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今回は、2017年4月15日から公開中の劇場版「名探偵コナン から紅(くれない)の恋歌(ラブレター)」を取り上げます。
今回の劇場版「名探偵コナン から紅の恋歌」は、シリーズ当初からの熱心なファンも納得の「名探偵コナン」らしさを持ちつつ、スクリーンでこそ見栄えのするアクションも展開し、今回初めて見ても楽しめる、幅広い層におすすめできる作品に仕上がっています。
劇場で久々に「名探偵コナン」のおもしろさを実感した筆者が、今作の楽しみをご紹介します。
「名探偵コナン」の基本は、ラブストーリー+推理もの
原作コミックの連載がスタートしてから23年、TVシリーズアニメの放送がスタートしてから21年、毎年新作が公開される劇場版として21作目。アニメ「名探偵コナン」は、あらゆる世代の人が楽しめる作品となった。
毎日のように事件や犯罪が起きている、東京都内のごく普通の町、米花(べいか)町。ありえない確率で遺体に遭遇してしまう小学生の少年探偵団。「名探偵コナン」は、事件と謎解きに満ちた「ミステリー」だ。推理という、子どもから大人までが楽しむことのできる知的ゲームを、誰もがこの作品で楽しむことができる。
でも、作品の頭からメインキャラクターたちの物語を時系列でおっていくとよくわかるが、「名探偵コナン」の根底にあるのは、ちょっと不思議なラブストーリーだ。
黒の組織に毒薬を飲まされて、子供の姿になった高校生探偵の工藤新一は、身近な人に危険が及ぶのを恐れて、偽名「江戸川コナン」を名乗り、別人のふりをしている。
幼馴染の毛利蘭とは相思相愛の関係だったが、今は子どもとして正体を隠して相対しなくてはならず、近くにいながらすれちがいつづける立場にある。コナンを小学生だと思って無防備に接してくる蘭に、どぎまぎすることもある。新一を思って不安に涙をこぼす蘭に、時折連絡を入れてフォローも忘れない。ときには、危険を冒してもとの高校生の姿になって姿を現し、蘭を驚かせることもある。
推理や殺人事件の解決は理詰めで進むけれど、ベースにあるのはロマンティックなラブ・ファンタジーなのだ。
作中で、工藤新一の失踪からまだそれほど時間が経っていないという設定であることも、不思議といえば不思議だ。季節がなんども巡り、すでにアニメでは、新一が姿を消してから1年経っていると仮定しても、事件が起こっていない日の方が少ないほどになっている。それでも蘭たちは進級しないし、〝東の高校生探偵〟工藤新一を世間が忘れることもない。
いわば時間的に閉じた不思議空間なのだが、その中で、少しずつキャラクターの関係性が変化するところに、ファンはワクワクしている。
人気の劇場版シリーズ〝安定のおもしろさ〟の秘密
大型連休の定番となった劇場版「名探偵コナン」シリーズの魅力は、なんといって〝安定のおもしろさ〟にある。
まず、登場人物がテレビシリーズでもおなじみの、魅力的なキャラクターたちだ。江戸川コナン(=工藤新一)、服部平次(はっとりへいじ)、怪盗キッドといった、プロ顔負けの高校生探偵たちはカッコよく、毛利蘭(もうりらん)、灰原哀(はいばらあい)、遠山和葉(とおやまかずは)といった女性陣はかわいらしくチャーミングだ。警察の刑事たちやFBIのエージェントたちは、愛嬌あり陰影ありで、大人が見ても感情移入しやすい。
ミステリー作品で、事件と謎解きを子どもから大人までが楽しめるのも大きい。推理が苦手な向きには、探偵役がわかりやすく解説してくれる。
スケールの大きなアクションも、劇場版ならでのお楽しみだ。カーチェイスや銃撃戦、脱出劇といった、大人も楽しめる派手な要素が詰め込まれている。
そして、毎回取り上げられるテーマによって、知らない世界を知る・体験する楽しみもある。今回の劇場版「名探偵コナン から紅の恋歌」でいえば、競技かるたと百人一首だ。
今回アニメーション映画としては、現代日本が舞台というのが、初めて見る人にも親しみやすい。これまでのシリーズを知らなくても入りやすいし、友達や家族を誘いやすい。
こういったエンターテインメントの定番要素に加え、毎年新たな試みも行われている。昨年公開の劇場版「名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)」(2016年)では、公安警察の安室透(声・古谷徹)とFBI捜査官の赤井秀一(声・池田秀一)が活躍して、幅広いアニメファンの注目を集め、歴代最高の興行収入を記録した。
