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あの金田一が、ついに帰ってきた──。前シリーズ終了から14年の月日を経て、4月より放送を開始したテレビアニメ「金田一少年の事件簿R(リターンズ)」。第1話が放送されるやいなや、「これぞ金田一!」と、往年のファンを歓喜の渦に巻き込んだ。
それもそのはず。「金田一少年の事件簿R」は、前シリーズのスタイルを色濃く受け継いでおり、スタッフの意気込みはもとより、キャスト陣はほぼ変わらぬ布陣となっている。
強力なメンバーが再集結した“金田一”チーム。これをまとめるシリーズディレクター(監督)にひとりの男が抜擢された。土田豊さんだ。土田さんは特にコメディやギャグの演出に定評があり、「スマイルプリキュア!」で演出を手がけた回は軒並み“神回”と言われるほどの実力の持ち主。もちろん、シリアスなエピソードでもたびたび力を発揮している。そんな土田さんが、「金田一少年の事件簿R」というビッグタイトルで初の監督を務めることとなったのだ。
まさに制作のまっただ中である今、土田さんは何を思うのか。そして彼が作り出す“金田一”とは──。本人に直撃した。
初監督作品が“金田一”。とにかく頑張らなければと思った
──まずはシリーズディレクター(監督)になることが決まったときのお気持ちを教えてください。とにかくびっくりしました。「え? 僕がですか?」って思いましたね。初めての監督作品が“金田一”になるなんて……。ただ、任せていただいたからには、頑張らなければいけないなと。ありきたりですが、身の引き締まる思いがしました。
──今回14年ぶりの復活となるテレビシリーズですが、そもそもどんなきっかけで再開されることになったんでしょうか?前作も担当されていた読売テレビの
諏訪道彦プロデューサーからお話があったことがきっかけだと聞いています。そこには東映アニメーションの清水慎治さんも深く関わっているみたいで、諏訪プロデューサーには、14年前に大好評だった「
金田一少年の事件簿」と「
名探偵コナン」が連続で放送される1時間、通称“ミステリーゾーン”を復活させたいという思いが強くあったようです。
──チーフプロデューサーの諏訪さんや清水慎治さん、前シリーズの監督であり新シリーズのプロデューサーを務める西尾大介さんからはどんなアドバイスがありましたか?諏訪さんからは、「金田一少年の事件簿R」はあなたの船だから、おもいっきり暴れてください」と言っていただきました。清水さんは飲み会の席でしかお会いしていないので、「頑張れよ」と言っていただいたくらいです(笑)。そして西尾さんからは、プロデューサーの視点というよりむしろ監督視点でアドバイスをいただいています。「そこはこういう絵じゃないよね?」などとダメ出しをいただくこともしばしば。私も初監督なので、その意見をありがたく頂戴し勉強しながら作っています。
──諏訪さんが「土田さんの船だから」とおっしゃっていたというのは、今回の“金田一”は、もう土田さんの“金田一”だということでしょうか?そうだと受け取っています。光栄なことです。
──具体的にはどんなところが土田さんの“金田一”になったでしょう?正直なところ、昔のテレビシリーズがあって、もう作品の世界観はできあがっていますので、僕がどうこうするというよりは昔のテイストを大切に守って、受け継いでいきたいというスタンスです。
あえて変えた部分はない。キャスト陣も、変える理由はまったくなかった
──では、制作スタッフの皆さんには、監督としてどんな指示をされていますか?「金田一少年の事件簿」は東映アニメーション作品の中ではかなりリアル系の部類に入りますので、“金田一”は少し特殊なんです。だから演出さんにしても作画さんにしても、いつもと違ったノリでリアルな芝居や絵を追求してもらうようにオーダーしています。
