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ParallelFiction-Ja_En-100k

like 58

「......なんだこりゃ?」 ホーラント側の出入り口に向かった一二三が見たのは、呆然と立ち尽くすホーラント兵たちの姿だった。 無表情のまま武器を手に持ち、視線はどこも見ていない人々の姿は、まるでマネキンが並んでいるような異様さがある。 命令者であったホーラントの魔法使いが発していたのは“ミュンスターへ攻め込め”というものだったので、街へ入ってしまうと次の指令を待って停止してしまったらしい。 「ひょっとしてさっきの奴が操ってたのか? 本当に人形だな」 そんな事を言いながらホーラント兵を迂回して出入り口に向かっていると、一人の騎士が馬上から誰何してくる。 「止まれ! 何者だ」 「第二騎士隊の生き残りか。俺は一二三だ」 「一二三......は、伯爵様でしたか! 失礼いたしました!」 慌てて馬をおりた騎士は、背筋を伸ばして謝罪した。 彼は第二騎士隊の隊員で、オーソングランデ兵を率いて包囲側で戦っていたという。それが突然扉が開いて敵兵が街へ侵入したと思ったら、途端にホーラント兵は立ち止まってしまったので、一旦攻撃を止めて状況の確認に廻っていたらしい。 先ほど出会った第二騎士隊の連中とは違った反応に、一二三は首をかしげる。 「おや、俺の今の爵位を知っているのか。それに、さっき会った第二騎士隊の連中は、隊長以下もっと敵意を向けてきてたけどな」 もっとも、派閥が違うせいかも知れないが、と一二三が言うのに、騎士は真面目な顔で答えた。 「陞爵されました事は、第一騎士隊の騎士たちと話をする機会がありましたので......。それで、隊長たちにお会いされたのですか?」 「ああ、殺したけどな」 ざわりと、騎士の肌が泡立つ。 剣の柄に手をかけようとしたが、やめた。 「おや? 俺を殺そうとは思わないのか?」 なんだ、つまらないと言う一二三に、騎士は首を振った。 「トオノ伯の腕前は存じております。私ごときでは数秒ともちますまい。それに、隊長は貴方の事を目の敵にしておりました。いずれこうなるのではと予感はしておりましたから......」 「ふぅん」 「それで、お願いしたいことがありまして」 「なんだ?」 騎士は、現状第二騎士隊の生き残りが数名と、オーソングランデの兵が数十名残っていると言う。 「それで、隊長もいない状況ですので、どうか我々をビロン伯と引き合わせていただければ助かるのですが......」 ビロン伯爵とスティフェルスの仲が険悪だったこともあり、頼みづらいのだろう。 「私たち騎士隊はまだ良いのですが、兵たちは大分消耗いたしましたし、早く休ませてやりたいのです」 「ふむ......まあ、いいだろう」 「ありがとうございます」 「ただし、ちょっと手伝ってもらうことがある」 一二三はホーラント兵たちを指差した。 「こいつらの手を縛り上げて、ここの領主館まで運んでくれ」 「捕虜にされるのですか?」 「まあ、色々さ」 話をはぐらかす一二三に、騎士はそれ以上突っ込まずに、兵たちを連れてくると言って離れて行った。 「では、今回のお礼についてのお話をさせていただきたいのですが」 翌朝、慌ただしく日常へ戻りつつあるミュンスターの街で一拍した一二三は、ビロンに呼ばれて領主館へ来ていた。 執務室にはビロンの他、サブナクとオリガも来ている。 「お陰様で、ミュンスターの街は大した被害を受けずに済みましたし、私自身の命も助けていただきました。私にできることであれば最大限にお応えしたいと思うのですが」 そんな事言ってしまって大丈夫か、とサブナクはハラハラしながら聞いていたが、領主同士の話に割って入るのは流石に気が引ける。 「なら、お言葉に甘えさせてもらう」 紅茶を一口含み、ソファの背もたれに身体を預けた一二三は、視線を天井に向けた。 「まずは捕虜にしたホーラント兵を正気に戻す実験に協力してもらう」 「実験......ですか?」 「そうだ。あれらが正気に戻って、俺が保護したとすれば、ホーラントを攻撃する丁度良い名分になる。それに、これほどわかりやすい善行は無いからな。民衆が俺を英雄扱いして、フォカロルの人口が増えれば、今後の資金の稼ぎやすい」 オリガなどは「素晴らしいお考えです」と、いつもどおり賞賛しているが、ビロンとサブナクは明け透けにも程がある物言いに青ざめている。 ホーラントの兵たちは、領主館の中のホールに押し込んである。ギュウギュウ詰めだが、もちろん誰からも文句は出ない。ちなみに、第二騎士隊とオーソングランデの兵たちは、ビロンの預かりとして第三騎士隊と共に街の復興作業に協力している。 「しかし、何か元に戻す方法があるのですか?」 サブナクの疑問に、一二三は顔色一つ変えずに言う。 「さぁなぁ。水につけたり大量に水を飲ませたり......湯に浸けるという手もあるか」 それは拷問だろうと喉まで出たが、ビロンは堪えて微笑みを崩さない。 「まあ、あれだけの人数がいるんだ。多少消耗しても問題無い。元に戻れたら儲けものくらいに思えばいいさ。それより、依頼はもう一つある」 「伺いましょう」 「もうすぐフォカロル領兵がここに到着する。一旦はこの街で休息を取らせるつもりだが......二日程度休ませたら、すぐにでも出発する予定だ」 「もう少しゆっくりしていただいてもよろしいのでは? 我々は大歓迎ですよ」 ビロンは満面の笑みで、宿泊場所や食事を用意すると言うが、そうじゃないと一二三は首を振った。 「ホーラントへ攻め込む。この街でそのための補給をするから、物資を用意してもらおう」 「逆侵攻をするのですか? 領兵だけで?」 驚いたサブナクが人数が少なすぎると反対するも、一二三は鼻で笑う。 「まずは俺だけで入る。後から兵たちを進行させるが、あいつらはあくまで人形どもの相手だ。本命は俺が殺す」 ビロンも無理があるとは思ったが、ひょっとしたら成し遂げてしまうかもしれない、と思わせてしまうあたりが、一二三の怖いところかもしれないとも思った。 ホーラント兵に対する救済という名の虐待は、まず水を浴びせる事から始まり、水を大量に飲ませたり、水をぬるま湯に変えてみたり、熱めのお湯に変えてみたりと一二三の思いつくままに進められた。 手伝わされるのは第三と第二の騎士隊たちである。 突然意識を取り戻してパニックになった相手に攻撃されないように、帯剣はしないまでも鎧は着たままで作業をしている。 そこで一二三が蒸し風呂にして汗をかけばいいんじゃないかと言い出したので、騎士たちにとっても地獄の様相となった。 締め切ったホールに煮えたぎる湯を張った鍋が持ち込まれ、さらにどんどんと沸かされていく。 湿気と熱でホールの中はすっかりサウナ状態となり、館の他の部屋も気温が上昇していく。 サブナクも、他の隊員に混じって作業をしていた。 大鍋でグラグラと煮えている湯を見て、火が消えないように監視しているが、あまりの暑さに意識が朦朧としてくる。 既に鎧は脱ぎ捨て、鎧下として着ていた簡素な布の服一枚だけである。 早く誰か交代してくれと思っていると、一人のホーラント兵が倒れるのが見えた。 「あ~。また誰か限界が......あれ?」 倒れた兵士は、よく見ると少しだけもがくように手足を動かしている。サブナクは慌てて駆け寄り、革袋に入れておいたぬるい水を飲ませた。 「おい、しっかりしろ!」 「うぅ......こ、ここは......」 まだ意識がはっきりしないらしく、呻くようなか細い声だが、確かに自分で話している。 「だ、誰か呼んでくれ! 一人正気に戻った!」 サブナクの叫びに、暑さと不快指数の上昇に魂が抜け駆けていた他の騎士たちも覚醒し、バタバタと集まって意識を取り戻したホーラント兵を別室へと運び出した。 担架に乗せられて運び出されていくホーラント兵を見送り、サブナクは床に座り込んだ。 「回復......できちゃったよ」 天井を仰ぎながら、これでまた一二三の狙い通りになるのかと苦笑いするサブナクだった。 オリガは今、ミュンスターの宿の中、一二三が滞在する部屋へ向かっていた。 決して無断で忍び込もうというわけではなく、一二三に呼ばれてのことである。 ビロンとの会見のあと、一二三に夕方に誰も連れずに部屋へ来るようにと言われ、時間ギリギリまで身だしなみを整えていたのだ。 「これは......いよいよでしょうか」 期待と気恥かしさに頬を染めつつ、足早にたどり着いたドアの前で深呼吸し、ノックをする。 「開いてるぞ」 一二三の声が聞こえると、鼓動が早まるのを感じる。 「失礼します」 部屋に入ると、質素な個室のベッドの上に腰掛けた一二三が、刀の点検をしているところだった。 真剣な目で刀を見つめる姿に、しばらくの間オリガは見とれていた。 「適当に座るといい」 「はい。失礼します」 迷うことなく一二三の隣に腰を下ろす。 一二三は少し顔をしかめたが、まあいいかと刀を収納した。 「呼んだのは、頼みがあるからなんだが......」 「ええ、何でもお命じください」 すぐに服を脱いで見せる覚悟で、鼻息荒く返事をするオリガに、一二三はちょっと引いた。 「落ち着け。お前には俺の目的のために、ひと働きしてもらいたい」 「......はい。何なりと......」 明らかに落胆しているオリガを無視して、一二三は続ける。 「いいか。これはお前を信用しているからこそ任せる事だ」 「信用......」 今度は目をキラキラさせ始めたオリガを極力見ないようにする。 「俺はこれからホーラントに攻め込むが、そこで例の魔法具をあるだけ奪取してくるつもりだ。数がどれくらいあるか判らないが、魔法薬があれだけの人数に使えるくらいだ。凶暴化する魔法具もある程度の数があるだろう。それを残らずいただく」 「それで、その魔法具を何に使うのでしょうか?」 オリガの疑問に、一二三はよくぞ聞いたと立ち上がる。 「俺は、この世界の連中が戦いに対して真剣味が足りないと思った。だからこそ戦いを広めようと思ったんだが......俺が一方的に殺すばかりで、俺を殺せそうな奴も出てこない。ひょっとしたらいるのかもしれないが、いつになったら表舞台に出てくるやら」 部屋の中の文机に置いていた水差しから一口だけ水を飲む。 「そこでだ。俺がいないところでもみんなに必死で戦う事を覚えてもらう方法を考えた。あのホーラントの凶暴化魔法具を、あちこちの地域にいる強力な魔物に取り付けたらどうか、と」 「魔物が強力になれば、それに対抗して戦術や武器を考えるようになり、冒険者や兵たちももっと鍛えるようになるということですね。素晴らしい智謀です」 「そこで、お前に仕事をしてもらいたい」 再びベッドに座った一二三は、まっすぐオリガの目を見る。 「これは裏の仕事だ。本来なら、復讐を果たした今、俺の側にいる必要も、ましてや命令を聞く必要もないんだが......」 「何をおっしゃるのですか! 私はすでに一二三様と共に在り、共に滅びるつもりです」 「......まあいいか。それでな、俺の後にホーラントに入ったあと、ありったけの魔法具を持って何人かの兵を連れてこっそり抜け出してくれ。あとはヴィシー・オーソングランデ両国の魔物に適当に魔法具を試してみてほしい」 なるべく、普通の人間じゃ扱いに困るような奴を重点的に。尚且つ、人里に近い所へ誘導するのも良いな、とほくそ笑む。 「ついでに領兵の訓練にもなるだろう。頼んだぞ」 「かしこまりました。必ずやご期待に応えて見せます」 立ち上がったオリガが深々と頭を下げる。 「ああ、楽しみにしている」 一二三の脳裏には、魔物を相手に必死で戦う冒険者や兵たちの姿が浮かんでいた。

"... What the hell is this?" (Hifumi) Hifumi, facing the exit towards Horant, saw the figures of the soldiers from Horant, who were dazed and standing stock still. Holding their weapons in their hands while being expressionless, their gazes are somewhat unfocused. It has a strangeness as if mannequins have been lined up side-by-side. Since they were given the instruction "Invade Munster" by the magician from Horant, who had the authority to command them, they apparently were in a deadlock of waiting for the next instruction after having finished entering the city. "Did the guy just now control them by any chance? There are really puppets." (Hifumi) He is heading towards the exit circumventing the soldiers from Horant while contemplating about such matters. A single knight asks him from the back of his horse to identify himself. "Stop! Who are you!?" (Knight) "A survivor of the Second Knight Order, eh? I'm Hifumi." (Hifumi) "Hifumi... i-it was Earl-sama? Please forgive my discourtesy!" (Knight) The knight, dismounting his horse in panic, straightened up his back and apologized. He fought on the side of the encirclement leading the soldiers from Orsongrande as member of the Second Knight Order. Since the soldiers of Horant ended up stopping just after the gate suddenly opened and the enemy invaded the city, he apparently went around checking the situation stopping his attacks temporarily. Hifumi inclines his head to the side as his reaction is different from the lot of the Second Knight Order he encountered not long ago. "Oh, you know about my current peerage? Also, the captain and his followers of the Second Knight Order, I ran into just now, held a lot more hostility towards me." (Hifumi) "But then again that might be because of being in a different faction", although Hifumi said this, the knight replied with a earnest face. "Since there was an opportunity to have a talk with the knights of the First Knight Order, I know about the matter of you climbing in peerage... And, did you meet with Captain's group?" (Knight) "Ah, I killed them." (Hifumi) With an unpleasant feeling, the knight's skin gets goosebumps. He tried to put his hand on the hilt of his sword but gave up on it. "Oh? You don't plan to kill me?" (Hifumi) As Hifumi says "What? How boring", the knight shook his head. "I'm well aware of Earl Tohno's skill. I won't even last several seconds. Besides, it was only because captain announced you as enemy. I had a hunch that it would turn out like this sooner or later..." (Knight) "Hmmm." (Hifumi) "Besides, there is something I'd like to request from you." (Knight) "What is it?" (Hifumi) Going by the knight's words, there are currently a few dozen soldiers from Orsongrande and several survivors of the Second Knight Order remaining. "And, because it is a situation where we don't even have a commanding officer, please, we will be saved if you can introduce us to Earl Biron." (Knight) It's probably a difficult request as Earl Biron' relationship with Stiffels was a bad one too. "Our knight order is still alright, but most of the soldiers have become exhausted. They want to have a break soon." (Knight) "I see... Well, it's fine, I guess." (Hifumi) "Thank you very much." (Knight) "However, there's something I need your help with." (Hifumi) Hifumi pointed at the soldiers from Horant. "Bind those guys hands and move them to the lord's mansion here." (Hifumi) "Are you taking them as prisoners?" (Knight) "Hmm, you might say that's it's a variety of that." (Hifumi) As Hifumi evaded the core of the matter, the knight didn't poke his nose any further in and separated to go bringing some soldiers. "Well, I want to have the privilege to thank you regarding the issue this time." (Biron) The next morning, Hifumi, who allowed the city of Munster to return quickly to its daily life in a beat, came to the lord's mansion being called by Biron. Sabnak and Origa have also come to the office, besides Biron. "Thanks to you, it finished without significant damage to the city of Munster. You even saved my life. You can expect me to help you to my utmost effort if it is something I can assist you with." (Biron) Sabnak was nervous while listening. But as expected, he would feel awkward to to force his way into the discussion between fellow feudal lords. "If that's the case, I shall accept your offer." (Hifumi) Hifumi entrusting his body into the sofa and tasting a sip of black tea, turned his line of sight towards the ceiling. "First I want to receive your help in the experiment of returning the consciousness of the imprisoned soldiers from Horant." (Hifumi) "Experiment... is it?" (Biron) "That's right. It will become a just cause if I were to take them under my protection after returning their sanity. Besides, it isn't just a plain benevolent act. If I, treated as hero by the masses, increase the population of Fokalore, it will be easier to earn funds thereafter." (Hifumi) As usual Origa is admiring him with something like [What a magnificent plan] , but Biron and Sabnak are turning pale as Hifumi's manner of speaking is far too frank. The soldiers from Horant are crammed into a hall within the lord's mansion. It's jam packed, but of course there aren't any kinds of complaints from them either. Incidentally, the Second Knight Order and the soldiers from Orsongrande, under the supervision of Biron, are cooperating with the Third Knight Order in the reconstruction work in the city. "However, is there some method to return them to their previous state?" (Sabnak) Towards Sabnak's question Hifumi answers without even changing his expression. "Who knows. If you adhere to water, there are the ways of having them drink large quantities of water... or soak them in hot water?" (Hifumi) , almost left Biron't mouth, but he endured it without having his smile falter. "Well, there are that many of them. It isn't a problem if we waste a few either. It's fine if you consider that at least some will profit by returning to their original state. Leaving that aside, I have another request." (Hifumi) "Let's hear it." (Biron) "Soon the soldiers from Fokalore will arrive here. I intend to have them rest in this city temporarily, but... once they took a rest for about two days, they are scheduled to depart right away." (Hifumi) "Isn't it also fine if they take it a bit slower? We will welcome them warmly." (Biron) Biron, with his whole face smiling, talked about the provision of a lodging place and meals, however with a "Let's not do this" Hifumi shook his head. "They will invade Horant. Since they are resupplying at this city for that reason, I want you to have the goods arranged." (Hifumi) "You will do an invasion in reverse? With only the territorial soldiers?" (Sabnak) Even as the surprised Sabnak opposes it due to the lacking numbers, Hifumi laughs scornfully. "First, it will be only me entering. The soldiers will advance in the rear, but to the bitter end they will be the opponents of the dolls. I will kill to my heart's desire." (Hifumi) Although Biron also thought it would be impossible, he ended up considering The abuse of the soldiers from Horant, in the name of salvation, began with pouring water on them, having them drink massive amounts of water. Advancing alongside Hifumi's ideas, they tried changing it to lukewarm water and then to hot water. The knights of the Second and Third Knight Order are dragged into assisting. In order to not be attacked by those becoming panicked due to suddenly regaining their consciousness, they are doing their job while wearing their armor and even going as far having a bamboo sword equipped. Those will be used to beat up thieves! Then, as Hifumi proposed "Isn't it fine if they sweat in a steam bath?", it became hell for the knights as well. Carrying in pots filled with boiling hot water into the closed up hall, they are rapidly heating up even more. With the heat and humidity, the hall has completely entered the state of a sauna. The temperature in the other rooms of the mansion has risen as well. Even Sabnak, mixed among the other knights, was working on the task. Watching the hot water boiling with bubbles in the cauldrons and monitoring the fire so that it doesn't go out, his consciousness has become dizzy due to the excessive heat. Already having thrown off the armor, he only wore a plain cloth beneath it. he saw a single soldier from Horant collapsing. "Ah~ Once again someone's limit has... huh?" (Sabnak) Once he looked properly, he saw the collapsed soldier moving his hands and feet as if struggling slightly. Sabnak rushed over in a hurry and gave him lukewarm water, he put into a leather bag beforehand. "Oi, get a hold of yourself!" (Sabnak) "U-Uh... h-here is..." (Soldier) Apparently his consciousness isn't clear yet. Although it is with a fragile voice as if groaning, he definitely speaks by himself. "S-Someone, come here! One person recovered his consciousness!" (Sabnak) Due to Sabnak's shout, the other knights also revived and their souls escaped from the rising discomfort of the heat. Noisily gathering, they took out the soldiers from Horant, who regained their consciousness, to another room. Seeing off the soldiers from Horant being carried out placed on a stretcher, Sabnak sat down on the floor. "Recovery... it was possible." (Sabnak) While looking up at the ceiling, Sabnak smiled bitterly as with this it had once again worked out according to Hifumi's plan. Currently Origa was heading to the room, where Hifumi stayed, within the inn of Munster. By no means it is for the sake of creeping in without permission. She has been called by Hifumi. After the audience with Biron she was told by Hifumi to come to the room in the evening without taking anyone along. She put her personal appearance in order until the very last minute. "This is... is it at last time?" (Origa) While blushing in embarrassment and anticipation, she finally arrives in front of the door at a quick pace. With a deep breath she knocks. "It's open." (Hifumi) As she hears Hifumi's voice, she feels her heartbeat quickening. "Excuse me." (Origa) When she entered the room, Hifumi was sitting on top of the bed in the simple room. He was about to examine his katana. The figure of him staring at the katana with serious eyes fascinated Origa for a short while. "It's alright to sit somewhere fitting." (Hifumi) "Yes. Excuse me." (Origa) Without hesitation she sits down next to Hifumi. Although Hifumi grimaced slightly, he put away the katana with a "Well, it's fine, I guess?" "I called you because there is something I want request from you, but..." (Hifumi) "Yes, please give me any kind of order." (Origa) As Origa replied with a rough nasal breathing, showing her resolution to take off her clothes right away, Hifumi drew back a little. "Calm down. I want you to to do some condemning work for the sake of my goal." (Hifumi) "... Yes. Whatever you..." (Origa) Disregarding the obviously disappointed Origa, Hifumi continues. "Listen. This is something I entrust to you because I believe in you." (Hifumi) "Believe..." (Origa) Hifumi makes sure to not look at Origa, whose eyes now began to sparkle, to the best of his ability. "After this I will invade Horant. I plan to take all the aforementioned magic tools from there. Although I don't know how many they possess, they have at least used the magic potion on that number of people. I guess there will also be a number of magic tools that turn people ferocious. I will take them all without leaving anything behind." (Hifumi) "And then? What will you use those magic tools for?" (Origa) After having listened well to Origa's question, Hifumi stands up. He draws his katana and beheads a thief trying to steal the translation sneakily "I thought that there isn't enough seriousness towards battles in this world. Therefore I planned to spread the fighting, but... it's just me killing them one-sidedly. There doesn't seem to be any fellow, that can kill me, appearing either. Although there might be some people like that by chance, when will they appear in front of me?" (Hifumi)magic He drinks a single sip of water from the water jug placed on the writing desk in the room. "And that's the point. I pondered about a method to have everyone learn by heart about fighting desperately even if I'm not there anymore. And then I asked myself, why don't you attach that magic tool, causing ferocity, from Horant on powerful monsters that are roaming all over the area?" (Hifumi) "If it's powerful monsters, the people will have to think about their weapons and tactics to oppose them. It will also cause that adventurers and soldiers will train even more. What wonderful craftiness." (Origa) "Accordingly, I want you to do a job for me." (Hifumi) Hifumi, sitting down on the bed once again, looks straight into the eyes of Origa. "This is an underworld job. By all rights, now that you've accomplished your revenge, there isn't even any necessity to stay at my side, much less to listen to my orders, but..." (Hifumi) "What are you talking about!? I'm already together with Hifumi-sama. I intend to perish at the same time as you." (Origa) "... Well, whatever. After I entered Horant, please take some soldiers. for holding all of the magic tools, and secretly slip out from Horant. Afterwards, I want you to test the magic tools on suitable monsters within both countries, Vichy and Orsongrande." (Hifumi) "Be focused as much as possible on those monster which are troublesome to deal with for ordinary people. On top of that, it would be good if you lead them to a place close to human habitation", he said with a snicker. "On that occasion it will also become training for the territorial soldiers, I suppose. I'm relying on you." (Hifumi) "Certainly! I will show you that I can live up to your expectation without fail." (Origa) Origa, who stood up, bows very deeply. "Gotcha, I'm looking forward to it." (Hifumi) Within Hifumi's mind the scene of soldiers and adventurers frantically fighting against monsters as their opponents was rising to the surface.

112.Livin’ La Vida Loca ウェパルたちが城門へ辿り着いた時には、すでに一二三の姿は城の中へと消えた後だった。それだけ、一二三の心が戦いに高揚しており、その遊戯の時間は短いものだったという事がわかる。 「うぇ、おえええ......」 「ちょ......えろろろ......」 ウェパルについてきた治癒魔法使いの少女が、いきなり目にした惨状に思い切り吐瀉し、すぐ横にいたもう一人の少女も、もらった。 やれやれ、と肩をすくめたウェパルは、冷静な目で城門周辺を見回す。 誰ひとり、無事な者は存在しない。 男も女も関係なく、年齢も関係なく、全ての者に等しく死が訪れていた。 「派手にやってくれたわね」 「隊長、あの人間は中へ入っていったのでしょうか。王がいる、城内へ」 「でしょうね」 吐いてはいないものの、青い顔をした部下の言葉に、ウェパルはため息混じりに答えた。 「何しろ、王を倒して私を新たな魔人族の王に据えるらしいからね」 「......正気ですか?」 「私に言わないでよ」 腕を組み、ウェパルは口をへの字に曲げる。 「でも、あの目は本気だったわ。どういう思考をしているのかわからないけれど、王を殺すなんてとんでもない事を、実現できる目標として捉えている表情よ、あれは」 問題があるとすれば、とウェパルが城を見上げると、周りにいた部下たちも、未だにえづいている二人を除いて、同じように王の私室あたりを見上げた。 「あの王に、人間が勝てるかどうか、よね」 ウェパルの言葉に、全員が頷いた。 魔人族の兵士たちは知っている。若く、少年にしか見えない王が、なぜ王として君臨し続けているのかを。 「げぇっ、うえっ」 「ぺっぺっ、なんか口の中が気持ち悪い。うがいしたいね、うがい」 重苦しいはずの空気は、少女たちのせいでいまいち締まらなかった。 フォカロルの軍が、多くの人々の歓声を浴びながら町の大門から列を成して出て行く。 揃いの戦闘服を身に纏い、槍や剣、中には鎖鎌などの武器を手にした兵士たちの顔は、緊張混じりの笑顔だった。 その数は五百名。これでも、トオノ伯爵領で正規兵として勤務する者たちの半数以下でしかない。金食い虫の常備軍をこれだけの規模で運用できるだけの財政基盤を持っているのは、各国の王都以外ではこの伯爵領のみであろう。 「魔物なんて、全滅させてくれよ!」 「ちゃんと帰ってきてね!」 黄色い声援も野太い叱咤も入り混じり、まるで音の波が押し寄せてくるようだった。 町の外に出た兵士たちは慣れた動きで整列し、街道沿いにズラリと顔を並べて正面にいる人物に視線を向けた。 「それじゃ、出発するよ!」 「応!」 先頭に進む幌のない露天の馬車の上から、アリッサが小さな身体を精一杯伸ばして叫ぶと、大勢の声が重なって返って来た。 ゆるゆると進み始めた馬車にはアリッサの他に補佐としてミュカレが同乗し、その後ろから、物資を運ぶ輜重部隊の馬車を挟み、兵士たちが進む。 「とりあえずは、ヴィシー方面へ進むって事で良かったよね」 「ええ、すでに馭者には指示を出しております。アリッサ様はゆっくり座っていていただいて大丈夫ですよ」 カップに入れたお茶を差し出しながら、ミュカレは微笑んだ。 「ありがとう」 微笑み返したアリッサの顔を見て、ミュカレは鼻の奥がツンとなるのを必死で抑え、傍らに置いていた書類を手にした。 「このまま、ヴィシー方面へ進みながら順次魔物を掃討して行きます。基本的には街道及びその周辺の安全確保が主目的となりますが......最終的には、ヴィシーへの圧力を強め、暴発すれば開戦。しなければ駐留部隊を置いて国境警備の名目で人の出入りを制限すること。これが、領主様の指示の全てです」 「具体的な事が何にも書かれてないよね」 口を尖らせ、アリッサは腰の後ろに提げている脇差の位置を調整した。馬車の振動が響いて、座りが悪い。 「これも、アリッサ様と私に課せられた“宿題”ですわ。ですが、二人で力を合わせればこの程度の作戦、造作もなく熟せることでしょう」 「うん、頼りにしてるね。ミュカレさん」 辛うじてポーカーフェイスを保つミュカレの内心を悶絶させる、明るい笑顔を見せたアリッサだったが、並び歩く兵士たちへ視線を向けると、真剣な眼差しに変わった。 フォカロルに人が集まるに連れ、警備や治安維持のために多くの人数が必要になっていく。仕事を求めてやってくる人々もそれだけ多くいたので、人員補充に関しては特に問題は発生しなかった。 訓練と勉強を繰り返した精鋭たちは、それぞれの得意分野に割り振られていく。 魔物との戦いや、街中での事件などで時折命を落とす者が出たものの、然程影響なくフォカロル領軍は巨大化していった。 そして、いつかの戦闘以来、久しぶりの軍事行動である。相変わらず活用されている台車には、プルフラスが自ら会心の出来だと語った新型の投槍機が据え付けられている。 「......誰も、死んで欲しくは無いんだ。知っている人が死んじゃうのは悲しいから。仕方ないと思って押さえ込むことはできるけれど、それでも」 アリッサの視線が、ミュカレへと向いた。 「一二三さんが何を目指しているか、初めて聞いた時はどう思った?」 「......正直、とてもとても迷惑な話だと思いました。訓練と称して仔馬の尻を叩いて走らせるような、無茶な真似だと思いますけれど」 「あはっ、その例えは面白いね」 吹き出したアリッサは、腰の後ろから脇差を鞘ごと外して、目の前で抜いた。 「一二三さんって、暇があると自分の刀をじっと見てるんだよ。知ってた?」 手首を返し、キラリと光を反射する。 「前にね、どうしてそんなに刀をじっと見つめるのか聞いたことがあるんだ」 それは、一二三が日課の稽古を終え、黙想を終えて刀を手入れをしている時だった。オリガも交えて三人で食事をしようと思ったアリッサが、一二三の自室に入ったとき、室内にあるのは耳が痛くなるほどの沈黙の中に佇む、刀と男だった。 「自分が死ぬ時の事を想像しているんだって」 思わず声のトーンを上げて聞き返してしまったミュカレは、顔を赤らめた。 「僕も、最初に聞いたときは同じように聞き返したよ」 楽しそうにアリッサは笑った。 ひとしきり、ケラケラと笑ったアリッサは、目の端に浮かんだ涙を指で拭った。 「前に話したっけ、僕がヴィシーの兵士だったとき、酷い目にあって死んじゃうような目に遭ったこと」 「ええ、覚えています」 「あの時は、死ぬのがすごい怖かった。やりたかったこともあったし、美味しいものも楽しいことも、この痛いのが終わったら、全部全部お終いなんだって思った」 馬車が小石に乗り上げ、大きく揺れる。 少しだけバランスを崩したミュカレと対照的に、アリッサは軽く腰を浮かせて衝撃を逃がした。 「でも、今は一二三さんに聞いた通りに、いつ死んでも悔いが無いように懸命に生きてるよ。もちろん死にたくないし、一二三さんについて行くことを決めた時には、そこまで考えてなかったけれど」 脇差の鞘を、優しく撫でる。 一二三のものと同様に、黒塗りに仕上げられた鞘は、敢えて光沢を消した暗闇を思わせる黒だった。 「きっとね。いつ死んでも良いように、頑張って生きる事が大事だって、一二三さんはみんなに伝えたいんだと思うんだ。言葉のまんま“殺し合い”をするんだけれど、それが一番わかりやすいから、みんなと殺し合いをしようって、そういう事だと思ってる。......ミュカレさんが言う通り、はた迷惑だと思うけどね」 ミュカレは、はにかむアリッサの目の奥に見える怪しげな光が、一二三に似たものだと気づいた。 「......では、私も後悔しない生き方をしましょう。誰に対しても胸を張って生きていけるように努力をしましょう」 「ね。このおかしな人生も、きっと楽しいよ」 後ろからついてきている兵士たちには、女性二人が和やかに話しているようにしか見えなかったが、古参の数名だけが、頼もしくも恐ろしい、どこかで知っている空気を感じていた。 一二三は全身あちこちに切り傷や火傷を負い、両腕にも両足にも、青痣をいくつも作っていた。 それでも、前髪や切っ先から血を滴らせる刀を右手に提げて歩く姿は堂々としており、オリガやウェパルが見たならば美しいと表現したかもしれない。 袴はあちこちに穴が空き、右肩や脇腹も地肌が覗いている。 「無人......いや、隠れているだけか」 誘うように開かれた扉から城内へと入り込んだ一二三は、何人かの視線を感じながら進む。 それら視線の主は、攻撃してくる様子は無いものの敵意はたっぷりと含んでいる。外で殺された連中の同僚でもあるのだろう。 「なにを大人しく見ているんだか。俺を殺したいなら、そうするべきだろうに」 「兵たちを挑発するのはやめてもらおう」 暗い廊下の先から姿を表したのはフェゴールだった。 昼間に見たようなスマイルは消え失せ、真剣に一二三の挙動を見逃すまいとする視線が突き刺さる。 「お前か。昼に見たアガチオンとやらが、随分と手荒な迎えを寄越してくれたからな。礼を言いたいんだが」 一二三は本気で礼を言うつもりだったのだが、フェゴールは皮肉だと受け取った。 「......心にも無い事を。王が呼んでいる。ついてくるように」 「お前は、参加しないのか?」 こんなに楽しく盛り上がっている夜なのに、つまらないだろう、と一二三は笑った。 「余裕だな、人間。だがそれも、王の御前に立つまでの話だ」 背を向けて歩き出したフェゴールを斬るかどうか迷ったが、一二三はこのままの方が楽しそうだ、と思った。ウェパルが本気で王の座を忌避した場合、フェゴールを代わりに王の座に据える事も考える必要があるかもしれない。 硬質な音を響かせ、石造りの床を踏みしめながらあるくフェゴールの心境は、その表情からは読み取ることはできない。 その内心は複雑だった。 王の強さへの絶対の信頼があり、さらには罠も用意している。 人間の強さはある程度知っているフェゴールにとって、王が出るまでもないというのが正直な感想ではある。 だが、城門前で見せた一二三の強さは、フェゴールが知る人間のそれは逸脱していた。 (なんとしても、彼の武器だけは奪わなくては) それが、王の望みであれば命などいつでも投げ出す。 だが、王の期待に応えられずに終わるわけにはいかない。 一二三がしっかりとついてきている事は足音でわかる。 そう長くない通路を抜け、フェゴールは目的の場所へ辿り着いた。 3階部分まで吹き抜けとなったホールには円筒形の室内のあちらこちらに魔法の光が灯され、揺れる光が幻想的な空間を演出していた。 「おう、これは広いな」 一二三の感想が聞こえたが、フェゴールは言葉を返す事はしなかった。 それよりも仕掛けが無事に動くかどうかがフェゴールには気になる。そして、ホールの奥、壇上にて玉座に収まっているアガチオンの姿も。 「よく来たね、一二三」 まだおはようには早いかな、とアガチオンは笑みを浮かべたが、昼間のように立ち上がることはしない。 君臨していることを示すかのように、肘をついて一二三を見下ろしている。 「ああ、おかげで楽しい時間を過ごすことができた。礼を言おう」 「それは良かった。それを聞けば、彼らも浮かばれるよ」 語りあいながら、一二三が自然と歩を進める。 フェゴールの隣を通り過ぎた。 そこで何か仕掛けてくるかと考えていた一二三だが、視線以外になにも向けてこないフェゴールに拍子抜けして、目の前のアガチオンに集中する。 「昔から」 一二三がホール中央に差し掛かったとき、アガチオンが何かを語り始めた。 「そう、我々の数代前の者たちが、国とも呼べない集落を作り、この不毛の土地で懸命に生きていた頃から、魔人族は武器や道具を使うようになったそうだ。それまでは、強力な魔法と身体能力で充分に他種族を圧倒できたし、実際にエルフにしてやられるまでの長い期間、それで充分だった」 「なるほどな。随分前に魔人族は武器を使わないと聞いて、ここで実物を見て勘違いだと思っていたが、そういうことか」 立ち止まった一二三は、手に提げ持ったままの刀を揺らした。 「でもね。魔人族の特性が魔法に特化している事には変わりない。たまにベレトのような肉体派が出てくるけれど、生まれ持った特性に支えられた強力な魔法は、他の種族では真似出来ない、僕たちだけの力だよ」 アガチオンが立ち上がり、両手を広げた。 魔法を放つつもりかと一二三が見据えるが、その兆候は見えない。 「人間のように。そう、君のように強力な武器があれば、充分に戦えるだろうね。でも、それに頼らず僕たちは自分たちの力だけで戦う事ができる。それだけ強力な魔法を、僕たちは使えるんだ。例えば、フェゴールのような強力な結界魔法とか、ね」 攻撃魔法が飛んで来ると予想していた一二三は、その言葉でフェゴールの方を見た。 フェゴールは両手をだらりと下げ、ただ立っているだけであった。 だが、一二三は自分の周囲の空気が変わった事に気づいた。 「この感覚は......」 次第に、周囲を丸く囲む、薄ぼんやりとした膜が見えてきた。 「フェゴールの結界魔法は、エルフが僕たちを閉じ込めている結界と同様かそれ以上の強さだよ。最も、あれほど広範囲にはできないけれどね」 「恐縮です」 頭を下げたフェゴールに、鷹揚に手を振って応えたアガチオン。そして、結界に閉じ込められた一二三を見てほくそ笑む。 「どうやら、その武器には強い能力が付与されているようだ。しかし、どんなに鋭い刃も、相手に届かなければ意味が無い」 アガチオンの合図で、フェゴールはもう一つ張っていた結界を消した。 それはホールの天井を支えていた結界で、通常は天井裏で固定されている石材の集合体だった。 固定具はあらかじめ外され、フェゴールの結界で支えられていた石材は、重力に引かれて同時に崩れ始める。 当然、その様子を真下で見上げていた一二三に向かって、大きな石材が次々と落下していく。 轟音と砂埃、砕けた石を撒き散らしながら、筒状の結界の中に瓦礫が積み上がっていく。 「無力だよねぇ、人間は」 アガチオンの笑い声は、最後のひとかけらが落ちるまで、激しく鳴り響く騒音と混じり合って響いていた。

Chapter 112: Livin' La Vida Loca The time Vepar's group arrived at the gate was when Hifumi's figure had already vanished into the castle. Hifumi's spirit was simply uplifted by the battling. He knows that the time for that game was short. "Ueeh, oeeh, oeeh..." "Cho...erororo..." The healing magician girl who followed Vepar, vomited with all her strength abruptly once she saw the terrible scene and one of the girls, who was right next to her, joined in. Vepar, who shrugged her shoulders while saying "Good grief", calmly surveys the gate's vicinity. Not a single living person is around. Without regards to whether man or woman and their age, all of them were equally visited by death. "He went at it quite flashily." (Vepar) "Captain, did that human go inside? To where the king is, inside the castle?" "I guess so." (Vepar) Vepar answered the question of her subordinate, who had a pale face although she hasn't thrown up, with a sigh mixed in. "Anyway, he seems to plan on installing me as new demon king once he brings down the current king." (Vepar) "... Is he sane?" "Don't ask me." (Vepar) Folding her arms, Vepar twists her mouth in the shape of he. "However, his eyes were serious. I don't know what he is thinking, but that was the expression of someone who has seized the outrageous act of killing the king as realizable target." (Vepar) "If there's a problem", Vepar raised her eyes at the castle and even her subordinates, except the two who were still vomiting, likewise looked up at the area around the king's private chamber. "It's whether the human can win against that king, right?" (Vepar) Everyone nodded at Vepar's words. The demon soldiers know why he continues to reign as king although he looks like nothing more but a young boy. "Gee, ueeh" "*spits out* Somehow I have a disgusting feeling within my mouth. I want to rinse it out." The mood, which should be gloomy, didn't become too tense thanks to the girls. While Fokalore's army is showered with cheers by a crowd of people, they form lines by the city's large front gate and leave. The expressions of the soldiers, who are donning battle gear on their bodies and held weapons such as swords, spears and some of them even kusarigama's, were smiling faces tinged with nervousness. They number 500. But even then it's no more than less half of the soldiers serving as regulars in the Tohno feudal army. Only this earldom possesses the financial leeway to uphold such a large-scaled standing army, which is a money sink, with the exception of each nation's capital. "Please annihilate the monsters and their-likes!" "Come back properly!" Even bold scolding was mixed into the high-pitched encouragements. It was completely like being overwhelmed by waves of sounds. The soldiers, who left the city, formed lines with accustomed movements, matched their faces alongside the highway and looked at the person in the front. "Well then, move out!" (Alyssa) """Yes!""" Advancing at the lead, from atop an open-air carriage with no canopy, Alyssa stretches her small body as best she can while shouting and received a reply with many voices overlapping. Beside Alyssa Miyukare is riding with her on the carriage, which began to advance slowly, as her advisor. The soldiers start to move and in their backs the carriages of the supply unit, carrying goods, follow. "For the time being it would be good to head in the direction of Vichy, right?" (Alyssa) "Yes, I already gave the coachman the order. It's alright for you to comfortably sit down, Alyssa-sama." (Miyukare) Miyukare smiled while holding out a cup filled with tea to her. "Thank you." (Alyssa) Seeing the face of Alyssa, who returned a smile, Miyukare frantically suppressed the thump within her nose and grabbed the documents placed nearby. "While marching towards Vichy like this we will clean up the monsters. Basically the main purpose is to secure the safety of the highway and its surroundings, but... in the end by emphasizing the pressure onto Vichy, a war will break out if the situation explodes. If it doesn't, we will restrict the entry and leaving at the border in the name of security measures at the garrisoned forces. Those are all Lord-sama' orders." (Miyukare) "There's nothing specific written, right?" (Alyssa) While pouting, Alyssa adjusted the position of the short sword which is hanging at the back of her hips. With the carriage's vibrations making a stir, it's difficult to sit. "This is also the "homework" assigned to you and me, Alyssa-sama. But, if we work together, an operation of such level can be completed without difficulty." (Miyukare) "Yea, I count on you, Miyukare-san." (Alyssa) Miyukare, who barely manages to keep up a poker face, faints within her mind. Alyssa showed her a bright smile, but once she turned her sight towards the walking lines of soldiers, her look became serious. As people are gathering in Fokalore, a great number of people is necessary for security and maintenance of public order. Given that there are that many people who have turned up looking for work, there was no particular problem in regards to replenishment of personnel. The elites, who repeatedly practised and studied, have been assigned to their respective fields of expertise. Although it happened that sometimes some lost their lives due to incidents in the city and the battles with monsters, there was no substantial influence due to that and the Fokalore feudal army became huge. And, after several battles, it's a military operation after a long time. On the platform wagons, which are being used as usual, Prulfras has installed a new type of spear throwers he himself named to be of satisfactory quality. "... No one wants to die. It's sad for people you know to pass away after all. But even so, it's possible to restrain that way of thinking by accepting that it's inevitable." (Miyukare) Alyssa's look faced towards Miyukare. "What is Hifumi-san aiming for? What did you think when you heard it for the first time?" (Alyssa) "... Honestly, I thought it to be a simply troublesome matter. I considered it an absurd action like running to beat a horse in the name of practise." (Miyukare) "Ahaha, that example is funny." (Alyssa) The laughing Alyssa unfastened the scabbard with the short sword from behind her hips and drew it out in front of her eyes. "Hifumi-san, you know, stares at his katana when he got free time. Did you know?" (Alyssa) Turning over her wrists, light is reflected in a momentary flash. "Previously I asked him why he is staring that fixedly at his katana." (Alyssa) It was at the time Hifumi was maintaining the katana after meditating and finishing his daily practise. Alyssa planned to have her meal together with the three of them, Origa included, but at the moment she entered Hifumi's room, there was a man and his katana standing in the room shrouded in a silence that was painful. "I have imagined the time of my death, he said." (Alyssa) Unintentionally raising the tone of her voice, Miyukare blushed. "I also asked the same thing when I heard it for the first time." (Alyssa) Alyssa laughed delightfully. Alyssa, who giggled for a while, wiped her tears with a finger. "I told you before, I experienced something cruel at the time I was a soldier of Vichy to the degree of wanting to die." (Alyssa) "Yes, I remember." (Miyukare) "At that time I was terribly afraid of dying. There were also things I wanted to do and delicious things I wanted to enjoy. I thought that all of it would come to an end once this pain ended." (Alyssa) The carriage sways grandly as it runs over a pebble. In contrast to Miyukare whose balance crumbled a bit, Alyssa lightly half-rose to her feet and cushioned the impact. "But now I'm living earnestly without regrets until the time I die, as I was told by Hifumi-san. Of course I don't want to die. At the time I decided to follow Hifumi-san, I didn't think that far ahead though." (Alyssa) She gently strokes the scabbard of the short sword. The scabbard which had been polished to the degree of blackening just like Hifumi's, had a blackness making somebody believe that its darkness erased the lustre purposely. as is, but since it's the easiest thing to understand, let's simply kill each other. I think that's how it is. ... It's a nuisance to others though, as you say, Miyukare, I guess." (Alyssa) Miyukare noticed that the questionable light visible within Alyssa's resembled that of Hifumi. "... Then I shall lead my life without regrets as well. I will put in great efforts to live while upholding my pride towards whoever it is." (Miyukare) "Right? Even this odd life will undoubtedly be enjoyable." (Alyssa) For the soldiers following in the back it didn't appear as anything but two women calmly chatting, but only the veterans reliably felt the somehow frightening mood they already experienced before. Hifumi had cuts and burns all over his body. Both his arms and legs were plastered with bruises as well. And yet, he daringly walked forwards holding the katana with his right hand while the point of the katana and his fore-bangs were dripping with blood. If Origa or Vepar saw that, they might have judged it as lovely appearance. With his hakama having holes all over, his skin is showing at his sides and the right shoulder. "No one's here... no, they are only hiding, huh?" (Hifumi) Hifumi, who openly entered the castle through the door as if luring them, proceeds onwards while feeling the looks of several people. Although the owners of those looks aren't attacking, they are filled with plenty of hostility. They are probably comrades of the lot I killed outside. "Why are you looking at me quietly? If you want to kill me, you should do so, right?" (Hifumi) "I'd like you to stop provoking the soldiers." (Phegor) It was Phegor who made an appearance in the dark hallway ahead. The smile he showed during daytime has vanished. His look is piercing in order to not oversee even one of Hifumi's moves. "You, eh? Agathion, whom I've seen during the day, sent quite the violent greeting. I'd like to thank you for that." (Hifumi) Hifumi planned to thank for that honestly, but Phegor took it as sarcasm. "... Such an insincere remark. You have been invited by the king. Follow me." (Phegor) "Are you going to participate as well?" (Hifumi) "Although the night has been filled with such amusements, isn't that boring?" Hifumi laughed. "You are quite calm, human. But, even that will only last until you stand in front of the king." (Phegor) In case Vepar really shirked away from the king's seat, it might be necessary to place Phegor on the king's throne instead. The mental state of Phegor, who walks while stepping firmly on the stone floor with a hard sound resounding, can't be read from his expression. His innermost thinking was complicated. He has absolute trust in the strength of the king. Moreover he has prepared a trap. For Phegor, who knows the human's strength to some degree, the appearance of the king is unnecessary. That's what his honest impression is. However, the strength of Hifumi, shown in front of the castle's gate, deviated from the strength Phegor knew of humans. (If I don't steal that weapon by all means necessary...) If that's the king's wish, he will throw down his life at any time. However, I cannot afford to not live up to the king's expectations. He properly knows from the footsteps that Hifumi is following him. Coming out from the not-so-long hallway, Phegor arrived at the targeted place. Magic lights are shining all over in the cylindrical room which became a hall with up to 3 floors. The swaying lights produced a fairytale-like atmosphere. "Yea, this is wide." (Hifumi) He heard Hifumi's impression, but Phegor didn't return any words. Rather than that, Phegor is worried whether the device will work as intended or not. And, inside the hall, there was also the figure of Agathion who was seated on the throne placed on a platform. "You did well to come here, Hifumi." (Agathion) "It's still too early for good morning, I guess" Agathion showed a smile, but he doesn't stand up like he did during the day. He looks down on Hifumi while leaning on his elbow as if showing that he is the one ruling. "Yea, thanks to you I was able to spend my time enjoyably. Let me thank you for that." (Hifumi) "That's great. If I hear that, they float up in my mind as well." (Agathion) While talking with each other, Hifumi naturally steps forward. He passed Phegor's side. Hifumi wondered whether something would start there, but being disappointed by Phegor as he turns nothing but his look at him, he concentrates on Agathion who is in front of him. "Since long ago." (Agathion) At the time Hifumi came close to the centre of the hall, Agathion began to talk about something. "Right, a number of our people of a previous generation created a village you can't even call a nation. After the time they eagerly strived to survive in this barren area, the demons reached the point of using tools and weapons. Until then they we were yet another race that had overwhelmingly powerful magic and physical abilities. In fact that was sufficient for a long time until we were outwitted by the elves." (Agathion) "I see. Hearing that the demons from long ago didn't use weapons, I thought it was a misunderstanding seeing the actual situation here, but now I got it." (Hifumi) Hifumi, who stopped, shook the katana he held in his hand. "But you know, it doesn't change the fact that the demon's strength lies in magic. Sometimes those endowed with muscle strength, like Beleth, appear as well, but the powerful magic, we were supported with as special trait since our birth, can't be copied by other races. It's our power." (Agathion) Standing up, Agathion spread both his hands. Hifumi looks at him wondering whether he intends to release magic, however he can's see any sign of that. "Like humans. Right, just like you. If we have powerful weapons, we will be able to fight properly. However, without relying on that, we are able to fight with just our strength. We are able to use such a powerful magic after all. For example, strong barrier magic like Phegor." (Agathion) Hifumi, who expected offensive spells to be hurled at him, looked in the direction of Phegor at those words. Phegor was simply standing there with both his arms loosely dangling. However, Hifumi noticed that the sky in his own surrounding had changed. "This sensation is..." (Hifumi) He saw a faint membrane gradually surrounding the vicinity. "Phegor's barrier magic is the same as what the elves are using to imprison us or even stronger. Originally he isn't able to extend it to such a degree though." (Agathion) "I'm grateful." (Phegor) Agathion replied with a generous waving of his hand towards Phegor who bowed his head. And he chuckles as he watches Hifumi who was locked up by the barrier. "It somehow seems that this weapon was endowed with powerful abilities. However, no matter how sharp it might be, it's meaningless if it isn't able to reach its opponent." (Agathion) At Agathion's sign Phegor erased another deployed barrier. It was the assembly of stones which are usually holding the ceiling with a barrier supporting the hall's ceiling. Removing the fixing installations in advance, the stones, which were supported by Phegor's barrier, begin to crumble while being pulled by gravity.magic Naturally large stones are falling one after the other onto Hifumi who looked up at its state from directly below. While the broken stones are scattering with a thunderous roar and a cloud of dust, the debris is piling up within the cylindrical barrier. "Powerless, isn't he? That human." (Agathion) Agathion's laughter mixed with the violently reverberating sound until the last piece fell.

29.There She Goes 【死骸地に繰り出そう】 一二三はアロセールと同様に、オーソングランデ国境に近い複数の街とそれに付随する村を順番に支配していった。 基本的に一二三がアロセールで行った事を、兵たちにやらせているだけである。少人数で潜入して代表を捕縛もしくは殺害して、戦力があると思しき箇所をピンポイントで制圧していく。ギルドだけは一二三が担当し、ギルド長に恭順を迫った。 多くのヴィシー兵と冒険者が殺され、一二三側も抵抗されて数人の死者が出ていたが、損害の差は圧倒的だ。全ての侵略は多くの民衆が気づかないうちに行われ、気がついたら支配者の名義のみが変更されていった。 反抗する者以外は生かしたまま、行政機関としてはトップが一二三になったと広めさせるだけで、特に手はつけなかった。完成している行政体制を変更するには、時間が足りない。 中央からの工作員や連絡員は、見つけた分は軟禁しているが、一二三は特に対策は打たなかった。彼らには、時期が来れば中央に支配地域の状況を伝えてもらう役目がある。 そうこうしているうちに3つの都市国家と、その周辺にある10の村を支配下に置いた。 各都市では、反抗する者を一通り殺してからはで出入りを制限するための最低限の兵力のみを残しており、村に至っては三人だけにした。 「そろそろだな。パジョー、手はず通りここを占領して新たな国境を設定する。直ぐに国から警備のための兵を送るように手配してくれ」 アロセール代表の館から奪った地図の一ヶ所に指を置く。 一二三が指定したのはローヌという名の小規模な街だが、街道沿いにヴィシーの主だった都市へ向かうには必ず経由する位置にあり、ここで差し止めができればヴィシーの5分の1程を削り取る形となる。 パジョーは目的の街を目前とするここまで随行して来ていた。 支配領土だけ見ても、戦果としてはオーソングランデの歴史上類を見ないもので、街や村をほぼ無傷で手に入れているので、税収もさほど減らさずに回収できると思われる。 ただ、そのやり方は騎士を始めとする貴族たちには到底受け入れられないものだろうとパジョーは見ている。これが一二三で無ければ、すぐにでも遠征軍のトップは差し替えられていただろう。 「では、俺はローヌに“話をつけに”行ってくる」 馬に跨り、他の隊員たちを残して一人街道の向こうへ消えて行く一二三を見送りながら、パジョーはオーソングランデのこれからを考えていた。 (イメラリア様は他国を侵略することはお考えでは無かったはず。であれば、ここで一度ヴィシーとの話し合いに持ち込んで、オーソングランデへの謝罪という形で収束させるべきなのだけれど......) 一二三はここで立ち止まる事を納得するだろうか? 誰かの意見を聞いて考えを変える事などあるのだろうか? ......果たして、ヴィシーだけが被害者で終わるのだろうか? パジョーは遠征軍の隊員たちを見た。 彼らは一様に疲れを見せていた。今まで経験の無い、静かな侵略と一方的な殺害。遠征による肉体的な消耗もあるだろうが、抵抗できない相手を多く含む殺人の繰り返しは、確実に兵たちを消耗させていた。 夜襲・奇襲に選択と集中。効率だけで言えば、一般人に被害を出さずに制圧できる方法。だがそれは、人を殺すための作業だ。このやり方がオーソングランデに浸透したとして、自分たち騎士や兵士はどうなってしまうのだろうか。 止めなければ、オーソングランデは内側から崩壊するかもしれない。 オリガは内心は分からないが、一二三に対して正面から意見する事は無い。アリッサも同様で、わからないから従うというスタンスだ。 (もし、一二三さんを止める事を考えるなら......) パジョーは、一番隊に制圧準備を指示しているカーシャを見た。この遠征中、一二三の従者の中で彼女だけは一二三のやり方に不安気な表情を見せたことが数回ある。 「ちょっと、いいかしら?」 手が空いたらしいカーシャに、パジョーがそっと声をかけた。 ローヌの街に近づきながら、一二三は眉をひそめていた。 風に乗って血の匂いが漂ってくる。街の出入り口も見えはじめているが、人の気配がほとんどしない。 「どういうことだ......?」 馬の速度を早めながら、一二三は刀をしっかりと腰に固定して、いつでも抜けるようにと軽く左手を鞘に添えておく。 グングンと近づいていくうちに、街の入口に異様な土壁がそびえ立っているのが見えた。 注意深く傍に行って確認すると、岩のように締固められた土の壁が、街の入口をしっかりと塞いでいる。人の気配がしないことを確認して、一二三は一太刀で壁を破壊した。 解放された門から、むわっとむせる様な血の匂いと腐臭がする。 「全滅しているな」 街の中を見て回るが、あちこちに腐敗した死体が転がり、生きているものは犬や猫すら見当たらない。商店や宿、一般の家屋に至るまで、血と死体のオブジェがある。 一二三が違和感を感じたのは、ほとんどの死体が死後数時間から一日程度と思われるのに対し、所々にある一部の死体だけは酷く腐乱している事だった。 「病気......ではなさそうだな」 まだ腐っていない死体をいくつか見てみたが、全て撲殺か首などに傷を負っての失血死のようだった。だが、それらの死体にも疑問がある。一二三は死体の指や爪が綺麗な事が不思議に思えた。明らかに“殺された”はずなのに、抵抗した様子も無く、死に顔も恐怖や痛みに歪んでいるどころか、全くの無表情だったのだ。 腐乱死体は死因がわからなかったが、喉を抑えたり胸部を引っ掻いた形のまま硬直しているものが多かったので、何かの原因んで呼吸ができなくなって息絶えたのだろう。 一二三は徐ろに刀を抜いて、腐乱死体の腹を裂いた。体内のガスは抜けており、グチャリと音を立てて内蔵が流れ出る。 「内蔵も酷く腐っているが、胃の中の物は腐っていないな」 腐乱死体も、死んだのは他の住人たちと同じくらいの時間で、何かの理由で早い段階で腐敗していったのだろうと一二三は推測したが、裂けた服からチラリと見えるものに気づいた。 「これは、あのゴリラみたいな奴が付けられてた魔法具だな」 とすると、またホーラントの奴かその指示を受けた者の仕業だろうか? 「......とりあえずは片付けないと街が使えないな」 これ以上は判断できないとため息をついて、一二三は再び遠征軍が待機している場所へと戻っていった。 最初に死屍累々の街を見た遠征軍は絶句し、ここまでやるかという目線が一二三に集中したが、「こんな短時間でこんなに殺せるか」というちょっとずれた文句を言われた。 病気の発生を避けるため、死体は焼却処分するように指示を出し、骨は適当に穴を掘って埋めてしまう事にした。 「一体これはどういう状況なのでしょうか?」 一二三について回っていたオリガが疑問を口にする。 「わからん。状況だけで言えば、腐った方の奴らは身体を強化する例の魔法具を付けていた。付けられたのかもしれんがな。他の連中は表情が抜けていたから、アロセールの兵士連中が使っていた魔法具と同じような物を使われたようだな。抵抗もしない程だから、もっと強烈なやつだろう」 そこまで話してから、一二三は身体強化の魔法具は何度か目にしたが、アロセールの兵が使ったという魔法具は見ていない事に気づいた。 少し離れてついてきたパジョーに振り返る。 「パジョー。アロセールの兵は何かの魔法具を中央からの指示で使っていたはずだが、どういう魔法具かはわかるか?」 「いえ、特に共通して身につけている魔法具は無かったと思うけど......」 「だが、アロセールで聞いた時には魔法具だと......ん?」 「妙な臭いがする」 一二三が向かったのは、近くにあった共同の井戸だった。一二三に続いてオリガたちも覗き込んで臭いを確かめると、僅かに目にしみるような酸い臭いがする。 桶を放り込んで水を組み上げると、水の色におかしな所は無いが、間違いなく水から臭いが広がっている。 「......飲み込む事で効果がでる魔法具とかはあるのか?」 「見たことは無いけれど、話には聞いたことがあるわね。でも、それがどうかしたの?」 「例えば、魔法具で作った成分が体内に広がって効果が出るものだと仮定して、その成分を水に溶かして飲ませたとしたら?」 「同じ効果が出るかどうかわかりませんが......」 「だから、実験したんじゃないのか?」 オリガもパジョーも黙りこんでしまった。 街一つを壊滅させてまでやることなのか、その狂った思考に一二三に対するものとは違った戦慄を覚える。 「多分、国境の兵を魔法具で強化した奴を使って潰した奴と同一だろうな。あちこちで実験をしながら移動をしているんだろう」 あるいはそれがベイレヴラなのかもしれないと一二三は思ったが、確証は無い。 「井戸を使わないように全員に通達。近くの川の水を三番隊の誰かに確認に行かせろ。パジョーは状況を国に報告しろ。隊の誰かを使ってもかまわんから、馬を走らせて伝えろ」 領地に戻ったら全員が腑抜けになっていたなんて、笑えないと一二三は嘆息した。 3日ほどレーヌに留まっている間に、着々と国境砦としての配置を整えていく。 ヴィシー側の出入り口を多少作り変え、街の内側にだけ兵の待機所を作成。国境警備の経験がある兵が数人いたので、彼らを中心に担当を割り振る事にした。 さらに、二番隊が簡易の塹壕をヴィシー側にのみ作成し、馬で街に近づくには中央のもんへ続く道か、大きく迂回しなければならないようにしている。 「そろそろだな。アリッサ、三番隊から制圧済みの街や村に伝達。国境の変更を完了したので、街の出入りの制限を解除すること」 「りょうかい!」 「パジョーは国からの駐留軍の受け入れ準備だな。家は大量に余っているから、宿をいくつか接収して使うといい。文句を言う奴はいないだろう」 「二番隊で街の中の調査を続けろ。もし生き残りがいるなら取り敢えず捕獲しておけ」 「一番隊は?」 「今のうちに国境警備に慣れておけ」 まとめて指示を出してしまうと、一二三は疲れたから寝ると言って、適当な宿に向かって行ってしまった。 「とりあえず、これで一段落かねぇ?」 カーシャは背中を伸ばしながら呟いた。 「そうね。でも、まだ私たちの目的は果たせてないでしょう?」 ベイレヴラを処分して初めて、自分たちの復讐は果たせるのだと、もう何度も二人で話した事をオリガは繰り返した。 「それなんだけどさ......」 カーシャは視線を合わせる事なく、人差し指で頬をかきながら小さな声で言う。 「奴隷からは解放されたし、このままだとベイレヴラにたどり着くまでにどれくらい人を殺さないといけないか判らないし......。ほら、アタシたちもそろそろ本業に戻ってもいいかなって思うんだけど......」 言っている間に、オリガの目がどんどん険しくなっていく。 「ぼ、僕は隊に合流するから!」 空気が重くなるのに耐え切れず、アリッサは逃げ出した。 パジョーもそうしたいのは山々だったが“狙った状況”である以上は、最後まで見届ける必要があると、二人の会話を聞いていた。 「カーシャ、あなたは多少は適当な所があるけれど、不義理はしないと思っていたのだけれど」 「ひ、一二三さんだって自由にして良いって言ってたじゃないか! それに、アタシたちは冒険者だから、本来は魔物が相手であって人を殺すのはやっぱり......何か違うと思うんだ」 「なら、あなただけ王都へ戻りなさい。私は一二三様について行きます」 「あ......」 結局、オリガは背を向けて足早に離れていった。 引きとめようと伸ばされたカーシャの右手は、空を泳ぐ。 「ごめんなさい。嫌な役をやらせてしまって......」 「いいよ。こんな所で兵士たちを指揮するなんて、アタシたちの柄じゃないんだから、そのうちオリガもわかってくれるよ。一二三さんには感謝してるけど、だからってこんな事は長く続かないと思うし......正直、オリガの為にも、ずっと傍に居ていい相手じゃないと解ってもらわないとね」 「ええ、わたしにも理解できるわ」 もし、一二三にパジョーの狙いが知られたらどうなるだろうか。あまり他人の事を気にしない人だから、仲間の離反にも何も言わないかもしれない。だがそれが、一二三にとって裏切りや敵対行動ととられたら? 自分は国に帰る事なく死ぬかもしれないが、それでも多少なりとも一二三の陣営を弱体化させなくてはいけないとパジョーは覚悟をしている。彼は英雄になった。オーソングランデに勝利と利益をもたらした。でもこれ以上はいらないのだ。 (為政者の勝手な都合だけれど、恨むならわたしだけにしてね) 宿舎として割り振られた建物へ向かいながら、パジョーは今回の事を王女へ報告しない事を決めた。

Chapter 29: There She Goes Hifumi occupied the cities and villages by the Orsongrande-Arosel border one by one. Basically, the reason they captured Arosel the way they did was only for the soldiers to gain experience. In the other cases, he just had a small number of people infiltrating, where they either seized, or killed the representatives. The places that seemed to be able to offer some resistance were pinpointed and suppressed. The only matter where Hifumi personally moved were in regards to the guilds, where he had each of the guild masters swear allegiance to him. After killing many of Vichy's soldiers and adventurers, Hifumi's side also had some casualties, but the difference in losses were overwhelming. Their raids were performed in such a way that most of the populace didn't notice anything. But even if they did, the only thing that changed was the name of the governor. Except the ones resisting, the rest were let live. It was also made known that the only change in the administrative body was that Hifumi was now the chief. Except that, there were no changes, so nothing really went out of hand. At the moment there simply wasn't enough time for a complete restructure of the administrative system. Except putting the central government's spies and liaisons on house arrest, Hifumi didn't really take any actions towards them. In time, they were to divulge the state of affairs within the their area of control. In the meantime, three city states and ten of the surrounding villages were put under their control. In each of the cities, the opposing parties were generally killed, and passage through the city gates was restricted. The soldiers left behind were the bare minimum for upholding those restrictions, so in the villages there could be as few as three of them. "It's about time. Pajou. According to plan, after occupying this area, we are to establish a new national border. You should send for soldiers from Orsongrande to defend it." Hifumi pointed his finger at the map they took from the representative of Arosel's mansion. The place he pointed at was just a small-scale city named Rhone, but to get to one of the major cities in Vichy, you would have to pass by here. If they could set up a blockade here, one of Vichy's five major cities would be whittled away. magic Until now, when the city they were aiming for was right in front of them, Pajou had been following Hifumi's orders. Looking at the size conquered territory, the military gains were unprecedented in the history of Orsongrande. Furthermore, occupying these cities and villages in a relatively unscathed condition, the tax revenue would barely need to be reduced at all. But doing it in this manner, which was a first for the knights, Pajou didn't think the aristocrats could possibly agree to it. If the head of the campaign wasn't Hifumi, and rather someone else, he would've been replaced long ago. "Well then, I guess I'll go have a 'talk' with them in Rhone." Seeing Hifumi straddling the horse and riding off on the highway alone, leaving the troops behind, Pajou was thinking about the future of Orsongrande. Imeraria probably doesn't have the notion to invade other countries herself. If that's the case and Vichy wants to enter negotiations with us, offering Orsongrande an apology, it should all conclude there, but... Would Hifumi agree to stopping at this point? Would he listen to anyone's opinion, and change the way he's thinking? ...... In the end, would it all be over with Vichy as the only victim? Pajou looked at the troops participating in the campaign. They were all showing signs of fatigue. Having no experience with these methods until now, they were performing silent invasions, and engaging in one-sided slaughter. Sure, they had signs of physical exhaustion, but what had really exhausted them was the repeated killing of enemies, including many who couldn't even resist. They were primarily concentrating on performing night raids and surprise attacks. Although they were operations in which the masses weren't hurt, in the end their purpose was still having others killed. If they didn't stop soon, perhaps Orsongrande would crumble from within. Origa couldn't understand Hifumi's real intentions, but didn't voice any opinions towards him. Alyssa didn't understand him either, but decided to keep following orders. Perhaps if Hifumi was thinking about stopping... Pajou was observing Kasha ordering the first unit around, preparing for the next assault. Among Hifumi's followers participating in the campaign, Kasha was the only one having shown uneasy expressions a couple of times. "Sorry, do you have some time?" When Kasha seemed free for a little while, Pajou quietly asked her. Closing in on Rhone, Hifumi frowned. The smell of blood drifted over from the wind. The town's entrance came into sight, but there were still no presence of people. "What's all this about...?" Speeding up the horse, Hifumi tightly held onto his katana fixed on his waist. The left hand was propping up the scabbard, making him able to draw at a moment's notice. Steadily closing in on the city, a bizarre mud wall covering the entrance came into view. Carefully approaching, he confirmed that a mud wall that was as hard as rock was completely covering the city entrance. Making sure that no one was around, he swung his katana, destroying the wall. A stench of blood and decay burst forth the moment the entrance was cleared. "So they were completely annihilated." Looking around within the city, decomposed bodies were scattered all over the place, no living things to be found. Not even cats or dogs. Whether it be the stores, the inns, or even the regular houses, blood and dead bodies could be found everywhere. Hifumi had an uncomfortable feeling. He judged that they had been dead from anywhere between a few hours and a day, but several patches on the corpses were extremely decomposed. "A disease? ...No, that doesn't seem to be the case." There were several bodies that hadn't decomposed yet, seemingly having died due to blood loss from the wounds on their necks and various other places. But these corpses looked suspicious as well. Their fingers and fingernails looked too clean. They should obviously have 'been killed', but there were no indications of resistance, and their faces were anything but warped in horror or pain. They were completely expressionless. He didn't understand the circumstances of the deaths of the decomposed bodies, but there were numerous cases of their throats having being clamped down upon, and clawing their own chests. Hifumi abruptly withdrew his katana, as the stomach of one of the decomposed bodied opened. Some gas emerged, and the content gushed out with a splashing sound. "The intestines are also extremely decomposed, but it seems that what's inside the stomach is still fine." As Hifumi guessed that for some reason, they all started quickly decomposing at around the same time, he caught a quick glance of something through one of the bodies' split clothes. "Isn't this the same magic tool that Gorilla-like guy was wearing?" Wouldn't that indicate that this incident was orchestrated on the orders of Horant? "... For the time being, we can't use the city unless we clean up." Not being able to conclude anything more than that, Hifumi let out a sigh and returned to the where the campaign's forces were stationed. When the soldiers first saw the city with the corpses spread all around, they were speechless. In order to avoid diseases from breaking out, Hifumi had them dispose of the corpses by burning them, and then burying the bones. "What is actually going on here?" Having surveyed the surroundings, Origa asked Hifumi. "No idea. The decayed guys were wearing that body strengthening magic tool we encountered before. Perhaps they were made to wear them by someone. The other ones had no facial expressions, so it appears to be the same kind of magic tool as the soldiers in Arosel were using. The low levels of resistance would indicate that this should be a strengthened version." Having said that, he had now seen the strengthening magic tool a few times by now, but this time he had noticed a few things he hadn't back in Arosel. He turned to Pajou who was situated a small bit away. "Pajou. The soldiers from Arosel were using some kind of magic tool on the orders from their government, do you know what kind of tool it was?" "No. I didn't think they were having a uniform magic tool they were equipped with..." "But when you heard about it in Arosel, didn't you think that... Hmm?" "I feel a strange smell." Hifumi turned around, and walked towards one of the city's wells. Origa and the rest followed him to take a peek into the well and sniffed to check the smell. It was an acidic smell that slightly stung the eyes. Throwing in the bucket and withdrawing some water, there was nothing wrong with the color of it, but it was undoubtedly the source of that smell. "...... Are there any magic tools that display an effect when you're drinking, for example?" "I haven't seen one myself, but I've heard others talks about them existing. What about it?" "For example, let's assume we have a magic tool creating a substance that spreads throughout the body. If that substance could dissolve in water, what would happen when you drink water?" "I don't know if you could get the same result or not, but..." "That's why they needed to experiment with it, right?" Both Origa and Pajou turned quiet. Destroying a while city just for that purpose. That kind of deranged thinking made them shiver in a different way than when they were facing Hifumi. "It's probably the same kind of strengthening magic tool the border guards used. The ones we smashed. While they were doing experiments all over the place, it seems like they migrated somewhere else." Possibly because of Beirevra, Hifumi thought, but he had no positive proof that was actually the case. "Tell everyone to not use the water from the well. Send someone from the third unit to make sure the water from the river close by is okay. Pajou, send a report back to Orsongrande. I don't mind if you're using one of the soldiers to do that." If, after the messenger delivered the report, everyone hearing became spineless, it wouldn't be a laughing matter, Hifumi sighed. Staying in Rhone for three days, they were steadily coming along with the preparations for fortifying the new national border. The entrance on Vichy's side of the city was changed slightly. Only on the inside of the gate was a guard room prepared. The guards who had previous experience in guarding a border were put in charge of the central positions. Furthermore, the second unit made a simple moat on Vichy's side of the city. Closing in on horse, they would have to to take a long detour. "It's about time. Alyssa, since we've now established the new national border, have the third unit convey to the troops in the occupied cities and villages that they can now release the restrictions on entering and exiting the cities." "Roger!" "Pajou, you make the preparations to receive the troops from Orsongrande that are to be stationed here. There are a lot of houses remaining, so seizing a few inns to use as well should be enough. No one should complain about that, right?" "The second unit is to continue the investigations within the city. If there are any survivors, take them into custody." "What about the first unit?" "They should get accustomed to defending the border for now." Having issued all the orders, Hifumi felt worn out and told the others he'd lie down for a while, after which he headed towards a suitable inn. "With this, we're done with the first step, aren't we?" Kasha muttered, stretching her back. "Yeah. But we still haven't achieved our own objective, have we?" Only after dealing with Beirevra would they have taken their own revenge, Origa mentioned. It was something the two of them had talked about many times already. "About that..." Kasha put her index finger to her cheek and said in a small voice, not meeting Origa's gaze. "We've already been released as slaves, and continuing like this, I don't know how many more people we have to kill before we reach Beirevra... I also thought it's about time we returned to our primary professions......" For every word Kasha said, Origa's eyes turned more severe. "I-I'll return to the rest of the unit!" Not being able to withstand the mood turning heavier, Alyssa ran away. Pajou really wanted to do so as well, but this was the situation she was looking for. But more than just having it happen, she had to see for herself how it would unfold, so she stayed to listen to their conversation. "Kasha, you may have some valid points in what you say, but I didn't think you were this dishonorable." "Hi-Hifumi giving us our freedom back is amazing, I'm not saying it isn't! But we're adventurers, so originally our enemies were the monsters. Killing people is just... I just think that's wrong." "If that's the case, you can return to the capital by yourself. I'll still be following Hifumi." "Ah..." After that, Origa turned around and walked away at a quick pace. Kasha stretched out her right hand as if to stop her, but grabbed nothing but air. "I'm sorry. I made you do something unpleasant." "It's fine. We aren't fit to command soldiers like this in the first place. Origa will eventually come to understand that as well. I'm thankful towards Hifumi, but that's not reason enough to do this for an extended period of time... And honestly, for her own sake, Origa needs to realize that Hifumi isn't a person that's good to always stay close to. "Yeah, I understand you as well." If Hifumi knew about Pajou's goal, how would he react? He's a person who doesn't care about others, so perhaps he wouldn't say anything if a comrade decides to leave. But what would happen if they do something Hifumi would regard as treachery, or hostility? She might not be able to return to her own country, or perhaps even die. But even then, Pajou was determined to weaken Hifumi's faction. He had become a hero, and brought both triumph and benefits to Orsongrande. But what they've gotten so far was enough. They didn't need more. This is for the selfish sake of those politicians, but if you're going to resent someone, please just hate me Walking back towards the assigned lodgings, Pajou had now decided on something she wouldn't report to the princess.

174.If U Can’T Dance 魔人族とのやり取りは、誰もが考えているよりスムースに進んだ。ウェパルを始め、魔人族側に対外的な交渉や根回しなどを経験した者が皆無だったため、オーソングランデ側からの提案を、ほぼそのまま受け入れる形になったのだ。 「獣人族と一緒に、王都に先乗りしなくてよかったの?」 ローヌの国境で、魔人族の来訪を待つアリッサは、傍らに立つエルフの指導者であるザンガーに尋ねた。 「あっちに着いたら、会合やら打ち合わせやらで、じっくり魔人族の顔を拝む機会も無さそうだしねぇ。大丈夫、魔人族の女王だって、ここで暴れるほどお馬鹿じゃあないだろうさ」 ひっひ、と笑い、ザンガーは安心おし、とアリッサに答えた。 「獣人族のお嬢ちゃんたちは、あたしよりよっぽど賢いかも知れないねぇ。あたしらみたいに恨み辛みやら無くて、町を取られたってのにサッパリしたもんだ。大したもんさね」 アリッサには、レニが何を考えて首都へ先行したのかが今一つ理解できていなかった。考える時間もあまり無かったのだが。 「あっ、来た」 街道を、ゆっくりとこちらへ向かってくる一段の姿が見えた。 青い肌をした馬に乗る、灰色の肌をした人々。 それらに守られるようにいくつかの馬車が連なり、ガタガタと大きな音を響かせていた。 「やっと着いたわね」 「陛下、お尻が痛いです」 「私が言わずにいたことをこの子は......」 馬車に並走している兵士から国境が見えてきたという報告を受けたウェパルが嘆息していると、向かいに座っているニャールが不満を述べた。 ヴィシー中央部からの移動は、馬車に慣れていないウェパルにとっては苦痛以外の何物でもなかった。書類仕事でもやっておくかと思ったが、五分ともたずに酔ってしまったので早々に放り出し、尾てい骨に響く不快な振動に耐え続けていたのだ。 「会談が終わったら、馬車の乗り心地について研究するように指示を出しますか」 「そんな余裕はありませんよ。ただでさえ税の回収を始めとした統治にすら人員を欠く状態ですし」 ニャールの隣に座るフェレスが、書類を捌きながら冷静に意見する。 「良く酔わないわね」 「慣れました」 のんきな会話で痛みを忘れる努力をしていると、馬車が止まり、再び護衛の兵士が馬を寄せてきた。 「陛下。人間たちが町の入口で待ち構えております」 「わかった。降りるわよ、二人とも」 兵士たちが周囲を固める中、ゆっくりと馬車を降りる。ステップは用意されているが、急場拵えのシンプルなものだ。 ステップの板面を踏み、馬車の外の空気を吸い込むと、先ほどまでの鬱屈した気分が多少は晴れた気がした。 馬車が向いている方向を見ると、五十メートルほど先に、数名の人間たちが立っている。 「......女性の比率が多いわね」 「私達も同じでしょう。早く降りてください。後が支えています」 「もう少し、女王を敬いなさいよ」 フェレスとニャールを従え、町の方へと進み始めると、向こうからも歩み出てくる。双方の護衛たちに緊張が走り、空気が冷えてきた。人間側にエルフが数名混じっているのがわかり、魔人族は緊張の中に不穏な空気が混ざる。 適度に距離を開けて、双方が立ち止まり、人間側から一人の女性が歩み出た。 「魔人族の女王、ウェパル様ですね。オーソングランデ国王、イメラリア・トリエ・オーソングランデ様の命により、お迎えに参上いたしました。フィリニオン・アマゼロトと申します」 会談に参加することになったもう一つの国、ホーラントからも世話役を委任されていると説明し、フィリニオンは一礼した。 「それはご苦労様。魔人族を統べる王、ウェパルよ。貴国でのことはお任せしますから、よろしくね」 「安んじて、お任せください。では、改めて今後のスケジュールについてご説明させていただきたいと思います。どうぞ、町の中へご案内いたします。ご同行の方々は、先に宿へご案内させましょう」 「ありがとう。......その前に、一つ聞いておきたいのだけれど」 言い終わる前に、ウェパルの視線がエルフのザンガーへと向いていたので、誰もがその質問に予想がついた。 フィリニオンが答える前に、ザンガーが進み出る。 「エルフの代表、ザンガーだよ。あたしらもこの町の客人なのさ。あんたたち魔人族が人間の王に会うということだから、ついでにあたしも挨拶に行こうと思ってね」 「人間と組む、ということね?」 「ちょっと違うねぇ。あたしたちは、保護してもらったのさ。魔人族に勝てないから、助けてくれ、ってね」 「ふん......」 ウェパルとしても、ここで騒動を起こすつもりは無いが、エルフというイレギュラーな存在を無視するわけにもいかない。卑下したような物言いだが、人の町へ入っているエルフの総数がわからない以上、無視できる勢力だと切り捨てることはできない。 「お姉さんが、女王様?」 ザンガーとの睨み合いに、横から割り込んできた少女。突然の事にウェパルが目を見開いていると、フィリニオンがそっと説明を加えた。 「この国境を含む領地を治める領主、トオノ伯爵です」 「一二三さんから話を聞いたことがあるよ。水の魔法を使うんでしょ?」 「そ、そうだけど。一二三を知っているのね......トオノ?」 首をかしげるウェパルに、アリッサが元気よく挨拶する。 「一二三・トオノの娘で、アリッサ・トオノだよ」 「娘ぇ!?」 「と、とにかく中へどうぞ。色々と我が国の状況について予めご説明しておく部分もあるかと思いますので......」 声を上げたウェパルに反応し、周囲の兵士たちが武器に手をかけようとしたのを見て、フィリニオンが素早くアリッサの前に出た。 同様に、魔人族側からも一人が進み出る。 「陛下の秘書官を務めております、フェレスです」 もちろん、秘書官というのは今回のために作ったポストである。 「私と陛下。それと数名の兵士を同行させていただきます。ニャール、兵士たちを連れて宿舎へ」 「はぁい」 何とも段取りの悪いスタートながら、何とか血を見ることなく、最初の接触が始まった。 この後、ローヌにて一日を休養に当て、フォカロルにて王都から派遣された護衛の騎士と合流。そこから王都まで、約二週間の行程となる。 レニを連れて、一二三は王都をブラブラと歩いていた。 指導をしていた騎士たちが一人残らずフォカロルへ向かったため、一二三は一旦指導役をお役御免となった。魔人族やエルフを迎えるにあたってのアドバイザーを依頼されたが、二言、三言伝えただけで、出仕は断っている。 代わりに、アリッサ他フォカロルの人員に関する打ち合わせで、連日オリガが登城している。 「規模がスラムとは全然違う。ソードランテの街中だって、人も店もずっと少ないです」 「当たり前だ」 一二三とレニが並び、後ろにヘレンとゲングが続く。 もはや繁華街で知らぬ者がいない一二三はただでさえ目立つ。それに加えて獣人族がいるのだ。誰もが彼らが歩くのを目で追い、誰かが声をかけて何事かを聞いてくれないものか、期待していた。 「ローヌの町も、ごちゃっとしてましたけど、活気がありましたよ。屋台のおじさんも、獣人のウチに優しくしてくれました」 「あれはパリュやらアリッサがやったことだ。俺は知らん」 楽しそうに話すレニと、真顔で歩く一二三を後ろから観察しながら、ゲングはそっとヘレンに顔を寄せた。 「ひょっとして、と考えたこともありやしたが、やっぱりレニさんは一二三さんのことを......」 「お父さんか何かだと思ってるみたいよ。オスとしてはどうかなぁ。まだそんな歳じゃないし」 「そうですか......」 ヘレンにしてみれば、もうここまでくれば自分たちの集落どころか、獣人族全体の将来が、この後の事で決まる緊張で頭が一杯だった。勢力としては依然としてまとまりが無い獣人族は、数が圧倒的に少ないエルフや魔人族に比較しても不利だと思える。 もし、何かの拍子でレニと一二三がくっついてくれるなら、それも有りかもしれないとすら考えていた。友人としては、絶対に薦めたくない話だが。 「ゲングさんはどう思ってるの?」 「何がです?」 「獣人族の未来について、よ。戦うって別れた連中はさておいても、人間に、魔人族に、エルフに、一二三に、振り回されてばっかりだわ」 一二三が人間枠と別にされたことに、不思議とゲングは違和感を覚えなかった。 「さぁて。あっしはそういうのはとんと苦手でしてね。レニさんについて行けば、楽しくなりそうってだけでやすよ」 「何それ。獣人族の男としては、無責任じゃない?」 ヘレンの不機嫌な返答に、ゲングは鋭い爪で耳の裏を掻いた。一二三の屋敷にある広い風呂でたっぷりと石鹸を使って洗ったので、ごわごわとしたワイルドな毛並みだったのが、今やふかふかになっている。それが妙にくすぐったい。 「確かにそうかもしれやせんね。でもねヘレンさん。もう世の中の動きが種族だとか町だとか、そんな範囲の話じゃなくなってるんですよ。あっしの手......いやいや、頭が届く範囲じゃありやせんぜ」 途中の屋台で手に入れた焼肉の串を一気に口に放り込み、牙の間から串を引き抜く。 「うめぇ! ......一二三さんみてぇに、一人の力で何でもまるごとひっくり返せるってんなら別ですがね」 自分一人がどう思うとかは関係ない、だからレニは“みんながどう思っているか”を知るために、一二三のところに来たのだろう、とゲングは言う。 「それがどうして一二三のところって結論になるのよ」 「簡単ですよ」 もう一本、肉串にかじりつく。 「あの人が、一番たくさんの種族や階級の人と話してるでしょ? 一番偉い人たちと、そこで生活してる人たちを知ってるってことでさぁ」 レニが望んだのは、魔人族よりも先に女王と会う事だった。 順番にことが運ぶのはイメラリアにとっても都合が良かったので、要望はすぐに受け入れられた。 レニが獣人族代表としてイメラリアと語り、ヘレンが補佐、ゲングは一応護衛という事になっている。 一二三は単なる道案内だった。 イメラリアに命じられたのだろう。サブナクが王城前の広場で一二三たちを待っていた。 女王イメラリアの指示により、一時的に立ち入りを制限された王城前の広場は閑散としている。広場中央に新しく作られた二メートル超の台座と、その上に魔法的な封印を施されて曝されている『魔人の首』と称されるバールゼフォンの生きた頭部には、魔人族の目に入ると問題になるということで、布を掛けられて縄で縛り上げられ、傍目には補修を待つ街灯のようだ。 「ここまで来ればいいだろう」 「一二三さんは、陛下にお会いになられないのですか?」 「あいつに用事は無い」 素っ気ない態度に、サブナクはつい顔に不満が出てしまう。彼は次期王の父親が一二三だと知っている数少ない人間だった。自らも、同時期に父親になるであろうことを妻から聞かされている。 自分が聞いた時は、妻シビュラに殴って止められるまで駆けまわって踊るほど喜んだのに、目の前の男はどうだろう。 「......正直言って、今回の件でぼくは多少なり貴方を見損ないました。責任を取れとは言いませんが、せめて一言......うっ!」 「馬鹿か、お前は」 一二三に首を掴まれ、サブナクは自分より背の低い一二三に引きずられるように前に出た。 「あれが望んだ状況を、お前らがぶち壊すつもりか?」 「で、ですけど......」 四本の指がしっかりと頸椎を押え、親指が頸動脈にめり込む。 「発覚して、馬鹿な貴族が俺の所に押し寄せてくる状況を作りたいのか? ようやく生まれる二人目の王族を、寄ってたかって傀儡にしようとする連中を生み、それらが死んでいく状況を作るつもりか?」 突き放すように手を離した一二三は、むせるサブナクを睨みつけた。 「俺はあいつの考えが面白いと思ったから、一度だけ協力した。それだけだ」 去っていく一二三を涙目で見送ったサブナクは、手の甲で乱暴に涙を拭った。 「あー......情けないところをお見せしました。どうぞ、イメラリア陛下がお待ちです」 「ありがとう」 先導するというサブナクに礼を言い、レニは一瞬だけ一二三の背中を見てから歩き出す。 一二三が怒ったところを見て固まっていたヘレンたちが慌てて追いかける。 「ねえ、レニ。一二三が居なくて大丈夫なの?」 「うーん......正直に言えば、ウチとしては逆にありがたい、かな?」 一二三さんには内緒だよ、とレニが小声で笑った。 「なんでよ。一二三と知り合いなら、人間の女王だって悪いようには......」 「ヘレン。それじゃダメだよ」 ぶんぶんと首を振る。揺れるくせっ毛から、石鹸の匂いが広がった。 「ウチたち獣人族が、自分の足で立って生活しなくちゃ......。ウチは、一二三さんや他の人間たちと友達でいたいけれど、奴隷にはなりたくないよ」 そうならないために、怖くて仕方ないけれど、今から偉い人と話さなくちゃ、獣人族が獣人族として生きる道を探さなくちゃ、とレニは震える声を押し殺して呟いた。 振り向いた顔は、いつもの緩い笑顔ではない。青ざめて、固く引きつっていた。 とっさに、ヘレンがレニの手を握る。小さなペンだこのある細い指先まで、緊張で冷え切っていた。 「ちゃんとついて行くから......ううん、一緒に頑張るから」 「うん、ありがとう。ヘレン」 そう言って笑ったレニの顔に、ヘレンは少しだけ安心できた。

Chapter 174: If U Can'T Dance The exchange with the demons proceeded smoother than everyone had expected. Because there were no people experienced with things like laying the groundwork and foreign diplomacy on the demon's side, not to mention Vepar, it took the shape of them accepting almost all of Orsongrande's proposals without demanding any changes. "Was it a good idea for you to not go ahead to the capital together with the beastmen?" (Alyssa) Alyssa, who waits for the visit of the demons at Rhone's national border, asked Zanga, the leader of the elves, who stood next to her. "It's unlikely that I would have a chance to carefully look at the faces of the demons due to meetings, briefings and such, if I had gone over there. Don't worry, even the demons' queen is probably not that much of a fool to go on a rampage here." (Zanga) Zanga laughed with a "Hihi," and answered Alyssa to give her a peace of mind. "The ojou-chans of the beastmen might be a lot smarter than I am. They don't have pent-up resentments like us, and they didn't feel down even though they had their city taken away. They are quite good." (Zanga) Alyssa couldn't quite understand what Reni was thinking to go ahead to the capital. She didn't have much time to ponder about it either though. "Ah, they are here." (Alyssa) A group slowly approaching their location along the highway had become visible. It's horse-mounted people who had gray hair and blue skin. Obviously being protected by them, several carriages advanced in a row while causing loud clattering sounds. "We finally arrived, eh?" (Vepar) "Your Majesty, my butt hurts." (Nyarl) "That's nothing you have to point out..." (Pheres) Once Vepar, who received a report of the border having come in sight from a soldier riding alongside the carriage, sighed, Nyarl, who was sitting opposite of her, expressed her discontent. The travel from Vichy's central area had been nothing but painful for Vepar who isn't used to carriages. She wondered whether she would be able to do some paperwork in advance, but since she ended up sick within 5 minutes after the journey started, she gave up on that idea early on, and continued to bear the unpleasant vibrations affecting her tailbone. "Once the conference is over with, I guess I will give orders to research about padding for carriages." (Vepar) "You won't have any time for something like that. Even under normal circumstances we are in a situation where we are lacking personnel to even govern our new territories, let alone collecting the taxes." (Pheres) Pheres, who sits next to Nyarl, calmly comments while sorting documents. "How nice for you to not having gotten sick." (Vepar) "I grew accustomed to it." (Pheres) When Vepar was putting great effort into forgetting the pain through a light chat, the carriage stopped and one of the escorting soldiers once again approached on his horse. "Your Majesty. Humans are awaiting us at the city's entrance." "Got it. We're getting off, you two." (Vepar) While the soldiers secured the vicinity, they slowly got off the carriage. A step had been provided, but it was of a simple ad-hoc make. Once she sucked in the air outside the carriage after stepping on the footboard, she felt like her gloomy mood until just now cleared up a bit. Looking in the direction where the carriage is facing, she discovers several humans standing around 50 meters ahead. "...The ratio of women is high, isn't it?" (Vepar) "It's the same on our side, no? Please get off quickly. My back hurts." (Nyarl) "Show a bit more respect to the queen." (Pheres) Once Vepar starts walking towards the city while accompanied by Pheres and Nyarl, the other side walks in their direction, too. Tension ran through the guards on both sides and the atmosphere became chilly. Realizing that there are several elves mixed in with the humans, a threatening air blends into the demons' tension. Keeping a moderate distance, both sides came to a halt and a single woman walked forward on the humans' side. "Queen of the demons, Vepar-sama, correct? By the decree of Orsongrande's queen, Imeraria Torie Orsongrande-sama, I came to welcome you. Phyrinion Amazelot is my name." Phyrinion explained that she had also been charged with the duty of mediator by Horant, the other country that would participate in the conference, and bowed. "I appreciate your efforts. I'm Vepar, the queen ruling the demons. Since I will leave matters in the hands of your country, please take care of me." (Vepar) "Please leave it to us and be at ease. Well then, I'd like to formally give you an explanation about the schedule from now on. Please follow, I will guide you into the city. We will lead your retinue to an inn first." (Phyrinion) "Thanks...But before that I'd like to ask one thing." (Vepar) Since Vepar's eyes focused on Zanga before even finishing to speak, everyone could guess her next question. Zanga steps forward before Phyrinion could answer. "I'm the elves' representative, Zanga. We are guests in this city, too. Since I've heard that you demons would meet the humans' rulers, I wanted to use the occasion to give you my greetings." (Zanga) "That means you joined up with the humans?" (Vepar) "It's slightly different. We received their protection. We asked them for help because we can't win against you demons." (Zanga) "Humph..." (Vepar) Even Vepar has no intention to start a quarrel here, but it's not like she can ignore the irregular existences called elves either. "That onee-san is the queen?" (Alyssa) A young girl wedged herself in-between the standoff of Zanga and Vepar from the side. As Vepar widened here eyes due to the sudden intrusion, Phyrinion gently added another explanation. "It's Countess Tohno, the feudal lord governing the territory containing this national border." (Phyrinion) "I've heard about you from Hifumi-san. You use water magic, don't you?" (Alyssa) "T-That's right, but you know Hifumi...Tohno?" (Vepar) Alyssa cheerfully greets Vepar who tilts her head to the side in confusion. "I'm Alyssa Tohno, the daughter of Hifumi Tohno." (Alyssa) "Daaaughter!?" (Vepar) "A-Anyway, please come inside. I believe there might be various parts I should first explain about the situation in our country." (Phyrinion) Seeing the surrounding soldiers being about to put their hands on the weapons because of Vepar raising her voice, Phyrinion quickly stepped in front of Alyssa. At the same time one of the demons steps forward, too. "I'm serving as Her Majesty's secretary, the name's Pheres." Of course secretary is a post the created for the sake of this time's occasion. "Her Majesty, me and several soldiers will accompany you. Nyarl, lead the other soldiers to the lodging house." (Pheres) "Yeees~." (Nyarl) Even though it was a very difficult start, the first contact was established somehow without any blood being spilled. After this they will take a rest for one day in Rhone, then join up with the guarding knights dispatched from the capital in Fokalore, and lastly make the journey to the capital over the period of roughly two weeks. Taking Reni along, Hifumi strolled through the capital. Because all the knight, who he had trained, headed to Fokalore, Hifumi had been temporarily relieved from his coaching duty. He had been requested to act as advisor at the time of welcoming the elves and demons, but he has refused to attend with no more than three words. In exchange, Origa goes every day to the castle for preparatory meetings in regards to Fokalore's personnel besides Alyssa. "The scale is completely different from the slums. Even in Swordland there have always been few people and stores." (Reni) "That's only natural." (Hifumi) With Reni walking next to Hifumi, Helen and Gengu follow behind. Hifumi, who's no longer a stranger in the shopping district, stands out even under normal circumstances. In addition to this, beastmen are with him. As everyone chased them with their eyes as they walked, they expected that someone might call out to them or ask what was going on. "Even Rhone has increasingly become a jumble, but it had liveliness. The stall owners treated us beastmen kindly, too." (Reni) "That's Paryu's and Alyssa's work. I don't know anything 'bout it." (Hifumi) While observing Reni, who talks happily, and Hifumi, who walks with a serious face, from behind, Gengu quietly brought his face close to Helen's. "I thought that it might be the case by chance, but as expected, Reni-san...about Hifumi-san..." (Gengu) "It looks like she considers him as father figure or something like that. As male; I really wonder about that. She's still not at that age." (Helen) "Is that so...?" (Gengu) In case of Helen; if compared to until now, her head was already full with worries about the future developments of the whole beastman race, let alone their own village. The beastmen, who still aren't unified as power, can be considered to be at a disadvantage in comparison to the elves and demons with their overwhelmingly low numbers. She even thought that there might be a possibility if Reni and Hifumi become intimate due to some kind of chance. It's a story that she absolutely doesn't want to encourage for the sake of the beastmen though. "Gengu-san, what are your thoughts?" (Helen) "About what?" (Gengu) "In regards to the beastmen's future. Even setting aside the group that split off, saying that they will fight, we are only manipulated by the humans, by the demons, by the elves and by Hifumi." (Helen) Gengu didn't consider it strange and out of place that she had mentioned Hifumi separate to the humans. "I wonder. I'm quite bad at these kind of things. I only believe that it seems likely to be fun if I follow Reni-san ~ssu." (Gengu) "What's with that? Isn't that irresponsible for a male beastman?" (Helen) Due to Helen's displeased reply, Gengu scratched the back of his ear with his sharp claws. "Certainly, you might be right there. But you know, Helen, the developments on this world have already exceeded the scope of cities or races. It ain't a scope that's in the reach of my hands...no, my intellect ~ssu." (Gengu) He throws a whole grilled meat skewer, which he obtained at a stall along the way, into his mouth, and then pulls out the empty skewer out from in-between his fangs. "Deliciooous! ...If it's someone like Hifumi-san, who can completely upset whatever he likes with his own power, it's a different matter though." (Gengu) "Because it's irrelevant what she thinks about it herself, Reni-san probably came to Hifumi's place in order to learn "Then why did she conclude that it has to be Hifumi's place?" (Helen) "That's easy." (Gengu) He sinks his fangs into yet another meat skewer. "That man has talked with the most races and people of different social ranks, right? It means he knows the most important people and those who live under them." (Gengu) What Reni desired was to meet the queen before the demons do. Because proceeding in order was also rather convenient for Imeraria, Reni's request had been granted right away. It's been decided that Reni will talk with Imeraria as the representative of the beastmen, Helen will act as her assistant, and Gengu will serve as their guard for the time being. Hifumi was merely their guide. Probably having been ordered by Imeraria to do so, Sabnak waited for Hifumi and the others at the plaza in front of the royal castle. The plaza, which had been temporarily restricted from entering due to Queen Imeraria's order, looks deserted. As it will turn into a problem, if the demons catch sight of Balzephon's living head, which has been announced as {Demon's Head} after sealing it magically and exposing it on top of a more than two meters high pedestal, which had been newly built in the center of the plaza, the head has been covered with a cloth and tied with a rope, making it seem like a street light waiting for repair in the eyes of an outsider. "I guess me coming with you until here will be enough." (Hifumi) "Hifumi-san, you're not going to meet Her Majesty?" (Sabnak) "I have no business with her." (Hifumi) Dissatisfaction unintentionally appears on Sabnak's face due to Hifumi's cold attitude. He was one of the few people knowing that Hifumi is the father of the next king. He himself had been informed by his wife that he will probably become a father around the same time. As he was delighted to the degree of dancing and running around until he was stopped by a good whacking of his wife Shibyura when he heard the auspicious news, he wonders how it's for the man in front of his eyes "...To be honest, I somewhat misjudged you in this matter. I won't tell you to take responsibility, but at least a few wor...ugh!" (Sabnak) "You, are you an idiot?" (Hifumi) Having his neck grabbed by Hifumi, Sabnak was pulled forward by Hifumi, who's shorter than himself. "Do you guys intend to wreck the situation which that person desired?" (Hifumi) "B-But..." (Sabnak) Tightly grasping the neck's spine with four fingers, he sinks his thumb into Sabnak's carotid artery. "Do you want to create a situation where stupid nobles will march on my place after it came to light? Do you plan to produce a group that gangs up on the finally born second royal member trying to use them as puppet, causing that person to lose spirit due to them?" (Hifumi) Hifumi, who removed his hand by thrusting him away, glared at the choking Sabnak.magic "Because I considered her idea to be interesting, I cooperated with her only once. That's all there is to it." (Hifumi) Seeing off the leaving Hifumi with teary eyes, Sabnak roughly wiped away his tears with the back of his hand. "Ah...I ended up showing you something pathetic. Please follow me. Her Majesty is awaiting you." (Sabnak) "Thank you." (Reni) Thanking Sabnak, who said that he will guide them, Reni looks for just an instant at Hifumi's back and then starts walking. Helen and Gengu, who froze when they saw Hifumi getting angry, chase after her in a hurry. "Hey, Reni. Will it be alright without Hifumi being present?" (Helen) "Hmm...honestly spoken, it's actually better for us, I think?" (Reni) "Keep it a secret from Hifumi-san," Reni whispered and then laughed. "Why!? We are acquaintances of Hifumi, so even the human queen won't do anything bad..." (Helen) "Helen, that's no good." (Reni) Reni shakes her head. The scent of soap spread from her swaying, frizzy hair. "Unless us beastmen live while standing on our own feet...I want to be friends with Hifumi-san and the other humans, but I don't want it to result in slavery." (Reni) "In order for that to not happen, we have to talk with the high-ranking people from now on and the beastmen have to search for a path of survival as beastmen, even though it can't be helped that it's scary," Reni muttered with a trembling, subdued voice. Her face, which looked back at Helen, doesn't have its usual, gentle smile. It was pale and stiff. At once Helen grasps Reni's hand. Even her thin fingers with their tiny calluses had become completely cold out of nervousness. "I will accompany you all the way, so...err no, I will do my best together with you." (Helen) "Oki, thanks, Helen." (Reni) Helen was able to feel slightly relieved due to Reni smiling while saying that.

163.Fragile 魔人族たちの敗残兵をやり過ごし、ゲングとマルファスは魔人族たちに追いつかないように距離を取って荒野を進む。いずれは別の方向へと逸れていくのではないかと考えていたゲングだったが、いつまでたっても、同じ道を進んでいる。 「どういうこった? ひょっとしてあいつら、スラムに向かってるんじゃないか......」 とても今から戦闘を行おうという雰囲気ではないが、人間に敗北したからと狙いをスラムにいる獣人へと変更した可能性が無くも無い。 「ゲングさん......」 不安げに見てくるマルファスを見て、ゲングは予定していたルートを変更し、極力森の中を進むことにする。 他の獣人に襲われる可能性は怖いが、逃げるだけなら何とかなるだろう。 「森へ入るぞ。キツイだろうが、急いでレニさんに知らせなくちゃいかん」 「わかった」 少しだけ魔人族たちの集団へ近づき、確かにソードランテ方面を目指していることを確認し、二人はそっと道を外れて森へと入って行った。 魔人族たちからは見えないと判断できるまで奥に入ると、早足で進む。 「今の人間たちの町には、一二三さんがいる。俺たちがついて行って見たとおり、あの人は移動も速いし、戦いの場に出て行くのに躊躇しない。魔人族が攻めてきたと見れば、さっさと撃退して見せるだろうさ......ひょっとすると、あの魔人族たちは一二三さんに撃退されたのかもな」 ゲングの話を聞いていたマルファスは、黙り込んでいた。 さすが狼の獣人というべき足の速いゲングに、マルファスも何とかついて行く。その中で、ゲングの予想を聞いてからたっぷり十分ほど、走りながら考え込んでいたマルファスが口を開いた。 「魔人族は、まだ人間と戦うつもりかな」 「何を考えてるかと思ったら......さぁな。今回の件で懲りたかも知れないし、準備ができたらまた攻めていくかもな。あるいは......」 ゲングの予想で一番最悪なのは、獣人族を配下に従えて、人間と比べて足りない“人数”を補うことを考える可能性だ。もしさっき見た魔人族の兵たちの行き先が、予想通りソードランテであり、そこへ攻め込むことを考えているのであれば、その狙いは町でありそこにいる人員だろう。 「いかんせん、俺はそこまで頭が回らねぇ。考えるのは人に任せるしかねぇから、できるだけ戦える準備をやっておくに越したことはねぇ」 「レニさんたちは、誰とも戦うつもりはないのかな」 マルファスの言葉に、ゲングは鼻を鳴らした。 「俺が知るわけがねぇ......と言いたいところだが、確実な事は一つだけある」 ゲングが立ち止まり、マルファスの顔を見る。 「レニさんは、感情で仲間を危険にさらすような選択はしない。どうしても守らなければならん物があるか、間違いなく勝てるか。どちらかでなければ、無茶な戦いに仲間を巻き込んだりはしねぇだろうよ」 ゲングが奴隷になった時に、集落のリーダーは戦うことを判断した。結果として仲間の半数が無惨に殺され、残った者は一人残らず奴隷にされ、知っているだけでも、奴隷になった仲間のさらに半数もすでに死んでいる。 もし、自分たちのリーダーがレニのように判断できるものであれば、少なくとも一度退いて立て直す事を考えたかもしれない。 いや、単に強いだけでリーダーを決めるような、野蛮な集団ではなく、リーダーとしての素養を判断して決める理性的な集団であれば......。 なまじレニのやり方を知ってしまってから、ゲングの頭の中で幾度となく浮かんでは、今さら考えても仕方がない事、と記憶の奥に押し込んでいた思いだ。 「とにかく今は、急いでスラムへ戻って......隠れろ!」 マルファスが背負っている荷物を掴み、無理やり木の後ろへ引き込む。 伏せているように言うと、ゲングはそっと木陰から前を確認した。何人かの人影が動いたように見えたのだ。 「この辺にいるのがどの獣人かわからねぇが、穏やかな連中であることを祈るぜ......」 じっと見ていること数秒。遠くの茂みの上に兎の耳が見えた時、ゲングは一安心した。兎獣人であればいきなり襲ってくることは無いだろう。人間であれば、荒野エリアにある森へ入るのに、戦闘力のない兎獣人を連れてくることは考えにくいというのもある。 「立て、マルファス。兎さんだ」 ゲングが素早く下ろした荷物を抱え直し、マルファスも伏せて崩れた荷物をまとめなおしていると、兎耳が近づいてきた。 ガサガサと乱暴に草をかき分けてでてきた顔は、ヘレンだった。数名の獣人を連れて、ゲングの前へ早足で近づいてくる。 「......ゲングさん?」 「ヘレンさん?! なんでこんなところに!」 「こっちのセリフよ。一二三に会いに行ったんじゃなかったの? 迷った?」 ヘレンの冗談に、ゲングは声をあげて笑ったが、マルファスは暗い顔だった。 「人数も減ってるし......本当にどうしたのよ」 話すと長くなりやすが、とゲングはなるべく簡単に、ヴィーネとプーセがそれぞれ人間の国に残ることになったこと、マルファスと一二三の関係について説明した。 ヘレンはそれを聞いて「プーセさんもね......」と不思議そうにしている。プーセ本人があくまでヴィーネの付き添いのつもりでいたのを知っているので、まさか残留するとは思っていなかったのだろう。 「わたしは食料探しと周囲の確認で巡回してたんだけど、丁度よかった」 「それがね......」 ヘレンは自分の長い耳を指でしごきながら、言い辛そうに口をもごもごさせてから、伝えないといけないよね、と口を開いた。 「魔人族が攻めてきたから、全員でスラムを放棄して森に入ったんだよね。で、この先で簡易の集落を作ったってところ」 ゲングは、ヘレンが言った内容を理解するまで、少し時間がかかった。まさかさっきまで考えていた撤退を、レニが実行済みだとは、予想もしていなかったからだ。 「で、ちょっと問題が起きてるんだよね......」 「やっぱり森での生活に戻りたくないって話ですかい?」 ゲングの質問に、ヘレンは首を横に振る。 ゆらゆらと揺れる耳も、心なしか萎れて見えた。 「レニの意見に沿って森で騒動をやり過ごすのを受け入れたグループと、反撃に出てスラムを取り戻そうってグループに分かれちゃってね」 この時、マルファスは一つの決意をしていたのだが、この場にいた誰もがそれに気付くことは無かった。 王都へ向かう一二三の旅には、オリガの努力の甲斐あって、随行は妻であるオリガのみだった。 もとより護衛なぞ必要ないのは誰もがわかっていることであり、収納魔法が使えるのも多くの者が知っていた。 なので、二人がそれぞれの馬に乗って、馬車も無く町を出ていくのを不思議に思っている者はいない。 特に告知もしていなかった旅立ちは、館でカイムやヴィーネ、アリッサの見送りがあるのみで、街の人々は軽装の二人を見て、散歩にでも行くのかと見送る。 当然、フォカロルの町を出る際に止められるようなことも無く、兵士たちの視線を浴びながら、領主夫婦はゆらゆらと馬に乗って門を抜けて行った。 「行ってらっしゃいませ!」 「お気をつけて!」 兵士たちの声に、一二三はひらひらと左手を振って応え、オリガもそっと手を振った。 薄曇りの街道をのんびりと進む二頭の馬。 フォカロル周辺の街道を行く兵士はもちろん、商人たちも一二三の顔を憶えているので、顔を見れば会釈をし、あいさつをしてくる。他の貴族のように気難しいというわけではない、という話が浸透しているせいだろう。 この世界に呼び出されてしばらく経ったが、結局、一二三は身分制度というものをくだらないものと評価して変える気は無い。金は無いと困る。戦争には金がかかることを知っているし、金があれば損得で納得させたうえで人を動かすことができる。 その身分を手に入れた初代であれば、それはその人の価値を示すものとして良いだろうとは思う。だが、相続によって引き継いだ身分はと言えば、精一杯好意的に評価して、“社会構造を混乱させないための仕組み”以上の価値はない。 だからこそ、アリッサがちゃんと受け止めた以上、自分が伯爵という身分を放り捨てることに戸惑いは無い。 便利ではあったが、変に人を使う立場になってしまうと、自分のところまで争いが回って来ないような気がして、もどかしい気持ちがあった。 立場があると、恨みや妬みがあっても近づくことができない。敵に身をさらす機会が減ると、それだけ殺し合いのチャンスは無くなるのではないか? ひょっとすると、自分が領主館で寝泊まりしている間に、相手が貴族だからと復讐を諦めた何者かがいたのではないか? そう考えると、せっかくの異世界でとても勿体ないことをしていたような気がする。 「余計な事を考えずに、ひたすら殺して回っても良かったのかも知れないな」 だが、結局それでは草刈りをして回る様な、虚しい単純作業の繰り返しになりかねない。オリガと出会い、この国の戦いを知った時の恐怖は今でも憶えている。 『ひょっとして、この世界にいるのは碌に戦えない奴ばかりじゃないのか?』 騎士を殺し、王を殺し、冒険者を殺して魔物を殺した。 どれもこれも、戦いとも言えないような物だった。 あとでオリガに聞いたが、ギルドで真っ二つにした冒険者は、それなりに強い部類だったらしい。アロセールで殺した冒険者も、あのエリアではトップランクだったというし、やはり戦いを広めていく方針はあっていたはずだ、と自分の考えを確かめた。 「そうすると、イメラリアと魔人族がどうするつもりかによって、そろそろ計画の最終段階か」 なんとなく呟いただけの言葉だったが、オリガは肩を震わせ、手綱を握りしめた。 「一二三様......」 いつも通りの調子で聞き返した一二三に、オリガは微笑みを作った。 「急ぐ旅ではありませんから、途中にある温泉が有名な村など寄っていきませんか? きっとおいしい物もありますよ」 「ああ、いいな。ゆっくりした方が色々動きも出てくるだろうから、そうしよう。というより、王都までの道についてはオリガに任せる。行きたいところに寄ってくれ」 急に重大な任務を任され、オリガは目を丸くして固まった。 「どうも、今までの移動は戦場を求めて右往左往して落ち着かなかったからな。折角だから、適当に観光なりうまいものでも食べながら行こう。オリガも忙しかっただろうし、たまにはいいだろう。次にこういう機会があるかどうかわからないからな」 「は、はい」 頭の中で、王都までの街道沿いや少し外れた場所で、名物や観光名所がどこにあるのかを懸命に思い出しながら、オリガはいつしか涙を零していた。 一二三の優しさが、オリガに対する侘びであることに気付いてしまったからだ。 彼の狙いは、平和とは程遠いところにある。現に今までは任務や戦闘で休む間もなく動き続けていて、最終的な一二三の狙いの中にも、平穏という文字は見当たらない。 それを受け入れ、それでも彼の傍にいることを決めた以上、その事に文句を言うつもりは微塵も無い。無いのだが、それでもその計画に巻き込むことを、一二三がオリガに対して多少なり負い目を感じているのではないだろうか。 少し前を行く、一二三の背中はいつもと変わらない。 奴隷として購入された日。ヴィシー相手に暴れまわった時。ホーラントでの戦闘でも、領地を得て領主として活動をしているときでも、その背中は迷いなくまっすぐに進む。 「あなた」 馬を寄せ、オリガは隣に並んだ一二三の、手袋に包まれた左手にそっと手を重ねた。 その薄い魔物の皮を通した向こう側が、どうなっているのかを、いつかの寝物語にオリガは聞いていた。 一二三もいつかは死ぬ。それは彼自身もそう言っていたし、彼が怪我をする場面も見た。現に、手袋の中身は肉体ではない。 「今日中に着ける町で、面白い料理があると聞きました。おそらくあなたが一度も寄られたことの無い町ですけれど、お肉で野菜を豪快に巻いて、特別な香草を使って焼き上げるそうです。あなたもきっと気に入ると思いますよ」 「それはいいな。話を聞いただけで腹が減ってきた。今日の宿はその町にしよう」 「ええ、そういたしましょう」 自分はずるい女だから、この機会で誰よりも、誰にも追いつけないくらい、一二三という人の事を知って、自分の事をもっと知ってもらおう。そして、一二三にわかってもらうのだ。彼が何を考えて、何をやろうとも、ずっと隣に寄り添う存在がいるのだ、と。 本当の意味で伴侶として認めてもらい、もっと正直な彼の言葉を聞くために。 いつか来る、終わりの前に。

Chapter 163: Fragile Letting the remnants of the defeated demon army pass, Gengu and Malfas traverse the wastelands while keeping a distance so that they don't catch up with them. Gengu wondered whether they will deviate towards another direction sooner or later, but, no matter how much time passes, they follow the same path. "What's this about? Are those guys possibly heading towards the slums...?" (Gengu) They don't have an aura as if they are about to head into battle from now on, however it's not entirely impossible that they changed their target to the beastmen living in the slums after having lost to the humans. "Gengu-san..." (Malfas) Looking at Malfas who watches him uneasily, Gengu decides to change their planned route towards advancing through the forests as much as possible. I'm afraid of the possibility of being attacked by other beastmen, but if it's just running away, we will manage somehow. "We will enter the forest. It might get difficult, but we haven't any other choice but to hurry in order to inform Reni." (Gengu) "Got it." (Malfas) Closing in on the demon group a bit, he confirmed that they are definitely heading in the direction of Swordland. The two of them got off the path quietly and went into the forest. Once they have entered a depth where Gengu judges that they aren't visible by the demons, they advance at a quick pace. "Hifumi is currently in the human cities. As you could see from him following us, that person travels quickly as well. He won't hesitate to go towards a battlefield. If he sees the demons coming to attack, he will likely repel them quickly... maybe those demons were actually repelled by Hifumi." (Gengu) Listening to Gengu's talk, Malfas fell into silence. Malfas somehow manages to accompany Gengu who is fast on his feet as should be expected of a wolf beastman. After listening to Gengu's predictions, Malfas, who pondered about it while running to an extent that it's more than enough, opened his mouth as he is following Gengu, "Do the demons still intend to fight against the humans?" (Malfas) "If I ponder about what they are planning... I've no idea. They might have learned their lesson this time. Likewise they might attack once again after having finished their preparations. Or..." (Gengu) If the destination of the of the demon soldiers we saw just now is Swordland as expected, and if they are planning to attack that place, their target will likely be the beastmen living in that city. "Unfortunately my head can't process things so far ahead. Since I've always left the thinking part to others, there's no other option but to spend our time on preparing as much as possible so that we are able to fight." (Gengu) "Reni-san and the others don't have any intention to fight with anyone, I think?" (Malfas) Gengu snorted due to Malfas' remark. "There are parts where I want to say... 'not like I would know', but there's one thing that's definite." (Gengu) Gengu stops and looks at Malfas' face. "Reni-san won't emotionally choose an option that seems like it'll expose her comrades to danger. If there's nothing she has to protect by all means or no way to definitely win, she won't drag her comrades into an unreasonable battle, I'm sure." (Gengu) At the time when Gengu became a slave, the leader of the village had decided to fight. As a result of that, half of his friends had been pointlessly killed and the remaining survivors had all been turned into slaves. Though he had just recently heard of it, but half of his friends that had been turned into slaves have already died. If their leader was someone capable of making decisions like Reni, he might have at least considered to retreat temporarily to reorganize. No, if we had been a group that decided its leader by judging their accomplishments and not just a savage group that settles on a leader simply going by their strength... After half-heartedly getting to know Reni's methods, this popped up in Gengu's head many times, but, as it's something that can't be helped even if he broods over it now after such long time, he pushed back those thoughts inside his memories. "Anyway, for now we have to hurry to return to the slums... Hide!" (Gengu) He grabs the luggage Malfas is carrying and forcibly pulls it behind a tree. After telling Malfas to conceal himself, Gengu silently checked their front from within the shade of the tree. It looked as if several figures of people moved about. "I don't know what kind of beastmen live around here, but I pray that they are a gentle lot..." (Gengu) He watches fixedly for several seconds. Gengu felt relieved when he saw the ears of a rabbit atop a distant thicket. "Stand up, Malfas. It's a rabbit-san." (Gengu) Gengu quickly picked up his dropped luggage and, once Malfas had also fixed all the luggage that had been thrown into disarray due to him lying down, they approached the rabbit ears. The face that appeared after roughly pushing its way through the grass with a rustling was that of Helen. Leading several beastmen, she draws nears to in front of Gengu at a fast pace. "... Gengu-san?" (Helen) "Helen-san!? What are you doing in this place!?" (Gengu) "That's my line. Haven't you gone to meet Hifumi-san? Did you get lost?" (Helen) Gengu burst out in laughter due to Helen's joke, but Malfas had a bitter expression. "Your numbers have decreased as well... What did actually happen?" (Helen) "It's a long story ~ssu", Gengu explained as simple as possible that Viine and Puuse remained in the human country and about Malfas' relationship with Hifumi. Hearing that, Helen looks curious and says [Puuse-san, too, eh...?] Since Helen knows that Puuse herself only went there with the intention of accompanying Viine, she never expected her to actually stay behind, too. "I just went on patrol to check the surrounding area and to search for food, but you are just right in time." (Helen) "That is, you know..." (Helen) After Helen mumbled under hear breath as if it was difficult to say while fiddling with one of her long ears with her fingers, she said "I have to tell you, don't I?" and continued, "Since the demons came to attack us, we abandoned the slums with everyone and entered the forest. And so we built a simple village ahead of here." (Helen) It took a bit time until Gengu understood what Helen had told him. That's because he didn't actually expect Reni to completely realize the evacuation he had pondered about until some time ago. "So, a little problem has cropped up..." (Helen)magic "It's about them not wanting to return to the forest after all, isn't it?" (Gengu) Helen shakes her head at Gengu's question. Even her ears that are slowly shaking looked somewhat dejected. "We ended up splitting into a group, which accepted Reni's opinion of letting the strife go past inside the forest, and one that wants to take back the slums by mounting a counter-attack." (Helen) At that moment Malfas came to one decision, but none of those present noticed that. On the travel of Hifumi towards the capital, his only attendant was his wife, Origa, which was also a result of her great efforts towards that effect. Everyone knows that there was no need for an escort to begin with, and many people were also aware that Hifumi could use storage magic. Therefore there wasn't a single person that considered it odd for the two of them mounting a horse each and leaving the city without using a carriage. The setting-off that hadn't been particularly announced was only seen off by Caim, Viine and Alyssa at the mansion. The citizens, seeing the two of them wearing lightweight equipment, let them pass by while probably thinking that they were just going for a walk. Of course they weren't stopped at the time they left the city of Fokalore. While being warmly showered with the looks of the soldiers, the feudal lord couple passed through the gate while slowly swaying on their horses. "Have a good trip!" "Please take care!" Hifumi replied to the voices of the soldiers with a light wave of his left hand and even Origa quietly waved her hands. Two horses leisurely advanced on the highway below a slightly cloudy sky. Since the merchants and, of course, the soldiers patrolling the highway in the vicinity of Fokalore know Hifumi's face, they greet him or salute to him upon sight. That's probably because the story that he isn't as moody as other nobles has sunk into the people's mind. It will be troublesome if there's no money. And I know that war costs money. If there's money, people can operate based on their grasp of gains and losses. If it's the first generation that obtained that social status, it's probably fine as it shows the value of that person That's why I have no hesitation to abandon my social status of Earl, seeing that Alyssa accepted it reliably. Although it was out of convenience, I feel like conflict won't come around to my place, if I end up in a strange position that employs others. It was an irritating feeling. Even if there's resentment and jealousy, those won't be able to approach me as long as I have a certain social standing. If the opportunities to expose myself to enemies decreases, won't the chances to kill others vanish in accordance? Aren't there possibly some people who gave up on their revenge because their opponent is a noble while I was staying in the feudal lord's mansion? If I consider it like that, I feel like it's something far too wasteful after finally having come to a different world. "It would probably be great if I could simple-mindedly kill without having to ponder about unnecessary things." (Hifumi) However, in the end it's quite likely for that to become a repetitive, empty and simple work just like spending time on mowing grass. Even now I remember the dismay at the time I learned of the battles of this country after meeting Origa. {Are there by chance only people who can't fight decently in this world?} I killed knights, kings, adventurers and monsters. All of them were people where you couldn't even call it a fight. I asked Origa afterwards, but it seems that the adventurer I cut into two halves in the guild belonged to a reasonably strong category. Even the adventurer I killed in Arosel was called the top adventurer in that area. I should enforce my plan to spread fighting after all "Once I do so, it will soon enter the final stages of the plan depending on what Imeraria and the demons are planning to do, won't it?" (Hifumi) Those were words he had only murmured for some reason or another, but Origa tightly grasped the reins with her shoulders trembling. "Hifumi-sama..." (Origa) Origa produced a smile due to Hifumi answering her in his usual way. "Can we drop by a village famous for its hot baths along the way since we are in no hurry? I'm certain that they will have delicious food as well." (Origa) "Yeah, that's a nice idea. Let's do that since various developments will likely become apparent by moving slowly. Or rather, I will leave the path to the royal capital to you, Origa. Please make a short visit at any place you want to go to." (Hifumi) Suddenly being assigned an important task, Origa stiffened while staring in wonder. "Really, my travels until now weren't calm and went this way and that way in my pursuit of the battlefield. Since it's a long-awaited occasion, let's proceed while eating delicious stuff and enjoying some proper sightseeing. You were busy as well, Origa, weren't you? I think this way of handling things is fine once in a while. After all I don't know whether there will be such opportunity after this." (Hifumi) "Y-Yes." (Origa) Origa spilled tears before realizing it while eagerly recalling inside her head where there are sightseeing spots and famous local products along the highway towards the capital and at places slightly away from it. Hifumi's kindness ended up being perceived as apology towards her by Origa. His objective is peace down a long, long road. In reality he continues to move without the time to rest due to battles and duties. In the end the word Having accepted that, and on top of that, having decided to stay at his side despite that, she hasn't the slightest intention to complain about it. And although that's the case, doesn't Hifumi still feel a slight indebtedness towards Origa for having involved her in his plans? The back of Hifumi, who is slightly ahead, is no different from usual. On the day I was bought as slave, at the time when he rampaged around with Vichy as opponent, in the battle with Horant and even at the time he spent actively as feudal lord after obtaining territory; his back always advances straight ahead without any hesitation. "Dear." (Origa) Bringing her horse close, Origa lined up next to him and gently placed her hand on the left hand of Hifumi that was covered by a glove. Origa heard how the other side of that thin monster skin became as it is now during a pillow talk the other day. Hifumi will die sooner or later, too. He himself said so as well. There were also situations where he got injured. In reality, the contents of that glove aren't flesh anymore. "I heard that there's interesting food in the city we will reach by the end of the day. Very likely it's a city you never visited even once, but apparently the vegetables are heartily enveloped by meat and then grilled while using special herbs. I believe that it will suit your taste, dear." (Origa) "That sounds great. I got hungry by just hearing you talk about it. Let's lodge in that city today." (Hifumi) "Yes, let's do that." (Origa) Because I'm a sly woman, I will learn about the person called Hifumi and have him learn about me to the extent that no one will be able to catch up. And I will have Hifumi understand as well: No matter what he does or what he plans to do, there's someone that will always stay close to him. I will have him accept me as spouse in the truest meaning, in order to hear the words of his heart. It will happen in time, before the end.

22.Another One Bites The Dust 【新しい仲間と簡単な因果応報】 一二三からの誘いに、アリッサは首を縦に降った。 「僕にはもう両親もいないし、国境警備が長くて、特に知り合いもいないんだ。だから、一二三さんに付いてく。復讐もしたいと思うけど、それよりも、恩返しをしたいよ」 「国境では急にみんなが殺されたり、兵長たちには殴られたり無理やり走らされたりして、ついさっきまでは、何がどうなってるのか訳がわからなくて、体中が痛くて、もうどこがどう痛いのかも分からないくらい痛くて、このまま死んじゃうんだと思ってた......」 うまく思考がまとまらないのか、アリッサはところどころつまりながらも語り、それを一二三たちは黙って聞いていた。 「でも、一二三さん達が助けてくれて、痛いのも全部直してくれて......。でも、僕にはお礼になるだけのお金も何もないから、だから、一二三さん達の奴隷にしてもらって、役にたてたらと思って......」 奴隷という言葉が出て、オリガが思わず笑みをこぼした。 「アリッサ。私もカーシャも、一二三様の奴隷なんですよ?」 「えっ? そんないい装備着てるし、貴族の一二三さんと親しそうに話してるし、従者とか、その......愛人とかだと......思ってた」 「まあ確かに、アタシたちが奴隷だって事を忘れそうなくらい、いい待遇してくれるよ。でも従者か、悪くないかもね」 「愛人なんて、そんな......」 カーシャとオリガでは、食いつくポイントが違うらしい。一二三は冷静に反応を見ながら、収納から干し肉とパンを取り出して、齧っていた。 「ご主人、アリッサが自分の人生を決めようとしてるのに......」 「腹が減ったんだよ。気にするな」 水も飲まずにバクバクと食べながら、ふと思いついたように一二三が言った。 「奴隷奴隷って言ってるけどな、オリガ達は王都に戻ったら解放するぞ?」 「え、なんで?」 「ご、ご主人様?! 私たちに何かご不満があられるのですか? 改善しますので、どうか......」 カーシャはきょとんとしているが、オリガは一二三にすがりついてきた。 「何を驚いてるんだ。ベイレヴラを捕まえて、お前らが奴隷になった原因の事件が解決したら、別に奴隷のままでいる必要はないだろう?」 オーソングランデの法律がどうなっているかは知らないが、いわれのない罪で罰を受けているなら、冤罪が証明されたなら罰は無くなって当然だろう。 「でも、ご主人があたし達を買うのに払ったお金が戻ってくるかどうかわからないんじゃない?」 「別にいいさ。金が惜しいわけでもない。この世界の常識とかについて教えてくれる奴が欲しかったのと、旅をするのに一人だと不便だと思ったからだし。二人を選んだのも、まあ見た目が良かったのもあるが、能力的にも俺についてこれそうだったからだな」 言ってしまってから、残りの干し肉を口に放り込む。 「でもな、さっきも言ったが、解放はこの件が終わって王都に戻ってからだ。それまでに、自由になってからどうするか、考えておけばいい」 「あの......僕はどうしたらいいんでしょう?」 「そうだな。別に奴隷はいらん」 「そうですか......僕みたいにチビで弱いのは使えないよね......」 うつむいてしまったアリッサを、オリガは不安そうに見ているが、主人の前で勝手はできないと黙っていた。 「俺はまだ、ここではなんちゃって貴族の根無し草だからな。そんなにたくさん奴隷を抱えてもしょうがない。だが、自分の意思でついてくるならそれでもいい」 ばっと顔を上げたアリッサに、さらに一二三は続ける。 「ただし、俺にはある目標がある。というより、この世界の連中の戦い方を見て、決めたことがある」 「決めたこと?」 「内容はまだ言わないが、お前たちが今まで見たよりもたくさんの血が流れる。ついてくるなら沢山殺す必要があるし、殺される可能性ももちろんある」 アリッサは、一二三が戦う姿を見たは国境での一度だけだが、他のオリガとカーシャの二人の表情と、小さく聞こえた「あれ以上?」という言葉から、相当な修羅場だという事は理解できた。 「でも、僕はそんなに強くないから......」 自信なく言うアリッサに、一二三はニヤリと笑った。 「戦う術は教えてやろう。それに、戦うだけが仕事じゃない。必要なのは、覚悟だけだ」 そして、返答はすぐじゃなくて良いと一二三は言った。 それよりも、これからの行動についてだ。 アリッサから、この街の代表の館を聞き出してから、腰へ刀を帯びた。 「アリッサはここにいろ。オリガとカーシャはここで警戒な。敵が来たら、殺せ」 「わかりました」 オリガの返事を聞いて、一二三は馬車を降りた。 背筋を伸ばしながら、月を見上げる。 雲はまだ厚く、月明かりは少ない。 血の流れる夜は、まだ続く。 具体的には語らなかったが、一二三はこの世界について一つの結論を出しており、それに酷く不満だった。 それは、この世界の誰もが“殺されるかもしれない緊張感”に乏しいということだ。 オーソングランデと獣人族との戦いを聞いた時もそうだが、この世界での戦は精々一二三が考える小競り合い程度らしい。もちろん人は死ぬだろうが、戦争というには少ない。 個人間の戦いはもっと酷い。 魔物が強いエリアはそうでもないのかもしれないが、人同士の戦いでも“武器を抜いてよーいドン”のスポーツのような戦い方しか知らない。ちょっと工夫している奴がいる程度で、それも誤魔化しの技術であって戦う技術ではなかった。 この世界へ来て、人を殺すことができて、しばらくは満足感があった一二三。しかし、どうものんびりとしたこの世界の人々に鬱憤はまた溜まっていた。 強い奴がいない。命を削って必死に自分が生きるための工夫を凝らす奴がいない。せっかく夜なべして開発した闇魔法を使う機会すらない。誰も彼もが必死で頭を捻って、戦える奴は武器を取り、国ごと命を削り取るような戦いが無い。 平和を求めるならそれでもいいのかもしれない。 だが、敵はいるのだ。 どうして誰も懸命になって相手を殺そうとしないのか。 (これじゃ、日本と変わらない) 不満をあらわに歩いてると、アリッサから聞いた街の代表の館へ着いた。 街の代表はオティスという中年の男で、この街ができた時の立役者となった商人の子孫だという。三階建ての石造りの建物は、この世界にしてはお金がある方なのか、ガラスを使った窓がいくつかある。 (居るな) 昼間に見た、アリッサ曰く兵長らしい男の気配は建物の中にある。報告でもしに来たのか、少なくとも今はどうでもいいと思った。この状況に至っては、この街で情報収集は難しい。であれば、やり方はもっとシンプルでいい。 ふと敷地へ入る門の前を見ると、露骨に気の抜けた二人の兵が立っていて、剣を腰に提げたままでいる。 それを見た一二三は、やっぱりとため息をついた。一度気になってしまうと、どうしてもそこに目が行ってしまう。 最初は話しかけようかと思った一二三だが、やめた。門番というのは最初に異常に気づき、全ての対応の起点になる重要な立ち位置だと一二三は考えている。侯爵邸の時は楽でいいと思ったが、今の心理状況では苛立ちの感情しか湧かない。 無言でさっさと近づいてくる一二三の姿を見つけた兵士たちだが、腰の武器が抜かれていない事を見て、緊張を解いた。その事も、一二三は気に入らない。 「はい減点」 一二三が柄に手をかけた瞬間、門番たちは再度緊張を見せたが、立て続けに喉を斬られて、声を上げることもできずに死んだ。 施錠されてもいない門から入り込むと、真正面に館の大きな扉が見える。敷地内には見張りなどはいないようで、室内には10人程度の気配しかない。 念のためじっくりと観察してみたが、罠の類も無いようだ。 右手に刀を掴んだまま、堂々と正面のドアを開けた。 ドアを開けると、使用人らしい線の細い若い男と目があった。 「えっ? あの......」 「侵入者だよ」 声をかけながら、反応されるより速く後ろに回り込んだ一二三は、首を軽く締めながら足を払い、正面にあっる階段の影へ男を引き込んだ。 「俺の質問に答えろ。小さな声でな。妙な動きをしたらすぐ殺して他の奴に聞く」 首に回した腕から、震えながら頷いたのがわかる。 「兵長とオティスはどこにいる?」 「今は二人共、に、二階の執務室に......」 執務室の場所を聞き出してから、ついでにベイレヴラという男を知っているかと聞いてみた。 「そ、それは......」 男の反応がおかしいと感じた一二三は、刀を滑らせて男の胸を薄く切って、脅した。 「つぅ......や、やめて......」 「止めてほしいなら、話すんだ」 「ベイレヴラという男は、以前にこの屋敷に逗留していました」 意外なところでヒントを見つけた一二三は、今までの苛立ちを少しだけ落ち着けて、続きを促した。 この男は、街の予算関係の管理をしている文官らしい。 ベイレブラは何度か訪れたことがあり、最近では今日の朝の事らしい。 (ひょっとすると、アリッサが声を聞いた男がベイレヴラだったのかもな) さっさと逃げているかと思ったら、こいつものんびりしているらしい。 ベイレヴラは宿泊せず、朝早くに来てオティスと何か話をした後、すぐに出ていったらしい。 これ以上の情報な出てこないようなので、首を絞めて気絶させた。 さっさと殺してしまおうと思ったが、そうもいかないらしい。 歯がゆさを感じながらも、仕事として受けてしまったことを後悔しながら、一二三は階段を登っていった。 執務室の前に立った一二三は、ためらいなくドアを開いて踏み込んだ。 室内にいたのは二人。昼に会った兵長と、この街の代表オティスだろう中年の男だ。 「お前は」 言いながら剣を抜いた兵長は、ノシノシと一二三に近づいてくる。 「お前はいらん......」 身体が当たるほど近づきながら、一二三は兵長の足の甲を踏みつけ、剣を振られる前に兵長を突き倒した。弾みで、踏まれた足の足首が折れる。 ところが、痛みを感じていないのか、もぞもぞとぎこちなく立ち上がろうとするので、胸を踏みつけて刀を首に刺して止めを差した。 「さて、オティスと言ったな。聞きたいことがある」 表情一つ変えずに人を殺した一二三に対し、オティスはデスクから立ち上がる暇さえ与えられず、顔を青ざめて震えていた。 「こ、この街でワシにこんな真似をして、ただで済むと......」 「そういう話はいらない」 刀が振り抜かれ、オティスの両腕に赤い線が引かれる。 「ひぃっ!?」 「時間が惜しい。そろそろ眠いからさっさと終わらせたいんだ。ほんの数人殺す程度だと、もうテンションも上がらない」 面倒な仕事を受けてしまったと、ブツブツ言っている一二三。 「な、何が聞きたいんだ?」 「いくつかある。ベイレヴラは何者で、どこへ行ったのか、何をやっているのか。この街の兵の様子がおかしい理由もだ。さっき殺した奴も感情の起伏が乏しくて痛覚も鈍かった。一体あいつらに何をした?」 「べ、ベイレヴラはヴィシー中央から送られてきた工作員だ。どこでどうしているかは知らない......」 「今朝会っただろう? 何を話した。どんな任務を負っている?」 刀をチラチラと見ながらオティスが話した内容を、一二三は頭の中で整理していた。 ベイレヴラはいわゆる都市国家をまとめる中央から派遣されたエージェントで、主にオーソングランデからの情報を集めているとオティスは聞いていたらしい。オーソングランデ内での活動内容は聞かされていないようだ。 兵たちに関しては、中央から送られた新開発の魔法具の実験らしい。これもベイレヴラが運んできた物で、身体強化の効果があるとされ、兵士たちに配布されたらしい。 「で、感情が抜けるのは、その副作用か何かか?」 「ワシにもわからん。中央に説明を求めたが、“経過を観察しろ”としか連絡が無い。職務に支障はないんだが......」 「アリッサは魔法具をつけていなかったが?」 オティスが受けた説明だと、若すぎると強化に身体が耐えられないという事だ。 「とりあえず、今聞きたいのはこれくらいだな」 「今だと? また来るつもりか!?」 「いや、お前が来るんだよ」 首筋を刀の峰で痛打され、オティスはあっさり意識を手放した。 元より監視の薄い屋敷を出て、夜道を馬車まで戻ってきた一二三は、気絶したオティスをオリガたちに預けて縛らせ、自分は宿の中へ入って行った。 向かう先は、宿の親爺がいる部屋だ。 ドアを開けて一二三が侵入したのに気づかない親爺は、ベッドでのんきに鼾をかいて寝ていた。 刀を抜いた一二三は、眠る親爺の心臓を一突きし、血振りをして納刀。 何も言わずに部屋を出た。 「何かあられましたか?」 オリガの問いに短く答えると、一二三は街を出てフォカロルへ向かうと告げると、自分の馬に飛び乗った。 「ご主人、戻るのかい?」 「そいつの話だと、ベイレヴラはヴィシー中央からの指示で動いている工作員らしいぞ。今の状態で国同士の話に関わると面倒だから、調査はパジョーたちに任せる。それとアリッサ」 「は、はい!」 「今言った通り、俺たちは一度オーソングランデへ行く。それからの事はその時決めればいいが、本当についてくるつもりか?」 街だけでは無く、国を捨てる事になると一二三が告げるが、アリッサは真剣な顔で頷いた。 「構わない。そうなる事は覚悟の上だから」 「そうか。好きにするといい」 「よろしくお願いしますね、アリッサ」 「あのご主人についていくのは大変だよ? 頑張らないとね」 奴隷達と仲良く話しながら、自分が馭者をすると言って移動するアリッサに背を向けて、道を進む一二三の表情は誰にも見られていないが、笑っていた。 (これでいい。これでアリッサも俺の戦い方を吸収できるようなら、この国で、この世界で、もっと“戦いの空気”を広める事もできるだろう) オリガとカーシャは元々ある程度の経験もあったせいか、教えられた事を上手くやれていると一二三は評価している。これは単なる実験ではあったが、もう少し馴染めば、対人戦ではこの世界でかなり強い部類に入れるだろう。 そしてさらに、魔法が使えず、力も決して強くないアリッサも、武術や戦術によって人並み以上に戦える事が証明できれば、その驚異が広まっていけば、この世界の戦いも変わっていくだろう。 個人・集団・国や街、互いに手段を選ばない、本当の命の奪い合いが始まるのだ。 その為には、ある程度の地位はあった方がいいかも知れないと、一二三は考えるようになった。多くの人を動かせる地位はすなわち、大きな戦いを起こせる地位なのだから。 (準騎士爵の地位、なんとなく受け取っただけだったが、せっかくだから利用させてもらおう。イメラリア、お前は勇者を召喚したつもりだったな。なら勇者になってやろう。この世界で勇名を轟かせる勇者にな。そしてその結果、どれだけこの世界で血が流れるか、よく見ているといい) 乱戦・混戦の興奮、夜襲の緊張感、必死に対応し、力及ばず殺される人々......。イメージだけでも、一二三の胸を熱くする。 (動かないカカシを斬ってもつまらんのだ。人が活きているから殺したいんだ)

Chapter 22: Another One Bites The Dust Alyssa nodded towards Hifumi's invitation. "My parents are no longer alive, and having been in the border security for so long, I don't really have any acquaintances either. So I'll come along with you guys. I'd like to exact revenge, but above that, I'd like to repay this debt", Alyssa said, whilst looking Hifumi in the eye. "Suddenly, everyone at the border were killed, the Corporals were beaten, and I was forcibly made to run away. Until just now, I didn't even know what was going on, and was hurting so much all over my body that I didn't even know where it was the most painful. I really thought I was going to die." She couldn't skillfully transmit her thoughts and kept talking, even though her explanations were all over the place, while Hifumi and the rest listened quietly. "But then you came along and saved me, and even cured all of my pain... However, except my thanks, I don't have any money or anything else to offer. Therefore, I'll become your slave. I won't complain even if you boil me." When the word slave was mentioned, Origa unintentionally let out a smile. "Alyssa, both me and Kasha are Hifumi's slaves, you know?" "Eh? With your fine equipment, and how you're talking familiarly with Hifumi, I thought you were his attendants, or perhaps... his lovers..." "Well, it's true that we've been given so good treatment we've almost forgotten we're slaves in the first place. But attendants, huh? That doesn't sound so bad." "Lover... that's kind of..." It seems like the words in her sentence that Kasha and Origa reacted on were different. Hifumi retrieved some dried meat and bread from his storage to snack on, while calmly observing the spectacle. "Master, even though Alyssa is currently deciding what to do with her life..." "Don't mind me, I was just hungry." Vigorously eating his food, Hifumi suddenly came to think of something. "You're saying slaves, but once we return to the capital, I'll let you free, you know?" "Eh? Why?" "Ma-Master!? Are you dissatisfied with us in any way? We'll better, so please..." Kasha looked gave Hifumi a blank look, while Origa started clinging to him. "After catching Beirevra, and resolving the conflict that lead to you becoming slaves, you don't need to be slaves anymore, right?" Without knowing how the laws in Orsongrande works, it should still be a matter of course that in case you're being punished for something you didn't do, and show proof of your innocence, your punishment should be removed. "But Master bought us, and we don't even know if that money will be repaid." "I don't particularly mind. Money isn't all that valuable. Buying slaves was because it's both what the person teaching me this world's general knowledge wanted me to to do, as well as me thinking it'd be inconvenient to travel alone. As for choosing you two specifically... Well, besides your looks being fairly good, as far as I'm concerned, you also also had some ability." Saying that, Hifumi threw the remaining dried meat into his mouth. "But as I said earlier as well, I'm letting you free when this matter is over and we return to the capital. Until then, it'd be good if you can think about what you want to do after that." "Excuse me... I wonder what I should do now?" "Right. I don't really need any slaves." "I see... A small and weak person like me don't have any uses..." Seeing Alyssa getting downcast, Origa looked a little anxious. But being in front of her Master, she couldn't really do anything on her own accord, and therefore decided to keep silent. "I'm currently just a wandering fake noble, so there's no point in having a lot of slaves. Still, you're free to follow us of your own volition." Alyssa quickly raised her head, while Hifumi continued. "However, I have an objective. Or rather, after seeing how people in this world fight, I've made up my mind on something."magic "Made up your mind on what?" "I won't tell you the specifics, but like you've seen until now, there will be a lot of bloodshed. If you're coming along, a lot of killing will be necessary, and there's always the risk of getting killed yourself." Alyssa only saw Hifumi fight once, by the border. But looking at Origa and Kasha's facial expressions, she faintly whispered "more than that?", and subsequently got an understanding on what considerable carnage may look like. "But, I'm not strong like that..." Alyssa said without self-confidence, to which Hifumi grinned broadly and let out a laugh. "I'll teach you some fighting techniques. Besides, just fighting isn't what matters. What really matters is your resolve." It's not something you need to answer to anytime soon, he also added. More importantly, what actions should be taken now? Having Alyssa tell them the location of the town representative's mansion, Hifumi strapped his sword to his waist. "Alyssa will wait here, while Origa and Kasha keep guard. If enemies appears, kill them." "Understood." Hearing Origa's answer, Hifumi got off the carriage. Stretching his back, he looked up at the moon. It was still cloudy outside, scarce with moonlight. The night flowing with blood had yet to conclude. Hifumi didn't specifically talk about it, but he had come to a conclusion about something he was very dissatisfied with. It was the fact that no one in this world had any tension regarding the possibility of being killed at any time. It was the same when he heard about the fight between Orsongrande and the Beastmen tribe. It seemed like the wars of this world was more on the level of skirmishes. Of course some people died, but real wars rarely happened. Struggles between individuals were much fiercer. In areas with strong demons that might not be the case, but the fights between humans that looked more like some kind of sports event, was all that Hifumi currently knew about. The degree of people doing a bit of scheming is more an art of deception, rather than the art of war. Coming to this world, being able to kill people, Hifumi felt satisfied for a while. However, he soon started building up resentment towards the people in this world, with their carefree disposition. There are no strong people here. No people frantically scheming for their lives. No opportunity to use the dark magic painstakingly developed through the nights. Wars where people are desperately racking their brains, where the warriors were hoarding weapons, and where each country respectively were fighting frenetically to ensure their survival... none of these existed either. Maybe that's good if you're striving for peace. But there are threats. Why are no one earnestly trying to kill their enemies? Like this, it's no different from Japan. While expressing his displeasure, he arrived at the town representative's mansion. A building three stories tall made out of stone, adorned with several windows made out of glass, in this world, was something showing that you have money. He's here. According to what Alyssa saw during the day, a man seeming like a Colonel was also present in the building. Wonder if she come here to report before? Whichever the case, it was no longer of any interest. In the town's current circumstances, gathering information became a difficult task. Therefore, the best way to do it was in a much simpler fashion. By the entrance, two haggard soldiers were conspicuously standing guard, with swords handing from their waists. Once you've seen them, your eyes will unconditionally be drawn there. He first thought he could talk to them, but quickly gave up on the idea. The guards would realize something was amiss right from the start as they're most likely dealing with everything with the mindset of a being gate guardians. The other time with the Marquis' residence was fine, but regarding these guards' current mentality, Hifumi only felt irritation come gushing forth. He wordlessly walked closer to the guards, which they quickly discovered. But seeing that he didn't draw his weapon, they relaxed. That too, made Hifumi displeased. "Okay, that's minus points." The moment Hifumi put his hand on the hilt of his katana, the guards tensed up again. But he slashed their throats in succession, and they died without being able to raise their voices. Slipping in through the unlocked gate, there was a huge door straight ahead. There were no guards in the garden, but inside the house were the presence of ten or so people. Hifumi carefully observed for a while, but it didn't look like it was a trap. Gripping the katana in his right hand, he boldly opened the front door. Opening the door, he met eyes with a young, slender male servant. "Eh, who are..." "I'm an intruder." Saying that, rather than waiting for an answer, Hifumi swiftly emerged behind the servant. After putting him in a choke hold and tripping him, Hifumi dragged him into the shadows of the staircase close by. "Answer my questions in a low voice. If you do any strange movements, I'll kill you and find someone else to ask." With an arm around his neck, the servant trembled while nodding. "Where are Ortis and the Corporal?" "R-right now, they are in the office on the s-second floor..." After pressing him for information of where the office was located, Hifumi had the servant tell him if he knew about a man named Beirevra. "T-that's..." Hifumi felt that the response was weird, so he threatened him by sliding the blade over his chest, lightly cutting it. "Uu... p-please stop..." "If you want me to stop, speak." "The man called Beirevra previously stayed here in this mansion." Finding a clue like this from an unexpected source, Hifumi's irritation calmed down somewhat, urging the man to continue. It seems that the servant was working with matters regarding the town's budget management. As for Beirevra, he had apparently been coming here several times. The most recent visit seems to have been this morning. Perhaps the voice Alyssa heard back then was him. Hifumi had previously thought that Beirevra would make a quick escape, but it seems like he's taking his sweet time. Not having stayed over during the night, Beirevra had apparently come early in the morning, and left right after talking to Ortis about something. As it didn't seem like he'd get any more information out of this, Hifumi strangled the guy, making him fall unconscious. He first had thoughts of killing him, but it didn't seem appropriate. While feeling irritated, and regretting having accepted this task, Hifumi climbed up the stairs. Without hesitating, Hifumi opened the door to the office and stepped inside. There were two persons inside the room. The Corporal he met during the day, and a middle aged man. Presumably Ortis. "It's you." The Corporal uttered while brandishing his sword, stepping towards Hifumi with heavy steps. "I have no need for you..." When he came into striking distance, Hifumi trampled down on the top of his foot, and thrust him down on the ground before crushing his ankle. While the Corporal was clumsily trying to stand up, Hifumi stepped down on his chest and pierced his neck with the katana, delivering the finishing blow. "Well then. Ortis, I presume? I've got a couple of questions for you." Facing Hifumi who just killed a man without a changing of expression, Ortis face turned pale, and he shakily stood up from the table. "I-if you think you can behave like this to me, don't think you can get awa..." "I don't need you to tell me that." Swinging the blade, a red line appeared on both of Ortis' arms. "Hiiii!?" "Too bad we don't have time. I'm getting a bit tired, so I'd like to finish this. Just killing a few people, I can't feel the tension anymore." Hifumi complained about the annoying job he got. "W-what do you want to know?" "There are a few things. Who is Beirevra, where did he go, and what is he doing? I also want to know why the town's soldiers are acting weird. The ones I killed earlier where lacking emotional ups and downs, and had a dull sense of pain. What was done to them? "Be-Beirevra is a spy sent from the capital of Vichy. Where he is and what he's doing, I don't know..." "You met him this morning, didn't you? What did you talk about? What has he been tasked with?" Listening to what Ortis was saying while flicking with his katana, Hifumi was arranging the information in his head. Apparently, Beirevra was an agent dispatched from the Capital of the so called city-state, and it seems like he mainly asked Ortis about the intelligence collected from Orsongrande. Though he was never told the contents concerning Orsongrande's internal activities. As for the soldiers, it seems it was an experiment of a newly developed magic tool sent from the Capital. "So, is the suppression of emotions a side effect from that?" "I don't know either. I asked the Capital for an explanation, but 'watch over the process' is all they told me. It didn't hinder my work so..." "Alyssa wasn't equipped with one of those magic tools?" According to the information Ortis got, apparently they can't bear the body strengthening if they're too young. "For now, that's all I wanted to ask." "For now? Are you planning to come back!?" "No, you're the one coming." Hitting him hard on the back of his neck with the back of the katana, Ortis consciousness was let go. Exiting the originally sparsely guarded mansion, Hifumi returned with a horse carriage. He entrusted Origa and the rest with tying up Ortis, while he himself entered the inn. Ahead of him was the inn owner's room. Opening the door, the old man was snoring in bed, not noticing Hifumi intruding. Drawing his katana, he stabbed the sleeping old man in the heart, before flicking the blood off the blade and returning it to its sheath. He then left the room without saying anything. "Something you had forgotten?" Answering Origa's question, Hifumi jumped up on his horse, announcing they were leaving the town, going towards Fukaroru. "Master, are we returning?" "According to what Ortis said, Beirevra is a spy from the Capital of Vichy. The current situation could affect negotiations between countries, but it's a bother, so I'll leave the investigation to Pajou and them. That aside, Alyssa." "Y-yes!" "Like I said earlier, we're returning to Orsongrande for now. As for what we're doing after that, we'll decide when the time arrives. Are you really planning on coming with us?" Not just the town, but you'd be discarding even your country, he told her. But Alyssa just responded with a resolute nod. "I don't mind. My resolution stretches beyond that." "I see. Just do as you like." "We'll be counting on you, Alyssa." "Following this Master is difficult, you know? You have to work hard." While Alyssa was getting along with the slaves, Hifumi said he'd drive, and turned his back to Alyssa, before jumping up the coachman seat. The wagon started to advance on the road, and Hifumi let out a smile, unbeknownst to the others. This is good. If Alyssa also can learn my way of fighting, it should be possible to spread the spirit of war throughout the country. Throughout the world. Maybe because Origa and Kasha originally had some previous experience, Hifumi thought that teaching them was going fairly well. This was just a simple experiment, but if they just got a bit more familiar with his teachings, they'd be able to enter the ranks of the quite strong people in this world. Alyssa on the other hand couldn't use magic, and was by no means physically strong. But if he could prove that she could fight on an above average level due to martial arts and tactics, the way the world waged war was bound to experience change. Whether it be individually, in group, town or country, without being able to choose the means themselves, their true struggle for life would begin. For that purpose, having some kind of social status may be for the best, Hifumi thought. A status able to mobilize a lot of people. In other words, a status being able to start huge battles. Since I somehow managed to get the rank of Patrician, let's finally put it to use. Imeraria, you planned to summon a hero, didn't you? Then I'll become your hero. A hero whose name resounds throughout the world. I'm really looking forward to what degree of bloodshed that will result in. The excitement of strife, of battle. The tension of the night raids. Desperately fending for oneself, killing the ones failing to... Just imagining it, Hifumi got a warm feeling in his chest. Cutting a motionless scarecrow would be boring. I want to kill because they're alive

158.Footsteps 「子供が遊びに誘ってるんじゃないんだから......」 ニャールが持ち帰った返答に、ウェパルは頭痛を覚えて眉間を押えた。 「手紙に書かれている他に、何か聞いたり見たりしなかった?」 「果物おいしかったです」 「......わかったから、しばらく待機してなさい」 とてて、と相棒フェレスのところへ戻っていくニャールの後ろ姿に、警戒されにくい容姿に拘ってキャストを間違えた、と後悔した。 「とにかくは獣人族側からは動くつもりはないのかしら......少なくとも、好戦的とは言えないみたいね」 ウェパルが前方に視線を向けると、スラムへ向かう入口には、若干のエルフを含む獣人族が武器を構えており、人間だけが住むと言われている町にも、兵士が並んでいる。 獣人たちは、どこか自信に満ちた顔で余裕すら見えるのに対し、兵士たちは隊列もバラバラで、ウェパルたちと獣人たちの両方におどおどと視線を向けていた。 気味が悪い、とウェパルは思う。 エルフと近しくしている獣人の方が、人間よりも魔人族の情報を知っているはずで、魔人族に対しては獣人族の方が怯えているのが自然ではないか。 どこまで的確なものかはわからないが、しっかりと魔人族に対する対応が決まっていて、準備もできているのだろう。 そして人間は、少なくともこの国にいる人間は、自分たちが強いと思い込むことができない程に、獣人族に叩きのめされた経験があるのだろう。その記憶がまだ新しいから、余計に正体不明な魔人族が怖いのかもしれない。 「さて、どうしましょうか......」 ウェパルとしては、獣人族の糾合を進めているスラムの者たちと交誼を結ぶことができれば、人間に対する数的劣勢を多少なりカバーできるうえ、魔人族が隔絶されていた間の世界の情報を手に入れるのに都合が良いと考えていた。 ところが、獣人族の代表は乗ってこなかった。 「魔人族の強さを知っていて尚、町を守る自信があるってことよね」 その自信、根拠がわからない。それが怖い。 「一気に叩き潰して、隷属させることも考えたけれど、もう少し情報が欲しいわね」 万が一にも、失敗したくはない。 「かと言って、あっさり振られちゃった以上、話し合いというのも......。知恵無しが力任せみたいで嫌だけど、仕方ないわね」 ウェパルは、部隊を統率する魔人を呼び出し、任務を与えた。 「では、獣人族に私たちの事を詳しく教えてさしあげましょう」 翌早朝。 魔人族は三十名という少数で、ソードランテの町を襲った。 スラムは完全に無視をして、人間たちの町へと雪崩れ込んだ。 午前中だけの戦闘で、ソードランテは兵士の半数を失い、民間人にも多大な被害が出た。対して獣人族たちがいるスラムには被害が一切出ていない。 「どういうことよ!」 ウェパルは美女と評される顔を歪めて地団太を踏んだ。 「町を守る手段があるんじゃなくて、揃って町を捨てるなんて!」 人間側に甚大な被害を与え、改めて獣人族に恭順を迫るつもりでスラムを訪れたウェパルは、もぬけの殻になった町の真ん中に立っていた。 夜のうちに戦いの準備をしていた魔人族の動きに感づいたのか、エルフを含む獣人族たちは、戦いの混乱が始まる前から、町を脱出してしまったのだ。 「そうよね......良く考えたら、森の中で集落を作って生活しているのが基本の連中だもの。土地にそこまでこだわる訳ないのよね」 森を捨てたエルフと、人間の町から離れた者、戦争に巻き込まれないように、と森へ避難することに、強い反対は無かっただろう。 「今回は、私の負け......損はしたくないから、しっかり取り分はもらうからね」 ウェパルは生き残った人間のうち、城にいた者で高位の職にあった者は処刑し、残った職員たちは奴隷身分へ落とした。 民間の者たちには特に危害を加えることは無かったが、出入りは厳しく制限された。 「ここを私たち魔人族再起の拠点とする! 日陰者であった我々が、この世界の頂点に立つことを、ここからの戦いで証明してみせるのだ!」 ウェパルの芝居めいた演説に、魔人族の兵たちは興奮し、人間たちは気力を奪われた。 ソードランテという国号は、この時点で消滅したことになる。 ヴィシーを襲った魔人族は、魔法攻撃でヴィシー側防衛線をズタズタに引き裂いた後、少人数の部隊ごとにヴィシー国内へと散り散りに侵攻している。 これはヴィシーの兵士や民間人の目が届かないところで変装し、間者をもぐりこませるためだ。策は成功し、ヴィシーの兵を振り切った数名は、無事に人間に化けて戦争から逃げてきたと偽って、他の町へと入り込むことに成功した。 ところが、部隊を分けたことで被害を増やした一面もあった。 「なんだこいつら! 人間じゃねぇのか!」 「くそっ! 腕が無くなってるのに何で......ぎゃあああ!」 得意の火球で右手を炭化するまで焼き尽くした相手に、深々とナイフを刺されて悲鳴を上げた魔人は、声が消えると同時に死んだ。 最初の攻撃から“人間は弱い”と印象づけられた魔人族にとって、傷ついても迫りくる強化兵に恐れおののいた。 素早い剣撃も強力な魔法も、彼らを怯ませることができない。 傷ついても愚直に迫る強化兵たちに、魔人族もじわじわと被害を増やしていた。 「死ぬのが怖くないのか!」 「頭を弄られてるんじゃないか? 人間は狂ってる!」 強化兵ともみ合っている間に、ヴィシー兵の攻撃を受けて倒れる魔人族も出て、さらにそのヴィシー兵が強化兵に殺される。 三つ巴の戦場は、魔人族や強化兵が無軌道に動くため、ヴィシー国内のあちこちで、民間人も巻き込みながら発生していた。 そして、魔人族の将であるバシムには、状況がつかめない。戦場が広すぎるうえに、一部隊の人数が少なすぎるので、状況の報告が上がってこないのだ。 兵士が戻ってこないのは、うまく潜り込めたのだ、と考えるしかない。伝達手段を確立しなかったことが、被害の拡大を招いた部分もある。だが、その事すらもバシムが知ることは無い。 当然、たった一人でもう一つの勢力になりうる者が、フィールドに入り込んだことも、出会うその時まで知ることは無かった。 「ふぅん......」 切り捨てた強化兵の鎧を剥ぎとり、一二三は切り開いた敵の胸部を眺めていた。 そこにあるのは間違いなく魔法具であり、痛みを感じることなく襲ってきたあたり、今まで見てきたものと同様のものだと判断できた。 「多少は動きがマシになったくらいか。このあたりは個人差なのか?」 周りには、三体ある強化兵の他、商人と思しき家族、冒険者のような剣と皮鎧で武装した男が三人、死体で転がっている。 「無差別、か。別にいいけどこれだと誰がやったかわからないな。それじゃあ敵が不明瞭で、憎悪の方向が定まらない。つまらん、つまらん」 拭った刀を鞘に納め、馬が死んで横倒しになっている馬車に入っていたパンを齧る。まだしっとりした舌触りが残っている。 「ん~......割と近くからか? そんなに乾いてないな」 魔人族の侵攻から逃げてきたところで、強化兵に襲われたのだろうか。冒険者は護衛か、ひょっとすると商人たちを襲った野盗かもしれない。 いずれにせよ、皆死んでしまっているので、意味のない想像だが。 モリモリとパンの残りを口に押し込むと、一二三は左手の手袋を外し、帯に押し込んだ。 「ようやく来たか」 左手を振ると、飛来した氷の槍が三分の二ほど削り取られ、地面に落ちて四散した。 「な、なにをやったんだ?」 氷を飛ばした魔人族の兵は、防がれたのはわかっても、どうやってなのかはわかっていないようだ。 「構うな! どうせ人間はまともに魔法に対応できん!」 次に一二三を襲ったのは火球だったが、真っ黒に染まった左手の一振りで中央を抉り取られ、残りは火の粉となってゆらゆらと地面へ消えた。 「もっと違うことをやろうぜ。他の奴と同じじゃつまらないだろう?」 右手で刀を抜き、左手で魔人族たちを挑発する。 魔人の兵は五人。それぞれが剣を持ち、同時に魔法も使えるようだ。 「人間風情が!」 一人が駆け寄ってきたのを、思い切り前蹴りで蹴り飛ばし、走ってきた十数メートルを転がした。 「それじゃあ駄目だ。人間も多少は頭を使って戦うことを覚え始めたぞ。ヴィシーの連中はさておき、これから人間と戦っていくなら、そうだな......ベンニーアみたいに工夫してみろ」 ベンニーアの名前を知る者が一人いたらしく、混乱しているのか奇妙な顔をしている。 「な、なぜ彼女の名前を......」 「殺し合いをした仲さ」 こんなふうに、と一二三は一気に距離を詰め、先ほど蹴り飛ばした魔人に迫る。 「させるか!」 立ち上がり様に剣を突き出して反撃してくるのを、身体をくるりと回して避け、そのまま横薙ぎに首を刈り取った。 「知っているぞ、知っているぞ。お前ら魔人族は魔法が得意で」 石つぶてを全て刀で叩き落とす。 「身体的にも人間より多少は頑丈で、力も強い」 剣を持って前に出てきた魔人族と、刃を合わせて鍔競り合いに持ち込む。 「な、なんで......」 魔人族が両手で体重をかけて必死に押し込もうとしているのに対し、一二三は右手一本。三倍の厚みがある剣が、日本刀の刃でメリメリと傷つけられていく。 「そして、身体の造りは人間と大差がない」 一二三が左手を伸ばし、魔人の腰に巻かれた帯を引く。 「ぬおっ!?」 無理やりのけぞる格好にさせられた魔人は、剣を支えることができず、目の前に刀が迫るのを目を見開いて迎えるしかない。 「おっと」 他の魔人が放った火球を避けた拍子に圧力がゆるくなったところで、剣を捨てて地面を転がり一二三から離れていく。 追おうとする一二三に、さらに石つぶてが足元へ集中し、その間に別の一人が剣を構えて行く手を塞いでいた。 「チームワークは良いな」 感心、感心と一二三は頷き、飛んできた火球を左手で握りつぶした。 握られた左の拳。二本だけ指を立てる。 「あと二人殺す。残り二人は逃がしてやる」 「えっ」 急な発言に目を見開いた瞬間。 一二三の猛烈な突きが、構えられた剣の刀身を猛烈に叩いた。 自分の剣で頭を打った魔人は、額から血を流して混乱する。 その軸足を蹴り飛ばし、横倒しになった心臓を刀が貫く。 「内臓の位置も同じ......あと一人」 灰色の肌から切っ先を抜き、血振り。 「ち、近づくなっ!」 魔人族の一人が腕を振ると、一二三の足元、地面が爆発したようにはじけた。 無数の石つぶてが八方に飛び散り、土煙で一二三の姿が見えなくなる。 「今のうちに逃げよう!」 魔法を放った男が仲間の顔を見ると、その眼球に刀が刺さっている。 その刀、掴んでいるのは当然、一二三だ。 「面白い攻撃だった。だが、威力が足りない」 袴にいくつかの小さな穴が開いている。わずかながら足に傷を負ったのか、血が足元に流れていた。 それでも、前に出て直撃を避けたこともあり、一二三にとっては無視できる程度でしかない。 「そんな......」 怯える魔人族たちの前で、魂が抜けた仲間の身体は、倒れることで刀から自由になった。 「宣言通り二人だ。逃がしはするから、そら走れ!」 一二三の号令で、二人の魔人族は背を向けて全力疾走を始めた。 人間は弱いんじゃなかったのか。 魔法攻撃にろくに対応できないはずじゃなかったか。 荒野で散々に蹂躙した人間の集団と、たった今仲間を殺した男は同じ人間とは違うのか。 不都合な現実に悪態をつきながら、目指すのは大将がいる戦陣だ。 将であるバシムは、魔人族の中でも上位にいる者たちの多くがそうであるように、特殊な魔法を使える。ヴィシーの使者を殺した時に使った魔法だ。 何もない場所から瞬時に刃物を生み出し、飛ばす。どんな相手だろうと、知らなければ避けようがないほどの速度であり、先の戦いでも人間の将をあっさりと殺している。 バシムのところまで行けば、あの人間を殺せる。 後ろから追ってくる足音は聞こえないふりをして。 陣へ戻れば助かる。 その一心で走った。

Chapter 158: Footsteps "It ain't a child's invitation to play, thus..." (Vepar) Due to reply brought back by Nyarl, Vepar curbed her eyebrows while feeling a headache. "You didn't hear or see anything besides what's written in the letter, did you?" (Vepar) "The fruits were delicious." (Nyarl) "... Got it, wait for further orders." (Vepar) Watching the retreating figure of Nyarl who returned to her partner Pheres with a *totete*, Vepar regretted that she made a mistake in her choice of personnel out of concern over an easily trustable outer appearance. "Anyway, I wonder whether the beastmen's side has no intention to make a move... at least it looks like you can't call them belligerent." Once Vepar turns her sight to the front, the beastmen, including some elves, have prepared their weapons at the entrance towards the slums, and even in the city said to have only humans living there, the soldiers have lined up. In contrast to the beastmen who seem to even have composure in their expressions brimming somewhat with confidence, the soldiers stood in loose ranks as they coweringly turned their looks at Vepar's group and the beastmen. , Vepar thinks. The side of the beastmen who seems to be close with the elves, should be more knowledgeable about the us demons than the humans. Thus, wouldn't it be natural for the beastmen to be afraid of us? I don't know how accurate their intelligence about us is, but they have properly decided on the course of action and have likely finished their preparations as well. And the humans, or at least the humans living in this country, probably have experienced being beaten up by the beastmen to a degree that they are unable to believe in their own strength. Since that memory is still fresh, they might be all the more scared of us demons with our unknown identity. "Well then, what shall we do...?" (Vepar) On top of being able to somewhat offset our numerical inferiority against the humans if we can form a friendship with the inhabitants of the slums which will also hasten the rallying of the beastmen, it would be convenient for obtaining information about the world during the time us demons were isolated However, the representative of the beastmen didn't fall in line with that way of thinking. "She knows about the strength of the demons and yet has the confidence to protect the city, is what she's indicating?" (Vepar) She doesn't understand the basis of that confidence and that's scary for her. "I considered crushing them in one go and then turn them into our subordinates, but I'd like a bit more information." (Vepar) She doesn't want to fail, even in the worst case. "Having said that, seeing that she easily turned me down, even discussing it... I dislike forcing our way without intelligence, but it can't be helped." (Vepar) Vepar summoned a demon who commands an unit and gave him a mission. "Well then, let's teach the beastmen about us in detail." (Vepar) The following early morning. With a minority of 30 soldiers the demons attacked the city of Swordland. Completely ignoring the slums, they surged into the humans' city. With just the battle in the morning, Swordland lost half of its soldiers and heavy losses appeared among the civilians, too. On the other hand, there's no damage to the slums, where the beastmen live, at all. "What's this about!?" (Vepar) Vepar's face, which is evaluated as being beautiful, warped as she stamped her feet in frustration. "Not having any means to protect the city, they abandoned the city all together!" Vepar, who visited the slums once more with the intention to press the beastmen into allegiance after delivering serious damage to the humans' side, stood right in the middle of the completely deserted city. Did they sense the movements of the demons who prepared for battle during the night? The beastmen, including the elves, escaped the city before the chaos of the battle started to spread. "That's right, isn't it...? If I think properly about it, they are basically a group who lives by creating settlements inside forests. There's no reason for them to be that fixated about this place, is there?" (Vepar) In order to not get involved in the war, the elves, who abandoned their forest, and those, who left the humans' city, likely didn't have a strong opposition against taking refuge in the forest. "This time it's my defeat... since I don't want to incur losses, I will properly get my share." (Vepar) Among the humans who survived, Vepar executed those who had a high ranking positions among the people who were in the castle, and dropped the remaining personnel into to the status of slavery. There wasn't any particular harm towards the civilians, but their coming and going was severely restricted. "This is the place of our, the demons', comeback! We, who were outcasts, will show everyone proof in the battles from now on that we stand at the top of this world!" (Vepar) Due to Vepar's drama-like speech, the demons' soldiers got excited and the humans were deprived of their willpower. The name of the country called Swordland vanished at that moment. After the demons, who attacked Vichy, tore Vichy's line of defence apart with magic attacks, they invaded Vichy by dispersing in small units. Disguising at places where Vichy soldiers and civilians didn't see them, they slipped in as spies. The plan succeeded. Those, who shook free from the pursuit of Vichy's soldiers, safely changed into humans while pretending to have escaped the war, and were successful at infiltrating the other cities. Even so, there was also the fact that splitting the forces increased the losses. "What are these guys!? They aren't humans, are they!?" "Fuck! Why have I become this unskilled... gyaaaa!" The demon, who screamed after being pierced very deeply with a knife by an opponent whom he burned to nothing with his special fireball in his right hand, died at the same time as his voice disappeared. The demons, who had the impression "humans are weak" because of the first attack, trembled in fear when the reinforced soldiers approached them even while being injured. Swift sword attacks and powerful spells aren't able to make the reinforced soldiers flinch at all. Due to the reinforced soldiers, who approached them directly without any tactics even when wounded, the demons slowly suffered losses as well. "Aren't you scared of dying!?" "Hasn't your brain been messed up? Humans are insane!" Demons, who die after receiving attacks by Vichy's soldiers while struggling with the reinforced soldiers emerge. Moreover those soldiers of Vichy get killed by the reinforced soldiers. Because the demons and reinforced soldiers move about as they please, 3-way battlefields were created all over Vichy while also dragging the civilians into it. And, the general of the demons, Bashim, can't grasp the state of affairs either. On top of the battlefield being stretched out too far, reports about the situation didn't reach him since the numbers of the single units were too low. As his soldiers don't return, he has no other choice but to believe that they infiltrated Vichy successfully. The fact of him not having established a means of communication invited an amplification of the losses. However, even that's something Bashim isn't aware of. Of course he also didn't know about the person, who can become another power just by himself, entering the field until the time of meeting him. "Hmm..." (Hifumi) Tearing off the armour of the reinforced soldier he slew, Hifumi gazed at the chest of the opened-up enemy. What was embedded there was a magic tool without a doubt. Guessing it from the soldiers having attacked him without feeling any pain, Hifumi was able to conclude that it's the same item as the one he had seen until now. "Did its movements became a bit better? Or is that an individual difference?" (Hifumi) The corpses of three other reinforced soldiers, merchants, people who were apparently a family and three adventurer-like men, who were armed with leather armours and swords, are scattered in the surroundings. "Without any discrimination, huh? Though that doesn't really matter. But with this I won't know who did them in, right? Well then, that means the enemy is unclear and the target of hatred isn't set. How boring and stupid." (Hifumi) Sheathing his drawn katana, he chews a bread which was inside a carriage, with its horses dead, that had toppled over. The texture of the food still has dampness remaining. "Mmh~... from relatively close-by? It hasn't become overly dry." (Hifumi) They were probably attacked by the reinforced soldiers at the time when they ran away from the demons' invasion. The adventurers were the escort? Or they might have been bandits who attacked the merchants. At any rate, since all of them are dead, there's no point in guessing. Once he stuffed the remaining bread into his mouth with gusto, Hifumi removed the glove of his left hand and crammed it into his obi. "Did they finally come?" (Hifumi) Once he waved his left hand, two thirds of the ice spear, which came flying, was shaved off and it scattered after falling to the ground. "W-What did you do?" Even while realizing that it was repelled, the demon soldier, who fired the ice, doesn't seem to know how it was done. "Don't mind it! A human isn't capable of directly dealing with magic anyway!" What attacked Hifumi next was a fireball, but with one swing of his pitch-black left hand, its centre was hollowed out and the rest vanished towards the ground while slowly swaying and turning into sparks. "Let's do something totally different. It will probably end up the same as with the other guys as well, won't it?" (Hifumi) Drawing the katana with his right hand, he provokes the demons with the left hand. There are five demon soldiers. All of them hold swords and are capable of using magic at the same time. "The likes of a human!" Kicking the one, who came rushing at him, with a full-power front kick, caused the demon to roll back the ten-odd meters he ran. "That's no good. Even the humans have begun to learn fighting while using their heads. Leaving aside the lot from Vichy, if you are going to fight humans from now on, right... try scheming like Bennia did." (Hifumi) Apparently there was one among them who knew Bennia. Is he confused? He shows a strange expression. "W-Why do you know her name...?" "We had a relationship of fighting to the death against each other." (Hifumi) "Just like this", Hifumi shortens the distance in one breath and approaches the demon he sent flying with a kick just now. "As if I would let you!" Evading the demon's counter-attack of thrusting out his sword in order to stand up by turning around, Hifumi reaped the demon's head with a sideways swing of his katana. "I know, I know. You demons are good at magic." (Hifumi) He knocks down all the pebbles with his katana. "Your bodies are somewhat sturdier than those of humans and you are powerful, too." (Hifumi) Once a demon appeared in front of him while holding a sword, he drags him into a power struggle between the swords' guards by putting blade to blade. "W-Why...?" In contrast to the demon who tries pushing frantically with both hands while investing his entire body's weight, Hifumi uses just his right hand. The demon's sword, which is three times as thick, scratches against the blade of the Japanese sword with a creak. "And, there's no considerable difference between you and humans in the structure of your bodies." (Hifumi) Hifumi extends his left hand and pulls the obi which was coiled around the demon's waist. "Nuoo!?" Being placed in a situation of having his body bent against his will, the demon becomes unable to use his sword. He has no other choice but to watch with wide-open eyes the katana approaching in front of him. "Oops." (Hifumi) At the moment the pressure exerted became lax as Hifumi had to avoid a fireball which was thrown at him by another demon at that time, the demon separates from Hifumi by rolling on the ground after abandoning his sword. They concentrated another barrage of pellets at the feet of Hifumi who tries to chase, and during that time another demon prepared their sword and stood in the way of Hifumi. "Your teamwork is good." (Hifumi) "Well done, I'm pleased", Hifumi nodded and crushed the fireball, which came flying at him, with his left hand. A clutched left first with only two fingers standing up. "I will kill two more and let the other two of you go." (Hifumi) "Eh?" The instant he opened his eyes widely due to the sudden statement.magic Hifumi's intense thrust violently hit the blade of the sword he set up. The demon who hit his head with his own sword, is confused while shedding blood from his forehead. Kicking away the demon's pivot leg, Hifumi pierces the heart of the demon who toppled over. "The placement of the organs is the same as well... one more." (Hifumi) Pulling out the katana's point from within the grey skin, he shakes off the blood clinging to it. "D-Don't come any closer!" When one of the demons swung his arm, the ground under Hifumi's feet burst open as if exploding. Countless small rocks scatter in all directions and Hifumi vanishes within a cloud of dust. "Let's escape now!" Once the man, who cast the spell, looks at the face of his comrade, the katana is piercing one of his eyeballs. The one who is holding the katana is naturally Hifumi. "It was an interesting attack. However, its output was too low." (Hifumi) There are several small holes in his hakama. Though only slightly, were his feet injured? Blood was trickling down on the ground beneath him. Even so, there's also the fact that he evaded getting directly hit by escaping to the front. For Hifumi ((those injuries)) are at a level that he can ignore them easily. "Such a..." In front of the scared demons, the body of their comrade, whose soul departed this world, was released from the katana by collapsing. "Just as I announced, two are left. Since I'm letting you go, get moving!" (Hifumi) Upon Hifumi's order, the two demons turned around and started to sprint with all their might. Weren't humans weak? Weren't they supposed to be unable to decently cope with magic attacks? Are the human groups we thoroughly overran in the wastelands different from the man who killed our comrades just now? While cursing at the troublesome reality, they head towards the forces with their leader. Just like Bashim, who is their general, many of those in the higher ranks among the demons reach their positions because they can use unique magic. It's the magic Bashim used at the time when he killed the messenger from Vichy. Instantly creating a blade out of thin air, he sends it flying. No matter what opponent it might be, if they don't know about it, it has a speed to a degree of being unavoidable. Even in the battle some time ago, it has easily killed the human general. If we reach Bashim's location, we will be able to kill that human. They pretend to not hear the footsteps chasing them from behind. We will be safe if we return to our forces. They ran while embracing that belief.

国境の体制作りは終わったが、新たな砦はオーソングランデ側にしかまだ兵が居ない。 ここまで、急速に侵攻した上、人の出入りをかなり厳しく制限したため、ヴィシー側が全くと言っていいほど対応できていなかったのだ。 今、新たな砦を通って、数人がオーソングランデからヴィシーへと出て行こうとしている。それを見ていた一二三にとって、その人数の少なさは意外なほどだった。 交通機関も発達しておらず、生まれついた稼業を継いで仕事をするという生き方がほとんどというこの世界では、暮らしている街や村から移動しようという考え自体が一般的ではないらしい。 「正直な話、街の人々も皆殺しにするのかと思ってたんだけどね」 カーシャは、輜重隊が用意した昼食を摂りながら一二三にそう言った。 「民衆は敵じゃない。殺戮に必要なのは多くの敵なんだぞ。こんな数十人とか精々百人ちょっとの兵を相手にしても面白くないし効率も悪い。民衆の働きで兵を強化して、まずはヴィシーの連中に危機感を与えることだ。そうすれば、兵をまとめて本気でかかってくるだろう」 「......そうなったら、負けちゃうんじゃないの?」 アリッサも一緒にいる。オリガとパジョーだけは、割り振られた仕事からまだ戻っていなかった。もっとも、オリガは昨日からカーシャを意図的に避けている。 「そうだな、負けるかもな」 「え......?」 あっさりと認めた一二三に、カーシャは食事の手が止まる。 「ここにいる兵は奇襲と潜入を一夜漬けで覚えさせただけだ。正規の軍隊とまともにカチあったら、数で負けていたら押し切られるだろうな」 「それじゃ、どうするのさ」 「まともにぶつからなければいい。こちらがコントロールできる状況を作り、殺したい分だけをしっかり分裂させて撃破できるようにする。別に相手が全軍集結するまで待ってる必要はないし、集まったとしてもまた散っていくようにすればいい」 それでも、俺より気の回るやつが向こうに居たなら、こっちが負けて終わりだけどな、と言ってから、一二三は残りの肉を口の中に次々と放り込んでいく。 「負けるかもって考えたらダメだって、兵士になる時に訓練で言われたけど......」 アリッサのつぶやきに、一二三はむっとして答えた。 「馬鹿言え。殺そうとするのに殺されないと思う方が問題だ」 「何人がかりでも問題にならないくらい強いくせに」 「百人くらいなら問題はないだろうな。だが俺も人間だ。休息は必要だし、何時間もずっと戦い続けることはできん。疲れて一撃でも避け損なったらそこで死ぬ。どれだけ強くても、これは変わらない真実だ」 だから、殺す事は生きることと同じ充実感があるんだと、一二三は言った。 カーシャは、一二三の言葉が何となく頭に残った。こんな化け物じみた強さがあっても、死ぬことを考えているのかと。 食後にアリッサを連れて国境付近の状況を確認している一二三が、不意に国境を出ようとしている三人組の男に声をかけた。 「おう、ちょっといいか?」 「こ、これは子爵様」 先頭を歩いていた筋肉質な体つきの男が、代表して一二三に応えた。 「ヴィシーの中央からの工作員だな?」 「いえ、私たちはただの商人でございまして......」 仕切りに汗を拭っている商人の手首を掴んだ一二三は、無理やり開かせた掌を指差して笑う。 「普通の商人はこんな手はしてないぞ。すぐバレる嘘はやめろ」 愛想笑いをしていた男は、直ぐに真顔に戻ると、改めて頭を下げた。 「さすがは遠征軍の将というべきでしょうか。感服いたしました。私は確かにヴィシー中央委員会から派遣された工作員でございます」 彼はオーソングランデ遠征軍に制圧されたアナラゼルという街に降り、制圧時にはたまたま代表館から離れていたために捕縛されなかったという。しばらくは旅の商人として振る舞い、他の商人に紛れて中央へ戻ろうとしたという。 「私の命運もどうやらここまでのようです。この二人は私の従者ですが、現地で雇った何も知らない者共です。どうか、彼らだけはお慈悲を......」 「どいつもこいつも、俺を殺人狂みたいに言いやがる。呼び止めたのは殺すためじゃない。中央に行くのに持って行って貰いたいものがあるだけだ」 「お持ちする物、ですか。中央の......委員会にお渡しすればよろしいので?」 一二三が取り出したものが書簡であるのを見てとった工作員は、すぐにそれがヴィシーの政府に対してのものであると気づいた。 「ああ、ここまでの状況を踏まえた上で、この書類への返答を......そうだな、二十日以内にここへ届けるように伝えてくれ」 中央まで馬車を使って7日程度らしいので、多少は考える時間を作った形だ。 「......かしこまりました。いずれにせよ中央へ報告せねばならぬ身ですので、問題ありません。」 「名は?」 「ヴィヌと申します」 「ではヴィヌ。重要な書類だから、間違っても魔物に食われたりしないようにな」 恭しく書類を受け取ったヴィヌは、丁寧な礼をしてから、再びヴィシー側へと向かっていった。 「一二三さん、あの書類は?」 黙って後ろで見ていたアリッサだが、内容には興味があるようだ。 「......そうだな。まあ別にいいか」 しばらく考えた一二三だが、ここで知られても影響は無いと判断した。 「オリガとカーシャがベイレヴラという男を探している事は知っているな? そいつは中央委員会の工作員らしいからな。ヴィシー中を探し回るよりも、中央側から突き出すようにと伝える手紙だ」 イメラリアの署名入りのな、と一二三は笑った。これでベイレヴラを今回の戦争の発端となった事件の犯人として突き出すなら別にそれでいいし、断るなら“やはり国ぐるみの犯行だった”と、ヴィシーへの攻撃・圧力を強めるだけだ。 「ベイレヴラを人身御供にオーソングランデとの講和を求めるか、実力で俺たちを跳ね除けるかの選択だな」 「それで、これからどうするの?」 返答は二十日以内という条件をつけているので、返答があるまで時間はある。一二三はその間に、自分の領地をしっかり見て回ることにした。 「そろそろオーソングランデから増援が来る。占領地はそいつらに任せて、俺はゆっくり子爵領を見てみるか」 「僕も?」 「好きにしろ」 翌日には、国境まで援軍が到着し、警備を強化しつつ順次ローヌの街を軍事的な基地へと作り替えていく作業が始まった。 遠征軍はここで一旦お役御免となり、そのまま一二三が担当する子爵領の領軍となることが決まっている。 引き継ぎを終えた一二三は、遠征軍全員を集め、子爵領の中心であるフォカロルまで移動する事を告げた。 「わたしは報告があるから、そのまま王都へ戻ります」 パジョーがそう申告するのに、一二三はそうだろうなと了承する。 それに続いて、カーシャがおずおずと進み出た。 「あの......良かったらアタシも王都に戻りたいんだけど......」 オリガはそれに何も言わないが、冷たい視線でカーシャを見ている。 「軍を抜けるということか? 復讐はもういいのか?」 一二三の問いに、ぐぐっと喉を鳴らして、カーシャは応えた。 「一二三さんやイメラリア様のおかげで、元の自由な身に戻れたし、実行犯だった兵は自分で殺したからね......というかアタシはね、もう充分に復讐に足る人数は殺したと思うんだ。正直、もう疲れちゃったから、気楽な冒険者に戻りたいのさ」 「お前がそう思うなら別にいい。フォカロルまで隊を連れて帰ったら、あとは好きにするといい」 そう言った一二三は、ふとオリガに視線を向けた。今までならオリガも同じ意見を言って、一緒に帰ると言うのかと考えたが、オリガは何も言わない。 「その、いいの? ずっと一緒にいたんでしょ?」 アリッサが突然の離脱宣言にオロオロしていた。 「別にそんな長い期間でも無かったからな。俺があいつらを買って利用して、それからは利害が一致したからついてきただけだろう」 自分で道を選んで行くのだから、特に気にすることもないという一二三の意見に、声を上げたのはオリガだった。 「私は、一二三様についていきます! この先どれほどの苦難があろうとも、一二三様に拾っていただいた命ですから。最期までお供いたします」 「......好きにすればいい」 「ええ、好きにやらせていただきます!」 カーシャ離反の反動かは分からないが、オリガの一二三への傾倒はより深刻になっていると、パジョーは見ていた。 (ひょっとすると、彼女の存在は危険かもしれないわね) 一二三への不利な情報を嗅ぎ分ける、彼にとっての第二の目となる可能性もある。あるいは、先にオリガの方に手を打たないといけないかもしれない。 そう考えるパジョーは、ふと一二三の視線が自分を向いているのに気づいた。 「......何か?」 「そうやって色々考えるのはいいが、深みにはまるなよ。考えすぎる奴ほど間抜けな失敗をする」 気づいているともいないとも取れる言葉に、パジョーは鼓動が早くなるのを抑えられなかった。 「多分、本国はぼくを使い潰す気なんですよ......」 数日かけてフォカロルへ戻って来た一二三を迎えたのは、幽鬼のように目がギラギラとして痩せこけたサブナクだった。 遠征軍への援助やパジョーからの報告の中継、フォカロルの領主代行と援軍の世話と、およそ騎士の仕事とは思えない者も含めて、全てがサブナクの肩にのしかかって来ていた。 「とにかく、一二三さんが戻って来られて良かった。これでぼくは王都へ戻れます」 一二三へ引渡し予定の元ハーゲンティ子爵の館、その応接室でニコリと笑ったサブナクは、うっすら涙を浮かべていた。ハーゲンティ子爵の時の使用人や文官はほとんどが処分されるか逃げてしまっており、生活するだけでも大変だったようだ。 「俺の文官奴隷は?」 「何ですかその呼び方......彼らも既にこの街に到着しています。領主館に詰めて、一二三さんからの課題を黙々とこなしていますよ。ちらっと見せてもらいましたが、ぼくにも理解できない範囲が多かったですけど」 あんなに勉強させる必要があるのですかとサブナクは問うが、あれでも基礎中の基礎だと、一二三は何でもないことのように答えた。 「文官奴隷に引き継ぎの準備はできているなら、パジョーやカーシャと一緒に王都に行くといい。他にも何人か、兵の中から帰りたがっている奴がいるから、連れて帰ってくれ」 話しながら、一二三はサブナクから渡された書類を読んでいた。財務状況は綺麗に整理されており、代理である以上は大きな手を加える事を控えたようだが、急な為政者の変更にも関わらず、出入りする商人たちの選別など、必要なポイントはきちんとまとめてあった。 「騎士よりこういう街の運営が向いてるんじゃないか?」 「やめてくださいよ。ぼくは騎士なんですから。それに、王都へ戻ったらしばらくはゆっくり休ませてもらいますよ。こんな長期間出向すること自体、異例なんですから」 通常は緊急的に代理領主を置くことはあるが、直ぐに引き継ぎされるのが通常で、一二三のように遠征に出てしまってしばらく戻ってこないという事はイレギュラーと言えた。 「それなんだけどな。報告は聞いていると思うが......ヴィシー国内で一つの街が壊滅していた件は知っているな?」 「ええ、何でもこれまでの事件と同様の魔法具が使われた可能性があるとか」 「その件の調査な、あれお前が担当になるらしいぞ」 「うぇ?」 「援軍を連れてきた兵隊長が言ってたが、そういう魔法具関係の調査は騎士の仕事らしいな」 ニヤニヤと笑いながら紅茶を飲む。久しぶりにちゃんと侍女が入れた紅茶を飲むと、一二三でも落ち着く気分がする。 すっかりこっちの世界に染まってきたと、カップを置いてゆっくり息を吐いた。 「ぱ、パジョー先輩がいるじゃないですか!」 バラ色の休暇が遠く離れていくのに、サブナクは焦っていたが、一二三は天井を見上げて視線を合わせることも無かった。 「パジョーな......。あいつはあいつで、何やら王女のための用事で忙しいみたいだぞ」 天井には飾りを彫り込んだ木材が使われており、ドラゴンやフェニックスのような姿も見える。この世界には、そういう生き物も実在するのかもしれない。 「イメラリア様のために、ですか?」 そういう話は聞いてないと首をひねるサブナクに、一二三は呵呵と笑って立ち上がる。 「ああ、大きな仕事になるだろうな。それじゃ、奴隷たちに久しぶりに顔を見せに行ってくる。これからあいつらも忙しくなるからな」 「え? ええ、わかりました」 部屋を出ようとした一二三は、ふと立ち止まった。 「そういえば、オーソングランデの兵はどれくらいいるんだ?」 「兵力ですか? 王都にいる王族直轄で1万程度、諸侯の軍が合わせて3万程度ですかね」 「ふぅん」 「ああ、今はホーラント側に3000ほどが駐留している状況ですね。どうしてそんな事を?」 余裕がありませんから、領軍にもっと欲しいと言われても、すぐには補充するのは難しいですよ、とサブナクは釘を刺した。だが、一二三の狙いはそこではなかった。 「増やす必要はないぞ。手足は多すぎても絡まりやすくなって面倒なだけだ。“敵を知り、己を知れば、百戦危うからず”というからな」 「......そのうちわかるだろう」 サブナクを振り返ることもせず、そのまま一二三は部屋を出ていった。

Although they solidified the national border, many of the new fortresses belong to Orsongrande in name only--they are unoccupied. The invasion so far, primarily due to the fact that preventing people from getting out also slowed down the speed at which news travel, has continued without much opposition from Vichy. And now, via these fortresses, some people are leaving Orsongrande for Vichy. Yet their hesitation to leave their home cities and villages is predictable: the roads are underdeveloped and their only means of substance comes from the businesses they took years if not generations to develop. [Frankly, I thought you might just decide to massacre everyone...] Kasha said, while partaking with Hifumi the lunch the supply corps prepared [Civilians are not the enemy. Only the enemy needs to be slaughtered. But fighting tens or even hundreds of soldiers is inefficient and boring. Instead, it's best to force those Vichy bastards to become afraid and to strengthen their ranks with more people. Then, they might finally come at us for real] [***If they do, wouldn't we lose?] Alyssa was there among them. Only Origa and Pajo have not returned from their respective tasks. In fact, Origa has been intentionally avoiding Kasha since yesterday. [***Right, we might lose] [Huh***?] Kasha froze mid-bite at Hifumi's nonchalant declaration. [The soldiers here have only crammed knowledge of infiltration and assassination. Even if they had any worth as soldiers before, they would simply be overwhelmed numerically] [But then, what should we do?] [We're fine as long as we don't fight them head on. We need to dictate the environment and attack them after dividing them into smaller groups. Besides, we don't really need to wait for our enemy to gather their forces, and even if they do, we just need to have them scatter a bit] But should there be a person more capable than I among them we'd lose, Hifumi concluded while putting the last piece of meat in his mouth. [But they teach soldiers never to consider defeat***] Alyssa murmured, and Hifumi rebuked her, [Don't be a fool: how could you think of cutting someone down without considering being cut down?] [Says a guy who could easily cut down hundreds] [A hundred may not pose a problem, but I too am human. I too need to rest, and I cannot fight continuously for many hours. If I fail to dodge even a single slash out of fatigue, I will die. No matter how strong you become, this fact never changes] That is why killing is just as fulfilling as living, Hifumi said. These words were imprinted in Kasha's mind: even these monster of a human considered death. After lunch, Hifumi observed the border with Alyssa, and called out to three men attempting to leave. [Yo, could you wait a minute?] [O-oh my, Viscount-sama] The first of the three burly men responded to Representative Hifumi. [You are spies from Vichy, aren't you?] [N-no, we are simple traveling merchants***] Wiping the sweat from his brow the man replied, but Hifumi grabbed his hand and pointed to his palm. [Merchant's don't have hands like this. Drop the obvious lies] The smile on the man's face disappeared, and his looked down, serious. [As expected of the Expeditionary Force General, I presume. I applaud you. I am indeed a spy deployed by Vichy's Central Council] While this man was already in Anarazel city when it was occupied by Orsongrande's Expeditionary Force, he was away from the representative's manor and thus avoided capture. So he pretended to be a merchants and sought to join others on his return to Central. [Seems like I am fated to perish here. These two men are indeed in my employ, but I have hired them here--they know nothing about my purpose. I beseech you to have mercy] [What are you doing talking to me like I'm some homicidal maniac? I didn't stop you to kill you. You're headed to Central, so I wanted you to deliver something for me] [A delivery, you said? Should I... Should I hand it to the Council?] Once the spy noticed the document Hifumi took out, he immediately realized it was addressed to Vichy's government. [Yeah, so after they get a grasp on what has happened here, I need the response to this letter... let's say twenty days from now] Since it takes seven days to reach Central from here, he gave them plenty of time. [***Understood. I have matters to report to Central, so this shall be no problem] [Your name?] [Vinu, your grace] [Now then, Vinu, these documents are important. Don't go and get killed by a monster or something] Vinu bowed, reverently accepted the letter, and set off towards Vichy. [Hifumi-san, what's in that letter?] Alyssa, who up until quietly observed, asked out of curiosity. [***Right... well, I guess it's fine] Hifumi said after concluding that nothing will change even if she were to know now. [So you know there's this man that Origa and Kasha are looking for--Beirevra? Apparently he's one of Vichy Council's spies. Rather than having to run around all of Vichy looking for him, it's a demand to have him extradited] Hifumi could only laugh thinking that this document had Imeraria's signature on it. Now, Vichy could simply blame Beirevra as the cause of his war, or respond in silence and face condemnation as a country that harbors criminals. One way or another, they were being pressured. [So their choice is either to sacrifice Beirevra to appease Orsongrande or attempt to push us out with their military might] [So what will we do for now?] The answer was not due for another twenty days, so they had lots of time. Hifumi decided to take that time to carefully tour his dominion. [Reinforcements are bound to come from Orsongrande soon. I'll leave the occupied territory to them and go see my land] [Should I come along?] [Do as you wish] The following day reinforcements arrived to the frontier and, while strengthening control over the new territory, decided to convert the town of Rhone into a military base. The Expeditionary Force, now relieved of their duty, were scheduled to patrol Hifumi's domain. That day Hifumi gathered his troops and announced their return to Fokalore. [I have matter to report to the royal capital, so I shall return there] Pajo stated, and Hifumi nodded in understanding. Kasha, fidgeting about, timidly continued, [Umm... if it's not a problem, I too would like to return to the capital***] Origa remained silent but looked at Kasha with an ice-cold glare. [You mean to quit the military? Have you abandoned your revenge?] Kasha cleared her throat and responded to Hifumi's question. [Thanks to Hifumi-san's and Imeraria-sama's efforts, I have regained my freedom and even killed the soldiers responsible... so how do I say this, I think I have exacted my revenge already. Frankly, I'm just tired, I want to go back to my carefree adventuring days] [If that is what you wish for, then so be it. Follow with the squad until Fokalore, and feel free to do as you wish from there] Hifumi said, and looked at Origa. He had thought that Origa wanted to the same, but she remained silent. [Is that alright? Weren't you together for like forever?] Alyssa said but regretted it immediately, praying to take back what she had just said. [It wasn't even that long. I merely bought and used them; our goals merely overlapped. That is all] As long as they themselves chose their path, it didn't bother Hifumi that much, but then Origa stated, [I will follow Hifumi-sama! No matter how much suffering lies ahead, this life was saved by Hifumi-sama. I will follow you until the end!] [***Do as you wish] [Yes, I will!] Watching this, Pajo could not understand why Kasha recoiled at those words as she did, but she clearly saw that Origa's loyalty to Hifumi only deepend. (Perhaps she too is a danger) She might become a second set of eyes for Hifumi, smelling out dangers that lie ahead. Perhaps she had to eliminate Origa first. Being deep in thought, Pajo noticed a bit too late that Hifumi's glare was focused on her. [***What is it?] [Thinking things through is alright, but watch your step. Some who think to hard tend to do the stupidest things] Pajo's pulse quickened at his warning, as she could not figure out if he had figured her thoughts out or not. [I wonder if the country is just trying to kill me...] (Sabnak) After reaching Fokalore after a few days of travel, they were met with but a ghost of Sabnak. Managing the reinforcements for the Expedition Force and ferrying Pajo's reports, managing Fokalore's affairs and negotiating for troops, all of these matters - none of which befit a knight - fell on poor Sabnak's shoulders. [Anyways, I am glad that you have returned, Hifumi-san. I can finally return to the capital] Sabnak exclaimed, laughing with tears streaming down his face, thinking of how he could finally hand over the office and affairs of late Viscount Haagenti to Hifumi. All of Haagenti's officials and servants were either eliminated or escaped, so even living in the manor was a challenge. [How are the civil slaves I bought?] you mean... they have already arrived. They have spent every waking hour silently digesting the information you gave them. I have briefly looked at their work and must admit that it exceeds my own education.] And nonchalantly dismissing the question of whether that much education was even necessary for them with a "those are just basics," Hifumi responded, [If the civil slaves are ready to take over the affairs, feel free to join Pajo and Kasha on their return to the capital. If there are any soldiers who wish to accompany you, please take them along] The major points were summarized well: economic situation was stabilizing rapidly, faction representatives abstained from any major action, certain statesmen have been replaced, and a list of merchants entering and exiting the domain was compiled. [Aren't you fit for this kind of work more than that of a knight?] [Please, don't. I'm a knight. And after returning to the capital I intend to rest for a while. It's unnatural for a person to spend so many nights awake] Representatives have been changed in the past and normally these take control of their land immediately; but never before has there been one like Hifumi who immediately set off on an expedition. [About that... I assume you know... but you have heard about the town destroyed within Vichy, right?] [Yes, the news of that matter and the possibility that magic item was used is known here] [Well, about that... you've been assigned to investigate that case] [Uehh?!] [That's what the captain of the reinforcements asked me to tell you; at least investigation of magic items fits a knight] Hifumi said while smiling and sipping tea. Tea was prepared by a proper maid, so it made even Hifumi relax.magic Feeling as if he's been influenced by this world too much, Hifumi placed down his cup and sighed. [C-can't you leave it to Pajo-senpai?!] His dreams of a rosy vacation drifting further and further away, Sabnak was in a state of panic; Hifumi, however, merely stared at the ceiling. [Pajo, huh... You know how she is, she is probably busy working for the queen] The ceiling was decorated with carved lumber, with the depictions of dragons and phoenixes visible. These beings too are present in this world. [For Imeraria-sama's sake, you say?] Sabnak turned his head and was met with Hifumi's laughter. [Yeah, and a big job I bet it will be. Now then, how about I meet the slaves. They'll get busy from now on as well] [Huh? Ah, understood] Hifumi started for the door, but then stopped. [By the way, how many soldiers does Orsongrande have?] [Soldiers? Those loyal to the crown number around 10,000; under the control of the nobles there may be up to 30,000 more] [Hmm~] [Oh, and there are currently three thousand soldiers stationed at Horant. Why do you ask?] Sabnak answered as if trying to shoot down any requests for additional troops. But that is not why Hifumi asked. [Not to increase our troops. If there are more people, it's easier to trip over. "If you know the enemy and know yourself, you need not fear the result of a hundred battles"] [You'll see] Without turning to look at Sabnak, Hifumi left the room.