キャラクターを大切に。原点回帰のおもしろさ
劇場版「名探偵コナン」は、映画として派手な見せ場を作りスケールアップし、幅広いファン層を取り込む方向に進化してきた。その一方で、新一と蘭のすれちがい、ヒロインとしての蘭の存在感、ラブストーリーとしての見せ場など、劇場版シリーズ初期作のお約束だった要素は、必ずしも重視されなくなっていった。それが、「名探偵コナン」らしさを求めるファンには、もの足りないところもあった。
こうした流れを踏まえて、今作ではサブタイトルに「恋」の字が入り、「恋愛」が大きなテーマになった。さらに、劇場版で初めて〝西の高校生探偵〟こと服部平次がメインのストーリーとなり、新鮮さを出している。
平次と和葉は、作中で主人公の新一(=コナン)&蘭と並ぶ、名物高校生カップルだ。長いストーリーの中で少しずつ進展してきたふたりの関係を前提に、今回の映画では、2人それぞれの思いが言葉や行動になっている。
見ていると、まるで自分のことのようにハラハラドキドキしたり、胸がキュンとなるのが映画の醍醐味。今回の映画でも、和葉に自分を重ねて、平次に「惚れた!」というファンが続出。SNSや映画サイトのレビューに感想があふれている。
平次と和葉、クローズアップされた関西組カップルにトキメキ
もともと服部平次は、作中で主役のコナン、怪盗キッドと並ぶイケメントリオで、女性ファンの人気が高い。いずれも高校生で、頭脳のキレは一級品だ。
その中でも平次はやんちゃで陽気、色黒で方言が特徴という愛嬌のあるキャラクターだ。それでいて竹刀を握れば剣道では日本一の腕前だし、大型バイクを乗り回してのアクションは派手さ十分。なんといっても帽子を正面にかぶりなおして本気を出すときのカッコよさはピカイチだ。推理勝負を通じて工藤新一=江戸川コナンであることに気づいてからは、頼れる〝親友〟といっていい存在になった。
いっぽうの和葉は、平次の幼馴染だ。気さくで明るく、負けず嫌いで、合気道が得意。平次とは遠慮なくぽんぽん言葉をぶつけあう仲だが、だからこそ「好き」とハッキリ言葉や態度にできずにいる。
和葉の思いが届かず、鈍感な平次がボケる、じれったくも微笑ましい幼馴染カップルの転機は、TVシリーズ第764話「コナンと平次 恋の暗号(後編)」。和葉の危機に、「オレの和葉に何さらしとんのじゃ!」と口走った平次はようやく、自分にとって和葉が大切な存在だと気づく。
ところが平次はその発言を自分でうやむやにしてしまう。まるでプロポーズのように大事な「告白」を、大阪のナンパスポット戎橋の上で勢いでしたことが許せず、和葉への決定的な告白のチャンスを狙っている。
そこまで知ったうえで今回の映画を見ると、あまりシリーズに詳しくない人でも、平次と和葉の距離感や親密度、セリフのやりとりに納得できるだろう。
今回は、平次を「ウチの未来の旦那さん」と呼ぶ、競技かるたのクイーン候補、大岡紅葉(おおおかもみじ)が登場する。彼女と平次の過去に何があったのか? ライバルの登場に発奮する和葉のかわいらしさも、見どころのひとつだ。
百人一首に恋心を重ねながら、何度でも楽しめる
今回、百人一首の札が謎解きの鍵になっているが、同時に、登場人物1人ひとりの恋する気持ちが和歌によって浮かびあがっていておもしろい。
平次が大好きな和葉と、新一を待っている蘭。それぞれが好きな歌を聞けば、和葉と蘭をずっと見ているファンは、「なるほど!」と思い、百人一首にも興味がわくだろう。
事件の解決と、メインキャラの感情のクライマックスが同時にくるスタイルも、ファンとしては「待ってました!」という気持ちになる。この作品の男たちは、絶体絶命の危機にしか、なかなか本音を言ってくれない。そこがカッコつけな男の子らしくもあるし、乙女心がキュンとするポイントでもあるのだ。
謎解きとラブストーリーとアクションの楽しみが何重にも折り重なった構成は、一度見ただけだと全部を味わえない。気になった人は劇場で、もう一度細かいところをチェックしてみてはいかがだろうか。
(文・やまゆー)
(C) 2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会