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"source": "superScraper-fanfic"
} | 「う、ん......」
「気がついたか」
女はパッと起き上がって、周りをきょろきょろと見廻した。
女は自分に何が起きたのか分からないという顔をしていた。
既に野次馬の見物人の殆どが散っている。
近くの茶屋の軒先を借りて彼女を寝かせて、ジジに介抱させたら、意外と早く気がついた。
「お前、は?」
「この人に感謝した方がいいよ、あんたを助けてくれた恩人さんだよ」
茶屋の女将で、いかにも人の良さそうなおばさんが女にそう言いながら、繁盛している店で接客にまわった。
「どこまで覚えている?」
「戦って......あっ、警戒してない所からの攻撃が」
「その時の男が、仲間にこっそりお前を攻撃させたんだ」
「卑怯な!」
女は怒りを露わにして、吐き捨てるように言った。
「あれが卑怯なのは否定しないが、お前も油断が過ぎる」
「うっ......」
「そもそもなんであんなことをしていたんだ? 相手が誰であろうと負けるつもりはなかったんだろう?」
「分かる、のか......?」
俺はクスッと笑った。
彼女が言わなかったその先に「お前のような子供が?」って言うのが聞こえたような気がした。
「そんなの見てれば分かる」
今度は警戒の目をした、こいつただ者じゃないって目だ。
「何かするつもりなら気絶してる間にしてる」
「......それもそうだな」
「で、なんであんなことをしてたんだ?」
「......旅費が無かったから」
「旅費?」
女は頷き、苦虫を噛み潰した様な顔で語り出す。
「今年の騎士選抜で上京してきたのだが、それが叶わなかった。何かの間違いだと思って都に残って、調べてもらって待っていたら、旅費が底をついてしまった。このままじゃ故郷にも帰れないから、あんな事を......」
「まて、それはおかしい」
騎士選抜に落ちたと言うことを口にしたことで落ち込んで俯きかけた女だが、俺が言うとパッと顔を上げて、怒った顔で俺を睨んだ。
「何がおかしいっていうんだ」
「怒るな、そういうことじゃない。お前の腕はさっき見させてもらった。その腕前なら選考に落ちるはずがない」
相手が街中の、その辺の男って事を差し引いても、女の腕はかなりのものだった。
俺がった騎士、シャーリーに勝るとも劣らないほどの腕前だ。
それで落ちるとか、考えられん。
「私もそう思った。だから伝手を頼って調べてもらった。すると、審査官の第十親王様と会うことが出来た。親王様は、女なら、その......」
女は言いよどんで、顔を真っ赤に染めた。
羞恥とも、憤怒とも取れない顔だ。
「ああ、もういい。話はわかった」
第十親王、俺の兄でもあるそいつの性格はよく知っている。
女なら体を差し出せ、って言う意味のことをかなりド直球にいったんだろう。
そういう性格の男だ。
俺は少し考えて、女に聞いてみた。
「まだ、騎士になりたいか?」
「もちろんだ。来年も来るつもりだ。何年かかっても、私の実力で騎士になってみせる」
「なら、急いで故郷に帰ることも無い」
「え?」
俺は懐から小さい袋を取り出して、女に手渡した。
「これは......お金?」
「100リィーンある。都に一年滞在する位はある」
「えっ......?」
「ジジ、タイラー通りに何軒か人が住んでない家があったな?」
「はい、ご主人様」
さっきからずっと俺の背後で、物静かに控えていたジジが答えた。
「ディランに、その中から一軒を彼女に使わせるように手配しろ」
「わかりました」
「ど、どういうことだ?」
女は戸惑っていた。
自分の身に振りかかったことをまだ理解出来ていないようだ。
「都に残っていろ。ここにいた方が、騎士選抜の情報が入りやすくて、対策も立てやすい」
「そうじゃなくて、どうして私にこんな......」
「俺はいろんな人間のパトロンをやっている。お前が気に入ったから金を出した」
「私、が?」
「女の武器を安易に使わずに、実力で自分を認めさせたい。そういう人間は好きだ」
「......」
「あなた、何者? ただ者じゃない――」
感心した目で俺を見つめる女。
そこに空気を読まない、邪魔者がやってきた。
「いたぞ!」
声の後に、たくさんの足音が迫ってきた。
みると、ざっく人くらいが、茶屋ごと俺たちを取り囲んでいた。
その中心にさっきの男――チャドがいた。
チャドは肩に応急処置の包帯を巻いて、ちゃんとしたズボンに履き替えている。
「この小僧だ。お前らやっちまえ! 兄貴もお願いします!」
チャドの号令とともに、男達が一斉に襲いかかってきた。
まったく、懲りない奴らだ。
俺は一歩前に進み出た。
レヴィアタンを――と思ったら、ルティーヤーが頭の中でダイレクトに訴えかけてきた。
レヴィアタンだけじゃなくて、こっちにも活躍の場を。
そんな感情がストレートに流れてきたから、俺はそれに応える事にした。
二つの指輪をリンクさせる。
ルティーヤーと鎧の指輪をリンクさせて、手甲に変化させて、両腕をおおう。
瞬間、燃え盛る両拳のできあがりだ。
それで男達を迎撃した。
がら空きのボディを殴って、隙だらけの顎を打ち抜いて。
地を這う炎を投げつけて、喉輪を掴んでゼロ距離で爆破させる。
ルティーヤーの技を、レヴィアタンの時と同じように再現した。
攻撃がヒットする度に、男達の体が大きく炎上する。
一瞬だけ燃え上がってすぐに消えるのも、ルティーヤーの技の特徴だ。
「すごい......スピードも力も見た目通りの少年なのに......こんなに強かったのか」
出遅れた女が感嘆していた。
そうこうしている間に、もはや問答するのも面倒臭いチャドを含めて、新たにやってきた男達を全員倒していた――と思いきや。
一人だけ、騎士っぽい格好の男が倒れてなかった。
最後尾にいて、攻撃をしてこなかったから、俺も反撃してなくて攻撃しそびれた。
そいつは苦虫を噛み潰した様な顔をしている。
戦わないのなら面倒もない、俺はその騎士に。
「こいつらを連れてどこかに――」
「お前は! 第十親王の騎士!」
「むっ?」
女が言って、騎士がビクッとした。
騎士を見ると、みるみる内に顔が青ざめていった。
「ああ、そうか。そういうことか」
「――っ!」
俺が言うと、騎士はまたビクッとした。
そいつはどうやら、第十親王ダスティン・アララートの騎士のようだ。
そして俺は向こうのことは知らないが、向こうは俺のことを当然知っている。
ああ、そういえばチャドが「兄貴頼む」とかも言ってたな。
チャドに引っ張られてきたはいいが、相手が俺だと知って、そして俺は向こうのことを知らないと思って、攻撃もせずどうにかやり過ごせないかと黙っていた訳だ。
それをしかし、裏接待を要求された時に多分会ったことのある女にバラされてしまった。
知らないままならそれでも良かったが、一旦ばれてしまった以上。
「どうかお許しを! 下」
騎士は、その場でパッと俺に土下座した。
一度は散った野次馬が再び集まってざわざわし出して。
「え......?」
女も、いきなりの事に騎士と俺のことを、キツネにつままれたような顔で交互に見比べた。
「十三......殿下? って、あの法務親王大臣の賢親王様!?」
女は盛大に驚愕した。
「ああ。ノア・アララートだ」
がここまでの勢いで土下座してるんだ。偽物のわけがない......」
どうやらこの騎士にも何か言われたみたいだな。
「親王で大臣なのに、身分や地位をひけらかさない......?」
女の目は驚嘆と、尊敬の色が半々になっていた。
彼女はしばらく放置でいいとして、問題は騎士の方だ。
コバルト通りの時と違い、こちらはちゃんと
「こいつら、お前の仲間か?」
「は、はい......その......悪友、と申しますか」
「なら処分は任せる」
「聞こえなかったのか?」
「い、いえ。そうではなく、私......は?」
「お前、俺に襲いかかってきたか?」
騎士の男はプルプルと、クビがちぎれる程の勢いで振った。
「なら見逃してやる。そいつらを連れてとっととどっかに行け」
「あ、ありがたき幸せ!」
騎士はゴツン、ゴツンと音が聞こえてくるほどの勢いで、頭を地面に叩きつけてから、仲間達を起こして、全員引き連れて立ち去った。
さて、後は女のほうだが――。
パチパチパチ。
まだ野次馬のざわつきが残っている中、やけに響く拍手の音がした。
音の方を見ると、茶屋の向かいにある酒を出している露店で、一人の老人が拍手しているのが見えた。
「うむ、中々の少年だ。顔も腕も一級品。これほどすごい少年は近年稀に見る」
俺の事を褒める老人、とても雰囲気のある人だ。
一体何者だ――と思った瞬間、老人がテーブルの上に置いている黄金の瓢箪が目に入った。
胸がドキン! と大きく鼓動した。
ドキン!
世の中には、風変わりすぎる持ち物が、本人よりも有名という場合がある。
分かりやすいところだと、騎士の異名が愛用している武器のパターン。
黄金の瓢箪もそれだ。
その持ち主を俺は最近知った。
調べて、知った。
俺はつかつかと近づいていき、老人の前で片膝をついた。 | “Uh-hmm. ......”
“You woke up huh”
The woman got up quickly and looked around her.
She had a look of confusion on her face, as if she didn’t know what had happened to her.
Most of the onlookers had already dispersed.
I rented the nearby teahouse’s eaves, laid her down, and let Gigi take care of her, which she did surprisingly quickly.
“You, what?”
“You’d better thank this person, he’s the one who saved your life.”
The owner of the teahouse, a good-looking woman, said to the woman and went to serve the customers in the busy store.
“How much do you remember?”
“I was fighting ...... and there was an attack from somewhere I wasn’t paying attention to.”
“The guy you were fighting had his guys sneak in and attack you.”
“Cowardly!”
The woman became angry and spat at the person.
“I don’t deny that it was cowardly, but you were too careless.”
“Ugh. ......”
“Why were you doing that in the first place? You never intended to lose no matter who your opponent was, did you?”
“You understand, ......?”
I chuckled.
Beyond what she didn’t say, I thought I heard her say, “A kid like you?” .
“I can tell that by looking at you.”
This time she gave a wary look, a look that said, “This guy’s not ordinary.”
“If I was going to do something, I would have done it while you were unconscious.”
“...... That’s true.”
“So, why were you doing that anyways?”
“...... I had no money for travel.”
“Travel money?”
She nodded and spoke with a bitter look on her face.
“I came to Royal Capital for this year’s knight selection, but I couldn’t make it. Thinking it was some kind of mistake, I stayed in the capital and waited for them to look into it, but I ran out of my expenses. I couldn’t even go back to my hometown at this rate, so I did what I did .......”
“Well, that’s strange.”
She was depressed and turned her head down when she mentioned that she was not selected for the knighthood, but when I replied, she looked up and glared at me with an angry face.
“What’s so funny?”
“Don’t get mad, that’s not the point. I just saw your skills. If you were to come with that skill set, there was no way you could fail the selection process.”
Even if you take into account the fact that she was just some person from the city, her skills were quite impressive.
She is no less skilled than Shirley, the only knight I’ve taken.
I can’t imagine her falling for that.
“I thought so too. That’s why I asked my contacts to check it out. Then, I was able to meet the Tenth Prince, the examiner. And for His Highness, a woman had .......”
The woman stammered, and her face turned bright red.
Her expression could not be taken as either shame or outrage.
“Okay, that’s enough. I understand what you’re talking about.”
The tenth prince, my brother, I know his character well.
I think he was very direct in saying that if you are a woman, you should offer your body.
That’s the kind of guy he is.
I thought about it for a while and asked the woman.
“Do you still want to be a knight?”
“Of course I do. I will come back next year. No matter how many years it takes, I’ll make it.”
“If so, there is no hurry to return home.”
“Eh?”
I took out a small bag from my pocket and handed it to the woman.
“Is this ...... money?
“It’s reens. Enough to last you a year in the capital.”
“Eh ......?”
“Gigi, weren’t there some empty houses on Tyler Street?”
“Yes, Master.”
Gigi, who had been quietly waiting behind me for a while now, answered.
“Tell Dylan to arrange for her to use one of them.”
“Understood.”
“W-What do you mean?”
The woman was puzzled.
She still didn’t seem to understand what was happening.
“Stay in the capital. It’s easier to get information about the selection of knights and take measures if you stay here.”
“It’s not that. I mean, why are you giving me this ......”
“I’m a patron of many people. And I like you, so I gave you money.”
“Me, you say?”
“I want you to be recognized for your abilities, not for your easy use as a woman. That’s the kind of person I like.”
“......”
“Who are you? You’re not an ordinary person.”
The woman stares at me with admiring eyes.
Then, an intruder, who did not read the air, arrived.
“There she is!”
After the voice, I heard many footsteps approaching.
I looked around and saw that there were roughly twenty people surrounding us in the entire teahouse.
At the center of it all was the man from earlier, Chad.
He had a first aid bandage on his shoulder and had changed into proper pants.
“You little bastard. Finish him off, all of you! Brother too, please!”
At Chad’s command, the men attacked in unison.
They never learn, do they?
I took a step forward.
While I was thinking about Leviathan, Luthiya made a direct appeal in my head.
Not only Leviathan, but also me.
Such feelings flowed straight to me, and I decided to respond to them.
I linked the two rings together.
Linking Luthiya and the armor ring, I transformed them into hand armor to cover both arms.
In an instant, I had two burning fists.
I intercepted the men with them.
Punching them in their unprotected bodies and through their gaping jaws.
Throwing flames that crawled on the ground, I grabbed their throat rings and blasted them at zero distance.
I replicated Luthiya’s technique, just as I had done with Leviathan.
Each time the attack hit, the men’s bodies would burst into flames.
Another characteristic of Luthiys’ technique is that it flares up for a moment and then quickly disappears.
“Amazing ...... speed and strength for a boy who looks ...... just like he does, but he’s so strong!”
The woman who was late to the game was marveling.
In the meantime, all the newly arrived men had been defeated, including Chad, who I could hardly be bothered to question anymore – I thought.
There was only one man, dressed like a knight, who had not fallen.
He was at the end of the line and didn’t attack, so I didn’t fight back and attack him.
The man looked as if he had bitten into a bitter bug.
If you do not want to fight, there is no need to bother, I told the knight.
“I’ll take these guys and go somewhere else...”
“You are! The Tenth Prince’s knight!”
“Hm?”
When the woman said that, the knight was startled.
When I looked at the knight, his face instantly turned pale.
“Ooh, I see. That’s how it is, huh.”
“—!”
I said so, and the Knight was surprised again.
It seems that the Knight is a knight of the Tenth Prince Dustin Ararat.
While I don’t know anything about the other side, of course they know about me.
Oh, by the way, Chad also said, “Brother, please.”
It’s okay that Chad had dragged him here, but knowing that it was me, and thinking that I didn’t know him, he didn’t attack me and kept quiet to see if he could get away with it.
But then, the woman who had probably seen him before, when she asked for backstage entertainment, told me.
It would have been fine if I hadn’t known about it, but now that it’s out there.
“Please forgive me! Your Highness the th.”
The knight instantly kneeled down to me on the spot.
The onlookers, who had once dispersed, gathered again and started buzzing.
“eh ......?”
The woman, too, looked at the knight and me in turn, as if she had been pinched by a fox.
“3th......? His Highness? Isn’t that the Wise Prince of the Minister of Justice?”
The woman was greatly astonished.
“Yeah. Noah Ararat.”
‘T-the real one ......? No, that knight is on his knees with such vigor. It can’t be fake. ......”
It seems that this knight also have something to say about it.
“You’re a prince and a minister, but you don’t flaunt your status and position. ......?”
The woman’s eyes were half in amazement and half in respect.
She could be left alone for a while, but the problem was the knight.
Unlike the time at Cobalt Street, this one is well behaved.
“Are these your people?”
“Yes,......, that....right... my friend.”
“If so, then just leave.”
“Didn’t you hear me?”
“N-no. I did. I ......?”
“Did you try to attack me?”
The knight man shook his head with such force that it seems like he would rip his neck off.
“I’ll let you off. Take them and get the hell out of here.”
“Oh, thank you for your greatness!”
The knight slammed his head into the ground with such force that you could hear it thump, thump, thump, and then he woke up his friends and left with them all.
Now, all that’s left is the woman–
Clap, Clap Clap.
I heard a resounding clapping sound while the onlookers were still buzzing around.
Looking towards the sound, I saw an old man clapping at a stall serving sake across from the teahouse.
“Well, you are quite a boy. Your face, as well as your skills, are first-rate. I’ve never seen such an amazing boy in recent years.”
The old man praised me, he seemed to have a certain air about him.
Just as I was wondering who the hell he was, I saw the golden gourd he had placed on the table.
My heart thumped! And I felt my heart beat loudly.
Dokun!
In this world, there are times when the most eccentric belongings are more famous than the person himself.
For example, a knight’s alias is the pattern of his favorite weapon.
The golden gourd is another example.
Recently, I came to know its owner.
I looked it up and found out.
I approached the old man and knelt down in front of him. |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | 闇奴隷商のゴタゴタが終わった後、俺は兄上を屋敷に誘ってに夕飯を食べた。
大食堂の中で、長いテーブルを縦に挟んで、かなりの距離で向き合って座る俺と兄上。
ヘンリー兄上相手でそこまで拘る必要もないが、これも礼法のうちの一つだ。
メイド達の給仕で食事が進み、メインディッシュになろうかというところで、執事のディランが食堂に入ってきた。
ディランはまず兄上に一礼してから、俺に耳打ちした。
「......分かった、下がっていい」
「どうしたノア、何があった」
「第一皇子――ギルバート兄上の家の者です」
「ほう、なんて言ってきた」
兄上は手を止め、目をキラン、と光らせて聞いてきた。
「よく捕まえてくれた。不届き者を尋問したら、やっぱり俺の名を騙って商売をしていた。明日にでも裁判所につき出すつもりだったが、目を離した隙に自殺してしまった」
兄上はため息をついた、俺もため息をついた。
まったく、人は宝だというのに......。
兄上と目線を交換した、どちらからともなく、あごを微かに引いた程度に頷いた。
俺も兄上も分かっている、おそらく同じ言葉が頭を過ったに違いない。
トカゲの尻尾切り。
死人に口なしというのは、どの時代のどこでも同じことだ。
そしてそこまでして口を封じると言うことは。
「闇奴隷商は兄上が命じてやらせていたことだな」
ヘンリー兄上も頷いた。
「ギルバートは昔からそうだった。商売――店を持ったり、荘園を買ったり。とにかくそういう事に夢中になっていた」
「仕方ないですよ兄上」
ヘンリー兄上はびっくりして、眉をひそめて俺を見つめた。
「ギルバート兄上は第一皇子だが側室の子、そのせいで皇太子になれなかった。その鬱憤を晴らすためなのか、それとも帝国そのものを継げないからかわりを求めているのか。商売も荘園も、代替品のナワバリなんだ」
「......」
俺が一気に言った後、ヘンリー兄上は何故か無言で俺をじっと見つめ続けていた。
「どうしたんですか兄上」
「いや......それも分かっているのか。つくづくすごいな、お前は」
「そうですか? 少し考えれば分かることです」
「そんな事もないがな」
ヘンリー兄上はニコリと微笑んで、メイド達が運んできたメインディッシュに手をつけた。
を聞いてしまったせいで、メシはあんまり美味くなかった。
ヘンリー兄上が帰った後の、屋敷のリビング。
俺と、護衛のシャーリーと、数人の少年少女が同じ部屋の中にいた。
ランタンの灯りが照らし出す部屋の中、座っている俺の前に、売られかけた少年少女らが跪いていた。
全部、少年で、少女。
今の俺と同じくらいの歳だ、出会いと生まれをちょっとずらすだけで、一緒にかくれんぼでもしているような間柄になっていたのかもしれない。
そんな少年少女らに聞く。
「とりあえず手は回した。お前達は自由の身だ。今回の事で売られることはない」
「「「......」」」
奴隷からの解放を宣言したが、五人はさほど喜ぶでもなく、むしろ戸惑いながら互いを見つめ合ったりしているだけ。
これは......あれか。
「どこへでも行くがいい。どこか行くあては?」
「ありません......」
少女の一人、真ん中にいて、最初に俺の馬車を止めた少女が消え入りそうな声で答えた。
「ないのか?」
「はい......私は今年の種籾の代金の代わりに売られました」
「俺は母親の葬式代に」
「口減らしです......」
少年少女らはそれぞれの事情を訴えた。
全員が全員、帰る場所がないか、帰ってもそのうちまた売られるであろう子達だ。
ちなみに親は闇奴隷商に売った方が高くついてお得だ。
別になにかからくりがあるわけじゃない、闇奴隷商は税金を払わなくていいから、その分の金を回して高く
闇奴隷商に一度売ったような親は、例え子供が戻ってきてもまた売るに違いない。
「分かった。ディラン」
手を叩いて、執事のディランを呼ぶ。
ほとんど間を空けずして、ディランが部屋に入ってきた。
「こいつら全員引き取る。寝床と、適当な仕事を振り分けてやれ」
「それと賢いのがいたら勉強もさせてやれ」
「はっ、いつもの様に」
「わ、私達を買って下さるんですか!?」
少女が驚き半分、嬉しさ半分で聞いてきた。
「買うんじゃない、だからお前達も出て行きたかったらいつでも出ていっていい、ただし......」
そこで一旦言葉を切って、少年少女らを一人ずつ見ていく。
俺の視線から何かを感じ取ったのか、全員が身じろいで固唾を飲んだ。
「俺は一度出ていった人間を二度と使わない。裏切り者を許さないって意味だ」
「「「......」」」
むぅ? 難しかったか。
それを察したのか、ディランが横から。
「裏切らず誠心誠意尽くせばいいだけだ。早く殿下にお礼をいいなさい」
と、子供達をせっついた。
せっつかれた子供達は跪いたまま俺にお礼を言って、それからディランに連れて行かれた。
一人になった部屋の中で、俺はそういえばと、あることを思いだした。
「エヴリンを呼べ」
手を叩いてそう言うと、しばらくしてから、メイドのエヴリンが現われた。
屋敷で接客を長く担当してきたメイドだ。
「お呼びでしょうかご主人様」
「ああ、お前にこれを持ってきた」
俺はそう言って、大きめの封筒を取り出して、エヴリンに手渡した。
受け取ったエヴリンはきょとんとして。
「これは?」
「辞令だ。アルメリアにある、小さな土地の統治官だ」
聞き慣れない言葉のせいか、平坦なアクセントでオウム返しにつぶやくエヴリン。
「即日発効のものだ、これでお前も一端の役人だ」
「ど、どうして私に?」
エヴリンは驚き半分、嬉しさ半分で聞き返してきた。
親王に与えられた封地はかなり広いものだ、当然、親王一人で何もかも出来るわけじゃない。
そのため土地を細かく区切って、統治官を送って代理で治めてもらう。
親王代理の統治官――庶民は代官とも呼んでいる。
メイドから代官――かなりの出世だ。
「長年お前を見ていた、今いるメイドの中で、お前が一番賢い。その賢さは屋敷のメイドとして接客を担当するだけじゃもったいない。そう思ったのだ」
「で、ですが! その、私は......」
エヴリンは視線を彷徨わせた。
明らかに言葉を選んでいる様子。
「外に出て出世するより、もっとご主人様に仕えていたいです!」
エヴリンはせがむようにいってきた。
真摯な言葉で、本気なのが伝わってくる。
「分かっている、だが、お前は伸びる。そしてお前が伸びて、活躍してくれたら、任命した俺の人を見る目があったという事になる」
「あっ......」
「外にでて、俺のために働け」
「は、はい! 分かりました!」
辞令を一生の宝物のように大事そうに胸もとに抱えて、エヴリンは嬉しさ半分、決意半分の顔でリビングから出て行った。
「すごい......」
「ん?」
振り向き、シャーリーを見る。
さっきからずっと護衛をしていたシャーリー。
こういう場合の護衛というのは、身の安全のためだけじゃない。
場合にもよるが、貴族はその身分故に、「直に手を出した」だけで負けなところがある。
今回がそうで、子供達が万が一逆上して襲いかかってきても、親王の俺が直接反撃してはいけない。
貴族の身分を落とすし、向こうも親王の手をわずらわせたことで罪が重くなる。
だからシャーリーを置いた。
シャーリーは騎士で、貴族じゃない。
万が一子供達が何かしても、シャーリーにやってもらえば何の問題もなくなる。
そのシャーリーが、舌を巻いて、感動した様子で俺をじっと見つめていた。
「何がだ?」
「第一親王殿下と人の使い方が全然――」
「シャーリー」
俺はシャーリーの言葉を遮った。
「そこまでだ、そういうのは思っても口に出すもんじゃない」
「は、はい! すみませんでした」
シャーリーは慌てて謝罪をした。
謝罪をして、口では言わなかったが。
その後も、ずっと尊敬の眼差しで、俺を見つめ続けたのだった。
次の日の朝。
謁見の間で開かれる陛下と諸大臣の朝礼に俺は呼び出された。
一通りの政務を行ったところで俺が呼ばれて、俺は大臣らの列を出て、片膝ついて陛下に一礼した。
それを受けた後、陛下は。
「話は聞いたぞノア、ギルバートの名誉を守ってくれたそうだな」
「偶然でございます」
闇奴隷商の事か。
ということはギルバート兄上自ら報告したんだな。
上手いな。
変に隠し立てするより、ちゃんと申し出た方が、やましいことがないように見えてしまう。
「しかし不届き者もいたものだ、ギルバートの名を騙って闇奴隷商とは。闇奴隷の商いは――どんな罪だったかな」
「はっ、帝国法で無届けでの奴隷――人身売買は、主犯であれば利き腕の切断刑、従犯以下は従軍刑となっております」
「そうなのか? 第一宰相よ」
「殿下のおっしゃる通りでございます」
列の一番前にいる、第一宰相はわずかに腰を折って答えた。
「ふむふむ。そうだ、ノアにケガはなかったか? あれは逆上して襲いかかってきたと聞く」
「幸いにも返り討ちにできました」
「そうか。まあノアだからケガをするはずもないか。余だったら、お忍びだったろうから、名乗るべきかと迷っているうちにボコボコにされていたであろうな」
「それでは大不敬罪、死刑でございましたな」
第一宰相が話の流れでそのまま陛下に答えたが。
「いいえ」
と、俺はそれに反論した。
「帝国法において、陛下の正体を知らないものに、つまり陛下がお忍びで名乗る前であれば不敬罪は適用されない。この場合ただの傷害罪になります」
言った瞬間、ただでさえ静かな謁見の間がますます静かになった。
大臣達が全員俺を見つめている。
言い過ぎたかもしれない、「不敬罪」――つまり皇帝に失礼な事をするしないというのは本来デリケートな話だ。
こういう例え話であれば、ごますりもかねて不敬罪だっていった方がいいのかもしれないが、
とは言え言い過ぎたのもそうだ。
仕方ない、謝るか――と思ったその時。
陛下がいきなり笑いだした。
「どうだ第一宰相よ、賭けは余の勝ちだな?」
「えっと......どういうことなのでしょう?」
いきなり「賭け」とか「勝ち」とか言い出して、第一宰相と笑いあう陛下に、俺は意図がつかめずに困った。
「なあに第一宰相と少し賭けをしていたのだよ。ノアが真っ直ぐ、法のみで語れるのかと試したのだ」
「は、はあ......」
試した? 何のために。
「すごいぞノア。い前からノアが法に関しては厳正なのは分かっていた。それを念のために確認したまでだ」
「......?」
「ノアよ」
「はい」
「帝国皇帝の名において、ノア・アララートを法務省大臣に命ずる」
......。
「「「おおおおお!?」」」
一呼吸の沈黙の後、大臣らから歓声が上がった。
なんだか試されて、いつも通りに受け答えをしていたら。
俺は、法務省大臣に命じられたのだった。 | After the mess of the black slave trade was over, I invited my brother to the mansion and we had dinner together.
In the large dining room, my brother and I were seated facing each other at a long table, with a considerable distance between us.
There was no need to be so particular with my brother Henry, but it was part of the etiquette.
The maids served the meal, and just as the main course was about to be served, Dylan, the butler, came into the dining room.
Dylan first bowed to brother and then spoke to me.
“...... Okay, you can step back.”
“What’s up, Noah, is there a problem?”
“It’s about First Prince – Brother Gilbert’s man.”
“Oh, what did he say?”
Brother stopped his hand and asked, his eyes flashing.
“Well, he got me. After questioning the scoundrel, I found out that he was doing business under brothers name. I would have taken him to court tomorrow, but he killed himself when we took our eyes off him.”
Brother and I both sighed.
A person is a treasure, but .......
After exchanging glances with brother, both of us nodded our heads with a slight tug of the chin.
Brother and I both know that the same words must have crossed our minds.
The lizard’s tail.
Dead men tell no tales, it’s the same in every age.
And to go to such lengths to silence them?
“The black market slave trader did what brother ordered him to do.”
Brother Henry nodded.
“Gilbert had always been like that. Business – owning a store, buying a manor. He’s always been into that sort of thing.”
“It can’t be helped, brother.”
Brother stared at me in surprise, raising his eyebrows.
“He was the first prince, but also was the son of a concubine, and because of that he could not become crown prince. Maybe he’s trying to vent his frustration, or maybe he’s looking for a suitable replacement because he can’t take over the empire itself. Business and the manor are in the territory of substitutes.”
“......”
After I said it all at once, Brother Henry continued to stare at me in silence for some reason.
“What’s the matter, brother?”
“No, ...... didn’t think you know that as well. You’re really amazing, you know that?”
“Is that so? I’m sure anyone can figure it out with a little thought.”
“No, not really.”
He smiled and took a bite of the main dish that the maids had brought over.
The food was not very tasty because of the disgusting things I had heard.
In the living room of the mansion, after Brother Henry had left.
Me, my guard Shirley, and a few other kids were in the same room.
In the room, lit by lanterns, the boys and girls who were about to be sold were kneeling in front of me as I sat down.
There were five of them, three boys and two girls.
They are about the same age as I am now, and with just a slight shift in their birthdays, maybe they would have been playing hide-and-seek together.
I asked these boys and girls.
“I have already taken care of it. You’re free to go. You will not be sold because now.”
“””......”””
The five of them didn’t seem too happy despite being declared free from slavery, but rather just stared at each other in confusion.
Is it ...... because of that?
“You can go anywhere you want. Do you have somewhere to go?”
“No. ......”
One of the girls, who was in the middle, the one who stopped my carriage first, answered in a muffled voice.
“There isn’t any?”
“Yes...... I was sold in exchange for this years paddy.”
“I was sold to pay for my mother’s funeral.”
“To reduce the number of mouths to feed......”
The boys and girls told me about their circumstances.
All of them have no place to go back to, or if they do, they will be sold again sooner or later.
By the way, it is more profitable for the parents to sell them to black market slavers.
It’s not that there’s some kind of trick to it, it’s just that the black market slavers don’t have to pay taxes, so they can turn that money around and buy them at a higher price.
Parents who sell their children to black market slavers are bound to sell them again, even if they come back.
“All right then. Dylan.”
I clapped my hands and called Dylan, the butler.
Almost immediately, Dylan came into the room.
“I’m taking all of these people in. Give them a place to sleep and assign them to appropriate jobs.”
“And if any of them are smart, make sure they study.”
“Yes. As usual.”
“A-Ah are you buying us?”
The girl asked, half surprised, half happy.
” I am not buying you, so if you want to leave, you can always go to .......”
I cut her off and looked at the boys and girls one by one.
They must have sensed something in my gaze, because they all shrank back and gulped.
“I will never take in anyone who has already left. It means I will not tolerate traitors.”
“””......””
Mmm? Was that too difficult?
As if he sensed this, Dylan came from the side.
“You just have to be sincere without betrayal. Hurry up and thank His Highness.”
He urged the children.
The children knelt down and thanked me, then Dylan took them away.
Alone in the room, I remembered something.
“Call Evelyn.”
I clapped my hands and said this, and a moment later Evelyn, the maid, appeared.
Evelyn, the maid, had been serving the guests at the house for a long time.
“You wanted to see me, master?”
“Yes, I brought you this.”
I took out a large envelope and handed it to her.
When Evelyn received it, she puzzled.
“What’s this?”
“A letter of appointment. You are now appointed governor of a small estate in Almeria.”
Evelyn mumbles in a flat accent, perhaps because the language is unfamiliar to her.(TN: instead of kanji she pronounced just hiragana)
“Also it’s valid immediately. You are now an official.”
“B-But why me?”
Evelyn asked back, she looked both surprised and happy.
The land granted to the Prince is quite large, and of course the Prince cannot do everything by himself.
Therefore, the land is divided into small areas and a governor is sent to rule on his behalf.
The acting governor of the Prince is also called a deputy governor by the common people.
From a maid to a deputy – that’s quite a rise.
“I’ve been watching you for many years, and you’re the smartest maid we have. That cleverness would be wasted if you were just a maid in charge of serving guests at the mansion. That’s what I thought.”
“W-Well but! You see, I’m .......”
She wandered her gaze.
It was obvious that she was choosing her words.
“I’d much rather serve my master than go out and get ahead!”
Evelyn begged.
The words were sincere, and I could tell she meant it.
“I know, but you will grow. And if you do, and you do well, then I will have been a good judge of character in appointing you.”
“Ah.......”
“And so you should go out and work for me.”
“Y-Yes! I understand!”
Holding the letter of appointment as if it were a lifelong treasure, Evelyn walked out of the living room with a look of equal parts happiness and determination on her face.
“Amazing .......”
“Hmm?”
I turned around and looked at Shirley.
She has been escorting me since a while ago.
It’s not just for personal safety that she is a guard in these cases.
Depending on the case, the aristocracy, because of their status, can lose just by “directly involving”.
This time it was the same, and even if the children were to get upset and attack me, I, as the prince, should not fight back directly.
It would ruin the nobleman’s status, and the other side would be guilty of causing trouble for the Prince.
That’s why I put Shirley in charge.
Shirley is a knight, not a nobleman.
If the children should do something, Shirley would take care of it and there would be no problem.
Shirley was staring at me with her mouth agape, looking impressed.
“What is it?”
“His First Highness and his use of people is totally–“
“Shirley.”
I cut off Shirley’s words.
“That’s enough, you can’t say that out loud even if you think it.”
“Y-yes! I’m very sorry.”
Shirley hurriedly apologized.
She apologized, but did not say anymore.
After that, she continued to stare at me with a look of respect.
The next morning.
I was summoned to the morning meeting of His Majesty and the ministers in the audience hall.
I was called in after I had gone through the government business, and I left the line of ministers and bowed to His Majesty on one knee.
After receiving the bow, His Majesty said.
“I heard about it, Noah. I heard that you defended Gilbert’s honor.”
“It was a coincidence, Your Majesty.”
He meant the black market slavers.
That means Brother Gilbert reported it himself.
You’re good.
Rather than hiding it, it’s better to offer it properly so that it looks like you have nothing to hide.
“However, there were some wicked people, using Gilbert’s name as a black slave trader. I wonder what the crime was in the black slave trade.”
“By imperial law, trafficking in unreported slaves is punishable by amputation of the dominant arm for the principal offender, and by military servitude for the second offender and below.”
“Is that so? First Vizier.”
“His Highness is correct, Your Majesty.”
The First Vizier, who was at the front of the column, answered with a slight bow.
“FumuFumu. By the way, was Noah injured? I heard that some of them got angry and attacked you.”
“Fortunately, I was able to turn it back.”
“I see. Well, it was Noah, so there was no way he could have been hurt. If it was me, I would have been beaten to a pulp while I was trying to decide whether or not to identify myself.”
“Then it would have been a crime of great blasphemy, punishable by death.”(TN: was confused whether to use Blasphemy or Disrespect)
The First Vizier replied to His Majesty as the conversation went on.
“I don’t think so.”
I countered.
“Under imperial law, the crime of disrespect does not apply to those who do not know His Majesty’s true identity, that is to say, if His Majesty was going incognito. In this case, it would be mere assault.”
At the moment I said this, the audience hall, which was already quiet, became even quieter.
The ministers were all staring at me.
I may have said too much, but “blasphemy” – in other words, whether or not to do something blasphemous to the emperor – is an inherently delicate subject.
In a metaphor like this, it might be better to say the word “disrespectful” as a cover, but it’s better to talk about it properly.
However, it’s also true that I said too much.
I was just thinking that I should apologize.
But then His Majesty suddenly started laughing.
“How about it, First Vizier, do I win this bet?”
“Umm, ......, what do you mean?”
His Majesty suddenly said “bet” and “win” and laughed with the First Vizier, and I was troubled to understand his intentions.
“I had a little bet with him. I was testing Noah to see if he could speak straightforwardly and only with the law.”
“Ha-haah ......”
Tested? For what?
“That’s great, Noah. No, I’ve known for six years that Noah is very strict when it comes to the law. I was just checking to make sure.”
“......?”
“Noah.”
“Yes.”
“In the name of the Emperor of the Empire, I hereby appoint Noah Ararat as Minister of Justice.”
.......
“‘”Oh, oh, oh!’?”””
After a breath of silence, a cheer went up from the ministers.
I was somewhat tested, and I was answering as usual.
And now I am appointed as the Minister of Justice. |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | 次の日、朝起きた俺は庭のあずまやの中にいた。
あずまやは」とも書くように、壁のない四本の柱のみで、その上に天井だけを乗っけた構造物だ。
涼しい風が吹き抜けていくあずまやの中で、メイドのゾーイをそばに侍らせながら、レヴィアタンとルティーヤーを戦わせていた。
鎧の指輪をリンクさせて、分身体を作り出させて、戦わせる。
水の魔剣に火の指輪、両方とも高い能力を持っているから、何かを壊さないように屋敷の中じゃなくて庭のあずまやでやった。
十回戦って、十回ともレヴィアタンの勝ちだった。
両方とも高い能力を持っているが、レヴィアタンの方が圧倒している。
それはそうとして。
「あがったな」
つぶやく俺、目線が戦闘後の人形から、隅っこのステータスに移る。
名前:ノア・アララート
法務親王大臣
性別:男
レベル:3/∞
体力 F+F 地 F
また、レベルが1上がった。
昨日と同じように、レヴィアタンとルティーヤーに戦わせて上がった。
今度は力階上がって、Eになっている。
「ゾーイ」
「分かりましたご主人様」
侍っていたゾーイが頷き、目を閉じて、俺にステータスチェックの魔法を掛ける。
俺の屋敷に入ってか以上。
俺から恩を受けて、恩返ししたいということで、彼女は色々覚えた。
ステータスチェックの魔法がその一つだ。
彼女がかけてくれた魔法で、ステータスが即座に浮かび上がる。
性別:男
レベル:3/∞
体力 F 地 F
相変わらず俺が見えてるのとまったく違って、「+」の後ろがなくて、合算? したようなのが表示される。
「すごい......本当にご自分が戦わないでレベルが上がった......こんなの聞いたことが無い」
「この人形達が戦った結果だ」
「じゃ、じゃあ。ずっと戦わせてれば延々と上がるのですか?」
「そんな簡単な話でもない。レベルを上げる為の経験値は、同じ相手からはやればやるほど下がっていく。2になるには一回戦ったらなったけど、2から3は10回だ」
「あっ......」
「この感じだと、レヴィアタンとルティーヤーを延々とやらせても、レベル4は100回以上だな。根気よくやればそれでもいいんだが」
「そうなんですね......残念です」
「まあ、これでまた一つ分かった」
「何をですか?」
「レヴィアタンやルティーヤーみたいなのをもっと集めたらいい、ってね。100回必要でも、
「確かに!」
ゾーイが納得した所で、俺は再びレヴィアタンとルティーヤーを戦わせ出した。
もうほとんど効果は無いが、それでもやらせた。
結構参考になる。
レヴィアタンとルティーヤーが戦っているのを見るのは。
二体の能力は頭に入っている、それが使えばどうなるのかを実際に見て、しかもの視点から見れるのは大きい。
だから俺は侍らしたゾーイに給仕させつつ、延々と戦うのを見ていた。
今の所、レヴィアタンの全勝だ。
ルティーヤーも動きを見る限り弱いって訳じゃないが、レヴィアタンに比べると一枚――いや二枚くらい格が落ちる。
だから圧倒されている。
同時に、ルティーヤーの性格も把握できた。
忠犬のレヴィアタンと違って、ルティーヤーはかなりの負けず嫌いだ。
俺の配下になっているのに、負けたらすぐに「次だ」という感情で俺に訴えかけてくる。
それを延々とやらせた。
「あっ」
攻撃をしのいだレヴィアタンの動きに隙を見つけた。
攻撃を受け流した後の硬直。
俺はレヴィアタンの技も使えるから、はっきりと見えた隙だ。
同時に、ルティーヤーの能力も使えるから、ルティーヤーではそれをついて破ることは出来ないだろうことも分かった。
残念だが、この隙をしのいでまたレヴィアタンの勝ちだな。
そう思った次の瞬間、ルティーヤーの動きが変わった。
しのがれたあと完全にバランスを崩したが、それを炎を吹き出すことで勢いを殺して持ち直した。
そして炎に包まれた手甲で、フルスイングしたハンマーパンチをレヴィアタンに叩き込む。
レヴィアタンの体が両断、のちに炎上する。
ルティーヤーの勝ちだ。
負けず嫌いなルティーヤーから、「どうだやったぞ!」という感情がダイレクトにつたわってきた。
「見事だルティーヤー。今の動き、一皮剥けた感じだな」
ルティーヤーから喜びの感情が流れ込んでくる。
同時に、視界の隅でステータスが動いた。
HP E+F 火 F+B
俺のレベルと能力は変わりなくて、火の「+」があがった。
「お前の方が成長したのか」
パチパチパチ。
背後からいきなり、拍手の音が聞こえてきた。
振り向くと、ヘンリー兄上が、新しい接客のメイド(エヴリンの後釜)に案内されてこっちに向かってきた。
「兄上」
「さすがだなノア。意志があるとはいえ、指輪をも成長させるとは」
「どこから見ていたんだ兄上」
俺は苦笑いした。
「少し前からな。面白そうなことをしていたから、つい」
「そうですか」
また苦笑いしていると、兄上はあずまやに入ってきて、俺の向かいに座った。
「それより、俺に何か用ですか兄上」
「ああ、実は、兵務省で管理しているモンスターの巣が熟した」
巣が熟した。
前世の俺にはない記憶で、皇室に、親王として産まれた後に知った言い回しだ。
皇室の男、親王は夭折を防ぐため、皇帝の許しがなくては実戦にでる事は出来ない。
だから俺は昨日までレベル1のままだ。
そして実戦――初陣での事故を防ぐために、あらかじめ手を加えた「それなりに安全な」狩り場、モンスターの巣を用意する事がある。
それは兵務省の管轄だ。
なるほど、それの準備が済んだって訳だ。
「陛下の許しも得た。だからお前の初陣の占いをする」
「占い?」
「これだ」
兄上はそう言って、継ぎ目のない箱を取り出して、俺に手渡した。
「これは?」
「有名な占い師の箱だ。これを開けると、必要なことを占ってくれる。今回は開けた人間の、初陣に必要な兵力を占う造りだ」
「この辺は慎重にやらねばならんのでな」
兄上は真顔になった。
「初陣に随行する兵が多すぎては、後々の汚点になってしまう。かといって少なすぎては、危険が生じて元も子もない。だからこうして適切な数を占うのだ」
「ちなみに」
兄上の表情が一変、にやりとして、イタズラっぽい笑顔を浮かべてきた。
「それ、一つで1万リィーンするぞ」
「高いですね」
親王になってから金銭感覚が
詐欺師なら笑い飛ばすところだが、持ってきたのがヘンリー兄上、兵務親王大臣の第四親王だ。
一万リィーンの高額にふさわしいアイテムだろうな。
「これをどうすれば?」
「なんでもいい、開ければ中に答えがある」
「わかりました」
俺はそう言って、力を箱に加えて、おしたりひねったりしてみた。
すると、継ぎ目のない箱が、糸のようにほぐれてしまった。
その糸が更にすぅと消えてなくなり、一枚の紙が残った。
その紙を掴んで、書いてある文字を読む――むっ。
「どうした......むっ」
立ち上がって、紙をのぞき込んできた兄上も驚いた。
紙には――「1」という数字だけがあった。
「これは......1人で十分、ということか?」
「そういうことだな。......すごいぞノア」
自分が持ってきた箱だからか、兄上は占いの結果が、俺の実力だと信じ切っていた。 | The next day, I woke up in the morning and found myself in the garden, in an Azumaya.[TN: Azumaya is a traditional arbor or summer pavilion found in formal Japanese gardens. “
The ‘Azumaya’, as it is also called, is a structure with no walls, just four pillars, and a ceiling on top of them.
[Like this one]
A cool breeze blew through the Azumaya, and with Zoe, the maid, by my side, I let Leviathan and Luthiya do mock battle.
I linked the Armor Rings to create altered bodies, and let them fight.
The Water Demon Sword and the fire ring were both very powerful, so we did it in a garden vestibule instead of inside the mansion so as not to break anything.
They fought ten times, and Leviathan won all ten times.
Both of them were highly skilled, but Leviathan was more dominant.
“It went up.”
I mumbled, my eyes shifting from the two figures after the battle to the status in the corner.
Name: Noah Ararat
Minister of Justice
Gender: Male
Level: / ∞
HPE+FMPF+FStrengthE+EStaminaF+FIntelligenceF+ESpiritF+FSpeedF+FDexterityF+FLuckF+F FireF+CWaterE+SWindFEarthFLight FDarknessF
My level went up by again.
Just like yesterday, I let Leviathan and Luthiya do mock battle.
This time, my strength has gone up one level, to E.
“Zoe.”
“Understood, Master.”
Zoe nodded, closed her eyes, and cast a status check spell on me.
It has been more than six years since she entered my residence.
She’s learned a lot of things because she’s been indebted to me and wants to return the favor.
One of the things she learned was the status check spell.
The magic she cast on me brings up my status instantly.
Gender: Male
HPEMPFStrengthDStaminaFIntelligenceESpiritFSpeedFDexterityFLuckF FireCWaterSSWindFEarthFLight FDarknessF
As usual, it’s completely different from what I can see, there’s no “+” after it, so it looks sum? Well it is displayed like this.
“Wow, ...... your level really went up without you fighting. ...... I’ve never heard of anything like this.”
“This is the result of these figures fighting.”
“T-Then. If they fight all the time, will your level go up endlessly?”
“It’s not that simple. The experience required to raise a level decreases the more you fight the same person. It took one fight to get to level , but it took ten to get from 2 to 3.”
“Ahh ......”
“If I let Leviathan and Luthiya continue to fight like this, I’ll get to level 4 over 100 times. If you’re patient, that’s fine.”
“I see. ...... it’s a shame.”
“Well, now I understand something else.”
“Understand what?”
“I’ve learned that it’s better to collect more like Leviathan and Luthiya because even if it takes 100 times, with 200 of them it’ll only take a second.
“Indeed!”
When Zoe convinced, I let Luthiya and Leviathan fight again.
It’s not nearly as effective anymore, but I still let them try.
It’s quite helpful.
Watching Leviathan and Luthier fight.
I know what they are capable of, and it’s great to see what happens when they use it, and from a third person’s perspective.
So I let Zoe serve me while I watched them fight endlessly.
So far, Leviathan was winning all the battles.
Luthiya is not weak as far as I can tell, but in comparison to Leviathan, a notch or two lower.
That’s why it was overwhelmed.
At the same time, I was able to understand Luthiya’s personality.
Unlike Leviathan, who is a loyal dog, Luthiya is a competitive one.
Even though it’s under my control, as soon as it loses, it immediately appeals to me with the emotion of “next”.[I am keeping it gender neutral]
And I let her do it endlessly.
“Ah!”
It found an opening in Leviathan’s movements after deflecting an attack.
It was stunned after the attack was deflected.
I can also use Leviathan’s techniques, so I could clearly see the gap.
At the same time, I knew that Lutiya would not be able to exploit it since I could also use its ability.
Unfortunately, Leviathan would win yet again by overcoming this gap.
Just as I thought this, Luthiya’s movements changed.
Though it lost its balance completely, it was able to regain it by blowing out flames to kill its momentum.
And then used the hand wrapped in flames to deliver a full swing hammer punch to Leviathan.
Leviathan’s body was severed in two and then burst into flames.
Luthiya had won.
Luthiya, who hates to lose, directly conveys the emotion, “I did it! I’ve done it!”.
“Nice work, Luthiya. You’ve really overcome yourself with that.”
A feeling of joy flowed from Luthiya.
At the same time, I saw a status move in the corner of my eye.
Level: 3 / ∞
HPE+FMPF+FStrengthE+EStaminaF+FIntelligenceF+ESpiritF+FSpeedF+FDexterityF+FLuckF+F FireF+BWaterE+SWindFEarthFLight FDarknessF
My level and ability remained the same, but the “+” in fire went up.
“You’ve grown more than I thought.”
Clap, clap, clap.
From behind me, I suddenly heard the sound of applause.
I turned around to see Brother Henry being led towards me by the new serving-maid (Evelyn’s Successor).
“Brother.”
‘As expected of you, Noah. Even though the ring has a will of its own, it still manages to grow.”
“Where were you watching from, brother?”
I chuckled.
“For a while now. It’s because you’ve been doing something interesting.”
“Is that so.”
As I laughed again, he walked into the room and sat down across from me.
“More than that, anything I can do for you, brother”
“Yeah, actually, the nest of monsters managed by the Ministry of Military Affairs has matured.”
The nest has matured.
It was a phrase that I learned after I was born into the imperial family as a prince, something I didn’t remember from my previous life.
A man of the imperial family, a prince, cannot go into battle without the emperor’s permission, to prevent his untimely death.
That’s why I was still at level 1 until yesterday.
And in order to prevent accidents in the actual battle – the first battle – there is a “reasonably safe” hunting ground, a monster’s nest that has been prepared in advance.
That is under the jurisdiction of the Ministry of Military Affairs.
Well, it seems that it’s ready.
“His Majesty has granted me permission. So I shall divine your first battle.”
“Divination?”
“Here.”
He then took out a seamless box and handed it to me.
“What’s this?”
“It’s a box from a famous fortune-teller. When you open it, it will tell you what you need to know. This time, it’s designed to tell you the strength you need for your first battle.”
“We have to be very careful in this area.”
My brother’s face became serious.
“If we have too many men accompanying us on the first battle, it will be a disgrace. And if there are too few, the danger will be too great. That is why we divine the appropriate number.”
“By the way...”
Brother’s expression changed dramatically, and he smiled mischievously.
“That’s 10,000 leen a piece.”
“That’s expensive.”
My sense of money has become more sophisticated since I became a Prince, but I was still surprised by this.
If I were a con man, I would have laughed it off, but the person who brought it to me was Brother Henry, the Fourth Prince, Minister of Military Affairs.
It would be an item worthy of the high price of ten thousand leens.
“What should I do with this?”
“Anything. Open it and you’ll find the answer inside.”
“Okay.”
With that, I applied force to the box, pushing and twisting it.
Then the seamless box came unraveled like a thread.
The thread disappeared further and further, and a piece of paper remained.
I grabbed the paper and read the words on it – mmm.
” what is...... mmm.”
My brother, who stood up and looked at the paper, was also surprised.
The only thing on the paper was the number “1”.
“Does this mean that ......just 1 person is enough?”
“That’s what it means. ...... you’re amazing, Noah.”
Perhaps because he had brought the box with him, my brother was convinced that the result of the fortune-telling was my ability. |
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} | 「そこのお前達」
茫然自失となっていを無視して、離れたところで跪いている兵士に呼びかけた。
「は、はっ!」
兵士の隊長だと思われる男が、跪いたまま器用に足を動かして、一歩前に進み出て、俺の呼びかけに応じた。
皇帝だと身分を明かした俺に、兵士達は天上人に向ける畏怖混じりの敬意を向けてきた。
「この二人をとりあえず牢にぶち込め。それと何人かは余と一緒に来い」
「はっ。ど、どこにでありますか?」
「オルコット総督の屋敷だ」
兵士を引き連れて、デュセル総督オルコットの屋敷にやってきた。
夜であるのにもかかわらず、屋敷ははっきりと分かるくらい威容を誇っていた。
それほどの屋敷だ、当然門番はおり、
「止まれ! 何者だ!」
と、当たり前のように誰何してきた。
俺はそれに応じなかった。
既に皇帝だと身分を明かしている、連れてきた兵士が当たり前の行動をした。
有無を言わさず門番の兵士を取り押さえて、完全に無力化した。
「どうぞ」
「うむ」
正門が開かれて、俺は屋敷の中に入った。
表の騒ぎは早速中に伝わった。
屋敷に入った直後のロビーに大量の使用人と、数日前、川の上で見かけた男の姿があった。
あの、黄金をばらまいていた男。
デュセル総督、オルコット当人だ。
「何者だ。ここがどこなのか分かっての狼藉か」
「無礼な! 陛下の御前だぞ!」
「陛下、だと?」
オルコットは胡乱げなものを見る目で俺を見た。
オルコットは俺が任命した総督ではなく、実際に会ったことはない。
総督であっても、長らく地方に居続けたものなら、
と面識がなくても不思議はない。
だから俺は――。
「これで納得か?」
そう言いながら、身分を明かす為のプレッシャーを放った。
オルコットも、そして周りにいる使用人達も。
全員が一斉に血相を変えて、その場で跪いた。
「陛下直々の降臨とは知らず、失礼を――」
「そんな事はどうでもいい。それよりも――オルコット、自分の罪を分かっているな?」
「――っ!」
オルコットは跪き、頭を下げたまま、びくっと震えた。
が、そんな動揺も一瞬だけの事、オルコットはすぐに動揺で傾きかけた心を立て直した。
「認めないか。今更とぼけても遅いぞ」
「陛下が何を指しているのか分かりかねます。たしかに出迎えをしなかったことは認めますが、陛下が都を発ったという公文書はなく、お忍びである以上罪は無い――」
「あくまで認めないか。総督の俸禄は年いくらだ? 黄金をばら撒けるほど貰えてるのか?」
「はて、なんのことでございましょう」
オルコットは更にすっとぼけた。
最初こそ動揺はあったが、腹を括ったらしくて、かなり落ち着いてきた。
さて、どの証拠から突きつけてやるか――。
いきなり割り込んできた若い声。
そっちに振り向くと、使用人の中から、一人の若い男が俺を見つめていた。
服装を見るに、使用人の中でも下級の使用人で、多分奴隷かなんかなのだろう。
その男は何か言いたいという目をしていたが、
「弁えろ、陛下の御前だぞ」
オルコットは、主人として当たり前の叱責をした。
身分の差というのはそういうものだ。
皇帝と総督が話している時に、使用人や奴隷が口を挟むなど言語道断。
この場で無礼打ちされても文句の言えない所業だ。
だが、
「かまわん。余に話したいことがあるのだろう? 言ってみろ」
俺――皇帝の許しがあればそれは問題にはならない。
「......」
その証拠に、オルコットも眉間をキツく寄せたが、何も言えなかった。
男はそんなオルコットを見て、息を飲んだ。
息を飲んで驚いた後、俺をじっと見て。
「ほ、本当に皇帝陛下なのですか?」
「そ、そうじゃなくて。皇帝陛下がこんなところにいるのが信じられなくて」
「なるほど?」
「本当に......本物......」
俺と若い奴隷、あまり意味があるとはいえないやりとりをした。
それを見てオルコットが不機嫌になったが――口を挟めない。
皇帝の俺が、話していい、言ってみろ、と許可を与えたのだ。
それは略式ながら、若い奴隷に直訴権を与えたということと同義だ。
皇帝自ら認めた直訴。
それを遮ってしまうのは不敬罪に当る行為。
だからオルコットは何も言えなかった。
一方で、それを理解しているのかいないのか。
若い奴隷はようやく、俺が皇帝であり、ここに出現した事に納得して。
「こ、皇帝陛下に見て欲しいものが」
「なんだ?」
「これです!」
男は衣服の前をはだけさせた。
いきなり何を――と思っていたら、服の裏地に何かが縫い込んでいるのが見えた。
男は縫い込みをビリビリと破った。
服の中から封筒を取り出して、両手で俺に差し出した。
「これは?」
「旦那様――オルコットの賄賂の証拠です」
絶句するオルコット。
直後、男に飛びかかって差し出したものに手を伸ばして掴み取ろうとしたが、
「ぐわっ!」
レヴィアタンの軽い威嚇で、へたり込んでまったく動けなくなった。
オルコットを止めてから、改めて男に聞いた。
「なんで証拠を持っている」
「お、俺、両親と妹をオルコットのせいで殺されたんです」
「復讐の為に潜入したわけか」
「はい! それで証拠を手に入れたはいいけど、信用できる人が見つからなくて。それに」
「下手に出すと揉消されてしまうから、ずっと隠して、使い時を待っていたんです」
「......ほう」
俺は感心した。
「お前、名前は」
「え? フ、フィル・モームっていいます」
「フィルか」
俺は自分でも分かるくらい、称賛の籠もった目でフィルを見つめた。
家族の復讐の為に奴隷に身をやつす事は珍しい話ではない。
潜入して、証拠を掴むことはそこまで難しいことでもない。
一番難しいのは、手に入れた切り札を、ずっと持ったまま、かつ効果的だと思った時に切れることだ。
さっきの無駄話、俺を皇帝なのかと念入りに確認した意味が分かった。
帝国皇帝、最高権力者だと念押ししてから、切り札を切ったのだ。
フィル・モーム。
この男は――。
「それを見せろ」
俺は証拠の書類を受け取って、パラパラと眺めた。
「フィル・モーム」
「は、はい!」
「よくやった。今からお前が総督を引き継げ」
「「「........................」」」
おれが言った瞬間、その場にいる全員が固まった。
当然だろうな。
だが。
「どうした、嫌なのか?」
「い、いえ。えっと......ありがとうございます!」
フィルは慌てて頭を下げた。
慌てすぎたからか、あるいは知識が無いからか。
フィルは作法もへったくれもない返事をした。
それだけではない。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
帝国皇帝
性別:男
レベル:17+1/∞
HP C+B 火 E+S+S
視界の隅っこに見えているHPの能力、その「+」があがった。
フィルは、まだまだ磨かれてない、才能の原石なんだと、俺は思った。
次の日の午後、「元」オルコットの屋敷。
オルコットが罷免され、この屋敷はひとまず俺の
そこの書斎で、俺は呼び戻したゾーイと向き合っていた。
「凄いです陛下」
昨夜の事を知ったゾーイは、めちゃくちゃ目を輝かせた。
「人材だと分かるやいなやの抜擢。さすが陛下です」
「あの勝負勘? は天性のもの、得がたいものだ。上手く育てたいものだ」
「陛下ならきっと大丈夫です!」
「それより、連中の財産没収はどうなってる」
「あっ、はい」
ゾーイは慌てて、手元の書類に視線を落とした。
オルコットを始めとする、今回の塩税に関わって投獄する連中の財産は没収する事にした。
それを早速やらせて、ゾーイに仕切らせてる。
「アシュリー――えっと、小生意気な方の男の家なんですが、ちょっとしたトラブルがあって」
「なんだ?」
「実は庭から人骨が発掘されまして、殺人の容疑もあるかも知れないと」
「......ふっ」
俺は笑った。
「ふっ......って、陛下?」
「よくある話だな」
「え?」
「財産没取するとき、兵士が行って監視したり、集計したりするだろう?」
「は、はい」
「それでな、大抵の場合、こそっと対象者の資産をポケットに入れて持ち帰るんだ。まあ、ちょっとした不正だ。そしてそれは結構邪魔される」
「邪魔、ですか?」
「ああ、対象の妻や妾などにだ。ああいう手合いは、例えこういう時でも、感情剥き出しのままで泣きわめくからな。こんなのおかしい、なんで私達だけ。ってな」
「あ......」
「で、それが暴走して、兵士達の『小遣い稼ぎ』を邪魔すると、嫌がらせをされる。今回だと、人骨埋めて殺人容疑の冤罪をふっかけられたってわけだ」
「さすが」が早くないか? って不思議になってゾーイを見た。
「もう冤罪だって分かってます。出てきた人骨が、肋骨とか骨盤で見ると男と女の混合みたいで、掘り出した場所も、水を染みこませてみたら最近掘り返した場所だってわかりました」
現場では早速バレてるってわけだ。
「やっぱり陛下は凄い。報告する前にすぐに分かってしまうなんて」
俺は再び、ふっ、と笑った。
かつて法務親王大臣をやっていた俺だ。
罪人の財産没収を多く実行してきたから、その手口はよく分かる。
それだけの話だ。
「さて......概算でいい、どれくらいになるんだ」
ゾーイは書類を見て、息を飲んだ。
「どうした」
「その......2000万リィーンは下らないだろう、って」
「かなり溜め込んだな」
ある意味尊敬するよ、と思いつつ。
「2000万か......」
今の国庫は500万もない。
それが一気に2000万増だ。
そのうえ更に、塩税の正常化も望める。
これだけの金があれば、結構な事ができるぞ、と俺は思ったのだった。 | “You guys over there.”
Ignoring the two stunned men, I called out to a group of soldiers kneeling at a distance.
“Y-Yes!”
A man who appeared to be the Captain of the soldiers responded to my call, moving his feet dexterously as he knelt and stepped forward.
The soldiers gave me the awe-struck respect they would give to a superior being as I revealed my identity as the Emperor.
“Put these two in prison for now. And some of you, come with me.”
“Yes. W-Where to, sire?
“The residence of Governor Olcott.”
With soldiers in tow, we arrived at the residence of Dussel Governor, Olcott.
Even though it was nighttime, the house was so majestic that it was clearly visible.
With such a mansion, it was only natural that there would be a gatekeeper to guard it.
“Stop! Who are you?”
And, they asked me who I was, as a matter of course.
I did not respond.
The soldier who had brought me here, who I had revealed my identity as the Emperor, acted as a matter of course.
They seized the gatekeeper without saying anything and completely neutralized him.
“Please.”
“Umu.”
The main gate was opened and I entered the compound.
The commotion in the front quickly spread inside.
I saw a large number of servants and the man I had seen on the river a few days before in the lobby immediately after entering the mansion.
That man was the one who had scattered the gold.
It was Dusell’s Governor, Olcott himself.
“Who are you? Do you know where you are?”
“You insolent! You’re in the presence of His Majesty!”
“His Majesty?”
Olcott looked at me with a suspicious look.
It’s no wonder because he doesn’t know me.
Olcott is not the Governor I appointed, and never met in person.
Even if he is the Governor, it would not be surprising if he has never met me when I was Prince even though he has been in the region for a long time.
So I–
“Is this satisfactory?”
Saying this, I released the pressure to reveal my identity.
And Olcott with all the servants around him.
All of their expressions changed and they all knelt.
“I beg your pardon, I didn’t know it was His Majesty’s direct advent...”
“I don’t care about that. More than that–Olcott, you know your own sin, don’t you?”
“–!”
Olcott kneeled down, trembling as he kept his head lowered.
But such agitation was only for a moment, and Olcott quickly regained his composure, which had almost been shaken by the agitation.
“Not admitting, huh. It’s too late for that now, though.”
“I don’t know what His Majesty is referring to. I admit that I did not greet you, but there is no official record of your departure from the capital, and as long as you were on a personal visit, there is no crime–“
“You still refuse to admit it, huh. How much is a Governor’s salary? Is it enough to scatter gold around?”
“Well, what are you referring to?”
Olcott shrugged his shoulders.
He was agitated at first, but he seemed to have calmed down.
Now, which evidence should I start with?
A young voice suddenly interrupted me.
When I turned around, I saw a young man watching me from among the servants.
Looking at his clothes, I guess he was a low-ranked servant, probably a slave or something.
He had a look in his eyes that said he wanted to say something.
“Mind your manners, you are in the presence of His Majesty”
Olcott reprimanded him as a master should.
That is the way it is with status differences.
It is outrageous for a servant more so for a slave to interrupt the conversation between the Emperor and the Governor.
One can’t complain even if one were to be disrespected here and there.
However,
“It doesn’t matter. You have something to tell me, don’t you? Tell me.”
With I–The Emperor’s permission, it doesn’t matter.
“......”
As proof, Olcott frowned, but could not say anything.
The man gulped as he saw Olcott like that.
After taking a breath and being surprised, he stared at me.
“A-are you really the Emperor?”
“Well, that’s not what I meant. I just can’t believe that the Emperor would be here.”
“Is that so?”
“Really ...... the thing is ......”
The young slave and I had a not very meaningful exchange.
Olcott got grumpy when he saw it – but couldn’t interject.
I, the Emperor, gave him permission to speak and say what he wanted to say.
It was the equivalent of giving the young slave the right of direct appeal, albeit summarily.
The Emperor himself had granted the right of direct appeal.
To interrupt him would be an act of disrespect.
Therefore, Olcott could not say anything.
On the other hand, does the young slave understand this or not?
The young man was finally convinced that I was the Emperor and that I had appeared here.
“T-there’s something I want the Emperor to see.”
“What is it?”
“This!”
The young man removed the front of his garment.
I was wondering what he was suddenly doing when I saw something sewn into the lining of the garment.
The man ripped open the stitching.
He took out an envelope from inside his clothes and held it out to me.
‘What’s this?’
“My Lord–it’s the evidence of Olcott’s bribe.”
“Waa!”
Olcott exclaimed.
He then immediately jumped on the man and tried to reach out to grab what the young man was offering but,
“Gwaa!”
Leviathan’s mild intimidation caused him to slump down and not be able to move at all.
After stopping Olcott, I asked the man again.
“Why do you have proof?”
“M-My parents and my sister were killed because of Olcott.”
“So you went undercover to get revenge.”
“Yes! I got the evidence, but I couldn’t find anyone I could trust. Besides...”
“I had to keep it under wraps and wait for the right moment to use it because if I didn’t, it would be buried under the rug.”
“......”
I was impressed.
“What’s your name?”
“Eh? P-Phil Mohm.”
“Phil, huh.”
I looked at him admiringly so much so that even others could tell.
It’s not uncommon for people to turn themselves into slaves to avenge their families.
It is not that difficult to infiltrate and get evidence.
The most difficult thing is to hold on to the trump card in your hand for as long as you can and to snap it when you think it is effective.
I now understand what he meant earlier when he wasted no time in carefully checking that I was the Emperor.
He made sure that I am the Emperor, the supreme power of the Empire, and used his trump card.
Phil Mohm.
This fellow...
“Show it to me.”
I took the documented evidence and looked at it.
“Phil Mohm.”
“Well done. From now on, you are the Governor.”[TN: LOL]
“””.........................”””
As soon as I said that, everyone in the room froze.
Of course they did.
But.
“What’s wrong, you don’t want to be?”
“N-not that. Umm ......thank you very much!”
Phil bowed his head in a panic.
Either because he was too flustered or because he didn’t understand the situation.
Phil’s response lacked any manners.
But that’s not it.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Empire Emperor
Gender: Male
Level: + / ∞
HPC+BMPD+CStrengthC+SStaminaD+CIntelligenceD+BSpiritE+CSpeedE+CDexterityE+CLuckD+C FireE+S+SWaterC+SSWindE+CEarthE+CLight E+BDarknessE+B
HP’s stat that I can see out of the corner of my eye, it had it’s ‘+’ went up.
I thought that Phil was a rough gem, a talent that has yet to be polished.
The next afternoon, the ‘Former’ Olcott residence.
After Olcott was dismissed from office, I decided to use this place as my temporary residence.
In the study there, I met Zoe, whom I had called back.
“Your Majesty, how wonderful!”
Zoe’s eyes lit up when she heard what had happened last night.
“You selected him as soon as you discovered the right person for the job. As expected of His Majesty.”
“That good perception? It’s a natural thing, hard to get. I hope we can nurture him well.”
“It’s His Majesty, so it’ll be alright!”
“More importantly, how is the confiscation of their property coming along?”
“Ah, yes.”
Zoe hurriedly looked at the documents in her hand.
Olcott and the others who will be imprisoned for the salt tax will have their property confiscated.
I’m having that done as soon as possible, and I’m putting Zoe in charge.
“Ashley–well, the cheeky one’s residence, there’s a bit of a problem.”
“What is it”
“Well, actually, some human remains were unearthed in the yard, and they think he might be suspected of murder.”
“.......Fu”
I laughed.
“Fu........., Your Majesty?”
“That’s a common occurrence.”
“Eh?”
“When you’re confiscating property, the soldiers go there to monitor it, tally it up, right?”
“Y-Yes.”
“And, most of the time, they’ll sneak the subject’s assets back into their pockets. Well, it’s a little bit of a scam. And it’s pretty annoying.”
“Annoying, sir?”
“Yeah, the subject’s wives, concubines, etc. Those sorts of people, even in a situation like this, will cry and scream with their emotions bare. They will say, why is it only us”
“Ah, ......”
“So, when it gets out of control and interferes with the soldiers’ ‘pocket earnings,’ they are harassed. In this case, they bury human remains and falsely accuse them of murder.”
Isn’t ‘As expected’ too soon? I looked at Zoe, wondering.
“I already know it’s a false accusation. The ribs and pelvis of the human bones that came out looks like a mixture of male and female, and when soaked with water, I found out that the place where they were dug up was recent.”
So, it was quickly discovered at the site.
“Your Majesty is amazing. I can’t believe that you could figure it out right away before I even reported it to you.”
I smiled again.
I used to be the Minister of Justice.
Because of my experience in confiscating the property of many criminals, I know exactly how they do it.
That’s it.
“Now, ......, give me a rough estimate of how much will it be?”
Zoe looked at the paperwork and gulped.
“What is it?”
“Well ...... no less than million reens.”
“That’s quite an accumulation.”
While thinking that I admire them in a way.
“0 million ......”
The current national treasury is less than 5 million.
That’s an increase of 20 million all at once.
And on top of that, we can expect the normalization of the salt tax.
With this much money, we can do a lot of things, I thought. |
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} | 翌朝、俺は朝日の中目覚めた。
目を覚まして、ベッドから起き上がると、ほぼ同時に寝室のドアがノックされた。
「ご主人様、よろしいでしょうか」
寝起きでまだ開ききらないまぶたを閉じたままで応じる。
するとドアが開き、気配で数人、部屋に入ってくるのが分かった。
先頭にいるのはドアをノックして許可を求めてきたメアリーだろう。
それ以外は彼女の使用人だろうが――。
リヴァイアサンの気配が微かに揺れたのを感じた。
例の俺に敵意を剥き出しにしている少女がいるのだな、と。
リヴァイアサンの相変わらずの忠犬ぶりに、思わず笑みがこぼれた。
「失礼します。おみ足を」
俺はベッドから降りて、自分の両足ですっくと立ち上がった。
目蓋は閉じたまま、全身を脱力する。
すると、メアリーが慣れた手つきで俺の寝間着を脱がせてくれた。
俺はあくまで自然体のまま脱がされて全裸になった。
長年親王邸で使用人をやっていたメアリーも、当然主の裸になにか反応することなく朝の身支度をやってくれた。
が、他の使用人たちは違った。
俺が全裸になると、全員に動揺したのが気配で分かった。
「申し訳ございませんご主人様――あなた達、手が止まっているわよ」
「すみません!!」
俺に一言断ってからの、メアリーの叱責。
それをきっかけに、使用人達が動き出した。
基本はやっぱり、メアリーだ。
俺の服を脱がせ、新しい服を着せて。
髪をとかし顔を洗う。
特に耳の中を丁寧に蒸しタオルでふやかし、綺麗にしてくれた。
これはオードリーと出会った頃くらいに教わったことだ。
オードリーは、普通は見ない・見えない所こそ綺麗にすべきだという持論の持ち主だった。
それは政道にもつながる事で、俺は素直に取り入れた。
それ以来、親王邸の使用人達には、毎朝特に耳のあたりを綺麗にしてもらっている。
それをメアリーが、親王邸にいた頃と同じ感覚でやってくれた。
耳のまわりが綺麗になった頃には、俺の眠気も完全にさえた。
「ごくろう」
「恐れ入ります、ご主人様。では――」
「ああ、少し待て。メアリーと――その子は残ってくれ」
俺は気配で感じ取った、件の少女を指名した。
少女は驚き、より一層俺に警戒したのがわかった。
「かしこまりました。ではあなた達、先に戻っていなさい」
「「はい」」
メアリーの命令に、他の使用人達は疑問にも思うことなく、部屋から出て行った。
俺の目の前に、メアリーと例の少女だけが残った。
「お前、名前は?」
「え?」
少女は戸惑った。
「ご主人様から直接聞かれるは光栄なことなのよ。聞かれたことを素直に答えなさい」
「は、はい。アイビーって、言います」
少女――アイビーは緊張気味で答えた。
俺の事を警戒して敵意めいたものを向けては来るものの、実際は「主人の主人」と直接会話することは緊張するようだ。
俺はくすっと笑った。
「そう緊張しなくていい。メアリー、いい子を拾ったな」
「はい。今いる子達のなかで一番賢い娘です」
「そうだろうな。俺の世話なんてやり慣れてないだろうに、それでもお前のサポートは上手くやってた。あんなふうにテキパキ先読みしていいあんばいでやれるのはなかなかいない」
「さすがご主人様、ご慧眼恐れ入りました。私もそれが出来るようになったのは、ご主人様に拾われて一年経った位の頃です」
「お前はお前で並以上には物覚えがよかった」
「世辞を言ってるつもりは無いぞ。ジョンを外に出したのは、お前がいざっていう時のブレーキ役、サポート役ができると思ったからだ」
「......」
メアリーは驚き、言葉を失った。
「ジョンお前わせて1.5――通常の家人の1.5倍は期待できると踏んで外に出した」
「――っ! ありがとうございます!! ご主人様にそこまで褒めていただけて......感謝の言葉もないです」
メアリーは言葉通り、感涙してボロボロと泣き出した。
「そう泣くな。褒めているのだからな」
「は、はい。ありがとうございます!」
「今の事はジョンには話すな、お前が上手くジョンを乗りこなせ。お前がいればジョンは上手く功績を積めるだろう。そうしたら頃合いをみてジョンを中枢に呼び戻して、今以上に働いてもらう」
「はい! ちゃんとあの人のフォローをします」
メアリーへの激励が済んで、俺は改めてアイビーを見た。
「しかし残念だ。余が先に見つけていればな」
そうならアイビーを連れていったのに、という意味で言った。
すると、メアリーがその場で俺に跪いてきた。
「ご主人様、是非彼女を連れて行って下さい」
「メアリー様!?」
メアリーにいきなりそんなことを言われて、アイビーは悲鳴に近い声を上げて、信じられないような目でメアリーを見つめた。
「ん? いいのか? 手元に置いておきたくはないのか?」
「もちろんです。こんなところでくすぶっているより、ご主人様の下で学んだ方が断然彼女のためになります」
「一概にそうともいえんがな」
俺はふっと笑った。
まあでも、悪いようにするつもりもない。
「メアリー様! 私は、メアリー様にまだご恩を返していないです。だから――」
「おバカ! これ以上の恩返しは無いのよ」
「え?」
戸惑うアイビー。
さっきとは違う意味で、どういう事なのか? とメアリーを見つめる。
「陛下は常々『人は宝』だとおっしゃってるの」
メアリーはそこで一旦言葉を切って、俺の方をみた。
俺は無言で頷き、それを肯定してやった。
するとメアリーは再びアイビーの方をむき、更に続ける。
「陛下のお眼鏡にかなう人間を献上出来るなんて、どんな金銀財宝を献上することよりも素晴らしい事よ」
「そうだな。100万リィーンに匹敵するな」
「そ、そんなに......?」
せっかくだから、具体的な数字を口にした。
アイビーはますます驚いた。
「......ほ、本当に。メアリー様への恩返しに......?」
アイビーはおそるおそる、俺とメアリーの顔を見比べ、うかがうように聞いてきた。
「うむ」
「わ、わかりました。ついて......いきます」
アイビーはおずおずと言った。
まだメアリーへの恩返しで、という感じだが、例えそうだとしても有望そうな人材を手にしたという事に変わりは無い。
その事に、朝から満足感を得て、今日はいい一日になりそうだと何となく思ったのだった。
朝食の後、俺はジョンの護衛で出発した。
ジョンは馬車を用意してくれて、自分の管轄の境まで護衛するといった。
それを受け入れつつ、ジョンを馬車に同乗させて、向かい合って座る。
「アイビーの様な子供は」
「年間どれくらい引き取っている」
「えっと、十人か、もうちょっとか......」
ジョンは答えつつ、「なんでそんなことを聞くの?」って不思議そうな顔をしていた。
「お前達夫婦の生活を圧迫してるだろ。賄賂とかもらわない限り、お前の俸禄じゃそんなに保護できないし養えないはずだ」
「そ、それは......もちろん! 賄賂なんか誓ってもらってはないです」
「しってる。人間は普段の生活が空気にでる。お前からは上品なのも成金なのも感じない。それは疑っていない」
「ありがとうございます!」
「むしろ逆だ。何も受け取ってないならお前達夫婦の生活を圧迫しているのではないかという話だ」
「は、はい......だ、大丈夫です、それは。メアリーも分かってくれてます」
ジョンはまっすぐ俺を見つめ、力強く言い切った。
そりゃわかるだろう、メアリーも出自は同じなんだから。
「余の目的を話してやろう」
「は、はあ......」
まったく脈絡のない話をされて、困惑してるのがありありと見て取れた。
「ジョンは、余が何のために皇帝をやっていると思う?」
「ノア様の志は家人がみな理解してます!」
うってかわって、ジョンは強く力説した。
「俺達のような人間でも安心して過ごせるような、泰平の世を作りあげることです」
俺はフッと微笑みながら、言った。
ジョンは目を見開くほど驚いた。
今の答えがこんなに点数が低いとは思ってもなかった顔だ。
「それは間違ってはいないが、目的ではない。余の中ではむしろ『手段』に分類される」
「目的......手段......」
「世の真の目的は、余を見いだし、帝位を譲ってくださった先帝陛下を名君にすること」
「へ、陛下はしっかりと名君――」
「今はそうであろう。しかし余に失政があれば、歴史書では後継者を見る目がなかったと一筆が加えられる。だから、余の代では大きな動乱があってはならない。何があってもだ」
「......オスカー様がなんか企んでるんですか?」
ジョンが急にそんなことを言い出した。
今度は俺が驚いた。
ジョンの察し方にびっくりした。
それはそうだ。
オスカーの野心は未だに消えていない。帝位を虎視眈々と狙っている。
万が一オスカーが帝位を狙って乱を起こせば、歴史書ではそれは先帝のミスとして書き加えられる。
オスカーは第八親王、俺はもと王だ。
俺がもし第一親王――長男であれば帝位をもらったあとの反乱は父上のミスには見られないのだが、十三親王だからどうしたって父上が「あえて」という形になる。
あえて俺を選んだのに、その結果兄弟不和からの反乱が起こった。
だから俺からすれば、オスカーの動向は常に気を配っていて、警戒している相手だ。
それを、ジョンが読み取った。
俺はふっと微笑み、答えた。
「そんな事はない。あるはずがない。あってはならない」
三段活用的な俺の言い方に、ジョンはますます顔を険しくさせた。
ないないないの三連発だが、事実上あると言ってるような物だ。
「ご主人様。俺、いつでもいけます。いや、なんかあったら勝手に暴走
真顔でいうジョン。
それはつまり、自分が鉄砲玉としてオスカーを暗殺すると言う話だ。
「押さえろ。余の家人がそうなったら、家人の制御もできなかった男に帝位を渡した先帝に――ということになる」
「す、すみません!!」
ジョンはハッとして、慌てて頭を下げた。
「そういうわけだから、余の目的がそうである以上、オスカーには手をだせん。お前もだすな」
「はい! さすがご主人様。俺達は不思議だったんです、ご主人様がなんであんなにオスカー様をあまやかすんだろうって」
「ふっ、目的がそうだからそうせざるをえないだけだ」
俺は横を向いた。
馬車の壁越しに遠くをみつめる、ものすごく遠い目をした。
まあ、それは今どうでもいい。
俺はジョンに振り向いた。
「お前の察しがよくて話が早い。目的に応じて、手段が変わるのは分かったな?」
「はい!」
「では、お前の目的はなんだ?」
「俺の......」
「どんな目的で子供達を引き取っている?」
「......っ!!」
しばらく考えた後、ジョンはハッとした。
その顔のまま俺を見つめることしばし。
そして――。
「ご主人様、この土地で救貧院を作りたいのですが、許可をいただけますか?」
俺はジョンを褒めた。
「そうだ。貧民を救いたいということなら公的にやればいい、なんなら余に直訴すればいい。余は名君たらんとしているから、その手の話は無下には却下しない」
「はい!」
「よくやった。賢いなお前は」
「ご主人様の教育のおかげです! すごいのはご主人様です!!」
ジョンは言葉通り、ますます感動した、心酔しきった目で俺を見つめた。
「おって沙汰を下す、計画を練っておけ」
ジョンは大きく頷いたあと、表情を切り替え、おそるおそる聞いてきた。
「ご主人様......足りなかった十点はなんですか?」
「お前は今、処罰覚悟――死を覚悟して直訴しただろ」
「余に対しても他に対してもそうだ。人は宝だ、死を覚悟して何かをするのはやめろ」
「――っ! わかりました!! さすがご主人様だ......」
ジョンはいろいろ理解してくれたようだ。
いずれ帝国の中枢に呼び戻したい人材だから、会えるときに教えられるだけ教えておこうと。
それが出来たことに、俺は満足したのだった。 | The next morning I awoke in the morning sun.
I woke up, got out of bed, and at about the same time, there was a knock at my bedroom door.
“Master, may I come in?”
I responded with my eyelids still not fully open from sleep.
Then the door opened and I noticed several people entering the room.
The first one was probably Mary, who knocked on the door and asked for permission.
The rest of them are probably her servants.
I felt Livyathan’s presence shake slightly.
It must be that girl who is showing hostility toward me, I thought.
I couldn’t help but smile at Livyathan’s usual loyalty.
“Excuse me. Please be on your feet.”
I got off the bed and stood up on my feet.
With my eyelids closed, I relaxed my entire body.
Then with a familiar hand, Mary helped me out of my nightgown.
I was undressed in my natural state and completely naked.
Mary, who had been a servant in the Imperial Residence for many years, naturally did not react to her Master’s nudity and helped me to get ready in the morning.
But the other servants were different.
When I stripped naked, I could see that they were all shaken up at the same time.
“I apologize, Master–my hands are full here.:
“Excuse me!”
After apologizing to me, Mary reprimanded the servants.
And with that, the servants began to move.
It was mostly Mary though.
She took off my clothes and put on new clothes.
After that, she brushed my hair and washed my face.
Especially, she cleaned my ears by carefully blotting them with a steaming towel.
This is something Audrey taught her about when she first met her.
Audrey believed that it is the parts of the body that are usually unnoticed should be cleaned.
This was also connected to politics, and I took it in stride.
Since then, the servants at the Imperial Residence cleaned my ears every morning.
Mary did that in the same sense as when she was at the Imperial Residence.
By the time the area around my ears was clean, I was completely sleepy.
“Excuse me, Master. Now then...”
“Oh, wait a minute. Mary and that girl stay behind.”
I picked out the girl, whom I sensed by her presence.
The girl was surprised, and I could see she was warier towards me.
“Very well. Then you guys go back ahead of me.”
“”Yes.””
At Mary’s command, the other servants left the room without question.
Only Mary and the girl remained before me.
“What is your name?”
“Eh?”
The girl was puzzled.
“It is an honor to be asked directly by Master. You must answer the question honestly.”
“Y-Yes. My name is Ivy.”
The girl– Ivy, answered nervously.
Although she was cautious of me and was hostile toward me, she actually seemed nervous about talking directly to her ‘Master’s Master’.
I chuckled.
“No need to be so nervous. Mary, you picked up a nice girl.”
“Yes. She is the smartest of all the girls we have.”
“I’m sure she is. Even though she’s not used to taking care of me, she’s been very good at supporting you. It’s not easy to be able to anticipate and anticipate quickly like that, and do it in a good way.”
“I am very impressed with your wise words, Master. I became able to do that about a year after the master picked me up.”
“You were able to remember things better than most.”
“I’m not trying to flatter you. I let John out because I thought you could act as his brakes and support when the time came.”
“......”
Mary was startled and speechless.
“John’s a seven, and you’re an eight. I figured you two together would make .–one and a half times what I’d expect from a regular retainer–so I let you out.”[TN: It’s like rating someone out of , and combined they got 5.... bla bla bla ...acting as one entity would be 1.5 times the single]
“–! Thank you very much! I can’t thank you enough ...... for giving me that much praise from you, Master”
Mary was moved to tears and burst into ragged tears as she said.
“Don’t cry so. It’s a compliment.”
“Y-yes. Thank you very much!”
“Don’t tell him about what happened, but you will get him through it. With you in his life, he will be more successful. Then, when the time is right, bring him back to the center and have him work even harder than he is now.”
“Yes! I’ll be sure to follow up with him.”
“hmm”
I looked at Ivy again.
“It’s a shame, though. If only I had found her first.”
I meant if I had, I would have taken Ivy with me.
Then Mary knelt down in front of me.
“Master, please take her with you.”
“Mary-sama!?”
At Mary’s sudden remark, Ivy almost screamed and stared at Mary in disbelief.
“Hmm? Are you sure? Don’t you want to keep her close?”
“Of course I do. Instead of smoldering in a place like this, it would definitely be better for her to learn under Master.”
“That’s not entirely true, though.”
I chuckled.
Well, I don’t intend to make it worse.
“Mary-sama! I haven’t repaid my debt to Mary-sama yet. So–“
“Silly girl! There’s no better way for you to repay back.”
“Eh?”
Ivy was puzzled.
Why was it something different than before? she looked at Mary with those questioning eyes.
“His Majesty always says, ‘People are treasures’.”
Mary cut off her words there and looked at me.
I nodded my head in silent affirmation.
Then Mary turned to Ivy again and continued.
“To be able to present a human being who can satisfy His Majesty’s eyes is more wonderful than presenting any gold, silver, or treasure.”
“That’s right. It’s the equivalent to 1 million reens.”
“T-That much......?”
Since I gave her a specific number.
Ivy was even more surprised.
“......, R-really. I can return Mary-sama’s favor with a ......?”
Ivy looked at me and at Mary and asked me as if she were trying to figure out what I was going to say.
“Umu.”
“I-I understand. I’ll follow you .......”
Ivy said timidly.
She still felt like she was returning the favor to Mary, but even if she was, it didn’t change the fact that she was a very promising recruit.
I felt a sense of satisfaction this morning, and I vaguely thought that today was going to be a good day.
After breakfast, I set out with John’s escort.
John provided a carriage and said he would escort me to the border of his jurisdiction.
While accepting this, I let John ride with me in the carriage and we sat facing each other.
“Children like Ivy.”
“How many do you take in a year?”
“Let’s see, ten, maybe a few more. ......”
John answered, “Why do you ask that?” He looked at me strangely.
“That’s putting a strain on you and your wife’s lives. Your stipend is not enough to protect and support you unless you take a bribe or something.”
“T-That’s ...... of course! I didn’t take a bribe, I swear.”
“I know. People’s everyday lives are reflected in the air. I don’t sense any elegance or richness in you. I don’t doubt that.”
“Thank you very much!”
“It’s rather the opposite. If you’re not receiving anything, then you’re putting a squeeze on your life together.”
“Y-yes. ......, it’s all right, sire. And Mary understands that.”
John looked me straight in the eye and assured me emphatically
It’s understandable because Mary is also from the same background.
“Let me tell you what my purpose is.”
“Y-yes, .......”
He was obviously puzzled by this completely out-of-context conversation.
“John, what do you think my purpose is as the Emperor?
“Every retainer understands your ambition, Master Noah!”
In turn, John strongly insisted.
“It is to create a peaceful world where people like us can live in peace.”
I said with a smile.
John widened his eyes in surprise.
He had not expected such a low score for his answer.
“That’s not wrong, but it’s not the goal. In the grand context, it’s more like a ‘means’ to an end.”
“ends...... means......”
“The true purpose in the grand context is to make me, and the Former Emperor, who found me and gave me the Imperial Throne, into a great sovereign.”
“H-His Majesty is firmly a great lord...”
“For the present, perhaps. If there is any misbehavior on my part, the history books will add a note saying that the successor lacked discernment. Therefore, there must be no great upheaval in my reign. No matter what.”
“Is ...... Oscar-sama plotting something?”
John suddenly said something like that.
This time I was surprised.
I was surprised at John’s way of thinking.
That’s right.
Oscar’s ambition has not disappeared.
If Oscar should start a rebellion for the throne, the history books would add it as a mistake of the previous Emperor.
Oscar is the Eighth Prince, and I am the former Thirteenth Prince.
If I had been the First Prince, his rebellion after receiving the throne would not be seen as father’s mistake, but because I was the Thirteenth, it would be a “dare” on his part no matter how it happened.
He dared to choose me, and as a result, a rebellion broke out due to discord between the brothers.
So, from my point of view, Oscar is someone I am always on the lookout for and wary of.
John sensed that.
I smiled and replied.
“No, I don’t think so. It can’t be. It shouldn’t be.”
John’s face grew increasingly grim at my triple-entendre phrasing.[TN: triple-entendre means three different phrasings giving similar meaning]
I was saying No, No, No three times in a row, effectively telling him it was possible.
“Master. I’m always ready. No, if something happens, I can go berserk on my own.”
John says with a straight face.
That means he’s talking about assassinating Oscar himself, as a bullet.
“Hold it down. If my retainers do that, the former Emperor will be called a man who gave the throne to a man who couldn’t even control his own retainers.”
“I-I’m sorry!”
John was shocked and lowered his head in a panic.
“That’s why as far as I’m concerned, I won’t touch Oscar. And Neither do you.”
“Yes, sir! As expected of Master. We were wondering why Master was so soft on Oscar-sama.
“Well, it’s just because that’s what he wants, that’s all.”
I turned my head to the side.
And stared into the distance through the wall of the carriage with a very distant look.
Well, it doesn’t matter now.
I turned to John.
“You’re very perceptive and quick with your words. Do you understand that means change according to the purpose?”
“Then what is your purpose?”
“My .......”
“For what purpose do you take in these children?”
“......!”
After thinking for a while, John gasped.
He stared at me with that look on his face for a long time.
Then he said...
“Master, I want to build a relief shelter on this land, will you allow me to do so?”
I praised John.
“Well done. If you want to save the poor, you can do it publicly, or you can appeal directly to me. I’m trying to be a great ruler, so I won’t reject that kind of thing outright.”
“Yes!”
“Well done. You’re clever.”
“It’s thanks to Master’s education! It is the master who is amazing!”
John looked at me with increasingly impressed, enthralled eyes.
“Okay, come up with a plan.”
“Yes!”
John nodded broadly, then switched his expression and asked timidly,
“Master ......, where did the ten points go wrong?”
“You just appealed directly to me, prepared to be punished–prepared to die.”
“It’s the same with me and for others. People are treasures. Don’t risk death for nothing.”
“—! Understood! As expected of Master. ......”
John seems to have grasped a lot of things.
Because I want to bring him back to the heart of the Empire eventually, I will teach him what I can when we meet.
I was satisfied that I could do something about it. |
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} | ヘンリーが帰った後も、シャーリーとジェシカの模擬戦は続いた。
の戦いを、俺はじっと食い入るように見つめていた。
シャーリーは真面目気な女だ。集中すれば騎士選抜の時の様に、親王である俺でも構わず、目的の為に平気で刃を突き立ててくる。
ジェシカも似たような女だ。俺が「本気で戦え」と命じた瞬間から纏う空気が一変して、どの歴戦の戦士よりも鋭く、洗練された闘気を放っている。
そんな二人がぶつかり合い、物理的にも精神的にも火花を散らす戦いは美しかった。
いつまでも見ていたいと思うほど美しかった。
だから、これは俺のミスだ。
真剣の戦いは、例え模擬戦であっても簡単に一線を踏み越えてしまう。
シャーリーがジェシカの剣をはじいて、淀みのない動きで電光石火の突きがジェシカの胸にまっすぐ伸びていく――
「いかん!」
とっさに中指を親指に引っかけ、反動をつけてはじいた。
はじかれ飛ばされた空気の塊がまっすぐ飛んでいき、シャーリーのロングソードをはじいた。
手からはじかれたロングロード、ぐるぐる回って遠く離れた地面に突き刺さったのを、呆然と見つめるシャーリー。
そして王手をかけられ、尻餅ついたままの格好のジェシカ。
「そこまでだ」
俺がそう言うと、二人は一斉に我に返った。
俺が楽しみに耽ってしまったせいで二人を危険にさらした、謝らないと。
「すま――」
「すごいです! さすが陛下!」
「今のは......空気の塊。純粋な空気の塊を飛ばしてきた......?」
シャーリーは無邪気に喜び、俺を褒め称えた。
ジェシカは驚きつつも、頬を染めて心酔しきった目で俺を見つめた。
「むっ」
二人してそんな目をされるとものすごくやりにくい。
「......取り敢えずそこまでだ。ジェシカ、着替えてこい。父上のところに行く」
「わかりました」
ジェシカは一瞬で空気を切り替えた。
さっきまでは歴戦の戦士だったのが、一瞬で高貴な貴婦人に纏う空気を変えた。
俺の意図を読み、ドレスに着替えるため屋敷に戻っていくジェシカの後ろ姿を眺めて、俺は今の事を反省し。
そして......。
ドレスに着替えたジェシカを連れて、父上に謁見を求めた。
皇帝と上皇の面会、場合によってはかなり荘厳な儀式とともに行われるものだが、父上は俺達を庭園に通して、自身は平服のまま姿を現わした。
「父上」
「うむ、よくきたなノア。ほう、それが新しい妃か」
皇帝の座を俺に譲って、上皇になった後も父上の情報網は健在のようだ。
ジェシカが俺の新しい妃になったことは完全に筒抜けのようだ。
それはいい、説明の手間が省けた。
「ジェシカ、挨拶を」
ジェシカは一歩前に進み出て、しずしずと父上に一礼した。
貴婦人の――庶妃の作法を完璧におこなった文句のつけようがない一礼だ。
当たり前の事だが、皇后、嫡妃、側妃、庶妃と、位によって礼儀作法がまったく異なる。
昨日の今日で、ジェシカは庶妃として完璧な作法を披露してみせた。
「ほう、なかなかの女ではないか」
「余もそう思う」
「剣術も達者だと聞いたが、見せてくれぬか」
「それは容赦願いたい父上」
シャーリーとの一件があったから、それはまた今度にして欲しいと思った。
父上は少し俺を見たが、食い下がることなく「そうか」と引き下がった。
「で、その娘を討伐軍に随行させるつもりなのだな」
やはり父上は話が早い、と、俺は静かにうなずいた。
「はい、そのつもりです」
「花は花瓶に生けたままでよいのではないか?」
「人は宝です、父上」
「ふむ?」
「そして手つかずの宝は半分も残っています。ジェシカは始まりの一人に過ぎません」
「そうか。ふふ、ノアらしいな」
父上は楽しげに笑った。
これで少なくとも俺の考えには好意的なのが分かった。
「ですので、父上にもご協力願いたい」
「何をすればいい」
「これに反対するものは、父上に直訴を試みるはずです」
「......うむ、余はノアの十倍は妃をもっている。ノアのそれで余がもっとも影響を受けると考えるであろう」
実際はなにも影響を受けないけど――とは、父上とのアイコンタクトで通じ合ったから、あえて言葉にはしなかった。
俺が妃を部下にすると公言し、その伝統を壊したとしても、父上には実質何の影響も出ない。
しかし形式としては変わることもある。
そこをついて、反対する連中が父上のところに駆け込むのは間違いない。
「わかった、その事は任せよ」
「ありがとうございます、父上」
俺が軽く頭を下げた、ジェシカも無言ながら、俺のそばで同じように頭を下げた。
妃というのは夫をたてるもの。
庶妃になりきっているジェシカは完璧にそれを演じた。
「しかし......即位してからこれだけ経つのに、まだ二人とは......もっと一気に増やさぬかノア」
「一気に......ですか?」
父上の空気が一変した。
真剣のように見えて、その実からかっている口ぶり。
親戚の老人が「まだ結婚しないのか」って言ってくるあれとほぼ同じだ。
「男子たるもの、常に女の匂いをくっつけておくべきだ」
「はあ」
「戦場の返り血と閨の女、この二つの匂いは男には必要不可欠だぞノア。100人くらい妃を持て、それがノアを更なる上のステージへ押し上げる」
「それでは父上よりも多くなってしまいます」
「それでよい、ノアの器を考えればそれが最低限だ」
ものすごい評価をされた。
が、そんな評価がなくとも――人は宝だ。
「見つかればそうします、父上。数ではなく質が欲しいので」
「ふむ、それもよかろう」
話はそこで終わり、俺はジェシカを連れて、辞して宮殿から立ち去った。
宮殿を出た後、ジェシカはそっと話しかけてきた。
「陛下」
「ん、なんだ?」
「討伐に向かうのですが、敵や捕虜、現地などで女を見繕った方がよろしいのでしょうか」
「父上の話か」
ジェシカは真顔で俺を見つめている。
冗談ではない、何か試しているという顔でもない。
言葉通り、やるべきなのかと聞いてきている。
そして、命令さえあれば本気で、という顔でもある。
「そんなのは――ああいや」
俺は言いかけた言葉を飲み込んで、別の言葉に代えた。
「父上との話を聞いてたな? 量より質だ。お前のメガネにかなって、ふさわしいと思う女だけつれてこい」
「――はい!」
俺の言葉を信頼と正しく受け取って、ジェシカは大きく頷いた。
離宮の書斎、一人になった俺は、アポピスを出した。
一つ深呼吸して、アポピスに命じる。
「やれ」
アポピスからわずかなためらいの感情が伝わってきたが、それでも俺の命令だから、とおそるおそる従った。
「――ぐふっ!」
次の瞬間、俺の体に毒が駆け巡った。
アポピスの毒だ。
その猛毒は一瞬でまわり――
「消せ」
――命令とともに消えた。
「......がはっ!」
腹の底からこみ上げてきたものを吐き出した。
紫色をした血だ。
毒に犯された証である毒血。
それをあらかた吐きだした後。
「もう一回だ、アポピス」
今度は迷いが短くなって、再び俺の命令に従って、俺の体に毒を回らせた。
そして、再び消す。
「......なる、ほど」
二度にわたる、毒とそれが消えた瞬間を自分の体で体験した俺。
その感覚は、ほとんど予想した通りのものだ。
アポピスが自分の毒を消すとき、全くの無にするのではなく、正反対の力でそれを中和させている。
その正反対の力が、俺が今欲しい物だった。
それがあると分かって―。
あると分かるものを、もっとよく感じるために。
「やれアポピス――消せっ」
俺は、再び毒を自分の体に受けた。
また毒の血を吐き出す。
床一面に紫色の血が広がった。
そのおかげで欲しい物が見つかった、判明した。
俺は手を伸ばして、つきだした人差し指に全神経を集中する。
やがて、指先からきらりと光る、透明の雫がにじみ出る――。
兵務省、親王大臣室。
ノック無しに入室した俺に、ヘンリーは一瞬「何者だ!」と誰何したが、俺の顔を見るなり慌てて椅子から立ち上がった。
「陛下がおいでとは知らず失礼しました」
と、その場でひざまづいた。
「よい、余が通報しなくていいと言ったのだ。ジェシカも楽にしていい」
ヘンリーと話をしていたジェシカも同じようにひざまづいたから、二人を立たせた。
「それで......陛下がおいでになったのは?」
「ああ、ジェシカに話があってな。ヘンリーにも見てもらった方が討伐での割り振りをしやすいと思ってな」
俺はそう言って、懐から小瓶を取り出した。
瓶の中に薄青い液体が揺らめいている。
「これをジェシカに持たせようと思ってな。まだ試作品だが、期日までに数を揃える」
「それはなんでしょうか?」
「見ていろ」
俺はまず、手刀で自分の手首を斬った。
結構深く斬って、どくどくと血が流れ出す。
俺が何かをする、と分かって身構えていたヘンリーもジェシカも驚いた。
「陛下!」
「いいから見ていろ」
二人を制止して、小瓶の液体を手首の傷に振りかけた。
すると、深く斬ったはずの傷が一瞬で塞がった。
「なっ!」
「これを作った。ジェシカはこれを持っていけ」
「そ、それはまさか――伝説のポーション?」
ヘンリーが驚愕しながら言った。
「ポーション? なんだそれは」
「かつて、栄華を誇った古代文明に『回復魔法』なる物があるというのは陛下もご存じのはず」
完全に失われた古代魔法の事だな。
「回復魔法があっても、魔法は誰にでも使えるものではない。そこで回復魔法と同等の効果がある、魔道具『ポーション』が作られていたわけです」
「なるほど、道理だ」
「本当に怪我が癒えるのですか?」
「切り傷程度ならば。肉体が欠損するほどの大けがだと、一瞬で傷を塞ぐ程度でしかないが」
「伝説のポーションそのものです......これを陛下が?」
「ああ、作った」
「なんという......さすが陛下でございます」
ヘンリーは、今までで一番びっくりしていた。
そんなヘンリーを置いといて、ジェシカと向き合う。
ポーションを渡す。
彼女とシャーリーが模擬戦で怪我をしそうになったのを見て、それを何とかしようと作ったポーション。
「ジェシカ」
「お前は余の妃でもある。肉体は綺麗なままに、怪我を負ったらすぐに使え」
ジェシカは感激して、その場でひざまづいた。
一方で、ポーションを見たヘンリーは。
「すごい......これがもしもっとあれば......戦争の形が変わる......」
と、真剣な顔をしていた。 | Even after Henry left, Shirley and Jessica’s mock battle continued.
I intently watched the battle between the two of them.
Shirley is a serious and earnest person. When she concentrates, she will use her blade to achieve her goal, regardless of whether it’s a Prince or not, just as she did during the knight selection process.
Jessica is a similar woman. From the moment I ordered her to ‘fight seriously,’ the atmosphere around her changed completely, and she released a fighting spirit that was sharper and more refined than the warriors of the past.
It was beautiful to watch these two clash and fight with sparks flying both physically and mentally.
It was so beautiful that I wanted to watch it forever.
And, that was my mistake.
Serious fights, even if they are mock battles, can easily cross the line.
Shirley flicked Jessica’s sword, and with a stagnant movement, a lightning-fast thrust went straight for Jessica’s chest–
“Not good!”
I instinctively snagged my middle finger on my thumb and flicked it back with a recoil.
A chunk of air flew straight up and hit Shirley’s longsword.
Shirley stared in dismay as the longsword was flicked from her hand, whirled around, and stuck into the ground far away.
And Jessica, who was closed in, had fallen on her backside.
“That’s enough.”
As I said that, they both came to their senses at once.
I should apologize to them for putting them in danger because of my indulgence in fun.
“Sorr–.”
“That’s amazing! As expected of Your Majesty!”
“Just now that was a...... chunk of air. Did you just flicker a chunk of pure ...... air?”
Shirley was overjoyed and praised me innocently.
Jessica was surprised, and then gazed at me with fascinated eyes and a blush on her cheeks.
“Mu”
It was very difficult when those two gave me such looks.
“......That’s enough for now. Jessica, go get changed. Let’s go to father’s place.”
“Understood.”
Jessica’s atmosphere instantly switched.
She was a warrior before, but in an instant, she changed her air into that of a noble lady.
I watched Jessica’s back as she read my intention and returned to the mansion to change into her dress, and I reflected on what I had just done.
And .......
I took Jessica, who had changed into her dress, and requested an audience with my father.
It was the meeting between the Emperor and the retired Emperor which, in some cases, is accompanied by a rather solemn ceremony, but Father let us through into the garden and himself appeared in plain clothes.
“Father.”
“Umu, welcome, Noah. So that’s the new concubine, huh.”
Even after he gave up his position as emperor to me, his information network is still strong.
It seems that he is fully informed of Jessica becoming my concubine.
That’s good, saves me the trouble of explaining.
“Jessica, your greetings.”
Jessica stepped forward and bowed to her father.
It was an impeccable bow, perfectly executed in the manner of a noblewoman, a common concubine.
It’s natural, but the etiquette of Empress, direct concubines, side concubines, and common concubines differs greatly depending on their ranks.
And today, Jessica showed off her perfect manners as a common concubine.
“Well, she’s quite a woman, isn’t she?”
“I also think so.”
“Also, I heard she’s an expert swordswoman, let’s see what she can do.”
“I do beg your pardon, father.”
After what had happened with Shirley, I thought it would be best to leave that for another time.
Father glanced at me for a moment but said ‘I see’ and withdrew without complaint.
“So you intend to have the girl accompany the subjugation army.”
I nodded quietly, knowing that my father was quick with words.
“Yes, I intend to.”
“Shouldn’t the flowers remain in the vase?”
“People are treasures, Father.”
“Fumu?”
“And there’s still half a treasure left untouched. Jessica is only the beginning.”
“I see. Fufu, that’s just like Noah.”
Father laughed happily.
This shows that at least he likes my idea.
“So I would like to ask father for assistance.”
“What do you want me to do?”
“Anyone who opposes this should attempt to appeal directly to father.”
“...... Umu, I have ten times as many concubines as Noah. And one would think that I would be the most affected because of Noah.”
Actually, nothing will be affected – I didn’t dare to say the words because I communicated that through eye contact with my father.
Even if I break the tradition by publicly announcing that I will make the consort my subordinate, it will have no real effect on my father.
However, the format may change.
There’s no doubt that those who oppose it will run to my father to get to the bottom of it.
“All right, I’ll take care of it.”
“Thank you very much, Father.”
I bowed lightly, and Jessica did the same, silently, at my side.
A concubine is someone who treats her husband with respect.
Jessica, who is a common concubine, played the role perfectly.
“But,...... it’s been so long since your accession to the throne and yet there are only two ...., Noah, why don’t you add more at once?”
“All at ...... once?”
Father’s air changed drastically.
He seemed to be serious, but in fact, he was teasing.
It’s almost the same as when an old relative asks, ‘Aren’t you married yet?'[TN: I know that feeling]
“A man should always have a woman’s scent on him.”
“Haah.”
“The blood of the battlefield and a woman in his bed chamber are two essential smells for a man, Noah. And having or so concubines will push Noah to the next level.”
“That would be more than you, father.”
“That’s fine, that should be minimum for a man of Noah’s caliber.”
It was a tremendous recognition.
But even without such recognition- people are treasures.
“If I can find one, I will, father. I want quality, not quantity.”
“Fumu, that’s all right.”
Our conversation ended there, and I took Jessica and dismissed ourselves from the palace.
After we left the palace, Jessica spoke softly to me.
“Your Majesty.”
“Hmm, what is it?”
“I am heading for subjugation, but should I look over the women among the enemies, prisoners of war, and locals?”
“It’s because of Father’s words, huh.”
Jessica looked at me with a straight face.
She’s not joking and doesn’t look like she’s trying something.
She is only asking if she should do it, as she intended.
And as soon as I give the order, she’ll do it seriously.
“That’s not–aah no.”
I swallowed the words I was about to say and replaced them with something else.
“You heard what I said to my father, didn’t you? Quality is better than quantity. Bring me only those women you think are worthy from your viewpoint.”
“—-Yes!”
Jessica nodded greatly, taking my words as a sign of confidence.
I was alone in the study of the detached palace, and I brought out Apophis.
I took a deep breath and commanded Apophis,
“Do it.”
I could feel a slight hesitation from Apophis, but it still obeyed fearfully because it was my order.
“—–Gghh!”
The next moment, poison rushed through my body.
It was Apophis’s poison.
It was so poisonous that it spread over my body in an instant—.
“Erase it”
–With that command, it was gone.
“...... haaaa!”
I spat out what was rising from the bottom of my stomach.
It was purplish blood.
Poisonous blood, the proof of having been poisoned.
After spitting out most of it, I said,
“Apophis, one more time.”
This time, its hesitation was shortened, and it obeyed my order again, letting the poison circulate through my body.
And then erased it again.
“...... I–see.”
I experienced the poison and its disappearance twice in my own body.
The sensation is almost precisely what I expected.
When Apophis erases its poison, it does not make it disappear into anything at all but neutralizes it with the exact opposite force.
That opposite power was what I wanted now.
I knew it was there – three times.
To better feel what I know is there.
“Apophis, do it–erase it.”
I took the poison into my body again.
I spit out the poisoned blood again.
Purple blood spread all over the floor.
Thanks to that, I found what I wanted.
I reached out and concentrated all my attention on my outstretched index finger.
Before long, a glistening, transparent drop oozes from the tip of my finger.
The Ministry of War, the Minister Prince’s office.
I entered the room without knocking, and Henry said, ‘Who is it!’ but when he saw my face, he hurriedly got up from his chair.
“I apologize for not knowing that Your Majesty was here.”
He said as he knelt down on the spot.
“Good, more than that, what about the reports? And Jessica you can make yourself comfortable.”
Jessica, who had been talking with Henry, knelt the same way, so I helped them both to their feet.
“So ...... what brings His Majesty here?”
“Ahh, I had something to talk to Jessica about. And I thought if Henry could have a look at it, it would make it easier for me to assign it for the subjugation.”
I said so and took a small bottle out of my pocket.
A pale blue liquid was shimmering in the bottle.
“I thought I’d give this to Jessica to take with her. It’s just a prototype, but I’ll have a few of them for you by the due date.”
“What is it?”
“Look.”
First I slit my wrist with my knife-hand.
It was a pretty deep cut, and the blood was pouring out.
Henry and Jessica, who had prepared themselves for what I was about to do, were surprised.
“Your Majesty!”
“It’s all right, just watch.”
I stopped them, and I sprayed the liquid from the vial onto the wound on my wrist.
The wound, which should have been a deep cut, instantly closed.
“What!”
“I made this. Jessica, take this with you.”
“Y-You don’t mean to tell me that’s the Legendary potion?”
Henry asked, astonished.
“Potion? What is it?”
“You know that ancient civilizations that once flourished in the past had ‘recovery magic,’.”
It’s ancient magic that has been completely lost.
“Even if there is recovery magic, magic cannot be used by everyone. That’s why magic potions were made, which have the same effect as recovery magic.”
“I see, that makes sense.”
“Can it really heal injuries?”
“If it is only a cut. If the injury is so severe that the body parts are missing, it can only close the wound in an instant.”
“It is the legendary potion itself...... Did His Majesty make this?”
“Yeah, I made it.”
“As expected ...... sasuga, Your Majesty.”
But, the one who was most surprised was Henry.
Leaving Henry as he was, I turned to Jessica.
I handed her the potion.
I made this potion when I saw that she and Shirley were almost injured in the mock battle, and I tried to do something about it.
“Jessica.”
“You are also my concubine. Keep your body safe and use it as soon as you are injured.”
Jessica was moved and knelt down on the spot.
On the other hand, Henry, when he saw the potion.
“Amazing,...... if there were more of this,...... it would change the flow of the war,.......”
He had a serious look. |
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} | 首謀者を失ったアルメリアの反乱は、あっという間にヘンリー兄上によって鎮圧された。
その知らせが届いた王宮の謁見の間で、大臣達の歓呼がこだました。
知らせを持ち帰った伝令兵は陛下の前に跪きながら、更に続ける。
「反乱を企てた者達はほとんど捕縛。陛下の裁可を仰ぎたい、とのことでございます」
「うむ」
陛下は静かにうなずいた。
表情は平然としている――という訳ではなく。
むしろ今にも目から火を吹きそうなくらい激怒している。
「ヘンリーに伝えよ残らず都に連れてこいとな」
「いかがなさるおつもりなのですか」
伝令兵が去ったあと、第一宰相が大臣の列から出て、陛下に意図を聞いた。
「決まっている、ノアの領地で反乱を起こすなど許さん。牛馬を用意しろ、一族郎裂きにしてくれる」
陛下の口調から怒りが本物だと理解した大臣達は、口々にその意見に賛成した。
「陛下」
俺は列を出て、第一宰相の横で片膝をついた。
「待っていろノア。今すぐ奴らを――」
「恐れながら申し上げます陛下。それはまかりなりません」
「――八つ裂きに......なに?」
驚く陛下、同時に他の大臣らもざわつく。
激怒している皇帝に真っ向から異を唱える行為。
既に何人かの、気の弱いことで有名な大臣が顔を青ざめていた。
「どういう事だ、ノア」
陛下の声のトーンも低くなった。
俺に向けられて発した言葉だが、何人かの大臣がビクッと震えた。
その反応は、皇帝の権威を間接的に証明しているようなものだ。
俺は平然と顔をあげて、陛下を見つめた。
「刑罰はあくまで法に則るべき」
と、大前提をまず突きつけてから。
「帝国法では、造反の首謀者は斬胴の刑、そ等および共謀者は絞首まで、それ以外は関与の度合いに応じて斬首となっております。八つ裂きは慣用表現なれど、帝国法ではそのような刑罰は存在しません」
「しかし、奴らはノアの顔に泥を塗ったのだぞ」
陛下は眉をひそめてその事を主張したが、俺はスルーした。
「皇帝が率先して法をやぶっては天下が乱れる原因となる。ご再考を」
「......」
陛下が黙った。
大臣達は固唾を呑んで成り行きを見守った。
謁見の間に重い沈黙が流れた。
「......ふう。理はノアにあるな」
しばらくして、陛下はそうつぶやいた。
誰かが――いや何人かが明らかにほっとして息を吐いたのがはっきりと聞こえた。
「よくやったノア。余の過ちを諫めてくれて」
「いえ」
「しかしそれでは余の腹が納まらぬ。量刑は法の範囲内で最も重く、減刑は一切無し。それならばよいな」
「まったく問題ありません」
俺は一度頭を下げてから、更に続けた。
「過去に起こった反乱では、首謀者の三親等であっても子供や赤子は可哀想だからと見逃されるケースが多くございました。陛下がそのお考えなら、そこは特に注意すべき所かと」
貴族の子はただの子供ではない。
没落や滅ぼされた家が、生き延びた子供によって再興、あるいは復讐を遂げる事例は枚挙に暇が無い。
反乱の場合とくにだ。
共謀者は見逃せても、首謀者の子供は根絶やしにしなきゃならないのが貴族の世界だ。
だから俺はそう進言した、そして陛下は「よく気づかせてくれた」と頷いた。
「第三宰相よ」
陛下に呼ばれて、第三宰相、ジャン=ブラッド・レイドークが列をでて静かに一礼した。
「話は聞いていたな。この件はお前に任せる」
それで反乱を企てた者の処遇がほとんど決まった。
と同時に、さっきまでの重苦しい空気を払拭するかのように、別の種類の声が上がった。
「さすが十三親王殿下。あれほどの直諫をなさるとは」
「しかも顔色一つかえず、陛下に向かって朗々と意見を述べられた」
「まさに天が授けた英才、麒麟児のごときお方」
口々にそう話す大臣達。
それを聞いて、陛下はさっきの激怒などどこへやら、って具合に機嫌がよくなっていった。
「ノアよ」
「はい」
「これからも余に過ちがあれば正してくれ」
「今日の所は......ふぅむ、余が歴史に汚名を残さずにすんだのはノアのおかげだ。何か褒美をあたえんとな」
陛下はあごに手を当てて考えた。
さっきの沈黙とは違って、今回は皆、気楽な感じで俺へ下賜される褒美が何なのかをまった。
「うむ、決まった。称号を授けよう」
瞬間、どよめきが走った。
かつて、親王は一部の皇子しかなれなかった。
現在では帝国法において、皇子は産まれながらにして親王の地位を持つ。
位的に、親王の上は皇帝、つまり親王はいわゆる出世する事はない。
ただそれでは功績を立てた親王にやれる褒美はないと言うことで、親王に称号をつけるという方法が考えられた。
「ノアの諌言はよくやった。余に諌言できるのは子ならばできるが、それが正しいものなのは何物にも代えがたい素晴しい資質。その賢さを天下に知らしめるために――『賢』の字を与える」
陛下がそう言うと、またどよめきが起きたあと。
「「「ノア様万歳、賢親王万歳」」」
歓呼の声が起きた。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
賢親王
性別:男
レベル:1/∞
体力 F+F 地 F
そして、俺のステータスも変わって、新しい肩書きになった。
「ありがたき幸せ」
俺はそのまま頭を下げた。
陛下が玉座から立ち上がって、赤絨毯を降りて、こっちに来た。
片膝をついてる俺の前にやってきた。
「お前が、もう少し早く産まれてくれていたらなあ」
三度、どよめきが違う質のものに変わったのだった。
賢親王になってから数週間。
この日、俺は帝都のホース通り広場――都で一番大きな広場にいた。
広場の中央に舞台を立てて、その上にテーブルと椅子を置く。
椅子には俺が座ってて、テーブルにはティーセットがある。
騎士選抜。
その予選をやっていた。
前に陛下に提案した通りのやり方が通って、俺はくつろぎながら、選抜する相手に好きなように攻撃させていた。
俺自身は何もしない、代わりに指輪とリンクしたレヴィアタンがことごとく攻撃を防いでいた。
一人また一人と舞台に上がってきては、俺に攻撃して――完全に防がれて落胆して舞台を降りる。
「おいおいすごいな、今の魔法も防いじまうのか」
「あんなチビなのにとんでもないな」
「お前それは不敬罪だぞ。あの方は十三親王、いや、賢親王様だぞ」
都一番の大きな広場でやってることもあって、見物人は山のように集まって来た。
俺は合格基準を明示してない、だが、今までの挑戦者が全員不合格なのは誰の目にも明らかだ。
全員が全員、攻撃してきては、レヴィアタンに完璧に防がれている。
大勢の前で、寛いでいる子供の防御すら貫けないとあっては、やる側も素直に引き下がらざるをえない。
それをやり続けて、半日。
そろそろ日が落ちるな、と西の空を見あげていると。
「やああぁぁぁぁ!」
裂帛の気合とともに、攻撃がしかけられてきた。
白い鎧を纏った少女だった。
少女は剣を水平に突き出し、体重を乗せるかのように前掛かりで突進してきた。
それをレヴィアタンが反応して、リンクした指輪を変形させて、盾にして防ぐ。
ここまではまるで一緒。
今日だけで数百人を選考してきた内容とまったく一緒。
「これ......しきの、ことで!」
ぎりっ、と少女の歯ぎしりの音が聞こえた。
直後、更に前掛かりになった少女、と同時に盾がひび割れた。
丸一日誰も突破できなかった盾を突き破って、更に突進する少女。
切っ先が、俺の右肩を貫通した。
「――っ!」
やった本人が一番驚いている。
思わず剣から手を離して後ずさりした。
「貴様!」
「何をするか!」
舞台の上で護衛をしていた兵士達がやってきて、少女をその場で取り押さえた。
舞台の下では民衆がざわざわしている。
俺は貫通された肩を見て。
と頷いた。
「彼女を離せ」
「え? いやしかし。殿下を傷つけた罪人――」
「離せと言っている」
少女を取り押さえた兵士がビクッとして、少女から離れた。
呆然とする少女、取り押さえられた体勢から上体だけを起こして、何が起きたのか分からないって目で俺をみた。
俺は剣を抜いた、血が噴き出した。
「ご主人様!」
一日中ずっと俺の給仕をしていたメイド――ゾーイが慌てて駆け寄ってきて、自分のメイド服を裂いて俺の肩を手当てした。
「も、申し訳ありません!」
我に返った少女が俺に土下座した。
「ん? なんでお前まで土下座する」
「で......殿下を傷つけたから」
「合格ラインは言ってないが、やらせたことからしてどう見ても今のは合格だろ?」
少女はポカーンとなった。
「あれで合格か」
「しかも本選合格だって」
「自分の肩を貫いた相手に......なんという器の大きさだ......」
見物人達がざわざわする中、少女はポカーンとしたまま、中々 | With the loss of the ringleader, the Almeria rebellion was quickly put down by Brother Henry.
The cheers of the ministers echoed in the audience room of the royal palace where the news was delivered.
The messenger who brought back the news knelt before His Majesty and continued.
“Most of those who plotted the rebellion have been captured. We wish to seek Your Majesty’s approval.”
His Majesty nodded quietly.
The expression on his face is calm – it’s not that he’s unconcerned.
Rather, he was furious, as if he was about to blow fire from his eyes.
“Tell Henry to bring every single one of them to the capital.”
“Yes!”
“How do you intend to do this?”
After the messenger had left, the First Vizier stepped out of the ministerial line and asked His Majesty about his intentions.
“It’ s clear, I will not allow any rebellion in Noah’ s territory. Prepare the oxen and horses, they will dismember the whole clan.”
Understanding from His Majesty’s tone that his anger was genuine, the ministers agreed with him verbatim.
“Your Majesty,”
I left the queue and got down on one knee next to the First Vizier.
“Wait for me, Noah. I’ll get them —-“
“With all due respect, Your Majesty. This is not allowed.”
“– ripped to pieces at ...... what?”
His Majesty was surprised, and the other ministers were buzzing at the same time.
An act of outright disagreement with the enraged emperor.
Several ministers, famous for their weaknesses, were already pale in the face.
“What do you mean, Noah?”
The tone of His Majesty’s voice lowered as well.
Though the words were directed at me, several ministers shuddered in a jolt.
Their reactions were like indirect proof of the emperor’s authority.
I raised my face without hesitation and looked at His Majesty.
“Punishment should only be in accordance with the law.”
After confronting the basic premise first.
“Under Imperial Law, the ringleader of the rebellion is punished by beheading, the third degree and any co-conspirators are punished up to and including hanging, and the rest of them, based on the degree of their involvement. Although beheading is a conventional way to punish, no such punishment exists under Imperial law.”
“But they have smeared dirt on Noah’s face.”
His Majesty raised his eyebrows and insisted on that, but I passed it off.
“If the emperor takes the initiative to break the law, it will cause disorder in the land. Please reconsider.”
“......”
His Majesty was silent.
The ministers watched the course of events holding their breaths.
A heavy silence passed between audiences.
“...... Fuu. Noah’s reasoning is correct.”
After a moment, His Majesty murmured.
I could clearly hear someone – or several people – exhale in obvious relief.
“Well done, Noah. For admonishing me for my mistakes.”
“But that would not satisfy me. The punishment should be the heaviest within the limits of the law and should not be reduced in any way. So be it.”
“No problem at all, sir.”
I bowed my head once and then continued further.
“In past rebellions, there were many cases where even the third degree of the ringleader was overlooked because of the pity of the children or babies. If His Majesty is of that opinion, I think that is something we should pay special attention to.”
A child of a nobleman is not just a child.
There are countless examples of fallen or ruined houses being revived or avenged by surviving children.
Especially in the case of rebellion.
In the aristocracy, the conspirators can be overlooked, but the ringleader’s children must be eradicated.
So I advised him to do so, and His Majesty nodded, “You have made me well aware of this.”
“Third Vizier,”
“Yes!”
The Third Vizier, Jean-Brad Reydouk, called by His Majesty, bowed quietly from the line.
“You’ve heard the story. I leave this matter to you.”
That almost decided the treatment of those who had planned the rebellion.
At the same time, as if to dispel the heavy atmosphere that had been created earlier, a different kind of voice was raised.
“As expected of His Imperial Highness the Thirteenth. I didn’t expect him to be so direct.”
“And yet he never looked back, never blinked, just spoke his mind to His Majesty.”
“A genius gifted by the gods, a child prodigy.”
The ministers said this to each other.
Hearing that, His Majesty’s anger from earlier was nowhere to be found, and his mood became better.
“Noah!”
“If I make a mistake, you have to correct it.”
” Today it’ s ...... hmmm, the only reason I didn’t leave a bad name in history is because of Noah. There should be some kind of reward for that.”
His Majesty put a hand to his chin and thought about it.
Unlike the silence of earlier, this time everyone is at ease with the idea of what the reward for me will be.
“Umu, it’s been decided. Let’s give you a title.”
A moment later, there was a stir.
In the past, only a select few princes could be the imperial prince.
Nowadays, under imperial law, a prince had the status of imperial prince from birth.
In terms of rank, above the imperial prince was the Emperor, which meant that the imperial prince would never rise to the top, so to speak.
The idea was to give the title to the prince because there was no other reward for his achievements.
“Noah’s admonition was well done. My son can only remonstrate against me, but what makes it right is its irreplaceable quality. To make his wisdom known throughout the world, I will give him the title of ‘wise’.”
After His Majesty said that, there was another stir.
“Long live Master Noah, long live the Wise Prince!”
A cheer arose.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Wise Prince
Gender: Male
Level: / ∞
HPFMPFStrengthF+FStaminaF+FIntelligenceF+FSpiritF+FSpeedFDexterityF+FLuckF+F FireFWaterE+SWindFEarthFLight FDarknessF
And then my status changed, and I got a new title.
“I am grateful and happy.”
I kept my head down.
His Majesty got up from his throne, got off the red carpet, and came over to me.
I was on one knee and he came in front of me.
“If only you’d been born a little sooner.”
Three times, the stirring turned to a different quality.
It had been a few weeks since I became the wise prince.
On this day, I was in the Imperial City’s Horse Street Plaza – the largest plaza in the city.
A stage is set up in the middle of the plaza, with tables and chairs on it.
I was sitting in the chair, and there is a tea set on the table.
Knight selection.
We were holding that preliminary round.
It went exactly the way I proposed to His Majesty before, and I just relaxed and let the people I was selecting attack me as they pleased.
I didn’t do anything myself, instead the ring-linked Leviathan was blocking every attack.
One by one, they came up to the stage and attacked me – completely blocked and left the stage in disappointment.
“Damn, that’s impressive, considering it prevents all that magic.”
“For such a small guy, he’s extraordinary.”
“You’re being impolite. That man is the th Prince, no, the Wise Prince.”
Since it was being held in the biggest plaza in the city, the crowd of onlookers came in torrents.
I didn’t specify the criteria for passing, but it’s clear to everyone that all the challengers so far have failed.
They’ve all attacked me, and they’ve all been perfectly defended by the Leviathan.
In front of a large number of people, if you can’t even penetrate the defense of a relaxed child, the person doing it has to back down honestly.
It’s already been half a day since I’ve been doing that.
I was looking up at the western sky to see if the sun was about to set.
“Heyaaaaaaaaaaah!”
An attack was lobbed at me along with the energy of a cleaver.
It was a girl in white armor.
The girl thrust her sword out horizontally and rushed forward with a front hinge, as if to put her weight on it.
Leviathan reacted to it, transforming the linked ring and using it as a shield to prevent it.
So far, it’s just like that.
Exactly the same as what we have selected hundreds of people for today alone.
“This ...... thing, then!”
The sound of the girl’s teeth clenching was heard with a grind.
Right after that, the girl rushed even more forward, and at the same time, the shield cracked.
This girl rushed further through a shield that no one was able to break through for a whole day.
The cutting edge pierced my right shoulder.
The person who did it was most surprised.
She unconsciously pulled her hand away from her sword and backed away.
“You!”
“What the hell do you do!”
A group of soldiers who had been guarding the stage came over and seized the girl on the spot.
The people are buzzing below the stage.
I looked at the shoulder that had been pierced.
“Hmm.”
I nodded.
“Let her go.”
“Eh? No, b-but. She’s guilty of hurting your highness–“
“I said, Let her go.”
“—-!”
The soldier who had seized the girl freaked out and moved away from her.
The girl, stunned, raised her upper body only from the seized position and looked at me with eyes that said she didn’t know what had happened.
I pulled out the sword, blood spurted out.
“Master!”
The maid who had been serving me all day – Zoe – rushed over to me, ripped off her own maid’s clothes and tended to my shoulder.
“I-I’m really sorry!”
The girl came to herself and got down on her knees to me.
“Hmm? And also why are you on your knees?”
“F ...... for hurting His Highness.”
“Well, I never mentioned about a passing grade, but judging by what you just did, by all appearances, that was a passing grade, don’t you agree?”
The girl paused.
” So that was enough to pass”
“And she’ s been accepted.”
“To someone who has pierced his shoulder, ...... such a big caliber of a person ......”
As the onlookers buzzed around, the girl was still in a state of shock and didn’t come back. |
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} | 大広間を離れ、陛下に書斎に戻ってきた。
一緒に来いと呼ばれたのは俺だけ。
陛下はいつも通り机に戻って椅子に座り、俺はその机を挟んで陛下と向かい合った。
「さて、ノアよ」
「はっ」
「人質の事なのだが。向こうに恩を売るためにも、親王の誰かの側室にあてがおうと思っているのだが、どう思う」
「ただの人質よりも、親王――余の息子の側室にした方が良いだろう」
政略結婚というわけだ。定石でもある。
俺は少し考えた。
陛下は「恩を売る」と言った。
それは陛下が思う大まかな方針だ。
それを起点に――いや動かない終点として。
それに添うようにして、更に帝国の利益になる何かを考えた。
脳裏に様々なものが電光石火の如く駆け巡っていった後、俺は陛下に一礼して、答えた。
「人質は受け取らずにいた方が良いかと」
「ほう? 何か面白いアイデアがあるのか?」
陛下は興味津々な目で俺を見た。
「はっ。まず、人質は要らない。母親と姉。いくら必要だと分かっていても、それを人質にして、完全に割り切れる人間はそうはいない」
「当然だな」
「ですので送り返します。そのかわり、先ほど進言いたしました食糧。それを一週間毎に区切って送ります」
「一週間毎?」
「はい、ルーシ・ツァーリの民の腹を賄えるギリギリの分を、一週間毎」
「それでどうなる――はっ」
聞きかけて、ハッとする陛下。
陛下は最初は驚き、次ににやりと口角を歪めて、俺を見た。
「エグいな、ノアは」
その一言で、俺は陛下が意図を理解したと確信した。
俺は頷き、更に続ける。
「はっ、詰まるところ餌付けでございます。餌付けをすれば、次第に向こうはこの配給分の食糧から離れられなくなります。いざという時に供給を絶つ事を考慮に入れておけば、これが事実上の人質になります」
「うむ、そうだな」
「更に、この餌付けに依存しきってくれれば、万が一向こうが新たに別の供給源を求めだしたら――」
――裏切る前兆にもなる。ということか」
俺は静かにうなずいた。
「食糧を送る、人質はいらない。恩を売るのと同時に、向こうの生命線を握る一石二鳥の策になり得ます」
「うむ。さすがだノア。よし、その案で進めさせよう」
陛下は、俺の提案に満足したようだ。
次の日の朝、王宮横の王邸。
封地入りした俺は、ここをディランに管理を任せた。
長年十三親王――俺に仕えていたディランは、都の屋敷をそつなく維持してくれていた。
もうしばらく都に用事がある俺は、その間この屋敷に滞在する事になった。
十数年間親しんだ部屋で朝起きて、こっちに残していったメイド達に身支度させた。
さて今日は何から手をつけるか......。
「シャーリー達を呼べ」
メイドに命じるとすぐに呼びに行った。
俺はリビングに移動して、メイドに入れさせた茶を飲みながら待った。
しばらくして、二人の女がリビングに入ってきた。
シャーリー・グランズと、シェリル・ハイド。
シャーリーは俺が最初に審査官をやった時に採った唯一の騎士。シェリルはインドラと会う前に出会っていた騎士志望の女で、あの後向上心が強く見込みがあったから、騎士選抜でゲスト審査官として潜り込み、彼女を引き上げた。
その二人が部屋に入るなり、ソファーに座っている俺に片膝をついて頭を下げた。
「お呼びでしょうか、殿下」
「ああ。二人の鍛錬の成果を見せてもらおうと思ってな。宿題のチェックってところだ」
「はっ!」
「承知いたしました」
二人は視線を交換して、まずはシャーリーが剣を抜いた。
「ああ、二人同時にで良い」
「えっ? しかし」
「それでは......」
「構わん、来い」
俺はそう言い、立ち上がった。
一歩進んで、二人と真っ向から向き合う。
二人はもう一度視線を交換する。
頷き合って、迷いを振り払う。
シェリルも、剣を抜き放った。
シャーリーとシェリル、二人は左右から挟み撃ちするかのように、攻撃を仕掛けてきた。
俺は立ったまま動かなかった。
シャーリーの斬撃が首筋に、シェリルのが腰に入った。
キーン!!
甲高い金属音が鳴り響き、火花が飛び散る。
二人の斬撃は防がれた。
「もっと来い」
「「はっ!!」」
二人とも俺が選考官をやって選出した騎士だ。
選考した時と同じやり方だったから、二人とも攻撃に躊躇はなかった。
俺は身動ぎもせず、それを受け止めた。
鎧の指輪と、レヴィアタンによる「絶対防御」で。
最初にこれをやったのはレヴィアタンだけだった。
水の魔剣と鎧の指輪がリンクして、体から離れたところに自動防御の盾を出す。
そのやり方は、俺も、そしてレヴィアタンらも徐々に慣れてきた。
今や、体にほぼくっついているような薄い皮一枚程度の防御膜を張れるようになった。
更に、レヴィアタンだけじゃなく、バハムートやフワワ、ベヘモトにアポピスと。
それぞれ得意が違うこいつらは、得意の攻撃をより弾けるようになった。
レヴィアタンなら水や斬撃を正確に防げて、バハムートは炎や格闘をほぼ無効化出来る。
体に皮のように張っているから、傍から見れば、俺が何もせずに一方的に二人に斬りつけられているように見えるが、実の所かなりの余裕がある。
それは、俺が涼しい顔で立っているのに対して、猛攻撃を仕掛けている二人は既に汗だくになっていることからも窺える。
二人の猛攻は実に五分間続いた。
息を止めての猛ダッシュを五分間したようなものだ。
二人はすっかり息が上がって、その場で膝をついてしまった。
「うむ。二人ともよくやった。シャーリーは一撃の重さ、シェリルは手数の多さにますます磨きが掛かったな」
「あ、ありがとうございます......」
「殿下こそ......ますますすごくなられて......」
「殿下との距離がますます遠のく一方です」
「お前達もまだまだ伸びしろがあるように思える。もっと励むといい」
二人は声を揃えて応じて、剣を納めて息を整えた。
慰める為に言ったのではない、シャーリーもシェリルも、前に鍛錬の成果をチェックした時に比べて上達している。
このまま精進すればまだまだ強くなる余地はある、俺は本気でそう思った。
パチパチパチ。
ふと、リビングの中に拍手の音が響いた。
見ると、いつの間にかヘンリー兄上が来ていた。
「兄上、いつの間に」
「今来たばかりだ。ああ、使用人達を責めてやるな、俺が報せなくていいと言ったんだ」
「そうですか。どうぞ」
俺はシャーリーとシェリルに「もういい」と言って下がらせて、兄上と一緒にソファーに座った。
前と同じように兄上を上座に通して、俺は下座に座る。
「さすがノアだ。あの二人が強くなったと言っていたが、ノアはそれ以上伸びているのではないか?」
「そうですね、そこそこです」
「ふむ。それはいいのだが、あのやり方はさすがに危険ではないのか? 万が一と言うこともあるだろう?」
兄上は当たり前の疑問を呈した。
「あの二人にはそれだけの価値がありますよ」
「ほう?」
「いざって時に俺は二人を信用したい、だから二人の力を常に把握しておきたい......自分の身をもって。実際に体験した方がより分かるというものでしょう」
「お前はやっぱりすごいな。理屈は分かるが、同じ事をやれって言われても、私にはできん」
「やせ我慢をしているだけですよ」
「貴族の特権か」
ヘンリー兄上は「ふふっ」と笑った。 | I left the Great Hall and returned to the Study with His Majesty.
I was the only one who was called to come with him.
His Majesty returned to his desk and sat down in his chair as usual, and I faced him across the desk.
“Well, Noah.”
“Yes”
“It’s about the hostages. What do you think about the idea of assigning one of the princesses as your concubine in order to give them a favor?”
” It would be better to have her as the wife of my son than as a mere hostage.”
It would be a political marriage. This is a standard procedure.
I thought about it for a while.
His Majesty said, “Give them a favor.”
That is the general policy that His Majesty thinks.
With that as the starting point – or rather, the unmoving endpoint.
He thought of something that would further benefit the empire, along with that.
After a number of things raced through my mind like lightning, I bowed to His Majesty and replied.
“I think it would be better not to take any hostages.”
“Hou? Do you have any interesting ideas?”
His Majesty looked at me with curious eyes.
“Yes. First of all, we don’t need hostages. Mother and sister. Not many people can hold those as hostages and completely split, no matter how much they know they need them.”
“Of course not.”
“So, let’s send them back. Instead, we will supply them with the food that we have discussed earlier. I’ll send it in weekly shipments.”
“Every week?”
“Yes, just enough to feed the people of the Rushi Tsar, every week.”
“And what will happen—–haa”
His Majesty was about to ask when he realized it.
He looked at me, first with surprise, then with a smirk on the corner of his mouth.
“That’s intense, Noah.”
With that one word, I was sure that he understood my intentions.
I nodded and continued.
“Yes, it’s all about baiting, sir. If we feed them, they will gradually become unable to stay away from this ration of food. Taking into account the fact that the supply will be cut off in case of emergency, this will become a de facto hostage.”
“Umu, that’s right.”
“Furthermore, if they become so dependent on this bait that they start to seek other sources of supply...”
“Double-dealing- the first sign of betrayal. Is that what you mean?”
I nodded quietly.
“We’ll send food, we don’t need hostages. It could be a way to kill two birds with one stone, to ingratiate ourselves and at the same time hold their lifeline.”
“Umu. That’s great, Noah. Okay, I’ll let you go ahead with that idea.”
His Majesty seemed to be satisfied with my proposal.
The next morning, I was at the residence of the Thirteenth Prince next to the Royal Palace.
When I entered the fief, I left Dylan in charge of this place.
Dylan, who had served me – the Thirteenth Prince – for many years, had maintained the mansion in the capital without a hitch.
I had some business to attend to in the capital for a while longer, so I decided to stay here for the time being.
Waking up in the morning in the room I had been familiar with for more than ten years, I had the maids I had left here get ready.
Now, where to start today .......
“Call Shirley and the rest.”
I ordered the maids and they immediately went to call them.
As I headed to the living room, I waited while I sipped the tea the maid had made for me.
After a while, two women came into the living room.
Shirley Glans and Sheryl Hyde.
Shirley was the only knight I took when I was a judge for the first time. Sheryl was an aspiring knight I had met before I met Indra, and after that, she was ambitious and promising, so I went in as a guest judge at the knight selection and brought her up.
As soon as the two of them entered the room, they knelt down and bowed to me as I sat on the sofa.
“You wanted to see us, Your Highness?”
“Yes. I wanted to check out the results of your training. Checking your homework, I mean.”
“I understand.”
The two exchanged glances, and Shirley drew her sword first.
“Aah, you can both come at me at the same time.”
“Ehh? But...”
“That is ......”
“It’s fine, come now.”
I said and stood up.
Stepping forward, I faced the two head-on.
They exchange another glance.
Nodding at each other, they shake off their doubts.
Sheryl, too, drew her sword and unleashed it.
“Haaaah!”
Shirley and Sheryl attacked from both sides as if they were pinning me down.
I stood there and didn’t move.
Shirley’s slash went into my neck, and Cheryl’s went into my waist.
Ding!
A high-pitched metallic sound rang out, and sparks flew.
The two slashes were blocked.
“Come again”
“”Yes!!””
Both of them are knights that I selected myself as a selector.
There was no hesitation in their attacks because they used the same methods as when I selected them.
I didn’t even move to receive the attacks.
The Armor Ring and the “absolute defense” of Leviathan and the other five bodies.
There was only Leviathan who did this first.
The Water Demon Sword and the Armor Ring were linked together to create an automatic defense shield away from the body.
That method was something that I, and Leviathan and the others, were slowly getting used to.
Now, they could put up a protective membrane that was almost like a thin layer of skin attached to the body.
In addition, not only Leviathan, but also Bahamut, Fuwawa, Behemoth, and Apophis.
They all have different specialties, and now they are able to better repel the attacks they are good at.
Leviathan can accurately block water and slashes, while Bahamut can almost completely nullify fire and combat.
Because of the skin-like covering on my body, from the side, it looks like I’m being slashed by both of them one way or the other without me doing anything, but the truth is that I have quite a bit of leeway.
This can be seen from the fact that I’m standing there with a calm face, while the two who are attacking me are already drenched in sweat.
The ferocious assault by the two continued for five minutes.
It was like holding your breath for five minutes in a mad dash.
The two of them were completely out of breath and fell to their knees on the spot.
“Umu. Well done, both of you. Shirley has become more and more proficient with the weight of her blows, and Sheryl has become more and more proficient with her moves.”
“T-thank you, .......”
“Your Highness is becoming more and more ...... amazing.”
“The distance between us just keeps getting further and further.”
“You guys still seem to have a lot of room to grow. You should work harder.”
The two responded in unison, putting their swords away and catching their breath.
I didn’t say that to comfort them, but both Shirley and Cheryl have improved since the last time I checked on their training.
There’s still room for them to get stronger if they continue to work hard, I really thought.
Clap Clap Clap.
Suddenly, I heard the sound of applause in the living room.
I looked and saw that my brother Henry had arrived before I knew it.
“Brother, when did you get here?”
“Just arrived. Oh, don’t blame the servants. I told them they need not report it.”
“I see. Please.”
I told Shirley and Sheryl to leave and sat down on the sofa with my brother.
As before, I let my brother sit on the top seat and I sat on the lower seat.
“It’s impressive, Noah. You said those two have gotten stronger, but I think Noah has grown even more.”
“That’s right, it may be s”o.
‘Fumu. That’s good, but isn’t that way of doing things really dangerous? You know, just in case.”
My brother asked the obvious question.
“The two of them are worth it.”
“Hou?”
“I want to be able to trust them when the time comes, so I want to know what they’re capable of ....... I believe the more you experience it, the more you understand.”
“You’re still amazing. I understand the logic, but if you were to ask me to do the same thing, I wouldn’t be able to.”
“I’m just putting up with it.”
“The privileges of the nobility, huh.”
”Fufu”, saying that Brother Henry laughed. |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | 「なぜ族長の娘がこうしいくらの中に入っている。答えろ」
「うっ......」
少女ペイユは口籠もったが、既に絶対服従の魔法が掛かっているから、俺の命令には逆らえなかった。
彼女は苦虫を噛み潰した顔で、訥々と俺の質問に答えた。
「父様に、逃がされました」
「族長にか? しかしお前が族長の娘なら、狙われる戦利品としてはかなり優先順位が高いはずだ。そう簡単に逃がせないし、逃げられたとしてもこんな風に売られるのはおかしい」
「父様は、母様と一緒に、別の子を殺して、それから自殺しました」
それなら話は分かる。
陛下の方を見る、長年帝国の頂点に君臨して、時には親征もした陛下は静かにうなずいた。
族長は、負けを悟って一家心中――を演出したんだろう。
それはよくあることだ。
戦争の敗者の末路は大抵が悲惨なものだ。
生きてその苦しみを味わうくらいなら、そして我が子がそれを味わうくらいなら。
と、負けを悟った指導者がその家族を自ら手にかける事は非常によくあることだ。
おそらく、族長がそれをやって、現場検証したら
「で、逃がされたは良いが、逃げ切れなくて捕まって、奴隷商に売られたって訳だ」
「......」
ペイユは静かにうなずいた。
「名前を捨てて、どこかで静かに暮らしなさい......って」
なるほど、これで話は分かった。
「ノアよ、その娘はどう処する」
陛下が聞き、ペイユがビクッと身震いした。
俺は法務親王大臣として、頭の中に全部叩き込んでいる帝国法を引っ張り出した。
「サエイ族は元々帝国に降っておらず、従って反乱ではない。故に族長の血筋なら、男は斬首、女は功績のある者に奴隷として下賜するものと定められております」
「取り立てて何かをする必要はない、ということか」
「おっしゃる通りでございます」
既にペイユは奴隷になっている。
絶対服従の魔法を掛けられて、俺の命令には何があっても逆らえない。
ここで死ねと命じれば彼女は泣き叫びながらも、体はその命令に従って勝手に動くだろう。
そんなペイユをみた、目と目が合った。
怯えた感じの彼女は、すぐに目を伏せて視線をそらした。
彼女は怯えた様子で、俺の顔色を窺っている。
目の前の男が自分の生殺与奪の権利を握っていると、正しく理解してそれ故に怯えている顔だ。
「なら、その娘はノアにくれてやろう」
俺はその場で膝をついて頭を下げた。
改めて陛下から下賜されたという形になった。
立ち上がって、ペイユを見て。
「というわけだ。これからは俺の奴隷。屋敷でメイドをやってもらう」
「メイド、ですか?」
「ああそうだ」
「殺さない、んですか?」
「必要ないな」
人は宝だ。
直前にジェリーの活躍を聞いたのもあって、またペイユは既に絶対服従の魔法が掛かっていることもあって。
ペイユを殺すつもりは微塵もない。
「......あ、あの」
わずかな逡巡の後、ペイユは勇気を振り絞った、って感じで切り出してきた。
「みんなも、一緒じゃ......だめですか?」
「みんな?」
「はい」
ペイユはおずおずと頷き、周りを見た。
彼女の周りにはまだまだ、多くの麻袋がある。
「みんな、同じ村で育った友達だから......」
俺は頷き、さっきからずっと黙っている奴隷商の方を向いた。
「今ここにあるの、全部買い取った」
「お買い上げありがとうございます!」
「それと今の話は聞いてたな?」
そう言って、金を取り出して奴隷商に渡す。
袋入りで持ち歩いている金、1000リィーンを渡した。
「サエイ族の生き残りがいれば、売りに出さないで王邸に送ってこい」
「し、親王様!?」
奴隷商は大げさに驚いた。
「畏まりました。手前に全てお任せ下さい」
「これでいいか?」
「――っ! はい! ありがとうございます!」
ペイユはものすごく感激した様子で満面の笑みを浮かべた。
その笑顔は美しく、少しだけどきっとした――が。
それ以上に。
名前:ノア・アララート
法務親王大臣
性別:男
レベル:15/∞
HP C+D 火 E+A
体力の「+」が一段階上がった事の方が、より目に留まったのだった。
数日後、アルメリア州都、ニシルの屋敷。
昼過ぎに到着した俺は、リビングでゾーイを呼び出した。
メイド長のゾーイ。俺に対する忠誠心は折り紙付きで、それを買って全てのメイドの管理を任せている。
その彼女を呼び出して。
「都から連れ帰ってきた奴隷達、全部任せる」
「分かりました。みんなメイド、と言うことでいいのでしょうか」
「ああ。絶対服従の魔法を掛けられてて、俺が上書きしない限りお前の命令を聞くように言いつけておいた。全部お前に任せる」
「それと――」
念の為にもういくつか言いつけておこうとしたところ、ドアが開いて、オードリーが部屋に入ってきた。
「お帰りなさいませ、ノア様」
「ただいま。居ない間、屋敷に何か変わったことはあったか?」
「屋敷の方は何も。いつも通りです」
「私の方から、一つノア様にご報告が」
「なんだ?」
「ややを身籠りました」
ちょっと驚いた。
俺は立ち上がり、オードリーに近づく。
見えはしないが、彼女の前に片膝をついて、腹を見つめて、そっと触れる。
「確かなのか」
「はい」
「そうか。良くやった。嬉しいぞ」
不思議なものだ。
オードリーに告げられた後、胸の奥から湧き上がってくるこの感情。
様々なものが満たされていくこの感情。
自分の気持ちに芽生えた変化が面白かった。
「ありがとうございます」
「名前を決めねばな」
「お願いします」
俺は立ち上がって、少し考えた。
いくつか名前を思い浮かべて、それらを取捨選択してまで絞る。
「男ならセム」
「素晴しい名前だと思います」
「女ならアヴィス――」
そう、俺が言った瞬間。の事だった。
よく見た光景に、初めての変化が生じた。
レベル:15+1/∞
HP C+D 火 E+A
知性 D+D 光 E+C
なんと、今までの能力だけでなく。
レベルの値にも、「+」がついた。
「どうかなさいましたか?」
「ゾーイ、俺のステータスを」
直接オードリーには答えず、話の途中で、少し距離をとって控えていたゾーイに命じた。
ゾーイは命令を聞き返すことなく、手慣れた感じで俺に魔法を掛けた。
レベル:16/∞
HP A 火 S
運 C
表向きのステータスが表示された。
それを見たオードリーは。
「レベルが上がってますね。いつ上がったのですか?」
「今だ」
「え?」
「今、お前の腹の中の子に名前を付けたら上がった」
「――っ!」
オードリーも、ゾーイも揃って驚きの表情を浮かべた。
俺の能力が、部下や封地が増える度に上がることをこの二人は知っている。
「レベルも上がる......? 凄い......」
初めての現象に、二人は絶句していた。 | Child Compensation
“‘Why is the chief’s daughter in this state? Answer me.”
“Uuh. ......”
Peiyu tried to remain silent, but, since the magic of absolute obedience had already been cast, she could not disobey my orders.
She bit her lips and answered my question in a choppy voice.
“My father made me flee.”
“The chief? But if you are the daughter of the chief, you must be a high priority as a target for the loot. It’s not that easy to get away, and even if you could, you wouldn’t be sold like this.”
“My father killed a different child along with my mother, and then committed suicide.”
Then I understand the story.
I looked at His Majesty, who had reigned at the pinnacle of the Empire for many years and had even made the occasional procession, and nodded quietly.
The chief probably realized that he was losing and staged a family suicide.
It is a common occurrence.
The end of a defeated warrior is usually tragic.
They would prefer not to live to experience it, nor for their children to experience it.
It is very common for a defeated leader to personally kill his family.
Perhaps after the chief did this, the headcount was right when the crime scene was examined, so it was cleared out.
“So you escaped, but you couldn’t manage to get away, so you were caught and sold to the slavers.”
“......”
Peiyu nodded quietly.
“I was told to throw away my name and go live a quiet life somewhere .......”
Well, now we know the story.
“Noah, what will you do with the girl?”
Peiyu shuddered when His Majesty asked.
As Minister of Justice, I pulled out the imperial laws that I’ve had all through my head.
“The Saeis were not originally part of the empire, so this was not a rebellion. Therefore, for the bloodline of the Chief, men are to be beheaded and women are to be given as slaves to those with merit.”
“Are you saying that there is no need to do anything special?”
“It is exactly as you say, sir.”
Peiyu is already a slave.
She can’t disobey my orders no matter what, because of the magic of absolute obedience.
If I order her to die here, she will scream and cry, but her body will move on its own according to the order.
I looked at her, and our eyes met.
Her frightened look quickly made her avert her eyes and look away.
She looked frightened, and I looked at her expression.
It was a face that correctly understood that the man in front of her had the right to kill her and was therefore frightened.
“Then, I’ll leave the girl to Noah.”
I dropped to my knees and bowed my head.
It seemed like a gift from His Majesty once again.
Standing up, I looked at Peiyu.
“So it is. From now on, you are my slave. You will be a maid in my house.”
“Maid?”
“Yes, that’s right.”
“You’re not going to kill me?”
“That won’t be necessary.”
People are treasures.
Because I had heard about Jerry’s success just before, and because Peiyu was already under the spell of absolute obedience.
I have no intention of killing her.
“...... Ah, um...”
After a slight hesitation, she summoned up the courage to speak up.
“Can everyone come ...... together?”
“Everyone?”
“Yes.”
Peiyu nodded nervously and looked around.
There were still many jute bags around her.
” Everyone is a friend who grew up in the same village. ......”
After nodding, I turned to the slaver who had been silent for a while.
“Everything you have here has been purchased.”
“Thank you for your patronage!”
“And did you catch our conversation?”
Then I took out the money and handed it to the slaver.
I gave him reens, the money I carry around in a bag.
“If there are any survivors of the Saei tribe, send them to the th Prince’s residence instead of selling them.”
“M-My Lord?!”
The slaver was exaggeratedly surprised.
“Understood. Please leave everything to me.”
“Is that all?”
“—-! Yes, sir! Thank you very much!”
Peiyu looked very impressed and smiled a big smile.
Her smile, although small, it was beautiful, but...
More than that...
Name: Noah Ararat
Minister of Justice
Gender: Male
Level: 15 / ∞
HPC+DMPE+D
StrengthC+AStaminaD+DIntelligenceE+DSpiritE+DSpeedE+EDexterityE+DLuckE+D FireE+AWaterC+SWindE+FEarthE+DLight E+CDarknessE+C
It was more noticeable with the “+” in physical strength had gone up one step.
A few days later, in the capital of Almeria, Nisir’s mansion.
I arrived in the early afternoon and called Zoe in the living room.
Zoe, the head maid. Her loyalty to me is proven, and I’ve entrusted her with the management of all my maids.
I called her up.
“I entrust you with all the slaves I brought back from the capital.”
” Understood. So they are all maids, is that correct?”
“Yes. They’re under a spell of absolute obedience, and I’ve told them to obey your commands unless I override them. They are all yours.”
“I respectfully obey.”
“And...”
As I was about to say a few more words just in case, the door opened and Audrey came into the room.
“Welcome back, Noah-sama.”
“I’m home. Have you experienced any changes in the house while we were away?”
“Nothing changed at the residence. Everything is as usual.”
“I have something to tell you, Noah-sama.”
“What it may be?”
I was a little surprised.
Standing up, I approached Audrey.
I knelt in front of her, though I couldn’t see it, stared at her belly, touching it gently.
“Are you sure?”
“Yes.”
“I see. Well done. I’m glad.”
It’s strange.
After Audrey told me, this feeling came up from deep in my chest.
This feeling of being filled with all kinds of things.
It was interesting to see the change that had developed in my feelings.
“Thank you very much.”
” We need to decide on a name.”
“Yes please.”
I stood up and thought for a moment.
Several names came to mind, and I narrowed them down to two.
“Sem if we have a boy.”
“I think that’s a great name.
“And if we have a girl then, Evis.”
Right when I said that. It was the same moment.
The scene I was familiar with for quite some time changed for the first time.
Level: 15 + 1 / ∞
HPC+DMPE+DStrengthC+AStaminaD+DIntelligenceD+DSpiritE+DSpeedE+EDexterityE+DLuckE+D FireE+AWaterC+SWindE+FEarthE+DLight E+CDarknessE+C
Not just abilities so far.
A ” + ” has been added to the level value as well.
“Did something happen?”
“Zoe, my status.”
I didn’t answer Audrey directly, but I ordered Zoe, who was standing at a slight distance from me in the middle of the conversation.
Zoe cast a spell on me in a familiar way, without bothering to ask me back.
Level: 16 / ∞
HPAMPCStrengthSSSStaminaBIntelligenceBSpiritCSpeedDDexterityCLuckC FireSWaterSSSWindEEarthCLight BDarknessB
My outward status was displayed.
Audrey glanced at it and said.
“Your level has gone up. When did it go up?”
“Now.”
“Eh?”
“I just named the baby in your belly and it went up.”
“—!”
Audrey and Zoe both had a look of surprise on their faces.
These two know that my abilities increase every time I have more subordinates or fiefs.
“Your level also increases ......? Amazing .......”
The two of them were immensely surprised by this first-time phenomenon. |
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} | 屋敷の内苑、リビングの中。
俺はメイドのゾーイと向き合っていた。
俺がソファーに深く背をもたれ掛けて座り、ゾーイが真ん前に立っている。
「ご主人様のご命令通り、乳を確保しました。いずれも経産婦ばかりで、乳の出は保証されております」
「保母もご命令通り四人、教育係はを確保しました。教育係につきましてはエヴリンさんの推薦、シャーリー様の推薦です」
「分かった」
乳母四人、保母四人、教育係十六人。
そろそろ産まれてくる俺の息子の為に揃えた人間だ。
皇族は、よほどのことが無い限り母親が自らの母乳で子育てをする事はない。
理由はいくつかある。
一つは危険だからそうすべきではないというもの。
もう一つは、身も蓋もない言い方をすれば、貴族の女は跡継ぎ――つまり男子を産むまで
故に、子育てするよりも、一刻も早く次の出産が出来る位に回復する必要がある。
事実、転生して生まれた瞬間からの記憶がある俺は、母ではなく乳母の乳で育ったのをよく覚えている。
ちなみに、皇太子ともなれば乳兄弟は基本存在しない。
死産した女を乳母につけるからだ。
乳兄弟はなんだかんだで特別な存在になるから、その可能性を最初から排除する。
帝国が天下を取る前の帝国は皇帝の乳兄弟が政治に口を出して国を傾けさせた事もあり、我が帝国は皇太子には乳兄弟を作らないようにしている。
「しかし......すごいです......」
「ん? なにがだ、ゾーイ」
「まだ生まれてもおりませんのに、もう二十人近くの人間をつけてます。こんなに多くの乳母や保母は初めて聞きます」
「家の為だからな」
「家の為、ですか」
俺は静かに頷いた。
「優れた子供は、その家の次の代をより良きものにする。そう思えば力を入れざるを得ない」
「なるほど! さすがご主人様です!」
ゾーイが納得した所で、俺は指折って、出産までの日数を数えた。
オードリーの腹は順調に膨らんでいて、医官の定期検診でも順調だと言われてる。
予定日が待ち遠しくある。
そんな事を考えていると、ドアがノックされて、ゾーイが向かっていった。
ドアが開いて、メイドの一人がゾーイに耳打ちした。
ゾーイは頷いて、ドアを閉めて戻ってくる。
「ご主人様」
「どうした」
「なんでも、吉兆が現われたそうです」
「またか」
俺は半分ほど呆れた様子で苦笑いした。
最近、吉兆が多いな。
最初は「賢」の文字が自然にできたと言われる隕石だった。これは全くの捏造だった。
その次は、子供が宝石を握り締めながら産まれてきた。
そして今、また吉兆が現われたという。
「今度はなんだ? もう献上品として届いているのか?」
「いえ、物ではないようです」
「物じゃない?」
「はい、窓の外をご覧下さい」
「......?」
俺は首をかしげつつも、ソファーから立ち上がって、窓際に向かっていった。
驚いた、思わず息を飲んでしまう位驚いた。
なんと窓の外――空にオーロラが掲げられていた。
空高く掲げられている極光のカーテン。
紛れもなく、普段は見ないものだ。
「こんな所にオーロラだって?」
「アルメリアでこれが現れたのは、少なくともこの数百年はないみたいです」
「だろうな」
オーロラというのは、もっと北の果てか、南の果てに現われるものだ。
このアルメリアのような、農作に適した温暖な気候の所には普通現れない。
「バハムート」
「あれはなんらかの人為的なものか?」
『そういった意志はまったく感じられぬ』
どうやら、自然発生のようだ。
なるほどなと思った。
これを見れば、確かに吉兆と思っても不思議ではない。
「こんなのが現われるなんて、やっぱりご主人様ってすごい......」
ゾーイは、当たり前のように。
吉兆=為政者の為にあるものとして、俺に憧れの眼差しを向けてきたのだった。
結果から言えば、それは吉兆だったようだ。
数ヶ月後、無事臨月を迎えたオードリーは、玉のような男の子を産んだ。
かなりの安産で、母子ともに元気だ。
「よくやったな、オードリー」
俺はベッドの上に寝そべっているオードリーを労った。
「ありがとうございます」
「男だから、名前は前もって決めた通り、セムとする」
「はい......」
大仕事を終えたオードリーは頷き、微かな微笑みのまま目をそっと閉じた。
「さて......ゾーイ」
「わかりました」
ゾーイは保母に抱かれている赤ん坊――セムに近づき、魔法をかけた。
俺が転生――生まれた直後にやったことと同じだ。
能力をチェックする魔法をかけた。
直後、子供のステータスが浮かび上がる。
名前:セム・アララート
性別:男
レベル:1/100
HP F 火 F
力 F 風 F
体力 F 地 F
速さ F
「「「おおおっ!?」」」
ステータスが表示された瞬間、部屋の中にいたメイドや保母、助産婦らが一斉に驚きの声を上げた。
「レベルの上限が100か」
「さすがご主人様、すごいです。ご主人様の血がばっちり若様に受け継がれました」
「そうなるな」
レベルの上限が100、というのは相当のものだ。
レベル15でも人間の上位5%だ。
レベル上限が100なんて、数千万人に一人ってレベルの才能だ。
「やっぱりあの吉兆はこれを予言したものだったんですね」
「そうかもしれないな......そうだ。この子に領地をやらないとな」
親王ほどではないが、親王の子供にも多少の領地を与えるのが一般的だ。
一般的ではあるが、もちろんそれだけではない。
レベルの上限が俺の血を引き継いで100という高さなら、領地や人間を加えて能力があがる俺特有のこの力は?
「ドッソをやろう。いいな、ゾーイ」
「ありがとうございます!」
ゾーイは嬉しそうに頭を下げた。
ドッソは彼女の故郷の土地だ。
その土地を俺の長子――世継ぎの可能性が高いセムに与えるのは一種の恩賜だ。
そうした後、もう一度ゾーイに命じてステータスを呼び出させる。
名前:セム・アララート
性別:男
なるほど、「+」はやっぱり俺特有で、子供には受け継がれなかったようだ。
それでも。
「レベル100だって」
「最後が出たのはいつだったかしら」
年くらい前の大将軍グラント様じゃなかった?」
周りはセムに自然と期待して、同時に俺にはますます尊敬の視線を向けてくるのだった。
セムが産まれた事で、俺は都に飛んだ。
親王は子供が生まれた場合、特に男の子が生まれた場合、皇帝陛下に報告する義務がある。
その義務を果たすため都に戻り王宮に入って陛下に謁見を求めた。
すぐに目通りがかなって、俺は陛下の書斎にやってきた。
「おお、よく来たなノア」
書斎の中にいた陛下が両手をあげて、満面の笑顔で俺に向かってきた。
俺はその場で片膝をついて、作法に則って一礼した。
「かしこまったのはいい、面を上げよ」
「聞いたぞ、お前の子供。セム、だったか」
「はい」
「レベルの上限が100だそうだな。さすがノアの子供だ」
「恐縮です。封地に戻り、すぐにセムを連れて都に戻ってきますので、その時に陛下に一度抱いて頂ければ」
「うむ、そうしよう。それよりも、ノアよ、お前に話がある」
「話、ですか?」
顔を上げると、ちょっと驚いた。
陛下の顔が、いつになく真剣だったからだ。
さっきまであんなに笑顔だったのが、急に真剣な顔つきになった。
「そうだ」
陛下は頷き――爆弾発言をした。
「余は退位して、上皇になろうと思う」
さすがに驚いた。
転生してから十六年、今が一番驚いた瞬間だ。
「......どういう事ですか?」
「色々考えたのだ。ノアのアドバイスもあったが、やはりそれは不確定だ」
俺のアドバイス――体の中に遺言、つまり次の皇帝の人選を書いたものを埋め込むと言う話だ。
「あれをやった所で、余のいない所で次の皇帝が決まるという事に変わりは無い。ならば、余がまだちゃんと物事を判断できる間に、次の皇帝を決めてしまうのが一番だと思った」
「......はっ」
陛下の言うことにも一理ある。
いや、むしろさすがと言うべきだ。
「だから――ノア、次の皇帝をやってくれ」
「......セム、ですか」
瞬間、脳裏に白い雷が突き抜けていった。
一ヶ月くらい前までだったら分からなかっただろう。
だが、今は分かる。
セムが産まれた事で、陛下の考えが分かった。
「やはりお前はすごいな、ノア」
陛下にほめられた。
「うむ。レベル上限100という、数千万人に一人の才能だ、セムは。ノアに帝位を渡せば、帝国三代にわたっての繁栄が約束される」
「つまりはそういうことだ。やってくれるな、ノア」
「......」
俺は少し考えたあと、無言でひざまづいた。
「分かりました。三代の繁栄のため、ご期待に違えず精進します」
「うむ」
陛下は頷き、俺の肩を叩いた。
「儀式などはこれからだが、この瞬間をもって帝位を渡す」
瞬間、視界の隅っこにあるステータスが変わった。
名前:ノア・アララート
帝国皇帝
レベル:15+1/∞
HP C+C 火 E+S
肩書きが皇帝に代わり、「+」が全部一段階上がった。
......なるほど。
前に総理親王大臣になった時は、「+」が全部SSSになった。
しかし今は、全部が一段階上がっただけ。
それはつまり、陛下――上皇になられた後もまだ権力を全部手放すつもりはないと言うことだ。
だから、俺は言った。
「ますます精進し、帝国の全てを任せるに値する皇帝になります」
「それがお前の凄い所だ。二代目は安泰だな」
陛下は嬉しそうに微笑んだ。
こうして、俺は親王から皇帝になったのだった。 | In the living room of the inner garden of the mansion.
I was standing in front of my maid, Zoe.
I was seated with my back leaning deeply against the sofa, and Zoe was standing directly in front of me.
” As per Master’s orders, I have secured four wet nurses. All of them are full-term mothers, and their milk production is guaranteed.:
“Hmm”
“I’ve also secured four babysitters as ordered, and sixteen educators. Two of the educators were recommended by Evelyn-san and one by Shirley-sama.”
” Okay.”
Four wet nurses, four babysitters, and sixteen educators.
These are the people I have lined up for my child who is about to be born.
The royal family does not allow mothers to raise their children on their own breast milk unless they are very lucky.
There are several reasons for this.
One is that it is considered unsafe and should not be done.
The other reason is that to put it bluntly, a noblewoman must continue to give birth until she gives birth to an heir, a male.
Therefore, rather than raising children, they need to recover to the point where they can give birth to another child as soon as possible.
In fact, I was reincarnated and have memories from the moment I was born, and I remember well that I was raised on the milk of a wet nurse instead of my mother.
Furthermore, if you are the Crown Prince, your siblings basically do not exist.
This is because they assign stillborn women as wet nurses.
Because siblings are special in some way, they eliminate the possibility from the beginning.
Before the Empire took over, the emperor’s brothers and sisters interfered in politics and tilted the country, so the Empire does not allow the Crown Prince to have milk siblings.
“But ...... this is amazing .......”
“Hmm? What do you mean, Zoe?”
“The child hasn’t even been born yet, and you’ve already provided almost twenty humans. I’ve never heard of so many wet nurses and babysitters.”
“Because it’s for the family.”
“For the household, you mean”
I nodded quietly.
“A good child will make the next generation of the family better. That’s why you have to put so much effort into it.”
“I see! As expected of Master!”
Once Zoe was convinced, I folded my fingers and counted the days until the birth.
Audrey’s belly was swelling steadily, and the doctor’s regular checkups indicated that she was doing well.
Can’t wait for the due date.
While I was thinking about this, there was a knock on the door, and Zoe head for it.
The door opened and one of the maids whispered to Zoey.
Zoe nodded and returned, closing the door behind her.
“Master.”
“What happened?”
“They say a good omen has appeared.”
“Again?”
I chuckled, looking half-amused.
Recently, I’ve been hearing a lot of good omens.
The first one was a meteorite that was said to have naturally formed the word “wise. This was a total fabrication.
Next, a child was born clutching a jewel.
And now, they say, another good omen has appeared.
“What is it this time? Has it arrived as a gift yet?”
“No, it’s not a gift.”
“Not an object, then?”
“Yes, please look out the window.”
“......?”
I nodded my head getting up from the couch and going to the window.
I was surprised, so much so that I gasped.
To my surprise, there was an Aurora in the sky outside the window.
A curtain of polar lights high in the sky.
Definitely, something you don’t normally see.
“Aurora here in this place?”
“There hasn’t been anything like this in Almeria for at least a few hundred years.”
“Maybe.”
Auroras are usually seen in the far north or the far south.
They don’t usually appear in places like here in Almeria, where the climate is warm enough for farming.
“Bahamut.”
“Is that some kind of man-made thing?”
{I can’t feel any such will.}
It appears to be naturally occurring.
I thought that makes sense.
It’s no wonder it’s a good omen.
“After all, it is amazing that Master’s presence can make such a thing appear .......”
Zoe’s reaction was normal.
Good Omens= something good that exists for rulers, so I was being looked at with admiration.
As it turned out, it’s was a good omen.
A few months later, Audrey was safely in her last month of pregnancy and gave birth to a gem of a boy.
The delivery was quite easy, and both mother and child are healthy.
“You did great, Audrey.”
I said to Audrey as she lay on the bed.
“Thank you very much.”
“Since we have a boy, we’ll name him Shem, as we decided.”
“Yes, .......”
Audrey nodded, her eyes closing softly with a faint smile as she finished her big task.
“Now, ...... Zoe.”
“I understand.”
Zoe approached the baby – Sem – who was being held by the caretaker and cast a spell.
It’s the same thing that was performed right after I was born – when I reincarnated.
A spell was cast to check his abilities.
Immediately after, the child’s status came up.
Name: Sem Ararat
Gender: Male
Level: /HPFMPFStrengthFStaminaFIntelligenceFSpiritFSpeedF
DexterityFLuckF FireFWaterFWindFEarthFLight FDarknessE
“””Ohhhh!?”””
The moment the status was displayed, the maids, wet nurses, and babysitters in the room all shouted in surprise at the same time.
“Upper limit of level 0?”
“As expected of Master, this is incredible. Master’s blood has been passed on to the young master.”
“That’s right.”
The upper limit of 100 levels is quite something.
Even level 15 is in the top 5% of the human population.
With the upper limit being level 100, it is a talent that is only found in one in tens of millions of people.
“I believe the good omen was a prediction of this.
“That may be so. ...... yeah. I have to grant this boy his domain.”
Although not as much as the Prince, the Prince’s children are generally given some territory as well.
It’s common, but of course, it’s not the only reason.
If the upper limit of the level is as high as 100 after inheriting my blood, then what about this unique power of mine that increases my abilities by adding territories and people?
“Let’s grant Dosso. Sounds good, Zoe.”
“Thank you very much!”
Zoe bowed her head happily.
Dosso is her homeland.
Giving it to my firstborn son, Sem, who is the most likely heir, would be a kind of gift.
After that, I ordered Zoe to call up the status again.
Name: Sem Ararat
Gender: Male
Level: 1/100
HPFMPFStrengthFStaminaFIntelligenceFSpiritFSpeedFDexterityFLuckF FireFWaterFWindF
EarthFLight FDarknessE
I see the “+” is still unique to me, and I guess I didn’t pass it on to my children.
Still.
“Level 100 is it”
“When was the last time there was three digits?”
“Wasn’t it about fifty years ago, General Grant-sama?”
The people around me naturally expected more from Sem, and at the same time, they looked at me with increasing respect.
With the birth of Sem, I flew to the capital.
When a child is born, especially if it’s a boy, it’s the prince’s duty to report it to the emperor.
To fulfill this duty, I returned to the capital, entered the royal palace, and sought an audience with His Majesty.
I was soon granted an audience, and I came to His Majesty’s study.
“Ohh, you’ve arrived well, Noah.”
His Majesty, who was in his study, raised his hands and came towards me with a big smile on his face.
I got down on one knee and bowed to him in the proper manner.
” No need to be so formal, raise your head.”
“I heard about your kid. Sem, was it?”
“Yes.”
“And the level limit is 100. It’s Noah’s boy alright.”
“It’s my pleasure. I will return to the fief and return to the capital with Sem soon, so I hope Your Majesty will hold him once.”
“Umu, I will. Noah, I have something to tell you.”
“Something to tell me?”
When I looked up, I was a little surprised.
His Majesty’s face was more serious than ever.
His face, which had been smiling so much earlier, suddenly became serious.
“That’s right.”
His Majesty nodded and dropped a bombshell.
“I am going to abdicate and become the Ex-Emperor.”
I was indeed surprised.
In the sixteen years since I was reincarnated, this is the most surprising moment.
” ...... What do you mean?”
“I’ve given it a lot of thought. Noah had also advised me, but I was still uncertain about that.”
My advice – implanting a will in your body, something that says who the next emperor will be.
“There is no difference between that and having the next emperor decided without me. So I thought it would be best to decide on the next emperor while I’m still able to make good decisions.”
“...... yes”
There is a point to what His Majesty said.
No, rather, I should say that it is as good as it gets.
“So – Noah, be the next emperor.”
“...... Sem, right?”
Instantly, a bolt of white lightning went through my brain.
A month or so ago, I wouldn’t have known.
But now I know.
Now that Sem was born, I knew what His Majesty was thinking.
“You’re really something, Noah.”
He complimented me.
“Umu. With a level limit of 100, Sem is a talent like no other in tens of millions. If Noah takes the throne, the empire is guaranteed to prosper for three generations.”
“That’s the idea. Perform well, Noah.”
“......”
I thought about it for a moment and then knelt silently.
“I understand. For the prosperity of three generations to come, I will do my best to live up to your expectations.”
His Majesty nodded and patted me on the shoulder.
“The ceremonies and such are yet to come, but as of this moment, I hand over the throne.”
At that moment, the status in the corner of my vision changed.
Name: Noah Ararat
Emperor of the Empire
Level: 15 + 1 / ∞
HPC+CMPE+CStrengthC+SStaminaD+CIntelligenceD+CSpiritE+CSpeedE+CDexterityE+CLuckE+C FireE+SWaterC+SSWindE+EEarthE+CLight E+BDarknessE+B
My title changed to Emperor, and all the “+”s have been raised one level.
...... I see.
When I became the Prime Minister, all of my “+”s went up to SSS.
But now, all of them have just gone up one level.
That means that even after becoming the Emperor – His Majesty – he still doesn’t intend to give up all his power.
So I said,
“I will continue to work hard and become an Emperor worthy of being entrusted with the entire Empire.”
“That’s the great thing about you. The second generation is in safe hands.”
His Majesty smiled happily.
Thus, I went from being the Prince to being the Emperor. |
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} | 夜になって、今度は屋敷のリビングで、「抑え気味に」と命令したレヴィアタンとルティーヤーの模擬戦を見ていると、メイドがノックをして部屋に入ってきた。
普段、この時間帯に顔を見ることのない、エヴリンの後釜に座ったセシリーというメイドだ。
「ご主人様、お客様でございます」
「だれだ?」
「陛下の使者です、勅命を携えてきたとのこと」
俺はパッと立ち上がった。
夜も遅いが、勅命とあっては会うしかない。
「通せ」
「かしこまりました」
セシリーが部屋を出て、しばらくして1人の男が入ってきた。
ちょっと驚いた。
知った顔だ。
ライス・ケーキ。
ヘンリー兄上の部下で、ちょっと前まで反乱の鎮圧に出てた男だ。
俺はライスに片膝をついた。
勅命を持って来た使者はいわば皇帝の代理人。
礼法はすべてにおいて陛下にするものでなければならないし、勅命を伝達する今のような場合、がなにか口をはさむのも不敬罪に当る。
だから俺は、片膝ついて頭を垂れて、静かに耳を澄ました。
「賢親王ノア・アララートの初陣は延期するものとする。別命あるまで待機せよ」
俺はそう応じてから、更してすっくと立ち上がった。
次の瞬間、まるで入れ替わるように、ライスが俺に膝をついて頭を垂れた。
「お久しゅうございます、殿下」
「うん? ああそうか、お前はヘンリー兄上の『家人』か」
ライスは応じて、更に頭を下げた。
皇族は時として、自分の奴隷や使用人などを役人や武将として外に出すことがある。
そういう出自を持つ者は、「貴族の家から輩出された人間」という意味で「家人」と呼ばれる。
俺もちょっと前に、エヴリンをアルメリアの小さな土地の代官に出した。
それと同じで、でもエヴリンより大分出世しているのがライスだ。
そして、一つ重要なことがある。
それは役人という公人の身分がありつつも、皇族の「下人」ということでもある。
ライスはヘンリー兄上の下人であるのと同時に、俺の下人でもある。
だから、ライスは勅命の宣下が終わるやいなや、俺に片膝をついて頭を下げたのだ。
「そうか、楽にしていいぞ」
そういうことならば、と俺はソファーに座り直した。
ライスは当然のように、立ったまま俺と向き合った。
「ゾーイ!」
ゾーイが入ってきた。
「使者殿に足代をお渡ししろ。500リィーンだ」
ゾーイが部屋から出て、俺は改めてライスと向き合った。
「陛下の勅命は分かったが、なぜこうなったのだ?」
「それはひとえに殿下のお力ゆえ」
「どういうことだ?」
「ヘンリー様――兵務省が陛下に占いの結果を報告したら、陛下は大いに喜んでおられた」
「なるほど」
「そういうことならば、と大々的にやらねばと仰せになった。兵務省と財務省が共同で、大々的に行うということに」
俺は静かにうなずいた。
そういうのも大事だ。
庶民は英雄譚を好む。
その主役が皇族なら、盛大に広める必要がある。
「初陣が1人でというのは前代未聞。陛下はそのすごさを帝国全土に広めるための方法を、ヘンリー様、下のと一緒に考えておられます」
俺は更に頷いた。
そういうことなら、初陣関連で、しばらくは俺の出る幕はないな。
次の日、俺はシャーリーを連れてコバルト通りに向かった。
ルティーヤーの成長と模擬戦で俺のレベルアップ。
この二つの新しい力のために、俺は更にレヴィアタンやルティーヤーのようなアイテムを見つけるべく、骨董やお宝が集まるコバルト通りにやってきた。
シャーリーを引き連れたまま歩いて探し回るが、それっぽいものはまったく見つからない。
まあ、レヴィアタンやルティーヤーみたいなのはそう簡単に見つかるものでもない。
二体とも本物のお宝、そうそう出るものじゃない。
見つからなくてもしょうがない、と、俺は一回りした後、顔なじみのアランの店にやってきた。
店にいたアランは満面の笑顔で俺とシャーリーを店の奥に通した。
通された貴賓室で、俺は座って、騎士のシャーリーは俺の背後で警戒するように仁王立ちした。
「本日はどのようなものをお探しでしょうか」
アランは商売人らしく、手もみしながら聞いてきた。
「アイテムを探している......そうだな、意志を持っているタイプの魔道具だ」
「なるほど......」
「そういうものはないか? なんでもいいぞ、例えば呪われた人形とか」
「それならば一体――ああいえ、あれは、えっと」
「ん?」
なんでいきなり言いよどむ? って感じの目でアランをみた。
「ここだけの話、今言ったのは偽物で。素人に押しつける程度の品物でございます」
俺はクスッと笑った。
骨董品やお宝を扱う店だ、もちろんそういうこともある。
「ということはないんだな、今は」
「はい......誠に申し訳ありません......」
「いいさ、ならば」
俺は懐から革袋を取り出した。
お宝を見つけた時のための金だ。
「とっとけ、一万リィーンある。それっぽい掘り出し物があったら連絡しろ」
「はい!」
「ちゃんと見つかったら別途褒美をくれてやる。それじゃ」
俺はそう言い残して、シャーリーを連れて店を出た。
アランは俺たちを店の外まで送ってきて、いつまでも頭を下げて見送った。
さて、どうするか――ん?
「どうしたシャーリー、変な顔をして」
店を出てから、シャーリーがずっとポカーンとしているのに気づいた。
「い、いえ。今のってなんなのかな、っておもって」
「今の?」
「えっと......お金を、渡した?」
シャーリーは自信なさげな口調で言ってきた。
「何って、買い物だろ?」
「......買い物なんですか?」
「そういう買い物見たことないです。品物もないのにお金を、しかも一万リィーンを払ってしまうなんて」
「ああ」
「なんか......すごい......。それに値段も全然きいてない」
気持ちはわかる、俺も前世のままなら今のシャーリーと同じ反応をしてた。
がまあ、それが貴族の買い物ってやつだ。
舌を巻くシャーリーを連れて、最後に露店に出てるものを流し見しながら、コバルト通りを後にする。
「ああん!?」
突然、雑踏の中でもよく通り、野太い男の声が聞こえた。
それは周りにもよく聞こえたらしく、骨董市の賑わいが一瞬にして静まりかえった。
「もう一度言ってみろ、今、なんていった」
静寂の中、さっきの声がまた聞こえてきた。
声の方を見ると、遠目からでもはっきりと分かる、頭のてっぺんをはげ上がらせた男が、露店の店主に怒鳴っているのが見えた。
「で、ですから。この品物は別のお客様が予約していったもので――」
「俺様が買うつってんだろ!」
「ひぃっ!」
男の再度の恫喝に、露店の店主はすくみ上がった。
俺は近づき。
「やめろ」
と男に言った。
「はぁん? これはこれは、ノア様じゃないですか」
「俺のことを知っているのか?」
男は一変、慇懃な態度取ってきた。
いや違うな。
慇懃無礼な態度、っていった方が正しい。
「申し遅れました、私、ギルバート殿下の家人の、ダレンと申します」
「ダレン」
「宮内省でお会いしませんでしたか?」
「むっ」
宮内省というのは、王族の「内務」を総括する省庁だ。
王族の財務も管理してて、財務省が帝国の国庫を管理しているのに対し、宮内省は皇帝、そして王族の「おサイフ」を管理している所だ。
皇族と密接に接している事もあり、どこか変なエリート意識で、他の省庁を見下しがちなのもここの特徴だ。
「それはいい。それよりも何をしている、話を聞いてたが今のは恫喝だぞ」
「おやおや、ノア様は法務親王大臣なのにご存じない?」
ダレンは蔑みきった目で俺を見た。
「宮内省の人間は、内乱外患の罪以外では罪に問えないのですよ、いわば法外特権。これは皇室の安定を保つためで、しっかりと帝国法でも定められております」
「......」
確かにそうだ。
宮内省とあんまり絡まないから失念していたが、確かにそうだ。
そうだが。
「ですので? 口出しは無用に願いたい」
「の、ノア様......」
シャーリーがおそるおそる俺の名を呼んだ。
きっと今、俺はかなり怖い顔をしてるんだろう。
皇族、特に親王の使用人は、それだけでかなりの地位を持つ。
門番程度でも、皇族と絡まない下級騎士くらいの地位と見なされる。
それが今上陛下の第一子、第一親王ギルバートの家人で、なおかつ特権を持つ宮内省の人間ならば、この態度も驚くほどのものじゃない。
「わかった、それはいい。だが」
「だが?」
ダレンは「まだ何かあるのか?」って顔で、俺を見下しきったまま聞いてきた。
「お前は兄上の家人だな? なら、なんで俺を見て突っ立ったままでいる」
「むっ」
ダレンの顔色が初めて変わった。
昨日、ライスが俺にしたことだ。
最初は勅命の宣下をしに来たから俺はライスに跪いたが、それが終わればライスは「皇族の家人」として俺に跪いた。
それと同じことだ。
ダレンは本来、俺にもっと恭しくするべきだ。
「き、気づかず――」
「もう遅い。シャーリー」
「こいつを捕まえろ。その辺に縛りつけてむち打ちにしろ」
目を剥くほど驚愕するダレン。
「正気か! 俺はギルバート様の――」
「ギルバート兄上の顔に泥を塗ったことがまだ分からないか。やれシャーリー!」
話を理解したシャーリーは前に進み出て、ダレンを捕まえた。
ダレンは抵抗したが、シャーリーはレヴィアタンの結界さえもやぶれるほどの力を持っている。
抵抗するダレンを難なく捕まえて、後ろ手でひねり上げた。
「えっと......縄は......」
「こ、これを使って下さい」
見物人の中から一人男が進みでて、縄を差し出した。
「ありがとう」
シャーリーはそれを受け取って、その辺の店に柱を借りて、ダレンを縛りあげた。
今度は鞭を差し出す者がいた、シャーリーはそれを受け取った。
「ノア様、どれくらい打ちますか?」
そこで一旦言葉を切って、ダレンをちらっと見てからシャーリーにいう。
「お前やメイド達、俺の家人、配下が民を虐げるような事があれば、俺は容赦なく死刑にする」
「分かりました」
シャーリーは頷き、躊躇なくダレンを鞭でうちだす。
瞬間、歓声が上がった。
「いつも威張って、罰が当ったんだ」
「親王様に感謝だね」
周りの人間は意外と大喜びで、ダレンが鞭で打たれているのを笑いながら見ていた。
シャーリーは、ダレンが息絶えるまで鞭で打ち続けた。 | It was nighttime, and this time I was in the living room of the mansion watching the mock battle between Leviathan and Luthiya, which I had ordered to be “restrained” when a maid knocked and entered the room.
It was a maid named Cecily, who took Evelyn’s place, and whose face was not usually seen at this time of the day.
“Master, you have a visitor.”
“Who is it?”
“An envoy of His Majesty’s, with an imperial order.”
I stood up quickly.
It was late at night, but I had no choice but to meet him.
“Let him through.”
Cecily left the room, and a moment later a man entered.
I was a little surprised.
It was a familiar face.
Rice Cake.[THIS NAAAME]
He’s one of my brother Henry’s men, the one who was out suppressing the rebellion a while back.
“Yes.”
I got down on one knee in front of Rice.
The messenger who came with the imperial order is the emperor’s representative, so to speak.
The courtesy must be done to the emperor in all respects, and in cases like this where the imperial order is being conveyed, it is a crime of disrespect for a third party to interfere in any way.
So I got down on one knee, lowered my head, and listened quietly.
“The first battle of the Wise Prince Noah Ararat shall be postponed. Stand by until further notice.”
I bowed and stood up smoothly.
The next moment, as if by turns, Rice knelt down and bowed to me.
“Long time no see, Your Highness.”
“Hmm? Oh, so you’re Brother Henry’s Retainer’.”
Rice bowed his head further in response.
The royal family sometimes sends their servants and employees out as officials and commanders.
A person with that kind of origin is called a “Retainer” in the sense of “a person brought forth from a noble family”.
I also sent Evelyn to be a representative of a small land in Armeria a while ago.
It’s the same thing, but Rice has risen much higher than Evelyn.
And there’s one important thing.
Rice has the status of a public official, but he is also a “servant” of the royal family.
At the same time, while he is Brother Henry’s servant, he is also my servant.
That’s why, as soon as the imperial order was given, Rice got down on one knee and bowed to me.
“Well, you can make yourself comfortable.”
And with that, I sat back down on the couch.
Rice, of course, stood and faced me.
“Zoe!”
Zoe walked in.
“Give the messenger his traveling expenses, reens.”
Zoe left the room and I faced Rice again.
“I understand His Majesty’s decree, but how did it come to this?”
“It’s all because of Your Highness.”
“What do you mean?”
“Henry-sama, when the Ministry of Military Affairs reported the results of the fortune-telling to His Majesty, he was very pleased.”
“In that case, he said, we must do something big. The Ministry of Military Affairs and the Ministry of Finance are going to work together to carry out a large-scale project.”
I nodded quietly.
That’s important, too.
The common people love a heroic tale.
If it’s the royal family that’s in charge, they need to spread the word.
“It’s unheard of for one person to be chosen for the first battle. His Majesty is working with Henry-sama and His Eighth Highness to find a way to spread his greatness throughout the Empire.”
I nodded further.
If that’s the case, then I guess I won’t be around for a while in relation to the first campaign.
The next day, I took Shirley with me to Cobalt Street.
Luthiya’s growth and the mock battle had raised my level.
Because of these two new powers, I came to Cobalt Street, where antiques and treasures are gathered, to find more items like Leviathan and Luthiya.
I walked around with Shirley in tow, but couldn’t find anything that looked like it at all.
Well, it’s not so easy to find something like Leviathan or Luthiya.
Both of them are real treasures, not something that comes along very often.
Deciding that it couldn’t be helped if I couldn’t find anything, I went around and came to the store, and I found Alan, a familiar face.
With a big smile on his face, he ushered Shirley and me into the back of the store.
In the guest room, I sat down and Shirley, the knight, stood guard behind me.
“What can I do for you today, sir?”
Alan asked, wringing his hands like a businessman.
“I’m looking for an item ......, yes, a magic tool that has a will of its own.”
“I see. ......”
“Do you have anything like that? Anything, like a cursed doll.”
“I’m thinking maybe one of those... oh, no, that’s, uh...”
“Hmm?”
Why are you stammering all of a sudden? I looked at Alan with such a look.
“The one I was talking about is a fake. It’s just an item to be forced on an amateur.”
I chuckled.
This is a store that deals in antiques and treasures, so of course, it happens.
“So there is no such thing, now?”
“Yes. ...... I’m very sorry. ......”
“Okay, then.”
I took out a leather bag from my pocket.
It’s the money in case I find a treasure.
“Keep it, I’ve got ,00 reens. Call me when you find a bargain like that.”
“Yes!”
“If you find it properly, I’ll give you a separate reward. See you.”
With that, I left the store with Shirley.
Alan walked us out of the store, bowing his head for all time as he saw us off.
Now, what to do – hmm?
“What’s the matter Shirley, you look so strange.”
After we left the store, I noticed that Shirley had been pouting the whole time.
“N-no. I was just wondering what was that now.”
“Now?”
“Umm...the money you handed?”
Shirley said in an unsure tone.
“What else it would be, shopping?”
“...... That was shopping?”
“I’ve never seen shopping like that. You paid 10,000 reens for something you didn’t even have.”
“Aah.”
“That was ...... amazing ....... And it’s not even close to the price.”
I know how she felt, in my previous life I would have reacted the same way Shirley does now.
But that’s what aristocratic shopping is all about.
With Shirley’s tongue rolling, we left Cobalt Street, taking one last look at the stalls.
“Aaaah!?”
Suddenly, I heard a loud man’s voice in the crowded street.
It seemed to be well heard by those around him, and the bustle of the antique market instantly quieted down.
“Say that again, what did you just say?”
In the silence, I heard the voice from before again.
I looked towards the voice and saw a man with a bald head, clearly visible from a distance, shouting at the owner of the stall.
“S-sir. This item was pre-ordered by another customer.”
“I’m the one who’s buying it!”
The owner of the stall cowered at the man’s renewed threat.
And I approached them.
“Stop.”
I said to the man.
“Hmm? Well, well, Noah-sama, isn’t it?”
“Do you know me?”
The man suddenly changed his attitude and became rather courteous.
No, that’s not it.
It was more like a superficial courtesy.
“I am sorry for the late introduction, but my name is Darren, a Retainer of His Highness Gilbert.”
“Daren.”
” I believe we’ve met at the Ministry of the Imperial Household?”
“Mmm.”
The Ministry of the Imperial Household is the ministry that oversees the royal family’s ‘internal affairs’.
While the Ministry of Finance manages the imperial treasury, the Ministry of the Interior manages the emperor and the royal family’s wallet.
Because of its close contact with the royal family, the Ministry of the Imperial Household tends to look down on other ministries with a strange sense of elite.
“That’s fine. What are you doing more than that? I heard you talking, but that was a threat.”
“Well, well, Noah-sama is the Minister of Justice, and you don’t know it?”
Daren looked at me with scornful eyes.
“People in the Ministry of the Imperial Household cannot be charged with any crime other than the crime of internal disturbance, so to speak, an extralegal privilege. This is in order to maintain the stability of the imperial family, and is firmly enshrined in imperial law.”
“......”
Indeed, it is.
I had forgotten about it because I don’t get involved with the Ministry of the Imperial Household very often, but it’s true.
Yes, but.
“So? I hope you don’t need to interfere.”
“N-Noah-sama......”
Shirley called out my name cautiously.
I’m sure I’m making a very scary face right now.
The royal family, especially the servants of the king, have a very high status in their own right.
Even a gatekeeper is considered to have the status of a low-ranking knight who is not involved with the royal family.
If you are a servant of His Majesty’s first child, the First Prince Gilbert, and you are a member of the Ministry of the Imperial Household with privileges, this attitude is not surprising.
“All right, that’s fine. But...”
“But?”
Daren looked at me with a “Is there anything more?” as if looking down on me.
“You’re my Brother’s Retainer, aren’t you? Then why are you just standing there looking at me?”
“Mmm.”
For the first time, Daren’s color changed.
That’s what Rice did to me yesterday.
It’s the same thing as when I knelt before Rice because he came to pronounce an imperial decree, but when he was done, he knelt before me as a ‘Royal Family’s Retainer’.
It’s the same thing.
Daren should have been more reverent to me.
“I-I didn’t notice...”
“It’s too late. Shirley.”
“Get this guy. Tie him to the ground and whip him.”
“Hey!”
Darren’s eyes widen in shock.
“You’re insane! I’m Gilbert-sama’s...”
“Don’t you understand that you’ve smeared dirt on Brother Gilbert’s face? Shirley, do it!”
When Shirley understood what he was saying, she stepped forward and grabbed Darren.
Daren resisted, but Shirley had the power to break through even the Leviathan’s protection.
She caught Darren without difficulty and twisted his hand behind his back.
“Um,......, the rope is .......”
“H-Here, please use this.”
A man stepped forward from the crowd and held out the rope.
“Thank you.”
Shirley took it, borrowed a post from a nearby store, and tied Darren up.
This time someone held out a whip, which Shirley took.
“Noah-sama, how many lashes do you want?”
I broke my sentence there, glanced at Daren, and then said to Shirley.
“If you or any of my maids, or any of my retainers, or any of my men, ever mistreat my people, I will execute you without mercy.”
“I understand.”
Shirley nodded, and without hesitation, whipped Daren out.
A cheer went up at that moment.
“Shameful.”
“He got what he deserved for being so arrogant.”
“Thank you, Your Highness.”
The people around were surprisingly overjoyed and laughed as they watched Darren being whipped.
Shirley continued to whip Daren until he passed out. |
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} | 「ん、これで良し」
屋敷に戻って来た俺は、リビングで上半身をはだけさせて、自分で手当てをしていた。
メイドが手当てしてくれた布を外して、レヴィアタンとリンクした指輪で、傷口の周りを密着させるように鎧を作る。
金属のようで金属じゃない、そんな不思議な感触の素材でぴったり傷口の周りを押さえて止血した。
そうしてから、連れ帰ってきた少女に目を向けた。
少女は小さく縮こまっている。
まるで親に怒られた――いやそれ以上の何かに怯えている子供のようだ。
「とりあえず、名前を聞かせてくれ」
「あっ......し、失礼しました」
少女は慌てて、パッと土下座して、そのまま名乗った。
「シャ、シャーリー・グランズといいます」
「シャーリーか。その鎧は結構立派なこしらえだけど、自前なのか?」
「これは先祖代々受け継いできたものです......あの」
「ん、なんだ?」
「私の沙汰は......どのようなものに......」
「その、親王殿下を誤って傷つけてしまった罪の......」
両手両膝をついて、顔だけ上げるシャーリー。
ものすごく怯えている顔だ。
さっきも気にするなって言ったはずなんだがな。
「その罪は存在しないぞ」
「え? しかし帝国法では......」
「そうじゃない。誤って傷つけた罪なら存在しないって意味だ」
「それはどういう......?」
首をかしげるシャーリー。
「立てシャーリー」
「は、はい!」
「あの突きをも俺にやって見ろ」
「えっ? でも......」
「騎士なら命令に従え」
「――っ! 失礼します」
立ち上がったシャーリーは長剣を抜き放ち、構えた。
表情が一変した、怯えている色はほとんど吹っ飛び、凜々しい顔をした。
そのまま、裂帛の気合のこもったかけ声とともに突きを放ってきた。
騎士選抜の時に勝るとも劣らない突きだ。
それを俺は止めた。
レヴィアタンが出した盾がとめた。
「これくらいっ......え?」
シャーリーはすぐに「違い」に気づいた。
選考の時は貫けた盾が、まったくびくともしないことに気づき、驚く。
「びくともしないだろう?」
「はい、押しても――引いてもっ!? こんなの......すごい」
剣の切っ先が盾にまるで吸い付いたかのように、押しても引いても動かず、その事にシャーリーは驚愕した。
「俺が本気で防ごうと思えばその攻撃は通らない。だからお前が『誤って』ってのはない。俺がそう仕向けたんだ」
「ど、どうして?」
シャーリーは更に戸惑った。
「騎士は命令に従うのが大前提だ。命令に忠実に従えないのはせいぜい奴隷に過ぎない。いろいろ目論見はあるが、あそこで俺の顔色をうかがって本気で掛かってこないのはそもそもいらない」
「奴隷が欲しいのなら奴隷の方法で集める。今回は騎士を選ぶ。そういうことだ」
「それで......自分の危険も顧みずに?」
「俺に傷をつけた後の人間の反応も知りたかったからな目でも、俺の命令なら本気で来られた。合格だ」
「......は、はい」
こくりと頷くシャーリー。
目を丸くして、口をポカーンと開けて。
そのあと、感動したような目で俺を見つめた。
「と言うわけでお前は合格だ。一応確認だけするが、俺の騎士になるつもりで選考を受けたんだな?」
シャーリーは慌てて居住まいを正して、片膝をついて頭を下げた。
見よう見まねの礼法――いや、これは戯曲にあるやつだな。
貴族の正式な礼法は庶民には分からない、戯曲や芝居とかのために見栄えのするものの方が伝わっている。
シャーリーはそういう、芝居でやってる騎士の礼をした。
「シャーリー・グランズ。親王殿下に生涯変わらぬ忠誠を誓います」
これも正式な文言じゃないが、気持ちは伝わった。
何より。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
賢親王
性別:男
レベル:1/∞
体力 F+F 地 F
配下を増やすと上がる俺の能力が上がった。
この能力上昇は礼法の正しい正しくないよりもよほど重要でわかりやすかった。
そういえば、個人ではシャーリーが一番上がったのかもしれないな。
「期待しているぞ、シャーリー」
「――っ、はい!」
シャーリーとの話が終わった後、それを待っていたかのように、接客のメイドが医者を連れて来た。
真ん丸と太ってて、丸い顔にネズミヒゲを生やした中年男。
知ってる顔。宮廷の医官、陛下の御殿医だ。
確か名前はグッド・クローイ。
本名はバッドだったが、医者でそれは不吉すぎるからって、陛下からグッドの名前を下賜された男だ。
それくらい、医療技術で陛下に信頼されている男だ。
「お前が来たか、大げさだな」
「はっ。早速傷口を拝見」
「ああ」
来たのなら拒む必要もない。
どうせ俺がやったのは応急処置の止血だけだ。
俺はレヴィアタンに命じて、肌着のように肌に密着している鎧を解除した。
瞬間、血がプシュッ、と吹き出す。
「――っ!」
「......しばしのご辛抱を」
シャーリーは息を飲んだが、グッドはさすがは医者、一目見て命に別状のないただの外傷を、眉一つ動かさずに見た。
「申し上げます。幸いにも骨と腱をはずれてますので、このまま縫えば大丈夫かと」
「そうか。やってくれ」
「では麻酔を――」
「いらん、まだ話の途中だからちゃちゃっとやってくれ」
「は、はあ......では」
泰然と座っている俺にグッドは頷き、縫合用の針と糸を取り出した。
血を拭いて綺麗にして、肌の表面を縫い合わせていく。
前の方を縫い終わったところで、グッドは顔を上げて俺をじっと見つめた。
「どうした、俺の顔に何かついてるか?」
「いえ、こうした縫合で声はおろか、顔色一つ変えない方ははじめてでございましたので」
「そうか?」
「さすがでございます」
そういって、グッドは俺の後ろに回って、そこも縫いだした。
目の前からグッドが消えたから、それまでそいつの体に隠れていたシャーリーが、実は興味津々に縫合を見ているのが見えた。
「どうしたシャーリー」
「あっ、えっと......医者ってすごいなって」
「うん?」
「切り傷って、こうやって治すものなのかと。はじめて見ました」
「医者に掛かったことはないのか?」
「村に医者はいないので」
「なんだって?」
俺は眉をひそめた。
「村に医者がいない?」
「はい。あの......それが何か?」
「じゃあ怪我人とか、病気になった人が出たらどうするんだ?」
「オババ様に祈ってもらったり、病気の元を払ってもらったり」
「貧村にありがちですな」
グッドが後ろから口をはさんできた。
ため息交じりなのは、医者として苦々しく思っているという事だろう。
「グッドよ」
「医者ってのはどうやってなる」
「そうですな、既に開業したりしている医者に弟子入りするのが一般的ですな」
「お前は弟子をとってるか?」
「ええ、何人か」
「シャーリー」
「初めての命令だ。お前の村から賢い子、努力が出来る子を連れてこい」
「えっと......?」
「グッド、何人か弟子を頼む」
一呼吸の間をあけて、グッドは俺の背後で静かにうなずいた。
「えっと......殿下? 一体どういう......」
シャーリーは未だに状況が飲み込めてないようで、おそるおそる俺に聞いてくる。
「学費と生活費は俺が出す。医者になって村の皆を診るつもりがあるやつを連れてこい」
「......っ、ありがとうございます!」
シャーリーは慌てて両膝をつき、土下座のように俺に頭を下げた。
騎士はこんな風にしないから、おいおい教えてやらんとな。
顔だけ上げたシャーリーは、ますます、尊敬する眼差しで俺をじっと見つめたのだった。 | “Hmm, this is fine”
When I came back to the mansion, I had my upper body stripped in the living room and treated myself.
I removed the cloth that the maids had treated me with and created an armor to adhere around the wound with a ring linked to the Leviathan.
The material, which feels like metal, but not metal, is a strange material, and I pressed it snugly around the wound to stop the bleeding.
Then I turned my attention to the girl who had been brought back.
The girl shrank back a little.
She looks like a child who is scared of her parents’ anger – or something more.
“Anyway, let me hear your name.”
“Oh ...... Ah excuse me.”
The girl panicked, poof, got down on her knees and just said her name.
“My name is Shi-Shirley Glans,”
“Shirley. Your armor is pretty well made, did you make it yourself?”
“No, It’s been passed down for generations....... um.”
“Hmm, what?”
“My matter earlier......what will happen to that....”
“That, for the crime of accidentally hurting His Imperial Highness... ......”
Shirley gets down on her hands and knees and simply looks up.
She looks extremely scared.
I thought I told everyone not to worry about it earlier.
“That crime doesn’t exist.”
“Huh? But in imperial law ......”
“That’s not true. I mean, if you’re guilty of accidentally hurting someone, it doesn’t exist.”
“What kind of ...... is that?”
Shirley tilted her head.
“Stand up Shirley.”
“Try that thrust again on me.”
“Huh? But ......”
“If you are a knight, you need to follow orders.”
“–Ha! Excuse me.”
Shirley stood up, drew her long sword and held it ready.
Her expression changed drastically, her scared look was almost blown away, and she had an imposing face.
As it was, she released a thrust with the spirit of a splendid shout of enthusiasm.
It is a thrust that is no less than the time of the knight selection.
I stopped it.
Or rather a shield put out by Leviathan stopped it.
“This much is...... eh?”
Shirley immediately noticed the “difference”.
She was surprised to find that the shield that she could penetrate during the selection process wouldn’t budge at all.
“It doesn’t budge at all, does it?”
“Yes, even if I press–pull back!? This is ...... amazing.”
It was as if the tip of the sword had been sucked into the shield, neither pushing nor pulling, and Shirley was taken aback by this.
“If I really wanted to prevent it, those attacks wouldn’t go through. So there’s no such thing as you did it ‘accidentally’. I made it happen.”
“W-Why?”
Shirley was even more confused.
“A knight is supposed to follow orders. You’re a slave at best if you can’t follow orders to the letter. I’ve got a lot of plans, but I don’t want anyone in there trying to get in my face and not really bothering me in the first place.”
“Ye-yes!”
“If I want slaves I would have collected them through the method one collect a slave. This time, I was selecting a knight. That’s what I mean.”
“So, ...... you have no regard for your own danger?”
“I wanted to know how people would react after hurting me. And even for the second time, you came for real on my orders. You passed.”
“......, yes.”
Shirley nodded with a chuckle.
She rolled her eyes and opened her mouth with a pout.
Then she looked at me with impressed eyes.
“So, you’ve passed. Just to confirm, you intended to be my knight, correct?”
Shirley hurriedly corrected her position, got down on one knee and bowed her head.
This etiquette was rather – no, that’s the one in the plays.
The formal etiquette of the aristocracy is not understood by the common people, it’s more passed down to the common people as something that looks good for a play or performance or something.
Shirley gave that kind of knightly bow, the kind you do in plays.
“I, Shirley Grans. I pledge my lifelong loyalty to His Royal Highness the Prince.”
Again, this wasn’t an official sentence, but the feeling came through.
Above all.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Wise Prince
Gender: Male
Level: / ∞
HPF+FMPFStrengthF+EStaminaF+FIntelligenceF+FSpiritF+FSpeedF+FDexterityF+FLuckF+F FireFWaterE+SWindFEarthFLight FDarknessF
My ability increases as I take in more subordinates.
This increase in ability for me was much more important and easy to understand than proper or improper etiquette.
Come to think of it, Shirley may have been the single individual who rose my abilities the most.
“I’m counting on you, Shirley”
“——Yes!”
After the talk with Shirley was over, as if waiting for it, the serving maid brought in a doctor.
A middle-aged man, fat and round, with a ratty mustache on his face.
He’s a familiar face. He’s the court physician, His Imperial Physician.
His name is Goode Croy, as I recall.
Although his real name was Bade, he was a doctor, and His Majesty gave him the name Goode because it was too sinister.(TN: Well his name was literally Bad and now got changed to Good, I just added ‘e’ at the end to sound it better than just Good and Bad)
That’s how much he is trusted by His Majesty for his medical skills.
“Even if you came, it’s an overreaction.”
“Ha. Let’s see the wound.”
“Ah.”
Since he came, I shouldn’t refuse him.
All I did was stop the bleeding as a first aid measure anyway.
I ordered Leviathan to release the armor that clings to my skin like an underclothing.
An instant later, blood spurts out in a pushy spray.
“–!”
“...... please be patient.”
Shirley gulped, but Goode, as expected of a doctor, looked at the mere non-life-threatening injuries at first glance, without moving an eyebrow.
“I will say. Luckily, the bones and tendons have been dislodged, so I hope you can keep the stitches.”
“I see. Do it.”
“Now, the anesthesia–“
“No, we’re in the middle of a conversation, so just do it quickly.”
“H-huh...Okay”
Goode nodded to me as I sat in a relaxed manner and took out a suture needle and thread.
Wiping the blood clean, he stitched together the skin’s surface.
When he finished sewing the front, Goode looked up and stared at me.