10.The Fight Song 【魔物との遭遇】 多少の騒動の後、一二三たちは依頼が貼られたボードの前に来ていた。 オックの死体は、その仲間たちが運びだし、床もさっさと洗い流された。流石は荒事に慣れた連中というべきか。 ギルドには特にランク付け等はなく、受注の制限等もなかった。そのためか、ボードの依頼書も、討伐と護衛とその他で、大まかに分けられただけで乱雑に貼り付けられていた。 「今日は軽くお前たちの戦い方を見るだけだから、街の近くで出てくる奴を討伐するか」 「でしたら、これが良いかと」 オリガが一枚の依頼票をピンごと取り、内容を読み上げた。 「ゴブリンの討伐依頼です。近くの森で10体ほどの集団が確認されたようです。報酬は一体あたり銀貨1枚です」 「ゴブリンなら、なんども倒したことがあるよ。報酬は角を切り取って持っていけばいいからね」 ゴブリンは身長1m前後の鬼のような小さな角がある人型の魔物で、薄汚れた濃い緑の肌をしているらしい。森や草原でよく発見されるゴブリンは、大して強くは無いが5体から10体程度の集団でいることが多いため、囲まれて袋叩きにされ、駆け出しが殺られる事も珍しくないらしい。 だが、討伐報酬以外に売れる部位も無いので、新人向けの討伐対象や、練習相手程度の魔物として見られている。 「まあ、無難なところかな」 「では、依頼を受注してきます」 頷いて依頼票を受付に持っていくオリガを見て、まるで秘書のようだと一二三は思った。話し方や仕草を見るに、結構良い家柄の出身なのかもしれない。 何か懸命に一二三の役に立とうとしているのも、打算があるかもしれないが、別に悪いことだとは思わなかった。 ゴブリン退治の依頼を受け、街を出る前に服を買いに行くことにした。 「一般の洋服ではなくて、特殊な布や魔物の革で作る防具としての服でしたら、武具店で依頼をするのも手だと思いますよ」 若干引きつったスマイルのヘラに言われて、それもそうかと思った一二三は、街を出る前にドワーフのトルンがやっている武具店へ立ち寄ることにした。 「どうした? まだ依頼の武器はできてねえぞ」 相変わらず店の奥にいて、何やら作業をしていたトルンは、一二三が店に入るなりいかつい顔で睨みつけてくる。 「追加注文だよ」 「追加? また変なもん作らせるつもりか?」 「これは俺の故郷の稽古や戦闘のための服なんだ。これじゃないと気分が落ち着かなくてな」 一二三の濃紺の道着と袴を見て、トルンは眉をしかめた。 「これが戦闘用なのか? えらくヒラヒラして動きにくそうに見えるぞ?」 道着は袖が手首から腕が拳一つ分見える程度に短く、袴は足元をほとんど隠すほど長い。ズボンにブーツで足回りは動きやすく固め、上着はしっかり長袖で、鉄板等でしっかり防御性も高めるのが常識とされる冒険者たちの服とは正反対だ。 「別にここで脱いでもいいぞ?」 「営業妨害だ。やめろ」 後ろで聞いていたオリガとカーシャは、服に手をかけた一二三を見て、慌てて両手で顔を覆ったが、しっかり指の隙間が開いていた。 道着の寸法を測り終わって、素材はトルンに任せる事や、防御力より着心地を優先するという何故武具屋に頼むのかという注文をしながら道着を着なおす。その様子を興味深く観察しているトルンは、変わった着方をする服もあるもんだと思っていた。 道着自体は平面裁断でできるし、金属やプラスチックと言った材料も使っていないので、この世界の技術レベルでも充分作れる。袴の腰板も、大きな亀の魔物から取れる素材で同じような柔軟性で作れるらしい。 「また依頼するときとか、他の街で依頼するときに使うから、型紙作ってワンセットもらえると助かるんだけど」 「型紙ってなんだ?」 一二三が確認すると、一般的に服は職人の感覚で作成しており、型紙を作って同じパーツをいくつも作るような事はしていないらしい。言われてみれば、この店にある装備にもサイズ表示は無く、合わせてみて調整という具合になっている。 着ては調整を繰り返すのは面倒だし、旅先で依頼をする時も楽になるからと、型紙とは何かを説明する。 「なるほどな。常連で同じ鎧下ばっかり買う奴は多いから、作ってみるのも手かもな。そんな大きな紙は手に入らねぇから、布か革で代用するか......」 アイデア料換わりに、一二三の分の型紙(型布?)はタダで作ってくれる事になった。 ちなみに、道着と袴は明日中には出来るという。店の奥に大量の職人でもいるのかと思ったが、弟子が5人いるものの、売りに出す商品を主に作るのはトルンらしい。 日本ではまず見られない光景に、一二三は内心感動していた。 「自然がいっぱいだ。草木の匂いが濃いな」 そう言われても、この世界で生きてきたオリガたちには何を言っているのかわからなかった。 「ご主人、何を立ち止まっているのか知らないけど、早く行こうよ。森はあっちだからさ」 カーシャは久しぶりに戦えるのが嬉しいのか、街道を外れた先を指差して急かしてくる。 一二三が先の方を見ると、平原の先に森が始まっているのが見えた。歩いて20分位かかるだろうという距離だ。 「あの森の中、中心部に向かって一時間程度の場所でゴブリンが目撃されているそうです」 オリガが依頼票を見ながら教えてくれた。 この世界、時計はごく一部の貴族が持っているだけで、庶民派大体の太陽の位置と体内時計、正午の鐘をたよりに生活している。農村などでは鐘すらも無い。一時間程度と書いてあっても、報告者の体内時計での話なので、信用できるかどうかはわからない。 そうこうしているうちに森に着いた。 おもむろに二本の剣を抜いたカーシャと、布で巻いて背負っていた杖を取り出したオリガ。一二三から見たらのんびりと武器を用意する二人に、違和感を覚えた。 「おい、なんで今剣を抜く?」 「え? 今から森に入るんだから、武器を用意してるんだけど......」 何を言っているのかという表情の二人に、一二三は驚きを隠せない。 「いやいや、いつでも戦闘に入れるように用意しておくのは重要だろう? ひょっとして、剣を納めた状態からすぐに剣を抜けないのか? ......まさか、オリガも杖を構えないと魔法がまったく使えないとか......」 「申し訳ありません。ご主人様のような熟練であれば、媒体や詠唱が無くとも自在に魔法が使えるのは承知しておりますが、私はそこまでは......」 「そりゃ、誰だって剣を抜いて構えないと戦えないよ。ご主人はすごかったよね、矢を叩き落としたのなんて、いつの間に剣を持っていたのか気づかなかったよ」 突然不機嫌になった一二三に動揺したのか、うろたえた様子と的外れな返答に、一二三は思わず目を押えてしまった。 「ご、ご主人様?」 「ちょっと話があるから、座れ」 言われて、オリガとカーシャは訳も分からないまま、おずおずと草の上に座った。 「俺の国の武術家、大体の奴が知っている言葉に、『常在戦場』というものがある。意味わかるか?」 首をかしげる二人に、一二三は腰の刀の柄をトントンと叩きながら続ける。 「いついかなる時も戦いの場にいるつもりでいろという意味だ。俺の国は今は平和だし、昔だって街中はそれなりに安全だった。今出てきた王都もそれなりに安全なんだろう。でもな、町の外は違うだろう」 オリガとカーシャを交互に見る。まだ一二三の言いたいことは伝わっていない。 「街道から離れたり、森に入ると魔物が出やすいとは聞いたぞ。だが、“出やすい”だけだろうが。何かの理由で町の近くにいたらどうする? 魔物は剣や杖を用意するまで待ってくれるのか? 魔物だけじゃない、人間の方がさらにやっかいだ。町の外で、敵かどうかわからないまま近づかれて、いきなり攻撃されたらどうする? さっきカーシャは自分で矢を射かけられた話をしていただろう。街中であれだ。他人の目がない外ならどうなる?」 一二三の言葉に何も言い返せない二人は、黙って聞くしかなかった。 「カーシャ。お前は剣を鞘に納めた状態で攻撃されたらどうするつもりでいた?」 「えっと......とにかく距離を取って、剣を取り出す時間を稼ぐよ」 「たとえば、昨日のような袋小路だったらどうする」 「それは......」 答えに詰まったカーシャから、オリガに視線を移す。 「オリガは、杖無しだと魔法が使えないんだな。杖を背負った状態から、魔法を使うまでどれくらい時間がかかる?」 「さ、最低でも20数えるくらいは、かかります......」 「杖無しで襲われたときに、一時的にでも戦う武器や道具はないのか? これは買ったか買ってないかじゃないぞ。使えるかどうかだ」 オリガはもう泣きそうな顔になっている。 これで、この二人は中堅の冒険者として活動していたらしい。つまり、基本的な技術は持っていて、およそこの世界で常識とされる戦いの技術や知識は持っている。これがこの世界の平均レベルで、平均的な考え方だと判断してもいいだろう、と一二三は思った。 (今思えば、ギルドで襲ってきた奴は、怒っていた割にチンタラ剣を抜いていたが......) どうやら、ここから戦いの場だというあたりで、ゆっくり準備して、戦いに備えるというのがこの国の考え方らしい。城の連中の基本装備が短槍だったのは、対人を想定しているからだけでなく、鞘から抜く時間がいらないからという理由からなのだろう。 (ということは、冒険者だけではなくて、正規の軍人達もそうなのかもな) 古代ローマなどでは、行軍中は長槍を分解して持ち運んでいたと聞いたことがある。突撃前に組立て槍衾を作るのだ。戦い方が違うとはいえ、ハンドガンやライフルで即応可能な現代では考えられない悠長さだ。 そんな検証をしながら、ちらちらと上目で一二三を見てくる奴隷たちを見ているうちに、一二三の中に悪い考えが浮かぶ。 (面倒くさいから内政チートは考えてなかったけど、この世界に戦い方を広めるというのは面白いかもしれん。問題は、今ある国に入り込むか、新しく国を作るかだが......) 長考に入った一二三を見て、不安に駆られたオリガは、我慢できずに声をかけた。 「あ、あの......未熟な私には理解するのに時間がかかりますが、魔法以外の戦い方も覚えますので、何卒お見捨てなきよう......」 「ん......ああ、考え込んでしまったな。見捨てるとかそういうのじゃなくてだな。......よし、決めた」 一二三はオリガとカーシャを見て、さっきの不機嫌な表情はどこかへ消して、実に良い笑顔を見せた。 「お前たちを鍛えてやろう。昨日襲ってきた連中を一人で対応できるくらいを、当面の目標にしようか」 一二三の話を聞いた二人の反応は正反対だった。 「うぐ......あんな動き、アタシができるとは思えないんだけど......」 「ご主人様、ありがとうございます!」 「オリガは頑張れそうだな。カーシャ、いきなりあの動きは無理だし、向いてるかどうかというのもあるからな。まずは、お前たちがどれくらいできるかを見せてもらおうか」 ずんずんと森の奥へ歩いていく一二三を、オリガとカーシャは急いで追いかけた。 「向こうに5体いるみたいだから、とりあえずお前たちの魔法と剣技でやってみろ。俺は手を出さない。できるな?」 「お任せください」 「5体くらいなら、問題ないよ」 それぞれ、意気込んで得物を握りしめて答えた。 陽が傾いた頃、ギルドに一二三たちが再び姿を見せたが、その出で立ちにギルド内はまたざわついた。 「オリガさんたちだけが戦ったんですか?」 カウンターに来た一二三に、つい非難するような質問をしてしまったヘラに、一二三は気にする様子もなく答えた。 「いいや? これだけ狩ってきたけど、半分は俺が仕留めた」 闇魔法収納からあらかじめ町で買った麻袋に移しておいたゴブリンの角をカウンターにのせる。パッと見でも優に50本以上は入っていた。 袋を受け取ったヘラが確認すると、袋には63本の角が詰まっていた。占めて銀貨63枚。一二三にとってははした金だが、ギルドに登録した初日の稼ぎとしては異常だ。 「こんなに戦っていたら、それは疲れるでしょうね......」 一二三の力を目の前で見せられたヘラは、30体前後を仕留めたことを信じざるを得ない。ぐったりと座り込んでいるオリガとカーシャに目を向ける。 「あいつらが疲れてんのは、別にゴブリンと戦ったからじゃないぞ。狩りは昼くらいで大体終わったし」 「え、じゃあ......」 「俺にとっては基礎訓練でも、あいつらにはキツかったみたいだ」 情けない、と鼻を鳴らす一二三に、女性とはいえ中堅冒険者があれほど疲弊する基礎訓練とはどんなものかと、ヘラは恐ろしくなった。 そこに、簡単な皮鎧を着た二人組の男が荒々しくギルドへ入ってきた。 まっすぐ奥へ進み、ヘラの隣のカウンターに近づいた。 「治安維持隊の者だ。今朝、ここでオックという男が殺された件で来たんだが、誰か状況がわかるものはいるか?」 話しかけられた職員は、オック斬殺の際にいあわせて一二三の事を知っていたのだろう、視線が思わず一二三とヘラの方を向く。つられて、二人の兵士も一二三たちを見た。 さらりと聞かれて、ヘラもうなづく。 「では、その時の状況を聞きたい。詰所まで同行しろ」 「あ? 剣を抜いて襲ってきたから返り討ちにした。それだけだ。疑うなら他の連中にも聞いてみろよ」 一二三の態度に、眉間にしわを寄せた二人の兵士が何か言おうとしたとき、さらに二人の人物がギルドに飛び込んできた。 「......間に合ったか」 「血が流れる前でよかったわ」 入ってきたのは、第三騎士隊所属のミダスとパジョーだった。騎士隊の制服だろうか、一二三が会った時と違って、二人とも軍服と思しき白いスーツを着ている。 「第三騎士隊のミダスだ。悪いがこの人物は我々が話をする。今朝の件も騎士隊預かりとなった」 「き、騎士隊預かり? では、こいつ......この方は」 「貴族とかじゃないんだけれどね......色々と貴方達には話せない事情があるのよ」 お互いに顔を見合わせた兵士たちだったが、騎士隊が出てくるとなると、もはや手出しのしようがないと、おとなしく帰っていた。 「おう、パジョー。昨夜はお疲れだったな」 「ええ......あの後は結局徹夜だったわ」 よく見ると、パジョーの目元にはうっすらと隈が見える。メイクで多少は隠しているようだが、疲れているようだ。 「昨夜......? ご主人様、夕食の後にこの方と何かあったのですか?」 いつの間にか一二三の隣に来ていたオリガが、パジョーに疑念の視線を向けている。 「そんなに睨まなくて結構よ。貴方のご主人様には振り回されただけで、貴方が心配するような事は何もないから」 年上の女性らしい余裕を見せて、パジョーが答えるのを、カーシャは妙に冷静になった思考で見ていた。 (オリガもアタシも抱かずに、外で発散したってわけじゃなさそうだね。夜中に抜け出して、ご主人は何をやってたんだか) 「......話の続きをいいだろうか?」 完全に蚊帳の外だったミダスが、咳払いで注目を集めると、パジョーと並び、姿勢を正して一二三に向かって仰々しい声で言った。 「今回の重要事件の摘発に関し、事件の捜査と容疑者の捕縛に多大な貢献があり、また騎士パジョーの危急を救った事に対する功績として、特にイメラリア王女の推薦もあり、ヒフミ殿には準騎士爵位と、報奨金が与えられます」 「イメラリアめ、一体何をたくらんでやがる?」 騎士が表れたことで注目されていた矢先に突然の叙爵宣言と、それを軽く流しながら一二三が王女を呼び捨てにしたことで、オリガたちを含め、ギルドにいた全員が混乱し、大騒ぎになった。

Chapter 10: The Fight Song After the little disturbance, Hifumi and the other two went towards the board on which requests were posted. Okku's corpse was carried out by his companions, and the floor was quickly cleaned. As expected of people accustomed to fights. The guild did not have any ranking system in particular, so there were no restrictions on receiving requests. Probably because of that, the board seemed to be only roughly divided into subjugation and escort requests, that too, in a disorderly way. [ Today, since I want to see how you two fight, look for a subjugation request near the town. ] magic [ How about this one? ] Origa took down a request pinned on the board and read it out loud. [ A goblin subjugation request. A group of about 10 of them have been confirmed in the nearby forest. The reward is one silver coin per goblin. ] [ Since you should have killed many goblins, don't worry about the rewards, just take it. ] Goblins are small, human-like demons about 1m tall with dirty dark green skin. Often found in forests or meadows, usually in groups of 5 to 10, though not individually strong, if ganged up on at once, it isn't unusual for novices to die. However, since even the amount obtained after selling their parts is negligible, goblin subjugation is seen as practice for newcomers. [ Well, it's safe. ] [ Then, I will register the request. ] Looking at Origa, who bowed and took the request to the receptionist, Hifumi thought she was quite like a secretary. Looking at her speaking style and bearing, she seems to come from a good family. Doing something so helpfully and eagerly, Hifumi thought it might be calculated, but did not particularly mind. Receiving the goblin subjugation request, it was decided to buy clothes before leaving the town. Patting his clothes, Hifumi asked the guild's staff Hera. Ordinary people generally wore second-hand clothes, and only occasionally bought nicer ready-made clothes. Getting custom-made clothes would be difficult outside the area of the aristocratic block. [ Generally, for clothes made from special materials and demon hide, such as protective gear, I believe armour shops take such commissions. ] To Hera saying so with a slightly strained smile, Hifumi also decided to stop by the armourer's shop that was next to Thorn's before leaving town. [ What is it? the weapon commission is not done yet. ] Scowling as usual, Thorn, who was working on something inside the shop asked Hifumi who entered. [ An additional order. ] [ Additional? Another weird thing again? ] [ These are clothes used for practice and combat in my hometown. Wearing these makes me feel at ease. ] Seeing Hifumi's dark blue dougi and hakama, Thorn frowned. [ Is this for combat? It's fluttery and isn't it hard to move around in? ] The dougi's sleeves were long enough to extend below the elbow, the hakama was long enough to almost conceal his feet. Completely opposite to the trousers, hardened boots, and long-sleeved jackets reinforced with iron plates that the adventurers wore. [ Shall I just take it off here? ] [ It obstructs business. Stop. ] Behind him, Kasha and Origa, on seeing Hifumi put his hands on his clothes, hurriedly covered their faces with their hands, though they left gaps between their fingers. Finished with the dougi's measurements, leaving the raw materials to Thorn, Hifumi put on his dougi, and gave the order to prioritize comfort over defence for his new dougi. Thorn, who was interestedly watching, thought that the way of wearing these clothes was quite strange. The dougi itself can be cut from cloth, since materials like metal or plastic are not used, it is possible to make it even with the current technological level of this world. It seems possible to make the leather lining of the hakama as well, from the great turtle demonic beast. [ Moreover, I can get another set in other towns as well, thanks to the blueprints. ] [ Blueprints? ] When Hifumi asked, generally clothes were made based on the craftsman's sense for it, and using blueprints to make a large number of identical parts was unheard of. There was no size display for any equipment in the shop either, it was adjusted as required. Since constantly adjusting the equipment would be a hassle during journeys, Hifumi explained the blueprint. [ I see. Other than the regular patrons, there are a lot of other guys that buy equipment, so making it by hand is not possible. Such a great paper has come into my hands, substituting cloth with leather..... ] As an exchange for the idea, Hifumi's clothes were made for free. Incidentally, the dougi and hakama would be done by the next day. Inside the shop, though there are only 5 apprentices, it seems that Thorn is the one that makes the marketed commodities. Hifumi was impressed by this scene which could not be found in Japan. [ Full of nature. The smell of the trees and plants is heavy. ] Origa and Kasha, who lived in this world did not understand his words. [ Master, let us move quickly. The forest is that way. ] Kasha, glad to be able to fight after a long time, pointed in a direction away from the highway and hurried on. When Hifumi looked, the forest seemed to start at a certain point on the plain. Walking, it would take around 20 minutes to reach it. [ Inside the forest, the goblins were witnessed in a place about one hour towards the center. ] Origa informed everyone, after looking at the request. In this world, only a small portion of nobles have clocks. The common people have to rely on the position of the sun, a bell at noon and their own biological clocks. In some farm villages, even bells were absent. Even if one hour is written, since it is the account of the reporter, it's reliability is unknown. In the meantime, they arrived at the forest. Kasha slowly pulled out her swords, Origa took out her staff rolled up in cloth and shouldered it. Watching the two people pull out their weapons, Hifumi felt weird. [ Oy, why are you pulling the swords out now? ] [ Eh? We are entering the forest now, so I am preparing my weapon....... ] To their faces expressing [ Nono, isn't preparing for a battle essential? By any chance, should any situation arise?.... Origa cannot use her magic without the staff.... ] (Kasha) [ I am sorry. To be skilled like master, I cannot use magic without a medium or a chant.... ] [ Anyone can prepare their sword in advance for battle. Master is amazing, knocking down an incoming arrow like that using the katana without anyone realising. ] Seemingly displeased by their off the point answers, Hifumi held their gaze. [ M-Master? ] [ Sit down, we're going to have a little chat. ] Not understanding clearly, Origa and Kasha sat down timidly on the grass. [ Among the martial artists of my country, we are familiar with "Battlefield awareness". Do you understand it's meaning? ] Looking at their confused expressions, Hifumi continued while tapping his sword. [ It means that at any time, battle may erupt. My country is peaceful now, In older times, it was safe in it's own way inside towns. As such, the royal capital is also quite safe, but it will be different outside the town. ] Origa and Kasha exchanged a look. What Hifumi wanted to say had not been cleared up yet. [ Leaving the highway and entering the forest, one hears that demons tend to show up. However, only "heard". What is your reason for something near the town? Do demons wait for you to prepare your swords and staffs? Not just demons, humans are more troublesome. Outside the town, without knowing whether it is an enemy or not, what will you do if suddenly attacked? A little while ago, Kasha referenced the story of me and the arrow. That was in town. ] The two could not refute Hifumi's words, and silently listened. [ Kasha. What would you have done if you were attacked with your swords sheathed? ] [ Um..... Buy time to draw my swords by gaining some distance. ] [ For example, a scenario like yesterday's blind alley? ] [ That is.... ] Turning his gaze away from Kasha who was lost for words, Hifumi looked at Origa. [ Origa, how long would it take for you to cast magic without your staff at the ready? ] [ Hm, about 20 seconds at the very least. ] [ When attacked without the staff, even momentarily fighting with weapons or tools? Leave aside whether you've bought them or not. Can you use them? ] Origa already had a face that seemed ready to cry. The two seem to be middle-level adventurers. In other words, they possess basic skills, and common sense of this world and it's knowledge of fighting. The standard level of this world was quite average, judged Hifumi. Now that I think of it, the guy from the guild who attacked drew his sword comparatively angrily..... It seems that preparing for a fight is a way of thinking for this country. Short spears seem to be the basic equipment for the people in the castle, possibly because the time taken to pull a weapon from it's sheath is more. Then, not just adventurers, but regular soldiers as well.. In ancient Rome, it was heard that spears were disassembled while marching. Before attacking, they were reassembled. Though the type of fighting is different, it was not as leisurely as using handguns and rifles in the modern world. While watching the slaves looking at him with upturned eyes, a bad idea came to Hifumi's mind. Though it would be tiresome to think about domestic affairs, spreading strife in this world would be interesting. Problem is, this country, or a newer one? Origa, unable to endure the long silence Hifumi had fallen into, called out. [ U-Um.... Though it may take the inexperienced me some time, I will learn how to fight without magic, so please do not abandon us... ] [ Hn.... Ah, I was lost in thought. No abandoning will be done..... Alright, it's decided. ] Hifumi looked at Origa and Kasha, the evil expression from a while ago disappeared, replaced with an enchanting smile. [ I will train you. The immediate goal will be for you to handle a single one of the guys that attacked yesterday on your own. ] The reactions of the two were polar opposites of each other. [ Uu.... such movements, though I don't think we can do it..... ] (Kasha) [ Master, thank you very much! ] (Origa) [ Origa, do your best. Kasha, it is impossible to move like that immediately. Well then, first of all, I will have you two start moving. ] Origa and Kasha hurriedly ran after Hifumi, who was rapidly walking towards the depths of the forest. [ There seem to be five of them there, for the time being, use your magic and sword skills. I will not raise a hand. Can you do it? ] [ Please leave it to us. ] (Origa) [ 5 of them, it is not a problem. ] (Kasha) Both of them enthusiastically responded and tightly grasped their weapons. As the sunlight waned, when Hifumi and the two showed up at the guild, it became noisy again. Only the hem of Hifumi's hakama was dirty, and he did not look tired either, but the slaves were worn-out. Though not injured, they were clearly exhausted. [ Did only Origa and Kasha fight? ] Inadvertently criticizing, Hera asked Hifumi who came to the counter. [ No? Though we hunted a lot, I killed half of them. ] A jute bag, previously bought in town, filled with goblin ears was put on the counter. There were easily 50 or more. On receiving the bag, Hera confirmed that the bag was filled with 63 ears. It amounted to 63 silver coins. Though small change to Hifumi, it was abnormal for a first day earning. [ Fighting so much, it must be tiring... ] (Hera) Hera, who had seen Hifumi's power could not help but believe that he had killed around 30 of them. More attention was paid to Origa and Kasha, who were wearily sitting down. [ They became tired not just from fighting goblins. Hunting ended at midday. ] [ Eh, then... ] [ I drove the fundamental training into them quite severely. ] To Hifumi snorting, what kind of training did they go through, to exhaust them this much? Hera was frightened. Abruptly, two men wearing light armour violently entered the guild. Advancing straight to the interior, they approached the counter next to Hera. [ We are from the Public Security Corps. This morning, there was a matter of a man named Okku killed here, is there anyone who knows the situation? ] The staff member spoken to instinctively glanced towards Hifumi and Hera. The two soldiers also looked towards them. Hera also nodded when asked. [ Then, we want to hear the accounts of the incident. You will come with us to the station. ] [ Ah? He drew his sword and attacked, I responded. Ask the other witnesses if you have any doubts. ] The two soldiers, whose foreheads had creased on seeing Hifumi's attitude were about to say something, when two people ran into the guild. [ ......Were we in time? ] [ Its good we reached before blood started flowing. ] It was Midas and Pajou, belonging to the Third Knight Corps. Unlike the last time, they were wearing white military uniforms, probably the uniform of the Knight Corps. [ Midas from the Third Knight Corps. The matter this morning will be taken over by the Third Knight Corps. ] [ Th-Third Knight Corps? Then, this guy.... this person.. ] [ Is not a noble...... There are circumstances that cannot be spoken of. ] The soldiers looked at each other, but returned quietly knowing they could not interfere since the Third Knight Corps had come into play. [ Oh, Pajou. Worn out from last night huh. ] (Hifumi) [ Ee.... Well, eventually I stayed up all night. ] Dark circles were slightly visible under Pajou's eyes. Though make-up somewhat disguised it, she was clearly tired. [ Last night......? Master, what happened with this person after dinner? ] Unawares, Origa was next to Hifumi, looking at Pajou suspiciously. [ Don't glare at me so much. Your master manipulated me, there is nothing you need to worry about. ] Seeing the older woman's calm reply and composure, Kasha thought, Sleeping with neither me nor Origa, slipping out in the middle of the night, what did master do? [ ..... Shall I continue the discussion? ] Midas, who was cleanly ignored, cleared his throat, straightening his posture, lined up with Pajou and said with an exaggerated voice to Hifumi, [ Concerning the recent significant events, due to the large contributions in the investigation leading to the suspect's arrest, saving Knight Pajou, and especially Princess Imeraria's endorsement as well, Hifumi-dono is to be awarded with the Associate Knight title, and also here is the cash reward. ] [ Imeraria, what the hell is she planning? ] With a Knight suddenly appearing and conferring a peerage, and Hifumi calling the the Princess without any honorific, Origa and Kasha included, the entire guild erupted into an uproar.

125.Lying From You ホーラント国境が俄かに騒がしくなっていたのに対し、ソードランテの騒動は早々に鎮められていた。 王を失い、舵取りをする者がいなくなった城内では、相変わらず権力闘争が続き、朝令暮改そのものの、無茶苦茶な法令が乱発されていた。 唯一、共通していた部分は、獣人がほとんど出て行ってしまった後、一般市民を労働力及び搾取の対象としているという事だけで、権力を持った貴族たちが、名目を変えてひたすら勢力争いのための原資を吸い上げているという状態でしかない。 当然ながら、そんな状況で一般の市民たちが大人しく従うだけでいるわけはない。 不満は急速に広がり、兵士の中にすら職場を放棄するものすら出てくる。兵士にとって、一般市民とは自分たちのことでもあるのだから、懸命に働いた結果の給料を、訳のわからない理屈で棒引きされるのは我慢ならない。 市民と兵士、兵士どうし、兵士と騎士、市民と騎士など、小さないざこざや衝突はあちらこちらで頻発するようになった。 「それで、結局どうなったの?」 留守番役を命じられたヘレンは、へとへとになって机に突っ伏しているレニに訪ねた。 「ん~......」 レニは顔をころりと横に向け、眠そうな目を少しだけ開けた。 「こっちに来たい人たちは来てもらって、攻撃してきた兵士さんたちは、エルフの人たちの魔法で逃げちゃった。終わり」 「終わりって、あんたね......」 「だって、それしか言えないもん。ゲングさんたち獣人は活躍の場が無かったって嘆いてるし、ウチたちは新しい人たちの受け入れでさっきまで大忙しだったし」 レニを始め、誰もが気づいていなかったが、この時点で一部の獣人たちがこっそりと元スラムの区画を拡張し、居住場所を確保し始めていた。 しかも、本来の居住地であるソードランテ市街と、元スラムである他種族居住エリアで、人口の逆転が発生している。人間も獣人側もそれぞれの人口統計など取っていなかったので、誰も気づいていなかったが。 「なに? ヘレン」 「出た。風魔法」 何気なく、杖をいじりまわしていたヘレンが、机の上に毛玉よろしく乗っかっていたレニの頭に向かってそよ風を送りたいと思ったら、出た。 「な、なんで......?」 「わかんないよ、そんなの」 でもなんか出た、とヘレンがレニの顔に風を当てると、小さな悲鳴をあげたレニの髪がゆらゆらと揺れた。 「ずるいずるい! ウチも魔法使いたい!」 「うわっ! ちょっと、やめてってば」 レニに飛びつかれ、ヘレンが床で転がっているところで、ザンガーが入って来た。 「おやおや、元気だねぇ」 「あ、ザンガーさん!」 ヘレンの髪をクシャクシャにかき回して、少しだけすっきりしたレニは、ザンガーに笑顔を向けた。自分の頭も酷い有様になっている。 「どうしました?」 「いやね。ちょっと相談があるんだよ。あたしじゃないけどね」 ザンガーが入っておいで、と促すと、エルフのプーセと片耳の兎獣人の女性、そして、虎獣人の少年マルファスが入って来た。 なんともまとまりのない組み合わせに、レニとヘレンが髪を整えていると、兎獣人の女性が、なんとも言いづらそうに話し始めた。 「あの......街を出る許可が欲しくて......」 「へ? 別に許可とかはいらないけれど、どうして? 荒野に出たら危ないよ?」 首をかしげるレニに、片耳兎の女性は顔を赤くして視線を落とした。 ひゃっひゃっとザンガーが笑う。 「一二三さんに、会いたいんだそうだよ。いやいや、良い男だとは思ったけど、やっぱり隅に置けないねぇ」 若いねぇ、とザンガーが笑うと、兎獣人の女性はますます縮こまってしまった。 レニとヘレンは、お互いに顔を見合わせて呆然としている。 「私も、付き添います。一二三さんに会って、聞きたいこともありますし、彼も......」 プーセに促され、マルファスが頷いた。 「俺も行きます。その人間に会って見たい。兎のお姉ちゃんから、獣人に対して偏見が無くて強いって聞いたから、鍛えてもらいたいんだ。結局、魔法は使えそうにないし......」 マルファスの口から、兎獣人が語ったと思しき一二三像が透けて見えて、ヘレンは小さく「美化しすぎじゃない?」とつぶやいた。 「そうなんだぁ。なんかいいなぁ。一二三さんのどういうところが好きなの?」 ザンガーが囃したて、レニが質問攻めにして、兎獣人がポツポツと答える。 女性陣が盛り上がっている脇で、マルファスは一人、妹を置いて旅に出るために自分を励ましていた。 「人間は嫌いだけど、このままじゃあいつに勝てないんだ......」 復讐心は、燃えはすれど消える事は無い。 「敵が来ます! 予定通り、ミュンスターで補給のみを行い、こちらへ向かっています。総勢五百名超!」 一度ビロン伯爵の元へマ・カルメの提案を持ち帰っていた伝令が、陣を敷いたホーラント国境へと馬を駆って戻って来た。 「ご苦労、お前さんは早くミュンスターに戻るんだ。連中とかち合わないように、大回りしてな」 「いえ、私はここに残り、戦況を見極める任務があります!」 マ・カルメは部下たちに戦闘準備をするように伝えると、伝令に向き直った。 「ここから先は馬を降りて後方に歩いて行きな」 「歩いて、ですか?」 「ちょっとした、仕掛けがあるんだよ」 自慢じゃないが、うちの領主様の教えの通りさ、とマ・カルメはケラケラ笑って部下たちと共に投槍器の設置を手伝い始めた。 「それは、ヴィシーとの戦争でも活躍した投槍器ですね。初めて見ました」 「活躍ねぇ。実際は、あれは領主様が暴れただけなんだがね」 「しかし、たった五台で大丈夫なのですか?」 不安を隠せない伝令に、マ・カルメは軽く答えた。 「大丈夫じゃないさ。五百人に五台じゃ、無理だ」 「え、それじゃ......」 「これは釣り餌。何発か撃ったら捨てていく」 準備ができたところで、マ・カルメの号令で各々休憩に入る。 「さて、俺は昼飯にしようかね」 その場にどかっと座り込み、ホーラントの街で買っておいたパンを一口齧り、水筒の水を飲んだ。 伝令が周りを見回すと、同じように食事を採っている者もいれば、豪胆にも昼寝をしている者までいる。 とても、今から命懸けの戦いをしようという緊張感が見当たらない。 「皆さん、とても落ち着いておられますね」 伝令も座り込み、手綱を適当な石にくくり付けると、腰に提げていた水筒に口をつけた。 「領主様の教えさ。良くわからんが、戦いは日常の延長にあるものなんだとさ。普通に食って寝て、その中で殺し合うのが当然なんだと」 頭おかしいよな、とマ・カルメは笑うと、バターが塗りこまれたパンをバクバクと食べ終わり、ごろりと横になった。 「でも、それで実際に生き延びてんだから、従うしかないやな。有名な細剣の騎士様の教えだしな」 「なるほど......。そうやって、トオノ伯やフォカロルの兵たちは国のために戦っていたのですね」 「あ、それは間違いだな」 腹を掻き、ヘラヘラと笑うマ・カルメは座っている伝令に目を向けた。 「領主様は“誰かのために戦う”なんて大嫌いだからな。えっと、なんつってたか」 マ・カルメは空を見上げた。 少しだけ雲が出ているが、暑いくらいの日差しはしっかりと地上に届いている。 「そうそう。人のために命をかけて、死んだとして、そいつは嬉しいかって話だ」 「わかりにくいか。こういう説明は苦手だな。つまり、お前が命懸けで誰かのために戦って、死んだとして、お前が守った奴は嬉しいかどうかって話だ」 マ・カルメの話に、伝令は腕を組んで考え込んだ。 「でも、私たちは誰かを守る為に戦うのが仕事で。しかし、確かに私のために誰かが死ぬかもしれないと思うと......」 「さぁてね、俺にも本当の答えなんかわからん」 顔を横に向けたマ・カルメは 「俺はなるほど、と思った。どうせ戦うなら、自分の目的の為に戦った方が、ずっと健全だってな」 「じゃあ、何のために戦うんですか?」 「決まってる。アリッサ長官に褒めてもらうためさ」 マ・カルメは地面に耳を当てて、目を閉じた。 「来たぜ」 立ち上がったマ・カルメが一声かけると、のんびりとしていた空気が一気に張り詰めた。 「蹄の音が近づいてくる。沢山、な」 伝令は、今までで一番硬い唾を飲んだ。 「もうちょっと待ってもいいんじゃないかな?」 「いや、別にいいだろ」 アリッサが控えめに引き止めるも、一二三は特に気にしたふうも無く、着替えや予備の武器などを闇魔法収納に放り込み、旅に出る準備を進めている。 「でも、オリガさんは一二三さんに会いたがってると思うよ?」 「ここで待っているように伝えてくれ。すぐそこに出かけるだけだ」 「......わかった。僕もここで待ってる」 アリッサと共に自分の部屋で朝食を採っていた一二三は、食事が終わると「人型の魔物を見に行く」と突然言い出し、オリガが悲しむというより壊れるんじゃないかと思ったアリッサが止めようとしたが、無駄だった。 獲物がいるのが明確なのに、ジッとしているわけにはいかない、と一二三が言い出すのは予想通りだったからだ。 「一晩考えたけど、やっぱりあれはお城にいた騎士だよ。なんであんなになっちゃったのかはわからないけど」 アリッサは、まだ身体が本調子ではなかった。 誰にも言わなかったが、戦いが少し怖くなっていた。 訓練に参加する時間を減らし、気づけば一二三と過ごす時間を増やしている。一緒にいると、少し安心するのだ。 「でも、僕のこともわからなかったみたいだったよ。憶えてないだけかもしれないけど、言葉も通じてなかったっぽい」 一二三は一通りの準備を終え、魔人族の街からこっそり持ち帰ったコーヒーもどきを淹れて飲んでいる。 「なるほどな。アリッサが翻弄されるくらいの奴だからな。正気でやってくれたら、もっと楽しめるが......馬鹿と戦争するよりマシか」 もきゅもきゅとサラダを口に詰め込みながら、アリッサは疑問に思った。 「あれ? 一二三さんなら、沢山がいる戦争を選ぶかと思った」 「大量に人が殺せるのはいいんだがな。いかんせん、相手が普通の兵士連中じゃな。獣人やら魔人族あたりがまとめて攻めて来てくれたら、まだ楽しめるんだが」 コーヒーもどきの香りを愉しみながら、一二三は残念そうに首を振った。 「何その飲み物」 「コーヒーみたいなもんだ」 「ちょっと頂戴......うぇ」 一二三のカップに口をつけた途端、苦味に顔をしかめたアリッサに、一二三は何かを思い出したように闇魔法収納から何か取り出した。 「これを忘れていた」 するりと取り出した脇差を、アリッサに放り投げた。 「あ、僕の脇差」 薄いパジャマ一枚の胸にぽんと当たった脇差は、綺麗に 一二三の細かい要求に苛々しながら耐え抜いたプルフラスの力作である。 「武器が駄目だと、人を殺すのに苦労するからな。今度からは自分で手入れしろよ」 「あ......うん!」 両手でしっかりと脇差を抱きしめたアリッサは、一二三が留守の間、しっかり鍛えなおそうと決めた。 十五分程後になってから、アリッサはオリガを出迎える役を体よく押し付けられたことに気がつき、しばらく行方を

Chapter 125: Lying From You In contrast to Horant's national border which suddenly turned lively, the turmoil in Swordland was suppressed quickly. In the castle, that lacked a person to take the leadership with the king gone, the power struggle continued as ever and unreasonable laws were excessively issued just to be revised without any guiding principle behind it all. After almost all beastmen had left to the city's part where they lived as community, it has simply turned into a situation of nobles, who held the authority by simply making the common citizens into targets of exploitation and labour force, siphoning off the capital in order to contest over their influence determined on revising their titles. Understandably it's not like the common citizens are meekly obeying in such circumstances either. As for the soldiers; they cannot tolerate to have their salary, resulting from them working earnestly, being cancelled for incomprehensible reason because they are common citizens themselves as well. Small troubles and conflicts frequently occurred all over the place between soldiers and citizens, among fellow soldiers, soldiers and knights as well as between citizens and knights. "So, what happened in the end then?" (Helen)magic Helen, who was ordered to stay back at home, visited Reni who is prostrating on top of the desk while being completely exhausted. "Mm~..." (Reni) Reni suddenly turned her face sideways and slightly opened her sleepy eyes. "Reaching the people who wanted to come to us, the soldiers, who came attacking, were made to flee with the elves' magic. The end." (Reni) "The end you say, you know..." (Helen) "I mean, I can't tell you anything besides that. Gengu-san's followers are grieving that the beastmen lost out to play an active role at this occasion. We were very busy until just a while ago with receiving the new people." (Reni) Including Reni no one noticed it, but a part of the beastmen started to secure their places of residence by secretly expanding the area of the former slums at this occasion. Moreover, with the area of residence for the other races being the former slums and the urban areas of Swordland being their original address, a reversal of the population is developing. "What's up, Helen?" (Reni) "It appeared. Wind magic." (Helen) Helen, who casually fumbled around with her wand, faced Reni's head, which was lying on top of the desk just like a furball, and once she imagined that she wants to cause a gentle breeze, it appeared. "W-Why...?" (Reni) "I don't know about that." (Helen) "However it appeared somehow", when Helen targeted the wind towards Reni's face, the hair of Reni, who grumbled a bit, slowly swayed. "Unfair, unfair! I want to be a magician as well!" (Reni) "Uwah! Wai-, stop." (Helen) Being assaulted by Reni with a jump and Helen tumbling to the floor was at the time when Zanga entered. "Oh my! You are lively, aren't you?" (Zanga) "Ah, Zanga-san!" (Reni) Reni, who felt a bit relieved by dishevelling Helen's hair, faced Zanga with a smile. "What happened?" "Well, you know. There's something to discuss for a bit. It's not me though." (Zanga) When Zanga ushered them in with "Come in", the elf, Puuse, the one-eared rabbitwoman and the tigerboy, Malfas, entered. Due to to the combination that has no coherence at all, the rabbit woman began to speak while looking as if it's something very difficult to speak about once Reni and Helen had arranged their hair. "Umm... I'd like to have permission to leave the city..." "Eh? You don't particularly need our permission or such, but what for? Won't it be dangerous if you go out to the wastelands?" (Reni) Due to Reni tilting her head, the one-eared rabbitwoman lowered her sight while having a red face. Zanga laughs with a "hya hya." "It looks like she wants to meet with Hifumi-san. Well, well, I thought that he was a handsome man, but he is a smooth operator after all." (Zanga) With Zanga laughing while saying "how youthful", the rabbitwoman ended up curling herself up more and more. Reni and Helen are dumbfounded as they look at each other faces. "I will accompany her as well. There's something I want to ask him once I meet Hifumi-san. He also..." (Puuse) Urged on by Puuse, Malfas nodded. "I will go, too. I want to try meeting with that human. Since I heard that he is strong without being prejudiced towards beastmen from the rabbit-oneechan, I'd like him to train me. After all it's extremely unlikely for me to be able to use magic." (Malfas) Seeing Hifumi's image as spoken of by the rabbitwoman apparently leaking through the words of Malfas, Helen quietly muttered [Aren't you glorifying him too much?] . "I see. That's somehow nice. What part of Hifumi-san do you like?" (Reni) Thanks to the barrage of questions from Reni and Zanga cheering her on, the rabbitwoman answers bit-by-bit. As the side of the female group is getting excited, Malfas encourages himself to go on a trip and leave his younger sister behind. "Although I hate humans, I won't be able to win ever if things stay as they are..." (Malfas) The flame of his desire for revenge has never vanished. "The enemy has arrived! As planned, we will head this way and only carry out replenishment in Munster. The whole army numbers more than 500!" The messenger, who brought back Ma Carme's suggestion to Count Biron, returned to the national border of Horant, where they were encamped, while spurring on his horse. "Thanks for your hard work of returning to Munster quickly. You will need to take a detour to not clash with the enemy." (Ma) "No, I have the duty to make sure of the war progress by staying behind here!" Ma Carme told his subordinates to get ready for battle and turned around to the messenger. "Dismount from the horse from here on out and walk to the rear." (Ma) "Walk, you say?" "There are some petty tricks set up." (Ma) "I don't want to boast, but it's according to the teachings from our Lord-sama", Ma Carme cackled and began to help with the installation of the spear throwers together with his men. "Those are the spear throwers which played a big part in the war with Vichy, aren't they? I see those for the first time." "A big part, eh? In reality that was just Lord-sama rampaging around though." (Ma) "However, will it be alright with just 5 of those?" Ma Carme simply answered to the messenger who can't hide his anxiety, "It won't be alright. 500 people with 5 spear throwers is impossible." (Ma) "Eh, then..." "These are bait. They will be abandoned once they fired some shots." (Ma) Once they were able to finish the preparations, each of them takes a break upon Ma Carme's order. "Well then, I wonder what I shall do for lunch?" (Ma) Plumping down at that place, he munched the bread they bought in a city of Horant and drank water from a flask. Once the messenger surveys the surroundings, there are only those who take their meals in the same manner and those who are boldly having a nap. The tension of having a life-waging battle from now on can't be found at all. "Everyone is very calm." The messenger tied the reins to a suitable rock, sat down as well and took a sip from the flask he carried at his waist. "It's Lord-sama' teachings. I don't understand it properly, but a battle is something like an extension everyday's life. He says that he eats and sleeps normally and that it's natural to kill each other in between those." (Ma) "His brain is weird", Ma Carme laughed, finished eating the bread with butter smeared onto it and lied down. "However, since he is actually surviving by doing that, we have no other choice but to abide to that. It's the doctrine of the famous Knight of the Slender Sword-sama after all." (Ma) "I see... Count Tohno and Fokalore's soldiers fought for the sake of the country like that." "Ah, that's wrong." (Ma) Scratching his belly, Ma Carme shifted his attention to the sitting messenger while laughing frivolously. "Lord-sama hates "to fight for someone." Let me see, what did he say?" (Ma) Ma Carme looked up to the sky. A few clouds have appeared, but sunlight to the degree of it being hot properly reaches the surface. "Ah that's it. It's a story about whether a fellow, who dies after risking his life for the sake of people, is happy." (Ma) "Is it hard to understand? I'm bad at such explanations. In other words, it's a story about whether the fellow, whom you protected, will be happy with you dying after you having fought for the sake of someone with your life on the line." (Ma) The messenger folded his arms and pondered about Ma Carme words. "But it's our job to fight to protect someone. However, certainly, if I consider the possibility of someone dying for my sake..." "Well, I don't know the true answer either." (Ma) Ma Carme, who turned his face sideways, concluded with self-effacement. "I thought "Indeed." If I have to fight anyway, it's always more sound to fight for my own goals." (Ma) "Well then, for what reason are you fighting?" "I have decided. It's in order to receive praise from Director Alyssa." (Ma) Ma Carme pressed his ear against the ground and closed his eyes. "They are here." (Ma) When Ma Carme shouted so after standing up, the carefree mood became immediately strained. "The sounds of hooves are approaching. A lot of them." (Ma) The messenger gulped down the biggest spit up to date. "Isn't it also fine to wait a bit longer?" (Alyssa) "Well, it doesn't really matter, right?" (Hifumi) In a manner of not particularly caring about it while also restraining Alyssa to stay low-key, Hifumi tosses his change of clothes and spare weapon in the darkness storage and goes ahead with his preparations to leave on a journey. "But don't you think that Origa-san wants to see you, Hifumi-san?" (Alyssa) "Please tell her to wait here. I will just head to a short distance away." (Hifumi) "... Got it. I will wait here as well." (Alyssa) Hifumi, who took his breakfast together with Alyssa in his room, suddenly stated [I will go visit the human-shaped monster] once he finished eating and Alyssa, who though "It's impossible for me to stay still even though it's clear that there's prey", was just as expected of Hifumi. "I thought about it all night, but that's the knight, who was at the castle, after all. Though I don't understand how he ended up becoming like that." (Alyssa) Alyssa's body was still not at normal condition. She didn't tell anyone, but she became a bit scared of fighting. Once she noticed, the time for training has decreased and the time spent together with Hifumi has increased. "However, it looked like he didn't know about me. He might just not remember me, but it was like words weren't getting through to him." (Alyssa) Finishing his usual preparations, Hifumi brews the fake-coffee, he secretly brought back from the city of demons and drinks it. "I see. It's a fellow at the level of toying around with you, Alyssa. If he were to be sane, it would be a lot more fun, but... it's better than a stupid war, isn't it?" (Hifumi) While cutely cramming salad in her mouth, Alyssa thought about his question. "Huh? If it's you, I wondered whether you would choose war, where there are many to kill, Hifumi-san." (Alyssa) "Killing a large amount of people is nice, too. But, to my regret, the opponents would be regular soldiers. If beastmen or demons come attacking all at once, I will still be able to enjoy it though." (Hifumi) While enjoying the aroma of the fake-coffee, Hifumi shook his head while looking disappointed. "What's that drink?" (Alyssa) "It's something like coffee." (Hifumi) "Please let me take sip.... ueeh." (Alyssa) Due to Alyssa grimacing due to the bitter taste just as she tasted it from Hifumi's cup, Hifumi took out something from his darkness storage as he had apparently recalled something. "You forgot this." (Hifumi) Hifumi tossed the wakizashi, he took out with a smooth motion, to Alyssa. "Ah, my wakizashi." (Alyssa) The wakizashi, which hit the chest area of her thin pajama with a *pon*, was repaired with beautiful workmanship. It's the painstaking piece of work of Pruflas who stuck with it until the end while getting irritated by the minute demands of Hifumi. "If the weapon becomes useless, it will be difficult to kill people. Maintain it by yourself from now on." (Hifumi) "Ah... yea!" (Alyssa) Alyssa, who tightly hugged the wakizashi with both hands, decided to do her training over properly during Hifumi's absence. Realizing that the role of greeting Origa was discreetly forced upon her 15 minutes later, Alyssa became truly troubled whether she should disappear for a while.

18.New Divide 【処理は公務員に押し付ける】 担いでいたハーゲンティを床に転がして席についた一二三は、引きつった顔の店員に紅茶を頼んだ。 「は、ハーゲンティ子爵......」 サブナクは、話題の人物が無造作に転がされている現実に絶句する。 「殺したのかい?」 「いや、気絶させただけだ」 「そうですか」 対して、まるで日常の風景のように話す一二三たちに、サブナクは震えを隠せない。 敵対しているとはいえ、短時間で貴族を拉致してくる一二三と、それを不思議と思わない二人の女性。この時点で、王女からの指示とは無関係にサブナクは三人を完全に“敵対してはいけない相手”だと認識した。 「で、話はまとまったか?」 「そんな事より、一体どうやってハーゲンティ子爵を?!」 「ああ、二階の窓から入って、一人魔法使いが居たけど殺して、持ってきた」 サブナクは、その答えにそろそろついて行けなくなってきた。 狼狽えるサブナクの姿は無視して、一二三は別行動中の事を説明する。 「......その、短剣を使って魔法を使った男は、ホーラント出身だと思います」 「パジョーもそんな事を言っていたな」 「ホーラントの魔法使いは、杖ではなく特殊な加工をした短剣を媒体に魔法を使うと聞いたことがあります」 気がつけば、この国と周辺国についても習っていなかった事を思い出した一二三。 (今日の夜にでもオリガたちに教えてもらおう、いや、せっかく騎士がいるんだからこっちに聞いてもいいか) 「で、話は戻るけど、ハーゲンティをどうするんだ。殺すか? サブナクに引き渡すか?」 何か甘いものが食べたい、と店員に頼んで持ってきてもらった桃のような果物を食べながら、一二三は改めて聞いた。 (......かわいい) 手が汚れないように少しずつ皮を剥きながらモクモクと果物を食べる一二三を見て、オリガは密かに思った。 カーシャの方は、普段の食事と違う大人しい食べ方に、違和感しか覚えなかった。 「私たちの仇は、やはり商人のベイレヴラです。そこへ近づく情報が得られるのであれば、この男をわざわざ殺す事も無いのではないかと」 もちろん、ご主人様の許しがあればですが、とオリガは言う。 「ふぅん」 「そういうわけで、ハーゲンティの身柄は僕に任せてもらえないだろうか」 再び頭を下げて頼み込むサブナクに、一二三はオリガたちの目に迷いがないことを確認してから、了承した。 「あ、ありがたい!」 「そのかわり、ちょっと手配して貰いたいことがある。まあ、俺の働きに対する報酬みたいなもんだと思ってもらっていい」 果物を食べ終わった一二三は、サブナクに席に戻るように促して、指を三本立てた。 「ひとつは、今残りの兵士どもが街の門へと殺到して状況を確認しているところだろうから、これを皆殺しにする。その後処理を頼む。ふたつ目は、領主館の2階に死体を転がしたままの、えっと......」 「ご主人様、ホーラントの魔法使いの件ですか?」 「そう、ホーラントの魔法使いを殺してそのままにしているから、そいつを調べてくれ。以前侯爵邸でも見た奴だから、パジョーも会ったことがある」 一二三の要求を取り出した羊皮紙にメモしていくサブナクは、書きながらストラスという名前を報告書で見たことがあるのを思い出した。パジョーが腕に怪我を負いながらも侯爵の密貿易の証拠を掴んだ件は、第三騎士隊ではしっかりと周知されている。 (あの事件には、彼が関わっていたのか、道理で。観察活動メインのパジョー先輩にしては、妙に勇ましい顛末だと思ったんだ......) サブナクの脳裏に、一二三に振り回されながら侯爵邸へ突撃する先輩騎士の姿がありありと浮かんだ。一歩間違えば子爵邸で再現されるところだったと、胸をなでおろす。 「それで、三つ目はなんですか?」 「騎士隊が把握しているこの国と周辺国の情勢を教えてくれ。ヴィシーに行く前に、やはりある程度は把握しておく必要はありそうだ」 「......それは、どこまでを?」 「全部だ。気楽な旅のつもりだったし、国々を直接見ながら覚えて行こうと思ったが、ここまで複雑に巻き込まれたらそうも言っていられないようだ」 ため息をつきながら首を振る一二三を見て、サブナクは諦めて全て飲む事にした。 「本当なら、もっとスマートに子爵を捕縛して、秘密裏に事を進めたかったんだけど......。仕方ないですね、応援を呼びますので数日はこの街に居ていただけますか?」 「ああ、その間に情報を教えてくれたらいい......あっ!」 「どうしたんだい、ご主人?」 「子爵邸の使用人に、ホールに集まっておくように言ってそのまんまだった......」 珍しく焦っている一二三に、オリガはクスリと笑ってサブナクに向き直った。 「サブナクさん、ご主人様の代わりに屋敷に行っていただけますか?」 「え、僕が?」 「そうだね、ご主人が行くと怖がられるだろうから、その方がいいかもね」 オリガの提案にカーシャも同意する。 自分の扱いが不満な一二三は、敵じゃないメイドには優しくしたと主張するが、誰も信じてくれなかった。 「わかった、僕が行こう。いずれにせよ街をまとめる必要もあるからね」 「すまない」 立ち上がるサブナクに、さらりと頭を下げる一二三。 「い、いや、これも仕事ですから!」 「では、サブナクが屋敷に行っている間に、他の兵士たちを始末しておくか」 結局、血なまぐさい話題から離れられなかったな、とサブナクは思った。 サブナクと別れた一二三たちが再び町の入口へ戻ると、5人の兵士たちが死体を片付けているところだった。 まだ距離がある所で立ち止まった一二三は、作業をしている連中を観察してみた。 「どう思う?」 「私とカーシャ二人であれば、充分余裕をもって殺せるでしょう」 (......いちおう、捕縛するか殺すかを聞こうと思ったんだけどな) こんな殺伐とした感じの子だったかな? と自分の事は棚に上げて心配になってきた一二三だった。 「じゃあ、二人に任せる」 「お任せを」 「よっし!」 気合を入れて兵士たちへ向かって駆け出す二人を見送って、一二三は奴隷への接し方について少し反省した。 「少しは、潤いのあるイベントも必要かな」 穏やかな瞳に映るのは、少女二人が生み出す惨劇の舞台だった。 それから数日、サブナクは緊急依頼を出して冒険者に町の警備や出入りの監視を依頼したり、死体と血液が散乱する町と屋敷の掃除を指揮したり、臨時の領主代行として街のあれこれの決裁をしたりと、息つく暇もなく働き詰めだった。 そのうえ、執務に利用している子爵邸にば毎日一二三が来ては、サブナクにあれこれと質問をしてくるので、さらに時間が無くなっていく。 一二三に着いてくるオリガとカーシャが屋敷の庭で訓練をしているので、そのまま雇用されている使用人たちは気が気ではない様子だ。 「来るなとは言いませんが、彼女たちが敷地内で訓練するのを遠慮させてもらえませんか......」 「勝手についてくるんだよ。気になるなら直接言えばいい」 「勝手にって......貴方の奴隷ですよね?」 「別に奴隷だからって一から十まで指示通りに動くわけじゃなし、何もかも言うとおりにしか動かないならこっちが疲れるわ。それに、最近は戦うことばかりだったから、街で羽を伸ばすように俺も言ったんだけどな」 人を簡単に殺す癖に、妙なところで優しい人だと、サブナクな毎日顔を合わせているうちに一二三に対して怖さより可笑しみを感じていた。こんなに歪んでいてこんなにわがままで、こんなに自由に振る舞う人を見たことがない。 「奴隷に慕われているんですね」 「そういうのとは、ちょっと違うと思うけどな。さあ、続きを教えてくれ」 地図を開きながら言う一二三の表情は、知識欲に突き動かされる少年のようで、サブナクは思わず笑みをこぼした。 王国オーソングランデは、その名の通りオーソングランデ王族が納める国で、典型的な貴族階級による封建制度によって統治されている。各地は規模は様々ながら子爵以上の貴族によって納められ、税制も最低限王国へ納める分以外は領主が自由に設定でき、それぞれ領軍など独自の兵力を有しているが、財力・兵力共に王族が圧倒的で、内乱は現在のところは特にないようだ。 国土の北側のみが海に面し、東西と南を他国の国境と接している。 東は商人の国ヴィシー。小規模な都市国家がそれぞれの代表による合議制を取る国家集合体となっている。商人の国と呼ばれるのは、国自体が魔道具や金属製品を他国に売りさばいて、その利益が国家予算のかなりの部分を占めることと、商業・産業が振興される都市国家が多いことから来ている。ちなみに、南側の山地は良質な金属が発掘できるうえ、多くのドワーフが住むため、ドワーフとの交流によって多くの商品を生み出せている事が大きな強みだ。 反対側の西側は、特に国境というものはなく、荒野や山地が広がる広大な土地に、多くの獣人が村を作って生活している。農耕の習慣が無く、主に狩りで生活をしているとされているが、人間が興味を持たず、単に忌避すべき種族としているため、詳しくはわかっていない。一二三は彼ら獣人族は“人間と敵対している”と聞いたし、彼ら“亜人と戦うため”に王女は一二三を召喚したのだが、サブナクの話を聞く限りでは、土地が欲しくてオーソングランデが一方的に攻め入っては、多種族のゲリラ戦に一方的に消耗し、最終的には疲弊して撤退するという事を繰り返しているようだ。 「意味のない事をやっているな」 「獣人族の土地を挟んで向こう側に、騎士の国と呼ばれる国があって、そことの土地の取り合いでもあるんです。あとは、荒野はともかく山地からは鉱石が取れる可能性がありますから、ヴィシーから一方的に買わされる状況から脱するには、あの土地が必要だと王は考えていたようです」 今となっては過去の話で、跡を継いだ王子はまだ若く判断力も無いし、代わりに国を取り仕切っている王女は、もはや外征には興味がないらしいと、騎士たちは思っている。 「南は?」 「魔法国ホーラントです」 ホーラントは一人の天才魔法使いが、弟子たちを集めて研究・修行をするために作った町から発展した国で、ヴィシーで製作されている魔法具の大半は、ホーラントで考案されたといわれている。中でも、武器として使える短剣を魔法杖としても使えるようにと改造された魔法剣は、ある程度の魔法使いには知られているが、製作法はヴィシーにも伝えられていないという。 ホーラントの西側にあり、少しだけオーソングランデと接している国がエルフの国だ。 「エルフ! やっぱりいるのか!」 「......ええ、いる事はいますが、まず会うことはないでしょう」 エルフの国は国土の大半が森林地帯となっていると言われ、エルフ自身はどこの国とも交流を持たず、肥沃で広大な森の奥にひっそりと暮らしている。森に侵入するよそ者は容赦なく攻撃されるうえ、オーソングランデもホーラントも幾度かは森の一部を奪おうと仕掛けたことがあるが、人族は森での戦闘に慣れておらず、木々の陰から不意に飛来する矢や、人族が使えない魔法に散々にやり込められて、これといった収穫も無く撤退している。 「とりあえずは、我が国の周辺国と状況はこういう感じという事で」 「助かった。ありがとうな」 「いえ、それより、明日もここへ来ていただけますか?」 立ち上がった一二三が理由を聞くと、サブナクは疲れた笑みを見せた。 「ようやく王都から応援が来ます。その中に、パジョー先輩がいるそうです。ストラスという男について、直接情報交換をされてはいかがかと思いまして」 「ゴデスラスが脱走したわ」 かなり急いで馬を走らせたらしいパジョーは、旧子爵邸で一二三を見つけると、息を切らせながら、あいさつもそこそこに状況を伝えた。 パジョーの説明によると、騎士団詰所の牢で処分を待っていたゴデスラスが、牢の見張りに残っていた同僚一人を殺害して姿を消したという。 「見張りに立っていた騎士は、首をねじ切られていたわ。鉄格子も曲げられていたし、人間の力じゃ不可能よ。凶悪な魔物に襲われて、ゴデスラスは食べられたと考える方が自然なくらいね」 しかし、パジョーの席が荒らされ、一二三に関する報告書が盗まれていることが判明し、ゴデスラス単独か、何者かの手引きによるものと騎士団は判断したという。 「ゴデスラスは誰かの手で解き放たれたと、私たちは見ているわ」 息を整え、報告を済ませたパジョーは、すっと背筋を伸ばして、一二三に深々と頭を下げた。 「今回は完全に私たちの失態です。貴方がせっかく私たちに自分たちの不始末を片付ける機会をくださったというのに、それを無にしただけでなく、貴方の情報まで奪われてしまった。この責任は、私にあります」 申し訳ありません、と頭を下げたまま微動だにしないパジョーを見て、一二三は笑った。 「謝ることはない。情報は隠そうとしてもいずれどこかから漏れるもんだ。それに、鉄格子をひん曲げる程の力を持った奴がいるかもしれないんだろう?」 顔を上げたパジョーの目に、侯爵邸で見た事がある冷たい笑みが見え、背筋が凍える。 「楽しみだなぁ。腕っ節に自信がある奴ほど、技を試すのに丁度いい相手はいないからな」 愉悦に歪む一二三の顔を見たその場の全員が、しばらくの間、口を開くことができなかった。

Chapter 18: New Divide Hifumi dropped Hagenti onto the floor, sat down and ordered tea from the waiter who was wearing a rather strained expression. [ V-Viscount Hagenti..... ] (Sabnak) Seeing Hifumi casually toss the Viscount on the floor, Sabnak was speechless. [ Did you kill him? ] [ No, he's just stunned. ] [ Is that so. ] Seeing that Hifumi did not see the situation as out of the ordinary, Sabnak couldn't help but tremble. The two women didn't think Hifumi's abduction of the Viscount in such a short time as wondrous. At this point, Sabnak completely understood the Princess' instructions of "Do not defy. " [ Then, is your discussion finished? ] [ To hell with that, what happened to Viscount Hagenti?! ] [ Ah, I entered through the second floor window, killed the magician who was present and brought him. ] Sabnak was unable to digest the answer. Disregarding Sabnak's lost expression, Hifumi explained. [ ......Hm, that dagger wielding magician seems to be from the country Horant. ] [ Pajou said something like that as well. ] [ I have heard that the magicians from Horant do not use staffs, but daggers specially processed with magic as a medium. ] Hifumi recalled that he had not learned about this country and its neighbours. I will have Origa and Kasha teach me about it tonight, no, now that this Knight is here, listening here is also fine. [So, Before we get back to the story; about Hagenti. Do you want to kill him? Or hand him over to Sabnak?] Hifumi wanted to eat something sweet, so he ordered something from the waiter, who brought him a peach like fruit to eat, and started listening to them once more. .......So cute Origa thought secretly, watching Hifumi peel and eat the fruit bit by bit to avoid getting his hands dirty. Kasha memorised the sight, different from the way her master usually ate. [ Our enmity is with the merchant Beirevura. If you obtain information that leads to him, killing this man specifically is unnecessary. ] Of course, Origa spoke after taking her master's permission. [ Fuuun~ ] [Would you give me custody of Hagenti himself? ] Requesting earnestly, Sabnak bowed down once again. Hifumi accepted the request after he confirmed that there was no hesitation in Origa and Kasha's eyes. [I, I'm really thankful! ] [Instead of saying that, I want you to arrange a little something for me. You can think of it as compensation for my work.] After Hifumi finished eating the fruit, he prompted Sabnak to sit down and held up three fingers. [ First, since the remaining soldiers rushed to the city gates to control the situation, I'm going to massacre them. I want a cleanup crew. Second, there are two dead bodies in the 2nd floor of the Viscount's mansion that I left behind so, let me see...... ] [ Master, is it in regards the magician from Horant? ] [ Yes, I killed the magician and just left the body there. I want you to investigate him, because I saw that guy at the Marquis' mansion, Pajou too. ] Sabnak wrote down Hifumi's demands on a piece of parchment. While writing the name 'Strauss', he remembered having seen the name before. Though Pajou's arm had been injured in the event, it had led to evidence of the Marquis's smuggling operation; this was a well known fact within the Third Knight Corps. No wonder, he was involved in that matter. I thought it was strange that the observing Pajou-senpai would be so valiant in those circumstances. A vivid image of Hifumi charging the Marquis's estate while dressed as a senior Knight suddenly rose up in Sabnak's mind. He heaved a sigh of relief at it not being the case at the Viscount's estate. [ And the third.....? ] [ Tell me everything the Third Knight Corps knows about the state of affairs in this country and the neighbouring one. It will be necessary to do so before going to Vichy. ] [ ......Um, to what extent? ] [ Everything. I had planned to travel carefreely and gather intelligence while touring the countries directly, but this seems to have become quite complicated. ] Seeing Hifumi sigh while shaking his head, Sabnak resigned himself to simply accepting all this. [ To tell the truth, I wanted to arrest the Viscount a little more smartly and secretly get things going in the background but....... Can't be helped, would you be willing to stay in town for a few days while I call for support? ] [ Hmm, in that time you can give me all the information you have on.....Ah! ] [ Master? What's wrong? ] [ I told the Viscount's servants to gather in the hall..... ] Seeing Hifumi's chagrined expression, Origa let slip a chuckle and turned to Sabnak. [ Sabnak, could you go to the Viscount's estate in place of Master? ] [ Eh, me? ] [ Indeed, because if master goes, everyone is likely to be scared shitless. ] Kasha agreed with Origa's proposal. The annoyed Hifumi insisted that he had been gentle with the non-adversary maid, but no one believed him. [ Got it, I will go. At any rate, putting the town in order is necessary. ] [ Sorry about that.] Hifumi smoothly inclined his head at Sabnak who had stood up. [ N-No, this too is my job! ] [ Then, while Sabnak is going to the estate, are there other soldiers that need to be dealt with? ] In the end, we still came back to a topic that reeks of blood. Separating from Sabnak, Hifumi and the two returned to the town entrance. Five soldiers were cleaning up the corpses. Coming to a halt a suitable distance away, Hifumi observed the working soldiers. [ What do you think? ] [ Kasha and I, just the two of us are enough to kill them with room to spare. ] (Origa) ....... I intended to ask them whether they wanted to kill or arrest, but... Was this girl always capable of such brutality? Hifumi was more concerned about her, conveniently blind to his own character. [ Well then, I'll leave it to you. ] [ Leave it to us. ] (Origa) [ Yoshi! ] (Kasha) Seeing off the fired-up duo and watching them run towards the soldiers, Hifumi contemplated on how to deal with slaves. [ Is this event beneficial as well, I wonder? ] His calm eyes reflected the tragedy orchestrated by the two girls. Several days after the event, Sabnak worked tirelessly; putting out an urgent request to the town guard to monitor the comings and goings of adventurers, and cleaning of the blood and bodies was begun under the command of the temporary acting lord of the area. Moreover, time flew when Hifumi visited the Viscount's estate everyday to ask Sabnak something or the other. When Hifumi arrived, Kasha and Origa trained in the garden of the mansion, the employed servants were worried. [ If I say not to come, would they refrain from training on the premises....? ] (Sabnak) [ Don't twist your words. If you're worried, say what you want to say directly.] (Hifumi) [ Twist my words...... They are your slaves,yes? ] [ Even if that's the case, without explicit instruction, they move yes? Telling them each and every move is tiresome. Anyway, because of the fights in town recently, I told them to let their hair down. ] Seeing his tender expression that contrasted with his everyday behaviour, and remembering his cheerful slaughtering of people, instead of amusement, Sabnak felt fear. He had never seen such a warped and selfish individual like this before. [ The slaves adore you. ] [ I think I'd use a different word. Come now, continue your instruction. ] Seeing Hifumi's expression while opening the map, Sabnak was moved by his desire to learn and unintentionally smiled. The kingdom of Orsongrande, as the name implied, was ruled by nobles in a model similar to the feudal system. It varied in different places depending on the nobles in charge. Apart from the amount that had to be paid to the kingdom, it could be freely set by the lord of the area. Only the northern side of the country faced the sea, it touched borders with other countries on the eastern, western and southern sides. To the east was the merchant country, Vichy. The country was run by a parliamentary system in which several city-states were represented by representatives in an assembly. Being called the merchant country, the country itself sold metal and manufactured goods in neighbouring countries, the profit formed a large part of the national budget. As a result, many city-states promoted commerce and industry. Incidentally, good quality metal could be excavated from it's southern mountainous area. A lot of dwarves lived there, so as to exchange and trade commodities made by the dwarves, it was a definite plus point. The western side did not exactly have a clearly defined border, the vast mountainous region was filled with wilderness over which were spread many beastmen villages. The custom of farming being nonexistent, it was said they lived off hunting, but no details were known. Humans weren't interested, simply avoiding the race as a whole. While Hifumi had heard they were "hostile to humans" when princess Imeraria had summoned him to "Fight the demi-humans", Sabnak had a different story to tell. Orsongrande one-sidedly invaded to get more land and were hit hard by the guerilla warfare used against them, became impoverished and withdrew. [ What a nonsensical affair. ] [ Beyond the beastmen land, there is a country known as the Knight country, they too want the land in question. After all, in the mountainous and wild areas, ores and crystals can potentially be mined. Currently we have no choice but to one-sidedly buy them from Vichy. To escape from this miserable state of affairs, the King seemed to have thought that that land was necessary.] In a past story, the prince who succeeded did not have appropriate judgement either, instead, the princess ruling the country now did not seem to be interested in the conquest any more, thought the Knights. [ The south? ] [ The magic country, Horant. ] A genius magician in Horant gathered apprentices to train and research for the country. Most of the magic tools produced by Vichy are designed by Horant. Also, making use of weapons like daggers as a magic wand is known to some magicians, but the production methods are not released by Vichy. On the west of Horant, sharing only a little bit of border with Orsongrande, is the country of elves. [ Elves! Elves exist! ] [ ...... Uh, yes. They exist, but meeting them is unlikely. ] It is said that most of the elves' country is heavily forested, and the elves live quietly in the depths of the forest, not interacting with other countries. Any stranger entering the forest is immediately attacked mercilessly; Orsongrande and Horant have tried several times to subjugate some of the forest, to no avail. Unfamiliar to forest warfare, with arrows unexpectedly flying in from the shadows among the trees, even the magicians could not fight properly, and had to retreat numerous times. [ For the time being, these are the state of affairs of our country and it's neighbours. ] (Sabnak) [ You saved my time. Thanks. ] magic [ Ah, apart from that, could you come here tomorrow? ] Listening to the tired-out Sabnak's reason, Hifumi smiled and stood up. [ At last reinforcements have come from the capital. It seems that Pajou senpai will be here as well. Regarding the man called Strauss, I believe she will give you the information directly. ] [ Gothras escaped. ] Pajou, who seemed to have ridden in considerable haste, found Hifumi in the Viscount's mansion. Out of breath, she cut her greetings short and explained the situation. According to Pajou's explanation, Gothras, who was awaiting punishment in the Knight Corps' prison, had killed a guard and disappeared. [ The Knight who was guarding him, his neck was snapped. The prison bars were bent, a feat of strength impossible for a human. ] However, Pajou's place was broken into, and the report related to Hifumi was stolen. Gothras could not be working alone, he had to be receiving some guidance, was the conclusion the Knight Corps reached. [ We believe that someone helped Gothras escape. ] Regaining her breath, Pajou finished reporting and straightened her spine. She bowed deeply to Hifumi. [ This incident was completely our blunder. You painstakingly gave us an opportunity to clear up our mismanagement, we not only wasted it, but as a result you are deprived of information. The responsibility is mine. ] Seeing her apologising with her head bowed and not moving an inch, Hifumi laughed. [ The apology is unnecessary. Even if the information is concealed, sometime, somewhere, it will be revealed. Besides, there might be a guy holding enough power to bend prison bars, yes? ] Looking up, Pajou's eyes met a cold smile, the same one she saw at the Marquis' estate. A chill went up her spine. [ Ah, joy. A fellow confident in their physical prowess, there's this technique I really want to try out....] Everyone froze seeing the expression of warped joy on Hifumi's face.

第45話 時間をしばらく遡る。 控え室でのことだ。 俺はリオ、イリス、メイファの三人を前にして、決勝戦での戦い方をレクチャーしていた。 「──ってわけで、ジェイクやドロシーはまだ何とかなるとして、問題は“剛剣”アドルフだ。はっきり言うが、こいつはお前ら三人のうちの誰よりも強い」 俺はそう言って、大会スケジュール冊子の裏紙に書いた「アドルフ」という名前に、ペンで丸を付けてみせる。 それを見た教え子たちは、みんな一様に難しい顔をした。 そのうちの一人、リオが少し不服そうに、口を尖らせて言う。 「でも兄ちゃん、そんなの実際にやってみなきゃ分かんなくね? 試合見てた感じ、あいつオレより速いって気はしなかったし」 「そうだな。敏捷性だけなら、俺もリオのほうが上だと思う」 「だったらさぁ」 「だが僅差だ。そして腕力と打たれ強さは、リオよりもアドルフのほうが格段に上。剣の技量もある。やれると思うならやってみるのは構わないが──そのあと、どうするかだ」 俺の言葉を聞いて、リオはぶーたれるように、口をへの字に曲げていた。 三人を見回す。 するとメイファが「......はい、お兄さん」と言って挙手をした。 指名してやると、メイファは名案を発表するような口ぶりで言う。 「......一対一で勝てないなら、三対一でやればいい。......ほかの二人をさっさと倒して、二人が加勢に入る。......それで、勝てる」 メイファは得意げに、ふふんと鼻を鳴らす。 しかしそれには、リオが不満そうに口を挟んだ。 「でも三人で一人を倒すのって、なんか勇者として卑怯じゃねぇ? 魔王相手ならともかく、相手も一応勇者だろ。なんかそれって、 「......そんなことない。......元々は三対三、何も卑怯じゃない」 「うん。リオの言ってるのも分かるけど、団体戦なんだし、そういうものだと思うな」 メイファとイリスに畳みかけられて、リオはまた面白くなさそうに口を尖らせる。 俺はそれを見て、ふと口元を綻ばせていた。 理屈としてはメイファやイリスの言うとおりだが、リオの真っ直ぐな気持ちも微笑ましい。 まだ納得がいかないという様子のリオが、俺に向かって聞いてくる。 「なあ、兄ちゃんはどう思う? 勇者が三対一って、卑怯だと思わねぇ?」 俺は少し考えてから、リオに向かって答えた。 「まあ......そうだな。卑怯に見えるかもしれないし、 「だろ!? ほーら見ろよ、兄ちゃんだってこう言ってんじゃん!」 得意げになるリオと、ムッとするメイファ。 イリスは「まあまあ」と言って二人をたしなめるポジションだ。 今度はメイファが、ぷーっと膨れた様子で俺に聞いてくる。 「......じゃあ、どうやって勝つの、お兄さん。......三対三でまとまって戦ったって、三人同時に倒さなきゃ、どうせ最後には一人になる。......そんなことまで気にして、戦っていられない」 フィーリングで物事を捉えがちなリオと比べて、メイファは理屈屋だ。 言っていることは、ほぼ全面的に正論。 俺は今度は、メイファに向かって答える。 「いや、メイファの言うとおりだと思うぞ。勝つためには、ほかの二人を先に倒して三人がかりでアドルフを相手にするのが最良なんじゃないか?」 「......??? ......お兄さん、そういう二枚舌は、どうかと思う。......リオにはリオが正しいって言って、ボクにはボクが正しいって言うのは、ズルい」 メイファが怪訝そうな顔で、俺を見つめてくる。 つぶらな瞳で真っ直ぐに見つめられると、なんかいつも以上に可愛さを感じるな。 俺はそんなメイファの頭に手を乗せ、わしわしとなでてやる。 「よしよし。メイファは賢いな」 「......ふにゅっ。......お兄さん、そういう誤魔化しも、ボクはどうかと思う」 メイファが頬を染めながらも、恨みがましそうな上目遣いで俺を見上げてきた。 げろげろに可愛い。 さておき俺は、メイファをなでながら言葉を返す。 「いや、誤魔化したつもりも、二枚舌を使ったつもりもないぞ。俺は、少しでも卑怯な勇者になるのが嫌ならリオの言ったとおりにすればいいし、勝ちたいならメイファの言うとおりにすればいいって、そう言ったんだ。何もおかしくないだろ?」 今度はリオ、イリス、メイファの三人ともが首を傾げた。 少し考えこんでから、イリスが聞いてくる。 「いや? 俺はお前たちが、どっちでも好きなほうを選べばいいって思ってる」 「ええ......? 先生、言ってる意味が分かりません。じゃあ、負けたほうがいいってことですか?」 「お前たちがそうしたいんならな」 「んんんんっ......! うあああっ、もう、先生が何を言いたいんだか分かんないよぉ!」 イリスが頭を抱えて悶絶した。 俺はハハハと笑って、イリスの頭をなでてやる。 イリスは「はうぅ......」と言って、顔を赤くして小っちゃくなってしまった。 俺はイリスを解放してから、三人に向かって言う。 「どの道を選んだって望む結果全部を得られないってときはあるってことだよ。そういうときは、何を選ぶのかを自分たちで決めて、その結果を引き受けるしかない。三人で話し合って、どうするか決めてくれ。ここまで来たら、もう俺は口出ししないからさ」 そう言って、俺はあとのことは三人の決断に任せた。 ちなみにサイラスとの勝負のことは伏せておいた。 サイラスとの勝負の内容は、俺の教え子たちが優勝したら、王都復帰でも何でも好きな望みを聞いてやる、ただし結果が出せなければ覚悟しておけよ──だったか。 まあサイラスのやつが律儀に約束を守るともあまり思えないし、それでなくても、三人の決断に俺の事情を混ぜたくはないんだよな。 俺はもう──何となくだけど、満足していた。 こいつらをここまで連れてこられただけで、だいぶ満足だ。 もう俺がいなくてもこいつらは生きていけるだろうし、俺が教えられることもだいたい教え切った......と思う。 最初はこいつらが世界最強の勇者になるところまで俺の手で育てたいと思っていたが── 十歳も年下の少女たちに、目の前で自分の実力を凌駕されてなおいっぱしの教師面をしていられる自信はあまりないってことに、俺は最近気付きつつあって。 嫉妬ってことはないにせよ、卑屈にぐらいはなっちまいそうだ。 天賦の才能の差ってものに、天に向かって恨み言の一つも言いたくなるだろう。 まあ、なんていうか......今手を離せば、こいつらの心の中で俺は一生「尊敬する先生」でいられるんだろうなって、そういう浅ましさみたいなもんが俺の中にあるわけで。 いずれにせよ。 あとはこいつら自身の足で、自分の人生を歩いて行けばいいと思う。 そのために、自分の足で歩くための方法を、最後に教えておきたかった──と、まあそんなところだ。 ──そして、その後。 話し合いを終えた三人は、決勝戦へと向かった。 三人がどう戦うつもりなのかは、俺はあえて聞かなかった。 三人の決断を、実戦で見せてもらおうと思った。

45 Episode 45 Go back in time for a while. It's in the back room. I was in front of three guys, Rio, Illis and Mayfa, lecturing them on how to fight in the finals. "- So as Jake and Dorothy can still work it out, the problem is" Rigid Sword "Adolf. Clearly, this guy is stronger than any of you three." That's what I said, I'll put a pen round the name "Adolph" on the back of the tournament schedule booklet. The godchildren who saw it all looked equally difficult. One of them, Rio says with a slight discontent, pointing his mouth. "But, brother, you have to actually try that, don't you? I didn't feel like he was faster than me watching the game." "Right. If it's just agility, I think Rio is better." "Then come on." "But it's only a small difference. And arm strength and battered strength are extraordinarily higher in Adolf than in Rio. I also have the skill of a sword. If you think you can do it, I don't care what you do." He listened to my words and bent his mouth to the letter to Rio Habu. Look around the three of them. Then Mayfa said "... yes, brother" and raised her hand. When I nominate him, Mayfa says in a mouthful like announcing her name proposal. "... If you can't win one-on-one, you can do it three-on-one.... Just knock the other two out and the two of them will join the ranks. ... so you can win" Mayfa is good at it, humming her nose. But to that, Rio pinched his mouth in dissatisfaction. "But defeating one of the three isn't cowardice as some kind of brave man? Whatever the demon king's opponent is, he's also a brave man. I think that's against the spirit of bravery. So we're no different from them, are we? "... that's not true.... originally three to three, nothing is cowardly" "Yeah. I know what Rio's talking about, but it's a team fight, and don't think that's what it's all about" Sprinkled by Mayfa and Illis, Rio pointing his mouth at it again as if it didn't seem funny. I saw it, and I was blowing my mouth off. As a matter of reason, Mayfa and Illis are right, but Rio's upright feelings are also smiling. Rio asks me how I'm still not convinced. "Hey, what do you think of your brother? Don't you think it's cowardly that brave men are three-on-one? I thought about it for a moment and then I answered to Rio. "Well...... right. It may seem dastardly, and if I say it's against the spirit of bravery (bravership), it might be, depending on the way you think. If you don't want to be a cowardly brave man, you might want to stop thinking about knocking him down three on one." "Right!? Look, even your brother said this! Rio to be good at and Muffy Mayfa. Ilis is in a position to flatter both of us by saying "Fair enough". Now Mayfa asks me how swollen she is. "... then how do you win, brother?... I fought three to three together, and I have to knock them out at the same time, I'll be alone at the end of the day anyway.... I don't care about that, I can't fight" Mayfa is a rationalist compared to Rio, who tends to capture things in filling. What you're saying is almost entirely true. Now I answer to Mayfa. "No, I think Mayfa's right. Wouldn't it be best to beat the other two first and deal with Adolph for three? ...... ... brother, I don't know about those two tongues.... telling Rio that Rio is right and I'm right is cheating " Mayfa looks surprised, and she stares at me. Don't feel cuter than usual when you can stare straight in the eyes. I put my hand on Mayfa's head like that, and I'll do it with me. "All right, all right. Mayfa's smart." "... fuuuuuu.... brother, I don't know about that kind of deception" Mayfa dyed her cheeks, but she looked up at me with a grudge. She's cute. Besides, I'll give Mayfa back her words while she's at it. "No, I didn't mean to delude you, I didn't mean to use two tongues. That's what I said, if you don't like being a little dastardly brave, you can do what Rio said, and if you want to win, you can do what Mayfa said. Nothing's wrong with you, is it? Now all three, Rio, Iris and Mayfa, tilted their necks. Think about it for a second, and then Ilis will listen. "No? I think you guys should choose whichever you want." "Yeah......? Doctor, I don't know what you're talking about. So you're saying we should lose? "If that's what you want." "Mmmm......! Uh-oh, I don't know what the teacher wants to say anymore! Ilis held his head and smothered. I laugh hahahaha and do the head of Illis. Iris said, "Ha ha..." and turned red on his face and got smaller. I say to the three of you after I release Illis. "Sometimes it means you can't get all the results you want, which way you chose. In that case, we have to decide for ourselves what to choose and take on the consequences. The three of us discuss it and decide what to do. When I get here, I won't talk anymore." That said, I left the rest to the three of us. By the way, I lay low about my battle with Cyrus. The contents of my battle with Cyrus is that if my godchildren win, I will ask them what they want when they return to King's Landing, but if they don't get results, be prepared. Well, I don't really think the Cyrus one keeps his word to discipline, and even if it isn't, you don't want to mix my circumstances with the decision of the three of us. I'm already... I'm not sure, but I was happy. I'm a lot satisfied they just brought these guys this far. I think these guys will be able to live without me anymore, and I've more or less taught them what I can teach them... At first, I wanted to raise these guys with my hands until they became the strongest braves in the world. I've been noticing lately that I don't have much confidence in the teenage girls to be a teacher full of people who haven't outdone their strengths in front of me. Even if it's not jealous, it's going to be humiliating. You'll also want to say one of your grudges toward heaven about what is the difference in talent. Well, I don't know... if I let go of my hand now, I guess I'll be a "respected teacher" in these guys' minds for the rest of my life, so it's kind of shallow in me. Either way. And then there's these guys' own feet, and I think I just need to walk away with my life. For that reason, I wanted to tell you the last thing I know about how to walk on my own feet. - And then. After finishing the discussion, the three headed to the final. I didn't dare ask how the three of them were going to fight. I wanted them to show me their decisions in action.

第40話 試合が始まった。 相手校の三人の男子生徒たちは剣、槍、斧といった思い思いの木製武器を手に、リオたちを威嚇するように見下し、睨みつける。 「......おい、田舎女ども。こっちが優しく接してやったらつけあがりやがって。舐めてんのか、ああ?」 三人のリーダーらしき男子生徒は、剣を肩に担いだ姿勢で啖呵を切る。 勇者というか、ただのチンピラだなありゃ。 しかし相手校は確か、最強新人勇者決定戦に毎年出場しているぐらいの強豪校だ。 その中でレギュラーを勝ち取ったのなら、人格はともかく、実力はかなりのもののはず。 なのだが── あいつ試合始まって余裕ぶっこいてるけど、あの位置はすでにリオの間合いなんだけどな......。 リオたちも、実力隠すの結構うまくなったからなぁ。 「おーい、リオ。分かってないみたいだから、一発挨拶してやれ」 「うん、分かった兄ちゃん」 リオは俺の声にそう答えると── ──ヒュッ。 一瞬だけ身を沈めてから、風のように動いた。 それを見た相手校のリーダー格が、目を丸くして慌てる。 「は......? あ、あいつ、どこに消え──」 「目の前だよバーカ」 リオはあっという間に、相手の懐に飛び込んでいた。 「なっ......!?」 きょろきょろと周囲を探していた相手選手は、いつの間にか眼下にいたリオを見てぎょっとした様子だ。 まあ厳密にはリオも直進したわけじゃなくて、一度横手、斜め前方に走って相手の視界から逃がれての移動なので、周囲を探したのも完全な見当違いではないんだが。 でもそれがコンマ二秒も遅いんじゃ、まったく意味がないんだよな。 「じゃ、挨拶ってことで──【二段切り】!」 「ぐわあああああっ!」 ズババッ! リオの木剣が二度閃くと、相手の体が数メートル吹き飛んだ。 そのままグラウンドの地面をごろごろと転がって、止まる。 そして── ビーッ、ビーッ! グラウンドに横たわった相手の体から、警告音が鳴り響いた。 『ノックアウト。ノックアウト。被ダメージが規定値をオーバーしました。退場です』 それは、あの男子生徒が装着した魔道具が発した魔導音声だった。 最強新人勇者決定戦では、装着者の肉体が一定以上のダメージを受けるとこの音声が発信され、その生徒は敗退となる。 「「「へっ......?」」」 それに驚きの声を上げたのは、相手校の残る男子生徒二人と、もう一人。 攻撃を仕掛けたリオ本人だった。 ちなみに観客席も、おおむね静まりかえっている。 何が起こったのか、見ていた人たちも認識が追い付いていないという様子だ。 「えっ......ちょ、ちょっと待って兄ちゃん。これで終わりなの?」 リオは俺のほうに振り向いて聞いてくる。 相当意外だったようだ。 俺はリオに答えてやる。 「おう。もしリオが本物の剣を使っていたら、相手は今の一手で戦闘不能になってる。そういうダメージだよ」 「え、でも......マジで?」 なお実際には、相手選手は「痛ってぇ......」などと言って頭を振って起き上がろうとしているが、それはリオが使っているのが模擬戦用の木剣だからだ。 大会で選手が装着する魔道具は、選手たちの安全を確保しつつ。なるべく実戦をそのままシミュレートできるように設定されている。 これが真剣を使った実戦なら、リオが放った【二段切り】のダメージは相手勇者の打たれ強さを一瞬で突破して、即座に戦闘不能に追い込んでいたことだろう。 そして、そのときようやく観客席も湧き上がり始めた。 ワーワーと、大興奮の歓声が巻き起こる。 俺は、自身の力に呆然として立ち尽くしているリオに、再び声をかける。 「リオ。まだ二人残ってるぞ。油断しすぎてやられるなよ」 「う、うん。分かった兄ちゃん」 リオは気を取り直して、残りの二人と向き合った。 一方で気を取り直せないのは、相手方の残る二人の男子生徒だった。 「な......なんだったんだ、今の......」 「魔道具の、故障か......?」 「......お、おおおおっ、それだよそれ。じゃなきゃランドルのやつが田舎勇者の【二段切り】一発でノックアウトなんて、あるわけがねぇし」 「でも、あの田舎女......動きも信じられないぐらい速かった気がするけど......」 「速いだけなら、魔法で撃ち落としゃいいんだよ! 見てろ──食らいやがれ、【 ボッ、ボッ! 二つの火の玉が片方の男子生徒の周囲に浮かび、それがリオに向かって発射された。 】は──というより攻撃魔法全般の話だが──弓矢並みの高速の投射速度に加えて、緩やかな追尾性能まで持っているため、一般に武器攻撃よりも命中する確率は高めになる。 だから「敏捷性が高い相手には魔法で攻撃」というのは、戦術としては一応正しい。 ただ、問題は── そういう細かな戦術って、「実力差が圧倒的な場合」には、あんまり意味ないんだよな。 「──よっと」 】が自分に命中する直前のタイミングに素早く横手に跳んで、飛んできた二つの火炎弾を難なくかわしていた。 緩やかな追尾性能ぐらいは、あってなきが如しである。 トンと、軽やかに着地したリオがつぶやく。 「こんなもんか。この弾速で、しかもたった二連だと、【ディフレクション】とか全然必要ねぇな」 ちなみに【ディフレクション】というのは、敵が放った射撃攻撃や魔法攻撃を、勇者の闘気をまとわせた武器で弾く技だ。 イリスやメイファを相手にした模擬戦ではリオが頻繁に使う技なのだが、そもそも通常の回避で事が足りてしまえば必要がない。 「そ、そんな......魔法でも、あんなにあっさり......速すぎるだろ......田舎勇者が、どうしてこんな......!?」 もう一人の男子生徒が、今度は風属性の魔法を放ってくる。 黄緑色の魔力で薄く色づいた風が二陣、リオを切り裂こうと襲い掛かる。 だが、それも── 「だから、当たんねぇって」 リオはひょいと、横っ飛びで軽々回避してしまう。 まるで歯牙にもかけないという動きだ。 「なっ......あ......そん、な......」 】まで、一発も当たらないなんて......そんな、バカな......」 驚愕のまなざしでリオを見つめる二人の男子生徒。 それに対してリオは、んーっと考える仕草をして、次に後ろへと振り返った。 「......心得た」 リオは戦いを、メイファへとバトンタッチした。 メイファは一歩前に出て、魔力を高めていく。 小柄な少女の全身から、薄く輝く魔力がゆらゆらと立ち昇った。 メイファがそう言って、右手を開いて前に突き出すと── ──ボッボッボッボッボッ。 メイファの右手の周囲に五つの火の玉が生まれ、それがぐるぐると回り始めた。 ちなみにメイファのやつはノリで「究極奥義」とか言っているが、その実態は何の変哲もない普通の初級攻撃魔法である。 ぐるぐる回っているのは、ちょっとコントロールが巧くなったせいでメイファが変な演出をしているだけだ。 】が......五連!? 魔力どんだけだよ!?」 「う、うそだろ......!? ちょっと待て、ストップ、ストップ! 降参す──」 「......ふっ。恨むなら、己が下品さを恨むがいい。......えいっ」 「「ぐわわわーっ!?」」 メイファの可愛らしい声とともに放たれた火炎弾は、二人の男子生徒たちに高速で降り注いで、白煙を巻き起こした。 やがてその煙がやむと、そこにはぷすぷすといい感じに焼き上がった少年たちの姿が。 ちなみに、そのうち一人からは「ノックアウト」の音声が鳴っていたが、もう一人は辛うじてダメージが規定値に達していないようで、よろよろと立ち上がろうとしていた。 と、そこに── イリスが疑問符の付いた声とともに放った木矢が当たって、最後の一人が跳ねとんだ。 ばたりと倒れ込んで、「ノックアウト」の魔導音声が鳴り響いた。 「し、試合終了! 勝者、リット村勇者学院!」 審判の判定の声とともに、大歓声が巻き起こる。 それらの声は間違いなく、リオ、イリス、メイファの三人を称賛していた。 が、当のリオたちはというと、俺のもとに戻ってきて、しきりに首をひねる。 「えっと......兄ちゃん、本当にこれでいいの?」 「なんだか思っていたより、すごく弱かった気がするんですけど......」 「......というか、相手が弱すぎて、戦いになってない」 三人とも欲求不満、不完全燃焼という様子だった。 だがその三人の様子を見て、俺は一人ほくそ笑む。 ふっふっふ......そうだろう、そうだろう。 だが、それでいいんだ。 あと、これは言っておかないとな。 「リオ、イリス、メイファ。一つ大事なことを言っておくぞ」 「相手が弱いんじゃない。──お前らが強すぎるんだよ」 俺はニッと笑って三人にそう言ってやった。 でも三人とも、いまいち釈然としないという様子で首を傾げた。 ダメかー、伝わらないかー。 ......いや、まあ、そうな。 このおよそ一年間の訓練中、三人が出会う勇者と言えばプロの魔王ハンターの中でもベテラン勢ばっかりで、学生レベルとか見てこなかったもんな。 俺は首を傾げる三人を引っ張って、控え室に戻っていく。 とりあえず、次行ってみよう。

40 Episode 40 The game started. The three boys at the other school look down and stare at Rio and threaten them with thoughtful wooden weapons such as swords, spears, and axes. "... hey country women. If this one treats you nicely, follow me. You're licking it, huh? The three leader-like male students cut each other with a sword on their shoulders. Brave guy, or just a dick. That. But the other school is definitely as powerful as the one that competes in the strongest rookie brave decision every year. If you won the regulars in it, your personality, whatever it is, your strength should be considerable. But... He's got plenty of room to spare when the game starts, but that position is already in Rio's time... Rio and the others are pretty good at hiding their strengths. "Hey, Rio. You don't seem to understand, so say hello one shot." "Yeah, okay, brother" When Rio answers my voice like that... - - Huh. I sank myself only for a moment and then moved like the wind. The other school leader who sees it panics with his eyes round. "Is...? Oh, where did he disappear..." "Right in front of you, Barca." Rio was quickly, jumping into their nostalgia. "Become...!? The opponent, who was searching for his surroundings for a moment, looked a little at Rio, who was under his eyes at some point. Well, technically, Rio didn't go straight either, but once he ran laterally, diagonally forward and escaped from his opponent's sight, it wasn't a complete mistake to look around. But that's a comma. It's two seconds slow, so it doesn't make any sense. "Well, by saying hello, I mean... [binary chopping]! "Whoa, whoa!" Zubaba! When Rio's wooden sword flashed twice, his opponent's body blew up for a few meters. Keep rolling through the ground, stopping. And... Beep, beep! From the other person's body lying on the ground, a warning sound rang. "Knockout. Knockout. Damage taken has exceeded the specified value. Exit. ' That was the demonic guidance audio emitted by the demonic props worn by that boy student. In the strongest newcomer brave decisive battle, this audio is emitted when the wearer's flesh takes more than a certain amount of damage, and the student loses. "" "Heh...? And the two remaining boys at the other school and the other one raised their surprise. It was Rio himself who launched the attack. The audience, by the way, is largely quiet. What happened is that the people who were watching aren't on the lookout either. "What... Wait a minute, brother. Is that it? Rio turns to me and asks. It seemed rather unexpected. I'll answer Rio. "Oops. If Rio had used a real sword, the opponent would be rendered incapable of fighting with one hand now. That's the damage." "Oh, but... seriously? In fact, the opponent is about to get up shaking his head by saying, "It hurts..." etc, but that's because Rio is using a wooden sword for mock warfare. The magic equipment worn by athletes at the tournament ensures the safety of the athletes. It is set to simulate the actual battle as much as possible. If this was a real fight with seriousness, the [bunk cut] damage that Rio had unleashed would have instantly pushed the opponent's brave man through his battered strength and instantly out of combat. And that's when the audience finally started to gush up, too. Warwer and a cheer of great excitement ensues. I speak again to Rio, who is stunned by his power. "Rio. There's still two of us left. Don't be too alarmed." "Ugh, yeah. Okay, brother." Rio regained his mind and faced the other two. On the other hand, the two remaining male students on the other side were unable to regain their minds. "hey... what was that, now..." "Of demonic props, a malfunction...? "... oh, whoa, that's it. Otherwise, there's no way the Randall guy's going to knock out a country brave man's [bunk cut] shot." "But that country woman... I think she moved incredibly fast too..." "If it's just fast, you can magically shoot it off! Look at this. - Eat it, you flaming arrow!" Bo, bo! Two fireballs floated around one male student, which fired towards Rio. [Firebolt] is more about attack magic in general than - but - because it has even a slow tracking performance in addition to the high projection speed of the arrow-like bow, it generally has a higher chance of hitting than a weapon attack. So "Magic attacks on highly agile opponents" is right for once as a tactic. But the thing is... That kind of fine tactic doesn't really mean "if the power difference is overwhelming," does it? "- Oops." Rio quickly jumped sideways at the timing just before the [Fire Arrow (Firebolt)] hit him, without difficulty removing the two flamethrows that had flown. Slow tracking performance is as good as none. Tons and lightly landed Rio crush. "Is this it? With this bullet speed, and only two in a row, you don't need [difflection] or anything at all." By the way, [difflection] is a move that plays shooting and magic attacks unleashed by an enemy with a weapon that sums up the brave man's fighting spirit. Rio's frequent moves in mock warfare against Illis and Mayfa are unnecessary if the usual circumvention is sufficient in the first place. "Oh no... magic, but so light... you're too fast... how could a country brave man be like this...!? Another boy student now unleashes the magic of the wind attribute. Two lightly tinted winds with yellow-green magic strike to rip Rio apart. But it's also... "So I guess not." Rio hits and gently dodges by flying. It's like not even putting it on your teeth. "Become... ah... you know..." "I can't believe I didn't hit a single shot until [Wind Blade (Windcutter)]... that's stupid..." Two male students staring at Rio in amazement. In contrast, Rio did his best to think and then looked back. "... I got it" Rio baton touched the fight to Mayfa. Mayfa steps forward and increases her magic. From the whole body of the little girl, the thin, shining magic rose every inch. That's what Mayfa said when she opened her right hand and stuck it out front... - - Bobby, bobby, bobby. Five fireballs arose around Mayfa's right hand, and it began to circle. By the way, the Mayfa one says "ultimate depth" or something in Nori, but the reality of it is normal primary attack magic with no philosophy whatsoever. The only thing going around is that Mayfa's acting weird because of the slightly more ingenious control. "What......!? [Fire Arrow (Firebolt)] but...... five series!? How much magic do you have? "Ugh, you're lying......!? Wait, stop, stop! Surrender..." "... Huh. If you resent me, resent me for being nasty....... eh" "" Wha!? The flamebullet released along with Mayfa's adorable voice poured down fast on the two boys students, causing white smoke. Eventually when that smoke stops, there's a look at the boys baked in a puffy way. Incidentally, from one of them, the "knockout" audio was ringing, but the other was trying to stand up hard and the damage didn't seem to reach the prescribed value. And there 's-- The last one jumped when the tree arrow that Illis unleashed along with his question-marked voice hit him. Falling in with a buckwheat, the "knockout" demon-guided audio rang. "And the game is over! Winner, Lit Village College of the Brave! Along with the voice of the judgment of the referee, a great cheer rolls up. Those voices undoubtedly praised three: Rio, Illis and Mayfa. but the Rio's of the day, they come back to me and twist their necks tight. "Uh... brother, are you sure this is okay? "I feel so weaker than I thought..." "... or the opponent is too weak to be in a fight" All three of them seemed insatiable, incomplete burning. But seeing as how those three are doing, I laugh one damn time. Ha-ha-ha... I guess so, I guess so. But that's fine. And I have to tell you this. "Rio, Illis, Mayfa. Let me tell you something important." "They're not weak. - You guys are too strong." I laughed and told the three of them that. But all three of them tilted their necks in such a way that they were not so sure. Can't you, can you pass it on? ... No, well, yeah. During this roughly one year of training, when it comes to the brave men the three meet, they're all veterans among the professional Demon King hunters, and they haven't seen the student level or anything. I pull the three people who tilt my neck and go back to the modem. In the meantime, let's go next.

第109話 ドラゴンからの許可を得ることさえできれば、月鉱石を採掘するのは、そう難しいことではなかった。 ドワーフの武具職人ガルドンから教えてもらっていた採掘場は、丘陵地帯の入り口付近にある洞窟だ。 ドラゴンの棲み処と比べると遥かに狭い、人間サイズの洞窟。 俺たちはそこに、【 天然の洞窟をしばらく進んでいくと、やがて特徴的な地形に行き当たった。 「うわぁ、綺麗......!」 俺の隣で、イリスが感嘆の声をあげる。 リオとメイファ、それに 洞窟を進んだ先にあったその場所は、ちょっとした広間だった。 特徴的なのは、その広間の天井から上に向かって縦穴が伸びており、外と繋がる空洞ができていること。 その空洞を通して、外から柔らかな月光が、洞窟内の地面や壁へと降り注いでいた。 月光を受けた壁や地面の一部は、キラキラと輝いている。 その場所を発見した俺は、まず【 すると月光を遮って光が届かなくなったにも関わらず、壁や床に淡い光を自ら放っている部分がいくつか発見できた。 これこそがまさに月鉱石だ。 この鉱石は長い月日をかけて月の光を吸収し、その内部に魔力を蓄えるのだという。 『これが月鉱石なんすね。──けど周りの壁とか、ホント硬いっすよ。獣化したうちの爪は鉄板でも引き裂けるんすけど、それでも全然歯が立たないっす』 姿のウルが月鉱石を掘り出そうとして、その周囲の壁に爪を立てるが、岩石が硬く、カチンと弾かれて爪が通らないようだった。 ガルドンから聞いた話によると、月鉱石の採掘には特殊な採掘具が必要で、今はその道具は手に入りにくいということだった。 しかしその点に関しては、俺はあまり心配していない。 俺はリオに声をかける。 「よし──やるぞ、リオ」 「あいよ、兄ちゃん♪」 俺とリオはそれぞれ剣を抜き、別の月鉱石の前で、それを構える。 そして勇者の闘気を剣に流し込むと、同時に技を放った。 「「──【月光剣】!」」 キィンと二筋の剣閃が奔り、俺とリオの剣はそれぞれ、月鉱石の周囲の岩石をあっさりと断ち切っていた。 物質の硬度を半ばまで無視する【月光剣】なら、このぐらいの硬さの岩石はものともしない。 俺とリオはさらに【月光剣】を何度か放つことで、各一個ずつ、月鉱石を掘り出すことに成功する。 それを見ていたウルは、驚いたという様子で目を丸くしていた。 『ゆ、勇者って凄いんすね......。あの技、どんな硬い物でも真っ二つにしちまいそうっす......』 「ウルちゃん、【月光剣】は勇者だからって、誰でもできるわけじゃないんだよ。これが使えるのは、剣技に長けた勇者の中でもごくごく一握りの人だけなんだから」 イリスが人差し指を立てて、自慢げにそう説明する。 それは【月光剣】を教えてくれた教師、セシリアが言っていた話の受け売りなのだが、イリスがそれを我が事のように誇らしげに語っているのが可愛らしい。 対してウルは、『ふんふん、そうなんすか。勇者の世界にも格の違いとかあるんすねぇ』などと、しきりにうなずきながら聞いていた。 その一方で、メイファもまた── などと言って、一人でうんうんとうなずいていた。 ともあれそんな感じで、俺とリオは手分けをして、月鉱石を次々と採掘していく。 するとそれを見たウルが、ふと疑問の声をあげた。 『あれ......? 月鉱石って、一個あればいいんじゃないんすか?』 「ああ。遮光の首飾りを一つ作るには、このサイズの月鉱石なら一個あれば十分みたいだけどな。ただ俺たちちょっと、お金が要りようなんだよ。ラヴィルトンにはリオたち三人の装備を買いにきたんだが、手持ちが少し心許なくてな」 ガルドンから聞いたところによると、月鉱石は採れたなら採れたでまぁまぁ需要はあるらしいので、街に持って帰れば採掘した分だけ売ってお金に変えることができるはずだ。 だがそれを聞いたウルは、慌ててこんなことを言う。 「えぇえええっ、そうだったんすか!? ていうか、そんな中でうちの手伝いをしてくれてたんすか!? ──だ、だったらドラゴンさんからもらったさっきの財宝、うちが受け取っちゃダメじゃないっすか! うちはそんな大金があっても使い道ないし、これはブレットさんたちが受け取ってくださいっす!」 ウルはドラゴンから受け取った財宝が入った布袋を、俺に向かって差し出してきた。 俺はそれを見て、固まってしまう。 いや、実は正直なところ、この財宝は喉から手が出るほど欲しかったのはあるんだよな......。 このドラゴンの財宝をラヴィルトンで売れば、大金貨数十枚単位の大金が手に入るのは間違いなく、それだけあれば教え子たちの装備購入のための予算はだいぶ豪華になる。 しかし、ドラゴンはウルにあれを渡したのだし、それを横取りするわけにもいかないなと思っていたのだが......。 俺はつい欲が出て、そう言ってしまった。 これが世知にまみれた残念な大人の姿である。 「当たり前っすよ。もともとブレットさんたちがいなかったら、なかったはずのものっす。それにうちは、ブレットさんやリオちゃんたちから、もうたくさんのものをもらってるっす。──これだけでも、せめて受け取ってくださいっす!」 そう言ってウルがもう一度差し出してくるので、俺は「そ、そうか。じゃあ、ありがたく」などと言って、布袋をひょいと奪ってしまった。 先生、お金の誘惑には勝てなかったよ......。 いや、うん。 お金は大事だ。 お金のために見境がなくなってしまうのがアレなだけで。 それに、そう。 ウルの手助けをした分の正当な対価を受け取っているのだと思えば、問題はないという見方もできなくもない。 ウルもハッピーで、俺たちもハッピー。 情けは人のためならずってやつだな。 悪い大人が自己正当化しているようにも思えるのは、きっと気のせいだろう、うん。 しかし正当な対価といえば、遮光の首飾りを作ってくれるガルドンにも、正当な対価は支払ってやりたいところだ。 あと向こうが勝手に言い出したこととはいえ、リオたちの専用防具のデザインをしてくれるっていうリゼルにも、物を受け取るのであれば正当な代価は支払いたい。 その辺りも少し考えておくべきだな。 何をするにしてもお金は大事だ。 稼げるときには稼いでおこう。 そんなわけで、ウルからドラゴンの財宝を受け取ったにも関わらず、俺たちは月鉱石もちゃっかりしっかり持ち帰れるだけ採掘して、ラヴィルトンの街へと帰還した。 そして夜分遅くだが、ガルドン武具店へと向かって、その家の扉を叩く。 住居と店舗が同じ建物内なので、戸を叩けばガルドンは二階から降りてきて、俺たちを出迎えてくれた。 「おお、月鉱石を採ってきたか! よし、あとはワシに任せろ。なんとしてでも必ず、『遮光の首飾り』を完成してみせよう。......そのアイドルライブというのは確か、次の週末、満月の夜だったな?」 「はい。あと一週間もないですけど、いけそうですか?」 「やってみなければ分からん、というのが正直なところだな。だがドワーフに二言はない。やってみせると言ったからには、やってみせるわい」 そう言ってガルドンは、ニッと口元を吊り上がらせる。 ともあれ、こうして一つの課題が片付いた。 ウルたちが出場する予定のアイドルライブがある満月の夜までは、あと六日だ。 最低限、やるべきことはやり切ったと思う。 あとは本番に備えて、リオたちが歌や踊りの練習をすることぐらいか。 素人ライブとはいえ、ウルがあのレベルだ。 付け焼刃にせよ、うちの子たちも最低限の練習はしたほうがいいだろう。 このラヴィルトンには教え子たちの武具を買いにきたはずなのに、どうしてこうなったという気もするが......リオたちもやる気だし、何事も経験だ。 そんなわけで俺は、あとは教え子たちの動向を見守ることにしたのだが──

109 Lesson 109 Mining moon ore, as long as we could get permission from the dragon, wasn't that difficult. The mining site, taught to me by Dwarf's martial artisan Gardon, is a cave near the entrance to the hilly area. Human-sized caves, much narrower than dragon habitats. We step in there with [light] lights in one hand. Moving on through the natural cave for a while, it eventually hit the characteristic terrain. "Wow, beautiful...! Next to me, Illis gives an exclamation. Rio and Mayfa, as well as Ulu as a werewolf, were also looking at the sight and sparkling their eyes. The place, which was ahead of us as we proceeded through the cave, was a little hallway. What is characteristic is that the vertical hole extends upwards from the ceiling in its hallway, creating a cavity that connects to the outside. Through its cavity, soft moonlight from the outside was pouring down onto the ground and walls in the cave. Moonlit walls and parts of the ground sparkle. When I discovered the place, I first covered up the magical effects of [Light "Light] and then used my body to block some of the moonlight pouring out of the ceiling. Then, despite blocking the moonlight and no longer reaching the light, I could discover some parts of the walls and floors that were emitting light on themselves. This is exactly the moon ore. This ore absorbs the light of the moon over a long period of time and accumulates magic inside it, he said. "This is the moon ore, isn't it? - - But the walls around me are really stiff. I can rip my nails off even on an iron plate when I beast them, but they still don't stand at all. ' Uru, a werewolf, tries to dig out the moon ore, putting his nails up on the wall around it, but the rock is stiff and he seems to be bounced with a cock and his nails don't pass. According to what Gardon told me, the mining of moon ore required special mining tools, which are now difficult to obtain. But I'm not too worried about that. I speak to Rio. "All right, let's do it, Rio." "Aye, brother." Me and Rio each pull out their swords, in front of another moon ore, set it up. And as he poured the brave man's fighting spirit into his sword, he unleashed his moves at the same time. "" - [Moonlight Sword]! Kin and his double-edged sword flashes ran, and me and Rio's swords were each lightly cutting off the rocks around the moon ore. If [Moonlight Sword] ignores the hardness of matter up to half the time, the rock of this hardness shall not be. Me and Rio succeed in digging out the moon ore one at a time by releasing a few more [moonlight swords]. Ur, watching it, was circling his eyes in the way that he was surprised. "Yu, brave people are amazing...... That move, any hard stuff seems like it's going to be in two... ' "Uru, [Moonlight Sword] is a brave man, so not everyone can do it. Only a handful of the brave men who are good at swordsmanship can use this." Illis puts his index finger up and proudly explains so. That's the recipient and seller of the story Cecilia, the teacher who taught me [Moonlight Sword], but it's adorable that Illis is proud to tell it like it's my business. Ur, by contrast, said, 'Hmm, yeah. Something like that. There's also a difference in character in the world of brave men, "he asked, nodding with a firm nod. Meanwhile, Mayfa... He said things like that, and he was nodding yeah on his own. That's how it all goes, me and Rio split up and mine the moon ore one after the other. Then Ur, who saw it, raised his doubts. "Is that...? Why don't you just have one moon ore? "Oh. Looks like one moon ore of this size would suffice to make one blackout necklace. It's just that we kind of need money. I came to Ravilton to buy some gear for the three Rio guys, but I'm a little bit uncomfortable with my hand." Gardon tells me the moon ore was picked if it was mined. Well, there's demand, so if you take it back to the city, you should be able to sell it only for what you've mined and turn it into money. But when he heard it, Ur said this in a hurry. "Yeah, eh, you did!? I mean, would you help us in that!? - So, the treasure we just received from Mr. Dragon, shouldn't we take it? We don't have that kind of money to spend, and Mr. Brett and the others will take this! Ur offered me a cloth bag containing the treasure he had received from the dragon. I look at it and it hardens. No, actually, to be honest, there's something about this treasure that you wanted so much that you could get your hands out of your throat... If you sell this dragon's treasure in Lavilton, you will undoubtedly get a lot of money in dozens of large gold coins, and with that, the budget for purchasing equipment for your godchildren will be a lot more luxurious. But the dragon gave that to Ur, and I thought he couldn't take it aside... I grew greedy and said so. This is what an unfortunate adult looks like all over the world. "It's obvious. If it weren't for Mr. Brett and the others, it wouldn't have been there. Besides, we already got a lot of stuff from Mr. Brett and Rio. - - Even if this is all, at least take it! That's what Ur's going to give you again, so I'm like, "Well, well. Well, thank you," he said, snatching a bag of cloth. Doctor, I couldn't beat the temptation for money... No, yeah. Money matters. I'm just allergic to losing sight for money. And yes. If you think you're receiving a legitimate consideration for what you did with Ur's help, you can neither see nor see that there's a problem. Ur is happy, and so are we. Patience is bad for people. It must be my fault that bad adults seem self-justified, too, yeah. Speaking of legitimate consideration, though, I'd like to pay Gardon for making a blackout necklace. Even though the other side said it on its own, I would also like to pay Rizel the legitimate price if she were to receive things that would design Rio's special protective equipment. You should think about that area a little bit. Whatever you do, money matters. Let's make money when we can. That's why, despite receiving the dragon's treasure from Ur, we returned to the city of Ravilton by mining as much moon ore as we could take home securely. And late at night, but head to the Gardon Martial Arts Store and knock on the door of the house. The house and the store are in the same building, so if you knock on the door, Gardon comes down from upstairs and welcomes us. "Oh, you've picked the moon ore! All right, I'll take care of the rest. Whatever you do, make sure you complete The Blackout Neck.... That Idol Live was definitely the next weekend, full moon night, right? "Yes. I don't have a week left, do I look like I should? "If you don't try, I don't know, you're being honest. But Dwarf doesn't have two words. I said I'd give it a shot. I'll give it a shot." That's what Gardon says, nigga, let his mouth hang. All in all, this is how one challenge was cleared up. We have six days till the full moon night when the Urs are scheduled to play idol live. At the very least, I think I've done what I have to do. All you have to do is get ready for the real thing, so Rio and the others can practice singing and dancing. Though amateur live, Ur is that level. Whether it's a burning blade or not, my kids should do a minimum of practice. I also feel how this happened when I should have come to this Ravilton to buy my godchildren's armor... the Rio's are motivated, and everything is an experience. That's why I decided to keep an eye on my godchildren.

第69話 ヴァンパイアスポーンの棲み処だった家の中。 俺とメイファが倒したスポーンが四体、居間に並べられていた。 四体のスポーンはそれぞれ、中年の男性、女性、少年、老人の姿をしている。 今や怪物の姿だが、もともとはヴァンパイアに襲われた犠牲者だ。 それらスポーンの前に立つのはイリス。 俺とリオ、メイファが見守る中、イリスは倒れた怪物を前にしてごくりと唾をのむ。 俺はイリスほか、三人の教え子たちに向かって説明する。 「ヴァンパイアスポーンはアンデッドモンスターに分類されるが、スポーンになってすぐの頃は厳密には『死んでいない』状態らしい。スポーンになってから一、二週間程度の間は正の生命力と負の生命力が入り混じった状態で、存在の在り方がまだ確定されていないって話なんだが......言ってること分かるか?」 俺の言葉に、三人はぶんぶんと首を横に振る。 ......まあ、そうだろうな。 「あー、つまりだ。『死んでさえいなければだいたいなんとかなるような反則級の治癒魔法』なら、なんとかなる可能性があるってわけだ」 】を使えるから......」 イリスがそう確認してくるので、俺は微笑みを浮かべて三姉妹の次女の頭を優しくなでる。 「ああ。教師としては情けない話だが、俺には【 「そんな......! 先生は少しも情けなくなんてないです! ......あの、私なんかがこんなことを言うのはおこがましいかもしれないですけど、先生は多分、自分ひとりで全部をやろうとしすぎです。それじゃ私たちが、いつまでたっても先生のパートナーになれない......。先生には、もっと私たちを頼ってほしいです!」 怒られてしまった。 ううむ......。 「でもなぁ、それってもう教師と教え子の関係じゃないだろ」 「先生、私たち......教師と教え子の関係じゃないと、ダメなんですか?」 イリスが上目遣いの視線とともに、自分の服の胸元をきゅっと手で握りつつ、そう訴えかけてきた。 ズキュウウウウウウンッ! 俺のハートは一瞬にして撃ち抜かれた。 ......い、いや、イリスが言いたいのは、自分たちももう弱くはないのだからともに戦う仲間だと思ってほしいということだろう。 しかしなんかこう、頬を染めて懇願するようなまなざしで言われると、男と女の関係として大人の階段をのぼりたいんです、みたいな意味に聞こえてしまう。 まずいまずい、今の俺は錯乱している。 これは俺のオトナ力が試されているぞ。 「あ、あー、イリスさんや。そういう台詞を男性に向けるのは、少し気を付けような? 勘違いをされるからな?」 俺がそう言うと、イリスはきょとんとした表情を見せた。 それから少し考えるような仕草をして、うつむいて、視線をあちこちに彷徨わせてから、次にはこんなことを言ってきた。 「......私、先生相手じゃなきゃこんなこと言わないもん」 ──グサァッ! イリスの放った会心の一撃が、俺の胸にクリティカルヒットした。 もうやめて! 俺のオトナ力はとっくにゼロよ! というかそれ以前に、倒れたヴァンパイアスポーンが並んでいる前でする会話としては、非常にシュールだ。 話を戻そう。 「わ、分かったイリス。その話はまた今度にしよう、な? 今は治療だ、そうしよう」 「ぶぅ......分かりました」 イリスは口を尖らせながらも、不承不承といった様子で納得してくれた。 ちなみに俺の横ではリオとメイファが、 「なあメイファ、兄ちゃんのコレってどう思うよ?」 「......もう少しで、牙城が崩せそうな感じ? ......どんどん攻撃を仕掛けていこう。......だれか一人でも突破できれば、多分あとは雪崩式」 「オーライ。オレもガンガン仕掛けないとな。恥ずかしがってなんていらないよな」 などと、よく分からないがどこか恐ろしげな相談をしていた。 ともあれ、イリスの魔法である。 イリスは横たわっているヴァンパイアスポーンの一体の前に両膝をつき、胸の前で祈るように両手を組むと、まぶたを閉じる。 しばらくするとイリスの全身が淡くも力強い魔力の輝きを放つ。 イリスはその両手を、目の前のスポーンの胸へと添える。 そして美しくも勇ましい声で、その呪文を唱えた。 イリスの両手に強い光が宿り、それがスポーンの体じゅうへと広がっていく。 光はスポーンの全身を包み込み── やがて光がやむと、青白かったスポーンの肌は健康的な肌色となり、鋭かった牙や爪も人間らしいそれへと戻っていた。 俺は歩み寄り、試しにスポーンだった犠牲者の目を開いてみたが、そこにあったのは怪物らしき真っ赤な眼球ではなく、人間の瞳だった。 もちろん、スポーンの状態で負ったダメージも癒されている。 ちなみにその犠牲者、まだ意識は取り戻していないが、胸は健やかに上下している。 しばらくすれば目を覚ますことだろう。 「はぁっ......はぁっ......。や、やれた......?」 「......すごい。......怪物だったのが、本当に人間に戻った。......まるで奇跡」 大きな魔力を使って荒く息をつくイリスと、姉が使った魔法の効果を見て驚くメイファ。 一方でリオは、メイファと同じように驚きながらも、何か考え事をしている仕草だった。 「......なぁ兄ちゃん。これってさ、ヴァンパイアの手下──スポーンっていうんだっけ? そのスポーンだけじゃなくて、ヴァンパイアそのものにも効くの?」 リオは俺に、そう聞いてくる。 その質問に俺は少しの不自然さを感じたが、ひとまずその違和感はスルーして答える。 「ああ、親玉のヴァンパイアも条件は一緒だな。ヴァンパイアになってからどれだけ期間が経過しているかにもよるが、その存在がアンデッドとして確定していない段階なら、人間として蘇生できる可能性は十分にある。とはいえ無力化した状態じゃないとまず通らないはずだから、ヴァンパイア相手の戦闘で使うのは無理があると思うけどな」 「そっか......」 リオはそう言って、また何かを考え込む仕草を見せた。 その様子が気にはなったが、とりあえず物事はひとつずつ解決していくことにする。 俺はイリスに歩み寄って、その小さな体を強く抱きしめた。 「イリス、すごいぞ、よくやった。今イリスは、失われるはずだった人ひとりの命を救ったんだ。本当にすごいし、偉いぞ。──イリス、魔力を膨大に消費してつらいと思うが、残り三人、やれるか?」 「えへへ......先生にすごく褒められた......うぅぅっ、すっごく嬉しい......。──はい、先生。私、頑張ります。このぐらい全然へっちゃらです♪」 そう言ってイリスは儚げな微笑みを見せた。 それからイリスは、二人目、三人目と【 それにより、スポーンとなった犠牲者四人のうち三人までが、健やかな人間に戻ることができた。 しかしイリスの消耗は、その段階で目に見えて大きなものとなっていた。 「はぁっ......はぁっ......あ、あと......ひとり......」 そう言って最後の一人のもとに向かおうとしたとき、イリスはふらりと揺れて、倒れそうになった。 俺は慌てて駆け寄って、イリスの華奢な体を抱きとめる。 「イリス、大丈夫か!? ......あと一人は、また明日にするか? 多分一日ぐらいなら、まだ大丈夫だと思うが......」 俺はそう言いながら、自分の言葉に何も根拠がないことも同時に理解していた。 ヴァンパイアスポーンを【 しかし目の前の犠牲者がスポーンになってから厳密にどのぐらいの期間が経過しているのかはっきりとは分からない上に、「一、二週間」という非常にざっくりしたリミットも確たるものとは言いづらい。 あくまでもそういった研究結果があるというレベルの話なのだ。 だから本来なら心を鬼にして、イリスにあと一人分だけ頑張ってもらうべきところだ。 いや、今からでも前言を撤回して、イリスにそうさせるべきだろう。 そう思い直した俺だったが── そのとき、俺の腕の中で支えられていたイリスが、こんなことを言いだした。 「あの、先生......。私、あと一人頑張ったら......ご褒美、もらえますか......?」 それを聞いた俺は、一瞬だけ躊躇ったが、次には大きくうなずく。 「ああ。俺にできることなら、なんでも言うこと聞いてやる」 教え子に無理を言って頑張らせなければいけない状況だ。 ご褒美ぐらいで快く頑張れるなら、どんな要求だって安いものだ。 無茶な要求だろうがドンと来い、何でも叶えてやる。 「だったら、その、私......夜に先生と、一緒のベッドで寝たいです」 イリスの口から出てきた言葉に、俺は目が点になった。 イリスは熱に浮かされたような様子で、俺にささやきかけてくる。 「あはは......私、悪い子ですよね......。先生を、困らせようとしてます。でも......頑張ったらご褒美、欲しいな......?」 「お、おう......わ、分かった。約束する」 俺は戸惑いながらも、そう答えるしかなかった。 いろいろとおかしい気もしたが、今は何よりも人命だ。 あとのことは、あとで考えよう。 今はイリスに頑張ってもらうための最善を尽くすべきだ。 そして俺の返事を聞いたイリスは、「いよっし!」と気合を入れ直して立ち上がった。 それから勢い任せに最後の一人の前に向かっていって【 だがヴァンパイアスポーンとなった犠牲者は、これで四人とも治療された。 イリスのお手柄だ。 俺は力を使い果たした教え子の少女を抱き上げ、小さく「お疲れ様」とささやく。 四人もの人命を救った小さな聖女は、俺の胸に顔を埋め、すぅすぅと寝息を立てていた。

69 Lesson 69 In the house that was the habitat of Vampire Spawn. Four spawns that Me and Mayfa took down were lined up in the living room. Each of the four spawns looks like a middle-aged man, a woman, a boy and an old man. Now he looks like a monster, but he's originally a victim of a vampire attack. Standing in front of those spawns is Iris. As me and Rio and Mayfa watch, Illis spits in front of the fallen monster. I'll explain myself to the three godchildren in addition to Iris. "Vampire Spawn is classified as an undead monster, but right after Spawn, he's technically in a 'not dead' state. I'm talking about a week or so after Spawn, it's a mix of positive and negative vitality, and the way it exists hasn't been confirmed yet... you know what I'm saying? In my words, the three of them shake their heads beside each other. ... Well, I guess so. "Uh, I mean. If you're not even dead, you're more or less capable of irregular healing magic, there's a chance that you can handle it." "So I can use [Ultimate Healing (Ultimate Heel)] ..." That's how Illis confirms it, so I smile and be gentle with the heads of my three sisters' second daughter. "Oh. As a teacher, I'm sorry, but I can't use the Ultimate Heal. We have to rely on Illis." "Oh no...! The teacher has no pity at all!... Um, I may be tempted to say this, but the teacher probably tries to do it all by himself too much. Then we can't be teachers' partners forever... I want my teacher to rely on us more! They pissed me off. Uhm...... "But hey, that's not a teacher-teacher relationship anymore," "Doctor, can't we... if it's not a teacher-to-teacher relationship? That's what Illis has been complaining about as he grabbed the chest of his clothes with his hands all the time, along with the gaze of his ascendants. Zukuuuuuuuuu! My heart was instantly shot out. ... Yes, no, what Illis is trying to say is that they want us to think of ourselves as fellow fighters together because we're not weak anymore either. But something like this, when people say things like dye your cheeks and plead, I want to climb the adult stairs as a relationship between a man and a woman, it sounds like something. Not good, I'm confused right now. This is my Otona power being tested. "Oh, uh, Mr. Iris. Let's be a little careful about pointing that kind of dialogue at men, shall we? Because they make mistakes, don't they? When I said that, Illis gave me a decent look. Then I did a little thinking trick, I relaxed, I wandered my gaze all over the place, and then I said this next time. "... I, Doctor, wouldn't say this if I wasn't your opponent" - - Gusaaa! The blow of Illis' unleashed synagogue hit me critically in the chest. No more! My Otona power is so nil! Or before that, it's very surreal to have a conversation in front of a fallen vampire spawn in line. Let's get back to it. "Wow, okay, Iris. We'll talk about that another time, huh? It's treatment now, let's do that." "Buh... ok" Iris convinced me, pointing his mouth, but with things like disapproval. By the way, next to me, Rio and Mayfa, "Hey Mayfa, what do you think of your brother? "... it feels like the castle is about to collapse?... Let's mount more and more attacks.... If anyone can break through, maybe the rest is avalanche-style" "Aurai. I have to gang up, too. You don't have to be shy." And so on, I wasn't sure, but I was having some horrible consultation. Whatever it is, it is the magic of Illis. Ilis kneels in front of the whole vampire spawn lying, hands together to pray in front of his chest, closing his eyelids. After a while, the whole body of Illis emits a glow of pale but powerful magic. Iris attaches his hands to Spawn's chest in front of him. And with a beautiful and brave voice, I cast that spell. A strong light dwells on both hands of Illis, and it spreads to Spawn's body. The light envelops Spawn's entire body. Eventually, when the light faded, Spawn's skin, which was blue and white, had a healthy skin tone, and her sharp fangs and nails had returned to it as humane. I walked over and tried to open the eyes of the victim who was Spawn, but what was there was not a monstrous bright red eye, but a human eye. Of course, the damage done in Spawn's condition is healing. The victim, by the way, has not regained consciousness yet, but his chest is up and down healthy. You'll wake up in a while. "Ha... ha... Or did you...? "... wow.... It was the monster that really went back to being human.... as if it were a miracle" Iris, who breathes roughly using great magic, and Mayfa, who is surprised to see the magical effects her sister used. Rio, on the other hand, was just as surprised as Mayfa, but a way of thinking about something. "... hey brother. Is this some kind of vampire guy named Spawn? Not just for that spawn, but for the vampire itself? Rio asks me that. I felt a little unnatural about that question, but for one thing, the discomfort answers through. "Oh, my dear balls vampire is on the same terms. It depends on how long it's been since you became a vampire, but if its existence is at a stage that hasn't been established as undead, there's ample chance that you can resurrect as a human being. I don't think it's possible to use it in a vampire opponent's battle because it's not supposed to go through without being powerless." "Oh well..." That's what Rio said and showed him how to come up with something again. I was curious to see how that was going, but for now I'm going to settle things one by one. I walked over to Illis and hugged that little body hard. "Iris, you're amazing, well done. Now Iris saved the lives of every man who was supposed to be lost. It's really amazing, and it's great. - - Illis, I think it's hard to consume a lot of magic, but the three of us left, can we do it? "eheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheheh... - Yes, Doctor. I'll do my best. This is a total mess." " That being said, Illis smiled with a smile. Then Iris applied [Ultimate Healing (Ultimate Heel)] with the second and third. That allowed up to three of the four victims who became Spawn to return to a healthy person. But the depletion of Illis had become visible and significant at that stage. "Ha... Ha... Oh, and... one more..." When I said that and tried to make my way to the last one, Illis fluttered and shook, about to fall. I rush over and hug the luxurious body of Illis. "Iris, are you okay!?... One more, will we see you tomorrow? Maybe a day or so will still be fine..." While I said that, I understood at the same time that my words had no basis whatsoever. It is believed that saving Vampire Spawn by [Ultimate Healing (Ultimate Heel)] is a case within a week or two of its victim becoming Spawn. It is hard to say, however, that a very rough limit of "a week or two" is certain, besides not knowing exactly how long has elapsed since the victim in front of him became Spawn. We're only talking about the level where there are such research findings. So it's where we should be supposed to haunt our hearts and ask Illis to do just one more good job. No, we should withdraw the foreword even now and let Illis do so. That's what I was thinking, but... That's when Iris, supported in my arms, said something like this. "Um, Doctor... Me, if I try one more hard...... reward, can I get...? When I heard that, I hesitated only for a moment, but next I nodded aloud. "Oh. If there's anything I can do, I'll listen to you." This is a situation where you have to tell your godchild you can't do it and make him work hard. Any demand is cheap if you can work as hard as you reward. I know it's an unscrupulous demand, but come with Don, I'll make anything come true. "Well, I... I want to sleep in bed with my teacher at night." My eyes dotted on the words that came out of Iris's mouth. Iris looks like he's been floating in heat, and he's whispering to me. "Haha...... I, am a bad boy...... I'm trying to get my teacher in trouble. But... reward me if I try, I want...? "Ooh... ok. I promise." I was confused, but I had to answer that. I've felt a lot strange, but now it's more human than anything else. Let's think about the rest later. Now we should do our best to get Iris to work hard. And when I heard my reply, Iris said, "Come on!" and got up in a new mood. Then when he headed in front of the last one to leave the momentum to use [Ultimate Healing (Ultimate Heel)], Iris then snapped and batanced. But all four of the victims who became vampire spawns were now treated. It's a handful of Illis. I hold up my goddaughter, who has exhausted her powers, and whisper "good luck" small. The little Virgin, who had saved all four lives, buried her face in my chest, resting suddenly.

】発動を察知したセシリアは、吐き捨てるように言う。 「はっ! メイファちゃんには悪いけどさ、【 セシリアはメイファなど眼中にないと、これ見よがしに言い放つ。 確かに、セシリアの防御力の高さは物理防御力に限った話ではない。 魔法でもよほど高火力のものでなければまともに通らないというのは、強がりでも何でもない事実だ。 だがこれが、セシリアの誤算その二でもある。 「......じゃあ、その羽虫が集まって一羽の鳥になったらどう、お姉さん。──結合! 行け、【 「なっ......!?」 ──キュアオオオオッ! 大気を切り裂く怪鳥の叫び声のような音とともに、メイファの放った大きな火の鳥がセシリアに襲い掛かった。 セシリアはとっさに大盾を構える。 直撃した大盾を中心に激しい炎が噴き上がり── 「ぐぅっ......! ──こ、このっ!」 セシリアは直後、大盾を投げ捨てた。 がらんと音を立てて床に転がったセシリアの大盾は、炎上するばかりか、超高熱によってどろりと溶けて原形をとどめないほどになっていた。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ......! な、何だよ、今のは......!?」 額に汗を浮かべるセシリア。 彼女が直前まで大盾を装備していたその左腕では、漆黒のガントレットがぶすぶすと白い煙をあげていた。 そんなセシリアの疑問に対して、メイファが淡々と応じる。 】......“魔帝”マヌエルだって......?」 「......そう。......お爺さんは今、ヴァンパイアロードと戦っている。......“武神”オズワルドも一緒」 メイファがそう伝えると、対するセシリアは乾いた笑いを浮かべた。 「ははっ......“魔帝”マヌエルに、“武神”オズワルド......まさかそんな大物が出てくるとはね。......まあでも、そりゃあそうか。主様に太刀打ちするつもりなら、そのぐらいは連れてこないとね。──でもそれなら、私も遊んではいられなくなったね。ブレットくんたちをさっさと蹴散らして、主様の応援に行かないと。二対一は──卑怯だからね!」 セシリアの体から、漆黒の闘気が吹き上がる。 気圧されそうになるほどの恐ろしい力だ。 「そのためには──まずはイリスちゃん、キミだよ!」 ギンと、再びセシリアの瞳が赤く輝いた。 その視線が向いた先は、後衛に控えているイリス。 「あっ......」 少女の小さな声。 かくんと、俺の背後でイリスの体が力を失ったのが分かった。 俺は心の中で舌打ちをする。 さすがにイリスの抵抗力では、セシリアの【魅了の魔眼】に抵抗しきることはできなかったか。 予想はしていたことだが、こうなるとやはり、少しまずい。 かと言って魅了されたイリスを放置しておくのもまずい。 イリスの補助魔法でセシリアを強化されたりしたら、それこそ最悪の事態だ。 ......だが、もう一つ。 セシリアにはおそらく、もう一つ誤算がある。 このまま押し切ってもどうにか倒せるかもしれないが、それよりも── 俺は先ほど壁際まで吹き飛ばされたリオに向かって、叫ぶ。 「──リオ! 作戦プランB、その壁に【月光剣】だ!」 立ち上がって体勢を整えていたリオは、構えの姿勢から攻撃を放つ。 彼女の目の前にある、壁に向かって。 「はぁああああっ──【月光剣】!」 ──ギィン! リオの闘気をまとった剣が、部屋の石造りの壁を大きく貫き、分厚い壁に大ダメージを与えた。 それだけで破壊されるようなことはないが、まずは一撃目だ。 俺はここに来る前に、あらかじめリオたち三人に、セシリアと戦うときの作戦を伝えていた。 想定されるいくつかの状況にパターン分けして作戦を伝授していたが、この状況ならこれだろうというものを俺はリオに指示した。 だが一方のセシリアは、そんな俺たちの行動を嘲笑う。 「あははっ、ブレットくんの指示通りに動いてさ、健気だねリオちゃん! でもそんなことをしているうちに、愛しのブレットくんを壊しちゃうよ! ほぉらこんな風に──【月光剣】!」 ──ズブシュッ! セシリアが放った【月光剣】が、俺の胴を大きく切り裂いた。 正直めちゃくちゃ痛い。 俺のタフネスだってダテじゃないから一撃で撃沈するということもないが、そう何発も耐えられるようなダメージじゃない。 具体的には、もう二発もらったら確実に落ちるだろう。 いや、ひょっとすると次の一発でも危ないかもしれない。 だが── 俺はひとまず魔法でイリスを治療。 少しでも場を立て直しにかかる。 「うっ......! す、すみません先生! すぐに治します!」 はたと正気に戻った様子のイリス。 俺に治癒魔法をかけるために、慌てて精神集中を始める。 だがイリスには悪いが、本当のところそれにはあまり期待していない。 セシリアが繰り返しイリスに【魅了の魔眼】を使うことで、こっちの回復手の手数が二枚奪われ続けるという交換レートの悪いイタチごっこをする羽目になるだけだ。 それよりも期待するのは、アタッカー。 「メイファもだ! 作戦プランB、リオに続け!」 「......分かってる、お兄さん。──行け、【 メイファが再び必殺の魔法を放つ。 対象はセシリア──ではなく、リオが攻撃したのと同じ石壁だ。 ──ドガァアアアアアンッ! リオの【月光剣】に引き続き、メイファの【 よし、これであと一押し。 「リオ、蹴り飛ばせ!」 リオはあと一手で壊れるであろうボロボロの壁に、思いきり蹴りを叩き込もうとする。 それを見たセシリアが、高々と嘲笑った。 「あははははっ、ブレットくんのバァアアアアアカ! ヴァンパイアの弱点である日光を呼び込もうって作戦なんだろうけど、あいにくと今日は真っ暗の曇天だよ! 外を歩いてきて気付かなかったの? 注意力が足りない、足りないよ! あははははっ!」 どうも人類の多くは、他人の知性を侮るようにできているらしい。 それは勇者であれ、またヴァンパイアになったとて同じことのようだ。 というわけで、これがセシリアの誤算その三だ。 俺は構わず叫ぶ。 「リオ、やれ!」 「いっくぜぇえっ! てぇりゃあああああっ!」 ──ドガァンッ! 勇者の闘気を込めたリオの蹴りが、ボロボロの壁に向かって炸裂した。 分厚かった壁の一部が完全に崩れ去り、それによって大きな風穴が開いて── その壁の大穴から、日の光が燦々と注ぎ込んだ。 「そ、そんな、なんで──うわぁああああああああっ!」 大盾を失ったヴァンパイア=セシリアは、それを遮ることもできずにまともに浴びてもだえ苦しむ。 俺はそんなセシリアの前に傷の痛みを押して立ち、剣を構えた。 「な、いい天気だろ? “魔帝”マヌエルっていう、反則級の爺さんの仕業だよ。窓もないこんな閉じた部屋で棺桶の番人をやっていたら、外の天気が変わっても気付かないよな」 「ぐぅぅっ......! そんな、そんな......! これじゃあ私は、私の夢は......! みんなを欲望のままにむさぼる、私の夢がぁあああああっ!」 「その辺はあとできっちり説教してやるから、いっぺん眠れ。じゃあな、セシリアさん──【月光剣】!」 「ひぎゃあああああっ!」 ──ズバァッ! 俺が放ったトドメの一撃を受けて、ヴァンパイア=セシリアはよろりとふらつき、ついにはばったりと倒れた。 「ふぅ......」 俺は床に倒れたセシリアを見下ろして、ひとつ大きく息をつく。 「やったね、兄ちゃん!」 「うぅっ......足を引っ張ってしまってすみません、先生。私、どんな罰でも受ける覚悟です......」 「......別にイリスは足を引っ張ってなんかいない。大丈夫。......ね、お兄さん?」 「ああ、もちろんだ。三人とも初めての強敵との実戦、大変だったろ。お疲れ様、みんなよく頑張ったな」 俺は集まってきた三人の教え子たちの頭を一人一人なでてやってから、自分に治癒魔法を使った後、三人まとめてぎゅっと抱きしめた。 俺に抱きしめられた三人は、えへらっと笑って嬉しそうにしていた。 なおこの後、イリスの【 個人的に最大だった懸念事項が解消され、ホッと一安心だ。 そして残るはヴァンパイアロードなのだが── これに関しては、もうなんとも身も蓋もない結末が待っていたのである。

Cecilia, who senses Mayfa's [Fire Arrow (Firebolt)] activation, tells her to throw up. "Ha! It's bad for Mayfa, but [Firebolt] what a depression it is to have featherworms flying around! [Moonlight Sword] If only Brett and Rio could clean up! Cecilia tells Mayfa and others that she is not in her eyes. Indeed, Cecilia's height of defense is not limited to physical defense. The fact that magic doesn't go through properly unless it's something so high-fired is not a strength or anything. But this is also Cecilia's second miscalculation. "... So what if those featherworms get together and become one bird, sister? -Conjugate! Go, [Undead Arrow (Phoenix Arrow)]!" "Become...!? - - Cure, ooh, ooh! Mayfa's unleashed big fire bird struck Cecilia, along with the sounds of a strange bird screaming through the atmosphere. Cecilia sets up a big shield. A fierce flame erupted around the big shield that hit him directly. "Gu......! - Oh, my God! Cecilia threw down the big shield shortly afterwards. The great shield of Cecilia, which made a raging noise and rolled onto the floor, was just inflamed or melted loosely by ultra-high heat to the point that it did not hold its original shape. "Ha, ha, ha...! Hey, what's that, what's that...!? Cecilia sweats on her forehead. In that left arm, where she was equipped with a large shield until just before, a pitch-black gauntlet raised white smoke when it busted. Mayfa responds pale to such Cecilian questions. "[Undead Arrow (Phoenix Arrow)]..." Demon Emperor. "Even Manuel...? "... yes.... Grandpa is fighting Vampire Road right now. ..." The Martial God "Oswald is with us" When Mayfa told him so, the opposing Cecilia had a dry laugh. "Ha ha..." Demon Emperor "Manuel," Martial God "Oswald... I didn't know such a big guy would come out.... Well, I guess so. If you're going to fathom the Lord, you have to bring about that. - But then, I can't play anymore. We need to kick Brett and the others right away and go to the Lord's support. Two on one is... cowardly! From Cecilia's body, a pitch-black struggle blows up. It's such a horrible force that it's about to get barometric pressure. "To do that - first of all, Iris, you're here! Gin and Cecilia's eyes glowed red again. Ahead of that gaze, Iris, who is holding back on the guard. "Ah..." Little voice of a girl. Kakun, I found out behind my back that Iris' body had lost its power. I tongue in my heart. Exactly, couldn't the resistance of Illis resist Cecilia's [fascinating demonic eye]? I was expecting it, but when this happens, it's still a little bad. It's not a good idea to leave the fascinated Illis alone by saying it is. If Cecilia were to be fortified with the auxiliary magic of Illis, that would be the worst. ... but one more thing. Cecilia probably has another miscalculation. We might be able to take him down if we keep pushing him off, but more than that... I turned to Rio, who was blown to the wall earlier, screaming. "- Rio! Operation Plan B, [Moonlight Sword] on that wall! Rio, who was up and in shape, unleashes an attack from his standing position. It's right in front of her, against the wall. "Ha, ha, ha. - [Moonlight Sword]! - - Gin! Rio's struggling sword pierced the stone wall of the room greatly, causing great damage to the thick wall. Nothing like being destroyed by that alone, but it's the first blow first. Before I got here, I had informed the three Rio's beforehand of their operation when fighting Cecilia. I had patterned the operation into a number of scenarios, but I instructed Rio that this would be the case in this situation. But Cecilia, on the other hand, laughs at our actions like that. "Haha, you're doing exactly what Brett instructed you to do, you're healthy, Rio! But while you're doing that, you're gonna break my dear Brett! How dare you... [Moonlight Sword] - - Zubush! Cecilia released the [moonlight sword], but it cut my torso wide open. Honestly, it hurts so bad. My toughness doesn't sink in a single blow because it's not a dat, but yes, it's not as damaging as it can withstand many shots. Specifically, if I got two more shots, it would definitely fall off. No, maybe even the next shot could be dangerous after a little while. But... I'll treat Iris with magic for once. It takes at least a little bit to rebuild the place. "Ugh...! Shh, excuse me, Doctor! I'll be cured in a minute! Iris looks like he's back to sanity. To cure magic on me, I rush to start concentrating. But bad for Illis, but I really don't expect much from that. Cecilia's repeated use of the [Enchanted Demon's Eye] on Iris will only make her feather do a poorly exchanged Itachi that will keep taking away two healing hands over here. More than that, Attacker. "So is Mayfa! Operational Plan B, follow Rio! "... I know, brother. - - Go, [Undead Arrow (Phoenix Arrow)]!" Mayfa unleashes her special magic again. The target is not Cecilia, but the same stone wall that Rio attacked. - - Dogaaaaaaaaaaaa! Continuing with Rio's [Moonlight Sword], the thick stone wall, which also received a direct blow from Mayfa's [Immortal Bird Arrow (Phoenix Arrow)], finally wore out its endurance. All right, that's one more push. "Rio, kick your ass! Rio tries to tap a thoughtful kick into a worn wall that will break with one more hand. Cecilia, who saw it, scoffed high. "Hahaha, Brett's baaaaaaaa! I know it's an operation to bring in daylight, the weakness of vampires, but unfortunately it's dark cloudy weather today! You walked outside and you didn't notice? Not enough attention, not enough! Hahahaha! Hi. It seems that many of humanity are able to insult the intelligence of others. That sounds like the same thing being a vampire again, be it a brave man. So this is Cecilia's miscalculation number three. I don't mind screaming. "Rio, do it! "Come on, eh! Ahhhhh!" - - Dogayan! A brave Rio kick burst against a worn wall. Some of the thick walls completely collapsed, and there was a big wind hole. From the great pit of its wall, the light of day poured forth brightly. "Oh, no, why... whoa, whoa! Vampire-Cesilia, who has lost his great shield, suffers even if he is bathed properly without being able to block it. I stood in front of Cecilia like that, pressing the pain of my wound, putting up my sword. "Hey, nice weather, huh?" Demon Emperor "Manuel is the work of a disobedient grandfather. There's no windows. You wouldn't notice the weather outside if you were a coffin keeper in a closed room like this." "Grr......! No, no...! This, then, is my dream...! My dreams hump everyone as they desire. Ahhhhhh! "I'll preach exactly about that area later, so go to sleep. Bye, Mr. Cecilia... [Moonlight Sword] "Higaaaaaaaa! - Zuba! After a blow of todome I unleashed, Vampire-Cesilia fluttered and finally collapsed. "Phew..." I look down at Cecilia, who fell on the floor, and breathe one big breath. "You did it, brother! "Ugh... sorry I pulled your leg, Doctor. I am prepared to take any punishment..." "... there's nothing about Illis pulling his leg. It's okay.... right, brother? "Oh, of course. All three of them had a tough time fighting their first strong enemy in action. Good day, everyone. Good luck." I did every single head of the three godchildren I had gathered, and then after using healing magic on myself, I put the three together and hugged them all. The three people I hugged were laughing and happy. It should be noted that after this, Cecilia was able to safely return to the human race thanks to Illis' [Ultimate Healing (Ultimate Heel)]. I am relieved that my biggest personal concern was resolved. And all that's left is the Vampire Road. Regarding this, there awaited an end with no more body or lid.

第6話 さて、ノリだけで三人の幼い少女を抱きしめて、泣かせたまでは良かったんだが。 ひと通り落ち着いてきたら、この状況をどうしようとなった。 俺は三人が泣き止んだ頃合いを見計らって、彼女らから離れたのだが── 三人の少女は、寄り集まってぺたんと座り込み、所在無さげにしていた。 俺がいなければ、木の棒の──いや、木の棒を手放した黒髪ボーイッシュなあの子が、いろいろとリーダーシップをとるんだろうが。 俺がこの場にいると、どうにも間が持たない。 どうすっかなこの状況。 「そういえば、腹減ったな。昼から何も食ってなかったの忘れてたわ」 俺は間をもたせるためにそう言って、ハハハと笑ってみせる。 すると── 俺のものじゃない、誰かのお腹の虫が鳴った。 見れば、あの木の棒の少女が、恥ずかしそうにお腹を抱えてそっぽを向いていた。 彼女も腹減りのようだ。 でも── 「......もう寝る。起きてると腹が減ってしょうがねぇ。あんたも自分の家に帰れ。......嬉しかったよ、オレたちを受けいれて、抱いてくれたのは」 少女はそう言って、小屋にごろんと寝転がってしまった。 残る二人の少女も、名残惜しそうに俺のほうをちらと見てから、黒髪の少女の横に寝転がって、一枚の毛布を三人でかぶる。 えーっと......。 「お前ら、飯は?」 俺がそう聞くと、 「今日の分はもう食った」 黒髪の少女はそう答える。 状況はよく分からないが、子供だけでこんなところで暮らしていて、村人たちからは呪われた子だってことで関与されないとなると、食い物だって満足に食えてないことは想像に難くない。 子供はちゃんと食わなきゃダメだ。 育つものも育たない。 「よし、分かった。待ってろ」 俺はそう言い残して、勇者学院の校舎という名目の小屋を出ていく。 その俺を見て、黒髪の少女ががばっと起き上がった。 「おい、待ってろってなんだよ!? オレたちはもう寝るっつってんだろ!」 「いいから。少し待ってろ」 俺はそう言って、今度こそ小屋の外に出た。 小屋の扉を閉める直前に、「何だよあいつ......意味わかんねぇ」という少女のつぶやき声が聞こえた。 それから俺は、まず教員用の住居に戻って、大鍋をひとつと、食器や調理道具ひと通りを持ってくる。 ちなみにこれらは、魔法で水を作って適当に洗った。 次に夜分遅くながら再び村長の家に行って、お金を払って塩漬けの豚肉といくらかの野菜、それにパンを分けてもらった。 量はたっぷりで、それを大鍋に入れて校舎という名の小屋の前まで運ぶ。 手ごろな岩を拾ってきて、魔法と組み合わせて小屋の前に簡易のかまどを作った。 さらに薪を拾ってきて、魔法で火をつけて焚き火を作る。 大鍋にたっぷりの水を入れて、火にかける。 そこに適当に切ったキャベツ、ニンジン、カブなどの野菜と、塩漬けの豚肉を放り込んで煮込んでスープを作っていく。 火の通りやすい食材とかそういうのは考えない、わりと雑な調理だ。 キャベツやカブは煮込みすぎると微妙な気がしないでもないが、まあ食えないこともないだろ。 加えて適切な頃合いを見計らって、焚き火を使って適当にスライスした豚肉を焼いていく。 パンも軽くあぶってやる。 そしてスープが適度に煮込まれ、豚肉が香ばしく焼ける頃に、俺は三人の子猫を呼びに小屋に入った。 「おーい、出来たぞ」 そう言って俺が小屋の扉を開けると── ──バタバタバタッ。 小屋の中で、扉に寄りかかってこっそり様子を見ていたつもりの三人の少女が、取り繕うように小屋の中で正座していた。 木の棒の──黒髪の少女が、慌てふためいた様子で言い訳をしてくる。 「お、お、お前......! さっきから表で何やってんだよ! いい匂い──じゃなかった、騒がしくて寝れやしないだろ!」 うーん、素直じゃないなぁ。 どう見ても、期待して待ってたよなお前ら? ここはちょっと意地悪してやるか。 「あ、お前いらない? 分かった、じゃあ後ろの二人だけでいいや。メシたっぷり作ったから、一緒に食おうぜ」 「へっ......?」 俺は黒髪の少女の頭越しに、後ろの二人──金髪の少女と、銀髪の少女に声をかける。 二人の少女は、俺のかけた誘惑の声にあからさまによだれを垂らし立ち上がって、ふらふらとこっちに寄ってきた。 二人は黒髪の少女の横を通り過ぎる際、彼女にひと声をかける。 「リオ......ごめんね。私、無理......こんなの、耐えられない......」 「......リオ、ボクたちがリオの分まで食べてあげるから。......リオの犠牲は、無駄にはしない」 「あーっ! お前ら裏切るのかよ! ──ちょっ、ちょっと待って! オレも食う! 食べさせてください!」 黒髪の少女は、二人の姉妹の裏切りを受けて、秒で手のひらを返した。 ふっ......他愛もないな。 というわけで、全員が焚き火の前に揃ったところで。 俺は大きめのお椀に、豚肉と野菜のスープをたっぷりと注いで、各自に渡してやる。 それから焼いた肉とあぶったパンも、皿に乗せて渡してやった。 三人とも、じゅるりとよだれを垂らして料理を見つめている。 よし── 「それじゃ──いただきます」 「「「いただきます!」」」 食事の挨拶をした直後、少女たちは食事にがっつき始めた。 「はふはふっ!」 「むぐむぐ」 三人とも、すごい勢いだ。 子猫どころか、猛獣のような食べっぷりで料理にむしゃぶりついていく。 うんうん。 子供ってのはこうでなきゃな。 「どうだ、うまいか?」 「......神」 さっきまで素直じゃなかった黒髪の少女も、ずいぶん素直になってるし。 俺は食事に夢中な少女たちの顔を見て、可愛いなぁと思っていた。 ニヤニヤが止まらない。 こいつらのこんな顔が見られただけでも、飛ばされてきて良かったなと思った俺だった。

6 Lesson 6 Well, it was good until Nori alone hugged the three young girls and made them cry. Once I had settled down on the street, what was I going to do with this situation? I predicted when the three of them stopped crying, and I walked away from them. The three girls were gathered together and sat down, absent. If it weren't for me, that brunette boyish kid who let go of the wooden stick would take a lot of leadership. When I'm here, it won't last long. I don't know about this situation. "Speaking of which, you're hungry. I forgot I haven't eaten anything since noon." That's what I say to keep things going and make you laugh hahaha. And then... It's not mine, someone's tummy bug rang. If you look, that tree stick girl was facing you with a shy stomach. She looks hungry too. But... "... I'm going to bed now. I can't help but be hungry when I'm awake. You go home too.... I'm glad you took us and held us." That's what the girl said, and she fell asleep at the cabin. The two remaining girls, unfortunately, look at me one way or the other, then fall asleep beside the brunette girl and wear a single blanket for three. Erm...... "You guys, what about rice? When I hear that, "I've already had enough for today" That's what the brunette girl answers. I'm not sure what the situation is, but it's not hard to imagine that even food isn't satisfied when children live here alone and the villagers don't involve them because they're cursed children. Kids have to eat properly. I don't grow anything that grows. "Okay, okay. Wait." That's what I'm leaving the cabin in the name of the College of the Brave. When he saw me, the brunette got up. "Hey, what are you waiting for!? We're already asleep! "Fine. Wait a minute." That's what I said, and now it's time to get out of the cabin. Shortly before closing the cabin door, I heard the girl snapping, "What the hell... I don't know what that means". Then I'll go back to my faculty residence first and bring one big pot and a street of dishes and cooking utensils. By the way, these were magically made of water and washed appropriately. The next thing I know, I went to the village chief's house again late in the night, and paid to have some salted pork and some vegetables, and some bread divided into it. Plenty of it, put it in a large pot and transport it to the front of a cabin named the school building. I picked up an affordable rock and combined it with magic to make a simple kamado in front of the cabin. Pick up more firewood and magically light it to create an incineration. Place plenty of water in a large pan and set on fire. Throw in properly chopped cabbage, carrots, turnips and other vegetables there and simmer salted pork to make soup. I don't think of flammable ingredients or anything like that, it's cluttered cooking. Cabbage and turnips don't feel subtle if they simmer too much, but they can't be eaten. In addition, anticipate the appropriateness and cook the appropriately sliced pork using the incineration. I'll lightly crush the bread. And by the time the soup was moderately simmered and the pork could be cooked fragrant, I went into the cabin to get the three kittens. "Hey, we're done." That's what I said when I opened the cabin door... - - Butterflies. Inside the cabin, three girls, who were going to lean against the door and sneak up to see how it was, were sitting right in the cabin to fix it up. A wooden stick, a dark-haired girl, makes excuses in a hurry. "Oh, you...! What were you doing on the table earlier! It didn't smell good. It was so noisy, you couldn't sleep! Um, I'm not being honest. Whatever you think, I waited in anticipation. Shall I make you a little mean here? "Oh, don't you want one? Okay, then just the two of us behind you. No. I made plenty of mesh, so let's eat together." "Heh...? I speak to the two girls behind me, the blonde girl and the silver-haired girl, over the head of the brunette girl. The two girls came to me flustered, dripping up at the voice of my temptation. The two give her a voice as they pass beside the brunette girl. "Rio...... I'm sorry. I can't... I can't stand this..." "... Rio, I'll eat you up to Rio's minute. ... Rio's sacrifice will not be in vain" "Ah! You guys betray me! - - Hey, wait a minute! I'll eat too! Let me eat! The brunette girl, betrayed by her two sisters, returned her palm in seconds. Hmm... there's no other love. So where they were all aligned before the bonfire. I'll pour a large bowl of pork and vegetable soup and give it to each other. Then I also gave him the roasted meat and the crusted bread on a plate. All three of them are staring at the dish with a drizzle. All right... "Well, I'll have..." "" "I'll have it! Shortly after the meal greeting, the girls began to be disappointed in the meal. "Ha-ha-ha! "Muggle" All three, great momentum. Instead of kittens, eating like a beast and bumping into the food. Yeah, yeah. It has to be like this with kids. "What do you say, good? "... God" The brunette girl you weren't honest with earlier, she's a lot more honest, too. I saw the faces of the girls obsessed with eating and thought they were cute. I can't stop Niyaniya. I'm glad you got flown, even if you just saw these guys' faces. It was me.

第120話 あたりがだいぶ暗くなり、ラヴィルトンの街にネオンライトが目立ち始めた頃。 満月が煌々と輝く空の下、俺たちは街のメインストリートを通り、中央広場へと向かう。 中央広場に到着すると、すでに会場の設営は終わっているようだった。 会場には徐々に観客が集まりはじめている段階だ。 時間的には、遅刻というほど遅れてはいない。 俺は子供たちを連れて、ステージの舞台裏へと向かおうとしたのだが── 「いたーっ!」 そのときどこかから、そんな聞き覚えのある女性の声が聞こえてきた。 あたりを見回すと、俺たちの方へパタパタと駆け寄ってくる小柄な姿が一つ。 その後ろからボディガードの黒服が数人ついてくる。 リゼル武具店の店主、エルフのデザイナーにして職人のリゼルだ。 だがその目もとには、どこか隈のようなものが見える。 朝に「遮光の首飾り」を受け取るために会ったときも若干顔色が悪かった気がするが、それに拍車がかかっているような。 まさか、昨日から寝てないパターンか......? 「はぁっ、はぁっ......み、見つけた......!」 「どうしたんです、リゼルさん。おかげさまで『遮光の首飾り』はちゃんと機能しましたけど」 「そう......それは、良かったわ。じゃあついでに、これも受け取ってちょうだい」 リゼルは黒服の一人に、指図する。 指示を受けた黒服は、手元の袋から一着の衣装を取り出した。 そしてウルの前に行って、それを手渡す。 「えっ......なんすか、これ......?」 衣裳を受け取ったウルが呆然としていると、リゼルが言う。 「今日のあなたのステージ衣装よ。特急で作らせたから少し荒いかもしれないけど、ステージの主催側が用意している貸し衣装よりは百倍仕立ては良いはずだし、何よりあなたに似合うデザインにしたわ」 「は......? ──って、えぇええええっ!? う、うちの専用衣装ってことっすか!?」 ウルが驚きの声を上げる。 驚いたのは俺もだ。 そう言われてみればリゼルは、ウルのプロポーションをはかるような様子も見せていたが......。 一方のリゼルは、事もなげに言う。 「そうよ。この私が徹夜で作ったし、作らせたんだから、今日のステージではそれを着て踊りなさい。──ガルドンさんから聞いたわ。今日はあなたの晴れ舞台なんでしょう? だったら思いっきり着飾らなきゃ。それに何より、あなただけ貸し衣装なんかじゃ、私が作ったそっちの三人の衣装に見劣りしてしまうわ」 そう言ってリゼルは、リオ、イリス、メイファの三人を見る。 彼女が作って三人に渡してくれた防具は、今日のステージのための衣装でもあるのだ。 「ふぇぇっ......わ、分かったっす......。何もかも夢みたいっすよ......。あ、ありがとうございます。いくらお礼を言っても言い足りないっす」 「いいわ、気にしないで。私がやりたくてやっているんだから。その代わり、今日はいいステージを、見せてちょうだい......楽しみにして、る......」 「おっと」 リゼルは自らのミッションを達成したからなのか、ふらりと倒れそうになったので、俺はそれを支えてやった。 すぐに黒服たちが慌てて駆け寄ってきたので、ぐったりとしたリゼルを受け渡してやる。 リゼルも意識を失ったのは一瞬だけで、黒服たちに支えられながらよろりと立つ。 黒服たちは「リゼル様、無茶のしすぎです!」「どうかお体を大切にしてください!」などと言うが、リゼルは「......うるさいわね。あなたたち私のお母さんか何か? 好きにやらせてよ」などと言って拗ねていた。 ......なんというか、趣味に没頭して寝食を忘れた趣味人という感じだ。 リゼルもリゼルで、また相当な変わり者だな。 周りの人たちも大変だ。 それからリゼルは、ステージの前に用意された特設の観客席へふらりと向かっていって、そこにあった席に崩れ落ちるように腰かけた。 そして力尽きたのか、すぅすぅと寝息を立てはじめる。 そのリゼルの隣の席には、これまた見覚えのあるずんぐりむっくりとした人物がどっかりと座っていた。 隣の席で寝落ちたリゼルを見て、「ふん」と鼻を鳴らすのは、ドワーフの職人ガルドンだ。 彼も今日のステージを見に来たのだろうか。 「うち、ガルドンさんにも挨拶してくるっす!」 そう言ってウルは、パタパタと駆けていく。 そしてガルドンの前でウルが何度も何度も頭を下げると、ガルドンはその少女の頭を不愛想になでた。 さらにそこに── 「あ、兄ちゃん。あれってウルが働いてるパン屋のおっちゃんじゃねぇ?」 リオが指さした先には、大柄マッチョのパン屋の親方さんと、その奥さんがいた。 あの二人も、ウルのステージを見に来たのだろうか。 パン屋での修羅場のときと違い、今日は夫婦の仲も良さそうだ。 その姿をウルが見つけると、ウルは二人のもとにも挨拶に行く。 ウルはパン屋の夫婦にもまた、頭をなでられていた。 「先生......なんかああいうの、いいですね。ウルちゃん、たくさんの人たちに応援してもらって」 イリスがそう言って寄り添ってきたので、俺はその頭にぽんぽんと手を置く。 「ああ、そうだな。ちなみにイリスたちのことは、俺が百人分応援してやるから安心しろ」 「えへへっ。お願いしますね、先生♪」 イリスは少し頬を染め、俺に上目遣いで笑顔を向けてくる。 今日も今日とて、めちゃくちゃ可愛いな、うん。 「に、兄ちゃん......! オレも頑張るからっ! だから、その......オレもイリスみたいに、頭ぽんぽんってしてほしいなって......」 「......お兄さん、ボクも、イリスみたいにされたい。......なんなら頭ぽんぽんと頭なでなでのセットでも、ボクは一向に構わない」 そう言ってリオとメイファも寄ってきたので、二人にもめちゃくちゃ頭ぽんぽんしたり、頭なでなでしたり、イリスも含めて抱き寄せたりした。 そうこうしているうちに、ウルも戻ってくる。 「うちの挨拶は終わったっすよー......って、三人とブレットさんのべたべたっぷりは、相変わらずっすね......」 そう言ったウルの顔は、少し引きつっていたような気がした。 まあそれはともあれ。 準備も整って、いよいよステージに向かうときだ。 俺はウルも含めた四人の教え子たちに向かって発破をかける。 「それじゃあ四人とも、これまでの練習の成果を見せてこい。あと、せっかくだから楽しんでこいよ」 「「「「はいっ!」」」」 そうして四人は、ステージの舞台裏へと駆けていく。 舞台裏ではうちの子供たちのほかに、十組近くのグループがスタンバイをしているようだった。 うちの子たちが、あの数の子供たちとステージの出来を競うことになるのかと思うと、なかなかにドキドキするものがあるな。 一方で俺は、ステージを見やすい場所を適当に探し、そこに移動する。 するとそんな俺のもとに、また別の人物が歩み寄ってきた。 警邏服を着た女性だった。 今日はチンピラ風の二人を連れてはおらず、一人だけの様子。 「こんばんは、勇者学院の先生。──昨日は本当にありがとうございました。おかげでこの街が抱えていた、一つの大きな問題が解決しました。だからこんなイベントも安心して開催できる」 俺の隣に並んだ警邏女性は、俺に向かって頭を下げてきた。 俺はそれに、軽く微笑んで答える。 「こんばんは、警邏課長さん。なんの話だか分かりませんけど、この街を訪問した一旅行者としては何よりだと思います。うちの教え子たちも、このイベントを楽しみにしていましたから」 「そっか、それは良かった。──でもどこかの善意の旅行者さんは、自分たちのお手柄を誰にも知られなくていいのかなって、街の警備をしているあたしは思ってしまうんだよね。誰のお手柄かを明かせば、表彰と特別報酬ぐらいは出る可能性はあると思うよ?」 「でもその旅行者が実際にやったことは、街の外とはいえ、罪状の確定していない現地住民の住宅への殴り込みですよね。その辺は難しいんじゃないですか? その住居の内部から偶然、まずいものが見付かったから良かったものの。社会的には、目的のために手段を選ばないってのを正当化するわけにもいかないでしょう」 「うーん、実際のところ、そうなんだよねー......。ほんっとごめん! あとありがとう! また会う機会があったら、この埋め合わせは何かで必ずするから」 「気にしなくていいと思いますよ。その旅行者も、自分たちの目的のついででやっただけでしょうから」 「うん、分かった。何の役にも立たないだろうけど、悪党どもから何人もの罪もない市民を救った英雄がいたことは、あたしの胸の中には永遠に残しておくから。本当、ありがとう!」 そう言って俺のことを拝んでから、女性警邏は「それじゃ、また」と言って去っていった。 軽そうに見えて、意外と律儀な人なんだな、あの人も。 ──とまあ、そんなこんながありつつ時間が過ぎ。 やがてステージの時間がやってきたのであった。

120 Lesson 120 When it got a lot darker around and neon lights started to stand out in the city of Lavilton. Under a brilliant sky with a full moon, we head through the city's main street to Central Square. Upon arrival at Central Square, it appeared that the venue had already been set up. The venue is gradually beginning to gather audiences. In time, we are not so late as late. I tried to get the kids behind the scenes, but... "There he is! From somewhere then, I could hear such a familiar woman. Looking around, there's one tiny look rushing toward us. A few bodyguard black clothes follow me from behind. Liselle, the owner of the armoury store, designer of the elves and artisan Liselle. But in his eyes, he sees something like a neighborhood. I also felt slightly pale when I met him in the morning to receive the "blackout necklace," but he seems to be clapping at it. No way, the pattern you haven't slept in since yesterday...? "Ha, ha... mi, I found it...! "What's the matter, Mr. Lisel? Thanks to you," The Blackout Neck Decoration "worked properly." "Yes... that's good. Then take this too." Liselle instructs one of the black clothes. The black clothes on instruction took one outfit out of the bag at hand. And go before Ur, and hand it over. "What... somehow, this...? Liselle says that Ur, who received the garment, is stunned. "It's your stage costume today. It may be a little rough because I made it on the express, but it should be a hundred times better tailored than the rental costumes available on the stage's hosting side, and most importantly, I've designed it to suit you." "Is...? - - What do you mean," Yeah, yeah! "?" Ur shouts a surprise. I'm surprised, too. If you ask me, Liselle also looked like she was going to put on Ur's proposition... Liselle, on the other hand, says beforehand. "That's right. I made this all night, and you let me make it, so wear it and dance on stage today. - - Mr. Gardon told me. It must be your sunny day, isn't it? Then you have to dress as you wish. Besides, you're not the only one who lends costumes. You're inferior to the three of them I made." That's what Liselle sees: Rio, Illis and Mayfa. The armor she made and gave it to the three of us is also a costume for today's stage. "Huh... ok... I want to dream about everything... Oh, thank you. I don't care how much you thank me enough." "Fine, never mind. Because I want to do it. Instead, show me a good stage today... look forward to it..." "Oops." Was it because Liselle accomplished her own mission, or was about to fall off pretentiously, so I supported it. As soon as the black clothes rushed over, I'd give them a neat resell. Liselle has also lost consciousness only for a moment, standing flat, supported by the black clothes. The black clothes said, "Dear Liselle, it's too unscrupulous!" "Please take care of yourself!," he says, "but Liselle says,"... shut up. You guys my mother or something? Let me do what I want, "he said, obstinately. ... Somehow, it feels like a hobbyist who is immersed in his hobby and forgets to sleep. Liselle's Liselle, too, and you're quite a stranger again. People around us are in trouble, too. Liselle then fluttered towards the special audience seats reserved in front of the stage and sat down to collapse into the seats there. And you're exhausted, and you start to get some sleep. In the seat next to that risel, this again sat a familiar sloppy figure. It's Dwarf artisan Gardon who looks at Liselle falling asleep in the next seat and snorts, "Hmm. Has he come to see today's stage as well? "We're gonna say hello to Mr. Gardon, too! Saying so, Ur rushes off with a pat. And when Ur bowed his head over and over in front of Gardon, Gardon turned the girl's head into disdain. And there's... "Ah, brother. Isn't that the old lady from the bakery where Ur works? Ahead of what Rio pointed out was the parent of a large macho bakery and his wife. Have those two come to see Ur's stage, too? Unlike when we were training at the bakery, the couple seems to get along well today. When Ur finds that figure, Ur goes to greet them both. And Ur was also beheaded by a couple of bakeries. "Doctor... Something. Oh, that's good. Uru, get a lot of people to back you up." That's what Iris said and leaned in, so I put my hands on that head. "Oh, right. By the way, don't worry, I'll back you up for a hundred." "Eh heh. Please, Doctor." Iris dyes his cheeks a little and smiles up at me. Today and today, you're so cute, yeah. "To, brother......! I'll do my best! So... I want you to be like Illis..." "... brother, I want you to be like Illis, too.... I don't care if it's a heady, heady set." That's what I said and Rio and Mayfa stopped by, so I screwed up with both of them, I did it without my head, and I hugged them, including Illis. While that's the case, Ur will be back, too. "Our greetings are over... so the three of us and Mr. Brett have plenty to offer, as always..." That said Ur's face felt a little drawn. Well, whatever. It's time to get ready and finally head to the stage. I will make a breakthrough for the four godchildren, including Ur. "All four of you, then, show me the results of your previous practice. And because of that, have fun." "" "" Yes! That's how the four of them rush behind the scenes of the stage. Behind the scenes, besides our children, nearly ten groups seemed to be standing by. I was wondering if my kids were going to compete with that number of kids to make the stage, and there's something quite exciting about that. On the other hand, I will find a suitable place to see the stage and move there. Then another person walked up to me like that again. She was a woman in policing clothes. I'm not taking two chimpy styles today, just one look. "Good evening, teacher at the College of the Brave. - - Thank you so much for yesterday. Thanks to this city, one big problem was solved. So it's safe to host events like this." The policewoman who lined up next to me kept her head down against me. I answer that with a smile. "Good evening, Chief of Police. I don't know what you're talking about, but as a single traveler who visited this city, I think it's more than anything. My godchildren were looking forward to this event." "Oh well, that's good. - - But some bona fide traveler doesn't have to let anyone know what they're doing, and I think I'm guarding the city. I think it's possible that if you reveal who you're dealing with, you'll get an award and a special reward? "But what that traveler actually did, though outside the city, is punch in the homes of unconfirmed local residents, right? Isn't it hard around there? Though it was good because I stumbled across something bad from inside that residence. Socially, you can't justify not choosing the means for the purpose." "Um, actually, yes... I'm so sorry! Thanks a lot! If I ever get a chance to see you again, I'll make sure this filling is with something." "I don't think you have to worry about it. Because the traveler would just have done it for their own purposes." "Yeah, okay. I know it won't do me any good, but I'll keep it in my chest forever that there was a hero who saved a number of innocent citizens from the villains. True, thanks! That's what I said and worshipped about me, and then the female policing said, "See you later" and left. You look mild, you're a surprisingly disciplined person, and that guy. - - and well, time runs out while there's such a thing. Eventually the time for the stage arrived.

第143話 「んんっ......! やっと外に出れたね」 「でも、まわりが山に囲まれてる......ここ、谷の底でしょうか」 海賊娘マリーナが伸びをしながら、そして村の見習い勇者アーニャが周囲を見回しながら、そう口にする。 洞窟を出た俺たち。 その場所はどうやら、絶壁の岩山と岩山に挟まれた、谷底のようだった。 洞窟を出て正面と背後、それに右手側には、見上げるばかりの峻険な岩山がそそり立っている。 なので、まともに進めるのは左手側だけ── かと思いきや、もう一つ。 正面の岩山にも、俺たちが出てきたのと同じような洞窟が、ぽっかりと穴をあけていた。 それを見たリオが、俺のもとに寄ってくる。 「兄ちゃん、どっち行ったらいいと思う? 洞窟? それとも、向こうに歩いていったほうがいいのかな」 俺はそんなリオの頭になんとなく手を置いて、軽くなでる。 リオは「ふにゅっ」と小さく鳴いた。 ちなみに、左手側はずっと先まで谷が続いていて、その谷が途中からぐぐっとカーブしているため、そこから先の様子は窺うことができなかった。 「正直、どっちが正解かは分からないな──マリーナ、どうする?」 「んー、せっかく表に出れたのに、またすぐ洞窟ってのも面白くないね。あたいはこの谷底を歩いていくほうに一票」 マリーナはざっくばらんに答える。 いい加減な決め方だが、まあ気持ちは分かるし、俺も特に異論はなかった。 「よし、じゃあずっと洞窟ばっかりってのもアレだし、外を散策するか」 「「「賛成ーっ」」」 子供たちからも反対は出なかったので、俺たちは洞窟を出て左手側、谷底の道を進んでいくことにした。 俺を含めた六人の勇者が、谷底の道を歩いていく。 空を見上げれば、オレンジ色の夕焼け空が広がっている。 もうすぐ日が沈む時刻のようだ。 谷の上空では、大型の黒い鳥が数羽、ギャアギャアと鳴きながら飛び回っていた。 と、俺はふと思い出し、アーニャに聞く。 「そういえばアーニャ、ここに入るときに『気になることがある』って言ってたけど、あれ、何が気になるのか聞いてもいいか?」 「んん......? 『気になること』ですか? 私、そんなこと言いましたっけ?」 「ほら、この島に入って最初、大きな石の扉の前でさ。俺がアーニャに、船で待っているかどうかって聞いたときに、『少し気になることもありますし』って言ってただろ?」 「あー......」 アーニャはつぶやいて、何かを思い出そうとするように、指先で自分の眉間のあたりをとんとんと叩く。 それからアーニャは、指輪が嵌っているほうの手を俺に見せてきた。 「私たちの村に、この指輪とともに伝えられた言葉があるんです。──『鍵が鍵の形をしているとは限らず。縁なき者の命をも救う心優しき者たちに幸あれ』って。『鍵』とか『心優しき者』っていう言葉が符合していたから、ちょっと気になっていて」 「ふぅん、そういうことか」 なるほどな。 それは確かに気になる。 というか、それでほとんど繋がったんじゃないだろうか。 未だにそれらしきものが見つかっていないから、何とも言えない部分はあるが。 と、そんな話をしながら谷底を進んでいると── 「分岐だね。右か左か」 先頭に立ったマリーナが、その場所の前で仁王立ちをした。 谷がY字路状に、左右に分かれる場所だった。 正面にも切り立った断崖が現れ、それが幅広だった谷底の道を、左右に分断している。 「どうする、ブレットさん? あたいの勘だと、そうさね......ここは右かな」 海賊娘はいつも通り、適当なようだった。 とは言え、やはりどちらに進めばいいかの判断材料はないので、適当に決めるしかないのだが。 「どうしても左に行きたいってやつはいるか?」 「「「ないでーす」」」 「よし、じゃあ右行くぞー」 「「「はーい」」」 そんな適当なノリで、右の道を選んで進んでいく。 俺の引率の先生モードも、だんだん雑になってきたな。 まあ六人もいるんだから、二手に分かれるという方針もなきにしもあらずなのだが。 でも俺の予想だと、「当たり」のほうにマリーナとアーニャがいないと、結局意味がないんだよな。 そんなわけで、右の道を選んで進むことしばらく。 俺たちはようやく、緊張感を否応なく要求される光景に遭遇した。 緩やかにカーブする谷底の道を進んでいた俺たちだったが、先頭を歩いていたマリーナが鋭く、しかし小声で警告の声を発する。 「待った! ......この先、何かいるよ」 マリーナは隠れるように岩陰に駆け寄って、そこからわずかに身を乗り出すようにして、その先を見る。 俺や子供たちも、それに倣った。 「......また大扉があるね。でもその前に......たくさん転がってるあれは、サハギンの死体かね? まわりには大岩がごろごろ転がってる。ありゃあどういうことだい」 マリーナが小声で、そうつぶやく。 俺たちが進んできた谷底の道は、大きくカーブを描きながら進んだ先で、そそり立つ絶壁の岩山に阻まれて行き止まりになっていた。 その行き止まりの断崖に、石造りの大扉が設えられている。 あれを開くことができれば、先に進むことができるのだろう。 だがその大扉の前に、サハギンの遺体らしきものが数体、地面に倒れていた。 倒れているサハギンの周辺には、抱えるほどの大岩がいくつも転がっている。 ひどい遺体は、岩に潰されてぺちゃんこの状態に見えた。 立って動いているサハギンの姿は見当たらない。 何かの事後だろうと思える光景だった。 「近付いてみよう。周囲の警戒はしっかりやりつつだ」 俺のその言葉に、五人の勇者の少女はこくりとうなずく。 最大限に警戒しながら、大扉の前まで移動する。 特に襲撃や、動く者の気配はなし。 近付いてみると、倒れているサハギンがいずれも、確かにこと切れていることが分かった。 「......このサハギンたち、岩に潰されている。......上から、岩が落ちてきた......?」 遺体を調べていたメイファがそう言って、頭上を見上げる。 俺もつられて見上げてみるが、やはり、特に動く者の気配はなかった。 「兄ちゃん、扉の横に石のプレートがある。何か書いてあるよ。読んでみるね」 大扉周辺を調べていたリオが、そう伝えてくる。 嫌な予感がしたので、俺はリオが読み上げる前に釘をさす。 「リオ、無理にボケなくていいからな」 「ぎくっ。......あはは、やだなぁ兄ちゃん。メイファやイリスじゃないんだから、そんなことしないって」 ......やるつもりだったらしい。 ここまできたら長女がどうボケるのかを聞いてみたかった気もしたが、生産性が皆無なうえに、俺へのあらぬ疑いが増えるだけなのでやめておこう。 「ちゃんと読むね。えーっと──『資格なき者は立ち去れ。さもなくば汝らに大いなる災いが降り注ぐであろう』だって」 「......なるほどな。そういうことか」 ここまで情報が揃えば、だいたい状況が読めた気がする。 つまりはこういうことだろう。 まず、俺たちより先に、サハギンの探索隊がこの扉の前に到着した。 そして、やつらは何らかの方法で、この扉を強引に開けようとした。 「資格」を持たないままにだ。 その結果、「大いなる災い」がサハギンどもに降りかかった。 おおかた、頭上から大岩が落ちてくる となると── 「気になるのは、残りのサハギンが今どこにいるのかってことだな」 俺は誰にともなく、そうつぶやく。 サハギンの遺体は、死んでからそう長い時間がたったものではないように見える。 またここに倒れているサハギンは、しっかり数えてみれば全部で六体だ。 ここに来たサハギンが、これで全部ということはないだろう。 「あっ......! じゃあ先生、洞窟から外に出たときに見つけた、もう一つの洞窟! あれってもしかして......」 イリスのその言葉に、俺はうなずいてみせる。 「ああ、おそらくはサハギンたちが、向こうの洞窟を通ってこの場所に来たってことだろう。そう考えると、残る道は──」 「さっきの分岐の左側、ってことになるね」 マリーナの相槌に、俺は再びうなずく。 だがもう一つ、気になることがある。 俺の予想が正しければ── 「なあリオ、扉かその近くに、指輪が填まる穴か何かが見当たらないか?」 俺がそう聞くと、リオが驚いたという表情を見せる。 「えっ......? う、うん、あるけど。今ちょうど見つけて言おうと思ってたのに、どうして分かったの、兄ちゃん?」 「そりゃまあ、鍵には鍵穴が必要だからな」 なおも首を傾げるリオ。 ま、あとでゆっくり説明してやろう。 それと、一応これも確認しておくか。 「リオ、その指輪の填まりそうな穴は、ちゃんと二つあるよな?」 だがリオは、俺のその確認には「ん?」と疑問の声をあげる。 「二つ? や、穴は一つしかないと思うけど」 今度は俺が間抜けな声をあげる番だった。 穴が、一つしかない......? 俺自身も扉の前に行って、扉自体とその周辺を探してみる。 だがリオの言うとおり、扉の中央部に指輪が填まりそうな穴が一つあるほかは、それらしきものは一切見当たらなかった。 どういうことだ......? この穴が「鍵穴」なのだとすれば、二つなければいけないはずなのだが。 だが何度見ても、見つからないものは見つからない。 仕方がないので、俺は疑問を残したまま、次の行動へと移ることにした。

143 Episode 143 "Nhh....! You're finally out there." "But it's surrounded by mountains... is this the bottom of the valley?" As the pirate daughter Marina stretches out and the village apprentice Argna looks around, she says so. We left the cave. The place was apparently like the bottom of a valley, sandwiched between the rocky mountains of the cliff. Out of the cave, in front and behind, and on the right hand side, there is a steep rocky mountain that just looks up. Therefore, only the left hand side can proceed properly - - I thought, one more thing. In the rocky mountain in front, there was a cave like the one we came out of, full of holes. When I saw it, Rio came to me. "Brother, which way do you think I should go? A cave? Or should I walk over there?" I somehow put my hand on Rio's head, and I feel lighter. Rio cried "Funichu." Incidentally, the left hand side had a valley all the way ahead, and the valley was curved all the way from there, so I couldn't tell what was going on from there. "Honestly, I don't know which is the right answer - - Marina, what do we do? "Hmm, it's not interesting to see a cave again, even though it's out front. I voted to walk the bottom of this valley." Marina replies briefly. It's a lame decision, but I know how you feel, and I had no particular objection. All right, well, it's always just a cave, so why don't you take a walk outside? Agreed ~ There was no objection from the children, so we decided to leave the cave and proceed to the bottom of the valley on the left hand side. Six brave men, including me, walk the bottom of the valley. Looking up at the sky, the orange sunset sky spreads. It looks like the sun is about to set. Above the valley, a few large black birds were flying around whistling. And I remembered a lot and asked Agna. "Speaking of which, Argna, when I came in here, I said, 'I have something to worry about', but can I ask what's bothering me? "Nh...? 'What bothers you'? Did I say that? "Look, the first time I entered this island, I was in front of a big stone door. When I asked Agna if she was waiting on the boat, she said," Sometimes I wonder. " "Ah...." Argna smashes her eyebrows with her fingertips, trying to remember something. Then Argna showed me her hand with the ring on it. "There's a word in our village that came along with this ring. - - The key does not necessarily take the form of a key. Happiness to the kindhearted who save the lives of the needy." I was a little worried because the words "key" and "sweetheart" matched. " Phew, is that so? I see. That does bother me. Or is that why they're almost connected? I still haven't found what I've been doing, so I can't say anything about it. And as I was talking about it, I was walking down the valley - - "It's a branch. Right or left?" Marina, who stood at the head, royaled in front of the place. It was a place where the valley was divided into a Y-shaped path and left and right. Cut cliffs also appeared in the front, dividing the wide valley bottom road into left and right. "What do we do, Mr. Brett? As far as I'm concerned... this is the right place." The pirate daughter seemed fit, as usual. Nevertheless, I still don't have the material to decide which way to proceed, so I have to decide appropriately. "Does anyone really want to go left? "" "Don't" " All right, let's go right ~ "" Yes. "" With such a suitable noli, you choose the right path and proceed. The teacher mode of my pull rate is getting more and more cluttered. Well, there are six of them, so there is no policy of splitting them into two parts. But my guess is, if Marina and Argna weren't there for "winning", it wouldn't make sense after all. That's why I chose the right path for a while. We have finally encountered a scene in which tension is demanded without rejection. We were on a gently curving valley bottom road, but the leading marina was sharp, but whispered a warning. "Wait!... there's something going on." Marina rushes to the shade of the rock to hide and leaves slightly behind, looking beyond. Me and the kids did the same. "... there's a big door again. But before that... it's rolling a lot. Is that Sahagin's body? Big rocks are rolling around." Thank you very much. " Marina whispered and snapped. The path to the bottom of the valley that we had travelled along, drawing a large curve, was blocked by the rising rocky mountains. There is a large stone door on the cliff at the end of the road. If we can open it, we can move on. But in front of the big door, several things resembling Sahagin's body fell on the ground. There are plenty of big rocks rolling around the fallen Sahagin. The terrible body looked like it was crushed to pieces by a rock. I don't see Sahagin standing or moving. It was a sight that seemed to be something afterwards. "Let's get closer. Keep your eyes open." The five brave girls nodded in my words. Move to the front of the large door with maximum vigilance. No signs of raids or movers in particular. A closer look revealed that all of the fallen Sahagin had indeed been cut. "... these Sahagins are crushed by rocks.... the rock fell from above...? Mayfa, who was examining the body, said so and looked up. I was followed and looked up, but after all, there were no signs of anyone moving. "Brother, there is a stone plate next to the door. It says something. I'll read it." That's what Rio told me when he was looking around the big door. I had a bad feeling about it, so I pulled a nail before Rio could read it. Rio, you don't have to bother yourself. "Gikku.... ahaha, I don't know, brother. I'm not Mayfa or Iris, so I won't do that." ... they were going to do it. When I got here, I wanted to ask how my eldest daughter was going to get sick, but since there was no productivity and there was only more suspicion about me, let's stop. "Read it properly. Er - - - Leave the unqualified. Otherwise a great calamity will fall upon you. '" "... I see. Is that what this is about?" With all the information I've got, I think I can read the situation. I mean, this is what this is all about. First, a Sahagin expedition arrived before us. And they tried to force this door open in some way. Without qualifications. As a result, a "great calamity" befell the Sahagins. Crazy, it must have been a trap with a big rock falling from above. Then - - "I wonder where the rest of the Sahagins are now." I don't know anybody, I snap like that. Sahagin's body doesn't look like it's been that long since he died. Six Sahaguins fell here again, if you count them well. The Sahagins who came here will not be all of them. "Ah...! Well then, Doctor, another cave I found when I left the cave! Could that be...." I can nod at the words of England. "Ah, perhaps the Sahagins came to this place through the other cave. With that in mind, the way to go - -" "The left side of the branch just now." I nodded again at Marina's gavel. But there's one more thing I'm worried about. If my predictions are correct... "Hey, Rio, do you see any holes in or near the door that fill the ring? When I hear that, Rio looks surprised. "Eh...? Uh, yeah, I do. I was just about to find you and tell you, how did you know, brother? Well, the key needs a key hole. Still tilting his neck, Rio. Well, I'll explain later. Besides, should I check this as well? "Rio, there are two holes in that ring that might fill it, right? But Rio said to me, "Hmm?" and raised doubts. "Two? Well, I think there's only one hole." Now it was my turn to make an idiotic voice. There's only one hole...? I'll go in front of the door myself and look for the door itself and its surroundings. But Rio was right, except there was a hole in the middle of the door that might fill the ring, and I couldn't find any of them. What do you mean...? If this hole is a "key hole", there should be two. But no matter how many times I look, I can't find what I can't find. I had no choice, so I decided to move on to the next action, leaving no doubt.