──土田さんも「スマイルプリキュア!」などのコメディ回をご担当されてきました。そういう意味ではまさに正反対のタイプの作品になると思いますが、金田一の雰囲気を壊さない範囲で、そういった遊び心のある演出もされるのでしょうか?数は少ないですが、コメディ回も用意しています。そういった回では遊びも入れていますよ。
──楽しみですね。先ほども、前シリーズを引き継いでとおっしゃっていましたが、あえて違う形にした部分というのはありますか?特に意識して変えようとした部分はありません。ただ、まったく同じだとつまらないので、微妙に変えた部分はあります。
──ファンでもわからないレベルの変化でしょうか?そうですね。たとえば、アイキャッチはほぼ前シリーズと同じなんですが、ほんのちょっとだけ変えた部分があるなど、その程度です。わかる方はすごいですね(笑)。
──前シリーズから14年経ち、世の中でも時代とともにさまざまな部分が変化しました。作中でもはじめちゃんが携帯ではなくスマートフォンを使用しているなど、その変化を取り入れていましたよね。はい。スマートフォンなどは原作でもそうなっていますから、アニメもそのまま現代風にしています。あとは、はじめや美雪の家の設定も基本的には昔と同じ設定を使いますが、美雪の部屋にあったテレビデオなどは現代風のアイテムに変更しました。
──はじめちゃんや美雪など、メインキャラクターのキャストも以前と同じですよね。そこが前シリーズを引き継いでいるという点でかなり大きなポイントになっていると思いますが、同じキャストになった理由を教えてください。同じになった理由は、変える理由がないからですね。やっぱり、はじめも美雪も、あの声じゃないと。あのキャストさんたちじゃないとっていうのはあります。私たち作り手側もそう思っていますし、昔からのファンの方たちもそうだろうなと思ったんです。
──実際、インターネット上でも「同じキャストでよかった」という意見ばかりですよね。それぞれのキャストさんは、土田さんから見てどんな方ですか?はじめちゃん役の
松野太紀さんは、ご自身がまさにはじめちゃんみたいな感じの人なんです。いつもは軽口を叩いたりもする明るい人ですが、アフレコ本番になるとキリっとかっこよくなる。相変わらず解決編でははじめちゃんの長台詞がありますが、演技も昔とまったく変わっていませんでした。
──そうなんですね。美雪役の中川亜紀子さんはいかがでしょう。中川さんは収録前、復活第一発目のエピソードとなった「香港香港九龍財宝殺人事件」について、「かなりハードルが高いです」とおっしゃっていました。なんせ美雪と楊蘭(ヤン・ラン)の1人2役ですからね。でも、そんな難しい役どころもなんのその、ビシッとすばらしい演技をしてくださいました。
──剣持警部役の小杉十郎太さんや明智警視役の森川智之さんは?あの2人がいてこその“金田一”ですね。剣持警部も明智警視も、まだチラッと出ただけですが、これから本格的に活躍します! 楽しみにしていてください。
──アフレコ現場はどんな雰囲気でしょうか。とても明るい、和気あいあいとした現場です。やっているのは殺人事件が起こるシリアスな内容ですけれど(笑)。ずっと前から組んできたチームですから、息もぴったりです。
──そうですよね! でも、これだけのキャストさんが再び集まれたのも、奇跡的なのでは?確かに。前シリーズ終了からこれだけ長い時間が経ったにもかかわらず、みなさんが集まれたのは奇跡ですね。スケジュールも合ってよかったですよ、本当に(笑)。
──メインキャストのうちひとりでも欠けてしまったら、この「金田一少年の事件簿R」にはなっていなかったでしょうからね。ただ、スタッフは同じといえど、14年間の間にアニメの制作現場の環境は大きく変わったかと思います。その辺りで何か違いは出ましたか?14年前は私自身、まだこの業界にいなかったので、詳しくはわかりませんが、やはり今のようにデジタルではなくフィルムを使用していたようで、そこは大きく違いますね。当時の映像は今見ると画面が少しぼやっとしているように見えます。ただ、今みたいなすごくクリアな画面よりもむしろ雰囲気があったかもしれません。そこはそれぞれの良さがあると思います。