“What’s the matter, do I have something on my face?”
“Well, No, I’ve never heard of anyone who didn’t change their expression with these sutures, let alone their voice.”
“Really?”
“I’m impressed,”
With that, Goode went behind me and started stitching there, too.
Because Goode was gone from my sight, I saw Shirley, who had been hidden by the guy’s body, actually watching the stitching with great interest.
“What’s up Shirley?”
“Oh, uh, ...... I thought doctors were great.”
“Hmm?”
“I’ve never seen a treatment for a cut like this before. It’s the first time I’ve seen it.”
“Have you never seen a doctor?”
“There is no doctor in the village.”
“What?”
I raised an eyebrow.
“There’s no doctor in the village?”
“Yes. That ...... is something wrong with it?”
“So what if people get hurt or sick?”
Asking Obaba-sama to pray for you, and paying her off for your sickness. “
” It s a common practice in poor villages.”
Goode interrupted me from behind.
The fact that he was sighing probably meant that he felt bitter as a doctor.
“Hey Goode.”
“How can one be a doctor,”
“Well, it is more common to be apprenticed to a doctor who is already in business or is already in practice.”
“Are you also taking disciples?”
“Yes, some of them.”
“Shirley”
“Your first order. Bring a clever, hard-working boy from your village.”
“Uh, ......?”
“Goode, I’ll provide you some apprentices.”
After a pause for a breath, Goode nodded quietly behind me.
“Uh ...... your highness? What on earth is ......”
Shirley still can’t seem to grasp the situation and asks me fearfully
“I’ll pay for tuition and living expenses. Bring me the one who is going to be a doctor and treat everyone in the village.”
“......, thank you!”
Shirley hurriedly dropped to her knees and bowed to me as if she were on the ground.
Knights don’t do it this way, so hey, I’ll have to teach her something.
Shirley, who only looked up, stared at me with an increasingly respectful gaze. |
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} | 自宅に戻った俺は、リビングでドンを呼び出した。
未だにケガが完治していないドン、部屋に入るなり、神妙な面持ちのまま俺に土下座した。
親王に産まれて、かしづかれることには慣れてきたが、ドンのこれはちょっと普通じゃない。
「覚悟は、出来ております」
「覚悟?」
「はい。主を裏切っての密告の罪を問われるのでしょう。弁明は致しません。せめて斬首でひと思いに――」
「先走るな」
震え声で、早口になっているドンの言葉をさえぎった。
「え?」
「誰がお前を処罰するなんて言った」
「し、しかし......」
「人は宝だ、無為には殺さん。そもそもだ、謀反の告発者は免罪すると帝国法で決まっている。他の何かで密告したらそれなりの罪はあるが、謀反は別だ」
「......」
あんぐりと口をあけて、絶句してしまうドン。
知らなかったのか。
「で、だ。お前を呼んだのはいくつかある。まずギルバートが処刑された。謀反で有罪が確定したから、その勢力は跡形なく瓦解する。だからお前はもう名前を変えて都から出る必要はない。これ」
「は、はあ......」
「で、謀反の告発は最高1000リィーンの報奨金って決められている。それじゃ足りないから、0一個尻につけてやる。俺の金だ、遠慮無く受け取るといい」
「な、なぜそのような大金を」
ドンは震えた。
まだ自分が助かることを信じられないんだろう。そもそも処刑されること自体勘違いの早合点だというのに。
「父上の命の恩人だ。それ以上の理由はいるか?」
「あっ......」
目。あの時は代官に出すと言ったが、今なら俺の家人として宮内省に戻すことも出来る。どうしたいか言ってみろ」
「......」
「どうした、それも嫌か?」
ドンはパッと顔をあげ、プルプルとクビを横に振ってから、再び、両膝をついたまま額を床にこすりつけた。
「あなた様こそ生涯の主にふさわしいお方。どこまでも付いて行きます」
そう言った後、再び頭を上げたドンの目は。
心から臣従し、心酔している者の目だった。
次の日、俺は気晴らしをするために、メイドのジジを連れて街に出掛けた。
アリーチェの所に行くか、それともコバルト通りで宝探しをするか。
あるいはなにか新規開拓をするか。
今日は一日中楽しむぞ、と決めて、馬車にも乗らず、メイドを連れて二人で歩いた。
「ご主人様、なんか面白そうなことやってますよ」
そう話すジジは、瞳の中にわくわくするような色が見え隠れしていた。
まだメイドになって間もない、それにまだ幼いジジは、ゾーイや、今は代官に出しているエヴリンと違って、童心が抜けきれていないようだ。
それはそれで、たまにはいいと思いながら、ジジがいった「面白そうなこと」のある方をみた。
人だかりが出来ていて、真ん中に一人の女がいる。
女は剣を振るっている――剣舞、という言葉が頭の中に浮かび上がった。
大道芸人の類か?
と、俺も面白そうだと思ったから、ジジを引き連れて人だかりの方に向かった。
近づいて人の群れの中から覗くと、舞をやめた女が、挑戦的な口調で見物人たちに言った。
「条件は私と戦って勝つこと、参加料は3リィーンだ」
「勝ったら何をくれる」
見物人の一人が、張りのある声で聞いた。
声の上げ方からして、普段から野次馬になれてる感じのある男だ。
「私自身だ。妻でも妾でも使用人でも、勝った相手の命令をなんでも聞く」
瞬間、見物人達がざわつき始めた。
参加料を払って、彼女と戦って勝つことが出来れば、彼女を手に入れられる、と言う話か。
「どういうことなんでしょう」
俺の隣に立つジジが不思議そうに首をかしげた。
「一種の競売だ」
「セリってことだ。普通のセリは金だけだが、こういうのは金以外の条件をつけてやるもんだ。元は闇競売から始まったやつだな」
「ほええ......さすがご主人様、物知りです!」
ジジはものすごく感心した目で俺を見つめた。
一方の俺は、競売の女を観察してみた。
気が強すぎるきらいはあるものの、客観的にみて美人の類だ。
それを3リィーンで手に入れられるかもしれないというかなり魅力的な話だ。
都の奴隷は帝国法で特定の商人のみが認可されていると言うこともあって、値段は高止まりしている。
普通に買えば一人100リィーンはくだらない。
それが、3リィーンだ。
しかも、闇奴隷とか、そういうのに引っかからない。
帝国法における闇奴隷商の定義は「他人を売買する」というのが基本だ。
自分を売るのは法に抵触しない。
早速、一人の男がやる気をだして人の輪から女の前に飛びだした。
「倒せばいいんだな?」
「ああ。ただし一対一でだ」
「ふっ、言われなくても――他の誰かと共有するなんてもったいないことしねえよ!」
男はそう言って、嫌らしい顔とセットで、手を突き出して女を掴もうとした。
「「「おおおおお!?」」」
瞬間、歓声があがった。
手を突き出した男が、ぐるっと一回転して、背中から地面に突っ込んだ。
空を見上げた男、ポカーンとしてて、自分に何が起きたのか分からないって顔をしている。
女は男に向かって手をつきだして。
「3リィーン」
「......え?」
「参加料。どうせ勝つからと出さなかったのだろ?」
「自信満々にでてって瞬殺かよ」
周りの見物人から嘲笑の声があっちこっちであがった。
男は顔を真っ赤にして、ポケットから銀貨を取り出して地面に叩きつけて、逃げるように去っていった。
女はそれを拾って、丁寧にしまってから。
「次の挑戦者は?」
と言った。
男を瞬殺したのを皆みているが、3リィーンで彼女ほどの美女を手に入れられるというのはかなり魅力的な話だ。
次々と3リィーンを払う挑戦者が現われて、しかし全員彼女に撃退された。
「へへっ、次は俺の番だな」
「参加料を」
「慌てるな、俺に勝てたらちゃんとくれてやるよ」
男がそういうと、周りの野次馬と化している見物人達が口々にはやしたてた。
ここに来て、女がただ者じゃないと言うのは皆わかる様になった。
大半の野次馬は、新しい挑戦者が最初の男のように、醜態をさらすことを待ち望んでいる。そんな空気だ。
「じゃ、いっくぜえ!」
男は握った拳を、下からえぐり上げるように女に向かって放った。
そこそこの威力が予想されるパンチだが、今までの戦いをみている見物人は誰しも、女の勝利を予想した。
「――っ、がはっ!」
女は避けて反撃しようとしたところ、何かに
その次の瞬間、男の拳が女の腹をえぐった。
綺麗に入った一発で、女は目を見開きヘドを吐いて、男にもたれかかるように倒れ込んだ。
「へへ、約束だ、もうお前は俺のもんだ」
男はそう言って、意外な展開にざわつく野次馬を押しのけて立ち去ろうとした。
「待て」
俺は逆に、野次馬を押しのけて人の輪の中に入った。
「ああ。お前、それはルール違反だ」
「何の事だ?」
俺はスタスタと近づき、男が担ぎ上げた女の足首の裾をめくって見せた。
そこに一本、針が刺さっている。
「仲間にこんなことをさせたら二対一、ルール違反だろ?」
「何を言ってやがる、こんなの――」
ドサッ。
少し離れた所で、人が倒れた。
俺が、レヴィアタンで威嚇して倒したのだ。
「そいつがお前の仲間なんだろ?」
「嘘つけチャド、そいつお前の子分のロブじゃねえか」
「昨日もうちの店で二人で飲んでただろ」
「その子を離せ、卑怯だぞ」
二人が知り合いだってのは周りの者もよく知っていることのようだ。
野次馬たちにやいやいと言われて、チャドという男は顔を真っ赤にして。
「うるせえ! てめえガキ、余計な事をしやがって!」
と、逆ギレしてきた。
女を置いて、俺に殴り掛かってきた。
ちょっと痛い目を見てもらうか。
俺は腕輪からレヴィアタンを抜いた。
まずチャドの両肩を斬った。
ぶらんと垂れ下がるチャドの両腕、もう手は使えない。
返す刀で、チャドの腰帯を切った。
帯が斬れて、チャドのズボンはパサッ、と地面におちた。
「なっ......!?」
「まだやるか?」
レヴィアタンをチャドの喉元に突きつける。
チャドはますます顔を赤らめて、わなわなと震えた。
それを見た周りの野次馬達は。
「すげえ、なんだ今の。剣なんてどこから出てきた」
「それよりも今の技の方がすげえよ、何も見えなかったぜ」
「やり方の方がかっけえよ。チャドのやついつも態度でけえからすっとしたわ」
周りが口々に言い合う中、わなわなと震えるチャドは、
「お、覚えてろ!」
と、捨て台詞を吐いて逃げ去った。
手が使えずズボンを切り落とされ、フルチンのまま逃げ出すその姿に周りは大爆笑した。 | When I returned home, I called Don in the living room.
He was still recovering from his injuries, and as soon as he entered the room, he got down on his knees with a mysterious look on his face.
It’s been twelve years since I was born as a Prince, and I’ve gotten accustomed to being flattered, but this was a little out of the ordinary for Don.
“I’m ready for it.”
“Ready?”
“Yes. I believe I will be accused of betraying the Lord and tipping him off. I will make no excuses. At the very least, I will be beheaded.”
“Don’t get ahead of yourself.”
A shaky voice interrupted Don’s rapid speech.
“Eh?”
“Who said anything about punishing you?”
“B-But ......”
“People are treasures, not to be killed for nothing. In the first place, imperial law demands that anyone accused of treason be acquitted. If you were to inform on something else, you would be guilty of a certain crime, but not treason.:
“......”
Don’s mouth gapes open in exasperation.
You didn’t know, huh.
“So. I called you here for a few reasons. First, Gilbert was executed. He’s been found guilty of treason and his forces will be destroyed without a trace. So you don’t need to change your name and leave the capital anymore. That’s one.”
“Y-Yes ......”
“And the reward for accusations of treason is set at a maximum of one thousand reens. That’s not enough, so I’ll put one zero on the end. This is my money. Feel free to take it.”
“Why such a large sum?”
Don shuddered.
He still couldn’t believe that he was going to be saved. It was a misunderstanding that he would be executed in the first place.
“You saved my father’s life. What more reason do you need?”
“Ah......”
“Third. At that time, I said I would send you to serve as a deputy, but now I can send you back to the Ministry of the Imperial Household as my retainer. Tell me what you want to do.”[I guess the nd one is the money]
“......”
“What, you don’t like that either?”
Don looked up quickly, jerked his head to the side, and then rubbed his forehead on the floor again, still on both knees.
“You are the one who deserves to be my Lord for life. I will follow you wherever you go.”
After saying this, Don raised his head again and looked at me.
His eyes were the eyes of a sincere vassal and admirer.
The next day, I took Gigi, my maid, to the city to relax.
Whether to go to Alice’s place or to Cobalt Street for a treasure hunt.
Or perhaps I should explore something new.
I decided to have fun all day long, so I didn’t take the carriage and walked with the maid.
“Master, there’s something interesting going on.”
There was a hint of excitement in Gigi’s eyes as she said this.
She has only been a maid for a short time and is still very young, so unlike Zoe and Evelyn, who is now a governor, she has not lost her childlike spirit.
That’s why, while thinking that it’s a good idea once in a while, I looked towards the “interesting things” that Gigi had mentioned.
There was a crowd of people, and in the middle was a woman.
She was swinging a sword, and the word “sword dance” came to my mind.
Is she some kind of street performer?
I thought it sounded interesting, so I headed toward the crowd with Gigi in tow.
As we approached and peered through the crowd, the woman who had stopped dancing said to the onlookers in a challenging tone.
“The condition is that you fight me and win, and the fee is three reens.”
“What will you give me if I win?”
One of the spectators asked in a tense voice.
From the way he raised his voice, he sounded like a man who was accustomed to being an onlooker.
“Myself. Wife, concubine, or servant, I will do whatever the victor commands.”
Instantly, the crowd of onlookers began to buzz.
So if you pay the entry fee, fight her and win, you get her.
“What does that mean?”
Gigi, standing next to me, nodded her head curiously.
“It’s a kind of auction.”
“That’s the one with bidders. In a normal auction, there is only money, but in this kind of auction, other conditions are attached. It started as a black market auction.”
“Wow, ......, you really know your stuff, Master!
Gigi looked at me with great admiration.
I, on the other hand, observed the woman at the auction.
She was objectively beautiful, although she had a tendency to be too stern.
The fact that I might be able to get her for three reens was quite tempting.
The price of slaves in the capital remains high, partly because only certain merchants are authorized by imperial law.
If you were to buy them normally, they would cost no less than reens each.
But for three reens.
Moreover, she is not caught by black slavery or anything like that.
The basic definition of a black slave trader in Imperial law is “buying or selling another person”.
Selling yourself is not against the law.
Immediately, one of the men was motivated and jumped out of the circle of people and in front of the woman.
“So, I should just defeat you?”
“Yes. But, One on one.”
“Huh, you don’t have to tell me – I’m not going to waste it sharing it with someone else!”
The man said, and with a disgusted look on his face, stuck out his hand and tried to grab the woman.
“”Ohhhh!?””
Instantly, a cheer went up.
The man with his hand out spun around and plunged back into the ground.
The man looked up at the sky, puzzled, not knowing what had happened to him.
The woman held out her hand to the man.
“Three reens.”
“......eh?”
“The entry fee. You didn’t pay it because you thought you’d win anyway, did you?”
“He went in there full of confidence and got himself thrashed.”
There were shouts of derision here and there from the surrounding onlookers.
The man turned red, took a silver coin out of his pocket, slammed it on the ground, and ran away.
The woman picked it up and carefully stored it away.
“Who’s the next challenger?”
She said.
Everyone saw that she had beaten the man in an instant, but it was quite tempting to get beauty as beautiful as her for three reens.
One after another, challengers came up to pay three reens, but they were all repelled by her.
“Heh, I guess it’s my turn now.”
“Let’s get the entry fee.”
“Don’t panic, if you beat me, I’ll give it to you.”
When the man said that, the crowd of onlookers around him started to hoot and cry.
By now everyone could see that the woman was no ordinary person.
Most of the onlookers were hoping that the new challenger would turn out to be as ugly as the first man. Such is the atmosphere.
“Well, here we go!”
The man shot his clenched fist at the woman as if to gouge her from below.
It was a punch that was expected to have some power, but everyone who had seen the fight so far expected the woman to win.
“—Gah!”
As the woman tried to dodge and counterattack, she seemed to be caught by something and stopped moving.
The next moment, the man’s fist gouged the woman’s stomach.
With a clean shot, the woman’s eyes widened, she let out a gasp, and she fell back to lean on the man.
“Heh, you promised, you’re mine now.”
The man then turned to leave, pushing aside the onlookers who were buzzing at the unexpected turn of events.
“Wait.”
I did the opposite and pushed past the on lookers and entered the circle of people.
“Yeah. You are breaking the rules.”
“What are you talking about?”
I walked up to him and turned up the hem of the woman’s ankle that he was carrying.
There’s a needle stuck in there.
“It’s two against one if you let your buddies do this to you, isn’t it?”
“What the hell are you talking about, this is–“
Thud.
A few feet away, a man collapsed.
I intimidated him with my Leviathan and took him down.
“He’s your companion, isn’t he?”
“Bullshit, Chad, that’s your henchman Rob.”
“You two had a drink together at my bar yesterday.”
“Let her go, that’s not fair.”
It seemed that everyone around them knew that they knew each other.
The man, Chad, turned red as the onlookers yelled at him.
“Shut up! You little bastard, you’ve done more than you should have!”
And then he got upset.
He left the woman and attacked me.
I guess I’ll have to hurt him a little.
So, I pulled Leviathan out of my bracelet.
First, I slashed Chad’s shoulders.
Chad’s arms were hanging down, his hands were useless.
With my reversed grip, I cut Chad’s waistband.
The belt was cut, and Chad’s pants fell to the ground with a snap.
“What the ......?”
“You still want to do this?”
I pushed Leviathan to Chad’s throat.
Chad’s face grew redder and he shivered.
The onlookers around him saw this.
“Holy shit, what was that? Where’d that sword come from?”
“I didn’t see anything, the technique was impressive.”
“That was so much cooler. Chad’s attitude is always so annoying.”
Chand was trembling and shaking as everyone around him was saying to each other.
“R-Remember that!”
And then he spat the words and ran away.
The crowd laughed at the sight of him running away with his hands useless, his pants cut off, and nude. |
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} | この日、俺はニシルの中心部に来ていた。
アルメリアの州都ニシルは、水の都という異名を持つほど、全部で11本の上水道から、豊富な水が常時街に供給されている。
街の中心部の広場にも、水道の内の枝から作った大噴水がある。
その大噴水を、遠巻きにニシルの住民が集まっている。
兵士達に守られる中、式典として装飾した噴水に、俺は向かっていく。
噴水の上には横断幕で「特等水道開通セレモニー」とある。
その噴水に辿り着いた俺は、湧き出た水をそのまま一杯、また一杯と飲み干していった。
瞬間、大歓声が巻き起こる。
「すっげえ、本当に飲んだよあのお偉いさん」
「今までの一等水でも沸かさないと飲めなかったのに、そのまま飲めるってすげえ」
「あの親王様がやってくれたらしいぜ、特等水」
「すげえ......」
周りがざわつく中、俺は最後にもう一杯飲んでから、その場をゆっくりと立ち去った。
噴水広場から離れたところに立てられたテントに入ると、部下のドンが俺を出迎えた。
「お疲れ様ですノア様」
「ああ、これでセレモニーは終わりだな」
「はい。セレモニーが終了したことで、正式にアッピア水道を特等水道に格上げします」
俺は無言で頷いた。
アッピア水道の特等格上げ、それは俺が封地入りしてからの、一番の大仕事だった。
「いやあ、しかしアルメリアに来てびっくりしましたよ。どこもかしこも水・水・水」
ドンが感心したように言った。
その視線はテントの奥の水洗トイレに向けられている。
「こんなの帝都でもほとんど見られませんでしたよ」
「あれか」
親王の俺が使うって事で、このテントは公衆トイレを巻き込むように立てられているが、公衆トイレ自体は普通に街中にあるものだ。
アルメリアの州都、ニシルは周りの豊富な水源を、全11本からなる水道で引き込むことによって、昼夜問わず綺麗な水が使えるようになっている。
民の使用可能な水量は、一人当たりに換算すれば実に帝都という圧倒的な量だ。
「しかし、こんなに流しっぱなしでもったいなくないですかね」
「流さないと大変な事になるんだよ」
「え?」
「公衆トイレに使われてるのは三等水。一等水は食用飲用水は風呂や掃除など口にいれたら良くないが肌に触れても大丈夫なモノ、三等水はこのトイレや、下水を詰まらせないように流してるものだ」
「下水を......ですか?」
「使った後の水は汚くなる。ほっとくと詰まる。だからずっと流してないとダメなんだよ」
「なるほど」
「まあ、一等水も二等水も、使われてない分は流しっぱなしで、下水を詰まらせないように流用しているけどな」
「なるほど! ずっと思っていましたよ、水道の末端になにか装置みたいなのをつけて、流しっぱなしじゃなくて、使う時だけ流れるようにした方がもったいなくないって。下水のためだったんですね」
「そういうことだ。......今は一本だが、おいおい残りの10本も特等水にしていくつもりだ」
「なぜですか?」
「川と同じだ、砂や土が混じってる川の水だと徐々に堆積して詰まっていく。それは水道も同じ。三等水のつまりのメンテナンスが意外と金かかるんだ」
「特等水の方がお金がかかるのでは?」
「最初はな。だが長い目で見れば安くあがる。それに、水道のつまりを綺麗にするのって、時々人が死ぬんだ」
人は宝だ。
そういうのは出来るだけなくした方がいい。
「そこまでお考えで......さすがノア様」
ドンに微笑み返して、外の様子に聞き耳を立てる。
そのままで飲める特等水の開通に、ニシルの住民は大いに喜んでいた。
「......ちっ」
数日が過ぎて、屋敷外苑の書斎の中。
俺はオスカー兄上から戻って来た手紙を見て、思わず舌打ちをしてしまった。
部屋の隅で政務の処理をしてくれているドンが俺の舌打ちに気づいて、腰をあげてこっちに来た。
「オスカー兄上からの手紙だ」
「財務省の公文書ですか?」
「いや、取り敢えず私信だ。取り敢えずな」
俺はため息をつきながら、手紙をドンに渡した。
ドンがそれを読み、俺は内容を頭の中で反芻する。
それは、俺が財務省に予算を要請した事に対する返事だ。
11本の水道の一つ、ユリア水道という名の水道が、不純物の堆積や、途中の水道の破損など、大規模なメンテナンスを必要とした。
そのための予算を帝国に――財務省に申請した。
それをオスカーが私信という形で、やんわりと断ってきた。
「来年......ですか」
ドンが俺を見て、俺は小さく頷いた。
「今年の予算は財務省としてもかつかつだ、北方の戦に戦費を取られてどうしても出せない。来年まで待ってくれと」
「......北方の戦の話は聞いてます」
ドンは難しい顔をした。
「確かにものすごい勢いで国庫金が溶けております。下がこう言ってくるのもやむ無しかと」
「分かっている。だから兄上も私信でくれたのだ。公文書で返してきたら帝国の苦境が記録に残るからな」
つまり財務省としても「無い袖は振れぬ」状況だ。
「このままでは来週中にも止めないと、強引に使い続けては水道そのものに深刻なダメージがでる。そうなるとメンテナンス程度の金では済まなくなる」
「......ユリア水道でしたら、一年くらい放っておいても大丈夫なのではありませんか? 三等水ですし、すぐに民の生活に影響が出るわけでは」
「ユリア水道は三等水だが、一番規模が大きい水道だ。それを止めてしまうと、公衆トイレとか、それから下水。ここにどんな悪影響がでるか分からない。下水は詰まらせてはならない。トイレもだ。最悪疫病が流行りかねない」
「ですが、無い袖は」
「......ひとまず俺が出そう」
「え!?」
ドンは盛大に驚いた。
「出すって、殿下が? もしや私財で?」
「ああ」
「し、しかしユリア水道の修復とメンテナンスはかなりの金額が必要に。殿下の生活の維持にも支障が出かねません。ご再考を」
「言ったはずだ」
「やせ我慢は貴族の特権だ。とな」
ドンは口をポカーンと開け放ち、目を丸くして驚いた。
そんなドンを放っておいて、俺は必要な額と、俺の現資産を頭の中で計算した。
いくつか骨董品とかお宝を手放せば足りるだろう。
考えながら立ち上がって、窓から外を眺める。
この水の都の綺麗さを保たなくてはな。
数日後、同じように書斎で政務をしている時。
俺が持っている現金をほとんどつぎ込んだので、ユリア水道のメンテナンスが始まったとドンから報告を受けた。
「破損部の補修は済みました。これで使用停止になることはないと言うことです」
「そうか、ならいい」
俺は立ち上がって、先日と同じように、窓からニシルの街を眺める。
相変わらず綺麗な街並みだ。
今日は天気がいいこともあって、あっちこっちにある庶民の取水用噴水が煌めいてて、とても綺麗だった。
ふと、気づく。
屋敷からほんの少し離れた所に、火事が起きていることに。
「まずいな」
「何がですか?」
「見ろ」
俺は窓の前を譲った。ドンはそこから外を見た。
「火事ですか。あそこは......建物が密集しすぎてます」
ドンはすぐに、俺が「まずい」とつぶやいた理由を理解した。
そうだ、火事が起きてる所は、密集している繁華街だ。
建物のほとんどが身を寄せ合うように建てられている、簡単に延焼する造りだ。
事実、もう出火元から何軒も延焼をしている。
「どうしますか?」
「お前は住民の避難の手配を。俺が消しに行く」
「え? あっノア様!」
ドンがきょとんとしているのを放置して、俺は窓から飛び出した。
全能力SSSの無敵モード中の俺。
屋敷から飛び出して、近くの民家の屋根に飛び上がり、屋根伝いで火事の現場に急行する。
一刻も早く現場に向かって、レヴィアタンを使って火を消そうとする。
レヴィアタンで全力を出せば何軒かの建物も吹っ飛ぶだろうが、火事ではそれはむしろ好都合。
周りを吹っ飛ばして、延焼できないように破壊消火も兼ねられる。
俺は腕輪からレヴィアタンを取り出して元のサイズに戻して、現場に駆けつけた――。
「......ほう」
現場では、俺の出番がないようだった。
出火しているのは、建物が密集している繁華街。
そこには市場があって、飲食店がある。
そして――三等水道がある。
例えば肉の解体後の清掃に使ったり、そもそも人が多いから公衆トイレが他よりも多かったり。
そこは、三等水道が通っている場所だった。
住民の大半はその水道でバケツリレーをしていた。
豊富な水もあって、最初こそ延焼気味だったが、リレーが始まるや火の勢いは完全に抑えられ、やがて消し止められた。
出番が無かった俺は屋敷の書斎に戻ってきた。
それからほとんど間を置かず、ドンも戻って来た。
「どうだった?」
ドンは一礼して、報告を始める。
「全焼が一軒、半焼。そのほか煙を吸って体調を崩したのが6人......以上です。火元を考えれば、損害はほぼない様な物、と言っていいでしょう」
「そうだな」
あの密集地帯でその程度の損害ですんだのはラッキーだ。
「......それと」
「うん? どうした、何か言いにくいことでもあったのか?」
「いえ。あの時消火に使われたのは、ユリア水道でした」
「ユリア水道がもし止まっている状況だったら......コロンシア、いえそれ以上の大火事になっていたかもしれません」
「やはり......ノア様はおすごい。あの時止めてしまってたら......」
ドンは、俺に対する尊敬の念を、顔に浮かべていた。 | On this day, I was in the center of Nisir.
Nisir, the capital of Almeria, is known as the “City of Water” because of the abundance of water that is constantly supplied to the city from a total of eleven water systems.
In the square in the center of the city, there is a large fountain made from a branch of one of the water systems.
The residents of Nisir gather around the fountain in the distance.
Protected by soldiers, I made my way to the fountain, which I had decorated for the ceremony.
Above the fountain, a banner read, “Special Water Service Opening Ceremony.”
When I reached the fountain, I drank a cup of the gushing water, and then another.
Instantly, a huge cheer went up.
“Wow, he really drank it, what a great guy!”
“Even the first-grade water needed to be boiled before it could be drunk, but to be able to drink it straight from the tap is amazing.”
“It seems that the Prince is the one who started the Special-Grade Water.”
“Wow, ......”
I took one last drink and then slowly left the place as everyone around me buzzed.
As I entered a tent set up away from the fountain plaza, I was greeted by one of my men, Don.
“Thank you for your hard work, Master Noah.”
“Oh, so this is the end of the ceremony.”
“Yes, sire. Now that the ceremony is over, we are officially upgrading the Appia Water System to Special Water System.”
I nodded silently.
This was the most significant work I had done since I entered the fief.
“I was surprised when I arrived in Almeria. There’s water, water, water everywhere.”
Don said admiringly.
His eyes were fixed on the flush toilet at the back of the tent.
“I’ve never seen anything like it, even in the capital.”
“This?”
The tent was erected in such a way as to enclose a public restroom for my use as the Prince, but public restrooms themselves are common in the city.
Nisir, the capital of Armeria, has a total of eleven water lines drawn from the abundant water sources around it, so that clean water can be used day and night.
The amount of water that can be used by the people is overwhelmingly three times that of the Imperial Capital on a per capita basis.
“But isn’t it a waste to leave so much running?”
“If we don’t let it run, we’ll be in big trouble.”
“Eh?”
“Third-grade water is used in public toilets. The first-grade water is for eating and drinking, the second-grade water is for bathing, cleaning, etc., which is not good if you put it in your mouth but is safe if it touches your skin, and the third-grade water is used to keep this toilet and the sewage from clogging up.”
“Using ...... for sewage?”
“The water gets dirty after use. If you leave it alone, it will clog. That’s why it has to constantly flow.”
“Well, both first-grade and second-grade water are kept flowing when they are not in use, and they are diverted so as not to clog the sewage.”
“I see! I’ve always thought that it would be less wasteful to install some kind of device at the end of the water supply so that it only flows when it’s used, not left running. It was for the sake of sewage, wasn’t it?”
“That’s what I meant. ...... for now, we have one, but I’m planning to turn the remaining ten into special water.”
“Why?”
“Same as a river, river water with sand and dirt in it will gradually accumulate and clog up. The same goes for the water supply. Maintaining third-grade water is more expensive than you think.”
“Isn’t the special-grade water more expensive?”
“At first, it is. But in the long run, it’s more economical. Besides, sometimes people die trying to clean up water lines.”
People are treasures.
So it’s better to eliminate such problems as much as possible.
“I’m glad you thought of that ......, Noah-sama.”
I smiled back at Don and listened to what was going on outside.
The residents of Nisir were very happy to see the opening of the special-grade water that can be drunk as it is.
“...... che.”
A few days passed, and I was in the study of the mansion’s outer garden.
When I read the letter that came back from Brother Oscar, I couldn’t help but click my tongue.
Don, who was in the corner of the room taking care of some political matters, noticed my clicking and came over to me.
“It’s a letter from Brother Oscar.”
“Is it an official document from the Ministry of Finance?”
“No, it’s just a private letter. For now, that is.”
I sighed and handed the letter to Don.
Don read it and I thought over the contents in silence.
It was a response to my request for a budget from the Ministry of Finance.
One of the eleven water systems, called the Yuria Water System, was in need of major maintenance due to the accumulation of impurities and damage to the water system along the way.
We applied for a budget for this to the Empire – to the Ministry of Finance.
Oscar turned it down softly in the form of a private letter.
“Next year ......huh”
Don looked at me and I gave him a small nod.
“This year’s budget is too tight, even for the Ministry of Finance, and they can’t afford it because of the war expenses in the north. They want to wait until next year.”
“......I’ve heard about the war in the north.”
Don made a difficult face.
“It is true that the treasury money is running out at an alarming rate. It’s no wonder His Highness the Eighth has said it.”
“I understand. That’s why my brother notified me through a private letter. If he returned it in official documents, the predicament of the empire would be recorded.”
In other words, the Ministry of Finance is in a situation where ‘you can’t give what you don’t have’.
“If we continue to use the water supply at this rate, it will cause serious damage to the water itself if we don’t stop it by the end of next week. And if we do, we won’t be able to afford the maintenance.:
“If it’s ...... Yuria water supply, wouldn’t it be okay to leave it alone for a year or so? It’s third-grade water, and it won’t affect people’s lives right away.”
“The Yuria water supply has third-grade water, but it’s the largest water supply. If we shut it down, it will affect public toilets and sewage. We don’t know what kind of negative impact it will have. The sewage must not be clogged. The toilets, too. Worst-case scenario, we could have an epidemic.”[This hits hard]
“But we don’t have any leeway”
“......, I’ll handle it myself.”
“Eh?”
Don was greatly surprised.
“Your Highness, are you going to do it? With your own money?”
“Yeah.”
“But the restoration and maintenance of the Yuria water system will require a considerable amount of money. It might even interfere with the sustainability of His Highness’ life. Please reconsider.”
“I should have said this before.”
“Patience is a privilege of the nobility. You see.”
Don’s mouth opened wide and he rolled his eyes in surprise.
Leaving Don alone, I calculated in my head the amount I needed and my current assets.
It would be enough if I gave away some antiques and treasures.
Thinking about this, I stood up and looked out the window.
I’ll have to keep this water city clean.
A few days later, while I was doing the same political work in my study.
Don reported to me that the maintenance of Yuria Water Systems had started since I had spent most of my cash.
“The damaged parts have been repaired. So there’s no need to shut it down.”
“Well, good.”
I stood up and looked out the window at the city of Nisir, just like the other day.
The city is as beautiful as ever.
The weather was fine today, and the water fountains for the common people here and there were sparkling and beautiful.
Suddenly, I noticed something.
There was a fire just a few steps away from my residence.
“It’s bad.”
“What’s wrong?”
“Look.”
I moved in front of the window. And Don followed me.
“A fire. There are too many ...... buildings in that area.”
Don immediately understood why I had mumbled, “Bad”.
Yes, the fire is in a dense downtown area.
Most of the buildings were huddled together, making it easy for the fire to spread.
In fact, many buildings have already been destroyed by the fire.
“What should we do?”
“You arrange for the evacuation of the residents. I’ll go put it out.”
“Eh? Ah, Noah-sama!”
I left Don in a daze and jumped out the window.
Due to my all abilities SSS, I’m currently invincible.
Jumping out of the mansion, I jumped up on the roof of a nearby house and rushed to the scene of the fire along the roof.
I head to the scene as quickly as possible and try to put out the fire using Leviathan.
If I went all out with the leviathan, it would probably blow up a few buildings, but in a fire, it’s more of a good thing.
By blowing up the surrounding area, I can also destroy and extinguish the fire so that it cannot spread.
I took Leviathan out of my bracelets, returned it to its original size, and rushed to the scene.
“......Hoo”
At the scene, it seemed that I wasn’t needed.
The fire had broken out in the downtown area, where the buildings were densely packed.
There are markets and restaurants there.
And – there is a third-grade water supply.
For example, it is used for cleaning after meat dismemberment, and there are more public toilets than others because there are more people there.
It was a place with a third-class water supply running through it.
Most of the residents used that water supply to run bucket relays.
Due to the abundance of water, the fire seemed to spread at first, but once the relay started, the fire was completely controlled and eventually put out.
As I didn’t have a turn to play, I came back to the study of the mansion.
Almost immediately after that, Don came back.
“How’d it go?”
Don bowed and began his report.
“One burned down, four half-burned. In addition, six people fell ill from smoke inhalation. ...... Considering the origin of the fire, I’d say the damage is almost non-existent.”
” Right.”
It was lucky that there was only that much damage in that dense area.
“...... And...”
“Yeah? What’s wrong, was it something difficult for you to say?”
“No. It was the Yuria Water System that was used to extinguish the fire.”
“Oh.”
“If the water supply had been shut down, the fire would have been like....Coronasia, no even bigger than that.”
“...... You’re amazing, Noah-sama. If I had stopped you at that time,.......”
Don had a look of respect on his face for me. |
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} | あの後、しばらくアリーチェの歌を聴いてから、店を出て屋敷に戻ってきた。
夕暮れ時の屋敷の前に、何故か男が何人も土下座していた。
ただの土下座じゃない、俺の屋敷、王邸に向かって土下座している。
何だろうと思いつつ、屋敷に入る。
「お帰りなさいませご主人様」
俺を出迎えたのは接客を専門とする若いメイド。
客が来る時も、俺が帰ってくる時もまず彼女の顔を見る事になる。
ある意味十三親王邸の顔みたいなメイドだ。
「エヴリン、表で土下座してる連中がいたけど、何か知らないか?」
「はい、ご主人様に謝罪をしたいと申し出てきた者達です」
「謝罪?」
「なんでも、ご主人様の不興を買った部下に謝罪に来たとか」
「......ああ」
つまり例の金貸しと、そのボスって事か。
俺に追い払われて戻ったはいいが、やったのが
「......追い返せ。親王ってのは会おうと思って会えるものなのか? って言ってやれ」
メイドのエヴリンが俺の命令を受けて、屋敷の外に出かけていった。
「いい処置だ」
「兄上!?」
まるで入れ替わりのように、屋敷の奥から兄上――王ヘンリーが現われた。
「来ていたのですか兄上」
「ああ。今の処置は良かったぞ。あの様な連中に軽々しくあっては王族、親王の格を下げるようなものだ。よくやった」
ヘンリー兄上は嬉しそうな表情で俺をほめた。
「それもあるのですが、もう一つあるんです」
「ほう?」
俺はまず事の始まりを話した。
アリーチェの歌を聴きに行ったら父親の借金を取り立てに来た、それに介入して追い払った。
そこまで前提を説明してから。
「俺がまだ怒ってたと思わせた方が、向こうもアリーチェに手出しできなくなる。それをやると火に油を注ぐ事になる」
「ほう」
ヘンリー兄上の目が光った。
「その歳でそこまで考えてるのか、すごいな」
「たまに、こっちが忘れた頃にちょっかいを出し直すのがいるから」
「そうだな、ほとぼり冷めた頃にハネッかえる者もいる。いい判断だ。しかし」
「しかし?」
何かまずかっただろうか、と思ったがそういう話ではないようだ。
ヘンリー兄上はにやり、と口角を器用に片方だけつり上げて。
「そんなに良かったのか、その娘の歌は」
「取らないで下さいよ兄上。俺がじっくり育つのを楽しむんだから」
「気に入っているのだな」
「アリーチェは伸びますよ。歌い続けてさえいれば、というタイプです」
「なるほど。ならそのうち私も連れて行け」
「分かりました、案内します」
談笑しながら屋敷の奥に入る。俺が普段から使ってる居間に入った。
自然にヘンリー兄上に上座をすすめ、俺自身も下座に座る。
俺の屋敷とは言え、兄上は兄上だ。
だから上座をすすめた。
このあたりのバランスは難しい。
まず皇太子殿下は聞くまでもなく上座だ。
皇太子つまり次の皇帝で、俺たちにとって半分くらい主君の様なものだ。
そしてヘンリー兄上のような、歳が親子ほども離れてる兄たちにも客は客だが上座をすすめる。
歳が比較的近い、10番目くらいからはこっちも主人として上座に座る。
こういうのを間違えると大変な事になるんだが、幸いにして今まで間違えたことはない。
「お前はいつも礼儀正しいな」
「当然のことです」
まではそうはいかん。みんなまだまだ子供だ。特にギャリーがなあ......」
「兄上の弟ですね」
これも平民にはなかなか難しい、貴族でもあまりない話だ。
俺たちは全員皇帝陛下である父上の子供だが、母はそれぞれ違う。
そんな中、同じ母を持つヘンリー兄上とギャリーは他の兄弟とはまた違った繋がりというか、絆のようなものがある。
「いくら教えても礼法を覚えん、まったく困ったものだ。お前レベルとまでは言わんが、もう少しなあ」
「ギャリーももう少ししたら分かりますよ」
「だといいんだが」
「それより兄上。お一人で来たのはどういう用件だったんです? 兄上ほどのお忙しい人が、まさか世間話だけって訳でもないでしょう」
「......」
ヘンリー兄上は複雑な表情、微笑んでるような、苦虫を噛み潰した様な、そんな顔で俺を見る。
「お前は本当に賢いな。大人でもそう察する事ができる人間はそうそういない」
「って事はやっぱり何かあるんですね」
「ああ、魔剣のことだ」
魔剣レヴィアタン。
ヘンリー兄上と、皇太子が俺にプレゼントしたものだ。
この場合、皇太子からの贈り物だから、賜った、と言った方が貴族として正しい。
「魔剣がどうかしたんですか?」
「いずれの話だが、まずは耳に入れておこうと思ってな」
「はい」
「あれは意思がある、喋れはせんが、はっきりと意思を持っている」
「そうなんですか」
「そして、やっかいな事に上下意識に凝り固まっているようだ」
「上下意識」
おうむ返しにつぶやくと、ヘンリー兄上ははっきりと頷いた。
「犬と同じと思えばいい」
「もう少ししてからでよいが、振るう前には上下関係をきっちりさせておくといい。屈服させておいた方がお互いのためだ」
「屈服......」
ヘンリー兄上の言葉を舌の上で転がした。
もしや、という言葉が頭をよぎった。
「ちょっと待ってください兄上。だれか」
「はっ」
俺が呼ぶと、すぐにドアが開いて、使用人の男が入ってきた。
「例の魔剣を持ってこい」
「は、はい」
魔剣と聞いて、使用人の男は明らかに顔が強ばった。怯えているのだ。
「実は試しに魔剣を振るってみたところ、その時に居合わせたら気分が悪いって言われまして」
「ああ、水がC以上はないと、そばにいるだけで気分を悪くするだろうな」
「それで取りに行かされるのが怖い、って訳です」
ヘンリー兄上が納得するのとほぼ同時に、さっきの使用人が箱を抱えて戻って来た。
目に見えて顔色がもう悪くなっている。
「わかったわかった、テーブルの上に置いて下がっていい。しまう時は他の誰かに来させろ」
「ありがとうございます!」
男は赦しを得たかのように、大喜びで部屋から飛び出していった。
俺は箱を開けて、魔剣レヴィアタンを手にする。
柄を握り締めて、念じる。
柄を通して、反発が返ってきた。
魔剣の力、水の力で俺の意識に侵入してこようとしてる。
今ま持ったが、こういうのはなかった。
だからこっちからしかけた、「俺の
すると案の定魔剣が反発した。
が、その反発は俺には効かなかった。
今まで持った使用人達の反応と、俺が持った時に何もなかった事と、更に水がE+SでSSになっていることと。
その三つの事を合わせて考えて、大丈夫だと判断した。
そして、判断通り大丈夫だった。
して来ようとするが、水SSに阻まれてる形だ。
しばらくそれを好きにさせてから、タン! と魔剣を床に突き立てた。
下に見て、柄を頭に見立てて押し込む。
しばらくして、変化が現われた。
直接もっているから感じるもの、魔剣が諦め、俺の下につくという意思を伝えてきた。
同時に。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
アララート帝国十三親王
性別:男
レベル:1/∞
HP F 火 F
力 F+F 風 F
――――――――――――
いつも見えているステータスが上がった。
水がSからSSに。
狙い通りいった。
魔剣を屈服させる。
ヘンリー兄上が教えてくれたのは多分、あくまで魔剣を使いこなすための事だ。
だが、俺の体質は何故か従うものの能力が一部加算される。
だから魔剣を従えれば? と思ったのだ。
そしてそれは上手くいった。
「その顔はやったって顔だな」
頷き、使用人を呼んで、ステータスチェックの魔法を掛ける。
もちろんこういう雑用はヘンリー兄上の手を煩わせられないから使用人を呼んだ。
すると、俺が見てるものと違って、「+」のない表向きのステータスがでた。
レベル:1/∞
それを見た兄上が。
「むぅ......そうなるのか......すごいなあ......」
と、水がSSSになったのを本気で感心していた。 | After that, I listened to Alice’s song for a while, then left the shop and came back to the mansion.
For some reason, a number of men were getting down on their knees in front of the mansion at dusk.
Not only are they getting down on their knees, they’re getting down on their knees towards my mansion, the Thirteenth Parent House.
I enter the mansion, wondering what it is.
”Welcome home, Master.”
I was greeted by a young maid who specialized in hospitality.
She’s the first person I see when guests come in and when I come back.
In a way, she’s like a head maid of the th Prince’s residence.
“Evelyn, I saw some people getting down on their knees out front, do you know anything about that?”
“Yes, these are the people who have come forward with an apology to the Master.”
“Apology?”
“For some reason, they came to apologize to you with some men who displeased you, Master.”
“....Oh,”
So, the guy who owes the money and his boss.
I send him away, he comes back, and then he finds out it was me(Prince), and then the boss brings him here to apologize.
“...send them away. Can you meet the prince just because you want to? Tell them.”
” I understand, sir.”
My maid, Evelyn, took my orders and went out of the mansion.
“That’s a good measure.”
” Big brother!?”
As though they were swapping places, my brother – Henry the Fourth Prince – appeared from the back of the mansion.
“You’re here, brother.”
“Yeah. That was a good decision. Taking such people lightly would be a disgrace to the royalty and the King’s reputation. Well done.”
Brother Henry complimented me with a happy expression.
“There’s that too, but there’s another thing.”
“Huh?”
The first thing I told him was how things started.
I went to listen to Alice singing and they came to collect on her father’s debts, and I intervened to get rid of them.
After explaining the premise to that point.
” If I let them think I was still mad at them, they won’t be able to mess with Alice. Doing that would add fuel to the fire.”
“Hou”.
Brother Henry’s eyes lit up.
“It’s amazing that you think that much at your age.”
“Well after sometime, when they think I forgot about the matter they’ll mess with her again.”
“Well, some of them will be back when the heat dies down. Good call. However.”
“However?”
I wondered if I had done something wrong, but it didn’t seem to be that kind of thing.
Brother Henry grinned, the corners of his mouth dexterously lifted to one side.
“So that’s how good her singing was, huh?”
“Don’t take it off me, brother. I’m going to enjoy taking my time growing up.”
“You must have liked it.”
“Alice is growing. She’s the kind of person who just wants to keep singing.”
“Okay. So take me with you one of these days.”
We walked into the back of the mansion, chatting and laughing. We entered the living room I usually use.
Naturally, I offer my brother Henry the upper seat, and I sit in the lower seat myself.
Even though it’s my house, he’s still my brother.
So I told him to take the top seat.
It’s a difficult balance to strike between the two.
First of all, the crown prince is the superior of the throne.
He’s the crown prince, the next emperor, which makes him almost half lord to us.
Then there are the older brothers, like Henry, with whom my age gap is as old as parents and children, who are guests, but who are also invited to sit at the top.
From the th oldest brother, who is about the same age as me, they also sit at the top position than me.
If I make a mistake like this, I’m in trouble, but fortunately, I’ve never done it before.
“You’re always so polite.”
” It is only natural.”
“Not when you’re your age, Frank th to Garry th. They’ re all still kids. Especially Garry....”
“Little brother is a kid, big brother”
This is also difficult for the commoners, and not too much for the nobility.
We’re all children of Father, the Emperor, but we have different mothers.
However, with the same mother, brother Henry and Garry have a different kind of connection or bond with each other than the other brothers.
” No matter how many times I teach him, he never learns his manners. I don’t want to say it”s up to your level, but it’s not quite there yet.”
“Garry will understand in a little later.”
“I hope so.”
“More importantly, brother. What did you want to see me about coming alone? For someone as busy as you, brother, I don’t think it’s all about small talk.”
“....”
Brother Henry looks at me with a complicated expression, like he’ s smiling, or like he’ s biting down on a bitter bug.
“You’re really smart. There aren’t many people who can see that, even as an adult.”
“So that means you’re really onto something.”
“Yeah, the demonic sword.”
The Demon Sword, Leviathan.
It was a gift from my brother Henry and the Crown Prince.
In this case, it would be more correct for a nobleman to say that it was a gift from the crown prince.
”What is wrong with the demonic sword?”
” Well, it’s just a story, but I thought you’d want to hear it first.”
” It has a will, it doesn’t speak, but it has a definite will.”
“Really?”
“And the tricky part is, they seem to be entrenched in an awareness of hierarchy.
” Awareness of hierarchy.”
I murmured in return and brother Henry nodded clearly.
“Just think of it as a dog.”
“You can do that a little later, but you should get the hierarchy straightened out before you wield it. It’s better for both of you if you let him give in.”
“Give in...”
I rolled the words of brother Henry on my tongue.
’What if?’ was the word that crossed my mind.
“Wait a minute, brother. Someone.”
“Ha!”
As soon as I called out, the door opened and a male servant entered.
”Bring me that demonic sword of mine.”
“Ye-, Yes!.”
The male servant’s face obviously grew stronger when he heard of the magic sword. He was frightened.
“Actually, when I tried wielding the demon sword to test it out, he told me he didn’t feel good being near it.”
” Oh, if the Water rank is not above a C, it’s going to make you sick just being near it.”
“That’s why he’s afraid to go get it.”
About the same time Brother Henry was convinced, the servant from earlier came back with the box.
His face is visibly pale already.
“All right, all right, you can put it on the table and step back. If you need to put it away, let someone else come along.”
“Thank you very much!”
The man ran out of the room with great joy, as if he had gained forgiveness.
I open the box and pick up the Demon Sword Leviathan.
I tighten my grip on the hilt and recollect.
Through the hilt, a reaction came back to me.
The power of the demonic sword, the power of the water, is trying to invade my consciousness.
I have held it twice now, but never like this.
So I made a mental note to make it mine.
And sure enough, the demon sword repelled.
But that repulsion did not work on me.
The reactions of the servants who have held it so far, the things that didn’t happen when I held it, and furthermore, the fact that my water is E+S which is an SS.
I put those three things together and determined that it was okay.
And it was fine, just as I judged.
The Demon Swords try to invade me in succession, but it’s being blocked by the water rank SS.
I let it have its way with me for a while, and then TANG! And I thrust the magic sword to the floor.
Looking down, I pushed the hilt in as if it were a head.
After a while, a difference appeared.
I can feel it because I’m holding it directly, and the demon sword is giving up and telling me that it’s going to be under me.
At the same time.
――――――――――――
Name: Noah Ararat.
The 13th Prince of the Ararat Empire
Gender : Male
Level: 1/∞
HPFMPFStrengthF+FStaminaF+FIntelligenceF+FSpiritFSpeedFDexterityF+FLuckF+F FireFWaterE+SSWindFEarthFLight FDarknessF
――――――――――――
The always visible status has gone up.
Water went from S to SS.
I was right on target.
Succumbing to the Demon Sword.
What brother Henry taught me was probably just to master the demon sword.
However, my constitution somehow adds some of the abilities of those who follow me.
So why don’t I just subdue the demonic sword? I thought.
And it worked.
“That’s a face that says I did it.”
“Yes.”
I nodded and called a servant to cast a status check spell.
Of course, I couldn’t bother brother Henry with chores like this, so I called the servant.
Then, unlike the one I’m looking at, I got an apparent status without a “+”.
Level: 1/∞
HPFMPFStrengthEStaminaEIntelligenceFSpiritFSpeedFDexterityELuckE FireFWaterSSSWindFEarthFLight FDarknessF
Brother saw that and said.
”Mmmm....... so it’s true.... amazing....”
He was seriously impressed that the water had become SSS. |
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} | 庭で剣を振るっていたら汗が出て土埃まみれになった。
汚れを落とすために風呂に入った。
服を脱いで風呂場に入って、専任のメイド達に洗ってもらう。
普通の意味で、気持ちがいい。
人間どうしても自分の手で洗えないところが出てくるし、疲れてる時だと洗い方そのものがぞんざいになる。
メイド達にやってもらうとそういうのがなく、汚れも脂も、疲れまでもが綺麗さっぱり落とされる。
冗談抜きで体力回復効果のある入浴だ。
それをすませて、脱衣所で別のメイド達に着替えさせてもらっていると、応接のメイドがやってきた。
「ご主人様、お客様が訪ねて参りました」
メイドが差し出したままの名刺を受け取らずに見る。
ホージョイ総督マーレイ。
どこかで聞いた名前だ。
着替えをまかせて、訪客の事を記憶の中から探る。
「......ああ、俺の領地出身の出世頭だ」
どうにか思い出せた。
帝国は親王達に封地を与えていることもあり、属地主義的な面が大きい。
よほどの事がなければ、出身地の領主である皇族を主君のように仰ぐの的だ。
マーレイという男も、今は俺の封地と違う所で総督をやっているが、俺の民、俺の子という意識が強いはず。
しかしそのマーレイは何をしにきたんだ......いや、会えば分かるか。
「応接間に通せ、すぐ行く」
「かしこまりました」
メイドは命を受けて脱衣所を立ち去った。
俺は特になにもしなかった。
メイド達にしっかり着替えさせてもらって、身だしなみを整えて。
最後にレヴィアタンを腰に下げてから、悠然と脱衣所を出て応接間に向かった。
応接間の前にメイドが待機していて、俺がやってくると一礼してドアを開けた。
「あっ」
応接間の中、ソファーの下座に座った中年の男が立ち上がって、流れるような動きで俺に跪いた。
「デッド・マーレイ。ご尊顔を拝し恐悦至極に存じます」
「堅苦しいのはいいよ。座って」
「御意」
マーレイは立ち上がって、それでも俺が上座に着くのを待ってから、自分もソファーに座った。
「デッド・マーレイ。確か会うの目だな?」
記憶だとそうだが、一応確認してみた。
「はっ、一年半ほど前、陛下から総督に命じられた際にご挨拶をさせて頂きました」
「うん」
って事は赴任の挨拶だ。
それもまた、出身地の主君には欠かせない礼儀だ。
「そうか、よく来たな。任地はどうだ?」
「どうした、苦虫をかみつぶした様な顔をして」
「私が命じられたのは、アルメリアの出身と言うことが大きいのです」
「アルメリア出身だから......? そうか思いだしたぞ、治水に行けと陛下に命じられたんだ」
今度こそ完全に思い出した。
ホージョイという地は大河の曲がり角にあるような土地だ。
そのため穀倉地帯として肥沃な土地を持つが、たまに大洪水が起きて大災害になる。
それを完全に解消し、安定した穀倉地帯にしようというのが陛下の考えで、そのための総督として任命されたのが水の一族が住まう地、アルメリア出身のマーレイだ。
「その顔をしてるってことは上手くいってないのか?」
マーレイは小さく頷いた。
「予算が下りてこず、ない袖は振れない状況でした」
「予算? ないわけがないだろ。陛下の勅命だぞ」
「そうなのですが、財務省がなんだかんだと理由をつけて」
......なるほど。
それで俺の所に来たって訳か、財務省をどうにか出来ないかと。
「よし、ついて来い」
「えっ? あっ親王殿下!」
戸惑うマーレイを連れて屋敷を出た。
馬車を用意させて、マーレイと二人で一緒に財務省にやってきた。
王宮の西にある、かつては離宮だった建物を再利用したもので、格式と華やかさがハイレベルで同居している建物だ。
その更に一番格式張った部屋で、財務省長官メイブリックと向き合った。
メイブリックを過ぎた老人、顔はしわくちゃだが脂ぎった目をしている。
はっきりとしたある種の感情を感じた。
軽視。
表面上親王である俺を敬っているように見せているが、心の底じゃ「小僧が」って見下している顔だ。
俺はこういう人間とよく会っている。こいつもそういうタイプなのだとすぐに分かった。
俺はメイブリックと向かい合って座り、「格」が落ちるマーレイは俺の後ろに控えて立った。
「いきなりのお越しとは、何用ですかなノア殿下」
「マーレイから話を聞いた。予算を出し渋っているみたいだな」
「そんな事はございません」
「じゃあなんで出さないんだ?」
「これには深いわけがありまして――」
「子供に言ってもわからない、なんてほざくつもりなら今すぐその口を閉じろ」
顔色が変わったメイブリック。
それまでの軽侮の視線が引っ込んだ。
「もちろんそのような不敬な事はいたしません」
「じゃあ説明しろ」
「はい。ホージョイは昨年も水害に見舞われました」
「そうなのか?」
振り向きマーレイに聞く、マーレイは頷いた。
「その時に、陛下の温情で、ホージョイの税を一年間丸ごと免除する勅命を出されていたのです」
「で?」
「つまり浮いた税金がある、それを使えばよろしいというのが財務省の見解ですな」
「......おまえ、俺を舐めてるのか?」
「なっ」
「水害に遭った、陛下は税を免除した、なぜか。とれる税がないからだ。もちろん恩情だが根本的な問題点はそこだ。それをさもあるように言う、お前俺を舐めてるのか?」
「おぉ......」
背中からマーレイの感嘆の声を漏らしたのが聞こえた。
それを無視して、更にメイブリックを睨みながら。
「そ、そういう事ではないのですが」
「じゃあなんだ」
「その......実は今出せないのでございます」
「なんで」
「陛下の避暑地を新造するという話、もちろんご存じですな」
「ああ。陛下も結構なお歳だ、だから毎年猛暑になる都より北に避暑用の別荘を作ると言う話だろ? それがどうした」
「別荘とはいえ、陛下がお使いになられるものです。それは離宮も同じ。早い話が、別荘という名の、人規模の街になります。それは膨大な金がかかります」
「そのため国庫はカツカツでした」
「黙れ」
メイブリックはビクッとした。
語っていくうちに調子に乗って、つばが飛ぶほどの力説になってきたが、低く押し殺した俺の声を聞いてビクッとした。
「貴様、それは大不敬罪だぞ」
「陛下を、父上を暗愚の君にするつもりか」
「私は――」
反論しようとする、が言わせない。
「水害にあった地域で治水が必要だが、別荘を作るから今は国庫から金を出せない? 貴様が言ってるのは、陛下をそういう暗愚にしてしまう事だぞ」
「ご、誤解です!」
メイブリックは飛び上がって、俺の前に土下座した。
「なら金を出せ。それとも陛下に俺が直訴してきた方がいいか」
「と、とんでもありません。すぐに、すぐにホージョイに予算を!」
まだ土下座するメイブリックを睨む、するとそいつは「ひっ」と悲鳴をあげて飛び上がった。
そのまま部屋を飛び出して、大声で何かをわめく。
内容が、部下に威張り散らしながらも、すぐにホージョイに金を送るというものだったから、好きにさせた。
一度報告には戻ってくるから、それを待った。
その間、マーレイが感動したような顔で。
「さすがでございます。このデッド・マーレイ、感服致しました」
「ん?」
「交渉の追い込みがすごい、ご自身の立場ではなく、相手の弱点、失策をついた巧みな言葉。殿下にはその『立場』を求めた自分の浅はかさが恥ずかしい」
親王の俺にいって、無理矢理横車を押しきらせるつもりだったのか。
撃。本当に五体投地の思いでございます」
よほど感動したのか、メイブリックが戻ってくるまで、マーレイは俺を持ち上げて、ほめ続けた。
財務省の外でマーレイと別れた。
一刻も早く戻って、治水を推し進めなければという事だったから、引き留めずに別れた。
一仕事終えた俺は馬車に乗り込んで、屋敷に戻ろうとした。
その時、向かいから一人の子供宦官が走ってきた。
俺よりちょっと年上の、10歳程度の子供で、宦官の服を来ている。
その子はおれの前にやってくると、息を切らせなから跪いた。
「陛下がお呼びです、その足でお越し下さいとのこと」
「陛下が? 分かった。どこだ?」
「ご案内します」
宦官の子に先導されて、馬車に乗ってついていく。
王宮に入ってからは徒歩だ。
基本、陛下より高い位置にいてはいけないという建前で、王宮の城壁から内側は馬や馬車などは御法度だ。
だから馬車を降りて歩いて、子供宦官についていき、陛下の好きな庭園にやってきた。
噴水の前で鳥にエサをやっている陛下を見つけて、俺は子供宦官に小遣い程度のお金をやってから、陛下の元に向かってそのまま片膝ついた。
「召喚に応じ参上致しました、陛下」
「来たか、楽にするがいい」
「ありがとうございます」
「まずはよくやった、と言っておこう」
何の事か、と首をかしげていると。
「ホージョイのことだ、メイブリックを叩き潰したらしいではないか」
「――っ!」
盛大にびっくりした。
ついさっきの事だぞ、というかその財務省から出たばかりだぞ。
なんでもう知ってるんだ? 陛下は。
「情報は武器だ、常に磨く癖をつけるといい」
頭を下げた俺。
なんというか......すごい。すごいって感想しか出なかった。
「もう一度言う、よくやった」
「いえ、俺は当たり前の事をしたまでです」
「その当たり前が難しい」
陛下は持っているエサを、群がってきた鳥たちにやった。
一粒、一粒ずつ投げて。
「口が上手いものは多い、おべっかを使うものもな。しかし当たり前のことを当たり前にできるものは少ない」
陛下は鳥から、こっちを向いた。
俺に近づき、そっと頭を撫でてきた。
「まだ六歳なのに、すごいなあ......」
父親と皇帝、二つの嬉しさがない交ぜになった不思議な表情をしていた。 | I was swinging my sword in the yard and was covered in sweat and dirt.
So after that I took a bath to get rid of the dirt.
After taking off my clothes, I went into the bathroom to be washed by the full-time maids.
It felt good, in the normal sense of the word.
The parts of a person’s body that can’t be washed with one’s own hands inevitably come out, and when you’re tired, the way you wash yourself becomes careless.
The maids do it for me, so the dirt, grease, and even fatigue are washed away.
It’s no joke, it’s a bathing experience that will help recover your strength.
After that, I was dressed by another maid in the changing room, when the receptionist’s maid came in.
“Master, a visitor is here to see you.”
I looked at the business card as the maid held it out to me instead of accepting it.
Murray, Viceroy of Hojoi.
I have heard that name somewhere.
I leave the maid to get dressed and explore through my memory about the visitor.
“... oh, he’s an upstart from my domain.”
Somehow I managed to remember him.
The empire has a large genus-oriented aspect to it, partly because the empire has given the princes a fiefdom.
Unless there’s something very special, it’s common for them to look up to the royal family, the lords of their native lands, as their sovereign.
That man Marley, who is currently the governor of a different place than my fiefdom, should have a strong sense of being my people.
But what’s this Marley doing here no, I suppose I’ll find out when I see him.
“Send him to the parlor. I’ll be right there.”
“Understood”
The maid left the changing room with my orders.
I didn’t do anything special.
I let the maids make sure I was well dressed and groomed.
Finally, I hung the Leviathan around my waist and then leisurely walked out of the changing room and headed for the parlor.
A maid was waiting in front of the parlor, and when I arrived, she bowed and opened the door.
Inside the parlor, a middle-aged man sitting on the lower seat of the sofa stood up and knelt down to me in a fluid motion.
“Ded Murray. Your Highness, I am honored to meet you, sir.”
“Don’t be so formal. Sit down.”
“As you wish.”
Murray got up and waited for me to still get to the top seat before he sat down on the couch himself.
“Ded Murray. This is the second time we’ve met, as I recall?”
From memory, yes, but I checked it out just in case.
“Yes, I had the pleasure of greeting you about a year and a half ago when His Majesty assigned me to be the Viceroy.”
” Yeah.”
That means it’s an assignment greeting.
That’s also an essential courtesy for the lord of your home town.
“Well, it’s good to see you. How’s the assignment?”
“You look like you’ve bitten down on a bitter bug.”
” I have been ordered to do so largely because I am from Almeria.”
“Because you”re from Almeria...? Well, that reminds me, His Majesty ordered me to go to flood control.”
This time I remembered it perfectly.
Hojoi is a land that is situated at the corner of a great river.
Therefore, it has fertile land as a granary, but every once in a while a great flood occurs and it becomes a great disaster.
His Majesty’s idea was to completely eliminate this and make it a stable granary, and the Governor appointed to do so was Murray from Almeria, the land where the Water Clan lives.
“Doesn’t that look mean it’s not working?”
Marley gave me a small nod.
” The budget wasn’t coming down, and we couldn’t afford to wear a sleeve.”
“Budget? Why wouldn’t it be? It’s an edict from His Majesty.”
“Yes, but the Ministry of Finance gave a reason why,”
...Oh, okay.
So I guess that’s why you came to me, to see what I can do about the Ministry of Finance.
“Okay, follow me.”
“Eh? Oh, Your Highness!”
I left the mansion with a puzzled Murray.
I had my carriage ready, and Murray and I came to the Finance Ministry together.
It was a repurposed former detached building to the west of the Royal Palace, a building with a high level of prestige and pomp.
In the most prestigious room in the building, I was confronted by the Minister of Finance, Maybrick.
Maybrick is an old man in his sixties, his face wrinkled but with greasy eyes.
I sensed a certain emotion that was clear.
Disrespect.
On the surface, he appears to be respecting me, the prince, but deep down he’s looking down on me, saying, “You little bastard.”
I meet people like this all the time. I knew right away that this guy was one of them.
I sit down across from Maybrick, while Murray, whose “stature” is diminished, stands behind me.
“How is it that you came so unexpectedly, Your Highness Noah?”
“Murray told me about it. It sounds like you’re reluctant to give the budget.”
“I don’t think so.”
“So why don’t you release it?”
“I have a very good reason for this.”
If you’re going to tell me that I don’t understand anything just because I am a kid, then shut your mouth right now.”
Maybrick’s complexion changed.
The previous gaze of contempt retracted.
“Of course I won’t do that kind of disrespect.”
“Then explain.”
“Yes. Hojoi was flooded again last year.”
” Really?”
I turned around and asked Murray, he nodded.
“At that time, His Majesty had issued a royal decree exempting the Hojoi from taxes for a whole year.”
“So?”
“So, in other words, there’s a tax slush fund that’s up for grabs and we can spend it, in the view of the Ministry of Finance.”
“...Are you kidding me?”
“Nope.”
“Due to the flood, his Majesty waived the tax, you know why? Because there’s no tax to be extracted. That’s a favor, of course, but the fundamental problem is still there. You’re saying this as it is natural, do you take me for a fool, you dumb-ass?”
“Ah....”
I heard Marley let out an exclamation from behind my back.
I ignored it, glaring at Maybrick even more.
“Well, that’s not what I meant, sir.”
“So what?”
“Well ... actually, I can’t tell you right now, sir.”
“Why?”
“You’re aware of all the talk about building a new summer resort for His Majesty, aren’t you?”
“Yes. His Majesty is quite old, so you’re talking about building a summer home north of the capital, where it gets very hot every year, right? What about it?”
“Even though it’s a villa, it’s used by His Majesty. It’s the same with the detached palace. It will be a city for about five thousand people, in the name of a villa, at a very early stage. That will cost an enormous amount of money.”
“That’s why the treasury was cut off.”
“Shut up.”
“Eh”
Maybrick freaked out.
He was getting on a roll as he spoke, spitting forcefully, but he freaked out when he heard my low, stifled voice.
“You!, that’s a huge disrespect!”
” You are trying to make my father a fool of himself.”
“I’m...”
He tried to argue with me, but I wouldn’t let him say it.
“We need flood control in a flooded area, but can”t get the money out of the treasury now because we’re building a vacation home? You’re suggesting that you’d make His Majesty that kind of a fool.”
“You’re mistaken!”
Maybrick jumped up and got down on his knees in front of me.
“Then give us the money. Or would you prefer that I go straight to His Majesty?”
“Pl,Please don’t. Immediately, immediately get the budget for Hojoi!”
I glared at Maybrick, who was still on his knees, and then that guy screamed and jumped up.
He ran out of the room as it was, ranting something loudly.
Since the content was that he was going to send the money to Hojoi as soon as he was done blustering to his men, I let him do what he wanted.
I waited for him to come back to report once, so I waited it out.
In the meantime, Murray looked impressed.
“Excellent work, sir. This Ded Murray, admires you, sir.”
“Hmm?”
“A great negotiating push, skillful words that took advantage of the other party’s weaknesses and missteps, not his own position. I’m ashamed of my own shallowness in asking His Highness for this ”position”.”
So he thought that me, the Prince, was planning to forcibly have my own way on this matter.
“Actually.......Good gracious! Being lost for words against those verbal attacks. I truly am considering to prostate against you to show my respect”
Murray was so impressed that he kept praising me, lifting me up, until Maybrick came back.
I parted with Murray outside the Ministry of Finance.
He had to get back as soon as possible and push for flood control, so I didn’t keep him back, and we parted ways.
After completing my work, I climbed into the carriage and was about to return to the residence.
At that moment, a young eunuch came running from across the street.
He was a little older than me, about years old, and was wearing the eunuch’s uniform.
He came up to me and knelt down, gasping for breath.
“His Majesty wishes to see you. Please report to him on your way.”
” His Majesty? All right. Where to?”
“I’ll take you there.”
I followed in a carriage, led by the young eunuch.
Upon entering the Royal Palace, we were on foot.
As a rule, horses and carriages are not allowed within the walls of the palace, as it is forbidden to be standing higher than His Majesty.
So I dismounted and walked, following the young eunuch to the gardens, which are His Majesty’s favorite.
I found His Majesty feeding the birds in front of the fountain, and I gave the child eunuch a little money as pocket money, and then I went straight to His Majesty and knelt down on one knee.
“I have come in response to your summons, Your Majesty.”
“Come on, make yourself comfortable.”
“Thank you.”
“Let me start by saying good job.”
I tilted my head and wondered what he was talking about.
“It’s about Hojoi, I heard you smashed Maybrick.”
“-Oh!”
I was pleasantly surprised.
It just happened just a few minutes ago, I mean, I just got out of that Finance Ministry.
So how do you know about this already? Sire.
“Information is a weapon, and you should get in the habit of constantly polishing it.”
I bowed my head.
What can I say....... amazing. I mean, that’s all I can muster up.
” I say again, good job.”
“No, I’m just doing the obvious”.
” The obvious is hard to take for granted.”
His Majesty fed the bait he was holding to the birds that had flocked to him.
One by one, tossing it to them.
“Many of them have good mouths, and some use their sycophants. But there are few that can take it for granted.”
His Majesty turned towards me.
He approached me and gently patted me on the head.
“You’re only six years old, but you’ re really something...”
He had a strange expression on his face, a father and an emperor, two happy expressions mixed together. |
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} | バイロンを送り返したあと、俺は自分の部屋でレヴィアタンを触っていた。
魔剣であり、俺の忠犬でもあるレヴィアタン。
その「性格」が激しい分裏切りとかそういうのは心配してないが、その分何が出来るのか、を把握したいとは思った。
だからレヴィアタンに触れながら、何が出来るのかを聞いて、それを小さい規模で試したりした。
そんな時、部屋のドアがノックされた。
「入れ」
許可を出すと、メイドのゾーイが入ってきた。
何の用事だろうかと待ちながらレヴィアタンを触っていたが、いつまで経ってもゾーイが何も言わない。
それで不思議がって彼女を改めて見たが。
「どうした、顔色が悪いぞ」
ゾーイはまるで死人のような、血の気が引いた顔をしていた。
俺が聞くとびくっとして、そのままわなわなとへたり込んで、俺に土下座した。
さすがにこれはただ事じゃないと、俺は座っているのを立ち上がって、ゾーイの前に立った。
「こ、これ......」
ゾーイは震えた手で小さい革袋を両手で差し出してきた。
受け取って、袋を開く。
中には金が入っていた。
「何だこれは。結構な大金だな.....リィーンって所か」
額を口にした直後、俺も
ゾーイは王邸のメイド、よそで仕事してる子よりかは給料をもらっている。
とは言っても、五百リィーンを貯められるほどはもらえてない。
そもそも、彼女は少し前に、金がなくて娼館に売られそうになっていた。
こんな大金持っているはずがない。
「し、知らない人が持ってきました。ここ、これをご主人様に飲ませれば、の、報酬、です」
声が震えているし、内容も要領を得ない。
俺はゾーイが続いて差し出してきた小さな瓶を受け取って、蓋を取って匂いを嗅いだ。
「なんだこれは?」
「す、睡眠薬、って言ってました」
「......へえ?」
「ごめんなさい!」
声のトーンが低くなると、ゾーイはますます額を床に擦りつけての平謝りをした。
「これを俺の飲み物かなんかに混ぜて、気を失ったら引き渡せ、ってことか?」
「は、はい!」
「なるほど」
すっかり怯えきってるゾーイを眺めて、考えた。
多分またアルメリアの連中だな。
襲撃したが失敗したから、今度はメイドを買収して俺を拉致しようって魂胆か。
よほど俺の身柄が欲しいと見える。
が、それはそれとして。
俺はゾーイに向かって。
「顔をあげろ」
と言った。
「は、はい......」
「話は分かった。だが、なんでこれを俺に持ってきた」
「ご、ご主人様は裏切れません! 私を助けてくださいましたし、村のことも」
「ふむ」
「でも、やらないと殺すって脅されて、この薬とお金を押しつけられて。でもやっぱりご主人様を裏切るなんて出来なくて。えっと、えっと......」
まだパニックになったままなのか、ゾーイの言葉には「でも」が多くて、言いたいことを上手く言えないでいるようだ。
それでも、おおよその話はわかった。
「脅されたし大金を握らされたけど、それでも裏切れなくて、告発しに来た。ってことだな」
「はい!」
「分かった」
俺は身を翻し、さっきまで座っていた椅子に戻って、テーブルの上にある紙にさっとペンを走らせた。
再びゾーイの前に戻って来て、それを彼女に渡す。
「これは......?」
「褒美だ。連中はお前の裏切りを500リィーンで買おうとした。それでも裏切らなかったから、0をひとつ足してやる」
「0一つ......5000リィーン!?」
「ああ、俺のサインを入れといた。明日金庫番からもらうといい」
「そ、そんな! もらえません!」
「裏切らなかった褒美だ、もらっとけ」
裏切りの誘いに、大金の褒美。
立て続けの事に、ゾーイは頭がついてけなくて、放心したままだ。
「ありがとう......ございます......。ご主人様って、本当に器の大きい......」
「それよりも、一つやって欲しい事がある」
「――っ! やります! なんでもします!」
「ん、これからこの薬を飲むから。俺が気を失ったら向こうの言うとおりに俺を連中に突き出せ」
「......えっ」
「突き出したらお前はすぐに逃げて身を隠せ、間違いなく、向こうはお前の口を封じようとするはずだ」
「............」
ゾーイはポカーンとなったまま戻ってこない。
そんな彼女を眺めながら、俺はやるべき事を頭の中でシミュレートした。
目が醒めると、真っ暗闇の中にいた。
俺は手足を縛られて、干し草のようなものの上に寝かされている。
どこかの小屋、匂いからして馬小屋かなんかみたいだ。
「おい、火が消えるぞ。薪を拾ってこい」
「分かったよ。そっちはちゃんとガキを見張ってろよ」
「なあ、預かった短剣でさっさとぶっさそうぜ。それで終わりなんだろ」
「それは最終手段だって言われただろバカが。おまえ、自分から『子供の一人も捕まえられませんでした』って認めるつもりか?」
小屋の外から、粗野な口調の声が聞こえてきた。
俺を捕まえた連中か。
俺は干し草の上で首を振った。
耳の奥がカサカサする、何回か振ると、何かがポトッと出てきた。
出てきたやつは豆粒大の何か、そいつは耳から出ると元のサイズに戻った。
魔剣、レヴィアタン。
それにふれて、リンクした指輪を変形させて手足を縛ってる縄を切った。
レヴィアタンに状況を聞く。
瞬間、頭の中を映像が駆け抜けていった。
屋敷でゾーイに言いつけをした。
つかまった時絶対に持って行けないから、サイズを変えられるレヴィアタンを豆粒くらいにして、耳の中に隠した。武器と違って指輪は外されないからそのままにした。
そしてゾーイが持ってきた薬を飲んだ、俺の意識はここで途切れた。
ここからレヴィアタンの記憶。
ゾーイが部屋を出て、しばらくして複数人の黒装束を着た男が入ってきた。
男達は俺の手足を縛った、ゾーイはこの時点でひっそりと姿を消した。
男達は俺を担いで屋敷を離れ、外で待っている馬車の荷台に俺を押し込んで馬車を走らせた。
都を出て、大分離れた所で、夜を明かすために小休止を取った。
俺が馬小屋だと思っていたのは、単に馬車の荷台の上で、布を被せられているだけだったようだ。
縄を解いて、レヴィアタンを握って、労う気持ちを伝える。
レヴィアタンはそれだけでものすごく喜び、犬だったら尻尾がはち切れるくらいの喜びようがダイレクトに心に流れ込んできた。
俺は立ち上がった、かぶさっている布をズバッと斬った。
「なにっ!」
「ガキが動いたぞ!」
「誰だ! 縄をちゃんと縛らなかったやつは!」
荷台の上に立って、周りをぐるりと見回す。
何もない草原、街道から少し外れた所。
10人もの黒装束の男がたき火を囲んで座っていた。
俺が動いたのに、緊張感はまるでない。
ガキが動いた――俺をただの子供だとしか思ってないが故の油断。
俺は荷台から、男達に飛びかかった。
そんな俺を見て、失笑する一番近い男。
一閃、男の喉が斬られ、血がものすごい勢いで噴き出した。
「なにぃ!」
「てめえ、このクソガキが!」
一人殺された事で男達の表情がようやく変わった、全員が剣を抜いて切っ先をこっちに向けた。
「まだ遅い」
敵対心がようやく出たが、危機感がまだ致命的に足りない。
とはいえ指摘してやるつもりもない、俺はレヴィアタンを振るい続け、レヴィアタンの剣術で連中を全員斬り倒した。
総勢十人。一分も掛からなかった。
「無駄足だったな」
俺は苦笑いした。
ゾーイの睡眠薬を飲んだのは、レヴィアタンから見たもの聞いたことを後で教えてもらえるって分かったのが大きい。
捕まって、眠っている最中、俺を捕まえる男達が話す真実をレヴィアタンに聞いとけと命じた。
しかし大した情報は無かった。
連中はアルメリア反乱軍の一派で、前に襲撃で失敗したから、今度は使用人を買収して俺をさらって、アルメリアに連れて帰る。
それ以上の情報を持っていなかったから始末した。
「さて、帰るか――ん?」
帝都はどっち方向だ? と街道の前と後ろを眺めていると、遠くから無数の灯火がこっちに向かってくるのが見えた。
しばらく待ってると、兵士の一隊がたき火を持って近づいてきた。
その兵士と一緒に、ゾーイの姿があった。
そいつらが俺の前にやってくると。
「ご主人様!」
ゾーイがものすごく心配してたって感じの顔で俺を呼んだ。
「なんだこれは」
「はい! ご主人様が心配で、その、兵士の皆さんに頼んで」
「助けに来たって訳か」
ゾーイは大きく頷く。
「そうか、よくやった」
「でも......これって......」
ゾーイが俺を見て、周りに倒れてる黒装束の男達をみて、また俺がもっているレヴィアタンを見る。
「ご主人様がお一人で......?」
「すごい......」
ゾーイがつぶやき、兵士の一団がざわざわする。
まあ、助けはいらなかったが、人手があるのは助かる。
「お前ら、隊長は誰だ」
「はっ!」
一人の青年が前に進み出て、俺に片膝をついて頭を下げた。
「お初にお目にかかります、十三親王殿下」
「こいつらを運ぶのを任せる。何日か前にも襲われてる、それと共通点がないか調べさせろ」
「分かりました!」
兵士の隊長は俺の命令をうけて、部下たちに誘拐犯の死体を運ばせた。
その時、ガシャン、って金属音が聞こえた。
音の方をみる、死体の一つから、短剣が地面の石の上に落ちていた。
「――っ!」
それを見た瞬間、全身がぞわっとした。
殺意。
ものすごい殺意が、その短剣から感じられた。
「それに触るな」
拾おうとする兵士を制止して、短剣の前にたって、じっと見つめる。
これが......目を覚ました時男達が言ってた短剣のことか。
レヴィアタン越しだと、殺意とともに「呪い」のようなものを感じる。
ただの短剣じゃない、呪術も、それを込めた人間の思い――怨念がものすごく籠もっている。
「......もしかして」
レヴィアタンを抜き放ち、構えた。
「やれるか?」
聞くと、レヴィアタンは「はい」と伝えてきた。
「なら、やれ!」
命じられた瞬間大喜びするレヴィアタン。
その直後、立てた刀身から水柱が天に向かって迸った。
前に撃ったのに比べてかなり細い児の俺の腕程度の太さしかない。
それはしかし天に昇ったあと、途中で曲がって飛んでいった。
遠く、遠く。
地平の向こうよりも更に遠く、水柱が飛んでいく。
ゾーイも、兵士達も。
全員、何が起きたのか分からない顔をしていた。
翌日、王宮の花園。
呼び出された俺を見た途端、陛下は嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「すごいぞノア、よくやった!」
こっちが膝をついて一礼するよりも早く向かって来て、肩をつかんで喜びを露わにした。
「反乱軍の首魁、ベイカーという男が、昨夜どこからともなく現われた水柱に眉間を撃ち抜かれたらしい。ノアだろう、それは」
「......はい」
驚き半分、ほっとした半分だ。
驚きなのは、やっぱり陛下の耳が早いこと。
ほっとしたのはもちろん、レヴィアタンの超長距離狙撃が成功した事。
あの短剣、ものすごい呪いと怨念が込められた短剣を目印に、怨念の主をレヴィアタンで狙撃した。
レヴィアタンはできると言った、だがほとんど辺境にあるアルメリアに届くのかがちょっと不安だった。
「首魁を失って反乱軍の指揮系統が壊滅している。ヘンリーは数日中にはカタがつくと言ってきた。よくやったぞノア!」
陛下は今までで一番、興奮した感じで俺の功績を褒め称えたのだった。 | After sending Byron back, I was holding Leviathan in my room.(TN: I swear it sounds weird)
Leviathan, a demon sword and also my loyal dog.
I wasn’t worried about betrayal or anything like that because of its fierce ‘personality’, but I did want to figure out what it could do for me.
So I was asking Leviathan and asked what other things it could do and to try those things on a smaller scale.
Just then, there was a knock on the door of the room.
“Enter”
I gave my permission and Zoe, the maid, came in.
I was touching Leviathan while waiting to see what she wanted, but Zoe didn’t say anything for any length of time.
So I looked at her again, wondering.
“What’s wrong, you don’t look well?”
Zoe looked like a dead person with a bloody look on her face.
She freaked out when I asked, then slumped into a cowering position and got down on her knees to me.
As expected, this wasn’t just a normal thing, I got up from my seat and stood in front of Zoe.
“Th- this ...”
Zoe held out a small leather bag with her quivering hands
I received and opened the bag.
There was money inside.
“What’s this? It’s a lot of money ... hmm, reens or so?”
Immediately after I mentioned it, I noticed something.
Zoe is just a maid at the residence of th Prince, and is paid more than someone who works outside.
That said, she shouldn’t have received enough to save 00 reens.
In the first place, she was about to be sold to a brothel a while ago because she had no money.
She couldn’t have such an amount by any means.
“ST-, a stranger gave it to me. That person said if I give this to Master, this money will be my reward.”
Her voice was shaky and her content was to the point.
I accepted the small bottle Zoe offered me, then took the lid off and sniffed it.
“What’s this?”
“He said something about sleeping pills.”
“...... Heh?”
“I’m sorry!”
As the tone of her voice lowered, Zoe made more and more of a flat-out apology as she rubbed her forehead against the floor.
“They want you mix this into my drink or something and hand it over if I pass out, right?”
“Y-Yes!”
“I see.”
I looked at Zoe, who was completely frightened, and thought.
It’s probably the Almerians again.
They tried to attack me and failed, so now they’re trying to bribe my maids to kidnap me.
They want me that badly, it seems.
But we’ll leave it at that.
I turned to Zoey.
“Get your head up.”
I said.
“Ha, yes ......”
“You’ve made your point. But why did you bring this to me?”
“I cannot betray my master! You even helped me and the village I live in.”
“Hmm.”
“But he threatened to kill me if I didn’t do it, and he forced me to take these pills and money. But I couldn’t betray my master. Um, um, .......”
Perhaps she was still panicking, but there were so many “buts” in Zoe’s words that she couldn’t seem to say what she wanted to say very well.
Still, I got the general idea of the story.
“They threatened you and made you grab a lot of money, but you still couldn’t betray me, so you came to confess. So that’s it.”
“Yes!”
I turned myself around and went back to the chair I had been sitting in earlier and quickly ran a pen over the paper on the table.
I come back to Zoe again and hand it to her.
“Is this ......?”
“This is your reward. They tried to buy your betrayal with 500 reens. And since you didn’t betray me, I’ll add one zero to that.”
“one more 0 ...... 5000 reens!?”
“Yeah, I put my signature on it. You can get it from the accountant tomorrow.”
“Oh, no! I can’t take it!”
“You should have it for not ratting me out.”
An invitation to betrayal, a big money reward.
Zoe couldn’t get her head around the whole thing, and she was left to her own devices.
“Thank you ...... thank you ....... Master is a really big caliber ......”
“But you need to do one more thing for me.”
“–Hey! I’ll do it! I’ll do anything!”
“Hm, I’ll take these pills. If I pass out, just do what they tell you to do and hand me over to them.”
“...... eh.”
“Once you hand me over, you run and hide immediately, and no doubt they will try to shut your mouth.”
“............”
Zoe was still in a state of confusion and didn’t come back.
As I watched her, I simulated in my mind what I needed to do.
I woke up and found myself in total darkness.
I was tied up hand and foot, lying on what looked like hay.
It’s a hut somewhere, and from the smell it looks like a stable or something.
“Hey, the fire’s going out. Go get some wood.”
“All right. You just keep an eye on the kid.”
“Hey, why don’t we take that dagger and kick it to the curb? That’s all you have to do.”
“They told me that was a last resort, you idiot. Are you going to admit to yourself, ‘I couldn’t catch a single child’?”
I heard a coarse-talking voice from outside the hut.
They got me.
I shook my head on the hay.
My ears chattered behind my ears, and after a few shakes, something popped out.
The one that came out was something the size of a pea grain, and when it came out of my ear, it returned to its original size.
Demon sword, Leviathan.
I touched it, and it transformed the linked ring and cut the rope binding my limbs.
I ask Leviathan about the situation.
A moment later, an image ran through my mind.
I told Zoe in the mansion.
I could never take it with me when I got caught, so I made the Leviathan, which can change size, into a pea-sized piece and hid it in my ear. Unlike weapon, the ring can’t be removed, so I left it in place.
Then I took the pills Zoe had brought me, my consciousness was cut off here.
This is where Leviathan’s memories came from.
Zoe left the room, and a short time later, several men dressed in black entered the room.
The men tied my hands and feet, Zoe quietly disappeared at this point.
The men carried me away from the mansion and pushed me into the back of a carriage waiting outside and drove the carriage.
We left the capital and took a short break for the night at a great distance.
What I thought was a stable, it seemed, was simply the back of the wagon, covered with a cloth.
I untied the rope and grabbed the leviathan and told him to work hard.
The Loyal Sword Leviathan was so delighted by that alone that a dog’s tail would have been torn off, and the joy flowed directly into my heart.
I stood up and slashed the cloth that was covered with it with a slash.
“What!”
“The kid is on the move!”
“Who’s the one! The one who didn’t tie the rope properly!”
I stand on the back of the cart and look around.
An empty grassy field, a little off the road.
Ten men in black were sitting around a bonfire.
I moved, but there was no tension whatsoever.
The kid made a move – they are carefree cause they think that I am just a kid.
I leapt at the guys from the back of the truck.
The nearest man who saw me like that and laughed at me.
In a flash, the man’s throat was slashed and blood spurted out in a terrific gush.
“What!”
“You little shit!”
The expression on the men’s faces finally changed after one of them was killed, and they all drew their swords and pointed their cutting edges at me.
“Too slow.”
The hostile spirit finally came out, but the feeling of crisis was still fatally lacking.
However, I’m not going to point it out to them, though, I kept wielding my Leviathan and cut them all down with the Leviathan’s sword technique.
There were ten of them in total. It didn’t even take a minute.
“That was a waste of time.”
I chuckled.
I took Zoe’s sleeping pills, knowing that Leviathan would tell me later what it saw and heard from me.
I was captured, and while I was asleep, I ordered Leviathan to listen to the secrets told by the men who held me captive.
But I didn’t get much information.
They are part of the Almerian Rebellion, and since they failed in their previous raids, they have bribed their servants to kidnap me and take me back to Almeria.
I didn’t have any more information than that, so I took care of him.
“Well, let’s go home–hmm?”
Which way to the Imperial City? And as I looked at the front and back of the street, I saw countless lights coming towards me in the distance.
After waiting for a while, a squad of soldiers approached us holding a torch.
Along with that soldier, I saw Zoe.
They’re coming for me.
“My lord!”
Zoey looked at me like she was terribly worried about me.
“What’s this?”
“Yes! I’m worried about master, so, I mean, I asked the soldiers to help me.”
“So, You came here to help me.”
Zoe nodded vigorously.
“Well, good job then,”
“But ...... this is ......”
Zoe looks at me, then at the men in black who are falling around me, then at the leviathan I have again.
“Is this done by master alone ......?’
“Yeah.”
“Awesome ......”
Zoe murmured, and the group of soldiers buzzed.
Well, I didn’t need any help, but it helps to have a manpower.
“You guys, who’s the captain?”
“Ha!”
A young man stepped forward and knelt down on one knee and bowed to me.
“It’s a pleasure to meet you for the first time, Your Highness the Thirteenth Prince.”
“I’ll have you bring these guys in. They attacked me a few days ago, have them look for anything in common.”
“I understand!”
The captain had his men carry the body of the kidnapper away under my orders.
Then I heard a cracking sound.
I looked down and saw that a dagger had fallen from one of the bodies onto the ground and was resting on a rock.
“—-!”
The moment I saw it, my whole body shuddered.
Murderous intent.
A tremendous killing intent could be felt from that dagger.
“Don’t touch that.”
I stopped the soldier who was trying to pick it up and stood in front of the dagger and stared at it.
This is the dagger that the men were talking about when I woke up .......
Through the Leviathan, I can feel a “curse” along with a killing intent.
It’s not just a dagger, it’s also a spell and the human thoughts that went into it – a great deal of resentment.
...... Maybe...
I drew my leviathan and set it up.
“Can you do it?”
When I asked it, the reply was yes.
“Then, do it!”
The moment the order is given, Leviathan is overjoyed.
Immediately after that, a column of water gushed into the heavens from the blade I raised.
It’s much thinner than the one I shot before, only about as thick as a six-year-old’s arm.
It did however ascend to the sky and then turned and went flying on the way.
Far, far away.
Even farther away than over the horizon, the water column flew away.
Zoe, and the soldiers.
They all looked unsure of what had happened.
The next day, in the royal palace’s flower garden.
As soon as His Majesty saw me when I was summoned, he smiled happily.
“Great, Noah, well done!”
He came toward me faster than I could kneel down and bow, grabbing my shoulder and revealing his joy.
“A man named Baker, the rebel leader, was apparently shot between the eyes by a water column that appeared out of nowhere last night. It was Noah, wasn’t it?”
“...... Yes.”
I’m half surprised and half relieved.
The surprising thing is that His Majesty’s ears are still very quick.
Of course I was relieved that Leviathan’s ultra-long range snipe was successful.
That dagger, a dagger with a tremendous curse and grudge, was used as a marker to snipe the Lord of the grudge with the Leviathan.
Leviathan said it could be done, but I was a little concerned about its ability to reach Almeria, which is almost in the middle of nowhere.
“The loss of the leader has decimated the rebel chain of command. Henry has told me that they will be catapulted in a few days. Well done, Noah!”
His Majesty praised my accomplishments with the most excited feeling ever. |
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} | 王邸。
王宮に隣接して、外周をぐるっと取り囲んでいる親王達の邸宅。
そこで、俺は朝目覚めた。
この屋敷に移り住んでから、六歳になった俺はようやく新しい人生とそのスタイルに慣れてきた。
朝起きて、ベッドを降りたらパジャマのままぼけーっと立つ。
すると部屋の外で待ち構えてたメイド達が入ってきて、俺の顔を洗ったり髪を梳いたり、パジャマから着替えさせてくれる。
誰が雇ったのか分からないが、メイド達は指揮を取っている一人を除いてほとんどが十代のうら若き少女。
そういう若い子に着替えさせられて、毎日裸を見られてドキドキする――のにも慣れてきた。
「はい、お召し替え終わりましたよ」
「今日もとっても男前でいらっしゃいます」
「ん」
軽く頷き、寝室を出る。
そこから大食堂に向かう。
「いやあ、ノア様はたいしたもんだね」
「そうなの?」
「そうさ。普通あれくらいになると恥ずかしいって言い出したり、それかあんた達みたいな若いのにイタズラをし出したりするもんだけど。それがなくていつも泰然としてらっしゃる。あれが王者の風格ってやつなのかね」
メイド達の雑談を背に、俺は大食堂に向かう。
名前:ノア・アララート
体力 F+F 地 F
精神 F 闇 F
歩きながら、視界の隅っこにステータスを出す。
ステータスにある幾つかの疑問、転生してから六年、一つだけ分かったことがある。
それは、「+」の分は、俺の――十三親王ノア・アララートの部下次第で変わるということだ。
具体的にどういう計算なのかは分からないが、部下・配下が増えたり減ったりする度に「+」の後ろが変わる。
そしてこれは人には見えなくて、どうやら俺だけらしい。
今も屋敷のメイド数十人で、基礎能力に若干の上積みがある。
部下をもっと増やせば俺自身も強くなるんだが、親王――王子は王子で色々しがらみがある。
六歳の今じゃどうしようもない、もう数年待たないとな。
動けるようになったら――の事を色々考えていたら時間がたった。
その間俺は大食堂につき、別の若いメイドたちに給仕されて朝飯を食べた。
「ご主人様」
食べ終わるのとほぼ同時に、一人のメイドがやってきた。
俺の身の回りをするメイドじゃない、外面のいい、接客専門のメイドだ。
「皇太子殿下、および王殿下がお見えになりました」
「え? 今どこに?」
「居間にお通ししております。皇太子様は『ゆっくり食べてから来て良い』と仰せです」
「案内しろ」
皇太子本人がそう言っても、遅れたら失礼だ。
俺はすっくと立ち上がって、メイドに案内してもらって居間に向かった。
居間に入ると、そこの男がいた。
第二王子・兼皇太子のアルバート・アララート。
第四王子のヘンリー・アララート。
の実の兄だが、十三王子という順番からも分かる様に、上の二人はもう中年――皇太子に至っては耳の上に白髪が交じっている初老だ。
父親といっても通る二人の兄に、俺は正式な作法に則って一礼した。
「おはようございます、兄上」
「おう、来たか」
「かしこまらなくていい、座ってくれ」
「ありがとうございます」
俺はそう言って、下座に座った。
もちろん上座は皇太子アルバートだ。
実の兄弟とは言え、そこは皇太子。
政務の一部も任されている、半分皇帝のようなもの。
「うーむ、しかしノアは礼儀正しくて賢いな」
「十一番目と十二番、それに十四とノアと歳が近い子達はまだまだ子供そのものだったぞ」
「ありがとうございます、兄上」
「その歳でその賢さは大したものだ、将来有望だ。いずれは名宰相になるな」
「そうなれるように頑張ります」
「なれるさ。なあヘンリーよ」
第四王子・ヘンリーは静かに頷いてから、俺の方を見た。
アルバートより少し年下だが、瞳は物静かで、そこだけ見れば年上のように見えることもある。
。兄弟の中でも群を抜く賢さだ」
なにか深意ありそうな口ぶりだったが、突っ込まない方がいいと思った。
「それよりも兄上達、本日はどうしてこちらへ?」
「ああ、そうだったそうだった。ノアにプレゼントがあったんだ」
アルバートはそう言うなりパンパンと手を叩く。
すると部屋の外から使用人が一人、箱を持って入ってきた。
どういうわけか、青ざめた顔をして、ガタガタ震えている。
「開けろ」
人を命令する事に慣れきっている口調で、アルバートは使用人に命じた。
使用人は更に紙のようになった顔色で箱を開けた。
箱の中には、一振りの剣が入っていた。
「これは?」
「言っただろ? お前へのプレゼントだ」
「はあ......」
「まあ、持ってみろ」
真意が分からない。
ヘンリーの方を見たが、ヘンリーは静かに頷いた。
それに後押しされて、俺は大人用のサイズのその剣を手に取った。
若干重くて、鞘の先の方が地面にコツンと落ちた。
とは言えそれは通常の重さ。
六歳の子供が持てないだけで、重いとかそういう事ではないらしい。
が、ここで気付く。
俺が剣を持つと、さっきまで紙のようだった使用人の顔色が徐々に戻り始めていた。
「ほう、さすがだな」
アルバートが心から感心したような声を出した。
「どういう事ですか?」
「その剣の名前はレヴィアタン」
「レヴィア......タン」
「別名水の魔剣とも呼ばれている。魔剣の中でも最上位に位置するらしくてな、最初に手懐けるまでに百二十人ほど死んでいる」
「えっ!?」
あまりにも驚いてしまい、思わず剣を手放しそうになった。
「心配せずともいい」
俺の動揺を見抜いたのか、ヘンリーが優しい口調で言ってきた。
「持てぬ者は持った瞬間に呪い殺されている」
「その通り。ノアは水SSなのであろう? Sのヤツですら命を削って扱うような魔剣だが、水SSならどうなるのかと思ってな」
そんな理由なのかよクソ皇太子――おっといかん。
こういう悪態を心のなかで思ってるといつか口に出してしまいそうだから止めておいた。
「おいノア、本当にそれ普通に持てるのか?」
「ええ、まあ。重いですが」
「へえ、さすがだな。いや、良いものを見せてもらったよ」
魔剣で水SSを褒められたが、ちょっと釈然としない感情が残ってしまったのだった。 | Demonic Sword Resistance
The Thirteenth Prince’s Palace.
It was one of the residences of the imperial princes that surrounded the perimeter of the Emperor’s Palace.
That was where I woke up in the morning.
It’s been six years since I moved here, and in those six years of my life, I’ve gotten used to my new life.
After I woke up, I got off the bed and stood still in my pajamas.
Then, the maids waiting outside the room soon entered and washed my face, did my hair, and changed my clothes.
I don’t know who hired them, but the maids were pretty much all around ten years old except for the head maid.
Having my buck naked body being seen my young girls every day made me feel excited — only for the first week or so. I quickly got used to it.
“Master, I have finished dressing you.”
“I am very handsome as always.”
With a gentle nod, she left the bedroom.
From here, I head to the dining room.
“Noah is a handful, ain’t he.”
“Really?”
“Yep, yep. Normally, you’d be embarrassed at that stuff, but he teases you young ‘uns like nothing. And he stays calm. Quite like the Emperor.”
Turning my back to the gossiping of the maids, I headed to the grand dining room.
Name: Noah AralightGender: MaleAralight Empire’s Thirteenth Imperial PrinceLevel: /∞
HP: FMP: FSTR: FVIT: F+FINT: FMND: FAGI: FDEX: F+FLUK: F+F Fire: FWater: E+SWind: FEarth: FLight: FDark: F
While walking, I brought out my status page in a corner of my vision.
I have a few questions about my status page, but in the six years since I reincarnated, I was able to answer one of them.
The plusses change whenever my — no, the The Thirteenth Imperial Prince Noah Aralight’s subordinates change.
I don’t know all the numbers, but the plusses change every time I gain or lose a subordinate.
And the plus is invisible to everyone but me.
With the few dozen maids I had now, a few of my stats had a small buff.
I get stronger with more subordinates, but as a prince, I have various ties of obligation.
I couldn’t do anything as a six-year-old; I had to wait a few more years.
In the spare time walking through the halls, I thought about a few things.
I soon reached the dining room and was served breakfast by a different maid.
“Master.”
Just a bit after I finished eating, a maid came in.
She wasn’t one of the maids that served my daily needs. She was trained as a reception maid for visitors.
“The Crown Prince as well as the Fourth Imperial Prince have come to see you.”
“Huh? Right now?”
“They are waiting in the living room. The Crown Prince wishes for Master to come after Master eats.”
“Lead me to them.”
It would be rude to keep the Crown Prince waiting, regardless of what he said.
I stood up from my chair, and the maid guided me to the living room.
When I entered the living room, I saw the two men there.
The Second Prince and Crown Prince, Albert Aralight.
The Fourth Prince, Henry Aralight.
The two of them were Noah’s elder brothers, but as one might tell from me being the Thirteenth Prince, they were both middle-aged. The Crown Prince even had tufts of grey hair above his ears.
I performed the customary bow to my brothers, who were old enough to be my father.
“Good morning, elder brothers.”
“Oh, you finally came.”
“Dispense with the formality, sit down.”
“Thank you very much.”
I sat down in a lower seat.
The highest seat was, of course, being sat on by the Crown Prince, Albert.
Although he was my sibling, he was also the Crown Prince.
He was a major part of ruling the country, a sort of half-Emperor.
“Hmm, you’re very polite and smart for your age.”
Albert complimented me.
“The four other kids around your age are much more childish compared to you.”
“Thank you very much, elder brother.”
“Wise beyond his age, I see promise in you. We might have our future Prime Minister.”
“I will work hard to achieve that goal.”
“I bet you will. Hey, Henry.”
“Yeah.”
The Fourth Prince, Henry, gave a silent nod then looked at me.
He was younger than Albert, but based off the calmness in his eyes, one could easily believe that he was the older one.
“Noah understands.......his intelligence is bounds above his siblings.”
I felt that there was some deeper meaning to this, but I also felt that I shouldn’t overthink it.
“Excuse me for changing the topic. What might you have come here for, today?”
“Yeah, I almost forgot. I have a present for you.”
Albert clapped his hands twice.
Right after, a servant came from outside the room, holding a box.
For some reason, the servant had a pale face and was shaking.
“Open it.”
With a commandeering tone of voice, Albert gave the servant a single order.
The servant, with a face as white as paper, opened the box.
Inside the box was a sword.
“This is?”
“Didn’t I say? It’s your present.”
“Haahhh...”
“Try holding it.”
I looked over at Henry, and he gave a silent nod.
With the two of them giving approval, I took the adult-size sword to my hand.
It was slightly heavy, and the tip of the scabbard fell and bumped into the floor.
Even so, it wasn’t something that I couldn’t carry.
For a six-year-old to carry it, it must be fairly light.
However, I noticed something.
When I took the sword out of the box, the servant’s face began to regain color.
I had no idea what to make out of that fact.
“Oh, amazing.”
“What is?”
“That sword’s name is Leviathan.”
“Levia...than.”
“It’s also called the Blade of the Sea Demon. It ranks up pretty high amongst other demonic swords, and around a hundred and twenty people died before it was first tamed.”
“What!?”
I was so surprised that I almost instinctively dropped the sword.
“Don’t worry.”
Probably as he saw how uneasy I looked, Henry consoled me.
“Those who can’t hold it instantly die the moment they wield it.”
“Exactly. You have SS in water, don’t you? S-ranked users of demonic swords are basically incarnations of death, but what about SS-ranked users?”
What kind of reason was that, sh*tty Crown Prince — oh, wait.
If I continued to say insults like those in my head, it might accidentally be said aloud someday.
“Hey, Noah, do you really feel fine?”
“Yes. Well, it is a bit heavy.”
“Huh, amazing. Well, I got to see something good.”
My SS-rank was praised with the demonic sword, but I still felt that there was something missing. |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | 「ゾーイ」
「はい」
「物乞いを安全なところに連れて行け。そっちは疲弊しているだけだから、休ませて良い物を食べさせろ」
「分かりました」
ゾーイは頷き、倒れている物乞いを起こして、支えて路地裏から出た。
残った刺客の男と、俺とケイト。
直後、うつ伏せになっている男の背中に、投げナイフがドスドスと刺さった。
「ああっ!」
悲鳴を上げるケイト。
「ご、ご主人様! ナイフが!」
「......え?」
俺が落ち着き払っている為、ケイトも逆に落ち着いた。
「驚かないん......ですか?」
「相手が保険を掛けておくことは予想してた。口封じの口封じだな。そっちの方がより首謀者に近いだろうから、やらせておいたのさ」
「そうなんですか!?」
俺は頷き、歩き出す。
投げナイフが飛んできた方角に向かって行き、歩くこ弱。
路地裏の更に奥まったところに、男が一人倒れていた。
黒装束の、目だけを出している分かりやすい格好の男だ。
そいつは小刻みに震えながら、もがいて逃げ出そうとしている。
「ほらな」
「これ、ご主人様が?」
「ああ、ナイフが飛んできた瞬間、その発射点を割り出して倒しておいたのさ」
「凄いですご主人様! どうやったんですか? 何もやってないように見えたけど」
「そのうち教えてやる」
俺はそう言って、黒装束の男に近づいた。
男は振り向こうとするが、首すら回せないほど、体の自由が利かなくなっている。
その男を軽く蹴って、うつ伏せから仰向けにしてやる。
「さあ話せ、誰が命じた」
「こ、殺せ......」
「今話せば悪いようにはしない」
男は答えず、代わりに喉仏が動いた。
何かを飲み込んだ様子だ。
男はそのまま目を閉じた。
俺は何かするでも無く、そのまましばし待った。
何も、起こらなかった。
起こらなかったせいで、男は再び目を開き、驚愕の眼差しで自分を見つめた。
「な、なぜ......」
「ここまでやらせる連中だ、失敗したら自害するなんて予想しない訳がない。対処しておいたのさ」
「なっ――」
「ご主人様すごい......」
「自害する権利はくれてやらん。さあ、話せ」
「どうした、話さないのか」
「殺せ......殺してくれっ」
俺は眉を潜めて、首をかしげた。
この反応は予想外だ。
殺せ! までなら予想できるが、殺してくれ! というのはまったく予想できなかった。
男の顔を見ると、言葉通りの懇願の色がそこにあった。
「どういう意味だ? 殺してくれってのは」
「失敗したら速やかに死なないと、俺の家族が......娘がっ!」
話は分かった。
吐き気がするくらい、解りやすい話だった。
娘を人質に取られて、止むに止まれずって訳か。
しかも失敗したら死なないと、っていうあたり、気合の入った悪党どもだな。
ため息をつきつつ、俺は手を振った。
腕輪の中から紫色の液体が滲み出て、まるで矢のように飛び出した。
毒の矢は、一直線に男の体に打ち込まれた。
白目を剥き、泡を吹いた男は、最後の力を振り絞って倒れる前にそう言った。
一方で、それを見たケイトは驚きと怯えの中間くらいの表情をした。
「し、死んだんですか?」
「確認してみればわかる」
ケイトは頷き、おそるおそる倒れてる男の所に行き、首筋と鼻先に手を当てて。
「死んでる......」
と、呟いたのだった。
「う、ん......」
窓を閉じきった部屋の中、ベッドの上で、男は呻きながら目を覚ました。
「気が付いたか」
「え? ......こ、ここは!?」
男は飛び上がって、部屋の中を見回した。
「安心しろ、あの世ではない」
「お前は――俺は......生きてる!?」
「殺してくれたんじゃないのか!?」
男は俺に掴みかからんばかりの勢いで怒鳴ってきた。
「それも安心しろ、ちゃんと死んだ事になってる」
「え?」
俺は手をつきだし、人差し指を伸ばした。
指先からたらり、と紫色の液体が一滴、床に滴り落ちる。
さっきの、男の体に打ち込んだ毒だ。
「人間を一時仮死状態にする毒だ。お前の死を誰かが確認した事も確認した」
「仮死状態にって......そ、そんな事出来る訳が......」
「もう一度喰らってみるか? 体にはそれなりに毒だからオススメはできんぞ」
俺が言っても、男はなおも信じられないって顔をしている。
「それよりも、自分の体の周りを見ろ」
「体の周り......なんだ? この焦げた皮みたいなのは」
男はベッドの上にある、文字通り焦げた皮のような物を手に取った。
皮は、まるで男が脱皮したかのように、体のまわりに人の形をしていた。
「お前は一回火葬された。俺が手を回して、皮一枚焼けただけで済ませたが」
男に使った痺れ毒と仮死の毒はアポピスの物、火葬の時に使ったのはバハムートの憑依だ。
バハムートの憑依により、炎が無効化になって、その上に鎧の指輪で焼かれた皮を付けてその後の確認をごまかした。
火葬にもグレードがある。
無縁仏のような火葬だと、適当に焼いて適当に棄てるのが相場だ。
灰になるまで焼くのはちゃんと引き取る人間がいるときだけだ。
「す、凄い......」
男はそう言って、まなじりが裂けそうなくらい見開かれた。
「そんなことが出来るなんて......」
「お前は一体......何者だ」
「それよりも、ほれ」
俺は革袋を男に放り投げた。
100リィーンが入っている銀貨袋だ。
「当座の旅費だ、今回の件が解決するまでどこか行ってろ。じゃないとお前の家族が不味いんだろ?」
「......だが」
男は銀貨袋を手に持ったまま、なおもためらった。
何かを迷い、やがて決心した様子で顔を上げて、口を開く。
「やらせたのは――」
「――え?」
「何も言うな」
「し、しかし」
「お前から得た情報なら、お前が出所だってバレる可能性もある。そうなったらお前の家族に危険が迫る」
「自分の命だけの問題じゃない。何かを話そうとしてくれた。その事実だけでいい」
男は歯ぎしりしつつも、感激した目で俺を見た。
「な、なら。一つだけ」
「連中の次の手だ。連中はこういう時決まって、相手の近しい人間を買収する」
「なるほど。それくらいなら話しても大丈夫だな」
「力になれなくて済まない」
「気にするなと言った」
男はますます下唇を噛んで、悔しそうな顔をした。
本来は義理堅い男なんだろう。
こういう出会いじゃなければ、引き入れて部下にしたいところだ。
コンコン、と部屋のドアがノックされた。
男はビクッとした。
「入れ」
気配で既にゾーイだと分かっている。
入ってきたのは仕事を果たしたゾーイだった。
「ご主人様」
「ん、なんだ?」
ゾーイは俺に向かって、革袋を差し出してきた。
「なんだ?」
「金貨みたいです。3000リィーンあるとか」
「3000か」
「これで、ご主人様の正体と、今後の情報をって言われました」
「早速来たか」
俺はふっと笑った。
一方で、俺とゾーイのやりとりを見た男は驚愕して。
「え......買収、されなかった......のか? 3000リィーンでも......?」
俺はふっ、と微笑んだ。
懐かしいと思った。
十年近く前の話だ。
俺の事を暗殺しようとした連中が、ゾーイを買収しようとしたが、ゾーイはその事を俺に知らせて、もらった金をそのまま差し出した。
今と、まったく同じ光景で、懐かしさを覚えた。
「戻ったら3万くれてやる。その3千も取っておけ」
「ありがとうございます」
このやりとりも前回とまったく同じものだ。
「さ、3万......!? ど、どういうことだ......」
男は驚愕したまま、戻ってこなかった。 | “Zoe.”
“Yes.”
“Take the beggar to safety. He’s just exhausted over there, so let him rest and get some good food.”
“I understand.”
Zoe nodded, helped the fallen beggar up, propped him up, and walked out of the alleyway.
And there was only me, Kate, and the remaining assassin guy.
Immediately after, a throwing knife stabbed the slumped man in the back with a thud.
“Aaah!”
Kate screamed.
“M-Master! The knife!”
“...... Eh?”
Kate, on the contrary, became calm since I was calm.
“You’re ...... not surprised?”
“I expected the other party to keep an insurance policy. That’s how you shut their mouths. That one would probably be closer to the ringleaders, so I let it happen.”
“Really!?”
I nod and start walking.
It took me less than a minute to reach the direction from which the throwing knife had come.
I find a man lying further down the alleyway.
He was dressed in black, with only his eyes showing.
He was shaking and struggling to getaway.
“See”
“Was this Master’s doing?”
“Yeah, the moment the knife flew in, I figured out its firing point and took the guy down.”
“Amazing, Master! How did you do it? It looked like you didn’t do anything.”
“I’ll tell you later.”
I said this and approached the man in black.
The man tried to turn around, but his body was so paralyzed that he could not even turn his head.
I kicked him lightly and turned him from face down to face up.
“Talk now, who ordered you to do this?”
“K-Kill me.......”
“Speak now and I won’t make it worse.”
The man did not answer, instead, his larynx moved.
He seemed to swallow something.
The man closed his eyes.
I didn’t do anything and waited for a while.
Nothing happened.
Since nothing happened, the man opened his eyes again and looked at me with astonishment.[TN: Apophis can control poison so it didn’t work, for those who forgot or didn’t know.]
“W-Why ......?”
“I let you go this far, there’s no way I wouldn’t have expected you to commit suicide if you failed. I dealt with it.”
“Master is amazing......”
“You won’t get to harm yourself. Now, talk.”
“What’s wrong, you don’t want to talk?”
“Kill me. ...... kill me, please.”
I creased my eyebrows and tilted my head.
I didn’t expect this reaction.
Kill me! I did expect it would pop up but, kill me, please! It wasn’t something I had anticipated at all.
When I looked at the person’s face, there was a pleading look there, just as said.
“What do you mean? pleading to kill you?”
“If I fail, I must die swiftly or my family ...... my daughter!”
I get the story.
It was a story that was so easy to figure out that it made me nauseous.
They took this person’s daughter hostage, and there was nothing he could do to stop them.
Moreover, if they fail, they have to commit suicide, with no choice for them.
Sighing, I waved my hand.
A purple liquid oozed out of my bracelet and shot out like an arrow.
The poison arrow struck the man’s body in a straight line.
With white eyes and foaming from his mouth, he said this before he collapsed with his last ounce of strength.
Kate, on the other hand, saw this and looked somewhere between surprised and frightened.
‘”I-Is he dead?”
“If you check, you’ll understand.”
Kate nodded and fearfully went over to the lying man, putting her hands on his neck and the tip of his nose.
“He’s dead. ......”
She muttered.
“Um, hmm ......”
The man woke up on his bed, in a room with the windows closed, moaning.
“You’re conscious huh”
“Eh ...... th-this place!”
The man jumped up and looked around the room.
“Rest assured, it’s not the afterlife.”
“You–I’m ...... alive!”
“I thought you killed me!?”
He shouted at me as if he was about to grab me.
“Don’t worry about that either, you’re properly pronounced dead.”
“Eh?”
I held out my hand and extended my index finger.
A drop of purple liquid dripped from my fingertip onto the floor.
It was the poison I had injected into the man’s body earlier.
“It’s a poison that puts people in a state of temporary death. Someone has confirmed that you are dead.”
“Put into a state of temporary death ...... t-there’s no way it’s possible......”
“You want to try it again? I wouldn’t recommend it because it’s toxic to your body in its own way.”
The guy still looked incredulous when I told him.
“Rather, look around yourself.”
“What’s ...... around my body ......? It’s like burnt skin.”
The man picked up something on the bed that looked literally like charred skin.
The skin had a human shape around the body as if the man had shed his skin.
“You were cremated once. I managed to get my hands in it, and it only burned one layer of skin.”
The numbing and temporary death poisons used on the man were from Apophis, and the one used at the cremation was controlled by Bahamut.
The Bahamut possession made the fire ineffective, and the skin burned by the Armor Ring on top of it cheated the subsequent confirmation.
There are grades of cremation.
In a cremation like that of an unrelated person, they are appropriately burned and disposed of properly.
Only when there is someone who will take care of the body is it burned to ashes.
“A-amazing .......”
The man looked at me as if his eyelids were about to split open as he said this.
“I didn’t know you could do that. ......”
“Who the hell ...... are you?”
“More importantly, here.”
I tossed the leather bag to the guy.
It was a bag containing reens worth of silver coins.
“Just for the time being, you’ll have to go away until this matter is settled. Otherwise, your family will be in trouble, right?”
“......, but...”
The man hesitated, still holding the bag of silver coins in his hand.
He hesitated for a moment, then looked up as if he had made up his mind and opened his mouth.
“I was made to do—“
“No.”
“—-eh?”
“Don’t say anything.”
“But...”
“If I get information from you, there’s a chance they’ll find out you’re the source. And if that happens, your family will be in danger.”
“It’s not just about your life. You tried to tell me something. That fact alone is enough.”
The man looked at me with gritted teeth but impressed eyes.
“T-Then... Just one thing.”
“It’s about their next move. They always try to bribe someone close to the person they are dealing with.”
“I see. That’s enough information for you to share.”
“I’m sorry I can’t help you.”
“I told him not to worry about it.”
The man bit his lower lip more and more and looked frustrated.
He must be a righteous man by nature.[TN: .......]
If it weren’t for encounters like this, I would have taken him in and made him my subordinate.
Knock-knock, there was a knock at the door.
The man was startled.
“Come in.”
By the presence, I already know it’s Zoe.
Zoe entered, having done her job.
“Master.”
“Hmm, what is it?”
Zoe turned to me and held out a leather bag.
“What is it?”
“Looks like gold about ,0 reens.”
“3000 huh.”
“With this, I am to tell them about Master’s identity and any future updates I may have.”
“That was quick.”
I giggled.
Meanwhile, the guy who saw the exchange between me and Zoe was astonished.
“Eh ...... you weren’t bought ......? Even with 3000 reens ......?”
I chuckled and smiled.
It was nostalgic, I thought.
It was nearly ten years ago.
The people who tried to assassinate me tried to bribe Zoe, but instead, she let me know about it and offered me the money as she got it.
It was the exact same scene as now, and I felt nostalgic.
“When I get back, you can have 30,000. Keep the 3,000.”[TN: Dang Zoe, you are already richer than most of the population]
“Thank you very much.”
This exchange is exactly the same as last time.
“3-30,000 ......! Wh-What do you ......?”
The man was still astonished and did not come back. |
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} | 朝、起き出した俺はいつもの様にベッドから降りて、メイド隊に任せっきりで着替えて、朝飯のために大食堂に移動した。
食堂には既に数人のメイドが待ち構えていて、俺が姿を見せたのとほぼ同時に頭を下げた。
そのメイドの一人が引いた椅子に座ると、彼女達による給仕が始まった。
若いメイドがキッチンから料理を運んできて、それをメイドのゾーイが受け取って、俺の前に置く。
飲み物もだ。若いメイドが持ってきて、ゾーイが受け取って、俺のグラスにつぐ。
メイドの間にも上下関係がある。
ゾーイは長年俺に仕えてきたから、メイドの中でもそれなりの地位にいる。
俺は賢親王。
直接ご奉仕するにも、メイドの中である程度出世しないといけない――というのが、貴族の何となくの決まりだ。
食べ慣れた朝飯を口に運んでいると、ふと、若い――というよりまだ幼いメイドがそわそわしているのが気になった。
今の俺――になった俺よりも少し幼いくらいのメイドは、しきりに窓の外をきにしている。
「そこの――えっと名前なんっていうんだ?」
「ジジって言います」
俺の質問を、代わりにゾーイが答えた。
「なるほど。ジジ、窓がどうかしたのか?」
「あの......外の列がすごくて、その......」
「列?」
どういう事だ、と視線をゾーイに向ける。
「ご主人様がもうすぐ十二歳のお誕生日を迎えるじゃないですか、それで各地から贈り物を届けに来る方々が列を作っているので」
「なるほど。そういうのを見たことなかったのか?」
今度はジジに聞く。
「そ、それもそうですけど。列がも目になるのに、全然途切れなくて」
「そんなもんだ。受け取ってはい終わりじゃすまない。受け取って、チェックして、記録する。それをしっかりやるから列が中々はけない。去年はたしか......」
またゾーイに視線を向ける。
こういう「家」の事は使用人に聞かなきゃわからない。
「一週間ほど続きました」
「はわ......す、すごい......。誕生日の、プレゼント? がそんなにいっぱい来るなんて......」
おそらくはどっかの農村の出身であるジジはますます目を丸くさせたが、ゾーイに少し叱られて、慌てて仕事に戻るのだった。
朝飯のあと、俺は屋敷から外に出た。
プレゼントの列は裏門に回してて、そこで列を作らせているが、一週間も続く長い列、しかも完全に終わるまで続々とくるほどの大勢なものだから、正門の方から出ても賑やかなのがちらっと見える。
そんな、賢親王の地位の象徴のような場面をスルーして、馬車に乗って目的地に向かう。
都の東側にある兵務省、ここが俺の今の仕事場だ。
兵務省の敷地に入って、馬車から降りて、建物に入る。
「兄上は」
俺を出迎えた中年の役人に聞く。
「大臣室です。騎士様とお話をしております。殿下がお見えになったらすぐに来てほしいと言付かっております」
「わかった」
スタスタと進み、一直線に大臣室に向かった。
この建物で一番格式張った扉の前に立ち、ノックをする。
「ノアです」
「うむ、入れ」
左右の門番が観音開きの扉をあけるのを待ってから中に入った。
扉同様、格式張った部屋の中に二人の男がいた。
一人は部屋――いやこの兵務省の主。
ヘンリー・アララート兵務親王大臣。
アルメリアの一件以降、陛下から兵務省を任されたヘンリー兄上だ。
もう一人も見た顔だ。
いかつい顔をしたいかにも軍人な、兄上の騎士、ライス・ケーキ。
「遅かったなノア」
「すみません兄上」
「おはようございます、賢親王殿下」
「なるほど」
ライスを見た。
彼は兄上が十年くらい前に騎士選抜で選んだ騎士で、いわば兄上の直属の部下だ。
俺で言えばシャーリーみたいなやつだ。
個人の武勇もさることながら、軍を率いる才能に長けていて、兄上が従えている数人の騎士の中でも飛び抜けている出世頭だ。
今や帝国にいくつかある正規軍のうちの、第二軍を任される程だ。
「それで兄上、第二軍の派遣はもう決定事項なんですか?」
「ああ、陛下の勅命だ。南方の蛮族どもは優しい顔をするとつけあがる、正規の第二軍を派遣して、力の差を見せつけよとの事だ」
俺は考えた。
そして兄上も、ライスも俺を見つめた。
俺は今、兄上と一緒に兵務省に詰めている。
兄上はアルメリア鎮圧の功績あってのことで、俺は魔剣レヴィアタンを完全に従えたという事をかっての起用だ。
まだ十二歳の少年だが、任命は陛下直々ということもあって、兄上はよく俺の意見を聞いてくれている。
俺は少し考えて、ライスに聞く。
「一つだけ教えろ。第二軍の実数は?」
「どういう事だノア、実数というのは。そしてライス、お前は何を隠している」
兄上は眉をひそめて、ライスを軽く睨んだ。
ライスはそのまま土下座してしまい、兄上の顔がますます険しくなった。
「待って兄上、たいした事じゃないんだ。帝国の正規軍は、登録している兵数に応じて予算その他諸々が財務省から支給される」
「ああ」
「そこで、兵士じゃない雑用の人間や、駐屯している近くの村の商人や協力者を登録して、その分の予算を懐に入れるということがよくある」
「なんだって」
「申し訳ありません」
ライスはそのまま額を地面にこすりつけた。
証拠なんてなにもないが、それを突きつけたのが俺と言うこともあって、そして主の前と言うこともあって、ライスは事実上の白状をした。
「おまえ......」
「まって兄上。ライスも怯えるな。雑用の人間を頭数に数えるのは将軍の権限内だ。それを咎めるつもりはない」
「は、はあ......」
土下座したまま顔を上げるライス。
じゃあなんでそれを? って顔をしている。
「普段ならそれでいい。名目上の数も抑止力になる」
「......ふむ、確かにそうだ。例えば実数がそんなになくても、十万の大軍、と言った方がいい場合もあるな」
「そういうことです兄上」
「よく知っているな、さすがだノア」
俺はふっと微笑み返して、またライスに話しかける。
「だが、今回はダメだ。陛下の勅命はいわば、圧倒的に勝ってこいということ。ごまかしの数の軍を送り出すわけには行かない。だからどれくらいのごまかしがあるって聞いた。正直に答えろ」
「は、はは。約、二千人くらい」
「うん、その数をちゃんと補充しとけ」
「分かりました! この後すぐやります」
「ああ。兄上、ペンと紙を借りていい?」
頷く兄上、そのまま執務机の上にある紙とペンを渡してきた。
それを受け取って、紙にさらさらとペンを走らせてから、それをライスに渡す。
「こ、これは?」
「財務省にいけ、雑費扱いで
「そ、そんな!」
「貰っとけ。その代わり」
そこで言葉をきって、部屋に入ってきてから初めてとなる、真顔でライスを睨んだ。
「ちゃんと数は揃えろ。そして負けは許さん、いいな」
「は、ははー」
ライスは俺のメモを受け取って、最後に兄上に一礼して、大臣室から出て行った。
部屋の中に残った俺と兄上。
「凄いぞノア。飴と鞭の使い分けが絶妙だ」
兄上は、感心した顔で俺を見つめたのだった。 | Morning, I woke up, got out of bed as usual, left the maids to change my clothes, and moved to the main dining hall for breakfast.
There were already several maids waiting for me in the dining room, and they all bowed their heads at the same time as I showed up.
One of the maids pulled out a chair for me to sit on, and they began serving me.
A young maid brought in food from the kitchen, which Zoe, the maid, took and placed in front of me.
Some brought Drinks. Zoe takes those as well from them and fills my glass.
There is a hierarchy among the maids.
Zoe has been in my service for many years, so she has a certain status among the maids.
I’m the Wise Prince.
And if one want to serve me directly, they have to rise to a certain level among the maids–that’s somewhat the rule of the nobility.
As I brought the accustomed breakfast to my mouth, I suddenly noticed that the young – or rather, still young – maid was fidgeting.
The maid, who was a little younger than the twelve-year-old me that I am now, was constantly looking out the window.
“You there, what’s your name?”
“Her name is Gigi.”
My question was answered by Zoe instead.
“I see. Gigi, what’s wrong with the window?”
“That.....there’s a huge line outside .......”
“Line?”
I turned my gaze to Zoe and asked what she meant.
“Master will soon be celebrating his th birthday, so people from all over the land are lining up to bring you gifts.”
“I see. You’ve never seen anything like that before?”
This time I asked Gigi.
“Y-yes, that’s true. It’s been three days now and the line is still going strong.”
“That’s the way it is. Just because you receive it doesn’t mean it’s over. You have to receive, check, and record them. That’s why the line doesn’t end. Last year, I think it was .......”
I turned my attention to Zoe again.
I asked my servant about such “residential” matters.
“It lasted about a week.”
“Wow, ...... that’s amazing ....... A week of birthday presents? I can’t imagine that many birthday ...... gifts.”
Gigi, who was probably from some rural area, rolled her eyes more and more, but Zoe scolded her a little and hurried back to work.
After breakfast, I walked out of the mansion.
The line for the gifts was sent to the back gate, and they had people line up there, but the line was so long that it went on for a week, and there were so many people that they kept coming until it was completely over, so even when I went out the front gate I could see the crowd.
We passed through such a scene that symbolized the status of Wise Prince, and took a carriage to the destination.
The Ministry of Military Affairs in the east of the capital, this is where I’m working now.
I entered the grounds of the Military Affairs, got off the carriage, and entered the building.
“Where’s brother?”
I asked a middle-aged official who greeted me.
“He’s In the minister’s office. Currently having a conversation with a knight. His Highness has asked you to come as soon as you arrive.”
I strode forward and headed straight for the minister’s office.
I stood in front of the most prestigious door in the building and knocked.
“Noah here.”
“Yes, come in.”
I waited for the gatekeepers on either side to open the doors before entering.
There were two men in the room, which itself was as formal as the door.
One was the Lord of this room – or rather, this Ministry of Military Affairs.
Minister of Military Affairs Henry Ararat.
Brother Henry, who has been in charge of the Military Affairs Ministry since the incident in Almeria.
And the second person is a familiar face too.
My brother’s knight, Rice Cake, who is a very military man with a big face.
” You’ re late, Noah.”
“Sorry, brother.”
“Good morning, Your Royal Highness.”
I looked at Rice.
He was a knight that my brother had selected in a knight selection process about ten years ago, and he was my brother’s direct subordinate, so to speak.
He’s like Shirley to me.
In addition to his personal bravery, he has a great talent for leading an army, and is the most prominent among the several knights under his brother’s command.
He is now in charge of the second army out of the several regular armies in the empire.
“So brother, is it already decided to dispatch the second army?”
“Yes, it was ordered by His Majesty. The barbarians in the south will take advantage of us if we show them a friendly face, so we have to send a regular second army to show them the difference in power.”
“I see.”
I thought.
And both brother and Rice looked at me.
I’m currently working with my brother at the Ministry of Military Affairs.
My older brother was appointed to the Ministry of Military Affairs because of his success in subduing Almeria, and I was appointed because of my complete mastery of the Demon Sword Leviathan.
I’m only twelve years old, but since the appointment came directly from His Majesty, my brother listens to my opinions very carefully.
I thought for a moment and then asked Rice.
“Tell me one thing. What is the actual number of the second army?”
“Eh, .......”
“What do you mean, Noah, the actual number? And Rice, what are you hiding?”
My brother furrowed his brow and glared slightly at Rice.
Rice got down on his knees, and his face became even more grim.
“Wait, brother, it’s no big deal. The regular army of the empire receives its budget and other things from the Ministry of Finance according to the number of registered soldiers.”
“Ah.”
“Therefore, we often register miscellaneous people who are not soldiers, as well as merchants and collaborators from the nearby villages where we are stationed, and pocket the budget for them.”
“What did you say?”
“I’m sorry, sir.”
Rice continued to rub his forehead on the ground.
There is no proof, but because whether it was me who confronted him, or because it was in front of the Lord, Rice practically confessed.
“You ......”
“Hold on, brother. Don’t be intimidated, Rice. It’s within the general’s authority to count miscellaneous people as a headcount. I don’t blame you for that.”
Rice raises his head while on his knees.
Then why did you ask that? That’s the face he’s making.
“Usually, that’s fine. Even nominal numbers can be a deterrent.”
“...... Fumu, that’s true. For example, even if the actual number is not that great, it may be better to say a large army of ,00.”
“That’s what I mean, brother.”
“You know your stuff, Noah.”
I smiled back and spoke to Rice again.
“But not this time. His Majesty’s decree, so to speak, is to win overwhelmingly. We can’t send out an army of fake numbers. That’s why I asked how much deception there would be. Answer honestly.”
“Y-Yes. About two thousand.”
“Okay, make sure you replenish that number.”
“Understood! I’ll do it right after.”
“Oh. Brother, may I borrow a pen and paper?”
“Okay.”
My brother nodded and handed me a piece of paper and a pen on his desk.
I took it, ran my pen over the paper, and then handed it to Rice.
“What’s this?”
“Go to the Ministry of Finance, they’ll give you a budget to manage another two thousand people as miscellaneous expenses. I’ll give it to you.”
“S-Such thing!”
“Just take it. In exchange.”
I cut my words and stared at Rice with a straight face for the first time since I came into the room.
“You have to get the numbers right. And don’t lose, okay?”
“Y-Yes,.”
Rice took my note, bowed to brother for the last time, and left the minister’s office.
My brother and I remained in the room.
“That’s great, Noah. Your use of the whip and the candy is exquisite.”
My brother looked at me with an impressed expression. |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | りの兵務を処理した後、俺はヘンリー兄上と一緒に兵務省を出た。
時刻は正午を少し過ぎたあたり、暑さのピークは過ぎたが、日はまだ高くいつまでも外にいたくはない。
「どこか寄っていくか」
兄上は馬車の上から俺に言ってきた。
「キースなんてどうですか?」
「お前が贔屓にしてる歌姫のところか。いいだろう」
兄上は同意した。
俺は御者にキースの店に向かえと命令しての馬車が並んで進み出した。
両横に使用人がついてくる。
都の大通りは、貴人達が馬車をよく使う為広めに作られている。
二台並んで進んでも狭さを感じないどころか、向こう側から別の馬車が来てもすれ違う事ができるほど広い。
「そういえば。ノア、お前はまだ実戦を経験したことがなかったな」
答えながら、俺はずっと視界の隅っこにあるステータスを見た。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
賢親王
性別:男
レベル:1/∞
HP F+F 火 F
力 F+E 風 F
十二歳になっても、未だにレベルは1のまま。
これは皇室の規定のためだ。
皇室の子女は夭折――つまり赤ん坊の時に死んでしまう事が多い。
表向きには天然痘を始めとする疫病で死んでしまう事が多いとされている。
ちょっと踏み込める人間であれば、皇子は産まれてからすぐに母親の元から引き離され、乳母を始めとする使用人に育てられるため、実母の母乳をもらわず免疫力が低い事を指摘する。
一部の「口さがない者」や「真実を知る者」は、権力争いから来る毒殺などを唱える。
いずれにしても、皇室の子女に夭折が多いのは事実で、跡継ぎを確保するために、皇子はちゃんと成長するまで、皇帝の勅命なく実戦に出てはならないとされる。
そのせいで、俺は未だにレベルが1のままだ。
ちなみにヘンリー兄上の子供も次々と夭折してて、十人以上産ませたが今しかいない。
「お前ももう十二歳、そろそろいい頃だな。領地入りする前に少しは実戦を経験した方が格好もつくだろう」
「陛下が行けと言えば俺はいつでも」
「うむ......魔剣も持っているのだ、そう難しい事にはならないだろう」
「兄上の実戦はいつだったのですか?」
「私は――」
兄上が答えかけたその時、馬が嘶き、馬車が急に止まった。
馬車の中で前のめりになって、縁を掴んでなんとか姿勢を保った。
なんだいきなり――と問い質す暇もなく。
「た、助けてください!」
俺と同じくらいの年ごろの少女が馬車の前に土下座していて、言葉通り助けを求める視線を投げかけてきた。
少女の格好はボロボロで、髪もボサボサ。
靴とかも履いてなく、どこからか逃げ出してきたばかりって感じの出で立ちだ。
その少女に遅れること数秒、路地から更に数人の少年少女が逃げ出してきた。
いずれも同じ格好だ。
更に少し遅れて、今度は大人が追って出てきた。
数はおよそ十人、裏稼業にどっぷり浸かっている人間特有の横暴さが顔に出ていた。
「手間かけさせやがって!」
「おら、こっちこい!」
「いやああああ!」
「は、離せ!」
男達は少年少女を捕まえて、逃げてきた路地に引きずり込もうとした。
大通りにあって目撃者は少なくないが、全員が遠巻きに、我関せずって顔をしている。
「ノア」
「わかってる」
俺は兄上に頷いてから、馬車を飛び降りて諍いに割り込んだ。
「やめろ」
「関係ねえ事に首突っ込んでんじゃねえぞ小僧」
「登記は?」
「はあ?」
「登記は? 証書は? お前らの店はなんて名前だ?」
質問を三連発。
すると男達は答えられずに一瞬「ぐっ」と息を飲んだ。
ちらりと兄上に振り向き、アイコンタクトを交わす。
やっぱりそうだった。
こいつらは闇奴隷商だ。
「登記がないのか? 帝国法じゃ登記のない人身売買は重罪だって知ってるよな」
「うるせえ! おいてめえら、ガキ一人だ、やっちまえ!」
男の一人が怒鳴ると、別の男が逃げ出した奴隷を捕まえる手を離して、俺につかみかかってきた。
俺は右腕を真横に差し出すと、さっきまで何もなかった右腕にレヴィアタンが現われた。
俺の手首の内側には、レヴィアタンを収納する腕輪がある。
特注のもので、レヴィアタンを針くらい小さくしてすっぽり収まるようにした。
前は耳に隠したが、そこから更に隠密性運搬性を高めたものだ。
水色の残光を曳いて、男の両肩を斬った。
血が矢のように噴き出す、男の両腕がダランと垂れ下がる。
「お見事」
背後で兄上が喝采を送ってきた。
「筋を切っただけだ。その辺でやめとけ、これ以上は洒落じゃすまなくなる」
「ぐっ......」
「お、おい。どうする......」
「か、構わねえ! たかがガキ一人、一斉に掛かればどうとでもなる!」
やけくそのような号令だが、男達はそれに従って、一斉に掛かってきた。
俺はレヴィアタンを振るった。
レベルは一のままで能力もまだまだだが、この程度の荒くれ者に後れは取らない。
レヴィアタンの記憶にある剣術を発揮して、全員の手足を斬って無力化する。
「「「おおお!?」」」
最後の一人が倒れたのとほぼ同時に、周りの野次馬から感嘆の声が上がった。
「なにあの動き、すごくね」
「格好いいわ......まるで達人みたい......」
「どこのお坊っちゃんだ?」
そんな野次馬の声を聞き流しつつ、あっちこっちで地べたに座ったり這いつくばったりして、ポカーンとしている少年少女に声を掛けた。
「大丈夫か?」
「は、はい......」
俺たちの馬車を止めた、一番最初に逃げてきた少女が答えた。
「そうか。こいつら、闇奴隷商か?」
「はい、私たち、全員が――」
「おっとそこまでだ」
少女が頷き、逃げてきた原因を語ろうとしたその時。
路地の裏から更に別の男が現われた。
背が低く、さっきの荒くれと違って、こっちは腕っぷしで食ってる訳じゃないようだ。
だが目の濁り具合や、声から伝わってくる陰湿さは荒くれどもの数倍は上だ。
そいつは俺のすぐ前にやってきて、真っ向から見つめた後、略式で一礼をした。
「お初にお目にかかります、賢親王殿下」
「お前は何者だ?」
「この子達のような子で生業をしている者です。名前は......申し上げない方がよろしいでしょう」
「......なんで?」
「それは、わたくしめが第一親王殿下の手のものだからですよ」
男はそう言って、にやり、と嫌らしく笑った。
「......第一親王だと?」
男はまた頷いた。
なるほど、荒くれとは違う。
俺の事を知った上で、第一親王――俺の兄がバックボーンだから口出しするな、って脅してきている。
いくつかの選択肢が頭をよぎった。
周りを見た、野次馬が多い。
俺はヘンリー兄上の方を向いた。
「兄上、この男の事を知っているか?」
聞きながら、目配せをした。
兄上は一瞬きょとんとしたが、俺の目配せにのって、「いや知らない」と答えた。
「兄上はお前の事をしらないようだ。そして俺もだ」
「もちろんでございます、わたくしめのようなものは――」
それ以上は言わせなかった。
抜いたままのレヴィアタンで男を威嚇。
水の魔剣の殺気を直で当てられた男は、泡を吹いて気絶した。
そして、周りの見物人に聞こえるように、わざとらしく言った。
「まったく、兄上の従者を騙る不届き者が。他の人間は騙せても、俺と兄上は騙せないぞ」
「偽物だったのか?」
「っていうか、このお二人は?」
「俺知ってる。あれはアリーチェのパトロンをやってる賢親王様だ」
「ってことは本物? あの連中が偽物?」
どうやら俺を知っている人間もいたようで、噂があっという間に俺の誘導する方向で広まっていった。
俺は振り向き、馬車の横にずっといたうちの使用人にいった。
「こいつらを捕縛して、第一親王邸に連れて行け。『兄上の名を公衆の面前で騙った不届き者』だと言って渡してこい」
「はっ!」
「子供達は俺の屋敷にひとまず連れて行け、後で話を聞く」
うちの使用人は倒れている男達に縄をかけて、少年少女達と一緒に連れて行った。
一段落して、俺は馬車に飛び乗った後、兄上が俺にだけ聞こえる小声で言ってきた。
「見事だノア、上手く処理したもんだ」
「仕方ないですよ」
俺はため息ついた。
「兄上の配下なら切り捨てるわけにも行かない。そうしたら兄上に恨まれるし、兄上が闇奴隷商をやっていた事も本当になる。偽物だとして、兄上に
「ふふ」
「どうしたんですか兄上、いきなり笑ったりして」
「お前のやり方はいつも予想外ですごいな、と思ったのだ」
兄上は、ものすごく嬉しそうに笑ったのだった。 | After dealing with my military duties, I left the Ministry of Military Affairs with Brother Henry.
It was a little after noon, the peak of the heat had passed, but the sun was still high and I didn’t want to stay outside forever.
“Do you want to make a stop somewhere?”
Brother asked me from the carriage.
“How about Keith’s place?”
“Oh your favorite songstress place. Okay then.”
He agreed.
He ordered the coachman to head for Keith’s establishment, and the two carriages started to go side by side.
The servants followed on both sides.
The main street of the city was wide enough for the carriages to be used by the nobles.
Even with two carriages going side by side, it didn’t feel narrow, but rather wide enough to allow another carriage to pass from the other side.
“By the way. Noah, you’ve never been in a real battle before, have you?”
As I answered, I kept looking at the status out of the corner of my eye.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Wise Prince
Gender: Male
Level: / ∞
HPF+FMPFStrengthF+EStaminaF+FIntelligenceF+FSpiritF+FSpeedF+FDexterityF+FLuckF+F FireFWaterE+S
WindFEarthFLight FDarknessF
At the age of twelve, my level still remains at one.
This is because of the imperial family’s regulations.
Imperial children often die prematurely, that is, when they are babies.
On the surface, it is believed that they often die of smallpox and other plagues.
Anyone who knows anything about princes will point out that they are separated from their mothers as soon as they are born and are raised by nannies and other servants, so they do not receive their own mother’s milk and have low immunity.
Some of the “Gossipers” and “those who know the truth” advocate poisoning as a result of power struggle.
In any case, it is a fact that many children of the imperial family die prematurely, and in order to secure an heir, princes are not allowed to go into battle without the emperor’s order until they are fully grown.
Because of this, I’m still at level .
By the way, Brother Henry’s children also died prematurely, he had more than ten children, but now there are only three.
“You’re twelve years old now, it’s about time. It’s probably better for you to have experienced a bit of actual warfare before entering the territory.”
“Well, if His Majesty allows me to I am always ready to go.”
“Hmm,.... you do have that demon sword, so it shouldn’t be too difficult.”
“Speaking of which, brother, when was your first battle?”
“My –“
As he was about to answer, the horse neighed and the carriage came to a sudden stop.
He slumped forward in the carriage, grabbed the edge and managed to keep his posture.
And suddenly – I didn’t have time to ask about the situation.
“P-Please, help me!”
A girl about my age was on her knees in front of the carriage, and she looked at me as if she was asking for help.
The girl was dressed in tatters and her hair was shaggy.
She was not wearing any shoes, and looked like she had just escaped from somewhere.
A few seconds after the girl, several more boys and girls came running out of the alley.
They were all dressed the same.
A little later, the adults came out in pursuit.
There were about a dozen of them, and their faces showed the arrogance typical of people immersed in the underground business.
“You made us go through all this trouble!”
“Now, Get over here!”
“Nooooooo!”
“G-Get off me!”
The men grabbed the boys and girls and tried to drag them into the alley they had escaped from.
There were a few witnesses on the main street, but they all looked distant and indifferent.
“Noah.”
“I understand.”
I nodded to my brother, then jumped out of the carriage and interrupted the altercation.
“Halt your steps.”
“Don’t stick your nose in our business, boy.”
“Registration?”
“What?”
“Registration? Certificate? What’s the name of your store?”
I asked three questions in a row.
The men gulped for a moment, unable to answer.
I glanced back at my brother and made eye contact with him.
That’s what I thought.
These guys are black market slavers.
“It’s not registered? You do know that under imperial law, deals without registration is a felony, right?”
“Shut up! He’s just a kid, get him!”
When one of the men shouted, another guy let go the escaped slave and tried to grab me.
I extend my right arm out to the side, and Leviathan appears on my right arm, where before there was nothing.
Inside my wrist, there is a bracelet that holds Leviathan.
It was custom-made, and I made Leviathan as small as a needle so that it would fit perfectly.
Previously, I had hidden it in my ears, but now it was even more concealed and transportable.
I wielded the leviathan.
It cut the man’s shoulders, trailing a light blue afterglow.
Blood spurted out like arrows, and the man’s arms hung limp.
“Well done.”
Brother cheered behind me.
“I just cut through the the muscles. Don’t do it again, it’s going to get ugly.”
“Gaaah.......”
“Hey. What do you want .....?”
“No need to worry! It’s only one kid, he can’t do shit if he’s attacked all at once!”
The men followed the desperate order and came at once.
Even though I was still level and my abilities were not yet up to par, but I would not fall behind a roughneck like him.
I used the swordsmanship I remembered from Leviathan to cut off the limbs of all of them and rendered them powerless.
“””Ohhhh!!?”””
Almost simultaneously with the fall of the last one, the onlookers around us shouted in admiration.
“What kind of move is that?”
“That’s so cool. ...... It looked like that of a master.......”
“Where did this young man come from?”
While listening to the onlookers, I called out to the boys and girls who were sitting or crawling on the ground here and there, puzzled.
“Are you okay?”
“Y-yes......”
The girl who had stopped our carriage and had been the first to escape answered.
“I see. These guys are black slavers?”
“Yes, we’re all...”
The girl nodded and was about to tell me the reason why she had run away
Yet another man appeared from the back of the alley.
He was short, and unlike the roughnecks before him, this one didn’t seem to be eating off the strength of his arm.
However, the murkiness in his eyes and the insidiousness in his voice were several times greater than the roughnecks.
He walked right up to me, looked me straight in the eye, and gave me a short bow.
“It is a pleasure to meet you, Your Highness the Wise Prince.”
“Who are you?”
“I am a person who makes a living from children like these. I’d prefer not to give my name to .......”
“Why ......?”
“Because I am the property of His Highness the First.”
The man then smiled wickedly.
“...You said the First Prince?”
“That would be so.”
The man nodded again.
I see, he’s not a ruffian.
He knows me, and he’s threatening me to stay out of it because the First Prince – my brother – is his backbone. (TN: backer in this case but backbone sounds cool to me)
A few options crossed my mind.
I looked around, there were many onlookers.
I turned to Brother Henry.
“Brother, do you know this man?”
While asking, I gave him a wink.
He was puzzled for a moment, but he responded to my question, “No, I don’t know him.”
“My brother doesn’t seem to know you. And neither do I.”
“Of course not, my lord, someone like me...”
I didn’t let him say any more.
I intimidated the man with Leviathan, which was still drawn.
The man who was exposed directly to the killing intent of the Demon Sword blew bubbles and fainted.
I let him say those first words intentionally so that the onlookers around us could hear it properly.
“How dare you deceive me, pretending to be my brother’s servant!? You may be able to fool others, but you can’t fool me and my brother.”
“Was he a fake?”
“I mean, who are these two men?”
“I know them. That’s the Wise Prince, the patron of Alice.”
“So what they said was true? Those guys are fake?”
Apparently, some of them knew me, and the rumor quickly spread in the direction I was leading.
I turned to my servant, who had been standing beside the carriage the whole time.
“Capture these men and take them to the First Prince’s residence. Inform them that they are ‘insolent for duping my brother’s name in public.'”
“Yes!”
“Take the children to my residence for now, we’ll listen to them later.”
The servants put ropes on the fallen men and took them along with the runaway boys and girls.
After a short break, I jumped on the carriage and my brother said to me in a whisper that only I could hear.
“Well done, Noah, you’ve handled it well.”
“It can’t be helped.”
I sighed.
“I can’t cut him off if he’s under my brother’s command. If I did, brother would resent me, and it would be true that he was a black market slave trader. The best thing to do is to assume it’s a fake and let brother deal with it.”
“Fufu.”
“What’s the matter, brother? You’re laughing all of a sudden.”
“I was just thinking that your methods are always unexpected and amazing.”
Brother laughed with great joy. |
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} | 「俺も驚いている」
「でも、よく考えたら当たり前かもしれません」
「当たり前?」
納得しているゾーイに目を向けた。
彼女は静かに頷き、答えた。
「ご主人様はいつも、人は宝とおっしゃってます」
「宝と言えば、子はもっと宝ですから」
俺はクスッと笑った。
よもやそういう訳でもないのだろうが、ゾーイの言うとおりだという気もしてくる。
人は宝、そして可能性。
どっちも、自分の子供に当てはまる話だ。
「良い発想だ。ほれ」
俺は懐から100リィーンを取り出して、ゾーイに放り投げた。
慌てて受け取って、一礼するゾーイを放っておいて、オードリーの方を向く。
「オードリー。今から産後回復するまで、給仕とかそういうのは全部やらなくていい」
「分かりました、ありがとうございます。それと......」
「ん?」
「アーニャはもうすぐ到着するとの知らせが」
俺はくすっと笑った。
予定より若干早めだ。
オードリーが妊娠したと知った上で早めたんだとすぐに分かった。
貴族――特に皇族に絡んだ場合の特有の話だ。
相手が皇族の場合、口が裂けても言えないが、男側が種無しの可能性を考えてしまうものだ。
しかしオードリーは無事身籠った、ならば俺に種はある。
安心してオードリーの妹をこっちに送れるというものだ。
「妹にも、宝を授けてやらないとな」
「ありがとうございます!」
オードリーは、ものすごく嬉しそうな顔で頷いたのだった。
翌日、俺は庭に屋敷の使用人や、部下達を全員集めた。
メイドや宦官、そしてドンといった部下達。
集められる人間をとにかくかき集めた。
急な集合の意図を計りかねてか、半数くらいが不安そうな顔で、庭はざわざわとしている。
しかしそれも、俺が姿を現わすまで。
集めた者達の前に出て、全員に訓示をする位置に立つと、一斉に静かになって俺を見つめた。
「知ってると思うが、俺の正妻、オードリーが初子を身籠った。めでたいことだ」
「「「......」」」
「ちょうどいい機会だ、お前らを労うためのボーナスを出そうと思ってな」
そう言って手を上げると、屋敷の中から使用人達が箱を次々と運んできた。
少し前にバイロンからもらった、十万リィーンが入っている箱だ。
箱をあけると、使用人の大半はざわつきだした。
「これをお前達に配る。ゾーイに審査してもらって、これまでの働きに応じてA、B、Cのランクに分けた。Aランクは一人300リィーン、Bランクは200リィーン、Cランクは100リィーンだ」
「「「おおおおお!!」」」
ここに来て、使用人達の不安がまとめて吹き飛んだ。
数百メートル先でも聞こえそうな大歓声があがった。
それもそのはず。
成人男性の一ヶ月の稼ぎが約10リィーンだ。
最低のCランクでも約一年、最上のAランクな半分のボーナスだ。
それを理解した使用人に、更に畳み掛けることにした。
「Aランクの上に二人、特別に上乗せした。一人はエヴリン。お前達も知っているだろうが、俺の屋敷でメイドをしていたが、使えそうな人間だから代官に推薦した。そして、赴任先でよくやってくれた」
一呼吸ほど間を開けて、更に続ける。
「エヴリンが治めている土地は、夜は戸締まりをしなくても安全なほど治安が良くなった。それもあって、俺が任命した代官はいい代官だっていう意味の『賢任』って言葉も出来た。エヴリンには一万リィーンをくれてやる」
「「「おぉ......」」」
大半の人間の目には羨望の色があるが、一部遠い世界の出来事を見ているような目をするものもいる。
一万リィーンと言えば、一生涯で稼げるか稼げないかの額だ。
自分には降りかかってこないだろう、という感覚がするんだろう。
代官というのも、やっぱり遠いと感じるんだろう。
予想どおりだ。
「そしてもう一人――グラン、前に出ろ」
「え? は、はい!」
いきなり名前を呼ばれて、少年宦官は驚きながらも前に進み出た。
「あの後、屋敷の周りの地価を気にしていて、全部覚えているらしいな」
「は、はい! 殿下がいつか必要になった時のためにと」
「よくやった。主のやりたいことを覚えていて、それに気を回す。命令されたからじゃなくて、自ら動いた。お前には1000リィーンだ」
「「「おおおおおおおお!!」」」
この日一番の歓声が上がった。
代官を上手くやって一万リィーンという話は感情移入できなくても、俺がやろうとしてた事を覚えている事に対して一千リィーンならば、自分でも行けると想像がつくんだろう。
その結果、ほとんどのものが大歓声をあげて、何かを狙う者特有のぎらぎらした眼になった。
「と言うことだ。俺に仕えて、ちゃんと俺の為に働けば悪いようにはしない」
「「「十三親王殿下万歳! ノア様万歳!!」」」
歓声がいつまでも響き渡っていて。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
法務親王大臣
性別:男
レベル:15+1/∞
HP C+D 火 E+A
体力 D+D 地 E+D
速さの「+」が、一段階上がっていた。
話が終わって、俺は外苑の書斎に戻った。
話があると、一緒に連れてきたドンが部屋に入るなり感心した様子で。
「さすがでございます、殿下」
「皆の目の色が変わっておりました。特にグランには羨望の眼差しを向けていました」
「お前の目にもそう映っていたか」
「そうおっしゃると言うことは狙い通りと言うことでございますな。さすがでございます」
「定期的にやるつもりだ」
「罰は考えておられないのでしょうか」
俺はふっと笑った。
「理想は、あの直後に寝かせておいた裏切り者を内法で処断できればベストだったんだがな。あのタイミングで落差をつければ――なんだが、裏切り者はいなくてな」
「既に考えておいででしたか、さすがでございます」
「それよりも、お前にやって欲しいことがある」
Aランクで300リィーンをもらっているからか、ドンも心なしかいつもよりテンションが高い。
「アルメリアの余剰食糧を北の方に送ることにした」
「食糧を、ですか?」
俺は頷き、ルーシ・ツァーリの話をドンにした。
最初は驚いたが、話を聞いている内に「なるほど」と得心顔をするようになった。
「委細承知いたしました。しかしそれを出してしまっては、もしアルメリアに天災が起きて飢饉になってしまった場合は......?」
「それがお前を呼んだ理由だ。ドッソという地名を知っているか」
「たしか......かつて洪水にあって、まるごと殿下が買い上げた土地――と記憶しています」
「ああ。あの後放置したままだが、洪水ってのは、同時に肥沃な土も運んでくるもんだ」
「......なるほど!」
「そう、あそこを開墾する。手付かずで、肥沃な土が大量にある土地だ。大規模に開発すれば、アルメリアの収穫が一割は増えるだろう」
「なるほど! それならば大丈夫ですな」
「それをお前にやってもらう。大事業だ、行ってくれるな?」
「私で良いのですか?」
「さっきまで決めかねてたが、今の話で決めた」
「......?」
どういうことだ? って顔で俺を見るドン。
「俺のポケットマネーを投じて開墾するのだ。さっきのアレで『見せしめ』って言い出せるお前なら、着服とかするまいさ」
「しかし、失敗の可能性も」
「失敗は構わん」
「え?」
ドンは思いっきり驚いた。
「人は失敗するもんだ。俺に忠誠を誓ってる上での失敗なら、どんなものだろうと咎めるつもりはない」
「............」
「どうした、変な顔をして」
「いえ、ものすごい主に仕えられた幸運を噛み締めているだけでございます」
ドンは言葉通り、感極まった表情をするのだった。 | “I’m surprised too.”
“But when you think about it, it might be obvious.”
“Obvious?”
I looked at Zoe, who was content by herself.
She nodded quietly and replied.
“─ Master always says that people are treasures.”
“And speaking of treasures, children are even more treasured.”[TN: Now that’s some random bulls**t]
I chuckled.
It may not be that way, but I have a feeling that Zoe is right.
People are treasures and potential.
Both of which applied to my own children.
” Good point. Here.”
I took out a reens from my pocket and tossed it to Zoe.
I turned towards Audrey, leaving Zoe, who received it hurriedly and left while bowing.
“Audrey. From now until you recover from childbirth, you don’t have to do any of the serving or anything like that.”
“I understand, thank you. And .......”
“Hmm?”
“Anya has informed me that she will be arriving soon.”
I chuckled.
A little ahead of schedule.
I knew right away that Audrey’s pregnancy was the reason for the early arrival.
This is a peculiar story when it comes to the nobility, especially the royal family.
When you’re dealing with a member of the royal family, you can’t help but think about the possibility that the man might be sterile.
However, Audrey is safely pregnant, so I have the seed.
And now Audrey’s sister can be sent to me without worry.
“I’ll have to give her some treasure, too.”
“Thank you so much!”
Audrey nodded her head with a very happy look on her face.
The next day, I gathered all the servants and subordinates of the mansion in the garden.
Maids, eunuchs, and subordinates such as Don.
Anyway, I gathered everyone I could.
The garden was buzzing with anxious looks on the faces of about half of them as if they were unsure of the purpose of the sudden gathering.
That is until I showed up.
When I stepped in front of the assembled people and assumed the position to give them their instructions, they all quieted down and looked at me.
“As you know, my wife, Audrey, is pregnant with our first child. It is a celebration.”
“”......””
“So I thought it would be a good time to give you guys a little bonus for your hard work.”
When I raised my hand, the servants came from inside the mansion carrying boxes one after another.
This was the box that Byron had given me a while ago, containing ,000 reens.
When the boxes were opened, most of the servants started to buzz.
“I’m handing this out to you. Zoe has examined them and divided them into three ranks, A, B, and C, according to the work you’ve done so far: 300 reens each for A-rank, 200 reens for B rank, and 100 reens for C rank per person.”
“””Ooohhhh!”””
At this point, the servants’ fears were collectively blown away.
There was a huge cheer that could be heard hundreds of meters away.
That’s just as well.
The monthly earnings of an adult male are about 10 reens.
C, the lowest rank, got a bonus of about a year’s salary, and the highest rank, A, got a bonus of two and a half years.
When the servant understood this, I decided to further expand it.
“I’ve added two people to the A rank. One of them is Evelyn. You know her as the maid in my mansion, and I recommended her to be the Governor because she seemed to be a valuable person. And she has done well at her post.”
After a pause for breath, I continued.
“The land Evelyn controls has become so safe that the doors do not need to be locked at night. As a result, she’s been coined the term “Wise Official’, which means that the officials I appoint are good. Evelyn will receive 10,000 reens.”
“””Oh .......”””
There is a hint of envy in most people’s eyes, but some look as if they are watching events in a distant world.
10,000 reen is an amount of money that you may or may not earn in a lifetime.
I guess they feel that it will never happen to them.
Being a governor must also seem far away.
As expected.
“And one more person – Gran, step forward.”
“Eh? Y-yes!
The boy eunuch was surprised when his name was suddenly called, but he stepped forward.
“After that, I heard you were paying attention to the land prices around the mansion and remembered everything.
“‘Y-Yes! Just in case His Highness needs it someday.”
“Well done. Remembering what your Lord wants to do, and taking care of it. You acted on your own, not because you were ordered to. Here’s a 1000 reens for you.”
“””Oooohhhh!”””
The biggest cheer till now went up.
Even if they couldn’t get any emotional response to the story of 10,000 reens for doing well as the Governor, they probably could imagine that they would be able to go for 1,000 reens for what they remembered I was planning to do.
As a result, most of them cheered loudly and got that glazed look that is characteristic of those who are after something.
“Listen carefully. If you serve me and work for me properly, nothing wrong will happen to you.”
“””Long live His Imperial Highness the Thirteenth! Long live Noah-sama!”””
The cheers echoed on and on forever.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Minister of Justice
Gender: Male
Level: 15 + 1 / ∞
HPC+DMPE+DStrengthC+AStaminaD+DIntelligence
D+DSpiritE+DSpeedE+DDexterityE+DLuckE+D FireE+AWaterC+SWindE+FEarthE+DLight E+CDarknessE+C
The “+” in speed had gone up by one step.
After the meeting, I went back to my study in the outer garden.
When Don, who I had brought along with me to talk, entered the room, he looked impressed.
“As expected, Your Highness.”
” Everyone’s eyes changed. Their eyes were envious, especially towards Gran.”
“You noticed that in their eyes, huh”
“It was exactly what you wanted, then, I suppose. Very good, sir.”
“I’m going to do this regularly.”
“Do you have any plans for punishment?”
I chuckled.
“Ideally, it would have been best if we were able to deal with the rat who was laid down under the internal law, shortly after that. And if the timing was right, I could have made the transition, but there was no rat.”
“You’ve already thought of that, I’m impressed.”
“But there’s something I want you to do.”
It may be because he was given an A-rank and 300 reens as rewards, Don was more excited than usual.
“I’ve decided to send Almeria’s surplus food to the north.”
“Food, sir?”
I nodded and told Don about Rushi Tsar.
At first, he was surprised, but as he listened, he began to look more and more convinced.
“I understand the details. But if we give it out, and a natural disaster occurs in Almeria causing a famine, ......?”
“That’s why I summoned you. Do you know the place called Dosso?”
“I remember it was ...... once flooded, and His Highness bought up the whole place.”
“Yeah. It’s been abandoned ever since, but a flood also brings fertile soil with it.”
“...... I see!”
“Yes, we’re going to cultivate that area. That’s a lot of untouched, fertile soil. If we develop it on a large scale, Almeria’s harvest will increase by ten percent.”
“I see! That’s all right then.”
“I want you to do it. It is a big task. Are you up for it?”
“Are you okay with me?”
“I hadn’t made up my mind until just now, but now I have.”
“......?”
What do you mean? Don looked at me.
“We’re going to use my pocket-money to cultivate the land. If you have learned from ‘the example’ earlier, I’m sure you won’t embezzle the money.”
“But there’s always the possibility of failure.”
“I don’t care if it fails.”
“Eh?”
Don was surprised.
“People make mistakes. I don’t blame them if they fail when they’re loyal to me, no matter what.”
“............”
“What’s up with your strange expression?”
“No, I’m just basking in the good fortune of serving an incredible Lord.”
Don, had a look of admiration on his face as he said that. |
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"series": "Noble Reincarnation~Blessed With the Strongest Power From Birth",
"source": "superScraper-fanfic"
} | 「カカカ、皇帝が気に入るだけのことはある。オイラでさえ落とせなかったベヘモトをほんでのう」
「落とせなかった、ですか?」
「うむ。大昔に手に入れたはいいが、ベヘモトの方は名前を教えてくれただけで、何も話を聞いてくれんかった。あの時にみた姿は幻想的だったから、いつかもう一度会いたいとずっと思っていたのだがのう」
「姿って......こうですか?」
俺はベヘモトと鎧の指輪をリンクさせた。
レヴィアタンとルティーヤーを戦わせた時と同じように、ベヘモトも姿を具現化させる。
テーブルの上に、黄金の雄牛が現われた。
室外だというのに、黄金の輝きは凄まじく、その場にいる全員が目を反らさざるを得ない程眩しく輝いていた。
それを見たインドラは。
「これだこれ! こんなことも出来るのか! すごいぞボウズ」
「ベヘモト」
リンクしたベヘモトに命じた。
黄金の雄牛はテーブルの上でゆっくりと進み、牛のフォルムのまま、器用にインドラに酒を注いだ。
インドラの杯に注がれた酒も、透明ながらも黄金色に輝いている。
「「「おおおおお!!」」」
それを、見ている野次馬達からも感嘆の声が上がった。
「そんな事もできるのか」
インドラは更に驚いた。
ベヘモトのそれは、完全に俺に臣従している、部下がするような行動だ。
「これで戦わせて、力と技を学ぶのですよ」
「戦わせる? なにとだ」
「例えばレヴィアタン」
そう言って、レヴィアタンを同じように水の剣士にして出す。
「ほう」
「ルティーヤー」
今度は炎の格闘家。
「おお!」
そして最後に絵画の美女。
「フワワ」
俺が従えている意志を持っている武器、道具達。
それを全部具現化した――次の瞬間。
目の前が真っ白になった。
いや、そうじゃない。
魂ごと、遙か彼方に飛ばされた、そんな感じ。
声が聞こえる。
今まで聞いた事のない、圧倒的な存在感を持つ幻想的な声だ。
『我らがまでも集まったのは一千年ぶりか』
『白銀の時代、以来ということになるな』
『あの時の子も破格だった。レベルは255、それに我らを四人まで従え、力を取り戻させることができた』
が揃う日が来るだろう。完全に力を取り戻すことも出来よう。天地開闢以来の慶事だ』
『あらあら、よっぽどこの子が気に入ったのね。狂犬の
聞いたことのない、しかし何故か
最後に聞いたこと有るような無いような名前が出た直後に、感覚が急速に
周りをみる。
都の大通り、露店の所だ。
テーブルの上に乗っかっている四体の人形のようなものも、今までと何ら変わらない姿でいる。
ルティーヤー、フワワ、ベヘモト、そして
全員、まったく今までとは変わらない姿だ。
今のは......幻聴なのか?
「天の声だ、天が親王様に期待しているぞ」
「え?」
びっくりして、今聞こえてきた声の方を向いた。
そこに野次馬達がいて、なんと全員が目を剥いて信じられない、そんな顔をしている。
「ってことは、神様......だよな」
「俺全然わかんねえけど、今のは神様だと思ったぞ」
「えっ、私だけじゃないの?」
「神様が賢親王様に期待してる......?」
野次馬達は口々に言いながら、俺に期待や尊敬といった視線を向けてくる。
ついさっきまでも、親王だからって事でそういう目で見られていたが、今のはそれ以上だった。
地位に対しての、ある意味いやいや感のある尊敬じゃなくて。
心から尊敬している目だ。
「もしかして......ここにいる全員に聞こえた?」
「おう、そういうことだな。オイラにも聞こえたぜ」
「インドラ様」
「すごいぞボウズ。これはめでてえ」
インドラの顔に尊敬はないが、その分強い喜びと、期待が込められている。
それはそうとして。
「ジジ」
「えっ? あ、はい!」
離れた所で待っていて、同じように今の声を聞いて呆然としていたメイドのジジ。
俺に呼ばれて、慌てて駆け寄ってきた。
「ここにいる全員。今のに立ち会った皆に5――いや10リィーンを配れ」
そう言って、懐から革袋を取り出して、ジジに渡した。
これも貴族の義務の一つだ。
貴族の慶事は、庶民の慶事に比べてスケールが大きいことが殆どだ。
そのスケールの大きい物を独り占めせず庶民に分け与える、それが出来るのが貴族の美徳とされる。
そして、慶事に立ち会った庶民には、金銭を分け与えるのが貴族の義務とされる。
嗜み程度だとする貴族もいるが、より高位の貴族になればなるほど、「義務」という強いものと捉える。
誰かがこう言った。
分け与えるのを嫌がるのの貴族。
義務をやせ我慢でやり通すのの貴族。
やせ我慢とも思わず、当たり前にやってのけるのが一流の貴族。
俺は、それに従って、ジジに命じて、都の平均月収にあたる金をここにいる庶民たちに配らせた。
「ありがとうございます!」
「賢親王殿下万歳!」
「さすが神様に認められたお方だ、すごいや」
俺が貴族の義務を果たして、民達が沸きに沸いている中、ジジと同じように離れた所で唖然としていた、騎士志望の女が俺に近づき、おもむろに片膝をついて、頭を下げた。
「親王殿下に申し上げる」
「どうした、真剣な顔をして」
「親王殿下のご援助、辞退させて頂きたく思う」
片膝をついたまま、顔を上げて俺を見つめる女。
その顔はものすごく真剣だった。
「なんで辞退するんだ?」
「殿下の騎士になりたく思う」
「ふむ? それと辞退に何の関係が?」
「このまま殿下の援助に甘んじていては、堕落してふさわしい騎士になることは出来ない。自分の力で、更に精進をして、殿下の騎士にふさわしい人間になりたいと思う」
だから俺の援助を辞退するって訳か。
女の顔を見た、とても真剣な表情をしている。
もともとプライドの高い女だったが、今の出来事に触発されて、ますます負けん気が表に出たって感じか。
悪くない、こういう人間は好きだ。
俺がずっと援助している、アリーチェと似たような匂いを感じる。
「話は分かった、が、それは却下だ」
「な、何故」
一流や二流の貴族と同じ話だ。
「援助を受けて怠けてしまうのは論外。それは同意だ。だが、それを自ら避けるのは二流」
「に、二流?」
「一流の騎士になりたいのなら、援助を受けても怠けずに精進しろ。外部の環境にかかわらず、危機感と向上心は自分の中でもて」
「――っ!」
「俺にふさわしい騎士になりたいのなら、そういう風にやれ」
「はっ!」
女は頭を下げた。
さっき以上に感動、感服した表情を浮かべた。
再び顔を上げた女の目は真剣だった。
真っ直ぐと道があって、その先に目標があって、それしか見ていない真剣な目。
その目の中にわずかながらのやせ我慢を感じる。
これで二流、しかしこの女ならいずれやせ我慢も我慢と思わず、当たり前のように振舞うだろう。
一流の騎士が生まれそうで、俺はその事に満足した。
「すごいなボウズ、今の一瞬で
「で、あろう? だからこそ叔父上の孫娘を、と思ったのだ」
瞬間、俺とインドラは弾かれるように同じ方を向いた。
そこにいつの間にか現われたのか――。
「陛下!」
俺とインドラは同時に立ち上がって、陛下に片膝をつく。
その事にびっくりした野次馬やジジ達は、あわあわして全員が両膝をついて頭を下げたのだった。 | “Kaka, the emperor must like you. Even I couldn’t defeat Behemoth in a fraction of a second.”
“Did you not brought it down?”
“No. I got it a long time ago, but Behemoth only told me its name didn’t listen to anything I had to say. The appearance I saw was so fantastic that I’ve always wanted to see it again someday.”
“It’s appearance.....you say?”
I linked Behemoth with the Armor Ring.
Behemoth embodies the same way as Leviathan and Luthiya did when they fought.
A golden bull appeared on the stage.
Even though we were outdoors, the golden glow was so bright that everyone in the room had to turn their eyes away.
Indra saw it.
“This is it! So you can really do this! That’s amazing, Boi.”
“Behemoth.:
I then ordered the linked Behemoth.
The golden bull slowly moved forward on the table and dexterously poured Indra a cup of sake in the form of a bull.
The sake poured into Indra’s cup also shone with a clear but golden color.
“””Ooohhhh!”””
The onlookers were in awe.
“So you can order it like this huh”
Indra was even more amazed.
Behemoth’s behavior is that of a subordinate who is completely devoted to me.
“Let them fight with it, and learn their strength and skill.”
“Fight? With what?”
“Leviathan, for example.”
With that said, Leviathan turned itself into a Water Swordsman as well.
“Ho.”
“Luthiya.”
And there’s a flame fighter.
“Oh!”
And finally, the beautiful painting.
“Whoa.”
The weapons and tools that have wills that I’m carrying.
I materialized all of them and the next moment.
My eyes went blank.
No, that’s not it.
My entire soul was transported to a faraway place, or something like that.
I heard a voice.
It’s a fantastic voice with an overwhelming presence that I’ve never heard before.
[This is the first time in a thousand years that the four of us have come together.]
[It’s been since the Silver Age.]
[The child at that time also was exceptional. With a level of , that person was able to bring four of us together and restore our strength.]
[Soon the day will come when we will all be together. We will be able to regain our full strength. And it shall be the greatest celebration since the creation of heaven and earth.]
[Ara Ara, you must really like this child. Leviathan the Mad Dog.]
It was a voice I had never heard before, but somehow I knew it.
Just after the last name, which I may or may not have heard before, my senses were quickly jolted back to reality.
I look around.
I’m on the main street of the city, at a stall.
The four puppet-like figures on the table look no different from before.
Luthiya, Fuwawa, Behemoth, and Leviathan.
They all look exactly the same as before.
Was that a ...... hallucination?
“Heaven’s voice, the heavens have high expectations for you, Prince.”
“Eh?”
I was startled and turned towards the voice I had just heard.
There were onlookers there, and to my surprise, they all looked at me in disbelief.
“So that was, God ......, you say”
“I don’t know anything about that, but I thought that was God.”
“What, I’m not the only one?”
“God have expectation from the Wise Prince ......?”
The onlookers looked at me expectantly and respectfully as they said it.
Although I’ve had people look at me like that just a few minutes ago because I’m a Prince, now it’s more than that.
It wasn’t a kind of reluctant respect for just my position(status).
It was a look of sincere respect.
“Did everyone here at ...... hear that?”
“Yeah, that’s right. I heard it too.”
“Indra.”
“That’s great, Boy. Congratulations.”
Indra’s face was not that of reverence, but that of intense joy and anticipation.
And that’s usually the case.
“Gigi.”
“Eh? Ah, yes!”
Gigi, my maid, was waiting at a distance and was also stunned to hear my voice.
She hurriedly rushed over when I called her.
“To everyone here. Distribute , no, reens to everyone who witnessed what just happened.”
I then took out a leather bag from my pocket and handed it to Gigi.
This is one of the duties of a nobleman.
The celebrations of the aristocracy are almost always larger in scale than those of the common people.[TN: I didn’t use commoner term on purpose]
It is considered a virtue for a nobleman to be able to share something of such a large scale with the common people without keeping it to himself.
And it is the nobleman’s duty to share the money with the common people who witnessed the celebration.
Some aristocrats think it is just for the sake of taste, but the more high-ranking the aristocrat is, the more they see it as a strong “duty”.
Someone has said this.
It is the third-rate nobles who do not like to share.
A second-rate noble is the one who does his duty with patience.
A first-rate noble is one who does his duty as a matter of course, without thinking of it as holding back.
According to that, I ordered Gigi to distribute the average monthly income of the city to the common people here.[TN: still can’t wrap my head around 10 reens being monthly income. Maybe they have some sorting like gold coins, silver coins and a certain amount of them can be termed as a reen, but there’s still nothing for smaller value ]
“Thank you very much!”
“Long live His Highness the Wise!”
“As expected of a man approved by the gods, AMAZING”
As I fulfilled my duty as a nobleman and the people were in a state of excitement, an aspiring knight, who was just as stunned as Gigi, approached me, got down on one knee, and bowed.
“I have something to address to His Highness the Wise Prince.”
“What’s the matter, you look so serious?”
“I would like to decline Your Highness’s assistance.”
The woman was on one knee, looking at me raising her head.
Her face was very serious.
“Why do you want to decline?”
“I want to be your knight.”
“Hmm? What does that have to do with you declining my help?”
“If I continue to rely on His Highness’ support, I will never be able to become a worthy knight. I would like to devote myself to becoming a worthy knight of Your Highness.”
So that’s why she’s declining my assistance.
I looked at the woman’s face. She had a very serious expression on her face.
She was a proud woman to begin with but what happened just now has inspired her to show more and more of her competitive spirit.
Not bad, I like this kind of person.
I can smell the similarity between her and Alice, whom I have been helping.
“I understand what you’re saying, but I can’t accept it.”
“W-Why not?”
It’s the same story with the first and second-class nobility.
“It’s out of the question to get help and slack off. I agree with that. But evading it yourself is second-rate.”
“Second-rate?”
“If you want to be a top-notch knight, don’t slack off when you receive help. Regardless of the external environment, you must have a sense of urgency and ambition within yourself.”
“———!”
“If you want to be a knight worthy of me, do it that way.”
“Yes!”
The woman bowed her head.
She was more than impressed and admired than before.
And her eyes were serious as she looked up again.
Her path is straight, her goal is ahead of her, and that’s all she sees in her eyes.
I could sense a little bit of patience in her eyes.
This is second-rate, but I’m sure this woman will eventually act as if it’s a matter of course, without thinking of it as endurance.
A first-rate knight is about to be born, and I’m happy about that.
“That’s great, Boy, you’ve grown some interesting sprouts in just a moment.”
“Well, isn’t it? That’s why I decided to give him your granddaughter.”
In a moment, Indra and I were both looking in the same direction, as if we had been pulled together.
Did he appear there before we knew it—-.
“Your Majesty!”
Both Indra and I stood up at the same time and knelt down on one knee.
The onlookers and Gigi were startled by this, and they all gasped and bowed down on both knees. |
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} | 「詳しいことはまだ分からないのですか、陛下」
「ノアよ」
「はい」
「反乱の規模はどれくらいだと思う」
質問に質問を返されてしまった。
が、皇帝の質問がなんであれ、答えなきゃいけないのが臣下たるものだ。
俺は少し考えた。
ステータスの「+」が、SSからSになった。
水の分はほぼほぼ全部、封地を決めた時にふえた。
つまりSSの分は全部アルメリアだって事になる。
それがS階だけさがったということは。
「現時点では小規模だと思う」
「正解だ」
まさかの「正解」。
陛下は意見を求めてきたんじゃなくて、状況を掴んでてクイズを出してきたのか。
「軍報では今の人だと言ってきてる。どうだノア」
なにが「どうだ」なのか一瞬不思議がったが、すぐにそれの意味を説明された。
「お前も分かるとおり小規模、しかもお前の封地だ。自分で討伐する気はないか?」
俺は驚き、そして少し考えてから。
「俺には無理だと思います」
「ほう?」
「俺は幼い、それに戦場をまだ知らない。討伐に向かっても兵が言うことを聞いてくれるかどうか。もし王子が出る必要があるのなら、他の、兄上の誰かの方がいいと思う」
「ふうむ......その答えは予想外だ。まさかそうも客観的に見た上で断られるとはな」
そう言いながらも、陛下は楽しそうに笑っていた。
「よかろう、その聡明さを買ってお前以外から選ぼう。誰がいいと思う」
「......王子なら、ヘンリー兄上の方がいいかと」
「なぜ」
「規模からして正面からぶつかって鎮圧するのがベストだと思う。奇策などは必要ないから、王子の中で一番慎重なヘンリー兄上がベストかと」
「見事な人選だ、そうしよう」
陛下は即断した。
クルーズを呼んで、王をすぐに王宮へ呼べと命じた。
夜が更けているのにもかかわらず兄上はすぐに王宮に顔を出して、陛下からアルメリア鎮圧を命じられたのだった。
一通り命令を受けた後、俺はヘンリー兄上と一緒に帰路についた。
兄上の馬車と俺の馬車で横並びして、たいまつが照らし出す夜の帝都をすすむ。
「せっかくの機会なのに、良かったのか?」
「俺が兵を率いて、ってことですか?」
兄上ははっきり頷いた。
「帝国は戦士の国、軍功を立てておけば後々いいぞ」
「今回はやめておきます、いきなりの事なのでそういう勉強はしてません」
「だが、お前は魔剣を持っている」
「知識無しで兵を率いてしまうのは。俺は死にはしませんが、その煽りを受けて兵が無駄死にする可能性が高い」
「......お前はすごいな、そこまで考えていたのか」
兄上は目を見開いて驚嘆した。
「そういうことだから、お願いします、兄上」
「わかった。まあ、騎兵相手は得意だ、お前の封地を綺麗に掃除してこよう」
へえ、反乱軍は騎兵が多いのか。
アルメリアって確か辺境にあって、農業や牧畜が弱いって聞いた事があるけど。
「その通りだ」
「あそこにある騎兵は強いが、よそ者だ。馬商人と懇意で導入したら上手くはまっただけ、自前じゃない」
ちょっと苦笑いした。
どうやら考えている事が顔に出ていたようだ。
わかりやすすぎるのもあれだし、ちょっと気を引き締めよう。
「――っ!」
「どうしたノア」
「いる、馬車を止めろ」
俺の命令で、御者が手綱を引いて、二頭の馬がいなないて止まった。
「いるって何が?」
「......」
俺は馬車から飛び出した。
反応したのは忠犬レヴィアタン、つまり狙われているのは俺。
だから兄上を巻き込ませないように先に馬車から飛び降りた。
直後、俺の四を魔法陣が取り囲んだ。
魔法陣は水の網を作り出して、まるで漁網のように俺に迫ってきた。
襲撃者だ。
殺気を感じて馬車を飛びだした俺に、水の網が捕縛せんと迫ってきた。
無形の水、それで出来た網は固体の縄じゃ決して出来ない速さで縮んできた。
ガシーン! 金属音が鳴った。
迫ってきた水の網を、レヴィアタンリンクの指輪の鎧が防いだ。
の盾、それが俺の前後左右に出来て、水の網を防いだ。
盾と網の押し合いが数十秒続いて、網が崩れてパシャーンと地面に落ちた。
この手の魔法の特徴だ。
捕縛魔法であるため、捕縛に失敗すれば魔法として維持できなくなる。
魔法が完全に効力を失った証拠に、レヴィアタンは盾を引っ込めた。
水の網――水。
アルメリアの、反乱軍からの襲撃者かな。
まだ六歳で、封地入りしていないが、それでも名目上は領主だ。このタイミングなら狙われて当然。
問題は殺すのか捕まえるのか――それを考えだした直後、前後左右から六人、黒装束を纏った者が物陰から姿を現わした。
「......やれ」
一人が号令を掛けた後、全員が一斉に飛びかかってきた。
「ノア!」
兄上の声が馬車の上から聞こえた。
俺の事を案じてくれてるのだが――問題はない。
一斉に飛びかかってきた襲撃者は全員、レヴィアタンを抜いて、達人の剣技で斬り伏せた。
「こんな子供が......ぐわっ!」
切られた襲撃者達は信じられないように目を剥いたあと、悶絶して意識を失った。
戦闘は一瞬で終わった、兄上が馬車から飛び降りる。
「すごいな、数日見ないうちにまた強くなったな。さっきの盾は何なんだ?」
「コバルト通りで見つけた魔道具で、レヴィアタンと相性がいいので組み合わせて使ってます」
「......予想以上のすごい答えが返ってきた」
一瞬だけ戸惑って、その直後に楽しげに笑い出した兄上。
「しかし殺したのか、吐かせるまでもないが、一応首謀者は聞いておきたかったな」
「殺してないよ」
驚く兄上。
倒れている襲撃者の元に向かい、しゃがんで鼻の下に指を伸ばす。
「本当だ、全員息がある」
「斬り倒した後にレヴィアタンの威嚇で気絶させました。この手の人間は自害しかねないから」
「はは、さすがだ」
「兄上、こいつらを任せてもいいだろうか」
兄上は深く頷いて、自分の部下に捕縛を命じた。
後は、兄上が上手くやってくれるだろう。
翌日、昼前に俺はバイロンを呼び出した。
屋敷の俺の部屋にやってきたバイロンは、すっかり臣下の立場に馴染みきった感じで、俺の前で片膝をついた。
「何かご用でしょうか、殿下」
「聞きたいことがある、お前はアルメリア近辺で商売をしてるか?」
「やらせて頂いてます。それもあって宰相様のパーティーに顔を出させて頂きました」
「うん」
あのパーティーで俺に取り入るためにやってきたんだ、俺の封地であるアルメリアの近くで商売をしている可能性が高い。
だから呼び出して、まずはそれを確認した。
「なにかご入り用ですか?」
「飼い葉だ」
「飼い葉......でございますか?」
「ああ、馬に食べさせる飼い葉。それを今からすぐに買い占めろ。一万リィーンを用意した」
俺は有無を言わさない、命令口調で言った。
バイロンは俺の紋章を看板に掲げて俺の下についた、更に「これ」は急いだ方がいい事柄だ。
だから、強めの口調で命じた。
「外に漏らしたら命はないと思え――アルメリアで反乱が起きた」
「反乱軍はどうやら騎馬が強いらしい」
「騎馬が......と言うことはカーフーン様が?」
「その騎馬部隊を無力化するために、飼い葉をカットしたい」
「御意。すぐに買い占めます。人間用の糧食はよろしいのですか? わたくしに任せて頂ければ」
「人間のはいい」
「はあ......」
バイロンが明らかに「なぜ?」って顔をしていた。
「騎兵の打撃力は凄まじい、が、馬は人間以上に維持のコストが掛かる」
「アルメリアはその辺りが弱い、飼い葉は外から調達しなきゃいけない。そして馬の飼い葉は馬の飼い葉だ。なくなったからと言って現地から、民から無理矢理奪うにも限界がある」
「あっ......兵の食料だと略奪が起きる......、しかし飼い葉では奪いようがない」
「そういうことだ」
「さすがでございます! 早速取りかかります」
一礼して退出するバイロンを見送った俺。
これで少しは、兄上が戦いやすくなるはずだ。 | “You don’t know the details yet, Your Majesty?”
“Noah.”
“How would you estimate the scale of the rebellion?”
He returned my question for a question.
But whatever the emperor’s question was, it was a vassal’s duty to answer it.
I thought about it for a moment.
The “+” in status went from SS to S.
The water portion was increased almost entirely when I was selected as the lord.
So the reason behind me getting SS is all due to Almeria.
And it got dropped to S this time, that means.
“I think it’s a minor one at this point.”
“You’re correct.”
I didn’t think it was the “correct” answer.
His Majesty didn’t ask for an opinion, but he was aware of the situation and quizzed me.
“The military report says it’s , so far. What do you think, Noah?”
I wondered for a moment what the ‘how’ was, but it was quickly explained to me what it meant.
“It’s a small scale, as you can see, and it’s your fiefdom. Are you willing to manage it by yourself?”
I was surprised, and so I thought for a minute.
“I don’t think I can handle this by myself.”
“Hoo?”
“I’m too young, and I don’t know anything about the battlefield yet. I don’t know if the soldiers will listen to me when we go to defeat them. If it is necessary for the prince to leave, I think it is better to go with another, one of my brother’s.”
“Fuumu ...... I didn’t expect that answer. I never anticipated that you would refuse to be so objective.”
His Majesty laughed happily as he said this.
“Very well, I’ll take your wisdom and choose one of the others besides you. Who do you think is better?”
“...... A Prince, I think Brother Henry would be a better choice.”
“Why?”
“On the scale of things, I think it’s best to go at them head-on and subdue them. There’s no need for a surprise attack, so I think it would be best for Brother Henry, the most cautious of the princes.”
“That’s an excellent choice, I approve of it.”
His Majesty made an immediate decision.
He called Cruz and ordered that the Fourth Prince be summoned to the royal palace at once.
Even though it was late in the night, my brother immediately appeared at the royal palace and was ordered by His Majesty to subdue Almeria.
After receiving my orders, I headed home with big brother Henry.
My brother’s carriage and my own, side by side, we steered through the torch-lit Imperial City at night.
“I’m glad you took the opportunity to do this?”
“You mean by me leading an army?”
“Yeah.”
Brother nodded clearly.
“The empire is a nation of warriors, if you make your military achievements, you’ll be better off later.”
“I won’t do it this time, I haven’t studied that kind of thing since it happened out of the blue.”
“But you have the magic sword.”
“You can’t lead your troops without knowledge. I won’t die, but there’s a good chance my soldiers will die in vain in the face of that incentive.”
“...... You’re really amazing, you’ve thought that far ahead.”
Brother marveled with his eyes wide open.
“That’s what I’m asking, please, brother.”
“All right. Well, I’m good against the cavalry, I’ll go clean up your fiefdom.”
Huh, so the rebels have a lot of cavalry?
I’ve heard that Almeria is in the middle of nowhere, and that agriculture and cattle farming are weak.
” That’ s true.”
“The cavalry over there are strong, but it was a foriegn thing for them before. It just fell into place when they were introduced with the horse trader on good terms, it was not on their own from the start.”
I chuckled a bit.
Apparently what I was thinking about was on my face.
It’s not too obvious, so let’s brace ourselves for a moment.
“e–!”
“What is it, Noah?”
“Hey, stop the carriage.”
At my command, He pulled the reins and the two horses moved to a halt.
“What do you mean?”
“......”
I jumped out of the carriage.
The one who reacted was the loyal dog Leviathan, which means I was the one being targeted.
So I jumped out of the carriage first so as not to get my brother involved.
Immediately afterwards, a magic circle surrounded me in all directions.
The magicians have created a net of water and are closing in on me like a fishing net.
It was the assailants.
I jumped out of the carriage, feeling the killing intent, and a net of water was closing in on me to capture me.
The net, made of intangible water, was shrinking faster than a solid rope could ever do.
Gasheen! There was a metallic clatter.
The ring armor of the Leviathan Link prevented the approaching web of water from coming at me.
A total of six shields, which formed on my front, back, and sides, blocked the web of water.
The push of the shields and netting continued for a few dozen seconds before the netting collapsed and fell to the ground with a crunch.
This is a characteristic of this kind of magic.
As it was a captive magic, if it failed to capture, it would not be able to be maintained as magic.
As proof that the magic had completely lost its effectiveness, Leviathan retracted the shields.
A web made of water——-water.
The assailants from Almeria, one from the rebels, I guess.
I am only six years old and haven’t entered the fiefdom, I am still the nominal lord. At this point in time, I am naturally a target.
The question is whether to kill or capture them — right after I started thinking about it, six people dressed in black emerged from the shadows from the front, back, and left sides.
“Do it ......”
After one of them gave the command, they all jumped on me in unison.
“Noah!”
I heard my brother’s voice from the top of the carriage.
He’s worried about me – but it’s not a problem.
I used the sword skills memory from Leviathan to cut the assailants, all of whom jumped on me at once.
“Such a child ...... gwaa!!”
The cut assailants peeled their eyes away in disbelief, then lost consciousness in agony.
The battle was over in an instant, and my brother jumped down from the carriage.
“Awesome, within a few days of not seeing you, you got even stronger. What was that shield you had earlier?”
“It’s a magic tool I found on Cobalt Street, and I use it in combination with Leviathan because it works so well together.”
“...... I got an even more amazing response than I expected.”
He was puzzled for a moment, then immediately afterwards, brother started laughing happily.
“Not to mention making them spit it out, you killed them all, but I would have liked to hear about the ringleader, just in case.”
“I didn’t kill any of them.”
Broter sure was surprised.
He walks over to the fallen attacker, squats down and reaches a finger under his nose.
“True, they’re all breathing.”
“After I cut them down, I stunned them with the killing intent from Leviathan. Because people like this could harm themselves.”
“Ha, that’s impressive.”
“Brother, do you mind if I put these men under your observation?”
Brother nodded deeply and ordered his men to capture him.
The rest of the thing, brother knows the best.
The next day, before noon, I summoned Byron to my room in the mansion.
Byron came to my room, in the mansion, feeling completely at home in his position as a vassal, and got down on one knee in front of me.
“What can I do for you, Your Highness?”
“Let me ask you, do you do business in or near Almeria?”
“I am allowed to do so. That’s also why I was able to attend the Prime Minister’s party.”
He came to get to me at that party, most likely doing business near my fiefdom, Almeria.
So I called him up and made sure of that first.
“Can I help you with something?”
“The Fodder”
“Fodder ......what about it, my lord?”
“Hmm, the fodder for the horses. Buy it all up now. I’ve got ,000 reens for you to spend on that.”
I said in a commanding tone of voice, rather than asking.
I had Byron underneath me with my crest on a sign, and “this” was a matter of urgency.
So I ordered in a strong tone of voice.
“If it leaks outside you’re on your own– there’s a revolt in Almeria.”
“The rebels are apparently very strong on horseback.”
“You mean the cavalry ......, so it means Cafun-sama is?
“I want to cut their supplies on fodder to neutralize that cavalry.”
“As you wish. I’ll buy them all up in no time. You sure you don’t want to buy up all the human food? If you’ll just let me handle it...”
“Human ones are fine.”
“Ha. ......”
Byron made a face obviously asking “why?”.
“The striking power of a cavalryman is tremendous, but a horse costs more to maintain than a man.”
“Yes.”
“Almeria is weak in that area, and the fodder has to be sourced from outside. And a horse’s fodder is that. There’s a limit to how much they can forcibly take from the locals, from the people, just because it’s gone.”
“Ah, ...... for the rations of soldiers they can loot for that ......, but fodder for their horses is whole other thing.”
“That’s what I’m talking about.”
“Outstanding thinking my lord! I’ll get right to it.”
Byron bowed to me as I saw him leave.
This should make it a little easier for brother to fight. |
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} | 「王宮の外だ、余計な作法はいらぬ。叔父上、余のそばに座るがいい」
「わかった」
陛下の命令が下ったのもあって、インドラは直前までの、豪快な振る舞いに戻って、陛下のそばに座った。
で、俺は周りをちらっと見てから、ルティーヤーを鎧の指輪とリンクさせて人の姿にした。
ただし前にやった人形のような小ささではない。
1分の1――つまり人間と同じサイズの姿にした。
炎を纏った戦士を、陛下を護るようにその後ろに仁王立ちさせる。
「大げさな」
「ここは王宮ではありません」
俺はきっぱりと言い放った。
「万全を期さねばなりません。それに陛下――皇帝の不慮は万民の不幸。陛下のような名君は、天寿以外の万が一があってはならない」
「そうか、ならばノア、全て任せる」
「はっ」
陛下に一礼して、更に周りをぐるっと見回してから、ルティーヤーに炎を吹かせた。
作り物の全身から炎が立ち上る。
まさしく炎の魔人、といった出で立ちだ。
それとともに、レヴィアタンで周りを弱めに押さえつける。
倒す程じゃない、ここにいる民達に畏怖と尊敬を植え付ける程度。
その程度の弱い威嚇だ。
そうして、一通り周りを確認する。
目に見えるのはルティーヤー、心に感じるのはレヴィアタン。
民達からは純粋な尊敬の念が伝わってきて、異心はまったく感じられなかった。
「さすがだ、ノア」
「その歳でそこまで冷静なのは驚きだわな。皇帝の子供の中でも一番じゃねえのかい?」
「うむ、余の自慢の子だ。だからこそ『賢』の字を授けた。叔父上の『雷』と同じ、ふさわしい一字だと思っている」
「カカカ、オイラのは雷は雷でも、もうそろそろ雷親父でしかないわな」
陛下とインドラは笑い合った。
「ノアの『賢』はこれからだ。何せ初陣を一人ですることが決定したのだから」
一瞬、周りがシーンと静まりかえった。
それで反動がついたかのように、今日一番の歓声があがった。
「初陣って、皇族の皆がするあれか?」
「あれを一人でやるのか? 普通兵士にカッチカチに守られて行くもんだろ」
「でも納得だわ......この親王様なら納得だわ......」
ざわつきの中、次々と俺を称える声が聞こえてきた。
ちょっと考えたが、自然な形で民の視線と注意力がこっちに集中してきた。
陛下を守るには都合がいい、ならばこのままで行こう。
いや......もしや......?
陛下をちらっと見た、目と目があった。
それを見て、俺は確信する。
これは陛下のフォローだ。
俺が周りを睥睨して陛下を守ろうとする行動に、陛下は一人初陣を公表すると言う形でフォローした。
そうでもなければ、とうの昔に決まっていて、市井にもそろそろある程度の噂が流れたことをここで公表する必要はない。
ならば、ますますそれに乗っかるまでだ。
「それがノアのすごい所だ」
むっ。
「どういう事だ皇帝よ」
訝しむインドラ。
民達のざわつきの中、陛下は横にいるインドラだけが聞こえる程度の小声で答えた。
「余が今のを公表したのはノアを助ける為だ。それをノアはちらっと目があっただけで理解して、それに乗った」
「ほう、さすがだな。オイラでも分からなかったぞ今の」
「叔父上は豪快だが繊細さにかける。仕方のないことだ」
「だから細君との細かい諍いが絶えないのだ」
「全くだ。カカカ、孫をますます安心して預けられるってこったな」
更に笑い合う陛下とインドラ。
「さて、叔父上よ。少し話がある、馬車に同乗してくれ」
――本題。
陛下がわざわざ出てきたのはこのためだなと理解した。
俺は手招きして、少し離れた所で待機している陛下の馬車を呼び寄せた。
民達が綺麗に道を譲って、馬車がゆっくりと近づいてくる。
馬車がやってくると、付き添っている下っ端の宦官がその場ん這いの犬の格好をして、陛下とインドラは次々とその背中を踏み台にして、馬車に乗った。
がちゃんと乗り込むと、御者が鞭を振るって、馬車はゆっくりと動き出す。
俺は横につき、ルティーヤーを先頭に立たせた。
「で、話ってなんだい皇帝」
「うむ」
陛下の顔が少し翳った、口が開かれる。
密かに「ドキン」とした俺は、ルティーヤーに命じて、更に火を吹かせた。
全身から炎がまるでオーラのように立ちこめると、民から歓声が上がった。
「皇太子を廃しようと思う」
陛下の言葉は、民の歓声の中にかき消された。
インドラはきょとんとした。その顔だとちゃんと聞こえたようだ。
陛下は俺に目を向けて「やるな」という目線を送ってきた後、更に続けた。
「なんとかなるとは思っていたが、もはやふさわしくないと思わざるを得なくなった」
「何故」
「ギルバートの一件だ」
「......そうかい」
インドラは重々しく頷いた。
ギルバートの一件。
それだけ聞けば、ギルバートが陛下と皇太子の毒殺を企んだ一件に聞こえるのだろうが、間違いなく違う。
俺が帝国法の穴を縫って縫って、どうにかギルバートを事実上の終身刑に留めて――陛下に子殺しをさせまいとしたのに、皇太子アルバートは即執行を強行した。
間違いなく、そっちの件だ。
「あれはあれで間違いではない、だが、もっとやりようはあるはずだ」
「あれはオイラも肝を冷やしたさ。あいつが皇帝になったら間違いなく粛清が起きるってな。オイラなんて、皇帝に無礼なことを散々してるから、その気になれば
「ああ。あの狭量さ、もし即位したらヘンリー、オスカー、それにノアだな。こは真っ先に粛清されよう」
だろうな。
ヘンリー兄上、オスカー兄上、それに俺。
今、親王大臣を拝命している面子だ。
おそらく、アルバートからすればかなり邪魔だと思われてるだろう。
「そのような狭量な男に、余の後を託すわけにはいかない」
「......それはいいが、次は?」
「決めておらん」
「それはだめだ」
インドラは即座に言い放った。
陛下がインドラに相談を持ちかけたのはおそらく、こうして率直な物言いが出来る相手だからなんだろう。
「皇帝はもういい歳だ、その歳になると明日の朝ぽっくり逝ってもおかしかない。そいつを廃して、決まる前に逝っちまったら帝国が分裂する」
「......」
陛下は黙り込んだ。
そうなんだよ、皇太子ってのはそういうことなんだよ。
普通の家庭でも、親が亡くなれば遺産でもめにもめるものだ。
皇族でその遺産に相当するものが皇帝の座だ。
皇太子というのは、例え皇帝が急死しても揉めないように決めておく、という意味合いが大きい。
事前に遺言を公表するのと同じことだ。
「決まってたらオイラは何も言わねえ、だが決まってねえんならだめだ」
「......決まってないわけじゃない」
陛下の口調がものすごく平坦なものになった。
あらゆる感情を感じさせない、
「だが、今それを公表すると余計に揉めるだけだ」
「それでも皇太子をたてないよりはましだ」
「そうだな......」
俺は少し考えて、あるアイデアを思いついた。
そのアイデアをいくつかの現実を摺り合わせて、実現可能な方法を練り込む。
そうしてある程度固まってから。
「恐れながら申し上げます、陛下」
「うむ? なんだ、申してみろノア」
「陛下の御遺言があることだけを公表するのはどうでしょうか。後継者――つまり事実上の皇太子は其処に書かれていると公表するのです」
インドラは即否定した。
「それの内容を公表するのは皇帝が死んだ後だろうが。なら、それはどうとでもねつ造出来る」
「はい、だから、遺言は陛下の『体の中』に隠しておくのです」
「余の?」
驚く陛下。
「何らかの形でそうするのです。手術など――簡単な所で文字を刻んだ差し歯か。あるいはなんらかの魔法か。そしてそのことを公表すれば――」
「いいぞ!」
さっきは否定したインドラが、一転して喝采した。
「それはいいアイデアだ。皇帝が常に自分で持ってるなら、すり替えられる恐れもねえ」
「ほう......」
陛下は眼を輝かせた。
「すごいぞノア、そのアイデアいいぞ!」
俺の提案を、ものすごく気に入ってくれたようだ。 | “Outside the palace, there’s no need for unnecessary formalities. Uncle, you may sit beside me.”
“All right.”
Because of His Majesty’s order, Indra returned to his previous dynamic behavior and sat by His Majesty’s side.
Meanwhile, I glanced around and linked Luthiya with my Armor ring to take human form.
However, it was not as small as the figure I had made before.
Instead, I made it : size – the same size as a human.
A warrior clad in flames stood behind His Majesty as if to protect him.
“Looks exaggerated.”
“This is not a royal palace.”
I said firmly.
“We must take every precaution. Besides, His Majesty, the Emperor’s misfortune is everyone’s misfortune. A great sovereign like you must not have any other contingency than his natural life.”
“Well, then, Noah, I leave everything to you.”
“Yes.”
I thanked His Majesty, looked around some more, and then let Luthiya blow flames.
Flames rose from the entire body of the creature.
It’s just the appearance of a fire demon.
And at the same time, the Leviathan weakly held the surrounding area.(He used intimidation)
It’s not enough to knock them out, just enough to instill awe and respect in the people here.
It’s just a weak threat.
Then, I check my surroundings.
In my vision is Luthiya, and the one I feel in my heart is Leviathan.
I could feel the pure respect from the people, and not a hint of animosity.
“As expected of you, Noah.”
“I’m surprised you’re so calm at your age. Isn’t he the best of the emperor’s children?”
“Yes, I’m very proud of him. That’s why I gave him the title of “Wise”. Same as Uncle’s “Thunder”, I think it’s an appropriate one.”
“Kakaka, mine may have been thunder, but by now it’s just old man thunder.”
His Majesty and Indra laughed at each other.
“Noah’s ‘Wisdom’ is yet to come. After all, it has been decided that Noah’s first battle will be by himself.”[TN: it says Wise but Wisdom here is appropriate]
For a moment, everything around them fell silent.
Then, as if recoiling, the biggest cheer of the day went up.
“Is that what all the members of the royal family do in their first battle?”
“Are you going to do that all by yourself? Normally you have to be protected by soldiers.”
“But it makes sense. ...... since it is this Prince. ......:
In the midst of the buzz, I heard one voice after another praising me.
Although I thought about it for a moment, the people’s gaze and attention naturally focused on me.
It’s convenient to protect His Majesty, so let’s go on like this.
No ...... what if ......?
I glanced at His Majesty, and our eyes met.
When I saw that, I was convinced.
This is a follow-up from His Majesty.
He followed up on my action of glaring around and trying to protect him by announcing my first battle alone.
Otherwise, there would be no need to announce here that the decision had been made long ago, and that a certain amount of rumors had already circulated in the city.
If that’s the case, then let’s just go along with it.
“That’s the great thing about Noah.”
Mmm.
“What do you mean, Emperor?”
Indra wondered.
In the midst of the murmur of the people, His Majesty answered in a whisper that only Indra beside him could hear.
“The reason I announced what I just did was to help Noah. Noah understood that when he caught a glimpse of me, and he went along with it.”
“Hoo, I’m impressed. Even I didn’t understand that.”
“Uncle is a bold man, but not very sensitive. It can’t be helped.”
“That’s why you and your mistress have so many minor quarrels.”
“Yes, indeed. Kakaka, I can leave my grandchildren in greater peace of mind.”
His Majesty and Indra laughed again.
“Well, Uncle. I would like to have a word with you. Please join me in the carriage.”
–The main point.
I understood that this was the reason why His Majesty had come all the way out here.
I beckoned to his carriage, which was waiting some distance away.
The people gave way neatly, and the carriage approached slowly.
When the carriage arrived, the eunuch accompanying him got on all fours on the spot, and His Majesty and Indra, one after the other, used his back as a springboard to get on the carriage.
Once they were properly mounted, the Imperial Guard waved their whips and the carriage began to move slowly.
I stepped to the side and put Luthier in the lead.
“So, what’s the story, Emperor?”
“Umu.”
His Majesty’s expression faded slightly, and his mouth opened.
I felt ‘Dokin’ and ordered Luthiya to breathe more fire.
The people cheered as the flames rose from within its body like an aura.
“I am going to abolish the Crown Prince.”
His Majesty’s words were drowned out in the cheers of the people.
Indra stared blankly at him. By the look on his face, it seemed he had heard correctly.
His Majesty looked at me, gave me a “had to” look, and then continued.
“I thought it would work out, but I can’t help but think that it would no longer be appropriate.”
“Why?”
“Due to Gilbert’s case.”
“...... Is that so”
Indra nodded gravely.
Gilbert’s case.
It may sound like a case of Gilbert plotting to poison His Majesty and the Crown Prince, but it is definitely not.
I stitched and weaved my way through the holes in the imperial law, and somehow managed to keep Gilbert in prison alive – I tried to prevent His Majesty from killing his child, but Crown Prince Albert forced the execution immediately.
That’s definitely the case.
“That’s not a mistake, but it could have been done better.”
“That chilled my nerves, too. If he becomes the emperor, there will be a purge, that’s for sure. I’ve been so disrespectful to the emperor, he could pick me off if he wanted to.”
“Yeah. That narrow-mindedness, if he ascends to the throne, it will be Henry, Oscar, and Noah. Those three will be the first to be purged.”
Probably.
Brother Henry, Brother Oscar, and me.
These are the people who are currently serving as Ministers being the Prince.
Probably, from Albert’s point of view, we are quite an obstacle.
“I can’t entrust my legacy to such a narrow-minded man.”
“...... That’s all well and good, but what now?”
“I haven’t decided.”
“That’s no good.”
Indra said immediately.
His Majesty’s consulting with Indra was probably due to the fact that he was able to speak frankly with him.
“The Emperor is old enough, at his age, it would not be surprising if he were to pass away tomorrow morning. If you abolish him and leave before the decision is made, the empire will be divided.”
“......”
His Majesty fell silent.
That’s right, that’s what being a Crown Prince is all about.
Even in a normal family, when a parent dies, there is always a dispute over the inheritance.
In the royal family, the equivalent of that inheritance is the position of Emperor.
The crown prince is meant to prevent disputes even if the emperor dies suddenly.
It’s the same as announcing a will in advance.
“I can’t say anything about it if it’s been decided, but if it hasn’t been decided, no.”
“It’s not that I haven’t decided .......”
The tone of His Majesty’s voice became very flat.
His tone was void of any emotion and was unreadable.
“But if we announce it now, it will only cause more trouble.”
“Still, it’s better than not having a crown prince.”
“Yes, it is. ......”
I thought about it for a while and came up with an idea.
The idea was put together with a number of realistic situations to formulate a feasible method.
Then, after it was somewhat solidified.
“With all due respect, Your Majesty.”
“Hmm? What is it? Tell me, Noah.”
“How about we just announce that you have a will? Announce that your successor – the de facto crown prince – is written therein.”
Indra immediately denied it.
“I’m sure the content of it will be made public after the emperor’s death. Then you can falsify it in any way you like.”
“Yes, that’s why the will is to be hidden ‘inside your body’.”
“My body?”
His Majesty was surprised.
“You can do so in some form. It can be as simple as an operation – like a tooth with a letter carved into it. Or some kind of magic. And if you make it known...”