第123話 うだるように暑い、ある夏の日のこと。 俺と教え子たちが暮らす、辺境の小さな村。 その一角にある、勇者学院校舎という名のボロ小屋の前で── 俺こと勇者学院の教師ブレットは、教え子たちの前に立ち、先日入手した秘密道具を取り出した。 「ジャジャーンッ! 見ろ、我らが貧乏勇者学院にも、新しい教育用具が導入された。その名も『魔力測定器』だ!」 新しく購入したアイテムを、さも素晴らしいものであるかのように、もったいぶってから登場させる俺。 だがグラウンドという名の庭に座った子供たちのテンションは、ちょっと低かった。 「兄ちゃん、それより暑っついよぉ。冷房魔道具買ってよ、冷房魔道具」 「ちょ、ちょっとリオ! 先生だっていろいろ考えて買うものを決めてくれているんだから、失礼だよ!」 「......ボクも、リオに賛成。......今年の夏はヤバい。ここ数年で最高。百年に一度の暑さ」 「でもメイファは毎年そんなこと言ってねぇ? 去年は何だっけ?」 「......豊かな日差しと、ほど良い湿度が調和した暑さ」 「そ、そんなことより二人とも! 魔力測定器だよ、魔力測定器! 学校で魔力が測れるんだよ! これってすごいと思わない?」 三人の教え子たちは、イリスひとりが一所懸命に俺の選択をよいしょしてくれていたが、リオとメイファは本音に正直である。 ちなみにそんな少女たちは今、衣服の胸元などをパタパタさせて、少しでも涼しくなろうとしていた。 ......目のやり場に困る。 こいつらももう年頃の女子なんだから、その辺は少し自覚してほしい。 あとこっちの様子を窺うようにチラチラと見てくる、その視線は何だと問いたいのだが。 俺は、はぁと大きくため息をつく。 「......リオ、メイファ。お前らも一昨年までは、冷房どころか何もない中で生活してたんだろ?」 「そりゃあそうだけどさぁ」 「......ボクたちは、広い世界を知ってしまった。......人は快適を求め、日々堕落していく生き物。......魔法文明の進歩は、蜜の味」 だんだんわがままになっていく教え子たちであった。 まあ、俺も快適なほうがいいから、悪いとは言わないけどさ。 「分かった分かった。次にまとまった収入が入ったときには、冷房魔道具の購入を検討してやるから」 「「「やったーっ!」」」 歓喜の声を上げる教え子たち。 さりげなくイリスも混じっている。 この気遣い天使の次女も、本音は一緒だったらしい。 ともあれ── 「とりあえず今日は魔力測定な。リオから順番に、一人ずつ測るぞ」 「「「はーい」」」 庭に体育座りをしていた子供たちは、まずリオから立ち上がり、俺のもとに来る。 「リオ、魔力測定器の使い方は覚えているか? ステータス検定のときに使ったと思うが」 「えっと......どうやるんだっけ、兄ちゃん。こう?」 「微妙に違う。もっとこう、真ん中のほうを持って──」 「あ、そっか。えへへ、忘れてた」 俺が道具の使い方を手取り足取り教えてやると、リオはぺろっと舌を出してみせてくる。 相変わらずくっそ可愛いな、うちの子は。 「リオの魔力値は──19か。三ヶ月前のステータス検定のときはいくつだった?」 「んと、勇者カード、勇者カード......あった。三ヶ月前に測ったときは、魔力17だって」 「お、2ポイント伸びてるな。ただ計測結果にはそのときどきで多少の誤差は出るから、それは頭に入れておいてくれ」 「ふぅん......。でも魔力はオレ、そんなに高くなくていいや」 「まあな。リオは剣を使った武器戦闘がメインだし、そっちを頑張っているからな。──よし、リオは計測終了だ。次はイリス。こっち来い」 「は、はいっ!」 リオと入れ替わって、イリスが立ち上がり、俺のもとに来た。 ドキドキした様子で、俺から魔力測定器を受け取る。 それから測定をしようとして──イリスはチラと、俺の方を見てきた。 「あ、あの、先生。......これ、どうやって使うんでしたっけ?」 イリスはおずおずと、そんなことを聞いてきた。 んん......? 「おいおい、今のリオがやっていたのを見てなかったのか?」 「あ、いえ、その......す、すみません」 「......しょうがないな。いいか、こうやってだな」 俺はイリスにも、彼女の背後に回り込んで手を取って、道具の使い方を教えてやる。 「ふわぁあああっ......! せ、先生が、後ろから密着して......!」 「......おいイリス、人聞きの悪い言い方をするな。近所の人に聞かれたら勘違いされるだろ」 「は、はい、すみませんっ! 密着してのご指導、ありがとうございます!」 「お、おう。どういたしまして」 イリスもときどき、変なこと言うんだよな。 しかしこの測定器、そんなに扱い難しいかな。 片手剣ぐらいの長さの棒状の道具で、両端にグリップがついていて、そこを両手で握って魔力を流し込むだけなんだが。 「イリスの測定結果は──40。三ヶ月前はいくつだった?」 「えっと......37です」 「イリスは3ポイント伸びているか。これも誤差の範囲内の可能性はあるが、まあ伸びていると見ていいだろ。イリスもよく頑張ってるな」 「えへへ~」 俺が頭をなでてやると、イリスはにへらっと相好を崩す。 これまたいつもながら、とても可愛い。 するとそれを見たリオが、ぷっくーと頬を膨らませた。 「あーっ、イリスだけずるい! 兄ちゃんオレも、頭なでて!」 「そ、そうか......?」 リオが近付いてきて頭を差し出すので、俺はリオもなでてやる。 するとリオは一瞬にして機嫌を直して、「えへへっ」とはにかんだ。 どうしてうちの子たちは、こうも頭をなでられるのが好きなんだろう。 俺もついついやってしまう動作なので、お互いさまではあるのだが。 「よし、じゃあ最後、メイファ」 「......暑い。......ボクはもう、動けない。お兄さん、抱っこして、そこまで連れていって」 「ん、いろいろおかしいが、とりあえずぐだぐだ言わずに来ること」 「......はぁい」 メイファはふらりと立ち上がる。 元の場所に戻るイリスやリオと入れ替わりで、俺のもとへとやってきた。 そして──ひしっ。 ふらふらっと俺の目の前まで来るなり、不意に俺に抱きついてきた。 「......おい、何をやっているメイファ」 「......暑い。死ぬ」 「暑かったら、抱き着いたら余計に暑くなるだろうが。いやそういう問題でもないが。ていうか自分の行動に疑問を持たんのかお前は」 「......お兄さんには、言われたくないよね。......ん、測定器、貸して」 奇行に満足したのか、俺から離れるメイファ。 相変わらず、行動の一部始終が意味不明で理解不能だ。 あと態度が偉そう。 こいつは将来大物になるのかもしれないが、今から偉そうなのはどうなのか。 そんな教え子の言動に不安になりながらも、俺はメイファに魔力測定器を渡す。 メイファが測定器のグリップをにぎり、魔力を注ぎ込む。 計測が終了したようだ。 「......まあ、こんな感じだよね」 「げっ、メイファの魔力値、58ポイント......!? お前、三ヶ月前のステータス検定のときにはいくつだった?」 「......魔力は、53。......でも、リオもイリスも一割ぐらい伸びているんだから、予想通りの結果」 「いや、そういう言い方をしたら、確かにそうなるが......」 魔力特化型の成長力を持つメイファだから、驚くには値しないのかもしれない。 しかしそれにしても、三ヶ月で5ポイントの伸びとは......。 勇者は成長するにつれて、能力値成長の度合いは鈍化していくのが普通だ。 例外はあるものの、たいていのケースではトレーニングや実戦経験を始めてから三年から五年程度である程度の能力値の完成を見せ、以後はさほど伸びなくなると言われている。 うちの三人はトレーニングを開始してから、まだ一年と三ヶ月ほどだ。 まだ成長期のまっ盛りと考えれば、まあ不思議ではないんだが。 ......まだ成長期のまっ盛りなのかぁ。 現状ですでに、そんじょそこらの大人の勇者を遥かに上回るかなりの実力者なんだが......。 今更ながらに、とんでもないなこいつら。 末恐ろしい以外の言葉が見付からない。 まあ日々のトレーニングを頑張っているだけじゃなく、いろいろと経験もしているからな。 今後も様々な経験を積んでいけば、教え子たちの能力は順調に伸びていくことが予想できる。 教育方針的には、これまでどおりで問題はなさそうだ。 ちなみにだが、俺自身も測ってみたら、魔力値の計測結果は38ポイントだった。 三ヶ月前のステータス検定では36ポイントだったから、2ポイントの伸びだ。 俺自身のステータス成長は、ここ数年間ずっと止まっている印象だったので、この結果には少しドキッとした。 だが計測誤差もあるし、ぬか喜びはしないでおこうと思った。 そんなことがありつつ。 その日の訓練を終えた子供たちを連れて、収穫期の見事な麦畑の間にある道を歩いて、家に帰ろうとする帰り道。 俺の魔法通話具に、着信があった。 着信相手の名前を見ると、「アルマ」と表記されていた。 俺が王都の勇者学院で勤務していた頃の、同僚で仲のいい女性教師だ。 彼女とは、最強勇者決定戦のときに久々に会って以降も、魔法通話具でちょくちょく連絡を取り合ってはいたのだが。 今日は何の用事だろうと思いながら通話を受けると、魔法通話具の向こうのアルマは開口一番、こう言ってきた。 「ブレット先生、夏休みだよ! 海に行こうよ海!」 俺はそう言われて、夏休みなどという概念をすっかり忘れていたことを思い出していた。

123 Lesson 123 Hot as a whiff, about one summer day. A small village on the border where me and my godchildren live. At the corner, in front of a shack named Brave Men's College... Me, Brett, a teacher at Brave Men's College, stood in front of the teachers and took out the secret tools he had acquired the other day. "Jajang! Look, our College of the Poor Brave has also introduced new educational equipment. It's called Magic Measuring Instrument! Me making newly purchased items appear after a long time, as if they were great. But the tension of the children sitting in the garden named Ground was a little low. "Brother, it's hotter than that. Buy cooling demon props, cooling demon props." "Hey, hey, Rio! Even teachers think a lot about it and decide what to buy, so that's rude! "... Me too, I agree with Rio.... This summer sucks. Best in the last few years. Centennial Heat" "But Mayfa doesn't say that every year? What was that last year? "... the richer the sun and the better the humidity the heat" "Oh, better than that, both of you! It's a magic measuring instrument, a magic measuring instrument! You can measure magic at school! Don't you think this is amazing? The three godchildren, one of the Iris, had worked hard to make a good choice for me, but Rio and Mayfa are honest with the truth. By the way, those girls were now trying to get a little cooler by patting on the chest of their clothes etc. ... I have trouble finding a place for my eyes. These guys are girls of their age now too, so I want you to be a little aware of that area. And I'm going to look at you like a flicker, and I'm going to ask you what your gaze is. I sigh loudly. "... Rio, Mayfa. Until last year, you guys lived in nothing but cooling, right? "Well, yeah, but come on" "... we know the wider world.... creatures that people seek comfort and corrupt every day. ... the progress of magical civilization is the taste of honey" It was the godchildren who became more and more selfish. Well, I'd rather be comfortable too, so I'm not saying it's bad. "All right, all right. The next time I get my consolidated income, I'll consider buying cooling demon props." "" "Yay! Teachers who raise their voices of joy. There is also a subtle mix of irises. The second daughter of this caring angel, she said, was genuinely with me. Whatever... "Measure your magic today for now. One by one, in order from Rio." "" "Yes" " The children, who were sitting in the garden in physical education, first rise from Rio and come to me. "Rio, do you remember how to use magic measuring instruments? I think I used it during the status test." "Uh... how do you do it, brother? Like this?" "Subtly different. More like this, in the middle..." "Oh, well. Uh, I forgot." When I teach her how to use the tools, Rio will try to get her tongue out. Damn cute as ever, my kid. "Is Rio's Magic Value - 19? How old were you when you tested your status three months ago? "Um, brave cards, brave cards... there was. When I measured it three months ago, I said," Magic 17. " "Oh, you're growing two points. Just keep that in mind, there are some errors in the measurement results." "Phew...... But I don't have to be that expensive." "Sort of. Rio focuses on weapon combat with swords, and he's working hard on that one. - All right, Rio's finished measuring. Next up, Illis. Come here." "Ha, ha! I switched with Rio, and Illis stood up and came to me. He looks thrilled, and he receives a magic meter from me. And then I tried to make measurements... and Iris looked at me with a chill. "Oh, you know, Doctor.... How did you use this? Ellis has asked me that, not to mention. Hmm......? "Dude, you didn't see what Rio was doing right now? "Oh, no, the... su, sorry" "... I can't help it. Look, here's the deal." I'll teach Iris how to use the tools, too, by turning around behind her back and taking her hand. "Wow...! Let, teacher, snuggle from behind...! "... Hey Illis, don't say it in a bad way. If your neighbors ask you, you'll be mistaken." "Ha, yes, sorry! Thanks for your close guidance! "Ooh. You're welcome." Sometimes, Illis says weird things, too. But I wonder if this measuring instrument is that hard to handle. It's a bar-shaped tool about the length of a one-handed sword, with grips on both ends, and I just grip it with both hands and pour magic into it. "The results of the Ilis measurements are - 40. How old were you three months ago? "Uh... it's 37" "Is Illis growing by three points? This could also be within the margin of error, but you can see it's well stretched. Iris is working hard too." "Eh heh." When I take your head off, Illis falls apart. This is always again, very cute. Then Rio, who saw it, swelled his cheeks plumply. "Uh, just Illis sloppy! Brother, me too, without my head! "Oh well...? Rio comes up and gives me his head, so I'll do Rio. Then Rio instantly fixed his mood and hung up on him. I wonder why my kids like to get their heads together. It's a motion that I'll stick to, so we're different. "All right, then, last one, Mayfa" "... hot.... I can't move anymore. Brother, hold me, take me that far." "Mmm, a lot of weirdness, but for now, it's something to come without saying" "...... ha" Mayfa gets up fluttered. He came to me in exchange for Illis and Rio, who would return to their original place. And... Hiccup. He stumbled right in front of me, cuddling me by accident. "... Hey, what are you doing Mayfa" "... hot. Die." "If it were hot, it would be extra hot if I held him. No, that's not the problem either. So you're questioning your actions." "... you don't want your brother to tell you. ... Mm, measuring instruments, lend me." Happy with the bizarre, Mayfa, away from me. As always, a whole bunch of actions are meaningless and incomprehensible. And the attitude seems great. This guy may be a big shot in the future, but how does he look now? I give Mayfa the magic gauge, even though I'm anxious about what she says and does. Mayfa drains the grip of the measuring instrument and infuses it with magic. Looks like the measurement is over. "... well, here's the thing" "Whew, Mayfa's Magic Value, 58 Points...!? How old were you when you tested your status three months ago? "... magic, 53.... but both Rio and Illis are about 10% stretched, so the results are as expected" "No, if I put it that way, it does..." Mayfa with her magic-specific growth power, so maybe she doesn't deserve to be surprised. But nevertheless, what is a five point growth in three months...... As brave men grow, it is normal for the degree of talent growth to slow down. Although there are exceptions, it is said that in most cases some degree of competence completion is shown between three and five years after starting training and practical experience, and will no longer grow as much as in the future. My three have only been about a year and three months since they started training. It's not surprising, considering it's still a growing season. ... are you still growing up? As it stands, I'm already quite a bit more powerful than the adult brave guys there... Even now, that's outrageous, these guys. I can't find any words but horrible. Well, not only do I work hard on my daily workouts, but I've been through a lot. If we continue to gain a variety of experiences, we can expect that our teachers' abilities will grow smoothly. In terms of education policy, as always, there seems to be no problem. By the way, when I measured it myself, the magic value was 38 points. It was 36 points on the status test three months ago, so it's a two-point stretch. My own status growth has been under the impression that I have been stopping for the past few years, so I was a little thrilled with this result. But there are measurement errors, and I thought I would not be delighted. While that is happening. On the way home, taking the children who had completed their training for the day and walking down the road between the stunning wheat fields of the harvest season. There was an incoming call from my magic device. When I looked at the incoming person's name, it was labeled "Alma". She was a colleague and good friend of a female teacher when I worked at the College of Brave Men in Wangdu. She and I have been in touch a little bit with each other on magic calls since we met a long time ago during the most powerful brave decision. When I take the call wondering what business I have to do today, Alma across the magic calling device is the opening best, he has said this. "Dr. Brett, it's summer vacation! Let's go to the sea, sea! That's what I was told and I remembered completely forgetting the concept of summer vacation etc.

がのしのしと、ドラゴンの前へと歩み出る。 それを見たドラゴンが、少し意外そうな様子で目を開いてから、口を開く。 『やあ、人間と同じ小さき者よ。人間と 『歌と踊りっす。......技術が未熟だったら、食い殺されたりするっすか?』 『いやぁ、そんなことはしないよ。僕はそういうのには寛容なんだ。たとえ未熟でも、僕を楽しませようとしてくれたなら、そのチャレンジスピリッツは買うよ』 それを聞いたウルは、ホッと胸に手を当てる。 次いで、決意を秘めた眼差しで 『じゃあ、始めるっす』 そしてウルは、獣化を解いた。 の巨体──それでもドラゴンと比べると子供のようなサイズだが──が、しゅるしゅると縮んでいって、獣毛が失われ、人間の少女の裸身が現れる。 そうして姿を変えたウルは、「あっ」と叫んで、慌ててリオのほうへと振り返った。 「ふ、服、忘れてたっす! リオちゃん、うちの服......!」 その様子を見て、ドラゴンが愉快そうに笑い転げる。 あのドラゴン、意外と笑いの沸点低いな......。 一方では、ウルから服を預かっていたリオが、裸の少女に向かって衣服を投げ渡す。 「ウル、お前なぁ......。もうちょっと慎みってものを持てっての」 「ち、違うっす! 今のは本当に忘れてただけっす!」 ウルは自分の衣服を受け取ると、慌ててそれを身につけていく。 その様子を見ていたイリスが、はたと気付いて、慌てて俺の視界を遮ってきた。 「せ、先生は、後ろを向いていてください!」 「あ......すまん、抜けてた」 なんかこう、ドラゴンの前に裸身の少女とか、普通に違和感のない風景だったんで、ついそのまま見惚れてしまっていた。 俺は後ろを向いて、ウルのほうを見ないようにする。 そんな俺の横にメイファが寄ってきて、俺の横っ腹に軽く肘を入れてきた。 「......お兄さん、浮気はダメ。......裸が見たければ、ボクに言ってくれればいい。いつでも脱いで、見せてあげる」 「あのなメイファ、いつも言っているが、大人に向かってそういうおちょくり方をするのはやめなさい」 「......ボクもいつも言っているけど、お兄さんにしかやらないし、問題ない。......それともロリコンのお兄さんでも、ボクの子供体型では、不満......?」 メイファは首を傾げ、少し不安そうな上目遣いでそんなことを聞いてくる。 ぐぅ......。 こいつ本当、どうしてやろうか。 いずれ本当に大人の怖さを教えてやろうか、などと一瞬だけ脳裏に浮かんでしまい、俺は慌てて頭を振る。 いかんいかん、メイファのペースに嵌まっているぞ。 「ノーコメントだ。それよりウルが服を着終わったら教えてくれ」 「......ふぅん。......いいよ、お兄さん。もうウルは、服を着た」 俺はあらためて、ドラゴンとウルのいる方を見た。 服を身につけたウルは、ドラゴンの前で胸に手をあて、大きく深呼吸をしていた。 の姿でも、ドラゴンの威圧に震えていたウルだ。 人間の姿では、なお心許なかろう。 しかしそんなウルも、やがて「よし」と言って、強い意志の灯った瞳でドラゴンのほうを見すえる。 そして、右手を自分の胸にあて、左手を前に差し出して、歌い始めた。 ──ひとりぼっちで立ち尽くす 雨の中 傘もささずに ──周りのみんな 楽しそうに笑っている ──ただ僕だけを この時間に 置き去りにして ウルの声は、普段の声色──どこか三下っぽい喋り方からは想像がつかないような、綺麗で透き通ったものだった。 そして、歌が巧い。 俺にはプロの水準は分からないが、素人の耳ではプロの歌手と遜色がないようにも聞こえる。 ──いつかきっと いいこともあるさなんて ──今がつらくない人たちが 無邪気に言う ──でもそんなとき 強引に差し出された手は ──温かくて 泣きたくなって 僕は逃げ出した ──本当に僕が望むものは 本当は僕の近くにあった ──だけど僕は臆病で その手をつかめなかった ──だってしょうがないだろう 過去の檻に 囚われた心 ──身勝手になんて なれやしないから ウルは右に歩き、左に歩き、観客側──ドラゴンのほうへとパフォーマンスを見せる。 それは舞台アイドルを思わせる歌であり、パフォーマンス。 振り付けを交えて歌い、やがて緩やかに踊り始める。 これらもまた、素人目にはプロのそれと変わらなく見える、洗練された動き。 ──世界はとっても不公平で ──幸せはいつもすぐそこにある ──かもしれない ないかもしれない ──だからせめて僕は つかみとる ──現れた 幸せのチャンス ──逃がしちゃダメだ 図々しくなーれ! 歌と踊りがアップテンポになり、佳境に入ったのが分かる。 それにしても、何度も何度も練習してきたのでなければ、こんな歌も踊りもできるはずがないと容易く想像できる洗練ぶりだ。 この日のために──きっといつか来るかもしれないこのような日のために、ずっと一人で練習を重ねてきたのだろう。 ──不条理な世界 そりゃそうだ ──世界はいつでも不条理だ ──弱肉強食 狼と羊 ──どうして僕らだけ 違うと思うの ──焼肉定食 お肉食べたい ──羊のお肉も おいしいぞ! 弾けるような笑顔でジャンプして、キラキラと輝く汗を飛び散らせた。 そうして歌い、踊り切ったウルは、はぁはぁと弾む息をどうにか整えながら、ドラゴンに向かってぺこりと頭を下げる。 「今日は未熟なうちの舞台を見てくれて、ありがとうございましたっす! 初めて誰かの前で歌えて、嬉しかったっす!」 一方、それを見ていたドラゴンはというと── 大層ご満悦のようで、両前肢の鉤爪をかっちんかっちんと打ち鳴らしていた。 『ブラボー! ブラーボー! いやぁ、素晴らしい! 最高だ! ......でもね、一つだけいいかな?』 「は、はいっす!」 ウルがびくっと震えあがる。 何をダメ出しされるのかと怯えた様子。 だがドラゴンは、そんなウルに対して、陽気に言う。 『自分で自分の技を未熟だとか言って、謙遜をするのはやめたほうがいいよ。それを評価するのは芸を見る側だ。芸を見せる側が言うことじゃない。キミの歌と踊りを、僕は素晴らしいと思ったんだ。その僕の気持ちに水を挿さないでほしいかな。──ま、これも見る側のわがままかもしれないけど』 「す、すみませんっす! おっしゃる通りっす! 以後気を付けるっす!」 ウルはドラゴンに向かって、ぺこぺこと頭を下げていた。 ドラゴンはその様子を見て、ハハハと笑う。 それからドラゴンは『ちょっと待っていてよ』と言って、今いる大広間のさらに奥にある洞窟へと消えていった。 少し待っていると、やがてドラゴンが戻ってくる。 その右前肢の鉤爪には、何やらキラキラと輝くものを持っていた。 ドラゴンがそれをウルの前に置く。 それはちょっとした財宝だった。 首飾りや腕輪、額冠など。 いずれも金銀宝石で装飾されていて、街で売ればかなりの金額になりそうな代物だ。 『期待していた以上に良いものを見せてもらったお礼だよ、持っていって。もちろん──ゲッコウセキだっけ? それの採掘も許可するよ。好きなだけ持っていっていい。この財宝だって好きに使ってくれて構わないよ』 だがドラゴンの財宝を前にしたウルは、大慌てだ。 「えぇえええっ! そそそ、そんな! こんなにもらえないっす! うちなんて全然まだまだで、こんなお礼だなんて、とてもとても......!」 『ほーら、また謙遜。僕の評価と好意を受け取らない気かい?』 「え、えぇええっ!? あわわわわっ......うち、こんなすごい宝物なんて......」 ウルがふらふらと眩んで、ぺたりと座り込んでしまう。 そしてウルは、すがるように俺の方を見てきた。 俺はそれに、うなずいてやる。 「せっかくの好意だ。受け取るのが礼儀だよ、ウル」 「ふぇええええっ......わ、分かったっす......」 そう言ってウルは、おっかなびっくり怯えながらも、財宝を手にしたのだった。 それから俺たちは、ドラゴンに別れの挨拶をする。 このとき、最後にウルが振り返り、ドラゴンに向かっておそるおそる聞いた。 「あ、あの......うち、また......ここに遊びに来てもいいっすか......?」 それに対してドラゴンは、愉快そうに応える。 『ああ、もちろんだよ。いつでも歓迎する。また新しい歌と踊りを見せてくれたら最高だ』 「あ、ありがとうございます! うち、もっともっと頑張るっす!」 そうして今度こそ、ドラゴンに向かって手を振って、俺たちは彼の巣穴をあとにしたのだった。

A werewolf walks out to the front of the dragon. The dragon that sees it opens its eyes looking a little unexpected, then opens its mouth. 'Hey, little man like man. I've never seen humans and werewolves (warwolves) together before... but what do you do to entertain me? "Dancing with songs.... If you were immature, would you be eaten to death? 'Hey, I won't do that. I'm tolerant of that. If you tried to entertain me, even if I was immature, I'd buy that challenge spirits. " Upon hearing that, Ur puts his hand on his chest, ho. Then, with a determined eye, the werewolf said. "Well, here we go." And Ur solved the beastification. The werewolf giant - still a child's size compared to the dragon - shrunk down and beast hair is lost and a human girl's nakedness appears. That's how Ur changed his appearance, shouting "Ah," he rushed back to Rio. "Fu, clothes, forget it! Rio, our clothes......! Seeing how it goes, the dragon laughs off delightfully. That dragon has a surprisingly low boiling point of laughter...... On the other hand, Rio, who had kept his clothes from Ur, throws his clothes at the naked girl. "Ur, it's you...... Have a little more discretion." "Chi, no! I just really forgot about that one! When Ur receives his clothes, he rushes to wear them. Iris, who was watching, noticed once again and hastily blocked my sight. "Let me, Doctor, keep your back! "Ah... sorry, I was missing" Something like this, it was a naked girl in front of a dragon or a normally uncomfortable landscape, so I was in love with it as it was. I turn around and try not to look at Ur. Mayfa came over beside me like that and gently elbowed me on my flank. "... brother, no cheating.... If you want to see naked, just tell me. Take it off anytime, I'll show you." "You know, Mayfa, I always say, don't do that kind of thing to adults." "... I always say it too, but I only do it to my brother, and it's no problem.... or even Loricon's brother, in my child shape, dissatisfied...? Mayfa tilts her neck and asks that with a slightly anxious uplift. Gu...... This guy is real, how do I do it? Sooner or later I'd really teach you adult scares, etc., I'd just float in my brain for a second, and I'd shake my head in a panic. Come on, Mayfa's pace is on the line. "No comment. Let me know when Ur's done with his clothes." "... Phew.... Fine, brother. And Ur was clothed." Once again, I saw a dragon and a wolf. Wearing his clothes, Ur had his hands on his chest in front of the dragon and breathed heavily and deeply. Even as a werewolf, he was trembling at dragon intimidation. In the human figure, let's not forget it. But such a ul also eventually say "ok" and see the dragon better with strong willed eyes. Then I put my right hand on my chest, offered my left hand forward, and started singing. - - Standing alone in the rain without an umbrella. - - Everyone around me is laughing with pleasure - Just leave me alone at this hour. Ur's voice was beautiful and clear, as you can't imagine from his usual voice tone - somewhere in a sandy way. And the song is clever. I don't know how professional I am, but my amateur ears also sound like I don't have a bad color with a professional singer. - I'm sure there 'll be good things someday. - - Innocence is said by people who don't feel comfortable right now - - But then the hand that was forcibly offered I ran away because it was warm and I wanted to cry. - What I really wanted was really near me. - But I was too timid to grab that hand. - - Because you can't help it. A heart trapped in a cage of the past. - You can't be on your own. Ur walks to the right, to the left, and shows performance toward the audience - the dragon. It's a song reminiscent of stage idols, a performance. Sing with choreography and eventually start dancing loosely. These are also sophisticated moves that look no different from those of a professional to an amateur. The world is so unfair. - - Happiness is always right there. - Might be. - So at least I'll grab it. - - Chance of happiness that showed up - Don't let him get away with it! I can see that the song and dance have become upbeat and have entered the good realm. Nevertheless, unless you've practiced it over and over again, it's a sophistication I can easily imagine that you can't possibly sing or dance like this. For this day - - I'm sure I've been practicing alone for a day like this that might come some day. -It's an irrational world. - The world is always irrational. - - Weak carnivorous wolves and sheep - Why do you think we're all different? - - BBQ meat set meat I want to eat - Sheep meat is delicious, too! He jumped with a playable smile and splashed a sparkling sweat. That's how Ur sang and danced off, his head peppered down toward the dragon as he managed to get his breath to play haha. "Thank you for watching our premature stage today! It was a pleasure singing in front of someone for the first time! On the other hand, the dragon that was watching... It seemed to be a great pleasure, and the hook claws on both forelimbs were pounding properly. "Bravo! Bravo! Hey, great! Awesome!... but hey, just one thing, okay? "Ha, ha! Ur trembles all the time. He looked frightened of what he would be damned out of. But the dragon says cheerfully to Ur. 'You'd better stop being modest and say you're immature with your moves yourself. It is the viewer who appreciates it. That's not what the show side says. I thought it was great to hear you sing and dance. I hope you don't insert water into my feelings. - - Ma, this may also be selfish on the viewing side.' "Shh, I'm sorry! You're right! I'll be careful later! Ur was turning toward the dragon, bowing his head with a pepper. The dragon sees how it goes and laughs hahahaha. Then the dragon said, 'Wait a minute,' and disappeared into a cave further back in the great hall where he is now. After a few moments, the dragon eventually returns. The hook claw on its right forelimb had something glittering. A dragon puts it in front of Ur. That was a little treasure. necklaces, bracelets, forehead crowns, etc. They are all decorated with gold and silver gems and are likely substitutes for a considerable amount of money if sold in the city. 'It's a thank you for showing me something better than I expected, take it. Of course. - Was it Gecko Seki? I'll allow you to mine it. You can take as much as you like. You can use this treasure if you like. " But Ur hastened ahead of the dragon's treasure. "Yeah, yeah, yeah! Oh, no, no! I can't get this much! I haven't seen us at all, and I can't believe how grateful we are...! "Here we go again, humble. Don't you want to take my credit and favor? "Oh, yeah, eh!? Wow... I can't believe this treasure..." Ur flickers and dazzles, and sits up perplexed. And Ur has looked at me like I'm scared. And I'm gonna give you a nod. "It's a favor because of it. It's polite to take it, Ur." "Huh eh eh... ok..." That said, Ur, frightened by surprise, had the treasure in his hand. Then we say goodbye to the dragon. At this point, at the end, Ur looked back and asked roughly towards the dragon. "Oh, um... of course, again... can I come visit you here...? In contrast, the dragon responds with pleasure. 'Oh, of course I do. You're always welcome. It would be great if you showed me another new song and dance' "Oh, thank you! We'll try harder! So now it's time to wave at the dragon and we left his nest hole behind.

第112話 満月の日の、一日前の夜。 いよいよアイドルライブが明日に迫ったという日。 ラヴィルトンの街の公園でその日のダンストレーニングを終えたリオ、イリス、メイファの三人は、にじむ汗を濡れタオルで拭っていた。 その様子を見ていたウルに向かって、リオが弾む息を整えながら聞く。 「どうだ、ウル。オレたち三人も、ちょっとはサマになったんじゃねぇ?」 「や、ちょっとなんてもんじゃないっすよ......。もううちが教えられることは何もないぐらいっす......。たった一週間足らずで......ハハハ......」 パン屋の仕事を終えた後に三人の最後の仕上がりを見にきたウルは、彼女らの出来の良すぎる演技を見て唖然としていた。 称賛するべきなのは分かるだが、自分が数年間かけて培ってきたものをこうも簡単に身につけられると、もはや笑うしかないというのがウルの心境だった。 そんなウルの様子を見ていたブレットが、少女のもとに寄ってその肩を優しく叩く。 「ウル、俺も今のお前の気持ち、よーく分かるぞ。でもあいつらはしょうがないんだ。ああいうものなんだよ」 「ううっ......ブレットさん、才能って残酷っすね......」 うるうると涙を流すウルの頭を、ブレットが慰めるようになでる。 そんな二人の姿を見た三姉妹は「「「いいなぁ」」」と言って指をくわえていた。 そうして今日の練習を終えると、全員が帰宅の途につく。 みんなでワイワイと話しながら街中を歩き、やがてブレットたちが宿泊している宿の前まで来ると、そこでウルは四人と別れることになる。 「いよいよ明日っすね! うちは明日、パン屋の仕事は早上がりすることになってるっすから、終わったらいつもの公園に行くっす」 「ああ。リゼルが『遮光の首飾り』は今日じゅうには仕上がるって言っていたから、朝一で受け取って、ウルに渡せるようにしておくよ」 「じゃあね、ウルちゃん。帰り道には気を付けてね」 「......世の中、危険な狼さんは、あちこちにいる」 「あはは、大丈夫っすよ。いつも帰ってる道っすから。それに狼さんはうちのほうっすから。変なのに遭ったら、こうやって食べてやるっす」 ウルはそう言って、ガオーッと猛獣のような仕草を見せる。 それを見て楽しげに笑う、ブレットと教え子三姉妹。 それからウルは、ぶんぶんと手を振って四人に一時の別れを告げると、自宅までの道を歩き始めた。 「ふんふんふ~ん♪」 鼻歌交じりで、上機嫌にストリートを歩く少女。 やがて街を出て、山中の小屋へと続く森の小道を歩いていく。 いつもの帰宅路、いつもの一人。 でもウルは、これまでのようには寂しさを感じていなかった。 ブレットや三姉妹と付き合っていたここ一週間ぐらいは、ずっと楽しい時間だった。 ドラゴンとも知り合って、仲良くなった。 ドワーフのガルドンは気難しいが、彼もひそかにウルのことを気に入ってくれていることが分かる。 エルフのリゼルは、ウルのことをじーっと見てきたり体の採寸をしてきたりで仕草があやしいが、根は優しい人だと思う。 いろんな人と出会って、仲良くできて、楽しい毎日だ。 毎日が楽しい。 こんな気持ちは、久しくなかった。 そして何より、いよいよ明日はアイドルライブの本番だ。 ずっと人と関わらないように、自分の存在を消して生きてきたウルは、たくさんの人の注目を浴びる舞台アイドルの姿にずっと憧れていた。 自分もああなれたらいいのに。 そうしたらどれだけ嬉しいだろうって、ずっと思ってきた。 自分はここにいるんだと知ってもらいたい、見てもらいたい。 その夢が、明日叶う。 もちろんプロのライブではないし、自分だけが注目されるなんてことはない。 仮初めのアイドル、一時の晴れ舞台。 それでも── それでもウルにとっては、夢にまで見た舞台なのだ。 ほかにもたくさんの候補者が出場するだろう。 グランプリを取るなんて、さすがに望みすぎかもしれない。 でも、それでもいい。 たくさんの人の前で、歌って踊れること。 それだけでも嬉しい。 見る人みんなに笑顔を振りまいてやろう。 今の自分には、きっとそれができる。 明日がとっても楽しみだ。 山中にポツンとある山小屋。 ウルは自宅の前に到着すると、ポケットから鍵を取り出して、扉の鍵を開けようとして── 「......あれ? 朝出るとき、鍵をかけ忘れたっすかね......?」 扉の鍵がかかっていないことに気付いた。 まあ、鍵をかけ忘れていたとしても、大した問題じゃない。 こんな山中にあるポツンと一軒家に誰が忍び込むとも思えないし、盗まれて困るような貴重品が特にあるわけでもなく。 そう思ったウルは、何を気にすることなく、家の扉を開けた。 すると、そこには── 「ひひひっ。お帰り、可愛らしいお嬢さん」 「こんな山小屋で女の子が一人暮らしとは、ちょっと不用心じゃないかなぁ。悪いおじさんたちに見つかったら、大変だぞぉ」 家の中には、見覚えのない男が三人、ニヤニヤとした笑いを浮かべて潜んでいた。 声をかけてきたのは、立っている二人だ。 その後ろに、ウルの愛用の椅子に勝手に座り、偉そうにふんぞり返っている軽薄そうな青年が一人いる。 「なっ......!? ──あんたたち何者っすか、と聞いても、悪い人としか思えないっすけど」 ウルはその目をスッと細め、家の中にいた男たちを睨みつける。 ウルはその一瞬で、すでに獣化を決意していた。 目の前にいるのは、明らかなならず者だ。 ブレットたちと出会ってからの出来事を経て、ウルは自らの 常人に容易く重傷を負わせてしまうパワーも、野生の獣のごときスピードも、ようは使いようだ。 必要以上に恐れることはせず、自分の一部だと思って使いこなせばいい。 そう考えるようになっていた。 そしてウルの質問には、椅子にふんぞり返った軽薄そうな青年が答える。 「ご明察。お嬢さんがお察しの通り、俺たちは悪い人でね。今日はここに、人さらいに来たんだが──知っているかな? お嬢さんみたいな小さくて可愛い女の子は、お金持ちの悪いおじさんたちに高く売れる。人身売買とか、奴隷売買って呼ばれるんだがね」 そう言って、軽薄そうな青年はパチンと指を鳴らす。 すると、その前に立っていた二人の男たちが、ニヤニヤ笑いを浮かべたままウルに歩み寄ってきた。 一方のウルは、嘆息する。 「......そうっすか。また服が台無しになるのは困るっすけど──そうも言ってられないっすよね。降りかかる火の粉は、払わないと──!」 ウルは脅しの意味合いも込めて、躊躇わずに獣化をした。 めきめきと筋肉が盛り上がって衣服が弾け飛び、背丈も伸びて天井につきそうなほどの高さになる。 獣化は一瞬のうちに完了していた。 ウルは思う。 これで男たちは、怯えて逃げ去ろうとするだろう。 問題は、その後どうするかだ。 街に帰った後に、また となれば、逃げられないように捕まえてロープで縛りつけて。 たしか家の奥の物置に、使えそうなロープがあったはず── だが、そう考えていたウルの目論見は、脆くも崩れ去る。 獣化したウルの姿を見ても、男たちはへらへらとした笑いを浮かべたままだったのだ。 「ひゅう、大当たりだ!」 だったぜ、このガキ」 『なっ......!?』 今度こそ、ウルが本当に驚く番だった。 『なっ......!? 「闇勇者ギルド」......!? あ、あんたたち、勇者なんすか!? なんで勇者がこんなことを......!』 「勇者がみんな善人だと思ったら大間違いだよ、 『何を勝手なことを......! ──くっ!』 ウルはすぐさま家を出て、街へと下る山道を駆けだした。 山道を駆け降りながら、ウルは思う。 あの男たちが勇者だというのは、本当のことだろう。 獣化したウルの姿を見て微塵も怯えなかったのは、そういうことだ。 の力は、並の勇者と互角程度だとブレットが言っていた。 だとするなら、真っ向勝負をしても三対一では勝ち目がない。 だが逃げてどうする。 ブレットたちに助けを求めるにしても、 だったらどうにか一時的にでもあの三人を振り切って、人間の姿に戻って街に入り、ブレットたちのいる宿まで── そのとき、危険を察したウルが、とっさに跳び退る。 ビィイイイイインッ! 山道を駆け降りていたウルの目の前の地面に、一本の槍が突き刺さっていた。 「惜っしい! もうちょっとだったのによぉ」 「はははっ、へたくそ! つぅか殺すんじゃねぇぞ。貴重な金ヅルなんだからよ」 その槍は、勇者の一人が投げたものだろう。 二人の男が笑いながら、ウルを追いかけてくる。 それを見て、ウルは察した。 あいつらは、狩りをやっているつもりなのだ。 一匹の憐れな狼を追い立てて、苦しめて、たっぷりと遊んでから捕まえようとしている。 こんなのが、人間のすることなのか。 そんなとき──ガサリッ。 ウルの前方の草むらから、音が聞こえた。 草むらの中から、ウルの行く手に立ちふさがるように、軽薄そうな男が歩み出てくる。 それは、ウルが一時足を止めたとはいえ、あまりにも速すぎる先回り。 後ろから追ってくる二人とは、明らかにレベルの違う能力。 軽薄そうな男は、薄く笑いながら言う。 のお嬢さん? 早く逃げないと、悪いおじさんたちに捕まってしまうよ」 『くぅっ......!』 ウルは横手の草むらへと飛び込み、草木をかき分けて逃げる。 到底逃げきれるとは思えない。 でも、そうするよりほかに道はない。 ウルは草木の間を縫って必死に駆けながら、 どうして。 どうしてどうしてどうして。 どうしていつもこうなるんだ。 やっと幸せがつかめると思ったら、またこうしてぶち壊しにされる。 『──アォオオオオオオオンッ!』 ウルは山中で草木をかき分け走りながら、悲しみをいっぱいに乗せた雄叫びを上げたのだった。

112 Lesson 112 A full moon day, a night ago. The day that Idol Live finally approaches tomorrow. Three people, Rio, Iris and Mayfa, who finished their dance training for the day in the city's park in Lavilton, were wiping their soaking sweat with a wet towel. I listen as Rio prepares his bouncing breath toward Ur, who was watching how it went. "What do you say, Ur? Aren't the three of us a little bummed out? "No, it's not a bit... There's nothing more we can teach... In just less than a week...... hahahaha......" Ur, who had come to see the last finishing touches of the three after finishing his bakery job, was flabbergasted to see them perform too well. I know it's commendable, but it was Ur's mood that when he could easily wear what he had cultivated over the years, he would no longer have to laugh. Brett, who was watching Ur like that, stops by the girl and gently slaps her on the shoulder. "Ur, I know how you feel right now, too. But they can't help it. Yeah, that's what it is." "Ugh... Mr. Brett, talent is cruel..." Brett comforts Uru's head with tears. The three sisters, who saw the two like that, said "" Nice "" and turned their fingers around. That's how you finish your practice today, everyone will be on their way home. When we all walk around the city talking to Wye and eventually come to the front of the inn where Brett and the others are staying, there Ur will break up with the four of us. "Tomorrow at last! We're supposed to be up early tomorrow at the bakery, so we're going to the usual park when we're done." "Oh. Liselle said that 'Blackout Neck Decoration' would be finished by the end of the day, so I'll take it first thing in the morning so I can give it to Ur" "Bye, Uru. Be careful on your way home." "... the world, the dangerous wolf, is everywhere" "Haha, I'll be fine. I'm always on my way home. And the wolf is ours. If you get weird, I'm gonna eat you like this." That's what Ur says, he shows a gaughty, beastly trick. I laugh fun to see that, Brett and the three sisters of the godchildren. Then Ur started walking down the road to his home when he waved a temporary goodbye to the four of them. "Phew, phew, phew." Girl walking down the street in an upbeat mood with a crossed nose. Eventually we leave the city and walk down the forest trail that leads to the huts in the mountains. The usual way home, the usual one. But Ur didn't feel lonely like before. The last week or so I've been dating Brett and the three sisters has always been a good time. I also knew the dragon and got along. Gardon the Dwarf is difficult, but I can tell that he secretly likes Ur, too. Liselle the Elf is a gentle person, although she has been watching Ur and taking body measurements. It's a fun day to meet all kinds of people, get along. Every day is fun. I haven't felt this way in a long time. And most importantly, finally tomorrow is Idol Live's production. Ur, who has lived out of his existence so as not to engage with people all the time, has always admired the appearance of stage idols that attract the attention of many. I wish I could be one myself. I've always wondered how happy I'd be if I did. I want you to know I'm here, I want you to see me. The dream comes true tomorrow. Of course it's not professional live, and I can't just be noticed. Tentative early idol, temporary sunny stage. Still... Still, for Ur, it's the stage he dreamed of. There will be plenty of other candidates out there. I might just want too much to take the grand prix. But still. Being able to sing and dance in front of a lot of people. I'm just glad to hear that. Let's give everyone who sees a smile. For me now, I'm sure I can do that. I'm so excited for tomorrow. A mountain hut with potpounds in the mountains. When Ur arrived in front of his home, he took the key out of his pocket and tried to unlock the door. "... that? Did you forget to lock up when you left in the morning...? I realized the door wasn't locked. Well, even if you forgot to lock it, it's not a big deal. I don't think anyone would sneak into a house with a potpound in a mountain like this, nor would there be any particular valuables that would be stolen and in trouble. That's what I thought. Ur opened the door to the house, without worrying about anything. And then there's... "Hi-hi. Welcome home, sweet lady." "I don't know if it's a little careless for a girl to live alone in a mountain hut like this. If your bad uncles find you, you're in trouble." Inside the house, three unrecognizable men lurked with a niggling laugh. It's the two of you standing there who've been speaking up. Behind it, there is one light-hearted young man sitting on his own in Ur's favorite chair and looking great and fluffy. "Become...!? I don't care who you are, you just seem like a bad person." Ur narrows his eyes softly, staring at the men who were in the house. In that moment Ur was already determined to beast. What's in front of you is an obvious rogue. After what happened after meeting Brett and the others, Ur has stopped avoiding his appearance as a werewolf. The power that can easily and severely injure a human being, and the speed of a wild beast, seems to have finally been used. You don't have to be more afraid than you need to be, just think of it as part of you and use it. That's what I was starting to think. And Ur's question is answered by a light-hearted young man fluttering in his chair. "Discover. As your daughter guesses, we're bad people. I'm here today to expose you. You know what? Little, cute girls like young ladies can sell high to poor rich uncles. It's called human trafficking or slave trading." That said, the seemingly thin young man rattles his fingers with his pussy. Then the two men who stood in front of them walked over to Ur with a niyanya laugh. Ur, on the other hand, sighs. "... I will. I'm having trouble ruining my clothes again, but I can't even tell you that. If you don't pay for the firepowder that comes down...! Ur beastified without hesitation, also with the implications of the threat. The vertigo and muscles flourish and the clothes bounce and fly, and the back length grows to such height that it is likely to climb to the ceiling. The beastification had been completed in an instant. Ur thinks. Now the men will try to flee frightened. The question is, what do we do then? After going back to the city, if there's another noise about a werewolf (Wolfe) coming out, it's probably a pain in the ass. If so, catch him so he can't escape and tie him with a rope. But there was a rope in the back of the house that seemed to work. But Ur's prospect, which he thought so, crumbles and collapses. Even when he saw the beastified Ur, the men still had a nagging laugh. "Hiu, you win big! "Seriously, he was a werewolf, you kid." "Become...!? Now it was Ur's turn to be really surprised. "Become...!?" Dark Brave Alliance "......!? Oh, you guys are brave!? Why would a brave man do this...! "It would be a big mistake if you thought all the brave men were good men, werewolf ladies. A brave man is simply a man of power. We're on our own no matter how we use that power. By and large, the exorcism of the Demon King is not a great deal of money in danger. Wouldn't it be unfair for someone with a chosen power like us to sweat and work at a reward that's not so different from the average person? If you're offering the reward of the brave from taxes, it would be suzier to squeeze them out of the general public and make them contribute to us. We're doing the lukewarm thing, so we can have bad braves like us." 'What are you doing on your own...! -Come on! Ur immediately left the house and rushed down the mountain road to the city. Running down the mountain road, Ur thinks. It must be true that those men are brave. That's what I didn't even scare the fine dust out of seeing the beastified Ur. And Brett said the power of werewolves (warwolves) is about reciprocal with the same brave men. If that's the case, there's no winning three-on-one even if you play head-on. But what if I run away? Even if you ask Brett and the others for help, if you go into the city as a werewolf, that's not a good idea. Then I'll shake those three off for a while, and then I'll go back to being a human, and I'll go into the city, and I'll go to the inn where Brett and the others are. At that time, Ur, who perceived the danger, jumped away. Biiiiiiiiiiiiin! One spear was piercing the ground in front of Ur as he ran down the mountain road. "Spare me! Just a little bit of it." "Ha ha, heck! Tsuka, don't kill me. It's a precious piece of gold." The spear must have been thrown by one of the brave men. Two men laugh and come after Ur. Seeing that, Ur guessed. They're gonna be hunting. He's pushing one poor wolf away, tormenting him, playing plenty before he tries to catch him. Is this what humans do? In that case - gusari. From the grass in front of Ur, I heard a noise. Out of the grass, a thin looking man walks out as he stands by Ur's whereabouts. That's way too fast ahead, even though Ur paused. The two of you following me from behind are clearly of different levels of ability. The light-hearted man says, laughing thinly. "- Well, what about the werewolf lady? If we don't get out of here soon, the bad uncles will catch us." 'Kuh......! Ur leaps into the grass on his side, tearing the grass apart and fleeing. I don't think I can get away with this. But there's no other way than to do that. Ur leaves tears flooded from his eyes as a werewolf as he sewed between the grass trees and ran desperately. Why not? Why not? Why not? How can this always happen? If I finally think I can grab happiness, this is how I get smashed up again. "--Aww, ooh, ooh! Ur raised a roar filled with grief as he ran his way through the mountains.

第49話 「こんな八百長試合は無効だ! ──アドルフくん、キミはそこの問題教師ブレットに買収され、わざと負けるように言われたのだろう!」 役員席で立ち上がったサイラスは、またいつもの演劇を始めた。 そしてアドルフを説得するような──あるいは最後のチャンスを与えるというような様子で、こう続ける。 「今ならまだ間に合う。悪いのはそこの問題教師だ、そうだな? アドルフくん、本当のことを話すなら今しかないぞ! キミはそそのかされただけなのだ。今ならまだやり直せる。──さあ、本当のことを言いたまえ!」 それはいつも通りに巧妙な、人の心の隙をつくような言葉だった。 だが── サイラスも頭に血が上っているのか、相手を見誤っている。 アドルフにそれは、逆効果だ。 案の定、アドルフは激怒した。 「ジジイ、貴様......俺たちの戦いを侮辱するか......! 戦士の戦いを冒涜する者を、俺は何人たりとも許さん......それは貴様でもだ、サイラス!!!」 激しい怒号。 それを受けたサイラスは、一度はぬぐぐと呻くが、次には深呼吸をしてこう言った。 「そうか、アドルフくん......残念だよ。キミには期待していたのに......私は我が子に裏切られたような心持ちだよ。八百長に手を染めたりしなければ、キミはこの国の未来を背負って立つ勇者になれたはずだったのに......実に残念だ」 サイラスはアドルフを切り捨てる方向に、瞬時に頭を切り替えたようだ。 やつの作ったシナリオは、俺がアドルフを買収し、八百長試合をさせたというもの。 どこまでも──どこまでも腐ったやつだ。 しかし俺の立場からでは、このシナリオをひっくり返せない。 問題の当事者として設定された俺が何を言おうと、聴衆には言い逃れとしか聞こえないだろう。 サイラスのひとり舞台は、なおも続く。 役員席の舞台役者は、観客に向かって演説を始める。 「今日この大会を楽しみにしてこられた皆様、まことに、まことに申し訳ございません。先ほど私のもとに告発がありまして、この決勝戦で八百長試合が行われたとのことでございます。これは私ども勇者協会の監督不行き届きにほかなりません。この通り、平にお詫び申し上げます。つきましては後日、協会のほうで事実調査を行い、問題の人物たちには懲戒免職などの厳重な処罰を──」 サイラスの舞台演劇は、完遂されるかに思えた。 八百長をした事実などなくとも、そんなものは裏でいくらでもでっち上げられるという具合だろう。 組織腐敗と権力と権謀術数。 あの勇者腐敗の象徴のような男を止められる者は、誰もいない。 であるならば、あの一年前の出来事── 俺がこの王都から左遷された、あの理事長室での出来事と何ら変わらない理不尽が、ここにまた再現されるしかない。 もちろん俺の戦略ミスではある。 この公の場なら、サイラスでも不実は働けないだろうと高をくくっていた。 だが甘かった。 あの男の戦い方は、大衆を前にしたときにこそ力を発揮する。 どれだけ許せないと思っても。 どれだけ真っ当なことを、真っ当にやってきても。 世の中は、組織内政治と世渡りをうまくやったやつだけが、甘い汁を吸う仕組みになっているのなら── 立ち尽くした俺は、拳を握りしめる。 この場で暴れて、もう何もかも吹き飛ばしてやろうかと思う。 だがもちろん、そんなことは許されない。 教師なんて言ったって、教え子たちを理不尽から守ってやることすらできないのか。 そうであるなら、俺は── ──だが、そのときだ。 聞き覚えのある声が、会場に響きわたった。 「ちょーっと待ったぁ! その話、そこまでだよ!」 観客席の一角に息を切らして現れたのは、顔なじみの女性教師、アルマ。 それに、もう一人。 「サイラス先生、もうおやめなさい。見苦しいですよ」 アルマの隣には、五十絡みの女性の姿があった。 それを見て、俺は呆然とつぶやく。 「先生......。どうして、ここに......」 それは十年ほど前、勇者学院で俺に勇者のいろはを教えて育ててくれた、担任教師の姿だった。 俺のつぶやきを聞いて、イリスが驚きの表情を見せる。 「先生って......あのおばさまが、先生の、先生ってことですか?」 そう聞いてくるイリスに、俺は重要な注意点を伝える。 「あ、ああ、そういうことだ。ところでイリス、『おばさま』はいいが、『ババア』とか言ったらダメだぞ。殺されるからな」 「はあ......。そんな失礼なこと普通は言いませんけど」 「だ、だよなー。アハハハハ......」 蘇る、俺の学院生時代の記憶。 先生に向かって口が滑って「クソババア」などと言った日には、俺は運動用のマットで簀巻きにされてミノムシのように木に吊るされたものだった。 「口のきき方には気を付けましょうね、ブレットくん?」などと言って、漆黒のオーラに身を包んで襲い掛かってきた先生の姿は、今思い出しても恐ろしい......。 いや待て、今思えば立派な体罰だぞあれ。 その何百倍もの愛情で育てられたからいい思い出みたいになっているが、あれは決して許してはいけない。訴えてやる。 ......とかまあ、そんな過去の思い出はさておいて。 俺が教わっていた当時からさらに十年ほどの月日がたち、当時行き遅れ感のある三十歳代だった先生も、今や四十歳を上回るナイスミディだ。 先生の名前は、レオノーラ。 そのレオノーラ先生が今、観客席でサイラスと向かい合っていた。 ちなみにその横には、アルマの姿があった。 アルマは俺に気付くと、パチッと可愛らしくウィンクを送ってきた。 なおウィンクの意味はよく分からない。 一方、呆然としているのは、先ほどまで舞台演説の主役を演じていたサイラスだ。 「レ、レオノーラ先生......なぜここに......」 そのサイラスのつぶやきを聞いた周囲の観客が、にわかにざわめき始める。 「レオノーラ先生って......ひょっとしてあの伝説の勇者学院教師と言われた、レオノーラ先生のことか?」 「えっ、熱血授業で何人もの不良勇者を更生させて立派な勇者に育て上げたっていう、あの伝説のレオノーラ先生!?」 ざわざわと、観客たちが湧き立ち始める。 レオノーラ先生は確かに、「伝説」とまで謳われたほどの凄腕勇者学院教師だ。 まあ、当時レオノーラ先生の授業を受けていた身としては、あれはそんないいものじゃないぞと抗議したいところだが。 飴と鞭、愛と恐怖を巧みに使い分けた地獄の授業。 それがレオノーラ先生の「伝説」の正体だ。 最近はさすがに大人しくなったのか、俺が教師になってからこっちは、そんな噂が流れてくるようなことはなかったが......。 どこぞの辺境の街の勇者学院で今も教師を続けているらしいという噂は聞いていたが、俺が学院を卒業して魔王ハンターになって以降は、直接会ったことはなかった。 そう考えると俺も、ずいぶんと恩知らずな生徒だなと思うが──さておき。 今はそんなことを考えている場合でもない。 いったいどんな流れでレオノーラ先生がここに現れたのか分からないが、予想できるのは、おそらくはアルマが連れてきたのであろうということだ。 そしてこの絶体絶命の舞台に、彼女らの登場は非常に心強い。 一方で、「伝説の教師」レオノーラの登場に観客がざわつき始める中、「しまった」という顔をして自分の口をふさいでいるのはサイラスだった。 人々は「名声」に後光効果を感じるものだ。 サイラスが作り出した舞台演出をぶち破るのに、それは十分な効果を持つ。 レオノーラ先生は、サイラスに向かって辛辣な言葉をぶつける。 「サイラス先生、またずいぶんとあくどいことをしているようですね。こちらのアルマ先生から、いろいろと聞かせてもらいましたよ」 サイラスは、ぐっと言葉を詰まらせた。

49 Lesson 49 "These eight hundred long matches are invalid! - - Adolph, you must have been bought by problem teacher Brett there and deliberately told to lose! Standing up on the board seat, Cyrus began his usual theatre again. And it's like convincing Adolphe - or giving him one last chance - to go on like this. "We can still make it now. The bad part is the problem teacher there, right? Adolph, if you're gonna tell me the truth, it's the only time! You were just thrown away. I can still start over now. - Come on, tell me the truth! That was a clever, void in people's minds, as usual. But... Cyrus is also looking at the wrong person for blood on his head. To Adolf, that's counterproductive. Adolph was furious. "Jizzy, you... insult our battle...! I will not forgive any one who desecrates the battle of warriors... even you, Cyrus!!! Fierce anger. Cyrus, who took it, groaned once, but then took a deep breath and said: "Right, Adolph...... too bad. I was hoping for you... I feel like my child betrayed me. If I hadn't dyed my hands on the eight hundred, you would have been a brave man standing behind the future of this country... I'm so sorry." Cyrus seems to have instantly switched his head in the direction of truncating Adolf. His scenario is that I bought Adolph and let him play eight hundred long games. He's rotten everywhere. But from my point of view, I can't flip this scenario. Whatever I say, set as the party in question, it'll only sound like an escape to the audience. One stage of Cyrus continues. The stage actors in the board seat begin their speeches to the audience. "I am truly, truly sorry to hear that you are looking forward to this tournament today. Earlier there was an accusation before me that eight hundred long matches were played in this final. This is no more than an improper oversight of our Association of the Brave. You're right, I apologize to you flat. Later, a fact-finding mission will be conducted at the association, and the persons in question will be punished with severe penalties such as disciplinary dismissal." Cyrus' stage theatre seemed complete. Even without the fact that he did eight hundred, it would be like he could make as many of those things up in the back. Number of organizational corruption, power and power tricks. No one can stop a man like that symbol of brave corruption. If so, what happened a year ago... The unreasonableness that is no different from what happened in that presidential office, where I was moved from this king's capital, can only be reproduced here again. It is, of course, my strategic mistake. In this public place, even Cyrus would not be able to work untruthlessly. But it was sweet. The way that man fights is only when he puts the masses in front of him. No matter how unforgivable you think. No matter how serious you are, no matter how serious you come. If the only thing in the world that has done well with intra-organizational politics and worldliness is a sweet juice-smoking mechanism... I stand up, I hold my fist. I think I'll ramble on this occasion and blow everything away already. But of course, that's unacceptable. What kind of teacher can't even protect his godchildren from irrationality? If that's the case, I... -But that's when. A familiar voice echoed the venue. "Wait a minute! That's it! A familiar female teacher, Alma, appeared out of breath at the corner of the audience. And the other one. "Dr. Cyrus, don't do this anymore. It's ugly." Next to Alma was the figure of a fifty tangled woman. Look at that, I snap. "Sir.... Why are you here..." About ten years ago, he taught me a lot about brave men at the College of the Brave, and raised them as teachers. Listen to my twinkle and Ilis gives you a surprise look. "Doctor... does that aunt mean teacher's, teacher's? That's what I'm gonna ask. I'm gonna tell Iris what's important. "Oh, yeah, that's the thing. By the way, Iris, 'Auntie' is fine, but not if you say 'Baba' or something. They're gonna kill me." "Ha...... I wouldn't normally say anything rude like that." "Yes, it is. Ahahahahahaha......" Resurrect, memories of my college years. On the day my mouth slipped toward my teacher and said "fucking baba" etc, I was wrapped around a mat for exercise and hung from a tree like a minotaur. "Be careful how you speak, Brett, huh?" And so on, the look of the teacher, dressed in a pitch-black aura and attacked me, is horrible even now that I remember... No, wait, now I think it's a fine corporal punishment. That. It's like a good memory because I was raised with that hundreds of times more love, but that should never be forgiven. I'll sue you. ... or well, not to mention those memories of the past. Even teachers in their late thirties, about a decade after I was teaching them, are now over forty years of age Nice Midi. The teacher's name is Leonora. The Leonora teacher was now facing Cyrus in the audience. Next to it, by the way, was Alma's appearance. Alma noticed me, sending her winks patchy and cute. Note that I'm not sure what wink means. Meanwhile, what is flattering is Cyrus, who played the lead role in the stage speech until earlier. "Les, Dr. Leonora... why are you here..." The surrounding audience, hearing that Cyrus twinkle, begins to blur. "Dr. Leonora... I was once told I was a teacher at the Legendary College of Brave Men, you mean Dr. Leonora? "What, that legendary Dr. Leonora who said he regenerated a bunch of bad braves in a bloodthirsty class and raised them into fine braves!? On purpose, the audience starts to gush. Dr. Leonora is certainly a teacher at the College of Brave Men who has been called "Legendary". Well, as I was taking Dr. Leonora's class at the time, I'd like to protest that's not such a good thing. A hell of a class with candy, whips, and skillful use of love and fear. That's who Dr. Leonora's "legend" is. You've just grown up lately, and since I've been a teacher, there hasn't been anything like that coming through... I heard rumors that he still teaches at the City's College of Brave Men on the other side of the border, but since I graduated from college and became a Demon King Hunter, I've never met him in person. Thinking about it, I think I'm a lot of ungrateful students, too, but... Forget it. Not even if you're thinking about it now. I don't know what the hell kind of flow Dr. Leonora showed up here, but what I can predict is that Alma probably brought him here. And on this stage of absolute desperation, their appearance is very comforting. On the other hand, as the audience began to bother with the appearance of "Legendary Teacher" Leonora, it was Cyrus who looked "Shit" and blocked his own mouth. People feel the afterlight effect on "fame". It has enough effect to smash through the stage performances created by Cyrus. Dr. Leonora hits a hard word toward Cyrus. "Dr. Cyrus, you seem to be doing a lot worse again. Dr. Alma told me a lot about you." Cyrus clogged the words a long time ago.

第44話 ジェイクは開始早々、遠距離からメイファに攻撃魔法を放つ。 「まずはお手並み拝見だ──【 ジェイクが伸ばした左手の前に、三つの火の玉が浮かび上がり、それがすぐさまメイファに向かって発射された。 三条の火炎弾がメイファに向かって殺到する。 「......そんなもの。......【風車】!」 メイファは槍を前面に突き出し、それを瞬時にくるくると高速回転させる。 闘気を帯びて回転する槍は、メイファに迫りくる三つの炎をすべてかき消した。 【風車】は槍を使った防御技だ。 ジェイクの両手が次々と伸び、メイファにつかみかかろうとしてくる。 「......くっ......!」 メイファはそれを、後退しながら最初の一手はどうにかかわし、次の一手も槍で弾いたが、三手目四手目で両の二の腕をつかまれてしまった。 「ひひひっ、捕まえたぁ。──さあどうする、子猫ちゃん」 「......んっ、ぐっ......!」 メイファは力ずくで引きはがそうとするが、腕力はメイファの苦手分野だ。 ジェイクのそれに及ばず、振りほどくことができない。 そうしている間に、ジェイクは長い舌でべろりと舌なめずりをして、メイファに顔を近付けていく。 「ひひひっ。ここまでの戦い、見てたからよぉ? お前って魔法が得意なタイプの勇者なんだろ? 白兵戦が苦手なお前は、こうやってつかまれちまったらどうする? どうしようもねぇよなあ? ......さあお楽しみの時間だ。ひひひひっ」 ジェイクがメイファに迫る。 メイファは為すすべもなく、されるがままに見えたが── 一方の“女王”ドロシーと、イリスの対決。 先に動いたのは、ドロシーのほうだ。 「それじゃあ、楽しい舞踏会を始めましょう? ──【 ドロシーの左手に、長い炎の鞭が現れる。 彼女は右手には槍を持っているので、これで両手に武器を持った形になった。 イリスはそれを、冷ややかな目で見つめる。 「......“女王”だから鞭? SM趣味? 私、マゾの趣味はないつもりなんだけど」 「大丈夫よぉ? ちゃんとこれから躾けてあげるわぁ。可愛い悲鳴を上げながら、ご主人様、もっと、もっとぉって、懇願するようにしてあ・げ・る☆」 「ふん、付き合い切れない。──【......】」 イリスがぼそっと、小さく魔法を唱えた。 魔法の輝きが、イリスの全身を覆う。 「あらぁ? 何の魔法を使ったのかしれないけど、補助魔法なんて使ってる余裕あるのぉ? 今の隙に、攻撃でもしていたほうがよかったんじゃないのかしら」 「生憎だけど、私は補助魔法が得意なの。得意分野で戦うのは基本だって、先生が教えてくれたから」 「あら、そう。じゃあ──その大好きな先生の教えと一緒に、心中なさいな!」 ドロシーは右手の槍を、イリスに向かって投擲した。 イリスはそれを見切り、横にステップして回避する。 「はぁい引っ掛かった。こっちが本命なのよぉ?」 一拍だけ遅れて、炎の鞭がイリスに襲い掛かる。 着地前のタイミングを狙われたイリスの体に、炎の鞭が巻き付いた。 両腕ごと炎の鞭に巻き込まれたイリスが、天に向かって絶叫するような悲鳴をあげる。 しかしそのイリスの体は、彼女が直前に使った魔法の輝きが膜となり、覆っていた。 我が天使、意外と人が悪いようである。 一番の問題は、リオだ。 リオと“剛剣”アドルフは、互いに駆け寄って、目の前まで来ると木剣を打ち合わせていた。 「ぬぅっ......!」 ──カンッ、カカカカカンッ、ガンッ、ガガンッ! 両者凄まじい速度で剣を振るっていく。 数秒の間に二十合も三十合も打ち合わされるような戦いが始まり、観客席からどよめきの声が上がる。 「お、おい......お前、あれ見えるか......?」 「いや、何となく......? 特に女の子のほう、目で追えねぇよ......速すぎる......」 「女の子のほうが、少し押してる......かな?」 「あ、ああ、多分......だってほら、また一撃入った」 観客たちの言うように、一見ではリオが優勢に見えた。 リオはその圧倒的な敏捷性を活かして右へ左へ跳び回り、四方八方から縦横無尽にアドルフを攻めたてる。 一方のアドルフは棒立ち、かつ防戦一方で、しかもリオの猛攻を完全には防ぎきれずにいた。 ときおり弱い一撃がアドルフの腕やわき腹などにヒットし、わずかなりとダメージを与えていく。 「ふっ......いいぞ雌犬! 貴様は素晴らしい! 俺が食うに値する強者だ──ふんっ!」 アドルフがたった一撃放った横薙ぎの攻撃が、リオの体を、受け止めた木剣ごと数メートル吹き飛ばした。 リオは地面をごろごろと転がるが、途中でアクロバティックに身を翻して立ち上がる。 どうにか姿勢を持ち直したリオは、服の袖で額の汗を拭って、相手の大柄な少年を睨みつける。 「はぁっ、はぁっ......くそっ、強ぇ......! 攻めきれねぇ......!」 「どうした、強き雌犬よ。貴様の強さはこの程度のものではあるまい。もっと抵抗してみせろ」 アドルフはリオに向かって、悠然と歩み寄っていく。 その姿はさながら、すべてを蹂躙しなぎ倒す竜の如しだ。 ──“剛剣”アドルフ、“女王”ドロシー、“賢狼”ジェイク。 現在の王都勇者学院で三強と呼ばれるこの三人だが、その実、ほかの二人とこの“剛剣”アドルフとの間には、大きな実力の開きがある。 圧倒的に最強なのは、アドルフただ一人だ。 ほかの二人と並び称されているのは、それ以外の生徒と比べてあの三人のレベルがかけ離れすぎているから、というだけのことにすぎない。 リオが苦し紛れに魔法を放つ。 リオの手の前に現れた火の玉が、迫りくるアドルフに向けて発射された。 「ふんっ......」 三つの火炎弾は、興味なさげに振るわれたアドルフの木剣によって、まとめてかき消されてしまった。 防御技の【ディフレクション】だが、アドルフにとってはほとんど無意識で使っているレベルなんだろう。 「くだらん真似はやめろ、雌犬。貴様の本質は剣だ。雑魚相手ならばそんな小細工も通用するのだろうが──俺相手には無意味だ」 アドルフの歩みは止まらず、ゆっくりとリオに向かって迫ってくる。 リオの額から、一筋の汗が流れ落ちた。

44 Lesson 44 Early in the beginning, Jake unleashes attack magic on Mayfa from a distance. "Let's see how you do it first - [Firebolt]!" Before Jake stretched his left hand, three fireballs floated, and it was immediately fired towards Mayfa. Sanjo's flamebullet arrives towards Mayfa. "... something like that.... [Windmill]! Mayfa protrudes the spear to the front, spun it fast as it instantly twists. The struggling, spinning spear undone all three flames looming at Mayfa. [Windmill] is a spear-based defensive move. Jake's hands stretch one after the other, trying to grab me by Mayfa. "... cum...! Mayfa managed to do it with her first hand as she retracted, and she played it with a spear with her next hand, but she was grabbed by both arms with her third and fourth hand. "Hi-hi, I got you. - Come on, kitten." "... ugh, gu...! Mayfa works hard and pulls like that, but arm strength is Mayfa's bad field. It doesn't go beyond Jake's and I can't shake it off. While doing so, Jake slurps his tongue with his long tongue and brings his face closer to Mayfa. "Hi-hi. I've been watching this fight, haven't I? You're the type of brave guy who's good at magic, aren't you? You don't like the White Soldier War, what if they grab you like this? There's nothing I can do, is there?... Now it's time for some fun. Hihihihihihihi." Jake approaches Mayfa. Mayfa didn't even have the power to exchange, but she seemed to stay... A confrontation between Dorothy, the "queen" on the one hand, and Iris, on the other. It was Dorothy who moved first. "So let's start a fun ball, shall we? - - [Flamewhip]!" On Dorothy's left hand, a long flaming whip appears. She has a spear in her right hand, so this took the form of a weapon in both hands. Iris stares at it, with cold eyes. "..." Queen, "so whip? Sm hobby? Me, I'm not gonna have a mazo hobby." "It's okay, huh? I'm gonna kick your ass. Wow. With a cute scream, Master, try to plead for more, oh, oh, oh, oh, oh, oh." "Hmm, we can't hang out. - - ...... Ilis softly, smallly cast his magic. A magical glow covers the whole body of Illis. "Oh? I don't know what kind of magic you used, but you can afford to use auxiliary magic? I wonder if it would have been better if it had been an attack." "Hate, but I'm good at auxiliary magic. It's basic to fight in your area of expertise, because your teacher taught you." "Oh, yeah. Then... with the teachings of your favorite teacher, be careful! Dorothy threw the spear of her right hand toward Illis. Iris sees it out, steps sideways and dodges it. "Huh. I'm hooked. This is our destiny, huh? Only a beat is delayed and the flaming whip strikes Illis. A flaming whip wrapped around Iris' body aimed at the timing before landing. An iris caught in a flaming whip on each arm screams like a scream towards heaven. But that Illis body, the magical glow she had used just before, became a membrane and covered it. My angel, people seem surprisingly bad. The biggest problem is Rio. Rio and "The Rigid Sword" Adolf were rushing towards each other and meeting the wooden sword as they came to their sight. "Nooo...! - - KANG, KANG, KANG, KANG! They both wave their swords at tremendous speeds. The battle begins so that in a matter of seconds both twenty and thirty rounds will be met, and a whirlwinding voice will be heard from the audience. "Oh hey... you see that one...? "No, somehow...? Especially the girls, you can't chase them with your eyes... they're too fast..." "Girls are pushing a little more...? "Oh, oh, maybe... 'Cause, look, I got another blow in" As the audience put it, Rio seemed dominant at first glance. Leveraging its overwhelming agility, Rio jumps right and left, attacking Adolf endlessly from all directions. Adolph, on the one hand, stood on the bar and defended against the war, on the other, and was completely unprotected from Rio's onslaught. Sometimes a weak blow hits Adolf's arm, straw, etc., causing slight damage. "Phew... that's good, bitch! You are wonderful! He's the strong man I deserve to eat. Adolf's onslaught of only one blow blew Rio's body a few meters for each wooden sword he received. Rio rolls all over the ground, but rises acrobatically along the way. Having managed to regain his posture, Rio wipes his forehead sweat with the sleeves of his clothes and stares at his opponent's big boy. "Ha, ha... damn, strong...! I can't attack you......! "What's up, you strong bitch? Your strength is not to this extent. Let them resist more." Adolph heads to Rio and walks over gently. The figure is like a dragon that ravages and defeats everything. - - "Rigid Sword" Adolf, "Queen" Dorothy, "Wise Wolf" Jake. These three, known as the Three Powers at the present Wangdu College of the Brave, have a great opening of strength between the fruit, the other two and this "Rigid Sword" Adolph. Overwhelmingly, Adolf is the only one. They are hailed alongside the other two just because those three levels are too far apart compared to the other students. Rio unleashes magic on the misery. A fireball appeared in front of Rio's hand and was fired at the impending Adolf. "Hmm..." The three flame bullets were summed up and wiped out by Adolf's wooden sword wielded by disinterest. [Deflection] of defensive moves, but I guess it's a level I use almost unconsciously for Adolf. "Stop imitating crap, bitch. Your essence is the sword. Miscellaneous fish opponents would have such a small worker, but... it doesn't make sense to me." Adolph's walk does not stop, but slowly approaches Rio. From Rio's forehead, a glimmer of sweat fell.

第35話 それからしばらくの後。 サイラス率いる王都勢は、帰還の途につくことになった。 だが河原から立ち去ろうとする際、サイラスは一度振り向き、わざとらしい口調でこんなことを言ってきた。 「そういえばブレット先生、およそ一年後に王都で開かれる最強新人勇者決定戦ですが──ひょっとして、出場するのはその子たちですかな?」 「......ええ、そうですね」 俺は答える。 一ヶ月前に王都を去る日の前日、そういえばサイラスとそんな話をしたなと思い出す。 正直なところ、こっちに来てからの日々が楽しすぎて、すっかり忘れていた。 最強新人勇者決定戦での、教え子を通したサイラスとの勝負。 それは今考えれば、自分のためにリオたち三人を利用するような話だが── しかし今となっては、逆にそっちのほうがいい口実だ。 リオたちに、ジェイクらともう一度ぶつかる機会を用意してやれるのだから。 リオたちとほぼ同年代の勇者では、あの三人──“剛剣”アドルフ、“女王”ドロシー、そして“賢狼”ジェイクが、おそらくはこの国の最強だろう。 そしてあの三人は、今年で勇者学院を卒業する。 最強新人勇者決定戦へは、勇者学院への在籍年数は関係なく出場できるものの、勇者学院を卒業した後には参加することができない。 リオたちをあいつらと戦わせてやれるのは、次の最強新人勇者決定戦を逃せば、その次があるかどうかも分からないということだ。 俺がそんなことを考えている一方で、サイラスはぺらぺらとまくし立てる。 「ブレット先生、その子たちもそれなりに腕は立つようですが......今日の結果を見れば分かるでしょう。出場させたところで生徒たちに恥をかかせ、その身に再び敗北の刻印をきざむことになるだけです。それはこの国のすべての勇者の育成を想う立場としては、見ていていささか忍びがない」 「............」 「ですのでブレット先生、先生の功績が認められなくて悔しいのは分かりますが......ここはひとつ、往生際よくあきらめられてはいかがですかな?」 やれやれ、言いたい放題言ってくれるな。 そもそも俺にその条件で勝負を望んだのは、サイラスのほうだったはずだ。 今日の出来事で溜飲をさげたから、もういいということなんだろうか。 そんなことを思いつつ俺は反論を口にしようとしたのだが、そのとき── 俺のかたわらにいた教え子たちが、先に声を上げた。 「──兄ちゃんは、そんなんじゃねぇ!」 「そうです! 先生は、誰からも見捨てられていた私たちを、何の打算もなく救ってくれた人です!」 「......まあ、理想の先生かどうかで言えば、ちょっとロリコンすぎるかもだけど。......少なくともお前よりは、五千兆倍いい先生。......功績だとか何とか、そういう風にしか見れないのは、お前の卑しさを自己紹介しているだけ」 メイファがサイラスを指さして言うと、サイラスは「ぐぬぬ......」と言って顔を真っ赤にして沸騰した。 子供たちに言い返されるとは思っていなかったのかもしれない。 ただまあ、三人の中で俺がちょっと美化されすぎている気がしないでもなく、そのあたり俺はもうちょっと俗物ですよとツッコミを入れたくはなるのだが......でも先生、ちょっと感動したよ。 俺は三人のあとを継いで、サイラスに言ってやる。 「ご心配には及びませんよ、サイラスさん。こいつらのことは、俺がこれから世界最強の勇者に育てますんで。一年後......いや、もう十一ヶ月後ですか、楽しみにしていてください。その頃には、そこの三人だって余裕で凌駕してますよ」 と、見事に大風呂敷を広げてしまう俺。 いや正直なところ、俺もリオたちみたいな怪物を育てた経験なんてないから、たった十一ヶ月でどこまで伸びるかなんて、やってみないと分からないんだけどな。 それにジェイクたち三人だって、十一ヶ月もあれば、今よりもさらに力を上げてくるだろう。 あいつらだって成長期だ。 だが、それでも── それでも俺は、リオたちを信じたかった。 教師が教え子の可能性を信じてやらなかったら、伸びるものも伸びなくなるのだから。 だが一方で、俺の言葉を聞いた王都最強の三人の生徒は、いずれも獰猛な笑みを浮かべた。 “剛剣”アドルフと“女王”ドロシーが、「ほう」とか「へぇぇ、それは楽しみだわ」などと言ってほくそ笑む。 そんな中、俺に向かって口を開いたのは、“賢狼”ジェイクだ。 「面白いこと言いますね、ブレット先生。......俺たちを凌駕する? 世界最強? ......それ、本気で言ってるんですか?」 「ああ、本気だぞ。お前らも大したもんだが、俺は今、この三人にべた惚れなんだよ」 俺がそう言ってやると、ジェイクは肩を震わせて笑い出した。 「くっ......くくくくくっ......! 面白れぇ、ブレット先生、あんた面白れぇよ。──じゃあこうしましょうよ。その決定戦で負けたほうは、勝ったほうの言うことに一日絶対服従ってことで。俺、そいつらをキャンキャン鳴かせながら蹂躙してやりたくて仕方ないんすよ。うちの地下牢でたっぷり躾けてやりますよ。ね、いいでしょ?」 ジェイクはそう言って、べろりと舌なめずりをした。 だが──俺はそれには、渋面を作らざるをえなかった。 ジェイクのモラルの無さは、俺が王都で教えていた頃から何も変わっていないようだ。 そして、いくら教え子たちを信じると言ったって、そんな無茶苦茶な約束はできるわけがない。 だから俺は、ノーを言い渡そうと思ったのだが── そこに口を挟んできたのは、サイラスだった。 「それは素晴らしい提案だジェイクくん。私も賛成するよ。年に一度、せっかくの祭りだ。そうやって想いを強くして、どんどん盛り上げていこうじゃないか」 「ちょ、ちょっとサイラスさん! それはいくらなんでも──」 アルマが横から抗議の声を上げる。 だがサイラスはどこ吹く風だ。 「いいではないですか、アルマ先生。......なぁに、こんな辺鄙な村のクズ勇者が三人程度使い物にならなくなったところで、この国に勇者の代わりなどほかにいくらでもいますよ。クズどもがジェイクくんたちのような優秀な勇者の糧となるのであれば、万々歳ではありませんか」 サイラスはぎろりと、リオ、イリス、メイファの三人をねめつける。 先の三人の反抗がよほど癇に障ったのか、それともこの場にいる者しか聞いていないから多少の暴言ぐらいはいくらでも揉み消せると油断したのか──あるいはその両方か。 いずれにせよ、サイラスには珍しい、分かりやすい大暴言だ。 聞いているこっちとしては非常に不愉快だが──でも、あれを回しておいて正解だったな。 「サイラスさん......それ、本気で言ってるの?」 一方で、サイラスを見るアルマの目が据わっていた。 ついに堪忍袋の緒が切れたという様子。 それを見たサイラスは、おどけたように引いてみせる。 「おっと失礼、言葉が過ぎましたかな。......しかしアルマ先生、まだ子供といっても、礼儀を欠くことは許されませんよ。私のような立場にある者に暴言を吐けばどういうことになるか、彼女らには身をもって思い知ってもらう必要があります。そうでしょう? ──そしてそれは、先生のような大人であればなおさらのこと。ブレット先生と違い利口なアルマ先生なら、分かりますね?」 アルマは瞳を閉じて、それ以上何も言うことはなかった。 アルマが何を考えているのかは分からない。 でもあれは、相当怒っているなと感じた。 あいつ、怒らせると怖いからなぁ......。 何やらかすか分かったもんじゃねぇ。 ま、それはともあれだ。 俺はサイラスに、言葉を返す。 「サイラスさん、いずれにせよ、その提案は呑めませんね。そんな非道徳的な約束、教師として黙認できるわけがないですよ」 「おや......? ブレット先生の話では、そこの三人の野良猫勇者が、ジェイクくんたちのような優秀なエリート勇者を凌駕するという話ではありませんでしたかな? 非道徳的というなら、ブレット先生の教え子が勝って道徳的な命令に服従させればよいだけでは?」 「だとしてもです。俺は教師として、教え子たちをそんな趣味の悪い賭け事に巻き込みたくはありません」 「......やれやれ。大口を叩いたかと思えば、大きいのは口だけで、本当は自信がないのですね。暴力教師の上にホラ吹きで臆病者とは、付ける薬がありません。教師がそれでは、教え子たちがどうしようもないのもうなずけます」 そう言ってサイラスが肩をすくめると、王都の生徒たちがドッと笑った。 やがてサイラス率いる約二十人は、俺たちへの嘲笑と侮蔑の言葉を駆使しながら、ようやく立ち去っていった。 台風一過だ。 俺はほうと一つ息をついて、三人の教え子たちに言う。 「......今日は変なもんに付き合わせて悪かったな」 「ううん、兄ちゃん。オレ、全然へっちゃらだし」 「私もあんなの全然平気です。今すぐ全員 「......お兄さん、ボクに早く、煉獄の炎ですべての敵を焼き尽くす魔法を教えてほしい」 若干二名、物騒なことを言う子がいたがスルーしておいた。 ──と、そこに王都勢の中から一人、こちらに駆け寄ってくる姿があった。 アルマだ。 アルマはパタパタと走ってくると、俺の前まで来て聞いてくる。 「はぁっ、はぁっ......あのさ、ブレット先生。さっきのサイラスの暴言って、ひょっとして録れてたりする?」 ああ、その話か。 アルマには用途まで伝えてあったしな。 「おう、バッチリだ。俺もまさか、あそこまでのものが録れるとは思ってなかったけどな──うちの口の悪い教え子の手柄だ」 俺がそう言って取り出したのは、アルマに王都で買ってきてもらって受け取っていた魔道具、「魔導録音機」だ。 何かサイラスのやつをぎゃふんと言わせられる材料を用意できないかと思って、やつとの会話を録音しておいたのだが、予想以上の録れ高だった。 これを使って、どうにかあいつをコテンパンにできないもんかと思うのだが── そこでアルマが、ニッコリ笑顔で手を広げてくる。 「ブレット先生が良かったらでいいんだけど、それ、あたしに任せてくれない?」 「何か考えがあるのか?」 「まあねー。ちょっと大変だけど、もうあたしも腹が据わったわ。ふふふ......あのクソ狸、なんとしても社会的にぶち殺してやる。絶対に許さない」 「お、おう、そうか」 俺はアルマに魔導録音機を渡した。 これはアルマに任せておいたほうが良さそうだ。 それを受け取ったアルマは、にやぁっと薄く笑った。 そして最後に、アルマはメイファのほうへと向き直る。 「キミがメイファちゃんだね。挨拶が後になったけど、会うのは初めまして」 「......こちらこそ初めまして、お兄さんの昔の女の人」 ガッチリと握手を交わす二人。 そしてバチバチと視線が交錯する。 なんだかよく分からんが、長き戦いを繰り広げる宿敵同士が出会った場面のような熱い何かを感じた。 あとメイファ、何度も言っているが、昔の女と違うからな。 俺とアルマは付き合ったことなんてないぞ。 ちょっと仲がいいだけのただの元同僚だぞ。 そしてアルマは、メイファだけでなくリオ、イリスにも視線を這わせ、何やら「うぐっ」とうめいた。 「くぅっ......さ、三人とも、可愛すぎる......! 反則でしょこんなの......。そりゃブレット先生じゃなくたってやられちゃうよ......これは強敵どころじゃないぞ......」 その言葉を聞いた俺は、嬉々としてアルマの手を取った。 「──だろ!? な、可愛いだろ!? 俺の言ってたこと間違ってないだろ!?」 「あ、ごめんブレット先生は黙ってて」 何か分からないけどバッサリ斬られた。 理不尽だ......。 そうしてしょんぼりする俺を尻目に、アルマとメイファは互いにこつんと拳をぶつけ合った。 「でもま、ひとまずは、一時休戦ってことで」 「......同意する。......あいつらをぎゃふんと言わせるのが、先」 そして再び、二人はがっちりと握手をした。 さらにリオとイリスまでもが、そこに手を重ねていく。 そんななんだか分からない契りのような何かが結ばれる中、俺一人が蚊帳の外で、ぽつんとその場に突っ立っていたのだった。 パパは寂しかったよ、ぐすん。

35 Lesson 35 Then some time later. The Kingdoms, led by Cyrus, were set to return. But when trying to walk away from the river plain, Cyrus turned around once and said this in a deliberate tone. "Speaking of which, Dr. Brett, about a year from now, it's the most powerful new brave fights in the King's Capital, but -- hey, are those kids the ones competing? "... yeah, that's right" I answer. I remember the day before I left King's Capital a month ago, speaking of which, you talked to Cyrus like that. To be honest, the days since I got here have been too much fun and I totally forgot. A battle against Cyrus through his godchildren in the strongest newcomer brave fights. Now, if you think about it, it's like using the three Rio guys for your own good. But now, on the contrary, that's a better pretext. I can give Rio and the others another chance to bump into each other. In brave men of almost the same age as the Rio's, those three - Adolph the Rigid Sword, Dorothy the Queen, and Jake the Wise Wolf - are probably the strongest in the country. And those three will graduate from the College of the Brave this year. Though years of attendance at the College of the Brave can compete in the strongest newcomer brave men's decision fights, they cannot participate after graduating from the College of the Brave. The only thing that can make Rio and the others fight them is that if you miss the next toughest new brave decision, you don't even know if that's next. Whilst I'm thinking about it, Cyrus gets all peppered up. "Dr. Brett, those kids seem to stand up quite well too...... you'll see how it turns out today. It just puts the students to shame where they put them on the field and puts another stamp of defeat on them. It's a position to think about the training of all the brave men in this country, and there's no sneaking around to watch." ............ "So Dr. Brett, I know you regret not being recognized for your teacher's accomplishments... but here's one, how about being given up a lot during your predecessors? Oh, man, you can say whatever you want. It should have been Cyrus who wanted me to compete on that condition in the first place. I offered you a drink because of what happened today, so does that mean that's enough? With that in mind, I tried to argue, but then... My godchildren raised their voices first. "- Your brother, it's not like that! "Yes! The teacher is the one who saved us from being abandoned by anyone, without any intention! "... Well, if it depends on whether you're the ideal teacher or not, maybe a little too lollicon.... at least five trillion times better than you, Doctor.... feat or something, all I see that way is an introduction to your inferiority" When Mayfa pointed at Cyrus and said, Cyrus said, "Grunting......" and his face turned bright red and boiled. Maybe he didn't think the kids would tell him back. It's just, I don't feel like I'm a little too beautified among the three of you, and I'm a little bit of a mess around here... but I'm a little impressed, Doctor. I'll take after the three of you, and I'll tell Cyrus. "Don't worry, Mr. Cyrus. I'm going to raise these guys to be the strongest brave man in the world. A year later...... no, it's eleven months later, stay tuned. By then, even the three of them will be able to afford it." And me spreading the big bath brilliantly. No, to be honest, I've never had the experience of raising monsters like the Rio's either, so I don't know how far I'm going to stretch in just eleven months, unless I try. And even the three Jakes, in eleven months, will be even more powerful than they are now. Even those guys are growing up. But still... Still, I wanted to believe Rio and the others. Because if a teacher doesn't believe in the possibility of a teacher, what stretches doesn't stretch either. But on the other hand, all three of the strongest students in the Wang Dynasty, who heard my words, had a fierce grin. Adolf the Rigid Sword and Dorothy the Queen laugh like, "Hey, I'm looking forward to that." In the meantime, Jake the Wise Wolf opened his mouth to me. "That's an interesting thing to say, Dr. Brett.... outweigh us? The strongest in the world?... Is that what you're serious about? "Oh, I mean it. You guys are a big deal, but I'm in love with these three right now." When I told him that, Jake shook his shoulder and laughed out. "Knock... Knock...! Funny, Dr. Brett, you're funny. - - Then let's do this. The more you lose in that decisive battle, the more you win, is that you are absolutely obedient to what you say for a day. I can't help but want to ravage them while they're campaigning. I'll give you plenty in my dungeon. You know what, right? That's what Jake said, and he slurred his tongue. But I had to make a tannic surface for it. Jake's lack of morality doesn't seem to have changed anything since I was teaching in King's Capital. And there's no way I can make such an unscrupulous promise when I say how much I believe in my godchildren. So I thought I'd say no. It was Cyrus who had pinched his mouth there. "That's a great suggestion, Jake. I agree. Once a year, it's a festival because of it. That's how we make our thoughts stronger and more exciting." "Hey, hey, Mr. Cyrus! Whatever it takes..." Alma raises a protest from the side. But where does Cyrus wind? "Isn't that nice, Dr. Alma?... and yet where there are about three scumbag braves in such a despicable village who are no longer useful, there are as many other things as replacing braves in this country. If scumbags are to feed good brave men like Jake and the rest of you, don't you, Hail?" Cyrus triumphs over Rio, Illis, and Mayfa. How much of the first three disobediences crippled the eclampsia, or did you warn that you could rub off any amount of rumbling because only those on this scene have heard it - or both? Either way, it's a rare, understandable outrage for Cyrus. This is very unpleasant of you to ask, but you were right to turn that around. "Mr. Cyrus...... are you serious about that? On the other hand, Alma's eyes stood still looking at Cyrus. At last, it seems that the token has been broken. Cyrus, who sees it, pulls it aside. "Whoa, excuse me, have you passed the word?... But Dr. Alma, even if you're still a child, you're not allowed to lack courtesy. They need to know with their own minds what it means to rumble to someone in a position like me. Isn't that right? - - And that's even more so if you're an adult like a teacher. Unlike Dr. Brett, if you're a clever Dr. Alma, you know what I mean? Alma closed her eyes and had nothing more to say. I don't know what Alma is thinking. But I felt quite angry. He scares me when I piss him off...... I don't think I know what it is. Oh, that's it. I'll return the word to Cyrus. "In any case, Mr. Cyrus, you can't swallow that suggestion. There's no way you can be silent on such immoral promises as a teacher." "Oh...? Wasn't Dr. Brett's story about the three wildcat braves out there surpassing the brilliant elite braves like Jake and the others? If you mean immoral, why not just let Dr. Brett's godson win and submit to moral orders? "Even so. As a teacher, I don't want to involve my teachers in gambling like that." "... man. I thought you slapped me in the mouth, and the only thing that's big is your mouth, and you're not really sure. A coward with a holla blow over a violent teacher is no medicine to put on. Teachers then nod what the teachers can't do." When Cyrus shrugged his shoulders with that said, the students of Wang Du laughed doedly. Eventually about twenty, led by Cyrus, finally walked away, using words of derision and contempt for us. It's a typhoon. I take one more breath and tell the three godchildren. "... sorry to have let you hang out with something weird today" "Yeah, brother. I'm totally screwed." "I'm perfectly fine with that, too. I didn't want to shoot them all right now." "... brother, I want you to teach me the magic of burning down all enemies with purgatory flames as soon as possible" There were a few kids who said something noisy, but they stayed through. - And there was one of the Wang Du dynasties, rushing over here. Alma. Alma comes running with a pat, he comes up to me and asks. "Ha, ha... you know, Dr. Brett. What was Cyrus' rambling earlier, a little recorded? Oh, is that the story? Alma even told me about it. "Whoa, that's perfect. I didn't think I'd be able to record anything like that, either." That's what I said and took out was the magic prop that Alma had bought and received in Wang Du, the "Magic Instruction Recorder". I was wondering if I could prepare some ingredients to make Cyrus say heh heh heh, so I recorded a conversation with him, which was higher than I expected. I was wondering if I could use this to make him a cotempan somehow. So Alma smiles and spreads her hand. "I hope Dr. Brett is good, but can you leave that to me? "Do you have any ideas? "Well. It's a little rough, but I'm already hungry. Hehe...... that fucking raccoon, I'm gonna smash you to death socially at any rate. I will never forgive you." "Oh, well." I gave Alma the magic recorder. Looks like you should leave this to Alma. Alma, who received it, laughed lightly at it. And finally, Alma turns to Mayfa. "You're Mayfa. Greetings later, but it's nice to meet you." "... it's a pleasure to meet you, my brother's old lady" Two people shaking hands with a gutter. And the bees and the gaze intersect. I don't know what it is, but I felt something hot, like a scene where a long-running enemy met each other. And Mayfa, I've said it many times, but it's not like the old woman. I've never dated Alma before. He's just an ex-colleague. And Alma let Mayfa as well as Rio and Illis crawl his gaze and groan somewhat "ugly". "Kuh...... Sa, all three, too cute......! It's against the rules. This... That's what they're gonna do, not Dr. Brett... this isn't about the strong enemy..." When I heard the words, I took Alma's hand as a delight. "- Right!? Hey, aren't you cute!? You're not wrong about what I was saying!? "Oh, I'm sorry, Dr. Brett, shut up." I don't know what it is, but it was bassari slashed. Irrational...... Alma and Mayfa slammed each other's fists against each other, putting me on their asses like that. "But for once, it means a temporary truce." "... Agree.... make them say" heh heh heh "first" And again, the two shook hands disappointingly. Even Rio and Illis lay their hands on it. One of me stood on the spot outside a mosquito net while something like that was tied up. Daddy missed you, Gusu.

第121話(第3部エピローグ) しばらく待っていると、ようやくステージの開始となった。 『それでは、お待たせいたしました! まずはエントリーナンバー一番、トゥインクルスターズの四人です! どうぞーっ!』 満月の月夜の下のライトアップされた舞台、拡声魔法器を持った司会進行らしき女性が舞台から退くと、それと入れ替わりで四人の少女たちが舞台に姿を現した。 リオたちではない。 しかし可憐な貸し衣装に身を包んだ少女たちは、いずれもなかなかに容姿端麗だ。 舞台の奥に陣取っていた音楽隊が、大音量で演奏を始める。 そのアップテンポの演奏に合わせて、舞台上の少女たちが歌い、踊り始めた。 うまい──気がする。 最近うちの子たちの練習をずっと見ているから目が肥えてきた気がするのだが、この子たちはその俺から見ても相当なものだ。 観客席から歓声が上がる。 少女たちの親と思われる一団が、特に派手に応援を始める。 少女たちはそれに、踊りの邪魔にならないタイミングで笑顔を見せて手を振り、続いて観客席全体に向かっても笑顔を振りまいていく。 ......もうほとんどプロじゃないのか、あれ? 素人ってレベルじゃない気がするぞ。 しかし当たり前といえば当たり前だが、どの子供たちにも応援してくれている人たちがいるんだよな。 うちの子たちだけが特別じゃない。 どの子たちも、みんなそれぞれの物語を背負って、特別になろうとしている。 歌と踊りが徐々に盛り上がってくれば、観客席ではペンライトも振られ始める。 ......しまった。 その手の応援アイテムは用意していなかった。 適当に光属性の魔法でも使って応援するか── などと思っていると、ペンライトを販売する売り子さんが近くを通りかかった。 商売上手め、などと思いながら俺は売り子さんに代金を支払って、ペンライトを購入。 それを振って、なんとなくよその子たちの応援を始める。 と、そのとき、俺の隣にいた訳知り顔の男が、こんなことをつぶやき始めた。 「ふむ......毎年行われている公開アイドルオーディションだが、トゥインクルスターズはまた一段とレベルを上げてきたな。これは超ド級の新人グループでも現れない限り、今年はトゥインクルスターズで決まりだろう」 訳知り顔の男は、うんうんとうなずく。 そうか、一番手のあの子たちは、優勝候補なのか。 道理でレベルが高いわけだ。 やがて一番手の子たちが大歓声のもとで演技を終えて、舞台から退いていく。 続いて二番手のグループが始まった。 まだうちの子たちの出番は来ない。 二番手のグループも、やはりなかなかの水準だったが、一番手の子たちと比べると表情が少しこわばっていたり、動きが硬かったり、演技が拙かったりと、やや見劣りするように感じた。 続いて三番手、四番手、五番手とステージが続いていく。 まだ来ない、まだ来ない、まだ来ない。 六番手、七番手、そして── 『ついに最後のグループになりました──ストレイキャット・ブレイバーズの皆さんです、どうぞー!』 出てきた、うちの子たち! ウル、リオ、イリス、メイファの順番で舞台の右手から出てきて、舞台上で横並びになると、四人でぺこりとお辞儀をする。 入場の際には、どよっと観客席がざわめいた。 これまでのグループのときにはなかった反応だ。 四人とも容姿端麗はあるが、ほかのグループの子たちも可愛いので、そこまで目立つほどではない。 問題は衣装だ。 これまでの子たちが着ていた貸し衣装とは、明らかに一線を画する艶やかさ。 しかも一級デザイナーであるリゼルが、うちの子たち専用に作ったオーダーメイド品だ。 各自の魅力を引き立てていることこの上ない。 平たく言って、反則級。 もう見た目の時点で、他のグループとレベルが違いすぎた。 それを作ったリゼルはと見ると── エルフの少女は特設の席から中腰で立ち上がり、よだれを垂らしそうな勢いででれっとしながら、ステージ上の子供たちを見入っていた。 ......あー、うん。 今のは見なかったことにしてあげよう。 あれはエルフの美少女がしていい顔じゃない。 俺は舞台上の子供たちへと注意を戻す。 見た感じ、ウルはがっちがちに緊張しているようだった。 今日にかける想いが強すぎる上に、これだけの観客に注目されるのも初めての経験だろうから、まあ無理もない。 一方でリオ、イリス、メイファの三人は比較的落ち着いている模様。 ほど良く緊張して、ほど良くリラックスしている様子だ。 あいつらは最強新人勇者決定戦で、大観衆の前に立った経験もあるしな。 そんな三人は、観客席をきょろきょろと見回しはじめる。 そして俺を見つけると、笑顔で手を振ってきた。 俺は三人のほうを見て、力強くうなずいてやる。 三人もまたうなずいて、俺から視線を外して観客席全体へと視線を向けた。 舞台奥の楽団が伴奏を始める。 リオがウルの緊張をほぐすように背中を軽く叩くと、自らは前に出て歌い、踊りはじめた。 イリスが、メイファがそれに合わせ、ウルも慌ててついていく。 ──大好きなあの人に 気持ち伝えたい ──それって本当かな 伝えたいけど 伝えたくない ──わたしのハートは ときどきドキドキ はちきれそうで ──しまっておいたら 壊れてしまう 静かなトーンで始まり、徐々に可愛らしさを前面に出した演技をしていくリオ、イリス、メイファの三人。 緊張しているウルをかばうようにして前に出た三人だったが、ウルも演技をしているうちに徐々に硬さがほぐれてくる。 ──だからDONKANなあの人に ──けん制攻撃 叩き込め ──気付いてほしい 気付いてほしくない ──どっちなのか 自分でも分からない キュートな表情と仕草に、可憐な踊り、そして愛らしい歌声で四人は観客を魅了していく。 湧き上がってくる観客席。 俺も観客に混ざってペンライトを振る。 俺の隣の訳知り顔の男が「ほう」とつぶやく。 「最後になって、とんでもないダークホースが来たな。最初は一人緊張していたようだが、ほぐれてみれば熟練の演技でほかの三人を牽引し始めた。ほかの三人も荒いながらに基礎はできているし、ときおり見せる大胆なアレンジ演技も急所を外していない見事なものだ。衣装を見たときには鳴り物入りかと思ったが、なかなかどうして侮れん。それに何より──か、可愛い! これは分からなくなってきたぞ......!」 訳知り顔の男が、カッと目を見開いた。 俺はその隣でほくそ笑む。 そうだろうそうだろう、うちの子たちは可愛いだろう。 お前はなかなか見る目があるな。 そんな中で、教え子たちのステージは佳境に入っていく。 弾けるような笑顔を観客席に向かって振りまきながら、舞台をいっぱいに使って演技をしていく。 ──クライマックスの恋愛成就 それだけが望みじゃない ──今が楽しい それも大事 ──わたしのわがまま 叶えてくれる ──気付きもしないくせに DONKAN☆ ──DENTOU GEINOU ──付かず離れず それも悪くない ──LUCKY SUKEBE ──もっとわたしを ドキドキさせてね☆ そうして、フィニッシュだ。 片手を胸に、片手を前に突き出して、観客席全体を見回す振り付けだったはずだが── ウルの演技は、基本の振り付けどおり。 しかしリオ、イリス、メイファの三人は、最後は完全に俺の方を見つめていた。 ......んん? 俺としては微妙な顔にならざるを得ない。 あいつら、練習ではここを間違えたことはなかったと思うんだが。 しかしあれだ、何度見ても可愛いな三人とも......。 そんな風に見つめられたら、本気で惚れてしまうからやめてくれ。 一方俺の隣では、訳知り顔の男がふるふると震えていた。 「わ、私の方を、見てきただと......!? なんだこの胸の高鳴りは。くっ......長らく忘れていた、こんなドキドキ感を思い出させてくれるとは。──ストレイキャット・ブレイバーズ、これはとてつもない大型新人が来たぞ。是非とも記事にしなければ......!」 お前じゃねぇ俺を見てたんだ寝言言ってんじゃねぇぶち殺すぞ──などと思ったが、どうにか殴り飛ばさずに我慢した俺は偉いと思う。 だがアレだ、やはりアイドルはダメだな。 うちの子たちは可愛すぎて、勘違いする男どもを増やしてしまう。 うん、これは良くない、良くないぞ。 今後アイドル活動は禁止だ。 悪い虫がつかないようにしないとな。 ──そうして、教え子たちのステージは終わった。 審査員たちの協議のあとに結果発表があり、グランプリが発表された。 グランプリは──トゥインクルスターズ。 最初に演技をしたグループだった。 おいおい審査員、見る目がないんじゃないか? うちの子たちが絶対一番可愛かっただろ──などとも思ったが、まあしょうがない。 舞台上では表彰を受けるトゥインクルスターズのメンバーが、みんな嬉し涙を浮かべて感謝の言葉を述べていた。 ......まあ、これでよかったのかもしれないな。 おそらく何年間もずっと頑張ってきたグループが、ようやく努力が報われたということなんだろうから。 それからしばらくして、リオ、イリス、メイファ、ウルの四人が戻ってきた。 「あーっ、優勝逃したーっ! 悔しい~! あんなに頑張って練習したのに~!」 「でも優勝した子たち、歌も踊りもすごくうまかったから、しょうがないかも。私たちよりずーっと長い間練習してきたんだろうなって思ったもん」 「......ふっ、今日のところは、負けを認める。......次に会ったときには、こうはいかない」 「でもうち、すっごく楽しかったっす! みんなと一緒に踊れて、あんなにたくさんの人に見てもらえて、こんなにすごい衣装まで。......幸せすぎて、罰が当たらないか怖いぐらいっす」 「なーに言ってんだよウル。お前これまでずーっと苦労してきたんだろ? ちょっと幸せになったぐらいで罰なんか当たるもんかよ。そんなことする神様がいたら、オレがぶん殴ってやる!」 そんな話をして、わいわいと騒ぎ、楽しそうに笑い合う少女たち。 俺はその子供たちの姿を見て、この場所にたどり着けて、本当に良かったなと思うのであった。 こうして、俺と教え子たちが芸術の都ラヴィルトンで出会った騒動は、満月の夜の下に幕を閉じた。 なお後日の話だが、リット村に帰った俺たちのもとに、ウルから手紙が届いた。 その手紙には、俺たちへの感謝の言葉とともに、こんな事柄が記述されていた。 ドワーフの職人ガルドンとエルフの職人リゼルが組んで「ガルドンブランド」なるものを立ち上げて、注文殺到・予約数年待ちの大人気状態に至っていること。 リオ、イリス、メイファの三人がラヴィルトンの街から颯爽と姿を消したため、業界誌ではストレイキャット・ブレイバーズというアイドルグループが伝説扱いされていること。 あるいは、ウルが件のカッパードラゴンとも仲良くやっていることや、アイドルの道もあきらめずに努力を続けていること。 そして何より、ウルが勇気を出してパン屋の親方に自分の事情をすべて打ち明けた結果、親方や奥さんから抱きしめられて、 俺は夕焼け空の下、勇者学院校舎という名のボロ小屋の前で、手紙をポケットにしまう。 それから訓練を終えた子供たちを連れて、みんなで家路へとついたのだった。

121 Episode 121 (Part 3 Epilogue) After waiting awhile, it was finally the start of the stage. 'Well, thank you for waiting! Firstly, the entry number is the best, four of the Twinkle Stars! Go ahead -! When the lighted stage under the full moon night, the MC seemingly lady with the loud magic apparatus, left the stage, four girls appeared on stage with it replaced. Not the Rio's. But the girls dressed in poor loaned costumes are all pretty good looking. A music team that was in formation behind the stage starts playing at high volume. To match that upbeat performance, the girls on stage sang and began to dance. It's good - I feel it. I feel my eyes are getting fat because I've been watching my kids practice lately, but these kids are pretty good from me. Cheering from the audience. A group that seems to be the parents of the girls starts their support especially flashy. The girls, to it, smile and wave at an undisturbed time of dance, followed by a smile even towards the entire audience. ... You're hardly a pro anymore, is that it? I don't think amateurs are on the level. But naturally, there are people out there who are there for every kid. My kids aren't the only ones special. Every child is trying to be special, carrying their own stories. If the song and dance give me a gradual boost, the pen lights will also start to shake in the audience. ... Shit. I didn't have any backup items for that hand. Properly use the magic of light attributes to support... Thinking so, a seller selling pen lights went through nearby. I paid the seller to buy the pen lights, thinking I was a good businessman. Shake it and somehow start supporting the strange children. And that's when the man with the face who knew he was next to me started crushing things like this. "Hmmm...... the public idol auditions that take place every year, but the Twinkle Stars have taken a step up again. This will be decided at Twinkle Stars this year, unless even a group of super-doo newcomers show up" The man with the translated face nods, yeah. Right, those kids at the top, are they the winning candidates? Reasonably high level. Eventually, the best kids finish their act with great cheer and retreat from the stage. This was followed by a second group. My kids are not here yet. The second group also felt slightly inferior in their expression, stiff movements and awkward acting compared to the first-hand children, although they were still quite standard. This is followed by third, fourth, fifth and stage. Not yet, not yet, not yet. Sixth, seventh, and... "Finally, it's the last group - everyone from Straycat Bravers, go ahead -! Coming out, my kids! When they come out of the right hand side of the stage in the order of Ur, Rio, Iris and Mayfa and are sidelined on stage, the four of them bow with a pepper. Upon admission, the audience seats were deflected. It's a reaction that never existed before in the group. All four have good looks, but the other group's kids are cute, so they're not that noticeable. The problem is costumes. The lent costume worn by the kids so far is clearly a luster that draws a line. Besides, it's a bespoke product made exclusively for our kids by Liselle, a first-class designer. It has never been more attractive to each other. Quite frankly, a transgressor. At the point of appearance already, the levels were too different from those of the other groups. And Liselle, who made it... The elf girl rose from her special seat with her mid waist, and watched the children on stage as she sat still with the momentum that seemed to drool. ... Uh, yeah. I'll let you decide I didn't see that one now. That's not a good face for an elf girl. I turn my attention back to the children on stage. Seeing it, Ur seemed tense and nervous. It would be my first experience to be noticed by this much of an audience on top of the fact that I have too much thoughts to put on today, so well I can't help it. On the other hand, Rio, Illis and Mayfa appear to be relatively calm. The better he gets nervous, the better he relaxes. Those guys are the strongest rookie brave fights, and they have some experience standing in front of the big crowd. The three of them start looking around the audience. And when he found me, he smiled and waved. I'll look at the three of them and give them a powerful nod. The three nodded again, taking their gaze off me and turning their gaze to the entire audience. The orchestra behind the stage begins to accompany you. When Rio gently slapped him on the back to relieve Ur's nervousness, he himself stepped forward and sang and began to dance. Iris, Mayfa goes along with it, and Ur follows in a hurry. - - I want to tell that person I love how I feel. - I don't know if that's true, but I don't want to. - - My heart sounds thrilled sometimes. - - If it stays, it'll break. Starting in a quiet tone, the three of Rio, Iris and Mayfa gradually act with cuteness in the foreground. They were the three who came forward to cover the nervous Ur, but their hardness slowly loosens up while Ur was also acting. - That's why he's a DONKAN. - Knock him out. - I want you to notice. I don't want you to notice. - I don't even know which one it is. With cute expressions and tricks, poor dancing, and adorable singing, the four attract the audience. Audience seats springing up. I mix with the audience and shake the pen light, too. The man next to me with the translator's face snaps. "Last but not least, you've got a hell of a dark hose. At first one seemed nervous, but if I loosened up, I started towing the other three with skilled acting. The other three, while rough, have their foundations, and the bold array of acts that they show from time to time are stunning things that haven't taken the steeple off. When I saw the costume, I thought it was ringing, but how can it be insulting? And most importantly... Oh, sweetie! I don't understand this anymore......! The man with the translated face opened his eyes. I fucking laugh next to it. You bet. You bet, my kids will be cute. You have a pretty good eye. In that, the stage of the godchildren goes into good shape. He uses the stage full to act as he wields a playable smile toward the audience. - - Climax's Love Achievement That's Not All You Want -It's fun now. -It's important. - - It fulfills my selfishness. - - You won't even notice. DONKAN - - DENTOU GEINOU - It's not bad. It's not bad. - - LUCKY SUKEBE - - Make me more thrilled. That's right, it's a finish. It was supposed to be a choreography with one hand in the chest, one hand in front of the other, looking around the entire audience, but... Ur's acting, as basic choreography suggests. But Rio, Illis, and Mayfa were all staring at me at the end of the day. ... hmm? As far as I'm concerned, I have to be subtle. I don't think they ever made a mistake here in practice. But that's it, all three of you are adorable no matter how many times you see it...... If you can stare at me like that, stop because I'm seriously gonna fall in love with you. Meanwhile, next to me, the man with the translation face was shivering as he sifted. "Wow, you've been watching me...!? What is this high chest beep? Damn...... I forgot for a long time, I didn't know it reminded me of such a thrill. - - Straycat Bravers, this is an incredibly big rookie coming. Must be an article......! It wasn't you. You were looking at me. I didn't say anything in my sleep. I thought I'd smash you to death. - But I put up with it without beating you up. I think I'm great. But that's it, you still can't idle. My kids are too cute for more guys to mistake. Yeah, this isn't good, it's not good. Idol activity is prohibited in the future. We need to make sure we don't get bad bugs. - - As such, the stage of the godchildren is over. After the judges' consultation, the results were announced, and the Grand Prix was announced. The Grand Prix is the Twinkle Stars. It was the first group to act. Come on, Judge, don't you have eyes to see? I thought my kids were definitely the cutest - but I can't help it. On stage, members of the award-winning Twinkle Stars were all in tears to say thank you. ... Well, maybe this is a good idea. Because it probably means that the group that has been working so hard for years has finally paid off their efforts. Then a while later, four people came back: Rio, Illis, Mayfa and Ur. "Ah, I missed the win -! I regret it! I practiced so hard!" "But the winning kids, they were so good at singing and dancing, I might not be able to help. I guess I've been practicing for a lot longer than we've been." "... hey, for today, I admit to losing. ... the next time we meet, this is not how it works" "But we had so much fun! I could dance with everyone, see so many people, even such amazing costumes.... too happy to be punished or scared" "What are you talking about, Ur? You've been struggling all this time, haven't you? I don't know if I'm going to be punished for being a little happy. If there was a god who would do that, I'd punch him! Girls who talk like that, squeamish and make noise and laugh at each other for fun. I was so glad to see the kids and get to this place. Thus the uproar between me and my godchildren in the capital of art, Ravilton, closed the curtain under the full moon night. Later, Ur sent a letter to us when we returned to Lit Village. The letter, along with words of gratitude to us, described this matter. That Dwarf craftsmen Gardon and Elf craftsmen Lisel have put together to launch what will be a "Gardon brand" to reach a very popular state of waiting for the order to arrive and be booked for several years. That an idol group called Straycat Bravers is treated as legendary in the industry magazine because three people, Rio, Iris and Mayfa, disappeared from the city of Ravilton in a refreshing way. Alternatively, what Ur is also doing amicably with the Caper Dragon on the matter, or continuing his efforts without giving up his idol path. And most importantly, that Ur had the courage to reveal all his circumstances to the parent of the bakery, so that a werewolf girl could get her place, hugged by her parent and wife. I pocket a letter under the sunset sky in front of a borough shed named Brave Men's College Building. Then we took the children who had finished training and we all went home.

第147話 指輪を填め込んだ石扉の先には、もはや障害はなかった。 アーニャとともに岩山を掘り抜いたような洞窟を進んでいくと、やがて一つの広間にたどり着く。 その広間へは別にもう一本、通路が繋がっていて、そこからリオ、メイファ、イリスの三人と、マリーナ、ついでに引っ立てられたサハギンバロンが現れた。 「お、兄ちゃんだ。やっほー。なんだ、意外と何もなかったな」 「......待って。......ひょっとすると、このお兄さんは、ニセモノかもしれない。......ううん、もしかすると、幻覚かも」 「だったら私に任せて。本物の先生かどうか、確かめる方法がある」 イリスがそう言って、俺のもとにてってと駆け寄ってくる。 イリスは俺の目の前に立って、こちらを見上げてくる。 「先生。本物かどうかを確かめます。まずは私の頭を、いつものようになでなでしてください」 俺は言われた通り、イリスの頭をなでた。 三姉妹の次女は、「えへへっ」とだらしなく頬をゆるめる。 「こ、こほん、合格です。では先生、次は私のことを、その胸にぎゅーっと抱きしめてみてください」 「ん、こうか......?」 俺はイリスの体を両腕で抱き寄せ、そのまま抱き締めた。 少女の顔が俺の胸に埋まる。 一方でイリスは、俺の腰へと腕を回し、こちらのことも抱きしめ返してくる。 俺がイリスを解放すると、俺から離れた白スク水の少女は、リオとメイファのほうへと振り返って、しゃあしゃあと言った。 「本物だね、間違いない。私の頭をなでる優しい手の感触、抱きしめてくる腕の力強さ──それに何より、先生の匂いだもん」 「「ふーん」」 リオとメイファの二人が、ジト目でイリスを見ていた。 まったく、何をやっとるんだか。 まあそれはさておき。 その広間は行き止まりだった。 ほかに進むべき道は見当たらない。 また、それがある必要もない。 なぜならその広間の奥には、どっかりと、目的の箱が安置されていたからだ。 宝箱である。 両腕で抱えて持ち運べるかどうかという大きさの、立派なものだ。 そこに真っ先に駆け寄っていたのは、海賊娘のマリーナだ。 俺と教え子たちがショートコントをやっている間に、宝箱の外側や周辺を慎重に調べていたようだ。 「罠はなさそうだ。鍵もかかってないね。──開けていいかい、ブレットさん?」 俺を含めたほかのメンバーも、宝箱の前まで歩み寄る。 その場の全員が息をのんで見守る中、マリーナが大事そうに、宝箱の蓋を開いた。 『おおーっ......!』 宝箱を覗き込む全員が、感嘆の声をあげる。 宝箱の中には、期待を裏切らないほどの膨大な量の金銀財宝が、ぎっしりと詰まっていた。 また、ほかにも魔道具と思しきいろいろの品々が入っている。 何本かの液体が入った小瓶や、ブーツ、腕輪、ティアラ、巻物、剣や槍などなどだ。 「あはっ、こりゃあすごい財宝だね......! これだけあれば人生十回ぐらいは遊んで暮らせるんじゃないかい? 船のみんなと山分けしたって相当なもんだよ! あははははっ!」 マリーナは黄金の山に目を輝かせながら、その両手で財宝をすくい取り、嬉しさが止まらないという様子ではしゃいでいた。 ううむ......この娘、宝で人生を持ち崩さないといいが。 俺の目は、宝箱の中に入っていた一振りの宝剣へと注がれていた。 俺の【目利き】スキルが、これは相当な業物に違いないと訴えかけている。 鞘に入った宝剣を無造作に手に取ると、すらりと引き抜いてみた。 くもり一つない、銀色に輝く刃が現れる。 剣の長さで見れば、バスタードソード級だ。 小柄なリオが使うには、少し長すぎるようにも思う。 「へぇ......。なんかその剣、兄ちゃんにぴったりな感じがする」 横で見ていたリオが、そんなことを言ってくる。 それにイリスとメイファも同意する。 「私もそう思います、先生。どこをどうとは言えないんですけど......なんか、先生にすごく似合っている気がします」 「......分かる。......ボクもその剣は、お兄さんのための剣だと思う」 うちの三人の天才勇者たちが、揃って予言めいたことを言ってくる。 それに俺自身も、この剣はすごく手に馴染む気がしていた。 下手をすると、これまでずっと愛用してきた剣よりもしっくりくるぐらいだ。 「へぇーっ、じゃあその剣は、ブレットさんの運命の剣なのかもしれないね。そういうゲン担ぎみたいなのは、あたいら海賊は大事にするんだ。その剣はブレットさんが使いなよ。──あと、アーニャはこっちな」 マリーナはそう言って、宝箱の中に入っていた 「えっ、わ、私ですか?」 「そうだよ。アーニャだってこれから、一人前の勇者としてやっていくんだろ? それなりの武器の一振りぐらいは、持っといた方がいいさね」 「そ、そうですね......。あ、ありがとうございます......」 おずおずと頭を下げるアーニャを見て、マリーナはにひっと笑う。 「どういたしまして。──あたいがアーニャの姉貴かどうかは、実際のトコわかんないんだけどさ。でも今の、ちょっとお姉ちゃんっぽくなかった?」 「そうかもですね。......えぇっと、じゃあ私、マリーナさんのことを『お姉ちゃん』って呼んでもいいですか? 実際のところは分からないですけど」 「ん、いいよ。でも海賊がお姉ちゃんでいいのかい?」 「マリーナお姉ちゃんが村を襲う悪い海賊になったら、お姉ちゃんであろうと構わず退治するので大丈夫です♪」 「なぁるほど。そりゃあ怖い妹だね」 マリーナとアーニャの二人は、互いに顔を見合わせて笑った。 宝箱は結局、中の財宝が入ったまま、箱ごと船まで運ぶことにした。 さすがに相当な重さだったが、これだけの数の勇者がいれば運べないこともない。 帰り道で大変なところもあって、具体的には例の吊り橋だったのだが、これもあれやこれやあってどうにか乗り越えた。 ようやく船まで到着すると、宝箱を船に乗せつつ、俺たち六人の勇者も乗船する。 ついでにロープでぐるぐる巻きにしたサハギンバロンもだ。 そして、船を停泊させていた海食洞から出航。 その頃にはもう夜の時間になっていて、海賊船は闇色の大海原を航海することになった。 灯りを焚いた夜の甲板で海を見つめて考え事をしていると、船長のマリーナが俺のもとにやってくる。 「けどブレットさん、どうするんだい? サハギンのやつらにはあたいたちだって迷惑してるから、そこは手伝うけどさ。だとしても百五十を超えるサハギンにサハギンロード付きは、さすがにちょいと厳しいんじゃないかい?」 「まあ、そうなんだよな......」 俺は正直にそう答える。 はっきりとした戦力関係は言い切れないが、おそらくは、やってやれなくはないというレベルだと思う。 ただ前の戦闘では、六十体やそこらを相手に軽度ながら負傷者を出したという戦闘結果だった。 どういう戦闘の流れになるか次第の部分はあるが、次は誰一人欠かさずに勝利できるかというとかなりあやしいし、何かの拍子にガタ崩れすればこちらの全滅すらもありうるかもしれない。 そんな状況にリオたち三人を巻き込みたくはないし、それはマリーナやアーニャに関してももちろん同じだ。 だから俺は、夜の海を見ながら考えていたのだ。 「二つのリスク」を天秤にかけて、どちらのほうがより大きいか──と。 俺の心は決まっていた。 「かもしれない」で言うなら、こちらのほうが明らかにリスクが小さいと思える。 俺は、海賊船の船長に向かってこう伝えた。 「マリーナ、この船の行き先なんだがな──サハギンのアジトに向かう前に、行ってほしい場所があるんだ」

147 Chapter 147 There were no more obstacles ahead of the stone doors filled with rings. As you go through the caves that have dug through the rocky mountains with Argna, you will eventually reach one hall. Apart from the hall, there was another passageway, from which three people emerged: Rio, Mayfa, and England, and Marina, and finally Sahagimbalon. "Oh, brother. Whoo. What, nothing surprised me." "... wait.... after all, this oniisan might be a fake.... yeah, maybe hallucinations." "Then leave it to me. There's a way to find out if you're a real teacher." That's what Iris said, and he came running to me. Iris stood in front of me and looked up at me. "Sensei, I'll see if it's real. First of all, please put my head like usual." As I was told, I licked England's head. The second daughter of the three sisters relaxed her cheeks without saying "eheheheheheh". "Koh, koh, you passed. Now, Sensei, please hold me in your chest." "Nh, like this...? I hugged the body of England with my arms and held it. The girl's face is buried in my chest. On the other hand, Iris turns his arm around my hips and hugs me back. When I let England go, the white squirt girl away from me turned to Rio and Mayfa and said, "Happy birthday." "It's real, I'm sure. The feeling of a gentle hand holding my head, the strength of the arms I hold - - and above all, the smell of the teacher." Hmm. Rio and Mayfa were watching England with their own eyes. What the hell are you doing? Not to mention that. The hall was a dead end. There is no other way forward. Also, there is no need for it. Because in the back of the hall, there was always a box of purpose. It's a chest. It's a magnificent thing to hold and carry with both arms. The pirate daughter Marina was the first to rush there. While I was doing my shortcuts with my schoolchildren, I looked carefully around and outside the chest. "I don't think it's a trap. It's unlocked. - - Can I open it, Mr. Brett? Other members, including me, walk to the front of the chest. The marina opened the chest lid with care as everyone breathed. Oooh......! Everyone who peeks into the treasure chest shouts with admiration. Inside the treasure chest, there was an enormous amount of gold and silver treasure that did not betray expectations. In addition, there are various other items that I think are magical equipment. Some liquid vials, boots, bracelets, tears, scrolls, swords and spears. "Ahah, what a treasure...! Isn't this the only way you can play and live about ten times in your life? It's pretty much like we split it up with the whole ship! Ahahaha! Marina glanced at the golden mountain and took the treasure with her hands, happiness continued. Hmm... I hope this girl doesn't lose her life with treasure. My eyes were poured into the treasure chest with a wave of swords. My [eye-catching] skills are complaining that this must be quite a business. When I grabbed the treasure sword in my sheath in my hands, I quickly pulled it out. A shiny silver blade appears. By the length of the sword, it's bastard sword-class. I think it's a little too long for a little Rio to use. "Heh... This sword feels perfect for your brother." Rio, who was watching on the side, said something like that. I also agree with Iris and Mayfa. "I agree, Doctor. I can't tell you where it is... but I think it looks really good on you." "... I understand.... I think that sword is for oniisan." Three of our genius heroes come together to tell us what they prophesied. Besides, I myself felt that this sword was very familiar with my hands. If I succeed, it will be more pleasant than the sword I have always loved. "Heeh, then maybe that sword is Mr. Brett's destiny sword. Pirates take care of that kind of stuff. That sword belongs to Mr. Brett. - - And Argna is this way." Marina said so and took the three spears (Tridents) that were in the treasure chest and threw them at Argna. "Eh, it's me? "That's right. Argna's going to be a brave man, right? You'd better keep your weapon for a swing." "That's right... Ah, thank you...." Seeing Argna bowing her head, Marina smiled. "You're welcome. - - I don't really know if it's Argna's sister. But didn't you look like a little sister just now? "I guess so.... eh, can I call Marina" oneechan "? I don't really know." "Nh, that's fine. But is it okay for the pirate to be your sister? "Marina, if oneechan becomes a bad pirate attacking the village, it's okay because I'll kill oneechan, no matter what " "I see. That's my scary little sister." Marina and Argna looked at each other and laughed. After all, I decided to carry the chests to the ship with the treasure inside. It was quite a weight, but with this many brave men, we can't carry it. There were some tough spots on the way home, specifically the suspension bridge, but I managed to get over it and this and this. When we finally arrive at the ship, we will carry the treasure chest aboard, as will our six brave men. And the sahagimbalon wrapped around with a rope. Then sailed through the seafood cave where the ship was anchored. By that time, it was already nighttime, and the pirate ships sailed the dark sea. The Captain's marina comes to me as I stare at the sea on the deck the night the lights burn. "But, Mr. Brett, what are you going to do? They're annoying to the Sahagins, so I'll help them out. Even so, over 150 Sahagins with Sahagine Road are a bit harsh, aren't they? "Well, that's right...." That's what I answer honestly. I can't say for sure what the power relationship is, but I think it's probably at a level where we can't do it. However, in the previous battle, it was the result of a battle in which 60 people and their opponents were slightly injured. It depends on what kind of battle flow it will be, but next time it is quite easy to say who can win without losing one, and if it falls apart with some kind of applause, there may even be our total annihilation. I don't want to involve the three of us in this situation, and that's the same with Marina and Argna, of course. That's why I was looking at the ocean at night. "Two Risks" on the balance, which is greater - -. My mind was set. If you say "maybe," I think this one is clearly less risky. I told the pirate captain: "Marina, this ship is going somewhere, but I need you to go before we head to Sahagi's Azito."

第81話 ヴァンパイアが潜むと思しき古城の門の前。 メイファは鉄柵型の門扉に向かって、懸命に魔法を行使していた。 「......右手から【 広げた両手の周囲に生み出した、左右五つずつの火炎弾をコントロールし、それぞれまとめて二つの炎の塊をつくる。 魔力操作が恐ろしく器用なメイファのこと。 まだチャレンジを初めて間もないというのに、ここまでは問題なく成功してみせる。 問題はここからだ。 「......さらに、結合。......それから、これを弓矢に......うあっ......!」 メイファの両手から、炎が弾けて霧散した。 一つにまとまった炎の塊は、弓矢の形にする過程で潰えてしまった。 小さな天才は、それでばったりと地面に倒れてしまう。 「......はあっ、はあっ、はあっ......。......し、しんどい......」 メイファが【 最初と比べるとだんだんコツをつかんできたようにも見えるが、かなりの量の魔力を消耗するようで、とても苦しそうだ。 「ほっほっ。メイファ嬢ちゃん、今日のところはそのぐらいにしておくかの?」 倒れたメイファを覗き込むように、“魔帝”マヌエルが彼女の前に立つ。 だがメイファは首を横に振った。 「......お爺さん、さっき言ってた魔力を回復する薬、ちょうだい」 「いいとも。じゃが、こいつは高いぞ」 マヌエルは自分の荷物入れから一本のポーションの瓶を持ってきて、メイファに渡した。 メイファはそれを受け取ると、やっとの様子で上半身を起こし、グイッと飲み干す。 「......構わない。......今は少しでも、戦力が必要。......続ける。......ボクのやり方、どこが悪い?」 「見かけによらず、負けん気の強い嬢ちゃんじゃ。言うてだいたいできておるわい。あとはの、もうちっと最後の変形のときに左手側の制御を強めてじゃな......」 マヌエルはメイファに指導をする。 メイファはもう一度立ち上がり、再挑戦を試みていった。 ......メイファがこれほど頑張っている姿はあまり見ないので、俺としては少し胸を打たれるものがあった。 基本的にメイファは怠け者だ。 トレーニングはちょいちょいサボろうとするし、それどころかサボるためにはあの手この手を使ってくるのが日常だ。 しかし本人の気分が乗ったときの熱の入り方は、ほかの二人の比ではない。 俺もメイファが、俺に見えないところで頑張っているのには気付いていた。 「......はあっ、はあっ......! ......もうちょっと、なのに......!」 六回目の挑戦に失敗したメイファは、そう言って悔しそうにしながら、ちらりと俺のほうを見てくる。 そして少し恥ずかしそうに頬を染めて、こんなことをつぶやく。 「......お兄さんには、こんな無様な姿は見せたくなかった。......でも、背に腹は代えられない。......セシリアお姉さんは、ボクたちの力で、絶対に助け出す」 そしてまた挑戦だ。 どうもメイファは、自分が泥臭い努力している姿を俺に見せたくないらしいが......あいつの考えていることはよく分からないな。 いやでも、俺も教え子たちに見えないところで早朝トレーニングしていたりするのも、似たようなものではあるのか。 別に隠す必要もないんだが、成果が出る見込みもない泥臭い頑張りをわざわざ見せつけるのは、なんか違う気がしてな......。 まあ俺のことはともあれ、メイファがここで努力をするのは、勝算あってのことだ。 マヌエルの爺さんも、メイファならやれると見込んで無茶ぶりをしたのだろう。 それが証拠に、挑戦九回目には── メイファが作った炎の弓から射出された矢は、放たれるなり火の鳥へと姿を変え、古城の門扉に向かって炸裂した。 ──ドォオオオオオオンッ! 鉄柵型の扉はドロドロに溶け、その中央部には人がゆうに通れるほどの大穴ができあがっていた。 ......いや、驚いた。 メイファならやるような気はしていたが、本当にやってしまった。 「......やった......! ......お兄さん、ねぇ見てた、今の......! ......ボク、すごい......!」 喜色満面のメイファが、俺のもとに駆け寄ってくる。 そしていかにも褒めてほしそうな目で俺を見上げてきた。 俺はそんなメイファが愛おしくて、頭をなでなでしてから、その体をぎゅっと抱きしめた。 「ああ、メイファ、すごいぞ! よく頑張ったな!」 「......うあっ......ふわぁああああっ......! ......お、お兄さん......ちょっと、激しい......!」 「おっと、悪い。強く抱きすぎたか?」 「......ううん。......ちょっと、驚いただけ。......むしろもっと、激しくしてくれてもいい」 どこか教師と教え子の会話としては不穏当な気がしないでもなかったが、まあきっと気のせいだろう。 ちなみにこんなところで悠長にトレーニングしていてよかったのかと言うと、どちらにせよ俺たちが来ていることはヴァンパイアウルフの遠吠えの時点でバレているだろうし、だったらちょっとぐらい時間を使ったって変わりはしない、むしろ戦力アップを狙ったほうがいいだろうという判断だった。 「大したもんじゃの、嬢ちゃん。これはサービスじゃ。飲んどくといい」 “魔帝”マヌエルは、魔力回復のポーションをもう一本取り出してメイファに投げ渡す。 メイファはそれを受け取ると、またぐいっと飲み干した。 「......ふぅっ。......ありがとう、お爺さん」 手で口元を拭う仕草がちょっと男前。 今のメイファさん、少しカッコイイ。 それにしても、カッコイイし可愛いとか、うちの娘たちは最強なんじゃないだろうか。 ある意味ですでに世界最強。 それはそうと、マヌエルさんが出してきたあの魔力回復のポーション、めちゃくちゃ貴重品のはずなんだけどな......。 消耗品のくせに一本で俺の月給が吹き飛ぶぐらいの市場取引価格だったはず。 魔王ハンター業をやっていれば、危険な代わりに比較的サクサク稼げるとはいえ、である。 さすがに世界最強クラスの勇者ともなると、金の使い方も派手だな......。 「よし、済んだならば行くぞ。これだけ派手に騒いだんだ。出迎えぐらいはあるだろう」 “武神”オズワルドが、メイファの【 そのあとを、“魔帝”マヌエル、それに俺、リオ、イリス、メイファの五人が追った。 中庭を縦断していくと、やがて居館の前にたどり着く。 今度立ちふさがったのは、両開きの大扉だ。 「これは【 “魔帝”マヌエルが魔法を行使し、その右手で扉を触れる。 すると、ゴゴゴゴッと音を立てて、大扉は開いていった。 大扉の向こう側にあったのは、居館一階の大ホールだ。 日の光が入り口から斜めに挿し込んだホールへと、俺たちは足を踏み入れていく。 そのホールの奥には、客人を出迎える姿があった。 暗がりの中に、赤く光る目がたくさん──十体分ぐらいあるだろうか。 いずれもヴァンパイアスポーンだろう。 そしてスポーンたちを従えるように前に立つのは、深紅の裏地の黒マントに身を包んだ一人の優男。 優男──真なるヴァンパイアの一人は、鋭い牙をむき出しにして笑う。 「我らが主の居館へようこそ、無力なる人間の勇者たちよ。──だが蛮勇は身を亡ぼすものだ。我がそれを教えて差し上げよう。......分かるかね諸君? ここが貴様らの墓場とな──」 「ギャアアアアアアッ!」 口上の途中でメイファが放った魔法が、ヴァンパイアの身を焼いた。 ヴァンパイアの体がメラメラと燃え上がり、次いでぶすぶすと白煙をあげてばたりと倒れる。 なんてひどいことを......。 まだ喋っている途中だったというのに。 「お、おい、メイファ......」 「......しまった。......ボクとしたことが、様式美を破ってしまった。......あまりにも中身のない無駄話だったから、つい」 一方、それを見たヴァンパイアスポーンたちが、奇声をあげつつ一斉に襲い掛かってくる。 なんか緊張感がないが、ぼーっとしていても仕方がないので撃退しよう。 リオやイリス、それに“武神”オズワルドなどが次々に武器を構えるのを横目にしつつ、俺も腰の鞘から剣を引き抜いた。

81 Lesson 81 I thought vampires would lurk in front of the gates of the ancient castle. Mayfa was diligently exercising her magic towards the iron-fenced portal. "... from your right hand [Fire Arrow (Firebolt)], and from your left hand [Firebolt (Firebolt)].... this, join...! Control the left and right five flame bullets, each collectively creating two flame chunks, created around the spread hands. I mean Mayfa, who is terribly clever at magic manipulation. Even though it hasn't been long since I first took the challenge, I'll try to succeed so far with no problems. The problem starts here. "... additionally, bonding.... then put this on the bow and arrow... Ugh...! From Mayfa's hands, the flames bounced and misted. The lump of flame that came together in one fell apart in the process of shaping the bow and arrow. Little genius just falls to the ground with it. "... Ha, ha, ha... ... and dull..." This is the fifth time Mayfa has failed to build the [Undead Arrow (Phoenix Arrow)]. It also seems to be getting the hang of it more and more compared to the beginning, but it seems to drain a considerable amount of magic and looks very painful. "Here. Miss Mayfa, will you keep that for today? "Demon Emperor" Manuel stands before her as she peeks into the fallen Mayfa. But Mayfa shook her head to the side. "... Grandpa, give me the medicine I was telling you about to restore my magic." "Fine. But this guy's expensive." Manuel brought a bottle of potion from his luggage compartment and gave it to Mayfa. When Mayfa receives it, she finally wakes up her torso and drinks it up glitchy. "... I don't mind.... now at all, we need the power of war. ... Continue.... my way, what's wrong? "It doesn't look like it, you're a loser lady. You can tell me. Wow. And then when the last deformation happens, strengthen the control on the left hand side..." Manuel mentors Mayfa. Mayfa rose again and tried again. ... I don't really see Mayfa working this hard, so as far as I'm concerned, I had something that hit me a little in the chest. Basically Mayfa is lazy. Training tries to skip a bit, and on the contrary, it's routine to use those hands to skip. But the way the fever enters when the person feels on board is not the ratio of the other two. I also noticed that Mayfa was working hard where I didn't see her. "... Ha, ha...!... some more, and yet...! Failing his sixth challenge, Mayfa looks at me all the time, regretting saying so. And dye your cheeks a little shy and crush this thing. "... I didn't want your brother to look like this.... but I can't replace my belly on my back.... Cecilia, your sister, with our help, will definitely help." And it's another challenge. Hi Mayfa, they don't want me to look like I'm making a muddy effort... but I'm not sure what he's thinking. No, but is it similar that I train early in the morning where I don't look like my godchildren, either? I don't need to hide anything, but I don't think it's any different to bother showing off your muddy hard work with no prospect of achieving results... Well, whatever it is about me, Mayfa's hard work here is about winning. Manuel's grandfather must have been impotent too, expecting Mayfa to be able to do it. That's the proof that, for the ninth time, The arrows ejected from the bow of flames made by Mayfa turned into birds of fire when they were ejected and burst towards the gates of the ancient castle. - - Do-o-o-o-o-o-o-o-o-o-o! The iron fence-shaped door dissolved in the drool, and in its centre there was enough large hole to allow a person to pass loosely. ... No, I'm surprised. I felt like Mayfa would do it, but I really did. "... Yay...!... brother, hey i was watching, now...!... Me, wow...! A delightful Mayfa rushes up to me. And he looked up at me with what a compliment he seemed to want. I was so fond of Mayfa, I held her body in my arms. "Oh Mayfa, that's amazing! Good luck with that! "... uhhhhhhhhhhhh...!... Oh, brother... hey, intense...! "Oops, bad. Did you hold him too hard? "... yeah.... Hey, I'm just surprised.... you can make it more, more intense" I didn't feel uncomfortable as a teacher-teacher conversation somewhere, but I'm sure it's my fault. By the way, if you're glad you've been training so long here, either way, what we're coming for would be found out at the time of the Vampire Wolf howl, and then it wouldn't make a difference if you spent a little bit of time on it, it was a decision you'd rather be after to increase your strength. "It's a big deal, miss. This is a service. Drink up." "Demon Emperor" Manuel takes out another potion of magic restoration and throws it to Mayfa. Mayfa drank a lot more when she received it. "... Huh.... Thanks, Grandpa" A bit of a manly trick to wipe your mouth with your hands. Now, Mr. Mayfa, it's a little cool. Still, aren't our daughters the strongest, like cool and cute? Already the strongest in the world in a way. That's right, that magic restoration potion Mr. Manuel has been putting out, it's supposed to be so precious... It should have been a market price that would have blown my monthly salary off with a single bottle of consumables. Though if you do the Demon King Hunter business, you can make relatively crisp money instead of dangerous. Exactly when you become the most powerful brave man in the world, the use of gold is flashy too...... "All right, if it's done, we're on our way. This is all flashy noise. There 'll be about a welcome." Oswald, the "martial god", knocks through the big hole in the gate opened by Mayfa's [Arrow of the Undead (Phoenix Arrow)] and steps into the ancient castle grounds without creation. After that, Manuel the Demon Emperor, and me, Rio, Illis and Mayfa, followed him. As we go longitudinally through the courtyard, we eventually reach in front of the inn. The next time I get stuck, it's both open doors. "This is the magic of [unlocking (unlocking)]. Yeah. Whoops." "Demon Emperor" Manuel exercises his magic and touches the door with his right hand. Then he made a loud noise and the main door opened. On the other side of the main door was the main hall on the first floor of the inn. We step into the hall with the light of day inserted diagonally through the entrance. Behind the hall, there was an appearance of welcoming guests. Do you have enough red eyes in the dark? All would be vampire spawns. And standing in front so you can follow the Spawns is one honorable man dressed in a black cloak with a deep red lining. Young man - one of the true vampires chuckles with his sharp fangs out. "Welcome to the residence of our Lord, you powerless human braves. -But barbaric courage is a loss. Let me teach you that. Do you understand that, gentlemen? This is your graveyard." "Gaaaaaaaa!" The magic unleashed by Mayfa halfway through his mouth burned himself a vampire. The vampire's body burns up with a melamera, and then if you blur it, you give him white smoke, and he falls. What a terrible thing... He said he was still on his way to talking. "Oh, hey, Mayfa..." "... Shit.... my mess broke my style beauty.... because it was a waste of money with too little content," Meanwhile, the vampire spawns who saw it strike at me in unison with an odd voice. I'm not nervous about anything, but I can't help being confused, so let's repel it. I pulled my sword out of the sheath of my hips as Rio and Ilis, and Oswald, the "god of martial arts", laid down one weapon after another.

第21話 その後俺たちは、オークロードが発見されたという洞窟へと向かった。 村を出て、森の木々の間をトーマスに案内されて歩いていく。 その道すがら、俺はオークというモンスターへの基本的な対応法について、教え子たちにレクチャーをしていった。 「さて、これから戦うオークだが──こいつはパワーとタフネスが自慢の、近接攻撃型のモンスターだ。その代わりに、動きはかなり鈍い。リオたちの敏捷性なら、よく見ていけば攻撃はまず回避できるはずだ。ただし複数のオークに囲まれたら危険だから、それは極力避けること。いいな?」 「「「はーい」」」 三人から元気のいい返事が返ってくる。 うーん、可愛いなぁ本当。 俺はさらに、教え子たちに聞いていく。 「戦闘での注意点は今言ったとおりだが──もっと一般的な知識として、オークがどんなモンスターか知ってるやつはいるか?」 そう聞くと、メイファが挙手をした。 俺が指名すると、メイファはこくんとうなずいて答える。 「......オークは人型のモンスター。......大きくて、太ってて、顔が豚に似ていて、肌は緑色。大きな棍棒を振り回して攻撃してくる」 「ん、正解だ。よくできました」 俺はメイファの頭をなでてやる。 メイファが少し嬉しそうな顔をした。 また、それで得意になったのか、メイファはさらに説明を続ける。 「......オークの種族的特徴は、その性欲の強さにある。......オークは異種族の女性を襲って子供を産ませる。......下半身の棍棒の攻撃力も絶大、それを叩き込まれた女性は耐えられな──痛いっ」 俺はメイファの頭にチョップした。 メイファは涙目で、頭をさすりながら恨みがましそうに俺を見てくる。 「......ひどい。......お兄さんが、説明しろって言ったのに」 「メイファみたいな可愛らしい子が、そんなお下品なことを口にしちゃいけません! パパは許しませんよ! ──だいたいお前、そんな知識どこで仕入れてきたんだよ」 「......母親が持っていた、エッチな本」 「お、おう、そうか」 ......すでにこの世にいない人の悪口を言うのもあれだが──こいつらの母親、思っていた以上にヤバいな。 いや仮に性癖だったとしても、オークに(ピーッ)されるエロ本なんて、子供の目に触れる場所に置いとくなよ。 とかまあ、そんな話はいいとして。 しばらく歩いていくと、やがて俺たちは、オークロードの根城と思しき洞窟が見える場所までやってきた。 「本当に、ここまででいいんでしょうか? やはり私も一緒に戦ったほうが......」 案内役のトーマスがそう聞いてくる。 イリスの魔法で傷が癒えたトーマスは、自分もオークロードの討伐に参加すると言ってきたのだが── 「いえ、先にも言ったとおり、こいつらに経験を積ませたいんで。それに保護者としては俺が付いているから大丈夫です」 「分かりました。たしかにブレットさんのような凄腕の勇者がついていれば、心配はないですね。──ではすみませんが、私はここまでで。よろしくお願いします」 トーマスはそう言って俺に頭を下げると、村のほうへと立ち去っていった。 ──よし、それじゃあ始めるか。 俺は三人の教え子を手招きする。 そして俺のもとに集まった教え子たち、一人ひとりに目を合わせて言った。 「さて、それじゃあ本番だ。リオ、イリス、メイファ──三人とも準備は良いか」 「うん、兄ちゃん」 「はい、先生」 「......少しドキドキはしてるけど、大丈夫、やれる」 俺に向かって、真っすぐな眼差しを返してくる教え子たち、 よし、いいコンディションだな。 それを確認した俺は、オークロードの洞窟へと視線を向けた。 俺たちが今いる場所は、洞窟から少し離れた場所にある森の中だ。 現在俺たちは太い木の幹の後ろに隠れていて、少し身を乗り出せば洞窟の入り口が見える位置にいる。 ただしそれをすると、向こうからもこちらの姿が捕捉されてしまう危険性がある。 ちなみに「向こう」というのは、洞窟の入り口の前に立っている一体の見張りオークのことだ。 でっぷりとした緑色の巨体が、大きな棍棒を持って洞窟前に立っている。 今のところ、こちらに気付いている様子はない。 「──よし、お前たち。あそこにオークの見張りが立っているのは、分かっているな?」 俺がそう聞くと、三人はみんな無言でうなずく。 それを確認して、俺は三人に課題を出した。 「じゃあ三人で、あれを倒す方法を考えてみろ。決まったら俺に教えてくれ」 教え子たちは、こくりとうなずいた。 それから三人は、ああだこうだと戦い方の議論を始めた。 ──ただ実際のところ、選択肢はさほど多くない。 三人ともできることはかなり限られていて、この状況下なら正解と呼べる戦術はわりと明白だし、彼女たちならそこにたどり着くのは簡単だろう。 メイファは何やら搦め手の提案もしていたようだが、それは確実性の点で正攻法に劣るという結論で、最終的に意見が一致したようだった。 戦い方が決まったようだ。 リオが代表して、俺に伝えにくる。 「よし、決まったみたいだな。教えてくれ」 「うん。すっげぇシンプルなんだけど──まずイリスの弓と、メイファの【 少し不安そうな、テストの採点を待つかのようなリオたちの表情。 俺の考えは── ──まあ、それが順当だろうなと思った。 各自の最も得意な攻撃方法で、集中攻撃を仕掛けて倒す。 基本的にはそれが正解といっていいだろう。 ただ実戦では、選択した戦術が正解かどうかに固執しすぎると、痛い目に遭いかねない。 というのは、結果がすべてだからだ。 仮に決行前の段階で見えている情報の範囲内で正解の戦術を選んでも、その後に起こった何らかのアクシデントでガタ崩れするということは十分にありうる。 俺はそう考え、三人にこう伝えた。 「よし、それでうまくいくかどうか、実際にやってみろ」 俺がそう言うと、三人はサッと緊張した面持ちになった。 自分たちの考えが正解かどうかを、採点してもらえると思っていたのだろう。 ......が、それだけだとコミュニケーションエラーになりそうだったので、さらに俺は、自分の考えを三人に話して聞かせた。 俺は三人の決めた戦術が適確だと思ったこと、ただ俺という一人の教師の見解は絶対の正解ではないこと、正解を選ぶことよりも結果を意識してほしいということ── それを聞いた三人は、まだうまく呑み込めないようだったが、少なくとも俺が意地悪をしているわけでないことだけは理解してもらえたようだった。 口をへの字にして複雑そうな顔をしたメイファが、ぽつりとこんなことをつぶやく。 「......お兄さんは、ダメなロリコンのお兄さんなのか、すごくしっかりした先生なのか、ときどきよく分からない」 「ははっ、バーカ。そんなの俺にも分かんねぇよ」 俺はメイファの頭をうりうりとなでると、次にその少女の体をがばっと抱きしめた。 「やーめーろー」と言ってジタバタするメイファを、可愛いなぁ可愛いなぁと思って抱きしめていると、そんな俺の脛をリオが軽く蹴っ飛ばしてきた。 「......兄ちゃん、メイファばっか可愛がりすぎ。......そこはオレの居場所だし」 拗ねたような素振りのリオが、頬を赤く染めてそっぽを向いていた。 ......おや?

21 Lesson 21 Then we headed to the cave where Oak Road was found. Leaving the village, Thomas guides me through the woods to walk. Along the way, I lectured my godchildren on the basic way to deal with a monster called Oak. "Well, the orc we're going to fight for - this is a melee monster that prides itself on power and toughness. Instead, the movement is pretty dull. With Rio's agility, if you look closely, the attack should be avoided first. However, if you are surrounded by multiple oaks, it is dangerous, so avoid it as much as possible. All right?" "" "Yes" " I get a good reply from the three of us. Um, she's cute. True. I'm going to ask my godchildren. "As I've just said, the caveats in battle - as a more general knowledge, do any of you know what kind of monster Orcs are? When I heard that, Mayfa raised her hand. When I nominate him, Mayfa nods and answers. "... Orcs are monsters of human shapes.... big, fat, face looks like a pig, skin is green. He's gonna swing a big stick and attack me." "Mm, you're right. Well done." I'll take Mayfa's head. Mayfa looked a little happy. Also, Mayfa goes on to explain further if that's what you've become good at. "... the racist character of the oak lies in the strength of its lust.... Orcs attack heterogeneous women to have children. ... the attacking power of the stick in the lower body is also immense, and the woman who was slapped into it is unbearable - it hurts." I chopped on Mayfa's head. Mayfa had tears in her eyes, and she looked at me like she had a grudge as she rubbed her head. "... terrible.... Your brother told me to explain." "Cute kids like Mayfa shouldn't say such nasty things! Dad won't forgive me! - By and large, you, where did you get that knowledge?" "... mother had, an eclectic book" "Oh, well." ... some bad words about people who aren't already in the world - these mothers, they suck worse than I thought. No, even if it was sexuality, don't leave a porn book that gets (peeped) by an orc in a place that touches a child's eyes. Like, well, I don't mind talking about that. After a short walk, we eventually arrived where we could see Oak Road's Negijo and the Cave of Thought. "Really, is that enough? Again, I'd better fight with you too..." That's what Thomas, the guide, asks. Thomas, whose wounds were healed by the magic of England, said he would join the Oak Road crusade. "No, as I said earlier, I want these guys to have some experience. And as a guardian, it's okay because I'm attached." "Okay. If you do have an awesome brave man like Mr. Brett on you, you don't have to worry. - Excuse me, but that's it for me. Best regards," Thomas said so and bowed his head to me, walking away to the village. - Okay, let's get started. I invite my three godchildren. And the godchildren gathered at me, I said to each and every one of them, eyes to eye. "Well, then it's the real deal. Rio, Illis, Mayfa... are you all ready?" "Yeah, brother" "Yes, Doctor" "... I'm a little thrilled, but okay, I can do it" Teachers turning to me and giving me a straight eye back, All right, that's in good condition. Confirming that, I turned my gaze to the cave on Oak Road. Where we are now is in the woods a little further from the cave. We're currently hiding behind a thick tree trunk, and if we get a little bit out, we're in position to see the entrance to the cave. However, if you do that, there is a risk that this figure will be captured from the other side. "Beyond", by the way, is the whole lookout oak standing in front of the entrance to the cave. A plentiful green giant stands in front of the cave with a large stick. So far, nothing seems to be noticing this one. "- Okay, you guys. You know there's an oak watch over there, right? When I hear that, all three nod silently. Confirming that, I gave the three of them an assignment. "Then the three of us, figure out a way to take that one down. Let me know when you decide." The godchildren nodded coldly. Then the three of them started arguing about how to fight. - - As a matter of fact, there aren't as many options. There are quite a few things the three of us can do, and the tactics that can be called the right answer under these circumstances are obvious, and it would be easy for them to get there. Mayfa also seemed to have made some sort of suggestion, but it seemed that there was eventual agreement on the conclusion that it was inferior to the positive approach in terms of certainty. Looks like we've decided how to fight. On behalf of Rio, he'll tell me. "Okay, looks like you've made up your mind. Tell me." "Yeah. It's amazingly simple, but - first, I'm going to launch a remote attack with an Iris bow and Mayfa's [Firebolt]. In the meantime, I go in and stab Todome in the melee. - So what do you say, brother...? A little anxious, the look on the faces of the Rio's as if waiting to grade the test. My thoughts are... - - Well, I thought that would be appropriate. Use your best attack methods to mount a focused attack and defeat them. Basically, that would be the right answer. However, in real life, it can hurt to be too adamant about whether the tactics you choose are the right ones. That's because the result is everything. Even if you choose the correct tactic within the range of information you are seeing at the pre-decisional stage, it can be enough that it will rattle off in some sort of incident that happened afterwards. That's what I thought and I told the three of them. "All right, let's see if that works, actually." When I said that, the three of them turned out to be sassy nervous. I guess they thought they could score us to see if our thoughts were right. ... but that was going to be a communication error, so I told the three of them what I was thinking. The fact that I thought the tactics of the three of us were appropriate, that the view of one teacher, me, was not absolutely correct, that I wanted you to be more aware of the consequences than of choosing the right answers-- The three of us who heard that still didn't seem to swallow well, but at least they seemed to understand that I wasn't being mean. Mayfa, with her mouth as a letter to her and a seemingly complicated face, snuffs up on this stuff. "... your brother is sometimes unsure if he is a bad Loricon brother or a very solid teacher" "Ha, baka. I don't even know that." When I held Mayfa's head in my arms, the next thing I knew, I embraced the girl's body. Rio kicked my tibia like that lightly as I hugged Mayfa, who said "Yame-ro" and jiggled, thinking she was cute and cute. "... brother, Mayfa is just too cute.... That's where I am." A stubborn, barebacked Rio dyed his cheeks red and pointed at him. ... Oh?

第128話 じりじりと太陽が照りつける海辺の砂浜を、俺はリオに手を引かれて歩いていく。 午前中の早い時間なので、日射しのピークはまだまだ先だが、それでも日向にいれば何もしていなくても汗ばむほどの暑さだ。 「兄ちゃん、ほら早く早く!」 だがリオは、そんなことはお構いなしという様子で、俺のことを急かしてくる。 リオの勢いに引っ張られて、俺も少し駆け足になってしまう。 それにしてもリオ、まるでパパと一緒に遊びたい盛りの子供のようだ。 幼少期に本当の父親との触れ合いが少なかったのかもしれない。 そう思えば、今日ぐらいは俺が父親代わりになって思いっ切り甘えさせてやってもいいかもな、などと思ったのだが──すぐに方針転換。 リオがそのまま海に向かって駆け込んでいこうとするので、俺は慌てて引き止めた。 「いや、待てってリオ」 「うわっ......! おっとっとっ......!?」 だがリオを止めようとする際、少し強く引っ張り過ぎてしまったようだ。 勢いがあだとなったリオの体が、逆に俺のほうにつんのめってくる。 俺は慌ててそれを抱きとめた。 「っと、悪いリオ。力が入り過ぎたみたいだ」 「......な、なんだよ兄ちゃん。いきなり大胆だなぁ......」 リオは俺の腕の中で頬を真っ赤に染め、恥ずかしそうに視線を逸らす。 俺と手をつないだリオの手が、もぞっと指を動かし、俺の手に絡んできた。 ......いや待て、どうしてこうなった。 俺は慌ててリオの肩をつかんで、教え子を引きはがす。 「すまん、今のは俺が悪かった、謝る。でもリオ、海に入る前に準備運動はしないとダメだ。自分が勇者だと思って油断をしていると思わぬ怪我をするぞ」 「あー......そういえば兄ちゃんって、先生だったね」 一転して、呆れたような顔で言うリオ。 そういえばって、今まで何だと思っていたんだ。 ともあれそんなわけで、俺とリオだけでなく、イリスとメイファ、それにアルマとセシリアも一緒になって、全員で準備体操を行った。 イチ、ニ、サン、シ......。 だが周囲の人々は、そんな俺たちの姿をどこか珍しいものでも見るように横目にしながら、準備運動をした様子もなく海へと入っていく。 それを見た俺は、体を捻りながら、ついボヤいてしまう。 「......まったく、どいつもこいつも。準備運動の大切さが、まるで分かっちゃいないんだよな。勇者でなくとも、初等教育でひと通りは教わるはずなんだが」 「あはは......ブレット先生のそういう空気を読まない真面目さ、あたしは嫌いじゃないけどね」 アルマが体を斜めに倒しつつ、そう言って苦笑する。 そして教え子たちも── 「ま、兄ちゃんがときどきダサいのは、今に始まったことでもねぇし」 「ちょっ、ちょっとリオ! そんな言い方......!」 「......イリス、ボクたちも反抗したい年頃だから、しょうがない」 などと言いながらも各々に、前屈や後屈などを行っていた。 まったく、言いたい放題だな。 なおセシリアは、自分も準備体操をするふりをしながら、子供たちが胸を逸らせたりするのをチラチラと盗み見していたので、俺は無造作に近付いていって鼻をつまむ折檻をした。 セシリアは涙目になって「痛ふぁい痛ふぁい! ごめんなひゃい、ごひゅ人様ぁっ......!」などと叫ぶので、周囲の目がまた無駄に俺たちに注目する羽目になった。 ......セシリアを連れてきたのは、やはり失敗だったかもしれない。 しかし今さら帰れとも言うのも可哀想だしな。 ともあれ。 俺はセシリアを解放してから元の位置に戻り、体操を続けながら言う。 「ていうかリオ、人目を気にしてやるべきことをやらないなんて、そっちのほうがダサいと思うぞ俺は。誰がなんと言おうが、他人からどう見られようが、自分がそうするべきと思うことを貫く。それが勇者のあるべき姿だって、俺はそう思うけどな」 教師の立場からの押し付けにならないよう、言い回しに気を付けながらリオに伝える。 すると── 女性陣がみんな体操を止め、きょとんとした顔で俺のことを見てきた。 なんだ......? そして次には全員で寄り集まって、ごにょごにょと内緒話を始めた。 「ブレット先生のああいうところ、本当に根っからの勇者だよね」 「むぅ......悔しいけど、兄ちゃんの言ってる方が正しい気がする......」 「先生、カッコイイ......」 「......ああいうところが、お兄さんの、お兄さんたるゆえん」 「ふふっ......若い頃とはだいぶ変わったようでいて、やはりブレットくんはブレットくんだな」 各々の発言の細かい部分はうまく聞き取れなかったが、断片的に聞こえてくる内容から察するに、どうやら俺の発言に対する品評会が行われているようだった。 まあ俺も全員の水着姿の品評を心の中でしていたわけだし、多少悪いことを言われていようが、こっちが評価されることをどうこうは言えないよな。 で、そんなこんなありながら準備体操を終えると、いよいよ海水浴を楽しむときだ。 俺は子供たちにあっちこっちと連れまわされて大忙しになった。 例えばリオ。 「なぁ兄ちゃん、泳ぎでどっちが速いか競争しようぜ♪」 と言うので、沖まで競争をすることになったのはいいのだが、二人でざばざばと沖の方まで泳いでいったところで── 「うわぁ、あ、足が吊ったぁ。兄ちゃん、助けてぇ~」 などと言ってリオが溺れそうになった。 これはまずいと、俺はリオに向かって魔法をかける。 「大丈夫か、リオ! ──【 「へっ......?」 溺れそうになっていたリオは、水の中でも呼吸ができるようになる魔法をかけられて首をかしげる。 「い、いや、兄ちゃん、そうじゃなくて......。オレ泳げなくなっちゃったから、兄ちゃんにおんぶしてもらいたかったんだけど......」 「あ、そ、そっか。......えへへっ」 俺がリオに近付いて背を見せてやると、リオは俺にぎゅっと抱きついてきた。 ふにょん、と俺の背中にリオの弾力のある双丘が当たったり、抱きついてくる腕や脚などの妙に艶めかしい感触についドキッとしてしまったりしたが、そんな教師にあるまじき感想は頭を振って消し去った。 なお岸についてリオを安全な場所に寝かせてやると、それまでずっと吊っていたらしいリオの足は、そのタイミングですぐに治った。 俺は少し首を傾げたが、元気になるに越したことはないので、それで良しとした。 次にイリス。 こちらは異なことに、俺に向かってこんなことを言ってきた。 「あ、あの、先生......私、実は泳げないので、先生に泳ぎを教えてほしいんです......その、手取り足取り......」 白のスクール水着を着た三姉妹の次女は、俺の前で頬を赤らめ、もじもじとしながらそう訴えかけてくる。 だが俺は、その発言に違和感を覚えた。 「ん......? いや、泳ぎを教えるのはいいんだが、確か三人とも泳げるって話じゃなかったか? 村の近所の川でよく遊んでいたって」 「へっ......? あ、あれー? そんなこと、先生に話しましたっけ......?」 「確かリオがそんなことを言ってたと思うぞ。全員泳ぎは得意なんだって」 「(ちっ......リオってば、余計なことを......)──あ、えっと、その......わ、忘れちゃったんです、泳ぎ方! 先生が手取り足取り指導をしてくれれば、きっと思い出せると思うんですけどっ......!」 「......? そうか。まあ構わんけど」 一瞬舌打ちらしきものが聞こえた気もしたが、きっと気のせいだろう。 そんなわけで、俺はイリスと二人で海の中に入って、泳ぎの指導をした。 俺が前で手を取って、バタ足の練習を見てやったり。 背泳ぎの練習のために、頭と腰を背中側から支えてやったりといった補助もした。 さらには、そのうちにイリスが「先生......私、疲れました......」などと言って、海の中でぐったりとした仕草で俺に抱きついてきたりもした。 イリスが疲れてくると甘えん坊になるのは、今に始まった話でもないのでそこはいいのだが......。 今のイリスの魅惑的な体つきで水着一枚の姿で抱きつかれて、その肌の柔らかさや彼女の心臓の鼓動などを感じてしまうと、俺としてもつい意識してしまって、煩悩を振り払うのにかなり精神力が必要となった。 あるいは、メイファ。 メイファに誘われて二人で沖のほうまで泳ぎにいくと、ゴスロリ水着の三女は海の上で突然ぷかぁっと仰向けになって、そのまま動かなくなった。 そのまましばらく待ってみても、波に揺られてぷかぷか浮いているだけで、本人では微動だにしない。 「......おい、メイファ。それは何だ」 「......水難事故に遭って、動けなくなった人の真似。......こうしていると、一番体力を使わない」 「そ、そうか。......で、俺はどうしたらいいんだ」 「......お兄さんは、救助隊の真似をしてくれればいい。......ボクが力なく抱きつくから、そのまま岸までおんぶで連れていって、マウストゥマウスの人工呼吸までセットでやってくれると百点満点」 「俺、帰っていいかな」 「......ダメ。......お兄さんがいてくれないと、この水難者ごっこは成立しない。......ほらお兄さん、早く。......急がないと、水難者のボクは溺れてしまう」 「ああもう、分かったよ」 俺は本人の要望どおり、水難者の真似(?)をしたメイファを背負って岸まで泳いだ。 なお、マウストゥマウスの人工呼吸は断固として拒否した。 人前で意識のある小さな女の子を相手にそんな「ごっこ」をしていたら、俺が犯罪者として通報されることは目に見えている。 メイファは「......お兄さんの、意気地なし」などと恨みがましそうにしていたが、意気地があるとかないとかいう問題ではないと思った。 一方で、そんな俺たちの様子を砂浜で見ていた、アルマとセシリアの二人はというと── 「ううっ......あたしの付け入る隙がない......。毎年あたしの貸し切りだったのになぁ......ぐすん。ていうかあの子たちのあれ、絶対わざとやってますよね......?」 「ああ、そうだろうね。ブレットくんは気付いていないようだが、あの子たちは相当したたかだよ。メイファちゃんは分かりやすいけど、実際のところはリオちゃんと、イリスちゃんもね。おかげで私は完全に手懐けられてしまったワン。私はブレット先生の奴隷であるだけでなく、あの三人の忠実なペットでもあるワン」 「セシリアさん......」 そう、なんだか抽象的でよく分からない会話をしていたが、最後にアルマがどこか憐れみのこもった目でセシリアを見た部分に関しては、俺にも分かった。 まったくもって適切な反応だと思う。 アルマには是非ともそのように、常識人の立場からのツッコミポジションを今後ともキープしてもらいたいところだ。 ボケが多すぎてツッコミが間に合わないのが、我が家の目下の問題点の一つである。 とまあ、そんなこんなをしながら俺たちは、海水浴を楽しんでいたのだが── そのときだ。 海水浴場の端にある岩場のほうから、突如、絹を裂くような悲鳴が聞こえてきたのだ。

128 Lesson 128 I walk along the sandy beach by the sea where the sun shines and Rio draws my hand. It's early in the morning, so the peak of sunlight is still ahead of us, but it's still hot enough to sweat even if we're in the sun. "Brother, come on, come on! But Rio hastens to talk to me like that's okay. I get pulled by Rio's momentum, and I get a little rushed too. And yet, Rio, you're like a platter of kids who want to hang out with their dad. Maybe I had less contact with my real father in my childhood. If you think about it, I might be able to take my father's place today and make him sweeten everything he wants, etc. - but the policy shifts immediately. I pulled over in a hurry as Rio tried to rush straight into the ocean. "No, wait, Rio." "Ugh......! Oops......!?" But I think I pulled a little too hard when I was trying to stop Rio. Rio's body, with all the momentum, clings to me in reverse. I embraced it in a hurry. "Hey, bad Rio. Looks like we're overpowered." "... hey, what's up, brother? All of a sudden you're so bold..." Rio dyes his cheeks bright red in my arms and shyly misses his gaze. He's holding hands with me. Rio's hand is moving his fingers, and he's tangled in my hand. ... No, wait, how did this happen? I grab Rio's shoulder in a hurry and pull off my goddaughter. "Sorry, that was my fault, I apologize. But Rio, we have to do some prep exercises before we go into the ocean. You think you're a brave man, you're gonna get hurt you don't think you're caught off guard." "Ah... speaking of which, you were a teacher" Turn around and say it with a frightened face, Rio. Speaking of which, what did you ever think it was? That's why not only me and Rio, but Ilis and Mayfa, along with Alma and Cecilia, did the prep gymnastics together. Ichi, ni, san, si...... But the people around them go into the ocean as they lay low to see us like that, even if it's something rare. I saw it, twisting my body, and I'm going to get laid. "... not at all, and not always this guy. You don't understand the importance of preparatory exercise. Even if you're not a brave man, you're supposed to teach one street in primary education." "Haha... I don't read Dr. Brett's air like that. Seriousness, I don't hate it though" That's what he says and laughs bitterly as Alma defeats his body obliquely. And my godchildren... "You know, sometimes it's not even like it started now." "Hey, hey, Rio! That's the way to put it......! "... Iris, I can't help it because we're about the same age that we want to defy" Even though he said so, he carried out forward bending, backward bending, etc., on each side. Damn, you can say whatever you want. It should be noted that Cecilia, pretending to do prep gymnastics herself, had a flickering glimpse of the children deflecting her breasts, so I approached her unconstitutionally and snapped her nose in a fold. Cecilia cried in tears and said, "Ouch, ouch, ouch, ouch, ouch! Sorry hiccup, oh dear...!" and so on, so my surrounding eyes became feathers to focus on us in vain again. ... bringing Cecilia could still have been a failure. But it's pathetic to tell you to go home now. Whatever. I say as I release Cecilia and then return to my original position and continue my gymnastics. "I mean, Rio, I can't believe you don't care about people and do what you have to do. I think it's worse that way. Whoever says what, no matter how you can see it from others, pierce what you think you should do. That's what brave men are supposed to look like. I think so." Tell Rio with caution in rhetoric to avoid pushing him from a teacher's point of view. And then... The women have all stopped gymnastics and seen me with a decent face. What...? And then we all stopped by and started talking a little secret to you. "Dr. Brett's. Oh, you're really a root brave man, aren't you?" "Mmmm... I regret it, but I feel more right what your brother is saying..." "Doctor, it's cool..." "... oh my god, your brother's, your brother's Taruen" "Heh... it seems a lot different from when I was younger, and Brett is still Brett" The details of each statement were not heard well, but from what I hear in fragments, apparently there was a review of my statements. Well, I had a reputation in my heart for all my swimsuits, and I don't know how you can tell me that this one will be appreciated, even if they say something slightly worse. So, after all that but prep gymnastics, it's finally time to enjoy a sea bath. I got very busy with the kids taking me around that way. Rio, for example. "Hey brother, let's compete on which one is faster with swimming." So it's nice that we decided to compete offshore, but we had to swim offshore. "Wow, my leg hung. Brother, help me!" Rio nearly drowned when he said something like that. If this isn't good, I'll magic my way to Rio. "Are you okay, Rio! - - [Underwater Breathing" Water Breezing "]! "Heh...? Rio, who was about to drown, is beheaded by magic that will allow him to breathe even in the water. "Yes, no, brother, it's not... I couldn't swim anymore, so I wanted my brother to munch me..." "Oh, well.... eheheheheheh" When I approached Rio and showed him my back, Rio hugged me all the time. Phew, and Rio's elastic double hills hit my back, and I was thrilled with strangely lustrous feelings such as arms and legs that hugged me, but the serious feelings in such a teacher shook my head and erased it. It should be noted that when I put Rio to sleep in a safe place about the shore, Rio's legs, which he had hung until then, healed quickly at that time. I tilted my neck a little, but never got better, so I made it better. Next, Illis. This one, oddly enough, has said this to me. "Oh, you know, Doctor... I actually can't swim, so I want you to teach Doctor to swim... that, hand in hand..." The second daughter of the three sisters, in a white school swimsuit, blushes her cheeks in front of me and complains like that with a grudge. But I was uncomfortable with that statement. "Hmm...? No, it's fine to teach you to swim, but surely you were talking about all three of us being able to swim? He used to play in the neighborhood river." "Heh...? Oh, uh? Did I tell my teacher about that...? "I do think Rio said that. Everybody's good at swimming." "(Shit... Rio, do extra things...) - Oh, uh, the... oh, I forgot, how to swim! If my teacher gave me hands-on instruction, I'm sure I can remember...! ...... Well, I don't mind. " I also thought I heard something tongue-in-cheek for a second, but I'm sure it's my fault. That's why I walked into the ocean with Iris to teach him how to swim. I'll take your hand in front of you and watch you practice your bumpy feet. He also assisted by supporting his head and hips from his back side for backstroke practice. What's more, in time, Illis said, "Doctor... I'm tired..." etc., and he even hugged me with a neat trick in the ocean. When Illis gets tired, it's good there because it's not even a story that started now...... When I felt the softness of that skin and the beating of her heart, embraced in a single swimsuit with the enchanting body of Illis today, I became aware of it, even as I am, and needed a lot of mental strength to shake off my troubles. Or, Mayfa. When Mayfa invited us to swim offshore, the three Goslori swimsuits suddenly leaned back puffy on the sea and stopped moving as they were. Even if I wait a while as it is, I'm just shaken by the waves and floating puffy, and I won't let it be slight in person. "... Hey Mayfa. What's that?" "... imitation of someone who was in a water crash and could no longer move.... when you do this, you use the least amount of strength" "Oh well.... and what am I supposed to do?" "... your brother, you just have to imitate the rescue team.... I can't help but hug you, so you can take me straight to the shore and do it on the set until the artificial breathing of the mouse to mouse is out of 100 points" "I think I can go home." "... no.... If you don't have a brother, this water wreck won't be established.... Here, brother, come on.... if you don't hurry, I'll drown in the water victims" "Yeah, I got it." I, as per my own request, imitate the water victims (?) I swam to shore carrying Mayfa, who did. It should be noted that the artificial respiration of the mouse to mouse was resolutely refused. If you were such a "mess" with a conscious little girl in public, it's obvious that I'd be wanted as a criminal. Mayfa resented "... your brother's, no intention," etc. I did, but I didn't think it was a matter of being unwilling. On the other hand, I was watching us on the beach, and Alma and Cecilia... "Ugh... there's no gap in me... It was my rent out every year...... Gu. I mean, those kids, they're definitely doing it on purpose...? "Oh, I guess so. Brett doesn't seem to have noticed, but those kids are pretty tough. Mayfa's easy to understand, but the truth is, Rio and Iris, too. Thanks to you I've been totally hand-nosed One. I'm not only a slave to Dr. Brett, I'm also one of those three faithful pets." "Mr. Cecilia......" Yes, we were having some sort of abstract, poorly understood conversation, but as for the last part where Alma saw Cecilia with some pitiful eye, I also found out. I think it's a perfectly appropriate reaction. I just want Alma to make sure he keeps his scrupulous position from a common sense person's point of view. Too much bokeh to scratch in time is one of the problems under our house. Well, while we were doing that, we were enjoying a sea bath. That's when. From the rocks on the edge of the water bath, suddenly, I heard screams ripping through the silk.

第114話 薄暗い地下牢。 何人もの少女が牢に入れられ、すすり泣いている。 広い地下牢全体に、鉄格子の嵌まった牢獄は四つあるが、そのうちの一つ。 一人の少女が牢獄の奥の石壁に、両手両足を鎖でつながれ拘束されていた。 成人しているかどうかというぐらいの、幼く小柄な少女。 身に着けている衣服はあちこち引き裂かれてボロボロだ。 あらわになった白い肌は、あちこちがすり傷や切り傷、刺し傷によって無惨なありさまだった 少女──ウルは満身創痍で、鎖に繋がれたその身は今や力なくぐったりとしている。 そんなウルの前には、軽薄そうな笑みを浮かべた青年が一人。 彼はナイフを片手に弄びながら、少女の姿を観察して楽しんでいた。 のお嬢さん? もう抵抗はしないのかい? それじゃあつまらないじゃないか」 その青年──“疾風”の異名を持つ闇勇者ゲイリー・ハウエルはそう言いながら、手にしたナイフで、拘束された少女の衣服を戯れに引き裂いていく。 少女──ウルの衣服がボロボロになっているのは、獣化によって引き千切れたことばかりが原因ではない。 ウルを辱めるように、ゲイリーらが少しずつ破り裂いていった結果でもある。 「......獣化をして抵抗したって、殴られたり刺されたりするだけじゃないっすか......。うちの力じゃ、鎖をちぎって逃げられるわけでもないっす......」 ウルは虚ろな目で、何もかもあきらめたというようにそう口にする。 人さらいの闇勇者たちの手であっさりと捕らえられたウルは、そのまま気絶させられ、男たちの本拠地へと担ぎ込まれていた。 地下牢に鎖で繋がれたウルは、頭から水をぶっかけられて強制的に意識を引き戻されると、その後はずっと男たちの玩具にされていた。 たまらず獣化を解くと、今度はニヤニヤと下卑た笑みを浮かべた男たちによって、その身を辱められた。 衣服を引き裂かれ、あらわになった肌を男たちのおぞましい手でまさぐられる。 嫌悪感で悲鳴を上げるウルを見て、男たちは歓声を上げた。 だがそれでも、暴力を振るわれるよりはマシだ──そう思うように調教されたウルは、もはや男たちにされるがまま、無抵抗を貫くようになった。 男たちはさらに行為をエスカレートさせようとしたが、しかしそれは、リーダーのゲイリーがやめさせた。 別に温情などではなく、商品に治癒魔法で癒せない傷が付かないようにというだけの配慮であったのだが。 そしてゲイリーは、ウルを嬲り者にしていた男たちに階上へ行くよう指示すると、自分だけがこの場に残ったのだ。 なおこの地下牢へは、隠し階段を下りてこなければたどり着けない仕組みになっている。 この地下牢の上、地上階にあるのはただの別荘のように見える建物だ。 闇勇者たちが人身売買や麻薬取引を行っている証拠は、この地下部分にしかない。 それは見方を変えれば、この場所を見たものはもはや、日常の世界に戻されることは一切許されないことをも意味していた。 「くくくっ......抵抗をしても痛い目を見るだけだから、お嬢さんは抵抗をせずに、こうして辱められる方を選ぶわけだ。いや、賢いよ」 そう言いながら、闇勇者ゲイリーはさらに一つ、今度はウルの下着へと切れ込みを入れていく。 ウルは少しだけ悔しげに頬を染めつつも、それに抵抗することはなかった。 目の前の男が飽きるまで、耐えるしかない── それが現在のウルが置かれた立場であり、少女に与えられた絶望だった。 「......こんなことをして、何が楽しいんすか......これが勇者の......人間のすることっすか......」 余計なことを言えば、相手を楽しませるだけ。 そんなことは分かっていても、ウルの口からは悔しさとやるせなさのあまり、そんな言葉が漏れてしまう。 ようやく人の優しさを、思いやりを、温もりを信じられるようになってきた少女にとって、これはあまりにも無体な仕打ちであった。 だがゲイリーは、そんなウルにさらなる人の悪意を見せつける。 「ああそうさ、これが人間だよ、 が人間様をケダモノ呼ばわりとは。──じゃあ、もっとケダモノらしく、こんなこともしてやろうか?」 ぞぶりっ。 ゲイリーのナイフが、ウルの左肩に突き立てられた。 「くくくっ、獣化してなきゃ痛めつけないなんて、一言も言ってないよ俺は。さあ、もっといい声で泣いてみようか」 ゲイリーはウルの肩に突き刺したナイフを、ぐりぐりと捻ってみせる。 ウルは痛みに悶え、涙を流し、絶叫し、必死に身をよじらせる。 だが鎖に繋がれた身はどうやっても自由にならず、肩に捻じ込まれたナイフの痛みで、ウルの意識が飛びそうになる。 だが、そんなときだ。 上の方でゴゴゴッと音がしてから、一人の男が、地上階からの隠し階段を下りてきた。 地下牢まで降りてきた男は、ゲイリーのもとに駆け寄って耳打ちをする。 「何......? 男が一人、女のガキ三人を連れて、仲間にしてほしいと言ってきた? 全員勇者だって言っているのか」 「ああ。その四人は同じ村の出身らしいんだが、魔王ハンターだの何だのケチな仕事はやってられねぇ、もっと楽に大金が手に入る仕事がやりてぇって話だ」 「くくくっ、分かっているじゃないか。それでどこからか知らないが、俺たちのことを嗅ぎつけてきたというわけか。男はともかくとして、ガキの女勇者というのは使い勝手がいいな。......しかし、あやしくもある。官憲の息がかかったやつらじゃないんだろうな?」 「それはわからねぇ。ただ、もう一つ大事なことがあってよ。そのガキの女勇者ってのが、三人ともとんでもねぇ上玉なんだ」 「ほぅ......? それは面白い。どちらに転がしても使いようがあるということか。分かった、今行くから待たせておけ」 「おう。じゃあ、上に行って伝えてくる」 そう言って伝令の男は、ゲイリーのもとを離れて、地上階へと続く階段を上っていこうとする。 だが、そのとき── 「いや、伝えにいく必要はないぜ。こっちから出向いてきたからな」 階段の上から、若い男の声がした。 階段を上がろうとしていた伝令の男が、驚きの声とともに慌てて剣を構えたところに、階段の上から一人の青年が飛び降りてくる。 飛び降りざまに振り下ろされた剣を、伝令の男は剣で受け止めるが── 「──ぅぐおっ!?」 振り下ろされた剣のパワーを殺しきれずに、伝令の男は吹き飛ばされた。 伝令の男は、地下牢の廊下を数メートル転がってから、慌てて体勢を立て直す。 だがその脚にガタが来て、再びがくりと膝をついた。 「くそっ......! 何だこのパワー、バケモノかよ......!? 俺だって勇者だぞ!?」 一方、その様子を見ていたゲイリーは忌々しげに舌打ちをする。 「やはり官憲の回し者だったか。......というか、つけられたなお前? この地下牢が知られたら終わりだと、散々言っておいたはずだが」 「わ、わりぃ。上で囲んで待たせていたはずなんだが」 「ブ、ブレットさん......!」 ウルはそこに現れた青年の姿を見て、瞳に涙をいっぱいに溜めていた。 絶望の中に現れた光。 空っぽになりかけていたウルの胸の奥から、希望が湧き上がってくる。 地下牢に飛び降りてきた青年──勇者学院の教師ブレットは、ウルの姿を見てまず驚き、その瞳に一瞬だけ憤りの色を見せたが、すぐに大きく息を吐き、それからウルに向かって笑顔でこう言った。 「ウル、遅れてすまない。すごく痛くて、つらかったよな。でももう大丈夫だ。ここにいる悪いやつらは、全部俺たちがやっつけるから」 そして、そのブレットのそばにもう三人、上から少女たちが飛び降りてくる。 「兄ちゃん、上のやつらもすぐに降りてくるよ!」 「って、ウルちゃん!? そんな、ひどすぎる......!」 「......っ! ......ボクは、本気でトサカにきた......!」 ブレットのそばに飛び降りてきたのは、リオ、イリス、メイファの三人だ。 さらにブレットは、ウルがいる牢獄のほうへと素早く駆け寄ってくる。 一瞬の攻防。 突然の侵入者たちを警戒して廊下に出ていたゲイリーは、ブレットの剣の一撃をとっさに跳び退って回避すると、そのまま廊下を後退して戦闘態勢を整えた。 ブレットに続いて、三人の少女たちもウルのいる牢獄の前まで駆け寄り、囚われの少女を守るように陣取った。 そこから少し遅れて、地上階からは武器を手にした闇勇者たちが次々と下りてくる。 その数、六人。 先に地下牢にいたゲイリーと伝令の男を加えると、闇勇者の数は全部で八人だ。 それらの光景を見たウルの中で、浮かび上がってきた希望の光が、闇に食われて萎んでいってしまう。 四人対八人、多勢に無勢だ。 せっかく助けに来てくれたのに、これでは── ウルは想像してしまう。 ブレットが闇勇者たちに打ちのめされ、リオやイリス、メイファまでもが男たちに捕らえられ、自分と同じように嬲り者にされる光景を。 だからウルは叫ぼうとした。 自分のことはいいから、みんな早く逃げて、と。 だがそんなとき、ウルの脳裏に浮かんだのは、先ほどのブレットの優しい笑顔だった。 『もう大丈夫だ。ここにいる悪いやつらは、全部俺たちがやっつけるから』 ブレットはそう言った。 ウルに向かって、そう約束してくれたのだ。 だったら、信じなきゃ。 ウルは思い直し、勇気をふり絞る。 そしてウルは、傷の痛みに歯を食いしばりながら、こう叫んでいた。 「ブレットさん......! それにリオちゃん、イリスちゃん、メイファちゃんも──そいつらけちょんけちょんに、やっつけちゃえっす!」

114 Lesson 114 Dim dungeons. Many girls are locked up and sobbing. Throughout the wide dungeon, there are four jails fitted with iron lattices, but one of them. One girl was chained and restrained to the stone wall behind the prison with her hands and legs. A young, little girl, whether she's an adult or not. The clothes you're wearing are torn up and worn out everywhere. The revealed white skin was devastated by scratches, cuts and stab wounds everywhere The girl - Ur - is full of creativity, and her chained body is now powerless and restless. In front of such a ul, there was one young man with a slight grin. He was enjoying observing the girl with his knife in one hand. "What is it, a werewolf lady? No more resistance? Well, that's boring." That's what the young man, Gary Howell, a dark brave man with the alias "disease," says, with a knife in his hand, ripping the clothes of the girl in captivity into play. Girl - Ur's clothes are worn out, not all because she was pulled apart by beastification. It is also the result of Gary and the others tearing it apart little by little so as to humiliate Ur. "... didn't you just get beaten or stabbed for beastifying and resisting... Our power doesn't mean we can break the chain and get away with it..." Ur says so with vain eyes, as if he had given up everything. Ur, lightly captured at the hands of the dark braves in public, had been stunned as it was and brought to the home of the men. Ur, chained to a dungeon, was made into a toy for men long after when he was watered from his head and forced to draw his consciousness back. Not only did he solve the beastification, but now he was humiliated by Niyaniya and the men with a humble grin. The clothes are torn apart and the revealed skin is wandered with the men's vague hands. The men cheered when they saw Ur screaming with disgust. But still, it's better than being violence-that Ur, who was taught to think so, was no longer made into men, but became irresistible. The men tried to escalate the act further, but it made the leader, Gary, stop. It was not a matter of temper or anything, it was just a consideration to ensure that the product did not have wounds that could not be healed by healing magic. And when Gary instructed the men who had made Ur a crook to go upstairs, he was the only one left. It should be noted that this dungeon has a mechanism that cannot be reached without coming down a hidden staircase. Above this dungeon, on the ground floor is a building that looks like just a villa. Evidence of the Dark Braves trading in human beings and drugs is only found in this underground part. That also meant that if we changed our view, what we saw of this place would no longer be allowed to be returned to the everyday world in any way. "Kuck...... even if you resist, you just look at the painful eyes, so the lady chooses the one who can be humiliated like this, without resisting. No, I'm smart." With that said, the Dark Brave Gary puts one more thing, now a cut into Ur's underwear. Ur dyed his cheeks with a little remorse, but never resisted it. Until the man in front of you gets tired of it, you just have to endure... That was the position where the current Ur was placed, and the despair bestowed on the girl. "... I don't know what's so fun about doing this... this is what brave people do..." If you say anything extra, just entertain them. Even if I knew that, not much remorse and naughty words would leak out of Ur's mouth. This was too intact a trick for a girl who was finally able to believe in people's kindness, compassion and warmth. But Gary shows such malice to Ur. "Oh yes, this is the human being, the young lady of the werewolf. No, it's not just human. The strong treat the weak as they please. It's an irresistible, natural dish, isn't it? "Ha ha, what a werewolf (warwolf) calls a human being a queer. - - So, it sounds more like a kettle thing, shall we do this too? Bullshit. Gary's knife was stuck on Ur's left shoulder. "Damn, I didn't say a word about not hurting you unless you beastified me. Come on, let's cry in a better voice" Gary twists a knife through Ur's shoulder. Ur is bored with pain, weeping, screaming, and desperately twisting herself. But no matter how he was tied to the chain, the pain of a knife screwed into his shoulder makes Ur's consciousness seem to fly. But that's when. One man came down a hidden staircase from the ground floor after a loud noise upstairs. The man who comes down to the dungeon rushes over to Gary for ear slapping. "What...? Did a man bring one, three lady kids, and you want me to be one of them? Are you saying they're all brave?" "Oh. I hear those four are from the same village, but I can't do some asshole work with Demon King Hunter, I'm talking about a job that's easier to get a lot of money for." "Damn, you know what I mean. So I don't know where you're from, but you've been sniffing around about us? Regardless of the man, being a brave lady is user-friendly.... but also obscure. I guess they're not the ones who breathed the official constitution, huh? "I don't know that. Just one more important thing. All three of them are brave ladies." "Ho...? That's funny. So you can use it whichever way you roll it? All right, I'm on my way. Let me wait." "Ooh. Well, I'll go upstairs and tell him" That said, the man in the preaching tries to leave Gary and go up the stairs leading to the ground floor. But then... "No, you don't have to go tell him. He's coming out of here." From the top of the stairs, there was a young man's voice. One young man jumps from the top of the stairs where the man of the decree who was about to go up the stairs hastily laid his sword with a voice of surprise. The man of the command will take the sword that was unjumped and swung down with the sword, but... "- - Ugh!? Without killing the power of the sword that was swung down, the man of the decree was blown away. The man in the preaching rolls a few meters down the dungeon hallway before rushing back into position. But the rattle came upon his leg, and he knelt again. "Damn......! What the fuck is this power, bugger...!? I'm a brave man too!? Gary, on the other hand, tongues abominably as he watches how it goes. "Were you still a spinner of the government constitution?... or did they put you on? I told you once this dungeon was known, it would be over." "Wow, no. I was supposed to keep you waiting up there." "B, Mr. Brett......! Ur looked at the young man who showed up there and was hoarding his eyes full of tears. The light that appeared in despair. Hope rises from behind Ur's chest, which was about to be empty. The young man who jumped into the dungeon - Brett, a teacher at the College of the Brave - was first surprised to see Ur, showing the colour of his anger only for a moment in his eyes, but soon exhaled loudly, then smiled at Ur and said this. "Ur, I'm sorry I'm late. It hurts so much, it's hard. But I'm fine now. The bad guys here, 'cause we're gonna kill them all." And there are three more by that Brett, the girls jumping off the top. "Brother, the ones up there will be right down! "What, Uru!? Oh no, it's too bad......! "... Huh!... I've come to Tosaka for real...! Three people jumped by Brett: Rio, Illis and Mayfa. Furthermore, Brett rushes quickly to the prison where Ur is. A flash of defense. Gary, who was out in the hallway alerting the sudden intruders, retreated straight down the hallway to prepare for battle as he slipped back and dodged the blow of Brett's sword. Following Brett, the three girls also rushed to the front of the prison where Ur was, and formed themselves to protect the imprisoned girl. A little later from there, from the ground floor comes down one after another the Dark Braves with their weapons in their hands. That number, six. Add Gary, who was in the dungeon first, and the man of the preaching, and the number of Dark Braves is eight in all. In the wolf that sees those sights, the light of hope that has risen will shrivel eaten by darkness. Four against eight, passive to many. You came here to help me, and now... Ur imagines. The sight of Brett being beaten down by the Dark Braves, and even Rio, Illis, and Mayfa being captured by men, and made into crooks just like himself. So Ur tried to scream. I don't care about myself, let's all get out of here. But then, what floated behind Ur's brain was Brett's gentle smile earlier. 'It's all right now. The bad guys here,' cause we're gonna kill them all. ' That's what Brett said. To Ur, that's what he promised me. Then you have to believe it. Ur rethinks and squeezes courage. And Ur was screaming like this, eating his teeth away at the pain of the wound. "Mr. Brett......! And Rio, Iris, Mayfa, they're gonna kill you!

第100話 「んんっ......!」 俺は読んでいた本に ずっと同じ姿勢で本を読んでいると体が固まるから、たびたびほぐしてやるのだが、それにしてもそろそろ少ししんどくなってきた。 図書館に設置されている壁掛けの時計を見れば、間もなく昼になるという時刻。 朝食後に宿を出て、ウルと合流してすぐに図書館に来たのだから、すでに三時間ほど、ずっとこうして本と睨めっこをしていることになる。 目的の情報──ウルの 六人掛けのテーブルで同じく読書をしていた教え子たちは、まずリオは根気が続かずに、とうの昔に突っ伏していた。 イリスも、最初こそメモなどを取りながら頑張る姿勢を見せたものの、しばらくしてうつらうつらしはじめ、やがてノックダウン。 彼女らにとっては、魔王退治よりも、図書館での調べもののほうがよっぽど強敵のようだ。 一方で、メイファとウルの二人はというと、興味深げに本に喰いついていて、今も黙々とページをめくっていた。 メイファはなんとなく本と相性がいい気はしていたが、ウルのほうは少し意外だ。 が、それはそれとして、ひとまずは昼食休憩だろうな。 「よし、お前ら。一度切り上げて、昼飯に行くか」 「ふぇぇっ、やっとだぁ......」 俺が昼食休憩を宣言すると、リオが疲れきった様子で言う。 イリスもまた、崩れ落ちていたテーブルからがばっと顔を上げ、「ね、ねねねね、寝てませんよ!?」と、半ば寝ぼけ眼で言った。 口元からうっすらよだれがたれていたが、それでも可愛らしいというのがずるいところだ。 まあね、難解な本を読んでいると眠くなってくるというのは、分かるよ。 今回はわりと専門的な内容の本が多いから、図書館で調べものをするにあたって、ビギナー向けの授業としては、ちょっと難易度が高すぎたかもしれない。 とはいえ今回は、題材が選べないから、しょうがない。 本当は、頑張って自力で調べた結果、ほしい情報が見つかって万々歳、という展開になってくれることが教育的にも理想なんだが......。 いずれにせよ、一度昼食をとりに外へ出よう。 俺は司書さんに本を預かってもらって、子供たちを連れて図書館を出た。 エントランスから表に出ながら、子供たちはこんな会話をしていた。 切り出すのはリオだ。 「それにしてもメイファとウル、よくそんなに集中力続くよな」 「......多分、集中力じゃなくて、興味の問題。......ボクは、自分が知らないことを知るのが、わりと好き」 「あ、興味が大事っていうのは分かるっす。うちも自分のことで知らないことがたくさんあったから、もりもり読んじまったっすけど、自分のことじゃなかったら全然読める気がしないっす」 「興味かぁ。いろんなことに興味持たないとダメってことかぁ」 「......それも、なんか違うような。......向き不向きがある。......イリスとリオは、物語を読むといい。何もしていないより、暇がつぶれる」 「うわっ、メイファが上から目線だよ。くそ~、いつも怠け者のメイファが働き者に見える~!」 「......誤解はやめてほしい。......本を読むこと、知識を得ることは、ボクの中では労働に含まれない。......働きたくないということに関して、ボクはプライドを持ってやってる」 「そのプライドは、今からでも遅くないから、捨てたほうがいいと思うな......」 そんなイリスの意見に俺も同意である。 メイファは普段からもっと働け。 まあ、それはともあれ。 「さて、昼飯どうすっかな。──ウル、近くでどこか、うまくて安い店とか知ってるか?」 俺が地元民であるウルにそう聞くと、ウルは嬉々として答えてきた。 「そしたら、うちが働いているパン屋が近くにあるんで、よかったらどうっすか? 親方の焼くパンはうまいっすよ~。ちなみに名物はデリシャスジャンボサンドっす。安くてうまくてボリューム満点が売りっす!」 胸を張って、誇らしげにそう言うウル。 この様子だと、自分が働いているパン屋のことが好きなんだろうな。 「ん、じゃあそうするか。お前らもそれでいいか?」 「「「賛成ーっ!」」」 そんなわけで、ウルの案内でしばらく歩いていくと、やがて往く手に一軒のパン屋が見えてきた。 中流階級の住宅街にひっそりとたたずむ、素朴な雰囲気のパン屋だ。 店からはパンを焼くいい匂いが漂ってくる。 するとウルは、店の近くまで来たところで、こんなことを言ってきた。 「じゃあ、うちはここで待ってるっす」 ウルはそう言って、その場で立ち止まってしまった。 手を振って、俺たちを見送ろうとしている。 「なんでだよ。せっかく来たんだから、挨拶してけばいいじゃん」 リオがそう詰めると、ウルは恥ずかしそうにこう返してきた。 「いや、その......うち、職場では、無口キャラで通ってるんすよ......。店のみんなとは、あまり仲良くしてないというか......」 リオ、イリス、メイファの三人が首を傾げる。 そして俺も、そこはかとない違和感を覚えていた。 自分の職場を誇らしげに紹介しながら、職場の人たちとは仲良くしていないというのは、どうもアンマッチな気がする。 近くの路地の角から、陽気そうでガタイのいい中年男性が現れ、ウルに向かって声をかけてきた。 「おう、ウル坊じゃねぇか。どうした、休日に店に来るとは珍しいな」 その声を聞き、ウルがびくーんと跳ね上がる。 そしてウルは顔を隠すようにうつむき、男に返事をした。 「お、親方......うっす」 ウルの声のトーンが、一段落ちていた。 なんだろう、妙だな......? だがウルから親方と呼ばれた男は、別に気にした様子もなく、のしのしと俺たちの前までやってくる。 見上げるぐらい背がでかい。 体もマッチョで、特に上半身がムキムキだ。 だがウルが「親方」と言ったからには、この人がウルを雇っているパン屋の店主なんだろう。 そんなパン屋の店主と思しきマッチョ男は、俺に向かって声をかけてくる。 「ウル坊が友達と一緒にいるところなんて初めて見たな。しかもその格好、旅の勇者さんかい?」 「ええ。ウルとは昨日知り合いまして」 俺がそう答えると、マッチョ男は俺のそばにいたリオ、イリス、メイファの三人を見て、それからうつむいているウルを一瞥すると、俺に向かってちょいちょいと手招きをしてきた。 なんだろうと思って男の近くに寄ると、男はその腕をガシッと俺の肩へと回し、少女たちに聞こえないよう耳打ちで、こう伝えてきた。 「......なぁ、兄さんよぉ。女の子を侍らすなたぁ言わねぇが、ウルのこと、遊びだと思って付き合ってんなら、やめてやっちゃあくれねぇか。こいつは人見知りだが、仕事にも真面目ないいやつなんだよ。な、頼むよ」 なんだかものすごい勘違いをされていた。 「ち、違いますよ! こいつらは俺の教え子で、俺は勇者学院の教師です」 俺がそう説明すると、男は俺を解放し、驚いたような顔を見せる。 「教師......? 教え子......? ──なぁんだ、それならそうと早く言ってくれよ! ウル坊が悪い男に引っ掛かったんじゃねぇかと思って、勘違いしちまったじゃねぇか。はっはっは!」 そう言って、バンバンと背中を叩かれた。 勇者じゃない一般人なのに、まぁまぁのパワーで、まぁまぁ痛い。 そこにウルが、おずおずと言ってくる。 「あ、あの、親方......この人たちは、お昼ご飯に、店のパンを買いにきたっす......」 「おおっ、そうかそうか、お客さんか! いやぁ、そりゃあすみません。ささ、どうぞお店の方へ。初めてうちのパンを食べるなら、まずはデリシャスジャンボサンドを......」 そう、パン屋の親方に背中を押される俺だったが── 後ろを見れば、うつむいて表情を隠したままのウルがいて。 俺はパンのことよりも、ウルと親方の奇妙な関係のほうが気になっていた。 親方のほうは、ウルを我が子のように可愛がっているような印象。 俺を悪い虫だと思って、追い払おうとしたのがその証拠だ。 だがウルのほうはというと、親方に対して自ら壁を作っているようにも見える。 ──こりゃあまた、何か複雑な感じっぽいな。 そんなことを思いながら、俺は親方に押され、パン屋の扉をくぐっていくのだった。

100 Lesson 100 "Hmmm......! I close the book by pinching a string in the book I was reading and stretch it out. My body hardens when I read the book in the same position all the time, so I try to loosen it up every now and then, but it's time to get a little tough. If you look at the wall-mounted clock installed in the library, the time is shortly after noon. I left the inn after breakfast and joined Ur and came to the library immediately, so I would have been staring at the book like this for about three hours already. Purpose Info - Unfortunately, we have yet to find a way to do something about Uru's Beastification (Lycanslopi) curse. The godchildren, who were similarly reading at the six-man table, first of all, Rio stuck around a long time ago without his guts continuing. Iris also began to get upset after a while, eventually knocking down, although it was at first that he showed a hard working attitude while taking notes and such. To them, the research in the library seems to be more formidable than the exorcism of the Demon King. Meanwhile, Mayfa and Ur were both intriguingly eating into the book and still turned the page silently. Mayfa felt somewhat compatible with the book, but Ur is a little more surprised. but that, for one thing, would be a lunch break. "All right, you guys. Cut it up once and go to lunch." "Huh, finally..." When I declare a lunch break, Rio tells me how tired he is. Iris also looked up from the table that was falling apart and said, "Hey, hey, you haven't slept!?," he said half-sleep-eyed. Whoever was tattered from the mouth is still adorable. Well, you know, reading a difficult book makes me sleepy. Since there are many books with professional content this time around, it may have been a bit too difficult for a class for Beginners when doing research in the library. This time though, I can't help it because I can't choose the subject matter. The truth is, after hard work and self-research, it is ideal for me to be educated that I find the information I want and hope to develop... Either way, let's go outside for lunch once. I asked the clerk to keep the book and take the kids out of the library. The kids were having this conversation as they came out of the entrance to the table. It's Rio who cuts it out. "Nevertheless, Mayfa and Ur, don't stay so focused often" "... maybe it's not about concentration, it's about interest. I like to know things I don't know." "Oh, I know interest matters. We had a lot of things we didn't know about ourselves, so I thought I'd read them, but if it wasn't about me, I don't feel like I could read them at all." "Interested. I mean, you have to be interested in a lot of things." "... it's also, like, something different. ... unsuitable. ... Illis and Rio should read the story. More time than nothing." "Wow, Mayfa's the sight from the top. Damn, Mayfa the lazy always looks like a worker!" "... I want you to stop misunderstanding. ... reading books, gaining knowledge is not included in my labor. ... I have pride in not wanting to work" "Don't think you should throw that pride away because it's not too late..." I agree with Iris. Work more Mayfa from time to time. Well, whatever that is. "Well, what about lunch? - Ulu, you know somewhere nearby, a good, cheap store or something? When I asked Ur, who is a local, Ur replied with joy. "Then there's a bakery nearby where we work, so what if I do? Parental baked bread is good. By the way, the specialty is delicious jumbo sandwich. It's cheap, it's good, and it sells full volume! Put your chest up and say that proudly Ur. In this way, I guess you like the bakery you work for. "Mm-hmm. Then you will. You guys okay with that? "" "Agreed! That's why when I walked for a while with Ur's guide, I eventually saw a bakery on my hands. Hidden in a middle-class residential neighborhood, it's a rustic bakery. The store smells good baking bread. Then Ur came near the store and said this. "Well, we'll wait here." That's what Ur said, and he stopped on the spot. Waving, trying to drop us off. "Why not? You should just say hello because you're here." When Rio stuffed it that way, Ur returned it like this in embarrassment. "No, the... of which, at work, I go by silent characters... You don't get along very well with everyone in the store..." Three people, Rio, Illis and Mayfa, tilt their necks. And I felt quite uncomfortable there, too. I feel unmatched that I am not getting along with people at work while proudly introducing my workplace. From the corner of the nearby alley, a cheerful and good Gatai middle-aged man appeared and spoke to Ur. "Whoa, isn't that Wolfie? What's the matter, it's rare to come to the store on holiday" I hear that voice, and Uru jumps. And Ur nagged to hide his face and replied to the man. "Ooh, parent...... nagging" The tone of Ur's voice had fallen. I don't know, that's odd...? But the man Ur called his parents, he didn't seem to care, and he came before us. Tall enough to look up. My body is also macho, especially my upper body is mucky. But when Ur said "parent," he must be the bakery owner who hires Ur. The owner of such a bakery and the Macho man call to me. "You've never seen Wolfgang with friends before. And that outfit, Mr. Traveling Brave? "Yeah. I knew Ur yesterday." When I answered that, the Macchio man looked at the three Rio, Illis and Mayfa who were by my side, and then glanced at Ur, who was nagging, and he made an invitation to me for a moment. When I stopped near the man wondering what it was, the man turned his arms gasp to my shoulder, ears slapped so the girls wouldn't hear me, and this is what he told me. "... hey brother. Don't samurai the girl. Oh, I don't know, but if you think it's about Ur, it's a game and you're dating him, why don't you stop doing it? This guy is familiar with people, but he's also a serious good one for work. Oh, please." He was kind of making a huge mistake. "Chi, no! These are my godchildren, and I'm a teacher at Brave Men's College." When I explain it that way, the man lets me go and looks surprised. "Teacher...? Goddess......? - Hurry up and say yes! I thought Wolfgang might have hooked up with a bad guy, so you got it wrong. Ha ha! That's what I said, I got slapped in the back with a bang. You're not a brave man. You're an ordinary man, but with some power, well, it hurts. And there's Ur, and he's going to say goodbye. "Oh, you know, my parents... these people, for lunch, came to buy the bread from the store..." "Whoa, right, right, a customer! Hey, I'm sorry about that. Yes, please go to the store. If you're eating our bread for the first time, let's start with Delicious Jumbo Sandwich..." Yeah, I was the one who got my back pushed by the parents at the bakery, but... If you look behind you, there's Uru, who's nagging and hiding his expression. I was more concerned about Ur's odd relationship with his parents than about bread. Parents have the impression that they adore Ur like my child. Thinking of me as a bad bug and trying to get rid of me is proof of that. But Ur also looks like he's building his own wall against his parents. - - That sounds complicated again. With that in mind, I was pushed by my parents and knocked over the bakery door.