“Good!”
Indra, who had rejected the idea earlier, turned and cheered.
“That’s a good idea. If the emperor always has it in his possession, there is no danger of it being replaced.”
“How ......”
His Majesty’s eyes lit up.
“That’s a great suggestion, Noah, I like it!”
He seemed to like my suggestion a lot. |
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} | この様子だと店には入れそうもないな。
無理矢理入ったとしても、無用な騒ぎを起こしかねない。
俺はゾーイを連れて、身を翻してそこから立ち去った。
さて、当てが外れたが、どうしようか。
アリーチェの所は当面いけそうにないから、新しい所でも開拓しておくか。
そう思いながら雑踏の中を歩いていると。
「やや、こんな所でお会いするとは」
「ん?」
なんだか芝居がかった口調の台詞が聞こえてきて、何事だ?って思って声の方に振り向いた。
そこにバイロンがいた。
バイロンは俺の目の前にやってきて、深々した。
膝を突かないのは、俺がお忍び――正体を知られたくないと言うことを理解しているから。
「お前こそ、こんな所で何をしている」
「この近くで商談をしていたところでして」
何の商談なのかは聞かなかった。
言いたければ向こうから言ってくるし、
「お見受けしたところ暇を持て余しているご様子。どこかご案内しましょうか?」
「そうだな......難民が集められた場所を知ってるか?」
「存じ上げてます」
「そこへ案内しろ」
「はい」
何故?とは聞かないのがバイロンだ。
彼との付き合いも十年になる、今更この程度の事で驚くような付き合いじゃない。
バイロンの案内で、ゾーイを引き連れたまま、南に向かって歩いて行く。
大通りをいくつも抜けると、景色はがらりと変わって、荒廃とした感じになってきた。
さっきまでのが表――都の光の部分なら、ここはさしずめ闇ってところか。
そんな感じでの、淀んだ空気と、くらい雰囲気が充満していた。
道ばたのところどころに、地べたに座ってぐったりしている難民が見えた。
それを見て、俺が微かに眉をひそめた。
すると、バイロンが聞いてもいないのに話し出した。
「炊き出しは一日、流動食を中心に提供しているようです」
「ああ、難民――特に飢民は胃腸が弱くなっている。そういう風にやれと命じた」
「......子供がそれなりにいるな」
どういう意味だ?って顔で俺を見つめるバイロン。
それには答えずに、観察しながら更に歩いて行く。
難民の中にはこっちを不審げに見つめてくるものもいるが、大半はそんな気力も無い位弱っていた。
そんな中――
「ほらほら、これが最後のチャンスだぜ?」
難民のものではない、元気な声が聞こえてきた。
声は元気だが、聞き取れる感情、そしてニュアンスは神経を逆なでして、不快にさせるものだ。
声の方に向かっていった。
すると、難民の親子らしき男と娘がいて、その親子に現金をちらつかせている中年の男がいた。
男が見せつけているのは数枚の銀貨だった。
「うぅ......」
「よく考えろ、5リィーンだぜ? この5リィーンで娘を俺らに売って、身軽になっちまいなよ」
「この先、子供なんかいてもどうせ足手まといなだけだろ? それよりもこの5リィーンを受け取って、もっとマシなもので腹を満たした方が利口だぜ?」
父親はがっくりとうなだれるように頷いた。
すると男はにやりと笑って、持っていた5リィーンを父親に握らせて、怯えでしがみついてる娘を引き離そうとした。
「やあっ! やめて! お父さん! お父さん!!」
「――っ! や、やっぱりダメだ!」
必死に縋る娘に表情が歪む父親。
受け取ったばかりの5リィーンを男――人買いに返そうとする。
苦しいのは事実、それで一度押し切られはしたが、実際に泣いてすがる娘を見て思い直したってところか。
どっちも分からないではない話だが、しかし。
「おいおい、一度取引が成立したんだぜ?そりゃないだろ」
「しかし......」
「どうしてもってんなら、買い戻すしかないわな」
「わ、わかった、買い戻――」
「10リィーンで売ってやる」
「――す、えええっ!?」
父親はまるで悲鳴のような声を上げた。
「じゅ、10リィーンって、そんな!?」
「こっちが買い上げて、こっちの商品になったんだ。いくらで売ろうがこっちの勝手だろ?」
「しかし!」
「ええいしつこいな。諦めろって意味だよいわせんな」
父親は今にも泣き出しそうな顔で――娘は既に泣き出していた。
人買いに掴まれたまま、必死に父親に手を伸ばして、泣きじゃくりながら縋ろうとしている。
さすがに、これは気分が悪い。
俺は一歩踏み出して。
「10リィーンだな、俺が買った」
「はあ?」
人買いは胡乱げな視線をこっちに向けてきた。
「何だお前は、こっちは仕事してるんだ、邪魔すんな」
「仕事って商売のことだろ? 10リィーンは俺が出す。その娘を返してやれ」
「......いくらで売ろうがこっちの勝手って言ったよな。お前さん相手なら――100だ」
ピクリ。
こめかみがひくついたのが自分でも分かった。
が、俺は怒気を押さえた。
「分かった100だな」
そう言って懐に手を入れてから――思い出した。
金がないのだ。
皇帝は金を持たない。
例えお忍びで出てきたとしても、現金を持たないのが皇帝というものだ。
それはたしなみであり、ある種の義務でもある。
が、だからといって「金がない」という訳ではない。
こういう場合――。
「どうぞ、こちらをお使い下さい」
サイフ代わりに連れているゾーイが取り出してくるものだと思っていたが、それよりも先に動いたのがバイロンだった。
バイロンはぎっしりと銀貨の詰まった革袋を俺に差し出した。
「悪いな」
「何をおっしゃいますか。これ以上の光栄はございません。運良くこの場に居合わせた事を神に感謝します」
俺は受け取った革袋をそのまま人買いに向かって放り投げた。
数えてはいないが、確実に100以上はある革袋だ。
人買いは一瞬きょとんとしながらも、革袋をしっかりキャッチした。
そいつはしばらく革袋を見つめたあと、俺に投げ返してきた。
「気が変わった。お前には売らん」
「......」
再び、こめかみがひくつく俺。
「お前ら、どこの奴隷商の人間だ?」
「お前には関係ないだろ?」
「答えろ」
「――うっ!」
睨みながら問い質すと、人買いは思わず一歩後ずさってしまったほど気後れした。
「おーい、そっちはどうだ?」
「なんだ? まだ一人しか買えてないのか?」
周りから人買いの仲間らしき男達がぞろぞろと集まってきた。
全員が全員、数人ほどの子供を連れていた。
子供達は皆嫌がっているが、既に首輪と鎖で繋がれている。
「こいつが邪魔してるんだ」
最初の人買いが仲間達に状況を説明した。
「見た所どっかのおぼっちゃんのようだけど、あまり首を突っ込みすぎると火傷するぜ」
人買いの一人が、ありきたりな脅し文句を投げかけてきた。
「お前達、どこの店だ? 免許は持ってるのか?」
俺が聞くと、人買いたちはアイコンタクトを交わして。
「しゃーねえ、ちょっと痛めつけてやるか」
「そうだな。おい! お前ら集まれ!!」
一人が叫ぶと、人買いが更にぞろぞろと、「なんだなんだ?」って感じで集まってきた。
最終的に、という数になった。
連中は仲間内でさっと状況を説明して、全員が俺に仕掛けてこようと身構えた。
「......」
俺は無言で腕輪の中からレヴィアタンを引き抜いた。
一斉に掛かってくる人買いたちに、水色の光を曳く魔剣を振るった。
男達は場慣れしているが、それは所詮チンピラの喧嘩慣れしているレベルだ。
俺は一人ずつ、襲ってきた人買いを切り倒して、返り討ちにしてやった。
十五人という数は、わずか2分と言う短さで方が付いた。
「ふん」
「ひ、ひ、人殺しだ!!!」
斬られて、倒れて血を流している人買いたちを見て、周りに集まってきた難民の一人が叫んだ。
だれ一人として殺してはいないが――それがわからないんだろう。
「人殺しだ! だれか警吏を呼べ!」
「犯人を逃がすな!」
今度は難民達が俺を取り囲んだ。
俺の手にレヴィアタンが握られているから、それを恐れて掛かっては来ないが、遠巻きにして逃がさないという感じだ。
しばらくして、難民の人垣を割って、警吏の一群がやってきた。
「どけどけ! 何事だ」
「警吏様、あいつです、あいつが人殺しです」
難民の一人が警吏のリーダーらしき青年に事情を話した。
それを聞いた警吏のリーダーが睨む目でこっちに向かってきた――が。
「はっ! へ、陛下!」
そいつはまるでお化けでも見つけてしまったかのような驚きっぷりで、直後、俺に片膝を突いて頭を下げた。
「ここに皇帝陛下がいるとは知らず、失礼しました!」
警吏が言った直後、数秒ほどの沈黙が流れた。
「皇帝陛下の御前である!」
ゾーイが、よく通る――そして威厳が出始めている声でいった。
すると、その場にいる難民達が警吏をみて、一斉に跪いた。
俺は警吏のリーダーに聞いた。
の顔を知っているのか?」
警吏程度にしては珍しい。
「はい! 俺――じゃなくて自分はライス様の部下で、一時期兵務省で使いっ走りをやってました」
昔ヘンリーが兵務省にいた頃、俺もそこにいたから、その時に顔を見たことがあったんだろう。
「本当に皇帝
「皇帝様が悪人を成敗してくれた?」
「なんてお強いんだ......」
普通は皇帝の前では私語も慎むもんだが、田舎から来た難民達はそれが分からず、ひそひそと感想を漏らしていた。
それらをスルーして、警吏の男に命じる。
「この連中を捕まえろ。闇奴隷商の容疑だ」
「御意!」
命令を受けると、後は早かった。
警吏達はものすごく手慣れた感じで、俺が斬り倒して――命までは取っていない連中を捕縛して、どこかへ連れて行った。
俺は周りを見ながら。
子供......足手まとい、か。
さっきの人買いの言葉を思い出した。
父親が一瞬でも売ろうとした――いや、実際に他にも売った人間がいることを考えれば、難民でいる限り、子供が足手まといになる事もあるんだろう。
子供でそうなら、例えば赤ん坊なんてもう完全に足手まといにしかならないだろう。
しかし、人は宝だ。
希望しかない
......育嬰......」
字面が悪いな。
こういう時は――。
「ゾーイ」
「ドンにいって『育英館』を作らせろ。難民達の手に余るようなら、子供は一年――い間預かるようにさせろ」
「かしこまりました」
俺に忠実なゾーイは余計なことを言わずに、命令を受け取った。
一方で、一部始終を至近距離で見ていたバイロンは。
「さすがでございます、陛下」
と言ったのだった。 | From the looks of it, I don’t think I can get into the store.
Even if I force my way in, I’m afraid I’ll cause an unnecessary commotion.
I turned around and walked away, taking Zoe with me.
Now that my guess is off, what should I do?
I don’t think I can visit Alice’s place for the time being, so I should explore a new place.
While thinking so, I walked through the crowded streets.
“Well, I never thought I’d see you here.”
“Hmm?”
I heard a somewhat playful tone of voice, what is it? I turned my head toward the voice.
Byron was there.
Byron came right in front of me and bowed deeply.
He didn’t kneel because he knew I was going incognito and didn’t want anyone to know who I was.
“What are you doing in a place like this.”
“I was just in the neighborhood for a business meeting.
I didn’t ask him what kind of business he was discussing.
If he wanted to tell me, he would, and I’m sure he has things he’d rather I didn’t hear.
“Looks like you have some spare time on your hands. Would you like me to show you around?”
“Well, do you know where ...... the refugees were gathered?”
“Take me there.”
“Understood.”
Why? Byron didn’t ask for a reason.
It’s been ten years since we’ve known each other, and it’s not something that would surprise me now.
With Byron leading the way, I walked south with Zoe in tow.
As we passed through a number of main streets, the scenery changed drastically, becoming more and more desolate.
If what we had just seen was the front, the light part of the city, then this was the darkness at last.
The air was stagnant and the atmosphere was filled with such a feeling.
I could see refugees sitting on the ground, slumped in various places along the street.
Seeing this, I raised my eyebrows slightly.
Then Byron started speaking, even though I hadn’t asked him.
“It seems that the kitchen serves mainly liquid food twice a day.”
“Yeah, the refugees – especially the starving people – have weakened stomachs. That’s what I ordered them to do.”
“I see, excellent, sir.”
“...... There are a good number of children here.”
What do you mean? Byron looked at me with such expression.
I didn’t answer him but walked further while observing.
Some of the refugees stared at me suspiciously, but most of them were so weak that they didn’t have the energy to do so.
Then...
“Hey, hey, this is your last chance, okay?”
I heard a cheerful voice that didn’t belong to the refugees.
The voice was cheerful, but the emotions and nuances I could hear were nerve-wracking and unpleasant.
I walked toward the voice.
There was a man and his daughter who looked like a refugee family, and a middle-aged man who was flicking cash at them.
What the man was flashing at them were a few silver coins.
“Uu. ......”
“Think about it, it’s reens, right? Why don’t you sell your daughter to me for reens and have your weight off?:
“Isn’t it going to be a drag to have a kid in the future? You’d be wiser to take this reens and fill your belly with something better.”
The father nodded his head in resignation.
The man grinned and gave the father the reens he was holding and tried to pull the frightened girl away from him.
“Noo! Stop it! Father! Father!”
“–! N-No, you can’t!”
The father’s expression distorts as he clings desperately to his daughter.
He tried to return the reens he had just received to the man – the buyer.
In fact, it was painful for him, and once he pushed her away, but when he saw her crying and begging for help, he reconsidered.
It’s not hard to understand either way, but...
“Oi, Oi, the deal was made once, you know? Don’t tell me it’s not.”
“But ......”
“If you insist, you’ll have to buy her back.”
“O-okay, I’ll buy back.”
“I’ll sell it back for 0 reens.”
“—, ehhh..?”
The father’s voice sounded like a scream.
“T-Ten reens, just like that!?”
“I bought it, and it’s now my product. How much I want to sell it for is up to me, isn’t it?”
“But!”
“You’re so persistent. Don’t make me tell you to give up.”
The father looked like he was about to start crying – the daughter had already started crying.
She desperately tried to reach out to her father and cling to him, sobbing, while being grabbed by the people.
As I expected, this didn’t feel good.
I take a step forward.
“Here are 10 reens, I will buy her.”[TN: They are using terms for objects rather than humans]
“Haaah?”
The buyer gave me a disturbed look.
“What are you doing? Don’t interrupt me, I’m doing my job.:
“You mean business, right? I’ll give you 10 reens. Return the girl.”
” ...... I told you, it’s my choice how much I sell her for. For you, it’s 100reens.”
Twitch.
I found that my temples were twitching.
However, I suppressed my anger.
“I understand, here’s 100.”
After putting my hands in my pockets, I remembered.
I had no money.
The emperor has no money.
Even if they are going incognito, the emperor is not supposed to carry cash.
It is etiquette and a kind of duty.
But that doesn’t mean ‘I don’t have any money’.
In this case...
“Please, use this.”
I was expecting Zoe, who was carrying the wallet, to take it out, but it was Byron who moved first.
Byron held out a leather bag full of silver coins to me.
“Sorry.”
“What are you saying? I couldn’t be more honored. I thank God that I was lucky enough to be here.”
I took the leather bag and threw it at the buyer.
I didn’t count, but I’m pretty sure there were over 100 in that leather bag.
The man- that buyer was puzzled for a moment, but then caught the leather bag firmly.
He stared at it for a moment and then threw it back to me.
“I’ve changed my mind. I’m not selling it to you.”
“......”
Again, my temples twitched.
“What kind of slavers are you?”
“What’s it to you?”
“Answer me.”
“—-Uu!”
I glared at him and asked him a question, which made him take a step backward.
“Hey, how’s it going over there?”
“What? You only bought just one person yet?”
A group of men who looked like fellow buyers began to gather around him.
All of them had a few children with them.
The children were all reluctant, but they were already collared and chained.
“This guy’s in the way.”
The first buyer explained the situation to his friends.
“You look like some young master, but if you stick your nose in too far you’ll get burned.”
One of them threw out the usual threats.
“Where are you guys from? Do you have a license?”
I asked, and they exchanged eye contact.
“Hey, we’re gonna hurt you a little, okay.”
“That’s right. Oi! Gather around!”
One of them shouted, and more and more people, those who looked like buyers started to gather around, like, “What is it?”.
In the end, there were fifteen of them.
They quickly explained the situation to their friends, and all of them prepared themselves to set a trap for me.
“......”
I silently pulled Leviathan out of my bracelet.
Wielding my demon sword, which was trailing a light blue light, I swung it at the men- the buyers who were coming at me at once.
The men were familiar with these situations, but it was only a level of familiarity with thug fights.
One by one, I cut down the attackers and beat them back.
It only took two minutes to deal with the fifteen men.
“Fuuh.:
“M-M-Murderer!!!”
One of the refugees who had gathered around screamed when he saw those people who had been cut down and were bleeding.
I didn’t kill any of them – but I guess you can’t see that.
“It’s a murderer! Somebody call the guards!”
“Don’t let the murderer escape!”
This time, the refugees surrounded me.
They were afraid of me because I had the leviathan in my hand, but they didn’t want to let me go.
After a while, a group of guards arrived, breaking through the crowd of refugees.
“Move, move! What’s going on?”
“Sir, that’s him, that’s the murderer.”
One of the refugees told the young man who seemed to be the leader of the guards what had happened.
And then the leader of the guards who heard it headed over to us with glaring eyes.
“What! Y-Your Majesty!”
He looked so surprised, as if he had just found a ghost, that he immediately dropped to one knee and bowed to me.
“My apologies, I didn’t know that His Majesty the Emperor was here!”
Immediately after the guard said this, there was a few seconds of silence.
“You are in the presence of His Majesty the Emperor!”
Zoe said in a voice that was clear – and increasingly dignified.
The refugees present looked at the guard and all knelt down at the same time.
Then, I asked the guard leader.
“Did you recognize my face?”
It was unusual for a guard.
“Yes! I – well, I was one of Rice-sama’s subordinates, and for a while, I was an errand boy for the Ministry of Military Affairs.”
I was there when Henry was in the Ministry of War, so I guess I’d seen his face before.
“It’s really the Emperor.”
“The Emperor has defeated the bad guys?”
“How powerful he is ......”
Normally, people would refrain from talking in front of the emperor, but the refugees from the countryside didn’t understand that and were whispering their opinions.
I ignored them and ordered the guard leader.
“Catch these people. They are suspected of being illegal slavers.”
“By your will!”
Once the order was given, the rest was quick.
The guards were very good at what they were doing, and they took the people I had cut down – those who had not been killed – and took them somewhere.
I looked around.
Children ...... drags you down, was it?
I remembered the words of the buyer earlier.
The father tried to sell the child, even for a moment – no, in fact, considering that there are other people who sold the child, as long as you are a refugee, the child can become a drag.
If that’s the case with a child then for example a baby would be a complete liability.
However, people are treasures.
Especially the babies who still have nothing but hope.
“Baby ...... infant ...... education......”
I don’t like the way it sounds.
In this case...
“Zoe.”
“Yes.”
“Go to Don and have him set up a ‘nursery’. If the refugees can’t handle them, let the kids stay there for a year- no, three years.”[TN: Although I used nursery, it’s more of a school boarding home, I guess]
“I understand.”
Zoe, who is loyal to me, accepted the order without saying anything else.
On the other hand, Byron, who was watching the whole thing closely, said.
He said with a smile. |
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} | アルメリアに移動する途中で、ガベル州の辺境を通り過ぎた。
ポーションの件を早く何とかするために、余計な事に巻き込まれないために、夜は道の駅――それも私営のところに宿泊する事にした。
の、だが。
「お、お久しぶりです、陛下」
馬車から降りて、道の駅の宿に入ろうとしたところ、待ち構えていた男が俺に跪いて頭を下げた。
「お前は......フィル・モーム。なにゆえここにいる」
顔を上げた青年――フィル・モームは、塩税で取り立てた青年総督だ。
ガベル州の総督であり、奴隷上がりでまだまだ不慣れで多忙の身のはずなんだが。
「陛下が来るって聞きました、だから護衛に」
「護衛?」
眉をひそめまわりをよく見た。
なるほど、確かに隠してはいるが、あっちこっちに旅人じゃない雰囲気をした連中が多数いる。
「こういう時、護衛と、挨拶にくるものだって聞きました」
「......なるほど。ついでに話がある、どこか話せるところに案内しろ」
「はい」
まだ臣下としての言葉使いに不慣れなフィル・モーム。
立ち上がって、自ら俺を案内した。
宿の一つ――事情を知っていれば貸し切ったとすぐにわかる宿の中に案内されて、その中でも一際豪華な部屋に通された。
俺が促すと、フィル・モームは部下とか使用人とかを全部下がらせて、部屋の中で俺っきりになった。
そして、改めて片膝を付いて、臣下の礼を取った。
「よい、そんな事よりも話がある」
「は、はい! なんでしょう」
「まず、報告は読んでいる。あれでいい、気になったこと、報告したいことがあればいつでも送ってこい」
フィル・モームの報告書、読み書きが出来ないから、絵にして俺に送ってきた。
今の話を聞いてると、あれもそのうち、部下だかなんだかの「善意のアドバイス」につぶされかねない。
「誰か何か言ったら、あれでいい、勅命だ、と返しておけ」
勅命だと強調すると、フィル・モームは無駄に力が入ったポーズで頷いた。
「で、これからはこういうのはいい」
「い、いいんですか?」
「ああ。お前にもう一つの勅命、密命をやる。民の為に動け、余への礼法は無視していい」
「し、しかし。それじゃ――」
何か言おうとするフィル・モームを遮って、真っ直ぐ見つめた。
はっきりと、若干遅めの口調で、重々しく言い切った。
「礼法に長けた人間は腐るほどいる。それが必要ならお前を取り立てていない」
「――っ!」
「わかったな」
「はい! わかりました!」
「うむ」
ここまで言えば大丈夫だろう。
そしてそこまで言ったせいで、フィル・モームはかなりかっちこっちに緊張していた。
それをほぐすために、適当な話を振ってみた。
「そういえば、結婚はしたのか?」
「ま、まだです」
「なんだ? いい相手が見つからなかったのか? 余が紹介してやろうか」
「そうじゃなくて。ずっと一緒だった子達がいて、どっちにするべきか、悩んでて......」
「なんだ、そんな事か」
俺はフッと笑った。
フィル・モームは、奴隷上がりにありがちな「思い違い」をしている。
「いいか、フィル・モーム。一夫多妻というのは貴族の義務だ」
「ぎ、義務ですか?」
「奴隷だったお前の目には権利、しかも特権に見えるだろう? 違うのだ、義務なのだ」
「どういうことなんでしょう?」
「養える人間が多く養って、育てるのが義務だ。庶民は産めても養えない事が多いだろう? 極論、同じ病気になったとしても今までのお前だったら神頼み、しかし今のお前なら医者に診せられる」
だからこそ、帝国は闇奴隷商を禁じて、その辺りをどうにかしようとしていた。
「は、はい! 診せられます!」
「貴族なら養える、育てられる。人は宝、そして可能性だ。養える力のある人間が多く産ませるのは義務だ」
分かったような、分からない様なフィル・モームだ。
このあたり、貴族と平民とでは考え方の違いが激しい。
庶民は一夫多妻に意味を見出せず、もっぱら享楽の為にしているのだと、はなから思い込んでる事が多い。
「そもそもだ」
「え?」
「帝国は戦士の国、というのは分かっているな」
「常に外敵と戦争状態にある帝国は、男が常に前線で死に続けている。女は前線には出ないから減らない」
今のところはな、と、ジェシカの姿が脳裏に浮かび上がってきた。
「全員が一夫一妻では女は余ってしまうのだよ」
「あっ......」
フィル・モームはハッとした。
「まあ、どうしても自分はやりたくないのならそれはそれでいい。それだったら下の人間がそうできるようにしろ。女が余るのは帝国が帝国である以上変わらん。ならお前が治める土地を豊かにして、男が普通に複数の妻を娶れるほど豊かにすればいい」
「な、なるほど。さすが陛下! やっぱり民の事を考えていたのですね」
どっちかというとお前を納得させるための理屈を探していたんだ、とは。
話をややこしくさせてしまうから言わないでおいた。
「というわけで、取り敢えず迷っている古馴染みはどっちも娶っておけ」
「わかりました!」
フィル・モームの一件があったため、俺はペースを上げつつ、更に行方をくらましつつ。
途中のいざこざ(の可能性)を全部スルーして、最速でアルメリア州、州都ニシルに到着した。
ニシルの入り口に馬車をとめて、飛び降りる。
封地入りしていた頃からあまり変わらない、街中に張り巡らされた水道で栄えている水の都そのままだった。
いい街だ、と改めて思ったのとほぼ同時に。
「お待ちしてました、
そばから、懐かしい呼び方が聞こえてきた。
振り向くと、メイド服に身を包んだエヴリンが
「ああ、久しぶりだなエヴリン」
「ご案内します、こちらへどうぞ」
エヴリンはそう言って、俺を先導して歩き出した。
俺は馬車の御者に目配せだけして、エヴリンについて行く。
しばらく歩いて、エヴリンに連れられて質素な家に入った。
家に入って、ドアを閉めきってから、エヴリンは改めて膝をついた。
「ご無礼をお許し下さい」
「いや、これでいい。ついでだ、人がいないここでなら陛下呼びもいらん。ご主人様でいい」
エヴリンはすっ、と立ち上がった。
王邸から外に出して大分経つ、そのメイド姿は懐かしさを覚えるほどだ。
「俺がくるのは誰にもいってないな?」
「よし。で、龍脈の話なんだが――」
前もって、簡単な説明を手紙でエヴリンに送った。
その補足に、もっと詳しく説明してやろうと思った。が、
「それでしたら、三日間の取水制限と、貯水命令を出しました」
「ほう?」
「水源に、とのことですので。貯水はもとより取水も制限致しました。これでよろしかったでしょうか」
「ふむ、よくやった」
俺はエヴリンを褒めた。
エヴリンは嬉しそうに、微かに頬を染めた。
急ぎだったし、事が事だったというのもある。
エヴリンに宛てた手紙は最低限の説明しかしてなかった。
それでもエヴリンは、最大限民の事を考えた施策をした。
「本当によくやった。十三親王邸から一番最初に外に出した家人だ。お前がそうしてくれてると、俺も鼻が高い」
「そ、そんな......恐縮です」
エヴリンはますます恥ずかしそうに、顔を背け目をそらしてしまった。
そして、それをごまかすかのように、袖の下から一枚の紙を取り出し、俺に手渡した。
「これは?」
「ニシルの全水路を描いた図面です。これも必要になると思いまして」
俺は水路図を受け取って、開いて眺めた。
一通り眺めてから、俺もポケットか折りの紙を取り出して、開いて比較するように交互に見た。
「それは何でしょうか、ご主人様」
「ああ、ニシルの最古の水路図だ」
「え!?」
エヴリンがブルッと震えた。
何故か大きなショックを受けてしまったかのように震えてしまった。
そして俺が見せた古い水路図を見て、ますます顔が驚きに染まる。
「実は......」
エヴリンはもう一枚、紙を取り出した。
それを受け取って、目を通す。
俺が取り出した「最古の水路図」とほぼ一致しているものだった。
「これは?」
「ご主人様がおっしゃったように、古い方の水路図です。これも必要だと思って調べさせたのですが、何分既に歴史になっているほど遙か昔の出来事、真実だと確認するまでは出来ませんでしたので、出すべきかと迷っていました」
「なるほど。この二つが一致しているということは、これであっているということだな」
「それをどうやって......?」
「リヴァイアサンに書かせた」
「リヴァイ......レヴィアタンですか? あの魔剣の」
「ああ。そしてリヴァイアサンとは、かつての四賢者のリヴァイアサンと同一の存在だったのだ」
「なんと!? そんな存在を屈服させている......さすがご主人様です」
エヴリンはこの日一番の、尊敬する眼差しで俺を見つめた。
「なるほど、これが大地の力か」
ニシルの街から少し出て、二つの水路図と、リヴァイアサンの記憶から導きだした龍脈の上に立った。
すると......感じた。
大地の下に流れている、「見えない水脈」を。
大地の力、魔力が流れているその龍脈の存在をはっきりと感じ取った。
「凄まじい力だ」
「そのようなものがあるのですね」
「感じないか?」
「愚鈍にして......」
エヴリンは申し訳なさそうに、微かにうつむいてしまった。
「しかし、これほどの力だ。リヴァイアサンが言うとおり、川が集まって海に流れ込んでいくかのごとく――なら大地に異変がとっくに起きてるはずだ。何かないのか?」
「いいえ。お話ではご主人様が新たな水路を増築した前後の話でしたので、それを調べてみたのですが、『自然界』というくくりでは、特に何かが変化したと言うことはありませんでした」
どういう事なんだろうな。
俺は龍脈の流れに沿って歩き出した。
流れているのは確かだ、なら、集まっている最終地点も見ておこう。
そう思って、流れに沿って歩き出すと、街から約二十分ほど離れた辺りで、
「ここか」
「なにがですか?」
「淀み、か? せき止められている」
「せき止められている?」
俺が言うと、エヴリンは理解不能ながらも、言われた通りに下がった。
「リヴァイアサン」
腕輪の中から魔剣を抜き放ち、彼女を召喚した。
幼げな老女が、人を越えた存在が目の前に現われた。
「どうすればいい」
「河川となんら変わりない。決壊させてしまえばいい」
頷き、少し考える。
腹を決めて、リヴァイアサン(剣)を地面に突き立てた。
そして、力を流す。
龍脈に向かって、一瞬だがその一瞬で全力で力を流した。
ゴゴゴゴゴ......地鳴りがした。
直後、大地から何かが飛び出してきた。
大地を割って、空に飛び上がった黒くまがまがしい肉体。
まがまがしいオーラを放った竜種だった。
モンスターの中でもとりわけ強い相手を見て、エヴリンは叫んだ。
「お逃げ下さいご主人様! 今すぐ兵を集結――」
両断。
飛び上がり、肉薄して、リヴァイアサンを振るって竜を縦に真っ二つにした。
一刀のもとに斬り捨てられた竜は、力を失って地面に墜落する。
どしん! と大地が更に揺れた。
竜は強かったが、それ以上にリヴァイアサンが強かった。
そして、やる気になっていた。
現われるなり俺に殺気を向けてきた竜に、リヴァイアサンがぶち切れた。
今まではブレーキをかけ続けてきたリヴァイアサンの殺意、それを初めて好きにさせた。
結果、おそらくは1000人ほどの兵で討伐を試みるほどの竜を、一刀の元に斬り捨てた。
それを至近距離で見ていたエヴリンは、ぽかーんと口を開いて絶句してしまった。 | On our way to Almeria, we passed through the frontier of the Gavel region.
To handle the potion matter as quickly as possible, and to avoid getting involved in anything unnecessary, we decided to stay the night at a roadside inn – a private establishment.
But...
“Oh, it’s been a while, Your Majesty.”
When I got off the carriage and was about to enter the roadside inn, a man who was waiting for me kneeled down and bowed to me.
“You are ...... Phil Mohm. Why are you here?”
The young man who raised his head – Phil Mohm, was the young governor who had taken up a case of the salt tax.
He is the governor of the Gabel Province, and as a former slave, he is still new to the city and busy with his work.
“I heard that His Majesty is coming, so I decided to be his escort.”
“Escort?”
I furrowed my brow and looked around me carefully.
I see, there are many people here and there who look like they are not travelers, although they are certainly concealed.
“I heard that in such a case, the escort would come to greet.”
“......... I see. Lead somewhere we can talk, I have something to talk to you about.”
Phil Mohm was still unfamiliar with the language of the vassals.
He stood up and personally led me to,
One of the inns – you could easily tell it had been rented out if you knew what was going on and I was shown into one of the most luxurious rooms in the inn.
At my prompting, Phim Mohm dismissed all his men and servants and left me alone with him in the room.
Then he got down on one knee again and took the courtesy of a retainer.
“Good, there’s something you need to know.”
“Y-yes! What is it?”
“First of all, I’ve read your report. That’s fine, and if you have anything you want to tell me, send it to me anytime.”
Phim Mohm reports in picture form to me, because he can’t read or write.
The way I see it now, one of these days I might be overwhelmed by the ‘well-meaning advice’ of my subordinates.
“If anyone says anything, it’s fine because it’s an Imperial decree.”
When I emphasized that it was an Imperial order, Phim Mohm nodded with an unnecessarily forceful pause.
“And from now on, it’s okay not to do this.”
“I-Is that all right?”
“Yeah. I’m going to give you another Imperial order, a secret one. You are to act for the good of the people and disregard the etiquette.”
“But... But then...”
I interrupted Phil Mohm, who was about to say something and looked him straight in the eye.
This time, I said clearly, in a slightly slower tone, and with great gravity.
“There are plenty of people who are good at etiquette. If that were necessary, I wouldn’t have taken you in.”
“—!”
“Yes! Understood!”
“Umu.”
It would be all right if I said this much.
And because I had said all this, Phim Mohm looked somewhat nervous.
To loosen him up, I asked him a random question.
“Speaking of which, have you gotten married yet?”
“N-Not yet.”
“What? You didn’t find a good partner? I can introduce you.”
“No, that’s not it. Some girls have been with me for a long time, and I’m not sure which one I should choose. ......”
“Oh, that’s what this is about?”
I chuckled.
Phil Mohm was ‘misunderstanding’, which tends to happen to ex-slaves.
“Listen to me, Phil Mohm. Polygamy is an obligation of the nobility.”
“O-Obligation?”
“In your eyes, as a slave, it seems a right, a privilege, doesn’t it? But it is not, it is a duty.”
“What does that mean?”
“It is the duty of those who can support themselves to support and nurture as many people as possible. The common people often cannot support themselves even if they can give birth, right? Ultimately, if you were to get a disease, you would have to ask God for help, but now you can get a doctor to take care of you.”
That is why the Empire had banned the black market slave trade and was trying to do something about it.
“Y-yes! I can see a doctor!”
“Nobles can feed and nurture. People are treasures and potential. It is the duty of those who have the power to nurture them to give birth to more of them.”
Phil Mohm sounded as though he understood, but he didn’t that much.
In this regard, there is a strong difference in the way of thinking between the nobility and the commoners.
The average person often thinks that polygamy is for pleasure only, not for meaning.
“To begin with,”
“Eh?”
“You know that the Empire is a nation of warriors.”
“The Empire is always at war with the outside world, and men are always dying on the front lines. Women are not on the front lines, so they do not decrease.”
Not at the moment, I thought, as the image of Jessica flashed through my mind.
“If everyone was monogamous, there would be a surplus of women.”
“Ah, .......”
Phil Mohm huffed.
“Well, if you really don’t want to do it, that’s okay. But make sure that the people below you can do so. The surplus of women will never change as long as the Empire remains itself. So enrich the land you rule and make it rich enough that a man can usually take more than one wife.”
“I-I see. As expected of His Majesty! After all, you were thinking of the people.”
If anything, I was looking for a logic to convince you, I thought.
I didn’t say that because it would have complicated the conversation.
“So, for the time being, take either of the old acquaintances you’re not sure about and marry them.”
“I understand!”
After the incident with Phil Mohm, I picked up the pace, while further missing from the scene.
I arrived at Nisir, the capital of the province of Almeria, at the fastest speed possible, passing through all the troubles (possibilities) on the way.
We parked the carriage at the entrance of Nisir and jumped off.
It was just as it had been since I had entered the enclave, a thriving water city with a water system that stretched all over the city.
It is a nice city, I thought again at the same time.
“We have been waiting for you, Master.”
I heard a familiar call from nearby.
I turned around to see Evelyn standing alone, dressed in a maid’s outfit.
“Yeah, it’s been a long time, Evelyn.”
“Allow me to show you around, this way, please.”
Evelyn said and started to lead me away.
I glanced at the coachman and followed Evelyn.
After walking for a while, Evelyn led me into a modest house.
After entering the house and closing the door behind us, Evelyn kneeled down once again.
“Please excuse my rudeness.”
“No, this is fine. No need to call me His Majesty if I’m with no one else. Call me master.”
“Understood.”
Evelyn then quickly stood up.
It’s been a long time since she left the th Prince’s mansion, and seeing her in her maid’s outfit makes me feel nostalgic.
“You haven’t told anyone I’m coming, have you?”
“Yes.”
“Yes. So, about the dragon’s vein...”
I sent a brief explanation to Evelyn in a letter beforehand.
As a follow-up, I thought I would give him a more detailed explanation. But,
“For that matter, I’ve issued a three-day water withdrawal restriction and a water storage order.”
“Hoo?”
“Since it’s the water source. So we have restricted not only water storage but also water withdrawal. Was that a good idea?”
“Fumu, well done.”
I praised Evelyn.
And Evelyn looked happy as she blushed slightly.
It was urgent, and partly because of the way things were.
The letters to Evelyn gave only the barest of explanations.
Even so, Evelyn made the most of the measures she had taken with the people in mind.
“You did a really good job. You’re the first retainer to leave the th Prince’s residence. And I’m proud of you for doing so.”
“T-That,...... excuse me.”
Evelyn turned away and looked away, looking even shyer.
Then, as if to cover it up, she pulled a piece of paper out from under her sleeve and handed it to me.
“And this is?”
“It’s a blueprint of all the waterways in Nisir. I thought you might need this as well.”
I took the map, unfolded it, and looked at it.
After taking a quick look at it, I took a folded piece of paper out of my pocket, opened it up, and looked at it in turn, as to compare them.
“Is there something, Master?”
“Yeah, it’s Nisir’s earliest waterway map.”
“Eh!?”
Evelyn jolted up.
For some reason, she trembled as if she had received a great shock.
Then she looked at the old map I had shown her, and her face grew more and more surprised.
“What’s wrong?”
“Actually, it’s .......”
Evelyn took out another sheet of paper.
I take it and look it over.
It was almost identical to the ‘earliest waterway map’ I had taken out.
“What is this?”
“As the master said, it is the older waterway map. I had it checked because I thought it was necessary, but it happened so long ago that it had already become history, and I couldn’t confirm that it was true.”
“I see. The fact that the two coincide means that this is correct.”
“How did you come up with ......?”
“I had Livyathan write it.”
“Livya ...... Leviathan, was it? The Demon Sword.”
“Yeah. And Livyathan is the same being as the former Livyathan of the Four Sages.”
“What!? And bringing such an entity to its knees,......, as expected of Master.”
Evelyn looked at me with the most respectful gaze that day.
“I see, so this is the power of the earth.”
A little out of the city of Nisir, I stood on the two waterway maps and the dragon vein that I had derived from Livyathan’s memory.
Then ....... I felt it.
The “invisible vein” that flows beneath the earth.
I clearly sensed the dragon vein’s presence, where the earth’s power and magic flowed.
“It is a tremendous power.”
“Is there such a thing?”
“Don’t you feel it?”
“I am ashamed .......”
Evelyn apologetically slumped slightly.
“But it is such power. As if the rivers were gathering and flowing into the sea, as Livyathan said – if so, there should have been an anomaly in the earth long ago. Wasn’t there something?”
“No, sir. The time you mentioned was before master added a new waterway, so I checked into that, but there was nothing to indicate that anything, in particular, had changed in the ‘natural world’.”
I wonder what that means.
I started walking along the dragon’s vein.
It’s flowing, that’s for sure, so let’s take a look at the final point where it’s gathering.
So I started walking along the stream, and about twenty minutes out of town, I noticed it.
“Here it is.”
“Stagnation, huh? It’s blocked.”
“Stagnant?”
When I said that, even though Evelyn couldn’t understand me, she did as she was told.
“Livyathan.”
I pulled out the Demon Sword from my bracelet and summoned her.
A youthful-looking elderly woman, a being beyond human, appeared in front of me.
“What should I do?”
“It’s no different from a river. Just let it burst.”
I nodded and thought for a while.
Then determined, I thrust Livyasan (the sword) into the ground.
Then, channeled the power.
Toward the dragon vein, for an instant, but in that instant, I flowed the power with all my might.
Gogogogogo ...... the earth rumbled.
Immediately afterward, something came flying out of the earth.
A black, dazzling body split the earth and flew up into the sky.
It was a dragon type that emitted an aura of glamour.
Seeing the strongest of the monsters, Evelyn shouted.
“Master please escape! Gather the troops now—“
Bisect.
I jumped up, flung myself at it, and swung Livyathan, cutting the dragon in half.
With a single slash, the dragon lost its strength and crashed to the ground.
Thud! and the earth shook even more.
The Dragon was strong, but Livyathan was even stronger.
And was motivated.
Livyathan was furious at the Dragon, which had turned its murderous intent on me as soon as it appeared.
Livyathan’s killing intent, which had been kept on the brakes until now, was made to do as it pleased for the first time.
As a result, the dragon, which probably took about ,00 soldiers to attempt to defeat, was slashed down with a single sword strike.
Evelyn, who was watching it closely, was at a loss for words with her mouth wide open. |
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} | 「それだ......というのは?」
ヘンリーは訝しみ、首をかしげて俺を見つめた。
「盗賊団――ああいう裏稼業の人間は縄張り意識が強い。それを利用するのだ」
「......そういった輩同士に、互いに争わせるように仕向ける、と?」
「そうだ」
俺は大きく頷いた。
「毒をもって毒を制す。ジェリーを見て分かったのだが、ああいう人間は下手をすると騎士よりも名誉を欲しがっている。考えれば当然のことだ、裏稼業に身をやつす以上それを諦めなければならないが、それはしょうがないと思うからこその諦めに過ぎない。そこに、相応の名誉というエサをぶら下げてやればいい」
「具体的にはどうなさるおつもりで?」
「妥当な連中を見つけて、名誉騎士を授ける」
名誉騎士というのは、数年前に俺が考えついた制度だ。
国庫に寄付した人間にのみ与える、文字通り名誉だけで、実権無いものだ。
仮にも「騎士」であるのだから、現在は「まともな人間」にしか与えないようにしている。
盗賊などの裏稼業をしている人間には全くの無縁だ。
だが、ダメというわけではない。
伝統のある制度でもないし、そもそも親王である俺が考案したものだから、皇帝になった俺がどうイジろうが勝手だ。
「そうすると、名誉騎士を貰った連中に、貰えなかった連中が嫉妬する。そうすると――」
「自然と仲違いを始める。毒をもって毒を制す――さすがでございます」
ヘンリーは感心した表情で言った。
「ああ。もらえなかった連中の台詞はすぐに思いつくぞ。帝国の犬に成り下がった奴らめ――ってとこだろうな」
「間違いなくそうなると思います」
ヘンリーはその事に賛同した。
嫉妬というのは大抵の人間が持ち――逃れられない感情だ。
それを上手く突っついてやれば......。
「ヘンリー」
「いくつか候補を調べて来い。武力を持つ――盗賊団が良いな、それも奪うだけで、女に乱暴はしないタイプのを」
「何故そういうタイプを?」
「盗賊に類ある」
俺は「二種類」と言いつつも、一本だけ指を立てた。
「食うに困って仕方なくやってるのと、そうじゃないのとだ。食うにやむなく身をやつした連中は、よほどのことが無い限り余計な悪事を働かない。女というのはそれを測る尺度の一つだ」
「なるほど」
「そういうのを調べ出せ。名誉騎士にする口実も作りやすいし、ジェリーのように『改心』する可能性も高い」
「御意――さすが陛下、素晴しいお考えです」
半月後、俺はシャーリーと二人で、郊外の公道を進んでいた。
乗っているのは普段の馬車ではなく、荷馬車だ。
荷台には行商人らしい商品を山ほど積んでいて、御者台でシャーリーと肩を寄せて座っている。
「今からでも......おやめになった方がいいのではありませんか。陛下」
既に都を出発して一日近く経つが、シャーリーはまだ、俺の説得を諦めきっていないようだ。
「危険です、いくら何でも、陛下自らが囮など」
「危険だからといって何もしないんじゃ話にならない」
「それは分かりますが......今回の事、陛下が自らお出になる程の事ではないかと......」
「だからこそ余がでるのだ」
「だからこそ......?」
シャーリーは首をかしげた。
「良いか、何かあったときってのは、関係者が対処している時だ。余はもはや皇帝、そういう時にのこのこ出ていったところで、何も真実は見えやしない」
「それは......そうですね......」
ためらいながらも、シャーリーは静かにうなずいた。
「真実を知らなきゃ国は治められない。だから普段から、何も起きてない時から出歩き、自分の目で見て、体で感じるようにしなければならん」
「でも、危険です」
「危険?」
俺はふっ、と笑った。
「危険なんてあるものか」
「え?」
「お前の事だ、どうせ護衛は付けてるんだろう?」
「――っ!」
図星だったようで、シャーリーはわずかにのけぞりながら、目を見開いてびっくりした。
しばらくして、落ち着きを取り戻して。
「はい。シェリルに2000の兵を持たせて、後方数キロで待機させております。騎兵もあり、いざという時は数分以内で駆けつけられます」
俺はすっくと立ち上がった。
御者台の上でジズの力を使い、背中に翼を生やして、垂直に飛び上がった。
ジズを手に入れて一ヶ月近く、毎日鍛錬してきたおかげで、垂直に飛び上がるだけなら、十メートル近くまで飛び上がる事ができるようになった。
その高さから、後方をみる。
地上にいるときは見えなかったが、この高さなら見える。
シャーリーの言うとおり、2000人くらいの兵が後方でゆっくりついてきている。
それを確認したあと、ゆっくりと荷馬車の上に降り立つ。
「過保護な事だ。まあ、それで気が済むのなら思う存分やればいい」
シャーリーもシェリルも俺の騎士だ、俺の身を案じて、対策を講じるのは彼女らの本分だ。
「......」
降りてきたあと、シャーリーは何故かぼうっと俺を見つめていた。
「どうした」
「......」
「おい、何かあったのか」
「......かっこいい」
「ん?」
「――はっ! な、なんでもありません! 失礼しました!」
我に返ったシャーリーは盛大に赤面して、顔を背けてしまった。
しばらくそうした後、顔色が戻ったシャーリーは俺に向き直って。
「でも、すごいです陛下。今のは何ですか?」
「余の新しい力だ。飛ぶだけのものだがな」
「『だけ』なんて、凄いです。まるで天使か、神のようでした。やっぱり陛下は凄いお方です......」
「それは良いんだけど、そろそろ直しとけ」
「直す?」
「呼び方だ。今回は身分を隠して事にあたる、
「わ、分かりました! これからはご主人様って呼びます!」
真面目な気質のシャーリーは、御者台の上で背筋を伸ばして、まるで敬礼するかのような勢いで応じた。
呼び方も直させたところで、俺たちは荷馬車に乗ったまま更に進んだ。
ヘンリーに調べさせた、候補の盗賊団に狙われるような進路をとって、進み続ける。
その日は何事もなく、途中にある宿屋に辿りついた。
荷馬車を止めて、シャーリーと宿屋に入る。
「いらっしゃいませ、お二人様でしょうか」
「そうだ。部屋は一つでいい、一番上等なのを用意しろ」
俺の従者になったシャーリーが、宿屋の主人と交渉した。
「はい、ありがとうございます。湯水もすぐにご用意しますので、まずはご案内します」
宿屋の主人はそう言って、俺たちを部屋に案内した。
宿屋の更に奥にある、独立した一軒家の部屋だ。
中の調度品はそこそこ良くて、それなりの村の村長の家くらいの感じだ。
郊外の宿屋でこれくらいの部屋があるのはかなりのものだろう。
宿屋の主人がうかがうように聞いてくる、シャーリーも俺の方を見た。
「いいだろう、ここで一晩あかそう」
俺はそう言いながら、懐から革袋を取り出して、宿屋の主人に放り投げた。
「200リィーンある。釣りは要らん」
「ありがとうございます、ありがとうございます!」
宿屋の主人は大喜びして、顔や足を洗うためのお湯とタオルを持ってくると言って、部屋の外に出た。
二人っきりになると、シャーリーが聞いてきた。
「ご主人様......今のは与えすぎなのではありませんか?」
「あれはエサだ」
「エサ?」
「気前の良い商人の噂を広める為のな。ただ漠然と歩いてたんじゃ 何時狙われるかも分からん。多少はエサを撒いて、食いつきを早めないとな」
「なるほど! さすがでございます!」
シャーリーは感心した顔で言った。
その晩、宿屋の主人のサービスがいいって理由をつけて、更に倍の400リィーンを与えた。
主人の目が糸のように細くなって、満面の笑みを浮かべたのは言うまでもない。
その事が宿に泊まった他の客の耳に入って、噂になったのをシャーリーに確認させた。
それが功を奏した。
次の日、宿屋を出発してから一時間足らずで。
俺たちは、盗賊の一団に包囲された。 | ” That’s it,...... what do you mean?”
Henry looked at me quizzically, tilting his head.
“Bandits – people who work in the underworld – are very territorial. We use that to our advantage.”
” ...... So you’re trying to get these people to fight each other?”
“Yes.”
I nodded my head.
“Using poison to control a poison. As I found out from Jerry, such people are more interested in honor than knighthood. It’s natural to think about it, as long as you are in the underworld business, you have to give it up, but it’s only because you think you can’t help it. You should hang the bait of appropriate honor on it.”
“What exactly do you intend to do?”
“We’ll find the right people and give them honorary knighthoods.”
Honorary knight is a system I came up with a few years ago.
It is literally just an honor, with no real power, given only to those who have donated to the treasury.
Since they are “knights,” I’m currently only granting them to “decent people”.
Those who are thieves and other underhanded people have absolutely nothing to do with it.
But that doesn’t mean it’s bad.
It’s not a traditional system, and since it was invented by me as a Prince, it’s up to me as an Emperor to tweak it however I see fit.
“Then those who did not get the honorary knighthood will be jealous of those who got it. And then...”
“They will naturally start to disagree with each other. Control poison with poison — as expected.”
Henry said with a look of admiration.
“Yeah. I can think of a few lines for those who didn’t get it. They’ve become the dogs of the empire, I suppose.”
“I think it will definitely happen.”
Henry agreed with him.
Jealousy is an emotion that most people have that they can’t escape.
If we poke at it well, we can .......
“Henry.”
“Yes “
” Look up a few candidates. Those with armed forces – bandits who only rob and do not violate women.”
“Why do you want that type?”
“There are two types of bandits.”
I said “two types” but held up one finger.
“Those who are forced to do it because they can’t afford to eat, and those who don’t. The ones who have no choice but to eat don’t do anything wrong unless they have to. Women are one way to measure that.”
“Find out about them. It’s easy to make an excuse to make them honorary knights, and there’s a good chance they’ll ‘convert’ as Jerry did.”
“By your will — as expected, Your Majesty, that’s an excellent idea.”
Half a month later, Shirley and I were on a public road in the suburbs.
It’s not the usual carriage that we are riding in, but a cart.
In the back of the cart was a pile of goods that resembled a peddler’s, and Shirley and I were sitting shoulder to shoulder on the peddler’s stand.
“Even now, it would be better to leave ......, wouldn’t it? Your Majesty.”
It’s been almost a day since we left the capital, but Shirley still seems to have not given up on persuading me.
“It’s dangerous, no matter what, for Your Majesty to take the bait yourself.”
“You cannot just do nothing because it’s dangerous.”
“I understand that, but ...... I don’t think that this is something that His Majesty would go out of his way to do. ......”
“That’s why I have to go.”
“That’s why ......?”
Shirley tilted her head.
“Look, if something goes wrong, that is when the people involved are dealing with it. I am the Emperor now, and if I leave at such a time, I will not see the truth of anything.”
“That’s ...... right, .......”
Even though she hesitated, Shirley nodded quietly.
“You can’t rule a country if you don’t know the truth. Therefore, you have to go out and see with your own eyes and feel with your own body, even when nothing is happening.”
“But it’s dangerous.”
“Danger?”
I chuckled.
“There is no such thing as danger.”
“Eh?
“I mean, you are one of the escorts, aren’t you?”
“–!”
Shirley’s eyes widened in astonishment, as she realized what I meant.
After a while, she regained her composure.
“Yes, sir. With , units under Sheryl’s command, we have them waiting for a few kilometers to the rear. We also have cavalry that can be on the scene in a matter of minutes.”
I stood up easily.
Using Ziz’s power on the platform, I sprouted wings on my back and flew up vertically.
Thanks to my daily training for almost a month since I acquired Ziz, I can now fly up to ten meters vertically.
From that height, I looked behind me.
Although I couldn’t see it when I was on the ground, I could see it from this height.
Shirley was right, there were about 00 soldiers slowly following behind us.
After confirming this, I slowly climbed down onto the wagon.
“That’s overprotective. Well, if it makes you feel better, go ahead and do what you want.”
Shirley and Sheryl are both my knights, it is their duty to look out for me and take measures to protect me.
“......”
Shirley was staring at me blankly for some reason after I descended.
“What’s wrong?”
“......”
“Hey, what’s the matter?”
“......Cool.”
“Hmm?”
“—Yes! N-Nothing at all, sire! Excuse me!”
Shirley blushed profusely when she came to her senses and turned her face away.
After doing so for a while, Shirley’s complexion returned and she turned to me.
“But it’s amazing, Your Majesty. What was that?”
“It’s my new power. All it does is fly.”
“Just ‘just’ is amazing. It was like an angel or God. After all, His Majesty is an amazing man. ......”
“That’s all well and good, but you’re gonna have to fix that.”
“Fix it?”
“The way you call me. This time, I will be hiding my identity, and if you keep calling me “Your Majesty,” it won’t work, will it?”
“U-Understood! I’ll call you Master from now on!”
Shirley, who has a serious temperament, straightened her back on the platform and responded as if she was saluting.
After I had her correct the way she addressed me, we continued on our way in the wagon.
We kept going, taking a path that Henry had suggested would be targeted by a potential bandit group.
The day was uneventful and we reached an inn along the way.
I stopped the wagon and entered the inn with Shirley.
“Welcome, are you two here?”
“Yes, we are. One room is fine, just make sure you get the best one.”
Shirley, now my servant, negotiated with the innkeeper.
“Yes, thank you for the patronage. We will prepare hot water right away, and I will show you around first.”
With that, the innkeeper led us to our room.
It was an isolated room further inside the inn, in a house of its own.
The furnishings inside were reasonably good, about the size of a village chief’s house.
It would be quite a feat to have a room like this in a suburban inn.
The innkeeper asked me curiously, and Shirley looked at me.
“All right, let’s spend the night here.”
I took out a leather bag from my pocket and threw it to the innkeeper.
“There are 200 reens. Keep the change.”
“Thank you very much, thank you very much!”
The innkeeper was overjoyed and went out of the room, saying he would bring him some hot water and towels for us to wash our faces and feet.
Once we were alone, Shirley asked.
“Master ......, isn’t that a bit much to give?”
“That was bait.”
“Bait?”
“It’s to spread the word about the generous merchant. If we just walk around aimlessly, we never know when we might be targeted. We have to spread some bait to get them to bite.”
“I see! That’s great!”
Shirley said with a look of admiration on her face.
That night, I gave the innkeeper double the amount of 400 reens saying that his service was good.
Needless to say, the owner’s eyes narrowed like a thread and a big smile appeared on his face.
I had Shirley confirm that this had been overheard by the other guests staying at the inn and had become a rumor.
That did the trick.
The next day, less than an hour after we left the inn.
We were surrounded by a group of bandits. |
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} | 次の日、メイドのジジを連れて、街に出掛けた。
適当にぶらついて、街の様子を見る。
アルメリア州、州都ニシル。
州都、と呼ばれているだけあって、通常の街の数倍の規模がある。
の区画に分けて、東西南北と代官が四人必要な事からも街の規模の大きさが分かろうというものだ。
正直、封地入りしてから大分経つが、まだニシル全体を回りきっていない。
民の日常を知るためにも、俺はこうして街をぶらついていた。
「ご主人様、なんだかあっちが賑わってるみたいです」
「うむ。何か見世物でもあるのかな」
ジジが気づいて、指さした先を見た。
典型的な何かが起きて、野次馬が集まっている雰囲気だ。
俺は野次馬に近づき、近くの男に聞いてみた。
「これはなんの騒ぎだ?」
「死刑の執行だよ。今日は強姦殺人のクズが打ち首にされるって話だから、みんな見に来てるのさ」
男は興奮気味に答えた。
死刑というのは、公衆の面前で執行されることがよくある。
謀反人とかは見せしめの為にこうするし、大衆の怒りを買うような犯行内容のものは溜飲を下げるためにする事が多い。
今回は後者。強姦殺人犯なら、まあこうして公開処刑になるのも分かる。
話は分かった、これ以上見る必要は無さそうだ。
俺は法務親王大臣、のまとめ執行の最終決定権を持つ立場だ。
その立場にいて数年経つ、今更死刑を見物するような立場でもないし趣味もない。
ジジを連れて、この場から立ち去ろうと――したその瞬間。
野次馬が集まっている広場、取り囲んでいる死刑執行のための台。
その上に、代官と、執行人と、犯人とそれを取り押さえる人間たちが次々と上がっていった。
代官は正装だ。死刑執行するときはそうするべきだと法で明文化されている。
執行人の男は、上半身裸のムキムキな男だ。
よく研いである、遠目からでも鋭さが窺える刀を抱えている。
犯人は後ろ手を縛られて、ぐったりとした様子で台に上らされて、ひざまづかされた。
あっちこっちから罵声があがった。
強姦殺人犯、という事は既に皆が分かっているところで、社会の敵と化した犯人に周りから罵声が次々と浴びせかけられた。
代官は前に出て、両手を挙げる。
罵声が大分やんだ。
静かになったところで、代官が犯人に向き直って、よく通る声で。
「クレイグ・ホールだな。何か言い残すことは?」
跪かされて、項垂れていた犯人はそれを聞いて顔を上げて何かを言いたげだったが、喉から呻き声を漏らすだけで言葉は出てこなかった。
「ないようだな。ならば」
代官は処刑人に目配せをした。
犯人を取り押さえる者達は左右から犯人を押しつけて、頭を下がらせた。
そして、執行人が刀を振り上げる。
「――――!!」
犯人は更にうめき声を漏らして、何か言いたげだ。
「......バハムート」
「通訳、できるか?」
『造作もない』
バハムートが答えたあと、犯人の呻き声が、バハムートを経由して分かる言葉に
された。
『私は無実だ! 陥れられたんだ!』
「――っ!」
執行人が刀を上げて――振り下ろす!
「待った!」
俺はそう叫び、同時に地面を蹴って飛び上がり、一直線に処刑台に向かっていった。
処刑人の刀は止まらなかった。
腕輪からレヴィアタンを抜き放ち、斬撃を放つ。
キーーン!
澄んだ音がして、処刑人の刀が真に折れた。
犯人――無実を訴える者の首は繋がったまま、無傷だ。
「何者だ!」
代官が俺に誰何した。
パスカル同様、俺の顔をまだ知らないようだ。
「俺が誰かなんてどうでもいい。その人は無実だ」
「脱獄の手引きか! 出合え! 出合ええ!!」
厳密には脱獄でもないんだが、代官は若干焦った様子で叫んだ。
すると、十人の兵士が台に上がってきて、俺に攻撃してきた。
「ふっ」
レヴィアタンを振るって、兵士達の武器を一つ残らず斬った。
更に返す刀で、全員の太ももとか肩とかを斬って、一先ず戦う力を奪い取った。
「なっ――!」
「「「おおおおお!!」」」
代官が驚愕し、群衆が歓声をあげた。
「何今の、すごくね?」
「一対十なのに一瞬で倒したぞ」
「どうやったのかまったく見えなかったぜ」
歓声に包まれる中、俺は代官に向き直る。
「その処刑、待った」
「お、お前、こんなことしてどうなるか分かってるのか」
「その人は犯人じゃない」
「何を言う! もう確定した――」
「証拠がある」
「――え?」
俺が声を上げて言い放った。
声は周りに響いて、急展開に野次馬達が静まりかえった。
ちょうどいい、黙らせる手間が省けた。
俺は周りを見た。
野次馬の一番前に、いかにも「おばちゃん」らしき中年の女がいた。
「そこの女、一つ頼みたい。台に上がってくれ」
女は不思議そうに思いつつも、なんだかおもしろそうだ、って顔で台にあがった。
「頼みたい事ってなんだ?」
「その犯人を調べてみてくれ。体をだ」
「はあ......?」
意味が分からないながらも、女は犯人に向かっていった。
代官が止めようとしたが、俺はレヴィアタンを喉先に突きつけて動きを止めた。
女が犯人に近づき、至近距離からしばらく「調べて」いると。
「なんてこと! この人女よ! 男装させられた女だわ!」
女がいうと、野次馬達が更に騒ぎ出し、
「............」
代官は、顔が青ざめてしまった。
「あんた、よく女だって見抜いたね。凄いじゃないか」
確認を終えた女は、見立て通り「おばちゃん」らしさ全開で言ってきた。
それをスルーして、代官を睨みつけながら聞く。
「女が、強姦殺人の犯人ってことはあるまい?」
「そ、それは――そうとは限らな――」
「犯人の名前はクレイグ・ホールだったな? どう聞いても男の名前なんだが?」
「それは......」
「まあ、身替わりなんてよくある話だ。珍しくもない」
法務親王大臣を長くやってると、現場のいろんな「小技」も分かるようになってくる。
死刑にされた犯人は、家に金があれば、関係者達に賄賂を送って、身替わりの人間と入れ替わる事がまぁある。
もちろん謀反人とか、有名な犯人は出来ないが、そうじゃないなら珍しい話でもない。
当然、関係者の中には執行に立ち会う代官も入っている。
俺は更に強く睨みながら、
「お前は金を貰っているのか」
代官は「うぅっ」、と更に青ざめた。
元は強姦殺人犯という社会の敵に向けられていた敵意や怒気が、徐々に真犯人を逃したかもしれないという代官に向けられた。
それを肌で感じている代官は、答えに窮した。
だが、どのみち「そうだ」とは答えられない。
「ち、違う。俺は何も知らない」
「本当だな?」
「ああ! 何も知らない!」
「じゃあこれは何だ」
俺はレヴィアタンを振るって、代官の服を斬った。
傷一つつけずに服だけを斬ったら、切口からポロリと、何かが台の上に落ちた。
ガラスの瓶で、中に液体が入っている。
アポピス経由で分かった。
「これは毒だ、彼女を喋れなくしたのと同じ毒だ」
「そ、そんなものは知らない――じゃなくて。それは私の常備薬だ!」
「ほう? だったら飲んでみろ。自分で飲んで何事もなかったら信じてやる」
「うっ――」
男は答えに詰まった。
野次馬達が騒ぎ出した。
「おい飲めよ!」
「自分の薬なんだろ?」
「皆の前で無実を証明してみろ!」
代官はまごついた。
「ふん」
俺は鼻をならして、代官に近づき、取り押さえて、薬を口の中に流し込んだ。
毒に詳しいアポピス。
それ経由で、数日は喋れなくなる毒だってのは判明している。
だから無理矢理飲ませた。
すると――
「げほっ......ごほっ......うぅ......あうぁ......」
代官はすぐに喋れなくなって。
「悪代官じゃないか!」
「そいつを捕まえろ!」
「真犯人はどこだ!」
完全に代官が関わっていると分かった群衆の怒りが、全て代官に向けられたのだった。 | The next day, I took my maid, Gigi, and went out to the city.
We wandered around at random and took a look at the city.
Almeria’s capital, Nisir.
It’s called the state capital, and it’s several times larger than a normal city.
The fact that it is divided into four sections and requires four governors for east, west, north, and south, gives you an idea of the size of the city.
Honestly, it’s been a long time since I entered the enclave, but I haven’t been able to visit the whole of Nisir yet.
I’ve been wandering around the city like this to get to know the daily life of the people.
“Master, it looks like it’s getting crowded over there.”
“Umu. Is there some kind of a show going on?”
I noticed it and looked at where she was pointing.
It’s a typical atmosphere where something is happening and onlookers are gathering.
I approached the onlookers and asked a man nearby.
“What’s this all about?”
“It’s execution. Today they’re going to behead a rapist and murderer, so everyone’s here to see it.”
The man answered excitedly.
I understood.
The death penalty is often carried out in public.
It’s often done to make an example of the perpetrators or to reduce the public’s anger at the crime.
This time it was the latter. If it was a rapist and murderer, I can understand why he would be publicly executed like this.
Now that I know the story, I guess I don’t need to look any further.
I’m the Minister of Justice, the one who has the final say on the yearly summary executions.
I’ve been in that position for a few years now, and I have no standing or taste for watching the death penalty now.
At the moment I was about to take Gigi with me and leave the place.
The square was filled with onlookers, and the execution platform was surrounded by them.
On top of it, the governor, the executioner, the criminal, and the people seizing him went up one after another.
The governor was dressed in formal attire. It was clearly stipulated in the law that they should do so when carrying out executions.
The executioner was a muscular man with a bare upper body.
He is carrying a well-sharpened sword that looks extremely sharp even from a distance.
The murderer’s hands were tied behind his back, and he was made to kneel on the platform in a limp state.
There were shouts of abuse from everywhere.
Everyone already knew that he was a convicted rapist and murderer, and he was shouted at from all around as he became an enemy of society.
The governor stepped forward and raised his hands.
The shouting ceased considerably.
When it had quieted down, the governor faced the criminal and said in a clear voice,
“Craig Hall... Any last words?”
“–!”
The murderer, who had been kneeling and drooping, looked up and wanted to say something, but no words came out except for a grunt that escaped his throat.
“‘I guess not. Then.”
The governor then glanced at the executioner.
Those seizing the criminal shoved him from both sides, forcing him to lower his head.
Then the executioner raised his sword.
“—-!!!”
The criminal let out another groan and seemed to be trying to say something.
“...... Bahamut.”
“Can you translate?”
{No problem}
After Bahamut answered, the criminal’s grunts were translated into a language that was understandable through Bahamut.
{I’m innocent! I’ve been framed!}
The executioner raised his sword and swung it down!
“Wait!”
I shouted, and at the same time kicked the ground, jumped up, and headed in a straight line for the execution table.
But the executioner’s sword didn’t stop.
I pulled out Leviathan from my bracelet and unleashed a slash.
Kinnn!
There was a clear sound, and the executioner’s sword snapped in half.
The criminal’s head – the one who claimed innocence – was still connected and unharmed.
“Who are you!”
The governor asked about my identity.
Like Pascal, he didn’t seem to know my face yet.
“It doesn’t matter who I am. That man is innocent.”
“You’re helping him escape! Get him! Get himm!”
Technically, it wasn’t a prison break either, but the governor shouted with some agitation.
Then ten soldiers came up to the platform and attacked me.
“Fuu.”
I swung Leviathan and slashed every single one of the soldiers’ weapons.
In addition, I slashed the thighs and shoulders of all of them in return, taking away their strength to fight for the time being.
“Wha—!”
“””Ohhhh!”””
The governor was astonished and the crowd cheered.
“What was that, so amazing, right?”
“It’s ten against one, and he beat them all in an instant.”
“I didn’t see how he did it at all.”
Amidst the cheers, I turned to the governor.
” Hold that execution.”
“Y-You don’t know what you’re getting into, do you?”
“That man is not a murderer.”
“What do you mean! We’ve already established...”
“I have proof.”
” – eh?”
I said, raising my voice.
My voice echoed around me, and the onlookers quieted down at the sudden development.
Just as well, it saved me the trouble of silencing them.
I looked around.
At the front of the crowd was a middle-aged woman who looked like an “auntie”.
“That lady over there, do me a favor. Get up on the platform.”
The woman looked at me strangely but seemed to think it would be interesting.
“What is it you want me to do?”
“I want you to investigate the murderer. Examine his body.”
“Haah ......?”
Although she didn’t understand what was happening, she headed towards the criminal.
The governor tried to stop her, but I put Leviathan to his throat and stopped him.
The woman approached the criminal and “examined” him for a while at close range.
“‘Oh my God! She’s a woman! A woman dressed as a man!”
The woman said, and the onlookers started to make more noise.
“............”
The governor’s face turned pale.
” You were able to tell she was a woman, huh. That’s impressive.”
After confirming her identity, the woman said in her full “auntie” way.
I ignored her and asked her while glaring at the governor.
“It’s not possible that the woman is the one who committed the rape and murder, is it?”
“T-That’s not– that’s not–“
“The killer’s name was Craig Hall, wasn’t it? That’s a man’s name for crying out loud.”
“That’s .......”
“Well, it’s common practice to switch identities. Not unusual at all.”
When you’ve been the Minister of Justice for a long time, you learn all kinds of little tricks in the field.
If the criminal who was sentenced to death is someone with deep pockets, they can bribe the people involved to switch places with them.
Of course, this is not possible for traitors or famous criminals, but if they are not, it is not unusual.
Naturally, some of the people involved are the governors who are present at the execution.
I glared at him even more fiercely.
“You got bribed for this?”
The officer turned even paler, “Uuuh”.
The hostility and anger that had originally been directed at the rapist and murderer, the enemy of society, gradually turned to the governor who might have let the real criminal escape.
Feeling it firsthand, the governor was at a loss for an answer.
But in any case, he couldn’t answer, “Yes.”
“N-No... I have no idea.”
“Are you sure?”
“No! I don’t know anything!”
“Then what is this?”
I wielded the Leviathan and cut the deputy’s clothes.
When I sliced through the clothes without damaging them, something fell out of the cut and onto the table.
It was a glass bottle with a liquid inside.
I found out via Apophis.
“It’s poison, the same poison that made her unable to speak.”
“Well, I don’t know anything about that – no. That is my regular medicine!”
“Oh? Then drink it. If you take it yourself and nothing happens, I’ll believe you.”
“Ugh...”
The man was at a loss for an answer.
The onlookers started screaming.
“Come on, drink it!”
“It’s your own medicine, isn’t it?”
“Prove your innocence in front of everyone!”
The governor was perplexed.
“Fuuh.”
I snorted and approached the deputy while seizing him I poured the medicine into his mouth.
Apophis is familiar with poison.
I knew from that that it was a poison that would make him unable to speak for a few days.
So I forced him to drink it.
And then...
” Gehou...... Gehou...... Ugh...... Aaah......”
The governor immediately stopped talking.
“That’s an evil official!”
“Catch him!”
“Where’s the real killer!”
The crowd’s anger, when they realized that the governor was fully involved, was all directed at him. |
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} | 「で、向こうには何て返事をした」
驚愕したままの男ず放っておいて、ゾーイに聞く。
「引き受けました。ご主人様であればそれを利用するかと思いましたので」
「うむ」
さすがは俺に長いこと従っているだけあって、ゾーイは俺の事が良く分かっている。
今回の件、店ごと消えた事も相まって、地下に潜られて出てこないのが一番面倒臭くなる。
ゾーイを買収しようとした、つまり限りなく表に近いところまで浮上してきてくれたのは、ありがたいという他ない。
ゾーイのファインプレイだ。
「俺達の正体はなんと答えた」
は皇帝陛下の密命を受けて調べに来た、と返事しました」
「え?」
男は更に驚いた。
「そうか、よくやったゾーイ。ほぼ満点の対応だ」
「ど、どういう事だ......?」
半ば絶句するほど不思議がる男と、同じように、若干だが不思議がっているゾーイ。
男だけならスルーしたのだが、ゾーイには説明しようと思った。
「人を騙すとき、嘘を並べるののやることだ」
男は「なるほど」、ゾーイは「うんそうだね」的な表情をした。
は本当の事を言いつつ、いざって時だけ嘘をつく」
「い、一流は?」
「本当の事しか言わない」
「本当の事しか言わない......」
俺の言葉を、まるで舌の上で転がすかのように、じっくり吟味する男。
一方で、男よりも少し理解が早かったゾーイは。
と言った。
「お前の返事も中々だ。今の所嘘は無い。向こうからすれば当たり前の展開だと納得するだろう」
「これから私はどうすればいいのですか?」
「俺の動きを余す事なく全部伝えろ。せっかく向こうが出てきてくれたんだ、当面は泳がせておくさ」
「畏まりました」
頷くゾーイ。
この程度の事なら、彼女は問題なくこなすだろう。
俺は考えた。
この旅でのもう一つの目的、ゾーイを連れてきた理由。
それは、彼女を育て、更に鍛え上げる為だ。
そのためには何をしたらいいのか、折角のこのチャンスをもっと利用するには――と頭をフル回転させた。
ゾーイは俺の思考を邪魔しなかった、じっと佇んだまま、次の言葉を待つ。
その間、俺は策を練り上げて、ゾーイにまず聞いてみた。
「連中とは連絡が取れるのか?」
「はい、緊急の時の連絡方法を教えてもらってます」
「よし、ならそいつらに会いに行け。ああ、その3000リィーンをケイトにくれてやれ。都に戻ったら俺が補填してやる」
「ご主人様の為なら3000リィーンくらい......でもどうしてですか?」
「向こうに言って、更に金を要求して来い。理由は今言ったとおり、3000リィーンはケイト買収に使った、と」
「......」
「な、何でそんな事をするんだ?」
ゾーイは口を真一文字に引き結んで考え込んだのに対して、男は持った疑問をそのまま俺に聞いてきた。
「どう思う? ゾーイ」
「......より向こうに取り入るため、でしょうか?」
「半分正解だ」
俺は微笑んで、手を伸ばしてゾーイの頭を撫でてやった。
そこまで解ればとりあえずは充分だ。
「そう、こういう時にもっと要求するのは、相手を安心させ、信用させるという効果がある。だが、ただ欲に任せて要求したのでは、同時に向こうに安く見られる」
「安く見られない為に、ケイトを買収......?」
ゾーイの思考は上手く繋がったようだが、その先までは届かないようだ。
意地悪をしたいわけではないから、種明かしをしてやった。
「同時に、相手の力量を測るんだよ。ある程度出来るやつなら、お前がこの大金を任務遂行の為にまず使ったと知れば、お前の事をそれなりに評価するはずだ」
「評価」
「金はつまるところ道具でしかない。道具をより効果的に使いこなせる人間だけがより多くの財を手に入れられる」
「......はい」
ゾーイは真顔で、静かにうなずいた。
「お前に追加で金を渡すかどうかで相手の力量を測るって訳だ」
「なるほど......さすがご主人様です!」
「ぶっちゃけ今までの話と同じだぞ?」
「お前は3000リィーンで買収されたと俺に報告した、俺は3万をお前にくれてやった」
「あっ......」
「それと本質は一緒だ。細部と金の流れ方が微妙に違うだけだ」
「なるほど!」
ゾーイは完全に納得したみたいだ。
まあ、買収を俺に知らせたのはこれで二回目だから、理解はしやすかったんだろう。
相手に接触して、更に買収の金をせしめようとするのにやる気が出た。
正直、結構な危険が伴う。
ゾーイにさせようとしているのは、二重スパイという事でもあるのだ。
今までのとは訳が違う、本人にも高いリスクがついて回る。
だが、それでも俺はやらせた。
ここにゾーイを連れてきたのは、彼女を更に育てるためだ。
多少の危険に踏み込ませて、この一件で更なる成長をしてくれる事を、俺は心から願った。
次の日、俺はゾーイを連れて宿を出て、街をぶらついた。
もちろん、事前にゾーイとケイト経由で相手に情報を流した。
調査に出かける時間、ルート。
それらの事を、相手に流した。
「いや......最近はすっかり不景気でねえ」
「俺らもどうにか食えてるような状況なんだよ」
「景気が戻ってくれればねえ......」
行く先行く先で、街の人間が不景気に嘆いていた。
住民が着ている服も質素な物になって、店に並ぶ商品も品揃えが
一晩で、街が思いっきり変貌した。
昨晩、フワワに見てこさせた街とはまったく違った感じだ。
「ふっ......やり過ぎだ」
「やり過ぎ、ですか?」
ゾーイは首をかしげて聞いてきた。
「この街に入ったときの事は覚えてるだろ? それがいきなりこれだ。何かを隠すにしても、やり過ぎだよ」
俺はそう言って、第三者には分からない様にゾーイに目配せした。
このやりとりも、向こうに伝えろというアイコンタクトだ。
ゾーイは縦にも横に首を振らずに、ただ、俺を見つめて「了解」と応じてきた。
ガベル食塩ギルド、本館。
その応接間で、ゾーイは二人の男と向き合っていた。
二人とも、華美な衣装で身を包んでいる。
ゾーイの目から見ても、皇帝のそれに勝るとも劣らないほど、上質な衣服だ。
二人とも大商人の肩書きがついてる割には若く、片方が三十台の中盤で、もう片方は三十になったばかりか、といったところだ。
ゾーイは二人に、ノアの言葉をありのまま伝えた。
「ご主人様は、やり過ぎ、だとおっしゃってました」
「やり過ぎだと?」
「はい。このデュセルにやってきた夜の事は私もよく覚えてます、夜ながらかなり栄えて、賑わっていました。それがあんな感じでいきなり不景気になるなんて......ご主人様がやり過ぎだと見抜いても仕方ない事かと」
「......だろうな。やり過ぎだ、馬鹿」
「馬鹿だって!?」
若い方の男が反発した。
どうやらこの男が実行したようだ、とゾーイは理解した。
「今の話を聞かなかったのか? 俺も実際に見てきた、あんなの、一回普段の街を見ていたら誰だって変化に気付くくらいの豹変だ。やり過ぎ以外の何がある」
「ぐっ......」
「少し緩めろ。それと......そうだな。少しだけ密輸をさせろ」
「何だって!?」
「ここまできたら密売がゼロなんて向こうも信じない。生け贄を用意してそいつに罪を被せろ」
二人の男が策を練るのを眺めるゾーイ。
彼女は密かに感心した。
(さすがご主人様......当たり前の反応を伝えただけで、相手の警戒を緩めていったわ)
ゾーイは確信していた。
この事は、ノアが狙ってやらせたことを。
なぜなら、ノアは彼女に「全部伝えろ」と言った。
そして、ノアは「嘘は言わない」のが一流だと本人も言った。
ノアは出来ない事は口にしない。
つまり、ノアはゾーイにも、「言わないでやろうとしている」ことがあるのだ。
それがきっとこれで、あるいはもっと色々あるはず。
(ご主人様......凄い......)
ゾーイは、その事を確信しきっていた。 | “So what did you reply to the other side?”
Leaving the astonished man alone for the moment, I ask Zoe.
“I accepted the offer. I thought the master might take advantage of it.”
“Umu.”
As expected from someone who has followed me for so long, Zoe knows me so well.
This time, combined with the fact that the whole store disappeared, it will be most troublesome for them to go underground and not come out.
I can only be thankful that they tried to bribe Zoe, meaning that they emerged as close to the surface as possible.
It was a fine play by Zoe.
“What did you say about our identities?”
“I replied that we were sent under the secret orders of the Emperor to investigate.”
“Eh?”
The man was even more surprised.
“Well, good job, Zoe. That’s almost a perfect reply.”
“W-What do you mean ......?”
The man was half-lost for words, and Zoe was wondering as well, though slightly more so.
If it had been just the man, I would have let it pass, but I decided to explain to Zoe.
“Those who tell a bunch of lies to fool people are third-rate.'”
The man said, “I see,” and Zoe gave a ‘yeah, right’ kind of look.
“Second-rate people tell the truth and lie only when the time comes.”
“Yes. And First-rate?”
“They only tell the truth.”
“They only tell the truth.......”
The man examines my words carefully and rolls them in his tongue.
Zoe, on the other hand, was a little quicker to understand than the man.
She said.
“Your reply is also moderate. So far, no lies. The other side will be convinced that this is a natural development.”
“What should I do now?”
“Tell them every move I make. Now that they’ve come out into the open, I’m going to let them swim for the time being.”
“Understood.”
Zoe nodded.
She would have no problem handling something like this.
I thought.
It’s another reason why I brought Zoe with me on this trip.
To nurture her and train her further.
I turned my head to think about what I should do to make this happen, and how I could make the most of this opportunity.
Zoe didn’t interrupt my thoughts and stood still while waiting for my next words.
In the meantime, I formulated a plan and asked Zoe first.
“Can you get in touch with these guys?”
“Yes, I’ve been given instructions on how to contact them in case of an emergency.”
“Good, then go meet with those guys. Yeah, and give Kate those , reens. Once we get back to the capital, I’ll make it up to you.”
“For master’s sake 00 reens is....... ...... but why do that?”
“Go over there and ask for more money. The reason, as I just said, is that the 3,000 reens were used to bribe Kate.”
“......”
“W-why would you do that?”
Zoe’s face was drawn into a thoughtful expression, whereas the man asked me the same question he had.
“What do you think? Zoe.”
” ...... to take more from that side, right?”
“You’re half right.”
I smiled and reached over to pat Zoe on the head.
If she could figure that out, that was enough for now.
“That’s right, demanding more at a time like this has the effect of reassuring the other person and making them trust you. However, if you just ask for more out of greed, the other side will think you are cheap.”
“I bribed Kate to not look cheap ......?”
Zoe’s thoughts seem to have connected well, but they don’t seem to reach beyond that point.
I didn’t want to be mean, so I told her the stuff.
“And also gauge their ability to handle it. If they are somewhat competent, they’ll evaluate you in a certain way when they see that you’ve spent a lot of money to accomplish a task.”
“Evaluation.”
“Money is, after all, only a tool. Only those who can use it more effectively can acquire more wealth.”
“..... yes.”
Zoe with a straight face nodded quietly.
“It’s a way of gauging how good they are by whether or not they’ll give you additional money.”
“I see. ...... As expected of Master!”
“To put it bluntly, the same story as before?”
“You reported to me that you were bought out for 3,000 reens, and I gave you 30,000.”
“Ah, ......”
“It’s essentially the same thing. Only the details and the way the money flows are slightly different.”
“I see!”
Zoe looked fully convinced.
Well, this is the second time she’s notified the acquisition to me, so I guess it was easy for her to understand.
She was motivated to contact the other party and try to get more money for the bribe.
Frankly, it was quite risky.
What Zoe was going to have to do was to be a double agent.
It’s different from what she’s done in the past, and it comes with a high risk for her.
But I let her do it.
I brought Zoe here to further nurture her.
I sincerely hoped that by letting her take some risks, she would grow even more through this one experience.
The next day, I left the inn with Zoe and wandered around town.
Of course, I fed information to the other party in advance via Zoe and Kate.
The time and route to go out to investigate.
I let them know about these things.
“No, ......, the economy is in a slump these days.”
“We’re just trying to make ends meet, you know.”
“If only the economy would come back. ......”
Everywhere I went, people in the city were bemoaning the recession.
The clothes worn by residents became more frugal, and the merchandise in the stores was less well-stocked.
Overnight, the city was transformed drastically.
It looks completely different from the town I sent Fuwawa to see last night.
“Fu, ......, this is overkill.”
“Overkill, sir?”
Zoe tilted her head and asked.
“You remember when we came into this town, don’t you? And suddenly it’s this. Even if you’re trying to hide something, it’s overkill.”
I turned to Zoe and made eye contact with her so that no third party could see.
This exchange was also an eye contact to tell the other side.
Zoe didn’t shake her head either way, she just looked at me and responded, ‘Roger that’.
Gabel Salt Guild, main building.
In the parlor, Zoe was facing two men.
Both men were dressed in lavish outfits.
In Zoe’s eyes, their clothes were as fine as those of the emperor.
Both men were quite young for their titles as merchants, one in his mid-thirties and the other just shy of thirty.
Zoe told them both exactly what Noa had said.
“The master said it was overkill.”
“Overkill?”
“Yes, sir. I remember the first night we came to Dussel, it was prosperous and crowded even at night. And to see it suddenly go into recession like that ......, it’s no wonder the master found it overkill.”
” ...... I bet. It was overkill, you idiot.”
“Who’s an idiot?”
The younger man protested.
Zoe understood that this was the man who had done it.
“Did you not hear what she just said? I’ve seen it in person, it’s such a sudden change that anyone would notice the change if they were to look at the city on a regular basis for once. What else could it be but overkill?”
“Gu......”
“Cut it a little slack. And ...... yeah, I know. And let’s do a little smuggling.”
“What!?”
“The other side doesn’t believe that there is zero smuggling at this point. Prepare a scapegoat and have that person take the blame.”
Zoe watches as the two men devise a plan.
She is secretly impressed.
(As expected of the master ...... I just told them the obvious response and they let their guard down.)
Zoe was convinced.
That Noa had targeted this matter and made her do it.
Because Noa told her to tell them everything.
And Noa said himself that it was first-rate “not tell lies”.
Noa never said what she couldn’t do.
In other words, Noah wants Zoe to ‘try to do without being told’ as well.
That must be this, or a lot more.
(Master ...... Sugoi......)
Zoe felt sure of this. |
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} | 「アンガス・ブル。天顔を拝し光栄至極に存じます」
謁見の間、親王・大臣らが列席し、さらには多くの兵に守られている正式な場。
その場での青年将軍が片膝をついて、玉座にいる俺に正式な作法にのっとった礼をしていた。
「面をあげよ」
「誰か、ブル卿に座を」
俺が言うと、控えていた宦官が一人、椅子を持ってやってきた。
立ち上がったアンガス、それを見て慌ててもう一度ひざまづく。
「よい。そなたと余とは親戚。普通の家庭ならばそなたを兄上と呼ぶべきところだ。その上功績を立ててきたのだ、遠慮無く座るがいい」
「はっ、ありがたき幸せ」
アンガスはなおも恐縮しつつ、更に一礼してから立ち上がり、椅子の縁に遠慮がちに座った。
アンガス・ブル。
第女アーリーンの夫。
庶民の出だが、戦功を幾度も積み上げ、先帝の時代に王女アーリーンを降嫁させた。
王女の夫という準皇族という立場にもおごらず、変わらず辺境で戦い続けている愚直なタイプの武人だ。
前から、割と好感を持っていた人物である。
「第四親王から報告を受けた。ここ数年、うまくトゥルバイフとやり合っているようだな」
「身に余る評価恐れ入ります。帝国の禄を食み、王女殿下を妻にいただいたご恩は涯かけても返し切れる物ではありません。只々、粉骨砕身の思いで日夜過ごしているだけでございます」
「この前も、トゥルバイフが反乱したと見せかけた鉄砲玉を一騎打ちで倒したそうだな」
「はっ、状況に恵まれ、最小限の兵の損害で切り抜けられました」
短いやりとりで、大体の人となりが掴めてきた。
おそらく、この場ではいくら話しても上っ面のやりとりしか出てこないだろう。
「公」という物をよく弁えている人物だ。
それはそれで好感に値するが、少々つまらん。
「一騎打ちで勝ったということは、腕に覚えがあるということだな。その腕前を見せてもらおう」
「はっ、ご命令とあらば――えっ」
頷きかけたアンガス、驚愕で目を見開く。
他の親王、大臣もざわざわし出した。
俺がすっくと玉座から立ち上がって、魔剣リヴァイアサンを抜いたからだ。
「へ、陛下。それは危険です」
王シリアス・アララートが列から一歩出て、諫めるようにいった。
の中で、もっとも実直な男。
よく言えば実直、悪くいえばクソ真面目なシリアスは真顔で俺を止めようとする。
「安心しろ、誰にも怪我させん」
「し、しかし――」
言いかけたシリアスが息を飲んだ。
大臣らの大半がすくみ上がった、何人かは泡を吹いて卒倒した。
「逸るなリヴァイアサン、シリアスのそれはあくまで好意だ」
(わかった)
リヴァイアサンが渋々――というよりどこか拗ねた様子で引き下がった。
シリアスが俺に反論しようとしたら、それだけでぶち切れた。
その殺気が洩れて、親王大臣一同を圧倒したというわけだ。
覚醒してもなお狂犬――いやむしろ悪化しているリヴァイアサン。
「あれが魔剣レヴィアタン......」
「し、死ぬかと思った......」
「あれを完全に制御しているとは、さすがは陛下」
突発的にキレる事は多くなった気がするが、俺の言葉は絶対でそれには従うから、問題はない。
それはそうと。
「抜け、アンガス。余が相手だ」
玉座から進み出て、アンガスに近づく。
ここまでされては、とアンガスは一礼して、それから宦官がもってきた剣(謁見中の武将は武装解除するのが慣わし)を受け取って、引き抜いた。
「いくぞ」
先手を取って、斬りかかった。
殺す為ではないから、当然本気は出さない。
アンガスの腕を試す為に剣技を繰り出した。
「ほう......」
(なまいき――)
「待て」
(......わかった)
またまた拗ねた様子のリヴァイアサン、しかし俺の命令は絶対だとばかりに、今度こそ完全に引き下がった。
リヴァイアサンが反応したのは、アンガスの振る舞いだ。
本当の力を隠して、俺に花を持たせようという感じがアリアリと出ている動き方だった。
それを「舐められてる」と解釈したのだ、リヴァイアサンは。
だが、俺は少し違う見方をしていた。
一通り剣技のやりとりをした後、俺はリヴァイアサンを下ろした。
本気を出していないアンガスももちろんそこでやめて、同じように剣を納めた。
「なるほど、大体分かった」
「そなた、余を上手く誘導して、勝たせようとしていたであろう」
「も、申し訳ございません!」
アンガスは剣を捨てて、その場で土下座した。
「よい、責めてはおらん。むしろ頼もしく思った」
「いまの動きで得心がいった。あの一騎打ちも、相手が受けざるを得ないという状況を作り出したのはそなただろ?」
「......」
まさしくそんな感じで絶句するアンガス。そしてざわつく周りの大臣。
「ふふ、余がただの親王であったのなら、そなたの将としてその用兵に従ってみるのも面白かったかもしれんな」
「今のはどういう事なのだ?」
「分からぬが、ブル卿が何かを企んでいたのが、あっさりと陛下が看破したのだろう」
「気に入った、褒美をやろう。何か望む物はないか」
リヴァイアサンを収め、玉座に戻る。
ここから先は皇帝の振る舞いがいる。
アンガスはしばし逡巡した後。
「......非礼は承知で申し上げます」
「よい、余が褒美と言っているのだ。何が欲しい」
「アーリーン様と、もっと会えるように」
アンガスはそう言って、真っ直ぐな目で――挑むような目で俺を見つめた。
アーリーン――妻ともっと会えるように?
一瞬何の事かと思った。
すぐに理解出来なかったのは、それは皇女特有の事情だからだ。
親王の俺には無縁の事だったから、理解するまでに数秒かかった。
「い、いえ。当たり前のことと――」
アンガスは焦った。
俺はそれを遮った。
「ふっ、焦らなくて良い。余もそれを陋習だと思っていた。国の根本を揺るがす事ではないから後回しにしていただけだ」
「で、では――」
アンガスの目に希望の光が宿る。
「悪いようにはしない。準備が出来たら呼び出す」
「――っ! ありがとうございます!」
「あれはどういう事なのですか、陛下」
謁見の間を解散させて、書斎に戻ってきた俺に、ついてきたドンが聞いてきた。
「アンガスの事か」
「はい」
「まあ、実情を知らなければ、皇女降嫁は逆玉の輿にしか見えないだろうな」
「ええ、民間でも羨望や美談として扱われる話です」
そうだろうな。
なにせ平民と皇女の婚姻だ。
成り上がりの王道の一つだし、夢がある。
この際政略結婚じゃなくて、お互い愛が故に――となればこの上なく美談だ。
「よし、お前に現実を見せてやろう。付いてこい」
書斎に入ったばかりだが、俺はドンを連れて外に出た。
馬車に乗りこんで、行き先を告げる。
暫くして、都の高級住宅地にある一軒の屋敷にやってきた。
屋敷の門番は皇帝の来訪だと知って、慌てて正門をあけて馬車を中に入れた。
「ここは......?」
「アーリーン、十四皇女の屋敷だ」
「はあ。しかし不思議な屋敷ですな」
「ほう?」
「屋敷のそばに......小さな屋敷がある。そういえばこのような様式をよく見かけるな......」
「あっちがアンガスの屋敷だ」
はっきりと、「信じられない事を聞いた」って顔をするドン。
「ど、どういう事ですか」
「言葉通りの意味だ。でっかいのがアーリーンの屋敷、小さいのがアンガスの屋敷だ」
「な、なぜ」
「皇女と平民が結婚した場合、夫婦でありながら
「ま、まさか。会うだけでも......」
ドンはおそるおそる聞いてきた。
俺が宰相に引き立てた男は賢かった。
一瞬で今回の話を理解した。
「そういうことだ」
ふっと笑った俺。
馬車が止まって、俺は飛び降りた。
皇帝来訪の事を聞きつけて、屋敷の中から慌てた様子で、年かさの女がでてきた。
女は俺の前にやってきてひざまづき。
「陛下のご降臨とは知らず、大変失礼を――」
「よい、思いつきで来たのだ。そなたらに咎はない」
「あ、ありがとうございます」
ジェスチャーをして、女を立たせてから。
「お前か、侍女頭は」
「はい。カサンドラと申します」
「アーリーンとアンガスの様子はどうだ」
「お気にかけ下さりありがとうございます。の間柄はきわめて良好。互いの身分を汚さずに済んでおります」
「身分を......?」
そばにいるドンが信じられないって感じでつぶやいた。
彼は知らないが、俺は内情をよく知っている。
おそらくはアーリーンが待っている応接間に向かうべく、カサンドラとドンを引き連れて屋敷に入った。
「面会は?」
「週に一回でございます」
「夜は」
「二ヶ月に一度」
「少ないな」
俺の知識的にも、だ。
「はい、皇女殿下は世継ぎの為にも月に一度はとおっしゃっているのですが、ブル様の身分を考えて、二ヶ月に一度がベストと考えました」
ちらっとドンを見る。
ますます絶句しているのが分かった。
俺に着く前から皇族のもとについていたドンだが、そこも親王。
皇女を取り巻く「闇」はまったく知らなかったんだろうな。
ドンに聞かせるように話しつつ、応接間に案内された。
中に皇女とメイド達がいた。
十四皇女アーリーン。
俺より四つ年上の姉で、子供の頃は王宮の庭園で一緒に遊んだこともある。
「ご降臨、恐悦――」
「いい、姉上と俺の間にそういうのはいらない」
の為にも、俺は皇帝としてはなく、弟として振る舞った。
これも一つの、親王と皇女の差だ。
親王相手では一つ間違えれば帝位簒奪の話になるから、俺は皇帝としての振る舞いを維持しなくてはいけないが、その心配が無い皇女相手には大分崩す事ができる。
アーリーンは少し驚いたが、すぐに微笑みを浮かべて。
「そうね。そうさせてもらうわ。皇女の特権だものね」
「その皇女の特権だが、姉上に話を聞きにきた」
「姉上はアンガスの事を好きか? 率直に、夫婦として」
「な、何を」
「アンガスは戦功の褒美に、もっと姉上に会いたいと言ってきた」
「あの男......無礼な」
カサンドラが呟くと、アーリーンは悲しげに目を伏せた。
「お前は何者だ」
肩越しにカサンドラを睨んで、問い詰める。
「余と皇女が話しているのだ。それに割り込むとは......お前は
「も、申し訳ございません!」
カサンドラは顔面蒼白になって、土下座して米つきバッタの如く何度も何度も頭を叩きつけた。
そのカサンドラは無視して、再びアーリーンの方を向いて。
「どうだ姉上、アンガスの事は好きなのか? これは皇帝としてではない、弟として聞いている」
「......ええ、すごく。優しくて、強くて。私のことを愛してくれて......信じられる?」
アーリーンはクスッと笑った。
「あっちの屋敷に、側室が一人もいないのよ」
「おいおい、本当なのかそれは」
「あり得ない事よね」
皇女と平民が結婚した場合、屋敷を分けて主従と見なされ、まともに会えない。
しかし、元平民とはいえ、皇女と結婚したら準皇族だ。
側室をとるのは当たり前の行動。
そして、皇女はそれに嫉妬をするのはこの上なくみっともない行為とされる。
主が従に嫉妬するなんて――という筋が通っているような通ってないような理由だ。
「本当にいないのか?」
「そうなの......バカだよね」
そうは言いながらも、アーリーンは嬉しそうだった。
「よし、姉上の気持ちはわかった。さてどうしよう、アンガスに爵位をやるのは簡単だが――」
「だめよ。それは男のプライドが傷つく」
「だな。姉上の皇族を剥奪するのも同じで良くない」
色々考えて、俺は。
「そもそもこの陋習がおかしい。法で禁じる。立法には――第四宰相」
「正式の手続きで約二週間。陛下の権限で、立法前のテストケースとして、即時発効が可能でございます」
淀みなく話すドン。
俺がカサンドラを睨んだ瞬間から、俺がやりたいことを完全に理解して、考えていたんだろう。
「よし、ならそうしよう。カサンドラ」
「は、はい!」
「今日から姉上夫妻の間で、身分に関係する話を一切してはならん。破ったら即刻打ち首だ」
「は、はいぃ!」
声が裏返ったカサンドラ。こっちへの脅しはこのくらいでいいだろう。
「見事なお裁き、さすがでございます」
「ありがとう......ノア」
これで、アーリーンの一件は片付いた――と思ったら。
その夜、珍客がやってくる。
第一皇女、レイン・アララートだ。 | “Angus Bull. It is my honor to receive your countenance.”
In the audience chamber, a formal place where the Prince and ministers are in attendance and even more so, guarded by many soldiers.
There, a young general was kneeling on one knee and bowing to me on the throne in a formal manner.
“Raise your face.”
“Yes”
“Someone give Lord Bull a seat.”
I said, and one of the attending eunuchs came over with a chair.
Angus stood up and, seeing this, hurriedly knelt down once more.
“Good. You and I are related. In a normal family, I would call you brother. And since you have made merit for us, you may sit down without reservation.”
“Yes, I am gratified.”
Angus expressed his gratitude, bowed again, stood up, and sat down on the edge of the chair.
Angus Bull.
He is the husband of the fourteenth princess, Arlene.
Although he comes from a commoner’s family, he has accumulated many war merits and succeeded in marrying off Princess Arlene during the reign of the previous Emperor.
He is an honest type of warrior who has continued to fight on the frontier without being flattered by his position as the husband of a princess, a quasi-Royalty.
I had always had a rather favorable impression of him.
“I received a report from the Fourth Prince. It seems that you have been fighting well with Turbaif for the past few years.”
“I am grateful for your superior assessment. The debt of gratitude I owe to the Imperial family for the stipend and for having Her Highness the Princess as my wife cannot be repaid even if I spent three lifetimes. All I can do is spend my days and nights with all my heart and soul.”
“Earlier, I heard that you defeated a truant messenger in a one-on-one combat when he tried to make it look like Turbaif had revolted.”
“Yes, we were blessed by the circumstances and managed to get through with minimal casualties.”
With this brief exchange, I was able to get a general idea of who he was.
Probably, no matter how much we talked here, only superficial exchanges would come out.
He is a man who has a good sense of what is “public”.
That is a good thing, but it is a little boring.
“Winning one-on-one combat means that you have a good skill. Let’s see how good you are.”
“Yes, if you order me to...eh”
Angus, who was about to nod, opened his eyes in astonishment.
The other Prince and Ministers also began to stir.
The reason is that I stood up quickly from the throne and pulled out the demon sword Livyathan.
“Y-Your Majesty. It is dangerous.”
The Sixth Prince, Sirius Ararat, stepped out of the line and cautioned me.
Of the dozen or so Princes, he was the most honest.
At best, he is honest; at worst, he is damn serious, and he tried to stop me with a straight face.
“Don’t worry, no one’s going to get hurt.”
“B-but...”
Sirius gulped as he was about to say something.
Most of the Ministers scrambled, some of them fuming and fainted.
“Don’t lose your temper, Livyathan, it’s only a courtesy.”
(Okay.)
Livyathan backed away reluctantly—-rather, somewhat sulkily.
When Sirius tried to argue with me, that was all it took for it to snap.
So the killing intent leaked out and overpowered all the Prince Ministers.
Livyathan is still a mad dog even though it awakened – or rather, it is getting worse.
“That’s the Demon Sword Leviathan .......”[TN: he’s pronouncing the old way]
“I-I thought I was going to die. ......”
“As expected of His Majesty, he is in complete control of that thing.”
I feel like it’s losing its temper more often, but my word is absolute and it will follow it, so there’s no problem.
That being said.
“Draw, Angus. I’ll be your opponent.”
Stepping out of the throne, I approached Angus.
Angus bowed, then accepted the eunuch’s sword (it is customary for generals to be disarmed during an audience) and drew it.
“Here we go.”
He took the initiative and attacked.
It wasn’t intended for a kill, so naturally, he didn’t take it seriously.
I began to use my sword techniques to test Angus’s skill.
“Hou .......”
(Cheeky—)
“Wait.”
(...... understood)
Livyathan seemed to be sulking again, but this time completely backed down, stating that my orders are absolute.
What Livyathan reacted to was Angus’ behavior.
It was the way he moved, clearly indicating that he was trying to hide his true power and make me feel flowery.
Leviathan interpreted it as ‘being played for a fool,’
But I saw it a little differently.
After exchanging a few sword techniques, I put Livyathan down.
Angus, who was not in earnest, stopped there, of course, and put his sword down as well.
“I see, I have a general idea.”
“You were trying to lead me to victory, weren’t you?”
“I-I’m sorry, sir!”
Angus dropped his sword and knelt on the ground.
“Good, I don’t blame you. In fact, I’m flattered.”
“I see what you did just now. It was you who made it so that the other side had no choice but to accept the one-on-one fight, wasn’t it?”
“......”
Angus expressed his dismay just like that. And the ministers around him were in an uproar.
“Fufu, if I were only the Prince, it would have been interesting to follow as a soldier with you as General.”
“What was that all about?”
“I don’t know, but I think that Sir Bull was up to something, and His Majesty easily detected it.”
“I like it, so let’s reward you. Is there anything you want?”
I put Livyathan away and returned to the throne.
From this point on, I had to behave like the Emperor.
Angus hesitated for a moment.
” ...... It’s impolite of me to say so.”
“It’s all right, I’m offering you a reward. What do you want?”
“I want to see Lady Arlene more often.”
Angus looked at me with straight–challenging eyes.
Arlene – to see your wife more?
For a moment I wondered what he was talking about.
The reason I didn’t understand immediately was that it was a situation peculiar to the Princess.
It took me a few seconds to understand it, because I, as the Prince, had no connection to it.
“No, no. It’s a matter of course...”
Angus became impatient.
I interrupted him.
“Fuu, there is no need to be in a hurry. I considered it a stupid custom, too. It’s not something that would shake the foundation of the nation, so I will just put it off.”
“T-then...”
A glimmer of hope flashed in Angus’s eyes.
“Don’t worry, I won’t make it any worse. You’ll be notified when it’s done .”
“—-! Thank you very much!”
“What was that all about, Your Majesty?”
Don asked me as I returned to the study after dismissing the audience.
“You mean about Angus?”
“Well, without knowing the real situation, I suppose the Princess’s marriage would seem to be viewed as a reverse of the royal wedding.”
“Yes, it’s a story that is treated with some envy and admiration even in the private talks.”
I suppose so.
After all, it is a marriage between a commoner and an Imperial Princess.
It’s one of the top paths to success, and it’s a dream come true.
And it would be a beautiful story — if it were not a political marriage, but a marriage out of love for each other.
“All right, I’ll show you the reality. Follow me.”
We had just entered the study but I took Don outside with me.
We got into the carriage and headed for the destination.
A short time later, we came to a mansion in an upscale residential area of the capital.
The gatekeeper of the mansion, upon learning of the Emperor’s visit, hurriedly opened the main gate and let the carriage in.
“Is this ......?”
“This is the residence of the Fourteenth Princess, Arlene.”
“Yes. It’s a very interesting residence, though”
“Hou?”
“There is a ...... small house by the mansion. Come to think of it, I’ve seen this kind of style before. ......”
“That’s Angus’ place.”
Don looks at me his expression clearly says, “I can’t believe I just heard that”.
“W-What do you mean?”
“Exactly what I say. The big one is Arlene’s place, the little one is Angus’.”
“W-Why?”
“When a Princess and a commoner are married, they are both married couples, but also Lord and subject. It is a perverse custom that the husband’s residence should not be larger than the Princess’s.”
“N-No way. Then just to meet .......”
Don asked timidly.
The man I had brought in as the Vizier was a wise man.
In an instant, he understood what I was talking about.
“That’s how it is.”
I laughed.
The carriage stopped and I jumped off.
Hearing about the Emperor’s visit, a panicked-looking, elderly woman came out from inside the mansion.
She came in front of me and knelt.
“I am very sorry, I did not know that His Majesty had come...”
“I came on a whim. You are not to blame.”
“T-thank you very much.”
I gestured for the woman to stand up.
“So you’re the head chambermaid.”
“Yes. My name is Cassandra.”
“How are Arlene and Angus?”
“Thank you for your concern. Their relationship is very good. They have not tainted each other’s identities.”
“Identity ......?”
Don, who was standing beside me, mumbled in disbelief.
He doesn’t know, but I know what’s going on.
I entered the house with Cassandra and Don in tow, presumably to the parlor where Arlene was waiting.
“What about visitation?”
“Once a week, sir.”
“And night?”
“Once every two months.”
“That’s not much.”
Not even to my knowledge.
“Yes, Her Imperial Highness says once a month for the sake of the heir, but considering Lord Bull’s status, we thought once every two months would be best.”
I glanced at Don.
I could see he was becoming more and more exasperated.
Don had been with the royal family before he got to me, and there too with a Prince.
I guess he had no idea of the ‘darkness’ surrounding the Princess.
While talking so that Don could hear me, I was led into the reception room.
Inside were the Imperial Princess and her maids.
Fourteenth Princess Arlene.
She was four years older than me, and we had played together in the royal garden when we were children.
“It’s a pleasure for your descent....”
“No, there is no need for such a thing between you and me.”
For the sake of the future, I behaved as a brother, not as an Emperor.
This is one of the differences between a prince and a princess.
When dealing with the Prince, a single mistake can lead to the usurpation of the throne, so I have to maintain my Emperor-like behavior, but when dealing with the Princess, who does not have to worry about that, I can break it down considerably.
Arlene was a little surprised but immediately smiled.
“Yeah. I will do so. It is a privilege of a princess, isn’t it?”
“It is the privilege of a princess, but I have come to talk to you, sister.”
“What is it?”
“Frankly tell me, do you like Angus? I mean as a married couple.”
“Angus has asked to see you more as a reward for his service.”
“That man ...... so disrespectful.”
Cassandra muttered, while Arlene sadly lowered her eyes.
“Who are you?”
I asked, glancing over my shoulder at Cassandra.
“I am talking to the Princess. Who the hell do you think you are to interrupt ...... me?”
“I-I’m sorry!”
Cassandra’s face paled, she fell to her knees and slammed her head down again and again like grasshoppers on rice.
Ignoring Cassandra, I turned to Arlene again.
“How about you, sister, do you like Angus? I ask this not as your Emperor, but as your brother.”
“...... yes, very much. He is kind and strong. He loves me and ...... can you believe it?”
Arlene giggled.
“He doesn’t have a single concubine in that mansion over there.”
“Oh, come on, is that true?”
“It’s impossible, isn’t it?”
If a Princess and a commoner were married, they would be considered squires with separate mansions and not be able to see each other properly.
However, even though a former commoner, if he marries an imperial Princess, he is a quasi-royalty.
It is a natural behavior to take a concubine.
And for the princess to be jealous of that is considered the most disgusting behavior.
The reason is that it doesn’t make sense for the Lord to be jealous of a subject.
“Are you sure there aren’t any?”
“That’s right, ...... such an idiot.”
Despite saying so, Arlene seemed happy.
“Okay, I know how you feel, sister. Well, what to do, it would be easy to give Angus a knighthood, but–“
“No, you can’t. That would hurt a man’s pride.”
“Yeah. It would be just as bad to strip you of your royalty.”
I was been thinking about it a lot.
“This stupid custom is wrong in the first place. The law forbids it. For legislation, Fourth Vizier...”
“It takes about two weeks for the formalities to be completed. By His Majesty’s authority, as a test case before legislation, it can take effect immediately.”
Don speaks without hesitation.
From the moment I glanced at Cassandra, he must have fully understood and thought about what I wanted to do.
“Okay, then I’ll do that. Cassandra.”
“Y-yes!”
“From this day forward, you are not to talk to my sister and her husband about their status. If you break it, you will be hanged immediately.”
“Y-Yess!”
Cassandra’s voice trailed off. That’s enough of a threat, I thought.
“You are a fine judge of character, sir.”
“Thank you, ...... Noah.”
Arlene’s case was now closed, or so we thought.
That night, a rare visitor arrives.
It is the First Princess, Rain Ararat. |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | 商人のバイロン・アランから謁見の申し出があった。
公式なものじゃなくて、プライベートなもので、っていう申し出だったから、離宮の応接間で会うことにした。
陽光が過不足なく射し込んできて、調度品の数々がよ輝きを放つ部屋で座って待っていた俺。
そこへ、メイドに案内されて、バイロンがやってきた。
バイロンは部屋に入るなり、進むよりも先にひざまづいた。
「バイロン・アラン。天顔を拝し光栄至極に存じます」
「その程度でよい。余とそなたの付き合いだ。楽にしていい」
「ありがとうございます」
「今日はなんだ――むぅ?」
バイロンが立ち上がって、部屋に入ってくると、それまで部屋の一歩外で待機していたのか、ドレス姿の女が入ってきた。
声が出てしまった。
絶世の美女という訳ではない。
だが、立ち居振る舞いに優雅さと気品がある。
しかもそれは――後天的なものだ。
ここでいう先天的、後天的というのは「生まれ」の事だ。
と躾られた者と、成長してからそれを学んで身につけた者とでは若干の違いがある。
善し悪しではない、違うというだけだ。
もちろん、中には文字通り「先天的」に気品をもって生まれた者もいるが、それはまた別の話だ。
バイロンに続いて入ってきた女は、後天的に気品を身に付けた人間だった。
善し悪しではないとはいうが、後天的な者というのはどうしても先天的な者に比べて年月が――経験が少なく短い。
後天的な者が劣って見えるのはひとえにこの期間の長さによるものだ。
しかし、目の前の女はまだ若いのにもかかわらず、後天的なのにもかかわらず、立ち居振る舞いが完璧に近い。
それが――面白かった。
「本日は、このジェシカを陛下に献上したく連れて参りました」
「献上?」
「陛下の後宮に加えて頂きたく――という意味でございます」
「ああ......なるほど」
父上の妃の一人、庶妃エイダを思い出した。
エイダは俺がバイロンと組んで、父上の後宮に送り込んで、その後無事目に止って妃となった女だ。
バイロンのような商人は、後宮――内裏に息の掛かった人間がいるかどうかで商売のやり方ががらりと変わる。
父上は退位されて、エイダの効果は薄くなった。
それを補うために、俺のところにも送り込んできたというわけだ。
「ふっ、お前が直接連れてくるとはな」
「恐れ入ります。隠し立てしても陛下のご慧眼から隠し通せるものではございませんので」
「まあ、お前と余ではな」
慧眼とかじゃなくて、前に組んで同じことをしたから。
「わかった。受け取ろう――」
バイロンからなら断る必要性もない、として受け入れた瞬間。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
帝国皇帝
性別:男
レベル:17+1/∞
知性 D+A 光 E+B
いつも視界の隅っこにある、ステータスの「+」が上がった。
俺は驚いて、女――ジェシカを見た。
になって、一気にステータスを二つもあげる女。
これは......逸材だ。
「お前――ただの女じゃないな」
「さすがは陛下、そのご慧眼感服致しました。この一瞬でお気づきになるとは」
「どういう人間だ?」
「私からいえるのは――陛下が好まれる性質の女でございます」
「ほう」
バイロンとは、エイダを選ぶ時に俺の好みを大分話した。
その好み――向上心のある女を選んだと言うことか。
まあ、父上の時と違って、直接俺に贈るのだ。
俺の好みで選んで当然だろう。
「そして」
「そして?」
「その中でも、特にその性質に優れたものでございました」
「なるほど」
一番努力家の女だったというわけか。
それなら、立ち居振る舞いから感じた事もうなずける。
「それでは、私はこれにて......」
バイロンはそう言って、早々に立ち去った。
ここで「何卒よろしく」っていうのは二流だ。
そんな事言わなくてもわかるし、言われて良い気はしない。
もちろんマイナスとしては微小だが、その微小を取り払えるのが一流だ。
バイロンもメイドもいなくなった後、部屋の中は俺とジェシカの二人っきりになった。
ジェシカを見つめる、観察する。
緊張、そして興奮。
興奮の中に、わずかな引っかかりを感じた。
「そなたは自分から、余の妃になることを志願したのか? それともバイロンに乞われたか?」
「お答えします。バイロン様に自ら赴き、鍛えて下さいと申し出ました」
「ふむ......ふむ? 進んで妃になろうと?」
「はい」
「それでバイロンの門を自ら叩いた?」
へえ。
そのルートを見つけるとは、鍛える前から才気あふれる女だったという事かな?
ますます気に入った、興味をもった――と思っていると。
ジェシカは、そっと手を伸ばした。
手の平を上にして差し出してきた。その手に何かが乗っている。
「金、か?」
「十リィーンです」
「それがなんだ?」
さすがに意図が読めなかった。
親王時代も含めて、皇帝である俺に、十リィーン程度の金を渡してくる人間はいない。
事実として、それはない。
だからこそ、意図が読めなかった。
「陛下と初めてお会いしたときに受け取ったものでございます」
「ふむ。もっと詳しく話してみろ」
「陛下が雷親王様と初めてお会いした際に、居合わせた者達に配った十リィーンでございます」
正直、記憶がおぼろげだった。
雷親王インドラ――オードリーの祖父と初めて会ったときは屋外だった。
そして、注目を集めていた。
インドラに認められた事も覚えてる。
ここまでは覚えてる。
そしてそうなったとき、居合わせた民に金を配る、というのは間違いなくやっている。
その時の金だということか。
「陛下を一目見たとき、全身を雷が突き抜けていきました」
ジェシカの空気が一変した。
嫋やかと優雅さの中に、激しさが加わった。
「お慕いしてます! 世界中の誰よりも陛下の事をお慕いしております!
気持ちはわかった――強く分かった。
もとより、手放す気はない。
「誰か」
呼ぶと、メイドが一人入ってきた。
「皇后をここに呼べ」
メイドは恭しく一礼して出て行き、ほとんど間をおかずに皇后オードリーが入ってきた。
「お呼びでございますか、陛下」
「この早さ、話を聞いていたな?」
「はい、商人が女を連れて来たとなれば、後宮の主としては」
オードリーはにこりと微笑んだ。
まあ、当然の反応だ。
「それなら話は早い。彼女はジェシカ、妃にする」
「――っ! あ、あ、あ......ありがとうございます!」
ジェシカは感涙した。
「あらあら、そんなに嬉しいのですか?」
この喜びようには、さすがのオードリーもびっくりしたようだ。
俺はオードリーにジェシカの事を話した。
インドラの時、出逢っただけで、バイロンを見つけ、自分を鍛え上げてここまできた。
それを聞いたオードリーは瞳を輝かせた。
そして、ジェシカの方を向いて、(皇后として)自らジェシカの手を取って
「あなた、見所があるわね」
「え......?」
「陛下のすばらしさを見抜き、それに心酔して、ここまでやって来たのでしょう」
「――っ、はい!」
「ふふ、それなら大歓迎よ。よろしく、ジェシカ」
「はい、よろしくお願いいたします」
「では、メイドにあなたの部屋を」
「ああ、ちょっと待って」
後宮の主として早速動き出そうとするオードリーを呼び止めた。
「なんでしょうか」
「彼女の処遇はすこし違う。妃として迎え入れるが――部下としても使いたい」
「え?」
オードリーもジェシカも驚いた。
「腕、結構立つんだろ? そこまで自分を鍛えたんだ、余の妃、ってだけではもったいない」
「あっ......」
ジェシカは嬉しそうに、微かにうつむいた。
評価された事を、しかも俺に評価されたことを喜んでいる。
「ですが陛下、妃となるものは後宮に入るのがしきたり」
「それは取っ払う。今後はジェシカみたいなのが増える。元々世界の半分は女だ、その中には才能が多いはず。活用せんのはもったいない」
「陛下の人材に対する渇望は分かりますが――はっ!」
オードリーは文字通り「はっ」と目を見開いた。
「皇女様達の一件は――このために......?」
「......」
俺はにこりと笑った。
「さすが陛下。そこまで考えていらっしゃったとは」
「シンディーの時からずっと考えてた。そこにアーリーンの件が舞い込んだ。これなら一だと思っただけだ」
「すごいです陛下」
「え? それは......?」
状況が分からないジェシカに、オードリーが説明をしてやる。
アーリーンの一件で、俺は皇女にまつわるしきたりを壊した。
皇族の、女にまつわるしきたりでも容赦なく手をつける皇帝だと明言した形だ。
俺の妃を俺の部下としても使うとしても、今更大した抵抗はあるまい。
「あぁ......やっぱり......陛下は......」
説明を受けたジェシカはますますうっとりと、心酔しきった目で俺を見つめ。
俺に心酔する女は味方だ、というオードリーは、満足げにジェシカを見守った。
次の日、離宮の庭にヘンリーを呼び出した。
俺とヘンリーは東屋でくつろいでいて、その東屋の先でシャーリーとジェシカが戦っていた。
互いに切っ先をつぶした武器での模擬戦。
二人は互角に戦っていた。
一本気で剛剣のシャーリー。
それとは対象的に、流麗で踊るような剣術のジェシカ。
対象的な二人の戦いは、互角ということも相まって美しく見えた。
「口さがない者がなにかとうるさそうだ」
ジェシカを部下としても使う事を話したら、ヘンリーは平然とそう言った。
反対がないのはありがたい、説得の手間がなくて。
「そういう連中は囀かせとけばいい」
「私を呼んだのは? その事ならむしろオスカーの管轄だが?」
「ジェシカを討伐に加えたい。そのために呼んだ」
「討伐......最前線にいきなりですか?」
「ああ」
「なぜ?」
「経験を積ませたい」
俺はジェシカを眺めた。
昨晩俺に抱かれて、庶妃ジェシカとなった女は、閨の愛らしさからは想像もつかないような、優美で苛烈な剣技を見せている。
「今までで一番の逸材だ。いろんな経験を積ませたい」
「そのためには最前線、過酷な戦場にも......逆にえこひいきすると言うことですか」
「そういうことだ」
「......さすが陛下、そこまですれば雑音も収まりましょう」
「雑音なんか最初からどうでもいい......が任せた。死なないようには余がどうにかする。とにかく経験が積める配置にだ」
「御意」
ヘンリーはそう言い、微かに頭を下げた。
俺はジェシカを見て、逸材の先を楽しくあれこれ想像を馳せた。 | I received a request for the audience by merchant Byron Allan.
It was not a formal meeting, but a private one, so I decided to meet him in the parlor of the palace.
I sat and waited in the room, where the sun shone brightly and the furnishings shined even more brilliantly.
Then Byron came in, escorted by a maid.
Byron entered the room and knelt before proceeding.
“Byron Alan. It is an honor to have an audience with you, sir.”
“That’s fine. It’s just you and me. Make yourself comfortable.”
“Thank you very much, sir.”
“What is it today, —fmmm?”
As Byron stood up and entered the room, a well-dressed woman entered, perhaps having been waiting outside the room a step before.
My voice trailed off.
She was not the most beautiful woman in the world.
But she had grace and elegance in her behavior.
Moreover, it is – something she acquired.
What I mean by acquired and inherent refers to ‘birth’ matter.
There is a slight difference between those who are born into an aristocratic family and are disciplined from the moment they are born and those who learn and acquire this discipline after they grow up.
It is not good or bad, just different.
Of course, some are simply born with a certain ‘inborn’ grace, but that is a different story.
The woman who came in after Byron was someone who acquired grace.
Although it is not good or bad, those who acquired it inevitably have fewer years – and less experience compared to those who were inherent.
It is this length of time that makes those who acquired look inferior.
However, despite being young and acquired, the woman in front of me had near-perfect behavior.
That’s – interesting.
“I have brought Jessica here today to gift her to Your Majesty.”
“Gift?”
“I mean that I wish her to be added to Your Majesty’s inner court.”
“Ahh, ......, I see,”
I remembered one of my father’s wives, the concubine Ada.
I teamed up with Byron and sent Ada to my father’s palace, and after that, she became his concubine after she was successfully noticed.
A merchant like Byron’s business practices changed drastically depending on whether or not there was someone in the inner palace who was interested in his business.
Ada’s influence has diminished since Father abdicated.
To make up for it, he sent someone to me as well.
“I didn’t expect you to bring her directly to me.”
“I apologize. Even if I were to conceal it from you, it cannot be hidden from His Majesty’s discerning eye.”
“Well, I guess it’s between you and me.”
It’s not because of wisdom, it’s because we’ve worked together before and done the same thing.
“All right. I’ll receive –“
There was no need to refuse Bryon’s gift, so the moment I accepted.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Emperor of the Empire
Gender: Male
Level: + / ∞
The “+” on my status, which is always in the corner of my eye, has gone up.
And – two at once.[TN: His Intelligence went from ‘D+B’ to ‘D+A’ and Speed went from ‘E+C’ to ‘E+B’]
I was surprised and looked at the woman – Jessica.
A woman who became mine and also boosted my stats by two at once.
This is a ...... gem.
“You’re — not just an ordinary woman.”
“As expected of you, Your Majesty, I admire your keen eye. I never thought you would notice it in this instant.”
“What manner of person is she?”
“I can only tell you that she is the kind of woman His Majesty likes.”
“Hoo.”
Byron and I talked a lot about preferences when we selected Ada.
That preference was – an ambitious woman, you say.
Well, unlike my father, she was being presented directly to me.
It’s only natural that I should choose her based on my own preferences.
“And...”
“And?”
“Among them, she was the one with the best qualities.”
So she was the hardest-working of them all.
Then I can understand what I felt from her behavior.
“With this, I’ll take my leave .......”
Byron said and left quickly.
It is second-rate to say, “Best regards,” here.
I understand without saying it, and I do not like it when people say it.
Of course, the downside is minutes, but the first-rate person is the one who can get rid of that minute.
After Byron and the maid were gone, it was just me and Jessica in the room.
I gazed at Jessica, observing her.
There was nervousness, then excitement.
In the midst of the excitement, I felt a slight tug.
“Did you volunteer to be my concubine? Or did Byron beg you?”
“I would like to answer. I went to Master Byron myself and asked him to train me.”
“Fumu...... Fumu? You willingly offered to become a concubine?”
“Yes.”
“And you personally knocked on Byron’s door?”
Heh.
Finding that route, I guess she was a brilliant woman even before she was trained?
I’m getting more and more interested.
Jessica gently reached out her hand.
She held out her hand, palm up. And there was something on her palm.
“Money?”
“It’s ten reens.”
“What is it?”
As expected, I could not read her intention.
Even including my time as the Prince, no one would give me, the Emperor, money as little as ten reens.
In fact, it’s not the case here.
That is why I could not read her intention.
“I received this when I met Your Majesty for the first time.”
“Fumu. Tell me more about it.”
“It is the ten reens that Your Majesty distributed to those who were present during his first meeting with His Highness the Thunder Prince.”
To be honest, my memory was a little hazy.
The first time I met the Thunder Prince Indra – Audrey’s grandfather, we were outdoors.
And it was attention grabbing.
I also remember being recognized by Indra.
I remember this much.
And when that happened, I definitely handed out money to the people who were there.
That’s the money from that time, huh.
“When I caught a glimpse of Your Majesty, it was like lightning went through my whole body.”
Jessica’s air changed completely.
A fierceness was added to her grace and elegance..
“I yearned for you! I admired Your Majesty more than anyone else in the world! That’s why, I don’t care if I will be just a servant, please let me be by your side!”[TN: Shitt, a Yandere!?]
I understood her feelings – I understood them strongly.
Of course, I have no intention of letting her go.
“Anyone”
I called, and a maid entered.
” Ask the Empress to come in here.”
The maid bowed reverently and left, and almost immediately Empress Audrey entered.
“You wished to see me, Your Majesty?”
“Did you catch our conversation this early?”
“Yes, as the master of the inner court I would be since a merchant has brought a woman with him.”
Audrey smiled.
Well, it is a natural reaction.
“Then it’s a quick matter. She is Jessica, and she will be a concubine.”
“—-! T-T-T....thank you very much!”
Jessica burst into tears.
“Ara Ara, are you so happy?”
It was natural for Audrey to be surprised at such joy.
I told Audrey about Jessica.
When I first met Indra, she simply encountered me, then found Byron, and worked herself up to this point.
“Oh my.”
Audrey’s eyes lit up when she heard that.
Then she turned to Jessica and (as Empress) took Jessica’s hand herself.
“You are something to behold.”
“Eh ......?”
“You must have come all this way because you see the splendor of His Majesty and because you are fascinated by it.”
“—- Yes!”
“Fufu, then you are more than welcome. Nice to meet you, Jessica.”
“Yes, my best regards.”
“Now, let’s have the maid show you to your room.”
“Yeah, just a minute.”
I stopped Audrey, who as the master of the inner court was about to move.
“What is it?”
“She will be treated a little differently. I will take her in as a concubine, but I want to use her as a subordinate as well.”
“Eh?”
Audrey and Jessica were both surprised.
“She’s got a lot of skill, you know? Since she’s trained herself to that level, it would be a shame to just have her as a concubine.”
“Ah, .......”
Jessica was delighted, but then she looked down slightly.
She’s happy that she’s appreciated, and that it was me who appreciated her.
“But, Your Majesty, it is customary for the concubine to be in the inner court.”
“I will remove that. From now on, there will be more like Jessica. To begin with, half of the people in the world are women, and there must be a lot of talent among them. It would be a waste not to utilize them.
“I understand Your Majesty’s thirst for talent, but–hm”
With a ‘hm’ Audrey’s eyes widened.
“The princesses’ case–is this what ...... is for?”
“.......”
I chuckled.
“As expected of you, Your Majesty. I didn’t realize you had thought that far ahead.”
“I’ve been thinking about it since Cindy. That’s when Arlene’s case came along. I thought this would be a great way to kill three birds with one stone.”
“It’s amazing, Your Majesty.”
“Eh? What is that ......?”
Audrey explained the situation to Jessica, who did not understand what was going on.
I broke the tradition of the royal family with Arlene’s case.
It’s a clear statement that I am an Emperor who mercilessly deals with the traditions of the royal family, even those related to women.
Even if I use my concubine as my subordinate, there should be no big resistance now.
“Ahh, ......, after all, ...... His Majesty is.......”
Jessica, who had received the explanation, gazed at me with eyes that became increasingly entranced and fascinated.
Audrey, who said that a woman fascinated by me is her friend, looked at Jessica with a satisfied expression on her face.
The next day, I summoned Henry to the garden of the detached palace.
Henry and I were relaxing in the pavilion, while Shirley and Jessica were fighting at the end of the pavilion.
They were engaged in a mock battle with weapons that had both had their tips flattened.
The two were fighting evenly.
Shirley’s swordsmanship was earnest and strong.
In contrast, Jessica’s swordsmanship was elegant and graceful, as if she were dancing.
The battle between two contrasting styles was beautiful, coupled with the fact that they were evenly matched.
“Those jabbering people will make a fuss one way or the other.”
When I mentioned to Henry that I would be using Jessica as a subordinate, he replied flatly.
Thankfully there was no opposition, and there was no need to persuade him.
“Let those people chirp.”
“So, why did you invite me here? It’s more Oscar’s jurisdiction, isn’t it?”
“I want to add Jessica to the suppression team. That’s why I called you here.”
“Suppression ......you mean to the front lines this fast?”
“Yeah.”
“Why?”
“To let her get some experience.”
I looked at Jessica.
The woman who became concubine Jessica last night in my arms was showing graceful and fierce swordsmanship that I could not have imagined from her loveliness in the bed chamber.
“She is the best talent I have seen so far. I want her to gain many experiences.”
“For that purpose, you want her to go to the front lines, to the harsh battlefields, ...... and on the contrary you want her to be treated favorably, huh.”
“That’s what I mean.”
” ......Your Majesty, if you go that far, the noises will die down.”
“I didn’t care about the noise from the start,......, I leave it to you. Make sure that she doesn’t die. Anyway, let’s put her in a position where she can gain experience.”
“By your will,”
Henry said and bowed slightly.
I looked at Jessica and imagined the fun things that were ahead of her. |
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} | 「......?」
少女は俺たちの横できょとんとしている、若干怯えてもいるようにも見える。
俺とシャーリーの言ってることを理解できないでいる上に、俺の気分を害してしまったんじゃないかって怯えているんだろう。
「安心しろ。褒めてるんだ」
「それよりも、お前の名前は?」
「ケイト、って言います」
「ケイトか。名字は?」
「ありません」
名字がないのは庶民には珍しくない。
辺境まで行けば、名字とかいう概念がなくて、どこどこの家の誰々さん、という事が多くなってくる。
この「どこどこの家」って言うのが、大抵その家の家長の名前だ。
俺で例えれば、ノアの家のセムさん、が俺の長男だ。
そういう呼び方しかないところで、無理矢理名字が必要な時になると、父親の名前を名字にして使う。
もっとも、最初から名字という概念がなくて、父と祖父、曾祖父と名前を後ろにずらりとならべる習俗もある。
名字も名前っぽい、という人間は大抵このパターンのどっちかだ。
そういうよくある話だから、俺は不覚にも突っ込まなかった。
今はそれよりも、ケイト本人に興味がある。
「お前は――」
バタン!
ドアが乱暴に開け放たれ、その向こうにさっきの村長と、数人の村民が姿を見せた。
全員が仏頂面をしている。
「何をしに来た」
「今すぐ村から出て行ってくれ」
怒りか、それとも元からそうだからなのか。
震えながら言ってきた。
「無礼な! お前達何をしているのか分かって――」
いきり立つシャーリーの前に手をかざして、止める。
「分かった、出ていこう。行くぞ、シャーリー、ケイト」
「待った、その娘は置いていってもらう」
「......なに?」
「カラ神様の怒りに触れたのかもしれぬ。万時のために、ケイトには残ってもらう」
「何を言ってる! あの化け物が退治されたのは見ただろ!」
いよいよ怒り心頭に発したシャーリー、顔を真っ赤にして、村長に怒鳴りつけた。
「神はあの程度の事では死なぬ」
「そうだそうだ」
「復活した神がお怒りになったらどうしてくれる!」
「その娘は置いてけ!」
「......シャーリー」
目配せしつつ名前を呼ぶと、シャーリーはその意味を理解して、家の外に出た。
ケイトを引き留める為にここに来た村長と村人達は、単身外に出るシャーリーを引き留めなかった。
シャーリーは外で、信号弾をあげた。
別れはしたが、皇帝である俺が王宮に戻っていないのだ。
シェリル達は当然、近くで待機していた。
数分後、ドドドドドド――と地鳴りのような足音が迫ってきた。
「な、何事だ」
驚愕する村長。
そこに別の村人が駆け込んできた。
「大変です村長! 兵隊、正規の兵隊さんがたくさん来ました」
「なんじゃと!?」
更に驚愕して、状況を飲み込めないでいる村長。
そんな中、今度はシェリルが――。
騎士の正装をしたシェリルが家の中に駆け込んできて、俺の前に跪いた。
「お呼びでしょうか、皇帝陛下」
「てい......?」
村長、そして村人全員が言葉を失った。
「御前である、頭が高いぞ!」
遅れて戻ってきたシャーリーが、怒気を露わに一喝した。
ハッとした村人達が、家の外――いや、村そのものを取り囲んだ兵士と俺を交互に見比べて、やがて俺に跪いた。
村長はワナワナ――今度ははっきりと怯えから来る震えで、俺に向かって土下座した。
「忍びの旅だ、余に楯突いたとしても罪はない」
帝国法でちゃんとそう決められている、法務大臣をやってきた俺だ、それを破るつもりはない。
「は、はは――ありがとうございます」
俺は口調を変えた。
同時に、レヴィアタンで軽めの威嚇をした。
部屋の温度が、一瞬にして十度近くさがって、一斉に跪いた村人達が身震いした。
「法の外で私刑を行うことは許せん」
「そ、そんな!」
「仕方なかったんです!」
「か、カラ神様に背くと村が」
「カラ神、か。確かにあれほどの化け物、怯えて、従うのも理解できなくはない。ならば一度チャンスをやろう」
一斉に土下座した村人達はパッと顔をあげた。
希望を見つけたような、そんな顔をした。
俺はそれを冷ややかな目で眺めつつ、横で跪いているが、茫然自失となっているケイトに水を向けた。
「ケイト」
「......え? あっ、はい!!」
「この村を許すか?」
「え?」
「お前はいわば被害者だ。お前が許すと言ったら、許そう」
「......」
ケイトは村人達を見た。
村人達は縋る目でケイトを見つめた、が。
「許さない」
歯をキリリと噛み締めた後、搾り出したケイトの一言。
「な、なぜ!?」
「誰も助けてくれなかった」
「それは――」
「私が――されたときも」
「――っ!」
抗弁をしようとする村人が気圧された。
そこは直接「カラ神」とやらと関係ないところだ。
ケイトにそれを責められると言い返せない、と言ったところだ。
「決まったな。シャーリー」
「この村、永久に税金免除無しだ。地方の代官に伝えろ」
理解できない顔をしたが、シャーリーはそれでも、忠実に俺の命令を遂行した。
それは、村人達も同じ。
罰のようで、罰には見えないそれを聞いて、全員が戸惑った顔をしている。
これ以上話すことはない、とシェリルに命じて、そいつらを追い出した。
家の中に残ったのは座っている俺と、立っているシャーリーとケイトだ。
「陛下......良かったのですか、あんなので」
「わからんか?」
「え? ええ」
「我が帝国で税金が免除されるのは主に二つの場合がある。一つは天災に見舞われた時」
「はい」
「もう一つは、人頭税が主である帝国で歳を超えれば免除される」
「――あっ」
そこまで聞いて、ようやくハッとしたシャーリー。
帝国が民から取る税金は大半が人頭税だ。
そして、法的に生涯納めないといけない人頭税は、六十を超えれば「申請すれば」免除される。
「それに、こうもできる――病死や事故死を認めない」
「戸籍が残っていれば、実際に死んでいても人頭税は残り続ける」
「余は法務大臣をしていた。適法でも、いくらでも苦しめる方法を知っている」
「さすがでございます!」
シャーリーにふっ、と微笑んでから、未だにポカーンとしているケイトの方を向く。
「そういうわけだ。これからこの村はじわじわと苦しむことになる。今はそれで納得しておけ」
「ううん、ありがとうございます......ありがとうございます......」
ケイトは涙した。
ほっとしたのか、嬉し涙なのか分からないが、今まで溜まっていた物が溢れた――そんな風に見えた涙だ。
「......よし、都に戻るぞ」
「もうよろしいのですか?」
「ああ、宝は手に入れた。収穫は十分だ」
こうして、俺はケイトを連れて、都に戻った。
数日後の王宮、夜の自室。
俺が本を読んでいると、ドアがノックされた。
応じると、皇后オードリーと、その妹である庶妃アーニャが連れ添って入ってきた。
二人は俺の前にやってきて、貴婦人の作法に則って一礼した。
「どうした、二人とも」
「もう夜は遅いです、そろそろお休みになられる頃かと」
「明日も早いんですよね」
セムを出産したからか、ここしばらく更に大人びてきたオードリーと、対照的に稚気が今一つ抜けないでいるアーニャ。
二人並んでいると、その対比が効いてて、互いの魅力を引き立てるようで、俺は好きだ。
「もう少し読んだら寝るさ」
「毎日遅くまでご本を読んでいらっしゃいますよね」
「ああ。大抵の知識は本の中に書かれている。数を読めば、物事の本質も見えてくる。知識の基本は読書だ」
「もうあんなにいっぱい知ってるのにまだ読むの? 凄いなあ陛下」
「ふっ。ところで、そんな話をしに来たわけでもあるまい?」
そう言いながら、オードリーを見る。
夜、皇后も妃も、基本は皇帝の元を訪ねないものだ。
皇帝が選んで、宦官が届ける。
それが皇帝と妃達の繫がりだ。
それを無視してきたからには、何かがあるということである。
「さすがです陛下――陛下は、妃を増やすおつもりはございませんか?」
少し驚いた俺は、本を置いてオードリーを真っ直ぐ見つめた。
「皇后になってから色々と考えました、見方も変わりました。皇帝たるもの、妃が一人では格好がつきません」
格好くらい、と言い返すこともできるが、貴族――その頂点である皇帝が格好つかないんじゃ話にならない。
「ダスティンでも、側室は十人以上います」
第十親王ダスティン。
父上の血を一番色濃く引いている男で、二十二歳という若さにして既に二桁の側室を持っている。
「それに格好だけではありません。陛下はもっと側室を増やし、世の中の女達に希望を与えるべきなのです。それが皇帝の義務だと思います」
女は出世の道が非常に狭い。「登りつめる」為には、貴人の妻なり側室なりを目指すのが一般的だ。
そして、貴族は皇帝を忖度するものでもある。
皇帝の妃が少ないと、貴族も遠慮して増やすことも出来ない。
確かに、未だにアーニャ一人というのは少なすぎると言われても反論はできん。
俺は少し考えてから。
「よし、ならば庶妃――いや、皇妃選抜をやらせよう」
「選抜、ですか?」
「ああ。年に一度でいい、全国から美と才覚を兼ね備えた女を選ばせるのだ。そこで秀でた女を妃にする」
オードリーはしばし俺を見つめた。
やがて、何かを思いついたのかハッとした。
「騎士選抜と同じように?」
「そういうことだ」
「なるほど......そこまで狙っておいでで......さすがでございます」
俺はふっと笑った。
むしろさすがオードリー、一瞬で俺の狙いに気づいたか。
「え? どういう事なのお姉ちゃん」 | “......?”
The girl was standing dumbfounded beside us, looking slightly frightened as well.
I’m sure she’s scared that she might have offended me, on top of not understanding what Shirley and I are saying.
“Don’t worry. I’m complimenting you.”
“More importantly, what’s your name?”
“My name is Kate.”
“Kate. What’s your last name?”
“I don’t have one.”
It is not uncommon for commoners to not have a last name.
If you go to remote areas, there is no such thing as a last name, and you are more likely to be referred to as someone from a certain house.
This “house” is usually the name of the patriarch of the family.
For example, in my case, my eldest son would be referred to as Sem-san from Noah’s house.
Whenever there is no other way to call me, and I need to use my family name, I use my father’s name as my family name.
However, there is also a custom that there is no concept of surnames from the beginning, and the names of the father, grandfather, and great-grandfather are listed in a row behind.
Most people who have a first name that also resembles a name have one of these two patterns.
It’s such a common story that I didn’t bother to go into it.
For now, I’m more interested in Kate herself.
“You...”
Slam!
The door was roughly thrown open, revealing the village chief and several villagers.
All of them had sour looks on their faces.
“What are you doing here?”
“Get out of this village right now!”
Was it anger, or was it because they had always been like that?
The chief said while trembling
“Rude! You guys don’t know what you’re doing–“
I held up my hand in front of Shirley, who was getting upset and stopped her.
“All right, let’s get out of here. Come on, Shirley, Kate.”
“Wait, leave that girl behind.”
“...... What?”
“She may have incurred the wrath of the gods. Kate will stay, in case of emergency.”
“What are you saying! You saw how that monster was defeated!”
Shirley, who had finally become angry, turned red and yelled at the village chief.
“The gods will not die for something like that.”
“What if the resurrected God gets angry?”
“Leave the girl!”
“...... Shirley.”
As I called her name and gave a look, Shirley understood what I meant and walked out of the house.
The chief and the villagers, who had come here to detain Kate, did not deter Shirley from going out on her own.
Shirley went outside and gave a signal shot.
We parted ways, but I, the emperor, have not returned to the royal palace.
Sheryl and the others, of course, were waiting nearby.
A few minutes later, dodododo—-the sound of thudding footsteps approached us.
“W-What’s going on?”
The village head was startled.
Then another villager came running in.
“Oh my God, Chief! Soldiers, lots of real soldiers, they’re here.”
“What!?
The village chief was even more astonished and could not swallow the situation.
In the midst of all this, Sheryl came in.
Sheryl, dressed in her knightly attire, rushed into the house and knelt in front of me.
“You wanted to see me, Your Majesty the Emperor?”
“ror......?”
The chief and all the villagers were speechless.
“You are in presence of His Majesty, and your heads are high!”
Shirley, who came back late, shouted angrily.
The villagers looked at me and the soldiers who had surrounded the house – or rather, the village itself – in turn, and then knelt down to me.
The village chief fell to his knees, shaking from fear.
“It’s a journey hiding my status, no crime is committed by challenging me.”
I’ve been the Minister of Justice, which is the law of the Empire, and I have no intention of breaking it.
“Y-Yess–thank you very much.”
I changed my tone.
At the same time, I made slight intimidation with Leviathan.
The temperature in the room dropped nearly ten degrees in an instant, causing the villagers to shudder as they knelt in unison.
“I will not tolerate private punishment outside the law.”
“We had no choice!”
“D-Disobeying the God Kala will result in the destruction of the village.”
“God Kala, huh? A monster like that, it is understandable that they would be frightened and follow him. Then I will give you one chance.”
The villagers, who had all fallen to their knees at once, looked up quickly.
They looked as if they had found hope.
I looked at them with cold eyes and pointed my hand at Kate, who was kneeling beside me but looking stunned.
“Kate?”
“......eh? Ah, yes!!”
“Do you forgive this village?”
“Eh?”
“You are the victim of all this, so to speak. If you say you forgive them, I will allow it.”
“......”
Kate looked at the villagers.
The villagers also looked at Kate with clinging eyes, but...
“I cannot forgive them.”
She gritted her teeth and squeezed out a single word.
“Why?:
“Because no one helped me when I needed it.”
“That’s ...”
“Even when I was about to leave—.”
“—-!”
The villagers trying to speak up were pressured.
This has nothing to do with the “Kala God” directly.
I have already said that if Kate accuses them of that, they can’t say anything back.
“It’s decided. Shirley.”
“Yes!”
“This village will never be exempt from taxes. Tell that to the local governor.”
She gave me an incomprehensible look, but Shirley still faithfully carried out my orders.
It was the same for the villagers.
It seems like a punishment, but at the same time it doesn’t, and everyone has a puzzled look on their face when they hear it.
I commanded Sheryl that there was nothing more to say, and sent them away.
The three of us left in the house were me sitting, with Shirley and Kate standing.
“Your Majesty, ...... are you sure that was a good idea, with that?”
“Don’t you understand?”
“Eh? Yeah.”
“There are two main reasons why taxes are exempted in our empire. One is when a natural disaster strikes.”
“Yes.”
“The other is the Empire’s main per capita tax, which you are exempted from if you are over years old.”
“—Ah.”
When she heard that much, Shirley finally had an idea.
The majority of the taxes the empire takes from its people are per capita taxes.
And the poll tax, which you are legally required to pay for the rest of your life, can be waived if you apply for it after you reach .
“And we can even do this – not recognize deaths due to illness or accident.”
“As long as the family register remains, the per capita tax remains even if the person is actually dead.”
“I used to be the Minister of Justice. And I know a lot of ways to make people suffer, even when it’s legal.”
“That’s brilliant, sir!”
After smiling at Shirley, I turned to Kate, who was still puzzled.
“That’s how it is. The village will suffer slowly from now on. That should do it for now.”
“Uuuuh, thank you very much. ...... Thank you very much. ......”
Kate cried.
I don’t know if it’s relief or tears of joy, but it’s the kind of tears that make you feel like you’ve got an overflow of something you’ve been holding in.
“...... Okay, let’s go back to the capital.”
“Are you sure it’s time?”
“Yeah, we got the treasure. It was a good harvest.”
And so I returned to the capital, taking Kate with me.
A few days later, I was in my room at night in the royal palace.
While I was reading a book, there was a knock at the door.
When I answered it, Empress Audrey and her sister, the consort Anya, came in with her.
They came in front of me and bowed in the manner of noble ladies.
“Is something up, you two?”
“It’s late, sire so I thought you might want to get some sleep.”
“You have an early day tomorrow, don’t you?”
Audrey, who has become more mature since giving birth to Sem, and Anya, who, in contrast, has not lost her youthfulness.
I like the contrast between the two of them when they are standing side by side, it seems to bring out the charm of each other.
“I’ll read some more and then go to bed.”
“You’ve been reading late every day, haven’t you?”
“Yes, I do. Most of the knowledge is in books. If you read a lot, you can see the essence of things. The basis of knowledge is reading.”
“You already know so much, but you still read? That’s amazing, Your Majesty.”
“Fu. By the way, you didn’t come here to talk about that, did you?”
I said so as I looked at Audrey.
In the evening, Empress and Consorts do not usually visit the Emperor.
The Emperor picks them and the eunuchs deliver them.
This is the chain of connection between the Emperor and his ladies.
Because they neglected to do so, it means that there is something to it.
“As expected, Your Majesty — Your Majesty has no plans to increase the number of consorts?”
A little surprised, I put down my book and gazed straight at Audrey.
“I’ve thought about it a lot since becoming Empress, and my views have changed. I can’t imagine being an Emperor with only one consort.”
You can say that it’s just an appearance, but if the aristocrat – the Emperor, who is the apex of the aristocracy – can’t appear elegant, it’s no use.
“Even Dustin has more than ten consorts.”[TN: If you are wondering why I am not using the word concubine because concubines are not considered wives and are in the lower social hierarchy while consorts are the wives and also in higher social hierarchy]
The Tenth Prince, Dustin.
He has the most blood from his father, and at the young age of , he already has a double-digit number of consorts.
“And it’s not just for the sake of appearances. His Majesty should have more consorts and give hope to the women of the world. I think that is the duty of the Emperor.”
“That’s true.”
Women have a very narrow career path. To ” climb up the ladder”, women usually aim to become the wife or consort of a nobleman.
The aristocracy is also a discipline of the Emperor.
If the Emperor does not have many consorts, the aristocrats cannot afford to have more.
Certainly, only having one, Anya, is still too few, but I can’t argue with that.”
I thought about it for a while.
“Okay, then have the consort – no, the consort selection.”
“Select?”
“Yes. Once a year, I want you to select a woman of beauty and talent from all over the Empire. The woman who excels will become the consort.”
Audrey stared at me for a while.
Eventually, she thought of something and realized it.
“Just like the selection of knights?”
“That’s exactly what I mean.”
“I see. ...... You were aiming for that level. ...... I’m impressed.”
I chuckled.
Rather, Audrey, as expected, you noticed my objective in an instant.
“Eh? Sister, what are you talking about?” |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | 幻想的な光景は、長くは続かなかった。
目の当たりにした威容と裏腹に、終わる時は実にあっけなく終わった。
まるで空気抜けしたかのように、ケイトからバハムートの力が抜けて、本人は元の姿に戻って、その場にへたり込んだ。
「大丈夫か?」
「大丈夫、です。ちょっと、疲れました......」
「ふむ」
ケイトの様子を見る。
顔色は紙のように白いが、人間が極度に疲労した時に見せるものだ。
疲れている以外、本人の自己申告通り、大した事はないのだろう。
「しかし、憑依出来るのは良いが、この程度の短さじゃ何も出来んな」
「陛下、私にも試させて下さい」
「そうだな。バハムート、ゾーイに今のを」
『承知した』
まったく同じ光景が繰り返された。
バハムートが応じる。
その力が腕輪から飛び出す。
ゾーイに乗り移る。
神々しい炎の魔神とも言うべき姿に変わる。
そして、すぐに息切れする。
バハムートの力が抜けて、ゾーイもまた、極度の疲労からその場にへたり込んだ。
「は、はい......何日か寝なかった時位疲れた、だけです」
「ふむ。バハムート、次は余だ」
「構わん、やれ」
俺の命令にバハムートが応じて、その力が俺に乗り移った。
両手を見つめる、見た目が変わる。
そして、能力も。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
帝国皇帝
性別:男
レベル:17+1/∞
HP C+C 火 E+S+S
火の能力が変わった。
「+」が、更増えた。
なるほど、これは確かに強くなるな。
それに......疲労の理由も分かった。
憑依中は、HPとMPが秒刻みで減っている。
俺のHPはC+Cの実質S、MPはC+DのA。
減ってはいても、当面は保っていられる。
「陛下......凄い......」
「こんなに長く......」
すぐに息切れしは、尊敬の眼差しで俺を見上げた。
俺はバハムート憑依を自分の意識で切り上げた。
憑依分の消耗でちょっと脱力感があったが、この程度なら大した事はない。
戦いで、短期決戦の切り札になると確信した。
書斎の中、机を挟んでオスカーと向き合う。
俺が座ったままで、オスカーが立って報告している。
内容は、帝国の財政。
財務親王大臣であるオスカーに、財政の事を聞いたので、オスカーは現状を報告した。
「皇妃選抜......今年すぐには難しいかと」
「ふむ......」
財政を聞いたのは、皇后・オードリーの提案を実現させるためだ。
だが、そのための金が足りないのだという。
俺は報告ついでに、オスカーから上がってきた書類を机の上に広げて、数字をじっと見つめた。
「税金が、また少し減ったのではないか?」
「はっ、ガベルからの塩税が漸減傾向にあるためかと」
「塩税か......」
塩というのは大事な物だ。
料理に塩がなければ味気がなくなる――なんていう低レベルな話ではない。
医者などの研究で既に判明していることだ。
人間は、塩分を取らなければ命に関わる。
塩分が足りなければ短期的には疲れやすくなるし、長期的には内臓の至る所が弱っていく。
人間は、塩が必要不可欠なのだ。
だから、帝国は塩を管理した。
販売は許可制で、そこから税金を取り立てて、貴重な財源とした。
俺は報告書を眺めつつ。
「どれくらい減ってるんだ?」
「全盛期の約二割、という所でしょうか」
「どこが一番減ってるんだ?」
産塩地はいくつかある。
「ガベル地方です。帝国でもっとも塩の産出量が多いところです」
「ガベル、か」
確か、俺が皇帝になった後、ロレンスを総督に向かわせた所だな。
そのロレンスから......何の報告もない。
フワワの箱を使った密告は何もきていない。
減るような事がまったく起きてないという事だ。
ロレンスは――信用出来る。
俺は少し考えて、オスカーを見つめた。
「オスカー」
「はっ」
「実際の所、どう思う」
沈黙が降りる。
たっぷりと、約一分ほどの沈黙が流れてから。
「......さすが陛下、ご明察でございます」
オスカーは微苦笑しながら一度頭を下げた。
「おそらく、密売が行われているのかと」
「密売?」
「役人が」
「役人が......」
俺は少し考えた。
帝国が取っているのは、販売の許可制だ。
販売分を許可することで、最低でもその分の塩税を取り立てる、という方法だ。
それと密売という単語を組み合わせると......。
「.....が密売――闇塩になってるって事か」
「おっしゃる通りかと思います。名目上は、不況から塩の消費が減ったと言うことで、それが毎年、少しずつ減っています。毎年数パーセントずつ減ってきたのだから、その都度仕方ない事とされて、気がつけば......が現在の状況です」
「なるほどな。時間をかけて減らした分を密売の闇塩にすれば、その分の税金は丸儲けだ。額が額だし、役人を黙らせるために使える金も豊富だ」
「はい......さすが陛下。この一瞬で
全て理解してしまうとは」
オスカーがそう言うからには、俺の推理は間違ってはいない、と言うことだろう。
ならば、ここをなんとかしよう。
皇妃選抜だけじゃない、将来的に出兵する事も考えている、その時にも金は必要だ。
塩税は、どうにかしなきゃいけない部分だ。
「余が自ら出向こう」
「陛下がでございますか?」
「ああ、八割の塩税。看過できるものでもあるまい」
「......はっ、さすがにやり過ぎました」
「ふっ」
俺は立ち上がって、オスカーに近づいて、肩を叩いた。
皇后に言われた「綺麗な水は住みにくい」という言葉がここ最近頭に残っている。
オスカーの「さすがにやり過ぎた」という言葉はまさにそれだ。
実際の数パーセントをごまかす位なら、目をつむったりも出来るのだが、全盛期――いや、現状の八割も誤魔化されたらやり過ぎだと言う他ない。
オスカーもさすがに親王で、財務大臣もやっているだけあって、そういうのがよく分かる。
「陛下?」
「そう言えるのは素晴しい事だ。これからも余の治世に力を貸してくれ」
「――はっ!」
オスカー下がって、俺の影を踏まない程度の距離に下がってから、片膝を突いて頭を下げた。
王都、第八親王邸。
窓のない書斎の中で、オスカーは腹心のアールという男を呼び出した。
「ガベルの事だ。あそこと私の繫がりはあるか?」
アールは一瞬きょとんとしたが、すぐに真顔に戻って答えた。
「多少は。直接的にはありませんが、『どうぞ宜しく』程度の頂き物は」
「送り返せ、そして切れるだけ綺麗に切っておけ」
「はっ......しかしなぜ?」
「陛下が目をつけられた」
「――っ!」
アールは息を飲んだ。
「陛下は素晴しい才覚を持ったお方だ。上皇陛下に比べても、不正の暴露と解決などにかけては更に長けているかもしれない。その陛下が直々にガベルに向かうと言い出したのだ。必ず解決する」
「必ず......ですか?」
アールがおそるおそる聞き返すと、オスカーはきっぱりと言い切った。
「必ずだ。陛下の事は子供の頃から見ている。万に一つも失敗はない」
オスカーは立ち上がる、手を後ろに組んで、書斎の中を歩き回った。
「ガベルの一件は、すぐに隠蔽出来るものではない、構造的に。長年かけて戻していくか、全部明るみになって百人単位が処罰されるか、そのどっちかしかない」
「し、しかし。陛下は常々『人は宝』とおっしゃっておりますが」
「忘れるな、陛下は法を重んじる法務親王大臣でもあったということを」
「――っ!」
アールは再び息を飲んで、瞠目した。
「皇太子ですら法に照らせば廃嫡させられるのだ、親王を庶民に落とすなど訳もない」
「――承知いたしました、すぐに綺麗にしてきます!」
青ざめたアールが書斎から飛び出したのを見送ったオスカー。
そして、一人っきりになった部屋の中で、ぼそりとつぶやく。
の才覚なら間違いなく解決するだろう。ならば私は......」 | The fantastic scene did not last long.
Despite the grandeur of what I witnessed, the ending was very simple.
Bahamut’s power drained from Kate as if the air had been knocked out of her, and she slumped back to her original form.
“You okay?”
“I’m fine. I’m just a little tired. ......”
“Fumu.”
I looked at Kate.
Her complexion is as white as paper, but it’s what people show when they’re extremely tired.
I’m sure it’s nothing serious, except for the fact that she’s tired, as she’s self-reported.
“But although it’s good that it can possess you, it can’t do anything with such a short length.”
“Your Majesty, let me try it.”
“Alright. Bahamut, let Zoe have that one.”
[I understand.]
The same scene was repeated.
Bahamut responded.
The power leaps out of the bracelet.
And got transferred to Zoe.
She turns into a demonic goddess of divine fire.
Then, she quickly runs out of breath.
As Bahamut’s power drained away, Zoe also slumped to the ground from sheer exhaustion.
“Y-Yes,......, it’s just that I’m as tired as I’ve been in days without sleep.”
“Fumu. Bahamut, I’m next.”
‘I don’t mind, go ahead.”
[Understood]
Bahamut responds to my command, and the power is transferred to me.
Staring at my hands, my appearance changes.
And my status.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Empire’s Emperor
Gender: Male
Level: + / ∞
HPC+CMPD+CStrengthC+SStaminaD+CIntelligenceD+BSpiritE+CSpeedE+CDexterityE+CLuckD+C FireE+S+SWaterC+SSWindE+CEarthE+CLight E+BDarknessE+B
Fire stat has changed.
The “+” has been increased by one more.
I see, this certainly makes it stronger.
I also found out the reason for the ...... fatigue.
While possessed, HP and MP are decreasing by the second.
My HP is C+C, which is actually S, and my MP is C+D, which is A.
Even though they are decreasing, I can keep them for the time being.
“Your Majesty ...... Amazing ......”
“This length ......”
As they had quickly ran out of breath previously, they looked up at me with respect.
I broke up the Bahamut possession with my own consciousness.
I felt a little weak from the exhaustion of the possession, but this was no big deal.
In battle, I was convinced that it would be my trump card for short-term decisive battle.
In the study, I faced Oscar across the desk.
I was seated while Oscar was standing and reporting.
The report is on the finances of the empire.
I asked Oscar, who is the Finance Minister, about the finances, so Oscar reported on the current situation.
“The selection of the consorts...... is going to be difficult this year right away.”
“Fumu ......”
The reason I asked about finances was to make Empress Audrey’s proposal a reality.
However, there is not enough money to do so.
I spread out the documents that Oscar had sent me on my desk and stared at the numbers.
“Taxes are down a bit again, aren’t they?”
“Yes, I think it’s because the salt tax from Gabel is on a gradual decline.”
“Salt tax. ......”
Salt is a very important ingredient.
Without it, a dish would be tasteless – and I’m not talking about low-level stuff like that.
Doctors and other researchers have already found this out.
It’s life threatening if we don’t take in salt.
If we don’t take enough salt, we will get tired easily in the short term, and our internal organs will weaken in the long term.[[TN: Your body uses salt to balance fluids in the blood and maintain healthy blood pressure, and it is also essential for nerve and muscle function. (I should stop at it cause typing everything is tiresome so I will leave a –>link<– if you want to learn more)]
Salt is essential for humans.
That’s why the empire controlled salt.
Sales were permitted, and taxes were collected to provide a valuable source of revenue.
I was looking at the report.
“How much is it reduced?”
“About % of what it was in its heyday, I’d say.”
“Where’s the biggest decline?”
There are several salt-producing regions.
“The Gabel region. It’s the largest producer of salt in the empire.”
“Gabel, huh.”
I believe that’s where I sent Lawrence to become viceroy after I became emperor.
And from Lawrence, there is ...... no report.
And no secret message through Fuwawa’s box.
It means that nothing has happened to diminish it at all.
Lawrence — can be trusted.
I thought for a moment and looked at Oscar.
“Oscar.”
“Yes?”
“What do you actually think?”
Silence descends.
After a full minute of silence.
“...... As you can tell, Your Majesty, it’s quite clear.”
Oscar bowed his head once with a slight chuckle.
“Perhaps there is trafficking going on.”
“Trafficking?”
“By officials.”
“Officials .......”
I thought for a moment.
The empire has a permit system for sales.
By permitting the sale of the product, they can collect a minimum amount of salt tax on it.
Combine that with the word “trafficking” and you get .......
“......, which means that 0% of it is trafficking – it’s black salt, huh.”
“I think you’re right. Nominally, salt consumption has decreased since the recession, and it has been decreasing a little bit every year. Since it has been decreasing by a few percent every year, it was considered unavoidable each time, and before we knew it, ...... was the current situation.”
“I see. If the amount reduced over time is used as black salt for trafficking, the taxpayer will make a profit on that amount. It’s a lot of money, and there’s plenty of money available to keep the officials quiet.”
“Yes ......, as expected of Your Majesty. You understand almost everything in this one moment.”
Oscar says so, it means that my guess is not wrong.
Then, let’s do something about this.
Not just for the selection of the queen, I’m also thinking about going to war in the future, and I’ll need money for that too.
The salt tax is the part that needs to be dealt with.
“I’ll go there myself.”
“Your Majesty will?”
“Yeah, the 80% salt tax. It’s not something that can be overlooked.”
“...... Yes, it’s a bit too much.”
“Fuh.”
I stood up, walked over to Oscar and tapped him on the shoulder.
The empress’s words, “Clean water is hard to live in,” have been stuck in my head lately.
Oscar’s words, ” It’s too much indeed,” is exactly what he said.
If they were to cheat on a few percent of the actual amount, I could turn a blind eye, but in the heyday – or even 80 percent of the current amount – I would say it was too much.
Oscar, as expected, is also a Prince as well as the Finance Minister, so he understands such things very well.
“Your Majesty?”
“It’s wonderful that you can say that. Please continue to lend your support to my reign.”
“Yes!”
He took three steps back, just far enough so that he didn’t step on my shadow, then dropped to one knee and bowed his head.
Royal Capital, the Eighth Prince’s residence.
In his windowless study, Oscar summoned his confidant, a man named Arl.
“It’s Gabel. Is there any connection between there and me?”
Arl was puzzled for a moment, but quickly returned to a straight face.
“There is some. Not directly, but a few ‘nice to meet you’ gifts.”
“Send it back and cut it as neatly as you can.”
“Yes. ...... But why?”
“His Majesty has taken notice.”
“–!”
Earl gulped.
“His Majesty is a man of great talent. He may be even better at exposing and resolving injustice than the Previous Emperor. His Majesty has personally proposed to go to Gabel. It will be solved for sure.”
“Surely...... sir?”
Arl was afraid to ask him back, but Oscar assured him firmly.
“For sure. I’ve been watching His Majesty since I was a child. There’s no mistake in that.”
Oscar stood up, folded his hands behind his back, and walked around the study.
“Gabel’s matter is not something that can be covered up quickly, structurally. It can only be put back over the years, or the whole thing will come to light and hundreds of people will be punished, one way or the other.”
“B-But... His Majesty has always stated that ‘People are Treasures’.”
“Don’t forget, His Majesty was also the Minister of Justice, who respected the law.”
“—!”
Arl gasped and gazed at him again.
“Even the Crown Prince can be disinherited according to the law, so there is no way that a Prince can be reduced to a commoner.”
“I’ll go clean it up right away!”
Oscar saw off the pale Arl as he ran out of the study.
And then, in the room where he was left alone, he murmured to himself.
“The Thirteenth’s resourcefulness will no doubt solve this. Then I will .......” |
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} | この日は朝から、庭の東屋でレベル上げをしていた。
屋敷から離れて、庭の開けた所にある東屋。
そこでゾーイを侍らせたまま、模擬戦をやっている。
アポピスが新たに加わった事で、そのアポピスを他と戦わせた。
共に鎧の指輪にリンクし、具現化させて戦わせる。
の内、アポピスは四番目くらいの強さってところだ。
覚醒してからは、バハムートがトップを独走している。
もで陥落したレヴィアタンとの力関係は完全に逆転して、バハムートが十回やれは勝てるって差だ。
目はベヘモトで、四番目はアポピス、最後がフワワ。
ただし、上が抜きん出ていて、下の三体はこれといった差は無い、と言うのが現状だ。
一体増えれば、戦いの組み合わせもかなり増える。
組み合わせが増えれば、戦いの内容や結末も爆発的に増大する。
それが面白くて、朝からずっと模擬戦をし続けていた。
夕方にもなると、朝に比べて
名前:ノア・アララート
法務親王大臣
性別:男
レベル:15/∞
HP C+E 火 E+A
体力 D+E 地 E+D
視界の隅っこに常にあるステータスを見る。
レベルが10から15にあがって、HPと力、それに水の属性がCになった。
俺の力のみ
「ゾーイ、ステータスチェックだ」
ずっとそばに控えていたゾーイに命じて、魔法をかけてもらう。
名前:ノア・アララート
法務親王大臣
HP B 火 S
器用 C
ゾーイがかけた魔法で、「+」の補正を上乗せした、表向きのステータスが出てきた。
「さ、さすがご主人様。またすごく強くなってます......」
「そうだな」
封地にアララートが加わった結果だ。
アララート分のAが上乗せして、力がSSSになった。
他も順調に上がっている。
俺自身の能力と、部下を加えた分の「+」。
二つが合わさって、いい感じに強くなった。
力がSSSなら気をつければ、最強モードの時と同じくらい戦えるかもしれない。
俺が能力を見て色々考えている傍らで、ゾーイが驚嘆したまま帰ってこない。
「どうした、そんなに驚いた顔して」
「お、驚きますよ。だってレベル15って、帝国臣民全ての上位5%だって言うじゃないですか」
「......ああ、そうだったな」
実はそうだ。
レベルを上げる事は実に難しい。
かつて栄華を誇った古代文明には、「回復魔法」というものが存在していた。
信じられないことに、その魔法は人間のケガを一日足らずで癒やせてしまうというのだ。
その回復魔法があったおかげで、その頃の人間は思う存分戦い、レベルを上げる事が出来た。
今は皇族の初陣がとても慎重に、モンスターの巣を「育てて」やる事からも分かる様に、レベル上げは非常に困難だ。
もっといえば、人類の半数近くは、最大レベルが10未満という事実もある。
かくいう俺も、前世の最大レベルは8だった。
「そんなに若いのにもうレベル15......ご主人様って本当にすごい......」
ゾーイは、俺のレベル15にいつまでも驚嘆し続けていた。
その日の夜、書斎で調べものをしていたら、ドンがノックして入ってきた。
「良かった、まだここにいらしたのですね殿下」
「もうそろそろ内苑に戻ろうと思っていたところだが......どうした」
「でしたら本当によかったです。内苑に戻られると私は入れませんので」
ドンはほっとして、俺の机に箱を置いた。
「これが送られてきました」
「フワワの箱か」
「はい」
頷くドン、真顔で箱をみている。
「殿下から聞いた話では、これがちゃんと送られてくるという事はちゃんとした報告だとか」
「そうだな」
フワワの箱。
フワワの力を使って作った箱で、一旦鍵を掛けてしまえば俺以外の人間は開けることが出来なくなる。
それを俺に直接報告するために、あるいは密告が出来るように、いくつかの代官やら役人やらに配ったものだ。
ちなみに、これを栄誉だとして、他人に見せびらかした時は即座に自壊する造りにもなっている。
それが鍵を掛けて送られてきた。
俺は慎重に箱に触れて、鍵を開けようとした――
「むっ」
「どうしました?」
「おかしい」
「え?」
「これは......何かがおかしい」
何かがおかしい、というのは推測や直感などといったものではない。
箱にふれた瞬間、俺のステータスで、属性の「+」が全部消えていた。
ものを手に入れて「+」がつく事は今までよくあったが、減るのは初めてだ。
俺は慎重に、箱を開けた。
中にこぶし大の石と、手紙が入っていた。
俺は手紙を読んだ――眉をひそめてしまった。
「何がかいてあるのですか」
「この石は隕石だが、落ちてきた時の衝撃で表に『自然に』『賢』の文字が出来たらしい」
「あー......」
ドンは眉をひそめ、苦笑いした。
俺は石を手に取って、眺める。
石の表面にははっきりと、賢親王の「賢」の文字が刻まれていた。
「よくある手ですね。天然でこういうものが出てきたから、吉兆だとしてごますりに献上する輩が。このようなものが天然で出来るはずがないのに」
「......」
「しかし、さすが殿下ですな。箱を手に取った瞬間分かったとは」
ドンの言葉を聞き流し、俺は隕石を見つめた。
箱を手に取った瞬間に分かった――ステータス減。
それは、ごますりだとか、今後フワワの箱に新しい機能を追加しなきゃいけないなとか。
そういった事がまとめて吹っ飛ぶほどだ。
俺は少し考えた後、レヴィアタンを抜いた。
水の魔剣を振るって、隕石を真横に両断する――瞬間。
隕石の中から何かが飛び出した。
「うわっ!」
飛び出した物が膨らんで、ドンがそれに弾き飛ばされて、壁に叩きつけられた。
それは次第に形になり――うにょうにょと蠢く、まだら色の触手となっていく。
実に名状しがたい醜悪さと、不吉さを併せ持った触手だ。
触手が暴れだす。
床を穿ち、壁をなぎ払う。
あっという間に、執務用の書斎を半壊させてしまった。
崩壊で巻き起こった砂煙の向こうに星空が見える。
「殿下!」
「下がっていろ!」
こっちに向かってこようとするドンを一喝して、レヴィアタンを構える。
破壊するごとに体積を増していく触手に、まずは威嚇をぶつけた。
「効かないか」
触手の動きが鈍る様子は全く無く、わずかにビクッとしただけで、更に破壊を続けていく。
あれよあれよという間に、書斎はほぼ全壊だ。
そして壊すものがなくなったのか、触手は蠢きながら、こっちに向かってきた。
「ふっ!」
突進してくる先端に、レヴィアタンで斬りつけて迎撃する。
「堅いな――だが!」
刃が通らない程じゃない。
片手で斬りつけた俺は、両手で構えて力を込めた。
触手の真ん中から、縦に一直線に引き裂く。
まるで絡み合った糸くずのような触手のうち、一本が切断され、床に落ちて痙攣した後に動かなくなった。
斬撃は通用する!
俺はレヴィアタンを構えて触手に肉薄する。
人間でいう懐に潜り込むやいなや、レヴィアタンを乱舞して斬りつけた。
堅いが、アポピスほどじゃない。
水色の魔剣で、容赦なく触手を切り落としていく。
ものの三分程で、書斎を半壊させて巨大化した触手を細切れにする事が出来た。
「......これで終わりか」
レヴィアタンを構えたまま、生き残りを少し警戒した。
ついでに威嚇も飛ばしてみるが、反応した様子もないのでレヴィアタンを納める。
「大丈夫か?」
「......」
「ドン?」
「え? あ、ああ。大丈夫です。殿下の剣術はすごいですな。あんな化け物を一瞬で」
「それよりもこの箱を送ってきたヤツを捕まえて、話を聞け」
「そうでした!」
激戦に唖然としていたドンが慌てて外に飛び出して行った。 | Top % strength
Today, I spent the morning leveling up at the pavilion in the garden.
The pavilion is located in an open area of the garden, away from the villa.
There, with Zoe as my attendant, we were having a mock battle.
With the new addition of Apophis, I had him fight four other figures.
They were all linked to the Armor Ring and materialized to fight.
Of the five, Apophis was the fourth-strongest.
Since awakening, Bahamut has taken the top spot.
The power relationship with Leviathan, who was originally in the first place and fell, has been completely reversed, with Bahamut winning nine times out of ten.
The third is Behemoth, the fourth is Apophis, and the last is Fuwawa.
However, the top two are outstanding, and the bottom three are not so different.
The more of them there are, the more combinations there will be.
As the number of combinations increases, the content and outcome of the fights will also increase exponentially.
It was interesting, and I had been doing mock battles all morning.
In the evening, the level increase was visibly slower than in the morning.
Name: Noah Ararat
Minister of Justice
Gender: Male
HPC+EMPE+EStrengthC+AStaminaD+EIntelligenceE+DSpiritE+DSpeedE+EDexterityE+DLuckE+D FireE+AWaterC+SWindE+FEarthE+DLight E+CDarknessE+C
I look at my status, which is always in the corner of my vision.
My level has gone up from to 5, and my HP, strength, and water attributes are now C.
But that’s only with my power.
“Zoe, check my status.”
I ordered Zoe, who had been standing by my side the whole time, to cast a spell on me.
Name: Noah Ararat
Minister of Justice
Level: 15 / ∞
HPBMPDStrengthSSSStaminaCIntelligenceCSpiritCSpeedDDexterityCLuckC FireSWaterSSSWindEEarthCLight BDarknessB
The magic that Zoe had cast gave her an outwardly visible status, with a “+” correction on top.
“A-As expected of you, Master. You’re getting so strong ......”
“Yes, it is.”
This is the result of the addition of Ararat to the fief.
Ararat caused my strength to increase to SSS, with an additional A.
Other statuses are also going up steadily.
My own ability and the “+” from the addition of my subordinates.
The combination of the two has made me stronger in a good way.
If my strength is SSS, I might be able to fight as well as I did in the strongest mode if I’m careful.
While I was looking at the ability and thinking about it, Zoe was still marveling and didn’t come back.
“What’s the matter, you look so surprised?”
“Oh, I’m surprised. Because level 15 is the top 5% of all Imperial subjects.”[TN: SERIOUSLY!]
“...... Oh, that’s right.”
Actually, yes.
Raising the level is really difficult.
In the ancient civilizations that once flourished, there was something called “recovery magic”.
Incredibly, this magic could heal human injuries in less than a day.
Thanks to this recovery magic, people were able to fight and improve their skills to the fullest.
Nowadays, it is very difficult to level up, as evidenced by the fact that the royal family’s first battle is to carefully “raise” a nest of monsters.
More to the point, nearly half of the human race has a maximum level of less than 10.
I, too, had a maximum level of 8 in my previous life.
“You’re so young, but you’re already level 15. ...... Master is really amazing. ......”
Zoe continued to marvel at my level 15 endlessly.
Later that day, I was doing some research in the study when Don knocked and came in.
“Thank goodness you’re still here, Your Highness.”
“I was just about to head back to the Inner Garden. ...... What’s the matter?”
“I am glad that I came now. Because if you go back to the inner garden, I won’t be able to get in.”
Don was relieved and placed the box on my desk.
“This has been sent for you.”
“Fuwawa’s box?”
“Yes.”
Don nodded, looking straight at the box.
” From what I’ve heard from His Highness, this is a proper report if it’s sent properly.”
“Yes, it is.”
Fuwawa’s box.
The box was made using the power of Fuwawa, and once locked, no one but me could open it.
It was given out to a number of governors and officials so that they could report it directly to me or tip me off.
Incidentally, if you show it off to others as an honor, it will destroy itself immediately.
I received the box with a lock on it.
Carefully touching the box, I tried to open the lock.
“Mu.”
“What’s wrong?”
“Strange.”
“Eh?”
“There is ...... something wrong.”
When I said something was wrong, I didn’t mean something like a guess or a hunch.
HPC+EMPE+EStrengthC+AStaminaD+EIntelligenceE+DSpiritE+DSpeedE+EDexterityE+DLuckE+D FireEWaterCWindEEarthELight EDarknessE
The moment I touched the box, all of the “+” attributes in my status disappeared.
I’ve often gotten “+” when I’ve gotten things, but this is the first time I’ve lost it.
Carefully, I opened the box.
Inside was a fist-sized stone and a letter.
I read the letter and furrowed my brow.
“What does it say?”
“The stone is a meteorite, but it seems that the impact of its fall left the word ‘naturally’ and ‘wise’ on the surface.”
“Ah, .......”
Don furrowed his brow and smiled wryly.
I picked up the stone and looked at it.
On its surface was clearly engraved the character for “wise” of the Wise Prince.
“It’s a common practice. Because something like this is found in nature, some people offer it as a good omen. It’s not possible for something like this to be produced from scratch.”
“......”
“But since it’s Your Highness. You knew the moment you picked up the box, right.”
I listened to Don’s words and stared at the meteorite.
The moment I picked up the box, I knew – status reduction.
It was just a gimmick, or maybe I’d have to add a new feature to the Fuwawa box in the future.
All those thoughts were blown away.
I thought about it for a moment and then pulled out my Leviathan.
I wielded my Water Demon Sword and cut the meteorite in half – at that moment.
Something jumped out of the meteorite.
“Whoa!”
The thing that flew out swelled and Don was flung away by it and slammed into the wall.
It gradually took shape into a wriggling, mottled tentacle.
A tentacle that is both unnamable, ugly, and sinister.
The tentacles begin to rampage.
They pierce the floor and tear down the walls.
In the blink of an eye, they had destroyed half of the office study.
I can see the starry sky beyond the cloud of dust created by the collapse.
“Your Highness!”
“Stay back!”
I ordered Don, who was trying to come towards me, to stand back and held up the Leviathan.
The first thing I did was intimidate the tentacles, which grew in volume as I destroyed them.
” It doesn’t work?”
The tentacles didn’t seem to slow down at all, they just spooked slightly and continued to destroy more.
In the blink of an eye, the study was almost completely destroyed.
And then, as if there was nothing left to destroy, the tentacles wriggled and came towards me.
“Fuu!”
Using Leviathan, I intercepted the rushing tip with a slash.
“It’s hard–but!”
It’s not so hard that the blade can’t penetrate.
I slashed it with a one-handed slash, and then I took a two-handed stance and put all my strength into it.
From the center of the tentacle, I tore it in a straight line vertically.
One of the tentacles, which looked like entangled lint, was severed, fell to the floor, convulsed, and then stopped moving.
Slashing works!
I held Leviathan at the ready and closed in on the tentacle.
As soon as I dove into its bosom-shaped area, as humans call it, I slashed it wildly with Leviathan.
It was hard, but not as hard as Apophis.
The light blue magic sword cut off the tentacles without mercy.
In about three minutes, I was able to half-destroy the study and slice the giant tentacles into small pieces.
“...... Is it over?”
While holding Leviathan, I was a little wary of the remains.
Although I tried to intimidate it, it didn’t seem to react, so I put Leviathan away.
“Are you okay?”
“......”
“Don?”
“Eh? Oh, yeah. I’m fine. His Highness’s swordsmanship is amazing. You could take on a monster like that in an instant.”
“Rather, get the man who sent this box and hear what he has to say.”
“Yes, sir!”
Don, who had been stunned by the fierce battle, rushed out. |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | 夜、屋敷内苑の居間。
くつろぎの為に作られた部屋で、日中は採光のいい大きな窓の向こうに、空高く掲げられた半月が見える。
その居間で、立ったまま侍るオードリーとゾーイを置いて。
俺は、模擬戦をやっていた。
水の魔剣レヴィアタン。
名画フワワ。
黄金の巨牛ベヘモト。
そして――覚醒した炎竜バハムート。
そを、次々に鎧の指輪にリンクさせて一で戦わせた。
最初にレヴィアタンと、当時はまだルティーヤーだったバハムートを戦わせたらレベルが上がったあの日以来、俺はちょこちょここいつらを戦わせあっている。
最初はレヴィアタンが圧倒していたのだが、覚醒した後はバハムートがほぼ全勝だ。
今もそうで、バハムートの炎がレヴィアタンの水の剣士を焼き尽くして、勝負がついた。
「ふむ」
「どうしたのですか、ノア様」
「レベルが上がった」
「まあ、おめでとうございます」
「おめでとうございます!」
オードリーとゾーイが次々に祝いの言葉をかけてきた。
名前:ノア・アララート
法務親王大臣
性別:男
レベル:10/∞
HP D+E 火 E+A
視界の隅っこにあるステータスが、また一つレベルが上がって、これで10になった。
こちょこちょこやってきた事で分かったのは、同じ相手――つまりこの四体だけで回しても、ペースが遅くなるだけで、まったく上がらない訳ではない。
しゃかりきになって、通常の方法でレベル上げをする必要はなく、バハムート達に戦わせていればいいというのが分かった。
「しかし、ノア様はすごいですね」
「ん?」
何がだ? って顔で立っているオードリーを見た。
「このような方法、聞いた事もありません」
「レベル上げの方法をどれくらい知っているんだ?」
「多分、一通りは。貴族の妻として、戦いに赴く夫のサポートをするために、一通りの知識は学びましたから」
「なるほど」
それならオードリーの言うとおり一通り、というか通常の方法は全部知ってるんだろう。
何しろ雷親王の孫娘という、まごうことなきやんごとない血統だ。
生粋の貴族であるほど無知を恥じる、オードリーは相当の教育を受けて、相当の知識があるはずだ。
そのオードリーが「聞いた事もない」と言っている。
俺も貴族――親王として産まれた為に色々知識を学んだが、その上で彼女にも確認した。
「能力で、『+』がつくのは?」
「まったく聞いたことがありません。ノア様だけだと思います。世界でたった一人、選ばれた人間の証です」
「すごいですノア様!」
オードリーの言葉に、ゾーイも乗っかってきた。
二人とも心の底から心酔しきっている目で、そういう目で見られるのは悪い気はしない。
さて、夜も更けてきたし、もう一戦だけしてそろそろ寝るか。
コンコン。
ドアがノックされて、応じると接客メイドのセシリーが入ってきた。
「夜分遅くすみません。ご主人様に来客です」
「こんな時間に? もう遅いから明日に――」
「いや、いい」
言いかけたオードリーを遮る。
「会おう」
俺は立ち上がって、居間を出た。
内苑から外苑に出て、応接間ではなく玄関ホールに案内された。
そこに一人の、くたびれきった格好をした男がいる。
髪はぼさぼさ、目は窪んでいる。
近づくと汗の匂いがツーンとしてくる。
「お前は?」
「シンディー様からこれを届けるように仰せつかりました」
男はそう言って、箱を差し出した。
俺に極秘の何かを届けるための箱。
シンディー・アラン。
バイロン・アランの義理の娘で、あのパーティーで出会ってから十年近い歳月が経った今、彼女は二十歳近くなって、バイロンの仕事を手伝っている。
有能だし、忠誠心も高いので、俺はあの箱を預けた。
男の格好をみて、そう聞いた。
「早馬で、三頭乗り継いできました」
「そうか。ゾーイ、こいつに褒美だ。百リィーン持ってこい」
「かしこまりました」
俺の後ろについて来たメイド長のゾーイが頭を下げて応じた。
そのまま男を連れて立ち去った。
俺はその場に立ったまま、箱を開けた。
「――っ!」
箱の中身は簡単なメモだった。
陛下が病で倒れた。
その一言だけだった。
翌日の朝、大食堂でいつものようにオードリーの給仕で朝食をとった後、またセシリーがやってきた。
「ご主人様、王宮から宦官様がおいでです」
「来たか......」
俺は眉を微かにひそめて、立ち上がった。
「昨日の件なのでしょうか」
オードリーが聞いてきた。
「だろうな」
「そうですか......それにしてもすごいです、正式な知らせよりも早いなんて」
「だからシンディーに箱を預けた」
それに、これは陛下から学んだことだ。
何度もやられた事から、俺は情報の鮮度の大事さを学んだ。
この程度でもまだまだ陛下には及ばないが、いずれは......。
そう思いながら、屋敷外苑の応接間に向かった。
そこに驚きの人物がいた。
「クルーズ!? お前が?」
「はっ。勅命である」
こういう場合、親王の俺と宦官のクルーズ、本当なら出会い頭にクルーズが俺に膝をついて一礼するべきなのだが、クルーズは「勅命」と言った。
つまり彼は陛下の名代――勅命を宣下している間は陛下そのものになる。
だから俺は逆に、彼に片膝をついて頭を垂れた。
「余が戻るまでの一ヶ月、ノアを総理親王大臣に命ずる。軍事以外は全て任せる――との事です」
俺は応じ、立ち上がった。
するとクルーズは入れ替わりに、俺に両膝をついて頭を下げた。
「お久しゅうございます、賢親王殿下」
「立ってくれ。それよりも陛下はなぜ俺に、何かあったのか?」
昨日シンディーから知らせがあったが、それは非公式な物だから俺はすっとぼけた。
「陛下のお加減はよろしくありません」
「なに?」
「いわゆる夏バテでございます」
「夏バテ」
「とはいえ一度お倒れになられましたし、ご高齢という事もあって、御殿医グッドの進言もあり、一ヶ月の避暑を行う事となりました」
「なるほど......」
俺は少しほっとした。
おそらく大事を取っての避暑だという事だろう。
それは、政務のほとんどを投げてきたが、軍事だけは手放さないという事からも伺える。
「陛下はこうも仰せです。『余をよく見てきたそなたになら任せられる』、と」
「......」
行間が、まるでトゲのように刺さってきた。
余を良く見ている――字義通りじゃないな。
多分、シンディーの箱もばれてるんだろう。
「さすが賢親王殿下でございます。陛下がこうまで信頼を寄せる方は、賢親王殿下ただ一人」
「あまり持ち上げるな。ともかく分かった。政務はどうする?」
「このままアルメリアにいてとのことです、書類はこちらに転送してくる手はずとなっております」
「わかった。ゾーイ。クルーズリィーンを持ってこい」
クルーズを送り出した後、俺はふぅ、とため息をついた。
そこで冷静になって――気づく。
さっきまで陛下が倒れただの、総理親王大臣に命じられただのに気を取られたので気づかなかったが。
名前:ノア・アララート
総理親王大臣
性別:男
レベル:10/∞
HP D+SSS 火 E+SSS
力 D+SSS 風 E+SSS
なんと、俺のステータスが未だかつてないような物になっていた。
自分の能力の後ろにある、「+」の部分。
人を従えた分上がっていく「+」は、全部が「SSS」になっていた。
びっくりして、戻って来たゾーイに魔法を掛けてもらって、他人でも見られる実際のステータスにしてもらう。
HP SSS 火 SSS
「ご、ご主人様......すごいです......」
ゾーイは死ぬほどびっくりして、唖然となった。
いきなり「+」が大幅に増えた。
かつて生まれた時に封地をもらって水がSになったのと同じで。
陛下が、一ヶ月限定で帝国を預けたからこうなった、というのは火を見るよりも明らかだ。
「国一つ、丸ごとが宝だな......」
不可能ではない未来に、俺は心躍らせたのだった。 | At night, in the living room of the mansion’s inner garden.
It is a room made for relaxation, and during the day, a half-moon raised high in the sky can be seen through the large, well-lit window.
In the living room, with Audrey and Zoe standing by my side.
I was engaged in a mock battle.
Leviathan, the Demon Sword of Water.
The famous painting Fuwawa.
Behemoth, the golden giant bull.
And–the awakened flame dragon Bahamut.
I linked all four of them one after the other to the Armor Ring and had them fight one on one.
Since that day when I first put Leviathan against Bahamut, who was still a Luthiya at the time, my level went up. I’ve been putting them against each other little by little.
At first, Leviathan was the dominant force, but after it awakened, Bahamut won almost all the battles.
And it was still the case now, with Bahamut’s flames consuming Leviathan’s water swordsman, and the game was decided.
“Fumu.”
“Is there anything, Noah-sama”
“My level has increased.”
“Well, congratulations.”
“Congratulations!”
Audrey and Zoe congratulated me one after the other.
Name: Noah Ararat
Minister of Justice
Gender: Male
HPD+EMPE+EStrengthD+EStaminaE+EIntelligenceE+ESpiritE+ESpeedF+EDexterityE+ELuckE+E FireE+AWaterD+SWindE+FEarthE+FLight E+CDarknessE+F
My status in the corner of my eye has gone up one more level, to .
What I’ve learned over the past three years of doing a little bit of everything is that even if I run with the same opponents–that is, just these four–the pace only slows down, but it doesn’t mean it doesn’t go up at all.
I realized that I didn’t need to scramble to level up in the usual way, I just needed to let Bahamut and the others fight.
“But Noah-sama is amazing.”
“Hmm?”
What about? I looked at Audrey who was standing there with such a look.
“I’ve never even heard of such a method.”
“How much do you know about how to level up?”
“─ Probably in one way or another. As the wife of a nobleman, I learned a lot to support my husband in battle.”
“I see.”
If so, then Audrey is right, she knows everything there is to know, or rather, all the usual methods.
After all, she is the granddaughter of the Thunder Prince, an unquestionably respectable bloodline.
The more genuine the nobleman, the more they are ashamed of their ignorance, and Audrey must have received a considerable education and have considerable knowledge.
And yet, Audrey says ‘I never heard of this.’
Being born as a noble—a Prince, I have learned a lot of knowledge, but on top of that, I checked with her as well.
“What kind of ability has a ‘+’ in it?”
“I’ve never heard of it at all. I think it’s just Noah-sama. It may be the sign that you are the only one in the world who has been chosen.”
“That’s amazing, Noah-sama!”
Audrey’s words were echoed by Zoe.
Both of them had a look of utter infatuation in their eyes, and it was not a bad thing to be looked at that way.
Now that it’s getting late, I think I’ll just have another battle and go to bed soon.
Knock, knock.
There was a knock on the door, and when I answered it, Cecily, the guest service maid, came in.
“I’m sorry it’s so late at night. Master has a visitor.”
“At this hour? It’s late, it can wait until tomor-.”
“No, wait.”
I interrupted Audrey as she was about to say.
“Let’s meet.”
I got up and left the living room.
I was led out of the inner garden and into the outer garden, not to the parlor but to the entrance hall.
There was a man there, dressed in a worn-out outfit.
His hair was shaggy and his eyes were sunken in.
As I approached him, I could smell his sweat.
“Who are you?”
“I’ve been asked by Cindy-sama to deliver this.”
The man said, holding out a box.
A box to deliver something top secret to me.
Cindy Allan.
She’s Byron Allan’s adopted daughter, and now, nearly a decade after we met at the party, she’s nearly twenty years old and helping him with his business.
She is capable and loyal, so I entrusted her with the box.
I inquired, looking at the man’s outfit.
“I’ve ridden three horses in a row.”
“That so. Zoe, bring him his reward. Get him 0 reens.”
The head maid, Zoe, who was following behind me, bowed her head and complied.
She took the man and walked away.
I stood there and opened the box.
“——!”
The contents of the box were a simple note.
His Majesty has fallen ill.
That was all it said.
The next morning, after having breakfast in the grand dining hall with Audrey serving, as usual, Cecily came in again.
“Master, the eunuch from the royal palace is here.”
“Finally here......”
I furrowed my brow slightly and stood up.
“Is this about yesterday?”
Audrey asked.
“Maybe.”
“Is that so ...... It’s amazing though, that you got the news so much sooner than it was official.”
“That’s why I left the box with Cindy.”
Besides, this is something I learned from His Majesty.
I have learned the importance of freshness of information from the many times it has been done to me.
Even at this level, I’m still not as good as His Majesty, but I’ll get to ...... sooner or later.
With that in mind, I headed for the parlor in the outer garden of the mansion.
There, I found a surprising person.
“Curuz!? You?”
“Yes. I have an Imperial Decree.”
In a case like this, I, as the Prince, and Curuz, as the eunuch, should have kneeled and bowed to me when we first met, but Cruz said, ‘Imperial Decree’.
In other words, he’s His Majesty’s representative, and as long as he’s delivering the Imperial Decree, he’s His Majesty himself.
So I did the opposite, and got down on one knee and bowed to him.
“I hereby order Noah to be the Prime Minister for one month until my return. Everything but military affairs will be entrusted to him.”
“I comply.”
I complied and stood up.
Cruz took his place and bowed to me on both knees.
“It’s been a long time, Your Highness the Wise Prince.”
“Stand up. Why did His Majesty ask me to do this?”
Yesterday, Cindy gave me some news, but it was unofficial, so I just brushed it off.
“His Majesty’s condition is not good.”
“What?
“It’s the so-called Summer Heat.”
“Summer Heat.”
“However, since he fell ill once and because of his old age, at the advice of the palace physician, Goud, we have decided to take a one-month summer retreat.”
“I see. ......”
I was a little relieved.
This is why the summer resort is probably for important reasons.
It can be seen from the fact that he has thrown away most of his political affairs, yet he has not let go of his military affairs.
“His Majesty also said. ‘You have been watching me closely, and I can trust you with this.’.”
“......”
The space between the lines pricked me like a thorn.
You’ve been watching me closely–that’s not literal.
Maybe, Cindy’s box has been discovered too.
“As expected of His Highness the Wise. His Majesty has only one person he trusts so much.”
“Don’t flatter me too much. Anyway, I understand. What about affairs of state?”
“He wants you to stay in Almeria, and he’ll have the documents forwarded to you.”
“Okay then. Zoe. Give Curuz 5,000 reens.
After sending Cruz off, I sighed.
I then calmed down and noticed.
His Majesty had fallen ill a while ago, and the order of Prime Minister had distracted, so I hadn’t noticed.
Name: Noah Ararat
Prime Minister
Gender: Male
Level: 10 / ∞
HPD+SSSMPE+SSSStrengthD+SSSStaminaE+SSSIntelligenceE+SSSSpiritE+SSSSpeedF+SSSDexterityE+SSSLuckE+SSS FireE+SSSWaterD+SSS
WindE+SSSEarthE+SSSLight E+SSSDarknessE+SSS
How, my status was something like never before.
The “+” part behind your ability.
The “+” that went up as the person followed was all “SSS”.
I was surprised and asked Zoe who came back to cast a spell on it so that it could be seen by others.
Level: 10 / ∞
HPSSSMPSSSStrengthSSSStaminaSSSIntelligenceSSSSpiritSSSSpeedSSSDexteritySSSLuckSSS FireSSSWaterSSSWindSSSEarthSSSLight SSSDarknessSSS
“M-Master ...... wow.......”
Zoe was taken by surprise and dumbfounded almost to death.
Suddenly, the “+” increased significantly.
In the same way that I once received the fief when I was born and water became S.
It’s clear as daylight that this happened because His Majesty entrusted his Empire to me for a month only.
“A whole nation, a treasure, .......”
I was excited about the not-so-impossible future. |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | そのまま、フワワと話す。
声は聞こえるが、それは人間の言葉ではない。
聞こえる声とは別に、頭の中にダイレクトに何かが流れ込んでくる。
まるで、夢の中のやりとりを思い出すかのような、ふわふわでつかみ所がないが、確かに理解できる不思議な感覚。
「なるほど、ならやってみろ」
いうと、フワワは床の上に降りたって、姿がぼやけだした。
ぼやけた姿がまるで霧のようになって、それが離散集合を繰り返した後。
「ええっ!?」
アランが声をあげる程驚いた。
「こ、これは......私?」
「そうだな。誰かに鏡を持ってこさせてで並んでみろ」
アランが自分の部下を呼んで――その部下もぎょっとする中、鏡を持ってくるように言いつけた。
その間、変身したフワワがアランのそばに並んだ。
部下が鏡を持ってきて、それをのぞき込むアランはますます驚いた。
「そっくりだ......」
フワワが化けたアランは、本人の双子の兄弟かという位そっくりだった。
「このようなことも出来るのか......」
「まだあるぞ。多分......こうだな」
俺は手をフワワに伸ばした。
フワワが俺の手を取った瞬間――消えた。
自分の姿をした存在にして消えたことに驚くアラン。
直後、フワワが再び現われた。
消える直前と同じ、アランの姿で。
「な、何かなさったのですか?」
「フワワ、両手を出してみろ。アラン、両手を順に触ってみろ」
二人とも俺の言葉にしたがった。
フワワが両手を出して、アランは右手を触ってから、左手を触ろうとして――すり抜けた。
「ええっ?」
「右半身だけ実体化させた。両方もいけるが、今回は試しだからな」
「元が幽霊みたいに触れなくて、右半身だけ実体化させた......?」
アランは更に目を丸くした。
フワワを実体化させたのは鎧の指輪とのリンクだ。
レヴィアタンもルティーヤーもやったそれを、フワワにさせた。
幽霊のような変身能力に、鎧の指輪で実体化。
ほぼ完全に変身能力だ。
「どこまで行けるんだ? 腹は鳴らせるか?」
――ギュルルルルル。
俺が聞いた途端、フワワ=アランの腹の虫が盛大になった。
「消えるのは?」
「うおっ!」
今度は左半分、鎧の指輪で実体化してない部分が透明になった。
きっちり半分だけの自分を見て、アランは悲鳴のような声を上げてしまう。
「なるほど、一通り出来るな」
「......さすがは殿下、初めての相手もこうして使いこなせるとは」
驚きからようやく立ち直ったアラン。
俺は完全にフワワを元に戻してから、アランにいう。
「よくやった。また何かあったら連絡しろ」
「はい!」
王邸の屋敷に戻ると、玄関で俺を出迎えた、新しい接客メイドのセシリーがいってきた。
「ご主人様、マーサさんがご主人様にお話ししたいことがあると」
「マーサ? 誰だ?」
「ゾーイさんのお母様です」
「......ああ」
数秒ほど考えて、ようやく思い出した。
前のことだ。
ゾーイの故郷のドッソが水害にあって、その時に彼女の母親にこの屋敷で閑職を与えたんだ。
たしか......なんだっけ。
あってもなくても、というかとってつけたような仕事だったとしか覚えてない。
「分かった、書斎に呼べ」
「はい」
六年間、多分一度も話したことのないマーサが俺に話があるといってきた。
聞かれたくない話ってことも考えて、俺は書斎を選んだ。
俺の書斎、親王の屋敷の書斎だけあって、断音魔法がかけられている。
人間が喋る程度の音なら外に漏れないし、外からも聞こえてこない。
書斎に入って、しばらく待っていると、ノックが使えない部屋だからドアについてる特殊なベルがなった。
直後、一人の老婦人が入ってくる。
老婦人――マーサは部屋に入ってドアを閉めて、俺の前に両膝をついた。
「なんだ? 話って」
「はい、私、親王様のご命令で、裏口のドアの開け閉めを毎日させてもらってます」
マーサにいわれて、彼女の仕事を思い出した。
屋敷であまり使われていない裏門の、朝と夜の開け閉めの仕事だ。
それで月十リィーンだ。
ぶっちゃけ意味のないしごと、施しのためだけにしたことだ。
「ここ何日か、夜中に、裏門で誰かと会っている人がいるのです」
「誰かと? 誰が?」
「ええっと、最近お屋敷に来た......えっと......」
マーサは眉間を揉みながら、思い出そうとする。
見た目通りの歳で、記憶力が弱ってるのか。
「最近?」
「ドン・オーツか」
「その人です!」
眉がはねたのが自分でも分かった。
「ドンが夜中に誰かとあっているって?」
「はい。何者かわかりません、でも、この屋敷の人はあんな風に、こそこそと夜中外部の人間と会うことは無かったから」
頷く俺。
ディランにも調べさせたが、これでまた一つ、ドンがスパイだって状況証拠が揃った。
「わかった。そら」
俺は懐から適当に、残っている数十リィーンを取り出して、マーサに渡した。
「よく知らせてくれた。褒美だ、取っとけ」
「ありがとうございます」
「そのことをだれにも話すな。娘にもだ」
俺からもらった金を両手で抱えるようにして、書斎から出て行くマーサ。
......まいったな。
月のない、真っ暗な中、十三親王邸の裏口。
いつもの様に、毎日欠かさずしている仕事を果たすべく、マーサが屋敷から出て来た。
彼女は年相応のゆっくりとした足取りで、一歩一歩裏門に近づいていく。
それまで開け放ったいた門を閉めた――その時。
「――むぐっ!」
何者かが後ろから羽交い締めにしてきて、口を塞いだ。
マーサは抵抗した、が振りほどけなかった。
その何者かはマーサに何かをした。
一瞬ビクッとして、大きくけいれんした後、マーサは糸の切れた人形のように崩れ落ちた。
地面に倒れたマーサを、その何者かが鼻で息を確かめ、心臓に耳を当てて確認する。
それで満足したのか、その場からそそくさと立ち去った。
――という、一連のことを、俺は物陰で見ていた。
「助かったな」
「......」
俺の背後で絶句している女が二人いた。
ゾーイと、マーサの母娘だ。
「お、お母さんが狙われた、って事ですか?」
おそるおそる聞いてくるゾーイ。
「そういうことだ。しかもあれ、多分自然死に見えるようにやったんだろうな。外傷がまるでない」
そう言った直後、離れた所で殺された「マーサ」の姿が揺らいで、俺の親指にある指輪に戻って来た。
そして、フワワがゆっくり飛んでくる。
マーサが、ドンが外部の人間と連絡を取っているところを目撃した。
それを知ったドンが口封じに走る――と予測した俺は、マーサの代わりにフワワを実体化させたのを行かせた。
殺されたのはフワワ、鎧の指輪で実体化した彼女は人間の生体反応を再現出来るから、やられたように見せた訳だ。
「すごい......さっきまでお母さんだった人が......」
驚嘆するゾーイ。
「ゾーイ」
「は、はい」
「しばらくの間、お母さんの遺体と一緒にドッソ、故郷に戻れ。葬るなら住み慣れた故郷の方が良いだろう」
「えっと......?」
「というていだ。このままじゃお前も狙われかねん」
「あっ......」
常に魑魅魍魎たちと化かし合いをしている商人や貴族と違って、一介のメイドであるゾーイには、ストレートに話した。
「分かりました」
「マーサも、終わったらまた呼び戻す、しばらく休んでいろ」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
命を救ってもらい、更に恩情をかけてもらった――って事でマーサは何度も何度も俺を拝んだ。
「あの、ご主人様? 差し出がましいかもしれませんけど、あの人を監視してなくていいんですか?」
「それならもう考えてある」
「え?」
「何かが足りないって気づかないか?」
「え? えっと......ああっ、あのご主人様の新しい部下がいません」
フワワがいつの間にか消えていることに気づいたゾーイ。
「実はお前のそばにいる。フワワ、肩にさわってやれ」
「え? ――ひゃあ」
俺が予告したのにもかかわらずに驚くゾーイ。
何も見えないのに触られた感触がして驚いたのだ。
「こ、これって」
「顔だけ出せ」
今度は空中に浮かんでいる生首に驚く。
「こんな風に、姿を消すことができる。フワワ、姿を消してさっきのやつを監視しろ」
フワワは生首のまま頷き、完全に姿を消した。
それでようやく理解したゾーイ。
「なるほど! すごいですご主人様」
と、ワンテンポ遅れた喝采をしてきたのだった。 | After the incident, I spoke to Fuwawa.
I could hear voices, but they were not human words.
Apart from the voices I hear, something else flows directly into my head.
It’s as if I’m remembering an exchange in a dream, a strange sensation that I can’t quite grasp, but can certainly understand.
” I see, then try it.”
As I said this, Fuwawa stepped down onto the floor and her figure began to blur.
After the blurred figure became like a fog, and it repeatedly dispersed and gathered.
“ehhh!?”
Alan was so surprised that he shouted.
“I-Is this ...... me?”
“Yes, it is. Have someone get a mirror and line the two of you up.”
Alan called one of his own men – who was also awestruck – and told him to bring the mirror.
In the meantime, the transformed Fuwawa lined up beside Alan.
When his subordinate brought the mirror, Alan was even more surprised when he looked into it.
“Just like .......”
Alan, who was Fuwawa transformed into, looked just like his twin brother.
“It was possible to do something like this .......”
“There’s more. Maybe ...... like this.”
I reached out my hand to Fuwawa.
The moment she touched my hand,—- she disappeared.
Alan was astonished that a being that looked like him disappeared in an instant.
Immediately after, Fuwawa reappeared.
Just as she did right before she disappeared, she reappeared in Alan’s form.
“W-What did you do?”
“Fuwawa, show me your hands. Alan, touch them in turn.”
They both did as I asked.
Fuwawa held out both hands, and Alan touched the right hand, then tried to touch the left – it slipped through.
“Ehhhh?”
“She only materialized the right half of the body. She could have done both, but it was just a test.”
“The former wasn’t like touching a ghost, so only the right half materialized. ......?”
“Yeah.”
Alan rolled his eyes even more.
It was the link to the Armor Ring that made Fuwawa materialize.
Leviathan and Luthiya had both done it, and this time Fuwawa did it too.
A ghostly shapeshifting ability, materialized by the ring of armor.
It’s almost a complete shapeshifting ability.
“How far can it go? Can your stomach growl?”
–GyururuRuru.
As soon as I asked, Fuwawa aka Alan’s stomach began to growl.
“What about disappearing!?”
“Whoa!”
This time, the left half, the part not materialized by the armor ring, became transparent.
Alan let out a scream when he saw exactly half of himself.
“I see, you can do it all at once.”
“...... As expected of His Highness, even though you met it for the first time, you are able to use it like this.”
Alan finally recovered from his surprise.
After I had completely restored the Fuwawa, I turned to Alan.
“You’ve done well. Contact me if anything else happens.”
“Yes!”
When I returned to the th Prince’s residence, I was greeted by Cecily, the new maid who greeted me at the entrance.
“Master, Martha-san has something to tell you.”
“Martha? Who is it?”[WHY DID YOU SAY THAT NAME!!!]
“She’s Zoe-san’s mother.”
“...... Ahh.”
I thought about it for a few seconds and finally remembered.
It was six years ago.
Zoe’s hometown of Dosso had been flooded, and I had given her mother a quiet job here at the estate.
I believe it’s .......
Well, I only remember it was a job that wasn’t exactly there as a job.
“All right, bring her into the study.”
Martha, who I hadn’t spoken to in probably six years, said she wanted to talk to me.
Considering the fact that she didn’t want to be heard, I chose the study.
My study, being the study of the Prince’s residence, has been enchanted with sound insulation.
The sound of human speech would not leak out, nor could it be heard from outside.
As I entered the study and waited for a while, the special bell on the door rang because knocking was not allowed in this room.
Shortly after, an old lady walks in.
The old woman, Martha, entered the room, closed the door, and knelt down in front of me.
“What is it? Talk”
“Yes, I am assigned by the Prince to open and close the back entrance every day.”
Martha reminded me of her job.
It was to open and close the back gate in the morning and at night as it was not used very often.
At reens a month.
To be honest, it was a meaningless job, something I only did for charity.
“For the past few days, some people have been meeting at the back gate in the middle of the night.”
“Someone? Who?”
“Um, a recent visitor to the mansion, ...... uh, .......”
Martha rubbed her brow and tried to remember.
She’s as old as she looks, and her memory is getting weaker.
“Recently?”
“Don Oates?”
“That’s him!”
I felt my eyebrows shoot up.
“Don’s seeing someone in the middle of the night?”
“Yes. Well, I don’t know who the other person is, but the people in this mansion don’t sneak out at night like that to meet with outsiders.”
I nodded.
As I had asked, Dylan did his research, and now we have circumstantial evidence that Don is a spy.
“I understand. Here.”
I took the dozens of remaining reens out of my pocket and handed them to Martha.
“Good to know. Here’s your reward. Keep it.
“Thank you, sir.”
“Don’t tell anyone about it. Not even your daughter.”
Martha walks out of the study, holding the money I gave her in both hands.
...... I need to move.
In the darkness of the moonless night, the back entrance of the th Prince’s residence.
As usual, Martha came out of the mansion to fulfill the work that she does every day without fail.
She approached the back gate, step by step, with slowly paced steps befitting her age.
She closed the gate, which she had left open until then.
“—-MUGU!”
Someone clutched her from behind and covered her mouth.
Martha tried to resist, but she couldn’t shake it off.
That person did something to Martha.
She jerked for a moment, cramped up, and then collapsed like a stringless puppet.
As Martha fell to the ground, that someone checked her breath through her nose and placed an ear to her heart.
Satisfied with that, it quickly left the scene.
–I watched the whole thing from the shadows.
“Saved from that.”
“......”
There were two women behind me who were speechless.
Zoe and Martha, mother and daughter pair.
“M-Mother was targeted, you mean?”
Zoe asked cautiously.
“That’s right. And they probably did it to make it look like a natural death. There’s no sign of trauma.”
Just as I said this, the figure of Martha, who had been killed at a distance, flickered and came back to the ring on my finger.
Then Fuwawa slowly flew in.
Martha witnessed Don communicating with an outsider.
I predicted that the Don would find out and try to silence her, so instead of Martha, I sent a materialized Fuwawa to take her place.
It was Fuwawa who was murdered, and since she was materialized by the Armor Ring, she was able to replicate human bio-reactivity, making it look like she was killed.
“Wow, ...... the person who was my mother just now, ......”
Zoe marveled.
“Zoe.”
“Y-Yes.”
“For now, take your mother’s body with you back to your hometown, Dosso. It would be better to lay down in a familiar place.”
“Uhm, ......?”
“After all. At this rate, you’ll be a target.”
“Ah, .......”
Unlike the merchants and aristocrats who always deceive others with evil spirits of rivers and mountains, I spoke straight to Zoe, who is a maid.[TN: 魑魅魍魎 (chimimoryo) evil spirits of rivers and mountains are a**holes, although I don’t exactly know what that means, it should be something like deception, looking like human but is a monster, kind of, anyway here’s the Wiki link, do help me if you know]
“I understand.”
“Martha, I’ll call you back when it’s over, rest for a while.”
“Thank you very much! Thank you so much!”
Martha worshipped me over and over again for saving her life and for being so kind to her.
“Um, Master? I don’t mean to be rude, but are you sure you shouldn’t be keeping an eye on that man?”
“I’ve already thought of that.”
“Eh?”
“Don’t you realize that there’s something missing?”
“Eh? Well, ......, Master’s new subordinate is missing.”
Zoe noticed that Fuwawa had disappeared for some time.
“Actually, she’s right there with you. Fuwawa, touch her shoulder.”
“Eh? –Uwaahh”
Despite my warning, Zoe was surprised.
She couldn’t see anything, but she was surprised when she felt a touch.
“Th-This is”
“Just show her your face.”
She was surprised to see a head floating in the air.
“She can disappear like this. Fuwawa, make yourself invisible and keep an eye on that guy.”
She nodded her head and disappeared completely.
That finally made sense to Zoe.
“I see! That’s great, Master.”
And she gave delayed applause. |
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} | 「......ここ、は?」
「――ッ!」
ベッドの上で目覚めたドンは、驚きのあまり飛び上がろうとしたが、痛みを感じてそのままベッドに倒れ込んだ。
屋敷ではない、都の外れにある民家で、俺とドンきりだ。
「無理をするな、死ぬところだったんだ」
「し、ぬ?」
痛みに耐えて、眉をひそめて俺を見つめる。
「覚えてないか? 一部始終監視させてあるから、覚えてないなら教えてやるぞ」
どうやら思い出したようだ。
「そう、お前は目撃者を消したという報告をした後、間をつないでる人間に切られたんだ。まあ、ドジったお前も切り捨てられたって話だな」
ドンはベッドの上に寝そべっていながらも、はっきりと分かる位がっくり――気落ちしていた。
「尾行をさせたのはこんなこともあるんじゃないかって思ったからなんだが、本当に口封じをしてくるとはな」
俺はため息をついた。
上の兄は本当にもう......。
「人は宝だというのに」
ドンはベッドの上で顔を横に向けて、俺を見つめてきた。
「私が切り捨てられることを読んでいたというのか」
「噂に違わぬ賢親王、さすがだ......」
ドンはふっ、と笑い、感心したような全てを諦めたような顔をした。
「もし、最初から殿下の方に......」
つぶやくドン、言葉に自嘲の色が混じっている。
「今からでも構わんぞ」
「え?」
「巡り合わせが違えば俺の部下になってるって意味だろ? 今のは。だったら今からでも遅くない」
「本気......ですか?」
「そのかわり俺は裏切りに厳しいぞ。一度俺の部下になったからには死ぬまで抜けることは許さない」
「ありがとうございます......ッ」
傷が痛むのか、ベッドに肘をついて体を起こしたドンは、ベッドの上で俺に土下座する形で頭を下げた。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
法務親王大臣
性別:男
レベル:3/∞
体力 F+F 地 F+F
スパイとしてやってきた時とは違って、俺のステータスがアップした。
心の底から、俺の部下になろうと決めているって証だ。
「よし。なら傷を癒やすことに専念しろ。明日にでも没落貴族を探してお前を養子にする。新しい身分と名前だ。そのうち顔も少し変えとけ」
「は、はい......」
「宮内省に、というか都はしばらくいない方がいい。アルメリアに代官の口を見つけてやるから、そこでほとぼりを冷ませ」
「あ、ありがとうございます......っ」
「当面はそれでいいだろ。その後のことはまたその時になったら決める」
「どうした」
陛下に進呈したポイニクスの酒、今すぐにでも飲用をやめさせるべきです」
「......何でだ?」
聞き返すと、ドンは押し殺した声で、俺にだけ聞こえるようにその秘密を教えてくれた。
ドンを安置した都外れの家を出て、一度法務省に戻ってから王宮に駆け込んだ。
王宮に入って、陛下に面会を申し込んで、待った。
一時間くらい待ってから、図書館のような書斎に通された。
「おお、どうしたノア」
「陛下、極秘の話がございます。人払いを」
「ふむ......?」
陛下は俺をじっと観察するように見つめてから。
「このまま話せば良い。クルーズ以外は全員耳が聞こえない連中だ」
俺は陛下の横にいる、雑用をしている若い宦官を見た。
俺が陛下と話している間も、何も聞こえていないようなそぶりをしている。
なるほど、機密保持の為に、はなっから書斎に配置しているのは耳が聞こえない連中か。
「分かりました。陛下、いますぐポイニクスの酒の飲用をやめて下さい」
「ポイニクス......ギルバートの封地で生産して、今年から王宮に進呈したものだな?」
「食べ合わせです」
俺はドンから聞いた話を陛下につげた。
「ポイニクスの酒はそのままで滋養強壮の効果のあるいい酒ですが、特定のものと一緒に食べると激しい毒に変化します」
「なんだ? その特定のものとは」
「竜の爪、と呼ばれるものです」
「竜の爪......ふむ、年に一度の儀式で、余と皇太子が先祖を祀る時に口にするものだな」
俺は一度深呼吸して、更に続けた。
ドンから聞いた話に、推測を肉付けしたものを。
「この食べ合わせの恐ろしいところは、ポイニクスの酒は飲んだその日だけではなく、一週間は効果が体内に残り続けるところです。そしてポイニクスの酒は進呈して一年弱、陛下が日頃から飲用していることもあって、陛下自ら毒がないと証明しているようなものです。故に、
「下手人のアリバイが成立する、と言うわけだな」
「しかしそれは、その食べ合わせが本当ならという前提がつく」
「試してきました。死刑囚に無事だったら釈放という条件で両方口にしてもらいました。結果は」
「なるほど、効果はてきめんだった、と言うことだな」
ポイニクスの酒のみの死刑囚。
竜の爪のみの死刑囚。
両方を口にした死刑囚。
のうち、片方だけの二人はピンピンしているが、両方口にした者はほぼ即死した。
「そうか。つまり、このままでは余も、そして皇太子も儀式の時に絶命するわけだな。ポイニクスの酒は皇太子にも下賜しているし、竜の爪は余と皇太子のみが口にする」「はい」
「よくやったノア、すごいぞ。良くそれを暴いてくれた。クルーズ」
「ヘンリーを呼べ。兵を出して第一親王邸を包囲させろ。沙汰は追って伝える」
腹心の宦官クルーズは、陛下の命令を受けて動き出した。
これでよし。
ギルバート兄上には悪いが、さすがにこれほどのことは見逃せん。
「ノアももういいぞ。褒美は追って伝える」
最後に一礼して、書斎から立ち去ろうとした。
あとで法務親王大臣としての意見を求められるかもしれんが、今はこれまでだ。
身を翻して、外に向かって歩き出そうとしたその時。
何かが頭の中をよぎっていった。
足が止まった。
大きな違和感。
その違和感は何なのかと必死に考える。
やがて、思い出す。
何度もそれを思い知らされてきた。
ドッソの村の件とか、その後の色々とか。
陛下の耳目は凄まじく、俺がやっていることはほぼ筒抜けだ。
その陛下が、ドンでさえ知っている事で、俺に言ったこと。
それを――まるで今知ったかのように振る舞ったと言う違和感。
......まさか?
振り向き、おそるおそる陛下を見る。
目があった、陛下が苦笑いした。
「お前はやっぱりすごく賢いな、ノア」
その一言で、俺が気づいた事を陛下も気づいたのが分かった。
「き、気づいていたのですか」
「うむ。もっといえば、余はポイニクスの酒を飲んではおらぬ」
もう待ちきれないものもいるようだ」
「お前は......そういうのはないようだな」
「ありません」
俺は即答した。
正直生まれ変わりだし、皇族として生まれたこともあって。
陛下には、あまり「父親」と感じたことはない。
それでも、陛下を殺してでも帝位を奪おうとはまったく思わない。
「そうか。ノア・アララートよ」
「お前に兵務副大臣を命ずる、今の法務大臣と兼任しろ」
「は......?」
「そして第一軍、通称皇帝親衛軍の提督も命じる」
「御意」
応じたはいいが、陛下の意図を今一つ掴みきれずにいる俺。
「余は、むざむざ倒れるつもりはない。息子にやられてしまえば後世のいい笑いものだ。だが、もしもの時は、そなたが親衛軍で帝都を掌握して、ふさわしい人間を皇帝に立てろ」
俺は息を飲んだ。
この人事は、陛下からの最高の信頼だった。 | “...... here is?”
Don woke up on the bed and tried to jump up in surprise, but he felt pain and fell back down on the bed.
It was not a mansion, but a room in a private house on the outskirts of the city, and it was just the two of us.
“Don’t push yourself, you could have died.”
“D-ie?”
Enduring the pain, he stares at me with a furrowed brow.
“Don’t you remember? you were under surveillance the whole time. I’ll tell you if you don’t remember.”
He seemed to remember.
“Yes, after you reported that you had eliminated the witness, you were cut off by your contact. Well, I guess they cut you off for screwing up, too.”
Don was lying on the bed, but he was clearly disappointed.
“I thought it might be the case that you had me followed, but I didn’t think you’d be the one to be silenced.”
I sighed.
My older brother is really .......
“People are treasures.”
Don turned his face sideways on the bed and stared at me.
“You mean to tell me you’ve been expecting me to be cut down?”
“You’re as good as they say, Wise Prince. ......”
Don laughed and looked impressed as if he had given up on everything.
“If I was on your side from the start,......”
Don mumbled, a hint of self-mockery in his words.
“You can start now.”
“Eh?”
“You mean, if things had gone differently, you’d be my subordinate, right? Start from now. Then it’s not too late.”
“Are you serious about ......?”
“In return, I’m very strict about betrayal. Once you’re under my command, you’re not allowed to leave until you die.”
“Thank you very much .......”
Perhaps his wounds hurt, but he propped himself up on his elbows on the bed and bowed his head to me on the bed.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Minister of Justice
Gender: Male
Level: / ∞
HPE+FMPF+FStrengthE+EStaminaF+FIntelligenceF+ESpiritF+FSpeedF+FDexterityF+FLuckF+F FireF+BWaterE+SWindF+FEarthF+FLight FDarknessF
Unlike when he came to me as a spy, this time, my status has increased.[His wind went from F to F+F]
It’s a sign that deep down, he has decided to be my subordinate.[TN: Now, that’s some bul**hit]
“Good. Then concentrate on healing your wounds. Tomorrow, I will find a fallen nobleman and adopt you. A new identity and name. You’ll have to change your appearance a bit.”
“Y-yes, .......”
“I suggest you stay away from the Ministry of the Imperial Household, or rather the capital, for a while. I will find you an alternative position in Almeria and you can cool off there.”
“T-thank you very much, .......”
“That will do for now. After that, we’ll decide what to do when the time comes.”
“What is it?”
“I don’t know if it would even be considered as a repayment of Your Highness’s kindness, but ...... the Poinics liquor that Gilbert presented to His Majesty should be discontinued immediately.”[TN: ‘ポイニクス’ (Poinikusu) Rather than Phoenix I thought Poinics would sound better]
“...... What do you mean?”
When I asked back, Don told me the secret in a stifled voice, so that only I could hear.
I left the house on the outskirts of the city where I had laid Don to rest, and once I returned to the Ministry of Justice, I ran to the Royal Palace.
Once inside the palace, I applied for a meeting with His Majesty and waited.
After waiting for about an hour, I was ushered into a library-like study.
“Oh, what’s the matter, Noah?”
“Your Majesty, I have a secret to tell you. Please send everyone away.”
“Fumu......?”
His Majesty looked at me as if he were observing me.
“You can talk like this. Everyone except Curuz is deaf.”
I looked at the young eunuch beside him, who was doing some chores.
He acted as if he hadn’t heard a thing while I was talking to him.
I see, so it is the deaf people who have always been placed in the study to maintain secrecy.
“I understand. Your Majesty, please stop drinking Poinics right now.”
“Poinics ...... produced in Gilbert’s estate and presented to the Royal Court this year, correct?”
“Combination(with other foods).”
I told him what Don had told me.
“Poinics liquor is a good tonic on its own, but when eaten with certain foods, it turns into a deadly poison.”
“What is it? What is that particular thing?”
“It’s called dragon’s claw.”
“Dragon’s claw. ...... Fumu, that’s what the Crown Prince and I consume once a year when we worship our ancestors.”
I took a deep breath and continued.
And continued with what Don had told me, fleshing out my speculations.
“The scary thing about this combination is that the effects of the Poinics liquor stay in your body for a week, not just the day you drink it. And since it’s been less than a year since it was presented to you, and you drink it on a regular basis, you yourself have proven that it is not poisonous. So, no one will suspect that when it comes time to eat the dragon’s claws, no one will suspect that Poinics wine is poisonous.”
“So you are saying that the alibi will be confirmed.:
“But that’s assuming the combination is real.”
“I have conducted tests. I let the death row inmate try both on the condition that he would be released if he was safe. And the result was there.”
“Oh, so you’re saying it worked.”
One prisoner on death row drank only Poinics.
Another one who took the dragon’s claw.
And the one who took both.
Of the three, the two who ate only one were still alive and well, but the one who ate both died almost instantly.
“I see. In other words, if this continues, both I and the Crown Prince will die during the ceremony. The Poinics liquor was also presented to the crown prince, and the dragon’s claw is only for me and the crown prince to eat.” “Yes”
“Well done, Noah. I am glad you were able to uncover it. Curuz.”
“Get Henry. Send out the troops and have them surround the First Prince’s residence. He’ll tell us what we need to know.”
The confidant eunuch, Curuz, moved after receiving His Majesty’s order.
That’s it.
I’m sorry Brother Gilbert, but I can’t let something like this go unnoticed.
“Noah, you can go now. The reward will follow later.”
I gave a final bow and turned to leave the study.
I may be asked for my opinion as Minister of Justice later, but for now, this is it.
Just as I was about to turn myself around and walk out of the room.
Something crossed my mind.
My feet stopped.
I felt a great sense of discomfort.
I desperately wondered what that strange feeling was.
Eventually, I remembered.
I’ve been reminded of it many times.
The incident in Dosso’s village, and the things that happened after that.
His Majesty’s attention is so intrusive that he knows almost everything I’m doing.
His Majesty told me something that only Don knew.
It feels strange that he acted as if he had just found out about it.
...... No way?
I turned around and looked at his Majesty hesitantly.
My eyes met his, and he chuckled.
“You’re very clever, Noah.”
With that one word, I knew that His Majesty had noticed what I had noticed.
“Y-You had realized that already?”
“Yes. More importantly, I haven’t been drinking Poinics.”
“I’ve been emperor for too long, and it seems some cannot wait any longer.”
“You ...... don’t seem to have any of that.”
“Not at all.”
I answered immediately.
To be honest, I was reincarnated and was born into the royal family.
His Majesty never really felt like a ‘father’ to me.
Even so, I don’t think I’ll kill him to take the throne.
“I see. Noah Ararat.”
“I hereby appoint you Vice Minister of Military Affairs, to serve concurrently with the current Minister of Justice.”
“Ye ......?”
“And you will also be the Commander of the First Army, also known as the Imperial Guard.”
“As you wish.”
Well, I agreed, but I couldn’t quite grasp His Majesty’s intentions.
“I have no intention of going down without a fight. I will be laughing stock for generations if my son kills me. However, if the worst should happen, you will take control of the Imperial Capital with Emperor’s Guard and appoint a suitable person as emperor.”
“—-!”
I gulped.
This was the utmost trust that His Majesty had placed in me. |
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} | ノアが立ち去った後、皇帝は長年の腹心である、相を呼び出した。
皇帝はノアに意見を求めた後いつもすぐに実行したり、相談したりしている。
そのため、予め待機していた第一宰相はと経たない内に皇帝の書斎にやって来た。
「おめでとうございます」
作法に則って一礼したあと、第一宰相はおもむろにそんな言葉を言い放った。
これにはさすがの皇帝も不思議がって。
「何がめでたいというのだ?」
「天顔がいつに無く優れているとお見受け致しました。よほど嬉しいことがあったのだと推察いたします」
「ふっ、顔にも出ていたか」
皇帝は更に嬉しそうに微笑んだ。
「ノアは益々、大物感が増してきたぞ」
「ほう、それは是非お聞きしたい」
第一宰相が興味を示すと、皇帝は文字通り我が子を自慢する父親の顔をして、今し方ノアとしたやりとりを一通り話した。
それを第一宰相は相槌を打ったりして、最後まで話を聞いてから。
「さすがですな。徹頭徹尾、貴族の道理のみで動ける方は......陛下のご子息の中でも賢親王殿下ただ一人ですな」
「うむ」
「まさに皇族の申し子でございますな」
「という訳だ。鎮圧にはライス・ケーキを使う。ヘンリーには悪いが、今は兵権を渡したくない」
「承知致しました。そのように致します」
「......それと」
皇帝はそこで一旦言葉を切って、顎を摘まんで考えた。
こういった感じの思案顔はノアとよく似ていて、やはり親子だなと、第一宰相は密かに思った。
皇帝はしばし考えてから、顔を上げていった。
「若くて、それなりに将来性のありそうなものを集めて、ライス・ケーキの討伐軍に加えさせよ」
「承知いたしました。どのような目的で?」
第一宰相は改めて聞き直した。
目的次第で選ぶ人間がはっきり違ってくるから、そこはきちんと把握しておかねばならないと考えた。
家人でもないのが条件だ」
「ふっ、なんでそんな事を、って顔をしているな」
「......はっ」
第一宰相は少し顔を赤らめて、恥ずかしそうにした。
「今のうちに、誰にも属していなくて、兵を知り実戦を知る若者を育てておきたいのだよ。次の皇帝が誰になろうとも使える無所属のを、な」
「なるほど!」
皇帝になった皇子が、他の親王の家人を重用できる事はほとんどない。
使いやすさにしろ、あるいは純粋にひいきするにしろ。
どうしたって、自分の家人を重用するものだ。
皇帝は兵権を握って離さない。
そのため、親王の家人が実戦を知る機会はほとんどない。
次の皇帝の為に、使えるニュートラルな立場の人間を用意したいというのが皇帝の考えだ。
その発想はやはりノアとよく似ている。
そしてノアならどうしただろう? と第一宰相は思った。
「それともう一つ。重要な話だ」
「余は、上皇になる」
「――っ!」
まさに晴天の霹靂。
第一宰相は誰が見ても分かるくらい驚愕した。
「慌てるな。あくまで前の話の続きだ。良き孫の繁栄を確保する。それに変わりは無い」
「はっ......」
第一宰相は少しほっとした。
「だが、余も人間だ。今でこそまだやれるが、この先老化と共に判断力が落ちていくだろう。であれば判断力がしっかりしている内に、しっかり帝位を渡した方が帝国の為にも良い――それに」
皇帝はにやりと笑った。
「この前気づいたのだ。余の息子が皇帝として活躍する姿を眺めるご隠居、と言うのも悪くないかも知れない、とな」
第一宰相は得心顔で、ぺこりと頭を下げた。
下を向いた顔は、自分でも分かるくらい驚いている顔だ。
(さすがノア様、陛下の人生まで変えてしまうとは......)
第一宰相は決して鈍くはない。
いや、むしろ宰相という立場は、皇帝とその下の大臣らの間に立って調整するのが主な仕事だ。
その分、人の感情の機微に長けたものが多い。
第一宰相はすぐに分かった。
このタイミングで、皇帝にそう思わせたのはノアだ。
皇帝はノアのことをとことん気に入っている。
自分が皇帝として権力を振るうよりも、ノアが皇帝になったらどういう治世になるのかを見たいと思った。
皇帝に自ら退位を決意をさせたノア。
その才覚はますます成長している。
第一宰相は、密かにそう思ったのだった。
夜、第三宰相、ジャン=ブラッド・レイドーク邸。
王宮から屋敷に戻ると、ジャンからの招待状が届いた。
今日の夜は一席設けるから是非来てくれと。
ジャンがパーティーを開くのはよくあることだが、今回の誘い方はちょっと強めだった。
それが気になって、日が沈む頃にやってきた。
屋敷の表に馬車が着くと、ジャン自ら出迎えに来た。
「ようこそ、おいで下さいました殿下」
「今日はどういう集まりなんだ?」
「どうぞ、中へ」
ジャンは答えなかった。
俺は無理に聞こうとしなかった。
そのままジャンとその使用人らに案内されて、屋敷の中に入った。
屋敷の広間に案内された。
『おお! また会えてうれしいです、十三親王殿下』
広間の中に知っているが、予想外の顔があった。
ルーシ・ツァーリの使者、謁見の間であったあの男がいた。
予想外だが、すぐに分かった。
ジャンはコネクションを作るのが上手く、また常にそれに力を注いでいる人間だ。
ルーシ・ツァーリを「使う」と帝国の方針が決まりかけたと知って、接待して取り入ろうとしてるんだろう。
俺はジャンに「ふっ」と微笑んで、レヴィアタンらを通して男に話しかけた。
『まだ、お前の名前を聞いてなかったな』
『これは失礼致しました。私はイワンと申します。どうぞお見知り置きを』
『イワンか。宜しくな』
「いやあ、さすが殿下。ルーシ語も堪能だったとは、改めて聞いても驚かずにはいられません。ささ、ともこちらへ」
良いタイミングで会話に入ってきたジャン。
広間に大きなテーブルがあり、彼は俺たちをそこに招いた。
上座には俺、その次がイワンで、ジャンは下座に座った。
俺たちが座ると、料理が運ばれてきた。
前のパーティーと違って、客が俺とイワン二人だから、量は少なく、そのかわりとことん上品で金も手間もかけている料理が運ばれてきた。
親王の俺はそれで驚きはしなかったが、イワンは料理を口にする度にかなり大袈裟に喜んだ。
心の底から喜んでいるのが分かった。
レヴィアタンらとリンクして、それで通訳をしている都合上、相手の感情が読めるというオマケがついた。
といっても考えが読めるとかじゃない、感情の大まかな動きだけだ。
イワンは表に出ている言葉や表情とおり大喜びしているし、ジャンはニコニコ微笑みを保っていながらも、接待が上手く行きそうなことに安堵を覚えていた。
ふと、イワンが給仕をするメイドの一人を見つめた。
伝わってくる感情はピンク色――性欲だ。
そういうことならば、と、俺はジャンに目配せした。
接待慣れしているジャンはそれだけで全てを理解した。
「後ほど、使者殿のご寝所までお届けします。と伝えて頂けないでしょうか」
『――と、第三宰相は言っている』
『えっ? いや、はは、これはまいったなあ』
そう言って、後頭部に手を当てて笑うイワン。
またまた言葉と感情が一致していて、ものすごく嬉しそうだ。
ジャンも密かに、顔には出さないが喜んだ。
接待する側からすれば、寝技――つまり女を宛がって喜んでくれるのなら、これほどやりやすいこともない。
食わせて、飲ませて、抱かせる。
接待の黄金パターンで、昔からずっと変わらないし、未来になっても決して変わらないだろうなと何となく思った。
ふと、メイドの一人が気になった。
表面上は普通に見えるが、何故かものすごく怯えて、緊張している。
そのメイドは酒を持ってきて、イワンのグラスに注ぐ。
緊張も怯えもますます強くなる。
『待て飲むな!』
言葉が反射的に口から出た、イワンがビクッとした。
俺は立ち上がって、「失礼」といってイワンからグラスを取り上げる。
そして、匂いを嗅ぐ。
「......毒だ」
「えっ?」
驚愕するジャン。
俺は更にグラスを見つめた。
人間ではなく、無機物であってもなお残存する感情。
強烈な殺意が酒に籠もっていた。
それはかつて、俺を暗殺しようとしてた連中が持っていた短剣と同質のものだった。
ジャンもイワンも、状況が理解できずに戸惑っていた。
広間とは別の部屋で、待っていた俺の所に、ジャンがやって来た。
なにやら複雑そうな、申し訳なさそうな顔をしている。
「どうだった?」
「メイドが全て白状しました。金を貰って、使者殿の酒に混ぜていたようです」
「良くそんな事を引き受ける気になったな」
「遅効性の毒で、一晩経ってから効いてくると言われたとか」
「なるほど、それなら自分が疑われることもない、と思ったのか」
「そのように話してました......いやはや、こうなって初めて分かりますよ、殿下の凄さが」
「アルメリア反乱の顛末をお聞きしています。メイドが裏切れずに告発をしたとか」
ああ、ゾーイの事か。
反乱軍の人間がゾーイを買収しようとしたが、俺を裏切れないゾーイがそのまま俺に知らせてきた。
「私も、部下の忠誠心には少し自信があったのですが......殿下にはかないませんでしたな」
「それよりも、暗殺を企てた者を捕まえるぞ」
「はあ、しかしメイドは『フードとローブを被っててどういう人間なのかよく分からない』と言っていましたが......」
「それなら問題ない」
俺は離れたところに置いてあるグラスを手に取った。
あの後、ずっと俺が持っていた毒入りのグラスだ。
それを持って、レヴィアタンとリンクする。
腕輪から、「水の糸」が伸びて、空中を進んだ。
「こ、これは?」
「道しるべだ。顛末を聞いてるのなら、俺が遠隔で首謀者を砲撃した事も聞いてるだろ?」
「はい」
「あれは厳密には失敗だった。今回はそれの応用、この水の糸がゆっくり進んで、首謀者の足あたりを撃ち抜くようにする。これについていけば捕まえられる」
「す、凄い! そこまで考えていたとは」
「お前に任せる。人を集めてこれについて行け」
ジャンは頭を下げて、人を呼びに走った。
俺とレヴィアタンのフォローで、ジャンは無事、イワン暗殺の首謀者の生け捕りに成功した。 | After Noah left, the emperor summoned his long-time confidant, the First Vizier.
The emperor has always been quick to implement or consult with him after asking Noah for his opinion.
Therefore, the First Vizier, who had been on standby, came to the emperor’s study in less than five minutes.
“Congratulations!”
After bowing properly, the First Vizier said these words out of nowhere.
And as expected, the Emperor was curious.
“I noticed that your countenance is better than ever. I assume that you are very happy.”
“Fuu, it showed on my face, huh.”
The Emperor smiled even more happily.
“Noah is becoming more and more of a great man.”
“Well, I’d love to hear about that.”
When the First Vizier showed interest, the Emperor had the look of a father who is extremely proud of his child, and told him about the exchange he had just had with Noah.
The First Vizier listened to the conversation until the end.
“I’m impressed. He is the only one of His Majesty’s sons who can act solely on the principles of nobility.”
“Umu.”
“He’s the perfect son of the Royal Family.”
“That is correct. We will have Rice Cake for suppression. I feel bad for Henry, but I don’t want to give him military authority right now.”
“Yes, sir. I’ll do it that way.”
“...... And...”
Emperor then stopped mid-sentence, plucked his chin, and thought.
The First Vizier secretly thought that this kind of pondering face was very similar to Noah’s and that they were indeed father and son.
The emperor thought for a moment, then looked up.
” Gather all the young men who look promising and let them join the Rice Cake Subjugation Army.”
“I understand, sir. But on what basis?”
The First Vizier asked again.
He thought it was important to understand that the people he would choose would depend on their purpose.
“Somebody with potential. Also, they must not be a member of anyone’s household.”
“Fuh, you have that look on your face that says, ‘Why would you do that?”
“......?”
The First Vizier looked embarrassed, slightly blushing.
“In the meantime, I want to raise a young man who doesn’t belong to anyone, but knows about troops and knows about actual warfare. No matter who the next emperor will be, I want them to be independent and useful.”
The Prince who becomes the Emperor can rarely make use of the household members of other Princes.
Whether for ease of use or pure patronage.
For whatever reason, he will always use his own household members.
The Emperor holds the right to Military Power and will not let it go.
As a result, there are few opportunities for the Royal family members to learn about actual warfare.
For the next emperor, the Emperor would like to have someone in a neutral position that he can use.
This idea is very similar to Noah’s.
And what would Noah have done? The First Vizier wondered.
“And one more matter. There’s one more important thing.”
“Yes”
“I will be A Retired Emperor.”
“—!”
It was a bolt out of the blue.
The First Vizier was astonished to the point that it would be obvious to anyone who would see him.
“No need to panic. It’s just a continuation of the previous conversation. Good grandchildren will ensure the prosperity of the three generations. Nothing has changed.”
“Yes, .......”
The First Vizier was a little relieved.
“But I am only human. I can still do it now, but my judgment will probably deteriorate as I age. It is better for the Empire if I hand over the throne while my judgment is still strong.”
The emperor chuckled.
“I realized something the other day. It might not be a bad idea to retire and watch my son succeed as emperor.”
“Is that so.”
The First Vizier bowed his head in acknowledgment.
As he looked down, his face showed a look of surprise that even he could recognize.
(As expected of you, Noah-sama, you changed His Majesty’s life as well. ......)
The First Vizier is not blunt at all.
In fact, the main job of the Vizier is to stand between the Emperor and his subordinate ministers and make adjustments.
Because of this, many of them are skilled in the subtleties of human emotions.
The First Prime Minister knew immediately.
At this moment, it was Noah who made the emperor think so.
The emperor is very fond of Noah.
Rather than wielding power as Emperor himself, he wanted to see what kind of reign Noah would have if he became Emperor.
Noah made the emperor decide to abdicate himself.
His talent is growing more and more.
The First Vizier secretly thought so.
At night, the Third Vizier, Jean-Brad Reydouk’s residence.
Returning to the mansion from the royal palace, I received an invitation from Jean.
He said that he would be hosting a party this evening and that I should come.
It’s not uncommon for Jean to throw a party, but the invitation was a bit more aggressive this time.
I was curious about it, so I came over just as the sun was setting.
When the carriage arrived at the front of the house, Jean himself came to greet me.
“Welcome, Your Highness.”
“What is the occasion of this gathering?”
“Please, come in.”
Jean didn’t answer.
And I didn’t force myself to ask.
Jean and his servants led the way into the house.
They led me to the hall of the mansion.
{Ohh! It’s good to see you again, Your Highness the Thirteenth.}
I saw a familiar but unexpected face in the hall.
It was the messenger of the Rushi Tsar, the man I had met in the audience hall.
It was a bit unexpected, but I understood immediately.
Jean was good at making connections, and he was always working on them.
He must have found out that the empire’s policy of “using” the Rushi Tsar was about to be decided, and he was trying to entertain and win him over.
I smiled at Jean and spoke to the man via Leviathan and the others.
“I still haven’t heard your name, have I”
“Apologies for that. My name is Ivan. Honored to make your acquaintance.”
“Ivan, huh. Nice to meet you.”
“Well, as expected of His Highness. It surprises me to learn that you are also fluent in Rushian. Now, please come this way, both of you.”
Jean entered the conversation at the right moment.
There was a large table in the hall, and he invited us to join him.
I sat at the upper seat, Ivan was next, and Jean sat at the lower seat.
Once we were seated, the food started to arrive.
Unlike the previous party, the amount of food was small because it was just Ivan and me. Instead, the food was extremely elegant, and a lot of money and effort had gone into it.
I was not surprised by this, but Ivan exaggerated his delight every time he took a bite of the food.
I could tell that he was happy from the bottom of his heart.
As a bonus, I could read his emotions because I was linked to Leviathan and the others and was translating through them.
But it’s not that I can read his thoughts, just the general dynamics of his emotions.
Ivan was as delighted as his words and expressions indicated, and Jean was relieved that the reception was going well, though he was still smiling.
Suddenly, Ivan looked at one of the maids serving him.
The feeling that came through was pink – sexual desire.
If that’s the case, I thought, giving Jean a look.
Jean, who was used to hospitality, understood everything with that.
“I will send them to the Emissary’s sleeping quarters later. Could you inform him that?”
{The Third Vizier says...}
{Ehh? No, Haha, this is embarrassing.”
Ivan laughs, scratching his head with his hand.
His words and emotions match again, and he looks very happy.
And for Jean, he was happy too, although he didn’t show it on his face.
From the side of the host, there was nothing easier than being able to entertain a man who was happy to have a woman in his bed.
Feed, drink and embrace.
It’s the golden pattern of entertainment, and it’s always been the same, and I have a feeling that it will never change in the future.
Suddenly, one of the maids caught my attention.
On the surface, she looked normal, but she was extremely frightened and nervous for some reason.
The maid brought a bottle of sake and poured it into Ivan’s glass.
Her nervousness and fright became stronger and stronger.
{Wait, don’t drink!}
The words came out of my mouth reflexively, and Ivan freaked out.
I got up, said, “Excuse me,” and took the glass from Ivan.
And then sniffed it.
“It’s ...... poison.”
“Eh?”
Jean was astonished.
I stared at the glass some more.
A feeling that still lingered even though it was inorganic, not a person.
The strong murderous intent was in the drink.
It had the same essence as the dagger that the assassins who had tried to kill me had once carried.
Both Jean and Ivan were puzzled, unable to understand the situation.
Jean came to me, who was waiting for me in a different room from the hall.
He had a complicated and apologetic look on his face.
“How did it go?”
“The maid confessed to everything. She was paid to mix it with the Emissary’s wine.”
“Quite a daring thing to do.”
“She said it was a slow-acting poison, that it would take effect after one night.”
“I see. So she thought she’d never be suspected.”
“That’s what she said. ...... Well, I can only understand now, Your Highness, how amazing you are.”
“What do you mean?”
“I’ve heard about the Almeria rebellion. The maids couldn’t betray you and made accusations against you.”
Ahh, he’s talking about Zoe.
The rebels tried to bribe Zoe, but she couldn’t betray me, so she just let me know.
“I had some confidence in the loyalty of my subordinates, but they were no match for ...... Your Highness.”
“Rather than that, let’s get the person who plotted the assassination.”
“Haah, the maid said, ‘I don’t really know what kind of person he is with the hood and robe on.’ ......”
“That’s not a problem.”
I picked up the glass I had left at a distance.
After that, I kept the poisoned glass in my hand.
Holding it, I linked up with Leviathan.
A ”String of Water” extended from the bracelet and traveled through the air.
“It’s a guide. If you have heard the whole story, then you must have known that I remotely bombarded the mastermind, right?”
“That was technically a mistake. This time, I’m going to apply it so that this string of water will move slowly and shoot the ringleader in the leg. If we follow it, we can catch him.”
“W-Wow! I didn’t know you were thinking that far ahead.”
“I’ll leave you to it. Gather your people and follow this.”
“Yes!”
Jean lowered his head and ran to call others.
With my and Leviathan’s follow-up, Jean successfully captured the mastermind of Ivan’s assassination alive. |
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} | サラルリア州、州都レアララト。
元は砂漠アシスだったここが、行政上州都に据えられた事で、今ではサラルリア州でもっとも栄えている街となった。
とはいえ、
「......ふむ」
帝都から来た俺からすれば田舎町そのもので、前世の記憶を持った目でみても寂れている感が否めない。
ただ、砂漠に適した様式なんだろうか、これまでに立ち寄った街とは建物の見た目がまるで違っていた。
帝国の州ではあるが、まるで異国にやってきた、そんなふしぎな感覚になった。
また、住民の顔つきも違う。
ほとんどの人間がこの降り注ぐ強い日差しに比例するかのように陽気な性格をしているが、同時に大半が痩せすぎで、顔がしわだらけだ。
砂漠という過酷な環境に生きていればこうなるのか、と興味深く思えてきた。
「さて、まずは宿をさがそうか」
「はい! お任せ下さいご主人様!」
ペイユが応じて、小走りで先をいった。
俺もアイビーを連れて後を追う。
ペイユは建物の前でその都度立ち止まって中をきょろきょろして目になったところでようやく中に入った。
ゆっくり歩いて追いかけると、丁度追いついたところでペイユが出てきた。
「お待たせしましたご主人様。お部屋あるそうです」
頷き、建物の中に入る。
外から分からなかったが、宿だったみたいだ。
「いらっしゃい」
奥に入ると、初老の男が出迎えてくれた。
痩せていて、顔もしわだらけだ。
この街としては標準的な顔つきなのだから、もしかしたら俺が推測しているよりも実年齢は若いのかもしれない、そう思えた。
「お客さん、早速部屋でおやすみかい、それとも何か食事を用意しようか」
俺は建物の中をみた。
日差しから解放されただけで、室内はひんやりとしていて心地よかった。
その分炎天下を歩いてきた疲れが一気にでて、体が水分をほしがっていた。
今たっているところがロビー的な作りで、テーブルがいくつも置かれて酒場的な雰囲気だ。
「なにかつまめる物と、飲み物をくれ。ペイユ、アイビーと一緒に荷物を置いてこい。疲れてたら休んでいていい」
「わかりましたご主人様」
「わ、わかりました」
俺が命じた後、奥から別の男がでてきた。
若い男と入れ替わりに一旦奥に引っ込んだ老人は、何皿かのつまみと、陶器の開口瓶をトレイに乗せて戻ってきた。
それを俺のテーブルの上に置く。
つまみは乾き物がメインで、特筆するものはなかった。
「お客さん、外地の人だね」
「ここじゃ水よりも酒の方が安いんだよ」
水が貴重なのはここまでの道程でわかったが、水よりも酒の方が安いのは驚きだ。
「水はなんにでも使えるけど、酒は飲むことにしか使えないからね」
「なるほど、道理だ」
俺は皿のつまみを一切れ摘まんで、口に入れた。
「そうなると、例えばこの皿はどう洗うんだ?」
「この土地で、旅行者を相手にしない人間は『あらう』という言い方をしない。砂をかけて、それで汚れをとるからね」
「ほう、それは面白い」
来る前にサラルリアでもちゃんと使える事がわかっている。
それを差し出すと、老人はパアァ、と顔をほころばせた。
「いいんですか、こんなに」
「ああ。チップだ」
「ありがとうございます。なにか他に必要なものは?」
老人は目を細めて、顔もくちゃくちゃにさせるほどの笑みを浮かべて聞いてきた。
上客だと認識したらしく、一気に愛想がよくなった。
「そうだな。このあたりで最近なにか変わったことはないか?」
「最近ですか......そりゃあっちこっちの代官が替わったのが一番大きいですね」
「代官が?」
「ええ、領主様が替わったことで、子飼いの代官が全員引き揚げられたんだとか」
俺は頷いた。
確かにそうだ。そうなるものだ。
家人級ではないただの代官だと、そのレベルの人事はいちいち皇帝である俺のところまでは上がってこないから、把握してなかった。
ちなみに家人級でも法制度上、皇帝に報告する必要はないのだが、親王邸から出て行った家人は形式上、親王が何らかの形で皇帝の耳に入れるようにしている。
それからも色々宿屋の老人から話を聞いた。
アイビーが俺のそばに座ろうとするが、ペイユはそうしなかった。
腰を下ろしかけたアイビーがペイユをみて固まった。
どっちも間違っているが、結果論でいえばペイユの方がより間違ってる。
「人目がある、座れペイユ」
「は、はい! すみませんご主人様」
ペイユは慌てて俺の横に座った。
座りかけて、中腰で固まったアイビーにもいう。
「今はいい、座れ」
「は、はい。今は、ですね」
アイビーは座りつつも、何かぶつぶつ唱えて、自分に言い聞かせているようだ。
皇帝である俺と、使用人は本来同じ席に座らないものだ。
宰相や親王であっても、許可無しに同席することはない。
だから、当たり前の様に横に座ろうとしたアイビーは本来間違ってる。
一方で、お忍びという形で出てきたのに、一緒に座ろうとしないペイユも間違ってる。
豪商や領主級だと、使用人を同席させないことも普通にあるが、そこまで目立ちたくない。
「ふむ......」
このあたり、俺もまだまだだなと思った。
皇帝としてのお忍びの経験がまだ少ないから、俺自身も改善の余地がある。
「ペイユ、紙とペンを」
ペイユに命じつつ、俺はフワワの箱を作った。
ペイユから受け取った紙にペンを走らせる。
「そういえば、読み書きは出来るのか?」
「メアリー様から学んでる最中でした」
「文字は一応読めますけど......読んでも内容が全然わかりません」
俺は手を止めて、熟考した。
「な、なにかいけないこと言いましたか?」
俺の思考に割り込んでくる感じで、アイビーがおそるおそる聞いてきた。
ここが彼女のまだ擦れきっていないところで、すこしだけ面白いと思った。
「いや、よく気づかせてくれた」
「え?」
「ついつい当たり前になっていたが、公文書とかのクセでもったいぶった言い回しをする。例えばだ」
俺はそういい、書き始めた文章の頭の三行をまとめて線をひいて、取消を意味させた。
「このあたりの修飾句は本文にまったく関係がない、いらないものだ。ものによっては平文――喋り言葉でいいんだよな」
「そういう意味ではよく気づかせてくれた、礼を言う」
「え? 私はただ分からなかっただけで」
何故自分が感謝されたのかもよく分からないって感じのアイビー、ものすごく困惑し、恐縮していた。
「ご主人様はいつもこうだから」
「え?」
「私達のような身分の人間の話もよく聞いて、場合によっては採用して下さるんです」
「あっ......それはすごい......」
ペイユの説明で理解したらしく、アイビーは驚き、感嘆した。
「偉い人なんて、話しを全然聞いてくれないのに......」
その認識もどうなのかと思うが、あながち間違ってもないだろうなとは思った。
俺は試しに、修飾句無しの平文で文章をつづった。
腹心のドンに送るものだ。
内容は、諜報関連を強化し、代官の人事をもっと密に把握させるように、という内容だ。
本来は必要ないが、俺は父上の事を見てきた。
圧倒的な情報網を築き上げた父上の事を。
情報は武器だ、使う使わないはともかく、情報は常に集めておいて損はない。
代官の把握が出来ていなかった事を気づかされた俺は、ドンにそれも把握するようにという命令を出す――という文書だ。
諜報関連は皇帝としての公文書ではないから、印は押さないで、代わりにドンにだけ開けるようにフワワの箱に収めた。
そうした後、集中していた意識が通常にもどった。
ふと、外が騒がしい事に気づいた。
なにやら怒気を含んだ騒がしさで、ペイユもアイビーも不思議がりながら視線を入り口の方に向けている。
「アイビー、何があったのか聞いてこい」
「はい!」
アイビーは立ち上がり、宿屋の外にでた。
数分後、彼女は深刻な顔で戻ってきた。
「どうだった?」
「両替税の値上がりです」
「ふむ?」
「新しい代官が来て、それで両替税を前より三割引き上げるって布告を出したんです。それで怒ったみんなが代官のところに抗議にいくって」
両替税というのは、特に地方に存在する税金の一つだ。
庶民――特に農民レベルになると、毎年の納税は細かい銭で支払われる。
それを受け入れていくと、地方の代官の手元に大量の小銭が集まる。
そして税金は一度中央に納められて、それから分配される。
当然、大量の小銭を地方から帝都に運ぶなんて出来ない。
商人なりに金貨とか手形とかに両替してもらって運ぶのが一般的だ。
そこには当然手数料が発生し、損耗が生じる。
両替税というのは、その損耗を予測した上で、通常の税金に上乗せされる手数料的な事をいう。
ちなみにそれは各地の代官の領分だが、ほとんど言い値で通ってしまう。
現実問題、帝都から遠ければ遠いほど、あるいは天候なりの事情によって必要な両替の手数料も変わってくるから、そこで余裕を持たせた。
それをいいことに、代官らは私腹を肥やし放題――というものがある。
「ひどい代官ですよ! いきなり三割も上げられたらみんなやっていけないです!」
アイビーはぷりぷり怒った。
ジョンに保護されるような身の上なのだから、増税で喘ぐ人間に感情移入しているのだろう。
俺は酒を一口、唇を湿らすように口をつけた。
アイビーは俺をちらっと見た。
「あの、ご主人様......」
「なんだ?」
「なんとかなりませんか?」
「あれは適法だ、この場で俺が正体を明かしたところで、適法の範囲内だと主張されれば何も言えなくなる」
「そんな......」
落胆するアイビー。
むろん、そんな代官はいない。
皇帝がやめろと言ってるのに「これは適法だから」で押し通せる代官は存在しない。
だから実際は、俺が出ればこの場は収まる。
この場は、だ。
アイビーの表情が落胆から失望に変わりつつあった。
結局は民に何もしてくれないのか......と思っているのがありありと見て取れた。
「心配しないで、ご主人様にちゃんと考えがあるはずだから」
アイビーの失望がよほどわかりやすかったのか、ペイユさえもそれを読み取って、彼女をたしなめた。
「考え?」
「でも、法律的には正しいって......」
「だったら法をかえればいい」
「法を変えてはならないという決まりがどこにも存在しない。むしろ状況、世情にあわせて日々変化しているものだ」
「部屋に戻る。ペイユ、印の準備を」
「あの......何を?」
「オスカー――財務大臣に手紙をだす。今年はもう間に合わんが、来年から両替税を国税とする」
国税にして、そのあと分配させる。
俺は二人をひきつれて階段を登りつつ、腹案を頭の中で練っていた。
「国税化......」
「私もよく分からないけど、代官様が不正をするのを止める様になるんだとおもいます、きっと」
「そんなことが出来るんですか......?」
「ご主人様なら簡単だよ」
「す、すごい......」
まるで自分の事を自慢するように話すペイユに、感嘆するアイビー。
利権に切り込む、と言う話だからいうほど簡単な事じゃないが。
それでも放っておけば、いずれ大きなうねりになって民の反乱に繋がる可能性のある事だから。
早いうちに何とかしなければと思ったのだった。 | Salaria State, the capital city of Leararat.
This was once an oasis in the desert, but it became the most prosperous city in Salaria State after being established as the state capital.
However,
“... Hmmm.”
From my perspective as someone who came from the Imperial Capital, it was just a rural town, and even with my memories from my past life, I couldn’t deny the feeling of being run down.
However, the appearance of the buildings was completely different from the towns I had visited before, perhaps due to a style suitable for the desert.
Although it was a state of the empire, it felt like I had arrived in a foreign country, giving me a strange sensation.
Furthermore, the facial features of the residents were different.
Most people had cheerful personalities that seemed to be proportional to the strong sunlight that poured down, but at the same time, most were too thin and their faces were full of wrinkles.
I found it interesting that this is what happens when living in such a harsh environment like the desert.
“Well, let’s first look for a place to stay.”
“Yes! Leave it to me, Master!”
Peiyu responded and ran ahead.
I followed behind with Ivy.
Peiyu stopped in front of each building and looked around before finally entering the third one.
When I caught up, Peiyu had just come out.
“Sorry to keep you waiting, Master. There are two rooms available.”
I nodded and entered the building.
I couldn’t tell from the outside, but it seemed to be an inn.
“Welcome.”
When we entered further, a middle-aged man greeted us.
He was thin and his face was full of wrinkles.
This was a standard facial feature for this town, so he might be younger than I guessed.
“Customer, will you be sleeping in your room right away, or would you like me to prepare something to eat?”
I looked inside the building.
Once I was released from the sun’s rays, the room was pleasantly cool.
However, the fatigue from walking in the scorching sun hit me all at once, and my body was craving water.
The place where I was standing had a lobby-like structure, with tables placed to create a bar-like atmosphere. I thought that the layout of the inn was not much different from other towns.
“After something to eat and drink, bring our luggage with you, Peiyu and Ivy. If you’re tired, feel free to rest.”
“Understood, sir.”
“Y-yes, understood.”
After I gave the order, another man appeared from the back. He was a young man, probably in his early twenties.
The young man guided Peiyu and Ivy up the stairs, while I sat down in one of the empty seats. An old man who had momentarily retreated to the back in exchange for the young man returned with a tray of several snacks and a ceramic bottle.
He placed it on my table.
The snacks consisted mainly of dried food, and there was nothing particularly noteworthy. A plump aroma wafted from the ceramic bottle.
“Customer, you’re from out of town, right?”
“You see, sake is cheaper than water here.”
I had already realized that water was precious on this journey, but I was surprised that sake was cheaper than water.
“Water can be used for anything, but sake can only be used for drinking.”
“I see, that makes sense.”
I picked up one of the snacks and put it in my mouth. As expected, the taste was nothing special.
“In that case, how do you wash these dishes, for example?”
“People in this area who don’t serve travelers don’t use the word ‘wash.’ They sprinkle sand on them and use that to clean them.”
“That’s interesting.”
I laughed and took out reens from my pocket, which was the official currency of the Empire. I knew it could be used in Saralaria before I arrived.
When I handed it to the old man, he smiled broadly.
“Is it okay to take this much?”
“Yes. It’s a tip.”
“Thank you very much. Is there anything else you need?”
The old man asked me with a smile that made his eyes narrow and his face scrunch up as well.
He seemed to recognize that I was a high-class customer, and he became more friendly at once.
“Well, has anything changed around here lately?”
“Recently... the biggest change was probably the replacement of the various governors around here.”
“governors?”
“Yes, when the lord changed, all of his governors were withdrawn.”
It was true. That was to happen.
But for just a governor who wasn’t at the level of a retainer, their matter won’t be reaching me, the emperor.
By the way, even for retainers, there is no legal requirement to report to the Emperor, but those who left the prince’s residence are expected to somehow inform the Emperor.
I listened to various stories from the old man at the inn and then waved him off as Peiyu and Ivy returned.
Ivy tried to sit next to me, but Peiyu didn’t.
Ivy froze as she was about to sit down, looking at Peiyu.
Both were wrong, but in hindsight, Peiyu was more so.
“There are people around, sit down Peiyu.”
“Y-Yes! I’m sorry, master!”
Peiyu hurriedly sat down next to me.
I also told Ivy to sit down.
“It’s okay to sit now.”
“Y-Yes. For now, right...”
I nodded.
Ivy muttered something under her breath and seemed to be reminding herself of something.
As the Emperor, I and my servants were not supposed to sit in the same seat.
Even prime ministers or princes are not allowed to sit together without permission.
Therefore, it was natural that Ivy, who had tried to sit next to me, was wrong.
On the other hand, Peiyu, who had come out incognito together, was also wrong not to sit with me.
Although it is not uncommon for wealthy merchants or lords not to let their servants sit together, they didn’t want to stand out that much.
“Hmm...”
I thought I still had a long way to go in this area.
As an emperor with little experience in incognito, I had room for improvement.
“Peiyu, get me some paper and a pen.”
While commanding Peiyu, I made a Fuwawa box.
I let the pen run on the paper I received from Peiyu. Ivy stared at me as I wrote.
“By the way, can you read and write?”
“I’m in the process of learning from Lady Mary.”
“I can read the characters, but I don’t understand the content at all.”
I stopped my hand and pondered.
“Did I say something wrong?”
Ivy asked hesitantly, interrupting my thoughts.
I found it a little interesting that this was an area that she wasn’t yet experienced.
“Well, you made me realize something important.”
“Huh?”
“I tend to use unnecessarily complicated language in official documents. For example,”
I said, drawing a line through the first three lines of the sentence I was writing to indicate the deletion.
“The modifiers here have nothing to do with the text, they’re unnecessary. Depending on the situation, plain language–spoken language–is sufficient.”
“In that sense, you helped me realize something important. Thank you.”
“Eh? I just didn’t understand.”
Ivy was perplexed, not understanding why she was being thanked.
“Master is always like this.”
“Eh?”
“He listens to the stories of people like us with lower status and sometimes adopts them.”
“Ah...that’s amazing...”
Ivy was surprised and impressed, apparently understanding Peiyu’s explanation.
“People in high positions never listen to others’ stories at all...”
I wasn’t sure if that perception was entirely accurate, but it wasn’t entirely wrong either.
As an experiment, I continued writing the document in plain language without modifiers.
It was for my trusted confidant Don.
And the contents were about strengthening intelligence activities and keeping a closer eye on the personnel of the governor.
It is not unnecessary, but I had seen my father.
He built an overwhelming information network.
Information is a weapon. And regardless of whether or not it is used, it is always useful to gather information.
Realizing that I had not fully grasped the personnel of the governor, I issued an order to Don to also keep an eye on that–that was the content of the document.
Intelligence-related matters are not official documents as the Emperor, so I don’t use the official seal. Instead, I put it in the Fuwawa box that only Dong can open.
After that, my focused mind returned to normal.
Suddenly, I noticed the noisy commotion outside.
It seemed to be a noise mixed with anger, and both Peiyu and Ivy were looking toward the entrance with curiosity.
“Ivy, find out what’s going on.”
“Yes!”
Ivy stood up and went outside the inn.
A few minutes later, she returned with a severe expression.
“What happened?”
“The exchange tax rate has gone up.”
“Hmm?”
“A new governor came and announced a thirty percent increase in exchange tax compared to before. Everyone got angry and went to protest at the governor’s office.”
Exchange tax is one of the local taxes, especially for rural areas.
Commoners–, particularly farmers, pay small amounts of taxes every year.
These payments accumulate in the hands of the local governor.
Then the taxes are collected and distributed once they reach the central government.
Naturally, it’s impossible to transport a large number of small coins from the local areas to the capital.
It’s common to exchange them for gold coins or promissory notes through merchants.
Fees and losses occur during the exchange process.
Exchange tax refers to the fee added to the normal tax, considering these losses.
By the way, it’s up to each local governor, but it’s usually accepted at face value.
In reality, the further away from the capital, or depending on weather conditions, the necessary exchange fees can vary, so they allow some leeway.
The governors take advantage of this to line their pockets as much as they want.
“That’s a terrible governor! Not everyone can survive if the tax suddenly goes up thirty percent!”
Ivy was angry.
She probably empathized with those suffering from the tax increase, being protected by John.
I took a sip of my drink, wetting my lips.
Ivy glanced at me.
“Um, Master...”
“What is it?”
“Can’t something be done about this?”
“That’s legal, and even if I reveal my identity here, they can argue that it’s within legal limits, and I won’t be able to say anything.”
“That’s just...”
Ivy was disappointed.
Of course, there’s no such governor.
No governor can push through with “this is legal” when the Emperor says to stop.
So in reality, if I show up, this situation will be resolved.
This situation, that is.
Ivy’s expression changed from disappointment to disillusionment.
It was clear that she was thinking that in the end, nothing would be done for the people.
“Don’t worry, Master must have a plan,”
Ivy’s disappointment was so obvious that even Peiyu could read it and remind her.
“A plan?”
“But legally, it’s correct...”
“Then we should just change the law.”
“There’s no rule that says you can’t change the law. In fact, it changes daily based on the situation and the state of society.”
“Let’s go back to the room. Peiyu, prepare the seal.”
“Um...what for?”
“I’ll write a letter to Oscar, the Minister of Finance. It’s too late for this year, but we’ll make the exchange tax a national tax starting next year.”
Make it a national tax and then distribute it.
As I climbed the stairs with the two of them, I was devising a plan in my head.
“National tax...”
“I can’t say for sure, but I think the governor’s injustice will come to a stop, for sure.”
“Is that possible...?”
“It’s easy for you if you’re Master.”
“Am-Amazing...”
Ivy was amazed by Peiyu’s boasting as if it were her own achievement.
It is not as easy as it sounds, since we are talking about cutting the interests.
But if it was left alone, it could eventually lead to a big wave of rebellion among the people.
I thought I needed to do something about it as soon as possible. |
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} | 「都に戻る。用意しろゾーイ」
「分かりました」
頷くゾーイ。
そのゾーイに部屋を出る。
この2500万があれば停めていた事も動かすことが出来る。
一番の目的である塩税の件はもう解決したから、デュセルにこれ以上留まる必要はない。
建物を出ると、一足先に出たゾーイが馬車を引いてこっちに向かってくるのが見えた。
普段通りに振る舞って、俺の元に戻ってこようとするゾーイ。
その、真横から。
物陰からいきなり何かが現われて、ゾーイに飛びついた。
鈍色の光が弧を描く。
それが、ゾーイの喉をえぐった。
ゾーイは、がっくりと両膝をついた。
「お前、何者だ」
地を蹴って一瞬で踏み込んで、抜き放ったレヴィアタンをそいつの喉元に突きつける。
やつれた感じの、目が血走っている壮年の男だ。
男は手に短刀を持っている。
それが今し方、ゾーイの喉を掻っ斬った凶器か。
男は怒りを露わにした瞳で俺を睨んで、答えようとしない。
「その人、見た事があります」
「......え?」
だが、ゾーイが普通に――驚き混じりだけど普通に喋ってるのを見ると、男の表情は驚愕に変わった。
「こいつを知っているのかゾーイ」
「はい。私がスパイとして行った時に、顔を見ました」
「連中の手の者か............なるほど、お前達をまんまと騙したゾーイに腹いせ、ってところか」
その反応で俺は推測が当っていると理解した。
そういうことならば、とレヴィアタンの威嚇で気絶させた。
白目を剥いて、その場に崩れ落ちる男。
一方で、自分の首筋に手を当てて、斬られたはずなのに血は着いてない――事に驚くゾーイ。
「どうして、傷が......?」
「胸の辺りをまさぐってみろ」
「胸......? 何かあります。これは......宝石?」
ゾーイが驚きつつ取り出したのは、砕けた赤色の宝石、ルビーだった。
「身替わりのルビーだ。この前からさり気なく持たせてた」
「ええっ?」
「スパイさせるんだ、何の保険もかけずに送り出す訳がないだろ?」
「陛下......」
ゾーイは目を潤わせて、感極まった表情で俺を見つめた。
「陛下ってやっぱり凄い......そこまで考えて下さってたなんて」
「お前は大事なメイドだからな」
「陛下......」
ゾーイは、ますます感激した顔をした。
都に戻ってきた翌日、離宮の書斎。
俺は第十親王ダスティンを呼び出した。
兄でもあるその男は、俺に片膝をついて一応の礼をした。
「何ですか陛下、俺なんか呼び出して」
ダスティンは他の親王達とは違う、フランクな口調で聞いてきた。
「デュセルの一件、話はもう聞いてるな?」
「まあ、一応」
「連中はお前にも女を送ったといっているが、それに対しての申し開きはあるのか?」
「貰いましたよ? 結構いい女達だったから、ちゃんと戴いて毎日楽しんでる」
ダスティンはさらりと答えながら、「それで?」って顔をした。
「賄賂を受け取った、ということでいいのか?」
俺はじろり、とダスティンを睨む。
「賄賂を受け取って、便宜を図ったとなれば、余の兄といえど庇い立ては出来んぞ」
「は? なんで俺があんな奴らに便宜を図るの?」
「うん?」
「俺は親王だぜ? 下々の人間から何人かの女を貰ったところで、何で連中の為に働かなきゃならん」
ダスティンの物言いには、さすがに苦笑いを禁じ得なかった。
「連中は女をくれた、上玉だったから貰った。それだけだ」
「連中が塩税を誤魔化してた事は知らないわけでもあるまい」
「何言ってんだ陛下、俺は皇帝じゃなくて、役職のないただの親王だぜ。そんな事いちいち気にしてられるか」
「というか陛下よ、その言い方だと、連中はもう女を送って来られないって事か? おいおい、あそこから貰った女は質がいいんだから、途切れちまうのは――」
「分かった分かった。そこまででいい」
俺は更に苦笑いした。
まったくこいつは。
「お前が関わってないのは分かった。だが、形として賄賂を貰っていた事に変わりはない。軽く処分は必要だ」
俺は少し考えて、言い渡す。
「罰俸一年、謹慎一ヶ月だ」
「はいはい。あっ、謹慎中は娼婦とか屋敷に呼び込んでいいよな」
「好きにしろ」
苦笑いしながらいうと、ダスティンは「りょーかい」って軽いノリのまま書斎から退出した。
「陛下、宜しいのですか?」
書斎の隅っこで控えていたゾーイが聞いてきた。
その彼女が、珍しく不機嫌を露わにする表情で、ダスティンが出て行ったドアをちらっと見やりつつ、俺に聞いてきた。
「何が?」
「ダスティン殿下です。あれは余りにも不敬が過ぎるのではありませんか?」
俺は「フッ」と笑った。
「あれはダスティンなりの韜晦だ」
「とうかい......?」
「才能や本心を隠すって事だ。『俺は女を抱ければいい、それ以上の野心はない』っていう表明だ」
「......野心を持ってらっしゃるのはどなたですか?」
驚いた。
びっくりして、ゾーイを見た。
今のやりとりでその事を一瞬で理解した。
その賢さは、もはやメイドに留めておくのは罪悪なくらいだ。
「それよりもゾーイ。お前に行って貰いたい所がある」
「はい、何なりとお申し付け下さい。何をすればいいのでしょう?」
ゾーイは佇まいをただして、軽く頭を下げた。
真顔になったゾーイに言い渡す。
「しばらく代官をやってこい」
「――っ!」
簡単なおつかいだと思っていたのか、ゾーイは瞠目した。
「わ、私が代官様、ですか?」
「何を驚いてる。今までもあったことだろ」
「そ、それはそうですが。でも私じゃ」
「お前に行って貰うのが一番すんなり行くんだ」
「............デュセル、ですか?」
まだ驚きが若干残ったままだが、ゾーイは俺の意図を正確に察した。
「そうだ。ガベルの総督はフィル・モームにしたが、あんな大抜擢、経験が足りない若者には荷が重いはず。お前にはデュセルに行って貰って、近くで見守りつつ、何かあったらすぐに余に報告して貰いたい」
「分かりました。そういうことでしたら、お任せ下さい」
さっきまでと違って、決心したゾーイ。
その場でフワワの箱を作って、詔書とともに渡した。
受け取ったゾーイは意気込んだ顔で退室した。
暫くして、メイドのジジが飛び込んで来た。
「ご、ご主人様――じゃなくて陛下。大変です」
「どうした、落ち着け。報告はゆっくり、正確にだ」
ゾーイとは対照的に「まだまだ」なジジを軽く叱責しつつ、報告を促す。
「じょ、上皇陛下がお見えに」
「何!?」
これにはさすがに俺も驚いた。
「すぐにお通しして――」
「はっはっは、もう来たぞ」
闊達な笑い声ととも、上皇陛下――父上が書斎に入ってきた。
父上は上皇には全く見えない、その辺の地主くらいの軽装姿で現われた。
入ってきた時の感じもものすごい気さくで、晩ご飯にお呼ばれしたって感じだ。
とはいえ、父親で上皇。
俺は立ち上がって慌てて頭を下げた。
「どうしたのですか父上、何かあれば誰か使いをよこしてくれれば」
「よいよい、暇だったから遊びに来ただけだ。それにしても」
父上は楽しそうな顔で笑いながら。
「さすがだな、ノア」
といった。
俺はそう返事しつつも、おそらくは塩税の一件だと当たりをつけていた――のだが。
「あの娘だ。ただの農家の娘が、よくもまああそこまで賢く調教したものだ」
「......相変わらずの地獄耳ですね、父上」
予想外の事に俺は苦笑いした。
ゾーイの事は今し方決めたばかりなのだが、父上はもうそれを知っている。
昔から父上の耳目がすごいのは身を以て思い知ってきたが、まだまだ認識が甘いなと思い知らされた。
「人は宝ですから」
「それよりも、父上は何をしに?」
「ああ、そうだった。ガベル州の一件、よくやった」
「ありがとうございます」
こっちは知っていて当然だから、驚きはしなかった。
「経緯は聞かせてもらった、今のノアになら、渡しても大丈夫だと思ってな」
「レヴィアタンの封印、だ」
「気づいていたのか」
俺は深く頷いた。
「何かあるとは思っていました。バハムートとあれほど張り合ってて、封印が解けそうで解けないのが続きました。実際に持っている感触からすれば覚醒してもいい場面が何回もあった、だけどそうはならなかった。何かあると思うのが自然でしょう」
「さすがだな」
父上は楽しそうに笑い、手をかざした。
すると、書斎のドアが開き、父上の腹心、宦官クルーズが両手で細長い箱を持って入ってきた。
それを抱え持ったまま俺の前にやってきて、箱を開ける。
「これは......っ」
箱の中のものに驚いて、父上を見つめる。
そこにあったのはレヴィアタン。
腕輪の中に収納したレヴィアタンを出す。
俺のレヴィアタンはここにある、つまり、もう一振りのレヴィアタンということだ。
「水の魔剣レヴィアタンに魂があるというのは知っているな」
「はい」
「それは完全なものではないのだ。かつて、レヴィアタンを封印した時、魂に割って封印したのだ」
「......なるほど、魂がそもそも足りていなければ、解くも何もない、ということですか」
「そういうことだ」
父上が真顔になった。
「レヴィアタンの真の封印を解いてはならぬ......という言い伝えだが。ノアなら大丈夫だろう」
「......ありがとうございます」
真顔から一変、再び楽しそうな笑顔に戻る父上。
「封印をどうやって解くのか、余も知らぬ。そもそも残されていないのだ」
「解毒剤を作れない毒使いは最悪ですね」
「ははは、正しくな」
父上は天を仰いで、大笑いした。
俺はクルーズが持っている箱から、もう一振りのレヴィアタンを手に取った。
二振りのレヴィアタンを見比べる。
俺は考えた。
どっちにもレヴィアタンの魂が入っている。
元は一つで、二つに割られた魂だ。
それを一つに戻すには......?
俺は考えた、考え続けた。
一頻り考えたあと、二振りのレヴィアタンを互いに叩きつけた。
パキーン!
綺麗な音がして、二本とも粉々に砕け散った。
「何をする」
「これですよ」
俺はルビーを取り出した。
デュセルで、暗殺されかかったゾーイの命を助けた、身替わりのルビー。
「こいつにも魂があって、砕け散るたびに依り代を作ってやってるんです。それと同じことをするんですよ」
「ほう」
「フワワ」
フワワを呼び出して、その力を借りた。
モノを創る、形を形成させることに長けたフワワ。
その力で、空中に飛び散っていた破片をまとめて、一振りの剣の形にした。
そして、魂を。
二つのレヴィアタンの魂をそこに押し込む。
二つの魂が一つに融合するように、そのイメージで押し込む。
やがて剣は元の形に戻り。
『幾、久しく』
今まで感情でしかなかったのが、はっきりとした声で脳内に響く。
レヴィアタン――もとい。
リヴァイアサンの声が脳裏に響く。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
帝国皇帝
性別:男
レベル:17+1/∞
そして、いつも視界の隅っこに見えていたステータスで、水の「+」が更に上がった。
それを見た俺、そして俺が見たものを視線で感じた父上は。
と誇らしげな笑顔でいった。
魔剣、リヴァイアサン。
覚醒の瞬間だった。 | “Let’s go back to the capital. Get ready, Zoe.”
Zoe nods.
I leave the room with Zoe.
With this million, we can move what we stopped.
The main goal, the salt tax, has already been resolved, so there is no need to stay in Dusselany longer.
As I left the building, I saw Zoe, who had left a step ahead of me, coming toward me with a carriage in tow.
Zoe acted as usual and tried to come back to me.
Then, right beside her.
Something suddenly appeared from the shadows and jumped on her.
It was an arc of dull light.
It gouged Zoe’s throat.
Zoe then fell to her knees.
“Who are you?”
Kicking the ground and stepping forward in an instant, I pulled out Leviathan and held it to the man’s throat.
It was a middle-aged man, with a gaunt appearance and bloodshot eyes.
He had a dagger in his hand.
Is that the weapon that just slashed Zoe’s throat?
The man stared at me with furious eyes, refusing to answer.
“I’ve seen that man before.”
“...... Eh?”
But when he saw Zoe speaking – mixed with surprise, but normally – the man’s expression changed to astonishment.
“Do you know this guy, Zoe?”
“Yes. I saw his face when I went there as a spy.”
“He’s one of theirs. ............ I see... they’re just pissed off at Zoe for screwing you over, huh.”
I knew by his reaction that my guess was correct.
If that’s the case, I stunned him with Leviathan’s intimidation.
The man crumples to the ground, with his eyes white.
On the other hand, Zoe puts her hand on her neck and is surprised to see that there is no blood on her neck, even though she should have been cut.
“Why is there no scar ......?”
“Look at your bosom.”
“Bosom ......? There’s something there. Is this ...... a jewel?”
Zoe was surprised to see a shattered red gemstone, a ruby.
“It’s a replacement ruby. You’ve been carrying it casually for a while now.”
“Ehhh?”
“When sending out a spy, I can’t just send you out without any insurance, now can I?”
“Your Majesty, .......”
Zoe’s eyes moistened as she looked at me with admiration.
“Your Majesty is amazing ...... you thought that much about it.”
“You’re a very important maid, you know.”
“Your Majesty,.......”
Zoe looked even more impressed.
The day after I returned to the capital, in the study of the detached palace.
I summoned Dustin, the Tenth Prince.
The man, who is also my elder brother, knelt down on one knee and gave me the proper courtesy.
“What might be the reason for your calling, Your Majesty?”
Dustin asked me in a frank tone, unlike other Princes.
“You’ve heard about Dussel, haven’t you?”
“Yeah, kind of.”
“They say they sent you a woman, too, but do you have anything to say about that?”
“Did you find out? They were pretty good girls, so I took them and I enjoy them every day.”
Dustin answered casually, ‘So what?’.
“So you’re saying you took a bribe?”
I stared at Dustin.
“If you took a bribe and offered favors, even as your brother I can’t protect you.”
“What? Why would I do favors for those guys?”
“Hmm?”
“I’m the Prince, right? Why should I work for them just to get a few girls from some low-life?”
I couldn’t help but laugh at Dustin’s tone.
“They gave me a woman, and I took her because she was good enough for me. That’s all.”
“You don’t know they were cheating on the salt tax, do you?”
“What are you saying, Your Majesty, I’m not an emperor, I’m just a prince without a title. I don’t care about that kind of thing.”
“Or, Your Majesty, the way you put it, seems they won’t be sending any more women, huh? Come on, the quality of the women they send is good, so it being cut off–.”
“All right, all right. That’s enough.”
I laughed even more.
This guy is just.
“I know you didn’t have anything to do with it. But it doesn’t change the fact that you took a bribe. You need to be punished lightly.”
I thought about it for a moment, and then I told him.
“A year’s pay and a month’s house arrest.”
“Yes, yes. Oh, and while under house arrest, I can bring in prostitutes and the like to the house, right?”
“Do as you please.”
With a bitter smile on his face, Dustin left the study with a light-hearted, “Okay”.
“Good grief.”
“Your Majesty, is this okay?”
Zoe, who was waiting in the corner of the study, asked.
She had a rare expression that revealed her unhappiness, glanced at the door Dustin had left and asked me.
“About His Highness Dustin. Wasn’t that too much disrespect?”
’Heh’ I laughed.
“It was Dustin’s way of showing it.”
“You mean ......?”
“It’s about hiding his talent and his true intentions. Saying that, ‘I’m just for the girls, nothing more’.”
” ...... and about the one with the ambition?”
Surprised.
I looked at Zoe.
She instantly understood that in the exchange we just had.
Her intelligence was such that it would be a crime to keep her as a maid any longer.
“I understand.”
“I’ll tell you what, Zoe. There is somewhere I need you to go.”
“Yes, whatever you want. What can I do for you?”
Zoe straightened up and bowed lightly.
I told Zoe straight-face.
“You’re going to be a Governor for a while.”
“–!.”
Zoe was astonished, expecting it to be a simple errand.
“I-I am going to be a Governor?”
“What are you surprised about? You’ve done this before.”
“T-that’s right. But not”
“It’s easier for me to have you go there.”
“............ Is it Dussel?”
Zoe guessed exactly what I was trying to say, although she was still slightly surprised.
“Yes, that’s right. Dussel’s Governor is Phil Mohm, but for an inexperienced young man, such a big job must be too much for him. I want you to go to Dussel, keep a close watch on him, and report to me immediately if anything should happen.”
“I understand. If that’s the case, leave it to me.”
Unlike before, Zoe made up her mind.
I made a Fuwawa Box on the spot and handed it to her along with the Imperial rescript.
Zoe received it and left the room with an enthusiastic look on her face.
A few moments later, Gig, the maid, came running into the room.
“M-Master–not that, Your Majesty. It’s serious.”
“What’s the matter? Report slowly and accurately.”
In contrast to Zoe, I lightly reprimanded Gig for not being “ready yet” and urged her to make a report.
“F-Former Emperor is here.”
“What!?
I was surprised at this.
“Lead him in immediately.”
“Ha-ha-ha, I’m already here.”
With a hearty laugh, the Former Εmperor – my father – entered the study.
He was dressed in light clothing, not at all like the Emperor, but rather like a local landowner.
He seemed very friendly when he came in as if he had been invited for dinner.
However, he’s my Father and the Emperor.
I stood up and bowed to him in a hurry.
“Is there anything Father, please just have someone send an errand to me if you need anything.”
“Hoho, I just came to visit because I had some free time. But anyway...”
Father laughed with a happy look on his face.
And it’s,
Although I asked, I had a good guess that it was probably the salt tax.
“That girl. A simple farmer’s daughter, how could you have trained her to be so clever?”
“...... As usual you got some hell of an ear, Father.”
I chuckled at the unexpected.
My father already knew about Zoe, even though I had only just made up my mind about her.
I’ve always known that my father has a great ear, but I’ve learned that I’m still a bit naive.
“People are treasures.”
“That’s right.”
“But more importantly, why is father here?”
“Oh, about that. You did a great job on the Gabel case.”
“Thank you very much.”
I was not surprised, because I knew it.
“I’ve heard the whole story, and I think it’s safe to give it to Noah now.”
“What is it?”
“Leviathan’s seal.”
“You noticed, huh.”
I nodded deeply.
“I knew there was more to it. It kept going up against Bahamut so much, and it kept seeming like it was going to break the seal, but it didn’t. There were a number of times when it could have awakened, from the feel I actually had, but it didn’t. It’s natural to think there’s something more to it.”
Father laughed happily and held up his hand.
Then the door to the study opened, and the eunuch Curuz, my father’s confidant, entered with his hands holding a long, thin box.
He came in front of me with it in his arms and opened the box.
“This is .......”
I look at my father in surprise at what is inside the box.
There was Leviathan.
I took out the Leviathan, which I had stored in my bracelet.
My Leviathan is here, and that is another Leviathan.
“You know that the Water Demon Sword Leviathan has a soul, don’t you?”
“Yes.”
“It is not complete. When Leviathan was sealed in the past, its soul was split in two and sealed.”[TN: Kurama?]
“I see ......, if the soul is not complete in the first place, there is no way to solve the problem.”
Father’s expression became serious.
“The legend says that the true seal of Leviathan must not be broken, but....... Noah will be fine.”
“...... thank you.”
Father’s expression changed from serious to a joyful smile again.
“I don’t even know how to break the seal. It wasn’t there, to begin with.”
“A poisoner who can’t make an antidote is the worst, isn’t he?”[TN: The correct term might be Toxicologists or Poison maker, but hey Poisoner sounds cool, so why not?]
“Ha-ha-ha, you are right.”
Father looked up and laughed out loud.
I picked up another Leviathan from the box Curuz was holding.
Compared the two Leviathans.
I thought.
Both of them contain the soul of Leviathan.
They were originally one soul, but it was split in two.
How can I put them back together ......?
I thought and kept thinking for a while.
After pondering for a while, I slammed the two Leviathans against each other.
Pakin!
There was a beautiful sound and both shattered into pieces.
“What are you doing?”
“Look here.”
I pulled out a ruby.
The replacement ruby that saved Zoe’s life when she was almost assassinated in Dussel.
“These have a soul, and I made a vessel as for its when it shattered. What I am going to do will be similar.”
“Whoa.”
“Fuwawa.”
I summoned Fuwawa and borrowed its power.
Fuwawa is skilled at creating things and shaping them.
With its power, it brought together the fragments that had been scattered in the air and formed them into the shape of a single sword.
And the soul.
Two leviathan souls are pressed into it.
Pushing in the image of the two souls as if they were fused into one.
Eventually, the sword returned to its original form.
{It’s been a long time.}
What had been only an emotion until then, echoed in my brain in a clear voice.
Leviathan — or rather.
The Leviathan’s voice echoed in my brain. [TN: It’s a bit complicated here. Till now it’s ‘レヴィアタン’ (Revu~iatan) now it’s ‘リヴァイアサン’ (Rivu~aiasan), Don’t know what to change.]
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Emperor of Empire
Gender: Male
Level: + / ∞
And in the status that was always visible out of the corner of my eye, the “+” in Water went up even more.
I saw it, and my father sensed what I saw in my gaze.
“Umu, as expected, Noah,”
He said with a proud smile.
The Demon Sword, Leviathan.
It was the moment of awakening. |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | 着替えが終わった後、ゾーイとケイトを連れて宿を出た。
昼間のデュセルも、夜間に負けず劣らず栄えていた。
昨夜は夜だったから気づかなかったけど、都に比べて、建物も、人々の服装なども。
全部が、「派手」な感じだ。
街挙げての成金スタイル、という感じだ。
「解りやすい街ですね」
呟くゾーイ、どうやら同じ感想のようだ。
ケイトはそのゾーイを不思議そうに見あげた。
まだ、そういうのが分からないようだ。
しばらく歩いたあと、それまで俺の後ろに付いてきていたゾーイがペースを上げて俺の前に出て。
「この店です、ご主人様」
といって、豪華な店構えの店を指した。
ゾーイが調べてきた、オルコットの詩が置かれてある店だ。
その店はデュセルの中心も中心、行き交う人間がかなり多い、繁華街のど真ん中にある、地だ。
周りの店も、行き交う通行人もそれなりの身なりをしている。
路地裏から物乞いが出てくると、すぐにどこかの店の店員が出てきて、それを追い払った。
「良いところに店を構えているんだな」
「こんなところにお店を......赤字が凄そうです......」
ケイトが困り顔で呟いた。
「赤字で良いんだよ」
「超一等地で店を構えるほど、人気な詩人だという虚像を作り出せればいいんだ。店舗一の赤字なんて、昨日ばら撒いてた黄金――オルコットに送った賄賂に比べれば安いもんだろ?」
「た、確かに......」
驚きつつも、ケイトは納得した。
「あそこに一般客なんて行かないはずだ、そうだろ?」
ゾーイに水を向けた。
ゾーイは静かに頷いた。
「さすがご主人様です。聞き込みをしたら、大体そんな感じでした」
だろうな。
夕方、俺達はさっきの店に戻ってきた。
街を一回りして、民の生活を見て回った。
街全体が成金チックというのはわざとらしい演出とかじゃなく、どこもかしこも金と物が溢れていた。
不況だから塩を食べない、売り上げが落ちて税金が減ってるなんて真っ赤な嘘だ。
それが確認取れたところで、実際に店に入って、藪を突っついてみようと戻ってきたのだが。
「えっ!!」
真っ先に声を上げたのはケイトだった。
驚いた彼女はバタバタと店の方に走っていった。
「ご主人様!?」
閉ざされたドアの隙間から店の中をのぞき込んだケイトは、驚愕した顔で俺を呼んだ。
俺は眉をひそめて、店に近づいていった。
午前中に来た時とはまったく様子が違っていた。
看板がなくなってて、ドアが閉ざされている。
ケイトの側にいって同じようにドアの隙間から中を覗き込むが、店の中はがらんとして何もなかった。
俺は一歩二歩と後ずさりして、距離を取って店の建物の全体を視界に入れる。
「ゾーイ」
「はい」
「ココで間違いないよな」
「間違いありません」
「中は? 店の中には入ってたよな」
「はい。店のあっちこっち額縁に入ったオルコットの詩が飾られて、接客用のテーブルとソファー、様々な調度品もありました」
「ふむ......もし、そこの人」
俺は通りすがりの通行人を呼び止めた。
「ここの店なんだけど、なにがあったのか分からないか?」
「なにが?」
呼び止められた男は閉まっている店をみた。
「なにがってなにが? ここはもう一年以上前から空き家になってるんだが?」
俺の後ろで聞いていたケイトとゾーイが揃って声をあげた。
男が立ち去った後。
「ご主人様! これは変です」
「一年前って、朝に来たときには、ちゃんとありました」
「......二人とも、周りの店の人に聞いてこい」
「はい!」
「分かりました!」
ゾーイとケイトは応じて、言われたとおり近隣の店に駆け出して、聞き込みをしてきた。
店の人間だけじゃなく、客や通行人にも聞いてみた。
しばらくして、二人は狐につままれたような顔で戻ってきた。
「どうだった」
「どこも同じです、あそこに店はない、って」
「前の店も何だったのか覚えてないくらい、立ち退きしてから凄く経ったっていってます」
「どういう事なのでしょうかご主人様。明らかにおかしいです」
「何かに化かされたんじゃないでしょうか」
俺は考えた。
勘違いとかじゃ決してない。
ゾーイの能力は信頼しているし、そもそも俺もゾーイもケイトもそろって午前中は「ここに店があった」のを見ている。
現実的に考えて......証拠隠滅と口裏合わせ。
素早く、そして大規模。
それを暴露するには......。
「ゾーイ」
「はい」
「何か食べ物を買ってこい。がっつり腹にたまる物だ。酒もあればなおいい」
「......分かりました」
何か聞きたげな顔をしているが、俺に何か考えがあると見抜いたゾーイは聞くのを後回しにして、まずは買い物に出かけた。
しばらくして、両手では抱えきれないほどの食糧と酒を抱えて戻ってきた。
「お待たせしました」
「付いてこい」
ゾーイとケイトを引き連れて、路地裏に入った。
饐えた匂いと淀んだ空気が支配する路地裏に入ってすぐ、地べたに座っている物乞いの姿が見えた。
物乞いは気怠げな目で俺たちを見ている。
「ゾーイ、それを渡せ」
「はい――どうぞ」
「――うおっ! パンに肉に、酒まである! これくれるのか?」
俺は頷き、物乞いの男に聞いた。
「朝、よそに追い出されてたな」
「ああ、いつものこった」
「それで戻ってきたって事は、いつもここに居るのか?」
「大抵はな」
「一つ聞きたい、この路地裏を出てすぐの、あの閉まってる店のことを知らないか」
「あの詩を売ってる店のことか?」
「「――っ!」」
ゾーイとケイトが息を飲んで、互いを見くらべた。
まるで何かに化かされている状況の中、ようやく
「ああ、あの店どうしたんだ?」
「昼くらいかな、急に大勢の人間がやってきて、物を運び出して締めたんだ。そのあと周りの店の連中に、ここには何も無かったって言え、って脅してた」
ケイトの表情に興奮の色が混ざっていた。
「誰がやらせたのか、わかるか?」
「そこまではわからねえよ」
「そうか。いや助かった。これは気持ちだ、取っといてくれ」
そう言って、100リィーンほどの現金を物乞いに渡した。
ゾーイとケイトを連れて、路地裏から出る。
「ご主人様」
「どうしてあの物乞いが知ってるってわかったのですか」
「あれは『最強の人』だからだ」
「最強の人?」
「守るものがある人間に、脅しや懐柔は効くが、物乞いくらい落ちぶれて失う物がない人間はそういうのは効かない。だから素直に喋ってくれる」
「なるほど! 凄いですご主人様」
「ぐわああああ!!」
悲鳴が木霊した。
ゾーイとケイトがぱっと振り向いた。
おれ達がさっきまで居た路地裏の中から、男の悲鳴が聞こえてきたのだ。
「早かったな」
「ふっ......」
俺は薄い笑みを浮かべながら、引き返していった。
ゾーイもケイトも付いてきた。
さっき居たところにもどってくると、物乞いが気絶して倒れていた。
そしてその横に、全身を焼かれて、体から煙をあげて、びくりとも動かずに倒れている知らない男達がいた。
「口封じ」
驚愕するゾーイ。
「店をあんな風に証拠隠滅する連中だ、俺達が接触したこの物乞いの口を封じようとするのは充分に考えられた。だから、バハムートに居させて、いざって時に憑依させるように命じた」
「おぉ......」
「ご主人様凄い......」
「こんなに早く始末するとは思わなかったけど、一つ解ったことがある」
「何がですか?」
「俺達は監視されている、じゃなきゃここまで早くないだろう?」
「――っ! 確かに!」 | After getting dressed, I left the inn with Zoe and Kate.
Dussel was as prosperous in the daytime as it was at night.
I didn’t notice it last night because it was nighttime but compared to the capital, the buildings, the people’s clothes, etc.
Everything’s “flashy”.
The whole city seemed to scream rich man’s style.
“It’s an easy town to understand, isn’t it?”
Zoe mutters, apparently feeling the same way.
Kate looked up at Zoe curiously.
She still doesn’t understand that kind of thing.
After walking for a while, Zoe, who had been following behind me, picked up the pace and moved in front of me.
“Master, this place.”
She pointed to a luxurious storefront.
Zoe had investigated and found it to be the place where Olcott’s poems were kept.
The store is in the center of Dussel, in the middle of a busy downtown area with many people passing by, a prime location.
The surrounding stores and passersby dressed appropriately.
As soon as a beggar came out of the alleyway, a clerk from one of the stores came out and chased him away.
“Quite a nice place to set up the store, eh.”
“To have a store in a place like this...... the deficit is going to be huge......”
Kate muttered with a troubled face.
“It’s all right to be in red.”
“The more you can create the illusion that you are such a popular poet that you can set up store in a very prestigious location, the better. The loss of a store or two is nothing compared to the bribe that was sent to Olcott for the gold he was throwing around yesterday, isn’t it?”
“T-That’s true. ......”
Kate was convinced, though she was surprised.
“No civilians are supposed to go there, am I right?”
I turned my attention to Zoe.
And she nodded quietly.
“As expected from Master. I asked around, and that’s pretty much how it went.”
Presumably.
In the evening we returned to the store we had just left.
We went around the town and looked at the people’s lives.
It wasn’t a deliberate stunt to say that the whole town was full of a rich man vibe, there was money and stuff everywhere.
It’s a complete lie that people don’t eat salt because of the recession, or that taxes are down because sales are down.
Once that was confirmed, I went back to the store to actually go in and beat around the bush.
“Eh!!”
Kate was the first to raise her voice.
Startled, she ran toward the store in a flurry.
“Master!?”
Kate peeked into the store through the closed door and called me with a startled look on her face.
I furrowed my brow and approached the store.
It looked completely different from when I had come in the morning.
The sign was gone and the door was closed.
I went to Kate’s side and peeked in through the same gap in the door, but the store was empty.
Stepping back a step or two, I moved to get a better view of the entire building from a distance.
“Zoe.”
“Yes.”
“You’re sure this is the location.”
“No doubt about it.”
“And inside? You’re inside the store, right?”
“Yes. There were framed poems by Olcott throughout the store, tables and couches for serving guests, and various furnishings.”
“Fumu. ...... if you’re there.”
I stopped a passerby as I walked by.
“What is it?”
“It’s about the store here, don’t you know what happened?”
“What?”
The man who was stopped looked at the closed store.
“What do you mean, what happened? This place has been vacant for over a year now?”
Kate and Zoe, who had been listening behind me, shouted together.
“I see. Sorry to hold you up.”
After the man walked away.
“Master! This is weird.”
“A year ago he says, when I came in this morning, it was there.”
“...... you two, go ask around, ask the shopkeepers.”
“Yes!”
“I understand!”
Zoe and Kate complied and ran out to neighborhood stores to ask around as they were told.
They asked not only people in the stores but also customers and passersby.
After a while, they returned with ghosted expressions on their faces.
“How was it?”
“It’s the same everywhere, there’s no store there.”
“They said it’s been so long since the last store was vacated that they don’t even remember what the last store was.”
“What is the meaning of this, Master? Something is obviously wrong.”
“Maybe something is haunting us.”
I thought.
It’s never a misunderstanding or anything like that.
I trust Zoe’s abilities, and to begin with, all three of us, I, Zoe, and Kate, saw “the store here” in the morning.
Realistically speaking, it’s ...... evidence destruction and backtracking.
Quickly and on a large scale.
To expose it, .......
“Zoe.”
“Yes.”
“Get something to eat. Something filling. And some booze would be nice.”
“...... I understand.”
She looked like she wanted to ask me something, but Zoe, seeing that I had an idea, put off asking and went shopping first.
After a while, she returned with more food and liquor than I could hold in both hands.
“Follow me.”
I walked into the alleyway with Zoe and Kate in tow.
As soon as we entered the alleyway, which was dominated by a foul smell and stagnant air, we saw a beggar sitting on the ground.
The beggar was looking at us with lazy eyes.
“Zoe, pass me that me that.”
“Yes– here you go.”
” — Whoa! Bread, meat, and even booze! You giving this to me?”
I nodded then asked the beggar.
“You got kicked out of that place in the morning.”
“Yeah, it’s always been that way.”
“So if you’re back, does that mean you’re here all the time?”
“Mostly.”
“I have one question, do you know anything about that closed store just off this alleyway?”
“You mean that place that sells poems?”
“”–!””
Zoe and Kate gulped and looked at each other.
They finally felt relief from meeting someone they could talk to, in a situation where it was as if they were being haunted by something.
“Yeah, what’s up with that place?”
“Around noon or so, a bunch of people suddenly came in, moved stuff out, and shut it down. After that, they were threatening to tell the people around the store that there was nothing here.”
Kate’s expression was laced with excitement.
“Do you have any idea who sent them to do it?”
“I don’t know that much.”
“I see. Well, thank you. Here’s my gratitude. Keep it.”
With that, I handed the beggar about reens in cash.
Then I left the alleyway, taking Zoe and Kate with me.
“Master.”
“Why do you think the beggar would know?”
“That’s because he’s ‘the strongest person’ there is.”
“The strongest person?”
Threats and coaxing work on people who have something to protect, but they don’t work on people who have nothing to lose and have fallen as far as being a beggar. That’s why they speak honestly.
“I see! That’s great, Master.”
“Aaagh!”
A scream was heard in the area.
Zoe and Kate turned around quickly.
A man’s scream came from the alleyway where we had just been.
“They’re early.”
“Fuu ......”
I turned back with a faint smile on my face.
Zoe and Kate followed.
When I came back to where I had been, I found the beggar lying unconscious.
Next to him was a group of men I didn’t recognize, lying motionless, their bodies smoking from the fire.
“Shutting his mouth.”
Zoe was astonished.
“They destroyed evidence in the store like that, it was quite conceivable that they would try to silence this beggar we came in contact with. That’s why I ordered Bahamut to stay and possess him in case of emergency.”
“Ohh ......”
“Amazing ........Master”
“I didn’t think they’d try to take care of it so quickly, but I did figure one thing out.”
“We’re being watched, or they wouldn’t be here so fast, would they?”
“—! Certainly!” |
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} | 街道を進んでいると、前後から急に荒くれが俺たちを挟み込んだ。
前後ともに50人、合わせて100人って所か。
全員が武装していて、荒事に馴れている人間特有の顔をしている。
「ご主人様......」
「心配するな」
をしたシャーリーの頭に手を乗せて、そのままでいいと暗に示す。
俺は馬車から飛び降りて、大声で言った。
「私はミレース・トゥルース。ご覧の通り商人です。私に何か御用がおありなのでしょうか」
いうと、正面人の中から、一人の青年が進みでた。
が良いのは他の人間と同じだが、どことなく冷静さを感じさせる瞳が特徴的な男だ。
「商人なのは知っている。少し、通行料をもらおうと思ってな」
「通行料、ですか」
「そうだ。商人ならそういうの、分かるだろう?」
男は笑顔のまま言い切った。
「払わなかったらどうする」
「払えないという訳でもないのだろう?」
男は更に笑顔のまま言い放った。
昨日の宿屋での俺の振るまいが、耳に入っているんだと確信した。
「素直に払った方がいい。そうすれば手荒な事をしなくて済む」
「残念だが、払うつもりはない」
男の笑顔がすぅ、と消えた。
その部下たちがざわつきだした。
一介の商人がこんな感じで要求を撥ね退けるなんて想像もしてなかったって思われたようだ。
「ならしょうがない、少し痛い目を見てもらう。おい」
男が顎をしゃくると、背後から部下、手やら首やらをボキボキならしながら出てきた。
「よく見たら綺麗な面してやがる」
「こういうお坊ちゃんがおりゃあ大っ嫌いなのよ」
「泣くなら早めの方が良いぜ」
男達は口々にそんな事を言い合いながら、俺に襲いかかってきた。
三人とも腰のボロい長剣を抜いて斬りかかってきた。
拳にバハムートの炎を纏わせて、無造作になぎ払う。
払われた長剣は、どろり、と刃が一斉に半分以上溶け落ちた。
ジュウ......と地面を焦がす真っ赤な溶鉄。
男達はまったく状況を理解できないでいた。
すかさず三人を殴り飛ばした。
盛大に燃え上がった火だるまになって、男達は吹っ飛んだ。
「凄いご主人様!」
「......どうやら、本気で痛い目を見たいようだ」
リーダーの青年が言うと、盗賊達が一斉に襲いかかってきた。
両手にバハムートの炎を纏わせて、迎撃する。
武器を溶かし、盛大に火だるまにして吹っ飛ばす。
敵は次々となぎ倒されて、地面に転んで悶絶する。
全員が俺に向かってきていた。
あっちには行かないのか――と思っていたら。
「動くな! こ、この女の命がないぞ!」
いきなりの恫喝に、俺も、そして盗賊達も動きが止まった。
ゆっくり振り向くと、盗賊の一人が馬車の上に飛び乗って、シャーリーを人質に取って、後ろから羽交い締めにして、剣の刃を喉に当てている。
「......」
俺は答えなかった。
「か、頭。今の内にさぁ!」
俺の動きが止まったのをみて、男はリーダーの青年に言った。
青年は無言のまま剣を抜いて歩き出し――俺の横をすり抜けた。
「えっ――ぐわっ!」
そして、まったく躊躇することなく自分の部下を斬り捨てた。
「な、なぜ......」
斬られて、馬車から転がり落ちた男は、信じられないって顔で自分のボスを見る。
「女を人質にとるなど、恥を知れ!」
「うっ......」
青年が吐き捨てるように言った後、シャーリーに向き直って。
「もう大丈夫だ......え?」
そして、今度は彼が驚く事になった。
なんと、シャーリーの首筋に剣が吸い付いていた。
人質に取った男が押し当てた剣が、首にそのまま吸い付いている。
「さすがご主人様。何があってもケガをする気が全くしません」
シャーリーは尊敬の眼差しを俺に向けてきた。
さっきの喝采は、シャーリーに前もって言って、やらせたものだ。
最初からシャーリーに目が行けばよし、行かなくてもシャーリーが声をあげて注意を引く。
それでどうするのかが見たかった。
もちろんシャーリーにはケガ一つ負わせないように、もっとも俺に忠実な猛犬であるレヴィアタンと鎧の指輪をリンクさせた上で、シャーリーを守ることだけに専念させた。
その結果が、喉元に押し当てられた剣が吸い付いた、という光景に繋がった。
それを見た青年がもの凄く驚き、おそるおそる俺を見る。
「お前は......一体、何者だ......?」
その目から、色々と察しつつあるのが分かった。
少なくとももう、俺をただの商人だとは思っていない目だ。
「レイモンド=グリフ・デイリー」
「!!!」
青年が盛大に驚いた。
そして部下の中から「グリフ?」という疑問の声が相次いでざわつきだした。
「こ年間レイモンド・デイリーとしか名乗っていないのに、なぜフルネームを知っているのかが不思議か? お前の父親が獄死してからはその名前を使わなくなったんだったな」
「なぜ......それを知っている」
さっきまでとはまるで違う、喉の奥から搾り出すような、しわがれた声だった。
「代官だった父親が死んだ後、物乞いを経て、盗賊に流れ着いた。それはそれで平穏に生きていたが、ある日盗賊団の団長が部下の妻を無理矢理手籠めにしようとしたのを見かねて、カッとなってその団長を殺した後、周りに推されて団長の座についた」
「......よく調べがついているな。お前は一体何者だ」
後半の盗賊団に入ってからの事績は、おそらく本人も隠してなくて、今の部下も皆知っている公然の事実というものだろうから、それを俺が言い出した辺りから、レイモンドは大分落ち着いてきた。
「このままだと、まともな死に方をしないぞ」
「この稼業を始めた時から覚悟はしている。そういう風に生まれついた人生だ」
「別の道があるといったらどうする」
「お前の父親の事は調べさせた。飢饉の時に独断で食糧を難民に配った事で投獄されたな。独断は独断だが、皇帝が変われば処遇も違う」
「どう違うというのだ」
吐き捨てるように聞き返してくるレイモンド。
「追号に、男爵をつけてやる程度には」
「......お前は、本当に何者だ?」
ますます、目の訝しむ色が強まるレイモンド。
「シャーリー」
「はっ」
シャーリーは頷き、空に向かって信号弾を打ち上げた。
手に持つタイプの花火の様なもので、一直線に打ち上げられて、爆音とともに、昼間でもはっきりと見える光を放った。
一分も経たずして、地鳴りのような足音が聞こえてくる。
更に一分くらいたって、兵が現われた。
2000人の兵がいきなり現われて、俺を取り囲む盗賊100名を更に取り囲んだ。
そうした後、シェリルが俺の前にやってきた。
「シェリル・ハイド、ただいま到着いたしました――陛下」
シェリルがそう言って俺に跪いた。
同時に、2000人の兵も俺に跪いた。
ちゃんとした格好の、正規軍2000人。
それが一斉に俺に跪いたのを見て、レイモンドを含む盗賊団は青ざめた。
「へ、陛下......お前が、いやあなたが......」
「ノア・アララート。余が帝国の皇帝だ」
「――っ!」
まるで雷に打たれたような顔をして、一歩後ずさるレイモンド。
固まること十秒。
レイモンドは我に返って跪き、作法に則った綺麗な一礼をした。
すると、盗賊団達も次々と跪いた。
シャーリーも馬車から飛び降りて、跪いていた。
総勢2100人の中、全員が跪いて、俺だけが立っている。
皇帝でしかあり得ない光景だ。
そんな中、俺は鷹揚とレイモンドを見下ろし。
「お前の事を調べさせた、さっきの対処も見させてもらった」
「はっ......」
「死なせるには惜しい男だ。余のために働く気はないか」
レイモンドはハッとして、顔を上げる。
「そ、それは、父の――」
「そっちは関係がない。あれはもう名誉回復をさせた」
レイモンドはますます驚き、同時に目に感謝の色が浮かんでいた。
「凄いわ......」
女の誰かがつぶやく中、レイモンドはそのまま頭を下げて。
「仰せのままに。この命、如何様にもお使い下さい」
――――――――――――
名前:ノア・アララート
帝国皇帝
性別:男
レベル:15+1/∞
HP C+C 火 E+S
知性 D+B 光 E+B
身も心も、俺に降ってきた。 | As we were moving along the road, a group of roughnecks suddenly intercepted us from both sides.
There were fifty of them in front of us and fifty behind us, making a total of about a hundred.
All of them were armed and had the look of someone who was accustomed to the rough stuff.
“Master, .......”
“Don’t worry.”
I put my hand on Shirley’s head and implied that she should remain where she was.
I jumped down from the carriage and said out loud.
“My name is Millace Truth. As you can see, I’m a merchant. What can I do for you?”
At this, a young man stepped forward from the fifty people in front.
He looked the same as the rest who were accustomed to rough trade, but his eyes had a certain calmness to them.
“I know you’re a merchant. Thought I’d take a little toll from you.”
“A toll, huh?”
“That’s right. You’re a merchant, you know how things work, don’t you?”
The man said with a smile.
“What if I don’t pay?”
“It’s not like you can’t pay, right?”
The man continued to smile.
I was sure that he had heard about my behavior at the inn yesterday.
“You’d better pay up. That way you won’t have to deal with any rough stuff.”
“I’m afraid I’m not going to pay.”
The man’s smile disappeared quickly.
His subordinates began to rustle.
They thought it was unimaginable that a simple merchant would reject their demands like this.
“Well then, I guess we’re going to have to hurt you a little. Oi.”
The man jerked his chin, and three of his men came out from behind him, cracking their hands and necks.
“Look at him, he’s got a pretty face.”
“I hate this kind of young man.”
“If you’re going to cry, you’d better do it early.”
The men were saying these things amongst themselves as they attacked me.
All three of them drew their raggedy long swords at their waists and slashed at me.
I wrapped Bahamut’s flames in my fist and slashed them away without a second thought.
Their long swords were swept away, and the blades melted off more than half of them at once.
Juu ...... and the bright red molten iron that scorches the ground.
The men could not understand the situation at all.
I quickly punched the three of them in the face.
The men were blown away as they appeared to be just a big fireball of flames.
“Master, amazing!”
“...... Looks like, you really want us to hurt you.”
The bandits attacked in unison as the group leader, the young man, said.
I wrapped Bahamut’s flames around my hands and intercepted them.
Melting their weapons and blowing them away in a huge fireball.
One by one, the enemies are knocked down, and they fall to the ground in agony.
All of them were coming at me.
And I was wondering why they weren’t going in that direction.
“Don’t move! E-Else this woman is done for!”
Suddenly, the threat stopped me and the bandits from moving.
Slowly turning around, I found one of the bandits jumped on top of the carriage, took Shirley as a hostage, shackled her from behind, and put the blade of the sword to her throat.
“......”
I didn’t answer.
“H-Head. Do it while you’re at it!”
Seeing that I had stopped moving, the man said to the young leader.
The young man silently drew his sword and walked away – slipping past me.
“EH–Guwa!”
And without any hesitation at all, he cut down his subordinate.
“W-Why ......?”
The man who had been cut down and rolled off the wagon looked at his boss with a look of disbelief.
“Shame on you for taking a woman hostage!”
“Ugh. ......”
The young man said as he spat, then turned to Shirley.
“It’s all right now. ...... Eh?”
And now he was in for a surprise.
To his surprise, the sword was stuck to Shirley’s neck.
The sword that was pressed against her by the man who had taken her hostage was stuck to her neck.
“As expected of Master. No matter what happens, I don’t expect to get hurt at all.”
Shirley gave me a look of respect.
The applause I had just given Shirley was something I had told her in advance and made her do.
It would be good if the eyes went to Shirley from the start, but even if they didn’t, Shirley would raise her voice to get their attention.
I wanted to see what would happen.
Of course, I linked the Armor Ring with Leviathan, my most loyal and fiercest dog, so that Shirley would not be injured, and I made him focus on protecting her.
The result of this was the sight of the sword pressed against her throat and sticking.
The young man who saw this was very surprised and looked at me fearfully.
“Who the hell are you, ......?”
I could tell from his eyes that he was starting to figure things out.
At least he doesn’t think I’m just a merchant anymore.
“Raymond Gryph Daley.”
“!!!”
The young man was greatly surprised.
”Griff?” Among the subordinates, a series of questioning voices began to buzz.
“For the past twenty years you’ve only been known as Raymond Daley, so you wonder how I know your full name? You stopped using that name after your father died in prison, didn’t you?”
“How did you ...... know that?”
It was a different voice from before, a croaky voice that seemed to be squeezing out of the back of his throat.
“After your father died, you became a beggar and then a bandit. You lived peacefully, but one day, the leader of the bandits tried to forcibly rape the wife of one of his men, you lost your temper and killed the leader, and then you were promoted to the position of leader.”
“...... You’ve done your research. Who the hell are you?”
His achievements since joining the bandits in the latter part of his life are probably an open secret that he is not hiding and that all of his current subordinates know about, and after I mentioned it to him, Raymond became much calmer.
“At this rate, you’ll never get a decent death.”
“I’ve been prepared for this since I started this line of work. It’s the life I was born with.”
“What if I told you there was another way?”
“I had your father investigated. He was imprisoned for distributing food to refugees during a famine. Discretion is still discretion, but it’s treated differently under different Emperors.”
“What difference does it make?”
Raymond asks back as if he were spitting.
“To the extent that I’m going to give you a Rank of Baron.”
“...... Who are you really?”
Raymond’s eyes become even more quizzical.
“Shirley.”
“Yes?”
Shirley nodded and launched a signal bomb into the sky.
It was like a hand-held firework, and it shot up in a straight line, emitting a blast of light that was clearly visible even in daylight.
Less than a minute later, we heard footsteps that sounded like the rumbling of the earth.
After another minute or so, the soldiers appeared.
Two thousand soldiers suddenly appeared, surrounding me with another hundred bandits.
After that, Sheryl came in front of me.
“Sheryl Hyde, I’ve just arrived, Your Majesty.”
Sheryl knelt as she said so.
At the same time, two thousand soldiers also knelt before me.
Two thousand regular troops, properly attired.
Seeing them all kneel to me at once, the bandits, including Raymond, turned pale.
“Y-Your Majesty, ...... you, no you, .......”[TN: He first says ‘Omae’ then changes to polite ‘anata’]
“Noah Ararat. Emperor of the Empire”
“—!”
Raymond took a step back as if he had been struck by lightning.
He froze for about ten seconds.
Then he knelt and gave a neat bow per etiquette.
Then, the bandits kneeled one after another.
Shirley also jumped down from the carriage and knelt down.
Out of the total of , people, everyone was kneeling, and I was the only one standing.
It was a scene that could only happen to an Emperor.
In the midst of all this, I looked at Raymond, magnanimously.
“I had them check you out, and I saw what you did earlier.”
“Yes. ......”
“A man too good to be left to die. Would you be willing to work for me?”
Raymond huffed and looked up.
“T-That my father’s...”
“It doesn’t matter. That honor is already restored.”
Raymond was more and more surprised and at the same time, his eyes were filled with gratitude.
“Amazing.......”
Raymond bowed his head as one of the women murmured.
“As you wish, sire. Use this life in any way you see fit.”
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Empire Emperor
Gender: Male
Level: + 1 / ∞
HPC+CMPE+CStrengthC+SStaminaD+CIntelligenceD+BSpiritE+CSpeedE+CDexterityE+CLuckE+C FireE+SWaterC+SSWindE+CEarthE+CLight E+BDarknessE+B
[TN: His intelligence increased from ‘D+C’ to ‘D+B’]
His Mind and Body, both bowed before me. |
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"series": "Noble Reincarnation~Blessed With the Strongest Power From Birth",
"source": "superScraper-fanfic"
} | 起きた俺は、オードリーとメイド達の手で、寝間着から着替えていた。
まずオードリーが俺の寝間着を脱がす。
鍛えた筋肉質な体に、窓から朝日が降り注ぐ。
体を拭かれ、香料をすり込まれ。
俺はいつもの様に、ほとんど動かずにオードリーやメイド達に身支度を任せた。
「ノア様?」
「ん? どうした」
「何かお悩みごとですか?」
「......なぜ分かる」
「お顔が、いつもより優れませんので」
「よく見てるな」
「ノア様のお顔ですもの」
オードリーはにこりと、しかしちょっとだけ頬を染めながら答えた。
こういう類の言葉は聞き慣れたものだが、妻の口から言われるのは悪い気はしない。
「お前の言うとおりだ。陛下の御下賜の、アポピスが気になってな」
「あの蛇の杖ですか」
俺ははっきり頷いた。
オードリーはレヴィアタンらの事も知ってるから、前提をすっ飛ばして「気になる」の内容を話した。
「あいつ、まだ俺に臣従していない。今日はそれをやろうと思ってな」
「そうだったのですか。あの、それは見ていて大丈夫な事なのでしょうか」
「見るか?」
「はい」
オードリーは頷く。
強い憧れと、懇願の色が表情に出ている。
達の話は聞かされてますが、それがノア様にかしづく瞬間は見たことがありません」
「ああ、確かに」
言われてみれば、と思い出す俺。
レヴィアタン。
バハムート=ルティーヤー。
フワワ。
ベヘモト。
これら全部、俺がオードリーと実際に会う前。
まだ都にいた時の事だ。
「なるほど......いいぞ」
「ありがとうございます!」
オードリーはものすごく嬉しそうな顔をした。
そうこうしているうちに着替えがすんで、そのまま大食堂に移動して、上機嫌のオードリーの給仕で朝食をとった。
その後、オードリーとメイド達を連れて、庭に出た。
庭の東屋の前で、前もってアポピスを箱ごと持ち出してもらっていた。
それに近づき、箱を開ける。
蛇の意匠をかたどった杖を手に取って目の前にかざす。
「応じろ」
すると、念が返ってきた。
言葉にならない念だが。
「大丈夫なのですか、ノア様」
「問題ない、多少見くびられているだけだ」
「見くびられている?」
「臣従して欲しければ倒せと言ってきた。お前のような力に使われる子供には無理だろうがなと」
「なんたる無礼!」
オードリーは眉を逆立てて、自分の事の様に怒った。
俺は杖――アポピスを見た。
わかりやすくああ言ったが、アポピスから伝わってきたのは「SSSに振り回されただけの子供」だった。
総理親王大臣は解任され、俺の能力は元に戻った。
それで見下してきた、って訳だ。
で、話は早い。
「お前を倒せばいいんだな?」
俺は再び、アポピスに話しかけた。
帰ってきたのは再び嘲りが混じった、しかし「そうだ」という意志だった。
「よし。ならこれを貸してやる」
俺はそう言って、アポピスを箱の中に戻して、ついでに鎧の指輪を外し、一緒に箱の中に置いた。
次の瞬間、アポピスが変化した。
アポピスは鎧の指輪とリンクして、巨大な蛇に姿を変えた。
巨大な蛇は杖を丸呑みして、人間など楽に丸呑みできそうな口を開けた。
「来る、鼻垂れ、小僧」
片言チックに喋って、威嚇するように口を開け放って、舌がちろちろと震える。
俺はレヴィアタンを抜き放って、斬りつけた。
水色の光を曳く魔剣の斬撃は、アポピスの鱗に弾かれてしまう。
「堅い!」
アポピスは一瞬得意げな顔をした後、そのまま俺に噛みついてきた。
地面を蹴って後ろに下がる。
アポピスは更に襲ってきた。
蛇の長い胴体がうねりながら突進してきて、ぐるっと俺の周りを回って――締め付けてくる。
レヴィアタンを横一文字に構える。
締め付けがレヴィアタンにつっかえた。
レヴィアタンを手離して、その場で飛び上がって、蛇の締め付けから脱出。
「縮め」
脱出した後レヴィアタンを縮ませた。
伸びると力比べになるが、縮む分にはなにも問題ない。
針くらいに縮んだレヴィアタンは地面に落ちた。
締め付けが空を切って、蛇は一瞬とぐろを巻いたが、すぐに伸びて向かって来た。
それをかわして、レヴィアタンを回収して元のサイズに戻す。
「お前、非力。俺、斬れない」
蛇はそう言って、舌をちろちろ出して、ゲラゲラと笑った。
「とどめ、刺す。丸のみ、する」
蛇は突進してきた、口を開け放って噛みつこうとしてくる。
レヴィアタンを構えて蛇を受け流す。
受け流した蛇はすぐにターンして、また突進してきたが、これも難なくいなす。
「「「おおおっ!!」」」
オードリー、そしてメイド達から歓声が上がった。
そうか、彼女達は分かるのか。
俺は力を捨てて、技のみでいなしていた。
それは毎朝の日課になった、ガジュマルを「斬らない」剣術だ。
武術は大抵、柔と剛にスタイルが分かれるもの。
俺が修練していたのは柔の極みとも言える技だ。
それを使って、何度も何度も蛇をいなした。
「お前、せこい。男、もっと来る」
「ふっ」
見え透いた挑発には乗らなかった。
そのまま更にいなしていると、ふと、ある一定の角度で受け流すと、蛇の胴体に引っかかる箇所があるのが分かった。
何度かやってみた。
引っかかりはよりはっきりと分かった。
そこに切り込んでみた。
突進を受け流したあと、蛇はすぐにターンして突っ込んでくる。
そのタイミングにあわせて俺も突っ込んだ。
「――っ!」
今までいなされてばかりだった蛇は見るからに驚いた顔をした。
向こうの勢い、そして俺自身の力。
そして刃はちゃんと角度をつけて、引っかかりにつっこむ。
すると、それまで堅くて、つるつるで刃が通らなかったのが、まるで豆腐を切るかのように刃がすんなりと通った。
そのまま更に突進、レヴィアタンで突き進む。
完全にすれ違った後、蛇の体は、まるで魚の開きのようにパカッと開いた。
「勝負あり、だな?」
鎧の指輪での具現化なので痛みはないだろうが、見事に斬られた事で蛇は唖然として、動きが完全に止まった。
しばらく待つと。
「お前、強い。しもべ、なる」
蛇はさっきまでの態度とは一変、実にしおらしくなった。
なんかの罠か? とも思ったのだが。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
法務親王大臣
性別:男
レベル:10/∞
HP D+E 火 E+A
力 D+A 風 E+F
視界の隅っこにあるステータスの「+」、闇が一気にCまで上がったので、心から臣従したと分かった。
「これからよろしく」
蛇は上手く頭を上下して頷いたあと、具現化をといた。
大蛇があった所に、鎧の指輪と蛇の杖――アポピスが落ちていた。
俺はそれを拾い上げた。
「さすがノア様!」
終わったことを正しく感じ取って、それまで距離をとっていたオードリーが感動した表情で近づいてきた。
数日後、外苑の書斎。
総理親王大臣はもう解任されたけど、政務の中で、使いやすいように改造していった書斎は、この先も使えると思って残しておいた。
その書斎で、ドンから報告を受けていた。
「これは?」
報告を受けた後、リストを眺めながら、ドンに聞いた。
「アララート州の代官が連名で送ってきた贈り物です。いずれもアララート地産の品ですね」
「アララートか」
「新たに統治者となった殿下への贈り物ですな」
「ああ、よくあるあれか」
口ではそういうものの、実の所俺は初体験だ。
アルメリアを封地にしてもらった時はまだ産まれた直後だったから、こういうことは全部周りの大人が処理していた。
だから、実際に俺の所に送ってきたのはこれが初めてと言うことだ。
「いやいや、よくあるなんて違いますな」
「このリスト、通常の倍くらい豪華ですね、こんなにすごいリストは見たことがない」
「そうか?」
「リストには民からと思しきものもあります。総理親王大臣のご政務、アルメリア・ニシルの治水。様々な殿下の噂を聞いて、自発的に送ってきたんでしょう」
「ギルバートの時は、これの一程度でしたね」
かつて、第一親王の元で働いていたドンが苦笑い交じりに言った。
「いやはや、すごいにも程がある」
「とはいえこんなにもらってもしょうがない。誰かいるか?」
ドアを開けて、一人の少年が入ってきた。
外苑に当るこの書斎の周りには、内苑と違って男子禁制がそこまで強くなく、男の使用人もいる。
少年は初めてみる顔だから、最近屋敷に入ったんだろう。
「これを俺の家人達に分配しろ。エヴリンはあれで酒好きだから醸造酒と蒸留酒1タルずつ。帝都にいるシャーリーはこの冷鉄の剣り、フォスターとハワードは一振りずつ。ディランは娘がいたな、絹をまるまる送ってやれ。バイロンには醸造酒、シンディーは蜂を全部一瓶ずつだ」
家人達の趣味と地位に会わせて、贈り物を分配する。
特に屋敷の中じゃなくて、外に出している者達を中心に配った。
一通り言い終えて、誰か漏れはないか、と考えていると。
「分かりました。エヴリンさんは醸造酒と蒸留酒1タルずつ。シャーリーさんは冷鉄の剣を二振りで、フォスターさんとハワードさんは一振りずつ。ディランさんは絹を。バイロンさんは醸造酒、シンディさんは蜂蜜四種を一瓶ずつ。ですね」
「......」
俺はちょっとだけ驚いて、少年を見た。
俺に見つめられて、少年はちょっとたじろいだ。
「ま、間違いがありましたか?」
「いいや、逆だ。よくあの一瞬で、一回聞いただけで全部覚えてたな」
叱られた、とかじゃないって分かった少年はほっとした。
「お前、名前は?」
「グランっていいます」
「屋敷に来てどれくらい経つ」
「一ヶ月くらいです」
「なんでここに来た」
俺が少年に語りかけた直後は、何か言いたげにしてたドンだが、矢継ぎ早にグランのパーソナルな情報を聞いていくのを目の当たりにすると、逆に何もいわないって感じで口を閉ざした。
一方で、聞かれたグランは若干戸惑いながら、俺の質問に答えた。
「両親が病気で、兄貴の稼ぎが少ないから、なにか稼げないかと思ってたら、宦官の募集がありました」
「なるほど」
宦官は毎月の給料とは別に、最初にまとまった金がもらえる。
去勢――つまり男性器を切りおとすのだから、それに対する補償というか、恩情だ。
「両親の病気は」
「少しは良くなったけど、まだ......」
グランは少しうつむき、顔が翳った。
「ふむ。今の給料はどれくらいもらってる」
「一月5リィーンです」
「50に上げてやる」
「........................え?」
何が起こったのか分からないって顔をしたグラン。
「それからドンの下につけ。分かるな?」
最後の言葉はドンに向かっていった。
ドンは静かに頷いた。
俺がグランの記憶力を見込んだのを理解して重用するつもりだ、って顔だ。
「あ、ありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございます!」
グランは何度も何度も頭を下げてから、品物分配の為に書斎を出た。
残ったドンは俺に向かった。
「さすがでございます。あれなら、恩義を感じて殿下に命賭けで尽くすでしょうな」
「命は賭けなくていい」
「へえ?」
「人は宝。尽くすのはいいが、生きて尽くしてもらわないとな」
「さすがでございます」
ドンは、完全に心服した、そんな顔で俺に一礼した。 | I woke up and Audrey and the maids were helping me change out of my nightgown.
Audrey takes off my nightgown first.
The morning sun poured in through the window on my muscular body.
My body was wiped down, and fragrance was rubbed in.
As usual, I barely moved, leaving Audrey and the maids to get ready for the day.
“Noah-sama?”
“Hmm? What’s wrong?
“Is there anything troubling you?”
“...... How do you know?”
“Your expression isn’t quite what it should be.”
“You’re quite observant.”
“It’s Noah-sama’s face that’s why.”
Audrey replied with a smile, but with a slight blush on her cheeks.
I am used to hearing these kinds of words, but I don’t feel bad when they come from my wife.
“You’re right. I was wondering about the Apophis, a gift from His Majesty.”
“The serpent’s staff?”
“Yeah.”
I nodded clearly.
Audrey knew about Leviathan and the others, so I skipped the premise and told her what I was curious about.
“He hasn’t submitted to me yet. I am thinking of doing that today.”
“Oh, really? Well, is that something I can watch?”
“You want to watch?”
“Yes.”
Audrey nodded.
The expression on her face showed a strong yearning and pleading.
“I’ve heard stories about Noah-sama’s weapons, but I’ve never seen when they submit to you.”
“Oh, sure then.”
I remember now that she mentioned it.
Leviathan.
Bahamut-Luthiya.
Fuwawa.
Behemoth.
All of these were before I had actually met Audrey.
When I was still in the capital.
“I see. ...... good.”
“Thank you very much!”
Audrey looked very happy.
In the meantime, I got dressed and went to the dining room to have breakfast with Audrey, who was in a good mood.
Afterwards, I took Audrey and the maids out to the garden.
In front of the pavilion in the garden, I had a box of Apophis brought out in advance.
I approached it and opened the box.
Then, picking up a staff in the shape of a snake, I held it in front of him.
“Respond.”
Then a message came back to me.
It was an inexpressible message.
“Are you all right, Noah-sama?”
“No problem. I’m just a little underestimated.”
“Underestimated?”
“He told me if I wanted him to obey me, I had to defeat him. It wouldn’t be possible for a power-hungry child like you, he said.”
“How rude!”
Audrey raised an eyebrow, angry as if it were her own.
I looked at the cane – Apophis.
It’s very easy to understand, but what Apohpis conveyed to me was that I was “Just a kid who got swayed around having SSS abilities”.
I was dismissed from the role of Prime Minister, and my abilities returned to normal.
That’s why, I was being looked down upon.
On the other hand, it was fast.
“Should I just take you down?”
I spoke to Apophis again.
And the response was, once again, a mocking but determined “Yes.”
“Good. Then I’ll lend you this.”
I put the Apophis back in the box, took off the Armor Ring, and put it in the box with the Apophis.
The next moment, Apophis changed.
The Apophis linked with the ring of armor and transformed into a giant snake.
The giant snake swallowed the staff whole, opening a mouth that could have easily swallowed a human.
“Come, greenhorn, boy.”
Speaking in sloppy manner, it opened its mouth menacingly, and its tongue quivered.
I pulled out my Leviathan and slashed at it.
The Demon Sword’s slash, which trails a light blue light, is repelled by Apophis’ scales.
“Hard!”
Apophis made a smug face for a moment and then tried to bit me.
I kicked the ground and stepped back.
Apophis attacked me again.
The long body of the snake undulated as it rushed forward, circling around me – tightening its grip.
I held Leviathan in a sideways position.
And the tightening clutches at the Leviathan.
Letting go of the leviathan, I jumped up on the spot and escaped the snake’s grip.
“Shrink.”
After escaping, I shrunk Leviathan.
When it stretched, it was a contest of strength, but when it shrank, there was no problem.
After shrinking to the size of a needle, Leviathan fell to the ground.
The constriction cut through the air, and the snake spun around for a moment, but it quickly extended and came at me.
Dodging it, I retrieved Leviathan and returned him to his original size.
“You, weak. You, cannot cut me.”
The snake chuckled, tongue lolling out.
“Will, finish. Swallow you, whole.”
The snake lunged at me, opening its mouth and trying to bite me.
I held up my leviathan and parried the snake.
The snake quickly turned and lunged again, but I was able to fend it off without difficulty.
“””Ooooooooooh!”””
Audrey and the maids cheered.
I see, they understood.
I set aside my strength and fought with only my technique.
It had become part of my morning routine to “not slash” the banyan tree with my sword.
In most martial arts, there are two styles: soft and hard.
What I was practicing was a technique that could be called the ultimate in softness.
I used it to fend off the snake’s attack over and over again.
“You, petty. Boy, There’s more.”
“Fu.”
I didn’t respond to the obvious provocation.
As I kept fending it off, I suddenly realized that there was a part of the snake’s body that would get latched onto if I passed it off at a certain angle.
I tried a few more times.
The tug became more obvious.
I tried to cut there.
The snake quickly turned and lunged at me after I parried its lunge.
I timed my lunge to coincide with its timing.
“—!”
The snake, which had constantly taunted me until now, looked surprised to see me.
The other side’s momentum and my own strength.
Then, I angled the blade properly and plunged it into the latch.
Then the blade, which had been too stiff and slippery to pass through, went through as easily as if it were cutting tofu.
I continued to charge forward, pushing forward with the leviathan.
After completely passing each other, the snake’s body snapped open like a fish opening.
“The game is over, isn’t it?”
The snake was stunned by the slash and stopped moving completely, though it was probably not painful since it was embodied in the ring of armor.
After waiting for a while.
“You, strong. Be your, servant.”
The snake’s demeanor changed drastically and it became very calm.
Is it some kind of trap? As I thought.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Minister of Justice
Gender: Male
Level: / ∞
HPD+EMPE+EStrengthD+AStaminaE+EIntelligenceE+DSpiritF+D
SpeedF+EDexterityE+DLuckE+D FireE+AWaterD+SWindE+FEarthE+DLight E+CDarknessE+C
The status “+” in the corner of my eye, Darkness, went all the way up to C, so I knew it truly became my subordinate.
“Looking forward to working with you.”
The snake nodded its head up and down nicely, and then released its embodiment.
Where the serpent had been, the ring of armor and the serpent’s staff – Apophis – had fallen.
I picked them up.
“As expected, Noah-sama!”
Audrey, who had been keeping her distance until then, approached me with an impressed expression, having sensed correctly that it was over.
A few days later, in Gaien’s study.
Although I had already been dismissed as the Prime Minister, I kept the study that I had remodeled to make it easier to use in the course of my political duties.
In that study, I was receiving a report from Don.
“What’s this?”
I asked Don as I looked at the list after receiving the report.
“These are gifts sent in the joint names of the governor of Ararat. All of them are local products of Ararat region.”
“Ararat, huh”
“Yes, a gift for their new lord, Your Highness.”
“Oh, that’s common then.”
Although this was the case, it was actually my first experience.
I got Almeria as my fief when I was just a baby, and the adults around me handled all of these things.
So, this is the first time they’ve actually sent one to me.
“No, no, it’s not common.”
“This list is twice as big as usual. I’ve never seen a list this big before.”
“Really?”
“Some of the items on the list appear to be from the general public. The political affairs during His Highness as the Prime Minister, the flood control of Almeria Nisir. They must have heard rumors about Your Highness and sent them voluntarily.”
“With Gilbert, it was about a third of this.”
Don, who had once worked for the First Prince, said with a wry smile.
“That’s why, it’s really amazing.”
“But I can’t help it if I get this much. Anyone there?”
A boy opened the door and walked in.
Unlike the inner garden, the ban on men was not as strong around this study, which was located in the outer garden, and there were male servants.
The boy looked new to me, so he must have joined the estate recently.
“Distribute this among my subordinates. Evelyn likes to drink, so I’ll give her one tart of brewed wine and one tart of distilled wine. Shirley, who is in the Imperial City, will take two of these cold iron swords, and Foster and Howard will take one each. Dylan, who has a daughter, send him a whole lot of silk. Byron gets a bottle of brew, and Cindy gets a jar of all four honeys.”
Distribute the gifts according to the taste and status of the household members.
Especially those who were out of the house, not in it.
When I had finished, I wondered if I had omitted anyone.
“I understand. Evelyn-san got one tart each of brewed and distilled liquor. Shirley-san will take two swords of cold iron, and Foster-san and Howard-san will take one each. Dylan-san will take silk. Byron-san will have a bottle of brew, and Cindy-san will have a bottle each of four kinds of honey. That’s it.”
“......”
I looked at the boy, a little surprised.
The boy flinched a little when I looked at him.
“I-Is there a mistake?”
“No, it’s the other way around. Well, I don’t know how you could have remembered everything in that one moment, just from hearing it once.”
The boy was relieved to know that he hadn’t been scolded or anything.
“What’s your name?”
“My name is Gran, sir.”
“How long have you been in the mansion?”
“About a month, sir.”
“Why did you come here?”
Immediately after I spoke to the boy, Don wanted to say something, but when he saw that I was asking for personal information about Gran one after another, he closed his mouth.
On the other hand, when asked, Gran answered my question with some confusion.
“My parents are sick and my brother doesn’t make much money, so I was looking for a way to make some money, and there was a recruitment for eunuchs.
Eunuchs receive a certain amount of money at the beginning of each month, in addition to their monthly salary.
Because of the castration, or the cutting off of the male genitalia, the eunuch would receive a large sum of money as compensation or a favor.
“So, your parents are ill”
“Though they’re a little better, they’re still ......”
Gran turned a little down, his face darkening.
‘Fumu. How much do you get paid now?”
“ reens a month.”
“Let’s raise it to .”
“........................ eh?”
Gran looked at me like he had no idea what was going on.
“So you will be under Don from now on. You understand?”
The last word went to Don.
Don nodded quietly.
He understood that I was counting on Gran’s memory and was going to use it.
“T-thank you so much! Thank you very much! Thank you very much!”
Gran bowed again and again, before leaving the study to distribute the goods.
Don who remained turned to me.
“As expected, sir. From now on, I’m sure he’ll be so grateful to you that he’ll risk his life for you.”
“No need to risk your life.”
“Huh?”
“People are treasure. Serving someone is good, but you have to live to serve them.”
“Very good, sir.”
Don bowed to me with a look of complete and utter admiration. |
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} | 喉を押さえて苦しむ代官を置いて、女の方を向いた。
中年の女に支えられた彼女は、何か言いたそうだが、呻き声しか出せなくて悲しそうな顔をしている。
「少し待て」
女にそう言って、アポピスを呼ぶ。
「お前、毒をいち早く感知したな。この毒は消せるか?」
おそらくは呼吸と同じくらい簡単な事だ、とアポピスは言いたいんだろう。
そんな分かるような分からないような片言で応じた後、俺の腕輪の中から紫色の、毒々しい煙が湧き出して、女に向かっていった。
アポピスの蛇の杖はレヴィアタンの水の魔剣と同じように、見た目の体積を自由に変えられて、小さくなった状態で俺の腕輪の中に収納している。
そのままで元のサイズに戻すことなく、「何か」だけを吐き出した感じだ。
「――っ!」
「安心しろ、悪いようにはしない」
見るからに毒っぽい、紫色の煙だ。
それを見た女はビクッとして逃げようとした、当たり前の反応だ。
俺はそれを止めた。
女は迷ったが、次の判断を下すよりも早く煙が女に取り憑いた。
煙は女の口や鼻から入っていく。
まるで女が全力で吸い込むような感じで、煙は瞬く間に、女の体の中に全部収まっていった。
むずがって、咳き込んで。
そして。
「......あっ、話せる」
「「「おおおおお!!」」」
女の声が戻ったことで、群衆の、最前列あたりで声が聞こえた者達に歓声をあげた。
「あんなに喉が焼ける程だったのに......どうして」
「毒を中和しただけだ。病気とかならなんとも言えんが、毒ならどうとでもなる」
『オレ、毒の神』
アポピスが片言で自慢げに言った。
毒ならば自分に勝る存在はいない、どんな毒だろうが制することが出来ると、アポピスの自信が感情としてそのまま俺に伝わってきた。
それに頼もしさを覚えた。
「ほんっとうにすごいわね。ねえねえ、今の、どうやったの?」
台にあげた「おばちゃん」は驚き、感心した。
それに付き合ってると話が盛大に脱線しかねないので、無視して、女にだけ話しかけた。
「これで話せるようになったな。なんでこうなったのか言ってみろ。冤罪なんだろう? 俺がなんとかしてやる」
「......うぅ」
女は俺をしばし見つめたあと、無言のままボロボロと涙をこぼした。
しゃべれるようになって無実を訴えるのかと思いきや、まったく違った行動だ。
俺はすこし戸惑った。
しかしすぐに、その反応の意味を知る。
「レナが......娘が......。レナの母親なんです」
女の口から紡がれる、支離滅裂な言葉。
断片的なキーワードを拾い集めた俺の頭の中に、とある想像が浮かび上がった。
眉をひそめて、それを聞く。
「もしかして、お前、被害者の母親か」
「......」
女は無言のまま、しかしこくりと頷いた。
次の瞬間、群衆の怒りが頂点に達した。
「何だよそれは!」
「被害者の母親を死刑の身替わりかよ!」
「どこまで腐ってるんだよ!」
あっちこっちから罵声があがった。
俺は「はっ」と、鼻で笑った。
ある意味感心した。
被害者の遺族を死刑の身替わりに突き出した。
まさに一だ――胸くそ悪いくらいに。
ますます許せん――とそんな事を考えていると。
誰かが喉を押さえつけている代官に向かって飲み物のコップを投げ込んだのを皮切りに、色んなものが投げ込まれてきた。
雨あられの如く、様々な物が台の上に投げ込まれ、降り注いできた。
「ふっ!」
レヴィアタンを抜いて、それを全部斬りおとす。
斬った跡をバハムートの炎で燃やし尽くす。
数百はあろうかという飛来物を余すことなく全部払い落とした。
「あんた、やるじゃないの!」
感心げな言葉をつぶやく「おばちゃん」はやっぱり「おばちゃん」で、この状況下でもどこか呑気だった。
それも無視して、俺は群衆に向かって。
「私刑は許さん」
「そいつを庇うのか!」
「お前も結局仲間なんじゃないのか!」
等々、様々な罵声が飛んできて、怒りの矛先が今度は俺の方に向かってきた。
これをどう切り抜けようか、レヴィアタンの威嚇を弱めにして全員黙らせるか。
周りをぐるっと見回す。
広場に集まってきている野次馬はざっと数えて千人くらいだ。
それなりに多い数だが、やれなくはない。
よし、ならば――と思っていると。
「どけどけ、道を開けろ!」
「開けないと逮捕するぞ!」
群衆の中から、野太い声が聞こえてきた。
その群衆を割って現われたのは、正規の服装をまとった警吏の一団だ。
その一団はまっすぐとこっちに向かってきて、次々と台に上った。
更に起きた変化、正規の警吏が何をどうするのか? と、
群衆は期待が怒りをやや上回り、様子見モードに入った。
そんな中、警吏の中から一人の男が現われた。
警吏を率いてやってきたその男は――ドンだった。
今や俺の腹心と言っても差し支えない、ドン・オーツ。
彼は俺の前に立つやいなや。
「護衛が遅れて申し訳ありません、王殿下」
高らかに言うと、片膝をついて頭を下げた。
そのほぼ同時に、連れてきた警吏らも全員頭を下げた。
ドンはかなりわざとらしく「十三親王殿下」とわかりやすく言った。
周りに聞こえるように――聞かせるように。
静寂が、水を打ったように広まっていく。
約十秒後、誰かが思い出したかのように跪くと、広場の周りに集まっていた千人近い野次馬が次々と跪いた。
人が波のように次々とひざまづいていく中、立っているのは俺と、もう一人。
「凄い......」
冤罪を着せられそうになった女だけだった。
その女もやがて「おばちゃん」に裾を引っ張られて、慌てて同じように跪いた。
千人近くが跪いている中たった一人立っている俺は、改めて、って感じでドンに命じた。
「クレイグ・ホールを即座に逮捕。家族は監視の下におけ。身替わりを立てられるなら、ある程度の資産は持ってる家ってことだろうな。刑が確定したら改めて財産没収だ」
頭の中で帝国法を思い出しつつ、適法の中でもっとも重い裁きを下す。
静寂の中、俺の声はよく通った。
裁きの意味が浸透するまで十数秒かかった――直後。
どっと沸いた。
歓声が広場を包んだ。
一方で、命令を受け取るだけのドンは動かなかった。
俺の前で跪いたまま動かない。
「どうした」
「恐れながら申し上げます。先々代ホールは引退こそしておりますが、かつては宰相まで登りつめたかた。クレイグ・ホールはその一人孫でして」
ドンはそんな事を言った。
が、至近距離で俺を見上げる顔は、イタズラっぽい笑みを浮かべていた。
止めろと言ってる顔でも口調でもない。
むしろ、俺へのアシストだ。
賢しいな、と思いつつ。
「だからなんだ」
俺は声を押し殺して、わざとらしくドンを睨んだ。
「引退したならただの庶民だ。行け」
ドンはもう一度頭を下げて、連れてきた警吏に命令した。
一部はそのまま呆然としている代官を拘束して、一部はそのまま来た道を引き返して、真犯人クレイグ・ホールを捕まえに走った。
「「「おおおおお!!」」」
この日一番の歓声が沸き上がった。
「名裁きだな」
「元宰相に対してそこまで言えるのは中々居ねえ」
「十三親王殿下って俺らの領主さまだよな」
「アッピア水道を特等に引き上げてくれたし、裁きも俺らに寄り添ってるし」
「凄い方だぜ」
俺を称える声がする中。
偶然遭遇した死刑囚身替わり事件は一段落した。 | Leaving the suffering deputy holding his throat, I turned to the woman.
She was supported by the middle-aged woman, and looked sad, as if she wanted to say something, but could only moan.
“Wait a minute.”
I said to the woman and called Apophis.
“You were the first to detect the poison. Can you remove this poison?”
Apophis is probably trying to say that it’s as simple as breathing.
After responding in such incomprehensible words, a purple, poisonous smoke gushed out of my bracelet and headed towards the woman.
Apophis’ Serpent Staff, like Leviathan’s Demon Sword, can change its apparent volume at will and is stored in my bracelet in a miniature form.
It’s like it just spat out “something” without returning to its original size.
” –!”
“Don’t worry, I won’t hurt you.”
It’s a poisonous, purple smoke.
When she saw it, she freaked out and tried to run away, which is a natural reaction.
I stopped her.
The woman was lost, but before she could make another decision, the smoke possessed her.
The smoke entered the woman’s mouth and nose.
It seemed as if the woman was inhaling with all her might, and in the blink of an eye, the smoke was all over her body.
She coughed hysterically.
And then.
“...... Ah, I can talk.”
“””Oooohhhh!”””
When the woman’s voice returned, the crowd, those in the front row who could hear her, cheered in unison.
“My throat was burning like that. ...... How”
“I only neutralized the poison. If it was a disease, I can’t say, but if it was a poison, I can do something about it.”
{Me, Poison God.}
Apophis said proudly in one sentence.
If it is a poison, there is no one better than itself, and no matter what kind of poison it is, it can be controlled, and Apopis’ confidence was transmitted directly to me as an emotion.
I found it reassuring.
“It’s really amazing. Hey, hey, how did you do that?”
The “auntie” on the platform was surprised and impressed.
I ignored her and spoke only to the woman, as I was afraid that if I kept up with her, I might derail the conversation in a big way.
“Now you can talk. Tell me why this happened. You’re falsely accused, aren’t you? I’ll take care of it.”
“...... Ugh.”
The woman stared at me for a long time and then burst into tears in silence.
I thought she was going to be able to speak and plead her innocence, but she did something completely different.
I was a little puzzled.
But soon, I realized the meaning of her reaction.
“Lena ...... is my daughter ....... I’m Lena’s mother.”
Incoherent words came out of the woman’s mouth.
As I picked up the fragmented keywords an imagination surfaced in my mind.
I furrowed my brow and listened to it.
“Are you, by any chance, the victim’s mother?”
“......”
The woman was silent, but she nodded her head.
In the next moment, the crowd’s anger reached its peak.
“What the hell is that!”
“The victim’s mother is being sentenced to death!”
“How rotten can you get!”
Curses came from everywhere.
I snorted “Haa ” and laughed.
In a way, I was impressed.
The victim’s family had been sentenced to death.
It’s like killing two birds with one stone – it’s disgusting.
All the more unforgivable — and as I was thinking about it.
Someone threw a glass of drink at the deputy who was holding his throat, and then all sorts of things were thrown at him.
As if in a rainstorm, all sorts of things were thrown onto the platform and poured down.
“Fu!”
I pulled out my leviathan and cut them all down.
And burned them all up with Bahamut’s flames.
There were hundreds of them, and I was able to get rid of every last one of them.
“You are pretty good!”
The lady who murmured those words of admiration was still in “Auntie” mode and seemed to be somewhat relaxed even in this situation.
Ignoring her, I turned to the crowd.
“I will not tolerate personal punishment.”
“You’re defending him!
“You are one of them after all, huh”
The anger was now directed at me.
I wondered how I could get out of this, maybe I could weaken Leviathan’s intimidation and shut them all up.
I look around.
At a rough count, there were about a thousand onlookers gathered in the square.
It’s a large number, but it’s not impossible.
Okay then– as I was thinking.
“Move, move, open up the path!”
“Open up or you’ll be arrested!”
I heard a loud voice coming from the crowd.
A group of patrol guards in full uniform appeared, breaking through the crowd.
They came straight at us and climbed up on the platform one by one.
More changes happened, what would the regular patrol guards do? And.
The crowd went into a wait-and-see mode, their anticipation slightly outweighing their anger.
Then, a man appeared from among the guards.
The man who led the guards was Don.
Don Oates, who is now my confidant.
As soon as he stood in front of me, he apologized.
“I apologize for the delay in escorting you, Your Highness the th.”
He said in a high-pitched voice, and bowed his head down on one knee.
At about the same time, all the guards he had brought with him also bowed.
Don said, in a rather deliberate manner, ” Your Highness, the th.”
He made sure that the people could hear him – so that they know.
The silence spread like a waterfall.
About ten seconds later, someone knelt down as if remembering, and the nearly one thousand onlookers who had gathered around the square knelt down one after another.
As people kneeled one after another in waves, there was only me and one other person standing.
” amazing ......”
The only person standing was the woman who was almost falsely accused.
Eventually, she too was pulled down by the “auntie” and hurriedly knelt down as well.
As I stood alone in the midst of nearly a thousand people kneeling, I ordered Don to do it again.
“Arrest Craig Hall immediately. Keep his family under the surveillance. If he can replace himself, he must be a man of some means. Once he’s sentenced, we’ll confiscate his property once again.”
Recalling the imperial law in my mind, I handed down the heaviest judgment of the lawful ones.
In the silence, my voice came through loud and clear.
It took more than ten seconds for the meaning of the judgment to sink in.
The crowd erupted.
A cheer enveloped the square.
On the other hand, Don, who was just receiving orders, did not move.
He just knelt in front of me and didn’t move.
“What’s wrong?”
“With all due respect, sir. I’m afraid to say this, but the previous generation of Halls have retired, but they once rose to the rank of Vizier. Craig Hall is his only grandson.”
That’s what Don said.
But the face that looked up at me at close range had a mischievous smile on it.
It wasn’t a look or a tone that told me to stop.
Rather, it was an assist to me.
That’s clever, I thought.
“So what?”
I stifled my voice and glared at Don deliberately.
“If you are retired then you are just a commoner. Now go.”
Don bowed his head once more and ordered the guards he had brought with him.
Some of them went straight to detain the stunned governor, and some of them went straight back the way they came and ran to catch the real criminal, Craig Hall.
“””Ooohhhh!”””
The loudest cheers till now erupted.
“Great judgment.”
“It’s not often you can say that about a former Vizier.”
“His Imperial Highness the Thirteenth is our lord, right?”
“He raised the Waterworks in Appia to the special grade, and he’s always there for us when we need him.”
“He’s a great person.”
Amidst the voices praising me.
The case of the death row prisoner switching that I happened to encounter has been settled. |
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} | 馬車を護衛して王宮に戻ってきた。
陛下とインドラとで、図書館のような書斎にやってきた。
陛下は腹心であるクルーズに向かって。
「外に行っていろ、呼ばない内は誰であろうと通すな」
「御意」
クルーズは恭しして、書斎から退出した。
書斎の中に、俺たち三人と、一人、若い宦官が残っていた。
「こいつはいいのかい?」
インドラは若い宦官を指さして聞いた。
「うむ、それは特別だ。耳は聞こえない、喋ることも出来ない、文字も読めないのを置いてある」
「なるほど、機密の話をするのにうってつけか」
インドラは納得して、面白そうだ、って顔でその宦官を眺めた。
一方で、陛下は俺を真っ直ぐ見つめた。
「さて、よくアイデアを出してくれた。それで行こうと思う」
「であれば、陛下」
俺は一歩進み出て、微かに頭を下げながら言った。
「軍の指揮権を全て陛下の元に取り戻すべきです」
「軍の指揮権?」
「はい。ヘンリー兄上の兵務親王大臣と、俺の第一親衛軍総督などです」
陛下は少し考えてから得心し、インドラは口角を歪めて笑った。
「確かにな、皇帝の遺命に不服な皇族が軍の指揮権を持ってたら話がこじれる。それで無理矢理他の皇子を排除して皇帝につく可能性もあらあな」
「はい、実質クーデターですが、陛下がお隠れになったゴタゴタの中、軍をコントロールしていたら横車を押し通せる」
「だな。にしても、それをボウズから提案するとはなあ」
「孫婿にはふさわしいだろ」
陛下は紙の上にペンを走らせた。
あっという間にりの詔書が出来上がった。
その片方を俺に渡す。
読むと、俺を労いつつ、総督を解任するという詔書だ。
となると、もう片方はヘンリー兄上のだな。
陛下は侍っている宦官に何かジャスチャーをした。
宦官は頷き、詔書をもって書斎を出て行って、すぐに戻って来た。
仕草が大きく、簡単なジェスチャーだった。
おそらくこの宦官は決まったいくつかの命令しか実行できないように教育されてるんだろうな、と思った。
「皇太子の廃嫡はどうする」
ここからが本題だ。
部屋の中の温度が一気に二度くらい下がったような気がした。
「それは、いかようにも」
俺は答えた。
「ん?」
「皇太子の指名と廃嫡、それは帝国の国事でありますが、皇室の内事でもあります。跡継ぎをどう指名しようがどう廃しようが、それは皇帝の自由です」
俺は法務親王大臣としての見解を示した。
「なるほど」
「ただ」
「ただ?」
「ギルバートとは違って、アルバート兄上は何か悪事を行った訳ではありません。故に、廃嫡後も親王として残しておくのがいいかと」
「ふむ。ならばこういうのはどうだ? アルバートは余にも、国にも二心はないが、天下を任せるのには力不足。故に皇太子を廃し、親王に戻す――どうだ」
「いいと思います」
「おう。それと皇帝よ、アルバートを再び世継ぎに戻す気はあるのか?」
「ない」
陛下はきっぱりと言い放った。
よほど......見放されてるんだな。
「ならそれを分かる様にした方がいい」
「ふむ......分かる様に、か」
「一字を与えるのはいかがでしょう。そこで終わりだ、という意味を含めた『終』親王というのは」
一字を与えるのは栄誉でもあるが、その親王の性質を帝国中に知らしめるという意味合いもある。
だから俺はそう提案した。
「うむ。それはいい。よく提案してくれたノア」
陛下は俺を褒めてから、戻って来た宦官が設置した新しい紙にペンを走らせた。
しかし、さっきはさらっと書けたのに対して、今度はなぜかつっかえつっかえで、書き終えた後顔を上げたら複雑な表情をしていた。
「どうしたのですか?」
「なんじゃこりゃ。字もひでえし、誤字が山ほどなうえ、文章もよく読まねえと意味が分からねえ。ひっでえ文章だな」
「実質我が子に罪を言い渡すのだ、廃嫡程度とは言え、忍びないのだ」
「なるほどなあ。まあ書き直せばいいさ」
「なんだノア」
「そのまま詔書として出してもいいのではと思います。正式な詔書は記録に残ります。陛下の気持ちも、この詔書とともに残ります。もちろん兄上にも伝わります......それで陛下のお心を感じて、今後は親王として帝国のお役に立てるようになれば」
「ふむ......」
陛下は自分が書いた間違いだらけの、気持ちが漏れ出した詔書をじっと見つめた。
しばらくして、顔をあげて俺をみて。
「お前が、もっと早く......いや」
何かを言いかけて、首を振って取り消した。
「よく進言してくれたノア」
俺は頭を下げた。
陛下は詔書を別の紙に清書した。
文字はいつもの陛下の文字に戻った、こうしないと詔書の真贋を疑われる可能性がある。
しかし文章は残した。俺が進言した、記録に残るから文章はそのままで、のを採用してくれた。
清書をしてから、陛下は再び宦官にジェスチャーをして呼び寄せて、詔書を渡した。
宦官はそれを受け取って、一瞬キョトンとしてから、身を翻して書斎の外に向かって歩き出した。
「――っ! 待て」
俺は宦官に追いつき、背後から肩を掴んで引き留めた。
「どうしたボウズ」
「この宦官、詔書を見て反応した」
「なに?」
「清書した陛下の字はいつも通りだった。なのに戸惑ったのは文章がおかしいと読めたからだ」
「「――っ!」」
陛下とインドラ、同時に顔色が変わった。
宦官は血相を変えて、俺が肩をつかんだ手を振り切って、逃げ出した。
「逃がさん!」
レヴィアタンを使って、威嚇して宦官の動きを止めた。
全力で駆け出したのは一瞬、すぐに糸の切れた人形の様に脱力して、顔から床に突っ込んでいくように倒れていった。
「おいおい皇帝、こいつスパイじゃねえのか?」
「......そういうことだな。クルーズ!!」
陛下は大声でクルーズを呼んだ。
怒気を含んだものすごく大きな声で、部屋を数個離れていても聞こえるほどだ。
しばらくして、クルーズが入ってきた。
「お呼びでしょうか、陛下」
「そこの、文字が読めたぞ」
「えっ......」
倒れている宦官をみて、クルーズはみるみる内に顔が青ざめていった。
「わ、私の不注意です! どうか、どうかお許し下さい!」
クルーズはその場で土下座して、額を床に叩きつけた。
彼のこんな姿は初めて見る。
「どう処分する、ノア」
伏しているクルーズはビクッとした。
「宦官は死刑、今すぐに執行すべきかと」
「理由は?」
「文字を読めるのに読めないと偽ってこの書斎の任務に就いた。それは宦官ではないのに宦官であると偽ったのと本質は同じ。陛下の禁裏を汚した罪として、死刑が妥当かと」
「それはいいが、吐かせてからの方がいいんじゃねえのか?」
インドラが言って、俺はクビを振った。
「そうなれば、首謀者も処分せざるを得ない。それ次第では......」
俺はそこで言葉を切った。
沈黙は金、という言葉がある。
ここまで言えば、陛下も分かるだろう。
そう、万が一、この宦官はアルバート兄上が送り込んできた者なら?
あるいは親王の誰かなら?
インドラも理解したようだ。
「よく言ってくれたノア、さすがだ。これからもお前は法務親王大臣として余に仕えてくれ」
「クルーズはどうする」
クルーズはビクッとした。
おそるおそる顔を上げる、その顔は青ざめたままだ。
俺はふっ、と軽く笑った。
「クルーズは監督不行き届きだけ、減俸半年くらいでいいでしょう」
「そうだな。って訳だ、減俸半年と、あとそれの処理を任せる」
クルーズは文字通り赦しをえた表情で、額をゴツンと床に叩きつけて、それから逃げるように宦官を引きずって書斎から出ていった。
夜、今度は宦官そのものをすべて遠ざけた、皇帝の書斎。
そこで、皇帝と第一宰相が二人っきりで密会をしていた。
皇帝は今日起きた話を腹心たる第一宰相に話した。
ノアが提案したそれを聞くなり、第一宰相は感心した顔で頷いた。
「やはりノア様はすごいですな。そのアイデア、考えもしなかった」
「それに、偶然でしょうが、陛下のお考え......孫をみて決めるとも一致している。あれは決定を出来るだけ引っ張らねば成立しませんからな」
「さすがは賢親王様、その名にふさわしいアイデア」
昼間にまた一人息子を自らの手で処分したからか、皇帝は息子を褒められて上機嫌だ。
それも一瞬の事、すぐに表情は元に戻って。
「で、例の宦官は吐いたか」
結局、ノアのアドバイスを聞き入れはしたが、皇帝は秘密裏に宦官を拷問に掛けた。
もっとも信頼の置ける、尋問させても表には出さないと確信する腹心たる第一宰相に。
「はい、私が直々に、一人でやりました」
「どうだった」
「......ノア様はおすごい。人の心でも読めるのではないか、と思ってしまうほどですな」
第一宰相はさすがだった、宦官は全て遠ざけたが、それでも明言は避けた。
それでも、皇帝には十分に伝わった。
スパイを送り込んできたのは、アルバート。
ノアの提案がなければ、アルバートに更に処分を下さなければならなかったところだ。
「余は何も知らなかった」
「......」
「国を任せられないだけで、余の子には違いないのだ」
「......」
第一宰相は何も言わずに、そのかわり会釈程度に頭を下げた。
皇帝の治世に何人も宰相がいるが、この第一宰相が一番長く続けていて、途中で罷免されたりとかは全くない。
こういう時に黙っていられるのが、彼の強みなのだ。
一方で、皇帝もこの空気の重さを嫌ってか、話題の転換を図った。
「そうだ、リヴァイアサン、という名前を知っているか?」
「それは......たしか白銀の時代に、時の皇帝に力を貸し者の内の一人でしたな」
皇帝は頷いた。
そして第一宰相に、街で、ノアとインドラに話しかける前の事を話した。
その場にいたから、皇帝もノアの配下達の声を聞いていたのだ。
「つまり......その一人であるリヴァイアサンがノア様に力を貸していると?」
「なんと! それはすごい! しかもその話が本当なら、四賢者よりも更に数が増えるのではありませんか」
「すごいですな......ノア様なら白銀の時代をも上回れる、と言うことですな」
「可能性はな」
皇帝も、第一宰相も興奮気味にうなずいた。
しかしそこで先走らないのがこの二人だ。
地上最高の権力者である帝国皇帝と、長年その右腕を務めた人物。
二人は、あくまで冷静に振る舞える人物だ。
「では、ノア様の可能性に期待するとしましょう」
「うむ、どう育つのか、じっくり見ていこう」
二人は自制心からそう発言したが。
ノアは一連の事で、間違いなく、二人の中の好感度が大幅に上がっていた。 | I escorted the carriage back to the Royal Palace.
His Majesty, Indra, and I came to a library-style study.
His Majesty addressed his confidant, Curuz.
“Go outside, and do not let anyone pass until I call you.”
“Yes, Your Majesty.”
Curuz bowed reverently and exited the study.
The three of us and a young eunuch remained in the study.
“Is this guy good?”
Indra asked, pointing at the young eunuch.
“Hmm, this one’s a bit special. He’s deaf, he can’t speak, and he can’t read.”
“Well, that’s a good way to talk about confidential matters.”
Indra looked at the eunuch with a satisfied and amused expression.
His Majesty, on the other hand, looked straight at me.
“Well, you’ve given me a good idea. I think I’ll go with it.”
I stepped forward and said with a slight bow.
“I think you should regain full command of the army.”
“Command of the army?”
“Yes, sir. Including brother Henry’s Ministry of War and my position as Governor of the First Order of Knights.”
His Majesty thought for a moment and then understood, and Indra smiled, the corners of her mouth twisting.
“Sure, if a member of the royal family who disagrees with the Emperor’s will has command of the army, it will complicate things. It is possible that they will forcefully eliminate the other Princes and take over as Emperor.”
“Yes, it’s practically a coup d’état, but if they control the army while His Majesty is gone, they can push their way through.”
“That’s right. But I didn’t expect you, boy to suggest it.”
“He is suitable to be your grandson-in-law.”
“Yes.”
His Majesty ran his pen over the paper.
In no time at all, he had created two sets of rescripts.
He handed me one of them.
I read it and saw that it was an imperial decree to dismiss the Governor as well as to thank me.
So, the other one must be for Brother Henry.
His Majesty made some kind of jerky gesture to the eunuch in attendance.
The eunuch nodded, walked out of the study with the rescript, and came right back.
The gesture was large and simple.
Perhaps this eunuch has been trained to carry out only a few fixed orders, I thought.
“What about the Crown Prince’s disinheritance?”
This is where it all begins.
I felt as if the temperature in the room had dropped two degrees at once.
I answered.
“Hmm?”
“The nomination and disinheritance of the Crown Prince is a matter of state for the empire, but it is also an internal matter for the royal family. It is up to the emperor to appoint or disinherit an heir.”
I expressed my view as the Minister of Justice.
“Just.”
“Just?”
“Unlike Gilbert, Brother Albert has not done anything wrong. Therefore, I think it would be better to keep him as the Prince even after his disinheritance.”
” Hmm. Then how about this? Although Albert has no double-mindedness towards me or the nation, he is not strong enough to be in charge of the nation. Therefore, abolish the Crown Prince and return him to the position of Prince.”
“I think that’s a good idea.”
“Oh. And, Emperor, do you intend to make Albert the heir again?”
“No.”
His Majesty said firmly.
He has given up on him...... very much.
“If that’s the case, you’d better make it known.”
“Hmm. ...... make it obvious, huh.”
“Just a single character. Like ‘End’ to signify that Crown Prince’s role ends here.”
It is an honor to be given a character, but it also means that the character’s nature will be known throughout the empire.
That’s why I suggested it.
“Umu. That’s good. Noah, you’ve made a good suggestion.”
His Majesty praised me and then ran his pen over a new piece of paper set up by the returning eunuch.
However, while the previous time he could write quickly and easily, this time he was stumbling around for some reason, and when he looked up after finishing, he had a complicated expression on his face.
“What’s wrong?”
“What the heck. I can’t understand the meaning of the text unless I read it carefully, and the handwriting is terrible. It’s a horrible sentence.”
“I’m actually sentencing my own child to a crime, even if it’s only a disinheritance, I can’t stand it.”
“I see. Well, you can rewrite it.”
“What is it, Noah?”
“I think we should just issue it as an Imperial Decree. A formal Imperial Decree will be recorded. His Majesty’s feelings will also remain with the Imperial Decree. Of course, it will also be conveyed to elder brother. ...... So, if he can feel His Majesty’s heart and be able to serve the empire as a prince in the future...”
“Fumu......”
His Majesty stared at the Imperial Decree that he had written, full of mistakes and leaking his feelings.
After a while, he raised his head and looked at me.
“You better get on with it. ...... No.”
He started to say something, then shook his head and canceled.
“You have given me good advice, Noah.”
I bowed my head.
His Majesty wrote the decree on another piece of paper.
The letters reverted to his usual style, otherwise, the authenticity of the decree might be questioned.
However, he preserved the text. He adopted my suggestion that the text is left as it was since it would be recorded.
After making a clean copy, His Majesty called the eunuch over again with a gesture and handed him the Imperial Decree.
The eunuch took it, looked puzzled for a moment, then turned himself around and walked out of the study.
“–! Wait.”
I caught up with the eunuch, grabbed his shoulder from behind, and held him back.
“What’s the matter, boy”
“The eunuch reacted to the Imperial Decree.”
“What?”
“His Majesty’s handwriting was as usual. Yet he was confused because he could read that the text was wrong.”
“”— !””
His Majesty and Indra’s complexion changed at the same time.
The eunuch complexion changed, and he shook off my hand that grabbed his shoulder and ran away.
“Don’t let him get away!”
I used Leviathan to intimidate and stop the eunuch’s movement.
The eunuch ran with all his might for a moment, and then immediately collapsed, weakening like a puppet with broken strings and plunging face-first into the floor.
“Oi, Oi, Emperor, isn’t this guy a spy?”
“...... That’s what I’m thinking. Curuz!!”
His Majesty called out loudly for Curuz.
It was so loud and filled with anger that it could be heard from several rooms away.
A few moments later, Curuz walked in.
“You wanted to see me, Your Majesty?”
“There, he can read the words.”
“Eh ......”
Seeing the eunuch on the floor, Curuz’s face grew pale.
“I’m sorry, I was careless! Please, please, please forgive me!”
Curuz got down on his knees and slammed his forehead on the floor.
I’ve never seen him like this before.
“How do you want to handle this, Noah?”
The prostrated Curuz freaked out.
“The eunuch is to be executed, and I’m thinking it should be done now.”
“And why is that?”
“He pretended to be unable to read when he could, and took on the duties of this study. It is essentially the same as pretending to be a eunuch when you are not. I think the death penalty is appropriate for the crime of defiling His Majesty’s forbidden grounds.”
“That’s all well and good, but wouldn’t it be better if you made him throw up first?”
Indra said, and I shook my head.
“If that happens, we’ll have to get rid of the ringleader. Depending on that, ......”
I trailed off there.
There is a saying that silence is golden.
Your Majesty will understand if I say this much.
Yes, on the off chance that this eunuch was sent by my brother Albert?
Or one of the Princes?
Indra seemed to understand.
“Noah, you’re right. You will continue to serve me as Minister of Justice.”
“By your will.”
“What about Curuz?”
Curuz freaked out.
He raised his head fearfully, his face still pale.
Giving a light laugh I said.
“I think he should get a six-month pay cut for poor supervision.”
“I guess so. Then he’ll get a six-month pay cut and you can handle the rest.”
He literally slammed his forehead on the floor with a pardoned expression, then dragged the eunuch out of the study as if to escape.
At night, this time, all the eunuchs themselves were kept away, in the Emperor’s study.
There, the Emperor and the First Vizier were having a secret meeting alone.
The emperor told the First Vizier about what had happened today.
As soon as he heard Noah’s suggestion, the First Vizier nodded his head in admiration.
“Noah-sama is amazing. Even I hadn’t thought of that idea.”
“And, coincidentally, it’s also in line with His Majesty’s decision to consider ...... the grandchildren. That only works if you drag out the decision as much as possible.”
“As expected of the Wise Prince, an idea worthy of his name.”
Perhaps because he had just put down another son with his own hands during the day, the emperor was in a good mood to be praised for his son.
It was only for a moment, and soon his expression returned to normal.
“So, did the eunuch spit it out?”
In the end, the emperor heeded Noah’s advice and had the eunuch tortured in secret.
By First Vizier, his most trusted confidant, who he was sure would not reveal the truth even if he were to interrogate him.
“Yes, I did it in person, all by myself.”
“How did it go?”
“...... Noah-sam was incredible. It’s almost as if he can read people’s minds.”
The First Vizier, as expected, kept all the eunuchs away, but still avoided saying anything.
Still, the Emperor could understand well enough.
It was Albert who had sent the spies.
If it hadn’t been for Noah’s suggestion, he would have had to take further action against Albert.
“I do not know.”
“......”
“Just because he can’t be trusted with the kingdom doesn’t mean he’s not my son.”
“......”
The First Vizier did not say anything but instead bowed his head in a begrudging manner.
There are many Viziers in the Emperor’s reign, but the first Vizier has lasted the longest and has not been dismissed at any time.
His strength lies in his ability to keep quiet at times like this.
On the other hand, the Emperor, perhaps disliking the heaviness in the air, tried to change the subject.
“Well, do you know the name Leviathan?”
“That’s ...... I believe he was one of the four Sages who helped the emperor during the Silver Age.”
The emperor nodded.
And then he told the First Vizier about what happened in the city before he spoke to Noah and Indra.
Because he had been there, the emperor had heard the voices of Noah’s servants.
“So you’re saying that ...... one of them, Leviathan, is helping Noah-sama?”
“Oh my! That’s amazing! And if what you say is true, won’t there be even more of the Four Sages?”
“I guess so.”
“It’s amazing. ...... Noah-sama may be able to surpass the Silver Age.”
“There is a possibility.”
The Emperor and the First Vizier both nodded excitedly.
However, these two do not get ahead of themselves.
The Emperor of the Empire, the highest power on the land, and the person who has been his right-hand man for many years.
They are two people who can act calmly.
“So, let’s hope for Noah-sama’s potential.”
“Umu, we’ll have to wait and see how he develops.”
They said this with restraint.
Noah’s likeability among the two of them had undoubtedly increased significantly after the series of events. |
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} | 王宮の中、皇帝の書斎。
書斎と呼ばれているが、そこは十万冊以上の書物と即位してからのほとんどの書類を保管している、実質図書館のような場所。
その書斎に呼び出された俺は、父上――つまり皇帝陛下の前で跪いていた。
「お呼びでしょうか、父上」
「うむ」
威厳たっぷりの声で、鷹揚にうなずく父上。
俺が挨拶している間も何か書類に目を通して、それにサインをしてから、侍っている宦官に渡した。
政務落したところで、ようやく父上は頭を上げて、こっちを見た。
「元気にしていたか」
「はい、日々精進しています」
父上は小さく頷き、直前の書類を手際良く処理した宦官に顎をしゃくった。
腹心とも言える宦官は更に下級宦官に指示を出して、その宦官が俺の側にやってきた。
俺に向かって魔法を使う。
ステータスを見る魔法、俺が生まれた直後に掛けられて、皆を結果的に驚かせた魔法。
しばらくして、俺のステータスが誰にも見れる形で現われた。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
性別:男
レベル:1/∞
HP F 火 F
MP F 水 SS
力 E 風 F
体力 E 地 F
知性 F 光 F
精神 F 闇 F
速さ F
器用 E
運 E
――――――――――――
「ほう、また上がっているな。前回と違って力がEになっておる」
父上は感心した様子で、執務机から離れて、俺の前にやってきて、ステータスをのぞき込んだ。
「それでいてレベルは1のまま、か。すごい話だ。レベル据え置きのまま能力が上がる人間など、今まで聞いた事もない。お前はつくづく不思議な子だ」
「ありがとうございます」
あの日皆を驚かせて、今父上が「不思議」だと評したこの特殊体質。
転生してか、俺はうっすらとその原因を理解しつつあった。
俺の「部下」と連動している。
普通の人間にはない、俺だけに見える「+」の後ろの部分、追加の部分は俺の部下とか使用人とか、そういう身分の人間に応じて増減する。
思えばあの時も領地が決定した直後に上がったし、今回も例の洪水の被害に遭った村を丸ごと俺の傘下に加えたから、力がF+FでEになって現われた。
ちなみに今、俺にはこう見えている。
アララート帝国十三親王
レベル:1/∞
MP F 水 E+S
力 F+F 風 F
体力 F+F 地 F
速さ F
器用 F+F
運 F+F
これに気づいてから色々調べて、いろんな人に話を聞いたが、「+」を持つ人間は他にいなかった。
俺だけらしい。
それに「∞」も意味は分からないままだが、これも誰も知らない俺だけの物らしい。
だからこの事は、皇帝である父上とはいえ今は黙っている。
「このために呼び出したのでしょうか、父上」
「ん? ああそうだった、本題は別にあった。ノア、お前村を一つ丸ごと買ったようだな」
「......」
俺は息を飲んだ。
驚いた、数日前の話で、まだ報告もしてないのになぜ父上が知っている。
「そう驚くな、叱責のために呼んだのではない。むしろ逆だ」
「え?」
「......」
父上は手を後ろに組んで、考え事をしているかの様に
「あれほどの天災だろうが、それにつけ込んで一儲けしようとする輩が現われる。大抵の場合余の所まで話が上がってくる頃には、連中が甘い汁を吸い終えた後だ。そして余は――国はその後始末のために人と金を投入する。天災と人災にかさなった惨状の後始末をな」
「どうやって知った?」
立ち止まり、後ろ手を組んだまま首だけこっちを向く。
俺は素直に答えた。
「その村出身の者が、十三親王邸でメイドをしてました。それが遊郭に身売りさせられそう、と言う話を聞いて」
「なるほど、では偶然か」
「偶然か。天意でもある。アルバートの所だったら三重の尻拭いをするところだったな」
皇帝のぼやき。
何となく皇太子への不満に聞こえたから、俺は相づちも打たないで、無言でスルーした。
数秒間の沈黙、父上は再び俺に話しかけてきた。
「なんにせよよくやった。褒美をくれてやる。クルーズ」
「はっ」
それまでずっと離れた所にいた、気配を押し殺した腹心の宦官が応じて、一歩前に進み出た。
「ノアの俸禄は今どんな感じだ」
「十三親王殿下の俸禄は現在、年間8000リィーンでございます」
「少ないな」
多いから。
都で働く三十歳の平均月収が10リィーン――年間120リィーンだ。
それ人分くらいの額だ、決して少なくない。
「とりあえず1000上げてやれ。遡って今年からだ」
「御意」
宦官クルーズは応じて、それを伝達するために立ち去った。
「ノア」
「はい」
「よくやった。これからも目が届く範囲でよい、余の力になってくれ」
「わかりました」
皇帝の書斎を出て、豪華な廊下を引き返す。
すると、廊下の向こうから知った顔が見えた。
そっちも俺が見えて、これでもか、ってくらいのニコニコ顔でやってきた。
「ノア様」
俺の名前を呼んで、その場で片膝をつく若い宦官。
名前はシーズ。役職のない、雑用をしてる下級宦官だ。
王宮に入った頃は母上のところに配属されたから、それで顔を知っている。
「ノア様に会えて良かった。ノア様のお顔を見るだけで、一日の活力が湧いてくるかのようです」
「相変わらず口を開けばおべっかだな。ほれ」
のために用意しておいた革袋を取り出し、シーズに放り投げた。
ざっと100リィーンが入っている、銀貨袋だ。
これも転生してから覚えた事だが、貴族は「施し」を美徳とする。
立場が明らかに下の、恵まれない人間に施す事をよしとし、またそれができる程の力があると誇示する目的もある。
宦官の給料は実に安い、月5リィーンだ。
それでも農村部に比べれば高いし、その職務上「永久就職」になるから、安定を求めてのなり手は多い。
だからといって薄給には変わりないから、こうして施すのは普通だ。
シーズはずしりとする革袋をキャッチして、ますますニコニコ顔になった。
「ありがとうございます!」
「独り占めするなよ。仲の良い連中くらいには分けてやれ」
「いやあ、さすがでございます。皆言ってるんですよ、十三親王様はあっしらに優しいだけじゃなく、ここにいない者の事も気に掛けて下さる神様のようなお方だと」
「おべっかがますます上手くなったな。さては御膳の蜂蜜をつまみ食いしてるな」
「とんでもありません、全て本心でございます、はい」
「そういうことにしとこう」
俺は歩き出した、シーズは俺の横について来て、あれこれよいしょしてきた。
「そういえばノア様。最近売り出し中の歌い手をご存じですかい」
「歌い手?」
「へい。レイド通りのキースって店でやってる女ですがね。名前はアリーチェ。まだまだ青臭いですが、伸び代はあるって評判でして。あっしらも通っているんですよ」
適当に雑談を聞き流しつつ、俺は王宮を出た。
王宮を出たあと、都を適当にぶらつく。
繁華を極める帝国の都、地上で一番栄えてる都市と言っていい。
人も物も――そして金も。
あらゆるものがここに集まってくる。
当然人間の欲望を満たすものも一通り揃っているが、まだ六歳であるこの体じゃやれる事もない。
街に来たはいいが、結局ぶらつくことしかできない。
ふと、シーズから聞いた話を思い出す。
売り出し中の歌い手か。
から聞いた話だったら、そこに色――つまり性的なものが絡んでくる。
だが、シーズは「あっしらも通ってる」って言った。
宦官というのは、万が一にも間違いが起きないために、男性器を切り落とされた人間だ。
それによって性欲はなくなる(代わりに金銭に対して執着するようになるが)から、彼らが通ってるって言うのなら歌だけなんだろう。
それなら六歳の俺でも楽しめる。
そう思って、話で聞いたレイド通りに足を向けた。
キースって店はすぐに見つかった。演劇や演奏などを楽しめる茶屋だ。
中に入って席代を払っていい席に案内してもらう。
店員は一瞬俺を見てきょとんとしたが、服の材質や装飾で貴人だとわかると相応の扱いをした。
席に座って、店員に聞く。
「アリーチェって女は今日いるか?」
「お客さん運がいい、今歌ってるのがそのアリーチェだよ」
「へえ......注文は適当に。野菜や葉物はいらない」
店員が立ち去った後、俺は改めて店の前方に目を向けた。
ステージがあって、放射線状に客席が配置されてる構造。
後ろに行けば行くほど見えにくいが、俺が席料をはずんだこともあって、案内されたのは最後尾ながらも台の上にあるような席で、前の客の頭関係なくステージを眺めていられる。
ステージ上では、ハープを鳴らしながらアリーチェが歌っている。
しばらく聞き入った。
なるほど、悪くない。
まだ技術は途上の域だが、真剣に、そして真面目に歌っているのが伺える。
音楽はその人の性格がよく出る。文字とかと一緒だ。
俺もまだそれを知って六年くらいだが、それでもはっきりとアリーチェが真面目な性格だというのを感じ取れた。
これなら俺もしばらく通って、場合によってはパトロンに――。
パリーン!
歌がガラスの割れる音に遮られた。
一つ二つじゃない、歌が完全に止まるまで継続的にだ。
アリーチェの手が止まって、客もそっちを向く。
すると、今し方店に入ってきた数人の男が、途中にある客のグラスや皿を掴んでたたき割りながら、ステージに近づいていく。
「おいおいおい、何ここでちんたら歌ってんだ、ああん?」
「お客様、ここは――ぷへっ!」
取りなしに入ろうとした店員が殴られて、テーブルを巻き込んで吹っ飛んだ。
店の中がざわつき出す。
「それはお金を――」
先頭のボス格らしき男が、ドスの効いた声と一緒に、近くにあるテーブルを蹴っ飛ばした。
安い脅しだ。
「父ちゃんが作った借金はこんなんじゃ返せねえだろ」
「で、ですがこれ以外では」
「はあ? なあ皆まで言わせんなよ。女なら女の稼ぐ武器があるだろ?」
アリーチェは下唇をかんで、悔しそうにうつむいた。
......。
俺は立ち上がって、ステージに向かっていった。
「おい」
「ああん? ガキか? ガキはママのおっぱいでも吸ってろ!」
「帝国法第六十七条の二。親の借金を子に肩代わりを求めてはならない」
「はあ?」
「金貸しの是非を問うつもりはないが、父親の借金を娘に、それも体を売って返せってのはれっきとした罪だ」
男は逆上して、俺の肩を掴んできた。
こうなると分かっていたから、俺は用意したものを発動させた。
魔道具、スプラッシュ。
使い切りの魔道具、魔力の有無に関係なく魔法を発動する代物だ。
効果は使用者の属性に依存。
発動した水の魔法は、人数分の猛烈な水流を産み出して、男達の肩を貫いた。
「ぐわっ!」
「ひいぃぃぃっ!」
「な、なんだこいつは」
直前まで威勢のよかった男達は、全員が血の滲む肩を押さえて、尻餅をついて後ずさった。
「まだやるか?」
そういって手をかざすと、男達は悲鳴を上げて、転がるように逃げ出した。
店の中は静まりかえった――直後。
爆発的な歓声があがった。
「なんかすげえぞ!」
「やるなボーズ!」
「ばか、言葉に気をつけろ。ありゃ貴人だぜ」
歓声の中、俺は殴られて、鼻血が出るのを押さえてる店員に手招きした。
「へ、へい、何でしょう......」
「連中がまた借金の話で来たら俺の所にこいって言ってやれ」
そう言って、懐から一枚の札を取り出して渡す。
店員はそれを見てぎょっとした。
「し、親王様!?」
店の中が更に大きくざわついた。
それを無視して、半ば放心しているアリーチェの方を向く。
「さっきの演奏、良かったぞ」
「あ、ありがとうございます......」
「お前、月の生活費いくらだ?」
「え? その......母の医療費も......」
「25リィーン」
アリーチェの言葉を途中で遮った。
「毎月それ渡してやるから安心して歌え。上達したら増やしてやる」
「――ありがとうございます!」
感激して頭を下げたアリーチェ。
親王――貴族だってこともあり、俺の能力もあって。
俺はこうして、ちょこちょこと必要な人間を見つけては、パトロンをしていった。 | In the royal palace, the emperor’s study room.
It’s called a study room, but it’s practically a library-like place where more than , books and most of the documents from his accession to the throne are kept.
When I was called into that study, I was kneeling in front of my father – that is, His Majesty the Emperor.
“You wanted to see me, father?”
Father nodded at me in a dignified voice.
While I was greeting him, he was looking over some papers, signing them and handing them to the serving confidant.
Once the political work had been completed, father raised his head and looked at me.
“How are you?”
“Yes, I’m doing great every day.”
“Hmm.”
Father gave a small nod and scoffed his chin at the confidant who had handled the last minute paperwork so deftly.
The confidant, who could be described as a confidant, gave further instructions to a junior confidant, who then came to my side.
The confidant uses magic on me.
The magic to see status, the magic that was cast right after I was born and surprised everyone as a result.
After a while, my status appears for all to see.
――――――――――――
Gender: male
Level: 1/∞
HP F Fire F
MP F Water SS
Strength E Wind F
Stamina E Earth F
Intelligence F Light F
Spirit F Darkness F
Speed F
Dexterity E
Luck E
――――――――――――
“Well, the power has gone up again. Your strength is on E, as opposed to last time.”
Father looked impressed as he walked off his office desk and came in front of me, peering at the status.
“And you’re still at level 1, huh. Great news. I’ve never heard of anyone’s ability increasing while their level remains unchanged. You are a very unique child.”
“Thank you very much.”
This peculiar constitution that surprised everyone that day, and which my father just described as “mysterious”.
Six years after my reincarnation, I was beginning to understand the cause of this.
It’s linked to my “subordinates”.
The part behind the “+” that is visible only to me and not to normal humans, the additional part increases or decreases according to the status of my subordinates, servants, and other such people.
If I recall, at that time too, it rose right after the territory was decided, and this time, too, because I added the entire flood-damaged village under my umbrella, the power appeared as F+F, which is E.
By the way, this is how I see it now.
Name: Noah Ararat
13th prince of Ararat Empire
Level: 1/∞
MP F Water E+S
Strength F+F Wind F
Stamina F+F Earth F
Speed F
Dexterity F+F
Luck F+F
After realizing this, I did a lot of research and talked to a lot of people, but I didn’t find anyone else who had a “+”.
I’m the only one, apparently.
And I still don’t know the meaning of “∞” either, but it seems that this is also something that no one else knows about, and it’s only me.
That’s why I’m keeping quiet about this for now, even though it’s my father, the emperor.
”Is this why you called me here, father?”
“Hmm? Oh yes, there was another subject. Noah, I see you’ve bought an entire village.”
“....”
I gulped.
’I’m surprised, it was a few days ago and I haven’t even reported it yet, so how did Father know about it?
“Don’t be so surprised, I didn’t call you here to reprimand you. Rather, it’s the opposite.”
” Huh?”
Father crossed his hands behind his back and walked out of the study as if he were thinking.
“I’m sure it’s a natural disaster, but there are always people who try to take advantage of it to make a profit. It’s usually after they’ve finished sucking the sweet juice out of it by the time they come up to me. And then I – the government throws in people and money to clean up afterwards. It’s a natural disaster and a man-made disaster, a double-layered disaster and a cleanup.”
“How did you know?”
He stopped and turned his head only to look at me with his hands crossed behind his back.
I answered honestly.
“A girl from that village worked as a maid in the residence of the 13th Prince. I heard that she was about to be sold to a brothel.”
“Yes, it’s a coincidence.”
” Coincidence. A lucky coincidence. In Albert’s place, I’d be doing a triple cleanup.”
The emperor blurted out.
Somehow it sounded like a complaint to the crown prince, so I didn’t even phase through it, and I passed it off in silence.
A few seconds of silence, and then my father spoke to me again.
“At any rate, you have done well. I’m going to reward you. Curuz.”
One of the gutted emissaries, who had been far away all that time, responded and stepped forward.
“How much is Noah’s allowance now?
“His Royal Highness the Thirteenth’s current allowance is 8,000 reen per annum.”
“That’s not much.”
It’s a lot.
The average monthly income of a thirty-year-old working in the city is ten reens – 120 reens a year.
That is about seventy people, not a small amount.
“Let’s raise by a 1000 then. That starts this year, retroactively.”
“As you wish.”
The confidant Cruz complied and left to communicate it.
“Noah,”
“You’ve done well. Keep up the good work, as far as I can see, and help out as much as you can.”
“I understand.”
I left the emperor’s study and turned back down the gorgeous hallway.
Then I saw a familiar face from across the hallway.
That one could see me, too, and he came over with a smiling face, as if this was the best he could do.
“Noah-sama”
A young eunuch who calls my name and gets down on one knee right then and there.
His name is Siz. He’s a low-level servant with no job title, doing menial tasks.
When he joined the palace, he was assigned to my mother’s place, so I know his face.
“It is a pleasure to meet you, Noah-sama. Just looking at Noah-sama’s face is enough to make you feel energized for the day.”
“You’re still a goofball with an open mouth. Here.”
I reached into my pocket and took out the leather bag I had prepared for this kind of... and tossed it to Siz.
It’s a silver coin sack, containing roughly 100 reens.
This is also something I’ve learned since my reincarnation, but nobles make a virtue out of ‘charity’.
In addition to the fact that it’s a good idea to give to people who are clearly underprivileged, the purpose of which is to show off that you are powerful enough to do so.
The wages of servants are very low, five reens a month.
Even so, it is higher than in the rural areas, and since their duties make them “permanently employed,” there are many who seek stability in their careers.
But that doesn’t change the fact that the wages are still very low, so it is normal to give them this kind of treatment.
Siz caught the slippery leather bag and became more and more smiley-faced.
“Thank you!”
“Don’t keep it to yourself. Split it up between the people you’re close to.”
“Oh, you’re very good. Everyone says that the 13th Prince is not only kind to us, he is also like a god who cares about those who are not here.”
“You’re getting better and better at sucking up. Now you’re snacking on honey from your dinner plate.”
“No, sir, I don’t. I mean all of it, yes, sir.”
” Let’s put it that way.”
I began to walk away, and Siz followed beside me, pointing this and that.
“Speaking of which, Noah-sama. You know that songstress who’s on the market lately?”
“The songstress?”
” Yeah. She runs a shop called Keith’s on Lade Street, though. Her name’s Alice. She’s still a bit green, but she has a reputation for growth. I know a guy who goes there.”
” Oh,”
I left the royal palace while listening to the random chatter.
After leaving the Royal Palace, I wandered around the Capital randomly.
The capital of a thriving empire, the most prosperous city on land, you could say.
People, goods – and money.
All kinds of things gather here.
Naturally, the things that satisfy human desires are also available, but my body is only six years old and there’s nothing I can do.
It’s nice to be in town, but in the end I can only wander around.
Suddenly, I remember a story I heard from Siz.
A songstress on the market.
If this was a story I heard from the minister or some other elder sibling of mine, that’s where the color – or sexuality – comes into play.
But Siz said, ” I went there too.”
A eunuch is a human being who has had his male genitals chopped off, just in case a mistake is made.
That eliminates their sex drive (though they become obsessed with money instead), so if they say they’re going through it, it’s probably just a song.
Then even six-year-old me can enjoy it.
With that in mind, I turned to Lade Street, where I’d heard about it.
I found a place called Keith’s right away. It’s a teahouse where you can enjoy plays and performances.
I walked in and paid for my seat and was shown to a good seat.
The waiter looks at me for a moment, and then treats me appropriately when he recognizes me as a noble by the material of my clothes and decorations.
I sit down and ask the waiter.
“Is this woman Alice here today?”
“You’re in luck, that’s Alice, the girl who is singing.”
“Well just get it right, order as you see fit. I don’t want any vegetables or leafy greens.”
” Yes!”
After the clerk walked away, I looked again at the front of the store.
There’s a stage and a structure with seating arranged in a radial pattern.
The further back you go, the harder it is to see, but since I had paid extra for my seat, I was ushered into a seat on a platform, so I could watch the stage regardless of the heads of the customers in front of me.
On stage, Alice was singing while playing a harp.
I listened for a while.
Okay, not bad.
Her technique is still in its infancy, but she seems to be singing seriously and earnestly.
Music shows a person’s character well. It’s the same with characters.
I’ve only known it for about six years, but I could still clearly sense that Alice is a serious character.
If this is the case, I’ll go for a while, and in a few occasions, I’ll be a patron–
Palin!
The song was interrupted by the sound of breaking glass.
Not one or two, but continuously until the singing stopped altogether.
Alice’s hands stopped and the customers turned to look at her.
Then a few men who had just entered the store approached the stage, grabbing glasses and plates of customers on the way in and smashing them.
“Hey, hey, hey, what are you doing here singing like a little bitch, huh?”
“Sir, this is– Phehee!”
A clerk who was about to enter to intercede was punched and blown up, involving a table.
The store starts to buzz.
“That’ s money–“
The man in the lead, who seemed to be the boss of the group, kicked a nearby table away with a dusky voice.
It was a cheap threat.
“You can’t pay off the debt your dad created with this.”
“But, sir, in addition to this...”
“What? Come on, don’t make me say it to everyone. What’s a woman to do with a woman’s earnings?”
“.....”
Alice chewed her lower lip and slumped in frustration.
.........
I stood up and went to the stage.
“Hey,”
“What? The kid? Kid, go suck on your mommy’s tits!”
“Article 67-2 of the Imperial Code. No child shall be required to shoulder the debts of a parent.”
“What?”
“I don’t mean to question the merits of money lending, but it’s a very real sin to ask a daughter to pay back her father’s debt by selling her body, too.”
The man turned the tables and grabbed my shoulder.
I knew this was going to happen, so I activated what I had prepared.
A magic tool, the splash.
It’s a magic tool that can be used up, a substitute that activates magic regardless of whether or not you have magic power.
The effect depends on the user’s attribute.
The water magic that was activated produced a fierce water flow as many as the number of people and pierced the shoulders of the men.
” Gwah!”
“Heeeee!”
“What the fuck is this?”
The men who had been so vigorous just before, all of them held their bloodied shoulders and backed away with their asses in their hands.
” Still want to try?”
With that, he held up his hand, and the men screamed and rolled away.
The inside of the store was silent – immediately after.
There was an explosive cheer.
” What the hell!”
” Stop it, Boz!”
” You should watch your mouth, idiot. That’s a nobleman.”
Amidst the cheers, I went towards the one clerk who was punched and was holding his nose bleeding.
“Ye-,Yes, what is it, sir...”
“If they come to you about the debt again, you tell them to come to me.”
Then I took a bill from my pocket and handed it to him.
The clerk looked at it and freaked out.
“The, The Prince!”
The store buzzed even louder.
Ignoring it, I turned to Alice, who was half-indulging.
“That was a good performance earlier.”
“Oh, thank you...”
“How much do you earn in a month?”
“What? Well I mean my mother’s medical bills too....”
“25 reen.”
I interrupted Alice mid-sentence.
“I’ll give you that every month, so don’t worry about it and sing along. I’ll give you more as you improve.”
“Thank you!”
Alice bowed her head in admiration.
Being a Prince: Growing as a nobleman and helping needy people
In this way, whenever I found someone who needed a little bit of help, I became their patron. |
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} | 俺に暴言を吐いたやつは自然と居場所をなくして、いつの間にか会場から消えていた。
その間も、俺はレイドークから次々と客を紹介されていた。
上流階級の人間だったが、目を引の男女がいた。
男代、いかにも商人風の格好をしている。こういう場では一目で身分や職業が分かるのは大事だ。
女は十歳くらい。若干背伸び感のある、清楚なドレスで着飾っている。
そんな男女組。
「お目にかかれて光栄です殿下。わたくしバイロン・アランと申します。こちらは娘のシンディー。お見知り置きを」
「うん。その子は、養女か何か?」
俺が指摘すると、バイロンと名乗った商人は一瞬顔が強ばった。
「ご、ご存じだったのですか」
「いや」
ただ、前世からの経験で「分かる」のだ。
四十代の男と十くらいの少女。二人はまるで親子には見えない。
「見てて分かるんだ」
「ほう、さすが殿下。後学のためその理由をご教示いただけないだろうか」
バイロンは戸惑っていたが、レイドークはさすがに冷静だった。
上手く間に入って、話を繋げた。
「アラン、お前は二代目目かだな?」
「は、はい。おっしゃる通りでございます」
「だろうな。立ち居振る舞いが生まれついての上流階級って感じがする。それがこの子にはない」
転生したのは十三親王という貴族中の貴族であるのと同時に、俺は前世の記憶を持っている。
生まれついての上流階級と、そうじゃない人間の身のこなしが分かる。
それを感じて、指摘した。
すると第三宰相レイドークは楽しげな笑顔で。
「なるほど! さすが殿下。ご慧眼に感服いたしましたぞ」
「ついでにいうと」
「まだあるのですかな」
「奴隷なんだろ、その子」
「え、ええ」
「なんと! そこまでお分かりになるのですか」
「ああ」
これは目線だ。
一度でも奴隷に堕ちた人間は、独特の伺うような目線をする。
娘の事を完璧に指摘されたバイロン、それで吹っ切れたのか、さっきに比べて大分落ち着いた顔で語り出す。
「この娘、奴隷商人のところから買ったのですが、他の子とは違って賢かったので、養女にして色々教えているのでございます」
「なるほど。いいね、俺はそういうのが好きだ」
俺がそう言った途端、どよめきが起きる。
それに構わず続ける。
「今度屋敷に招待する。その子の話をもっと詳しく聞かせてくれ」
「――っ! ははっ、喜んで!」
大喜びで頭を下げるバイロン、彼は周りから羨望の視線を一身に集めた。
のお眼鏡にかなった、このパーティーで一番のシンデレラボーイだから。
そしてバイロンは賢かった。
これ以上は嫉妬を買いすぎる、そして下手すると俺の不興も買う。
彼は娘を連れて、そそくさと輪の中心から離れた。
「レイドーク宰相。あの子が実の娘じゃないって分かった理由がもう一つある」
「ほう、それは何でしょう」
顎をしゃくると、そのタイミングで娘のシンディーがパッと振り向いた。
「こっちを向きましたな」
「あそこにだけ威嚇をした、それで反応した。最初の威嚇からずっと、彼女はバイロンを身を挺して守っていた」
「ほほう」
「あの年頃の娘は」
「なるほどそうでございますな。あの年頃の娘は通常親を身を挺しては守らない。守ってもらう側ですな」
「そういうことだ」
「最初の頃からということはそれも見てらっしゃったのですな。殿下の視野の広さ、感服いたしましたぞ」
褒め言葉を並べるレイドークにふっと微笑んで、俺は、他の客の紹介の続きを再開させた。
翌日、十三親王邸。
朝食の後、庭に出て伸びをしていたら、メイドの一人がやってきた。
知った顔、ゾーイと言う名のメイドだ。
「ご主人様」
「ん、なんだ」
「第三宰相からの謝礼が贈られて来ました。如何なさいますか?」
ゾーイはそう言って、封書を一通差し出してきた。
なんてことはない、昨日は俺が出席したからパーティーは成功した、そのお礼として一万リィーンを納めさせてくれ。
という内容だ。
これも貴族の付き合いの基本。
はっきりと敵対しているのでもなければ普通に受け取るものだ。
ちなみに誰も彼もが贈ることが出来るわけじゃない。
親王の俺に贈り物をするのも、身分とエピソードがいる。
昨日あった人間だと、レイドークとバイロンだけだ。
まあでも、バイロンは見た感じつけあがるような性格じゃない。
そんなすぐには贈って来ないだろう。
俺は手紙を封筒に収めて、ゾーイに手渡す。
「いつもの様に受け取っておけ」
「かしこまりました!」
ゾーイは振り向き、頷いた。
その視線の先に別の使用人がいて、ゾーイのジェスチャーを受けて動き出した。
謝礼の処理に行ったんだろう。
さて、一つ考えなきゃいけないことがある。
魔剣だ。
昨日はレヴィアタンを屈服させて、支配下に置いた。
それで二回、実践的に威嚇もした。
それはいいんだけど、いつまでもそれに頼りっきりではいられない。
魔剣を持つからには、剣そのものを振るえるようになっとかないと格好がつかない。
さてどうしたもんかな――と思っていた所に、レヴィアタンから何かを伝えようという感情が流れ込んできた。
言葉じゃない、シンプルな感情。
わくわくしている子供のような感情だ。
「......へえ」
「何がですかご主人様」
横からゾーイが聞いてきた。
まだいたのか、という言葉を呑み込んだ。
「ちょっと面白いのを
「面白いものですか」
「見てろ」
俺はスタスタと歩き出した、ゾーイはついて来た。
しばらく歩いて、庭師が毎日手入れしている庭園の中を歩く。
そして、一本の大木の前に立った。
結構な太さのある大木、少なくとの今の俺じゃ抱きかかえようとしても両手がつかない。
その大木の前に立ち、レヴィアタンを抜き放つ。
上段に構えて――振り下ろす。
「わああ!」
歓声があがった。
パワーも、速度もない。その辺の能力はEとかFとかのままだ。
その程度の力で、大木を斜めに両断した。
「すごーい! ご主人様いまのどうやったのですか。すごい軽々って見えましたけど」
「逆にこれじゃキレなかったさ」
俺はそういって、もう一度残りの大木を切って見せた。
いかにも力を込めて、体重を掛けての斬撃。
今度は刃が大木の途中で引っ掛かった。
「今の方が力込めてるように見えてたのに、どうしてですか?」
「今のは素人の斬り方だからさ。これが達人の――」
レヴィアタンの記憶にある、かつての所有者の動き。
その動きをトレースして振り下ろすと、またまた力も速さもない一撃だったが、大木を更に斬って、輪切りにした。
「わあああ! すごい! まるで達人みたい」
そういう動きだからな。
そう、使えるようにしたいと思った俺にレヴィアタンが伝えてきたのは、かつてのそいつの所有者の動き。
所有者を選ぶ魔剣だからか、かつての所有者も出来る人間がほとんどだ。
その動きとか技とかを、レヴィアタンが覚えていて、それをその記憶通りに再現した。
力と速さがEとかFとかでも、達人級の斬撃が出せるようになった。
これで、しばらくは格好がつくだろう。
そして、更に。
「へえ」
「どうしたんですか今度は」
「これを知ってるな」
俺はそう言って、魔道具スプラッシュを取り出してゾーイに見せた。
「はい! ご主人様の切り札ですよね」
「ああ。これと同じことをレヴィアタンも出来るらしい。俺の魔力を消費しない、自分も消耗しない代わりに、一時間に一回しか使えないらしい」
「なるほど」
「ちょっと撃ってみるか」
わくわくするわんぱく少年のようなレヴィアタンの感情にのって、それも試し撃ちしてみた。
レヴィアタンの刀身を立てて、残った大木の残骸に向かって撃とうとした。
直前、勘が働いた。
慌てて刀身を下に向けた。
轟音が轟く、地面が思いっきり揺れてゾーイが尻餅をつく。
「いたたた......ええっ!」
尻餅をついたゾーイは、起きた事を見て声をあげるほど驚いた。
俺も、ちょっと驚いた。
慌てて下に向けたレヴィアタンから放ったのは太ートルを超える水柱。
それが地面に向かって放たれて、直径五メートルの、底がみえない大穴をえぐり出した。
「す、すごい......」
それまでのとは違って、ゾーイは半ば絶句ぎみに呟いたのだった。 | The guy who ranted at me naturally lost his place and before I knew it, he was gone from the venue.
All the while, I was being introduced to guest after guest by Raydoke.
Most of them were just, well, insignificant, upper-class people, but there was one pair of men and women who caught my attention.
The man was in his forties and dressed in a very merchant-like manner. In a place like this, it was important to know their status and occupation at a glance.
The woman is about ten years old. She is dressed in a slightly tall, neat and clean dress.
Such a pair of men and women.
“It’s a pleasure to meet you, Your Highness. I am Byron Allan. This is my daughter, Cindy. Please allow us to get acquainted.”
” Yes. Is she your adopted daughter maybe?”
I pointed out, and the merchant who called himself Byron’s face stiffened for a moment.
“Gosh, you were aware of this before?”
“No,”
However, I just “get it” because of my experience from my previous life.
A man in his forties and a girl about ten years old. They don’t look like a father and daughter.
“I can tell by looking at her.”
“Your highness. For the sake of future reference, perhaps you could explain to me why.”
Byron was puzzled, but Reydouk was as calm as could be.
He interjected well and connected the conversation.
” Allan, you’re either the second or third generation, right?”
“Yes, indeed. As you stated, your honor.”
“I suppose. The way you behave makes me feel like you were born into the upper class. And she doesn’t have that in her.”
My reincarnation was that of the th Prince, an upper-class nobleman amongst the nobility, and at the same time, I have memories of my previous life.
I understand how the upper class, who were born into it, and those who were not, carry themselves.
I felt it and pointed it out.
Then the Third Vizier Reydouk smiled pleasantly.
“I see! That’s my highness. I’m impressed by your wisdom.”
“And besides,”
“I wonder if there are any more.”
” The girl’s a slave, isn’t she?”
” Ye-Yes.”
“Wow! You understand that much?”
“Yeah.”
Those eyes.
A person who has once fallen into slavery has a peculiar questioning look in their eyes.
When I was pointed out perfectly about his daughter, Byron, who was blown away by it, speaks out with a much calmer face than before.
“This girl, I bought her from a slave-trader, but she was different from the other kids and was smart, so I adopted her and taught her a lot of things.”
” I see. Good, I like that.”
As soon as I say that, there’s a groan.
I continue on regardless.
” Next time I will invite you to the house. I want to hear more about the girl.”
” — oh! HAHA, with pleasure!”
Byron bowed his head with great joy, and he drew envious glances all around him.
It was because she was the best little Cinderella at this party, which suited the thirteenth prince’s taste, who was brought by him.
And Byron was clever.
Any more and he would get jealousy, and if he wasn’t good enough, he would displease me.
He whisked away from the center of the circle, taking his daughter with him.
“Prime Minister Reydouk. There’s another reason why I found out that the girl wasn’t his own daughter.”
” I wonder what that is.”
” Look,”
I scoffed my chin, and at the same time his daughter, Cindy, turned around with a flash.
“She turned this way.”
‘I gave a little intimidation just over there, and that’s how she reacted. Ever since the first threat, she’s been protecting Byron with her own body.”
” Ho-ho.”
“A girl that young,”
“Yes, I see. A girl of that age would not normally take a stand for her parents. She’s the one to be protected.”
“That’s what I’m talking about.”
“From the very beginning, you have been observing it, haven’t you? I’m impressed by the breadth of your perspective, Your Highness.”
I grinned at Raydoke, who rattled off compliments, and I let him resume the rest of his introductions to the other guests.
The next day, the th Prince’s residence.
After breakfast, I was stretching out in the garden when one of the maids arrived.
A familiar face, a maid by the name of Zoe.
“My lord,”
“Hmm, what?”
“The Third Vizier has sent a token of gratitude. What will you do?”
Zoe said and held out a sealed envelope to me.
The party was a success because I was there yesterday and as thanks for that, please deliver the ten thousand reeks.
This is what it says.
This is another standard of noblemen’s relations.
If you are not explicitly hostile to them, it is normal to receive it.
By the way, not everyone is able to give it to me.
Giving a gift to me, the prince, also requires status and events.
The ones I had yesterday were only Reydouk and Byron.
But Byron doesn’t seem to have a proud disposition.
He won’t be giving me a gift so soon.
I put the letter in an envelope and hand it to Zoe.
“Get it like usual.”
“Understood!”
Zoe turns around and nods.
There was another servant right in the corner of her eyes, and he moved at Zoe’s gesture.
She must have gone to process the gratuity.
Now, there’s one thing I need to think about.
The magic sword.
Yesterday, I brought the Leviathan to its knees and took control of it.
So I even practically threatened him twice.
That’s fine, but I can’t rely on it forever.
If I’m going to hold the demon sword, I need to be able to wield the sword itself, otherwise it won’t look good.
Now what to do, I was wondering what to do – and then the emotion to communicate something from Leviathan flowed in.
It’s not words, it’s a simple emotion.
The feeling of an excited child.
“...hmmm.”
“What is it, master?”
Zoe asked from the side.
I swallowed the words, “You’re still here?”
“I came up with something kind of funny,”
” Is it funny?”
I walked off at a stalwart, and Zoe followed me.
We walked for a while, through the gardens that the gardener tends to every day.
Then we stood in front of one large tree.
It’s a pretty big tree, and even though I’m at least six years old now, I can’t get my hands on it to hold it.
Standing in front of that large tree, I pull out my Leviathan and unleash it.
Holding it upright – I swing it down.
“Waaah!”
She cheered.
There is no power, no speed. Those abilities are still at E or F or something like that.
I cut both sides of a large tree diagonally with that level of power.
“Wow! How did you do that, Master? It looked so effortless.”
“On the contrary, it wasn’t enough for me.”
With that, I cut the rest of the large tree once more and showed it to her.
A slash with all the force and weight I could muster.
The blade this time got caught in the middle of the large tree.
” Ugh.”
“You seemed to be putting more effort into it now, but this time seems different, why is that?”
” This is an amateur’s way of cutting. This is the master’s–“
Leviathan remembered the movement of its former owner.
I traced the movement and swung down, and it was another blow with no power or speed, but it slashed the large tree further, cutting it into a circle.
“Wow! Wow! You look like an expert.”
That’s the kind of move I’m talking about.
Yes, I wanted to be able to use it, and Leviathan told me about the movements of that guy’s former owner.
It’s probably because it’s a demon sword that chooses its owner, but most of its former owners are also capable of doing so.
Leviathan remembered those moves and techniques, and recreated them as it remembered them.
Even if my strength and speed were E or F, I could still be able to do expert-level slashes.
This would make him look good for a while.
And more.
“Heh.”
” What’s happening this time?”
“You know this.”
With that, I took out my magic splash and showed it to Zoe.
‘”Yes!’ It’s master’s trump card, isn’t it?”
“Yeah. I heard that Leviathan can do the same thing. Instead of consuming my magic and not draining myself, apparently it can only be used once an hour.”
“Let’s do some shooting.”
Like an excited little rascal, Leviathan’s emotions took hold of me, and I gave it a shot too.
I raised the Leviathan’s blade and tried to shoot at the remaining remains of a large tree.
Just before I did, an instinct kicked in.
I hurriedly pointed the sword barrel downward.
There was a roar, the ground shook as hard as it could and Zoe fell on her butt.
“Owww......eh!”
Zoe, who had fallen on her butt, was surprised enough to scream when she saw what had happened.
I was a little surprised, as well.
A column of water more than five meters thick was released from Leviathan, which was pointed downward in a hurry.
It shot toward the ground and gouged out a large hole five meters in diameter with no visible bottom.
” Amazing.........”
Unlike before, Zoe mumbled to herself mid-sentence. |
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} | 朝、屋敷の庭で。
俺は景観である、巨大な岩を持ち上げた。
縦、横共に人間の倍はある大岩、それを軽々と持ち上げて、筋トレでもするかのように上下に振ってみた。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
総理親王大臣
性別:男
レベル:10/∞
力 SSS 風 SSS
運 SSS
魔法で出してもらった、表向きの俺のステータスをちらっと眺めて、岩を元の場所に置いて、これまた用意していたロングソードを抜いて、軽く真上に放り投げた。
ふわりと舞い上がったロングソードは、そのまま切っ先を下にして落ちてくる。
切っ先は俺の頭のてっぺんに突き刺さ――ることなく、ゴムのように弾いて地面に転がった。
能力は抜群。
今の俺は、控えめにいって世界最強なんだろう。
「すごい......またお強くなったのですか、ノア様」
「ん?」
振り向くと、知った顔が絶句しているのが見えた。
シンディー・アラン。
出会った時は十歳の少女だった彼女も、今歳前ですっかり美しくなった。
「来たのか」
「はい。エイダ様直々にお手紙を頂いたので、それをノア様にご覧いただき、今後のことを直接お聞きしたいと思いまして」
「手紙? どんなのだ?」
「こちらです」
シンディーは手紙を取り出し、俺に差し出した。
エイダとは、俺が推薦して、その後後宮に入った庶妃エイダのことだ。
まだ子を成していないが、陛下もすっかり気に入って、今や妃の中で一番寵愛を受けている女といって過言ではない。
そのエイダの手紙を開いて、目を通した。
たいした事は書いてなかった。
陛下が宮殿を出て避暑地に向かうので、庶妃達が全員同行する。
という内容しか書かれていない。
「これでは陛下の具合が実際どうなのかまったく分かりません。もっと詳しくエイダ様に聞こうと思いますが、聞き方をノア様にご相談をと」
「いいや、それには及ばない」
「え?」
「この手紙でもう全て物語っているさ」
俺はふっ、と笑った。
「どういう事ですか?」
事が事だ。
俺はあえて俗っぽい言い方をした。
「庶妃を全て連れて行ったのが証拠だ。庶妃はなんだ? 陛下に幸して――抱かれるのが仕事だ」
「あっ......」
「本当に病にかかって静養するなら、庶妃全員連れて行く必要はない。陛下は割と元気だろう」
「逆に、皇后様を連れて行ったら大変だったな」
「どうしてなのですか?」
「病が重く、後継者が......という段になったら、後宮の主である皇后様をまったく無視する訳にもいかない。
「なるほど......すごい着眼点です。庶妃全員......まったく思いつきませんでした」
シンディーは尊敬の眼差しを俺に向けてきた。
出会った時に比べて、大分感情が豊かになったように思う。
まあ、それはともかく。
陛下が割と無事なのは分かった。
ならば真意がなんだろうと、俺がやることは一つ。
政務――民を優先するだけだ
総理親王大臣として、膨大な政務を処理するために、元からある屋敷の書斎じゃ足りないから、庭に急遽、大きめの書斎を作らせた。
その中で、俺はメイド姿をした、オリビア・コイルを侍らせて、政務を処理していった。
「次はこちらです、コロンシアの代官、エイムズを弾劾するものです」
「何をした」
「一旦集めて、都に輸送中だった今年の税金を無断流用した罪だそうです」
「ふむ......ふむ?」
オリビアは首をかしげた。
「それをよく見せろ」
俺は手を差し出し、オリビアの手から文書を受け取った。
それを開いて、中を眺める。
政務の文書は、本文の他に、概略がつけられている。
帝国は大きい、皇帝がそれを治めるにはちょっと大きすぎる程大きい。
故に、皇帝の裁可が必要な案件でも、実際の文書の上に概略をつけておくのが一般的だ。
その概略をつけるのが第一からである宰相達だ。
それをする事によって、宰相達が先に目を通して、皇帝が迷った時に諮ることが出来るという利点もある。
都から転送されてきたものは、既に宰相達による概略の書き出しが行われたものだ。
なのでオリビアは概略を読んで、引っかかった俺は開いて本文をじっと見つめた。
「元からおかしかったんだ。概略は汚職のように書かれているが、それにしては輸送中だったのを使ったというのがおかしい」
「......たしかに! 私腹を肥やすのなら前もってするべき」
「そうだ。輸送中の税金なんて集計後のもの、しかも表に出た金だ。それに手をつけるバカはいくらなんでもいない。だから詳細を見た」
「何が書いてあったのでしょうか」
「コロンシアは直前に大火が起きた。空気が乾燥し、風も強く、街の8割が焼失する程の大火だ」
「――っ!」
オリビアは息を飲んだ。
一つの街燃やし尽くした程の大火、もはや大災害だ。
「当然何もかも燃えた。そこでエイムズは送り出した税金の輸送車を全部捕まえて、その中身で近くの街から食糧を買って、被災した民に配った訳だ」
「それは......難しいですね」
俺はちらっとオリビアを見た。
ギルバートの家人、つまり使用人とは言え貴族の家で産まれた彼女がそう思うのも無理はない。
輸送が始まったと言うことは、それは国庫――いや皇帝の金だ。
皇帝の金を無断に使ったのは不敬罪に問われる。
とは言えその用途が災害救助なのだから仕方がない。
生まれついての庶民なら100%エイムズによくやったと喝采を送るところだが、庶民ではあるが生まれは親王の家であるオリビアは「どっちも分かる」として難しいと言った。
「死刑の求刑か、馬鹿げてる」
「しかし」
「馬鹿げてると言った。人は宝、民は至宝だ」
「うっ」
「この弾劾の文書からは私怨が透けて見える。おそらく普段からエイムズと不和な何者かが書いた物だろう」
俺は紙とペンを取って、処理を書き記していく。
「エイムズは無罪、むしろ災害救助の功績で増俸一年」
「はい」
「弾劾者は『叱責』」
皇帝の「叱責」はただ叱るだけじゃない。
れっきとした罰で、実質減俸に相当する重さの罰だ。
「さすがノア様。しかしよろしいのでしょうか」
「なにが?」
「このような裁きを下されますと、これが前例になって、大規模な災害が起きた時は、国庫に納入がへり、へい......皇族の皆様にしわ寄せがいくのではないでしょうか」
オリビアは「陛下」の二文字を呑み込んだ。
それを口にするのにはばかられたんだろう。
彼女が呑み込んだのなら、俺も気づかないふりをした。
「やせ我慢すればいい。弱きものを優先してやせ我慢する、それも貴族の特権だ」
「......すごい。そこまで貫ける貴族、見たことがありません......」
そこまで貫ける、というのも彼女がギルバートの家人だったから出た言葉なんだろう。
その後、穀倉地帯のホージョイから食糧援助、帝国認可の奴隷商人に「便宜を図る」、再建のための建材と人間を優先的に向かわせる......などなど。
一連の命令を下していく間、オリビアはずっと、尊敬の眼差しを俺に向けてきていた。
夜、屋敷の外苑。
俺は書斎にメイドのゾーイを呼び出した。
「行ってきてもらいたいところがある、コロンシアだ」
「コロンシア......ですか?」
「ああ。大火にあった地域だ」
俺はコロンシアの一件を、つぶさにゾーイに話した。
ゾーイはみるみる内に顔が強ばっていった。
「って事で、お前に監察官として行ってもらう。全権任命だ。俺の命令を無視するやつがいないか監視してきてくれ」
「分かりました! がんばります!」
ゾーイはものすごく意気込んだ。
かつて、ゾーイの故郷であるドッソは水害に遭った。
彼女はそれの助けを求めて、俺が応じた過去がある。
実際に水害を知っている身として、彼女はその後の再建での不正を見過ごせないはずだ。
「任せて下さい!」
ゾーイは意気込んだまま、書斎から立ち去った。
しばらくして、ノックとともに、二人の男が入ってきた。
フォスターと、ハワードだ。
二人ともアルバートの部下だったのだが、例の一件で主を失った後、俺が自分の部下として取り込んだ。
「お呼びですか、殿下」
「ああ、頼みがある」
俺は二人に、ゾーイを監察官として向かわせる事を話した。
「悪いが、お前達は兵士に扮して、ゾーイについてってくれ」
「ゾーイさんを守ればいいんですか?」
「いや、安全を守るのもそうだが、一番重要なのはゾーイの周りを監視することだ」
「「......?」」
フォスターとハワード、二人は互いに見つめあった。
命令の意味を理解できない、って顔だ。
「ゾーイに行かせはしたが、彼女はエヴリンと違って、俺の屋敷のメイドだ。素人のメイドってことで、ごまかす、いや騙していいようにしようとするヤツは絶対出る」
ハワードがはっとした。
「理解したか。そう、それがお前達を変装させた理由だ」
「なるほど、かつて皇太子の元にいた俺たちなら、兵士として油断を誘えば」
「向こうの小細工も見抜けるだろうって訳だ」
「そういうことだ」
「さすが殿下」
の対処ができるなんてすごいな」
「頼むぞ、二人とも」
「お任せを」
「殿下に拾っていただいた命、ようやくご恩が返せます」
二人は、ゾーイに勝るとも劣らない、意気込んだ顔で膝をついて、頭を下げて応じた。 | Foresight
In the morning, at the garden of the mansion.