第38話 最強新人勇者決定戦の会場は、王都の一角にある大型の競技場だ。 観客席の収容人数は、一万人をゆうに超える。 俺と教え子たちは、朝に宿を出て会場入りする。 開会式を終えると、すぐに控え室へと通されて、今日の大会スケジュールを渡された。 ひとつの控え室は、四校が合同で使うことになっている。 俺たちが通された少し広めの控え室には、すでに二校の生徒と教師──合計で十名がいて、それぞれが部屋の隅で試合の準備をしていた。 俺は教え子たちを連れて控え室の一角を陣取ると、渡された大会スケジュールを眺める。 「うちの初戦は第四試合か。わりとすぐに出番だな」 リオ、イリス、メイファの三人はほとんど俺にへばりつくような体勢で、俺の手にある大会スケジュールの小冊子を興味深そうにのぞき込んでいた。 学校対抗である最強新人勇者決定戦には、この国全土の勇者学院から毎年二十校から三十校程度が参加する。 今年の参加校は、どうやら二十七校のようだ。 大会スケジュールにはトーナメント表も付いており、それによれば俺たちの勇者学院こと「リット村学院」の第一戦は、第四試合とのことだった。 最強新人勇者決定戦は、トーナメント形式で行われる。 全二十七校のうち、過去の好成績によりシードを受けている五校を除いた二十二校により、トータル十一試合が第一戦として行われる。 第二戦は、第一戦で勝ち上がった学校に加え、シード校も参加しての八試合。 第三戦が準々決勝で、四試合。 第四戦が準決勝で、二試合。 そして第五戦が決勝だ。 なお、大会に参加する勇者学院は、基本的にどこも強豪校だ。 稀に例外はあるが、普通はある程度まで勝ち抜ける自信があるのでなければ、最強新人勇者決定戦には参加してこない。 これは遠征費や日数がかかることも理由の一つではあるが、何よりも大きいのは、最強新人勇者決定戦は このあたりも勇者協会の息がかかっているゆえの悪趣味さではあるわけだが、よく言えば初戦から精強揃いのレベルの高い試合が行われる素地になっているとも見ることができる。 まあいずれにせよ重要なのは、参加している二十七校がほぼ全校、強豪揃いだということだ。 と、そこに── 控え室にもう一校、別の勇者学院の生徒たちが入ってきた。 「おや、ブレット先生ですか? お久しぶりです」 そう声をかけてきたのは、その生徒たちを引率する教師だった。 俺はその姿を見て、懐かしい想いに駆られる。 「お、レナード先生じゃないですか。元気してましたか──って、また痩せてません? ちゃんと食ってます?」 「ははは、よく言われますが、そう会うたびに痩せていたら骨だけになってしまいますよ。ブレット先生も相変わらずのようで何よりです」 レナードは、四角い眼鏡をかけた長身痩躯の男性教師だ。 歳は俺より少し上ぐらいだから、今は二十五歳ぐらいか。 学者肌の勇者で、俺とは昔働いていた勇者学院での旧知の仲である。 レナードが連れている生徒は、男子が二人、女子が二人だった。 うちはそもそも三人しか生徒がいなかったから三人での登録だが、普通の出場校はレギュラー選手三名と補欠選手一名を加えた選手四名でエントリーする。 「ブレット先生のところは、女子三名での参加ですか? というかブレット先生、王都に転勤したと記憶しているのですが」 「いやあ、これがまた転勤になりまして。一年前からリット村って小さな村の勇者学院でこいつら相手に教えてるんですよ」 「ほう......」 レナードは何かを思ったようだったが、それは口に出さずに飲み込んだらしい。 代わりに俺に耳打ちで、こんなことを言ってきた。 「......それにしてもブレット先生、これまたえらい美少女揃いですね。......まさか、手出ししたりしてないでしょうね」 「おうこらレナードてめぇ俺のことなんだと思ってんだ表出ろや」 「ははは、冗談ですよ」 俺に襟首をつかまれても、やわらかい笑顔でかわすレナード。 相変わらず食えんやつだ。 「ったく......。けどレナード先生、ここにいるってことは、レナード先生のところも最強新人勇者決定戦に出場するってことですよね?」 レナードの勤務地は、大会常連の強豪校というわけではなく、わりと小規模な都市の勇者学院だったはずだ。 普通だったら参加はしてこないところだが── 俺の言葉を聞いたレナードは、指先でくいと上げた眼鏡を光らせつつニヤリと笑う。 「ええ、もちろん。ふふふ......今年のうちの子たちは強いですよ。大方の予想を覆す、大番狂わせを見せて差し上げましょう」 「ほう。そりゃ頼もしい」 「そう言うブレット先生のところはどうなんです? 教え子たちに世界のレベルを体感させるために敢えて参加させる、なんてこともブレット先生ならやりかねませんが」 レナードがそんなことを言ってくるので、俺もニヤリと笑って返してやる。 「ま、それは実戦を見てのお楽しみってことで。ただ、ひとつだけ言っておくと──めちゃくちゃ強いですよ、うちのやつら」 「ほほう、ブレット先生がそう言うなら相当のものなのでしょう。これは侮れませんね」 「ふふふ、ぶつかったときには、お互い 「ええ、もちろんです」 ごごごごごっ......! 俺と眼鏡、もとい、俺とレナードが額をつっつき合わせ、気迫をぶつけ合う。 手では握手をしているが、要は宣戦布告だ。 ちなみに教え子たちはと見ると、もうちょっとのんびりした様子だった。 うちの三人は、イリスが持ち前の人見知りを発揮してリオの後ろに隠れ、メイファも何となく矢面に立つのを嫌がってリオの後ろに隠れ、つまりはリオが前面に立つことになっていた。 一方の相手方の生徒たちはというと、リーダーらしき少年が前に出て、リオに握手を求める。 「やあ、キミがチームのリーダーかな? 僕はアレックス。今日は正々堂々と戦おう」 「おう。オレはリオ。こっちは妹のイリスとメイファだ」 リオは握手を受けながら、後ろに隠れた二人のことも紹介する。 少年──アレックスは驚いた顔をした。 「えっ......姉妹? そうは見えないな......いや、確かにみんな可愛らしいけど」 アレックスがそう言うと、彼の後ろからひとりの少女がアレックスの後ろ膝を蹴った。 「痛っ! 何するんだよヘレナ」 「うっさい! なぁにが『やあ、みんな可愛らしいね』よ。色目使っちゃって。あーやだやだ」 「別に色目を使ったつもりは......それに僕の言った台詞と微妙に違う......」 「うるさい! アレックスのバカ!」 「ふっふーん、今日も二人はお熱いですなぁ」 さらに後ろから、別の少女が茶々をいれに入った。 そして向こうのチームの生徒たちで、ワイワイと始めてしまう。 俺はそれを見て、ふっと微笑ましい気分になった。 レナードに向かって言う。 「いい子たちですね、レナード先生」 「ええ、自慢の教え子たちですよ。ブレット先生のところは、大人しい子が多いのかな」 「いやぁ、こう見えて本当はやんちゃなんですよ。......ほら、こんな風に」 そう言った俺の腕には、メイファが恋人のような仕草でしなだれかかり、抱き着いてきていた。 そしてメイファは俺に向かって、にやぁっと笑う。 よし、来やがったな? 俺はそんなメイファの首根っこをもう片方の手で引っつかまえて、猫のようにして持ち上げた。 俺に首根っこをつかんで持ち上げられたメイファは、ジタバタにゃーにゃーと暴れる。 「......ううっ、屈辱。......お兄さんのボクへの対応力が、上がっている」 「どれだけ一緒にいると思ってんだよ。慣れもするわ」 油断も隙もあったもんじゃねぇけどな。 メイファのやつは、隙あらばこっちの社会的立場を殺しに来るからな。 静かなる殺し屋 ちなみに、それを見たレナードはハハハと乾いた笑いを浮かべており、向こうの生徒たちは目を真ん丸くして俺たちのことを見ていた。 はいはい、見世物じゃないからな、散った散った。 ──とまあ、そんなやり取りをしながら、俺たちは試合の時間を待った。 ちなみにリオたちはAブロックで、レナードの教え子たちはBブロックなので、決勝まで行かないと当たらない組み合わせだ。 お互いどこまでやれるか、だな。 そして、ついにリオたちの出番がやってくる。 もうすぐ第四試合だというので、係の人が呼びに来た。 主役はリオたち三人だが、俺もセコンドとしてついていく。 俺は競技グラウンドへと続く石造りの廊下を、教え子たちのあとについて歩いていった。

38 Lesson 38 The venue for the most powerful rookie brave fights is a large arena in the corner of the Wang capital. The capacity of the audience exceeds 10,000 people loosely. Me and my godchildren leave the inn in the morning and enter the venue. Upon completion of the opening ceremony, he was immediately passed to the modem and given the schedule for today's tournament. One modem is to be used jointly by the four schools. There were already ten students and teachers in the slightly wider room we were put through, each preparing for a match in the corner of the room. When I take my godchildren to the corner of the gallery, I watch the tournament schedule they give me. "Is our first match the fourth? You'll be here soon." Rio, Illis and Mayfa were almost in a snarling position to me, glancing at the booklet of the tournament schedule in my hands with interest. Around twenty to thirty schools from the College of Brave Men throughout this country participate in the strongest newcomer brave men's decision battle, which is a school confrontation. This year's participating schools are apparently twenty-seven. The tournament schedule also includes a tournament table, according to which the first battle of our Brave Men's College, Lit Village College, was with Game Four. The strongest rookie brave fights take place in tournament form. Twenty-two of all twenty-seven schools, with the exception of five that have received seeds due to past good grades, result in a total of eleven games being played as the first match. In addition to winning schools in WWI, WWII also had eight matches in which Seed schools participated. Game three is the quarterfinals, four games. Game four is the semifinals, two games. And Game Five is the final. It should be noted that the College of the Brave, which participates in competitions, is basically a mighty school everywhere. There are rare exceptions, but unless you're usually confident you can win through to some extent, you're not coming to the strongest rookie brave decision. This is one of the reasons why expeditions and days are expensive, but above all because the strongest newcomer brave fights are strong in nature as spectacles (shows) and there is a culture that can be seen with a white eye if schools with no strength compete. Although it is not a bad taste due to the breath of the Brave Men's Association around here, it can also be seen as a place where high levels of matches of strength are played from the first battle. Well, in any case, the important thing is that almost all of the twenty-seven participating schools are all powerful. And there 's-- Another school, another College of the Brave Students, came into the pantry. "Oh, is that Dr. Brett? Long time no see." It was the teachers who led those students who had spoken so loudly. I'm driven by nostalgia when I see it. "Oh, isn't that Dr. Leonard? How are you? Are you losing weight again? Are you eating properly? "Ha, well said, every time I see you like that, if you were thin, you'd be the only one with bones. Dr. Brett seems the same, above all else." Leonard is a long, skinny male teacher with square glasses. I'm about 25 now because I'm a little older than I am. A scholar-skinned brave man, I am an old academy of brave men who used to work with me. The students Leonard was taking were two boys and two girls. We registered for three because we only had three students in the first place, but the regular school of attendance enters with three regular players and four additional alternates. "Is Dr. Brett's place for three women? Or Dr. Brett, I remember you transferred to Wang Du." "Hey, this is another transfer. Lit Village has been teaching these guys in a small village, Brave Men's College for a year now." "Hmm..." Leonard seemed to have thought of something, but it seems he swallowed it without putting it in his mouth. Instead he slapped me in the ear and said this to me. "... Yet again, Dr. Brett, you have all these beautiful girls.... I don't think you're giving it away." "Oh, this is Leonard. I thought you meant me. Get out." "Ha, I'm just kidding." Leonard smiles softly, even if he grabs me by the collar. It's the same eater. "Damn...... But, Dr. Leonard, being here also means that Dr. Leonard's place will compete in the most powerful new brave fights, right? Leonard's place of work should not have been a regular tournament school, but a brave college in a small city. If it was normal, I wouldn't be joining you. Leonard, hearing my words, laughs niggly as he shines up his glasses, which he lifts with his fingertips. "Yeah, sure. Hehe... My kids are strong this year. Let me show you the madness that overshadows our expectations." "Wow. That's reliable" "What about Dr. Brett? I dare you to join me to make my teachers feel the level of the world, for God's sake, Dr. Brett could do it." Leonard's gonna say that, so I'm gonna laugh and give it back to you, too. "That's a real pleasure to see. I just want to say one thing... it's so strong, my guys." "Ho, if that's what Dr. Brett says, it must be considerable. This is not an insult." "Heh heh, when we hit each other, let's fight each other's bravery (bravership) squarely" "Yes, of course." Oops...! Me and my glasses, my legs, me and Leonard clasp their foreheads and bump each other's temper. I shake hands with my hands, but the point is to declare war. By the way, the teachers looked a little more relaxed. Our three hid behind Rio with Illis showing his prior people-familiarity, and Mayfa also somehow hid behind Rio reluctantly to stand on the arrow, which meant that Rio was supposed to stand in the front. According to the other student, the leader-like boy comes forward and asks Rio to shake his hand. "Hey, are you the leader of the team? I'm Alex. Fight with dignity today." "Oops. I'm Rio. This is my sister Iris and Mayfa." Rio also introduces the two hidden behind him, shaking hands. The boy, Alex, looked surprised. "What... sisters? Doesn't look that way...... no, they sure are all adorable though" When Alex said that, one girl from behind him kicked Alex in the back knee. "Ouch! What are you doing, Helena?" "Ugh!" Hey, you're all cute. "I used the color of my eyes. Oh, no." "I meant to use another color... and subtly different from the dialogue I said..." "Shut up! Alex's idiot! "Hmm, you two are still hot today" From further behind, another girl entered the tea house. And the students on the other team, they start with Wye. I saw it and felt so smiling. I say to Leonard. "Good boys, Dr. Leonard." "Yeah, I'm proud of my godchildren. I wonder if Dr. Brett has a lot of big kids." "Hey, it's really a mess to look like this.... See, like this" That said, in my arms, Mayfa was snuggling around like a lover, and she was holding me. And Mayfa turns to me, and she laughs at me. All right, now you're here, huh? I grabbed Mayfa's root like that with my other hand and lifted it like a cat. Mayfa, who grabbed me by the root and lifted me, runs rampant with a jittery. "... Ugh, humiliation. ... your brother's responsiveness to me is increasing" "How much do you think we're together? I'll get used to it." There wasn't an alarm or a gap. The Mayfa one, if there's a gap, will come and kill our social position. Silent Assassin Mayfa. By the way, Leonard had a dry laugh when he saw it, and the students over there were looking at us with their eyes rounded. Yes, yes, because it's not a spectacle, scattered. - Well, with that exchange, we waited for the time of the game. By the way, the Rio's are Block A, and Leonard's godchildren are Block B, so it's a combination that won't hit until the finals. How far can we go with each other, huh? And at last, Rio's turn is coming. He said it was almost game four, so the clerk came to get him. The three stars are Rio, but I follow them as a second, too. I walked down the stone corridor to the competitive ground, after my godchildren.

第56話 俺と三人の教え子たちは、街に到着するとまずは勇者ギルドへと向かった。 勇者ギルドの受付でステータス検定を受けに来た旨を伝えると、四人分のゼッケンを渡される。 「ステータス検定の会場では、こちらのゼッケンの番号で呼ばれます。検定会場は街の中央西寄りにある競技場ですので、準備ができましたらそちらへ向ってください」 受付嬢から笑顔でそう伝えられた俺たちは、勇者ギルドをあとにして、測定会場である競技場へと向かった。 ちなみに、ギルドを去り際に受付嬢同士でのこんなやり取りが聞こえてきたりもした。 「きゃーっ! ねぇ聞いて聞いて! 私またあのブレット・クレイディルと話しちゃった! でもホントあの人ヤバくない!? 強くてカッコ良くてしかも先生とか、どんだけって感じだよね!」 「そうだね、主にあんたのミーハーっぷりがどんだけって感じだよね。あと声が大きい」 「それにあの三人の女の子たちも、見るたびにぐんぐん綺麗になっていってるし! きっと恋とかしてるんだろうなぁ......! ああ、めくるめく禁断の師弟愛の世界......次のコミフェスで出す薄い本の妄想が捗るわ......!」 「うん。ホントあんた一度逮捕されたほうがいいよね。あと声が大きい」 なんのこっちゃという話であるが、まあ気にしないことにして外に出た。 勇者ギルドから競技場までは、歩いて数分だ。 俺は三人の教え子たちを連れて会場へと向かい、やがて現地へとたどり着いた。 この街にある競技場は、王都の最強新人勇者決定戦を行った会場よりは多少手狭だが、それでもあれこれの運動競技を行うのに十分なだけの広さがある。 その競技場のあちこちで、様々な測定が行われていた。 百メートル走や、反復横跳び、砲丸投げ、魔力測定などなどだ。 これら複数のテストの総合点から、勇者協会が作った独自の計算式にもとづいて、勇者のそれぞれのステータスが算出される。 例えば「敏捷性」のステータスは、百メートル走や反復横跳びなどのテストの総合点から導き出されることになるわけだ。 俺たちは競技場の入り口で登録名やゼッケンの番号を確認されると、まずは百メートル走のコーナーに向かうよう指示された。 ちなみにそのときの受付は二人いたが、片方の女の子は勇者ギルド職員の仕事を始めたばかりの新人なのか、受付作業がいろいろと手際が悪くて、俺のときも少し時間がかかった。 リオたちと同い年ぐらいの子だ。 自信なさそうにおどおどとしている感じは、どこか一年前のイリスにも似ている気がする。 まあ、誰しも新人のときはあるし、最初から仕事のできる子ばかりじゃない。 こういう子もまた、失敗と経験を繰り返して成長していくわけだ。 俺は不手際を申し訳なさそうにするその子に「ありがとう。頑張ってな」と一声かけていく。 俺のあとに続いたイリスも、「うん、大丈夫だよ」と声をかけたようだった。 その受付の子は、顔を真っ赤にして俺とイリスに向って「すみません、すみません」と言ってぺこぺこと頭を下げてきた。 彼女のフォロー役と思しきもう一人の女性職員も、手際よくリオとメイファの受付を済ませると、俺とイリスに向ってぺこっと頭を下げてきた。 いやぁ、なんか和むな、こういうの。 どんな仕事でも、人を育てるのって楽じゃない。 何事も教えるだけでは身にならず、実践と経験が必要だし、そのためにはどこかで補助輪を外して本人の力でやらせていかなきゃいけない。 「お客さんは教材じゃない」という考え方も分かるんだが、俺は教師という職業柄もあってか、仕事を教える側と、仕事を学ぼうとしている新人の側に感情移入してしまう。 まあいずれにせよ、多少の不手際ぐらいは大目に見るのが良識ある大人ってものだろうと思うが── だがどうやら、そのとき俺たちの後ろに並んで順番待ちをしていた勇者は、俺と同じ考えの持ち主ではなかったようだ。 「チッ、遅っせぇなぁ。モタモタしてんじゃねぇよ愚図が」 俺たちが競技場の受付から出て、百メートル走のスタート地点へと向かおうとしたとき、背後からイライラとしたような男の声が聞えてきた。 振り返って見れば、そこにいたのは三十代中頃ぐらいの体格のいい男だった。 男は見るからに不愉快そうな表情を浮かべ、タン、タン、タンとせわしなく足を踏み鳴らしている。 新人らしき受付職員は、泣きそうな顔で「あ、あの、すみません......」と謝っていたが、男は「すみませんじゃねぇよ! 早くしろっつってんだよ!」などと急かし、そのせいで新人職員の手が震えてペンを取り落としたりと、見事な悪循環に陥っていた。 そこにもう一人の職員が慌てて助けにいく。 「すみません。その子まだ新人なもので。こちらで手続きをやり直しますので......」 だがその職員の言葉にも、男は苛立ちの言葉を向ける。 「はぁ? 新人とかこっちには関係ないよな? お前たち勇者ギルドにとって俺たちは何だ。客だよな? ちゃんと仕事できるように教育してから客の前に出すのが『当たり前』じゃねぇのかよ、なあ?」 男はそのように職員を問い詰める。 職員はうつむき、ただただ耐えるようにしてその言葉を聞いていた。 ......ダメだ。 さすがに見ていられない。 男の言い分は一見正論のようであるが、まず教える側の教育人員や教育時間が無制限に潤沢であることを前提にしている点でおかしい。 その業種の資金繰りにもよるのだが、例えば初期教育に三ヶ月ぐらいみっちり使って基礎を教えられるような潤っている業種と、教育三日目ぐらいには現場に出して失敗しながら学ばせなければ回らないような人手も人件費もカツカツの業種とでは、まったく話が変わってくる。 勇者ギルドの人件費その他の予算は国防費──すなわち国民が支払う税金から出ているわけだが、勇者活動に割り当てられる国防費のほとんどは俺たち勇者の仕事に対して支払われるため、勇者ギルドに割り当てられる予算は多くはない。 であれば、教育のための人手も教育時間も、そう潤沢には使えないだろう。 まあそもそも、勇者ギルドから魔王退治の仕事の斡旋を受けて報酬を受け取る魔王ハンターが「客」だという話もおかしいのだが......。 いや、仮に客だったとしても、あの態度はないだろう。 ベテランの女性職員さんも、まずいと思ってカバーに入って新人の不手際に対して頭まで下げているのだから、それ以上の文句をつけるのは明らかに度が過ぎている。 そう思った俺は、戻って口を出そうとしたのだが、そのとき── 「おい、おっさん! テメェも勇者じゃねぇのかよ!」 俺より先に、リオがそう口を開いた。 リオはつかつかと男の前まで歩いていって、目と鼻の先まで近付くと、頭一個分も大きな男を睨み上げる。 男は一瞬怯んだようだったが、すぐに気を取り直したようにリオに言葉を返す。 「あぁ......? なんだクソガキ、お前には関係ねぇだろうが。すっこんでろ」 「嫌だね。いい歳した勇者が弱い者いじめしてんじゃねぇよバーカ! 今すぐこの人たちに謝れよ!」 「なんだと......? おいメスガキ、今なら大人に失礼な口を聞いたことを許してやる。ここで土下座して、俺に謝れ」 「はっ、バッカじゃねぇの? 言ってて恥ずかしくねぇ? 大人の勇者のつもりなら、ちったぁ兄ちゃんみたいな立派な勇者を見習えよな」 そう言ってリオは、ビッと俺のほうを指さしてくる。 男の視線が、俺のほうへと向いた。 男は俺に向かって口を開く。 「......おう、そこの若いの。お前、勇者学院の教師か何かか? このクソガキはテメェの教え子か? 礼儀がなってねぇぞ、ちゃんと躾けとけ」 男はそう言って、俺を睨みつけてくる。 俺はそれに対し、さらっと言葉を返した。 「いやぁ、リオの言うとおりだと思いますよ。いい歳した勇者がその態度はないでしょ。 俺のその対応に、今度こそ男の怒りが沸点に達したようだった。 男は顔を真っ赤にすると、リオを無視して俺のほうに向かって歩み寄ってくる。 そして俺の目の前まで来ると、男は俺の胸倉をつかみ上げた。 「おう若造。喧嘩売ってんのかテメェ?」 「や、勇者として『当たり前』の心構えを説いただけですけど。そもそも魔王ハンターにとって、勇者ギルドは仕事を斡旋してくれる『お客さん』ですよね。あんたの言い分に従うなら、ちゃんとした勇者として教育されてからお客さんの前に出るのが『当たり前』じゃないんですかね」 「ぐっ......! ──テメェ、どうやら痛い目を見なきゃ分からねぇようだな!」 反論に詰まった男は、俺の胸倉をつかんでいないほうの右手で拳を握り、俺の顔面めがけて殴りかかってきた。 そう速くはない、並みの勇者のパンチだ。 俺はその拳を、左手でパシッと受け止める。 「なっ......!? ──ぐぁああああっ!」 俺が受け止めた左手に力を入れて男の拳をにぎってやると、男はがくりと膝をついて痛がった。 俺が手を離してやると、男は四つん這いになって慌てて俺から離れ、振り向きざま再び俺を睨みつけてくる。 「はぁっ、はぁっ......て、テメェ......何者だ!」 「何者って、さっきあなたが言っていたじゃないですか。勇者学院の教師ですよ」 「お、俺はベテランの魔王ハンターだぞ! 勇者学院の若造教師ごときが、こんな力を持っているわけがねぇだろうが!」 うーん......。 最近分かったのだが、どうも勇者学院の教師の世間的イメージというのは、実力のない頭でっかちの雑魚勇者というものらしい。 生徒たちに教える教師が実力不足では成り立たないと思うのだが、言われてみれば、俺が勇者学院生時代に教わったレオノーラ先生以外では、勇者として高い実戦能力を持った勇者学院教師にはあまりお目にかかったことがないかもしれない。 名選手が名コーチになれるとは限らないとはいえ、それもいかがなものかなぁとは思うのだが......。 と、そのときだ。 「お、遅れてすいやせん兄貴! あっしとしたことが、寝坊しちまいやした!」 俺たちと男とが騒動を起こしている競技場入り口の受付前に、一人の小男が現れた。 そして小男は、自らが兄貴と呼んだ騒動男と俺たちとを交互に見て、男に向かって問いかける。 「あれ? そんなところでしゃがんで、何やってんですか兄貴? それにこいつら一体......。あっ、分かりやしたぜ兄貴、こいつらが生意気なんでヤキ入れようってんですね! ならあっしも加勢しやすぜ。──シュッシュッ、オラオラどうした、かかって来いよ!」 小男は何やら格闘のポーズをとって、俺たちを挑発してくる。 だがその小男を、兄貴と呼ばれた男が止めに入る。 「ま、待て、ジョニー。あんまりこう、カタギのもんに手ぇ出すもんじゃねぇ。俺たちは勇者だからな。人々の模範となるべく行動しようじゃないか」 「えっ......? あ、ああ......さすが兄貴、言うことが違いやすね。──おい分かったかお前たち。こういう兄貴みたいな立派な勇者を目指すんだぞ」 「い、いいからジョニー、さっさと受付しろ! 測定に行くぞ!」 「あっ、そうですね兄貴! あっしとしたことが、すいやせん!」 小男がベテラン職員さんのほうで手早く手続きを済ませると、兄貴と小男は連れだって競技場の中へと入っていった。 嵐が去った後のような状況にぽかーんとする俺とリオたち、それに受付の人たち。 それから受付のベテランの職員さんがはたと気付いたように、俺に向かって頭を下げてくる。 「助けてくれてありがとうございました! おかげでもう、胸がスッとしました!」 「あー、いえ。あんなのもいると大変でしょうけど、お仕事頑張ってください。俺たちが勇者活動に専念できるのも皆さんのおかげです。こっちこそ、いつもありがとうございます」 「いえいえ、そんな滅相もない......!」 受付の職員さんは、なんだかめちゃくちゃ恐縮していた。 いやでも、自分が悪いことでもなくこんな風にお礼が言えるこの職員さんとか、実際すごいと思うけどな。 世の中にはこう、当たり前にすごい人が当たり前にその辺にいるから怖い。 ともあれ俺は、リオ、イリス、メイファの三人を連れて、競技場入り口の受付をあとにし、百メートル走のグラウンドへと向かった。 ちなみにその際、メイファが俺の脇腹に肘を入れてきて、「......お兄さん、そう行く先々でファンを増やすのは、どうかと思う」などと言ってきたが、意味はいまいち分からなかった。

56 Episode 56 Me and my three godchildren, when we arrived in the city, went first to the Guild of the Brave. Tell them you're here for a status test at the Brave Alliance reception and they'll give you a foursome Zeke. "At the status test venue, it's called by this Zeke's number. The test venue is located on the city's central west side, so head there when you're ready." The receptionist told us that with a smile, we left the Guild of the Brave and headed to the arena, which is the measuring venue. By the way, I could also hear this kind of interaction between receptionists as they left the guild. "Yikes! Hey, listen, listen! I talked to that Brett Claydill again! But really, that guy doesn't suck!? Strong, cool, and besides, teacher, how much does it feel! "Well, mainly it feels like how much of your meeher. And there's a loud voice." "And those three girls are getting so beautiful every time I look at them! I'm sure he's in love or something......! Oh my twirling forbidden master world of love...... I'll make progress with the thin book paranoia I'll be putting out at the next commifest......! "Yeah. Really. You better get arrested once, right? And there's a loud voice." I'm talking about what the hell, but I decided not to care and went outside. From the Guild of the Brave to the Arena, it's only a few minutes walk away. I took the three godchildren to the venue and eventually made it to the site. The stadium in this city is somewhat narrower than the venue where Wang Du's strongest rookie brave fights took place, but it is still big enough to play that athletic competition. Various measurements had been made all over that arena. Hundreds of meters, repetitive horizontal jumps, gunshot throws, magic measurements, and more. From the overall point of these multiple tests, the status of each of the brave men is calculated based on a unique formula made by the Brave Men's Association. For example, the status of "agility" will be derived from the overall points of tests such as hundred-meter walking and repetitive lateral jumping. When we checked the registration name and Zeke's number at the entrance to the arena, we were instructed to head to the corner of the 100-meter walk first. By the way, there were two receptionists at that time, but one girl was just starting to work for a brave guild clerk, she had a lot of bad reception work and it took a little while when I was there. He's about the same age as the Rio's. I don't feel confident. I feel almost alike to Illis somewhere a year ago. Well, there are times when everyone is new, and they're not all kids who can work from the start. These kids also grow up with repeated failures and experiences. I say to the kid, "Thank you. Good luck," he calls out. The Illis that followed me also seemed to have called out, "Yeah, I'm fine". The receptionist turned his face bright red and said to me and Iris, "Excuse me, excuse me," and he bowed his head. When I finished receiving Rio and Mayfa handily, the other female employee, thinking of her as a follower, bowed her head toward me and Illis. Hey, don't soothe something, like this. It's not easy to raise people for any job. You don't just teach me everything, you need practice and experience, and to do that, you have to take off the auxiliary wheel somewhere and let me do it on my own. I also know the idea that "customers are not teaching materials," but I also have the profession of a teacher, and I get emotional on the side of teaching my job and on the side of a newbie trying to learn my job. Well, in any case, I suppose it's a sensible adult to look a little out of hand. But apparently, the brave men who waited in order behind us at that time were not the owners of the same idea as me. "Chip, I can't slow you down. It's not a mess. It's a stupid picture." As we tried to get out of the arena reception and make our way to the starting point for a 100-meter walk, we heard a frustrated man from behind. Looking back, I was there about mid thirties, a man of good stature. The man has an unpleasant look on his face to see, treading on his feet with a tan, a tan, a tan. The newbie-looking receptionist apologized with a crying face, "Oh, you know, I'm sorry..." but the man said, "You're not sorry! Come on. It's on!" and so on, and because of it, the hands of the newbie clerk shook and removed the pen, in a brilliant vicious circle. Another official there rushes to help. "Excuse me. The kid is still a rookie. We'll redo the process here..." But even to the words of the official, the man turns to irritating words. "Huh? Doesn't matter to the rookie or anything this way, does it? What are we to you brave guilds? Guests, right? Isn't it 'natural' to educate them so they can work properly and then put them out in front of their customers, huh? That's how men question officials. Officials were nagging, just trying to endure and listening to the words. ... No. I just can't watch. The man's statement seems at first glance to be a true theory, but it is strange in that it first assumes that the educators and educational hours on the teaching side are unlimited luxury. Depending on the financial flow of that industry, the story changes completely between, for example, a moist industry that can be used neatly for initial education for about three months to teach the basics, and a cutting-edge industry where people and labor costs don't go around unless they put it in the field and let it learn while failing on about the third day of education. Although the labor and other budgets of the Brave Alliance are out of defence spending - that is, taxes paid by the people - most of the defence spending allocated to brave activity is paid for the work of us brave men, so there are not many budgets allocated to the Brave Alliance. If so, neither manpower nor educational time for education will be used so lubricately. Well, in the first place, it's strange to talk about the Demon King Hunter being a "guest" who gets paid for his job of exorcising the Demon King from the Guild of the Brave... No, even if I were a guest, I wouldn't have that attitude. The veteran female employee is obviously too much to complain about any more because she thinks it's not a good idea to go into the cover and bow her head against the rookie's mischief. That's what I thought. I went back and I tried to talk, and then... "Hey, old man! Teme's not a brave man, either! Before me, Rio opened his mouth like that. Rio walks to the front of the man with a grip, and as he approaches the tip of his eyes and nose, he stares up at the big man for not a single head. The man seemed frightened for a moment, but returns the word to Rio as soon as he regained his mind. "Ah...? What the fuck, kid, I don't think it's any of your business. Stay calm." "I don't like it. A good old brave man isn't bullying the weak, you idiot! Apologize to these people now! "What...? Hey, meth kid, now I forgive you for asking adults rude mouths. Sit down here and apologize to me." "Ha, aren't you Bakka? Aren't you ashamed to say it? If you're going to be a grown-up brave man, you're going to have to apprentice a fine brave man like your brother." That's what Rio is pointing at me. The man's gaze turned toward me. The man opens his mouth to me. "... whoa, that's the young one there. You, a teacher at the College of the Brave or something? Is this fucking kid Temehe's godson? You're not being polite, just be polite." That's what the man says, he stares at me. In contrast, I returned the words. "Hey, I think Rio's right. A good old brave man doesn't have that attitude, does he? Don't you know bravery? To my response, it seemed like it was time for the man's anger to reach a boiling point. When the man turns bright red in his face, he ignores Rio and walks over to me. And when he came to my sight, the man grabbed up my chest barn. "Ooh young build. You're selling fights, Temee? "Ya, I just preached the 'obvious' mindset as a brave man. For Demon King Hunter in the first place, the Guild of the Brave is a 'customer' who mediates his work, isn't it? If you're going to follow your lead, isn't it natural for you to be educated as a proper brave man and then come out in front of your customers?" "Gu......! - - Temee, apparently you have to look into your painful eyes to understand! The man stuck in objection grabbed his fist with the right hand of the one who hadn't grabbed my chest barn and punched me in the face. Not so fast, a punch of brave men in line. I take that fist with my left hand. "Become...!? - - Guuuuuuu! When I put my strength on the left hand I took and ran through a man's fist, the man fell on his knees and hurt. When I let go of my hand, the man crawls on all fours and rushes away from me, turning around and staring at me again. "Ha, ha... and Temee... who is it! "Who are you talking about earlier? I'm a teacher at Brave Men's College." "Oh, I'm a veteran demon hunter! There's no way every young teacher at the College of the Brave has this power! Hmmm...... I recently found out that the public image of a teacher at the College of Brave Men seems to be a miscellaneous fish brave man with no strength. I don't think a teacher who teaches his students can be made up of a lack of strength, but if you ask me, other than Dr. Leonora, whom I taught as a brave college student, I may not have seen much of a brave college teacher with high practical skills as a brave man. Though it doesn't necessarily mean a famous athlete can be a famous coach, I wonder if that would be nice too...... And that's when. "Oh, don't be late, brother! The slightest thing stopped me from sleeping! A little guy showed up before the reception at the arena entrance where we and the guy were making a scene. And the little man alternates between the disturbed man he called his brother and us and asks the man. "Is that it? Crouch in there, what are you doing, brother? Plus these guys... Oh, I can see that, brother, because these guys are so busy, you're going to let them in! Then it will be easier to join the ranks. - - Shh, Olaola, what's wrong, call me! The little man poses as some kind of fighter, provoking us. But a man called my brother stops the little man. "Ma, wait, Johnny. Not much like this, you can't get your hands on a snail. We're brave. Let's act as good as we can." "What...? Oh, oh... That's right, brother, it's easy to say it differently. - - Hey, get it, you guys. You go for a brave man like your brother." "Yes, please, Johnny, just accept it! We're going to the measurements! "Oh, right, brother! It's not easy to do what you do! When the little man finished the process quickly with the veteran clerk, his brother and the little man both went inside the arena. Me and Rio, and the receptionists, getting into a situation like this after the storm left. Then, as the receptionist veteran official noticed, he bows his head to me. "Thank you for your help! Thanks to you, my chest is soothed already! "Uh, no. It will be hard to have that one, but good luck with your work. We owe it to all of you to focus on our brave activities. Thank you so much for coming." "No, there is no such extermination...! The receptionist was kind of freaking out. No, but I think it's actually amazing that this clerk who can thank you like this, not that he's a bad thing. Here's the thing in the world, I'm scared because naturally there are amazing people around there. All in all, I took three men, Rio, Ilis and Mayfa, left the reception at the entrance to the arena and headed to the ground a hundred meters away. By the way, at that time, Mayfa put her elbow in my flank and said, "... brother, I don't know if I'm going to get more fans first," etc., but I didn't really know what that meant.

第111話 リゼル武具店の応接室。 しばらく待っていると、やがて新たな客人が二人、部屋の扉をノックして入ってきた。 「あれ、ブレットさんたちじゃないっすか」 「なんだお主ら、なぜここにいる」 一人はあらかじめ聞いた通り、ドワーフの武具職人ガルドンだ。 しかしもう一人のほうが意外だった。 「ウル......? お前、なんでここに」 「リオちゃんたちこそ、どうしてここにいるっすか? うちはガルドンさんのところに行ったら、なんか流れでここにくることになったんすけど」 ガルドンと一緒に現れたのは、ウルだった。 これでこの部屋にいるのは俺たち四人とリゼル、ガルドンにウル、それにリゼル武具店の店員や黒服ボディガードという、非常にごちゃごちゃとした状態になってしまった。 その混沌とした状態を見て、パンパンと手を叩いて場を仕切るのは、この場の主であるリゼルだ。 「なんだかよく分からないけど、お友達会は別の機会にしてちょうだい。──それで、ガルドンさん。何か私に用ですか?」 リゼルはそっけない様子で、ガルドンに問いかける。 それを受けたガルドンは、ゴホンとひとつ咳払いをする。 そして、たいそうバツが悪そうにこう言った。 「あー、その、だな......。このリゼル武具店の筆頭職人であるお主、リゼルに一つ、頼みたいことがあるのだ」 びくんっと、リゼルが小さく震えたのが分かった。 そのエルフの瞳に動揺の色が宿ったのも見えたが、ガルドンはリゼルから視線をそらしており、そのことに気付いていない。 「な、何かしら。ガルドンさんが私を『筆頭職人』なんて呼んだのは、初めてのような気がするわね。いつもは『ヒヨッコ』だの『女狐』だのって言うじゃないですか?」 そわそわした様子で言うリゼル。 その呼ばれ方が、よほど嬉しかったのだろうか。 一方のガルドンもまた、リゼルから視線を外したまま、居心地が悪そうに言葉を返す。 「むぅ......そ、それは、そうだが......。ぬぐぐっ......よ、呼び方など、どうでも良かろう!」 「ま、まあそうね。ほら、いいから早く本題に入ってくださいよ。何か私に頼みに来たんでしょう?」 「分かっておるわ! いちいち急かすな、この女狐エルフめ!」 「ほら、いつものやつが出た! あーやだやだ、頼みたいことがあるって言ってきておきながら、何ですかその態度」 「むぐぐぐぐっ......!」 犬猿の仲と言えばいいのか、あるいはツンデレ同士の不毛な言い争いとでも言えばいいのか。 そのエルフとドワーフの会話を横で聞いていた俺は、ついつい頬が緩んでしまっていた。 そんな俺の服の裾を、リオがくいくいと引っ張ってくる。 「なあ兄ちゃん、これって......」 「しっ、リオ、静かに。今いいところなんだから」 俺がリオの唇に人差し指を当ててやると、リオは少し頬を赤らめて、こくこくとうなずいた。 「わっ、人差し指キス......」 「......間接キスとどっちが上かは、議論の分かれるところ」 イリスとメイファが、またわけの分からないことを言っていた。 ていうか人差し指キスってなんだよ。 そんなの聞いたこともないわ。 一方、俺たちがそんなことをやっている間にも、ドワーフとエルフのツンデレ合戦は進んでいく。 「ふんっ。そこの小僧どもが来ているということは、ひょっとすると話は聞いておるかもしれんが、あらためて言うぞ」 「え、ええ。あらためて聞いてあげます」 「うむ。あー......その、あれだ......お主、装身具系武具の製作を得意としておったな?」 「まあ、そうね。どちらかというと得意なほうですけど、それが何か?」 「いちいち煽らずに聞けんのか、この女狐め! いや、だから、その、だな......今だけで構わんから、その......ワ、ワシの仕事を手伝ってもらえんだろうかと、そう思ってお主に相談に来たのだ!」 言ったぁあああああああっ! ツンデレ赤コーナーのガルドンさん、ついに言いました! などと俺が心の中で実況を入れる中で、ガルドンはさらに続ける。 「ワシの手に余る仕事を引き受けてしまったのだ。だがワシはこの娘に、何としてでもそれを完成させると約束した。ドワーフが約束をした以上は、これは何としても守らねばならん」 そう言って、隣にいたウルの肩を叩くガルドン。 ウルはリゼルに向かって、おずおずと会釈をする。 「完成させなければならない期限まで、もう三日を切ってしまった。もはや四の五のは言っておれんのだ。リゼル、お主の力を借りたい。──頼む、この通りだ!」 そう言って、ガルドンはリゼルに向かって深々と頭を下げた。 隣にいたウルも「お願いします!」と言って、ガルドンと同じように深く頭を下げる。 それを受けたリゼルは── 「そ、そう。分かったわ。そうまでして頼まれたら、嫌とは言えないわね。私の『筆頭職人』としての腕を見込んで頼んでくるんだもの。まったくしょうがないなぁ~。そうまでして、どうしてもって頼まれちゃ、『職人』としては断れないものねぇ~」 などと言って、たいそうもったいぶった言い方で、ガルドンの頼みを引き受けたのだった。 ちなみにだが、そう言ったときのエルフ少女の顔は、ゆるっゆるに緩みきっていた。 顔いっぱいに、嬉しさがあふれ出しているという表情。 俺はそれを見て、なるほどなーと思っていた。 リゼルはおそらくずっと、「商売人」としてではなく、「職人」としての自分を誰かに──特にガルドンに認めてほしかったんだろう。 思えばリゼルは、俺が最初に会ったときから、彼女自身が作った武具のクォリティのことをかなり意識していたように思う。 俺が【目利き】のスキルで彼女が作った武具のクォリティを認めると、かなり嬉しそうにしていたし、それだけで俺を気に入ったぐらいのふしも見えた。 商売っ気とビジュアルデザインにばかりこだわっているように見えて、彼女が見てほしい本当の自分は、そこにはなかったということなんだろう。 リゼルは半ば浮足立った様子で、ガルドンに聞く。 「け、けどガルドンさん。いつも私のことを『ヒヨッコ』って言うのに、どうして私を頼ろうなんて思ったの? ガルドンさんみたいな一流の職人が、私みたいな『ヒヨッコ』を頼る必要なんてないんじゃないかしら?」 「ぐっ......いちいち引っ掛かる言い方をしおって。ワシがお主を『ヒヨッコ』と呼ぶのはな、まだまだお主が発展途上で、街一番だなどと有頂天になって修練を怠ったりしなければ、これからもどんどん伸びていくと思っておるからだ! だいたい装身具系と衣服系防具の製作技術に関しては、すでにこの街では随一の経験と知見を持っておるだろうが! 職人の技術を見るワシの目を節穴だと思っておるのか、侮りおって!」 「はぁあ!? だったら最初からそう言ってくださいよ! これだからドワーフは! 私はあなたに、職人としての私なんて全っ然認めてもらえていないと思っていたんですけど!?」 「ふんっ、だからどうした! 他人からの評価を気にするなど、お主が職人としてヒヨッコである良い証拠だ! 職人ならば己が良いと思ったものは誰がなんと言おうと──」 キャンキャン、ギャーギャー、ワーワー。 エルフとドワーフの武具職人は、互いに角を突き合わせ、言い争いを始めてしまった。 うん、どこかで見た光景だな。 しかしそんな二人の様子は、喧々諤々やり合いながらも、どこか楽しそうであるようにも見えた。 俺はその二人の姿を見て、「遮光の首飾り」の製作はこの二人に任せておけば大丈夫だろうなと確信していたのだった。

111 Lesson 111 Reception room at the Riselle Martial Arts Store. After waiting a while, two new guests eventually came in, knocking on the door of the room. "Isn't that Mr. Brett and the others?" "Oh, my God, why are you here?" One, as I heard beforehand, is Gardon, a Dwarf martial artisan. But the other one was more surprising. "Ur......? Why are you here?" "Why are you here, Rio? When we went to Mr. Gardon, we were supposed to come here with some kind of flow." It was Ur who showed up with Gardon. Now the four of us in this room are in a very messy state: Liselle, Gardon, Ur, and Liselle Martial Arts Store clerk and Black Clothes Bodyguard. Seeing that chaotic state, it is Liselle, the Lord of this place, who slaps the bread and hands to divide the field. "I'm not sure what it is, but I need you to give me a chance at your friends' party sometime. - So, Mr. Gardon. What can I do for you? Liselle doesn't look that way and asks Gardon. Gardon, who took it, coughs one up with Gohon. And here's what the bat said looking bad, most of the time. "Uh, you know... There's one thing I'd like to ask of you, Liselle, the master craftsman of this Liselle armor store." I could see Liselle trembling a little. I could also see the colour of agitation dwelling in that elf's eyes, but Gardon was distracting himself from Liselle and was unaware of it. "Hey, I wonder what it is. I feel like this is the first time Mr. Gardon has ever called me 'the lead artisan'. You always say it's 'Hiyoko' or 'Woman Fox', right? Liselle says in a twitchy way. How glad I was to be called? Gardon, on the other hand, also returns the words uncomfortably, keeping his gaze off Liselle. "Mmm... well, that's, yeah... Stuff...... I don't care how you call it! "Well, yeah. Look, just get down to business. You came to me for something, didn't you? "I know! Don't rush me, you fox elf! "Look, the usual one's out! Oh no, what is that attitude while you say you have something to ask for?" "Muggle...! Should I say we are friends of the dog monkeys, or a barren argument between the tundeles? I was listening to that elf-dwarf conversation on the side, and my cheeks were getting loose. He pulls the hem of my clothes like that, and Rio's a pain in the ass. "Hey brother, what is this..." "Shh, Rio, be quiet. It's a good place." When I put my index finger on Rio's lips, Rio blushed a little and nodded. "Wow, index finger kiss..." "... Indirect kissing or whichever is above is where the debate divides" Iris and Mayfa said something that I don't understand again. I mean, it's an index finger kiss. I've never even heard of that. Meanwhile, while we're doing that, the Dwarf and Elf Tundre match goes on. "Huh. I know you heard the lads coming, but I'm gonna say it again." "Yeah, yeah. I'll ask you again." "Uhm. Uh... well, that's it... Lord, you specialize in the production of costume-based weapons? "Well, yeah. You're either better at it, but what's that? "Either you listen without stirring up, you fox! No, so, you know... I don't mind right now, so... Wah, I was wondering if you could help me with my job, and that's why I came to talk to your Lord! I said, "Oh, my God!" Mr. Gardon in the Tundele red corner, finally said it! Gardon goes on and on as I put reality into my mind, for example. "I've taken on extra work in my hands. But I promised this girl that I would finish it at all costs. This must be kept at all costs, beyond what Dwarf promised." That's what I said, Gardon tapping Ur's shoulder that was next door. Ur turns to Liselle for an interview with an aunt. "I've run out of three more days until the deadline I have to complete. No more four or five. Liselle, I want to help you with your Lord. - Please, you're right! That being said, Gardon bowed his head deeply toward Liselle. And Ur, who was next door, said, "Please!," he says, bowing his head as deeply as Gardon. Liselle, who took it... "Oh, yeah. All right. If you ask me to do that, I can't say no. I'm going to ask you for my arms as a" foreman. "I can't help it at all. Until then, how could you ask me to, as an 'artisan' I can't say no?" He took on Gardon's favor in a lot of ways, saying things like that. By the way, when I said that, the elf girl's face was loose. Full of faces, the look of joy overflowing. I saw it, I thought. Liselle probably always wanted someone - especially Gardon - to recognize herself as a "craftsman," not as a "merchant." It seems to me that Liselle has been quite aware of the quality of the weapons she made herself since the first time I met her. When I admitted the quality of the martial arts she made with my [eye-catching] skills, I looked pretty happy, and that's all I saw was pretend to like me. I guess the real me that she wants me to see, seemingly obsessed with business and visual design all the time, is that it wasn't there. Liselle looks half afloat and asks Gardon. "Ke, but Mr. Gardon. Why did you think to rely on me when you always called me 'Hiyoko'? Wouldn't it be necessary for a leading craftsman like Mr. Gardon to rely on a 'hyocco' like me? "Gu...... whichever way you say it gets hooked. I call you" Hiyoko "because I think that if you don't fail to train because you are still developing and the city is the best, etc., you will continue to grow and grow! Although I would already have some of the best experience and knowledge in this city when it comes more or less to the technique of making fitting-based and clothing-based protective equipment! Look at the craftsmanship. You think the eye of the eagle is a milestone, insult me! "Huh!? Then say so from the beginning! This is why the Dwarves! I thought you didn't recognize me as an artisan at all!? "Huh, so what's up! Good proof that your Lord is Hiyoko as an artisan, such as worrying about ratings from others! I don't care who says what the craftsmen think is good for them." Cancer, gagger, warwer. The elves and Dwarves' martial arts artisans had cornered each other and started to argue with each other. Yeah, that's a sight I saw somewhere. But the two appeared to be having some fun, even as they hung out in the hustle. When I saw the two of them, I was convinced that I would be fine if I left the production of the "blackout necklace" to these two.

第117話 ブレットが戦闘を始めるより少し前まで、時間は遡る。 イリスはブレットから指示を受け、牢獄の石壁に鎖で繋がれたウルのもとへと駆け寄っていた。 「ウルちゃん、よく頑張ったね。痛かったよね。今治療するから、つらいと思うけど、もうちょっとだけ痛いの我慢してね」 ウルの前まで来たイリスは、彼女自身が泣きそうなぐらいの同情を寄せてウルの心配をする。 だがそれにウルは、肩に刺さったナイフの痛みで脂汗を浮かべながらも、首を横に振る。 「い、イリスちゃん......うちは大丈夫っすから......ブレットさんたちを、手伝って──うぐぅっ......!」 みなまで言う前に、痛みで言葉を途切れさせてしまうウル。 イリスは余計に心配そうな表情を浮かべる。 「もう、バカなこと言わないでよ! ごめんね、ナイフ抜くから、今だけ痛いの我慢してね」 「だ、大丈夫......いぎっ......ぁあああああっ!」 イリスがウルの肩に刺さったナイフをひと思いに引き抜いた。 それでイリスの手にはべったりと赤い血がついてしまい、その顔や衣服にも血が跳ねたが、少女は気にすることなく作業を続ける。 「はぁっ......はぁっ......う、うちのことは、いいから......イリスちゃん......」 「先生たちなら大丈夫だから、静かにしてて。今、楽にしてあげるからね。──【 イリスはナイフを床に投げ捨て、ウルの患部に両手を当てて精神集中、自身が持つ最高水準の治癒魔法を行使する。 強力な治癒の光が、ウルの肩の傷をみるみるうちに癒していった。 そして数秒もしない間に、ウルが受けた重傷は完全に塞がってしまう。 それどころか、イリスが手を当てた直接の患部以外の小さな負傷も、すべて綺麗に癒されてしまった。 「す、すごい......イリスちゃん、聖女様みたいっす......」 「もう、こそばゆいよ......。それより、もう痛むところはない? 鎖も魔法で切るから、ちょっと待っててね」 「う、うん......って、そうじゃないっす! だからイリスちゃん、うちのことなんかより、ブレットさんたちの方を手伝ってあげてくださいっす! もううちは本当に大丈夫っすから!」 ウルがそう必死に伝えると、イリスは困ったように眉をハの字に曲げた。 「あのね、ウルちゃん。さっきも言ったように、先生たちは大丈夫だから。心配しないで」 「大丈夫って......!? だって、三対八っすよ! 勝てるわけないっす!」 ウルはなおも訴えるが、イリスはきょとんとした様子でこう答えた。 「なんで?」 「え、なんでって......」 相手に、先生たちが負けるはずなくない?」 「は......? ざ、雑魚......?」 イリスもまた首を傾げた。 「んー、まぁいいや。心配なら一緒に見てようか。もし万が一危なくなるようなら、私も助けに入るから」 そう言ってイリスは、光属性の攻撃魔法【 相対するトータル十一人の勇者たちは、戦闘に入る直前のピリピリとした空気で、互いに険悪な会話をしているところだった。 「はぁ......。でもあの“疾風”ゲイリーっていうやつ、めちゃくちゃ速くてめちゃくちゃ強かったっすよ。うちは獣化した状態でも、あいつ一人に完全に遊ばれたっす......」 「あー、そうだね。あいつだけは『ちょっとだけ』強いかな。──でもねウルちゃん。私とリオとメイファの三人で、二ヶ月ぐらい前に『最強新人勇者決定戦』っていうのに出場したんだけど」 何の話が始まるのかとウルが不思議に思って聞いていると、イリスは二本目の鎖を焼き切りつつ、こう続ける。 「それの決勝戦で、私たち、三人の強敵とぶつかったの。“剛剣”アドルフ、“女王”ドロシー、“銀狼”ジェイクっていう三人でね。その中で“剛剣”アドルフが一番強かったんだけど──あの“疾風”ゲイリーっていう人、多分アドルフにも及ばないよ。せいぜいあの当時のドロシーちゃんやジェイクと同じぐらいじゃないかな」 自分が知らない大会の話なので、うまくイメージが湧いていなかった。 だがイリスは語るのが楽しくなっていて、そんなウルの様子には気付かない。 イリスは両腕の鎖を切り終えた後、今度はウルの足を拘束している鎖に取り掛かりながら、話を続ける。 「でね、それが学生レベルの勇者大会。私たち三人はそれに優勝したんだけど──」 「ゆ、優勝!? イリスちゃんたち、勇者の強さを競う大会で、優勝したんすか!?」 「うん、まぁね。でもそれも、ぜーんぶ先生のおかげ。──だけどねウルちゃん、先生はそんな私たち三人が束になってかかって、ようやく相手になるかどうかっていうぐらいすっごく強いの。だから心配しないで」 「ふぇぇっ......うち、そんなすごい人のお世話になってたっすか......」 「そういうこと。先生はすごいんだから。ウルちゃんももっと先生に感謝していいよ。私も今後ずーっと、先生の従者として、しもべとして、なんなら奴隷として、先生に一生尽くし続けることを心に決めてるんだから♪」 そう誇らしげに語り、胸を張るイリス。 ちなみにウルを拘束していた鎖は、すでにすべて彼女の魔法によって断ち切られていた。 自由を得たウルは、そんなイリスの姿に何かの熱心な信者のようなものを感じてしまい、困ったようにあははと笑う。 「じゃ、じゃあ、あれっすね。イリスちゃんにとって、ブレットさんは神様みたいなものなんすね」 それはウルの口から、なんとなく出てきた言葉だった。 だが──びくんっ。 それを聞いたイリスの体が、電撃に撃たれたように跳ねた。 あれ、自分は今、何かまずいことを言ったかな......? 狼人間 「そう、それだよウルちゃん! ウルちゃん良いこと言った! そのとおりだよ! 私にとって先生は、私が一生を尽くして仕えるべき神様なの! それだよ!」 呆れるウルの前で、美少女三姉妹の次女は瞳をキラキラと輝かせ、うっとりとした表情を見せる。 「ああ......そうだわ。私は先生という神に一生尽くし続ける敬虔にして従順なる信徒として、先生にたっぷりとご奉仕するためにこの世に生まれてきたの。だから私の身も心も、全部先生のもの......私は先生のために存在するの......」 「あの......イリスちゃん......? 大丈夫っすか? だいぶトリップしているように見えるっすけど......」 「ウルちゃん、先生教はいつでも門戸を開いているけれど、一番の信徒の一人は私だから、それだけは忘れないでね。私が一番、ウルちゃんは二番」 「イリスちゃん、ちょっと落ち着くといいっすよ......?」 「これが落ち着いていられるわけない! だってこの世の真理を、私が生きる意味を見つけてしまったんだもの!」 「あ、ダメっすねこれ......しばらく止まりそうにないっす......。──でもイリスちゃん、ブレットさんは良くても、リオちゃんとメイファちゃんの方は大丈夫なんすか? 大人の勇者相手に、二対六っすよ......?」 それを言うと、イリスははたと正気に戻ったようになって、その瞳に理性を取り戻した。 「んー、まあ、大丈夫なんじゃないかな」 「大丈夫っすか」 そんな二人が視線を向けた先──地下牢の廊下では、ついにバトルが動き始めていた。

117 Lesson 117 Until a little before Brett started the fight, time goes back. Iris was instructed by Brett to rush to Ur, chained to the stone wall of the prison. "Well done, Uru. It hurt, didn't it? I'm going to treat it now. I know it's hard, but it's just going to hurt a little bit more. Just be patient." Coming all the way before Ur, Iris worries about Ur with so much sympathy that she herself is about to cry. But Ur shook his neck sideways, still sweating with the pain of a knife stabbed in his shoulder. "Yes, Iris... we'll be fine... help Mr. Brett and the others... Ugh...! Before I say it to everyone, Ur interrupts the words with pain. Iris gives an unnecessarily worrying look. "Don't say anything stupid anymore! I'm sorry, I'm gonna pull the knife out, but it's only hurting now. Just be patient." "Oh, it's okay... it's too... ahhh! I pulled the knife that Illis stabbed on Ur's shoulder into one thought. So there was red blood on Iris' hands, and blood jumped on his face and on his clothes, but the girl continued to work without worrying. "Ha... Ha... uh, about us, okay... Iris..." "The teachers will be fine, so be quiet. I'll make it easier for you now. - - [Ultimate Healing (Ultimate Heel)]!" Iris throws the knife on the floor, puts his hands on Ur's affected area and exercises mental concentration, the highest standard of healing magic he has. A powerful healing light healed Ur's shoulder wound as he looked at it. And in less than a few seconds, the serious injuries that Ur suffers will be completely blocked. On the contrary, all the minor injuries other than the direct injuries placed by Illis on his hands have been beautifully healed. "Shh, wow... Illis, you look like a Virgin..." "I'm so excited... Better than that, where does it hurt anymore? I'll magically cut the chain, too, so wait a minute." "Ugh, yeah...... you don't! So, Iris, I need you to help Mr. Brett and the others, more than anything about us! Because we're really gonna be okay now! When Ur told him so desperately, Iris bent his brow to the letter (c) as troubled. "You know, Uru. Like I said, the teachers are fine. Don't worry." "You're okay...!? 'Cause it's three to eight! There's no way you can win! Ur still complains, but Illis answered this in a proper manner. "Why?" "Oh, why..." "'Cause there's no way the teachers can beat that much miscellaneous fish opponent with that much difference in numbers? "Is...? Za, miscellaneous fish......? Iris also tilted his neck again. "Mmm, well, no. Should I watch it with you if you're worried? If it's going to be dangerous, I'm going to help." With that said, Iris stood next to Ur and puts in sight the figure of the brave men confronting him, burning out the chains that bind Ur's hands and feet with the attacking magic of light attributes [Holy Light (Holy Ray)]. The relative total eleven braves were about to have a sinister conversation with each other in a tingling air just before entering the fight. "Ha... But that" disease "Gary guy, he was so fast and so strong. We were totally played by one of them even when we were bestialized..." "Uh, right. Only that guy is' just a little 'strong, I guess. - - But, Uru. Me, Rio and Mayfa, we competed about two months ago in" The Strongest New Brave Fight. " As Ur asks wondering what the story begins, Illis goes on like this as he burns down the second chain. "In that final, we ran into three powerful enemies. The three of us: Adolph the Rigid Sword, Dorothy the Queen, and Jake the Silver Wolf. Adolph the Rigid Sword was the strongest of them all, and maybe not even Adolph the guy named Gary the Wind. At best, like Dorothy and Jake at the time." I didn't get a good image because I was talking about a tournament I didn't know about. But Illis is getting more fun to talk about, and I don't notice how Ur looks like that. After finishing the chains on both arms, Iris continues the conversation, now working on the chains that bind Ur's feet. "So, that's the Student Level Brave Games. The three of us won it." "Yu, winner!? Illis, do you want to win a tournament competing for the strength of the brave?!?" "Yeah, well. But thanks to Dr. Eunbu, too. - - But Wol, the teacher is so strong that it took the three of us to bundle up like that to finally get to know each other. So don't worry." "Huh... were you looking after such an amazing person..." "That sort of thing. The teacher is amazing. You can thank your teacher more, too, Uru. I will always, as a teacher's servant, as a servant, as a slave, decide to devote my life to my teacher." Talk so proudly, chest stretching iris. By the way, all the chains that were holding Ur had already been severed by her magic. Ur, who gained his freedom, felt like some keen believer in the appearance of such an Illis, laughing haha as trouble. "Well, then, that's it. For Iris, Mr. Brett is like a god." That was the word that came out of Ur's mouth, somehow. But... Bikun. When I heard that, Iris' body jumped like he had been shot by an electric shock. Did I just say something wrong...? Uluru grabs the squirrel. "Yes, that's it, Uru! Wol, I said good things! Exactly! To me, the teacher is a god I should devote my life to serving! That's it! In front of Uluru, the second daughter of the beautiful girl's three sisters makes her eyes sparkle and give her a lucid look. "Oh... that's right. As a devout and obedient believer who continues to devote his whole life to God, I was born into this world to serve my teacher in full. So all my body and mind belong to my teacher... I exist for my teacher..." "Um... Iris...? You gonna be okay? You look a lot like you're tripping..." "Ulu, don't forget that, although teacher teaching is always open to doors, one of the best followers is me. I'm the best, Uru's the second." "Illis, I hope you calm down a little...? "There's no way this can calm you down! 'Cause I've found the truth about this world that makes sense for me to live! "Oh, you can't. This... it's not going to stop for a while... - - But Iris, even if Mr. Brett is good, is it okay for Rio and Mayfa? Two against six adult brave opponents...? Speaking of which, Iris once again became sane and regained reason in his eyes. "Well, I guess it's okay." "Are you okay?" The battle was finally starting to move in the hallway of the dungeon.

第48話 静まりかえった観客席で、ガタンと音がした。 役員席の前に立ち上がっていたサイラスが、アドルフの怒声に気圧されたように席に尻餅をついていた。 「な......何を言うのかね、アドルフくん。わ、私にそのような口をきくことの意味が、分かっているのかね......?」 サイラスは震える声で、どうにかそれだけを口にした。 だがアドルフは、まったく怖じることなく応える。 「ジジイ、貴様の戦いは後にしろ。これは俺たちの戦いだ。邪魔をするな」 「なっ......」 それでサイラスは、口をパクパクとさせて何も言えなくなった。 自らの子飼いのつもりだったアドルフに反抗されるとは、思っていなかったのだろう。 アドルフはサイラスとのやり取りを終えると、再びリオたち三人のほうへと向き直る。 「外野は黙らせた。戦いの続きだ」 しかし戸惑ったのはリオたちだ。 「いや......戦いの続きったってお前、もうボロボロだろ......。勝負はついてんじゃねぇか」 リオはそう言うが、アドルフはふんと鼻を鳴らす。 「なんだ、相手が弱ったらトドメを刺すこともできんのか。よくそれで『勝つ方を選んだ』などと 「............」 「戦いは生きるか死ぬかだ。俺を叩きのめす覚悟がないなら降参しろ、雌犬。それは貴様らの弱さだ」 「......どうあっても、最後までやらなきゃ、負けを認めねぇってことかよ」 「チッ、分かったよ」 リオがその手の木剣を、ひゅんと振った。 アドルフもまた、その手の木剣を構える。 「いい覚悟だ。戦士とはそうあらねばならん。ことに、強い戦士はな」 「知るかバーカ。でもあんたもうボロボロだ。オレと一対一でいいだろ」 「構わんが、仲間の補助魔法が掛かった状態で一対一というのも、面白い表現だな」 「まあな。でもどっちにしたって、勝ちの決まった勝負に挑む汚れ役だ。変わんねぇよ」 「ふん、雌犬が。なかなか言うものだ」 リオとアドルフが、互いに木剣を構えて向かい合う。 両者の距離は、十歩ほど。 そこにメイファが声をかけようとするが── 「......待って、リオ。......そういう汚れ役なら、ボクの仕事──むががっ」 「はい、メイファ~。ここはリオの顔を立てるところだよ~。黙って後ろで見ていようね~」 イリスがメイファの背後から口をふさぎ、取り押さえて引きずり下げてしまった。 あの三人のパワーバランスは、ときどきよく分からないな。 「ふっ......なかなか面白い仲間たちだな」 「ああ、自慢の妹たちだ。あんたは少し付き合うやつを考えろよ。ドロシーとかジェイクとか、あんなろくでもないやつらとつるんでねぇでさ」 「いや、俺にはあのぐらいの連中のほうがちょうどいい」 「ふぅん、そうかい──じゃあ、行くぜ」 「ああ──来い、雌犬」 緊迫の間。 次いで、両者が同時に地面を蹴った。 一瞬の後、中央で衝突する。 「はぁあああああああっ!」 「うぉおおおおおおおっ!」 ──ガガガガガッ、ガキンッ、ガンッ、ガガガンッ!! リオとアドルフの、激しい打ち合いが始まった。 火花が散るような激突。 およそ木剣で打ち合っているとは思えないような激しい打撃音。 勇者同士の戦いに相応しい、目にも止まらぬ高速の打ち合いは、あっという間に十合、二十合、三十合と積み重ねられた。 だが── 戦いの形勢は、明らかだった。 万全の状態な上にイリスからの支援魔法の影響を受けているリオ。 対してアドルフは、ダメージが蓄積してパワーにもスピードにもガタがきている。 リオはアドルフを、一合ぶつかるごとに追い詰めていく。 そして── 「てぇやああああああっ!」 ──カァンッ! 下から力強く跳ね上げるリオの一撃が、アドルフの体勢を大きく崩した。 アドルフの巨躯が、ふらつくように後退する。 そこに向かって── リオが勇者の脚力で、高々と跳躍した。 そして空中で、木剣を頭上に構える。 「くらえぇえええええっ──【斬・岩・剣】っ!」 リオの木剣が闘気をまとい、振り下ろされた。 アドルフは木剣でその一撃を受け止めようとするが── ──バギンッ! リオの木剣が、受け止めたアドルフ木剣をへし折り、アドルフの肩口にめり込んでいた。 「が、はっ......」 ずしんっ! 半ば強制的に、アドルフが地面に膝をつかされた。 そこで──ビーッ、ビーッ! アドルフが装着した魔法具から、ノックアウトの警告音声が鳴り響く。 「し、勝負あり! 勝者、リット村勇者学院!」 審判が旗を上げた。 決勝戦、終了だ。 だが観客席から歓声が湧くことはなかった。 観客たちは、この事態にどう反応すればいいのか分からず、どよどよと戸惑いの声ばかりがあがっていた。 しかしそれには構わず、選手たちは互いの健闘をたたえ合う。 リオは膝をついたアドルフに、手を差し出していた。 「これで文句ねぇだろ。オレたちの勝ちだ」 「ああ......悔しいが、俺たちの完敗だ。──しかし最後の【斬岩剣】、あれはブレット先生から教わったのか?」 「うんにゃ、あんたのを見て盗んだ。でもオレの背丈や体重じゃ、あんたみたいなやり方じゃ無理だと思ってさ。ジャンプしたらいけるんじゃねぇかって」 「ふっ、技の本質を一瞬で見抜いて、自己流にアレンジしたか......無茶苦茶な雌犬だな」 アドルフはリオの手を取って、立ち上がる。 そこに来て、観客席からちらほらと拍手が鳴りはじめた。 最初は小さかった拍手の音は、やがて徐々に大きくなり、会場中を包み込むほどにまで広がって── だがそこに、抗議の叫び声をあげる者が現れる。 「認めん! 私はこんなものは認めんぞ......! 八百長だ!」 それは役員席から再び立ち上がった、サイラスだった。

48 Lesson 48 In a quiet audience, there was a guttan and a noise. Cyrus, who was standing up in front of the board seat, had a buttcake on his seat as if he had been barely pressured by Adolph's fury. "Nah... what do you say, Adolph? Wow, you know what it means to talk to me like that...? Cyrus had a trembling voice and managed to say just that. But Adolph responds without fear at all. "Jizzy, your battle is over. This is our fight. Stay out of my way." "Become..." So Cyrus couldn't say anything with his mouth pounding. I guess you didn't think you'd be disobeyed by Adolf, who was meant to be your own child. When Adolph finishes his interaction with Cyrus, he turns again to the three Rio's. "The outfield shut him up. The battle continues." But it was Rio and the others who were confused. "No... you said the battle went on, you're already worn out... Aren't you following the battle?" That's what Rio says, but Adolph snarls his nose out of it. "What, if they're weak, can't even stab Todome? That's why they often say," I chose to win. " ............ "The battle is to live or die. If you're not ready to slap me, surrender, bitch. That's your weakness." "... Whatever happens, we have to get to the end of this, you don't have to admit we lost." "Chip, all right." Rio shook the wooden sword in his hand. Adolph also lays down the wooden sword of his hand. "I'm ready. A warrior must be. And a strong warrior." "You know what, Barca? But you're already worn out. You can go one-on-one with me." "I don't mind, but a one-on-one with your buddy's auxiliary magic hanging on it is also an interesting expression." "Sort of. But either way, he's a dirty man trying to win a determined battle. It doesn't change." "Hmm, the bitch. It's quite something to say." Rio and Adolph face each other with wooden swords. The distance between the two is about ten steps. Mayfa would try to speak up there, but... "... wait, Rio.... If you're such a dirty person, it's my job to... swell up." "Yes, Mayfa. This is where we stand Rio's face. Let's just shut up and watch it behind us." Ilis blocked his mouth from behind Mayfa's back, seized it and dragged it down. The balance of power between those three is sometimes unclear. "Huh... those are some pretty funny people" "Oh, my proud sisters. Think of the one you'll hang out with a little. I'm not hanging out with Dorothy or Jake or any of them who aren't." "No, I'd rather have those guys." "Well, let's go." Oh, come on, bitch. During the urgency. Then both kicked the ground at the same time. After a moment, it collides in the center. "Ahhhhhh! "Whoa, whoa, whoa! - - Gagggggggggggggggggggggggggggggggggggggggg!! The intense meeting between Rio and Adolph began. Sparkly clashes. A fierce blow sound that I don't think is roughly meeting with a wooden sword. Unstoppable high-speed meetings, worthy of battle between brave men, quickly stacked at ten, twenty and thirty. But... The battle situation was obvious. Rio under the influence of supportive magic from the United Kingdom on top of being in perfect condition. Adolph, by contrast, has accumulated damage and is rattling on both power and speed. Rio hunts down Adolf every time he hits one. And... "Hey, hey, hey! - Ka! Ka! Rio's blow, which bounced forcefully from the bottom, greatly disfigured Adolf. Adolph's giant body retreats like a flutter. Towards the-- Rio jumped high with the legs of the brave. And in the air, put the wooden sword over your head. "Kuraya, yeah, uh... [Slash, Rock, Sword] Huh! Rio's wooden sword stirred up the struggle and was waved down. Adolf tries to take that blow with a wooden sword, but... - Baggin '! Rio's wooden sword was snapping the Adolf wooden sword he had received and sliding it into Adolf's shoulder. "but haha..." Shit! Half-compulsory, Adolf was kneeled to the ground. So... Beep, beep, beep! The knockout warning audio sounds from the magic equipment Adolf has worn. "And there's a battle! Winner, Lit Village College of the Brave! The referee raised the flag. Final game, over. But there was no cheer coming from the audience. The audience didn't know how to react to this situation, and all the confused voices were raised. But it doesn't matter, the athletes fight each other well. Rio was offering his hand to Adolf, who was on his knees. "You're not complaining about this. We win." "Oh... I regret it, but it's our complete defeat. - - But the last [Slashing Rock Sword], that was taught to you by Dr. Brett? "Yeah, I saw yours and stole it. But with my back length and weight, I don't think I can do it the way you do. I thought maybe I could jump." "Psst, did you spot the essence of the move in an instant and arrange it for yourself... you're a lame bitch" Adolph takes Rio's hand and stands up. I came there and a little applause began to sound from the audience. The applause, which was small at first, eventually grew louder and spread to encompass the entire venue. But there comes a cry of protest. "I won't admit it! I won't admit this...! Eight hundred!" It rose again from the board seat, it was Cyrus.

第19話 翌朝。 リビングで朝食を終えると、俺は教え子たちに伝える。 「よし、今日はこの一週間の締めくくりとして、魔王ハンターの仕事を実際にやってもらうぞ。三人とも、心の準備はいいか?」 俺がそう宣言すると、俺の前に立った三人の教え子は、みんなごくりと唾をのんだ。 それは昨日のうちに三人には伝えておいたことで、俺がやっているのはあらためての確認だ。 俺はさらに続ける。 「今のお前らの実力なら十分にやれると思うが、万一のときは俺が助けに入るからな。気負いすぎず、やれることをやればいい」 そう伝えても、三人が真剣な面持ちを崩すことはなかった。 あのメイファですら、緊張している様子だ。 まあ当然だろう。 というか、初めての実戦で緊張しない、魔王ハンターの仕事をなめ腐っている勇者学院の生徒がいたら、そいつには小一時間説教をしないといけないだろう。 しかしその点、うちの教え子たちに侮りの様子は見られない。 天才だから図に乗るかと思えば、意外とそんなことはないのがこいつらだ。 その点を疑問に思ってそれとなく聞いてみたこともあるのだが、そのときリオからはこんな答えが返ってきた。 「いや、だってオレたち、普段から兄ちゃんのすごさ見てるし。自分より全然すげぇ人がすぐそばにいたら、オレなんて全然まだまだだって思うじゃん」 ──とまあ、こんな具合だ。 人並み外れた才能を持っているからこそ、逆に教師を自分と同じステージに立っている存在として見られるのかもしれないが。 まあ何にせよ、末恐ろしいことだ。 とは言え、今の三人は少し気負い過ぎかなとも感じる。 ガッチガチに緊張していても高いパフォーマンスは出せないから、少しはほぐしてやる必要があるだろう。 俺は三人の目の前まで進み出て、安心できるように彼女らの頭をなでてやる。 「大丈夫だ。リオ、イリス、メイファ──今のお前たちならやれるさ。さっきも言ったが、本当に危なくなったら俺が助けるから。お前たちはあまり心配しないで、自信をもってぶつかってこい」 「「「──はい!」」」 今度こそ元気よく返事をする三人。 ちなみにメイファなんぞは、普段は俺のことをあまり尊敬しているようには見えないんだが、こういうときはしっかり生徒モードに切り替えてくるから大したもんだと思うわ。 そんなわけで俺たちは、まず件の最寄りの街へと向かった。 街に着くと、勇者ギルドへと足を踏み入れる。 勇者ギルドの一角には掲示板があり、そこには何枚かの魔王情報が貼り出されていた。 俺はそれらの貼り紙をざっと見て回る。 「ゴブリンロードの情報でもあるとベストなんだが......ないか。──なら、次点でこいつだな」 俺は掲示板にあった貼り紙のうちの一枚を手に取って、受付のカウンターへと向かった。 ちなみに三人の教え子たちは、そんな俺の一挙一投足を見逃すまいという様子で、俺の行動をしっかりと見ていた。 特に教わらずとも、学べるものは自分から学んでいこうとするこういった姿勢は、本当に好ましい。 こうした優秀な生徒たちには、教師はちょっと手助けをしてやるだけでいい。 俺は三人に、手に取った貼り紙を見せてやる。 「今回お前たちには、この魔王の討伐に挑戦してもらおうと思う」 そう言って俺が見せた魔王情報の紙には、こんな情報が記されていた。 魔王:オークロード 推定モンスターレベル:八 確認されている配下:オーク四体以上 確認された場所:ファブル村の北の洞窟 討伐報酬:金貨六十枚 するとそれを見たイリスが、さっそく質問をしてきた。 「あの、先生。掲示板には何枚か魔王情報が貼ってありましたけど、先生は主にどこを見て、その魔王情報を選んだんでしょうか」 「お、さすがイリス。目の付け所が鋭いな」 俺がそう言ってイリスの頭をなでてやると、イリスは「あ、あう......」とつぶやいて、頬を真っ赤にしてしまった。 上目づかいでこっちの様子をうかがってくる姿が超絶可愛い。 何この天使。 それはさておき、俺は質問に答えていく。 「イリスの質問に対する答えだが──魔王情報でまず見るべきは、『推定モンスターレベル』だな。モンスターレベルが高い魔王はそれだけ強いってことだから、実力が身についていないうちは避けること。モンスターレベルが十以上の魔王は、最初のうちはやめておいたほうがいいな」 「ふぅん......じゃあ兄ちゃん、この『オークロード』っていう魔王の『推定モンスターレベル:八』ってのは、結構弱いほうなの?」 リオがそう聞いてくる。 これに対する返答は、なかなか難しい。 俺は慎重に言葉を選び、答えていく。 「まあそうだな。魔王としては弱いほうだ。でも今のリオたちにとっては──」 「分かってる。侮ってかかったりはしないって」 「よし、そうだ。それでいい」 俺がなでなでをしてやると、リオは少し赤くなって片目をつむり、俺の行為を気持ちよさそうに受け入れていた。 俺の気のせいかもしれないが、最近リオが、前よりも少し従順になってきているように感じる。 ともあれ、魔王の強さの話に戻ろう。 リオたちには十レベル以上の魔王は避けたほうがいいと言ったのだが。 最弱クラスの魔王として頻繁に見かける「ゴブリンロード」だと、推定モンスターレベルは五だ。 これが最低ランクなので、魔王ハンターに最低限要求される実力は、こいつを複数人のハンターでパーティを組んで危なげなく討伐できるだけの実力、ということになる。 そして、勇者学院の卒業生に最低限要求される実力というのも、この水準だ。 最低でもその程度の実力はないと、実務が覚束ないからだ。 もちろん最低限なので、全員が全員その水準止まりというわけではないが。 そう考えると、今回選んだ「オークロード」の推定モンスターレベル八というのは、魔王ハンター業で日々の暮らしを営んでいる勇者──つまりプロの魔王ハンターであっても、未熟な者たちにとってはまあまあの強敵、ということになる。 「......つまり、ボクたちにとっては、八レベルのオークロードは、相手にとって不足なしということ。......恐れなくてもいい、でも、油断はしたらダメ」 メイファがそうまとめる。 俺はメイファにも、頭なでなでを敢行する。 メイファは珍しく素直に、少しだけ嬉しそうな顔をした。 「そういうことだ。──で、そうやって討伐したい魔王が決まったら、こうして魔王情報の貼り紙を持ってきて受付で手続きをする。分かったか?」 「「「はーい」」」 三人から元気な返事が返ってきた。 それにしても──打てば響くようなこの教育環境は、素晴らしいな......。 こんな環境でずっと教えていると、俺のほうが堕落しちまいそうだ。 普通はこんなにサクサク進まないからな。 うちの教え子たちは、ちょっと可愛すぎると思うんですよね。

19 Lesson 19 The next morning. When I finish breakfast in the living room, I tell my godchildren. "All right, today is the closing day of the week, and I'm going to have you actually do the work of the Demon King Hunter. All three of you, ready for your hearts? When I proclaimed that, all three godchildren who stood before me spit on me. That's what I told the three of you yesterday, and that's the only confirmation I'm doing. I'll keep going. "I know you guys can do enough right now, but I'll be there to help you in case. Don't feel too bad, just do what you can." Even if I told him that, the three of them never broke a serious face. Even that Mayfa looks nervous. Well, of course. Or if there were a student at the College of Brave Men who was not nervous in his first real fight and was rotting without the work of the Demon King Hunter, he would have to preach for a small hour. But in that regard, I don't see any insults in my godchildren. Genius, so I thought I'd get on the diagram, and surprisingly, it's these guys who don't. I've questioned that point somewhat, but that's when Rio gave me this answer. "No, 'cause we've been watching your brother awesome for a long time. I don't think I'd still be around if I had someone better than myself." - And, well, here's how it goes. Although he may see teachers as being on the same stage as himself because he has extraordinary talent. Well, whatever it is, it's terrible. That said, I also feel like the three of them are feeling a little overwhelmed right now. You'll need to loosen up a little bit because you can't give a high performance even if you're nervous about the gutter bees. I'll go in front of the three of them and give them their heads so they can feel safe. "I'm fine. Rio, Illis, Mayfa... you guys can do this right now. Like I said, if it gets really dangerous, I'll help. You guys don't worry too much, hit me with confidence." "" "- Yes! Now it's time for the three of you to respond well. By the way, Mayfa doesn't usually seem to have a lot of respect for me, but I think it's a big deal because I'm going to be switching to student mode securely at times like this. That's why we headed to the nearest city first. When you get to the city, you step into the Guild of the Brave. At the corner of the Brave Alliance was a bulletin board, where several demon king information was pasted out. I look around at those stickers. "It would be best if it were information on Goblin Road... - Then it's him next." I grabbed one of the stickers on the bulletin board and headed to the reception counter. By the way, the three godchildren kept a close eye on my behavior in such a way that they wouldn't miss my every shot. These attitudes, which try to learn from oneself what can be learned, even if not particularly taught, are really preferable. Teachers can just help these good students a little bit. I'll show the three of you the stickers I took. "This time I'm going to ask you to challenge this demon king's crusade" That's what I showed you. The Demon King information was on a piece of paper with this information. Demon King: Oak Road Estimated Monster Level: VIII Confirmed Subordination: Four or more oaks Confirmed Location: Cave north of Fable Village Crusade Reward: Sixty Gold Coins Then when I saw it, Illis just asked me a question. "Um, Doctor. There were several demon king information on the bulletin board, but where did the teacher primarily look and choose that demon king information?" "Oh, that's Iris. You have a sharp eye." When I said that and did the head of Iris, Iris snapped, "Oh, uh..." and turned his cheeks bright red. She looks super cute wanting to see what's going on over here. What an angel. Besides, I'm going to answer the question. "The answer to Ilis' question - the first thing you should see in Demon King's Information is" Estimated Monster Level. "The Demon King with a high monster level means he's that strong, so avoid it while his strength is not around. Demon Kings with more than ten monster levels should stop at first." "Phew... So, brother, this demon king's" Estimated Monster Level: Eight "thing called" Oak Road "is pretty weak? That's what Rio asks. The response to this is quite difficult. I choose words carefully and answer them. "Well yeah. As a demon king, you are weaker. But for Rio today..." "I know. He said he wouldn't insult me." "Okay, yeah. That's fine." When I did what I did, Rio turned a little red and glanced at me, accepting my actions with pleasure. Maybe it's my fault, but I feel like Rio's getting a little more obedient lately than before. Anyway, let's get back to talking about the strength of the Demon King. I told Rio we should avoid demon kings of ten or more levels. With Goblin Road frequently seen as the weakest class demon king, the estimated monster level is five. Since this is the lowest rank, the minimum strength required of Demon King Hunter is just the strength to party this guy with multiple hunters and crusade him without risk. And the minimum required strength for graduates of the College of the Brave is at this level as well. Because if you don't have at least that much strength, you don't remember practice. Of course, it's minimal, so not everyone stops at that level. Thinking about it, the estimated monster level eight of "Oak Road" chosen this time means that even the brave men who make their daily living in the Demon King Hunter industry - that is, professional Demon King Hunters - are reasonably powerful enemies for the immature. "... which means that for us, an eight-level oakload is no shortage for our opponents.... you don't have to be afraid, but you can't stay alert" That's how Mayfa sums it up. I dare Mayfa, too, to be headless. Mayfa looked unusual and honest and just a little happy. "That's the thing. - - So, when the Demon King decides that he wants to crusade that way, this is how he brings a sticker of Demon King information and goes through the process at the reception. You got that? "" "Yes" " The three of them gave me a healthy reply. Still, this educational environment that sounds great if you hit it... If I teach all the time in this environment, I'm going to be more corrupt. Normally, it doesn't go so crisp. My godchildren think they're a little too cute, don't they?

第148話 それから二日後。 準備を終えた俺たちは、サハギンどものアジトへと攻め込んだ。 サハギンどものアジトは、小さな島一つを占拠したものだ。 島は大部分が険しい岩山で占められているが、誰が作ったものか、その岩山の内部には広大な洞窟が広がっている。 その洞窟全体が、サハギンたちのアジトになっているというわけだ。 洞窟の入り口は、表と裏にそれぞれ一ヶ所ずつ。 表のほうは広々としていて、裏の方は狭苦しい。 俺たちは囚われている村の娘たちを救出するため、裏口からアジトの内部へと侵入した。 裏口から入って細い洞窟を進んでいくと、やがて往く先から、サハギンどもの声が聞こえてきた。 俺は後続の仲間たち──リオ、イリス、メイファ、マリーナ、アーニャの五人──に、口に人差し指を当てて静かにするように伝えると、サハギンどもの声に耳を澄ませる。 聞こえてきたのは、こんな会話だ。 「ギャギャギャッ、この人間の娘たち、五人ともずいぶんみすぼらしい姿になっちまったな。捕まえてきたときは、あんなにピチピチしてうまそうだったのに、もうどいつも死にかけじゃねぇかよ。もったいねぇな」 「ギョギョッ、気を付けろよ。あのお方に聞かれたらタダじゃ済まねぇぞ。──けど柱にくくりつけて、飯も食わせずに水だけを与えて、もう四日目か? そりゃそうなるだろ。司祭どもが言うには、これが儀式だってんだからしょうがねぇ」 「ギャギャッ、まったくよぉ。世界征服もいいけど、俺は思う存分、若い人間の女が食いてぇぜ」 「同感だ」 「「ギャーハハハハハッ!」」 そんな会話をしたあとも、サハギンたちの会話が尽きることはなかった。 数は二体だろうか。 声が離れていかないことを考えると、見張りかもしれない。 できればもう少し、情報が欲しいところだ。 俺は一つ、魔法を行使する。 「──【 音を感知する魔力の波紋が、俺を中心にして広がっていく。 すると、話をしている二体のサハギンとは別に、たくさんのサハギンらしき声を感知できた。 俺は小声で、仲間たちに伝える。 「ダメだな、この先には結構な数のサハギンがいる。人質の近くにいるのが少数だったら、奇襲を仕掛けて気付かれないうちに脱出という手もありえただろうが」 「じゃあ兄ちゃん、予定どおりに、サハギンは全部ぶっ倒すってこと?」 「......結局、脳筋な展開になる。......まあ、知ってたけど」 メイファがやれやれと肩をすくめた。 俺はそのまま、仲間たちを引き連れて、細い洞窟を静かに進んでいく。 やがて細道が、大広間へと繋がっている場所の近くまで来た。 俺は壁際に寄って、その先の大広間の様子をこっそりと覗く。 大広間には、三十体ほどの数のサハギンがいた。 座って飯を食っている者、横になっていびきをかいている者、槍を片手に喧嘩をしている者、それを見物している者などさまざまだ。 一方、俺たちのいる細道の出口からすぐの場所には、村娘らしき五人の少女たちが囚われていた。 いずれも床から伸びた石柱に縛り付けられており、すすり泣いたり、生気のない瞳であらぬ方を見つめていたり、力なくぐったりとしていたりした。 俺はそれを見て、いたたまれない気持ちになった。 俺があのときすぐにここに向かうことを決めていれば、この娘たちはここまで苦しまずに済んだのかもしれない。 だが後戻りはできないし、心は痛むが、後悔はない。 俺にできるのは、ここで彼女らを必ず助けてやることだけだ。 「手筈通りに行くぞ。──彼女たちは必ず助ける。俺たちも全員必ず生きて帰る。いいな」 俺のその言葉に、五人の少女たちは真剣な表情でうなずいた。 それから俺は、自身の声を拡大する風属性魔法【 俺の後に続いて、リオ、イリス、メイファ、マリーナ、アーニャの五人も大広間へと飛び出してくる。 「──ギョギョッ!? 裏口から人間だと!? ──ぐわぁーっ!」 「ギャギャギャッ!? ──お、おいお前ら、侵入者だぞ! 人間だーっ! ぶっ殺、ギャアアアアッ!」 俺とリオの二人で、すぐ近くにいた二体のサハギンを斬り捨てる。 イリス、メイファ、マリーナ、アーニャの四人は、石柱に縛り付けられている娘たちのロープを次々と切って、娘たちを救出して回っていた。 俺は囚われていた娘たち五人の自由が取り戻されたタイミングで、全員に耳を塞ぐようジェスチャーで伝える。 状況が分かっていない娘たちにも伝達が終わったことを確認すると、俺は大きく息を吸い込む。 そして、叫んだ。 『──サハギンどもぉおおおおおっ! お前らの野望を、勇者が打ち砕きにきたぞぉおおおおっ! 魔王がいるなら出てこぉおおおおい!』 魔法で拡大された大声は、洞窟じゅうに──いや、洞窟の外にも届くであろう声量で、わんわんと響きわたる。 比較的近くにいたサハギンの何体かは、耳を押さえて悶絶し、もんどりうって転がった。 俺はそうして「外への合図」を終えると、魔法の効果を切って、仲間たちに指示を出す。 「マリーナとアーニャは、娘たちを安全な場所まで誘導してくれ! ──リオ、イリス、メイファは、ここで俺と一緒に敵を食い止めろ!」 「「「はい! ──ガードクローク・ドレスアップ!」」」 ──そうして、戦闘が始まった。 大広間にいたサハギンたちは、我を取り戻すなり、武器を手に俺たちに向かって襲い掛かってくる。 「させるか!」 「ここは通さねぇっ!」 俺とリオが前に立ち、襲い掛かってくるサハギンや、投擲され飛んでくる槍を斬り捨てる。 「敵が散らばってて......! でも──いきます、【アローレイン】!」 「......場所が、広すぎる。......一度に巻き込めるのは、四、五体が限度だけど──いけっ、【 イリスとメイファが後ろから、攻撃魔法と弓による攻撃を放つ。 矢の雨と爆炎が、サハギンたちを次々と打ち倒していく。 そうして、やがて五体、十体と、打ち倒されたサハギンが積み重なっていった。 だがキャプテンミスリルの宝島で戦ったときよりも広さのあるこの大広間では、敵の密集度が低く、イリスの弓攻撃もメイファの魔法攻撃も、あのときほど大規模には功を奏さない。 一方で大広間には、次々とサハギンが集まってくる。 敵撃破の速度よりも、敵がこの大広間に集合してくる速度のほうがはるかに速い。 「兄ちゃん、まずい、数が多くなってきた! このままじゃ、前衛抜かれるかも──ぐっ......!」 投擲槍の一本がリオの横っ腹に命中したようだが、防具で弾いたようだ。 相変わらず、リゼルの防具様々だ。 もっとも、防具に守られている部位にとはいえ命中を許すのは、リオも余裕がなくなってきている証拠だ。 それに十分な余裕がなくなってきているのは、俺に関しても同じことだ。 押し寄せる敵の数が多く、凌ぎ切るのが難しくなってきた。 俺は状況の変化に応じて、全体に指示を出し直していく。 「リオ、無理はするな! 少しは突破されてもいい、俺もそうする!」 「りょ、了解、兄ちゃん! ──こんのぉおおおおっ!」 「イリス、メイファ、前衛を突破したサハギンは、優先的に片付けろ! 一発当たりの撃破数が減ってもいい!」 「わ、分かりました、先生!」 「マリーナ、アーニャ! 娘たちはまだ逃せないか!?」 「ブレットさん、みんな弱ってて、まともに歩けないんだよ!」 「何とか運んでいますけど、全員をすぐには無理です!」 「分かった! できる限りでいい、急いでくれ! ──まあまあしんどい状況に、なってきたな!」 俺は飛び掛かってきたサハギンを、一刀のもとに斬り捨てる。 サハギンの撃破数も徐々に積み重なっているが、大広間に集まってくるサハギンの数も、そろそろ洒落にならなくなってきた。 すでに五十を超える数のサハギンが、俺の視界内に現れている。 その中には四本腕で大柄のサハギンバロンも二体混ざっており、後方からギャーギャーと指示を出していた。 そして── そのとき大広間の入り口に、一つの巨体が悠然と現れる。 サハギンの魔王──サハギンロード。 ついに姿を現した大ボスは、遠くから俺たちを見下すように 「......ふん、人間の勇者が六匹か。どうやってここまでたどり着いたのかは知らんが──お前たち、何を手間取っている。たかが六匹のネズミごとき、さっさと数で押し潰せ。逃げた人間の娘も、現れた勇者の娘もすべて捕まえろ。一匹たりとも逃がすな」 そうサハギンどもに指示を出すと、八本の武器や盾を手にした魔王自身も、こちらへと向かってきた。

148 Episode 148 Then two days later. When we were ready, we made our way to the Sahagis' nest. The Sahagis occupied one of the small islands. Most of the island is occupied by steep rocky mountains, but there are vast caves inside the rocky mountains, no matter who made them. The whole cave has become a place for the Sahagins. The entrance to the cave is one on the front and one on the back. The front is spacious and the back is narrow and painful. We broke into the interior of Asia from the back door to rescue the captive village daughters. As I entered the back entrance and walked through the narrow cave, I finally heard the voices of the Sahagins from the far end. I told my followers - the five of Rio, England, Mayfa, Marina and Argna - to put their index fingers on their mouths and keep quiet, so that the voices of the Sahagins could be heard. What I heard was this conversation. "Gagga, all five of these human daughters have gotten a lot of shame. When I caught you, you were so stingy, and you almost died already. I want to have it." "Gyogi, be careful. If that guy asks you, you won't get paid. - - But it's been four days since I put it on a pillar and fed you only water without eating? That's what happens. I can't help the priests saying this is a ritual." "Gah, no way. It's nice to conquer the world, but I'm full of young human women." "I agree." "" Gahahahahaha! After that conversation, the Sahagins never finished. Is there two of them? Considering the fact that my voice won't go away, I might be watching. I would like a little more information, if possible. I'll do one magic trick. "- - [Enlarged hearing (high hearing)]" A magical ripple that senses sound spreads around me. Then, apart from the two Sahagi I was talking about, I was able to sense a lot of Sahagi voices. I'll keep my voice down and tell my friends. "No, there are quite a few Sahagins ahead. If only a few of them were near the hostages, they would have managed to escape without being noticed by the ambush." "So, brother, as planned, you're going to knock down all the Sahagins? "... after all, it's a brain muscle development.... well, I knew." Mayfa shrugged her shoulders. I will lead my people quietly through the thin cave. Eventually, the narrow road came close to the place that connected to the hall. I'll come by the wall and sneak up on the hall beyond. There were about thirty Sahagins in the hall. Sitting and eating, lying and snoring, fighting with a spear in one hand, and watching. On the other hand, there were five girls like village daughters imprisoned just outside our narrow exit. They were all tied to stone pillars that stretched out of the floor, sobbing, staring at people who didn't have vibrant eyes, or feeling weak. I felt sorry for seeing it. If I had decided to go here at once, these girls might not have suffered so much. But I can't go back, and my heart hurts, but I don't regret it. All I can do is make sure I help them here. "Let's get on with it. - - They will definitely help. We're all going home alive. That's good." The five girls nodded seriously at my words. [M] Then, using the wind attribute magic [loud voice (Great Voice)] that amplifies my voice, I jumped from the hidden narrow road to the hall. After me, Rio, England, Mayfa, Marina, and Argna all jump out into the hall. "- - Gyogi!? A human through the back door!? - - Wow! "Gah!? - - Hey, you guys are trespassers! Humans! Kill them, Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa Both Rio and I will slaughter the two Sahaguins who were nearby. Four of them, Elise, Mayfa, Marina, and Argna, cut the ropes of their daughters tied to stone pillars one after the other, and went round to rescue them. I gesture all my captive daughters to keep their ears shut when their freedom is restored. I take a big breath when I make sure it's over with the girls who don't know what's going on. And I screamed. - - Sahaggins! A brave man has come to crush your ambitions! If there's a demon king, come out! The magically enlarged loudness resonates in the cave - - No, it will reach beyond the cave. Some of the Sahaguins, who were relatively close, held their ears in agony and rolled back and forth. When I finish the "signal to the outside world", I will cut off the magic effect and give instructions to my friends. "Marina and Argna will lead our daughters to safety! - - Rio, England, Mayfa, stop the enemy with me here! "" "Yes! - - Guard Cloak Dress Up! - - That's how the battle began. The Sahagins in the Great Hall are coming at us with their weapons. "Let me! "I can't get through here! Rio and I stand in front of each other, slashing down sahagins and flying spears that are coming at us. "My enemies are scattered...! But - - let's go, [Arrow Rain]! "... the place is too wide.... four or five bodies can be involved at once, but - - cumming, [fireball]!" Iris and Mayfa fire attack magic and bow attacks from behind. Arrows of rain and blazing flames destroy the Sahagins one after the other. And it came to pass that five bodies, ten bodies, and the defeated Sahagin stacked up. But this hall, which is larger than when you fought on Captain Mythrill's Treasure Island, is less dense, and neither England's bow attacks nor Mayfa's magic attacks will work as well. Meanwhile, Sahagin gather in the hall one after the other. Enemies gather in this hall much faster than they destroy. "Brother, it's getting worse and worse! If you keep going like this, you might get pulled out of the avant-garde...! Looks like one of the spears hit Rio's side, but he hit it with his armor. As always, Lisel's armor varies. However, even if it is protected by protective equipment, it is evidence that Rio can't afford to hit. The same thing is happening to me when I'm running out of room. The number of enemies we can push against is getting harder to beat. I will give instructions back to the whole team as the situation changes. "Rio, don't push it! You can break through a little bit, and I will! "Roger, brother! - - Oops! "England, Mayfa, the Sahagin who broke through the avant-garde, take care of it as a matter of priority! Reduce the number of destroys per shot! "I understand, Doctor! "Marina, Argna! Can the daughters still escape!?" "Mr. Brett, we're all too weak to walk properly! "I'm managing to carry them, but I can't get them all right away! "Okay! Whatever you can, hurry up! - - Well, it's starting to get rough! I will slash the flying Sahagin under one sword. The number of Sahagis destroyed is gradually piling up, but the number of Sahagis gathering in the hall is getting less fashionable. There are already more than fifty Sahagins in my sight. Among them were two large Sahagimbalons with four arms mixed together, giving instructions from behind. And then... At that time, a giant body appears gently at the entrance of the hall. Sahagin Demon King - - Sahagin Road. The big boss who finally showed up stares down at us from afar. "... hmm, there are six brave humans. I don't know how we got here, but what's taking you guys so long? When it comes to six mice, crush them in a few seconds. Capture the daughter of a fleeing man, and the daughter of a brave man who shows up. Don't let any of them escape." When I gave instructions to the Sahagins, the Demon King himself, who had eight weapons and shields, came to us.

第64話 目的地の村へと向かう、森の小道。 リオとメイファの二人はピクニック気分で駆けずり回り、チョウチョを追いかけたりしながらキャッキャとはしゃいでいる。 普通の子供と違って人間離れした動きをする二人に、逃げ惑うチョウチョのほうも必死そうだ。 ちなみにイリスはというと、俺の隣を、俺の手をそっと握りつつ歩いていた。 最初は恥ずかしそうにもじもじしたり、幸せそうにほわほわしたりしていたイリスだが、街からしばらく歩いてきた今では、長年寄り添った妻のようなたたずまいになっている。 俺がチラリとイリスに目を向けると、その視線に気付いたイリスが俺に向かってにこりと微笑んでくる。 その笑顔がすさまじく可愛くて、俺のほうが恥ずかしくなって視線をそらしてしまう。 そんな俺たちの様子を見たリオが何かを言おうとするのだが、その肩にメイファが手を置いて、首を横に振る。 それからリオとメイファの二人は、我慢我慢といった様子で俺とイリスのほうから離れていく。 どうやら三人の少女たちの間で、何らかの協定が結ばれているようなのだが......。 まあいずれにせよ、街から目的の村までの移動は、そんな様子で行われた。 そうした穏やかな風景の中で、俺はあることを考えていた。 勇者ギルドでメイファに言われた、あの一言。 『それにお兄さん、ボクたち三人に負けるくせに、ボクたちを守るとかおこがましい』 その言葉が意外と大きなトゲとなって、俺の胸に残っていた。 もちろんメイファは、そんな強い意味で言ったのではないだろう。 俺を説得するための方便として使ったことは分かっている。 だが、それでも── その言葉が──いやその事実が、俺の中に打ち込まれた楔としてずっと残り続けていた。 俺が修得できずに挫折した【月光剣】を、リオはひと月ほどの訓練でいともたやすく修得してしまった。 イリスが修得した【 俺の教え子たちは着実に、俺がいる場所よりも前へと進もうとしている。 それが喜ぶべきことだというのは、理屈では分かっている。 だがそれでも、俺ひとりが置いていかれるのではないかという恐怖のような想いが、ずっと俺の胸の奥にこびりついて離れずにいた。 先天的な才能の差だからしょうがない。 それは一面の事実だ。 また、勇者としての力がその人間のすべてではないということにも、異論はない。 例えば王都の勇者学院で同僚の教師だったアルマなどは、勇者としての力は大したことはないが、俺は彼女のことが人間的に好きだし、それでいいと思っている。 しかし、「俺が」それでいいのかと自分に問うと、どうしてもモヤモヤとしたものが残る。 このままではいけないという漠然とした焦りが、俺の中にはずっとあった。 だから俺はこの一ヶ月間、リオがセシリアから【月光剣】を教わっている横でそれを盗み見ながら、自らももう一度【月光剣】を修得できないものかと、毎朝早起きして剣を振っていた。 しかしそれでもリオと俺との圧倒的なセンスの差は埋められず、リオが【月光剣】の修得を果たした今も、俺はその技をこの手にできてはいない。 だがそんなある日、俺は早朝の秘密特訓を、偶然早起きしたセシリアに見られてしまったのだ── セシリアはその朝、家の前でがむしゃらに訓練をする俺を見つけると、ふっと笑ってこう言った。 「安心したよブレットくん。今のキミは、牙を抜かれた獣のようにも見えたからね。──そういえばブレットくんは、どうして魔王ハンターをやめたのかな?」 そう不躾に聞かれた俺は、流れ落ちる汗を拭いながらこう答えた。 「いや、どうしてと聞かれても......。強いて言うなら、そうですね──どこまでも魔王を倒し続けるだけの日々に虚しさを感じていたってことと、あとは、俺の恩師の先生に憧れたからですかね」 「ふむ、ブレットくんは自身の勇者としての昇華よりも、後進を育てるほうに魅力を感じたわけか。──っでも虚しさと言うけど、自身が世界最強の魔王ハンターになりたいなどとは思わなかったのかな? 男なら誰でも夢見るものなのだろう、世界の頂点に立ちたいと」 そう言われて、俺は少し考えてから答える。 「......いや、男といったって色々いますよ。俺はあまり、興味がなかったっていうか......。まあそんな器でもないですし」 「世界最強を目指す動機もなかったし、そこまでの才能もないと自分を見限ったわけか。──しかしそんなブレットくんにも、『世界最強を目指す動機』のほうが生まれてしまった。......そうだね?」 「......っ!」 そう言い当てられて、俺は言葉を失った。 セシリアはそんな俺を尻目に、さらに続ける。 「教え子たちはキミの背中を見て育つ。お手本であるべきキミの背中が丸まっていては、あの子たちはいずれキミを見捨てていくかもしれないね。だからキミ自身が高い頂きを目指そうとする姿を見せなければいけない──ブレットくん、キミのその愚直なまでのひたむきさを、私は好ましく思うよ。それはきっと、あの子たちもね」 それは褒め言葉のように聞こえた。 俺は年甲斐もなく顔が熱くなってしまい、セシリアから目を逸らす。 久々に見たセシリアの一面。 年上のお姉さんとしての彼女は頼もしくて格好良くて、昔の俺は少し憧れていた。 俺は照れ隠しに、こんな言葉を返す。 「......そんなにカッコいいものじゃないですよ。俺はただ、あいつらに見限られるのが怖いだけで」 「だとしてもだよ。自分に何かが足りないと思ったときに、不貞腐れずに背筋を伸ばすというのは、誰にでもできることじゃない。頑張っても必ず結果がついてくるわけじゃないというときには、特にね」 「......実際、愚直に剣を振っていれば報われるとも限りませんけどね」 「まあね。しかし幸いなことに、私たちは勇者だ。勇気ある者、勇敢な者、勇ましき者に加護があることは歴史が証明してくれている。ブレットくんのその前向きな姿勢はきっと報われると、私は信じたいね」 セシリアはそう言って、ひらひらと手を振りながら俺の前から立ち去って行った。 セシリアが言うとおり、運命に果敢に立ち向かった勇者が自らの道を切り拓いたという伝承は、数多く残っている。 もちろんそれは、生存バイアスもあるだろう。 前向きさやひたむきさが報われず、志半ばに潰えた幾多の勇者が歴史の闇の中に消えていったのであろうことは、想像に難くない。 だが可能性がゼロでないなら、挑まない理由もない。 俺が望む未来を手に入れるために、できることはやろうと思う。 それでなお及ばないのであれば、そのときはそのときだ。 座して運命になぶられるよりは、よほど性に合っている── 「......せい......先生。......あの、先生。どうかしました?」 イリスの声。 過去の出来事に思いを巡らせていた俺は、はたと気付く。 森の中の小道。 俺の隣には、俺の手を握ったイリスの姿があった。 「あっ......いや、なんでもない。ちょっと考え事をしていてな」 「そうですか......。あ、ほら先生、村が見えてきましたよ」 イリスが指さす先には、確かに村の入り口が姿を見せていた。 時刻はそろそろ夕方といった頃だが、遠くの空にはどんよりとした雲が迫っていて、あたりは早くも薄暗さが目立ってきている。 「兄ちゃん、早く早く~!」 「......お兄さん、遅い。......いくらなんでも、イリスとイチャイチャしすぎ」 道の先からは、リオとメイファの声。 俺は空模様にどこか不吉な空気を感じながらも、教え子たちとともに村へと向かっていった。

64 Lesson 64 A forest trail to the destination village. Rio and Mayfa run around in a picnic mood, chasing and chasing Cho Cho and chasing Cacca. Unlike normal children, Cho Cho, who runs away, seems more desperate for two people who move apart from humans. By the way, Illis was walking next to me, holding my hand softly. Illis, who was embarrassed at first or happily hoarse, but now, after walking from the city for a while, he has become more hesitant like his wife, who has leaned against him for years. When I look at Chirali and Iris, Iris smiles at me when I notice that gaze. That smile is just so cute, I'm more embarrassed and distracted. I saw how we were like that. Rio tries to say something, but Mayfa puts her hand on that shoulder and shakes her neck to the side. Then Rio and Mayfa walk away from me and Illis in such a way as patience. Apparently, some sort of agreement has been reached between the three girls... Well in any case, the journey from the city to the village of destination took place in that way. In those tranquil landscapes, I was thinking about something. Mayfa told me in the Guild of the Brave, that one word. Brother, you can beat the three of us, protect us or something. The word unexpectedly turned out to be a big lizard and remained on my chest. Of course Mayfa didn't say that in such a strong way. I know you used it as a convenience to convince me. But still... That word -- no, that fact kept lingering in me as a wedge. Rio quickly learned about the [moonlight sword] that I was frustrated by not being able to acquire. Even the [Ultimate Healing (Ultimate Heel)] that Illis has acquired is magic that I can't use. My godchildren are steadily trying to move ahead of where I am. I know by reason that that is something to rejoice in. But still, the fear that one of me would be left behind kept creeping into the back of my chest. It's an innate difference in talent, so I can't help it. That is a one-sided fact. Nor can we dispute that power as a brave man is not all of that human being. Alma, for example, who was a colleague's teacher at the College of Brave Men in Wang Du, is not a big deal about his power as a brave man, but I like her humanly and think that's fine. But when I ask myself "I" if that's okay, it really leaves something moist. There has always been a vague rush in me that I shouldn't keep doing this. So for the past month, I've been up early every morning waving my sword, wondering if I can't acquire [Moonlight Sword] again myself, stealing it beside Rio's teaching [Moonlight Sword] from Cecilia. But still, I can't fill the overwhelming difference in taste between Rio and me, and even now that Rio has achieved his [moonlight sword] acquisition, I still haven't been able to get that move in my hands. But one day, Cecilia woke up early to see my secret early morning training. Cecilia laughed all the time when she found me training in front of the house. "I'm relieved, Brett. Now you look like a beast with your fangs out. Speaking of which, why did Brett stop being a demon hunter? When asked so indignantly, I replied as I wiped down the sweat. "No, I don't care why you ask... If you insist, that's right... because you felt void in your days just to keep defeating the Demon King everywhere, and then you admired my mentor's teacher." "Hmm, did Brett find it more attractive to cultivate backward moves than to sublime himself as a brave man? - - But I call it vanity, but didn't you want to be the world's most powerful demon hunter yourself, etc? I guess it's something anyone dreams of, he wants to be at the top of the world." That's what they say, and I'll think about it for a little while before I answer. "... No, there's a lot of things about being a man. I wasn't really interested... Well, it's not that kind of vessel." "You didn't have a motive to go for the strongest in the world, and you've got no talent that far, so you've set yourself aside. - - But Brett also had a better motive for the strongest in the world.... Right? "... Huh! That's what they told me, and I lost my word. Cecilia keeps me up her ass like that. "My godchildren grow up looking at you on your back. If you have a rounded back that should be an example, those kids might abandon you one day. So I have to show you that you're trying to get high on your own - Brett, I prefer your hiccups to that foolishness. I'm sure those kids will, too." That sounded like a compliment. I'm not worthy of my age, my face gets hot, and I turn away from Cecilia. A side of Cecilia I've seen for a long time. As an older sister, she was reliable and well-dressed, and I used to admire her a little. I return these words in the blindfold. "... it's not that cool. I'm just afraid I'll be limited by them." "Even so. Stretching your spine without infidelity is not something anyone can do when they think something is missing. Especially when you work hard and you don't always get results." "... in fact, if you wave your sword foolishly, you won't necessarily be rewarded" "Sort of. But fortunately, we're brave. History has proven that there is protection for the courageous, the brave, the brave. I believe Brett will be rewarded for his positive attitude." Cecilia said so and walked away from me with a flickering wave. As Cecilia put it, the legacy remains numerous that the brave man who stood resolutely against his destiny cut and paved his own way. Of course, there will be survival biases. It is not hard to imagine how many brave men who were not rewarded for their positivity and hiccups and crushed in the middle of their minds would have disappeared into the darkness of history. But if it's not zero possibility, there's no reason not to challenge it. I'm going to do what I can to get the future I want. If that is not the case, then that is the time. It's better suited to sex than to sit and be fated. "... because... Doctor.... Um, Doctor. What's wrong with you? The voice of Illis. I find myself in the midst of past events. Trails in the woods. Next to me, there was an image of Illis holding my hand. "Ah... no, it's nothing. I was just thinking." "Really...... Oh, look, Doctor, I can see the village." Ahead of where Illis pointed, the entrance to the village did show itself. The time is about evening, but there are more and more clouds looming in the distant skies, and the dimness is noticeable early around. "Brother, hurry up!" "... brother, it's late.... Whatever it takes, I flirt too much with Illis" From the end of the road, the voices of Rio and Mayfa. While I felt some ominous air in the sky, I headed to the village with my godchildren.

第91話 俺とリオ、イリス、メイファの三人は応接室に通されると、ソファーに横一列に腰掛けさせられ、紅茶とケーキで歓迎されていた。 あまりの唐突の話に犯罪性すら感じ、紅茶やケーキに毒でも入っているんじゃないかと疑ったが、魔法で調べてみたところそんなこともないようだ。 「なぁ兄ちゃん......なんでオレたちこんなことになってるの......?」 「いや、俺にもわからん......」 「たしか私たち、新しい武器と防具を探しにきていたような......」 「......でも、ケーキはおいしい。......悪い気はしない」 四人でぱくぱくとケーキをつまみ、お茶を堪能する。 結構いいケーキと茶葉だよな、これ......。 そうしてしばらく待っていると、やがてリゼルが数人の店員とともに応接室へと入ってきた。 「お待たせしてごめんなさい。早速だけど、三人の採寸と魔導撮影機での写真撮影をさせてちょうだい。──さ、あなたたち。このお嬢様たちを撮影室へ」 リゼルがそう言うと、リオたち三人はまたあれよあれよと部屋の外に連れ出されてしまった。 一瞬だけ教え子たちの身の安全を危惧したが、考えてみればリオたちはリゼルが連れていたボディガードなんぞよりもよっぽど強いわけで、最悪のケースでも問題はないだろうと判断する。 そうして応接室には、俺とリゼルの二人だけとなった。 リゼルは俺の対面のソファーに腰掛けると、俺に向かってこう切り出してくる。 「あなた、どうやら【目利き】ができるようね。──率直な意見を聞きたいのだけど、うちの商品、あなたの目にはどう映ったかしら?」 他に誰もいない、俺とエルフの少女の二人だけの空間。 こんな話をするからには、余人には聞かれたくないということか。 ならば──と思い、俺は言われた通り、率直に答える。 「品揃えとビジュアルデザインの良さに関しては、お世辞は言ってませんよ、リゼルオーナー。そこは本当に感心しました」 「ふぅん。──つまり武具としての品質に関しては、評価はできないってことね」 「いえ、厳密には何点か、それなりに高品質の武具もあるとは思いましたけど。ただ値段に見合っているかというと、評価は厳しくなりますね」 「やっぱりそう。【目利き】ができる人は、みんなそう言うのね」 そう言ってリゼルは、席から立ち上がる。 そして部屋の隅まで歩いて、そこにあった観葉植物の葉っぱを弄り始める。 それからリゼルは、少し沈んだ声でこんなことを言った。 「武具は戦闘に役に立つかどうかがすべて、見た目のデザインなんて邪道──そういう考えも、勇者が自分たちの命を預ける道具なんだと思えば分かりはするけれどね。でも実際には【目利き】ができる勇者なんてごく一部。ほとんどの勇者は、うちの商品を喜んで買っていくわ。......結局のところ、ちょっとやそっと中身が良くたって、商品は売れやしないんだから」 そのエルフの職人の声には、何か鬱屈した感情が乗っているように思えた。 そしてリゼルは落ちつかない様子で戻ってきてソファーに座り直すと、俺に儚げな笑顔を向けてこう続けた。 「あなたが『それなりの高品質』って評価した武具ね、きっと私が作ったものよ。そう評価してもらえたのは、素直に嬉しい。それ以外のものは私の弟子が作ったものね。──でもね、私は武具の見た目づくりや売り方も含めて、職人としての実力だって思っているの。同業者は私の考えを認めてくれないし、私の悪評ばかり流すけれどね。あーあ、僻みって嫌だわ」 「あ、あの......」 俺はついにこらえきれなくなって、ツッコミをいれることにした。 リゼルはきょとんとして聞き返してくる。 「いや、なんで俺そんな話を聞かされてるのかなって思って。別に俺、リゼルさんの悪評を流したりはしてないですよね」 「うぐっ......。そ、それは、その......私の言い分も、聞いてほしかっただけよ......」 リゼルは俺のツッコミを受けて、しゅんとなってしまった。 ちょっと可愛い気もするが、この人いったい何歳なんだろう......。 ていうか、いまだに何の話をされているのか分からない。 この人ひょっとして、自分の主張を吐き出せる相手を探していただけでは......? まあとりあえず、こっちの聞きたいことに話を誘導しよう。 「それよりもリゼルさん。うちの教え子たちの衣装デザインをどうとか言ってましたね。あれってどういうことなんです?」 「ああ、そうそう。その話だったわね」 気を取り直したリゼル。 紙とペンを取り出して、さささっと衣装の絵を描いていく。 おそろしい早業だ。 まごうことなきプロフェッショナル......いや、エキスパートの技術。 そしてリゼルは、できあがった簡単だが美麗な衣装画を俺に見せてくる。 「私ね、舞台アイドルの衣装デザインも手掛けているの。ううん、どっちかっていうとそっちのほうが得意分野かな」 「はあ」 舞台アイドルというと、可憐な衣装を身にまとったビジュアル系の舞台歌手で、歌って踊ってトークするなど、様々なライブイベントを行って観客を魅了する少女たちのことだ。 この芸術の都ラヴィルトンでは、アイドル活動も盛んだ。 トップクラスのアイドルユニットのライブともなれば、大規模ホールが超満員となり、わざわざ遠方から見にくるファンすらも少なくないほどと聞く。 だが、ということは── 「いや、ちょっと待ってください。確かにうちの子たちはそんじょそこらのアイドルよりよっぽど可愛いですけど、あいつらは今、立派な勇者になるために訓練をしている最中なんです。アイドル活動なんかにかまけている暇はないですよ」 俺がそう言うと、リゼルはどこか呆れたような表情を見せた。 「うん、あなた今さらっと親バカ発言したの分かってる? ていうかあなたあの子たちの何なの? 父親っていう年には見えないけれど」 「あいつらの教師です。俺は勇者学院の教師でブレットといいます。あと可愛いものを可愛いと言って何が悪いんですか。事実じゃないですか」 「ああ、うん......分かったわ、ブレット。そこはそれ以上突っ込まないことにするわ」 呆れるばかりか、諦められた。 事実を言っただけなのに、解せぬ......。 「でも、そっか......アイドルをやっている暇はないか......もったいないな。あの子たちなら確かにめちゃくちゃ可愛いし、アイドル界の天下だって取れるかもしれないのに......」 リゼルはそう言って考え込む。 そしてぶつくさと口の中で何事かつぶやいてから、再び俺に視線を向けてきた。 「......うん、やっぱりそうね。アイドル活動をするかどうかを置いても、あの子たちに地味な衣装を着せておくのは犯罪よ。全人類の損失だわ。私はそんなの絶対に許せない。あの子たちに似合うのは、可憐にコーディネートされたアイドル衣装よ。これだけは譲れないわ」 「えっと、何言ってんですかねリゼルさん」 大丈夫だろうかこの人......。 だがリゼルは口をとがらせて、不満そうな眼差しで俺を見つめてくる。 「......何よ、事実を言っただけじゃない。なんで呆れているのよ。解せないわ」 「はあ......。まあいいです、そこはもう突っ込みません。でもアイドル衣装で勇者活動なんてできませんよ。ちゃんとした防具を身につけていないと、強敵と出会ったときに危険です」 リゼルはなんで分からないかなぁという調子で言って、次にはこうつなげた。 「私が魔法繊維を使った強化素材を使って、あの子たちの防具をデザインするって言ってるの。やらせてちょうだい」 ほう......? 思いもかけない申し出に、俺は意表を突かれていた。 と、ちょうどそこに、採寸と撮影を終えたリオ、イリス、メイファの三人が、応接室へと戻ってきた。 「あのさ兄ちゃん、今更だけど、なんでオレたち胸囲とか測ったり写真撮られたりしたの?」 「先生がいないところで、知らない人ばかりで、少し心細かったです......」 「......写真をブロマイドとして売るつもりなら、権利料に関してはお兄さんと交渉するように言っておいた。抜かりはない」 そう言って、てててっと俺のもとに集まってくる教え子たち。 俺は何となく、お疲れ様の意を込めて三人の頭を一人ずつなでていく。 なでられた猫のように気持ちよさそうにするリオ、イリス、メイファの三人。 その一方でエルフの職人リゼルは、腰かけていたソファーから立ち上がる。 「まあそういうわけだから、考えておいてちょうだい、ブレット先生。──さ、出口までお見送りするわ」 と、そんなこんながあって、俺たちはリゼル武具店をあとにすることとなる。 だが、そうして店を出ようとしたときに、さらなる出来事と遭遇した。 店の入り口付近まで来たところで、何やら怒鳴り声が聞こえてきたのだ。 「ふんっ、相変わらずこんな詐欺商売をしおって! お前たちでは話にならん、リゼルを呼べ! 今日という今日こそは、あの女狐エルフの高く伸びた鼻をへし折ってくれる!」 何事かと見にいってみると、店のエントランス付近で騒ぎ立てているのは、一人の男性ドワーフのようだった。

91 Lesson 91 Me and Rio, Illis and Mayfa, when we were put through the reception room, were forced to sit in a row across the couch and were welcomed with tea and cake. I even found the story so abrupt criminal, I suspected it might even be poisoned with tea and cake, but I magically checked it out and it doesn't seem to be the case either. "Hey brother... why are we doing this...? "No, I don't know either..." "It's like we've been looking for new weapons and protective equipment..." "... but the cake is delicious.... I don't feel bad" The four of us pinch the cake and enjoy the tea. Pretty good cake and tea leaves, this... After waiting a while, Liselle eventually walked into the reception room with several clerks. "I'm sorry to keep you waiting. Quick, but let me do some measurements for the three of you and a photo shoot with the Magic Guide. - - Hey, you guys. Take these ladies to the shooting room." When Liselle said so, the three Rio men were taken out of the room again. I only feared for a moment for the safety of my godchildren, but if you think about it, Rio and the others decide that even in the worst case there will be no problem because they are so much stronger than the bodyguard that Liselle had. In that way, it was just me and Liselle in the reception room. Liselle sits on the couch opposite me and cuts out like this towards me. "You, apparently [eye-catching] can. - - I'd like to ask your frank opinion, how did our product appear in your eyes? There's nobody else, just two spaces for me and an elf girl. You mean you don't want the rest of us to listen to you when you talk like this? Then I think... and, as I was told, I answer frankly. "I'm not flattering you when it comes to product assortment and good visual design, Lisel owner. I was really impressed there." "Huh. I mean, you can't evaluate the quality of weapons." "No, technically I thought there were a few things, some pretty high quality martial arts. But if it's worth the price, it's going to be tough." "I knew it. People who can [sight] say that, don't they?" That's what Liselle says, she gets up from her seat. Then he walks to the corner of the room and starts mocking the foliage of the ornamental plant that was there. Then Liselle said this in a slightly sunken voice. "It's all about whether or not weapons are useful in combat, and what a devil the design looks like - though I can tell from the thought that brave men are tools to keep their lives. But in fact, there are very few brave men who can [sight]. Most brave men will be happy to buy our products.... In the end, the contents are a bit good, and the product won't sell." The artisan voice of that elf seemed to have some depressing emotion on it. And Liselle came back restless and sat back on the couch, and she kept smiling at me like this. "You rated it 'pretty high quality', it must have been made by me. I'm honestly glad you appreciated that. Anything else was made by my apprentice. - - But I think I'm capable of being an artisan, including how to make and sell weapons. My colleagues don't approve of my thoughts, though they keep my bad reviews coming. Oh, I don't like seclusion." "Oh, um..." I finally lost my grip and decided to leave a scratch. Liselle listens back properly. "No, I wonder why they're asking me that. It's not like I'm giving Liselle any bad reviews." "Ugh...... Well, that's... I just wanted you to hear what I have to say..." Liselle got my scratch, and she got all shitty. I also feel a little cute, but how old the hell is this guy...... I mean, I don't know what they're still talking about. Wasn't this guy just looking for someone who could spit out his claims...? Well, for now, let's direct the story to what we want to hear over here. "More than that, Mr. Lisel. You said something about our godchildren's costume designs. What's that supposed to mean? "Oh, yeah, yeah. That's what we talked about." Restored Liselle. Take out the paper and the pen and paint the costume. It's a pretty early start. Professionals without deception...... no, expert technology. And Liselle shows me an easy but beautiful costume painting. "It's me, I also design costumes for stage idols. Yeah, I guess I'm better at that one." "Ha." When it comes to stage idols, they are visual stage singers in poor costumes, girls who engage the audience by performing various live events, such as singing, dancing and talking. Idol activity also flourished in this capital of art, Lavilton. If it's also a live top class idle unit, I hear so much that the massive hall is overcrowded and even fewer fans come all the way from afar to see it. But that means... "No, wait a minute. Sure, my kids are cuter than those idols there, but they're in the middle of training to be fine braves right now. I don't have time for idle activities." When I said that, Liselle gave me a frightened look somewhere. "Yeah, you know what you just said about your parents? I mean, what are you, those kids? Though I don't look like a father." "I'm their teacher. I'm a teacher at Brave Men's College and I'm called Brett. And what's wrong with saying cute things are cute? Isn't that true?" "Oh, yeah... okay, Brett. I'm not going in there any further." He just gave up. I just said the facts, but I can't solve them...... "But you know what... don't you have time to do idols... what a waste. Those kids sure are so cute, and they might even be able to take it under the idol world..." That's what Liselle says and thinks. And he snapped something in his mouth with a bump, and then he turned his gaze at me again. "... yeah, I knew it. It's a crime to keep those kids in plain costumes, even if you put them down for idle activities. It's a loss for all mankind. I can never forgive that. What suits those kids is a poor coordinated idol costume. This is all I can't give away." "Uh, what are you talking about, Mr. Lisel?" Will it be all right with this guy...... But Liselle keeps her mouth shut and stares at me with a disgruntled look. "... what, I didn't just tell you the facts. Why are you so frightened? I can't solve it." "Ha...... Well, fine, I'm not going in there anymore. But you can't do valiant work with idol costumes. If you don't wear proper protective equipment, it's dangerous when you meet a strong enemy." Liselle said at a rate I wonder why she didn't know, and the next thing I knew, I connected. "I'm using reinforced materials made of magic fiber to design those kids' protective gear. Let me do it." Hmm...? I was stuck with an offer I didn't even think about. And, just there, three people, Rio, Iris and Mayfa, who had finished measuring and shooting, returned to the reception room. "You know, brother, even now, why did we get chest measurements and photographs? "Where I don't have a teacher, all I don't know, I was a little careful..." "... I told you to negotiate with your brother regarding the royalties if you intend to sell the photos as bromide. There's no drain." That's what I'm talking about, my godchildren. Somehow, with all due respect, I'm going to take three heads one at a time. Three people, Rio, Iris and Mayfa, who seem as comfortable as a cat who was. Elf artisan Liselle, on the other hand, rises from the couch she was sitting on. "Well, that's why, think about it, Dr. Brett. I'll drop you off at the exit." And with that happening, we're going to leave the reseller armor store behind. But when I tried to leave the store that way, I encountered further events. I came near the entrance to the store and heard some yelling. "Huh, still doing this fraudulent business! You can't talk about it, call Liselle! Today is the day it snaps the high stretched nose of that female fox elf! When I went to see what was going on, it was like a single male dwarf making a scene near the store entrance.

第92話 リゼル武具店のエントランスで騒ぎ立てる男性ドワーフ。 何人かの店員でなだめてどうにか店の外に出そうとしているが、ドワーフは頑として動きそうにない。 クレーマー......というよりは、口ぶりからすると同業者だろうか。 ついさっきリゼルが愚痴っていた、「同業者は私の考えを分かってくれない」という言葉を思い出す。 ちなみにドワーフというのは、ずんぐりむっくりとした姿と立派な髭が特徴の 体力があるうえに見た目からは想像できないほどに手先が器用で、頑固な性格とも相まって、ドワーフには優秀な職人が多い。 ここ職人都市ラヴィルトンにはドワーフの職人も多く、この街で作られる工芸品のクォリティを上げるのに一役買っているというが── 一方でこの店のオーナーであるエルフの武具職人リゼルはというと、そのドワーフの声が聞こえてきた段階ですでに顔をしかめていた。 そして当のドワーフの姿を目のあたりにすると、エルフの少女はつかつかとドワーフに向かって歩み寄っていく。 それを見たドワーフが、ふんと鼻を鳴らす。 「現れたな、女狐エルフめ! 貴様いつまでこんな薄汚い商売を続けるつもりだ!」 一方のリゼルは、ムカッとした様子を見せ、ドワーフの目の前まで行くと身長差で上から食ってかかる。 「あのねぇガルドンさん、いつも営業妨害はやめて頂戴と言っていますよね?」 「ふんっ、こっちだって粗悪な品を客に高値で売りつけるなと、何度も言っているだろう! 貴様のようなヒヨッコが薄汚い商売をしているのを見ると反吐が出るわい!」 「くっ......! だから何度も言っているように、私はガルドンさんの武具職人としての技術の素晴らしさは認めています! でもあなたは商売が下手! 手を組もうってずっと誘っているのに、乗らないのはそっちじゃないですか!」 「バカも休み休み言え女狐めが! ボッタクリ商売への加担など誰がするものか! だいたい貴様は──」 「見た目のデザインにだって売り方にだって、手間もお金も技術も必要だって何度言ったら分かってくれるんですか! どうしてあなたは──」 キャンキャン、ギャーギャー、ワーワー。 リゼルとドワーフとが、店の入り口付近で騒ぎ始めた。 店に入ろうかと外から覗いていた客が、その様子を見てそそくさと立ち去っていくのが見える。 何だってオーナー自ら、商売の足を引っ張ってるかな。 店員の何人かが、リゼルを羽交い絞めにしては「オーナー、落ち着いてください」などと言ってなだめている。 かんしゃく起こした子供か。 やがてリゼルは、「ガルドンさんのバーカ! 覚えてなさいよ! ──あなたたち、そのドワーフをつまみ出しなさい!」などと罵倒しながら、店の奥へと引きずられていった。 そしてガルドンという名のドワーフのほうも、リゼルのボディガードである黒服勇者たちの手で店の外に放り出される。 そうしてようやく店内が静かになったわけだが── なんというかこう、非常に複雑そうな人間関係を垣間見てしまったぞ。 「なぁ兄ちゃん、何だったの今の?」 「いや、俺にもわからん......。とりあえず、俺たちも出るか」 「そ、そうですね」 「......大人げない大人たち、稀によくいる」 そうしてリゼル武具店を出た俺たち。 だが、そんな俺たちの目の前に── 「おぬしら今、リゼルんとこの店から出てきたな」 ドワーフが現れた。 ドワーフは、俺たちの前に立ちふさがるようにしている。 び、びっくりした......。 「ええ、まあ。商品は買ってないですけど」 「ふんっ、それは朗報だ。お前たちは勇者で、品質のいい武器や防具を探している──そうだな? だったらワシについてこい」 そう言ってドワーフは、返事も聞かずにのしのしとメインストリートを歩いて行ってしまう。 えっと......とりあえず、ついていってみようか。 話の流れからすると、このガルドンというドワーフ、実際に腕のいい武具職人ではありそうだし。 そんなわけで俺たちは、ドワーフのあとをついて夜のラヴィルトンの街を歩いていく。 やがて派手なメインストリートから離れ、閑静な住宅街に。 そして街はずれまで来ると、その一角にある薄汚れた一軒家に、ドワーフは入っていく。 よく見ると「ガルドン武具店」という地味な木の看板が、端っこの方にかかっていた。 ......こんな店、わざわざ連れてこられて武具屋だって言われないと気付かないぞ。 しかも入り口とか、若干ほこりも被っていたし。 ──だが、ガルドンのあとを追って店の扉をくぐってみると、俺が抱いていた印象は一変した。 狭く薄暗い店内には、いくつかの武器や防具がディスプレイされている。 剣や斧、ハルバードや盾、プレートアーマー一式などなど。 それらは武骨で、今風の装飾など何一つない。 だがガルドンがランタンに火を入れて店内を照らすと、俺の【目利き】スキルが強烈に訴えかけてきた。 ──ここに並んでいる武器や防具は、まぎれもない「本物」だ。 リゼルには悪いが、リゼル武具店にあった最高級の品と比べても、比較にならない。 圧倒的な「本物」の力強さ。 だが【目利き】スキルを持っていないリオたちは、つまらなさそうに店内を見渡す。 「兄ちゃん、この店の武器とか防具、なんかどれも地味じゃねぇ?」 「むぅ......可愛くない......」 「......こういう浪漫も、わからないではないけど。......でもボクはもっと、見栄えのする格好良さのほうが好き」 それを聞いた俺は、あわわあわわとなった。 「おおおおお、お前たちは何を言っているんだ! すいませんすいません! こいつら礼儀がなってなくて」 俺は慌ててガルドンに頭を下げる。 一方のガルドンは、つまらなさそうに鼻を鳴らす。 「ふん、その手の意見は聞き飽きたわ。──で、おぬしもワシの武具たちを、地味だの何だのとしか思わんか?」 ガルドンは俺に、そう聞いてくる。 俺は首を横に振った。 「いえ。素晴らしい力を持った武具たちだと思います。大金を積んででも、手に入れる価値がある」 ガルドンはニヤリと口元をゆがめた。 とても嬉しそうだ。 「値段を教えてもらってもいいですか?」 「それぞれ木札が付いているじゃろう。そこに書いてあるわ」 言われたとおりにそれぞれの武具についた木札を確認していく。 剣──大金貨五十五枚。 槍──大金貨三十五枚。 プレートアーマー一式──大金貨八十枚。 それらを見た俺は、思わずつぶやいてしまう。 「安い......これだけの品質のものを、こんな値段で......?」 いや、もちろん一般人の年収レベルかそれ以上の値段なのだから、決して安くはないのだが。 品質を加味して考えると、喉から手が出るほど欲しいぐらいだ。 もっとも、俺の【目利き】も確実にヒットするわけじゃない。 だから高品質だと感じても、実はそうじゃなかったなんてことはありえなくはないんだが──でもこれは、まず間違いなく本物だと感じる。 一方で店主のガルドンは、またつまらなさそうに鼻を鳴らす。 「ふん、それでも碌に売れんがな。勇者なんぞと言って、どいつもこいつも見る目がない。それにそもそも客足自体がほとんどないからな。勇者という連中は、リゼルのようなヒヨッコがやっている大通りの派手な店にしか興味がないんじゃろう」 「いや、まあ、そりゃあ......」 【目利き】の有無以前に、店に人が来ないんじゃどうしようもないだろうなぁ。 運が良ければ口コミで広まるということもあるのかもしれないが、【目利き】自体に確実性がないうえに、実戦で試すにしても最低限同じモンスターと戦わないと分からないだろうとかもあるので、武器や防具の実質的性能というのは明確には測定しづらい問題などもある。 それに職人の腕による品質の良し悪しは、使っている材質などの差と比べると、どうしても地味だというのがある。 武具の性能を数値化できるとしたら、職人の腕による品質差は、ピンとキリでも二割ぐらいの差にしかならないだろう。 さらに人気店が粗悪なものを売っているはずがないという信仰もあるし、閑古鳥が鳴いている店は品質が悪いからだろうという思い込みもある。 そんなあれやこれやが相まって、武具は高品質なら売れるというものでもないのだろう。 実際、リオたちの反応もああだったし。 だがガルドンは、次にはこんな言葉を口にする。 「良い物を作れば売れる。それはこの世の真理だ。いや、そうでなければならん。──だというのにリゼルのヒヨッコめ、どうしてそんな当たり前のことが分からんのだ! あいつが悪いやつじゃないのは、ワシだってわかっておる。だがあいつの職人としての姿勢が気に食わん! なーにが手を組めじゃ! あいつのやり方に合わせたら、ワシの武具たちが腐ってしまうわ!」 そう言ってガルドンは、苛立たしげに地団駄を踏む。 べき論と現実論をごっちゃにしてしまっているのか分からないが、なんか言っていることが矛盾しているというか、微妙に噛み合っていない気がするぞガルドンさん。 が、それはともあれ......どうするかなぁ。 リオたち三人の顔を見れば、どうやらここの武具を買うのは不満そうだ。 俺はこっちのほうが性能はいいと思うし、身の安全のためだと言えば了解はしてくれる気がするが、正直こいつらのがっかりした顔を見るのは俺としてはしんどさがある。 それにこの店はそもそも魔法繊維を使った衣服系の防具の品揃えがほとんどなく、がっちょんがっちょんの金属製重装防具ばかりでリオたちには似合わない感じがする。 あと地味に値段も厳しいんだよな......。 この店で全員分の武器防具を揃えるには、今の手持ちでは微妙に心許ない。 品質と比べて安いとはいっても、予算が決まっている以上は絶対額も無視できない。 ヴァンパイアロード退治で大金貨二百枚を受け取ったときには相当な大金だと思ったが、高品質武具の値段もさるもの、侮ってはいけなかった。 そんなこんなで、いろいろな歯車が、微妙に噛み合わない。 まあでも、これも持ち帰り課題だろうな。 今夜一晩、宿で休みつつ考えよう。 「ガルドンさん、ちょっと考えたいので、後日また来てもいいですか?」 「ふん、構わん。おぬしはワシの武具の良さを分かる、見る目のある勇者だからな。いつでも歓迎するぞ」 そんなこんなで、ガルドンにはまた来る旨を伝えて、俺たちはガルドン武具店を出た。 そしてメインストリートに戻り、宿を探して歩き始めたのだが──

92 Lesson 92 A noisy male dwarf at the entrance to the Risel Martial Arts Store. I can't be a few clerks and I'm trying to get out of the store, but Dwarf is not going to move hard. Rather than Kramer......, is it from the mouth to mouth a colleague? I recall Liselle being stupid earlier, saying, "My peers don't get my thoughts". By the way, Dwarf is a subrace (demi-human) characterized by a sloppy figure and a fine mustache. There are many talented craftsmen in Dwarves who are dexterous enough to imagine from their appearance even after they have physical strength and go hand in hand with stubborn personalities. There are many Dwarf artisans here in the artisan city of Lavilton, and they say they play a role in raising the quality of the crafts that are made in this city. On the other hand, Elf's martial artisan Liselle, the owner of this store, had already flaunted her face at the stage where the voice of that dwarf was heard. And when he sees what the Dwarf looks like at the time, the elf girl walks toward the Dwarf once and for all. The dwarf who sees it squeaks his nose. "You showed up, you female fox elf! How long are you going to keep doing this dirty business? Liselle, on the other hand, looks mucky and eats from the top due to the height difference when she goes to the front of Dwarf. "Um, hey, Mr. Gardon, you're always asking me to stop interfering with sales, right? "Huh, I've told you many times not to sell crude products to customers at high prices! When I see a hyoco like you doing a dirty business, I'm gonna throw up! "Ku......! So as I have said many times, I acknowledge Mr Gardon's excellence in his skill as a martial arts artisan! But you're bad at business! I've been inviting you to join hands, but you're not the one to ride! "You idiot, take the rest of the day off. Say it, you fox! Who would do that, such as participate in bottacle commerce! By and large, you..." "How many times do I have to tell you that I need the hassle, the money, the skill to sell it, even for the design of its appearance! How could you..." Cancer, gagger, warwer. Liselle and Dwarf started making noise near the store entrance. I can see a customer peering from the outside to enter the store, looking at the condition and walking away. I wonder what the owner himself is pulling the leg of the business. Some of the clerks say, "Owner, calm down," etc. to strangle Liselle with wings. The kid who woke you up. Eventually Liselle said, "Mr. Gardon's a badass! Remember that! - - You guys, pinch out that dwarf!" and so on, he was dragged to the back of the store. And the dwarf named Gardon is also thrown out of the store at the hands of the Black Clothes Braves, Lisel's bodyguard. That's when the store finally got quiet. Somehow I got a glimpse of a very complicated relationship. "Hey brother, what was that about now? "No, I don't know either... In the meantime, shall we leave too?" "Right, right" "... adults who can't grow up, rarely often" That's how Liselle left the armor store for us. But before our eyes like that... "Oh, my God, Liselle and I are out of this store." Dwarves appeared. Dwarves are trying to get in front of us. Bit, I'm surprised...... "Yeah, well. I didn't buy the product." "Huh, that's good news. You guys are brave, looking for good quality weapons and protective gear-- right? Then follow me." That being said, Dwarf walks down Main Street with his boss without even hearing back. Uh... let's just keep up. From the way things are going, this Dwarf named Gardon, he seems to be actually a well-armed martial artisan. That's why we're walking down the city of Lavilton at night after Dwarf. Eventually away from the flashy main street, in a quiet residential neighborhood. And when you get to the outskirts of the city, Dwarf walks into a thin, dirty house on the corner of it. If you look closely, a plain wooden sign called "Gardon Martial Arts Store" hung on the end of it. ... I wouldn't realize if a store like this hadn't been deliberately brought here to tell me it was a martial arts store. Besides, he was wearing the entrance and some dust. - - But when I followed Gardon through the store door, the impression I had changed. Some weapons and protective equipment are displayed in the narrow and dim stores. Swords, axes, halvards and shields, a set of plate armors, etc. They are martial bones, and there is no such thing as a decoration of the current wind. But when Gardon lit the lantern and lit up the store, my [eye-catching] skills came up strongly. - - The weapons and protective equipment lined up here are "real". It's bad for Liselle, but compared to the finest items that were in Liselle's Martial Arts Store, it's not comparable. Overwhelming "real" power. But [eye-catching] Rio, who doesn't have the skills, looks at the store in a boring way. "Brother, aren't all the weapons and protective gear in this store, or something, plain? "Mmmm... not cute..." "... I don't know about this kind of romance either.... but I prefer to look good" When I heard that, I was awkward. "Whoa, whoa, what are you guys talking about! Excuse me, excuse me! These guys aren't being polite." I bow my head to Gardon in a hurry. Gardon, on the other hand, snorts boringly. "Well, I'm tired of hearing that hand. What do you think your servants are, like, plain or something? Gardon asks me that. I shook my head to the side. "No. I think they are marvellous powerful weapons. Loads of money. But it's worth it." Gardon distorted his mouth with a nigga. Looks very happy. "Can you tell me the price? "Each one will have a wooden plaque on it. That's what it says." I will check the wooden plaque on each piece of martial arts as I was told. The sword - 55 large gold coins. Thirty-five guns - big gold. A set of plate armor - 80 large gold coins. When I see them, I snap them by accident. "Cheap... this much quality stuff at such a price...? No, of course it's the average person's annual income level or more, so it's never cheap. When I think about the quality, I want my hands out of my throat. Besides, I'm not sure my [sightseeing] will hit either. So even if I feel that it is of high quality, I can't really say otherwise - but I feel that this is definitely real first. Gardon, the shopkeeper, on the other hand, sounds bored again. "Well, it still doesn't sell well. I don't know what a brave man is, but I don't always have eyes for this guy. Besides, we have very little foot in the first place. The brave guys are only interested in the fancy boulevard shops that Hyoko, like Liselle, does." "No, well, well..." I don't know what I can do if people don't come to the store before [eye-catching]. Sometimes, if you're lucky, it spreads by word of mouth, but even though there is no certainty in [the aim] itself, you won't know that even if you try it in action, you won't at least fight the same monster, so the substantial performance of weapons and protective equipment is clearly difficult to measure, etc. Besides, the quality of the craftsman's arms is really plain compared to the difference in the materials used. If the performance of the weapon could be quantified, the difference in quality due to the craftsman's arms would only be about 20% difference between the pin and the kili as well. Plus there is the belief that popular stores can't be selling crude stuff, and the assumption that shops with idle birds ringing are probably because of poor quality. I guess that goes hand in hand with this, and the martial artefacts don't mean they can be sold if they are of high quality. In fact, Rio's reaction was oh. But Gardon says these words next. "If you make good things, you can sell them. That is the truth of the world. No, it has to be. How do you not know what's so obvious, Liselle's hyocho? I know he's not the bad one. But I don't care about his attitude as an artisan! Put your hands together! If we match his methods, my weapons will rot! With that said, Gardon steps on the estate in frustration. I don't know if you're messing with the theory you should be talking about and the theory of reality, but I don't think what you're saying is contradictory or subtly meshing, Mr. Gardon. but whatever that is...... I don't know what to do. If you look at the faces of the three Rio's, you're apparently unhappy buying the firearms here. I think this one performs better, and if you say it's for your own safety, I feel you'll understand, but honestly, I have a lot of time to look at these disappointed faces. Besides, in the first place, this store has very little clothes-based protective equipment made of magic fiber, and it feels like it doesn't suit Rio and the others with all the metal heavy protective equipment. And the price is plainly tight... To have weapons and protective equipment for everyone in this store, I don't subtly allow it in my hand right now. Even though it is cheaper than quality, we cannot ignore the absolute amount beyond what is budgeted. I thought it was a lot of money when I received two hundred large gold coins from the Vampire Road exorcism, but I shouldn't have insulted the price of high quality weapons as well. That way, a lot of gears, they don't mesh subtly. Well, this would be a take-home challenge, too. Let's think about it tonight as we take the night off at the inn. "Mr. Gardon, I just want to think, so can I come back later? "Yeah, I don't mind. You're a brave man with eyes to see, knowing how good your firearms are. You're always welcome." So we told Gardon we were coming back and we left the Gardon Martial Arts store. And then I went back to Main Street, and I looked for a place to stay, and I started walking, and...

第99話 その日は宿を取って就寝し、翌朝。 教え子たちとともに朝食をとってから宿を出て、中央広場の噴水前に行くと、待ち合わせ相手のウルが先に待っていて、ぺこりとお辞儀をしてきた。 俺は片手を上げて、ウルに声をかける。 「よう、ウル。ずいぶんと早いな。俺たちも少し早めに出てきたつもりだったんだが」 「う、うっす。うちのために、ブレットさんやリオちゃんたちが協力してくれるっす。うちが遅れるわけにはいかないっす」 ウルは律儀だった。 そしてガッチガチに恐縮しているようだった。 俺はウルの前まで行って、その肩をポンポンと叩いてやる。 「そんなに気にしなくていいさ。教え子たちへの授業がてらだ。──それよりウル、今日の仕事は大丈夫なのか?」 「うっす。うち、普段は街のパン屋で雇ってもらってるっすけど、今日と明日は休みっす」 するとそれを聞いたリオとイリスが、感心したような声をあげた。 「へぇー、ウルってその歳で、もう働いてるんだな」 「すごいねウル。自分で働いて暮らしているんだったら、もう大人の仲間入りだね。私たちも頑張らないと」 対してウルは、わたわたと慌てて答える。 「そ、そんなことないっすよ! リオちゃんたちのほうが、よっぽどすごいっす!」 「......価値観の違い。......ボクは、毎日あくせく働くなんて、絶対に無理。......それができるウルは、尊敬に値する」 と、教え子たちとウルは、きゃいきゃいとそんな話をしていた。 なお、魔王ハンターとして魔王を退治するのも、報酬を受け取る以上は仕事であり、立派な労働であるわけだが、どうやらうちの教え子たちにその認識はないようだった。 ともあれ、そんな与太話をしながら、俺たち五人は図書館へと向かっていく。 ラヴィルトンの街の図書館は、中央広場から住宅街に向かってしばらく歩いたところにある。 やがて、閑静な住宅街の一角にある図書館の前にたどり着くと、少女たちはその建物を見上げて「おぉ~」と感嘆の声を上げた。 職人都市、あるいは芸術の都の二つ名を冠するラヴィルトンだが、その図書館もなかなかに立派なものだ。 三階建ての石造りの建物で、敷地面積も十分に広く、上流階級の邸宅ぐらいにはある。 この建物をいっぱいに使って蔵書しているのだから、その規模は相当なものだ。 しかもこの図書館は、ラヴィルトンの街の公費で運営されており、その利用料はなんと無料。 誰でも手軽に自主的に学べる環境を作り、それによって街の文化を発展させ、結果としてこの都市は今もさらなる発達を遂げている。 そして俺たちも、その恩恵を受けて気軽に調べものができるというわけだ。 俺は子供たちを連れて、そんなありがたい図書館の中へと踏み込んでいく。 入り口付近にいた司書さんに軽く挨拶をすると、司書さんは読んでいた本から目を離さずに、小さくこくりとうなずく。 俺は気にせず、子供たちを連れてそのまま書庫へと向かった。 「「「「うわぁっ......!」」」」 リオ、イリス、メイファ、そしてウルの四人が、再び感嘆の声をあげる。 ずらりと並んだたくさんの本棚に、革表紙の立派な本が、余すところなくぎっちりと収納されている。 その様は、まさに壮観の一言だ。 この図書館全体での蔵書量は、数万冊を数えることだろう。 専門書から娯楽書、魔法の教科書や料理のレシピ本、さらには随筆から物語に至るまで、多種多様な本が所狭しと並んでいる。 ラヴィルトンの街の性質上、職工や芸術関係の蔵書が特に手厚いが、それ以外の本も蔑ろにされてはいない。 さて── 問題は、この中からどうやって、目当ての情報を探し出すかだが。 「な、なあ、兄ちゃん......これだけの本、全部読まないといけないの......?」 リオが顔を青くして、そんなことを聞いてくる。 イリスとウルも、だいぶ怖気づいているようだった。 ちなみにメイファはというと、近くにあった本棚の本を一冊手に取って、それを適当にぺらぺらとめくって眺めていた。 こいつは多分、真面目に探す気がないな......。 おそらくは興味の向くままに本を開いているだけなのだろうが......まあいい。 俺はリオたちに向かって言う。 「この図書館の本を全部、端から端まで読んでいたら、それだけで一生が終わっちまうかもしれないな。そうじゃなくて、調べたいものに関する本を探すんだよ。今回だったら、 イリスが質問してくる。 良い質問だ。 俺は少し考えてから、答える。 「それに関しては、基本的には必勝法はないな。適当にあたりをつけて探すしかないのが通常だ。今回だったら、勇者向けの本や、生物学、あるいは人類学あたりの棚を探してみるのが正攻法ってことになると思う」 「......でも、お兄さん......『基本的に』とか、『通常だ』とか言うからには、本当は、必勝法を知っている......?」 メイファが読んでいた本から目を離し、俺に視線を向けつつ言ってくる。 さすがメイファ、鋭い。 あと本を読みながら俺の話も聞いているとか、相変わらず器用なことをするなこいつ。 俺はメイファに向かって答える。 「まあな。実はな、どこの図書館でもできるわけじゃないが、このラヴィルトンの図書館なら可能だという、とっておきの必殺技がある」 「......必殺技。......それにはボクも、興味がある」 「うちも必殺技、教えてほしいっす!」 メイファとウルが、目をキラキラとさせながら食いついてくる。 リオとイリスもまた、興味津々のようだった。 ふっふっふ......いいだろう。 では究極の必殺技をお見せしよう。 「じゃあ、俺が実践してみせるから、よーく見てろ」 俺は教え子たちの尊敬のまなざしを受けながら、まず、書庫の前から移動した。 そして向かった先は、図書館の入り口前だ。 入り口すぐの場所にはカウンターがあり、そこには椅子に座った一人の女性がいる。 彼女はこの図書館の司書だ。 二十代半ばで眼鏡をかけた、大人しそうな雰囲気の女性で、今は外界のことにはまるで興味がないというように、手元の本を読みふけっていた。 俺はその司書の女性に向かって──とっておきの必殺技を放った。 俺の必殺技を見た教え子たちが、一斉にずっこけた。 「ちょっ、兄ちゃん......! 必殺技って、図書館の人に聞いてるだけじゃん!」 リオがそう突っ込んでくるが、俺はチッチッチッと、人差し指を立ててみせる。 「いいか、分からないことは専門家に聞くのが一番なんだよ。俺たち勇者が魔王退治のプロフェッショナルなら、司書さんは本のプロフェッショナルだ。特にここの司書さんは優秀だぞ」 と、俺がそう言ったところで、それまで微動だにしていなかった司書の女性が、ようやく動いた。 読んでいた本にしおりを挟み、本を閉じる。 それをカウンターの上に置くと、視線を上げ、俺を見てきた。 「あ......ブレットさん、お久しぶりです」 司書の女性は、ぺこりと頭を下げてきた。 「あれ、俺のこと、覚えてるんですか? 一度しかお会いしてないし、前に来たのは何年も前だったはずですが」 「......はい、覚えています。以前に来た時に、私の仕事をべた褒めしてくれたので、つい名前と顔を反芻して、覚えてしまいました。以前よりも外見は大人びていますけど、ひと目で分かりましたよ」 司書の女性は、おっとりとした様子でそう言ってくる。 俺は以前にラヴィルトンに来たとき、やはり調べものがあって、この図書館を利用したのだ。 その際に調べたいものを彼女に伝えたら、この膨大な量の書物を収めた図書館の中から、的確な関連書籍を数冊、何の迷いもなく引っ張り出してきてくれたのだ。 特にべた褒めをした覚えはないのだが......まあ、その仕事ぶりに感動して、すごいすごいとは言ったかもしれない。 それにしても、たくさんの利用者を相手にしているであろうに、たった一度この図書館を利用しただけの俺を覚えているなんて、おそろしい記憶力だな。 一方、司書の女性は立ち上がり、なおもおっとりとした様子で言う。 そう言って、司書の女性はおもむろに、書庫に向かって歩いていった。 俺は教え子たちを連れて、そのあとについていく。 司書の女性は何の迷いもなく書庫を進んでいき、一切の淀みなく本を選んでいく。 「これと、これと......あと、これもですね」 書庫を進むごとに、司書の女性は次々と、俺に本を渡してくる。 そうしてしばらく彼女のあとをついていくと、最終的に全部で十冊を超える数の本が、俺の腕の中に積まれていた。 モンスター学、自然人類学に文化人類学、果ては に関する知識を得るために適切な本は、これで全部のはずです。私も、当館のすべての書籍を中身まで把握しているわけではないので、ひょっとすると漏れはあるかもしれませんが、その場合はすみません」 「いえいえ、ありがとうございます。とても助かりました」 「どういたしまして。館内で閲覧される場合は、こちらのテーブルを使ってください。それでは」 司書の女性は会釈をすると、また館の入り口のほうへと戻っていった。 そんなわけで、ものの十分あまりで、必要な本の抽出が完了してしまった。 俺たちが自力で探していたら、五人がかりでももっと膨大な時間がかかっていただろうし、取り漏らしも多かったはずだ。 「司書さんって、すっげぇ......」 立ち去っていく司書の女性を見て、リオがそう漏らす。 「いやまあ、ここの司書さんが特別優秀だっていうのもあるだろうけどな。──さて、ここから先は、俺たち自身が本を読んで調べる番だぞ。いいな」 そんなわけで俺は、子供たちを交えた人海戦術でもって、テーブルの上に積まれた本へと取り掛かっていったのである。

99 Lesson 99 I took the inn that day and went to bed, the next morning. When I had breakfast with my godchildren and then left the inn and went before the fountain in Central Square, my meeting mate Ur waited first, and I bowed with a pepper. I raise one hand and speak to Ur. "Hey, Ur. That's a lot faster. We were gonna come out a little early, too." "Ugh, nagging. For our sake, Mr. Brett and Rio will cooperate. We can't be late." Ur was disciplined. And he seemed scared of the gucci bee. I'm gonna go up to Uru and pound that shoulder. "You don't have to worry so much. I have a class for my godchildren. - - More than that, Ur, are you okay with your work today? "Ugh. Of which, they usually hire me at the city bakery, but I'm off today and tomorrow" Then Rio and Illis, who heard it, raised a voice as impressed. "Heh, Ur is that age, you're already working" "That's amazing, Ur. If you're working and living on your own, you're already one of the adults. We have to work hard, too." Ur replies hastily. "Oh, that's not true! Rio and the others are so much more amazing! "... Differences in values.... I can never work every day. ... Ur who can do that deserves respect" And, my godchildren and Ur, we had to talk about that. It should be noted that exorcising the Demon King as a demon hunter is also a job and a fine labor than receiving a reward, but apparently our godchildren did not have that recognition. Either way, with all that talk, the five of us head to the library. The city's library in Lavilton is a short walk from Central Square towards the residential area. Eventually, when they reached the front of the library on the corner of a quiet residential neighborhood, the girls looked up at the building and exclaimed, "Ooh." Ravilton, which bears two names: the Artisan City, or the Capital of the Arts, but its library is also quite splendid. It is a three-story stone building with a large enough site and about an upper class mansion. I'm using this building full of books, so the size of it is considerable. Moreover, this library operates at the public expense of the city of Lavilton, and what a free royalty for its use. Create an environment where anyone can learn easily and autonomously, thereby developing the culture of the city, and as a result the city is still developing further. And we can easily look into it with the benefit of it. I take the children and step inside such a thankful library. A gentle greeting to the clerk, who was near the entrance, the clerk nods small and creased without taking his eyes off the book he was reading. I didn't care and took the kids straight to the library. "" "" Wow...! Four people - Rio, Illis, Mayfa, and Ur - once again raise their exclamation. There are many bookshelves lined up in a row, and a splendid book with a leather cover is stored neatly with no extra space. That's just a word of spectacle. The amount of books in this entire library will count tens of thousands. From specialty books to entertainment books, magic textbooks and cooking recipe books, and even from scratch to story, a wide variety of books line up narrowly. Due to the nature of the city of Ravilton, the collection of artisanal and artistic relations is particularly generous, but other books have not been scorned. Well... The question is, how do we find the information we're looking for? "Hey, bro... I have to read all these books...? Rio blues his face and asks me that. Iris and Ur, too, seemed a lot scared to notice. By the way, Mayfa took one of the bookshelf books that was nearby and looked at it appropriately peppered. Maybe this guy isn't seriously looking... Probably just keeping the book open for interest...... okay. I say to Rio and the others. "If you've been reading all the books in this library, from end to end, that could be the end of your life. No, you're not, you're looking for books about what you want to find out. This time, it's a book about werewolves." Iris asks the question. Good question. I'll think about it for a second, then I'll answer. "Basically, there's no way to win. Usually we just have to follow the area appropriately and look for it. This time, I think it would be a good idea to look for books for the brave, biology, or shelves around anthropology." "... but brother... when it comes to saying 'basically' or 'normal', the truth is, I know how to win...? He takes his eyes off the book Mayfa was reading and tells me as he turns his gaze to me. That's Mayfa, sharp. And don't be as clever as ever about reading books and listening to me, this guy. I answer to Mayfa. "Sort of. As a matter of fact, not every library can do it, but this library in Lavilton can do it." "... Special Attacks. ... and I'm interested in that." "We have a special attack, you want me to tell you! Mayfa and Ur eat up with their eyes sparkling. Rio and Illis also seemed intrigued. Ha-ha-ha... Fine. Now let's show you the ultimate Special Attack. "Well, let me put it into practice, and you'll see." I first moved out of front of the library with the respect of my godchildren. And on our way, in front of the entrance to the library. There is a counter right at the entrance, where there is one woman sitting in a chair. She is the secretary of this library. A woman with glasses in her mid-twenties and a seemingly adult atmosphere, she was now reading through the book at hand as if she was not interested in the outside world. I unleashed a special attack on the secretary's woman. My godchildren, who saw my special moves, stumbled all at once. "Hey, brother......! You're just asking people in the library about special moves! Rio comes in like that, but I'm gonna chitchat, I'm gonna get my index finger up. "Look, it's best to ask the experts what they don't know. If we brave men are professionals in demon king exorcism, the scribe is a book professional. Especially the clerk here." And that's what I said, and the secretary's woman, who hadn't been slight until then, finally moved. Pinch the discharge into the book you were reading and close the book. When I put that on the counter, I raised my gaze and I've been looking at me. "Ah... long time no see, Mr. Brett" The secretary's woman has bowed her head with a pepper. "That, you remember me? I've only seen you once, and you must have been here years ago." "... Yes, I remember. When I came here before, you praised me for my work, so I rebuffed my name and face, and I remembered. I'm more adult on the outside than I used to be, but I could tell with one eye." The secretary's woman says that in a quiet way. When I first came to Lavilton, I still had something to look into and used this library. When I told her what I wanted to look into at that time, she pulled a few accurate related books out of the library containing this enormous amount of books, without any hesitation. I don't remember giving you any particular compliments... well, I might have said I was impressed with the job and it was amazing. Still, it's a terrible memory to remember me using this library just once, even though I would be dealing with a lot of users. Meanwhile, the secretary's woman stands up, still says in a quiet manner. With that said, the secretary's lady, most importantly, walked towards the library. I'll take the godchildren and follow them. The clerk's woman goes on through the library without any stray, choosing the book without any precipitation. "This, this... and this, too" Every time I go through the library, the secretary's lady gives me one book after another. So I followed her for a while, and eventually more than a dozen books in all were piled up in my arms. It even mixes monster science, natural anthropology with cultural anthropology and, at the end of the day, a story about werewolves (warwolves) and, for some reason, a book on artisanal relations dealing with weapons. "In our collection, this should be all the right books to gain knowledge about werewolves (warwolves). Nor do I know all the books in our hotel to their contents, so there may be a leak after a moment, in which case I'm sorry" "No, thank you. Very helpful." "You're welcome. If you're going to be viewed in the building, use this table. Bye." When the clerk's woman gave the meeting, she returned to the entrance to the hall. That's why, not much of the stuff, the extraction of the necessary books was completed. If we had looked for it ourselves, even the five of us would have taken a lot more time, and there would have been a lot of leaks. "The clerk is amazing..." Seeing the clerk woman walking away, Rio leaks so. "No, well, some say the scribe here is extraordinarily good. - Okay, from here on out, it's our turn to read and find out for ourselves. That's good." That's why I went to the books on the table with the man-made tactics of having children.

第20話 勇者ギルドでオークロード退治を申請した俺は、三人の教え子とともに街の大衆食堂で昼食をとると、その足でファブル村へと向かった。 ファブル村は、オークロードが潜むと目されている洞窟の最も近くにある村だ。 俺は村にたどり着くと、まず村長の家へと向かった。 村人に案内されて、村で一番大きな木造の住居へ。 家の扉をノックして魔王ハンターとして街から来た旨を伝えると、奥の応接室へと通された。 応接室にいたのは二人。 村長と思われる老人と、もう一人、腰に剣をさげた男だった。 剣をさげた男は、左腕を包帯で巻いて吊るしていた。 怪我をしている様子だ。 「おおっ、あなたがたが魔王ハンターとして来てくださっ......た、方々なのです、よね......?」 村長と思しき老人は、最初俺たちを歓迎するような声を上げたのだが、後半は疑問符へと変わった。 まあ俺たちの姿、見た目だけだと三人の幼い美少女を連れた優男ぐらいにしか見えないだろうし、無理もない。 俺は特に気にせず、村長と思しき老人に向かって手を差し出す。 「リンドバーグの街の勇者ギルドから、魔王の情報を受けてきました。あなたは村長どのとお見受けしますが──そちらの方は?」 「お、おお、そうですか。失礼をいたしました。確かに私がこの村の村長です。──そしてこちらは、我が村の 包帯の男──トーマスは、包帯をしていないほうの右手を差し出してきた。 集落によって守り手のいるところといないところとがあるが、弱いモンスターによる襲撃程度ならこの守り手だけで即時の撃退が可能なので、村人から徴収した自治会費から給料を出して守り手を抱えている集落も、決して少なくはない。 俺は村長との握手を終えると、次にトーマスとも握手をする。 「ブレットです。今は魔王ハンターが本業じゃないんですが──これが俺の今年のステータス検定の結果になります」 外見から不安を抱かれている可能性を懸念した俺は、自己紹介代わりに自分の勇者カードをトーマスに渡して見せた。 勇者カードは、毎年一回行われる勇者のステータス検定試験の結果を表したカードだ。 魔導撮影機で撮影した勇者の本人確認写真とともに、測定した各種ステータスや、そこから導き出される認定勇者レベルなどが記されている。 そして、俺の勇者カードを見たトーマスは、驚いたというように目を見開いた。 「なっ......!? ど、どうしてこんな高レベルの方が、こんな案件に......」 「いや俺、さっきも言いましたけど、今は魔王ハンターが本業じゃないんですよ。勇者学院で教師をやっていまして。──それでこいつらに、実戦経験を積ませてやりたくて」 俺はそう言って横手に退き、俺の後ろに控えていた三人の教え子たちを示した。 それを受けて、イリスが慌ててぺこりと頭を下げ、リオも軽く会釈する。 さらにメイファが興味なさそうにしていたのを見て、イリスが無理やり頭を下げさせた。 それを見たトーマスは、またも驚いたという表情を見せる。 「ほ、本気ですか......? こんな可愛い......じゃなかった、こんな幼い子供たちを、実戦に出すなんて......」 「ええ。でも勇者学院ができる前の時代には、みんなやっていたことですよ。ベテランの勇者が、まだ幼い勇者を実戦に同行させて面倒を見ながら育てる。スキルの訓練や座学だけじゃ身につかないものもありますから」 「まあ......そうですね。勇者学院を卒業していても、実戦を経験していない勇者は危なっかしいですからね......」 トーマスはさすがに現場で活動している勇者らしく、俺のやり方の意義をすぐに分かってくれたようだった。 これが勇者協会の上のほうのやつらを相手にすると、まるで通じないからなぁ......。 と、俺はもう一つ、気になっていたことをトーマスに聞く。 「ところでトーマスさん、失礼ですが、その左腕はやはり──オークロードに?」 俺のその不躾な質問に、トーマスは神妙な面持ちでうなずいた。 「はい。恥ずかしながら、村人が見かけたというオークを討伐に向かって、そこで魔王化したオークに出遭ってこのザマです。私の力では、命からがら逃げてくるのが精一杯でした」 「治癒魔法は使えないですか」 「はい。修得していれば便利なんでしょうが、私には適性がなくて。いずれ街に行って治癒魔法をかけてもらおうとは思っているのですが、いま私がこの村を離れてしまうと、村のことが心配で」 なるほどな。 だったらちょうどいい。 「じゃあトーマスさん、その怪我、治癒させてもらっていいですか?」 「えっ......? は、はい、もちろんですが......」 「よし、それでは──イリス」 「は、はいっ!」 俺が呼ぶと、イリスがびしっと背筋を伸ばした。 うん、緊張しすぎである。 「聞いての通りだ。出番だぞ」 「え、で、でも......」 「大丈夫だ、何度も練習しただろ。それにどう転んだって、何も迷惑をかけることなんてない。自信を持ってやってみろ」 俺がそう言ってイリスの頭をなでると、イリスは目をバッテンにして、耳まで真っ赤になってぷるぷるとした。 が、やがて── 「わ、わかりました......やってみます」 そう言って瞳に決意を宿し、トーマスの前まで歩いていった。 「あの、トーマスさん、失礼します」 「あ、ああ」 トーマスは年甲斐もなく、少し恥ずかしそうな様子で及び腰になっていた。 うんうん、分かるぞトーマス。 イリスみたいな超絶美少女に寄られて、男として緊張しないわけがないもんな。 でもダメだぞ。 うちの子のことをいやらしい目で見たら、その両目をメイファの槍使って二段突きでぶち抜くからな。 という脳内での冗談はともかく── イリスはトーマスの前に立つと、すぅと深呼吸をする。 そして次に、祈りを捧げるように両手を組んだ。 イリスの全身を、魔力の輝きが覆い始める。 ちなみに、別に魔法を使う際にあんなポーズをとる必要はないのだが、あれはイリスのクセというか、彼女なりの魔法イメージの作り方なんだろうと思う。 イリスは今、必死に頑張っているのだ。 そんな教え子の姿を見て、俺はいてもたってもいられなくなり、彼女にエールを送る。 「イリスーっ! お前ならできる、頑張れー! パパは応援してるぞー!」 「......お兄さん、うるさい。......それじゃイリスが集中できない」 メイファからツッコミを入れられた。 しょぼーん。 一方でイリスは、俺がそんなことをしている間にも、魔法を完成させていた。 愛らしくも凛としたイリスの声が、応接室に響きわたる。 と同時に── ──ぴちょん。 トーマスの左腕の上、空中から光り輝く水滴が落下した。 その水滴がトーマスの左肩に落ちると、治癒の魔力を帯びた光がトーマスの左腕全体へと広がっていく。 やがてトーマスは驚きの表情を見せ、さらにはその左腕をぐるんぐるんと回してみせた。 「おおっ......! すごい、腕が動くぞ! それに痛みも取れている! ──ありがとう、小さな勇者よ!」 「は、はいっ。治ったなら、良かったです」 「何かお礼をしないと......! ──そうだ、失礼かもしれないけど、通常の治療報酬でいいかい?」 イリスはトーマスから、金貨を一枚渡された。 困ったイリスが、どうしようという目で俺のほうを見てくるので、俺は少女に向かってうなずいてやる。 「いいよ、もらっておけ。イリスの仕事に対する正当な報酬だ」 「え、えっと......はい、分かりました。先生が、そう言うなら......」 イリスは両手で持った金貨をじっと見つめると、それをきゅっと握りしめて、胸の前で抱いた。 「えへへ~」 イリスはとても嬉しそうに笑った。 それはイリスが自分の力で稼いだ、初めてのお金だった。

20 Lesson 20 Having applied for Oak Road expulsion at the Guild of the Brave, I went to Fable Village with that leg when I had lunch in the city's Mass Dining Room with my three godchildren. Fable Village is the nearest village in the cave where Oak Road is seen lurking. When I got to the village, I headed to the village chief's house first. The villagers guide you to the biggest wooden dwelling in the village. When I knocked on the door of the house and told him that I was from the city as a demon king hunter, he was passed to the reception room in the back. There were two of us in the reception room. He was an old man, supposedly the village chief, and another, a man with a sword on his waist. The man with the sword was hanging with his left arm wrapped in a bandage. Looks like he's hurt. "Whoa, you guys come as demon hunters...... those are the people, right...? The village chief and the old man raised their voices to welcome us at first, but the second half turned into a question mark. Well, our appearance, just our appearance, will only look like a good guy with three beautiful young girls, and I can't help it. I don't give a shit, I think the village chief and I give a hand to the old man. "I have received information from the Guild of Brave Men of the City of Lindbergh about the Demon King. Who do you think you are, Mayor? "Oh, oh, really? I'm sorry for your rudeness. Indeed, I am the village chief of this village. And this is Thomas, the brave guardian of my village." The bandaged man - Thomas - has offered the right hand of the unbandaged one. There are places where there are no protectors by the settlements, but only this protector can be immediately repelled if it is about the extent of raids by weak monsters, so there are never a few settlements that have protectors with salaries out of the autonomous dues collected from the villagers. When I finish shaking hands with the village chief, the next time I shake hands with Thomas, too. "It's Brett. Now, the Demon King Hunter isn't in business, but this is my status test for this year." Concerned about the possibility of being anxious from the outside, I gave Thomas my brave card instead of introducing myself to show it. The Brave Man Card is a card that represents the results of the Brave Man's Status Test, which takes place once a year. Along with the identification photographs of the brave men taken with the magic guide photographer, the various statuses measured and the certified brave men level derived therefrom are noted. And Thomas, who saw my brave card, opened his eyes like he was surprised. "Become...!? How can such a high level be such a project..." "No, I, as I said earlier, now the Demon King Hunter is not the main business. I was a teacher at the College of the Brave. So I wanted to give these guys some experience in action." That's what I said, retreated sideways, showing the three godchildren I was holding back behind me. With that in mind, Illis rushes to bow his head with a pepper, and Rio also meets lightly. Seeing as Mayfa seemed even less interested, Iris forced me to bow my head. Thomas, who saw it, also gave the look of surprise. "Ho, are you serious......? This is so cute... I can't believe I put these young kids in action..." "Yeah. But in the days before the College of the Brave, that's what we all did. A veteran brave man raises a still young brave man to accompany him in action to take care of him. Some skills training and sitting are not the only things you can acquire." "Well...... right. Even if you are graduating from the College of the Brave, it is dangerous for a brave man who has not experienced a real battle..." Thomas was just like a brave man working in the field and seemed to quickly understand the significance of my ways. When this deals with the ones above the Brave Men's Association, it's as if they don't get through...... And I ask Thomas one more thing that I cared about. "By the way, Mr. Thomas, if you'll excuse me, is that left arm still on Oak Road? Thomas nodded with a strange face to that lame question of mine. "Yes. I am ashamed to go on a crusade for the oak that the villagers saw, where I am this zama when I run into the demonized oak. In my power, it was the best I could do to get away with it." "Can't you use healing magic" "Yes, it would be convenient if I learned, but I don't have the right. Sooner or later, I'm going to go to the city and get some healing magic done, but if I leave this village now, I'm worried about the village." I see. Then it's just fine. "So, Mr. Thomas, can I heal that injury, please? "What...? Yes, of course..." "All right, well, then..." "Ha, ha! When I called, Illis stretched his spine. Yeah, I'm too nervous. "You're right to ask. It's your turn." "Oh, so, but..." "It's okay, you've practiced it many times. And there's nothing bothering you about how you fell. Try it with confidence." When I said that and put Iris' head on, Iris bated his eyes, turning bright red to his ears and puffy. But eventually... "Wow, I get it...... I'll try" That's what I said, I settled in my eyes and walked up to Thomas. "Um, Mr. Thomas, excuse me" "Oh, oh." Thomas was not worthy of his age and was lying back looking a little embarrassed. Yeah, yeah, we'll see, Thomas. There's no way I wouldn't be nervous as a man being stopped by a super beautiful girl like Illis. But you can't. If you look at my kid with a nasty eye, I'll use Mayfa's spear to punch both of those eyes out with a bunk poke. Whatever the joke in your brain... Iris takes a deep breath when he stands in front of Thomas. And then he put his hands together to offer prayers. The glow of magic begins to cover the whole body of Illis. By the way, I don't need to pose like that when I use magic, but I guess that's Illis' scum or the way she creates her own magical image. Illis is working desperately hard right now. Seeing a goddaughter like that, I can't be there or not, and I send her a ale. "Iris! You can do it, come on! Daddy's here for you! "... brother, shut up.... then Illis can't concentrate." Mayfa put a scratch in me. Squishy. Iris, on the other hand, was completing his magic while I was doing that. The lovable and Rin's voice echoes into the reception room. At the same time... - - Pippin. Glowing droplets fell from the air over Thomas' left arm. As that droplet falls on Thomas' left shoulder, the magical light of healing spreads across Thomas' left arm. Eventually Thomas gave him a surprise look, and even turned that left arm around. "Whoa......! Wow, my arm's moving! And it's taking the pain! -Thanks, little brave man! "Ha, ha. I'm glad it's healed." "I need to thank you for something......! - Yeah, I know, I know it might be rude, but can I get a regular treatment reward? Ilis was given a piece of gold by Thomas. Troubled Illis will look at me more with the eye for what to do, so I will nod to the girl. "Fine, take it. A just reward for the work of Illis." "Uh... yes, I get it. If that's what the teacher says..." Ilis stared at the gold coin he held with both hands, clutching it softly and holding it in front of his chest. "Eh heh." Ilis laughed with great pleasure. That was the first money that Illis made on his own.

第47話 問題なのは、“剛剣”アドルフとリオの戦いだ。 「──うぁああああああっ!」 もう何度目になるか。 リオは再び、アドルフの攻撃の威力を受け止めきれずに、吹き飛ばされていた。 リオはグラウンドをごろごろと転がり、今度はすぐに起き上がることもできない。 そこに威圧感の塊のようなアドルフが歩み寄ってくる。 リオはよろよろと立ち上がり、苦しげな表情で迫りくる敵を見上げる。 「はぁっ......はぁっ......く、くそっ......強ぇ......!」 「どうした雌犬。自慢の速さも鈍ってきているぞ。もう抵抗は終わりか? ならば──」 「──ッ!?」 リオの目の前まで、アドルフが一瞬で駆け寄った。 万全の状態のリオにはわずかに及ばないが、アドルフの敏捷性もまた一級品だ。 「終わりだ──【斬岩剣】」 「くっ──【パリィ】!」 アドルフが頭上から木剣を力強く振り下ろす。 すでに脚にガタがきているリオは、それを防御技で弾こうとした。 ──カンッ! リオの木剣が、アドルフのそれを横から叩く。 だが── 「がっ......あがっ......!」 アドルフの木剣は、リオの右肩に直撃していた。 リオの【パリィ】では、アドルフの攻撃の威力を削ぎ切れなかったのだ。 アドルフが剣を引くと、リオはがくりと膝をつく。 少女の手から木剣が取り落とされ、からんと音を立てて地面に転がった。 「うっ、ぐ、あああああっ......!」 「ふん......非力だな」 アドルフはその大きな左手でリオの首をつかんで、少女の華奢な体を片手で持ち上げた。 宙づりにされたリオの手足が、もがくように宙を掻く。 「うあっ......あっ、ぐぅっ......!」 「存外に打たれ強さも鍛えているようだが......それもこれまでのようだな。では──死ね」 アドルフはリオを地面に放り捨てる。 そして、肩を抑えてもがき苦しむリオに向けて、冷たい目で木剣を振り下ろそうとするが── そのとき、リオが声を振り絞って叫んだ。 「た、助けてくれっ──イリス、メイファっ......!」 「......その言葉を、待ってた。......【 いつでも魔法を放てる状態で待機していたメイファが、アドルフに向かってそれを放った。 五つの火炎弾がアドルフに殺到する。 アドルフはそれを反射的に【ディフレクション】で弾こうとしたが、五弾すべてをかき消すことはできなかった。 二弾がアドルフの肩と脇腹にそれぞれ命中する。 「ぐっ......!」 それで決定打になるようなことはないが、アドルフがわずかに怯んだ。 その隙に、イリスが駆け込んでリオを抱え、アドルフの前から救出する。 「もう、リオ! 意地を張りすぎ! 見てるこっちの身にもなってよ」 「へっ......へへっ......わ、悪りぃ......にしてもあいつ、ホント強ぇな......」 「男の子じゃないんだから。リオは強い弱いにこだわりすぎ。ほら、じっとしてて──【 月光治癒 イリスの治癒魔法ですっかり元気になったリオは、イリスが拾っていた木剣を受け取りつつ、立ち上がる。 リオの治癒を終えたイリスも同時に立ち上がると── リオ、イリス、そしてメイファの三人が、“剛剣”アドルフを取り囲む形となった。 それを見たアドルフは、口元を歪めて笑う。 「ほう、三対一か。......なるほど、ドロシーとジェイクを手早く打ち倒す程度の実力はあるということか。俺としたことが、見誤ったようだ」 アドルフは周囲を見回し、自分の仲間たちがすでに倒されていることを確認する。 そのアドルフに対し、リオが言った。 「“剛剣”アドルフ──あんたやっぱ強ぇよ。でも悪りぃな。オレたちは『勝つ方』を選んだんだ」 「そうか──いや、結構だ。では戦いを再開するとしよう」 アドルフが地面を蹴った。 剛速で少女たちに向かって駆ける。 彼が狙う相手はイリス。 最初に回復手を潰そうという考えだろう。 だがその前に、リオが立ちふさがる。 アドルフが叫ぶ。 「──邪魔だ、雌犬! 貴様では俺を止められんことは分かっただろう!」 「オレ一人だったらな! ──イリス!」 「うんっ、リオ! ──【 イリスが放った補助魔法の効果がリオに宿る。 と同時に、アドルフとリオがぶつかった。 ──ガツンッ! アドルフとリオのパワーが衝突し、両者の木剣が互角の鍔迫り合いを演じる。 いや──厳密には、互角ではなかった。 気合いの声を上げたリオの押し込みで、攻めたアドルフの側が押し返された。 巨躯がよろめき、一歩、二歩と後ずさる。 そこに── メイファが放った二つの魔法が、同時にアドルフに襲い掛かる。 「初級魔法の【 五つの火炎弾と五つの風刃、トータルで十の魔法弾は、うち三つがアドルフの【ディフレクション】でかき消されたが、残りの七つがアドルフの肉体を焼き、切り裂いた。 さらに── 「ぐっ......目潰しか!」 「チッ──【三段切り】!」 「ぐぉおおおおおおっ!」 イリスとリオの連携攻撃で、着実にアドルフにダメージを与えていく。 さすがのアドルフも、あの三人を相手にして三対一では、到底歯が立たない。 一方的な試合展開になっていった。 それを見ていた観客席が、ざわつき始める。 「なんかさ......あんなの汚くねぇ?」 「まあな。一対一ならアドルフのほうが強いのに、あれじゃあな......」 「でも三対三の試合なんだから、ああいうもんだろ?」 「そりゃ分かるよ。分かるけどさ......なんかやっぱ、どうかと思うよな」 「ああ、なんつーか......勇者らしくないっていうか......集団リンチ?」 「そうそう、それな」 「なーんか、面白くねぇ試合だよな」 「あー、あれだよ。アイドルショーだと思っとけばいいんじゃねぇの?」 「そっかそっか。なるほどな。......あー、白けるわー」 ──俺はそれを、歯を食いしばりながら聞いていた。 どいつもこいつも、勝手なことばっかり言いやがって。 リオたちがどんな想いであの決断をしたのか、知りもしないくせに。 そして何より、それをけしかけたのは俺なんだ。 観客の声は、当然リオたちにも届いているだろう。 あいつらは今、どんな想いで戦っているのか。 それを思うと、胸をかきむしられるような想いだったが── そこで、「あの男」が動いた。 自分の子飼いの生徒たちの不利を目の当たりにして、ずっと苛立ちの様子を見せていたあの男──サイラスが、だ。 サイラスは役員席で立ち上がり、舞台演劇をするかのように語り始める。 「おのれリット村勇者学院! なんて卑劣な戦いをする生徒たちだ! 信じられん! 神聖なるこの最強新人勇者決定戦を、なんだと思っているのか!」 ──チッ、あの野郎......! 俺がサイラスのほうに視線を向けると、サイラスも俺のほうを見る。 そして口元をニヤリと歪め、言い放った。 「リット村勇者学院の担任教師は──おやぁ、なんと問題教師として左遷された、ブレット先生ではありませんか? なぁるほどぉ! 問題教師の指導で育ったから、教え子たちも問題生徒になったのですな! やれやれ、まったく嘆かわしい!」 サイラスの一人舞台。 それを耳にした観客たちが、ざわめきを増していく。 「あの担任、問題教師なのか......? はぁ~、だから生徒たちも、あんな戦い方してんのか......」 「なるほどな。勝てれば何でもいいって戦い方だもんな。教えてる教師のせいか」 「はぁ......そんなやつらが今年の優勝か。なんか嫌だよな......」 そんな中、いつしかリオたちも、戦いをやめていた。 ダメージを受け続けボロボロの姿になったアドルフと、リオ、イリス、メイファの三人も、手を止めてサイラスと観客席の声に注目してしまっていた。 リオが、イリスが、メイファが、観客たちに向かって訴えかける。 「違ぇよ! 兄ちゃんはオレたちに、どうするかは自分で選べって......! 選んだのはオレたちだ! 悪いのは兄ちゃんじゃねぇ!」 「先生は、問題教師なんかじゃありません! 私たちは、先生のおかげでここまで来られたんです!」 「......お兄さんのことを何も知らないのに、悪く言うな......! ......お兄さんは、お前たちの思っているような、悪い先生じゃない......!」 だが役員席のサイラスが、そこに再び口を挟む。 「おお、かわいそうに! 何かあれば自らをかばうように躾けるなど、もはや洗脳だ! ひどすぎる! 見てください皆さん、あれがブレットという問題教師による洗脳教育の結果です!」 「うわぁ......そこまでするか......とんでもない教師ですね」 「あの子たち、かわいそうに......せっかくの輝かしい才能が、問題教師のせいで台無しだ」 サイラスに同調するのは、彼の取り巻きの勇者協会の連中だ。 しかしそのサクラ効果によって、サイラスの意図が観客へと伝播していく。 ──この状況にあって、俺はどうすればいいのか、分からずにいた。 生徒たちをかばえばいいのか? いや、それでは俺やリオたちに向けられた偏見を拭えないだろう。 サイラスに言い返せばいいのか? それもダメだ。 先に問題教師という先入観をばら撒かれているのだから、普通に口論をしても圧倒的に分が悪い。 ──くそっ。 どうすればいい......!? だが、俺が手をこまねいていたそのとき── 一人の少年が、サイラスに向かって声を張り上げた。 それは──“剛剣”アドルフ。 獅子の咆哮のような怒号が、競技場に響きわたる。 「──うるせぇクソジジイ!!! 余計な横槍入れてんじゃねぇ! 俺たちの戦いを邪魔するなら──テメェもぶっ殺すぞ!!!」 びりびりと空気が震えるようなその声に、会場中が静まりかえった。

47 Lesson 47 The problem is the battle between Adolf and Rio. "- Uh-oh! How many times will it be now? Once again, Rio had been blown away, unable to accept the power of Adolf's attacks. Rio rolled through the ground, and now he can't even get up right away. Adolph walks over there like a chunk of intimidation. Rio rises at ease and looks up at his impending enemies with a bitter look. "Ha... ha... Damn... strong...! "What's up, bitch? The speed of bragging is slowing down. Is the resistance over yet? Then..." "- Huh!? Adolph rushed over in an instant, right in front of Rio. Though slightly less than Rio in perfect condition, Adolf's agility is also a first-class product. "It's over." "Knock it off. [Paris]! Adolf swings the wooden sword down forcefully from overhead. Already rattling on his legs, Rio tried to play it with a defensive move. - Kang! Rio's wooden sword slaps Adolf's from the side. But... "Damn... up...! Adolph's wooden sword was striking straight into Rio's right shoulder. In Rio's [Parry], Adolph's attack could not be cut off. When Adolph draws his sword, Rio kneels. A wooden sword was removed from the girl's hand, making teasing noises and rolling to the ground. "Ugh, guh, ahhh...! "Hmm... you're weak" Adolf grabbed Rio's neck with that big left hand and lifted the girl's luxurious body with one hand. Rio's hands and feet, made of space, scratch the universe as if they were crooked. "Ugh... Ah, guh...! "Looks like he's been hit out-of-the-box and working out his strength... but that sounds like he's done it before too. Then... die." Adolph throws Rio to the ground and dumps him. And I try to wield a wooden sword down with my cold eyes towards Rio, who suffers even if I keep my shoulders down. That's when Rio shook his voice and screamed. "Ya, help me - Iris, Mayfa...! "... I've been waiting for that word.... [Fire Arrow (Firebolt)]!" Mayfa, who was waiting with her magic unleashed at all times, unleashed it towards Adolf. Five flamethrows arrive in Adolf. Adolf tried to play it reflexively [difflection], but could not undo all five bullets. Two bullets hit Adolf's shoulder and flank, respectively. "Gu......! That doesn't make it to a decision, but Adolf was slightly frightened. In that gap, Illis rushes in and holds Rio and rescues him from before Adolf. "Already, Rio! Too mean! I'm watching. I'm watching." "Heh... heh... heh, bad... but he's really strong..." "Because I'm not a boy. Rio is too focused on strong weakness. Look, just sit tight. "Oh, I'll dye it...... ha, Thankyou, Illis. It's easier." Fully enlivened by the healing magic of Illis, Rio rises as he receives the wooden sword that Illis was picking up. After Rio's healing, Iris stood up at the same time. Three people, Rio, Illis, and Mayfa, surrounded the Rigid Sword Adolph. Adolph, who sees it, laughs distorted at his mouth. "Well, three against one?... So you're saying you have the strength to beat Dorothy and Jake down quickly? What I did seems to have gone wrong." Adolph looks around and makes sure his people have already been defeated. To that Adolph, Rio said. Adolph, you're strong. But not bad. We chose to win. " "Well... no, I'm fine. Then let's say we resume the fight." Adolf kicked the ground. Run for the girls at a fast speed. The person he's after is Illis. The first idea would be to crush the healing hand. But before that, Rio stops. Adolf screams. "- Out of the way, bitch! You know you can't stop me! "I wish I was alone! -Iris! "Ugh, Rio! - - [Earth Rigidity (Earth Mite)]!" The auxiliary magic effect unleashed by Illis dwells in Rio. At the same time, Adolf and Rio bumped into each other. - Gatsung! Adolf and Rio's power collide, and both wooden swords play each other's impending. No... technically, it wasn't mutual. Rio's push, which raised his temper voice, pushed back the side of Adolf who attacked him. The giant body melts, one step, two steps behind. There's... Two magics unleashed by Mayfa strike Adolf at the same time. "The [double cast] of elementary magic...!? Guuuuuuuu!" Five flame bullets and five wind blades, ten magic bullets in total, three of which were extinguished with Adolf's [difflection], but the remaining seven burned and mutilated Adolf's flesh. Plus... "Gu... you're blinding me! "Chip-- [Three-step Cut]! "Whoa, whoa, whoa!" A coordinated attack between Iris and Rio, steadily inflicting damage on Adolf. That's Adolph, too, three to one against those three, he can't stand a bottom tooth. It became a one-sided game development. The audience that was watching it starts to bother. "Something... isn't that dirty? "Sort of. Adolph is stronger if he's one-on-one, but I'll see you then..." "But it's a three-on-three game, so yeah, right? "You'll see. I know, but I don't know... I don't know." "Oh, I don't know... don't you mean like a brave man... group lynch? "Yeah, yeah, I guess so." "Nah, it's not funny. It's a game." "Uh, that's it. Shouldn't you think it's an idol show? "Oh well. I see.... uh, I'll white-" - - I was listening to it, eating up my teeth. All the time, this guy's just saying things on his own. You don't even know what kind of thoughts Rio and the others made of that decision. And most importantly, I'm the one who put it on. The audience's voice will naturally have reached the Rio's as well. What thoughts are those guys fighting with now? When I thought about it, I felt like I was getting my chest ripped off, but... So, "The Man" moved. The man, Cyrus, who had been showing frustration at the disadvantage of his children's students. Cyrus gets up on the board seat and starts talking as if doing stage theatre. "Tomorrow Lit Village College of Brave Men! What a despicable battle students! I can't believe it! What do you think this most powerful newcomer brave decisive battle of holiness is! - - Chih, that bastard...! When I turn my gaze towards Cyrus, Cyrus sees me too. And his mouth was crooked, and he said away. "The teacher at Lit Village College of the Brave - hey, what a problem teacher you've been relocated to, isn't that Dr. Brett? Heh heh heh! You grew up with the guidance of problem teachers, so your teachers became problem students too! Oh, boy, that's utterly lamentable! One person stage in Cyrus. The audience that hears about it gets more blurry. "Is that the problem teacher...? Ha ha, that's why the students are fighting like that..." "I see. It's a way of fighting that you can win anything you want. Because of the teacher I teach." "Ha... those are the winners of the year. I don't like it..." In the meantime, Rio and the others have always stopped fighting. Adolf, who continued to look damaged and worn out, and three others, Rio, Iris and Mayfa, had also stopped their hands and paid attention to Cyrus and the voice of the audience. Rio, Illis, Mayfa, appeals to the audience. "No! Your brother told us to choose for ourselves what to do...! We're the ones who chose! It's not your brother that's bad! "The teacher is not a problem teacher! We made it this far thanks to our teacher! "... Don't say it badly, even though I don't know anything about your brother...!... Your brother is not a bad teacher, as you think he is...! But Cyrus in the board seat pinches his mouth there again. "Oh, poor thing! If you need anything, you can cover yourself. It's no longer brainwashing! Too much! Look, ladies and gentlemen, that's the result of a brainwashing education by a problem teacher named Brett! "Wow... that's it... you're a hell of a teacher" "Poor kids... my glorious talent is ruined because of the problem teachers" In tune with Cyrus are the brave men of his surroundings. But the Sacramento effect propagates Cyrus' intentions to the audience. - - In this situation, I couldn't figure out what to do. You want me to cover the students? No, then you won't be able to wipe the prejudice directed at me or the Rio's. Am I supposed to tell Cyrus back? That doesn't work either. They sprinkle the preconceived notion of problem teachers first, so the minutes are overwhelmingly bad even if they usually argue. - - Damn. What can I do......!? But when I was holding my hand... One boy raised his voice toward Cyrus. It's... "Rigid Sword" Adolf. The roaring roar of a lion echoes the arena. "- Uuuuuuuuuuuuuuuu fucking jizzy!!! You're not putting in an extra cross spear! If you want to interrupt our fight - - I will kill Temehe too!!! The whole venue quieted back to that voice, which was trembling with fright and air.

第13話 その後、俺は魔法屋に寄り、初級魔法の教科書を三冊買って、リオ、イリス、メイファにそれぞれ一冊ずつ渡してやった。 それから街の食堂で食事を終えると、俺たちは街の門を出て、村への帰途についた。 「ふぃー、食った食った♪ お腹ぱんぱんだ」 「......お兄さんは、ボクたちに貢いでくれるから、やっぱり神。......でもロリコンだから、ロリコン神」 リオとメイファが、心底幸せそうな顔で村への帰り道を歩いていた。 こいつらが幸せそうにしているのを見ればこっちも気分はいいんだが、メイファのやつはときどきこのまま地面に埋めたくなるな。 そんな中、イリス一人が俺の服の袖をくいくいと引っ張り、少し心配そうな、申し訳なさそうな顔をしてくる。 「......でも先生、本当にいいんですか? 私たち、こんなに良くしてもらって......先生、私たちのために、お金たくさん払ってますよね......?」 そう言って、上目遣いに俺のほうを見上げてくる金髪碧眼の美少女。 なんだこれ、すげぇ可愛い。 あとさすがイリス、まだ子供なのに天使のような気遣いだ。 メイファに爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。 だけど、まあ── 「あー、いいっていいって、気にするな。そのうち体で払ってもらうからさ」 ちなみにリオもイリスのもとに寄って、その前で「がるるるるっ」と、今度は猛獣のようになって牙をむいている。 一方、同じように距離を取ったメイファが、俺にジト目を向けてくる。 「......お兄さん、『体で払ってもらう』の意味を、詳しく」 あっ。 「いやいやいやいや、お前らは何か勘違いをしてるぞ。そうじゃない。そのうち魔王ハンターの仕事で金を稼いで、それで返してもらおうと思っていただけだ」 「......まあ、そんなことだろうと思ったけど」 メイファは、はぁとため息をついた。 あれ、俺、メイファにすら呆れられている......? 俺はここまでに、三人の食事代や散髪代、衣服や武器、魔法の教科書を買う代金などのために、まあまあ大きな金額を支払っている。 そして今後も、何らかの入り用があれば、しばらくは俺が支払うよりほかにないだろう。 ただ俺は三人の親ではないし、教師が生徒の養育費や教材費を支払うというのは、あまり健全な関係とは言い難い。 かと言って、教育にかかる必要経費として協会に申請したところで、とても通るとは思えない。 しかしある程度の教材が無ければ十分な教育はできないし、そもそも衣食住が足りていなければ教育どころの話じゃない。 今のリオたちをまともに育てるには、最低限、どうしたって必要な出費というものがある。 そこで俺が考えていたのは、ちょっとした裏技だ。 王都で教師をやっていたときには、協会やら保護者やらがうるさいとか受け持っている生徒の人数が多いとかの事情で実行には移せなかったが、今のこの環境なら実現可能だという方法。 それはつまり、リオたち三人をある程度まで育てたら、実践訓練を兼ねて魔王ハンターの仕事を実際にやってもらうという方法だ。 これなら実戦の経験にもなり、金も稼げて一石二鳥というわけだ。 教師である俺が後ろで目を光らせていれば、危なくなったときにすぐにもカバーに入れるわけで、危険性も限りなく小さい。 ただ、いかな天才児揃いといっても、さすがに現段階でいきなりそれをやらせるというのは時期尚早だろう。 魔王の強さはピンキリだとは言え、総じて普通のモンスターよりも手ごわい。 群れを率いていることも多いので、弱めの魔王でも侮ると痛い目に遭いかねない。 まあ、ある程度基礎を教えたら、魔王じゃない普通のモンスターで慣らすところからだろうな── そんなことを考えながら、俺は村へと続く夜道を、三人の少女たちと共にぶらぶらと歩いていった。 俺たちはやがて、村へとたどり着いた。 俺の新たな住み家である教員用の住居の前まで来ると、リオたち三人がてててっと離れ、俺に向かって手を振ってくる。 「んじゃ、兄ちゃんまた明日な。今日はいろいろとありがと」 「先生、今日はごちそうさまでした。あと、プレゼントもありがとうございます。大切にします」 「......お兄さん、また明日、遊ぼう。......今日は、楽しかった」 そう言って三人は、勇者学院校舎という名のボロ小屋のほうへと去っていこうとするのだが── 「いや、ちょっと待てお前ら。どこに行くつもりだ?」 俺は三人の教え子を呼びとめる。 「ん......? どこって、家に帰るんだけど」 リオがそう返してきたので、俺は目の前の教員用の住居を指さした。 「や、だから。今日からお前らの家もここだって」 「えっ」 そういえばまだ話してなかったっけか。 「だってこの家、家族用の広さだから一人で住むのはもったいないし。朝一緒に掃除させたのは、今日からお前らの家でもあるから綺麗にしようぜって意味だったんだが」 「でも掃除の報酬はメシと風呂って」 あー、そう言えば、そんな方便も使ったような。 あの段階でリオたちを動かすのには、そのほうが釣りやすいと思ったからなんだが。 「──とにかく、今日からお前らもこの家に住め。あんなボロ小屋で毛布一枚に包まって寝るより、みんなベッドで寝た方がいいだろ」 リオはイリス、メイファの二人と顔を見合わせる。 三人とも、どうしようといった表情だ。 何を迷っているんだ? 遠慮しているんだろうか。 だったら遠慮の必要はないぞ、と言ってやろうとしたとき── リオが一歩前に出て、俺に向かって聞いてきた。 「あのさ、兄ちゃん」 「なんだ?」 「一緒の家で暮らして、その......オレたちに、何かしない?」 かくん。 俺はがっくりと肩を落とした。 そこまで信用ないのか、俺......。 「あのな、そんなことするわけねぇだろ。俺は教師だぞ」 「だ、だって兄ちゃん、油断するとまた抱きついてきそうだし」 「............」 おかしい。 否定できる要素が何もないぞ。 困った。 そのまま双方、しばらくの睨み合いが続いた。 そんな中、助け舟を出したのはメイファだった。 「......まったく、お兄さんは世話が焼ける」 そう言ってため息をつき、銀髪の少女がとてとてと、俺のほうへと近付いてくる。 なんだ......? そしてメイファは、俺の目の前まで来ると── ひしっ、と。 俺の腰回りに腕を回し、その未発達ながらも柔らかな体で、おもむろに抱きついてきた。 「お、おい、メイファ......!」 「......ロリコンのお兄さんは、こんなことをされたら、どうする......?」 抱き寄せて頭なでなでしたい、などとは断じて思っていない。 思ってないぞ。 だがメイファは、ふふんとイタズラっぽい笑みを浮かべ── 今度はその両腕を、俺の首周りへと伸ばしてきた。 「......ロリコンのお兄さん......ボクとイイコト、したい......?」 メイファはそう言って、俺の首筋にふっと息を吹きかけ、さらにその体を密着させてくる。 まだ少女なのに、妖艶な仕草。 俺は── そう言って、メイファを少し強めの力で突き放した。 どてっと、メイファが地面に尻餅をつく。 「痛たた......」 「あ......わ、悪い......」 俺がメイファに手を差し出すと、メイファは素直にその手を取った。 「......ううん、構わない。......むしろ、予定通り」 そしてメイファはパンパンと尻についた砂を払うと、リオたちのほうへと振り返った。 「......と、こんな感じで、お兄さんはロリコンだけどとてもヘタレだから、安全だとボクは思うよ」 それを言うために、今の小芝居を打ったのか。 あとヘタレって言うな、教師の自制心と言え。 だがそれを聞いたリオとイリスはというと── 「あー、まあ、それはそうかもな。じゃあいいか」 「そうだね。私も、できるならベッドで寝たいし......」 なんかそれで、納得されてしまった。 そして我が心の天使ことイリスまでが、本音に直球まっしぐらだった。 ......まあいいか。 少し釈然としないところはあるが、大事の前の小事だ。 「よし、じゃあ三人とも、今日はもう家に入って寝ろ。明日からはビシバシ鍛えてやるからな」 ──ともあれそんな感じで。 俺はこの日から、三人の教え子たちと一つ屋根の下で暮らすことになったのである。

13 Lesson 13 Then I stopped by the magician, bought three elementary magic textbooks, and handed them to Rio, Illis and Mayfa one at a time. Then when we finished eating in the city cafeteria, we left the city gate and headed back to the village. "Phew, I ate. Stomach breasts "... your brother, because he contributes to us, after all, God....... but lolicon, so lolicon god" Rio and Mayfa were walking back to the village with their heartfelt happy faces. I'd feel good about this one if I saw these guys looking happy, but the Mayfa one doesn't want to bury them on the ground like this sometimes. In the meantime, one of the Iris pulls the sleeve of my clothes and looks a little worried, sorry. "... but Doctor, are you sure? We, have it so much better... Doctor, for us, you're paying a lot of money...? That's what I said, a beautiful blonde blue-eyed girl looking up at me for the upper hand. Oh, my God. This is so cute. And that's Iris, even though he's only a child, he cares like an angel. I want Mayfa to fry and drink the dirt from her nails. But, well... "Uh, don't worry about it. I'll have it paid for with my body." By the way, Rio also stops by Ilis and says "Luluru" in front of him, now he's like a beast and fangs off. Meanwhile, Mayfa, who's equally distant, looks me in the eye. "... brother, learn more about what 'get paid with your body' means" Ah. "No, no, no, no, you guys are making some mistakes. I'm not. One of these days I was just going to make some money from my Demon King Hunter job and get it back to me." "... well, I thought that would happen" Mayfa sighed, ha. That, me, Mayfa is even stunned...? By now, I've paid a reasonably large sum for three people's meals, haircuts, clothes, weapons, and magic textbooks. And in the future, if there's any kind of intrusion, there won't be anything else for a while than I'll pay. I'm just not a parent of three, and it's hard to say that teachers pay for their students' alimony and teaching materials is a very healthy relationship. I said, I just applied to the association as a necessary expense for education, and I don't think I would go through very well. But we can't educate enough without some material, and if we don't have enough clothing and shelter in the first place, we're not talking about education. There is, at the very least, a necessary expense to raise the Rio people today. So what I was thinking was a little backstabbing. When I was a teacher in Wang Du, I couldn't transfer it to execution due to circumstances such as the association and parents loud and the large number of students I have, but the way that it is feasible in this environment today. That's a way to get the three Rio's to actually do their demon hunter work in tandem with hands-on training once they've raised them to some extent. This would be a real battle experience, and we could make money and make two birds a stone. If I, the teacher, had blinded my eyes behind me, I would put them in the cover as soon as they were in danger, and the danger is limitless and small. However, it would be premature to suddenly let it do just that at this stage, even when it comes to a good array of genius children. Even though the Demon King's strength is pinkier, all in all, he's more handsome than a regular monster. It can hurt to insult even the weaker Demon King, as he often leads the herd. Well, if I taught you some of the basics, I guess it's from getting used to being a normal monster who's not a demon king. With that in mind, I hung out with the three girls on the night trail leading to the village. We eventually made it to the village. Coming up to my new home, a faculty home, the three Rio people were away and waved at me. "See you tomorrow, brother. Thanks for everything today." "Doctor, thank you for your time today. And thank you for the gift. I'll take care of it." "... brother, I'll see you tomorrow, we'll play.... Today, it was fun" So the three of them are going to leave for a shack called the Brave Men's College Building. "No, wait a minute, you guys. Where do you think you're going? I'll call my three godchildren. "Hmm...? I'm going home." That's what Rio gave me back, so I pointed to the faculty residence in front of me. "Ya, so. Your house will be here from today." "Eh." Speaking of which, haven't we talked yet? "Because this house, it's so big for families, it's a waste to live alone. I let him clean with me in the morning because it's your house from now on, so I meant to clean it up." "But the reward for cleaning is a bath and a mess." Uh, with that said, it's like I used that convenience too. I thought it would be easier to fish to move the Rio's at that stage. "- Anyway, you guys start living in this house today. We should all go to bed instead of sleeping in one blanket in a shack like that." Rio meets two faces, Illis and Mayfa. All three of you, what are you gonna do about it? What are you getting lost in? Am I reluctant? Then you don't have to hesitate. When I tried to tell you... Rio stepped forward and asked me. "You know, brother" "What? "Live in a house with us, and... tell us, don't you want to do something? Kakun. I dropped my shoulder disappointingly. Don't you trust me that much, me... "You know, you can't do that. I'm a teacher." "Yes, 'cause, brother, when I get alarmed, I'm going to hug you again." ............ That's crazy. There's nothing to deny. Trouble. Both sides, as it were, continued to stare at each other for a while. In the meantime, it was Mayfa who put out the help boat. "... at all, your brother can take care of you" I sighed, and a silver-haired girl approached me. What...? And Mayfa came right in front of me... Hiccup. He turned his arm around my waist, and with his underdeveloped yet soft body, he hugged me roughly. "Oh, hey, Mayfa......! "... What would Loricon's brother do if he did this...? I want to hold it and be headless, etc. I don't think no. I don't think so. But Mayfa had a flirtatious smile... Now he's stretching his arms around my neck. "... Loricon's brother... Me and Ikoto, I want to...? That's what Mayfa said, breathing heavily into my neck muscle, and snuggling that body even more. Even though she's still a girl, she's a luscious trick. I don't... That's what I said, pushing Mayfa away with a little strength. Oh, my God, Mayfa puts a buttcake on the ground. "It hurt..." "Ah... wow, bad..." When I gave Mayfa my hand, Mayfa took it honestly. "... yeah, I don't mind.... rather, as planned" And when Mayfa paid for the bread and the sand on her ass, she looked back to Rio and the others. "... and like this, your brother is a lollicon but he's very hectic, so I think he's safe." To say that, did you hit the current little play? And don't call it heckling, call it teacher self-control. But when I heard about it, Rio and Illis... "Uh, well, maybe that is. Okay, then." "Right. I also want to sleep in bed if I can..." Something about it convinced me. And even the angel of my heart, Iris, was a straight ball to the truth. ... okay. There's something a little bit unclear about it, but it's a small matter before it matters. "All right, then, all three of you, get in the house and sleep already today. Starting tomorrow, I'm going to train you." - - Whatever. Like that. From this day on, I was to live under one roof with the three godchildren.

第149話 状況はますます逼迫していた。 サハギンの大群はさらに次々と押し寄せ、俺たち六人の勇者──いや、マリーナとアーニャの二人は村娘たちを逃がそうとしているから、実質は四人か──を押し潰そうとしてくる。 俺とリオ、イリス、メイファの四人も奮戦してはいるが、なにぶん脱出する娘たちや、それを助けるマリーナやアーニャを守りながらの戦いなので、普通に戦うよりも不利な戦いを強いられている。 防衛ラインを抜かれてはいけないのだ。 俺とリオの第一防衛ラインで八割から九割のサハギンを撃退、あるいは牽制する。 それを突破した残りの一割から二割は、イリスとメイファの第二防衛ラインによる攻撃で確実に仕留める。 それが完全にできているうちは、まだ良かったのだが── 「くそっ、奥に行くなって言ってんだ──ぐっ、痛ってぇ! ──野郎っ!」 ちらとリオのほうを見ると、押し寄せるサハギンどものうち一体が突き出した槍が、リオの剥き出しの太ももに突き刺さったようだった。 勇者であるリオの全身は闘気で守られているから、そう易々と決定打は受けない。 サハギン程度の攻撃力では、槍の穂先が多少太ももに突き刺さった程度で、貫通などには到底至らないが── 「リオ、大丈夫か! 無理はするなって言っただろ!」 「分かってる! 分かってるけどさあ! こいつら、倒しても倒しても次から次と湧いてきやがって......! ──こんのやろぉおおおおっ!」 ダメージを受けたリオの動きが、焦りのためか大雑把になってきていた。 リオは飛び抜けた才能を持っており、特に敏捷性に関してはすでに俺に匹敵するか凌駕するほどだが、彼女にはまだ圧倒的に経験が足りていない。 「リオ、落ち着け! まだ大丈夫だ! 焦る必要はない!」 「分かってる! 分かってるから! 兄ちゃんちょっと黙っててよ!」 「......っ! 分かった! マイペースでやればいい! あとは俺が何とかカバーする!」 「そういうのも余計なんだよ! オレは兄ちゃんの隣に立って、役に立ちたいのに......! それなのに、どうしてオレ、こんなに......!」 剣をふるいながら、泣きそうな声を返してくるリオ。 まずい。 俺の放った言葉のせいで、逆にリオのメンタルがガタ崩れし始めた。 だが、どういう言葉をかけるのが正解だったのか── 「くっ......!」 そのとき、一体のサハギンが突き出してきた槍が、俺の右頬をかすった。 頬に痛みが走る。 わずかだが出血もしただろう。 「チッ──あんまりよそ見も、していられないか!」 俺はそのサハギンを、一撃で斬って捨てる。 だが次の二体、いや三体のサハギンが俺に迫り、槍を突き出してくる。 俺はそれをさばきながら、声をあげる。 「マリーナ、アーニャ! 娘たちの避難はまだ終わらないか!」 「もうちょっとだよ、ブレットさん!」 「あと少しだけ時間をください!」 「わかった! 終わったらリオの援護に行ってくれ!」 「「了解!」」 戦況は刻々と変化する。 リオの精神面の崩れは少し心配だが、全体としてはまだ慌てるような状況ではない。 だが、そこに── 「──何をしている、役立たずどもめ」 サハギンの声に似た──しかし地獄の底から響くような声。 俺の前にいた三体のサハギンが、びくりと震えあがる。 その背後に立つ、サハギンバロンに似た巨体。 「我は六匹のネズミごとき、さっさと押し潰せと命令したはずだ。──役立たずどもはいらん、邪魔だ」 「「「──ギャァアアアアッ!」」」 俺の前にいた三体のサハギンが、一息に絶命した。 一体は斧に頭をかち割られ。 一体は槍で胸を串刺しにされて。 一体は剣で胴を両断され。 そして無造作に振り捨てられる。 無惨に薙ぎ払われた三体のサハギンの後ろから現れたのは、瘴気をまとった八本腕の巨体サハギンだ。 ついに大ボス、サハギンロードが目の前までやってきたのだ。 八本の腕にはいずれにも、斧、槍、剣、棍棒、盾などの武器を携えている。 その武器で、自らの配下のサハギンを、邪魔だというだけの理由で殺した。 相変わらず、魔王というやつはどうかしている。 そいつは悠然と歩み寄ってきながら、俺に向かって語りかける。 「ここにいる勇者どもを率いているのは、貴様だな。貴様さえひねり潰せば、指揮官を失ったメスの勇者どもは取るに足らん。捕らえて煮るも焼くも思いのままだ」 見上げるほどの巨体だ。 背丈は俺の五割増しほどもある。 そればかりではない。 威圧感も並みのサハギンやサハギンバロンの比ではなく、戦闘力で見ても到底侮れる相手ではないだろう。 この戦局に、こいつの登場は正直いただけない。 俺は額に汗を浮かべつつ、口元を意識的に吊り上げながら答える。 「魔王様が直々のお出ましとはな。こらえ性のない魔王は出世しないぜ? 部下が全滅するまで、高みの見物でも決め込んでりゃいいのによ」 「ふん、そうもいかん。苗床を用意して卵を産ませ、兵を育てるのにも時間がかかる。貴様が連れてきた娘どもを使うにせよ、そうそう兵を浪費していては埒が明かん。それでは我が野望の成就が遠のくというものだ」 「ああそうかい。テメェで戯れに殺しておいて、よく言うもんだ──【疾風剣】!」 俺は地面を蹴り、サハギンロードに斬りかかる。 ──ガガガガガガギィンッ! サハギンロードは手にした武器や盾を駆使して、やや後退しながらも、一瞬十二斬の多段攻撃のほとんどを防いでみせた。 巨体に似合わぬ俊敏な対応だ。 俺は即座にバックステップで後退して、距離を取る。 サハギンロードの巨体から、ブシュッ、ブシュッと二ヶ所、血が噴き出した。 「ほう......なるほど、これは我が配下どもがてこずるわけだ。並大抵の勇者とは、格が三つ四つは違うか」 十二発の斬撃のうち、二発だけがかろうじて防御を抜けてダメージを与えていたわけだが、それとて深手ではない。 どちらも浅く切り裂いただけで、致命傷にはほど遠い。 「......やっぱり真正面からの【疾風剣】じゃ、決め手にするのは難しいか」 俺は苦笑する。 容易くない相手であることを、再確認したというところだ。 それでも、キャプテンミスリルの宝箱の中にあった、剣の性能が幸いしていた。 一撃が軽い【疾風剣】でサハギンロードの鱗と瘴気による防御を突破できるのは、この剣の切れ味があってこそのものだ。 しかしサハギンロードは、この程度の負傷など物の数ではないという様子で、再び間合いを詰めてくる。 「認めよう、人間の勇者よ。貴様は強者だ──だが!」 「チッ......!」 武器の間合いに入る直前、サハギンロードは急激に速度を増した。 間合いに踏み込むと同時、瞬く間に怒涛の八連続攻撃を放ってくる。 腕の数だけではなく、一撃あたりの速度も並みのサハギンやサハギンバロンの比ではない。 それでもどうにか、俺は攻撃のほとんどを回避し、あるいは剣で受け止めて防御する。 俺が【疾風剣】を放ったときと同等の衝突音が響き渡る。 ブシュッと、俺の左腕をサハギンロードの剣の斬撃が浅く切り裂き、その二の腕から血が噴き出した。 「くっ──【月光剣】!」 「むっ──!?」 俺が奥の手の技を繰り出すと、一度は盾で防御しようとしたサハギンロードは、技の性質を見抜いたのか瞬時に行動を切り替え、後方へと飛び退った。 俺が放った【月光剣】はサハギンロードの盾を真っ二つに割ったが、それを装備していた腕までは斬り落とせず、その腕と胸部を浅く切り裂いただけに終わった。 「......さらに強力な技を隠し持っていたとは、底の知れん勇者だな」 サハギンロードは斬撃の入った箇所から血をあふれ出させながら、なおも悠然とした態度を崩さない。 サハギンロードと俺は、互いに相手の隙を探りつつ、にらみ合う。 下手に動けば、一瞬で命を取られる。 互いにそういう間合いであり、実力であると直感していた。 「強き人間の勇者よ、やはり貴様は危険だ。我が覇道の邪魔になろう。ここで殺しておく必要があるな」 「できるつもりかよ、サハギンの魔王。いや、強さからしてサハギンバロンが魔王化したものっぽいが──いずれにせよ、俺とあんたはせいぜい互角ってとこだろ。なんなら部下と総出で、死に物狂いで俺を潰しにきたほうがいいんじゃねぇか?」 「いや、それはやめておこう。貴様はしぶとそうだ。しばらく我との遊びに付き合ってもらおうか。その間に、我が部下が貴様の仲間たちを蹂躙するだろう」 「......そう思うか? 言っておくが、俺の教え子たちは強いぜ」 「そのようだが──なに、貴様よりは崩しやすそうだ。それに慌てることもない。我の全軍がこの広間に集結する頃には、この場に立っている人間は貴様一人になっている。そういった話だ」 そのサハギンロードの言葉に、俺は内心で舌を巻いていた。 サハギンロードから一瞬でも視線を外すことはできないが、聞こえてくる声や戦闘音、気配や空気感から、俺も周囲の状況はなんとなく分かっていた。 まずはマリーナとアーニャが村娘たちの避難を終え、リオの加勢に入っていた。 それで一時は盛り返したようだったが、今度はそこに敵方のサハギンバロンが二体乱入してきて、また一気に天秤が傾いた様子だ。 サハギンロードが単体で俺を抑えたことで、残るすべてのサハギンの大群戦力がリオたちのほうへと押し寄せている。 そうなれば、戦力の低いアーニャがまず耐えきれなくなる。 そしてリオとマリーナには、それぞれ一体ずつのサハギンバロンと数体のサハギンが常に同時に襲い掛かり、防戦一方になって押し込まれる。 イリスとメイファも必死に攻撃や援護をして戦局をひっくり返そうとしているようだが、押し寄せるサハギンの波は膨大で、その後衛二人も敵の攻撃にさらされ始める。 撃破されたサハギンの数もかなり増えてはいるが、このまま敵の数が増え続ければ、いずれもたなくなることは明白だろう。 だが── 「──いや、どうやらあんたの部下のサハギンは、もう打ち止めのようだぜ」 「なに......?」 この大広間へとずっと増え続けていたサハギンの増援が、少し前からまばらになり、ついには皆無となっていた。 現在この大広間にいるサハギンの数は、これまでに倒したサハギンと合わせても百に満たず、おそらくは八十とか九十とか、そのぐらいのものだ。 百五十を超えるサハギンの大軍勢というには、帳尻が合わない。 そして── サハギンの代わりに、この大広間へと現れた、別の増援の姿があった。 増援の先頭に立つのは、白銀色の甲冑と大盾に身を包んだ、金髪で美貌の女性勇者だ。 その後ろには、赤髪ポニーテールとメガネがチャームポイントの女性勇者と、筋骨隆々とした隻腕の壮年勇者、それに肉体美を誇るようにポージングをした二人の海賊勇者がいた。 甲冑と大盾に身を包んだ女性勇者は、大広間の入り口で声を張り上げる。 「ブレットくん、リオちゃん、イリスちゃん、メイファちゃん! すまない、遅くなった。今からでも、パーティには間に合うかな?」 「ああ、ギリギリセーフだ。──なにせパーティが始まるのは、こうして役者が全員揃ってからだからな」 「セシリア姉ちゃん、遅い!」 「もう、冷や冷やしたんですから!」 「......ふぅ。......もうボクは、働きすぎた。......あとはお姉さんたち、よろしく」 俺と教え子たちは、我が家の召使いに向かってそう返事をしていた。

149 Chapter 149 The situation was becoming more and more pressing. The swarm of Sahagins came one after the other, trying to crush our six heroes - no, Marina and Argna are trying to escape the village daughters, essentially four. Me, Rio, England, and Mayfa have fought hard, but because they are fighting to protect their escaping daughters and the Marina and Argna who help them, they are forced to fight more unfavourably than usual. Don't let them pull the line of defense. Defeat or contain 80% to 90% of Sahagin on Rio's first line of defense. Between 10% and 20% of the remaining breaches will be dealt with reliably by attacks by England and Mayfa's second line of defense. While it was fully made, it was still good - - "Dammit, don't go in there - - Gh, it hurts! - - Asshole! Looking at them and Rio, it seemed that one of the thighs of the thrusting Sahagins had been stabbed by a spear that had protruded. Rio's brave body is protected by a fighting spirit, so he won't be hit so easily. With an attack like Sahagin's, the spear's tip slightly pierced his thigh, but it couldn't penetrate the whole thing - - "Rio, are you okay? I told you not to push me! "I know! I know, but come on! Whether you knock them down or knock them down, the next thing you want to do...! - - Oops! Rio's movements, which were damaged, were becoming more chaotic due to the hurry. Rio has a tremendous talent and is already comparable to or better than me, especially with regard to agility, but she has not yet overwhelmingly enough experience. "Rio, calm down! It's still okay! You don't have to hurry! "I know! Because I know! Brother, just shut up! "......! Fine! You can do it at my pace! I'll cover the rest! "There's no need for that! I want to stand next to my brother and be useful...! And yet, why am I so...! Rio returned a crying voice while sifting his sword. It's not good. Because of my words, Rio's mentality began to collapse. However, I didn't know what words to use - - "Kh...! At that time, a spear sticking out of one of the Sahagins scratched my right cheek. My cheeks hurt. I think I bled a little. "Chi - - I can't even take a good look! I'll slash and throw away the Sahagine with a single blow. But the next two, no, three Sahagins approach me and stick out their spears. I'll raise my voice as I judge it. "Marina, Argna! The evacuation of our daughters isn't over yet! "Almost there, Mr. Brett! "Just give me a little more time! "Okay! Go back to Rio when you're done! "" Got it! The state of the war changes gradually. I'm a little worried about Rio's mental breakdown, but overall I'm not in a rush. But there - - "- - What are you doing, useless people?" A voice similar to the voice of Sahagin - - but echoing from the bottom of hell. The three Sahagins in front of me are trembling. Behind it is a giant resembling the Sahagimbalon. "I told you to crush the six rats. - - I don't want any useless people in the way." "" - - - Gaaaaaaaa! The three Sahaguins in front of me took a breath. The axe broke his head. He was stabbed in the chest with a spear. He was mutilated by a sword. And you're dumped in the middle of nowhere. Behind the three wretched Sahagins emerged an eight-armed giant Sahagine. At last, the Great Boss, the Sahagin Road has arrived. All eight arms carry weapons such as axes, spears, swords, sticks, and shields. With that weapon, he killed his own Sahagin just to get in the way. As always, there's something wrong with the demon king. He walks slowly and talks to me. "You are the one who leads the brave men here. If you even twist it, we won't be able to get enough of the female heroes who lost their commanders. Catch, simmer and bake as you wish." It's huge enough to look up. I'm about 50% taller. That's not all. The sense of intimidation is not the same as the ratio of Sahagi or Sahagi Baron, and even if you look at it with combat power, you will not be despised. I can't be honest with him in this war. As I sweat on my forehead, I consciously lift my mouth and answer. I didn't expect the Demon King to arrive directly. You're not going to be a reincarnated demon king, are you? I wish I could have made a decision about the sights until all my men were destroyed. " "Hmm, that's not going to work. It takes time to prepare seedbeds, lay eggs, and raise soldiers. Whether you use the daughters you brought in or not, it is not obvious that you are wasting your soldiers. Then my ambitions are far from being fulfilled." Oh yeah. Kill them all with teasing and say it often - - [Wind Sword]! I kick the ground and slash the Sahagin Road. - - Gagagagagagagagagging! Using the weapons and shields at his disposal, Sahagin Road retreated slightly, but prevented most of the twelve instantaneous multi-stage attacks. It's an agile response that doesn't suit giants. I immediately step back and distance myself. From the giant body of the Sahagin Road, there was a bush, a bush and two places, and blood erupted. "Hmm... I see, this is why my minions fall. Unlike most brave men, three or four are different." Of the twelve slashes, only two were barely able to pass through their defenses to deal damage, but they weren't too deep. Both were cut shallowly, far from fatal. "... I knew it would be difficult to decide from the front with the [Wind Sword]." I smile bitterly. I've just reconfirmed that it's not an easy target. Still, the performance of the sword in the Captain Mythrill's chest was fortunate. It was only with the sharpness of this sword that we were able to break through Sahagin Road's Scale and Chi defenses with a lightly struck Wind Sword . However, Sahagin Road seemed to not have this number of injuries and so on, and again filled the gap. "Admit it, human brave. You're a strong man, though! "Chi......! Shortly before the weapon arrived, Sahagin Road increased its speed dramatically. As you step in time, you instantly unleash an eight consecutive attacks of fury. Not only the number of arms, but also the speed per hit is not the same as the ratio of Sahagin or Sahagimbalon. Still, I can dodge most of the attacks or take them with my sword and defend them. The same crash sound as when I fired the [Wind Sword]. Bush, my left arm was shallowly slashed by the sword of Sahagin Road, and blood erupted from both arms. "Kh - - Moonlight Sword ! "Mhh!?" When I did my inner move, Sahagin Road, who once tried to defend himself with a shield, instantly switched actions to see the nature of the move and flew backwards. My [Moonlight Sword] broke Sahagin Road's shield in half, but I couldn't cut off the arm that was equipped with it, and I just shallowly slit its arm and chest. "... you've hidden even more powerful moves, you're a brave man at the bottom." The Sahagin-Lord does not break his calm attitude while bleeding from the slashing area. Sahagin-Lord and I are exploring each other's gaps. If you move poorly, you will be killed in an instant. I had an intuition that it was between them and that it was strong. "You are still dangerous, mighty human brave. Get in the way of my hegemony. We need to kill him here." "Are you going to do it, Sahagin Demon King? No, it looks like the Sahagimbalon demonized him because of his strength - - Either way, you and I are each other at best. Why don't you go out with your men and come crazy and crush me? "No, let's not do that. You look pretty good. [M] Will you hang out with me for a while? In the meantime, my men will ravage your people." "... do you think so? I'm telling you, my teachers are strong." "That sounds like it - - but it seems more collapsible than you. I'm not in a hurry. By the time my entire army gathers in this hall, you will be the only one standing here. That's what I'm talking about." I had my tongue wrapped around the words of the Sahagin Lord. I couldn't get out of sight of Sahagin Road even for a moment, but I knew the surrounding situation somehow from the voices, fighting sounds, signs, and air. First, Marina and Argna completed the evacuation of the village daughters and joined Rio. For a moment, it seemed like it was rejuvenating, but now there were two enemy Sahagimbalons randomly entering, and the balance was tilted again at once. With Sahagine Road holding me down on its own, all remaining Sahagine hordes are pushing towards Rio. That way, Argna, who has less power, can't stand it first. In Rio and Marina, one Sahagimbalon each and several Sahagi are constantly attacked simultaneously and pushed into battle. England and Mayfa seem desperately trying to overturn the battle by attacking and supporting them, but the waves of Sahagin that push in are enormous, and both of their backers begin to be exposed to enemy attacks. The number of Sahaguins destroyed has also grown considerably, but if the number of enemies continues to grow, it will be obvious that they will eventually disappear. But... "- - No, it looks like your Sahagin has stopped now." "What...? Sahagin's reinforcements, which had been increasing all the way to this hall, had been sparse for a while and had finally disappeared. The number of Sahagins currently in this hall is less than a hundred compared to the number of Sahagins defeated so far, perhaps eighty or ninety. The great army of the Sahagin, which exceeds 150, is unsuitable. And then... Instead of Sahagin, there was another reinforcement appearing in this hall. At the forefront of the reinforcements is a blonde, beautiful female brave man dressed in silver armor and a large shield. Behind them were the red-haired ponytail and glasses, the charm-point female brave, the muscularly talented grand brave of the ship, and two pirate braves who posed proudly for their physical beauty. The female brave man, wearing armor and a large shield, raised her voice at the entrance to the hall. "Brett, Rio, Iris, Mayfa! I'm sorry I'm late. Can we still make it to the party? "Oh, it's critical. - - After all, the party starts only after all the actors are here." "Cecilia sister, it's too late! "I'm already cold! "... Phew.... I've worked too hard already.... and say hello to oneesan" Me and my schoolchildren were answering to our servants.

第131話 海岸都市シーフィードを出て、アーニャに連れられて移動することしばらく。 夕刻を過ぎ、そろそろ暗くなり始めた頃になって、俺たちはアーニャが住んでいた村へとたどり着いた。 浜辺にある小さな村だ。 素朴な木造住居が三十軒ほど立ち並んでいるので、村の人口は本来ならば百人を少し超えるぐらいであろう。 しかし今は、村は閑散としていて、人の気配がなかった。 家の外に人の姿がないばかりでなく、家屋から漏れる生活の灯りや、夕食の支度をする煙突の煙も見当たらない。 その様子を見たアーニャはわずかな焦りの表情を浮かべたが、すぐに悪い想像を振り捨てるように首を振って、俺たちに向かって伝えてくる。 「少し離れた場所に、村人が緊急避難するときに使う洞窟があります。魚人どもから姿を隠すためにそこに逃げて、まだ戻ってきていないのかも」 気丈にふるまう褐色肌の少女は、踵を返して早足で歩いていく。 俺たちもそのあとを追った。 アーニャに続いて森林の中を進んでいくことしばらく。 やがて断崖にぽっかりと穴をあけた洞窟の前にたどり着いた。 洞窟に向かって注意深く近付いていくと、目的の洞窟の奥から、一人の男が姿を現した。 男はアーニャに向かって声をかける。 「アーニャ! 無事だったのか、よかった」 「セルゲイさん! この人たちに助けてもらったの。それより村のみんなは、それにお師匠は」 「中で話そう。お客人も、どうぞ洞窟の中へ」 現れた男は、アーニャが住む村の村人なのだろう。 アーニャと俺たちを、洞窟の中へと誘導していく。 洞窟を奥へと進んでいくと、やがて松明の灯りで照らされた大広間にたどり着いた。 大広間の奥には、さらに先へと進むトンネルがいくつかある。 大広間には三十人ほどの人々がいて、アーニャの姿を認めるとみんな喜びの歓声をあげた。 そんな人々の中に一人、筋骨隆々としていて大柄の、片腕の男がいた。 その片腕は、最近斬り落とされた傷口を治癒魔法でふさいだという様子だ。 アーニャはその姿を認めると、瞳いっぱいに涙をため、駆け寄っていって抱きついた。 「お師匠......! 良かった......お師匠が死んでしまったかと思って、私......!」 「アーニャこそ、無事でよかった。ずっと心配していた」 「魚人たちに追われていたところを、あの人たちに助けてもらったんです。全員が勇者なんです」 「全員が、勇者......? あの子供たちも含めて、六人とも全員が?」 アーニャが「お師匠」と呼ぶ片腕の男は、信じられないという顔で俺たちのことを見てくる。 それから目を凝らし、俺たちのことをじっと見て、さらなる驚きの表情を浮かべた。 勇者の力を見る「目」が確かなんだろう。 俺やセシリア、それにリオ、イリス、メイファの実力を大雑把にでも見抜けば、驚くのも無理はない。 ちなみに比較対象が異常なので目立たないが、アルマだって熟練の魔王ハンターと互角程度か、それ以上の力は持っている。 俺は驚いている片腕の男のもとに歩み寄って、手を差し出す。 「ブレットです。勇者学院の教師をしていて、過去には魔王ハンターの経験もあります。ちょうど海岸都市シーフィードに海水浴に来ていたところに、サハギンどもに追われて倒れていたアーニャに遭遇しまして」 「エドアルトだ。勇者ブレット、キミたちにはなんと礼を言えば良いか。アーニャの命の恩人だ、本当にありがとう。何か心尽くしのお礼をしたいところだが、今は村が危機的な状況で......申し訳ない」 エドアルトと名乗った片腕の男は、残っている左手で俺と握手を交わしてから、そう言って頭を下げてくる。 俺の倍ほども生きているであろう熟練の勇者が、俺みたいな若造に躊躇なく頭を下げてくるあたりを見ただけで、この勇者の優れた人柄をだいたい察することができる。 そんなエドアルトに、俺が「お気遣いなく」と断ったところで、アーニャが横から口をはさんできた。 「でもお師匠、その右腕は......? 魚人どもにやられたんですか?」 「ああ。四本腕の魚人三体に囲まれた折、不覚を取ってやられた。だがこうして命を残して逃げ延びられただけでも、よしとするべきだろう。村の若い娘で何人か、やつらに連れ去られた者もいる。俺は村を守護する守り手として、村の者たちを守り切れなかった」 そう言って、沈痛な表情を浮かべるエドアルト。 アーニャもまた、連れ去られた娘たちがいると聞いて「そんな......」と悲痛につぶやいて、うつむいていた。 だがそこに、別の村人たちから話を聞いていたセシリアが歩み寄ってきて、エドアルトに声をかけた。 「魔王ハンターのセシリアです。エドアルトさん、私はあなたを尊敬します。話を聞くに、敵の軍勢はあなた一人の手には余る相手であったようだ。それでも村人の大多数が避難するための時間を稼ぎ、さらに片腕を失いながらも、自分自身の命をも打ち捨てることはなかった。あなたは村の守り手として、たぐい稀なほどの働きをした。そうではないですか?」 そう言って、男優顔負けのキラキラとした微笑みを見せつつ、その手を差し出すセシリア。 ちなみにその後ろでは、リオたち三人がこそこそと「なあ、セシリア姉ちゃん格好良くねぇ?」「うん、詐欺だよねあれは」「......あのワンコ、意外と外面はいい」などと内緒話をしていた。 一方で、エドアルトはセシリアの手を取り、こちらもがっちりと握手をする。 「ありがとう、勇者セシリア。キミの言うとおりだ。自分を卑下している場合ではないな」 「ええ。今は前を向き、これから為すべきことへと目を向けるべきでしょう。──ところでエドアルトさん、失った右腕は手元にありますか?」 「失った腕......? ──いや、残念ながら、やつらに奪われてしまった。残虐な魚人族どもは、斬り落とした俺の腕を戦利品とばかりに槍で突き刺し、天に掲げて誇っていた。俺はやつらの隙を見て逃走するのが精いっぱいで、それを取り戻そうなどとは思わなかったが──なぜそんなことを?」 「いえ......」 セシリアは言葉を濁すが、俺には彼女の言いたいことが分かっていた。 彼の失われた右腕が手元にあれば、セシリアかイリスが最上級の治癒魔法【 それに今の話の中で、気になったこともあった。 俺はそこに言及する。 「ところでエドアルトさん、先ほど『村の娘が何人か連れ去られた』と言っていましたよね。サハギンどもはその娘たちを、『殺す』のではなく『生きたまま捕らえて連れ去った』ということですか?」 「ああ、村の者たちからはそう聞いている。やつらの目的は分からないが」 「いえ、そうなるとおそらく──」 俺はもう一人の勇者学院教師、アルマのほうを見る。 俺の視線を受けた赤髪の女教師は、こくりとうなずいた。 勇者学院で使うモンスター学の教科書には、サハギンの種族的特徴もいくつか記されている。 その中の記述のひとつに、 俺はエドアルトに、思い当たる節について説明をする。 「サハギンの大集団には、『闇司祭』と呼ばれる上位種がいるのが一般的です。サハギンの闇司祭は、人間の若い娘を使って七日間の儀式を行い、しかる後にその娘たちを殺します。七日間の儀式の後に殺された若い人間の娘の血肉は、 俺の言葉を聞いたエドアルトが大きく目を見開き、アーニャは「うっ」と呻いて口元に手を当てた。 さらに俺は、教え子たちのほうをちらと見る。 リオはその目に怒りを宿し、イリスもまた口元に手を当て、メイファは不愉快そうな様子で視線を横に逸らせていた。 邪悪なモンスター特有の文化や習性に関するあれこれは、あまり子供たちに聞かせたい話でもない。 しかし勇者である以上は避けて通れない話であり、いずれはぶつからなければいけない問題だ。 職人都市ラヴィルトンの近郊で出会ったカッパードラゴンのように、人間と共存しうる善良なモンスターもいれば、どうしようもなく人間とは相容れない邪悪なモンスターもいる。 そのことは子供たちにも、しっかりと把握しておいてもらう必要がある。 だが一方で── 「ですが逆に言えば、サハギンに捕らえられたその人たちは、七日間はまず殺されないということになります。アーニャからは、村が襲われてからまだ半日程度と聞いています。つまり──そのさらわれた娘さんたちは、まだ救い出す余地があります」 俺がそう言うと、大広間にいた人々から、どよめきの声が上がった。 さらわれた娘たちは、もう助からないものと思っていたのだろう。 一方でエドアルトは、少し慎重な態度を示した。 「勇者ブレット、その話は俺たち村の者にとって、大きな希望の光となる。......だが俺はすでに片腕を失い、アーニャも半人前だ。敵は強大で、この村の勇者──俺とアーニャだけではやつらに対抗することは不可能だ。そのか細い希望の光をつかむためには、今、俺の目の前にいる頼もしい勇者たちの力が必要になる。──手を貸してもらえるか?」 俺はそれに対し、小さく笑ってこう答えた。 「ええ、もちろんです。ですが、金品に少し余裕があったらでいいんですけど、シーフィードの勇者ギルドにクエスト依頼として出してもらえると助かります。クエストとしてギルドの審査が通れば、国から補助金で七割下りるので」 子供たちに冷房魔道具を取り付けるようにせがまれているので、とはさすがに口には出さない。 「分かった。金に換えられる財宝ならば、村にいくらかあるはずだ。村じゅうからかき集めれば、勇者ギルドへのクエスト発注分ぐらいはどうとでもなるだろう。そんなことでいいならば、願ってもない」 エドアルトはそう言って手を差し出してきたので、俺は再び強く握手をする。 だがそんな一方では、リオが泣きそうな声で俺に抗議してきた。 「に、兄ちゃん! 今それ言ったら、オレたちが困ってる人たちからお金をふんだくって、自分たちだけいい思いをしようとしてるみたいじゃん!」 だが俺は、それにも笑って答える。 「いいんだよ、それで。──あのな、勇者が人々のためにって無償でモンスター退治や魔王退治をしていた時代もあったんだけど、あまりうまくいかなかったんだよ。勇者は命がけで人々を救っているのに、人々はそれをいつしか当たり前と思って感謝もしなくなった。それどころか勇者の力が及ばないところの非難ばかりするようになって、善意で人々を救っていた勇者のほうが病んじまったって例がたくさんあってな」 「えーっ、なんだよそれ! ひっでぇ!」 リオは一転、まるで我がことのように、憤懣やるかたないという様子で怒り始める。 俺はそれを微笑ましい気持ちで眺めながら、さらに付け加えてやる。 「でも俺たち人間ってのは、そういうもんなんだよ。ずーっと感謝の気持ちを持ち続けるなんてことは、なかなかできやしない。だから金銭的な報酬で清算しておいた方が、あと腐れがないんだよ。本当にお金に困っている人たちから奪うってのはまずいが、そうでないなら頑張りの対価はしっかりもらっておいた方が、結果としてうまく回るってこと」 「......ふぅん」 リオは納得したようなしていないような、微妙な顔をしていた。 ちなみイリスなどは、「さすが先生、深遠なお考えです......」などと言って陶酔したような様子を見せていたので、そろそろこの子は本気でどうにかしないといけないのではないかと思った俺であった。

131 Lesson 131 Leaving the coastal city of Seafeed and being taken by Anya for a while. After the evening, when it was time to start getting dark, we reached the village where Anya lived. It's a small village on the beach. With about thirty rudimentary wooden dwellings lined up, the village's population would otherwise be a little over a hundred. But now, the village was idle and there was no sign of people. Not only are there no people outside the house, but I also don't see the lights of life leaking from the house or the smoke in the chimney that supports dinner. Anya had a slight look of impatience when she saw how it was going, but soon she shook her head to abandon her bad imagination and told us. "A short distance away is a cave that villagers use when evacuating urgently. Maybe he fled there to hide himself from the fishermen and hasn't come back yet." The brown-skinned girl, sifting to her temper, turns her heel and walks fast. We went after it, too. Going through the forest after Anya for a while. Eventually I reached in front of a cave with a poke hole in the cliff. As he approached the cave carefully, from behind the cave of purpose, one man appeared. The man speaks to Anya. "Anya! You're safe, I'm glad" "Mr. Sergei! I asked these people to help me. Everyone in the village, and your master." "Let's talk inside. Guests, please go into the cave." The man who showed up must be a villager in the village where Anya lives. Lead Anya and us into the cave. As we proceeded to the back of the cave, we eventually reached the large hall illuminated by pine lights. Behind the Great Hall there are several tunnels that go further. There were about thirty people in the Great Hall, and they all cheered with joy when they admitted what Anya looked like. There was one of those people, a man with big, one-armed muscles. One arm appears to have healed and magically blocked a recently slashed wound. Admitting the appearance, Anya ran over and hugged her, tears full of eyes. "Master...! Good...... I thought your master was dead, I......! "I'm glad Anya is safe. I've always been worried." "They helped me where the fishermen were chasing me. They're all brave men." "All of them, brave...? All six of them, including those kids? The one-armed man that Anya calls her "master" sees us in the face of incredibility. Then he gazed, stared at us, and gave me a further look of surprise. I guess I'm certain of the "eyes" that see the power of the brave. If you spot me, Cecilia, and Rio, Illis, and Mayfa in a big mess, you can't be surprised. By the way, the comparison object is unusual, so it is not noticeable, but Alma also has more power than that, to the extent that he is mutually reinforcing with a skilled demon king hunter. I walk over to the amazing one-armed man and give him my hand. "It's Brett. I am a teacher at the College of the Brave, and in the past I have also had experience with Demon King Hunters. Just as I was coming to the coastal city of Seafeed to take a sea bath, I ran into Anya, who was being chased down by the Sahaggins." "It's Ed Alto. Brave Brett, what a thank you to you. I'm a benefactor of Anya's life, thank you so much. I just wanted to thank you for everything you've done, but now the village is in a critical situation... sorry" The one-armed man named Ed Alto exchanges hands with me with his remaining left hand, and then he says so and bows his head. I can more or less perceive the superior character of this brave man by just seeing around a skilled brave man who would live as much as I do without hesitation to bow his head to a young man like me. To Ed Alto like that, where I said "no worries," Anya came from the side with her mouth. "But Master, what's that right arm...? Did the fishermen do this to you? "Oh. A fold surrounded by three four-armed fishermen, they took him unconscious. But even if they just ran away with their lives, they should do it. Some are young daughters of the village and some have been taken away by them. As a protector of the village, I couldn't protect the villagers." That's what I said, Ed Alto, with a sinking look on his face. Anya was also grieving and nagging when she heard she had daughters who had been taken away and said, "Oh no..." But there, Cecilia, who had heard from another villager, walked over and spoke to Ed Alto. "This is Cecilia, the demon king hunter. Mr. Edoart, I respect you. To hear the story, the enemy army seemed to be an extra opponent in your own hands. Still, the vast majority of villagers bought time to evacuate, losing one more arm, yet never laying down their own lives. As the guardian of the village, you worked very rarely. Isn't it? That being said, Cecilia offers that hand while showing a sparkling smile on the actor's face loss. Behind that, by the way, the three Rio's are the ones who say, "Hey, Cecilia, aren't you dressed up?" "Yeah, it's a scam, isn't it?" "... that wanker, surprisingly good on the outside," he told me in confidence. Meanwhile, Ed Alto takes Cecilia's hand, and this one shakes his hand disappointingly. "Thank you, Cecilia the Brave. You're right. Not if you're despising yourself." "Yeah. You should now look forward and look to what you should be doing from now on. - By the way, Mr. Edoart, do you have the lost right arm at hand? "Lost arm......? - No, unfortunately, they took it from me. The brutal fishermen speared my arm slashed off with all the spoils of war and were proud to put it up in heaven. I was so full of them, I didn't think I'd get it back, but... why would I do that? "No......" Cecilia clouds her words, but I knew what she was trying to say. If his lost right arm was on hand, Cecilia or Illis would have used the finest healing magic [Ultimate healing (Ultimate heel)], which would have also made it possible to join the severed right arm. Besides, in my current story, I was curious. I'll mention it there. "By the way, Mr. Ed Alto, you said earlier that 'several village daughters were taken away', right? Are you saying that the Sahagins captured and took their daughters alive instead of 'killing' them? "Oh, that's what I hear from the villagers. I don't know what they're after." "No, then perhaps..." I see the other brave college teacher, Alma. The red-haired teacher who got my gaze nodded. The textbook on monsterology used at the College of the Brave also describes some of Sahagin's racial characteristics. One of the descriptions describes a way to get a handkerchief out of a shark as a service animal. I will explain to Ed Alto the verses that come to mind. "It is common for large groups of sahaggins to have superior species called 'Dark Priests'. The Dark Priest of Sahagin uses the young daughter of man to perform a seven-day ritual, and later kills her daughters. It is said that the flesh of a young human daughter killed after seven days of ritual will be the 'bait' necessary to keep and tame (Shark)." Ed Alto, who heard my words, opened his eyes wide, and Anya groaned, "Ugh," and put her hand on her mouth. Plus, I see my godchildren better. Rio had anger in his eyes, and Iris had his hands on his mouth again, and Mayfa had sidelined his gaze in an unpleasant way. That about the culture and habits characteristic of evil monsters is not much of a story I want my children to hear. But it's more than just being a brave man. It's an inevitable story, and it's an issue that you have to bump into eventually. Some good monsters can coexist with humans, like the Caper Dragon we met near the artisanal city of Lavilton, and some evil monsters are helpless and incompatible with humans. We need to make sure the kids know that. But on the other hand... "But on the contrary, it means that those captured by Sahagin will not be killed for seven days first. Anya tells me that it's only been about half a day since the village was attacked. I mean, there's still room to save your daughters." When I said that, people in the big hall raised their voices. The daughters who were taken must have thought that they could no longer help. Ed Alto, on the other hand, showed a slightly more cautious attitude. "Brave Brett, that story will be a great light of hope for those of us in the village.... but I've already lost one arm and Anya is half a serving. The enemy is mighty, and the brave men of this village - me and Anya alone - cannot fight them. To capture that fine light of hope, I'm going to need the power of the dependable brave men in front of me now. - Can you give me a hand? I replied with a small smile. "Yeah, of course. But I wish I could spare a little for the hardware, but it would help if I could get SeaFeed's Guild of Braves to put it out as a quest request. Because if you pass the guild review as a quest, you'll be down 70% on subsidies from the state." The children are asked to install cooling magic props, so I don't put them in my mouth. "Okay. If it's a treasure that can be converted into gold, there must be some in the village. If you gather from the village jungle, you will not care about the amount of quest orders to the Guild of the Brave. If that's all right, I don't even wish." That's what Ed Alto has said and offered his hand, so I shake my hand hard again. But on the other hand, Rio has protested against me with a crying voice. "To, brother! If I say that now, it's like we're just trying to get some good thoughts out of people in need! But I answer that with a laugh. "That's okay, so. - You know, there were times when brave men were exorcising monsters and demon kings for free for people, but it didn't work very well. Even though the brave are saving people with their lives, people no longer appreciate it because they only take it for granted. On the contrary, there are many examples of how a brave man who was saving people with good intentions became more ill when he blamed them for not having the power to do so." "Eh, what the hell is that! Hit it! Rio starts to get angry when he turns around, as if it were about me, and he doesn't want to be outraged. I'll add that with a smile on my face. "But that's what we humans are for. Keeping being grateful all the time is hard to do. That's why it's better to liquidate it with a financial reward, and there's no more rot. It's not a good idea to take it away from people who are really in need of money, but if not, it means that it's better to get a good consideration for your hard work, and it turns out well" "... Phew." Rio looked subtle, like he wasn't convinced. Incidentally, Illis and others were showing up like they were intoxicated by saying, "That's a far-reaching idea..." etc., so I thought it was time for this kid to really do something about it.

第29話 それからさらに一週間ほど後。 勇者協会の重鎮サイラスが、王都の生徒二十人ほどを連れて、俺たちの住む村までやってきた。 うららかな午後のひと時だ。 校舎の庭では三人の教え子たちが武器を使ったトレーニングをしていて、俺がそれを指導したり稽古をつけているところに、ぞろぞろと団体さんが現れたという次第だった。 「やれやれ、こんな交通の便も悪い辺鄙な村に勇者学院とは。貴重な予算の無駄遣いとも思えますな、ブレット先生?」 王都の生徒たちを引き連れたサイラスは、開口一番、あたりを見渡してそう言った。 いや、知るかよそんなの。 ここに勇者学院を作ったのは俺じゃないし、そもそもここに俺を送り込んだのはお前だろうが。 あとここまで転移魔法陣を使って社会科見学に来るとかいう予算無駄遣いの極みをやっているお前に言われたくはねぇよ。 ......などなど、思ったことを口に出してもどうせ面倒なことになるだけなので、俺は顔をしかめるだけで黙っていた。 ちなみに、サイラスの後ろにぞろぞろといる王都勇者学院の生徒たちは、いずれも見覚えのある、裕福な貴族や大商人の家の勇者たちだ。 彼らの多くは、サイラスの言葉に同調するように、「まったく、サイラスさんの言うとおりですよ」「国民の支払う血税を何だと思っているんだか」などと適当なことを口走っていた。 数十人に一人の割合で生まれると言われている勇者なので、当然ながら、貴族や大商人の家に生まれる勇者もいる。 そうしたエリート社会の中に生まれたエリート勇者は、たいてい蝶よ花よと大事に育てられ、王都の勇者学院に入学して形だけでも卒業すれば、その後は魔王ハンターなどの現場を経験することなく、勇者協会や国家の防衛部門の重要ポストに就くことになる。 そのあたりはまさに、人間社会の腐敗の極みといったところなのだが、そういう平和ボケを支えているのが現場で必死に魔王を退治している勇者たちなのだと思うと、なんとも複雑な気持ちになる。 ただ── そんな平和ボケ社会に支えられたエリート勇者たちの中にもまた、一定の割合で逸材は現れる。 どんな環境にあろうと、育つやつは育つ。 それを知らしめるような存在が、サイラスの後ろでへらへらと笑っている少年少女の勇者たちの中に、三人だけいた。 “剛剣”アドルフ。 “女王”ドロシー。 “賢狼”ジェイク。 現在の王都勇者学院の生徒では、実力トップスリーと呼ばれる三人だ。 その三人だけは、特にあざけるでもなく静かに場の様子を窺っていた。 ちなみに、そうした生徒たちの後ろにはげっそりと疲れた様子のアルマがいて、俺に向かって力なく手を振っていた。 あー......多分ここまで来る間に、いろいろと苦労があったんだろうな。 何しろ金持ちのボンボン勇者ばかりだし、サイラスはまともに役に立たないだろうし、事実上一人で引率してきたようなものなら、さぞ大変だったろう。 俺はアルマとアイコンタクトを取り、惜しみない同情の念を込めてうなずいた。 アルマは「分かってくれる?」と言わんばかりに眼鏡の奥の瞳をうるうるとさせていた。 さておき。 あたりを見回していたサイラスは、不思議そうに言う。 「はて......? ブレット先生、勇者学院の校舎はどちらですかな? 村長から、こちらにあると聞いてきたのですが」 わざとなのか、それとも本当に分からないのか、サイラスはそんなことを言ってきた。 俺と教え子たちが今いるのが校舎のグラウンドで、その横にあるボロ小屋が校舎なのだが。 まあこれは、俺も最初は呆気にとられたから、分からないのも無理はないか。 「そこの小さな小屋がこの村の勇者学院の校舎で、ここがそのグラウンドですよ」 俺がそう答えると── それを聞いたサイラスは、思いきり噴き出してみせた。 「ぶふっ......! ちょっとブレット先生、本気で言っているのですかな? これが勇者学院で、これがそのグラウンド? いやはや、こんなところで勤務しているとは。さすが、教育熱心な先生は違いますな。こんな環境でも教育を諦めない。いやぁさすが、教師の鏡ですな!」 サイラスが芝居がかった様子でそう言うと、後ろにいた生徒たちがドッと笑った。 「おい、聞いたかよ。あれが校舎だってよ......!」 「ぷぷっ......貧乏な勇者って、すごいところで勉強しているのね」 「熱血教師ブレット先生には、お似合いの環境だな」 生徒たちがくすくすと笑い始める。 あー......すげぇなこれ。 こっちに落ち度は何もないのに、なんか俺たちの問題みたいになってるぞ。 これを問題だというなら、どっちかっていうと全国の勇者学院への予算配分を決めている勇者協会の問題だと思うんだが、まったくもって見事な印象のすり替えだ。 相変わらずサイラスの野郎、こういうところは口が回るんだよな。 ──と、そう思っていると。 俺の隣に歩み寄ってきたリオが、くいくいと俺の服のすそを引っ張ってきた。 「なあ兄ちゃん、こいつらが王都の勇者学院のやつら?」 「ああ、そうだな。悪いがリオ、ちょっとだけ付き合ってくれないか」 「いや、それはいいんだけどさ──あの三人以外、全員すっげぇ弱そうだなって思って。兄ちゃんみたいに力が表に見えないようにしてるわけでもねぇんだろ? なんでこいつら、弱いのに偉そうに威張ってんの?」 そのリオの言葉は、純粋に思ったことを口にしただけだったのか、それとも意図的な挑発だったのか。 いずれにせよ、少女の発した言葉は、王都の生徒たちの間にどよめきを走らせた。 ちなみに「あの三人」というのはもちろん、実力トップスリーの三人のことだ。 そのあたり、リオの実力を測る目に狂いはない。 そしてそこに、もう二人。 イリスとメイファが、リオの横に並び立つ。 「そうだねリオ、それは私も思ってた。特にあそこの、先生のことをバカにしたやつとか、雑魚雑魚の雑魚でしょ」 「......分かる。......能のないバカほど、よく吠える」 メイファはともかく、イリスまで口が悪かった。 何だか分からないけどイリスさん、目が据わっていますよ? というか、よく見ればリオとメイファも、闘争本能をむき出しにして王都の生徒たちを睨みつけているようだった。 あー......。 こんなボロ家でも、自分たちの勇者学院をバカにされて、火がついちゃいましたか。 そして当然ながら、リオたちの挑発を受けた王都の生徒たちも色めきだっていた。 「チッ、あいつら貧乏勇者のくせに、勘違いしやがって」 「なによ、ちょっと顔がいいからって、庶民の勇者が調子に乗って」 「おい、やっちまおうぜ。ああいうクソ生意気なメスどもは、一度ワカらせてやらねぇとよ?」 「ははは、いいねぇ。やっちまうっつーか、ヤッちまおうぜ。なぁに、いざとなったらパパに揉み消してもらえば」 ......あー、困った。 あいつらサイラス色が全身にまで回ってやがる。 あとこういう展開になる可能性も予想はしていたが、思っていたよりも早い。 これは今のうちに、あれを受け取っておいた方が良さそうだ。 俺はその場で手を上げると、王都の生徒たちの後ろにいる引率の先生に声をかける。 「おーい、アルマ先生。ちょっとこっち、来てもらえますか?」 「あ、はい、ブレット先生。なんですか?」 「頼んでおいたブツを受け取っておきたくて」 「あ、はいはい。今渡しますね」 俺はアルマを呼び寄せて、購入を頼んでおいた魔道具を受け取り、代金を支払う。 一方で── そんな俺とアルマの動きを、サイラスは何やら憎々しげに見つめていた。

29 Lesson 29 Then another week or so later. Cyrus, a heavy town of the Order of the Brave, brought about twenty students from the King's Capital to the village where we live. It's a flattering afternoon. In the garden of the school building, the three godchildren were training with weapons, and it was up to the group to show up where I was coaching and auditioning for it. "Oh man, what is the College of the Brave in a despicable village with such bad transportation. That sounds like a valuable waste of your budget, doesn't it, Dr. Brett? Cyrus, who had taken the students of the Wang capital, said so with the best of openings, looking around. No, you know what? I'm not the one who built the College of the Brave here, and I'm guessing you're the one who sent me here in the first place. I don't want you to tell me you're wasting your budget on a tour of Social Sciences using the Transition Magic Brigade. ... etc. I just kept my face shut because even if I put what I thought into my mouth, it would just be a hassle. By the way, the students of the Wang Du College of Brave Men, all of whom are familiar behind Cyrus, are the brave men of wealthy noblemen and great merchants' houses. Many of them had spoken appropriately, as Cyrus said, "Damn it, Mr. Cyrus is right," "What do you think of the blood taxes paid by the people," etc. As brave men are said to be born in a proportion of one in dozens, naturally, some are born in the homes of nobles and great merchants. Elite brave men born within such elite societies are usually raised with care to be butterflies, flowers, and if they enroll in the King's Capital's College of Brave Men and graduate only in form, they will then take up important posts in the Brave Men's Association and the nation's defense department without experiencing a scene such as the Demon King Hunter. What a complicated feeling it is to think that it is the braves who are desperately exorcising demon kings in the field that support such a peaceful bokeh, precisely around it, such as the extremes of corruption in human society. It's just... Also among the elite braves supported by such a peaceful bokeh society, delicacies appear in a certain proportion. Whatever the environment, the one who grows grows. There were only three of the brave boys and girls laughing naggingly behind Cyrus, whose presence made it known. "Rigid Sword" Adolf. "Queen" Dorothy. "Wise Wolf" Jake. In the current Wangdu College of Brave Men students, there are three known as the Top Three of Strength. Only those three people watched the place quietly, not particularly bruised. By the way, behind those students was Alma, who looked snugly tired, waving at me powerless. Uh... maybe I had a lot of trouble getting here. Anyway, it's just rich bonbong braves, and Cyrus won't be decently helpful, and if it's virtually like he's been pulling off on his own, come on. It would have been tough. I made eye contact with Alma and nodded with unstinting sympathy. Alma said, "Do you understand?" He kept letting his eyes in the back of his glasses roam all the time. Forget it. Cyrus, looking around, says wonderfully. "Ha...? Dr. Brett, which school building is the College of the Brave? The village chief told me it was here." Is it on purpose, or do you really not know, Cyrus has said that? Me and my godchildren are in the grounds of the school building, and the borough shed next to it is the school building. Well, I was embarrassed at first, too, so can't you tell? "The little cabin there is the campus of this village's College of the Brave, and this is the ground." And when I say that... When Cyrus heard about it, he let it erupt as he wished. "Buffoo......! Hey, Dr. Brett, are you serious? This is the College of the Brave, and this is its ground? No, I didn't know you worked here. That's right, you're not an educationally keen teacher. I won't give up education even in an environment like this. Hey, that's the teacher's mirror! When Cyrus said that in the way he wanted to play, the students behind him laughed doedly. "Hey, did you hear that? That's the school building...! "Pfft... you're studying in an amazing place, poor brave man" "Bloodthirsty teacher, Dr. Brett, you look great in a good environment." Students start laughing when they dull. Uh... awesome this. There's nothing down here, but it's like something's wrong with us. If you call this a problem, I think it's one of the brave associations deciding which budget to allocate to the National College of Brave Men, but it's a brilliant change of impression altogether. As usual, you Cyrus bastard, your mouth turns in places like this. - And that's what you think. Rio walked up next to me and pulled my clothes. "Hey brother, are these the ones from the College of Brave Men in Wang Du? "Oh, right. I'm sorry, Rio, but could you just hang out for a second?" "No, that's fine. - Except for those three, they all seem so weak. You're not trying to keep your powers from appearing like your brother, are you? Why are these guys so prestigious when they're weak? Were those Rio words just words of pure thought, or were they deliberate provocations? In any case, the girl's utterance ran a twist among the students of the king's capital. By the way, "those three," of course, are about the three top three in strength. Around that time, there is no madness in Rio's eyes that measures his strength. And there, the other two. Illis and Mayfa line up next to Rio. "Right, Rio, that's what I thought too. Especially the one over there, the one who made fun of the teacher, the grubby fish, the grubby fish." "... I understand.... the more impossible idiots, the more often they bark" Mayfa, anyway, had a bad mouth until Illis. I don't know what you're talking about, Mr. Iris, but you have eyes on you, don't you? Or, if you look closely, it seemed that Rio and Mayfa were also staring at the students of the Wang Capital by putting out their fighting instincts. Ah...... Did such a Borough family fool around with their own College of Brave Men and set them on fire? And naturally, the students of King's Capital, who were provoked by Rio, were also colored. "Chip, you poor brave bastards, get me wrong" "What, because you look a little good, the brave people are on track" "Hey, let's do this. Oh, those fucking busty females, they're not gonna let you get wacky once, are they? "Ha, that's good. Let's fuck when we're done. Hey, if you have to, just ask your dad to rub it off." ... Uh, trouble. They turn cyrus all over their bodies. I was also anticipating the possibility that this would happen again, but sooner than I thought. This looks like you should take that one while you can. When I raise my hand on the spot, I speak to the pull teacher behind the students in Wang Du. "Hey, Dr. Alma. Hey, over here, can you come? "Oh, yes, Dr. Brett. What is it? "I wanted to take the boobs you asked for." "Oh, yes, yes. I'll give it to you now." I summon Alma to receive the magic props I asked him to purchase and pay for them. On the other hand... Cyrus looked at me and Alma's movements in some hateful way.

第15話 朝食を終えると、俺は教え子たちを連れて校舎という名のボロ小屋へと向かった。 はっきり言って家で授業をしたほうが広いのだが、移動することで気持ちの切り替えになる。 それにグラウンド相当と思われる庭はそれなりに広いので、実習には悪くなかった。 午前中は、まずはウォーミングアップの運動とある程度の筋トレをしてから、次に武器戦闘の指導を行うことにした。 全員天才だから教えることなど何もないかというと、さすがにそこまでではない。 基礎は教えるまでもなく何となくできているという恐ろしさがあるのだが、技術的なこととなってくると、そこには勇者教育史が育んできた歴史がある。 それは一人の天才がいきなり凌駕できる類のものじゃない。 まあ、技術を学んでいって長じた暁には、彼女らがその歴史の一部を塗り変えるようなことも、あるいはあるのかもしれないが......。 しかしそうは言っても、さすがに三人とも筋がいい。 教えたことはすぐさまつかみ取る、天性の勘の良さがある。 特にリオの剣術に関しては、バケモノとしか言いようがなかった。 「二段斬りってのはこう、まず右上段からの斬り下ろしから入って、振り切ったときの反動を利用して右手に切り返す技なんだが......」 「あー、なるほどね。こんな感じ?」 「ゲッ、だいたいできてる......」 「でも兄ちゃんのやったのとは、ちょっと違う感じなんだよな......。少し練習してみるね」 「あとこれ、ちょっと体の使い方変わってくるけど、違う形でもできるよな。左下からの斬り上げから始めるやつとか」 「そ、そうだな。ただそれ普通、中級の技として教えるやつなんだが......」 一般に、十を教えて一を学ぶのが普通の勇者、一を教えたら一を学ぶのが優秀な勇者なのだが。 リオは剣に関しては、一を教えて十を学ぶ驚異的なセンスを持っている。 教えているこっちが恐ろしくなってくるぐらいだ。 もちろん筋がいいのはリオの剣だけじゃない。 イリスの弓もメイファの槍も、初めて扱うにしては十分すぎるほどに見事な取り回しだ。 あともう一つ良い点があって、それは俺という一人の教師が、三人だけという少数の生徒を手取り足取り見てやれるということ。 王都の学院で教師をやっていたときは、一度に二十人から四十人程度の生徒を同時に見るような環境だったから、なかなか一人ひとりのペースに合わせた丁寧な教育を施すというのはやりづらかった。 特に優秀な生徒の教育は難しい。 生徒の才能には上から下まであって、授業のレベルをそのどこに合わせたものにするかという問題がある。 集団を相手に授業をする際には、授業のレベルは「下から三割の位置にいる生徒にとって適正なレベル」に合わせるのが一般的だ。 才能に劣る生徒を置いてけぼりにしないよう、なるべく平等に育てようとするとそうなる。 ただこれだと、才能がある生徒にとっては、退屈で仕方のない授業になる。 そういうときは、才能のある生徒にはいっそ教える側に回ってもらうというのも一つの手になってくるわけだが── 教えることが自分の学びにもなるとはいえ、この方法だとやはり、ハイレベルな実力は身につけるのが難しくなる。 その点、今の俺に与えられている教育環境は、ものすごく贅沢なものだ。 何しろ三人だけを見ていればいいので、個々の特性にぴったり合った教育をしてやれる。 ──と、そんなことを考えながら三人を見ていたら。 ふと、我が天使イリスから、お呼び出しの声がかかった。 「あ、あの、先生......! ちょっと見ていただきたいんですけど、いいい、いいでしょうか......!」 何やら緊張をはらんだ声だった。 俺はイリスのもとに歩み寄る。 「どうしたイリス?」 「い、いえ、その......。私の弓のフォームとか、どうかなって、思いまして」 イリスは何やら頬を染めて、ちらちらと俺のほうを見てくる。 何か気になることでもあるんだろうか。 「んー、まあまあいいと思うけどな。ちょっと構えてみてくれるか」 「は、はいっ。......こ、こんな感じで、どうでしょう」 「うん、いいと思うぞ。......んー、でも......ちょっといいか、イリス?」 俺は弓を構えているイリスの背後へと回り、彼女のフォームに手を添えて、少しだけ矯正してやる。 「このぐらいのほうがもっといいかもな──って、どうしたイリス?」 「ふあああっ......先生の手が、ぬくもりが......ふわああああっ......!」 「おーい、イリスー? 大丈夫かー?」 「はっ......! は、はいっ! ご指導ご鞭撻、ありがとうございます、先生っ......!」 なんだかイリスは、指導する前よりガッチガチに固まっていた気がするが── まあ、いくら天才児といったって、微細な部分まで教えてすぐにできるようになるわけじゃないだろうしな。 指導したことによって逆に一時的に持ち崩すということはありうるし、そのあたりは本人の中で時間をかけて消化していってもらうしかない。 と、そんな折、今度はリオからお呼びの声がかかる。 「なあ兄ちゃん、オレもちょっと聞きたいことあるんだけど」 「おう、リオ。待ってろ、すぐ行く」 あっちからもこっちからも引っ張りダコだ。 やれやれ、モテる男はつらいな──なーんて。 そうして俺がリオのほうへと向かうと、その一方では、通りすがりのメイファがイリスに何やら声をかけているのが見えた。 「......イリス、お兄さんへの態度、分かりやすすぎ。......露骨」 「ううう、うるさいなメイファ......! それ以上言ったら、メイファでも許さないから!」 「......にひひ、怖い怖い」 「だいたいメイファはずるいよ、あんな立ち位置......」 「......だったらイリスも、ボクみたいにすればいい」 「で、できるわけないでしょ! メイファは先生に失礼! あと 破廉恥 「なっ、なななな、何を言ってるかなメイファは!? そそそそんなこと、私がするわけないじゃない......!」 「......ほんと、イリスは分かりやすい」 いったい何の話をしているんだ、あいつらは。 まあ、姉妹の間でしか通じない何かがあるのかもしれないな。 気にしないでおくことにしよう。

15 Episode 15 At the end of my breakfast, I took my godchildren to a shack called the school building. Clearly, it's wider to give classes at home, but moving around makes me change my mind. Besides, the garden, which seems to be the ground equivalent, is quite large, so it wasn't bad for the internship. In the morning, I decided to do some muscle treading with the warm-up exercise first, then instructing on weapons combat next. We're all geniuses, so there's nothing to teach, that's just not it. There is the horror that the foundation is somehow made without having to teach, but when it comes to technology, there is a history where the history of brave education has grown. That's not like one genius can suddenly outsmart another. Well, in the dawn of learning and learning technology, there may be things or things that they change to paint a part of that history... But that being said, all three of us are just fine. I will grasp what I have taught, and I have a good understanding of nature. Especially when it came to Rio's swordsmanship, all I could say was that it was a bucket. "This is what a bunk slash is, a move that starts with a slash down from the upper right, and uses recoil when you shake it off to cut it back into your right hand..." "Uh, I see. Like this?" "Gee, I can do more or less..." "But it feels a little different than what your brother did... I'm gonna practice a little bit." "And this is going to change the way you use your body a little bit, but you can do it in a different way. Like the one that starts with the slash up from the bottom left." "Oh, yeah. It's just that I usually teach it as an intermediate move..." In general, it is normal brave men who teach ten and learn one, and brave men who are good at learning one when they teach one. When it comes to swords, Rio has an amazing sense of teaching one and learning ten. So much so that this one I'm teaching is getting scary. Of course, Rio's sword isn't the only one with good muscles. Both the bow of Illis and the spear of Mayfa are so stunning a take that they are too much for the first time handling them. Oh, and there's another good point, which is that one teacher named me can take a good look at a handful of students: just three. When I was a teacher at Wang Du's college, it was difficult to do that because it was an environment where I saw about twenty to forty students at the same time, so it was difficult to provide a polite education to suit the pace of each and every one of them. It is particularly difficult to educate good students. Student talents range from top to bottom, and there is the question of where to tailor the level of classes. When classes are given to a group of people, it is common for the level of the class to be "appropriate for students in a 30% position from the bottom". This happens when we try to raise students as equally as possible to avoid leaving students with inferior talents behind. Just this makes it a boring and helpless class for talented students. In that case, having talented students turn to the teaching side is one thing that comes into play. Even though teaching can also be your own learning, this way still makes it difficult to acquire high-level strength. In that regard, the educational environment that I am being given today is a tremendous luxury. You just have to look at the three of them somehow, so you can educate them that suits their individual characteristics perfectly. - And if you were looking at the three of them thinking about that. Huh, my angel Iris called me. "Oh, you know, Doctor...! I'd like you to have a look, okay, okay......! It was a nervous voice. I walk over to Illis. "What's up, Iris? "Yes, no, the... My bow form, whatever, I thought." Iris dyes his cheeks and looks at me. Is it also something that bothers me? "Um, I think it's okay. Would you mind setting it up for a second?" "Ha, ha. ... like this, what do you think" "Yeah, I think it's good.... um, but... do you have a minute, Iris? I'm gonna go around behind the bow, put my hand on her form, and I'm gonna make it right. "Maybe this is better. - What's up, Iris? "Huhhhhh... the teacher's hand, the plush... huhhhhhhhh...! "Hey, Iris? Are you all right? "Ha......! Ha ha! Thank you for your instruction whip, first born......! I think Iris was harder on the gutter than he was before he coached him. Well, I don't know how many genius children I'm talking about, but I can teach you even a tiny part of it. It can be temporarily broken down by mentoring on the contrary, and the only way around it is to have it digested over time in the person. And, that folds, now I hear you calling from Rio. "Hey, brother, I need to ask you something, too." "Ooh, Rio. Wait, I'll be right there." It's a pull dako from over there and from over here. Oh, man, hot guys are tough. That's how I turned to Rio, and on the other hand, I saw a passing Mayfa speaking up to Iris. "... Illis, attitude towards your brother, too easy to understand.... blatant" "Ugh, shut up Mayfa......! If I say any more, even Mayfa won't forgive me! "... hihi, scared scared" "Mayfa is generally sloppy, standing like that..." "... then Iris can do it like me too" "So, there's no way you can! Mayfa is rude to her teacher! And shame on you!" "... hmm.... Then yeah, it's not shameful to seek skinship in the dark." "So, what are you talking about, Mayfa?!? That's not what I would do...! "... Really, Illis is easy to understand" What the hell are you talking about, those guys? Well, maybe there's something that only passes between the sisters. Let's not worry about it.

第32話 「残り全員......まとめてかかってこい、だと......? まだこっちには十人以上いるんだぞ。分かっているのか......?」 王都の生徒たちは、リオの言葉にざわりと色めきだった。 だがリオは、それにも動じる様子はない。 同年代の、あるいは多少上の歳の者たちも混ざっている十人以上を前にして、まったく気構えた風もない。 「おう。イリスが二人、メイファが二人倒したから、残り十一人だろ。ってかいいから早くかかって来いよ。それとも、それだけ人数がいてもオレ一人にビビるような ビキッ、ビキビキッ......! リオが一つ発言するごとに、王都の生徒たち、特に男子生徒たちの額に青筋が浮かんでいく。 女子生徒たちの中には、「ねえ、やめたほうがいいんじゃない? あの子すごく強そうよ」なんて言って止めようとしている者もいたが、男子どもはもう退けないようだった。 「このクソアマぁ......もう許さねぇ! ぶちのめして裸にひん剥いて〇してやる! 行くぞテメェら!」 「「「おおおっ!」」」 四人の男子生徒が武器を振り上げ、リオに向かって一斉に襲い掛かった。 動機はともあれ、気迫だけはたっぷりだ。 「オラァッ、ボコボコにしてやらあっ! ──食らえやああああっ!!!」 少年たちが一斉に武器を振り下ろす。 その先には、その武器の軌道をぼんやりと眺めるリオの姿があって── そのリオが、ふっと動いた。 「って、あれ......? あのクソアマ、どこいった?」 王都の生徒たちが武器を振り下ろした先に、少女はいなかった。 リオの姿を見失った少年たちは、きょろきょろとあたりを見回す。 が、まるで見当違い。 「ふぅん。やっぱ全然見えてねぇんだな」 「こ、声......! どこだ!?」 「下だよ、下」 聞こえてきた少女の声で、王都の男子生徒たちは慌てて自分の足元を見る。 リオは四人の少年たちの懐、すぐ目の前の足元に、にひひっといたずらっ子の笑顔でしゃがみ込んでいた。 「なっ......! い、いつの間に──ぐえっ」 「ぎゃっ」 バタバタバタ。 リオが木剣で素早く連続突きを放ち、少年たちのみぞおちに軽く一撃を入れていくと、少年たちは次々と地面に倒れた。 倒れる少年たちと入れ替わりで、しゃがみ込んでいたリオが立ち上がる。 それを呆然と見ていたアルマが、慌てて旗を上げた。 「あっ......ゆ、有効四発! 四人退場!」 ざわっ......! 残る王都の生徒たちのほとんどが、動揺した。 だが王都陣営にも、多少ながら骨のあるやつがいる。 立ち上がったリオの足元の地面から、砂利を押しのけて二本の土の手が生えてきて、リオの足首をつかんだ。 土の手はそのまま土くれに戻り、リオの足を地面に縫いつけてしまう。 見れば王都陣営の後衛に、魔法を行使した姿でリオに手のひらを向けている男子生徒がいた。 ──お、あの男子生徒は覚えがあるぞ。 あいつはだいぶちゃんと授業を受けていたほうだし、そのぐらいはやってくるか。 「はっ! 攻撃魔法がダメとは言われたが、魔法を使うなとは言われてないぜ!」 男子生徒は勝ち誇ったように言う。 ああ、そのとおり。 これはルール違反でも何でもなく、真っ当な戦術だ。 そして身動きが取れなくなったリオに、もう一人、別の剣士の少年が襲い掛かった。 「よくやった! これでちょこまか動けねぇだろ──くらいやがれ、【唐竹割り】ぃ!」 こちらもある程度まともに授業を受けていた勢の一人だ。 剣の初級技である【唐竹割り】を使いこなせるあたり、ほかの連中とは一味違うのだが── しかし【唐竹割り】は、相手の脳天へと剣を振り下ろす技だ。 決まれば威力は高く、振り下ろしの剣筋も鋭いのだが、今回の試合のルールである「意図的な顔面攻撃禁止」に引っ掛かる危険技である。 まあ厳密には「頭部」への攻撃なので、アルマが「顔面」攻撃禁止と言ってしまった以上、一応のグレーゾーンではあるのだが。 いずれにせよ危険な攻撃であることには違いない。 生徒の優秀さと人格とは、必ずしも一致しないということだ。 アルマが目を見開いたが、制止は間に合いそうになかった。 それを見て、俺はあらかじめ拾っておいた石ころをぶつけてやろうかと思ったが── リオの動作が見えたからだ。 「なっ......!?」 ──カンッ。 リオの木剣が、相手の木剣を横から弾き、軌道を殺した。 剣筋を斜めに受け流された相手はバランスを崩し、たたらを踏む。 その少年の胸に、リオが木剣の柄を叩き込んだ。 「うげっ......!」 少年は胸を押さえて、ばたりと倒れ込む。 「ゆ、有効! 退場!」 アルマが慌てて判定の旗を上げる。 ちなみにアルマは退場と言ってはいるが、リオが倒した生徒たちは全員いまだにダメージから復帰できず、地面に転がって芋虫のようにうずくまっていた。 リオも手加減はしているんだろうが、元々のパワーがかなり上がってるからな。 そして── ──バキッ、バキッ。 リオは気合いの声をあげると、自分の足首をつかんでいる土くれを、脚力だけで力ずくで引きはがした。 自由を取り戻したリオは、残った六人の王都の生徒たちのほうを見て、にひっと笑う。 「なんだよ、少しはやるやつもいるじゃん。わりぃわりぃ、ちっと見くびってたわ。──で、それはいいんだけど、お前らまだ続ける?」 リオがのんびりとそう聞くと、残る六人の生徒たちは全員、ぶんぶんと首を横に振った。 そうして、残る王都の生徒たちは全員降参をして、勝負が決着した。 「「「いえーい!」」」 リオ、イリス、メイファの三人は集まって、笑顔でハイタッチ。 そして三人とも、子犬のように俺のほうに駆け寄ってきて、無邪気な目で俺を見上げてくる。 「ねぇ兄ちゃん、どうだったオレたち? 結構強くなったんじゃねぇ?」 「もう、リオ。調子に乗ったらダメだよ。先生と比べたら、私たちなんて全然まだまだなんだから。......で、ですよね、先生?」 「......相手がへっぽこすぎて、よく分からなかった。......ロリコンのお兄さん的には、ボクたちの体の具合はどう? むがっ」 「いやぁ、めちゃくちゃ成長してると思うぞ! リオもイリスもメイファも、しばらく前とは見違えるようだ。よーしよしよし!」 微妙に危険な発言にシフトしてくるメイファの口をふさぎつつ、三人を一人ずつ抱き寄せてなでこなでこ。 「えへへ」とはにかんでくるリオやイリスの可愛さを堪能しつつ、俺は三人のことをたっぷりと称賛してやった。 それをアルマが半笑いで、光彩を失った目で見ていたような気がしないでもないが── いや、このぐらいは教師と教え子の普通のスキンシップだよな......? ──その一方。 王都の生徒たちは、サイラスのまわりに集められ、叱責を受けていた。 サイラスは苛立ちを生徒たちにまき散らし、唾を飛ばしていた。 そして生徒たちも、「ま、待ってくださいサイラスさん、減点だけは......!」などと、すがるようにしてサイラスに取り入っていた。 「減点」というのがどういう意味かは知らないが、あの生徒たちの反応などから察するに、おそらくは将来の人事にでも関わる話なのだろうと思うが。 ちなみに俺の目から見ると、イリスに向かって矢を正確に飛ばした弓使いの女子生徒と、【 などと俺が思っていた、そのとき。 サイラスの横で事態を静観していた三人のうちの一人が、動いた。 「まあまあサイラスさん、そう慌てることもないでしょ」 それは“賢狼”の異名を持つ、ジェイクという名の男子生徒だった。

32 Lesson 32 "All the rest of you... call me back together, so...? There are still more than ten of us over here. Do you understand...? The students of the Wang capital were deliberately colored by Rio's words. But Rio doesn't seem to move either. There is no wind at all in front of more than ten people of the same age, or somewhat older, who are also mixed. "Whoa. You've got eleven left because there's two Illis and two Mayfa down. Call me as soon as you can. Or is there just a bunch of hipster (chicken) bastards freaking out about me on my own, even if there's so many of them? Then you can call us unbeatable." Biki, Biki, Biki...! Every time Rio makes one statement, a blue muscle floats on the foreheads of the students of the Wang Capital, especially the boys. Some of the girls said, "Hey, shouldn't we stop? She looks so strong." Some were trying to stop her, but the boys couldn't seem to retreat anymore. "You fucking amah...... I won't forgive you anymore! I'm gonna smash you naked and peel you! Let's go, Temehe and the others! "" "Whoa! Four male students shook up their weapons and attacked Rio in unison. Whatever the motive, only temper is plentiful. "Olaah, I'm gonna bump him out! - - Eat it. Oh!!! The boys wave down their weapons simultaneously. Ahead, there's a blurry glimpse of Rio looking at the trajectory of that weapon. The Rio just moved. "What, is that...? Where the fuck is she? There was no girl before the students of the Wang capital waved down their weapons. The boys, who have lost sight of Rio, look around for a moment. but it's like a misunderstanding. "Huh. I didn't see you at all." "Ko, voice......! Where!? "Down there, down there" In the voice of the girl who heard it, the male students of Wang Du rush to see their feet. Rio was crouching in the nostalgia of the four boys, right at the foot in front of him, with a smile of a naughty boy. "Become...! When did you...?" "Geez." Butterflies. The boys fell to the ground one after the other as Rio quickly unleashed a continuous thrust with a wooden sword and lightly struck each and every one of the boys. In exchange for the falling boys, Rio, who was crouching in, rises. Alma, who had looked at it in dismay, hastily raised the flag. "Ah... Yu, four valid shots! Four out! Goddamn it......! Most of the students in the remaining King's Capital were upset. But the Wang Du faction also has a somewhat bony one. From the ground at Rio's feet, which stood up, two hands of dirt grew by pressing gravel, grabbing Rio's ankle. The dirt hands go straight back to giving me dirt and sew Rio's feet to the ground. If you look, there was a male student in the rear guard of the Wang Du faction who was palming at Rio for exercising his magic. - Oh, that boy student remembers. He should have taken a lot of proper classes, and is that about it coming? "Ha! They said no attack magic, but they didn't tell me not to use magic! Boys students say like they've won. Oh, you're right. This isn't against the rules or anything, it's a legitimate tactic. And another swordsman boy attacked Rio, who was unable to move. "Well done! Now you can't move. - Fuck you, [Takeshi cracking] No! This one is one of the momentum that was taking some decent classes. While I can use [Tangbamboo cracking], the primary skill of the sword, it's different from the rest of them. But [Tangbamboo cracking] is a move to wave down the opponent's sword to his brain. If you decide, it's powerful, and the sword muscle of the swing is sharp, but it's a dangerous move that gets caught up in the "no intentional facial attacks" rule of this game. Well, technically, it's an attack on the "head," so it's more of a one-off grey zone than Alma said it was a "facial" attack ban. It must be a dangerous attack in any case. Student excellence and personality do not always coincide. Alma opened her eyes, but the stop was unlikely in time. And when I saw it, I thought I'd hit the stone I'd picked up beforehand, but... Because I saw Rio's behavior. "Become...!? - - Kang. Rio's wooden sword played his opponent's wooden sword from the side and killed the orbit. The opponent, who is diverted diagonally from the sword muscle, loses balance and steps on the bump. On the boy's chest, Rio slammed a wooden sword pattern. "Whew...! The boy holds his chest and falls in with a buckwheat. "Yu, effective! Exit!" Alma rushes to raise the flag of judgment. By the way, Alma says exit, but all the students Rio knocked down still couldn't get back from the damage, rolling on the ground and nodding like potato worms. I'm sure Rio is doing well, but the original power is up a lot. And... - - Baki, baki. When Rio raised his temper voice, he pulled the dirt that was grabbing his ankle with his leg strength alone. When he regained his freedom, Rio laughs at the six remaining King's Capital students. "Oh, my God, some of you do a little. I was a little underestimated. - So, that's okay, you guys still going on? When Rio heard that relaxed, all six of the remaining students shook their heads beside each other. So all the students of the remaining king's capital surrendered, and the battle was settled. "" "Yikes! Rio, Illis and Mayfa got together and smiled and hi-touched. And all three of them, they run up to me like puppies, and they look up at me with innocent eyes. "Hey, bro, how'd it go with us? You've gotten pretty strong, haven't you? "Already, Rio. Not when you're in good shape. Compared to the teacher, how can we still be?... So, right, Doctor? "... the other guy was too hectic, I wasn't sure.... Loricon's brother, how are we doing with our bodies? Swollen." "Hey, I think you're growing up so much! Rio, Illis and Mayfa, they don't look like they did a while back. All right, all right, all right! Hold the three of you one at a time as you block Mayfa's mouth shifting to a subtly dangerous statement. Why not? While enjoying the cuteness of Rio and Illis, I praised the three of them with plenty. I don't feel like Alma was laughing and watching me lose my glow, but... No, this is normal skinship between teachers and teachers...? - - On the other hand. The students of the Wang capital had been gathered around Cyrus and had been reprimanded. Cyrus had scattered his frustration among the students and was spitting. And the students also said, "Wait, Mr. Cyrus, just a reduction...!" and so on, so that they could soak up and take in Cyrus. I don't know what "subtraction" means, but I think it's probably a story about future HR as well, to be seen from the reactions of those students, etc. By the way, from my eyes, I thought maybe two of the bowman's female students who flew an arrow accurately toward Illis and a male student who succeeded in stopping Rio, albeit temporarily, with [Earth Hand (Earth Hand)] could do so, but Cyrus' rating criteria don't seem to be in that place. And so on, I thought, at that time. One of the three people who was still watching things next to Cyrus, moved. "Well, Mr. Cyrus, you don't have to panic." It was a boy student named Jake, with the alias "Wise Wolf".

第134話 海神様がざあざあと波をかき分け、船に近付いていく。 ある程度近付くと、甲板上の戦いの様子が見えてきた。 現在のところ、甲板に取りついているサハギンの数は十体ほどのようだ。 だがそれ以外にも続々と、海から船に取りつき、這い上がっていっているサハギンの姿が見える。 対する人間側の戦力を見れば、勇者らしき動きをしているのは三人だ。 二人は屈強な海の男、もう一人は若い娘。 娘は十七か十八か、そのぐらいの年齢に見える。 リオたちやアーニャと比べれば二、三歳上といったところだろう。 アーニャと同様、よく日に焼けた健康的な褐色の肌を持っており、踊り子のように露出度の高い服装で、槍を片手に戦っていた。 この三人の勇者のうち、二人の屈強な男が縦横無尽に立ち回って、襲い来る多数のサハギンどもをどうにか打ち倒し、あるいは牽制していた。 ちなみに、ほか十人以上の船員たちも武器を構えてはいるが、これはろくな戦力にはなっていないように見える。 個体戦力としては、「 一般人 < サハギン < 勇者 」という図式になる。 平均的な勇者一人で複数のサハギンと渡り合えるが、武器を持っただけの一般船員ではサハギンと一対一でも分が悪い。 そして三人の勇者のうちの残り一人、若い娘の勇者は何と戦っているかというと、四本腕のサハギン── サハギンバロンの図体は、通常のサハギンより一回り大きく、人間の成人男性が対峙しても見上げるほど。 四本腕を駆使して四本の武器を同時に扱い、平均的な勇者と一対一で対等に渡り合うだけの実力を持つ。 しかもそれが二体、同時に娘の勇者に襲い掛かっている。 娘の勇者は、まだ若いのになかなか腕が立つように見えるが、だとしても相手が悪い。 各四本、合計八本の武器に次々と攻め立てられて、防戦一方に追い込まれていた。 そして残り二人の勇者も、救援に行けるほどの余裕はない。 「姐御っ、今助けに──くそっ、雑魚どもが、次から次と邪魔くせぇ!」 「あたいに構うな! こっちはこっちで何とかする! ほかのやつらを守ってやれ!」 「何とかするったって姐御、バロン二体相手じゃあ、いくら姐御でも! ちくしょう、やっと宝の地図を手に入れたのに、何だってんだよ!」 戦力は均衡──いや、サハギンたちのほうがやや上回っているようにも思える。 しかもそこに、決定打が投入された。 もう一体、別のサハギンバロンが甲板に上がっていったのだ。 それを見た船上の勇者たちが、驚きの声を上げる。 「なっ......!? ちくしょう、もう一体バロンが来やがっただと!?」 「ふざけんなよ!? あ、姐御、もう無理だ! どうしよう!?」 「泣き言言ってんじゃない! でかい図体して、ちったあ根性見せろっつーの! つっても無理か──このっ、【 二体のサハギンバロンを相手にしながら、娘の勇者がかなり無理をして一瞬の隙を見出し、魔法を放つ。 三つの風刃が、一般船員に襲い掛かろうとしていた雑魚サハギンの三体に一発ずつ命中し、手傷を負わせた。 そこに一般船員たちが束で攻撃を仕掛け、そのサハギンどもを仕留めることには成功する。 だがそれで、さしもの娘の勇者も対応力の限界にきてしまった。 「ゲギャギャッ、もらったぞ、女!」 「なっ、しまった......!?」 ──ギィンッ! 娘は右手に槍、左手には短い筒状の何かを手にして戦っていたのだが。 その金属製と思しき筒状のものが、サハギンバロンの一体が振るった槍の一撃で、大きく弾き飛ばされてしまったのだ。 筒状のものは、そのまま船の外、海へと落っこちていく。 「あ、あたいの地図が......!」 「おおっと、大事なものだ。ちゃんと回収しないとなぁ。ゲヒャヒャッ」 娘の勇者と戦っていたサハギンバロンのうちの一体が、海に落ちた筒状のものを追いかけて海に飛び込んでいく。 「ま、待て! そいつはあたいたちの──」 「ゲヒヒッ、焦って隙ができたぜ、勇者さまよぉ! 食らいな!」 「ぐあっ......!」 慌てて追いかけようとした娘の勇者は、もう一体のサハギンバロンの槍で腹部を貫かれ、甲板上でもんどりうって倒れてしまう。 「「姐御ぉっ!」」 屈強な男の勇者たちは娘の勇者のピンチに叫び声をあげるが、自分たちの前の敵の相手をするだけで手いっぱいで、到底助けには行けない。 そうしているうちにも、船に取りついた新たなサハギンが、次々と甲板上に上っていく。 一方、腹部を槍で貫かれた娘の勇者は、甲板上でのたうち、もだえ苦しむ。 「あぐぅっ......! くっそぉ......あたいたちが、こんなことで......!」 「ゲヒャヒャヒャッ! 若い娘は連れて帰るよう言われているが、お前は生かしておくと危険そうだからな。ここで死んでもらおうか」 サハギンバロンが、甲板上で腹部を押さえて苦しむ娘の勇者の前まで歩み寄り、四本の武器を一斉に振り下ろそうとする。 だが、そこで── ようやく、俺たちの最初の攻撃射程に入った。 「イリス!」 「はい、先生! ──行けっ、【ダブルショット】!」 イリスが矢継ぎ早に、弓に二本の矢をつがえて放つ。 放たれた二本の矢は、まっすぐに目標──娘の勇者にトドメを刺そうとしていたサハギンバロンの胴へと、たて続けに突き刺さった。 「グギャアアアッ!」 イリスの攻撃を受けたサハギンバロンの巨体は、弾かれたように吹き飛んで、甲板上を転がっていく。 イリスが使う弓はショートボウではあるが、職人都市ラヴィルトンの名工、ドワーフのガルドンの手による 特製の矢の威力と、弦を引くイリスの力の強さも相まって、その攻撃力は通常のショートボウのそれをはるかに上回る。 吹き飛ばされたサハギンバロンの姿を見て、甲板上のサハギンどもが驚きの声をあげる。 「ゲギャッ!? な、なんだ!? どこから攻撃が来た!?」 「ギャギャッ! 見ろ、あっちから何か来るぞ!」 「あれは......海神様!? 人間が乗っている!? なんでだ!」 「ゲゲッ、あいつらは......!?」 最後のやつは、俺たちのことを知っているかのような口ぶりだった。 海水浴場で戦ったサハギンかもしれない。 まあ正直、サハギンの顔なんて見ても区別はつかないし、非常にどうでもいい話ではあるが。 一方で俺たちは、弓の射程から、ついには攻撃魔法の射程までたどり着く。 俺は子供たちに号令をかけ、自分でも魔法を行使する。 「行くぞ、リオ、メイファ、アーニャ! ──【 俺、リオ、メイファ、アーニャの四人が同時に魔法を発動する。 俺たちの前に現れたのは、合計で二十を超える膨大な数の火炎弾。 それがゴウと音を立てて一斉に射出され、船の上のサハギンどもに降り注いだ。 『ギャワアアアアアッ!』 次々と悲鳴を上げ、倒れていくサハギンたち。 中には尻に火がつき、慌てて海に飛び込んだ者もいる。 「ゲギャギャッ、海神に乗って、人間どもの増援だと......!? しかもあいつら、全員勇者か!」 「バ、バロン様! あいつらです、あの勇者のメスガキを捕まえるのを邪魔したやつらは!」 「なんだとぉっ!? 勇者がたくさん現れたなどと、失敗をごまかすためにでっち上げた嘘ではなかったのか!? ──えぇい、この船の人間どもは皆殺しにしてやりたかったが、やむをえん! 撤退だ! 野郎ども、全員退けぇっ!」 そのサハギンバロンの号令で、船上にいた生き残りのサハギンどもは、次々と海に飛び込んでいく。 「兄ちゃん、あれ追いかける?」 「いや、やめておいたほうがいいだろうな。水中のサハギンは侮れないし、何より素早い。泳いで追いかけても、追いつけないだろう」 水陸どちらも得意なサハギンは、陸上生物である俺たち人間と比べると、水中での戦闘力や移動力はかなり高くなる。 泳ぎではまず追いつけないし、仮に追いつけたとしても陸上戦闘とは話がまったく違うので、あの数を相手にすれば返り討ちに遭う危険性も低くはない。 一体ぐらいとっ捕まえてアジトの場所を聞き出したかったが、やむを得ない。 それに運が良ければ、甲板上にまだ生き残りのサハギンがいるかもしれない。 そんなわけで、生き残ったサハギンどもはすべて撤退して戦闘終了だ。 一応、逃げ去って行った方角は覚えておく。 一方で船の上の人々は、俺たちの姿を見てぽかーんとしていた。 「う、海神様に乗って、子供の勇者がたくさん......? どんなおとぎ話さ......」 娘の勇者が自ら治癒魔法で腹部の傷を癒しながら、そんなことをつぶやいていた。

134 Lesson 134 God of the Sea bruises and scratches the waves, approaching the ship. Approaching some degree, I could see how the battle was on deck. So far, the number of sahaggins attached to the deck seems to be about ten. But other than that, I can see Sahagin following him from the sea to the ship and crawling up. If you look at the power of the opposing human side, there are three of them making brave moves. Two are men of the benign sea and the other is a young daughter. My daughter looks seventeen or eighteen, about that age. Compared to the Rio's and Anya's, it would be like two or three years older. Like Anya, she often had healthy brown skin that burned on the day, clothed as exposed as a dancer, and fought the spear with one hand. Two of these three brave men stood around endlessly to somehow defeat or restrain the numerous Sahagins who were attacking them. Incidentally, more than ten other sailors are armed, but this doesn't look like a lot of fighting power. Individual combat power will be shown as "ordinary people < Sahagin < brave men". The average brave man can cross with multiple sahaggins on his own, but even the average sailor with a weapon has bad minutes one-on-one with the sahaggins. And the remaining of the three brave men, the brave one of the young daughters, fights against what is called a four-armed sahagin - the superior species of sahagin called the Baron of the Half Fish (Sahagin Baron). The Sahaggin Baron figure is one turn larger than the normal Sahaggin, so much so that even when a human adult man confronts him, he looks up. He has the strength to use four arms to handle four weapons simultaneously and just cross on a one-on-one basis with the average brave man. Besides, that's two, at the same time, attacking my daughter's brave man. My daughter's brave man looks quite armed, even though she's still young, but she's not good with him. He was being pushed to the side of the war, one after the other by four weapons each, for a total of eight. And neither can the two remaining brave men afford to go to the rescue. "Sister, I'm going to help you now. - Damn it, the miscellaneous fish are going to get in the way next time! "Don't worry about me! We'll figure this one out! Protect the others! "Do something, sister, two barons. Then, as much as you want! Damn, I finally got the treasure map, what the hell! The force is balanced - no, the Sahaggins seem to be slightly outnumbered. Besides, a decision hit was put in there. Another Sahaggin 'Baron has gone up on the deck. The brave men on board who saw it raise their voices of surprise. "Become...!? Goddamn it, Baron's already here!?" "Are you kidding me!? Oh, sister, I can't do this anymore! What do we do!?" "I'm not crying! Show me your guts! I don't know if I can do this. [Wind Blade (Windcutter)]!" While dealing with two sahaggin barons, my daughter's brave man finds a moment's gap quite impossible and unleashes magic. Three wind blades struck three of the miscellaneous fish sahagins that were about to be attacked by ordinary sailors one by one, causing injuries to their hands. The general sailors attack there in a bunch and succeed in bringing those Sahaggins to justice. But the brave man of his servant daughter also came to the limit of his coping power. "Gee gah, I got it, woman! "Been, Shit...!?" - - Ginn! My daughter was fighting with a spear on her right hand and a short barrel on her left. Its metallic and cylindrical shape caused the Sahaggin Baron's entire spear to fly away. The cylindrical one falls straight out of the ship, into the sea. "Oh, my map...! "Whoa, it's important. I guess I need to collect it properly. Gehhhh." One of the Sahaggin 'Barons, who was fighting his daughter's brave men, jumps into the ocean after the cylindrical one that fell into the ocean. "Ma, wait! He's our..." "Gehihi, you're in a hurry, brave man! Eat!" "Guh...! Her daughter's brave man, who hastily tried to chase her, is pierced through her abdomen with another Sahaggin Baron spear and falls more and more on the deck. "" Sister, oh! The brave men of the inflexible scream at the pinch of their daughter's brave men, but they are just full of opponents of the enemies before them, and cannot go to help them in the end. While doing so, a new sahaggin attached to the ship goes up one after the other on the deck. Meanwhile, the brave man of his daughter, who was speared through his abdomen, will suffer no more on the deck. "Agoo......! Goddamn it... we did this...! "Gee hee hee hee! My young daughter is told to take me home, but you look dangerous to keep alive. Let's have him die here." Sahaginbaron walks up to the brave man of his daughter, who suffers by holding her abdomen down on the deck, trying to wave down four weapons simultaneously. But that's where... Finally, we're in our first range of attack. "Illis!" "Yes, Doctor! - - Go, [double shot]! As soon as Illis inherits the arrow, he leads two arrows to the bow and releases them. The two arrows unleashed went straight to the goal - to the torso of Sahaginbaron, who was about to stab Todome in his daughter's valiant. "Ggaaaaaa!" The giant Sahaginbaron under attack by Illis blows up like it was bounced and rolls over the deck. Although the bow used by Illis is a short bow, it is a sturdy bow by the hand of the artisan city of Ravilton, Gardon of Dwarf. The power of a special arrow coupled with the strength of the power of a string pulling Illis, its offensive power far exceeds that of a normal shortbow. Seeing the blown out Sahaggin Baron, the Sahaggins on deck give a shout of surprise. "Gee gah!? What!? Where did the attack come from?!?" "Gah! Look, something's coming from over there! "Is that... Sea God!? Humans on board!? Why! "Gee gee, are those...!?" The last one was mouth-watering as if he knew about us. It could be the sahagin we fought in the seawater bath. Well, honestly, I can't tell the difference between looking at Sahagin's face, and it's a very irrelevant story. On the other hand, we get from bow range to attack magic range at last. I give orders to my children, and I exercise magic myself. "Let's go, Rio, Mayfa, Anya! - - Fire Arrow (Firebolt) Me, Rio, Mayfa and Anya activate magic at the same time. What appeared before us was a huge number of flamethrows in excess of twenty in total. It made a noise with the gow and was ejected simultaneously, pouring down on the sahagins on the ship. "Gawaaaaaaaa!" Sahaggins screaming and falling one after the other. Some of them caught fire in their asses and jumped into the sea in a hurry. "Gee gah, get on the sea god and say it's a reinforcement for the humans...!? And those guys, are they all brave! "Ba, Master Baron! It's them, the ones who got in the way of catching that brave female kid! "What the heck!? Wasn't that a lie you made up to deceive the failures, such as a lot of brave men showing up?!? - Yep, all the humans on this ship wanted to kill you, but they had to! Retreat, bastards, all of you! With its Sahaginbaron decree, the surviving Sahagins who were on board jump into the sea one after the other. "Brother, are we going after that? "No, you should stop. Sahagin in the water is not insulting, and most importantly, quick. Swimming and chasing, you won't catch up." Sahagin, who is good at both the surface, is considerably more combative and mobile in the water than we humans, who are terrestrial organisms. You can't catch up first with swimming, and even if you can catch up, it's not like talking about shore combat at all, so it's not unlikely you'll be in return if you deal with that number. I wanted to catch him and find out where Ajito was, but I had to. If you're lucky with that, there could still be a surviving sahaggin on deck. That's why all the surviving Sahagins withdrew and the battle was over. For once, remember where you ran away. The people on the boat, on the other hand, were pompous to see us. "Ugh, aboard Sea God, lots of brave kids......? What kind of fairy tale..." I was crushing that while my daughter's brave man healed her abdominal wounds with his own healing magic.

第98話 ウルは俺の問いかけに応じて、ぽつりぽつりと自分の身の上を語っていった。 満月の夜に月光を浴びると理性を失い、暴力的・殺戮的な衝動につき動かされてしまうこと。 そのせいで幼い頃に、友達だった子を半死半生の目に遭わせてしまったこと。 村人たちからバケモノ扱いされて石を投げられ、住んでいた村から逃げてきたこと。 ウルは今は、この街の外、街の近くの山麓にある寂れた山小屋に住んでいるらしい。 一緒に住んでいた母親も病気で亡くなり、今のウルは一人暮らしであるという。 そして先ほどのモンスター騒ぎは、馬車に轢かれそうになっていた子供を助けるために、ウルが獣化したことによって起こったものだとのこと。 ウルがこの街で獣化をしたのは、今回が初めてで── と、ウルがそこまで語ったところで、リオが口をはさんだ。 「でもさ、ウル。それだったら逃げたりしないで、街の人たちにちゃんと説明すれば良かったんじゃねぇの? 昔と違って悪いことしたわけじゃねぇんだからさ。ちゃんと事情を話したら、街の人たちだって分かってくれたと思うぜ」 「そ、それは......」 リオの言葉を聞いたウルは、返事に詰まってうつむいてしまう。 リオの言うことは必ずしも間違いとは言い切れないんだが、この場合はどうだろうなぁ。 言葉が通じる者同士、ちゃんと話せば分かってもらえる── そう信じるリオの価値観は俺も嫌いじゃないんだが、人間というものを無条件に信じすぎているきらいはある。 現実には、事はそう簡単ではないだろう。 まったく戦う力のない一般人の目の前に突然、見上げるような体格と鋭い牙や爪を持った猛獣じみた姿の生き物が現れたら、普通の人間はまず怯える。 自分の身に重大な危険が降りかかる可能性を想像してしまえば、人は冷静に物事を判断する能力を失い、短絡思考に陥りがちになるものだ。 そうなった人々が、偏見なくウルの話を聞いてくれたかというと甚だあやしい。 俺はリオに対し、そのあたりを指摘しようかと思ったのだが── その前に、メイファがこんなことを言った。 「......リオ。......世の中そんなに簡単じゃないことを、ボクたちはよく知っているはず。......ボクたちだって、お兄さんに救われる前は、呪われた子だった」 メイファの言葉に、リオがはたと何かを思い出したという顔になった。 そうか......こいつらにはその経験があったか。 この子たちと関わったら自分も命を落とすかもしれない──そういう恐怖の感情を根源とした迫害行動に、彼女らは晒されていた時期がある。 根拠のない迷信じみた事柄でも、誤った情報でも、不安や恐怖を触媒にすればいともたやすく信じられてしまう。 そんな人々の習性をリオたちは身をもって知っているのだから、ウルの身の上に共感するのも早かったようだ。 「そっか......そうだな。──ウル、わりぃ。オレ、ウルの気持ちも考えないで、ちょっと無神経なこと言っちまったかも」 「あ、いや......だ、大丈夫っす。全然気にしてないっすよ」 あははと笑うウル。 話は収まるべきところに収まったように思えた。 俺はそこで、口をはさむ。 「じゃあウル、アイドルライブの日程が満月の夜だって知って参加をあきらめたのも、 そう聞くと、ウルはこくんとうなずいた。 それから自嘲気味に、こんなことを言ってきた。 「......うちの人生、いつもこうなんすよ。なんにもうまくいかないっす。せっかくチャンスが来たと思ってもこのザマで──でもこれでよかったんすよ。うちのために、リオちゃんたちに迷惑をかけずに済んだっす。これで全部丸く収まるっすよ」 そう言って、今にも泣きそうな笑顔を見せてくるウル。 この顔を見せられて、全部丸く収まったって言われてもなぁ......。 多分だが、ウルの「アイドルライブに出たい」というのは、事の本質ではないんだろう。 それが叶わないだけのことに対して、「生きるのに疲れた」なんて言葉は、おそらくは出てこない。 だがそこに希望を見出している以上、それはウルの根っこにある絶望と希望を象徴している何かなんだろう。 だからどうにかしてやりたいとは思う。 この世のすべての不幸を救うことなんて俺にはできないが、目の前に現れた子供の不幸ぐらいは、どうにかしてやりたいと思ってしまう。 自分でも面倒くさい性分だとは思うが、治らんのでしょうがない。 しかもその性分は、どうも伝染性のものらしく── 「全部丸く収まってなんてねぇだろ!」 リオが叫んだ。 リオはつかつかとウルのもとに歩み寄って、 「それが自分の運命だってあきらめるのかよ! オレたちの迷惑なんて気にすんな! アイドルライブ、ウルはやりたいのかやりたくないのか、どっちなんだよ!」 リオがそう問い詰めれば、今度はウルの気持ちが決壊した。 ウルは瞳いっぱいに涙をためて、リオに向かって叫び返す。 「やりたいっすよ! こんなチャンス、二度と来ないっす! でもしょうがないじゃないっすか! 満月の夜に、屋外ステージでやるんすよ!? うちが出たら、うちはバケモノになっちまうっす! あきらめるなったって、どうしたらいいんすか!?」 「そ、それは......! ──ねぇ兄ちゃん、どうにかできないの!?」 困ったリオが俺に振ってくる。 うーん、リオってば猪突猛進な上に、他力本願だなぁ。 そして「どうにか」と言われても、これもそう簡単ではない。 正攻法としては、イベントの主催側に事情を話してなんとかウルが月光を浴びない環境でライブを敢行できないかを検討することだが、これは普通に考えて難しいだろう。 引く手あまたのトップアイドルが言うならまだしも、スカウトを受けただけの一人のキャストのためにそこまでする理由が主催側にあるとは思えない。 に対する人々の偏見も、軽視はできない。 モンスター学の基礎をきちんと修めている勇者なら、 だが一般人にそう説明したところで、たやすく信じてはもらえないだろう。 「このライオンは人を食い殺したことがありますが、本来は温厚なので放し飼いにしても大丈夫ですよ」と言われたって、普通の人は安心して飼うことなんてできないのと同じだ。 そういった意味でも、イベント主催側の協力を得ることは難しいだろうと考えられる。 だからリオの言う「どうにかできないの?」という問いには、「正攻法では難しいだろうな」というのが今のところの答えになる。 「今のところこれといって冴えた手は思いつかないが、なんなら明日にでも、街の図書館に行って調べてみるか?」 俺はリオたちに向かって、そう提案する。 要はウルが宿している そして分からないことを調べようとするなら、人類の叡智の塊である「本」をあたるというのが正攻法だ。 これはリオたちの教育のためにも好ましい。 必要な情報を自分で探す習慣は、身につけさせておくに越したことはない。 「え......と、図書館......?」 リオはそう返されるとは思っていなかったのか、腰が引けたようだった。 に関しては、基礎知識を押さえている程度だからな。俺の知識の範囲内では有効な対策は思い浮かばないが、図書館で調べれば何か俺が知らない情報が手に入るかもしれない」 「そ、そっか......。でもオレ、本とかあんまり得意じゃないんだよな......」 さっきまで猪突猛進で暴走していたリオが、一気に尻込みする。 「ウルはどうだ? 図書館で自分のこと── 俺がそう聞くと、ウルは首をぶんぶんと横に振った。 「図書館って、頭のいい人が行くところだと思ってたんすけど......違うんすか?」 おずおずとそう返してくる。 あー、うん、ありがちなやつがきたな。 俺は一つため息をついてから、四人の少女たちに向かって言った。 「よし分かった。じゃあ明日はウルも一緒に、全員で図書館に行くぞ。いいな?」 「「「「はーい」」」」 というわけで、いつの間にかウルも、俺の教え子っぽい感じになっていた。 まあいいか。 せっかくだから、この街にいる間は一緒に面倒を見てやることにしよう。

98 Lesson 98 Ur responded to my query, talking about himself in a pompous manner. That when you get moonlight on a full moonlight night, you lose reason and are driven by violent and murderous impulses. That when I was young because of it, I let a child who was my friend get a half-dead eye. Being treated like a bucket by the villagers and thrown stones, and fleeing the village where they lived. It seems Ur now lives outside this city in a lonely mountain hut at the foot of a mountain near the city. His mother, who lived with him, also died of illness, and now Ur says he lives alone. And that the monster noise earlier was caused by Ur's beastification to help a child who was about to be hit by a carriage. This is the first time Ur has been a beast in this city. And as Ur had spoken so far, Rio snapped his mouth. "But, Ur. If that was the case, wouldn't you have run away and explained it properly to the city folks? I didn't do anything wrong. I think if I told you what was going on, you'd know the people in the city." "Oh, that's..." Ur, having heard Rio's words, gets stuck in a reply and gets annoyed. What Rio says isn't necessarily a mistake, but I don't know in this case. If the words speak properly to each other, you will understand... I don't hate Rio's values for believing that, either, but I find it hard to believe too unconditionally in something called human beings. In reality, things won't be that easy. If suddenly a creature appears in front of ordinary people with no fighting power at all, with a gazing physique and a beastly figure with sharp fangs and nails, ordinary humans are frightened first. If you imagine the possibility of a serious danger coming down on you, people lose the ability to judge things calmly and tend to fall into short-circuit thinking. The people who did so listened to Ur without prejudice are even more obnoxious. I thought I'd point out something to Rio. Before that, Mayfa said this. "... Rio.... we should know very well that the world isn't that easy.... Even we were cursed children before your brother saved us." In Mayfa's words, he became the face that Rio remembered something else. Right... did these guys have that experience? If they were involved with these kids, they might lose their lives, too - at times they were exposed to persecution rooted in feelings of fear like that. Whether it is an unfounded superstitious matter or misinformation, anxiety and fear are easily believed if they are catalyzed. It seemed quick to empathize with Ur because Rio and the others knew the habits of such people with themselves. "Oh well... right. - - Ur, Wa no. Don't even think about how Ur feels, I might have said something a little insensitive." "Oh, no... so, it's okay. You don't give a shit." Hahaha laughing ul. The story seemed to fit where it should fit in. There I am, clapping my mouth. "Well, Ur, I gave up my participation knowing that Idol Live dates were on a full moon night, because there's a curse for beastification (Lycanslopi), too? When I heard that, Ur nodded at Kokon. Then in self-derision, I've said this. "... this is what we always do with our lives. Something's not working. I don't care if you think you got a chance, but I'm glad you did. You didn't have to bother Rio for us. It'll all fit in a circle." That's what I'm saying, and I'm still gonna give you a crying smile, Ur. I don't care if they show me this face and tell me it all fits round...... Maybe, but Ur's "I want to be at Idol Live" is not the essence of the matter. The word "tired of living" probably doesn't come out for something that just doesn't come true. But beyond finding hope there, it must be something that symbolizes the despair and hope that underlies Ur. So I think I want to do something about it. I can't save all the misfortunes in the world, but about the misfortunes of the children who show up in front of me, I want to do something about it. I know it's a pain in the ass myself, but I can't help it because it won't heal. Besides, it seems to be very contagious. "You can't fit it all in circles! Rio screamed. Rio walks over to Ur and grabs both shoulders of a werewolf girl. "You give up that's your destiny! Don't worry about our annoyance! Idol Live, Ur wants to do it or not, which is it! If Rio asks that, now Ur's feelings have been decimated. Ur cries back to Rio with tears all over his eyes. "I want to! Such a chance, you'll never come again! But you can't help it! Do it outdoors on a full moon night!? When we get out, we're gonna be a bucket! What should I do if I don't give up!? "Oh, that's...! - - Hey brother, can't you do something about it!? The troubled Rio swings at me. Um, on top of Rio being a pig rush, it's an application for other powers. And even if they say "somehow," this isn't that easy either. A positive offense would be to tell the organizers of the event what's going on and consider if Ur can't manage to dare live in an environment that doesn't get moonlight, but this would be difficult to think about normally. If the top idol of the draw says so yet, I still don't think the organizers have a reason to go that far for one cast who just got scouted. Besides, people's prejudices against werewolves cannot be underestimated. If you are a brave man who is properly shaping the foundations of monsterology, you know that a species called werewolf only becomes impulsively ferocious on a full moon night, and most of the good are otherwise. But that's what I explained to the average person, and they won't believe me easily. "This lion has eaten and killed people before, but it's usually warm, so it's okay to leave them alone," he said, just like normal people can't keep them in peace. Even in this sense, it would be difficult to obtain the cooperation of the event organisers. That's why Rio says, "Can't you do something? To the question," It would be difficult with a positive attack method "is the answer so far. "So far, I can't think of a hand in this, but anything tomorrow, why don't you go to the city library and find out? I propose to Rio and the others. The point is that the curse of the beastification (Lycanslopi) in which Ur resides is necked, so if you can find a way to deal with it, you might see a live path. And if you're trying to find out something you don't understand, it's a positive offense to hit a "book" that's a chunk of humanity's wisdom. This is also preferable for the education of Rio's people. The habit of finding the information you need for yourself has never gone beyond making you wear it. "Uh... and the library...? Rio didn't think he was going to be returned that way, or he seemed to have pulled his back. "Oh, I'm holding back the basics about werewolves, too. I can't think of any effective measures within my knowledge, but if you look them up in the library, you might get something I don't know." "Oh well...... But I'm not very good at books..." Rio, who was running wild with a swine rush until just now, butts in all at once. "How's Ur? Have you ever looked into yourself in the library about werewolves? When I heard that, Ur shook his head to the side. "I thought libraries were where smart people go... aren't they? I will return it to you as a snack. Uh, yeah, you've got the common one. I sighed one and then said to the four girls. "All right, all right. Then Ur will be with us tomorrow, and we'll all go to the library. All right?" "" "" Yes "" " So at some point, Ur, too, felt like my goddaughter. Well, okay. Because of this, we'll take care of him together while we're in this city.

第30話 俺がアルマから頼んでいた魔道具を受け取っていると、こちらを睨みつけていたサイラスが嫌味たらしくこんなことを言ってきた。 「......ブレット先生、アルマ先生、社会科見学といっても授業中ですよ。私事は別の機会にしてもらえませんかな?」 一応の正論。 が、そのサイラスの顔には憎しみの表情が浮かんでいるので、授業中だからやめろというのは方便で、何か別の目的があるはずだ。 俺はアルマに耳打ちをする。 「なあアルマ先生、サイラスのやつ、何をあんなに腹立ててんだ?」 するとアルマもまた、俺に耳打ちを返してくる。 「あたしが自分の思い通りにならないから、ムカついてんじゃない? ブレット先生のみすぼらしいところを見せたのに、それでもあたしがブレット先生と仲良くしてるのが気に入らないんじゃないかと」 おい、さらっとみすぼらしいとか言うな。 人間の価値はそんなところで決まらんわ。 などと思ったが、それでだいたい分かった気がした。 サイラスの予定では、人間の価値はそんなところで決まるはずだったんだろうな、と。 王都勇者学院のエリート教師コースから追い出された俺が、この僻地の村で慎ましく教師をしている姿をアルマに見せたら、アルマが俺のことを価値のない人間と思って見限るとでも考えていたんだろう。 だが残念ながら、アルマがそんなタイプのキャラなら、最初から俺と気が合ったりなんてしていない。 アルマはしたたかなところはあるが、根は結構純粋なやつなのだ──というのはまあ、俺の中でのアルマ像だが。 そしてアルマはさらにもう一つ、俺に耳打ちしてくる。 「なんなら恋人っぽく腕でも組んで、もっと嫌がらせしてやるっていうのは......どう?」 「あのなぁ......。それこそ生徒たちの前だろうが」 「へへっ、冗談だよ、冗談」 アルマはぺろっと舌を出して、てってってと元いた位置──すなわち王都の生徒たちの後ろに戻っていった。 その姿を見て、俺はひとつため息をつく。 あいつにファンクラブができるのも分かるよなぁ......。 アルマみたいな美人にあんな態度取られたら、そりゃあ男子はイチコロだろうよ。 ま、それはさておき、本題だ。 俺とアルマ、サイラスという教師陣がバチバチやり合った横では、リオ、イリス、メイファの三人と、王都の生徒たち十五人ほどとが互いに睨み合いを続けていた。 一触即発、両者今にも飛び掛からんという様子で、クールダウンさせるのは大変そうだ。 ただ王都陣営、例の実力トップスリーの三人だけは、我関せずといった様子で静観していたのだが。 俺はサイラスに向かって言う。 「ねぇサイラスさん。サイラスさんたちがうちの勇者学院をバカにしたせいで、うちの子らがいきり立っちまいました。ここはひとつ、サイラスさんがうちの子らに謝罪して、場を収めてもらえませんかね? そうじゃないとこいつら、殴り合ってどっちが上かケリを付けないと収まりませんよ」 と、一応切り出してみる。 しかしサイラスは「謝罪する」という行為を蛇蝎のごとく嫌う男だ。 こんな要求に従うとは到底思えないので、本当に言ってみただけレベルだった。 そして一方のサイラスはというと、ニヤリと笑ってこう切り返してきた。 「いやいや、それでしたらブレット先生、生徒たちの気が済むようにしてあげたらよろしいのではありませんかな? 競争心、大いに結構ではありませんか。そういった生徒たちの気持ちこそが、強い勇者へと育つ力になるのです。生徒たち同士、互いに力の限りぶつかり合う──そういったことも勇者教育には必要でしょう」 いけしゃあしゃあと、そんなことを言ってきた。 ......いやいやいやいや。 お前、俺を王都から追い出した理由は何だったよ? 「えっと......それはサイラスさんの言う『暴力授業』と、どう違うんです? 生徒たちが大怪我をする原因になると思うんですが」 「ブレット先生、そういう教育者同士の授業観に関する議論は、またの機会、生徒たちがいない場で行うことにしましょうよ。今は生徒たちの成長を一番に考えるべきときでしょう」 「はあ......」 いや、すげぇなサイラス......。 ああ言えばこう言う、屁理屈と議論すり替えの引き出しの数が半端じゃない。 そして王都の生徒たちも「さすがサイラスさんだ。正論すぎる。勉強になるな」「それに引き換えブレット先生は......」などと言って、サイラスの意見に賛意を示していた。 いや、まあいいけどな。 こっちもこうなった以上、生徒同士でぶつかり合わせることに異論はないし。 「分かりました。じゃあマッチメイクはどうします? こっちの生徒は三人しかいないんで、そっちも三人ってことになると思いますが」 俺はそう聞いておきながら、サイラスの返事は間違いなくこれだろうなというのは分かっていた。 敗北の汚辱を嫌うサイラスのことだ。 当然、実力トップスリーのあいつらを使うに決まっている。 と、思っていたのだが── サイラスの返事は、俺の予想の斜め上から攻めてきた。 「いやいやブレット先生、そういう固定観念はよくありませんな。そちらが三人だからこちらも三人。そういうお決まりのルールに縛られないことも、ときには必要でしょう」 「は......?」 え、こいつ何を言いだそうとしてんの......? 俺が呆気に取られている中、サイラスは揚々と続ける。 「ブレット先生の教え子たちは、こちらの生徒たちを『雑魚』だの『能無し』だのと罵ったのですよ? それは本来許されないことです。その言葉で、うちの生徒たちはとても傷つきました。──ならば彼女たちに、その責任を取ってもらいましょう。彼女たちの言うところの『雑魚』で『能無し』の十五人全員と戦ってもらおうじゃありませんか」 そんなことをさらりと言ってきた。 よくもまあ臆面もなくそんなことを言えるな。 ちなみに王都の生徒たちは全部で十八人いるので、十五人というのは、例の三人を除いてということになるわけだが。 まああの三人は、俺も王都で教えていたから知っているが、そんな集団リンチには加担しないだろう。 サイラスもその辺りのことは分かっているってことか。 一方そのサイラスの言葉を聞いて、ほかの王都の生徒たちは「おお、サイラスさんの言うとおりだ!」「私たちはすごく傷ついたのよ!」「責任を取って十五人対三人だ!」「これは俺たちの当然の権利だ!」などと言い始めた。 す、すげぇな......。 プライドの無さもここまでくると、もはや感動すら覚える。 ていうか、こっちも散々傷つけられるようなこと言われた気がするんだが、そこはノーカウントなのな......。 ちなみにアルマのほうを見ると、やれやれといった様子で肩をすくめていた。 だよなー。 ──さて。 普通に考えれば、そんな集団リンチみたいな条件を受けられるわけがないのだが── 「──ということなんだが、お前ら、どうする?」 俺はリオたち三人に、そう問いかけていた。 それは俺の中で、ある目算が立っていたからだ。 勇者は強敵との激闘を経験することによって、劇的な成長を遂げるものだ。 リオたちはすでに一度、それを経験している。 あのオークロードとの戦いを経て、リオ、イリス、メイファとも、その能力を飛躍的に向上させていた。 先天的な才能だけじゃない。 王都の勇者学院でぬるま湯に浸かり続けている連中とは、経験の密度も段違いなのだ。 一方ではリオが、俺に向かって聞き返してくる。 「えっと......兄ちゃん、それって......」 「ああ」 「ふぅん、そっか。要するに──」 リオが手招きをするので、俺は少し屈んで、教え子の言葉に耳をそばだてる。 リオは俺の耳元で、小声でささやきかけてきた。 「......あいつら、十五人いればオレたちに勝てるつもりってこと?」 リオのその言葉に、俺はにこっと笑って、その少女の頭をなでてやる。 するとリオもにひっと嬉しそうに笑って、イリスとメイファにも耳打ちしにいった。 そして次には三人とも、俺に向かってぐっと親指を立ててきた。 俺は立ち上がって、サイラスに向かう。 「分かった、サイラスさん、それでいきましょう。うちの教え子たちも『雑魚』とか『能無し』とか言った責任は取りたいと、そう言っています」 俺はそう言って、口元をつりあげてみせた。 サイラスは怪訝そうな顔をしたが、さすがに自分で提案した条件をひっくり返そうとはせず、そこが合意点となった。 そうして、三人対十五人という一見めちゃくちゃな条件の勇者対決が実現したのだった。

30 Episode 30 When I was receiving the demonic props I was asking for from Alma, Cyrus, who was staring at this one, said this to me in disgust. "... Dr. Brett, Dr. Alma, even if it's a social studies tour, I'm in class. Can't you do your personal business another time? A one-size-fits-all truth. but that cyrus face has a hate look on it, so it's convenient to tell him not to because he's in class, and he's got to have some other purpose. I slap Alma in the face. "Hey, Dr. Alma, Cyrus, what are you so angry about? Then Alma will give me ear punches again. "Aren't you annoyed because I'm not what I think I am? I showed Dr. Brett the blues, and you still don't like how I get along with Dr. Brett." Hey, don't tell me you're rusty or something. That's not how human value is determined. I thought so, but I think I figured it out more or less. On Cyrus' plans, I guess human value was supposed to be determined in that place, I guess. If Alma had shown me that I was a careful teacher in this secluded village after being kicked out of the elite teacher course at Wangdu College of Brave Men, she would have thought Alma would consider me worthless. But unfortunately, if Alma is that type of character, she hasn't felt comfortable with me since the beginning. Alma is somewhere tough, but the roots are pretty pure - well, the Alma statue in me. And Alma's got yet another, ear to ear at me. "What do you mean, I'm going to arm you like a lover and harass you more... how about that? "I don't know... That must be before the students." "Hehe, it's a joke, a joke" Alma poured out her tongue and returned to her former position, which was behind the students of the king's capital. Look at that, I sigh one thing. I also know he can have a fan club...... If a beauty like Alma took such an attitude, then a boy would be a dick. Besides, that's the point. Next to me and a bunch of teachers named Alma and Cyrus beeping each other, the three of them, Rio, Ilis and Mayfa, and about fifteen students from the Wang capital, kept hanging out with each other. It seems like it would be hard to cool them down because of the instant impact and the fact that they both don't fly anymore. Only the Wang Du faction and the three top three examples of strength were static in a way that did not involve me. I say to Cyrus. "Hey, Mr. Cyrus. My kids suddenly stood up because Mr. Cyrus and his boys made a fool out of our College of the Brave. There's one thing here, Mr. Cyrus apologizes to our kids, will you please put the place away? Otherwise, they can't fit in without hitting each other and putting a keri on it." And I'll cut it out for once. But Cyrus is a man who hates the act of "apologizing" as much as a snake scorpion. I really didn't think I would comply with this request, so I was just trying to say it on a level. And Cyrus on the other hand, he grinned and cut back like this. "No, no, if that's the case, Dr. Brett, why don't you finally give it to the students? Competitiveness, isn't that a lot? It is the feelings of those students that help them grow up to be strong brave. Students bump into each other as much as they can, and that's what we need to do to educate the brave." Shh, shh, I've said that. ... No, no, no. You, why did you kick me out of the king's capital? "Uh... how is that different from what Mr. Cyrus calls a 'violence class'? I think it could cause some serious injuries to the students." "Dr. Brett, let's have another opportunity to discuss classroom views between educators like that in a place where the students aren't there. Now would be the best time to think about the growth of our students." "Ha..." No, that's awesome, Cyrus... Yeah, to put it this way, not half the number of reasoning and argument switching drawers. And the students of Wang Capital also said, "That's Mr. Cyrus. Too righteous. Don't study." "In exchange for that, Dr. Brett..." and so on, he said in favor of Cyrus' opinion. No, that's okay. I have no objection to students bumping into each other more than this happened. "Okay. So what do you do with matchmaking? There are only three students here, and I think there will be three of them." That's what I heard, and I knew Cyrus' reply would definitely be this. It's about Cyrus, who hates the insults of defeat. Naturally, I'm determined to use those guys from Top Three of Strength. And I thought... Cyrus' reply came from the diagonal side of my prediction. "No, no, Dr. Brett, that's not a good stereotype. There are three of you, so there are three of you. Sometimes it's necessary not to be tied to such rules." "Is...? What is this guy trying to say...? Cyrus keeps frying while I'm distracted. "Dr. Brett's godchildren scolded these students for being 'clutterfish' or 'incompetent', didn't they? That is inherently unacceptable. In those words, our students were very hurt. - - Then let them take responsibility for it. Why don't you fight all fifteen of the" incompetents "in" Miscellaneous Fish "as they say?" I've been sayin 'that. How dare you say that without even a coward? By the way, there are eighteen students in the Wang capital, so fifteen means, with the exception of the three examples. Well, I know those three because I taught in Wang capital too, but I wouldn't be part of such a group lynching. You mean Cyrus knows about the area, too? Hearing that Cyrus, on the other hand, the students of the other king's capital said, "Oh, Mr. Cyrus is right!" "We were so hurt!" "Take responsibility. Fifteen against three!" "This is our natural right!," he began to say. Shh, that's amazing... When the lack of pride gets this far, I can no longer even remember being moved. I mean, I think they said something that could hurt me scattered over here, but that's a no-count... By the way, when I looked at Alma, he shrugged his shoulders like, oh man. That's right. - - Well. Normally, there's no way you're gonna get that kind of mass lynching. "- I mean, what do you guys do? That's what I was asking the three of Rio. That's because in me, there was a certain amount of money. Brave men grow dramatically by experiencing a fierce struggle with powerful enemies. Rio and the others have already gone through that once. After that battle with Oak Road, both Rio, Iris and Mayfa had dramatically improved their abilities. It's not just innate talent. The density of experience is also out of step with the people who continue to soak up warm water at Wangdu's College of the Brave. Rio, on the other hand, asks me back. "Uh... brother, that's..." "Oh." "Huh, well. In short..." Rio calls, so I give in a little, and I squirm my ears at the word of my goddaughter. Rio was in my ear, whispering in a whisper. "... those guys, you mean if there were fifteen of us, they'd beat us? I will laugh at Rio's words and give the girl her head. Then Rio laughed with joy, and went to ear to ear to Iris and Mayfa as well. And the next thing I know, all three of them, they've been thumbing up at me a lot. I'll get up and head to Cyrus. "Okay, Mr. Cyrus, let's go with that. My godchildren also say that they want to take responsibility for saying 'miscellaneous fish' and 'incompetence'." That's what I said, and I let him keep his mouth shut. Cyrus looked surprised, but just didn't try to flip the terms he proposed himself, and that's where the agreement came in. That's how the seemingly messed-up brave confrontation between the three and the fifteen came about.

第94話 「どう、どう、落ち着け。俺たちは犯罪者じゃない。どちらかというと勇者だ」 「ゆ、勇者......?」 リオに肩車をされた少女は、ごくりと唾を飲む。 「な、なんでっすか......? なんで勇者がうちのところに......うちを退治しにきたっすか......?」 怯えた様子でそう返してくる少女。 待て待て、なぜそうなる。 俺は苦笑しながら、少女に返事をする。 「だから落ち着けって。なんで勇者が一般市民を退治するんだ。勇者が退治するのは魔王とか、人々を苦しめるモンスターとかだよ。俺たちはただの通りすがりの勇者。キミがアイドルのライブを見たそうにしていたから、こいつらがおせっかいを焼いたんだよ」 俺のその言葉に、少女は「そ、そうっすか......」と言って胸をなでおろし、それからこう返してきた。 「アイドル、大好きっす。すごく憧れるっす。うちもあんな風になれたらなって、叶わない願いを持ってしまうぐらいに......」 と、憧憬の火が灯った目で言ってから、少女ははたと気付いた様子でぶんぶんと首を横に振る。 「って、な、なんでもないっす! 今のは聞かなかったことにしてほしいっす! あははっ、初めて会ったイケメンのお兄さんに、何言ってるんすかねうち。バカだなー」 そう言って、笑ってごまかそうとする少女。 アイドルが大好きで、アイドルになりたい、か......。 はぐらかしはしたが、それがこの子の本心ではあるんだろうな。 だが叶わない願いと本人は言うが、彼女の容姿や愛らしさを見れば、見込みはありそうにも思える。 ショートカットで外跳ね気味の栗色の髪と、ぱっちりとした同色の瞳。 年齢はおそらくリオたちと同じぐらい──十四歳か十五歳か、そのあたりだろう。 顔立ちは整っていて、美少女と評価していい部類に入ると思う。 背丈は低いが、メイファと違って出るところはしっかり出ている。 一言で言って、リスみたいなちまっこい可愛らしさだ。 喋り方が三下っぽいのは少し気になるが、いまどきのアイドルは個性が必要だとも聞くし、ありの範囲内ではないだろうか。 あまり無責任なことも言えないが── 「いや、俺はキミのこと、可愛いと思うぞ。最初からあきらめないで、挑戦してみるのも悪くないと思うけどな」 俺がそう伝えると、少女はボッと顔を赤くした。 「な、な、なに言ってるっすか......! ......あんまり、からかわないでほしいっす」 少女は照れた仕草を見せ、自分の髪を指先でくるくると弄る。 うむ、うちの子たちほどではないにせよ、やはりなかなかに可愛いな。 しかし一方では、うちの三人娘が一斉に、俺にジト目を向けてきた。 「出た、兄ちゃんの天然女たらし」 「先生のこういうところだよね......」 「......でも、お兄さんがお兄さんである以上は防げない、災害のようなもの。......はぁ。......ボクたちは、あきらめるしかないんだよ」 メイファに至っては、やれやれと肩をすくめてみせてきた。 くっ、こいつら......。 「あのなぁ......。女たらしって、そういう話じゃないだろ。今の話の文脈で分かるだろ」 「「「そーですね」」」 聞いちゃくれねぇし......。 そろそろ反抗期ですかねこいつら。 一方、それを見ていた少女は俺たちの様子にクスッと笑いつつ、次にははにかみながら言う。 「可愛いって言ってくれたのは嬉しいっす。ありがとうっす。......でも、うちはダメなんすよ。うちは、あんなキラキラしたところには、立っちゃいけないんす。──あの、リオちゃん、下ろしてもらってもいいっすか?」 「あ、ああ」 リオが腰を下ろすと、少女はぴょこんと飛び降りた。 そしてまた、淡い笑顔で言ってくる。 「うちはウルっていうっす。今日はいい夢を見れたっす。ありがとうっす。もう会うこともないと思うけど、みんなのくれた温かさは、うちの胸にしっかりと刻まれたっす。それじゃ──」 そう言って、少女は立ち去っていこうとした。 だが、そのときだ。 「──フォオオオオオオオッ!」 近くから、妙に甲高い男の声が聞こえてきた。 なんだなんだ。 周囲を見回してみると、声の主を見つけた。 白髪で赤いサングラスをした謎の男が、白鳥のポーズを取ってこちらを見ていた。 ......なんだ、ただの変人か。 だがその変人は、つかつかと俺たちのほうへ歩み寄ってくる。 「フォオオオーッ! ユーたち四人は、ミーのメガネに適った! エ~クセレントッ! 実に可憐だ! ユーたちこそ、まさにミーが求める次世代のアイドルグループにベストマッチッ!」 変人はいちいち謎のポーズを取りながら、リオたち四人を褒めちぎった。 ......ていうか、待って、何なのこの人。 唐突過ぎてテンションについていけないんだけど。 リオたち四人もあまりの事態に怯えている、というかドン引きしているようだった。 ちなみに「リオたち四人」というのには、俺は含まれていない。 リオ、イリス、メイファ──そして、くだんの三下っぽい喋り方の少女ウルの四人だ。 つまりこの変人の人は、ウルを含めた四人を指して、アイドルグループにベストマッチだとか何とか言ったわけである。 さらに変人さんは、荷物から薄い冊子を取り出して、それを俺に渡してきた。 「ユーはこちらのお嬢様がたの兄上かな? まあそこはどうでもいい。ユーはこれを、この子たちの保護者に渡してほしい。ライブは今度の満月の夜だ。この子たちの未来がかかっているんだ、しっかり頼むよ」 そう言って変人さんは、俺の肩をポンポンと叩くと、そのままどこかへ行ってしまった。 嵐が去った。 ぽかーんとするのは、俺とウルを含めた五人だ。 「えっと......兄ちゃん、今の人、何......?」 「いや、俺も分からん......」 「先生、受け取ったその冊子は──」 「......アイドルライブへの、参加要項って書いてある」 「ちょっ、マジっすか!?」 一度は立ち去ろうとしていたウルが再び寄ってきて、俺が受け取った小冊子を食い入るように見てくる。 「えっと......見るか?」 俺がそう聞くと、ウルはこくこくとうなずく。 そして俺が冊子を渡すと、猛烈な勢いでそれをめくり、中を見ていった。 そんなウルはやがて、冊子の裏表紙を見つめて動きを止める。 少女の手が、わなわなと震えた。 「このパンフレット、フォールマン・エンターテイメントのものっす......! じゃ、じゃあ、今の人──あれが伝説のアイドルスカウトマン、フォード・フォールマンっすか!?」 ウルは周囲を慌て見回すが、変人さんはどこかに消え去ってしまっていた。 「えっと......フォード・フォールマン? あの人って、有名なの?」 俺がウルにそう聞くと、少女は血相を変え、信じらないという顔をした。 「はぁっ、知らないんすか!? かーっ、ありえないっす! これだからパンピーは! 伝説のアイドルスカウトマン、フォード・フォールマンを知らないなんて、さすがにちょっとどうかと思うっすよ! 数々のトップアイドルを見出したと言われている知る人ぞ知るアイドル業界の第一人者っすよ!? あー、でも、パンピーだとそういうこと知らなくても、暮らしていけちゃうのかなぁ。情報格差を感じるっすねぇ」 「............」 いや、知らんがな。 ていうかこの子、自分の得意分野の話になったら突然上から目線で語りだしたぞ。 ──が、まあ、ウルの反応はいいとして。 あの変人さんがアイドルスカウトの人だとすると、リオ、イリス、メイファ、それにウルの四人をアイドルグループとしてスカウトしていったことになる。 連絡先は──冊子に書いてあるか。 俺はウルから冊子を返してもらい、ペラペラとめくっていく。 「でも、どうしよう......うちの人生で、こんなチャンスは二度と来ないっす......。でも、でも......」 一方でウルはそんなことをつぶやきながら、葛藤をしているようだった。 まあ憧れていた夢へと繋がる切符が突然目の前に現れたというのがウルの状況なのだろうから、喉から手が出るほどほしいというのも無理もない。 ただ問題は、リオ、イリス、メイファの三人も含めたユニットで勧誘していったということなんだよな。 手元の冊子を読んでいくと、どうやら次の満月の夜にこの中央広場で素人アイドルグループを集めた公開ライブイベントを行う予定らしい。 その参加者たちの中から次代のプロアイドルを発掘しようという企画のようだ。 ていうかこれ、完全な素人も混じるイベントだよな......。 その素人たちに、大勢の観衆の前で歌って踊らせる? めちゃくちゃアグレッシブな企画だな。 それに参加する度胸や、人前でつたない演技を披露する胆力も見ようって腹だろうか。 さて、どうしたものか。 少なくともリオたちには、本格的にアイドル活動をやるような暇はないと思うが── 「リオ、イリス、メイファ......どうする? イベントに出てみるだけなら、お前たちにとっても良い経験にはなると思うし、審査の成績優秀者には賞金も出るみたいだが」 一応、本人たちの希望を聞いてみる。 ちなみに賞金はまあまあ結構な金額で、好成績を取れば三人の武具購入予算にも貢献するだろう。 リオ、イリス、メイファの三人は、顔を見合わせる。 次いでウルのほうを見てから、互いにうなずいた。 「兄ちゃん、オレ、やってみたい。それにオレたちがやらないと、ウルのチャンスもなくなっちまうんだろ? なんかそれ......オレたちにとっても、心残りになりそうだし」 「私もです、先生。......大勢の人にじろじろ見られるのは、ちょっと恥ずかしいけど......でも私、勇者としての心の修行になると思って、頑張ります!」 「......賞金が出るなら、ボクもやぶさかではない。......見事優勝した暁には、豪華スイーツを堪能したい」 一方でそれを聞いていたウルは、手をぶんぶんと振って大慌てだ。 「そ、そんな......! 悪いっすよ! さっき会ったばっかりのうちのために、そこまでしてくれるなんて......!」 だがリオを筆頭として、そんなウルに絡んでいく。 「いいっていいって。こういう人助けもまた、 「ねー。私たち、人助けが趣味みたいなものだから、気にしないでよ。メイファもそうだよね?」 「......別にボクは、そういうわけじゃ。......ボクは賞金に釣られただけで、二人みたいにお人好しじゃない......って、お兄さん! 何をニヤニヤして、ボクのほうを見て......!」 「いやぁ、別にぃ?」 あー、可愛い。 うちの子たち、マジ天使。 だがウルは、それでもまたうつむいてしまう。 「でも......やっぱりダメっす。満月の夜だけは、うち......ご、ごめんなさいっす!」 そしてウルは、リオたちを振り切って駆けていき、そのまま走り去ってしまった。 その場に取り残されたのは、俺たち四人。 「えーっ、なんだよあいつ。意気地がねぇな」 リオがそう言って口を尖らせる。 ウルがアイドルライブに出るのに、怖気づいたと思ったのだろう。 しかし俺は、ウルが最後に言い放った「満月の夜だけは」という言葉が、妙に頭に引っ掛かっていた。 怖気づいたというだけではなく、何かほかに事情がありそうだ。 だがいずれにせよ、一番の希望者本人が逃げてしまうのであれば、俺たちがそれ以上踏み込むべきでもないだろう。 本人の意志がないものを無理にやらせるのは、善意の押し売りでしかない。 「ま、それならそれでいいさ。じゃ、あらためて宿でも探すか」 「「「はぁーい」」」 そうして俺たちは、中央広場をあとにする。 また夜のラヴィルトンの街のメインストリートを歩きはじめたのだが── 「──キャアアアアアアッ!」 そんなときどこかから、絹を裂くような女性の声が聞こえてきたのである。

94 Lesson 94 "How, how, calm down. We're not criminals. One way or another, he's a brave man." "Yu, brave......? The girl, who was shouldered by Rio, drinks a saliva. "Hey, why...? Why did the brave man come to us... to exorcise us...? Girl returning so in a frightened manner. Wait, wait, why does that happen? I smile bitterly and reply to the girl. "So calm down. Why would a brave man exorcise the public? It's demon kings and monsters that make people suffer. We're just passing braves. You saw Idol live, so they burned the crap out of you." To my words, the girl said, "Oh, well..." and grated her chest, and then returned it like this. "Idol, I love it. I really admire it. So much so that if we could be like that, we'd have a wish that wouldn't come true..." And, after saying it with her eyes lit by the fire of her vision, the girl shook her head beside her with a glimpse of it. "Oh, hey, it's nothing! I want you to decide what you didn't hear! Haha, I don't know what you're talking about to your handsome brother I first met. We. Stupid." That's what I said, a girl who tries to laugh and deceive. I love idols, I want to be idols, or... I teased him, but I guess that's not what this kid meant. But she says it's a wish that won't come true, but if you look at her appearance and adorability, it seems promising. Shortcut, outside bouncing chestnut hair and neat tonal eyes. The age is probably about the same as the Rio's -- fourteen or fifteen, or so. I think he looks neat and falls into a category that can be rated as a beautiful girl. My back length is low, but unlike Mayfa, it's well out. In a nutshell, he's a little cute like a squirrel. I'm a little concerned about the way it sounds, but I also hear that idols need individuality, and I wonder if it's within a certain range. I can't even tell you how irresponsible it is. "No, I think you're cute. Don't give up from the start, but I don't think it's a bad idea to try." When I told her that, the girl blushed. "Hey, what are you talking about...!... I don't really want you to make fun of me" The girl shows her illuminated tricks and twirls her own hair with her fingertips. Um, even if it's not as cute as my kids, it's still pretty cute. But on the other hand, my three daughters have turned to me all at once. "Out, my brother's natural girlfriend" "This is what the teacher is..." "... but you can't prevent more than your brother being your brother, something like a disaster....... ha.... we just have to give up." To Mayfa, I've made him shrug his shoulder, for Christ's sake. Damn, these guys...... "I don't know... That's not what you're talking about, woman. You know, in the context of what we're talking about." "" "That's right" " You don't listen to me... Is it time for rebellion, these guys? Meanwhile, the girl who was watching it laughs softly at how we are, next thing I know, she says softly. "I'm glad you said you were cute. Thanks.... but we can't. We shouldn't stand in such a glittering place. - Um, Rio, can I have it down? "Oh, oh." As Rio lowered her hips, the girl jumped a little. And he also says with a pale smile. "We're called Uru. I had a good dream today. Thank you. I don't think I'll ever see you again, but the warmth everyone gave me was firmly engraved on our chest. So..." That's what I said, the girl tried to walk away. But that's when. "- Pho-o-o-o-o-o-o-o-o-o-o-o! From nearby, I heard a strangely tall man. What? What? Looking around, I found the Lord of Voices. A mysterious man with white hair and red sunglasses was looking at this one posing as a swan. ... What, are you just a freak? But the freak comes to us once and for all. "Phoo-ooh! The four of you were right for my glasses! E ~ Xerento! Poor thing! You guys are the best match for the next generation of idol groups exactly what Me wants! The freak praised the four Rio's, whichever one poses as a mystery. ... I mean, wait, what is this guy? I'm too abrupt to keep up with the tension. Rio and the four of them were too frightened, or seemed to be donning. By the way, "The Rio Four" doesn't include me. Rio, Ilis, Mayfa... and Uluru, the three most talkative girls. In other words, this freak pointed to four people, including Ur, and said something about being the best match for the idol group. Plus the freak took a thin booklet out of his luggage and gave it to me. "Is Yu this lady's older brother? Well, I don't care there. Yu wants you to give this to the guardians of these children. Live is the next full moon night. The future of these children is at stake, I beg of you." That said, the freak slapped me on the shoulder with a pomp and went straight away somewhere. The storm left. Pocahontas are five people, including me and Ur. "Uh... brother, who are you now, what...? "No, I don't know either..." "Doctor, the booklet I received..." "... to Idol Live, it says participation requirements" "Hey, are you serious!? Once I was about to walk away, Ur comes by again and sees me eat in the booklet I received. "Uh... you see that? When I heard that, Ur nodded. And when I gave him the booklet, he turned it around with fierce momentum and looked inside. Such Ur eventually stares at the back cover of the booklet and stops moving. The girl's hand trembled as a mess. "This brochure belongs to Fallman Entertainment......! So, who are you now-- that's the legendary Idol Scoutman, Ford Fallman!? Ur looks around in panic, but the freak had vanished somewhere. "Uh... Ford Fallman? Is that guy famous? When I asked Ur that, the girl changed her blood phase and looked at her as if she didn't believe me. "Huh, you don't know!? Oh, that's impossible! This is why Pumpy! Just wondering if you don't know the legendary Idol Scoutman, Ford Fallman! They say they've found a number of top idols. You're the leader in the idol industry!? Uh, but even if you don't know that when you're a pamper, I don't know if you're going to live. Feel the information disparity." ............ No, I don't. When I talked about my specialty, Kako suddenly told me from above. - But, well, Ur's reaction is good. Assuming that freak is an idle scout, he would have scouted Rio, Illis, Mayfa, and Ur's four as idle groups. Do you have any contact information in the booklet? I get the booklet back from Ur, and it turns perky. "But what am I going to do... in my life, I'm never going to get another chance like this... But, but..." Ur, on the other hand, seemed to be grinding, crushing at that. Well, I guess it's Ur's situation that a ticket that leads to the dream I admired suddenly appeared in front of me, so I can't help but want my hand out of my throat. The only problem is that I solicited him in a unit that included three people: Rio, Illis and Mayfa. As I read the booklet at hand, apparently I plan to have a public live event gathering amateur idol groups in this central square the next full moon night. Seems like a plan to unearth the next generation of professional idols from among its participants. I mean, this is an event that mixes complete amateurs too... Let those amateurs sing and dance in front of a large audience? That's a damn aggressive plan. Would you also like to see the courage to participate in it and the courage to perform a tedious act in public? Well, what's the matter? At least I don't think Rio and the others have time to really idle. "Rio, Illis, Mayfa...... what do we do? I think it would be a good experience for both of you if you just went to the event, and it looks like there would be a prize money for the top judges." For once, I'll ask them what they want. By the way, the prize money is reasonably good, and a good grade would also contribute to the budget for the purchase of three arms. The three of them, Rio, Ilis and Mayfa, face to face. Then we looked at Ur, and then we nodded at each other. "Brother, I want to try. Plus, if we don't do it, we're gonna lose Ur's chances, right? It's... it's going to be a heartbreak for us." "Me too, Doctor.... It's a little embarrassing to see a lot of people hanging around... but I, I think it's going to be my heart's training as a brave man, and I'll do my best! "... If there's going to be a prize, I'm not a jerk either. ... I want to indulge in the sumptuous sweets at the dawn of the brilliant victory" Ur, on the other hand, listening to it, shook his hand and panicked. "Oh, no...! I'm sorry! I can't believe you got that far for what we just met...! But with Rio at the head, he gets tangled up in such a woul. "You can say it. This kind of help is also called bravery. Hey, Iris? "Hey. We, people help is like a hobby, don't worry about it. So is Mayfa, right? "... that's not what I am.... I was just caught by the prize money, and I'm not your favorite like the two of you... That's my brother! What are you nibbling at, look at me...! "Hey, nothing. No? Uh, cute. My kids, seriously angels. But Ur still gets upset again. "But... I knew it wouldn't work. Only on a full moon night, of which... Oh, I'm sorry! And Ur, he shook off the Rio's and ran away, as he did. The four of us were left on the spot. "Eh, what the hell is that guy? I don't feel like it." That's what Rio says and makes his mouth pointy. I guess you thought Ur noticed you were scared, even though he was going on Idol Live. But the last word Ur said, "Only on a full moon night," was strangely hooked to my head. I'm not just saying I realized I was scared, but something else seems to be going on. But in any case, if the most desirable person runs away, we shouldn't have stepped in any further. The only thing that forces you to do something that you don't have the will of the person is a bona fide push. "Well, that's fine. Let's look for the inn again." "" "Huh" " That's how we leave Central Square behind. I started walking down the main streets of the city of Lavilton again at night. "- Caaaaaaaaaaaa! That was when I heard a woman tearing silk from somewhere.

第76話 ──チュンチュン、チュンチュン。 宿の部屋の外から小鳥の鳴き声が聞こえてきて、俺はベッドの上でぼんやりと目を覚ます。 「あー、朝か......。おいお前ら、起きろー」 そう言って俺は、俺にへばりついて寝ている教え子たちに声をかける。 昨日も一昨日も、夜更かしをさせてしまったからな。 朝に多少弱くなるのは仕方ないが。 「まったく、かわいい寝顔しやがって」 俺はベッドの上、自分の目の前ですぅすぅと寝息を立てているイリスの髪を優しくなでる。 それは本当に、天使のような寝顔で── ──と。 そこで俺は、ぴたりと動きを止めた。 待て。 何かがおかしい。 どうしてイリスが、俺の目の前──俺と同じベッドで眠っているんだ? いや、イリスだけじゃない。 リオとメイファも、俺と同じベッドで、俺に抱きつきながら眠っている。 さーっと血の気が引いてくる。 ......まずい。 何がまずいのか分からないが、とにかくまずい。 これはいったいどういう状況だ。 昨日の夜、俺とこいつらの身に何があった......? 焦って頭が回らない。 そんな......そんなはずはないんだ。 俺に限って、そんなことは── 「んぅ......」 俺が混乱していると、目の前の天使──イリスが目を覚ました。 そして俺の顔が目の前にあるのを見つけるなり、にっこりと微笑んでのほほんと口を開く。 「あ、先生だぁ......。おはようございます、先生」 「お、おう。おはよう、イリス」 「先生もよく眠れましたか? 私は先生のおかげで、安心して眠れました」 「そ、そうか。それはよかった」 イリスの態度は自然だ。 何一つ、おかしなことはないという様子。 挙動不審なのはただ一人、俺だ。 そしてそうこうしているうちに、俺にへばりついていた残りの二人──リオとメイファも目を覚ます。 「んぁ......ふぁああああっ。うにゅ~、兄ちゃん、おはよー......」 「......おはよう、お兄さん。......朝から元気そうだね。......ボクはまだ、眠い」 こっちの二人も、特に変わった様子はない。 普通の日常の、朝の景色といった雰囲気だ。 ──よし、落ち着け、俺。 昨日の夜に何があったのかを、しっかりと思い出すんだ。 まず覚えているのは、昨日の夜中、宿の扉越しにヴァンパイアたちと遭遇したことだ。 セシリア、それにヴァンパイアロードと言葉を交わした後、彼らが去っていったのを覚えている。 そしてそのあと、どうしたんだったか── そうだ。 明日に備えて眠ろうとしたら、俺が宿泊している部屋の扉がノックされたんだ。 俺の部屋を訪問してきたのはイリスだった。 教え子たちには俺の部屋とは別に三人部屋を借りていたから、このタイミングでイリスが俺の部屋に来るのはおかしい。 俺が「どうした」と聞くと、イリスはこう答えた。 「先生......昼間の約束、これから叶えてもらってもいいですか......?」 部屋の扉を開けた俺の前で、パジャマ姿のイリスは恥ずかしそうにもじもじしながらそう言った。 昼間の約束というのは、【 たしか、夜に一緒に寝たいとか何とかだったはずだ。 そしてイリスはさらに、こう続けた。 「ヴァンパイアロードは帰ったのに、どうしても不安で眠れないんです。──だから先生、お願いします。先生と一緒のベッドに、添い寝させてもらえませんか......?」 俺は当然困ったわけだが、教え子と約束したものを反故にするわけにもいかない。 いずれは成就してやらなければならない頼みである。 それに不安で眠れないというなら、その点はサポートしてやりたいところだ。 それならば、ということで俺はイリスの申し出を受け入れた。 だがイリスは教え子とはいえ、その体つきはもはや立派な女性だ。 というかむしろ、健全な欲望を持った男性にとっては、理性破壊兵器と言って差し支えないほどの恐ろしい魅力を宿している。 俺もご多分に漏れず健全な男性ではあるので、今のイリスと一緒に寝る、というのは非常にまずい感じはある。 しかしイリスが要求してきたのが子供心に添い寝してほしいということなのは分かったから、ならば俺が邪念を捨てて、頑張って「立派な大人」を演じればいい話だ。 俺は頑張った。 イリスと一緒にベッドに入ると、自分の内側から襲い掛かってくる邪念と必死に戦った。 俺は教師だ。 教え子に手を出すなんてことは、決してあってはならない。 絶望的な戦いだった。 そっと寄り添ってくるイリスは柔らかくて温かくていい匂いがして、俺は自分との戦いに何度も敗北しそうになった。 そしてそんな折、さらなる刺客が俺の部屋を訪れたのである。 「兄ちゃん、イリスだけズルい! オレも兄ちゃんと一緒に寝たい!」 「......お兄さん、ボクも不安。......なんなら今日だけでなく、明日も明後日もずっと不安」 俺の部屋を訪問した新たな刺客たちを見てイリスがむーっと頬を膨らませていたような気もしたが、それはさておき。 そこまで来たら俺はもう、毒を食らわば皿までよ、という気分になっていた。 というわけで、三人の教え子たちが俺と一緒のベッドで寝ることになったのだ。 その後はもう、何が何やらよく覚えていない。 とにかく柔らかくて気持ちのいい感触をたくさん味わったことだけは覚えている。 そして今朝──今に至る。 相変わらずよく覚えていない部分があるが、教え子たちにいかがわしいことをした記憶は浮かんでこないので、きっとセーフだ。 セーフだ、セーフなのだ。 俺はそう、自分に言い聞かせた。 「よ、よし。じゃあ起きて顔洗って、朝飯にするか」 俺はそうして、何事もなかったかのようにベッドから出ようとした。 試練のときは去ったのだ。 あとは何食わぬ顔で、今までどおりに教え子たちと接すればそれで問題ない。 万事問題ない。オールグリーン。 そう思っていたのだ。 だが──そのとき。 「お、なんじゃ、部屋の鍵が開いておるのか。入るぞ、小童」 ──ガチャリ。 部屋の扉が開く、絶望的な音がした。 勇者にありがちな常識知らずっぷりを、このときほど呪ったことはない。 俺はおそるおそる、部屋の入り口のほうへと視線を向ける。 開かれた扉の向こうには二人の人物がいた。 一人は老人。 一人は筋骨隆々とした、上半身裸で入れ墨をした巨躯の男。 応援の到着はたしか、昼前頃という話だったと思うのだが......。 しかしその二人から感じる気配は、間違いなくただ者ではない。 この二人こそが、セドリックが送ってくれた応援の魔王ハンターに違いないだろう。 が、それはそれとして。 「......なんじゃ、取り込み中じゃったか、いやすまんすまん。しかしヴァンパイアロードのいる界隈で、またずいぶんと剛毅じゃのぅ。これはアホか大物のどっちかじゃな」 ──バタン。 俺が何かを言う前に、部屋の扉が閉じられた。 それが俺には、まっとうな社会人としての扉が閉じた音のように聞こえて── 「あちゃー。こりゃまずいところ見られちったかな」 「あはは、まさかだったね。──って、あれ、先生? ねぇ先生、大丈夫ですか......?」 「......大丈夫じゃなさそう。......口から魂が抜け出てる」 真っ白になった俺は、教え子たちの声をどこか遠くに聞きながら、お空の彼方へと旅立ったのであった。

76 Lesson 76 - - Chung-chung, chung-chun. I wake up blurry on my bed when I hear a little bird squeaking from outside the inn room. "Uh, in the morning... Hey, you guys, get up -" That's what I say, I speak to the godchildren who are sleeping on me. Yesterday and all yesterday, I kept you up late. I can't help but get a little weaker in the morning. "Damn, you pretty sleeping face." I'm on the bed, right in front of me - so gentle with Ilis' hair resting in her sleep. It's really an angelic sleeping face. - and. So I stopped moving perfectly. Wait. Something's wrong. Why is Iris sleeping in the same bed as me right in front of me? No, it's not just Illis. Rio and Mayfa are sleeping in the same bed as me, hugging me. The blood draws my attention. ... Not good. I don't know what's wrong, but not anyway. What the hell is going on here? What happened to me and these guys last night...? I can't turn my head in a hurry. Oh no... that can't be right. Only I don't... "Hmmm......" When I was confused, the angel in front of me, Iris, woke up. And when you find my face in front of you, smile and just open your mouth. "Ah, I'm a teacher...... Good morning, Doctor." "Ooh. Morning, Illis." "Did the teacher sleep well, too? Thanks to my teacher, I slept in peace." "Oh well. That's good." Iris' attitude is natural. One thing, there's nothing strange about it. I'm the only one suspicious of behavior. And while I'm at it, the other two people who were snagging at me - Rio and Mayfa - wake up, too. "Huh... Huh. Ugh, brother, ooh..." "... Good morning, brother.... You look fine in the morning.... I'm still sleepy" Neither do the two of us look particularly unusual. Ordinary, everyday, morning scenery. - Okay, calm down, me. Remember exactly what happened last night. The first thing I remember is that I ran into a bunch of vampires over the inn door last night. Cecilia, and I remember them leaving after exchanging words with Vampire Road. And then, what happened? That's right. I tried to get some sleep in case of tomorrow, and the door to the room I was staying in was knocked on. It was Iris who visited my room. I rented the godchildren a three-person room apart from mine, so it's odd that Iris should come to my room at this time. When I asked, "What's wrong?", Illis replied: "Doctor... day promises, can I have them fulfilled from now on...? In front of me, who opened the door to the room, Illis in his pajamas said so in embarrassment. The promise of day will mean the "reward" demanded by the Illis when saving the villagers who became vampire spawns by [Ultimate Healing (Ultimate Heel)]. But it must have been something like wanting to sleep with me at night or something. And Iris went on, moreover, like this. "The Vampire Road is home, but I'm really anxious to sleep. - - So, Doctor, please. Can you let me sleep in the bed with the teacher...? I'm naturally in trouble, but I can't rebel what I promised my goddaughter. All is a request that must be accomplished and done. And if you're anxious to sleep, I'd like to support you on that. Then I accepted Ilis' offer. But Iris is no longer a fine woman, even though she is a godchild. Or rather, for a man with a healthy desire, he dwells in such a terrible fascination that it may be said to be a weapon of rational destruction. I'm probably not a healthy man either, so sleeping with Illis now feels very bad. But now that I know what Illis has been asking for is for me to accompany him to his child's heart, then it's a good story for me to abandon my evil thoughts and work hard to play "Fine Adult". I did my best. When I entered bed with Illis, I fought desperately against the evil that struck me from the inside out. I'm a teacher. There must never be a hand on a godchild. It was a desperate battle. Coming softly closer, Illis smelled soft, warm and good, and I almost defeated the battle against myself many times. And then another assassin visited my room. "Brother, only Illis cheats! I want to sleep with my brother too! "... brother, I'm anxious too.... Whatever. Much more anxious tomorrow and the day after, as well as today" Look at the new assassins who visited my room. I also felt like Illis was swelling his cheeks all the time, but aside from that. When I got there, I was already in the mood for poison and dishes. That's why the three godchildren were supposed to sleep in bed with me. After that, I don't remember much anymore. Anyway, I just remember having tasted a lot of soft and pleasant feelings. And this morning... to this day. As always, there are parts of me that I don't remember very well, but I'm sure it's safe because I don't come to mind that I did something pathetic to my godchildren. It's safe, it's safe. I told myself, yes. "Okay. Then wake up, wash your face, and make it breakfast." I did that and tried to get out of bed as if nothing had happened. He left during the trial. And then there's the face you don't eat, and if you deal with your godchildren as you've always done, that's fine. Everything is fine. All green. That's what I thought. But... then. "Oh, what, the room is unlocked? We're coming in, kid." - - Gachari. The door to the room opened, there was a desperate noise. I've never cursed as much common sense as I do in brave men. I roughly turn my gaze towards the entrance to the room. Beyond the open door were two figures. One is an old man. One is a musculoskeletal, giant man with a naked upper body and a tattoo. The arrival of backup was only about noon, I think... But the signs I feel from both of them are definitely not the same. These two must be the demon hunters of support Cedric sent me. but that is. "... I don't know, I'm taking it in, no, I'm sorry. But in the neighborhood with Vampire Road, it's a lot more rigid again. This is either an asshole or a big guy." - - Batan. Before I said anything, the door to the room was closed. That sounds like a closed door to me as a decent socialite. "Ahhh. I don't think they've seen the right place." "Haha, you didn't. - What, is that, Doctor? Hey Doctor, are you okay...? "... it doesn't look okay.... my soul is out of my mouth" When I turned white, I traveled to the other side of the sky, listening somewhere far away to my godchildren's voices.

第132話 夜の帳が下りた海辺を、【 にさらわれた村の娘たちを救い出すため、俺たちは村の勇者アーニャのあとについて、海岸沿いの険しい道を進んでいた。 すぐ左手は見上げるような断崖絶壁、右手は海という道なき道を、岩から岩へと跳んだり、岩壁をクライミングしたりしながらどうにか進んでいく。 勇者の運動神経がないと、とてもではないがついていけない道のりだ。 俺はもちろん、うちの子たちも危なげはないが、足元はごつごつとした岩場なので少しでも足を滑らせたら危険なのも確かだ。 俺は、妙に甘えてくるイリスの手を取って支えたりしながら、慎重に足を進めていく。 ちなみに格好はというと、全員が再びの水着姿だ。 ここから先は、海洋やその付近での冒険が予想される。 着衣状態で海に落ちると危険だし体力も消耗するので、全員が水着に着替えたうえで、ひと通りの荷物は村に置いてきていた。 なおそれぞれが武器は持ってきているし、リオ、イリス、メイファの三人に関しては首飾り式の防具も身につけてはいる。 三人の防具は、職人都市ラヴィルトンに住むエルフの武具職人リゼルから贈られたもので、合言葉を唱えると瞬時に強化繊維製の防具を身に着けられるという優れものだ。 ちなみに今のメンバーはというと、アーニャ、俺、リオ、イリス、メイファの五人へと減っている。 というのも、村の防衛役としてある程度の戦力を残しておく必要があったからだ。 アーニャとともに洞窟を訪れてエドアルトらと合流したあの後、村人たちは普段の生活を取り戻すために村へと戻った。 村の周辺もある程度見て回って、サハギンどもはおそらくすでに立ち去ったのだろうという判断のもとでの帰還だったが、それでも彼らが再び襲われないとも限らない。 いろいろな要素を検討した結果、エドアルトとセシリア、それにアルマが村に残ることになった。 エドアルトは片腕を失っているが、セシリアがいれば村の防衛戦力としては十分だろう。 また重装甲が売りのセシリアは、水着姿では戦力が半減してしまうため、その点でも村の防衛役のほうが適していると判断された。 ちなみにアルマはというと、メガネが海には向かないという理由である。 あいつはメガネがないと視力がいまいちで、勇者としてはあまり戦力にならなくなってしまう。 というわけで、防御に三人を残して、攻めに出るのは俺と子供たちで合計五人ということになった。 子供たちばかりというと頼りないようだが、実質的な総合戦力で言えば、平均的な魔王ハンターの五人パーティよりもはるかに上である。 そんな俺たちが今、この海岸沿いの険しい道を進んでいるのは、とある生き物に会いにいくためだ。 リオが岩から岩へと軽快に跳び移りながら、前を進むアーニャへと声をかける。 「なあアーニャ、その『 するとアーニャは一度、比較的平らな大岩で足を止め、振り返って答える。 「実際に会ってみれば分かるよ、リオ。すごく大きいんだから。でも少し気難しいから、あまり失礼なことは言わないように気をつけて」 「それだけじゃ何だか分かんねぇし。まぁいいけどさ。会えば分かるってのはそうだろうし」 リオはそう言って、再び進み始めたアーニャのあとを追っていく。 俺もまた、イリスやメイファの様子を気にしながら、そのあとをついていった。 さらわれた娘たちを救い出すにしても、サハギンどもの本拠地がどこにあるかが分からないというのがネックになった。 そんなときに出てきたのが、「ひょっとすると『海神様』なら知っているんじゃないか?」という村人の言葉だ。 ならばということで、俺たちはアーニャの案内で、その「海神様」のもとへと向かうことにしたのだ。 そうして険しい道のりを進んでいくと、やがて、海沿いの切り立った岩壁に、巨大な海食洞がぽっかりと穴をあけているところへとたどり着いた。 「この洞窟の奥に、海神様が棲んでいるの。ついてきて」 アーニャはぴょんぴょんと岩を跳び継いで、海水の入り込む洞窟の片端、人がギリギリ歩けるほどの細い岩棚へと跳び移ると、俺たちに目配せをしつつ洞窟の奥へと進んでいく。 俺たちもまた、そのあとをついていった。 俺は洞窟を進んでいくごとに、奥に何か巨大な生き物がいるであろう気配を肌で感じ取っていく。 この感じは、ドラゴンの洞窟に踏み込んだときとよく似ている。 しばらく進んでいくと、海食洞はやがて行き止まりに到着した。 行き止まりといっても、洞窟に流れ込む海水の幅はちょっとした大河ぐらいはあるし、天井までの高さも俺の身長の三倍ほどもあるので、かなりの大空洞なのだが。 それにしても、見たところはただの行き止まりで、「海神様」なるものの姿は見当たらないのだが── 何もいないか、というと、そんなことはないと思う。 どこか近くに、巨大な何かがいるような気配を確かに感じる。 「おーい、海神様ーっ! こんばんはーっ!」 その行き止まりで、アーニャが叫ぶ。 声を向けている先は、だだっ広い海食洞の大部分を占める、真っ暗な海だ。 すると── ──ズモモモモモッ! 俺たちの目の前にあった海の海水が盛り上がり、やがて水しぶきをまき散らしながら、海の中から巨大な生き物が姿を現した。 大きな平屋ほどの図体を持つ生き物は、その大口を開けて、洞窟中に反響する地響きのような声を発してくる。 『おお~、ドゥブナ村の友がひとり、若き人間の勇者アーニャではないか。よく来たな。エドアルトは元気かね?』 「はい、海神様! でもお師匠は今、大怪我を負って......今日は海神様に、教えてほしいことがあって来たんです」 アーニャは巨大な生き物に向かって、元気に返事をする。 一方でその生き物は『そうか~』などと、のんびりとした口調で言葉を返していた。 その巨大な生き物の姿は、一言で言い表すなら「巨大な亀」だ。 岩のように固そうな肌は灰黒色と深海のエメラルド色を混ぜ合わせたような色合いで、それ以上に固そうな甲羅は岩山のようにトゲ張っている。 大口にずらりと並ぶ牙の数々は頑丈そうかつ鋭く尖っており、あれに噛み砕かれれば並みの金属甲冑など鉄クズほどの意味も持たないだろう。 勇者学院のモンスター学の教科書にも、S級の力を持った超強力モンスターとして記載されている、恐るべき生き物だ。 「ドラゴン」いうのは名称だけで、実際は竜族ではないのだが、その巨大さと長寿ぶり、それに戦闘力は本物のドラゴンにも劣らないという怪物である。 「すっげぇ......でけぇ......! ラヴィルトンで会ったドラゴンよりでかいかも......!」 「せ、先生......すごく、大きいです......」 子供たちが率直な感想を口にする。 ......いや、本当に率直な感想なのかどうか、特にメイファあたりはあやしい気はするが。 ともあれ、アーニャが言っていた「海神様」というのは、このドラゴンタートルのことで間違いなさそうだ。 さほど文明的でない村落では、ある種の荘厳なモンスターを神のように崇める文化は、決して珍しいものではない。 もっともアーニャとのやり取りを見ている感じ、そこまで厳格で堅苦しいものではなさそうだが。 村の者たちとは友好関係にある間柄で、「海神様」というのは愛称程度のものなのかもしれない。 その海神様は、次にはぐぐぐっとその顔を俺と三人の教え子たちのほうへと向けてくると、そのまぶたをすぅと細める。 『お前たちは、我のもとを訪れるのは初めてだな。アーニャの友であるか?』 地の底から響くような声を直接向けられて、びりびりと肌に緊張感が走る。 だがその様子に敵意はないと感じた。 俺はドラゴンタートル──海神様に向かって返事をする。 「ええ。俺たちはアーニャの、そして彼女の村の村人たちの隣人として、彼女らに手を貸す者です。アーニャの村がサハギン──魚人族の群れに襲われ、村の娘たちがさらわれました。海神様ならば魚人族のアジトを知っているのではないかとの話を聞き、あなたのもとを訪れたのです」 『......なるほど。我が友らと、魚人族との間の争い事か。そして確かに、この近くの海で我が知らぬことはあまりない。魚人どもをよく見かける海域にも、心当たりはある。......魚人どもは我に歯向かうことは滅多にないが、我らが海の秩序をいたずらに乱す、好ましからぬ連中でもあるな』 そう言って海神様は、一度口を閉じる。 表情からは分からないが、何かを考えているのかもしれない。 リオとイリスが緊張して、ごくりと唾をのむ。 一方でメイファは、俺の海水パンツの裾をくいくいと引っ張って、海神様を指さしてこんなことを言ってきた。 「......お兄さん、ボクはあの背中に乗ってみたい。......海神様、なかなか格好いい」 さすがメイファである。 怖いもの知らずとはこのことだ。 それが聞こえたのか、海神様がぴくりと反応する。 アーニャによると、海神様は気難しいから言葉には気を付けろとのことだった。 これはひょっとしてまずいか、などと思っていると── 『ワハハハハッ! 娘、我の背中に乗りたいと言うか! 面白いことを言う!』 びりびりと大気を震わせ、洞窟が揺れるような声で笑うドラゴンタートル。 アーニャは手で耳をふさいで膝をつき、リオは圧に耐えるように踏ん張り、イリスは震える手でぎゅっと俺の腕に抱きついてくる。 だがメイファは、最初こそびくりと震えたものの、そのあとにはいつもの泰然自若な様子に戻って、海神様に向かって返事をする。 「......うん。......海神様、格好いい。ボクは乗ってみたい。......ダメ?」 このメイファの言葉に、海神様は再び大声で笑う。 『ワハハハハッ! いいだろう。我もお前たちに、魚人族がたむろしている場所をどう伝えようかと思案していたところだ。この大いなる海のいずこにあるか、言葉で説明するのも面倒だ。お前たちを我が背に乗せて連れていってやろう』 「......おーっ! ......海神様、太っ腹」 『そうだろう、そうだろう。ワハハハハッ!』 なんと、そんな調子で海神様が上機嫌になり、俺たちをサハギンどもの居場所まで連れていってくれることになってしまった。 メイファの交渉術、おそるべしである。 いや、ただの天然だとは思うが。 「......海神様、しゅっぱーつ」 『ワハハハハッ! 出発である!』 そんなわけで俺たちは、メイファを先頭に海神様の背に乗り、海食洞から夜の海へと出立したのであった。

132 Lesson 132 The magical lights of [light (light)] illuminate the seaside where the night book descends. In order to rescue the daughters of the village exposed to the Fish Nation (Sahagin), we were on a steep coastal road after the village brave Anya. Immediately on the left hand is a cliff that looks up, and on the right hand is a roadless road called the ocean, jumping from rock to rock or climbing through rock walls. Without the brave athletic nerves, it's a very, but difficult journey to follow. I, of course, don't have any dangers for my kids, but I'm pretty sure it would be dangerous if I slipped my legs a little bit because my feet are on a rocky ground. I proceed carefully with my feet as I take and support the strangely sweetening Iris hand. By the way, the outfit is all in swimsuit again. From here on forward, adventures in and around the ocean are expected. Falling into the sea in a dressed state was dangerous and drained of strength, so after everyone changed into swimsuits, one street of luggage was left in the village. It should be noted that each of them brings a weapon, and wears decorative protective gear when it comes to the three Rio, Illis, and Mayfa. The three men's protective gear was given to them by the elf martial artisan Liselle, who lives in the artisan city of Lavilton, an excellent way to instantly wear reinforced fiber protective gear when uttered in euphemism. By the way, the current membership is down to five: Anya, me, Rio, Illis and Mayfa. Because we needed to leave some force behind as the village's defenseman. After visiting the cave with Anya and rendezvous with Ed Alto and others, the villagers returned to the village to reclaim their normal lives. He also looked around the village to some extent, and the Sahagins were returning under the decision that they had probably already left, but still not necessarily that they would not be attacked again. After considering various elements, Ed Alto and Cecilia, plus Alma, were to remain in the village. Ed Alto has lost one arm, but with Cecilia, it would be enough as a village defensive force. Cecilia, whose heavy armor was sold, was also judged to be more suitable as a village defenseman in that regard, as her battle power would be halved in her swimsuit. By the way, Alma is the reason that glasses are not suitable for the sea. He doesn't have good eyesight without glasses, and as a brave man, he's not much of a fighter. So I left three on the defense, and it was me and the kids and a total of five to go on the offense. It seems unreliable when it comes to just the kids, but in terms of substantial overall combat power, it is far above the five-man party of the average Demon King Hunter. That's what we're going down this harsh road along the coast right now, to see some creature. Speak to Anya moving forward as Rio gently jumps from rock to rock. "Hey Anya, who's that" Dear God of the Sea "? You're going to see him now, aren't you? Then, once, Anya stops on her feet with a relatively flat large rock, looking back and answering. "You can actually see him, Rio. It's so big. But it's a little hard, so be careful not to be too rude." "I don't know what that is. Well, fine. I'm sure you'll know when you see him." That's what Rio says and goes after Anya, who starts moving on again. I also followed Iris and Mayfa, wondering how they were doing. It became a necklace that even if we were to rescue our daughters, we would not know where the home of the Sahaggins was. That's when it came out, "If you're a little bit like, 'Sea God,' you know what I mean? It's a villager's word." In other words, we decided to go to the Sea God with the guidance of Anya. As he did so, on a steep journey, he eventually reached a point where a giant sea food sinus was poking holes in the chopped rock walls along the sea. "Behind this cave lies the sea god. Follow me." Anya jumps on the rocks, jumping to one end of the cave where the sea water enters, the narrow enough rock shelf for a person to walk on, and continues to the back of the cave with a gaze at us. We followed him again. As I go through the cave, I feel signs on my skin that there will be some giant creature in the back. This feeling is very similar to when you step into a dragon cave. Moving on for a while, the sea food sinus eventually arrived at the end of the line. Even at the end of the day, the sea water that flows into the cave is a little big river, and it's about three times taller to the ceiling, so it's pretty big hollow. Still, what I've seen is just a dead end, and I don't see what's going to be a god of the sea. Nothing, I don't think so. Somewhere nearby, I do feel signs of something huge. "Hey, Sea God! Evening! At that end, Anya screams. Ahead of the voices is the dark sea, which accounts for the vast majority of the nautical sinuses. And then... - - Zumomomomomomomomomomomo! A giant creature emerged from the sea as the sea water that was in front of us flourished and eventually scattered blisters. The creature, with about the size of a large bungalow, opens its big mouth and emits a sounding earthquake echoing throughout the cave. "Oh, there is one friend in the village of Dubna, isn't it Anja, a young human brave man? Nice to meet you. How's Ed Alto? "Yes, God of the Sea! But your master is now seriously injured... and today I have something for you to tell me." Anya turns to a giant creature and responds well. The creature, on the other hand, was returning words in a relaxed tone, such as' well ~ '. The figure of that giant creature, in a nutshell, is a "giant turtle". The skin, which seems solid as a rock, is shaded like a mixture of grey black and deep sea emerald colors, and the methyl, which seems more solid than that, is tossed like a rocky mountain. Many of the fangs that line up at large mouths look sturdy and sharp and pointed, and if they bite off that one, they won't mean as much as iron scum, such as a row of metal armor. A terrible creature, also described in the College of Brave Men's textbook of monster science as a super powerful monster with S-class power. "Dragon" is only a name, not actually a dragon tribe, but a monster whose immensity and longevity, and whose combat power is no less than that of a real dragon. "Wow... Yikes...! Maybe bigger than the dragon we met in Ravilton......! "Shh, Doctor... it's amazing, it's huge..." The children speak frankly. ... No, I don't know if it's really a candid feeling, especially around Mayfa. Anyway, what Anya said about "Sea God" doesn't seem to go wrong with this dragon turtle. In less civilized villages, a culture that worships certain majestic monsters like God is by no means uncommon. I feel like I'm watching the most interactions with Anya, and it doesn't seem that strict and tough. While in friendship with the villagers, "Sea God" may be of the degree of nickname. The sea god narrows his eyelids softly as he next turns his face toward me and the three godchildren. You've never visited me before. Are you a friend of Anya? Tired and nervous running on my skin, directed directly at the sounding voice from the bottom of the ground. But I felt no hostility to the way it was. I will respond to the Dragon Turtle - God of the Sea. "Yeah. We're neighbors to Anya's, and to the villagers in her village, who give them a hand. The village of Anya was attacked by a flock of Sahagins and the daughters of the village were taken. I heard that God of the Sea would know the Ajit of the Fishmen, and I came to you." '... I see. A dispute between our friends and the fishermen? And sure, there's not much I don't know in the ocean near here. Even in the waters where we often see the fishermen, we know it.... The fishermen rarely turn their teeth to me, but they are also the undesirable ones who mischievously disturb our maritime order' With that said, the Sea God shuts his mouth once. I don't know from the look on your face, but maybe you're thinking of something. Rio and Illis get nervous and spit at you. Mayfa, on the other hand, pulled the hem off my seawater pants, pointing to God of the Sea and saying this. "... brother, I want to get on that back.... God of the Sea, it's pretty good" That's Mayfa. I don't know what I'm afraid of. Did you hear that, the Sea God reacts perfectly? According to Anya, God of the Sea told me to be careful with words because they were difficult. I don't know if this is a good idea, but... "Wahahahaha! Daughter, tell me you want to ride on my back! Say something funny! A dragon turtle that trembles through the atmosphere and laughs with a cavern shaking voice. Anya kneels with her hands blocking her ears, Rio stomps to withstand the pressure, and Iris clutches to my arms with her trembling hand. But Mayfa, though trembling at first, returns to her usual tattooed selfishness and responds to the Sea God. "... yeah.... God of the sea, it's good. I want to take a ride.... No? God of the sea laughs out loud again at this Mayfa word. "Wahahahahaha! Fine. I was just trying to figure out how to tell you where the fishermen are. It is also troublesome to explain in words whether it is here without this great sea. I'll take you on my back. ' "... ooh!... God of the Sea, Fat" 'You will, you will. Wahahahahaha!' Oh, my God, the sea god is in such a good mood that he's supposed to take us all the way to where the Sahaggins are. It is Mayfa's art of negotiation. No, I think it's just natural. "... sea god, shuuuuuuuuuutsu" "Wahahahaha! It is a departure! That's why we rode Mayfa on the back of the Sea God and set out from the sea canal to the sea at night.

第65話 教え子たちを連れて村に入ると、俺はまず村長の家を訪ねた。 村長の家の扉をノックして、勇者ギルドから来たことを伝える。 扉を開けて現れた初老の村長は、俺たちの姿を見て「はて」と首を傾げた。 「......失礼ですが、魔王ハンターの方では?」 訝 まあ見た目では幼い美少女三人組を連れた若造なのだから、不思議に思うのも無理はない。 いつものパターンだ。 俺は勇者ギルドからの紹介状や勇者カードなどを見せることで、村長からの信用をどうにか獲得する。 「これは失礼しました。どうぞ中へ」 村長はそう言って、俺たちを家の中へと案内し、応接室で話を聞いてくれた。 俺は村長に向かって、単刀直入に問いかける。 「村長。セシリアという名の勇者がこの村に来たかと思うのですが、今どこにいるかご存じありませんか?」 すると村長は、少し身を乗り出しながら答えてきた。 「おお、やはりその件ですか。確かにセシリアさんなら一週間ほど前に村に来て、村の失踪事件に関して調査をしてくださると。ただ......」 「ただ?」 「はい。セシリアさんが昼過ぎに村を訪ねてきて、その日の夜中のことです。彼女はこの家を訪問してきて、こう言いました。『私はしばらく姿を見せないかもしれないが、事件は必ず解決するから心配しないでほしい。勇者ギルドにも連絡はしないでほしい』と。それ以来、私はセシリアさんの姿を見ていないですし、村の者たちに聞いてみても、あの日より後には彼女を目撃していないとのことでした」 なんだそりゃ。 セシリアが自身の失踪をほのめかした? しかも勇者ギルドにも連絡するな? 「えっと......セシリアさんはそれ以外に何か言っていましたか?」 「いえ......。ですが勇者ギルドからの紹介状にも、特に凄腕の勇者だと記されておりましたし、話した感じもしっかりとしていると感じたので、信頼してお任せをした次第です。ただ、もうあれから一週間にもなるので、そろそろ勇者ギルドに連絡をするべきかどうか迷っていたところに、皆さんが来られたという次第でして」 ちなみに、村長が「話した感じもしっかりとしている」と言ったあたりで、教え子たちから「えっ」という声があがったが、話がややこしくなりそうなので、俺は三人に静かにするよう指示する。 ああ見えてセシリア、少年少女が絡んで暴走しなければ、すごくしっかりとした勇者なんだよな......。 魔王ハンターをやっている勇者の中には、この間の兄貴さんのようなチンピラ崩れみたいなのもまあいるので、普通に当たり前のことができるだけで好印象になるという悲しい現実があるのだ。 まあ、それはさておき。 俺はさっそく困ってしまった。 セシリアが何の意図でそんなことを言ったのかは分からないが、これでセシリアに繋がる手掛かりが潰れてしまった。 となると── 「では村長、そもそもの失踪事件について、詳しく教えてもらえますか」 あとはセシリアがたどったであろう調査経路を、同じように追いかけるしかない。 遠回りになるかもしれないが、急がば回れだ。 村長は「分かりました」と答えると、少し考え込んでから、こう続けた。 「最初に行方不明となったのは、この村に住むとある家の一人娘でした。ある朝に彼女の両親が目覚めてみたら、娘の姿が家からなくなっていたとのことで......。ですがそれだけならばまだ、家出か何かかもしれないと思えたのですが。──それから数日に渡り、村で次々と若い娘や子供の失踪事件が相次いだのです」 「なるほど......。それで勇者ギルドに依頼を。そしてセシリアが派遣されてきたと」 「左様でございます」 確かに最初の一件だけならともかく、同様の失踪が複数件続いたとなると、事件性を疑うのがスジだろう。 それに加えて、調査に来たセシリア自身の失踪。 しかし気になるのは、セシリアが失踪前に村長宅を訪問して残した言葉だ。 「自分が失踪しても心配するな」「勇者ギルドには連絡するな」 なぜセシリアがそんな言葉を残したのか、まったく見当がつかない。 ここまでに得た情報を整理すれば、セシリア自身が事件の隠蔽に手を貸していると考えるのが自然であるように思う。 だがそれは、俺が知るセシリアの人物像と合致しない。 あんなダメ勇者でも、このような犯罪行為に手を染めるような人ではないはずだ。 真犯人とでも言うべき何者かに、何か弱みでも握られたのか。 あるいは── ダメだ。 情報が足りなさすぎて、現段階では真相を絞り込めない。 と、俺がそんな思考をしていると、くいくいと俺の服の裾が引っ張られた。 振り向いてみれば、メイファが揺れる瞳で俺を見つめていた。 「......お兄さん。......セシリアお姉さんは、違う。......お姉さんは変質者だけど、我欲のために子供をさらう悪事に加担するような人じゃない。......お姉さんは、ダメな人だけど根はいい人」 頭の回転が速いメイファは、ここまでの情報を突き合わせればセシリアが怪しい──彼女が事件に何らかの形で加担していると判断せざるを得ないことに気付いたのだろう。 しかしメイファは、セシリアと何度も寝床を一緒にして、彼女の人柄をよく知っているのだ。 そしてメイファと同様にセシリアと寄り添ったリオとイリスもまた、俺のことをじっと見つめてきていた。 「兄ちゃん、オレもセシリア姉ちゃんは、そんなことしないと思う」 「私もです、先生。セシリアさんはダメな人だけど、悪い人じゃありません」 三人の真摯な眼差しを見て、俺はふっと笑う。 セシリア、誰に聞いても「ダメな人だけど」と前置きが付くのは笑ってしまうが、根っこの部分で悪人でないという点でも、全員の見解が一致していた。 俺はメイファ、リオ、イリスの頭を、一人ずつなでていく。 それぞれ「ふにゃっ」「わふっ」「きゃんっ」などと鳴き声をあげつつ、気持ちよさそうにごろにゃんした。 可愛い。 「分かってる。俺もセシリアさんが悪事に加担したとは思っていないよ。あの人はそんな人じゃない」 俺がそう伝えると、三人は嬉しそうにパァッと表情を輝かせた。 とても可愛い。 「......でもお兄さん、そうすると、セシリアお姉さんが村長に言ったことが謎。......それは、何だか分かる?」 メイファが、俺が抱いていたのと同じ疑問を口にする。 そうなんだよな。 結局そこに戻ってしまう。 まだ情報が足りていない。 と言っても、どうやってその情報を得たものか......。 「ちなみに村長、失踪したという村の娘さんや少年というのは、全部で何人になります?」 俺がそう聞くと、村長はうなずいて答える。 「失踪したのはセシリアさんを除いて四人です。四人目の失踪者が出た段階で、村の皆に夜中には絶対に出歩かぬよう厳命をしました。それ以後は、失踪者は出ていないはずです」 俺は村長の言葉の中に、引っかかるものを感じた。 「......えっと、村長。『夜中には』出歩くな、というのは? 朝や昼間、夕方は絶対に大丈夫なんですか?」 「......ああ、はい。絶対にかどうかは分かりませんが、四人とも失踪したのは夜中だったので。そしていずれも、自ら家の外に出ていったケースのようでして」 失踪事件は、すべて夜中に起こっている。 それも夜中に出歩くのを禁止したら、被害はなくなった。 これは事件を追う手掛かりとして、有用な情報であるように思う。 「ちなみにセシリアさんは......?」 「ああ、セシリアさんは、調査のため夜中も出歩いていたようですな。うちを訪問して先のことを言ったのも夜中でした」 ......ふむ。 俺は村長の家の応接室から、開かれた木窓の外を見る。 空はどんよりとした雲に覆われており、わずかに垣間見える夕陽は、今にも西の山間に沈もうとしていた。 「虎穴に入らざれば虎子を得ず、か......試してみるか」 俺はポツリと、そうつぶやいていた。

65 Lesson 65 When I took my godchildren into the village, I first visited the village chief's house. Knock on the door of the village chief's house and tell him you're from the Guild of the Brave. The old village chief, who showed up with the door open, tilted his neck as he saw us. "... Excuse me, but not with the Demon King Hunter? She seemed surprised. Well, by the looks of it, it's a young creation with a trio of beautiful young girls, so there's no reason to wonder. It's the usual pattern. I somehow earn the credit from the village chief by showing references, brave cards, etc. from the Brave Alliance. "I'm sorry about this. Please come inside." That's what the village chief said, led us inside the house and listened to us in the reception room. I turn to the village chief and ask him to go straight in. "Village chief. I wonder if a brave man named Cecilia has come to this village, do you have any idea where he is now? Then the village chief answered as he rode himself out a little. "Oh, is that still the case? Surely Mr. Cecilia would have come to the village about a week ago to investigate the disappearance of the village. Just..." "Just?" "Yes, Mr. Cecilia came to visit the village after noon and it was about midnight that day. She came to visit this house and said: 'I may not show up for a while, but I hope you don't worry, the case will always be solved. I don't want you to contact the Guild of the Brave, either'. I haven't seen Cecilia since, and I asked the villagers, and they haven't seen her since that day." What the hell. Cecilia hinted at her own disappearance? Besides, don't even contact the Guild of the Brave? "Uh... did Mr. Cecilia say anything else? "No...... But the letter of introduction from the Guild of the Brave also stated that he was a particularly brave man, and I felt that I was feeling solid talking to him, so it was up to me to trust him and leave it to him. It's just been a week since then, so I was wondering if it was time to contact the Guild of the Brave, depending on you guys being here." By the way, around the time the village chief said, "It feels good to have spoken," the godchildren raised their voice, "eh," but the conversation is going to be confusing, so I instruct the three of them to be quiet. Yeah, see, Cecilia, if a boy and a girl don't get involved and run wild, you're a very solid brave man... Some of the brave men who do Demon King hunters seem like a chimp collapse like their brothers in the meantime, so there's a sad reality that they're usually just as good an impression as they can take for granted. Well, aside from that. I just got in trouble. I don't know what Cecilia meant by saying that, but this has crushed the clue that leads to Cecilia. And then... "So, village chief, can you tell me more about the disappearance in the first place?" All we have to do is follow the investigative path that Cecilia would have followed, in the same way. It could be a long way around, but hurry up and get around. The village chief replied, "Okay," thinking a little bit, then went on like this. "The first person who went missing was the only daughter of a certain house living in this village. One morning her parents woke up and said her daughter was gone from the house... But if that's all, I still thought it might be a runaway or something. And then over the next few days, there were successive disappearances of young daughters and children in the village." "I see...... So ask the Guild of the Brave. And Cecilia was sent." "Sir Left." Regardless if it is true that only the first case, if there were to have been more than one similar disappearance, it would be susceptible to doubt the casework. In addition to that, Cecilia's own disappearance, who came to investigate. What bothers me, however, are the words Cecilia left over from her visit to the village chief's house before she disappeared. "Don't worry if you disappear." "Don't contact the Brave Alliance." I have no idea why Cecilia left those words behind. If we collate the information we have obtained so far, it seems natural to assume that Cecilia herself is helping to cover up the case. But that doesn't match the statue of Cecilia I know. Even such a bad brave man shouldn't be the kind to dye his hands at such criminal activity. Were you even gripped by something weak to say even the true culprit? Or... No. Too little information to narrow down the truth at this stage. And when I was thinking like that, the hem of my clothes was pulled off when it sucked. I turned around and Mayfa was staring at me with shaky eyes. "... brother.... Cecilia, your sister, no.... Your sister is a pervert, but she's not the kind of person who takes part in the evil of exposing a child for her own sake.... your sister is a bad person but a good one with good roots" Mayfa, whose head spins fast, must have noticed that Cecilia would be suspicious if she poked the information so far - and had to decide that she was in some way involved in the case. But Mayfa has slept with Cecilia many times and knows her personality very well. And just like Mayfa, Rio and Iris, who leaned in with Cecilia, were also staring at me. "Brother, I don't think I would do that, neither would Sister Cecilia" "Me too, Doctor. Mr. Cecilia is a bad person, but he's not a bad person." Look at the sincere eyes of the three of you, I laugh all the time. Cecilia, whoever you ask, "I'm a no good person," it makes me laugh, but everyone's views were in agreement, even in that I'm not a bad guy in the root part. I'll take Mayfa, Rio, and Iris' heads, one at a time. Each sounded "fuzzy," "waffy," "kizzy," etc., while sounding comfortable. Lovely. "I know. I don't think Mr. Cecilia has done anything wrong, either. He's not like that." When I told them that, the three of them glistened with joy. Very cute. "... but brother, when you do, it's a mystery that your sister Cecilia told the village chief.... you know what that is? Mayfa talks about the same questions I had. That's right. I end up back there. I don't have enough information yet. Even so, how did you get that information...... "By the way, village chief, how many daughters and boys in the village will you be that you disappeared? When I hear that, the village chief nods and answers. "There are four people missing, except for Mr. Cecilia. At the stage when the fourth disappeared person came out, I made a stern attempt on everyone in the village to never walk in the middle of the night. After that, there must have been no missing persons." I felt something caught in the words of the village chief. "... uh, village chief. Don't walk in the middle of the night. Are you absolutely fine in the morning, during the day, or in the evening? "... oh, yes. I don't know if it's ever going to happen, because it was midnight when all four disappeared. And it all seemed like a case of walking out of the house." The disappearances are all occurring in the middle of the night. If that also banned me from walking in the middle of the night, the damage was gone. This seems to me to be useful information as a clue to pursuing the case. "By the way, Mr. Cecilia...? "Oh, Mr. Cecilia seems to have been walking out in the middle of the night to investigate. It was also in the middle of the night when he visited us and said something earlier." ... Hmm. I look out the open wooden window from the reception room of the village chief's house. The sky was covered with more and more clouds, and the slightly glimpsing sunset was still about to set in the western mountains. "If you don't get into a tiger hole, you have to get a tiger child, or... give it a try" I was crushing like that.