I lifted a huge rock that was part of the landscape.
The rock was twice the size of a person in both length and width, and I lifted it lightly and shook it up and down as if I were doing a strength training exercise.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Prime Minister
Gender: Male
Level: / ∞
HPSSSMPSSSStrengthSSSStaminaSSSIntelligenceSSSSpiritSSSSpeedSSSDexteritySSSLuckSSS FireSSSWaterSSSWindSSSEarthSSSLight SSSDarknessSSS
I glanced at my status on the surface, which was generated by magic, and put the rock in its original place, pulled out my longsword, which I had also prepared, and threw it slightly upwards.
The longsword swooped up in the air and fell, tip down.
The tip of the longsword did not pierce the top of my head, but instead flicked like rubber and rolled to the ground.
My abilities were outstanding.
I think I’m the strongest person in the world right now, to put it mildly.
“Wow ......, you’re getting stronger again, Noah-sama.”
“Hmm?”
I turned my head and saw a familiar face exclaiming at the sight.
Cindy Allan.
She was a ten-year-old girl when I met her, and now she is twenty years old and completely beautiful.
“You came, huh.”
“Yes. I received a letter from Ada-sama personally, and I wanted Noah-sama to see it and ask about the details of the future.”
“A letter? What kind of letter?”
“This one.”
Cindy took out the letter and held it out to me.
Ada is the consort, whom I recommended and who has since joined the palace.
She has yet to bear a child, but His Majesty has taken a liking to her and she is now the most favored of all the consorts, and that is no exaggeration.
I opened Ada’s letter and read through it.
There wasn’t much in it.
The only thing it said was that His Majesty was leaving the palace for a summer resort, and all the consorts would accompany him.
That’s all it said.
“I don’t know how His Majesty’s condition is in real. I will ask Ada-sama for more details, but I needed to consult with Noah-sama about this matter.
“No, it’s not necessary.”
“Eh?”
“This letter already told me everything I need to know.
I chuckled.
“What do you mean?”
The thing is.
I tried to sound sarcastic.
“The proof is that he took all the consorts. And what is a consort for? For His Majesty’s pleasure, they are to be embraced.”
“Ah ......”
“If he’s really ill and needs to rest, there’s no need to take all the consorts with him. I’m sure he’s in rather good health.”
“On the other hand, it would have been a disaster if he were to take the Empress with him.”
“Why is that?”
“If his illness is serious and his successor is to be ...... chosen, the Empress, who is the master of the inner palace, cannot be ignored at all. Whichever way you look at it.”[TN: Queen had control over concubines, and the inner palace is made up of concubines group]
“I see,......, that’s an amazing point of view. All the consorts ...... I had no idea at all.”
Cindy gave me a look of respect.
She’s showing a lot more emotions than she did when we first met.
Well, anyhow.
I know that His Majesty is relatively safe.
If that’s the case, there’s only one thing I can do, no matter what his true intentions are.
All I have to do is put the people first.
As the Prime Minister, I had a large study hastily built in the garden because the original study in the mansion was not enough to handle the enormous amount of administrative work.
In it, I had Olivia Coyle, dressed as a maid, attend to my affairs.
“This next one is the impeachment of Ames, the Governor of Coronsia.”
“What was the deed?”
“He’s accused of misappropriating this year’s taxes, which were once collected and in transit to the capital.”
“Fumu. ...... Fumu?”
Olivia tilted her head.
“Let me take a closer look at that.”
I held out my hand and took the document from Olivia’s hand.
Opening it, I looked inside.
In addition to the body of the document, there is an outline.
The empire is large, a little too large for the emperor to rule over it.
For this reason, even matters that require the emperor’s approval are usually written in outline form on top of the actual document.
This is done by the first four Viziers.
The advantage of doing this is that the Viziers can look over the document first and consult with the Emperor if he is in doubt.
The one that was forwarded from the capital had already been written out in outline by the Viziers.
So Olivia read the outline, and I opened it and stared at the text, which stuck with me.
“It was strange from the start. The outline is written as if it were corruption, but the fact that they used it when it was in transit is odd.”
“...... That’s right! If you’re going to line your own pockets, you should do it in advance.”
“Correct. Taxes in transit are after the tally, and it’s money that’s already out there. No one would be stupid enough to mess with it. So I looked at the details.”
“What did it say?”
“There was a big fire just before Coronsia. The air was dry, the wind was strong, and the fire was so big that it destroyed the th of the city.”
“–!”
Olivia gulped.
A fire so large that it burned through % of a city, was a major disaster.
“So naturally, everything burned. So Ames took all the tax transports he sent out and used their contents to buy food from nearby cities and distribute it to the people affected.”
“That’s a ...... difficult one.”
I glanced at Olivia.
It’s not hard to see why, as she was born into a noble family, albeit a servant of Gilbert.
The fact that the transport has begun means that it is the treasury – or rather the Emperor’s money.
It would be a crime of disrespect to use the emperor’s money without permission.
However, since the purpose of the money was disaster relief, it could not be helped.
If you were a commoner, you would 00% applaud Ames for a job well done, but Olivia, who is a commoner but being born inside the royal family, said it was difficult to know which way to go.
” A request for the death penalty, that’s ridiculous.”
“But...”
“I said it was ridiculous. People are treasures, and citizens are the greatest treasure.”
“Uhh.”
“This impeachment document reveals a personal grudge. It was probably written by someone who has a history of disagreement with Ames.”
I took a pen and paper and wrote down the process.
“Ames is innocent, in fact, he will get a year’s pay increase for his disaster relief efforts.”
“Yes.”
“The Impeachment is ‘Rebuked’.”
The Emperor’s “Rebuke” is more than just a scolding.
It’s a proper punishment, the equivalent of a pay cut.
“As expected, Noah-sama. But is that all right?”
“What?”
“If this kind of judgment is handed down, it will become a precedent, and when a major disaster occurs, there will be a decrease in deliveries to the national treasury, which will be passed on to the ...... Royal Family.”
Olivia swallowed the two words, “His Majesty.”
I think she was hesitant to say it.
I pretended not to notice if she had swallowed it.
“Just be patient. It’s a privilege of the Nobility to be patient with the weak.”
“...... is amazing. I’ve never seen a Noble who can go that far. ......”
She says this because she was a member of Gilbert’s household.
After that, food aid from Hojoy in the granary, “accommodations” for imperial-approved slave traders, and priority for building materials and people to rebuild .......
Throughout the series of orders, Olivia kept giving me a look of respect.
At night, in the outer garden of the mansion.
I called my maid, Zoe, into my study.
“There’s a place I want you to go, Coronsia.”
“Coronsia is that ......?”
“Yes. That’s the area where the big fire happened.”
I told Zoey all about what had happened in Coronsia.
Zoe’s face was becoming quite serious.
“So, you’re going to be the inspector general. It’s a full authority appointment. I want you to go and watch for anyone who ignores my orders.”
” Understood! I’ll do my best!”
Zoe was extremely enthusiastic.
Once, Zoe’s hometown of Dosso had been flooded.
She asked for help with that and I responded in the past.
As someone who actually knew about the flooding, she should not be able to overlook the injustice in the rebuilding that followed.
“Please leave it to me!”
Zoe walked away from the study with enthusiasm.
A few moments later, with a knock, two men entered the room.
They were Foster and Howard.
They were both Albert’s men, but after losing their master in the incident, I took them in as my own.
“You wanted to see us, Your Highness?”
“Yes, I have a task for you.”
I told them that I was sending Zoe to be the inspector.
“Sorry about this, but you’ll have to dress as soldiers and follow Zoe.”
“Are we supposed to be guarding Zoe?”
“No, just make sure she’s safe, and most importantly, keep an eye on things around Zoe.”
“”......?””
Foster and Howard stared at each other.
They were making faces like they didn’t understand the meaning of the order.
“I sent Zoe, but she is a maid in my house, unlike Evelyn. I’m sure there will be people who will try to cheat, or even deceive her, into believing that she is an amateur maid.”
Howard flinched.
” You understood, huh. Yeah, that’s why I will have you disguised.”
“I see, we were once under the Crown Prince, and as soldiers, we can catch them off guard.”
“And we’ll be able to see through their tricks.”
“That’s it.”
“As expected, Your Highness.”
“Yeah, it’s amazing how well you can anticipate failure.”
“Good luck, you two.”
“Leave it to me.”
“I’m finally going to repay you for the life you’ve given me.”
The two of them complied by kneeling down and bowing their heads, looking no less enthusiastic than Zoe. |
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} | 数日後の夜、俺はレアアラトの街の外にでた。
街かでれば広大な砂漠になる、サラルリア州。
今もそうで、俺は砂漠のど真ん中にたっていた。
「うぅ......」
少女のうめき声に振り向く。
振り向いた先で、ペイユとアイビーが両手を肩に回して、自分を抱きしめる仕草をしていた。
どうやら寒いようだ
それもそのはず、夜の砂漠は昼間の灼けるような暑さから想像もつかないほど、一気に気温が下がってしまう。
若い少女達にはこの寒さが体に堪えるようだ。
「バハムート、温めてやれ」
『御意』
俺の命令に応じたバハムート。
直後、ペイユとアイビーのまわりにほのかな炎が浮かび上がった。
「あっ、あったかい......」
バハムートが出した炎をみて、ペイユは表情がほっとした。
それまで自分を抱きしめる仕草で小さくなっていたのが、リラックスして体がほぐれた感じがした。
「こ、これって......」
一方、初めてバハムートの力を目撃したアイビーは目をむくほど驚いていた。
「ご主人様のお力なんだよ」
「力......」
「ご主人様はいろんな力が使えるの。こんなのまだまだ序の口なんだから」
アイビーに話すとき、ペイユは自然と上から目線になる。
先輩メイドとして、言葉にこそしないものの「そんなことも知らないの?」的なニュアンスで話す事がよくある。
ペイユが自慢し、アイビーが感嘆する。
そんを尻目に、俺は空を見上げた。
雲一つ無い夜空には、まん丸の月が高く掲げられている。
満月。
オスカーの使者が来るのを宿で待っていられたのは、この満月の日を待っていたからだ。
「バハムート」
『はっ』
「あれでたりるか?」
俺はバハムートを呼んで、頭上の満月をさして聞いてみた。
リヴァイアサンじゃないのは、バハムートでペイユらに暖を取らせている最中だったから、ついでにって感じだ。
『はっ、文句のつけようがない満月かと。これなら龍脈の力が最大化されよう』
「うむ」
俺は小さく頷いた。
ここサラルリア州、州都レアララトに来たのは、新しい龍脈を発掘するためだ。
しかし龍脈にはすぐには手を出せなかった。
サラルリアの龍脈は切断されてから年月が経ちすぎていて、アルメリアの時以上に枯れている状態だ。
このままじゃ使い物にならないどころか、そもそも龍脈を見つけるのも一苦労だ。
そこで、リヴァイアサンらから提案をもらった。
龍脈は月に大きく影響を受ける。
満月の夜がもっとも活性化して、逆に新月の時はしぼんでほとんど消えてしまう。
だから満月の夜を待って、まずはそれを見つけ出すところから始めることにした。
そして、今がその満月の夜だ。
「ここからどうすればいい」
『我らを使うがいい、主よ』
「我ら、か。わかった」
俺は頷き、目を閉じた。
頭の中で「全員分のイメージ」を思い浮かべた。
リヴァイアサン。
バハムート。
ベヘモト。
フワワ。
アポピス。
ジズ。
俺に付き従う、人間を遙かに超越した者達のイメージを思い浮かべつつ、召喚する。
指輪を媒介にして、全員が召喚された。
リヴァイアサンとバハムートが特に威容を誇っていたが、他も神秘的だったり威圧的だったりして、ものすごい雰囲気を出していた。
さてこれで龍脈を――と思ったその時。
ドサッ、という音が背後から聞こえてきた。
背後を向くと、アイビーが腰を抜かしたのか、砂の上にへたり込んでいる姿が見えた。
「な、なに、これ......」
驚きすぎて、敬語を使うべきだというのも完全に頭から吹き飛んだ様子だ。
そして腰を抜かしているだけじゃなく、全身が小刻みに震えていて、なにやらおびえている様子のアイビー。
「怖がる必要はない。こいつらは全員余に従っている者達だ」
「従って、いる」
「お前達を今温めているのも、バハムートにやらせていることだ。なあバハムート」
バハムートは応じて、小さく首を引いて、人間とは違う感じでの頷き方をした。
炎竜の姿をしているバハムート。
体の一部も、まさに炎を纏っているという感じの見た目だ。
「こんなにおっきいの......すごい......」
バハムートの本体と、暖を取るために出させている炎を。
この二つを交互に見たアイビーはますます感嘆した。
俺は振り向き、改めと向き合う。
「龍脈は見えているな?」
『はっ、途切れ途切れではあるが』
「つなげればいいんだっけ? リヴァイアサン」
「それをやれるか?」
『おそらくは』
リヴァイアサンが応えると、他も身じろぎしたり頷いたりして、肯定の意を示してきた。
「ならばやれ。やり方は全て一任する。とにかく切れた龍脈をつなげろ」
俺が命じたあと、六人は一斉に動き出した。
命令を遂行し、途切れ途切れの龍脈をつなげようというわけだ。
俺はそれを見守った。
とりあえずやらせてみてるけど、俺が口も手も挟まない方がいいように感じたから、ひたすら楽して見守った。
ふと、右前方の少し離れたところに、まるで間欠泉かのように、地中から砂が上向きで柱の様に噴き出された。
「な、なにっ!」
「ご主人様!?」
「うむ、余の後ろに隠れていろ――」
そう言った直後だった。
同じような砂柱が四から噴き出された。
その砂柱の中からトカゲのようなシルエットの魔物が見えた。
サイズはそれなりに大きい、人間くらいなら丸呑み出来る程度の大きさだ。
「ま、魔物!? どうして!?」
驚くペイユ、それに対して、アイビーは眉をひそめ若干怯えている様子だが、驚いてはいない。
在地の人間の反応だなと何となく納得した。
「帝国は魔物をほぼ管理できているが、サラルリアは辺境、完全に管理出来ていない野良の魔物がいると聞いている」
「そんな! ま、魔物がいるなんて」
「街に戻りましょう、街なら大丈夫です」
ペイユに比べてやはりどこか冷静さが残るアイビー。
街に戻ればいい――という提案もちゃんとしているものだ。
「問題ない。バハムート、龍脈と娘らを任せたぞ」
『御意』
応じるバハムート。
直後、俺はリヴァイアサン――魔剣リヴァイアサンを手にした。
普段は耳の穴の中に隠しているリヴァイアサンを元のサイズに戻した。
手に馴染む魔剣をしっかりと握り締めつつ、ペイユとアイビーに一瞥をくれてやった。
「動くな、バハムートが守ってくれる」
「は、はい」
「どうするのですか――」
アイビーに答えてやるよりも早く、俺はリヴァイアサンを構えて飛び出した。
砂柱の中から現れて、砂の上を器用に這ってこっちに近づいてくる。
顔からして殺気立っていて、こっちを襲う気満々だ。
だったらと俺の方から近づいていった。
リヴァイアサンを振りかぶって、最初に遭遇したトカゲに斬りかかった。
さすが魔物というべきか、トカゲの鱗は普通の猛獣よりも硬かった。
が、問題になるレベルでは無かった。
斬りかかった瞬間更に力を込めると、リヴァイアサンの刃がトカゲを袈裟懸けに両断した。
一刀のもとに斬り捨てられたトカゲ。
地面に転がって、何が起きたのかわからないような驚きの顔をする。
その顔――頭にリヴァイアサンを突き立てた。
頭を貫かれたトカゲはビクビクとけいれんし、そのまま絶命して動かなくなった。
一瞬だけ待ったが、復活するようなそぶりはない。
魔物の中には殺しても復活してくるタイプがあると聞くが、トカゲはそういうタイプでは無いようだ。
ならば、と。
俺は遠慮無く、リヴァイアサンを構えたまま疾走した。
砂の上は平地よりも多少走りにくいが、雪の上よりは大分ましだ。
そんな砂の上を走って、次々とトカゲを斬って捨てる。
復活してこないのはわかったが、生命力が通常の猛獣よりも高いことに変わりは無い。
俺は頭を中心に、切りおとしたり貫いたりして、確実に倒して、息の根を止めていた。
「きゃあああ!?」
ペイユの悲鳴が聞こえた。
見ると、彼女達に向かって、数頭のトカゲが突進していた。
よく見ると――
「むっ、巨大化しているのか?」
『龍脈に引かれてきた小バエが、龍脈に当てられたせいだろう』
リヴァイアサンが答える。
なるほど龍脈の影響か。
龍脈――高濃度魔力の効用を知っている俺からすれば、体が巨大化する程度の影響がでてもおかしくはないと思った。
そう思いながら、さらに疾走し、二人を襲おうとするトカゲの懐に飛び込んで、リヴァイアサンを振るう。
巨大化から予想したとおり鱗は硬くなっていたが、予想した通りの硬さだった。
最初から振るう力を強めたから、巨大化した首を今まで通りに飛ばした。
飛んだ首が放物線を描いて、ドシン、と女達の目の前に落ちた。
ちらっと見て、一瞬怯えたが実害はなかったから、二人はそのままにして別のトカゲに飛びかかっていく。
時間にして、ほんの五分程度。
巨大化したりしなかったりの、龍脈に惹かれてきたトカゲを一掃した。
「ふむ」
リヴァイアサンを振って血払いして、サイズを戻して再び耳の穴に隠した。
そして、元の場所に戻る。
戻ってくると、ペイユが目をきらきらとさせていて、アイビーは逆に驚いている姿が見えた。
「すごいです! ご主人様の戦っている姿はやっぱり格好いいです!」
「そうか」
俺が「強い」という事は知っているペイユ、彼女は素直に感動した。
一方、ほぼ初めて俺が戦う光景を目撃したアイビーは驚いていた。
「こんなに......強い人だったんですか」
「何言ってんの、追い剥ぎの時いたじゃないの」
「そう言ってやるなペイユ。あの時はほぼリヴァイアサン。余が自ら手を下したのを見たのはこれが初めてだろう」
「あっ、そっか......そうなるんですね」
俺の言葉に納得するペイユ。
一方で、相変わらず俺をじっと見つめたままのアイビーは。
「もしかして......ジョン様の助けとかいらなかった......?」
「ん? ああ、あの夜のことか」
「そうだな、いらないと言えばいらない。ジョンの気持ち、孝行したい気持ちを汲んでやったまでだ」
そういって頷くアイビー。
ペイユに少し遅れて、彼女の顔にも感動の色が表れた。 | A few nights later, I was outside the city of Leararat.
One step out of the city and you are in the vast desert of Salaria.
Even now, I was standing in the middle of the desert.
“Uuh. ......”
I turned around at the sound of the girl’s groan.
When I turned around, I saw Peiyu and Ivy with their hands wrapped around their shoulders hugging themselves.
Looks like they are cold.
That’s as it should be, the temperature in the desert at night drops so quickly that it is hard to imagine from the scorching heat during the day.
For young girls, this cold seems to be too much for their bodies.
“Bahamut, warm them up.”
{Will.}
Bahamut responds to my order.
Immediately after, a faint flame appeared around Peiyu and Ivy.
“Ahh, it’s warm ......”
Seeing the flames produced by Bahamut, Peiyu’s expression became relieved.
Although she had become smaller with her hugging gestures, her body seemed to relax and unwind.
“T-This is.......’
Meanwhile, Ivy, witnessing Bahamut’s power for the first time, was surprised with her eyes wide open.
“It’s Master’s power.”
“Power .......”
“Master can use all kinds of power. This is just the beginning.”
When addressing Ivy, Peiyu naturally looks at her from a superior perspective.
As a senior maid, she often speaks with a nuance of “Don’t you know such things?”.
Peiyu bragged and Ivy marveled at her.
I looked up at the sky with them in the background.
In the cloudless night sky, a perfectly round moon was high in the sky.
A full moon.
The reason I was waiting at the inn for Oscar’s messenger to arrive was that I was waiting for this full moon day.
“Bahamut.”
“Is that enough?”
I called Bahamut and asked while pointing at the full moon overhead.
The reason it wasn’t Livyathan was that Bahamut was in the middle of warming Peiyu’s group, so it was just a coincidence.
{Yes, I cannot complain about the full moon. This will maximize the power of the dragon’s veins.}
“Umu.”
I gave a small nod.
The reason I came here to Salaria’s capital, Leararat, was to unearth a new dragon vein.
But I couldn’t get my hands on the veins right away.
The dragon vein in Salaria had been cut off so many years ago that it was even more withered than it had been in Almeria.
Not only is it useless as it is, but it is also difficult to find a dragon vein in the first place.
Then, Livyathan and others made a suggestion.
Dragon veins are greatly influenced by the moon.
They are most active on the night of a full moon and almost disappear at the time of a new moon.
So we decided to wait for the night of the full moon and started by finding it.
And now is the night of the full moon.
“What do we do from here?”
{Use us, Lord.}
“Us, huh? I get it.”
I nodded and closed my eyes.
In my mind’s eye, I pictured “an image for everyone”.
Livyathan.
Bahamut.
Behemoth.
Fuwawa.
Apophis.
Jiz.
I summoned them, recalling the images of those who followed me and were far beyond human beings.
Using the ring as a medium, everyone was summoned.
Livyathan and Bahamut were particularly majestic, but the other four were also giving off a tremendous vibe, some mystical, some intimidating.
Now, let’s reach the dragon veins– just when I thought like that.
I heard a thud from behind me.
I turned my back and saw Ivy slumped down on the sand, perhaps having fallen off her back.
“W-What’s this ......?”
She was so surprised that the idea of using honorifics seemed to have completely blown over in her mind.
Ivy was not only hunched over, she was trembling all over, and she looked frightened.
“No need to be afraid. These are all my followers.”
“Followers.”
“And Bahamut was the one keeping you warm today. Come, Bahamut.”
“Ha!”
Bahamut responded, nodding its head slightly, but in a different way than a human would.
Bahamut is in the form of a flame dragon.
Even parts of its body look exactly like it is clothed in flames.
“It’s so big ...... amazing .......”
Bahamut’s main body and the flame it emits to keep warm.
Ivy looked at these two alternately and marveled more and more.
Turning around, I faced the six of them once again.
“You see the dragon’s vein, don’t you?”
{Yes, though it’s intermittent.}
“Should it be connected? Livyathan.”
“Can you do that?”
{Probably.}
When Leviathan responded, the other five responded in the affirmative, squirming and nodding their heads.
“If so, do it. I’ll leave everything to you. In any case, connect the broken dragon vein.”
After I gave the order, the six began to move in unison.
Carrying out the order, they were trying to connect the broken dragon veins.
I watched them.
I let them do it for now, feeling that it would be better if I didn’t interfere, so I just watched happily.
Suddenly, a little to the right in front of me, a geyser-like pillar of sand erupted upward from the ground.
“W-What!”
“Master?”
“Umu, stay behind me...”
Just after saying that,
Similar pillars of sand erupted from all directions.
From among these pillars of sand, a lizard-like silhouette of a monster could be seen.
It was a reasonably large size, large enough to swallow a human or so whole.
“M-Monster!? Why!?”
Peiyu was surprised, while Ivy looked a little frightened with a furrowed brow, but not surprised.
I was somewhat convinced that this was the reaction of local people.
“The Empire has most of the monsters under control, but Saralaria is a frontier, and I hear that there are stray monsters that are not completely under control.”
“Such a thing! M-Monsters are here.”
“Let’s go back to the city, it will be fine.”
Compared to Peiyu, Ivy is still somewhat calm.
She suggested — to return to the city.
“No worries. Bahamut, I entrust you with the dragon’s veins and the girls.”
{Will.}
Bahamut responds.
Shortly after, I picked up the Livyathan – the demon sword Livyathan.
I returned Leviathan to its original size, which I usually hide in my ear hole.
Clutching the demon sword that felt comfortable in my hand, I gave Peiyu and Ivy a quick glance.
“Stay still, Bahamut will protect you.”
“Y-Yes.”
“What are you going to do–“
Before I could answer Ivy, I leaped out with Livyathan ready.
Appearing out of the sand pillar, it dexterously crawled on the sand and approached us.
It looked deadly from its face and was ready to attack me.
In that case, I approached it from my side.
I swung Livyathan and slashed at the first lizard I saw.
As might be expected of a monster, its scales were harder than those of an ordinary fierce beast.
However, it was not a problem.
As soon as I put more force into the slash, Livyathan’s blade sliced the lizard in half in a single strike.
The lizard was cut down with a single stroke.
Rolling on the ground, it made a surprised face, as if it did not know what had happened.
That face – I thrust the Leviathan at its head.
The lizard, pierced through the head, jerked and convulsed, and then it died and stopped moving.
I waited for a moment, but it did not seem to revive.
I heard that some types of monsters come back to life even after being killed, but the lizard did not seem to be of that type.
If so, then.
Without hesitation, I sprinted with Livyathan at ready.
It was a little harder to run on sand than on level ground, but much better than on snow.
Running on such sand, I cut down and disposed of the lizards one after another.
I knew that they would not revive, but their vitality was still higher than that of ordinary ferocious beasts.
Focusing mainly on the head, I cut down and pierced it, making sure to take it down and choke the life out of it.
“Kyaaaah!?”
I heard Peiyu scream.
When I looked, I saw several lizards charging toward them.
Upon closer inspection–
“Mhmm, are they getting huge?”
{It must be because those little flies were drawn by the dragon vein and hit by it.}
Livyathan replied.
I see, so it is the effect of the dragon vein.
For me, knowing the effects of dragon veins – high concentration magic power, it is not surprising that the body is affected to the extent that it grows to a giant size.
With this in mind, I sprinted even faster, jumped into the bosom of the lizard about to attack the two of them, and swung Livyathan.
As I had expected from its giant size, its scales had become harder, but they were just as hard as I had anticipated.
Since I strengthened my swing from the beginning, I sent the giant’s head flying as before.
The flying head drew a parabolic line and fell in front of the girls with a thud.
At a glance, they were frightened for a moment, but no harm came to them, so I left them alone and jumped on another lizard.
It was only about five minutes in time.
I wiped out the lizards that had been attracted to the dragon’s veins, whether they were gigantic or not.
“Fumu.”
Shaking Livyathan to remove the blood, I returned it to its size and hid it in my earhole once again.
Then I returned to where I was before.
When I returned, I saw Peiyu’s sparkling eyes and Ivy’s surprise.
“It’s amazing! Master’s fighting figure is really cool!”
“Really.”
Peiyu, knowing that I am “strong,” was frankly impressed.
Meanwhile, Ivy, who witnessed me fighting for almost the first time, was amazed.
“You were such a ...... strong person?”
“What are you talking about, weren’t you there during the bandit pursuit?”
“Don’t say that, Peiyu. At that time, it was mostly Livyathan. This must be the first time she’s seen me take things into my own hands.”
“Oh, I see. ...... that’s how it is, isn’t it?”
Peiyu is convinced by my words.
On the other hand, Ivy is still staring at me.
“Could it be that you didn’t need ...... John-sama’s help or anything ...... like that?”
“Hmm? Oh, you mean that night.”
“Well, if you are asking if I really need it, I didn’t need it. I was only trying to help John with his feelings and his filial piety.”
Ivy nodded in agreement.
A little later to Peiyu, her face also expressed her emotion. |
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} | 「おお、オイラのことを知ってるのかい」
老人は上機嫌に「カカカ」と笑った。
雷親王、インドラ・アララート。
陛下の叔父で、陛下が即位した直後は期摂政親王として権力の中枢にいた男だ。
陛下が即位し経ったところで摂政を返上して封地に戻った。
それ以来陛下の親政が始まって、帝国の黄金期が幕を開けた。
陛下が即位した直後は幼かったため帝国に混乱があり、それを豪腕で押さえつけたことと、陛下が成長した(と言っても今の俺と同じ)のとほぼ同時に身を引いて陛下の親政を実現させたため、陛下が「雷」の一字を与え、雷親王として今は封地で静かに暮らしているという。
それが、まさか帝都に姿を現わすとは思わなかったから、少し驚いた。
「見込みのあるボウズだな。ほれ、そんなところでかしこまってねえでこっち来て座れ」
「はい」
俺は立ち上がって、インドラの右隣に座った。
露店なので、周りの野次馬がざわざわしている。
さっき助けた女も、俺のメイドのジジも困惑顔をしている。
それらをまるっと無視して、インドラは黄金の瓢箪から酒を一口飲んで、それから俺の目を真っ直ぐのぞき込むように見つめてきた。
「オイラのことを調べたって事は、話はもう聞いてるんだな?」
「はい、陛下から直接」
「うむ、そうかそうか。だったらオイラがここに来た理由も分かるな?」
「......品定め、ですか?」
俺は慎重に言葉を選んで、インドラに返事をした。
「おう。ボウズもよ? オイラと同じ称号つきで、今の17人いる皇子の中で唯一の『賢』親王だ。皇帝が信頼して、期待してるのは分かる。だから普通は確認するまでもねえんだが」
インドラの言葉は、監察省の役人達が聞いたら、激怒して弾劾するようなものだ。
親王で叔父とは言え臣下である、臣下が陛下を「皇帝」呼ばわりするのは不敬の極みだ。
だが、まあ。
何となく、弾劾されてもインドラは気にも留めない気がするし、陛下も咎めないような気がする。
会ってまだ少ししか経ってないけど、「そういうキャラ」だ、となんとなく思った。
「可愛くて大事な孫娘の一生の問題だ、自分の目で確認しなきゃ話にならねえだろ」
「わかります」
「ってことで、お前を値踏みに来た」
「ちなみに、俺がお眼鏡に叶わない場合はどうするんですか?」
「どうするもこうするもねえ」
インドラは鼻を鳴らして、言った。
「嫁にやらねえだけよ」
「関係ねえな。そりゃ皇帝の命令なら敵軍のど真ん中に突っ込んでこいとか、たとえ無茶な命令だろうが従うさ。だがな、孫娘だぜ? 孫娘だぜ? オイラの可愛い可愛い孫娘なんだぜ?」
インドラは同じ台詞繰り返した。
ああ、孫娘に祖父か。なるほどそれはしょうがない。
だ、そして相手は俺の膝の上で遊ばせたことのある甥っ子だ。頭引っ叩いてでも止めさせる」
面白い人だなと思った。
皇族の中で、たまにこういう憎めない方向に振り切った人間が現われる。
皇族とは言え陛下の前では臣下だ九分は型に飴細工を流し込んだような、礼儀正しい人間になってしまう。そうさせられてしまう。
普通の人間なら普通にかしづいてしまうのだ。
しかし、残りの一分くらいがどうしようもない変人で、こうなってしまう。
そして大抵の場合、こういう人間には権力欲はない。
だから「失礼」や「不敬」ではあるが、たいして咎められずに、むしろ皇帝に好まれる事が多い。
このインドラが「オイラの大事な孫娘はやらん!」って怒鳴り込めば、それが普通に通りそうな、そんな雰囲気がある。
「それで、俺は合格なんですか?」
「それは今から確かめる」
「え?」
次の瞬間、ズシン! と何かが全身にのしかかってきた。
周りの景色はなにも変わらない、しかしなにかが。
見えない何かが俺の全身を覆い、押し潰そうとしてくる。
いくつかの考えが頭をよぎり、瞬時に答えに辿り着いた。
俺が、いつもやっているのと同じことだ。
レヴィアタンを使った威嚇。
それを受けている――目の前のインドラから受けている。
ならば。
「――っ!」
深呼吸して、歯を食いしばって建て直す。
レヴィアタンを使って、プレッシャーを押し返した。
「ほう?」
やっぱりインドラだったようで、俺が押し返しだした途端、「おもしれえ」と言わんばかりの目で俺をみる。
先制されたからきつかったが、一旦押し返せばもう大丈夫だ。
このまま押し切ろう――と思ったが、やめた。
それに俺の大叔父で、義理の祖父になるかもしれない男だ。
人前で打ちのめすのはよろしくない。
だから俺はレヴィアタンの威力を調節した。
勝ちもせず、かと言って負けもしない。
綱引きで言えば、マークがずっと中央の位置に来るように、相手の力を的確に量って、押し返す力を調整する。
引き分けを維持するようにレヴィアタンをコントロールした。
膠着して、約一分間。
インドラは楽しげに天を仰いで笑った。
プレッシャーが完全に消えた。俺もレヴィアタンの力を引っ込めた。
「すげえなボウズ。オイラの負けだ」
「えっと......引き分けかと――」
「ばーか。オイラの力を完全に読み切った上で引き分けに持って行ったんだ、その気遣い、完敗だよ」
「......はい」
俺は苦笑いした。
気遣いと言いながら、それを自分からまるっとバラしていくインドラ。
やっぱり、憎めない性格のようだ。
......あるいは、こういう性格だから、ずっと親王で居続けられるんだろうか。
ギルバートのことを何となく思い出した。
インドラとは対照的に権力欲が強すぎて、それが災いして親王で居続けるどころか死を招いた。
「気に入ったボウズ! オイラの孫を頼むぜ」
「お任せ下さい」
「よっしゃ! おいそこの!」
インドラは露店の店主に手招きした。
野次馬と同じように、遠くで成り行きを見守っていた店主が小走りでやってきた。
「店にある酒を全部だせ」
インドラは何枚かの金貨を放り投げた。
店の酒どころか、店ごと余裕で買えるほどの額だ。
「今日は気分がいい。おいお前ら、オイラの奢りだ、飲めるやつは飲んでいけ!」
そしてこれは、野次馬達に向かって放った言葉だった。
豪快にも程がある、俺が知っている皇族らしくない。
だが。
「「「おおおおお!!」」」
野次馬達から歓声が上がった。
十数人が一斉に露店に飛び込んできて、店主が次々と出したお酒にがっついた。
それまで野次馬に取り囲まれていたのが、一瞬にしてその野次馬をも巻き込む大宴会になった。
それをやってのけたインドラは、自分のでっかい黄金の瓢箪からグビグビと酒を飲んだ後。
「これをやる、結納品だ」
懐から何かを取り出して、無造作に放り投げてきた。
慌ててそれをキャッチすると、リングの部分も翡翠で作った指輪だった。
「それはな――」
インドラが説明しようとした瞬間。
頭の中に、インドラとは別の声が聞こえてきた。
『力を示してみよ』
はっきりとした声だ。
次の瞬間、周りの景色が一変した。
何時の間にか広大な草原に一人ぽつんと立ちつくしていた。
何事かと様子を飲み込める暇もなく、どどどどど――と地鳴りがした。
音の方をみると、巨大な黄金の牛がこっちに向かって突進してくるのが見えた。
「......力を示せ、か」
俺は腕輪からレヴィアタンを取り出して、元のサイズに戻した。
そして、構える。
「吹っ飛べ」
チャージが必要な、レヴィアタンの必殺技を放つ。
巨大な黄金の牛よりも太い水柱が迸って、黄金の牛はあっけなく吹き飛ばされた。
そして――視界の隅では。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
法務親王大臣
性別:男
レベル:3/∞
体力 F+F 地 F+F
能力が、また少し増えていた。
光に+C。
って事はルティーヤーの出会った頃と同じだ。
レヴィアタンで吹っ飛ばした結果、黄金の牛――ベヘモトという、頭の中で浮かび上がった名前が、俺の元に降ったのがわかった。
そして、景色が戻る。
何もない草原から、大宴会が開かれている都に。
「――ベヘモトといってな、オイラのと対になる」
「こう、ですか」
俺はテーブルの上に置かれている杯を手にとって、降ったばかりのベヘモトの力を使った。
杯は、黄金色に輝いた。
「むぅ、もう落としたか、すごいなボウズ」
インドラは、自分の瓢箪と同じく黄金色に輝く杯をみて、目を剥いて驚いたのだった。 | “Oh, you know who I am?”
The old man gave a good, “Kakaka”
Indra Ararat, the Thunder Prince.[TN: In Hindu Mythology, Indra is god of heavens, lightning, thunder, storms, rains, river flows, and war. Also arrogant to the point of causing war and even leading to heaven’s downfall like a lot of times]
He is the uncle of His Majesty, and was at the center of power for a time as the Prince Regent after His Majesty was crowned.[TN: A Prince Regent is a temporary ruler who is also in line of succession, rules instead of the Monarch who may be young or sick, till the said Monarch can properly rule(super short description)]
Five years after His Majesty’s accession to the throne, he gave up his regency and returned to his enclave.
Since then, His Majesty’s rule has begun, and the golden age of the Empire has begun.
Immediately after His Majesty’s coronation, there was turmoil in the Empire because of his young age, and He{Thunder Prince} was able to suppress it with his extraordinary skills, and at the same time as His Majesty grew up (though he was only twelve years old, the same age as I am now), he retired as he realised that it was time His Majesty’s direct Imperial rule Implementation, and, His Majesty bestowed him with the title “Thunder” and he is now living quietly in a fiefdom as Thunder Prince.
I was surprised because I didn’t think it would show up in the Imperial City.
“You look like a very promising young man. Come on, don’t be so formal, come over here and sit down.”
“Yes”
I rose and sat down right next to Indra.
Since it was a stall, there were a lot of onlookers buzzing around.
The woman I had just saved and my maid, Gigi, both looked confused.
Ignoring them all, Indra took a sip of sake from his golden gourd and looked me straight in the eye.
“Since you know my name, I take it you’ve already heard of me?”
“Yes, directly from His Majesty.”
“Oh, I see. Then you understand why I’m here, don’t you?”
“...... to judge, isn’t it?”
I chose my words carefully and replied to Indra.
“Uh-huh. And you, Boy? With the similar title as I, you’re the only ‘wise’ prince among the current Princes. I know the Emperor trusts and expects a lot from you. So normally I wouldn’t need to check.”
Indra’s words were those that would make the officials of the Ministry of Inspection furious if they heard and would impeach him.
It is the height of disrespect for a vassal, even if he is a Prince and an uncle, to call His Majesty simply “Emperor”.
But, well.
Somehow, I have a feeling that Indra won’t mind being impeached, and that His Majesty won’t blame him either.
It’s only been a short time since we met, but I kind of thought that he was “that kind of character.”
“It’s a matter about my lovely and precious granddaughter’s future, so I have to confirm it with my own eyes.”
“I understand
“That’s why I’m here, to measure your worth.”
“By the way, what happens if I don’t meet your expectations?”
Indra snorted and said.
“I just won’t allow her to marry you.”
“I don’t care. If it’s an order from the emperor, I’ll obey it, even if it’s a crazy order like running into the middle of an enemy army. But, you know, she’s my granddaughter. Granddaughter? She’s my little, cute granddaughter.”
Indra repeated the same line three times.
Ahh, a grandfather to his granddaughter. That can’t be helped.
“It’s not politics, it’s internal affairs, and I’m dealing with a nephew who I’ve let play on my lap for as long as I can remember. I’ll make him stop even if I have to smack him on the head.”
I thought he was interesting.
Sometimes, among the royal family, there are people who have swung in such a direction that is hard to hate.
Even though he is a member of the royal family, he is still a vassal in front of His Majesty, and ninety-nine percent of the time, he ends up being a polite person, like a candy cane poured into a mold. That’s what they make you do.
Ordinary people usually shy away from it.
But the remaining one would be a freak who can’t help it, and this is what happens.
And in most cases, these people have no desire for power.
So, although they may be “rude” or “disrespectful”, they are not blamed much, and in fact are often favored by the Emperor.
If this Indra were to shout, “I’m not giving you my precious granddaughter!” it would be a normal thing to do.
“So, was I the worth you were looking for?”
“We’ll find out now.”
“Eh?”
The next moment, THUD!. Something struck my whole body.
The scenery around me did not change, but something did.
Something invisible covered my whole body and tried to crush me.
A few thoughts crossed my mind, and I instantly came up with an answer.
It’s the same thing I’ve always done.
Intimidation using Leviathan.
And now I am the one receiving it – from Indra in front of me.
Then.
“—–!”
I took a deep breath, gritted my teeth and replied.
Using Leviathan, I pushed back the pressure.
“Huh?”
It seems that it was Indra after all, and as soon as I started pushing back, he looked at me with a look that said, “This is fun.”
It was tough because I was the first to receive, but once I pushed back, it was okay.
I thought about pushing through, but decided against it.
He’s my great uncle, and he could be my grandfather-in-law.
It was not wise to overpower him in public.
So I adjusted the power of Leviathan.
I didn’t win, but I didn’t lose either.
In a tug-of-war, I would accurately weigh my opponent’s strength and adjust the force of my pushback so that the mark would always be in the middle.
I controlled Leviathan so as to maintain the draw.
It was a stalemate, for about a minute.
Indra laughed happily, looking up at the sky.
The pressure was completely off. I retracted Leviathan’s power as well.
“That’s great, Boy. I lost.”
“Um, I thought it was a ...... tie.”
“Bullshit. You completely read through my power and brought it to a tie, that’s a complete defeat of mine.”
“...... Yes.”
I laughed bitterly.
Even though I said that because of concern, Indra then revealed the whole thing himself.
Oh well, his character is hard to hate.
...... or maybe this kind of personality is what allows you to stay just as the Prince, huh.
I somehow remembered Gilbert.
In contrast to Indra, his desire for power was so strong that it caused him to die instead of staying as the Prince.
“I like you, Boi! Take care of my granddaughter.”
“Leave it to me.”
“Yosh! Hey, there!”
Indra beckoned to the owner of the stall.
The owner, who, like the onlookers, had been watching the proceedings from a distance, came trotting over.
“Yes, what can I do for you?”
“Give me all the liquor you have in the store.”[TN: technically he says Sake]
Indra threw a few gold coins at him.
Far from the liquor in the store, it was more than enough to buy the entire store.
“I’m in a good mood today. Hey, you guys, it’s my treat, drink as much as you can!”
These were his words to the onlookers.
Unlike the royalty I knew, this was a bit too bold.
But.
“””Oooooooooooooohhh”””
A cheer went up from the onlookers.
More than a dozen people jumped into the stall at once and gobbled up the drinks that the owner served one after another.
In an instant, what had been surrounded by onlookers turned into a huge party involving them as well.
After Indra had done this, he drank from his huge golden gourd.
“I give you this, consider it a wedding gift.”
He took something out of his pocket and threw it at me casually.
I hurriedly caught it and found that the ring was also made of jade.
“It’s –“
The moment Indra was about to explain.
In my head, I heard a voice different from Indra’s.
{{Show you the power.}}
It was a clear voice.
The next moment, the scenery around me changed completely.
Before I knew it, I was standing alone in a vast meadow.
Without having time to swallow what was going on, I heard the earth rumbling.
When I looked towards the source of the noise, I saw a huge golden bull charging towards me.
“Show me your ...... strength,” it said.
I took Leviathan out of my bracelet and returned it to its original size.
Then I prepared it.
“Blow it up.”
I unleash Leviathan’s special move, which requires a charge.
A column of water thicker than the giant golden cow gushed out, and the golden cow was blown away easily.
And – in the corner of my vision.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Minister of Justice
Gender: Male
Level: / ∞
HPE+FMPF+FStrengthE+EStaminaF+FIntelligenceF+ESpiritF+FSpeedF+FDexterityF+FLuckF+F FireF+BWaterE+SWindF+FEarthF+FLight F+CDarknessF
My abilities had increased a bit again.
There was ‘+C’ to light.
That means the same as when I met Luthiya.
As a result of blowing it up with Leviathan, I found that the golden cow – Behemoth, a name that had popped up in my head – had lost to me.
And then the scenery returned.
From the empty grasslands to the city where a great feast was being held.
“— Behemoth, and my partner.”
“You mean like this?”
I grabbed the cup on the table and used the power of the Behemoth that had just become my servant.
The cup glowed with a golden color.
“Muuh, so it lost to you already, that’s amazing Boi.”
Indra was amazed to see that the cup was as golden as his gourd, with his eyes open wide. |
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} | 次の日、書斎の中で、ドンの報告を聞いていた。
騎士選抜の件だ。
新皇帝の即位には必ず行われる大規模な騎士選抜、それのやり方と、テストの基準をドンから聞いた。
規模こそ大きくしたが、騎士選抜自体毎年やっている事。
ドンがまとめ上げた案は無難で、文句のつけようがないものだった。
「うむ、基本はそれでいい」
「なにか付け加えるものが?」
ドンは俺の言葉の行間を読んで、聞き返してきた。
俺は静かに頷く。
「選抜の最終段階は、余が直々に見ることになっているな」
「はい。陛下の恩顧を騎士候補たちに授けるという意味合いもございます」
「それ、選抜成績の上位100名と、下位100名を見させてもらおう」
「上位は分かりますが、下位......というのは底辺の100名ということでございますか?」
俺ははっきりと頷いた。
「何故でありましょう?」
「才能というのは尖っているものだ」
「普通にやっていたんじゃ似たり寄ったりの人間しか上がってこない。だから、普通の基準でとことんダメなのをこの目で見ておきたい」
「なるほど」
「天才となんとかはとはいうが、凡人が見れば紙一重どころではなく両極端だろうさ。それに」
「それに?」
まだあるのか? って顔をするドン。
「余は先帝陛下の元で十年近く政務に携わってきた。通常の騎士選抜で、賄賂がそこそこ横行している事は知っている」
「......」
ドンは一礼して、何も言わなかった。
あるとも、ないとも言えないのが彼の立場だ。
だからそうして、ある種の黙認という返事をした。
「賄賂を徹底的に嫌い、自分の力でどうにかなるという自信家程、貰う側に嫌われて成績を下げられるものだ。だからこそ下位100人だ」
「なるほど......さすがでございます。御見逸れいたしました」
ドンは心から感銘を受けた表情で、もう一度頭を下げた。
「承知いたしました。陛下のおっしゃる通り、上下から100名を最終候補に挙げるように致します」
「分かっていると思うが、下位を取るのは内密にな」
「御意」
皇帝になった直後に、屋敷の書斎を改造した。
一番良い場所に俺の机があるのは変わらないが、入り口に近いところでドンの席も作ってやった。
ドンはそこで俺の命令を元に、詔書を作って、あるいは清書して、その後俺が印を
そのドンが詔書を作っているのを眺めつつ、俺は更に考える。
人は宝、そして可能性だ。
下位100人を見るのはその可能性に賭けるためだ。
もっと他に何かないのか、と。
俺は雪水を溶かして淹れた極上の茶を啜りながら考えた。
ドンをじっと見つめる。
彼のような男がもっと欲しい、どうやったら見つけられるのかを考えた。
「......」
「ご確認下さい陛下......陛下?」
詔書の草案をもって戻ってきたドンは、不思議そうな顔で俺を見つめた。
「ん?」
「私の顔に何かついていますか?」
「お前、騎士ではなかったな」
「お前のような騎士出身ではない男をもっと見つけるにはどうすれば良いのかを考えていた。騎士選抜の中に入れた方が都合がいいのかもしれんな」
「騎士選抜の中に文官を......ですか?」
驚愕するドン。
俺の言葉がそれほどショッキングなものに聞こえたようだ。
「それは......前代未聞の事でございます。そもそも騎士というのは――」
「知っている。帝国は戦士の国、武芸に長けた人間を騎士に抜擢する――のが毎年の騎士選抜だろう?」
「さようでございます。伝統でございますので」
「新皇帝即位の大規模な選抜は、伝統であり、特例でもある」
今回の選抜以外でも、年内にもう一度恒例の選抜が行われる。
新皇帝即位の直後はまるまる一回分増えると言うわけだ。
「特例なら、多少の前代未聞でも問題はなかろう? 何か――そうだな、テストでもして、文人を掬い上げようか」
「しかしそれでは......今まで通りではダメなのでしょうか」
俺は苦笑いした。
「今の制度のままだと、文官の抜擢には時間が掛かる。そうだな?」
ドンは静かに頷いた。
「騎士とちがって、若者はまず出てこない。特に大胆で自由な発想の若者は、な。余の目に入り、使われるころには皆が丸くなった中年ばかりだ。可能性の段階から欲しいのだよ」
「......なるほど」
俺は少し考えた。
ドンが異論を唱えるのは分かる。
が、俺は皇帝だ。
伝統に背いてても、望んだことの横車を押し通せるのが皇帝というものだ。
明日からあらゆる税にするという無茶な事でも押し通せる、文人を取り立てるなんて事はそれに比べれば大したことじゃない。
「決めたことだ。文人も拾えるようにしろ。少しでもより多くの人材が欲しい」
「御意......さすがでございます」
俺の決意に、ドンは感動したような熱い眼差しで俺を見つめた。
文人選抜は前代未聞、故に草案だとしても時間が掛かる。
それをドンに投げた俺は、思考を邪魔しないように書斎を出た。
そのまま離宮を出て、腹心宦官のグランを伴って、王宮に入る。
俺が通った道は、兵士、女官、宦官ともに、全員が手元の仕事を置いて、俺が通り過ぎるまで跪いて頭を下げた。
皇帝らしい尊敬と畏怖を一身に受けながら、王宮の宝物庫にやってきた。
「うわぁ......凄い......」
山のような宝物を前に、グランはただただ感嘆した。
「気に入ったのなら、何か一つ持っていくか?」
「えええ!? い、いいえ! こんな凄いのをもらったら寿命が縮まりそうですよ」
俺は微かに微笑みながら、宝物庫の中を適当に歩いた。
前にここに来たのは、父上からルティーヤー――今のバハムートを頂いた時だ。
あの時の事を思い出して、もっと他に何か宝物はないものかと見に来た。
そう、宝物。
レヴィアタンやバハムートのような、能力が上がる宝物が欲しい。
俺は皇帝。
今なら、欲しい物を持ち出しても誰にも文句は言わせない。
だから、宝物庫の中をまわって、本当の宝物を探した。
宝物をじっと眺めては、手に取ってみて、視界の隅っこにいつもあるステータスに変化はないかと確認する。
変動はまったくなかった。
ルティーヤー程のものが、そうそう残っていないと言うことなのか......?
手元にある小さな宝石箱を取ってみた。
蓋に宝石はめられるような窪みがあるが、今は何もはまっていない。
見るからに不完全な宝物で、そりゃ能力は上がらないなと思い、元の場所に戻そうとした。
「どうしたグラン」
「その箱の窪み......さっきそれと
グランはきっぱりと、「まったく同じ」と言い切った。
彼の記憶力はよく知っている。
「どこだ? 取ってこい」
「はい!」
グランは来た道を引き返していき、しばらくしてバタバタと戻ってきた。
手に、青色の宝石をもっている。
俺はそれを受け取って、宝石箱と比較しながら眺めると、グランの言うとおり宝石と窪みがまったく一致していた。
試しにはめてみると――びっくりするくらいスムーズに、まるで吸い付くように填まった。
「よくやったグラン。後で褒美をやる」
「ありがとうございます!」
「他にはなかったか」
グランはきっぱり言い切った。
記憶力に長けて、アルメリアの屋敷の周りの地価も、この宝石の事も。
俺の為に気を配れるグランがこういうのなら、まだ見てないのは確かだろう。
「なら探してみろ」
「はい!」
グランは俺の命令通りに探し出した。
俺も一緒になって、残っの窪みに填まるものはないものかと探してまわった。
「ありました。陛下!」
グランはすぐに、赤い宝石を見つけてそれを持ってきた。
受け取って、填めると、さっきと同じく箱にジャストフィットした。
こうなると――きっと全部あると、ますます確信するようになった。
グランで探し回って約一時間。
「これで揃ったな」
最後の宝石を宝箱に填め込む。
もともと高級感漂う箱だったが、宝石が全部はまると一層のこと、神々しさが出るようになった。
さてステータスに変化は――次の瞬間。
『我に命じよ』
バハムートの声が脳内に聞こえてきた。
何を命じるのかは分からないが。
「......よかろう、やれ」
無駄な主張はしないバハムートに全て任せることにした。
次の瞬間、バハムートの本体――指輪が収められている腕輪の中から光が飛び出して、あろうことか光なのに途中で曲がって、箱にはめたばかりの赤い宝石に吸い込まれていった。
赤い宝石が、宝物庫の中を照らすほど輝きだした。
すると、レヴィアタン、ベヘモト、フワワ、そしてアポピスから次々と、バハムートと同じのが聞こえてきた。
俺は更に「やれ」と命じた。
光が次々と腕輪から飛び出して、填め込んだ宝石を一つまた一つと光らせていった。
やがて、五つの宝石が全部光った――次の瞬間。
箱の蓋が勝手に開いて、その中に羽根飾りが入っていた。
『待ちかねたぞ』
頭の中に声が聞こえた。
そしてそれだけではなく。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
帝国皇帝
性別:男
レベル:15+1/∞
HP C+C 火 E+S
風の「+」が、一瞬にして二段階上がったのだった。 | The next day, I was in my study, listening to Don’s report.
It was about the selection of knights.
I heard from Don about the large-scale selection of knights that always takes place when a new Emperor ascends to the throne, how it is done, and the criteria for the test.
Although the scale was bigger, the selection of knights was something that was done every year.
The idea that Don had put together was safe and there was nothing to complain about.
“Umu, that’s the basic outline.”
“Is there anything you’d like to add?
Don read between the lines of my words and asked me back.
I nodded quietly.
“The final stage of the selection process is to be seen in person, right?”
“Yes. It also means that His Majesty’s favor will be bestowed upon the knight candidates.”
“Then, let me take a look at the top and the bottom .”
“I get the top 100, but the bottom, ......, means the last 100, right?”
I nodded my head clearly.
“Why would that be?”
“Talent is a sharp thing.”
“Yeah.......”
“If we just do what we do normally, we’ll only end up with people who are similar to each other. That’s why I want to see with my own eyes those who fail by normal standards.”
“They say there’s a fine line between genius and a so-so person, but if you look at it from an ordinary person’s point of view, it’s not a fine line, it’s two extremes. Besides.”
“Besides?
Is there more? Don makes such an expression.
“I’ve been involved in political affairs for nearly ten years under His Majesty the Former Emperor. So I know that bribery is quite rampant in the normal selection of knights.”
“......”
Don bowed and said nothing.
He was in a position where he could not say whether there was or was not.
So he replied with a kind of tacit approval.
“The more confident you are that you can handle yourself and thoroughly dislike bribes, the more the recipient will dislike you and lower your grade. That accounts for the bottom 100.”
“I see. ...... You’re right. I missed the point.”
Don bowed again with a sincerely impressed expression.
“I understand. As Your Majesty suggested, I will try to shortlist 100 people from the top and bottom.”
“I am certain you are aware of this, but please do not tell anyone you are selecting a lower rank.”
“By your will.”
Immediately after I became emperor, I remodeled the study of the mansion.
I still had my desk in the best place, but I also made a seat for Don near the entrance.
There, he would make or revise the decree based on my orders, and then I would put my seal on it.
As I watched Don make the decree, I thought about it more.
People are treasure and potential.
The reason I’m looking at the bottom 100 is to bet on that potential.
Is there anything else I can do, I wondered.
I thought about this as I sipped on a cup of tea made from melted snow water.
Then I stared at Don.
I wanted more men like him, and I wondered how I could find them.
“......”
“Please confirm this, Your Majesty ...... Your Majesty?”
Don came back with a draft of the decree and looked at me curiously.
“Do I have something on my face?
“You’re not a knight, right?”
“Yes”
“I’ve been thinking about how to find more men like you who don’t come from a knightly background. Maybe it would be more convenient to include you in the selection of knights.”
“You ...... want a civilian in the knight selection?”
Don was surprised.
My words sounded so shocking to him.
“That’s ...... unheard of, sire. A knight, for starters...”
“I know. The empire is a nation of warriors, and those who are skilled in martial arts are selected as knights every year, right?”
“As you have said, sir. It’s a tradition that we do.”
“The large-scale selection for the accession of the new Emperor is both a tradition and an exception.”
In addition to this selection, another annual selection will be held within the year.
Immediately after the new emperor ascends to the throne, there will be a whole new round.
“If it’s a special case, there’s nothing wrong with a little bit of unprecedented, right? Something like – well, let’s do a test and scoop up the literati.”[TN: Literati means, the person of the educated class, or in simple terms for the novel it means the ‘literate civilians’,]
“But then, can’t we continue to do what we’ve been doing at ......?”
I chuckled.
“If we continue with the current system, it will take a long time to select civilian officials. Isn’t that right?”
Don nodded quietly.
“Unlike the knights, young people rarely come up. Especially the bold and free-thinking ones. By the time we find and employ them, they’re all middle-aged and well-rounded. So I want them from the stage of possibility.”
I thought for a moment.
Don’s objections are understandable.
But I’m the Emperor.
The emperor is the one who can push through what he wants, even if it goes against tradition.
I can push through the absurdity of tripling all taxes tomorrow, and recruiting literati is nothing compared to that.
“I’ve made up my mind. Let’s pick up the literati. I want as many people as possible.”
“By your will......, as expected of my lord.”
To my determination, Don looked at me with an enthusiastic gaze, as if moved.
The selection of literati is unheard of, so even if it is a draft, it will take time.
I threw it to Don and left the study so as not to disturb his thoughts.
Leaving the palace intact, I entered the Royal Palace accompanied by the eunuch Gran.
As I passed, all of the soldiers, the lady in waiting, and eunuchs put down their work at hand and bowed their heads on their knees until I passed by.
While receiving every ounce of emperor-like respect and awe, I came to the treasury of the royal palace.
“Woaa ...... awesome .......”
In front of the mountain of treasures, Gran could only marvel.
“If you like it, why don’t you take one of them?”
“Ehhhh!? N-no! I’m afraid I’ll lose my life span if I get one of these.”
I smiled slightly and walked randomly through the treasure room.
The last time I came here was when my father gave me Luthiya – now Bahamut.
Remembering that time, I came here to see if there were any more treasures.
Yes, treasures.
I want treasures that increase my abilities, like Leviathan and Bahamut.
I am the emperor.
Now, I can take what I want and no one will complain.
So, I went around the treasury, looking for the real treasure.
I stared at the treasures, holding them in my hands, checking for any change in the status that was always in the corner of my vision.
There was no change at all.
Could it be that there are not so many things left like Luthiya ......?
Then I hold up a small jewelry box in my hand.
The lid had an indentation in it that could hold five jewels, but nothing was attached to it at the moment.
It was an incomplete treasure, and I knew it wouldn’t improve my abilities, so I tried to put it back where it belonged.
“Huh?”
“What’s wrong Gran?
“In the recesses of that box ......, there was a jewel of exactly the same shape as that earlier.”
Gran clearly stated that it was “exactly the same”.
I know his memory well.
“Where? Go get it.”
“Yes!”
Gran turned back the way he came, and after a while, he came back running.
He had a blue gem in his hand.
I took it and looked at it, comparing it to the jewelry box, and saw that Gran was right, the jewel and the hollow matched exactly.
When I tried it on, it went on surprisingly smoothly, as if it had been sucked into place.
“Well done, Gran. You will be rewarded later.”
“Thank you very much!”
“Was there another one?”
Gran said firmly.
With his excellent memory, he was able to remember the land prices around Almeria’s mansion, and also about this gem.
If Gran, who can take care of things for me, is like this, then he certainly hasn’t seen it yet.
“If that’s the case, go look for it.”
“Yes!”
Gran did as I commanded and started searching.
I looked around with him, trying to find something that would fit into the four remaining hollows.
“Here it is. Your Majesty!”
Gran quickly found a red gem and brought it to me.
I received it, loaded it, and it fits into the box just like before.
I became more and more convinced that it was all there.
Gran and I searched for about an hour.
“Now we have everything.”
I put the last jewel into the treasure chest.
The box had always had a luxurious feel to it, but when all the gems were placed in it, it became even more divine.
The next moment—- my status changed.
{Command me.}
I could hear Bahamut’s voice in my head.
I don’t know what I am supposed to command.
“......... Fine, do it.”
I decided to leave everything to Bahamut, who didn’t waste time arguing.
The next moment, a light shot out from Bahamut’s body – the bracelet that contained the ring – and, though it was light, it curved in the middle and was sucked into the red gem that I had just put in the box.
The red jewel began to shine so brightly that it lit up the inside of the treasury.
Then I heard the same thing from Leviathan, Behemoth, Fuwawa, and Apophis, one after another, as Bahamut.
I further commanded, “Do it.”
One by one, light shot out of the bracelet, illuminating the jewels I had loaded into it one by one.
Eventually, all five jewels glowed – the next moment.
The lid of the box opened by itself, and inside was a feather ornament.
{I’ve been waiting for you.}
I heard a voice in my head.
And that’s not all.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Empire Emperor
Gender: Male
Level: 15 + 1 / ∞
HPC+CMPE+CStrengthC+SStaminaD+CIntelligenceD+CSpiritE+CSpeedE+CDexterityE+CLuckE+C FireE+SWaterC+SSWindE+CEarthE+CLight E+BDarknessE+B
The “+” in the wind had instantly increased by two steps. |
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"series": "Noble Reincarnation~Blessed With the Strongest Power From Birth",
"source": "superScraper-fanfic"
} | ジョンと別れた後、ペイユとアイビーを連れて先を急いだ。
使用人に荷物を持たせて、街道を進む。
ペイユはもとより、細身だと思っていたアイビーも意外と力持ちで、荷物を担いで歩いているのにつらそうな様子はなかった。
最初だから体力が追いつかなかったらペースを落としたりする事も考えたが、どうやらその心配はないようだ。
俺は普通のペースで、二人を引き連れて歩いていた。
ふと、アイビーが後ろからおずおずと話しかけてきた。
「うむ? なんだ?」
首だけ振り向き、アイビーに聞き返す。
「こ、皇帝......様、は――」
「その呼び方はダメですよ」
不慣れなのがありありと見てとれるアイビーに、ペイユは先輩風をふかしながら指摘する。
「皇帝様、なんて呼び方はないです。陛下とよびなさい」
「は、はい。陛下、ですね」
「そう。それと今はお忍びだから、正体がバレないようにご主人様って呼ぶように。都にもどったらその時は陛下です」
「は、はい......えと......はい」
アイビーは混乱していた。
ただでさえ分からないのにに色々言われてしまうと――って感じで困っているようだ。
「難しく考えるな。当面は全部ご主人様でいい。陛下呼びは慣れてきたら自然と分かるようになる」
「わ、わかりました」
「で、なんの話だ?」
「あっ。えっと、ご主人様、水は......大丈夫なんですか?」
「水?」
「このまま進むと砂漠にはいっちゃいます......」
俺は小さく頷いた。
砂漠に入る――それがもともとの目的だ。
アイビーはペイユとともに荷物持ちをしている、そしてこのあたりの出身だ。
自分達が持っている荷物の中に、水が極端に少ない事が気になっているのだろう。
「その事なら大丈夫だ」
「でも、砂漠は水がないと。その......死にます」
アイビーはストレートに「死ぬ」といった。
俺は砂漠に入ったことはない、知識として知っているだけだ。
が、裏を返せば知識としては知っていると言うことでもある。
砂漠はとにかく水源がないところで、水のありなしは冗談抜きで生死に関わるということは知っている。
アイビーはその事を気にしているのだ。
俺の場合、その知識だけで十分だ。
「大丈夫っていうだけじゃ安心できないか」
「え、はい......」
「こらっ、それはご主人様に対して無礼ですよ」
「ご、ごめんなさい」
「いい。まだ仕えたばかりだ、無理もない。今からその不安を取り除いてやろう」
俺はそういい、リヴァイアサンを取り出した。
サイズを自由自在に変えられるリヴァイアサンは、普段は針よりも小さくして、耳の中に隠している。
それを取り出して、元のサイズにもどした。
「ど、どこから......」
驚くアイビー。
俺はにこりと微笑んでやった。「驚くのはまだ早い」と。
驚くアイビーが立ち止まったから、俺も立ち止まって、振り向いてリヴァイアサンを突き出した。
「やれるか? リヴァイアサン」
リヴァイアサンが応じると、水平に突き出した切っ先の先端から、ちょろ、ちょろと水が滴りおちた。
まるでその辺の湧き水かのようなわずかな分量だが、それでも「剣」という物体から延々と流れ出る水は、何も知らない人間からすれば不思議な光景だ。
案の定、アイビーが驚愕する。
口をぽかんと開け放って、驚愕してしまう。
「水は蒸発して空気中に逃げる。このリヴァイアサンは、空気中にある水気を自由に水に変えることが出来る」
「そ、そんなことが!?」
驚嘆し、絶句するアイビー。
実例を見せなければ何を言ってるんだ、ってなる話だろうが、実際に目の前で「剣が水を出し続けてる」のが見えているから、アイビーとしては信じざるを得ない、ってところだろう。
「こういうわけだから、水を持っていく必要性はない。文献で読んだに過ぎないが、砂漠とて水気が皆無という訳でもない。わずかながらでも水を作れる方法があるのだろう?」
それも文献で読んだものだが、現地の人間は知っていると踏んでアイビーに同意を求めた。
案の定アイビーは知っていて、話がスムーズだった。
「そのどんな方法よりも、リヴァイアサンの方が水をかき集められるということだ。なんなら砂漠でも水浴びができるぞ」
「み、水浴びも!? でも......これだったら......」
驚くアイビーだが、やっぱりリヴァイアサンが出し続けてる水が説得力を持っていた。
アイビーは驚きつつも、納得するしかない、という表情になっていた。
一方で、その横でペイユが得意げな顔をしていた。
砂漠に入ると、ペイユの消耗が目に見えて激しくなってきた。
砂に足を取られることが頻発するようになって、歩くペースが遅くなった。
アイビーの方はこの地方の出身だからか、目立った消耗は見られない。
「少し休もう」
休憩を切り出すと、ペイユの顔は明らかにホッとした。
俺はまわりを見回す。
遮蔽物がなく、空は見事に晴れている。
俺は手をかざした。
親指につけたままの指輪を変形させて、太陽のある方角に大きな壁を作った。
それが遮蔽物となって、かなり広範囲にわたっての日陰を作り出した。
「荷物を下ろして少し休むといい。アイビーもだ」
「水も飲んでおけよ」
俺の言葉に、二人の少女がそれぞれ頷いた。
ペイユは荷物を下ろすとそのまま地面にへたり込んだが、アイビーは幾分か余裕があるようで、俺の前にやってきた。
「何かする事はありませんか、ご主人様」
「今はない。それよりもしっかり休め」
「いいんですか?」
「ご主人様は......ジョン様と似てる」
ジョンと似ていると言われて、そのわけに興味をもった。
俺は微笑みながら、アイビーに聞き返す。
アイビーはおずおずと答えた。
「その......仕事終わったら休んでいいって言ってくれるところです」
「ふむ?」
俺は少し考えた。
一瞬考えて、理解した。
「ああ、『元を取る』話か」
「元を取る?」
俺の言葉に、今度は逆にアイビーが首をかしげた。
「ジョンの前にケチ性の雇い主の元でも働いてたのか?」
「は、はい。売られる前に、ほんのちょっと」
俺は小さく頷いた。
雇い主の中に、そういう人間がいることは理解している。
そういう人間の考え方はこうだ。
給料を払って雇ってる人間が仕事していないと、はらった給料が損になってしまうという考え方だ。
だから、雇った人間には休みなく働くことを要求する。
一種のケチという訳だ。
言い方を変えれば「元を取らなきゃ」という考え方だ。
もちろん、俺はそんな考え方を持っていない。
ある程度までなら、商人あたりには必須の感覚だからそれ自体否定はしないが、俺はそういうふうにするつもりはまったくない。
「余のやりようを見て、それでジョンが学んでいったのだろう」
「だったらそのままのつもりでいていい。余は延々と働けとは言わん。休めるときはちゃんと体を休めておけ」
「わかりました......」
アイビーはそれで一旦引き下がったが、完全に納得した訳じゃないようだ。
「ふむ、なにか気になることでもあるのか?」
「え?」
「余のやり方に納得していないのだろう?」
「なにが気になる、話してみろ」
「......」
アイビーは俺を見つめた。
本当に話していいのかどうか、って顔をしている。
俺はちらっとペイユを見た。
彼女はまだへばっている。
俺が作った日陰で目を薄く閉じて休んでいる。
ペイユが回復するまでなら、じっくりと話を聞いてやろうと思った。
そうやってじっと待った。
急かさないのがよかったのか、やがてアイビーの方からおずおずと口を開いてきた。
「ご、ご主人様って......本当に皇帝様――じゃなくて、陛下、なんですか?」
「ふむ」
「イメージの中にある皇帝像とちがったか?」
朗らかに笑いながら、アイビーに聞き返す。
「はい......」
「どういうイメージだ? アイビーの頭の中にある皇帝像は」
「忌憚なく話していい。余が聞いてる事なのだからな」
「は、はい。その......すごくきらきらした服をきてて、ものすごい大勢の人間を従えてて、ご飯もすごく贅沢して」
「贅沢か。どういう感じなんだ?」
「おかずを百品くらい並べて、全部一口だけ食べてあとは捨てる、とか」
俺は大笑いした。
庶民がもっているステレオタイプなイメージそのままで、一周回って面白くなったのだ。
「そんなことはしない。そもそもだ」
「全部一口でも百口、よほどの大食漢でも無い限りそんなに入らん」
「そ、そうですよね」
「他には?」
「えと......美女をとにかく集めて、その......」
これまたステレオタイプで、俺は大笑いした。
「そっちはあながち間違いではない。余の父、先帝陛下は数十人の妃と数百人の女官を召し抱えていた。皇帝は世継ぎを作らねばならん、確実に跡継ぎを産むには数に頼るほか無いのだ」
「じゃあ、陛下も?」
「え? それだけ?」
驚くアイビー。
どうやら予想よりも遙かに少なかったようだ。
まあ、すくないだろうな。
それは理解している。
俺はおそらく、帝国史上もっとも後宮がさみしい皇帝だろうな。
アイビーはぽかーんとした顔で俺を凝視している。
何に驚いているのか手に取るように分かる。
その辺の商人でももう少しは妾とか囲ってるもんだろうからな。
「ふっ、確かに余はお前が思っているような皇帝とは少し違うかもしれんな。本当に皇帝かどうかは帝都に戻れば分かる。それまではジョンの事を信じていろ」
アイビーは少し慌てて、しかし素直に頷いた。
ジョンの事を信じろ、というのが効いたようだ。
「さて......」
話が一段落して、俺はペイユの方を見た。
ペイユの回復度合いをチェックして、出発出来るかどうかを見るためだ。
「む?」
「ご主人様?」
ペイユは充分回復したみたいだ。
それ故、俺の表情が変わったのに気づいたようだ。
俺はペイユ越しに、彼女の背中――その先を見ていた。
どこまでも広がる砂原、熱気でゆらめく地平の向こうから、砂塵を巻き上げながらこっちに近づく一団があった。
「馬、か」
驚くペイユ、パッと振り向く。
アイビーも同じように俺たちと同じ方角に視線をむけた。
砂煙を巻き起こしているのは人を乗せた馬だった。
体格が普段見ている馬とは違う、軍馬でも駄馬でも馬術用に美しくそだった馬でもない。
「この地方特有の馬があるのか?」
俺はアイビーに聞いた。
「ああ。......砂漠を走るのが得意とか、そういうのだ」
「はい、ありますけど......」
俺は頷き、再び砂塵の方に視線を戻した。
そうこうしているうちに、馬に乗った一団がこっちに来て、何か言うよりも先に俺達のまわりを取り囲んだ。
数は......馬が二十、乗っている男がざっと三十。
全員がならず者っぽい格好をしている。
俺は連中を見回した。
一人だけ、そこそこの雰囲気を出している男がいた。
男は片目がつぶれていて、その目を斜めに顔を横断する大きな傷跡がある。
男は俺たちを見て、そんなことを言ってきた。
「何者だ?」
「なあに、ちょっとばっかし酒代をお裾分けして欲しいだけよ」
「なるほど強盗か」
見た目通りの連中って訳だ。
「人聞きのわるい事をいっちゃいけねえ」
「いうのをやめなかったら?」
「広大な砂漠に干物が一つふえるだけだ」
アイビーは震えて、怯えた目で俺にすがってきた。
「案ずるな」
「まあ見ていろ」
俺はふっと笑い、男達――盗賊の頭目の方をむいた。
「リヴァイアサン」
魔剣を出さずに、リヴァイアサンの名前を呼ぶ。
「殺すな」
リヴァイアサンが応じた――直後の事だった。
俺の体のまわり――全身から水柱が吹きだした。
太さは子供が遊びに使う水鉄砲程度のもの、しかし勢いは比べものにならないほどのものだった。
まるで水の針――それが一遍に百本以上吹きだして、一瞬で盗賊ら全員の手足を貫いた。
「ぎゃあああ!」
男達は全員、水の針に貫かれて落馬した。
俺が命じた通り、リヴァイアサンはしっかり手加減して、誰一人として殺していなかった。
中には死んだ方がましって位の手傷を負ったやつもいるが、ともかく誰一人殺していない。
一瞬の出来事に、それを目撃したアイビーの口からそんな言葉が漏れ出したのだった。 | After parting with John, I hurried ahead with Peiyu and Ivy.
The two servants carried our luggage and proceeded along the way.
Ivy, who I thought was slender as well as Peiyu, was surprisingly strong and did not look as if she was having a hard time walking with the luggage.
I thought about slowing down the pace if their stamina didn’t catch up with them, but it seemed there was no need to worry about that.
I was walking at a normal pace with them in tow.
Ivy suddenly spoke up from behind me.
“Umu? What is it?”
I turned my head and asked Ivy.
“E-Emperor ......-sama, .”
“You shouldn’t call him that.”
Peiyu pointed this out to Ivy, who was unfamiliar with the term while acting as a senior colleague.
“There is no need to call him ‘Emperor,’. You should address him as Your Majesty.”
“Y-Yes. Your Majesty, right?”
“That’s right. And since we are traveling incognito, you must call him Master so that his true identity will not be revealed. When you return to the capital, you should address him as Your Majesty.”
“Y-yes ...... eh ...... yes.”
Ivy was confused.
She’s confused, and she’s having a hard time understanding it all at once.
“Don’t think too hard. For now, you should address him as Master. Once you get used to calling His Majesty, you’ll naturally understand.”
“I-I understand.”
“So, what are you talking about?”
“Ah. Um, Master, about the water...is it okay?”
“Water?”
“If we continue along this road, we’ll end up in the desert. ......”
I nodded slightly.
Entering the desert – that was the original purpose.
Ivy is carrying our luggage with Peiyu, and she’s from around here.
She must be concerned about the lack of water in our luggage.
“If that’s the case, it is going to be fine.”
“But in the desert, if you don’t have water. That ...... will kill you.”
Ivy said straight out, “You will die”.
I’ve never been in the desert, I only know about it.
However, the flip side of this is that I do know the desert.
I know that a desert is a place where there is no water source anyway, and the availability of water is a matter of life and death, no joke.
Ivy is concerned about that.
For me, that knowledge is enough.
“So me saying it’s fine isn’t enough to reassure you, huh.”
“Uh, yes. ......”
“Hey, that’s disrespectful to Master.”
“S-sorry.”
“Okay. You just started working for me, so it’s understandable. Let’s get rid of that anxiety now.”
I said that and took out the Livyathan.
Livyathan, which can change size at will, is usually smaller than a needle and hidden in the ear.
I took it out and restored it to its original size.
“F-from where ......”
Ivy was surprised.
I smiled at her. And said, “Don’t be surprised just yet.”
As Ivy paused, I stood still, turned around, and held out the Livyathan.
“Can you do it? Livyathan.”
As Leviathan responded, a trickle of water dripped from the tip of its tip.
Although it is just a small amount of water, like a spring from the area, it is still a strange sight for an uninformed person to see water flowing endlessly from an object called a “sword”.
Sure enough, Ivy is astonished.
Ivy’s mouth gapes open in astonishment.
“Water evaporates and escapes into the air. Livyathan can transform that escaped water into the water at will.”
Ivy was amazed and at a loss for words.
If I didn’t show her an actual example, she would probably wonder wha I was talking about, but since she can see “the sword keeps producing water” right in front of her, Ivy has no choice but to believe it.
“For this reason, we don’t need to carry water with us. I’ve only read about it in the literature, but even in the desert, there is water available, even if it is only a little. So there must be some way to produce water, even if it’s just a little, right?”
Although this was also something I had read about in the literature, I assumed that the locals knew about it and asked Ivy to concur.
Sure enough, Ivy knew, and the conversation went smoothly.
“Livyathan can gather water better than any of those methods. And you can even bathe in the desert if you want.”
“B-Bath!? But ...... this would work. ......”
Ivy was surprised, but seeing Livyathan continually producing water was persuasive after all.
Although she was surprised, Ivy had no choice but to be convinced.
On the other hand, beside her, Peiyu looked proud.
Once we entered the desert, Peiyu’s fatigue became more and more visible.
Her walking pace slowed as she frequently got her feet caught in the sand.
Ivy, perhaps because she is from this region, showed no noticeable signs of fatigue.
“Let’s take a break.”
Peiyu’s face was noticeably relieved when I suggested that we take a break.
I looked around.
The sky was clear and unobstructed.
I held up my hand.
I shaped the ring still on my thumb to create a large wall in the sun’s direction.
It became a shield, creating a fairly wide area of shade.
“Unpack and get some rest. Ivy, too.”
“And drink some water.”
The two girls nodded at my words.
Peiyu put the luggage down and slumped to the ground, but Ivy seemed to have some room to breathe and came over to me.
“Is there anything I can do for you, Master?”
“No, not at the moment. Rest up.”
“Are you sure?”
“Master resembles ...... John-sama.”
I was interested in the reason why she said I resembled John.
Smiling, I asked Ivy back.
She answered timidly,
“Well ...... the part where you tell us we can take a break when we’re done with our work.”
“Fumu?”
I thought for a bit.
After a moment’s pondering, I understood.
“Oh, you’re talking about ‘Recovering it back’ huh”
“Recovering it back?”
Ivy nodded her head at my words, this time in the opposite direction.
“Did you work for a cheapskate employer before John?”
“Y-Yes. A little bit before he sold me.”
Among employers, I understand that there are people like that.
That’s how they think.
They think that if the people they pay to work for them are not working, they will lose their wages.
Therefore, they demand that the people they hire work without a break.
This is a kind of stinginess.
In other words, they think they have to recover their money.
Needless to say, I do not have such a mindset.
To a certain extent, it is an essential feeling for merchants, and I don’t deny it, but I don’t intend to do it that way at all.
“John must have learned by watching the way I do things, I suppose.”
“Well, then, you can keep on doing what you’re doing. I don’t ask you to work endlessly. Rest when it is available.”
“I understand. ......”
Ivy backed down after that, but she didn’t seem to be completely convinced.
“Fumu, is there something on your mind?”
“Eh?”
“You’re not satisfied with my methods, are you?”
“You can tell me what’s bothering you.”
“......”
Ivy stared at me.
She was looking at me, wondering if it was really okay to talk about it.
I glanced at Peiyu.
She was still exhausted.
She was resting in the shade I’d created with her eyes closed thinly.
I decided that I would listen to her long until Peiyu recovered.
So I waited patiently.
Perhaps it was good that I didn’t rush her, but eventually, Ivy began to open her mouth.
“M-Master is ...... really the Emperor–or is it His Majesty?”
“Fumu.”
I gave a small nod.
“Not the image you have in your mind of the Emperor, huh?”
I asked Ivy with a cheerful smile.
“Yes. ......”
“So what’s the image? The image of the Emperor in Ivy’s head.”
“Well, ......”
“You can speak frankly. I’m the one who’s asking you after all.”
“Y-yes. You know, ...... wearing all these sparkly clothes, having a huge crowd of people with him, and eating very extravagant meals. “
“Extravagant. What’s it like?”
“He’d have a hundred dishes on the table, and he’d take one bite of everything and throw the rest away.”
I laughed out loud.
It was just like the stereotypical image of the common man, and it was funny in a roundabout way.
“I don’t do that. Not to begin with.”
“You can eat a hundred bites of everything, but you don’t need that many unless you’re a glutton.”
“T-that’s right.”
“What else?”
“Well, you can get ...... all beauties, and um .......”
I laughed so hard at this stereotype.
“That’s not so wrong. My father, the previous Emperor, had dozens of concubines and hundreds of female courtesans. The Emperor must have an heir, and the only way to ensure that he has an heir is to rely on numbers.”
“And you, Your Majesty?”
“Eh? That’s all?”
Ivy is surprised.
Apparently, it was far less than she had expected.
Well, I guess there aren’t many.
I understand that.
I’m the dullest Emperor in the history of the Empire, I guess.
Ivy stared at me with a blank expression on her face.
I can tell what she’s surprised about.
Even merchants around here have a few concubines of their own.
“Fuu, it is true that I may not be the Emperor you think I am. You’ll find out if I’m really Emperor or not when you return to the capital. Until then, just trust John.”
Ivy was a little flustered but nodded honestly.
It seems that the “trust John” thing worked.
When the conversation was over, I looked at Peiyu.
I looked at Paille to check her recovery and see if she was ready to go.
“Mm?”
“Master?”
Peiyu seemed to have recovered sufficiently.
She seemed to have noticed the change in my expression.
I was looking at her back – and beyond.
Beyond the endless expanse of sand, the horizon shimmering with heat, there was a group of people approaching us, raising a cloud of dust.
“Horses, huh”
Peiyu was surprised and turned around.
Ivy turned her head in the same direction as us.
The horses with people on them were making a cloud of dust.
It wasn’t one of the horses we normally see, neither a warhorse, nor a packhorse, nor a beautifully bred horse for dressage.
“Are there horses that are unique to this part of the country?”
I asked Ivy.
“Yeah. ......The ones that are good at running in the desert, that sort of thing.”
“Yes, there are, but ......”
I nodded and turned my attention back to the dust.
In the meantime, a group of people on horseback came this way and surrounded us before we could say anything.
There were about men mounted on the horses in pairs.
And all of them were dressed like ruffians.
I looked around at them.
There was only one man who seemed to have a decent atmosphere.
He had one closed eye and a large scar across his face at an angle to the eye.
The man looked at us and said something like that.
“What are you?”
“Oh, we just want some money for a few drinks, that’s all.”
“It’s a robbery, I see.”
They are exactly what they look like.
“Don’t talk nonsense.”
“What if I don’t stop talking?”
“It’s a vast desert, and you’ll just be one more dried-up piece of meat.”
“Is that so?”
Ivy was trembling with fear in her eyes.
“Don’t worry about it.”
“You’ll see.”
I chuckled and turned to the men, —-to the bandit leader.
“Livyathan.”
I call out Livyathan’s name without drawing the Demon Sword.
“Don’t kill him.”
Livyathan responded, and —immediately.
Around my body — a column of water began to spout.
It was only as thick as a child’s water pistol, but the force was incomparable.
Just like water needles, — over a hundred of them shot out at once, instantly piercing through the limbs of all the bandits.
“Aaaaah!”
The men all fell from their horses, pierced by the water needles.
As I had ordered, Livyathan took it easy on them and didn’t kill any of them.
Some of them were wounded enough that they might as well be dead, but none of them were killed anyway.
At that moment as she witnessed it, such words escaped Ivy’s mouth. |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | ニシルの郊外。
100人近くの兵士に守られて、水の輸送隊が陛下の避暑地に向かっていく。
水を運ぶ荷馬車とは別に、ヘンリー兄上が乗ってる馬車が並走している。
俺は更にその横で馬に乗っている。
兄上が水を運ぶのを、途中まで見送るためだ。
「ふぅむ」
「どうしたんですか兄上」
「ノアは、馬に乗ってる姿が様になるな」
「そうですか?」
「ああ、見ていて惚れ惚れするくらいだ。普段から乗ってるのか?」
「それなりには。帝国は『戦士の国』。兄上だって、馬くらいは乗れなきゃ、と子供の頃から躾されたでしょうに」
「それでも乗らない人間はとことん乗らないのだよ。私もオスカーも、馬は苦手だ」
「オスカー兄上も?」
そうなのか......と思ったが。
オスカーでいうと「優男」という感じの人間だから。
馬が苦手だ、と言われれば納得かもしれない。
兄上といろいろ話していたが、ふと、水を護衛してる兵士達がざわつき始めた。
「どうした」
運送の責任者である、兄上が部下に聞く。
部下の兵士は顔をしかめながら答えた。
「申し上げます。南より砂煙が。おそらくは......」
兄上と俺は南を同時に向いた。
地平の向こうから、砂埃を巻き起こしながら一団が迫ってくる。
それは一直線にこっちに向かってきて、あっという間に隊列を包囲した。
「盗賊か」
兄上の口調が変わった。
顔も強ばっていて、眉間は紙を挟んで落とさないくらい皺が寄っている。
「まさかこんな所で」
「任せてください、兄上」
俺はそう言って、馬から飛び降りた。
止まった隊列を包囲する数百人の盗賊たち、それを指揮してるリーダーらしき男に近づいていく。
「お前たち、何のつもりだ」
「へへ、こんなに仰々しく護衛してるんだ、さぞや値打ちの物を運んでるんだろうな」
俺は後ろを振り向いた。
確かに、陛下に届ける為に、護衛の兵士は普段の輸送隊よりも増やした。
それで誤解した、と言うことか。
振り向いた先にいるヘンリー兄上と目があった。
俺たちは苦笑いしあった。
「大人しく積み荷を渡せば、命くらいは助けてやらんことも無いぞ? んん?」
男は持っているロングソードを、肩にとんとんと叩きながら、ニヤニヤする表情で言い放った。
俺はそいつの「勧告」を無視して、腕輪からレヴィアタンを引き抜いた。
水色の光を曳く魔剣。
抜いた瞬間、敵味方ともにそれに注目したのが分かる。
「なんだ? やるのか?」
「――ふっ!」
一歩踏み込み、男の背後にいの盗賊を一瞬で斬り伏せた。
三人は何が起きたのか分からないって顔で、武器を手放して倒れ込んだ。
ぐるりと周りをみる。
あまりにも一瞬の出来事だったからか、敵味方ともに反応できていない。
「なっ! て、てめえら! やっちまえ!」
最初に我に返ったのは、盗賊のリーダーの男だった。
そいつが号令を掛けると、盗賊が一斉に俺に襲いかかってきた。
積み荷を奪うことも忘れて、俺に襲いかかってきた。
予想通り注意を引けた俺は、レヴィアタンを振るって、次々と盗賊を斬り伏せた。
能力オールSSS、
一人につき一斬で、次々と斬り伏せていく。
三百人はいた盗賊を、全部斬り倒すのに三十分と掛からなかった。
全員倒したあと、兵士に命じて、とりあえず縄で腕を縛りあげて、拘束する。
ヘンリー兄上は馬車から降りて、俺の横にやってきた。
「すごいな、ノア。まさか一人で全員倒してしまうとは」
「被害を出せば、陛下へお届けするのがそれだけ遅くなりますからね」
「うむ。それにしても見事な腕前だ」
頷く兄上は俺を褒めちぎった。
俺は、縛られ両膝を無理矢理つかされた男をみた。
男は肩からどくどくと血を流しながら、俺を睨んでいる。
それを少し見て、考えてから、男に聞く。
「お前、名前は?」
「ホワイトタイガーのジェリー・アイゼン様だ。覚えときな」
答えるジェリーは威勢が良かった。
「ジェリーか。お前、自分が何をしたのか分かってるのか?」
「はっ、こういう稼業をやってるから覚悟は出来てるわ。どうせ死刑とかなんだろ。そんなのを怯えるほどやわじゃねえぜ」
「いい覚悟だ、だが無意味だ」
「なに?」
「ところで、お前は盗賊をやって、何人殺した」
「はっ! そんな事を聞いてどうする。罪を増やすつもりなら諦めろ。どうせ死刑だ、殺すなら今すぐ殺せ!」
ジェリーは一気に言い放った。
その表情は、本当に死ぬことは怖くないかのように見える顔だ。
......ふむ。
俺は少し考えてから、話題を変えた。
「この輸送隊は、陛下への献上物を運んでいる。つまり御用の品だ。いわば皇帝陛下の財産を奪おうとする人間はどうなると思う」
「最高で胴斬の刑までいくぞ」
「どう......ざん?」
聞き慣れない言葉だったからか、ジェリーは明らかに戸惑った。
「言葉通りだ、首じゃなくて、胴体を上下にたたっ切る処刑法だ。心臓を避けて胴体を切るとな、すぐには死なん。三十分くらいかけて、じっくり苦しみながら死んでいくのだ」
「体を両断された痛みを三十分だ。そして徐々に体が動かなくなっていく、もがこうとしても、もがく力すら失っていく。でも痛みはずっと残る」
ジェリーは青ざめた、歯の根が合わなくて、ガクガクと震えだした。
「お前、これまで何人殺した」
「こ、殺しはやってねえ......」
一瞬で唇まで真っ白になって、震えた声で答えた。
「なんでだ?」
「昔......飢饉にあったんだ。お代官様も何もしてくれなくてよ。気がついたらにっちもさっちも行かなくなって、こういう稼業に手を染めちまったのよ......」
「やってたのは不本意だってことか」
「そりゃ......そうだ。まともに働けるんなら、誰だって好き好んでこんな稼業しちゃいねえよ......」
答えたジェリー、徐々に俯いていく。
その言葉は感情がこもっていた。
俺は少し間をおいて、真顔で聞いた。
「やり直す機会は欲しいか?」
「――っ!」
ジェリーは顔をパッとあげて、何が起きたのか分からない、信じられないって顔で俺を見つめてきた。
俺はジェリーの周りを見た。
彼も部下も、同じような目で俺を見つめている。
「ただの盗賊なら、従軍刑というのにしてやれる」
法務親王大臣として、帝国法を思い出しながら話す。
別に盗賊に限ったものじゃない、ぎりぎり死罪に値する若者に処すための刑だ。
「文字通り軍にぶち込んで、辺境で戦わせる刑罰だ。そこで立てた軍功次第では、罪の帳消し、更に立身出世も不可能ではない」
「そ、そんなのがあるのか!」
目に光が戻るジェリー。俺の話に食いついてきた。
「手心は加えん――が、ちゃんと戦功を立てたら取り立ててやろう。どうする、乗るか? それとも胴斬刑か?」
を突きつけると、ジェリーも、その部下たちも。
迷いなく、額を地面に叩きつけるほどの勢いで、俺に頭を下げてきた。
そのまま兵士を一部割いて、ジェリーら盗賊団をニシルに送る。
それを見送った後、ずっと黙って話を聞いていた兄上が。
「お前の話術はすごいな」
と言ってきた。
「胴斬刑で散々脅して、怯えさせてから一気に切り崩したのは見事だった。だが、そこまで手間をかけるほどの相手か?」
「人は宝、そして希望ですよ、兄上」
「あれでも、です」
「ふっ、そこまで言い切れるのはさすがだな」
兄上と別れた後、俺はニシルの屋敷に戻ってきて、追加の護衛の兵士を手配して、ジェリーの後処理をした。
ジェリー達は喜んだ。
俺が提示したのは、いわば人生一発逆転のチャンスだ。
もちろん死ぬこともある、兵として戦う訳なのだから。
しかし、帝国は『戦士の国』、戦功はあらゆる功績を凌駕する。
もしも生き残って戦功を立てられたら、一気に貴族になることも夢ではない。
人生大逆転のチャンスを提示されて、ジェリー達は全員、しつこいくらい俺に感謝した。
それの処理がすんだ後、接客メイドのセシリーが書斎に入ってきた。
「ご主人様。ロレンス、と名乗る方がお見えになってます」
「ロレンスか、通せ」
セシリーが出ていき、しばらくしてロレンスが入ってきた。
ロレンスは部屋に入るなり、俺に片膝ついて頭を下げた。
俺は椅子から立ち上がって、ロレンスの腕を引いて立たせた。
「体はもう大丈夫か?」
「十三殿下のおかげで、もう大丈夫です。殿下直々に助けに来ていただいて、どうお礼を申し上げればよいのか」
「気にするな。それよりも、お前はこれからどうするつもりだ。俺の部下になる気はないか?」
「申し訳ございません。既にパスカル様に仕えている身でございますれば」
俺は眉をひそめた。
今の瞬間、沸き上がった感情をそのまま口にした。
「失望したな、お前には」
「え?」
いきなり何を? って驚きの顔で俺を見るロレンス。
「お前は有能な人間だ。謙遜するな、色々調べた」
「はっ......」
ロレンスは気持ち頭を下げた。
「民のために色々出来る有能な人間だ。なのに何故つまらんことにこだわってる」
「それは、パスカル様を裏切るのは......」
「自分が裏切り者になりたくない。それは私利私欲だろ。自分の名声を重視するという」
「パスカルが民のために何かをする人間ならそれでもいい。だがあいつは民など毛ほどにも思ってない人間だ。お前もそれは知ってるだろう?」
「そんな男の元に戻る、自分が裏切り者だと呼ばれたくないが為に。それに失望したと言ってるんだ」
俺はため息をついた。
「もういい、どこへでも行くがいい」
そう言って、身を翻した直後、ロレンスがパッと土下座した。
両手両膝をついて、頭を床にたたきつける。
「私が......私が間違っておりました」
「殿下のおっしゃる通りです、私は......いつの間にか自分の名声のことを考えておりました。自分でも気づかぬ内に......いえ、それは言い訳になってしまいます」
「殿下の素晴しいお言葉に目が醒めました。殿下こそ、真に仕えるべき主です。こんな男ですが、どうか、麾下に加えてください!」
お願いします! と最後に付け加えて、ゴツン、と音がするほど額を床にたたきつけた。
「民のために働くのだな」
「はい!」
「よし、なら許そう」
「――っ! ありがとうございます!!」
視界の隅っこのステータスはSSSで動かなかったが。
そうじゃなかったら間違いなくステータスが上がっていただろう。
そんな男が、俺の元に加わった。 | The outskirts of Nisir.
A water convoy, guarded by nearly a hundred soldiers, is heading towards His Majesty’s summer resort.
Apart from the wagons carrying the water, the carriage in which Brother Henry is riding alongside.
And I was riding on a horse next to it.
I am to see my brother off halfway through the transport of water.
“Fuumu.”
“What’s the matter, brother?”
“Noah looks good riding a horse.”
“Is that so?”
“Yeah, it’s quite impressive. Do you ride regularly?”
“Yes, to a certain extent. The Empire is a nation of ‘warriors’. Even brother was trained from childhood to be able to ride a horse.
“Still, those who cannot ride well, are not able to do well. Oscar and I are not good with horses.”
“Brother Oscar too?”
I was wondering if that was true .......
Oscar is, in a word, a “gentleman” kind of person.
He’s not very good with horses, which might make sense.
I was talking to my brother about various things when suddenly, the soldiers escorting the water began to rustle.
“What’s going on?”
My brother, who was in charge of the transportation, asked his subordinates.
The soldier replied with a frown.
“I’m sorry, sir. There’s sand and smoke coming from the south. It’s probably .......”
My brother and I looked south at the same time.
From beyond the horizon, a group of people were approaching us, creating a cloud of dust.
It came in a straight line towards us and quickly surrounded our ranks.
“Bandits?”
Brother’s tone changed.
His expression tightened, and his brow wrinkled to the point where he could hold a piece of paper between his eyes and not lose it.
“Didn’t expect them to be here.”
“Leave it to me, brother.”
With that, I jumped off my horse.
And walked up to the man who seemed to be the leader of the hundreds of bandits who surrounded the halted column.
“What do you guys think you’re doing?”
“Heh, such an ostentatious escort, you must be carrying something of great value.”
I turned around.
Certainly, to deliver the goods to his Majesty, the number of soldiers escorting him was greater than the usual convoy.
It was a misunderstanding on their part.
I turned around and locked eyes with my brother Henry.
We smiled at each other.
“If you give us the cargo, we’ll at least spare your life. Hmm?”
The man tapped his longsword on his shoulder and said with a grimace.
I ignored his “suggestion” and pulled Leviathan from my bracelet.
The Demon Sword tugged at the light blue light.
The moment I pulled it out, I could see that both friend and foe had taken notice of it.
“What? You gonna do it?”
“—Fuu!”
I took a step forward and instantly cut down the three bandits behind the man.
The three of them fell down, letting go of their weapons, looking as if they didn’t know what was happening.
I looked around.
Because it happened so quickly, neither friend nor foe could react.
“Hey! Y-You guys! Do it now!”
The first one to come to his senses was the leader of the bandits.
And as soon as he gave the order, all the bandits attacked me at once.
Forgetting about stealing the cargo, they attacked me.
As expected, I was able to get their attention, so I wielded my Leviathan and cut down the bandits one by one.
As I am still the Prime Minister, I am in invincible mode will all SSS abilities.
With one slash per bandit, I cut them down one by one.
It took me less than thirty minutes to cut down all three hundred bandits.
After defeating them all, I ordered the soldiers to bind their arms with ropes and restrain them for the time being.
Brother Henry got out of the carriage and came to my side.
“Amazing, Noah. I didn’t think you’d be able to take them all down by yourself.”
“If we cause any damage, it will delay our delivery to you, His Majesty.”
“Umu. But still, you’re very good.”
Brother then nodded and complimented me.
I looked at the man who was tied up and had his knees forcefully held.
The man was bleeding profusely from his shoulders and glaring at me.
After looking at him for a while and thinking about it, I asked him.
“What’s your name?”
“Jerry Eisen-sama, the White Tiger. Remember that.”
Jerry’s reply was vigorous.
“Jerry. Do you know what you’ve done?”
“Haaa, I know what I’m doing because I’m in this business. I am prepared. Ain’t too scared of that.”
“Good resolve, but it’s pointless.”
“What?”
“By the way, how many people have you killed as a bandit?”
“Ha! What’s the point of asking that? If you plan to add to my list of crimes, give up. I’m going to be executed anyway. If you want to kill me, kill me now!”
Jerry said all at once.
The expression on his face is a face that looks as if he really isn’t afraid of dying.
...... Fumu.
I thought about it for a while and then changed the subject.
“This convoy is carrying a gift for the Emperor. In other words, it’s an imperial gift. What do you think will happen to people who try to steal the emperor’s property, so to speak?”
“You’ll get the maximum punishment of cutting your body into pieces.”
“How ......isn’t it?
Jerry was clearly confused, perhaps because the words were unfamiliar to him.
“It’s a method of execution in which the torso is sliced up and down, not the neck. If you avoid the heart and cut the torso, you won’t die right away. It takes about thirty minutes for the victim to die in agony.”
“The pain of being cut in two is three minutes. And then, slowly, you lose the ability to move or even struggle. But the pain stays with you.”
Jerry went pale, his teeth didn’t meet, and he began to quiver.
“How many people have you killed?”
“I-I didn’t kill any.......”
In an instant, his lips became pale and he answered in a trembling voice.
“Why?”
“We had a ...... famine a long time ago. Our Governor did nothing to help us. We found ourselves in a situation where we couldn’t make ends meet, so we turned to this kind of work. ......”
“You mean you were unwilling to do this?”
“That’s ...... true. No one likes to do this kind of work if they can work properly. ......”
Jerry, who answered, gradually turned his head down.
The words were full of emotion.
I paused for a moment and then asked with a straight face,
“Do you want to start over?”
“—-!”
Jerry looked up and stared at me with a look of disbelief on his face, not knowing what had just happened.
I looked around Jerry.
He and his subordinates were all staring at me with the same look.
“If you’re just a bandit, I can have you sentenced to a term of service.”
As Minister of Justice, I spoke while remembering the Imperial Law.
Not just for bandits, but for young people who are considered to be barely worthy of death.
“The punishment is to literally throw you into the army and make you fight in the frontier. Depending on the merits of your service, your crimes may be cleared up and you may even be promoted.”
“Well, is there such a thing!”
Jerry’s eyes light up again. He bit into my speech.
“I have no reason to make this up—-so, if you do well in the war, I’ll remove your name. So what do you want, a do-over? Or death?”
When confronted with the two options, Jerry and his men.
Without hesitation, they bowed to me with such force that they slammed their foreheads into the ground.
As it was, I split up some of the soldiers and sent Jerry and the rest of the bandits to Nisir.
After seeing them off, my brother, who had been silently listening to me the whole time, said.
“You’re quite a speaker, aren’t you?”
He said to me.
“The way you threatened him about cutting the body, frightened him, and then tore it all down at once was brilliant. But is it really worth the trouble?”
“People are treasure and hope, brother.”
“Even that one.”
“Fuu, it’s great that you can say that much.:
After parting ways with my brother, I returned to Nisir’s compound, arranged for additional soldiers to escort me, and took care of Jerry.
Jerry and the others were pleased.
What I offered them was a chance to turn their lives around, so to speak.
Of course, they could die, because they were fighting as soldiers.
But the Empire is a nation of warriors, and merit surpasses all achievements.
If they could survive and make a mark in the war, it would not be a dream to become a nobleman.
Jerry and the others all thanked me persistently for offering them a second chance to turn their lives around.
After that was taken care of, Cecily, the reception maid, came into the study.
“Master. There’s a man here to see you who calls himself Lawrence.”
“Lawrence, huh. Send him in.”
Cecily left and Lawrence came in a few moments later.
As soon as Lawrence entered the room, he got down on one knee and bowed to me.
I got up from my chair and pulled Lawrence’s arm to stand him up.
“Are you feeling okay now?”
“Thanks to His Highness the Thirteenth, I’m fine now. I don’t know how to thank you for coming to my rescue in person.”
“Don’t worry about it. What are you going to do now? How would you like to be my subordinate?”
“I’m sorry. But I am someone who is serving Pascal-sama.”
I frowned.
And I said exactly what I was feeling at the moment.
“I am disappointed in you.”
“Eh?”
Why so suddenly? Lawrence had such a surprised look on his face.
“You are a capable man. Don’t be modest. I’ve done a lot of research.”
“Ha. ......”
Lawrence bowed his head.
“You are a capable person who can do a lot for the people. So why are you so obsessed with something you don’t need?”
“Because betraying Pascal-sama is ......”
“You don’t wish to be the traitor, you say. That’s self-interest, isn’t it? It’s called valuing one’s reputation.”
“If Pascal is a man who does something for the people, that’s fine. But he’s a man who doesn’t give a damn about the people. You know that, don’t you?”
“I’m saying I’m disappointed that you would go back to a man like that because you don’t want to be called a traitor. That’s why I said I was disappointed.”
I sighed.
“Forget it, you can go wherever you want.”
Right after I said that and turned myself around, Lawrence quickly got down on his knees.
He put his hands on his knees and slammed his head on the floor.
“I was ...... I was wrong.”
“Your Highness is right, I was ...... thinking about my own fame before I knew it. Before I knew it, I was ...... no, that would be an excuse.”
“I was awakened by His Highness’ speech. His Highness is the one who should truly be served. Please allow me to join your direction, even though I am a man like this!”
I beg you! He slammed his forehead on the floor with a thud.
“You work for the people, do you not?”
“Yes!”
“All right, I forgive you.”
“–! Thank you very much!”
The status in the corner of my eye was still stuck at SSS, though.
Well if it wasn’t, the status would have gone up for sure.
Such a man has joined me. |
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} | 暗殺されかけて、弱り切ったロレンスは息子のライナスに任せた。
もう少し遅かったらそのまま死んでいたのだが、あのやり方は外傷を作らないように自然死に見せかけるものだ。
それが間に合った、と言うことは、弱っているがケガはない、という事でもある。
助かりさえすれば、後は静養すれば良いだけ。
そんなロレンスは息子に任せて、俺はパスカルに落とし前をつけさせるために向かった。
パスカルの屋敷はニシルの街中にあって、そこそこ立派な建物だ。
屋敷の表には当たり前のように門番がいるが、俺は構わずスタスタと近づいていく。
「止まれ! 何者だ!」
門番は職務に忠実で、俺に槍を突きつけながら誰何してくる。
「パスカルはいるのか?」
「代官様を呼び捨てだと!? 何様のつもりだ」
「ノア・アララートだ」
「ノアだかなんだか――あ、アララートだってぇ!?」
直前まで活きが良かった門番は、はっとして顔がみるみる内に青ざめていった。
俺の顔は知らなくても、アララートという皇族の名字はさすがに知っているようだ。
そして、俺が封地入りしたこともどうやら知っているようだ。
「も、もしかして......下......」
「は、はい! 屋敷の中に!」
「ん」
俺は頷き、門番の横をすり抜けて中に入った。
ポカーンとするそいつを置いて、ズンズン屋敷に近づいていく。
正門の前あたりにやってくると、今度は別の人間、格好からして執事らしき男と遭遇した。
さすがに執事の男は俺の顔を知っているらしく、名乗る前から慌てて膝をついた。
「殿下がお越しとは知らず、失礼を――」
「パスカルはどこだ?」
そいつの台詞を遮って、進みながら聞く。
執事は慌てて立ち上がって、俺の後ろについて来た。
「こ、この奥でございます。今お呼び致しますので、応接間でお待ちください」
俺はそのまま進み、屋敷の中に入った。
男が言った「奥」に向かっていく。
途中で何人もの使用人とかメイドとかとすれ違ったが、執事が血相を変えながらも、貴顕相手にする態度で俺についてくるのを見て、誰も俺の事を止めようとはしなかった。
奥の部屋に入ると、そこではパスカルが服を半分はだけさせた、娼婦のような女といちゃついていた。
酒を飲み、ごちそうを食べて、女と戯れる。
いかにもな楽しみ方をしていた。
俺が部屋に入ると、パスカルは不機嫌そうな顔をした。
「明日の朝まで誰も入るなって言っただ......ろ............」
そう言いながらこちらを見るパスカル。
そいつは俺の姿を認めるや否や、あんぐりと言葉を失った。
「こ、これはこれはノア様。見苦しい所を――」
「御託はいい。あいつを口封じしようとしたな」
「そ、そのようなことは。何故私がロレンスの口を封じねばならないのでしょうか」
「俺はロレンスだと言ってない。お前とロレンスの今の関係は、百歩譲って代官と犯人だ。普通なら口封じで連想するような関係じゃない」
「うっ......」
息を飲むパスカル。
そのままガクガクと震え始めた。
「......バハムート」
「こいつを懲らしめろ」
俺はそう言い、鎧の指輪をリンクさせて、バハムートを具現化させる。
広い代官の屋敷の部屋は、その出現に狭苦しく感じた。
それだけの巨体、それだけの存在感。
「廃人にならない程度に、こっぴどくな」
『命は?』
俺は首を振った。
「人は宝......そして希望だ。例えこんなのでも、将来化けないとも限らん」
『さすが我が主。主の深意を解せず申し訳ない』
「後は任せた」
最後まで震え続け、逆ギレすらも出来なかったパスカルをバハムートに任せて、俺は屋敷から立ち去った。
屋敷からは、この世のありとあらゆる苦痛が凝縮されたような悲鳴が、途切れなく聞こえ続けて来た。
夜、屋敷の内苑。
戻って来た俺は、静かに読書していた。
色々やるためには知識が必要。
俺は、暇さえあれば書物を読み耽っていた。
その俺の向かいで、座っているのはオードリー。
給仕の合間は座ってていいと、俺が命じたからだ。
「ノア様」
「ん?」
ふと、オードリーが俺の名を呼んだ。
何事かと本を置いて、顔を上げて彼女に目を向ける。
「折り入ってご相談が」
「なんだ、言ってみろ」
「お爺様からお願いするように言われたのですが。私の妹、アーニャをノア様の側室に取り立てていただきたい、と」
「ふむ」
俺は本を置いた。真っ直ぐオードリーを見た。
貴族にとって、別段珍しい話ではない。
むしろ、一部の状況下では当たり前の事だ。
貴族同士の結婚は家を結びつけるのともう一つ、血を継承させるという重要な意味を持つ。
正室がどうしても子供が出来ない時は、血の繋がった妹を側室にして、妊娠――つまり世継ぎを産む確率を上げる行為がよく取られる。
珍しくもない行為だ。
「わかった。俺に異論は無い」
「本当ですか!?」
「ああ。お前も、側室の中に気心の知れた妹がいた方が気が休まるだろ」
「ありがとうございます......」
オードリーは嬉しそうに、はにかんで俯いてしまった。
「それはいつになるんだ?」
「ノア様の首肯が得られれば、すぐにでもとお爺様が」
「よほど俺の長子を雷親王の血縁にしたいみたいだな」
今の俺は正室のオードリー一人だが、皇族だからこの先側室は着々と増えていくだろう。
皇帝と違って、親王の跡継ぎはそこまで大事ではない。
はっきりと血が繋がってさえいればいいという考えがある。
故に、長男が継ぐ事が皇帝のそれに比べて比較的多い。
「お爺様のお手紙を見て、感じたんです」
「お爺様、すごくノア様の事を気に入ってます。認めてます」
「認めてるのか」
「はい! あのお爺様がそこまで認めた人って......ほとんど知りません」
オードリーはそう言って、心酔しきった目と上気した顔で俺を見つめた。
「ノア様......すごいです!」
皇帝の避暑地の別荘は、名目上でこそ別荘とされているが、妃達やその世話をする宦官、料理人やその他の雑役をこなす使用人達。
そして、警備の兵士。
それら諸々を入れると、全部で優に一千人は超えて、実質ちょっとした街の規模だ。
その別荘から封地に戻る郊外の道。
雷親王インドラは馬車に乗って、姿勢を正したまま地平線を見つめていた。
頭の中で思っているのは、別荘で皇帝としたやりとりの内容。
「三人、か......」
かなり遠回しな言い方だったが、インドラは皇帝の口調から、跡継ぎ――つまり次の皇帝の候補は三人まで絞られたと分かった。
王ヘンリー。
王オスカー。
そして、十三賢親王ノア。
その事はわかる。
インドラの目から見ても、この三人は、残ってい人近い皇帝の息子の中で、特に優秀な者達だ。
次の皇帝は、確実にこの三人から選ばれるとインドラは踏んでいる。
そして、その中でも。
十三賢親王が一歩――いや。
大幅にリードしている、とインドラは思った。
「すごいぜボウズ。皇帝があそこまで、父親の顔じゃなくて、皇帝の顔で親王を褒めたのは初めて見るぞ」
後継者レース、インドラの目には、ノアが大本命になっているように見えた。
だから、彼は早馬を飛ばして、孫娘のオードリーに手紙を出した。
もう一人の孫娘、アーニャもノアの側室にしようと動いた。
インドラという老人は、勝負師的な性格をしている。
ここだ、と思ったら全賭けで勝ちに行く性格だ。
インドラは今、確信していた。
次の皇帝は、間違いなくノアになると、確信していた。 | After almost being assassinated, a weakened Lawrence entrusted his son, Linus, with the task.
If it had been a little later, he would have died, but the way he did it was to make it look like a natural death so as not to cause any external injuries.
The fact that it happened in time also meant that he was weak but not injured.
As long as he survived, all he had to do was rest.
I left Lawrence to his son and headed to Pascal to make him pay for what he had done.
Pascal’s mansion was located in the city of Nisir, and it was a rather magnificent building.
There was a gatekeeper at the front of the mansion, but I didn’t care and walked up to him.
“Stop! Identify yourself”
The gatekeeper was faithful to his duty, pointing his spear at me and asking me who I was.
“Not showing respect to the Governor!? Who the hell do you think you are?”
“Noah Ararat.”
“You’re Noah – A-Ararat!?”
The gatekeeper, who had been very energetic until just before, flushed and his face grew pale as quickly as it appeared.
Even if he didn’t know my face, he seemed to know the surname of the royal family called Ararat.
And apparently, he knows that I’ve entered the fief.
“Could it be that ...... His Highness the Thirteenth ......”
“Is Pascal there?”
“Y-yes! He’s in the residence!”
“Hmm”
I nodded, slipped past the gatekeeper, and went inside.
Leaving him puzzled, I walked closer and closer to the mansion.
When I came to the front of the main gate, I encountered another person, this time a man who looked like a butler from the way he was dressed.
As expected, the butler seemed to know my face, and before I could say my name, he hurriedly kneeled down.
“I didn’t know Your Highness was coming, please excuse me...”
“Where’s Pascal?”
I interrupted him and asked as I continued.
The butler hurriedly stood up and followed behind me.
“I-In the back here, sir. Please wait in the parlor, I will call him now.”
I went on my way and entered the house.
Heading towards the “back” that the man had mentioned.
I passed a number of servants and maids on the way, but none of them tried to stop me as the butler followed me with a bloody but noble attitude.
I entered the back room where Pascal was flirting with a half-dressed prostitute.
Drinking, feasting, and playing with women.
He was enjoying himself in a very typical way.
When I entered the room, Pascal looked unhappy.
“I told you not to let anyone in until tomorrow morning. ...... and ............’
Pascal looked at me as he said this.
As soon as he recognized me, he was speechless.
“T-This is, this well Noah-sama. An unsightly place...”
“I don’t care what you say. You tried to shut him up, didn’t you?”
“No, I didn’t. Why would I want to shut Lawrence’s mouth?”
“I didn’t mention Lawrence. Your current relationship with Lawrence is that of a Governor and a criminal. Not a relationship one would normally associate with silence.”
“Ugh. ......”
Pascal gulped.
He began to tremble.
“...... Bahamut.”
{Yes}
“Punish this one.”
I said and linked my Armor Ring to make Bahamut materialize.
The room of the spacious Governor’s mansion suddenly felt cramped with his appearance.
That’s how big it is, that’s how much presence it has.
“Just enough to keep him from becoming a cripple.”
{His life?}
I shook my head.
“People are treasure ...... and hope. Even if they are like this, you can’t be sure they won’t turn into something else in the future.”
{That’s my Lord. I apologize for not understanding the depths of the Lord’s meaning.}
“I leave the rest to you.”
Pascal, who was trembling until the end and couldn’t even lose his temper, was left in the hands of Bahamut, and I left the house.
From the mansion, screams that seemed to condense all the pain in the world continued to be heard without interruption.
Night, in the inner garden of the mansion.
I came back and was quietly reading.
Knowledge is necessary in order to do many things.
In my spare time, I read a lot of books.
Across from me sat Audrey.
I had instructed her to sit there between serving.
“Noah-sama”
“Hmm?”
Audrey then called out to me casually.
I put my book down and looked up to see what was going on.
“I have something I need to discuss with you.”
“What is it? Tell me.”
“My grandfather told me to ask you for a favor. My grandfather asked me to ask you to take my sister Anya to be Noah-sama’s concubine.”
I put the book down. I looked at Audrey straight in the eyes.
This is not an unusual thing for a nobleman to do.
Rather, it is commonplace under some circumstances.
Marriage between noble families has another important meaning, to unite the families and to pass on the blood.
When the main family is unable to have children, they often take a sister who is related to the main family as a concubine to increase the probability of pregnancy, or in other words, the chance of having an heir.
It is not an uncommon practice.
“If you incest, then. I have no objection.”[TN: He says ‘わかった(wakatta)’ ]
“Is that true!?”
“Yeah. You’d be more comfortable with your sister as a concubine.”
“Thank you very much, .......”
Audrey giggled and turned over in delight.
“So when is that going to happen?”
“As soon as Noah-sama approves, Grandfather will be on his way.”
“It looks like Thunder Prince really wants my firstborn to be related to him.”
As of now, I have only one regular wife, Audrey, but since I am a member of the royal family, the number of concubines will steadily increase in the future.
Unlike the Emperor, the successor of the Prince is not that important.
They believe that as long as they are clearly blood-related, they are fine.
Therefore, the eldest son is more likely to succeed compared to the successor of the Emperor.
“I felt it when I saw my Grandfather’s letter.”
“Grandfather thinks very highly of you, Noah-sama. He approves of you.”
“He approves, huh”
“Yes! I don’t know many ...... people that Grandfather approves of that much.”
Audrey then looked at me with an upturned face and fascinated eyes.
“Noah-sama ...... is amazing!”
The Emperor’s summer resort is nominally a villa, but there are concubines, eunuchs to look after them, servants to cook and perform other miscellaneous tasks.
And then there were the soldiers on guard.
If you include all these people, the total number of people exceeds ,, which is practically the size of a small town.
On the outskirts of the resort, returning to the fief.
Indra, the Thunder King, was riding in a carriage, staring at the horizon with his posture straight.
In his mind, he is thinking about the exchange he had with the emperor at the resort.
“Three people, huh.......”
It was a rather roundabout way of saying it, but Indra could tell from the Emperor’s tone that he had narrowed down the candidates for the next emperor to three.
Henry, the fourth Prince.
Oscar, the Eighth Prince.
And Noah, the Thirteenth Wise Prince.
He could understand that.
From Indra’s point of view, these three were the most outstanding of the nearly twenty remaining sons of the Emperor.
Indra is certain that the next emperor will be chosen from among these three.
And among them.
The th Wise Prince is one step ahead of the rest.
Indra thought of him as a great leader.
“You’re something else, Boy. It’s the first time I’ve ever seen the Emperor praise a Prince so much from the standpoint of the Emperor, not a Father’s.”
The successor race, in Indra’s eyes, seemed to be in Noah’s favor.
So he dashed off his fast horse and wrote to his granddaughter, Audrey.
Anya, his other granddaughter, also moved to make Noah’s concubine.
The old man, Indra, had a gambler’s temperament.
When he thinks he is in a certain place, he will go all out to win.
Indra was now convinced.
He was sure that Noah would be the next emperor. |
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} | アリーチェの歌が終わった後も、客は店から出ようとしなかった。
大半が興味津々、って感じで事態の成り行きを見守るって感じだ。
というのも、店のすぐ外でここの代官がガクガク震えながら土下座していた。
この店は入り口を常時開け放っているタイプで、店の中からそれ瞭然だ。
代官が死ぬほど怯えながら土下座している。
そんな、年に一度――いや、下手したら一生に一度立ち会えるかどうかという珍しい場面は、客達の野次馬根性を大いに刺激した。
俺は席に着いたまま、茶をゆっくり啜っている。
入り口が開け放ったままのせいで、外にいる土下座代官と、その側についている部下らしき男のやりとりが聞こえてくる。
「だ、だめだ......おお、俺はもうダメだ。ロレンス、なんとかしてくれぇ」
「なりませんウィル様。ここまできて逃げ出してはかえってご不興を買います」
「でで、でも。じゅ、王殿下だぞ」
「だとしても出ていかないと逆に最悪の事態になります。私がフォローしますから、さっ」
聞こえてくる声は、代官の――おそらくウィルという男の怯えていながらもはっきりと聞き取れる程の大声。
それとその部下の――ロレンスという名の、低く抑えた男の声。
苦境の中でこそその人の真価が問われる。
そんな事を何となく思いながら待っていると、ウィルとロレンスが店の中に入ってきた。
ウィルは俺の前に土下座して頭を床に叩きつけ、ロレンスはその三歩後ろで、両膝をつきながらも顔をあげて俺を見ていた。
「ぱ、ぱぱ、パスカル・ウィル、十三親王殿下にお目通り、も、もも申し上げます」
「パスカル・ウィルか。お前がここいらの代官だな」
「は、はっはい!」
「俺が任命した覚えはないけど、任命したのは誰だ?」
「へ、へへ陛下から直接拝命いたしました」
「なるほど」
代官パスカル・ウィルは見ていて可哀想になるくらい怯えきっていた。
床にまるで小動物のようにうずくまり、入ってきてから一度も顔を上げていない。
帝国法に照らせば、パスカルはたいした罪ではない。
アリーチェのような人間を招いて私的な場所で歌わせるのはよくあることだ。
それを無理強いしたというだけ。
罪は罪だが、最大限重く見積もったところで減俸一ヶ月かそこらの話だ。
だから、そこまで怯えきってしまう事はないのだが。
「......パスカル。お前は自分の罪を分かっているのか?」
「は、はい! ゆ、ゆゆ、許されない事なのは分かっております」
そこまでではないんだがな。
俺はため息をついた、するとパスカルがうずくまったままビクッと震えた。
その反応にまたため息をついて。ふと、その後ろにいるロレンスの姿が目に入った。
怯えきっているパスカルと違って、ロレンスは終始、落ち着いている。
「お前は、ロレンスといったか」
俺に聞かれて、ロレンスは初めて頭を下げた。
そしてすぐに顔を上げて、俺の目を真っ直ぐ見つめながら答えた。
「ロレンス・バルテンと申します。ウィル様の書記官を拝命しております」
「バルテン、西の出身か?」
「父が」
「なるほど」
気後れせず、かといって失礼もなく。
泰然と受け答えしているロレンスに俺は好感を持った。
そういえば、さっきもパスカルにアドバイスをしていたっけ。
「......パスカル」
またこっちに来た! と言わんばかりに声が上ずるパスカル。
「自分を弾劾する文書を作ってこい」
「はい! ..................えっ?」
反射的に答えてから、意味が理解できなくて、きょとんとなったパスカル。
おそるおそるながら、そして伏せたまま、初めて顔をあげて俺の顔色をうかがった。
「弾劾......自分を? ですか?」
「そうだ、何が間違っているのか、どう罰するのが妥当なのか。明日のこの時間までに作って、俺の所に届けろ。話はそれからだ」
「どうした、それとも今俺が裁いた方がいいか?」
「そ、それは......」
未だに意味を理解していないパスカルを遮るような形で、ロレンスが頭を下げて、命令を受け取った形にして、パスカルを連れて立ち去った。
代官がいなくなった後、野次馬達もざわざわしながら店から立ち去った。
「ありがとうございます」
客が全員出ていって、店主が入り口の門を閉ざした後、離れた所にいたアリーチェがやってきた。
「大丈夫だったか?」
「はい。殿下のおかげです。いつもありがとうございます」
しばし、沈黙が流れる。
その沈黙に負けてしまうような形で、俺がアリーチェにきいた。
「なんでそんな事をさせたのか聞かないのか?」
「私は歌を歌い続けるだけ」
アリーチェは躊躇なく答えた。
「それが殿下に対する一番の恩返し、それ以外の事は口を挿むべきではないと思っています」
「お前のそういう所が好きだ」
「殿下がそうおっしゃるからには、何か
「そこまで深い訳じゃない」
俺はそう前置きして、アリーチェに説明した。
「曲がりなりにも陛下の任命、それにたいした罪ではない。自分を弾劾――ようは反省文だ。それで何が悪かったのかが分かればそれでいい、だめならその時処分する。言い訳と諂いしかなかったら交代だな」
「そこまでお考えになっていたとは......さすがでございます」
「それより、もう一曲歌ってくれないか」
「喜んで!」
俺はアリーチェの歌を聴きながら、さあどうくる、と
次の日、屋敷の外苑。
封地入りした俺は、皇族の伝統に倣って、屋敷を内苑と外苑の二つではっきり分かれるように改装させた。
内苑は純粋な住居の部分、そこは俺と正室であるオードリー、そしてメイドに宦官しか入れない。
皇帝陛下の後宮に準じた造りで、皇族の血の純潔性を守るため普通の男は一切立ち入ることが出来ない。
一方の外苑は書斎や応接間などがあって、政務や客をもてなす事とかはこっちで行う。もちろん普通の男も入れる。
その外苑の書斎で、ドン・オーツと向き合っていた。
ドンは三年前のあの一件から俺の部下になった。
俺は椅子に深く腰掛けて、ドンは俺の前に立って、二通の文書に目を通していた。
「殿下の予想通りでしたな」
ドンが読んでいたのはパスカルの「反省文」だ。
それが二通。
片方は十三親王の御贔屓だとは知らず、無礼を働いてしまった。処分はいかようにも。という感じの内容だ。
もう片方は嫌がる庶民――つまりアリーチェに無理強いをしたことを反省し、罰俸と降格を申し出る内容だ。
正式に送られてきたのは後者で、前者は俺が極秘に手に入れさせた物だ。
「あそこからの公文書は何回も見ております。殿下に無礼云々のはパスカルの直筆で、庶民に無理強いなのはロレンスの代筆ですな」
「さすがでございます殿下。殿下の予想通り、あのロレンスという男、切れ者ですな」
予想通りだった。
昨日のパスカルとロレンスの反応を見て、まずパスカルは命乞いか、的外れに等しいものを出してくると予想していた。
案の定そうだった。
俺はあの時名乗ってない。
名乗ってなければ俺に無礼云々は罪に問われない。
おそらく、パスカルがそれをまず出そうとして、ロレンスに止められて、それで罰俸と降格を申し出た文面になったんだろう。
昨日の二人の反応から得た予想通りだ。
「して、いかが処置しますか」
「罰俸だけでいい、元からその程度の話だ」
「よろしいのですか?」
「ああ、部下の進言を聞き入れる事ができるのなら、それはそれで悪くはない」
「寛大なる御心、さすがでございます」
「それと、ロレンスの所に行ってくれるか」
「はい。どのようなご用件で」
「これを渡してこい」
俺は執務机から両手で持つ程度の箱を取り出して、ドンに手渡した。
「これは?」
「フワワと指輪の一部を使って作った箱だ。一旦鍵を掛けてしまえば、もう俺にしか開けることが出来なくなる」
「はあ......?」
なんでそんな物を? って首を傾げるドン。
「ロレンスの方が使えるのは間違いない。だから預けるんだ、何かあった時に俺に密告するための道具を」
「なるほど、内部告発とかの為に」
「そういうことだ」
「さすがでございます!」
ドンはそう言って、羨ましそうに箱を見た。
「どうした」
「いえ、これを頂くのは名誉だな、と」
「名誉、か」
俺はふっ、と冷笑した。
「違うのですか?」
「いいや、これを見ろ」
俺は机の中からもう一つ箱を取り出した。
ドンに渡したのと同じ箱、しかしボロボロになっている箱だ。
「それは......何者かが中身を盗もうとしたのですか?」
「いいや、これはもらったやつが見せびらかしたからだ」
「見せびらかした」
同じ言葉を、平坦なトーンで繰り返すドン。
「フワワに監視してもらってる、これを本来の目的に使わないで、俺にもらったと、信用されてるんだぞと自慢してまわると、その場で自壊する仕組みだ」
「――なるほど! すごい仕組み、いえ、すごい理念ですな」
「そういう人間は使う気になれないからな」
俺がそういうと、ドンは同意を示して、箱を届ける為に書斎を出た。
俺は箱をしまった。
俺の信頼を裏切った人間のことは、もはや名前も顔も思い出せない。
ロレンスは信頼出来る男だろうか。
俺はちょっと期待していた。 | Even after Alice’s song was over, the customers didn’t want to leave the restaurant.
Most of them seemed to be curious to see how things would go.
This was because the governor was on his knees, trembling and shaking, right outside the store.
The entrance to this store is always open, and it’s obvious from inside the store.
And the governor was on his knees, scared to death.
Such a rare scene, which you can only witness once a year, or maybe once in a lifetime, stimulated the onlookers’ guts.
I remained seated, sipping my tea slowly.
Because the entrance was left open, I could hear the exchange between the kneeling governor outside and the man who seemed to be his subordinate at his side.
“N-No ...... Ohh, I’m screwed. Lawrence, please do something.”
“I can’t, Will-sama. It would be disgraceful for you to run away after all this time.”
“But, but. H-His Highness the Thirteenth Prince.”
“Even so, if you leave, the worst thing that can happen to you will be the opposite. I’ll follow up with you, so get going.”
The voice I heard was the terrified, but clearly audible, the voice of the Governor- probably a man named Will.
And the voice of his subordinate, a low, subdued man named Lawrence.
These are the two.
The true value of a person is tested in a difficult situation.
As I waited, vaguely thinking about this, Will and Lawrence walked into the store.
Will was on his knees in front of me, banging his head on the floor, and Lawrence was three steps behind him, on both knees, looking at me with his face up.
“Pa-pa-pa-Pascal Will, meet His Imperial Highness the Thirteenth, and extend my best wishes.”
“Pascal Will. You are the representative of this area.”
“Y-Yes!”
“I didn’t remember appointing you, so who did?”
“H-His Majesty appointed me directly, sir.”
Governor Pascal Will was so frightened that it was pitiful to watch.
He was cowering on the floor like a small animal and hadn’t looked up once since he entered.
In the light of imperial law, Pascal was not guilty of much.
It was common practice to invite someone like Alice to sing in a private place.
It’s just that he forced her to do it.
A crime is a crime, but at the most serious estimate, it’s only a month’s pay cut or so.
So there is no need to be so frightened.
“...... Pascal. Do you know what your mistake is?”
“Y-Yes! Something that’s n-no-not allowed to do.”
It’s not that far off.
I sighed, and Pascal was still trembling as he cowered.
I sighed again at his reaction. Suddenly, I saw Lawrence behind him.
Unlike the frightened Pascal, Lawrence was calm and collected the whole time.
“You are Lawrence, huh?”
“Yes”
When I asked, Lawrence bowed his head for the first time.
And then immediately raised his head, looked me straight in the eye, and answered.
“My name is Lawrence Barten. And I am Master Will’s secretary.”
“Barten, are you from the West?”
“My father was.”
He was not self-conscious or rude.
I liked Lawrence’s calm acceptance of the question.
By the way, I remembered that he had given advice to Pascal a while ago.
“...... Pascal.”
I am called again! His voice rose as if to say such.
“Go and prepare a document to impeach yourself.”
“Yes! .................. Ehh?”
Pascal reflexively replied, then puzzled over the meaning.
While fearful and down, he raised his head for the first time and looked at me.
“Impeach ...... yourself? Is it?”
“Yes, what is wrong and how is it appropriate to punish you? You have until this time tomorrow to produce it and deliver it to me. Then we’ll talk.”
“What’s the matter, or do you want me to judge you now?”
“No, that’s .......”
Lawrence bowed his head as if to interrupt Pascal, who still did not understand the meaning of the word, and, taking the form of having received the order, he walked away with Pascal.
After the Governor was gone, the onlookers also left the store in a buzz.
“Thank you very much.”
After all the customers had left and the owner had closed the entrance gate, Alice-who had been standing at a distance-arrived.
“Are you all right?”
“Yes. Thanks to His Highness. Thank you for all your help.”
There was a moment of silence.
As if defeated by the silence, I asked Alice.
“Why don’t you ask me why I did that?”
“All I know is that I’m going to keep singing.”
Alice answered without hesitation.
“That’s the best way to repay Your Highness, and I don’t think I should say anything else.”
“I like that about you.”
“Since you say so, does it have any deeper meaning?”
“It’s not that deep.”
I explained this to Alice.
“He was appointed by His Majesty in spite of all odds, and it wasn’t much of a crime. Impeach yourself – it’s a letter of remorse. If he finds out what he did wrong, that’s fine, if not, we’ll deal with it then. If there are only excuses and flattery, he’ll be replaced.”
“I’m impressed that you thought that far ahead .......”
“Now, will you sing one more song for me?”
“With pleasure!”
As I listened to Alice’s song, I was expecting the man’s response, wondering what would come of it.
The next day, in the outer garden of the mansion.
When I entered the estate, I had it remodeled so that it could be divided into two distinct areas, the inner garden, and the outer garden, following the tradition of the royal family.
The inner garden was purely residential, and only I, my wife Audrey, the maids, and eunuchs were allowed in there.
It was built like the emperor’s palace, and in order to protect the purity of the royal blood, no ordinary man was allowed to enter.
The outer garden, on the other hand, has a study and a reception room, where political affairs and entertaining guests are conducted. So of course, regular men can enter.
In the study of the outer garden, I was facing Don Oates.
Don had been my subordinate since that incident three years ago.
I was sitting deep in my chair, and Don was standing in front of me, looking over two documents.
“It was as you expected, Your Highness.”
What Don was reading was Pascal’s “Reflections Statement”.
One was that he did not know that the other party was favored by the th Prince and he was rude. The punishment is whatever I want it to be. That was the content of the letter.
The other was a letter of regret for forcing himself on a commoner, i.e., Alice, and a request for punishment and demotion.
It was the latter that was officially sent to me, and the former that I had them obtain in secret.
“I’ve seen the official documents from there many times. The one about disrespecting His Highness is in Pascal’s handwriting, and the one about forcing the common people is in Lawrence’s handwriting.”
“That’s very good, Your Highness. As you predicted, this Lawrence guy is a sharp guy, isn’t he?”
“Yeah.”
It was as I expected.
After seeing how Pascal and Lawrence had responded yesterday, I had expected that Pascal would either beg for his life or come up with something that would be off the mark.
Sure enough, he did.
I didn’t identify myself at that time.
If I hadn’t told him my name, he wouldn’t be guilty of being rude to me.
Perhaps Pascal had tried to give it out first, and Lawrence had stopped him, which had led to the text offering a punishment and demotion.
That’s what I expected from their reactions yesterday.
“So how do you want to handle it?”
“Only the salary cut punishment, that’s about it.”
“Are you sure?”
“Yes, he is someone who is willing to listen to the advice of his subordinates, it is not a bad thing.”
“That’s very generous of you, sir.”
“And would you go to Lawrence for me?”
“Yes, sir. And what should be the business.”
“Go give him this.”
I took a two-handed box from my desk and handed it to Don.
“This is?”
“It’s a box I made from a piece of Fuwawa and my Ring. Once locked up, only I will be able to open it.”
“What’s ......?”
Why would you want to do that? Don tilted his head.
“There’s no doubt Lawrence can use it better. So I’ll leave it to him so he can inform me if something goes wrong.”
“Ah, I see, for informing on things.”
“That’s what it is.”
“I’m impressed!”
Don said, looking at the box enviously.
“What’s up?”
“No, I just thought it would be an honor to receive it.”
“An honor, huh?”
I laughed scornfully.
“Is it different?”
“Well, have a look at this.”
I pulled out another box from my desk.
It was the same box as the one I had given Don, but it was wrecked.
“Did ...... someone try to steal the contents?”
“No, this is because the guy I gave it to was showing it off.”
“Showing off.”
Don repeated the same words in a flat tone.
“If you don’t use it for its intended purpose and go around bragging that I gave it to you and that I trust you, it will destroy itself on the spot.”
“—-Oh, I see! That’s a great mechanism, no, that’s a great idea.”
“I don’t want to employ people like that.”
Don agreed with me and left the study to deliver the box.
I put the box away.
The person who had betrayed my trust, I could no longer remember his name or face.
I wondered if Lawrence was a man I could trust.
I had high hopes. |
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} | 俺は、じっと魔剣を見つめた。
ヘンリー兄上の話を聞いて、こいつを屈服させてから、気のせいかよく手に馴染むようになった。
そうなると、別の考えが出てくる。
「何を考えている」
「せっかくここまで屈服させたんだから、このまま持ち歩きたいと思って」
「なるほど。しかしそれは難しいな。魔剣としてのそいつを押さえ込んだのはすごいが、物理的に大きすぎる。腰に下げるのはもちろん、背中に背負っても長すぎる」
「まあ、もう何年か待て。陛下も、お前の他の兄も皆背が高かった、お前もすぐ伸びる」
と言いつつも、諦めきれない俺だ。
それほど、振った後のレヴィアタンのなじみ具合がすごい。
その時だった。
脳内に声が響いた。
何かが聞こえてくるそれは人間の言葉じゃない、だが、不思議と「意味」が理解できてしまう。
「どうした、変な顔をして」
「失礼します兄上」
どうなるか分からないから、ヘンリー兄上に断りを入れた。
そうしてからレヴィアタンを握り締め、目を閉じて念じる。
俺が欲するように、こいつが望むように。
「むぅ」
ヘンリー兄上が呻く。
目を開ける、手に持っているレヴィアタンを見る。
魔剣は縮んでいた。
さっきまの俺には大剣サイズだったレヴィアタンは、フォルムそのままに縮んで、子供サイズだがいい感じの長剣に縮んだ。
「うん」
何度も握りなおし、感触を確認。
フィット感は相変わらず――いやさっき以上だ。
試しに腰元に持ってきてみる、ちょうどいい感じの長さだ。
一通り確認してから、顔を上げてヘンリー兄上に言った。
「これで持ち歩けます」
「......」
「兄上?」
何故か兄上がポカーンとしていた、俺は首を傾げて下から顔をのぞき込んだ。
「......ああいや、予想外すぎてな」
「予想外ですか?」
「その魔剣のサイズを変えたのは、ノア、お前なんだろう?」
「前代未聞だ。国宝というていで隔離し年、その前の記録も残っているが、こんなことはなかった。ただただすごい――脱帽だ」
「こいつが提案してくれたからですよ」
ヘンリー兄上は微笑んだ。
「そこまで狂犬を手懐けていると言うことか」
「そうですね、そうなります」
兄上はますます感心した目で俺を見た。
何はともあれ、これでレヴィアタンを装備できる。
これからは持ち歩こうと思った。
日が沈んで、兄上が帰るので、見送りのために部屋を出た。
すると応接のメイドがやってきて、まずはヘンリー兄上に一礼、その後に俺に報告した。
「ご主人様、相様から招待状が」
「招待状?」
「はい、今夜自宅で宴会を開くので、是非ともお越し頂きたい。とのことです」
メイドはそう言い、第三宰相の名刺と招待状を差し出した。
俺は受け取らない、こういう時貴族は自分の手で中身を読まない。
貴族の矜恃そのままに、メイドに聞く。
「時間は?」
「いつでもお越し下さい、とのことです」
こういう時の行間も、転生して六年大体読めるようになってきた。
つまり今日の主賓は俺、開始時刻は俺が到着した時間って意味だ。
そこまでの招待、しかも相手が第三宰相。
さすがに断るわけには行かない。
「兄上もどうですか?」
「私は遠慮する。騒がしいのは苦手だ」
「そうですか。わかりました」
なら一人で行こう。
メイドに下準備しろと命令だけして、ヘンリー兄上を見送るために一緒に外に出た。
兄上が馬車に乗りこんで、屋敷の外まで出るのを並んで歩いた。
「ん?」
馬車の中から外を見る兄上の視線を追いかける。
その先に、土下座している数人の男の姿があった。
ああ、例の借金取り。
そうとだけ頷いて、兄上を見送るために視線を外した。
もとより関係のない兄上も、そいつらから視線を外した。
すると。
「もうガマンならねえ! シカトこいてんじゃねえぞ!」
土下座している男の一人がいきり立った。
立ち上がって、こっちを睨む。
肩は包帯を巻いている、見た顔だ。
アリーチェの取り立てを実行してた男だ。
「てめえなんざ――」
「......」
こっちに食ってかかろうとした男、仲間の制止を振り切ってまで飛びかかろうとしたが、急に脱力して、茫然自失の顔でへたり込んだ。
それを仲間が後ろからつかみかかって、頭を地面に押しつけて再び土下座の体勢に戻したが。
「何をしたんだ?」
ヘンリー兄上は、その直前のへたり込んだのも俺がやったと察して、聞いてきた。
「失礼」
一言断ってから、兄上にも、男にしたのと同じことをした。
レヴィアタンの力を一部だけ開放した威嚇、それで男をねじ伏せた。
もちろん、兄上に向けたのはそれよりも遥かに弱いものだったが。
それを兄上も理解しているようで。
使いこなせるのか、すごいな」
最初に魔剣を屈服させた時よりも褒めてくれたのだった。
馬車に乗って、揺られること数十分。
帝都を半分横断したところで、目的地の屋敷に到着した。
馬車には十三親王の紋様が掲げられていたので、誰何されることなく、むしろ馬車の中からでも分かる位に歓迎されていた。
馬車が止まって飛び降りると、屋敷の扉が全開になって、その正面に一人の老人が立っていた。
俺の趣味じゃないが、今流行りの形にヒゲを整えている、割とダンディな初老の男だ。
第三宰相、ジャン=ブラッド・レイドーク。
複名を持つ、由緒ある名家の血筋だ。
レイドークは俺がしっかりと着地するのを見計らってから、大股で近づき、俺の前で膝をついて一礼した。
「ようこそいらしてくださいました、ノア殿下」
「お招きありがとう。今日は楽しい夜になりそうだな?」
「精一杯おもてなしさせて頂きます。ささ、中へどうぞ」
レイドークは立ち上がり、宰相の身でありながら、まるで使用人のように、俺の一歩後ろについてきた。
俺を先導にして歩き出し、屋敷に入る。
そのまま使用人の行列で出来た道を進んで、この手の屋敷には必ずあるパーティールームの扉の前に立った。
レイドークが目配せして、使用人が重たそうな扉を左右に開く――すると。
拍手の渦が巻き起こった。
パーティールームの中にはざっと数百人の、礼服やドレスを着た男女が集まっている。
それらが全員、俺に向かって拍手している。
ちょっと驚いたが、レイドークの指図だとすぐに分かった。
こうやって、俺を歓待すると言うのを形にした、まあ先制パンチのようなもんだ。
まあでも、悪い気はしない。
拍手の花道を、レイドークを従えて進む。
「あれが十三殿下なの」
「幼いのになんと凜々しいことか」
「場怖じしないどころか泰然自若とされている。さすが陛下の御子よ」
あっちこっちから聞こえてくる声の中を進む。
中央まで進むと、全員が群がってきた。
とは言え、無秩序にじゃない。
のパーティーだ、賓客も全員上流階級の者達ばかり。
だからこそ、ちゃんと序列が決まっていて、俺に挨拶する順番もあらかじめ決まっているみたいだ。
群がってきてるように見えても、実に順序よく俺に話しかけてきた。
「ところで、殿下。腰のお召し物は......以前お会いした時はなかったようですが」
一人挨拶が終わって、次の者が話しかけてくる前に、レイドークが聞いてきた。
「これか、これは皇太子殿下から賜った。レヴィアタンという」
瞬間、全員が一斉に息を飲み、その後ざわつき出す。
おそらくは全員疑問に思っている、それ故のざわつき。
そんな皆の疑問を代表するかのように、主催のレイドークが更に聞いてきた。
「レヴィアタンというと、あの?」
ここまで皆驚いてるのは知ってるって事だから、俺は肯定のニュアンスだけで返事した。
「おおお、まさかあのま――国宝が」
やっぱり魔剣って知ってるのかレイドーク。
「それを皇太子殿下から直々に」
「そういえば十三殿下の封地はアルメリア」
「なるほどそれつながりで!」
周りの声が一色であるが故に、ふとしたつぶやきでも、異質なものは目立った。
「へっ、そんなおもちゃ。どうせ偽物」
本人は小さくつぶやいただけって感覚だろうが、その一瞬で場は水を打ったかのように静まりかえった。
全員が一斉に、言葉を発した人間に注目した。
礼服を着た、二十代前半くらいの青年だ。
青年は一瞬たじろいだが、もはや後には引けないのか、顔を引きつらせながらもイヤミっぽい笑顔を作った。
ふむ、どうしてくれるか――。
瞬間、場の空気が更に一変した。
全員が一斉に青ざめた。
ドレスを着た女達に至ってはへたり込んでしまった。
全員、何かものすごい恐ろしいものを見てしまった、そんな反応だ。
「待て」
俺は小さくつぶやいた。
「お座り」の方がぴったりかもしれないが、「待て」でもいいかなと思った。
すると、空気は弛緩した。
レヴィアタンが
狂犬は狂犬のまま、忠犬になった。
故に主への侮辱に激しく反応した。
存在するだけで周りを圧倒する魔剣レヴィアタンが放った殺気が、この場にいる全員を圧した。
それはいいが、やり過ぎとも言える。
殺気から解放されてほっとしたものも多いが、まだ多くが青ざめている。
それだけの殺気を放ったのだ、レヴィアタンは。
どうしようかと思っていたら、レイドークが助け船を出してきた。
「いやはや、さすがでございますぞ殿下」
「うん?」
「今の一瞬、ここにいる全員が等しく感じたでしょう、『死』というものを。それが国宝の力ですな。そしてそれが」
レイドークはぱっと皆の方をむいて、しかし手は俺に向けて、演技掛かった紹介のような仕草をした。
「圧倒的な力すら御してしまう、十三殿下の凄さですな」
強引なまとめ、しかしそれは効果的だった。
死に直面したからこそ、心の底からの反応がでた。
俺が入場した時よりも更に盛大な拍手が起きて、全員が魔剣を飼い慣らした俺を褒め称えたのだった。 | I stared at the magic sword.
After listening to my brother Henry and bringing this thing to its knees, it started to feel more comfortable in my hand, if it was my imagination.
Then another thought came to mind.
“What are you thinking about?”
“I’ve given in to it now, so I thought I’d carry it around with me.”
“I see. But that’s hard to do. It’s great that you held that thing down as a demon sword, but it’s physically too big. It’s too long to carry it on your back, let alone lower it to your waist.”
“Well, wait a few more years. His Majesty and all your other brothers are tall, and you’ll grow up soon.”
But I’m not ready to give up.
That’s how well the leviathan blends in after swinging it.
It was then.
A voice echoed in my brain.
I could hear something, it wasn’t human language, but strangely enough, I could understand the “meaning” of it.
“What’s the matter, you look so funny,”
“Excuse me, brother.”
I didn’t know what the outcome of the process would be, so I declined to say a word to Brother Henry.
Then I tightened my grip on the leviathan and closed my eyes and concentrated on my thoughts.
The form I desire, as well as the form it desires.
“Mmm,”
Brother Henry grunts.
I open my eyes and look at the leviathan in my hand.
The magic sword had shrunk.
The Leviathan, which was the size of a large sword to my six year old me earlier, shrank in its form, shrinking into a child-sized but a good looking long sword.
“Yeah.”
I squeezed it again and again to check the feel.
The fit is still the same – or even better than before.
I brought it to my waist to try it out, it’s just the right length.
After checking it all over, I looked up and said to brother Henry.
“I’ll be able to take this with me.”‘
“....”
“Brother?”
For some reason, my brother was flabbergasted, I tilted my head and looked into his face from below.
“Oh no, I wasn’t expecting that.”
“You didn’t expect that?”
“It was you, Noah, who changed the size of that magic sword, wasn’t it?”
“This is unheard of. It’s been years since it was isolated as a national treasure, and there are records of it in existence, but nothing like this has ever happened before. It’s just amazing – I just want to take my hat off to you.”
“It’s because this guy suggested it.”
Brother Henry smiled.
“So you’re saying you’ve tamed the mad dog that much.”
My brother looked at me with increasingly impressed eyes.
At any rate, I can now equip the Leviathan.
From now on, I thought, I’ll carry it with me.
The sun was setting and I left the room to see my brother off as he was leaving.
The maid in the reception room came in and first bowed to brother Henry and then reported to me.
“Master, I have an invitation from the rd Vizier.
“Invitation?”
“Yes, he’ s hosting a banquet at his home tonight, and would like you to come. “
The maid said and held out the rd Vizier’s card and invitation.
I did not accept it, at a time like this nobles do not read the contents with their own hands.
I ask the maid, as a nobleman would.
“What time is it?”
“He said you’re welcome to come by anytime.”
I’ve been able to roughly read between the lines in these situations for six years since my reincarnation.
That means I’m the guest of honor today, and the start time is the time I arrived.
The invitation is that far, and the other party is the Third Vizier.
As expected, I couldn’t say no to him.
“How about you, brother?”
“I refrain. I don’t like the noise.”
“Is that so. I understand.”
Then I’ll go alone.
I simply ordered the maid to prepare and went out with her to see brother Henry off.
I walked side by side with my brother as he climbed into the carriage and walked out of the house.
“Hmm?”
I followed my brother’s gaze as he looked out from inside the carriage.
Just ahead of him, he saw several men on their knees.
Ah, those debt collectors as an example.
I nodded just so, and removed my gaze to look away from them, to see my brother off.
My brother, who was not involved in the matter in the first place, also removed his gaze from them.
Then.
”I can’t take it anymore dammit! Don’t be so cocky!
One of the guys who was on his knees stood up suddenly.
He stood up and glared at me.
His shoulders were covered in bandages, a familiar face.
He’s the guy who was collecting from Alice.
” You little–“
“....”
The guy tried to grab at me, and tried to jump at me until he was overpowered by his friends, but he was suddenly weak and slumped down with a stunned look on his face.
His companions grabbed him from behind, pushing his head to the ground and bringing him back to a kneeling position once again.
“What did you do?”
Brother Henry asked, guessing that I had done that last minute slump, too.
“Well, Pardon me,”
I didn’t say a word to him, but I did the same thing to my brother that I did to the man.
An intimidation that only partly unleashed Leviathan’s power, and that’s how I managed to make that man go slump.
Of course, the one I directed at my brother was far weaker than that.
Brother seemed to understand that as well.
“That’s...amazing how well you’re able to use it.”
He was more impressed than when I had first succumbed down the demon sword.
Riding in the carriage, we were swayed for a few minutes.
Halfway across the imperial capital, we arrived at our destination mansion.
The carriage bore the thirteenth prince’s crest, so there was no mistreatment by anyone, but rather, we were welcomed enough to be able to see it from inside the carriage.
When the carriage stopped and I jumped down, the doors of the mansion were fully open and an old man was standing in front of it.
He was a rather dandy first-timer, not my cup of tea, with a beard trimmed in the current fashion.
The rd Vizier, Jean-Brad Reydouk.
He comes from a distinguished and venerable family with two names.
Reydouk waited to see if I’d landed well before he approached me with his big stride, kneeling in front of me and bowing.
“Welcome, Your Highness Noah,”
“Thanks for having me. Looks like it’s a pleasant evening, doesn’t it?”
“I’ll do my best to entertain you, sir. Please, come in.”
Reydouk stood up and, despite being the vizier, followed a step behind me like a servant.
He walked out with me in the lead and entered the mansion.
I continued down the path made up of a procession of servants and stood in front of the door of the party room, which was a part of every mansion like this one.
Reydouk looked around, and the servants opened the heavy-looking doors to the left and right – and then.
A whirlwind of applause erupted.
Roughly hundreds of people, men and women in formal attire and dresses, were gathered in the party room.
All of them are clapping at me.
I was a little surprised, but I soon realized it was Raydouk’s cue.
This is the way they formulate the idea of welcoming me, well, like a preemptive punch.
Well, but I don’t feel bad about it.
I follow Reydouk down the flowery path of applause.
“That’s His Highness the Thirteenth.”
” Such an interesting person at such a young age.”
“Not only is he not afraid of the occasion, he is at ease and undisturbed. That’s His Majesty’s son, indeed.”
We made our way through the voices coming from all over the place.
As we advanced to the center, they all swarmed in.
Not in a disorderly fashion, though.
The party was hosted by the Third Vizier, and the guest of honor was me, the Thirteenth Prince, and all of the guests were of the upper class.
That’s why there seems to be a hierarchy and the order in which they address me has been decided in advance.
Even though they look like a bunch of people, they speak to me in a very orderly manner.
“By the way, Your Highness. As for your waistcoat....you didn’t have it on when we last met.”
After the greetings from one of them, and before the next one could speak, Reydouk asked.
“This, yes, this was given to me by His Royal Highness the Crown Prince. It’s called Leviathan.”
A moment later, they all gulp in unison and then start buzzing.
Probably all of them are wondering, and hence the buzzing.
As if to represent everyone’s doubts, the host, Reydouk, asks further.
“When you say Leviathan, you mean?”
“Yes, that.”
I responded with only a hint of affirmation, since everyone here was surprised to hear that.
“Oh, I didn’t think it was going to be that–the national treasure.”
As I thought, Reydouk knew about the Demon Sword.
“And it came straight from the Crown Prince.”
“As I recall, His Highness the Thirteenth’s estate is in Almeria.”
“Ooh, I see, it’s a connection!”
The voices around me were of one color, so even the sudden mumbling of something different was noticeable.
“Heh, such a toy. It’s a fake anyway.”
He may have felt that he only mumbled a little, but in that instant, the place fell silent as if it had been struck by water.
All of us at once turned our attention to the person who spoke.
It was a young man in his early twenties, dressed in formal wear.
The young man flinched for a moment, but as if he could no longer back down, he made an annoying smile while his face was drawn up.
Hm, what should I do–.
Instantly, the air in the place changed even more.
All of them turned pale in unison.
The women in dresses even slumped down.
They all reacted as if they had seen something terrible.
” Wait.”
I muttered softly.
Maybe “sit” would have been more fitting, but I figured “wait” would be fine.
Then the air relaxed.
The Leviathan was pissed.
The mad dog that had become a loyal dog, once again turned into a mad dog.
Thus, he reacted violently to the insult to his Lord.
The killing intent unleashed by the demon sword Leviathan, which overwhelmed those around it just by being present, overwhelmed everyone here.
That was fine, but it could be called overkill.
Many of them were relieved to be free of the killing intent, but many of them were still pale.
That’s how much killing energy was released by Leviathan.
Just as I was wondering what to do, Reydouk sent out a ship of help.
“Oh my goodness, that’s quite a feat, Your Highness.”
” Huh?”
“For a moment now, all of us here must have felt the same thing, ‘death’. That’s the power of a national treasure . And it was,”
He turned to the others but held his hand out to me in an act of introduction.
“It is the greatness of Your Highness the Thirteenth, that you are capable of using such overwhelming power.”
A forceful summary, but it was effective.
The response was heartfelt because of the death they faced.
The applause was even louder than when I entered, and everyone praised me for taming the demon sword. |
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} | の兄が帰った後、俺は部屋の中で魔剣を振るっていた。
確か名前は......そうだレヴィアタンだ。
水の魔剣、レヴィアタン。
鞘から抜き、振るう度に水色の残光を曳く。
の俺にはまだ重くて扱いにくいが、そこそこ見栄えがするから、このまま持っていよう。
何より兄上――皇太子殿下からの贈り物だ。
大事に使うという所を見せて忠誠心をアピールするのは必要な事だ。
とは言え、家の中でまで持ち歩く程のものじゃない。
「誰か」
人を呼んで、魔剣をしまわせることにした。
「......ん? 誰か?」
呼んでも誰も来ないことを不思議に思った。
これでも王であり、この屋敷の主だ。
使用人達はいつでも呼べばすぐにやってくるものだ。
それが来ない。
どういう事なのかとドアの方を見ると、使用人の男、怯えた顔で部屋の外に立っているのが見えた。
「どうした?」
「い、いえ。失礼します......」
男は慌てて入ってきた。
しかし顔色が青ざめて、体が小刻みに震えている。
明らかに様子がおかしい。
「そ、その剣が......」
「この剣? ああ」
言われて、兄上達がこれを持ってきた時の事を思い出した。
あの時も兄上の使用人が青ざめていたっけ。
この魔剣の影響なのか、と感づいた直後、男が想像した通りの原因を口にした。
「それを見ていると、全身がものすごく凍えて、針に刺されたように痛いのです」
「なるほど、本当に魔剣の影響だったか。えっと......たしか兄上達は......」
もらった時の事を思い出して、箱に入れる。
「これでどうだ?」
「あっ......少し楽に......」
「これ魔剣ってヤツですよね。さすが親王様、触ってもなんともないなんてすごいです」
「だから皇太子殿下が俺にくれたんだ。それよりも箱入りなら持てるか? ならちゃんとしまっておいてくれ」
「わかりました!」
まだ少し顔色が悪いが、それでも呼んだ時よりは遥かに良くなった男。
俺の命令で、魔剣の入った箱を持ち上げて、部屋から出ていった。
それと入れ替わりに、メイドの一人が部屋の外に立って、そっとノックをした。
「ご主人様」
「ん? ゾーイか。入っていいぞ」
メイドの中でも比較的顔を覚えている一人、ゾーイって名前のメイドだ。
毎日俺の風呂を世話しているから、なんだかんだで覚えてる方のメイドだ。
「どうした、呼んでないのに来るなんて、何かあったのか?」
「はい......その、お暇を頂こうかと」
前世が平民だった俺が、転生した直後にいくつかミスしたことがあって、これがそのうちの一つだ。
使用人が「暇をもらう」というのは「やめる」という意味で、最初はそれを知らなくて行き違いとかあった。
もちろん今は知ってる、それを前提に聞き返した。
「なんで辞めるんだ?」
「その、実家の畑が春先の洪水で流されてしまって」
「そうなのか?」
「はい、それで家も畑も何もかもが流されて、実家が食べていけなくなって、私に遊郭に行けと......その、親王様をお世話した、という売りで」
「わかったそこまででいい」
俺は少し考えた。
この六年間、貴族――それも親王としての振る舞いを学んできた。
その中で、最適解を探す。
「ゾーイの実家は確か母親だけだったな、畑を守ってたの」
「はい、それもあって――」
「その先はいい。母親を都によべ」
「え?」
「母親は屋敷の......そうだな裏門の戸締まりだ。一ヶ月十リィーンやる」
「ご主人様!?」
驚愕するゾーイ。
それもそのはず、裏門の戸締まりなんて職はない、今考えた適当なものだ。
十リィーンというのも、都の三十代男が一ヶ月で稼げる平均的な額だ。
「都の西外れに空き家を幾つか持ってたな、一つを家族で使え」
「......ありがとうございます!」
びっくりしすぎて、我に返るまで十秒近くかかったゾーイ。
我に返るなり俺に跪いて、頭を地面につけて感謝した。
「気にするな。それよりも早く母親を田舎から呼んでこい」
「はい! ありがとうございます!」
ゾーイは大喜びで部屋から飛び出した。
この処置は二つの理由がある。
そうなったら他の兄達――いや下手したら父上である皇帝からの叱責が飛んでくる。
親王の面子というものがあるのだ。
もう一つは――俺の独占欲だ。
例えなんであろうと、俺の使用人になったからには一生使用人でいてもらう。
やめる時は死ぬ時か、俺自身が追い出す時だ。
そんな、何十リィーンかの端金で、俺の使用人が辞める、それも遊郭に売られていくのなんて我慢できない。
「......ディラン」
「はい、こちらに」
呼んだ直後に、三十代後半の中年が入ってきた。
糸のような細目で、ヒゲを蓄えている男だ。
十三親王邸の執事のようなポジションの男だ。
「早かったな来るの」
「一部始終見ておりました故。しかし、さすがでございますノア様。見事な采配で御座いました」
「聞いていたのなら話は早い。洪水の話を知っているな?」
「ドッソの事ですな」
「そこの土地を買えるだけ買ってこい。洪水の後だ、ゾーイの実家のように、立ちゆかなくなった家から巻き上げようとする商人が現れる。その前に保全しろ」
「......」
「どうした、そんなにびっくりして」
「びっくりしておるのです」
ディランはストレートに返してきた。
「ノア様が産まれてから初めての洪水、にも関わらず見事な先読み采配。しかも、話を聞いた直後」
「......」
「何故それが出来たのかを驚いてる次第でございます」
転生前にそういうのをたくさん見てきた、とはさすがに言えない。
「いや、愚問でしたな。偉大なる皇帝陛下の御子、十三親王殿下でございます。その資質に『なぜ』と問うのも失礼でございますな」
万リィーンほど必要となりますが」
「おって届ける、直ぐに行け」
「はっ――それとノア様」
「なんだ」
まだ何かあるのか、と思ったらディランの目が真剣な事に気づいた。
「ありがとうございます」
「うん」
頷いた後、ディランが部屋から辞して出た。
ああそうか、そういえばディランもあのあたりの出身だったっけ。
と、彼がいなくなってからその事を思い出した。 | After my two brothers went back, I kept practice-swinging the sword in my room.
The name of this thing was...yes, Leviathan.
The Blade of the Sea Demon, Leviathan.
Each time I swung it, the sword would leave a sea-colored afterglow in its wake.
Since I was still six, it was a bit hard to handle. But, it looked flashy and cool swinging it, so I kept hold of it.
And above all else, it was my brother’s — the Crown Prince’s present to me.
I had to show them that I was treasuring the present if I wanted to suck up to them and live a happy life.
Then again, it wasn’t enough just to carry it around in my home.
“Someone come here.”
Calling a servant over, I sheathed the demonic sword.
“...Hm? Is anyone there?”
I thought it was strange that nobody came at my call.
I was the Thirteenth Prince as well as the master of this residence.
A servant would always be at my beck-and-call.
But nobody came.
Wondering what happened, I looked at the door. A single male servant was standing there, his face the very picture of “terrified.”
“N-Nothing, sir. Pardon my rudeness...”
The man hurriedly entered the room.
His face was pale, and his body was shivering.
Clearly something was wrong.
“What happened?”
“T-That sword...”
“This sword? Ah.”
I remembered what happened when my brothers came over.
Just like now, my brother’s servants had been afraid.
Right after I made that realization, the man started talking about exactly the same subject.
“Whenever I look at that thing, my whole body feels as if it’s encased in ice and a thousand needles are piercing through me.”
“I see, so it really is the effect of the demonic sword. Uhhh...what did my brothers do...”
I remembered what it was like when I received the sword and put it back in its case.
“How about now?”
“Ahh...It’s a bit better...”
“So this is what they call a demonic sword. It’s amazing for you to be able to swing the thing around as if it’s nothing, Master.”
“Which is why His Highness the Crown Prince gave it to me. More importantly, can you hold it when it’s in the case? Put it away if you can.”
“Certainly!”
His face was still somewhat pale, but it was leagues better than what he came here like.
At my orders, he took the sword case and left the room.
As his substitute, a maid stood outside the room and knocked.
“Master.”
“Hm? Oh, it’s Zoe. Come in.”
If there was a single maid that made the most impression on me, she would be Zoe.
She looked to be twenty. Her work as a maid couldn’t be described as extraordinary, but she helps me with my bath every day, so she’s made quite the impression.
“What’s up? You came here without my beckoning. Did something happen?”
“Yes...Um, I would like to take some time off.”
“Huh?”
As I was originally a commoner in my previous life, so there were some misunderstandings in my new life, this being one of them.
To a servant, “take time off” means “quitting the job.” At first, there were some troubles with me not knowing why,
Knowing what I knew now, that prompted a question on my part.
“Why do you want to quit?”
“Um, my parent’s land was flooded by the early spring floods.”
“Is that so?”
“Yes, everything we owned is gone, and my mother has nothing to eat. So I’ll go to the red-light district...and um, sell myself.”
“That’s enough.”
I thought for a little bit.
In the past six years, I studied how to behave as a nobleman and as a prince.
I looked for the optimal solution among my studies.
“Your only relative is your mother, is that correct?”
“Yes, and—”
“That’s enough. Summon your mother to the capital.”
“Your mother will be...oh yeah, the back gatekeeper. Ten leeng a month.”
“Master!?”
Zoe was shocked.
I had just remembered that there was no gatekeeper for the back gate, so I gave her mother the job.
Ten leeng a month was the average income of a man in the capital.
“I have a few houses in the western side of the capital. Use one for your family.”
“...Thank you very much!”
She was so surprised that it took nearly a dozen seconds for her to return from the skies.
And when she came back, she groveled at my feet and thanked me.
“Don’t worry about it. Just get your mother here from the countryside.”
“Yes! Thank you very much!”
Zoe went flying out of the room in the greatest of spirits.
I did this for her because of two reasons.
If it got out that one of my maids sold herself into prostitution, my repuation would fall.
I would almost certainly be reprimanded by my brothers or even my father the Emperor.
Something like the honor of a prince.
The other reason was — my possessiveness.
A servant of mine is my servant for life.
They can only leave in death or when I personally kick them out.
“...Dylan.”
“Yes, I am here.”
At my command, a man in his late thirties came in.
His beard was like pieces of thread hanging off his chin.
He had the position of a butler-type person in my manor.
“You sure came fast.”
“I saw the whole thing. You are amazing, Master. That was an act worthy of my greatest praise.”
“Since you overheard us, let’s cut to the chase. Do you know about the flood?”
“The one in Dussol.”
“Buy what land you can buy there. Merchants will come running to prey on the homeless victims. Before that happens, help them.”
“...”
“Why do you look so surprised.”
“Because I am surprised.”
Dylan spat my words right back at me.
“Master, it was the first flood since you were born, yet you handled it splendidly. Moreover, our conversation right afterwards.”
“...”
“I was surprised at how well it was done.”
Things like this never happened before I reincarnated.
“No, that was foolish of me. His Highness the Thirteenth Prince is the son of His Highness the Emperor, wise beyond the realm of mortals. It is rudeness on my part to be surprised at such a meager feat.”
“Around half a million leeng will be necessary.”
“Granted. Now go.”
“Yes—also, Master.”
“What is it.”
Dylan’s eyes were dead serious.
“Thank you very much.”
“Yeah.”
With a nod, Dylan left the room.
Ah, come to think of it, Dylan came from that area too.
By the time I remembered that fact, Dylan was already long gone. |
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} | 夜、馬車に揺られて、都の大通りを進む俺。
地上最強の帝国、その都は、不夜城とも言われるほど夜間でも栄えている。
そんな栄えている夜の街並みを眺めていると、ふと、シャーリーの強張っている顔が目についた。
馬車の横に並んに歩いてる彼女は、何か決意にも似た、ものすごく険しい顔をしている。
「どうしたシャーリー。何か緊張しているのか?」
「は、はい。殿下のご安全を、一命に代えてもお守りします!」
「本当に急になんだ、その決意は。今日はオスカー兄上の誘いで、ヘンリー兄上を交えの小宴会だ。そんなに気張ることはないぞ」
シャーリーはますます意気込んだ。
大通りの夜店で客の一人が食器を落として割った。
それをシャーリーがパッと振り向いて、剣の柄に手をかけて今にも飛び出さんばかりの勢いだ。
神経が不必要なくらい過敏になっているのがよく分かる。理由はまだ分からないが。
「なんだ、だからこそってのは」
シャーリーは俺を見て、押し殺した声で答えた。
「今の情勢、誰が見ても分かります。次の皇帝陛下はヘンリー様、オスカー様――そしてノア様。このお三方の誰かだという事が」
「......」
俺は答えなかった。
相槌すら打たないのは、シャーリーが声を押し殺したのと同じ理由だ。
一方で、最初こそ小声だったが、話している内に助走がついて、声は小さいままながら言葉が流暢になってきた。
「その当事者であるオスカー様が、ヘンリー様とノア様を招いての宴会......只で終わる訳がありません。警戒はしなければ」
「なるほど、話は分かった。だが、そういうことなら大丈夫だ」
「え?」
俺があまりにも軽い調子で言い切ったので、シャーリーが虚を突かれたかのように驚いた。
「ど、どうしてですか?」
「アルバート、ギルバートの一件の後、陛下は帝位の簒奪には神経を尖らせている」
「ヘンリー兄上、オスカー兄上、それに俺。この三人に絞られたのは傍から見てそうだろう。だからこそ、俺たちは争う事は出来ない。表だってはな。少なくとも今夜、こんな風に呼び出して何かされる事はあり得ない。むしろ、何かがあっても、オスカー兄上は自分の命に替えても俺とヘンリー兄上の身を守るだろう」
「そういうのは思いつきませんでした......さすがです」
俺はシャーリーにニコッと微笑みながら。
「実際、そうなっている」
と言った。
シャーリーは「え?」と目を見開き驚いた。
「注意深く周りの気配を探ってみるといい」
俺に言われて、シャーリーは鋭い目で、周りの気配を探り出した。
「これは......遠巻きに守って、いる?」
「そういうことだ」
俺はにやりと笑った。
オスカーの手のものが、俺たちが十三親王邸を出てからずっと遠巻きに付いて来ている。
俺自身はそこそこの能力があって、そばに一番信頼している騎士のシャーリーを付けている。
それでも用心しての、遠巻きの護衛だ。
「い、いつ気付いたのですか」
「屋敷を出た直後だ」
「そ、そんなに前から!? すごい......私、全然気付かなかった」
「ふっ」
シャーリーの緊張と、無用な警戒が程よく解れた。
俺は馬車の上から真っ直ぐ前を見て、考えた。
シャーリーには言わなかったが、オスカーの真意もある程度読めている。
シャーリーに言ったのは、あくまで「今夜は何も起こらない」事の理由だ。
オスカーが敢えて、この三人で集まると言い出した理由ではない。
陛下からすれば、傍目から見ても分かるくらい絞られた、俺たち三人が仲良くしているのが一番だ。
俺たち三人が普段から反目していれば、誰に帝位を残した方がスムーズにいくのかという心配が出てくる。
諍いのレベルによっては、俺たち三人以外の誰かにした方がすんなり行く、という考えに行き着いても不思議はない。
しかし俺たちが仲良かったらそういうこともなくなる。
オスカーは、それを演出しようとしている。
その証拠に、俺がギャルワンの討伐にライス・ケーキを推挙したら、オスカーは全力で賛成して後押しをした。
オスカーの性格は、よ目の兄上、マイル・アララートと引き合いに出される。
とも、温和で人当たりが良いという評判だ。
ただし、マイル兄上は素で人当たりが良くて、誰からも「野心はゼロ」だと思われているのに対し、オスカーは人当たりが良さそうに見えても、常に何か企んでいるような性格。
だから今夜のも、陛下の耳目が凄いのを承知の上で、俺をこっそり護衛するのも陛下に知られる、までを計算した上でやっている。
だから、今夜は何もない。
果たして、俺と二人の兄は。
久しぶりに国事関係なく、集まって、和やかな会食の一時を過ごした。
翌日、屋敷に骨董商のアランがやって来た。
応接室ではなくリビングで、座ったままアランを出迎える。
「殿下のご所望の品、手に入れて参りました」
「例の宝石か」
「はい」
「そうか――にしては浮かない顔をしているな。どうした」
「実は......」
アランは苦虫を噛み潰したような顔で、複数の宝石箱を取り出して、俺の前に並べた。
箱の蓋を開けると、中にはいくつもの――見た目がほとんど同じ宝石があった。
美しい赤色のルビーが、全部で6個あった。
「どういう事だ?」
「手前のミスでございます。一刻でも早く取り寄せようと、殿下ご所望の品だと使いの者に行かせたら、それが漏れて、似たようなものを競って差し出されまして」
「ふむ」
「少なくとも、5個は偽物でございます......」
「あはは。物が物だ、6個全部が偽物という可能性もあるな」
俺は笑いながら言った、アランはちょっとだけホッとしたようだ。
元々が「手に握って生まれてきた」という眉唾物の宝石だ。
それからして偽物という可能性が大いにある。
自分のミスで恐縮していたアランは、俺がその事を冗談につかって笑い飛ばしたことで、ちょっとだけホッとした。
「どうにかしてからと思ったのですが、手前には見分けをつける能力はございませんでしたので......」
「ふむ......あっ」
「あったぞ本物が。これだな」
全部のルビーを順番に手に取っていった俺は、6個の内の一つを持ったまま
余所見
「お解りになるのですか?」
「ああ」
俺は宝石ではない、視界の隅っこを見ていた。
隅っこに常にある俺のステータス、それが宝石を持った瞬間変わっていた。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
法務親王大臣
性別:男
レベル:15/∞
HP C+D 火 E+A
ほんのりだが、HPの「+」が一段階上がっていた。
「ほ、他の五つと何が違うのでしょうか」
「......見ていろ」
宝石から伝わってきた感情が、頭の中で文字ではなく、絵のような光景で浮かび上がった。
それを実現するために、俺はレヴィアタンを抜いた。
レヴィアタンを真上に放り投げて、それがぐるぐると地面に落ちてくる。
すぅ、と腕を伸ばして、レヴィアタンの落下点に割り込む。
「――っ!」
アランが息を飲んだ。
ぐるぐる回るレヴィアタンが俺の腕に当って――弾かれた後地面に突き刺さった。
「ど、どういう事なのですか?」
「見ろ」
「さっきのルビー......あれ? ちょっと欠けてる」
「こういう物らしい。持っていると、主のケガや病気の身替わりになるようだ」
「そんな効果の宝石初耳です。さすが殿下、よく見抜かれました」
「ふっ」
「しかし......そうなると残念ですな」
アランはルビーをのぞき込みながら、言葉通り残念そうな顔でつぶやいた。
「身替わりになると破損する......凄いがこれでは使い切りでしかない」
確かにそうだ。
それに、破損するという言葉を聞いて、ルビーの身替わりの効果を発揮させるのはもったいないと思った。
ルビーのおかげで、HPの「+」が一段階上がった。
身替わりになって砕け散るよりは、そのまま持っていた方が良いと思った。
「ん?」
「これは......」
ルビーからまた別の映像が頭に流れこんできた。
映像を読み取ったあと、考える。
一通りのシミュレートが頭の中で完成してから、俺は鎧の指輪をつけた。
指輪で、ルビーと同じ見た目の外見の塊を作り出してから、地面に突き刺さったレヴィアタンを引き抜き、ルビーを砕いた。
「ああっ! な、なにを!?」
驚愕するアラン。
しかし俺は新しく、鎧の指輪で作ったのを見つめて、更にステータスをみた。
ステータスは変わらなかった、つまりルビー――だったものはまだ
そしてもう一度、今度は強めに自分を斬る。
すると、鎧の指輪で作ったのが砕け散った。
俺の体は、当然ケガ一つ無い。
「な、なんと! もしやあのルビーを量産したのですか?」
驚くアランに説明する。
「ちょっと違う、ルビーに取り憑いてたのを、新しい依り代を用意してやっただけだ」
そう言いながら、鎧の指輪で更に作る。
ルビーとまったく同じのを、もう一度。
「と、と言うことは......何度でも使える......?」
アランは、言葉を失うほどびっくりしていた。 | Ruby Tensei
At night, I was riding a horse-drawn carriage along the main street of the capital.
The capital of the most powerful empire on the land is so prosperous even at night that it is called the Nightless City.
As I gazed at the prosperous streets at night, I suddenly noticed Shirley’s tense face.
She was strolling with me alongside the carriage, and she had a very grim look on her face, almost like determination.
“What’s the matter, Shirley? Are you nervous about something?”
“Y-Yes. I will protect His Highness’s safety at all costs!”
“What’s with the sudden determination? Brother Oscar has invited me and Brother Henry to a small banquet today. You don’t have to be so nervous.”
“That’s why I’m here, sir.”
Shirley became more and more enthusiastic.
One of the guests at the night stall on the main street dropped a dish and broke it.
Shirley turned around quickly and put her hand on the hilt of her sword and was about to jump out.
I can see that her nerves are unnecessarily overstimulated. The reason is still unknown to me.
“What do you mean, that’s why?”
Shirley looked at me and answered in a stifled voice.
“Everyone understands the current situation. The next emperor will be either Henry-sama, Oscar-sama, or Noah-sama. The next emperor will be one of these three.”
“......”
I didn’t answer.
The reason why I didn’t even make a gesture is the same reason why Shirley suppressed her voice.
On the other hand, her voice was a whisper at first, but as she spoke, her speech became more fluent, though her voice remained low.
“There is no way that Oscar-sama, who is involved in this, would just invite Henry-sama and Noah-sama to a banquet ....... We must be vigilant.”
“I see what you mean. But if that’s the case, it’s okay.”
“Eh?”
I made the statement in a very light tone, which startled Shirley, and she was caught off guard.
“B-But why?”
“After the incident with Albert and Gilbert, His Majesty is very sensitive about the usurpation of the imperial throne.”
“Ah.”
“Brother Henry, Brother Oscar, and me. It’s narrowed to us three, or so it would seem from the side. That’s why we can’t fight it out. Not outwardly, anyway. At least, there’s no way they’ll do anything to us tonight by calling us out like this. In fact, if anything were to happen, Brother Oscar would protect me and Brother Henry at the cost of his own life.”
“I couldn’t think of anything like that. ...... You’re right.”
I smiled at Shirley.
“In fact, it is now.”
I said.
Shirley’s eyes widened in surprise, “Eh?” Shirley’s eyes widened in surprise.
“Carefully look around you for signs.”
At my suggestion, Shirley’s sharp eyes began to search for signs of her surroundings.
” This is ...... protecting from a distance, is it?”
“That’s right.”
I chuckled.
Oscar’s men have been following us from a distance ever since we left the Thirteenth Prince’s residence.
I myself am reasonably competent, with my most trusted knight, Shirley, by my side.
Even so, it’s still a cautious, distant escort.
“W-When did you notice it?”
“Right after we left the mansion.”
“T-That long ago!? It’s amazing ...... I didn’t notice it at all.”
“Fu.”
Shirley’s nervousness and over caution were moderately relieved.
I looked straight ahead from the top of the carriage and thought.
Although I hadn’t told Shirley, I could read Oscar’s intentions to some extent.
I told Shirley that’ nothing was going to happen tonight’ for a reason.
It was not the reason why Oscar had dared to suggest that the three of us get together.
From His Majesty’s point of view, the best thing would be for the three of us to get along well, as we are so tightly knit that even the casual observer can tell.
If the three of us are at odds with each other regularly, there will be worries about who should be left with the throne.
Depending on the level of the quarrel, it would not be surprising if we concluded that it would be easier to leave the throne to someone other than the three of us.
But if we were close, that wouldn’t happen.
That’s what Oscar is trying to create.
As proof of this, when I suggested Rice Cake for defeating Galwan, Oscar gave his full support and encouragement.
His character is often compared to that of the fifth brother, Mile Ararat.
Both of them are reputed to be mild-mannered and good-natured.
Oscar, on the other hand, always seems to be up to something, even if he seems to be friendly.
That’s why he’s doing tonight’s thing, too, knowing that His Majesty’s ears are going to be very attentive, and he’s even calculated that his secretly escorting me will be known by His Majesty.
That’s why nothing is going to happen tonight.
As expected, I and my two brothers.
For the first time in a while, we gathered together and had a peaceful dinner, regardless of national affairs.
The next day, Alan, the antique dealer, came to the mansion.
I welcomed him in the living room, instead of the reception room, sitting down.
“I’ve got what your highness wanted.”
“The jewel?”
“Yes.”
“I see – but you don’t look too happy about it. Something wrong?”
“Actually, it’s .......”
Alan took out several boxes of jewels and laid them out in front of me with a bitter look on his face.
When I opened the lid of the box, I found a number of jewels inside – almost identical in appearance.
There were a total of six beautiful red rubies.
“What’s going on?”
“It was an error on my part, sir. When I sent a messenger to get them as soon as possible, saying that they were what His Highness wanted, the word got out and he was offered similar ones in competition.”
“Fumu.”
“At least five of them are fake. ......”
“Ahaha. Things are just things, all six may be fake.”
I said with a laugh, and Alan seemed a little relieved.
The jewels were originally supposed to be “held in hand at birth,” which raised eyebrows.
There’s a good possibility that it’s a fake.
Alan, who had been embarrassed by his mistake, was a little relieved when I laughed it off as a joke.
“I thought I’d wait until I could do something about it, but I didn’t have the ability to tell the difference. ......”
“Fumu, .......ah”
“There it is, the real thing. Here it is.”
I picked up all of the rubies in turn and looked aside as I held one of the six.
“Were you able to tell?”
I was looking at the corner of my eye, not at the jewel.
My status, always in the corner, had changed the moment I held the jewel.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Minister of Justice
Gender: Male
Level: / ∞
HPC+DMPE+EStrengthC+AStaminaD+EIntelligenceE+DSpiritE+DSpeedE+EDexterityE+DLuckE+D FireE+AWaterC+SWindE+FEarthE+DLight E+CDarknessE+C
Although only slightly, the “+” in HP had increased by one level.
“Ho, what is the difference between this and the other five?”
“...... Watch this.”
The emotions conveyed by the jewel appeared in my mind, not as words, but as a picturesque scene.
To make it happen, I pulled out my leviathan.
I flung the leviathan straight up, and it dropped to the ground in a circle.
With a swoosh, I extended my arm and broke into the Leviathan’s falling point.
“–!”
Alan gulped.
The Leviathan, spinning in circles, hit my arm – it bounced off and then stuck into the ground.
“Look.”
“The ruby ...... from earlier? It’s a little chipped.”
“This is how it works. It’s supposed to protect the Lord from injury or illness.”
“I’ve never heard of such a gem. Your Highness, you’ve seen right through it.”
“Fuu.”
“But ...... it’s a pity, then.”
Alan looked into the ruby and murmured with a look of disappointment on his face.
“It will be damaged when it substitutes the injury......, which is great, but this is just a one-time use.”
That’s true.
Besides, hearing the word ” damaged ” made him think that it would be a waste to let Ruby’s substitution take effect.
Thanks to the ruby, the ” + ” in HP went up one level.
Rather than being damaged during the substitution, I thought it would be better to keep it.
“Hmm?”
“This is .......”
Another image poured into my head from Ruby.
I read the image, then thought about it.
After I had completed the simulation in my mind, I placed the Armor Ring on.
With the ring, I created a mass with the same appearance as the ruby, and then pulled out the Leviathan stuck in the ground, crushing the ruby.
“Aah! W-what the !?”
Alan was astonished.
However, I stared at the new one I had made with my Armor Ring and looked at the status.
There was no change in my status, which meant that the Ruby – or whatever it was – was still intact.
Then I slashed myself again, harder this time.
Then, what I made with my Armor Ring shattered.
Naturally, my body was unharmed.
“M-My God! Were you able to mass-produce that Ruby?”
I explained to a surprised Alan.
“Not exactly, I just provided a new vessel for the Ruby to possess after it substituted for me.”
As I said this, I made more with the armor ring.
The same one as Ruby’s, again.
“And that means you can use ...... as many times as you want. ......?”
Alan was speechless with surprise. |
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} | 店に入って、本当にアリーチェなのかを確認しようとしたが、彼女の歌声に聞き惚れてか、街の人々が誘蛾灯の如く入り口に群がっていた。
ちらりと見えるだけでも、店の中が満員になっているのが分かる。
これじゃ入れない、と普通は思うところで。
「少々お待ちください、席を作らせてきます」
ゾーイもそう思ったようで、懐に手を差し込んで、金を握らせて席を作らせようと動きだした。
「待て」
「ご主人様?」
「そんな事をする必要はない」
「ですが......」
俺はゾーイを無視して、人垣を割ってその向こうに進んだ。
入り口を潜って、店の敷居を跨ぐ。
中に入るとより分かる、完全に超満員、席なんも無い状況だ。
俺達が中に入るとほぼ同時に、申し訳なさそうな顔で店員がやってきた。
「お客様すみません、ご覧の通り席がいっぱいでして......」
「そうか」
頷き、そのまま引き返そうとすると、奥から更に一人の店員がすっ飛んできて、最初の店員に耳打ちした。
その店員は何度か頷いてから、俺に商売用の笑顔を向けてきて。
「お客様、丁度今、別のお客様がお帰りになるみたいで。すぐにご案内できます」
「分かった。頼む」
頷くと、店員達は一旦店の中に引っ込んだ。
隣でゾーイが不思議そうな顔をしていたので、振り向き、小声で説明してやる。
「仕組まれた偶然ってヤツだ。これが向こうの仕組んだことなら、俺に席がなくて入れないなんて事にはさせないだろ」
「なるほど......さすがご主人様。そこまで考えが及びませんでした」
ゾーイにふっと微笑んで、改めて振り向き、歌声に包まれた店の中を眺める。
「むっ」
「どうかしたのですか?」
不思議そうな顔で聞いてくるゾーイ。
俺はどう答えるべきか少し悩んだ。
明らかに歌目当ての客ではない、目はステージに向けられているが、意識は俺の方に向けてきているのが―。
俺を監視するための奴が三人も既に紛れ込んでいるのを気配で察した。
だが、それをゾーイにそのまま言うわけにはいかない。
人を騙すのに、真実だけ言った方が効果的なのだ。
俺も、そしてゾーイも。
それを踏まえて、俺は言葉を選んで、ゾーイに言った。
そう言い、視線は今し方「空いた」席に向けた。
こっちを観察している連中に気づく。
少し考える、
騙すには嘘は言わない。
「良い席が都合良く残ってたな」
と、今度は普通のトーンで話した。
ゾーイは一瞬虚を突かれたかのように目を見開いた。
直前の俺の台詞とまるであべこべな感想だったから、何の事だろうかと思った。
しかし、一瞬で彼女は理解して、はっとした。
顔は動かなかったし、余計な事はなにも言わなかったが、目がぎょろっとして、一瞬だけまわりを気にしたのが分かった。
とっさにそう理解して、そういう反応が出来る。
ゾーイも、俺のメイドになった頃に比べるとかなり成長していると見える。
「ご主人様だからでございます」
適当なやりとりをしつつ待った。
しばらくして、店員に席に案内された。
それは店の一番後ろの、少し高くて、真ん中でステージを真っ正面から見られる席だ。
紛れもなく、この店で一番良い席なのが分かる。
俺は密かに冷笑した。
偶然を装うにしてはわざとらしすぎるということに。
それは指摘しないで席に着いた。
ゾーイは俺の隣に侍るように佇んだ。
アリーチェの歌を聴く。
また、少し上手くなったみたいだ。
芸事で上達するにはいくつかの要素があれば事足りる。
まずは継続すること。
そして目標がはっきりしていること。
の憂いがない事。
最初は、出会った頃からアリーチェは持っていた。
そこに俺が、彼女の母親の件も含めて、不安を全部取り除いてやった。
そうして、アリーチェはみるみると――今もなお、会う度に上達していた。
そのアリーチェの歌声に、店の内外問わず、ほとんどの人間が聞き惚れていた。
そうじゃないのは俺を監視している連中だけだろう。
曲や歌には「波」がある。
歌い手が意図するその波に乗せられて、歌声に揺蕩う一同。
プツン!
アリーチェの代名詞でもある、ハープの弦が一本はじけ飛んだ。
店の中がざわつく、夢心地のような歌声の中から、現実に戻された客達。
ざわつきが大きくなる、ステージの上でアリーチェが困っている。
白魚のような指がハープの残った弦の上を滑らせる。
切れたのは一番重要な弦で、指を滑らせただけでも、音が欠けているのがはっきりと分かる。
修理には時間がかかろう、このまま水入りだ。
――それではもったいない。
俺はフワワを呼んだ。
腕輪の中にいたフワワは、俺の意識を汲んで実体化した。
長い横笛になった。
それを構えて、そっと口を付ける。
即席で作り出した笛は、意図した通りの音色を出してくれた。
一瞬、店の中がざわつく。
アリーチェもきょとんとして――俺に気づいて驚く。
俺は笛を吹いた。
音色でアリーチェを「急かした」。
アリーチェは旋律を理解して、再びハープに手をはわせた。
切れた弦を使わないように、即興で曲をアレンジして歌う。
足りない音は、俺の笛が補った。
「うわぁ......」
隣に控えていたゾーイが感嘆の声を漏らした。
客達も一瞬戸惑ったものの、さっきまでと変わらないくらい、音楽に聴き入った。
曲が終わると、客から万雷のごとき拍手が起きた。
拍手しているのはゾーイもだった。
「凄いですご主人様!」
今の演奏は俺じゃなくて、バハムートだった。
それとなくバハムートに憑依させて、指と口をそいつに動かさせた。
剣や拳など、戦闘術を再現するのと同じように、バハムートが知っている演奏の動きをシミュレートして、再現した。
それが上手くいった。
だけでは続けようがなく、演奏は一先ず終わると発表された。
客が次々と店から出て行くと。
「他には居なかったか」
「え? なにがですか?」
俺は無言で手を挙げて、未だに呆然と座ったままの三人の男を指した。
そして、小声で。
「あれが俺達を監視してた奴らだ」
「えっ?」
「今の曲に魔力を込めておいた。敵意や害意を持つ者がより反応して、衝撃を受けて長く呆然としてしまうんだ」
「そ、そんな事も出来るのですか!?」
「ああ。ちなみにこれで人を殺すことも出来る」
「ええ!?」
「反対に極限まで興奮させれば、血圧が上がって脳卒中を引き起こせる」
「あっ......」
ゾーイは聡い。
ここで「そんな事も出来るの!?」とは聞かない。
物事には常に正反の両面があって、片方が出来ればその反対の事も可能であるという事が彼女にはわかる。
だから彼女はただ一言。
「やっぱりご主人様凄いです」
とだけ言った。
「ふざけんじゃねえ!」
ギルドの中、若い男が二人向き合っていた。
小柄な男は報告に激怒して、高級茶器を怒りのままに床にたたきつけて割った。
背の高い男は冷静に、茶に口をつけたまま考えごとをしている。
二人はそれぞれ、ギルドのトップとナンバー2の息子だ。
この二人が現場を取り仕切るようになってから密売と税金のごまかしが年々増えていった、いわば真の首謀者という二人だ。
「落ち着きたまえ。この場で逆上してもどうにもならないだろう?」
「これが落ち着いていられるか! 『誰の誘いにも乗らなかった歌姫に誘われたからしばらくこの街に居る』!? ふざけるな!!」
小柄の男は更に激怒して、テーブルを蹴っ飛ばして、盛大にひっくり返した。
もう一人の優男はあくまで落ち着いたまま、思案顔をしていた。
「なにも悪いことではない。エサには食いついたのだから」
「エサを食ったらとっとと帰り支度しろ! そいつが居ると密売が出来ねえ。一日密売が止れば、それだけで10万級の損なんだぞ!」
「......」
優男の眉が少しだけ潜められた。
相方の言うことももっともだ。
皇帝の密命を受けて調査しに来たあの男対策の為に、塩の密輸は一旦止めてある。
そしてその密輸は、今や一日で10万リィーン以上の利益となるほどに成長した商売だ。
その男がいるだけで、一日ごとに十万リィーンの損失なのだ。
「もうガマンできねえ! そいつを
「......曲がりなりにも皇帝の密命を受けてきた人間、それは早計というものではないか」
「構いやしねえよ! そんなの、金さえばらまきゃどうとでもなる! 何のために日頃から第三親王と第十親王に貢ぎ物してると思ってんだ」
「......そう、だな」
優男はすこし考えて、静かにうなづいた。 | I entered the store and tried to confirm that it was Alice, but the people of the city were flocking to the entrance like moths to a flame, probably because they were so fascinated by her singing voice.
Even a glimpse of the store showed that it was packed.
One would normally think, there’s no way I can get in there.
“Please wait a moment, and I’ll have a seat made for you.'”
Zoe seemed to think so too, and she reached into her pocket, grabbed the money, and started to move to reserve the seat.
“Wait.”
“Master?”
“You don’t have to do that.”
“But ......”
I ignored Zoe and broke through the crowd and proceeded to the other side of it.
Ducking through the entrance, I stepped over the threshold of the establishment.
Inside, the place was completely packed, and not a single seat was available.
An apologetic-looking waitress came in almost as soon as we entered.
“As you can see, the establishment is full.......”
I nodded and was about to turn around when one more waiter came rushing in from the back and gave the first waiter an earful.
He nodded a few times and then gave me a business smile.
“Sir customer, it seems that another customer just left. I can guide you there.”
“I understand. Please.”
Nodding, the clerks retreated into the store for a moment.
Next to me, Zoe had a curious look on her face, so I turned around and explained in a whisper.
“This coincidence is a set-up. If this was their idea, then they wouldn’t make it so that I couldn’t enter because they didn’t have a seat for me.”
“I see. ...... indeed, Master. I hadn’t thought that far ahead.”
Smiling at Zoe, I turned around once again and looked at the inside of the establishment, which was filled with singing voices.
“Mmm.”
“Is something wrong?”
Zoe asked with a curious look on her face.
I wondered what to say.
I took a quick look around and spotted a few people. people, who were obviously not there for the songs as their eyes were on the stage, but their attention was on me.
I could tell by the signs that three guys were already in the mix to keep an eye on me.
But I can’t just tell Zoe that as it is.
It is more effective to tell only the truth to deceive people.
For me and Zoe as well.
So, I chose my words carefully and said to Zoe.
I said this, and turned my gaze to the seat that had just been “vacated”.
I notice the people observing us.
And thought for a moment.
I won’t lie to fool.
“A good seat was conveniently left.”
And this time I spoke in a normal tone.
Zoe’s eyes widened as if she had been momentarily struck dumb.
I wondered what it was because her impression of my words was so opposite to what I had just said.
But in an instant, she understood and gasped.
She didn’t change her expression or say anything else, but her eyes widened and I could see that she was momentarily aware of her surroundings.
She understood and could react in that way.
Zoe also seems to have grown up a lot compared to when she first became my maid.
“Because it’s Master.”
“Right.”
We waited with appropriate exchanges.
After a while, a clerk showed me to my seat.
It was a seat at the very back of the restaurant, slightly elevated, in the middle, with a direct view of the stage.
It was undeniably the best seat in this place.
I chuckled to myself.
It was too deliberate to be a coincidence.
I didn’t point that out and took my seat.
Zoe stood next to me.
I then listen to Alice singing.
She’s gotten a little better at it again.
To improve in art, a few things suffice.
First of all, one must continuously do it.
And then, have a clear goal.
Finally, no worries about patronage.
Alice had the first two things from the time we first met.
Then I took away all her worries, including those about her mother.
And so, Alice has – and still is – improving every time I see her.
Almost everyone, both inside and outside the restaurant, was listening to Alice’s singing voice.
The only ones who weren’t would be those who were keeping tabs on me.
Songs and tunes have “waves” to them.
All the people were swaying to the singing voice, carried by the wave that the singer intended.
Snap!
One harp string that represents Alice broke off.
The customers were brought back to reality from the dreamy singing voice buzzing through the restaurant.
And as the buzz became louder, Alice was in trouble on the stage.
Her white clear fingers glide over the harp’s remaining strings.
The broken string was the most important one, and even as her finger slides over it, it is clear that a note is missing.
It would take a long time to repair it, and it would go into the water as it was.
–It would be a waste.
I called Fuwawa.
Fuwawa, who was in my bracelet, materialized, taking in my consciousness.
It became a long transverse flute.
I held it up and gently put my mouth to it.
The improvised flute produced the tone I intended.
There was a stir in the store for a moment.
Alice was puzzled – surprised when she noticed me.
I blew the flute.
Alice was “rushed” by the tune.
She understood the melody and flicked her hand to the harp again.
She improvised the tune and sang along, trying not to use the broken strings.
My flute made up for the missing notes.
“Woaa......”
Zoe, who was standing next to me, let out an exclamation.
The audience was puzzled for a moment but listened to the music as much as before.
When the song ended, the audience burst into thunderous applause.
Zoe was applauding as well.
“Awesome work, Master!”
It wasn’t me playing though, it was Bahamut.
I let Bahamut possess me, and I let it move my fingers and mouth.
Just as I reproduced sword, fist, and other fighting techniques, I simulated and reproduced the movements of the performance that Bahamut knew.
It worked.
As expected, there was no way they could continue the performance with just first aid, and it was announced that the performance was over for the time being.
As the guests left the restaurant one by one.
“There was no one else here, huh”
“Eh? What is it?”
I silently raised my hand and pointed to the three men who were still sitting there stunned.
Then, in a whisper.
“The ones that were spying on us.”
“Eh?”
“I put magic into the tune I just played. It makes those with hostile or harmful intent react more to it, and they’re shocked and stunned for some time.”
“T-That can be done!?”
“Yeah. By the way, it can even kill people.”
“Ehh!?
“On the contrary, if you push them to the limit, their blood pressure rises and they can induce a stroke.”
“Ah, ......”
Zoe is intelligent.
She didn’t ask “You can do that !?” this time.
She knows that there are always two sides to things and that if one can be done, the opposite is also possible.
So she just use one phrase,
“As expected, Master is awesome.”
She only said that.
“You’ve got to be kidding me!”
Inside the guild, two young men were facing each other.
The smaller man was furious at the report and angrily knocked a fine teacup to the floor and broke it.
The taller man remained calm, sipping at his tea and pondering.
They are the sons of the guild’s head and number two, respectively.
Since these two men have been in charge of the scene, the number of traffickers and tax cheats has increased year by year, and they are the real ringleaders, so to speak.
“Calm down. There is nothing you can do if you get upset here, is there?”
“I can’t keep calm about this! ’I’m in town for a while because I was invited by a diva who didn’t accept anyone’s advances’! Don’t screw with me!”[TN: Diva here means songstress or singer/performer]
The smaller man became even more enraged, kicking the table and overturning it in a heaping heap.
The other, younger man remained only calm and looked thoughtful.
“There’s nothing wrong with that. The bait was bit.”
“Get your asses back home if you have taken the bait! With him here, I can’t d my trafficking. It would be a loss of ,0 reens if it stops for a day!”
“......”
The graceful looking man’s eyebrows slightly furrowed.
His partner had a point.
The smuggling of salt has been temporarily halted to prevent that man from coming to investigate under the emperor’s secret orders.
And that smuggling is now a business that has grown to a profit of more than 100,000 reens in a day.
The man’s presence is costing them 100,000 reens per day.
“I can’t stand it any longer! I’m gonna kill him!”
“......As someone who’s received the Emperor’s secret orders, isn’t it premature to say that?”
“I don’t care! It doesn’t matter as long as you throw money around! What do you think I pay tribute to the 3rd and 10th princes regularly for?”
“......, yeah, right.”
The graceful looking man thought for a moment and quietly nodded his head. |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | 次の日もゾーイを連れて、店にやってきた。
この日も都合良く席が空いてくれた。
その事に心底苦笑いしたが、おくびにも出さずにアリーチェの歌を聴き続けた。
演目が進み、ほとんどの客がアリーチェに注目しているのを見計らって、ゾーイと『繋いだ』。
『俺の声が聞こえるか?』
『はい、ご主人様......あれ?』
普通にこっちを向いて、普通に返事をしたゾーイ。
しかしすぐに異変に気付く。
『声が......自分のものじゃない?』
『いや、それで合ってる。人間の声ってのは、自分の耳と他人の耳には違って聞こえるもんだ』
『なるほど? あっ、凄くはっきり聞こえます』
ゾーイはそうつぶやきながら、まわりを見回す。
アリーチェが歌っている店の中では、ほとんどの声がその歌声にかき消されて聞き取りづらくなっている。
実際、店員が来て注文とか取る時は耳元で普段より大きな声で、半ば怒鳴るくらいの勢いで話す。
それなのにもかかわらず、俺とのやりとりは普通にはっきり聞こえるのが不思議って感じだ。
『糸電話で遊んだことはあるか?』
『はい、ありますけど......』
『フワワを利用した、透明の糸電話だと思えばいい』
厳密にはもうちょっと複雑だが、そこまで説明する必要もない。
『なるほど......あっ、ご主人様の口が動いてないです』
『糸で結んでる者同士しか聞こえない、かつ俺自身口を動かさないでしゃべれるから』
『内緒話ですね。さすがです
ゾーイはこの技のメリットをすぐに理解した。同時に呼び方も
そういうことだ。
音や声は普段、空気に乗せて伝えられる。
糸電話のように、ものに乗って伝える事も出来る。
地面に耳をつけて、遠くの物音が聞き取れるのはそのためだ。
フワワを使ったこれは、空気を排除して、見えない糸のみで声を伝えるから、俺が繋げた人間との間でしか聞こえない。
防音魔法よりも、もうワンランク上の盗み聞き対策だ。
『連中に伝えたか?』
『はい、陛下がアリーチェさんを気にいってしばらく留まると話したら、凄く嫌そうな顔をしてました』
『そうか、ならいい。それなら楽になる』
『楽、ですか?』
内緒話という意識が出来たこともあって、普段は首をかしげるところを、ゾーイはそうしないで、目線だけで不思議がるのを伝えてきた。
『こっちが動かなきゃ向こうが焦れる。ゾーイ、今回の件、どっちが焦ってると思う?』
『えっと......陛下......は、焦る必要ありませんよね』
俺は頷いた。
彼女を育てる為に状況を利用した設問を出したが、彼女は見事に理解していた。
『そうだ。塩税の現象は、いわば慢性化した帝国の病巣だ。今解決しなくても、事態はそれほど大きく動きはしない』
『ですが、相手は――陛下がここにいらっしゃる限り、密売をする事は出来ません』
『そうだ、街ごとを脅迫して、大がかりに変えて見せるのは、金がかかるのはもちろん、同時に収入がストップするということだ。帝国が減った分の塩税がまるまる向こうの懐にはいったと考えれば止まっただけで、すくなくとも損失は十万リィーンをくだらない』
『そんなに......』
ゾーイは絶句した。
一介のメイドからすれば言葉を失うほどの大金だということだ。
『そういうわけだ。余が動かなければ、向こうが焦れて動き出す。だから余はのんびりしていれば良いのだ』
『なるほど! さすが陛下!』
ゾーイにふっ、と微笑んで、酒を一口、つまみを一切れ口に放り込む。
『しかし......十万......。そんなに大金を、許せません。全部明るみになった後は処刑しなければ』
『......』
俺は答えなかった。
ゾーイの言うことは分かる、その気持ちもだ。
だが、人間って言うのは、たいていの場合死んでるよりも生きてる方が使いようがある。
してや、帝国からこれほどの税を掠め取るシステムを作りあげた連中なら、上手く懐柔すれば......。
人は宝、そして可能性。
うまく懐柔できればいいんだが。
そう思いながら、歌を聴き、酒肴を口に運び、享楽している振りをする。
店員が新しい料理を運んできた。
それを再び摘んで口の中に入れた――瞬間。
俺は、ゆっくりと。
糸が切れた人形のように、テーブルの上に突っ伏した。
頭上からゾーイの悲鳴のような声が聞こえる。
「ご主人様! ご主人様!?」
体を揺すられる、鼻の先や、胸を次々と触られる。
「死んでる......?」
客が全員居なくなった店の中。
俺は床に寝かせられた。
目を閉じたまま、聞き耳を立てている。
「ちゃんと死んだのか?」
「は、はい。見ての通り心臓も止まってます」
初めて聞く男の声と、店員の声。
男の耳が俺の胸に当ててきた。
「確かに死んでるな。へっ、とっととこうすりゃよかったんだ」
「あ、あの。当店は......」
「心配するな、悪いようにはしねえ。この店はもう畳め。街の反対側にこれの倍はある店をくれてやる」
「あ、ありがとうございます!」
なるほど、俺に毒を盛ったご褒美ってわけだ。
「あの......」
今度はゾーイの声が聞こえた。
「なんだ? 金が欲しいのか」
「いえ、ご主人様の遺体を、私に引き取らせて下さい」
「あぁん?」
「長い間お世話になった方です。せめて、この手で弔いたい」
「好きにしろ」
男が鼻で笑ったあと、足音がして、それが徐々に遠ざかっていった。
どうやら店の外に出たようだ。
それに少し遅れて、不安げな足音がして、それも遠ざかった。
店員が、店の奥に入ったようだ。
周りに人が居なくなったみたいだ、なら。
『よく分かったな』
『陛下が毒殺されるはずがありませんから』
薄目を開けると、ゾーイは俺の側で、目を閉じて手を組んで、まるで祈りを捧げるようなポーズをしていた。
なるほど、これなら声が聞こえないのも合わせて、俺に黙祷しているようにみえる。
『陛下にはアポピス様がついていらっしゃいます。その辺の人間が手に入る毒で陛下が死ぬはずがありません』
『ああ、毒はアポピスで中和した』
『はい......ですが、心臓が止まったのは?』
『それもフワワだ。額を触ってみろ』
『はい......あっ、鼓動が』
『そこに心臓の代わりになるものを作って、一時的な代用品にした。心臓は止めてるが、これで血は流れてるから、なにも問題はない』
『そんなことまで......凄いです......陛下』
ゾーイは心底、感心したような顔をした。
『陛下。これからどうなさいますか?』
『お前が上手くやってくれたから、それに乗っかる』
『私が?』
『ああ。このまま余を火葬場に送って、火にくべろ』
『......バハムートですね』
『ああ。バハムートがいるから、火葬程度の炎で余はどうもしない。向こうの警戒を完全に解かすには、一度俺が燃やされた方がいい』
『さすがです陛下。わかりました』
『その後お前はこの街を離れろ』
驚くゾーイ。
『ああ、向こうを欺くための芝居だ。普通に離れろ、戻らなくていい。俺が連絡するまでは普通に都に戻る旅をしてていい』
『わかりました』
ゾーイは頷き、俺から離れた。
遠くから細々と、遺体を運ぶ手段と、火葬場の場所を店員に聞いているゾーイの声が聞こえてくる。
俺はそのまま死んだふりを続けた。
フワワを使ったこの死んだふりは別段大変でもなんでもない。
かかったレヴィアタンを宥める方が大変だった。
『――!』
今も半ギレのレヴィアタン。
狂犬で忠犬なこいつは、俺を害する人間は許さない。
さっきも、ちょっとでも気を抜いてたら、俺の死亡確認をしたあの男の首が落ちているところだ。 | The next day I came to the restaurant again with Zoe.
Again, a seat was conveniently available for us.
I laughed heartily at this, but I continued to listen to Alice’s song without showing any concern.
As the show went on and most of the audience was paying attention to Alice, I “connected” with Zoe.
[Can you hear me?]
[Yes, Master ...... hmmm?]
Zoe turned to me and replied as usual.
But soon she notices something is wrong.
[Is this voice ...... not yours?]
[No, you are right. The human voice sounds different inside your ears than it does to others.]
[Is that so? Ah, I hear it very clearly.]
Zoe looks around muttering so.
Inside the restaurant where Alice is singing, most of the voices have been drowned out by her singing, making it difficult to hear her.
In fact, when the waiter comes and asks for orders, he speaks louder than usual near my ear, halfway to the point of yelling.
Despite that, it seems strange that she can hear me clearly and normally.
[Have you ever played with a string phone]
[Yes, I have, but ......]
[Think of it as a transparent string phone through Fuwawa.]
Strictly speaking, it’s a bit more complicated than that, but I don’t need to explain that much.
[I see. ...... Ah, Master’s mouth isn’t moving.]
[Only those who are connected by strings can hear each other, and I can speak without moving my mouth myself.]
[A secret conversation, right? As expected of Your Majesty.]
Zoe quickly understood the advantages of this method. And she also changed the way she addressed me.
That’s how it is.
Sound and voices are usually transmitted through the air.
They can also be transmitted on things, like a string telephone.
And this is also why we can hear distant sounds with our ears on the ground.
Using Fuwawa, the voice is transmitted only by invisible strings, eliminating the air, so it can only be heard between me and the people I connect to.
It’s a higher level of eavesdropping protection than soundproofing magic.
[Have you told them?]
[Yes. They looked very unhappy when I told them that His Majesty liked Alicia and was going to stay for a while.]
[Well, that’s good. Then it will be easier.]
[Easier, sir?]
Zoe usually nods her head, but she doesn’t do so because she is conscious that this is a secret conversation, and she conveys her wonder by just looking at you.
[If we don’t move, they’ll get impatient. Zoe, who do you think is more rushed in this matter?]
[Well, ...... Your Majesty, ...... you don’t have to rush, do you, ......?]
I nodded.
I had put up a question using the situation to nurture her, and she understood it beautifully.
[That’s right. The salt tax phenomenon is a chronic imperial disease, so to speak. If we don’t solve it now, things won’t move too far.]
[But the other side – as long as Your Majesty is here, they can’t do any trafficking.]
[Yes, threatening an entire city and turning it into a big show of change is not only expensive, but at the same time, it means a stop in revenues. If you consider that the entire salt tax from the Empire’s decrease went into their pockets, they would have lost at least , reens just by stopping for a day.]
[So much .......]
Zoe was stunned.
From a maid’s point of view, that’s a lot of money that would leave her speechless.
[That’s the reason why. If I don’t make a move, they’ll get impatient and make a move. That’s why I should just take it easy.]
Smiling at Zoe, I took a sip of sake and a piece of snack in my mouth.
[But ...... one hundred thousand ....... That much money cannot be allowed to go unchecked. After it all comes to light, he must be executed.]
[.......]
I didn’t answer.
I know what Zoe is saying, and I understand her feelings.
But people are usually more useful alive than dead.
And if the people who have created the system capable of snatching so much tax money from the Empire can be successfully subdued, they can be useful .......
People are treasure and potential.
If only they could be persuaded.
With this in mind, I listened to the songs, had the drinks and eat the snacks, and pretended to be enjoying myself.
The waiter brings a new dish.
The moment I picked it up again and put it in my mouth...
I slowly,
Plopped down on the table like a puppet whose strings had been cut.
“Yo–Master!?” [TN: she was about to say, Your Majesty]
I hear Zoe’s scream-like voice from above my head.
[Master! Master!?]
My body is shaken, the tip of my nose, and my chest are touched one after another.
“Is he dead ......?”
Inside the store where all the customers had disappeared.
I was laid down on the floor.
I’m listening with my eyes closed.
“Is he dead?”
“Y-Yes. As you can see, his heart stopped.”
A man’s voice and a clerk’s voice I had never heard before.
The man’s ear was against my chest.
“You’re right, he’s dead. I should have done this as soon as possible.”
“Ah, sir. Our store is .......”
“Don’t worry, I won’t make it any worse. This store is going to close. I’ll give you a place on the other side of town that’s twice as big.”
“T-Thank you very much.”
I see, that’s the reward for poisoning me.
“You know, .......”
This time I heard Zoe’s voice.
“What is it? You want money?”
“No, I want you to let me take the master’s body.”
“Ahh?”
“I’ve been indebted to him for a long time. At least let me mourn him with my own hands.”
“Do as you please.”
The man snickered, and then I heard footsteps, which gradually moved away.
It seemed to have gone out of the store.
A little later, anxious footsteps followed, and then they too moved away.
The clerk seemed to have gone into the back of the store.
It seems that there are no more people around, then.
[You understand well]
[Because Your Majesty couldn’t possibly be poisoned.]
When I opened my eyes, I saw Zoe standing by my side with her eyes closed and her hands folded in a pose as if she were praying.
I see. This, combined with the fact that I can’t hear her voice, makes it look like she’s praying silently for me.
[Your majesty has an Apophis with you. The poison that is available to ordinary people would not have killed you.]
[Yeah, the poison was neutralized by Apophis.]
[Yes, ......, but how did your heart stop beating?]
[It’s also Fuwawa. She covered the work.]
[Yes, ......, Ah, the heartbeat]
[I made a temporary substitute for the heart there. My heart was stopped, but the blood is still flowing through it, so there’s nothing wrong with it.]
[That’s ...... amazing, ...... Your Majesty.]
Zoe looked really impressed.
[Your Majesty. What to do now?]
[You’ve done well, so let’s take advantage of that.]
[I did?]
[Yes. Take me to the crematorium and burn me.]
[...... Bahamut, right?]
[Yeah. Because of Bahamut, the flames of cremation will not harm me. I should be burned once to completely relax their vigilance.]
[As expected of you, Your Majesty. I understand.]
[After that you must leave the city.]
Zoe was surprised.
[Yeah, it’s just an act to deceive the other side. Leave normally, but no need to go back. You can travel normally back to the city until I contact you.]
[I understand.]
She nodded and left my side.
In the distance, I could hear Zoe asking the shopkeeper how to transport the body and where the crematorium was.
I continued to play dead.
Playing dead using Fuwawa is not that difficult.
It was more difficult to calm down Leviathan, who was about to lose his temper when he realized that my food had been poisoned.
[—!.]
Leviathan is still half-mad.
A mad and loyal dog, this fellow will not tolerate anyone who harms me.
If I had been even a little bit sloppy earlier, the head of the man who confirmed my death would have fallen off. |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | 「『ルティーヤー』......炎の力を持っているのですね」
「そこまで見抜いていたのか」
「はい。しかも相当な力を持っているようで」
「うむ。試してみるか? それなら外に出よう」
陛下がそう言って、先に歩き出した。
宝物庫を出て、腹心宦官のクルーズを呼んで、「的」を用意しろと命じるのだが。
「それには及びません、陛下」
「ほう? なにか考えがあるという目だな」
「はい」
「ならばやってみせよ」
許可が出た陛下と共に、庭園に出た。
俺は陛下して、少し離れた所に立った。
俺のステータスに「+」をもたらしたルティーヤーは、レヴィアタン共通点がある。
一つは意志を持つこと。だからこそ「+」に繋がったんだと俺は推測している。
もう一つは、俺の能力と関係無しに指輪のみの力で攻撃を放てること。
レヴィアタンのチャージ攻撃と同じなのが、ルティーヤーにもある。
それを放った――自分めがけて。
瞬間、俺の体が炎上した。
「ノア!?」
それに驚いたのが陛下だ。
反射的に一歩踏み出し、手を差し伸べてくる程驚いた。
「大丈夫です」
火だるまのまま告げる。
俺の声があまりにも普通だったから、陛下が二度驚き――ぎょっとしたのが見えた。
さりげなく出していたレヴィアタンを見えるように掲げて見せた。
「......なるほど」
数瞬またいで、得心顔に変わる陛下。
俺は、ルティーヤーの炎を自分にかけたが、それに反応したのがレヴィアタンだ。
鎧の指輪とリンクしたレヴィアタンは即座に水の力を持ったシールドを出した。
水と火は互いに弱点となる関係だ。
互角であれば互いにかき消されるだけだが、どっちかがはっきり格上だと効果が一気に膨れ上がる。
数値にするとこうだ。
100の火の力で攻撃したら通常100の効果が出る。水もそうだ。
しかし100の火の力で、99の水の力の相手に攻撃すれば、その効果は一気に2倍の200近くまで跳ね上がる。
逆に99の火の力で100の水の力に攻撃してしまうと、効果は0近くまで落ち込んでしまう。
今がそうだ。
「むぅ......周りの地面が溶けているのにまったく動じないとは。さすがだノア」
陛下も驚いているように、ルティーヤーの炎は俺の周りの地面をドロドロに溶かしてしまうほど強いものだったが、俺にはまったく効いてなかった。
それはレヴィアタンの力がルティーヤーより上だということに他ならない。
「むぅ?」
「どうしました陛下」
「地面が溶けるほどの熱だというのに、余はまったく熱いと感じぬぞ」
訝しげに言った陛下、まるでたき火にするように、手のひらを火だるまの俺に突き出す。
「もう一度地面をご覧下さい」
「地面を......? むっ、溶けてるのは『円』の範囲内か」
「はい。外に出ないように抑えてもいます」
「なんと! すごいぞそれは」
「ありがたき幸せ」
陛下の褒め言葉に、深々と腰を折って一礼する。
ルティーヤーの力を俺は把握した、陛下にも見せられた。
ってことで、ルティーヤーに命じて、炎を引っ込めさせる。
直前まで火だるまになっていたのが、まるで何事もなかったかのように元に戻った。
髪も肌も、服にも焦げめ一つついていない。
ドロドロに焼かれて溶けた地面だけが、ルティーヤーの力の強さを示していた。
「ここまで完全に御しきれるとはさすがだぞノア」
「うむ、改めてルティーヤーをノアに授ける。それをもって帝国のために益々励むがよい」
陛下は満足げな顔できびすを返し、「ついてこい」と言って歩き出した。
庭園から宮殿の中に戻って、一直線に書斎に戻ってきた。
陛下は執務の机の向こうに戻って、俺は臣下の立つ位置で立ち止まった。
「一つ、ノアの意見を聞きたいことがあった」
陛下は山ほどの報告書の中から一つ抜き出して、俺に突き出してきた。
俺はそれを受け取って、目を通す。
それは陛下の弟――つまり俺にとって叔父にあたるグラエム・アララートが、自ら罰リィーンを申し出たという内容のものだった。
「グラエム様が何かしたんですか?」
「グラエムの息子――余の甥になるな。それがグラエムの領地で横暴の限りをつくし、ついには泥酔して、その時もめた相手を殺してしまった」
「それはそれで相応の罪に問うたが、グラエム本人は息子の監督不行き届きだとして、自ら罰金を申し出てきたのだ」
「帝国法ではグラエム様に罪はありません。親の借金を子が返す義務がないのと同様、子の罪が親に及ぶこともありません」
俺は法務親王大臣として、帝国法からこの件の法的解釈をだした。
「うむ。余もそう言った。それでもグラエムは怯えているのだろうな。自ら罰金を申し出て、安心を買おうという腹づもりだろう」
俺は渡されたものをみた。
そこに書かれている数字を改めて確認。
三万リィーン。
かなりの大金だ。
帝都における、成人男性の一ヶ月に稼げる金額が、平均して10リィーンだ。
3万リィーンというのはその3000倍。
ざっと二年分の稼ぎだ。
「どう思う、ノア」
「......断固として却下すべきだと思います」
「理由は?」
「罪がないのに罰金を徴収するわけにはいきません、たとえ本人が申し出てもです」
「ふむ。ならば法を改正し明文化するというのは?」
陛下が俺をじっと見つめる。
「国庫が慢性的に危険なのだ。災害の救助に反乱の鎮圧、どれもこれも金がかかる」
だからこういう臨時収入が欲しい、って訳か。
気持ちはわかる、分かるが。
俺は真顔できっぱりと言い放った。
「このような前例を作ってしまうと、金を払える人間は『金さえ払えば無罪になる』と考えるようになってしまう。実際の帝国法ではそうではないが、そういう考えがはびこってしまうと犯罪へのハードルが下がります」
「うむ、その通りだ。法の抑止力が死んでしまう」
「さらには、そういう人間の大半は商人と貴族や官吏。それが巡り巡って政治の腐敗に繋がってしまいます」
「国庫の不足はゆゆしき問題。しかしそれは真っ当な手段で充実させるべきです」
「......そうだな、ノアのいう通りだ。良く諫めてくれたノア。国庫のオスカーと諮ろう。また意見を聞かせてもらうことになると思うが」
俺がいうと、陛下は頷き、手元の紙に何かを書いた。
一通り書き終えたあと、サインをしてはんこを押す。
皇帝の正式な文書――詔書だ。
それを俺に突き出してきた。
受け取って、内容に目を通す。
そこには十三親王――つまり俺が稀に見る賢親王であるという褒め言葉から始めて、最後には総理顧問官という役職に任命すると締めくくられている。
総理というのは俺が進言した総理親王大臣から来たもの、その顧問官。
「......」
「名誉職だ。気に入らぬか?」
「いえ......陛下」
「なんだ?」
「罪から逃れる為に金を払うのは論外ですが、名誉のために金を払わせるのはいかがでしょう」
総理顧問官という、間違いなく今でっち上げられた名誉職から産まれた発想を陛下に話した。
「名誉?」
「例えば、1000リィーンを国庫に寄付した人間には名誉騎士号を与えるなどは?」
前世の知識と記憶でそれがよく分かる。
人間は、ある程度の金――自分では使い切れない程の金を持った後は、物質よりも名誉を求めるようになるものだ。
貴族が様々な人間のパトロンになるのも、そういう面がある。
自分では使い切れない金、それを才能はあるが恵まれない人間を育てることによって、貴族としての名声を上げていく。
それと同じことなのだ。
陛下の目がきらりと光ったように見えた。
「ただし、あくまで名誉のみです。名誉騎士は、その後騎士選抜に出られず、実権に繋がることはないという但し書きを付けなくてはなりません」
「ふむ」
「その代わり、陛下から直々に表彰してもらえる」
「まさに名誉のみに特化、と言うわけだな?」
「その通りです」
「すごい発想だ......すごいぞノア」
ますます目を輝かせる陛下。
「クルーズ。オスカーを呼べ。急ぎだ」
早速財務親王大臣であるオスカーと話を詰めるくらい、陛下は俺の提案に乗り気になったようだ。 | “‘Luthiya’ ......, holds have the power of fire.”
“You’ve seen right through it.”
“Yeah. And it seems it’s quite powerful.”
“Uh. Would you like to try it? Then let’s go outside.”
His Majesty said and walked ahead.
He left the treasury and called out to his eunuch confidant, Curuz, ordering him to prepare a ‘target’.
“That won’t be necessary, Your Majesty.”
“Huh? It’s like you have some idea.”
“Yes, sir.”
“If so, let’s do it.”
With his permission, I went out into the garden with him.
I thanked him and stood at a distance.
Luthiyua, who had brought a “+” to my status, had two things in common with Leviathan.
One is having a will. That’s why it led to the “+”, I guessed.
The other is to shoot an attack with the power of the ring alone, regardless of my ability.
Luthiya has the same thing as Leviathan’s charge attack.
I released it – at myself.
Instantly, my body burst into flames.
“Noah!?”
His Majesty was surprised by that.
He was so surprised that he reflexively took a step forward and reached out his hand to me.
“I’m fine.”
I told him, while still on fire.
My voice was so calm that I could see that His Majesty was twice as surprised – and startled.
I held up the Leviathan I had been casually holding out so that he could see it.
“...... I see.”
His Majesty paused for a few moments, then changed his expression to one of understanding.
I cast Luthiya’s Flame on myself, and Leviathan reacted to it.
Linked to the ring of armor, Leviathan immediately produced a shield with the power of water.
Water and fire are each other’s weak points.
If they are evenly matched, they will only drown each other out, but if one of them is clearly superior, the effect will swell.
This is how it works numerically.
If you attack with fire-power, the effect is usually . The same goes for water.
But if you use 100 fire-power to attack an opponent with 99 water power, its effect will quickly double to almost 200.
On the other hand, if you attack with 99 fire-power against 100 water power, the effect will drop to almost zero.
That’s what is happening now.
“Mu ......, the ground around you is melting, and you are completely unfazed. As expected of Noah.”
As His Majesty was surprised, Luthiya’s flames were strong enough to melt the ground around me into mush, but they had no effect on me at all.
That meant that Leviathan’s power was superior to Luthiya’s.
“Mmm?”
“What is it, Your Majesty?”
“It’s hot enough to melt the ground, but I don’t feel any heat at all.”
His Majesty said doubtfully, thrusting his palm out to me as if he were lighting a bonfire.
“Please look at the ground again.”
“Look at the ground ......? Hmm, is it within the circle that’s melting?”
“Yes. And I’m trying to keep it from going out.”
“Oh my! It’s incredible.”
“Thank you for your praise.”
At His Majesty’s words of praise, I bowed respectfully.
I understood Luthiya’s power and was able to show it.
And after that, I ordered Luthiya to retract the flame.
What had been a flaming mass just before returned to normal as if nothing had happened.
Not a single burn mark on my hair, skin, or clothes.
The only thing that showed the strength of Luthier’s power was the ground that had been burned to a crisp and melted.
“Noah, it’s impressive that you’ve been able to control its power so well.”
“Umu, once again I give you Luthiya. Take it and work harder for the empire.”
“Yes”
His Majesty gave a satisfied look, said, “Follow me,” and started walking.
He walked back into the palace from the gardens and returned to his study in a straight line.
Then he went back behind his desk of the office, while I stopped at the position where his subjects stood.
“There was one thing I wanted to ask Noah’s opinion on.”
He pulled one out of his mountain of reports and held it out to me.
I took it and looked it over.
The report said that His Majesty’s brother, Graem Ararat, who is my uncle, had volunteered to pay a fine of 30,000 reens.
“What has Graem-sama done?”
“Graem’s son – that would be my nephew. He has been rampaging through Graem’s territory, and in a drunken rage murdered the man with whom he had a quarrel.”
“What?”
“I charged him with the appropriate crime, but Graem himself offered to impose a fine, claiming that he had failed to supervise his son.”
“Under imperial law, Graem-san is innocent. Just as a child is not obligated to repay a parent’s debt, neither is a child’s crime imputed to the parent.”
As the Minister of Justice, I gave the legal interpretation of this matter from the imperial law.
“Umu. That’s what I said. Still, Graem is probably frightened. He’s probably trying to buy himself some peace of mind by offering to pay the fine.”
I looked at what he handed me.
And checked the number on it again.
Thirty thousand reens.
That’s a lot of money.
On average, an adult male in the Imperial Capital can earn 10 reens per month.[TN: I still can’t wrap around my head on this currency value]
30,000 liens is 3,000 times that.
It is the equivalent of roughly 250 years of earnings.
“What do you think, Noah?”
” ...... I think we should reject it outright.”
“What is your reason?”
“We cannot levy a fine for an innocent man, even if he asks for it.”
“Fumu. Then how about amending the law to make it clearer?”
His Majesty stared at me.
“Our treasury is in a state of chronic danger. Rescuing people from disasters, suppressing rebellions, all of these things costs money.”
That’s why we want this kind of extra income.
I can understand how he feels, but...
I said firmly with a straight face.
“If we set a precedent like this, people who can pay will think that as long as they pay, they will be innocent. This is not the case in actual imperial law, but if this kind of thinking prevails, it lowers the barrier to crime.”
“Hmm, you’re right. The deterrent power of the law will die.”
“Furthermore, the majority of such people are merchants, nobles, and officials. That, in turn, leads to political corruption.”
“The lack of funds in treasury is a serious problem. But it should be enhanced by proper means.”
“...... Yes, it’s exactly as Noah says. You have corrected me well. I’ll consult with Oscar at the treasury. I think we will need to hear your opinion again.”
He nodded and wrote something on a piece of paper in his hand.
After finishing the whole thing, he signed it and stamped it.
It was the emperor’s official document – an imperial decree.
He held it out to me.
I accepted it and looked over the contents.
The document begins with praise that I the 13th Prince is Wise and rare, and concludes with the appointment of me to the position of Advisor to the Prime Minister.
The term “Prime Minister” came from the Prime Minister’s Office, which I had suggested, and his adviser.
“......”
“It’s an honorary position. Do you not like it?”
“Paying people to get away with crimes is out of the question, but why not let them pay for the honor?”
I told His Majesty about the idea, which was no doubt born of the now-fabricated honorary position of Advisor to the Prime Minister.
“Honor?”
” For example, how about an honorary knighthood for anyone who donates a thousand reens to the treasury?”
The knowledge and memories of my previous life tell me a lot about that.
When a person has a certain amount of money – more than he can spend on himself – he will seek honor rather than material things.
This is one of the reasons why aristocrats become the patrons of various people.
They use the money they can’t spend on themselves to nurture talented but underprivileged people in order to increase their fame as nobles.
That is the same thing.
His Majesty’s eyes seemed to gleam.
“However, it is only Honorary. An honorary knight must be accompanied by the proviso that he will not be able to participate in the selection of knights afterward and will not be connected to the actual authority.”
“Fumu.”
“In exchange, they will receive an award from His Majesty in person.”
“So it’s all about honor, is it?”
“Exactly as you say.”
“That’s a great idea. ......amazing, Noah.”
His Majesty’s eyes shone brighter and brighter.
“Curuz. Call Oscar. It’s urgent.”
His Majesty seemed to be on board with my proposal, so much so that he immediately got into talks with Oscar, the Minister of Finance. |
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} | 夜、離宮の居室。
俺はベッドの上であぐらを組んで、右手の手の平を上向きにして、みぞおちくらいの高さに突き出していた。
それに魔力を集中させる。
アポピスの力を使い、集中させた魔力を変質させていく。
「陛下」
ふと、横から俺を呼ぶ声が聞こえた。
顔をあげる、複数の使用人を引き連れているオードリーの姿があった。
例え後宮――いわば自宅のような場所であっても、皇后は常に多くの宦官や使用人を引き連れて歩くものだ。
皇后に不便な思いをさせてはならないというのと、何かあったら身を盾にして守るのと、わずかな感じの意味合いと。
それらの理由が何重にも重なり合って、皇后とは常にこのように無駄な隊列を引き連れてあるもの。
ちなみにそれは皇帝も似たようなものだが、「戦士の国」である帝国では、行動的な皇帝が力を誇示するために、単身でお忍びやらなんやらで行動する事も多い。
オードリーはひらり、と手を振った。
すると使用人達が深々して、全員が部屋から退出した。
残ったオードリーはベッドの上に上がり、俺にしなだれかかってきた。
「何をなさっているのですか陛下」
「ポーションを作っていた」
「ポーション......ジェシカに与えたあれですね」
「ああ」
「陛下が発明したものですわね、たしか。あら?」
言いかけて、首をかしげてしまうオードリー。
「どうした」
「陛下が発明したものなのは存じ上げてますが、何故また陛下がお作りになっていらっしゃるのですか? アルメリアの地を使って量産していると聞きますが」
「良い質問だ。今のポーションに満足してないのだ」
「満足してない?」
俺は小さく頷く。
「今のものは軽い怪我しか治せん。戦場で使うには効果が足りない。もっと効果の高いものを開発している」
「なるほど。それは可能なのですか?」
「もう出来ている」
「もう?」
俺はベッド横のサイドテーブルに置いた、小さな瓶を手に取って、オードリーに渡した。
「それが新しくできたものだ。名は、わかりやすくハイポーションとつけた」
「ハイ・ポーション......」
「見ていろ」
俺は腕輪の中から魔剣リヴァイアサンを抜き放つ。
夜の居室で、美しく輝く水色の光を曳く魔剣の切っ先を手の平に突き立てて――貫通した。
「陛下!?」
「騒ぐな」
リヴァイアサンを抜き放ち、腕輪に戻す。
一方でハイポーションを貫通した手の平にぶっかけた。
すると、みるみる内に、貫通した傷が塞がって、完全に消えてしまう。
「こんな感じだ」
「わあぁ......」
「これを使えば、傷は瞬時に塞がる......が」
「身体が欠損した場合――例えば指がちぎれたり、腕が落とされたりな。そういう身体欠損級の怪我だと、きずだけ塞いでしまう」
「......腕は落とされたままなのですね」
「そういうことだ。まあ、ポーションよりは効果的だから、これはこれで良いのだが」
「すごいです陛下」
俺はオードリーを見た。
オードリーはまるで少女のようなきらきらした、感動的な瞳で俺を見つめている。
「こんなすごいものまで作れてしまうなんて」
「ポーションの延長線上だ。まだ完璧ではない、これを作ろうとして、全くの別物になることもある」
「それでもすごいです。数百年の間、古の伝承にしか存在していなかった回復魔法や回復薬。それを復活させただけでなく、更に改良してしまうなんて」
「ふむ」
「私......歴史が変わる瞬間に立ち会っているような気分になってます。すごいです陛下!」
まるで村娘が著名な吟遊詩人にあったような、憧れ100%の目で見つめられる。
そこまで言われると、悪い気はしない。
「あの......陛下。陛下にお願いしたいことが......」
オードリーは俺から少し離れて、もじもじと、恥ずかしそうに言ってきた。
「なんだ、欲しい物でもあるのか? そろそろ離宮でもたてるのか?」
「いいえ、そうではありません。その......ハイポーションを、ジェシカに届けてあげてほしいのです」
俺は少し驚いた。
オードリーの「おねだり」は、まるで予想だにしなかった方向から飛んできた。
「ジェシカに?」
「はい、今の彼女こそ必要なものだと思います」
「気にかけているのか」
「共に陛下に侍る女同士、『妹』、のようになってくれれば嬉しいですわ」
「なるほど」
「それに陛下がわざわざ試練を与えるほどの子、大事にしなければ」
「俺が試練を与えるのがそんなに珍しいことか?」
俺はクスリと笑って、冗談めかして言った。
「はい、とても」
オードリーは同じようにクスリと笑って、きっぱりと言い放った。
「陛下は大抵の事を、自分でなさってしまいます」
オードリーはそう言いながら、手を伸ばして俺の手に触れた。
ハイポーションで傷は塞いだが、液体で薄められた血がのこっている。
その血を指の腹ですくい上げて、俺に見せるようにかざした。
「ご自身の危険や痛みを顧みずにすることが多々あります。そんな陛下がわざわざ他人に試練を与えてまで育てるのは珍しいことです」
オードリーの言うとおりかもしれないと思った。
「ですので、ジェシカにハイポーションを」
「話は分かった。それなら問題ない、もう届けさせてある」
「え?」
「最初に出来た分をすぐに届けさせた。もっとも、本人の手には渡らないように、別のものに持たせて、そばにいるようにさせたが」
「どうしてそんな事を?」
「オードリーは、俺がポーションに続いて、ハイポーションを開発したことをどう思う」
「え? それは......」
質問を質問で返されたオードリーは戸惑ったが、それでも頭をひねって答えてくれた。
「すごくて、早いなと」
「それだ。その考え方をジェシカが持ってしまうと、気の緩みを生む。一つは、ハイポーションがあるんなら多少の怪我は、というもの。もう一つは、もうしばらくしたらハイポーション以上のものがでてくるのではないか。ということだ」
「あっ......」
「彼女は守る、気の緩みを生じないように、陰からな」
「なるほど......さすが陛下。そこまで考えていらっしゃったなんて」
オードリーは、ますます目をきらきらと輝かせて、俺を見つめてきたのだった。
次の日、離宮の書斎。
俺の前に第一宰相、ジャン=ブラッド・レイドークがいた。
ジャンはものすごく熟練した動きで片膝をついて頭を下げた。
「楽にしろ。どうだ、調査の方は」
「はい。陛下のご命令通り、各地に再生可能な龍脈はないか、秘密裏に調査させました」
「うむ」
「ゲラハ砂漠がもっとも可能性が大きい事がわかりました」
「ゲラハ砂漠......サラルリアだったか」
サラルリア州。
帝国の東南部にある、もっとも面積の大きい州の事だ。
面積が大きいのは辺境である事、大した産業がなく人口が少ないこと、そもそも砂漠が全面積の一以上を占めている事などが理由である。
「サラルリアは......ゲルト辺境伯の封地だったな」
「はい。帝国にとってあまりにも『旨み』のない土地ですので、伯爵の一人に押しつけた形です」
「ゲルトに他の土地をやれ。代わりにサラルリアを皇帝直轄領にする」
「なぜ、ここまでなさるのですか? 龍脈ならアルメリアだけで事足りるのでは......?」
言葉を選びながら、って感じで聞いてきたジャン。
その質問は予想していた。
俺は用意してあった小瓶を取って、執務机の上に置かれているランタンに、瓶の液体を一滴たらした。
すると、ランタンが光り出した。
炎による光ではない、もっと明るくて、昼間の白い光に近いものだ。
「こ、これは!?」
驚くジャン、ランタンの光に食いつく。
「ポーションの......まあ失敗作だ」
「失敗作?」
「余の力でポーションを作ろうとすると、たまにまったく予想外の別物が出来てしまう」
昨日オードリーにも軽く話したが、彼女はそれに興味をしめさなかったっけ。
「その一つがこれだ。空気に触れてからしばらくたつと光り出す」
「空気に......」
「その一滴で一晩持つぞ」
「なっ!」
ますます驚愕して、ランタンを見つめるジャン。
「龍脈からの魔力はポーションを作り出せるが、その力の方向性を変えれば別のものも作り出せる。そこには無限の可能性があると、余は感じた」
「な、なるほど。だから龍脈を」
「ああ、サラルリアを皇帝直轄領にする」
「......」
ジャンはしばらくの間ランタンを食い入るように見つめた後、「ふぅ......」と気を取り直して、ランタンを置いて居住まいを正した。
「このようなものまで......さすが陛下でございます」
そう言った後、ジャンはキリッとした真顔に――第一宰相にふさわしい表情にもどった。
「サラルリアの件、急がせます。龍脈の復旧も」
「ああ、今後のためのテストにもなる、予算は使えるだけつかっていい」
「承知致しました」
ジャンは最後に一礼して、書斎から退出した。
龍脈が産み出す、魔力の雫。
人間の生活を大きく変えてしまう可能性を持っているものだと。
俺は、密かに確信していた。 | At night, in the living room of a detached palace.
I was sitting cross-legged on the bed, with my right palm facing upward, at about the height of my solar plexus.
Then concentrating my magical power on it.
I transformed the concentrated magic power with Apophis’s help.
“Your Majesty.”
Suddenly, I heard a voice calling me from the side.
I look up to see Audrey with several servants in tow.
Even if it is a rear palace – so to speak, her own home – the Empress always walks around with a large number of eunuchs and servants in tow.
The reason for this is to avoid inconveniencing the Empress, to protect her by shielding herself in case of trouble, and to give her a slight feeling of security.
Those reasons are many and overlapping, and Empresses are the ones who always have such useless ranks with them.
Incidentally, it is similar for Emperors, but in the Empire, which is a ‘land of warriors,’ the active Emperors often go off on their own to show off their power, like going incognito or similar.
Audrey waved her hand.
And the servants bowed deeply and everyone left the room.
Audrey, who remained behind, climbed onto the bed and leaned over me.
“What are you doing, Your Majesty?”
“I was making a potion.”
“Potion ...... that thing you gave to Jessica?”
“Yeah.”
“You devised it, I believe. Huh?”
Audrey tilts her head as she’s about to say.
“What is it?”
“I know that Your Majesty devised it, but why are you making it again? I hear that you are using Almeria’s land for mass production.”
“Good question. It’s because I’m not satisfied with the potions I’m making now.”
“Not satisfied?”
I nodded.
“The current potion only cures minor injuries. It is not effective enough for use on the battlefield. I am working on something more effective.”
“I see. Is it possible?”
“It’s already in the works.”
“Already?”
I picked up the small bottle on the side table next to the bed and handed it to Audrey.
“This is the latest product. I’ve named it High Potion, just for the sake of clarity.”
“High Potion ......”
“Watch.”
I pulled the Demon sword Livyathan from the bracelet.
In the residence at night, the tip of the magic sword towing a beautifully shining light blue light, I thrust the tip of the sword into the palm of my hand – it penetrated.
“Your Majesty!
“Don’t make a fuss.”
I pulled out Leviathan and returned it to the bracelet.
On the other hand, I sprinkled the high potion on the palm that had been pierced.
Then, in a flash, the wound that had pierced through was closed and completely disappeared.
“It goes something like this.”
“Wow. ......”
“With this, the wound is instantly closed .......but”
“If the body is missing–for example, a finger is torn off or the arm is cut off–. That kind of physical injury would only lead it to seal the wound.”
“So, ......, the arm will still be missing, right”
“That’s right. Well, it’s more effective than potions, so that’s good.”
“It’s amazing, Your Majesty.”
I looked at Audrey.
Audrey was staring at me with sparkling, moving eyes like an excited young girl.
“I couldn’t believe you could make something this amazing.”
‘It’s an extension of the potion. It’s not perfect yet, I try to make this and it can turn out to be something else entirely.”
“Still, it’s amazing. Recovery magic and restorative potions have only existed in ancient lore for hundreds of years. To not only revive it, but to further improve upon it.”
“Fumu.”
“I ...... feel like I’m witnessing a moment that will change history. It’s amazing, Your Majesty!”
It is as if a village girl met a famous bard, and she is staring at me with % admiration.
It’s not a bad feeling to be told that much.
“Ah”
“Um, ...... Your Majesty. I have a favor to ask of Your Majesty ......”
Audrey backed away from me a little, fidgeted, and said shyly,
“What, is there something you want? Is it about time to get a detached palace?”
“No, it’s not that. I want you to deliver that ...... high potion to Jessica.”
I was a little surprised.
Audrey’s “begging” came from a direction I hadn’t expected.
“For Jessica?”
“Yes. I think she’s the one who needs it now.”
“You care for her?”
“I’d be happy if we could be like ‘sisters,’ women who serve His Majesty together.”[TN: She’s the one who’s into incest kink]
“And since Your Majesty went to the trouble of giving her a trial, we must take good care of her.”
“Is it really so unusual for me to give her a trial?”
I smiled and said jokingly,
“Yes, very much.”
Audrey giggled as well and said firmly.
“Your Majesty does most things himself.”
Audrey reached out and touched my hand.
The wound was sealed with a high potion, but there was still blood diluted with the liquid.
She scraped up some of the blood with her finger and held it up for me to see.
“There are many things you do without regard for your own danger or pain. It is unusual for such a sovereign to go to the trouble of putting others through such ordeals.”
I thought Audrey might be right.
“So, please give Jessica a high potion.”
“I understand what you’re saying. But that won’t be a problem, ’cause I’ve already had it delivered to her.”
“Eh?”
“I had the first batch delivered right away. I had someone else hold it for her so she wouldn’t get it, but I made sure it will be close to her.”
“Why did you do that?”
“How does Audrey feel about me developing a high potion after the potion?”
“Eh? That’s .......”
Audrey was puzzled when the question was returned with a question, but she still twisted her head around to answer.
“I think it’s amazing and fast.”
“That’s right. If Jessica has that mindset, she will lose her composure. One is that if you have a high potion, you can get a little hurt. The second is that in a little while, there will be more than a high potion. That’s what I mean.”
“Ah, .......”
“She will be protected, so that there will be no slackness, from the shadows.”
“I see. ...... As expected of you, Your Majesty. I can’t believe you thought that far ahead.”
Audrey gazed at me with even more sparkling eyes.
The next day, in the study of the detached palace.
Jean Brad Reydouk, the First Vizier, was in front of me.
Jean knelt down on one knee and bowed his head with great skill.
“Be at ease. How is the investigation going?”
“Yes. As His Majesty’s order, I had them secretly investigate for regenerative dragon veins in various places.”
“Umu.”
“The Geraha Desert proved to be the most promising.”
“Geraha Desert, ......, Salaruria huh.”
Salaruria province.
It is the largest province in the southeastern part of the Empire.
The reason for its large area is that it is a frontier, it has no significant industry and a small population, and the desert accounts for more than half of its total area, to begin with.
“Salaruria is ...... a frontier land of the Margrave Gerdt, right?”
“Yes. It is a land too ‘good’ for the Empire, so it was forced upon one of the Margrave.
“Give another land to Gerdt. In exchange, Salaruria will be placed under the direct control of the Emperor.”
“Why do you go to such lengths? Isn’t Almeria enough for the Dragon Vein ......?”
Jean asked me, choosing his words carefully.
I had expected that question.
I took a small bottle that I had prepared and put a drop of liquid from the bottle on the lantern on my desk.
Then the lantern began to glow.
It was not the light from a flame, but something brighter, more like daytime light.
“T-This is!?”
Jean, amazed, catches on to the lantern’s light.
“It’s a potion ......, well, a failure.”
“A failure?”
“Whenever I try to make a potion with my own power, sometimes I end up with something completely unexpected.”
I mentioned this briefly to Audrey yesterday, but she didn’t seem interested in it.
“One of them is this. It glows after a while when it touches the air.”
“In the air .......”
“One drop of that will last you all night.”
“Haa!”
Jean stares at the lantern, even more astonished.
“The magic power from the dragon’s veins can create potions, but if we change the direction of that power, we can create something else. I felt that there are infinite possibilities there.”
“I see. That’s why the dragon’s vein.”
“Yeah, for that I made Saraluria under the direct control of the Emperor.”
“......”
Jean stared at the lantern for a while as if he were immersed in it, and then, “Fuu,......,” he said, putting it down and straightening himself up.
“Even this kind of thing...... is as expected from His Majesty’s.”
After saying this, Jean returned to a serious expression – an expression befitting a first Vizier.
“I’ll make haste with the Saraluria matter. And the restoration of the dragon’s vein.”
“Yes, it will be a test for the future. You can use as much of the budget as you can.”
“Understood.”
Jean gave a final bow and left the study.
Drops of magic power like this, produced using the dragon vein.
It has the potential to change people’s lives.
I was secretly convinced. |
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} | これからは密談が増えるからと思って、昨夜からは離れ家を貸し切るタイプの宿に移った。
その宿には広い庭があって、朝、起き出した俺は庭に佇んでいた。
朝日が緩やかに昇り、朝露が樹木から滴り落ちる。
その樹木は風に吹かれて、一枚の落ち葉がヒラヒラと舞い落ちてきた。
それが目の前に落ちてくると、俺は手を上げて、ドアをノックするように中指の節で叩いた。
ポフッ!
小気味よい音がして、落ち葉が空中で粉々に砕け散った。
文字通りの粉々だ、水分を含んでいるはずの落ち葉が、まるで枯れ葉のように粉々に吹っ飛ぶ。
「す、凄い......」
背後から、ゾーイの声が聞こえてきた。
外から戻ってきた彼女は、俺がしたことを見ていたのか、目を剥いて驚嘆していた。
「今の......ご主人様の力ですか?」
「そうなのですか......あれ?」
「どうした」
俺が聞き返すも、ゾーイは答えずに、逆に独り言のように呟いた。
「レヴィアタン様、バハムート様、ベヘモト様、フワワ様、アポピス様、ジズ様......」
数え上げるような呟きは、俺が持っている強力な魔道具らの名前だ。
それを一通り呟いたゾーイはしかし、ますます不可解に思う表情をした。
「今のは、どなたのお力ですか?」
「ああ、そういうことか。お前はずっと俺の側に居たから、全員の力をある程度把握しているんだったな」
「はい」
「お前が疑問に思った通り、今のはどれの力でもない」
「え?」
「俺自身の力だ」
ここへ塩税の事を調べに来たついでにゾーイを育てようと思っている。
そんな風に思っている俺が、まったく成長しないのでは話にならん。
今のステータスと、今までの経験を総合して。
何が出来るのかを一晩考えた結果、今の攻撃に繋がった。
力任せに攻撃を
だが、手を叩くのも、ただ打ち付けるより、一瞬のインパクトに注力した方がいい音がすることから着想を得て、面――いや点に集中する打撃を試した。
その結果、空中でひらひらと舞う落ち葉を粉々にする技が出来上がった。
「ご自分でも......やっぱりご主人様って凄い......」
「それよりも、連中と話してきたのか?」
「え? ええ......」
ゾーイはそう言い、不安気に周りをチラチラと見た。
「安心しろ、ジズの力で周りの風を操っている」
「風を?」
「言葉を伝達するのは空気だ。風を操って、音が外に漏れないようにした。屋内なら壁伝いでも伝わるが、庭なら大丈夫だ」
にご報告致します」
「うむ」
「もらった3000リィーンをケイトの買収に使った事を話したら、向こうは大層驚いていました。それで追加の金品を要求したら、渡してくれました」
「どれくらいだ?」
「え?」
「額はどれくらいだ?」
「同額の、3000リィーンです」
俺が微かに笑うと、ゾーイは不思議そうに首を傾げた。
「何かあるのですか陛下?」
「余が、もしゾーイのような人間が来たら、最低でも倍、いや十倍は払う。奇貨居くべしの典型例だ」
「それを同額なのがおかしく思えたのだ」
「えっと......つまり?」
今一つピンと来ないゾーイに、俺は再び微笑んで。
「そういう金の使い方をする人間が来たのに、同額しか出さない。せいぜいがBランク――地の利を得てもAランク程度の人間だって事だ。馬鹿でもないが、取り立てて凄くもない」
ステータスと、「+」になぞらえて説明すると。
「なるほど! そうかも知れません」
ゾーイは合点顔で頷いた。
「陛下の反応を伝えた後。向こうはこのまま行くか、やり方を変えるかで意見が分かれておりました。私でも分かります、良くない迷いが出てました」
「なるほど」
「それと、陛下が好む物を聞いてきました」
「余が好む物か。なんと答えた?」
「人間――特に才能のある女が好み、と」
ほぼ百点満点の答えだ。
嘘は言っていない、俺が今までやってきた事を考えればその答え方は充分に真実だ。
しかし、局限的でもある。
「よくやった、ゾーイ」
「ありがとうございます!!」
ゾーイは嬉しそうに破顔した。
「となると、エヴリンさんのような人を送ってくるでしょうか」
才能のある女。
ゾーイからすれば、それは先輩メイドでもあり、今や総督まで登りつめた、王邸家人の出世頭のエヴリンを連想するだろう。
だが。
「それは高く評価しすぎだ」
「そうですか?」
「Bランクの人間なら、その情報で送り込んでくるのはせいぜいが芸事に長けた娼婦か、体を売らない芸妓といったところだろう」
「はあ......なるほど......」
まあ、そのうち分かるだろう。
「さて、向こうの出方も分かったし。今日は出かけて調べる振りをしつつ、向こうのコンタクトを待とう。何かしら『才能のある女』を余と接近させようとするのは間違いないだろうからな」
「はい! ご用意します!」
ゾーイは頷き、宿の中に駆け込んで、出かける準備をした。
街に出ると、
馬車であればが同時に横並び出来る
ゾーイが聞いてきた通り、やり過ぎともいえる不景気の装いをそのまま続けるようだ。
まったく、どれだけの金を握ってるんだか。
この分じゃ、「この街で出来ない事はない」と向こうが豪語してもおかしくないな。
それだけの状況を作り出してるのだ。
「ご主人様......これって......普段とは違う生活を強いられてる、って事ですよね」
「みんな、それに従っているなんて......いまでもちょっと信じられません」
「ギルド、もしくは組合の力が強いのだろうな。まあ、金はあるのだ、当たり前でもある」
「そうなのですか?」
「ああ。親王達が持っている『別宅』の事を知っているな?」
「え? えっと......私達でいう『村』の事ですか?」
「それは半分正しくないな」
俺はふふ、と笑った。
「あくまで『別宅』だ、都から離れたところにある。ただ、それが大抵は村や街と同じ規模だってだけの話だ」
「あっ、はい」
上皇陛下をはじめ、皇族は別荘や別宅という名の、街や村を持っている事が多い。
その別荘にすむ数千人が、そのまま皇族の下僕なのだ。
「その別荘では、主たる皇族が黒と言えば黒、日は西から上るといえばその通りになる。別荘に査察が入れば、その期間中だけ色々自粛しろ、と命じる皇族もいるだろう? それと同じだ、規模がエグいくらい大きいだけのことだ」
ゾーイはゴクリ、と唾を飲んで、周りを見回した。
規模が「ちょっと大きい」レベルの話ではないが、たとえ話で理解して、それで塩商人達の持つ力を少しずつ体感出来てきたみたいだ。
「む?」
「どうしたのですかご主人様」
「あそこ、やけに『景気』が良いな」
俺は大通りの先を指さした。
俺の目をごまかすために、わざと不景気の虚像を作り出した街中だが、その一角だけ、街に入った夜と同じくらいの賑わいと活気があった。
ゾーイを引き連れて近づいていくと、街の人間の会話が聞こえてきた。
「あそこの店に、都からすっごい歌姫がきたんだぜ」
「都からの歌姫?」
「そう、俺もう聴いてきたけど、凄かったぜあの歌は。一生耳に残る歌だ」
「そんなに凄いのか?」
こっちを気にしながらの、通行人の会話を聞いて、俺はゾーイと視線を交わした。
これだな。と頷き合って、聞こえてきた会話の断片から、その歌姫とやらがいる店に向かって行く。
「さすがご主人様、読み通りです!」
俺の予想がぴったり当ったことに、ゾーイは大いに興奮した。
その直後に、彼女は――いや俺も驚かされることになる。
店の表までやってきた俺達の耳に入ってきたのは、聞き覚えのある歌声。
「これって......アリーチェさん......?」
店の中から微かに聞こえてくる歌声は、間違いなくアリーチェの物だった。 | Because I thought there would be more secret talks from now on, I moved to a type of inn that rents out a separate house from last night.
The inn had a large garden, and in the morning I woke up and stood in the garden.
The morning sun was gently rising and morning dew was dripping from the trees.
The trees were blown by the wind, and a single fallen leaf fluttered down.
As it was falling in front of me, I raised my hand and tapped it with my fingers like knocking on a door.
Poof!
There was a small crunching sound, and the fallen leaves shattered into pieces in mid-air.
The fallen leaves were literally shattered, as if they were dead leaves, even though they were supposed to contain moisture.
“A-awesome .......”
From behind me, I heard Zoe’s voice.
She had returned from outside and was marveling with her eyes wide open, having seen what I had done.
“Was this .......Master’s power now?”
“Yeah.”
“That’s so ...... huh?”
“What’s wrong?”
I asked back, but Zoe didn’t answer, on the contrary, she muttered to herself.
“Leviathan-sama, Bahamut-sama, Behemoth-sama, Fuwawa-sama, Apophis-sama, Ziz-sama, .......”
She counted as she muttered the names of the powerful magical tools in my possession.
Zoey, however, looked increasingly puzzled after she had muttered all of them.
“So, whose power was that?”
“Yeah, I see. You’ve been by my side all these years, so you had some idea of everyone’s power.”
“Yes.”
“Just as you wondered, it wasn’t any of them.”
“Eh?”
“It was my own power.
I came here to find out about the salt tax, and while I’m here nurture Zoe as well.
I can’t talk about me thinking like that if I’m not improving at all.
My current status and my experience so far combined.
I spent a night thinking about what I could do, which led me to my present attack.
It’s easy to swing out an attack with force.
However, I got the idea from the fact that clapping your hands makes a better sound if you focus on the momentary impact rather than just hitting them, and I tried a strike that concentrates on the surface – or rather, on the point.
As a result, I created a technique that shatters fallen leaves fluttering in the air.
“Just by yourself,...... I knew Master was awesome.............”
“More importantly, have you talked to the guys?”
“Eh? Yeah......”
Zoe glanced around uneasily as she said this.
“Don’t worry, Ziz’s power controls the wind around us.”
“Wind?”
” Air is what transmits the sound. I manipulated the wind so that the sound would not leak outside. If it’s indoors, it can travel through walls, but in the garden, it’s fine.”
“I see. Then I will report to His Majesty.”
“Umu.”
“When I told them that I had used the , reens I had received to bribe Kate, they were very surprised. So I asked for more money and they gave it to me.”
“How much?”
“Eh?”
“How much did they give you?”
“The same amount, ,000 reens.”
As I smiled a little, Zoe tilted her head curiously.
“What is it, Your Majesty?”
“If someone like Zoe came to my door, I would pay at least twice as much, or even ten times as much. It’s a classic example of a strike when the iron is hot.”
“It just seemed odd to me that it was the same amount.”
“Umm, ...... you mean?”
I smiled again at Zoe, who was still not quite sure what to think.
“Even though someone came in with that kind of money to spend, they only offered the same amount. At best, he’s a B-grade, or at best, an A-grade, even if he has the advantage of being in the area. He’s not stupid, but he’s not great either.”
Explaining it in terms of status and comparing it to the “+”.
“I see! I suppose you could say that.”
Zoe nodded with a knowing look on her face.
“After informing them of His Majesty’s response. The other side was divided on whether to go on as is or change their approach. Even I could tell, there was a hesitation, and not a good one.”
“And they’ve been asking me what His Majesty prefers.”
“My preference, huh. What did you say?”
“Humans – especially gifted women.”
It is almost a hundred-point answer.
No lie, considering what I have been doing, that answer is true enough.
But it is also very limited.
“Well done, Zoe.”
“Thank you very much!”
Zoe broke into a happy smile.
“Then I wonder if they will send someone like Evelyn-san.”
A woman of talent.
From Zoe’s point of view, it would be reminiscent of Evelyn, a senior maid and a rising member of the Thirteenth Household, who has now risen to the rank of Governor.
But,
“That would be overrating them.”
“Really?”
“A B-grade person would send in a skilled prostitute or an entertainer, at best, with information such as that.”
“Haah, ...... I see. ......”
Well, we’ll see.
“Well, now that we know how they’re coming out. Let’s go out today and pretend to investigate, and wait for their contact. I’m sure they’ll try to get some ‘gifted girl’ close to me.”
“Yes! I will prepare for it!”
Zoe nodded, ran inside the inn, and prepared to leave.
Out on the town, it was another slow day.
The city was so empty of life and goods that it was hard to imagine that six horse-drawn carriages could stand side by side at the same time on the street.
As Zoe had told me, it seems that the city is continuing with the guise of a recession, which is almost overdone.
I wonder how much money they are holding on to at all.
At this rate, I wouldn’t be surprised if the other side says boldly, “There’s nothing we can’t do in this city.”
That’s how much they are creating a situation.
“Master,......, this means ...... that people are forced to live a different life than usual, doesn’t it?”
“I still can’t believe ...... that people are following it.”
“I guess the guilds, or the associations, must be very powerful. Well, they have money, of course, they do.”
“Is that so?”
“Yeah. You know about the ‘separate house’ that the Princes have?”
“Eh? Umm, ...... you mean the ‘village’ as we call it?”
“That’s half incorrect.”
I giggled.
“It’s just a ‘separate house,’ away from the capital. Just that, it is usually the same size as a village or a city.”
“Ah, yes.”
His Majesty the Emperor and other members of the royal family often have their own towns and villages called villas or residences.
The thousands of people who live in these villas are the servants of the royal family.
“In the villa, if the main royal family says it is black, it is black, and if they say the sun rises in the west, they are right. If the villa is inspected, some members of the royal family will order the villa to refrain from various activities during that period, won’t they? It’s the same thing, only on an exasperatingly large scale.”
Zoe gulped, swallowed her saliva, and looked around.
It wasn’t on the level of ” slightly bigger” in scale, but she understood it metaphorically, and that seemed to give her a small taste of the power that the salt merchants had.
“Mm?”
“What is it, Master?”
“Over there, the ‘business’ is looking good.”
I pointed to the end of the main street.
The city had deliberately created a false image of recession to deceive my eyes, but that one corner was as bustling and lively as the night I entered the city.
As I approached there, with Zoe in tow, I could hear the conversations of the people of the city.
“There’s an amazing songstress from the capital over at that store over there.”
“A songstress from the capital?”
“Yes, I’ve already heard the song, and it was great. It’s something you’ll remember for the rest of your life.”
“Is it really that great?”
Overhearing the conversation of passersby, who were paying attention here, I exchanged glances with Zoe.
This is it. We nodded to each other, and from the fragments of conversation we heard, we headed toward the store where the songstress or whoever she was was.
“As expected of you, Master, you were right!”
Zoey was very excited that my prediction came true.
Shortly thereafter, she-no I was surprised as well.
As we walked to the front of the restaurant, we heard a familiar singing voice.
“This is ...... Alice-san ......?”
The singing voice coming faintly from inside the store was definitely Alice’s. |
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} | 「ノア様」
少し離れた所で長椅子を借りて、座って待っていると、シャーリーがやってきして報告した。
「あの男、事切れました」
「分かった」
「それと警吏が何人か来てます。騒ぎを聞きつけてきたのでしょうが、ノア様がいると聞いて遠巻きに困っているようです」
「だろうな」
警吏は俗に「おまわりさん」と呼ばれる。
これは治安維持の為に、巡回の為に「まわる」から来ている。
都の警吏は当然のことながら、法務省の管轄下にある。
「そいつらを呼んでこい」
「はい」
シャーリーは更に一礼して、俺の命令を伝達しに行った。
しばらくして、若い警吏やってきた。
二人とも慌てていて、俺の前にやってくると足がもつれて、そのままの転がる勢いで俺に跪いた。
「し、しし、親王殿下がいるとは知らず」
「大変失礼いたしました!」
二人はものすごい怯えた様子で言った。
作法とかまったくなってないが、スルーした。
「二人もいるのならちょうどいい。一人は――そっちのお前だ、お前があの死体を片付けろ。家族がいるのなら引き取ってもらえ、いないのならすぐに火葬だ」
「は、はい」
「お前は宮内省にいけ。第一親王家人、ダレンは王に不敬を働いたため
「わかりました」
「いけ」
二人は大喜びでかけ出していった。
間違いなく俺の気分を害したと誤解して、それで俺が二人に怒りをぶつけなかったことにほっとした。
二人と入れ替わりに、シャーリーが戻って来た。
「これからどうしますかノア様」
「手錠を一つ調達してこい」
「それはいいですが......どうして?」
不思議そうに首をかしげるシャーリー。
彼女が俺の命令を実行して、ダレンが死ぬまで鞭打ちを続けたのだ。
実際に実行しダレンが事切れたのを確認しているから、今更手錠? という疑問を持つのは当然。
「俺にかける、だから子供用のでいい」
「えっ......」
シャーリーは、ますますびっくりして、ポカーンとなってしまった。
俺の屋敷と同じ、王宮の外周にある、第一親王邸。
そこに俺はシャーリーを連れて、馬車ではなく徒歩でやってきた。
俺の手にはシャーリーが調達してきた手錠が掛けられている。
手錠を掛けた状態で、門番に近づく。
「これはこれは十三殿下――えっ?」
俺の顔を知っている門番はへつらうための笑みを浮かべかけたが、俺に手錠が掛けられているのをみて言葉を失った。
「えっと......これは一体......」
「兄上に謝罪に来た。通報してもらえないか」
「えっ? あっはい! 少々お待ちください」
一介の門番の処理能力を遥かに超えた状況ながら、門番は最善に近い行動をした。
俺をその場で待たせて、屋敷の中に入って通報をする。
しばらくして、初老の男が屋敷の中から現われた。
男の名はコイル、長らく第一親王邸で執事をしている男だ。
「お久しゅうございます、ノア殿下」
「いきなりすまない。兄上はご在宅か」
「ギルバート様は中でお待ちです。どうぞ」
門番とは違って、さすが長年第一親王邸で執事をしてきた男、俺が手錠を掛けてやってきたのを見てもまったく動じなかった。
そのコイルに先導されて、逆にまだそわそわしているシャーリーを引き連れて、第一親王邸に入る。
そのまま豪華な調度品が置かれた部屋に通された。
一目見るだけで分かる、いくつかの下賜品――陛下から頂戴した貴重なものが飾られている、応接間の中でも最上級の部屋だ。
その部屋の中でギルバートが窓の外を見ていたが、俺が入室したら振り向いてこっちにやってきた。
「おお、よく来たなノア。んん? なんだその手錠は、何かの新しい遊びか?」
ギルバートは俺の手錠を見て、屈託ないような笑みを浮かべながら聞いてきた。
「兄上に謝罪しに来たのです」
「謝罪? なんだいきなり」
「先ほど、兄上の家人であるダレンを処分しました。相談もせずにしてしまったことを詫びたい」
俺はそう言ってから、コバルト通りで起きた事をざっと説明した。
「それは当たり前の事だ。家人のくせに親王になめた口をきくなど万死に値する。しかし――」
ギルバートはあごを摘まんで、天井を見あげて思案顔をした。
「ダレン......ダレン......うーん、覚えてないな」
俺たちを案内してきた、執事のコイルが口を開く。
「数年前にこの屋敷から宮内省に異動した男の名です」
「ああっ!」
ギルバートはポン、と手を叩いた。
「思い出した、あいつか。あいつのことなら気に病むことは無いぞ」
ギルバートはにこりと笑った。
「あいつは素行が悪いからな、クビにして出したんだ。だから家人って程のものじゃない。気にしなくていいぞノア」
......なるほど、そうきたか。
「ありがとうございます」
俺は即座に頭を下げた。
「むしろよくやったぞノア。あいつをそのまま野放しにしてたら、俺の名を騙って悪さを続けていたところだ。むしろ俺の名誉を守ってくれてありがとうだ」
ギルバートはそう言って、コイルにあごをしゃくって、鍵を受け取って自ら俺の手錠を外した。
「お前はやっぱりすごいな。陛下が法務親王大臣――法の番人に任ずるだけある。普通はあそこで処分するまでは行かない」
「ありがとうございます、兄上」
ギルバートの話に乗っかりつつ、適当な世間話をしてから、第一親王邸を後にした。
屋敷を出た後、シャーリーと二人王宮をぐるっとまわるように歩き出す。
「あの......ノア様」
俺が自分に手錠を掛けてから、ずっとキツネにつままれたような顔をしていたシャーリーが、思い切って聞いてきた。
「なんか......えっと......なんか......」
シャーリーは首をひねりながら、必死に言葉を見つけようとする。
が、見つからないようでうーんうーん唸っている。
「兄上の態度、変だと思った?」
「それです! でも、何が変なのかは......」
「兄上、激怒してたぞ」
「ええっ!? で、でもあんなに和やかに」
「激怒はしているが、家人の一人位で俺と決裂は出来ないさ。同じく親王同士、しかも俺は法務親王大臣も兼任してる。今の俺の恩寵は兄上以上だ」
「はあ......」
「それに俺が自ら謝罪に来た。幼い弟が間違ったことをしたと先に言ってきたんだ。長子としては度量を示さないといけない。こっちは分かるだろ?」
「あっ、はい! 分かります! そうですよね、先に謝ったら怒れません。なるほど......すごいです」
シャーリーは舌を巻いて感心した。
「それにもう一つある」
「なんですか?」
「この件をなあなあにしておくと、後々兄上に嫌がらせをされる。敵対してるのも同然だからな」
「でも俺が謝罪に来た、兄上は許さざるを得なかった。そして貴族には面子がある、一度言ったことを引っ込めるのはみっともないことだ」
「そこまで考えて......すごい......」
感心するシャーリーを見て、フッと微笑む俺。
ここまでする必要はないが、まあ念には念をってことだ。
翌日、法務省の仕事を一通り終えて、昼過ぎに帰宅すると、執事のディランが珍しく玄関で俺を出迎えた。
「どうしたディラン」
「お客様でございます」
「客?」
「はい、宮内省の方だそうで。応接間にお通ししております」
「......わかった」
俺はその足で男が通された応接間に向かった。
中に入ると、座っていた男が弾かれるように立ち上がり、その勢いで俺に片膝をついて一礼した。
「お初にお目にかかります十三殿下。私ドン・オーツと申します」
微かにあごを引いて、俺はソファーに向かってまず座る。
「座っていいぞ」
「ありがとうございます」
ドンは起き上がって、元座っていたソファーの端っこに、遠慮がちな感じで座り直した。
「で、何の用だ」
「昨日のお話を伺いました」
「私、十三殿下の処置に感動いたしました。是非とも十三殿下の配下に加えて頂きたく参上いたしました!」
「俺につきたいのか」
「はい! なにとぞ」
「分かった。だが俺は法務親王大臣だ、宮内省のお前を出世させたりすることは難しいぞ」
「構いません! 殿下に必要な時に使って頂ければ!」
「分かった。覚えておこう」
「ありがとうございます!」
ドンは嬉しそうに頭を下げた。
ドンが屋敷から立ち去るのを窓越しに見送った後、俺はディランを呼び出した。
「あの男のことを調べろ。慎重にな」
ディランは理由を聞かずに、俺の命令を受けて部屋から退出した。
更に翌日。
朝起きて、いつも通りメイド達に顔洗いから歯磨き、髪のセットまで全部やってもらっていたら、ディランがそこにやってきた。
「ご報告します。ドンなるものの子細が判明いたしました」
「巧妙に隠されているようですが、両親共に第一殿下の使用人だそうです」
「筋金入りだな」
貴族は時として使用人同士を結婚させたりする。
貴族、特に親王の屋敷は厳重で、やめようと思ってやめられるものじゃないし、普段から親王に接しているため、秘密保持のため付き合いが制限される。
だから使用人同士の婚姻を斡旋することがよくある。
だが、使用人同士が産んだ子供も主人に忠誠を誓うもの。
それが貴族の使用人・家人ってものだ。
「おそらくは第一殿下が間者にするために送り込んできたものかと」
「だろうな。それを知ってる事は誰にも言うな。スパイだって知ってればそれなりの使いようがある」
「はっ」
ディランはそこで一呼吸ほどの間を空けて、報告する時とは違う口調で言った。
「一目だけで間者だと見抜く眼力、さすがでございます」
眼力というか――まあ眼力でいいんだが。
俺の視界の隅っこに常にあるステータス。
ドンに許しを出しても、「+」の後はまったく増えなかった。
心では俺の部下になってないのがバレバレだったからな。 | “Noah-sama”
I borrowed a couch a short distance away, sat down and waited, when Shirley came over, bowed, and reported.
“That man has died, sir.”
“All right.”
“And there are some police officers on their way. They must have heard the commotion, but when they heard that Noah-sama was there, they seemed troubled from afar.”
“Maybe.”
A police officer is commonly called a “policeman”.[警吏(Keiri) = Police Officer and おまわりさん(Omawarisan) = Policeman and yes kanji for the guard(警備員) is different]
This comes from the word “mawaru” meaning to visit several places in order to maintain public order.[TN: Here まわる(Mawaru)=’ to turn/to visit several places’ is used, while まわり(mawari) means circumference or rotation which may differ on Kanji Used]
The Police officers in the capital are, of course, under the jurisdiction of the Ministry of Justice.
“Go get them.”
“Yes, sir.”
Shirley bowed again and went to deliver my order.
A few moments later, two young police officers arrived.
Both of them were in a hurry, and when they got in front of me, their legs got tangled and they rolled over and knelt down to me.
“Y-Yo-Your Highness, we didn’t know you were here.”
“We are extremely sorry!”
The two of them looked terrified.
They didn’t have any manners at all, but I let them pass.
“If there are two of you, that’s just fine. One of you – you over there, you’re going to clean up that body. If he has a family, have them take him in. If not, have him cremated immediately.”
“And you, go to the Ministry of the Imperial Household. Report and record that Daren, the First Prince Retainer, has been punished under the Imperial Household Law for disrespecting the Thirteenth Prince.”
“Understood, sir.”
“Go.”
The two of them ran off in delight.
They misunderstood that I was definitely offended and were relieved that I hadn’t taken my anger out on them.
Shirley came back, replacing them.
“What do we do now, Noah-sama?”
“Go get one of those handcuffs.”
“That’s all very well, but ...... why?”
Shirley tilted her head curiously.
She carried out my orders and kept whipping Daren until he was dead.
Because she actually did it and made sure that Darren died, why handcuff him now? It’s natural to have this question.
“They’re for me, so I’ll just use the kids’ ones.”
“Ehh ......?”
Shirley was even more surprised and puzzled.
The First Prince’s residence is located on the perimeter of the royal palace, the same as my own.
I took Shirley there, not in a carriage, but on foot.
On my hands are the handcuffs that Shirley procured for me.
With the handcuffs on, I approached the gatekeeper.
“Hello there, Your Highness the thirt—eh?”
He knew my face and almost smiled to show his respect, but when he saw that I was handcuffed, he became speechless.
“Uhmm...... what is this...”
“I’m here to apologize to my brother. Can you please report this?”
“Ehh? Ah, sure! One moment, please.”
Although the situation was far beyond the capacity of a simple gatekeeper, he did what he thought was best.
He made me wait there and then went inside the residence to make a report.
A few moments later, an elderly man appeared from inside the compound.
His name is Coyle, and he has been working as a butler at the First Prince’s residence for a long time.[TN: コイル = Coil, changed it to Coyle]
“Long time no see, Your Highness.”
“I’m sorry to barge in on you like this. Is my brother at home?”
“Gilbert-sama is waiting inside. Please come in.”
Unlike the gatekeepers, as expected of a man who has worked as a butler at the First Prince’s residence for many years, he was completely unfazed when he saw that I had come in handcuffs.
Led by Coyle, I entered the First Prince’s residence with Shirley, who was still fidgety, in tow.
We were led into a room with gorgeous furnishings.
It was the highest-grade room in the parlor, with several priceless gifts from His Majesty that could be seen at a glance.
Inside the room, Gilbert was looking out the window, but when I entered the room, he turned around and came over to me.
“Oh, good to see you, Noah. Hmm? What’s with the handcuffs, is this some kind of new game?”
Gilbert looked at my handcuffs and asked with a carefree smile on his face.
“I’ve come to apologize to you, brother.”
“Apology? All of a sudden”
“I have just disposed of Daren, Brother’s Retainer. I want to apologize for what I did without consulting you.”
After I said that, I gave a brief explanation of what had happened on Cobalt Street.
“That’s a given. He deserves to die for being a Retainer and talking down to the Prince. But–“
Gilbert picked his chin and looked up at the ceiling, a thoughtful expression on his face.
“Daren......Daren......Hmm, I don’t remember.”
Coyle, the butler who had been showing us around, opened his mouth.
“This is the name of the man who was transferred from this residence to the Ministry of the Imperial Household a few years ago.”
“Ah!”
Gilbert clapped his hands.
“I remember now, that’s him. You don’t have to worry about him.”
Gilbert smirked.
“I had to fire him for misbehaving. That’s why he’s not much of a Retainer. Don’t worry about it, Noah.”
...... Oh, I see, so that’s what happened.
“Thank you very much.”
I immediately bowed my head.
“You’ve done rather well, Noah. If I had let him get away with it, he would have continued to misbehave under my name. I’d rather thank you for defending my honor.”
With that, Gilbert squared his chin at Coyle, took the key, and uncuffed me himself.
“You’re still amazing. His Majesty has appointed you Minister of Justice – the guardian of the law. Normally, you wouldn’t go so far as to get yourself punished .”
“Thank you very much, brother.”
While taking advantage of Gilbert’s story, which I wanted to put it that way, we made some appropriate small talk and then left the First Prince’s residence.
After leaving the mansion, Shirley and I walked around the royal palace.
“Um ...... Noah-sama.”
Shirley, who had been looking as if she had been pinched by a fox ever since I handcuffed myself, boldly asked me.
“What was that about?”
“What do you mean?”
“Something ......, um, ...... something .......”
Shirley tilted her head, desperately trying to find the words.
However, she can’t seem to find the right words, so she grunted.
“Did you find my brother’s attitude strange?”
“That’s it! But I don’t know what’s so strange about it. ......”
“He was furious.”
“Eh? But he seemed so calm.”
“He’s furious, but he’s not going to be hostile with me just over one of his Retainer. We’re both Princes, and I’m also the Minister of Justice. My patronage is greater than my brother’s now.”
“Hah. ......”
“And I went there to apologize, myself. His younger brother was the first to tell him he had done something wrong. As the eldest child, you must show some maturity. You know that, right?”
“Ah, yes! I understand! That’s right, he can’t get angry if you apologize first. I see. ......amazing.”
Shirley rolled her tongue in admiration.
“And there’s one more thing.”
“If we leave this matter open-ended, my brother will harass me later. It’s almost as if we’re enemies.”
“Yes.”
“But I came to apologize, and he had to forgive me. And a nobleman has a face. It’s shameful to retract something once you’ve said it.”
“Thinking that far ...... awesome .......”
Seeing Shirley’s admiration, I smiled.
Well, I didn’t have to go this far, but I guess you can never be too careful.
The next day, after finishing my work at the Ministry of Justice, I came home in the early afternoon to find Dylan, my butler, greeting me at the door.
“What’s up, Dylan?”
“You have a visitor, sir.”
“A visitor?”
“Yes, he’s from the Ministry of Imperial Household. Please come in and see him in the parlor.”
“...... Okay.”
I walked to the parlor where the man had been sent.
As soon as I entered, the seated man stood up as if he had been jolted and bowed to me on one knee.
“It is a pleasure to meet you, Your Highness. My name is Don Oates.”[Don Oats, why OATS]
With a slight tug of my chin, I walked over to the sofa and sat down.
“You may sit down.”
“Thank you.”
Don gets up and sits back down on the edge of the couch where he was sitting before in a reserved manner.
“I wanted to talk to you about yesterday.”
“I was impressed by His Highness Thirteen’s treatment. I would like to come under Your Highness!”
“You want to join me?”
“Yes! By all means.”
“All right. But I’m the Minister of Justice, it’s hard to get you promoted in the Ministry of the Imperial Household.”
“No problem at all! Your Highness can use me when he needs me!”
“All right. I’ll keep that in mind.”
“Thank you, sir!”
Don bowed his head happily.
After watching him leave through the window, I called Dylan.
“Find out what you can about the man. And be careful.”
Without asking why Dylan took my order and left the room.
The next day.
I woke up in the morning and had the maids wash my face, brush my teeth, and set my hair as usual when Dylan came to me.
“I have something to report. We found out some details about this Don.”
“It seems to have been cleverly concealed, but both his parents are servants of His Highness the First.”
“He’s quite committed.”
Sometimes, noblemen let their servants marry each other.
The house of the aristocracy, especially the Prince, is very strict, and you cannot stop if you want to, and since you are in contact with the Prince on a regular basis, you are restricted from socializing in order to maintain secrecy.
That’s why they often arrange marriages between their servants.
And, as a matter of course, children born to servants also swear allegiance to their masters.
That is what it means to be a servant of the nobility.
“Perhaps His Highness the First sent him to be his spy.”
“I suppose. Do not let anyone find out that you know that. If he being a spy is known, he can be used in a certain way.”
“Hah”
Dylan paused for a breath and said in a different tone than when he was reporting.
“You’ve got a great eye for seeing through a person with just one glance.”
Eyesight, huh—-or rather it’s the sight in front of my eye.
It’s a status that’s always in the corner of my vision.
Even when I allowed Don, the “+” didn’t increase at all.
It was so obvious that he was not working for me in my heart. |
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} | 歌の余韻に浸りつつ、バイロンに店を後にした。
アリーチェの進化からは予想外の満足を得られた。
彼女は伸びる! とは分かっていたものの、これほど早いのはまるっきり予想外だ。
まさに嬉しい誤算だ。
その余韻を味わいつつ、ついて来たバイロンに問うた。
「で、何しに来たんだ?」
「偶然通り掛かって、殿下のお姿が見えましたので」
「嘘だな」
「え?」
驚くバイロン、俺は歩いたまま笑顔で振り向き、知り合ったばかりの商人を見上げた。
「商人が時間を無駄に過ごす訳がない、成功している商人なら尚更だ」
「......」
今度は違う意味で絶句するバイロンだった。
目玉が飛び出そうなくらい目を見開かせて、俺を凝視してきた。
「どうした」
「いえ、そのお歳で......しかも貴族のお方が商人をそこまで理解している事に驚きました」
「こっちは逆に、時間を無駄にするのが仕事のようなものだからな」
「さすが親王殿下」
俺はフッと微笑んで、ちらっと背後を見た。
アリーチェがいる店が徐々に遠ざかっていく。
彼女のパトロンになったのは貴族特有の習性から来るもの。
ぶっちゃけ道楽であり、道楽とは無駄を楽しむという意味も併せ持っている。
「商人だと、ああして育てはしないだろう」
「いえ......あっ、まあ」
「何を言いかけた」
「えっ、その......」
バイロンはばつの悪そうな感じで言いよどんだが、やがて観念して答えた。
「妾としてなら金や時間を掛ける者も」
「ふっ、なるほど」
俺児だと思い出していったんは口をつぐんだわけだ。
「で?」
「はい、殿下にお願いしたいことがございまして......そろそろ今年も、王宮で使用人を採用する時期がやってきました」
「ふむ」
バイロンの言うとおりだ。
王宮は毎年に一度、女の使用人をまとめて大量採用する。
名目上は使用人の採用だが、もちろん陛下の目に止まれば夜伽を命じられ、妃などに成り上がるチャンスもある。
それ故に、選考の基準も厳しく、応募の人間も多く毎年が狭き門だ。
「それがどうした」
「その、何か選ばれる傾向などはお分りになるかなと」
「王宮に女を送り込みたいわけだ」
「......」
バイロンは真顔で頷いた。
「政」と「経」は古来より切っても切れない関係にある。
息の掛かった人間が王宮内にいればいち早く情報を得られるし、万が一妃に、さらに皇后になっちゃったりすれば商売にものすごくプラスに働く。
バイロンはそれをしたいわけだ。
「もちろんタダでとは申しません。わたくしめの気持ちはもう、お屋敷の方に届けさせております」
前払いか、やるな。
ここで「成功した暁には――」なんて言い出しただ。
さて、どうするか。
別にもらうだけもらっても別にいいんだ。
俺は親王、皇帝の実子。
商人の献上物なんて、もらうだけもらって「よくやった」の一言で済ませることも出来る。
親王とはそういう身分だ。
だが、俺はこの男を気に入っている。
彼が見いだして養女にしたあの少女。
それをしたバイロンという男を気に入っている。
だから何かないかと、色々考えた。
ふと、二人の顔が頭に浮かんだ。
一人は今し方別れたアリーチェ、もう一人は王宮にいる皇帝陛下だ。
陛下は今俺を気に入ってる、俺が推薦すればすんなり受け入れてくれるはずだ。
「一つある」
「......俺が気に入るような女なら、口を添えてやれる」
そう言ったあと、ちらっと背後を――アリーチェのいる方角を見た。
無条件にじゃない、本当に俺が気に入った人間だという事を匂わせる。
バイロンはどうやら賢かった。
俺とアリーチェのいる店を交互に見比べたあと、大喜びして頭を下げた。
「ありがとうございます! お眼鏡にかなう娘を選びます」
「うん。まあ本番は一発勝負だが、
恩情と、ダメ押しに誤解されないように付け加える。
「寛大な御心、感謝致します!」
「ん......まだ何か言いたげな顔をしてるな」
頭を上げたバイロンの顔からそれを読み取った。
「そんな決意した顔をされれば嫌でも分かる」
「さすが下、ご慧眼恐れ入ります」
「話してみろ」
「はい......もしよろしければ、わたくしの看板に、殿下の紋章を入れさせて頂ければと」
これは驚いた。
自分の看板に俺の紋章をいれる。
それはつまり、完全に俺の下につくって事だ。
「はい! まだお目にかかって日が浅いですが、これまでの殿下の凄さを目のあたりにして、是非とも麾下に加えさせて頂ければと」
「本当ですか?」
「裏切りだけは許さないからな、俺は」
「ありがとうございます!」
バイロンは往来であるのにも関わらず、人目はばからず俺に片膝をついた。
その瞬間、
名前:ノア・アララート
アララート帝国十三親王
性別:男
レベル:1/∞
体力 F+F 地 F
バイロンが配下に入ったことで、知性と精神の二つに「+」がついたのだった。
夜、自室でステータスを眺める。
バイロンが部下になった事で上がったステータスを眺めていた。
そろそろ一通り埋まってきた。
あの魔道書を吹き飛ばさなきゃ風にも「+」がついてたんだが、まあそこは今言ってもしょうがないだろう。
念のために、使用人をよんで、「表向き」のステータスも呼び出してもらった。
名前:ノア・アララート
アララート帝国十三親王
性別:男
力 E 風 F
知性 E 光 F
精神 E 闇 F
こっちにもちゃんと反映されている。
俺はこれをみて満足した。
これからもまだまだ増えていく。
皇帝の実子、十三親王。
この立場では、下につく人間を増やさないというほうが難しい。
そして下につく人間が増えれば増える程、「+」分が増えるし、実際の能力もあがる。
実際にも上がるのは、レヴィアタンを忠犬化させたことが証明している。
このまま貴族で居続けて、配下を増やしていくだけでどんどん強くなる。
想像する未来は明るく、俺は満足した。
しかし、異変が起きる。
「――っ!」
俺は弾かれるようにパッと立ち上がった。
今見ているステータスが変わったのだ。
水が減った。
直前までSSだったのが、Sになった。
何が起きたんだ?
「+」の後は配下の補正だ、そして水のSSはレヴィアタンを屈服させたときに、Sはおれが生まれた直後、アルメリアを俺の封地にすると陛下が宣言した瞬間についた。
つまり――アルメリアの異変。
しかも俺の配下から外れるような異変。
俺は駆け出した。
「ご主人様」
部屋を飛び出すと、廊下に控えていたメイドがびっくりして、俺の後についてきた。
「どうかなさったんですかご主人様」
「馬車を用意しろ、王宮に行く」
「は、はい!」
メイドは「どうして?」と問える身分ではない、俺の命令に慌てて従い、馬車を用意した。
夜、しかもいきなり訪ねてきたのにもかかわらず、陛下は俺と会ってくれた。
図書館ほどもある陛下の書斎で、俺は片膝ついて、陛下に報告した。
「アルメリアに異変が起きています」
「......何故分かった」
なんだこの陛下の反応は。
まるで――。
「知っていたのですか?」
「いいや、兆候を掴んでいるまでだ」
「であれば」
俺は片膝ついたまま顔を上げて。
「間違いなくそれが起きました」
陛下は眉をひそめて、俺をじっと見つめた。
しばらくして、陛下の腹心、宦官クルーズが入ってきて、陛下に耳打ちした。
「そうか。わかった」
陛下が頷くと、クルーズは腰をかがめて書斎から退出した。
陛下は一つため息をついて、それからおれの方を見て。
「すごいな、ノア」
頷く陛下。
「アルメリアで反乱がおきた」 | I left the restaurant with Byron immersed in the lingering effects of the song.
I got an unexpected satisfaction from Alice’s evolution.
She grew! I knew it would happen sometime, but I didn’t expect it to be this fast.
It was a happy miscalculation.
While savoring the lingering effects, I asked Byron, who had followed me.
“So, what are you doing here?”
“I was just passing by and saw His Highness.”
“You’re lying.”
“Eh?”
Byron was surprised, I turned around with a smile as I walked and looked up at the merchant I had just met.
“A merchant wouldn’t waste his time, especially if he’s a successful merchant.”
“......”
This time it was Byron who was exclaiming in a different way.
He stared at me with his eyes wide as if his eyeballs were about to pop out.
“What’s the matter,”
“No, I’m surprised that at your age ...... and a nobleman, you understand merchants so well.”
“Me, on the other hand, it’s kind of my job to waste time.”
“Your Highness.”
I smiled at him, and glanced behind me.
The shop where Alice is located is slowly moving away from me.
Her patronage comes from a peculiar aristocratic habit.
To put it bluntly, it’s a form of debauchery, and debauchery also means enjoying the waste.
“If you’re a merchant, you wouldn’t be raising them like that.”
“No. ...... Oh, well,”
“What were you about to say?”
“Eh, its ......”
Byron stammered on in an awkward tone, but eventually gave up and replied.
“Some people would spend money or time to find a mistress.”
He remembered that I’m six years old, so he interrupted before speaking.
“So?”
“Yes, I would like to ask Your Highness to do me a favor ...... I’m sure you know that it’s time to hire some servants at the Royal Palace this year.”
“Hmm.”
Byron is right.
Once a year, the royal palace hires a large number of female servants in bulk.
Although nominally it’s a recruitment of servants, if someone catches the eye of His Majesty, they are ordered to work the night shift and have the chance to become a concubine, etc.
That’s why the selection criteria are so strict, and the number of people who apply is high, making every year a tight squeeze.
“What’s the matter with that?”
“Well, you know what they tend to do, you know?”
“You want to send someone to the palace.”
“......”
Byron nodded with a straight face.
The “government” and the ” business” have been inseparable from each other since ancient times.
If a person in the palace who is in charge of the situation is in the palace, he or she will be able to get information as soon as possible, and if she becomes a queen or even an empress, it will be a great advantage for business.
This is what Byron wants to do.
“Of course, I won’t ask for free. I have already sent my sentiments to the mansion.”
Paying it forward, or don’t do it.
It would be second-rate to say “When we succeed–” here.
So, what to do?
As long as I take my share, I don’t mind.
I’m the prince, the emperor’s son.
As a prince, I can take a merchant’s gift with a simple “well done” and be done with it.
That’s the status of a prince.
But I like this man.
That girl he found and adopted.
So I like this man, Byron, for doing it.
So I started thinking about what we could do.
Suddenly, two faces popped into my head.
One is Alice, whom I just parted with, and the other one is the Emperor in the palace.
His Majesty is very fond of me now, and if I recommend him, he will readily accept my recommendation.
“There is one.
“...... I can put my recommendation on, it if she’s the kind of girl I like.”
After I said that, I glanced behind me – in the direction of where Alice was.
It wasn’t unconditional, I could feel that she really was someone I liked.
Byron was apparently smart.
After alternating between me and the store where Alice was, he bowed his head in great delight.
“Thank you! I’ll choose a girl who fits the bill.”
“Yeah. Well, you’ve got one shot at the real thing, but I can give you as many tries as you want to qualify.”
I would add, lest I be misunderstood by the ingratitude and no-goodness.
“For your generosity, my lord, thank you!
“Hmm ...... you still look like you have something to say.”
I read it in Byron’s face as he raised his head.
“I can see that look of determination on your face, and I can tell.”
“Your Highness the Thirteenth, I’m honored by your wisdom.”
“Start talking.”
“Yes, ......, if you would allow me to put His Highness’ insignia on my board.”
This is amazing.
Putting my insignia on the board.
Which means he’s going to be completely under my command.
“You sure?”
“Yes! It’s only been a short time since we’ve met, but having seen firsthand what a great man His Highness has been, I hope to be allowed to join your command.”
“Yeah, then okay.”
“The only thing I won’t tolerate is betrayal.”
“Thank you very much!”
Byron got down on one knee to me in spite of the fact that we were on the street.
At that moment.
Name: Noah Ararat
The th prince of the Ararat Empire
Gender: Male
With Byron under my command, I had a “+” in both intelligence and spirit.
At night, I look at the status in my room.
I was looking at the statuses that had been raised due to Byron becoming a subordinate.
It was about time I filled in the whole thing.
If I hadn’t blown up that grimoire, I would have gotten a “+” on the wind, but well, it wouldn’t matter if I said that now.
Just to be sure, I called a servant to call up my ” public ” status as well.
Name: Noah Ararat
Gender: Male
HPFMPFStrengthEStaminaEIntelligenceE
SpiritESpeedFDexterityELuckE FireFWaterSSSWindFEarthFLight FDarknessF
It reflects well on this side too.
I was satisfied with this.
There will be more to come.
I am the emperor’s son, the 13th prince.
It is difficult for me not to have more people in my position.
And the more people who are underneath, the more “+” minutes they have, and their actual abilities will increase.
The fact that it will actually go up as well is proven by the fact that I made Leviathan a loyal dog.
I’ll just continue to stay a nobleman and increase the number of subordinates and I’ll get stronger and stronger.
The future I imagine is bright and I’m satisfied.
But something strange happens.
“–!”
I stood up quickly as if I was being bounced.
The status I’m looking at now has changed.
The 13th prince of the Ararat Empire
Level: 1 / ∞
HPFMPFStrengthF+FStaminaF+FIntelligenceF+FSpiritF+FSpeedFDexterityF+FLuckF+F FireFWaterE+S
WindFEarthFLight FDarknessF
The one at Water has decreased.
It was SS right before and now it’s S.
What happened?
The “+” is a correction for the subordinates, and the water SS was attached to me when I brought Leviathan to his knees, and the S was attached to me the moment His Majesty declared Almeria to be my enclosure right after I was born.
In other words – an anomaly(incident) in Almeria.
What’s more, it’s an incident that makes me out of my control.
I ran out.
“Master,”
As I ran out of the room, the maid who was waiting in the hallway was startled and followed me.
“Is something wrong, master?”
“Get the carriage ready, we’re going to the palace.”
Yes!
The Maid wasn’t in position to ask, “Why?” , she hastily obeyed my orders and prepared a carriage.
It was night, and in spite of the fact that I had come out of the blue to visit him, His Majesty met with me.
In His Majesty’s study, which is the size of a library, I got down on one knee and reported to His Majesty.
“Something is happening to Almeria, Your Majesty.”
“...... How do you know?”
What is this reaction of His Majesty?
It’s as if–
“Did you know about this?”
“Not until I got indications.”
“So,”
I looked up from my position on one knee.
“There should some anomaly that happened,”
His Majesty raised his eyebrows and stared at me.
A few moments later, His Majesty’s confidant, Eunuch Cruz, came in and spoke something to His Majesty in his ear.
“I see. All right.”
His Majesty nodded, and Cruz bent down and left the study.
His Majesty sighed one sigh, then looked at me.
‘”Amazing, Noah,”
His Majesty nodded.
“There’s been a revolt in Almeria.” |
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} | 驚嘆するヘンリーを見て、少し思考に耽る。
ヘンリーが言う「戦争の形が変わる」というのが分かった。
「戦争は、負傷兵の方がやっかいだったな」
「はっ。負傷兵の手当て、治療に人員をさかねばなりませんので」
「ふっ、戦死された方がよっぽど助かるな」
もちろん、死者なんて少ないに越したことはない。
が、短期的に見れば、負傷兵よりも戦死者の方が軍にかかる負担が軽い。
「さすが陛下でございます。私がその事を理解したのは、兵務省に入ってか月経ってからでございました」
「この軽傷なら一瞬で直すポーション、これがもし量産可能となったら......戦力はどれくらい上がる?」
「......軽く見積もって」
ヘンリーは少し考えて、きっぱりと言い放った。
そこまで上がるのか......いや、そうなんだろうな。
ヘンリーがいう「戦争の形が変わる」というのが冗談ではない訳だ。
俺は少し考えて、まずはジェシカと向き合った。
「ジェシカ」
「それはちゃんと持っておけ。帝国の法では、最前線の将兵はいかなる状況であっても私的な理由で異動させてはならないとなっている。帝国は『戦士の国』だ、それは何があろうと変えてはならん」
「......はい」
俺が「なにか言おうとしている」事を察して、ジェシカはますます真剣な顔をした。
「そなたは余の妃だ、どんな建前をつけたところで、それが私的な理由になる。そうとしか見られない。つまりだ」
「そなたが次に戻ってくるのは、凱旋か、敗走かのどっちかだ」
もう一つの可能性に屍となって――があるが、それは言わないでおいた。
「余は、当然凱旋を望んでいる」
「――はい!」
「本当に分かっているか?」
「え?」
意気込んで頷いたジェシカ、きょとんとなってしまう。
「帝国は戦士の国、だから妃のそなたを将に取り立てるという制度の変更は通る。が、本来ならする必要はない。だが余はした――何故か」
「......」
真顔で俺を見つめ、固唾をのむジェシカ。
「そなたならと思った、そなたの為に変えた」
「――――!」
目の前にいるジェシカの空気が、見るからに変わった。
もとから凄味のあった女だが、それがますます強くなった。
俺の目に狂いはなかった。
直属部隊編成の為、ジェシカはいったん退室して、そこに俺とヘンリーが残った。
彼女が出て行った扉を見つめ、ほぅ......と息を吐くヘンリー。
「すごいですな」
「ん?」
「陛下のお言葉を賜ったあの一瞬で、まるで一年どこかで修行してきたかと錯覚するくらい強くなりました。あの闘気は普通の人間にはだせません」
「それを最初から持っていた女だ。彼女にも言ったが、だからこそ制度を変えた」
「それを引き出した陛下の人心掌握はさすがでございます」
「それはそうと......話を戻す、ポーションを量産する方法を見つけないとな」
ヘンリーはものすごい真顔になって頷いた。
「まったく知らないままであればよかったのですが、その存在を知ってしまっては......」
「うむ」
俺はあごを摘まんで、少し考えた。
「歴史上、ポーションが存在したのは確かだな」
ヘンリーは深く頷いた。
回復魔法は知っていたが、ポーションの事はヘンリーに聞くまでは知らなかった。
そのヘンリーがこうして言い切るからには、何かの書物で読んだということだろうな。
「作り方の手かがりは?」
ヘンリーは首を静かに振った。
「だろうな。あればとっくに再現しようとしてるものな」
「はい。帝国の年間予算を投じてでも研究する価値はあります。手かがりさえあれば」
「それくらいの代物だもんな」
ヘンリーは「軽く見積もって戦力三倍増」といった。
戦士の国であり、常に征戦をくり返し続ける帝国にとっては何よりも大事なこと。
ヘンリーは年間予算といったが、それこそ国を傾けてでも研究させる価値がある。
歴史上、不老不死を追い求めて国と自分を破滅させた皇帝は星の数ほどいる。
ポーションは、それに匹敵――いやそれを遙かに上回る、帝国に取って必要なものだ。
「とはいえ、手かがりがまったくないのではやりようが無い」
「はい......」
「王宮の蔵書は数万あるが......」
「......」
ヘンリーは静かに首を振った。
だろうな。
王宮の蔵書といえば、この地上に存在するありとあらゆる最重要な知識の粋を集めたものだ。
それでもないのだろう。
......まあ、あればとうに再現している。
手かがりはない。
というのは、普通の場合だ。
俺は、一つ心当たりがあった。
「ヘンリー、お前はリヴァイアサンを知っているか?」
「はあ......陛下の魔剣のことでございますか」
ヘンリーは慎重に聞き返した。
リヴァイアサン――元はレヴィアタン。
皇太子が持ってきた時はヘンリーもその場にいた。
思えば、付き合いが長いな。
そのレヴィアタンがリヴァイアサンになった事を知っているから、慎重な回答に繋がった。
「いや、そっちじゃない。もう一つ何か知らんか?」
「............、――っ!」
首をひねって考えたあと、ヘンリーはハッとした。
「白銀の時代!?」
「そうだ、白銀の時代にい者の一人、リヴァイアサン」
「まさか!?」
俺は小さく頷いた。
直接は聞いてない、だが、確信はある。
前に夢の中――のようなところで聞いた不思議な声。
ルテーヤーがバハムートに。
そしてレヴィアタンがリヴァイアサンに。
それぞれ確信した後、ますます確信した。
四賢者の一人リヴァイアサンは、
それは、もう一つの事実に繋がる。
「リヴァイアサン」
俺は手を掲げて、リヴァイアサンを呼び出した。
人型をした、人ならざるリヴァイアサンは顕現し、俺にひざまづいた。
「お呼びでしょうか、我が主」
「答えろ、回復魔法が存在した時代にお前はいたか」
「はっ、時の皇帝に力を貸していた」
「おお......」
ヘンリーが感嘆した。
賢い彼だ、すぐに理解した。
どの書物にも残っていない、回復魔法とポーションの情報。
それは、目の前の「生き証人」の頭の中に存在している事を瞬時に理解した。
「すごい......」
失われた知識を引っ張り出す俺を、ヘンリーは心底尊敬する眼差しで見つめてきた。
「ポーションの事も知っているな」
「教えろ」
「大地には『龍脈』なる魔力の通り道が存在する」
「龍脈」
おうむ返しにつぶやき、舌の上に転がす。
まったく初めて聞く言葉だ。
ヘンリーを見て、「お前は」と視線で尋ねる。
はっと我に返ったヘンリーは首を振った。
再び、リヴァイアサンに聞く。
「その龍脈とはなんだ?」
「魔力の、いわば川のようなもの。せせらぎから始まり、支流となって本流に合流し、やがて大海につながる」
「......集まって凝縮した魔力が実体化するのか」
「さすが我が主。さようでございます」
俺はリヴァイアサンの言った事をじっくり吟味した。
「つまり、その龍脈はいま存在してないと?」
「はっ。龍脈は一カ所をのぞいて全て寸断し、枯渇した」
「一カ所? 残っているのか?」
「再生した、といった方が正しい」
「どこだ?」
「アルメリア、州都ニシル」
「......え?」
完全に予想外だった。
もっと辺境なり、神聖な土地の名前が出てくるものだと思っていたが、予想に反してなじみの深い地名がでてきた。
親王時代の俺の封地、一時期はそこに住んで統治もしていた。
「龍脈は大地の命脈。命とは水」
「水」
「あの地もダメだったが、近年再生しつつある」
「水......再生......?」
あごを摘まんで考える。
すると、横からヘンリーが。
「陛下が特等水路を整備なさったから?」
リヴァイアサンが静かにうなずいた。
珍しく、完全に予想外な事で驚く俺。
「すごい、さすが陛下でございます」
一方で、ヘンリーはますます驚嘆していた。 | I looked at Henry, who was amazed and was lost in thought for a moment.
It was understandable what Henry meant when he said, “The flow of war would change”.
“The war was more trouble with wounded soldiers, I suppose.”
“Yes. We need more men to care for the wounded and treat them.”
“Fuu, death in battle would have been much better.”[TN: Don’t wanna say bad about MC, but wtf man]
Henry silently bowed his head.
Of course, the fewer the deaths, the better.
However, in the short term, the dead are less of a burden on the army than wounded soldiers.
“As expected of Your Majesty. I only realized this a month after I entered the Ministry of War.”
“If this potion that can heal minor wounds in an instant could be mass-produced,......, how much would it increase our military strength?”
“...... even estimating lightly, three times as much.”
Henry thought about it for a moment and stated simply.
I wonder if it will go up that much....... No, I guess it will.
So Henry was not joking when he said “The flow of the war will change.”.
I thought for a moment and turned to Jessica first.
“Jessica.”
“Take it with you, and keep it. Empire law states that front-line generals may not be transferred for personal reasons under any circumstances. The Empire is a ‘nation of warriors,’ and that must not change under any circumstances.
“...... yes.”
Jessica looked even more serious as she realized I was ‘about to say something’.
“You are my concubine, and whatever pretense you make, it will be for private reasons. It can only be seen as such. In other words,”
“The next time you return, it will either be in triumph or in defeat.”
Another possibility is to return as a corpse— but I left it out.
“Obviously, I want a triumphant return.”
“—Yes!”
“Do you get it?”
“Eh?”
Jessica nodded enthusiastically, but then she paused.
“The Empire is a nation of warriors, so changing the system to appoint you, a concubine, as a general will be acceptable. But, normally, it would not be so. But it did—-why,”
“......”
Jessica looked at me with a serious expression and held her breath.
“I changed it for you because I thought you can do it.”
“—-!”
Jessica’s demeanor changed as I looked at her.
She was already a fantastic woman, but now she was even more so.
My eyes were not mistaken.
Jessica left the room once to form her immediate unit, leaving just Henry and me there.
Henry stared at the door she had left and exhaled, “Oh, .......
“That’s amazing.”
“Hmm?”
“In just that moment when she received His Majesty’s words, she became stronger that I felt as if she had been training somewhere for a year. No ordinary human being can have that kind of fighting spirit.”
“She had it right from the start. As I told her, that is why I changed the system.”
“Your Majesty’s grasp of people’s hearts and minds is indeed impressive.”
“That said, ...... going back to our conversation, we need to find a way to mass produce the potions.”
Henry nodded with a serious look.
“I wish I had remained completely ignorant of it, but now that I know it exists, ......”
“Umu.”
I stroked my chin and thought for a moment.
“You are certain that potions have existed throughout history, correct?”
Henry nodded profoundly.
I had known about recovery magic, but I had never heard of potions until Henry told me.
But since Henry was so sure, he must have read about it in a book.
“Any clues as to how to make it?”
“Maybe. If there were, one would have tried to reproduce it by now.”
“Yes. It is worth studying, even with the Empire’s annual budget. If only we had a clue.”
“It’s truly that much worth.”
Henry said, “even estimating lightly, three times as much”.
For the Empire, land of warriors and constant conquerors, this was more important than anything else.
Henry mentioned the annual budget, but it is worth having the research done even if it means tilting the whole nation.
In history, there have been countless Emperors who have ruined themselves and their nations in the pursuit of immortality.
The potion is something that the Empire needs as much as, if not more than, that.
“But if there are no clues at all, there’s no way to do it.”
“Yes. ......”
“Even though the royal library numbers in the tens of thousands. ......”
Henry quietly shook his head.
I see.
Speaking of the royal library, it has the most important collection of knowledge that exists in this land.
But it is still not there.
............. Well, if there were, we would have reproduced it by now.
There is no clue.
That’s the usual case.
I had one thing in mind.
“Henry, you know about Livyathan, right?”
“Huh ...... His Majesty’s magic sword?”
Henry asked cautiously.
Livyathan – originally Leviathan.
Henry was there when the Crown Prince brought it.
Come to think of it, we’ve known each other for a long time.
Knowing that Leviathan had become Livyahtan led to a discreet response.
“No, not that way. Do you know anything else?”
“............,–!”
After tilting his head in thought, Henry hastened to ask,
“The Silver Age?”
“Yes, Livyathan, one of the Four Sages from the Silver Age.”
“Don’t tell me!?
I gave a small nod.
I have not heard it directly, but I am sure of it.
The mysterious voice –that I heard before in a dream-like place.
Luthiya is Bahamut.
And Leviathan is Livyathan.
After being convinced of each, I became more and more certain.
Livyathan, one of the Four Sages, is this Livyathan.
This led to another fact.
“Livyathan.”
I raised my hand and called out Livyathan.
The humanoid, non-human Livyathan appeared and knelt down before me.
“You wished to see me, my Lord?”
“Answer me, were you around when recovery magic existed?”
“Yes, I was aiding the Emperor of the time.”
“Ohh, .......”
Henry marveled.
He was smart and understood immediately.
There wasn’t any information on recovery magic and potions in any books.
I instantly understood that it existed in the mind of the ‘living witness’ in front of me.
“Amazing .......”
Henry looked at me with a look of deep respect as I retrieved the lost knowledge.
“You know about potions, too.”
“Tell me.”
“There is a magic channel in the earth called the ‘Dragon Vein’.”
“Dragon veins.”
I mumbled in return and rolled it on my tongue.
It’s a word I’ve never heard before.
I look at Henry and ask, “You got something”
Henry comes back to himself and shakes his head.
Then I asked Livyathan again.
“What is this dragon vein?”
“A river of magic power, so to speak. Starting as a small stream, it becomes a tributary and joins the mainstream, which eventually leads to the great ocean.”
“...... is the magic power that gathers and condenses and materializes?”
“As expected of my Lord. That is as you say.”
I carefully considered what Livyathan had said.
“In short, the dragon veins no longer exist?”
“Yes. All but one of the veins have been cut off and exhausted.”
“One? You mean it’s still there?
“It’s more like it’s regenerated.”
“Where?”
“Almeria, capital Nisir.”
“.....Eh?”
It was completely unexpected.
I had expected to see the names of more remote and sacred places, but unexpectedly, I found familiar names.
I had lived and ruled there for a time.
“Dragon veins are the lifeline of the earth. Life is water.”
“Water.”
“That land was also ruined, but it has been regenerating in recent years.”
“Water ...... regeneration ......?”
I stroked my chin and thought.
Then, Henry came up from the side.
“Maybe it’s because His Majesty has built a special waterway?”
Livyathan nodded quietly.
“......”
I was surprised by something unusual and completely unexpected.
“Amazing, as expected of His Majesty.”
Meanwhile, Henry was marveling even more. |
{
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"source": "superScraper-fanfic"
} | トカゲした後、龍脈の活性化を眺めつつ、自分のステータスをチェックした。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
帝国皇帝
性別:男
レベル:17+1/∞
戦う前とまったく変わっていなかった。
魔物を一掃したからレベルが上がってる可能性はあったが、そうはならなかった。
まあ、そんなものだろうと思った。
俺のレベル上限は(何故か)∞だが、世の中の大半が15以下だ。
つまり今の段階でも人間のかなり上位クラスのレベルである。
一戦程度じゃ上がらないのも無理からぬ事だ。
上がらないものは上がらない、無い物ねだりしても得られるものはない。
俺は自分のステータスから、再び龍脈を活性化しているバハムートらをみた。
大地――砂漠がほのかに光り始めている。
ぼんやりと、月明かりと同じ程度の淡い光を放ち始めている。
その光が、まるで支流から本流へ流れ込む川のように、活性化している中心点に向かって流れ込んできていた。
それと同時に、普段感じられない、濃密な魔力の波動を感じる。
それだけでも成功しつつある、というのが分かる。
「うぅ......」
「頭......痛い......」
「むっ」
急に背後から、ペイユとアイビーの苦しそうな声が聞こえてきた。
振り向くとがうずくまって、苦しんでる姿が見えた。
「どうした?」
ペイユは喋る余裕もない感じで、アイビーはどうにか「寒い」という言葉を搾り出した。
「寒い?」
「ああああ、熱い......熱いっ!」
一変。
アイビーは転げ回って熱さを訴えた。
どういう事なんだ――。
「はっ! これか」
ハッとして、パッと龍脈に振り向いた。
龍脈から、高濃度な魔力があふれ出している。
これに当てられたのか。
「ジズ、こっちに手を貸せ」
俺はそう言って、龍脈活性にかかっていたジズを引っこ抜いた。
そのジズを使って、光の翼を作った。
俺の背中に現われた、淡い燐光を放つ光の翼。
飛翔の能力があるそれを目一杯広げた。
翼を全開に広げて、燐光の粒子を放ちながら、背中にいる二人をかばう。
すると――
「熱くない......」
「ご主人様!」
ペイユが感動気味で俺を呼んだ。
状況を見て理解したようだ。
ペイユに一呼吸遅れるようにして。
「すごく綺麗......」
と、こっちは光の翼に見とれていた。
「......はっ! ご、ご主人様。私達いったい......」
「魔力に酔ったのだろう」
「酔った......魔力に?」
「ああ。翼の範囲から出るなよ」
「は、はい」
二人に念押しして、俺は再び龍脈の方に集中する。
「いるだけで苦しかったのに......平然と立っていられるなんて」
「すごい......」
龍脈が活性化するのを、じっと待ち続けたのだった。
数時間後、二人を連れて宿に戻ってきた。
部屋に入って、ここしばらくですっかり足洗いが上手くなったアイビーにそれをやらせつつ、懐からガラスの小瓶を取り出した。
瓶の中には、澄み切った色の液体がゆらゆらとしていた。
「魔力って......水みたいなんですね......」
俺が持っているものを見て、感嘆するペイユ。
「いいや、魔力は本来見えないものだ。どちらかと言えば空気の様なものだ」
「え? でも......」
驚くペイユ、俺の顔と小瓶の液体を交互に見比べる。
「これは魔力を凝縮させたものだ。前にみせたポーションもこれから作られている」
「そ、そうなんですか」
「せっかくだ、いろいろみせてやろう」
俺はそう言って、まず部屋の中央、俺が座っている椅子のセットでもあるテーブルの上にある燭台を手に取った。
燭台のロウソクを取り払って、魔力の雫を一滴――わずか一滴だけたらした。
そして――火をつける。
「わあっ」
じっと見つめていたペイユはもちろん、俺の足を洗い、布で拭いていたアイビーも驚いて、手を止めて顔をあげた。
「こんなふうに、火をつけて灯りにする事ができる」
「油みたいなものですね......あれ、すごく長い」
「そうだ、蝋よりも油よりも、こっちの方がずっと明るくて、長持ちする」
「それだけではない――アポピス」
アポピスをよんだ。
杖の形になっているアポピスを呼んで、ようやく燃え尽きた燭台の上に、アポピスの毒をたらす。
そして魔力の雫を更に一滴たらす。
アポピスの毒と魔力の雫が混ざったあと、小枝サイズの棒でかき混ぜた。
やがて、透明だった魔力の雫から細い糸のようなものができた。
円を描くようにかき混ぜつつ、その糸をすくい上げる。
それをペイユと、完全に手が止まっているアイビーに見せた。
「こんなものも作れる」
「これは......?」
「一種の糸だ。通常の糸と違って燃えにくいし、水も通さない」
「つまり燃えないし、雨の時濡れないような服を作ることができるわけだ」
今ひとつ理解してなさそうな二人に、糸の
「す、すごい!」
「そんなものが作れるの......?」
驚き、驚嘆する二人。
「他にも様々な用途があるが。どれもまだ模索している段階だ。当面はポーションを作るために使うことが多いだろう」
「模索......って、ご主人様が研究しているのですか?」
「そうだ」
「わあ、さすがご主人様研究も自分でするんですね」
「学者とかじゃないんだ......」
二人によいしょされつつ、俺は持っている魔力の雫を改めて見つめた。
龍脈の活性化が上手くいって、魔力の雫の凝縮に成功した。
ペイユとアイビーがそれに当てられたことからも、サラルリアの龍脈が産み出す魔力がアルメリアのそれよりも高濃度・高純度だという事がわかった。
純度が高ければ高いほどいいのが、この魔力の雫だ。
お試しの抽出が成功したのだ、次は量産体制の事を考えねばな。
そのためには相当の投資がいるだろう。
さて国庫は......足りるか?
してでもこっちを優先――。
『主よ、緊急事態が起きた』
「リヴァイアサン? なんだ、緊急事態というのは」
俺は眉をひそめて、リヴァイアサンに聞き返した。
リヴァイアサンがこんなことを言ってくるなんて珍しい。
『龍脈が弾けた』
「なにっ!?」
掛け値無しの緊急事態に思わず立ち上がってしまった。
俺の足を洗っていたアイビーに水がかかったが、それどころではなかった。
女二人を置いて、俺は活性化に成功したはずのところに戻ってきた。
満月が地平線に沈んでいく中俺がみたのは、あっちこっち途切れていて、断末魔の様な光を漏らしている龍脈の姿だった。
「どういうことだリヴァイアサン」
「話せ」
『御意......この土地の龍脈は長年寸断され、魔力が通っていなかった』
『そこに主がつなげ直した。しかし、長年魔力が通っていなかったため、龍脈そのものはすでに劣化していた』
「......家屋に人が住んでいければ加速度的に劣化する、それと同じか」
『本質は同じだ』
俺は頷いた。
「つまり、ボロボロの管を繋ぎ直したはいいが、管はすでに流れに耐えられなくなっていた、ということだな」
「アルメリアの時は大丈夫だったぞ......ああいや。ここの方が魔力の純度も、なんなら勢いも上だったな」
『......』
リヴァイアサンは答えなかったが、無言の気配から同意と感心の感情が伝わってきた。
いわばヒントを与えられている状態だ。ならばアルメリアと違って何故そうなったのかも推察が付こうという物だ。
「原因は分かった。ではどうすればいい? 繋ぎ直すことは可能なのか?」
『人柱――生け贄がいる』
俺は少し考えた。
「生け贄になる人間に何かしらの条件はあるのか?」
『贄になる瞬間が健康体であること、それだけだ』
「なら死刑囚を使おう。連座制で家族もろとも処刑されるヤツがいたはずだ。家族の助命と引き換えにすれば命をさしだしてくれるだろう」
『さすが我が主。皇帝に相応しい決断、お見事でございます』
「他に注意事項は」
『不浄なるものがあってはならない。贄にす前から清めて、食も断たせる。それから――』
リヴァイアサンからいろいろ説明を受けたが、その先はすべて些末な事だった。
生け贄か......。
なんとも思っていない――と言うことは無いが。
それでも龍脈の活性化、魔力の雫。
それを量産した暁の帝国の発展を思えば。
例えそれが罪業であろうと、皇帝としては背負う以外の選択肢はないと、俺は思ったのだった。 | After wiping out the lizards, I checked my status while watching the revitalization of the dragon vein.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Emperor of the Empire
Gender: Male
Level: + /∞
It hadn’t changed at all from before the fight.
There was some possibility that my level might have gone up because I wiped out the demons, but it didn’t.
Well, that’s what I thought it would be.
My level cap is (somehow) ∞, but most of the world is under .
In other words, even at this stage, I am at a fairly high level for a human being.
It’s not surprising that it won’t go up in just one fight.
If it doesn’t raise, it doesn’t raise, and there is nothing to be gained by begging for something you don’t have.[TN: Cannon Event]
I looked at my status and saw Bahamut and the others activating the Dragon Vein again.
The land – the desert was beginning to glow faintly.
It was dimly shining with a light as faint as moonlight.
The light was flowing toward the activated center point, like a river flowing from a tributary to the mainstream.
At the same time, I feel a dense surge of magical power that I cannot normally feel.
That alone was enough to tell me that it was succeeding.
“Ugh.......”
“My head ...... ouch ......”
“Muuh.”
Then suddenly, from behind me, I hear the pained voices of Peiyu and Ivy.
I turned around to see them both cowering and in agony.
“What’s wrong?”
“.......”
Peiyu looked like she couldn’t even afford to speak, and Ivy somehow managed to squeeze out the word ‘cold’.
“Cold?”
“Ahhhh, hot ...... hot!”
Complete change.
Ivy rolled over and complained of the heat.
What’s going on–
“Ha! That one, huh”
With a huff, I turned around to look at the dragon vein.
A high concentration of magical power was overflowing from the veins.
They were hit by this, huh.
“Ziz, give me a hand here.”
I said that and withdrew Ziz from the dragon vein.
Then I used the Ziz to create wings of light.
Wings of light with a pale phosphorescent glow appeared on my back.
As they were capable of flying, I spread them out as wide as I could.
Spreading the wings to their full extent, I shielded the two people on my back while releasing particles of phosphorescent light.
Then–
“Not hot ......”
“Master!”
Peiyu called me, seemingly moved.
Looks like she saw and understood the situation.
Peiyu gasped a breath later.
“So beautiful .......”
And she was admiring the wings of light.
“...... ha! M-Master. We were ......
“It must have been magic intoxication.”
“Intoxicated ...... with magic?”
“Yeah. Stay within the wings range.”
“Y-yes.”
After reminding the two of them, I focused on the dragon vein again.
“It was painful just to be there, and yet he could stand there ...... unperturbed.”
“Amazing .......”
I waited patiently for the dragon vein to activate.
A few hours later, I returned to the inn with the two of them.
Entering the room, I took out a glass vial from my pocket while letting Ivy, who had become quite good at washing feet in the past while, do it.
Inside the bottle was a clear-colored liquid shimmering.
“Magic is like ...... water, I see ......”
Peiyu marveled at what I was holding.
“No, magic power is essentially invisible. It is more like air.”
“Eh? But ......”
Peiyu, who was amazed, alternately examined my face and the liquid in the vial.
“This is condensed magic. The potion I showed you before is also made from this.”
“I-Is that so?”
“Well, I’ll show you all about it.”
I said this and picked up the candlestick in the center of the room, on the table that is also the set of the chair I am sitting on.
I removed the candles from the candlestick and put a drop – just a drop – of magic power on it.
Then – I lit it.
“Wow.”
Ivy, who was washing my feet and wiping them with a cloth, was also surprised, stopped, and looked up.
“Like this, you can light it and make it into a lamp.”
“It’s like oil isn’t it,...... and, very long.”
“Yes, it’s much brighter and lasts much longer than wax or oil.”
“Not only that–Apophis.”
I called out Apophis.
Calling Apophis in the form of a wand, and pouring Apophis poison on the candlestick, which had finally burned out.
Then, I put another drop of magic power on the candlestick.
After the Apophis poison and the magic drop were mixed, I stirred the mixture with a twig-sized stick.
Soon, a thin thread-like substance formed from the transparent drop of magic.
While stirring in a circular motion, I scooped up the thread.
I showed it to Peiyu and Ivy, who had completely stopped working.
“I can make something like this.”
“Is this ......?”
“It’s a kind of thread. It’s not flammable like regular yarn, and it’s impervious to water.”
“So you can make clothes that don’t burn easily and don’t get wet in the rain.”
I explained the end of the thread to them, who didn’t seem to understand it at the moment.
“Wow, that’s amazing!
Can you make something like that?
They were amazed and marveled.
There are many other uses,” he said. We are still exploring them. For the time being, it will most likely be used to make potions.
‘Exploring ...... is what your master is researching?
“Wow, you do your own research.
I’m not a scholar or anything like that. ......
While receiving the goodwill of the two, I looked again at the drops of magic power I was holding.
The Dragon’s Vein activation was successful in condensing the drops of magic power.
Also, since Peiyu and Ivy were hit by it, it’s clear that the magic power output by Saraluria’s dragon vein is more highly concentrated and pure than that of Almeria’s.
The higher the purity, the better this drop of magic power.
Now that the trial extraction was successful, we need to think about a mass production system.
That would require a considerable investment.
Now, will the treasury have enough ......?
At worst, even if we have to requisition it, this is our priority.
{My Lord, an emergency has arisen.}
“Livyathan? What is this emergency?”
I raised my eyebrows and asked Livyathan.
It was unusual for Livyathan to say something like this.
{The dragon vein has burst.}
“What!?”
I stood up unintentionally at the unmitigated emergency.
Ivy, who was washing my feet, got splashed with water, but it wasn’t important.
Leaving the two women behind, I returned to what should have been a successful activation.
As the full moon was sinking into the horizon, I saw the Dragon’s veins, broken here and there, leaking out a desperate light.
“What is the meaning of this, Leviathan?”
“Speak.”
{By Your Will ......, the dragon vein in this land has been cut off for many years, and no magic has passed through it.}
“Yeah.”
{The Lord reconnected it there. But the vein itself had already deteriorated because it had been without magic for so many years.}
“......, if a house is left unoccupied, it deteriorates at an accelerated rate, it is just like that, huh.”
{The essence is the same.}
I nodded.
“So you’re saying that you reconnected the battered pipes, but they were already unable to withstand the flow.”
“It was fine in Almeria. ...... Ah, no. The purity of the magic here is much better than in Almeria, and if anything, it’s more potent.”
Livyathan didn’t answer, but the silent hints conveyed a feeling of agreement and admiration.
It’s giving a hint, so to speak. Then, unlike Almeria, it is possible to guess the reason why it happened.
“I understand the cause. So what should we do? Is it possible to reconnect them?”
{It needs a sacrifice– a human sacrifice.}
I thought about it for a while.
“Are there any requirements for a person to be sacrificed?”
{Only that the human being must be in good health at the moment of the sacrifice.}
“Then let’s use a death-row prisoner. There must have been a man who will be executed with his family in succession. In exchange for the family’s life, he would give his life.”
{Sasuga my Lord. A decision worthy of the Emperor.}
“Any other precautions?”
“There should be no impurity. For three days before the sacrifice, he must be cleansed and forbidden to eat. And then...”
Leviathan explained everything to me, but beyond that, it was all trivial.
A Sacrifice huh.......
I don’t care – I can’t say that.
Still, the activation of the Dragon’s vein, the magic power drops...
If one considers the development of the Empire of the Dawn, which mass-produced them.
Even if it was a sinful deed, I thought that the Emperor, I had no other choice but to bear it. |
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} | 全壊した書斎は、使用人やらメイドやらが取り敢えずの始末をしていた。
その場にいても仕方がないから、俺は庭に出ている。
星空の下で、能力を確認。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
法務親王大臣
性別:男
レベル:15/∞
HP C+E 火 E+A
能力は完全に元通りだ。
増えてもいなければ、減ってもいない。
隕石を手にしたあれ的なものらしく、あの触手を倒すと戻るようだ。
念のための能力も一通りチェックする。
直前にやった模擬戦でつけた序列を下から順にやっていき、最後はバハムートの業炎を出した。
掌を上にして突き出して、その掌の十センチくらい上に浮かぶ炎の玉。
燦然と輝く炎の玉は、周り一帯をまるで昼間のように明るく照らした。
「おお!!」
背後から感嘆する声が聞こえる。
振り向くと、ドンが戻って来ていた。
「さすが殿下、あの凄まじい戦いでも手加減――力を抑えていたのですな」
ドンは、明らかに「すごい」炎の玉を見て驚嘆していた。
「それよりも、捕まえたのか」
「はっ、本人がニシルまで持ってきて、殿下の屋敷には使用人が届けたそうです。ただ......」
「ただ?」
「私が行った時、そいつは『待ってました』と嬉しそうでした。褒美がやってきた、という感じで。少し脅して話を聞いても、本人は『隕石を拾って文字を彫った』としか」
「単にごまをするつもりだったって事か?」
「そう感じます。もちろん演技の可能性もありますので、引き続き尋問させてます」
「わかった、だったらこの件はお前に任せる」
「はっ」
それでもう報告する事はなくなったドンは、一礼して下がっていった。
能力が戻ったのはいいが、一つ、謎が残ってしまったな。
封地入りしている親王は年に一度、都に戻って、陛下に封地統治の現状を報告する義務がある。
その時期になったので、俺はニシル――そしてアルメリアを出て、生まれ育った都に戻って来ていた。
都にある王邸には戻らず、一直線で王宮を訪ねる。
顔見知りの宦官に陛下へのお目通りを願い出ると、すぐさま書斎に通された。
書斎に入り、俺は慣れた様子で陛下の前で片膝をつく。
「おお、ノアじゃないか」
「臣・ノア、年度報告に参上いたしました」
「そうかそうか。それよりも聞いたぞ。結構な怪物を剣一本で倒したそうじゃないか」
相変わらず耳が早い陛下。
俺が出発する直前の話なのに、もうすでにキャッチしている。
「さすがノア、さすが我が『戦士の国』の親王」
陛下はものすごく上機嫌だった。
帝国の正式名称は「ミレース帝国」、古い言葉で「戦士の国」って意味だ。
その戦士の国の親王が戦いで力を見せつけた。
陛下はその事にものすごく喜んでいる。
「陛下からアルメリアだけではなくアララートも預った身として、日々の精進は怠っておりません」
「うむ。これからもより励むといい」
「はっ。つきましては――」
「ああ、報告だったな。それは今は良い」
陛下は俺の報告を止めた。
俺は小首を傾げて、不思議そうに陛下を見た。
「外交の使者が来ているのでな、余はそれにまず会わねばならん。ノアも同席しろ」
「御意」
外交ならそっち優先は当たり前だ。
陛下はそう言った後立ち上がって書斎を出た。
俺はその後に付いて行く。
王宮の中を進み、連れてこられたのは大広間。
基本は謁見の間と似たような造りだが、陛下の玉座だけくらいの高さのある高台の上に設えてある。
執務ではなくて、外交の使者など、権威を強調したい時に使う広間だ。
既に第一と第三宰相が台の下に控えていて、その他にも数人の役人や書記官達がスタンバっていた。
陛下はゆっくりと高台に登っていき、俺は台の下、第三宰相の横に立った。
古馴染みだが、ここで挨拶をする訳にもいかないので、互いに目礼だけを交わした。
陛下が玉座に座るなり手をかざす、すると門の所にいる宦官が甲高い声で言った。
ルーシ・ツァーリ?
初めて聞く名前だな。ルーシ王国とは違うのか?
そんな事を考えながらしばらく待っていると、外から一人の男が入ってきた。
浅黒い肌の、ヒゲがもじゃもじゃしている男だ。
男は指定された場所に辿り着くと、その場でぎこちない動きながらも、片膝をついて一礼した。
そして、何かを言う。
聞き慣れない言葉だ。
「陛下にお目にかかれて光栄、と、申しております」
控えている役人の一人が陛下に言った。
なるほど、通訳官って事か。
陛下が鷹揚にうなずくと、男は更に何かを言った。
それを最後まで聞いた通訳官は眉をひそめて。
「えっと、私は......偉大なる、その......の、使者で参りました。もっと偉大な皇帝陛下に......その、お願いがあります」
しどろもどろに通訳する通訳官。
陛下がじろりと通訳官を睨んだ。当たり前だ、傍目でも分かる、通訳が上手く訳せていない。
睨まれた通訳官は汗だらだらになった。
「まずは、ルーシ・ツァーリとは何だ、と聞け」
「はっ!」
通訳官は片膝ついている男に話した。
これまた、陛下の表情が不快になっていく事となった。
言葉は分からない、しかし話をされている男が何度も首を捻ったり、不思議がったりしている。
明らかに言葉が上手く通じてないのが分かる。
「やはりダメですな」
横で、第三宰相ジャン=ブラッド・レイドークが俺だけに聞こえるようにぼそっと言った。
「何か知っているのか?」
「あれはルーシ語の中でも更に南の方言のようですからな。通常の通訳官では難しいでしょう」
「なるほど」
俺は頷いた。
ルーシとは、帝国の北にあるルーシ王国のことである。
国民全体に見る気性の荒さと、帝国に勝るとも劣らない程の武力重視の風潮も相まって
別名、羅刹の国とも呼ばれている国だ。
当然、帝国とはちょこちょこ諍いが起きており、そのための交渉でも必要なので通訳官は常にいるのだが。
大抵の通訳官がそうであるように、標準語は通訳出来ても方言は難しいのだ。
まずいな、陛下の機嫌が徐々に悪くなっている。
このままじゃ――と思っていた所に。
『我に任せよ』
と、バハムートの声が聞こえてきた。
(任せる?)
『我らは人を超越し、あらゆる人と意思の疎通が出来る存在』
どういう事だ? と思っていると。
『だから、皇帝陛下に言ってくれ。私はルーシ・ツァーリを代表して、帝国と同盟を結ぶためにやってきた使者だって』
さっきまでまったく分からなかった男の言葉が、はっきりと分かる様になった。
聞こえ方は、バハムートの言葉か、レヴィアタンの感情に近いあれ。
あんな感じで、耳に入ってきた知らない言葉が、理解できる意味で頭に届いた。
『俺が伝えよう』
口を開くと、使者の男も、通訳官も驚いた。
俺は陛下に振り向いて、見上げながら言った。
「恐れながら申し上げます。この男はルーシ・ツァーリを代表する、同盟を結ぶ使者だと申しております」
瞬間、広間の中がざわつく。
「解るのか、ノア」
「......ルーシ・ツァーリとは何だ、と聞いてみよ」
陛下は少し考えて、俺に言った。
俺は男に振り向き。
『ルーシ・ツァーリって何だ? ルーシ王国ではないのか?』
『俺達はルーシの圧政から立ち上がったものだ。既に王国南方、帝国と隣接している土地を支配下に置いている。ルーシ・ツァーリというのは我々の新しい国の名前だ』
男から聞いた話を、そのまま陛下に伝えた。
「ふむ。すごいな、ノアは」
陛下は俺の通訳を最後まで聞いて、感心した目で俺を見た。
......陛下の事だ、今俺が伝えた事はきっともう知っている。
いや、陛下じゃなくても、国政の中枢にいる人間なら知っていて当たり前の事だ。
隣接していて、散発的な交戦状態にある国に内紛が起きて、一部独立した。
どんな皇帝だろうと把握している重大な出来事だ。
それを知らない(はずの)俺が通訳で正しく訳した。
「さすがだノア。引き続き通訳を頼む」
「ルーシ・ツァーリは帝国とどのような同盟を結びたいのだ?」
『私達はルーシの圧政に耐えかねて立ち上がったのみ。偉大なるミレース帝国に敵対するつもりはまったく無い。国境の恒久的な平和を願う』
「それを信じさせる根拠は」
『我が王の母、そして姉を人質に差し出す用意があります』
俺が訳した直後、宰相達を含む大臣達が一斉に「おおお」と声を上げた。
男が俺に目礼した。
言葉が通じなくても、今の反応で正しく訳しているのが分かる。
王の母と姉を人質に自ら差し出すというのはそれほどの事だ。
「話は分かった。重臣らと諮ってから返事をする。今日は下がって休んでいるがいい」
『ありがたき幸せ』
使者の男は最後に一礼してから立ち上がり、身を翻して大広間を出た。
使者が居なくなった後、陛下が俺たちに聞いた。
「今聞いたとおりだ。卿らの意見を聞きたい」
第三宰相が一歩出て、軽く頭を下げてから答えた。
「私は乗るべきではないと思います。名前を変えていてもルーシ――羅刹の国の流れを汲むもの。信用するべきではありません」
それに対して、第一宰相が反論した。
「彼の国とは交戦してはおりません。ここはまず受けて、帝国の懐の広さを示すべきかと。そのまま臣従するならよし、血迷って跳梁してきた暁には改めてたたき伏せればよろしいかと」
第一宰相は賛成、第三宰相は反対。
その二人を中心に、他の大臣らも次々と意見を述べた。
それが一通り終わった後、陛下は俺に向かって。
「ノアは、どう思う?」
俺は少し考えた。
アルメリア、ニシルの屋敷の事を思い出した。
屋敷の周りを――と目論んでいたことが、ここで似たような状況になるとはな。
「俺は賛成です。むしろ積極的に支援するべきだと思います」
大臣らは騒ついた。
「鎮まれ。ノアよ、その理由は」
「はい、地図で説明できれば」
「誰か地図を持てぃ」
陛下が命じるとの宦官が、まるで旗のようなサイズの地図を持ってきた。
帝国と、周辺諸国を示した地図だ。
俺は書記官の所からペンを取って、地図の上――帝国とルーシ王国の国境の上に、もう一本の線を引いた。
国境とその線の間にある区域に「長城」と書き込んだ。
「ルーシ・ツァーリの領土をこのような形にするのが最適かと」
「ふむ、帝国とルーシ王国を寸断するような形なのだな?」
「はい。ルーシ王国との諍いの歴史は永く、あらゆる手段をとってきたのにもかかわらず根絶は不可能でした。それ処か講和の意思すら向こうは見せたことはありません」
「一方、ルーシ・ツァーリは王の母親と姉を人質に差し出すほど、帝国と手を結びたがってます。であれば、ルーシ・ツァーリを使って、防波堤にするべく支援するのが上策かと」
「......なるほど、石の城ではなく、
国の長城
俺ははっきりと頷いた。
これが、俺が屋敷でやろうとしていた事だ。
かつて、俺が暗殺されかかった事があった。
メイドのゾーイを買収して、俺に毒を盛ろうとした連中がいた。
しかし、俺に恩義を感じるゾーイが逆に俺に密告してきた。
それと同じように、屋敷の周りに、俺に恩義を感じる人間をぐるっと取り囲むように配置したいと考えた。
今年は金が足りないから、来年以降だと思っていたが――ここで似たような状況に出くわすとは予想外だった。
「こうすれば、ルーシ王国は最低でもルーシ・ツァーリを叩きのめさないと帝国に手が出せません」
その話を聞いて、陛下は。
「うむ、すごいぞノア。その案素晴しいぞ」
「少し恩を売り、更に支援をしてもよろしいかと。向こうは反乱を起こした直後ですから、物資が不足しているはず。アルメリアのホージョイなら、100万人分の余剰食糧を出せます」
「うむ! よく言ってくれた。第一宰相」
「その方向で諮れ」
俺の提案が受け入れられ、陛下はもちろん、大臣らも感心した眼差しで俺を見つめていた。 | Great Wall of People
In the half-destroyed study, the servants and maids were taking care of the mess.
There was no point in staying there, so I went out to the garden.
I checked my abilities under the starry sky.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Minister of Justice
Gender: Male
Level: / ∞
HPC+EMPE+EStrengthC+AStaminaD+EIntelligenceE+DSpiritE+DSpeedE+EDexterityE+DLuckE+D FireE+AWaterC+SWindE+FEarthE+DLight E+CDarknessE+C
My abilities are completely back to normal.
They haven’t increased, nor have they decreased.
The problem with the meteorite in my hand seems to be temporary and will return when I defeat the tentacle.
I checked the abilities of all five of them just to be sure.
Going through the order from the bottom of the ranks from the mock battle I had just before, I finally produced Bahamut’s flame.
It was a ball of flame that floated about ten centimeters above my palm, thrusting it upward.
The brilliantly shining ball of flame illuminated the entire area around it as brightly as if it were daytime.
“Ohh!”
I heard a voice of admiration from behind me.
When I turned around, Don had returned.
“As expected of His Highness, even in that tremendous battle, you were able to hold back your power.”
Don was obviously marveling at the “amazing” fireball.
“Rather, you caught him?”
“Yes, he brought it to Nisir in person, and a servant delivered it to His Highness’s residence. Just .......”
“Just?”
“When I got there, he looked so happy that he said, ‘I was waiting’. He seemed to be happy as if his reward had come. When I threatened him a little and asked him about it, he just said, ‘I picked up a meteorite and carved letters on it’.”
“You mean he was just trying to cheat?”
“That’s what I think. Of course, there’s always the possibility that he’s acting, so we’ll keep questioning him.”
“All right, then I’ll leave you to it.”
“Yes”
Don had nothing more to report, so he bowed and left.
It was nice to have my abilities back, but there was one mystery left to solve.
The Prince who is in a fief is obliged to return to the capital once a year to report to His Majesty on the current state of the fief’s governance.
It was that time of year, so I left Nisir and Armeria and came back to the capital where I was born and raised.
Instead of returning to the residence of the th Prince in the capital, I made a straight line to visit the Royal Palace.
I asked a familiar eunuch for permission to see His Majesty and was immediately ushered into his study.
Entering the study, I knelt down on one knee in front of His Majesty in a familiar manner.
“Ohh, Noah, huh.”
“Your subject, Noah, here to submit my annual report.”
“Is that so. Well, I’ve heard more about you. Looks like you defeated quite a monster with just your sword.”
His Majesty’s ears are as quick as ever.
Even though it was just before I left, he’s already caught on.
“As expected of Noah, a Prince of the ‘Warrior Nation’.”
His Majesty was in a very good mood.
The empire’s official name is the ‘Meeres Empire’, which means “Warrior Nation” in the old language.
A Prince of that warrior nation had shown his power in battle.
His Majesty is very happy about it.
“As the one who was entrusted with not only Almeria but also Ararat by His Majesty, I have not neglected my daily efforts.”
“Umu. Keep up your diligence.”
“Yes. As for the...”
“Ahh, the report. No need for that now.”
His Majesty stopped me from giving my report.
I tilted my head and looked at him curiously.
“There is a diplomatic envoy here, and I need to see him first. Noah should be there.”
If it’s a diplomatic matter, it should come first.
His Majesty stood up after saying this and left the study.
I followed him.
Proceeding through the palace, I was brought to a large hall.
The basic structure is similar to that of the audience hall, but only His Majesty’s throne is set on a raised platform about two levels high.
It’s a room used not for office work, but for diplomatic envoys and other occasions when you want to emphasize your authority.
The First and Third Viziers were already standing under the platform and several other officials and clerks.
His Majesty slowly ascended the dais, and I stood underneath the dais, next to the Third Vizier.
Although we were old acquaintances, we couldn’t greet each other here, so we only exchanged glances.
As soon as His Majesty sat down on the throne, he held out his hand, and the eunuch at the gate said in a high-pitched voice:
Rushi Tsar?
I’ve never heard that name before. Is it different from the Kingdom of Rushi?[TN: You wanna know about this Kingdom of Rus’ルシ’? this may be referring to this kingdom which existed long ago ]
As I waited for a while, a man came in from outside.
He was a dark-skinned man with a bushy beard.
When he reached the designated place, he bowed down on one knee, moving awkwardly on the spot.
Then he said something.
The words were unfamiliar.
“He says it’s an honor to meet you, Your Majesty.”
One of the officials in attendance said to the king.
I see, a translator.
His Majesty nodded humbly, and the man said something more.
The translator listened to the end of it and furrowed his brow.
“Well, I’m here on behalf of the ...... magnificent, that ...... messenger. I have a ...... request to make it to the greater Emperor.”
The translator slurred as he translated.
His Majesty glared at the translator. Of course, it was obvious even to the casual observer that the translator was not translating well.[TN: I think I will get along well with that translator]
The translator was drenched in sweat from the glare.
“First of all, ask him what is the Rushi Tsar?”
“Yes!”
The translator spoke to the man on one knee.
And again, His Majesty’s expression grew uncomfortable.
I don’t understand the words, but the man being spoken to is twisting his head and wondering over and over again.
It was obvious that the words were not being understood well.
“It’s still not working.”
Jean Brad Reydouk, the Third Prime Vizier, whispered beside me so that only I could hear.
“Do you know anything about it?”
“That seems to be a very southern dialect of Rushian. A regular translator would have difficulty.”
I nodded.
Rushi is the name of the kingdom of Rushi in the north of the empire.
Combined with the harshness of the people, and the emphasis on military power, which is no less than that of the Empire,
It’s also known as Rakshasa’s Country.[TN: Rakshasha (Sanskrit: राक्षस, rākṣasa) is a supernatural being in Hinduism, Buddhism, and Jainism. Rakshasas are also called “man-eaters ” (nri-chakshas, kravyads). A female rakshasa is known as a rakshasi. A female rakshasi in human form is a Rakshesha. The terms asura and rakshasa are sometimes used interchangeably.]
Naturally, there are a few disputes with the empire, so there are always translators to help with negotiations.
As is the case with most translators, they can interpret standard languages, but dialects are difficult.
This is not good. His Majesty’s mood is getting worse and worse.
I was just thinking If this continues...
{Leave it to me.}
I heard Bahamut’s voice.
(Leave it to you?)
{We are beings that transcend humanity and can communicate with all people.}
What does that mean? I wondered.
{So tell His Majesty. I am here on behalf of the Rushi Tsar to form an alliance with the Empire.}
The man’s words, which I hadn’t understood at all before, became clear to me.
It was something that sounded like Bahamut’s words or Leviathan’s emotions.
In that way, the unknown words I heard reached my head in an understandable way.
“I’ll convey it.”
When I opened my mouth, both the messenger and the translator were surprised.
I turned to his Majesty, looked up at him, and said.
“With all due respect, Your Majesty. I’m afraid I must inform you that this man is a representative of Emperor of Rushi and an envoy of the alliance.”
Instantly, there was a buzz in the hall.
“Do you understand, Noah?”
“Yes.”
“Ask him what the ...... Rushi Tsar is.”
His Majesty thought for a moment and then said to me.
I turned to the man.
{What is Rushi Tsar? Isn’t it the Kingdom of Rushi?}
{We have risen from the tyranny of the Rushians. Our people have already taken control of the lands to the south of the kingdom, adjacent to the Empire. Rushi Tsar is the name of our new country.}
I told His Majesty exactly what the man had told me.
“Fumu. Impressive, Noah.”
His Majesty listened to my translation until the end and then looked at me with admiration.
Since it’s ...... His Majesty, I’m sure he already knows what I just told him.
No, even if it’s not his Majesty, it’s only natural that someone in the center of national politics would know about it.
A neighboring country in a state of sporadic warfare has had a civil war and has become partially independent.
This is a major event that any Emperor would be aware of.
I, who didn’t know (but should have), translated it correctly.
“That’s great, Noah. I need you to continue translating for me.”
“What kind of alliance does the Rushi Tsar want with the Empire?”
{We have only risen against the tyranny of Rushi. We have no intention of antagonizing the great Meeres Empire. Our only wish is for lasting peace within our borders.}
” And why should we believe that?”
{We are prepared to offer our King’s mother and sister as hostages.}
Immediately after I translated, the ministers, including the viziers, all shouted in unison, “Oooh!”
The man bowed to me.
Even if I couldn’t understand the words, I could tell by their reaction that I had translated them correctly.
To offer the king’s mother and sister hostages is a big deal.
“I understand what you are saying. I will reply after consulting with my chief ministers. You may go back and rest for the rest of the day.”
{Thank you for your grace.}
The messenger gave a final bow, stood up, and turned around to leave the hall.
After the messenger was gone, His Majesty consulted us.
“As you have just heard. I would like to hear what you have to say.”
The Third Vizier stepped forward and bowed slightly before answering.
“I don’t think we should be on board. Even though they have changed their name, they are still from Rushi – the Land of the Rakshaha. We shouldn’t trust them.”
The First Vizier countered.
“We are not at war with his country. I think we should accept the offer and show him the extent of our empire. If they continue to obey us, so be it, and if they decide to jump up and down in blood, we can beat them down again.”
The First Vizier agreed while the Third Vizier disagreed.
The other viziers expressed their opinions one after another, centering on these two.
After all of that, His Majesty turned to me.
“What do you think, Noah?”
I thought for a moment.
It reminded me about Nisir’s mansion in Armeria.
I never imagined that what I planned to do – surrounding the mansion – would lead to a similar situation here.
“I’m all for it. In fact, I think we should actively support them.”
The ministers were in an uproar.
“Calm down. Noah, what is your reason?”
“Yes, if you could provide a map.”
“Somebody get me a map.”
At His Majesty’s command, four eunuchs brought out a map the size of a flag.
The map showed the empire and the surrounding countries.
I took a pen from the official’s office and drew another line on the map – on the border between the Empire and the Kingdom of Rushi.
In the area between the border and the line, I wrote the word “Great Wall.”
“I thought it would be best to make the territory of the Rushi Tsar look like this.”
“Fumu. So, you mean to divide the Empire from the Kingdom of Lucy?”
“Yes. We have a long history of disputes with the Kingdom of Lucy, and despite all the measures we have taken, it has been impossible to eradicate them. In addition, they have never shown any intention of making peace.”
“On the other hand, Rushi Tsar wants to join hands with the Empire, even offering the King’s mother and sister as hostages. If that is the case, I think it would be best to use the Rushi Tsar to help create a shield against them.”
“...... I see, so it’s not a Stone Castle, but a Great Wall of Country.”
I nodded my head clearly.
This is what I was going to do in the mansion.
There was a time when I was almost assassinated.
Some people tried to bribe my maid, Zoe, to poison me.
But Zoe, who felt indebted to me, turned the tables on them.
In the same way, I wanted to surround the mansion with people who felt indebted to me.
I didn’t have enough money this year, so I figured I’d have to wait until next year – but I didn’t expect to run into a similar situation here.
“This way, the Kingdom of Rushi won’t be able to touch the Empire without at least knocking out the Rushi Tsar.”
Hearing this, His Majesty said.
“Umu, great work, Noah. That’s a great idea.”
“I think we can do them a favor and give them some additional support. Since the other side has just started a rebellion, they must be short of supplies. Almeria’s Hojoi can provide enough surplus food for a million people.”
“Umu! Well said. First Vizier.”
“Consult with them in that direction.”
“By your command.”
My proposal was accepted, and His Majesty as well as the Viziers looked at me with admiration. |
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} | 晴れ渡った朝、俺は屋敷の庭に出た。
アルメリア地方に多く見られる、ガジュマルの木の前に立った。
ガジュマルというのは、幹から「ヒゲ」のような気根が垂れ下がる特徴的な植物だ。
そのヒゲが集まって、絡まると新しい樹幹になるが、元が細い糸状のヒゲだから、絡まって固まった後も筋張って見えて、その姿は老人の体に見える。
そこに元々の「ヒゲ」と相まって、「長命樹」「仙人樹」などと呼ばれる、縁起のいい木だ。
そのガジュマルのヒゲに向かって、俺はレヴィアタンを抜き放って、薙ぎ払うように斬りつけた。
水色の残光を曳く魔剣、その刃はヒゲにあたって――斬れなかった。
それを皮切りに、次々と斬撃を放った。
子供でも手を伸ばせばちぎれるヒゲは、斬撃を受けども受けども斬れる様子はない。
斬れないようにしているのだ。
レヴィアタンの中にある剣術、簡単に斬れるものでも、斬れないように太刀筋をコントロールする技。
俺はここしばらく、その練習を朝の日課にしていた。
レヴィアタンを30分ほど振りつづけて、剣を納めて息をつく。
地面をみる。
今日も、ヒゲも斬れなかった。
「さすがでございます、ノア様」
背後から少女の声と、拍手の音が聞こえた。
くらいの少女が、メイドのゾーイを引き連れるような形で向かって来た。
少女の名は、オードリー。
雷親王インドラの孫娘で、俺の正室である少女だ。
「今日も見事な冴えでございました」
「まあ、こんなもんだ」
「ノア様と出会うまで、こんな剣術が世の中に存在するなんて想像も出来ませんでした。さすがノア様でございます」
オードリーはそう言って更に近づいて来た。
そして俺の前に立って。
「朝食は如何なさいますか?」
「ここで取ろう」
「わかりました。ゾーイ」
オードリーに命じられて、今や屋敷のメイド長になったゾーイが準備に走った。
一旦屋敷に引っ込むと、すぐに数人のメイドを連れて出てきた。
メイド達はテキパキと、俺の前にテーブルと椅子を一脚置いて、その上にテーブルクロスと食器類を並べた。
そして、料理が運ばれてくる。
メイドが運んできた料理を、オードリーが受け取って、椅子に座った俺の前に置く。
「どうぞ、ノア様」
「ん」
いつもの朝、オードリーの給仕を受けての朝食だった。
皇族は、妻を娶ると、家の中での使用人たちの役割ががらりと変わる。
俺の食事の給仕はオードリー、そして将来加わるであろう側室達の仕事だ。
メイド長であるゾーイだろうと、「夫人」がいる時は、直接俺に給仕する事は出来ない。
また、余程のことが無い限り、正室や側室達も、俺と一緒に食事を取ることはない。
これにの意味がある。
一つは、あくまで家の主は皇族――この場合俺であると言うことだ。
王宮の縮図の様なものだ。
だから、正室のオードリーは俺に給仕をする。
もう一つは、妻の地位向上のためだ。
家の主に「直接何かする」事ができるのは妻だけ、妻が家の中のナンバーツーというのを強調するためだ。
そんな正妻・オードリーの給仕を受けつつ、雑談をする。
「そういえば、来週でお前は満十五歳になるな」
「はい、その通りでございます」
「これでやっと『除名の儀』が出来るな」
「はい! 待ちわびていました!」
オードリーは目を輝かせて、興奮気味に答えた。
皇族の妻には、もう一つ庶民と違う事がある。
それは、名字を無くすことだ。
今、オードリーはオードリー・アララートがフルネームだ。
それを「除名の儀」という儀式をもって、名字であるアララートを取って、ただのオードリーになる。
古い慣習だ。
皇族の妻になった人間は離婚を一切許さない。
そして、名字とは「産まれた家」を意味している。
それを取り除き、「帰る家がない」とする古い習俗だ。
「除名の儀を庶民は憧れているというのは知っているが、お前もそうだったのか?」
「はい! だって、これで正真正銘、本当にノア様の妻になれるのですから」
儀式そのものじゃなくて、俺のものになれるからということか。
「やっとです、やっと」
「まあ、気負うな。それ自体はただの儀式だ。メイド達を見ても分かるように、俺は、この敷居をまたいだ人間を他の誰にもやるつもりはない」
「はい! ありがとうございます!」
オードリーはますます、嬉しそうに笑った。
アルメリア州、州都ニシル。
十五歳になった俺は、正妻のオードリーと封地入りした。
通例では、数年間封地に住んで、政務の勉強をする。
とはいえ俺はずっと前から法務親王大臣を拝命していて、陛下に様々な場面で政務に関する意見を求められてきた。
封地入りは特に緊張感とかもなく、いつも通りという感じだった。
今日も、一通りの政務を片付けた後、昼過ぎくらいに街に出た。
ニシルは「州都」だけあって、結構栄えていた。
帝都にあるものは、ここにも一通りある。
全体的に帝都を一回りスケールを小さくしたのがこのニシルだ。
俺は目的である、一軒の店に直行した。
が来ると聞いている。
店に近づくと、
「居るな」
俺はニコリと微笑んだ。
聞こえてきた歌声。
それはアリーチェの物だった。
かつて俺が助けて、その後パトロンになったアリーチェ。
彼女は歌い続けて、今や帝国で一、二を争う程の歌姫となった。
それに伴って、帝国の各地で歌うようになった。
もちろんその旅費も、彼女の母親の生活費も、なんとなれば行った先の店を買い取ったりするなど。
彼女がとにかく、「歌うことだけ」に専念できるように、俺が援助を続けている。
店に入ると、帝都のキースと同じような店だった。
ただしやっぱり規模はちょっと小さめ、だから店に入った途端、歌っているアリーチェと目が合った。
アリーチェが何かする前に俺は手をかざして止めた。
そのまま歌ってろと目線を送り、適当な席に座った。
ますます上達している彼女の歌声に俺は満足した。
一曲が終わり、アリーチェはひとまず舞台の奥に引っ込んだ。
するとそれまで静かに聞き入っていた客達が一斉に口を開く。
感想を言い合ったりする者もいて、純粋に雑談する者もいる。
こういった店にありがちな雑多な感じを俺は結構気に入っている。
「そういえばよ、俺、来月からゴーラに引っ越すんだ」
「ゴーラ? 何だってあんなところに?」
「知らないのか? ゴーラの今の代官様、エヴリン様っていうんだけど、それがすごいんだぜ」
隣の席にある二人組の会話が耳に入ってきた。
ゴーラの代官エヴリン......間違いなく、俺の屋敷から送り出した、家人エヴリンの事だ。
まったく関係ない話じゃないから、何がすごいのか気になった。
「エヴリン様が来てから治安に力を入れててよ、今やゴーラは夜でも戸締まりがいらないくらい治安がいいんだぜ」
「マジマジ。まあその分罪を犯したら大変だけどな。俺別にそんなのしないから、それで引っ越そうって思った訳よ」
「へえ、すげえな」
「おう。なんていったって『賢任』だからな」
「なんだ? そのけんにんってのは」
「賢任ってのはな、賢親王様が任命した役人のことだ。それ以外は『帝任』、皇帝様が任命した役人ってこと」
引っ越し予定の男はそこで一旦言葉を切ってから、何故か自分の事の様に、得意げになって言った。
「賢任は数少ねえが、皆すげえ良い代官様ばっかりなんだよ。どこもかしこも豊かになったり、安全になったりしてるんだ。や、別に帝任が悪いってわけじゃねえよ? でも賢任の方がすげえってだけだ」
「すげえのな。それってやっぱよ、賢親王様が人を見る目があったからなのか」
「それもあるが、代官様と直接話をした商人がいうには、皆賢親王様にすっげえ忠誠を誓ってて、ちゃんとやって恩義に報いるとか言ってるんだ」
「部下からそんなに慕われるのか、そっちの方がすげえなあ......」
男達の話をしばらく聞いていたが、それ以上の新しい情報は出てこなかった。
俺が送り出したエヴリンがそれなりによくやっているのは報告を受けている。
それはそうと、民の口から実際に評判が聞けて良かった。
エヴリンには後で、労う手紙でも出してやるか。
そう思っていると、舞台裏からアリーチェが戻って来た。
拍手が起きる、雑談が収まる。
次の曲が――。
「お前がアリーチェさんかい」
――始まらなかった。
舞台下から無粋な男、アリーチェに近づいていった。
アリーチェは一瞬だけ眉をビクッとさせたが、冷たい表情のまま答えた。
「そうですが、なにか」
「パスカル様がお前の事を気に入った。屋敷で歌って欲しいとのお誘いだ」
「申し訳ございません、誰であろうと、そういうのには応じません。歌を聴きたいのなら店に来て下さい」
「おいおい、分かってんのかお前。パスカル様だぞ、このニシルの代官様だぞ。それに一晩でいいんだ、分かるよな」
「既に申し上げました。どなたであろうと、店にお越し下さい」
「おいおい、まだ分かってねえようだな。俺は――」
「そこまでにしとけ」
成り行きを見守って、静かになってる店の中で、俺の声が普段以上に響いた。
椅子から立ち上がって、ゆっくりと舞台に向かっていく。
「はあ? なんだクソガキ。お前誰にものを言ってるのか分かってるのか?」
「俺たちはパスカル様の使いなんだぞ」
「知らんな」
「だったら分かるまでその体に教え込んでやるよ」
男達は嘲る笑いを浮かべながら、一人が手を伸ばして俺の肩を掴もうとしてきた。
「バハムート」
次の瞬間、俺の両腕に炎が纏った。
掴みかかってきた男のがら空きのボディを殴った。
男は数メートル吹っ飛び、そのまま火だるまになって地面を転げ回った。
「てめえ!」
残りの二人も襲いかかってきた。
二人とも同じように炎の拳を叩き込んで、火だるまにする。
炎は十数秒だけ続き、その後ピタッと嘘みたいに収まった。
「なんだあれは」
「すげえ......炎を自在に操ってるぜ?」
「何者なんだ?」
店の客達がざわざわする中、外から別の一団が飛び込んできた。
こっちは制服に武装している、街の警吏だ。
「だれだ!? ここで暴れてるやつってのは」
「俺だ」
「お前か――っ!? じゅ、十三殿下でしたか。これは失礼いたしました!!」
警吏は俺の顔を見るなり、ぱっとおれの前に片膝をついた。
「十三殿下?」
「ってもしかして、十三賢親王様?」
「このアルメリアの領主様じゃねえか!」
店のざわつきがピークに達した。
それを無視して、警吏に言う。
「こいつらは店の人間を連れ去ろうとした、逮捕してしばらく牢にぶち込んどけ」
「はっ!」
「その後パスカルなる男が部下を寄越して解放しろって言いに行く筈だ。そいつらに俺の所に来いと言っとけ」
「分かりました!」
警吏は俺の命令を受けて、プスプスと煙を上げている男達を捕まえて、去っていった。
俺はアリーチェに振り向く。
「大丈夫だったか。ああいう時は強情張らなくていいんだぞ」
「いいえ、ノア様でさえいつも店まで足を運んで下さっているのです。誰であろうと、付いて行く訳にはいきません」
「そうか。ならここでもう少し歌を聴かせてくれ」
「はい! 喜んで!」
俺は身を翻して、周りに見つめられる中自分の席に戻っていき、再び歌い出すアリーチェの歌を楽しんだ。
途中でパスカルという男が土下座しに来たが、無視して、アリーチェの歌が終わるまで土下座をさせ続けた。 | On a clear morning, I went out to the garden of the mansion.
I stood in front of a banyan tree, a common tree in the Almeria region.
The banyan tree is a characteristic plant that has “beard-like” roots hanging down from its trunk.
When the whiskers come together and become entangled, they form a new trunk, but because the whiskers are originally thin and thread-like, they look stringy even after they are entangled and hardened, making the tree look like the body of an old man.
The banyan tree is called the “long-life tree” or the “hermit tree” because of its whiskers, and this is a tree of good luck.
I pulled out my leviathan and slashed at the banyan’s beard as if I were cleaving it.
The blade of the demon sword, which was trailing a light blue afterglow, struck the whiskers – it couldn’t be cut.
Starting with that, I unleashed a series of slashes.
The whiskers, which could be torn off by even a child’s hand, did not seem to be cut by the slashes, no matter how many they were received.
Well, I was not trying to cut it.
Leviathan has a sword technique inside it, a technique to control the blade line so that even if something can be cut easily, it will not be cut.
For a while now, I’ve been practicing it as part of my morning routine.
After swinging the leviathan for about half an hour, I put the sword away and took a breath.
I look at the ground.
Today, not a single whisker had been cut.
“As expected, Noah-sama.”
I heard a girl’s voice and the sound of applause from behind me.
When I turned around, I saw a girl about fifteen years old, like me, coming towards me with Zoe, my maid, in tow.
The girl’s name was Audrey.
She’s the granddaughter of the Thunder Prince Indra, and she’s my wife.
“You have been brilliant today.”
“Well, I guess so.”
“Until I met Noah-sama, I could never have imagined that this kind of swordsmanship existed in the world. That’s Noah-sama for you.
Audrey said and came even closer.
Then she stood in front of me.
“Would you like some breakfast?”
“Sure let’s have it here.”
“All right. Zoe.”
“Understood.”
At Audrey’s command, Zoe, who was now the head maid of the mansion, ran to get ready.
Once she retreated into the mansion, she immediately came out with several maids.
The maids quickly set up a table and a chair in front of us and laid out a tablecloth and dishes on it.
Then the food was brought in.
Audrey took the food brought by the maids and placed it in front of me.
“Here you go, Noah-sama.”
It was a usual morning breakfast, served by Audrey.
When a member of the royal family takes a wife, the role of the servants in the house changes drastically.
Serving my meal was the job of Audrey and the concubines who would join her in the future.
Even Zoe, the head maid, cannot serve me directly when the “lady” is around.
Also, unless there’s something wrong, the main and entourage chambers will not eat with me.
There are two meanings to this.
The first is that the head of the house is the royal family, in this case, me.
It’s like the epitome of a Royal Family.
That’s why Audrey, my wife, serves me.
The other reason is to improve the status of my wife.
She is the only one who can “do something directly” to the head of the house, to emphasize that she is in the number two position in the house.
While being served by Audrey, my wife, I had a chat with her.
“By the way, you are turning fifteen next week, aren’t you?”
“Yes, that’s right.”
“Now we can finally perform the ‘Rite of Expulsion’.”
“Yes! I’ve been waiting for this!”
Audrey answered excitedly, her eyes shining.
There is one more thing that distinguishes the wives of the royal family from the common people.
That is, they lose their last names.
Right now, Audrey’s full name is Audrey Ararat.
In a ceremony called the ‘Rite of Expulsion’, she takes off her last name, Ararat, and becomes just Audrey.
It’s an old custom.
A person who becomes the wife of a member of the royal family is not allowed to divorce at all.
And a surname means “the house of one’s birth’.
It is an old custom to remove it and say ‘ there is no home to go back to.’
“I understand that the common people yearn for the rite of expulsion, but were you the same?”
“Yes! Because now I can truly and authentically become Noah’s wife.”
So it’s not about the ritual itself, but about being mine.
“Finally, finally.”
“Well, don’t get worked up. It’s just a ritual in itself. As you can see from the maids, I have no intention of letting anyone else cross this threshold.”
“Yes! Thank you very much!”
Audrey smiled even more gleefully.
Nisir, the capital city of Almeria.
At the age of fifteen, I entered a feudal domain with my wife Audrey.
As is customary, we live in a feudal domain for several years to study political affairs.
However, I had been appointed Minister of Justice for a long time, and His Majesty had asked me for my opinions on political matters on various occasions.
I didn’t feel particularly nervous when I entered the estate, and it was business as usual.
Today, too, I went out to the city around mid-afternoon after I had taken care of all the political affairs.
Nisir was the “capital of the province,” and it was quite prosperous.
Everything found in the imperial capital is also found here.
Overall, Nisir is a smaller version of the Imperial Capital.
I went straight to the one store I wanted to visit.
I have heard that she will be coming here today.
As I approached the store.
I said with a smile.
I heard a singing voice.
It belonged to Alice.
Alice, whom I had once helped and then become a patron of.
She has been singing for a while now and has become one of the best singers in the Empire.
As a result, she began to sing all over the Empire.
Of course, the travel expenses, her mother’s living expenses, and even purchasing outlets in the places she went.
In any case, I continue to support her so that she can concentrate on singing.
When I entered the store, I found that it was the same kind of store as Keith’s in the Imperial City.
But on a smaller scale, so as soon as I walked in, my eyes met Alice’s, who was singing.
Before she could do anything, I held up my hand to stop her.
I gave her a look and told her to keep singing, and sat down at an appropriate seat.
I was satisfied with her voice, which was getting better and better.
After one song, Alice went back to the back of the stage for a while.
The audience, who had been listening quietly until then, opened their mouths at once.
Some were discussing their impressions, while others were just chatting.
I like this kind of miscellaneous atmosphere that is common in such stores.
“Oh, by the way, I’m moving to Gora next month.”
“Gora? What kind of place is that?”
“Don’t you know? Gora’s new governor Evelyn, she’s amazing.”
I overheard a conversation between two people sitting next to me.
Evelyn, the governor of Gora ......, is definitely my servant Evelyn that I sent out from my mansion.
I was curious about what the big deal was because it wasn’t entirely unrelated.
“Ever since Evelyn-sama came, she’s put a lot of effort into security, and now Gora is so safe you don’t even have to lock your door at night.”
“No way!”
“I am serious. Well, if you commit a crime, you’re in trouble. I have no intention of doing that, so that’s why I decided to move there.”
“Wow. That’s great.”
“Yeah. Well, it’s because of the ‘Wise officials’.”
“What’s that? What’s this “Wise”?”
“A wise person is an official appointed by the Wise Prince. The rest are ‘Imperial Appointees’, officials appointed by the Emperor.”
The man who was planning to move out broke off at that point, and then said with a sense of pride, as if he were speaking for himself.
“There are only a few wise officials, but they’re all very good ones. Everywhere they go, people are getting richer and safer. It’s not that there’s anything wrong with the imperial appointees, you know. Just that the wise officials are better.”
” Amazing. That may be because Wise Prince had a good eye for people?”
“Although there is that too, the merchants who spoke directly with the Governor-samas say that they are all extremely loyal to him and will repay his debt by doing things right.”
“His subordinates love him so much, that’s even more impressive. ......”
I listened to the men talk for a while, but they didn’t give me any more new information.
I’ve received reports that the Evelyn I sent out is doing reasonably well.
That being said, I’m glad to hear that the people are actually talking about her.
I’ll send Evelyn a letter of appreciation later.
Just as I was thinking this, Alice returned from backstage.
There was applause, and the chatter died down.
The next song then—.
“You’re Alice-san?”
–did not start.
Three tactless men approached Alice from downstage.
Alice’s brow furrowed for a moment, but she answered with a cold expression.
“Yes I am, so what about it?”
“Pascal-sama has taken a liking to you. He has invited you to sing in his house.”
“I’m sorry, sir, but I don’t accept such invitations, no matter who they are. If you want to hear me sing, just come to my store.”
“Oh, come on, you don’t know anything. Pascal-sama is the governor of Nisir. And it’s only for one night, you know.”
“I already told you. Whoever you are, please come to the store.”
“Hey, you don’t get it yet, do you? I...”
“That’s enough.”
Watching the scene unfold, my voice rang out more than usual in the quiet store.
I got up from my chair and slowly made my way to the stage.
“Haah? What the fuck, kid? Do you have any idea who you’re talking to?”
“We’re Pascal’s messengers, you know.”
“I don’t care.”
“Then I’ll have to drill it into your body until you do.”
The men laughed mockingly, and one of them reached out to grab my shoulder.
“Bahamut.”
The next moment, both my arms were covered in flames.
I punched the open body of the man who had grabbed me.
The man was blown away a few meters and turned into a fire doll, rolling around on the ground.
“Wha”
“You bastard!”
The other two also came at me.
I hit them both with the same fist of flame, turning them into a fire doll.
The flames only lasted for a dozen seconds, and then subsided as if they were a lie.
“What the hell was that?”
“Wow, ......, he’s controlling the flames at will, huh?”
“Who is he?”
While the customers in the store were buzzing, another group of people jumped in from outside.
This one was a city patrolman, in uniform and armed.
“What’s this!? Who’s that rampaging around here?”
“It’s me.”
“It’s yo——–!? H-His Highness the th? I apologize for the intrusion!!”
The patrolman looked at my face and quickly dropped to one knee in front of me.
“His Highness the th?”
“Could it be that, His Highness the th Wise Prince?”
“The lord of Almeria!”
The buzz in the store reached its peak.
Ignoring it, I said to the patrolman.
“They tried to take someone from the store, arrest them and throw them in jail for a while.”
“Yes!”
“Also this guy Pascal should come to have his men released. And tell them to come to me.”
The patrolman followed my orders, grabbed the man who was letting out smoke, and left.
I turned to Alice.
“Is everything alright? You don’t have to be so stubborn when it comes to things like that.”
“No, even Noah-sama always comes to the store. So I can’t go with him, no matter who he is.”
“I see. Well, then let’s hear some more singing here.”
“Yes! With pleasure!”
I turned myself around and walked back to my seat as people stared at me, enjoying the song Alice was singing again.
Halfway through the song, a man named Pascal came to get down on his knees, but I ignored him and kept him on his knees until Alice finished singing. |
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} | ジズの翼で、空高く飛び上がった。
淡い燐光を帯びる翼の羽ばたきは、操作している俺自身ですら幻想的で美しく見える。
人間として当たり前の感覚だ。
俺も、自分ではなく何者かがこのような光の翼を背にして空を飛んでいたら、天から降り立った天使だと思っただろう。
そんな幻想的で美しい光景はもあった。
空は晴れ渡っている。
地上であれば蒸し暑く、冬の間に地下に貯蔵した氷を出さなければやってられないほどの暑さだ。
見渡す限りそんな快晴だが、数キロ先の一部分だけが違った。
雨柱。
一カ所だけ積乱雲が生じて、そこからまるで柱にもカーテンにも見える、滂沱の雨が降り注いでいる。
その雨量や凄まじく、嵐かと勘違いしかねないゲリラ豪雨だ。
「すごいな、リヴァイアサン」
俺はそうつぶやき、ゆっくりと羽ばたきながら地上に降りていった。
元王邸、離宮の庭に一人の幼い少女が立っていた。
の歳は10ってところか。
輝く金色の髪は身長を遙かに超えて、地面に瀧のように垂れている。
威厳の要件は揃っていて、いかにも思慮深そうな瞳の光を湛えている。
リヴァイアサン。
覚醒した水の魔剣の魂が、人間の姿に顕現した姿だ。
「見たぞ、雨。すごいな。今の一瞬で、帝都の一月分の用水が賄えるほどの雨量だったのではないか? あそこにため池がないことが惜しい」
「主の力あってこそ。我は主が強ければ強いほど、その力を発揮する事ができる」
「そういうものなのか」
「あの雨は主の力そのもの。すごいというのならば主の方がすごい」
なるほど。
なら俺がもっと強くなれば......。
と、治水の事を考え出した一瞬。
リヴァイアサンが、更に強い眼光で言ってきた。
「バハムートごときに遅れはとらぬ。これからも主の為に死力を尽くさせて頂きたい」
「お前もバハムートも余の宝だ。だがお前がそう思うのなら、余のための力をもっと競い合って、高めていくといい」
「――承知した!」
瞳の光通り、思慮の深さと理性が強く感じられる返事をしたリヴァイアサン。
覚醒して性格が少し変わったか――と思いきや。
「――!」
「ひ、ひぃっっ!」
背後からメイドの悲鳴が聞こえた。
振り向くと、メイドのジジが尻餅をついて、怯えた顔をしていた。
よく見ると、スカートに染みが現在進行形で広がっている。
恐怖で漏らしたか――そうか。
「リヴァイアサン」
振り向き、リヴァイアサンを宥める。
「お前より後に入ってきたから顔は知っているだろ、メイドのジジだ」
「......」
一変。
さっきまでの知的な空気がどこへやら、リヴァイアサンは激した顔で言った。
「主にいきなり話しかけるなど不届き千万」
「話しかけられるときは大抵いきなりだ。正面で同時に気づきでもしない限りは」
俺はふっ、と微苦笑した。
リヴァイアサンかと思えば、やっぱりレヴィアタンだった。
レヴィアたん、って感じだった。
見た目通りに幼くて、わがままを言ってる子供のように見えた。
「とにかく、余のメイドはある程度厳選して、余に恩義を感じている人間達ばかりだ。そこまでの威嚇は必要ない、余が使う時に支障が生じる」
「......わかった」
リヴァイアサンは威嚇を引っ込めた。
ジジは見るからにほっとした。
「着替えてこい......ああ、その前にどうした」
「あ......は、はいぃ」
ジジはまだ恐怖が抜けきってなくて、怯えながら報告した。
「ど、ドン様がいらっしゃいました」
「ここに通せ」
ジジは慌てて、まるで逃げ出すようにこの場から立ち去った。
入れ替わりに、相ドン・オーツが姿を現した。
「さすがでございます、陛下」
「なにがだ?」
「それほどの狂犬も、陛下にかかれば忠犬そのもの」
「今のを見ていたのか」
「いいえ。離れていても感じるほどだった、というだけでございます」
やり過ぎだなリヴァイアサン。
それをやりすぎだとも思ってなく、ドンにも警戒しているリヴァイアサンに言った。
「戻っていいぞ。今からドンと話をする」
「はい」
リヴァイアサンは特に何か言うでも無く、素直に受け入れて、顕現を解いて俺の腕輪の中に戻っていった。
「で、なんだ?」
「ガベル総督よりご報告の書状です」
「フィル・モームか。見せてみろ――って、なんだこれは」
ドンが差し出したのは封筒じゃなくて、細長い筒だった。
受け取ると、中に丸まった紙が入っているのが分かる。
「絵画か? ......まさか」
一瞬、いやな想像をした。
こういう感じに絵を送ってくるのは、大抵が賄賂で――俺は皇帝だから献上物だ。
そういう絵画は大抵が高価な物。
ガベル州。
少し前まで塩税の一件で、総督が賄賂を受け取って黄金をばらまいているのを見ていた。
その時に取り立てた男だが、直前までは奴隷。
絵画なんて送れる金はない。
まさか......もう?
「ん?」
「どうやら本人の手による物です」
「本人......フィル・モームがか?」
ドンははっきりと頷いた。
ならば骨董品の献上ではないのか。
だとしたらなんだ?
不思議に思いつつ筒から紙を取り出して、開く。
すると、絵画の技法など完全に無視した、素人の絵があった。
素人の絵だが、なんとなく情景はわかる。
絵あった。
一枚目は何者かがある者に贈り物をしているところ。
二枚目はされた方が、した方の尻を蹴っ飛ばしているところ。
「......ふむ」
「それから少し遅れて、ゾーイからこのようなものが。タイミングからして、おそらく関連があるかと」
今度は箱を差し出してきた。
フワワの箱。
ゾーイに与えた、密告用の箱。
受け取って、フワワで鍵を開ける。
中に入っていた封筒を取り出して、開封して中を読む。
「......なるほど」
「どのような内容でしたか」
「別の勢力がここぞとばかりにシェアを広げようとして、フィル・モームを抱え込もうとしたが、かなり恥をかかされる方法で突っ返されたらしい」
「そしてフィル・モームは読み書きが出来ないから、報告は自分が書いた絵でやったって訳だ」
「さようでございましたか。......陛下への忠誠心は認めますが、読み書きすら出来ないのは良くないのではありませんか。ゾーイが近くにおりますし、もっと補佐に――」
「いいや、このままでいい。フィル・モームを取り立てたのは余だ。失敗したのなら余が尻を拭えばいい。それよりも奴隷上がりなのに金銀財宝に目が眩まず、余に忠誠を誓っているその心を大事にしたい」
「承知いたしました。では、状況把握だけ密にします」
「うむ。任せる」
離宮の書斎に戻り、俺はヘンリーを呼び出した。
机を挟んだ向こうで、ヘンリーはいつものように恭しく俺に頭を下げる。
「お呼びでございますか、陛下」
「クルゲのギャルワンを完全に叩こうと思う」
「――ッ、申し訳ございません!」
ヘンリーの顔が強ばって、その場で膝をついた。
「よい。そなたのせいではない」
ヘンリーがそうしたのには理由がある。
俺が即位する前、領地入りした頃に、クルゲのギャルワンが反乱を起こしたという話があった。
その時の陛下――父上は俺に意見を求めて、俺は兵務親王大臣であるヘンリーを推薦した。
「しかし......」
「いいから立て。そなたのせいではない。むしろあの程度の予算で、よく膠着状態に持ち込んでくれた。そなたでなければ、反乱が広がり独立を認めざるを得ない状況だっただろう」
「もったいないお言葉」
「今回、塩税に手をつけたのはそれのせいでもある。ヘンリーよ、辺境の討伐は何が一番重要だ?」
ヘンリーはまったく迷うことなく即答した。
口調に経験者の重みが伺える。
「そう、兵站だ。うぬぼれではなく、帝国は巨大だ。ギャルワン程度の反乱では小競り合いに敗れても大局での勝ちは揺るがない。しかしだ、帝国の力をフルに発揮するには、大軍を動かすための食糧を供給し続ける必要がある」
ヘンリーは頷き、俺は立ち上がって、後ろに手を組んで、書斎の中を歩きながら話す。
「今までは予算が足りなくて、その場凌ぎの戦い方しかできなかったが、塩税の一件が片付いて、国庫は今が一番豊かだ。一気に投入して根こそぎ払ってしまう」
「お任せ下さい。陛下にそこまでしていただけて......ギャルワンを討滅できなければ帝都の土は二度と踏みません」
ヘンリーは膝をついて頭を下げた。
自ら出るつもりか、まあ、それでいい。
「つきましては、陛下」
「うむ?」
「トゥルバイフにもなにかしら牽制を」
ヘンリーが跪づいたまま顔だけを上げて言ってきた。
さすが長年兵務親王大臣をやっているだけあって、必要なことはすぐに提案してきた。
「ああ、それならもう手は打ってある」
「失礼ながら......それはどのような」
「トゥルバイフには三人の息子がいるそうだな。それぞれ武勇、知謀、人徳に長けた三人の息子が。三本の矢として有名らしいな」
「はい。その上いずれも父親を尊敬していて、故に絆も強固と聞きます」
「厄介だな」
やはりトゥルバイフが生きてる間は相手にしたくないな。
「父上に了解をもらってきた、目の姉、二十番目の妹の三人を嫁がせる」
十七皇女と十八皇女、そして二十皇女。
相手の三人の歳に合わせた姫を政略結婚に出す。
「そ、そこまで......恐れながら帝国がそこまで低姿勢にでる必要はございますか?政略結婚は賛成いたしますが、一人でよろしいかと」
「ギャルワンを根こそぎやってしまわねばならん、普段よりも二正面作戦をやる余裕はない。いざって所まで追い詰めた時に手引きして逃がされたら笑い話にもならん」
「土下座外交に見えるだろう? それくらいで丁度いいのだ......今は」
ヘンリーは驚き、後に再び頭を下げた。
「トゥルバイフも......三人も皇女をくれてやるんだ、今後は軽挙妄動は慎んでくれればいいのだが......」
俺は後ろ手を組んだまま、窓から青空を見上げた。 | With Ziz’s wings, I soared high into the sky.
The flapping wing with pale phosphorescence looks fantastic and beautiful even to me, the one who is controlling it.
It is a natural feeling for a human being.
If someone else had been flying in the sky with such wings of light on their back, I would have thought they were an angel who had descended from the heavens.
There was another fantastic and beautiful sight.
The sky was clear.
On the ground, it would be hot and humid, so hot that we would have to bring out the ice we stored underground during the winter.
It was such a clear sky as far as the eye could see, but there was one part a few kilometers away that was different.
A rain pillar.
A cumulonimbus cloud had formed in one place, and from there, the rain was pouring down in torrents, looking like a pillar or a curtain.
The rainfall was so heavy that one could have mistaken it for a storm.
“Amazing, Livyathan,”
I muttered, and slowly descended to the ground, flapping my wings.
A young girl was standing in the garden of the detached palace of the th Prince’s former residence.
She looked to be about years old.
Her shiny golden hair was far beyond her height and hung like a waterfall on the ground.
She has all the requirements of dignity, and her eyes are full of light, looking very thoughtful.
Livyathan.
The soul of the awakened Water Demon Sword manifested in human form.
“I saw it, it’s raining. Quite amazing. The rainfall was enough to supply a month’s worth of water for the Imperial City in a single moment, wasn’t it? It’s a pity there are no reservoirs there.”
“It is only because of the Lord’s strength. The stronger the Lord is, the more power I can exert.”
“Is that how it is?”
“That rain is the Lord’s power itself. If you say it is great, then the Lord is greater.”
I see.
Then if I become stronger,.......
I was thinking about flood control for a moment.
Livyathan said with an even stronger gaze.
“I will not fall behind Bahamut. And I will continue to do my utmost for the Lord.”
“Both you and Bahamut are my treasures. However, if you feel so, you may compete with each other to increase your power for my sake.”
“–I understand!”
Livyathan replied strongly with thoughtfulness and reason reflected in those eyes.
I wondered if its awakening had changed its character a little.
“–!”
“Hi-hiiiiiii!”
I heard a maid scream from behind me.
When I turned around, I saw Gig, the maid, on her bottom, looking frightened.
Looking closely, I saw an ongoing stain spreading across her skirt.
She must have leaked in fear – I see.
“Livyathan.”
I turn around and quiet Leviathan.
“Gigi is my maid, you should know her face since she came in later than you.”
“.......”
Complete change.
Far from the intellectual air of a moment ago, Livyathan now said with a furious expression.
“It’s insolent to talk to Lord suddenly.”
“Whenever someone addresses me, it’s usually sudden. Unless someone suddenly appears in front of me at the same time.”
I chuckled.
Even if Livyathan thinks properly, it is Leviathan.
Just like Leviathan.
She was as young as she looked and looked like a selfish child.
“Anyway, my maids are carefully selected to some extent, and they are all people who feel indebted to me. There is no need to be so intimidating, it will interfere with my use of them.”
“.....I understand.”
Leviathan retracted the intimidation.
Gig was relieved to see it.
“Go change your clothes,......, but first, what was the matter”
“Ah, ......, Y-yes.”
Gig was still scared but reported.
“Do-Don-sama is here.”
“Send him through here.”
Gig hurriedly left the place as if to run away.
In her place, the fourth Vizier, Don Oates, came.
“About what?”
“Even a mad dog like that would be a loyal dog in your hands.”
“You saw what just happened, huh.”
“No. I just felt it from a distance, that’s all.”
That’s too much, Livyathan.
I told Livyathan, who didn’t think it was too much and was wary of the Don.
“You can go back. I’m going to talk with Don now.”
“Yes.”
Livyathan didn’t say anything, just accepted, undid the manifestation, and went back into my bracelet.
“So, what is it?”
“A letter came from Governor Gabelle reporting to you.”
“Phil Mohm huh. Let me see–what’s this?”
Don didn’t present an envelope, but a long, thin tube.
When I took it, I could see that there was a rolled-up piece of paper inside.
“A painting? ......No way.”
For a moment, I had a bad imagination.
Most of the paintings sent to me like this are bribes–I am the emperor, and they are offerings.
Such paintings are usually expensive.
Gabel State.
Not long ago, I saw the Governor taking bribes and distributing gold in one of the salt tax cases.
The man I took it from at the time, but just before that, he was a slave.
He shouldn’t have the money to send paintings.
Don’t tell me ...... this soon?
“Hmm?”
“Apparently, it was his own handiwork.”
“By ...... Phil Mohm?”
Don nodded clearly.
So it’s not an antique gift?
If so, what is it?
Wondering, I took a piece of paper from the tube and opened it.
Then, there was an amateur’s drawing, completely disregarding the techniques of painting.
Although it was an amateur drawing, I could somehow understand the scene.
There were two pictures.
The first picture was of someone offering a gift to another person.
The second picture is of the recipient kicking the ass of the sender.
“...... hmm.”
“A little later, then, we got this one from Zoe. Given the timing, I thought perhaps they were related.”
This time he held out a box.
Fuwawa’s box.
The box I gave Zoe to use as a snitch.
I took it and unlocked it with Fuwawa.
Taking out the envelope inside, I opened it and read what was inside.
“What was the content?”
“Another party was trying to expand its market reach there, and they tried to hold onto Phil Mohm, but they were turned away in a rather embarrassing way, apparently.”
“And since Phil Mohm couldn’t read or write, he reported back with drawings he’d made.”
“I see. I admit that he is loyal to ...... His Majesty, but isn’t it bad that he can’t even read and write? Zoe is close by, and to assist him more–“
“No, let’s just leave it at that. I took up Phil Mohm. If he fails, I’ll just have to clean up his mess. I’d rather cherish the heart of a man who was born into slavery, who is not blinded by gold, silver, or treasure, and who has sworn his allegiance to me.”
“I understand. Then, I will only keep a close watch on the situation.”
“Umm. I’ll leave it to you.”
Returning to my study in the Palace, I called Henry.
Across the desk, Henry bowed reverently to me as usual.
“You wanted to see me, Your Majesty?”
“I’m about to strike Kuruge’s Galwan entirely.”
“—Pardon!”
Henry’s expression stiffened, and he fell to his knees on the spot.
“It’s fine. It’s not your fault.”
There is a reason why Henry did it.
Before I ascended to the throne, there was talk of a rebellion by Galwan of Kuruge when I first came to the territory.
His Majesty at that time – my father – asked my opinion, and I recommended Henry, the Minister of Military Affairs.
“But ......”
“It’s okay, get up. It is not your fault. You did a good job of bringing us to a stalemate with that kind of budget. If it weren’t for you, the rebellion would have spread and we would have been forced to recognize their independence.”
“Your kind words are wasted on me.”
“It is also the reason why I have tapped into the salt tax this time. Henry, what is most important in defeating the frontier?”
“Logistics, sir.”
Henry answered immediately without any hesitation at all.
The tone of his voice carried the weight of someone with experience.
“Yes, logistics. I am not being conceited, the Empire is huge. Even if we lose a skirmish with a rebellion of Galwan’s caliber, the victory in the big picture is unassailable. But, you see, for the Empire to reach its full potential, we need to keep supplying the food needed to move a large army.”
“Yes......”
Henry nodded, then I stood up, folded my hands behind my back, and walked through the study as I spoke.
“Up until now we’ve only been able to fight the war on the fly because of budget shortfalls, but now that the salt tax thing is taken care of, the treasury is at its best right now. We will invest all our resources at once and pay them off.”
“Please leave it to me. If Your Majesty is willing to go that far and if I can’t defeat ...... Galwan, I will never step on the soil of the Imperial City again.”
Henry knelt and bowed his head.
If he’s willing to step in on his own, well, that’s fine.
“And so Your Majesty.”
“Hmm?”
“Something to keep Turbaif in check.”
Henry knelt down and only raised his head.
As expected, he’s been the Minister of Military Affairs for many years and was quick to suggest what needed to be done.
“Oh, I’ve already made a move on that.”
“With all due respect, ...... what is it?”
“I heard that Turbaif has three sons. Three sons, each of them distinguished in valor, wisdom, and virtue. I hear they are known as the Three Arrows.”
“Yes. And I hear that all of them respect their father and are therefore very close to him.”
“That’s problematic.”
After all, I don’t want to deal with Turbaif as long as he’s alive.
“I’ve gotten father’s approval to marry off the th, 18th, and 20th sisters.”
The seventeenth, eighteenth, and twentieth Princesses.
The Princesses who match the age of the other three will be given into a political marriage.
“T-That’s ..... is it necessary for the empire to take such a low stance with fear? I agree with political marriage, but only one would be enough.”
“I have to uproot Galwan, and we can’t afford a two-front battle any more than we usually do. It would be laughable if he escapes by leading us into a trap when we have him cornered.”
“In your eyes, this diplomacy seems like we’re the one kneeling, right? That’s all the more appropriate ...... for now.”
Henry was surprised and bowed again.
“Turbaif ..... I am sending you three Imperial Princesses as well,...... and I hope you’ll refrain from any indiscretions in the future,.......”
I looked up at the blue sky through the window with my hands folded behind my back. |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | 都では、皇后オードリーを中心に大規模な出発パレードが開かれている中、俺のメイドを連れて、そっと旅立った。
メイド長であるゾーイと、最近拾ってきたばかりのケイトの二人だ。
こしらえは良いが、目立たない馬車に乗ってそれなりの商人を装い、ゾーイとケイトの二人は徒歩で付いてこさせた。
街道を半日くらい歩いたところで、ケイトに先行して、今日の宿を確保しに行かせた。
小走りで宿の確保をしに行くケイトの後ろ姿を馬車の上から眺めていると、横からゾーイが話しかけてきた。
言葉使いと呼び名は、お忍びであるため、親王時代の物にもどっている。
「ご主人様、お伺いしたいことがあるのですが」
「なんだ?」
「ケイトを連れてきたのは何故でしょうか」
「ん?」
真横を向く。
ゾーイが困ったような疑問顔で俺を見あげていた。
「ご主人様が彼女に目をかけた理由は分かります。健気で献身的で、何事もよく気がつきます。ですが、あまりにも経験が足りません。屋敷では他のメイドもいるのですぐにフォロー出来ますが、外に出ている時は......」
「まあな。まだまだ何かと危なっかしいのは確かだ」
道の先に見える、豆粒大くらいになったケイトの背中を眺めて、フッと微笑む。
何事もそうだが、意気込んでいるというのは、自分の能力以上か、限界近い事をするときなのだ。
人間は歩くときに「歩くぞ!」とはならない、速く走ろうとするときだけ「走るぞ!」となる。
そういう意味では、常に意気込んでいるケイトは、ゾーイの目には頼りなく映るのだろう。
「大した理由はない。ケイトの才覚を見込んで、経験を積ませて育てようとしているだけだ」
「育てる、ですか?」
「ああ。あの娘は、使っていれば伸びる。そう思うだろう?」
「それはそうですが......人手が足りない状況下でそれでは、ご主人様に不便が」
「人を育てるのは貴族の義務、それで痩せ我慢をするのは貴族の特権だ」
「でも......ご主人様は今......」
「......」の先は、おそらくは「皇帝なのに」っていうのが付くだろう。
少し口籠もった後、首を振って。
と納得した。
付き合いが長い分、俺が皇帝かどうか関係なく、人を育てるときは育てるもんだってのが分かってるみたいだ。
ケイトだけじゃなくて、ゾーイも育てるつもりで連れてきた。
メイド長としてよく働いてるからついつい手元に置いてきたが、本当ならもっと早く、エヴリンのように外に出したかった。
あのエヴリンも、今ではアルメリアの総督だ。
ゾーイの才覚はエヴリンに勝るとも劣らないほどだ。
だからゾーイも、経験を積ませるために連れてきた。
間ほどの旅路を経て、ガベルの州都、デュセルにやってきた。
デュセル。
デュセル川の上に乗っかるように、川の両端に作られた街。
この川の水運で栄えてきた街は、到着した夜でも、遠くから見ても分かるくらい賑わっていた。
「賑やかな街ですね」
「住民台帳に登録してるだけでも二十万人はいる街だ」
ケイトは驚きすぎて、「十万」のイントネーションが若干おかしかった。
「それよりも、宿はちゃんと取れているの?」
ケイトと違って、王都に長いこといたゾーイは、二十万人程度の街に驚きはしなかった。
彼女は落ち着いて、ケイトに聞いた。
「あっ、はい! 川の側の宿屋で、最上階の部屋を取ってあります。念のために一つ下の階も貸し切りました」
「宿ごと貸し切れなかったの?」
「すみません、わたしがいったときはもう、何人かのお客さんが」
「そこを交渉して――」
「いい。よくやったケイト」
ゾーイの詰問を止めて、ケイトにねぎらいの言葉をかける。
ケイトのそれは、ベストではないだろうがベターではある。
ベターであるのなら、今のケイトはもっと褒めて、自信をつけさせるのが重要だ。
褒められたケイトはほっとした。
嬉しがるよりもまずほっとした。
もうしばらくかかるだろうな、と思いながら街に入る。
夜でもそこそこ賑わってる街だった。
特に街の命脈ともいうべき川沿いは、様々な夜店や、
そんな賑わいの中、ケイトが手配した宿屋に入る。
前もってたっぷりと宿賃をはずんだせいか、宿屋の主人は従業員を引き連れて俺を出迎えた。
ゾーイにいって適当にチップをくれてやってから、最上階の部屋に入る。
最初から金持ちを想定して作っている部屋だからか、部屋の広い窓の向こうには、デュセル川が見渡せる作りだった。
俺は窓際で川を眺めた。
「ふはははは!」
ふと、川の上から男の高笑いが聞こえてきた。
みると川の中心に屋形船があって、その船の先端で、一人の男が高笑いしながら、何かをばら撒いていた。
それを両岸に山ほどの見物客がいて、男が撒くたびに感嘆したり、歓声を上げたりしている。
その反応に気をよくした男が更に何かを撒く。
その繰り返しだ。
「あれは......」
「綺麗です......」
俺の後ろにやってきたゾーイとケイト。
二人は俺から一歩下がった、肩越しのポジションで船と男を見ていた。
「何を撒いているのでしょうか」
「金だ」
「黄金ってことだ」
「「えええええ!?」」
ゾーイとケイト、二人揃って驚いて、声を上げてしまう。
「お、黄金とは、あの黄金ですか?」
「ああ。割と滞空時間が長いから、砂状か、金箔にした物だろう。この距離でも反射したのが見えるってことは、かなり大きいのを撒いてるんだろうな」
「黄金......すごい、高いです、よね?」
おそるおそる聞いてくるケイトに答えてやった。
「大きさと反射して見える量から考えれば、一撒き百リィーンってところだろうな」
「......」
「きゅう......」
ドサッ、とケイトが床に崩れ落ちた。
あまりの事に気を失ったようだ。
ゾーイは長年親王邸でメイド長を務めていたから、失神するほどの金額ではなかったが。
それでも、顔が青ざめて、眉をひそめる程度には衝撃を受けていた。
「ふはははは!! そーれそれそれ!」
「「きゃあああ!! オルコット様素敵!」」
「オルコット!?」
下から聞こえてきた黄色い悲鳴の中に混じっている人名に、ゾーイは違う意味で眉をひそめた。
「ご主人様!」
「ガベル総督オルコット。本人か、その家族か。初っぱなから出くわしてしまったな」
「総督の俸禄であんな事ができるはずがありません」
「その通り。賄賂でも貰ってるんだろうな」
「捕まえましょう」
「まあまて。これ自体賄賂の証拠にはならん。もっと言い逃れできないような物を掴むまで泳がせる」
ゾーイは苦い顔をしながらも、頷いて納得した。
俺が、メイドの中で、「外」に出したい人選で重要な要素が一つある。
いざという時、理性が感情を抑えられるタイプだ。
「理屈ではそうなのですが......」
と難色を示す人間は落第で、
「ならば理屈に従う」
といえる人間を俺は好む。
ゾーイは、その資質が充分にある。
そのゾーイは、すっかり違う顔になっていた。
なにやら不思議そうな顔で、首をひねりながら川の上のオルコットを見つめている。
女にちやほやされながら、黄金をばら撒いてるのを見て、不思議がっている。
「あっ、いえ。なにか違うな、と」
「何かって?」
「総督なのに、貴人の雰囲気がまったくしないのです」
「貴族の義務を果たしていないからな」
「貴族の義務」
おうむ返しをして、俺を見つめるゾーイ。
「貴族の義務は、『無私の行動』を行って、こそなのだ」
「同じばら撒きでも、食糧に変えて被災地にばら撒くのが貴族だ。あれではただの成金だよ」
「そうですよね!」
「......ゾーイ。あのオルコット、賄賂を受け取っていたという情報は?」
王都を出る前に、ガベルの主な人物、とくに調べなきゃいけない人物の情報をある程度集めて、ゾーイにも覚えさせていた。
それでゾーイに聞いてみた。
「いえ、まったくありません。清廉なものでした」
「なら可能性はそう多くはないな......ゾーイ、今すぐ調べてほしいことがある」
オルコットの狂態を目の当たりにしたせいか、ゾーイはやる気になっていた。
翌朝、起きた俺は、ケイトに手伝ってもらい着替えていた。
まだメイドになりたてのケイトは、裸で仁王立ちしている俺に赤面している。
ただの着替えだから、俺は恥じらったりすることなく着替えていた。
そこに、ドアがノックされた。
「入れ」
「失礼します」
ゾーイが入ってきた。
裸の俺を見ても、ゾーイはまったく動じなかった。
そのゾーイの反応にも、ケイトは複雑な顔をした。
おいおい慣れていくもんだ、そう思い、ケイトの反応を無視してゾーイに聞いた。
「どうだ、分かったか」
「はい。ご主人様がおっしゃっのうち、詩、でありました」
「そうか」
「オルコットの直筆の詩が、一篇10000リィーンで取引されてました」
「もちろん――」
「売れてません、店に飾られているだけです」
「そうか。せめて絵画だったらと思ったのだが、詩だったとはな」
「あの......どういうこと、なんですか?」
着替えを手伝いつつ、不思議そうに聞いてくるケイト。
「オルコットのあの金の使い方は、実際賄賂を受け取っていなければ無理――つまり実際受け取っているに違いない。ここまでは良いな?」
「はい」
「だが、賄賂という形では受け取ってない。ならばなんだ? という場合、一番無難なのが詩や絵画の取引だ。賄賂を送りたい人間が、無価値であろう詩や絵画を買い取る――実物はあるか?」
「高すぎる為ありませんでしたが......写してきました」
ゾーイはメモのような紙を俺に差し出した。
俺は読んでから、ケイトにも見せる。
「『永遠などない、それが永遠』」
ケイトが読みあげた直後に、ゾーイが。
「それで、10000リィーン」
「こっちが5000リィーン」
「『昨日の夕焼けは、今日の朝日』」
「ふぇえええ!?」
「地味にこっちのが酷いな歩百歩だが」
俺は肩をすくめた。
「そのうち今朝の献立を書いたものが1000リィーンくらい取引されそうだ」
「流石ご主人様」
「ん?」
「既に、そうなっているようです」
聞き込みもついでにやってきたんだろう。
ゾーイは軽蔑しきった顔で言った。
「なるほど。で、それをやってるのは?」
ゾーイは頷く。
「詩を扱っている店は、全て塩商人の、その為だけに開いてる店でした」 | While a large departure parade was being held in the capital, led by Empress Audrey, I quietly set off with my two maids.
Zoe, the head maid, and Kate, who I had just recently picked up.
I took a well-made but inconspicuous carriage and posed as a proper merchant, and had Zoe and Kate follow me on foot.
After about half a day of walking along the road, I sent Kate ahead of me to secure the lodging for the day.
As I watched from the top of the carriage as Kate ran to secure the lodging, Zoe spoke to me from the side.
Her speech and address had reverted to that of the days of me being the Prince, as we are traveling secretly.
“Master, there’s something I’d like to ask you.”
“What is it?”
“Why did you bring Kate along?”
“Hmm?”
I turn my head to the side.
Zoe was looking up at me with a troubled, questioning look on her face.
“I understand why Master took a liking to her. She is honest and devoted and is very aware of everything. But she is too inexperienced. In the palace, other maids are there to follow her around, but when she is outside, ......”
“Oh well. There are still some risks, that’s for sure.”
I looked at Kate’s back, which looked about the size of a pea at the end of the road and smiled.
As with anything, enthusiasm is when you are doing something that is beyond your capabilities or near your limits.
Humans don’t say, ‘I’m going to walk!’ when they are walking, only when they are trying to run fast, they will say ‘I am going to run!’.
In this sense, Kate’s constant enthusiasm was probably unreliable in Zoe’s eyes.
“It’s not a big reason. I’m just trying to nurture Kate’s talent and give her some experience.”
“Nurture?”
“Yeah. That girl will grow if you keep training her. Don’t you think so?”
“That’s true, but ...... with the shortage of manpower, that would be inconvenient for Master.”
“A nobleman must nurture others, and it is a nobleman’s privilege to put up with them.”
“But ...... master is now ......”
”......” it was probably followed by “even though you are the Emperor”.
After stammering for a bit, she shook her head.
She seemed convinced.
Since we’ve known each other for so long, she understands that when I nurture people, I nurture them, regardless of whether I’m the Emperor or not.
I brought them here not only to nurture Kate but Zoe as well.
She works hard as the head maid, so I kept her with me, but I wanted to let her out sooner, just like Evelyn.
That Evelyn is now the Governor of Almeria.
Zoe’s talent is no less than Evelyn’s.
That’s why I brought Zoe along with me, to give her some experience.
After about a week’s journey, we came to Dussel, the capital of Gabel.
Dussel.
A city built on both ends of the Dussel River, as if it were sitting on top of the river.
The city, which has prospered thanks to the river’s water transportation, was so crowded that we could see it from a distance even on the night we arrived.
“It’s a bustling town.”
“There are more than , people registered in the city’s register.”
Kate was so surprised that her intonation of “hundred thousand” was slightly funny.
“Anyway, have you got the accommodations in order?”
Unlike Kate, Zoe was not surprised by the city of about 200,000 people, since she has been in Royal Capital for a long time.
After calming her down, she asked Kate.
“Ah, yes! I have a room on the top floor at the inn by the river. And to be safe, I rented out the one downstairs as well.”
“You weren’t able to rent out the entire inn?”
“I apologize, but there were already some guests there when I got there.”
“Then negotiate–“
“Good. Well done, Kate.”
I stopped Zoe’s questioning and complimented Kate.
She may not have done the best but she did well enough.
If it’s good enough, then Kate needs to get more praise and confidence now.
Kate looked relieved by the praise.
She was more relieved than happy.
It would take a while, I thought, as I entered the city.
Even at night, the city was quite busy.
Especially along the river, which is the heartbeat of the city, there were various night stalls and people were doing nighttime business.
Amid this bustle, we entered the inn Kate had arranged for us.
The innkeeper welcomed me with his staff, probably because I had paid a lot of money in advance.
After telling Zoe to give an appropriate tip, I entered a room on the top floor.
The room had a wide window overlooking the Dusel River, probably because it was designed for rich people from the start.
I sat by the window and looked out at the river.
“Fuhahahahaha!”
Suddenly, I heard a man’s high-pitched laugh coming from above the river.
There was a houseboat in the center of the river, and at the tip of the boat, a man was throwing something while laughing hysterically.
On both sides of the river, there were piles of people watching, marveling, and cheering each time the man threw something.
The man, pleased with the response, threw more stuff.
And so it goes.
“That’s .......”
“Looks beautiful. ......”
Zoe and Kate came up behind me.
They were one step back from me, in an over-the-shoulder position, looking at the boat and the man.
“What is he throwing?”
“Maybe money.”[TN: 金 ‘kin’ means gold or can mean money as well]
“It’s the gold.”[TN: 黄金’kogane’ means gold as well]
“”Ehhhhhh!?””
Zoe and Kate both squealed in surprise.
“Oh, by gold do you mean that gold?”
“Yeah. It’s probably made out of gold dust or gold leaf since it has relatively long airtime. Since we can see the reflection from this distance, it must have been a very large one.”
“Gold ...... amazing, must be very expensive, right?”
Kate asked fearfully, to which I replied.
“Given the size and the amount of reflection, I’d say about 100 reens each time they are scattered”
“......”
“oh my......”
With a thud, Kate collapsed to the floor.
It seems that she fainted from too much.
Zoe’s been the head maid at the Royal Mansion for many years, though, so it wasn’t enough to cause her to pass out.
Still, she was shocked to the extent that her face turned pale and her brow furrowed.
“Fuhahahahaha!! That’s it!”
“”Kyaaaaah! Olcott-sama is wonderful!”
“Olcott!?”
Zoe raised her eyebrows differently hearing the name of the person mixed in with the yellow screams from below.
“Master!”
“Governor Gavel Olcott. Himself or his family? We’ve run into each other right from the start huh.”
‘With a Governor’s salary, there’s no way he could do something like that.”
“Exactly. He’s probably taking a bribe.”
“We’ll get him.”
“Wait a bit. This in itself is not evidence of a bribe. Let’s let him swim until we get something more incriminating.”
Zoe nodded her head in agreement, though she looked bitter.
Among my maids, there’s one important factor in the selection of who I want to put “out there”.
When push comes to shove, she is the type that reason can hold her emotions in check.
“It’s true in theory, but ......”
The person who shows reluctance is a failure,
“If so, I’ll follow theory.”
and I like those who can say this.
And, Zoe has those qualities in abundance.
Zoe had a completely different expression now.
She was looking at Olcott on the river with a puzzled look on her face, tilting her head.
She was wondering why he was scattering gold while being pampered by a woman.
“Ah, no. There’s something different about it.”
“What is it?”
“He’s a Governor, but he doesn’t look like a nobleman at all.”
“Because he’s not doing his nobleman’s duty.”
“Nobleman’s duties.”
Zoe turns her head and gazes at me.
“A nobleman has to act selflessly.”
“That’s right!”
“Even when throwing away gold, the nobleman should convert it into goods and distribute it to the affected areas. This one is just a rich man.”
“...... Zoe. What about that Olcott, did you hear about him taking bribes?”
Before I left Royal Capital, I had gathered some information on the major figures in Gabel, especially those I needed to look into, and I had Zoe memorize them as well.
So I asked Zoe.
“No, not at all. He came out clean.”
“Then there aren’t that many possibilities. ...... Zoe, there’s something I need you to look into right now.”
Perhaps it was because she had witnessed Olcott’s maniacal behavior, Zoe was motivated.
The next morning, I woke up and got dressed with Kate’s help.
Kate, who had just become a maid, blushed when she saw me standing there naked.
It was just changing clothes, so I did so without embarrassment.
Then there was a knock at the door.
“Come in.”
“Excuse me.”
Zoe walked in.
She was unfazed seeing me naked.
Kate had a mixed reaction to Zoe’s reaction as well.
You get used to it, I thought, and asked Zoe, ignoring Kate’s reaction.
“So, did you get it?
“Yes. Of the three that Master mentioned, the poem was the first.”
“One of Olcott’s handwritten poems was sold for a 10000 reens.”
“Of course–“
“It’s not for sale, just on display in the store.”
“I see. I was hoping it was a painting, but it’s a poem.”
“Hmm, ......, what do you mean by that?”
Kate asked curiously while helping me get dressed.
“For Olcott to spend money the way he did, he had to have taken a bribe–I mean, he must have taken it. So far, so good, right?”
“Yes.”
“But he didn’t take it in the form of a straight-up bribe. Then again, what would it be? In that case, the safest thing to do is to trade poems and paintings. A person who wants to bribe, buys a poem or a painting that would be worthless normally – and were you able to get the real thing?”
“I wasn’t because it was too expensive, but I have ...... copied it.”
Zoe held out a piece of paper to me that looked like a note.
I read it and then showed it to Kate.
“[Halo may be infinite, but Doom is eternal].”[TN: well the poem says, {No eternity, only timelessness}, ‘永遠などない、それが永遠’, really don’t know how to express it]
Shortly after Kate read it, Zoe said
“It was 1,000 reens.”
“This one is 5000 reens.”
“[Yesterday’s Sunset leads Today’s Sunrise].”[TN: 昨日の夕焼けは、今日の朝日]
“Fueeeeeeee!?”
“Simply put, this one’s worse. Half as bad as the other one.”
I shrugged my shoulders.
“Of those, this morning’s offering is likely to be traded for a 1000 reens or so.”
“Sasuga Master.”{Sasuga Ainz-sama}
“Hmm?”
“It appears that it already has.”
I guess the inquiries must have come along as well.
Zoe said with a scornful look on her face.
“I see. So, the one’s doing it is would be?”
“Yes.”
Zoe nodded.
“The stores dealing in poetry were all salt merchants, opened solely for that purpose.” |
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} | レイド通りの、キースの店。
店の中で、アリーチェがいつもの如くハープを奏でながら歌っている。
それ良い席で、陛下が聞きいっている。
時には真っ直ぐ見つめて、時には目を閉じて体を揺らしながらリズムを合わせて。
陛下は、アリーチェの歌を堪能していた。
その陛下の背後で、俺とクルーズが控えるように立っていた。
俺は、アポピスを使いこなした。
店でしか歌わない、誰かの屋敷に行っての独演会はしないというアリーチェのこだわりに合わせて、陛下はお忍びでキースにやってきた。
当然、周りにかなりの客がいる。
よほどのことでもない限り、俺が一緒に居るんだから、陛下に危害を加えられるものはいない。
だが、空気を読まない連中が陛下の楽しんでいる気分を害する可能性が大いにある。
そうならないように、アポピスで対策した。
薬と毒は紙一重だ。
人間に効く薬は、大抵は毒性を弱めた毒でしかない。
俺はアポピスを使って、店の中の客を全員眠らせた。
いびきをかかれても困るから、そうならないようにある程度マヒさせて、体の自由も奪った。
ここに来てるのは全員がただの客、誰一人としてアポピスの毒に対抗出来ず――するそぶりもなく俺に眠らされた。
結果、陛下の鑑賞会は物静かな中、無事に執り行われていく。
それでも俺は念のためにと、周りを見回して警戒した。
ふと、同じように控えているクルーズと目があった。
彼は唇だけを動かして、声を出さずに
簡単な言葉だったから、唇の形で分かった。
気付かれたか。
宦官という人種は、貴顕に仕えるのが仕事だ。
ただの使用人とは違って、宦官は去勢したから、もはや宦官しか出来ず、その結果仕える能力――貴顕を気持ち良く過ごさせるスキルに特化していく。
クルーズはその中でも更に突出して、「皇帝」に仕え続けた宦官。
ただの貴族よりも遥かに権力を持つ皇帝、それに仕えるクルーズはよりそのスキルに長けている。
そのクルーズが「さすが」と言ってるのなら、陛下に楽しんでもらうためのこの行為は正しいというわけだ。
俺はそのまま、アポピスを使役し続けて、陛下の鑑賞環境を維持し続けた。
幕間になって、アリーチェが一旦舞台裏に引っ込んだ。
直前に客全員の眠りとマヒを解いたので、店の中は拍手に包まれた。
ほとんどの客は狐につままれた顔をしていたが、それでも周りに流されて拍手をした。
「そうだ、ノアよ」
「なんでしょうか」
「南方の、サエイ族との戦いが一段落したと聞く」
「サエイ族、ですか」
なんで今そんな話を、とちょっとだけ思った。
帝国は戦士の国、国境のどこかで、常に戦争や反乱の鎮圧が行われている。
南方では最近、サエイ族という、森に住み帝国に恭順しない一族との戦いが行われていた。
「論功行賞をしているのだが、ジェリー・アイゼンという男が特に働いたと報告があった」
「ジェリー......へえ」
あの盗賊団の男か。
俺が捕まえて、従軍刑という形で軍に送ったんだが、意外と早く頭角を現わしてきたな。
「局地戦で負けた後、そのジェリーなる男が残存兵をまとめ上げて、敵を押し返したという。まさに獅子奮迅の活躍だったらしいぞ」
「そうでしたか」
「その者が言うには、ノア、お前の恩義に報いたいそうだ」
「俺の恩義、ですか?」
「新しい、希望の見える人生をくれた。いわば父のような存在だ」
「父」
俺は半分棒読みで呟いた。
ジェリーという男に含みはないが、あんな男に父親呼ばわりされるのは妙な気分だ。
そもそも、年齢でいえば向こうは俺の倍はあるだろうに。
「さすがだ、ノア」
陛下は上機嫌な顔で言った。
「盗賊だった男が使える兵になった。しかも兵をまとめ上げ、手足の如く動かしたとなれば将才もあろう」
そりゃそうだ。
もともとが盗賊団のリーダーだった男だ、兵をまとめる力はもともとあると分かっていた。
「その男を見い出し、しかるべき場所に送り込んだ。相変わらずすごいな、ノアは」
「人は宝、そして可能性です。陛下」
「うむ、まさしく可能性が実をつけた瞬間だな」
陛下は嬉しそうに笑った。
「これからも励めよ」
演奏が終わった後、もう少し街を見て回りたい、と陛下が言い出したから、俺は護衛も兼ねて同行した。
レイド通りを出て、ホース通りにやってくる。
帝都で一番賑やかなホース通り。
巨大な広場があることもあって、出征の儀典とか、大祭りとか。
大きなイベントがここで行われることが多く、普段からもかなり賑わっている所だ。
「むぅ? あれはなんだ? 何かの売り物か?」
陛下は広場の真ん中にある露店に興味を示した。
ぱっと見露店という形だが、商品が普通ではない。
口を紐で結んだだけの、巨大な麻袋がいくつも並んでいるだけの、シンプルな露店だ。
「あれは奴隷商でございます」
「奴隷?」
「はい、ちゃんとした、認可を受けている奴隷商でしょう」
俺はそう言いながら、露店の商人に近づいた。
陛下とクルーズがついてきているのを尻目でちらっと確認してから、商人に聞いた。
「これはどこからの奴隷なんだ?」
「入荷したての、サエイ族の奴隷でございます。はい」
「サエイ族との戦いに勝ったんだ」
俺はすっとぼけて、しかしこういう時にする当たり前の話をした。
帝国は常にどこかで戦っている、刑罰の中に従軍刑なんてものがあるのもその為だ。
そして、帝国は常に勝ってきた。その都度大量の捕虜を獲得してきた。
捕虜の大半は、認可された奴隷商に流れる。
どうでもいい身分の奴隷は、こうして麻袋に詰められて、文字通り一山幾らかっていう売られ方をする。
「なるほど、奴隷の売り買いはこうやってされるのか」
背後から、陛下が面白そうだ、って感じで呟いた。
俺は振り向き、陛下に軽く頭を下げて。
「はい、旦那様。何人か買って行かれますか?」
「これでいくらだ?」
商人は営業用のスマイルを浮かべながら答えた。
「それは安いのか? 高いのか?」
陛下が更に聞くと、今度は俺が答えた。
「10リィーンですと、袋に絶対服従の魔法が掛かっているタイプでしょう」
「魔法?」
「はい、袋を開けて、最初に見た人間を主として、いかなる命令も絶対に遵守する魔法です」
「まるで雛鳥のような話だな」
「この袋はそういう意味合いもあります」
「なるほど」
陛下は興味津々に麻袋を眺めた。
もしかしたら買っていくかもしれない。
絶対服従の魔法が掛かっているので大丈夫だが、俺は念のため、袋の上から触って、何か武器とか隠してないかとチェックをした。
「むっ?」
「どうした、ノア」
「いかがなさいましたかお客様」
「この袋......」
袋にふれたままじっと見つめる。
やっぱり、間違いない。
俺は懐から10リィーンを取り出して、商人に放り投げた。
「これをもらうぞ」
「しばしお待ちください」
俺は袋を縛っている紐を解いた、中から一人の女が姿を見せた。
ぼさぼさの頭に、ぼろ布のような奴隷服。
ありがちな格好だが、俺が見てるのはそこじゃない。
視界にある、俺のステータスだ。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
法務親王大臣
性別:男
レベル:15/∞
HP C+D 火 E+A
袋に入った少女に触れた瞬間、俺のMPの「+」が一段階あがった。
ただの奴隷ではこうはならない。
間違いなく「何者か」だ。
それを確認するために、俺は商人に金を払って彼女を買って、袋を開けて絶対服従の魔法を活性化させた。
そして、聞く。
「お前の名前は? 何者だ?」
少女は眉をひそめて、口を貝のように閉ざそうとしたが、そこは絶対服従の魔法。
「ロウ・ペイユ。サエイ族族長の娘だ――えっ」
自分の意志に反して答えたことに彼女自身驚いたが、俺たちも驚いた。
「族長の娘......紛れ込んでいたのか」
「なんと! それを見抜いたのかノア」
「さすがでございます」
陛下も、クルーズも驚いていた。 | Keith’s store on Raid Street.