第130話 アルマは少女を岩場から移動させ、砂浜へと横たわらせていた。 ほとんど裸同然の姿だった褐色肌の少女には、どこから調達したものか毛布のような布が掛けられている。 横になった少女のかたわらでは、セシリアが砂浜に膝をつき、気を失っているらしき少女に治癒魔法をかけていた。 一方でその様子を見守っていたアルマは、歩み寄っていく俺たちに気付いて声をかけてくる。 「ブレット先生──それにリオちゃん、イリスちゃん、メイファちゃんも。モンスターの撃退、お疲れ様。すごい手際の良さだったね。ブレット先生がすごいのはいまさらだけど、ほかのみんなも。見ててびっくりしたよ」 アルマにそう褒められて、子供たちは三者三様の反応をする。 「へへっ、まぁね。いつも兄ちゃんに鍛えられてるからな」 「そんな、私なんて全然まだまだです......。でもよくできているとしたら、先生のご指導の賜物です」 「......このぐらいは、朝飯前。......だけどお兄さん、ボクはそろそろ、三時のおやつが食べたい」 リオは誇らしげに胸を張り、イリスは謙遜しながら、どちらも俺を立ててくる。 こういうの、どこで覚えてくるんだろうなこいつら。 嬉しくないと言ったら嘘になるが、少しむず痒い。 ちなみにメイファは、俺におやつの催促である。 こいつは本当にブレないな。 さておき俺は、赤髪ポニーテールの親友へと言葉を返す。 「そっちはどうだアルマ。さっきはその子、だいぶヤバそうにも見えたが」 砂浜に寝かされている褐色肌の少女を見れば、セシリアの治癒魔法のおかげか今は穏やかな表情だ。 「ん、ひと安心って感じかな。体力と呼吸の限界を超えて運動し続けたみたいな状態だったけど、セシリアさんの治癒魔法でひとまず落ち着いたみたい」 「それは良かった。意識はないのか?」 「うん。あたしが肩を貸したところで、力尽きて寝入ってしまったみたい。【 】は、気絶状態であれ睡眠状態であれ、この魔法をかければ一瞬にして鮮明に意識を取り戻すという光属性の魔法だ。 どんな寝坊助にでも効果はてきめんで、家でもメイファがどうしても目を覚まさないときなどには、最終手段として使う場合がある。 ただ本人の体のリズムや防衛反応などを崩してしまうことにもなりかねないので、濫用はしないように注意が必要な魔法だが、今はそうも言っていられない状況だ。 「んんっ......! ......あ、あれ......ここは......?」 すると少女の体にかかっていた毛布のような布がぺろんとずれ落ち、何もつけていない胸があらわになった。 俺は慌てて目をそらす。 だが、それと同時に視界が真っ暗になった。 誰かの手が、俺の両目を覆ったようだ。 「な、なんだ......!?」 「先生は、見ちゃダメですっ......!」 ふにゅっと、大きくて弾力のある二つの感触が俺の背中に押し付けられる。 どうやら俺の視界をふさいだ犯人は、イリスのようだ。 背後から俺に抱きつくようにして、俺の視界を奪っているらしい。 だが密着するイリスの体温や、柔らかな肌の感触が水着越しにもろに伝わってきて、さらにほのかに甘い汗のにおいまで感じてしまい、これはこれでヤバい。 いや、教師として教え子相手にそこをヤバいなんて思っちゃいけないんだが、俺も健全な若い男なので、そう全部が理性の命じる通りにはいかない。 俺は内心を表に出さないように気を付けながら、イリスに呼びかける。 「イ、イリス......大丈夫だから、俺は後ろを向いてるから、放してくれないか......?」 「でも先生、ウルちゃんのときに前科が何回もありますし......」 「あー」 何も反論できなかった。 俺の前科多すぎ問題。 あとこの目隠しをされるシチュエーションにも、若干の既視感がある。 この前はメイファのお腹だったような。 しかもイリスは、俺の耳元でこんなことまでささやいてくる。 「先生を信用しないわけじゃないんですけど、その......先生ときどき、私たちのことも、エッチな目で見ていますよね......? だから......少し、怖いんです......」 「は......?」 イリスがなにげなく言ったであろうその言葉に、俺は震えあがっていた。 ......イリスは今、なんて言った? 私たちのことも、エッチな目で見ていますよね......? 「お、おい、イリス......それ、いつから......」 だがイリスは、そんな俺の疑問には答えずに、なおも耳元でささやき続けてくる。 「先生......私、やっぱり悪い子でしょうか......? 先生のことが大事なのに、私、先生には私たちだけを見てほしいって思ってます......。私たち以外の女の子を、エッチな目で見ないでほしいって......先生、私ってやっぱり、わがままな悪い子ですか......?」 イリスはいつからか、後ろから俺に体重を預けてきていた。 目隠しよりも、抱きつくことが主目的であるかのように。 視界がふさがれていることもあって、俺とイリスの二人だけの空間にいるのではないかとすら錯覚する。 だがそこにほかの声が聞こえてきて、俺は一気に現実へと引き戻された。 「なあイリス、いつまで兄ちゃんとイチャイチャしてんだよ。もうあの子の胸は隠し終わったから、手ぇ離して大丈夫だぞ」 「はわっ......!? イ、イチャイチャなんてしてないもんっ! 私は、先生の目隠しをしてただけで......!」 「ふーん。ま、そういうことにしとくよ」 「もう、リオっ!」 イリスは慌てて俺から離れると、リオとキャンキャンやり合い始める。 俺が呆然とイリスのほうを見ていると、イリスはちらとだけ俺のほうを見てきて、恥ずかしそうに頬を真っ赤に染めると、照れ隠しをするようにリオと取っ組み合いを始めた。 日常が戻ってきた。 俺は我知らず、ホッと胸をなでおろしていた。 今のをどう解釈したものか、俺は少し困惑していたが──とにかく今は、目の前の事件に集中しよう。 俺はピンク色の妄想を振り払うようにして、現実へと逃避する。 そんなわけで俺は、倒れていた少女に対して、あらためて事情聴取を開始した。 まずは少女に状況説明。 ここが海岸都市シーフィードの海水浴場であること。 追いかけてきていたサハギンたちは、勇者である俺たちが撃退したこと。 すると少女は自らの名を「アーニャ」と名乗り、自分も勇者であることと、助けられたことへのお礼を告げてきた後、俺たちに向かって必死な様子でこう訴えてきた。 「私たちの村に、あの魚人族の軍勢が攻めてきて、お師匠が......! 皆さんも勇者なら、お願いします! どうか私たちを助けてください! 私にできることなら、何でもしますから......!」 アーニャは涙を流し、俺たちに向かって深々と頭を下げて頼み込んでくる。 そうまでされて無碍に断れるほど俺は薄情にできていないし、子供たちやアルマ、セシリアも同じ気持ちのようだった。 俺は周囲の仲間たちが全員うなずいたのを確認すると、褐色肌の少女の黒髪の上に手を置いて、安心させるように優しくなでてやる。 「分かった。俺たちでよければ手伝うよ、アーニャ。村まで案内してくれるか?」 「......っ! はいっ、ありがとうございます!」 涙をいっぱいにためた瞳で、嬉しさが弾けたような笑顔を見せてくるアーニャ。 リオ、イリス、メイファの三人は、そんなアーニャのもとに寄って、励ましたり話を聞いたりしていた。 そんなわけで── 俺たちはその後、水着から普段着へと着替えてから、アーニャの案内で彼女が住む村への移動を開始。 この地域の勇者ギルドとも連絡を取りつつ、問題の現場へと急行したのだった。

130 Lesson 130 Alma was moving the girl off the rocks and lying on the beach. The brown-skinned girl, who looked almost naked, is hung with a blanket-like cloth about where she sourced it from. Instead of the girl lying down, Cecilia was kneeling on the beach, curing magic on the girl who seemed to be losing her mind. Alma, on the other hand, watching how it went, notices us walking over and calls out. "Dr. Brett - and Rio, Illis, and Mayfa. Good luck defeating the monster. That was so handy. Not to mention Dr. Brett is amazing, but so is everyone else. I was surprised to see that." So praised by Alma, the children react to the triplets. "Heh, well. My brother always trains me." "Oh no, I haven't... But if it's well done, it's the gift of your teacher's guidance." "... about this, before breakfast.... but brother, I think it's time for a three-o 'clock snack." Rio proudly puts his chest up, and Ilis humbly, both come up to me. I wonder where you can remember these things, these guys. I would lie if I said I wasn't happy, but it itches a little. By the way, Mayfa reminds me of a snack. This guy really doesn't brace. Besides, I'll return a word to my best friend in the red-haired ponytail. "How about you, Alma? He looked a lot worse earlier." If you look at the brown-skinned girl sleeping on the beach, thanks to Cecilia's healing magic it's a serene look now. "Mm, I guess it feels safe. It was like I kept exercising beyond my physical and breathing limits, but it seemed like Mr. Cecilia's healing magic calmed me down for the first time" "That was good. Are you unconscious? "Yeah. I think I just lent him my shoulder and fell asleep trying my best. Want to try and force me to wake you up with the magic of [Awaken]? [Awaken] is the magic of the light attribute of instantly regaining consciousness in a flash if this magic is applied, whether it is stunning or sleeping. It works great for any sleeper assistant, and may be used as a last resort when Mayfa doesn't wake up at home. It could just break the rhythm of the person's body, defensive reactions, etc., so it's magic that needs to be taken care not to abuse it, but it's a situation I can't even say so right now. "Hmmm......!... Oh, that... this place...? Then the blanket-like cloth that was on the girl's body fell off, revealing her breasts with nothing on. I turn a blind eye in panic. But at the same time, my vision darkened. Looks like someone's hand covered my eyes. "Hey what...!?" "Doctor, don't look...! Two big, elastic sensations push against my back. Apparently, the killer who blocked my sight is, like, Illis. They're trying to hug me from behind and take away my sight. But the intimate Iris body temperature and the soft skin feel came through the swimsuit, and even a slightly sweeter smell of sweat, and this sucks. No, as a teacher, I shouldn't think I suck there against my teachers, but I'm a healthy young man, too, so yes, it doesn't all work out the way reason commands. I call on Ilis, careful not to put my insides on the table. "Yi, Iris... it's okay, I'm turning back, can you let me go...? "But Doctor, I have many priors when I'm Ur..." "Ah." I couldn't argue with anything. I have too many priors. There is also a slight sense of vision in this blindfold situation. It was like Mayfa's stomach before this. Besides, Illis even whispers this in my ear. "It's not like I don't trust my teacher, but the... teacher Sometimes, you look at us, too, with an eclectic eye...? So... a little, I'm scared..." "Is...? I was trembling at those words, which Illis would have said in vain. ... What did Illis just say? You're also looking at us with an eclectic eye...? "Oh, hey, Illis... since when..." But Iris keeps whispering in his ear without answering my question. "Doctor... am I, after all, a bad boy...? Even though it's important about the teacher, I, the teacher, just want us to see... He wants you not to look at a girl other than us with a jerk's eye... Doctor, am I a selfish bad boy after all...? Since when has Illis been keeping his weight from behind me? More than blindfolding, as if hugging is the main purpose. Sometimes my vision is blocked, and I even imagine I'm in a space just for me and Illis. But I heard other voices there, and I was drawn back to reality at once. "Hey Iris, how long have you been flirting with your brother? I've already hidden her breasts. Get your hands off me. It's okay." "Ha...!? (a), I'm not flirting! I was just blindfolded by my teacher...! "Hmm. That's what I'm gonna do." "Already, Rio! When Iris rushes away from me, he starts camping out with Rio. As I glanced at Iris, Iris had only looked at me one way and when I dyed her cheeks bright red in embarrassment, she started working with Rio to do the lighting cover. The routine is back. I didn't know it, and I was grabbing my chest. I was a little confused about how you interpreted that, but... anyway, let's focus on the case in front of us now. I try to shake off my pink delusions and escape into reality. That's why I started questioning the girl who was falling once again. First, explain the situation to the girl. That this is the seawater bath in the coastal city of SeaFeed. The Sahaggins that were chasing me, that we, the brave ones, defeated them. Then the girl named herself "Anya," and after thanking herself for being a brave man and for being helped, she sued us like this in a desperate manner. "In our village, that army of fishermen attacked, and your master...! If you are all brave, please! Please help us! I'll do anything I can......! Anya weeps and begs us to bow her head deeply. I hadn't been so thin that I could say no unhindered, and the kids, Alma and Cecilia seemed to feel the same way. When I make sure all my friends around me nod, I put my hands on the brunette hair of the brown-skinned girl and I'll be gentle enough to reassure her. "Okay. I'll help you if we can, Anya. Can you show us to the village? "... Huh! Yes, thank you! With eyes filled with tears, Anya smiles like joy could have played. The three of them, Rio, Ilis and Mayfa, were stopping by such Anya to encourage and listen. That's why... We then changed from swimsuits to regular clothes and started moving to the village where she lives with guidance from Anya. He also made contact with the brave guilds in the area while rushing to the scene of the problem.

第136話 マリーナたちに協力して、宝の地図が指し示す場所に向かうことにした俺たち。 目的地へは、急げば半日ほどで到着できるらしい。 一方、俺たちのやり取りを見ていた海神様が、声を上げる。 『では、我はねぐらに帰るぞ。あとはその船で送ってもらうがいい』 「はい、ここまでありがとうございました」 「「「ありがとうございました」」」 「......海神様、またね~。......海神様に乗った海の旅、楽しかった」 海神様をいつまでも付き合わせるわけにもいかない。 ここまで運んでくれただけでも感謝だ。 俺たちは、ざあざあと波をかき分けて帰っていく海神様を、手を振って見送った。 そんなわけで、新たにマリーナの海賊船に同乗して、海の旅を再開した俺たち。 しばらく船旅を続けた頃、俺たちに同行していた村の勇者見習いアーニャが、ふとあることに気付いた。 アーニャは海賊船の船長、マリーナのもとへと歩み寄る。 「あの、マリーナさん。その指輪は──」 「あん? 指輪って、あたいのしているこの指輪のこと? これがどうかしたのかい?」 マリーナの右手の薬指にはまっている指輪を見て、アーニャが呆然とした表情になっていた。 それからアーニャは、自らの手をマリーナの前に差し出してみせる。 その手にもまた、指輪がはめられていた。 アーニャの持つ指輪と、マリーナの持つ指輪。 二つの指輪は、よく似ていた。 まるで一対のペアリングのようだ。 「お......? あたいの指輪と似てるねぇ。あんたアーニャっていったっけ。その指輪、どこで手に入れたんだい?」 「これは私たちの村に、代々伝わる指輪です。歴代の勇者が所持することになっていて、私はお師匠からこれを引き継ぎました。返そうと思ったんですけど、お前が持っておけと言われて。村の伝承によると、これは昔、一人の海賊が命を助けられたお礼にと、村に置いていったものだそうです」 「へぇ、海賊がねぇ......。てことは、あたいのこれとも何かの縁があるのかもしれないね」 マリーナはそう言って、自らの右手を頭上に掲げてみせる。 太陽の光が反射し、指輪がきらりと光った。 しかしアーニャは、「いえ」と言って首を横に振る。 「そうなんですけど、そうじゃないんです。──もともと海賊が村に置いていった指輪は、二個で一対だった聞いています。それがある日、片方が失われて、片方だけが村に残ったと」 「......なんだい。あたいが村から奪ったとでも言いたいのかい?」 マリーナが険悪な目つきでアーニャを睨みつける。 だがアーニャは、再び首を横に振る。 「違います──その指輪は、私がまだ幼い頃に海で行方不明になったという、私の姉とともに失われたものなんです。ひょんなことから、姉がその指輪を手にしたまま海で遊んでいたときに、いつの間にか村の大人の目を離れていなくなったと。姉はそのまま見つからず、村ではもう、私の姉は死んだことになっています」 「ん......? そりゃあ一体、どういう......。だってこの指輪は、あたいの親父からもらったもんだよ。親父はもうおっ死んじまって、あたいが代わりにこの船の船長を引き継いだんだけど──」 「分かりません、分かりませんけど......私のお姉ちゃんがもし生きていたら、マリーナさんぐらいの歳だろうなって、そう思うんです......」 「んあ......? それって......」 アーニャはうつむきがちにマリーナを見つめ、マリーナは困ったようにぽりぽりと頭を掻く。 言われてみれば確かに、アーニャとマリーナは、顔立ちなどが少し似ているかもしれない。 だとしたら、なんともまあ、数奇な巡り合わせだ 「なぁ兄ちゃん、何の話してんのあれ?」 リオが寄ってきて聞くので、俺はちょうどなでやすい場所にきたその頭を、なんとなしになでる。 「アーニャとマリーナは、生き別れの姉妹なんじゃないかって話だよ」 「へっ......? ──えぇえええっ!? マ、マジで......!? そう言われてみればあの二人、見た目は結構似てるかも......。でもなんで......」 「ということは、先生、この海賊船の前の船長さん──マリーナさんが『親父』と呼んでいる人が、海で事故に遭ったマリーナさんを拾って、育てたっていうことでしょうか......?」 イリスも俺の前に寄ってきて、上目遣いに俺を見上げて聞いてくるので、俺はイリスの頭もなでる。 「多分そういうことだろうな。本当のところは分からないが、そう考えると符号はする」 それにしても、教え子たちの頭をなでるのが、どうにも癖になってしまっているな。 うちの子たちは嫌がらないというか、むしろなでられるのが好きみたいだからいいが、ほかの相手にもつい同じノリでやってしまいがちなのが怖いところ。 ちなみにメイファは何の脈絡もなく「......ボクも、お兄さん」などと言って俺の海パンの裾をくいくいと引っ張ってきたので、ついでになでてやると、「......ん、これこれ」といって満足げにしていた。 それはさておき。 当のアーニャとマリーナはというと── どうやら、お互いにそれ以上は踏み込まずに、話をうやむやにしたようだった。 マリーナが船員に呼ばれてそっちに向かい、アーニャが俺たちのほうへと戻ってくる。 「アーニャ、いいのか?」 「はい。──ていうか、いまさらお姉ちゃんだ妹だっていっても、向こうも実感が湧きませんよね。本当にそうかどうかも分からないですし。私だって、もしかしてと思ったから言ってみただけで。冷静に考えてみたら、それは普通こうなるよなーって」 どうやらアーニャの中で整理はできているようだ。 ならばどうこうは言うまい。 さて、そんなことがありながらも、航海は続いていく。 すると次には、こんな話があった。 「けど姐御、本当に『魔の海域』を突っ切るつもりですかい?」 甲板上でマリーナ船長に向かってそう言ったのは、例の屈強な男の勇者のうちの一人だった。 それを聞いたマリーナは、少し不機嫌になってそいつを睨みつける。 「なんだい? あたいの決めたことに文句でもあんの? この船の今の船長は誰だい、言ってみな」 「そりゃ姐御ですけど。でも先代からは、『魔の海域』には絶対に踏み込むなって言われてたじゃないっすか。一回はうまくいきやしたけど、そう何度も危険域に突撃していたら──」 それを聞いたマリーナは、チッと舌打ちをして、それから苛立たしげに足踏みをする。 「もう一度だけ聞くよ。この海賊船の、今の船長は誰だい?」 「あ、姐御です......」 「じゃあ今、この船の航路を決めるのは誰だ。親父──先代の船長か?」 「......すんません。姐御です」 「分かりゃいいんだよ。ほら、持ち場に戻りな」 「へい......」 男は肩を落として、とぼとぼと持ち場に戻っていく。 俺は、その勇者のところに行って話を聞いてみた。 「あの、『魔の海域』っていうのは、なんなんです?」 「ああ、お客人。俺たち海賊の間に、昔っから伝わる伝承でしてね。これから向かう『魔の海域』には、絶対に近付いちゃならねぇって言われてんでさぁ。なんでも『海の悪魔』が出て、あっという間に船を沈没させちまうってぇことで」 「『海の悪魔』......? それは確かな話なんですか?」 「いえ、言い伝えっすよ、お客人。ただどの船もそこを避けて通るもんで、真相は分かりやせん。度胸試しに『魔の海域』に行くって言ってた船が、それっきり姿を見なくなったってぇ話は今でも聞くんすけどね。それも酒の席の話なんで、ホラかも分かりやせんけど」 俺はさらに、マリーナにも話を聞きにいく。 するとマリーナは、遠くの海を見るようにして、こう言ってきた。 「あたいだってそのぐらいは分かってるさ。けどその手のは、だいたいが迷信だとあたいは思ってる。あたいらがキャプテンミスリルの宝の地図を手に入れられたのも、似たような言い伝えのせいで誰も近寄れなかった海域を攻めたからさ」 マリーナはそこで一息つき、さらに鋭く船の前方を見据えながら言う。 「それに何より、『魔の海域』を避けて大回りしていったんじゃあ、時間を大幅にロスしてサハギンどもに先を越されちまう。ブレットさんだって、現地についてみたらサハギンどもはすでにお宝を持ち去った後で、もぬけの殻だってんじゃあ困るっしょ?」 「まあ、それはそうだな」 「でしょ? それにあたいはこう思ってるんだ。『魔の海域』だの何だのってのは、かのキャプテンミスリルが、自ら流したデマなんじゃないかってね。迷信を恐れて冒険ができない臆病な海賊にゃあ、宝は手に入らないって寸法さ」 マリーナの言うことにも、一理はあるように思う。 「ちなみにマリーナ船長、その『魔の海域』に現れる『海の悪魔』ってのは、具体的に何だか分かるか?」 「あー、言い伝えだと、めちゃくちゃでっかいタコだかイカだかって話だね。んなもんいやしないと思うけどさ」 ということは、実在したとしてジャイアントオクトパスか、クラーケンってあたりだろうな。 いざとなっても、どうにかはなるか。 俺はちらりと教え子たちのほうを見る。 水着姿のリオ、イリス、メイファ、アーニャの四人は、甲板上で楽しげに話をしていた。 アーニャはともかく、うちの三人娘と、それに加えて俺がいれば、この世界に存在するたいていのモンスターはどうにかなっちまうんだよなぁ......。 それにマリーナ船長の言うことも分かるし。 一刻を争う状況で、遠回りをしていられないのも事実だ。 ならばと考え、俺は航路に口出しはしないことにした。 そして俺たちの乗った海賊船はやがて、『魔の海域』と呼ばれる地帯へと進んでいく──

136 Lesson 136 We decided to work with the marinas and head to the location indicated by the treasure map. To the destination, they can arrive in about half a day. Meanwhile, God of the Sea, who was watching our exchange, raises his voice. 'Well, I'm going home to Negra. And then I want you to take me on that ship. " "Yes, thank you for getting this far" "" "Thank you" " "... sea god, see you later ~.... sea trip on sea god, enjoyed" We can't let the Sea God go out with us forever. I just wanted to thank you for bringing me this far. We waved off the god of the sea, who bruised and drove home the waves. That's why we boarded a new Marina pirate ship and resumed our journey to the sea. When I went on a sailing journey for a while, I realized that Anja, the valiant apprentice from the village who accompanied us, was in full swing. Anya walks over to the Marina, the captain of the pirate ship. "Um, Mr. Marina. The ring..." "Am I talking about this ring you're wearing? What's wrong with this? When I saw the ring that was stuck in Marina's right hand pharmacopoeia, Anya had a stunned look on her face. Then Anya gives her hand in front of the marina. There was also a ring on his hand. The ring held by Anya and the ring held by the marina. The two rings were very similar. It's like a pair of pairings. "Oh...? It's similar to the ring you're wearing. Did you say Anya? Where did you get that ring? "This is a ring that is passed down to our village, from generation to generation. It is to be possessed by the brave men of history, and I have taken this from my master. I tried to give it back, but you told me to keep it. According to the village heritage, this was something that one pirate once left behind in the village in gratitude for saving his life." "Heh, there's no pirate... Maybe it has something to do with this." That's what Marina says, letting her own right hand hang over her head. The sun's light reflected and the ring glowed hard. But Anya says, "No" and shakes her head to the side. "That's right, but it's not. - - The ring that the pirates originally left in the village was a pair of two, I hear. That one day, one was lost, and only one remained in the village." "... something. Are you trying to tell me you took it from the village? Marina stares at Anya with a sinister eye. But Anya shook her head sideways again. "No - that ring was lost with my sister when I was just a little girl, missing in the ocean. From the moment on, when my sister was playing at sea with that ring in her hand, she said that she had at some point left the adult eyes of the village. I can't find my sister as she is, and in the village, my sister is already dead." "Hmm...? Well, what do you mean... 'Cause my dad gave me this ring. My father is already dead, and I took over the captain of this ship instead." "I don't know, I don't know... If my sister were alive, she would be about the age of Mr. Marina, and I think so..." "Huh...? That's..." Anya stares at the marina with a nagging tendency, and the marina scratches her head like she's in trouble. Indeed, if you ask me, Anya and Marina may have a slight resemblance, for example, to their faces. If so, what a strange patrol. "Hey brother, what are you talking about? Rio stops by and asks, so I can do whatever it takes to get that head to the right place. "Anya and Marina are living sisters." "Heh...? - - Yeah eh!? Ma, seriously...!? If you ask me that, those two may look quite alike... But why..." "Does that mean, Doctor, that the captain in front of this pirate ship - someone Marina calls' Father '- picked up and raised Marina who was in an accident at sea...? Illis also stops in front of me and looks up at me to the top and asks me, so I am also the head of Illis. "Maybe that's what I'm talking about. I don't know what's really going on, but when I think about it, it's a code." Nevertheless, it has become a habit to be the head of the godchildren. My kids don't hate it, or they rather seem to like being able to, but I'm afraid they tend to do it with the same nori about other people. By the way, Mayfa pulled me off the hem of my sea bread by saying "... me too, brother" and so on without any context, so when I finally did, I was satisfied with "... um, this is it". Forget that. Anya and Marina at the time... Apparently, we talked about it without stepping any further into each other. Marina's been called by the sailors, heading that way, and Anya's coming back to us. "Anya, okay? "Yes. - I mean, even your sister's sister doesn't really make sense over there, does she? I don't even know if it really is. Even I just said it because I thought it might be possible. If you think about it calmly, it usually happens." Apparently, we can sort things out in Anya. Then I don't know what to say. Now, with that happening, the voyage goes on. Then the next thing I know, there was this story. "But, Sister, are you sure you want to go through the 'Devil's Sea'? Saying that to Captain Marina on deck was one of the brave men of the example bent. Marina gets a little grumpy and stares at him when she hears it. "What? Are you complaining about your decision? Who is the current captain of this ship? Tell me." "That's my sister. But my predecessors told me never to step into the 'Devil's Sea'. I made it work once, but if I had stormed the danger zone again and again..." When she hears that, Marina punches her tongue and then steps into frustration. "I'll just ask you one more time. Who's the current captain of this pirate ship? "Ah, it's my sister..." "So now, who's going to dictate the course of this ship? Father, is this the captain of your predecessor? "... excuse me. I'm your sister." "You just have to understand. Look, go back to your quarters." "Heh..." The man drops his shoulder and goes back to his possession. I went to the brave man and listened to him. "Um, what do you mean," demon waters "? "Oh, customers. Between us pirates, it's an old heirloom. They told me I should never get close to the Devil's Waters on my way. Whatever it is," The Devil of the Sea "comes out and sinks the ship in no time." "'The Devil of the Sea'...? Is that a certain story? "No, I'll tell you what, my guest. It's just that every ship passes by avoiding it, and the truth is hard to tell. I still hear stories about ships that said they were going to" Devil's Sea "to give it a shot, but they stopped seeing each other that way. It's also about booze seats, so it's hard to tell if it's holla." I'm going to go talk to the marina. The marina then tried to see the ocean in the distance and said: "I know about that, too. But I think it's mostly superstitious. Tomara got a map of Captain Mithril's treasure because he attacked a sea where no one could have approached him because of similar rhetoric." Marina takes a breath there and says as she looks even sharply ahead of the ship. "Besides, once you've gone around avoiding the 'Devil's Sea', then you're going to lose a lot of time and the Sahaggins are going to get ahead of you. Mr. Brett, why don't you follow me on the ground, and the Sahaggins will already take the treasure away, and you'll have trouble with the stuffed shell? "Well, that's right" "Right? And here's what I'm thinking. I wonder if Captain Mithrill is the one who flushed it himself. You're a cowardly pirate who can't adventure for fear of superstition. Oh, you can't get treasure." I think there's a point in what Marina says. "By the way, Captain Marina, do you know what exactly 'The Devil of the Sea' appears in that 'Sea of Demons'? "Uh, to tell you the truth, you're talking about whether you're a fucked-up big octopus or a squid. No, I don't think so." That would mean Giant Octopus or Kraken, if it existed. Even if I have to, what can I do? I look up to my godchildren. Four people in swimsuits, Rio, Ilis, Mayfa and Anya, were having fun talking on the deck. Anyway, with our three daughters and me in addition to that, we can figure out how many monsters exist in this world... And I know what Captain Marina is saying. It's also a fact that you can't stay away in a contested situation for a moment. Then I decided not to say anything to the route. And our pirate ship will eventually move on to a zone called The Devil's Sea.

第55話 ある日の真夜中、とある村でのことだ。 村で暮らす一人の娘が、寝静まった両親の目を盗み、家の扉を開いて外へと出ていく。 「まったく、夜中は危ないから出歩くなとか、過保護もほどほどにしてほしいよね」 娘は静かに扉を閉めると、家から離れて村の外の森へと向かっていく。 勝手知ったる村の中とその周辺、月明かりだけでも何ら問題はない。 彼女は今日、街から来た一人の勇者と、逢引きをする予定になっていた。 その勇者とは昼間に知り合って、わずかのうちに恋に落ちた。 娘はこれからその勇者と愛し合い、そして彼に村から連れ出してもらうことになっている。 村での代わり映えのしない生活にも、村の芋くさい男たちにも、彼女は辟易していた。 夢見るのは、都会でのキラキラとした未来だ。 相手の勇者との合流地点は、村の外の森にある一本の大樹の前。 娘はそこまで、胸を躍らせながらも足音を忍ばせ向かっていった。 村を囲う木造の低い柵を、引っ掛かるスカートを気にしつつ乗り越える。 そして森の中へと足を踏み入れ、しばらく進む。 彼女はやがて、目的の場所へとたどり着いた。 しかし── 「えっ......?」 娘がそこで見たのは、予想だにしていなかった光景だった。 夜空を覆い隠す木々のすき間から、木漏れ日のように月明かりが落ちる森の景色の中。 逢引き相手の勇者の男が、別の男に首筋を噛みつかれていた。 勇者の体は力なくぐったりとしながら、たまにびくびくと痙攣していたが、その瞳はもはや光を映していない。 その勇者に噛みついている男は、美しい容姿をしていた。 だが肌は青白く、目は赤く、口からは鋭く尖った二本の牙が伸びている。 その姿を見た娘は、幼い頃に絵本で見た絵を思い出してつぶやく。 おびえて後ずさろうとした娘は、木の根っこに足を引っかけて尻餅をついた。 そんな娘の目と、男──吸血鬼の赤い目とがぴたりと合う。 吸血鬼の赤い目が、妖しく輝いた。 すると、恐怖におびえていた娘の目がとろんと溶けて、陶酔の色を見せた。 吸血鬼は勇者の男を放り出し、おもむろに娘へと歩み寄る。 娘は逃げようとはせず、むしろ自ら身を差し出すように立ち上がって、吸血鬼に向かって両腕を広げた。 吸血鬼は娘を抱きしめると、その白い首筋に牙を突き立てた。 娘は背をのけぞらせ、うっとりとしながら吸血行為に身を任せる。 娘はどくどくと血を吸われながらも、心地よさそうな視線を宙へと投げていたが、やがてその瞳からも光が失われた。 どさりと、娘が地面に投げ出される。 その体はもはや、わずかに痙攣するばかりで、意思の欠片も見当たらない。 ──わずかばかりの月明かりが届く森の中、そこで起こった密かな出来事。 これは教師ブレットと三人の教え子たちが出会う、新たな物語の序章である。 麗らかな朝日が降り注ぐ森の小道。 俺──リット村の勇者学院に勤める教師ブレットは、三人の自慢の教え子たちを連れて、リット村から近隣の街リンドバーグへと向かって歩みを進めていた。 やがて行く手に街の姿が見えてくると、俺は足を止めて、教え子たちのほうへと振り返る。 「ってわけで今日は、勇者ギルドで『ステータス検定』を受ける。年に一度のステータス検定だ。プロの魔王ハンターなんかとも混じっての測定になるが、気後れせずに自信を持って挑むように。分かったか──リオ、イリス、メイファ」 「「「はーい」」」 俺の前に立つ三人の教え子たちから、元気のいい返事が戻ってくる。 教える側としては、実に気分がいい。 しかしこうしてあらためて見ると、三人とも初めて会った一年前より、少し大人びたかなと感じる。 今やリオが十五歳、イリスとメイファは十四歳だ。 背丈も多少伸びたのかなとは思うが、何よりも色香が、一年前と比べて段違いだ。 子供らしさが鳴りを潜め、その代わりにどこか女性らしさがぐんと立ってきている......気がする。 ボーイッシュなリオは、スポーティな女性になろうとしている過渡期のようだ。 少年的と呼ぶには少々セクシーさが際立ってきていて、活動的なタンクトップのシャツやハーフパンツから伸びる手足は瑞々しく健康的。 シャツを押し上げる胸の大きさも一年前よりだいぶ育ち、女性を意識させるに十分なものだ。 ショートカットの黒髪も、濡れたような艶を持って輝いている。 黒の瞳をたたえたまなざしは、ぱっちりとしていながらもどこか自信に満ちた強さを示していた。 それと対照的にお淑やかな印象のイリスもまた、最近ぐっと大人びて、女性的に綺麗になったように思う。 どこか小動物的でおどおどとしていた一年前の気配はほとんどなくなり、最近では母性的な魅力が強くなってきているように感じる。 白を基調としたローブがたおやかな肢体を包み込んでいて、背まで伸びたブロンドの髪、サファイアブルーの瞳とも相まって恐ろしく魅惑的だ。 とはいえ完全に大人の女性というわけでもなく、子供っぽさもどこか残しており、アンバランスな危うい魅力を感じさせるのが今の彼女だ。 そして危うい魅力と言えば、何よりもメイファだろう。 一年前は「子供っぽい可愛らしさ」が八に対して「妖艶さ」が二ぐらいであったメイファだが、今やこれが六対四ぐらいになりほぼ均衡してきている。 ゴシックドレスを模したようなフリルたっぷりデザインの漆黒のローブは、アメジストパープルの瞳やツインテールの銀髪ともマッチして、少女の可憐で幼くも魅惑的な容姿を妖しく引き立てている。 胸の大きさは依然として慎ましやかだし、その他ボディラインも緩やかではあるのだが、そんなものはハンデにもならないとばかりに男を魅了するフェロモンのような何かを強く放つようになってきている。 まあそんなわけで、俺もちょっと気を抜くとドキッとさせられてしまうぐらいに、三人とも綺麗になった。 でもその外見とは裏腹に、中身はそれほど変わっていない......のか? いや変わっているところは変わっているんだろうが、三人とも俺に子供と大人、教え子と教師の関係を期待して無邪気に接してくるせいか、いまだに内面は子供っぽい印象が強い。 そして俺も、教師という立場上、この三人の教え子たちを魅力的な異性と見ることは許されない。 というか、内心ドキドキしていても、それを気取られてはならないわけで。 三人がどれだけ魅惑的に育ったとしても、教師たる俺は男としてではなく、大人として彼女たちに接しなければいけないのだ。 「ところで兄ちゃん、その『ステータス検定』ってのをやるために街に行くのは聞いてたけど、そもそもその『ステータス』って何なの?」 リオが俺に、そう聞いてくる。 あー......そういえばそのあたりのことを、リオたちにはまだ説明していなかったか。 「勇者の『ステータス』っていうのは、その勇者の基礎能力を数値で表したものだな。例えば俺の去年の結果がこれ」 俺はそう言って、懐から一枚のカードを取り出す。 俺の去年の検定結果を記した「勇者カード」だ。 勇者カードには、魔導撮影機で撮影した本人確認写真とともに、測定した各種ステータスや、そこから導き出される認定勇者レベルなどが記されている。 例えば俺の勇者カードに記されている数値は、こんな値だ。 名前:ブレット 認定勇者レベル:21 筋力 :51 敏捷性 :50 打たれ強さ:50 魔力 :36 ちなみにプロの魔王ハンターの平均的な認定勇者レベルは、駆け出しで6レベル程度、熟練者で8レベル程度と言われている。 当然ながらステータスも、それ相応。 だから俺の能力は、自分で言うのもなんだが、相当優秀なほうだ。 とは言え、俺を上回る実力を持った勇者なんて、世界中を探せばいくらでもいるだろう。 俺ぐらいの実力で有頂天になっていたら、本当の強者からは鼻で笑われる。 世界は広いのだ。 さておき。 俺がそのカードをリオに渡して見せると、イリス、メイファもリオのもとに寄って俺の勇者カードに注目した。 するとイリスが、おそるおそるという様子で俺に聞いてくる。 「あ、あの、先生」 「ん、なんだイリス?」 「今日の検定結果が出たら、先生は新しいカードをもらうんですよね? それで、その......もしよければこのカード、私がもらってもいいですか?」 そのイリスの発言に、リオとメイファがイリスの顔をまじまじと見た。 だが俺としては、いまいち意味が分からない。 「え、何でだ? 勇者カードは個人情報だし身分証明も兼ねてるから、古いのは新しいカードを受け取るときに破棄されるし、まあ普通に無理だとは思うが」 「そ、そうですか......先生の勇者カード、お守りにしようと思ったんですけど......残念です」 するとそれを聞いていたメイファが、イリスに向かってニヤニヤ笑いを浮かべる。 「......お守りとは、よく言ったもの。......本当はイリス、夜な夜なお兄さんの写真を眺めてニヤニヤしたいだけふがふがっ」 「よーしメイファ、ちょっと黙ろうか! ちょっと黙ろうか!」 イリスが手でメイファの口をふさぎにかかり、二人は取っ組み合いを始める。 まあ何というか、今日も仲がいいなこいつら。 仲良きことは素晴らしきかな。うんうん。

55 Episode 55 It was in a village at midnight one day. One daughter living in the village steals the eyes of her sleeping parents, opens the door to the house and goes outside. "Damn, don't walk in the middle of the night because it's dangerous, or you want it to be as overprotective as it is." When her daughter quietly closes the door, she leads away from the house to the woods outside the village. There's nothing wrong with just the moonlight in and around the village that I know on my own. She was scheduled to meet one brave man from the city today. I knew the brave man during the day and within a few moments fell in love. My daughter is going to love that brave man and ask him to take him out of the village. For her irreplaceable life in the village, and for the potato-like men of the village, she was pioneering. What I dream of is a sparkling future in the city. The rendezvous point with the opponent's brave men is in front of a single great tree in the woods outside the village. Her daughter went that far, leaping her chest but sneaking her footsteps toward her. Get over the low wooden fence that surrounds the village, minding the skirts that hook you up. Then he steps into the woods and goes on for a while. Eventually, she reached her destination. But... "What...? What my daughter saw there was a sight I hadn't expected. The moonlight falls like a leaking day in a forest view from the tree's interstices that cover the night sky. A valiant man of his opponent was being bitten in the neck by another man. The brave man's body was powerless and relaxed, occasionally frightened and cramped, but his eyes no longer reflected the light. The man who was biting at the brave man looked beautiful. But his skin is blue and white, his eyes are red, and his mouth is stretched with two sharp and pointed fangs. My daughter, who sees that figure, crushes her when she remembers a picture she saw in a picture book when she was a young girl. Her daughter, frightened and trying to fall back, caught her foot at the root of the tree and buttocks it. The eyes of such a daughter fit perfectly with the red eyes of a man - a vampire. The vampire's red eyes glowed demonically. Then his daughter's eyes, frightened by fear, melted so much that she showed the colour of intoxication. The vampire throws out a man of valor and, in the meantime, walks over to his daughter. My daughter did not try to escape, but rather stood up to offer herself and spread her arms towards the vampire. When the vampire hugged her daughter, she stuck her fangs up to that white neck muscle. Her daughter glances over her back and leaves herself in the act of bloodsucking with a grudge. Her daughter was sucking blood hard, but she was throwing a comforting gaze into the universe, but eventually the light was lost from her eyes as well. Daughter is thrown to the ground. Its body is no longer just slightly cramped, nor do it see any shards of will. - - The covert events that took place there in the woods, where only a few moonlights arrive. This is the preface to a new story, where Teacher Brett and the three godchildren meet. Forest trails with beautiful morning sunsets. I, Brett, a teacher at Ritt Village College of the Brave, was walking from Ritt Village to the neighboring city of Lindbergh with three proud teachers. Eventually, when I see the city on my way, I stop and look back at my godchildren. "So today, I take a 'status test' at the Brave Alliance. It's an annual status test. It will be a mixed measurement with a professional demon hunter or something, but don't hesitate to challenge it with confidence. See... Rio, Illis, Mayfa." "" "Yes" " From the three godchildren standing in front of me, I get a healthy reply. As for the teaching side, I feel really good. But once again, I feel like I've grown up a little more than a year before I first met all three of them. Now Rio is fifteen, and Illis and Mayfa are fourteen. I wonder if my back length has grown somewhat, but above all, the colour fragrance is out of step compared to a year ago. Childliness lurks the ringing, and instead, somewhere femininity is standing... I feel it. The boyish Rio looks like a transitional period trying to be a sporty woman. Sexy is getting a little more prominent to call it juvenile, and the hands and feet stretching out of an active tank top shirt or half pants are bright and healthy. The size of the chest that pushes the shirt up is also much bigger than it was a year ago, enough to make a woman aware. Shortcut brunettes also shine with a wet luster. His black eyes showed some confident strength, even though they were neat. In contrast to that, I also think that Ilis, with a sobering impression, has grown up a lot more recently and has become more feminine. There are few signs of a year ago that were somewhere small animal and mostly, and I feel that the maternal attraction is getting stronger these days. White based robes envelop the sweet limbs, which are horribly seductive to go hand in hand with the tall blonde hair, sapphire blue eyes. It's not entirely an adult woman though, it also leaves her somewhere childish, and it's now her who makes her feel unbalanced and dangerous attracted. And speaking of a dangerous charm, it would be Mayfa above all else. A year ago, Mayfa had "childish cuteness" about two "luscious" against the eight, but now this is about six to four and almost evenly balanced. The pitch-black robe, designed with plenty of frills to mimic the Gothic dress, also matches the amethyst purple eyes and twin-tailed silver hair to demonize the poor, young and seductive look of the girl. The breast size is still discreet, and the other body lines are loose, but that stuff is starting to release something strong like a pheromone that just attracts men when it doesn't even have to be handy. Well, that's why they all got so pretty that I got a little distracted, too. But behind its appearance, the contents haven't changed so much...? No, I know things have changed, but I still have a strong childish impression on the inside because all three of them treat me innocently in anticipation of a relationship between a child and an adult, a godchild and a teacher. And I'm not allowed to see these three godchildren as attractive heterosexuals, either, because of their position as teachers. Or even if you're thrilled inside, you shouldn't be distracted by it. No matter how seductive the three of them grew up, I have to treat them as adults, not as men. "By the way, brother, I heard you go to the city to do that 'status test' thing, but what's that 'status' in the first place? Rio asks me that. Uh... Speaking of which, didn't you explain that to Rio and the others yet? "The 'status' of a brave man is a numerical representation of that brave man's basic abilities. For example, this is what I did last year." That's what I say, I take one card out of my nostalgia. It's a "brave card" with my test results from last year. Along with the identification photos taken with the Magic Guide Photographer, the Brave Card describes the various statuses measured and the level of certified bravery derived from it. For example, the numbers on my brave cards are these values. Name: Brett Certified Brave Level: 21 Muscle Strength: 51 Agility: 50 Strike Strength: 50 Magic: 36 Incidentally, the average certified bravery level of a professional Demon King Hunter is said to be about six levels in the run and eight levels in the skilled. Naturally, the status, it corresponds. So I'm pretty good at what I say myself. That said, there will be as many brave men around the world with more strength than me. If I were as powerful as I am, I'd be laughed at with my nose from the real strong. The world is wide. Forget it. When I gave that card to Rio to show him, Illis and Mayfa stopped by Rio to pay attention to my brave card. Then Iris asks me, roughly. "Oh, you know, Doctor" "Hmm, what is it, Iris? "When today's test results come out, the teacher gets a new card, right? So, um... can I have this card, if you don't mind? In that Iris statement, Rio and Mayfa took Iris' face seriously. But as far as I'm concerned, I don't really know what that means. "Uh, why? Because brave cards are personal information and ID, old ones are destroyed when you receive new cards, and I don't think you can do that normally." "Oh really... teacher brave card, I was going to amulet you...... too bad" Then Mayfa, who was listening to it, smiles Niyaniya towards Illis. "... Amulet is what I used to say.... The truth is, Iris, I just want to look and nibble at my nocturnal brother's photos." "All right, Mayfa, let's shut up for a second! Let's shut up for a second! Ilis blocks Mayfa's mouth with his hands, and the two start working together. Well, I don't know, you're still close today, these guys. I wonder if getting along is great. Yeah, yeah.

第8話 翌朝。 俺は再び、勇者学院の校舎へと向かった。 そして三人の少女に向かって言う。 「お前らに俺の住居の掃除を手伝ってほしい。報酬は食事と風呂。どうだ?」 「やる!」 「やります!」 「......やぶさかではない。......むしろロリコンのお兄さんに入浴を覗かれても構わないぐらい希望」 約一名、不穏当な発言をする者がいたが、聞かなかったことにする。 そんなわけで、俺と三人の少女は、教員用の住居の掃除に取り掛かった。 ちなみに掃除をしながら、三人はこんなやり取りをしていた。 「おいメイファ。兄ちゃんをロリコン呼ばわりするの、いい加減やめろよな」 「そうだよ。お兄さんに失礼でしょ」 「......心配しなくても大丈夫。......ボクはお兄さんの弱みをにぎっている。抜かりはない」 「「......?」」 メイファの言葉を聞いて首を傾げるリオとイリス。 こちらをちらっと見て、にやぁと笑ってくるメイファ。 ......あいつの口はいつか封じる必要があるな。 ロープでぐるぐる巻きに縛って山に埋めなければ。 などという犯罪者的な思考を巡らせながら掃除をしていると、今度は別の場所の片づけをしていたリオが、その手で俺の手を引っ張って聞いてきた。 「なあ兄ちゃん、これ、どこに持ってったらいい?」 「あー、どうすっかな。──確か奥に物置があったろ。とりあえずそこに放り込んでおいてくれ」 「うん、分かった。りょうかーい」 リオは俺に言われた通りに、荷物を物置まで運んでいく。 ......それにしてもリオのやつ、昨日初めて会ったときの態度とは大違いだ。 人懐っこいというか、すごく気を許してくれている感じ。 聞いたところによると、三人の中ではリオが一番年上のお姉さんらしい。 だから警戒しなきゃいけない相手の前では、二人の妹を守るお姉さんを演じる。 でも本来は、今見せているような人懐っこくて屈託のない性格なんだろうな。 その一方で、人見知りというか、なかなか砕けてくれないのが次女のイリスだ。 イリスは掃除の最中にたまに俺と目が合うと、恥ずかしそうにぺこりと会釈だけして、てててっとどこかに逃げてしまう。 その人見知りぶりは、俺に何か聞かなければならないことがあると、リオを捕まえて間接的に聞かせようとするぐらいだった。 リオもリオで、イリスのそういうところは分かっているようで── 「なんだよ、そんなの兄ちゃんに直接聞けばいいじゃん」 「そ、そんなの聞けないよ......リオもメイファも、どうして初対面の人にそう気安くできるの......」 「兄ちゃんなら大丈夫だって。ほら、行ってこい」 「うわわわっ......!」 リオに思いきり背中を押されて、イリスは俺に軽くぶつかってしまう。 「おっと。大丈夫かイリス」 「あ、お兄さん......すみませんすみません! ──もう、リオ! やめてよこういうの!」 「にひひひっ、ごゆっくり~」 「ええええっ! ちょっと、待ってよリオ! 助けてよ!」 リオが隣の部屋に消えてしまい、部屋に俺と二人きりになったイリスは、はわわわっと大慌てする。 ......いかん、めっちゃ可愛い。 ニヤニヤしてしまう。 「どうしたイリス。何か聞きたいことでもあるか?」 俺がそう聞くと、 「あ、え、えっと......はい......その、浴室に工具入れがあったんですけど、これはどこに持っていったらいいかなって......」 「あー、それも物置かな。とりあえず分からないものは全部物置に投げ込んでおいてくれ」 「わ、わかりました! ありがとうございます!」 イリスはぺこぺこと頭を下げると、また逃げるように部屋を出て行ってしまった。 小動物みたいで可愛いなぁ。 ......などと、思っていると。 イリスと入れ替わりで、メイファが部屋の入り口に、にやぁっとした顔で現れる。 「......お兄さん、やっぱりイリスにご執心」 「その言い方やめろ。あとメイファも怠けてないで働け」 メイファは何というか、掃除を絶妙にサボっていた。 リオやイリスはなんだかんだで働き者なんだが、こいつは目を離すとすぐに怠ける。 「......怠けるのが、ボクの仕事。......ボクが怠けることで、対比的にリオとイリスが働き者に見える。......これはリオとイリスへの、ボクの姉妹愛」 「そういう屁理屈はいらんから。ほれ働け働け」 「......ちぇーっ」 そうやって尻を叩いてやればまあまあちゃんとやるし、やり始めれば仕事の効率はいいんだけどな。 知能犯的怠け者とでも言えばいいのか。 まあそんなこんなしながら俺と三人とで掃除をしていくと、空のお日様が真上にのぼる少し前ぐらいには、住居の掃除がざっくりと完了した。 俺はそこで掃除の切り上げを宣言する。 「よし、じゃあメシにするぞ。みんなも調理するの手伝ってくれ」 「「「はーい」」」 三人にも手伝わせて、食事を作っていく。 メニューは昨夜とほぼ一緒だが、村長宅に行って追加でチーズや葡萄ジャムも分けてもらって、それを昼食のアクセントにした。 なお調理の際、リオたちに驚かれたのが、俺が魔法を使って薪に火をつけたことだ。 「すっげぇ......兄ちゃんそれ、勇者にしか使えない『魔法』ってやつ?」 】は初級魔法だから、リオたちも勉強すればすぐに使えるようになるぞ」 「マジで!? 兄ちゃん教えてくれるの?」 「もちろんだ。お前たちにいろいろ教えるために──教師として、俺はこの村に来たんだからな」 ちなみに情報収集したところによると、この村にいる勇者は、リオたち三人だけらしい。 成人した勇者はよその街に出稼ぎに行ったり、そのまま帰って来なかったりで、今この村にはいない。 なので俺が教えるのは、基本的にはリオたち三人だけってことになる。 王都の勇者学院にいたときも、あるいはその前の街でも、ひとりの教師が数十人の生徒を受け持って教えていたから、三人だけを手取り足取り教えられるなんて、こんなに贅沢な教育環境は初めてだ。 ただその代わりと言ってはなんだが、教育設備やら環境やらはまったく整っていない。 トレーニング設備はともかく、初級魔法の教科書ぐらいはないと予習・復習がかなり厳しいから、そのあたりは今後なんとかしていきたいところだ。 「「「「ごちそうさまでした」」」」 食事を終えると、全員で片付けをする。 いろいろ指示をすれば約一名を除いてちゃんとやってくれるので、そのあたり素直でいいなぁと思う。 そして片付けも終わったら、今度は── 「よしお前ら、風呂沸かしてあるから、入ってこい」 俺がそう伝えると、三人から歓声があがった。 リオとイリスはさっそく脱衣所に行って入浴の準備を始めるが── ひとり、メイファが残って、俺にこんなことを言ってきた。 「......お兄さんも、一緒に入ってもいいよ。......大サービスで、背中も流してあげる」 そう言って、にっこりと笑いかけてくる。 美少女なので、この笑顔がすごく様になるのだが。 ......こいつはまた、俺をからかって遊んでいるな。 「ったく、大人をからかうんじゃない。そんなことやっていると、いつか痛い目見るぞお前」 「......にひひ。......ちゃんと相手を見てやってる。......お兄さんなら、大丈夫」 「あのな......。男ってのは一皮むけばみんな狼だぞ。お前の短い人生経験で何が分かる。ほんと気を付けろよ」 俺がそう言うと── メイファは何を思ったか、俺と密着するぐらいの距離まで歩み寄ってきた。 そして、たじろいでいる俺の腰回りに腕を回すと──小柄な少女は、俺にぎゅっと抱きついてくる。 「......違う、そうじゃない。......お兄さんなら、ボクは大丈夫だって言った」 「お、おい、メイファ......!」 さすがに慌てる。 だがその俺の反応を受けたメイファは、心底嬉しそうな顔をして俺から離れた。 「......にひひ、うっそーん。......ボクの勝ち。......お兄さんは、やっぱりロリコン」 「こ、このやろう......。──ほれ、遊んでないで、さっさと風呂入ってこい!」 俺に背中を押されると、メイファは嬉しそうな声を上げて、更衣室のほうに消えていった。 ......まったく。 逞しいのはいいんだが、あいつの相手をするのは苦労しそうだな......。

8 Lesson 8 The next morning. Once again, I headed to the campus of the College of the Brave. And I say to the three girls. "I want you guys to help me clean my place. The reward is meals and baths. What do you say?" "Do it!" "I will! "... not a bluff.... I'd rather hope that my brother in Loricon wouldn't mind a peek into my bath" About one person made a disturbing statement, but decided not to listen. That's why me and the three girls worked on cleaning the faculty home. By the way, while cleaning, the three of them had this exchange. "Hey Mayfa. Stop calling your brother Lorikon." "That's right. You're rude to your brother." "... you don't have to worry.... I feel weak about your brother. There's no drain." ...... Rio and Iris tilting their necks when they hear Mayfa's words. Take a look at this one, Mayfa laughs at it. ... his mouth needs to be sealed someday. We have to tie it to a roll of rope and bury it in the mountains. As I was sweeping around the criminal thought of, for example, Rio, who was now cleaning up somewhere else, pulled my hand with that hand and asked. "Hey brother, where do I take this? "Uh, I don't know what to do. - - There was definitely a storage in the back. Just throw it in there." "Yeah, okay. Rikai." Rio carries his luggage to the storeroom, just as I was told. ... and the one in Rio, it's very different from the attitude I had yesterday when I first met him. I mean, it's nostalgic, or it feels like you're forgiving me so much. From what I've heard, Rio seems to be the oldest sister of the three. So you have to be vigilant. In front of your opponent, you play a sister who protects your two sisters. But I guess it's supposed to be a nostalgic, uncontrollable personality like what I'm showing you right now. On the other hand, it's my second daughter, Iris, who is either familiar with people or doesn't quite crush them. When Iris meets me every once in a while in the middle of cleaning, he just shyly meets with Pepper and then runs away somewhere. The first time the guy knew me, he had to ask me something, so much so that he would try to catch Rio and make him listen indirectly. Rio is also in Rio, and I think I know what's going on in Illis. "Oh, my God, you just have to ask your brother directly like that" "Oh, I can't ask you that... how can Rio and Mayfa feel so comfortable with the first person they meet..." "He said you'd be fine. Look, come on." "Wow...! Rio pushes me on the back of my head, and Illis hits me lightly. "Oops. Are you all right, Iris?" "Oh, brother...... sorry! - No more, Rio! Stop it. It's like this! "Hit it, take your time." "Yep, eh! Wait a minute, Rio! Help me! When Rio disappeared into the next room and I was alone in the room, Illis panicked. ... How cute. It makes me nibble. "What's up, Illis? Is there anything you'd like to hear? When I hear that, "Oh, uh... yes... there was a tool holder in the bathroom, where should I take this..." "Uh, I guess that's storage, too. In the meantime, throw everything you don't know into the storage room." "Wow, I get it! Thanks! When Iris lowered his head, he left the room to flee again. She's cute like a little animal. ... and so on and so on. In exchange for Illis, Mayfa shows up at the entrance of the room with a slight face. "... brother, I knew you were obsessed with Iris" "Stop saying that. And Mayfa, don't be lazy. Work." Mayfa was exquisitely skipping the cleaning, no matter what. Rio and Illis are some kind of workers, but this guy gets lazy as soon as he takes his eyes off him. "... Lazy is my job.... My laziness makes Rio and Iris look like workers in contrast.... This is my sister's love for Rio and Illis" "Because I don't need that kind of reasoning. Here, work, work." "... ugh." I'd do it reasonably well if I slapped him in the ass that way, and if I started doing it, I'd be good at my job efficiency. Can I call you an intelligent criminal lazy person? Well, while we were doing that, me and the three of us cleaned up, and about a short while before the sky's day went up on top, the house was cleaned up. I declare a cleaning cut there. "Okay, then I'll make it mesh. Help us all cook." "" "Yes" " Let the three of us help, and we'll cook a meal. The menu is pretty much with last night, but I went to the village chief's house and had some extra cheese and grape jam split up, and I accented that for lunch. It should also be noted that during cooking, Rio and I were surprised that I used magic to light firewood. "Awesome... brother. That, the one that can only be used by brave men called 'magic'? "Oops. [Ignite] is elementary magic, so if the Rio guys study it, they'll be ready to use it soon." "Seriously!? Brother, are you going to tell me? "Absolutely. I came to this village as a teacher to teach you a lot." By the way, according to the information gathered, the only three brave men in this village seem to be Rio. The adult brave man went to make money in an approximate city, or didn't come straight home, and is not in this village right now. So the only thing I'm going to teach you is basically the three Rio's. When I was at the College of the Brave in Wang Du, or in the city before that, one teacher had received dozens of students to teach, so I had never seen such a luxurious educational environment where I could teach only three. I don't know if it's a substitute for that, but the educational facilities and the environment aren't in place at all. Regardless of the training facilities, it's pretty tough to preview and review without about elementary magic textbooks, so I just want to do something about it in the future. "" "" It was a pleasure "" At the end of the meal, we all clean up. I think it would be nice to be honest around it because if I gave a lot of instructions, they would do it right except for about one person. And when you're done cleaning up, now... "All right, you guys, it's boiling in the bath, come on in" When I told him that, the three of them cheered me up. Rio and Illis are just going to the stripper and we're going to start getting ready for a bath, but... One, Mayfa stayed and said this to me. "... your brother, you can come in with me.... big service, and I'll flush your back" That's what I say, I laugh at you. Because she's a beautiful girl, this smile looks amazing. ... This guy is playing with me again. "Damn, don't make fun of the grownups. If you do that, you're gonna hurt one day. You." "... hihi.... I'm looking right at them.... your brother will be fine" "You know... All men are wolves, if you take it personally. What do you know with your short life experience? Just be careful." When I say that... Mayfa walked up to a distance close enough to snuggle with me about what she thought. And when I turn my arms around my waist, the little girl hugs me all the time. "... no, it's not.... Your brother said I'd be fine." "Oh, hey, Mayfa......! Just panic. But Mayfa, who had my reaction, walked away from me with a look of heartfelt joy. "... hihi, uh-huh.... my win.... Your brother, I knew it, Loricon" "Here, let's do this...... - Look, don't play, just come in the bath! When my back was pressed, Mayfa raised her happy voice and disappeared into the dressing room. ... Not at all. Fine to succeed, but it's going to be hard to deal with him...

第126話 俺は一度アルマとセシリアの二人と別れ、教え子たちを連れて宿を出た。 レジャーとしての海水浴が盛んな海岸都市シーフィードには、水着専門の販売店がある。 俺が三人を連れて向かったのはその店だ。 柔らかな潮風が吹くシーフィードの街並みをしばらく歩くと、小洒落た看板のかかった店の前にたどり着く。 扉をくぐって店内に入ると、女性店員が一人やってきて、案内をしてくれた。 「いらっしゃいませ、お客様。本日はどなたの水着をお探しですか?」 「この子たちの水着を。俺は持っているので大丈夫です」 「かしこまりました。ではお客様は、よろしければそちらのお席でお待ちください。お嬢様方はこちらへどうぞ。私がご案内をさせていただきます」 そんな具合で、俺は待合用の席に案内され、リオ、イリス、メイファの三人は女性店員のあとについて店内を巡っていった。 そこそこに広い木造の店内は、清掃が行き届いていて明るい雰囲気だ。 店内の敷地の八割は女性向け水着の展示スペースとなっていて、様々なデザインの見目麗しい女性用水着が所狭しとディスプレイされている。 俺は待合用の席で、子供たちが水着を選び終えるのをのんびりと待っていた。 三人にはあらかじめ予算は伝えてあるし、俺に女性用の水着を選ぶセンスはないのだから、基本的には本人たちと店員にお任せだ。 ──そう思っていたのだが。 しばらくすると、三人の案内をしていた女性店員が、俺を呼びに来た。 「お客様、お嬢様方がお呼びですよ。選んだ水着をお客様に見ていただきたいそうです」 「え、本当ですか? すみません、呼びに来させてしまって」 「いえいえ、滅相もございません。試着室はこちらです、どうぞ」 女性店員がそう言って誘導するので、俺はそれについていった。 まったく......あいつら、店員さんを顎で使うなよな。 そうして連れてこられたのは、一枚のカーテンで仕切られた小部屋の前だ。 女性店員は、カーテンの向こうへと声をかける。 「お嬢様方、お連れ様をお呼びしました。カーテンを開けても大丈夫ですか?」 「うん、準備オッケー♪ ありがとう、お姉さん」 「でも、やっぱり恥ずかしいな......。本当に見せるの、リオ、メイファ......?」 「......イリス、怖気づいても無駄。......どうせ明日、海で泳ぐときには見せる」 カーテンの向こうから、三人の声が聞こえてくる。 どうやら水着姿の三人が、このカーテンの向こうにいるようだ。 店員が「では、開けますね」と言って、カーテンを横に引いた。 カーテンが取り払われた小部屋には、予想通り、水着姿のリオ、イリス、メイファの姿があった。 何だか分からないが、三人の周辺の空気がキラキラと輝いて見える......気がする。 「えへへっ♪ どう兄ちゃん、似合う?」 リオはそう言って、きゃぴっと水着モデルのようなポーズを取ってみせる。 リオの水着は、健康的でスポーティなタイプのものだ。 ツーピースで上下に分かれてはいるが、上下とも布地面積は比較的大きめの健全なもの。 ただリオ自身のスタイルが、子供体型と呼ぶのはいい加減に無理のある女性的な魅力にあふれたものになりつつあるため、その姿は息を飲むほどにキュートだ。 ほどよく膨らんだ胸はスポーツタイプの水着を魅惑的に押し上げ、おへそ丸出しのお腹と女の子らしくくびれた腰、水着から伸びた健康的でみずみずしい腕や脚なども、一目見ただけで世の男どもをたやすく魅了してしまいそうな危うさを持っている。 そして、次に── 「......水着姿では、ボクの分が悪いのは分かってる。......でも、お兄さんはロリコンだから、そこに期待したい」 そんなことをのたまうメイファはというと、どこかゴスロリ服を連想させるデザインのワンピースタイプの黒の水着を、その柔肌の上にまとっていた。 露出は水着にしては多くないが、胸の部分や腰元などにヒラヒラのフリルがあしらわれていて、とても華やかで可愛らしい装いだ。 ちなみにメイファは二人の姉と比べるとかなりの子供体型で、悪い言い方をすれば寸胴とかまな板とかいった表現もできるボディラインなのだが、ただ完全にそうだというわけでもない。 なだらかながらも柔らかな曲線美をもった肌の輪郭は、妖艶さを兼ね備えた幼い顔立ちとも相まって、そこはかとない危うさで見る者を誘惑しうるものだ。 いや、もちろん俺は、別にどうとも思わないんだけどな。 ただこう、小さい女の子をよろしくない目で見るおじさんとかは魅惑的に感じるだろうって、それだけの話だ。本当だぞ。 そして、そんな二人すらも超えて、何よりも恐ろしかったのが── 「あ、あの、先生......やっぱりこれだと、子供っぽいですか......? 学校用の水着だっていうし、そんなに露出も多くないから、いいかなって思ったんですけど......」 イリスはもじもじと恥ずかしそうにしながら、頬を赤らめつつ、上目遣いでそう聞いてきた。 イリスが身に着けているのは、いわゆる「スクール水着」という種類のものだ。 しかも希少度が高い白色のタイプ。 スクール水着というのは、イリスが言ったとおり「学校で使う指定水着」のことだ。 といっても、普通の学校には遊泳のための設備などあるわけもなく。 もっぱら富裕層の子供たちが通う初等学校や中等学校、あるいは教育設備が潤沢な王都の勇者学院などにある、「プール」と呼ばれる遊泳用設備がある学校でのみ採用されている水着になる。 で、これまたイリスの言うとおり、スクール水着は水着にしては肌の露出は控えめだ。 まあ当たり前だな。 子供たちが運動のために着用する学校指定の水着に、セクシーさなどというものは一切必要がない。 そういう意味では、スクール水着は最も「健全な」水着のひとつとも言えるだろう。 だが、しかし。 問題は、女性の水着姿の魅力というものは、布地面積の大きさだけで決まるような単純なものではないということだ。 まず清楚な雰囲気のイリスに、白のスクール水着がよく似合っているというのはあるのだが、そればかりではない。 イリスは三姉妹の中で、女性的な部位の発育が最も豊かだ。 十四歳の少女にしてはずいぶんと豊かに育った胸やお尻は、子供向けのスクール水着をどん、どんと押し上げて強く自己主張をしており、これは逆にまずいのではないか、逆に、などと見ているこっちが錯乱してしまいそうになるほどだ。 それでいて、引っ込むべきところはしっかり引っ込んでいることに加え、恥ずかしがってもじもじとする仕草に、こちらを窺ってくる上目遣いの眼差し。 これはダメです。 百点満点中の、百五十点ぐらい。 ......いや、待て待て。 俺はいったい何を考えているんだ。 そもそも教え子たちの水着姿の品評など、言語道断。 教師としてあるまじきことだ。 イリスだけではなく、リオやメイファも恐ろしく可愛いからといって、それにドキッとしてしまうことなど絶対にあってはならない。 だから、そう。 特に意識することなしに、さらっと「みんな似合ってるぞ」などと言ってしまえばよかったのだ。 でもその言葉が、俺の口から出てくれなかった。 代わりに俺は、ごくりと唾を飲んでいた。 その俺の様子を見たメイファが、ニヤリと笑った。 俺は直観的に、危険を察知した。 「......お兄さん、どう? ......ボクたちの水着姿の感想は」 メイファがゆっくりと、俺に向かって歩み寄ってくる。 「あ、ああ。いや......よく似合ってると思うぞ」 「......ボクたち、可愛い?」 「あ、ああ。可愛いんじゃないか......?」 「......そこで疑問形は、おかしい。......ボクは、お兄さんに聞いているんだよ。......お兄さんは、この姿のボクたちのこと、可愛いと思う?」 「か、可愛いよ。三人ともすごく可愛い。な、これでいいだろ?」 「......投げやり。......ちょっと不満だけど、このぐらいで勘弁してあげる」 腰が引けた俺の腕に、メイファがひしっと水着姿のまま抱きついてきた。 至近距離でニヤリと笑って、俺を見上げてくる。 俺の腕にはいつもよりもダイレクトに、十四歳の少女の体温や肌の柔らかさが伝わってきていた。 俺は横手にいた女性店員へと、おそるおそる視線を向ける。 女性店員はにこにことした、底の見えない笑顔で言った。 「そちら三人分の水着、お買い上げでよろしいでしょうか、お客様?」 「......はい。よろしくお願いします」 ノーという選択肢は、いかなる意味でも存在しなかった。 そんなわけで子供たちの水着を購入してから、俺たちは宿へと戻る。 その頃には空が夕焼け色に染まる時刻で、帰り道では日射しも暑さも弱まっていた。 この日は宿でゆっくりと休み、翌朝。 昨日に負けるとも劣らぬぴっかぴかの青天の下、アルマやセシリアとも連れだって、俺たちは街の郊外にある海水浴場へと向かったのだった。

126 Lesson 126 I broke up with Alma and Cecilia once and took my godchildren out of the inn. SeaFeed, a coastal city with plenty of seawater bathing as leisure, has a retailer specializing in swimwear. It was the shop I took the three of them to. After a short walk through the streets of Seafeed with soft sea breezes, you reach in front of a shop with a small, sprinkling sign. When I walked through the door and into the store, one of the female clerks came and gave me a guide. "Welcome, sir. Looking for someone's swimsuit today? "Give me these kids' swimsuits. I have it, so it's okay." "Yes, I did. Then please wait in your seats if you like. Ladies, this way, please. Let me show you." In that way, I was led to a waiting seat, and Rio, Illis and Mayfa toured the store after the female clerk. The large wooden shop there has a well-cleaned and bright atmosphere. Eighty percent of the premises in the store serve as an exhibition space for women's swimsuits, and there is a narrow display of attractive women's swimsuits in various designs. I was in the waiting room, waiting for the kids to finish choosing their swimsuits. I told the three of them the budget in advance, and I don't have the sense to choose a swimsuit for women, so I basically leave it to them and the clerks. - - That's what I thought. After a while, a female clerk who was guiding the three men came to get me. "Sir, the ladies are here for you. They want customers to see the swimsuit they choose." "Oh, is that true? Sorry, I let you come and get me." "No, there is no extinction either. Here's the fitting room, please." That's what the female clerk says and directs me, so I followed it. Damn...... those guys, don't use the clerk in your jaw. That's how they brought me in front of a small room divided by a single curtain. The female clerk calls out across the curtain. "Ladies, I've called for you. Is it okay to open the curtain? "Yeah, ready ok Thank you, sister "But you're still embarrassed... Really, Rio, Mayfa...? "... Iris, it's no use being scared to notice. ... show it tomorrow when swimming in the sea anyway" From across the curtain, I hear three voices. Apparently, three people in swimsuits are over this curtain. The clerk said, "Okay, I'll open it," and pulled the curtain to the side. In the small room where the curtains were removed, as expected, there were the figures of Rio, Ilis and Mayfa in swimsuits. I don't know what it is, but the air around the three of us looks sparkling...... I feel it. "Eh heh How do you look, brother? That's what Rio says and makes me try to pose like a swimsuit model. Rio swimsuits are a healthy, sporty type. It is divided up and down by two pieces, but the fabric area is relatively large and healthy, both up and down. It's just that Rio's own style is becoming so full of feminine charm that it's impossible to call it a child shape, so the look is breathtaking and cute. The more inflated breasts seductively push up the sports type of swimsuit, and the navel rounded belly and girlish hips, healthy, stingy arms and legs stretched from the swimsuit, etc. also have the danger of easily attracting the men of the world just at first glance. And then... "... in my swimsuit, I know my share is bad.... but your brother is a lollicon, so I want to hope there" When it came to Mayfa doing that, she had a one-piece type black swimsuit with a design reminiscent of gosloli clothing somewhere on top of its soft skin. The exposure isn't much for a swimsuit, but it's a very gorgeous and adorable outfit with flirty frills on the chest area, waist, etc. By the way, Mayfa is in quite a child shape compared to her two sisters, and in a bad way, she's a body line that can also be expressed like a torso or slab, but it just doesn't mean she's totally. Skin contours with a soft yet soft curved beauty can be combined with a young face that combines luscious lusciousness to seduce the beholder with considerable danger. No, of course I don't think so. It's just that that's all I'm saying that you'll find uncles and stuff that look at little girls with a bad eye fascinating. It's true. And beyond those two, it was more terrifying than anything else. "Oh, you know, Doctor... I knew it was this, is it childish...? It's a swimsuit for school, and it's not that exposed, so I thought it would be nice..." Iris blushed his cheeks, seemingly embarrassed, while listening that way at the top of his head. What Illis wears is something of the kind called a "school swimsuit". And a white type with a high rarity. School swimsuits are "designated swimsuits for use in schools," as Illis said. Even so, there's no way regular schools have equipment for swimming or anything like that. Swimsuits are used only in elementary and secondary schools attended by wealthy children, or in schools with swimming facilities known as "swimming pools" where educational facilities are luxurious, such as Wangdu's College of the Brave. So, again, Ilis is right, school swimsuits have modest skin exposure for swimsuits. Well, of course. There's no need for anything sexy or anything like that in a school-designated swimsuit worn by the kids for exercise. In that sense, school swimsuits can also be described as one of the most "healthy" swimsuits. But, but. The problem is that the attraction of women in swimsuits is not as simple as the size of the fabric area alone dictates. First of all, there is the fact that white school swimsuits are well suited to a clear atmosphere Illis, but that's not all. Of the three sisters, Illis has the richest development of feminine sites. The breasts and buttocks that grew up a lot richer for a fourteen-year-old girl are pushing up and down school swimsuits for children and asserting themselves strongly, so much so that this one that sees it as the opposite is not a good idea or vice versa is going to be confused. Now, in addition to being firmly pulled in where we should pull in, an up-and-coming glance peering this way into a shy and messy trick. This is no good. Out of 100, about 150 points. ... No, wait, wait. What the hell am I thinking? Verbal discourse, such as the reputation of the teachers in swimsuits in the first place. I'm a teacher. Seriously. Just because Rio and Mayfa are horribly cute, not just Illis, should never be so excited about it. So, yeah. I should have said "Everyone looks great" and so on without being particularly conscious. But that word didn't come out of my mouth. Instead, I was spitting at you. Mayfa laughed when she saw me. I perceived danger intuitively. "... brother, how's it going? ... What do you think of our swimsuits?" Mayfa slowly walks up to me. "Ah, oh. No... I think you look great." "... us, cute? "Ah, oh. Isn't she cute...? "... So the question form is, weird.... I'm asking your brother.... Do you think your brother is cute about us? "Oh, she's cute. All three are so cute. Hey, that's it, right? "... throwing.... I'm a little dissapointed, but I'll give you a break about this" Mayfa held me in her swimsuit all the time on my arm. He laughs niggly at close range and looks up at me. More directly on my arm than usual, the body temperature and skin softness of a fourteen-year-old girl were being transmitted. I turn my gaze to the female clerk who was on the sidelines. The female clerk said with a grinning, bottomless smile. "Can I buy a bathing suit for three of you, customer? "... Yes. Best regards," The option of no did not exist in any sense. That's why I bought the kids' swimsuits, and then we go back to the inn. By then the time the sky stained the sunset color, the sun and heat had weakened on the way home. Take a rest at the inn on this day, the next morning. We took Alma and Cecilia to a seawater bath on the outskirts of the city under a perfect blue sky to beat yesterday.

第59話 「お待たせいたしました。こちらがブレットさんの更新された勇者カードと、リオさん、イリスさん、メイファさんの新規の勇者カードになります」 勇者ギルドの受付嬢は笑顔でそう言って、カウンターの向こうから俺たちにそれぞれ一枚ずつのカードを渡してきた。 俺はまず、自分のカードを確認する。 ステータスが多少動いていたが、認定勇者レベルに変化はなし。 ほかにも特に大きく変わったところはなかった。 一方、三人の教え子たちはというと── 「おおー......」 「ふわぁ......これが、私の勇者カード......」 「......これは結構、嬉しいかも。......ヤバい、ニヤニヤが止まらない」 三人とも自分の勇者カードを、キラキラとした目で見つめていた。 すごく嬉しそうだ。 そういえば俺も、初めて自分の勇者カードをもらったときは、すげぇ嬉しかったっけ。 なんだか自分が本物の勇者として認められたような感じがして、家に帰ってからもしきりにカードを取り出してはニヤニヤと眺めていたのを覚えている。 そして三人は、ひとしきり自分のカードを眺めた後、今度はほかの二人とカードを見比べ始める。 「あれ......? イリスもメイファも、認定勇者レベルって12なんだ。オレ、14だぜ?」 「えーっ、なんでリオだけ?」 「むっ......解せない。......お兄さん、これどういうこと? ......ボクとイリスは、リオより弱いっていう意味?」 「んー、どれどれ......?」 俺は三人の勇者カードを見比べてみる。 すると確かに、認定勇者レベルはリオが14、イリスとメイファが12となっていた。 名前:リオ 認定勇者レベル:14 筋力 :36 敏捷性 :49 打たれ強さ:35 魔力 :17 名前:イリス 筋力 :26 敏捷性 :27 打たれ強さ:25 魔力 :37 名前:メイファ 筋力 :18 敏捷性 :26 打たれ強さ:19 魔力 :52 三人とも証明写真映りもバッチリで超可愛い──とかは置いといて。 なるほど、このステータス具合なら確かに、リオだけ多少飛び抜けるのも分かるなという数字だった。 俺は三人に説明する。 「この『認定勇者レベル』っていうのは、四つのステータスの合計値をもとに算出されているからな。その勇者の強さの漠然とした指標にはなるけど、絶対的な強さを表すものじゃない。そもそもスキルとかも反映されないしな」 「「「ふーん......」」」 三人とも納得したようなしていないような、微妙なリアクションだった。 なお、駆け出しのプロ魔王ハンターで6レベル程度、ベテランで8レベル程度というのが認定勇者レベルの相場なので、この三人の認定勇者レベルは現段階ですでに、平均的なプロの魔王ハンターと比べても群を抜いている。 しかも三人ともまだまだ成長しきった感などまるでないので、末恐ろしい以外の言葉が見つからない。 「なあなあ、兄ちゃんの勇者カード、もう一回見せてもらってもいい?」 「おう、いいぞ」 俺はリオに請われて、更新された自分の勇者カードをあらためて見せる。 ちなみにだが、勇者カードに記されているステータスや認定勇者レベルは重要な個人情報だし、その勇者の実力が露骨に数値化されているわけだから、その扱いは普通、かなり慎重になる。 勇者カードは他人に年収を教えないというのと似たような意味で、あまり他人に見せびらかすようなものでもないというのが一般的な価値観だ。 しかしこの三人相手であれば、いまさら隠す必要もない。 なお俺のステータスは、去年版の勇者カードのものよりもわずかに伸びて、こんな感じになっていた。 名前:ブレット 認定勇者レベル:21 筋力 :52 敏捷性 :51 打たれ強さ:51 魔力 :36 去年版のステータスと比べると、筋力、敏捷性、打たれ強さのステータスが1ポイントずつ上昇していた。 もっとも、リオが百メートル走でミスったのと同じように、勇者カードのステータスは計測時の誤差やその時の調子にも多少左右されるので、このぐらいの伸びで実力が上がったと判断するのは早計と言える。 一般に、プロの魔王ハンター活動を初めて三年から五年ほども経験を積めば、その勇者の成長はそこでほぼ頭打ちとなる──ことが多いと言われている。 まあそのあたりは、戦場でどれだけ窮地や修羅場を潜り抜けるかによっても変わってくると言われているので、あまり確かなことは言えないのだが。 ただ俺も、ここ数年は大きなステータスの成長はしていない。 それは魔王ハンター業を引退して、戦場での窮地や修羅場を経験しなくなったからかもしれないが......。 しかし逆の見方をすれば、窮地や修羅場を経験するというのはすなわち命を落としやすい環境に身を置いているということでもあるわけで、ずっとそんなことばかりしていたらいずれ本当に命を落としてしまうだろう。 『真に強い勇者になるためには、勇敢でなければならない。勇敢は無謀と臆病の狭間にある』というのは、始祖の大勇者アルスの言葉だ。 しかし彼は、別の機会にこうも言っている──『僕が大勇者と呼ばれるまでに至ったのは、幾多の無謀な勇者たちの中で、たまたま才能と仲間と運に恵まれたおかげでここまで生き残ってこれたからだ。それだけだ』 まあいずれにせよ、勇者のステータスというのは才能と経験と請け負ったリスクの相乗的な結果だ、というのが一般的な見解である。 そんな結果としての俺のステータスを、リオ、イリス、メイファの三人はむむむっという様子で自分の勇者カードのステータスと見比べていた。 「兄ちゃん、21レベルか......。結構近付けたような気はしても、やっぱまだ遠いんだよな......」 リオがそう言うので、俺はそのおでこを指先でツンと突いてやる。 「当たり前だ。いくら何でも、そんなに簡単に追い抜かれてたまるか」 「えへへーっ。でもいつかオレ、兄ちゃんに追いついてやるんだ。そのときには兄ちゃん、オレたちのこと『子供』じゃなくて『パートナー』として見てくれるだろ?」 リオにそう言われて、俺は言葉に詰まる。 パートナー──つまり『仲間』ってことか。 そういうのは考えたことがなかったな。 今の俺はリオたち三人の保護者みたいな意識だが、そのうち対等の仲間として、魔王相手に肩を並べて戦うような関係にもなるのかもしれない。 そしてその先に待つのは、三人に守られる立場になる俺、か......。 「あ、あれ......? 先生、どうしたんですか? いきなり床にがっくりと膝をついて、四つん這いになって......」 「......何に凹んでいるのか分からないけど、お兄さん、よしよし」 俺が将来のビジョンを思い浮かべてorzしていると、メイファに子供をあやすように頭をなでられた。 ちなみに、もはやこの勇者ギルドで俺たちの妙な行動は周知のこととなっているので、周りの人たちからは「またか」みたいな目で見られている。 まあそもそも、勇者は社会に馴染む必要性が薄いせいか露骨に変なやつも多いし、今さら俺たちだけどうこうというのもないのだろう。 と、今度はリオが俺に、勇者カードを返してきながらこんなことを聞いてくる。 「ところで兄ちゃん、世界最強の勇者ってさ、どのぐらい強いの? オレ兄ちゃんより強い勇者って見たことないんだけど、やっぱ兄ちゃんより上がいるってことなんだよな?」 俺はそれに、自分の勇者カードを受け取りながら答える。 「世界最強がどのぐらい強いのか、は俺もよくは知らないな。現存している勇者で最強クラスと言われている人たちだと、“魔帝”マヌエルとか“武神”オズワルドあたりが真っ先に浮かぶけど、俺も実際に会ったことはないし」 「ふぅん......」 「俺が直接会ったことのある勇者の中だと、“鋼の聖騎士”セシリアが最強だな。悔しいけど、あの人には一対一で勝てる気はしなかった」 「先生にそこまで言わせるって、すごい......。私には先生より強い人って想像できません。──そのセシリアさんって、名前からして女性の勇者の方ですか?」 そのイリスの質問に、俺はその少女の頭をなでつつ答える。 「ああ。セシリアさんに会ったのは俺が魔王ハンター現役の頃だから、もう何年も前だけどな。あの当時に二十二歳って言ってたから、今は二十代後半ってとこか。確かちょうどこのあたりの地域を活動拠点にしているって言ってたから、ひょっとしたら会うこともあるかもな」 俺がそう言って、イリスの頭をなでこなでこしていた、そのときだった。 勇者ギルドの扉がキィと音を立てて開き、旅汚れた白のマントとプレートアーマーを身につけた一人の女性勇者が入ってきた。

59 Lesson 59 "Thank you for waiting. This will be Brett's updated Brave Card and the new Brave Card for Rio, Illis and Mayfa." The brave guild receptionist smiled and said so, handing us one card at a time from across the counter. I'll check my cards first. The status was moving somewhat, but there was no change in the level of certified bravery. Nothing else changed particularly dramatically. Meanwhile, the three godchildren... "Ooh..." "Wow... this is my brave card..." "... This is fine, I might be happy.... Shit, I can't stop Niyaniya" All three stared at their brave cards with sparkling eyes. Looks so happy. Speaking of which, I was awfully happy when I first got my brave card. I kind of remember feeling like I was recognized as a real brave guy and even when I got home I did take out my cards and I was looking at Niyaniya. And the three of them, after looking at one of their cards, now begin to compare the cards with the other two. "Is that...? Both Iris and Mayfa have 12 levels of certified bravery. I'm 14, right? "What, why just Rio? "Mmm... I can't solve it.... Brother, what do you mean by this?... Me and Iris mean weaker than Rio? "Hmm, which one...? I'll compare the three brave cards. Then indeed, the certified brave level was 14 for Rio and 12 for Iris and Mayfa. Name: Rio Certified Brave Level: 14 Muscle Strength: 36 Agility: 49 Strike strength: 35 Magic: 17 Name: Illis Muscle Strength: 26 Agility: 27 Strike Strength: 25 Magic: 37 Name: Mayfa Muscle Strength: 18 Agility: 26 Strike Strength: 19 Magic: 52 All three of them prove that the photo shows are perfect and super cute - leave it at that. Well, if this status is good, it was definitely a number that you also know that only Rio can jump through somewhat. I'll explain to the three of you. "This" Certified Brave Man Level "is calculated based on the sum of the four statuses. It will be a vague indicator of the strength of that brave man, but it does not represent absolute strength. It doesn't even reflect my skills in the first place." "" "Hmm......" " It was a subtle reaction, like none of the three of us were convinced. It should be noted that about six levels in a rushing professional Demon King hunter and eight levels in a veteran is the market for certified brave men, so these three certified brave men levels are already out of the group at this stage, even compared to the average professional Demon King hunter. Besides, all three of them still haven't grown up or anything like that, so I can't find a word other than horrible. "Oh, brother's brave card, can I see it again? "Whoa, that's good." I'm asked by Rio to show me my updated brave card once again. Incidentally, though, the status and certified bravery levels on the brave cards are important personal information, and because their brave strengths are openly quantified, their treatment is usually rather cautious. It's a common value that brave cards don't really show off to others either, in a similar sense to not teaching others how to earn an annual income. But if it's these three opponents, there's no need to hide them. It should be noted that my status had grown slightly more like this than last year's edition of the Brave Card. Name: Brett Certified Brave Level: 21 Muscle Strength: 52 Agility: 51 Strike Strength: 51 Magic: 36 Compared to last year's edition of the status, the status of muscle strength, agility, and struck strength had increased by one point at a time. Most importantly, just as Rio made a mistake walking a hundred meters, the status of the Brave Card depends somewhat on the error at the time of measurement and how well it is at that time, so it can be said that it is premature to determine that strength has increased with this stretch or so. Generally, it is said that the growth of a professional demon hunter can often be almost overwhelming there if he gains about three to five years of experience for the first time. Well, they say it can vary depending on how much distress and training you dive through on the battlefield, so I can't say for sure. It's just that I, too, haven't grown a lot in the last few years. Maybe that's because I retired from the Demon King Hunter business and stopped experiencing hardship and training on the battlefield...... But if you look the other way, experiencing a predicament or a training ground also means that you are in an environment that is prone to losing your life, so if you do that all the time, you will really lose your life sooner or later. 'To be a truly strong brave man, you have to be brave. Bravery is in a narrow space of recklessness and cowardice' is the word of the great brave Ars of his original ancestors. But he also says on another occasion - 'I have come to be called the Great Brave because of the many reckless braves who happen to have survived this far thanks to their talent, companionship and luck. That's all. " In any case, it is the general view that the status of the brave is the synergistic result of talent, experience and the risks assumed. My status as a result was compared to that of my brave cards by the way Rio, Illis and Mayfa were mumbling. "Brother, you're on level 21... Even though I feel pretty close, it's still far away..." That's what Rio says, so I'll stick that forehead with my fingertips. "Naturally. Whatever it is, it's that easy to get outrun." "Eh heh. But one day, I'll catch up with my brother. You'll see us as' partners', not 'kids', right, brother? That's what Rio tells me, and I'm stuck in words. Partner - I mean, 'buddy'? You never thought about that. Now I'm conscious like the three guardians of the Rio's, but one of these days, as an equal companion, I might even have a relationship where I fight shoulder to shoulder against demon king opponents. And waiting ahead is me in a position to be protected by the three of you, or... "Oh, that...? Doctor, what's wrong? Suddenly I knelt down disappointed on the floor, crawling on all fours..." "... I don't know what you're recessed in, brother, all right" As I orz with my vision for the future in mind, Mayfa gave me a head start. By the way, our strange behavior is no longer well known in this guild of brave men, so people around us are looking at us like "again". Well, in the first place, many brave people are blatantly weird because of their lack of need to be familiar with society, and I wonder why we're the only ones doing this now. And now Rio asks me this as he returns my brave card. "By the way, brother, how strong is the bravest man in the world? I've never seen a brave man stronger than my brother, but that means he's got better than my brother, right? I answer that as I receive my brave cards. "I don't really know how strong the world is either. These are the bravest and most powerful classes that exist, and Manuel the Demon Emperor, and Oswald the Martial Arts, float first, but I've never actually met them either." "Phew..." "Of all the brave men I've ever met in person," The Holy Knight of Steel. "Cecilia is the strongest. I regret it, but I didn't feel like I could beat that guy one-on-one." "Let the teacher say that, wow...... I can't imagine someone stronger than my teacher. - - Is Cecilia a female brave man by name? I answer that Iris question while answering the girl's head. "Oh. I met Mr. Cecilia when I was in active Demon King Hunter, so it's been years. She said she was twenty-two at the time, so now she's in her late twenties? He said he was just using the area as a base of activity, so maybe we'll meet again." That's what I said, and I was doing with Iris' head, that's when. The door of the Guild of the Brave opened with a noise with Ki, and one female brave man came in wearing a white cloak and plate armor that was traveling dirty.

第137話 船が『魔の海域』に突入してから、しばらくは何事もなかった。 順調に航海が進んでいく。 その様子にマリーナ船長は、「ほらな。やっぱりあたいの言ったとおりだろ?」と船員たちに向かって誇らしげに胸を張っていたのだが── 「あ、姐御、ちょっと! あの影、なんすかね......!?」 船の見張り台で見張りをしていた船員が、マリーナを呼ぶ。 「あぁん? あの影って、どの影さ」 マリーナはひょいひょいと見張り台まで上っていくと、見張りの船員から望遠鏡をふんだくるように奪って、それをのぞき込んだ。 そして、数秒ほど望遠鏡を凝視してから、マリーナは慌てて叫ぶ。 「野郎ども、緊急回頭だ! 正面の海中から、何かでかいのが猛烈なスピードで近付いてきてる! ギャンブルはあたいの負けだ! あたいのことは煮るなり焼くなり好きにしていいが、それも生き延びられたらの話だ! 急げ! あんなのに捕まったら、船なんざぺしゃんこだよ!」 『へいっ、姐御!』 マリーナの掛け声で、船員たちが慌ただしく甲板上を駆けずり回りはじめた。 そして海賊船はやがて、回頭を始める。 ギギギッと音を立てて、船が進行方向右側へと、徐々に向きを変えていく。 だがその動きの緩慢さは、海中を迫りくる巨大な何かの速度と比べて、あまりにも足りていない。 船員の力量がどうとかではなく、船という構造物そのものの限界がある。 「くそっ、このままじゃ......! あたいのツキにも、ずいぶんとヤキが回ったもんだね......!」 マリーナは見張り台の上で、苛立たしげに手指の爪を噛む。 いまさら回頭したところでおそらく逃げきれないということは、船長である彼女が一番よく分かっているという様子だった。 だが俺は、そんなマリーナに向かってこう言ってやる。 「いや、そうでもないさ、マリーナ船長。キミの 「ブレットさん、何言って......! だってこのままじゃ追い付かれちまうだろ!? 何かほかに逃げる手立てがあるってんなら──」 「逃げる手立てはないが、あれを倒せるだけの戦力ならある。──リオ、イリス、メイファ、行くぞ!」 「「「はいっ! ──ガードクローク・ドレスアップ!」」」 教え子たちの口から、合言葉が紡がれる。 三人の首飾りがまばゆく光り輝き、少女たちの全身を光が包み込んだ。 光がやんだあとには、アイドル衣装型の防具に身を包んだ、可憐な少女勇者たちの姿があった。 『おおーっ!』 船員たちから、感嘆の声があがる。 近くにいたアーニャも、「す、すごい......」とつぶやき驚いていた。 一方で、海中の巨大な影は、いよいよ間近までやってきた。 それはイリスの弓矢が届くか届かないかというぐらいの距離で、ずもももっと海水を押し上げ── ──ザバァァァァッ! 大雨のような水しぶきとともに、巨大モンスターが姿を現した。 それはとんでもない大きさのタコだ。 海上に姿を現した本体部分のサイズ感は、三階建ての住居ほどもあるだろうか。 巨大さで言えば、海神様──ドラゴンタートルともいい勝負かもしれない。 どうやら『海の悪魔』とやらは、このジャイアントオクトパスのことだったらしい。 より高ランクのモンスターであるクラーケンだとかなり面倒だったが、こっちならまあ。 とは言え、油断しすぎると厄介なことにもなりかねない相手だ。 「リオ、イリス、メイファ、あいつは船に近付いてくる前に仕留めるぞ。あれの触手が船に届くところまできたら、この船が壊されかねない。──イリスはまず、リオ、メイファの順番で【 俺の指示を受けて、イリスがリオに補助魔法をかける。 今のところこの魔法を使えるのは、俺を除けば、水属性魔法が得意なイリスだけだ。 イリスが放った魔法の輝きが、リオの体へと浸透していく。 だがそれを受けたリオは、俺が予想もしていなかったことを言い始めた。 「サンキュー、イリス。じゃあ兄ちゃん、オレ先に行ってるね」 「は......? お、おいちょっと待てリオ。すぐに俺も行くから──」 「オレ一人でも大丈夫だって。あいつ図体はデカいけど、たいしたプレッシャーじゃないし。──とぅっ」 アイドル衣装姿のリオは、甲板の上から海に向かってジャンプする。 そして波で荒れ狂う水面に、すたっと着地した。 だが── 「おわっ、ととっ......! あ、あぶなっ......! 波って結構キッツイのな」 リオは着地した水面で、バランスを崩しそうになる。 どうにかすぐに持ちなおしたようだが。 水の上を歩けるといっても、海の波の上では、大地震がきている最中の大地に立っているのと同じ状態のはずだ。 それでもすぐに持ちなおすのは、リオの卓越したバランス感覚の賜物ではあるが。 「いいか、ちょっと待ってろよリオ。いま俺も行くから──【 俺は自前で同じ魔法を使いつつ、リオを追いかけようとする。 だがリオは── 「やーだよ♪ 兄ちゃん、オレと競争な。どっちがあいつにたくさんダメージを与えられるかでさ。オレが勝ったら、兄ちゃんもオレの実力を認めてくれるよな?」 そう言ってリオは、荒波の上をうまいことバランスをとりながら駆けていってしまった。 「お、おい待てって、リオ! ......ったく、あいつ」 「ちょっとリオ、何やってるのよ! ──す、すみません、先生! リオのバカ! 先生に迷惑をかけて、もぉーっ、信じられない!」 「イリスが謝ることじゃないって。──でもリオのやつには、あとでたっぷり灸を据えてやる必要があるな。イリス、メイファ、援護は頼んだ。俺も行ってくる」 「はい、先生」 そんなわけで俺も、甲板上から大きくジャンプして、海の上へと着地する。 そしてすぐさま、リオのあとを追いかけた。 だがリオはというと、俺のだいぶ前方で、すでにジャイアントオクトパスと交戦する距離まで近付いていた。 リオがさらに接近していくと、巨大触手──それで何度か鞭打てば、船や住居をもたやすく破壊できるような代物──が次々とリオに向かって襲い掛かる。 「チッ......! 足場がふらつくせいで、わりとよけるの難しいな......!」 リオはそう言いながらも、一撃、二撃、三撃と、迫りくる巨大触手の攻撃を回避していく。 縦に振り下ろすような攻撃を横手に跳んで身をかわしたり、横に薙ぎ払うような一撃をジャンプしてよけたりとかなり忙しそうな動きをしながら、それでもジャイアントオクトパスの本体に向かって近付いていく。 無論それは並みの勇者にできる芸当ではなく、リオの驚異的な敏捷性や反射神経、運動能力があって初めて成しえる技だ。 だがその様子は、見ていて少し危なっかしい。 功を焦って勇み足を踏む、新人勇者のそれに似ている。 「リオ、無理はするな! 今行くから、俺と協力して──」 「だ、大丈夫! このぐらいなら、オレ一人でも多分やれ──って、うっそぉっ!?」 ──ブシャアアアアアッ! 巨大触手の連続攻撃に気を取られていたリオに向かって、ジャイアントオクトパス本体の口から、真っ黒い大量の墨が吐き出された。 リオは慌ててそれを回避しようとしたが、間に合わない。 横っ飛びに跳んだものの一瞬遅く、広範囲に噴射された墨を全身にもろに受けてしまった。 「わぷっ......! くそっ、なんだよこれ......! うわわわっ......!」 跳躍中にねっとりとした墨を全身に浴びてしまい、ごろごろと水面上を転がったリオは、そこで胴体を一本の巨大触手に巻きつかれて、宙に持ち上げられてしまう。 ......あーあ、だから言わんこっちゃない。 しょうがないから俺は、捕まったリオを助けに行くことにした。

137 Lesson 137 Nothing has happened for some time since the ship entered the 'Devil's Sea'. The voyage goes smoothly. To that appearance, Captain Marina said, "You see. I knew you were right, didn't I? I was so proud of the sailors. "Ah, sister, hey! That shadow, something...!?" A sailor on guard at the ship's watchtower calls for a marina. "Ah? Which shadow is that?" As the marina hissed up to the watchtower, she snatched the telescope from the watchman and glanced at it. And after staring at the telescope for a few seconds or so, the marina screams in panic. "Bastards, look back urgently! From the sea at the front, something big is approaching at a fierce speed! Gambling is your loss! You can cook and bake and like what you want, but if you survive that, too! Hurry! If you get caught like that, it's a ship! "Go, sister! With the marina hanging, the sailors rushed around on the deck. And the pirate ship eventually starts to turn around. Make a giggly noise and the ship will gradually change direction to the right of the direction of travel. But the slowness of that movement is too little compared to the speed of something enormous approaching the sea. There are limits to the very structure of the ship, not so much to the power of the sailors. "Damn, not like this...! You've got a lot of yaki going around on your twinks too......! The marina bites her fingernails in frustration on the watchtower. The fact that she probably couldn't get away with it just looking back seemed to me that she, the captain, knew best. But I'm gonna say this to a marina like that. "No, it's not, Captain Marina. You're still fat." "Mr. Brett, what are you saying...! If there's anything else you can do to get away with it..." "There's no way to escape, but there's just enough power to take that one down. - - Rio, Illis, Mayfa, let's go! "" "Yes! - - Guard Cloak Dress Up! From the mouth of the godchildren, the euphemism is spun. The three necklaces gleamed brightly, and the light enveloped the girls' entire bodies. After the light stopped, there was the figure of the poor girl braves, dressed in idle costume-shaped protective equipment. "Oooh! From the sailors, an exclamation is raised. Anya, who was nearby, was also crushing surprised, "Shh, wow..." Meanwhile, the huge shadows in the sea have finally come close. It's as far away as Iris' bow and arrow gets or doesn't get, but it pushes up more sea water. - Zabaaaaah! Huge monsters appeared, along with blisters like heavy rain. That's a hell of a size octopus. Would the size of the main body part, which appeared at sea, be as large as a three-story residence? In terms of immensity, it could be a good battle for the Sea God - the Dragon Turtle. Apparently, 'The Devil of the Sea' and I were referring to this giant octopus. It was pretty cumbersome to be a higher ranked monster, Kraken, but this way, well. That said, being too cautious can be a pain in the ass. "Rio, Illis, Mayfa, he's gonna finish before he gets close to the ship. If that tentacle gets to the ship, this ship could be destroyed. - - Illis first asks for [Water Walking] in the order of Rio, Mayfa" Take my instructions, and Ilis will do auxiliary magic to Rio. The only person who can use this magic so far, except me, is Iris, who is good at water attribute magic. The magical glow emitted by Illis penetrates Rio's body. But then Rio started saying things I didn't expect. "Thankyou, Illis. Well, then, brother, you're ahead of me." "Is...? Oh, hey, wait a minute, Rio. I'll be there in a minute." "I'm okay with it. He's a big figure, but he's not under a lot of pressure. - - Eh." Rio in his idol costume jumps from the top of the deck to the sea. Then he landed on the rough surface with waves. But... "Oops...! Oh, blah blah...! The waves are pretty tight." Rio is on the surface of the landed water and is about to lose his balance. I seem to have regained it soon. Even though you can walk on the water, on the waves of the sea, it should be in the same condition as standing on the earth in the midst of a major earthquake. Still, it is the gift of Rio's exceptional sense of balance that will soon be held back. "Look, just wait a minute, Rio. I'm coming now, too. I try to go after Rio while I use the same magic in front of myself. But Rio... "No. Brother, you're in competition with me. It depends on which one can do a lot of damage to him. If I win, you'll recognize me, too, won't you? That being said, Rio ran off balancing good things over the rough waves. "Oh, hey, wait, Rio!... Damn it, that guy" "Hey Rio, what are you doing! - - Sh, excuse me, Doctor! Rio idiot! Trouble with the teacher, ooh, I can't believe it! "He said it wasn't about Illis apologizing. - - But Rio needs plenty of moxibustion later. Iris, Mayfa, I asked for backup. I'm coming, too." "Yes, Doctor" That's why I, too, jump big off the deck and land on the ocean. And immediately, I chased after Rio. But Rio, a long way ahead of me, was already close to engaging Giant Octopus. As Rio approaches further, giant tentacles - and several whips with them, substitutes that can easily destroy ships and dwellings - strike at Rio one after another. "Chi......! Due to the fluttering of the scaffolding, it's hard to get around......! With that said, Rio avoids one, two, three blows and an imminent attack of giant tentacles. He still approaches the body of the Giant Octopus, making a rather busy move to jump horizontally down an attack and turn himself away, or jump a blow that snaps away to the side. Whatever it is, it's Rio's incredible agility, reflex nerves, and motor abilities that make it his first move. But it's a little dangerous to watch. I rush for merit and brave, similar to that of a new brave man. "Rio, don't push it! I'm on my way, so work with me." "So, it's okay! If this is the case, maybe I should do it alone. Ugh!?" - - Bushaaaaaaaa! Towards Rio, who was distracted by a continuous attack of giant tentacles, a large amount of black ink was spit out of the mouth of the giant octopus body. Rio hastily tried to circumvent it, but he couldn't make it. A moment later of what jumped on the sidelines, I got a wide range of sprayed ink all over my body. "Wapu......! Damn, what the hell is this...! Wow...! As he leaps, he bathes his whole body of snug ink, and Rio, rolling over the grass and water, is lifted into space, where he wraps his torso around a single giant tentacle. ... Oh, that's why I'm not telling you. I couldn't help it, so I decided to go help Rio get caught.

第133話 波のざあざあという音に、たっぷりの潮のにおい。 俺は明け方の大海原を、海神様の背に乗って進んでいた。 メンバーは変わらず、俺、リオ、イリス、メイファ、アーニャの五人だ。 海神様のすみかである海食洞を出てから、かなりの時間こうして海の上にいる。 出立したのが夕食どきを少し過ぎた頃のはずだから、半日ほども海神様の背中に乗っかっていることになる。 すでにだいぶ沖まで出ているはずだ。 後ろを振り返ったところで、とっくの昔に陸地が見えないぐらいには大海原の真っただ中である。 「ふあ~......」 そんな明け方の海の上で、俺は大きくあくびをしてしまう。 昨晩はちょっと仮眠をした程度で、ほとんど寝ていない。 海神様に乗せてもらっているのに、全員寝てしまうのはさすがに図々しすぎると思ったこともあるし、いつ海洋モンスターに襲われないとも限らないから警戒は必要だというのもある。 ちなみに子供たちはみな、俺に寄り掛かるようにしてすぅすぅと寝息を立てている。 海神様の背中はごつごつとしていて、眠るには適さないので仕方がない。 ちなみにアーニャは最初、頑張って起きていようとしていたが、さすがに夜も遅くなってくるとうつらうつらしてきて、俺が「気にせず寝ろ」と何度か言うと、最後にはほかの三人と一緒に眠ってしまった。 美少女たちに水着姿で四方からへばりつかれるのも、そろそろ慣れた。 人間、何にでも慣れるものだ。 ただまあ、仮眠をとったとはいえ、さすがに俺も眠くなってきた。 子供たちが起きたら、俺もある程度まとまった睡眠時間をもらおう。 そんなことを思っていたとき、海神様がのんびりとした声を上げる。 『魚人族をよく見かける海域は、そろそろであるな~』 なるほど、どうやら俺の睡眠時間はなさそうだ。 失敗したかなとも思うが、まあ眠いといっても、その気になれば戦闘に支障が出るほどではない。 それでもダメなら、自前で【 俺は子供たちを起こしにかかる。 リオなどは目を覚ますなり、妙に色っぽい声をあげて俺にしなだれかかってきたりしたが、ぽかりと軽く拳骨を落としてやると、ぺろっと舌を出していたずらっ子の顔を見せてくる。 相変わらずクッソ可愛いのはいいのだが、見事な子供体形のメイファならともかくリオにまでそんな動きをされると、眠気に侵食された俺の理性が吹き飛びそうになるので本当にやめてほしい。 一方でイリスは、目を覚ますなり俺のことを気遣ってくる。 「えっ......先生ひょっとして、ずっと寝てないんですか......?」 「いや、軽く仮眠は取ったよ。少し眠いが、戦闘に支障があるほどじゃないさ」 「そんな、ダメです! 先生もちゃんとお休みになってください! 周囲の警戒は、私たちがちゃんとやりますから」 「いや、でもな......」 「ダメです、寝てください!」 イリスが珍しく、頑として譲らなかった。 そしてイリスは姿勢を変えて正座をすると、頬を染めながら、ぽんぽんと自分の膝を叩いてみせてくる。 「え、イリス、それは......なに?」 「膝枕です。先生には、少しでも快適にお休みになっていただかないといけません」 「......冗談だろ?」 「どうしてです? それとも、その......先生は、私なんかの膝枕じゃ、いやですか......?」 イリスが少し泣きそうな顔で、俺の顔色を窺ってくる。 いやいやいや、もちろん嫌なわけがないのだが......。 ていうか、イリスがいま身に着けているのは例の白スクール水着だけなので、その格好で膝枕というのは── いや、何がどうというわけではないのだが、やんわりと危険が危ない気がする。 だがそうして俺が戸惑っていると、やがてイリスが瞳に涙を溜めはじめた。 「うっ......先生、私の膝枕は、嫌なんですね......? そうですよね、私なんかが先生を支えようなんて、おこがましいですよね......ぐすっ」 「い、いやあの、イリス......? そういうわけじゃなくてだな......」 しかも泣きべそをかいたイリスのもとに、リオとメイファの二人が寄り添って俺を糾弾してくる。 「兄ちゃん、イリスのこと泣かすなよー」 「......お兄さん、ひどい。......お兄さんは、イリスの気持ちなんて、どうでもいいんだ」 ちょっ、ちょっと待て。 なんだお前らその、いつになく息のあった連携攻撃は。 さすがにこうなったら、俺も観念するしかない。 「ああもう、分かった分かった。イリスの膝枕で寝ればいいんだろ?」 俺が白旗を上げると、リオとメイファは「イェーイ!」と言ってハイタッチをした。 お前らなぁ......。 だがまあ、俺のことを心配してくれているのは確かなんだろう。 せっかくだから少し寝かせてもらうか。 「じゃあイリス、ちょっと膝借りるな。あとしんどくなったらすぐに言えよ?」 「全然へっちゃらです。先生に鍛えられてますから。どうぞお気の召すままに私をお使いください」 「お、おう」 俺はイリスの言い草にどこかしら危うさを感じつつも、イリスの膝に頭を乗せて横たわる。 枕代わりにしたイリスの膝は、ぷにっとした柔らかさと包容力を備えており、どこか母性を感じさせる心地よさがあった。 ちなみに海神様はとても大きく、甲羅だけでも小さな船ぐらいの広さがあるので、横になるぐらいはまったく問題がない。 「先生、ゆっくりお休みください」 イリスがその手で、俺の髪を優しくなでてくる。 それがどうにも気持ちよくて、そのせいもあってか、一気に眠気が襲い掛かってきた。 「何かあったら......すぐに起こしてくれ......イリス......」 「はい、先生。おやすみなさい」 俺はそうして、ゆっくりとまぶたを閉じた。 「ん......」 どれぐらい眠っていたのだろう。 俺はイリスの声で目を覚ます。 「今、何時だ......?」 日の上り具合を見るに、朝食どきぐらいの時刻のようだ。 三時間ほど、ぐっすりと眠ってしまったらしい。 ざざーん、ざざーんという波の音に、どこか遠くの方から、カキン、ガキンという武器が打ち合わされる音が重なって聞こえてくる。 俺はそれで、慌てて身を起こした。 頭を振って周囲を見回す。 俺の周囲の状況は大きく変わっていなかったのを確認して、ホッと安堵する。 俺だけでなく、リオ、イリス、メイファ、アーニャとも海神様の背の上にいるし、すぐ近くに敵がいるというようなこともない。 「兄ちゃん、あれ......!」 リオが指さした方角を見る。 その先には、一隻の中型船の姿があった。 あの大きさなら、乗組員は二十人から三十人ぐらいだろうか。 どこかの国の軍船か......? いや、そうだとするなら、単独でこんな海域を航行していることには不自然さを感じる。 となると海賊船だとか、そういう手合いだろうか。 ただ、その船が俺たちを攻撃してきているというわけでもなかった。 むしろ攻撃されているのは、その船であるように見える。 船を攻撃しているのは、サハギンの群れだ。 数十体という群れで海から船を攻めるサハギンたちは、数にモノを言わせて船へ、そして甲板へと取りつき、船上にいる人間たちと戦いを始めている様子だ。 船上の人間たちの中には勇者もいるのか、サハギンどもの攻勢にもそれなりに対抗できてはいるようだが、それでも苦戦の色のほうが濃厚であるように見える。 「兄ちゃん、どうしよう......?」 「......こっちから首を突っ込まなければ、スルーはできそう。......でも」 リオとメイファが、俺に判断を求めてくる。 俺はその二人を含め、全員を見回して伝える。 『承知した』 海神様は俺の要請に応え、船のほうへと向かって移動を始めた。 状況はよく分からないが、片や邪悪なサハギン族、片や人間の船だ。 それに俺たちは、サハギンどものアジトを探してここまで来たのだから、あのサハギンどもは重要な手掛かりともなりうる。 俺は子供たちに戦闘準備を指示し、自らも愛剣を手に取った。

133 Lesson 133 Plenty of tidal smell to the sound of wave bruising. I was on the back of the Sea God at dawn. The members remain the same, me, Rio, Illis, Mayfa and Anya. I have been on the sea for quite some time since I left the seafood sinus, the soot of the sea god. It should have been a little after dinner when I left, so I'd be on the back of Sea God for about half a day. It should be way offshore already. Looking back, it is in the middle of the Great Sea Plains as far as the land was invisible some time ago. "Phew..." On such a dawn sea, I yawn heavily. To the extent that I had a bit of a hypnotic sleep last night, I barely slept. I've thought it's just too glamorous for everyone to fall asleep, even though I'm being put on board by the Sea God, and sometimes I need to be vigilant because it doesn't necessarily mean when you won't be attacked by ocean monsters. All the kids, by the way, try to lean on me and get some sleep. God of the Sea's back is a treat, and I can't help it because it's not suitable for sleeping. By the way, Anya was trying hard to wake up at first, but just when it was getting late at night, she got upset, and when I said several times, "Never mind, go to sleep," she ended up sleeping with the other three. It's time to get used to being snagged from all sides by the beautiful girls in their swimsuits. Humans, they get used to everything. It's just, well, even though I took a nap, I'm just getting sleepy, too. When the kids wake up, I'll get some cohesive sleep, too. When I was thinking about that, the Sea God raised his laid back voice. "It's about time you saw the fishermen in the sea." Well, apparently, I don't have time for my sleep. I don't know if I've failed, but if I'm sleepy, the more I care about it, the less I get in the way of the fight. If it still doesn't work, it would be crisp if it were [Awaken] magic in front of you. I'm going to wake the kids. Rio and the others woke up, giving me a strangely colorful voice and creeping me out, but when I gently dropped my fist bones, I'd get my tongue out and show the naughty boy's face. As always, it's okay to be fucking cute, but I really want you to stop because if Mayfa, a brilliant kid in shape, makes that move to Rio, my reason for being eroded by drowsiness, is about to blow. Iris, on the other hand, wakes up and cares about me. "What... Doctor, you haven't slept in forever...? "No, I took a gentle nap. I'm a little sleepy, but I'm not that much of an obstacle to combat." "No, you can't! Have a proper rest, Doctor! The perimeter's on alert because we'll do it right." "No, but..." "No, go to sleep! Illis was rare and didn't give in hard work. And when Iris changes his posture and sits in the front seat, he lets him try to tap his own knee with Pompon, dyeing his cheeks. "Uh, Iris, is that... what? "It's a knee pillow. Teachers need a little comfort to rest." "... are you kidding me? "Why not? Or is that... teacher, like, my kind of knee pillow, no...? Ilis looks like he's going to cry a little, and he's going to peek at my complexion. No, no, no, of course I don't like it... I mean, the only thing that Illis is wearing right now is an example white school swimsuit, so a knee pillow in that outfit... No, I don't know what's going on, but I feel relaxed and dangerous. But then when I was confused, Illis started to cry in my eyes. "Ugh... Doctor, you don't like my knee pillow...? That's right, it's a shame that I should support my teacher... Gu Gu" "Yes, no, um, Illis...? It's not like that..." Besides, under a crying squirrel, two Rio and Mayfa lean over and strangle me. "Brother, don't make me cry about Illis." "... brother, terrible.... your brother doesn't care what it feels like to be an Illis" Hey, wait a minute. What the hell, you guys, that, uh, breathless coordinated attack? Exactly when this happens, I'll have to keep an eye on it, too. "Yeah, already, okay, okay. You know, you could just sleep on an Iris knee pillow, right? When I raised the white flag, Rio and Mayfa said, "Yay! I said," I made a high touch. I don't know about you guys... But, well, I'm sure you're worried about me. Why don't you let me sleep a little? "Bye, Iris, don't borrow your knees for a second. Can you tell me as soon as it gets any harder? "It's totally hectic. Because my teacher is working me out. Please use me as you please." "Oh, wow." I lay with my head on Iris' lap, feeling somewhere in jeopardy in Iris' grass. The pillow-substituted Ilis knee had a puffy softness and inclusiveness that made him feel somewhere motherly. By the way, the Sea God is so big, and even the Kohlo alone is about the size of a small ship, I have no problems at all as much as lying down. "Doctor, take your time off" Ilis is coming with that hand, and he's going to be nice to my hair. That made me feel so good, and because of it, drowsiness hit me all at once. "If anything happens... wake me up right away... Ilis..." "Yes, Doctor. Good night." I did that and slowly closed my eyelids. "Mmm..." I wonder how long I've slept. I wake up in the voice of Illis. "What time is it...? Looks like breakfast time to see how the sun goes up. He fell asleep for about three hours. The sound of a wave called Zan, Zan, can be heard from somewhere far away, overlapping with the sound of a weapon called Kakin, Kikin. So I woke up in a hurry. Shake your head and look around. Make sure everything around me hasn't changed dramatically, and I'll be relieved. Not only me, but Rio, Ilis, Mayfa and Anya are on the back of the Sea God, and there's nothing like having enemies right around the corner. "Brother, that...! See the direction Rio pointed. Ahead, there was a figure of a medium-sized ship. If it were that size, would the crew be about twenty to thirty? Is that some country's military ship...? No, if that's the case, I feel unnatural to be sailing these waters alone. So it's a pirate ship, or something like that? It just didn't mean the ship was attacking us. Rather, it appears that it is that ship that is being attacked. It is the flock of sahaggins that are attacking the ship. The Sahagins, who attack ships from the sea in a flock of dozens, let the numbers say things to the ships and to the decks, and they are starting to fight the humans on board. Some of the humans on the ship seem to be brave enough to counter the Sahaggins' offense, but still the colours of the struggle seem more intense. "Brother, what shall we do...? "... if I don't stick my neck in from this side, I think I can make it through.... but" Rio and Mayfa are coming to me for judgment. I'll look around and tell everyone, including the two of them. "Understood." The Sea God responded to my request and began moving towards the ship. I'm not sure what the situation is, but it's one or the evil Sahagin, one or the human ship. Besides, we came all the way here looking for Sahagins' Azitos, so those Sahagins can also be important clues. I instructed the children to prepare for battle and took the sword of love myself.

第142話 橋を渡り終えた俺たちは、さらにその先の洞窟を進んでいく。 洞窟はやはり緩やかな上り坂だ。 「ねぇマリーナ姉ちゃん、キャプテンミスリル、だっけ? その海賊が残した宝物ってどんなのなの? やっぱ金銀財宝ざっくざくってやつ?」 リオがそう声をかけると、マリーナは人差し指を振って答える。 「チッチッチッ。リオちゃん、そういうのはさ、何が待ってるか分かんないのがいいんだよ。最初っから宝が何なのか分かってたら興ざめだろ?」 「えーっ、でもさ、せっかく探し当てたのに、すんごいしょーもないものがだったらがっかりするじゃん」 「それも含めてのロマンなんだって、わかんないかなぁ。──あ、ひょっとしたらだけど、飲んだ人をたちまち目の前の人に惚れさせる、惚れ薬とかが入ってるかもよ?」 「「「えっ......?」」」 ざわっ......ざわざわっ......。 うちの教え子たちが、にわかにざわめき始める。 「そ、それって、誰にでも効くの!?」 「例えば、その、すごく鈍感な人とかにも......!」 「......リオ、イリス、落ち着いて。......逆にボクたちが、飲んだふりをするという使い方もある。......その場合、薬のせいだから何をしてもしょうがないと言える」 うん、なんだか知らんが、メイファ含めて三人とも落ち着こうな。 もしもの話だからな。 俺は苦笑しながら、子供たちに教えてやる。 「今までに見つかったキャプテンミスリルの宝だと、やっぱり大量の金銀財宝と、加えて強力なオリジナルの魔道具なんかがいくつか入っていたことが多いみたいだな。それが絵に描いたような立派な宝箱に入ってるらしいぞ」 「あーっ、ブレットさん、それ言っちゃダメだって! ......てか、海賊でもないのによく知ってますね。ひょっとして昔、海賊やってました?」 「やってない。勇者関連の雑学に、まあまあ興味があるってだけだよ」 伝説の海賊・キャプテンミスリルは謎の多い人物ではあるが、歴史上の著名な勇者としては、かなりの上位に名前があがる超有名人でもある。 生前はその時代最強の勇者とも目されており、彼が引き連れる仲間の海賊たちも、いずれ劣らぬ凄腕揃いだったという。 マリーナたちのような、宝探しと浪漫のために世界の海を股にかける海賊のイメージを作ったのも、このキャプテンミスリルだと言われている。 それ以前の海賊といえばもっぱら、罪もない船を襲って略奪を働く海の闇勇者のことを指すものだったとか。 と、そんな雑談をしながら洞窟を進んでいくと、やがて道が直角に左手へと曲がり、そこからは道がやや急な下り坂になった。 「みんな、足元が少し滑るから、気を付けろよ」 「「「「「はーい」」」」」 気が付くとマリーナとアーニャまでもが、うちの教え子たちに混ざって元気よく返事をしている。 だんだん遠足みたいになってきたな。 そうして俺たちが、長い下り坂の道を進んでいって、しばらくしたときのことだった。 ──カチッ。 何かのスイッチを踏んだような音が、先頭を進むマリーナの足元から聞こえてきた。 「ん......? 今、なんかカチッて鳴ったような......」 マリーナがそっと足を上げてみると、そこには周囲よりも少しだけ凹んだ地面があった。 自然地形ではなく、明らかに人の手の入った仕掛けを踏んでしまったという様子。 そして── ──ガゴォオオオオンッ! 俺たちが進んできた背後の道で、何か大きくて重たいものが、上から落ちてきたような音が聞こえた。 振り向いてみれば、その先にあったのは── なんともまあ、古典的な仕掛けであった。 「......おおーっ! ......お兄さん、見て、 メイファがキャッキャとはしゃいで、自分たちが下ってきた坂道の先を指さす。 ゴロゴロゴロゴロッ......! それは徐々に速度を上げ、やがて猛スピードとなって坂道を転がり落ちてくる。 ちなみにその大岩、どのぐらい巨大かというと、直径が俺の背丈の倍ぐらいある。 あれがあの速度で転がってきたら、住居の一つぐらいは容易くぺちゃんこにしてしまうだろう。 「ヤッバ、マジか......! ──って、ちょっとブレットさん、何やってんのさ! 早く逃げないと潰されるし!」 「リオちゃん、イリスちゃん、メイファちゃんも、早く!」 マリーナとアーニャが慌てて坂道の下へと駆け下りていこうとするが、俺たちが動こうとしないのを見て、戸惑っているようだった ちなみにメイファは、その二人に賛同の意志を示す。 「......うん、分かる。......お兄さん、逃げよう。......これは、慌てて逃げるのが礼儀」 「礼儀って、お前なぁ......。まあいいや。リオ、イリス、やるぞ」 「あいよ、兄ちゃん!」 「......ダメ、お兄さん、それはダメ......! ......せっかくこんないいものを用意してくれた、キャプテンミスリルに対して失礼......!」 懸命に抗議をしてくるメイファは無視。 俺とリオが転がってくる岩の正面に立つと、その後ろでイリスが魔法を発動させる。 リオの体に、イリスが行使した魔法の輝きが宿った。 そんなリオと俺の前に、猛スピードで大岩が転がり落ちてきて── ──ズドォオオオオオンッ! あたりに轟音が鳴り響く。 ぱらりと、天井から砂粒が落ちてくる。 俺とリオは、転がり落ちてきた大岩を、二人掛かりでガッチリと受け止めていた。 足元が少し滑ったが、どうにか一歩分ぐらい押されただけで、勢いを殺すことに成功した。 俺たちの後ろでは、口をパクパクとさせているマリーナとアーニャ。 「う、うっそぉ......!?」 「あ、あれを受け止めるとか......そんなこと......」 そして、ぽかぽかと俺を叩くのは、メイファである。 「......お兄さんの、バカ......! バカバカバカ......! ...... 一人だけ論点がおかしいのは仕様である。 メイファの言わんとしていることは分からんでもないが、残念ながら安全が第一である。 「マリーナ、アーニャ、もうちょっと上まで戻ってきてくれ」 「「は、はい......」」 だいぶ下まで駆け下りていたところを、俺の指示に素直に従って戻ってくる二人の勇者。 それを確認して、俺はリオに合図をする。 「ほいさ、兄ちゃん」 俺とリオは二人で大岩を持ち上げ、そのまま通路の下のほうに向かって投げ飛ばした。 再び轟音を立てて着地した大岩は、そのまま下り坂の道を転がり落ちていって、やがてざっぱーんと水音を立てて動きを止めた。 どうやらこの下り坂の先は、水場になっているらしいな。 「「ほえぇ......」」 マリーナとアーニャは、ぽかんとした様子で大岩のゆく末を見ていた。 こうして見てもこの二人、よく似ているな。 「やったね、兄ちゃん!」 「先生、やりましたね!」 「ん、二人ともよくやったな」 リオとイリスが片手をあげてくるので、二人と順番にハイタッチ。 それからいつものように頭をなでなでしてやると、二人はいつものようににゃんにゃんと懐いてきた。 とても可愛い。 「......ぐぬぬぬぬっ」 一方で、一人だけ悔しそうにしているのがメイファだった。 相変わらず、こだわりどころのよく分からないやつである。 ともあれ、そんな風にして俺たちは 大岩が飛び込んだ水場の少し手前には、右手側に横道があり、そちらに進んでいくことしばらく。 やがて── 「兄ちゃん、見て、外の明かり!」 リオが指さす道の先には、洞窟の出口らしきものが姿を現していた。

142 Chapter 142 After crossing the bridge, we go further into the cave. The cave is still a gentle uphill slope. "Hey, Marina, are you Captain Mithrill? What kind of treasure did the pirate leave behind? The gold and silver treasure? When Rio called, Marina shook her index finger and replied. "Shh shh shh, Rio, you don't have to know what's waiting for you. If you knew what the treasure was from the beginning, would you be interested? "Er, but, you know, I've been trying to find something, but if it's not that big, you'll be disappointed." "I don't know if it's romantic, including that. - - Ah, maybe it contains a love medicine that immediately makes the person who took it fall in love with the person in front of you. "" Eh...? Damn it... damn it... Our teachers start groaning. "Well, that works for everyone!?" "For example, even for such a dull person....! "... Rio, England, calm down.... on the contrary, there is a way for us to pretend to have drunk it.... in that case, it's because of the medicine that I can't help it." Yeah, I don't know, but the three of you, including Mayfa, are gonna calm down. I'm talking about something. I'll tell the kids with a bitter smile. "The Captain Mythrill treasure I've found so far seems to contain a lot of gold and silver treasure, plus some powerful original magic tools. It seems to be in a magnificent chest like the one pictured." "Ah, Mr. Brett, don't say that!... I don't know, even though you're not a pirate. Were you a pirate once? "I didn't do it. I'm only interested in brave miscellaneous studies." The legendary pirate Captain Mythrill is a mysterious figure, but he is also a super celebrity with a fairly high name as a famous brave man in history. He was also seen as the greatest brave man of his time, and all the pirates he brought with him were no less powerful. It is also said that it was the Captain Mythrill who created the image of pirates crouching the world's oceans for treasure hunting and romance, such as the Marinas. Before that, pirates were referring exclusively to the Dark Warriors of the Sea who attacked innocent ships and looted them. And as we went through the cave with such a chat, the road eventually turned right to the left hand, and from there the road went down slightly steeply. "Everybody, be careful, your feet are slipping a little." "" "Yes" " When I noticed, Marina and Argna responded well mixed with our teachers. It's starting to look like an excursion. That was when we went down the long downhill road for a while. - - Clicking. The sound of some sort of switch was heard at the foot of the leading marina. "Nh...? It just kind of clicked..." As Marina gently raised her legs, there was a slightly more concave ground than her surroundings. Apparently, it was not a natural topography, but a trick obviously obtained by people. And then... - - Gagoooooooooon! On the road behind us, I heard something big and heavy fall from above. Turning around, what was ahead - - What a classic trick. "... oh!... oniisan, look, the rolling rock (rolling stone)!" Mayfa sneaks in, pointing to the end of the ramp where they descend. Logo, logo, logo...! It gradually increases its speed, and eventually it rolls down the ramp at a fierce speed. Incidentally, the big rock is about twice the diameter of my back. If that rolls at that speed, one of the dwellings will easily become a mess. "Yaba, really...! - - What are you doing, Mr. Brett? We need to get out of here or we're gonna get crushed! "Rio, Iris, Mayfa, hurry up! Marina and Argna rushed down the ramp, but seemed confused to see us not moving. By the way, Mayfa shows his willingness to agree with both of them. "... yeah, I know.... niisan, let's run.... it's polite to run away in a hurry." "Courtesy is you.... Well, no. Rio, England, let's do it." "Aye, brother! "... no, oniisan, that's no good...!... I'm so sorry for the Captain Mithrill...! Ignore the hard-working Mayfa. When Rio and I stand in front of the rolling rock, England activates magic behind it. There was a magical glow in Rio's body, exercised by England. In front of Rio and me, the big rock rolled down at such a fast pace - - - - Zdhhhhhhhhhh! There are roars in the area. Slowly, the sand falls from the ceiling. Me and Rio were catching the rolling rock by the two of us. My feet slipped slightly, but I managed to kill the momentum by being pushed one step or the other. Behind us, Marina and Argna are squeaking their mouths. "Uhhhhhh...!?" "Ah, I'll catch that... that sort of thing..." And it's Mayfa who slaps me in the face. "... oniisan's idiot...! Stupid, stupid...!... the rolling rock (rolling stone) is not like the rolling rock (rolling stone) if you don't run away in a hurry...! It is the specification that makes the point that only one person is strange. I don't know what Mayfa is saying, but unfortunately safety is the first priority. Marina, Argna, come back up a little bit. "Ha, yes..." Two brave men who had been running down a long way and followed my instructions honestly. Confirm that and I'll signal Rio. Hoisa, brother Rio and I both lifted the big rock and threw it under the aisle. The big rock, which landed again with a roar, rolled down the downhill road and eventually stopped moving with a water noise. Looks like this downhill is a water field. "Hmm...." Marina and Argna looked at the end of the big rock in a gloomy manner. Even if you look at them like this, they're very similar. "You did it, brother! "Doctor, you did it! Nh, well done, both of you. Rio and England raise their hands, so they're in turn hitting high. Then, when they put their heads on as usual, they nostalgically missed each other as usual. Very cute. "... slimy" Meanwhile, Mayfa was the only one who seemed to regret it. As always, I'm not sure where to focus. Anyway, when we attack the rolling rock (rolling stone) in this way, we go further into the cave. Just in front of the water field where the big rock jumped in, there is a sidewalk on the right hand side, and it will take a while to go there. Eventually... "Brother, look at the light outside! Beyond the path Rio pointed to, something like a cave exit appeared.

第146話 戦闘が終了し、負傷者には治癒魔法をかける。 といっても、メイファの腹部への打撲傷のほかには、マリーナとアーニャが軽い怪我を負った程度だったが。 戦闘不能状態のサハギンバロンは、まずはロープでぐるぐる巻きに縛って拘束した。 その後にイリスが【 というわけで、尋問タイムだ。 「さて、話してもらおうか。お前らのアジトはどこにある。連れ去られた村の娘たちがいる場所を吐いてもらおう」 俺がサハギンバロンにそう問いかけると、四本腕のサハギンはその魚顔をゆがめて笑いはじめる。 「クッ......クククククッ......! そんなことのために、こんな場所まで俺たちを追いかけてきたのか? たった数人の人間のために、ご苦労なことだな。──だがお前たち、本当に我らに勝てるとでも思っているのか? 我らがアジトには未だ、我が二人の兄弟率いる百五十を超える兵と、そして何より『あのお方』がいる。貴様らに勝ち目などないぞ、あきらめろ。土下座して許しを請えば、今なら見逃してやらんでもないぞ?」 サハギンバロンは、こちらが聞いてもいない情報をべらべらとしゃべり始める。 虚栄心に突き動かされているようだが......まあ、根本的にアホなのだろう。 しかし拠点にいるサハギンの数は、百五十超えか。 数が半端だし、嘘をついているとは思えない。 となると確かに、こいつの言うとおり、少し厳しいかもしれない。 百五十超えのサハギンと俺たち六人が真っ向勝負でぶつかったら、戦闘の流れ次第ではあるが、数で圧殺される可能性も想定しうる。 加えて、こいつと同格のサハギンバロンが二体。 「お前は今、『あのお方』と言ったな。それはサハギンの魔王──『サハギンロード』のことか?」 複数のサハギンバロン率いる大部隊を統率しうるものとして、最も素直に想定されるものはそれだ。 サハギンの魔王──すなわち、サハギンロード。 サハギンバロンが瘴気によって変異し、大規模の群れを統率する強力な個体となったものだ。 魔王が群れを統率し始めると、その群れが世界征服じみた動きをし始める傾向があるので、最近のサハギンどもの動きが活発化した状況とも符合する。 「クククッ......。そうだ。あのお方こそは、いずれはこの海すべてを、いやこの世界すべてを統べる存在なのだ! 貴様らごときに敵うとでも思っているのか、バカめ!」 「............」 どうもある程度の知能を持ったモンスターというのは、自分たちの長である魔王を世界最強の存在と思いたがる習性があるらしい。 まあ魔王だけにサハギンバロンよりは遥かに強いはずだし、百五十超えのサハギンと同時に相手をしなければならないとするなら、舐めてかかれる相手でないのは確かだが。 「つーかあんたさぁ、今の自分の立場ってものを分かってないんじゃないのかい? こっちの手が滑ったらあんたの首が飛ぶんだから、あんまりイキらないほうがいいと思うけどね。──そうは思わないかい?」 マリーナが海賊らしい獰猛な表情を見せ、戦斧の刃をサハギンバロンの首筋へと押し当てる。 サハギンバロンの顔がひきつった。 「ま、待て......」 「もう一度だけ問う。お前たちのアジトは──連れ去られた村の娘たちは、今どこにいる。答えろ」 俺が極力冷たい声で最初と同じ質問をすると、サハギンバロンの魚顔に怯えの色が浮かぶ。 「こ、答えたら、見逃してもらえるんだろうな......?」 「お前が嘘をついたりしなければな。いずれにせよお前には、その場所までついてきてもらうことになるが」 「クソッ......わ、分かった。だからその斧を引きやがれ」 「言い方~。あたいはさっき、立場をわきまえろって言ったつもりだったんだけど?」 「グッ......! ......は、話すから、その斧を引いてくれ......いや、引いてください。お、お願いします」 「おう、それでいいんだよ。素直になったね」 マリーナはニヤリと笑うと、サハギンバロンの首筋に当てていた戦斧を引いて、肩に担いだ。 サハギンバロンはホッと安堵の息を吐く。 そして俺たちが求めていた情報を口にした。 「......こ、この島の東にしばらく行ったところにある孤島だ。そこに俺たちのアジトがある。捕らえた人間の娘たちもそこだ」 サハギンのアジトには、このあとバロンに案内してもらうとして。 一通りの戦後処理と尋問を終えた俺たちは、お宝探索を再開した。 俺たちの目的はすでに済んだのだが、マリーナとの約束があるし、俺も子供たちもここで帰るというのでは生殺しだ。 ここまで来たら、お宝探索も最後までやり遂げたい。 拘束したサハギンバロンは、放っておくのも見張りを立てるのもいろいろと都合が悪いので、引っ立てる形で一緒に連れていくことにした。 まずは全員で、谷底の道の分岐から、左側の道の先へと進んでみる。 しばらく進んでいくと、反対側の先にあった光景と同じような風景に出くわした。 すなわち、谷底の道は断崖絶壁で行き止まりになっていて、行き止まりには大きな石の扉があり、その手前側にはサハギンが数体倒れているという光景だ。 だが少し違うのは、サハギンを押し潰す大岩は存在しない。 その代わりに、倒れたサハギンにはそれぞれ太矢が数本、深々と突き刺さっていた。 サハギンバロンを引っ立てていたマリーナが、その拘束した相手に言う。 「なんだい、向こう側でも罠に引っ掛かったのに、こっちでまたやられたわけ? あんたらも学習しないねぇ」 「グギギッ......! 頭上からの岩には気を付けていたんだ! 今度は真横の岩場から矢が飛んでくるなどとは思わんだろうが!」 「なるほど。キャプテンミスリルも意地が悪いね」 マリーナはくくくっと笑う。 まあサハギンたちも、ここまで来て何も手に入れられずに帰るというのも癪だから、少しでも何かを試してみたかったんだろうな。 さておき俺は、扉とその周辺を調べてみる。 すると石扉には予想通り、指輪を填め込めるようなくぼみが一つ。 また石扉の隣にプレートがあり、分岐の向こう側にあったのと同じ文面が書かれていた。 すなわち、『資格なき者は立ち去れ。さもなくば汝らに大いなる災いが降り注ぐであろう』だ。 「よし。マリーナかアーニャ、指輪を填めてみてくれ」 「分かりました。私が」 アーニャが自分の手指から指輪を外して、石扉のくぼみに填め込む。 すると向こう側のときと同じように、石扉とプレートが光る。 プレートの文章は、『汝、資格の片割れを示した。今一つも示せ。されば扉は開かれん』へと変わった。 「こりゃあ、イリスちゃんが言ってたのでドンピシャみたいだね。んじゃあたいが向こうに行って、指輪を填めてくるよ」 「分かった。──リオ、イリス、メイファ。何があるか分からないから、一応マリーナについていってやってくれ。向こうについたら、誰か俺の通話魔法具に連絡を頼む」 「「「はーい」」」 というわけで、マリーナ、リオ、イリス、メイファの四人、それとついでに引っ立てられたサハギンバロンが分岐の向こう側へと移動を開始。 しばらく待っていると、俺の通話魔法具にリオから連絡が来た。 『兄ちゃん、こっちも着いたよ』 「よし。じゃあ指輪を填めてみてくれ」 『うん、分かった。──マリーナ姉ちゃん、指輪お願い』 『オッケー。んじゃ、行くよ』 魔法通話具の向こうからマリーナの声が聞こえた、その次の瞬間── ゴゴゴゴゴッ......! 俺たちの前にあった石の大扉が、大きな音を立てて開いた。 また同時に、通話魔法具の向こうからも、同様の音が聞こえてくる。 『兄ちゃん、扉開いた!』 「こっちもだ。──だが扉の先に何があるか分からない。気を付けて進めよ」 『了解。兄ちゃんのほうも気を付けて』 「......ああ。そうするよ」 リオのやつ、一丁前のことを言うようになりやがって。 そして俺は、こっちの相棒であるアーニャが俺に向かってうなずくのを確認すると、二人で開いた石扉の奥へと踏み込んでいった。

146 Chapter 146 The fight is over and the wounded are healed. That said, apart from Mayfa's bruises to the abdomen, Marina and Argna suffered minor injuries. The Unstoppable Sahagimbalon was first tied to a rope wrap and restrained. Then Iris heals his abdomen with [Moonlight Healing (Moonlight Heel)] and wakes him with [Awakening (Awakening)]. So it's interrogation time. "Well, let's talk about it. Where are your giants? Let me tell you where the girls from the village were taken." When I ask Sahagimbalon that, the four-armed Sahagin starts laughing at the fish face. "Cumming... cumming... cumming...! Is that why you've been chasing us to this place? Thank you for your hard work on behalf of just a few people. - - But do you really think you can beat us? We still have more than 150 soldiers in Asia, led by our two brothers, and above all," The One. "You won't win, give up. Sit down and beg forgiveness, and you won't miss it now, will you? Sahagimbalon starts chatting about information we haven't heard. It seems to be driven by vanity... well, it's fundamentally stupid. But the number of Sahaguins in the base is more than 150. The numbers are halfway there, and I don't think you're lying. Well, he's right, it might be a little tough. If more than 150 Sahagins and six of us bump into each other in a straight match, it depends on the course of the battle, but we can also assume the possibility of being overwhelmed with numbers. Plus, two Sahagimbalons just like him. "You just said 'that guy'. Is that about the Sahagi Demon King, the Sahagi Road? One of the most honest assumptions that could lead a large unit led by multiple Sahagimbalons is that. The Sahagin Demon King, or Sahagin Road. The Sahagimbalon mutated by the mood and became a powerful individual to lead a large herd. As the Demon King begins to lead the herd, the herd tends to begin to move around the world, which is consistent with the recent revitalization of the Sahagi movement. "Ugh, uhh... Yes, he is the one who will eventually rule all of this ocean and, no, all of this world! You think you're the enemy, you idiots! ............ It seems that monsters with a certain level of intelligence have the habit of wanting to consider their leader, the Demon King, to be the most powerful in the world. Well, only the Demon King should be much stronger than the Sahagimbalon, and if you have to fight more than 150 Sahagins at the same time, I'm sure you're not the one to lick them. "I wonder if you don't understand your position right now. If my hand slips, your neck will fly, so I think it's better not to cum too much. - - Don't you agree? Marina shows a fierce pirate expression and pushes the blade of the axe against the neck of the Sahagimbalon. The face of Sahagimbalon touched me. "Wait..." "Just ask again. Where are the daughters of the village who were taken away from you? Answer me." When I ask the same question in my coldest voice, a frightening color appears on the fish face of the Sahagimbalon. "If I answer this, I guess you'll miss it...? "Unless you lie. Either way, you'll have to follow me to the place." "Shit... okay. So pull that ax." "The way I said it, I was going to tell you to stand down just now. "* giggle *!... I'll tell you what, pull that ax... no, pull it. Please." "Oh, that's fine. You're being honest." Marina laughed with a smile, pulling the axe that had been on Sahagimbalon's neck and holding it on her shoulders. Sahagimbalon exhales in relief. And he talked about the information we were looking for. "... this is an isolated island just to the east of this island. That's where we are. That's where the captured human daughters are." Asiatique of the Sahagin will take you back to Baron. After a single post-war process and interrogation, we resumed our treasure hunt. We've already done our job, but I have a promise with Marina, and I'm not going home with my kids. When you get here, I want to finish my treasure exploration. The captive Sahagimbalon was inconvenient to leave alone and keep watch, so he decided to take him with him in a lifting manner. First, let's all go from the branch of the valley bottom road to the road on the left. After a while, I encountered a scenery similar to the scenery I had seen earlier on the other side. In other words, the road at the bottom of the valley is blocked by a cliff wall with a large stone door and several sahaguins lying in front of it. But the slightest difference is that there is no big rock that crushes the Sahagine. Instead, there were several thick arrows poking deep into each fallen Sahagin. Marina, who was pulling up the Sahagimbalon, tells her captive. "Why, we got caught in a trap on the other side, and we got hit again? You're not gonna learn either." "Gggggggh....! I was careful with the rocks from above! I don't think the arrows will fly from the rock next to it! "I see. Captain Mithrill is also mean." Marina chuckles. Well, the Sahagins would have liked to try anything at all, because it was a shame to come here and go home without getting anything. Besides, I'll check the door and the surroundings. Then, as expected, there is one indentation in the stone door that allows the ring to be filled. There was also a plate next to the stone door with the same text written on the other side of the branch. That is, 'Leave the unqualified. Otherwise a great calamity will fall upon you.' "All right, Marina or Argna, try filling out the ring." "I see. I will." Argna removes the ring from her finger and fills the indentation of the stone door. Then the stone doors and plates glow the same way as on the other side. The text of the plate reads, 'Thou hast revealed a fragment of qualifications. Show me one too. Then the door won't open. " "Oh, that's what Iris said, so it looks like Dom Pisha. Then I'll go over there and fill out the ring." "Okay. - - Rio, England, Mayfa. I don't know what's going on, so just follow me to the marina. When I get there, somebody call my call magic kit." "" Yes. "" So Marina, Rio, England, Mayfa, and Sahagimbalon, who was then pulled up, started moving to the other side of the branch. After a while, Rio contacted my call magic tool. Brother, we're here too. "All right, then, fill out the ring." Yeah, I see. - - Marina, please give me the ring. Okay, here we go. The next moment I heard the voice of Marina from behind the magic equipment - - Goggggggggggggh...! The stone door in front of us opened with a loud noise. At the same time, you can hear the same sound from the other side of the call magic equipment. Brother, the door is open! Me too. - - But I don't know what's ahead of the door. Watch your step. " Roger, watch out for your brother too. "... ahh. I will." The one from Rio, he started talking about a long time ago. And when I saw my partner Argna nodding at me, I stepped into the back of the stone door that they opened.

第34話 木剣を片手に、リオが疾走する。 野生の動物もかくやというしなやかさをもって、自分よりも頭一個ぶんも大きな少年に向かって、果敢に立ち向かっていく。 相手──ジェイクのほうも、大型の銀狼を思わせる獰猛な敏捷性でリオに駆け寄ってくる。 その顔には、余裕の笑み。 常人の十数歩分の間合いなど、一瞬で詰まった。 接触の瞬間。 「もらった──【二段切り】!」 リオの剣が先に振るわれた。 得意の二連撃。 それを見たイリスとメイファが拳をにぎる。 「よし!」 「......とった。......リオの勝ち」 二人の目は優秀だ。 あのタイミングで、あの間合いで放たれた剣は、ジェイクの敏捷性をもってしても回避できない。 だから、あれで決まりだ。 ──そう見えたのだろう。 だが、実際に起こったことは違った。 「──おっと」 「なっ......!?」 ジェイクはその攻撃を回避し、リオは驚きの声を上げていた。 だが、すぐにジェイクの手がぬるりと伸びてきたので、リオは慌ててバックステップで回避する。 両者少しの間合いをとって、再び対峙する形になった。 ジェイクはへらへらと余裕の笑みを崩しておらず、リオは汗を浮かべている。 その出来事に驚いているのは、戦っているリオ本人だけではなかった。 「そ、そんな......」 「......どうして。......あんなの、よけられるはず、ないのに。......今、ありえない動きをした」 イリスとメイファもまた、驚きを隠せずにいた。 必殺の間合い、必殺のタイミング。 リオとジェイクの敏捷性はほぼ互角で、むしろリオのほうが少し速いぐらいなのだから、あれを回避できるはずがない── そう思い込んでいるから、二人は真相にたどりつけない。 俺はイリスとメイファに解説をしてやる。 「別にそう難しい話じゃない。──ジェイクのほうが速いんだよ、それも相当な」 その俺の言葉に、イリスとメイファが驚いて俺の顔を見てきた。 「そんなはずは......だってあの人、私たちと同じぐらいか、少し下ぐらいの強さで......」 イリスがそう言いながら、ハッと何かに気付いたような顔をする。 メイファもまた、考えがそこに行き着いたようだ。 俺は腕組みをした格好で、その手に持った小石をいじりつつ言う。 「そういうことだ。三人とも、俺の強さは正しく見抜けなかっただろ。つまり──ジェイクはそのレベルに到達してるってことだよ」 ある一定以上の実力を持った勇者は、「自らの真の実力を隠す」スキルを獲得するのが一般的だ。 このスキルは特に意識していなければ、常に働く。 ゆえに上級の勇者の実力を、初見で見抜くのは困難だ。 そして傍で見ている上に俺から解説を受けたイリスとメイファはともかく、ジェイクと目の前で戦っているリオがそれに気付くことは、より難しいだろう。 「くっ......! どんな魔法使ったのか分かんねぇけど──奇跡だったら、二度はねぇだろ!」 リオは再び、ジェイクに突っ込んでいった。 【二段切り】【スマッシュ】と、持っているスキルを駆使して果敢に攻めていくが、ジェイクはそれをひょいひょいとよけ続ける。 そしてリオが何度目かの【二段切り】を放とうとしたとき、そのタイミングと起点を見切ったジェイクの手が、木剣を持ったリオの右手首をがしっとつかんだ。 「ひひひっ、捕まえたぁ」 「くそっ......! なんでだよ......!?」 リオは空いている左手で拳をにぎってジェイクに殴りかかろうとするが、それも同じように、ジェイクのもう一方の手で手首をつかまれてしまった。 ジェイクはべろんと舌を出して、リオに詰め寄っていく。 「さあ、どうするお嬢ちゃん? このままじゃ狼さんに食べられちまうぜぇ?」 「くっ......放せよっ!」 今度は蹴りを繰り出そうとしたリオだが── それよりもわずかに速く放たれたジェイクの足払いによって、リオは仰向けに転ばされてしまった。 「ひひひっ、クライマックス突入ぅ~」 倒れたリオに、のしかかるようしてマウントをとったジェイク。 尖った歯の並んだ口から長い舌を出して、ゆっくりと顔を近付けていく。 「さあいよいよピンチだ。頑張って抜け出してみろよぉ。じゃないと、大変なことになるぜぇ?」 ──と言っても、あの状態からリオの力で抜け出せるわけもない。 筋力においても、ジェイクのほうが格上だ。 勝負は決まりだ。 俺は唖然とした様子で見ていたアルマに目配せをする。 それでハッと気付いた様子のアルマが、慌てて旗を上げた。 「し、勝負あり! ジェイクの勝ち! 両者離れて!」 だがその審判の判定を聞いたジェイクは、不服そうに口を尖らせる。 「えーっ、有効打が入らないと決着じゃないんだろ。まだ打撃入ってないじゃん。アルマ先生、それって嫉妬?」 「屁理屈言わない。審判のあたしが勝負ありって言ったら勝負ありなの。さっさと相手から離れて」 「はーい。ちぇっ、いいトコだったのにさ」 しぶしぶといった様子で、ジェイクはリオから離れていく。 そして去り際に、砂利の上に横たわったままのリオを尻目にして、一言。 「じゃ、またいつか遊ぼうぜ、子猫ちゃん。そんときは最後までヤり合いたいね。ひひひっ」 そしてジェイクは、ひらひらと手を振ってリオのもとから去っていった。 ジェイクはそのまま、サイラスのもとへと向かう。 サイラスはさっそくジェイクをほめ称えた。 「いやぁ素晴らしい! さすがはジェイクくんだ。キミのような者こそ勇者の中の勇者だよ。お父上にも、キミの功績をしっかりと伝えておくことにしよう」 「そりゃ助かりますね。何しろうちはまあまあの貧乏貴族なんで、家庭教師に優秀な勇者をつけてもらうだけでも大変なんすよ。勇者学院の授業なんてレベルが低すぎるか──たまに優秀な教師がいても、 そう言ってジェイクは、俺のほうをチラとだけ見てきた。 サイラスはそれに気付いているのかいないのか、「うむうむ、そうだろう、そうだろう」などと機嫌よさげにうなずいていた。 俺はそれをぼんやりと確認しつつ、自分は自分の仕事をすることにした。 リオのもとまで歩み寄る。 川のほとりの砂利の上に、負けた姿のまま横たわったリオは、腕で顔を隠すようにしながら、泣いていた。 「リオ、立てるか」 俺はそう言って手を差し出すが、リオはしばらく、ひっくひっくと泣いたまま動かなかった。 イリスとメイファも心配そうにリオの姿を見つめていたが、さすがの妹たちも、何を言っていいか分からないという様子だった。 俺は少し卑怯かと思いつつも、その言葉を口に出す。 「リオ──強くなりたいか?」 するとリオは、腕で顔を隠したままの姿で、こくんとうなずいた。 ──生徒に失敗や敗北の経験を積ませることの是非は、一概には決めつけ難いものがある。 それまでに成功体験をどれだけ積んでいるかや、あるいは本人の負けん気の強さなどによっても、それがプラスに働くかマイナスに働くかは、大きく変わってくるだろう。 でも俺は、リオならこの経験をバネにできるだろうと信じた。 ......いや、本当は「信じた」なんて格好いいモノじゃない。 半分は成り行きだ。 俺は最後までリオに、ジェイクのほうが格上で、戦ってもまず勝てない相手だということを伝えるかどうか迷っていた。 それを伝えていたら、リオはどうしていただろうか。 戦うのをやめていたか、それとも── だがそんな「もしも」の過去は、もう存在しない。 あとはもう、未来に向かって進むだけだ。 「分かった。俺がリオを──リオたちを今よりもずっとずっと強くしてやる」 俺はそう言って、もう一度リオに手を差し出した。 リオも今度は、ためらいながらも、その手を伸ばしてくる。 「......あいつよりも?」 「ああ、ジェイクよりも、あいつらよりもずっと──この世界の誰よりも強い、世界最強の勇者にリオたちを育ててやる」 「......本当に?」 「本当だ」 「本当の本当に?」 「本当の本当に、だ」 「......分かった。オレ、兄ちゃんにオレの全部を渡すから。だから兄ちゃん──オレを強くして。誰にも負けないぐらいに、強く」 リオが俺の手を取って、つかんだ。 瞳いっぱいに悔し涙をためた顔で、俺を見つめてくる。 俺はリオを引っ張って立たせた。 立ち上がったリオは、ぐしぐしと服の袖で涙をぬぐう。 一方、イリスとメイファも、リオの隣に立って俺を見上げてきた。 「先生......私も、お願いします!」 「......ボクも、黙っているつもりはない。......バカにされた分は、やり返す」 二人の瞳にも、闘志が宿っていた。 俺は二人にも、うなずいてみせる。 「分かった。イリスもメイファも、俺が全員まとめて面倒を見てやる。手取り足取り特訓してやるから、三人とも覚悟しておけよ!」 「「「はい!」」」 少女たちの元気のいい返事。 その日、川のせせらぎの音を背景に、俺たちは熱血していたのだった。

34 Lesson 34 With a wooden sword in one hand, Rio walks. With the suppleness that wild animals are also cowardly, he stands resolutely against a boy perhaps a head bigger than himself. The opponent - Jake - also rushes to Rio with a fierce agility reminiscent of a large silver wolf. On that face, an extra grin. Stuck in a flash, such as a dozen steps between regular people. Moment of contact. "I got it - [Bifurcated]! Rio's sword was wielded first. A double hit I'm good at. Iris and Mayfa fisting when they saw it. "All right!" "... Taken....... Rio's Win" The two eyes are excellent. At that time, the sword unleashed in that time cannot be avoided with Jake's agility. So that's settled. - - I guess that's what it looked like. But what actually happened was different. "- Oops." "Become...!? Jake dodged the attack and Rio was shouting surprises. But soon Jake's hand grew lukewarm, so Rio panicked and dodged in the backstep. It took a few moments between the two and took the form of a confrontation again. Jake has not broken his nagging and spare grin, and Rio is sweating. The only person surprised by the event was not the fighting Rio himself. "Oh, no..." "... why not.... you know, you're not supposed to get hurt.... I just made an impossible move" Iris and Mayfa also couldn't hide their surprises. Special time, special time. Rio and Jake's agility is almost mutually reinforcing, rather Rio is a little faster, so there's no way we can get around that... That's what I'm assuming, so the two of us can't get to the truth. I'll give Illis and Mayfa a commentary. "It's not that hard to talk about. - - Jake is faster, that's pretty much it." Iris and Mayfa have looked at my face in surprise at my words. "That shouldn't be... 'Cause that guy, he's about as strong as we are, a little below..." He looks like he noticed something hah while Illis says so. Mayfa also seems to have got her thoughts there. I'm dressed in arms, teasing the pebble in my hand. "That's the thing. All three of you, you couldn't see my strength right. I mean, Jake has reached that level." Brave men with certain or more strengths typically acquire "hide their true strengths" skills. This skill always works if you are not particularly aware of it. It is therefore difficult to discern the strength of advanced brave men at first sight. And whatever Illis and Mayfa got commentary from me over watching beside them, it would be harder for Rio, who is fighting Jake in front of him, to realize that. "Ku......! I don't know what kind of magic you used, but... if it was a miracle, you'd never do it again! Rio, again, ran into Jake. [Double-cut] [Smash] and use the skills he possesses to attack him resolutely, but Jake keeps hitting it off. And as Rio tried to release several [binary cuts], Jake's hand, which cut the timing and origin, grabbed Rio's right wrist with the wooden sword firmly. "Hi-hi, I got you." "Damn......! Why......!? Rio tries to punch Jake with his fist with his empty left hand, but in the same way, he gets his wrist grabbed with Jake's other hand. Jake puts out his tongue and stuffs it to Rio. "Come on, what do we do, little lady? Wolf's gonna eat you like this, huh? "Come on... let go! Now I'm trying to kick some ass, Rio, but... By Jake's foot payment, which was released slightly faster than that, Rio was rolled over on his back. "Hihihihi, climax entry ~" To the fallen Rio, Jake took the mount so that he could rush. Slowly bring your face closer with a long tongue out of your pointy-toothed lined mouth. "Come on, it's finally a pinch. Good luck getting out of here. Otherwise, it's gonna be a big deal, huh? - Even so, there's no way we can get out of that state with Rio's power. Jake is better in muscle strength. The battle is settled. I glance at Alma, who was looking at me in a dazed manner. So Alma hurriedly raised the flag as she noticed. "And there's a battle! Jake wins! Get away from both of them! But Jake, who heard the verdict of the referee, pointed his mouth in dissatisfaction. "Eh, you're not settled until you get an effective hit. You haven't hit it yet. Dr. Alma, is that jealous? "I don't rationalize. When the referee says I have a fight, I have a fight. Just stay away from them." "Yes, it was a good one." Jake walks away from Rio, like a shabu-shabu. And when you leave, butt Rio while he's lying on the gravel, a word. "See you sometime, kitty. I want to fuck each other till the end. Hihihihihi." And Jake walked away from Rio with a flickering wave. Jake stays put and heads to Cyrus. Cyrus just praised Jake. "Hey, that's great! That's Jake. You are the brave of the brave. Let's keep your father well informed of your achievements." "That would help. We're a so-so poor aristocrat anyway, so it's just hard to get a tutor to put on a good brave man. I don't know if Bravery College classes are too low - even if you have a good teacher once in a while, it's loud how bravery works. I like Silas's idea that power is everything." That's what Jake's been looking at me for. Cyrus nodded in a good mood to see if he was aware of it or not, "Uh-huh, I guess, I guess," etc. I made sure it was blurry, but I decided to do my job. Walk over to Rio. Lying on gravel by the river, looking defeated, Rio was crying as he tried to hide his face with his arms. "Rio, can you stand?" That's what I say and I give him my hand, but Rio didn't move for a while, crying when I hit him. Iris and Mayfa were also looking at Rio worryingly, but even her sisters looked like they didn't know what to say. I think I'm a little cowardly, but I say the words. "Rio... do you want to be strong? Then Rio nodded kokun, looking as if he had kept his face hidden with his arms. - - There are certain things that are difficult to determine when it comes to giving students experience of failure or defeat. Depending on how many successful experiences you have by then, or the strength of your personal defeat, etc., it will change dramatically whether it works positively or negatively. But I believed that Rio would be able to spring this experience. ... No, it's not really a great thing to "believe" in. Half of it is done. I was wondering if I would tell Rio by the end that Jake was more of a fighter and he couldn't win first. If I had told you that, what would Rio have done? Did you stop fighting, or... But such a "if" past no longer exists. All we have to do is move on to the future. "Okay. I'll make Rio a lot stronger than he is now." That's what I said, and I offered Rio my hand again. Rio also now, hesitantly, reaches out for it. "... more than that guy? "Oh, much stronger than Jake, much stronger than them... than anyone in this world, I will raise the Rio's to the strongest brave men in the world." "... really? "True." "Really, really? "Really, really." "... ok. I'll give you everything I have. So, brother... make me stronger. Strong enough to beat no one." Rio took my hand, grabbed it. He stares at me with a face filled with eyes for remorse. I pulled Rio to make him stand. Rising up, Rio wets his tears with a gutter and a sleeve of clothes. Meanwhile, Iris and Mayfa have also stood next to Rio and looked up to me. "Doctor... Me too, please! "... Neither am I going to keep my mouth shut.... for being fooled, I'll do it again" In both eyes, too, there was a fighting spirit. I'll give you both a nod. "Okay. Iris and Mayfa, I'll take care of them all. I'll give you a hands-on training, so be ready for all three of you! "" "Yes! A healthy reply from the girls. That day, against the backdrop of the sound of the river's spirals, we were bloody.

第18話 甘かった。 俺はすぐにアルマにかけ直したのだが、出てくれない。 何度もかけ直したが、出てくれない。 やがて俺はあきらめた。 終わった......。 俺の人生、すべて終わった。 こうなったら、元凶となったメイファだけでも道連れにして山に埋めてやろうか、などと考えながら自宅で教え子たちとともに夕食をとり、風呂に入り、リビングで今後のことをぼんやり考えていたとき── 通話魔法具が鳴った。 俺は慌ててそれを取り出す。 相手先には「アルマ」と表示されていた。 俺は一も二もなく通話を受けた。 「──アルマ先生、聞いてくれ! あれは誤解なんだ!」 『......ほーん、誤解ね。あたしを捨てて僻地に行った男が、新天地で教え子に手を出してよろしくやっていると知ったあたしは、とてもショックだったんだけど? 一応言い訳を聞きましょうか』 アルマの声は冷たかった。 彼女の言っている文脈が思っていたのと違う気がして、お前は俺の元カノか何かかと突っ込みたい気はしたのだが、そんなことを突っ込める雰囲気でもなく。 俺は必死に説明した。 包み隠さず、本当のところを誠心誠意説明した。 するとやがてアルマの声が、理解の色を帯び始めた。 ふんふんと言って聞いていた元同僚女性教師は、俺がひと通り説明したあと、こうまとめてきた。 『えーっと......つまりブレット先生は今、三人の超絶可愛い美少女な教え子たちと甘い共同生活をしていて、その子たちにメロメロであると。ただし手は出していないと、そこだけは信じろと、そういうことですか』 「......甘い共同生活、というあたりに誤解が残っているのと、メロメロの意味合いがだいぶ違う気もするが、まあ概ねそういうことだ」 俺がメロメロなのは彼女らの才能に、である。 そこのところを間違えないでいただきたい。 いやまあ、リオもイリスも、なんならメイファもすごく可愛いとは思うが。 それはそれ、これはこれだ。 教師と教え子の範疇を抜けてはいない......と思う。 そんな一方で、通話魔法具ごしのアルマの声は、何やら拗ねたような様子だった。 『ふーん。こっちは超絶美少女じゃなくてわるぅございましたね。ブレット先生は、ピッチピチの若い子じゃないと興味がないんですね』 「いや待て、んなこと一言も言ってねぇだろ。お前まで俺をロリコン呼ばわりかよ」 『けっ、ババァですみませんね』 「あの、アルマ先生まだ二十二歳ですよね? っていうか、怒ってるポイントおかしくね?」 『ふーんだ』 通話魔法具ごしの声だけで、アルマが頬をぷっくりと膨らませて拗ねている姿が、如実に想像できてしまう。 しかしこの元同僚女性教師が、何に拗ねているのかがさっぱり分からなかった。 俺の不徳に関して、倫理的なことを責められるのなら分かるのだが......謎だ。 と、そこでアルマが、声色を変えてくる。 『まあいいですけどね、信じましょう。付き合いも短くないし、話し方を聞けば今のブレット先生が嘘をついていないことぐらいは分かるから』 「すまん、助かる。今度会ったときにでも、食事の一つも奢るよ」 よかった......。 やはり持つべきものは、理解ある同僚教師だ。 食事ぐらいは奢って、しっかり機嫌を取っておかないとな。 『ふふふ、そのデートは楽しみにしておきますね、ブレット先生。──ところで、話変えてもいい?』 「おう。そっちで何か面白いことでもあったか?」 『うーん、面白くはないかなぁ......。あのね、サイラスさんが妙なことを言いだしたから、伝えておこうと思って』 「──妙なこと? サイラスのやつ、また何か良からぬことでも企んでやがるのか?」 およそ半月前。 王都の学院で理事長室に呼ばれて、ずいぶんと理不尽な茶番劇を演じさせられたあのときのことを思い出す。 『うん。あのね、「王都の学院の生徒たちを、社会科見学に連れていってはどうか」なんて言い出したんだ。で、それがもう上の方でほとんど通っちゃってるんだよ』 「社会科見学......? 何だそりゃ。現役魔王ハンターの仕事でも見学させるつもりか?」 だとしたら、見学される側の魔王ハンターにとっては甚だ迷惑な話だが、生徒たちにとっては実地を見ることができるのは有益かもしれない。 サイラスにしては面白いことを考えたな、などと思ったのだが── 『ううん、そうじゃないんだ。サイラスさんが生徒たちを連れて見学に行こうとしているのは──ブレット先生、あなたの職場に、だよ』 「......は?」 何を言われたのか、よく分からなかった。 「えっと......俺の職場に、王都の学院の生徒たちが社会科見学に来るってことは──ここに来るってことか?」 『うん、そういうこと』 ......冗談だろ? 「いや待て、そもそも何のためにだよ。だいたい王都からここまで片道で一週間もかかるぞ。往復で二週間だ。あり得ないだろ」 『ひとつずつ答えるね。まず「何のために」だけど、「いかに王都の教育環境が恵まれているかを生徒たちに再確認させることで、彼らの学習意欲を高めるため」だって』 「............」 吐き気のするような教育理論だった。 サイラスの考えそうなことだ。 「......で、わざわざ往復二週間もかけてここまで来るだけの意義は?」 『うん、そっちはね、日帰りで帰る方向性みたいだよ。つまり──転移魔法陣を使っての瞬間移動だね』 「なっ......!?」 アホか!? 転移魔法陣を使っての瞬間移動とか、一回使うだけで俺の月収が軽く吹き飛ぶぐらいの超高級移動手段だぞ? 転移魔法陣── それぞれの街や都市には普通、その「転移魔法陣」と呼ばれる魔法設備が必ず一つは用意されていて、それらの魔法陣同士では魔法を使った移動が可能になっている。 それを使えば、街から街へ、あっという間にひとっ飛びというわけだ。 ただその魔法陣を起動するには、途方もない量の魔力が要求されるため、通常、何十人もの勇者が集まって儀式を行い、一斉に魔力を注ぎ込む必要がある。 その結果として、転移魔法陣を使用しての移動には、凄まじい利用料が要求されることになるのだが── 「いやいや、そんなバカげた予算、どこから下りるんだよ」 『そりゃあまあ、サイラスさんだし? あと金持ちの家から協賛と出資を募って、その家の子たちを優先して連れていくみたいだよ』 「無茶苦茶だ......」 俺は大きくため息をついた。 だが何となく想像はつく。 サイラスや、その周辺の連中の考えることだ。 腐れたエリート意識──若いうちから、自分たちは平民出の勇者とは違うんだということを自覚させ、自尊心を獲得させようとかいう狙いもあるのだろう。 だが、サイラスの一番の狙いはといえば、おそらく── 「あいつ、そこまでして俺を潰したいのかよ......」 『そうみたいだね。ブレット先生を王都から追い出しただけじゃ、飽き足らないみたいでさ』 つまりは、俺をあざ笑いに来るというのが、サイラスの一番の目的なんだろう。 生徒たちに俺の惨めな姿を見せつけることで俺をへし折ってやろうと、そういうわけか。 あるいは同行する生徒たちに、自分に逆らったらこうなるんだぞと、自身の権力を見せつける目的などもあるのかもしれないが── 「......はぁ。何とも執念深いことで」 『本当にね。多分そっちにも、近いうちに通達が届くと思うよ』 「わかった。貴重な情報サンキューな、アルマ先生」 『いえいえ。あたしも久々にブレット先生と話せて楽しかったよ。──あ、そうだ。最後にひとつ──メイファちゃんだっけ? その子に伝言お願いできる?』 「......ん? メイファに伝言? 何だよ」 突然、アルマがひょんなことを言いだした。 俺が耳を傾けていると、アルマはさらによく分からない言葉を口にする。 『うん──「負けないからね」って、そう伝えておいて』 「はぁ......? 何だそりゃ」 『ふふん、鈍感なブレット先生には内緒。伝えれば、その子なら分かるよ。じゃあね』 「お、おい、アルマ──」 ──ピッ。 ツー、ツー、ツー。 ......切れやがった。 いったい何なんだ......? その後俺は、風呂上がりの姿でふらふらしていたメイファを見かけたので、声をかける。 「おい、メイファ」 「......ん。......お兄さん、さっきの人と通話、つながったみたいで、よかったね」 「聞いてたのか。あとお前が言うなお前が。──それより、その通話の相手がお前に『負けないからね』って伝えとけって言ってたんだが、意味分かるか?」 「......ふぅん。......そう、分かった。......面白い、受けて立つ」 メイファはそう言ってにやりと笑い、そのまま自分の寝室に引っ込んでいった。 ......本当に通じたよ。 わけ分かんねぇー。

18 Episode 18 It was sweet. I called Alma right back, but she won't answer. I called him back many times, but he won't answer. Eventually I gave up. Done...... My life, it's all over. If this happens, I'll just take Mayfa, the culprit, and bury him in the mountains, and so on, and I'll have dinner at home with my godchildren, take a bath, and blur about the future in the living room. The call magic device rang. I rush to take it out. The other party was labeled "Alma". I got a call without one or two. "- Dr. Alma, listen to me! That's a misunderstanding! '... hon, that's a misunderstanding. I was so shocked to find out that the man who dumped me and went to a remote place was doing his best with his hands on his goddaughter in New Heaven and Earth? Shall I ask you for an excuse?' Alma's voice was cold. I felt that the context she was talking about was different than I thought, and I thought you wanted to go in with my ex-girlfriend or something, but not the atmosphere where I could go in with that. I explained desperately. I did not cover it up and explained what was true in good faith. Eventually Alma's voice began to carry the color of understanding. The ex-colleague female teacher I was listening to said Hmph summed it up like this after I explained it exactly. 'Erm... I mean, Dr. Brett is now living sweetly together with three super cute little girl godchildren, and he says they are mellow on those kids. But if you haven't got your hands on it, you just have to believe it.' "... sweet cohabitation, I also feel that the meaning of mellow is a lot different from what there are misunderstandings around, but that's generally what I mean" It is to their talents that I am mellow. I want you to make no mistake there. No, well, I don't think Rio, Illis, or whatever Mayfa is, is so cute. That's it, this is it. I don't think I'm out of the range of teachers and teachers...... On the other hand, Alma's voice on the call magic device seemed somewhat obstinate. "Hmm. This wasn't a super beautiful girl, was it? Wow. Dr. Brett's not interested unless he's a pitch-pitch young lad. ' "No, wait, you didn't say a word. You're calling me Lorikon." "Oh, I'm sorry about Baba" "Um, Dr. Alma, you're only twenty-two, right? I mean, angry point. Weird, huh? "Hmm." Only the voice of the calling magic device can truly imagine Alma swelling her cheeks plumply and obstinately. But this former colleague female teacher had no idea what she was stuck with. I know if you can blame me for ethical things about my immorality... mystery. And so Alma, he changes his voice color. 'Fair enough, but believe me.' Cause dating isn't too short, and if you ask me how to talk, I know about the fact that Dr. Brett isn't lying right now. ' "Sorry, that helps. Next time we see each other, we'll have a meal to eat." Good...... After all, what you need to have is an understanding colleague teacher. I need to eat well and stay in a good mood. 'Hehe, I'll look forward to that date, Dr. Brett. - By the way, can I change my mind? "Whoa. Was there anything interesting over there? 'Um, I don't know if it's funny... You know, Mr. Cyrus said something strange, so I thought I'd tell him.' "- Weird thing? Cyrus, are you planning something else that's not good? Approximately half a month ago. I remember that time when I was called to the board chairman's office at the college in Wang Du to play a much more irrational farce. 'Yeah. You know, I said, "Why don't you take the students from Wang Du's college on a social studies tour?" So, that's pretty much what's going on up there.' "Social studies tour...? What the hell. You gonna give him a tour of active Demon King Hunter's work, too? If so, what an annoying story for the Demon King Hunter on the side to be visited, but it may be beneficial for the students to be able to see the field. I thought it was funny for Cyrus, but... 'Yeah, I'm not. Mr. Cyrus is taking the students on a tour... to your workplace, Dr. Brett. " "... what? I wasn't sure what they said. "Uh... do you mean that the students of Wang Du's college are coming to visit the social studies department at my place of work? "Yeah, that's the thing" ... Are you kidding me? "No, wait, what's it for in the first place? It'll take about a week from Wang Du to get here. It's two weeks back and forth. Impossible." 'Answer one at a time. "For what," he said, "to increase students' willingness to learn by reasserting how the King's Capital's educational environment is blessed." ............ It was a nauseating educational theory. That's what Cyrus is thinking. "... so what's the point of just bothering to take two weeks back and forth to get here? 'Yeah, you know, it sounds like a day trip home direction. I mean, it's a moment's journey using metastatic magic. " "Become...!? Are you an asshole!? It's a super fancy way to get around using a metamagic team for a moment or just one use and my monthly income blows up lightly, huh? Transfer magic forms-- Each city or city usually has one magic facility called its "Transition Magic Regiment," which allows them to travel with magic between themselves. Using it, you can fly from city to city in no time. However, to activate that magic formation, an uninterrupted amount of magic is required, so it is usually necessary for dozens of brave men to gather to perform rituals and infuse magic simultaneously. As a result, a tremendous royalty will be required to travel using the Transition Magic Formation. "No, no, that's such a ridiculous budget, where are we going down from?" "Well, that's Mr. Cyrus, isn't it? Looks like we're going to solicit sponsorship and funding from the rich house and take the kids first. ' "It's unscrupulous..." I sighed heavily. But somehow I can imagine. It's what Cyrus and the rest of the neighborhood think. Rotten Elite Consciousness - From a young age, I guess we also have the aim of making ourselves aware that we are not like the brave men out of the civilian population, and of gaining self-esteem. But when it comes to Cyrus' primary aim, it's probably... "He wants to crush me..." 'Sounds like it. I don't think I'm tired of kicking Dr. Brett out of King's Landing. " I mean, coming to bruise and laugh at me is probably Cyrus' primary purpose. Trying to break me by making my students look miserable, you know? Or maybe this is what happens to the accompanying students when they turn against themselves, and the purpose of showing them their power. "... ha. What an obsession." 'Really. Maybe you'll get a circular soon.' "Okay. Valuable Information Thankful, Dr. Alma" 'No. It's been a pleasure talking to Dr. Brett for a while. - Oh, yeah. One last thing. Mayfa? Can you give that kid a message? "... hmm? Message Mayfa? What the hell?" Suddenly, Alma said something. As I listen, Alma speaks words that she doesn't understand even better. "Yeah." Tell him, "I can't lose." "Huh...? What the hell." "Phew, don't tell Dr. Blunt. If you tell her, she'll understand. Bye. ' "Oh, hey, Alma--" - - Pip. Two, two, two. ... Damn it. What the hell...? Then I saw Mayfa fluttering in the bath, so I spoke. "Hey, Mayfa" "...... hmm.... brother, I think I just got through to someone earlier, and I'm glad you did." "Were you listening? And don't you say that. You. - Besides, the person on that call told you," I can't beat you, "you know what I mean? "... Phew.... Yes, I get it.... funny, take it and stand" Mayfa laughed and pulled herself straight into her bedroom. ... it really made sense. I don't know why.

むしろ一体すらも沈黙せず、三体は炎を振り払うと、怒り狂った様子で俺たちに襲い掛かってきた。 「メイファ、下がってろ!」 「......がってん承知」 メイファが素直に俺の指示に従い、後退する。 俺はメイファを守るように前に立った。 いや、俺の指示に従って下がったというのも違うんだろうな。 メイファはメイファで、自分で考えて動いている。 戦術的な考えで、俺と意見が合ったというのが実際のところだろう。 メイファは典型的な後衛型の勇者だ。 一応は槍も扱えるし身のこなしも悪くはないが、彼女の何よりの長所は攻撃魔法砲台としての魔法攻撃力の高さであると言える。 対して俺は、比較的オールラウンダーだが、どちらかというと前衛に立つのに適したステータスを持っている。 俺とメイファのコンビなら、適材適所で前衛と後衛に分かれるのが自然なわけだ。 「──シャアアアアアアッ!」 ヴァンパイアスポーンのうちの一体が、俺につかみかかろうと正面から突進してくる。 防御をかなぐり捨てた攻撃だ。 こっちを格上と見て、相打ちでも捕まえればいいと思っているのか。 そして捕まえられたあとに待つのは、あの鋭い牙による吸血攻撃だろう。 一方でその後ろから、別の二体のスポーンが左右に駆け出していく。 俺をスルーして、背後のメイファに襲い掛かろうという魂胆か。 なかなか厄介な動きをしてくるな。 全部を防ぐのは困難だ。 なら── 「【疾風剣】!」 ──ズババババッ! 俺はまず【疾風剣】で、正面から来たスポーンを切り刻んだ。 トータル十二の斬撃を受けたスポーンはそれで奥まで吹き飛び、壁に激突して動かなくなる。 まずこれで一体。 だが残り二体が、俺の左右を通り抜けてメイファを襲いに── 「──行かせるかよ!」 俺は【疾風剣】後の体勢の崩れを強引に振り切り、左手を伸ばして、俺の左側を通り過ぎようとしていたスポーンの手を引っつかまえ、無理やり床に引きずり倒した。 俺も体勢を崩して床に倒れるが、構わない。 そのスポーンは困惑してもがき、暴れようとするが、俺はそれを力づくで取り押さえにかかる。 俺がそう叫ぶと同時── 「......お兄さん、すごすぎ。......でも、おかげで楽に戦える。......【 十の火炎弾すべてが残る一体のスポーンに叩き込まれ、そのスポーンは燃え上がって床に崩れ落ちる。 これであとは、俺が取り押さえている一体だけだ。 家の奥からこれ以上のおかわりが現れるようなこともなさそうだ。 俺は自分が取り押さえたスポーンに向かって叫ぶ。 「おい、お前たちの親玉、真なるヴァンパイアはどこにいる! お前たちはなぜ、どんな命令を受けてここに隠れていた!」 「ガウゥウウウウウッ! グルァアアアアッ! ニンゲンの、ユウシャめっ......! アノお方こそが、このセカイを統べるのだ......! 下等なニンゲンフゼイが、チョウシにノるなぁっ......!」 じたばたと暴れながら叫び返してくるスポーンだが、有用な情報は喋ってくれそうになかった。 加えて少しでも油断すると、その牙で俺の体のどこにでも噛みついてこようとする。 下手な猛獣や魔獣の類よりも、よほどタチが悪い。 「チッ......しょうがねぇ、眠れ!」 俺は暴れるスポーンの頭部に向かって、闘気で強化した頭突きを三回叩き込んだ。 立て続けに頭部を打ち付けられたスポーンは、やがて全身の力をがくりと力を失った。 これで最後のスポーンも戦闘不能となった。 戦闘終了だ。 俺はスポーンから離れ、体についたほこりを払いつつ立ち上がる。 「ふぅっ......。スポーンから情報を得るのは難しそうだな」 「......お兄さん、すごい。......やることが強引というか、迫力がある」 メイファが感心したように言って、俺のもとに寄ってきた。 「まあな。お行儀よく戦うばかりが全部じゃないさ」 「......そういう強引さでお兄さんに迫ってこられたら、ボクも、どうにかなってしまうかも。......お兄さん、今度ボクに、そんな感じで壁ドンとかしてみてほしい」 「......あー、そういう話は、また今度な」 俺は苦笑しながらそう返す。 でもメイファの緊張感のない言葉が、なんだか愛おしかった。 ずっとシリアスな気持ちでいても、張りつめ続けた糸はたやすく切れてしまうから、こういうのはありがたいんだよな。 その後俺たちは家の中を散策したが、ほかにヴァンパイアスポーンが潜んでいる様子はなかった。 その代わり、奥の部屋にも土を詰めた棺桶が三つ、安置されていたのを発見した。 ヴァンパイアとそのスポーンは、「不浄なる土」を寝床とする。 そして一日に一度は「不浄なる土」のある場所で眠りにつかないと、彼らは徹夜状態の人間と同じようにどんどん弱っていく。 要するに、自分専用の布団でしか眠れないという制約を持った難儀なモンスターなのだ。 強い力を持つ一方で、いろいろと弱点や制約も多いのがヴァンパイアというアンデッドモンスターである。 ともあれ、家の中の確認を終えた俺はメイファを連れて、スポーンたちの棲み処だった住居を出ていく。 するとそこに、村人たちの避難誘導を終えたらしきイリスが戻ってきた。 イリスは俺たちの姿を確認すると、小走りで駆け寄ってくる。 「──先生! 中はどうでした? それにメイファも、大丈夫だった?」 「ヴァンパイアスポーン──ヴァンパイアに血を吸われて怪物化したやつが四体いた。でも全部倒したよ。メイファの援護もあって、無傷でな」 メイファが指でピースサインを作ってイリスに見せる。 少し自慢げな様子だった。 「ところでイリス、リオはどうした?」 俺はイリスに、そう問いかける。 周囲を見回しても、三姉妹の長女の姿が見当たらなかったのだ。 「あー、えっと......まだ、戻ってきてないですか? 私とは手分けして、逆方向にいた村の人たちを避難させていたはずなんですけど」 「ふぅん、なるほどな。まあしばらくすれば戻ってくるか」 そうしてしばらく待っていると、やがてリオも帰ってきた。 リオは遠くから俺たちの姿を見付けると、パタパタと駆け寄ってくる。 「お待たせ、兄ちゃん。......家の中の敵、どうだった?」 「おう。中にいたヴァンパイアの手下は、メイファと協力して全部バッチリ倒したぞ」 「へ、へぇー。中にいたの、ヴァンパイアの手下だったんだ」 「まあな。......しかしどうしたリオ? 何か気になることでもあるのか?」 「う、ううん、なんでもない。それより兄ちゃん、これからどうすんの?」 「あー......まずアレだな。倒したヴァンパイアスポーンの治療をしよう」 「......倒したモンスターを、治療するんですか?」 横からイリスが口を挟んでくる。 俺はそのイリスの髪に手を置いて、わしわしとなでる。 「ああ──イリスの出番だぞ」 「ほえ......? 私の出番......?」 俺になでられたイリスは、猫のように目を細めながらも、可愛らしく小首を傾げた。

Instead, the whole thing didn't even shut up, and when the three bodies shook off the flames, they attacked us in an angry way. "Mayfa, stay back! "... disappointment accepted" Mayfa honestly follows my instructions and retreats. I stood forward to protect Mayfa. No, I guess it's not the same thing that you followed my instructions to back down. Mayfa is Mayfa, she thinks and moves herself. It would be a tactical idea, and the fact that you and I had an opinion is the truth. Mayfa is a typical guard-type brave man. At first, she can handle spears, and she's not bad at what she does, but I can tell you that her most important advantage is her high level of magic attack power as an attack magic turret. By contrast, I have a comparatively all-rounder, but somewhat suitable status to stand avant-garde. If Me and Mayfa combine, it's natural to split it between the avant-garde and the rear guard in the right place. "- Shaaaaaaaa! One of the vampire spawns comes running from the front trying to grab me. It's a trumped-up attack. Do you think I should take a look at this one as superficial and catch him even in a fight? And waiting after he gets caught would be a bloodsucking attack by those sharp fangs. From behind it, on the other hand, another two spawns rush out to the left and right. How dare you go through me and hit Mayfa behind my back? Don't make quite a nasty move. It's hard to prevent it all. Then... "[Disease Sword]! - Zubabababa! I was first [sickness sword] and chopped up the spawn from the front. Spawn, who was slaughtered by a total of twelve, blows it deep with it, clashing against the wall and stopping moving. First of all, now what the hell. But the other two went through my left and right to attack Mayfa. "- Let me go! I forcefully shook off the disfigurement after [the disease sword], reached out my left hand, grabbed Spawn's hand as he was about to pass me on my left, and forced him to drag me down to the floor. I'm sick, too, and I fall to the floor, but I don't mind. The spawn gets confused and tries to get rough, but I'm going to take it down with my strength. And when I scream like that... "... brother, that's awesome.... but thanks to you it's easy to fight.... [Fire Arrow (Firebolt)]!" All ten flamethrows are slammed into the remaining integral spawn, whose spawn burns up and collapses to the floor. Now all I have to do is hold onto it. It doesn't look like any more chances are coming from the back of the house. I scream at Spawn, whom I have seized. "Hey, you big balls, where's the true vampire! Why were you hiding here under any orders! "Gauuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu! Ningen's, you yusha...! Ano, it's you who can control this sekai...! Bad Ningenhuzei, don't knock on the chowsi......! Spawn screaming back at me once and for all, but he wasn't going to talk to me about any useful information. Plus if I'm a little alarmed, I try to bite anywhere in my body with those fangs. How tougher than a bad beast or warcraft kind. "Chip... I can't help it, sleep! I thrashed my hardened head into Spawn's head three times. Spawn, struck in the head as he continued to stand, eventually lost his full body strength. This also made the last Spawn incapable of combat. The battle is over. I get away from Spawn and get up while I dust my body off. "Phew...... It's gonna be hard to get information from Spawn." "... brother, wow. ... what you do is forceful or compelling" Mayfa told me like she was impressed, and she stopped by me. "Sort of. Not all of them fought well." "... if your brother approached you with that kind of forcefulness, I could, too, figure it out.... brother, next time I want you to try a wall dong like that" "... uh, I'll talk about that another time" I give it back with a bitter smile. But Mayfa's unnerving words were kind of loving. Even if I've always felt serial, I'd appreciate this because the yarn I kept straining would be easily cut off. Then we strolled around the house, but there was no other vampire spawn lurking. Instead, he also found three earth-packed coffins resting in the back room. Vampires and their spawns make "unclean soil" their beds. And if you don't fall asleep once a day in a place with "unclean soil," they get weaker and weaker just like humans all night long. In short, it's a difficult monster with a constraint that you can only sleep in your own futon. While it has strong powers, many weaknesses and constraints are also the undead monster called Vampire. Either way, after checking the house, I'm taking Mayfa and leaving the residence where the Spawns lived. Then there, Iris returned, apparently after completing the evacuation induction of the villagers. When Iris confirms who we are, he comes running over on a small run. - Sir! How'd it go in there? And Mayfa, are you okay? "Vampire Spawn - There were four vampires who sucked blood and monstered him. But I knocked them all out. With Mayfa's help, it's intact." Mayfa makes a piece sign with her fingers to show it to Illis. He looked a little proud. "By the way, Iris, what happened to Rio? I ask Iris that. Looking around, he didn't see the eldest daughter of the three sisters. "Uh... haven't you come back yet? They were splitting up with me to evacuate the villagers in the opposite direction." "Huh, I see. Well, I'll be back in a little while." After waiting awhile that way, Rio eventually returned as well. When Rio spots us from afar, he rushes over with a patter. "Sorry to keep you waiting, brother.... enemies in the house, how was it? "Whoa. The vampire guys in there worked with Mayfa to bring it all down perfectly." "Heh. I was inside. I worked for a vampire." "Sort of.... but what's up, Rio? Something bothering you, too? "Ugh, yeah, it's nothing. More than that, brother, what are we going to do? "Uh... that's me first. Treat your defeated vampire spawn." "... are you going to treat the monster you defeated? Iris pinches his mouth from the side. I lay my hands on that Iris' hair and be mine. [M] "Oh, it's Iris's turn." "Yeah......? My turn......? Iris, who was made of me, tilted his little neck as he narrowed his eyes like a cat.

第138話 リオを捕まえた巨大触手は、しゅるしゅると巻きついていくと、そのままリオの全身をぎりぎりと締め上げはじめた。 「ぐぅっ......あ、んっ......く、苦し......い......! 兄、ちゃん......!」 全身にタコ墨を浴びたねちょねちょ状態で触手に締め上げられ、苦悶の声をあげるリオ。 リオぐらいのパワーがあれば自力で脱出できないこともないと思うのだが、慌てているせいもあってか、なかなかうまくいかないようだった。 まあ防具の防御力もあるし、リオ自身のタフネスもあるし、ジャイアントオクトパスの攻撃力もそこまでじゃない。 骨が折られるとか、そういう類の大ダメージをすぐに受けることもないはずだが── でも引率の先生としては、助けてやらないといけないよな。 独断先行したことに関するお灸は別途、あとで据えてやればいいだろう。 「しょうがない──少し待ってろ、リオ」 俺はジャイアントオクトパスと交戦距離に入ると、リオと同じように巨大触手の攻撃を次々と回避しながら、墨吐き攻撃にも注意しつつ間合いに踏み込んでいく。 そして水面を蹴って高く跳躍、リオを捕らえている巨大触手を攻撃範囲に捉えると、剣に闘気を流し込み── ──キィンッ! 闘気の残光を残した俺の斬撃が、リオを捕まえていた巨大触手の根元を、真一文字に切断した。 触手に捕らえられていたリオは、力を失った触手からするりと抜け落ちて落下。 俺はそれを追いかけ、空中で触手の残骸を蹴って素早くリオの落下地点に滑り込み、落ちてきたリオの体をどうにか抱きとめる。 「あ、ありがとう、兄ちゃん......でも、オレ......」 「リオさん、あなたにはあとでお話があります」 「他人行儀!? 待って兄ちゃんそれ一番こたえる! ごめんなさい! でも違うんだよ、オレ、兄ちゃんに強くなったところ見てもらいたくて、ちょうどいい敵だと思ったから、それで──」 「分かった分かった。言い訳はあとで、説教部屋で聞くよ──っと、危ねぇ」 さらに襲い掛かってくる巨大触手の攻撃を、俺はリオを抱えたまま船のほうに向かって大きくジャンプしてかわす。 そして触手の攻撃射程から離れたところで、【 リオは水浴びをした犬のようにぶるぶると全身を振って、水気を払う。 アイドル衣装型の防具はいまだにしっとりと濡れてリオの体に張り付いているが、一応、全体的には綺麗になった感じだ。 「説教はあとだ、リオ。まずはあいつを倒すぞ。今度こそ勇み足を踏むなよ」 「う、うん、兄ちゃん! 今度こそちゃんとやるから......!」 俺とリオは、並んで剣を構える。 そこに向かって、ジャイアントオクトパスの巨体が、ざあざあと波をかき分けて接近してきた。 背後にはマリーナの海賊船がある。 これ以上接近されると、船が損害を負いかねない。 その前にちゃちゃっと退治しないとな。 「いくぞ、リオ」 「うん、兄ちゃん!」 二人でぐっと体のバネを溜め、飛び出そうとするが── 「......ちょっと待って、二人とも。その前に、一発撃たせて。......右手から【 背後から眠たそうな声が聞こえたかと思うと、俺とリオの間を一羽の火の鳥が駆け抜けていった。 それは迫りくるジャイアントオクトパスの本体に直撃、その全身を炎上させる。 メイファによる援護攻撃だ。 なお、たいていのモンスターなら一撃必殺の【 しかし着実に大ダメージは与えたし、一瞬の怯みも見せた。 俺はそのタイミングで、再びジャイアントオクトパスの間合いに踏み込んでいく。 同時にリオも動いていた。 少女が水の上を疾走する速度は、俺とほぼ互角──滑空飛行する海鳥のそれよりもはるかに速い。 俺は左手側から、リオは右手側からという、同時での接近。 俺とリオの動きに気付いたジャイアントオクトパスが、慌てて巨大触手を振り回してくる。 だが二人を相手にした攻撃は精彩を欠き、そもそも命中する攻撃でなかったり、どうにか当たるはずの攻撃も俺とリオは軽々と回避していく。 さらにジャイアントオクトパスは、リオ目掛けてその口から墨を吐くのだが── 「バーカ、二度も同じ手を食うかよっ!」 リオは相手の攻撃動作開始の段階から動きを見切って走り抜け、広範囲に撒かれた墨攻撃を余裕で回避する。 ズバシュッ! 触手の攻撃をかいくぐって本体に接近した俺とリオが、左右から同時に攻撃を放つ。 闘気の青い光をまとった二つの斬撃は、ジャイアントオクトパスの胴体を深々と切断した。 切断部の内側から、巨大タコの青い血液がじわりと染み出していく。 だが何しろ巨大だし、急所らしい急所が見当たらないモンスターだ。 ちょっとやそっと斬ったぐらいじゃ、そうやすやすと致命傷には至らない。 「行きます──【ダブルショット】!」 さらにイリス、メイファの追撃。 強力な攻撃が次々と命中していけば、さしもの巨大モンスターも苦しみ始める。 巨大触手がのたうち回る。 その近くにいる俺とリオは、迫りくる何本もの触手の動きを的確に見切って回避する。 「もう一発行くぞ、リオ」 「あいよ、兄ちゃん!」 「「──【疾風剣】!」」 ──ズババババッ! 今度は二人で大きく跳躍して、落下しながらの連続斬撃。 こちらは一撃あたりの威力は低めで、ジャイアントオクトパスの表皮も意外と分厚くて、これまたなかなか決定打を与えられない。 ちなみに一撃あたりの威力は、リオのそれより俺のほうがかなり深い。 リオはドワーフの名工ガルドンの剣を使っているとはいえ、俺の剣だって業物だし、何よりパワーで言えば俺のほうがまだだいぶ上だ。 『ちぇっ、やっぱ兄ちゃんのほうが強いかぁ......』 『当たり前だ。だからそう簡単に俺を超えようとするな』 『だって早く追いつかないと、兄ちゃんオレたちのこと、パートナーとして見てくれないじゃん』 『そりゃあ、お前......教え子だから、完全に対等の相棒ってわけにはいかないだろ。でもお前たちのことは、頼りにしてるさ』 『ホントかなぁ......。なーんか兄ちゃん、オレたちのこといつも子供扱いしてさ』 『それも実際に十歳近く年下なんだからしょうがないだろ』 『......オレたちのこと、ときどきエッチな目で見てるくせに』 『兄ちゃんのエッチー、スケベー、ロリコン。あーあー、兄ちゃんってオレたちの体にしか興味ないんだー』 『えっ、いや......ちょっ、待っ......そういう、わけじゃ......てか、そうじゃなくて......』 『あはははっ。冗談だよ、兄ちゃん。それより、さっさとこいつ倒しちまおうぜ』 『......お、おう。そうだな』 この勇者特有の思念対話の時間、およそ一秒。 落下しながら二人で【疾風剣】を放って着地、もとい着水するまでの間である。 だがその間に俺は、よくない汗をだらだらとかいていた。 リオの言う「冗談」というのは、一体どこからどこまでが冗談だったのか。 ひょっとして俺はすでに死に体で、教え子たちの気まぐれで生かされているだけの虜囚にすぎないのではないか。 真っ暗闇の中で、巨大な三人の教え子たちに玩具のように遊ばれている自分の姿が思い浮かんでしまい、ぶんぶんと首を横に振る。 ははっ......考えすぎだな。 ──その後、俺たちは四人での総攻撃を連続して叩き込み、やがてはジャイアントオクトパスの退治に成功した。 そうしてモンスター退治を終えて海賊船に戻ると── 船長のマリーナが魂の抜けたような半笑いで、「ハハハ......海の悪魔って、倒せるものなのね......」などと呆然とした様子でつぶやいていたのだった。 なおこの後、海賊船の独房を借りてリオには懇々と説教をしたのだが、エッチな目で見ていた問題のせいで、もうひとつ締まらなかった。 「兄ちゃん......オレ、お仕置きされるの......?」とか頬を染めて潤んだ目で言われると、説教のリズムが狂うのである。 この件から俺は、「教え子をエッチな目で見てはいけない」という、当たり前すぎて教師仲間の誰にも言えない教訓を得たのであった。

138 Chapter 138 The giant tentacle that caught Rio began to tighten up Rio's body as it wrapped around. "Guu... ah, nh... ku, painful...! Niisan...! Rio shouted anguish as his tentacles squeezed his body with octopus ink. I don't think I can escape on my own if I have as much power as Rio, but even if it's because I'm in a hurry, it didn't seem to work. Well, they have defensive powers, Rio's own toughness, and Giant Octopus's attack power isn't that great. I don't think they'll break bones or take such a huge damage immediately - - But as a teacher with a pull rate, you have to help him. You may want to set up a separate moxibustion on what preceded you. "I can't help it - - Hold on, Rio." As I entered the battle distance with Giant Octopus, I walked in time, avoiding the attacks of the giant tentacles one by one, just like Rio, while paying attention to the ink spit attacks. Then he kicked the surface of the water, jumped high, grabbed Rio's huge tentacle in the attack range, and poured a fighting spirit into the sword - - - - Quinn! My slashing, which left behind the remnants of the fighting spirit, cut the root of the giant tentacle that had captured Rio into a single letter. Rio, caught by the tentacles, slipped out of the powerless tentacles and fell. I chased it, kicked the tentacle wreckage in the air, quickly slipped into Rio's drop point, and managed to hold Rio's body as it fell. "Ah, thank you, brother... but I..." "Mr. Rio, we need to talk to you later." "Behaviour of Others!? Wait, brother, that's the best! I'm sorry! But no, I wanted my brother to see where I got stronger, and I thought he was just the right enemy, so - -" "Okay, okay. I'll hear the excuses later in the sermon room - - It's dangerous." I hold Rio and jump toward the ship to avoid further attacks from the giant tentacles. And away from the tentacle's attack range, using the magic of [Purified Water (Purification)], Rio washed away the ink from his body. Rio shakes his whole body like a dog in the water and wipes out the water. Idol costume armor is still moist and wet and stuck to Rio's body, but overall it feels clean. "The sermon is over, Rio. Let's take him down first. Don't step on it this time." "Uh-huh, brother! I'll do it right next time....! Rio and I stand side by side with our swords. Towards it, a giant giant octopus approached, stirring up waves. Behind it is a Marina pirate ship. If we get any closer, the ship could be damaged. We need to get rid of him before that happens. Let's go, Rio. "Yeah, brother! Both of us tried to accumulate springs and jump out - - "... wait a minute, both of you. Before you do that, let me shoot you.... from the right hand [Flame Arrow (Firebolt)], from the left hand [Flame Arrow (Firebolt)], combine - - [Phoenix Arrow]!" I thought I heard a sleepy voice from behind, and a fire bird ran through between me and Rio. It strikes directly at the body of the approaching Giant Octopus, burning its entire body. It's a Mayfa backup attack. Most monsters have a special [Phoenix Arrow], but because the opponent is the opponent, that's not the case. But steadily inflicted huge damage and showed a moment of fright. At that time, I'll step back in time for the Giant Octopus. At the same time, Rio was moving. The speed at which a girl rushes over water is almost mutually reinforcing - much faster than that of a gliding seabird. I approached simultaneously from the left hand side and Rio from the right hand side. Giant Octopus, who noticed Rio's movements with me, rushed around with a giant tentacle. However, the attack on both of them was lacking in excitement, and Rio and I easily avoided an attack that wasn't meant to hit in the first place, or that was supposed to hit somehow. In addition, Giant Octopus used Rio's eyes to exhale ink from his mouth - - "Idiot, I'll eat the same hands twice! Rio runs through the opponent from the start of their attack, avoiding a wide range of ink attacks. Zubash! Me and Rio, who approached the main body with a tentacle attack, simultaneously launched an attack from the left and right. Two slashing shots of fighting blue light severed Giant Octopus's torso deeply. From the inside of the cut, the blue blood of the giant octopus sprays out. But it was a monster that was huge and couldn't find a critical place. If you slash it gently, it will not cause fatal wounds. "I'm going - - [Double shot]! In addition, the pursuit of England's Mayfa. If powerful attacks hit one after another, your giant monsters will begin to suffer. The giant tentacles roll around. Nearby, Rio and I will accurately spot and avoid the upcoming tentacle movements. Let's go again, Rio. "Aye, brother! "- - Wind Sword ! - - Zubabababa! Now the two of us jumped big and fell in a serial slash. This one is less powerful per hit, and the Giant Octopus skin is unexpectedly thick, making it hard to hit again. Incidentally, I'm much more powerful than Rio. Though Rio uses the sword of Gardon, a Dwarf master, my sword is an industry, and above all, I am much better off with power. Eh, after all, my brother is stronger... Naturally. So don't try to exceed me so easily. " Because if we don't catch up quickly, you won't see us as partners. Well then, you... you're a teacher, so you can't be a totally equal partner. But I'm counting on you. " I don't know... I don't know, brother, you always treat us like children. " It can't be helped because I'm actually nearly ten years younger. "... sometimes you look at us with lewd eyes." Your brother's etchy, skatey, and lollicon. Ahhh, my brother's only interested in our bodies! " "Eh, no... hey, wait... that's not it... that's not it..." Ahahaha. I'm kidding, brother. Let's get rid of this guy. "... oh, wow. That's right. The duration of this heroic thought conversation is about a second. While falling, the two of them unleashed a [wind sword] and landed until they reached the water. But in the meantime, I was sweating badly. Where did Rio say "joke" came from? Perhaps I'm already a dead body, and I'm just a prisoner of my teachers' whims. In the darkness, I think of myself playing like a toy with three giant schoolchildren, and I swing my head sideways. Haha... you're thinking too much. - - Afterwards, we slammed the total attack of the four of us in succession and eventually succeeded in eliminating the Giant Octopus. And when I finished killing the monsters and returned to the pirate ship... The captain's marina smiled half as if she had lost her soul and snapped, "Hahaha... you can defeat the sea demon..." After that, I rented a pirate cell to preach to Rio, but I couldn't close another one because of the problems I saw with my naughty eyes. "Brother... are you punishing me...? The rhythm of the sermon goes crazy when I dye my cheeks and say it with moist eyes. From this matter, I learned a lesson that was too obvious to say to any of my fellow teachers: "Don't look at the teacher with lewd eyes."