In the store, Alice is playing the harp and singing as usual.
And from the best seat, His Majesty is listening to her.
Sometimes he looks straight at her, sometimes he closes his eyes and sways his body in rhythm with the song.
His Majesty was enjoying Alice’s singing.
Curuz and I were standing behind him.
I had gotten the hang of using Apophis.
His Majesty had come to Keith’s in secret, in accordance with Alice’s insistence on singing only in the establishment and not in a solo performance at someone’s mansion.
Naturally, there are quite a few customers around.
As long as it’s not too much trouble, no one can harm His Majesty since I’m with him.
However, there is a great possibility that some people who don’t read the atmosphere will spoil His Majesty’s fun.
So, to prevent that from happening, I took measures with Apophis.
There is a fine line between medicine and poison.
A drug that works on humans is usually just a poison with weakened toxicity.
So I used Apophis to put all the customers in the store to sleep.
I didn’t want them to snore, so I paralyzed them to a certain extent and took away their physical freedom.
Since, all the people here were just customers, and none of them could resist Apophis’s poison – they were all put to sleep by me without any effort.
As a result, His Majesty’s reception went off without a hitch, quiet and peaceful.
Even so, I looked around to be on the alert, just in case.
Suddenly, I made eye contact with Curuz, who was also waiting.
He only moved his lips and said it without speaking.
I could tell by the way his lips formed because it was a simple word.
He had noticed.
Because a eunuch is a person whose job is to serve the nobleman.
Unlike mere servants, eunuchs are castrated, so they can only do what eunuchs can do, and as a result, they specialize in the ability to serve – the skills to make the nobleman comfortable.
And Curuz is a eunuch who has been serving the “Emperor” for a long time.
The emperor has far more power than just a common aristocrat, and Curuz is skilled at serving him.
If Curuz is saying that he’s ” as expected “, then this is the right thing to do in order to have His Majesty enjoy himself.
I then continued to use Apophis to maintain His Majesty’s entertainment environment.
At the interval, Alice retreated backstage for a moment.
The restaurant was filled with applause as I had broken the sleep and paralysis of all the guests just before.
Most of the customers looked confused, but they still applauded as they were carried away by their surroundings. [TN: Here it says ‘狐につままれた’ kitsune ni tsumareru, also termed as a Japanese Idiom that means being disbelieving one’s eyes, because the situation feels like surreal like a fox had put a spell on you]
“Ah yes, Noah.”
“What it may be?”
“I heard that the war with the Saeis in the south has come to an end.”
“The Saei tribe?”
I wondered for a moment why he was talking about it now.
The Empire is a Warrior nation, and there are always wars and rebellions being suppressed somewhere within its borders.
And, recently, in the south, there had been a battle against the Saeis, a tribe that lived in the forest and did not obey the empire.
“They’re giving out awards for meritorious service, and a man named Jerry Eisen was reported to have done particularly well.”
“Jerry ......, heh?”
He’s that bandit guy.
I caught him and sent him to the army as a prisoner of war, but he came to the surface surprisingly quickly.
“After losing the local battle, this Jerry guy gathered up the remaining soldiers and pushed the enemy back. I heard that he was like a lion in the field.”
“Is that so”
“He said that he wants to repay your favor, Noah.”
“A favor I owe him?”
“You gave me a new and hopeful second life. Like a father figure.”
“Father”
I muttered half-heartedly.
I have nothing against this guy Jerry, but it feels strange to be referred to as a father by a guy like him.
He’s probably twice my age, to begin with.
“That’s great, Noah.”
His Majesty said in a good mood.
“The man who was a thief has become a useful soldier. Moreover, if he can organize his troops and move them around like arms and legs, then he will be a general.”
That’s true.
He was the leader of the bandits, so I knew he had the ability to organize the troops.
“You found the man and sent him to the right place. Noah, as always, you are amazing.”
“People are treasure and potential. Your Majesty.”
“Yes, and it was a moment when that potential comes to fruition.”
His Majesty smiled happily.
“Keep up the good work.”
After the performance, His Majesty said he wanted to look around the city some more, so I accompanied him as an escort.
We left Raid Street and came to Hose Street.
Hose Street is the busiest street in the Imperial Capital.
There’s a huge plaza where the ceremonies of the expedition and the big festivals are held.
Large events are often held here, and the street is usually quite crowded.
“Muu? What’s that? Is it something for sale?”
His Majesty showed interest in a stall in the middle of the square.
At first glance, it looked like a stall, but the merchandise was unusual.
It was a simple stall with several huge jute sacks lined up with strings tied around their mouths.
“That’s a slave trader, sir.”
“Slaves?”
“Yes, a proper, licensed slave trader.”
While saying this, I approached the trader in the stall.
I glanced over to see that His Majesty and Curuz were accompanying me and then asked the trader.
“Where are these slaves from?”
“They are newly arrived slaves of the Saei tribe, sir. Indeed.”
“We won the war against the Saei tribe.”
I spoke calmly but relayed the obvious thing like this.
The empire is always fighting somewhere, that’s why there is such a thing as military service as a punishment.
And the Empire has always won. Each time it has won, it has taken a large number of prisoners.
Most of the prisoners of war go to licensed slave traders.
Slaves of unimportant status are stuffed into jute sacks and sold for literal piles of money.
“I see, buying and selling of slaves is done in this way.
His Majesty murmured from behind me, sounding like he was interested.
I turned around and bowed slightly to him.
“Yes, my lord. Will you be buying some of them?”
“How much for these?”
The merchant replied with a sales smile on his face.
“Is that cheap? Or is it expensive?”
When His Majesty asked further, I answered.
“For reens, the sack will have a spell of absolute obedience on it.”
“Magic?”
“Yes, it’s a spell that causes them to be obedient to all orders, as the first person they see when the bag is opened becomes their master”.
“Just like a baby bird.”
“That’s what this bag is for.”
“I see.”
His Majesty looked at the jute sack with great interest.
Maybe he will buy it.
Although the magic of absolute obedience is in place, just in case, I touched the top of the bag to check if there was any weapon or something hidden inside.
“Hmm?”
“What’s the matter, Noah?
“Can I help you, customer?”
“This bag ......”
I gazed at the bag as I touched it.
There’s no doubt about it.
I took out reens from my pocket and tossed them to the merchant.
“I’ll take this one.”
“Please wait a moment.”
I untied the string that bound the bag and a woman emerged from it.
She had shaggy hair and rags-like slave clothes.
It’s a common look, but that is not what I’m looking at.
It’s my status that is in view.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Minister of Justice
Gender: Male
Level: / ∞
HPC+DMPE+DStrengthC+AStaminaD+EIntelligenceE+DSpiritE+DSpeedE+EDexterityE+DLuckE+D FireE+AWaterC+SWindE+FEarthE+DLight E+CDarknessE+C
The moment I touched the bag the girl was inside, the “+” in my MP went up one level.
This would not happen with a mere slave.
It’s definitely “someone”.
To confirm this, I paid the trader to buy her, opened the bag, and activated the magic of absolute obedience.
Then I asked.
“What is your name? Who are you?”
The girl furrows her brow and tries to shut her mouth like a clam, but there is absolute obedience magic.
“Lou Peiyu. Daughter of the Saei tribe chief–eh.”
She was surprised that she answered against her will, but we were surprised too.
“The chief’s daughter ...... was mixed in?”
“What a surprise! You saw right through this, Noah.”
“Splendid, sir.”
His Majesty and Curuz were both surprised. |
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"series": "Noble Reincarnation~Blessed With the Strongest Power From Birth",
"source": "superScraper-fanfic"
} | 「ご主人様。下がお見えです」
「兄上が!?」
あくる日の昼下がり、内苑で読書していたら、接客メイドのセシリーが告げてきた来客に驚いた。
「はい」
セシリーして、部屋を出た。
しばらくして、久しぶりのヘンリー兄上が部屋に入ってきた。
俺は立ち上がって、兄上に軽く一礼する。
「お久しぶりです兄上。どうしたのですか急に」
「私も仕事だ――上意」
俺は更にびっくりして、脊髄反射のようにその場で跪いた。
上意――つまり勅命だ。
「シリアに新しい、直接の飲用に適した水が生まれたと聞く。宮内親王大臣ヘンリーに避暑地までの輸送を督促せよ――と言うわけで」
顔を上げる、ヘンリー兄上はニコリと微笑んでいた。
「水を用意してくれ」
「分かりました」
俺はメイドを呼んで、外苑の書斎の別室に詰めているドンに伝言を頼んだ。
陛下が言うのは特等水のことだろう。
それを、運送用につめろと命令した。
すぐに用意ができるものではないので、俺は兄上に振り向く。
「今用意させます。少し待ってください」
「うむ」
と言って、兄上と向かい合って座った。
「驚いたか」
「いいえ。水を運送するのは珍しい話ではないですから。王宮でも、常にお茶用にベリルの泉の水を運送し、常備していますから」
「そう。ベリルの泉の水。帝国で一番、茶を淹れるのに適した水と言われるもの。貴重だから陛下ご自身の飲用と、それから大臣への褒美くらいにしか使われない物だ。それと同じ扱いになりそうだ。すごいぞノア」
陛下の耳の早さに驚いていた。
特等水の開通からそんなに日が経ってない。
なのにもう、それを聞きつけたとは。
さすが陛下、耳目が相変わらず恐ろしいレベルだ。
当然、そんな事は言えないので。
「雑分の少ない水なので、陛下の療養には最適だと思います」
「そうだな、陛下には早く復帰してもらわねばな」
「そうだ、もう一つあった」
「もう一つ?」
「こっちは自分で読んで良いとのことだ」
ヘンリー兄上は懐から詔書を取り出して、俺に手渡してきた。
詔書を開いて頭から読んでいく。
表彰と褒美が書かれたものだ。
今回の事の褒美として、俺の息子――まだ妊娠すらもしていない、俺の長男に爵位をつけた。
皇帝の息子は生まれながらにして親王だが、親王の息子は産まれながらで何かがあるわけではない。
それを、生まれる前に、陛下は男爵位をつけた。
「ありがたき幸せ」
「すごい話だぞノア。皇族で、生まれる前から爵位は......何十年ぶりだ?」
「それくらいですね」
俺は記憶からそれっぽいものを探したが、見つからなかった。
「アルメリアの水道は発達している。手を加えるまでもないレベルでだ。それを封地入りしてから半年も経たない内にすごい改革だ」
「いずれ全部そうするつもりです」
「そうなのか!?」
目を剥き、驚く兄上。
「ええ、その方が民の健康にもいいでしょうし、水道のメンテナンスも簡単になる。毎年何人かはメンテナンス中に命を落とす。それをまず無くしたい」
「相変わらず人を大事にするな」
「性分です」
ガチャリと、ドアが開いて、オードリーが数人のメイドをひき連れて部屋に入ってきた。
オードリーはヘンリー兄上の目の前にやってきて、貴族の女性の礼法に則って一礼した。
「お久しぶりでございます、お義兄様」
兄上は簡単に頷いただけ。
ともすれば素っ気なく感じるくらいに、シンプルに頷いただけだ。
皇帝ほどではないが、親王の内苑は後宮に準ずる運用がされている。
義理の兄といえど夫以外の男。
内苑に入れはするが、必要以上に喋らないのが皇族の常識だ。
「元気そうだな」
言った。
こういう時は俺を介して会話するのが普通である。
「それに......少し見ないうちに正室
兄上は満足げな顔でいった。
オードリーはメイド達から色々手渡された。
茶器、茶葉、それにお湯。
メイドが渡して、オードリーが茶を淹れる、俺と兄上に給仕する。
メイド任せには出来ない、彼女の仕事。
それを黙々とこなしているオードリーをみて、兄上は満足げだ。
「どうぞ」
オードリーが入れた紅茶を受け取って、口をつける。
「うむ、素晴しい」
兄上はそう言って、やっぱり俺だけを見つめて。
「二人ともまだ若いのに、よくやれている」
と、大いに満足したようだ。
ヘンリー兄上が帰った後、俺は外苑の書斎に向かった。
万が一、実際に飲んで陛下が気に入ったのであれば、定期的に納入するための輸送の事をあらかじめ決めておかなきゃと思ったからだ。
そうして書斎にやってくると、ドアが向こうから開いて、ドンがでてきた。
「あっ! ノア様。今呼びに行こうと思っていました」
「どうした。......何かあったのか?」
ドンはなにやら慌てている様子だ。
「どうぞ、中へ」
俺は頷き、書斎の中に入った。
中に一人の少年が両膝をついていた。
少年は泣きはらした顔で、俺を見るなりこっちを向いて、頭を強く床にたたきつけた。
「親王様! お父さんを、お父さんを助けてください!」
「......どういう事だ?」
ドアを閉めたあと、ドンが横から何かを差し出してきた。
みると――あの箱だ。
俺がいろんな人間に配っている、密告用の箱。
ドンが差し出したのは、開けてはいないが、ハンマーにでも殴られたかのように、上部が大きくへこんでいる箱だった。
「これは......ロレンスのか」
箱に仕込んでいるのはフワワの力の一端だ。
そこから、俺は誰に渡した物なのかが一目見れば分かる。
「お父さんと言ったな。ロレンスの息子か?」
「はい! ライナスって言います」
「ロレンスはどうした」
「パスカル様に無実の罪を着せられて、今牢屋につかまってます!」
眉がきゅっ、と寄せたのが自分でも解った。
はっきりとした不快感の中、ライナスの話を聞く。
前の一件の後、パスカルはロレンスにきつく当たるようになった。
「どんな手を使って殿下に取り入ったんだ」
と度々言うように、俺がロレンスを気に入ったことが不満のようだ。
そして数日前、とうとうロレンスに無実の罪を着せて、そのまま投獄してしまったという事だ。
「賄賂をもらって裁判をひっくり返すなんて......お父さんはそんな事しません!」
「分かるのですか?」
ドンが真剣な顔で俺に聞いた。
俺はドンの手から、上部がへこんだ箱を取り上げて。
「この箱の能力を覚えているか?」
ドンは首をひねって思い出そうと試みる。
この箱自体、ドンに言ってロレンスに渡してきてもらった現物。
その時にドンに説明している。
「たしか......一度鍵を掛けてしまえば殿下以外開けられなくて、見せびらかしたら自壊する。でしたか」
「ああ。そこまでやる俺だ、もう一つくらい仕込むのは当たり前だろ?」
「......そうですな」
ドンはあまりのおかしさに、思わず吹きだしてしまった。
「賄賂を受けるような悪事をするものなら、これを持っている資格はありませんな」
「そういうことだ」
「さすが殿下。見事な仕込みでございます」
俺は箱を見た。
としたが、ロレンスという人間が箱を
ならば。
「どこだ、ロレンスが捕まってる牢屋は」
ライナスは、救世主を見つけたような顔をした。
ライナスに案内されて、俺はニシルの外れにある牢屋にやってきた。
アルメリア州の州都、ニシル。
州で一番大きな街は、大きめの牢屋が街の外れにある。
そこにやってきた俺とライナス。
「止まれ! 何者だ」
「ノア・アララート」
番兵が事務的に俺に一喝して、俺は冷たい口調で名乗った。
「ノア......し、親王様!」
番兵は俺の正体に気付いて、慌ててその場で土下座した。
「中に入るぞ」
「は、はい」
番兵の横を通り過ぎて、牢の中に入る。
中にも牢番がいるが、そっちは最初から俺の顔を知っているようで、誰何する前にビクッとして何も言えずにいた。
俺はズンズン進みながら、牢番の一人に。
「ロレンスはどこだ」
「えっと......」
「どこだ」
言いよどむ牢番に、立ち止まって、体ごと振り向いて睨む。
牢番はビクッとして、へたり込みそうな勢いで足がガタガタ震えながら、答える。
「お、奥の突き当たりです」
俺は再び歩き出した、一直線に最奥に向かっていく。
俺の後ろ数歩にライナスがついてくる。
しばらく歩いていると、くぐもったうめき声が聞こえてくる。
俺は急いだ。
最奥につくと、牢屋の中で、とんでもない事が起きているのが見えた。
ロレンスは床に寝かされていて、その胸から腹に掛けて、土嚢のようなものが載せられている。
そして黒装束の男。
一人が土嚢を上から体をのせて押さえつけて、残った二人は手足を押さえつけている。
えげつないやり方だ。
法務親王大臣として、法務省でいろんな刑罰や拷問の資料を見てきた。
このやり方は、自然死に見せかけるやり方だ。
体に土嚢を載せて、それに重しを載せる。
すると、胸――そして肺全体が圧迫されて、呼吸が出来なくなる。
一時間くらいは掛かるが、終わった後はまったく外傷のない、自然死に見える死体の一丁上がりだ。
「お父さん!」
「「「――っ!」」」
ライナスが叫ぶと、黒装束の男達が反応した。
一人が「くっ」と呻くや否や、ナイフを取り出して、ロレンスに突き刺そうとする。
ばれたからなりふり構わない方法に切り替えたか。
俺はレヴィアタンを抜いて、その場で振り下ろした。
総理親王大臣、帝国の臣民を扱っている身。
全能力SSSの無敵状態。
軽く振ったレヴィアタンは、斬撃を三人の男に飛ばした。
手足を押さえている反応の遅い二人がそのまま斬られ、ナイフの男はナイフで迎撃した。
しかしそのナイフも弾かれてしまう。
男はもう一本ナイフを取り出して、今度は俺に突進してきた。
かなりの突進、一直線に俺に肉薄する。
ナイフは、俺の胸をえぐった――様に見えた。
「残像だ」
「――っ!」
残像が残るほどのスピードで男の背後に回り、首に手刀をおとした。
男は白目を剥いて、そのまま倒れる。
「す、すごい......」
ついてきたライナスは、目を剥いて、信じられないものを見たような顔をした。 | “Master. His Highness the Fourth is here to see you.”
“My brother!?”
When I was reading in the inner garden in the late afternoon of the following day, I was surprised by a visitor who was announced by Cecily, the reception maid.
“Yes”
Cecily bowed and left the room.
A few moments later, my brother Henry, whom I hadn’t seen in a long time, came into the room.
I stood up and bowed lightly to him.
“It’s been a long time, brother. What’s up with the sudden visit?”
“I am here for work—– a Decree.”
I was even more surprised and knelt down on the spot as if it was a spinal reflex.
Decree – that means, an Imperial Command.
“I’ve heard that Syria has produced new water suitable for direct consumption. And I want you to urge Cabinet Minister, Henry, to have it transported to the summer resort.”
I looked up, Brother Henry was smiling at me.
“Prepare the water.”
“Understood.”
I called my maid and asked her to give a message to Don, who was in another room in the outer garden study.
His Majesty must be referring to the special water.
I’ve ordered twelve barrels of it to be packed for transport.
It was not something I could prepare right away, so I turned to my brother.
“I’ll have them prepared. Please wait a moment.”
“Umu.”
Saying that I sat down facing my brother.
“You surprised?”
“Well, no. It’s not unusual for water to be transported. Even at the royal palace, water from the Beryl Spring is always transported and kept on hand for tea.”
“Yes. Water from Beryl’s Spring. It is said to be the best water in the empire for brewing tea. It’s so precious that it’s only used for His Majesty’s own drinking and as a reward for his ministers. It’s going to be the same as that. That’s great, Noah.”
I was surprised at how quickly His Majesty heard.
It hasn’t been that long since the Special-Grade Water was made available.
And yet, he’d already heard about it.
As expected of His Majesty, his ears are as frightening as ever.
Of course, I couldn’t say such a thing.
“The water has low levels of miscellaneous substances, so I think it will be ideal for His Majesty’s recuperation.”
“Yes, His Majesty should be back on his feet soon.”
“Oh, there’s one more thing.”
“Another one?”
“You can read this one yourself.”
Brother Henry took out an imperial edict from his pocket and handed it to me.
I opened it and read it from the beginning.
It contained commendations and rewards.
As a reward for this incident, my son – my eldest son, who is not yet even conceived – has been given a title.
The son of the Emperor is born a Prince, but the son of a Prince is not born with any special title.
His Majesty gave him a baronetcy before he was even born.
“What a blessing.”
“Quite incredible, Noah. It’s been decades since a member of the royal family has received a baronetcy ...... before birth.”
“That’s about right.”
I searched my memory for something like that, but couldn’t find it.
“The Water System in Almeria is well developed. It’s at a level where it doesn’t need any modification. It’s been an amazing transformation in less than six months since you entered the fief.”
“I intend to do it all sooner or later.”
“Is that so!?”
My brother’s eyes widened in surprise.
“Yes, it will be better for the health of the people and easier to maintain the water supply. Every year some people die during maintenance. That’s the first thing we want to eliminate.”
“You always take care of people, don’t you?”
“It’s in my nature.”
With a crack, the door opened and Audrey came into the room with several maids in tow.
Audrey came in front of Brother Henry and bowed in the manner of a noblewoman.
“It’s been a long time, my brother-in-law.”
My brother simply nodded.
It was a simple nod, so simple that it seemed almost casual.
Although not as much as the emperor, the inner garden of the prince is operated in the same way as the inner palace.
Even though he was her brother-in-law, he was a man other than her husband.
It is the common sense of the royal family not to talk more than necessary, although they are allowed in the inner garden.
” Looking well.”
He said to me.
In such cases, it is normal to converse through me.
“And ...... you’ve become a proper wife in a short while.”
He said with a satisfied look on his face.
Audrey was handed a number of things by the maids.
Tea sets, tea leaves, and hot water.
The maids handed them to Audrey, who made the tea and served it to me and my brother.
This is her job, which cannot be left to the maids.
Seeing Audrey doing it quietly, my brother was satisfied.
“Please.”
He took the tea that Audrey had made and sipped it.
“Umu, excellent.”
My brother said, still staring at me.
“You’re both doing very well for such young people.”
He seemed to be very satisfied.
After Brother Henry left, I went to the study in the outer garden.
In case His Majesty actually liked the product after drinking it, I would have to decide in advance about the transportation of the product for regular delivery.
As I arrived at the study, the door opened from the other side and Don came out.
“Ah! Noah-sama. I was just about to call for you.”
“Yes. ...... What’s the matter?”
Don seemed to be in a panic.
“Please come in.”
I nodded and walked into the study.
There was a boy on his knees inside.
He looked at me with a sobbing face, turned around, and slammed his head down hard on the floor.
“My Lord! My father, please save my father!”
“...... What do you mean?”
After closing the door, Don held something out to me from the side.
I looked at it – the box.
It was one of those boxes I give out to people to send me messages.
Don held out a box that he hadn’t opened, but the top of it was heavily dented as if it had been hit by a hammer.
“Is this from ...... Lawrence?”
“You recognize it?”
The box contains a portion of the power of the Fuwawa.
From there, I can tell at a glance who I’ve given it to.
“You said your father. Are you Lawrence’s son?”
“Yes! My name is Linus.”
“What happened to Lawrence?”
“He’s in jail, accused by Pascal-sama of a crime he didn’t commit!”
I noticed that my eyebrows were furrowed.
I listened to Linus’s story with a clear sense of discomfort.
After the previous incident, Pascal began to be harsher with Lawrence.
“How did he get into His Highness’ good graces, huh”
He seems to be unhappy with the fact that I’ve taken a liking to Lawrence.
Then, a few days ago, he finally framed Lawrence for a crime he didn’t commit and threw him in jail.
“Taking bribes and turning a trial around. ...... My father would never do that!”
Don asked me with a serious face.
I took the box with the dented top out of Don’s hand.
“Do you remember what this box is capable of?”
Don tilted his head and tried to remember.
The box itself was the actual thing I told Don about and asked him to give to Lawrence.
I explained it to Don at the time.
“I am sure.... once locked, only His Highness can open it, and if you show it off, it will destroy itself. Isn’t that right?”
“Yes. If I’m going to go that far, it’s only natural that I’d have put another one of those means, right?
“...... that is correct.”
Don couldn’t help but burst out laughing at how funny it was.
“Anybody who would do something as bad as taking a bribe doesn’t deserve to have this.”
“That’s the point.”
“As expected, Your Highness. Quite a preparation, sire.”
I looked at the box.
Pascal tried to destroy the box, but the man named Lawrence kept him from doing so.
Then.
“Where is the prison where Lawrence is being held?”
Linus looked at me as if he had found his savior.
Linus led me to a prison cell on the outskirts of Nisir.
Nisir, the capital of the state of Almeria.
The largest city in the province has a large jail on the outskirts of the city.
Linus and I arrived there.
“Stop! Who are you?”
“Noah Ararat.”
The guard gave me a quick, administrative shout, and I said my name in a cold tone.
“P-Prince......, Noah!”
The guard realized who I was and hurriedly got down on his knees right then and there.
“I’ll head inside.”
“Y-Yes.”
I walked past the guard and entered the prison.
There was another guard inside, but he seemed to know my face from the start, and before I could say anything, he was too scared to say anything.
I continued on my way and asked one of the guards.
“Where’s Lawrence?”
“Uh, .......”
“Where is he?”
I stopped, turned my body around, and glared at the stunned prison guard.
The prisoner freaks out, his legs shaking as if he’s about to cave in.
‘A-At the far end, sire.”
I start walking again, heading in a straight line toward the far end.
Linus followed a few steps behind me.
After a few steps, I hear a muffled groan.
I hurried towards the sound.
When I reached the far end, I saw that something terrible was happening in the prison.
Lawrence was lying on the floor, with what looked like a sandbag on his chest and stomach.
And there were three men dressed in black.
One of them was holding Lawrence down by placing his body on top of the sandbag, and the other two were holding down his arms and legs.
It was a gruesome scene.
As the Minister of Justice, I have seen various documents on punishment and torture at the Ministry of Justice.
This method is to make it look like a natural death.
They put sandbags on the body and put weights on it.
Then, the chest – and the entire lungs – are compressed, making it impossible to breathe.
It takes about an hour, but when it’s over, you have a body that looks like it died of natural causes, with no external injuries at all.
“Father!”
“””—!”””
Linus shouted, and the black-clad men reacted.
As soon as one of them grunted, he pulled out a knife and tried to stab Lawrence with it.
You switched to a more brutal method because you were found out, huh.
I pulled out Leviathan and swung it down on the spot.
The Prime Minister, who deals with the subjects of the empire.
A state of Invincibility of all abilities SSS.
With a light swing, Leviathan sent slashes flying at the three men.
The two men who were slow to react and had restrained his limbs were cut, and the one with the knife intercepted it with his knife.
However, the knife was also repelled.
The man took out another knife and rushed at me this time.
It was a huge rush, and he was coming at me in a straight line.
The knife gouged me in the chest – or so it seemed.
“It was an afterimage.”
“—-!”
With enough speed to leave an afterimage, I got behind the man and slashed my hand across his neck.
The man went white-eyed and collapsed.
“A-Amazing.......”
Linus, who was following me, had his eyes opened wide and looked as if he had seen something unbelievable. |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | 「ご主人様、何を考えていらっしゃるのですか?」
「ん? ああ、ゾーイか」
顔を上げると、よく知っているメイドが配膳ワゴンのそばで、何故か心配そうな顔で俺を見つめていた。
ここ最近、彼女と顔を合わせる事が多くなった。
彼女の故郷、水害に遭った村を丸ごと買ったあと、少しでも恩返しをしたいって申し出があって、それで屋敷での仕事を増やしてやった。
恩義を感じているからか、よく働いて細かい気遣いも出来る様になった。身の回りの世話をやらせる分には悪くない。
今も、屋敷の広間で考えごとをしている俺のそばに侍って、色々と世話をしている。
「今度の騎士選抜の選考官になったのは聞いてるな? それをどういうやり方でやった方がいいのかって考えていたんだ」
「なるほど!」
「騎士選抜の事は知っているか?」
「はい! 私達庶民の登竜門、腕に覚えのある人は皆それを目指して日々鍛錬してますよ」
「だろうな。まあ、それでどういうやり方をしたらいいのかって思ってな。......お前の村にも挑戦者がいるのか?」
「はい、私の村からは毎年一人」
「そうか。まあ今年は俺が予選を取り払ったから。いくらでも来て良いぞ」
「......はい」
ゾーイの曖昧な返事が気になった。
「どうした」
「申し訳ありません!」
「気分を害したとかじゃない。それより今何を思った、言え」
「たいした事じゃないんです。うちの村から一人なのは予選とかじゃなくて、都までの旅費と、あと滞在費のせいです」
「うん?」
「都は、物価が高いです。村の皆がカンパしてようやくその一人分の滞在費がまかなえます。ですから......」
そう言って、複雑そうな表情をした。
なるほど、そういうことか。
「......それって多いのか? 村が金を集めて一人を送り出すのって」
「はい。それで村の期待を背負って出てくるのですから、皆すごく真剣に――」
「よし、だったらそれを取っ払おう」
ゾーイはきょとんとした。
「取っ払おうとは、何をですか?」
「旅費と滞在費だ。出来るだけ多くから選びたいのにそんな事で才能を逃しちゃたまらん。よし、希望者には都にいる間の衣食住を全部俺がもとう」
「そ、そんな事ができるのですか?」
「出来る」
俺ははっきりと言い放った。
「今度の騎士選抜は俺が責任者だ。俺が金を出すだけの話だ、今この瞬間で決められる」
「そうではなく......それは、ものすごくお金が掛かります......」
「だれか」
俺の呼びかけに、男の使用人が入ってきた。
俺はそいつに、都に今ある空き家の数を調べて来いと命じた。
空き家を片っ端から買いあさってそれで足りるのならよし、足りないのなら新しく寮みたいなものを建てるまでだ。
それと食べ物だ、人数次第では、村か小規模な街を一つまかなう分を調達する必要がある。
王邸と付き合いのある穀物商人はどこだっけなと、記憶の中を探る。
「ご主人様......すごいです......」
頭をフル回転させる俺の横で、ゾーイは逆に、ポカーンとしていた。
穀物商人のところに行った後の帰り道。
騎士選抜の期間中は安定した量を供給してくれるという言質を取った後、俺は満足して帰路についていた。
都の大通りは今日も様々な人間が行き交っている。
この中にも才能はいるのか? そう思うと、一人一人捕まえて話を聞いてみたくなってきた。
ふと、通行人達が次々と立ちどまって、左右に割れた。
それで出来た道の向こうから、一台の馬車が。
通行人を止めて優先的に道を使う馬車、それにあの紋様は――。
「ノアじゃないか」
馬車が俺の横にくるとそのまま止まった。
馬のいななきがやんだ後、馬車の中から一人の青年が顔を出した。
「兄上」
俺はその場で軽く一礼した。
オスカー・アララート。
陛下目の子供で、俺の兄だ。
もちろん同じく親王。通行人が道を譲ったのはそのせいだ。
親王の中でもっとも善人と言われているオスカーは、優しい顔のまま話しかけてきた。
「こんな所で何をしているんだ?」
「ちょっとぶらぶらしていました。兄上は?」
「コバルト通りに行くところだよ。そうだ、ノアも一緒にどうだ?」
「......分かりました、ご一緒します」
別に断る理由もないから、俺は誘いに応じた。
御者がさっそく馬車に乗せるための踏み台を下ろしたから、それを使って馬車に乗り、オスカーの向かいに座った。
俺が乗った直後、御者は慣れた手綱捌きで馬車を再び動き出させた。
「聞いたよ、今度の騎士選抜、ノアになったんだってね」
「早耳ですね兄上」
「陛下がしきりに君のことをほめていた。あんなに嬉しそうにしてる陛下、何年ぶりだろうか」
「そうなのですか?」
「うん、少なくともノアが産まれてからは初めてだ」
「なるほど」
オスカーと騎士選抜について話す。
オスカーに早耳だとはいったけど、陛下ほどじゃないようだ。
騎士選抜の話は知っているが、俺が早速都へ上る者の衣食住を保障するために動いてる事までは知らないようだ。
まあ、陛下のあれが異常すぎたとも言える。
しばらくして、馬車は別の大通りの入り口にやってきた。
「ここから先は歩きだよ」
「馬車はよろしいのですか?」
「ここは自分の足を使って宝探しを楽しむところだからね」
オスカーは無邪気に笑った。
もう青年という年齢なのに、子供のような笑顔がよく似合う人だ。
俺たちは馬車を降りて、目の前にあるコバルト通りに入る。
コバルト通りとは、骨董商が密集している場所だ。
店を構えているのもいれば、露店を出しているものもある。
帝国中の骨董品は全てここに集まってくるのだが、同時に偽物も多く集まる。
まさしく玉石混淆なこの小さな町で、自分の目を使って本物のお宝を探し出すのが、貴族のたしなみとされている。
「ノアはここに来たことは?」
「話はよく聞きます。実際に来たのは初めてです」
「結構お金が掛かると聞きますので」
「そうでもないぞ、一万リィーンでも持ってくればとりあえずは事足りる、本物の掘り出し物を見つけても手付け金としては足りる」
都の成人男性が一月に稼ぐ金が平均で十リィーンだ。
一万というのは決して小さい額じゃないが、本物のお宝と出会うとそれくらいは必要だ。
俺はオスカーと一緒に歩いて回った。
店に入って掘り出し物とやらを見たり、露店にでて陳列されてるものを眺めたり。
「絵画とかもあるのですね」
「ああ。まあ、絵は大抵が偽物だがな」
答えるオスカーは、ここに来た時ほどの熱意はなくなっていた。
お宝を見つけられないでいるせいで、テンションがはっきりと下がってきてるのが見て取れる。
まあ、そうポンポンお宝が見つかる訳でもないだろうけどな。
俺はそう思いながら、露店に並んでるものを適当に持ち上げて、まじまじと眺めたりした。
骨董品とか美術品とか良くわからない。
傾向としては、ちゃんと店を構えてる所の方がなんとなくいいものがあって、露店の方がガラクタばかりに見える。
それも先入観かもしれないが。
そんな事を思いながら、俺は露店から一冊の本を手にとった。
分厚いカバーの、かなり古い本だ。
「――っ!」
瞬間、手が止まった。
「どうしたんだいノア」
「......これ、いくら?」
「三リィーンだよ」
ポケットから言われた額を取り出して、店主に渡す。
そしてそれをまじまじと見る。
「どうしたんだいノア、そんな怖い顔でそれを見つめたりして」
「......」
「それがどうした......って、ちょっと見せてノア」
オスカーは何か思い出したかのように、俺の手首を掴んで、古い本をまじまじとみた。
この行動に、逆に俺が「どうした」となった。
「兄上?」
「これは......ああ、間違いない。ノア、これはお宝だよ」
「お宝?」
「ああ。これは大魔術師アンドレアの魔術書だよ。しかも原典だね」
「よくこれがお宝だって分かったね。すごいじゃないかノア」
オスカーに微笑み返して、俺は再び古い本――魔術書に視線を落とした。
これがお宝だとは知らなかった、俺はこれを手に取った途端あるものが変わったのが見えただけだ。
――――――――――――
アララート帝国十三親王
性別:男
レベル:1/∞
力 F+F 風 F+F
知性 F 光 F
――――――――――――
俺のステータスだ。
いつも視界の隅っこにあるそれが動いた。
風の所に「+」がついた。
間違いなくこれのせい、だから三リィーンを払って手に入れた。
歩きながら魔術書を眺める、オスカーは横でまだ言っていた。
「どうやらかなり後期に書かれたものだね。内容にもよるけど、一千リィーンはくだらないだろうね。いやあ、すごいな、初めてのコバルト通りで本物を、しかも露店の中から探し当てるとは」
「......感じる」
「え? 何を」
俺は立ち止まった。
本をもったままレヴィアタンを突き立てる。
「ノア!?」
驚くオスカー、それを無視してレヴィアタンを突き立てる。
レヴィアタンから教えてもらった。
魔道書をもってステータスが上がったのが不思議だった。
俺の能力の「+」は人間を配下にした時だけだ。
それを不思議がっていると、レヴィアタンから、魔道書の中に魂が封じ込められていると教えられた。
その魂を一目見ようと、レヴィアタンに言われた通り剣を本に突きつけた。
すると――本から黒い影が出てきた。
出てきた影は人の形をしていたが、目に瞳孔がなくて真っ白、体の周りからも物々しいオーラが立ち上っている。
「まさか! 本人の魂を封じ込めた禁書!? 逃げろノア! そいつは風を極めた――」
オスカーが言い終えるよりも前に俺が動いた。
俺を動かしたのは、狂犬で忠犬のレヴィアタンだ。
レヴィアタンはそいつが現われた直後に、今までで最大級の敵意を向けた。
だから俺は即動いた、魔剣を一閃、出てきた男の首を斬りおとすなり、返す刀でレヴィアタンの必殺技、あの水柱をぶっ放した。
放物線を描く首と、魔道書にくっついていた胴体。
水柱はそれをまとめてぶっ飛ばした。
ステータスから「+」が消えた。
もったいないが、レヴィアタンの敵意は実質警告だったから、こうした方がいいと思った。
「そういえばさっき兄上は何かを叫んでいらっしゃったけどあれは――兄上?」
気づけば、オスカーは俺を見てあんぐりと口を開きっぱなしで、ポカーンとしていた。
「どうしましたか兄上」
「お前......いつの間にそんなに強くなったんだ?」
兄上は、本気で驚いていた。 | “What are you thinking about, Master?”
“Hmm? Oh, Zoe.”
When I looked up, I saw a maid I knew well standing by the delivery wagon, looking at me with a worried look on her face for some reason.
I’ve been seeing her a lot lately.
After I bought her hometown, a whole village that had been flooded, she offered to repay me in any way she could, so I offered her more work at the mansion.
Perhaps because she felt indebted to me, she worked hard and became attentive to details. It’s not bad enough to let her take care of things around the house.
Even now, she’s staying by my side as I’m thinking in the mansion’s hall and taking care of things.
“I’m sure you’ve heard about the selection process for the upcoming knight selection. I was trying to figure out how to do that better.”
” Oh, I see!”
“What, are you aware of the Knight Selection?”
“Yes! It’s the only gateway for us common people to climb up the ladder, and everyone who knows how to use their skills is training for it every day.”
“Yeah. Well, I was just wondering how to do that. ...Is there a challenger from your village?”
“Yes, there’s one from my village every year.”
“Yeah. Well, I took away the qualifiers this year. They can come as much as they want.”
“...yes.”
Zoe’s vague reply bothered me.
“What’s wrong?”
“I’m sorry!”
“I’m not offended or anything. Just tell me what you think now, okay?”
“It’s not really important. The reason for being the only one from my village is not because of the qualifying or anything, but because of the cost of travel to the capital and also the cost of staying there.”
“Huh?”
“The cost of living in the capital is high. Everyone in the village has to contribute money to cover the cost of that one person’s stay at the city. Therefore....”
Then she gave him a complicated look.
I see, so that’s what happened.
“...Is that a lot? The village collects money and sends one of them out.”
“Yes. And so they come out with the expectations of the village, and they all take it very seriously–“
“Okay, well, let’s get rid of it then.”
Zoe stared blankly.
“What are you trying to get rid of?”
“Travel and accommodation. I’d like to choose as many as I can, but I don’t want to miss out on talent because of that. Okay, if you want, I’ll provide food, clothing, and shelter for the duration of their stay in the capital.”
“Oh, you can do that?”
“I can.”
I said clearly.
“I’m in charge of selecting the knights this time. All I have to do is pay for it, and I can decide right now, right now.”
“No sir it’s going to cost a hell of a lot of money...”
” Anyone.”
A man’s servant came in to answer my call.
I ordered him to check the number of empty dwellings in the capital.
I told him to buy every empty house in the city and if that’s enough, good, if not, it’s enough to build a new dormitory of sorts.
And food, depending on the number of people, we’ll need to buy enough to feed a village or a small town.
I search my memory for the grain merchant who has a relationship with the Thirteenth Parent’s residence.
“Master you are amazing........”
Beside me, with my brain in full swing, Zoe, on the other hand, was flabbergasted.
On the way home after visiting the grain merchant.
I was heading back home, satisfied after taking the pledge of a steady supply during the knight selection period.
The capital’s main street is still busy with all sorts of people today.
Is there any talent among these people? The thought of that made me want to catch each one of them and listen to their stories.
Suddenly, one by one, the passersby stopped and broke off to the left and right.
From the other side of the road that had been created, a carriage.
A carriage that stops passersby and gives priority to the use of the road, and that pattern – that’s the pattern.
“Isn’t that Noah?”
The carriage stopped as it came up beside me.
After the horses had stopped neighing, a young man emerged from the carriage.
“Brother,”
I bowed lightly on the spot.
Oscar Ararat.
His Majesty’s eighth child and my brother.
Obviously, the prince as well. Which is why passersby gave way to him.
Oscar, who is said to be the nicest of all the Princes, spoke to me with a kind face.
“What are you doing here?”
“I was just hanging out. And what about you, brother?”
“I’m on my way to Cobalt Street. Yeah, why don’t you join us, Noah?”
“...Okay, I’ll join you.”
There was no reason to refuse, so I accepted the invitation.
He quickly lowered a step stool to get me into the carriage, and I used it to get in and sit across from Oscar.
As soon as I got in, he started the carriage up again with his expert handling of the reins.
“I heard that you’ve been selected for the upcoming knight selection, Noah.”
“That’s a real good ear, brother.”
“His Majesty kept going on and on about you. I haven’t seen His Majesty that happy in years.”
“Is that so?”
“Yeah, at least for the first time since Noah was born.”
I talk with Oscar about knight selection.
I told Oscar that he has good ears, but he doesn’t seem to have as many ears as Your Majesty does.”
He knows about the selection process, but he doesn’t know that I’m working to secure food and clothing for all those who travel to the capital as soon as possible.
Well, it could be said that that of His Majesty was too unusual.
A short time later, the carriage came to the entrance of another main street.
“From here on out, we have to walk.”
“Are you sure about the carriage?”
“This is a place where I enjoy using my feet to hunt for treasure.”
Oscar smiled innocently.
He was already a young man, but he had a childlike smile that suited him well, despite his age.
We get out of the carriage and turn into Cobalt Street, which is right in front of us.
Cobalt Street is a densely populated area of antique dealers.
Some of them have shops and some have stalls.
All the antiques from all over the empire are gathered here, but at the same time many fakes are also gathered.
It’s a small town that is truly jumbled up, and it is considered an aristocrat’s way of life to seek out genuine treasures using their own eyes.
“Has Noah ever been here before?”
“I’ve heard a lot about it. This is my first time here in person.”
“Okay.”
“I hear it costs quite a bit of money.”
“Not really, , reens will be enough for now, and even if you find a real bargain, it will be enough for a handout.”‘
The average amount of money an adult male in the city earns in a month is ten reens.
Ten thousand is not a small amount, but when you meet a real treasure, you need that much.
I walked around with Oscar.
We went into a shop and looked at some bargains, or went to a stall and looked at some of the displays.
“I didn’t know they had paintings and stuff.”
“Yeah. Well, most of those artworks are fake.”
Oscar replied, no longer as enthusiastic as he was when he came here.
I can see that the tension is clearly dropping due to the fact that he hasn’t been able to find any treasures.
Well, it’s not like I’m going to be able to find treasures pompously like that.
With that in mind, I randomly lifted the things lined up in the stalls and stared at them.
I don’t know much about antiques and artifacts.
As a tendency, there are somehow better things in the places that have a proper shop, and the stalls seem to be full of junk.
That may be my preconceptions.
With that in mind, I picked up a book from the stall.
It’s a rather old book with a thick cover.
“—-m!”
A moment later, my hand stopped.
“What is it, Noah?”
“How much is this?”
“It’s three reens.”
I pull the said amount out of my pocket and hand it to the owner.
Then I stare at it intently.
“What’s the matter with you, Noah, staring at it with such a scary look on your face?”
“....”
“What’s the matter with that, I mean, let me see a little bit, Noah.”
As if he remembered something, Oscar grabbed my wrist and stared at the old book.
This action, on the contrary, made me go, “What’s wrong?”
“Brother?”
“This is ... oh, I’m sure of it. Noah, this is a treasure.”
“Treasure?”
“Oh. This is the book of the great sorcerer Andreas. And it’s the original.”
“How do you know it’s a treasure? It’s amazing, Noah.”
Smiling back at Oscar, I looked down at the old book – the book of magic – again.
I didn’t know this was a treasure, I just saw certain things change as soon as I picked it up.
――――――――――――
Name: Noah Ararat3th prince of the Ararat Empire
Gender: Male
Level: 1 / ∞
HPFMPFStrengthF+FStaminaF+FIntelligenceFSpiritFSpeedFDexterityF+FLuckF+F FireFWaterE+SSWindF+F
EarthFLight FDarknessF
――――――――――――
It was my status.
It’ always in the corner of my vision, and it changed.
I got a “+” at the wind.
Definitely because of this, so I paid three reeks to get it.
I looked at the grimoire as I walked, Oscar was still beside me, saying.
‘”Apparently it was written quite a bit later. Depending on the content, a 1000 reens wouldn’t be trivial. Wow, that’s amazing, to find the real thing in Cobalt Street for the first time, and among the stalls.”
“... feeling.”
“Eh? What?”
I stopped.
I thrust the Leviathan at the Book.
“Noah!?”
Oscar was surprised, but I ignored it and prodded the Leviathan.
Leviathan told me about it.
It was strange that my status increased with the grimoire.
The “+” in my ability is only when I have a human under my command.
When I wondered about that, Leviathan told me that a soul was enclosed in the grimoire.
In order to get a glimpse of that soul, I thrust my sword at the book as Leviathan had told me to do.
Then — a black shadow came out of the book.
The shadow that came out had the shape of a person, but it was pure white with no pupils in its eyes, and a monstrous aura rose up from around its body.
“No way! A forbidden book that contains the soul of the person in question! Run, Noah! He has mastered the wind–“
I moved before Oscar could finish.
The one who moved me was a mad dog, a loyal dog, Leviathan.
As soon as he appeared, the Leviathan gave one of the most hostile looks I’ve ever seen.
So I immediately moved to cut off the man’s head with a flash of my demon sword, and in return, I unleashed Leviathan’s special technique, the water column.
The head with a parabolic neck and the torso that was attached to the grimoire.
The water pillar smashed them all together.
The ‘+’ disappeared from the status.
It was a waste, but Leviathan’s hostility was practically a warning, so I thought it was better to do this.
“Speaking of which, just now, brother was shouting something, but was that – brother?”
The next thing I knew, Oscar was looking at me and gaping his mouth open, pouting.
“What’s the matter, brother?”
“You ... when did you become so strong?”
Brother was genuinely surprised. |
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} | 「それよりも兄上、俺に何か用があったのではないですか?」
「おお、そうだった」
兄上は居住まいを正して、改まった感じで、俺を見つめてきた。
「ノアに頼みたい事があって来た」
「俺に頼み事?」
思わず身構えてしまった。
ヘンリー兄上、王。
地位は俺と同じ、歳は親子ほども離れている。
そんな兄上が、改まった感じで聞いてきたとなれば、思わず身構えてしまうものだ。
「ああ、深刻な話ではない。私が多くの芸人を抱えている事は知っているな」
「ええ」
俺は頷いた。
兄上も、貴族の義務を励行している。
画家、音楽家、その他の芸事をしている人間を支援している。
貴族として、それが出来れば出来るほど貴族の面目が立ち、称賛される。
俺がアリーチェを支援したのもそういう理由からだ。
「少し前に絵の才能が素晴しい少年を見つけた。身震いするほどの才能だ」
「兄上にそこまで言わせるなんて......余程ですね」
兄上は俺の言葉に頷いた。
「生活に困窮していたから、まずはそれなりの援助をしたのだが、それだけでは足りないと思ってな。だから、ノアに育てて欲しいのだ」
「なんで俺なんです?」
「アリーチェ」
兄上はそう言って、にこりと微笑んだ。
「お前が育てた歌姫は帝国中にその名を轟かせている。陛下ですら、お忍びで店に聴きに行くほどだ」
「何ですって!」
ガタン! ソファーにぶつかって音を立てる程の勢いで立ち上がった俺。
「陛下が?」
「ああ。しかではない。アリーチェが都にいる時はかなりの頻度でだ。更に驚く事に、だ」
兄上は感心したような、苦笑いしたような、どっちともつかないそんな顔をして。
「あの陛下が―人以上の子を成しているあの陛下が。まったく抱こうとせず、ただただ歌を聴きに行っているだけなのだ」
「......おおぉ」
それはすごい、俺もびっくりした。
この前、第王が産まれた。
それはつまり、陛下の子供が、男だけで十七人いると言うことだ。
女の子供――内親王も含めれば三十人は優に超えている。
三十人も子供を作るほど陛下は性欲が強いのだが、アリーチェにはまったくそうしていないという。
アリーチェは決して美しくないわけでは、ない。
そのアリーチェの所に行って、歌を聴くだけ。
である俺たちは、それがどれほどすごいことなのかがよく分かる。
「その、アリーチェを育てたお前に頼みたい」
「俺に」
「お前だけが頼りだ、ノア」
兄上はそう言って、真っ直ぐ俺を見つめた。
お前だけが頼り。
そう言われては、断る訳にはいかない。
俺は、兄上から画家の卵を引き取る事を決めた。
兄上が帰って、画家の卵をさてどうしようか、と考えていた。
メイド達に給仕してもらって、茶を飲みながら、くつろぎつつ考えた。
ふとドアがノックされて、接客のメイドが入ってきた。
セシリーではない、都の屋敷に残していった別のメイドだ。
「ご主人様、バイロン・アラン様がお見えになりました」
「バイロンが? 通せ」
接客メイドが一旦出ると、ほぼ入れ替わりでバイロンが入ってきた。
なにやら急いでいるのか、普段はきっちりセットしている髪が乱れ、額に大粒の汗が浮かび、息を切らせている。
「どうした、そんなに慌てて」
「し、失礼しました......お前達」
バイロンは振り向き、今まさに入ってこようとする彼の部下たちを急かした。
部下たちは幾つもの箱を運んで、部屋の中に並べた。
「はっ。まずはご報告を。エイダ様がご懐妊なされました」
エイダ。
俺の手引きで王宮に入り、陛下の目に止まって、庶妃になった女だ。
もともとバイロンの下についていた女だったが、妃になったことで立場が逆転して、今や「エイダ様」と呼ぶ立場だ。
「良かったな」
「ありがとうございます! これも殿下のおかげです」
バイロンはそう言いかけて、振り向き、彼の部下たちに目配せした。
部下たちは一斉に運んできた箱を開けた。
箱の中は、びっしりと金貨が詰まっていた。
「すごい......こんなの見たこと無い」
俺の背後で、給仕していて、今は控えている若いメイドがぽつりと漏らした。
箱一杯に詰められた金貨。
この量だと――ざっと十万リィーンって所か。
「殿下のご尽力への、ささやかな気持ちです」
「わかった、貰っとく」
「ありがとうございます!」
俺はメイドを呼び、箱の金貨――金をしまう所を案内しろと言いつけた。
メイドとバイロンの部下が一緒に出ていって、ここから機密な話になっていくから、給仕してる若いメイドも下がらせた。
部屋の中には、俺とバイロンの二人きりになった。
ソファーに座って、向き合う俺たち。
「実は、もう一人――レベッカ妃もご懐妊が分かったのです」
「なるほど」
いやはや、さすが陛下だ。
ここに来て更に二人子供追加とはな。
というか、例の避暑地へ庶妃達を連れていったあれ......あれの結果が今出たって事だな。
「つきましては、どうすればいいのか、殿下にアドバイスを頂ければ、と」
「向こうにも後見人が?」
「はい。実は既に向こうは動き出しているとの事」
「お前は? もう何かしたのか?」
「いえ、殿下にお話を聞くまでは余計なことはすまいと。まずはここに伺った次第でございます」
「そうか。なら何もしないでいい」
「え?」
「むしろ、現状命拾いしたかもな」
「そ、それは......?」
驚くバイロン。
命拾いという言葉に瞠目する。
「......どういう、事なのでしょうか」
俺は声を低く押し殺して、バイロンに答えた。
「陛下は、二度の謀反で嫌気が差している」
「――っ!」
話の内容の重大さに、バイロンは違う意味でまた顔が強張った。
「親王達に色々政務をやらせているけど、兵権や、決裁権をがっつり握ってるのがその証だ。陛下は今、権力を握ろうとする人間をこころよく思わない。内裏にかこつけて成り上がりが権利を握ろうとするなんて、一番のタブーだろうな」
「だから、何もしない方がいい」
さっきのアドバイスに戻って、それをもう一度口にすると、今度はハッとしたバイロン。
「し、しかしそれではいくら何でも」
「急がば回れ――いや、負けるが勝ちってヤツだ」
「負けるが......勝ち」
「何もせず、むしろ積極的に身を引くのがいいと思う。同時期に懐妊した方の、お前と同じ立場の人間が積極的に動いているとなれば、それはいい対比になる」
「あっ......」
やっと分かったようだな。
「だから何もするな、むしろ積極的に退くべきだ」
「なるほど、さすが殿下! 素晴しいアイデアです!」
バイロンは思いっきり喜んだ、そして胸を撫で下ろした。
十万リィーン分の金貨を担いで急いでやってきたのと同じように。
俺から話を聞いてなければ、次の瞬間嫡妃に昇進するであろうエイダの為に色々動いている所だろう。
「そもそもな」
「そもそも?」
「今の陛下は実に名君だ。数百年に一人ってレベルの」
それは分かってるけど、それがどうした? って顔をするバイロン。
「権力を獲りに行こうとする行為なんて、いくら上手くやっても陛下に筒抜けだ。そういう意味でも、何もしない方が良い」
「まったくもっておっしゃる通りでございます!」
バイロンはそう言って、立ち上がってドアを開けて、外にいる彼の部下に手招きをした。
「今すぐ店に戻って、もう十万リィーンお持ちするのだ」
お礼の上積みは、それだけ彼が「命拾いした」と思った度合い、そのままだった。 | “More importantly, brother, you had some business with me, didn’t you?”
“Ohh, that’s right.”
He straightened up and looked at me as if he had changed his mind.
“I’ve come to ask Noah for a favor.”
“A favor from me?”
I braced myself.
Brother Henry, the Fourth Prince.
His rank is the same as mine, and we are as old as father and son.
If such an older brother comes and formally asks you, you can’t help but feel defensive.
“Oh, it’s nothing serious. You know that I have many entertainers.”
“Yeah.”
I nodded.
My brother does his duty as a nobleman.
He supports painters, musicians, and other artisans.
As a nobleman, the more you can do that, the more you will be honored and praised.
That’s the reason why I supported Alice.
“Some time ago, I found a boy with a great talent for painting. His talent makes me shudder.”
“For my brother to say that...... is quite a feat.”
He nodded at my words.
“I gave him a fair amount of help to start with because he was having trouble making ends meet, but I didn’t think that would be enough. That’s why I want Noah to raise him.”
“Why me?”
“Alice.”
My brother said and smiled at me.
“The songstress you raised has made a name for herself throughout the empire. Even His Majesty has been known to go out of his way to listen to her.”
” What the !”
Crash! I stood up with such force that I hit the sofa and made a noise.
“His Majesty?”
“Yeah. And not just once or twice. Whenever Alice is in the capital, it’s quite often. Even more surprisingly.”
My brother looked impressed, chuckled, or something in between.
“His Majesty – who has had more than thirty children. He doesn’t want to embrace her at all, he just wants to listen to her sing.”
“...... Ohhhhh.”
That’s great, I was surprised too.
The other day, the Seventeenth Prince was born.
This means that His Majesty has male children alone.
If you include the female children, the Princess, there are more than thirty.
His Majesty’s libido is so strong that he can have thirty children, but he does not want to do that at all with Alice.
It’s not that Alice is not beautiful.
He just wants to go to her and listen to her singing.
We, who know His Majesty well and are the result of his work, know how great it is.
“So, I want to ask you, the man who raised Alice-“
“Me?”
“I can only count on you, Noah.”
Brother said so and looked at me straight in the eyes.
Only count on me.
If he is going to that extent, there is no way I can refuse.
I decided to accept painter in making from my brother.
After my brother left, I was thinking about what to do with the painter in making.
I had the maids serve me, and I was relaxing and thinking over a cup of tea.
Suddenly, there was a knock on the door and a receptionist maid came in.
It wasn’t Cecily, but another Maid she had left behind in the capital.
“Master, Byron Alain is here to see you.”
“Byron? Send him in.”
“Very well, sir.”
Once the maid left, Byron came in almost as soon as she left.
He seemed to be in a hurry, his normally neatly set hair was disheveled, his forehead was sweating profusely, and he was out of breath.
“What’s the matter, you’re in such a hurry?”
“Sorry about this ...... you guys.”
Byron turned around and hurried his men who were just about to enter.
They carried several boxes and laid them out in the room.
“Yes. First of all, I have something to report. Ada-sama is pregnant.”
Ada.
She entered the royal palace with my help, caught His Majesty’s eye, and became the concubine.
She was originally under Byron’s command, but now that she has become a concubine, the positions have reversed and she is now called Ada-sama.
“Thank you, Your Highness. I owe it all to you, Your Highness.”
Byron was about to speak when he turned and looked at his men.
They all opened the boxes they had brought in at once.
The box was filled with gold coins.
“Wow, ......, I’ve never seen anything like it.”
The young maid behind me, who had been serving and was now refraining from serving, blurted out.
A box full of gold coins.
That amount of gold coins – roughly ,00 reens, I think.
“It’s a small token of our appreciation for His Highness’ efforts.”
“All right, I’ll take it.”
“Thank you very much!”
I called a Maid and instructed her to take the men to the place where the gold was stored.
The Maid and Byron’s men left together, and I sent the young maid serving us back, as this was going to be a confidential conversation.
It was just me and Byron in the room.
We sat on the sofa, facing each other.
“Actually, we’ve just found out that another person — Consort Rebecca is also pregnant.”
Well, as expected of His Majesty.
I can’t believe he’s added two more children to the family.
Or rather, the results of that ...... trip to the summer resort with the concubines have just come out.
“I was hoping Your Highness could give me some advice on what to do about it.”
“Is there a guardian on the other side?”
“Yes. In fact, they’ve already started working on it.”
“What about it? Anything done about it?”
“No, I didn’t want to do anything until I spoke to His Highness. That’s why I’ve come here.”
“I see. Then you need not do anything.”
“Eh?”
“In fact, this just saved your life.”
“I-Is that ......?”
Byron is surprised.
The word ” saved your life ” caught him off guard.
” ...... How, what do you mean?”
I kept my voice low and answered Byron.
“His Majesty is disgusted by the two rebellions.”
“—!”
Byron’s face tensed again in a different way as he realized the gravity of what I was saying.
“He’s allowing the Princes to do all sorts of political work, but the fact that he has a firm grip on Military power and decision-making power is proof of that. His Majesty does not like people who try to seize power now. The most taboo thing would be for an upstart to try to seize power under the guise of the Inner Palace.”
“So it’s best not to do anything about it.”
Returning to my earlier advice, I mentioned it again, and this time Byron huffed.
“B-But then, no matter what...”
“Haste makes waste... no, losing is winning.”
“Losing is ...... winning.”
“It is better to do absolutely nothing, but rather to actively withdraw from the situation. It would be a good contrast if the one who conceived at the same time, and who is in the same position as you is also actively working.”
“Ahh ......”
Looks like he finally got it.
“So don’t do anything, you should rather actively retreat.”
“I see, Your Highness! That’s an excellent idea!”
Byron was overjoyed and patted his chest.
Just as he had rushed in bringing 100,000 reens.
If he hadn’t heard about it from me, he would have been doing a lot of work on behalf of Ada, who would be promoted to legitimate wife the next moment.
” To begin with.”
“To begin with?”
“His Majesty is indeed a great ruler. One in a few hundred years.”
“Yeah.”
I know that, but why bring that up? Bryon had such a look on his face.
“No matter how well you try to gain power, his Majesty will always know about it. In that sense, it’s better not to do anything.”
“You are absolutely right, Your Highness!”
Byron said, standing up and opening the door, beckoning to his men outside.
“Go back to the store now and bring me another 100,000 reens.”
The thank-you was also this much, to the degree that he thought it was such a ” life-saver”. |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | この日、アリーチェの歌を聴きに行って、昼過ぎくらいに屋敷に帰ってくると、庭、木に括りつけられている男女の姿が見えた。
男の方は宦官、女の方はメイド。
どっちもこの屋敷にいる、顔を知っている人間だ。
その二人は木に括りつけられて、別の宦官に鞭打たれている。
普段見ない光景を不思議がって立ち止まっていると、屋敷の中からゾーイが出てきた。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
「あれはなんだ?」
聞くと、ゾーイは赤面して、複雑な顔をした。
「奥様が......その......」
「ふむ。分かった、オードリーに直接聞いてくる」
よほど言いにくいことなのがわかった。
強く問い質せばゾーイは答えるだろうが、そこまですることもない。
俺は屋敷に入って、ゾーイに聞いて、リビングにいるオードリーを訪ねた。
「あっ、お帰りなさいませノア様」
「ただいま。庭のあれは何だ?」
「すみません、私の不徳の致すところで」
「ん?」
どういう事だ? と目線で詳細を促す。
「ついさっきの事ですが、あの二人が自分の部屋で、裸で抱き合っていたのを見たとメイドから聞かされて、それで行ってみれば......」
「ほう」
こめかみがヒクッ、と動いたのが自分でも感じた。
「男の方が?」
「ちゃんと改めました。全去勢――間違いなく宦官です」
「ふむ」
宦官の去勢にはいくつか方法がある。
睾丸だけをとる半去勢と、性器を丸々取ってしまう全去勢だ。
もちろん、宦官の成り立ちから考えて、後者の方がより「安全」なのは言うまでもない。
「ってことはただのごっこ遊びか」
「はい。ですので、宦官は鞭打ち30メイドの方は10としました。内事ですので、私が処理しました――まずかったでしょうか」
「いや、まったく妥当だ。何の問題もない」
オードリーはほっとした。
宦官は去勢された男だが、だからといってまったく性欲がなくなったわけではない。
もちろんゼロになった宦官もいる、それはそれでいい。
しかし少しでも性欲が残っている宦官は、王宮でなら女官と、貴族の屋敷ならメイドと。
たまにいい関係になって、体を重ねることがある。
ちなみに完全に去勢した宦官は、体を重ねても「出す」事ができないから、相手を噛む殴るなど、暴力的な行為に走る傾向があるという――のは余談だ。
これで実は去勢してなかったとなれば相手もろとも死罪だが、ちゃんと去勢した上での「ごっこ遊び」なら、鞭打ち数十回程度の話で終わる。
「なんで数に違いがあるんだ?」
「それが......宦官の方が『俺が誘った。彼女は悪くない!』と庇うので。メイドの方も同じように自分がかぶろうとしたのですが、宦官の方が額に血が出るほどの勢いで土下座してきたので」
「ふむ......両想いって訳か」
「はい」
オードリーは静かに頷いた。
俺は少し考えてにリビングに入ってきたゾーイに言った。
「庭に行って、鞭打ちが終わったらここに来いって伝えろ」
「かしこまりました」
ゾーイはリビングからでて、二人を呼びに行った。
しばらくして、服がボロボロで、あっちこっちにミミズ腫れ――裂けて血が出てるところもある、宦官とメイドの二人組がやってきた。
二人はリビングに入るなり、ものすごく青ざめて土下座をした。
「も、申し訳ございません!」
「もう二度としません! ですから――」
「ああ、もう罰は受けたんだ、その事はいい」
俺は手をかざして、二人の謝罪を止めた。
オードリーの言うとおりこれは内事だ。
彼女が処分した以上、俺が何か言うのは良くない。
の正室、つまり王妃だ。
面子があるし。明らかに間違ってるのならともかく、それがないのに俺がしゃしゃり出たら今後誰も彼女の命令を聞かなくなる。
「そういう話じゃない。お前ら、好き合っているみたいだな」
「それは......」
宦官とメイドは互いに見つめ合った。
どう答えていいのかわからない、って顔だ。
やがて、宦官の方が意を決した顔で。
「はい! 好き合ってます。俺たち同じ村の出身で、彼女は殿下の屋敷に、俺は王宮に行ってたのですが、殿下が封地入りする時に、上に頼んで付いて来たんです」
「幼馴染ってわけか」
オードリーをみる、彼女はびっくりした顔で首を振った。
どうやら知らなかったみたいだ。
「はい......」
「ずっと一緒に居たいか」
宦官は訥々と答える。
俺の真意をはかりかねて、おそるおそるって感じだ。
「最後にもう一つ。屋敷の中にお前達のようなのはいるか?」
「――っ!」
「密告しろって話じゃない。ああ、話す順番が悪かったな。ゾーイ、屋敷の周りにある家を何軒か買い上げろ。出来ればぐるっと屋敷を取り囲むようにしてな。で、その一つをお前ら二人にやる」
「「............」」
二人はポカーンとした、何が起きているのか分からず、まったくついて行けてない様子だ。
「昼間は今まで通り屋敷で仕事しろ、夜は二人の家に帰っていい」
「ノア様......それはまるで......臣下に婚姻を斡旋しているように見えますけど」
オードリーが言うと、二人ははっとした。
「俺はそのつもりだ」
オードリーに答えてから、二人に聞く。
「どうだ? ずっと一緒に居たくないって言うのならこの話はなかったことにするが」
「と、とんでもありません!」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
二人は俺に何度も何度も頭を下げた。
「こんな......こんなすごいお方だったなんて......」
「このご恩は一生忘れません」
「ん。ああそうだ。娘なら、養子をとってもいいぞ。養子の娘も家人扱いにしてやる。別に息子でもいいが、お前も息子をとってその子まで宦官にはしたくないだろう?」
「「――っ! ありがとうございます!!」」
二人は涙が出るほど感激して、何度も何度も、米つきバッタの様に頭を下げ続けた。
「と言う訳だ。使用人達が他にも『家庭』を作りたい者がいれば今のと同じにしていい。お前に任せた」
「はい、分かりました」
オードリーは微笑んで頷いた。
「しかし、さすがノア様ですね。そんな処置、私では到底思いつけませんでした」
「あの、ご主人様......」
「ん?」
ゾーイの方に振り向く。
彼女は何故か、困り顔をしていた。
「どうした」
「その......ご主人様の命令なのですが」
「今年は、その......お金が......」
「......ああ」
少し考えて、ゾーイが難しい顔をした理由が分かった。
前に、水道メンテナンスの件で、オスカー兄上が今年は予算が付かないから、俺の私財からひとまず補填したのだ。
「まったく無いのか?」
「いえ、多分希望者の分は。ただぐるっと屋敷を取り囲むように買うのは......」
「なるほど。ならまず希望者の分だ。周りの住民もすぐに出て行ける訳でもない。残りは来年まで待とう」
「分かりました。そのようにします」
次の日、リビングでくつろぎながら、新しく臣従したアポピスと先輩にあたの模擬戦をやって、レベル上げ兼こいつらの序列を決めていると、接客メイドのセシリーが入ってきた。
「ご主人様、お客様でございます」
「何者だ?」
「えっと......町長さん達が、たくさん」
「なに?」
思わず眉をひそめた。
「町長って、ニシルのか?」
「はい」
「分かった、応接間に通せ。それとドンも呼んでこい」
セシリーは頷き、リビングを出た。
俺は立ち上がって、考えながら応接間に向かう。
アルメリア州、州都ニシル。
このニシルは、いくつもの「町」に分かれている。
その町ごとに町長がいて、二つないくらいの町をベースに、一人の代官を置いている。
その町長が大勢で押しかけてきた?
なんだろう一体。
考えても分からないまま、途中でドンと合流して、一緒に応接間に入った。
部屋の中に二十人ほど立っていた。
ほとんどが老人で、たまに中年もいる。
そんな感じの町長達だ。
「お初にお目にかかります。私デロスと申します」
一番前の老人が頭を下げながら言った。
他の町長達はつられて頭をさげるが、何も言わない。
どうやらこのデロスがリーダーのようだ。
「うむ。セシリー、皆に椅子を」
俺がソファーに座った。ドンは俺の後ろに控える様に立った。
町長達の人数では部屋に備え付けのものが足りなかったから、メイド達に椅子を運ばせた。
町長ら全員が椅子に座ったのを待ってから。
「で、今日はなんだ?」
と、デロスに聞いた。
「こちらを」
デロスは立ち上がり、俺の前にやってきて、両手で何かを差し出した。
受け取って、それを開く。
文字が書かれた、目録のようなものだ。
「これは?」
「町民一同のカンパでございます」
「カンパ?」
「聞けば――水道のメンテナンス、今年は殿下が私財を投じて下さったとのこと」
「......」
「水はこのニシルの生命線。殿下にいくら感謝してもしきれません」
「それでカンパして、俺に返しにきたわけか」
デロスが言うと、町長らが全員、示し合わせたように立ち上がって、そのまま頭を下げた。
「失礼かとは存じますが。民の気持ち、どうかお受け取り下さい」
「「「お願いします」」」
「わかった、遠慮無くもらおう」
「「「ありがとうございます!!!」」」
再び顔を上げた町長達は、全員が嬉しそうな顔をしていた。
町長達が帰った後、応接間に残った俺とドン。
俺がデロスからもらった目録を眺めている。
「なんという......こんなすごい話初めてです。民がこうして自発的に金を出すなんて前代未聞。これも殿下の人徳でございますな」
「ドン」
「はい、何でしょう」
「特等水にするための水源浄化、進めろ」
「え? それは予算がついてから――」
俺は目録をドンに放り投げた。
「これがあるだろ?」
「......」
ドンはポカーンとした。
「し、しかしそれは殿下の――」
「民の健気に答えるのも貴族の義務だ。俺が使った金は来年財務省から取り返す。これは民の金、だから民に使う」
「――御意。間違いなく、全てを水利事業に使います」
「うむ」
俺は頷き、ドンを残して応接間を後にした。
ノアが去った後、しばし応接間にとどまって考えごとをしていたドンは、やがて部屋を出て、ゾーイを探した。
今やメイド長となっているゾーイ。
ドンが見る限り、エヴリンに勝るとも劣らない才覚を持っていながらも、本人はノアに忠誠を誓っているので、エヴリンのように代官などになるつもりはないという。
そのゾーイに、今起きた出来事と、受け取った目録を見せた。
「ご主人様らしいです。やるだけやって、民には何も言わないのでしょうね」
ドンが言い、ゾーイは頷く。
「何をすればいいのですか?」
「俺は全力で水利事業を進める。ゾーイはメイドや宦官を使って噂を流してくれ」
「事実を、包み隠さず?」
「分かったわ。任せて」
ドンとゾーイ。二人は頷き会って、この場は別れた。
ノアは「やせ我慢は貴族の特権」だと言って言いふらす事を好まないが、彼を慕う者達はそれでは我慢ならない。
本人の意図しないところで、名声がますます上がっていくのだった。 | Today, while returning to the mansion around mid-afternoon after listening to Alice’s singing, I saw two people in the garden, a man and a woman, tied to a tree.
The man was a eunuch and the woman was a maid.
Both were familiar faces in the mansion.
The two were tied to a tree and being whipped by another eunuch.
As I paused to wonder at the unusual sight, Zoe came out from inside the mansion.
“Welcome back, Master.”
“What’s that?”
When I asked, Zoe blushed and made a complicated face.
“Madam is ...... well ......”
“Fumu. All right, I’ll ask Audrey directly.”
I could tell that this was a very difficult thing to say.
If I questioned her too strongly, Zoe would probably answer, but I didn’t have to go that far.
After asking Zoe, I went inside the Mansion and visited Audrey in the living room.
“Ah, welcome home, Noah-sama.”
“I’m home. What’s that in the garden?”
“I’m sorry, that was my fault.”
“Hmm?”
What do you mean? I asked her to elaborate.
“A while ago, one of the maids told me she saw them naked in their room, hugging each other, so I went to .......”
“Oh.”
I could feel my temples twitching.
“Still a Man?”
“It’s been changed properly. All castrated – definitely a eunuch.”
“Fumu.”
There are several ways to castrate a eunuch.
Half castration, in which only the testicles are removed, and full castration, in which the entire genitals are removed.
Of course, considering the nature of eunuchs, it goes without saying that the latter is more ‘safe’.
“So they are only doing pretend play?”
“Yes. So, the eunuch was given whippings and the maid was given . Since it was an internal matter, I handled it myself.”
“Well, that’s perfectly reasonable. There’s nothing to be concerned about.”
Audrey was relieved.
The eunuch was a castrated man, but that didn’t mean that he had lost his libido altogether.
Of course, there are eunuchs who have reached zero, and that’s fine.
However, eunuchs who still have a little bit of sexual desire will have relationships with lady in waiting in the royal palace, or with maids in the nobleman’s mansion.
Sometimes they get into a good relationship and have physical intimacy with each other.
By the way, eunuchs who are completely castrated can’t ” release ” themselves when they have physical intimacy, so they tend to engage in violent acts such as biting or hitting their partners.[TN: I didn’t need explanation]
If they had not been castrated, then this would be a crime of death, but if they had been properly castrated and were doing “play,” it would only take a few dozen lashes.
“Why the difference in numbers?”
“That...... eunuch said, “I was the one who asked her out. It’s not her fault!” And so he defends her. The maid tried to cover for him as well, but the eunuch got down on his knees with such force that his forehead bled.”
“Fumu. ...... So it’s a two-sided affair.”
“Yes.”
Audrey nodded quietly.
I thought about it for a minute and then said to Zoe, who came into the living room with me.
“Go to the garden and tell them to come here when the whipping is over.”
Zoe walked out of the living room and went to call them.
A short time later, the pair of the eunuch and the maid came in, with their clothes in tatters and swollen lines here and there – ripped and bleeding in some places.
As soon as they entered the living room, they turned extremely pale and got down on their knees.
“F-Forgive us!”
“It won’t happen again! So–!
“Ahh, you’ve already been punished, so stop it.”
I held up my hand to stop them from apologizing.
Audrey was right, this was an internal matter.
Now that she’s dealt with it, it’s not my place to say anything.
Audrey is the legitimate wife of the Prince, in other words, the Princess.[TN: it says queen (王妃 ‘ohi’), but I didn’t feel like using it, so changed it to Princess, suggestions are welcomed though.]
She has a reputation to uphold. If she’s wrong, it’s obvious, but if she’s not and I intervene, no one will listen to her orders in the future.
“That’s not what I’m talking about. You guys seem to like each other.”
“It’s ......”
The eunuch and the maid looked at each other.
They had the look of unsure of how to answer.
Eventually, the eunuch made up his mind.
“Yes! We like each other. We came from the same village, she went to His Highness’ residence and I went to the royal palace, but when His Highness entered the fief, I requested my superiors to let me accompany her.”
“Childhood friends, huh?”
I looked at Audrey and she shook her head in surprise.
It seems that she didn’t know.
“Yes, .......”
” You want to stay together forever”
The eunuch replied haltingly.
He seemed unsure of my true intentions.
“One last thing. Are there any more like you in the mansion?”
“—-!”
“I’m not talking about ratting them out. Ohh, I guess the order was wrong. Zoe, I want you to buy up some of the houses around the estate. Preferably in a neighborhood that surrounds the mansion. One of them will be given to you.”
“”............””
The two of them were puzzled, they didn’t know what was going on and didn’t seem to be able to follow it at all.
“During the day, you can continue to work at the mansion as before, but at night you can go back to your homes.”
“Noah-sama, ...... it looks as if you are arranging ...... marriages for your subjects.”
Audrey said, and they both snapped out of it.
“I intend to.”
After replying to Audrey, I asked them.
“So? We can pretend this never happened if you don’t want to be together forever.”
“A-Absolutely not!”
“Thank you very much! Thank you very much!”
They bowed their heads to me again and again.
“Such ...... an amazing person ......”
“I shall never forget this kindness.”
“Hmm. Ah, yes. If you want a daughter, you can adopt one. I’ll treat your adopted daughter as a household member. A son is fine, but you don’t want to take a son and turn him into a eunuch, do you?”
“”–! Thank you very much!””
The two of them were so moved to tears that they kept bowing their heads over and over again, like a bunch of grasshoppers.
“That’s why. If any of the servants want to start another ‘family’, they can do the same as now. I leave this matter to you.”
“Yes, I understand.”
Audrey smiled and nodded.
“But as expected of Noah-sama. I could never have imagined such a procedure.”
“Um, Master .......”
“Hmm?”
I turned to Zoe.
For some reason, she had a troubled look on her face.
“What’s wrong?”
“That ...... there was an order from Master...”
“This year, that ...... money is ......”
“...... Oh.”
Thinking for a moment, I understood why Zoe looked so worried.
In the past, when it came to water maintenance, my brother Oscar couldn’t pass the budget for it this year, so I had to cover it out of my own pocket.
“Nothing at all?”
“No, maybe for those who want to. It’s just that purchasing them in a circle around the house is .......”
“I see. Well then, let’s start with the applicants. The neighbors won’t be leaving any time soon. The rest can wait until next year.”
“I understand. I’ll do it that way.”
☆ The next day, while I was relaxing in the living room, playing a mock battle between the newly subordinated Apophis and four of his seniors to raise their levels and determine their ranks, Cecily, the serving maid, came in.
“Master, you have a visitor.”
“Who is this?”
“Well, there are a lot of ...... mayors.”
“What?”
I frowned.
“Mayors, are they from Nisir?”
“Yes.”
“All right, lead them into the parlor. And call Don.”
Cecily nodded and left the living room.
I stood up and walked to the parlor, thinking.
Nisir, the capital of Almeria.
This city is divided into a number of “towns”.
Each town has its own mayor and based on two or three towns, there is one governor.
And the mayors of these towns came in group?
What the heck.
I thought about it and couldn’t figure it out, so I met up with Don on the way and we went into the parlor together.
There were about twenty people standing in the room.
Most of them were old men, with a few middle-aged ones.
That’s what they looked like.
“It’s a privilege to meet you. My name is Delos.”
The old man at the front bowed his head and said.
The other mayors bowed along with him but said nothing.
It seemed that Delos was the leader of the group.
“Umm. Cecily, bring everyone a chair.”
I sat down on the couch. Don stood behind me.
I had the maids bring in the chairs, as there were not enough of them in the room for the mayors.
I waited until all the mayors had sat down in their chairs.
“So, what’s the occasion?”
I asked Delos.
“Here.”
Delos stood up, walked over to me, and held out something with both hands.
I took it and opened it.
It looked like a catalog, with words written on it.
“What’s this?”
“This is a donation from the entire town.”
“Money?”
“I heard that this year His Highness spent his own money to maintain the waterworks.”
“......”
“Water is the lifeline of this city. We cannot thank you enough, Your Highness.”
“That’s why you came to me to repay me?”
Delos said so, and, the mayor and others stood up as if in unison, and bowed their heads.
“We apologize for any rudeness. But please accept the feelings of the people.”
“””Please do.”””
“All right, I’ll take it without reservation, then.”
“””Thank you very much!!!”””
The mayors looked up again, and all of them had happy faces.
After the mayors left, Don and I remained in the parlor.
I’m looking at the inventory that Delos gave me.
“What a ...... story, I’ve never heard such an amazing story before. It’s unheard of for people to voluntarily give money like this. This is another example of His Highness’ virtue.”
“Don.”
“Yes, what is it?”
“Proceed with the purification of the water source to make it special-grade.”
“Eh? That was supposed to be done after the budget was set–“
I tossed the inventory to Don.
“You see this?”
“.......”
Don was puzzled.
“But that’s His Highness’s–“
“It is the duty of a nobleman to answer to the goodwill of his people. I’ll get the money I spent back from the Treasury next year. This is the people’s money, so spend it on the people.”
“By your will. We will definitely use it all for water projects.”
“Um.”
I nodded and left the parlor, leaving Don behind.
After Noah left, Don stayed in the parlor for a while to think, and then he left the room to look for Zoe.
Zoe was now the head maid.
As far as Don could see, she was as talented as Evelyn, but she was loyal to Noah and had no intention of becoming a governor like Evelyn.
He explained to Zoe what had just happened and showed her the catalog he had received.
“That’s just like Master. I guess he’ll just do what he has to do and say nothing to the people.”
Don said, and Zoe nodded.
“So what do you suggest we do?”
“I’ll do everything I can to get the water project going. Zoe, use the maids and eunuchs to spread the word.”
“You’ll keep the facts under wraps?”
“All right. Leave it to me.”
“Appreciated.”
Don and Zoe. They nodded at each other and parted ways for the moment.
Noah didn’t like to talk about it, saying ‘It’s a nobleman’s privilege to be putting up with it,’ but those who adored him couldn’t stand it.
Noah’s fame grew even higher without his intention. |
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} | 翌朝、朝食の後王宮に呼び出された俺は、花園にやってきた。
色とりどりの花園の中で、インコに何かを仕込んでいる――道楽に興じている陛下の姿を見つけて、大股でその元に急いだ。
「ノア・アララート、召喚に応じ参上いたしました」
片膝をつき頭を垂れると、陛下はやけに上機嫌な口調で。
「おお、来たか。さあ面を上げよ」
「はい」
「昨晩の事はヘンリーから報告があった。刺客が口を割ったぞ」
「では?」
「うむ。反乱軍の手の者だ。お前を捕まえて手札にしようと考えたらしい」
予想はついていたから、驚きはしなかった。
むしろたっで吐いたことにびっくりした。
「陛下」
「あまりにもあっけなく口を割ったようですけど、嘘という可能性も」
「賢いな、お前は」
陛下はますます上機嫌になった。
「それなら心配はない。口を割った人間が真実を喋ったのかどうかを確かめる方法がある。それによれば真実だという」
蛇の道は蛇か。
拷問について俺は詳しくないし、そういうことなら素直に受け入れとこう。
「だからだ。よくやったノア。お前が捕まっていれば、帝国は難しい選択を迫られる所だった」
「それと」
「?」
まだ何かあるのか? ――と思った次の瞬間。
「飼い葉に目をつけるとはさすがだ」
「――っ!」
これには盛大にびっくりした。
アルメリア攻略のために飼い葉を周りの土地で買い占めて、騎兵の威力を削ぐという話は、昨夜その場で思いついて、バイロンにしか言ってないことだ。
なのに、もう陛下の耳に入った。
今までもこういう事はちょくちょくあったが、今のが一番びっくりした。
俺がびっくりしている事などまったく気にも留めずに、陛下は興奮気味で誉めてきた。
「兵糧攻めなど誰でもできる、しかし領民の事まで考えて、馬にだけ絞って兵糧攻めを行うとは、しかも私財で」
陛下は俺に近づき、肩にポン、と手を置いた。
「この発想、そして行動力はすごい。なかなかできるものではない」
「ありがとうございます」
「何か褒美をやらねばな。ここで金子は俗すぎる......よし、クルーズ」
「はっ」
花園の物陰から宦官のクルーズが現われた。
相変わらず呼ばれるまでどこに隠れているのか分からないな。
「ノアの紋章に剣を一本つける事を許す。布告をだせ」
「御意」
クルーズは早速動き出した。
俺はびっくりしつつ、もう一度片膝をついて頭を垂れる。
と言った。
帝国は戦士の国、名誉は戦闘がらみのものが多い。
その中でも、公的な紋章に「剣」を足すことは皇帝の許しがなければやってはいけないこと。
商人やギルドなどの看板もそうだ。
勝手に「剣」を紋様につかったら不敬罪、最悪死刑もあり得る。
逆に言えば、それを使えるというのは皇帝から下賜される名誉の中でも最高級のものだということだ。
顔を上げて、立ち上がる。
陛下はニコニコしている、しわくちゃの顔にえくぼが出ている。
俺よりも陛下の方がうれしそうだ。
ふと、陛下は思い出したかのように。
「そうだノア、騎士選抜の事、どう選ぶのか決まったか」
「......はい、一つ腹案があります」
「ほう? どんなのだ?」
「この場で失礼しても?」
「うむ、許す」
陛下が鷹揚にうなずいたあと、俺は遠くで控えている、姿が見えている下っ端宦官に手招きした。
やってきた宦官に耳打ちをして、準備をさせる。
宦官は応じて用意に走った。
数分後、花園の中にテーブルと椅子が置かれて、更に追加で数人の宦官がやってきた。
テーブルの上にはティーセットが置かれていて、宦官は水の入ったバケツを持っている。
本当は兵士の方がわかりやすいんだが、王宮の中は陛下の許可が無ければ武装してはいけないからこうした。
陛下に視線を向けた。
笑顔で頷かれた、何をするのか楽しみにしてるって顔だ。
俺は頷き返して、椅子に座ってティーセットを手に取った。
王宮内の、この世で一番金が掛かっている天国のごとき花園の中で、優雅なティータイム――という振る舞いをした。
手招きする、宦官の一人がバケツの水をこっちにぶっかけてきた。
俺に向かって掛かってくる水、それにレヴィアタンが反応した。
リンクした指輪から鎧が変形して、まるで傘のようになって、バケツの水を防いだ。
更に別の宦官がぶっかけてきた、その次に控えてる宦官もぶっかけてきた。
合計、全員が一通りバケツで水を掛けてきたが、全部が指輪の傘に防がれた。
地面は水でびちゃびちゃになったが、俺の周囲、直ートルの円の内側は乾いていた。
テリトリーという言葉が頭に浮かぶ。
テリトリーの内側には、例え水一滴だろうと、レヴィアタンは通さなかった。
デモンストレーションは完了、俺はティーカップを置いて、立ち上がって陛下に片膝ついて報告した。
「こんな感じで、選考する相手に俺を攻撃してもらう。どこまで押し込めるのか、それで決めます」
ティータイムは長丁場になるから、という意味なのであえて言わずにしておいたのだが。
「うむ、さすがだ。これなら長丁場の選考にも耐えられよう」
陛下にはお見通しのようだった。
「しかし......ううむ」
「なにかまずいのですか?」
「うむ。それは危険もあると思ってな。選考するものの中に、それなりの強者もいるだろう。万が一防御を貫かれるようなことがあれば」
「それくらいは覚悟の上です」
俺は即答した。
貴族の義務として、親王の責務として。
ちゃんとした人材を帝国のために見つけなければならない。
その事に比べれば、多少の危険はやむを得ない。
だから俺は即答で答えた。
すると、陛下はますます――今日一番の嬉しそうな顔をして。
「よく言った。すごいぞノア。それでこそ余の息子だ、帝国の親王だ」
と、誉めてくれたのだった。
王宮から屋敷に戻ってくると、バイロンが訪ねてきていた。
応接間に通して話を聞く、早速飼い葉の買い占めに動いてくれてて、ある程度の目星はついてるみたいだ。
「早いな」
「運搬できるように加工した飼い葉ならば数は限られていますし、どこにあるのかも分かります。であれば押さえるのはそう難しいことではございません」
さすがは商人って所か。
もう少し詳しく話を聞こうとすると、部屋のドアがノックされた。
普通ではない、焦りを感じるノックだ。
「入れ」
接客のメイドが入ってきた。
「失礼します――ご主人様、正門の所に傷だらけの男が」
「傷だらけの男?」
「何でもアルメリアから来て、ご主人様に火急のご報告があるとか」
アルメリア、という単語を聞いて、俺はバイロンと視線を交換して、頷きあった。
俺がまず立ち上がって部屋を出て、バイロンが後ろについて来た。
屋敷を出て、正門の所にやってきた。
そこにメイドの報告通り、ボロボロな格好をした青年が一人いた。
生傷だらけなのもさることながら、肌も服も汗と泥で汚れきっている、一目で「遠くから急いでやってきた人間」なのが分かる格好だ。
「ノア・アララートだ」
「お初にお目にかかります、親王殿下」
「うん。お前は何者だ?」
「アルメリア州のアドラ県で兵士を、十人隊の隊長をやっているものです」
「ふむ」
「殿下、アルメリアで反乱が起きました」
「......ほう」
俺は静かに青年の話を聞いた。
青年が話したのは、今となってはたいした内容じゃなかった。
アルメリアで上司が反乱を起こした。
自分はそれに賛同していない、だから必死に軍を脱走して、帝都にきて俺に報告した。
俺は少し考えて、頷いた。
「分かった、よく知らせてくれた」
そういってから、ついて来た接客のメイドに振り向き。
「彼に手当てを。それ――いや一千リィーンの褒美をくれてやれ」
と命じた。
メイドは頷いて、別のメイドを呼んで、手当てするために男を連れて行った。
その場に残った俺とバイロン、早速バイロンが聞いてきた。
「殿下、今のはどういう事ですか?」
「うん?」
「殿下はもう既に、反乱の事を知っているのでは? なのに何故そんな大金を褒美にやったのでしょう?」
「確かに彼の情報は役に立たなかった。今となっては目新しいものはないし、何の役にも立たないだろう」
俺がそう言うのを真っ直ぐ見つめてくるバイロン。
だよな、で? って目で俺を見つめ続けていた。
「その気持ち、その忠誠心に対する褒美だ。一介の兵士長が危険を顧みずに知らせに来たのだ、その忠誠心には応えてやらなきゃいけない」
「それだけであんな大金を......さすがでございます!」
バイロンは大きく口を開け放ったあと、感動した目で俺を見つめたのだった。 | The next morning, after breakfast, I was summoned to the royal palace and arrived at the flower garden.
I found His Majesty in the midst of the colourful flower garden, where he was playing with a parrot – enjoying himself – and I hurried to him with a great stride.
“Noah Ararat, here to answer your summons.”
His Majesty was in a very good mood as I dropped to one knee and bowed my head.
“Oh, you’re here. Lift your head.”
“Yes, sir.”
“Henry told me what happened last night. The assassin has spoken up.”
“So?”
“Hmm. This is a rebel hand. They thought they’d capture you and turn you into a card for their play.”
I wasn’t surprised, because I knew what to expect.
Rather, I was surprised that they threw up in just one night.
“Your Majesty,”
“I’m afraid I am speaking out of place, but it’s possible that they lied.”
“You’re a smart boy.”
His Majesty was in an increasingly good mood.
” Well, about that, there’s nothing to be worried. There is a way to be sure that the person who spoke up was telling the truth. According to that, it is the truth.”
So the path of the snake.
I don’t know much about torture, so let’s just accept it for what it is.
“Therefore. Good job, Noah. If you had been captured, the Empire would have had to make a difficult choice.”
“And,”
“?”
Is there more to it? – and the next moment I thought.
“I’m impressed that you’ve got your eye on fodder supplies.”
“—e!”
This was a grand surprise.
The talk of buying up the fodder in the surrounding land to capture Almeria and reduce the power of the cavalry was something that I came up with on the spot last night and only told Byron.
And yet, it has already been heard by His Majesty.
This kind of thing has happened occasionally before, but this was the most surprising.
The fact that I was surprised doesn’t really matter at all, as His Majesty excitedly praised me.
“Anyone can do a food raid, but to think about the people of your domain and attack only on horses, and with your own money!”
His Majesty approached me and placed a hand on my shoulder with a pat.
“This idea, and the power of action, is amazing. It’s not something you can do very often.”
“Thank you.”
“I’ll have to reward you with something. Money will be too mundane for this matter.... ...... Okay, Cruz.”
“Ha!”
The eunuch Cruz emerged from the shadows of the flower garden.
As usual, I don’t know where he’s hiding until he’s called.
” Permission to put a sword on Noah’s coat of arms. Give the decree.”
“As you wish.”
Cruz moved quickly.
I got down on one knee again, surprised, and dropped my head down once more.
That said.
The Empire is a nation of warriors, and many of the honors are battle-related.
Among them, adding a “sword” to an official coat of arms is something that should not be done without the Emperor’s permission.
The same is true for the signs of merchants and guilds.
If you use a “sword” on a crest without permission, you will be guilty of impiety, and in the worst case, you could be executed.
On the contrary, being able to use it is the highest honor bestowed by the emperor.
I raised my face and stood up.
His Majesty smiles, dimples appearing on his wrinkled face.
He looks happier than I do.
Suddenly, His Majesty seems to remember.
“Oh, yes, Noah, have you decided how you’re going to choose the knight selection?”
“...... Yes, I have one plan.”
” hmm? What’s it like?”
“Would you mind excusing me?”
“Mm, I approve.”
After His Majesty nodded solemnly at me, I beckoned to the junior eunuch, who was waiting in the distance and was visible.
I gave the coming eunuch an earful and got him ready to go.
Then the eunuch complied and ran to get ready.
A few minutes later, a table and chairs were placed in the flower garden, and a few more eunuchs arrived with a few additional eunuchs.
There was a tea set on the table and the eunuch was holding a bucket of water.
It was actually easier to recognize the soldiers, but they did this because they weren’t allowed to be armed inside the royal palace without His Majesty’s permission.
I turned my gaze to His Majesty.
He smiled and nodded, a look on his face that said he was looking forward to seeing what I was going to do.
I nodded back, sat down in my chair and picked up my tea set.
I behaved as if it was an elegant tea time – in the heavenly garden inside the royal palace, the most expensive garden in the land.
One of the eunuchs, beckoning me to join him, splashed a bucket of water on me.
The water hurled at me, and Leviathan reacted to it.
My armor transformed from the Linked Ring and became like an umbrella, blocking the bucket of water.
Furthermore, another eunuch splashed on me, and then the next eunuch on the waiting list.
In total, there were four eunuchs, all of whom splashed buckets of water, but all of them were prevented by the ring umbrella.
The ground was soaked with water, but the area around me, inside the two-meter diameter circle, was dry.
The word “territory(domain)” comes to mind.
Inside the territory, even if it was just a drop of water, Leviathan didn’t let any of it through.
The demonstration was complete, I put down my teacup, stood up and reported to His Majesty down on one knee.
” I will have the person I am selecting attack me like this. I’ll decide how far they can push me, then I’ll decide.”
I didn’t dare say it because I meant that teatime would be a long process.
“I’m impressed. This should be able to withstand the long process of selection.”
His Majesty seemed to have seen it coming.
“But ...... ummm.”
“Is there any problem with it?”
“Mm. That’s why I thought it was dangerous. Some of the ones we select will be reasonably strong. In the unlikely event that they can penetrate your defenses.”
” That’ s the extent of my commitment, sir.”
I answered immediately.
It is the duty of a nobleman, the duty of a prince.
I must find the right people for the Empire.
Compared to that, some risk is unavoidable.
So I answered immediately.
And then His Majesty became more and more – with the happiest face of the day.
“Well said. I’m proud of you, Noah. That’s my son,the prince of the empire.”
He praised me for this.
When I came back to the mansion from the palace, Byron had come to visit me.
I let him into the parlor to talk to him, he’s been working on buying up the fodder as soon as possible and seems to have some idea of what he’s going to do.
“You’re early,'”
There are only a limited number of fodder places from where it can be transported, and I know where they are. So it is not that difficult to seize them.”
As expected of a merchant.
As I was about to ask for more information, there was a knock at the door of the room.
It’s an unusual, impatient knock.
“Enter.”
A maid from the hospitality service came in.
“Excuse me–Master, there’s a man with wounds at the main gate.
” A man with wounds?”
“I received word that he came from Almeria with a report of something important to master.”
When I heard the word “Almeria,” I exchanged glances with Byron and we nodded at each other.
I got up first and left the room, Byron following behind me.
We left the mansion and came to the main gate.
There, as the maid reported, there was one young man who looked like a raggedy looking man.
Aside from being covered in fresh wounds, his skin and clothes are stained with sweat and mud, and you can tell at a glance that he’s a person who came from far away in a hurry.
“This is Noah Ararat.”
“It’s a pleasure to meet you, Your Imperial Highness.”
“Hmm. And who are you?”
“I’m a soldier in the province of Adora, in the province of Almeria, and I’m the commander of a ten-man squad.”
“Hmm.”
“Your Highness, there’s been a rebellion in Almeria.”
“......ho.”
I quietly listened to the young man.
It wasn’t much of a story now that the young man spoke.
His superiors had rebelled in Almeria.
He didn’t agree with it himself, so he desperately escaped the army and came to the Imperial City to report to me.
I thought for a moment and nodded.
“Okay, you did well to inform me.”
Then I turned to the hospitality service maid who had followed along.
“Patch him up. And reward him with five hundred–no, a thousand reens.”
I ordered.
The maid nodded and called for another maid to take the man away to patch him up.
We remained there, myself and Byron, and soon Byron asked me.
“Your Highness, what did that mean?”
“hmm?”
” His Highness already knows about the rebellion, doesn’t he? So why did you reward him with such a large sum of money?”
“Certainly his information was useless. It’s nothing new now, and it won’t be of any use.”
Byron stares straight at me as I say that.
Right, so? He kept looking at me asking, with his eyes.
“That feeling, the reward for that loyalty. A mere captain of a soldier has risked his life to inform me, and I must reciprocate that loyalty.”
“That’s a lot of money for ...... that’s all I can say about that!”
Byron opened his mouth wide and, then looked at me with impressed eyes. |
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} | 数日後、昼間の王宮の書斎。
書斎の主たる陛下がいて、陛下がいつも座っている机の向かいに俺と皇太子であるアルバートが並んで立っている。
ともものすごく真顔だ。
そんないつになく重苦しい空気の中、俺進み出て、咳払いで沈黙をやぶってから報告を始める。
「兄上――いえ、ギルバートの屋敷の捜査が終わりました。ポイニクスの酒と竜の爪を一緒に摂取したらどうなるか、という資料を地下の隠し部屋から発見致しました」
「陛下を謀殺しようとした確固たる証拠だな。隠し部屋に隠してあったのが何よりの証拠。犬にも劣る畜生めが」
アルバートは憎々しげに吐き捨てた。
一方で、陛下はこの件のせいで、まるで十歳ふけてしまったかのような、気落ちした顔で、ため息まじりに言った。
「ギルバートは?」
「ギルバートはそのまま投獄。自害を防ぐため魔法であらゆる行動を制限し、通常の三倍の看守をつけました」
俺が報告したのは、通常では考えられないほどの厳重体制だった。
皇帝の毒殺を企んだ前代未聞の大罪、陛下の決定がある前に何かあってはならない。
ここで罪をおそれてギルバートが牢の中で自殺でもすれば、看守のクビが冗談抜きで全員吹っ飛ぶことになる。
俺は、最厳重体制で――むしろ世界からギルバートを守るくらいの厳重体制を敷いて彼を守った。
「そうか......。して、処分は?」
陛下は重い口を開いて、俺を見つめる。
法務親王大臣である俺の意見を求めてきた。
「確固たる証拠があり、陛下の謀殺というまごうことなき謀反ですので、帝国法に照らし合わせて斬胴刑以外あり得ません」
「うむ......」
陛下は苦虫をかみつぶした顔をした。
それを見て、俺は一呼吸間をあけた後、更に続ける。
「ただ、今回の場合、未遂ともとれます」
陛下の眉がひくっと動いた。
「未遂だとどうなる」
「もちろん謀反には違いありませんので、斬胴刑は免れません。しかし減一等の執行猶予をつけられます。そして謀反の場合、執行猶予の実行タイミングは陛下が望む時に執行を命じる事ができます」
「なんでそんなややっこしいことをするんだ?」
アルバートは俺の意見を聞いた後、不思議そうに首をかしげてきた。
「いや、さすがノアだ。法と、人情の両面から考えてくれている」
「......」
俺は無言で一礼した。
ことがことだ、あまり「うん」って言い切るのもどうかと思う。
「よく考えてくれたな、ノア」
「......?」
一方で、アルバートはやっぱり理解していないようだ。
謀殺されかけたとは言え、ギルバートは陛下の息子だ。
殺され掛かっても息子を処罰することなんてできない、という可能性も考えた。
だから俺は、法の中で、皇帝の一存で執行のタイミングを決められる執行猶予――つまりその気になれば事実上終身刑にする事ができるこのアイデアをだした。
それを陛下は理解し、ほめてくれた。
「陛下、迷うことはありません。誰であろうと、陛下を毒殺しようと考えた
アルバートは即執行を訴えた。
これはこれで正しい、が。
一瞬だけ、陛下が不快そうに眉をひそめたのが見えた。
それはしかし一瞬だけで、陛下はすぐに普通の真顔に戻って、数十秒考えた。
「......アルバート」
「はい」
「執行はお前に任せる。いってこい」
アルバートは片膝ついて、書斎から退出した。
俺は密かに心の中でため息をついた。
「ノアよ」
「よくやってくれた。そういう心遣いができるお前はすごいな」
「......」
「その心遣いだけで救われた気分だ」
俺は無言で、かすかに頭を下げたままただ聞いているだけでいた。
最初から重かった空気がますます重くなった――のをきらってか、陛下は咳払いして話題を変えた。
「死んだギルバートの封地は召し上げる。本当はそれをそのままお前にあてがおうと思ったが――」
「いけません」
俺はパッと顔を上げて、陛下の言葉を遮った。
「むっ?」
「今回のことは俺の密告から始まった事。いかにギルバートの自業自得とは言え、それでギルバートの封地を頂戴してしまっては、のちのち親王達の争い――いえ、足の引っ張り合いに繋がる恐れがあります」
俺が言った後、陛下は今日初めて、嬉しそうに笑顔を見せた。
「早まるな、余は『本当は』といったぞ」
「あっ......」
「そしてよくいってくれた。さすがだ。そう、その恐れがある。争いまでならいい、しかし足の引っ張り合いは容認できん。だからこの件でノアには何も褒美はやらない」
「ありがたき幸せ」
俺はその場で片膝をついて礼をいった。
「代わりに当然のことをする。ノア、お前もそろそろ封地いりが見えてきた。正室を迎えることを考える時期だな」
顔を上げて、頷く。
今の俺はだが、それで結婚はけっして早いとは言えない。
皇族の初婚、つまり正室は100%政略がらみで、最低でも家柄が釣り合う相手でなきゃならない。
そういうのもかんがえたら、十二歳では遅いくらいだ。
「余の叔父上――雷親王の孫娘はどうだ?」
「異論はありません」
俺は当たり前の返事をした。
「そうか。実は事前に相性の占いをさせてみたが、ノアとその娘な以上で結構賢い子供が生まれると出た。1%くらいの確率でお前以上の才覚で産まれるとでたぞ」
占いというのは、未来であればあるほど見えづらく、つまりは外れるものだ。
十二歳で結婚するのは早くないが、だからといってすぐに子供を産むと言うわけでは無い。
俺の子供は、順当にいって最低でも後五年くらいは待たないといけない。
五年後のことをそこまで見通せる占いなど存在しない、高確率で外れるだろう。
それでも。
「そんな方をいただけるなんて、この上ない幸せです」
「そうか、ならその娘との縁談を進める」
「ありがたき幸せ」
最後に一礼をして、陛下からは何もないと確認してから、ゆっくりと書斎をでた。
ノアが退出した後、代わりに第一宰相が書斎に入ってきた。
「いやあ、さすがノア様ですな。相手がどんな娘なのかどころか、名前すら聞かなかった」
「それが皇族、親王というものだ」
「とはいえ、それを貫けるお方があまりいないのも事実。男子たるもの、妻となる人間に多少なりとも興味が湧くものです。ノア様はそのお歳でそこまでできる、さすがという他ありますまい」
第一宰相が感心して、皇帝も満足げに頷いた。
あそこでノアが相手のことを聞くのは限り無く不敬罪に当る。
主君が部下の婚姻を斡旋することはままある、それが皇帝と親王に規模を拡大しても同じだ。
そして、皇帝の下賜品を必ずもらわなくてはいけない。
相手の名前や人となりを聞くというのは、相手次第では断る、という意味を孕んでしまう。
それは貴族――皇帝と親王の間ではあり得ない事だ。
「しかし、さすがのノア様でも、
第一宰相は刻みの深い皺を更に寄せて、楽しげに笑った。
「そなたのその話、聞いた時は鼻白んだが......」
「悪い提案ではございますまい」
長年臣従しているからこそ、第一宰相は割と皇帝にはフランクな態度で接した――あくまで他に比べてだが。
それを皇帝も悪い気はしていないようで。
「ああ。盲点だが、確かにいい案だ。孫、か」
「孫で後継者を選べ。良き孫は三代渡っての繁栄を確約する」
第一宰相は、しばらく前に皇帝に上奏した言葉をもう一度繰り返した。
「実際の所どうなんだ? 余を超える可能性のある孫は」
「今のところ、可能性はノア様のみでございますな。ノア様の才覚が上手く御子に伝われば」
「そうか......期待、するしかないか」
皇帝と第一宰相は、ノアが出ていった後の扉を、真剣な顔で見つめ続けたのだった。 | A few days later, in the study of the royal palace in the daytime.
His Majesty, the head of the study, is there, and across from the desk where he usually sits, Albert, the Crown Prince, and I are standing side by side.
All three of us have very serious faces.
I stepped forward and broke the silence with a cough before beginning my report.
“The investigation of Brother———no, Gilbert’s house has been completed. We found a document in a hidden room in the basement that shows what happens if you consume Poinics wine and dragon claws together.”
“Solid evidence of an attempt to conspire against you. The fact that it was hidden in a hidden room is the best proof. A bastard no better than a dog.”[Don’t compare that as**ole to a dog]
Albert spat hatefully.
On the other hand, His Majesty sighed with a dejected look on his face, as if he had lost ten years of age because of this incident.
“What about Gilbert?”
“Gilbert is imprisoned. In order to prevent him from committing suicide, we’ve magically restricted his every move and assigned him three times as many guards as usual.”
What I reported was an unbelievably strict regime.
He had plotted to poison the emperor, a crime of unprecedented proportions, and I didn’t want anything to happen to him before His Majesty made a decision.
If Gilbert were to commit suicide in the prison because of his guilt, the guards would all be fired, no joke.
I protected Gilbert with the strictest of measures – in fact, with the strictest of measures to protect him from the whole world.
“Well, ....... So, what’s the disposition?”
His Majesty opened his heavy mouth and stared at me.
As the Minister of Justice, he asked for my opinion.
“There is solid evidence, and it is a clear case of treason, a conspiracy to kill His Majesty, so in light of imperial law, there is no alternative but to execute him by decapitation.”
“Umu. ......”
His Majesty made a face of a grimace.
Seeing this, I took a breath and then continued.
“But in this case, it could be taken as an attempt.”
His Majesty’s eyebrows twitched.
“What if it is an attempt?”
“Of course, it must be treason, so the execution by decapitation is unavoidable. However, the sentence can be suspended for a reduced period of time. And in the case of treason, His Majesty can order the suspension to be carried out at any time he wishes.”
“Why are you doing such a complicated thing?”
Albert, after hearing my opinion, tilted his head curiously.
“No, this is just Noah. He thinks in terms of both the law and humanity.”
“......”
I bowed silently.
That’s what I thought, and I don’t know if I should say “yes” too often.
“You’ve thought this through, Noah.”
“......?”
Albert, on the other hand, still doesn’t seem to understand.
Although he was almost murdered, Gilbert is still his son.
He also thought of the possibility that he could not punish his son even if he was about to be killed.
That’s why I came up with the idea of a suspension of execution, where the emperor can decide the timing of execution at his discretion within the law – in other words, if he wanted to, he could effectively sentence him to life in prison.”
His Majesty understood this and praised me for it.
“Your Majesty, don’t hesitate. Whoever it was who thought of poisoning you should be executed.”
Albert appealed for immediate execution.
This is the right thing to do, though.
For a moment, I saw His Majesty’s brow furrow in displeasure.
It was only for a moment, however, and he quickly returned to his normal expression and thought about it for several tens of seconds.
“...... Albert.”
“Yes.”
“I will leave the execution to you. Go ahead.”
Albert got down on one knee and walked out of the study.
I sighed secretly in my mind.
“Noah.”
“You’ve done well. It’s amazing you can be so thoughtful.”
“......”
“That kind of thoughtfulness alone is a lifesaver.”
I was silent, just listening with my head faintly bowed.
The air that had been heavy from the start became even heavier, and his majesty coughed and changed the subject.
“Gilbert’s estate after his death will be transferred. Actually, I was going to give it to you as is, but–“
“Please do not.”
I looked up quickly and interrupted his words.
“Hm?”
“This whole thing started because of my informant. No matter how much fault Gilbert has brought upon himself, if I took Gilbert’s domain because of it, it might lead to a dispute between the Princes later on – or rather, pulling each other’s legs.”
After I said that, His Majesty revealed a smile happily for the first time today.
“Don’t be hasty, I said ‘actually’.”
“Ah .......”
“And well said. That’s what I’m afraid of. Yes, there is that fear. It’s okay to fight, but dragging each other down is unacceptable. So I’m not rewarding Noah for this.”
“Thank you for your consideration.”
I knelt down on the spot and thanked him.
“Instead, I’m going to do what’s right. Noah, you’ve reached the point where you are ready to enter your domain(fief). It’s time for you to think about taking a wife.”
I raised my head and nodded.
I am years old now, but it is not so early to get married.
The first marriage of a member of the royal family, that is to say, for the main wife is % political, and the marriage must be with someone whose family background is at least equal.
If you take that into consideration, twelve is a bit late.
“How about my uncle——-Lightning Prince’s granddaughter?”[TN: visible confusion 雷(kaminari=Lightning) 親王(Shino=Imperial Prince)”
“I have no objection.”
I replied as a matter of course.
“I see. Actually, I had the fortune-teller do a compatibility reading beforehand, and she said that Noah and the girl would make a pretty smart child in over 0% of cases and that there was about a 1% chance that the child would be more talented than you.”
The further into the future you look, the harder it is to see, and the more likely you are to be wrong.
It’s not too early to get married at twelve, but that doesn’t mean you have to have a baby right away.
My child will have to wait at least five more years in order to be born.
There is no such thing as a fortune teller that can predict what will happen in five years, and there is a high probability that it will be wrong.
But still.
“I am extremely fortunate to have such a person.”
“Well, then I will proceed with the match with the girl.”
“Thank you for your generosity.”
I bowed one last time, and after confirming that His Majesty had nothing to say, I slowly left the study.
After Noah left, the First Vizier came into the study instead.
“Oh, as expected of Noah-sama. Not only did he not know what kind of girl she was, but he also didn’t even ask for her name.”
“That is how it is with royalty and princes.”
“However, it is true that there are not many people who can do so. Every boy has some interest in the person who will be his wife. Noah-sama, at his age, is capable of such a thing, which is quite impressive.”
The First Vizier was impressed, and the Emperor nodded in satisfaction.
Noah’s questioning of the other party there would be an act of disrespect.
It’s not uncommon for a lord to arrange marriages for his subordinates, even if it’s on a larger scale as the Emperor and the Prince.
And you must always receive the Emperor’s gifts.
Asking for the person’s name and personality can mean refusing, depending on the person.
This is not possible between a nobleman – the Emperor and the Prince.
“But not even Noah-sama noticed this.”
The first vizier smiled happily, his deep wrinkles creasing even more.
“When I heard you mention it, it made me snicker. ......”
“It was not a bad suggestion.”
The First Vizier, because he had been a vassal for many years, was rather frank with the emperor – though only in comparison to others.
And the Emperor does not seem to feel bad about it.
“Aah. A blind spot, but certainly a good idea. Grandson, huh”
“Choose your grandchildren as your successors. A good grandson will ensure prosperity for three generations.”
The First Vizier repeated what he had said to the Emperor some time ago.
“But, from which one precisely? A Grandchild who could be my successor”
“So far, the only possibility is Noah-sama. If his talents can be passed on to his child.”
“Well......we can only hope.”
The emperor and the first vizier continued to stare at the door after Noah had left with serious faces. |
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} | 宿に泊っ経った昼過ぎ、部屋で前の日の政務文書に目を通していると、ドアがノックされた。
「ペイユか、入れ」
顔を上げずに、ノックの音と気配で判断した。
「ご主人様、お客さまがお見えです」
「ふむ、誰だ?」
「王殿下の家人って名乗ってます」
「わかった、通せ」
「はい」
ペイユはもう一礼して、入ってきた時と同じ雰囲気のまま退出した。
詳しい返事が必要なものだったから、頭の中で一度文章をまとめてから書き込んでいく。
ノックが再びされた。
「入れ」
許可をすると、ペイユの時よりも更に恭しい感じでドアが開かれた。
入ってきた者が入り口近くで跪いたのが気配で分かった。
「リオ・レオ、天顔を拝し恐悦至極に存じます」
「うむ」
俺は頷きつつも、途中だった書き物を続けた。
細かい指示が必要だったから、全部書き切るま近くかかった。
ペンを置いて、更に内容のチェックくらいかかった。
指示の内容が問題ないと判断してから、ペンを置き顔を上げる。
リオ・レオと名乗った男が頭を下げたままだった。
肩で息をしてて、汗だくだ。
見るからに急いできたのが分かる。
「立って良い。急いできたのか?」
「はっ。オスカー様のご命令で、『急行』で参りました」
「なるほど」
急行、というのは急ぐ度合いの事だ。
命令や文書を届ける時、その重要度によって急ぎ方が変わる。
大まかには「急行」と「特急」の二種類がある。
馬を乗り継いで早く届けようとするものだが、その際馬を使いつぶしても構わない、というレベルの急ぎ方だ。
特急は急行よりも更にワンランク上だ。
この場合、馬に乗る人間の生死さえも問わない、とにかく急げというレベルだ。
人間の生死も問わないのだから、同じ文書を持った人馬を同時に三組送り出して、どれか一組が生きて届ければいい、というものだ。
滅多に使わないが、その上に「超特急」という、緊急の軍報の時くらいにしか使わない物がある。
オスカーは自分の家人、さらには急行でよこしてくれた。
「落ち着いて話そうか。ペイユ、リオに椅子を」
部屋の外にむかって呼びかけると、ペイユが椅子を一脚持ってきて、リオのそばに置いた。
リオはすぐには座らず、その場でもう一度跪いて、
「ありがたき幸せ」
といってから、立ち上がって、尻を半分にして遠慮がちに座った。
これも作法の一つだから、とやかくは言わなかった。
「さて、オスカーはなんと言っている」
「はっ。財務大臣としては賛成ではあります、との仰せでした」
「反対する立場もあるということか」
リオは座ったまま軽く一揖した。
「一親王としては手放しに賛成できない、との仰せです」
「理由は?」
「両替税は施行してから100年以上、慣例となっていて、利権も多く絡む。それを取り上げてしまうと各地の代官、および引退した大臣の反発度合いが予想できない、と」
「引退した大臣? ......ああ」
リオは神妙な顔で頭を下げた。
オスカーの言うとおり、そこは確かに危惧するところだ。
親王の家人の他にも、宰相級の大臣が騎士選抜の選考官になって、子飼いを増やすことがある。
俺がシャーリーを選んだのと同じようにだ。
そしてその子飼いを代官として出すこともままあること。
そしてその子飼いらは、慣例として自分を選出した大臣に上納金を差し出すことが多い。
その上納金がどこから来ているのか――大半が両替税である。
そして大臣らの多くが、どこかの親王の家人である。
皇后オードリーの実家、雷親王も、家人から三人くらい宰相を排出している。
つまり、両替税を取り上げると言う話になると、必然的に引退した大臣らを敵に回し、さらにはその背後にいる親王を敵に回しかねない。
オスカーが財務大臣としては賛成だが、親王――皇族としては手放しにはいかないと回答をよこしてきたのはそういう理由だ。
「......オスカーが預けた言葉はそれだけか?」
「え?」
「オスカーの事だ、今の話を聞いた余がどういうのかも予想はついているのだろう?」
「......さすが陛下、このリオ・レオ、心から感服致してございます」
リオはそう言って、一度椅子から立ち上がって、跪いて俺に深々と頭を下げた。
そしてまた立ち上がって、椅子に座り直して、俺を真っ直ぐ見つめる。
「ご明察の通り、オスカー様はこうおっしゃってました。『陛下は様々な慣習に手をつけておられるから、その理由では引かないだろう』と」
「その通りだ」
最初に手をつけたのは皇女の夫婦関係だ。
皇女は民間人に降嫁しても、慣習として身分は維持されるから、夫婦であっても主従のような関係性になる。
夫が妻に会うにもいちいち申請や許可が必要で、それはまともな夫婦関係とは言えないから、俺が皇帝の勅命で廃止してやった。
帝国のそれこそ初期から続いてきた慣習ではあるが、政務には関係のない夫婦の関係。
さらには夫――男が抑圧されるという状況に、各世代の親王達が改善には好意的で、最悪でも「好きにしろ」程度の感想だったからスムーズに改革が出来た。
もともと、皇帝としていくつかの慣習を改革しようと思っていたところに、降って湧いたその話を利用した。
それによって、オスカーなど一部の親王・大臣らには、俺が慣例に手をつけたがっている皇帝だとしっかり認識された。
今回もそうだ。
両替税に手をつけようとした俺を、オスカーは立場から諫めつつも、どうせきかないだろうと予測していた。
「やっぱり人材だよな......」
「はあ、それはどういう?」
「いやなんでもない。話はわかった。オスカーにはすすめるように返事しろ。詳細は余が帰朝してから詰める、と」
「......方向性だけ伝えておく」
「拝聴致します」
リオは再びたって、俺に跪いた。
跪いたまま、俺の命令を受ける。
「前提として代官から取り上げる。しかしただ取り上げたんじゃ反発はある。そこで両替税分の金をそうだな――ボーナスという名目で代官に配る」
リオは驚いて顔を上げた。
しかしなにも言わなかった。
皇帝が親王に言付けをする場面、自分はいわば伝書鳩だ。
そこに自分の意見や言葉を挟むのは不敬罪に当る。
親王の家人として、リオはそこをよくわきまえているから驚いただけでなにも言わなかった。
「言いたいことはわかる。それじゃ取り上げる意味がないだろうなのと、下手したら赤字になるだろう? ということであろう」
「......」
リオは無言で頭を下げた。
おっしゃるとおりでございます――という無言の返答だ。
「雑費もいるから、両替税は一部引き上げる」
「――っ!」
「逸るな、続きがある。私腹を肥やすためではないのだから、一部あげるが全体的には横ばい程度になる。とはいえ、それでも上げるという事に不満を持つ民がでるだろう」
リオは再び無言で頭を下げた。
「そこでもうひとつ、永久に増税しない、という布告をだす」
「ーーっ!」
「少なくとも余の在位中は永久に両替税を増税しないというものだ」
「......」
リオの表情がものすごく複雑なものになった。
驚き3割、困惑7割ってかんじだ。
「何に引っかかっている? 許可するから言って見ろ」
「ありがたき幸せ。なぜ増税しない事を代わりに打ち出すのでしょうか」
「国が民に与える一番大事なものは何かわかるか?」
「えっと、金......いや職......衣食住、でしょか」
「70点だ、わるくない」
「ありがとうございます!」
「それらをひっくるめて、希望や期待を与えるのだ」
「希望......期待......」
「そうだ、希望や期待を持てるようにするのが国の、為政者の務めだ。金も職も、衣食住すべてが生きるための希望や期待に含まれる」
一拍おいて、俺は更に続ける。
「永久に増税しないというのもその期待を作る一環だ」
「なるほど......さすが陛下。感服致しました」
「うむ。今の話をオスカーに伝えろ。原文を復唱していい。オスカーならそれで上手く草案を練ってくれよう」
リオはもう一度頭を下げて、それから退出した。
出て行ったリオを見送ってから、俺は立ち上がって、窓から外をみた。
オスカーは有能だ、この話で気づくだろう。
この話の本質はむしろ民じゃない、役人の体制・体質そのものを変える一発目の策だ。
私腹を肥やす手段を取り上げた、しかし補填はしてやった。
それでもなお何かの形で私腹を肥やそうとするのなら今度は許さない、という事だ。
俺は、オスカーに色々便宜を図っている。
帝位以外、望むものなら大抵は与えてやれる。
そこまでやってるのに、それでも帝位を狙ってくるようなら......。
オスカーはきっと、読み取れるだろう。
「帝位は諦めてくれ、兄上。それは父上の名を汚す」
窓の外を眺める俺のつぶやきは、誰の耳にも届くことなく、砂漠の烈日に溶けて消えるのだった。 | After three days of staying at the inn, in the early afternoon, I was going through the political documents from the previous day in my room when there was a knock on the door.
“Peiyu huh, come in.”
Without lifting my head, I determined from the sound of the knock and presence who it was. As expected, it was Peiyu, who entered the room and bowed to me silently.
“Master, a guest has arrived.”
“Hmm, who is it?”
“He claims to be a retainer of the Eighth Prince.”
“I see, let him in.”
“Yes.”
Peiyu bowed once more and left the room with the same atmosphere as when she entered.
I continued with my political work as is. For things that required a detailed response, I first organized my thoughts in my head before writing them down.
There was another knock on the door.
“Come in.”
Upon my permission, the door opened even more respectfully than when Peiyu entered.
I could tell from the presence that the person who entered knelt near the entrance.
“Rio Leo, I am deeply honored to meet you and bow before your divine countenance.”
“Umu.”
While nodding, I continued writing.
As there were specific instructions that required me to finish writing for nearly five minutes.
After setting down the pen, I spent another two minutes checking the contents.
After confirming the instructions were correct, I put down my pen and lifted my head.
The man who introduced himself as Rio Leo remained bowing his head.
He’s breathing heavily with sweat covering his body.
It was clear he had come in a hurry.
“Stand up. Did you come in a hurry?”
“Yes. I came by ‘express’ under Oscar-sama’s order.”
“Express” refers to the degree of urgency.
Depending on the importance of the order or document being delivered, the level of urgency would differ.
Roughly speaking, there were two types: “Express” and “Special Express.”
This meant using horses to deliver the message quickly, even if it meant exhausting the horse in the process.
“Special Express” was a level of urgency even higher than “Express.”
In this case, human life was not even taken into account. The focus was on speed.
Since human life was not a concern, three sets of people and horses carrying the same document were often sent out simultaneously. If at least one set arrived alive, the mission was considered successful.
Although rarely used, there was also a level higher than “Special Express” called “Super Special Express,” which was only used for emergency military reports.
Oscar had sent his own retainer and it was even by Express.
“Let’s talk calmly. Peiyu, bring a chair for Rio.”
I called out to the outside of the room. Peiyu brought a chair and placed it beside Rio.
Rio did not sit right away but knelt down again and said,
“Thank you for your kindness,”
Before standing up and sitting down hesitantly with his bottom half on the chair.
This was also a form of etiquette, so there’s no complaint.
“Now then, what did Oscar say?”
“He said that as Minister of Finance, he agrees with the plan,”
“So there are opposing views as well?”
Rio gave a small bow while seated.
“He said that as a Prince first, he cannot fully agree with the plan.”
“And the reason?”
“The exchange tax has been in place for over years and has become a precedent, with many interests involved. If we take it away, it will be difficult to predict the level of backlash from local officials and retired ministers.”
“Retired ministers? Ah, I see.”
Rio said, bowing his head solemnly.
As Oscar had said, this was indeed a point of concern.
Apart from the Prince’s retainers, ministers at the level of the Viziers often became examiners for selecting knights and increased their own followers.
It was similar to how I chose Shirley.
And they often send out their protegees as governors.
Then, these followers were often sent out as officials, and they usually paid tribute to the minister who had chosen them.
And where does this money come from— most of this tribute came from the exchange tax.
And many of these ministers were family members of some prince...
Empress Audrey’s family, Prince Rai, also has about three viziers among their retainers.
In other words, if the conversation turns to take up the exchange tax, it would inevitably make retired ministers enemies and even possibly turn the Prince behind them into an enemy.
Oscar agrees as the finance minister, but as a Prince, he cannot simply let it go, which is why he replies as such.
“... Is that all Oscar said?”
“Huh?”
“It’s Oscar here, he must have some idea what I would do after hearing the story?”
“... As expected of Your Majesty, I am sincerely impressed,”
Rio said, then got up from his chair, knelt down, and bowed deeply to me.
Then he stood up again, sat back in his chair, and looked straight at me.
“As you guessed, Oscar-sama said ‘His Majesty does not hesitate to touch various customs, so it is unlikely that he will back down for that reason.’ “
“That’s right.”
The first thing I tackled was the marital relationship of the Imperial Princess.
Even if the Imperial Princess married a commoner, her status would be maintained as a custom, and their relationship would become like that of a master and servant.
Even meeting with his wife required applications and permissions, which was not a normal marital relationship, so I abolished it by Imperial decree.
Although it was a custom that had been continuing since the early days of the empire, it was a relationship between a husband and wife that had nothing to do with political affairs.
Furthermore, the situation where men were oppressed――husbands――was viewed favorably by the various generations of Princes, and even at worst, their opinion was, “Do as you please,” so the reform went smoothly.
Originally, I had been thinking of reforming some customs as the Emperor, and I utilized this opportunity that suddenly arose.
As a result, like Oscar, some of the Princes and ministers recognized me as an Emperor who was willing to break with tradition.
“As expected, this time is the same as well.”
Even though I was trying to touch the exchange tax, Oscar had predicted that it wouldn’t work, while admonishing me from his position.
“It’s really about human resources...”
“Huh, what do you mean?”
“No, it’s nothing. I understand the conversation. Give a response to Oscar recommending it. We’ll fill in the details once we return to the capital.”
“...I’ll just give you the direction.”
“I receive.”
Rio stood up again and kneeled before me.
He knelt and was ready to receive my orders.
“First, we take it away from the governors. But if we do that alone, there will be a backlash. So, we’ll distribute the money from the exchange tax to the governors as a bonus.”
“...”
Rio looked up in surprise.
But he didn’t say anything.
In this situation where the Emperor gave orders to the prince, he was like a carrier pigeon.
Interjecting with one’s own opinions or words would be considered a disrespectful act.
As a retainer to the Prince, Rio understood this well and was only surprised, without saying anything.
“I understand what you want to say. That it’s pointless to take it away if we’re just going to give it back, and that we might even end up in the red?”
“...”
Rio bowed his head silently.
His response was a silent agreement.
“We also need some incidental expenses, so we’ll raise part of the exchange tax.”
“...!”
“Don’t get distracted, there’s more. It’s not to line our own pockets, so we’ll raise it just enough to keep it at the same level overall. However, some people will still be unhappy with the fact that it’s going up.”
Rio bowed his head silently again.
“So, we’ll issue a decree that we won’t increase the exchange tax permanently.”
“!”
“At least during my reign, we won’t increase the exchange tax permanently.”
Rio’s expression became extremely complex.
It was % surprise and 70% confusion.
“What’s bothering you? I’ll allow it, so tell me.”
“I am grateful for your kindness. Why not propose something instead of raising taxes?”
“Do you know what the most important thing the country can give to its people is?”
“Um, money...no, jobs...food, clothing, and shelter, right?”
“70 points, not bad.”
“Thank you!”
“All of those things combined give hope and expectations.”
“Hope....expectations”
“That’s right. It is the duty of the government, of the rulers, to give people hope and expectations for the future. Money, jobs, food, clothing, and shelter are all included in that hope and expectation for a better life.”
After a brief pause, I continued.
“Permanently not raising taxes is also part of creating that expectation.”
“I see...as expected of Your Majesty. I am impressed.”
“Indeed. Now go tell Oscar about this. Recite the original text to him, he’ll be able to draft a good proposal.”
“Yes.”
Rio bowed once again and then left.
After seeing Rio off, I stood up and looked out the window.
Oscar is capable, he will understand the essence of this discussion.
The essence of this discussion is not only to help the people but also to change the structure and nature of the bureaucracy itself.
We took away the means for officials to line their pockets, but we provided compensation.
Even so, if they still try to profit in any way, it won’t be forgiven.
I have been very accommodating to Oscar.
Aside from the throne, I can give him almost anything he desires.
If he still aims for the throne after all that...
Oscar will surely understand.
“Give up the throne, my brother. That would tarnish our father’s name.”
My mutterings by the window disappeared into the scorching desert sun, unheard by anyone. |
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} | 「くそがああああ!」
リーダーらしき男が、武器を振るって俺に飛びかかってきた。
得物は肉厚の大剣、本人の体格も合わさって軽々と振るっている。
リヴァイアサン攻撃で手傷を負ったが、動きには支障のないレベルでの軽傷だ。
「いい、リヴァイアサン」
気配が震えるリヴァイアサンを制止して、元の姿にして、剣として握る。
リヴァイアサンで、男の斬撃を受けとめる。
剣戟音が鳴り響き、火花が飛び散った。
何もないところから現われた様に見える物々しい剣をみて男は一瞬ぎょっとした。
そのままつばぜり合い――と思いきや、男はギリッ、と歯を食いしばった後、一旦俺を競ったままで押しのけると、大剣をぶんぶんと振って斬りかかってきた。
「うおおおりゃあああ! こなくそー!!」
ぶんぶんと、気流の渦を巻き起こしそうなほどの勢いで何回も斬りかかってくる。
それを俺はリヴァイアサンで受け止めたり、受け流したりする。
男は斬撃一辺倒ではなかった。
たまに大剣を地面に突き立てて砂を巻き起こしたり、流れた血を俺に飛ばして目くらましを狙ったりしてくる。
「......なるほど、いいボスだ」
「――っ!」
俺の言葉に戸惑い、驚愕する男。
「止めろリヴァイアサン、足を止めるだけで良い」
『御意』
刀身が震えるリヴァイアサン。
さっきと同じ感じで、しかし遙かに細い水の柱――水の針が一斉に飛ばされた。
男が俺の気を引きつけている間に逃げ出そうとする盗賊全員の足を止めた。
「み、見えていたのか......」
攻撃の手を止め、構えたまま俺をにらみ、顔をゆがめる男。
「不自然に動きが大きく、オーバーだったからな」
「どこで指示を出していた」
俺は男に聞いた。
実の所、男が俺の気を引くために攻撃して居たのだとは最初気づかなかった。
襲ってきてすぐだということもある。こんな速攻で撤退を決断する盗賊は見たことがないからだ。
「指示なんかだしてねえ」
「ほう?」
「命あっての物種だ。ダメなときはいつも逃げろって言ってある」
「部下じゃねえ、兄弟たちだ」
「ふむ」
俺は小さく頷いた。
余人には理解しがたい関係性であるようだ。
「なんで女を人質にとらなかった?」
俺は更に聞く。
ペイユとアイビーは小さく震えたが、手をかざすジェスチャーとかで安心しろと伝えたまま、男をじっと見つめる。
「そんなのでどうにかなるような力の差じゃねえだろ」
「ふむ、状況判断も素早い」
俺は男を改めてみた。
やってることがやってることだし、出会いの仕方も悪いが。
目の前にいる男は間違いなく人材だ。
俺はペイユに首だけ振り向き、肩越しに命じる。
「ペイユ、ポーションを出せ」
「え?」
「怪我の重いところから直していけ」
ペイユは一瞬戸惑ったが、それでも主である俺の命令に従い、荷物の中からポーションを取りだした。
最近開発したばかりのポーション、戦略物資にさえなる貴重な品。
リヴァイアサンの水とちがって、すぐに使えるようにつくって、現物で持ち歩いている。
それをペイユが取り出した。
そして先輩らしく、アイビーに手伝うようにいった。
アイビーは何がなんだか分からなかったが、それでもペイユの手伝いをした。
「け、怪我が一瞬で治った......!?」
ポーションを初めてみるアイビーは驚愕した。
「これ、ご主人様が作ったものだよ」
「作った?」
「そう、すごいでしょ。これをつければどんな怪我だって治っちゃうんだから」
「うそ......でも本当だ......。すごい......」
ポーションの威力に言葉を失うアイビー。
驚いてるのはアイビーだけじゃなかった。
ポーションで怪我が一瞬で治ったという実体験をした盗賊達も驚愕し、何が起きたのか分からない、ってヤツも多かった。
一方、引いたポジションから「全体」を見ている男は、驚きつつも、状況が把握できていた。
そんな男は、驚きと警戒が半分、そんな顔で俺を見てきた。
「なんで助ける」
「脅威ではないからだ」
「なに?」
「お前は一瞬で俺にはかなわないと判断した。なら全員の怪我を治しても、それで襲いかかってくることもないだろう」
「......」
「それに人は宝だ、むやみに死なせていい道理もない」
「追い剥ぎだぞ」
「追い剥ぎに死罪はない。帝国法ではどう重く量刑しても終身刑さえならん」
件数が重なって、数百年の禁固刑――という事もあるが、それでも終身刑や死刑とは
「だとしても」
男は警戒したまま俺に聞く。
「わざわざ直す理由がねえ。なにが目的だ」
「話を聞かせろ」
「部下――ああ兄弟たちだったか。怪我を治してやれば話くらいは聞かせてくれるだろ?」
「......なにが聞きたい。天気か? それとも近いオアシスの場所か?」
「ははは、なるほど、ここでは天気の話には価値がつくのだな」
俺は楽しげに笑った。
男の語気から、「天気」というのが軽口の類ではないと感じたからだ。
確かにこの砂漠だ、この劣悪な環境での天気は場合によっては生死を分かつレベルの情報になると想像にかたくない。
としてるのなら、話ができるのだと理解した。
「まずはそうだな、ありきたりだがなんでこんな稼業をしている」
「食えねえからの他になにがある」
「元手のいらねえ商売なんかそんなにねえよ」
人類最古の職業あると言われている。
男は傭兵、女は娼婦。
いずれも、最終的に体一つで出来るものだ。
そういう意味では、盗賊・追い剥ぎも身一つで出来る「元手いらずの商売」といえなくもない。
「傭兵になるのは考えなかったのか?」
「傭兵なんかににゃ成れねえよ。ちゃんとした武装とかねえと雇い主もまずみつからねえ。運良く見つかっても捨て駒用だ」
俺は頷き、納得した。
その発想はなかったが、確かに雇う側からすれば、通常は戦力として武具装備もみる。
そういう意味じゃ、まともにやろうとすれば傭兵は「元手」がいる。
追い剥ぎなら最低限の武器だけでいい......なるほど。
「聞きたい話はそれだけか?」
男は苛立ちながら言ってきた。
盗賊・追い剥ぎにまで身をやつしたいきさつなんて話したくもない過去だ、と言わんばかりの顔だ。
まあ、そうだろう。
つらい過去でもなければこんな稼業に落ちてくることなんてそうそうない。
ましてや、これほどの才能を感じさせるほどの男だ。
「いや、もうひとつある」
「さっさと聞け」
「盗賊をやめる気はないか?」
「はっ!」
「やめられるならとっくにやめてらあ」
「質問をよく聞け。盗賊を
「......やめられるならとっくにやめてる」
男はトーンダウンした。
同じ言葉なのに、意味合いが違っていた。
最初は意地や侮蔑の意味合いがあったが、二回目はつらさの吐露......という感じになった。
「軍に入るつもりはあるか?」
「入れねえよ......あんなの、まともな出身のやつしか」
「紹介があればそうでもない」
「なに?」
「......」
男は俺を見つめた。
俺も無言で男を見つめ返して、返事をまった。
「お前......一体......」
「そんなのはどうでもいい。お前の意思を聞いている」
男の態度がさっきに比べてかなり軟化した。
まわりの「兄弟」達をみた。
ポーションで治った連中も、男と同じような困惑の色が顔にあった。
男は俺に向き直り。
「で、でも。俺達はもう札付き、こういうのをやってるって手配されてるし」
「そんなのたいしたことじゃない。正直に話せ、今までで何人殺した」
「こ、殺したのは......十は超えてねえ......」
「この団全員でか?」
「だったら話は簡単だ。その数ならそれぞれ禁固年、あるいは従軍刑三年だ」
帝国法では、量刑次第ではあるが、従軍刑は禁固刑の十分の一になることがよくある。
理由はいくつかある。
まず帝国は「戦士の国」で、常に近隣の小国と戦っていて、兵士の補充が必要だからだ。
そして従軍刑で兵士にして、数年も生き延びれるような人間なら、囚人としてではなく兵か将として登用した方がいいという考え方がある。
そもそも、兵士は「消耗品」ですぐに死ぬのだから、従軍刑の長さにさほど意味はないというのもある。
兵務省と法務省の両方にいた俺は、その事をよく理解している。
「従軍刑なら合法的に軍に入れる」
「ぜ、絶対そうなるって決まらねえだろ」
「だから紹介といった」
「――っ!」
男はハッとした。
そして俺を見つめたまま、
「お前......何者だよ......」
「お前を確実に軍に送れる程度の立場にいる人間、とだけ言っておこう」
「......本当にできるのか?」
「騙されるな兄貴! そんなの俺達を騙そうとしてるにきまってる!」
「そうだそうだ! 騙して牢に閉じ込めるつもりだ!」
揺らぐ男に、部下達が大声をだした。
それを聞いて、男は力なくため息をついた。
「俺達をここで全滅させられるような男が、なんでそんなまわりくどい事をする必要があるか?」
「うっ......」
「そ、それは......」
男の指摘に、全員が黙り込んでしまった。
男は改めて俺を見つめ。
「本当に......か?」
「ペイユ」
「はい!」
ペイユは荷物の中から紙とペン、そして小さな板を取り出した。
板を持って、即席の机にして、俺の前に立った。
俺はペンをとって、紙にさらさらと文章を書き記していく。
「はい」
ペイユは改めて用意していた印をさしだし、俺はそれを受け取って、紙の最後――署名のそばに印を押した。
最後にもう一度文面を読み直してから、ぽかーんとしている男に渡す。
「これを代官か州長官のところにもっていけ、わるいようにはしない」
「......あんた」
「道は敷いてやった、後はお前の頑張り次第だ」
「......ありがとう、感謝する」
男は深々と頭を下げて、俺が渡した手紙を大事に握り締めた。
男たちが去った後、ペイユが聞いてきた。
「よかったんですかご主人様、あのまま逃がして」
「事実上の自首だ、問題ないだろう」
「でも、軍に入るんですよね。軍でも同じことをしてたら......」
ペイユの言いたいことはわかる。
軍にも、略奪をするというイメージがあるからだ。
「問題ない」
「も、問題ないんですか?」
「そうだ。民が盗賊行為で人を殺しても禁固刑ですむが、許可の無い略奪は軍法だと最低で死刑だ」
軍の規律を守るために、普通の法律よりも軍法の方が罰が重くなってる。
もちろん罰だけじゃない、出兵の際「どこそこを落としたら何日間の略奪を認める」という飴も付け加えなきゃならないが、それを今ペイユに話す必要もない。
「あくまで道を敷いてやった。そこからどうなるかは本人次第だ」
「そっか......さすがですご主人様。形は違うけど、私の時と一緒ですね」
「そうだな」
ペイユは家として引き取り、保護した。
男達は国として引き取り、保護した。
多少形は違うが、本質的には同じこと。
それを理解したペイユもまた、賢い女なのだと、俺はちょっとだけ嬉しくなったのだった。
アイビーは戦慄していた。
ノアがした事をまったく理解できなかった。
なんで盗賊を罰さずに、治療したり解放したり、挙げ句の果てには職を斡旋したりするのだろうか。
それを理解できなかった。
人間は、自分が理解できないものを恐れる。
アイビーはまだ、ノアを理解できずに恐れている、そんな段階だったが。
それと同時に、ノアの事が前よりも気になりだしたのだった。 | “Damn it!”
A man who seemed to be the leader jumped at me, wielding a weapon.
His weapon was a large, thick sword, which, combined with his size, he wielded with ease.
Leviathan’s volley of attacks wounded him, but the wound was minor enough that it didn’t interfere with his movement.
“Control, Livyathan.”
I restrained Livyathan from shaking with my presence, took it back to its original form, and held it as a sword.
I then used Livyathan to catch the man’s slash.
The sound of sword fights rang out, and sparks flew.
The man was startled momentarily when he saw the sword appear out of thin air.
Just as we were about to engage in a sparring match, the man gritted his teeth and pushed me aside, still competing with me, and came at me with his great sword swinging wildly.
“Uh-oh, oriyaaah! You little bastard!”
He slashed at me several times with such force that it seemed to create a whirlpool of air currents.
I caught and parried them with my leviathan.
The man was not focused solely on slashing.
Sometimes he would thrust his great sword into the ground, causing sand to roll up, or he would aim to distract me by sending spilled blood at me.
“...... I see, a good boss.”
“–!”
The man is confused and startled by my words.
“Stop him Livyathan, just hold his feet.”
{As you wish.}
Leviathan’s blade shuddered.
It was the same feeling as before, but a far thinner pillar of water – a needle of water was sent flying all at once.
I stopped all the bandits who were trying to escape while the man was distracting me.
“Y-You saw ......’
The man stopped attacking, glared at me with his arms ready, and twisted face.
“It was because your movements were unnaturally loud and over the top.”
“When did you give the orders?”
I asked the man.
To tell the truth, I didn’t realize at first that he was attacking me to get my attention.
It was just after he attacked me. I had never seen a bandit decide to retreat so quickly.
“I didn’t give them any orders.”
“Hou?”
“Life is the most important thing. I always tell them to run away when things go wrong.”
“They’re not my subordinates, they are my brothers.”[TN: DOM?]
“Fumu.”
I nodded slightly.
It was a relationship that was difficult for others to understand.
“Why didn’t you take the girl hostage?”
I asked again.
Peiyu and Ivy shuddered and stared at the man, holding up their hands in a gesture of reassurance.
“That’s not the kind of power difference that would help, you know”
“Fumu, quick assessment of the situation.”
I looked at the man again.
What he was doing was the wrong thing to do, and it was the wrong way to meet him, but...
The man in front of me is definitely a talent.
I turn my head to Peiyu and instructed looking over my shoulder.
“Peiyu, give me the potion.”
“Eh?”
“Heal the most severely injured first.”
Peyre was puzzled for a moment, but still obeyed my order and took a potion out of her baggage.
A newly developed potion, a precious commodity that can even be a strategic supply.
Unlike Livyathan’s water, it was made to be used immediately and carried in physical form.
Peiyu brought it out.
Then, like a senior, she asked Ivy to help her.
Ivy didn’t know what was going on, but she helped Peyre nonetheless.
“T-The wound was healed in an instant. ......!”
Ivy, seeing the potion for the first time, was astonished.
“This is something Master made.”
“He made it?”
“Yes, isn’t it amazing? It can cure any kind of injury.”
“That’s ...... but it’s true ....... Amazing .......”
Ivy is speechless at the potion’s potency.
And she wasn’t the only one surprised.
Even the bandits who had experienced the instantaneous recovery from injuries with the potion were astonished, and many of them didn’t know what had happened.
On the other hand, the man who was looking at the “whole” situation from a distance was surprised but was able to grasp what was going on.
He looked at me with a face that was half surprised and half cautious.
“Why are you helping me?”
“Because you are not a threat.”
“What?”
“You decided in an instant that you were no match for me. Then even if I heal everyone’s wounds, they won’t attack.”
“......”
“And people are treasures. There’s no reason to let them die unnecessarily.”
“It’s a robbery.”
“There is no death penalty for banditry. Under Imperial law, no matter how severe the sentence, it can’t even reach life imprisonment for it.”
In some cases, it’s a few hundred years in prison, but that’s still a different stage from life imprisonment or the death penalty.
“Even so.”
The man asks me, still wary.
“There’s no reason to go to the trouble of fixing it. So why are you doing this?”
“To ask a question.”
“What?”
“Your men – your brothers, I should say. If I heal their wounds, you will hear me out, won’t you?”
“...... what do you want to know? The weather? Or the location of the nearest oasis?”
“Ha-ha-ha, I see, the weather is worth talking about here.”
I laughed happily.
From the man’s tone, I felt that “the weather” was not a casual remark.
It’s true that the weather in this desert, in this poor environment, can be life-or-death information in some cases.
I understood that if he was willing to give it to me, we could talk.
“First, why do you do this kind of work?”
“What else is there to do besides make a living?”
“There’s no such business that doesn’t need money.”
It is said that the two oldest professions of mankind are mercenaries and prostitutes.
Men as mercenaries and women as prostitutes.
Both are things that can be done with just one’s body.
In that sense, it could be said that being a thief or a bandit is a ‘business that requires no capital’ that can be done with only one’s body.
“Have you thought about becoming a mercenary?”
“You can’t become a mercenary. Without proper armaments, you can’t even find an employer. Even if you are lucky to find one, you will be a pawn.”
I nodded and agreed.
I didn’t think of it that way, but it is true that employers usually look at equipment and weapons as part of the force.
In that sense, mercenaries need to have the “original capital” if they want to do it right.
However, if you are a bandit, you only need a minimal amount of weapons....... I see.
“Is that all you want to hear?”
The man said with irritation.
He looked as if he didn’t want to talk about how he ended up as a bandit and a thief.
Well, I guess so.
If it weren’t for a painful past, you wouldn’t have fallen into this line of work.
Especially a man who is as talented as he is.
“No, there’s one more thing.”
“Ask me quickly.”
“Are you willing to stop being a bandit?”
“Ha!”
The man snorted.
“If I could quit, I would have done it by now.”
“Listen to the question carefully. Are you willing to stop being a bandit?”
” ......if I could quit, I would have already quit.”
The man toned down.
It was the same word, but it had a different meaning.
The first time it was meant to be mean and contemptuous, but the second time it was more like an expletive ...... of bitterness .......
“Do you want to join the army?”
“I ain’t getting in, ...... only guys from decent backgrounds can get in.”
“Not a problem if you get a good introduction.”
The guy looked at me.
I stared back at him silently and waited for his reply.
“You are...... just a .......”
“That’s not important. I’m asking you your intentions.”
The man’s demeanor softened considerably.
He looked at his “brothers” around him.
The ones who had been cured by the potion had the same look of bewilderment on their faces as the man.
And the man turned to me.
“B-But. We’ve already been tagged and known to do this kind of thing.”
“That’s not a big deal. Tell me honestly, how many people have you killed?”
“K-killed ...... um not more than ten...”
“As a group?”
“Then it’s easy to talk. That’s years of imprisonment or three years in the military, respectively, for that number.”
Under imperial law, the military sentence is often one-tenth of the imprisonment sentence, although it depends on the amount of punishment.
There are several reasons.
First, the empire is a “nation of warriors,” constantly at war with smaller neighboring countries that need to replenish their ranks.
Then there is the idea that if a person can be made a soldier with a military sentence and survive for several years, it is better to promote him to a soldier or general rather than as a prisoner.
In the first place, some believe that since soldiers are “expendable” and will die soon, the length of the military sentence does not mean much.
Having worked for both the Department of Military Affairs and the Department of Justice, I understand this very well.
“If you get a military sentence, you can legally serve in the military.”
“Well, it’s not decided that it will be done.”
“That’s why I’m introducing you.”
“–!”
He looked at me.
“Who the... hell are you ......?”
“Let’s just say I’m someone who’s in a position to make sure you’re sent to the military.”
“Can you really ...... do that?”
“Don’t be fooled, brother! That’s just an attempt to screw us over!
“That’s right, that’s right! They’re trying to trick us and throw us in jail!”
His men shouted at the wavering man.
Hearing this, the man sighed weakly.
“Why would a man who could annihilate us here need to go through such a roundabout process?”
“Uuh. .......”
“T-That’s .......”
Everyone fell silent at the man’s point.
He looked at me again.
“Is it really ......?”
“Peiyu.”
“Yes!”
Peiyu pulled out a piece of paper, a pen, and a small board from the luggage.
She took the board and stood in front of me, using it as a makeshift desk.
I took the pen and began to scribble a few sentences on the paper.
“Yes.”
I took it and marked the end of the paper, near my signature.
After reading the text one last time, I handed it to the man who looked at me blankly.
“Take this to the governor or the secretary of state, and don’t make it any worse.”
“...... you.”
“I’ve paved the way for you, now it’s up to you to do your best.”
” ......Thank you, I appreciate it.”
The man bowed deeply and clutched the letter I gave him carefully.
After the men left, Peiyu asked me.
“Was it all right, Master, to let them go?”
“They are effectively turning themselves in, it won’t be a problem.”
“But they are going into the army. If they did the same thing in the military, they would have ......”
I understand what Peiyu is trying to say.
That is because the military also has an image of looting.
“No problem.”
“N-No problem, is that sure?”
“That’s right. If a civilian kills someone for banditry, they are only imprisoned, but for unauthorized looting, the minimum penalty is death according to military law.”
Military law imposes heavier penalties than the common law in order to maintain discipline in the army.
Of course, it is not only about the punishment, but also there’s a candy that says “defeat the place and you are allowed to loot for a few days” which is added when going to war, but there is no need to tell that to her now.
“I just laid out the path for him. What happens from there is up to him.”
“I see. ...... That’s as expected of you, Master. Although the form is different, it is the same as mine, isn’t it?”
“Yes, it is.”
I took Peiyu in as a retainer and protected her.
The men were taken in and protected by the nation.
The form is a little different, but it is essentially the same thing.
I was a little happy to know that Peiyu is also a smart woman who understood this.
Ivy was trembling.
She couldn’t understand what Noah had done at all.
Why would he not punish the bandit, but instead heal them, release them, and to top it off, offer them a job?
She couldn’t understand it.
People fear what they do not understand.
Ivy was still at that stage where she couldn’t understand Noah and was afraid of him.
“......”
At the same time, she began to be more curious about Noah than before. |
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} | 次の日、俺は単身でレアララトの庁舎にやってきた。
庁舎とはその町の公的な行政機関の事で、通常はその町を統治する領主なり代官なりがいる場所だ。
大通りに立って、その庁舎を見あげる。
最高建ての建物だが、見慣れない様式の建築物だった。
「......王宮、か」
俺の頭の中にそんな感想が浮かび上がってきた。
はじめて見る様式のものだが、外観についてる装飾だったり、門のこしらえだったり、街との高低差の位置関係だったり。
全てが、いわゆる王宮の要件を満たしていた。
「よほど楽しめたようだな」
俺はフッと笑った。
辺境に赴任した代官や総督が、その土地で王のごとき権力を振るう事は珍しくない。
同じ官職でも、都にいればただの中堅役人だが、辺境にでれば都から来たお偉いさんになる。
だから出世して帝国の中枢に食い込むよりも、官職が低くてもいいからずっと辺境の下級官吏でいたい、と言う話はよく聞く。
中には、政績を監察する監察官に賄賂を送って、留任するようにするものさえいる。
そういう意味では、不毛の地かつ辺境だったサラルリアはそういうのがやりやすかった土地だろうな――と、目の前の宮殿っぽい建物をみて全てを理解した。
まあ、それは今どうでもいいことだ。
俺は再び歩き出し、正門を守っている門番の前にやってきた。
この手の門番は基組で、観音開きの左右に控えているの的だ。
ここも例外ではなく、初老の男と若い青年の二人組が番兵をしていた。
俺が近づくのを見ると、若い門番がこれまた定番の武器である槍を構えて、穂先をこっちに突き出してきた。
「止まれ! 何者だ」
「こういうものだ」
門番と問答をしている時間も惜しい、と。
俺はリヴァイアサンの力を解放して、背中に紋章をだした。
船を意匠した、俺の紋章だ。
かつてレヴィアタンだった頃に編み出した技だ。
紋章とともに、もっとも俺に忠実な狂犬リヴァイアサンのプレッシャーで威圧する。
「「はは――」」
門番の二人が同時に槍を捨てて、その場に跪いた。
偶然通りかかった人間の中からも跪くものが現われた。
このプレッシャーで、相手に俺が皇帝である事を主張してわからせるのだ。
「中に入るぞ。ここのトップは誰だ?」
「は、はい!総督様がいらっしゃいます」
「わかった」
頷きつつ、二人の門番をその場に置き去りにして、庁舎に入る。
中に入ると様々な人間と遭遇するが、リヴァイアサンの威嚇が続いているから、会うもの会うもの全員が一瞬で俺に跪いた。
を聞いて、建物の最上階にあるそこにやってきた。
俺はノックをせず、扉を押して中に入った。
俺の――皇帝の執務室に勝るとも劣らないほどの豪華な調度品がしつらえられた政務室のなか、一人の男が机に脚を載せた格好で杯を傾けていた。
「だれだ? ノックくらいせんか」
「これでいいか?」
俺は開け放った扉に、後付けのノックをしてみた。
男は不機嫌な顔でこっちをみた――直後。
「へ、陛下!?」
驚き、椅子から転げ落ちた。
杯は床に落ちて割れて、琥珀色の液体が男の体にかかった。
男は床を這うようにして、俺の前に来てん這いのまま何度も何度も頭を下げた。
「へ、陛下がお越しとは知らず大変なる無礼を――」
「いい。......お前は余の顔を知っているな?」
俺はそういいながら、リヴァイアサンの紋章を引っ込めた。
紋章での身分明かしと、最初から俺の事を知っている人間の反応。
その反応が微妙に違ってて、目の前の男、サラルリアの総督は俺の顔を知っている方の反応だった。
「はっ! 都の親王邸で一度お顔を拝見したことがございます」
「ほう? 名前は」
「い、イエロー・ケーキと申します」
「ケーキ? ライスの身内か?」
「はっ、ライスは愚弟でございます」
「なるほど、ということはヘンリーの家人か」
「いえ、わたくしは下の家人でございます」
「......ほう」
面白い、と思った。
ライス・ケーキ。
それは第四親王ヘンリーの家人だ。
俺が12歳のころ、ヘンリーの下で兵務省につめていた頃にであった男で、兵には厳しい一方で、その手腕で上手く兵をまとめ上げて戦功を立てるという、豪腕タイプの武将だ。
そのライスの兄だというのだから、同じくヘンリーの家人だと思ったのだが、本人はオスカーの家人だという。
「珍しいな、兄弟で違う親王に仕えるのは。なにか理由はあるのか?」
「そ、それは......」
イエローは気まずそうに目を逸らしてしまった。
目をそらして、ちらちらと俺の顔色をうかがってくる。
俺にいうと気まずくなるタイプの話か?
......ああ。
「え?」
「大方、兄弟でそれぞれ別の親王に仕えて、どっちが即位してもライスの家は守られるって狙いか」
「そ、それは......」
「ははは、よい。十三親王だった余が即位するなど想像も出来なかっただろう。余のところに一族を送り込まなかったのは理解できる」
「きょ、恐縮です......」
「ふっ」
俺は薄く微笑んで、さっきまでイエローが座っていた椅子に座った。
そしてテーブル越しにイエローに目を向ける。
「立て、話がある」
イエローは俺の命令通り立ち上がった。
「いくつかやることがある。まず、このレアララトに死刑囚はいるか?」
「死刑囚......でございますか?」
「ああ。即決までいかなかった、執行待ちの死刑囚だ」
俺はイエローに聞いた。
昨晩思ったのは、叛逆とかで連座制になって一族皆殺しに決まった死刑囚を使おうとしたのだが、よくよく考えたらそういうのはほとんど即決で、帝都にも今は一人も存在しない事を思い出した。
仕方ないから近場で死刑囚を調達する方針に切り替えて、ここに来たのだ。
「何人かは......」
「そうか。えん罪と身代りはないか?」
「え?」
「余は法務大臣だ、この手のからくりはよく知っている。金ではいった身代りはいるのか?」
「そ、それは......い、いないはず――いえ、いません。明日になれば――ッッ」
色々言いかけては、ハッとして口をつぐむイエロー。
「落ち着け、お前の罪を問いに来たのではない」
「皇帝たる余がその程度のことでわざわざここまで来ると思うのか?」
「あっ......」
違う意味でハッとして、表情が少しだけ安堵する。
そもそも、身代りでの出頭とか処刑とか、そういう事は永遠に無くならないものだ。
ある程度の財力と権力があればそういうことがおきる。
主人がなにかをやらかしたとき、刑期が終わった後のあれこれを約束して、身代りで出頭させることは500年くらい前の書物でそういう事が確認されている。
事実として存在することで、この先も永遠になくならないだろう。
根絶不可能な事に時間を割くつもりはない。
「死刑囚の中で、えん罪とか身代りはいないかと聞いているだけだ」
「......何人かは」
「全部ではないのだな?」
「はい」
「ならちゃんとした死刑囚を使わせてもらう」
「ぎょ、御意。して、どのように......使う? のでしょうか」
「うむ」
俺は頷き、龍脈活性の事について、実務的な事だけを拾って、イエローに話すことにした。
頭の中で一通りまとめて、口を開きかけた――その時。
「総督様! 大変、大変です!!」
部屋の扉をぶち破ろうかというほどの勢いで、一人の中年が飛び込んできた。
飛び込んできたものを、イエローは怒りを露わに睨みつける。
「騒々しいぞ! 何事かはしらんが下がれ! 後で聞く!」
「それ所ではありません! 都からの特急文書です!」
「なに!?」
むぅ?
イエローは男から文書を受け取った。
そして手を振って男を下がらせた。
再び二人っきりになったところで、イエローは俺にうかがってきた。
「よろしいでしょうか、陛下」
「ああ、特急だ、余に構わず内容を確認しろ」
「はっ!」
イエローは恭しく腰を折ってから、特急で届いた文書を開封した。
「どうした」
イエローは顔をあげて、俺を見つめる。
「火急の案件につき、サラルリアにお越しの陛下を見つけて、同封したものをお渡しするように、とのことでございます」
そういいながら、話にもでてきた文書に同封している一回り小さな封書を俺に見せた。
「見せてみろ」
イエローは両手で封書を差しだした。
俺はそれを受け取って、開封して中を読む。
すると――驚いた。
それはヘンリーからの手紙だった。
内容はシンプルだった。
反乱勃発、皇軍敗走。
その一文だけ書かれていた。
ガタッ、と椅子を倒して立ち上がった。
「へ、陛下?」
「......なんでもない」
俺は深呼吸して、椅子に座り直した。
落ち着け、と自分に言い聞かせる。
大事だ、紛れもない大事だ。
だが――緊急事態ではない。
反乱の場所から帝都まで。
そして程度からこのレアララトまで。
どっちも特急便をつかっても、届くまでほどはかかる。
つまり、敗走それ事自体は七日前の事だ。
大事だが......
俺はもう一度深呼吸した。
皇帝としての落ち着きを取り戻せと自分に言い聞かせた。
そして、考える。
今すべき事と、これからすべき事を。
「イエロー」
「超特急ようの馬を用意しろ、先々までだ」
「御意!」
「いくつか勅命をだす、紙とペンの用意を」
「御意!!」
「それとここに人を残していく、余の名代、勅使だと思え」
「御意――え?」
特急に対しての超特急。
総督まで登りつめたイエローには、詳細は分からずとも事態の緊急さは分かった。
それで俺の命令に都度応じて、手の平に何かを書き込む仕草で覚えていたが、最後の言葉に固まってしまった。
「残していく......? 陛下はどちらへ?」
「その超特急便を使って、余は帝都に戻る」
驚愕するイエロー。
超特急便というのは、「人馬ともに命の保証はしない」、そういうものなのだ。 | The next day, I came alone to the Leararat government office.
A government building is a public administrative agency of a town and is usually the place where the lord or governor who governs the town resides.
Standing on the main street, look up at the government building.
It’s a three-story building at most, but it’s an unfamiliar-style building.
“... the royal palace, huh?”
That kind of impression popped up in my head.
It’s a style I’ve never seen before, but it’s the decorations on the exterior, the construction of the gate, and the positional relationship with the city.
Everything met the requirements of the so-called royal palace.
“Seems like they had a lot of fun.”
I chuckled.
It is not unusual for a deputy or governor posted to a frontier region to wield power like a king in that region.
Even if they hold the same official position, if they are in the capital, they are just mid-level officials, but if they are in the frontier, they become high-ranking officials from the capital.
Therefore, it is common to hear people say that they would rather stay as a low-ranking official on the frontier, even if their official position is lower than rise to the top and enter the center of the empire.
Some of them even bribe the inspector-general who oversees their political performance so that they will stay in office.
In that sense, the barren and remote area of Saralira would have been an easy place to do such a thing, I thought as I looked at the palace-like building in front of me.
Well, that’s not important now.
I started walking again and came to the gate guard guarding the main gate.
Usually, these gatekeepers are a pair of two people, standing on either side of the double-opening gate.
This place was no exception, with an elderly man and a young man serving as the guards.
When they saw me approaching, the young gatekeeper held up his spear, another standard weapon, and thrust the tip of the spear toward me.
“Stop! Who are you?”
“I am this.”
It was not worth the time to argue with the gatekeeper, so.
I released Livyathan’s power and displayed the crest on my back.
It is my crest, designed after the ship.
It was a technique I had developed when I had Leviathan.
I will use my most loyal and mag dog, Livyathan’s power to intimidate along with the crest.
“”Hah-hah–“”
Two of the gatekeepers dropped their spears at the same time and knelt on the spot.
Some of the people who happened to be passing by also kneeled.
With this pressure, it will make them know that I am the Emperor.
“Let’s go inside. Who is the head of this place?”
“Y-yes! The governor is here.”
“I understand.”
With a nod, I leave the two gatekeepers in their place and enter the government building.
Once inside, I encounter various people, but because of Livyathan’s continued intimidation, everyone I meet instantly kneels down to me.
I learned from the kneeling people where the Governor’s office was and came to it on the top floor of the building.
I didn’t knock, but pushed the door open and went in.
In the government office, furnished as luxuriously as the Emperor’s office, a man was sitting at a desk with his legs propped up on the desk, sipping from his cup.
“Who is it? Can’t you at least knock?”
“Is that all right?”
I knocked on the open door.
The man looked at me with a sour expression—- then.
“Y-Your Majesty!?”
Startled, he fell off his chair.
The cup fell to the floor and broke, splashing amber liquid on the man’s body.
The man crawled across the floor, came in front of me, and bowed again and again on all fours.
“Y-Your Majesty, I am very sorry, I didn’t know you were coming...”
“Good. ...... you know my face, don’t you?”
I said this and retracted Livyathan’s crest.
Revealing my identity with my crest versus the reaction of someone who has known me from the beginning.
The reaction was slightly different, and the man in front of me, the governor of Saralaria, was the one who knew my face.
“Yes! I have seen you once at the Imperial Prince’s residence in the capital.”
“Hou? What is your name?”
“Y-Yellow Cake, sire.”
“Cake? Are you related to Rice?”
“Yes, Rice is my brother.”
“I see. So you must be one of Henry’s retainers, huh.”
“No, I’m a retainer of His Highness the Eighth.”
“.......Hou”
Interesting, I thought.
Rice cake.
He’s the retainer of the fourth prince, Henry.
When I was years old, I met him when I was working with Henry in the Ministry of War. He was a tough soldier, but at the same time, he was a strong military commander, and he used his skills to successfully organize his troops and achieve success in war.
I thought that since he was Rice’s older brother, he was also Henry’s retainer, but he said that he was Oscar’s retainer.
“It is unusual for two brothers to serve different Princes. Is there a reason for that?”
“T-That’s.......”
Yellow looked away awkwardly.
He averted his eyes and glanced at me.
Is this something that would be awkward for you to tell me?
......Ahh.
“Eh?”
“The brothers will each serve a different Prince, and whichever one ascends to the throne, the house of Rice will be protected.”
“Well, that’s .......”
“Hahaha, good. You could not have imagined that I, the thirteenth prince, would ascend to the throne. I can understand why you did not send your family to me.”
“A-apologies. ......”
“Fuh.”
I smiled faintly and sat down in the chair that Yellow had been sitting in a moment ago.
I looked at him over the table.
“Stand up, I need to talk to you.”
Yellow stood up as I had ordered.
“I have a few things to do. First, is there a death row inmate here in Leararat?”
“A death-row inmate..... sire?”
“Yeah. A death row inmate awaiting execution who did not reach an immediate decision.”
I asked Yellow.
What I thought last night was that I was going to use a death row inmate who had been convicted of rebellion or something like that, and whose whole family had been sentenced to death, but then I thought about it and remembered that most such cases are decided immediately, and none of them exist in the Imperial Capital at the moment.
I had no choice but to switch to a policy of procuring death row inmates in the vicinity, and here we are.
“Some of them are at .......”
“I see. Is there anyone on false charge and substitution?”
“Eh?”
“I’m the Minister of Justice. I know how this works. Do you have a substitute who is paid for?”
“T-that’s ...... no it shouldn’t be–no, it’s not. Tomorrow...”
Yellow spouted off a lot of words but then stopped talking.
“Calm down, I’m not here to question you about your sins.”
“Do you think I, the Emperor, would come all the way here for something as trivial as that?”
“Ah, .......”
He was taken aback in a different way, and his expression was a little relieved.
In the first place, the substitution attendance and execution, of such things will not disappear forever.
That kind of thing happens when there is a certain amount of wealth and power.
It is confirmed in a book written about years ago that when a master has done something wrong, someone is forced to substitute himself for the master with the promise that after the sentence is over he will do something about it.
It is a fact that exists and will never disappear.
There is no time to waste on something that cannot be eradicated.
“I’m just asking if there is anyone on false charges or scapegoats among those on death row.”
“There are...... some.”
“But not all of them?”
“Yes.”
“Then I’ll use the proper death row inmates.”
“B-By your will. Then, how will you use them......?.”
“Umu.”
I nodded and decided to tell Yellow about the dragon vein revitalization, picking up only the practical details.
After putting it all together in my head, I was about to open my mouth—then.
“Governor-sama! There’s a serious, very serious situation!”
A middle-aged man jumped in, almost smashing through the door of the room.
Yellow glared angrily at the one who jumped in.
“You’re being noisy! I don’t know what’s going on, but back off! I’ll hear you later!”
“That’s not it, sire! It’s an express letter from the capital!”
“What!?”
Umu?
Yellow took the document from the man.
He waved his hand and let the man go.
When we were alone again, Yellow asked me.
“May I read it, Your Majesty?”
“Yeah, it’s an express, check the content without concern for me.”
Yellow reverently bent down and opened the express document.
“What is it?”
Yellow looked up and stared at me.
“It is an urgent matter, and I have been asked to find His Majesty in Saralaria and give him the enclosed document.”
With that, he showed me a smaller envelope enclosed in the document he had mentioned.
“Let me see it.”
Yellow held out the envelope with both hands.
I took it, opened it, and read what was inside.
Then – to my surprise.
It was a letter from Henry.
The content was simple.
Rebellion has broken out and the Imperial Army has been defeated.
That was all that was written.
With a clatter, I knocked over the chair and stood up.
“Y-Your Majesty?”
“......, it’s nothing.”
I took a deep breath and sat back in my chair.
Calm down, I told myself.
It’s important, undeniably important.
But – it’s not an emergency.
From the place of the rebellion to the Imperial Capital.
And from there to Leararat.
Both would take about seven days to reach here, even with express service.
In other words, the defeat itself happened seven days ago.
It’s important, but ...... depending on the case, it’s a situation that can’t be rushed.
I took another deep breath.
I told myself to regain my composure as an emperor.
And then I thought.
What I should do now and what I should do in the future.
“Yellow.”
“Yes!”
“Prepare a horse for the super-express, ahead of time.”
“By your will!!”
“I have some decrees. Get a pen and paper ready.”
“By your will!”
“And I’m leaving a man here to serve as my personal representative.”
“By your will—eh?”
The super-express for the limited express.
As a man who had risen to the rank of governor, Yellow understood the urgency of the situation, even if he didn’t know the details.[TN: Should I have used viceroy from the beginning instead of the governor?]
So he responded to my orders each time, remembering them by the gesture of writing something in the palm of his hand, but he froze at the last word.
“Leaving ......? Where is His Majesty going?”
“With that super-express service, I am going back to Imperial Capital.”
Yellow was astonished.
The super express service is a service that does not guarantee the lives of either man or horse. |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | しばらく頭を撫でた後、陛下は俺の腰の魔剣に目をやった。
レヴィアタンか、なるほど、本当に縮んでおるのだな」
陛下の口ぶりからして、レヴィアタンが縮んだのも情報を仕入れてたみたいだ。
それはつまり、俺の屋敷にも陛下に情報を届ける人間がいると言うことだ。
当然と言えば当然か。
「ノアよ」
「はい」
「それを再び大きくすることは出来るのか?」
陛下の言葉は聞こえているだろうが、レヴィアタンは俺が直で聞くまで答えなかった。
ますます忠犬だなと思いつつ、返事をそのまま陛下に報告した。
「どうやら出来る様です」
「やって見せろ」
俺はレヴィアタンを抜いて、地面に突き立てた。
柄のてっぺんに手をかけて、レヴィアタンに大きくなれと念じる。
すると、レヴィアタンはグングン伸びていった。
の俺の肉体にふさわしい長さから、初めて会った時の、大人が振るいやすい長さに戻った。
「おお......」
目の前で起きた変化を見て、陛下が驚嘆した。
「なるほど、確かに前代未聞だ。それに」
「?」
「完全に御しているのだな、あの魔剣レヴィアタンを。これについて回った忌まわしき歴史を考えればすごいと言わざるを得ない」
忌まわしき歴史、か。
まあ、こいつの狂犬っぷりは俺もよく知っている。
相レイドークに招かれていったパーティーで、俺が止めていなければ無駄口を叩いた男、いや下手したらその場にいる人間を皆殺しにしてたかもしれない。
レヴィアタンを止める人間がいなければ、確かに「忌まわしき歴史」が次から次へと作られるだろうなと納得した。
頷き、レヴィアタンを俺専用のサイズにして、腰のあたりに戻す。
「見た目も似合う。そうだ、ノアに師匠をつけてやらんとな」
「師匠ですか?」
「剣術の師匠だ。魔剣を振るう技を身につけた方がいいだろう。クルーズ」
陛下が呼ぶと、それまでどこにいたのか、腹心の宦官が音もなく姿を現わした。
「ノーブルを呼んでこい、今すぐにだ」
クルーズは命令を受け、そのまま立ち去った。
庭園で陛下と世間話をしながら待った。
分後、騎士の鎧を纏った中年の男がやってきた。
男は父上の前に片膝をつき。
「ダミアン・ノーブル、参上いたしました」
「うむ、よく来た。お前にやってもらいたいことがある」
「ノアの事は知ってるな。剣を教えてやって欲しい」
「はっ、微力を尽くします」
命令を受けて、ダミアンは立ち上がってこっちを向いた。
陛下には膝をついたのに対して、俺には会釈程度に頭を下げた。
「殿下の指南役を拝命したダミアン・ノーブルと申す。以後お見知りおきを」
「ノーブルは帝国の腕前、剣では並ぶものなしと謳われるほどの剣豪だ」
そういって軽く頭を下げたダミアン。
嬉しいのか嬉しくないのかよく分からない、仏頂面をしている。
それはいつもの事なのか、陛下も気にはしなかった。
「ノーブルのもとで励め」
「早速だが、殿下。まずは素質を確かめさせていただきたく」
ダミアンは腰の剣を抜いて、切っ先を俺に向けた。
これにはさすがに陛下も驚いたのか。
「まだ何も教えていない子供だぞ」
「ご安心を、技ではなく素質をみるだけゆえ」
「ふむ」
陛下はあっさり納得した。
そんなに簡単に納得していいのか、とも思ったけど、そこは「帝国で一番の腕前」に対する信頼なのかもしれない。
「どこからでも斬りかかってくるといい」
「わかった」
俺はレヴィアタンを抜いて、ダミアンに斬りかかって。
真上から振り下ろす俺の斬撃、それをダミアンは剣を水平に構えて受け止める構えを取った。
キーン!
軽い金属音の直後。
「......えっ」
ダミアンは驚愕した。
ついさっきまで持っていた剣が、明後日の方角に飛んでいき、ぐるぐると回って、地面に突き刺さった。
無造作に振り下ろした俺の斬撃は、ダミアンの剣と打ち合った瞬間、そのまま巻き付いてひねり上げた。
刀身同士が吸い付くような巻き込み、そのまま持っていると手首が曲がっちゃいけない方に曲がってしまうダミアンは堪らず剣を手離した。
その剣は巻き上げられた勢いのまま、ぐるぐると遠くへ飛んでいった、という訳だ。
ダミアンは呆然と俺を見つめ、遠くに突き刺さった自分の剣を見て、天を仰いだ。
そして、最後は陛下に向き直って、片膝をついて。
「申しわけございませぬ、陛下。私には殿下に教えられるものはなにもありません」
「どういう事だ、分かる様に説明しろ」
「殿下の力も、速さも、それらは全て子供のものでございますが、剣の技は既に達人の域に達しておられる」
「先ほどのは、技のみで私から剣を巻き上げた」
「......」
「教えるなどおこがましい、私の完敗です」
「......おぉ」
さすがの陛下も一瞬、いや十秒くらいは状況を飲み込めずにポカーンとしていたが、我に返るとさっきよりも嬉しそうな顔をした。
「そうか、そうなのか」
「そうか、あはははは。やるではないかノア、すごいぞノア」
「はっ。さすがは陛下のご子息でございます」
「あはははははは!」
陛下はものすごく嬉しそうに、天を仰いで大笑いした。
「いい、いいぞ。そうだ!」
陛下は何かを思い出したように手を叩いた。
「今年の騎士選抜、メインの選考官をノアにやってもらおう」
「この上なくふさわしい人選かと」
ダミアンは陛下に同調した。
騎士選抜、それは帝国の年に一度の大イベントだ。
呼ばなくなったが、本来は「ミーレス帝国」というのが正式な名前だ。
ミーレスとは古い言葉で戦士、つまりミーレス帝国とは「戦士の国」という意味だ。
帝国は伝統として武人を重宝する、武のみが唯一実力で立身出世を果たせる道とすら言われている。
それを決めるのが、年に一度の騎士選抜だ。
帝国各地から勝ち抜いてきた人間が、帝都で死闘を繰り広げ、勝ち残ったものには騎士の称号が与えられて、一気に上流階級の仲間入りを果たす。
その選考官を俺にやれって言うのだ。
これは非常に、俺に都合がいい。
なぜかと言えば、最後まで勝ち抜いた騎士は、その時の選考官の部下になるのが最初の仕事だ。
俺は視界の片隅にある、普段はあまり気にしてないステータスをみた。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
アララート帝国十三親王
性別:男
レベル:1/∞
MP F 水 E+SS
体力 F+F 地 F
――――――――――――
何故か他の人間にはない、俺だけある「+」の能力。
それは俺の部下、俺の領地の人間次第で上積みされるものだ。
つまり、俺は強い部下を持てば俺自身強くなる。
騎士選抜の選考官は、願ってもない命令だ。
俺は一歩前に進み出て、陛下に片膝をついて。
「御意、選考官の任を見事果たして見せます」
「うむ。それなら早速一つだけ決めよう。ノアはどういう選考にする」
陛下の質問。これまた選考官の権利だ。
最後に残った人間を自分の部下にするのだから、選考のやり方を決める権利がある。
例えばリーグ戦とトーナメントじゃ、最後まで勝ち残ってくる人間の傾向がまるで違う。
俺は少し考えた。
何の事はない、より強い人間がいいのだから。
「一つだけ」
「帝国各地の予選を、全て帝都で。俺の目の前でやって欲しい」
「なに? それは何故だ」
「才能を見逃したくない。全てを自分の目で見て、決めたい」
帝国は大きい、こういう大きなイベントだと、地方の予選レベルじゃ完全にコントロール出来ない。
そこにもし俺の部下にふさわしい人間がいて、なんか変な事で落とされたらもったいない。
だから、全部自分の目で見たいと思った。
「おお、おおおぉ」
「陛下?」
「陛下は」
天を仰いで恍惚な表情をする陛下に変わって、ダミアンが説明をした。
「御立派な考えに感動しておられる」 | The th prince from the Land of Warriors
After patting my head for a while, His Majesty looked at the demon sword at my waist.
”So that’s Leviathan now, I see, it really has shrunk.”
From the way His Majesty spoke, it seems that the Leviathan’s shrinking was also a source of information.
That means there’s someone in my mansion who delivers information to His Majesty in a timely manner.
I guess that’s only natural.
” Noah.”
“Yes”
“Can you make it big again?”
I know His Majesty would have heard the words, but the Leviathan didn’t answer until I asked it in person.
I thought it was more and more of a loyal dog, and reported the reply directly to His Majesty.
“It appears that I can do it,”
“Show me.”
I pulled out the Leviathan and thrust it to the ground.
I put my hand on the top of the hilt and reminded Leviathan to be bigger.
Then the Leviathan grew steadily.
It went from a length appropriate for my six year old body to one that was easy for an adult to wield when I first met it.
“Oh....”
His Majesty marveled at the changes that took place before his eyes.
“I see, it is indeed unheard of. Besides,”
“?”
“It’s perfectly accurate, isn’t it, the Demon Sword Leviathan? Considering the abominable history of this, I have to say, it’s amazing.”
Abominable history, huh?
Well, I’m well aware of this guy’s mad dog nature.
If I hadn’t been there to stop it, the man who spoke uselessly at the party invited by the third vizier, Reydok, might very well have killed the man-or worse, all the people present.
I was convinced that if there was no one to stop the Leviathan, then surely ‘abominable history’ would be made one after another.
“Okay.”
I nod and put the leviathan back around my waist, sizing it up for my own use.
“It looks good on you, too. Yes, I need to get Noah a master.”
“A master?”
“He’s a master of swordsmanship. You’d better learn the art of wielding the Demon Sword. Cruz.”
When His Majesty called out, the gutted eunuch, where he had been until then, appeared without a sound.
“Go get Noble, right now.
Cruz took his orders and left without further ado.
I waited in the garden, making small talk with His Majesty in the garden.
About twenty minutes later, a middle-aged man in knight’s armor arrived.
The man dropped to one knee before father.
“Damien Noble, I am honored to serve you.”
“Mm, good to see you. I need you to do something for me.”
“You know Noah. I want you to teach him to use a sword.”
“Yes!, I’ll do my best.”
At the command, Damien stood up and turned to me.
He bowed his head to me to the point of a bailout, whereas he kneeled to His Majesty.
“My name is Damien Noble and I have been appointed to be your highness’ instructor. Henceforth, I hope that you will be familiar with me.”
“Noble is the best swordsman in the Empire and is claimed to be unmatched in swordplay.”
Damien bowed his head lightly as he said that.
I’m not sure if he’s happy or not, he puts on a stern face.
Maybe that’s always been the case, but His Majesty didn’t mind it either.
“Be encouraged under Noble.”
“Let’s get right to it, Your Highness. Let us see what you have to offer.”
Damien drew the sword from his waist and pointed the cutting edge at me.
His Majesty was surprised by this, as expected.
“He’s a child who hasn’t been taught anything yet.”
” Rest assured, I am not looking for skills, just character.”
“Hmm.”
His Majesty was easily convinced.
I didn’t know if he could be convinced so easily, but maybe that was his faith in ‘the best in the Empire’.
”You can come slashing at me from anywhere.”
I pulled out my leviathan and slashed at Damien.
My slash, swinging down from directly above, and Damien took a stance to catch it, holding his sword horizontally.
Keen!
Right after a light metallic sound.
“...eh...”
Damien was astonished.
The sword he had held just a moment ago flew in the opposite direction, whirling around and stabbing into the ground.
My slash, which I haphazardly swung down, wrapped around and twisted just as it struck Damien’s sword.
The sword blade wrapped around each other as if it were sucking, and Damien, whose wrist bent in a way it shouldn’t if he held it as it was, couldn’t help but let go of the sword.
The sword flew far away from me with the momentum of being wound up.
Damien stared at me dumbfounded, looked at his sword stuck in the distance and looked up at the heavens.
And finally, he turned to His Majesty and got down on one knee.
“I’m sorry, Your Majesty. I have nothing to teach His Highness.”
“What is this all about? You gotta help me understand.”
” His Highness’s strength and speed, they are all of a child’s nature, but his sword skills have already reached the level of a master.”
“Mastery?”
“The one before, he hoisted the sword from me with only the right technique.”
“....”
“I can’t teach you anything. I’ve lost.”
“...Oh.”
As expected of His Majesty, he was pouting for a moment, or even ten seconds, unable to swallow the situation, but when he came back to himself, he looked happier than before.
“Well, ha-ha-ha. You’re doing great, Noah, that’s great, Noah.”
“Ha! You are indeed His Majesty’s son.”
“Hahahahahahaha!”
His Majesty looked extremely happy and smiled broadly to the heavens.
“Good, good. That’s right!”
His Majesty clapped his hands as if he remembered something.
“This year’s knight selection, let’s have Noah be the main selection officer.
I could not have picked a better person.”
Damien agreed with His Majesty.
The knight selection, it’s the big annual event of the Empire.
Now, the term Empire on earth means our Empire, and although no one calls it that anymore, the official name was originally ‘Meeres Empire’.
Meeres is an old word for warrior, or the Empire of Meeres means ‘Land of Warriors’.
The empire has a tradition of valuing the warrior, and it is even said that warriorship is the only way to get up and running on merit.
This is determined by the annual selection of knights.
People who have won from all over the empire fight to the death in the imperial capital, and the winner is given the title of knight and at once joins the upper class.
He wants me to be that selector.
I thought about it for a moment.
This is very, very convenient for me.
The reason being, the knight who wins in the end is the first to become the selector’s subordinate at that time.
I looked at the status out of the corner of my eye, a status I normally don’t pay much attention to.
――――――――――――
Name: Noah Araratth Prince of Ararat Empire
Gender: male
Level: /∞
HPFMPFStrengthF+FStaminaF+FIntelligenceFSpiritFSpeedFDexterityF+FLuckF+F FireFWater
E+SSWindFEarthFLight FDarknessF
――――――――――――
For some reason, I have a unique “+” ability that other people don’t have.
It depends on my subordinates, the people in my domain, to build it up.
In other words, if I have strong subordinates, I will become strong myself.
The knight selector is a welcome decree.
I stepped forward and got down on one knee.
“As you wish, I will faithfully execute the selector’s duty.”
“Hmm. Then we should make one quick decision. What kind of selection will Noah make?”
His Majesty’s question. This is another right of the selectors.
Since the last person to be selected is to be your subordinate, you have the right to decide how the selection process is conducted.
For example, in a league and a tournament, the tendency of the people who survive to the end is completely different.
It’s nothing, because I want the stronger person.
” Just one.”
“Yeah, say it.”
“I want all the qualifiers from all over the Empire in the Imperial City. I want it done right in front of me.”
“What? Why is that?”
“I don’t want to miss out on any talent. I want to see everything for myself and decide for myself.”
The empire is big, and with a big event like this, I can’t completely control it at the local qualifying level.
It would be a shame if there was someone there who was worthy of being under my command and they were dropped for something weird.
So I wanted to see the whole thing with my own eyes.
“Oh, ooooh,”
“Your Majesty.”
Turning to His Majesty, who was looking up to the heavens in ecstasy, Damien explained.
“He is impressed by your splendid thoughts,” |
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} | 「そうだ、なんだこの男は。なぜ襲ってきたのかを吐かせろ」
オスカーは自分の御者に命じた。
俺もそいつが取り押さえてる暴漢の顔をのぞき込んだ――すると。
「お前か」
「知っているのかノア」
襲ってきたのはなんと、あの借金取りだった。
周りをきょろきょろと見る、王邸の前で土下座してた連中の姿がない。
アリーチェから始まっの事を話した
「なるほど、完全に逆恨みってわけだ」
「ふざけるな! 離せゴルァ!」
「聞き苦しいね、あごをはずして」
「はっ」
オスカーの命令で、御者の男はものすごく慣れた手つきで借金取りのあごを外した。
手際がいい、ただの御者じゃないな。
まあ、こいつの事なんてどうでもいい。
それよりもレヴィアタンとリンクした鎧だ。
オスカーは使いこなしてると感嘆したが、本当にそうなのかどうかはまだ分からない。
もうちょっと試してみたいな。
俺はオスカーを見あげて。
「兄上、一つ頼まれてくれないだろうか」
「なんだ、言ってみろ」
「どれだけこの鎧を使いこなせてるのかを試したい。兄上が抱えている魔術師を一人貸してもらえるか?」
「そんなのお安いご用だ。何をしたいんだ?」
「えっと......」
俺は考えている事をオスカーに話した。
オスカーはそれを黙って最後まで聞いてから、ニカッと笑顔を浮かべて。
「それなら私がやってやろう」
「ああ。実際どうなのか私も見たい、自らやった方が手応えとしても分かるというものだろ?」
「なるほど。じゃあ俺の屋敷の中で」
頷き、オスカーと一緒に屋敷に入る。
その場を離れる直前にオスカーが御者の男に目配せをした、借金取りはどこかへ連れて行かれた。
親王を襲撃したんだ、それ相応の刑が待ってる。
俺たちは屋敷の建物には入らず、庭にやってきた。
そして向き合って、十メートルくらいの距離をとる。
「いくよ」
頷くと、オスカーは呪文を詠唱しだした。
足元に魔法陣を広げて、貴族の服が高まっていく魔力でなびく。
直後、たくさんの炎の矢が一斉に飛んできた。
一三――全部で
十七本の炎の矢が飛んできて、俺の数メートル前で一斉に散って、それから全周囲で俺に襲いかかってきた。
俺は動かなかった、泰然としたまま佇んでいた。
飛んできた炎の矢は、レヴィアタンリンクの指輪が変形した盾に防がれた。
矢は十七本、俺の周りに出した盾も十七枚。
オスカーが撃ってきた十七本の矢をきっちり全部防いだ。
「はぁ......すごいな。私のこれをこんなに完璧に防いだのはノアが初めてだ」
「そうなのか?」
「うん、これでも鍛錬を続けてるんだけどね。いやあ、すごいよノアは。これは是非陛下にお見せしたいな」
興奮気味のオスカーに、俺は頷く。
「もうちょっと把握してからだな」
「なんで?」
「陛下に見せたら必ず『どうなっているんだ』って聞かれる。その時に自分の力を説明できないんじゃしょうがないだろ?」
「なるほど。賢いなノア、そこまで考えが及ぶとは」
オスカーに微笑み返して。
俺は、この能力をもっと自分の物にするために色々と考えた。
翌日、気分転換のために、俺はアリーチェの居る店に出かけた。
あの借金取りはもはや再起不能だろう、アリーチェがもしまだ心配してるんなら、その事を告げて安心させようという思いもある。
そう思って店に行った。
するとアリーチェがちょうど歌っていた。
歌うのを邪魔するのは不本意だ、俺はチップ含めて十リィーンを店員に渡して、一番いい席で彼女の歌を聴いた。
うん、やっぱりだ。
もっと歌っていけば伸びる。間違いなく伸びる。
将来が楽しみだなと思いながら、静かにアリーチェの歌を聴いていた。
一曲が終わり、アリーチェは息を整える。
幕間におひねりを投げる客がそこそこいる。
そんな中、客の一人がおぼつかない足取りで舞台に近づく。
「よー姉ちゃん、いー歌だったぜ、ほれ、これはご褒美だ」
「ありがとうございます」
「ちょっとこっち来てよ、俺に酌をしてくれよ」
「すみません、そういう事は――」
この手の酔っ払いには慣れているのか、アリーチェは顔色一つ変えずに断ろうとしたが。
「ああん、引っ込んでろよおめえ。この女は俺が先に目をつけたんだぞ」
反対側から、別の酔っ払いが現われた。
「うるせえ、こっちが先だ」
「てめえこそうるせえ、スッ込んでろ」
酔っぱらい二人、自分のルールを押しつけながらアリーチェを争った。
アリーチェは困り果てた顔をした。
「やったろうじゃねえか!」
二人はますますヒートアップして、それぞれ拳を握って相手に殴り掛かった。
ゴゴーン。
鈍い音が立て続けに二回した。
「いってえええ!」
「ぐおおお!」
二人は振るった拳を押さえて痛がった。
その二人の間に――俺が割り込んでいた。
このままでは血を見る。
この二人がどうなろうとどうでもいいが、アリーチェが巻き込まれるのはむかつく。
だから俺は割り込んだ、二人のパンチの間に。
するとレヴィアタンが反応して、リンクした指輪から二つの盾をだしてパンチを防いだ。
酔っ払いは、全力で鉄の盾を殴って、腕を押さえて悶絶した。
「なんだてめえ!」
俺は無言でレヴィアタンを抜いて、二人を斬った。
次の瞬間、二人の服がばらばらに切り裂かれて、真っ裸になった。
「な、ななな」
「ひぃぃぃ!」
一瞬で服だけを切り裂かれた事で、男達は青ざめて、悲鳴をあげて逃げ出した。
手加減したのは、アリーチェの前で血を流したくないだけだ。
レヴィアタンでの威嚇もいいが、それで「倒して」しまうとアリーチェの心に悪影響が出ないとも限らない。
だからこうして、コミカルに退場してもらった。
「何だ今のは、すごい剣術だったぞ」
「あれは親王様。はぁ......さすが親王様、剣の腕も一流だなあ」
周りがざわざわしているが、まっぱに剥いて追い払ったということもあって、雰囲気は和やかなものに保たれた。
俺はアリーチェに向かって。
「大丈夫か?」
と聞いた。
「はい......ありがとうございます」
「ん。おい店主」
「は、はい! すみませんでした親王様」
ちょっと離れた所で成り行きを見守っていた店主は、慌てて――テーブルに足をぶつける程慌てて駆け寄ってきた。
「これからああいう客は入れるな」
「で、ですがこの店はあの様な客に支えられているようなものでして。私どもも商売として――」
「分かった分かった。じゃあ店ごと買う」
「――へ?」
驚く店主。俺は懐から持ち歩いている金を取り出して、そいつに渡す。
「一千リィーンある、店ごと買い取るからああいうのは断れ」
「は、はい! ありがとうございます!」
店主は受け取った金を高く掲げながら、何度も何度も頭を下げた。
「あの......殿下」
「どうしたアリーチェ、浮かない顔をして」
「こんなにして下さって、私、どうご恩をおかえしすればいいのか」
「歌えばいい」
俺は即答した。
「俺がお前に求めてるのは歌だ。お前は歌ってさえいればいい」
「歌ってさえ、いれば」
「ああ、期待している。いずれ陛下にも聴かせたい、それまでに精進しろ」
「はい......」
アリーチェは感激に目を潤わせて、頬を染めた。
「あの......殿下?」
「もう一曲、聴いていって下さいますか?」
「ああ、歌え」
俺は笑顔で頷き、一番後ろの自分の席に戻った。
俺が座るのを待って、アリーチェははにかんだ微笑みを浮かべた後、ハープの弦にふれ、再び歌い出した。
「むっ......」
出だしから明らかに違っていた。
歌い出すと、ますます顕著だった。
アリーチェの歌が店を包む。
俺も、残っている客も。
全員が、アリーチェの歌に聴き惚れた。
それまでのアリーチェの歌とは明らかに一線を画している。
一瞬で成長――いや進化したかのようだ。
才能があるのは分かっていた、だから上手くなるのは納得出来る。
だが、なぜ急に?
不思議なまま歌に聴き惚れているうちに終曲を迎えた。
瞬間、万雷のような拍手が鳴り響いた。
アリーチェの羽化に立ち会った客が全員立ち上がり、惜しみのない拍手を贈った。
「本当、どういう事なんだろう」
「殿下のお力かと」
「ん?」
横から話しかけられて、振り向く。
知った顔だ、たしか――。
「バイロン、か」
第三宰相のパーティーで会ったあの商人、バイロンだ。
バイロンは尊敬する表情を浮かべて。
「なんでここに......いやそれよりも俺の力って言うのは?」
「殿下があの娘を進化させたのでございます。殿下に応えようと、あの娘が一皮剥けたのかと」
「そういうことがあるのか」
「稀に。それをなせた殿下はやはり素晴らしいお方かと」
「そうか。あれは続くのか?」
「殿下が目を掛けてやる限りは」
バイロンは言い切った。
ならばよし。 | “Right, what’s this guy’s problem? Get him to tell us why he attacked us.”
Oscar told his men.
So I looked into the face of the man who was subdued – and I said.
“It’s you.”
“Do you know him, Noah?”
What a surprise, it was that debt collector who attacked me.
I looked around, and I didn’t see the guys who were on their knees in front of the th Prince’s residence.
I told him about the series of things that started with Alice.
“Yeah, it’s totally counterproductive.”
“Fuck you! Hey, let go of me!”
“Too loud.. Let’s remove that jaw.”
“Ha!”
At Oscar’s command, the gent removes the debt collector’s jaw with an extremely expert hand.
Cleverly, not your average Joe.
Well, I don’t care about this guy.
More importantly, it’s the armor linked to the Leviathan.
Oscar marveled at how well he was using it, but I’m still not sure if he really is.
I’d like to try it out some more.
I look up at Oscar.
“‘Brother, could I ask you to do one thing for me?”
“Yes, please speak up.”
“I’d like to see how well I can handle this armor. Since brother has expert magicians with him, can you help me with this one?
“It’s no problem. What do you want to do?”
“Um, .......”
I told Oscar what I was thinking.
Oscar listened to the end of it in silence, and then smiled with a snicker.
“Then let’s get on with it.”
“Yeah. I’d like to see how it works, wouldn’t it be more informative to do it yourself?”
“Okay. Well, then, let’s go inside my house.”
“Yup.”
Nodding, I entered the mansion with Oscar.
Just before we left the place, Oscar gave a look to the man, the debt collector was being taken somewhere.
He attacked a prince, and he’s going to get the punishment he deserves.
We didn’t enter the mansion building, but rather came to the yard.
Then we face each other and get about ten meters away from each other.
“Let’s go.”
Nodding, Oscar began to chant a spell.
A magic circle was spread out at his feet, and his aristocratic clothes fluttered with the rising magic power.
Immediately afterwards, many flaming arrows flew in unison.
One, two, three – seventeen in all.
Seventeen flame arrows flew in and scattered all at once a few meters in front of me, and then they attacked me in the entire perimeter.
I didn’t move, I was standing in a state of peace.
The flame arrows that flew at me were blocked by a shield that was transformed by the ring from the Leviathan Link.
There were seventeen arrows and seventeen shields that were put out around me.
All of the seventeen arrows that Oscar shot at me were exactly blocked by all of them.
“Haha ...... that’s amazing. Noah was the first person to prevent this so perfectly.”
“Is that so?”
“Yeah, I’m still working out on this one. Wow, that’s amazing, Noah. I’d love to show this to His Majesty.”
I nodded at the excited Oscar.
” I suppose I’ll have to figure it out a bit more.”
“Why?”
“If I show it to His Majesty, he will surely ask me ‘how it happened’. If you can’t explain your power to him then, then what’s the point?”
“I see. Clever Noah, I didn’t know you could think that far ahead.”
I smiled back at Oscar.
I’ve been thinking a lot about making this ability more my own.
The next day, for a change of pace, I went out to the store where Alice is.
I figured that the debt collector would no longer be able to recover, and if Arice was still worried about it, I’d tell her and reassure her.
So I went to the store with that in mind.
And, there Alice was just singing along.
I didn’t want to interrupt her singing, I gave the clerk ten reeks, including the tip, and took the best seat to listen to her sing.
Yeah, I knew it.
The more she sings, the more she will grow. Definitely, she’ll grow.
I was quietly listening to Alice’s song, thinking that I’m looking forward to the future.
When the song ended, Alice caught her breath.
There are a few guests here and there who throw a treat in between acts.
In the midst of this, one of the guests approaches the stage with a dazed step.
“Yo sis, that was a good song, see, here’s your reward.”
“Thank you very much.”
“Come over here and pour me a drink.”
“I’m sorry, that’s not what I meant–“
Alice was used to this kind of drunk, though she tried to refuse without changing her face.
“Ahn, back off, you. I had my eye on this woman first.”
Another drunk appeared from the other side.
“Shut up. I’m going first.”
“You shut up and get in there.”
Two drunks, fighting Alice while imposing their own rules.
Alice looked troubled.
“You fucking did it!”
The two men grew more and more heated, each clenching their fists and hitting the other.
Gogon.
There were two dull noises in rapid succession.
“gaaah!”
They held their fists that they swung and were in pain.
Between the two of them – I was the one who had interrupted them.
At this rate, blood will be seen.
I don’t care what happens to these two, but it would be disgusting for Alice to see it involved.
So I interrupted, between their punches.
Then Leviathan reacts and pulls out two shields from the linked ring to block the punches.
The drunkards punched the iron shields as hard as they could, holding their hands and screaming in agony.
“What the hell!”
I silently pulled out my leviathan and slashed them both.
In the next moment, their clothes were torn apart and they were completely naked.
“N,Noooo.”
“Hiiii!”
The men turned pale and ran away screaming, having only their clothes torn off in an instant.
I held back, I just didn’t want to spill blood in front of Alice.
Threatening them with Leviathan was fine, but if I “beat” them with it, it might not necessarily have a negative effect on Alice’s mind.
So this is how I had them comically exit the scene.
“What the hell was that, that was some amazing swordplay!”
“That’s the prince himself. Huh. ...... As expected of the prince, his swordsmanship is also top-notch.”
The atmosphere was buzzing around me, but the fact that I had stripped and chased them away in a mop, kept the atmosphere peaceful.
I turned to Alice.
“Are you okay?”
I asked her.
“Yes ...... thank you so much.”
“Hm. Hey, owner.”
“Yes, sir! Excuse me, my lord.”
The owner, who had been watching the course of events at a distance, came running up to me in a hurry – so hurriedly that his foot hit the table.
“From now on, don’t let customers like that in.”
“And yet, this is the kind of customer base that sustains our shop. We’re in the business of...”
“Okay, that’ s fine. I’ll buy the whole store, then.”
“—-Eh?”
The owner is surprised. I pull the money I’m carrying around in my pocket and give it to him.
“I’ve got a thousand liens, I’ll buy the whole shop, so don’t let that happen again.”
“Yes, sir! Thank you!”
The shopkeeper bowed his head over and over again as he held the money he had received high.
“That ...... your highness.”
“What’s the matter with you, Alice, you don’t look so happy.”
“I don’t know how I can ever repay you for all you’ve done for me.”
“Just keep singing.”
I answered immediately.
“All I want from you is a song. All you have to do is sing.”
” Just keep singing, Yes”
“Yeah, I’m counting on it. I hope His Majesty will eventually hear it, and in the meantime, devote yourself to it.”
“Yes ......”
Alice’s eyes welled up with emotion and her cheeks dyed.
“Um, Your Highness ......?”
” Another song, if you would?”
“Yes, sing.”
With a smile, I nodded and went back to my seat at the back of the room.
Waiting for me to sit down, Alice gave a beaming smile, then touched the strings of her harp and started to sing again.
“Mmm ......”
It was clearly different from the start.
As she started to sing, it was more and more pronounced.
Alice’s song enveloped the restaurant.
Me and the rest of the customers.
All of us fell in love with Alice’s song.
It was a clear departure from Alice’s previous songs.
It’s as if she grew – or evolved – in an instant.
I knew she had talent, so it makes sense that she would get better.
However, why all of a sudden?
The end of the song came as I was mysteriously listening to the song.
A moment later, there was a thunderous applause.
All the guests who had witnessed Alice’s hatching stood up and gave generous applause.
“Really, I wonder what that means,”
“I think it was His Highness.”
“Hmm?”
Someone speaks to me from the side and I turn around.
I know that face, I think–
“Byron, huh?”
It was that merchant I met at the Third Vizier’s party, Byron.
Byron gave him a respectful look.
“Why are you here ...... or more importantly, what do you call it my help?”
“Your Highness made her evolve the way she did. I thought the girl had grown out of her shell to respond to His Highness.”
“Is that possible?”
“A rare occurrence. But that makes you, your Highness a great person indeed.”
“Right. Is that going to last?”
“As long as you keep your eye on her, Your Highness.”
Byron assured me.
Then it’s alright. |
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} | 王宮、謁見の広間。
玉座に座っている俺の前にの皇子がいた。
王、ヘンリー・アララート。
王、オスカー・アララート。
二人は謁見の間に入ってきて、所定の位置につくなり、流れるような動きで俺に片膝をついた。
「臣、オスカー」
「そしてヘンリー。召喚に応じ参上いたしました」
「二人とも、顔を上げてくれ」
「はい」
「仰せのままに」
二人は頷き、言われた通り立ち上がった。
俺が二人の名前を呼ぶと、ヘンリーは平然と、オスカーはほんだけ眉間に皺を作ってから。
「「はっ」」
と、声を揃えて応じた。
「今日二人に来てもらったのは他でもない。二人に今のうちに渡したい物があってね」
「今のうち、ですか?」
ヘンリーが微かに首をかしげて聞き返した。
の治世はこれから、様々な施策を行っていく。その前に、まだ何もしていない今のうちだ」
前提をまず二人に話した。
ヘンリーもオスカーも、いまいち要領を得ないっていう顔をしていた。
「レイドーク卿」
水を向けると、そばで控えていたジャン=ブラッド・レイドーク――第一宰相に昇格したばかりの男が手招きして、若い宦官が現われた。
宦官の手にはそれぞれトレイのような物を持っていて、何か長い物がそのトレイの上に置かれているが、更に赤い布をその上に被せているから、何があるのか分からない。
二人の宦官はそれを持って、それぞれヘンリーとオスカーの前に立った。
そして、俺がジャンに頷き、ジャンが宦官に目配せする。
赤い布が取り払われた。
二本の、ガラスで作られた長剣が姿を見せた。
「こ、これは!」
「クリスタルソード......」
ヘンリーとオスカー、二人は顔が真っ赤になるくらい驚いた。
「そう、クリスタルソード。別命『免死の剣』だ」
皇帝は、その気になれば帝国法を完全に無視できる。
それは皇帝が帝国最高の権力者であり、つまるところ帝国とは皇帝の私有物という思想から来ている。
その皇帝の特権の一部を臣下に下賜するのが、このクリスタルソードだ。
「知っての通り、これを持っている人間は、謀反以外なら、どんな罪でも一回までは無効化――つまり免除出来る。死罪でさえもだ」
「これを私達に......?」
驚くオスカー、眉間に皺を作って、信じられないって顔で俺をみる。
それもまあそのはず。
死罪さえも免除出来るこれは、臣下に下賜する物としては最大級となるものだ。
「ああ、二人に」
「身に余る光栄ですが――なぜ私達に?」
ヘンリーが真顔で聞き返してきた。
「上皇陛下の二十人近い息子の中で、ヘンリー、そしてオスカー。二人がもっとも有能だ。余の治世では、二人の力を大いに借りたいと思っている」
「それは臣下としての本分――」
「政務によっては、ぶつかることもある」
ヘンリーの言葉を遮った。
「この『免死の剣』は、ぶつかることを、不敬を恐れずにやって欲しい、という意思表明だ」
「「......」」
「引き受けてくれるか」
二人は視線を交わしてから、改めてひざまづいて。
「「一命にかえましても」」
と受け入れてくれた。
その後、二人はクリスタルソードを受け取って、謁見の間から退出した。
「さすがでございます、陛下」
残ったジャンが、感動した目で言ってきた。
「オスカー様が感動した眼差しをしておられた。ヘンリー様も平然としておられたが、クリスタルソードを受け取った手が若干震えておりました」
「良く見ているな」
「初手から最大級の恩賞。これで両殿下も陛下の為に身を粉にして働きますな」
ヘンリー、そしてオスカー。
将来、もし帝位に何かをしてくるとするならこの二人だ。
そうなる前に、二人には臣下でいることを、心の底から納得してもらわないとな。
夜、離宮の書斎。
王宮のそばの、元王邸。
陛下が上皇になられて、新しい宮殿の建築が終わるまで。
王宮は上皇陛下に、俺は十三親王邸を改めた離宮で寝食をする事になった。
その書斎の中で、政務に関する書類に目を通していると。
「陛下」
声とともに、宦官のグランが入ってきた。
「どうした――その服にあっているじゃないか」
「え? あっ、ありがとうございます」
グランは照れくさそうに笑った。
俺が皇帝になったのとほぼ同時に行った二つの人事。
一つはジャンを第一宰相に、もう一つはグランを宦官頭にすることだ。
にクルーズがいたように、俺にも腹心が必要だ。
グランは物覚えが良く、こっちの立場に立って物事を考える事も出来るから、まずは取り立ててみた。
そのグランが、宦官頭を意味する服に着替えていた。
「まさかこんなすごい地位になれるとは思ってもいなかったです」
に仕えていれば、更に出世もさせてやる」
「はい!」
「で、なんなんだ?」
「あっ、そうでした。これです」
グランはそう言って、書斎に入ってきた時からずっと大事そうに持っていたトレイを俺の目の前に差し出してきた。
トレイの上には精巧な人形が二つあって、うつ伏せに置かれている。
その背中には、それぞれオードリーとアーニャの名前が書かれている。
皇后オードリー、そして庶妃アーニャ。
「本日の夜伽の方を選んでください」
皇帝になっていくつか起きた変化の一つが、これだ。
毎晩、宦官が「今晩の相手」を聞きに来るのだ。
こうして、「今日相手できる」妃たちの人形を差し出して、皇帝が気に入った相手のをひっくり返して仰向けにする。
すると、宦官たちが素っ裸にしたその相手を簀巻き(ものすごい高価な布で)にして、皇帝の部屋に届けてくる。
皇帝の一番重要な仕事は世継ぎを作ることだ、といわんばかりにシステム化されている。
ちなみに毎晩選んだ相手はしっかりと内務省によって記録される。
調べて驚いたのだが、父上はあの歳で未だに「毎晩」なのだ。
そりゃあ兄弟だけでも二十人近く、姉妹も入れて百人近くにもなる。
ちなみに、男が少ないのは常識だ。
帝位相続権をもつ男子は、「なぜか」夭折が多いからだ。
俺は人形をちらっと見てから。
「今日はいい。二人にはもう休んでもらえ」
「いいんですか!?」
驚くグラン。
「なんだ、どっちかから褒美でももらって、薦めるように頼まれたか」
「そんなことはしません!」
グランは慌てながらもきっぱりと否定した。
まあ、そういうこともあるってだけだ。
宦官が妃から金をもらって、人形を目のつきやすいポジションに置いたり、そもそもライバルの人形を外したりするという事もよく行われている。
女には月の物がある、当然毎日がいいという訳にはいかないから、そういう小細工がしやすいのだ。
「ふっ、冗談だ」
「ああ、今はこっちのが重要だ」
俺は手元にある、グランが入ってくる前からみていた書類をさした。
「それは......?」
「騎士選抜だ。新しい皇帝が即位する時は大々的にやるのが伝統だからな」
戦士の国だった時からの伝統だ。
戦士の国の皇帝は良く親征する、そして時には戦場で死ぬこともある。
皇帝が死ぬような事態は、その部下も大勢死んでるという事態でもある。
そのため、新しい皇帝の為に新しい騎士を大量に選ばなくてはいけない――という時代から残された伝統だ。
それとは関係なく。
人は宝、そして可能性だ。
最大規模の騎士選抜を、適当に済ますわけにはいかない。
よりも仕事優先なんて......さすが陛下」
「そういうわけだ、今夜はいい。それよりも濃いめの茶を淹れてきてくれ」
「分かりました!」
ちなみに、望めば簀巻きにした妃をここに呼んで、「終わった後」に返してそのまま政務を再開することも出来る。
父上は、それをよくやっていたらしい。
数日後、王宮の中の大広間。
謁見の間とほとんど同じ作りで、真ん中の玉座だけ、通常の二階建てくらいの高さにある広間。
純粋に執務じゃなくて、権威を強調したい時に使う広間だ。
俺はゆっくりと玉座の階段を上っていき、一番上に辿りつき、振り向く。
同時に、ヘンリー、そしてオスカーを含む1000人を超す人間が一斉に跪いた。
一番前の二人から、まるで水面に広がった波紋の如く、綺麗に跪くのが広まっていく。
1000人以上が揃って、一人に跪く。
胸にえも言われぬ高揚感が沸き上がる。
これが、貴族――いや。
皇帝にだけ許された楽しみだ。 | The royal palace, audience hall.