第11話 「はっ......! い、いかんいかん」 俺は我を取り戻した。 あやうく才能に惚れて、リオ一人を愛してしまうところだった。 教師たるもの、生徒の才能のいかんで愛し方に差別をしてはいけない。 才能があろうがなかろうが、すべての生徒を全力で育ててやらなければ、教師失格だ。 俺は反省した。 ほかの二人の才能がどうあろうと、リオと同じく全力で育ててやるのだと自分の心に刻み込む。 そしてあらためて、リオ以外の二人の潜在能力も確認することにした。 俺は各自の記録紙に、落ち着いて、冷静に、目を通していった。 筋力 :A 敏捷性 :S 打たれ強さ:A 魔力 :C 水 :C 風 :C 土 :B 光 :C イリス 筋力 :B 打たれ強さ:B 魔力 :A 剣 :B 斧 :B 槍 :B 格闘 :B 水 :S 風 :B 土 :S 光 :S メイファ 筋力 :C 打たれ強さ:C 魔力 :S 剣 :C 斧 :C 弓 :C 火 :S 水 :A 風 :S 土 :A 光 :A 「──ほぎゃあああああああああっ!」 俺はひっくり返った。 俺に抱かれていたリオも一緒に床にひっくり返った。 「ぎゃあああああああっ!」 俺は床の上を転がる。 「うわああああんっ! 何すんだよ兄ちゃあああああん! 痛い痛い痛い痛い! 目が回るぅううううっ......!」 俺に抱かれているリオも一緒に床の上を転がった。 俺ともども、頭やら何やらをガンガン床にぶつける。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ......」 「ううっ......何なんだよ......なんでオレがこんな目に......」 やがて俺の驚きも落ち着き、俺は床の上で転がるのをやめた。 ちなみに俺の腕の中では、リオが何やら痛々しい様子で涙を流していた。 ──いやぁ、それにしても驚いた。 マジであり得ない。 超天才は、リオ一人ではなかったのだ。 イリス、メイファとも、才能の種類こそ違うものの、リオに匹敵するぐらいのド天才だ。 中でも、特に分かりやすい才能を持っているのがメイファだ。 魔力がSランクに、火属性魔法と風属性魔法もともにSランク。 典型的な攻撃魔法才能型の勇者を、そのままごっそり格上げしたかのような凄まじい資質の持ち主だ。 肉弾戦闘の資質はさほどではないが、それでも一部戦闘スキルに天才的な適性がある。 まさに怪物と言って差し支えない。 これに比べて地味と言えば地味なのがイリスであるが── いや、これを地味というのは、何かがものすごく間違っている。 イリスはあらゆる資質がBランク以上のスーパーオールラウンダー型で、特に突出しているのが魔力のAランクと、弓のAランク。 それに何より、水属性魔法、土属性魔法、光属性魔法がいずれもSランクという弾けっぷりだ。 この特性は、治癒魔法や補助魔法などにすさまじい才能を発揮するだろう。 つまり── 一言で言って、全員おかしい。 異常。 これは何だ、姉妹全員ってことは、生みの親の問題なのか? いや、親が優秀な勇者であれば子も優秀な勇者になるという説に対しては、否定的な見解もあったはずだが......。 まあ、今はそんなことはどうでもいい。 問題は、今俺の手元に、とんでもないダイヤの原石が三人も転がっているということだ。 こいつは責任重大だぞ......。 ていうか、俺がここに赴任してこなかったら、こいつらが発見されないまま、場合によっては飢え死にしていたようなこともありうるってことか? 全世界の、全人類の莫大な損失だぞそれ。 これに関しては、俺を左遷したサイラスよくやったと言わざるを得ない。 ──と、そんなことを俺が考えていると。 床の上でリオを抱いて横たわっていた俺を、上からメイファとイリスが覗き込んできた。 「......お兄さん、そのロリコンっぷりは、やりすぎ。......さすがのボクでも、ドン引きする」 「ね、ねぇリオ......大丈夫......?」 「お、オレ......もう......らめぇっ......」 ふと見ると、俺の腕の中でリオがぐるぐると目を回していた。 おや......? 「......あとお兄さん、周りを見るといい。......そして絶望して」 「んん......?」 メイファに言われて、俺はリオを手放して立ち上がり、周囲を見回す。 勇者ギルドにいるすべての男女が、俺のほうに注目して、ドン引きしている様子だった。 ちなみに女性魔王ハンターの一人が、壁の端っこでこちらをチラチラと見ながら、通話魔法具に向かって話しかけていた。 「はい、はい......あの、場所は勇者ギルドなんですけど......少女性愛者の男が一人、若い女の子三人を連れて......はい、それで、うち一人の女の子をこの場で手籠めにしようとして......」 「よし──リオ、イリス、メイファ。帰ろう」 社会的な危険を察知した俺は、三人の教え子を連れてすぐに勇者ギルドを出ようとした。 でもギルドの職員や魔王ハンターたちに取り押さえられた。 そのまま縛られて、街の詰め所まで連行させられた。 三人の教え子たちが呆れながらも証言をしてくれて、俺が詰所から解放されたのは、夕方を過ぎて暗くなり始めた頃のことだった......。

11 Lesson 11 "Ha......! Hey, why don't you" I got me back. I almost fell in love with talent and loved Rio alone. Don't discriminate between what you teach and how you love your students because of their talents. Talented or not, if you don't do everything you can to raise all your students, you're disqualified as a teacher. I reflected. Whatever the talents of the other two, I engrave them in my heart that I would do everything I could to raise them, just like Rio. And once again, I also decided to confirm the potential of two other people besides Rio. I looked calmly, calmly, calmly at my own record paper. Muscle strength: A Agility: S Strike Strength: A Magic: C Water: C Wind: C Sat: B Light: C Iris Muscle strength: B Strike strength: B Magic: A Sword: B Axe: B Gun: B Fighting: B Water: S Wind: B Sat: S Light: S Mayfa Muscle strength: C Strike strength: C Magic: S Sword: C Axe: C Bow: C Fire: S Water: A Wind: S Sat: A Light: A "- Ho, ho, ho, ho! I flipped. Rio, who was held by me, flipped to the floor with me. "Ghaaaaaaaa! I roll over the floor. "Whoa, whoa, whoa! Oh, my God, my brother. Oh, my God! Ouch, ouch, ouch, ouch! My eyes turn. Ugh...! Rio, held by me, rolled over the floor with me. Together, I'm gonna hit my head on the cancer floor. "Ha, ha, ha..." "Ugh... what the hell... why am I looking at you like this..." Eventually my surprise settled and I stopped rolling on the floor. By the way, in my arms, Rio was in tears looking somewhat painful. - Oh, hey, and I'm surprised. It can't be serious. The supergenius wasn't alone in Rio. Both Iris and Mayfa are so de genius that they are comparable to Rio, although it is the different kinds of talent. Among them, Mayfa has a particularly discerning talent. Magic is S-ranked, along with fire attribute magic and wind attribute magic. He is the owner of a tremendous qualities as if he had upgraded a typical attack magical talented brave man. Not as qualitative as fleshbullet combat, but still genius aptitude for some combat skills. That's exactly what I'd call a monster. Compared to this, it's Iris who's plain, but... No, plain this is something so wrong. Iris is a super all-rounder type with all qualities above the B rank, especially protruding is the A-rank of magic and the A-rank of bow. Besides, water attribute magic, earth attribute magic, and light attribute magic are all bounced off the S-rank. This trait will show even more talent for healing magic, auxiliary magic, etc. I mean... In a nutshell, they're all crazy. Abnormality. What is this, all the sisters, is it a matter of birth parents? No, there must have been some negative views on the theory that if parents were good braves, children would also be good braves... Well, I don't care about that now. The problem is that I have three hell of a diamond's raw stone rolling in my hand right now. This guy is a serious liability... I mean, if I hadn't been here on duty, it could have been like starving to death in some cases without these guys being discovered? It's a huge loss to all mankind in the world. With regard to this, Cyrus, you moved me left. I must say, you did well. - And that's what I'm thinking. Mayfa and Iris peered in from above at me as I lay holding Rio on the floor. "... brother, its lollicon full, too much.... That's just me, don't pull." "Hey, hey Rio... it's okay...? "Oh, me... no more... Lame..." When I looked at him, I was turning my eyes as Rio circled in my arms. Ooh...? "... and brother, you should look around.... and despair." "Hmm...? Mayfa tells me that I let go of Rio and get up and look around. All the men and women in the Guild of the Brave looked more attentive to me and donned. By the way, one of the female demon king hunters was talking toward the calling magic fixture, looking at this one as a flicker at the end of the wall. "Yes, yes... you know, the place is a brave guild... there's one girl sexuality guy and three young girls with him... yes, so, trying to cage one of our girls in this place..." "Okay - Rio, Illis, Mayfa. Let's go home." Sensing the social danger, I took my three godchildren and immediately tried to leave the Guild of the Brave. But they were seized by Alliance officials and Demon King Hunters. He was tied up as it was and forced to take him to the city's jar. The three godchildren gave their testimony in awe, and it was when I was freed from the stuffing that it started to get dark after the evening...

第77話 口から魂が抜け出た俺は、お空の彼方からどうにか帰ってきてから、慌てて着替えて応援の魔王ハンターたちのもとへと向かった。 二人の応援魔王ハンターは、宿の一階の食堂で軽食をとっている最中だった。 六人掛けの丸テーブルに座っているのは、一人は六十歳を超えているであろう老年男性、もう一人は筋骨隆々たる上半身を惜しげもなくさらした入れ墨入りの壮年男性だ。 老人は慌てて二階から駆け下りてきた俺を見て、白いひげを扱きながら言う。 「おう小童、朝っぱらから見せつけてくれるのぅ。ワシみたいなジジイを遠方から呼びつけておいて、なかなかやるではないか」 開口一番、言われたのはやはりそんなことだった。 俺は慌てて弁明を試みる。 「ち、違うんですよあれは。きっと何か誤解をされてます」 「何が誤解なもんかい。ベッドの上であんな綺麗な娘っ子を三人も侍らせておいて。あー、羨ましいったらないわ」 「いや、ですから......」 俺は一所懸命に言い訳を考えるが、何も思い浮かばなかった。 教え子たちが不安がっていたから添い寝した、などと事実を言ったところで客観的に通用するとも思えない。 ちなみに筋骨隆々男のほうは、俺を軽く一瞥しただけで、特に興味もなさそうにテーブルの上の肉を口に運び始める。 と、そこに── 「なぁ兄ちゃん、その人たち誰?」 「ひょっとして、応援の魔王ハンターという方々ですか?」 「......それは、今日の昼前頃に来るっていう話だった。......さてはあの情報、お兄さんを陥れるためのフェイクだった」 二階から俺のあとを追って、三人の教え子たちが階段を下りてきた。 みんなパジャマから着替えて、活動用の衣服だ それを見た老人が、喜色満面といった顔になる。 「おお、ほんに可愛らしい嬢ちゃんたちじゃのぅ。──ほれ、そこに席が余っておる。みんな座りなさい」 老人のその言葉に、リオ、イリス、メイファの三人は俺の様子を窺ってきた。 俺はがっくりと肩を落としつつ、三人に向かって「座ってくれ」という意志を込めてうなずく。 誤解を解くのを優先すると話がものすごくややこしいことになりそうなので、とりあえずその話はあとにしよう。 俺がうなずいたのを見て、三人の教え子たちは思い思いに席に着いた。 俺も空いた席に腰掛ける。 「ほっほっ、お主によう懐いておるようじゃの小童」 「......ええ、まあ。俺の教え子なんですよ、三人とも」 「んん? 勇者学院の教師とは聞いとったが、教え子を抱いとったのかお主。そりゃあまた──」 「ち、違います! その話はまたあとで説明しますので......。今は先に、お互いの自己紹介をさせていただいてもいいですかね」 「おお、そうじゃったな。あまりに衝撃的だったものじゃから、お互い初対面であることを忘れとったわ。ほっほっ」 老人は朗々と笑う。 どうも細かいことをあまり気にしなさそうな爺さんだな......。 ──というわけで、俺はまず自分の自己紹介をしてから、ついでリオ、イリス、メイファを順に紹介していった。 しかる後に、二人の応援魔王ハンターの自己紹介となる。 まずは老人のほうが口を開いた。 「ワシは主にこの国の南方で活動しておる魔王ハンターのマヌエルじゃ。見ての通りのジジイじゃが、まだまだそんじょそこらの若いもんに後れは取らんぞ。巷じゃあ“魔帝”マヌエルなんぞと大層な二つ名で呼ばれることもあるの」 「......“魔帝”マヌエル? ......それ、どこかで聞いたような」 メイファが首を傾げる。 俺はそんなメイファの疑問に答えてやる。 「勇者ギルドでメイファたちの勇者カードを受け取ったとき、リオが聞いてきただろ。世界最強は誰だって。そのときに俺が口に出したんだよ。──現存している勇者の中で、世界最強クラスの一人と呼ばれるのがこのマヌエルさんだ」 「「「あぁあああああーっ!」」」 三人の驚きの声が合唱した。 それを見た老人はご満悦の様子だ。 「ほっほっ。なかなか理想的なリアクションがもらえたのぅ。やたらと大層な二つ名も、そう驚いてもらえるならジジイとしては嬉しいわい」 「えっ......じゃ、じゃあ、もう一人のほうは......?」 リオがおそるおそる、もう一人──筋骨隆々男のほうを見る。 筋骨隆々男は、言葉少なに答えた。 「俺はオズワルド。世間では“武神”オズワルドなどとも呼ばれている」 「「「えぇええええええーっ!!?」」」 うちの子らがいつになく見事なリアクションを見せている。 こいつら普段驚かれる側だから、なかなか貴重なシーンだな。 イリスがぽかーんとした様子で聞いてくる。 「そ、それじゃあ先生......この世界で最強クラスと呼ばれている勇者の方が二人も、私たちの目の前にいるっていうことですか......?」 「おう、そういうことになる。俺も最初セドリックさんから聞いたときには驚いたよ」 「ヴァンパイアロードが出たと聞いちゃあ、今日は腰が痛いから行きたくないとは言えんからのぅ。そうじゃ嬢ちゃんたち、あとでちぃとワシの腰を揉んでくれんかの」 そう言って老人──“魔帝”マヌエルは、自分の腰をトントンと叩いてみせる。 だがそれを見たリオが、ふとジト目になった。 「......ねぇ兄ちゃん、そっちのムキムキのおっさんはともかく、この爺ちゃん本当に強いの? なんか心配になってきたんだけど......」 リオが世界最強クラスの勇者を前に、とんでもないことを言いだした。 俺は慌てて 「お、おい、リオ! あんまり失礼なことを言うな!」 「だぁってさぁ。これから世界がヤバいぐらいの大ボスと戦いに行くんだろ? 名前ばっかりすごくて実は弱かったですじゃヤバいじゃん」 それはそうなんだが......。 伝説級の勇者を前にこの物怖じのしなさは、子供の特権と言うべきなのかどうなのか。 そういえば俺も、数年前に魔王ハンターになったばかりの頃はこんな感じだった気もするなぁ......。 一方それを聞いた老人──自称“魔帝”マヌエルは、愉快そうに自分のひげを扱く。 「ほっほっ、勇ましいのぅお嬢ちゃん。なんなら一つ、お嬢ちゃんとワシとで『立ち合い』でもしてみるかの?」 「立ち合いって......武器抜いて勝負すんの? ここで?」 「いやいや、そこまでせんでもお主なら分かるじゃろ。文字通り、お互いに立って向き合うだけじゃよ」 そう言って老人は席から立ち上がり、食堂のカウンター前、広く空いたスペースのほうへと歩いていく。 「......? どういうこと?」 リオは不思議そうに首を傾げながらも、それに追随する。 そうして老人とリオ、二人が十歩ほどの距離を置いて、向かい合って立った。 老人は口を開く。 「じゃあ娘っ子、ワシに向かって全力で闘気をぶつけてきてみぃ」 「闘気を......? ああ、そういうことか。闘気をぶつけ合えば、だいたいの実力が分かるってことな」 リオは納得したようで、老人に向かってまっすぐに構えた。 肩幅に足を開き、腕は自然に下ろして、拳は軽く握る。 そしてひとつ深呼吸をしてから── 「──はぁっ!」 精悍な掛け声とともに、リオの闘気が解放された。 力の波動はびりびりと空気を震わせる。 何事かと見ていた宿の主人がびくりと震え、コップを取り落としそうになった。 闘気とは、勇者の超人的な能力の源となるパワーである。 勇者なら誰でも多かれ少なかれ持っているものだが、当然ながら能力の高い勇者ほど闘気の内包量は多い。 リオの闘気を浴びた老人は、「ほぅ」とつぶやいて興味深げな表情を浮かべた。 「これは見込んだ通り、たいした娘っ子じゃ。そっちの二人の娘も、お主と同等ぐらいの力を持っておるのじゃろ?」 「ああ。ちなみに兄ちゃんはもっと強いけどな」 「ほっほっ、分かっとる分かっとる。あの小童は、一目見ただけでワシとオズワルドの力を見抜いたようじゃからの。──さて娘っ子、今度はワシの番じゃ。しっかり踏ん張って耐えるんじゃぞ」 そう言って老人は、こちらもひとつ深呼吸。 そして、曲がった腰の後ろで両手を組んだ姿勢のまま── 「──ほっ!」 小さな掛け声とともに、莫大な闘気が解放された。 ──ゴォオオオッ! その力は、リオの闘気のそれを数倍にもした圧で、周囲を嬲る。 「う、あっ......!」 「......うぐっ......つ、強い......押される......!」 傍観者であるイリスとメイファが、ただ近くにいるというだけで気圧されていた。 俺も同様に、気を抜くと震えあがりそうなほどの力の圧を感じていた。 食堂に立った腰の曲がった小さな老人が、荒野に君臨する巨大な竜や巨人よりも遥かに強大な存在であると思えるほどの闘気圧。 一人“武神”オズワルドだけは涼しい顔をしていたが......。 傍観していた俺たちでさえ、そんな様子だ。 その闘気をまともにぶつけられたリオはというと── 「──うぁあああああっ!」 びくっと跳ねあがり、ついで腰砕けになってがくりと膝をつく。 それを見た老人──“魔帝”マヌエルが闘気の解放を抑えると、リオは震えながら床にうずくまった。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ......! な、なんだよ、これ......こんなの......こんなに......」 「ほっほっ。これがお主とワシの年季の違いというやつじゃ。才能があるからと自惚れるでないぞ。伸び盛りが天狗になってはもったいないからの」 そう言って“魔帝”マヌエルはリオの前まで歩み寄って、しわがれた細腕で少女の首根っこを軽々とつかんで持ち上げる。 猫のように持ち上げられたリオは、そのまま無造作に持ってこられてひょいと椅子に座らされた。 そしてマヌエル自身も椅子に腰かけ直す。 「いやしかし、寄る年波には勝てんでのぅ。昔はこんなもんじゃなかったんじゃが。──というわけで嬢ちゃん、あとでワシの腰、揉んでくれんかのぅ」 「あ、はい......ははは......」 リオは魂を抜かれたような目で、半笑いになっていたのだった。

77 Lesson 77 With my soul out of my mouth, I managed to get back from the other side of the sky and rushed to get dressed and come to the demon hunters of support. The two backup demon king hunters were in the middle of a snack in the dining room on the first floor of the inn. Sitting at a round table of six, one is an elderly man who would be over sixty years of age and the other is a tattooed, mature man who has sparingly exposed his musculoskeletal torso. The old man rushes down from upstairs. He looks at me and says as he handles his white beard. "Oh boy, you show it to me from the morning. It's hard to keep a crocodile from afar." Best of all, that's still what they said. I rush to try to clarify. "Chi, it's not. That's... There must be some misunderstanding." "What is the misunderstanding? Keep all three of those beautiful daughters on the bed. Uh, I don't envy you." "No, so..." I try so hard to think of excuses, but I can't think of anything. I don't even think it would work objectively when I said the fact that my godchildren were anxious to accompany me to bed, etc. By the way, the more musculoskeletal guy just glances at me lightly and begins to carry the meat on the table into his mouth without any particular interest. And there 's-- "Hey brother, who are those people? "Hey, are you guys called Demon King Hunters of Solidarity? "... That was about coming around noon today.... Now that information, it was a fake to fall for your brother" After me from upstairs, three godchildren came down the stairs. Guys, get dressed from your pajamas. It's for activities. An old man who sees it makes a face full of joy. "Oh, you're such a cute little lady. - - Look, there's extra seats there. Have a seat, everyone." To the words of the old man, three people, Rio, Illis and Mayfa, have been watching me. I nod with the will to "sit down" towards the three of you while I drop my shoulders disappointingly. Prioritizing solving misunderstandings is going to make the story so much easier, let's talk about it for now. Seeing me nod, the three godchildren took their seats thoughtfully. I'll sit in an empty seat, too. "Oh, boy, you seem to miss the Lord." "... yeah, well. He's my goddaughter, all three of them." "Hmm? I heard you were a teacher at the College of the Brave, but you held a godson. Well, then again..." "Chi, no! I'll explain that story later...... Can we introduce ourselves to each other first?" "Oh, that's right. It was so shocking that we forgot that we met each other for the first time. Ho, ho." The old man laughs in good spirits. Thank you. You don't seem to care much about the details... - - So I introduced myself first, then introduced Rio, Iris and Mayfa in turn. Later, however, it will be an introduction to the two supporting Demon King Hunters. First the old man opened his mouth better. "I am mainly Manuel, the demon hunter operating in the south of the country. As you can see, I'm not going to fall behind the youngsters there yet. Well, then," Demon Emperor, "Manuel. Sometimes it's called by two big names." "..." Demon Emperor "Manuel?... it's like I heard somewhere" Mayfa tilts her neck. I'll answer Mayfa's questions like that. "When you received the Mayfa's Brave Cards at the Brave Alliance, Rio would have asked. Who is the strongest man in the world? I put it in my mouth then. This Manuel is one of the most powerful brave men in the world." "" "Ahhhhhhh! Three surprised voices chorused. The old man who sees it looks happy. "Here. I got an ideal reaction. If it surprises me, I'll be happy as a jizzy person." "What... So, what about the other one...? Rio roughly looks at the other - the musculoskeletal man. The musculoskeletal man replied, with few words. "I'm Oswald. It's also known as Oswald the Martial God." "" "Yeah, yeah, yeah!!? My kids are showing brilliant reactions sometime. These guys are usually on the surprise side, so that's a pretty valuable scene. He asks me how Iris is pompous. "Well, then, Doctor... do you mean that both of the bravest men we call the most powerful class in this world are right in front of us...? "Ooh, that's what happens. I was surprised when Mr. Cedric first told me." "I heard the Vampire Road came out, because I can't say I don't want to go because my back hurts today. Well, ladies, why don't you rub my hips later?" That's what the old man - "Demon Emperor" Manuel - asks him to slap his hips with a ton. But when I saw it, Rio became a jerk. "... hey brother, is this grandpa really strong, anyway, your mukimuki old man? I'm getting worried about something..." Rio said something terrible in front of the most powerful brave man in the world. I get embarrassed in a hurry. "Oh, hey, Rio! Don't be too rude! "Well, come on. We're gonna go fight a big boss about the world sucks, right? You were so weak with all your names. You suck." That's true...... Is this fearlessness before the Epic brave supposed to be referred to as the privilege of a child? Speaking of which, I also feel like this when I just became a Demon King Hunter a few years ago...... On the other hand, the old man who hears it - calling himself "Demon Emperor" Manuel - handles his beard with pleasure. "Look, you're brave, young lady. What, do you want to 'stand up' with your daughter and me? "Standing together... are you going to fight without your weapon? Here?" "No, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no. Literally, we don't just stand up to each other." That being said, the old man rises from his seat and walks towards a large, empty space in front of the dining room counter. ...... What do you mean? " Rio leans his neck wonderfully, but follows it. So the old man and Rio, they stood about ten steps apart, facing each other. The old man opens his mouth. "Well, daughter, try to hit me with all your strength towards the eagle. No." "Struggle...? Oh, you mean that. If we bump into each other, we'll know more or less what we're capable of." Rio seemed convinced and set up straight toward the old man. Feet shoulder-width apart, arms naturally lowered, fists gently gripped. And after one deep breath... "- Ha! Along with a harsh hanging voice, Rio's fighting spirit was unleashed. The fluctuations of force shake the air with fright. The owner of the inn, who was looking at something, trembled terribly and nearly took off the cup. Struggle is the power that is the source of the superhuman abilities of the brave. Anyone who is brave has more or less, but naturally the more capable brave they are, the more struggling they are packed. The old man, bathed in Rio's struggle, gave an interesting look by crushing "ho". "As expected, this is a lot of daughters. Your two daughters have the same power as your lord, don't they? "Oh. Your brother's stronger, by the way." "Look, I'll take it. I'll take it. That kid seemed to have spotted the power of Washi and Oswald at first sight. - Okay, daughter, now it's my turn. Just hold on tight and hold on." That said, old man, take one deep breath here. And with his hands behind his crooked hips... "- Ho! Along with a small hanging voice, a huge struggle was unleashed. - Whoa, whoa! The power surrounds Rio with a pressure that multiplies that of his struggle. "Ugh...! "... Grr... two, strong... be pushed...! Iris and Mayfa, bystanders, were just barometric when they said they were nearby. Likewise, I felt so much pressure of force that I was going to tremble when I lost my mind. Struggling barometric pressure to the point where a crooked little old man standing in a dining room seems far more powerful than a giant dragon or giant who reigns in the wilderness. Only one "martial arts god" Oswald looked cool... Even us watching, that's how it goes. When Rio was struck by that struggle, "- Uh-oh! He jumps and then kneels as his back crumbles. When the old man who saw it - "Demon Emperor" Manuel - suppressed the liberation of the struggle, Rio shuddered to the floor. "Ha, ha, ha...! Oh, my God, this... this... this... so..." "Here. This is the difference between your lord and me in the season. Don't fall for it because you're talented. 'Cause it's a waste of time when stretching is a heavenly dog." Saying so, "Demon Emperor" Manuel walks up to Rio and gently grabs and lifts the girl's neck with his clever arms. Lifted like a cat, Rio was brought unconstructively as it was and then sat in a chair. And Manuel himself sits back in the chair. "No, but you can't beat the annual wave. It wasn't like this back in the day. - - So, miss, I was wondering if you could rub my hip later." "Oh, yes... haha..." Rio had a soul-drained eye and was half laughing.

第51話 ──side:リオ── 兄ちゃんに連れられて、イリス、メイファと一緒に宿屋を出た。 もう夜中だ。 兄ちゃんの背中を追って、夜道を歩いていく。 それにしても兄ちゃん、オレたちをどこに連れていくつもりなんだろう? まさか、いかがわしいことをするための宿屋とか......。 いやいやいや、あり得ないあり得ない。 何考えてんだオレ。 落ち着け。 変なことを想像したせいで、オレの顔が熱くなってる。 ぶんぶんと首を横に振っていると、メイファがそそっと寄ってきて、耳打ちをした。 「......リオ。......今、いかがわしい想像をしていた」 「──っ!? な、なんでわかるんだよ......!?」 「......にひひ、引っ掛かった。......カマをかけただけ。......リオは意外と、えっち」 「このやろう......! う、うっせーな! ほっとけよ!」 まったく......。 にしてもメイファのやつ、なんでこんなピンポイントなタイミングで、そんなカマかけを......? そこまで顔に出てたかな、オレ。 で、そんなオレたちのやり取りを、前を歩く兄ちゃんが少しだけ見て、ふっと笑う。 一瞬ドキッとしたけど、小声で話していたから、話の内容は聞こえてないはず......。 ちなみに兄ちゃんは、いつ見てもカッコイイ。 めっちゃイケメンだ。 髪はブラウンで、男性らしく短く整えられている。 瞳も穏やかな色合いの褐色で、その優しい目でいつもオレたちを見守ってくれる。 背はオレから見ると、少し見上げるぐらい。 大人の男性としては普通ぐらいかな。 太りすぎても痩せすぎてもいない、ちょうどいい体型。 体つきは引き締まっていて、ほど良く筋肉もついていて、いかにもプロの勇者──スポーツ選手って感じだ。 歳は見た目だけだと十七歳か十八歳か、そのぐらいに見える。 まさにカッコイイお兄ちゃんって感じの外見。 でもそれは童顔なだけで、本当はもう二十四歳とからしい。 ホントかよって思うけど、でもすごく大人っぽくもあるし、実際そうなんだろう。 あと当たり前だけど、兄ちゃんはすげぇ強い。 オレもだいぶ強くなったと思うけど、兄ちゃんにはまだ全然勝てる気がしない。 アドルフのやつも強かったけど、あいつよりもさらに、兄ちゃんのほうが絶対強い。 大人の勇者だから当たり前かっていうと、そうでもないみたいだ。 兄ちゃんと会ってからの一年間で、魔王ハンターとか村の守り手とかたくさんの大人の勇者に会ったけど、兄ちゃんほど強い勇者は一人もいなかった。 まあ兄ちゃん、いきなり抱きついてきて離さないとか、変なトコもあるけど......。 ていうか、最初に会ったときから、変な人だなって思った。 村の誰からも見捨てられてたオレたちを、なんでか分かんないけど受け入れてくれて、助けてくれて、面倒見てくれて、育ててくれた。 兄ちゃんがいなかったらオレたちどうなっていただろうって思うと、ぞっとする。 オレ一人じゃ絶対、イリスもメイファも守ってやれなかった。 兄ちゃんはオレたちの恩人で、カッコ良くて、ちょっと変だけど──やっぱ大好きだ。 いや、大好きなんて言葉じゃ表せないぐらい感謝しているし、もう兄ちゃんなしの生活なんて考えられないぐらい、オレもうずぶずぶに兄ちゃんにハマっちゃってる。 オレだけじゃない。 イリスやメイファもそうだ。 二人とも兄ちゃんのことが間違いなく大好きだし、むしろ三人の中ではオレが一番、兄ちゃんに惚れるのが遅かったぐらいだ。 で、多分だけど──兄ちゃんもオレたちのこと、好きなんだと思う。 自惚れだと思う? でもだって、そうじゃないと、あんなに抱き着いてきたり、抱き寄せて頭なでなでしてくれたりするかなって思うし。 でも兄ちゃん大人だから、オレたちのこと子ども扱いするし。 メイファとかすんげーきわどいアタックかけてるけど、はいはい分かった分かったって具合にいなされてるし。 オレたちが兄ちゃんを「好き」なのと、兄ちゃんがオレたちを「好き」なのとでは、きっと「好き」の種類が違うんだと思う。 でもそんなことは分かってて、オレたちはずっと兄ちゃんのことが好きでいる。 兄ちゃん、いつになったらオレたちのこと、対等に見てくれるのかな。 オレたちが、兄ちゃんと同じぐらいに強くなったら、とか......? それはまだまだ遠いよなぁ。 ──なんて思っていたら、いつの間にか目的地に着いたらしい。 オレはその建物を見上げる。 「ここ......今日の大会をやった、競技場?」 「おう。こっちこっち」 「う、うん、兄ちゃん」 なんで競技場......? イリスとメイファも首を傾げている。 でも兄ちゃんが競技場の中に入っていくから、オレたちもそれを追いかけた。 いかがわしい宿屋とかじゃなかったのは、安心したやら、ちょっと残念やらだけど......。 って待てオレ、なんで残念がってるんだよ! 今の無し、ノーカン! 兄ちゃんとそういうことするの期待したりなんか、全然してねぇし! してねぇからな! って、誰に言い訳してるんだオレ......。 だからメイファのやつに、えっちだとか言われるんだよ。 あーもう。 オレが心の中でそんなことをモヤモヤ考えていると── やがてたどり着いたのは、競技場のグラウンドだった。 兄ちゃんは、そこでオレたちに── リオ、イリス、メイファの三人を連れてやってきた、夜の競技場。 もちろん使用許可はあらかじめ取ってある。 俺はそのグラウンドで、三人の前に立った。 「......お兄さん、ここで何をする気? ......いかがわしいことをするなら、いきなり屋外、しかも三人同時にというのはどうかと思う」 メイファがいつものノリで、いつも通りのことを言ってくる。 その条件じゃなきゃありなのかよ、というツッコミをしたくなるが、そういうことをしていると話が進みそうにないので飲み込むことにした。 代わりに俺は、メイファたち三人に「道具」を渡していく。 それらの道具を見た三人は、一様に首を傾げた。 「先生、これ......今日の最強勇者決定戦で使った、木製の武器と魔道具ですか?」 イリスが聞いてくるので、俺は自らも同じものを装着しながら答える。 この辺の道具も、あらかじめレンタルしておいたのだ。 「おう。全員装着してくれ」 「え、なんでだよ兄ちゃん。今から模擬戦でもするの?」 今度はリオが聞いてくるので、俺は「まあそんなところだ」と言葉を濁しつつ答える。 リオたちは首を傾げながらも、俺の言うとおりに魔道具を装着し、木製の武器を手にした。 俺はリオたちから二十歩ほど離れた場所まで移動する。 三人と対峙するように、教え子たちのほうを向いて立った。 そして俺は、三人に向かって言う。 「卒業試験だ。三人がかりで俺を倒してみろ。ルールは大会のときと一緒──魔道具がノックアウトの警報を鳴らしたら退場だ」 俺の言葉を聞いた三人は、ぽかーんとした顔で突っ立っていた。

51 Lesson 51 - - side: rio - My brother took me out of the inn with Illis and Mayfa. It's the middle of the night. Follow your brother's back and walk down the night lane. And yet, brother, where are you taking us? No way, an inn to do something nasty...... No, no, no, it can't be. It can't be. What are you thinking? Me. Calm down. My face is getting hot because I imagined something weird. As he shook his head beside him, Mayfa pulled over softly and slapped him in the ear. "... Rio. ... Now I had a pretty imagination" "- Huh!? hey how do you know......!? "... hiccup, hooked up.... I just camouflaged it.... Rio is surprisingly, eh" "Let's do this......! Ugh, jerk off! Leave me alone!" Totally...... Even so, the Mayfa one, why are you making such a mess at such a pinpoint time...? I guess it was on your face that far, me. So, my brother walks in front of me and laughs all the time. I was thrilled for a moment, but I wasn't supposed to hear what the story was because I was whispering... By the way, brother, it's always cool to watch. He's so handsome. Her hair is brown and she is shortened and trimmed like a man. Her eyes are also a serene shade of brown, and she always watches us with those gentle eyes. My back looks up a little. As an adult male, I guess. I'm not overweight or too skinny, just in shape. I feel tight, muscular, and professional brave - a sportsman. I look like I'm seventeen or eighteen when I'm just looking. Exactly what it feels like to be a cool brother. But that's just a child-face, he's really twenty-four years old or something. I think it's true, but it's also very mature, and I guess it is. And of course, my brother is so strong. I think I'm a lot stronger too, but I still don't feel like I can beat my brother at all. The Adolph one was strong, too, but even stronger than him, your brother is definitely stronger. It seems obvious because you're an adult brave man, but you're not. In the year since I met my brother, I met a lot of adult braves like the Demon King Hunter and the Village Guardian, but not a single brave man was stronger than my brother. Well brother, suddenly you hug me and you don't let me go or some weird toko...... I mean, from the first time I saw him, I thought he was weird. I don't know why, but he accepted me, helped me, took care of me, raised me. I'm relieved to think what would have happened to us if it wasn't for you. I could never protect Iris or Mayfa on my own. Your brother is our benefactor, he's cool, he's a little weird, but... I still love him. No, I'm so grateful that I can't describe how much I love you, and I haven't had a crush on my brother for a long time, so much so that I can't even think about living without him anymore. I'm not the only one. The same goes for Illis and Mayfa. We both definitely love your brother, and rather, I'm the best of the three, about as late as I fell in love with my brother. So, maybe... I think you like us, too. You think I'm narcissistic? But if I don't, I think you're going to be so huggy, huggy and headless. But you're an adult, so I'm gonna treat you like a child. Mayfa and all that shit. I'm on a terrible attack, but yes, yes, I got it. They're saying I got it. I'm sure there's a different kind of "likes" us than "likes" us. But I know that, and we've always liked you. Brother, when will you look at us equally? If we get as strong as your brother, or...? That's still a long way to go. - - I don't know, he got to his destination sometime. I look up at the building. "Here...... played today's tournament, arena? "Ooh. Over here." "Ugh, yeah, brother" Why arena......? Iris and Mayfa are also tilting their necks. But my brother's going inside the arena, so we went after him. It wasn't a poor inn or anything, I'm relieved. I'm sorry to hear that... Wait, why am I sorry? None now, No-Can! I didn't expect you to do that with your brother or anything at all! I didn't! Who are you excusing me for... That's why the Mayfa guy tells me what the fuck it is. Uh, already. When I think about it in my heart, Eventually it was the grounds of the arena that got there. Your brother told us... I've brought three men, Rio, Illis and Mayfa, to the arena at night. Of course, permission to use the product is obtained in advance. I stood in front of the three of them on that ground. "... brother, what are you going to do here?... If you're going to do something sad, I don't know if it's going to be outdoors all of a sudden, but three people at the same time." Mayfa is the usual nori and she always says the same thing. I want to scratch that it has to be on that condition, but I decided to swallow it because I'm not going to be able to talk about it when I'm doing that. Instead, I give the three Mayfa's the tools. The three men who saw those tools tilted their necks uniformly. "Doctor, this... is this a wooden weapon and demon prop that you used in today's most powerful brave decision? Ilis asks, so I answer myself wearing the same thing. Tools around here were also pre-rented. "Whoa. Put them all on." "Oh, why, brother. Are you going to do a mock fight now? Now Rio asks, so I answer as I cloud the words, "Well, that's the place." Leaning their necks, the Rio's wore their magic props, as I said, with their wooden weapons in their hands. I travel about twenty steps away from the Rio's. I stood facing my godchildren as I confronted the three of them. And I say to the three of you, "It's a graduation exam. Take me down for three. The rules go hand in hand with the tournament, and when the magic kit sounds the knockout alarm, you're out." The three of you who heard my words stood with a pompous face.

第60話 その女性勇者は、ギルド内に俺の姿を見つけるなり、驚いたという様子で目を見開く。 「キミはひょっとして、ブレット・クレイディルか......? 魔王ハンターをやめたと聞いていたが」 重装甲の女性勇者は、鎧をかちゃかちゃと鳴らしながら俺の前まで歩み寄ってくる。 「セシリアさん、ですか......?」 その女性勇者の姿を見て、俺もまた驚いていた。 金髪碧眼の美しい容姿でありながら、全身を白銀色に輝く特製プレートアーマーと盾でガッチガチに固めた重装の勇者姿。 数年前よりも多少大人びてはいるが──俺の知り合いでこんな姿の人物には、“鋼の聖騎士”セシリア以外に心当たりはない。 「やはりブレットくんか! いやぁ見違えたよ。数年前はこんな小さくて可愛い少年のようだったのにな。今や立派な青年になって」 セシリアはそう言って、自分の胸の前で手を横にして、以前の俺の小ささを表現して見せる。 なおその表現だと、俺の数年前の背丈は今のメイファ以下だったことになるが、いくら何でもそこまで小さかった覚えはない。 相変わらず大雑把な人だなと思うが、さておき。 「セシリアさんこそ、昔よりもだいぶ大人びていて、見違えましたよ」 「はっはっは、まあな! ──って、誰が年増だって?」 セシリアは急に、瞳の奥に闇を宿らせる。 俺の両肩にがしっと両手を置くと、ぎりぎりと力を込めてきた。 「い、言ってませんて! 痛い痛い、力強い!」 「ううっ......毎年実家に帰るたびにチクチク言われるんだ......。誰かいい人はいないのか、孫の顔を早く見たい、などとな......。なあブレットくん、結婚をして家庭を持つことだけが人の生きる道ではないと思わないか? そもそも私たち勇者が世界の平和を守っているからこそ──」 「そ、その話、俺は関係ないっすよね!? セシリアさんと親御さんとの間の話ですよね!?」 「はっ......!? そ、そうだ、すまない。つい日ごろの鬱憤が愚痴になって出てしまった」 セシリアさんは正気を取り戻し、俺の肩から手を離してくれた。 両肩がにぎり潰されるかと思った......。 相変わらずのバカ力と暴走癖だ。 ちなみに、うちの三人の教え子たちはというと── 「......また昔の女っぽいのが出てきた。......お兄さん、無自覚に気に入られすぎ問題」 「先生より強くて美人とか、ちょっとまずいかも......」 「よし、いざとなったら三人で畳んで埋めるぞ」 などと、何だかよく分からないが恐ろしげな談合を行っていた。 一方でセシリアはというと、こちらも俺の隣にいる三人の教え子たちの姿に気付いたようだ。 そして可憐な少女たちを見た重装の女性勇者は、その瞳をキラキラと輝かせ始める。 「なっ......か、可愛い......! ──ブレットくん! この子たちはいったい、キミの何なんだ!?」 セシリアは再び俺の肩をつかむと、今度はがくがくと揺さぶってきた。 脳がシェイクされる。 あと顔が近い。 「ゆ、勇者学院の教え子たちですよ......。俺、魔王ハンターをやめてから勇者学院の教師をしていまして。と言っても、俺が教えられることはほとんど教え切っちまったんで、今は実戦経験を積むためのフォローをしているぐらいですけど」 「うわぁ......いいなぁ、いいなぁ......勇者学院の教師って、こんなかわいい子たちといつもハァハァできるんだ......私もなろうかな、勇者学院の教師......ハァハァ......ハァハァ......」 セシリアは鼻息を荒くし、欲にまみれた瞳をリオ、イリス、メイファの三人へと向けた。 さっきまで恐ろしげな相談をしていた三人だったが、その視線にさらされると一様にビクッと震えあがり、全員逃げ込むようにして俺の後ろに隠れる。 セシリアさん、昔から可愛いもの好きだったからなぁ......。 以前の俺も少年扱いで可愛がられ、散々頭をなでられたり抱きつかれたりしたものだが。 それにしてもこの人、以前よりもさらに性癖がひどくなっている気がするぞ。 長い独り身生活で拗らせたのか知らんが、せめて隠そうとする努力ぐらいはしろよ。 「あー、無理っすね。セシリアさんを勇者学院の教師にするのは、凶悪犯罪者を一人生み出すのと同義ですんで」 「えーっ、何故だ!? 私ほど子供を愛している勇者もそうはいないぞ!」 「だからだよド変態。あんたは一生魔王ハンターやってろ」 「ひどい、あんまりだ! ──よし分かった。子供たちがダメならブレットくん、キミでも構わない。私のこの冷たく凍った心を温めてくれ! キミもだいぶ育ってしまったが、まだ私的にイケる範囲内だ!」 「もういい加減黙りませんかねこの犯罪者予備軍──って寄るな寄るな! 顔を近付けるな!」 俺の肩をつかんだまま、ぐいぐいと近寄ってくるセシリア。 目がヤバいし力が強い。 美人なのに、ハァハァと鼻息を荒くしているからまともに異性として見れない。 と、そこに── ぺいっと、間に割り込んだリオの手が、俺に近付こうとするセシリアの顔を押し返した。 「んん......?」 セシリアは、きょとんとした様子で俺から離れる。 リオ、イリス、メイファの三人が俺を守るように立って、セシリアに向かってこう言い放った。 「に、兄ちゃんは渡さねぇぞ!」 「先生が欲しければ、私たちを倒してからにしてください!」 「......お兄さんは、もうボクたちのもの。......昔の女の出る幕じゃない」 あー、うん。 一応ツッコんでおくと、俺は別にキミたちのモノでもないからね。 ......とまあ、勇者ギルド内では、そんなカオスな出来事があったわけだが。 しかしそれも、俺たちならばいつもの奇行だと思われて、周囲の人々からは見事にスルーされた。 職員さんたちもほかの魔王ハンターも、我関せずという態度で平常運転である。 ははは、普段の行いがモノを言ったな。 ちなみに、その後は別に両者の間でバトルが起こるようなこともなく、普通にセシリアが退いて終わった。 ただ、顎に手を当てて「ほぅ......」などとつぶやいていたので、何を考えていたのやら知れたものではないが。 それはさておき、俺たちは目的であった勇者カードの受け取りを終えたので、あとは村に帰還するばかりだ。 勇者ギルドでセシリアに偶然出会うというアクシデントはあったが、それ以外は特に何事もなく無事に村まで帰り着くことができた──と、なるはずだったのだが。 リット村までの帰り道、俺は自分の隣をかちゃかちゃと鎧の音を立てて歩く女性勇者に質問する。 「あの、セシリアさん」 「何かなブレットくん」 「何かな、じゃなくて。......なんでついてきてるんですか?」 リット村へと続く森の小道。 俺と三人の教え子たちのほかにもう一人、余計な勇者がついてきていた。 誰かと言えばもちろん、“鋼の聖騎士”ことセシリアである。 「私がなぜキミたちについていくか、か......。それはまた、ずいぶんと哲学的な質問だな」 俺の隣を歩いていたセシリアは、そう言ってそらっとぼける。 いや哲学性などどこにもないと思うが。 ちなみにリオ、イリス、メイファの三人は、セシリアに向ってしきりに威嚇と牽制の態度を見せていたが、当のセシリアに効いた様子はまったくない。 セシリアは、ふふふと笑いながら言う。 「では、そうだな......またあの当時のように、私がブレットくんとともに眠れぬ夜を過ごしたい──という理由ではダメか?」 その言葉に、三人の教え子たちがびくっと跳ね上がった。 一方で俺は、ひとつ大きくため息をつく。 「そういうあらぬ妄想をさせるような言い方はやめてもらえませんかね。確かに二人で一緒に夜通し魔王退治をした日はありましたけど」 「あのときにブレットくんにぶっかけられた体液のことは、今でも忘れられないな......」 森の小道、俺はその場で立ち止まって、セシリアさんにジト目を向ける。 するとセシリアさんは、少し拗ねたように顔をしてこう言ってきた。 「どうしても、ついていったらダメか......?」 「いや、ダメっていうほどの理由もないですけど。ていうか、なんでそんなについてきたいんです?」 「だぁって! ついて行ったら楽しそうなんだもん! お姉さんだって独り身は寂しいの! 冷たくしないでよぉ!」 「子供か。......いやだったら、彼氏でも何でも作ればいいじゃないですか。セシリアさんなら普通にしていれば、寄ってくる男の一人や二人はいるでしょうに」 「......だって、私が気に入った可愛い男の子に話しかけても、なぜかいつも怯えて逃げられるんだもん」 この人なんで、刑務所にぶち込まれないで自由に出歩いているんだろう。 第一級の危険人物なんじゃないだろうか。 こんな人が世界最強にほど近い実力を持った勇者の一人だというのだから、世の中恐ろしいものだが。 ......でも、そうか。 こんな人でも、実力はあるんだよな。 セシリアさんの指導を受けられれば、リオたち三人も何か得られるものがあるかもしれない。 「分かりました。そこまで言うなら、二つ条件を出します」 「本当か!? 条件というのは──」 「一つ目、うちの教え子たちに勇者としての技術指導をすること」 「お安い御用だ! むしろ願ってもない! 手取り足取りたっぷりと教えよう!」 「二つ目、うちの子たち──リオ、イリス、メイファの三人の許可を得ること」 俺がそんな条件を出した結果、セシリアは三人の少女たちの前で道端で土下座をしてまで頼み込んで、同行の許可をもぎ取ったのだった。 何がそこまで彼女をかき立てたのか不明であるが、これで高レベルの指導者を一人確保だ。 俺では教えられないが、セシリアなら教えられるという技術もある。 そうして俺の教え子たちは、しばらくの間セシリアから指導を受けることになったのであるが、その成果は目覚ましいものとなった。 メイファは相性が悪かったが、リオは【

60 Lesson 60 The female brave man opens his eyes to the appearance of surprise if he finds me in the guild. "Are you Brett Claydill...? I heard you stopped being a demon hunter." The heavily armored female brave walks up to me with her armor squeaking properly. "Mr. Cecilia, is...? I was surprised to see that woman brave again. Beautiful looking with blonde blue eyes, yet brave in heavy duty with a special plate armor and shield that shines silver all over her body to solidify her into a gucci bee. Though somewhat more adult than a few years ago, I have no idea who I know and who looks like this other than Cecilia, the Holy Knight of Steel. "You're still Brett! Hey, I misjudged you. You looked like such a little, pretty boy a few years ago. Now be a fine young man." Cecilia says so, lays her hands down in front of her own chest and shows them how small I was before. Note that in that expression, my back length a few years ago would have been less than my current Mayfa, but I don't remember anything being that small. I think you're still a big mess, but aside. "Mr. Cecilia is a lot more grown up than she used to be, and she didn't look the same." "Ha ha, sort of! - Who's getting older? Cecilia suddenly lets darkness dwell behind her eyes. When I put my hands firmly on my shoulders, I came to the brink of strength. "Yes, I didn't say it! Ouch. Ouch, powerful! "Ugh... every time I go home to my parents, they tick me off... I wonder if anyone is good, I want to see my grandson's face fast, etc...... Hey, Brett, don't you think getting married and having a family isn't the only way people live? In the first place, it's because we brave men keep the peace of the world." "Well, that story doesn't matter to me, does it?!? It's between Cecilia and her parents, isn't it!? "Ha......!? Oh, yeah, I'm sorry. The day after day of depression became foolish and came out." Mr. Cecilia regained his sanity and took his hand off my shoulder. I thought my shoulders would be busted and crushed...... It's the same stupid power and rampant habit. By the way, my three godchildren... "... the old ladylike came out again.... Brother, an issue you unconsciously like too much" "Stronger and prettier than the teacher, maybe a little worse..." "All right, if you have to, the three of us will fold up and bury you." etc., and had some sort of uncertain but horrific collusion. Cecilia, on the other hand, seems to have noticed the three godchildren next to me. And the heavily dressed female brave man who sees the poor girls begins to sparkle their eyes. "Become... or cute...! - Brett! What the hell are these kids? Cecilia grabbed my shoulder again, and now she's shaking it down. My brain is shaken. My face is still close. "Yu, these are the godchildren of the College of the Brave... I've been a teacher at the College of the Brave since I stopped being a demon hunter. Even so, I almost ran out of what I could teach you, and now I'm following up with you to gain experience in action." "Wow... nice, nice... I can always haha with these cute kids a teacher at the Brave College... I guess I'll be one too, a teacher at the Brave College...... haha......" Cecilia roughened her nose and turned her greedy eyes to three: Rio, Iris and Mayfa. It was the three of us who had a horrible consultation until just now, but when I was exposed to that gaze, I was uniformly freaked out and shivered, trying to escape all in and hide behind me. Cecilia, I've always loved cute things...... I used to be adored when I was a boy, and I got my head squeezed and hugged. And this guy, I feel even worse about his sexuality than before. I don't know if you've stuck it out in your long bachelor life, but at least try to hide it. "Uh, you can't. Making Cecilia a teacher at the College of the Brave is synonymous with creating a single criminal." "What, why!? No brave man loves his children as much as I do! "That's why, de pervert. You've been a demon hunter your whole life." "Terrible, not really! - - Okay, okay. Brett, I don't care if the kids don't work. Warm up this cold, freezing heart of mine! You've grown up a lot, but you're still within the limits of being privately handsome! "Why don't you shut the fuck up, you criminal reservist? - Don't come near me! Keep your face away from me! With my shoulder grabbed, Cecilia walks up to me. My eyes suck and my powers are strong. Even though she's beautiful, she can't be seen as a decent heterosexual because she's haha and rough on her nose. And there 's-- Pei, the hand of Rio that broke in between pushed back Cecilia's face trying to get close to me. "Hmm...? Cecilia walks away from me in a proper way. Three people, Rio, Illis and Mayfa, stood to protect me and said this to Cecilia. "And I'm not giving you my brother! "If you want a teacher, take us down before you do! "... your brother is already ours.... it's not the old lady's act." Uh, yeah. Once I'm stuck, I'm nothing but you. ... and well, within the Brave Alliance, there was such a chaotic event. But it was also thought to be the usual oddity for us, and it was brilliantly passed by the people around us. Officials and other Demon King hunters drive normally in a manner that does not involve me. Ha ha, your usual deeds said things. Incidentally, there was nothing like a battle between the two afterwards, and Cecilia usually ended up retreating. It's just that I put my hand on my chin and snapped "ho..." etc, so it's not what I was thinking. Besides, we finished receiving the brave cards that were our purpose, so all we have to do is return to the village. There was an incident where Cecilia was accidentally encountered in the Guild of the Brave, but otherwise she was able to safely return to the village without anything in particular - and it was supposed to be. On my way back to Litt Village, I ask myself a question to a woman brave man who walks next to me making a proper sound of armor. "Um, Mr. Cecilia" "Something, Brett." "It's something, not something.... Why are you following me? Forest trail leading to Ritt village. In addition to me and my three godchildren, another, extra brave, was following me. Speaking of whom, of course, it is Cecilia about the "Holy Knight of Steel". "Why I follow you... That's a lot of philosophical questions again." Cecilia, walking next to me, blurs softly when she says so. No, I don't think it's philosophical or anything. By the way, the three of them, Rio, Iris and Mayfa, had shown a firm attitude of intimidation and restraint towards Cecilia, but nothing at all seems to have worked for Cecilia at the time. Cecilia says, hehe, laughing. "So, yeah... again, like that time, not for the reason that I want to spend sleepless nights with Brett? To the words, the three godchildren jumped in awe. Meanwhile, I sigh one loud sigh. "Can you stop saying things like that that that make me paranoid? Sure, there were days when the two of us spent the night together exorcising the Demon King." "I still can't forget the fluids that Brett hit me with back then..." Forest trail, I stop on the spot and turn to Mr. Cecilia. Mr. Cecilia then said this with a slightly obstinate face. "Can't you really, if you follow me...? "No, there's no reason why you shouldn't. I mean, why do you want to follow me so much? "Well! If I follow you, you look like you're having fun! Even your sister is lonely! Don't be cold! "A child?... If you don't like it, why don't you just make it your boyfriend or whatever. Mr. Cecilia would have one or two of the men stopping by if he had been normal." "... because even if you talk to a cute boy I like, somehow you can always get away with it" He's this guy, so I guess he's walking free without being jailed. Isn't he a first-level danger figure? Though it is horrible in the world because such a man is one of the bravest men near the world's strongest. ... but right. Even people like this have strength. If you can get Mr. Cecilia's guidance, the three Rio's might also have something to gain. "Okay. If that's all I'm saying, I'll give you two conditions." "Is that true!? Conditions are..." "The first is to give our godchildren technical instruction as brave men" "It's cheap! I'd rather not even wish! Teach me plenty of hands-on! "The second is to obtain the permission of three of our children, Rio, Illis and Mayfa." As a result of my offer, Cecilia asked me to sit down on the side of the road in front of the three girls until I had permission to accompany her. It's unclear what set her up that far, but this ensures one high-level mentor. I can't teach it myself, but Cecilia has the technology to teach it. That is how my godchildren were to receive guidance from Cecilia for some time, but the results were remarkable. Mayfa was incompatible, but Rio won the magic of [Moonlight Sword] and Illis of [Ultimate Healing (Ultimate Heel)] for each.

第82話 ──ドカバキボコスカ! はい、戦闘終了。 こっちの面子に対して、たいした敵でもない。 入口ホールにいたヴァンパイアとヴァンパイアスポーンの群れは、何の問題もなく打倒した。 こちらは三人の教え子たちを含め、全員がまったくのノーダメージ。 対して十体ほどのヴァンパイアスポーンは今やいずれもホールの床に倒れ、動かなくなっていた。 そして、その連中のボスらしきヴァンパイアも── 「おのれ、おのれおのれおのれぇええええ! なぜだ!? 人間の勇者ごときが、なぜこれほどの──ギャアアアアアッ!」 「まったく、騒がしいわ。ちぃと静かにしとれ」 ダメージで倒れて動けなくなっているところに、“魔帝”マヌエルが【 ヴァンパイアは悲鳴を上げ、白い煙をあげてぴくぴくしていたが、やがて動かなくなった。 でもあれも一時的なものなんだよなぁ......。 ヴァンパイアはメイファの【 だがヴァンパイアというモンスターは、普通にダメージを与えただけで倒せるものではない。 戦闘不能に追い込むことはできても、滅ぼすことはできない。 どれだけ切り刻んでも、あるいは魔法で焼こうとも、少したつと霧に姿を変えて逃げてしまうのだ。 そして逃げ出した霧は、彼専用の棺桶までたどり着くとその中で肉体を取り戻し、負の生命力を回復してしばらく後には復活してしまう。 ヴァンパイアが不死身と言われるゆえんだ。 だがその不死身にも、いくつか弱点はある。 たとえば光属性のダメージを受けると少しの間変身能力が使えなくなるので、光属性ダメージを連続して与え続けていれば、霧になって逃げられるのを防ぐことができる。 あとは木の杭で心臓を穿つ、日光のもとにさらす、棺桶の中の不浄なる土を浄化して復活できなくする、などのいくつかの方法でヴァンパイアに滅びを与えることはできるのだが──その前に。 「イリス」 「は、はい!」 俺は三姉妹の次女を呼ぶ。 小さな聖女ともいうべき容姿をたたえた少女は、倒れて動かなくなったヴァンパイアの前に、ごくりと息をのんで立った。 そして胸の前で手を組み、精神集中すると── イリスは最上級の治癒魔法を、倒れたヴァンパイアに向けて放った。 今回の事件の元凶がヴァンパイアロードであるなら、このヴァンパイアもまた犠牲者──すなわち元々は勇者であった可能性が高い。 ならば治るかどうかわからないにせよ、試してみる価値はある。 ちなみに“魔帝”の異名を持つマヌエル爺さんも、どちらかというと攻撃寄りの魔法が得意分野のようで、【 】を受けたヴァンパイアは── やがて青白かった肌の色が人間らしい健康な肌色に戻った。 長く鋭かった牙も縮んでいき、普通の人間の歯へと変わる。 まだ気絶したままだが、その胸は健やかに上下している。 人間の勇者に戻った彼は、いずれは目も覚ますだろう。 治療は成功だ。 イリスがホッと胸をなでおろす。 「よくやったな、イリス」 「は、はい、先生! ......えへへ」 俺が頭をなでると、イリスは嬉しそうに、そして照れくさそうにはにかんだ。 とても可愛い。 イリスさんマジ聖女。 「さて、あとはヴァンパイアスポーンたちだが、人数が問題だな──っとと!」 俺は突然飛んできた瓶を、慌ててキャッチする。 それは四本の魔力回復のポーションで、投げて寄こしたのは“魔帝”マヌエルだった。 「それを使って全員治してやんなさい。......にしても嬢ちゃん、その歳で【 「は、はい。ありがとうございます、マヌエルさん」 「ほっほっ。しかもほかの二人と違って、年上への礼儀っちゅうもんを弁えておる。──のう、リオ嬢ちゃん、メイファ嬢ちゃん」 そう振られたリオはというと、視線をそらせて知らぬふりでひゅーひゅひゅーっと口笛を吹き、一方のメイファはふっと鼻で笑っていた。 ですよね......あの二人、ちょっと礼儀知らず過ぎますよね......。 すみません、すみません。 あいつらそのへんは、言っても聞かないんです......。 まあさておき。 】を使って回った。 魔力が切れてきたらマヌエルから受け取った魔力回復のポーションをぐいっと飲み干し、さらに治療して回る。 うーん......魔力回復のポーション、べらぼうに高価だけど、やっぱりいざというときのために便利だな。 俺も今度、何本か買ってキープしておこう。 さて、そうやってイリスは、退治したすべてのヴァンパイアスポーンの治療を完了した。 手遅れの者は一人もおらず、全員の治療に成功。 イリスはさすがに疲れてハァハァいっていたが、俺が軽く抱き寄せて背中をポンポン叩いて「お疲れ様」と伝えると、「ふへへっ」と変な声をもらして俺に身を寄せてきた。 まあ、元気そうで何よりである。 が、それを見ていたマヌエル爺さんが、ジト目で俺たちのほうを眺めつつ、隣にいるリオへとボヤく。 「......のぅ、リオ嬢ちゃんや。あれはおぬしらの普段の姿なのかの?」 「うん、普通だよ。──ね、兄ちゃん?」 リオが俺に話を投げてきた。 俺は首を傾げる。 「え、普通って、何がだ?」 「ほらね」 「ん、よぅ分かった」 と、リオとマヌエル爺さんの間で何だかよく分からない会話が繰り広げられていた。 一方そんな折、かたわらで我関せずを決め込んでいた“武神”オズワルドが、話がひと段落したタイミングを見計らって俺のほうへと歩み寄ってきた。 「ブレットといったな。剣は誰から教わった?」 唐突にそんなことを聞いてきた。 「俺が剣を誰から教わったか、ですか? 基本的に我流ですけど、強いて言うならレオノーラ先生から最初教わって、あとはセシリアさんからも多少教わったことありますけど」 「そうか。いや、お前が戦う姿を見ていたのだが、スジが良いわりに妙な癖がついていると思ってな。少し見ても構わんか?」 え、それって── “武神”オズワルドに、俺の剣術を見てもらえるってこと? リオの剣を見るとかじゃなくて、俺の......? そんなわけで、俺は予想外の展開に驚き戸惑いながらも、“武神”オズワルドに剣術を見てもらうことになった。 といってもそんなにガチでという話じゃなくて、軽く見てもらっていくつかアドバイスを受けた程度だ。 でも、たったそれだけのことが、とんでもない奇跡を起こした。 教育って、嵌まると恐ろしい......。 そのことを我が身で思い知ることとなったのである。

82 Lesson 82 - - Dokabakibokoska! Yes, the battle is over. It's not much of an enemy against Fuko over here. The swarm of vampires and vampire spawns who were in the entrance hall defeated without any problems. This one is a total no damage to everyone, including the three godchildren. By contrast, about ten vampire spawns had all now fallen to the hall floor and stopped moving. And their boss-like vampires... "Hey, hey, hey, hey, yeah! Why!? Why are you so... gaaaaaaaaaaaa! "Damn, it's noisy. Be quiet." "Demon Emperor" Manuel unleashes the magic of [Holy Light (Holy Ray)] where damage is causing him to fall and become immobile. Vampires were screaming, white smoke and tingling, but eventually stopped moving. But that's also temporary... Vampires got up and attacked again even after receiving Mayfa's [Immortal Arrow (Phoenix Arrow)], but there I was in the target Mayfa cover when I tapped in the [Disease Sword] and repelled it. But a monster named Vampire can't be defeated just because he's done damage normally. Even if we can push them out of combat, we can't destroy them. No matter how chopped or magically baked, every little bit of it turns into fog and runs away. And the mist that escapes regains flesh in it when it reaches the coffin reserved for him, restoring negative vitality and reviving it some time later. Vampires are said to be immortal. But the immortality also has some weaknesses. For example, the ability to transform cannot be used for a little while when taking damage from light attributes, so if you continue to inflict light attribute damage continuously, you can prevent it from becoming foggy and escaping. And then we can inflict doom on vampires in several ways, such as wearing a heart in a pile of wood, exposing it to sunlight, purifying the unclean soil in the coffin and making it impossible to resurrect it -- before that. "Illis." "Yes! I call the second daughter of three sisters. The girl, who had the appearance of a little saint, stood breathlessly before a vampire who fell and stopped moving. And when you put your hands together in front of your chest and concentrate... Illis unleashed the finest healing magic against a fallen vampire. If the culprit in this case is the Vampire Road, it is likely that this vampire was also a victim - that is, an original brave man. Then it's worth a try, even if you don't know if it will heal. By the way, Grandpa Manuel, with the alias "Demon Emperor", seems to be somewhat adept at attacking magic, and [Ultimate Healing (Ultimate Heel)] cannot be used. And the vampires who received the Ultimate Heal of Illis... Eventually, the color of the blue and white skin returned to a healthy skin tone that was human-like. The long and sharp fangs also shrink and turn into normal human teeth. Still stunned, but its breasts are up and down healthy. Returning to the brave man of man, he will all wake up. Treatment is a success. Iris grates his chest. "Well done, Iris" "Yes, Doctor!... eheheheh" When I turned my head, Illis looked happy and glowed. Very cute. Mr. Illis. Seriously, Virgin. "Well, the Vampire Spawns are the rest, but the numbers are problematic. - Ever! I catch a bottle flying all of a sudden in a hurry. It was four magic restoration potions, and it was "Demon Emperor" Manuel who threw it and sent it over. "Use it to cure them all. Even so, young lady, at that age, I didn't know you could use [Ultimate Healing (Ultimate Heel)]." "Yes. Thank you, Mr. Manuel." "Here. Besides, unlike the other two, I'm being polite to older people. - - Tomorrow, Miss Rio, Miss Mayfa." As for Rio, who was so shaken, he whistled hiuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu Right...... those two are a little too impolite...... Excuse me, excuse me. They don't even listen to me when I say it... Well aside. Iris turned to the fallen vampire spawns using [Ultimate Healing (Ultimate Heel)]. When the magic runs out, I drink up the potion of magic restoration I received from Manuel all the time and go around treating him even more. Hmmm...... magic restoration potion, it's expensive to tease, but it's still useful for when you have a lot to do. I'll buy a few bottles next time and keep them. Well, that's how Iris completed the treatment of all the exorcised vampire spawns. Not a single one is too late, and everyone is successfully treated. Iris was just tired and haha, but when I held him gently and pounded him on the back and told him "good luck," he brought a weird voice to me. Well, she looks fine and above all. but Grandpa Manuel watching it boils down to Rio next door as he looks at us with his jitsu eyes. "... Noh, Miss Rio. Is that what you normally look like? "Yeah, it's normal. - Right, brother? Rio threw me a story. I lean my neck. "What do you mean, normal? "You see." "Mm-hmm. Okay." and there was some unsure conversation going on between Rio and Grandpa Manuel. On the other hand, Oswald, the "god of martial arts", who had decided to leave me alone instead, walked up to me in anticipation of the timing of a paragraph in the story. "Like Brett. Who taught you the sword? I've heard that abruptly. "From whom did I teach the sword? It's basically my style, but if I insist, I've been taught first by Dr. Leonora and then some by Mr. Cecilia." "Right. No, I watched you fight, but I thought you had a strange habit instead of a good suzi. Do you mind if I take a look? Oh, that 's-- You mean Oswald the Martial God can see my swordsmanship? Not like looking at Rio's sword, but mine...? So while I was surprised and confused by the unexpected developments, I decided to let "Wushu" Oswald look at swordsmanship. Even so, I'm not talking about being that beefy, but to the extent that you took a lighter look and took some advice. But that's all it took, a hell of a miracle. Education is horrible when it's embedded... We came to know it for ourselves.

第33話 「おお、ジェイクくん......! やってくれるのかね......!」 サイラスは一転、喜色満面へと変わった。 “賢狼”ジェイクに、揉み手をするようにすり寄っていく。 「そう、そうだよ。最初からキミたちにやってもらえばよかったのだ。いや、下の者たちにもチャンスをやらねばと思ったのだが、予想以上に不甲斐なくてね。キミたちの手を煩わせなければならないとは」 「いやぁ、親父に言われてついてはきましたけど、もともと出張るつもりはなかったんですがね。ちぃと気が変わりまして。......あんな極上の獲物を見ちまっちゃあね」 ジェイクはそう言って、その理知と獣性の両方を宿した目をこちらへと向けてきた。 ジェイクは王都の勇者学院の三年生で、リオたちと比べると一つか二つ年上だ。 ひょろりとした体格ながら体にはしっかりと筋肉がついており、ぼさぼさの長い銀髪は背中まで伸ばされている。 その切れ長の鋭い視線がこちらを見すえてきたのだが──その視線の先にいたのは、厳密には一人だ。 リオは、視線を受けてびくりと反応した。 慌てて振り向いて、その悪寒の元凶を探し、ジェイクの鋭い視線へとたどりつく。 リオとジェイクの視線が、真っ向からぶつかった。 「テメェ......なんかオレに用かよ」 「ひひひっ、雑魚の相手だけじゃ退屈だったろうと思ってな。どうだお嬢ちゃん、俺と一戦ヤらねぇか? たっぷり気持ちよくしてやるぜぇ?」 「はっ! ......上等だ」 リオが俺のもとから離れて、前に進み出ていく。 ジェイクもまた、獣のように前傾姿勢になりながら、のしのしと歩み出てきた。 俺はそれを見て、思案していた。 元より子供の喧嘩みたいな模擬戦だったが、これ以上続ける意味があるのか。 それに、何より── いや、それは仕方ないとしても、一応体裁は確認しておこう。 俺はサイラスに声をかける。 「サイラスさん、まだ続けるんですか? ひとまずの決着はついたかと思いますが」 その俺の問いかけに、サイラスはニヤニヤしながら返答してくる。 「いやいやブレット先生、若者たちの情熱はまだまだ迸っておるようです。私たちがその火を消してはいけませんよ。彼らの想いのままにぶつからせてやりましょう」 相変わらず綺麗事がすらすらと出てくるやつだ。 とは言え、特にケチをつける理由もない。 あとは確認事項だ。 「わかりました。それで、今度は団体戦でなく、一対一ということですか?」 俺がそう聞くと、サイラスはかたわらにいた二人の生徒──“剛剣”アドルフと、“女王”ドロシーに何やら声をかけた。 “剛剣”アドルフ──リオたちと大差ない歳とは思えないほど立派な体格をした少年は、腕を組んだまま、その彫りの深い顔に浮かぶ表情を変えずに言う。 「俺は出る気はない。まだ俺が食うに値する獲物ではないからな」 また“女王”ドロシーも、少女とは思えない妖艶な仕草で、紅を塗った唇に薄く笑みを作って言った。 「私もとりあえずパスねぇ。でもジェイクぅ、せっかくのおいしそうなオモチャなんだから、簡単に壊さないでよぉ?」 そして、それを受けたサイラスが、俺に向かって言ってくる。 「ということです。やる気のある生徒同士で競わせるのがよろしいでしょう」 「わかりました。リオとジェイクの一対一ですね」 というわけで、次の戦いはリオ対ジェイクのカードで行われることになった。 俺の横についたイリスとメイファが、緊張した面持ちで俺のほうを見てくる。 「先生......あの、ジェイクっていう人......」 「......あいつ、強い。......ほかの雑魚とは、レベルが違いすぎる。......でも、今のリオなら」 そうした二人の評価を聞いて、俺は口をへの字に曲げていた。 確かにジェイクは強い。 王都で教えていた時代、あいつらの実力を見ているから分かる。 だが── それをリオに言うべきかどうか、俺は迷っていた。 そうこうしているうちに、リオとジェイクが互いに真っ向対峙する位置に立っていた。 ジェイクが、そうした様子をぽかんと見ていたアルマに向かって言う。 「アルマ先生、審判頼むぜ。しっかり見ていてくれよ。ボンクラどもの戦いとはわけが違うからよ」 「あ......う、うん、分かりました。──ルールはさっきと一緒。くれぐれも、危険な攻撃は禁止だからね。さっきの【唐竹割り】みたいなのは、絶対ダメだからね」 「大丈夫だって。そんなにカリカリしないでよアルマ先生。それにほら見てよ、俺の得物は剣じゃない。【唐竹割り】みたいなしょぼいレベルの技を使う気もないしさ」 そう言ってジェイクは、何も持っていない両手を広げてみせる。 ジェイクの白兵戦スタイルは、剣でも斧でも槍でもない、徒手空拳の格闘術だ。 「そういうことを言ってるんじゃなくて!」 「はははっ、冗談だって。ムキになっちゃうアルマ先生も可愛いなぁ。今度デートしてよ。夜中までしっぽりとさ」 「お断りします。そういうことばっかり言ってると、審判やらないよ」 「ごめんごめん、冗談だから怒らないで。俺アルマ先生に嫌われたら、ショックで学校に行けなくなっちゃう」 「元々ほとんど出席してないくせに、よく言うよ」 ジェイクの人を食った物言いで、アルマはすっかりペースに乗せられてしまっていた。 しかもジェイクは、さらにこんなことまで言う。 「でも俺、弱い女に興味ないからなぁ。今はまだアルマ先生のほうが上だけど、すぐにぶち抜いちゃうだろうし。そうしたら興味なくなってポイ捨てしちゃうだろうから、やっぱ俺、アルマ先生とは付き合わないほうがいいわ」 「──ッ!」 アルマの表情に動揺が走ったのが分かった。 だがジェイクは、そんなアルマの様子など気にした風もなく、自分の今対峙している相手へと向き直った。 すなわち──リオに。 「へへっ......その点、お前はいいよ。才能の匂いがぷんぷんする。あっちの二人も匂いはするが、今はお前だ。そそるんだよ......ちょっとフライングだが、食っちまいたくてしょうがねぇ」 ジェイクはそう言って、長い舌を出してべろりと舌なめずりをした。 一方、対するリオは── 「キモイんだよテメェ。──イリスにもメイファにも手は出させねぇ。テメェはオレがぶっ潰す!」 そう言って、木剣を構えた。 重心を低くして半身になる。 先の十五人を相手にしていたときよりも、よほど本気の構え──俺と稽古をするときに取る構えだ。 「ひひひっ、いいねぇ。──そうこなくっちゃあ面白くない」 ジェイクのほうも構えをとる。 リオと似たような構えだが、今にもつかみかからんとするように両手を前に出した、これまた独特の姿勢だ。 リオの立ち位置からジェイクまでは、十数歩程度の距離がある。 しかし二人の踏み込みの力と速さを考えれば、そう大きな間合いではない。 ジェイクが、リオから視線を外さずに言う。 「ほら、アルマ先生。ぼーっとしてないで、試合開始の合図を頼むよ」 「あ......ご、ごめん。それじゃ──始めっ!」 我に返り、横手へと引いたアルマが、試合開始の声とともに旗を上げる。 リオとジェイク、両者が同時に地面を蹴った。

33 Lesson 33 "Oh, Jake......! Will you do it......! Cyrus turned to a delightful surface. "Wise Wolf." Jake leans over to rub his hand. "Yes, I am. I should have let you do it from the start. No, I thought I'd have to give the guys downstairs a chance, but it's more impudent than I expected. I didn't know you had to bother your hands." "Hey, my dad told me to follow you, but I didn't mean to put you out originally. I changed my mind.... you'll have to see such superb prey." That's what Jake said, and he's turned his eyes toward this one, which houses both its sense and its beastiality. Jake is a third grader at King's Capital's College of the Brave, one or two older than the Rio's. She has firm muscles on her body with a slight physique, and long blurred silver hair is stretched to her back. I can see the sharp gaze of that slice, but technically, I'm the only one who was at the end of that gaze. Rio reacted with agitation to his gaze. He turns around hastily, searches for the culprit of that chill, and reaches Jake's sharp gaze. Rio and Jake's gaze bumped straight into each other. "Temee... what can I do for you?" "Hihihihi, I thought you'd be bored just with your grocery fish counterpart. What do you say, lady, you don't want to go to war with me? I'll make you feel plenty better, okay? "Ha!... superior" Rio walks away from me and moves forward. Jake also walked out with a hinge as he leaned forward like a beast. I saw it, I had an idea. It was more like a kid fight mock fight than the ex, but does it make any sense to keep going any longer? Besides, most importantly... No, even if you can't help it, let's just make sure it's in shape. I speak to Cyrus. "Mr. Cyrus, are you still going on? I think you've settled for a while." Cyrus responds to my query with a nibble. "No, no, Dr. Brett, the passions of the young people still seem to be bursting. We mustn't put that fire out. Let them hit what they want." As always, it's the one with all the beauty. That said, there's no particular reason to wear an ass. And then there's the confirmation. "Okay. So, now you're saying it's not a team fight, it's one-on-one? When I heard that, Cyrus spoke to two of his students, Adolf, the Rigid Sword, and Dorothy, the Queen. Adolphe the "Rigid Sword" - A boy with such a fine physique that he doesn't seem to be much older than the Rio's, says without changing the look that floats in his carved face with his arms together. "I'm not leaving. It's not something I deserve yet." Also "Queen" Dorothy said, making a thin grin on her red-coated lips with a luscious trick that she didn't think was a girl. "I'm a pass too for now. But Jake, because you look like a tasty toy, don't break it easily, huh? And Cyrus, who got it, comes at me. "I mean. It would be nice to have motivated students compete with each other." "Okay. That's Rio and Jake one-on-one." So the next battle was going to be on Rio vs. Jake's card. Iris and Mayfa, next to me, look at me with a nervous face. "Doctor... you know, someone named Jake..." "... he's strong.... too different levels from other miscellaneous fish.... but if you're Rio now" Hearing those two acclaims, I was bending my mouth to the letter to. Sure Jake is strong. In the days I was teaching in Wang Du, I can tell because I'm looking at their strength. But... I was wondering if I should tell Rio that. While doing so, Rio and Jake were in a position to confront each other head-on. Jake turns to Alma, who was watching such a thing. "Doctor Alma, the referee, please. Keep an eye on me. It's not like the Bonklas are fighting." "Ah... uh, yeah, I get it. - - The rules are with you just now. However, dangerous attacks are prohibited. It's like [Tangbamboo cracking] earlier, because it's definitely not working." "'Cause it's okay. Don't be so crunchy, Dr. Alma. Besides, look, my thing isn't a sword. I'm not even willing to use a soggy level move like [Takebamboo cracking]." That's what Jake says, try to spread your hands open that you don't have anything. Jake's White Soldier style is not a sword, axe, or spear, it's a hand-to-hand karate martial arts. "That's not what I'm saying! "Ha ha, even a joke. Dr. Alma is cute, too, which makes me mucky. Next time you're on a date. Tail till midnight." "I refuse. If you keep saying that, I won't judge you." "I'm sorry, I'm just kidding, so don't get mad. If Dr. Alma hates me, I'll be shocked and I won't be able to go to school." "You barely attended the meeting, I often say." Alma had been totally put on pace with what he said about eating Jake's people. Plus, Jake even says this. "But I'm not interested in weak women. Dr. Alma is still better up there now, but he'll bump right out of it. Then you'll lose interest and throw it away, so you better not hang out with me, Dr. Alma." "- Huh! I could see the upset running on Alma's expression. But Jake turned to his opponent, who was now confronted, without such a wind that he cared about Alma. That is, to Rio. "Hehe... in that respect, you're fine. The smell of talent is puffy. I can smell those two over there, but now it's you. Damn...... kinda flying, but I can't help but eat it" That's what Jake said, making a long tongue out of it. On the other hand, the opposite Rio... "It's creepy, Temehe. - - I'm not letting Iris or Mayfa get their hands on me. I'll crush Teme! That's what I said, I put up a wooden sword. Lower your center of gravity and become half-body. More serious than when you were dealing with the first fifteen people... than when you did your archery with me. "Hihihi, that's good. - It's not funny if you don't." Jake takes care of himself. A similar structure to Rio's, but with both hands in front of him so that he could still grasp it, this is another unique attitude. Rio's standing position to Jake is about a dozen steps away. But given the power and speed of the two stepping in, it's not such a big time. Jake says, without taking his gaze off Rio. "Look, Dr. Alma. Don't get upset. I need a signal to start the game." "Ah... oh, sorry. Okay, let's get started. Returning to me, Alma, pulled sideways, raises the flag with the voice of the start of the match. Rio and Jake, both kicked the ground at the same time.

第37話 ガタゴトと乗り合い馬車に揺られること、およそ一週間。 長い旅路の果て、夕焼け空の下に、ついに王都の姿が見えてきた。 「うわぁ、すっげぇ......! ほら、見てよ兄ちゃん!」 「すごい......今まで見てきたどんな街よりも大きい......」 リオとイリスが、馬車の窓から身を乗り出してキラキラと目を輝かせる。 メイファも感動を口にこそ出さないが、窓から見える景色に目を奪われている様子だった。 俺も久々に見る王都の姿に、少しだけ郷愁のようなものを感じていた。 この丘から緩やかな下り坂の街道を進んでいけば、王都の城門へとたどり着く。 王都は人口十万人を超える規模の巨大都市だ。 城壁にぐるりと囲われた街区は、南門から北門まで歩けば一時間以上もかかるほどの広大さである。 その王都を南北に貫くメインストリートと交差するように、東西に走る大きな川が街並みを二つに分けている、そんな景色。 俺たちがこれからたどり着く予定の南門を見れば、その前にはたくさんの人々が渋滞をつくって並んでいた。 門番による入市チェック待ちの行列だろう。 最強新人勇者決定戦は、一年に一度だけ行われる国をあげたお祭りなのだから、この王都の賑わいぶりも当然のことだ。 「はわわわ......あれだけのたくさんの人が見ている中で、私たち戦うんですか......?」 イリスが久々に、怯えた小動物のような様子を見せていた。 すごく可愛らしい。 俺はそんなイリスの頭に手を置いて、軽くなでてやる。 「大丈夫だよ、イリスたちなら。緊張することないさ。気楽にやってこい」 「はうぅぅ......そう言われても......あうあう......」 カタカタカタカタ......。 イリスは小刻みに震えていた。 可愛いなぁもう。 なでなでなでなで。 「あうぅぅ......せ、先生......そんなになでなでされたら、私、ダメになります......」 「よーし、もっとダメになっちまえ。うりゃうりゃうりゃうりゃ」 「ふああっ......ふわああああっ......」 俺がイリスの肩を抱き寄せてもっとたくさんなでなですると、イリスは耳まで真っ赤にして頭のてっぺんからぽひーっと湯気を吹いていた。 そんな俺とイリスの様子を、メイファは呆れた様子で、リオは微笑ましげな様子で見ていた。 やがてお姉ちゃんであるリオが、イリスに言う。 「大丈夫だってイリス。だってオレたち、兄ちゃんにたくさん鍛えてもらったんだぜ。自信もっていこうぜ」 「そ、そうだね......! 私たち、先生に鍛えてもらったんだし。うん、自信持とう!」 ぐっと、拳をにぎって意気込むイリス。 それを聞いていたメイファが、ふっと瞳から光彩を失って言った。 「......うん......地獄だったよ、この一年間......。......ボクは怠けたいのに、怠けさせてもらえなかった......。......ボクは自由の翼をもがれて地を這うしかない、檻の中で飼い殺された、無様な鶏だった......」 馬車の窓の外、空のかなたを見上げるメイファ。 口からは今にも魂が抜け出ていきそうだった。 ちなみにメイファ、こんなことを言ってはいるが、ここ一年間、家では学校での借りを返さんとばかりに毎日のように俺をいじって遊んでいた。 ある日は風呂上がりの真っ裸同然の姿で俺にへばりついてきたり、ある日は俺の寝室に潜り込んできたり、ある日は俺にキスしようと迫ってきたり......。 本当にもうね......パパも大変だったよ。 何度言ってもやめないんだもん、こいつ。 俺の理性は本当によく頑張ったと思う。 ま、ともあれ── 「そうそう。お前らもあれだけ頑張ったんだから、自信もっていいぞ」 俺はイリスだけでなく、リオとメイファの頭にも手を置いて、わしわしとなでていく。 二人とも、こそばゆそうな、嬉しそうな顔をして、少しだけ頬を染めていた。 「へへっ、でもオレ、ちょっとワクワクしてきたかも」 「うん、そうだね。今の私たちにどれだけやれるか、試してみよう」 「......あれだけつらい想いをしたんだから、少しははっちゃけないと、やってられない」 三人ともやる気満々。 良いコンディションだった。 ──その後俺たちは、門の前でしばらく待たされはしたものの、やがてつつがなく王都に入ることができた。 俺は教え子たちを連れて、夜の暗がりが魔法の灯りで照らされるメインストリートを練り歩き、一足早く出ている出店で買い食いを楽しむなどした。 明日はそれどころじゃないのだから、今のうちにお祭り気分を堪能しておかないとな。 「兄ちゃん、豚焼き買って豚焼き!」 「すごい......ふわふわのパンに、果物と甘いシロップがたっぷり......幸せ......」 「......お兄さん、ボクはそろそろ歩き疲れた。おんぶしてほしい。......よいしょ」 「あーっ、メイファずるい! ......じゃなかった、先生に迷惑でしょ! やめなよ!」 「いや、別に大丈夫だぞ。なんならイリスもおんぶしてやるか? メイファと二人だと場所狭いけど」 「えっ、ほ、ホントですか......? そ、それじゃあ......よいしょっと。......えへへ」 「あ、兄ちゃんオレもオレも。でも背中空いてないから、前でいいか。とりゃっ」 「ぐえっ。さすがに三人は重い」 ......とまあ、何やかんや、あれやこれやあって大変だった。 そうして子供たちが遊び疲れた頃、俺は三人を連れて宿を取り、翌日の本番に備えて子供たちを就寝させる。 三人があどけない天使のような寝顔で、ベッドですぅすぅと寝息を立てるのを確認して、俺自身も床に就いた。 そして翌朝── ついに最強新人勇者決定戦の幕が開かれるときとなり、俺は三人の教え子たちを連れてその会場へと向かったのだった。

37 Lesson 37 Getting rocked by a ride carriage with Gatagotto, roughly a week. At the end of a long journey, beneath the sunset sky, we finally saw the King's capital. "Wow, that's awesome...! Look, look, brother! "Wow... bigger than any city I've ever seen..." Rio and Mayfa gleam their eyes as they ride themselves out the carriage window. Mayfa wouldn't let her impression come out of her mouth either, but it looked like she was blinded by the view she could see through the window. I was feeling a little sad about Wang Du's appearance, which I saw a long time ago. If you continue down a gentle downhill street from this hill, you will reach the castle gate of the King's Capital. Wang Du is a huge city with a population of over 100,000. Surrounded by walls, the neighborhood is large enough to take more than an hour to walk from the South Gate to the North Gate. Such a view, with a large river running east and west dividing the city in two, as it intersects the main street that runs north and south through its king capital. If we saw the South Gate we were going to reach, there were a lot of people lined up in traffic before that. It would be queuing for entry checks by gatekeepers. The bustling of this king's capital is also natural, as the strongest new brave fights are festivals that have given you a country that takes place only once a year. "Hawawawah... are we going to fight in all those people watching...? It wasn't long before Illis was looking like a frightened little animal. So cute. I'll put my hand on that Iris' head and lighten him up. "It's okay, if it's the Iris. I'm not nervous. Come easy." "Huh... even if they say so... ahhh..." Katakata Katakata............. Iris was trembling in small pieces. Cute already. Why? Why not? "Ugh... let me, Doctor... if you don't do so much, I won't..." "All right, get worse. Uri Uri Uri" "Huh... Huh... Huh..." When I held Ilis' shoulder over her shoulder for a lot more. So, Ilis turned bright red to his ear and blew hot air from the top of his head. Mayfa looked at me and Iris like that, and Rio looked smiling. Eventually, your sister, Rio, tells Illis. "'Cause it's okay, Iris.' Cause we got a lot of work out for you, bro. Let's be confident." "Oh yeah......! We got the teacher to work out. Yeah, let's be confident! All the while, Iris with his fists and intentions. Mayfa, who was listening to it, said, losing her glow from her eyes all the time. "... yeah... it was hell, the past year...... I want to be lazy, but I couldn't let you be lazy...... I had no choice but to crawl through the earth with my wings of freedom, kept and killed in a cage, an unusual chicken..." Outside the carriage window, Mayfa looks up into the sky. My soul was going to get out of my mouth even now. By the way, Mayfa, I'm telling you this, you've been messing with me like every day at home the last year just because I need to pay back my school debts. One day he snapped at me looking naked in the bath, one day he dived into my bedroom, and one day he approached me to kiss me... Really already... my dad had a tough time too. I won't stop saying it again and again, this guy. I think my reason worked really well. Whatever... "Yes, yes. You guys worked so hard, you can be confident." I not only put my hands on Illis, but also on Rio and Mayfa's head, and go with me. They both looked delightful and just a little bit cheek-dyed. "Heh, but I think I'm getting a little excited." "Yeah, you are. Let's see how much we can do right now." "... that's all I had a hard time with, so I can't do it without a little" All three are motivated. It was in good condition. - - After that, we were waited for a while in front of the gate, but eventually we were able to enter the Wang Capital. I took my godchildren along the main street, where the darkness of the night was lit by magical lights, and enjoyed buying and eating at the store that was out a foot early. Tomorrow is not the time, so we need to indulge in the festive mood. "Brother, buy pork roast and pork roast! "Wow... fluffy bread, plenty of fruit and sweet syrup... happiness..." "... brother, I'm tired of walking. I want you to mumble. ... come on." "Ah, Mayfa, that's sloppy!... it wasn't, you annoyed the teacher! Don't do this! "No, it's nothing. It's okay. Why don't you give Iris a kiss? Mayfa and I have a small place." "What, ho, are you sure...? Well, then... hey.... eheheheh" "Ah, brother, me and me. But I don't have a free back, okay? Tori." "What. Exactly three are heavy" ... and well, it was hard with that and this. That's how when the kids get tired of playing, I take the three of them to the inn and put the kids to bed in preparation for the next day's production. The three of them slept like an unusual angel, and it was a bed - so I made sure to get some sleep, and I got on the floor myself. And the next morning... Finally, when the curtain of the most powerful new brave battle opened, I took my three godchildren to the venue.

第139話 ジャイアントオクトパスを倒し、『魔の海域』を抜けたあとは、航海は順調だった。 俺たちがマリーナの海賊船に乗ってから、半日ほどの船旅を続けた頃、船はついに目的地へとたどり着く。 時刻は昼下がり、夕刻前といったところ。 穏やかな午後の日差しの下、船は一つの島へと到着する。 ただ島に到着したといっても、船が止まったのは砂浜だとかではない。 絶壁の岩山の下部にできた、大型の海食洞の内部だ。 地形的には、海神様の棲み処とも似ている。 「よぉし、ここで泊めな。岩礁に船をぶつけないように気をつけるんだよ」 海食洞の奥の行き止まりで、マリーナは船員たちに指示を出し、船を停泊させる。 ちなみにだが、マリーナは船員たちの反対を押し切って強引に『魔の海域』への侵入を決めたようだったが、それによって『海の悪魔』ことジャイアントオクトパスに遭遇してしまっても、海賊船の船員たちはマリーナから離反したりはしなかった。 俺たちがジャイアントオクトパスを退治したのち、マリーナは船員たちの前で神妙にあぐらをかき、「お前ら、あたいを船長として相応しくないと思うんなら、煮るなり焼くなり好きにしな」と啖呵を切ったのだが、船員の誰一人としてマリーナに危害を加えようとはしなかったのだ。 度を過ぎたことが起こるようなら俺も黙ってはいないつもりだったが、問題がなかったようで何よりだ。 ようはマリーナが、この海賊船の船員たちから、思いのほか信頼されているのだろう。 ともあれそんなわけで、船は海食洞の奥に停泊。 その横手にあった岩棚に、勇者たちが跳び下りていく。 俺と教え子たちとアーニャ、それにマリーナだ。 「よーし、それじゃあたいたちは、キャプテンミスリルの宝を探しに行ってくる。野郎ども、船のほうは頼んだよ」 『ういっす! いってらっしゃい、姐御!』 船員たちが野太い声で、気合の入った見送りの声をあげる。 なお屈強な男の勇者二人は、ほかの船員たちの護衛として船に残すという。 サハギンどもの動きが読み切れないので、やむを得ない采配だろう。 というわけで、マリーナと俺と教え子たち、それにアーニャという合計六人の勇者で、キャプテンミスリルの宝探しを開始することになった。 いやまあ、正直俺たちには宝探しに参加する動機は、実はあまりないのだが。 どっちにしろサハギンと遭遇しないことには手掛かりがないので、先に進めば何か進展もあるかもしれないという、希望的観測での行動ではあった。 俺たちは、船が停泊している横手の岩棚から、その先に続く狭い洞窟へと足を踏み入れていく。 手には【 人ひとりがどうにか通れるぐらいの狭い道を、マリーナのあとに続いて進みながら、俺は周辺の岩肌の様子なども観察していく。 「この洞窟、明らかに人の手が入っているな。【 「ってこたぁブレットさん、キャプテンミスリルの宝の隠し場所としては、この島のこの洞窟は間違いなくドンピシャってわけだね」 「だろうな。──っと、アーニャ、そこ足元に気を付けろよ」 「は、はい、大丈夫です。ありがとう、ブレットさん」 「あのさアーニャ、今のうちに言っとくけど、兄ちゃんに惚れたらダメだぞ。兄ちゃんの隣は、もうとっくに定員オーバーだからな」 「むぅー。先生の周りがいつも、気が付くと女の人ばっかりになってるのはどうしてだろう?」 「......イリス、それは多分、考えるだけ無駄。......お兄さんは、磁石みたいなもの」 勇者も六人いればかしましいとでも言えばいいのか。 思い思いに適当な話をしながら、洞窟を進んでいく。 ちなみに三人の教え子たちの発言にはいろいろと突っ込みたいところはあったが、キリがないので今はスルーしておくことにする。 そうしてしばらく、身をかがめながら狭い洞窟を進んでいくと、やがて開放的な大きな広間に出た。 やはり洞窟内であることは変わりないのだが、天井が高く、周囲も広い。 ホールというような表現が適切な雰囲気だ。 そのホールの一角には、石造りの大扉があった。 脇の壁には、何やら文字の書かれた石碑のようなものが据え付けられている。 好奇心旺盛なメイファが、とててっと近付いていって、その石碑に書かれた内容を読みあげていく。 「......えっと、なになに......『お兄さんの朝は早い。毎朝ボクたちがベッドで眠っている間に、ボクたちの下着を盗んでいく。犯行に抜かりはない。新品の下着と差し替えて、使用済みの──』って、痛い痛いっ! ギブ! ギブアップ......!」 俺はメイファの背後に歩み寄って、そろそろ恒例となった頭ぐりぐりである。 「書いてないよな、んん? 伝説の海賊キャプテンミスリルが、ピンポイントに俺を貶めるテキストをこんなところに残すわけないよな?」 「......ううっ......ちょっとした、冗談なのに......。......最近、お兄さんのツッコミが激しい......」 「お前のボケのほうがよっぽど激しいわ。......ったく」 俺は気を取り直して、石碑に記された言葉を読み上げていく。 そこにはこのように記されていた。 「えーっと──『此処に眠りし宝の資格、心優しき者たちの縁が抱く。二つの鍵を持たぬ者は立ち去るがよかろう』だそうだ」 と、読み上げてはみたが、正直ちんぷんかんぷんである。 扉やその周辺を見ても、鍵穴らしきものは見当たらない。 それどころか、石の扉はほぼ完全に真っ平で、取っ手が一つ付いているだけだ。 「なんだって、『資格』? 『二つの鍵』? んなこと言われたって、あたいは地図しか──」 そうぼやきながら、マリーナが石の扉にぐっと力をかけてみる。 すると── ──ゴゴゴゴゴッ。 石の大扉は、重厚な音をたてつつも、素直に開いてしまった。 「......ありゃ? 普通に開いちまったね」 「となると、この先に罠があるとかか? 正しい開き方をしないと、罠が発動して痛い目を見るみたいな」 「はっ。だとしても、ここで怖気づいて帰るようなら、あたいは海賊なんて稼業からはとっくに足を洗ってるさ」 マリーナはそう言って、止める間もなく、開いた扉の先へずんずんと進んでいってしまった。 一応、周囲の警戒はしながらのようだが、それにしても大雑把で大胆だ。 ......あの娘、勇敢なのはいいが、いつかそのうちポックリ逝きそうなタイプだな。 うまいこと生き残れれば、将来的に相当強い勇者にもなっていそうだが。 ただそのあたりは、マリーナの中でスタイルも覚悟もすでに固まっているようなので、今さら俺がどうこう指導するようなものでもないよなと思う。 「おーい、ブレットさんたちも早く来なよ~。罠もないし、普通に道が続いてる」 さくさくとだいぶ先まで進んだマリーナが、まだ扉の前で躊躇っている俺たちに向かって、手を振りつつ声をかけてくる。 ......何もないとすると、この石碑の内容はフェイクか? いや、わざわざこんな場所を作って宝を隠すようなやつが、そんな真似をするとも思えないが。 だがひょっとすると、この入り口の扉の開き方ではなく、この宝の隠し場所全体に関するメッセージかもしれない。 いずれにせよ、この石碑に書かれている言葉の意味が分からない以上は、俺たちにできるのは進むか退くか、その選択だけだ。 こちらの戦力から考えて、よほどのことがなければ、大きな危険はないと思うが── 「うーん......兄ちゃん、どうしよう?」 「正直に言って、俺にも正解は分からん。リオたちはどうしたい?」 俺がそう聞き返すと、リオ、イリス、メイファの三人は顔を見合わせる。 そして互いにうなずき合うと、 「行きたい!」 「行ってみたいです、先生」 「......好奇心は、猫を殺す。......でも退屈は、人を殺す。......今は、猫になりたい気分」 と、三人とも乗り気のようだった。 でもメイファのそれは、死ぬんじゃないだろうか。 「アーニャはどうする? なんなら船で待っていてもいいが」 俺が最後の一人にそう聞くと、アーニャは少し考えるような仕草をしてから、こう答える。 「ブレットさんたちは行くんですよね? だったら私も。少し気になることもありますし」 「よし、分かった。じゃあみんなで宝探しといくか」 そんなわけで俺たちは、大扉をくぐり、その先へと踏み出していった。

139 Chapter 139 After defeating the Giant Octopus and passing through the "Sea of Magic", the voyage went smoothly. After we embarked on a pirate ship in Marina, the ship finally reached its destination after a half-day sailing journey. The time is after noon, before evening, etc. Under the gentle afternoon sun, the ship arrives on one island. Just because we arrived on the island doesn't mean that the ship stopped on the beach. It's inside a large seafood cave at the bottom of a rocky mountain on the cliff. Topographically, it is similar to the habitat of Kaijin. "Hey, let's stay here. Be careful not to hit a ship on a rock." At the end of the seafood cave, Marina instructs the crew to dock the ship. Incidentally, the marina seemed to have pushed the sailors against it and forcefully decided to enter the "Sea of Magic", but even if it encountered a giant octopus about the "Sea Devil", the pirate sailors did not turn away from the marina. After we destroyed the Giant Octopus, the marina mysteriously stood in front of the sailors and said, "If you don't think you're worthy as captains, boil and burn as much as you like," but as one of the sailors, she didn't want to harm the marina. I would not have kept quiet if things had happened more than once, but it seems that there was no problem. I'm sure Marina can be trusted by the crew of this pirate ship. That's why the ship docked deep in the seafood cave. The brave men jumped down on the rock shelf beside them. Me, the kids, Argna, and Marina. "All right, then, they're going to look for Captain Mithrill's treasure. I asked for a boat, you bastards." Ugh! Welcome, sister! The sailors gave a loud voice and a greedy waiter. Two brave men will remain on board to escort the rest of the crew. The Sahagins can't read through their movements, so it's probably an unavoidable extraction. That's why Marina, me, my schoolchildren, and a total of six brave men named Argna started a treasure hunt for Captain Mithrill. Well, honestly, we don't really have much motive to participate in the treasure hunt. Either way, there was no clue that he would not encounter the Sahagin, so it was an act of hopeful observation that there might be some progress if we went ahead. We step into the narrow cave that leads from the side of the rock shelf where the ship is anchored. I was holding a magically prepared light in my hand. I will also observe the surrounding rock skin as I continue along the narrow path that one person can manage to pass after the marina. "This cave is obviously in people's hands. I may have used Hole digging (tunnel) magic to advance the digging process. "Mr. Brett, as a hideout for Captain Mithrill's treasure, this cave on this island is definitely Dompisha." "I guess. - - Watch your step, Argna." "Yes, yes, it's okay. Thank you, Mr. Brett." "Um, Agna, let me tell you something right now, but don't fall in love with your brother. My brother's neighbor is already overbooked." "Mmm. Why do you always notice that there are only women around the teacher? "... England, maybe it's just useless to think about it.... oniisan is like a magnet." Should I say that if there are six brave men, it would be wrong? Walk through the cave, telling the right story for your thoughts. Incidentally, there were a lot of things that I wanted to get into in the statements of the three teachers, but I decided to go through them now because I don't have any kills. After a while, he leaned over to the narrow cave and eventually went into the large open hall. It's still the same in the cave, but the ceilings are high and the surroundings are wide. Expressions such as halls are the appropriate atmosphere. There was a large stone door in the corner of the hall. On the side wall is a stone tablet with letters written on it. A curious Mayfa approached and read what was written on the stone tablet. "... um, what... 'Oniisan's morning is early. Every morning while we sleep in bed, we steal our underwear. There's nothing wrong with committing a crime. I replaced it with a new underwear and it hurts when I use it - -"! Gib! Gib up...! I walked behind Mayfa and it was time for my usual head swing. "It's not written, huh? The legendary pirate captain Mithrill didn't leave a text here that discredited me on the pinpoint, did he? "... uhh... I'm just kidding...... oniisan's clatter has been intense lately..." "Your bluff is much more intense.... I don't want to." I will recite the words written on the tablet. It was written like this. "Er - - -" I sleep here, and I have the credentials of treasure, and the friendly ones. Those who do not have two keys may leave. " And, I read it out, but honestly, it's a stroke. Looking at the door and its surroundings, there is nothing like a key hole. On the contrary, the stone door is almost completely flat, with only one handle attached. "What, 'qualifications'?" Two keys "? I was told it was just a map - -" As she blurred, the marina put a lot of force on the stone door. And then... - - Gogogogogogogogogogo. The stone door opened honestly with a loud noise. "... what? It opened normally." So, is there a trap ahead? If you don't open it correctly, it looks like a trap will trigger and hurt your eyes. " "Ha, but if you were to come home scared, pirates would be washing their feet long after business." That's what Marina said. Soon after she stopped, she moved slowly towards the open door. For the time being, it seems to be vigilant around me, but it's still rough and bold. ... I hope that girl is brave, but one day she'll come. If you survive well, you'll be a pretty strong hero in the future. However, the style and readiness in the marina seem to be already solid, so I don't think it's anything I can teach you now. "Hey, Brett, come quickly. There's no trap, there's a normal path." Marina, who had gone a long way, waved her hand at us, still hesitating in front of the door. ... if nothing happens, is the contents of this stone tablet fake? No, I don't think a guy who went out of his way to build a place like this and hide a treasure would do that. However, it may be a message about the entire treasure cache, not the way this entrance door opens. Either way, we can only make the choice between moving forward or retreating, rather than understanding the meaning of the words written on this tablet. Based on our strength, I don't think there's much danger if nothing happens - - "Hmm... what should I do, brother? "Honestly, I don't know the right answer either. What do we want from Rio? When I hear that back, Rio, England and Mayfa face to face. And when they nodded at each other, "I want to go! I'd like to go, Doctor. "... curiosity kills cats.... but boredom kills people.... now I want to be a cat." And the three of them seemed to be on board. But I think Mayfa's going to die. "What about Argna? You can wait by boat for whatever you want." When I ask the last person that, Argna thinks a little and then answers: "Brett and the others are going, aren't they? Then so am I. Sometimes I'm a little concerned." "All right, all right. Let's all go treasure hunting." That's why we walked through the big door and went further.

第129話 「──きゃあああああっ!」 海水浴場の端にある岩場のほうから、突如、悲鳴が聞こえてきた。 海で遊んでいた人々が、何が起こったのかという戸惑いの表情を見せる。 「ブレット先生、今の」 「ああ。何が起こったのかは分からないが、ひとまず見にいくぞ」 アルマの言葉を受けた俺の意見に、その場にいた女性勇者全員が真剣な顔でうなずいた。 俺たちは声のした方へと向かって駆けていく。 やがて大岩がごろごろと並んでいる波打ち際へとたどり着いた。 こうした場所は、遊ぶには少々危険なのであまり人が寄らないものなのだが、逆にちょっとした冒険感が得られるために、火遊びが好きなカップルなどがこういった場所でイチャイチャしていることも稀にある。 実際、そこでは水着姿の一組の男女が、抱き合って震えていた。 男女は俺たちの姿を認めると、震える手で海のほうを指さす。 その先を追えば、見えたものは大きく二つだ。 一つは、波打ち際の岩場に打ち上げられた姿で、げほげほとせき込む一人の少女の姿だ。 よく日焼けした褐色肌をもつ黒髪の少女で、年の頃はリオたちと同じぐらいに見える。 その少女が身に着けているのは水着ではなく、見た感じ、下着一枚のみのようだ。 トップレスに見えるが、今はそんなことを気にしている場合でもなさそうだ。 というのは、もう一つ見えたものが問題だ。 少女のさらに先──海のほうを見れば、半魚人型のモンスターらしきものたちが、こちらへと向かってきているのが分かった。 モンスターは魚顔で、全身が緑がかった青色の鱗に覆われ、体形は人間の成人と似ているが、魚に似た尻尾を持ち、腕や脚などにも水中活動用のヒレを持っている。 数は、見える範囲で四体。 水中にも別に何体かいそうな気配がある。 水上に姿を現しているものは、水中にいる何かにまたがった姿勢で、こちらに向かってくる。 手にはそれぞれ、銛に似た形状の槍や、三つ又の槍などを持っていた。 俺はそのモンスターの姿を見て、勇者学院のモンスター学の教科書に記述されている知識の中から、適応するものを引っ張り出してくる。 俺がセシリア、をやめてアルマのほうを見て聞くと、元同僚教師はこくりとうなずく。 「分かった。ブレット先生たちは?」 「あれを迎え撃つ。事情は分からないが、少なくとも平和的解決を望める相手じゃなさそうだ」 「そりゃあそうでしょ。サハギンは邪悪で暴力的な種族だからね。──ところで、セシリアさんじゃなくて私にあの子を頼む理由は?」 「セシリアさんは性癖的にヤバい。セシリアさんに裸同然の少女を任せたら、二次被害になりかねない」 俺がアルマにそう答えると、話を聞いていたセシリアががくっと肩を落とした。 「私の信頼は、そこまで落ちているのか......とほほ」 「しょうがねぇよ、セシリア姉ちゃん。その辺は姉ちゃんの自業自得だし」 リオにトドメを刺されて、セシリアが力尽きるようにその場に膝をつく。 まあそれは置いといて。 まずはアルマが、ぴょんぴょんと岩場を跳んでいって褐色肌の少女のもとにたどり着くと、その少女に肩を貸して助け起こす。 一方で俺は、リオ、イリス、メイファの三人を連れて、アルマたちと半魚人どもの間に入るような位置まで移動した。 セシリアは岩場にいたカップルを誘導して、砂浜のほうへと誘導している。 最近ダメ勇者という印象が強いセシリアなので、彼女がちゃんと勇者らしい動きをしてくれるのを見ただけで俺は感動した。 そうこうしているうちに、だいぶ遠くの海にいたサハギンたちは、あっという間に俺たちのすぐ近くまでやってきた。 その数は、まず何かにまたがっている様子のサハギンが、二体ワンセットで二組いて合計四体。 加えて、その周辺の水中からざばっと顔を出したサハギンが、全部で三体。 トータルで七体。 さらに水中に潜れば、二組四体のサハギンたちがまたがっている を不思議な力で手懐けて、騎乗動物として、あるいは戦力として利用することが知られている。 俺たちの前に現れた半魚人たちは、その魚面の顔を歪ませ──多分あれは薄ら笑いの表情なのだと思う──次々にその口を開く。 「ゲッゲッゲ、うまそうなニンゲンの女がたくさんいるぞ。ごちそうだらけじゃないか」 「待て待て。まずはあの逃げた女を捕まえるのが先だ」 「どっちも捕まえればいいだろ。そんで連れ帰るやつ以外は食っちまえばいい」 「ゲヒヒッ、それもそうか!」 『ゲヒャヒャアーッ!』 サハギンたちは、俺たちに向かって一斉に襲い掛かってきた。 一応言葉はしゃべるのだが、対話の余地などありはしない。 半魚人たちは、あるものは槍を手に水上から跳び上がり、あるものは泳いで岩場へと上がろうとしてくる。 それを俺、リオ、イリス、メイファの四人で迎え撃つ。 俺とリオが前に立ち、イリスとメイファはやや後方へと下がる形だ。 なお、俺たちは武器も防具もない完全な徒手空拳だし、敵のほうが数も多い。 とは言え── 「兄ちゃん、こいつらぶん殴っていいんだよな?」 「ああ、対話をする余地もなく襲い掛かってくるような連中だ、平和的対応を考えるのは不毛だな。それよりリオ、格闘戦は得意分野じゃないと思うが、やれるか?」 「へへっ、楽勝! 剣を持ってなくたって、このぐらいの相手ならどうってことないだろ」 「よし。ただ足場が悪いから、そこは気を付けろよ」 「オッケー、兄ちゃん!」 俺とリオは、それぞれ一体ずつ飛び掛かってきたサハギンの槍の一撃を、まずは悠々と回避してみせる。 それから俺は、自分に突きかかってきたサハギンの槍をつかんで、ぐいと引っ張る。 相手が前のめりにバランスを崩したところに、思いきり手刀を叩き込んだ。 俺の手刀で背中を強かに打たれたサハギンは、「ぐぇっ」とうめき声をあげて大岩の上に突っ伏した。 一方でリオは── 「──はあっ!」 自身に襲い掛かってきたサハギンの腹に、強烈なパンチを叩き込んでいた。 ズドンッと強烈な衝撃音が響いて、サハギンが前かがみになって呻く。 リオはさらに、そうして怯んだサハギンを強く蹴りつけた。 それでサハギンは吹き飛んで、ドボーンと大きな水しぶきをあげて海に沈む。 だがリオは「おっとと......!?」と、サハギンを蹴り飛ばした勢いで、大岩の上で足を滑らせてバランスを崩していた。 まったく、言わんこっちゃない。 しかもそのリオに向かって、別のサハギンが襲い掛かり、手にした槍を突き出そうとするのだが── 「もう、リオってば油断しすぎ! ──【 イリスが放った光属性の攻撃魔法が、リオに襲い掛かろうとしていたサハギンに向かって炸裂した。 聖なる熱線の直撃を受け、そのサハギンは「グギャアッ」と悲鳴を上げて吹き飛び、やはり大きな水しぶきを上げて海中へと沈んだ。 「サンキュー、イリス。でも今のぐらいは、助けてもらわなくてもよけられたけどな」 「見てるこっちの心臓に悪いの! ほら、ちゃんと前見て!」 「ほーい」 リオとイリスがそんなこんなをやっている間に、俺は手に入れた槍で別のサハギンを迎撃して海に沈めている。 これでトータルの撃破数は四体目だ。 残るサハギンは三体。 残ったサハギンたちは、あっという間に仲間が倒されたことに焦っている様子だった。 「ゲゲェッ、ウソだろ!? こいつらまさか、全員が勇者なのか!?」 「ギャギャッ、しかもバカみたいに強いぞ! ど、どうする!?」 「グゲェーッ、どうするったって、あの逃げた女だけでも捕まえねぇと......!」 そんな風に慌てふためく半魚人たち。 しかしそうして戸惑っていれば、今度はメイファの魔法が発動する。 「......水の中の相手だと、火属性の魔法は、相性が悪いかも? ......まあ、そこはそれ。──【 メイファが突き出した右手の前に、燃え盛る紅蓮の魔力球体が生まれる。 それを見た残りのサハギンたちが『ゲゲェーッ!?』と悲鳴を上げて、慌てて海に潜った。 ほぼ同時に、メイファの魔法が発射される。 一瞬の後、メイファが放った灼熱の魔力球が、サハギンたちが潜った海の上、海面に着弾して大爆発を巻き起こした。 その結果はというと── 「ギャワーッ!」 「熱っぢぃいいいいいっ!」 海の中から、サハギンたちが次々とトビウオのように跳ねとんだ。 メイファが疑ったとおり、水中の敵に対して火属性の魔法というのは相性が悪い。 だがそうは言っても、海水の一部を一瞬で沸騰させて、熱湯にしてしまうことぐらいはできる。 メイファの怪物級の魔力で放たれた【 あれでは海中に逃げ込んだサハギンどもも、全身大火傷は免れないだろう。 「く、くそっ! 覚えていろ、ニンゲンども!」 サハギンたちがそう言って逃げ去っていこうとしていたので、俺は「こいつも持っていけ!」と言って、自分の足元で伸びていたサハギンを、仲間たちのもとに投げ飛ばしてやった。 半魚人たちは、そいつも拾ってほうほうの態で逃げ去っていった。 一件落着だ。 「ふぅ......問題なく片付いたみたいだな」 俺が一息をついていると、そこにリオがやってくる。 「いえーい、兄ちゃん! ねぇね、手ぇ出してみて♪」 「ん、こうか?」 俺が両手を開いてリオの前に出すと、リオがそれに両手をパチンと打ち合わせてきた。 それからリオは、後に手を組んで「にひーっ」と笑いかけてくる。 今日も今日とて、うちの子はめちゃくちゃ可愛かった。 しかも水着姿なので、さらに可愛さ倍増。 これはもう、愛おしいと言っても過言でないレベルではなかろうか。 加えて、イリスとメイファも同じことを要求してきたので、俺は二人とも両手を合わせていく。 それから何となく寄り添ってきた二人の頭をなでて、さらにリオも同じことを要求してきたのでまた頭をなでて、一通りの戦後処理が終了──いや、これを戦後処理と呼んでいいのかどうかは分からないが。 ともあれその後、俺は教え子たちとともに、倒れていた少女の看護をするアルマのもとへと向かった。

129 Lesson 129 "- - Ahhhhh! From the rocks on the edge of the seawater bath, suddenly, I heard screams. People playing in the ocean give a bewildered look at what happened. "Dr. Brett, now" "Oh. I don't know what happened, but I'm gonna go check it out first." All the women brave men on the spot nodded seriously in my opinion after Alma's words. We rush toward the voice. Eventually we reached the wave strike, where the big rock was lined up with grass. These places are something that not many people come to because they are a little dangerous to play with, but on the contrary, it is rare that couples and others who like to play with fire flirt in these places in order to get a little bit of adventure. In fact, there was a pair of men and women in swimsuits, hugging each other and shivering. When men and women admit what we look like, they point more at the sea with their trembling hands. After that, there are two big things you can see. One is the appearance of a girl who is launched into the rocks at the waves, with her cheeks lifted in. A dark-haired girl with well-tanned brown skin, she looks about the same as the Rio's when she was old. It's not the bathing suit that the girl is wearing, it feels like she saw it, only one pair of underwear. It looks topless, but even if you care about that now, it doesn't seem like it. That's another thing I saw is the problem. Even further ahead of the girl - looking at the sea - I could see that the half-fish monster-like things were coming this way. The monster is fish-faced, covered in green blue scales all over his body, similar in shape to a human adult, but with tails similar to fish, fins for underwater activities in his arms, legs, etc. The number is four as far as you can see. There are other signs that there may be a few in the water. Anything that shows up on the water comes this way in an attitude spanning something that's underwater. Each of them had a spear similar in shape to a spear or a triple spear. I look at that monster and pull something out of the knowledge described in the College of Brave Men's textbook on monsterology to adapt. When I stopped looking at Cecilia and Alma, my former colleague teacher nodded. "Okay. What about Dr. Brett and the others? "Intercept that one. I don't know what's going on, but at least it doesn't look like someone who can hope for a peaceful solution." "Then you are. Sahagin is an evil and violent species. - By the way, why would you ask me to do that girl, not Mr. Cecilia? "Mr. Cecilia sucks sexually. If you leave Cecilia with a naked girl, she could be a secondary victim." When I said that to Alma, Cecilia, who was listening, dropped her shoulder. "Is my trust falling that far...... and ho" "I can't help it, Sister Cecilia. She deserves it around here." Rio stabs me in the todome and I kneel on the spot so Cecilia can do her best. Well, put that away. First, when Alma jumps to the rocks and gets to the brown-skinned girl, she lends the girl her shoulders to help her wake up. Meanwhile, I took three men, Rio, Illis and Mayfa, to a position where they would enter between the Almas and the half-fishers. Cecilia is guiding a couple who were on the rocks to the beach. Cecilia has a strong impression of no brave people lately, so I was just impressed to see her make a proper brave move. In doing so, the Sahaggins, who were in the ocean a long way away, quickly came to our immediate vicinity. That number is first of all four pairs of sahaggins that look like they're spanning something. In addition, there are three Sahaggins, all of them with faces all the way out of the water around them. Seven in total. If you dive further into the water, you will be able to see two pairs of four sahaggins spanning each other. Sahagin has been known to use Xuan (Shark) as a strange force, as a riding animal, or as a force of war. The half-fishers who appeared before us distorted the face of the fish surface - I think that's probably a thin smiley expression - and opened their mouths one after the other. "Geggeggegge, there are a lot of good looking ningen women out there. It's all over the place." "Wait, wait. First thing we need to do is catch that runaway woman." "You can catch them both. You can eat anything but the one that takes you home." "Gehich, so is that! "Gehhhhhhh!" The Sahaggins are attacking us all at once. Words are spoken for once, but there is no room for dialogue. The half-fishers, some jump off the water with a spear in their hands, and some try to swim up to the rocks. Intercept that with me, Rio, Illis and Mayfa. Me and Rio are standing in front, and Iris and Mayfa are slightly backwards. It should be noted that we are complete hands-on karate with no weapons or protective gear, and we have more enemies. That said... "Brother, these guys can punch you, right? "Oh, they're the kind of people who come at us without room for dialogue, it's barren to think about a peaceful response. More than that, Rio, I don't think fighting is my specialty, but can you do it? "Hehe, easy win! If you don't have a sword, you don't know how to deal with someone like this." "All right. Just bad scaffolding, so watch out there." "Ok, brother! Me and Rio will first try to avoid the blow of Sahagin's spear, which each flew in one piece. Then I grab Sahagin's spear and pull it. I slapped my sword into my mind where my opponent was out of balance at the front. Sahagin, who had been hit hard in the back with my knife, groaned "ghoulishly" and stuck on the big rock. On the other hand, Rio... "- Ha! He was pounding a mighty punch into Sahagin's belly as he attacked himself. Zudong sounds of intense shock, and Sahagin groans in front of him. Rio furthermore kicked the frightened sahagin hard that way. So Sahagin blows up, gives him a big blister with the dbourne and sinks into the sea. But Rio was "oops...!?" with the momentum that kicked Sahagin off, slipping his legs on the big rock and out of balance. Damn it, I'm not telling you. And towards Rio, another Sahaggin strikes and tries to stick out the spear in his hand. "I'm already too caught off guard with Rio! - - [Holy Light (Holy Ray)]!" The attacking magic of the light attributes emitted by Illis burst towards Sahagin, who was about to strike Rio. Taking a direct hit of the Holy Hotline, its sahagin screamed and blew away "Ggaaa," still raising a big blister and sinking into the sea. "Thankyou, Illis. But for now, you didn't have to help me." "It's bad for the heart over here watching! Look, look right in the front! "Hoi." While Rio and Illis are doing that, I'm intercepting another sahagin with the spear I got and sinking it into the ocean. This brings the total number of destroyed bodies to four. There are three remaining sahaggins. The remaining Sahaggins were in a hurry for their people to be defeated in no time. "Gee gee, you're lying!? Are these guys all brave?!?" "Gah, and you're strong as an idiot! Doh, what do we do!?" "Ggee, what are you gonna do, you can't just catch that runaway woman...! Half-fishers panicking like that. But if you do that and you're confused, now Mayfa's magic is activated. "... if you're the opponent in the water, might the magic of fire attributes be incompatible?... Well, there it is. - - [Fireball]!" Before the right hand protruded by Mayfa, a burning Red Lotus magic sphere is born. The rest of the sahaggins who saw it screamed 'Gee gee!?' and rushed to dive into the sea. Almost at the same time, Mayfa's magic is fired. A moment later, a scorching magic sphere unleashed by Mayfa caused a huge explosion by landing a bullet on the surface of the sea where the Sahaggins dived. The result is... "Gawart!" "Hot, no, no! From the sea, the sahagins jumped like Tobiuo one after the other. As Mayfa suspected, the magic of fire attributes against enemies in the water is incompatible. But that said, I can boil some of the seawater in an instant and turn it into hot water. Released by Mayfa's monster magic, [Fireball (Fireball)] had boiled the sea water there in a wide range of ways. Those Sahaggins who escaped into the sea will not be spared from major burns all over their bodies. "Fuck, fuck! Remember, Ningens! That's what the Sahaggins were trying to say and get away with, so I said, "Take this one too! He said," I threw Sahagin, who was stretching out at my feet, at my companions. The half-fishers fled in such a way that they would have picked it up as well. One case is settled. "Phew... looks like you cleared it up without a problem" When I'm taking a breath, that's where Rio comes in. "No, brother! Hey, give me your hand." "Hmm? When I opened my hands and put them in front of Rio, Rio met with Pattin with both hands on it. Then Rio laughs "hee hee" later, hand in hand. Today and today, my kid was so cute. Plus, he looks like a swimsuit, so he doubles his cuteness even more. Isn't this on a level where it's not an exaggeration to say it's loving anymore? Plus, Iris and Mayfa have been demanding the same thing, so I'm going to both hands together. Then I kind of leaned on the two heads, and then Rio demanded the same thing, so I took the head again, and the whole post-war process ended -- no, I don't know if I can call this post-war processing. After that, I went with my godchildren to Alma, nursing the girl who was falling.

第50話 形勢が悪くなったことを悟ったのか、視線をあちこちに彷徨わせてから、震える声で答える。 「レ、レオノーラ先生......何を聞いたのか分かりませんが、それはおそらく、そこのアルマ先生の妄想でしょう。彼女はどうやら、私に私怨を持っているようでしてな」 「ふぅん? ではサイラス先生が、嫌がるアルマ先生のお尻をなでたり、胸を揉んだりしたセクハラ行為も、すべてアルマ先生の妄想であると。そう主張されるわけですね?」 ざわっ......! 観客席がさらにざわめき始める。 先ほどまで形作られていた、サイラスが正義で俺たちが悪という構図が、サイラス=悪という図式が浮かび上がったことによって一気に傾き始める。 「あのサイラスっていう役員、セクハラをするような人なの......? だったらあの人が言っていること、最初から全部嘘なんじゃ......」 「待て待て、証拠が何もない。サイラスさんは、あのアルマっていう女性教師の妄想だって言っていたじゃないか」 「でもそれを言ったら、さっきの戦いが八百長だっていうのも証拠はないじゃない」 「それはそうだが......」 観客の反応は、五分と五分。 女性の観客はアルマとレオノーラ側の主張に肩入れしている人が多いようだが、男性の観客はもう少し慎重に見るべきだという声が大きいように見える。 サイラスは慌てて取り繕うように、レオノーラに言葉を返す。 「そ、そうですとも。困りますなぁレオノーラ先生。自分も女性だからと、被害妄想癖のある女性教師の言うことを真に受けてこのような公の場で糾弾に及ぶなどと。そんなことではレオノーラ先生の伝説まで地に墜ちますぞ?」 「ふ、ふふふふ......あなたは相変わらずのようですねぇ、サイラス先生? 昔っからそうやって、他人を陥れるのが大のお得意だったものね」 あ、ヤバい。 レオノーラ先生の怒りゲージが一瞬でMAXに上がった。 ていうかあの二人、もともと何か因縁でもあるのか。 そういや同年代だし、サイラスも昔は勇者学院の教師をやっていたみたいだから、何かあったのかもしれない。 サイラスは、ここが逃げ場だと思ったのか、こほんと咳払いをする。 「ま、まあいずれにせよレオノーラ先生。そのような話はこの場でするようなことではありませんよ。ここは生徒たちの活躍の場です。大人同士の諍いの話は、また後日にいたしましょう」 この場を切り抜け、うまいことまた密室政治に持ち込もうと企むサイラス。 だがレオノーラ先生は、逃がしはしない。 にやぁっと笑って、こう続けた。 「だからこそですよ、サイラス先生。あなたはその生徒たちの戦いを、『八百長』などと言い張りました。そんな言いがかりを放つサイラスという人がどんな人か、この場の皆さんに知ってもらう必要があるでしょう? 清廉潔白なら、逃げる必要はないですよねぇ?」 「ぐっ......!」 レオノーラ先生が、喰らいついたら離さない蛇みたいな顔をしていた。 怖い。 「アルマ先生のほかにも、あなたの悪行の被害者はたくさんいるようですね? ──特にひどかったものの一つが、そこのブレット先生に関すること」 レオノーラ先生は俺のほうを指さす。 ふっと微笑んだ表情は、この場は私に任せておけと言っているように思えた。 先生は、再びサイラスへと視線を向ける。 「ブレット先生に暴力教師であるという因縁をつけて、王都から辺境に左遷したのだと聞きました。彼のことを『問題教師』などと吹聴したみたいですけど、あなたがそう仕立て上げただけのことですよね?」 「ち、違う! 私は生徒たちから実際に相談を受けて......!」 「しかもブレット先生の教え子たちを『クズ勇者』などと罵り、クズの代わりなどいくらでもいる、などとも言ったそうですね?」 「え、えぇい、根も葉もないことを! でたらめばかりを言わないでもらえますかな!? レオノーラ先生と言えども名誉棄損、侮辱罪は免れませんぞ! 分かっているのですか!?」 「根も葉もないでたらめばかり言っているのは、サイラス先生のほうでしょう?」 そこでついに、サイラスがキレた。 いや、キレた振りなのかもしれないが、やつの丁寧語が崩れる。 「ふんっ、話にならん! そこまで言うならレオノーラ、証拠を出せ、証拠を! ないのだろう! あるわけがないな! すべて根も葉もない嘘八百なのだからな! ──さあ、証拠を出せ、証拠を!」 役員席に用意されたテーブルを、苛立たしげにバンバンと叩くサイラス。 それにレオノーラ先生は、すまし顔で言う。 「ですって、アルマ先生」 「ほいほい。じゃ、流しまーす」 そう言ってアルマが取り出したのは、魔導録音機だ。 それを見たサイラスが顔を青くするが、もう遅い。 アルマは魔法で記録された音声を再生した。 『いいではないですか、アルマ先生。......なぁに、こんな辺鄙な村のクズ勇者が三人程度使い物にならなくなったところで、この国に勇者の代わりなどほかにいくらでもいますよ。クズどもがジェイクくんたちのような優秀な勇者の糧となるのであれば、万々歳ではありませんか』 魔法による録音音声であるために少しくぐもった、しかしまぎれもないサイラスの声。 その魔道具の音声を聞いた観客たちは、さらに大きくざわめき始めた。 観客たちの視線のほぼすべてが、サイラスを非難するものへと変わっていた。 サイラスは慌てふためいた様子で周囲を見回す。 「ち、違うのです! これは......! ──お、おのれ女狐ども! 私に似た声の持ち主を探して、このような細工をするなど! こんな録音に証拠能力などないぞ!」 だがそんなサイラスの主張にも、レオノーラ先生とアルマの二人はどこ吹く風だ。 「アルマ先生、その先もいっとく?」 「そうですねー、レオノーラ先生」 アルマは一度止めていた音声を、続けて再生する。 最初に流れてきたのは、アルマの声だ。 『サイラスさん......それ、本気で言ってるの?』 『おっと失礼、言葉が過ぎましたかな。......しかしアルマ先生、まだ子供といっても、礼儀を欠くことは許されませんよ。私のような立場にある者に暴言を吐けばどういうことになるか、彼女らには身をもって思い知ってもらう必要があります。そうでしょう? ──そしてそれは、先生のような大人であればなおさらのこと。ブレット先生と違い利口なアルマ先生なら、分かりますね?』 先の音声、そしてアルマへのセクハラ疑惑を聞いたあとに聞くと、これらの発言の「意味」も観客に十分に伝わる内容だった。 自分の声を聞いたサイラスは、大声で騒ぐ。 「やめろ! 今すぐそれを流すのをやめろ! そんなものに証拠能力はないと言っているだろう! 名誉棄損だ! 貴様ら全員──こんなことは許されんぞ! 分かっているんだろうな!!!」 だがレオノーラ先生は、サイラスのその物言いにも冷静にこう切り返した。 「そうですね。法廷での証拠能力は、参考程度といったところでしょうか。私はこの場にいる観客の皆さんに、判断材料の一つを提示したまでです。あとはサイラス先生のご希望通り、後日のお話し合いにいたしましょうか」 ──結局、サイラスは最後まで喚いていたが、観客の反応は歴然だった。 ほぼ一色、サイラスへの非難の目を向けるもの。 やがてその目に耐えられなくなったサイラスは、逃げるように会場から立ち去っていった。 ちなみに、後日の勇者協会の査問委員会などでサイラスはその役職を追われ、それによってやつは長年かけて築き上げてきた権力基盤の一切を失うことになるのだが、まあそれはさておき。 現在の観客席を見れば── 「「いえーい!」」 レオノーラ先生とアルマとがハイタッチをして、勝利を祝っていたのだった。 ......うん、あの二人は怒らせないようにしような、俺。 怖い怖い。 ──とまあ、そんなわけで、最強新人勇者決定戦はリオ、イリス、メイファの三人が今年の優勝者となった。 大勢の観客や勇者たちの前で表彰された三人は、とても照れくさそうにしていたが、とても嬉しそうでもあった。 俺はそんな三人を、たくさん称賛し、たくさん抱きしめて、たくさんなでなでした。 その現場をレオノーラ先生とアルマに目撃されて、社会的にも物理的にも命を落としそうになったのは、きっと気のせいだ。 そんなこんながあって、やがてはそれも落ち着き。 俺は三人の教え子を連れて宿へと戻り、穏やかで楽しい夕食の時間を過ごした。 あとは── 最後の仕事だ。 俺は夜中、リオたち三人を連れて宿を出る。 そして、わけの分かっていない三人を連れて、誰もいなくなった夜の競技場へと向かった。

50 Lesson 50 You realize the situation has gotten worse, you let your gaze wander around, and then you answer with a trembling voice. "Les, Dr. Leonora... I don't know what you heard, but that's probably Dr. Alma's delusion there. She seems to have a personal grudge against me." "Hmm? Then Dr. Cyrus said that all acts of sexual harassment that disgusted Dr. Alma's ass or rubbed his chest were also delusions of Dr. Alma. So that's what they claim? Goddamn it......! The audience begins to blur even further. The idea that Cyrus is righteous and we are evil, which was shaped until earlier, begins to lean at once by the emergence of a diagram called Cyrus = Evil. "That officer named Cyrus, he's like a sexual harasser...? Then he's lying about everything he's been saying from the beginning..." "Wait, wait, there's nothing to prove. Mr. Cyrus said she was paranoid about a female teacher named Alma." "But when I say that, there's no proof that the battle was 800." "That's right..." The audience reacts, five minutes and five minutes. A lot of female audiences seem to put their shoulders on the claims of Alma and Leonora's side, but the male audience looks louder that they should look at it a little more carefully. Cyrus hurries back to Leonora to fix it. "Well, I suppose so. I'm in trouble, Dr. Leonora. Because I am also a woman, I truly take what a paranoid female teacher says and extend it to bullets in public places like this, etc. We're going down to Dr. Leonora's legend, aren't we? "Heh heh heh... you seem the same, Dr. Cyrus? That's how I've always been good at falling for other people." Oh, shit. Dr. Leonora's anger gauge went up to MAX in an instant. I mean, are those two, originally also due to something? That's kind of the same age, and Cyrus used to seem to be a teacher at the College of the Brave, so maybe something happened. Cyrus really coughs up whether he thinks this is an escape. "As it were, well, in any case, Dr. Leonora. That's not what we're talking about here. This is a place for the students to play. We'll talk about adults later." Cyrus tries to cut through this place and bring it to the secret room politics again for the good. But Dr. Leonora won't let you get away with it. I finally laughed at it and went on like this. "That's why, Dr. Cyrus. Thou hast called the battle of the pupils, 'Eight Hundreds', etc. You need to let everyone in this room know what a man named Cyrus is who releases such claims, right? If it's clean and clean, you don't have to run, do you? "Gu......! Dr. Leonora looked like a snake who wouldn't let go if he ate it. Scary. "Besides Dr. Alma, you seem to have a lot of victims of your evil deeds, don't you? - - One of the things that was particularly terrible was about Dr. Brett there" Dr. Leonora points to me. The smiling look all the time seemed to me to be telling me to leave this place to myself. The teacher turns his gaze to Cyrus again. "I heard you moved left from Wang Du to the border because you were a violent teacher to Dr. Brett. Sounds like you bragged about him as a 'problem teacher' or something, but that's just how you tailored him, isn't it? "Chi, no! I was actually consulted by the students......! "Besides, he cursed Dr. Brett's godchildren as' scumbag braves' and so on, and he also said that there are as many scumbag substitutes and so on? "Oh, yeah, the lack of roots and leaves! Can you not just bullshit me!? Speak of Dr. Leonora. You will not be excused for dishonor or insult! Do you understand!? "Dr. Cyrus is the one who keeps saying bullshit without roots or leaves, isn't he? So finally, Cyrus kicked ass. No, maybe it's a clean gesture, but his polite language breaks down. "Huh, we're not talking! If you say that much, Leonora, give me proof, give me proof! I guess not! There's no way! It's all a lie with no roots or leaves! -Come on, give me proof, give me proof! Cyrus slaps the table provided for the board seat with a bang in frustration. And Dr. Leonora says, with a soft-face. "Yes, Dr. Alma." "Ho ho. Okay, let's flush." That's what Alma took out, the magic recorder. I saw that. Cyrus blues his face, but it's too late. Alma played magically recorded audio. 'Isn't that nice, Dr. Alma?... and yet where there are about three scumbag braves in such a despicable village who are no longer useful, there are as many other things as replacing braves in this country. If scumbags are to feed good brave men like Jake and the others, aren't they hail?' The voice of Cyrus, a little creepy, but unmistakable, to be a magical recording audio. The audience, hearing the sound of that magic prop, began to squeal even louder. Almost everything in the audience's gaze had turned into something that condemned Cyrus. Cyrus looks around in a panic. "Chi, it's not! This...! - Oh, you old foxes! Find a voice owner similar to me, do this kind of work, etc! This recording doesn't have the ability to prove anything! But even with Cyrus' claim, where are Dr. Leonora and Alma's winds blowing? "Dr. Alma, you want to stay ahead of me? "That's right, Dr. Leonora." Alma plays back the audio he once stopped. The first thing that came through was Alma's voice. "Mr. Cyrus... are you serious about that? 'Oops. Excuse me, have you passed the word?... But Dr. Alma, even if you're still a child, you're not allowed to lack courtesy. They need to know with their own minds what it means to rumble to someone in a position like me. Isn't that right? - - And that's even more so if you're an adult like a teacher. Unlike Dr. Brett, if you're a clever Dr. Alma, you know what I mean? When I heard the earlier audio, and after I heard the suspicion of sexual harassment of Alma, the "meaning" of these statements was also sufficiently conveyed to the audience. Hearing his own voice, Cyrus makes a noise. "Stop it! Stop flushing it now! I'm telling you, I don't have the ability to prove that stuff! Dishonored! All of you... you're not allowed to do this! You must know!!! But Dr. Leonora calmly cut back on Cyrus' story. "Right. Is the ability to prove in court something like the degree of reference? Until I presented one of the judgment materials to the audience here. And then, as Dr. Cyrus would like us to discuss it later." - - In the end, Cyrus was calling to the end, but the audience's reaction was historical. Almost monochrome, something that turns the eye of condemnation to Cyrus. Eventually, Cyrus, unable to stand those eyes, walked away from the venue to escape. Incidentally, Cyrus was pursued for that position on the Inquiry Committee of the Association of the Brave at a later date, thereby losing any power base that he had built over the years, well, aside from that. If you look at the current audience... "" Yikes! Dr. Leonora and Alma had a high touch and were celebrating the victory. ... Yeah, let's not piss those two off, me. Scary. Scary. - Well, that's why three of the strongest rookie brave fights became winners of the year: Rio, Illis and Mayfa. The three honored in front of a large audience and brave men seemed very illuminating, but also very pleased. I praised the three of them a lot, hugged them a lot, and a lot of them. I'm sure it was my fault that Dr. Leonora and Alma witnessed the scene and nearly lost my life, both socially and physically. That happened, and eventually it calmed down, too. I took my three godchildren back to the inn for a peaceful and enjoyable dinner. And then... It's my last job. I take the three Rio's out of the inn in the middle of the night. Then he took three of my strangers to the arena the night nobody was gone.

第23話 三人の少女たちは洞窟の前に立ち、緊張の面持ちで中を覗いていた。 俺は彼女らの後ろで、様子を見守っている。 洞窟の壁はごつごつとした岩肌で、少しだけ茶色みを帯びていた。 洞窟の天井までの高さや道幅は、巨体のオークが根城としているだけあってかなり広々としたものだ。 天井までの高さはリオたちの背丈の倍以上もあるし、道幅はそれ以上ある。 洞窟の明るさは、入り口付近は昼下がりの陽光が入り込んでまだ明るいが、奥に進むにつれて真っ暗闇になっている。 闇の眷属であるオークは、暗視能力──暗闇の中でも問題なくモノを見ることができる能力を持っているが、俺たち人間はそうはいかない。 洞窟探索には、灯りが必要だ。 「──【 イリスが魔法を唱えた。 彼女が手にした弓が、まばゆく輝きを放つ。 】は物品にかけると、その物品が照明のように明るい光を放つようになる魔法だ。 それから、洞窟を覗き込んでいたリオ、イリス、メイファの三人は、互いにうなずき合うと、今度は後ろにいる俺のほうを窺うように見てきた。 このまま進んでいいのか、不安なようだ。 「気になるところがあったら助言するから、まずは思うようにやってみな」 俺がそう言うと、三人はこくんとうなずいて、おっかなびっくりという様子で洞窟の中へと足を踏み込んでいった。 リオが先頭になって進み、イリス、メイファが後ろについていく。 イリスが手にした弓の灯りが、周囲の壁にゆらゆらとした影を作り出していた。 】の魔法を使い、持っている短剣の一本を照明に変えて鞘にしまっておく。 いざとなったときにイリスの灯りが頼りだというのでは、引率の先生として十分な仕事はできないからな。 少女たちは周囲を警戒しながら、洞窟の道をゆっくりと進んでいく。 道はしばらく一本道で、うねうねと蛇行しながら続いていた。 「ねぇ、リオ......」 「なんだよ、イリス」 】の魔法、リオの剣にもかけておいたほうがいいかな......?」 「あー、まあな、あると助かるかも。オレがイリスの前に立つと、前が暗くなっちまうんだよな。魔力は大丈夫?」 】はほとんど消耗しないから、大丈夫だと思う」 「じゃあお願い」 俺はそんな二人のやりとりを見ていて、よしよしと思う。 彼女たちにはそうやって、自分たちで考えて動けるようになってほしいと考えているからだ。 教師の指示を受けないと何もできないような勇者には、育ってほしくない。 そんなことを思っていると、メイファがイリスの横に寄って、うりうりと肘を入れる。 「......そんなこと言って、本当は、暗いとイリスが怖いだけ。......イリスは怖がり」 「ちちちち、違うもんっ! メイファはそうやって、すぐにからかう!」 「......だったら、こうしたらいい......ごにょごにょごにょ」 メイファは何やらイリスに耳打ちをする。 その際に、いつものいたずら好きの顔で俺のほうをちらと見た。 一方でメイファから耳打ちをされたイリスは、ぼんっと顔を赤くした。 「そそそ、そんなことできるわけないでしょ! 何考えてるの、メイファのバカ!」 「......そう言いながらイリスは、まんざらでもないと思ってる」 「違うもん! 私、そんなこと──」 そう言いながら、今度はイリスが俺のほうを窺うように見てきた。 それからまた顔が真っ赤になり、ぶんぶんと首を振る。 「......そんな迷惑なこと......思ってないもん......」 そう言って、イリスはしゅんとなってしまった。 まったく、いったい何なんだ。 「おいメイファ、何だか知らんがイリスが困って──」 「......そんなお兄さんに......イリスをどーん!」 「うわわわわわっ......!」 「って、イリス!? ──おっととととと」 何を思ったか、メイファがイリスの背中をドンと押して、俺のほうへと突き飛ばしてきた。 俺は慌ててイリスを抱きとめる。 「っと......大丈夫かイリス」 「は、はい......。......でも、先生の胸に抱かれて、先生のにおいで、くらくらして......」 「......は?」 「はっ......! ──いいいいいえ、なんでもありません!」 「お、おう、そうか。それならいいんだが」 なんか今、不穏な言葉が聞こえたような、聞こえなかったような。 だがそれよりも、今はあいつだ。 「おいメイファ、お前いったい何やってんだ、真面目にやれ。いつどこからオークが襲ってくるか分からないんだぞ」 俺はメイファにそう注意する。 そんなことは、メイファは知らないはずだ。 なのにふざけるというのは、緊張感が足りないということで── などと思っていたのだが。 メイファは首を横に振る。 「......大丈夫。......まだ近くにオークはいない」 「なんでそんなこと分かるんだよ」 「......お兄さんも、分かってるはず。......だって、さっき使ってた」 「はぁ? お前何言って──」 そこまで言って、俺は脳内で一つの可能性に行きついた。 そしてその可能性は、メイファの性格や能力と合わせて考えれば、すぐさま確信に変わった。 まさか、こいつ──!? 一方メイファは、俺の表情の変化に気付いたのか、ニヤァっと笑う。 「......気付いたみたいだね、お兄さん。......その顔が見たかった。頑張った甲斐があった」 そう言って、メイファが今度はにっこりと微笑んだ。 いつか聞いたようなセリフに、いつか見たような天使のような悪魔のような笑顔。 俺はメイファに問いかける。 】、いつの間にか修得してたのか? それで今、使ってるってことか......!?」 「......正解。......教科書を見て、面白そうな魔法だと思ったから、この一週間の間に勉強した」 にこにこ笑顔で答えるメイファ。 】は初級魔法だし、メイファが特に得意とする風属性の魔法だ。 だが初級は初級でも、【 メイファのやつ、相変わらずバケモノっぷりだし、相変わらずの才能の無駄遣いだ。 だがこれを頭ごなしに否定するのも良くない。 それを修得する余力があるならこっちを覚えたほうが──なんて教師が考える最適解の押しつけをして、生徒が自ら楽しんで学ぶ芽を潰してしまっては逆効果だ。 メイファのやつは多分、ある程度自由にやらせた方が伸びる。 だったらこれは注意せず、放置だ。 俺は自分の腕の中に収まっているイリスに聞く。 「ところでイリスはさっき、メイファから何を言われたんだ?」 「うっ......せ、先生には、内緒です......(......怖いから先生の腕に抱きつきたいなんて、言えるわけないじゃない......メイファのバカ)」 「ん......? 今ボソボソっと何か言ったか?」 「いいいいいえ! 何でもありませんっ!」 イリスは顔を真っ赤にして、わたわたしながら全力否定した。 俺の天使が壊れ気味な気がする今日この頃である。

23 Lesson 23 The three girls stood in front of the cave and peered inside in the face of tension. I'm behind them, watching. The walls of the cave had a bite of rocky skin and were only slightly browned. The height and width of the cave to the ceiling is quite spacious, with giant oaks just as rootscapes. The height to the ceiling is more than double the back length of the Rio's, and the road width is more than that. The brightness of the cave is still bright with daylight entering near the entrance, but it is dark as it progresses to the back. Orc, a family member of Darkness, has the ability to see things without any problems, even in the dark, but we humans don't. We need lights to explore the cave. "- - [Light (Light)]!" Illis cast his magic. The bow in her hand sparkles brightly. [Light] is a magic that when applied to an article, the article emits a bright light like lighting. Then the three of them, Rio, Ilis and Mayfa, who were peeking into the cave, nodded at each other and now looked at me more behind them. I'm anxious to see if I can keep going. "I'll advise you if you have any concerns, so first try what you think" When I said that, the three of them nodded and stepped into the cave looking surprised. Rio leads the way, Ilis, Mayfa follows behind. The bow lights in the hands of Illis had created a loose shadow on the surrounding walls. I use the magic of [light (light)] myself as I follow them a few steps back, turning one of the daggers I have into lighting and keeping it in my sheath. I can't do enough work as a pull teacher because I depend on the Illis lights when I have to. The girls slow down the path of the cave, guarding their surroundings. The road was the main road for a while and continued with a snake. "Hey, Rio..." "Oh, my God, Illis" "[Light (Light)] magic, should I also put it on Rio's sword...? "Uh, sort of, it might help to have one. When I stand in front of Illis, it gets dark before me. Is magic okay? "Yeah. [light (light)] hardly wears off, so I think it's okay" "Then please" I've been watching those two interact, and I think it's okay. Because that's how we want them to be able to think and move on their own. I don't want brave men who can do anything without instruction from their teachers to grow up. With that in mind, Mayfa stops next to Illis and elbows in. "... say that, the truth is, I'm just scared of Iris when it's dark.... Ilis is scared" "Chichichi, it's not! That's how Mayfa teases you right away! "... then this is what you should do..." Mayfa hits Iris in the ear somehow. In doing so, I saw me with my usual mischievous face. Meanwhile, Iris, slapped in the ear by Mayfa, blushed. "Oh, my God, you can't do that! What are you thinking, Mayfa idiot! "... and with that said, Illis thinks it's not a good idea." "No! I don't..." With that said, now I've seen Iris peer at me. Then my face turns bright red again and I shake my head probably. "... such a nuisance... I don't think..." That's what I said, and Ilis got sober. Damn, what the hell is that? "Hey, Mayfa, I don't know what you're talking about, but I'm having trouble with Iris." "... to your brother... don't take Illis! "Wow wow...! "What, Illis!? - - Oops." I don't know what you thought, Mayfa pushed Iris' back with a dong and she popped right at me. I rush to hold Illis. "Are you all right, Iris?" "Yes......... but held by the teacher's chest, with the smell of the teacher, teasing..." "... what? "Ha......! - - Yes, no, nothing! "Oh, well. I hope so." Something like I just heard disturbing words, like I didn't hear them. But more than that, it's him now. "Hey Mayfa, what the hell are you doing, seriously. I don't know when or where the orcs are coming from." That's what I pay attention to Mayfa. Mayfa shouldn't know that. And you're kidding, because you're not nervous enough. I thought so. Mayfa shakes her head to the side. "... it's okay.... no orcs nearby yet" "How do you know that?" "... your brother, too, you know.... because I was just using it" "Huh? What are you--" That's it, I went to one possibility in my brain. And that possibility quickly turned into certainty when considered in conjunction with Mayfa's character and abilities. No way, this guy...!? Mayfa, on the other hand, sneers at you for noticing a change in my expression. "... you seem to have noticed, brother.... I wanted to see that face. It was worth the effort." That's what I said, and Mayfa smiled now. An angelic devilish smile like you saw one day on a line like you heard. I ask Mayfa. "Mayfa, you... [Expanded Hearing (High Hearing)], when were you getting it? So now you're using...!? "... correct.... I studied this past week because I saw the textbook and thought it looked like an interesting magic" Mayfa answers with a smile on her face. Indeed, [Expanded Hearing (High Hearing)] is elementary magic, and the magic of wind attributes that Mayfa specializes in. But even in elementary school, compared to basic magic such as [Ignite], [Water Creation (Creative Water)], and [Light (Light)], elementary median magic is the same level as [Fire Arrow (Firebolt)], [Healing Water (Heel Water)], and it shouldn't be easy to acquire magic. The Mayfa one, it's still full of bucket stuff, and it's the same waste of talent. But it's not a good idea to deny this without a headache. If there's room to learn that, it's better to remember this one - what a push for optimal solutions for teachers to think, and crushing the buds that students enjoy and learn for themselves is counterproductive. The Mayfa one probably stretches better if I let him do it somewhat freely. Then I won't pay attention to this, I'll leave it alone. I ask Illis, who fits in my arms. "By the way, what did Iris just say to you from Mayfa? "Ugh... let the teacher know... (... I can't say I want to hug you in the teacher's arms because I'm scared... Mayfa's idiot)" "Hmm...? Did you just say something bossy? "Yes, no! It's nothing! And Iris turned his face bright red, and denied it with all his might as I I feel like my angel is broken today.

第89話 市門で入市チェックを受けてから、俺たちは都市ラヴィルトンの市内へと入った。 「うわぁ、すっげぇ......!」 「すごい、綺麗......」 「......おー」 リオ、イリス、メイファの三人は、街の中の様子に感動していた。 ここラヴィルトンも一般的な都市と同様、市門からはまっすぐにメインストリートが伸びていて、それとは別に右手と左手にも市壁に沿って道路が続いている。 またメインストリートは二台の馬車がゆうにすれ違えるほどの広さで、通りの左右には住居や店舗などがずらりと並んでいて、そのあたりも普通の大規模都市と同じ形だ。 ただ特徴的なのは、夜のラヴィルトンの街並みはぴかぴかと、色とりどりの魔法の灯りによって装飾されているところだ。 いろいろな建物が赤、青、緑といった様々な色合いの光をともしていて、ものによってはそれで看板の文字が形作られていたりもする。 この種類の灯りはネオンライトと呼ばれていて、魔法工学研究の成果としてここ最近に開発されたものだ。 またこのラヴィルトンの街は、通りを見てももうすっかり夜といっていい時間だというのに、いまだたくさんの人でごった返していて人通りが絶えそうな気配がない。 夜のない街ラヴィルトン──そう表現されても納得してしまうほどの活況が、俺たちの眼前に広がっていた。 のんびりとした風景が好きな俺なんかは、この景色は多少華美でうるさいかなとも感じるのだが、リオ、イリス、メイファの三人はしきりに感嘆の声を漏らしていた。 俺はちょうどいい位置にいたメイファの髪を手でなでつけつつ、三人に向かって言う。 「普通の街だったらもう店じまいの時間だろうけど、この街の武具店だったらまだしばらく開いているかもな。宿をとる前に何件か先に覗いておくか?」 「んっ......ボクは、苦しゅうない」 頭をなでられたメイファが、気持ちよさそうにしながら言ってくる。 一方でイリスとリオも、 「はい。先生のおっしゃるとおりに♪」 「オレたちこの街は初めてだし、兄ちゃんに任すよ」 と同意したので、俺は三人を連れてメインストリートを進んでいくことにした。 俺もこの街に来るのはこれで二度目だし、以前に来たときとは街並みもだいぶ変わっている。 俺たちは左右にたくさんの店舗が立ち並ぶ中を、どこかいい店はないかと物色しながら歩いていく。 “芸術の都”の異名とともにもう一つ、“職人都市”とも呼ばれるラヴィルトンだ。 衣類や靴や家具、調理器具や工芸品など、様々な種類の職工業を生業とする職人たちの、思い思いの商品を所狭しとウィンドウした店舗がずらりと並んでいる。 勇者用の武具店だって、一店舗ではない。 品質や個性を競い合うように幾多の職人の店があって、客としてはより取りみどりだ。 ちなみに俺の懐にある予算は、大金貨で百八十枚ほど。 これは一般市民の年収数年分に相当する大金だ。 その所持金を踏まえ、俺がどこの店舗に入ろうかと物色していると── 「......お兄さん。......ボクはお兄さんと、手をつなぎたい」 メイファが唐突に、そんなことを言ってきた。 「ん......? ああ、まあいいけど」 「......そう。......ありがとう、お兄さん」 メイファの口元が、ニヤリと吊り上がった気がした。 メイファは俺の右手側につくと、俺の右手に自分の左手を合わせて、その小さな手指を絡めてきた。 その所作に妙に艶めかしさを感じて、俺は少しドキッとしてしまう。 「お、おい、メイファ」 「......ボクは宣言した通り、手をつないだだけ」 メイファはそう言って、にこっと俺に笑いかけてくる。 そして再びもぞもぞと手を動かし、俺の手と指同士を絡め合わせてから、俺の手をきゅっと握ってきた。 それからメイファはほのかに頬を染め、俺から視線を外す。 ......な、なんなんだこの、妙なこそばゆさは。 すごく恋人チックな空気を感じるのだが、俺の気のせいだろうか。 一方、その様子を見ていたイリス。 ぷっくーと頬をふくらませてから、俺に向かって言う。 「先生!」 「お、おう、なんだイリス」 「私、先生と腕を組みたいですっ!」 「そうか。分かった」 俺の承諾を得たイリスは、メイファとは逆──俺の左手側につき、俺の左腕を自分の腕でぎゅっと抱きしめ、そのまま俺に寄り添ってきた。 子供と侮れない立派なたわわの柔らかな感触が俺の腕にぎゅっと押し付けられ、さらには体重を預けてくるイリスの体温が伝わってくる。 ......いや、待て待て なんかこれも、恋人っぽくないか? 何だかよく分からぬ間に、妙なことになってきた。 そして最後に残ったのはリオだ。 「兄ちゃん」 「な、なんだ、リオ?」 「もう兄ちゃんの腕が空いてないから、オレはおんぶでいいよ?」 「......分かった」 自分でも何が分かったのか分からないが。 俺の許可を受けたリオは、ぴょんと俺の背中に飛びついてくると、背後から抱きつくようにしがみついてきた。 少女の柔らかな両腕が俺の首回りに巻かれ、さらに健康的な両脚が俺の胴回りをぎゅっと絡めとってくる。 そして、リオもイリスほどではないが胸は十分にあり、それが俺の背中にぎゅっと押し付けられた。 ていうか、どういうことなの......。 三人とも休日のパパに甘える子供のような気分なのか分からないが、それにしては妙にいけない気持ちにさせられるというか。 俺が意識しすぎなんだろうか。 いや、それを抜きにしてもだ。 三人とももう俺から見ればすでに立派なお体を持った蠱惑的な美少女なので、ちょっと自重してほしい。 教師とか親代わりとかいう立場を忘れて、一人の男としてどうしてもいけない気持ちになってしまう。 ......まあ、でもなぁ。 こいつらも実の父親とかにはそんなに甘える機会がなかったんだろうから、今になって甘えたい盛りがきているのかもしれない。 そう考えると、やりたいようにさせてやってもいいかなと思えてくる。 つらい幼少期を送ってきた三人だから、ちょっとぐらい甘えさせてやっても罰は当たるまいと。 「......ま、いいか」 俺はひとつ呟きつつ、三人を連れて──というか三人と合体した状態で、街を歩き始めた。 俺が変なことをしたりしなければ何の問題もない話だし、先日のヴァンパイアロード退治のときにイリスやほかの二人と一緒のベッドで寝たときと比べれば、我慢のための難易度はよっぽど低い。 いけるいける、問題ない。 とはいえ事情を知らない人たちから見れば、一人の男にへばりつく超絶美少女三人という、とんでもない構図だ。 道行く人たちがチラチラと、俺たちのほうを訝しげに見ては通り過ぎて行く。 ......まあ旅の恥はかき捨てと言うし、あきらめよう。 そんな風に考えながら、俺は都市ラヴィルトンの中央通りを進んでいった。 するとやがて── 「ねぇ先生、あのお店の品揃え、すごくないですか?」 イリスがそう言って、通りの右手側の大きな店舗を指さした。 そこは大規模の勇者用武具店で、透明ガラス張りの店頭ショーウィンドウには多数の武器や防具が飾られていた。 それらの武器や防具はどれもデザイン性に優れたもので、見栄えにも美しい芸術的な品だ。 「ああ、あそこはリゼル武具店か。ここラヴィルトンでも有名な、エルフの武具職人の店だな」 「ほえ......? エルフの職人さん、ですか......?」 イリスが俺のほうを見て、驚いたように聞き返してくる。 まあ驚きたくなる気持ちは分かる。 “森の妖精”とも呼ばれるエルフ族は、人間と似ているが総じて痩身で容姿端麗、さらに尖った耳が特徴の長命の 俺たち人間と比べると圧倒的に人口が少なく、さらに人間の街で暮らす者となるとかなりのレアキャラである。 「イリスはエルフって、見たことはないか?」 俺がそう聞くと、イリスはこくこくと小動物のようにうなずいてくる。 はい可愛い。 まあかく言う俺も、魔王ハンターのエルフにしか会ったことはないんだけどな。 人間同様、エルフの中にも勇者はいて、そのうちの何人かを見たことがあるだけだ。 「せっかくだし、リゼル武具店は覗いておくか。三人ともさすがに店の中では迷惑だから、俺から離れるように」 「「「はぁーい」」」 俺の指示に従って、名残惜しそうに離れていくリオ、イリス、メイファの三人。 「ちぇっ、さすが兄ちゃん、手ごわいな。このぐらいじゃびくともしないか」 「......そうでもない。......ボクの勘では、効果はあった。効いてる効いてる」 リオとメイファが何だかよく分からない話をしていたが。 ともあれ俺は、三人の教え子を引き連れてリゼル武具店へと入っていった。

89 Lesson 89 After being checked into the city at the city gate, we entered the city of Ravilton. "Wow, that's awesome...! "Wow, beautiful..." "... ooh" The three of them, Rio, Ilis and Mayfa, were impressed by what was going on in the city. Here in Lavilton, as in common cities, the main street stretches straight from the city gate, apart from which roads continue along the city walls on the right and left. Also Main Street is large enough for the two carriages to be loosely different, and to the left and right of the street there are sloppy lines of dwellings, shops, etc., and the area is the same shape as a normal large city. Only characteristic is that the streets of Lavilton at night are perfectly decorated by colorful magical lights. Various buildings have various shades of light, such as red, blue, and green, and in some things, the lettering of the sign may also be shaped with it. This type of lighting is called neon lights and was recently developed here as a result of magic engineering research. Again, this city of Ravilton says it's already a perfectly good time to watch the streets, but there's still a lot of people and there's no sign that the crowd is going to keep going. Lavilton, a city without nights - so vibrant that we were convinced even when it was described as such - was spreading in front of us. I like the relaxed landscape. I also feel that the scenery is somewhat gorgeous and loud, but Rio, Illis and Mayfa were definitely leaking their admiration. I say to the three of them as I grab Mayfa's hair in just the right position. "If it were a normal city, it would be time for stores, but if it were an armoury store in this city, it might still be open for a while. You want me to take a peek at a few things before you take the inn? "Hmm... I won't suffer" Mayfa, with her head in her hand, says as she feels comfortable. Illis and Rio, on the other hand, "Yes. Just like the teacher said." "We've never seen this city before, and I'll leave you to your brother." I agreed, so I decided to take the three of them down Main Street. This is the second time I've come to this city, too, and the streets have changed a lot since I've been here before. We walk around with lots of stores lined up on the left and right, wondering if there are any good stores. Another, along with the alias "Capital of the Arts", is Ravilton, also known as "Artisan City". Craftsmen working in various types of industries, such as clothing, shoes and furniture, cookware and crafts, have a narrow window of thought-products. Even a brave martial arts store is not a single store. As a customer, there are many artisan stores that compete for quality and personality. The budget in my nostalgia, by the way, is about one hundred and eighty pieces in large gold coins. This is a large sum of money equivalent to the average citizen's annual earnings for several years. Based on that holdings, he said he was trying to figure out where I was going to get into. "... brother.... I want to hold hands with my brother." Mayfa has abruptly said that. "Hmm...? Yeah, that's okay." "... yes.... Thank you, brother" Mayfa's mouth felt like she hung a nibble. When Mayfa got to my right hand side, she put her left hand together in my right hand and tangled those little fingers. I feel strangely glossy about what I did, and I get a little thrilled. "Oh, hey, Mayfa" "... as I declare, I just hold hands" That's what Mayfa says, and she laughs at me. Then he moved his hand again, intertwining my hand and my fingers, and then he held my hand all the time. Then Mayfa dyes her cheeks slightly and takes her gaze off me. ... hey, what is this, weird blackness? I feel such a lover tick air, but is it my fault? Meanwhile, Illis was watching how it went. Plump your cheeks and then say to me. "Doctor!" "Oh, hey, what's up, Illis?" "I want to arm myself with my teacher! "Right. Okay." With my consent, Iris, contrary to Mayfa, hugged my left arm with his own and leaned straight against me. The soft feel of fine deflection that doesn't insult the child is pressed all the way into my arm, and even the temperature of the iris that keeps my weight is transmitted. ... No, wait, wait. Doesn't this look like a lover to you? While I'm not sure what it is, it's getting weird. And the last thing left was Rio. "Brother." "Hey, what's up, Rio? "My brother's not free anymore, so I'm good with you, right? "... ok" I don't know what I found out myself. Rio, with my permission, clung to hold me from behind as he jumped right onto my back. Girl's soft arms wrapped around my neck, and even healthier legs wrapped around my torso. And Rio isn't as good as Iris either, but he's got enough breasts, and that pushed him all over my back. I mean, what do you mean... I don't know if they all feel like sweet kids to their holiday dads, but do you think that makes them feel weird about it? Am I too conscious? No, even if you skip that. I want you to weigh in a bit because all three of them are already compelling beautiful girls with fine bodies from my point of view. I forget my position as a teacher or a substitute for a parent, and I feel like I can't help myself as a single man. ... well, but hey. I guess these guys haven't had such a sweet chance with their real fathers or anything, so maybe now they have an assortment they want to sweeten. Thinking about it makes me wonder if I can make him do what I want. The three of us have had a tough childhood, so even if we let him sweeten up a little bit, he won't be punished. "... ma, okay" I started walking around the city, whining and taking the three of them - or merging with them. There's nothing wrong with me if I don't do something weird, and compared to when I slept in bed with Illis and the other two the other day during the Vampire Road exorcism, it's less difficult for me to endure. I can, I don't have a problem. From the perspective of those who don't know the circumstances, though, it's a hell of a schematic: three super beautiful girls snapping at one guy. The people on the road flicker and look at us more surprised and go by. ... Well, the shame of the journey is to throw it away, and let's give it up. With that in mind, I went down Central Avenue in the city of Ravilton. And then eventually... "Hey Doctor, isn't that store's assortment awesome? That's what Illis said, pointing to the big store on the right hand side of the street. It was a massive brave martial arts store, and the transparent glazed storefront show window was decorated with numerous weapons and protective equipment. All of those weapons and protective gear are well designed and beautiful to look at. "Oh, is that the Rizel Martial Arts Store over there? It's the famous Elf's Martial Arts shop here in Lavilton." "Yeah......? Elf craftsman, is...? Iris sees me better and asks me back as surprised. Well, I know what makes you want to be surprised. Also known as the "Forest Fairy", the Elves are a long-lived subrace (Demi-Human), similar to humans but characterized by overall lean, stunning appearance and pointy ears. Compared to us humans, we have an overwhelmingly small population and are quite rare characters when it comes to living in a human city. "Have you ever seen an elf in Illis? When I hear that, Illis nods like a little animal. Yes, sweetie. Well, I've only met Elf the Demon King Hunter, too. Like humans, there are brave men in the elves, and I've just seen some of them. "Because of this, and do you want to keep a peek at the Risel Martial Arts Store? All three of them are just annoying in the store, so get away from me." "" "Huh" " Follow my instructions, the three of Rio, Iris and Mayfa, who are going away with regret. "Eh, that's right, brother, that's awesome. I don't know if this is the best way to go." "... not so.... In my opinion, it worked. It's working. It's working." Though we were talking about Rio and Mayfa not knowing what it was. Either way, I took my three godchildren into the Riesel Martial Arts Store.

第125話 磯の香りのする潮風を浴びながらシーフィードの街並みを歩いていると、やがて目的の宿へとたどり着いた。 予約しておいた宿は、一階部分が食堂兼酒場、二階と三階部分が宿泊用の部屋になっているという典型的な旅行客向けの宿屋だ。 俺はフロントでチェックインをしてから、食堂へと向かう。 食堂の一角には、六人掛けのテーブルでお茶を嗜んでいる、一人の見知った女性の姿があった。 ポニーテールの赤毛と、眼鏡がチャームポイント。 待ち合わせの相手、アルマだ。 俺は元同僚の女性教師に、片手を上げて挨拶をする。 「よっ、アルマ。会うのは久しぶりだな。元気そうで何よりだ」 「あっ、ブレット先生、久しぶり♪ しばらく会えなかったから、あたしは寂しかったよ~。リオちゃん、イリスちゃん、メイファちゃんも元気だった? それに......えっと?」 アルマが俺の後ろを付いてきた、もう一人の人物──セシリアを見て、首を傾げた。 俺はアルマに、連れのことを紹介してやる。 「俺の魔王ハンター時代の先輩で、世界でも有数の凄腕勇者であるセシリアさんだ。“鋼の聖騎士”セシリアって聞いたことないか?」 「いぃいいいいっ!? ......は、“鋼の聖騎士”セシリアって、あの超有名人の!? え、な、なんでそんな人が......もう一人連れてくるとは聞いてたけど......」 慌てて席から立ち上がったアルマは、口をパクパクさせて驚きの表情を見せる。 「いや、このあいだ偶然出会ってさ、ひょんなことから今、うちで一緒に暮らしてるんだよ」 「はぁあっ!? い、一緒に暮らしてるって......ブレット先生と、このモデル体型の美人で凛々しいお姉さんが、ひとつ屋根の下で暮らしてるってこと......? それって、つまり......け、けけけ、結婚──」 「いやいや、違うって、早合点するな。そういうんじゃなくて、もっと普通に──つっても、なんて説明したらいいかなぁ......」 さっそく勘違いを始めたアルマに、俺は慌てて待ったをかける。 しかしまいったな、どう説明したものか。 どうしてこうみんな、環境で男女の関係を決め付けたがるかな。 と、俺が困っていると。 後ろから当のセシリアが、俺の肩にポンと手を置いてきた。 「ブレットくん、アルマさんには私から、直接説明をするよ」 「あー、そうですね......。その方がいいかも。お願いします、セシリアさん」 ヴァンパイア騒動の話を最初からしないと、アルマに理解してもらうのは難しいかもしれない。 俺はセシリアに説明を任せることにした。 セシリアはアルマの前まで歩み寄ると、握手を求めて右手を差し出した。 「魔王ハンターのセシリアだ。アルマさんだったね、ブレットくんから話は聞いているよ。彼の王都での教員時代の、同僚教師だそうだね」 「あ......は、はい! 勇者学院教師の、アルマです。お会いできて光栄です、セシリアさん。よ、よろしくお願いします」 アルマは差し出された手をおずおずと握り、ポーっと頬を赤らめる。 セシリアは男性並みの長身なので、アルマが少し見上げる形だ。 まあ、アルマがあんな感じになるのも、分かる気はする。 セシリアは同性から見ても、格好よく見えるところはあるだろうからな。 ......いや、その本性を見せなければの話だが。 一方のセシリアは、そんなアルマに対して、女性をも虜にする男優顔負けの微笑みを浮かべて言う。 「ああ、こちらこそよろしく、アルマさん。それで、私とブレットくんの関係について、だったね」 「は、はい。ブレット先生とセシリアさんとは、どういったご関係なんでしょうか......?」 憧れの人へと向けるような、アルマの視線。 セシリアは彼女の質問に、こくりとうなずいて答える。 「うん。私とブレットくんの今の関係は、そうだな──一言で言うならば『召使い』と『ご主人様』かな。私は彼の言うことならば、どんな外道な要求でも呑まなければならない立場にある。だからもっと言えば、私は彼の『奴隷』とも言えるね」 「へぇー、そうなんですか。じゃあセシリアさんは今、ブレット先生の奴隷......って、はい?」 アルマが首を傾げた。 そして俺は、がっくりと肩を落とした。 セシリアのやつ、間の説明を綺麗にすっとばしやがった......。 俺はセシリアの片手を、がしっと掴む。 「......セシリアさん、ちょっと」 「ん......? な、なんだいブレットくん? ......いや、確かに私はキミの奴隷といって過言ではない立場だが、さすがにこんな公の場で強引に事を運ばれるのは、私としても心の準備が──」 「黙れポンコツ。いいから来い」 俺はセシリアの手を引っ張って、食堂の端に連れていって説教をした。 一方で、首を傾げたまま半笑い状態のアルマには、リオたちが歩み寄ってポンポンと肩を叩く。 「アルマ姉ちゃん、そのことはオレたちから説明するよ」 「......ダメな大人たちに任せておくと、話が前に進まない」 「あはは......セシリアさんも、本当はすごい人のはずなんだけどね」 アルマもリオたち三人から説明を受けて、最終的には理解してくれたようだった。 まったく、ちょっと油断をすると俺の社会的尊厳が脅かされるのは、どうにかならんものだろうか。 ひととおり話が落ち着いてから、みんなで食堂のテーブルについた。 適当に軽食を注文してから、話を再開する。 「ふぅん......つまりセシリアさんは、そのヴァンパイアロード退治のときにみんなに迷惑をかけたから、その罪滅ぼしとしてブレット先生たちにご奉仕をしていると、そういうわけですか」 アルマはリオたちから聞いた話をまとめて、そう確認する。 対面の席に座ったセシリアが、それにこくりとうなずいた。 「ああ。勇者としての私は、ブレットくんたちが救ってくれなかったら、あそこで死んでいたのだしね。いくら感謝と奉仕を尽くしても足りないぐらいなんだよ」 セシリアはそう答えて、運ばれてきた紅茶を優雅に嗜む。 やっぱり見た目だけだと様になるんだけどな、この人......。 一方でアルマはというと、それを聞いて大きくため息をついた。 「はぁ~っ......ていうか、ヴァンパイアロードって......。ブレット先生たちが、そんな国が一つ二つ消し飛ぶレベルの伝説級の魔王と交戦して、いつの間にか倒していたなんて......。そんなとんでもないことが起こっていたなんて、あたし全然知らなかったよ......」 「まあ勇者学院の方には、その辺の情報は回らないかもな。あとヴァンパイアロードを倒したのは俺たちじゃなくて、“魔帝”マヌエルと“武神”オズワルドの最強魔王ハンタータッグだよ」 俺が横から訂正すると、それを聞いたアルマは頭を抱える。 「にしたってさぁ......異次元すぎるぅ~! どこの世界に、教え子と一緒にヴァンパイアロード退治に参加する勇者学院の教師がいるんだよ......聞いたことないよそんなの......」 「いや、だってしょうがないだろ。あのときは状況が状況だったんだから。あそこで前に踏み出さなかったら、ヴァンパイア化したセシリアさんだって元に戻れなかったと思うぜ」 「うん......責めてるわけじゃないからね......。あまりに非常識すぎる世界が展開されていることに、驚いて呆れているだけだからね......。ていうかどうしてあたしは、こんなとんでもない人たちと海水浴に来ているんだろう......あたしだけ凡人......」 「海水浴を楽しむのに、勇者としての能力は関係ないだろ。だいたいアルマ、お前も勇者って時点で凡人じゃないからな」 「そりゃあそうですけどね......。そういうのって、能力のある人だから気兼ねなく言えるんでございますよ。そこんところお分かりですかね、ブレット先生?」 アルマは不貞腐れたように、しかし同時に冗談めかした様子も混ぜながらそう言ってくる。 別にそんなには気にしてないよ、というサインだろう。 実際、能力の高低なんてものは、どこまでいっても上には上がいるってだけの話だから、気にしすぎてもしょうがない。 というのはまぁ、俺自身に向けるべき話でもあるのだが。 しかも、「とりわけ能力の高い者は、それなりの義務や責任を伴うとすべきだ」とかいう類のノブレス・オブリージュの派生みたいな議論もあって、能力がある者も良いことばかりではない──というようなことを言うと、またアルマに怒られそうだな。 でもそう考えると、うちの子たちにもそのうちに、この子たちが倒すべき宿敵みたいなものが現れたりするんだろうか。 俺はリオ、イリス、メイファの三人へと視線を向ける。 おやつをパクついている三人は、不思議そうな顔で俺を見つめ返してきた。 相変わらずクッソかわいい......じゃなくって。 こいつらが立ち向かうべき大きな何かに出遭ったとき、俺はどこにいるのだろうか。 今と同じようにこいつらを守り、教え育てる立場にいるのか。 それとも── ......なんて、たられば話を考えていてもしょうがないか。 俺たちがするべきことは、いつも決まっている。 過去や将来のことを思い悩むのではなく、今このときに向かって全力を尽くすことだ。 そんなわけで、俺はおやつを頬張る子供たちに声をかける。 「よし、それじゃお前ら、一休みしたら水着を買いに行くぞ」 だから今はこれからの海水浴を、全力で楽しむことに注力しよう。 なんかちょっと違う気もするが、きっと気のせいだろう、うむ。

125 Lesson 125 Walking through the streets of Seafeed in the scented sea breeze of Iso, he eventually reached his destination inn. The accommodation booked is typical for travelers with a dining room and tavern on the ground floor and accommodation rooms on the second and third floors. I'll check in at the front desk, then head to the dining room. At the corner of the dining room there was a figure of a single, discerning woman who was eager for tea at a table for six. Ponytail redhead and eyeglasses charm point. It's Alma, the one we're meeting. I greet my former colleague's female teacher with one hand up. "Yo, Alma. It's been a long time since I've seen you. Looking good, above all." "Ah, Dr. Brett, it's been a while I've missed you for a while, so I've missed you ~. How have you been, Rio, Iris and Mayfa? And... eh? Alma followed me, and I looked at the other person, Cecilia, and I tilted my neck. I'll introduce you to Alma. "It's Cecilia, a senior from my demon hunter days and one of the best brave men in the world. Have you ever heard of Cecilia, the Holy Knight of Steel? "Yikes no!?... is" The Holy Knight of Steel. "Cecilia is from that super celebrity!? Oh hey, why would someone like that... I heard you were bringing another one..." Alma, who hastily rose from her seat, pampered her mouth for a look of surprise. "No, we just ran into each other, and now we're living together." "Ha ha!? Hey, he said we live together... that Dr. Brett and his beautiful, Rin sister in this model shape live under one roof...? I mean... kake, kake, married-" "No, no, no, don't get me started. I don't mean that. I don't care if you say it more normally..." I rush to wait for Alma, who has just begun to make a mistake. But damn it, how did you explain it? I wonder why everyone here wants to decide on the relationship between men and women in the environment. And he said I was in trouble. My Cecilia put her hand on my shoulder from behind. "Brett, I'll explain directly to Alma." "Uh, right...... Maybe that's better. Please, Mr. Cecilia." If we don't talk about the vampire commotion from the beginning, it may be difficult for Alma to understand. I decided to leave Cecilia to explain. Cecilia walked up to Alma and offered her right hand in search of a handshake. "It's Cecilia, the demon hunter. It was Mr. Alma, Brett told me about you. I hear he's a colleague teacher from his time as a teacher in King's Capital." "Ah...... yes! I'm Alma, a teacher at the College of the Brave. It's a pleasure to meet you, Mr. Cecilia. Thank you very much." Alma grips the offered hand aside and blushes Poe's cheeks. Cecilia is a long, masculine figure, so Alma looks up a little. Well, I think I know what Alma's gonna look like. Cecilia will look good, even from the same sex. ... No, I need to show you its true nature. Cecilia, on the other hand, says with an actor-faced smile that also captivates women against such Alma. "Oh, it's nice to meet you, Mr. Alma. So, about my relationship with Brett, right?" "Yes. What is your relationship with Dr. Brett and Mr. Cecilia...? Alma's gaze, like directed at the admirer. Cecilia answers her question with a stubborn nod. "Yeah. My current relationship with Brett, I guess - in a nutshell, 'servant' and 'husband'. I am in a position to swallow any outward demands, if he says so. So, more importantly, I could be his slave." "Heh, really? So Mr. Cecilia is now Dr. Brett's slave...... yes? Alma tilted her neck. And I dropped my shoulder disappointingly. The one from Cecilia, she softened the explanation between them beautifully... I grab Cecilia's hand. "... Cecilia, hey" "Hmm...? What's up, Brett?... No, I'm certainly not exaggerating when it comes to your slavery, but it's just that being carried so forcefully in a public place like this, even for me, prepares my mind..." "Shut up, Ponky. Just come." I pulled Cecilia's hand and took her to the edge of the dining room to preach. On the other hand, for Alma, who is half laughing with his neck tilted, Rio walks over and slaps him on the shoulder with a pomp. "Sister Alma, I'll explain that to you." "... leave it to the bad adults, the story won't move forward" "haha...... Cecilia is really supposed to be an amazing person too" Alma was also briefed by the three Rio's and eventually seemed to understand. Damn, if you're a little cautious, what can you do to threaten my social dignity? After the conversation settled down as one, we all went to the dining room table. Order snacks appropriately and then resume the conversation. "Phew... I mean, Mr. Cecilia annoyed everyone when that vampire road was exorcised, so is that what you're saying when you serve Dr. Brett and the others as their sins" Alma sums up what he heard from Rio and confirms that. Cecilia, sitting in the opposite seat, nodded snuggly at it. "Oh. As a brave man, I would have died there if the Brets hadn't saved me. How much gratitude and service is not enough?" Cecilia answers that and gracefully adores the tea that has been carried. I knew it would just depend on how he looked, this guy...... Alma, on the other hand, sighed loudly when he heard it. "Huh... I mean, a vampire load... I can't believe Dr. Brett and his men were defeated at some point by engaging a level of legendary demon king whose country would wipe out one or two of those... I had no idea that was happening..." "Well, if you're at the College of the Brave, maybe we won't get around to that information. And we're not the ones who defeated the Vampire Road, we're the most powerful demon hunter tags of the Demon Emperor Manuel and the Martial God Oswald." When I correct it from the side, Alma holds his head when he hears it. "Come on... there's a teacher from the College of the Brave who participates in the Vampire Road exorcism with his godchildren... I've never heard of him..." "No, 'cause you can't help it. That's when the situation was. If I hadn't stepped forward there, I don't think even the vampired Cecilia would have made it back." "Yeah... I'm not blaming you... I'm just surprised and frightened that there's a world unfolding that's too insane... I don't know why I'm here in a sea bath with these incredible people... just me..." "Your ability as a brave man has nothing to do with enjoying a sea bath. Alma, for the most part, you're not a brave man at all." "That's right...... You can casually say that because you're a capable person. Do you know where that is, Dr. Brett? Alma says so as to be infidel, but at the same time mixed with how she joked. I don't care that much, it would be a sign. In fact, I can't help but care too much because I'm just saying that there's a top up there no matter how far you go. That's well, it's something I should be talking about myself. Moreover, you're going to be pissed off by Alma again when you say that there are arguments like the derivation of Nobles Obriege such as "among other things, the highly capable should be accompanied by a lot of duties and responsibilities," and that the capable are not all good things either. But if I think about it, will something like a rival appear to our children in time for these children to defeat? I turn my gaze to Rio, Illis and Mayfa. The three of you who are puking on snacks have stared back at me with a strange face. Still fucking cute...... otherwise. Where am I when these guys come across something big to face? Are you in the same position to protect, teach and nurture these guys as you are now? Or... ... How can we even think about talking if we do? What we have to do is always decided. It's not about worrying about the past or the future, it's about doing everything we can toward this time now. That's why I speak to the children who cheek for snacks. "All right, then you guys, we'll go buy some bathing suits after a break" So now let's focus on enjoying the seawater bath as much as we can. I also feel a little different, but I'm sure it's your fault, hmm.

第96話 俺はリオたちを引き連れ、悲鳴があったほうへと走る。 するとストリートを少し行った先で、何やらざわざわと人だかりができていた。 俺は人だかりの中から、適当に一人を捕まえて話を聞く。 「何があったんですか」 するとその男性は、青褪めた顔で答える。 「モ、モンスターが出たんだ!」 「モンスター? この街中にですか?」 「ああ......! こんな大きな、人型だけど狼みたいな姿のやつで。あっという間にいなくなっちまったが......」 「被害者は」 「分からない。子供がひとり捕まっていたみたいだが、どうやら無事みたいだ」 周囲を見回してみても、少なくとも救急の怪我をした人はいないようだった。 ならばその、街中に出たモンスターとやらを追いかけるべきか。 「分かりました、ありがとうございます。──リオ、イリス、メイファ、ついてこい!」 「「「はい!」」」 俺は教え子たちの返事を聞くと、その場から大きく跳躍。 騒ぎのせいで人が密集している地帯を避けるために、近くにあった一階建ての住居の屋根の上に上がる。 リオ、イリス、メイファの三人も俺にならって屋根の上までジャンプしてきた。 リオは楽勝、イリスとメイファはギリギリ届いたというところだ。 並の勇者の跳躍力では屋根の上までひとっ跳びとはいかないが、こいつらはすでにそれができる領域にある。 「おおっ、勇者だ!」 「すっげぇ......子供もいるぞ」 「勇者様! モンスターはあっちに行きました! お願いします!」 「わかりました!」 人々の声を受けつつ、俺たちは屋根伝いに走っていく。 家の人にとっては屋根の上をバタバタと走られるのはうるさいだろうが、今は緊急事態なので許してほしい。 そして人だかりの密集地帯を抜けると、再び道路に下りる。 「そこ、下ります! どいてください!」 「えっ......? うわわわっ!」 「すいません。あと三人下りてくるんで」 「へっ......? ぎゃああああっ!」 屋根の上から飛び降りてきた俺たちに腰を抜かす街の人を尻目に、俺は人混みの間を縫うようにストリートを駆けていく。 その俺のあとを、リオ、イリス、メイファの三人がついてくる。 人混みではあるのだが、人々がおあつらえ向きに左右に割れ、通り道ができていた。 モンスターが通っていった後だろうか。 俺は走る速度を上げていく。 このスピードだとついてこれるのはリオぐらいだが、イリスとメイファも背中を追うことはできるだろう。 しばらく走っていくと、やがて人々が、横手の細い路地のほうを見ている場所まで来た。 俺は声を張り上げる。 「通りすがりの勇者です! モンスターは!」 「そっちです! その路地に入っていきました!」 路地を見ていた人たちのうちの一人が、路地の先を指さしてそう答えてくる。 「ありがとうございます!」 俺はその人にお礼を言いつつ、路地の中に駆け込んでいく。 そのあとにすぐさま、リオが続く。 イリスとメイファはだいぶ後方だが、この路地に入ったことは見えただろう。 俺はリオと二人で細い路地裏を道なりに駆けていく。 するとその先で、思いがけない人物と遭遇した。 「あっちゃあ......服があちこち破けてるっすよ。これじゃ人間の姿でも人前に出られないっす......」 路地裏にぽつんと一人、 ネオンライトがほとんど届かない薄暗い路地、月の光だけがわずかに挿し込む中で、少女──ウルは独り言をつぶやいていた。 その姿を見つけたリオが、驚いた様子で口を開く。 「ウル......? お前、なんでここに......それに、その格好」 一方のウルも、目をまん丸に見開いて驚きの表情を見せた。 「はへ......? リオ、ちゃん......? イケメンのお兄さんも......そっちこそ、なんで......」 そうしていると、一足遅れてイリスとメイファも追いついてくる。 その二人も、ウルの姿を見て驚いていた。 一方で俺は、モンスターに関する知識と頭の中にあるいくつかの断片的な情報をつなぎ合わせ、一つの答えを導き出していた。 「満月の夜だけは」と言ったウルの言葉。 街の人が言った「人型だけど狼みたいな姿のやつ」という言葉。 そしてモンスターの足取りを追ってみれば、服があちこち破けたウルの姿── 俺はその答えを、本人に確認する。 俺のその言葉に、少女はびくりと震えた。 そのつぶらな瞳が、怯えるように揺れる。 だが次にはうつむいて、ハハハと笑った。 「すごいっすね......。勇者って、そんなことまで分かっちゃうんすか? ......あーあ、お手上げっすよ」 ウルは、言葉通りに両手をあげてみせる。 それからこう続けた。 「モンスターであるうちのことを退治しに来たんすよね。いいっすよ、ひと思いにやってくださいっす。......もう、頑張って生きるのにも、疲れたっす」 だがそれを聞いて戸惑ったのはリオたちだ。 「ちょっ、ちょっと待てよお前......! なんでそういう話になるんだよ! オレたちは街中にモンスターが出たって聞いて、それでここまで来ただけだ。──それに兄ちゃん! ウルが 「いや、何なんだよって言われても、文字通りなんだが──」 うーん......。 俺自身も事態がそれほど呑み込めているわけじゃないんだが、いずれにせよややこしい話になりそうだ。 そしてそこに、さらに話がややこしくなりそうな出来事が舞い込んできた。 俺たちの背後に、街の 「......あぁん? モンスターが出たっていうから来てみれば、なんだこりゃ? どういう状況だ?」 そう言うのは、警邏らしき制服を着た二人の男のうちの一人、粗野な印象のある大柄の男だ。 一方、もう一人は小男で、ニタニタと下卑た笑いを浮かべながら大男に向かって言う。 「へへっ、そんなことより兄貴。あの女のガキ、服が破けてますぜ。ありゃあ今すぐしょっぴいて、詰め所でたっぷりと尋問しねぇといけませんや」 その視線の先にいたのはウルだ。 さらに大男の方も、我が意を得たりという様子で同意する。 「おぉ、確かにそうだ。あんな格好で街中をうろつかれちゃあ、公の秩序が守れねぇ。ほかに誰も来ない詰め所で、俺たち二人でしっかりと指導をしてやらねぇとなぁ?」 を片手にパシパシと叩いて威圧的な態度を見せつつ、ウルのほうへと向かってずんずんと歩み寄っていく。 そして小男はその後ろに金魚のフンのようについていき、俺たちを威嚇するように睨みつけた。 この二人、動きから見て勇者であることは間違いないだろう。 実力は平凡そうだし、様子を見た感じでは官憲といっても真っ当な手合いじゃなさそうだが── ......しかしこの大男と小男の二人組というのは、どこかデジャブを感じるな。 まあ世の中には似たような人間が三人はいるというから、気にすることもないかと思うが。 ただどうにも良くない連中という感じはするので、このままウルが逮捕されるのを見過ごすわけにもいかないな。 そう思い、俺がどう動いたものかと考えていると── 「おい、待てよ。薄汚ねぇ魂胆でウルに近付くんじゃねぇよ」 さらにその後ろに、イリスとメイファも立つ。 それに対し、大男はメイスをパシパシと自分の手に打ちつけ、少女たちを威圧する。 「なんだクソガキども。公務執行妨害で逮捕されたいのか?」 「へへっ、兄貴。なんならこいつらも、まとめてしょっぴいちまいましょうぜ。まだガキだが大した上玉揃いだ」 「おう、そりゃあいいな。公務を妨害するとどうなるか、未熟な体にたっぷりと教え込んでやらねぇとな」 舌なめずりをする大男。 ケケケと笑う小男。 こいつらどう見ても、治安を維持するよりも乱す側だと思うんだが......。 まあ、ともあれ── 「あー、すみません。この街の官憲の方々ですか? 私、勇者学院の教師をやっている者なんですが──」 俺は横から割り入って、懐から身分証明書代わりに勇者カードを取り出すと、大男へと差し出してみせる。 暴漢っぽいとはいえ一応は官憲がらみの連中のようだし、事はなるべく穏便に済ませたいところだ。 だが大男は不愉快そうに眉を動かすと、俺が差し出した勇者カードを見もせずに俺から奪い取った。 そしてそのまま地面に放り捨てると、俺の顔写真付きのそれを靴の裏でぐりぐりと踏みにじる。 「はっ、学校のセンセイがしゃしゃり出てくるんじゃねぇよ。これは治安維持活動であり公務なんだ。逮捕されたくなけりゃあどいてろ、色男」 うわぁ......こりゃまた滅茶苦茶しやがる。 カードを踏まれて俺もさすがにちょっとカチンときたが、一瞬あとには怒りを通りすぎて呆れを覚えてしまった。 まあ勇者カードの材質的に、よれたり割れたりはしないだろうし、実害はないからいいかとは思うが。 にしても、認定勇者レベルを見たらビビッてくれるかと思ったが、見もしやがらねぇし。 と、俺がある程度の武力解決を覚悟した、そのときだった。 プチンッと、どこかで何かがブチギレた音がした。 俺のすぐ横だ。 見ると、我が可愛い教え子の一人イリスが、その長い金髪を闘気によって修羅のように逆立たせていた。 「お前......今、何をした......!? ──先生を、踏みにじったなあっ!」 ──ゴォオオオオオッ! 闘気を全開で噴き上がらせるイリス。

96 Episode 96 I take Rio and run for screams. Then, a little further down the street, a crowd was deliberately formed. I catch one from the crowd and listen appropriately. "What happened?" Then the man answers with a blue-faced face. "Mo, there's a monster out there! "Monsters? All over this city? "Oh......! With a big, man-shaped, but wolf-like one like this. He was gone in no time..." "The victim." "I don't know. He's got one kid, but apparently he's safe." Looking around, at least no one seemed to have suffered an emergency injury. If so, should we go after the monsters who have left the city? "Okay, thank you. - - Rio, Illis, Mayfa, follow me! "" "Yes! When I hear back from my godchildren, I jump a lot from the spot. Up on the roof of a one-story residence that was nearby to avoid areas where people were dense because of the noise. Three people, Rio, Illis and Mayfa, have also jumped to the roof by being me. Rio is an easy winner, and Illis and Mayfa have arrived critical. The bouncing power of the coarse brave doesn't make it to the top of the roof, but these guys are already in the realm where they can do it. "Whoa, brave man! "Wow... I have kids too" "Dear brave man! The monster went that way! Please! "Okay! We run to the roof as we receive people's voices. It would be loud for people in the house to run bumpy on the roof, but now it's an emergency, so I want you to forgive me. And as we go through densely populated areas, we go down the road again. "There, I'm going down! Step aside! "What...? Wow! "Excuse me, three more coming down." "Heh...? Whoa, whoa! I run down the street like I sew between the crowds with a city guy on my ass slipping down on us jumping off the roof. After me, Rio, Illis and Mayfa follow me. Although crowded, people broke left and right toward each other, creating passageways. Is it after the monster leaves? I'm going to run faster. It's about Rio that can follow me at this speed, but Ilis and Mayfa will be able to follow my back, too. After a while of running, it eventually came to a place where people were looking at the narrower alleys on the sidelines. I raise my voice. "I'm a passing brave man! Monsters!" "That way! I went into that alley! One of the people who was looking at the alley answers that by pointing to the end of the alley. "Thank you! I'm going to run into the alley as I thank him. Soon after that, Rio continues. Ilis and Mayfa are a lot rear, but we would have seen them enter this alley. Rio and I are going down a narrow alley. Then ahead, I ran into an unexpected person. "Ahhh... my clothes are ripping everywhere. You can't go out in public like a human being..." A girl in an alley with a pond and a queue. The girl - Ur - was crushing to herself in a dim alley where the neon lights barely reached, only the light of the moon inserted slightly. Rio, who found the figure, opens his mouth in surprise. "Ur......? You, why are you here... and that outfit" Uru, on the other hand, also gave a surprising look with his eyes wide open. "Ha ha...? Rio, honey...? And my handsome brother... that way, why..." Doing so, one foot behind and Illis and Mayfa catching up too. Both of them were surprised to see Ur. On the other hand, I was connecting my knowledge of monsters with some fragmentary information in my head to derive one answer. "Only on a full moon night," said Ul. The city guy said, "The one who's human, but looks like a wolf". And if you follow in the footsteps of the monster, you'll see Ur with his clothes torn everywhere. I'll check with him for that answer. The girl trembled at my words. Those crushed eyes shake frighteningly. But the next thing I knew, I laughed hahahaha. "That sounds amazing... Do you even know what a brave man is?... Oh, you're doing great." Ur asks her to raise her hands as she says. Then I went on like this. "You're here to exorcise us for being a monster, aren't you? Fine, do it for one thought.... I'm tired of living hard." But it was Rio and the others who were confused when they heard it. "Hey, wait a minute, you...! Why are we talking about that?! We heard there were monsters all over the city, so we just got here. - Besides, brother! What the hell is a werewolf!? "No, no matter what they say, it's literally..." Hmmm...... I'm not so swallowed up myself, but it's going to be a tough story anyway. And there came an event that was going to be even more difficult to talk about. Behind us came two men in the city's police-like uniform. "... ahem? I said there's a monster out there, so come on, what the hell? What's the situation? To say so is one of two men in a polite uniform, a big man with a crude impression. The other, on the other hand, is a little boy, and he says to the big man with a nitanita and a humble laugh. "Hehe, brother than that. That woman's kid, her clothes are torn. Well, now's not a good time to interrogate him plenty in the jar." It was Ur who was at the end of that gaze. Furthermore, the big man agrees with me in the way that he gets my will. "Oh, sure it is. If they wander around the city dressed like that, you can't keep public order. In a stuffing lot where no one else is coming, you and I need to give you solid guidance, okay? The older man slaps the hammer (mace) with one hand to show an intimidating attitude, while walking toward Ur. And the little man followed him like a goldfish hun, staring at us to intimidate him. These two, from the motion, will definitely be brave. Your strength seems mediocre, and from what I've seen, it doesn't seem like a proper match for a government constitution, but... ... but this pair of big guys and little boys means don't feel deja vu somewhere. Well, there are three similar people in the world, so I don't know if they care. I just don't feel like a good bunch of people, so I can't overlook Ur getting arrested like this. That's what I thought, thinking about how I moved. "Hey, wait. Don't get too close to Uru." Behind it further, Iris and Mayfa also stand. In contrast, the big man strikes Mace in his own hands with Pacipasi, intimidating the girls. "What the fuck kids. You want to be arrested for obstruction of justice? "Hehe, brother. Whatever. Let's keep these guys together and hang up. He's still a kid, but he's got a lot of balls." "Whoa, that's good. I want you to teach your immature body plenty about what happens when you interfere with your official duties." A big man with a grunt tongue. A cheeky and laughing little man. I don't care what these guys think, I think it's more of a disturbing side than maintaining law and order... Well, whatever... "Uh, excuse me. Are you the official constitutions of this city? I'm a teacher at the College of the Brave." When I break in from the side and take out my ID card instead of my nostalgia, I give it to the big man. Though he looks like a thug, he looks like a bunch of government constitutional guys at first, and I just want to make things as peaceful as possible. But when the big man moved his brow uncomfortably, he took it from me without even looking at the brave card I gave him. And when I throw it on the ground as it is, I trample it around the back of my shoe with a picture of my face. "Ha, the school sensei isn't squeaking out. This is policing and official business. Stay where you are if you don't want to be arrested, colored man." Wow... this is so lame again. I was just a little cocky when they stepped on my card, but after a moment, I was too angry to remember to shudder. Well, according to the material of the Brave Man card, it won't break or break, and I don't think it's harmful. Even so, I thought if I saw the certified brave level, you'd freak me out, but I don't want to look. And I was ready for some sort of force resolution, that was then. Pussy, something sounded butchy somewhere. Right next to me. Seeing, one of my adorable godchildren, Illis, was turning that long blonde hair upside down like Shura by her struggle. "You... what have you done now...!? - You trampled the teacher! - Whoa, whoa, whoa, whoa! Iris sprays his fighting spirit up in full swing.

第28話 数日後。 勇者協会から来た通達は、こんな内容のものだった。 曰く── 王都の勇者学院から生徒が十八名、貴校を見学に向かう予定です。 日取りと時間はいついつですので、その時間は教師・生徒とも校舎在中のこと。 なお勇者協会の役員サイラスと、王都の勇者学院教師アルマの二名が引率します。 特別授業など行う場合は、引率の二名と相談の上行ってください。 以上。 「......はー。まったく、自分の虚栄心を満たすために生徒たちを巻き込むなんざ、教育関係者の風上にも置けねぇやつだ」 俺はそうした内容の手紙をその日の夕方に受け取って、リビングでぼんやり眺めていた。 と、そこにエプロン姿のイリスが現れて、首を傾げる。 「あれ、先生。そのお手紙は......?」 「あー、大人の事情」 「はあ......。ところで先生、今日は先にごはんにしますか? それともお風呂にします?」 幼な妻といった様相のイリスが、にっこりと笑ってそんなことを聞いてきた。 こらこら、ちょっとドキッとしちゃうだろうが。 最近では、家事全般はリオ、イリス、メイファの三人で行うようになり、俺は家ではリビングでのんびりしていればいいというルールが出来上がりつつある。 俺に対して特に強く恩義を感じているらしいイリスが言い出したことなのだが、リオもメイファも意外と反対せず、採用されてしまった。 イリス曰く、「先生は私たちのために全部をやってくれました。だからこれからは私たちに、先生の身の回りのお世話ぐらいはやらせてください」とのことなのだが── 俺は独り立ちしてからはずっと一人暮らしで、身の回りのことは全部自分でやってきたもんだから、最初は落ち着かなかった。 しかし人間、慣れというものはあって、だんだんそんな環境にも馴染んできている俺もいて。 まあなんというか、堕落しそうな今日この頃だ。 「ん......俺には気を使わなくていいよイリス。自分たちで好きなように決めてくれ。俺は風呂とか、空いてる時間に適当に入るから」 「そうはいきません、先生が最優先です! 私たちのことは、先生の奴隷ぐらいに考えてください!」 ......ときどきイリスは、ナチュラルに危険な発言をする。 我が天使、ここにも少し教育が必要かもしれない。 「で、ですから、その......も、もし先生がどうしてもと言うなら、一緒に入る覚悟だって......」 もじもじしながら、そんな爆弾発言まで追加してきた。 うん、イリスまで、メイファみたいなことを言わないでほしいな。 「あー、分かった分かった。じゃあ俺は、風呂はあとで入るよ。通話魔法具で連絡しなきゃいけない相手もいるしな」 「分かりました。じゃあお食事の準備を先にしますね」 そう言って、エプロン姿のイリスはパタパタと台所に駆けていった。 が、台所に消えようとしたところで、壁際からぴょこっと顔を出して、こんなことを聞いてくる。 「その、先生......通話魔法具で話す相手は、先生の昔の彼女さんですか......?」 「ああ、昔の彼女でも何でもないが、多分イリスが想像している相手で合ってる」 「そうですか......。その......先生は、まだその人のこと、好きなんですか......?」 「イリスさん、人の話聞いてましたかね?」 「はうっ! すみませんすみません! 出過ぎた真似を!」 イリスはぺこぺこと頭を下げて、今度こそ台所に逃げ込んだ。 ううむ......あれはきっと、言葉が通じてないな......。 さておき、俺は通話魔法具を取り出して、通話先の番号をダイヤルする。 呼び出し相手は、王都の勇者学院時代の同僚教師アルマだ。 何コールかすると、相手が出た。 『もしもし~、みんなのアイドル、アルマ先生ですよ。ブレット先生お久しぶり』 「おう、久しぶり。そっちは相変わらずのようで何よりだ」 『いやぁ、案外そうでもないんだけどね。──ところでブレット先生、今日かけてきたのは、やっぱり例の社会科見学の件?』 俺が特に何を言ったわけでもないのに、アルマはそう切り返してくる。 相変わらず察しがいいな。 アルマとは昔から、会話の波長が合うというか、話していて気持ちがいいんだよな。 「おう、それな。通達きたけど、引率の教師にアルマ先生の名前が書いてあったからさ」 『そうなんだよねぇ......。もうね、サイラスさんにも──いや、ほかに誰も聞いてないからいいか──サイラスのやつにも困ったもんだってわけですよ』 そう言って、アルマは通話魔法具越しに大きくため息をついた。 ちょっと予想外の反応だ。 何かあったんだろうか。 「どうした。アルマ先生も、サイラスから何か嫌がらせでも受けてるのか?」 『うーん......嫌がらせというか、逆に気に入られてしまったことに嫌悪感を隠せないとでも申しましょうか』 「んん......? よく分からないな。もう少し詳しく」 俺がそう聞き返すと、アルマは再び大きくため息をついた。 『......だからね、サイラスのやつ、どうも最近あたしのことを狙っているようなのですよ、男と女的な意味で。......あのクソジジイ、会うたびにべたべたセクハラしてきやがって。何度その場でぶっ殺してやろうかと思ったことか』 それを聞いた俺は、さすがにカチンときた。 怒りが言葉ににじみ出てしまう。 「......チッ。ホントあの野郎、どこまでもクソなやつだな。......で、アルマお前、大丈夫なのか?」 『まぁね、今のところどうにか。長い物には巻かれろって、自分で選んだ道だからしょうがないんだけど、いい加減この生き方もやめたくなってきたよ。ブレット先生を見習おうかなって』 「ははは、俺の生き方も人に勧められたもんでもねぇけどな。貧乏クジ引きまくりだ」 『でも、自分の信念に従って生きているから日々が楽しい──そうでしょ?』 鋭い切り込み。 さすが、短くない付き合いだけあって俺のことを分かってやがる。 「ま、実際は幸運に恵まれてるってのもあるけどな」 『新しい教え子たちのことかな。そういえばあれからどう? メイファちゃんたちとはよろしくやってる?』 「その言い方やめれ。まあいろいろあるが、それなりに楽しくやってるよ。三人ともバカスカ成長してるしな」 『バカスカって......まだ教え始めて二週間ぐらいでしょ?』 「バケモノなんだよ三人とも。教えたそばからぐんぐん吸収していきやがる」 『本人がバケモノみたいな勇者のブレット先生にそれ言わせるんだから、相当ってことだね』 あははと笑うアルマ。 まあ俺も、バケモノみたいは言い過ぎにしても、自分は勇者としてそこそこの実力をもっているほうだとは自認しているが、それにしても── 「おう、あれは俺なんて目じゃないね。誇張抜きにして、あいつらなら世界最強の勇者になることだって夢じゃない」 『べた惚れですねぇブレット先生。......いいなぁ、若さと才能のある子たちはブレット先生に構ってもらえて。こっちなんてサイラスだよ、サイラス』 「......ひょっとして、例の社会科見学の引率に選ばれたのも、それが関係してんのか?」 『だと思うよ。ブレット先生とあたしが恋仲だと思ってるみたいだよあいつ。だから自分の権力を目の前で見せつけて、あたしに心変わりさせたいんじゃないの? あーやだやだ、反吐が出る』 「......なんだそりゃ。前提から何からめちゃくちゃだな。そもそも俺とアルマ先生はただの同僚教師だってのにな。男と女が仲いいとすぐに男女関係だと思うやつとか、ホント困るよな」 『そーですねっ!』 アルマは俺の言葉に、投げやりな同意をしてきた。 何でそこ投げやりなんだ。 が、そこでアルマは声色を変えてくる。 『でも、おかげでブレット先生と久々に会えるのは嬉しいかな。そこはサイラスのクソジジイのことを評価してやってもいい』 「ははは、俺もアルマ先生に久々に会えるのは楽しみだ。──あ、そうだアルマ先生、ついでに一つ頼まれてもらっていいか? こっちの街で売ってないものがあって、王都で買ってきてほしいんだが」 『ん? なになに、いいですよ。お姉さん、ブレット先生のためだったら喜んで小間使いに走りますよ』 「ああ。とある魔道具なんだがな──」 ──とまあ、そんなような話をして、俺はアルマとの通話を終了した。 いやぁ、久々に長話をしたな。 俺は椅子に座ったまま、体を捻って身をほぐそうとして──そいつらの存在に、そこでようやく気付いた。 「「「じぃー......」」」 「うぉっ!? な、なんだお前ら、いつからそこに」 いつの間にか三人の教え子が、俺の後ろで見張っていた。 アルマとの会話に夢中で、全然気付かなかった......。 「兄ちゃん、楽しそうだった」 「先生、私たちと話をするときには、こんなに気を許してくれないのに」 「......意外と手ごわい。......いずれ、決着をつけないといけない」 三人はそんなことを口走りながら、とてとてと台所のほうに消えていった。 ......えっと、若干怖いんだが? 教え子たちがときどき謎の挙動をするので、少し不安になったりもする俺なのである。

28 Lesson 28 A few days later. The circular from the Association of the Brave was of this content. Said... Eighteen students from Wang Du's College of the Brave are due to visit your school. When is the day and time, so that time should be in the school building for both teachers and students. It should be noted that Cyrus, an officer of the Brave Men's Association, and Alma, a teacher at the College of Brave Men in Wangdu, will lead the way. If you are doing special classes, etc., do so in consultation with two of the deduction rates. That's it. "... ha-ha. Totally, I can't even put my students in the wind to satisfy my vanity." I received a letter of that kind that evening, and I had a blurry view in the living room. and there appears the iris in apron, leaning his neck. "That, Doctor. Is that letter...? "Uh, adult circumstances" "Ha...... By the way, Doctor, would you like to have dinner first? Or do you want to take a bath? Illis, who looked like a young wife, laughed and asked me that. Come on, it's gonna be a little exciting. These days, housework in general has started to be done by three people: Rio, Illis and Mayfa, and I'm getting a rule at home that I just need to relax in the living room. He seems to be particularly strongly beneficial to me. That's what Illis said, but neither Rio nor Mayfa unexpectedly disagreed, and he was hired. Iris said, "The teacher did everything for us. So let us take care of the teacher from now on." I've lived alone ever since I was alone, and I've done everything around me myself, so I didn't settle down at first. But humans, I'm getting used to it, and I'm getting familiar with it. Well, somehow, it's going to be corrupt today. "Hmm... you don't have to worry about me, Iris. Decide what we want for ourselves. I'm gonna take a bath or something, and I'm gonna be in the right place in my free time." "That's not going to happen, the teacher is the top priority! Think about us, like a teacher's slave! ... Sometimes Illis makes dangerous statements to the natural. My angel, we may need a little education here as well. "So, if the teacher says anything about it, he's ready to come in with me..." Together, I've even added such a bomb statement. Yeah, until Illis, I hope you don't say something like Mayfa. "Uh, okay, okay. Then I'll take a bath later. Some people have to be contacted by calling magic devices." "Okay. Let's get you ready for dinner." With that said, Illis in an apron ran to the kitchen with Patapata. but I just tried to disappear into the kitchen, and I get a little face from the wall and I ask this. "Um, Doctor... is the person you talk to with the calling magic device your teacher's old girlfriend...? "Yeah, it's not an old girlfriend or anything, but maybe it fits with the person Illis envisions" "Really...... The... teacher still likes the person...? "Mr. Iris, were you listening to people? "Ugh! Excuse me, excuse me! Imitate what happened! Ilis bowed his head, and now it was time to escape into the kitchen. Uhm... I'm sure that doesn't make sense... Besides, I'll take out the call magic equipment and dial the number of the call destination. The caller is Alma, a colleague teacher from the College of the Brave in Wangdu. After a few calls, the opponent answered. Hello, it's Dr. Alma, everyone's idol. Dr. Brett, it's been a while. ' "Ooh, it's been a while. You seem the same, above all." 'Hey, I don't think I'm going to show you around. - - By the way, Dr. Brett, what I've been calling you today is about an example social studies tour? That's how Alma cuts back, even though I didn't say anything in particular. Still good to guess. Alma and I have been talking and it feels good to say that the wavelength of the conversation fits. "Whoa, that's it. I did, but the teacher at the rate had Dr. Alma's name on it." 'That's right... No, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no. Mr. Cyrus, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no. That said, Alma sighed loudly over the call magic fixture. It's a bit of an unexpected reaction. Is something wrong? "What's up? Is Dr. Alma being harassed by Cyrus? 'Hmm... shall I say that I can't hide my disgust at the harassment or, conversely, at the fact that they like me' "Hmm...? I'm not sure. A Little More" When I asked back, Alma sighed loudly again. '... so the Cyrus one, it seems like he's been after me lately, in a man and woman way.... thatfuckingjizzy, every time I see you, you get all sticky and sexually harassed. How many times have I thought about killing you on the spot?' When I heard that, I just got cocky. Anger gets all over the words. "... chip. Really, that bastard, you're a shitty one everywhere.... So, Alma, are you okay? 'Well, somehow so far. I can't help but get wrapped up in the long stuff because it's my chosen path, but I'm starting to want to stop living this way, too. Let's try to apprentice Dr. Brett. " "Ha ha, even though my way of life wasn't recommended to me by people. Poor whales." "But I enjoy my days because I live by my beliefs. - Right? Sharp cut in. That's right, it's just not a short relationship and you know me. "You know, sometimes I'm actually lucky." "I wonder if you mean the new godchildren. Speaking of which, how about since then? Do you say hello to Mayfa and the others? "Stop saying that. Well, there's a lot going on, but it's a lot of fun. They're all grown up." 'What idiot ska... I've been teaching you for about two weeks now, haven't I? "It's a bucket of stuff, all three of you. You're absorbing it from the side I taught you." "I'm going to let Dr. Brett, the brave guy like a bucket, say that in person, so that's pretty much it." Hahaha laughing alma. Well, I, too, say too much like a bucket, but I think I'd rather have the strength there as a brave man, and... "Whoa, that's not my eye. It's not a dream for them to be the strongest braves in the world." "It's a love affair. Hey, Dr. Brett.... Nice, young and talented kids let Dr. Brett take care of them. What a cyrus this way, Cyrus. ' "... hey, is that what you chose as the deduction rate for your example social studies tour? 'I think so. He seems to think Dr. Brett and I are in love. Isn't that why you want to show your power in front of me and make me change my mind? Uh, no. No, I'm gonna throw up.' "... what the hell. You're messed up from what from the premise. Me and Dr. Alma are just colleagues in the first place. I really don't want to get into trouble with guys and women who immediately think they're in a relationship." "That's right! Alma has agreed to my words. Why are you throwing it there? but that's where Alma changes her voice color. 'But thanks to you, I wonder if I'd be happy to see Dr. Brett for a long time. You can do that by evaluating Cyrus' fucking jizz thing there. ' "Ha ha, I'm looking forward to seeing Dr. Alma for a long time too. - Oh, yeah, Dr. Alma, can you finally ask me for one? There's something I don't sell in this city, and I'd like you to buy it in Wangdu." 'Hmm? What, that's fine. Sister, if it was for Dr. Brett, I'd be happy to run for a small room.' "Oh, it's some kind of magic trick." - Well, that's what we talked about, and I ended my call with Alma. Hey, you've talked a long time. I was sitting in a chair, twisting my body and trying to relax myself, and I finally realized that they existed. "" "No..." " "Wow!? Hey, what are you guys, how long have you been there?" Soon three godchildren watched over me. I was obsessed with the conversation with Alma and didn't notice at all...... "Brother, it seemed like fun" "Doctor, when you talk to us, you don't forgive me so much" "... surprisingly awesome. ... sooner or later, we have to settle." The three of them disappeared into the kitchen with their mouths running about it. ... Uh, I'm a little scared? Because my godchildren behave mysteriously from time to time, it's me who gets a little nervous.

第5話 「落ち着け。俺は勇者学院の教師だ。今日この村に赴任してきた。......とりあえず、その木の棒を下ろしてくれないか?」 俺は敵意がないことを示すために、両手を上げてみせた。 「勇者学院の......教師......?」 木の棒を持った子供は、訝しんだ様子で俺を見つめてくる。 俺を値踏みしているという様子だった。 ちなみにその子供、最初は少年とも少女とも分かりづらいと思ったが、よく見ればそんなことはなかった。 間違いなく女の子──少女だ。 なぜかと言えば、よく見たら胸がわりと膨らんでいるからだ。 ボロ布のような薄汚れた衣服を押し上げて、女の子であることを懸命に主張している。 また後ろの二人も同様に、女の子のようだった。 一人は金髪碧眼で、木の棒を持った少女よりもさらに胸が大きく、腰つきやお尻なども子供と侮れないほどに女性的な危うさを持っている。 この子はきゅっと口を結び、どこか怯えた小動物のように、木の棒の少女にしがみついていた。 もう一人は銀髪と紫色の瞳を持っていて、かなり小柄で胸はほんのり膨らんでいる程度だが、それでも一応、腰のくびれやお尻のラインなどに少女らしい自己主張があった。 こちらも人見知りするのか、木の棒の少女の後ろに隠れてこっそりとこちらの様子を窺っていた。 ......いや、お前は一体どこを熱心に観察しているんだと言われそうだが。 別に俺はロリコンではない、はずだ。 ただ、ロリコンではない俺でも少し見惚れてしまうぐらい、そこにいた三人の少女たちは魅力的だった。 全身が薄汚れていて衣服もボロだが、それでも覆い隠せないほどの魔性の魅力を、三人ともが備えているように思えた。 だがそれはそれとして、三人は俺のことを警戒しているようだった。 木の棒を持った少女だけではなく、後ろの二人も、俺の一挙手一投足を見逃すまいとじっとこちらを見つめてきている。 んー、これはどうしたものか。 できれば警戒を解いてもらいたいもんだが。 とりあえず、話でもしてみるか。 「お前ら、ここで何してるんだ? かくれんぼ、ではないよな?」 俺が試しにそう切り出すと── 「はあ? バカじゃねぇの。オレたちがそんなガキに見えんのかよ。だいたいこんな夜中に、そんなことするわけねぇだろ」 木の棒を持った少女は、口が悪かった。 ついでに言うとオレっ娘だ。 まあ、子供はこのぐらいやんちゃでも可愛いもんだが。 だったら── 「ふぅん、そうか。じゃあひょっとして──家出ごっこか?」 俺がそう切り込むと、木の棒を持った少女は、その瞳を怜悧に細める。 そしてこう言った。 「ここがオレたちの家だ。勇者学院の教師だかなんだか知らねぇけど、用がないなら出てけ」 俺は驚いた。 ここが、この子たちの家......? 「親はどうした」 「とっくの昔にいねぇよそんなもん。オレらの母親はバカでクズだ。あっちこっちで違う男と寝て、オレたちぽこぽこ生んで、そんで何年か前に酒の飲みすぎで死んだ」 ......うへぇ。 それはまた、事実だとしたら何ともヘヴィな話だ。 自分の親をバカでクズ呼ばわりするのはどうなんだと一瞬思ったが、とてもそれどころの話じゃない。 あと彼女の話を信じるなら、この三人は種違いの姉妹ってことか。 髪の色も瞳の色も、体形も顔立ちも全部違うから、全然そうとは思わなかった。 しかし、ということは── 「じゃあお前ら、母親が死んでから、ずっと三人だけでここで暮らしてるってことか......?」 「ああそうだよ。わりぃか」 「いや......むしろ大したもんだ。感心した」 俺がそう答えると、木の棒を持った少女はきょとんとした顔になった。 意外なことを言われたという様子だ。 最近は王都で金持ちの家のボンボンばかり見ていたから、こう逞しい生命力の輝きを見せられると感嘆するしかない。 ──で、ここまでの話だけでも驚きだったんだが。 その上、件の少女はさらに、こんなことまで言ってきた。 「......つーか、あんたもオレたちに、あんまり近寄らない方がいいぞ。オレたち呪われてるらしいからな」 「はぁ......? 呪われてる? 何だそりゃ」 まさに寝耳に水だ。 少女は続ける。 「オレたち、母親が死んだだけじゃないんだ。父親もみんな死んでる──モンスターに食われたとか、通り魔に刺されたとか、いろんな理由でな。あとこの村に住んでた人で、オレたちの面倒を見ようとした人がいたんだけど、その人も病気で死んだ。......だからこの村のやつらは、オレたちに近付こうとしない」 その少女の告白には、絶句するしかなかった。 何だそりゃ......。 呪いなんて、そんなことが本当にあるのか? モンスターの中には「呪い」と呼称されるバッドステータスを与えてくるものもいるが、今言っていたような内容のものは聞いたことがない。 でも母親と父親三人、それにもう一人と合わせて五人中五人が死んでいるとなると、さすがに偶然じゃなく何かの必然を疑いたくなるのは分かる。 分かるが── 「......あのさ」 「あん? 何だよ、まだオレたちに用があんのか? 言っただろ、オレたちには近づかないほうがあんたの身のため──」 「いや......その呪われてるっていうの、誰が言ったんだ? そいつらが死んだのって、偶然じゃねぇの?」 「......ん?」 少女が「どういうこと?」という様子で、わずかに首を傾げる。 俺は続ける。 「いやさ、俺そういう呪いとか聞いたことないし、信じる気もないから」 俺がそう言うと、少女は唖然とした顔を見せた。 後ろの二人も同様だ。 そして、少しして我を取り戻した木の棒の少女は、俺に向かってこう言った。 「......あのさ。あんたアホだろ」 「そうか?」 「そうだよ。あんたみたいなやつ、ほかに見たことない」 「いや、俺に言わせれば、そんな迷信を信じてお前らみたいなガキをこんな目に遭わせておくやつらのほうがアホだぞ」 俺はそう言って、三人の少女に向かって歩み寄る。 少女たちは──特に木の棒の少女はたじろいだが、特に攻撃してきたり、逃げたりすることはなかった。 ただの衝動だ。 深い意味なんてない。 でも誰か大人が、こいつらの存在を肯定してやらなきゃいけないと思った。 自分たちに近付いたら呪われるから近付くななんて、こんな子供に言わせて自己否定をさせちゃいけない。 だから── 俺は三人の少女の目の前まで行って少しだけかがむと、三人をまとめて抱き寄せた。 できる限り力強く、俺がお前らの全部を受け止めてやるという意志を込めて。 それに一番慌てたのは、木の棒の少女だった。 「なっ......何してんだよお前! そんなことしたら......!」 彼女はあわてて身をよじって、抜け出そうとする。 でも俺は、そんな彼女を逃がさないように、彼女らを抱く腕に力を込める。 「呪われねぇよ、バーカ。俺が徹底的にお前らを構ってやる。それで俺が死ななかったら、お前らは呪われてないって証拠になるだろ?」 そう言って、俺は木の棒の少女にニッと笑いかけてやった。 俺は勇者学院の教師である前に、教師だし、大人だし、人間だ。 そのつもりだ。 だったらこんな子供たちを、放っておいちゃいけない。 俺が救ってやるなんていうのはおこがましいが、面倒ぐらいは見てやろう。 そう思っていると── 木の棒の少女は、その手から木の棒を取り落とした。 からん、と床に木の棒が転がる。 そして少女は、張りつめていた糸が切れたかのように、突然子供らしい表情を見せた。 取り繕っていた強気が決壊し、弱気を見せた彼女は、やがて瞳いっぱいに涙をためて── 「おまっ......ぐすっ......おまえ......ほんとアホだろ......」 「そうかもな。そのアホの胸でよけりゃ、好きなだけ泣け」 「うん......泣く......うあっ......うぁあああああああああん!」 そうして木の棒の少女が思いっ切り泣き始めると、残る二人の少女も伝染したかのように大声で泣き出し始めた。 俺はそんな少女たちの背中をぽんぽんと叩いて、三人が泣き止むまでずっと抱きしめ、見守ってやった。

5 Lesson 5 "Calm down. I'm a teacher at the College of the Brave. I came to this village today....... in the meantime, can you put that tree stick down? I let my hands go up to show that I had no hostility. "The College of the Brave... Teacher...? A kid with a stick of wood stares at me like he's surprised. It looked like he was deserving of me. By the way, I found it hard to tell the kid, both the boy and the girl at first, but if you look closely, that didn't happen. Definitely a girl - a girl. Why, because if you look closely, your chest is swollen and bloated. He pushes up thin dirty clothes like borough clothes and insists diligently on being a girl. Again, the two in the back were alike, like girls. One has blonde blue eyes, bigger breasts than a girl with a wooden stick, and more feminine dangers such as sitting back and buttocks not being insulted with a child. This child tied her mouth together all the time, clinging to the wooden stick girl, like some frightened little animal. The other had silver hair and purple eyes, quite small and to the extent that his chest was slightly swollen, but still, for once, there were girly self-assertions on hips creases, butt lines, etc. Do you know this one too, hiding behind the girl with the stick of a tree and sneaking around to see how this one looks? ... No, they're going to say where the hell you're eager to observe. Nothing. I'm not Loricon, I'm sure. However, the three girls there were so fascinating that I fell in love with them even a little bit, not Loricon. The whole body was thinly dirty and the clothes were worn out, but they all seemed to have such a magical charm that they could still not cover it up. But for that matter, the three of them seemed wary of me. It's not just the girl with the stick of a tree, but the two behind her are staring at me not to miss one by one. Hmm, what's wrong with this? I'd like you to de-alert me if you can. In the meantime, let's talk about it. "You guys, what are you doing here? Hide and seek, isn't it? If I cut it out like that to try... "Huh? I'm not stupid. Don't we look like such kids? Mostly in the middle of the night, you can't do that." The girl with the wooden stick, she had a bad mouth. At last, it's my daughter. Well, kids are cute even this much. Then... "Huh, well. So, what, are you running away from home? When I cut in like that, the girl with the stick of a tree narrows her eyes pitifully. And I said this. "This is our home. I don't know if you're a teacher at Brave Men's College, but if you don't need me, get out." I was surprised. This is the house of these kids...? "What happened to my parents?" "Not so long ago. Our mother is stupid and scumbag. I slept with a different guy over there, and we were born, and he died of drinking too much a few years ago." ... Ugh. Again, what a hefty story if it's true. For a moment I thought about calling my own parents dumb and scumbags, but I'm not talking about that very much. And if you believe her story, do you mean these three are different sisters? I didn't think so at all because the color of my hair, the color of my eyes, my body shape and face are all different. But that means... "So you guys have been living here with just the three of us ever since your mother died...? "Oh yeah. Wakari no." "No... it's more of a big deal. I'm impressed." When I answered that, the girl with the wooden stick turned into a decent face. It looks like they said something unexpected. I can only admire the fact that I have been seeing all the bonbongs of a rich house in the King's Capital lately, so I can see the brilliance of this successful vitality. - So, I was surprised to just talk about it so far. Besides, the girl in the matter has even said this. "... or you shouldn't be too close to us. I hear we're cursed." "Huh...? Cursed? What the hell." It's just water in my sleeping ear. The girl goes on. "We didn't just have our mother dead. Fathers are all dead, too, for all sorts of reasons, like being eaten by monsters and stabbed by passing passers-by. Someone else who lived in this village and tried to take care of us died of illness, too. ... so the people in this village don't try to get anywhere near us" The girl's confession had no choice but to put an end to it. What the hell...... Is there really such a thing as a curse? Some monsters are going to give you Bad status called "Curse," but I've never heard of anything as contentful as I was just saying. But when a mother and three fathers, and five out of five combined with the other, are dead, I know you just want to doubt the inevitability of something, not coincidence. I know, but... "... you know" "What are you still doing for us? I told you, it's better for you to stay away from us." "No... who said it was cursed? Isn't that a coincidence that they're dead? "... hmm? The girl said, "What do you mean?" He leans slightly on his neck. I go on. "No, because I've never heard of a curse like that, and I'm not willing to believe it" When I said that, the girl looked stunned. The same goes for the two in the back. And the girl with the wooden stick who took me back a little bit said this to me. "... you know. You're an asshole." "Really? "That's right. I've never seen anything like you." "No, if you let me tell you, I'd be more of an asshole to believe that superstition and keep kids like you in my sights like this." That's what I say, walking over to the three girls. The girls - especially the wooden stick girl - were bare, but never particularly attacked or fled. It's just an urge. There's no deep meaning. But I thought someone adult had to affirm the existence of these guys. If we get close to ourselves, we'll be cursed, so we shouldn't let these kids tell us to self-deny it. So... I went to the sight of the three girls and held them together. Be as powerful as you can, with the will that I'll take all of you. Best panicked about it was the girl with the wooden stick. "Become... what are you doing, you! If you do that......! She dares to turn herself around and try to get out. But I can put my strength in my arms holding them so I don't let her get away with it. "You're not cursed, you idiot. I'll totally take care of you guys. So if I didn't die, it would prove you guys weren't cursed, right? That's what I said, and I laughed nicely at the wooden stick girl. Before I was a teacher at the College of the Brave, I was a teacher, an adult, a human being. I intend to. Then you shouldn't leave these kids alone. It's okay if I don't save you, but I'll take care of it. That's what I thought. The wooden stick girl removed the wooden stick from its hand. Teasing, and a wooden stick rolls on the floor. And the girl suddenly gave a childish look, as if the thread she was straining had been cut off. When the strength she was fixing broke and she showed weakness, she eventually burst into tears with her eyes... "Oh my... Gu Gu... You... you really are an asshole..." "I guess so. Cry as much as you like with that asshole's chest." "Yeah... cry... uhhhhhhhhhhhhhhhhh! That's how the tree stick girl started crying out loud as if the two remaining girls were contagious as well. I slapped those girls on the back with a pound and hugged them and watched them until the three of them stopped crying.

第31話 校舎という名のボロ家の庭は、多少広めではあっても、二十人近くが入り乱れるにはさすがに手狭だ。 そこで俺たちは、村を出て少し歩いた場所にある、川のほとりへと移動した。 そこはちょっとした広場になっている。 足元には大小の砂利が敷かれていて多少足場は悪いが、スペースだけは十分にある。 川のせせらぎの音と、小鳥の鳴く声を背景にして── 今、三人の少女と、十五人の少年少女たちが向かい合っていた。 右手側には川が流れ、左手側のだいぶ先には森の木々が立ち並んでいる。 俺の前にはリオ、イリス、メイファの三人が、俺に背を向ける形で正面を見て立っていた。 その向こう側、三人のいる場所から十数歩ぐらいの位置には、十五人の少年少女がぞろぞろと、それぞれ武器を持って立っている。 武器は形状こそ剣状、槍状、斧状などと多様だが、いずれも木の棒の打撃部に布が巻きつけられたものだ。 これは勇者学院の稽古で使う模擬戦用の武器で、うちもしばらく前に三人分を購入して常備していたが、先方も今回の社会科見学にあたって、ご丁寧なことに人数分持参してきていたようだ。 なお、その十五人の少し後方では、サイラスと三人の生徒が高みの見物を決め込んでいた。 対峙する二組の勢力の間に立っているのは、引率のアルマ先生だ。 朱色の髪をポニーテイルにした美人教師が、両チームにルールを説明していく。 「敵対チームの攻撃で有効打を受けた人は退場ね。有効打かどうかは審判である私が判断します。魔法は、直接相手に怪我をさせるような攻撃魔法は禁止。ほか、意図的な顔面への攻撃など危険行為も当然禁止。いいね?」 『はーい』 両チームの生徒から声が上がる。 それを確認して、アルマは横手へと下がった。 そして、両チーム準備ができたのを確認すると、アルマは「はじめ!」と言ってその手に持った旗をあげた。 が、両チームともすぐには動かなかった。 そんな中で、最初に動きを見せたのは、王都チームの中ほどに立っていた少年だった。 少年は二歩ほど前に進み出ると、木剣を肩に担いでニヤニヤしながら、リオたち三人に語り掛けてくる。 「よお、生意気な庶民のメス犬勇者ども。泣いて謝るなら今のうちだぜ? この人数差が見えてるよなぁ? 着ている服を全部脱いで、『申し訳ございませんでしたご主人様。お望みのままにご奉仕いたしますので、どうかお許しください』って言って土下座したら、まあ俺たちも鬼じゃねぇ、王都に連れ帰ってペットとして可愛がってやるからよぉ?」 少年がそう言うと、その後ろでドッと笑い声が上がった。 ......ああいうめちゃくちゃ下品なの、どうも金持ちジョークらしいんだよな。 社交界では若者の間でバカウケらしくて、王都にいた頃に教師として注意しても直りやしなかった。 ふとアルマのほうを見ると、彼女も顔をしかめていた。 が、俺の視線に気付くと、こっちに向かって小さく肩をすくめてくる。 まあ、反則ってわけでもないし、審判の立場でどうこうもないか。 が、そこに── 「えっと......【クイックショット】?」 「ぐわあああああっ!」 イリスが弓から放った木の矢が、先頭に立った少年の左胸に当たって、少年はもんどりうって倒れた。 それを見た審判のアルマが、有効と退場を言い渡す。 イリスが少し不安そうな顔で、俺のほうへと振り返ってきた。 「あの、先生......もう試合始まってるから、撃っちゃってよかったんですよね?」 「あ、ああ、大丈夫。イリスは間違ってないぞ。あれはな、油断というんだ......」 「そうですよね......。あんまり無防備すぎるから、ルール違反なんじゃないかと不安になっちゃいました」 イリスはホッと安心してまた敵チームと向き合った。 いや、なんだ......。 あいつら、模擬戦の授業とか真面目に受けてこなかったしな......。 で、その王都チームの様子はというと、 「なっ......! 卑怯だぞ!」 「口上を無視して攻撃するなんて、なんて下品な......! こうなったら、こっちも撃ち返すわよ!」 そう言って、慌てて攻撃を始めた。 王都チームの弓手は三人だ。 思い思いに弓を引き絞り、バン、バン、バンと矢を放ってくる。 それらはみな、イリスを狙ったようだったが── まず一人目、弓を引く過程で、矢を取り落とした。 落とした矢をあわあわと拾う。 論外。 二人目、どうにか矢を飛ばしたが、明後日の方向に飛んでいってぽちゃりと川に落ちた。 ド素人レベル。 三人目、唯一まともな矢がイリスのほうに飛んできたが、イリスはその軌道を悠々と見切って半身になってよけた。 ん、頑張ったけど、相手が悪かったな。 それらを見た俺は、大きくため息をつく。 あれでも二年生、三年生の選手なんだよなぁ......。 イリスと比べるのは酷と言ったって、イリスはまだ弓をにぎって三週間だぞ。 お前らせめてもうちょっとちゃんと授業受けておけよと小一時間説教したい。 そして、飛んできた矢をよけたイリスは、すぐさま次の矢を構えて── 「──【クイックショット】!」 「ぁ痛たっ!」 唯一、イリスのほうに正確に矢を飛ばしてきた女子生徒の右手首を矢で撃ち、さっそく二つ目の有効と退場をもぎ取っていた。 その生徒は悔しそうに、戦場から抜け出していく。 【クイックショット】は速射性に優れた弓の基本技だ。 威力は高くないが使い勝手がいいので、たいていの弓使いが最初に修得する技の一つである。 もっとも王都のボンボン勇者勢では、今イリスに撃ち抜かれた一番マシな生徒でも、そうした初級技を覚える段階にまで到達していないのだが......。 「──くそっ! あの弓の女が向こうのエースだぞ! 全員で取り押さえろ!」 そんなイリスに、慌てた王都の生徒たちが一斉に向かっていく。 と、その横合いから── 「......ボク、参上。......ほいっと【二段突き】」 「は......? ぐえっ」 「よ、横からだと!? ──ぐわああああっ!」 ゴッゴッ! 颯爽と駆け寄っていたメイファが放った木槍の【二段突き】が、王都勢の二人の少年の脇腹を捉えた。 これも当然有効で、その二人の少年は退場を言い渡される。 「なっ......!? このガキ、死角からとは卑怯な......!」 「......そんなこと言われても、そっちの死角が多すぎる。......あと、ボクやイリスに構っている場合じゃない。......ボクたちは、武器戦闘では一番の小者」 「な、何を言っている......! お前たち以上の使い手がいるというのか!?」 「だから......本命、あれ」 メイファはそう言って、ある方角を指さした。 そこにいたのは、最初と変わらない立ち位置で無造作に木剣を肩に担いだ、黒髪ショートカットのボーイッシュな少女の姿だった。 少女──リオは陽光の下、暇そうにあくびをしていた。 周りで起こっている騒動に、まるで興味がなくなったというように。 リオは俺のほうへと振り向いて言う。 「なあ兄ちゃん、こいつらいくらなんでも、これはなくね?」 俺はため息をついて答える。 「リオ、一応戦いの場だぞ。勇者の礼儀、ちゃんとしろ」 「えーっ、こいつらだって礼儀とか、全然ちゃんとしてねぇじゃん」 「まあ、そりゃそうなんだが......」 俺は渋い顔にならざるを得なかった。 相手がどんな態度を取ろうが、こちらは礼儀を守る。 それは善き勇者の理想ではあるんだが── 勇者だって人間だし、リオたちにいつでも理想的な勇者であれと言えるほど、俺も勇者ができちゃいない。 ......まあいいか。 今日は相手も悪いんだし、ある程度は目をつぶろう。 「分かった、好きにしろ。でも手加減だけは忘れるなよ」 「はーい」 リオは気のない返事をすると、ぐっ、ぐっと体を捻って軽いストレッチ。 それからぴょんぴょんとその場で跳ねて調子を確認すると、ニッと強気の笑みを浮かべて、呆然としている王都の生徒たちに向かって、こう声をかけた。 「じゃ、残り全員まとめてかかってきな。──遊んでやるよ」 その凛々しい少年チックな声の響きを聞いて、俺はこう思った。 キャーッ、うちの子カッコイイ、かわいい、食べちゃいたい、抱きしめたい、チュッチュしたい......などなど。 でもそれを口に出すとアルマあたりに思いきり蔑んだ目で見られそうなので、俺はその想いを心の宝石箱にそっとしまっておくことにした。

31 Lesson 31 The garden of the Boro family, named the school building, is just narrow for nearly twenty people to get into, even if it is somewhat spacious. So we moved out of the village, a short walk, to the river. It's a little square there. Gravels large and small are laid at the foot and the scaffolding is somewhat poor, but there is only enough space. Against the backdrop of the sound of the river's spirals and the sounds of the birds... Now three girls and fifteen boys and girls were across the street. Rivers flow on the right hand side, and woodland trees line up a long way ahead on the left. Before me, three people, Rio, Illis and Mayfa, stood looking at the front in a way that turned their backs on me. On the other side, about a dozen steps from where the three are, fifteen boys and girls stand, each with a weapon. Weapons vary in shape from sword-shaped, spear-shaped, ax-shaped, etc., all with cloth wrapped around the striking part of a tree stick. This is a weapon for mock warfare to be used in the archaeology of the College of the Brave, which we also purchased and kept for three some time ago, but the other side seems to have politely brought the number of people on this tour of social studies. It should be noted that slightly behind those fifteen, Cyrus and three students had set a high profile. Standing between two opposing groups of forces is Dr. Alma of the pull. A beautiful teacher with vermilion hair as ponytail explains the rules to both teams. "Anyone who has been effectively hit by an attack by a hostile team should leave. It is up to me, the referee, to decide whether to strike effectively or not. Magic is forbidden to attack magic that causes injury to the opponent directly. In addition, dangerous acts such as intentional facial attacks are naturally prohibited. Like?" "Yes." Voices are raised by students from both teams. Confirming that, Alma lowered to the sidelines. And when he made sure both teams were ready, Alma said, "Here we go! I said," I gave him the flag in his hand. but neither team moved quickly. Among them, the first to show movement was a boy who stood as much within the Wang Du team. As the boy moves forward about two steps, he talks to the three Rio's, nibbling with a wooden sword on his shoulder. "Hey, busty commoners female dog braves. If you're gonna cry and apologize, now's the time, right? You see this difference in numbers, don't you? Take off all the clothes you're wearing and say, 'I'm sorry, sir. I will serve you as you wish, please forgive me,' and when I get down to earth, well, we're not ghosts either, because I'll take you back to Wang Du and make you adorable as a pet, huh? When the boy said that, there was a dodgy laugh behind it. ... Oh that's so nasty, sounds like a rich joke. In the social world, it seemed silly among young people, and caution as a teacher when I was in Wang Capital didn't make it easier to fix it. When I looked at Alma, she looked up too. but when you notice my gaze, you shrug your shoulders small toward me. Well, it's not against the rules, and there's nothing in the referee's position. But there's... "Uh... [Quick shot]? "Whoa, whoa!" The boy fell more and more as an arrow of trees unleashed from his bow hit the boy's left chest at the head. Alma, the referee who sees it, says validity and exit. Iris looked a little anxious and looked back at me. "Um, Doctor... you're glad I shot you because the game's already started, aren't you? "Oh, oh, I'm fine. You're not wrong about Illis. That's alarming..." "That's right...... I was worried it was against the rules because I was too defenseless." Iris was relieved to face the enemy team again. No, what... Those guys didn't take mock warfare classes or anything seriously...... So, what's going on with that King's Capital team? "Become...! You're a coward! "How nasty of you to ignore your mouth and attack...! If this happens, I'll shoot you back! That's what I said, and I panicked and started attacking. There are three archers on the Wang Du team. Thoughtfully he squeezes his bow and releases bangs, bangs, bangs and arrows. They all looked like they were after Iris, but... The first person, in the process of pulling the bow, removed the arrow. Pick up the dropped arrow with a wrinkle. Out of the question. The second, he managed to fly an arrow, but flew in the direction of the day after tomorrow and fell into the river with Pooch. d amateur level. The third, the only decent arrow, flew towards Illis, but Illis slowly cut off his orbit and half-baked himself. Mm, I tried, but they were bad. When I saw them, I sighed loudly. I'm a sophomore and sophomore athlete though...... You said it was cruel compared to Illis, and he's still been bowing for three weeks. I want to preach for a little hour that you guys should at least take some more proper classes. And the flying arrow, Elise, put up the next arrow. "- - [Quick Shot]! "Ah, it hurts! The only female student who had flown an arrow more accurately at Illis was shooting her right wrist with an arrow and was just taking the second effective and exit. The student, regrettably, leaves the battlefield. [Quickshot] is a basic technique for a fast fire bow. It is one of the first moves most bowmen acquire because it is not very powerful but user-friendly. In the most Bonbon brave forces in the Wang capital, even the best students who have now been shot out by Illis have not reached the stage of remembering such elementary moves...... "- Damn it! That woman with the bow is the ace over there! Hold them all down! To such an Illis, the students of the hasty King's Capital head toward one another. And from the side of it... "... me, supra. ... ho ho [bunk poking]" "Is...? What?" "Oh, from the side!? - - Whoa, whoa! Goggo! The [bunk poke] of a wooden spear released by Mayfa, who was rushing over refreshingly, captured the flank of two boys from Wang Duzheng. This is also naturally valid, and those two boys are told to leave. "Become...!? This kid is cowardly from the blind spot......! "... even if they say that, there are too many blind spots over there.... and not if it's up to me or Illis. ... we are the best dwarfs in weapons combat" "Hey, what are you talking about...! You mean there are more users than you guys!? "So... fate, that" Mayfa said so, pointing in a certain direction. What was there was the appearance of a boyish girl with dark hair shortcuts, unconstructively carrying a wooden sword on her shoulder in a standing position no different from the first. The girl - Rio - was yawning in the sun in her spare time. It's like I'm no longer interested in the commotion that's going on around me. Rio turns to me and says: "Hey brother, it's hard, but this isn't it, is it? I answer with a sigh. "Rio, it's time for a battle. Courtesy of the brave, be proper." "Eh, even these guys aren't polite or anything at all decent." "Well, that's right..." I had to look sinister. Whatever attitude they take, this one is polite. It's the ideal of a good brave man. Even the brave ones are human, and I can't be brave enough to tell the Rio's that I'm the ideal brave one at any time. ... okay. They're bad today, too, and to some extent, let's close our eyes. "Okay, do whatever you want. But don't forget to give me a break." "Yes." When Rio replied carelessly, he twisted his body for a long time and a light stretch. Then when I jumped on the spot with Pippi to see how he was doing, I smiled nicely and mightily, and called out to the students of Wangdu, who were flabbergasted. "Then get everyone else together. - I'll play." This is what I thought when I heard that ridiculous boy tick voice. Kah, my kids are cool, cute, I want to eat them, I want to hug them, I want to tutch them... etc. But when I put it in my mouth, it was likely to be seen with thoughtful and contemptuous eyes around Alma, so I decided to leave the thoughts softly in the jewelry box of my heart.

第73話 「チッ......!」 ヴァンパイアは舌打ちをし、すぐさま 自らに滅びを与える「弱点」を知っているというのは、彼にとっては計算外の事態だったのだ。 だがそれ以前の話として、あのセシリアとかいう勇者の戦闘力は尋常ではない。 昼間ならともかく、たった一人でいながら夜のヴァンパイアをも恐れず力でねじ伏せようとしている時点で話がおかしいのだ。 ヴァンパイアの戦闘力は、当然ながらその眷属たるヴァンパイアスポーンのそれとは一線を画するものだ。 並みの魔王ハンターが立ち向かおうとしたら、五人で束になってかかっても足りるかどうかだろう。 だというのに、そのヴァンパイアが自分たちの時間である夜中にあってすら、逃げの一手を取らざるを得ない。 セシリアという女勇者は、それほどの驚異的な力を持った使い手だった。 「ぐっ......!」 それは勇者セシリアが行使した魔法の効果だ。 初級魔法ゆえに大した拘束力はなく、ヴァンパイアは一度転倒してわずかの間だけ足を取られたぐらいで、すぐに力ずくでひきはがして再び逃走を開始しようとする。 だがそれだけのわずかの間でも、ヴァンパイアにとっては決定的なタイムロスになった。 「ぐわぁあああああっ!」 転倒状態から起き上がろうとしたヴァンパイアは、その動作を叶えることなく悲鳴を上げた。 重装備をものともせず追いついたセシリアの剣が、ヴァンパイアを背中から貫き、その体を地面へと縫い付けていた。 「ギャアアアアアッ! アァアアアアアッ!」 セシリアが放った光属性の攻撃魔法が、ヴァンパイアの肉体を それ自体、大したダメージではないのだが── 「ヴァンパイアには変身能力もあるらしいが、それも光属性のダメージを受けた直後には行使できないらしいね。だからこれで、キミはコウモリや霧に姿を変えて逃げることもできなくなった──そうだね?」 「おのれ、おのれ、おのれ、おのれぇえええええっ!」 セシリアが背中を踏みつけにして木の杭を取り出すと、ヴァンパイアは怨嗟の叫び声をあげる。 あとはもはや、その杭を心臓に打ち込まれれば、このヴァンパイアは滅びる。 決着はついたかのように思えた。 だが、そのとき── セシリアが、眼下のヴァンパイアとはまったく関係ない方角へと向けて、とっさに大盾を構えた。 大盾に一瞬で闘気が注ぎ込まれ、淡い光を発する。 ──ドガァンッ!!! 砲弾が城壁に撃ち込まれたかのような、凄まじい破壊音が鳴り響いた。 それは森の奥から飛来した、一個の石ころだった。 握りこぶし大ほどの大きさの何の変哲もないただの石ころだったが、それには「力」が宿っていた。 セシリアは自らが掲げた大盾を見て、その目をまじまじと見開く。 「バカな......!?」 自慢の大盾の一部が破砕されていた。 そもそもが超硬度のオリハルコン製の盾である上に、セシリアの闘気を流し込んで防御力を高めた代物であるのに、たかだか石ころがぶつかった程度で大穴が開いたのだ。 さすがに飛んできた石ころそのものは盾との衝突時に粉々に砕け散っていたが、だとしても異常なまでの力だ。 セシリアの額に、冷や汗が浮かんだ。 とっさに盾で防いだからよかったものの。 こんなものが自らの体に命中していれば、自慢の防御力などさほどの役にも立たず、命中部がやすやすと打ち砕かれていただろう。 そして、その一撃を放った攻撃の主が、森の奥から悠然と姿を現わす。 「──やあ、素敵な勇者のお嬢さん。投石などという無粋な真似をして悪かったね。しかしあまり余の『眷属』をいじめないでほしいのだよ。そんなやつでも、やがて人類を滅ぼすためには必要となる大事な手駒なんだ」 それはやはり、ヴァンパイアであった。 赤い裏地の黒マントを身にまとい、優雅な仕草で森の中を歩み進んでくる。 だがセシリアは、その姿を見た瞬間にびくりと震えた。 圧倒的な力の差を、肌で感じとってしまったからだ。 男性と比べても遜色のない背丈のセシリアよりも、さらに頭一個分も高い長身。 金髪をオールバックにした美男子で、口からはヴァンパイアの例にもれず鋭い牙が伸びている。 そして問題なのは、そのヴァンパイアが身にまとっている「瘴気」だ。 瘴気は、「魔王」となったモンスターのみが宿しているもの。 そのことはつまり、セシリアの目の前に現れた新たな敵が、「魔王化したヴァンパイア」であることを示していた。 「そんな......まさか、ヴァンパイアロードだというのか......!?」 そうしてセシリアが、新たな敵に気を取られたとき。 彼女が踏みつけにしていたもう一体のヴァンパイアが、肉体を霧へと変化させて拘束から脱出してしまう。 「くっ、しまった......!」 「ふははははっ! 後ろを取ったぞ、生意気な女勇者め!」 ヴァンパイアはセシリアの背後に回って霧化を解くと、女勇者に後ろから抱き着いて首筋に牙を突き立てようとする。 「舐めるな!」 だがセシリアは、頭突きで背後のヴァンパイアを怯ませると、力ずくで拘束を振りほどき、振り向いて剣を振るった。 「グワァアアアアアッ!」 胴を斜めに断ち切られたヴァンパイアは悲鳴を上げ、よろよろと後ずさる。 だが致命傷ではないし、夜のヴァンパイアには再生能力もある。 シュウシュウと煙をあげて、みるみるうちにその傷が癒えていく。 「くっ......! ここは退くしかないか......!」 セシリアは追撃を断念し、窮地からの脱出を最優先に考え始める。 だがその決断は、遅きに失していた。 いや、元よりアレと遭遇した時点で、セシリアの運命は決していたのだ。 「悪いが退かせもしないよ、美しいお嬢さん。あなたはもう余の手の内だ」 背後から優しく抱きすくめられるようにして、甲冑姿の女勇者は、瘴気をまとったヴァンパイアに囚われていた。 ──さっきまであんな遠くにいたのに、いつの間に。 怯えるセシリアの頬を、ヴァンパイア王の冷たい手が優しくなでる。 セシリアの額をさらなる冷や汗が伝う。 「さあ、もう余からは逃げられない。聡いお嬢さんなら分かっているはずだ。それでも敢えて抵抗してみるかな?」 「くっ......このっ!」 セシリアは先ほどと同じように、後方に向かって頭突きをして、窮地を脱しようとした。 だがそのときには、彼女の背後には誰もいない。 ヴァンパイアの魔王はいつの間にかするりと動き、意識の隙をつくようにしてセシリアの前面へと回っていた。 セシリアはそのことにはたと気付き、慌てて正面に向かって剣と盾を構えるが── そのとき、魔王たるヴァンパイアの瞳が、赤く輝いた。 放たれた強大な魔力が、セシリアの瞳を通して彼女の内側へと侵入し、女勇者の心を侵食する。 からんと音をたて、セシリアの剣が地面に転がった。 ヴァンパイアの魔王はゆっくりと彼女に歩み寄り、彼女が取り落とした剣を拾って、彼女の腰にある鞘へと優しく収める。 そして冷たい手で女勇者の頬へと淫靡に触れ、魔王は優雅に微笑んだ。 「さあ、もう喧嘩はやめよう、麗しき女勇者よ。それよりも一つ頼みたいことがあるのだが──聞いてもらえるね?」 セシリアは、半ば虚ろな瞳でこくりとうなずいていた。 セシリアはその後、村長の家に行って自らの失踪を心配しないよう、そして勇者ギルドにも連絡しないよう言い含めた。 そして、しかる後にヴァンパイアの魔王のもとに戻り、彼に血を吸われて闇の眷属となったのである。

73 Lesson 73 "Chi......! The vampire struck his tongue and quickly returned his heel and fled. Knowing the "weaknesses" that would inflict doom on him was an out-of-count matter for him. But before that, the fighting power of such a brave man as Cecilia was unusual. Whatever the day is, there's something wrong with me at a time when I'm alone and I'm not afraid of the vampires of the night and I'm trying to screw them down with force. Vampire fighting power naturally stands out from that of his family, Vampire Spawn. If a lined demon king hunter tries to face it, it will be enough for the five of us to bundle up. Even in the middle of the night, when that vampire is our time, we have to take a hand in the run. A brave woman named Cecilia was such an amazing user of power. "Gu......! That is the magical effect exercised by the brave Cecilia. Primary magic does not restrain him greatly, and vampires try to escape again as soon as they have fallen and only taken their feet for a few moments. But even just a few moments later, it became a decisive time loss for vampires. "Whoa, whoa!" The vampire who tried to get up from the fall state screamed without fulfilling its motion. A Cecilian sword caught up with no heavy equipment was piercing the vampire from his back and sewing its body to the ground. "Gaaaaaaaaaa! The attacking magic of the light attributes emitted by Cecilia burns the flesh of the vampire. It's not a great deal of damage in itself. "It seems that vampires also have the ability to transform, but that can't be exercised immediately after damage to light attributes, either. So now you can't turn yourself into a bat or fog and run away. - Right? "Hey, hey, hey, hey, hey, yeah, yeah! When Cecilia steps on her back and takes out the wooden pile, the vampire makes a grudging scream. And then no longer, if that pile is punched into the heart, this vampire will perish. It seemed as if the settlement had been reached. But then... Cecilia set up a big shield in a direction that had nothing to do with the vampire under her eyes. The struggle is instilled in the Great Shield in an instant, emitting a pale light. - - Dogayang!!! An awesome sound of destruction rang as if the shells had been shot into the walls of the castle. It flew in from behind the woods, one stone's throw. It was just a stone's throw with no inflection of any magnitude of gripping, but it had "power" to it. Cecilia looks at the big shield she put up herself and opens her eyes seriously. "Stupid......!? Some of the great shields of pride were crushed. On top of being a super hard Orihalcon shield in the first place, a big hole was drilled to the point where the stone hit it, even though it was a substitute for instilling Cecilia's fighting spirit and boosting his defense. The very stone that just flew in was shattered and scattered during a collision with the shield, but even so, it is a force to the point of anomaly. On Cecilia's forehead, a cold sweat floated. Though I'm glad I prevented it with a shield. If something like this had hit his own body, he wouldn't have helped as much as he would have been proud of his defense and so on, and would have been smashed when the hitting area was easy. And the Lord of the attack, who unleashed that blow, reveals himself from behind the woods. "- Hey, lovely brave lady. I'm sorry to hear you imitate stone-throwing and such. But I don't want you to bully the rest of my family. Even that is an important pawn that will eventually be needed to destroy humanity." It was, after all, a vampire. Dressed in a red-lined black cape, he walks through the woods with graceful tricks. But Cecilia trembled the moment she saw him. Because I felt an overwhelming difference in force on my skin. Longer than a back-length Cecilia, which is no less pale than a man's, and even taller than a head. He is a beautiful man with blonde hair all back, with sharp fangs stretched from his mouth without being an example of a vampire. And the problem is the "chi" that the vampire is wearing. Only monsters who have become Demon Kings live in the city. That meant that the new enemy that appeared before Cecilia was a "demonized vampire". "Oh no... you mean it's a vampire road...!? When Cecilia is distracted by a new enemy. The other vampire she was stomping on, turning her flesh into fog and getting out of custody. "Goddamn it...! "Ha ha ha! I got the back, you busty brave lady! As the vampire turns behind Cecilia to unfog it, he tries to hold the female brave man from behind and stick his fangs up his neck muscles. "Don't lick it! But when Cecilia frightened the vampire behind her with a head poke, she forcefully swung away the restraint, turning around and waving her sword. "Gwaaaaaaaa!" The vampire, cut off diagonally from his torso, screams, relaxes and falls back. But it's not fatal, and vampires at night have the ability to regenerate. Give me the shush and the smoke, and the wound heals as I look at it. "Ku......! Do we have to leave here...! Cecilia abandons pursuit and begins to give top priority to her escape from the predicament. But the decision was lost too late. No, Cecilia's fate was never there when she ran into him more than it was before. "I'm sorry, but I won't let you back off, beautiful lady. You're in the other hand." To be gently embraced from behind, the brave woman in armor was imprisoned by a carefree vampire. - - I was so far away just now, when? King Vampire's cold hands are gentle with the frightening Cecilian cheeks. A further cold sweat conveys Cecilia's forehead. "Come on, you can't run from the rest anymore. A wise young lady would know. Still dare to resist? "Goddamn... this! Cecilia tried to get out of the predicament, just like earlier, with a head poke towards the rear. But at that time, there was no one behind her. Soon the demon king of the vampires moved and turned to the front of Cecilia to make a gap in consciousness. Cecilia noticed it and rushed to the front with her sword and shield, but... At that time, the eyes of the Demon King Taru vampire shone red. The mighty magic unleashed breaks into her interior through Cecilia's eyes and erodes the hearts of the female braves. After teasing and sounding, Cecilia's sword rolled to the ground. The demon king of vampires slowly walks over to her, picking up the sword she has removed and gently tucking it into the sheath on her hips. And with cold hands he touched the cheeks of the brave woman, and the demon king smiled gracefully. "Come on, let's not fight anymore, Reiki brave. There's one more thing I'd like to ask you to do. Cecilia nodded with her half-vain eyes. Cecilia then went to the village chief's house to avoid worrying about her own disappearance, and included telling her not to contact the Guild of the Brave. And afterward he returned to the demon king of the vampire, and was drained of blood by him, and became a family of darkness.

第70話 俺はすっかりお休みになったイリスを宿まで運び、ベッドに寝かせた。 魔力枯渇で倒れたときは、だいたい一時間ぐらいは目を覚まさない。 イリスはしばらく寝かせておく必要があるだろう。 俺は次に、魔導通話具を使って勇者ギルドに現状報告をした。 村の住居のひとつにヴァンパイアスポーンが四体潜んでいたことと、それらを撃退した上、イリスの【 しかし事件の発端として存在するはずのヴァンパイアそのものにはまだ遭遇しておらず、セシリアの消息もいまだつかめていないこと。 それら一通りの情報を勇者ギルドに伝えると、俺は魔導通話具の通話を切った。 「ふぅ......」 これでひと段落だ。 俺は宿の部屋にある椅子の一つにどっかりと座りこむと、傍らのミルクが入ったコップを手に取り、中身を胃に流し込む。 するとそんな俺の様子を見たリオが、心配そうな顔で俺の前に立ち、こんなことを言ってきた。 「なぁ兄ちゃん、疲れてる? ──大丈夫? おっぱい揉む?」 「ブーッ!」 俺は盛大にミルクを噴いた。 「げほっ、げほっ......!」 「うわっ、兄ちゃん汚ねぇ! かかったし!」 「わ、悪い......。しかしリオ、お前どこでそんな台詞覚えたんだ」 俺はタオルを持ってきてリオの体を拭いてやる。 リオは少し顔を赤らめつつ俺に拭かれていたが、途中で「じ、自分でやるよ......」と言って俺からタオルを奪い取って、自分で拭き始めた。 「......セシリア姉ちゃんが教えてくれたんだよ。男の人はおっぱいを揉むと疲れが吹き飛ぶんだって」 「あんのクソアマぁ......! うちの可愛い天使に何を吹き込んでくれやがる!」 「......お姉さん、ボクにはそれ、教えてくれなかった。......ボクは今、すごく傷ついた」 一方ではメイファが、自分の平らかな胸を見て部屋の床にがくりと崩れ落ちていた。 あー......まあなんだ、メイファにはメイファの魅力があるから、気にしなくていいと思うぞ? と、そんな戯れ言はさておき。 「じゃあさ、リオ。俺からひとつ頼みがあるんだが」 「ん、何? やっぱりオレのおっぱい揉みたい? 兄ちゃんエッチだなぁ」 「違う! そうじゃなくてだ──リオ、俺に何か隠していることがあったら、今ここで教えてくれ」 俺がそう言うと、リオは一瞬で真顔になった。 崩れ落ちていたメイファも、興味深げに話に耳を傾ける。 「え、と......な、何の話かわかんないよ、兄ちゃん」 リオはそう言うのだが、その目は右に左に泳いでいた。 ──俺がリオの言動に違和感を覚えたのは、ヴァンパイアスポーンを撃退した後のことだ。 それ以後わずかだが、リオの口から出た言葉に不自然と思えるものがあった。 リオが村人を避難誘導してから戻ってきたのは、イリスよりも少し遅かったし、その間──リオが俺のもとから離れていたときに、何かがあったのかもしれない。 俺はリオの両肩に手を置く。 リオがびくりと震えた。 「リオ、何かあったなら話してくれ。内容次第では、リオやイリスやメイファの身に危険が及ぶことかもしれないんだ」 「だ、だから......何もねぇって......」 そう言いながら、リオはやはり俺と目を合わせようとしない。 俺に何かを隠しているのは間違いなさそうだが、話してくれそうにはなかった。 仕方ない。 「分かった。何か思い出したら、またそのときに教えてくれ」 「......うん」 リオはうつむきながら、そう答えただけだった。 メイファはそれを、何かを考えるような仕草で見守っていた。 そんな一幕がありつつ。 しばらくするとイリスが目を覚ましたので、その後みんなで宿の食堂で昼食をとった。 「「「「いただきまーす!」」」」 木造四人掛けの丸テーブルを囲み、料理の前でみんなで手を合わせる。 パンとスープ、焼いた鶏肉に添えもののサラダと、デザートにオレンジ。 リオ、イリス、メイファの三人が思い思いに食事を口に運びはじめる中、俺は自分が知っているヴァンパイアに関する情報を教え子たちにレクチャーしていった。 すなわち、ヴァンパイアは人間を襲ってその血を吸うことで、犠牲者をスポーンに変えてしまう能力を持っていること。 加えてその戦闘力の高さと、日光を浴びるとダメージを受けることや、「不浄なる土」のある場所で眠らないと弱っていくこと。 さらに── 「ほかにもヴァンパイアには不思議な能力や特性がいくつもある。例えば、『ヴァンパイアは、人が住む家には家人に招かれないと立ち入ることができない』という弱点がある」 「......何それ、よく分からない。......お兄さん、どういうこと?」 俺の説明に、メイファが首を傾げる。 イリスも不思議そうにしていたが、リオはまた何か考える仕草だ。 相変わらずリオの挙動が気になるが、まあいい。 俺は説明を続ける。 「原理はよく分かっていないんだが、内容は今言ったとおりだ。ヴァンパイアは、人が住む家には中にいる人から招かれないと入ることができないんだ。人の住居にはヴァンパイアにしか効かない結界みたいな力が働く、とでも思ってもらえばいいか」 「......説明されてもわけが分からない。......謎現象すぎる」 俺の説明を受けても、メイファはいまだに腑に落ちないという様子だった。 気持ちは分かる。 俺も最初は、なんだそりゃと思ったもんだ。 「まあいずれにせよ、そういう性質があるってことだ。だから村長が村人に出した『夜中に家の外に出るな』ってあの指示なんかは、結果論としては大正解なんだよ。日光でダメージを受けるヴァンパイアは、あまり日中に動きたがらなくて、たいていは『不浄なる土』を敷いた棺桶の中で寝ている。しかしヴァンパイアが夜になって棺桶の外に出てみれば、夜中は人間がみんな家の中にいて手出しができない。こうなれば向こうとしては動きづらいわな」 「なるほど......。でも先生、じゃあどうしてあの家の人たちはヴァンパイアスポーンになっていたんですか? ヴァンパイアが家の中に入れないなら、噛みついて血を吸うこともできないような......」 イリスがそう質問しながら、フォークでサラダを口に運びつつもぐもぐする。 いい質問だ。 「それはいくつか可能性が考えられるが......。たとえば何らかの理由で、家の中にいる家人がヴァンパイアを招き入れたのかもしれないな」 「何らかの理由......。例えば何があるだろ......」 「まあいくらも考えうるとは思うが──例えばの話で言えば、ヴァンパイアにはもう一つ、厄介な能力があるんだよ。【魅了の魔眼】っていうんだが」 「......まだあるの? ......次から次と、ヴァンパイアとかいうモンスター、特殊能力の見本市のよう。......で、お兄さん、【魅了の魔眼】って、どんな能力?」 そんなメイファの感想に苦笑しつつ、俺は答える。 「【魅了の魔眼】は、ヴァンパイアが目を合わせた相手の『心』に魔力で干渉して、強制的に自分に『惚れさせる』能力だ。抵抗力の弱い一般人が対象になると、それ一発で能力の使用者であるヴァンパイアにべた惚れの陶酔状態になる。だから──」 「あ、あのさ、兄ちゃん......!」 そのとき、リオが突然、口を挟んできた。 見ればリオは、不安そうなまなざしで俺のことを見つめていた。 「ん......? なんだ、リオ?」 俺は努めて優しい顔を作って、リオにほほ笑みかける。 俺の顔を見たリオは、少し頬を赤らめつつ、言葉を続ける。 「いや、その......例えば、例えばの話なんだけど──もしその【魅了の魔眼】を一般人じゃなくて、オレたちみたいな勇者が受けたら......どうなるの?」 「......まあその勇者のレベルというか、抵抗力の強さにもよるだろうが、一般人が受けたときほどべたべたの陶酔状態にはなりにくいみたいだな。ただ完全に抵抗しきれなければ、そのヴァンパイアに対して好感を抱いたり、ヴァンパイアからの頼みごとを引き受けてしまうぐらいの効果はあるらしい」 「そ、そっか......」 そう言って、リオはまた何か考え込むようにうつむいてしまった。 ......なるほどな。 リオが何を隠しているのか、おおむねの筋道は見えた気がする。 非常に危険な状態だが、むしろ今この状態でリオがここにいることは、運が良かったというべきだろう。 俺はホッと胸をなでおろす。 一歩間違えば、とんでもないことになっていたところだった。 敵が何を考えているのか、はっきりとは分からないが──さておき。 俺は席から立ち上がり、おもむろに歩いていってリオが座っている席の後ろに立った。 リオは焦った様子で俺のほうを見る。 「に、兄ちゃん、な、なに......?」 「悪いがリオ──ちょっと拘束するぞ」 「へっ......? うわわっ......!?」 俺はリオが座っていた椅子を蹴り倒す。 そしてバランスを崩したリオを、俺は食堂の床の上へと押し倒した。

70 Lesson 70 I took Illis to the inn, where I was completely off, and put him to bed. When you fall down from a depletion of magic, you generally don't wake up for an hour or so. Iris will need to let him sleep for a while. Next, I used the Magic Call Device to report back to the Brave Alliance on the status quo. Four vampire spawns were lurking in one of the village dwellings and, after repelling them, using Illis' [Ultimate Healing (Ultimate Heel)] to claim the lives of the victims. But that we have not yet encountered the vampire itself, which is supposed to exist as the beginning of the case, and that we have not yet grasped Cecilia's news. When I gave those streets of information to the Guild of the Brave, I hung up the call on the Magic Instructor. "Phew..." That's one paragraph. I sit tight in one of the chairs in the inn room and grab a cup with the milk by my side and pour the contents into my stomach. Then Rio, who saw me like that, stood before me with a worried face and said this. "Hey brother, are you tired? -Are you okay? Rub your tits?" "Boo!" I sprayed a lot of milk. "Whoa, whoa...! "Wow, brother, you're dirty! It took! "Wow, bad...... But, Rio, where did you learn to talk like that?" I'll get a towel and wipe Rio's body. Rio was being wiped by me while blushing a little, but along the way he said, "I'll do it myself..." and took the towel from me and started wiping it myself. "... Sister Cecilia taught me. Man says rubbing his tits blows his fatigue away." "Your fucking amah......! What the fuck are you blowing into our pretty angel! "... sister, you didn't tell me that.... I'm so hurt right now" Mayfa, on the other hand, was crumbling against the floor of the room looking at her flat chest. Uh... well, what, Mayfa has Mayfa charm, so I don't think you have to worry about it, huh? And that's bullshit aside. "Bye, Rio. I need a favor from you." "Mm, what? You want to rub my tits after all? Brother, you're a jerk." "No, I'm not. - Rio, if you have something to hide from me, tell me here and now." When I said that, Rio turned true in an instant. Mayfa, who was falling apart, listens to the story with interest as well. "Uh... hey, I don't know what you're talking about, brother" That's what Rio says, but those eyes were swimming left to the right. - - I was uncomfortable with Rio's words and actions after he defeated Vampire Spawn. Only a few after that, there was something that seemed unnatural about the words that came out of Rio's mouth. It was a little later than Illis when Rio led the villagers to evacuation, and in the meantime - when Rio was away from me - something might have happened. I put my hands on both shoulders of Rio. Rio trembled. "Rio, if anything happens, talk to me. Depending on what you're talking about, it could be a danger to Rio, Illis, Mayfa." "So... nothing..." With that said, Rio still doesn't try to keep an eye on me. You seem pretty sure you're hiding something from me, but you weren't going to tell me. I have no choice. "Okay. If you remember anything, let me know then." "... yeah" Rio just answered that, nagging. Mayfa watched it in a way that seemed to think of something. While there is such an act. After a while, Iris woke up, so we all had lunch in the inn dining room afterwards. "" "" Here you go! Surrounding a round table of four wooden people, we all join hands in front of the dish. Bread and soup, accompanying salad for roasted chicken and orange for dessert. As Rio, Iris, and Mayfa began to thoughtfully carry their meals into their mouths, I lectured my teachers about the vampires I knew. That vampires have the ability to turn their victims into spawns by attacking humans and sucking their blood. In addition to its high combat power and the fact that it is damaged when exposed to sunlight, or weakened if it does not sleep in a place with "unclean soil". Plus... "Vampires also have a number of other strange abilities and traits. For example, 'vampires cannot enter a house where people live without being invited by their families' has a weakness." "... I'm not sure what that is.... Brother, what do you mean? To my explanation, Mayfa tilts her neck. Illis also seemed to wonder, but Rio is another way to think. I'm still concerned about Rio's behavior, but okay. I'll keep explaining. "I'm not sure how it works, but the content is just as I said. Vampires cannot enter a house where people live without being invited by the people inside. I mean, people's homes only work for vampires, and they work like a bond." "... I don't understand why they explain it.... too mysterious a phenomenon" Even with my explanation, Mayfa still didn't fall for it. I know how you feel. At first, I thought, "What the hell?" "Well in any case, it means it's of that nature. So that instruction that the village chief gave the villagers," Don't go outside the house in the middle of the night, "is quite correct as a result theory. Vampires damaged by sunlight do not want to move much during the day and usually sleep in coffins laid with 'unclean soil'. But if vampires try to get out of the coffin at night, all humans are in the house at night and can't help themselves. If this happens, it's hard to move beyond." "I see...... But Doctor, then how could those people in that house have become vampire spawns? If vampires can't get inside the house, it's like they can't even bite and breathe blood..." Bring the salad to your mouth with a fork while Illis asks you that question. Good question. "There are a few possibilities for that... Maybe, for some reason, a family member in the house invited a vampire in." "For some reason...... For example, what do you have..." "Well, I know I can think of as much - for example, vampires have another nasty ability. [Enchanted Demon's Eye]" "... you still have it? ... Next, a monster called a vampire, like a trade fair with special abilities.... So, brother, what kind of ability is [fascinating demon eye]? While I laugh bitterly at Mayfa's thoughts like that, I answer. "[The Enchanted Devil's Eye] is the ability of vampires to magically interfere with the 'heart' of their eye-to-eye opponents to force them to 'fall in love' with themselves. When the average person with weak resistance is targeted, it becomes an intoxicating state of love towards a vampire who is the user of his abilities in one shot. So..." "Oh, you know, brother...! That's when Rio suddenly pinched his mouth. Rio was staring at me like he was anxious. "Hmm...? What is it, Rio? I try to make a nice face and cheer on Rio. Seeing my face, Rio continues his words as he blushes a little. "No, the... for example, what happens if a brave man like us receives that [enchanting demon's eye] instead of the average person? "... Well it depends on the level of that brave man or the strength of his resistance, but it sounds like he's less likely to get sticky and intoxicated than the average person gets. If you just can't resist it completely, it seems to work enough to favor that vampire or take on every request from a vampire" "Oh well..." That said, Rio got upset to think of something again. ... I see. I think I saw roughly what Rio was hiding. Very dangerous condition, but rather the fact that Rio is here in this state now should be said to have been lucky. I grate my chest. One wrong step, I was just about to be outrageous. I don't know exactly what the enemy is thinking, but... aside. I got up from my seat, walked up in the air and stood behind the seat where Rio was sitting. Rio looks at me in a hurry. "To, brother, hey, what...? "I'm sorry, Rio, but I'm gonna hold you for a second." "Heh...? Wow......!? I kick down the chair where Rio was sitting. And I knocked Rio out of balance, and I pushed him over the dining room floor.

第24話 その後も俺は、三人の教え子たちのあとについて洞窟を進んでいく。 するとしばらく進んだところで、メイファがぴくりと反応した。 それとほぼ同時に、俺の【 のしのしと歩く足音に、ふごふごといった鼻息の音。 メイファが俺のほうへと振り返る。 「......お兄さん、聞こえた?」 「ああ。オークだな。数は──おそらくは一体か」 「......だと思う、鼻息が一つしか聞こえない。......まだ少し、距離がある。リオ、イリス、近くまでは、静かに行こう」 メイファの提案に、リオとイリスが顔を見合わせてうなずいた。 三人は、静かに進み始める。 俺も彼女らのあとを、音を立てないようにしてついていった。 やがて大きく曲がりくねった洞窟の先に、広間が見える場所へとたどりつく。 広間には一体のオークがいて、手持ち無沙汰な様子でうろうろとしていた。 オークはこちらの存在には気付いていないようだ。 あれならば、洞窟の入り口にいた見張りのオークと同様、三人の一斉攻撃で片付けられるだろう。 そう思っていたのだが── 「なあ兄ちゃん、頼みがあるんだ」 一度後退して作戦会議をさせようとしたところ、リオが俺のすぐそばまでやってきて、小声で話しかけてきた。 「頼み? なんだ」 「あのさ、兄ちゃん......オレ、あいつと一人で戦ってみたいんだ」 リオはそう言った。 俺は驚いて、聞き返してしまう。 「一人で......? ってことは、イリスやメイファの援護なしに、リオが一対一でオークとやり合うってことか?」 「うん。さっきやってみた感じ多分イケると思ったし、やってみたいんだ。......やっぱり、ダメかな?」 リオは怒られるのを恐れるような、不安そうな目で俺を見つめてくる。 ダメ元で聞いてきた、という様子だ。 うーん......。 実際のところ、俺の判断でもそれはアリなんだよな。 俺の目から見ても、リオの実力ならオークと一対一でやり合っても、分はいいと思う。 それに万一があっても、致命打を受ける前には俺が助けに入れるだろう。 何より、その経験をリオにさせてやりたいという気持ちが、俺の中にふつふつと湧き上がっていた。 本当に危ないなら、本人がやりたいと言っても止めるのが教師の責務だと思うが、今回は俺の判断でも問題ない範囲内だ。 「メイファとイリスは、それでいいのか?」 俺が残り二人の生徒に聞くと、彼女らもまたうなずく。 「......ボクは楽ができるなら、それに越したことはない。......リオが一人でやりたいって言うなら、任せる」 「私もいいですけど......リオ、本当に大丈夫?」 「うん、やれる......と思う。ていうか、やってみたいんだ。──なあ、頼むよ兄ちゃん。やらせてよ、この通り!」 リオはそう言って、ついには俺のことを拝んできた。 よっぽどやってみたいらしい。 】の範囲内に、ほかのオークの気配もなし。 「よし分かった、やってみろ。でも危ないと思ったら、すぐに助けに入るからな」 「ホント!? やったあ! 兄ちゃん大好き!」 リオはがばっと、俺に抱きついてきた。 俺は脊椎反射的にリオの背中を抱き寄せて、その少女の頭をなでこなでこする。 「よーしよしよし、リオは可愛いなー」 「えへへー、兄ちゃん大好き~」 お互いにひとしきりそんな動作をしたあたりで── はて、と気付く。 リオって、こんなキャラだっけ? 一方のリオのほうも、はたと何かに気付いたようだ。 慌ててそそくさと俺から離れていく。 「......あー、こほん。......んじゃ、行ってくるな、イリス、メイファ。──あと兄ちゃん、あんまりそうやって、気安くオレに抱きついてくるなよな」 リオは耳まで真っ赤に染めながら、俺のことを指さしてそんなことを言いつつ、剣を抜いて、そのままてってとオークのほうへ向かって走っていった。 いや......今のはリオから抱きついてきたような気がするんだが......。 おかしいな、俺の記憶違いかな......。 そんな風に首を傾げる俺のかたわらでは、イリスとメイファのやり取り。 「ねぇメイファ......リオ、どうしたんだろ? 言ってること変だったよね......? ていうか、いつもあんなに素直に先生に懐いてたっけ......?」 「......リオも、複雑で多感なお年頃。......分かってあげよう」 メイファひとりが、うんうんと分かったような顔をしてうなずいていた。 何だか分からないが、複雑で多感なお年頃ならしょうがないな。 ──なお結果を言うと、リオはオークを相手に完封勝利した。 持ち前の素早い動きで鈍重なオークを翻弄し、相手がバランスを崩した隙に【二段切り】を叩き込む。 タフなオークはそれだけでは倒れないが、リオはまったく慌てなかった。 ダメージを負ったオークが怒り狂ってぶんぶんと棍棒を振り回してくるところを闘牛士のように華麗にさばいて、さらに二回の【二段切り】をぶち込んだところで、オークはついに倒れて動かなくなった。 ちなみにだが、オークというのは決して弱いモンスターではない。 一般人が戦う場合、武器を持った大の男が数人で束になってかかっても、犠牲者を出さずに勝つのは難しいぐらいの相手だ。 それをリオは、一人で圧倒した。 リオという、まだ子供と呼んでも差し支えないぐらいの少女が、たった一週間の訓練ですでに勇者としての頭角と存在感を現しつつあるのだ。 まったく──何度も言うようだが、末恐ろしいことこの上ない。 なお勝利したリオは、にひっと満足げな笑みを浮かべて俺に向かってVサインを見せてきて、ありていに言ってめちゃくちゃ可愛かった。

24 Lesson 24 After that, I'm going to go down the cave after the three godchildren. Then after a while, Mayfa reacted perfectly. At about the same time, my [enlarged hearing (high hearing)] was picking up a faint sound as well. Nose sounds like fufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufufu Mayfa looks back at me. "... Brother, did you hear that? "Oh. You're an oak. How many? - Probably what?" "... I think so, I can only hear one snort. ... still a little, there is a distance. Rio, Illis, to the nearby, let's go quietly." Rio and Iris nodded face-to-face at Mayfa's suggestion. The three of them begin to proceed quietly. I followed them too, trying not to make any noise. Eventually, at the end of a large, curved cave, you reach where you can see the hall. There was an integral oak in the hall, wandering around in a shabby manner. Oak doesn't seem to be aware of this presence. If any, they would be cleaned up with a simultaneous attack by the three, just like the lookout oak that was at the entrance to the cave. That's what I thought. "Hey brother, do me a favor" Once I retreated and tried to get him to have an ops meeting, Rio came right next to me and talked to me in a whisper. "Please? What?" "You know, brother... I want to fight him alone" That's what Rio said. I'm surprised, I listen back. "Alone...? Does that mean Rio will work with Oak on a one-on-one basis, without the cover of Illis or Mayfa? "Yeah. Feels like I just tried. I thought maybe it would look good, and I want to try.... after all, can't you? Rio stares at me with anxious eyes, afraid of getting angry. No, I heard about it. Hmmm...... The truth is, even at my discretion, that's an ant, isn't it? From my eyes, if Rio's strong enough, I don't care if he meets Oak one-on-one, I think the minute is good. Plus, in case you get a fatal beating, I'll put you in for help. Most importantly, the desire to make the experience Rio was gushing in me. If it's really dangerous, I think it's up to the teacher to stop him even if he says he wants to, but this time, it's within my discretion. "Mayfa and Iris, is that all right? When I ask the two remaining students, they nod again. "... If I can make it easier, I've never been over it.... If Rio says he wants to do it alone, I'll take care of it" "I don't mind either...... Rio, are you sure you're okay? "Yeah, I can... I think. I mean, I want to try. - Hey, do me a favor, brother. Let me do it, you're right! That's what Rio said, and he's finally worshipped me. He wants to try it. By the way, within [Expanded Hearing (High Hearing)], there are no other signs of orcs. "Okay, all right, try it. But if you think it's dangerous, I'll be right in." "Really!? Yay! I love you!" Rio gave me a hug. I hold Rio's back in spinal reflexes and do the girl's head. "All right, all right, all right, Rio's cute." "Eh heh, I love you brother ~" Around the time we did that to each other... Well, I realize. Is Rio such a character? On the other hand, Rio seems to have noticed something. He rushes away from you and me. "... uh, Kohon.... Well, don't come, Illis, Mayfa. - And, brother, don't hug me like that." As Rio dyed bright red to his ears, pointing to me and saying that, he pulled out his sword and ran towards the oak as it remained. No... I feel like I've been holding onto that from Rio... That's crazy, I guess my memory is wrong...... Instead of me tilting my neck like that, the exchange between Iris and Mayfa. "Hey Mayfa... Rio, what's going on? What you're saying was weird...? I mean, I always miss my teacher so honestly...? "... Rio, too, is a complicated and multisensorial age.... I'll make you understand." One Mayfa nodded, looking like she'd figured it out. I don't know what it is, but I can't help it when I'm old enough to be complicated and overwhelmed. - - Note that with the result, Rio won the oak completely over his opponent. Flirt a dull oak with a quick move in front of you and tap [bunk cut] into a gap where your opponent is out of balance. Tough orcs don't just fall for it, but Rio didn't panic at all. The oak finally fell and stopped moving when the damaged oak graciously judged him like a bullfighter and punched in two more [bunk cuts]. By the way, an oak is never a weak monster. If the average man fights, even if it takes a few big men with weapons to bundle up, it's hard enough to win without making a victim. Rio was overwhelmed by it alone. A girl named Rio, who can still be called a child, is already showing up as a brave man in just one week of training. Totally - I've said it many times, but it's horrible. It should be noted that the victorious Rio was so cute, thankfully, with a smile of satisfaction at him and a V sign at me.

第102話 見つけた、と言ったメイファの周りに、全員が集まる。 メイファが読んでいたのは、なぜか混ざっていた武具を扱う職工関係の本だった。 「......お兄さん。......見て、これ」 メイファが開いているそのページを覗き込むと、勇者向けの、とある魔法のネックレスに関する情報が記されていた。 そのネックレスの名称は「遮光の首飾り」。 このアイテムを身に着けていると、光属性の魔法効果──例えば【 そして──本命はそのあとの記述だ。 メイファがそれを読み上げる。 「......『この光属性の影響を遮断する効果は、厳密には魔法以外の効果にも作用する。例えば、満月の月光による 「ちょっと見せてくれ、メイファ」 俺はメイファから本を受け取り、その記述をつぶさに見ていく。 そこにはメイファが読み上げたとおりの内容が記述されており、この件に関しては、それ以上のことは何も明記がなかった。 ......いや、待て。 どうしてこんなアイテムがあるのに、人里で暮らす 俺はウルへと視線を投げかける。 ウルはぽかんとして、この状況に驚いている様子だった。 俺は少し考えて──そうか、と合点する。 ウルは職場の人たちには、自分が たちが、今回の俺たちと同じように能動的に図書館で調査をすればこの情報を見つける可能性はあったわけだが、だとしても自分たちのことが書かれているであろう人類学やモンスター学関連の本には当たったとしても、武具関係の職人向けの専門書なんて普通は触りもしないだろう。 これはあの司書さんのお手柄だ。 司書さんはこの本の内容を読んだことがあって、この部分の記述を記憶していたから、 俺は「遮光の首飾り」に関する記述を一通りメモに取ってから、すべての本を元の棚に戻して、教え子たちを連れて図書館を出る。 その際、入り口のカウンターで本を読んでいた司書さんに、一声をかけた。 「ありがとうございました! おかげで解決の糸口が見つかりました」 すると司書さんは、本に目を落としたまま、言葉だけでぽつりとこう返してきた。 「お役に立てたなら、良かったです。またどうぞ」 相変わらず淡白でおっとりとした様子だったが、心なしか、少しだけ嬉しそうにも見えた。 俺たちは図書館を出ると、中央通りのほうへと足を向ける。 子供たちはと見れば、彼女らもまた、ずいぶんと嬉しそうだった。 「良かったな、ウル。何とかなりそうじゃん」 「ま、まだ信じられないっす......。こんなことあるんだ......。うち、嬉しすぎて、何が起こってるのか、もうわけが分からなくなってきてるっす......」 「よしよし、ずっとつらかったんだよね、ウルちゃん」 イリスがウルをそっと抱き寄せて、ウルの頭を優しくなでなでする。 ウルは驚いて目を真ん丸にし、顔を真っ赤にしながらも、されるがままにイリスの胸に埋まっていた。 えっ、何あれ尊い......。 子供が子供を抱いてなでなでするとか、そういうのアリなの......? ていうか、イリスさんマジ聖母。 俺はなぜ今、携帯用の魔導撮影機を持っていないのか。 テンションが上がっているところに水を差すのは気が引けるが、釘は打っておかないといけないんだよな。 俺は心を鬼にして、子供たちに伝える。 「まだ喜ぶのは早いぞ。解決の糸口が見付かっただけで、問題はまだまだ山積みなんだからな」 俺のその言葉を聞いて、少女たちは「えっ?」という顔を見せた。 うん、だろうと思ったよ......。 この世の中に解決手段が存在するらしいと分かっただけで、まだ俺たちがその手段を手に入れたわけじゃない。 「遮光の首飾り」──本にあった記述によれば、これはかなりレアなアイテムである上に、そこそこランクの高い装身具のようだ。 これを入手するためには、まず、どこに行けば手に入るかという問題が一つ。 そしてもう一つが、値段の問題だ。 一点目の問題──すなわち、どこに行けば手に入るかに関しては、心当たりはある。 勇者向けの装身具系アイテムならば、まずはあそこを当たってみるべきだろう。 リゼル武具店。 勇者向けの武具の品揃えなら、この街ではあの店が随一だろうし、装身具系の取り扱いという点でもあの店は強そうだ。 さっきの本には、市場取引価格に関しては記述されていなかったから、値段が未知数なのが気がかりだが......まあレアで高ランクという時点で、安くはないだろうなぁ。 ......というように、いまだ頭が痛いことは多いが、それでも前進は前進だ。 これで次のステップに進める。 まずはリゼル武具店に行って、在庫があるかどうかの確認と、値段の把握をするところからだな。 そう思い、俺はリゼル武具店に向かうべく、子供たちを連れて中央広場を横切ろうとしたのだが── そのとき、ふとこんな声が聞こえてきた。 「あーっ! 姉御、あいつらです! 昨日のモンスター騒ぎのときの!」 そう言って、行く手の先から俺たちを指さしてきたのは、どこかで見覚えのある二人組の男だった。 警邏の制服を身に着けていて、一人は大男、一人は小男。 昨日、路地裏でウルを見つけたときに絡んできた、チンピラじみた男たちだ。 そして今、二人の男たちは、一緒にいるもう一人の人物に何かを訴えかけているようだった。 もう一人はどうやら、二十代中頃の若い女性のようで、様子から察するに男たちの上司なのだろう。 赤毛の短髪で、男たちと同じく警邏服に身を包んでいるが、スタイルがいいので男性と見間違えることはない。 女性警邏は、しばらく男たちの話を聞いていたが、やがて俺たちのほうへと歩み寄ってきた。 女性警邏の後ろについてくるのは、ニヤニヤとした笑みを浮かべる大男と小男。 何だか知らんが、昨日の恨みでも晴らそうというのだろうか。 女性警邏は俺たちの前まで来ると、こう問いかけてきた。 「あー、キミたちは旅の勇者かな? 聞きたいことがあるんだけど、少しいい?」 女性警邏から、敵意は感じられない。 あくまでも普通の職務質問といった様子だ。 後ろの二人とは違い、まともな官憲であるように見える。 ならばこちらも、ひとまずは通常対応だな。 「ええ、構いませんけど」 俺がそう答えると、女性警邏は屈託のない笑顔を見せてくる。 「ありがと。──じゃあ早速なんだけど、昨日のモンスター騒ぎについては知ってる? 街中にモンスターが出たっていうやつなんだけど」 女性警邏がそう切り込んできた。 ウルはと見れば、女性警邏のその言葉にびくりと震え、目を泳がせていた。 その様子を、女性警邏がちらりと一瞥したのが分かった。 であることは、少なくとも現段階では、街の人たちにはなるべく知られたくない情報だ。 そう考えると、全部が全部、真実を伝えるというわけにもいかないだろう。 とはいえ、闇雲に嘘をつくのもまずいし── 「ええ、知っています。昨日ちょうど、俺たちが近くにいたときに騒ぎが起きたので、俺たちもモンスターの目撃情報を追いかけたんですよ」 とりあえず事実を伝えてみた。 このあたりは街の人たちも見ていたわけだし、嘘をついても調べればすぐにバレてしまうだろう。 すると女性警邏は「ふんふん、なるほど」とうなずいて、こう返してきた。 「ということは、通りすがりの勇者として、街中にモンスターが出たと聞いたら見過ごせなかったっていうところかな?」 「ええ、そんなところです」 「ちなみにお兄さんは、魔王ハンター?」 「いえ、今の本業は勇者学院の教師です。リット村という小さな村で、こいつらを相手に教えていまして。ラヴィルトンには装備を買いに来たんですよ」 「ふぅん......なるほどねぇ......」 女性警邏は顎に手をあてつつ、子供たちのほうへと視線を向ける。 そして少し考える仕草を見せてから、こう言ってきた。 「まあ、それはいいや。それで──モンスターを追いかけて、そのモンスターは見つかった?」 ──本命の質問が来た。 女性警邏の視線が、鋭く光る。 嘘を言ったら見抜いてやるぞという目だ。 俺は──

102 Lesson 102 I found it, around Mayfa I said, everyone gathers. What Mayfa was reading was an artisanal relationship book dealing with weapons that somehow were mixed. "... brother.... Look, this" A peek into that page that Mayfa was opening contained information about a certain magical necklace for the brave. The name of that necklace is "blackout necklace". Wearing this item is described as completely blocking the magical effects of light attributes - for example, [Holy Ray] damage or [Moonlight Healing (Moonlight Heel)] healing effects. And - - fate is a statement after that. Mayfa reads it out. "... 'The effect of blocking the influence of this light attribute also acts on effects other than strictly magic. For example, it would also prevent the madness of werewolves (warwolves) due to full moonlight"... " "Let me see, Mayfa" I get the book from Mayfa and I'm going to crush the description. There was a description of what Mayfa had read out, and there was nothing more specific about the matter. ... No, wait. How come we don't have this information spread to werewolves living in people when we have items like this...? I throw my gaze at Ur. Ur looked pompous and surprised by this situation. I think about it a little bit, and I think about it. Ur told people at work that he was hiding from them that he was a werewolf. Or the werewolves could have found this information if they were as active in the library as we are this time, but even if they hit anthropological and monsterological books that would have written about them, they wouldn't normally touch a specialty book for craftsmen in arms relations. This is the way the clerk handled it. Since the clerk had read the contents of this book and remembered the description of this part, he probably gave it to me as a werewolf related book. I take a whole note of the "blackout necklace" statement, then put all the books back on their original shelves and take my godchildren out of the library. At that time, I called out to the clerk who was reading the book at the counter at the entrance. "Thank you! Thanks to you we have found the thread for the resolution" The clerk then returned the pompous words alone with his eyes dropped on the book. "If it helped, good. See you later." He looked pale and relaxed as ever, but he didn't have a heart or even looked a little happy. When we leave the library, we turn to Central Avenue. The kids looked a lot happier, too. "Good for you, Ur. You're going to figure it out." "I still can't believe it... This is happening... Of which, I'm so happy that I don't know what's going on anymore..." "Okay, okay, you've been hard, Uru" And Iris held Ur softly, and took Ur's head gently. Ur was stunned, his eyes rounded, his face bright red, yet buried in the chest of Illis, being but left to be. What, whatever is honorable...... Is it an ant that a child holds a child and then...? I mean, Mr. Illis, seriously, Virgin Mary. Why don't I have a portable Magic Guide camera right now? I'm tempted to water where the tension is rising, but I guess I'll have to hit the nail. I haunt my heart and tell my children. "It's too soon to be happy. I just found the thread to solve it, and the problem is still piling up." When I heard that word of mine, the girls said, "Huh? I showed my face." Yeah, I thought so...... I just found out that there seems to be a solution in this world, and it's not like we've got that means yet. "Blackout necklace" - According to the description in the book, this is a fairly rare item and looks like a high-ranking outfit there. To get this, first of all, there is one question: where do I get it? And the other thing, it's a matter of price. The first point - i.e., I know where to get it. If it's a brave outfit item, you should try to hit that one first. Risel Martial Arts Store. That store would be the best in this city if it were an assortment of warfare gear for the brave, and that store looks strong in terms of handling the outfit system. I am concerned that the price is unknown because the book just now did not describe it in terms of market transaction prices...... well at the point of being rare and high rank, it would not be cheap. ... so my head still hurts a lot, but still the forward is forward. Now we move on to the next step. I'll start by going to the reselle armor store to see if it's in stock and get an idea of the price. I thought so, and I tried to take the kids across Central Square to get to the Rizel Armor Store, but... At that time, I heard two voices like this. "Ah! Sister, it's them! of yesterday's monster noise! That being said, it was a pair of guys who looked familiar somewhere who had pointed us from the end of the road. He's wearing a uniform of policing, one big man and one little man. Yesterday, when I found Ur in the alley, I got tangled up, chimpy men. And now, the two men seemed to be about to complain about something to the other person they were with. The other, apparently, is a young woman in her mid-twenties, who is the men's boss to see from how things are going. She has short red hair and is dressed in policing clothes just like the men, but she can't be mistaken for a man because of her style. Female policing, listening to the men for a while, eventually walked up to us. What follows behind the female policing is a big man and a little man with a niggling grin. I don't know what it is, but should I clear up yesterday's grudge? When the policing of women came before us, they asked. "Uh, are you traveling braves? I need to ask you something, do you have a minute? From female policing, I don't feel hostile. It's just a normal job question or something. Unlike the two behind us, it looks like a decent official constitution. So this one, for one thing, is usually handled. "Yeah, I don't mind." When I answer that, female policing gives me an uncontrolled smile. "Thanks. - So it's quick, you know about yesterday's monster noise? There are monsters out there all over the city." That's how the female policing cuts in. When Ur saw it, he was trembling at the words of female policing and let his eyes swim. I saw a glimpse of how the female policing looked. The fact that Ur is a werewolf is information that people in the city don't want to know as much as possible, at least at this stage. Thinking about it like that, there's no way it's all going to tell the truth. But it's not a good idea to lie to the dark clouds. "Yeah, I know. Just yesterday, when we were nearby, there was a commotion, so we chased monster sightings, too." In the meantime, I tried to tell you the facts. People in the city were watching around here, and even if you lied, you'd find out as soon as you did. Then the female policing nodded, "Hmm, I see," and returned it like this. "Does that mean that, as a passing brave man, I couldn't overlook it if I heard there were monsters out all over the city? "Yeah, that's the place." "By the way, what about your brother, the Demon King Hunter? "No, my main business now is a teacher at the College of the Brave. I was teaching these guys in a small village called Lit Village. I came to Lavilton to buy gear." "Hmm... I see..." Female policing puts her hands on her chin, while gazing toward the children. And since I showed you a little trick to think about, I've said this. "Well, that's no. So... after the monster, did you find the monster? - - The question of fate has come. The gaze of female policing shines sharply. If you lie to me, I'll spot you. I don't...

第151話(エピローグ) サハギンの退治は、そうして終了した。 俺たちは救出した村娘たちを連れて、アーニャの村へと帰還した。 帰りがけ、メイファはまた海神様の甲羅に乗せてもらって、かなりはしゃいでいた。 村に到着すると、救出してきた五人の村娘たちがそれぞれ家族と再会し、抱擁を交わし、涙を流していた。 村娘たちはかなり弱っていたが、しばらく養生すれば元通りに元気になるだろうというのが村の医師の見解だった。 娘たちの家族ばかりでなく、俺もまたそれを聞いて、ホッと胸をなでおろしていた。 ついで、海神様に別れを告げる。 メイファが珍しく、ぐずぐずに涙を流していた。 俺が「その気になればまたいつでも会いに来れるだろ」と伝えると、メイファは強くうなずいた。 そして、「......絶対に、また会いに来る」と、海神様と約束をしていた。 マリーナたちもまた、海賊船に乗って村から去っていった。 彼女たちは今後も、特に何の変わりもなく、海賊を続けるそうだ。 手に入れた財宝は、パーッと使うのだと言っていた。 そうして財を使い切ったらまた新たな宝を探すのが、粋な海賊の生き方なのだという。 俺が「そんな命知らずなことばかりしていて、死ぬのが怖くないのか」と聞いたら、マリーナは「やりたいことをやらなくて、生きているって言えますかね?」と返してきた。 いかにも自由人らしい言葉だなと思った。 ちなみに、彼女がアーニャの姉であるかどうかは、あいまいなままだった。 結局、マリーナは海賊に戻ったし、アーニャは村の守り手に戻った。 それ以上のことは、彼女らの心のうちにあればいいのかもしれない。 マリーナたちを見送った後は、アーニャの村で宴による歓迎を受けた。 夜に篝火の焚かれた村の広場で、飲んで、騒いで、村の珍味に舌鼓を打って、笑って、踊って、村の伝統芸能を見せてもらって──まあとにかく、いろいろあった。 それから、その日は村で泊めてもらって、俺たちは翌日に村を発った。 なお今回のサハギンの襲撃で、村の守り手であるオズワルトは片腕を失ったが、今後は成長したアーニャがその穴を埋めるように、二人で協力して村を守っていくということだった。 そうしていろいろがあって、俺たちは自分たちの村へと帰還する。 俺、リオ、イリス、メイファ、セシリアの五人だけではなく、アルマもまた、乗合馬車に一緒に乗ってきた。 アルマに理由を聞いたところ、「ここであたしだけ別れるのは、なんかさみしい。泣いちゃう」という、よく分からない子供のような返事が戻ってきた。 ともあれそんなわけで、アーニャの村を発ち、海岸都市シーフィードから乗合馬車に揺られて数日後の夕刻に、俺たちはようやく、リット村の自宅へと帰ってきたのであった。 「ただーいまっと」 リオが一番乗りで、俺たちの自宅──教員用の宿舎に足を踏み入れる。 「疲れた~。でも、楽しかったね」 「......うん。......特に海神様とは、また遊びたい」 イリスとリオが、そのあとに続き。 「いやあ、とんだ海水浴になったよね。あんなモンスターの大群と戦ったの、あたし初めてだったよ。お邪魔しま~す」 「魔王ハンター稼業をしていればああいうのも稀にあるが、ブレットくんは特に、昔からこういう大事件に巻き込まれやすい体質だった気がするよ。──あ、ブレットくんじゃなかった、ご主人様だ」 「いや、別に家でも言い直さなくていいからな。俺、セシリアさんにご主人様と呼べって言った覚えはないぞ」 アルマ、セシリア、俺と続けば、我が自宅はずいぶんと賑やかになる。 まあ、ほぼ普段通りではあるのだが。 アルマ一人が加わるだけでも、ずいぶんと賑やかさと新鮮さが変わるもんだな。 俺はリビングで荷物を下ろして、荷解きをしながら同僚教師に声をかける。 「アルマ、なんとなく成り行きでついてきたみたいだが、しばらくうちに泊まっていくか? と言ってもベッドは空いてないんで、寝床がないんだが」 「あー、どうしよう。本当に成り行きでついてきたから、何も考えてないんだよね。夏休みはまだしばらくあるから、そこは問題ないんだけど」 「そろそろ一人の時間が恋しくなったか? アルマって結構、一人でいるの好きだろ」 「むっ......それはブレット先生、あたしのこと分かってないよ。鬱陶しい相手と一緒にいるぐらいなら一人のほうが気楽だってだけで......そ、その......ブレット先生とだったらあたし、一生だって一緒にいてもいいんだけど......?」 「ははは、王都の勇者学院で一番人気の売れっ子教師から、そこまで気に入ってもらえているのは光栄だよ」 俺はアルマの軽口にそう答えつつ、庭の井戸まで水を汲みに行く。 するとリビングのほうからは、 「出た、アルマ姉ちゃんの強烈な空振りジャブ」 「結構踏み込んで打ってるんだけどね......」 「......お兄さんが、さばくのに慣れすぎている。......多分、どんな角度から打ってもダメ」 「ぐぬぬぬぬっ......ま、負けないし」 などと謎の拳闘談義が繰り広げられていた。 なぜ俺が話に混ざっているのかはよく分からなかったが。 その後、少し休んだら、みんなで夕食の準備だ。 今日はアルマもいるし、家政婦のセシリア任せにはせず、せっかくなので庭でワイワイと鉄板焼き料理をやることにした。 火種と薪を用意して、リオに【 発火 するとそんなとき、教員宿舎の庭の前を一人の老人が通りかかった。 村長だ。 「おやブレット先生、お帰りでしたか。夕食の準備ですかな?」 「ええ。今日はみんなでバーベキューでもやろうと思いまして」 「ほっほっ、いいですな。それに両手に花とは、なんとも羨ましい。育てていた子猫たちも、立派になりましたな。もう子猫とは呼べぬ、いつでも親猫にもなれるという顔をしておる」 「いえ、そういう感じでは......ていうか、親猫、ですか......?」 「ほっほっほ」 村長は俺の疑問には答えず、立ち去っていった。 相変わらず、食えない爺さんだな。 その後はみんなで、帰りがけに街で勝ってきた肉や野菜を焼いて、食事を楽しんだ。 だがそのうちにメイファが、いつの間にか買っていた果実酒を取り出してきて、場は大混乱に陥った。 終いには、俺は酔っぱらったリオ、イリス、メイファの三人に抱きつかれ、さらには何が起こったのか、アルマとセシリアまで俺の体の空いた場所に抱きついてきた。 「ねぇ兄ちゃん......オレたち、いつになったら兄ちゃんのお嫁さんになれるの......?」 「先生......私、もう我慢できません......。こんなの、イケない子なのは分かっています。でも......」 「......お兄さん、そろそろ観念しよう? ......お兄さんは、一生ボクたちだけの先生になる。......大人なことも、いろいろと教えてくれる」 「ブレット先生は、あたしにばっかり冷たいのではないれしょうか! あたしにも抱きついたりなでなでされたりするぐらいの権利はあると思うのれふ!」 「すまない、ブレットくん。この状況を私だけ傍で見ているだけというのは、拷問にも等しいんだ。私も混ぜてほしい。罰としてご奉仕期間が一生に伸びても構わないから」 立派に成長した教え子たちと、そもそも立派に成長している美女たちに柔らかな肌を押し付けられて、暑い夏の夜に甘酸っぱい汗のにおいを否応なくたくさん嗅がされて。 俺はもう、暑さと心地よさと官能とでくらくらとして、何がなんだか分からなくなって、こう言ってしまったのだ。 「あー、もう分かった分かった! 俺が全員まとめて面倒見てやる! 一生だろうが何だろうが構うもんか!」 ──まあ、そんなことがあったりもしたが。 ともあれ俺たちは、旅のあとの一夜を、たっぷりと楽しんだ。 みんな笑顔だったから、俺もつられて笑顔になった。 そして、世の中にいるたくさんの人たちのこんな笑顔を守るために。 俺たちは今後も、一介の勇者として微力ながら活動し、この世界の平和を守っていく。 は、割に合わないと思うこともたまにはあるが、こうして最後に笑顔でいられるなら悪くはない。 終わりよければすべてよしだ。 捨て猫勇者を育ててみたら、こんな

151 Episode 151 (Epilogue) Sahagin's extermination ended there. We took the rescued village daughters back to the village of Argna. Back home, Mayfa was also aboard the armor of the Kaijin, and was quite happy. Upon arrival in the village, each of the five village daughters rescued was reunited with his family, hugged and weeping. The village daughters were fairly weak, but it was the village doctor's opinion that they would be well again after a while. Not only my daughters' families, but I also listened to it, and my breasts flashed. Then I bid farewell to the Kaijin. Mayfa was unusual and she was crying instantly. Mayfa nodded strongly when I told her that I would come to see her again whenever I wanted to. And I promised the god of the sea, "... I will definitely come to see you again." The marinas also left the village on a pirate ship. They say they will continue to pirate, and nothing in particular will change. He said the treasure he had acquired would be used happily. It is said that once the wealth is exhausted, it is a good pirate way of life to look for new treasures. When I said, "You're always doing that and you're not afraid to die," Marina said, "You don't have to do what you want to do, you're alive." I returned it. I thought it was a liberal word anyway. By the way, it remained ambiguous whether she was Argna's sister. After all, Marina returned to the pirates, and Argna returned to the guardian of the village. Maybe more is in their minds. After I dropped off the marinas, I received a banquet welcome in the village of Argna. In the village square where the campfire was burned at night, I drank, made a noise, pounded my tongue on the delicacies of the village, laughed, danced, and showed the traditional performances of the village - - Anyway, there were a lot of things. Then we had them stay in the village that day, and we left the village the next day. Oswalt, the village's protector, lost one arm during the Sahagin raid, but in the future, Argna grew up to work together to protect the village. There's so much going on, we're going back to our village. Not only me, Rio, England, Mayfa, Cecilia, but Alma also rode in a coach. When I asked Alma why, she said, "I don't want to leave here alone. I'm going to cry," replied a child who wasn't sure. That's why we left the village of Argna and were rocked by a ride carriage from the coastal city of Seafeed. A few days later, in the evening, we finally returned to our home in the village of Ritt. "Just now." Rio will be the first to step into our home - the teachers' quarters. "I'm tired, but it was fun." "... yeah.... especially with Kaijin, I want to play again." England and Rio followed. "Well, it's a beach bath, isn't it? I've never fought a bunch of monsters like that. Sorry to bother you." "It's a rare thing to say if you're working as a demon king hunter, but Brett has always felt particularly susceptible to major incidents like this. - - Ah, it wasn't Brett, it was Master." "No, you don't have to say it again at home. I don't remember telling Cecilia to call me Master." Alma, Cecilia, with me, my home will be a lot livelier. Well, almost as usual. Even with Alma alone, the vibrancy and freshness change a lot. I unload my luggage in the living room and call out to my co-teacher as I unpack. "Alma, I seem to have managed to follow you, but will you stay for a while? That said, I don't have a bed, so I don't have a bed." "Ah, what should I do? You're really not thinking about anything because it's just happening. There's still a summer vacation going on, so there's no problem." "Do you miss your time alone? Alma loves being alone." "Mmm... that's Dr. Brett, you don't understand me. It would be easier to be alone than with a depressed opponent... well... if I were with Dr. Brett, I could stay with you for the rest of my life...? "Hahaha, it's an honor for you to like it so much, from the most popular selling child teacher at the Academy of Bravery in King's Landing." While I answer Alma lightly, I go to the well in the garden to fetch water. And from the living room, "Out, Alma. Sister's intense empty jab." "I'm really stepping in and hitting..." "... oniisan is too accustomed to judging.... maybe not from any angle." "I'm so slimy... I can't lose" There was a mysterious boxing argument. I wasn't sure why I was mixed up in the story. After that, after a little rest, we'll all get ready for dinner. Today, Alma is here, and Cecilia, the housekeeper, is not in charge, so I decided to cook Wai and Teppanyaki in the garden. Prepare sparks and firewood, and let Rio use Ignite magic to light the fire. When I first came here, Rio was struggling to master [Ignite], but now I feel impressed that he has grown to use the top [Fire Arrow (Firebolt)]. Then an old man passed by in front of the yard of the teachers' quarters. The village chief. "Oh, Miss Brett, are you home? Are you ready for dinner? "Yes, we were all going to have a barbecue today." "Ho ho, that's good. Besides, I envy flowers in both hands. The kittens that I grew up with are doing well, too. I can't call it a kitten anymore, I have the face that I can always be a parent cat." "No, that's not how it feels... or is it your own cat...? "Ho-ho-ho-ho." The village chief left without answering my question. As usual, you're a terrible old man. Afterwards, they all enjoyed their meat and vegetables, which they had won in the city on their way home. But in the meantime, Mayfa took out the fruit liquor she had bought, and the scene was in great chaos. At the end of the day, I was hugged by three drunk Rio, England and Mayfa, and even what happened, to Alma and Cecilia, where my body was empty. "Hey brother... when are we gonna be brothers' daughter-in-law...? "Sensei... I can't stand it anymore... I know you're not cute. But...." "... oniisan, it's time to think about it.... oniisan will be our only teacher for the rest of his life.... they teach me a lot about adults." "Dr. Brett, isn't it just cold for me?! I think I have enough right to be hugged and naked too! "I'm sorry, Brett. Just watching this situation by my side is tantamount to torture. I want you to mix it with me. As a punishment, I don't mind the lifetime of service growing." A lot of sweet, sour sweat smells on hot summer nights, pressed against soft skin by splendid teachers and splendid beauties in the first place. I don't know what I'm talking about anymore because of the heat, the comfort and the sensuality. "Ah, I got it! I got it! I'll take care of you all! I don't care what happens all my life! - - Well, sometimes that happens. Anyway, we enjoyed the night after the trip a lot. Everyone smiled, so I smiled when they followed me. And to protect the smiles of so many people in the world. We will continue to work diligently as a brave man to preserve peace in this world. Sometimes I don't think that brave people are suitable for work, but it's not bad if you can smile at the end. It's all right if it's over. I think it was also a pleasure to raise a discarded cat hero and see that such a happy ending (happy end) awaited.

第41話 選手控え室に戻ると、レナードとその生徒たちが迎えてくれた。 「ブレット先生、結果はどうでした?」 「あー、まあ、楽勝ですね。うちの子たち強いんで」 「ほう、言いますね。相手校はなかなかの強豪だったかと思いますが」 「並みの強豪校じゃ、こいつらは止められませんて」 「ふふふ、これは恐ろしい」 完全に本音なのだが、レナードは大口の類だと思ったようだ。 ちなみに子供たちのほうでも、 「へぇ、一回戦を勝ち抜いたんだ。すごいな。これは僕たちも負けていられないね」 「んー、つっても、すげぇ弱かったけどな」 「結構言うじゃない。小さな村の勇者学院っていうから、記念に参加しただけかと思ってたけど。てことは相手のこと、けちょんけちょんにやっつけちゃったわけ?」 「......ムカッとしてやった。後悔はしていない」 などと、レナードの教え子たちとも仲良く話していた。 それを見た俺は、ちょっと微笑ましい気持ちになった。 しばらくすると、レナードの教え子たちの出番が来た。 エールを送って見送ると、十分間ほどで戦いを終え、戻ってきた。 「レナード先生、どうでした?」 俺が同じ質問を返すと、レナードはぐっと親指を立てる。 「勝ちましたよ。何しろ、うちの子たちは強いですからね」 「おっ、おめでとうございます」 「......が、さすがに国じゅうの勇者学院から猛者が集まっているだけあって、相手校も手強かったですよ」 「ですよね」 普通はそういうもんだよ。 うちの子らは異常。 ちなみにレナードの教え子たちは、「ヘレナの援護のタイミングがバッチリだったからな」「ううん、アレックスが敵の前衛をしっかり抑えてくれたから」「熱い~、熱いよぉ~。ラブラブ熱にあてられて焼け死ぬぅ~」などと和気あいあいの感想戦をやっていた。 頑張れ、焼け死にそうな子。 あと話に混ざれなくてモジモジしている補欠の子も頑張れ。 まあともあれ、そんな感じで試合は進んだ。 リオたちは二回戦、三回戦とも楽勝ペースで勝ち抜いたし、レナードの教え子たちもまた、二回戦は突破した。 異変が起こったのは、三回戦のレナードの教え子たちの試合──すなわち、準々決勝の第四試合だった。 相手校は、王都の勇者学院。 参加選手はもちろん、“剛剣”アドルフ、“女王”ドロシー、“賢狼”ジェイクの三人だ。 俺はリオたち三人を連れて、観客席まで試合を見に行ったのだが── それは一方的で、なおかつ残虐といっても過言でない試合内容となった。 三対三で、試合開始の礼をして始まった戦い。 まずは初手、“賢狼”ジェイクが放った魔法によって、戦局が大きく傾いた。 「くくくっ......さぁ、抵抗してみろよ──【 「くっ......こんなもの......!」 リーダーの少年アレックスは、すぐに力ずくで束縛を抜け出そうとしたが、その少年の前に立ったのは“剛剣”アドルフだ。 アドルフは、アレックス少年よりも頭一個高い背丈から相手を興味なげに見下し、その手の木剣を高々と振り上げ、振り下ろした。 「──【斬岩剣】」 威圧感のある声とともに技が放たれる。 アレックス少年は慌てて【パリィ】で弾こうとしたが、アドルフの剣撃は鋭く、防御は及ばなかった。 アドルフが振り下ろした木剣はアレックス少年の左肩へと振り下ろされ── 木剣が少年の肩へとめり込み。 メキッ、ボギッと、何か致命的な音がした。 アレックス少年は苦しみの声とともに地面に倒れ、のたうち回った。 ビーッ、ビーッと警報音が鳴り、アレックスが装着した魔道具がノックダウンを伝える。 それを“剛剣”アドルフは、依然冷たい目で見下し、舌打ちをした。 「雑魚が。この程度で俺の前に立つな」 「──アレックス! ねぇアレックス、しっかりして! お願い──【 ──その少女の腹部に、アドルフの蹴りがめり込んだ。 「が、はっ......!」 少女はもんどりうって倒れる。 彼女は苦しげにお腹を押さえて、芋虫にのようにうずくまり、のたうち回った。 「うえぇっ、げほっ、げほっ......!」 「......貴様は何をやっている。ここは戦場だ。その男はもう死んでいる。貴様も死にたいのか?」 少女の前に立ち、それを冷然と見下すのはアドルフだ。 お腹を押さえてうずくまった少女は、苦しげにしながらも、それでもアドルフを見上げて懇願する。 「お、お願い......このままじゃアレックスの腕が......今ならまだ......」 「知ったことではない。戦場に出て敗北して、五体満足で帰らせろなどという甘ったれが。お前も──死ね」 「──うぶっ! うげぇぇっ......!」 さらに一発、二発とアドルフの蹴りが少女の腹部に叩き込まれた。 やがて少女の魔法具からも警報と、「ノックダウン」を伝える音声が鳴った。 「う......あ、あ......」 「......ふん。くだらん」 アドルフは力なくうずくまった少女を、興味なさそうに一瞥した。 観客席から、「ひどい」「あんまりよ」などと言って、目を背ける人々が出始める。 それを見ていたリオやイリスも、俺に噛みついてくる。 「兄ちゃん! なんで審判は止めなかったんだよ! あんなの!」 「そうです、あんなのひどすぎます! 先生!」 リオたちに言われるまでもなく、俺も歯噛みしていた。 確かにあれは、やりすぎだ。 俺は絞り出すように、教え子たちに言う。 「......ルールの範囲内だ。それにアドルフは、別に間違ったことを言ってるわけじゃない」 あれはレナードの教え子のミスだ。 アレックス少年には今、救護班が駆け寄ってグラウンド脇に運び出され、治癒魔法がかけられている。 あのダメージなら、少なくとも後遺症が残るということはないだろう。 つまり、あのヘレナという少女は、戦いを続けるべきだった。 戦闘不能とジャッジされた仲間に、敵の前に無防備を晒して治癒魔法をかけるという行為は、人の優しさとしては理解できても、戦士としては不適切だ。 魔王の前で同じことをしたら、死ぬ。 そして、それが分かっているから引率教師のレナードもまた、拳を握りしめながらも耐えていた。 また、それだけではない。 戦場ではもう一組、なぶり殺しにも近い事態が起こっていた。 「──アレックス! ヘレナ! くぅっ......!」 「あはははははっ! 他人の心配をしている場合かしらぁ? もう一つ行くわよ、【 「うわぁあああああああっ!」 レナードの教え子たちのうち、戦場に残ったもう一人の少女の足元から嵐が吹きすさぶ。 それは少女の髪を舞いあげ、荒れ狂う風の刃で彼女の衣服や肌をずたずたに切り裂きながらも──しかし、少女に致命的なダメージは与えていなかった。 あえて魔力を弱めにコントロールして、魔法を放っているのだろう。 その魔法を行使しているのは、“女王”ドロシーだ。 ドロシーは、ジェイクの【 やがて嵐がやみ、全身をボロボロにされたレナードの教え子の少女は、青色吐息でドロシーを睨みつける。 「はぁっ......はぁっ......わざと魔法を弱くして、あたしを嬲ってるでしょ、あんた......!」 一方でドロシーは、それを愉悦と嘲りの表情で見下す。 「あらぁ、バレちゃったぁ? 何なら降参してもいいのよぉ?」 「ふざけるな......! あんたたち全員、ぶっ殺してやるんだから......!」 「あら怖ぁい。でもあんまりいつまでも意地を張ってるとぉ、ストリップショーになっちゃうわよぉ? そぉれ、【 ドロシーの放った風の魔法が、再び少女を嬲っていく。 すでにボロボロだった少女の衣服が、風の刃に次々と切り裂かれ、用を為さなくなっていった。 だが少女は、それでもあきらめない。 「くぅっ......はぁっ......はぁっ......降参なんて、絶対にするもんか......! お前たちは、絶対にあたしが......!」 もはやほとんど下着だけという姿になりながらも、闘志だけは失わない少女。 それをニヤニヤと見つめるのは“女王”ドロシーと、“賢狼”ジェイク。 一方で“剛剣”アドルフは、その少女の姿に、少し感心したという様子を見せた。 「ほぅ、いい気迫だ。──ならば貴様には、気持ちだけでは戦いには勝てんということを教えてやらねばならんな」 アドルフは、木剣を片手に少女に歩み寄っていく。 少女はアドルフを睨みつけるが、いまだに【 少女はアドルフに向かって吠えるように牙をむき、拳をにぎる。 格闘戦が彼女の得意分野なのかもしれない。 だが──だとしても、結果は見えている。 アドルフが少女の前にたどり着く前に、一人の教師の声が戦いを止めた。 「──降参です。もうやめてください」 それは、これまでずっと黙って見ていたレナードだった。 その引率教師の言葉に、悲鳴のような声で抗議したのは、当のいたぶられていた少女だった。 「レナード先生! あたしはまだ負けてない! こいつらをぶち殺さないと、あたしは......!」 「ダメです、シンシア。勇者が怒りと憎しみのために戦ってはいけません」 「──っ! でも、先生......!」 「ダメです」 レナードに頑として言われて、言葉を失う少女。 そして少女は、瞳いっぱいに涙を溜めると── 「ひぐっ......うわああああああああん! うわぁあああああああっ!」 そう、声の限りに泣き叫んだ。 ──そうして準々決勝、第四試合の戦いは、少女の号泣とともに決着となった。 王都の三人、“剛剣”アドルフ、“女王”ドロシー、“賢狼”ジェイクの三人が、勇者協会の役員席に向かって礼をして去っていく。 それに役員席のサイラスは、満足げな表情で鷹揚にうなずいていた。 一方、俺の隣で試合を見ていたリオ、イリス、メイファの三人は── 救護班に運ばれていくレナードの教え子たちと、それを嘲笑うような態度で見ながら退場していく王都の生徒たちとを、強い視線で見つめていた。

41 Lesson 41 Returning to the Athletes' Desk, Leonard and his students welcomed him. "Dr. Brett, how was the result? "Uh, well, that's an easy win. My kids are strong." "Well, you say. I think the other school was quite powerful." "You can't stop these guys at some mighty school." "hehe, this is horrible" Totally for real, but Leonard seemed to think he was a big mouth kind of guy. Even the kids, by the way. "Heh, I won the first round. Wow. We can't lose this one either." "Well, I mean, it was really weak." "Quite right. I thought you were just in for the memorial because it's called the Little Village College of the Brave. What do you mean by" they "? "... I did it as a muck. I have no regrets." and others, and talked amicably with Leonard's godchildren. When I saw it, I felt a little smiled. After a while, came the turn of Leonard's godchildren. Sending Yale off, he finished the fight in about ten minutes and came back. "How was it, Dr. Leonard? When I return the same question, Leonard thumbs up a lot. "I won. Anyway, my kids are strong." "Whoa, congratulations" "... but there were just a bunch of fierce men from the National College of Brave Men, and the other school was strong." "Right" That's usually what it is. My kids are abnormal. By the way, Leonard's godchildren had a soothing sentiment match with "Helena's timing for cover was perfect," "Yeah, because Alex kept the enemy's avant-garde in check," "Hot, hot, hot. I'm burned to death by Love Love Fever." Come on, kid, you're about to burn to death. And good luck with the alternate kid who's not mixed up and mozzled by the story. Well, anyway, that's how the game went. The Rio boys won both WWII and WWIII at an easy pace, as did Leonard's godchildren. WWII also broke through. What caused the anomaly was a match between Leonard's godchildren in Game Three - that is, Game Four of the quarterfinals. The other school is the College of the Brave in Wangdu. Of course, there are three players involved: Adolph the Rigid Sword, Dorothy the Queen, and Jake the Wise Wolf. I took the three Rio guys to the audience to see the game, but... That was a one-sided, yet not overstated, content of the game. Three to three, the battle started thanks to the start of the game. First of all, the magic unleashed by the first hand, "Wise Wolf" Jake, led the battlefield to a great lean. "Kuck... now try to resist... [Earth Binding]" "Damn... this stuff...! Alex, the leader's boy, immediately tried to forcefully break out of restraint, but it was Adolf, the "Rigid Sword", who stood in front of the boy. Adolf looked down at his opponent with interest from a back length one taller than Alex boy, and shook the wooden sword of his hand high and down. "- Rock Slashing Sword " The move is unleashed along with an intimidating voice. The Alex boy rushed to play in [Parry], but Adolf's sword strike was sharp and his defense did not extend. The wooden sword that Adolf shook down, it shook down Alex's left shoulder. A wooden sword enters the boy's shoulder. Meow, boggly, something deadly sounded. Alex the boy fell to the ground with the voice of suffering and swung around. Beep, beep and alarm sounds, and the magic props Alex wears transmit a knockdown. Adolf looked down at it with his still cold eyes and struck his tongue. "The miscellaneous fish. Don't stand in front of me to this extent." "- Alex! Hey, Alex, hold on! Please - [Moonlight Healing (Moonlight Heel)]!" - - Adolf's kick stuck in the girl's abdomen. "but haha......! The girl falls down more and more. She held her stomach in agony and nodded like a potato worm, hovering around. "Yeah, whoa, whoa...! "... what are you doing? This is a battlefield. The man is already dead. You want to die, too? It is Adolphe who stands in front of the girl and looks down at it cold. The girl, who nodded holding her stomach, painfully, but still looks up at Adolphe and begs. "Oh, please... Alex's arm just like this... not yet..." "It's not what I found out. There's the sweetness of being defeated on the battlefield and letting the five of us go home satisfied, etc. You too... die." "- Ugh! Whew...! One, two more shots and Adolph's kick slammed into the girl's abdomen. Eventually there was also an alarm from the girl's magic equipment and an audio that conveyed a "knockdown". "Ugh... ah..." "... Hmm. Crap." Adolf glanced at the girl who nodded powerlessly, seemingly uninterested. From the audience, people start turning away by saying "terrible," "not really," etc. Rio and Illis, who watched it, bite me too. "Brother! Why didn't you stop the referee! That one!" "Yes, that's too much! Sir!" I didn't have to tell the Rio guys, I was biting my teeth, too. Sure, that's too much. I tell my godchildren to squeeze it out. "... within the rules. And Adolf isn't saying anything wrong." That was Leonard's godson's mistake. Alex boy now has an ambulance team rushing over and being transported out to the side of the ground, healing magic. If that damage, at least it won't mean there will be sequelae. I mean, that girl named Helena, she should have kept fighting. It is inappropriate as a warrior to expose his non-combatant and jugged companions to indefensible and healing magic in front of his enemies, even if understandable as a person's kindness. If you do the same thing in front of the Demon King, you die. And because I know that, Leonard, the rate teacher, also endured while holding his fist. Also, that's not all. On the battlefield, there was another set of things that were close to killing Nabu. "- Alex! Helena! Ku......! "Hahahahaha! What if I'm worried about someone else? Let's go for another one, [Windstorm]!" "Whoa, whoa, whoa! Of Leonard's godchildren, a storm blew from the foot of the other girl who remained on the battlefield. It lifted the girl's hair, slicing her clothes and skin in pieces with a blade of wild wind - but it didn't do the girl any lethal damage. I dare you to control your magic to weaken it, and you're unleashing magic. Dorothy the Queen is exercising that magic. Dorothy had already unleashed the magic of the wind for several times on the girl who had her feet grabbed by Jake's [earth restraint (earthbound)]. Eventually the storm subsides and Leonard's goddaughter, whose whole body is worn out, stares at Dorothy with a blue exhale. "Ha... ha... deliberately weaken the magic, you're mocking me, you...! Dorothy, on the other hand, looks down at it with a look of joy and ridicule. "Oh, did you find out? You can surrender if you want, huh? "Don't be ridiculous......! I'm gonna kill you all...! "Oh, I'm scared. But if you're too mean all the time, you're gonna be a strip show, aren't you? Oh, [Windstorm]" The magic of Dorothy's unleashed wind strikes the girl again. The girl's clothes, which were already worn out, were cut one after the other by the blade of the wind and no longer exchanged for her. But the girl still won't give up. "Kuhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh You guys, I'm definitely...! A girl who no longer looks almost like just her underwear, but doesn't lose just her fighting spirit. Dorothy the Queen and Jake the Wise Wolf stare at it as Niyaniya. Adolf, on the other hand, showed a little admiration for the girl's appearance. "Ho, that's a good temper. Then I must teach you that feelings alone can't win a battle." Adolf walks over to the girl with a wooden sword in one hand. The girl glances at Adolph, but still could only wait so long to exchange Adolph's impending arrival without undoing [the bondage of the earth (earthbound)]. The girl howls her fangs and fists as she barks at Adolf. Maybe fighting is her specialty. But even so, the results are visible. One teacher's voice stopped the fight before Adolf reached before the girl. "- It's surrender. No more, please." That was Leonard watching in silence the whole time. Protesting the words of that rate teacher with a screaming voice was the mundane girl of the day. "Dr. Leonard! I haven't lost yet! If I don't smash these guys to death, I...! "No, Cynthia. Don't let the brave fight for anger and hatred." "- Huh! But, Doctor...! "No, sir." Leonard tells me to be stubborn, the girl who loses her word. And the girl's eyes filled with tears... "Higu...... wowwwwwwwwww! Wow, wow!" Yes, I cried out as far as my voice was concerned. - - That's how the quarterfinals, the battle for Game IV, were settled with the girl's crying. Three people from the Wang capital, Adolf the "Gang Sword", Dorothy the "Queen" and Jake the "Wise Wolf", leave in thanksgiving toward the board seat of the Brave Men's Society. Plus Cyrus on the board seat was nodding to Eagle Deep with a satisfying look. Meanwhile, the three of you who were watching the game next to me, Rio, Illis and Mayfa... He stared with a strong gaze at Leonard's godchildren being transported to the ambulance and at the students of the King's Capital who were leaving as they looked at it in a derisive manner.

第124話 俺がみんなで海水浴に行くことを提案すると、リオ、イリス、メイファの三人は大はしゃぎで喜んだ。 そんなわけで、善は急げ。 誘ってきたアルマと日程の調整をすると、俺たちは数日後には村を出立し、海岸都市シーフィードへと向かった。 出立時のメンバーは、俺とリオ、イリス、メイファの三人に加え、ヴァンパイア事件以降、我が家の専属家政婦になったセシリアも一緒だ。 なお出立前の一幕としては、こんなことがあった。 アルマから連絡があった日の夜、俺はセシリアにも一緒に遊びに行かないかと誘ったのだが── 「い、いいのか!? 私なんかが一緒に行っても!?」 と、セシリアは凄まじい喰いつきを見せ、俺の手を両手でがっちりと握ってきたのだ。 「え、ええ......。ただ当たり前ですけど、うちの子たちの水着姿を見て、変な気は起こさないでくださいよ。セシリアさんの少年少女愛好は度が過ぎるときがありますから、大丈夫だとは思うんですけど一応忠告しておきます」 「も、もちろんだとも! 変な気を起こさないように頑張る! 努力はする!」 「......頑張る? 努力?」 「あ、いや、えっと......ぜ、絶対にしない! ......ように、気を付けます......」 と、だんだん声が萎んでいったうちの家政婦であった。 どうやらこのダメ勇者、嘘がつけない性格のようである。 これは連れていったらまずいのではないかと真剣に考えたのだが、リオたちが、 「また留守番はかわいそうだから、セシリア姉ちゃんも連れていってやろうぜ、兄ちゃん」 などと言うので、俺は最終的には、セシリアにも同行を許可したのだった。 なお、オーケーを言い渡したときのセシリアは、「ははーっ、ありがとうございます、ご主人様」などと言って家のリビングで土下座して、おでこを床にこすりつけんばかりに頭を低くしていた。 全国でもトップクラスの凄腕勇者は、うちの教え子たちと一緒に海水浴に行きたいがために、どこまでもプライドをかなぐり捨てていた。 まあそんなわけで、俺と子供たち三人とオマケ一人を加えた五人で、乗り合い馬車に揺られること数日。 俺たちはついに、海岸都市シーフィードへとやってきたのである。 「うわぁ、すっげぇ......! あれが、海......!」 「大っきい......! 先生、すごく大きいです......!」 「......くんくん。......これが、磯の香り。......貝の匂いみたいだけど、どこか趣き深い」 先に馬車から下りた子供たちは、都市の向こうに一面に広がる広大な海の姿に感動しているようだった。 海岸都市シーフィードは、俺たちの今いる陸側の入り口は市壁と市門に守られているが、街の向こう側は海岸に面しており、港にはたくさんの船が往来している姿を望むことができる。 馬車の停留場所は、そのシーフィードの街の市門前だ。 俺も子供たちに続いて、馬車を降りる。 セシリアもそれに続いた。 馬車が現地に到着したのは、昼下がりの時刻だ。 麗らかというには少々強すぎる日差しに照らされて、俺はまぶしさに目を細める。 市門では、訪問者の入市チェックが門番によって行われていて、門の前には多少の行列ができていた。 全員でその最後尾について順番を待っていると、セシリアが俺に、ふとこんなことを聞いてきた。 「ごしゅ......ブレットくんは、この海岸都市シーフィードには、以前にも来たことがあるのかな?」 「そうですね、アルマと一緒に何度か。セシリアさんは?」 「私も何度か来たことはあるが......ところでごしゅ......ブレットくん、その『アルマ』というのは何者なんだい?」 俺から家の外では「ご主人様」呼びを禁止されているセシリアが、そんな質問をしてくる。 そういえばセシリアは、アルマとは接点がなかったか。 「アルマは王都の勇者学院で勤務していたときの同僚ですね。王都の男子生徒たちの中にはファンクラブもあるぐらい人気のある美人教師ですよ。俺は彼女とは年齢も近いし気が合うんで、長期休暇のときにはよく一緒に遊びに来ていたんですよ」 「ふぅん......それは意味深だね。ブレットくんも意外と隅に置けないな。まあそれはそうか。ブレット君ほどのイイ男が、モテないはずもないものな」 そう言ってセシリアは、ニヤリと笑いかけてくる。 俺はそれを見て、はぁと大きくため息をついた。 またそのパターンか。 俺はセシリアさんの首に腕を回し、肩を並べた友人同士のようにして言う。 「あのね、セシリアさん。そう男女が仲良くしていたらすぐ恋仲を疑うの、良くないと思うんですよ。俺とセシリアさんだって、そういう関係ではないでしょ?」 「ああ。ご主人様と召使いの関係だね」 「うっ......いや、それはさておき。アルマとは別に、いわゆる男女の仲ではないです。普通に仲のいい同僚ですからそのつもりで。変な勘繰りはやめてください」 だが俺がそう伝えると、セシリアは怪訝そうな様子で眉をひそめた。 「えっと......すると何か、ブレットくん。キミはそのアルマという女性教師と、恋仲でもないのに男女二人きりで一緒に海水浴をしに来ていたと?」 「ええ。どうもアルマのやつ、俺ぐらいの相手が一番気安くていいらしいんですよ。自分のファンみたいな男と一緒だと変な目で見られるし、同性とも意外と打ち解けづらいみたいで」 「はあ......」 セシリアはなおも、いまいち釈然としていないようだった。 と、そんなとき── 「セシリア姉ちゃん、ちょっとこっち来て」 リオがセシリアに向かって、ちょいちょいと手招きをした。 なんだ......? セシリアはそれを受け、リオのもとに近付いて、しゃがんで耳を寄せる。 リオはセシリアの耳元で、ごにょごにょと何かを伝えたようだった。 しばらくふんふんと聞いていたセシリア。 やがて「なるほど」とつぶやくと、ちらと俺のほうを見てから、何やら大きくため息をついた。 それからセシリアは立ち上がり、再び俺のもとに歩み寄ってきて、俺の肩にポンと手を置く。 「ブレットくん。キミのそういうところは嫌いではないけど、ほどほどにしなよ。そのうち刺されるよ」 「......いったい何の話をしているんですか」 なんだかとても呆れられたような雰囲気だった。 ぐぬぬ......残念お姉さんのくせに生意気だぞ。 ともあれそんなやり取りをしていると、やがて市門での入市チェックも終わり、俺たちはシーフィードの街に入ることができた。 海岸都市シーフィードは、街の三方を海に囲まれた都市だ。 天然の地形を利用して作られた街並みは、俺たちの入った陸側から三方の海側に向かって下っていく高低差のある構造になっていて、通常の都市とは一つ趣を異にしている。 海側からは磯の香りのする潮風が吹いてくるので、旅行客にとっては雰囲気があっていいが、現地住民にとってはべたつくし塩害もあるしでまあまあ大変なものらしい。 ちなみにこのシーフィード、港を持つ貿易拠点としてももちろん大きな機能を果たしているのだが、港湾都市でなく海岸都市と呼ばれるのは、何よりも海岸の地形を利用したレジャースポットとして有名だからだ。 特に街の東側に広がる海水浴場は、この暑い夏の時期には大人気となり、近隣地域ばかりか遠方からもバカンスに来る人が少なくないほどだという。 それゆえに、観光客向けの宿泊業なども盛んだ。 もちろん俺たちもその利用客で、あらかじめ市内の一軒の宿を予約してある。 アルマともその宿で落ち合う予定になっているので、俺は子供たちとセシリアを連れて、まずはその宿へと足を向けたのだった。

124 Lesson 124 When I suggested we all go for a seawater bath, Rio, Illis and Mayfa were very shabby and happy. That's why goodness hurry. After scheduling with Alma, who invited us, we left the village a few days later and headed to the coastal city of Seafeed. In addition to me and three of Rio, Illis and Mayfa, the members on departure are also with Cecilia, who has become our exclusive housekeeper since the Vampire case. As for the act before the departure, this happened. The night Alma called, I asked Cecilia if she'd come with me. "Yes, okay!? Even if I go with you!?" And Cecilia showed great devouring and held my hand in disappointment with both hands. "Yeah... It's just obvious, but don't get weird seeing my kids in their swimsuits. Mr. Cecilia's hobby for boys and girls sometimes goes too far, so I'm sure it's okay, but I'll advise you first." "Or, of course! I'll try not to get weird! I'll make an effort! "... work hard? Effort?" "Oh, no, uh... hey, I would never! ... so, be careful..." And he was our housekeeper, whose voice was shriveling. Apparently, this damned brave man, he has a character he can't lie to. I seriously thought this might not be a good idea if I took you, because Rio and the others, "I feel sorry for your voicemail again, so let's take Sister Cecilia with us, bro" And so I eventually gave Cecilia permission to accompany me. It should be noted that Cecilia, when she said OK, said, "Ha-ha-ha, thank you, sir," etc., sat down in the living room of the house and kept her head down just rubbing her forehead on the floor. The top awesome brave men in the country wanted to go seabathing with our godchildren, but for that, they had tossed their pride everywhere. Well, that's why me, the three kids and the five of us who added an omelet, a few days to be rocked by a ride carriage. We have finally arrived in the coastal city of Seafeed. "Wow, that's awesome...! That's the ocean......! "Big...! Doctor, it's so big......! "... Kun. ... This is the scent of Iso.... sounds like shellfish, but somewhere hobby" The children who descended from the carriage earlier seemed impressed by the vast sea appearance that spread across the city on one side. Seafeed, the coastal city where we are now, is guarded by city walls and city gates, but the other side of the city faces the coast and you can hope to see plenty of ships moving around the harbor. Carriage stops in front of the city gates in Seafeed. I'll follow the kids and get out of the carriage. Cecilia followed suit. The carriage arrived on site at noon time. I narrow my eyes to my eyelids in the light of the sun, which is a little too strong for Reiki. At the city gate, visitor entry checks were carried out by gatekeepers, with some queues in front of the gate. As we all waited for order about the end of the line, Cecilia asked me this. "Ohhhhhhhhhhhhhhh... has Brett ever been to this coastal city of SeaFeed before? "Right, a few times with Alma. Where's Mr. Cecilia? "I've been here a few times too... by the way... Brett, who is that 'Alma'? Cecilia, who is forbidden from calling me "your husband" outside my house, asks me that question. Speaking of which, did Cecilia have any contact with Alma? "Alma was a colleague when he worked at the College of the Brave in Wangdu, wasn't he? Some of the male students in Wangdu are beautiful teachers who are popular enough to have fan clubs. I'm close to her age and I feel comfortable, so I used to come and visit with her when I was on vacation." "Hmm... that makes a lot of sense. Brett can't surprisingly put it in the corner, either. Well, is that so? Brett, a nice guy like you can't possibly be hot." Cecilia laughs at me like that. I looked at it and sighed loudly. Is that pattern again? I turn my arms around Mr. Cecilia's neck and say to each other like a friend with shoulders lined up. "You know, Mr. Cecilia. I don't think it's a good idea to suspect a relationship as soon as a man and a woman are close. Even me and Mr. Cecilia, that's not the relationship, is it? "Oh, it's about your husband and your servant." "Ugh... no, forget that. Apart from Alma, we are not friends of so-called men and women. I intend to do so because I am usually a good colleague. Stop making weird assumptions." But when I told her that, Cecilia frowned in a strange way. "Uh... and then something, Brett. You said you were here with a female teacher named Alma, and a man and a woman who weren't in love, but you were alone in a seabath together? "Yeah. Thanks Alma. He's the cheapest guy I've ever met. With a guy like his own fan, he sees it with weird eyes, and the same sex seems surprisingly hard to crack." "Ha..." Cecilia still didn't seem to be very conspicuous. And then... "Sister Cecilia, come here for a second" Rio made an offer to Cecilia. What...? Cecilia takes it, comes close to Rio, crouches and ears. Rio was in Cecilia's ear and seemed to tell you something. Cecilia I've been hearing about humph for a while. Eventually he snapped, "I see," he looked at me and me, then sighed somewhat loudly. Then Cecilia stands up, walks up to me again, and puts her hands on my shoulder with a pong. "Brett. I don't hate that about you, but don't be so much. You'll get stabbed." "... what the hell are you talking about" It was kind of a very frightening atmosphere. Geez... too bad I'm busy with your sister. With all that interaction, eventually the entry check at the city gate was over, and we were able to get into the city of SeaFeed. Seafeed, the coastal city, is a city surrounded by sea on three sides of the city. Built using natural topography, the city has a structure with high and low differences going down from our inland side to the tripartite sea side, which is one thing that is different from the normal city. The scented sea breeze of Iso blows from the sea side, so the atmosphere is fine for travelers, but it seems to be sticky and salty for local residents and reasonably difficult. This seafeed, by the way, also plays a major role, of course, as a trading hub with ports, but it is called a coastal city, not a port city, above all because it is famous as a leisure spot using coastal terrain. Especially the sea baths, which extend to the east of the city, become very popular during this hot summer period, so much so that few people come to vacation from all the neighborhoods or far away, he said. Therefore, the accommodation business for tourists also flourished. Of course, we're the same guests who booked an inn in the city in advance. Alma and I were supposed to meet at the inn, so I took the kids and Cecilia and turned to the inn first.

第52話 「卒業試験だ。三人がかりで俺を倒してみろ。ルールは大会のときと一緒──魔道具がノックアウトの警報を鳴らしたら退場だ」 俺の言葉を聞いた三人は、ぽかーんとした顔で突っ立っていた。 十秒経過。 二十秒経過。 三十秒経過。 だがやがて、三人は慌てた様子で聞き返してきた。 「は......? ちょっ、ちょっと待ってよ兄ちゃん!? 卒業試験って何だよ!?」 「せ、先生!? え、どういうことですか......? 卒業......?」 「......お兄さん、さすがのボクも、理解が追い付かない。......お兄さんが何を言っているのか、理解できない。......ううん、理解したくない」 三人とも驚いてはいるようだが、メイファあたりは俺の言わんとしていることが分かってはいるようだった。 ──というわけで、俺の最後の仕事だ。 俺が三人に出会ってから、およそ一年がたった。 リオは一歳成長して十五歳になったし、イリスとメイファも十四歳になった。 俺は三人を、「卒業」させることに決めた。 三人とも学年が分からないような状況ではあるし、普通は卒業かどうかなんて一教師が決めるようなことでもないのだが── 勇者学院は、本来は三年制だ。 しかし三人ののみ込みが異常に早かったのと、俺が三人だけを見ていればよかったという環境もあって、その三年間で教えるべきことはこの一年間でおおむね教え切ってしまっていた。 勇者学院の教育内容は実習が大部分だから、さっさとできるようになってしまえば、さっさと先に進めてしまうのだ。 でんぐり返しができるようになった子に、でんぐり返しのトレーニングを続ける必要はないということ。 そういう状況下にあって、三人の学年も分からなければ、あの村の勇者学院の状況では学院としての制度もあってないようなもの。 なら実質の話、こいつらの唯一の教師である俺が、どうするかを決めるべき問題だ。 俺は三人に向かって、笑顔で──多分ギリギリ笑顔を作れていると思う──こう伝える。 「いやぁ、お前らならもう、魔王ハンターするなり何なり、自分たちだけで十分に生きていけるだろ? だから卒業。──ってわけでさ、お前ら最後に、強くなった姿を俺に見せてくれよ。俺への感謝の気持ちだと思ってさ」 俺は木剣を右手に持ちつつ、左手はポケットから金貨を一枚取り出す。 金貨は試合開始のサインとして投げるためのものだ。 しかし大慌てなのは、三人の教え子たちだった。 「何でだよ兄ちゃん......! オレたちのこと、嫌いになったの......!?」 「待ってください先生! お願いします、何でもしますから、卒業なんて──!」 「......お兄さん、待って、待って......! ......そんなのおかしいよ! ......どうして、どうして突然、そんなこと言うの......?」 見捨てられた子猫たちのように訴えかけてくる少女たち。 「だってよ、俺の左遷がサイラスの横暴だったってことになれば、俺も王都の勇者学院に戻れるかもしれないだろ。そうなりゃ給料も今より良くなるしさ。辺境のちっぽけな村からもおさらばってわけよ」 そんな嘘をついて、偽悪を演じる。 自分でもなんでこんなことを言っているのか分からなくなってきた。 三人と別れなければいけない。 俺は教え子離れをしなきゃいけないし、こいつらは教師離れをしなきゃいけない。 そういう強い強迫観念に、俺はとらわれていた。 この三人との共同生活は、ちょっとヤバいぐらいに楽しくて、ずぶずぶと嵌まってしまいそうで── だからこそ、ここでこいつらを強く拒絶しなきゃいけないんだ。 そして、俺の言葉を額面通りに受け取ったのか。 まずイリスが、強いショックと絶望に襲われたような顔になった。 イリスはうつむき、表情に影を落としつつ言う。 「......分かりました、先生。......リオ、メイファ。先生には先生の都合があるよ。私たちがそれを邪魔しちゃいけない」 「イリス! で、でもよ! お前は兄ちゃんと別れるの、それでいいのかよ!?」 「はあ!? いいわけないでしょ!!! でもしょうがないじゃない! 私たちはわがまま言ったらダメなの! 先生に感謝してるなら、先生のことを一番に考えないといけないの!!!」 悲鳴のようなイリスの声。 グラウンドにぽたぽたと、涙がこぼれ落ちていた。 リオはそれで、絶句してしまう。 それから苛立たしげに、地団駄を踏む。 感情の向けどころが分からないという様子。 一方でメイファは、真っ直ぐに俺を睨みつける。 「......嘘。......お兄さんは、そんなことを言う人じゃない。......お兄さんは嘘をついてる、絶対! ......ボクはお兄さんのことなら、よく分かってる──分かってるんだよ! どうしてそんな嘘をつくの、お兄さん! ボクには分からない! お兄さんの言ってることが分からない!!!」 メイファのいつにない絶叫。 言葉は矛盾。 俺を睨みつけるメイファもまた、瞳いっぱいに涙をためていた。 ......まあ、鋭いよ。 さすがはメイファと言わざるを得ない。 だが俺は嘘を押し通す。 「はあ? 俺のことを分かってる? 何言ってやがんだガキがよ。お前らに合わせてやってただけだよ」 「......嘘だ! ......嘘だ嘘だ嘘だ! そんなの、お兄さんじゃない!!!」 「目が曇ってたみたいだな。残念でした、バーカ」 なんでこんなことを言ってるんだ俺は。 こいつらと別れなきゃいけない。 何が何でも。 それしか頭になくて、出てくる言葉が全部教え子たちを傷つけるものになってしまう。 嫌われてしまえば、別れられるから。 そんな軽率すぎる考えで頭がいっぱいになって、それ以上のことが考えられない。 だが、そんなとき。 リオが言った。 「......兄ちゃん、嘘が下手だよ」 俺は目元を服の袖で拭ってから、鼻で笑って答える。 「ハッ、何言ってやがんだリオ。お前までメイファと同じようなこと──」 「だってさ、兄ちゃん──だったら、なんで兄ちゃんは泣いてるんだよ」 そりゃあ、リオ。 お前らと別れるのも、嘘の暴言でお前らの心を傷つけるのも、悲しくて苦しいからだよ。 ......ああもう。 ホント、嘘が下手だな俺。 「はぁー......。でもよ、リオ。卒業だってのは本当だぞ。お前らはもう自分たちの足で、自分たちの力で生きていける。だったらもう、『先生』はいらないだろ」 「んなことねぇよ! 兄ちゃん、オレたちを世界最強の勇者にしてくれるって言っただろ! あれは嘘だったのかよ! オレたちまだ、世界最強になんて全然なってないだろ!」 まあ、言った。 確かに言った。 自分の目の前で、自分を追い抜いていく教え子たちを見ちまったら、俺は良い教師でいられる自信がねぇんだよ。 そのことに気付いちまったんだよ。 教え子たちに嫉妬狂いする醜い俺の姿なんか、こいつらに見せたくない。 綺麗に別れられるうちに、別れておきたい。 それでいつか、噂に聞くなり、伝え聞くなりすればいい。 俺の知らないどこかで世界最強の存在となった、最強の美少女勇者三姉妹の だから──だからさ。 分かってくれよ。 どうして分かってくれないんだよ。 などと思っていたところに、突然だ。 俺が予想だにしていなかった、唐突な声が聞こえてきた。 「ずいぶんと話が拗れているようですね、ブレット先生」 「こんな夜中に教え子たちとランデブーとは。ブレット先生がどんどんふしだらになっていってお姉さんは悲しいよ。よよよ......」 競技場のグラウンド突如現れていたのは、二人の女性教師だった。 片や俺の元恩師、片や俺の元同僚だ。 「レオノーラ先生に、アルマ......どうしてここに」 俺のつぶやきに、レオノーラ先生とアルマは事も無げに答える。 「同じ宿に泊まっていたら、こんな夜更けにあなたが教え子たちを連れて出ていくのを見かけたものだから、面白そうなのでアルマ先生と一緒に見学にきました」 「あと、ブレット先生が犯罪行為とかに及ばないように見張っておかないと、みたいな?」 俺のプライバシーはどこへ。 考えようによってはストーカー案件なんじゃないでしょうか。 が、そんな俺の内心の嘆きが顧みられることはなく。 レオノーラ先生は、次にはこんなことを言い出した。 「話はだいたい聞いていました。ようは、ブレット先生は生徒たちを卒業させたくて卒業試験をやりたい、生徒たちのほうはブレット先生にもっと自分たちと一緒にいてほしいと、そういうことですよね?」 「えっと......ま、まあ、そうなるんですかね?」 なんかおかしい気もするが、でも今の話の流れを要約すると確かにそうなる。 現にリオ、イリス、メイファの三人もこくこくと首を縦に振っていた。 そしてレオノーラ先生は、人差し指を立ててこんなことを言ったのだ。 「だったら話は簡単でしょう。ブレット先生は生徒たちの卒業を賭けて、生徒たちはブレット先生の私物化──じゃなかった、ブレット先生ともうしばらく一緒にいる権利を賭けて、卒業試験を行えばいいんです。自分の望みは自分の力で勝ち取りましょう。さあ、お互いに勇者らしく、正々堂々と戦いなさい」 何を言われたのか、スッと頭に入ってこなかった。 えっと、つまり、どういうことだ......? 要するに── この卒業試験で俺とリオ、イリス、メイファの三人組とが戦って。 俺が勝ったら、三人が卒業。 三人が勝ったら、俺は三人の教師続行ってことか? 待ってそれ、何かおかしくね? 三人が強くなったところを見せてもらうんだから、三人が俺を負かして綺麗に卒業ってなる予定だったんだが......。 しかし、レオノーラ先生の提案を聞いたリオたち三人は、さっきまでにない目の輝きでやる気を見せ始め、準備運動を始めていた。 ......あ、うん。 あれはガチで俺を潰しに来る構えだ。 ちなみに我が天使イリスまで、正当な権利をもらいましたとばかりにやる気満々でストレッチとかしていた。 ......はぁ。 分かったよ。 「......ふ、ふふふふふ......いいぜ、やったろうじゃねぇか」 俺は不敵に笑ってみせる。 教え子たちとの戦いに、本気で挑むことに決めていた。 元々の腹積もりでは、卒業試験だから最後は綺麗に負けてやるつもりだったが、こうなったら話は別だ。 あいつら全力でぶっ潰して、綺麗に卒業させてやる。 それで全部、丸く収まるんだ。 大人げないと言われようが何だろうが知ったことか。 ──そんなわけで、レオノーラ先生とアルマの立会いのもと、俺と三人の教え子たちとの夜のガチバトルが始まることになったのだった。

52 Lesson 52 "It's a graduation exam. Take me down for three. The rules go hand in hand with the tournament, and when the magic kit sounds the knockout alarm, you're out." The three of you who heard my words stood with a pompous face. Ten seconds have passed. Twenty seconds have passed. Thirty seconds have passed. Eventually, however, the three of them heard back in a hurry. "Is...? Hey, wait a minute, bro!? What's a graduation exam!? "Let, Doctor!? What do you mean...? Graduation......? "... brother, that's just me, too, I can't keep up with understanding.... I don't understand what your brother is saying.... Yeah, I don't want to understand" They all seem surprised, but around Mayfa they seemed to know what I was trying to say. - So this is my last job. It's been roughly a year since I met the three of them. Rio grew one year old and turned fifteen, as did Illis and Mayfa. I decided to "graduate" the three of them. It's not like all three of us don't know what grade we're in, and it's not like a teacher usually decides whether to graduate or not. The College of the Brave is originally triennial. But only the three of them came in unusually fast, and there was an environment where I should have seen only the three of them, and in those three years I had roughly run out of things to teach them. The educational content of the College of the Brave is mostly practical, so if you can do it now, you'll move on. That you don't need to continue training your stare back to the kid who can stare back. Under that circumstance, and if you don't know the three grades, it's like there's no system as a college in that village's College of the Brave. Then it's a matter of substance, of me being the only teacher of these guys, to decide what to do. I smile at the three of them, and I tell them, "I think maybe I can make a critical smile." "Hey, you guys can live long enough on your own if you hunter the Demon King, right? That's why I graduated. - So, you guys, at the end of the day, show me how strong you are. I thought you were thankful for me." I hold the wooden sword in my right hand, while my left hand takes a piece of gold out of my pocket. Gold coins are meant to be thrown as a sign of the start of the game. But it was the three godchildren who panicked. "Why, brother...! You hated us...!? "Wait, Doctor! Please, I'll do whatever it takes to graduate. "... brother, wait, wait...!... That's crazy!... Why, why do you say that all of a sudden...? Girls suing like abandoned kittens. "Because if it meant that my left transition was Cyrus' tyranny, I might be able to go back to King's Capital's College of the Brave. Otherwise, your salary will be better than it is now. You can say goodbye from a small village on the border." You lie like that, you play false evil. I don't know why I'm saying this myself anymore. I have to break up with the three of them. I have to teach away, and these guys have to teach away. I was caught up in such a strong obsessive attitude. Living with these three people is about as much fun as it sounds, and it's going to fit in after a long time. That's why we have to strongly reject these guys here. And you got my word on par? First of all, Illis turned out to be like he was attacked by strong shock and despair. Illis sneers and says as he casts a shadow on his expression. "... OK, Doctor....... Rio, Mayfa. The teacher has a convenience for you. We mustn't disturb it." "Iris! So, but yes! You're breaking up with your brother, is that all right? "Ha!? That can't be good!!! But you can't help it! We can't do this if we're selfish! If you are thankful for your teacher, you have to think about your teacher the most!!! The voice of a screaming squirrel. Pounded on the ground, tears were spilling. Rio goes out of line with that. Then in frustration, step on the estate waste. The fact that I don't know where the emotions are directed. Mayfa, on the other hand, stares straight at me. "... Shh.... Your brother is not the one to say that.... your brother is lying, absolutely!... If I'm talking about your brother, I know... I know! Why are you lying like that, brother! I don't get it! I don't get what your brother is saying!!! Mayfa's never screaming. Words are contradictions. Mayfa, staring at me, was also crying with her eyes full. ... Well, it's sharp. That's right, I have to say Mayfa. But I push through lies. "Huh? Do you know me? What are you talking about, you cancer kid? I was just doing it for you guys." "... lying!... Lying, lying, lying! That's not your brother!!! "Looks like your eyes were cloudy. I'm sorry, Barca." Why are you saying this to me? I have to break up with these guys. Whatever. That's all I have in mind, and all the words that come out hurt my godchildren. Because if you hate me, we can break up. Such a frivolous thought fills my head and I can't think of anything more. But then. Rio said. "... brother, you're a lousy liar" I wipe my eyes with a sleeve of clothes and then I laugh with my nose and answer. "Ha, what are you talking about, Rio? The same thing you did with Mayfa." "Because if you're a brother, why are you crying?" Well, then, Rio. Breaking up with you guys and breaking your hearts with lying ramblings is because it's sad and painful. ... Ahhh. Really, you're a lousy liar, me. "Ha... But, Rio. It's true that you graduated. You guys are already on our own feet, and we can live on our own. Then you don't need 'Doctor' anymore." "It's nothing! Brother, I told you you'd make us the strongest braves in the world! That was a lie! We haven't become the strongest in the world yet! Well, I said. I did say it. I'm not sure I can be a good teacher if I see the teachers going through me right in front of me. I noticed that. I don't want these guys to see me ugly and crazy about my godchildren. While we can split up beautifully, I want to keep breaking up. So one day, when you hear rumors, you just have to tell them. The legend (legend) and hero Tan (saga) of the three mightiest brave girls who have become the most powerful in the world somewhere I don't know. So... that's why. You have to understand. How can you not understand? Where I thought so, all of a sudden. I didn't make it my prediction, I heard a sudden voice. "You seem a lot more obstinate, Dr. Brett" "What are the godchildren and the Landeboo at night like this. Your sister is sad that Dr. Brett is getting more and more mundane. It's..." Grounds in the arena suddenly appeared were two female teachers. One is my former mentor, one is my former colleague. "Tell Dr. Leonora, Alma... why are you here" To my crush, Dr. Leonora and Alma answer without incident. "When I was staying at the same inn, I came on a tour with Dr. Alma because it seemed interesting because I saw you taking your godchildren out this late at night" "And if we don't keep an eye on Dr. Brett to keep him out of criminal activity or something, like that? Where's my privacy going? Isn't it a stalking project, depending on what you think? but my inner mourning never sees me like that. Dr. Leonora said this next time. "I was generally listening. Finally, Dr. Brett wants the students to graduate and do their graduation exams, and the students want Dr. Brett to be more with them, right? "Uh... well, does that happen? Something's wrong, too, but in summarising the current course of the story, it does. Now three men, Rio, Iris and Mayfa, were also shaking their heads vertically. And Dr. Leonora said this with her index finger up. "Then the story will be easy. Dr. Brett bet the students graduation, the students didn't privatize Dr. Brett, they just have to bet Dr. Brett and his right to be with him for a while longer and take the graduation exam. Win what you want on your own. Come on, fight each other bravely and squarely." It didn't come to my mind sooo sooo much about what they said. Uh, I mean, what do you mean...? In short... Me and Rio, Illis and Mayfa are fighting this graduation exam. If I win, the three of us graduate. If the three of you win, do you mean I'll continue with the three teachers? Wait, is something wrong with that? Let me see where the three of them got stronger, so the three of them were going to beat me and graduate beautifully... However, the three Rio's who had heard Dr. Leonora's suggestion had begun to show motivation with an unprecedented glow of eyes and had begun a preparatory movement. ... Oh, yeah. That's a bee to come and crush me. By the way, even my angel, Iris, was motivated and stretched or something just to say that he had a legitimate right. ...... ha. I get it. "... hehe, hehe... okay, let's do it" I make you laugh invincibly. I had decided to take a serious challenge in the fight against my godchildren. Originally in my stomach, I was going to beat him beautifully at the end because it was a graduation exam, except when this happens. I'll smash them with all I can and let them graduate beautifully. So it all fits in a circle. I don't know what they say about adulthood, but what do you know? - - That's why, in the presence of Dr. Leonora and Alma, an evening battle between me and my three godchildren was to begin.

第2話 俺は理事長室の出口の前で立ち止まり、サイラスのほうへと振り返る。 「──なあサイラスさんよ、勇者学院の教師ってのは勇者を育てるのが仕事だろ。俺はどこに左遷されようが、そこで出会った勇者の卵を全力で育てる。それが俺の矜持だ。──で、あんたはいつまでそうやって、権力なんつーくだらねぇモノにしがみついてんだ? あんたのやり方じゃ、勇者は育たないぜ」 そう言い捨てて、俺は今度こそ理事長室から去ろうとした。 だが、そのとき── ──ドゴォンッ! 轟音がした。 何事かと振り向いてみれば、サイラスがその拳を、理事長のデスクの上に振り下ろしていた。 サイラスの勇者の力をまとった拳が、木製のデスクの天板をへし割っている。 後ろの男子生徒たちは、そのサイラスの豹変ぶりに驚き、怯えていた。 額に青筋を浮かべたサイラスが、俺を憎々しげに睨みつけて言った。 「......いいだろうブレットくん。キミの教育のあり方こそが正しいとあくまで言い張るのであれば、それを証明してみたまえ」 サイラスも勇者協会の役員なんてやっている以上、昔は勇者学院の教師だったはず。 そのわずかに残っていたプライドに、ヒビが入ったのかもしれない。 しかし── 「証明って言われてもな」 俺はそうつぶやく。 証明ができるものならしてやりたいが、事実上不可能だろうと思ったからだ。 だが俺のつぶやきを聞いたサイラスは、怒りの表情の中にも、ニヤリした笑みを浮かべる。 「ふん、逃げは打たせんぞ。一年後に最強新人勇者決定戦がこの王都で開かれるのは知っているな? それにキミの教え子を参戦させたまえ。くくく......ろくな教育設備もない場でキミがどこまでやれるか、楽しみにさせてもらうよ」 そう言ってサイラスは、小憎らしい顔でくつくつと笑った。 俺はそれを聞いて、なるほどと思った。 つまりはこういうことだ。 一年後に王都で開かれる最強新人勇者決定戦に、俺の教え子を出場させる。 それで俺の教え子が王都の生徒たちに勝つようなら、俺の教師としての実力を認めざるを得ない、というわけだ。 サイラスの出した提案にしてはストレートで分かりやすく、俺はそれなりに気に入っていた。 とは言え、こっちはまだ育てるべき新たな教え子に会ってすらいないわけで。 またそれを抜きにしてもいろいろとハンデがあって、つまりは圧倒的に俺に不利な勝負条件であり、だからこそサイラスは自信満々で提示してきたんだろう。 しかしそこでケチをつけても、勝負から逃げる腰抜けだの何だのと罵られるだけなのは目に見えていた。 だったら──と思い、俺はサイラスに問いかけた。 「ちなみに、その勝負に勝ったら、俺に何かいいことでもあるんですかね?」 「ふん......そうだな。万が一、キミの教え子が優勝するようなことでもあれば、キミの王都復帰だろうが何だろうが、好きに望みを言いたまえ。......ただし、私に向かってあれだけの侮辱をしたのだ。結果を出せなかったときには、それなりの覚悟をしてもらうぞ」 釣れた。 圧倒的にこっちに不利な条件での勝負だが、だからこそサイラスも慢心の言葉を吐いたのだろう。 ちなみに、仮にサイラスがこの約束をしらばっくれたとしても、最強新人勇者決定戦で俺の教え子が好成績を残せば、その結果は衆目のもとに晒されることになる。 最強新人勇者決定戦はオープンな大会であり、年に一度王都で開かれる祭りのようなものだ。 その場で結果を出せば、サイラスとて好き勝手に事実を動かすことはできなくなるだろう。 「分かりました。そっちこそ、今自分が言った言葉をよーく覚えておいてください。──それじゃ、また一年後に」 俺はそうサイラスに啖呵を切って、今度こそ理事長室から立ち去った。 そんなことがあった翌日── つまりは今日。 というか、つい先ほどのことだ。 寮生活で荷物も少なかった俺は、昨日のうちに必要な準備を終え、さっそく王都を出立する乗り合い馬車の停留場にいたのだが。 そこまで見送りに来た同僚の女性教師アルマは、呆れたという様子で腰に手を当てていた。 「それでサイラスさんに、喧嘩を吹っ掛けちゃったわけ? 相変わらずとんでもないことするね、ブレット先生は」 アルマはスタイルも抜群な、妙齢の女性教師だ。 朱色の髪はポニーテイルにまとめてあり、大きめの眼鏡もよく似合っている。 男子生徒どもの間ではファンクラブもあるらしいが、どちらかというと気安さが魅力のタイプと言える。 俺とは軽口を叩き合う仲だ。 俺はそんな同僚の女性教師に、言葉を返す。 「先に喧嘩を売ってきたのはあっちだ。一方的に殴られるだけってのは性に合わない」 「それで、勝算はあるの?」 「さてね。まだ教える生徒がどんなやつだかも分かってないからな。──ま、やれるだけやるさ」 俺が肩をすくめながらそう答えると、アルマは大きくため息をついた。 「はぁ、無鉄砲だなぁ......でもブレット先生だからしょうがないか。──とりあえず、何かあったら通話魔法具のあたしの連絡先に連絡ちょうだい。相談ぐらいは乗るから。こっちからも何かあったら連絡するね」 「おう、サンキュー」 そう言ったところで、乗合馬車が出立の時間となった。 俺は馬車のほうへと急ぎながら、アルマに手を振る。 「じゃあまたいずれな、アルマ先生」 「うん。またね、ブレット先生。──あ、あと、もう一つだけ言っていい?」 「なんだよ」 「バーカ。こっちの気持ちも少しは考えてよね」 「......はぁ? なんだよそれ。こっちは人生の一大事だぞ。いちいち同僚の教師の気持ちまで考えていられるか」 俺がそう答えると、アルマは可愛らしく「べーっ」と舌を出した。 俺はなんのこっちゃと思いながら、乗合馬車に搭乗した。 ──と、そんなことがあっての今だった。 しばらく前に王都を出た馬車は、今は農村地帯も抜け、深い森の中へと進もうとしている。 「......はぁ。まったく、何のための勇者学院だか」 乗合馬車の中で、俺は再びボヤいていた。 良くないなとは思いつつも、少しは吐き出さないとやっていられないとも思う。 勇者学院は、何のために存在するのか。 そんなものは学院創設の言葉を見れば真っ先に書いてあるのだが、今や有名無実に成り下がってしまっているのではないかとすら錯覚する。 勇者学院の意義── それを語るには、「勇者」と「魔王」との関係から、あらためて確認しなおす必要があるだろう。 「勇者」と「魔王」の戦いは、もう何百年も前からずっと続いているらしい。 「魔王」というのは、モンスターが突然変異して生まれるものだ。 魔王となったモンスターは配下のモンスターたちを率いて人里を襲い、人類を滅ぼそうとする。 一方で、そうした魔王に対抗する力を持つのが俺たち──すなわち「勇者」だ。 勇者とは、平たく言えば「常人にない超常的な力を持った人々」ということになる。 勇者は人類の中に、数十人に一人程度の割合で生まれると言われている。 勇者でない普通の人間でも、ゴブリン程度のモンスターが相手なら戦えなくはない。 だが魔法を行使でき、超常的な身体能力を駆使して戦える勇者と比べると、一般人の戦闘能力は高が知れている。 武器を持った常人が数十人集まっても、素手の勇者一人に軽くあしらわれると言えば、勇者の実力のほどが伝わるだろうか。 だがそれも、十分な経験を積んだ歴戦の勇者であればの話だ。 未熟な勇者では、常人と大差ない程度の戦闘力しか持たない。 ちなみに魔王の側も、その強さは変異前のモンスターによって、あるいは個体によってピンキリだ。 例えばゴブリンが魔王になったゴブリンロードなどは、場合によっては未熟な勇者でも倒せるぐらいの相手だ。 しかしドラゴンが魔王になったドラゴンロードともなれば、ベテランの勇者が束になっても勝てるかどうかという災厄級のバケモノになる。 まあそんなわけで、魔王と勇者の──モンスターと人類の戦いは、世界各地で日々続いている。 戦いはいつも「最後には」人類の側が勝ち、魔王は討ち取られる。 またそうでなければ、今頃とっくに人類は滅亡しているわけだが── その「最後には」というのの前段階で命を落とす勇者の存在は、いつの世も尽きることはない。 未熟な勇者が未熟なままに強力な魔王に挑み、返り討ちに遭う。 そういった悲劇を極力減らすため、三百年ほど前に設立されたのが「勇者学院」だ。 勇者学院は、人類の希望である勇者たちを大事に、安全に、かつ効率的に育成するために生まれたのだ。 俺はその理念に賛同し、未熟な勇者たちに対し、俺にできうる限りの教育を施しているつもりだ。 俺は外の景色を見ながら、再びボヤく。 勇者学院の創設から長い年月がたった現代では、その理念を蔑ろにするサイラスのようなやつが幅を利かせるような、本末転倒なことも起こっている。 人間が運営する組織である以上は、どうしたって腐敗は避けられないってことなんだろうが── まあ、歯痒いが、それは俺にどうこうできる問題でもない。 俺にできるのは、俺が担当する教え子たちを精一杯に育てることだけだし、それが俺の為すべき仕事だと思っている。 だから俺は、これから向かう勤務地で教え子となる勇者の卵たちに、想いを馳せていた。 それがどんなやつらで、どうやって教えるのが最も望ましいか。 それをパターン分けして頭の中でシミュレートしつつ──苦笑する。 「......まだ本人らと出会ってもいないのに、何やってんだかね」 まったく、我ながら教育バカもいいところだなと思った。 森の中へと入った馬車は、ガタガタと揺れながらも、つつがなく進路を進んでいる。 王都を出てから、新たな勤務先である村に着くまでには一週間ほどがかかる。 しばらくは退屈だなと思っていたのだが── 王都を出立して三日目の夕刻に、事件は起こった。 俺が乗っていた乗合馬車が、その道中でモンスターに遭遇したのだ。

2 Number Two. I stop in front of the exit of the president's office and look back towards Cyrus. "- Hey Mr. Cyrus, it's your job to raise a brave man to be a teacher at the College of Braves. Wherever I am relocated, I will do my best to raise the eggs of the brave men I meet there. That's what I hold. - So, how long have you been doing that and clinging to things when you're in power? You don't grow brave the way you do." That's what I said, and now it's time for me to leave the president's office. But then... - - Dogowong! There was a roar. I turned around and Cyrus was swinging his fist down on the chairman's desk. A fist gathering the power of Cyrus' brave men is cracking the ceiling of a wooden desk. The boys students behind them were surprised and frightened by that Cyrus leopard freak. Cyrus, with a blue muscle on his forehead, said, staring at me hatefully. "... Fine, Brett. If you only insist that the way you educate is right, prove it." Cyrus should have been a teacher at the College of the Braves in the past, more than he did on the board of the Association of the Brave. In that slight remaining pride, a crack may have entered. But... "Prove it." I twinkle like that. Because I wanted to do it if I could prove it, but I thought it would be virtually impossible. But Cyrus, hearing my twinkle, smiles with a niggling grin, even in his angry expression. "Well, I'm not letting you hit me on the run. You know that in a year's time, the most powerful new brave decision will be held in this king's capital, right? And get your godson into the war. Kukuku... I'll be looking forward to seeing how far you can go in a place where you don't have all kinds of educational facilities" Saying so, Cyrus laughed with a loathsome face. When I heard that, I thought it would be. I mean, here's the thing. Let my godson compete in the strongest newcomer brave decision in Wang Du in a year. So if my godson is going to beat the students of Wang Du, I have to acknowledge my prowess as a teacher. It was straightforward and easy to understand for Cyrus' suggestion, and I liked it a lot. That said, this one hasn't even met a new godchild to raise yet. There's a lot of handouts even without it again, which means it's an overwhelmingly unfavourable playing field against me, which is why Cyrus has confidently presented it. But even with his ass there, it was only visible that he would be scolded for being a hipster or something fleeing the battle. Then... I asked Cyrus. "By the way, if you win that battle, is it also something good for me? "Hmm... right. In the unlikely event that your godson wins, you will return to the King's capital, but say what you want.... Except you did all that insulting to me. When you fail to deliver results, you'll be quite prepared." I caught it. Overwhelmingly a battle on unfavourable terms over here, but I guess that's why Cyrus also vomited the words of his chronic heart. By the way, even if Cyrus kept this promise, if my godson did well in the strongest newcomer brave decision, the result would be exposed to the public. The Strongest Rookie Brave Fight is an open tournament, like a festival held once a year in King's Capital. If you get results on the spot, you won't be able to move facts as you please with Cyrus. "Okay. Remember what you just said. - See you in a year." I hung up on Cyrus, and now it's time I walked out of the chairman's office. The day after that... I mean today. Or earlier. Having lived in the dormitory and had little luggage, I was in a boarding carriage stop leaving Wangdu just yesterday after finishing the necessary preparations. Alma, a coworker female teacher who came to drop her off that far, had her hands on her hips with the appearance of being frightened. "So, Mr. Cyrus, did you blow the fight? You're gonna do a hell of a job, Dr. Brett." Alma is an elderly female teacher with excellent style. The vermilion hair is clustered in ponytail and the larger glasses look great. There seems to be a fan club among the boys, but one can say that insecurity is the type of attraction. Me and I are the ones who slap each other lightly. I give words back to my colleague's female teacher. "It was that way that I sold the fight first. Being hit unilaterally doesn't suit your sexuality." "So, do you have a chance? "Well. I don't even know what kind of students I teach yet. - I'll do what I can." Alma sighed loudly when I answered that as I shrugged my shoulders. "Ha, it's iron free...... but I'm Dr. Brett, so can't you help it? - - In the meantime, if anything happens, please contact my contact information on the call magic device. I'll talk to you about it. I'll let you know if anything happens from here." "Ooh, thank you." That's what I said, and the boarding carriage was time to leave. I wave to Alma as I rush to the carriage. See you soon, Dr. Alma. "Yeah. See you later, Dr. Brett. - Oh, and can I just say one more thing? "What the fuck?" "Idiot. Think about how we feel." "... Huh? What the hell is that? This is a big part of my life. Can you even think about the feelings of your colleague's teacher?" When I answered that, Alma uttered a cute "beh" tongue. I got in the carriage, wondering what the hell was going on. - And it was now after that. The carriage, which left the Wang capital some time ago, is now also about to escape the rural areas and move on into the deep woods. "... ha. Totally, what a college of brave men for." In the carriage, I was bogged down again. While I don't think it's a good idea, I don't think I can do it without spitting it out a little bit. What does the College of the Brave exist for? Such a thing is written first if you look at the words of the creation of the College, but I even imagine that it has now become famously innocent. The significance of the College of the Brave... To speak of it, we will need to reconfirm it once again, because of its relationship with the "brave" and the "demon king". It seems the battle between the "brave" and the "demon king" has been going on for hundreds of years now. "Demon King" is what monsters are born with mutations. The monsters who became demon kings lead the monsters under their command to attack mankind and try to destroy mankind. On the other hand, it is we - the "brave men" - who have the power against such demon kings. A brave man would mean, to put it bluntly, "people with paranormal powers that are not in the ordinary". It is said that brave men are born in the midst of mankind in a proportion of about one in dozens. Even normal people who are not brave can't fight if monsters to the extent of goblins are opponents. But compared to brave men who can exercise magic and fight using paranormal physical abilities, the combat ability of ordinary people is known to be high. If we say that even if dozens of ordinary men with weapons gather together, they will be lightly embellished by one brave man with bare hands, the more powerful the brave will be? But that is also true if you are a warring brave man with enough experience. In immature brave men, they only have a degree of combat power that is not significantly different from that of a regular person. The Demon King's side, by the way, is also pinky in its strength by pre-mutation monsters or by individuals. For example, Goblin Road, where Goblins have become Demon Kings, is enough to defeat even immature braves in some cases. But if the dragon also becomes the Dragon Lord who became the Demon King, it becomes a disastrous bucket of things about whether a veteran brave man can win even if he becomes a bunch. That's why the battle between the demon king and the brave - monsters and mankind - continues every day around the world. The battle is always won "at the end of the day" by the human side, and the Demon King is taken over. Otherwise, mankind would be doomed by now. The existence of a brave man who loses his life in the previous phase of that "at the end of the day" will never be exhausted. An immature brave man challenges a powerful demon king while immature, and falls into retribution. To minimize such tragedies, the "College of the Brave" was founded about three hundred years ago. The College of the Brave was born to nurture the brave men, the hope of humanity, with care, safety and efficiency. I agree with that philosophy and intend to educate the immature braves as much as I can. I get bogged down again, watching the view outside. In modern times, where only a few years have elapsed since the founding of the College of the Brave, there have also been some downfall events, such as the Cyrus-like one that scorns its philosophy to the advantage of its breadth. I don't know what's more inevitable than being a human-run organization, but... Well, it's an itch, but it's not a question of how I can do it. All I can do is raise all the godchildren I'm in charge of, and I think that's what I'm supposed to do. That's why I had my thoughts on the eggs of the brave men who would be my godchildren in the workplace I was headed to. What kind of them is that and how is it most desirable to teach them? I patterned it and simulated it in my head, and I laughed. "... what are you doing if you haven't even met them yet?" Damn, I thought educational idiots were a good place. The carriage into the woods, rattling and shaking, is nevertheless on a connected path. It will take about a week from leaving Wang Capital to reach the village, which is your new place of work. I thought you were bored for a while. On the evening of the third day after leaving Wang Capital, the incident occurred. The riding wagon I was riding ran into a monster on the road.

第12話 「いやぁ、ひどい目に遭った」 俺は詰所からようやく解放されると、シャバの空気を思いきり吸い込む。 空を見上げれば、夕焼け色が暗闇へと染まりつつある時刻だ。 そろそろ村に帰らないとな。 しかし、そんなもうお家に帰らなければならない頃合いだというのに。 その俺から少し離れた場所では、一人の少女が猛然と俺に抗議をしていた。 「ひどい目に遭った、じゃねぇよ! ひどい目に遭ったのはオレ! 兄ちゃんは加害者だ!」 「まあまあ、そう言うなってリオ。ほらほらこっち来い。抱っこしてやろう」 「誰が行くかバカ! 兄ちゃんのバカ! ロリコン!」 バカって二回言われた上に、ロリコンとまで言われた。 メイファにはさんざん言われていたが、ついにリオにまでロリコン認定されてしまった。 「いや、言い訳をさせてほしい。決してやましい気持ちがあったわけじゃないんだ。ただな、リオの抱き心地があまりに良すぎてな。もうリオを抱いていないと落ち着かないんだ」 そう──腕の中にリオを抱いている状態が、あまりにもしっくりきすぎてしまったのだ。 あの状態こそが俺の完成系。 否、俺とリオとの合体完成系なのだと確信する。 だがそんなことを考えていた俺に、メイファのジト目が突き刺さる。 「......世間では、それをやましい気持ちと呼ぶし、ロリコンと評価する。......お兄さん、そろそろ自重しないと本当にヤバい。イリスが本気で怯えてる」 「えっ」 見ればイリスは、小動物のようにリオの後ろに隠れ、怯えたような眼差しで俺を見ていた。 その前では、リオが「ふしゃああああっ!」と猫のようになり、こちらを威嚇している。 まずいぞ。 これでは最初に会ったときの状態に逆戻りではないか。 むぅ......リオの抱き心地は名残惜しいが、仕方ない。 「──とまあ、そういう冗談はさておき、だ」 「......冗談であるようには、見えなかった」 すかさずツッコミを入れてくるメイファは全力でスルーする。 「村に帰る前に、あともう何件か寄っていきたい店があるんだ。三人とも付き合ってくれ」 「......うん。兄ちゃんが抱きついてこないなら、いいけど」 リオが口を尖らせて言うと、その後ろのイリスもこくこくとうなずく。 俺はものすごく信用を失っていた。 ──それはともあれ、俺は三人の教え子とともに、次の店へと向かった。 向かった先は、武器屋だ。 そろそろ店じまいの準備をしているところに、俺は三人の少女を連れて入っていく。 「いらっしゃい! 兄さん、何をお探しで? 可愛い妹さんたちへのプレゼントには、うちの商品はちょっと似合わねぇから──やっぱ、兄さんの剣の新調ってとこかい?」 陽気な店主が店じまいの手を止めつつ、俺が腰に佩いた剣を見てそう聞いてくる。 なかなか目端の利く武器屋の店主のようだが── 「いや、可愛い教え子たちへのプレゼントのほうで正解だ。剣と弓矢と槍、それぞれ小柄な勇者でも扱いやすいものを、一つずつ見繕ってくれ」 「......驚いた。そのお嬢ちゃんたち、三人とも勇者かい? 教え子ってことは、兄さんが勇者学院の先生?」 「ああ、そのとお──」 「......ううん、違う。......このお兄さんは、ただのロリコン。......プレゼントで恩を売って、あとでボクたちに良からぬことをしよ──むががっ」 「よしメイファ、少し黙ろうか」 俺はメイファを背後から確保し、その口を手でふさいだ。 普段はまだいいが、人前では絶対にやめてほしいなそういうの。 そんなこんなで、あやうく再度通報されそうになりながらも、俺はどうにか武器の購入に成功した。 武器屋を出てひと気の少ない広場に出ると、買ったものを三人にそれぞれ一つずつ渡していく。 リオにはやや短めの剣──ショートソードを。 イリスには、腰から頭のてっぺんぐらいまでの大きさの弓──ショートボウと、それに使う矢を。 メイファには、身の丈ぐらいの長さの槍──ショートスピアを、それぞれ手渡した。 「おお......すげぇ、ホンモノの剣だ......」 リオは剣を鞘から少しだけ抜き、その刃が持つ銀色の輝きに目を奪われていた。 一方では、イリスとメイファもまた、自分に与えられた武器の手触りや重量感などを確かめているようだった。 「なぁ兄ちゃん、これ、オレがもらっていいの......?」 リオが目を輝かせて、そう聞いてくる。 「おう。俺からのもう一つのプレゼントだ。それでさっきのことは大目に見てくれたり、何ならまた抱っこさせてくれてもいいぞ」 「や、それとこれとは別だけど......でも、ありがと。すげー嬉しい」 リオはそう言いつつ、シャリッと音を立てて、剣を鞘から引き抜いた。 そして誰もいない虚空に向かって構えて── ──ヒュンッ! 剣を振った。 さらに──ヒュ、ヒュンッ! 初めて手にしたであろう剣を、おそろしく鋭い身のこなしとともに振っていく。 それからリオは、綺麗な動作で剣を鞘に納め、俺のほうへと振り向いた。 「──なんか、すっげぇ手に馴染む。初めて持ったのに、一番いい使い方が分かるみたいだ......って、兄ちゃん、どうかした? ぼーっとして」 「......ん? あ、ああ、いや......」 俺は驚いて、呆然としていた。 リオの剣スキルの才能がSランクというのは見たが、それがどういうことを意味するのかは、実はよく分かっていなかったのかもしれない。 あんなの、剣を初めて持った勇者の動きじゃない。 こんな幼い少女が、剣を持った瞬間から、歴戦の戦士のような身のこなしをする。 ──おいおい。 こんなの、反則もいいとこだろ。 またイリスとメイファに視線を向ければ── イリスは何となく撃ったという様子の弓矢の一射を、十歩ほど離れた場所にある木の幹にいきなり命中させていたし。 メイファはその手の槍をぶんぶんと、まるで体の一部のようにぶん回して遊んでいた。 ......まあ、この二人ぐらいの使い手ならまだ見たことがあるし、俺も剣スキルの才能はAランクだったから分かる範囲だが。 リオの剣──あれは半端なものじゃない。 もちろんまだ訓練を積んでいないから、それなり程度のものではあるのだが。 あいつが育ったら、一体どこまでいくんだ......? 俺はごくりと唾をのみ込む。 震えが止まらない。 こんな怪物を、俺の手で育てるのか。 ははっ、ヤバい。 どうすんだよこれ。 「......リオ」 「な、なんだよ兄ちゃん。何度言われたって、抱きつくのはもうダメだからな!」 「お、おう。そうか」 この才能を見てから、これまでと変わらない反応をされると、なんだか嬉しくなってしまう。 あー、なでたい。 リオの頭をなでたい。 ダメか。 欲望丸出しで近付いたら、猫みたいに威嚇されるもんな。 ちぇっ。

12 Episode 12 "Hey, I got a terrible look" When I'm finally free from the clogging, I breathe in Shabba's air. If you look up into the sky, the sunset is dying into the dark. It's time to go back to the village. But you said it was a good time when you already had to go home like that. A little further from me, a girl was suddenly protesting against me. "I've had a terrible time, you know! I'm the one who got the worst of it! Your brother is the perpetrator! "Well, don't say that, Rio. Here, here, come here. Let's hold him." "Who's going, idiot! Your brother's an idiot! Loricon!" After being told twice that I was an idiot, I was even told that I was a lollicon. Mayfa had told me a lot, but I finally got Loricon certified to Rio. "No, I want you to let me make an excuse. I never felt bad about it. It's just that Rio feels too comfortable hugging you. If I don't hold Rio anymore, I won't be able to relax." Yes - holding Rio in my arm made it too tight. That state is my complete system. No, I'm pretty sure it's me and Rio. But I was thinking about it, and Mayfa's jito eyes pierce me. "... In the world, we call that a disgusting feeling, and we rate it Loricon.... Brother, it's time to weigh yourself down. It really sucks. Illis is really scared." "Eh." If you look, Iris was hiding behind Rio like a small animal, looking at me with a frightened look. Before that, Rio said, "Huh!" and he's like a cat, intimidating this one. That's not good. Isn't this going back to the state we were in when we first met? Mmm...... I regret Rio's comfort in holding him, but I can't help it. "Well, not to mention jokes like that." "... as if it were a joke, it didn't look" Mayfa makes every effort to get the scratch through. "Before I go back to the village, I have a few more shops I'd like to drop by. I need all three of you to hang out." "... yeah. If your brother's not gonna hug you, fine." When Rio pointed his mouth and said, the iris behind it also nodded coddly. I was so discredited. - - Whatever that was, I went to the next store with my three godchildren. On our way, we're at the weapons store. It's time to get ready for the store, and I'm taking the three girls in. "Welcome! Brother, what are you looking for? Because our products don't look good as a gift for my lovely sisters. - So, what's your new sword? A cheerful shopkeeper stops the shopkeeper while he sees the sword I put on his hip and asks me that. Sounds like a pretty good arms dealer to me. "No, you're more right about the gifts for the cute godchildren. Look at the swords, bows, arrows, and spears, each one easy to handle by the little brave." "... surprised. Are all three of those ladies brave? You mean your brother's a teacher at the College of the Brave? "Oh, and..." "... yeah, no.... This brother is just a lollicon. ... sell thanks with a gift and do something bad to us later - swoop." "All right, Mayfa, shall we shut up for a second?" I secured Mayfa from behind and blocked her mouth with my hands. Usually not yet, but I would never want you to stop in public. That's what I mean. Even though I was about to be reported again, I managed to successfully purchase a weapon. When I leave the weapons store and go out to one less concerned square, I give each of the three of them what I bought. Give Rio a slightly shorter sword - a short sword. For Illis, a bow about the size of a waist to the top of his head - a shortbow and an arrow to use for it. Mayfa was handed spears about the length of her body - short spears. "Oh... wow, that's a real sword..." Rio had pulled his sword just a little out of his sheath and was blinded by the silver glow that its blade held. On the other hand, Iris and Mayfa also seemed to ascertain the touch and weight of the weapon given to them. "Hey brother, can I have this...? Rio shines his eyes, and that's what he asks. "Whoa. Here's another gift from me. So you can take a big look at what you just did, or you can give me another hug if you want." "Ya, apart from that and this...... but thanks. Wow, I'm glad." While Rio said so, he made a sharp noise and pulled his sword out of his sheath. And there's no one standing against the void. - Humph! I waved my sword. Plus - Huh, Huh! Shake the sword that would have been in your hands for the first time, along with a roughly sharp figure of body. Then Rio put his sword to his sheath in a beautiful motion and turned to me. "- Something's so familiar with my hands. I've never had one before and it looks like I know the best way to use it...... what's wrong, brother? Get confused." "... hmm? Oh, oh, no..." I was surprised and stunned. I saw that Rio's talent for sword skills was S-rank, but maybe he wasn't really sure what that meant. That's not the first brave man to have a sword. Such a young girl behaves like a warrior in the war, from the moment she holds the sword. - - Whoa. This is a good place to break the rules. If you turn your gaze to Iris and Mayfa again... Iris was suddenly hitting the trunk of a tree about ten steps away with a shot of a bow and arrow. Mayfa was playing with the spear in her hand, spun around as if it were part of her body. ... Well, I've still seen these two or so users, and I know as far as I can tell because my sword skills talent was A-rank. Rio's sword - that's not half of it. Of course, I haven't been trained yet, so it's quite a bit. When he grows up, how far the hell are we going...? I only spit on you. I can't stop trembling. Do you raise such a monster with my hands? Ha, yuck. What's wrong with this? "... Rio" "Hey, what's up, brother? How many times have I told you, you can't hug me anymore! "Ooh. Right." Seeing this talent and then having the same reaction as before makes me kind of happy. Uh, I want to. I want to see Rio's head. Can't you? If I come near you with a round of desire, you'll be intimidated like a cat. Huh.

第58話 「準備はいいですか? それでは、位置について──」 百メートル走のスタート地点。 俺はクラウチングスタートの姿勢でスタート位置につき、係員の人の声に耳を傾けていた。 第一コースの俺の隣、第二コースでは、リオが同様にスタートの姿勢をとっている。 その横顔に普段のユルさはなく、精悍で凛々しい少女の顔立ちが前を向いていた。 ぞくっとするぐらい綺麗だ。 その姿に見惚れそうになり、俺は慌てて前を向きなおす。 「よーい──」 しかしほんのりだが、リオの頬が赤く染まり、瞳もわずかに揺れ動いていたようにも見えた。 緊張していたのだろうか? いや、気のせいかもしれない。 そんなことよりも、これからのレースに専念しなければ。 俺は集中を高めていき── 「──スタート!」 係員の声と同時に、地面を蹴った。 勇者の闘気を脚力に集中させるイメージで、力強く、速く、地面をえぐるように駆けていく。 ──こうして集中しているときは、時間がゆっくりと流れ、半ば止まったようにすら感じる。 もちろんそれは錯覚なのだが、そんな主観的な時間感覚の中で俺は地面を蹴り、自らのスピードをぐんぐんと上げていく。 「あっ! やべっ!?」 そのとき後ろから、リオの声が聞こえてきた。 ん......? スタートが遅れたのか? 遅れはコンマ二秒ぐらいのものだが、集中力に長けたリオにしては珍しい。 何か余計なことでも考えていたのか。 だがそうだとしても、手を抜くつもりはない。 俺は全力で、百メートルを一気に駆け抜けた。 俺よりわずかに遅れて、リオもゴールしたようだった。 そしてリオは、ゴールを過ぎてしばらくしたところで立ち止まり、頭を抱えた。 「はぁっ、はぁっ......んああああ~っ! ああもう、兄ちゃんズルい!」 「えっ、何がだよ」 何だか分からないので聞き返すと、リオはつかつかと俺の目の前までやってきて、頬を真っ赤に染めた顔で俺を見上げてくる。 「兄ちゃん、スタート前にオレのこと見てただろ! 何なんだよあれ!? 気にしたらダメだダメだと思ってたら、いつの間にかスタートしてた! ──ああああ~、もう、くっそぉ~!」 「あっ、そういうことか......悪い。......いや、正直な話をするとな、リオの横顔が綺麗だなと思って、つい見惚れちまって......すまなかった」 「へっ......?」 俺がそう頭を下げると、顔を真っ赤にしたリオが頭からぽひゅーっと湯気を噴いた。 それからリオはうつむいて、どこか拗ねたような上目遣いで俺のことを見てくる。 「......あ、あのさ、兄ちゃん......それって、どういう意味で言ってんの......?」 「どういう意味......? いや、普通の意味だけど」 「普通の意味って、そんなの......。......はぁ~、まぁ兄ちゃんだし、しょうがないか」 何だかよくわからんが、リオに呆れられた。 それはさておき。 俺はリオに手を引かれて、ゴール地点の係員のところに二人の記録を聞きに行く。 係員さんは、半ば引きつったような笑いを浮かべつつ、俺たちの結果を教えてくれた。 「ブレットさん、一秒九六。リオさん、二秒二一です。二人ともすごいですね......今日のトップ記録ワンツー、それもダントツですよ」 だがそれを聞いたリオは、うがぁあああっと悶える。 「あーもう、悔しい~! オレだって二秒切れるときもあるのにぃ~!」 でもステータス検定の各測定はどれも一回ずつで、再測定は測定側にミスがあったときだけなんだよな......。 残念ながら、新たな公式測定は来年までおあずけになる。 「あー、リオ......俺のせいだったならマジですまん」 「うん、兄ちゃんのせいだ。......お詫びに、あとで抱っこして。そしたら許す」 「お、おう分かった。抱っこだな。でも、あとで人のいないところでな」 何だかよく分からないが、そんな話になった。 正直、最近急激に女子の色香を放ち始めたリオを抱っこするのは結構ヤバいと思うのだが、今回は俺が悪いみたいなのでしょうがない。 リオも別に他意はなくて、一年前と同じノリで言っているんだろうから、邪な気持ちを抱いてはダメなんだが......正直自信がないが、頑張って心を聖者にするしかない。 ちなみに俺から言質を取ったリオはというと、イリスとメイファのもとに行って、二人と何やら話をしていた。 「ずっる......。リオ、今の何あれ。ああいうのありなの?」 「別に最初からわざとやったわけじゃねぇよ。兄ちゃんのせいでタイムが遅くなったのはホントだぜ?」 「......だとしても、やり方がこすっからい。......お兄さんの弱みを利用して、欲望を満たすとか。......ボクも真似しよう」 「えーっ!? ......じゃ、じゃあ、私も......」 三人の教え子たちの俺を見る目がギンと光った気がして、背筋にぞくりと悪寒が走った。 な、なんだあの獲物を見るような目は......。 ちなみに、俺とリオの百メートル走を見ていた兄貴さんと小男はというと── 「に......二秒、だと......!? ていうか、なんだ今のあり得ない速さ......」 「あ、兄貴! さっきのがドーピングだったら、今度のやつは何なんすか!?」 「え、えっと......あれだ。ドーピングの、ドーピングだ。ダブルドーピングってやつだな」 「ダブルドーピング!? 初めて聞いたっす! 何か分かんないけど、めちゃくちゃヤバそうっすね!」 「ああ、めちゃくちゃヤバい。だがジョニー、俺はちょっと用事を思い出した。あいつらのことは気にしないで、俺たちはさっさとステータス検定を終わらせてしまおう」 「えっ......? あいつらのドーピングを暴いてやるんじゃないんすか兄貴!?」 「そうしたいのは山々だが、何しろ今の俺には時間がない。残念だが、今回は見逃してやるしなかいな」 「なんてこった......! チッ、あいつら、なんて悪運のいいやつらだ......!」 兄貴さんと小男はさっさと次の測定に向かってしまった。 それを見たリオたちは、 「あ、逃げた......」 「どうするリオ? 追いかける?」 「や、別にいいんじゃね? どうせなんだかんだ言い逃れて謝らなさそうだし」 「......残念な人ほど、虚勢を張りたがる。......哀しいけど、この世の真理」 そんな風に兄貴さんと小男を憐みの目で見送っていた。 まあ、勇者としては言うほど能力がないわけでもないんだけどな、あの人たちも......。 キミら三人が異常なだけだからね。 そこのところは、はき違えないようにしてほしい。 ──というわけで、そんなちょっとしたいざこざはあったものの、俺とリオ、イリス、メイファの四人のステータス検定はその後つつがなく進んだ。 反復横跳び、砲丸投げ、握力、背筋力、それに数々の耐久力測定や魔力測定などなど、様々なテストで俺と教え子たちは測定係を驚かせるほどの記録を次々と弾き出していった。 そして証明写真の撮影なども行うと、検定は無事に終了した。 最後には勇者ギルドに戻って検定終了の報告をする。 すると認定ステータスを記した勇者カードは、三日後までにできあがると伝えられた。 すぐに結果を見れると思っていたリオたちはちょっとした不満の声を上げたが、ごねたところで一瞬で勇者カードができあがったりはしない。 俺はリオたちを連れて街のちょっと華やかな飲食店で食事をし、その後、村へと帰還した。 なおこの日の夜中には、約束通りに自宅の自室でリオを抱っこした。 正直に言って、やましい気持ちを抱かないのはごめんなさいやっぱり無理でしたっていうぐらいドキドキした。 抱きついたときに感じたのは、髪からふわりと漂ってくる女の子の匂いと、少女の柔らかな肌、押し当てられる胸の感触。 一年前に抱き心地のいい抱き枕だとか言っていた邪気の無かった俺は、どこかへ吹き飛んでしまっていた。 今のリオに対してそんな見方は、まったく不可能だ。 リオの抱きつき方にも、これは恋人のハグなのでは? と思うような艶めかしさを感じてしまってとてもいけない気持ちになったのだが、そんな俺の内心はリオにはどうにか気付かれずに済んだみたいだ......と思う、多分。 ──そして、そんなことがあった、三日後。 出来上がっているであろう勇者カードを受け取るため、俺たちは再び、勇者ギルドへと向かったのだった。

58 Lesson 58 "Are you ready? Now for the position..." A starting point for a hundred meters walk. I was in the starting position in the crowding start position and listened to the attendant. Next to me in the first course, in the second, Rio takes a starting position as well. There was no usual yurliness on its side, and the face of a tough, riddled girl looked forward. It's so beautiful. I almost fell in love with the way it looked, and I panicked and turned back. "Yoo-hoo." But slightly, Rio's cheeks stained red, and his eyes also seemed slightly shaky. Were you nervous? No, maybe it's my fault. More than that, we have to focus on the upcoming race. I'm going to concentrate. "- Start! At the same time as the attendant's voice, he kicked the ground. With an image that focuses the brave man's struggle on his legs, he rushes forcefully, fast, and through the ground. - - When you are concentrating like this, time flies slowly and even feels half-stopped. Of course that's an illusion, but in such a subjective sense of time I kick in the ground and go up my own speed. "Ah! Yabe!? From behind then on, I heard Rio. Hmm...? You got a late start? Delay is about a comma two seconds long, but rare for a Rio with a good concentration. Were you thinking of anything extra? But even so, I'm not going out of hand. I did everything I could and ran through 100 meters at once. Slightly behind me, it seemed Rio had scored a goal as well. And Rio stopped some time after the goal and held his head. "Ha, ha... Mm-hmm! Oh, brother, you're cheating! "What is it?" I don't know what it is, so I ask him back, and Rio comes up to me once and for all, looking up at me with a face dyed bright red on his cheeks. "Brother, you were looking at me before the start! What the fuck is that!? If you care, you can't. If you thought you couldn't, you'd start at some point! - Oh, shit!" "Oh, you mean... bad.... No, to be honest, I thought Rio's side was beautiful, and I fell in love... sorry" "Heh...? When I lowered my head like that, Rio, whose face turned bright red, sprayed hot air from his head. Then Rio gets upset and looks at me with some obstinate uplift. "... Oh, you know, brother... what does that mean...? "What do you mean...? No, I mean normal." "Normal means that...... Huh, well, it's my brother, and I can't help it" I don't know what it is, but Rio stunned me. Forget that. I get pulled over by Rio and go to the attendant at the goal point to hear the two records. The attendant gave us a half-drawn laugh and told us how it turned out. "Mr. Brett, ninety-six a second. Mr. Rio, it's two seconds, 21. They're both amazing...... today's top record one two, that's a dantoz too" But when I heard that, Rio was so bored. "Ah, I regret it! Even when I run out of two seconds, I can't!" But every measurement of the status test is one at a time, and the re-measurement is only when there are mistakes on the measurement side... Unfortunately, the new official measurements will be off-duty until next year. "Uh, Rio... I'm really sorry if it was my fault" "Yeah, it's your brother's fault.... apologize, hold me later. Then I forgive you." "Oh, okay. That's a hug. But later, where there's no one." I don't know what it is, but that's what we talked about. Honestly, I think it's pretty nasty to hold Rio, who has recently suddenly started releasing women's colored incense, but this time it doesn't seem like I'm the one to blame. Rio has nothing else to say, and I guess he's saying it in the same nori as he did a year ago, so you can't have an evil feeling... I'm not sure I'm honest, but I just have to work hard to make my heart a saint. By the way, Rio, who took the pledge from me, went to Iris and Mayfa and talked to them about something. "Off...... Rio, what is it now? Oh, is that what this is about? "I didn't have to do it from the beginning. Honestly, I'm late for time because of your brother, huh? "... but the way it's done is rubbing.... you think you can use your brother's weaknesses to satisfy your desires?... I'll imitate you too." "What!? ... then, so am I..." I felt my eyes glisten as my three godchildren looked at me, and the chills ran on my spine. Hey, what are those eyes that look at that prey...... By the way, my brother and I were watching Rio walk a hundred meters. "To... two seconds, so...!? I mean, what's the impossible speed right now..." "Ah, brother! If that was doping earlier, what about the next one!? "Uh... that's it. Doping, doping. Double doping." "Double doping!? I've never heard that before! I don't know what it is, but you look so fucked up! "Oh, it's so bad. But Johnny, I just remembered some errands. Don't worry about them, we'll just finish the status test." "What...? Aren't you going to expose their doping, brother?!? "I want to do that in the mountains, but somehow I don't have time right now. I'm afraid I'm gonna miss it this time." "Holy crap......! Chip, those guys, what a bad luck...! Your brother and the little man have just made their way to the next measurement. Rio and the others who saw it, "Oh, I ran away..." "What do we do, Rio? chase?" "No, it's not okay, is it? Anyway, I don't think I'm going to apologize for getting away with it." "... the more unfortunate, the more wanting to put up a vanity.... pathetic, but the truth of the world" That's how I was dropping off my brother and little guy with pity eyes. Well, it's not like I'm as incapable as I say as a brave man, and those guys... You and the three of them are just unusual. I want you to make sure there's no mistake. - - So although there was such a little trouble, the status tests for me and Rio, Ilis and Mayfa for the four of us went on unconnected afterwards. In various tests, including repetitive lateral bouncing, gunshot throwing, grip, spine strength, and numerous endurance and magic measurements, my godchildren and I popped up enough records to surprise the surveyor one after another. And when the photo was taken, the test was successfully completed. At the end of the day, return to the Guild of the Brave to report the end of the test. He was then told that the Brave Man card with certification status could be raised by three days later. Rio and the others, who thought they would see the results soon, raised a little dissatisfaction, but the brave cards wouldn't be raised in an instant from where you saw them. I took Rio and dined in a somewhat gorgeous restaurant in the city and then returned to the village. It should be noted that in the middle of the night, I held Rio in my home room as promised. Honestly, I'm sorry I don't feel so comfortable. I knew I couldn't. So excited. What I felt when I hugged her was the smell of a girl drifting from her hair and the girl's soft skin, the feeling of her chest being pressed against her. A year ago, he said it was a comfortable pillow. I was blowing away somewhere. Such a view of Rio today is completely impossible. Even to Rio's hug, isn't this a lover's hug? I felt like I shouldn't feel so glossy that I thought, but it seems like my insides didn't have to be noticed by Rio somehow... I think, maybe. - And that happened, three days later. Once again, we headed to the Brave Alliance to receive the Brave Card that we would have been able to.