Before me on the throne, there were two princes.
The Fourth Prince, Henry Ararat.
The Eighth Prince, Oscar Ararat.
They walked into the audience hall, positioned themselves in place, and knelt down to me in a fluid motion.
“You vassal, Oscar.”
“And Henry. We have answered your summons.”
“Both of you, please raise your heads.”
“Yes.”
“As you command.”
They nodded and stood up as they were told.
When I called their names, Henry remained calm and Oscar wrinkled his brow for a moment.
And, they responded in unison.
“I’ve asked you both to come here today for one simple reason. I wanted to give you both something for the moment.”
“For the moment?”
Henry tilted his head slightly and asked.
“Yes, for the moment. My reign is about, to begin with, many measures. But before that, it’s time to do something that hasn’t been done yet.”
I told them both the premise first.
Both Henry and Oscar looked at me as if they were having trouble understanding me.
“Sir Reydok.”
A young eunuch appeared at the beck of Jean Brad Reydouk, who had been waiting nearby and had just been promoted to First Vizier.
In each of the eunuch’s hands was a tray of some sort, with something long on top of the tray, but there was also a red cloth over it, so it was hard to tell what was on it.
Both eunuchs took it and stood in front of Henry and Oscar respectively.
Then I nodded to Jean and he looked at the eunuch.
The red cloth was removed.
Two long swords made of glass were revealed.
“T-This is!”
“Crystal Swords ......”
Henry and Oscar were so startled that their faces flushed red.
“Yes, the crystal sword. Otherwise known as ”The Sword of Immunity”.
The emperor can completely ignore the laws of the empire if he wants to.
This is because the Emperor holds the highest power in the empire, and the empire is his domain.
The Crystal Sword is a gift from the Emperor to his subjects.
“As you know, a person who possesses this sword can be exempted from any single crime, except treason. Even death penalty.”
“Giving this to us ......?”
Oscar’s brows creased in surprise as he looked at me in disbelief.
It’s just as well.
This is one of the greatest gifts that can be given to a vassal, even exempt from death charges.
“Yes, for both of you.
“It’s a great honor, but why us?”
Henry asked back with a straight face.
” Among the nearly twenty sons of His Majesty the Emperor, Henry, and Oscar. They are the most capable. In my reign, I hope to be able to rely heavily on them.”
“That is what a vassal is supposed to —-.”
“Depending on political matters, we may come into conflict.”
I interrupted Henry.
“The Sword of Immunity is an expression of my desire that you do so without fear of disrespect.”
“......”
“Will you accept?”
The two exchanged glances, then knelt down again.
“”Even if it costs me my life.””
They accepted.
Afterward, they received the crystal sword and left the audience hall.
“Very good, Your Majesty.”
Jean, who remained behind, said with impressed eyes.
“Oscar-sama had an impressed look in his eyes. Henry-sama seemed unconcerned, but his hand was trembling slightly as he accepted the crystal sword.”
“You’re watching closely.”
“This is the biggest reward of all. Now Your Highnesses will work their hearts out for you.”
Henry, and Oscar.
In the future, if anybody is going to do anything to the throne, it will be these two.
Before that happens, I’ll have to convince them deep down to stay as my vassals.
In the evening, in the study of the detached palace.
The former residence of the th Prince, near the Royal Palace.
After becoming the Emperor and until the construction of the new palace is finished.
The palace was given to the Emperor, and I was to sleep and eat in the detached palace that was converted from the Thirteenth Prince’s residence.
In the study, I was looking over some documents related to political affairs.
“Your Majesty.”
With a voice, the eunuch Gran came in.
“What happened – your clothes look good on you.”
“Eh? Ah, Thank you, Your Majesty.”
Gran smiled embarrassed.
Two appointments were made at about the same time I became Emperor.
The first was to make Jean the First Vizier and the second was to make Gran the head eunuch.
Just as my father had Curuz, I needed a confidant.
Gran has a good memory and can think from my point of view, so I decided to take him up first.
He had changed his clothes, signifying that he was the head eunuch.
“I never thought I’d be in such a great position.”
“If you serve me properly, I’ll even let you move up the ladder.”
“Yes!”
“So, what is it?”
“Ah, that’s right. Here.”
Gran said and held out in front of me the tray that he had been holding so carefully since he came into the study.
There were two elaborate dolls on the tray, placed face down.
On their backs were written the names of Audrey and Anya, respectively.
Empress Audrey, and Concubine Anya.
“Please select your lady for the night session today.”
“Hmm.”
This is one of the several changes that have occurred since I became Emperor.
Every night, a eunuch would come to ask me who my “companion for the night” would be.
The eunuchs would present the dolls of the “available” consorts, and the Emperor would turn over the one he liked and lay it on its back.
The eunuchs would then wrap the naked partner in a screen (with a very expensive cloth) and deliver it to the emperor’s room.
This is a systematic way of saying that the most important job of the emperor is to create an heir.
Incidentally, the Household Ministry keeps a record of the partners chosen each night.
I was surprised to find out that my father, at his age, is still doing this “every night”.
That would be so considering that I have nearly brothers and a hundred sisters.
By the way, it is common to find that there are few men.
The reason why there are so few males is common knowledge because many males who have the right to inherit the emperor’s throne “somehow” die prematurely.
Regardless of that.
I glanced at the doll.
“Not today. I want the two of them to get some rest.”
“Is that okay!?”
Gran was surprised.
“What, did one of them give you a reward and ask you to recommend them?”
” No sir, of course not!”
Gran panicked but firmly denied it.
Well, that’s just the way it is sometimes.
Eunuchs are often paid by the consort to place dolls in positions where they can be easily seen, or to remove the dolls of rivals in the first place.
Women have the things of the month, and of course, they can’t be good every day, so it’s easy to do such tricks.
“Fuu, I was joking.”
“Yeah, this is more important right now.”
I pointed to a document in my hand that I had been looking at before Gran walked in.
“This is......?”
“Knight selection. When a new Emperor ascends to the throne, it’s tradition to have a big ceremony.”
It’s a tradition that dates back to the time when we were a Warrior Nation.
The Emperor of the Warrior Nation often goes on friendly campaigns and sometimes dies on the battlefield.
When the Emperor dies, it means that many of his men also perish.
Therefore, a large number of new knights have to be chosen for the new Emperor – a tradition leftover from the times.
People are treasures and potential.
The largest selection of knights can’t be done haphazardly.
“You prioritize work over night thing. ...... As expected, Your Majesty.”
“That’s why not tonight. And brew me a nice strong cup of tea.”
“I understand!”
Incidentally, if I wanted to, I could call the consort who had been wrapped up in a mattress here, return her ” when I was done ” and resume my political duties directly.
I heard that my father used to do that a lot.
A few days later, a large hall in the royal palace.
It was almost the same as the audience hall, only the throne in the middle was as high as a normal two-story building.
It’s a room used when you want to emphasize your authority, not purely for business.
I slowly walked up the stairs to the throne, reached the top, and turned around.
At the same time, more than a thousand people, including Henry and Oscar, all knelt down at once.
Starting with the two people at the front, the kneeling spread out like ripples on the water.
Over a thousand people kneeled to one person.
An inexplicable feeling of elation welled up in my chest.
This is what nobility – no.
This is the kind of excitement that only the Emperor is allowed to enjoy. |
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} | バイロンの部下も、俺のメイドも。
箱に入った金貨共々部屋から退出した後、残った俺とバイロン。
再び向き合った俺たち。
バイロンは咳払して――表情が変わった。
さっきまでとは違う真顔になった。
「殿下に......お願いしたいことが」
「シンディーの事です」
「彼女がどうかしたか?」
それに、バイロンのこの表情はなんだ?
彼のこんな表情は初めて見る、どういう事なんだ?
「嫁ぎ先を考えておりまして」
「なるほど。たしかシンディーは今年で......」
「19になります」
「うむ、そうだったな」
出会った時は10歳だった。
俺の4つ年上で――そうか、出会ってからもう10年近いのか。
「そろそろ行き遅れですし、賢く育ったのはいいのですが、その分相手が......」
苦笑いして、ため息をつくバイロン。
シンディーはバイロンが見い出して、養女にした女だ。
賢いまま育ったのはいいが、それで行き遅れるのは養父として胸中複雑だ、ってことか。
「たしかに、20歳にもなろうかってのに嫁いでないのは外聞がよろしくないな」
「はい。つきましては......殿下にご紹介頂けないかと」
「俺に? ......なるほど」
話は完全に分かった。
主君が部下の婚姻を斡旋するのは珍しいことではない、いや、むしろ当たり前だ。
シンディーは賢いし、働き者だしで俺も失念していたけど、このままでは俺のメンツにも関わる。
バイロンは俺の部下、つまりシンディーは実質俺の家人だ。
つまり、俺はシンディーにとって父親に近い存在でもある。
娘が行き遅れでまずいのは俺も一緒だった。
「しかしな......うーん」
「何か」
「難しい話だ。シンディーの才能が惜しい。あれは俺に付き従っている人間の中でもトップレベルに有能な部類だ。むざむざ他の男に渡すのは惜しい」
「それまでに評価を......ありがとうございます」
シンディーの得意が内事なら側室にしたのだがな。
屋敷に宦官を使うのと同じことで、正室側室は基本外には出さない――他の男と接触させないものだ。
シンディーという才能を家の中に閉じ込めておくのはもったいなさ過ぎる。
「人選はじっくり考える。彼女はいずれ総督にして封地の一角を任せたいと思っている。半端な男じゃダメだ」
「ええっ!」
バイロンは声をあげて、目を見張った。
「どうしたそんなに驚いて」
「そ、総督ですか? 女の総督は前代未聞では......?」
「前代未聞だが、ダメって決まりもない。何となく居ないだけだ」
皇帝や皇族の正室側室に宦官をつけて他の男から遠ざけるのはちゃんと決まりがある、宮内省の内法で決まっている。
それに比べて、高官に女が居ないのは「なんとなく」でしかない。
なんとなくなら、従う理由もこだわる理由もない。
「人は宝だ。そもそも女は全臣民の半数を占めている。才能も男だけで掬った場合に比べて女も掬えば倍近くにはなる。見て見ぬ振りはもったいない」
「さすがでございます、その発想まではありませんでした」
「とにかく、シンディーの事は俺に任せろ」
「はい! ありがとうございます!」
翌日、昼過ぎくらいになると、いきなり宦官が来て、俺を王宮に呼び出した。
王宮に行って、書斎で陛下に謁見する。
以前の事があって、この書斎の宦官は耳と舌をきっちり潰した人間に全部入れ替えた。
その書斎の中で、陛下に片膝ついて頭を下げる。
「召喚に応じ参上いたしました。本日はどのようなご用でしょうか」
「よく来たノア、顔をあげよ。朝礼で諮る前に、お前の意見を聞いておこうと思ってな」
「はっ......どのような事でしょう」
「西で、クルゲのギャルワンが動いた」
「なんですって!?」
頭がかつん、と殴られた様な衝撃を覚えた。
クルゲのギャルワン。
クルゲというのは宗教の名前で、ギャルワンは代々そこの最高指導者の名だ。
ギャルワンは「転生」という形で受け継がれ、前のギャルワンが没した直後に、なんらかの形で新しいギャルワンが指名される。
今のギャルワンはギャルワ。
かなりの野心家であると知られている人物だ。
「反乱でしょうか」
「それしかないだろう。しかも、トゥルバイフに使者を送ろうという動きがある」
「......なるほど」
顔が深刻になるのが自分でも分かった。
トゥルバイフは西にある帝国の属国で、これまたいつ裏切ってもおかしくない、不穏な動きが続いてるところだ。
「お前ならどうする、ノア」
俺を見つめる陛下。
その目――なんだか試されている気がするけど、事態が事態だ、気のせいだろう。
俺は考えた。
「クルゲの動きは確かなのでしょうか」
「ああ、そっちは間違いない。使者は今のところまだ出発していないようだ」
陛下は言い切った。
これまでの、陛下の耳目の凄さを身を以て体験している、この前提条件は間違いないだろうと思った。
ならば。
「......今すぐ兵を出すべきです。電光石火に動き、まずはクルゲを叩く」
「電光石火、か?」
「はい。同時に厳重態勢を敷き、トゥルバイフの所に使者が辿り着く前に止めるのです」
「なぜそうするのだ?」
「大前提として面作戦は避けるべきかと。トゥルバイフが乗ってしまえば討伐自体手こずるし、後始末も大変でしょう。しかし、使者がそもそも辿り着いていないのであれば......」
「......トゥルバイフは何も知らなかった、で押し通せる」
「その通りでございます。トゥルバイフはいずれなんとかしなければならない相手でしょうが、今はまず、討伐の対象を絞るべきかと」
「なるほど。うむ、ノアの意見を聞いておいてよかった。いつもながら凄いな、お前は」
どうやら意見は気にいってもらえたようだ。
「せっかくだ、ノア、お前が行ってくれないか」
「俺が、ですか?」
首をかしげる俺。
「うむ。クルゲの討伐だ」
「それはヘンリー兄上の方が適任かと」
俺は即答した。
まったく迷う事なく答えた。
「ヘンリーが? なぜ」
「親王の中で、実際に兵を率いたことがあるのは兄上だけです。しかも兄上の騎士、ライス・ケーキは用兵に長けている。故に兄上が適任だと俺は思います」
一気に言い切ると、陛下は何故か、瞠目するほど驚いていた。
その驚きは実に十数秒間続いた後、陛下は首をかしげながら更に聞いてきた。
「お前も相当強くなったのでは無いか? 騎士も育っていると聞く」
「私たちのは個の武勇です」
俺はまったく揺らぐ事無く、陛下を見つめながら答えた。
「兵を率いるのに適しているか分かりませんし、経験もありません。此度の大任、荷が勝ちすぎています」
「なるほどな......」
陛下はそういい、俯き加減で、白い髭を撫でながら呟く。
「昔は出来ても、力を手に入れた後同じことが出来る人間は少ない」
「?」
「負けるが勝ち......言行は一致していて当たり前、ということか」
呟きが段々と小さくなっていき、最後の方は何を言ってるのかまったく聞き取れなかった。
何かまずい事でも言ったのだろうか。
いや、そんな事はないはずだ。
それにたとえまずかったとしても、自分のポリシーに沿った発言だ。
胸を張って陛下の沙汰を待つのが筋という物だ。
俺は狼狽えずに、陛下を見つめて、次の言葉を待った。
しばらくして、陛下は顔を上げた。
その顔は賛美の――満足したような顔だった。
「お前はすごいな、ノア」
「恐悦です」
何をほめられたのか分からないが、陛下の下賜は例え自害用の毒薬だろうと恭しく受け取るべきもの。
いわんや褒め言葉など、だ。
「よし、ではその方向で宰相らと諮る。よく意見してくれた、これからも頼むぞ、ノア」
陛下が満足そうだったので、とりあえずこれで良しって事にした。 | Byron’s subordinates and my maid.
After they left the room with the gold coins in the box, Byron and I stayed behind.
We faced each other again.
Byron cleared his throat and his expression changed.
He had a different expression on his face than before.
“I have a ...... request for you, Your Highness.”
“Hmm? What is it?”
“It’s about Cindy.”
“Is there something about her?”
And what’s with the look on Byron’s face?
I have never seen him look like this. What’s going on?
“It’s about her marriage.”
“I see. I believe Cindy is going to be ......”
“She’ll be this year.”
“Umu, right.”
She was ten when I met her.
Four years older than me – well, it’s been almost ten years since we met.
“It’s about time, and it’s good that she grew up smart, but what about......”
Byron smiles bitterly and sighs.
Cindy is the girl that Byron found and adopted.
As an adoptive father, he’s happy that she grew up to be a smart girl, but it’s complicated for him to let her fall behind.
“You’re right, it’s not a good look to be married off when you’re almost twenty.”
“Yes. So I was hoping that His Highness would introduce her to .......”
“By me? ...... I see.”
I completely understand.
It is not unusual for a lord to arrange marriages for his subordinates, or rather it is natural.
Cindy is smart and hardworking, and although I may have lost track of her, she’s a liability to my reputation.
Byron is my subordinate, which means Cindy is practically under my household.
In other words, I’m almost like a father to Cindy.
It’s not good for my daughter to be late.
“But you know, ...... hmm...:
“What is it?”
“It’s a tough one. Cindy’s talent will be missed. She’s one of the most talented people I know. It would be a shame to give her to another man.”
“For your such assessment ......, thank you.”
If Cindy’s forte was domestic affairs, I would have made her my concubine.
Similar to having eunuchs in the house, the ladies of the family are generally not allowed out of the house – no contact with other men.
It would be a shame to keep Cindy’s talent locked up in the house.
“I’ll think about her selection carefully. I want to make her a governor and give her a part of the fief. We cannot afford a half-hearted person.”
“Ehh!”
Byron’s eyes widened as he shouted.
“What’s so surprising?”
“G-Governor, is it? Isn’t a female Governor unheard of ......?”
“It’s unheard of, but there’s no rule against it. We just don’t have one for some reason.”
It is standard practice for the Emperor and the Royal Family to have eunuchs in their regular and side chambers to keep them away from other men, according to the Internal Affairs Ministry’s laws.
In comparison, the lack of women in high-ranking positions is only a matter of “somehow”.
There is no reason to obey or insist on it.
“People are treasures. In the first place, women make up half of all subjects. If you scoop up women as well, you’ll have almost twice as much talent as if you scoop up men alone. It would be a shame to turn a blind eye to them.”
“As expected of you, sir, I hadn’t thought of it that way.”
“Anyway, leave Cindy to me.”
“Yes, sir! Thank you very much!”
The next day, around mid-afternoon, a eunuch suddenly came and summoned me to the royal palace.
I went to the palace and had an audience with His Majesty in his study.
Because of what happened before, the eunuch in this study was replaced by a man who had his ears and tongue destroyed.
In his study, I bowed down on one knee to His Majesty.
“I have come in response to your summons. How can be of service to you today?”
” Welcome Noah, look up. I wanted to get your opinion before I discuss it at the morning meeting.”
“In the west, Kuruge’s Galwan has moved.”
“What the!?”
I felt a shock as if I had been hit on the head.
Kuruge’s Galwan
Kuruge is the name of a religion, and Galwan is the title for the supreme leader of the religion for generations.
Galwans are passed on in the form of “reincarnation,” and immediately after the death of the previous Galwan, a new Galwan is appointed in some way.
The current Galwan is Galwan VI.
He is known to be a very ambitious person.
“A rebellion, perhaps?”
“That’s the only possibility. Moreover, there is a movement to send a messenger to Tulbaikh.”
“...... I see.”
I could sense the seriousness in his voice.
Tulbaikh is a vassal state of the empire to the west, and there is a lot of unrest there that could lead to another betrayal at any moment.
“What would you do, Noah?”
His Majesty stares at me.
I feel like he’s testing me, but I’m sure it’s just my imagination, given the circumstances.
I thought to myself.
“Are we sure about Kuruge’s movements?”
“Yes, I’m sure about that. And it seems that the messenger hasn’t left yet.”
Your Majesty assured me.
I thought that this prerequisite was certain, having experienced firsthand the greatness of His Majesty’s ears so far.
Then.
“...... We should send out our troops now. We have to move with lightning speed and hit Kruuge first.”
“Lightning fast, huh?”
“Yes, sir. And at the same time, we must be on high alert and stop the messenger before he reaches Tulbaikh.”
“Why are we doing this?”
“The basic idea is to avoid a two-front operation. Once the Tulbaikhs are on board, it will be difficult to defeat them and clean up after them. But if the messenger hasn’t arrived in the first place, then ......”
“...... Tulbaikh would have known nothing about it.”
“That’s right, sir. We will have to deal with the Tulbaikh sooner or later, but for now, we should focus on the targets to be defeated.”
“I see. Umu, I’m glad I listened to Noah’s opinion. You’re amazing as always, you know that?”
Apparently, he liked my opinion.
“Now that you mention it, Noah, why don’t you go?”
“Me, sir?”
I tilt my head.
“Umu. For taking down Kuruge.”
“I think Brother Henry would be better suited for that.”
I answered immediately.
And without any hesitation at all.
“Henry, huh? Why is so?”
“He’s the only one who’s ever actually led an army. Moreover, his knight, Rice Cake, is a skilled soldier. Therefore, I believe that brother is the best choice.”
When I said it all at once, His Majesty was, for some reason, blindingly surprised.
The surprise lasted for more than ten seconds, and then he nodded his head and asked further.
“Aren’t you getting pretty strong, too? I hear your knights are growing.”
“Ours is individual prowess.”
I replied, staring at his majesty without wavering at all.
“I don’t know if I’m cut out to lead an army, and I have no experience. The burden of this great task is too great for me.”
“I see. ......”
His Majesty said, turning over and stroking his white beard.
“Even though it was possible in the past, few people are able to do the same after gaining power.”
“?”
“Lose but win. ...... It is natural for words and deeds to coincide.”
The murmurings became quieter and quieter, and at the end, I could not hear what he was saying at all.
I wondered if I had said something wrong.
No, I don’t think so.
And even if it was bad, it was in line with my own policy.
It was only logical that I should wait for His Majesty’s response with my heart on my sleeve.
Unperturbed, I looked at His Majesty and waited for his next words.
After a while, His Majesty looked up.
The look on his face was one of praise – a look of satisfaction.
“You are marvelous, Noah.”
“I’m flattered.”
I don’t know what he was complimenting me on, but a present from His Majesty should be received with reverence, even if it’s a poisonous medicine for suicide.
Not to mention the words of praise.
“I will consult with the Prime Minister and others in that direction. You’ve given your opinion well, I’ll be counting on you from now on, Noah.”
His Majesty seemed satisfied, so for the time being, this was a good decision. |
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} | 「陛下」
俺は腰を折っして、陛下を真っ直ぐ見つめた。
「どうした」
「法務省でやりかけの仕事があるのを思い出しました。退出を許していただきたく」
「......」
陛下は眉をひそめ、首をかしげて俺を見つめた。
ここまでだ。
何事もそうだが、出しゃばりすぎは良くない。
この話もそう。
陛下は財務親王大臣のオスカーを呼んだ。
ここに俺が居続けてしまうと、下手したらオスカーの領分を侵すことになりかねない。
こういうのはほどほどでいい、いやほどほどでなくちゃならない。
だからオスカーが来る前に、適当な口実で辞することを上奏する。
陛下はしばらく俺を見つめた後、微かに聞こえるため息交じりに言う。
「賢しいな、ノアは」
が、そこはさすが皇帝と言うべきか。
陛下はそれ以上突っ込んでくることなく、元の表情に戻って。
「差し許す」
最後に片膝つく一礼をして、陛下の書斎から退出した。
書斎を出て、表に歩き出す。
近くにいる宦官を見つけて手招きする。そいつは向かって来た。
近づいてくると、顔見知りだと分かった。
「へい」
王宮に来る度にちょこちょこ会っている、下級宦官のシーズだ。
「屋敷に戻る。俺の馬車を用意しろ」
「既に表に待たせてます」
「手際がいいな」
「ありがとうございます」
「なんかあっちが騒がしいみたいだけど、何かあったのか?」
「何をおっしゃいますか」
シーズは甲高い声で答えた。
宦官というのは大抵が幼いころに生殖器を切りおとして王宮に入るから、ほとんどがヒゲも生えず、声変わりもしない。
医者に言わせると、男が成人した後に、体内で分泌するはずの何かが、されなくなったからということらしい。
ちなみに過去には、教会に属している聖歌隊で、少年の声を保つ為に宦官と同じようにしてたこともあったが、今は皇室が抱えている宦官以外で生殖器を切り落とすことを帝国法で禁じている。
「先ほど殿下がなさったことの後始末をしているのですよ」
「俺が?」
「なんでも地面がドーナツ型に溶けているだとかで、何をどうしたらこうなるのか皆不思議がって、あっしらの間であれこれ噂してますよ」
「皆それをみて、殿下の力の凄さに舌を巻いてます。ドロドロに溶けた後の土を掘り起こそうとして、その穴に落ちたのもいます。あまりにも深すぎて落ちたやつは足を折ってしまったくらいで」
俺は懐から革袋を取り出して、シーズに向かって放り投げた。
いつもの様に、褒美に出す為に用意した100リィーンが入った革袋だ。
「治療費と、手間賃だ」
「ありがとうございます! いやあ、みんな言ってますよ、殿下はお若いのに下の者にはお優しいって」
「いえいえ、本当のことです。殿下はもうすぐご成婚するかと思いますが、今からお仕えする希望者が殺到して、倍率が100を超えてますよ」
王宮だけじゃなく、親王邸も希望すれば宦官を派遣してもらえる。
宦官は元々、去勢することで貴人の正妻や側室などと「間違い」を起こせないようにするもの。
皇帝が血統の純潔を保つ為には必須の処置であるのだが、親王クラスでもそれは結構重要だから、結婚した後は宦官を屋敷に入れることが多い。
「この分だとまだまだ増えそうです。今上陛下の御子の中では一番の人気だそうで」
「へえ。ところで、お前の懐の中にあるそれ、なんだ?」
広げすぎると政治的に微妙な話になる話題を逸らして、シーズの懐の辺りを指した。
「あっ、これですかい」
シーズは懐から透明な箱を取り出した。
箱の中にのカブトムシがいる。
「下のために持ち込んだものです。殿下はカブトムシを戦わせるのがお好きみたいで」
十六殿下――俺の弟である十六親王は今年になったばかりだ。
まだ幼いから、王宮の外に屋敷を構えずに、王宮内に住んでいる。
親王だからそれなりに厳しい教育はされている一方で、宦官に頼んでこういう当たり障りのないおもちゃをねだる子も少なくない。
王――ヘンリー兄上もそういうのが好きだったと聞いた事がある。
シーズと適当に雑談しながら王宮の外に出て、待っていた馬車に乗り込んだ。
「どちらへ行きますか?」
馬車の横に侍っていた、新人メイドのジジが俺に聞いてきた。
「屋敷だ」
ジジはまだ不慣れながらも、俺の命令を馬車の御者に伝達した。
馬車が動き出し、ジジは歩いて横についてくる。
馬車に揺られて、親指の指輪を眺める。
陛下の下賜品、新しい装備、ルティーヤーの指輪。
これも、上手く使いこなせるようにならなくてはな。
「......ふむ」
ふと、シーズが持っていたカブトムシのことを思い出した。
それを思い出して、意志のあるレヴィアタンとルティーヤーに可否を問う。
両者共に、「可能」と答えてきた。
ならばやれ、と両者に命じる。
鎧の指輪をレヴィアタンとルティーヤーの両方とリンクをさせる。
両方とも鎧の指輪を変形させた。
しばらくして、人形が二体できた。
俺の手のひらと同じサイズの人形で、両方とも足先は鎧の指輪と繋がっている。
片方は水色で剣を構えていて、片方は赤色で拳を握っていた。
次の瞬間、二体の人形が戦いだした。
俺の目の前で、馬車の上で、二体の人形が戦う。
水色の剣士の動きは見たことがある、レヴィアタンの記憶で、俺が剣を振るっていた時の動きとよく似ている。
こっちの方がパワーもスピードも上。俺も成長すればこれくらい動けるんだなと思った。
赤色の格闘家は初めて見る動きだが、こっちは両手両足に炎を纏わせて、拳を放ったり蹴りを見舞ったりしている。
ルティーヤーの力を使えば、俺もこういう風に動けるんだな。
戦いは一分も持たなかった。
終始水色の剣士――レヴィアタンがルティーヤーを圧倒して、最後はガードをこじ開けて、胴体を真ん中から真っ二つに斬り裂いた。
「うわぁ......」
横から感嘆の声が聞こえていた。
歩いてついてくるジジが、尊敬の眼差しで俺を見ている。
「どうした」
「ご主人様すごいです、何ですかそれは?」
「カブトムシとか、コオロギとかを戦わせたりしなかったか?」
「えっと、村の男の子達がやってました」
「あれと同じだ」
「でもすごいです、それって魔法ですよね」
「似たようなもんだ」
俺は少し考えて、さっきのレヴィアタンの動きを真似た。
ルティーヤーを両断した最後の斬撃を真似て、抜き出した魔剣を振るう。
レヴィアタンは馬車前方の装飾を
「あれ? 通り過ぎたのに斬れてないんですか?」
「斬れてるよ、ほら」
そう言って、装飾の先端をつまんで持ち上げる。
「わあ」
そのまま戻す――レヴィアタンのアドバイスで。
装飾は元に戻った。
斬り口などまったく無いかのように、吸い付くかのように元に戻った。
馬車が街中を進む、車輪が小石に乗り上げて馬車がちょっとはねた。
しかし。
「あれ? 落ちない」
斬れたはずの装飾がぴったりくっついたままで、ジジは不思議そうにそれをマジマジとみた。
装飾を再び掴んで、ジジに見せる。
「断面がつるつるだろ?」
「はい」
「それなりの技で斬ると、こんな風につるつるになって、戻したらぴったりくっつくんだ」
「わあ......すごいです!」
ジジは目を輝かせながら言った。
俺はふっと微笑んで、レヴィアタンとルティーヤーのことを考える。
鎧の指輪と組み合わせて使ったいわば模擬戦。
これで、両者の中にある技を練習することが出来る。
偶然だがいいやり方を編み出したと、ちょっと嬉しくなっていると。
「――っ!」
すっと視界の隅っこにあるステータス、それが目に入った。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
法務親王大臣
性別:男
レベル:2/∞
体力 F+F 地 F
何故かレベルが上がっていて、HPが一段階上がっている。
何故だ、と思った直後に指輪が目に入る。
「......まさか」 | “Your Majesty.”
I bent at the waist, bowed, and stared straight at His Majesty.
“What is it?”
“I remembered that I had some unfinished business at the Ministry of Justice. I’d like to ask your permission to leave.”
“......”
His Majesty furrowed his brow, tilting his head to look at me.
That was it.
Like anything else, it’s not good to overdo it.
The same goes for this story.
His Majesty called Oscar, the Minister of Finance.
If I continue to stay here, I might encroach on Oscar’s authority if I’m not careful.
This kind of thing should be done in moderation, or rather, it must be done in moderation.
So before Oscar arrives, I make an excuse for my absence.
His Majesty looks at me for a moment, then says with a faint sigh.
“You’re a clever one, Noah.”
But then again, that’s the emperor for you.
He didn’t go any further and returned to his original expression.
“I will allow it.”
Finally, I kneeled down on one knee, bowed, and exited His Majesty’s study.
I left the study and walked out to the front.
And I spotted a eunuch nearby and gestured to him. He came towards me.
As he approached, I realized I knew him.
“Siz, huh”
“Yes.”
It was Siz, a low-ranking eunuch I’ve met every time I come to the palace.
“I’m going back to my residence. Get my carriage ready.”
“It’s already waiting out front.”
“You’re quite smart.”
“Thank you very much, sir.”
“There seems to be a lot of noise over there, what happened?”
“What do you mean?”
Siz replied in a high-pitched voice.
Eunuchs usually enter the royal court at an early age with their genitals clipped, so most of them never grow beards or change their voices.
According to the doctor, this is because something that is supposed to be secreted in the body after a man comes of age is no longer done.
Incidentally, in the past, the church choir used to do the same thing as eunuchs in order to maintain the boy’s voice, but now the imperial law forbids anyone other than the eunuchs in the imperial family to cut off their genitals.
“We’re cleaning up the area after what Your Highness just did.”
“Me?”
“Yes, the ground has melted into a doughnut shape, and everyone is wondering how it happened, and there’s a lot of talk among us.”[TN: Yep it really says doughnut]
“Everyone was amazed at the power of His Highness. One of them even fell into the pit when he was trying to dig up the soil after it had melted into mush. It was so deep that the one who fell broke his leg.”
I took out a leather bag from my pocket and threw it at Siz.
As usual, it was a leather bag containing reens that I had prepared for him as a reward.
“That’s for the treatment and the labor.”
“Thank you very much! Also, everyone says that His Highness is very kind to those under him, even though he is young.”
“No, it’s true. His Highness will probably get married soon, but the number of applicants to serve him is flooding in, and the scale is over .”
Not only the royal palace but also the Prince’s residence can dispatch eunuchs if they wish.
Eunuchs are originally castrated to prevent them from making “mistakes” with the nobleman’s wives and concubines.
This is a necessary procedure for the emperor to maintain the purity of his bloodline, and it’s quite important, even for the Princes, so they often have eunuchs in their mansions after marriage.
“The number of eunuchs is likely to increase at this rate. It is said that you are the most popular of His Majesty’s children.”
“Hoh. By the way, what’s that thing in your pocket?”
I pointed to the area around Seeds’ bosom, diverting the conversation from the politically sensitive topic that could become too broad.
“Oh, this one.”
He took out a transparent box from his pocket.
There were two beetles in the box.
“I brought this for His Highness the Sixteenth. He seems to like to make beetles fight.”
His Royal Highness the Sixteenth – my younger brother, the Sixteenth Prince – just turned three this year.
He is still very young, therefore he does not have a house outside the Palace, and lives in the Palace.
Since he is a Prince, he is given a certain amount of strict education, but at the same time, there are many children who ask eunuchs to give them these bland toys.
I’ve heard that the fourth prince, brother Henry, was also fond of such things.
While chatting randomly with Siz, we went outside the palace and boarded a waiting carriage.
“Where are we heading?”
Gigi, the new maid, who was sitting beside the carriage, asked me.
“The mansion.”
Though still inexperienced, Gigi relayed my order to the carriage attendant.
As the carriage began to move, Gigi made her way to the side.
As the carriage rocked, I looked at the ring on my thumb.
His Majesty’s gift, a new piece of equipment, the Ring Luthiya.
I’ll have to learn to use this well.
“......Fumu.”
Suddenly, I remembered the beetle that Siz had.
I remembered that, and asked the willful Leviathan and Luthiya if it was feasible.
Both of them answered that it was ‘possible’.
Then do it, I ordered them.
I linked the ring of armor with both Leviathan and Luthiya.
They both transformed the armor rings.
After a while, two figures were created.
Both were the same size as my palm, and both had their toes connected to the ring of armor.
One was light blue and held a sword, and the other was red and had its fists clenched.
The next moment, the two dolls started to fight.
Right in front of me, on the carriage, the two figures were fighting.
I had seen the movements of the light blue swordsman before, in Leviathan’s memory, and they were very similar to the movements I had made when I was swinging my sword.
This one had more power and speed. I guess I can move like this when I grow up, I thought.
And I had never seen the red one before, but this one had flames on his hands and feet and was throwing punches and kicks.
I guess with Luthiya’s power, I can move like this too.
The fight lasted less than a minute.
The light blue swordsman–Leviathan–overwhelmed Luthiya from start to finish, finally managing to break through the guard and slice the torso in half down the middle.
“Wow. ......”
I heard an admiring voice from the side.
Gigi, who was accompanying me, looked at me with respect.
“What is it?”
“Master, that’s amazing. What’s that?”
“Ever saw a beetle or a cricket fight?”
“Well, the boys in the village used to do that.”
“It’s the same thing.”
“But it’s amazing. It’s magic, isn’t it?”
“It’s kind of similar.”
I thought for a moment and mimicked Leviathan’s move from earlier.
Imitating its last slash that cut down Luthiya, I swung the demon sword I pulled out.
Leviathan slashed the decoration that was inside the carriage in front of me.
“Huh? Your sword passed by it and it was not cut?”[TN: or slashed help me on this one]
“It’s been cut, you see.”
With that, I pinched the tip of the decoration and lifted it up.
“Wow.”
I put it back – on Leviathan’s suggestion.
The decoration was restored to its original state.
It was as if there was no cut at all as if it had been sucked back into place.
The carriage went through the city, and the wheels hit a pebble and the carriage bounced a bit.
But.
” Huh? It didn’t fall.”
The decoration that should have been cut off was still attached to the carriage, and Gigi looked at it curiously.
I grabbed the decoration again and showed it to Gigi.
“The surface is smooth, right?”
“If you cut it with the right technique, it becomes smooth like this, and when you put it back together, it sticks together perfectly.”
“Wow, ...... this is amazing!”
Gigi said with sparkling eyes.
I smiled and thought about Leviathan and Luthiya.
It was a mock battle, so to speak, using it in combination with the Armor Ring.
This way, they could practice the techniques they both had in them.
It was a coincidence but I was a little happy that I had devised a good method.
“...u!”
I saw a status out of the corner of my eye, and it caught my eye.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Minister of Justice
Gender: Male
Level: 2 / ∞
HPE+FMPF+FStrengthF+EStaminaF+FIntelligenceF+ESpiritF+FSpeedF+FDexterityF+FLuckF+F FireF+CWaterE+SWindFEarthFLight FDarknessF
For some reason, my level has increased, and my HP has gone up one level.
As soon as I thought, “How?” the ring caught my eye.
“...... No way.” |
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} | 「以上が、今回の謀反の主犯、従犯となります」
「見事に皇太子殿下の周りの人間ばっかりだな」
全員が聞いた事のある名前ばっかりだ。
皇太子の腹心やら、かつての教育係やら、騎士やら。
誰が見ても、皇太子一派の造反・謀反にしかみえない面子。
「......」
俺はため息をついて、こめかみを揉んだ。
こいつらだけなら、法に則って量刑すればいいだけの話だ。
問題は――ちらっとヴィニーを見た。
ヴィニーは気まずそうに目をそらした。
当然の反応だ。
問題はただ一つ。
ここに、皇太子が絡んでいるかどうかだ。
帝国法じゃ皇族は法を犯しても、なんだかんだで刑を軽くするような条文がつけられている。
例外はただ一つ――謀反だ。
皇族が謀反に関わった場合、主犯従犯問わず、一番重い斬胴の刑って決まっている。
そしてこれだけ皇太子とゆかり深い面子だ、皇太子が「まったく知らなかった」と言うことはあり得ない。
通常の犯罪でも、犯罪と知りつつ通報しないことは罪である――まあ、窃盗とかだと軽い刑罰か、あるいは1リィーン程度の罰金ですむ。
ただし、それはれっきとした帝国法で定められている罪。
そして皇太子が「謀反と知りつつ(皇帝に)通報しなかった」場合、皇族が謀反に関わったとして、それだけでも極刑だ。
問題はここだ。
皇太子の謀反――そして死刑。
それはとんでもないスキャンダルになって、帝国そのものが揺らぎかねない。
「陛下はなにか言ってきてるか?」
「はっ、原文を復唱せよとのこと。『その者らは相応の刑に処すべし』とのこと」
「......そっちか」
俺はため息をついた。
「どういう事なのでしょうか」
「陛下は事を荒立てないつもりのようだ。まあ当然だが」
「では?」
「ああ、そのリストだけを処断する。幸い謀反は確実、自供をとる必要もない」
「たしかに」
「と言うわけで、全員が死刑、そして即日執行だ」
ヴィニーは深々と一揖した。
上目遣いに向けてきた目は、心の底から感心している目だ。
同じ死刑にも、執行のタイミングによって二パターンに分ける事ができる。
片方が即日執行、もう片方は年一のまとめ執行に回すものだ。
より罪が重かったり、酌量する余地がないものだとすぐに執行される。
逆に情状酌量する余地があったり、あるいは他にも未判明の罪があったりすると、執行を後回しにする事がある。
後回しだと、大赦に巡り会う事もある。
例えばだ、家族を何者かに惨殺された場合、その復讐として相手を殺した。
この場合帝国法では斬首刑だ。
ただ、事情が事情だから、最大後執行の斬首刑とする事ができる。
その間に大赦があったりしたら、その者は自由の身となる。
あるいはこういう話もある。
死刑になった男はやっぱり情状酌量する余地があるし、三年の執行を待ったが、それでも大赦のタイミングに巡り会えなかった。
家族が牢屋の看守を買収して、女を送り込んで、男の子を身籠るようにして血筋を繋げた。
つまり、死刑でも執行を後回しにする事ができるのだが。
俺は、全員を即日執行と定めた。
陛下は明らかに、「現時点では」皇太子を巻き込みたくない。
だから俺はこうした。
そう決めた後、俺は大臣の椅子から立ち上がった。
「どこへ?」
「陛下に謁見してくる。念のためだ」
「分かりました。準備は進めておきます」
「頼む」
俺は大臣室を出て、法務省も出て、馬車に乗り込んで一直線に王宮を目指した。
陛下への謁見を申し出ると、そのまま陛下の書斎――図書館ほどもある書斎に通された。
そこで何か書類を読んでいる陛下は、顔を上げて俺を見て、笑顔で立ち上がった。
「おお、きたかノア」
「はい」
俺はその場で片膝ついて一礼して、それから立ち上がって陛下と向き合った。
「謀反の件でございます」
「なるほど。量刑はどうだ?」
「帝国法通り、主犯は斬胴の刑、従犯以下はそれぞれ死刑とし――」
ここで一旦切って、今回一番重要な所を切り分けて報告する。
「――全員、即日執行するものといたしました」
「うむ、よくやった」
陛下は手を後ろに組んで、書斎のなかでくるっと歩いてから。
「クルーズ」
腹心の宦官、クルーズが相変わらずどこからともなく現われた。
「ノアはよくやった。俸禄に年間1000リィーンの加増だ」
クルーズは事務的に陛下の勅命を受け取って、無表情のまま立ち去った。
やっぱり......巻き込みたくないのが正解か。
この程度の判決なんて加増をする程の功績じゃない。
それでもしたのは、陛下の「そういう」メッセージだということだ。
「さすがだ、ノア」
陛下は俺に近づき、肩を叩いて真っ直ぐ見つめてきた。
「よくやった」
真剣な顔は、ますますそういうことなのだと思った。
「これからも期待している、しっかりやってくれ」
書斎から退出して、王宮の外で馬車に乗り込んで、法務省に戻った。
こうなった以上、謀反した連中はすぐに執行しなきゃならない。
馬車を急がせて法務省に戻ると、何故か、外からでも分かる位ドタバタしていた。
馬車から飛び降りて、オロオロしている門番の若い男に聞く。
「おい、何があった」
「で、殿下! その、侵入者が」
「侵入者だと?」
「はい、もう何人も仲間を殺されて、侵入者は中に」
「......お前、兵務省に行って兄上に――」
兵の応援を貰ってこい。
と、言いかけたのをやめた。
このタイミング......大事にしたらまずそうだ。
「ここにいる全員をかき集めろ。俺以外誰も出すな、誰も入れるな。相手が親王だろうとだ」
「は、はい!」
「行け!」
慌てた様子で駆け出す門番を見て、俺は腕輪からレヴィアタンを抜いて、元のサイズに戻した。
魔剣を携えたまま法務省の建物の中に突入する。
中に入ると、剣戟の音と、悲鳴と怒号が聞こえてきた。
その声の方に向かって進んでいくと、衛兵の一人を短刀で斬り倒したあと、こっちに疾走してくる黒い影が見えた。
目を凝らすと、正体を隠すための黒装束を頭のてっぺんからつま先まですっぽり覆っているのが見える。
「キェェェェェィッッッ!」
そいつは奇声をあげ、更に加速して俺に飛び掛かって、短刀で斬りつけてきた。
「甘い」
レヴィアタンで斬撃を受け流して、返す刀の腱を断ち切る。
そいつが地面に墜落すると、魔剣とリンクした指輪から猿ぐつわをそいつの口に生成した。
自害防止だ。
動きをほとんど封じると、更に後続がやってきた。
今度は三人、まったく同じ格好で、黒装束には返り血がべったりとくっついている。
三人は一斉に飛びかかってきた。
正面に、左右。
息の合ったコンビネーションだ。
同じ短刀での斬撃をレヴィアタンで受け流し、三人が巴のように、AがB、BがC、CがAへとそれぞれ斬りつけるように斬撃を誘導した。
そして同じように、手足の腱を斬って、猿ぐつわを噛ます。
騒ぎが徐々に収まる、少なくとも戦いの物音はしなくなった。
「殿下!」
廊下の曲がり角の向こうから、ヴィニーが慌てて駆け寄ってきた。
「ご無事ですか殿下――なんと! 全員倒したのですか。なんというすごい腕前」
「そうか?」
「はっ、何しろ衛兵が二十人以上死傷者が出ており、更に」
「更に?」
「謀反の連中。全員が殺されておりました」
「......」
あまりにも事が大きいから、通常の牢屋じゃなくて、法務省で預かっていた謀反の一味。
「全員か?」
「全員です」
俺を真っ直ぐ見つめて、頷くヴィニー。
そういうことです。
と、暗に言ってるのがわかった。
つまり、この四人は皇太子の手の者だ。
皇太子は自分に累が及ばないために、口封じに走ったのだ。
俺は無言で、レヴィアタンを使い、自分の腹を斬った。
脇腹をちょっと深めに斬って、血がドバドバと噴き出す。
「この四人にやられた。親王に重傷を負わせた場合、一番重い量刑はどうなる」
「――っ!」
息を飲むヴィニー、理解したようだ。
「いずれも死刑、それも即決となります」
「ならそうしろ」
ヴィニーは応じて、動ける衛兵を呼んで、その場で俺が止めた四人にトドメを刺した。
全員が息絶えたのを確認してから、ヴィニーは戻って来た。
「執行いたしました」
「ああ」
「殿下......さすがでございます」
「......これでこの件はおしまいだ」
ふう......。
まったく、一歩間違えたら国が揺れたぞ、皇太子よ。 | “These are the main and subordinate criminals of this rebellion.”
“All of them are people around the Crown Prince.”
All the names were familiar to me.
The Crown Prince’s confidant, his former educator, and a knight.
It can only be seen as a rebellion from Crown Prince’s faction trying to overthrow the system.
“......”
I sighed and rubbed my temples.
For these people, it’s just a matter of getting a legal sentence.
The problem is — I glanced at Vinnie.
Vinnie looked away awkwardly.
Well, it was a natural reaction.
There was only one problem.
Whether or not the Crown Prince is involved here.
In imperial law, even if the royal family violates the law, there is a clause that allows them to receive a lighter sentence.
The only exception is —rebellion.
If a member of the Imperial Family is involved in a rebellion, regardless of whether he is a main criminal or accomplice, the penalty is the most severe-beheading.
And with such a close relationship with the Crown Prince, it is impossible for the Crown Prince to say that ‘I had no idea about it’.
Even in the case of ordinary crimes, it is a crime to not report a crime when you know that it is a crime — well, in the case of theft, it is a light penalty or a fine of about one reen.
However, it is a crime that is clearly defined by Imperial Law.
And if the crown prince “knew of the rebellion and did not report it (to the emperor),” that alone is an extreme penalty for the royal family’s involvement in the rebellion.
Here’s the problem.
The Crown Prince’s treason – and the death penalty.
It would be a terrible scandal, and the empire itself could be shaken.
“Has His Majesty said anything to you?”
“Hah, he wants me to repeat the original text. “Those who did shall be punished accordingly.” “
“......, is that it?”
I sighed.
“What does it mean?”
“It seems that His Majesty does not intend to make a scene. Well, of course, that would be the case.”
“Then?”
“Yeah, we’ll only execute those on that list. Fortunately, the rebellion is so certain that we don’t need to get a confession.”
“Indeed.”
“And so they will all be executed, and the execution will be immediate.”
“...... I’m impressed, sir.”
Vinnie took a deep breath.
The eyes that looked up at me were the eyes of deep admiration.
There are two types of death penalties, depending on the timing of the execution.
One is for immediate execution and the other is for collective execution once a year.
If the crime is more serious or there is no room for extenuating circumstances, the execution is carried out immediately.
On the other hand, if there is room for consideration of circumstances, or if there are other unidentified crimes, the execution may be postponed.
In some cases, the postponement can lead to a grand pardon.
For example, if someone slaughtered your family and you killed them in revenge.
In this case, according to imperial law, you would be beheaded.
However, because of the circumstances, the execution can be carried out after a maximum of three years.
If there is a grand pardon in the meantime, the person will be set free.
Or there is a story like this.
The man who was sentenced to death still had extenuating circumstances and waited three years to be executed, but he still didn’t get a grand pardon.
His family bribed the prison guards to send a woman to carry his baby boy so that he could continue his bloodline.
In other words, even with the death penalty, the execution could be postponed.
I decided to execute them all on the same day.
His Majesty clearly does not want to involve the Crown Prince “at the moment”.
So I did this.
After I made that decision, I got up from the chair.
“Where to?”
“I’m going to see His Majesty. Just in case.”
“All right, sir. I’ll make the necessary preparations.”
“I ask you to.”
I left the minister’s office and the Ministry of Justice then got into a carriage and headed straight for the royal palace.
When I requested an audience with His Majesty, I was taken straight to His Majesty’s study – a study as big as a library.
His Majesty, who was reading some documents there, looked up, saw me, and stood up with a smile.
“Oh, you’re here, Noah.”
I got down on one knee and bowed, then stood up and faced His Majesty.
“It’s about the rebellion, Your Majesty.”
“I see. What’s the penalty?”
“As per imperial law, the main perpetrator will be executed by beheading, and each of the subordinates and below will be sentenced to death.”
I cut off at this point and report the most important part of the case separately.
“All of them will be executed on the same day.”
“Umu, Well done.”
His Majesty folded his hands behind his back and walked around in his study.
“Curuz.”
“Yes”
Cruz, the eunuch, still appeared out of nowhere.
“Noah has done well. His allowance will be increased by reens per year.”
Cruz accepted the imperial order from His Majesty in a formal manner and walked away with a blank expression on his face.
After all, it’s right that he doesn’t want to get ...... involved.
A judgment of this magnitude is not enough of an achievement to warrant an addition.
Even so, it was His Majesty’s ‘that kind of’ message.
“Very good, Noah.”
He approached me, tapped me on the shoulder, and looked me straight in the eye.
“Well done.”
I could tell by the serious look on his face that he meant it.
“I’ll be counting on you to keep up the good work.”
I left the study, boarded a carriage outside the royal palace, and returned to the Ministry of Justice.
Now that this has happened, the rebels must be executed immediately.
I hurried the carriage back to the Ministry of Justice, and for some reason, it was so chaotic that I could see it from the outside.
I jumped down from the carriage and asked the young man who was guarding the gate.
“Hey, what’s going on?”
“Y-Your Highness! There’s been an intruder.”
“Intruders?”
“Yes, they’ve already killed several of our men, and the intruders are inside.”
“......, you go to the Ministry of Military Affairs and tell my brother–“
Get support from the military.
I stopped what I was about to say.
This timing ...... could prove problematic if we make a big mistake.
“Gather everyone here. Aside from me, nobody else should be allowed in. Even if the other party is the Prince.”
“Move!”
Seeing the gatekeeper rushing out in a panic, I pulled Leviathan from my bracelet and returned it to its original size.
With the Demon Sword in my hand, I rushed into the building of the Ministry of Justice.
Once inside, I heard the sound of sword fights, screams, and shouts.
As I advanced toward the voice, I saw a black shadow sprinting toward me after cutting down one of the guards with a dagger.
Looking closely, I could see that it was completely covered from head to toe in a black costume to hide its true identity.
“Keeeeeeeeeee!”
The man shouted, then accelerated and jumped at me, slashing at me with his dagger.
“Naïve.”
I parry the slash with my leviathan and cut off his tendons in return.
As he crashed to the ground, the ring linked to the magic sword produced a gag in his mouth.
It’s to prevent suicide.
When the movement was almost blocked, more came after.
This time, there were three of them, all dressed exactly the same, with blood on their black robes.
The three of them jumped at me at once.
From the front, left, and right.
It was a breathtaking combination.
Leviathan parried the slashes from identical daggers and guided the slashes so that A slashed at B, B slashed at C, and C slashed at A as if the three of them were in a circle.[TN: it says like in Tomoe]
Then, in the same way, slashed the tendons of their limbs and gagged them.
The commotion slowly subsided, at least there was no more noise from the battle.
“Your Highness!”
Vinnie rushed over from across the turn of the corridor.
“Are you all right, Your Highness? Did you defeat them all? What an amazing feat.”
“Really?”
“Hah, after all, there were more than casualties among the guards, and even more so...”
“More so?”
“The rebels. They’ve all been killed.”
Because of the severity of the situation, the rebels were kept in the Ministry of Justice instead of the usual jail.
“All of them?”
“All of them.”
Vinnie looked straight at me and nodded.
That is what it means.
I knew he was implying it.
In other words, these four people belong to the Crown Prince.
The Crown Prince has gone to great lengths to keep their mouth shut in order to prevent any repercussions for himself.
“.......”
I used Leviathan to cut my own stomach without saying a word.
I slashed my side a little deeper, and blood spurted out.
“I was attacked by these four. What will be the heaviest sentence for seriously injuring the Crown Prince?”
“–!”
Vinnie gulped, he seems to understand.
“All of them will be executed, and that too immediately.”
“Then do it.”
“Y-Yes!”
Vinnie responded by calling in the guards who could move and stabbing the four I had stopped on the spot.
After making sure they were all dead, Vinnie came back.
“We executed them.”
“Ahh.”
“...... This is the end of the matter.”
Fuuh.
You know, one wrong move and the country would have been shaken, Crown Prince. |
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} | 不日、晴れた昼さがりに、俺はシャーリーを連れてコバルト通りにやってきた。
「こ、ここは......」
栄えてる都の中でも、骨董品を取り扱っている性質上、特に金持ちや貴族が集まってくるコバルト通り。
医者すら居ない村から出てきたばかりのシャーリーは、百花繚乱な賑やかさに目を奪われて、唖然としていた。
「ぼけっとしてないで、ついてこい」
「は、はい!」
コバルト通りの入り口で馬車から飛び降りて、騎士になったばかりのシャーリーを従えて中に入る。
俺は適当にぶらつきながら宝を探す。
パッと見て目を引くものはいろいろあったが、どれもこれもパッとしない。
ここに来たのは、ヘンリー兄上のプレゼントを探すためだ。
陛下の命令とは言え、形の上では俺の代わりにアルメリアを鎮圧してくれたんだ。
なにか気持ちを示さなきゃ話にならない。
だからそのためのお宝を探しているのだが......。
「むっ、あそこは......」
「どうしたんですか殿下?」
「あの店に入るぞ」
「はい」
訝しみつつも、シャーリーは俺の後ろについて来た。
彼女を連れてとある店に入った。
前に、オスカー兄上に来た店だ。
「おお、これはこれは王殿下、ようこそおいで下さいました」
「アラン・バーズリー、だっけ」
「はい。ささこちらへ」
店に入った途端、俺たちを出迎えた店主のアランは、ものすごく腰を低くしたまま俺たちを店の奥に招き入れた。
通されたそこはVIPのための部屋。
俺は上座に通され、直後に店の使用人が飲み物を持ってきた。
匂いだけで分かる、相当いい茶葉を使った紅茶だ。
ちなみにシャーリーは俺の後ろに控えて、手を後ろに組んで立っている。
主と一緒にいる時の騎士に席はない。貴族相手に商売をしているアランはもちろんその事を知っていて、シャーリーをまるで空気のように扱った。
「本日はなにかお探しでしょうか」
「兄上に感謝の気持ちで何か贈りたい、何か良いものはないか」
「王殿下でしょうか」
「いや、ヘンリー兄上だ」
「王殿下でしたか! 先日いくつか仕入れたばかりでございます。しばしお待ち頂けますでしょうか」
「ああ」
俺が頷くと、アランは一旦部屋を出ていった。
そのまま数分間待つと、何人かの使用人を連れて戻って来た。
使用人は一人につき一つ、何かを持っている。
それは宝石箱だったり、額縁に入った絵だったり、ワゴンに乗るほどの大きなものだったり。
多分、この店で出せるお宝をまるっと持ってきたんだろう。
そんな中、俺はとあるものに目が釘付けになった。
それはワゴンに乗せられ、上に布を被せられている。
気になったから、それを指差して、アランに聞く。
「それはなんだ? 雰囲気が明らかに他と違うぞ」
「おお、さすが十三親王殿下、一目で見抜かれましたか」
アランは商売半分、素が半分の驚き顔をした。
目配せをして、使用人に布を取らせる。
出てきたのは透明の女神の像だった。
「これは......ガラスか?」
「水晶じゃなくてガラスで女神像だと? こんなものが作れたのか」
「驚きはごもっともです。これは名工・リンジーが残したものでございます。ガラスで女神像を作れるのはこのリンジーのみ、今はもう失われた技術でございます」
「だろうな」
女神像をじっと見た。
やっぱり――ちょっと出てる。
あの魔道書と似たような感じのものが少し出てる。
それが見えたから、これを真っ先に見せろと指名した。
「リンジー自体作品がすくなく、女神像はこの世で残、と言われております」
「そうか。よし、これをもらうぞ」
「こちら一万リィーンとなりますが......」
懐から革袋を取り出して、アランに渡す。
「一万以上入ってる。余った分は、兄上への贈り物を持ってきたお前への褒美だ」
「ありがとうございます!」
アランは顔がくちゃくちゃになるくらい、満面の笑みで革袋を受け取った。
「その女神像、後でうちに――」
「ここにいたのかノア」
言いかけたとき、外から一人の男が入ってきた。
優しげな笑顔がトレードマークの、八番目の兄、第八親王オスカーだ。
「兄上」
俺は立ち上がって、オスカーに向かって軽く一礼した。
「店に入ったらノアが来てると聞いてね。何かいい宝を見つけた――の、か......」
オスカーはガラスの女神像を見て、そのまま固まった。
なにか信じられないようなものを見てしまったかのような表情をする。
「どうしたんだ兄上」
「これはリンジーの女神像。本物か?」
「ああ、おそらく」
答える俺、それだけでは足りないのか、オスカーはアランを見た。
アランは戸惑いながらも頷いた。
「は、はい。殿下に偽物をお出しするようなことはありえません......なにか拙かったでしょうか」
「はあ」
オスカーはため息ついて、近くの椅子に座った。
「参ったな、ってことは二つしかないのが二つとも出てきたってことか」
「もう一つを知っているのか?」
「持ってる」
そう言って、今度は苦笑いするオスカー。
「リンジーのガラス像だからな、二つ作られたことは知ってるが、このコバルト通りでも出てこないから、てっきり私が持っているのが世界で最後の一つだと思っていたんだ。それがまさか残ってたとはね」
「なるほど」
オスカーが嘆くのも分かる。
お宝というのは、数が少なければ少ないほど、その希少性で価値が上がるものだ。
その中でも、「一つしか無い」というのはとんでもない価値がある。
二つある時、それぞれの価値が1だとすれば、一つだけになった時の価値は十倍以上だ。
お宝――骨董品とはそういうものだ。
「兄上」
「うん、なんだ」
俺は無言でガラスの女神像に近づき、それを持ち上げて――地面に叩き割った。
「むっ」
「し、しし、親王殿下!?」
慌てるアランに、俺は更に懐から百リィーンほど入った袋を取り出して、彼に渡した。
「安心しろ、さっきの代金はそのままくれてやる。それとこれは手間賃だ」
「て、手間賃?」
「二つめの女神像は出てきたけど、割れてしまった。それをコバルト通り内だけでいい、噂で流して欲しい」
「......さすがだな」
オスカーが感心した顔でうなずいた。
「いやすごい、すごいぞノア。お前がそれを割って、更に割った事実を流すことで、私が持っている像は確実に価値が上がる」
「お宝は早い者勝ちです。オスカー兄上の方が価値が上がればそれで」
「この方法を知っていたのも驚きだが、実際にやったのも驚きだ。さすがだ。私がこの域に達したのは、成人して封地入りした後の事だ」
オスカーは立ち上がり、ちらっと割れた女神像を一瞥だけして。
「礼はいずれする、ではな」
そういって、オスカーは店から出て行った。
アランに諸々の後始末と、次点のお宝を選んで屋敷に贈るように言いつけてから、俺もシャーリーを連れて店を出た。
「あ、あの......殿下?」
店を出た後、賑やかなコバルト通り。
シャーリーはおそるおそるって感じで俺を呼んだ。
「どうした」
「な、なぜあの様な事を?」
俺は周りを見回した。
周りは全員知らない顔、聞かれる心配がない。
「あれは所詮、物だ」
「でもすっごく高いお宝ですよ?」
「本物のお宝はあんなのじゃない」
「え?」
戸惑うシャーリー。
俺は視界の隅っこに常に見えている、俺のステータスを見た。
通常のステータスの後ろに、「+」がついてる俺だけのステータス。
俺には、これがある。
「本物のお宝というのはあんなものじゃない、人間だ」
「にんげん?」
「俺に忠誠を誓う人間だ。お前とかな」
「ああ」
頷く俺。
そう、俺にとって、本当の宝は人間だ。
あんなガラスの女神像一つ割って、オスカー兄上の覚えがめでたくなるんなら安いものだ。
「......」
「どうしたシャーリー」
「感動しました! 物語に出てきた名君達と同じことを言ってます」
「すごいです殿下......私、一生ついて行きます!」
オスカーの覚えをめでたくするために割ったんだが、オマケでシャーリーの好感度も上がったようだ。
そのシャーリーを連れて、ガラクタまみれのコバルト通りを出る。
なんとなく、オスカーが言っていた言葉を思い出す。
成人になって、封地入り。
俺もいずれ、アルメリア入りする時がやってくる。
帝国では、大抵は皇族が成人する時と決まっている。
を集めたいと、はっきり目標が見えてきたのだった。 | In the late afternoon on a sunny day, I came to Cobalt Street with Shirley.
“T-This is ......”
Even in the flourishing capital, Cobalt Street, which, by the nature of dealing in antiques, attracts the rich and noble especially.
Shirley, who just came from a village where there is not even a doctor, was dumbfounded by the buzz of a hundreds of people.
“Don’t be a dimwit and just follow me.”
“Y-Yes!”
I jumped off the carriage at the entrance to Cobalt Street and walked in with a newly knighted Shirley in tow.
I wander around at random, looking for treasure.
There were all sorts of things that caught my eye at a glance, but none of them were flashy.
The reason I came here is to find a gift for my brother Henry.
Even though it was ordered by His Majesty, technically he subdued Almeria on my behalf.
I need to show some sentiments.
So I’m looking for the treasure to do just that........
“Mmmm, there’s ......”
“What’s going on, Your Highness?”
“Let’s go into that store!”
“Yes.”
Shirley followed behind me, wondering.
I took her into a store.
I’ve been there before with my brother Oscar.
“Oh, well, well, well. His Royal Highness the Thirteenth, it’s a pleasure to meet you.”
“Alan Bardsley, right?”
“Yes. This way, please.”
The moment we walked in, the owner, Alan, greeted us and invited us into the back of the store, keeping a very low profile.
We were ushered into a VIP room.
Immediately afterwards, the shopkeeper brought us our drinks.
I could tell by the smell alone that it was a pretty good tea.
By the way, Shirley stood behind me with her hands clasped behind her back.
There is no seat for a knight when you are with the Lord. Alan, who does business with the aristocracy, of course knows this and treats Shirley as if she were an air.
“Can I help you with something today, sir?”
“I want to give my brother something to thank him for, something good.”
“Is it His Royal Highness the Eighth Prince?”
“No, it’s my brother Henry.”
“You mean His Royal Highness the Fourth Prince! I just stocked up on something the other day. Would you please wait a moment?”
“Ah.”
I nodded and Alan left the room once.
We waited for a few minutes, and then he returned with some servants.
Each of the servants had something with them.
Perhaps it was a jewelry box, or a picture in a frame, or something big enough to fit in a wagon.
They probably brought a whole lot of treasures that can be sold in this store.
In the midst of all this, my eyes were glued to one thing.
It was placed on a table in a wagon and covered with a cloth on top.
I was curious, so I pointed to it and asked Alan.
“What’s that? The atmosphere is clearly different from the rest.”
“Oh, Your Royal Highness the Thirteenth, you saw through it at a glance.”
Alan looked half business tongued, half plain amazed.
He made eye contact and had a servant take a cloth.
What came out was a statue of a goddess which was transparent.
“Is this ...... glass?
“A goddess made of glass and not crystal? I didn’t know you could make something like this.”
” The surprise is understandable. This is the legacy of Lindsey, the master glass artist. Lindsay was the only one who could make a goddess statue out of glass, a now lost skill.”
“I guess.”
I stared at the statue of the goddess.
I knew – it’s a little bit out.
A little bit of something similar to that grimoire.
I saw it, so I asked to be the first to see it.
“It is said that Lindsey herself has few works, and that there are only two goddess statues left in the world.”
“Okay. So, I’ll take that.”
“This will be , reens......”
I took out a leather bag from my pocket and handed it to Alan.
“There’s more than ten thousand in there. The remainder is my reward for you bringing a gift for my brother.”
“Thank you very much!”
Alan received the leather bag with a big smile on his face.
“That goddess statue, later at home–“
“There you are, Noah.”
As I was about to say, a man came in from outside.
It was the Eighth Prince, Brother Oscar, with his trademark gentle smile.
“Brother,”
I stood up and gave a quick bow to Oscar.
“I heard Noah was here when I went into the store. Found some good treasure–or ......”
Oscar looked at the glass goddess statue and froze in place.
He looks as if he has seen something unbelievable.
“What’s the matter with you, brother?”
“This is the Statue by Lindsey. Is it real?”
“Yeah, probably.”
Me, who replied, as if that wasn’t enough, Oscar looked at Alan.
Alan nodded, puzzled.
“I-It’s authentic. There’s no way I would offer your highness a fake ...... something poorly done.”
“Hah.”
Oscar sighed and sat down in a nearby chair.
“Damn, so I guess that means there are only two of them and they’re both coming out at the same time.”
“Do you know about the other one?”
“I have it.”
Then, Oscar, this time with a wry smile.
“It’s a glass statue of Lindsay, I know it was made in two, but I didn’t see it here on Cobalt Street, so I thought I had the last one in the world. I didn’t know there were any more of them.
I can understand why Oscar laments.
The fewer the number of treasures, the more valuable they are in their rarity.
Among them, “there is only one” is of tremendous value.
When there are two, if the value of each is , the value of one is more than ten times higher than the value of the other.
This is what treasures – antiques – are all about.
“Brother.”
“Yeah, what is it?”
I silently approached the glass goddess statue, lifted it up – and smashed it to the ground.
“Mmm”
“Y-Y-Your Royal Highness!”
As Alan panicked, I took out another bag of about 100 reens from my pocket and gave it to him.
“Don’t worry, you can keep the money for what I paid you for earlier. And here’s your wages.”
“What, wage?”
“The second statue came out, but it broke. I want you to spread the word, but only in Cobalt Street”.
“.....I’m impressed”
Oscar nodded with an impressed look on his face.
“Wow that’s amazing, Noah. If you broke it and even shed the fact that you’re the one who broke it, the statue I have will certainly increase in value.”
“The sooner the treasure is found, the better. And if only brother Oscar have it, it would be worth more.”
“I’m surprised you knew how to do this, and even more so that you actually did it. Amazing. I only reached this point after I came of age and entered the fiefdom.”
Oscar stood up and gave a glimpse of the cracked statue.
“I’ll thank you, in due course,”
With that, Oscar walked out of the store.
After telling Alan to clean up and choose the next treasure to present to the house, I left with Shirley.
“Oh, uh, your highness ......?”
After leaving the store, the busy Cobalt Street.
Shirley called out to me as if she were afraid.
“What’s up,”
“Why would you do that?”
I looked around.
Everyone around me is a stranger, and I don’t have to worry about being heard.
“It’s just a thing, after all.”
But it’s a very expensive treasure?”
“A real treasure is not like that.”
“Eh?”
Shirley was puzzled.
I saw my status, always visible in the corner of my vision.
My own personal status with a “+” behind my normal status.
I have this one.
“A real treasure is not something like that, it’s people.”
“People?”
“People who are loyal to me. Like you.”
“Yeah.”
I nodded.
Yes, to me, the real treasures are people.
Breaking one of those glass goddesses is a small price to pay for a happy memory of brother Oscar.
“......”
“What’s up Shirley?”
“I’m impressed! You’re saying the same thing as the great men in the story.”
“It’s amazing, Your Highness. ...... I’ll follow you forever!”
“Ah.”
I broke it down to make Oscar’s memory a happy one, and as a bonus, Shirley’s favorability seems to have increased.
I took Shirley with me out of the junk-covered Cobalt Street.
Somehow, I remember what Oscar said.
Becoming an adult, entering the fiefdom.
The time will come for me to join Almeria.
In the Empire, it’s usually when the royal family comes of age.
Until that time, I had a clear goal in mind to collect more treasures. |
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} | 「姉上! 病に伏せていると聞いたのだが!?」
応接間に通されたレインを見て、俺はここしばらく驚いた。
母上とほぼ同年代である第一皇女レイン。
女だてらに武芸を嗜み、豪快な性格として知られていた王女。
ここ最近は重い病を患っていると報告を受けただけに、その姿に驚いた。
何せ、訪ねてきたレインは元気いっぱいで、とても病人には見えないからだ。
「寝てなんかいられないわ、こんな時に」
「え?」
「ありがとうノア。お礼を言いに来たのよ」
「お礼?」
何の事だろう、と小首を傾げる俺。
「アーリーンにしてあげた事を聞いたわよ」
「ああ」
「それで、ついさっき、あの囲ってる女を全員叩き出したわ」
ここでようやく話が見えてきた。
レインの夫、アラン。
皇女の夫として、ある意味一番まともな事をしている男だ。
皇女の夫はよほどの事が無い限りは臣下扱い。
そして、皇女であるため、さほど跡継ぎを求められない。
故に、その夫達は皇女ではなく、妾を囲うものが非常に多い。
その事は半公認で認められている。
皇女にふしだらな思いを向けるよりは、他の女で解消した方がいい。
皇女の夫という準皇族ともなればそれなりの地位、妾の一人はむしろあって当たり前だ。
男の方も、どうやっても自分より上の立場の皇女を相手にするよりは、支配できる妾を相手にした方がプライドを保てる。
アンガスのようにアーリーンと添い遂げたいと言ってくる方が稀なのだ。
「礼を言うわノア、あなたのおかげで、堂々と泥棒猫たちと戦えるようになったのよ」
俺はふっ、と笑った。
当たり前だからといって、皇女側に嫉妬心がないわけではない。
臣下に嫉妬するのがみっともないから、表立って――いや、こそこそやるほうがよりみっともないから、何も出来ないでいるだけだ。
その「嫉妬」の許しが出たから、レインは早速動いたというわけだ。
俺がアーリーン達の為にしたことが、意味こそ違えど、レインの助けになったようだ。
「それはいいけど姉上、あまり無理はするなよ。医官の報告は読んでいる、病は――」
「それなら治った」
「え?」
「泥棒猫達を叩き出したら、信じられないくらい体が軽くなったわ」
病は気からという。
そして心の病というのもある。
レインのはどっちなのかは知らないけど、どうやら、本気であれで治ったようだ。
「本当にありがとう、ノア」
「どういたしまして。それで姉上、これからどうするんです?」
「これから?」
「妾達を叩き出した後ですよ」
「それは......」
なんだこの反応は。
かなりいい歳いってるレインが顔を赤らめてもじもじしだしたぞ。
「姉上?」
「あの人、結婚した夜に言ってくれた言葉を覚えてたのよ」
「はあ」
何の言葉なのかは気になった。
二人の思い出、しかもおそらくは初夜の時の話。
深くは聞かない方がいいと思った。
「だから......泥棒猫たちもいなくなったし、赦してやってもいいかな、って」
「なるほど。それなら頑張って姉上、余に出来る事があったら何でも言って」
「ええ。ありがとうね、ノア」
図らずも、という言葉がある。
ノアの一連の動きがまさにそうだ。
帝国の皇女はこれまで、親王に比べて大幅に寿命が短かった。
数百年の歴史の中で、60歳を超えたのはわずか二人というレベルだ。
しかしノアのこの施策を境に、帝国の皇女の寿命が大幅に伸びることになった。
当時ではすぐにわからなかったのだが、皇女を縛り付けていた因習から解放されたことで、寿命が大きく伸びたのは後世になって明らかにされた。
ノア一世を語る上で、ささやかな、しかし確かに歴史に残る功績になった。
翌日、書斎の中。
俺はヘンリーとオスカーの二人を呼び出した。
俺が座り、ヘンリーとオスカーが机を挟んで立っているという、いつもの形で政務を執り行う。
「というわけでオスカー。嫁いだ皇女関係の予算の見直しをさせろ。年間予算からすれば大した額ではないが、余が本気でこうしたと示す為だ」
「陛下、その事なのですが、もう少し慎重に行うべきではないのでしょうか」
反論をするオスカーを真っ正面から見つめる。
「帝国数百年にわたって続けられてきたしきたり。いきなり廃止するのはいかがなものかと。アーリーンの件は特例ということでもよろしいのではないでしょうか」
オスカーの言うことは正論だ。
こういう古いしきたりは、いきなりぶっ壊すようなやり方をすると強い反発を受ける。
皇帝とて、やりたいことを何でもかんでもやれる訳ではない。
特にしきたりなんかはそうだ。
しきたりをイジるということは、ある意味過去の皇帝たちに対する挑戦なのだ。
その抵抗や反発は時には予想以上に強いものだ。
だが。
「もう決めたことだ、変更はない」
「どうしても考え直しては頂けないのでしょうか」
「......」
「オスカー」
それまで黙って成り行きを見守っていた、
「何でしょうか、兄上」
「トゥルバイフに動きがあった」
「今は皇女達の――」
「皇女達の特権を下げてまで、嫁がせてくれる帝国皇帝の本気さが伺える。その類の声がトゥルバイフの内部から聞こえてきた」
「――っ! 陛下......まさかこのために」
俺は深く頷いた。
アンガスの直訴を耳にした瞬間、この図を頭の中で描いていた。
嫁いだ皇女の特権は、何も帝国内だけではない。
むしろ他国に出した時にこそきいてくる。
当然だ、嫁いだ皇女は人質であり、ゲストだ。
ないがしろにしてしまったら、帝国に敵対宣言をするのとほぼ同じ意味なのだ。
故に、皇女は嫁いだ先でも、同じレベルで扱われる。
それを俺が取っ払った。
「最初からこれが狙いだったのですか?」
俺はにこりと微笑んだ。
直接には応えずに、立ち上がって、背後の窓から外を眺めた。
「大人しくしてくれるといいんだがな」
それはの皇女を政略結婚に出すと決めた時の続きの言葉だった。
「さすが陛下でございます。ここまでやれば、トゥルバイフもきっと感涙し従ってくれるはずでしょう」
「とはいえ油断はできん。警戒だけは欠かさずにしておけ」
「はい」
ヘンリーは深く頭を下げた。
俺はオスカーをじっと見つめた。
目と目があった、しばらくの間見つめ合った。
オスカーは「わかりました」と、予算の見直しに応じた。
ヘンリーとオスカー、二人は揃って退室した。
「はあ......」
「上手くはいきませんね」
入れ替わりに入ってきたドンがそう言った。
「殿下が、陛下のお気持ちを受け取りませんでしたね」
「......よく気づいたな」
「陛下さすがでございます」
ドンの褒詞にも、俺は再びため息をついた。
予算の見直しなど、事務的レベルの話で、相を通して関連部署に文書を一枚だすだけのはなしなのに、俺はわざわざ内務親王大臣であるオスカーを呼び出して、直接話した。
それは彼に
「治世のためならばなんにでも手をかける」
というメッセージを送るためだ。
父上に倣って、俺は諜報網を構築している。
フワワの箱だけではない、もっと闇に紛れているような連中も使っている。
そして、あっちこっちからオスカーに不穏な動き――とまではいかないが異心ありという報告が上がってきた。
邪魔をすればたとえ親王でも――
そんなメッセージを送ったのだが、オスカーは受け取らなかった。
気づいていて、あえて受け取らなかった。
いつかは手をつけなければならんのか、いや、そんな日が来なければと願うしかないか。 | “Sister! I heard that you were ill!?”
I was the most surprised I’ve been in a while when I saw Rain being ushered into the parlor.
The First Princess Rain is almost the same age as Mother.
A princess who was known for her lady-like martial arts and dynamic personality.
I was surprised to see her, as I had heard that she had been suffering from a serious illness recently.
She was in such high spirits that she didn’t look like a sick person.
“I can’t be resting, not at a time like this.”
“Eh?”
“I need to be thanking, Noah. I came to thank you.”
“Thank me?”
I tilted my head, wondering what she was talking about.
“I heard what you did for Arlene.”
“Ahh.”
“So, just a little while ago, I knocked out all the women staying at Husband’s place.”
The rest of the story finally came into focus here.
Alan, Rain’s husband.
As the princess’s husband, he is in a way the man who is doing the most normal thing.
The husband of the Imperial Princess is treated as a subject unless there is something wrong with him.
And because she is a princess, she’s not asked to have an heir.
Therefore, many of the husbands of the Imperial Princess have concubines in their lives, rather than only the Imperial Princess.
This is semi-official recognition.
It is better to get rid of your desire with other women than to turn the sluttish thoughts toward the Imperial Princess.
When you are the husband of an Imperial Princess, a quasi-royalty figure, it is only natural to have a concubine or two.
For men, it is better to have a concubine they can control than to have a princess who is above them in any way, and they can maintain their pride.
It is rare for a man to say he wants to be with Arlene like Angus.
“Noah, thanks to you, I can now fight those thieving cats proudly.”
I chuckled.
The fact that it is natural does not mean that there is no jealousy on the part of the Princess.
Because it’s not dignified to be jealous of your subjects, so you can’t show it openly — no, you can’t do anything at all because it’s even more disgraceful to sneak around.
Now that the ‘jealousy’ was excused, Rain moved quickly.
It seems that what I did for Arlene and the others helped Rain, even if in a different way.
“That’s fine, sister, but don’t take it too hard. I’ve read the medical officer’s report.”
“I’ve recovered, you know.”
“Eh?”
“After I beat those thieving cats out of there, I feel incredibly light.”
It is said that sickness and health begin with the heart.
And there is also mental illness.
I don’t know which one Rain’s is, but apparently, she was properly cured by that one.
“Thank you so much, Noah.”
“You’re welcome. So, sister, what are you going to do now?”
“About what now?”
“After knocking out the concubines.”
“That’s .......”
What is this reaction?
Rain, who’s getting pretty old, started blushing and fidgeting.
“Sister?”
“I just remembered what he said to me the night we got married.”
“Haah.”
I wondered what those words were.
A memory of the two of them, and probably from their wedding night.
I knew better than to ask too deeply.
“So I thought, ...... now that the thieving cats are gone, I might as well forgive him.”
“I see. Well then, good luck, sister, and if there is anything I can do, please let me know.”
“Yes. Thank you, Noah.
There is the word, unintentional.
Noah’s sequence of actions was just like that.
Imperial Princesses have had a significantly shorter lifespan than their kinsmen.
In the several hundred years of their history, only two have exceeded the age of .
However, after this measure by Noah, the life expectancy of the Imperial Princesses increased significantly.
It was not immediately clear at the time. Still, it was revealed in later generations that the liberation of the Imperial Princesses from the customs that had bound them had greatly increased their life expectancy.
It was a small but certainly historic achievement of Noah’s generation.
The next day, in the study.
I called Henry and Oscar over.
We conducted government business in the usual manner, with me sitting and Henry and Oscar standing across the desk from each other.
“That’s why Oscar. I want you to review the budget for the Princesses who have married. It may not be much from the annual budget, but it’s to show that I’m serious about this.”
“Your Majesty, about that, shouldn’t we be a little more careful?”
I look Oscar straight in the eye as he makes his rebuttal.
“The tradition has been carried on for hundreds of years in the Empire. I don’t think it’s a good idea to suddenly abolish it. I think it would be fine to call Arlene’s case a special exception.”
Oscar had a good point.
These old traditions are strongly opposed if you try to break them suddenly.
Even the Emperor cannot do everything he wants to do.
This is especially true concerning traditions.
In a sense, tweaking traditions is a challenge to the Emperors of the past.
The resistance and backlash are sometimes stronger than expected.
But,
“It has already been decided, there will be no change.”
“I hope you will reconsider.”
“......”
“Oscar.”
Henry, who had been quietly watching the proceedings until then, opened his mouth to speak next.
“What is it, brother?”
“There has been a move in Turbaif.”
“Now the princesses–“
“It shows the seriousness of the Emperor who is willing to lower the privileges of the Imperial Princesses to allow them to marry. Voices of that kind were heard from within the Turbaif.”
“–! Your Majesty, ......, now way for this to happen.”
“Yeah.”
I nodded deeply.
The moment I heard Angus’ direct appeal, I had drawn this picture in my mind.
The privileges of a married Princess are not limited to the Empire.
In fact, their privileges come into play when they are sent to other countries.
Naturally, a married Princess is both hostage and guest.
Neglecting her is almost the same as declaring hostility to the Empire.
Therefore, the Princess is treated on the same level even after marriage.
I took that away.
“Was this your intention all along?”
I smiled at him.
Without responding directly, I stood up and looked out the window behind me.
“I hope they’ll behave themselves.”
It was a continuation of the words I had used when I decided to send the three princesses off to a political marriage.
“As expected of His Majesty. If you have gone this far, I am sure that Turbaif will shed tears of joy and follow your orders.”
“One cannot be too careful, though. Keep your guard up.”
Henry bowed deeply.
I stared at Oscar.
Our eyes met, and we stared at each other for a while.
Oscar said, “I understand,” and agreed to review the budget.
Henry and Oscar both left the room together.
“Haah.......”
“That didn’t go so well.”
Don said as he came in to take over.
“His Highness didn’t accept Your Majesty’s wishes, did he?”
“I’m surprised you noticed that, .......”
“Your Majesty is indeed very good.”
I sighed again at Don’s compliment.
“I went out of my way to call Oscar, the Minister of the Imperial Household, and spoke to him directly, even though it was just a matter of sending a single document to the relevant department through the Fourth Vizier.”
It was to,
“I will do whatever it takes to bring about the reign of the monarchy.”
This was to convey a message to him.
Following in my father’s footsteps, I’m building an intelligence network.
I’m using more than just Fuwawa’s box; I’m also using people who are more in the dark.
And from all over the place came reports of disturbing – if not outright unrest – in Oscar.
If anyone interfered even if it’s the Prince–
I sent such a message, but Oscar did not receive it.
He was aware of it, and he didn’t dare take it.
Will I have to deal with it someday, or can I only hope that such a day will never come? |
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} | 深夜、俺は宿の中で書き物をしていた。
俺が都を留守にしてても、ヘンリーとオスカーの合議で政務は動くが、それでも皇帝じゃないと決裁できない案件がちらほらと出てくる。
それがたまに運ばれてくるから、夜の内に内容を読んで、考えて、返事をしないといけない。
今もそれで、俺は寝る時間を削って返事を書いていた。
コンコン。
ドアが控えめにノックされた。
「ジョンです」
書き物をする手が止まった。
顔を上げて、ドアを見た。
ペイユではない、男の声が名乗ってきた。
ジョン......という名前を記憶の中から探した。
すぐの青年の姿が脳裏に浮かび上がってきた。
「......ああ、お前か。入れ」
「ありがとうございます!」
返事のあと、ドアがゆっくり開いた。
ドアの外で跪いたままドアを開けて、一旦立ち上がって丁寧にドアを閉めてから、改めて恭しく俺に跪き頭を下げた。
「陛下におかれましては――」
「部外者はいない、
「――はい! お久しぶりでございます、ご主人様」
「うむ。元気だったか」
「はい!」
ジョンは顔を上げて、満面の笑みで答えた。
かつて、先帝の第一王子アルバートが闇奴隷を商っていた時期がある。
その闇奴隷商と街中でばったりでくわして、無理矢理奴隷にされてた子供達を助けて、引き取った。
その時の子供のうちの一人がこのジョンだ。
あの後数年間屋敷で雑務をしてたが、俺が即位した時に代官として外にだした。
俺はジョンを見つめ、観察した。
「少しふっくらとしてきたな、ちゃんとメシは食ってるみたいだな」
「すいません! 最近アブラ飯にはまってて」
「へえ? アブラ飯」
「脂身を濃く味付けして飯にぶっかけただけの物だけど、これがやみつきになる味なんですよ!」
「ははははは、男らしい飯だな。もっといい物は食ってないのか?」
「何回か商人どもの接待に行ったことがあるんですが、出てくる飯がなんか上品すぎて合わなかったんです。上品なのはわかるけど食ったら下痢んなっちゃんです」
「貧乏舌が染みついてるのか。それでも少しずつならしていけ。将来帝都に呼び戻したときもその貧乏舌のままじゃ、余が褒美にやれるものが減る」
「は、はい! がんばります!」
「で、何をしに来たんだ?」
「はい! ご主人様がここに来てるって聞いて、兵を連れて護衛に来ました」
「兵?」
俺がちょこんと小首をかしげ、耳を澄ませた。
すると、ちょっと気配を感じた。
宿の外に、深夜ではあり得ないような物々しい空気を感じた。
「大げさだな」
「とんでもない! こんなところでご主人様に何かあったらどえらい事ですよ。それに」
「屋敷を出た後はご主人様にご奉仕する機会が減ったんで、こういう時くらいやらせて下さい」
ジョンはそう言って、熱烈な目を向けてきた。
慕われてるのが分かるから、悪い気はしない。
「ははは、わかった。全部お前に任せよう」
ジョンが嬉しそうに、パッと頭を下げた。
その時の事だった。
さっきまでは耳を澄ませても何も物音が聞こえなかったのに、一変して外で言い争う物音が聞こえてきた。
「なんだ?」
「よっぱらいかもしれません。大丈夫です、誰もいれるなって下にはキツく言ってますんで」
「宿泊客はちゃんととおしてやれ。貸し切ってるわけじゃないんだ」
「は、はい! さすがご主人様、そういう気配り出来るようになれってメアリーからいつも言われてるのに忘れてました!」
ジョンはそう言って、ポカ、と自分の頭を小突いた。
農民から奴隷を経て俺の屋敷に来たという経歴上、ジョンは作法とか言葉遣いとかはぱっと見めちゃくちゃなほうだ。
今もそれが出てるが、俺の家人は奴隷出身が多いから、こういう場では笑って流すことにしてる。
そう考えるとエヴリンは希少な存在だったな――と、思っていると。
争いの物音の中に、金属の剣戟音が混じった。
「むぅ?」
「なんだぁ? あいつら。すいませんご主人様、窓をかります」
「ああ」
俺が頷き、ジョンは立ち上がって、窓際に向かっていった。
「ご主人様!?」
部屋にペイユが飛び込んできた。
俺はやることがあるから先に寝てていいっていったのが、この騒ぎで起きてきたみたいだ。
「安心しろ、なんともない」
「は、はい......あっ、ジョンさん......」
俺の屋敷の出身で、顔見知りでもあるジョン。
ジョンの姿を見て、ペイユは「なんで?」っていう疑問と、久しぶりにあった懐かしさの感情がない交ぜになっていた。
一方、ジョンは窓際に立った後、一気に窓を開けた。
すると窓越しにうっすらと聞こえていた争いの音が一気にクリアに聞こえるようになった。
「何やってんだてめえら!!」
ジョンは腹の底から怒鳴った。
親王時代、兵務省に詰めていたころはこういうタイプの武将とよく接していたから、俺は慣れたもんだけど、そうじゃないペイユはビクッとして身をすくませた。
「ああん、なんだあ? なんで兵士同士でもめてる。てめえらどこの管轄だ!」
「こ、これはこれはジョン様。ジョン様がおいでになってるとは知らず大変申し訳ありません」
ジョンの怒鳴り声に、一人の男が慇懃な態度で応じた。
「ご主人様、この声......」
「ああ。ジョン」
「はい、なんですか」
ジョンは窓際に立ったまま、体ごと俺の方をむいた。
「そいつの事を知ってるのか?」
「はい、まあ俺の下で関所の門番をやってる、まあザコです」
「そうか。そいつは俺が目当てだろう」
「ご主人様を?」
目をむくほど驚くジョン。
俺はジョンに、昼間起きた出来事を話した。
「そうだったんですか」
ジョンの驚きが収まった。
話を聞けば、俺がいつもやってる事なのはわかるからだろう。
事情を知ったジョンは再び振り向いた。
「一人で来いクズが!」
男が応じる声の直後、ドタドタドタ、という足音とともに、昼間の男が慌てた様子で部屋に転がり込んできた。
「お待たせしましたジョン様! すみません、ジョン様がいるって知らないで、挨拶が遅くなってしまって」
「俺への挨拶なんかどうだっていいんだよ」
ジョンは近づき、男を蹴った。
「てめえのご主人様のご主人様がここにいらっしゃるんだ、挨拶しろ!」
話が理解できない、とばかりに首をかしげる男。
ジョンがあごをしゃくって、男は俺をみた。
そこで、ようやく俺の存在に気づいた男はハッとした。
「ああ、お前! ここであったが百年目!」
男はいきり立って、俺につかみかかろうとした。
ペイユは悲鳴を上げた。
俺は座ったまま動かなかった。
ジョンが横から割って入って、男を蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされた男は壁に激突して、驚愕した顔でジョンをみた。
「な、なぜ......」
「てめえのご主人様のご主人様だっつってんだろ」
「え?」
そこでようやく、すこし落ち着いて物を考えられる様になったのか。
「ご主人様......」
「......ご主人様?」
それから俺を見て、つぶやく。
つぶやいた後、みるみるうちに青ざめていった。
ジョンは王邸時代の使用人だ。
つまり、十三親王――皇帝の家人だ。
それは、役人レベルならば誰でも知っている事実。
誰がどこの家人だというのは重要な事で、知らないではすまされないことだ。
当然、この男もジョンの事はよく知っているはずだ。
その上で、ジョンのご主人様といえば――。
理解がすすんで、男はがくがく震えだした。
ようやく俺の正体を理解したみたいだ。
「も、申し訳ございません! 陛下だとはつゆ知らず!」
「知らないですむと思ってんのか!」
「いや、知らないですむ」
俺は会話に割って入った。
机の上に置かれている、書き物の間すっかり冷えてしまった茶をとって、一口すする。
「帝国法にきちんと定められている。余が名乗る前の事には不敬罪が適用されない」
「そりゃそうですけど。おいてめえ、よかったな、陛下が帝国史上で一番法律をきっちりする方で」
「は、はは。はひぃ......」
男はすっかり腰が抜けたようだ。
一方、ジョンは俺に体ごと振り向いた。
「さすが陛下。で、実際どうします?」
「ふっ」
俺は微笑みかけた。
それこそさすがジョン、さすが仕えて古い家人の一人だ。
ジョンは、こういう時の俺の事をよく知っている。
「関所で規定以上の通行料の要求、民への暴行。罷免の上永久登用不可、このあたりだろう」
ジョンは心底感動したような目で俺を見つめた。
そして、未だにへばっている男にふりむき。
「今の聞いてたか?」
「は、はい?」
「首だよ首。よかったな命たすかって」
「は、はい! あ、あああありがたき幸せ!」
男は慌てて、俺に頭を下げた。
何度も何度もその場で土下座したまま頭を下げるもんだから。
「もううざいから消えろ」
と、ジョンに部屋の外に蹴り出された。
ジョンはその後をおって、廊下に待たせているであろう自分の部下に一言二言、言いつけをしてから、戻ってきて部屋のドアを閉めた。
その間、俺の目配せでペイユが窓をしめた。
「本当にすいませんご主人様、俺の監督不行き届きです」
「気にするな、どこにもそういうのがいるものだ」
「はい、本当すいません。あっ、そうだご主人様」
「ここじゃまたご主人様に因縁つけてくるやからがいないともかぎらないから、うちに来ていただけませんか。じつはメアリーもご主人様に会いたいって。もちろん、親王邸にいたときに覚えた料理とかつくらせますんで」
俺はふっと笑い、そのまま立ち上がった。
「だったらやっかいになろう」
「ーー! ありがとうございます」
「行こうか、ペイユ」
「はい!」
宿を出て、ジョンの兵士に護衛されて、ジョンの家にやってきた。
「広いな」
馬から下りた俺は、目の前の邸宅を見てつぶやいた。
そこそこに広い邸宅は、入り口のところにかがり火が焚かれている。
そのかがり火がまるで道しるべの様に、表門から奥の建物に伸びている。
だからありがたく住まわせてもらってるです」
「これで家賃とかかなり浮いてメアリーも喜んでますよ」
俺はにこりと微笑みながら、かがり火の花道を通って中に入った。
ジョンの官職はそれなりのものだ。
すくなくとも100人近くの兵士を指先一つで指揮できて、関所の役人を足蹴に出来るレベルだ。
本当なら「家賃が浮いた」ような話をする地位ではない。
だが、たぶん......賄賂とか受け取らないで清貧をつらぬいてるんだろうな。
俺の家人はそういうタイプが多い。
俺の好みに迎合してる面はなくはないが、現実としてそうしている者が多い。
「自分がケチるのはいいけど、下にまで押しつけるなよ」
「え? でも俺が模範になってやって、まわりの連中も綺麗になればいいじゃないですか」
「ふっ、人間は理想じゃ食っていけない」
俺は微笑みながら、ジョンに言う。
「お前もエヴリンと同じ病気だな」
「姉さんと同じ病気? な、なにがまずいんですか?」
ジョンは血相を変えた。
俺が「病気」という言葉を使ったもんだから、それで慌てだしたんだ。
「焦るな、責めてるんじゃない。お前もエヴリンも自分の基準で普通の人間を高く評価しすぎだ」
「えっと......?」
「お前は大して金をもらわなくても、余のために働ける」
「もちろんです! ご主人様は命の恩人、人生の恩人です!」
「でも大した給金も出さないで、お前はいい人材を捕まえられるのか?」
「え......」
「余に恩義を感じてない人間が、お前のところの安い給料と、例えば高い給料出してくれる商人のところ。さあどっちに行く?」
「うっ......」
ジョンは言葉をつまらせた。
「大抵の人間、特に有能な人間になればなるほど、自分の能力ならもっと稼げてもいい、と思うものだ」
「そ、そりゃ......しかし」
「そもそも」
俺はふっ、と悪戯っぽく笑った。
「余とて、お前たちがちゃんと働いたときに褒美をやってるだろ?」
「!!!」
「下の者を足蹴にすることはかまわん、鞭で叩く必要もあるだろう。だが、飴をやることはわすれるなということだ」
「は、はい! 分かりました! ちゃんとやります」
俺はもう少し穏やかに微笑んでみせた。
ジョンのことだ、ちゃんと言えばその通りに軌道修正するだろう。
「実は、最近人材引っ張れなくて困ってたんです。今ならそれのせいなんだって......ありがとうございます!」
ジョンは恥ずかしそうにいう。
「そうか、ちゃんと励めよ」
ジョンの様子をしばらく見よう。
これで人材を集められるようになれば――もう一つ二つ上の地位に引き上げてやろう。
俺はそう思ったのだった。 | It was late at night and I was inside the inn writing.
Even when I am away from the Capital, the government affairs are run by a joint decision of Henry and Oscar, but there are still a few matters here and there that can only be decided by the Emperor.
I have to read the contents, think about them, and respond to them during the night.
So even now, I was cutting down on my sleeping time to write a reply.
Knock-knock.
A discreet knock on the door.
“It’s John.”
I stopped writing.
And then looked up to see the door.
A man’s voice, not Pieyu’s, had identified himself.
I searched my memory for the name John .......
Immediately the image of a young man came into my mind.
“...... Ah, it’s you. Come in.”
“Thank you very much!”
After the reply, the door slowly opened.
Kneeling outside the door, he opened it, stood up once and carefully closed the door, then reverently knelt and bowed to me once again.
“Your majesty, I–“
“There are no outsiders here, private courtesy will do.”
“–Yes! It has been a long time, Master.”
“Umu. You’ve been well?”
“Yes!”
John looked up and answered with a big smile.
There was once a time when Albert, the former Emperor’s first Prince, was a black marketer of slaves.
I bumped into this black marketer on the street and rescued the children who were being forced into slavery and took them in.
One of those children was John.
He did odd jobs in the mansion for a few years after that, but when I ascended to the throne, I sent him out as a deputy.
I looked at him and observed.
“You’ve gotten a little plump, looks like you’ve been eating well.”
“Apologies! I’ve been addicted to fatty rice lately.”
“Eh? Fatty rice.”
“It’s basically just thickly seasoned fat poured over rice, but it’s so addictive!”
“Hahahaha, that’s a manly meal. Have you had anything better?”
“I once went to a restaurant to entertain some merchants, but the food was too refined for me. It’s elegant, I know, but I got diarrhea after eating it.”
“You have a poor palate. However, you should gradually get used to it. If you keep that poor palate when I call you back to the capital in the future, there will be less for me to reward you with.”
“Y-yes! I’ll do my best!”
“So, what are you doing here?”
“Yes, sir! I heard that Master was here, so I came to escort him with soldiers.”
“Soldiers?”
I tilted my head a little and listened carefully.
Then I felt a slight presence.
Outside the inn, I sensed an air of something that could not have been there in the middle of the night.
“That’s over the top.”
“No way! If something happened to Master in a place like this, it would be a disaster. Besides,”
“I haven’t had much opportunity to serve Master since I left the mansion, so let me at least do it on occasions like this.”
John said so as he turned his eager eyes on me.
I don’t feel bad because I know he admires me.
“Hahaha, all right. I’ll leave everything to you.”
“Thank you very much!”
John bowed his head, looking happy.
That’s when it happened.
Until now, I couldn’t hear anything even if I listened carefully, but then I heard an argument going on outside.
“What is it?”
“It might be a drunk. There’s nothing to worry about. I’ve told the staff downstairs not to let anyone in.”
“Let the guests through. We’re not renting the whole place out.”
“Y-Yes! As expected of Master, Mary always told me to be attentive to such things, but I forgot!”
John said and scratched his head.
Given his history as a farmer and then a slave before coming to my mansion, John’s mannerisms and language are a bit of a mess at first glance.
It still shows, but since many of my people come from slavery, I try to laugh it off on occasions like this.
Evelyn was a rarity when you think about it – or so I thought.
Amidst the noise of the struggle, a metallic swordfight mingled.
“Muh?”
“What is it? Those guys. Excuse me, master, I’ll take the window.”
I nodded, and John got up and went to the window.
“Master!?”
Peiyu came running into the room.
I told her that I had something to do and that she could go back to bed, but the commotion seemed to have woken her up.
“Don’t worry, I’m fine.”
“Y-yes, ......,Ah, John-san .......”
John was from my mansion and they knew each other.
When Peiyu saw John, she felt mixed emotions, a ‘Why’ as well as nostalgia for meeting after a long time.
Meanwhile, John stood by the window and opened it at once.
Then all at once the sound of the struggle that had been faintly audible through the window became clear.
“What the hell are you guys doing!”
John roared from the bottom of his gut.
When I was in the Ministry of Military Affairs during the reign of the Emperor, I used to deal with these types of generals a lot, so I’m used to it, but Peiyu, who was not one of them, was horrified and shrugged.
“Aaahh, what is it? Why are you soldiers fighting with each other? What jurisdiction is this!”
“I-It’s John-sama. I am so sorry, I didn’t know that John-sama was here.”
A man responded to John’s yell with condescension.
“Master, this is .......”
“Yeah. John.”
“Yes, what is it?”
John stood at the window and turned himself toward me.
“Do you know that guy?”
“Yes, well, he works for me as a gatekeeper at the checkpoint, and he’s a real piece of shit.”
“I see. He’s after me, I think.”
John was surprised, his eyes widened.
I told him what had happened during the day.
John’s surprise subsided.
I guess he could tell from what I told him that I do this all the time.
When he heard what had happened, he turned around again.
“Come up alone, you little shit!”
Immediately after the man’s voice, there was a thud, thud, thud of footsteps, and the man from the afternoon came tumbling into the room, looking flustered.
“I’m sorry to keep you waiting, John-sama! Apologies, I didn’t know John-sama was here, and I’m sorry it took me so long to greet you.”
“I don’t care how you greet me.”
John approached and kicked the man.
“Your Master’s Master is here, so greet him!”
The man tilted his head as if he didn’t understand the conversation.
John scrunched up his chin, and the man looked at me.
Then he finally noticed my presence and gasped.
“Ahh, you! Your luck runs out here!”
The man became furious and tried to grab me.
At that, Peiyu screamed.
I sat down and didn’t move.
John intervened from the side and kicked the man.
The man slammed into the wall and looked at John with a startled look on his face.
“W-why ......”
“I told you he’s your master’s master.”
“Eh?”
The man finally calmed down and began to think things over.
“Master, .......”
“Ouu.”
“......, master?”
Then he looked at me and mumbled.
After mumbling for a bit, he turned pale.
John was a servant from the Thirteenth Residence.
In other words, he was a servant of the Thirteenth Prince–the Emperor.
That is a fact that anyone at the official level knows.
It is important to know who is a retainer of whom, and ignorance is not an option.
Naturally, this man must know John very well.
On top of that, speaking of John’s master–.
The man began to tremble as his understanding progressed.
It was as if he finally understood who I was.
“I am so sorry! I had no idea His Majesty was there!”
“You think you can get away without knowing!”
“No, ignorance is fine.”
I interrupted the conversation.
Then took a sip of the tea on the desk, which had cooled down while I was writing...
“Your Majesty?”
“It’s written in the imperial law. There is no disrespect for anything I do before I identify myself.”
“That’s true, but... You are lucky His Majesty is the most law-abiding person in the history of the Empire.”
“Ha-ha-ha. yess .......”
The man seemed to have completely lost his nerve.
John, on the other hand, turned himself to me.
“As expected of you, Your Majesty. So, what are you going to do?”
“Fuuh.”
I smiled at him.
As expected of John, one of the oldest servants under me.
John knows me well at times like this.
“Demanding more than the prescribed toll at the gate, assaulting the people. He’ll be dismissed from his post and forever denied promotion.”
John looked at me with deeply impressed eyes.
Then he turned to the still-battered man and said,
“Did you hear that?”
“Y-Yes?”
“Neck, your neck. You’re lucky to be alive.”
“Y-yes, sir! T-Tttthank you for your grace!”
The man panicked and bowed his head to me.
He bowed again and again, on his knees on the spot.
“It’s getting annoying, get out of here.”
John kicked him out of the room.
John followed him, said a word or two to his men who were probably waiting in the hallway, and then came back and closed the door to the room.
Meanwhile, Peiyu closed the window on my watch.
“I’m really sorry for my lack of supervision, Master.”
“Don’t worry, there are people like that everywhere.”
“Yes, I’m sorry. Ah, by the way, Master.”
“I don’t know who might try to get on the master’s case here again. so could you please come to my house? As a matter of fact, Mary also wants to see Master. Of course, I will have her cook some of the dishes she learned when she was at Lord’s house.”
I laughed and stood up.
“Then I will be troubling you.”
“Shall we go, Peiyu?”
“Yes!”
We left the inn and were escorted by John’s soldiers to his place.
“It’s huge”
I muttered to myself as I dismounted from my horse and looked at the mansion in front of me.
The mansion is quite spacious, with a bonfire burning at the entrance.
The bonfire stretched from the front gate to the back of the building as if it were a beacon.
“This is the residence of the Governor, and I’m grateful to be allowed to live here for free.”
“Is that so?”
“Mary is very happy with this as it will save a lot of money on rent and stuff.”
I smiled and walked in through the bonfire pathway.
John’s position as a government official is a good one.
At the very least, he could command nearly a hundred men with the snap of his fingers, and he could kick the crap out of any official at the checkpoint.
With that said, he is not in a position to talk about “rent-bagging”.
But maybe he’s just keeping it simple, not accepting ...... bribes or anything like that.
Many of my retainers are like that.
It’s not uncommon for them to pander to my preferences, but many of them do so as a matter of reality.
“It’s fine if you’re stingy, but don’t force it on everyone else.”
“Wh? But if I set a good example, why don’t the people around me become cleaner, too?”
“Fuu, People can’t survive on ideals.”
I smile and say to John,
“You have the same illness as Evelyn.”
“Same illness as sister? W-What’s wrong?”
John’s complexion changed.
Because I used the word ‘Illness’ he panicked.
“Don’t be impatient, I’m not blaming you. You and Evelyn both think too highly of ordinary people by your own standards.”
“Eh mm... ......?”
“You guys work for me without getting paid much money.”
“Of course, I can! I owe my life to the master, you’re my life’s savior!”
“But can you recruit good people without paying them much money?”
“Eh .......”
“Let’s say for example, there’s a person who doesn’t feel indebted to me, would that person go to your place for a low salary or to a merchant who pays a high salary? Which would they go for?”
“Ugh. .......”
John stumbled over his words.
“Most people, especially the more capable ones, think they should be making more money than they are.”
“T-that’s ...... true, but...”
“To begin with.”
I laugh playfully.
“At the end of the day, I reward you when you work hard, don’t I?”
“!!!”
“I don’t mind if you kick down your underlings, and even whip them. But don’t forget to give them candy as well.”
“Y-Yes! Understood! I’ll do it right.”
I smiled a little more gently.
John’s the kind of guy who will change his tune if properly told.
“I’ve been having trouble pulling in talent lately, actually. Now that you mentioned the reason for that. ...... Thank you very much!”
John said embarrassingly.
“Well, you better give me some encouragement.”
Let’s watch John for a while.
If he can get the right people, – let’s move his position up a bit.
I thought to myself. |
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"series": "Noble Reincarnation~Blessed With the Strongest Power From Birth",
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} | 「......よし、やってくれ」
あくる日の昼下がり、屋敷の庭の開けたところで、俺は深呼吸して心の準備を整えた後、相手に命じた。
目の前にいるのは、炎を纏った竜。
鎧の指輪で実体化した、ルティーヤーの指輪――覚醒したバハムートだ。
バハムートは口を大きく開き、喉の奥から渦巻く炎を俺に向かって吐いた。
次の瞬間、俺の体が炎上した。
「むっ......」
業火に焼かれながら、その感触を体に覚え込ませる。
するのを堪えて、心の中で数える―。
「はっ!」
レヴィアタンの力を使って、バハムートの炎を吹き飛ばした。
焦げた匂いがする、地面がぶすぶすと、焼かれて土が溶け落ちている。
大体分かったところで、さあ次――
「きゃあ!」
悲鳴が聞こえた。
声の方を向くと、メイドのジジが地面にへたり込んで、口は金魚のようにぱくぱくしている。
その横に何か封筒のようなものが落ちている。
「だ、大丈夫ですかご主人様」
「あんな......すごい炎......」
「ああ。あれはバハムート、俺が自分で自分を焼いたんだ」
「えええええっ!?」
盛大にびっくりするジジ、何を言われたのかわからない、そんな顔をした。
「じ、自分で自分をって、ど、どうしてですか?」
「今のうちに受けておこうと思ってな」
ちらりと、視界の隅っこにあるステータスをみる。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
総理親王大臣
性別:男
レベル:10/∞
HP D+SSS 火 E+SSS
知性 E+SSS 光 E+SSS
陛下の代わりに帝国の政務を行う、総理親王大臣。
それを命じられたことで、俺の「+」はおそらく「帝国全土分」が上乗せされている。
俗な言い方をすれば、今の俺は無敵状態だ。
だから今のうちに、バハムートやレヴィアタンの攻撃を受けておこうと思った。
「どうして今のうちなんですか?」
「ジジは、天然痘の予防接種を受けたか?」
「え? あっ、はい。ご主人様のメイド達はみんな受けてます」
「それと一緒だ。天然痘の予防接種は人痘法といってな、患者の膿――つまり弱い病気の毒をわざと移して体に覚えさせるものだ。それと一緒だよ」
「あっ、はい......」
俺に言われて、ようやく理解、そして納得したジジ。
彼女はゆっくりと立ち上がるも、まだ完全には驚きが引いていないようだ。
「そ、そうだとしても、あんなに強い攻撃を......すごい炎を......」
「おかげで分かった。全身を燃やされると息苦しくなる。これでいざって時は驚かずにすむ」
「はぁ......ご主人様ってやっぱり、すごいです......」
「それより、何を持ってきたんだ?」
「あっ、はい! ご主人様にお手紙です」
ジジは慌てて手紙を拾い、俺に差し出した。
「誰からだ?」
「わかりません」
「なに?」
「届けてきた人は何も言いませんでした。ただ一言親王様にって」
「ふむ......」
俺は手紙を受け取って、マジマジと眺めた。
とりあえず、害意はなさそうだ。
俺は封をきって、中の手紙を取り出した。
「これは......」
「どうしたんですか?」
「みてみろ」
俺は手紙をジジに見せた。
「これは......献立ですね。すごい健啖家な人ですね」
ジジでも一目で分かるように、手紙の内容は献立だった。
一日の基本と、たまにはさまれたおやつらしきもの。
それが約一ヶ月分、ずらりと書かれていた。
献立以外には、簡単に一言「命の恩人へ」と書かれている。
文字を書き慣れてない人の字だ。
俺は手紙をマジマジと見つめた。
何かの暗号か? と疑ってみたが、簡単な行の頭を読むものから、複雑な暗号まで。
いろいろな可能性を試したが、それらしき内容は読み取れなかった。
ふと、気づく。
その紙の感触に。
そして感触に気づくと、あることが分かった。
一連の可能性が、芋づる式のようにひらめいた。
「クルーズ、か」
「え? 分かったんですか?」
「ああ、これは陛下の......おそらくここ一ヶ月の献立だよ」
「なるほど。たしかに王宮の御膳っぽい内容ですね......あれ? でも陛下って、今お加減が......」
ジジは目を剥いて驚いた。
陛下の健康状態が思わしくないから、それが回復するまで俺に総理親王大臣を命じてきたのは、この屋敷のメイドなら誰でも知っていることだ。
「つまりそういう事だ」
「どういう事ですか?」
「まず、この紙の感触は知っている。王宮に献上している、陛下御用達の紙だ」
「だから陛下の献立だと分かった。そしてこれを使えて、『命の恩人』と言うのはクルーズくらいだ」
あの時、文字を書けない宦官のことで、俺が罪を軽くするよう進言した話だ。
あれは、解釈によってはクルーズも死罪にできた。
命の恩人は、言いすぎでも何でも無い。
そしてクルーズは陛下の側近、おそらく健康の実情は誰にも喋るなと陛下から厳命されている。
実際、勅命を伝えに来た時も何も喋らなかった。
しかし、陛下は献立まで気が回らなかったらしい。
クルーズが届けてきたのは、どう見ても健康な人間の献立だ。
夏バテの人間はこんなに食えない。
クルーズ、そして庶妃エイダ。
から寄せられた遠回しな情報で、俺はますます、陛下が健康なままであると確信した。
「はあ......すごいですね。この紙の材質だけで差出人が分かるなんて。やっぱりご主人様はすごいです」
感嘆するジジに微笑み返し。俺は、今度クルーズにお礼を言わねばなと思った。
ところどころ灼けた服を着替えて、俺は今日の政務に取りかかるため、外苑に作った書斎に向かおうとした。
すると、正門で門番と何者かがもめているのが見えた。
何事だろうかと気になって、近づいてみた。
「あっ! 申し訳ございません殿下。今すぐ追い払いますので」
若い門番が慌てた。
もめている男の胸板を押して、言葉通り今すぐ追い払う態勢だ。
「殿下って、あんたが十三殿下様かい」
門番ともめていた男は、明るい声で俺に話しかけてきた。
男の身なりは、一言で言えば乞食のようだった。
髪はボサボサ、服はボロボロ。
体の至る所は泥塗れで、近づくとツーン、として異臭が鼻の奥を刺激する。
「ちょうどいいや、ちょっとお話があるんだけど、聞いてくれるかな」
「おまえ、なに言ってるんだ。失礼にもほどがあるぞ」
「......いや、いい。話があるんだろ? 聞こう」
驚く門番、何が起きたのか分かってないって顔だ。
「付いて来い」
俺は男を連れて、屋敷に引き返した。
屋敷に入って、メイドの一人に茶を用意させて、自ら男を応接間に連れ込む。
俺はソファーに座り、男も座った。
「いやあ、さすが親王様、話が分かるぅ」
「それよりも、俺にあってなんのようだ?」
「そうそう、オイラはリオン。今日は親王様に儲け話を持ってきたんだ」
「商売の話さ」
「なるほど? で、どんな商売だ」
「それは秘密ですわ。親王様のところは使用人も多いだろ? 壁にナントカってね」
「ばれると儲け損ねるのか?」
「ふむ。で、いくらいるんだ?」
「100リィーン。それだけあれば十分だ」
「ふむ」
俺はリオンを眺めた。
リオンは俺をじっと見つめている。
「お前に金を――つまり出資したら何が帰ってくる」
「一年で、十倍にして返しますわ」
「そうか」
ふと、部屋に入ってきていたメイドの表情が目に入った。
メイドは苦笑いでリオンの後ろ頭を見ている。
そんな雑な詐欺じゃだれも騙せないよ、と言っているような顔だ。
まあ、そう思うだろうな。
「分かった。ボニー」
俺はそこにいるメイドの名を呼んだ。
「はい」
「ディランにいって、1000リィーンをこの男に渡せ」
リオンとボニー、二人の驚きの声が重なった。
「どうした、1000リィーンじゃ足りないのか?」
「い、いや......足りないこたあ......ないが......」
「だったら問題ないだろ。期待しているぞ」
リオンはキツネにつままれた顔のまま、ボニーに連れられて、応接間の外に出て行った。
しばらくして、ボニーが戻って来た。
「ご主人様。さっきの男にお金を渡して、帰ってもらいました」
「ああ」
「あの......どうして、お金を? それに十倍も。あんな詐欺師、お金を渡したら帰ってきませんよ」
「お前、あの男の頭をみたか」
いきなり何を聞くんだ? って顔をするボニー。
「頭だよ」
「はあ......ボサボサでした、けど」
「そこじゃない。確かに頭はボサボサで、服もボロボロ、泥だらけで臭かった。しかし」
「頭皮は綺麗だった」
「え? そ、そんなのあり得ません」
「お前にはわかるか」
「はい! 私もご主人様に助けられた孤児で、そのままメイドになったのですから」
俺は微かに頷いた。
この屋敷のメイドの大半はそういう人間だ。
本人か、家族が俺に命を救われて、そのままメイドになった。
ボニーもその一人だ。
「あんな格好で、頭皮が綺麗な訳がありません」
「そう。だからあれは変装だ」
「......はい」
ボニーは苦い顔のままだが、納得して頷いた。
それに......これはボニーに言っても意味はないが、リオンは部屋に入ってきても俺だけを見ていた。
ここは十三親王邸の応接間、貴顕を接待するために、かなり高価な調度品が置かれている。
素人でも一目で価値が分かるものばかりだ。
なのに、リオンはまったく気にもせず、俺だけを見つめてきた。
「わざわざ変装してまできて俺に金を要求してきた、つまり何かがある」
「はい......」
「何があるのかは分からん」
俺は手のひらを上向きにして、肩をすくめた。
「だが、人は宝だ。そこまでして来た男に投資と考えればいい。例えこの先何もなくても、損は金銭だけ。何かがあれば、ああいう格好して懐に飛び込んできた男を一人手に入れられる。あれはそういう金だ」
「なるほど......さすがです、ご主人様!」
十三親王邸の外。
屋敷から出てきたリオンは、物陰で待っている、別の男と合流した。
その男はちゃんとした格好をしている、容姿端麗な青年だ。
「どうだ?」
「......もらってきた」
「なんでそんな変な顔をしている」
「見ろ」
リオンが革袋を取り出すと、仲間の男も驚いた。
「これは......いくらなんだ?」
「1000リィーン。十倍もくれたぜあのお殿様」
「......なぜ?」
「知らん。俺の顔をじっと見つめたかと思ったら、メイドに1000リィーン渡せって命じた」
「お前の顔を?」
青年はしばしリオンをじっと見つめてから、ハッとした。
「......頭だ」
「頭?」
「見抜かれていたんだよ、お前のその綺麗な頭で、変装してたんだって」
「......あっ」
リオンは自分の頭――ぼさぼさの下にある綺麗な頭皮にふれて、同じようにはっとした。
「だから、何かがあるって思ったんだ」
「何かがあるって、何もないぞ。ただ親王様という人を観察したかっただけだぞ俺たちは」
「なのに、十倍の金をだした。どうやら予想以上の大物らしいぞ、あの殿下は」
二人の青年は、物陰から十三親王邸を見つめた。
ノアは面白い男を一人釣る為に1000リィーンを出したが。
その行為は彼の予想に反して。
二人の、有望な青年が釣れたのだった。 | “...... Okay, do it.”
In the early afternoon of the following day, in the garden of the mansion, I took a deep breath and prepared my mind, then ordered the other party.
In front of me was a dragon clad in flames.
It was Luthiya’s ring, materialized by the Armor Ring – the Awakened Bahamut.
Bahamut opened its mouth wide and spat out swirling flames at me from the back of its throat.
The next moment, my body was in flames.
“Mmm. ......”
As I was burned by the fire, I let my body remember the feeling.
I counted in my mind as my skin sizzled – one minute.
“Ha!”
Using the power of Leviathan, I blew out the flames of Bahamut.
I can smell the charred smell, the ground is smoldering, the earth is melting down from the burning.
Now that I had a general idea, let’s move on to–
“Kyaaa!”
I heard a scream.
I turned to the voice and saw Gigi, my maid, slumped on the ground, her mouth gaping like a goldfish.
An envelope of some kind fell beside her.
“What’s wrong?”
“A-Are you okay, Master?”
“That was such a ...... great flame. .....”.
“Yeah. That’s Bahamut, I burned myself.”
“Eeeeeeeeeeeh!?”
Gigi looked very surprised, she looked as if she had no idea what was said to her.
“W-What do you mean, you burned yourself?”
“I thought I’d take it while I still could.”
I glanced at the status in the corner of my eye.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Prime Minister
Gender: Male
Level: / ∞
HPD+SSSMPE+SSSStrengthD+SSSStaminaE+SSSIntelligenceE+SSSSpiritE+SSSSpeedF+SSSDexterityE+SSSLuckE+SSS FireE+SSSWaterD+SSSWindE+SSSEarthE+SSS
Light E+SSSDarknessE+SSS
The Prime Minister, who is in charge of the affairs of the Empire on behalf of His Majesty.
As a result of being ordered to do so, my “+” has probably added “the entire Empire” to it.
In layman’s terms, I am now invincible.
That’s why I decided to take on the attacks of Bahamut and Leviathan while I still can.
“But why now?”
“Gigi, have you been vaccinated against smallpox?”
“Eh? Ah, yes. All of Master’s maids are vaccinated.”
“It’s the same thing. The smallpox vaccination is called variolation, in which the patient’s pus – the poison of a weak disease – is deliberately transferred to the body so that the body learns it. It’s the same thing.”
“Oh, yes, .......”
Gigi finally understood and agreed with what I said.
She slowly stood up, but it seemed that the surprise had not completely worn off yet.
“B-But even so, it’s hard to believe that such a strong attack ...... that amount of flame .......”
“I know that. It’s hard to breathe when your whole body is on fire. This way I won’t be surprised when the time comes.”
“Haaa. ...... Master is amazing, after all. ......”
“So, what do you have for me?”
“Ah, yes! It’s a letter to Master.”
Gigi hurriedly picked up the letter and presented it to me.
“Who is it from?”
“I don’t know.”
“What?”
“The person who delivered it didn’t say anything. He just said it was for the Prince.”
“Fumu. ......”
I took the letter and looked at it intently.
At any rate, it seemed to be harmless.
I broke the seal and took out the letter inside.
“This is .......”
“Have a look.”
I showed the letter to Gigi.
“It’s a ...... menu. And it’s for a healthy person.”
As even Gigi could see at a glance, the contents of the letter were a menu.
There were three basic meals a day and the occasional snacks.
This was written in a row for about a month.
In addition to the menu, there was a simple note that read, “To the person who saved my life.”
It was the handwriting of someone who was not used to writing.
I stared at the letter intently.
Was it some kind of code? I suspected that it was some kind of cipher, but it ranged from a simple reading of the beginning of a line to a complex cipher.
I looked at all the possibilities, but couldn’t read anything that looked like it.
Suddenly, I noticed something.
I noticed the texture of the paper.
And as I noticed the texture, I realized something.
A series of possibilities flashed through my mind like a stream.
“Curuz, huh?”
“E? Were you able to figure it out?”
“Yeah, this is His Majesty’s ...... menu for the past month, probably.”
“I see. It is true that the contents are like a royal palace meal. ...... Huh? But His Majesty is currently not feeling well .......”
Gigi opened her eyes in surprise.
Since His Majesty’s health was not good, he ordered me to be the Prime Minister until his recovery, and all the maids in the house know that.
“That’s what this is all about.”
“What do you mean?”
“First of all, this paper is familiar to me. It’s the paper of His Majesty’s royal court.”
“That’s how I knew it was His Majesty’s menu. And the only person who can use this and say ‘thank you for saving my life’ is Curuz.”
At that time, I recommended that the charges against the eunuch who couldn’t write be dropped.
That was the case, and Curuz could have been charged with death sentence, depending on the interpretation.
It’s not too much to say that I owe him my life.
And Curuz is a member of His Majesty’s inner circle, and he’s probably under strict orders from His Majesty not to tell anyone the truth about his health.
In fact, he didn’t say a word when he came to deliver the Imperial Decree.
However, His Majesty didn’t seem to mind the menu.
What Curuz delivered was a menu for a healthy person, no matter how you look at it.
No one with summer fatigue could eat this much.
Curuz and the consort, Ada.
The roundabout information from the two of them made me more and more convinced that His Majesty was still in good health.
“Hmmm, ...... as expected. You can tell the sender just by the material of this paper. Master is amazing after all.”
I smiled back at Gigi’s admiration. I’ll have to thank Cruise next time, I thought.
After changing out of my partially burned clothes, I headed to the study I had built in the outer garden to begin today’s political work.
But then I saw someone arguing with the gatekeeper at the main gate.
Curious as to what was going on, I approached the gate.
“Ah! I’m sorry, Your Highness. I’ll send him away right now.”
The young gatekeeper panicked.
Pushing the man’s breastplate, he is ready to drive him away right now, just as he said.
“Your Highness, huh, are you His Highness the Thirteenth?”
The man who had been arguing with the gatekeeper spoke to me in a cheerful voice.
The man’s appearance could be summed up in one word: beggar-like.
His hair was shaggy and his clothes were tattered.
And his body was smeared with mud, and when I approached him, I could smell a strange odor that irritated the back of my nose.
“Just in time, I’d like to talk to you, but I don’t know if you’ll listen.”
“What are you talking about? You are being too rude.”
“...... No, leave it at that. Do you want to talk about something? Let’s hear it.”
Surprised, the gatekeeper looks like he doesn’t know what’s going on.
“Follow me.”
I took the man and headed back to the house.
Entering the mansion, I had one of the maids prepare a cup of tea and brought the man into the parlor myself.
I sat down on the sofa and the man sat down.
“Yep, as expected from the Prince, you know your stuff.”
“More importantly, what do you want with me?”
“Yes, yes, I’m Leon. Today I brought the Prince a lucrative offer.”[TN: This guy has a rough way of speaking like Indra(The Thunder Prince)]
“A Business.”
“Oh, really? And what kind of business?”
“That’s a secret. The Prince has a lot of servants, doesn’t he? And they say that even walls have ears.”
“If they find out, you’ll lose your money?”
“Fumu. So how much is it?”
“ reens. That’s all I need.”
“Fumu.”
I looked at Leon.
He was staring at me.
“What do I get for my money or my investment in you?”
“I’ll pay you back tenfold in a year.”
Suddenly, I saw the expression of the maid who had entered the room.
The maid was looking at the back of Leon’s head with a wry smile.
It was as if she was saying, “You can’t fool anyone with such a crude scam.”
Well, you would think so.
“All right. Bonnie.”
I called out the name of the maid there.
“Yes?”
“Go to Dylan and give him the 000 Reens.”
The two surprised voices of Leon and Bonnie overlapped.
“What’s the matter, 1000 reen’s not enough?”
“N-no, ...... it’s not that it’s not enough, but .......”
“If so, it won’t be a problem. I’m counting on you.”
Rion, who was led out of the parlor by Bonnie had a sly expression.
A few moments later, Bonnie came back.
“Master. I gave the man the money and asked him to leave.”
“Oh.”
“But ......, why did you give him the money? And top of that ten times more. You can’t give money to a crook like that and expect him to come back.”
“Did you see that guy’s head?”
What do you hear suddenly? Bonnie makes a face.
“Yes, his head.”
“Well, it was shaggy, but...”
“Not that. It’s true that his head was shaggy, his clothes were tattered, and he smelled of mud. But.”
“His scalp was clean.”
“What? Th-that’s not possible.”
“You got it now?”
“Yes! Because I was also an orphan rescued by my master and became a maid.”
I nodded slightly.
Most of the maids in this mansion are like that.
She or her family members were saved by me and then became my maid.
Bonnie is one of them.
“That’s not possible to keep your scalp clean looking like that.”
“Yes. That’s why it was a disguise.”
“...... Yes.”
Bonnie’s face remained bitter, but she nodded in agreement.
And ...... this makes no sense to Bonnie, but Rion was only looking at me when he came into the room.
This is the parlor of the Thirteenth Prince’s residence, and it is furnished with rather expensive furnishings for entertaining noblemen.
Even a layman can recognize the value of these items at a glance.
And yet, Rion didn’t pay any attention to them and just stared at me.
“He even went to the trouble of disguising himself to ask me for money, which means there’s something going on.”
“Yes, .......”
“I don’t know what it is.”
I shrugged my shoulders, palms upwards.
“But people are treasure. Think of it as an investment in a man who has come that far. Even if there’s nothing in the future, the only loss is money. If something happens, we get one guy who dresses like that and jumps into our pockets. That’s the type of payment I’m talking about.”
“I see. ...... As expected, master!”
Outside the 13th Prince’s residence.
Rion came out of the mansion and met up with another man waiting in the shadows.
The man was a well-dressed, good-looking young man.
“How did it go?”
“I got it.......”
“Why do you have such a strange look on your face?”
“Look.”
When Leon took out a leather bag, his companion was also surprised.
“How much is this ......?”
“A thousand reens. He gave me ten times as much.”
“Why ......?”
“I don’t know. He just stared me in the face and told the maid to give me a 1000 reens.”
“He stared at your face?”
“Yeah.”
The young man stared at Leon for a moment, then huffed.
“....Head.”
“Head?”
“He saw right through you, with your clean head, that you were in disguise.”
“...... Ahh.”
Rion touched his head – the clean scalp underneath the shag – and was equally flabbergasted.
“That’s why I thought there was something about it.”
“There’s not much of anything. We just wanted to observe the person referred as Prince.”
“But we got ten times the money. Apparently, he’s a bigger fish than we thought, his highness.”
The two young men stared at the Thirteenth Prince’s residence from the shadows.
Though Noah had offered 1000 reens to catch one interesting man.
The act was contrary to his expectations.
Two promising young men had been caught. |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | ジョンについて行って、官邸の正門前にやってきた。
かがり火の終着点とも言うべきそこには、見知った女が使用人を引き連れて待ち構えていた。
メアリー。
かつて奴隷商から救い出した少女で、ジョンの妻となって、外に出したいまでは夫同様俺の家人である女。
そのメアリーが、よどみない動きで俺の前で跪いて、地面に平伏しした。
ジョンの時は公人としての身分があるから指摘したが、メアリーは公には役職がないから、ただただ使用人としての
そんなメアリーの後ろで、使用人達が驚いている。
――奥様がなんで? この人何者?
という感じになっているのがありありと見えた。
「お待ちしておりました、ご主人様」
「楽にしろ。というか、略式でもよかったのだぞ」
どんな礼法にも、正式なものと略式のものがある。
メアリーがいましたのは、内礼の中でもかなり正式のもの――作法のフルコースといっていいものだ。
だから俺は簡単な略式の方でいいって言ったんだが、メアリーは両手両膝を地面につけたまま、顔だけ上げて。
「とんでもありません! ご主人様に会えるのなんてもう数年に一度あるかないかくらいです。こうして会えるときはさせて下さい。大恩あるご主人様にちゃんとしないと後ろめたさで夜もねむれません!」
「そういうものなのか」
「はい」
「ならば――ジョン」
俺は振り向き、ジョンの名前を呼んだ。
「はい!」
「職務で上京して余に謁見するときもあるだろう。その時はメアリーも連れて夫婦でこい。――これでたまにあえるだろ?」
「ありがとうございます」
慌てて頭を下げるジョンに対して、メアリーは落ち着き払った感じで更に一礼した。
まだ幾分か少年的なおちつきのなさが残っているジョンに比べて、メアリーは大分大人の女な落ち着きを身につけているようだ。
そんなメアリーは静々と立ち上がって、一歩引いて半身になって、俺に官邸への道を譲った。
「どうぞお入り下さい、ご主人様」
「うむ」
俺はうなずき、中に入った。
歩き出した俺の後ろにジョンとメアリーの夫妻がついてきて、そのすぐ後ろにジョンたちの使用人が困惑顔のままついてくる。そして一番後ろからペイユが黙ってついてきた。
官邸にはいって、まずは応接間の様なところに通された。
「......ほう」
中に入った俺は思わず声を漏らした。
部屋に入った瞬間、まるで別天地に足を踏み入れたかのような感じになった。
夜だというのに灯りがふんだんに灯されて明るく、さらには一嗅ぎで分かる位良質なお香が焚かれている。
さらには俺が座るであろうソファーも刺繍などがふんだんにあしらわれてて、その前のテーブルに瑞々しい果物が置かれている。
誰が見ても分かる、かなりの歓待ぶりだ。
「すみません、ここではこれくらいの事しか出来なくて。都には到底及ばないですけどその分頑張ってお仕えしますから」
「ささ、ご主人様こっちにどうぞ」
ジョン・メアリー夫妻に誘導されて、俺はソファーに座った。
見かけだけじゃなくて、詰め物をたっぷり使ったいいソファーだ。
俺は座って、部屋の中を見回した。
「......金はどうした」
おもむろに、ジョンとメアリーに聞いた。
はばつの悪そうな表情を浮かべた。
「こんな接待、お前の俸給じゃ賄えんだろ。下手したら一年くらいの俸給がすっ飛ぶぞ」
帝国の下級官吏の俸禄はお世辞にも高いとは言えない。
それもいずれは手をつけるところなのだが――今はまずジョンの話だ。
「それなら大丈夫です」
「ほう?」
「街の商人から借りました。あっ、ちゃんと借用書書きましたよ。俺の任期がおわるまで返せばいいって約束してくれたので」
「ふむ」
「安心して下さいご主人様。ちゃんと分かってます。民から吸い上げて――なんて事は絶対にしません」
メアリーがジョンのフォローをした。
もともとが奴隷、さらに辿れば奴隷に売られるほどの寒村で産まれ育った二人だ。
間違っても民から搾取するようなことはしない、俺もそれをよく見極めて上で家人として外にだした。
それは見る目が間違ってなかったが、借金してまで俺の接待をしてくるとは思わなかった。
「さあさあ、ご主人様おくつを」
メアリーはそう言って、俺の足元で跪いた。
そして俺が履いてる靴を恭しく脱がせてきた。
靴を脱がしたあと、背後に控えている若い使用人から水をはったたらいを受け取る。
そして、俺の足を洗う。
王邸にいたときから、夜帰宅すると使用人に足を洗わせて、疲れをとる。
これはみんながやってることだし、一日歩いた後に足を洗って簡単なマッサージをするだけでも疲れがかなり取れるものだから、転生した直後は戸惑ったがいつしか普通にやってもらう様になっていた。
親王邸にいたときと同じように、メアリーが俺の足を洗う。
そして、その後ろには他の使用人が控えている。
特に親王以上の場合、給仕とか直接奉仕できるのは一定以上の地位の使用人だけだ。
この場だと、俺の家人でもあるメアリーがそれに相当する。
有り体に言えば、他の使用人じゃ「奉仕する資格もない」だ。
それは貴族ならば当たり前の様に分かっていることだが、平民にはなかなか理解できないものだ。
今も、メアリーの使用人達が、「なんで奥様がそんな下女みたいな事をしてるの?」な顔をしていた。
ひとしきり足を洗わせた後。
「ペイユ」
「は、はい!」
俺に呼ばれて、ペイユは慌てて小走りで俺のそばにきた。
「紙とペンだ」
「はい!」
ペイユは肌身離さず持っていた荷物の中から、紙とペンを取り出して俺に渡した。
俺はそれと受け取って、テーブルの上でさらさらと走り書きをした。
そして、流れを理解してそのまま俺の印鑑――皇帝の印をさしだした。
それを受け取って、書いた紙に印を押す。
これで――略式だが詔書のできあがりだ。
俺はそれをジョンに渡した。
「もっていけ」
「これは?」
「余の接待に使った分は内府にちゃんと請求しろ。請求分出すように書いておいた」
ジョンが悲鳴のような声を上げた。
メアリーも、洗い終えた俺の足を拭く姿勢のまま固まっている。
「すいません! 足りないところがあったら今からすぐに集めてやらせますんで」
「逆だ」
「え?」
「余の接待など、借金してまでするような物ではない。
「ご主人様......」
「やっぱりご主人様はすごいお方......」
ジョン・メアリー夫妻は感動し、目を潤わせた。
「さて......寝室に案内してもらおうか。話は明日にしよう」
「わかりました!」
夫妻は同時に頷いた。
そしてメアリーが使用人を指揮して動き出す。
教育が行き届いているのか、使用人達はメアリーの命令に従ってテキパキ動き出した。
「わ、私はただのメイドで――」
メアリーの使用人がペイユを客扱いするものだから、ペイユは慌てだした。
「いいから、あんたは俺達の後輩、つまりこの子達より上の客だ」
と、ジョンはそう言った。
それでもペイユは不安げに俺に救いの目線を投げかけてくる。
俺はふっと微笑み返して。
「そうしろ。お前は余のメイドであって、他の人間には必要以上にかしこまる必要はない」
「は、はい。よろしくお願いします、ジョンさん、メアリーさん」
俺の言いつけで少しは気が楽になったのか、ペイユは状況を受け入れた。
そして俺も、メアリーに寝室に案内してもらった。
そこもわかりやすく高価な寝具がそろっていたが、あえて指摘する事なく放っておいた。
メアリーと最後までついてきた使用人が部屋から退出して、部屋の中は俺一人になった。
『主、少しよろしいか』
「うん? どうしたリヴァイアサン」
一人っきりになった瞬間、リヴァイアサンが話しかけてきた。
「珍しいな、お前のほうから話しかけてくるのは」
『申し訳ございません。主の耳に入れておいた方がよろしいかと判断したもので』
「ふむ?」
ベッドの上に腰掛けて、小さく首をかしげ、先を促す。
『下女の中に一人、主に強い敵意を放っていた者がおりました』
「ああ、賢そうな女の子のことだろ?」
俺は頷き、メアリーの背後にいた印象深い女の子の事を思い出した。
年齢は12~3――いや、ジョンとメアリーのやっていることを考えれば、その子も貧村の出だろうから、発育不良を考慮したら15~6の可能性もある。
その子は、ずっと俺に敵意を向けていた。
しかしその敵意をうまく隠している。
即物的な物しか見えていない人間の目じゃなくて、思慮が深いタイプの人間にありがちな瞳をしていた。
『さすが主、気づいてらっしゃったのか』
「あれだけの敵意を向けられれば気づきもする」
『その娘をどう処されるおつもりだろうか。ご用命とあらば、身の程を軽く思い知らす事も可能ですが』
「お前はいつも物騒だな」
俺は声を上げて笑った。
「捨て置け、毒にも薬にもならない敵意をいちいち気にする必要はない」
『さようで......』
「そもそも何も問題はない。例え敵意が行動に発展したとして、お前の守りを抜けられるか?」
『万が一にも』
リヴァイアサンは即答した。
「ならば問題はない。お前が守っているのだからな」
応じるリヴァイアサン。
俺の脳裏にだけ聞こえてくる声で姿形はないが、その返事の声色は、目の前に跪き、感激に震える姿が見えてくるようなものだ。
に比べて激している性格のリヴァイアサンは、こういう時の反応も大きいものだった。
その晩、俺は熟睡した。
俺が無防備であればあるほど信頼しているという事だから、いつもよりリラックスして熟睡する事にしたのだった。 | I followed John and came to the front gate of the official residence.
There, at the end of the bonfire, a familiar woman was waiting with a servant in tow.
Mary.
She is the girl I once rescued from the slavers, and she is now John’s wife, and until she got out, she was also my retainer, just like her husband.
Mary knelt in front of me, bowing flat on the ground.
I had pointed this out to John because of his status as a public figure, but Mary had no official position, so she simply bowed inwardly as a servant.
Behind Mary’s back, the servants were surprised.
-Why is Mistress doing this? Who is this man?
I could clearly see that they were thinking like that,
We have been expecting you, Master.
“At ease. I would have preferred a short ceremony.”
In any etiquette, there are formal and informal ones.
Mary attended with a very formal version of the etiquette–a full course of manners if you will.
So I told her I was fine with the simpler, abbreviated version, but Mary kept her hands and knees on the ground and only raised her face.
“It cannot be! I only get to see the master once every few years or so. So please let me do this when we can meet. I can’t sleep at night because I feel guilty if I don’t do right by the master to whom I owe so much!”
“Is that how it is?”
“Yes.”
“Then–John.”
I turned around and called his name.
“Yes!”
“There will be times when you will have to come to Capital on official business to seek an audience with me. When you do, bring Mary with you as a couple. –That way we can see each other from time to time, right?”
“Thank you very much.”
John bowed hurriedly, and Mary bowed again in a calm manner.
Compared to John, who still has some boyish composure, Mary seems to have acquired the composure of an adult woman.
Mary stood up quietly, took a step back, and with a half-step, gave me the way to the official residence,
“Please come in, My Lord.”
“Umu.”
I nodded and went inside.
John and Mary followed behind me as I walked out, and John’s servants followed right behind them with puzzled looks on their faces. Peiyu followed silently from the very back.
We entered the official residence and were first ushered into what looked like a parlor.
“......Hou”
I let out an unintentional gasp as I entered the room.
The moment I entered the room, I felt as if I had stepped into a different world.
Even though it was nighttime, the room was brightly lit, and there was incense burning that I could tell from one whiff of it.
The sofa on which I would be sitting was richly decorated with embroidery, and fresh fruit was placed on the table in front of it.
It was a very hospitable atmosphere that anyone could see.
“I’m sorry, this is all we can offer here. I know it’s not as much as the capital can offer, but I’ll do my best to make up for it.”
“Here here, Master, this way please.”
John and Mary led me over to the sofa.
Not only did it look good, but it was a nice sofa with plenty of padding.
I sat down and looked around the room.
” ............. what about the money?”
I asked John and Mary.
They both looked embarrassed.
“Your salary wouldn’t cover this kind of entertainment. If you are not careful, you could lose a year’s salary in an instant.”
The salary of a low-ranking official in the Empire is not very high.
That’s something I’ll get around to eventually, but for now, let’s talk about John.
“It’s okay on that front.”
“Houu?”
“I borrowed it from a merchant in town. I wrote an IOU. And promised to pay it back by the end of my term.”[TN: For those not familiar with IOU, it’s an abbreviation for ‘I owe you’. And a written promise that you will pay back some money that you have borrowed.]
“Fumu.”
“Don’t worry, Master. We understand it perfectly. We will not suck it out of the people.”
Mary followed up with John.
The two were born and raised in a village so poor that they were originally slaves and were sold into slavery.
Even if they made a mistake, they would never exploit the people, and I had carefully watched them and sent them out as my retainers.
I was not mistaken in my judgment, but I did not think they would go into debt to host me.
“Now, now, master, let me take off your shoes.”
Mary said and knelt at my feet.
Then she reverently took off the shoes I was wearing.
After removing my shoes, she received a tub of water from a young servant standing behind her.
Then washed my feet.
Ever since I was at the residence of the Thirteen Prince, when I came home at night, I let the servant wash my feet to relieve my fatigue.
This is something that everyone does, and just washing my feet and giving them a simple massage after a day of walking takes away a lot of the fatigue, so I was a bit confused right after my reincarnation, but eventually, I started having the servants do it as usual.
Mary washed my feet, just as she did when I was at the Imperial Palace.
Behind her, there were other servants.
Especially in the cases of Princes and above those, only servants of a certain rank are allowed to serve you or directly serve you.
In this case, Mary, who was also my maid, is the equivalent.
To put it bluntly, other servants are ‘not qualified to serve’.
This is something that nobles understand as a matter of course, but it is difficult for commoners to understand.
Even now, Mary’s servants were making faces like, “Why is the mistress acting like such a servant?” ?
After showing my feet for a while,
“Peiyu”
“Y-Yes!”
I called her, and she scurried over to my side.
“Paper and pen.”
“Yes!”
She took a piece of paper and a pen out of her baggage, which she carried close to her, and handed them to me.
I took it and scribbled it on the table.
Understanding the flow of the writing, she then presented me with my seal – the seal of the Emperor.
I took it and stamped it on the paper.
With this, the Imperial Rescript was ready, albeit in an unofficial form.
I handed it to John.
“Take it.”
“What’s this?”
“Make sure that the amount spent on my entertainment is properly billed to the Ministry of Internal Affairs. I’ve written it down so that you’ll be billed for it.”
John screamed.
Mary was frozen in the same position she had been in while wiping my feet after washing them.
“I’m sorry! If anything is missing, I’ll have the staff come and get it right away.”
“It’s the opposite.”
“Eh?”
“My hospitality is not something that you should have to borrow money for. I have received your filial piety. That’s fine.”
“Master ......”
“Master is indeed an amazing person......”[TN: Ah yes, the missing ingredient.......]
John and Mary were moved and their eyes were moistened.
“Well ......, let’s head to the bedroom. We’ll talk tomorrow.”
“Understood!”
The couple nodded simultaneously.
Then Mary started to lead the servants.
The properly-trained servants moved briskly following Mary’s orders.
“I-I’m just a maid–“
Mary’s servants treated Peiyu as a guest, and Peiyu began to panic.
“Don’t worry, you’re our junior, which means you’re superior to these girls.”
John said.
Peiyu was still anxiously casting me a helpful glance but,
I smiled back at her.
“So be it. You’re my maid, and you don’t have to be polite to anyone else.”
“Y-yes. John-san, Mary-san, it’s a pleasure to meet you.”
Perhaps a little comforted by my words, Peiyu accepted the situation.
And I, too, had Mary show me to the bedroom.
There, too, the bedding was expensive, but I left it alone without bothering to point it out.
Mary and the servant who had followed me to the end left the room, leaving me alone in the room.
{Lord, may I have a word?}
“Um? What’s wrong, Livyathan?”
The moment I was alone, Livyathan spoke to me.
“It’s rare for you to speak to me.”
{Apologies. I decided it would be better to keep it in the Lord’s ear.}
“Fumu?”
Sitting on the bed, I nodded slightly and urged onward.
{There was one of the servants who was very hostile to the Lord,}
“Ohh, you mean the little intelligent girl, right?”
I nodded, remembering the impressive girl behind Mary.
Her age was or – no, given what John and Mary did, the girl must have come from a poor village, so she could have been 5 or 16 if you take stunted growth into account.
That child has always been hostile toward me.
But she hid her hostility well.
She had the eyes of a thoughtful person, not the eyes of someone who can only see immediate things.
{As expected of the Lord, you have noticed.}
“With that much hostility directed at me, I would have noticed.”
{What do you intend to do with the girl? At your order, I could slightly make her realize her position.}
“You are always so fussy.”
I laughed out loud.
“Let it go, and don’t worry about all this hostility, which is neither poison nor medicine.”
{ But it .......}
“There’s nothing wrong with it in the first place. Even if the hostility did turn into action, could it ever get past your defenses?”
{Not even in the unlikely event.}
Livyathan answered immediately.
“Then there’s no problem. You’re the one protecting me.”
Livyathan replied.
Although the voice is only audible in my brain and has no form, the tone of its reply is such that I can almost see it kneeling before me, trembling with emotion.
Livyathan, who has a temperamental personality that fluctuates wildly and is more agitated than others, reacts greatly in such situations.
I slept soundly that night.
The more vulnerable I was, the more I trusted Livyathan, so I decided to relax and sleep more soundly than usual. |
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} | 夜、川岸から少し離れて、それできるところに、俺は静かに佇んでいた。
ゾーイと別れて単独で別行動をしている俺、気配りも気兼ねもしなくて良くなって、力を全て気配隠しに使っている。
草むらとかに身を潜めるのが常套だが、単独なら真っ正面にでも立たない限り気付かれる事はない。
そうやって、連中がしている事を眺めている。
川岸の桟橋にはかがり火を大量に焚いていて、そのまわりはまるで昼間かってくらい明るい。
そこまで明るくしたのは積み込み作業の為だ。
桟橋には大量の船が横付けされていて、これまた大量の人夫がぎっしりと何かを詰めた麻袋を船に積み込んでいる。
満載した船から出港して、また新しい船が来て、それに積み込まれる。
麻袋の中身は塩。
俺が監視をはじめてからだけでも、数万人はまかなえる分の塩が積み込まれ、運ばれて行った。
「よほど待ちきれなかったんだな」
俺は苦笑いした。
俺がいることで出来なかった密輸、
一は様子を見る可能性もあると予想していただけに、苦笑いを禁じ得なかった。
「レヴィアタン」
(――)
レヴィアタンから帰ってきた返事は、強い「任せろ」の意思だった。
これで、証拠は確保したといっていい。
デュセルの塩販売や輸送は税金を取っていることもあって、常に詳細な数字にして報告させている。
その数字を、最新分含めて帝都から俺の元に報告させている。
目の前の状況なら、詳しく比較するまでもない。
通常の販売、輸送の十倍は遙かに超えている。
この状況そのものが、もう既に証拠と言っていい。
更なる証拠を掴むために、俺は少し離れたところに留まっている屋形船に向かった。
貨物を運搬する船が大量にある中、その屋形船だけ付かず離れずの距離にいて、さらには風に乗って享楽の声も聞こえてくる。
その船に近づき、フワワの糸を船そのものに括り付けた。
すると、船と糸経由で、声が聞こえてくる。
『これ万リィーン分。明日の朝まで万に届くって話だ』
『大丈夫なのか? こんなに一気に運んで』
『安心しろ、オルコットのヤツからの闇許可も出ている、途中で止められる事はまずねえ』
『ふむ......』
『大丈夫だって』
やりとりしている二人の男。
片方はなんだか思慮深くて、色々考えているのに対し、もう片方はイケイケドンドンな性格だった。
『皇帝がまた新しいヤツを送ってくるかもしれねえ。今のヤツが死んで、新しいヤツが来るまでの間にやれるだけやっとかないとさ』
『......それもそうか』
冷静な男は説得された。
なるほど一理ある。
今回の俺が、皇帝ではなく調べる為の勅使だと考えた場合、その急死で新しい人間が派遣されてくる事は十二分に考えられる。
それが到着するまでは、情報の往復、皇帝の決断、新しい使いの足、もろもろ合わせれば二十日は見てしかるべきだ。
二十日は長いと言えば長いし、短いと言えば短い。
次の相手と戦うために、この時間を利用して盛大にやる、というのは正しい判断と言える。
『安心しろ、何かあればすぐに知らせてやる。この前送った女達を、第十殿下はいたってお気に入りだからな』
三人目の男の声が聞こえた。
人間は、その場の立場次第で声色や言葉使いが変わるもの。
第三の男は、明らかに自分が他の二人より上位にいると考えている様子の声だ。
『よく集めたな』
『殿下がお気に入りならなんの事はない』
『殿下もお好きですな。いや、英雄色を好む。また集まったので、明日にでも送りますよ』
最初の二人が、揃ってよいしょするような口調に切り替えた。
どうやら、男は第十親王・ダスティンの家人ってところだ。
ダスティンは昔から女好きで有名だった、ある意味一番上皇陛下の血を色濃く引いているという評価すらある。
騎士選抜の時は枕を要求したこともあり、それを俺が介入してやめさせたのがシェリルだ。
そのダスティン、金じゃなくて女を賄賂にもらってるって事か。
「......」
俺はちょっと後悔した。
この話を聞きたくはなかった。
というより、この先の話も聞きたくない。
糸を切って、俺は突入することにした。
地を蹴って跳躍し、屋形船の窓をぶち破って突入した。
「何者!」
首謀者二人が誰何する――前に、ダスティンの家人の首が宙を舞った。
『お見事!』
バハムートの喝采が聞こえた。
突入した一瞬でレヴィアタンを抜き放って、そいつの首を刎ねたんだが、それ自体は大した技じゃない。
バハムートが喝采するほどのもんじゃない。
その喝采は、俺の判断に向けてのものだ。
今回の一件、俺は塩税を取り戻すために来ている。
ここにダスティンが絡んでいると分かると、ダスティンにも処罰を下さないといけない。
それは最悪、死罪も免れないことだ。
第十親王の首まで取るような事になれば大事になりすぎる。
だから俺は今のを聞かなかったことにして、それ以上の何かが飛び出す前にダスティンの家人を斬った。
それをバハムートは一瞬で理解して、凄いと喝采を送ってきた。
まあ、そんな事よりも――と俺は二人の男と向き合った。
まだ若い二人の男、片方は盛大に驚いて、片方は何か察したような顔をした。
「塩税の事を調べに来たものだ」
「なんだと! ――おい!」
驚いていた、短気な方の男は立ち上がって、船外に向かって合図を送った。
途端に外が慌ただしくなって、船がこぞって離れていく物音が聞こえた。
「なるほど、予想はしていたのか」
「備えあれば憂い無しか、お前の言う通りだったな」
短気な男がいって、冷静な方の男は苦笑いした。
「てめえが死んでなかったのは予想外だが、残念だったな。これで証拠は何もねえ」
「本当に無いと思うか?」
「ねえな、船はある程度離れたところで沈める。積んでるのは塩なんだ、河の中に沈めば証拠は綺麗さっぱり消える」
「なるほど。よく考えている」
冷静な方の男の眉がビクッと跳ねた。
俺が落ち着いている事に何かを感じてる様な顔だ。
その通り――だと言わんばかりに、俺はレヴィアタンを掲げた。
「何をするつもりだ」
「証拠を取り戻すのさ。レヴィアタン」
(!!!)
レヴィアタンから『待ってました!!』という、強い感情が流れ込んできた。
はしゃいでいるようにも感じる。
俺に暗殺の為の毒が盛られていると分かった瞬間から、忠犬で狂犬のレヴィアタンの感情は大きく動いていた。
今にも暴走しそうなそいつを宥めて、別の任務を与えると、レヴィアタンは嬉々として、何より全力でそれをやった。
音が聞こえる。
水の上を航行する船の音が大量に、そして人間のざわつきも大量に。
「どうした!?」
男が叫ぶと、屋形船の外から部下らしき男が駆け込んできた。
「た、大変です! 船が、船が全部引き返してきます」
「何だと! とっとと離れさせろ!」
「それが! 全部の船が制御不能だと」
「なにぃ!?」
男は目を向いて、それから「ハッ」となって俺を睨んだ。
「てめえの仕業なのか!?」
「ああ。河の流れを掌握すれば、船を呼び戻すなどたやすい」
「馬鹿な! そんな事出来るわけが」
「すごいな......それほどの力。名前を聞いても?」
レヴィアタンのおかげで証拠も完全に確保したと言っていいので、俺は改めて名乗ることにした。
レヴィアタンの力で、目の前に水で船を意匠した紋章を作って、更に意識に強く訴えかけるプレッシャーをかける。
俺が皇帝だぞ、というプレッシャーを。
「余は帝国皇帝、ノア・アララートである」
「なっ!」
「へ、陛下......」
二人とも言葉を失った。
魔剣の力を借りた名乗り、証拠がなくても、相手は「皇帝」だと信じ込む名乗り。
これで決着――だと思いきや。
「た、例え皇帝だろうと関係ねえ!」
男は叫んで、外に向かって更に合図を送った。
「出会え! 出会えぃぃ!」
次の瞬間、船の外から次々と、武装した男達が突入してきた。
瞬く間に屋形船の中をいっぱいにして、外でも取り囲んでいる。
「そ、そいつは陛下の名を騙る不届き者だ!」
「......捕まえて、いや、殺せ」
冷静な方の男も腹をくくって、手下達に命令した。
(――せろ)
レヴィアタンの意思が伝わってきた。
任せろ。
おぼろげながら、言葉で聞こえたような気がする。
高いテンションと、河全体を掌握したという限界突破級の事をやってのけた事もあって、レヴィアタンはライバル視しているバハムートのように、覚醒しつつあるように思えた。
ならば、と、俺はレヴィアタンを振るうことにした。
サッと把握。
俺を取り囲んでいるのは約100人、桟橋の向こうにいるのも合わせて二百はいる。
そいつらに向かって、魔剣を振るった。
夜の川の上で、魔剣が曳く水色の光は幻想的で美しく、それが通るたびに血しぶきが舞い、悲鳴が木霊した。
まるで暴風雨の如く、俺が通ったところには血の雨が降った。
レヴィアタンからその度に歓喜の感情が流れ込んできた。
レヴィアタンのハイテンションも手伝って、二百人を倒しきるまでに五分とかからなかった。
「す、凄い......」
「ば、化け物だぁ!」
最後に残った二人。
片方は突き抜けて逆に感動すらしたような顔をして、もう片方は腰が抜けてわなわなと震えていた。 | At night, I was quietly standing in a place where I could a short distance from the riverbank, overlooking it.
I was now acting alone after separating from Zoe, and don’t have to be so attentive or concerned anymore, and I use all my strength to hide my presence.
Usually hiding in the bushes is the way, but alone, I can’t be noticed unless I’m standing directly in front of them.
So, I was observing what they were doing.
The pier on the riverbank has a huge bonfire burning, and the light around it is so bright that it looks as if it is daytime.
The reason why it was so bright was because of the loading operation.
A large number of boats are moored at the pier, and a large number of laborers are loading jute bags filled with something into the boats.
The fully loaded boat leaves the port, and a new boat arrives and loads the jute bags onto it.
The jute bags are filled with salt.
Since I started monitoring the situation, enough salt has been loaded and taken away to feed tens of thousands of people.
“I guess they couldn’t wait much longer.”
I chuckled.
The smuggling that couldn’t be done because of my presence, resumed immediately after my death.
I couldn’t help but chuckle, expecting that I might have to wait a day or two to see what happened.
“Leviathan.”
(–)
The reply I got back from Leviathan was a strong ‘leave it to me’.
With this, the evidence was secured.
Dussel’s salt sales and transportation are taxed, so they are always required to report detailed figures.
I have them report those figures, including the most recent ones, to me from the Imperial Capital.
I don’t need to compare the details of the situation in front of me.
It is far more than ten times the normal sales and transportation.
This situation itself was already a piece of evidence.
To get further evidence, I headed for a houseboat that was parked a short distance away.
Amidst the large number of boats transporting cargo, the houseboat was not far away, and I could even hear the sound of pleasure in the wind.
Approaching the boat, I strapped Fuwawa’s string to the boat itself.
Then, via the boat and the thread, I heard the voice.
[This is enough for , reens. We’re talking about reaching 500,000 by tomorrow morning.]
[Carrying this much at once. Is it going to be fine?]
[Don’t worry, we’ve received black market clearance from Olcott, so there’s no way we’ll be stopped on the way.]
[It’s going to be all right].
Two guys were exchanging information.
One of them was thoughtful about the situation, while the other one was a bit of a rush guy.
[The Emperor may send a new one. We have to do as much we can in the time between the death of the current one and the arrival of the new one.]
[......That’s right.]
The calm man was persuaded.
I guess he had a point.
Considering that an Imperial envoy was sent to investigate the situation rather than the Emperor himself, it is more than conceivable that a new person will be dispatched because of his sudden death.
Until that person arrives, it should take 20 days of back-and-forth information, the Emperor’s decision, the new envoy’s travel, and other factors.
20 days can be considered long enough, yet also short.
It is the right decision to use this time to fight the next opponent and make a big show of it.
[Rest assured, we will let you know as soon in case there is any problem. The 10th Prince was very fond of the women I sent last time.]
I heard the voice of the third man.
Depending on their position, people change their tone of voice and use of language.
The third man’s voice clearly seemed to think he was above the other two.
[You have done well to gather them all.]
[If His Highness likes them, it’s nothing.]
[His Highness likes it no problem. No, Great men always have a great fondness for sensual pleasure. I have gathered more and will send them tomorrow.]
The first two men switched to a tone of encouragement.
Apparently, the man was a retainer of the 10th Prince, Dustin.
Dustin has always been famous for his love of women, and in a sense, he even has the reputation of having the most potent blood of His Majesty the Previous Emperor.
During the knight selection process, he demanded a lap pillow, and it was Sheryl who intervened and stopped him from doing so.
Dustin huh, I guess that means he’s bribing women, not money.
“......”
I kind of regretted it.
I didn’t want to hear this story.
Or rather, I didn’t want to hear the rest of the story.
Cutting the cord, I decided to charge in.
I kicked the ground, leaped, and smashed through the window of the houseboat.
“Who!”
Before the two conspirators could do anything, Dustin’s retainer’s head was in the air.
[Well Done!]
I heard Bahamut applaud.
In the split second that I was in there, I pulled out Leviathan and decapitated the guy, which in itself wasn’t much of a feat.
It wasn’t enough to make Bahamut applaud.
That applause was for my judgment.
I’m here to get my salt tax back this time around.
If it turns out that Dustin is involved here, he will have to be punished as well.
That is, at worst, a death sentence.
It would be too important if it comes to taking the 10th Prince’s head as well.
So I pretended I hadn’t heard that and slashed Dustin’s retainer before anything more could come out of it.
Bahamut understood that in an instant and applauded me.
Well, it doesn’t matter – and I turned to face the two men.
The two young men, one of whom was still very surprised, the other looked as if he had guessed what was going on.
“I’m here to investigate the salt tax.”
“What! –Hey!”
The surprised, short-tempered man stood up and motioned to the outside of the boat.
Instantly there was a flurry of activity outside, and I heard the noise of boats scrambling away.
“I see, you were prepared for this huh.”
“You are right about being prepared, don’t worry about that.”
The short-tempered man said that and the calm one laughed.
“It’s a shame that you’re not dead, but I didn’t expect you to be. Now you have no proof.”
“You really think there isn’t?”
“The boat will sink some distance away. It’s salt that’s sinking, and once it’s in the river, all the evidence will be wiped clean.”
“I see. You’ve thought this through.”
“......”
The calm one’s eyebrows twitched.
He looked as if he felt something about the fact that I was calm.
I held up the leviathan to indicate that he was right.
“What are you going to do?”
“I’m going to get the evidence back. Leviathan.”
(!!!)
A strong emotion flowed from Leviathan, ‘I’ve been waiting for this!’ .
He seemed excited.
From the moment he found out that I had been poisoned for assassination, Leviathan, a loyal and mad dog, showed a great deal of emotion.
When I quieted him down and gave him another task, Leviathan did it happily and above all with all his might.
I hear a sound.
The sounds of ships sailing on the water, and the rustling of humans, in great numbers.
“What’s going on!?”
The man shouted, and a man who looked like a subordinate rushed in from outside the houseboat.
“D-Disaster! The boats are all turning back.”
“What! Get them away from us now!”
“About that! They’ve lost control of the ship.”
“What!?”
The guy looks at me, then goes “huh” and stares at me.
“Is this your doing!?”
“Yeah. Once you control the flow of the river, it’s easy to bring the ship back.”
“Nonsense! How is that possible?”
“Amazing ......, that much power. May I ask your name?
Thanks to Leviathan, I could say that the evidence was completely secured, so I decided to tell him my name again.
With Leviathan’s power, I created a Coat of Arms designed as a ship with water before them putting even more pressure on their consciousness to strongly appeal to me.
The pressure gives the impression that I am the emperor.
“I am Noah Ararat, Empire’s Emperor.”
“Wha–!”
“Y-Your Majesty, .......”
Both men were speechless.
The name through the power of the Demon Sword is the name that makes you believe that the other party is the “Emperor” even if you have no proof.
This is settled—is what I thought.
“I don’t care if he’s the emperor or not!”
the man shouted, signaling to the outside.
“Come on! Come onn!
The next moment, armed men rushed in from outside the boat, one after another.
In the blink of an eye, they filled the houseboat and surrounded the outside as well.
“That man is a traitor impersonating the name of His Majesty!”
“Catch him at ......, no, kill him.”
Even the Calm one was angry and ordered his men to kill me.
(—Yes)
Leviathan’s intention flow through.
Leave it to me.
I think I heard it in words, though dimly.
Leviathan seemed to be awakening, like Bahamut, whom it considers its rival, due to the high tension and the fact that it had done something that was at the level of breaking the limit, taking control of the entire river.
Then, I decided to wield Leviathan.
A quick grasp.
About 100 people were surrounding me, and 200 more were on the other side of the pier.
I swung my demon sword at them.
The light blue light of the sword on the river at night was fantastic and beautiful, and every time it passed by, blood-splattered and screams filled the air.
Like a storm, blood rained where I passed.
A feeling of joy flowed from Leviathan each time.
It took me less than five minutes to defeat two hundred people, thanks to Leviathan’s high spirits.
“A-amazing ......!”
“M-monster!”
Only two remained at the end.
One had an extremely moving look on his face, while the other was shaking uncontrollably from the waist down. |
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} | 謁見の間で法務親王大臣を拝命し、朝礼が散会した後、俺はその足で法務省にやってきた。
法務省の建物は兵務省向こうの通りにある。
ヘンリー兄上の手伝いをしていた俺は、毎朝通ってちらっと見てきた建物だ。
既に辞令の伝達は済んでいるのか、法務省の敷地内に入って馬車から降りると、そこには数十人の役人が待ち構えていて、綺麗に揃った動きで俺に頭を下げた。
一人だけ頭を下げなかった、まん中にいた中年の男が進み出て、俺に片膝をついて一礼した。
「お待ちしておりました、賢親王殿下」
「話はもう聞いてるな」
「もちろんでございます」
「なら俺の部屋に案内しろ。説明は......お前の名前は?」
「ヴィニー・オージーと申します。法務省次官を仰せつかっております」
「ナンバー2か」
次官というのは、大臣のすぐ下で、実務的な事を取り仕切る役職だ。
ヴィニーは見た歳をちょっと超えたくらい。
その歳でこのポジションなら、かなりの出世頭ってことだ。
そのヴィニーに導かれて、俺は法務省の建物に入り、一直線に大臣室に案内された。
法務省の大臣室は兵務省と似たような造りで、部屋に入った瞬間すぐになじめたくらいだ。
俺は大臣の椅子に座り、ヴィニーと一対一で向き直った。
「さて、法務省で俺がやるべき事は? 刻限までざっくりでいい、説明してくれ」
「はい。法務省とは、帝国各地の裁判所を取り纏めることと、帝都における裁判を実際に行う場です。ご存じの通り帝都には貴人が多く、また先立っての反乱のように――」
そこでヴィニーは一旦言葉を切って、俺を見た。
6年前のアルメリアの反乱、その時に俺も絡んでいる事をどうやら知っているようだ。
「反乱、謀反などの重大な罪は帝都に連行し、法務省、ないしは陛下が直々に裁くのが慣わしでございます」
「そうか。つまりここは普段、通常の裁判所のような事もやってるって事だな?」
慇懃に頭を下げるヴィニー。
まあ、そんな事は知っている。
俺には、前世の記憶が残っているのだからな。
だから、その記憶をもとにズバッと切り込んだ。
「お前も裁くのか?」
「場合によっては」
「賄賂はどれくらい貰ってる」
「いい」
俺は手を突き出して、ヴィニーの言葉を遮った。
「追及するつもりで聞いたんじゃない。実情が知りたい。今聞いた話はこの部屋を出たら忘れてやる。正直に話してみろ」
「......さすが『賢』親王殿下でございます」
ヴィニーは深々と腰をおって一礼して、それから話した。
「私は取っていない方です。年間で――数百リィーンと言う所でしょうか」
「ふむ」
「こだわりがございますので。そうじゃない下の者は、私の十倍は受け取っているかと」
「こだわりって?」
「殺人の案件は受け取らない」
「なぜ」
「原告が恨んで、露見しやすく、また復讐の矛先になると取り返しがつかないからです。私は適当な案件で、どっちに転んでもおかしくない案件で幾ばくかを受け取っております」
俺は大臣の机の上にある紙を取って、その上に字を走り書きした。
書いたものをヴィニーに投げる。
「これは......」
「一年だとして、十倍の五千をやる。俺がいる間はそういうのをやめろ。俺は陛下の期待に応えたい。それに力を貸してくれ」
「......」
ヴィニーは目を大きく固まったが、やがて俺の言葉と意味が頭に染みこんだようで。
「陛下であった親王殿下に『賢』となづけ、法務親王大臣に命じた理由が今分かりました」
「そうか?」
「はい、その対応の仕方、感服いたしました。さすがでございます」
ヴィニーはメモを俺に返して、深々と一礼して。
「余分なお金は要りません、これから賄賂も受け取りません。殿下の為に働かせて下さい」
と言ってきた。
普通なら、その真意を疑うところだが。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
法務親王大臣
性別:男
レベル:1/∞
HP F+F 火 F
力 F+E 風 F
知性 F+E 光 F
視界の隅っこで見えているステータスの、MPと知性の「+」が上がった。
配下が増えれば増える程「+」の後の数値が上がっていく俺だけの能力。
少なくともこの瞬間において、ヴィニーは宣言通り、俺のために働きたいっていうのが本心だと分かった。
夜、王邸――オスカー兄上の屋敷。
法務省で色々話を聞いていたら、大臣就任を祝いたくて、屋敷に一席を設けたから来てくれ、というオスカー兄上の使いの者が来た。
断る理由もないし、俺はそこそこに話を聞いた後、ここにやってきた。
オスカー兄上は庭に宴席を設けていた。
庭はまるで昼間かの如く、ランタンを数百個灯して、ものすごく明るくなっている。
メインのテーブルがまん中にあって、少し離れた所で楽団が演奏している。
招かれたのは俺だけだが、オスカー兄上は金も人もものすごく使った。
「ありがとうございます兄上。こんなに盛大に祝ってくれてなんとお礼をしたら」
「私も嬉しいからね。陛下の五十年の治世に亘って、これ目の親王大臣だ。それもノアなのだから、なおさら祝わなきゃ......そうだろ?」
「ありがとうございます」
オスカー兄上と乾杯をすると、第八親王邸の使用人達が次々と料理を運んできた。
テーブルの上には置かなかった。
二十人くらいがそれぞれ違う料理の入った大皿を持って、俺たちのテーブルを遠巻きに取り囲んでいる。
そして、ぐるぐると回っている。
帝国の伝統的な宴会料理だ。
ぐるぐる回ってる料理で気に入ったのがあったら呼び止めると、使用人が小皿に取り分けてくれる。
それ以外の間はずっと、料理を持って、「展示」したまま俺たちの周りをぐるぐる回っている。
「しかし、本当にめでたい!」
「そうかな」
「うん? どうしたんだノア、変な顔をして。何か悩みごとか?」
「陛下がなぜ、急に親王大臣を次々に任命したのかと思って」
「それは――ノアが可愛いからだろ?」
オスカーはからかい混じりの顔でいった。
確かにそう思うことも出来る。
兵務大臣はヘンリー兄上、任命した理由は俺の領地、アルメリアで起きた謀反を平定したからだ。
そして、法務大臣は俺本人に。
俺をえこひいき、猫かわいがりしているから、と言えなくもない。
だが......本当にそうか?
「何か気になることでもあるのか?」
オスカーは飲みかけた酒を置いて、俺を真っ直ぐ見つめてくる。
「兄上なら知っているだろうけど、帝国は一度滅びかけた歴史がある、その後中興して、帝国のシステムが大きく変わった歴史が」
「ああ。それまでは皇太子以外は何もしない。ただ皇子として贅を尽くし遊び呆ける毎日だった。だから、後を継ぐために政務の勉強をしてきた皇太子以外全員が無能で、それ故帝国が滅びかけた」
「それがあるから、今の帝国は皇子が産まれたら親王にして、封地を与えてそれなりの育成をしている」
俺がいって、オスカーと頷き会う。
帝国の現状、いわば序論あたりを復習し合ったところで。
「それがどうしたんだ?」
「今の状況って、それの更に一歩先だとは思わない?」
「......まさか!?」
オスカーが盛大にびっくりして、ガタンと椅子を倒して立ち上がった。
ぐるぐる回る料理の人の輪が止まって、楽団の演奏も止まった。
静寂の中、オスカーが俺をじっと見つめる。
「皇太子の......かわりを?」
「分からない、そうかもしれないし、そうじゃないかも知れない。陛下が俺を可愛がってくれるだけなら問題はない」
オスカーは使用人が直した椅子に座り直して、微苦笑していった。
「さすがにそのような事は......」
そこに別の使用人――執事らしき格好をした使用人がやってきた。
その男がオスカーに耳打ちすると、オスカーの顔色が変わった。
しばらくして、報告を終えた執事は静かに立ち去った。
「どうしたんだ兄上」
「お前の言うとおりだ。すごいぞノア」
「え?」
「買収してる宦官からの情報だ。明日の朝礼で、私を財務親王大臣に任命するらしい」
空気が止まった。
俺もオスカーも言葉もなかった。
オスカーの大臣任命。
それは、俺を可愛がるという枠から明らかにはみ出している。
「とりあえず」
「え?」
「今日はノアの祝いと、ノアの読みに乾杯しよう」
オスカーがそう言った。
俺も気持ちを切り替えて、とりあえずオスカーと乾杯をした。
オスカーとノアが微妙に盛り上がらない祝い会をしている頃。
王宮の屋上、地上から二十メートルほどの地上にある庭園。
帝国が誇る空中庭園の中に、二人の老人がいた。
一人はこの帝国の最高権力者、皇帝だ。
もう一人はその皇帝の長年の腹心として陰に陽に様々な政務を執り行ってきた、第一宰相だ。
皇帝が空中庭園で月をみあげて、第一宰相がその背後で丁寧に報告書を読みあげていた。
「――キーツ以下、百六を捕縛いたしましたとのこと」
「陛下に譲位を迫り、上皇になって頂いた上で、皇太子殿下に即位して頂く――という、前もって掴んだいい訳通りでございました」
「そうか。五十年の治世、四十五年の皇太子――もはや待てぬか」
「ご留意を、皇太子殿下が直接関わったという証拠は何一つございません――見つからないでしょう」
陰に陽に。
第一宰相は証拠と、そして腹心としての言葉を放った。
「分かっておる。だからアルバートには何もせん。キーツとやらを処刑、それで終わりだ」
第一宰相は何も言わなかった。
皇帝相手に余計な事は何一つ言わない。
常に公正を心がけて、出しゃばらない。
それが皇帝五十年の治世のうち、二十五年以上第一宰相をやってこられた一番大きな理由だ。
「オスカーに辞令を漏らすようにさせたアレ、どうなった?」
「さきほど、殿下から日頃小銭をもらっている宦官に行かせました。どうやら殿下は察していた様子で」
「ほう?」
「その場にノア殿下もいらしたとか」
「ほうほう......」
さっきまで陰鬱だった皇帝の顔が明るくなった。
「と言うことは、ノアは余の意図に気づいていたと言うことか?」
「はっ、第八親王邸付きの宦官から、そのような報告を受けております」
「ふふ、さすがだ。相変わらずすごいぞノア」
興奮する皇帝。その顔は、子供を溺愛する一人の父親だった。
が、それは一瞬だけの事。
子供が目の前におらず、腹心と二人っきりの皇帝はすぐにいつもの、皇帝としての顔に戻った。
「ギルバートもだめ、アルバートもだめ......」
「誰だ? 誰が余の跡継ぎたり得る。ヘンリー? オスカー? ノア?」
「誰でもいい、見事余が与える試練を乗り越えてみせよ」
皇帝は、父としては甘かったが。
それ以上に、皇帝としての厳正さを兼ね備えた人だった。 | After receiving the order of the Minister of Justice in the audience hall and the morning assembly was dismissed, I came to the Ministry of Justice on my feet.
The building of the Ministry of Justice is located one street over from the Ministry of Military Affairs.
It was a building that I had glimpsed every morning when I was assisting my brother Henry.
When I entered the Ministry of Justice grounds and got off the carriage, dozens of officials were waiting for me, bowing to me in neatly coordinated movements, as if the letter of appointment had already been handed down.
A middle-aged man in the middle of the crowd, the only one who didn’t bow, stepped forward, knelt down, and bowed to me.
“I have been expecting you, Your Highness.”
“I suppose you have already heard the story.”
“Of course, Your Highness.”
“Then guide me to my room. Explanation can....... What’s your name?”
“My name is Vinnie Aussie. I’m the Vice Minister of Justice.”
“Second in command?”
The vice-minister is a position under the minister that deals with practical matters.
Vinnie is a little over forty years old, from the looks of it.
At that age, this position is quite a career move.
Guided by Vinnie, I entered the Ministry of Justice building and was led straight to the Minister’s office.
The Minister’s office at the Ministry was similar to the one at the Ministry of Military Affairs, and I felt at home as soon as I entered the room.
I sat down in the Minister’s chair and faced Vinnie one-on-one.
“So, what do I have to do at the Ministry of Justice? Just give me a quick rundown up to the moment.”
“Yes, sir. The Ministry of Justice is the body that organizes the courts throughout the empire and is the place where trials in the imperial capital are actually conducted. As you know, there are a lot of noblemen in the imperial capital, and as in the previous rebellion–“
Then Vinnie broke off and looked at me.
Apparently, he knows about the revolt in Almeria six years ago, and that I was involved in it.
“It is customary for serious crimes such as rebellion and treason to be brought to the Imperial Capital and judged by the Ministry of Justice or His Majesty in person.”
“I see. So you’re saying that this place usually acts like an ordinary court?”
Vinnie bows his head politely.
Well, I know about that.
I still have memories of my previous life, you know.
So, I cut right to the chase based on those memories.
” Do you judge too?”
“In some cases.”
“How much bribe money do you take?”
“Enough.”
Interrupting Vinnie by holding out my hand.
“I have no intention of pursuing this. I want to know what’s really going on. I’ll forget what you’ve just told me as soon as we leave this room. Just tell me the truth.”
“...... As expected of His Highness the ‘Wise’.”
Vinnie bowed deeply and then spoke.
“I haven’t taken that much. In a year–something like a few hundred reens.”[TN: to be honest, I am really not getting the economy of this novel, the average income is reens, is it my sense of money that is bad or something else, I don’t know?]
“Fumu.”
“It’s because I’m very particular. Others who are not so particular take ten times as much as I do.”
“I don’t take murder cases.”
“Why not?”
“Because the accuser holds a grudge, it’s easy to expose, and if the accused wants revenge, there’s no way to get it back. I receive some money for cases that are appropriate, cases that could go either way.”
I took a piece of paper from the minister’s desk and scribbled some words on it.
I toss it to Vinnie.
“This is .......”
” Assuming you take five hundred a year, I’ll give you ten times, that is, five thousand. You’ll have to stop doing that while I’m here. I want to live up to His Majesty’s expectations. And I need your help.”
“......”
Vinnie’s eyes went wide, but eventually, my words and meaning seemed to sink in.
“I now understand why His Majesty gave you the title of ‘Wise Price’ at the age of six and appointed you to become Minister of Justice.”
“Really?”
“Yes, I admire the way you handled it. It’s impressive indeed.”
Vinnie handed the note back to me and bowed deeply.
“I don’t want any extra money, and I won’t take any more bribes. Let me work for you, Your Highness.”
He said to me.
Normally, I would have questioned his sincerity.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Minister of Justice
Gender: Male
Level: / ∞
HPF+FMPF+FStrengthF+EStaminaF+FIntelligenceF+ESpiritF+FSpeedF+FDexterityF+FLuckF+F FireFWaterE+S
WindFEarthFLight FDarknessF
[TN: His Intelligence went from F+F to F+E, and MP from F to F+F]
My MP and Intelligence “+” in the statuses visible in the corner of my eye have increased.
The more subordinates I have, the more the numbers after the “+” go up.
At least at this moment, I knew that Vinnie really wanted to work for me, as he had declared.
At night, the Eighth Prince’s residence – Brother Oscar’s mansion.
While I was listening to various stories at the Ministry of Justice, a messenger from Brother Oscar came to congratulate me on my appointment as a minister and asked me to come to his mansion.
There was no reason for me to refuse, so I listened to what he had to say and came here.
Brother Oscar had set up a banquet hall in the garden.
The garden was as bright as if it was daytime, with hundreds of lanterns lit up.
The main table was in the middle of the room, and an orchestra was playing a little further away.
I was the only one invited to the party, but Brother Oscar spent a lot of money and manpower.
“Thank you, brother. To think that you would celebrate in such a big way.”
“No need to thank me, I’m happy too. We are talking about the second person as the Prince to be appointed as the Minister during His Majesty’s reign over fifty-years. And since it’s Noah, we have to celebrate even more, don’t we ......?”
“I appreciate it very much.”
After a toast with Brother Oscar, the servants of the Eighth Prince’s residence brought in the food one after another.
They were not placed on the table.
There were about twenty of them, each holding a platter with a different dish, surrounding our table in the distance.
And they were going around in circles.
It was the traditional banquet food of the empire.
If we liked any of the dishes that were being passed around, we could call them off and the servants would serve them to us on small plates.
For the rest of the time, they were circling around us, holding the food and keeping it on “display”.
“But really, what a blessing!”
“Is that so”.
“Hmm? What’s the matter, Noah, with that funny look on your face? What’s troubling you?”
“I’m just wondering why His Majesty has suddenly appointed the Imperial Princes as Minsters one after another.”
“Isn’t it because—- Noah is cute?
Oscar said with a teasing look on his face.
You can certainly think so.
The Minister of Military Affairs is my brother Henry, and he was appointed because of the rebellion that took place in my territory of Almeria.
And the Minister of Justice is me.
You could say it’s because he’s favoring me and patronizing me.
But ...... was it really the case?
“Is there something bothering you?”
Oscar put down his drink and stared straight at me.
“As you know brother, the empire has a history of near destruction, then a history of rebirth, then a history of major changes in the imperial system.”
“Yeah. Until then, no one except the crown prince would do anything. As a prince, he spent his days luxuriating and playing around. So everyone except the crown prince, who had studied political affairs in order to succeed to the throne, was incompetent, and that’s why the empire almost collapsed.”
“Because of this, the empire now provides the Prince with a royal title when he is born and gives him a feudal domain and a certain amount of training.”
As I said that, Oscar and I nodded at each other.
The current state of the empire, so to speak, we recap the preliminary discussion.
“What’s wrong with that?”
“Don’t you think the current situation is one step beyond that?”
“...... No way!”
Oscar was grandly startled and stood up, knocking over his chair with a clatter.
The circle of people serving the food stopped, as well as the orchestra stopped playing.
In the silence, Oscar stared at me.
“Don’t tell me... replacement of the Crown Prince?”
“I don’t know, it may be, it may not be. As long as it was just His Majesty adoring me, there is no problem.”
Oscar sat back in the chair the servant had fixed and smiled.
“As expected, such a thing....”
“Your Highness?”
Oscar was about to say something.
Then, another servant – one dressed as a butler – arrived.
When the man whispered to Oscar, his complexion changed.
After a while, the butler finished his report and quietly left.
“What’s the matter, brother?”
“As you said. Noah, amazing.”
“Eh?”
“The eunuch I’m bribing told me. It seems I will be appointed as the Minister of Finance at tomorrow’s morning assembly.”
The atmosphere froze.
Both Oscar and I were speechless.
Oscar’s appointment as minister.
That was clearly out of me being favored.
“Well, for now.”
“Eh?”
“Let’s toast to congratulate Noah and to his deduction “.
I also shifted my mind and made a toast with Oscar for now.
While Oscar and Noah were having their slightly unenthusiastic celebration party.
On the roof of the royal palace, about meters above the ground, in the garden.
In the midst of the empire’s pride and joy, there were two old men in the garden.
One was the emperor, the supreme power of this empire.
The other was the First Vizier, the emperor’s long-time confidant, who had been in charge of the emperor’s affairs for many years.
The emperor was looking up at the moon in the garden, while the First Vizier was carefully reading a report behind him.
“—-We have captured one hundred and sixty-seven people, including Keets.”
“The confession was in accordance with the excuse we had obtained in advance, that His Majesty would be forced to abdicate the throne, and then the Crown Prince would take the throne.”
“I see. Fifty years of reign, and forty-five years of the Crown Prince... can we wait any longer?”
“Please note, there is no evidence that His Imperial Highness the Crown Prince was directly involved in any of this – none that you will find.”
Both Openly and Secretly.
The first vizier gave his evidence and his words as a confidant.
“I know. That is why I will not do anything to Albert. Execute Keats and be done with it.”
The First Vizier said nothing.
He did not say a single unnecessary word to the emperor.
He always tries to be fair and does not interfere.
This is the biggest reason why he has been the First Vizier for more than twenty-five years of the Emperor’s fifty-year reign.
“What happened to the matter of leaking the letter of appointment to Oscar?
“Earlier, I sent for the eunuch who receives coins from His Highness on a daily basis. Apparently, His Highness had already guessed it.”
“Hoh?”
“His Highness Noah was there.”
“Hoh, hoh.......”
The emperor’s face, which had been gloomy earlier, brightened.
“So you’re saying that Noah was aware of my intentions?”
“Yes, the eunuch associated with the Eighth Prince’s residence reported as such.”
“Fufu, as expected. Impressive as always, Noah.”
The emperor was excited. His face was that of a father who dotes on his child.
But it was only for a moment.
The emperor, without his child in front of him and alone with his confidant, immediately returned to his normal, emperor-like face.
“Neither Gilbert nor Albert.......”
“Who? Who will be my successor? Henry? Oscar? Noah?”
“Whoever it may be, I hope you will succeed in the trials I have for you.”
As a father, the emperor was sweet.
But more than that, as the Emperor, he was a strict man. |
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} | 離宮の書斎に、相のドンを呼び出した。
いつも通りに、俺は座ってて、机を挟んだ向こうでドンが立っている。
そのドンに向かって、ガベルの事を調べに行く、と先に伝えた上で。
「連中に悟られないように、陽動を掛ける」
「陽動......でございますか」
「ああ。敢えてする必要はない、と見る事も出来るのだが、念には念をと思ってな」
「なるほど......して、どのような陽動を?」
「別荘を使う」
「別荘......」
首を傾げて、考え込むドン。
「上皇陛下が改修した、あの避暑用の別荘だ。あそこに余が皇后を連れて行くことにする」
「なるほど。でありますれば、『神輿』で赴くのがベストかと」
皇帝が公式に都から出かける場合、目的に応じて隊列などの規模に決まりがある。
祭祀など重要な公の行事などは、1000人規模の『神輿』になる。
その次が、500人規模の『大輿』。これは例えば戦勝した軍を都の郊外まで出向く時とかに使われる。
最後に『騎輿』。規模は100人程度で、ちょっとした郊外まで遊びに出かける時のものだ。
ちなみに、「戦士の国」の残滓がここにもあって、どこに出かける時も馬に乗る――騎乗して向かえという、御先祖から受け継いだ伝統だ。
そから、陽動、という意味でドンは一番規模の大きい、大々的にやる『神輿』を提案した。
「いや、『騎輿』――いや、それよりも規模を小さくしていい」
「更に小さく......でございますか?」
「そうだ。余がお忍びで別荘に出掛けた。そういう形にしろ。『騎輿』を使って、更に関係のないところに行かせろ」
ドンはしばしの間、俺を見つめてから。
「裏の裏――でございますな」
「そういうことだ」
ドンは尊敬の目で俺を見つめた。
「では、そのようにいたします」
「うむ」
俺は頷き、椅子に深く背をもたれて、天井を見上げた。
庶民の家とは違って、天井まで色とりどりな装飾がつけられている。
それを眺めながら、思考に耽った。
「何か気になることが?」
「お忍びで塩税を調査しに行くのはいいが、肝心なときにぱっと余が皇帝であることを分からせる方法がないと話にならん。それを考えていたのだ」
辺境の街レルモから先の一連の事を思い出した。
あの時から既に、顕在化こそしてないが、問題としては存在していた。
お忍びで出かけた時、いざという時に皇帝である事を明かす場面がどうしても出てくる。
レルモの一件の時は、シェリルが率いた2000人の兵がその役割を担った。
あれは辺境の街だからこそ出来たことだ。
通常の街だと、大量の兵を置いておくのは難しいし、いざって時に現場に急行するのも時間がかかる。
荒野を駆け抜けるのと、入り組んだ街の中を進むのとでは、後者の方が圧倒的に時間がかかってしまう。
不確定要素が大きいし、即時性もない。
その場でパッと分からせる何かが欲しい。
「陛下の持つ魔剣、ではいかがでしょうか?」
「レヴィアタンの事か?」
「はい。見た目が特徴的でございますし、一点ものでございますので」
俺は腕輪の中から、レヴィアタンを抜き放った。
むき身の刀身が、水色の光を曳いている。
ドンが言うとおり、特徴的な見た目だし、おそらく地上でこのレヴィアタンだけがこうだ。
「これでも良いのだが、レヴィアタンの事を知らない人間しかいなかったらどうなる」
「むっ......」
ドンは言葉に詰まった。
いかにレヴィアタンといえど、その存在が遍く知られているという訳ではない。
「余が望んでいるのは、見せれば100人中100人が余だと――皇帝だと分かるものだ」
「それは......」
ドンは眉根をきつく寄せながら。
「......そのような物は、おそらく存在し得ないかと」
「......うむ」
こればかりはドンの言うとおりだろうな。
「100人中100人がそう思う物はこの世に存在し得ない。少し妥協すべきか」
「......ん?」
「そんな物はない......物は......」
繰り返しそれを呟くと、瞬間、頭の中にあることが閃いた。
その事を具体的な形で脳裏に描いてから。
「出来るのは?」
と、腕輪を掲げて、その中にいる連中に聞いた。
レヴィアタン。
バハムート。
ベヘモト。
フワワ。
アポピス。
ジズ。
俺に付き従う、人ならぬ存在の連中達に聞いた。
すると、真っ先応じたのはレヴィアタンだった。
バハムートとは違って、はっきりとした言葉じゃなくて、感情が脳裏に直接流れ込んでくる分、言葉以外の物が強くそこに反映した。
直前に編み出した人体憑依なども含めて。
最近はバハムートばかり。
という、レヴィアタンの負けん気が強く伝わってきた。
「やれるのか?」
更に問う、レヴィアタンの猛々しい感情が強く「出来る」と主張してきた。
俺はドンを見た。
腕輪をかざしているから、レヴィアタンらと話していると知っているドンは、会話には参加せず、じっと俺の事を見つめているだけ。
そのドンに、実験を手伝ってもらうことにした。
俺は目を閉じて、イメージした。
俺を象徴する
人は宝。
その宝を全部載せるもの。
水の魔剣レヴィアタン。
水で、人と宝を載せる物。
――船。
大量の人と宝を載せて、守れる箱船を意匠した紋章を、水の力で、俺の前の空中に描いた。
同時に、レヴィアタンで威嚇を行った。
今までのような、力でねじ伏せるような威嚇じゃない。
強く、意識に訴えかけるプレッシャーを、試しにドンにぶつけた。
「ははー!」
ドンはその場で跪いた。
その直後に「あっ」と声を漏らす。
今の行動が、半分は反射的に体が勝手に動いた、と言わんばかりの声だ。
「どうだ?」
「さすがでございます!!」
ドンは跪いたまま、今までで一番の称賛する言葉を口にした。
見上げて俺に向けてくる顔は、興奮の色も混ざっている。
「今のプレッシャー、私の意識が『皇帝陛下だ』とはっきり認識しました」
「成功だな」
今までのレヴィアタンの威嚇は、純粋な殺意や敵意などをぶつけて相手をねじ伏せる物だったのだが。
それを少しアレンジして、俺が皇帝だと、意識するようにぶつけるもの。
視覚的な紋章も合わせて、どうやら上手く行きそうだ。
夜、閨にオードリーとアーニャを呼び出した。
書斎でグランが聞きに来た時の人形を仰向けにして、二人ともに指名すると返した。
もうしばらくすると宦官に連れられた二人がやってくる。
明日の出発でしばらく二人と離れるから、その前に指名しておこうというものだ。
二人が来るまでに、俺は何となく自分のステータスを眺めていた。
名前:ノア・アララート
帝国皇帝
性別:男
レベル:17+1/∞
HP C+C 火 E+S+S
生まれた直後から大分色々増えて、色々複雑になっていった俺のステータス。
この先どう伸びるのか、それに思いを馳せるだけでも楽しいことだった。
そうしている内に、二人が「届いた」。
例え皇后だろうと、正式な夜伽の時は、裸で簀巻きにされて、宦官達が担いでくる。
いや、むしろ皇后だからとも言える。
親王の正室止まりでは、こうする事もないからだ。
皇帝の夜の相手だからこその、特別待遇だ。
二人はベッドの上に置かれて、宦官達は簀巻き用の高価な布を回収して、寝室からそそくさと立ち去った。
俺はベッドに上がり、二人に近づく。
すると、オードリーが。
「何か、お考えごとだったのですか?」
「ん? ああ、少しな」
覆い被さった直後に飛んできた、オードリーの質問に虚を突かれた思いだ。
「余のステータスを考えていた。そういえば、二人のステータスは?」
「私は1のままです」
「あたしは2です、ちょっと色々あって」
アーニャが恥ずかしそうに答える。
オードリーに比べてちょっとはすっぱな所のあるアーニャの「色々」にはちょっと興味がある。
俺はふっと微笑みながら、二人にステータスチェックの魔法をかけた。
普段は自分では使わないが、一応覚えてはいる。
閨という、皇帝であろうとも、裸の男女だけがいる空間でなければ、皇帝である俺がこの魔法を使うことはないだろう。
それを使って、二人のステータスを眺めた。
二人の自己申告通り、オードリーはレベルが生まれたときの1のまま、アーニャは一つあがって2になっている。
「え?」
が、オードリーは何故か、驚きで声を漏らした。
「どうした」
「私の最高レベルが......上がってます」
「なに?」
オードリーのステータスを見る。
名前:オードリー
帝国皇后
性別:女
レベル:1/13
HP F 火 F
『除名の儀』を経て、名字がなくなったオードリー。
肩書きも皇后になっていて、ステータスそのものもレベル1にふさわしく全てが最低ランクのものだ。
だからこそ、俺はパッと見て何もおかしいとは感じなかった。
しかし、当の本人は上限レベルが上がっているという。
「間違いではないのか?」
「そんなはずは、だって、一桁でしたから」
「......それは間違いようがないな」
細かい数字の覚え間違いはあるだろうが、一桁だったのが二桁になった、という勘違いはなかなか難しい。
「ということは、本当に上がっている......? なぜだ?」
「あの、陛下。あたしも、多分上がってます」
「多分なのか?」
「はい......普段は見ないから、自信は無いです」
庶妃――妃ともなればそんなもんだ。
騎士や兵士、あるいは冒険者と呼ばれる人種でもなければ自分のステータスをチェックする事は少ない。
貴族の女――部下や騎士に守られて、自分の手を汚さない事を美徳とする貴族の女ならなおのことだ。
「......これからは注意して見ててくれ。変わったら余に知らせろ」
「はい」
「わかりました」
二人が応じると、俺はふっ、と微笑んで雰囲気を切り替えて。
寝室の最後の照明を、無言の内に落とした。
翌朝、起きた俺はゾーイに言って、メイドや宦官達のステータスを一通り調べさせた。
俺の周りにいる人間で、他にも上限が上がっている者がいるかどうかを調べさせたのだが、メイドや宦官は全員変わってなくて、毎日のように自分のステータスとにらめっこしている騎士のシャーリーとシェリルも同じく変わってなかった。
オードリーたちのは何かの間違いだったのか、と思ったのだが。
「陛下! 大変です」
オードリーと、アーニャが考え事をしている書斎に飛び込んできた。
「見て下さい!」
オードリーが言うと、音もなく一緒についてきた新人メイドのケイトがステータスチェックの魔法をかけた。
帝国皇后
レベル:1/14
HP F 火 F
「むっ」
「上がってます、また上がってます」
オードリーの言う通り、彼女のレベル上限が昨夜見た物よりも一つ上がっていた。
となると――俺はアーニャを見た。
「はい、あたしも昨夜より上がってます」
自分のステータスを見る。
前代未聞と言われた「∞」の表記が目に入った。
これのおかげでそうなった?
と、俺が今一つ確信を持てずにいるのだが。
「きっとそうです!」
「さすが陛下、凄いですよこれは!」
オードリーも、アーニャも。
確定の事として、もの凄く喜んでいた。 | I called Don, the Fourth Chancellor, into my study at the Palace.
As usual, I was seated, and Don was standing across the desk from me.
And I told him that I was going to check on Gabel.
“I’m going to create a diversion so they don’t find out.”
“Diversion ......, sir?”
“Yeah. There’s no need to do it, I can see that, but just in case.”
” I see ....... and What kind of diversion?”
“Using the Vacation home.”
“The vacation home .......”
Don tilted his head and pondered.
“The Summer Vacation home that was renovated for previous Emperor. I’ll take the Empress there.”
“I see. If that’s the case, then it would be best to take the ‘Emperor Palanquin’ there.”[TN: “神輿’ mikoshi says portable shrine but, 神 can also be used for addressing Emperor, and 輿 means palanquin/litter which is something like a carriage carried by people. Thus instead of saying portable shrine, I used Emperor Palanquin]
When the Emperor officially leaves the capital, there are rules governing the size of the procession and so on, depending on the purpose.
For the most important official events, such as ceremonies, a ‘Emperor Palanquin’ consisting of , people is required.
Next is the 0-member ‘Big Palanquin’. This is used, for instance, to transport a victorious army to the outskirts of the capital.
Finally, there is the ‘Cavalry Palanquin’. The scale of this is about 100 people, and it is used when going out to explore the countryside.
Incidentally, there is a remnant of the “Warrior Nation” here as well, and it is a tradition passed down from our ancestors to ride a horse wherever you go.
From those three, Don proposed the largest scale of diversion, a large-scale ‘Emperor Palanquin’.
“Not ‘Cavalry Palanquin’, —no, let’s scale it smaller than that.”
“Even ......smaller than that, my lord?”
“Yes. I went to the Vacation home secretly. Make it that way. Let’s use ‘Cavalry Palanquin’ to go somewhere even more irrelevant.”
Don stared at me for a few moments.
“Behind the scenes—sir”
“That’s right.”
Don looked at me with respect.
“Then, let’s get to it.”
“Umu.”
I nodded, leaned back deeply in my chair, and looked up at the ceiling.
Unlike the average person’s house, the ceiling was decorated in a variety of colors.
As I gazed at it, I was lost in thought.
“Something on your mind?”
“It’s fine to secretly go to investigate the salt tax, but it wouldn’t be good if there wasn’t a way to quickly reveal that I’m the Emperor at the critical moment. That’s what I’ve been thinking about.”
I remembered the series of events beyond the border town, Lermo.
Although it had not become obvious at that time, it had already been a problem.
Whenever I go out in secret, there will inevitably be times when I have to reveal my identity as emperor.
At the time of the Lermo incident, the 2,000 soldiers led by Sheryl took on that role.
That was only possible because it was a border city.
In a normal town, it would be difficult to keep a large number of soldiers, and it would take a long time to rush to the scene in case of an emergency.
Running through the wilderness and navigating the intricate city would take far more time than the latter.
There is a lot of uncertainty and no immediate gratification.
I wanted something that would be instantly recognizable on the spot.
“How about your magic sword, Your Majesty?”
“You mean Leviathan?”
“Yes. It’s unique in appearance, and it’s one of a kind.”
I pulled the Leviathan out of my bracelet and pulled it out.
The bare blade of the sword is trailing a light blue light.
As Don mentioned, it has a distinctive look, and it’s probably the only one on this world.
“It’s fine, but what if there are only people who don’t know about Leviathan?”
“Mmm. ......”
Don was at a loss for words.
No matter how leviathan is, it’s not necessarily well-known all over the world.
“I want something that if I show it to a hundred people, hundred of them knows- I am the Emperor.”
“That’s .......”
Don’s brow furrowed.
” ...... something, I doubt is possible to be found.”
“......Umu.”
I think Don’s right about that.
“Something that 100 out of 100 people agree can’t really be possible. Maybe we should compromise a little.”
“......hmm?”
“No such thing as ...... thing....”
As I mumbled this over and over, a thought flashed through my mind.
After picturing the thing in concrete form in my mind.
“What can I do?”
I raised my bracelet and asked the guys in it.
Leviathan.
Bahamut.
Behemoth.
Fuwawa.
Apophis.
Ziz.
I asked the non-human beings following me.
And the first to respond was Leviathan.
Unlike Bahamut, there were no clear words, but rather emotions that flowed directly into my brain, strongly reflecting things other than words.
This includes human possession, which I devised just before.
Recently, it’s only Bahamut.
I could feel Leviathan’s competitive spirit.
“Can you do it?”
I asked further, Leviathan’s fierce emotions strongly insisting that it was could be done.
I looked at Don.
He knew I was talking to Leviathan and the others because I was holding up my bracelet, but he didn’t join in the conversation, he just watched at me.
I asked Don to help me with the experiment.
Closing my eyes, I imagined...
Something that symbolizes me.
People are treasures.
Something to hold all of that treasure.
Leviathan, the water demon sword.
Something to carry people and treasure in water.
–A ship.
With the power of water, I drew a coat of arms in the air in front of me with the design of an ark that could carry and protect a large number of people and treasure.
At the same time, I intimidated them with Leviathan.
It was not forceful intimidation like the previous ones.
I put Don to the test with a strong pressure that appealed to his consciousness.
“Haha!”
Don knelt down on the spot.
Immediately afterward, he let out an “ah”.
It was as if what he had just done was half a reflex, half his body moving on its own.
“Very good, sir!”
Don drops to his knees and utters his greatest words of praise yet.
He looked up and turned to me, his face a mixture of excitement.
“The pressure right now, my consciousness has clearly recognized that it’s the Emperor.”
“It’s a Success.”
In the past, Leviathan’s intimidation was based on pure murderous intent or hostility to subdue the opponent.
Managing it a little differently, in order to make them aware that it’s the Emperor.
With the visual emblem, it seems to work well.
I summoned Audrey and Anya to my bedroom at night.
When Gran came to ask me in the study, I turned the two dolls on their backs and responded that I would appoint both of them.[TN: if you have forgotten by now, the dolls each represent his wives and the one which is then placed on its back would be the one who gets summoned.]
After a while, the two of them, accompanied by the eunuch, will arrive.
I will be away from them for a while when I leave tomorrow, so I wanted to appoint them before that.
By the time they arrived, I was somewhat looking at my status.
Name: Noah Ararat
Empire’s Emperor
Gender: Male
Level: 17 + 1 / ∞
HPC+CMPD+CStrengthC+SStaminaD+CIntelligenceD+BSpiritE+CSpeedE+CDexterityE+CLuckD+C FireE+S+SWaterC+SSWindE+CEarthE+CLight E+BDarknessE+B
My status has increased a lot since I was born, and it has become more and more complicated.
Just thinking about how it would grow in the future was fun.
In the meantime, the two of them were ‘delivered’.
Even if you are the Empress herself, when you have a formal night, you will be naked and wrapped in a mattress and carried around by eunuchs.
No, it was more because she was an empress.
It’s not like that if you’re just a regular member of the royal family.
It was a special treatment because she was the Emperor’s companion for the night.
The two of them were placed on the bed, and the eunuchs collected the expensive cloth used for the mattress and hurriedly left the bedroom.
I climb into bed and approach them.
Then, Audrey.
“Did you have something on your mind?”
“Hmm? Yeah, a little.”
Audrey’s question, which came just after I had pulled her over, caught me off guard.
“I was thinking about my status. Speaking of which, what are your two statuses?”
“I’m still at one.”
“Mine’s two because of a few reasons,”
Anya answered shyly.
I’m a little curious about her ‘reasons’, since she’s a little brasher than Audrey.
I smiled and cast a status check spell on the two of them.
I don’t usually use it myself, but I do remember it.
Even as the Emperor, I would never use this magic unless I were in a bedroom, where only naked men and women were allowed.
Using it, I looked at the status of the two.
As per their self-assessment, Audrey’s level was still 1 since birth, while Anya’s had risen by one level to 2.
“Eh?”
But for some reason, Audrey’s voice leaked out in surprise.
“What is it”
“My level cap has increased .......”
“What?”
I looked at Audrey’s status.
Name: Audrey
Empress of the Empire
Gender: Female
Level: 1/13
HPFMPFStrengthFStaminaFIntelligenceFSpiritFSpeedFDexterityFLuckF FireFWaterFWindFEarthFLight FDarknessF
Audrey has lost her last name after the ‘Expulsion Ceremony’.
Her title is now Empress, and her status itself is at the lowest possible rank for a level 1.
That’s why I didn’t find anything strange about her at first glance.
However, the person in question said that her level cap limit had increased.
“Isn’t that a mistake?”
“It can’t be, because it was in the single digits.”
“...... Then it cannot be a mistake, I guess.”
If it were small number it’s possible to misremember, but it is very difficult to misunderstand that a single-digit has become a double-digit.
“So it really has gone up, ......? Why though?”
“Well, Your Majesty. Maybe mine has gone up as well.”
“Maybe?”
“Yes. ...... I don’t usually see it, so I’m not sure.”
Queen Consort- this is what the Consort is like.
Unless you are a knight, a soldier, or an adventurer, you are unlikely to check your status.
Aristocratic ladies, who are guarded by servants and knights and who consider it a virtue to keep their hands clean, are even more likely to do so.
“...... Keep an eye on it from now on. If anything changes, let me know.”
“Yes.”
“Got it.”
As the two responded, I smiled and switched the mood.
I turned off the last light in the bedroom silently.[TN: looks like someone’s seggs intro problem was solved, this isn’t R-18 stuff so accept it as it is]
The next morning, I woke up and told Zoe to check the status of all the maids and eunuchs.
I asked her if anyone else around me had their level cap increased, but all of the maids and eunuchs remained the same, as did the knights Shirley and Cheryl, who check their status every day.
I wondered if Audrey and Anya were mistaken.
“Your Majesty! It’s serious.”
Audrey and Anya burst into the study where I was deep in thought.
“What’s wrong?”
“Please have a look!”
Audrey said, and Kate, the new maid who had accompanied her silently, cast a status check spell.
Empress of the Empire
Level: 1/14
HPFMPFStrengthFStaminaFIntelligenceFSpiritFSpeedFDexterityFLuckF FireFWaterFWindFEarthFLight FDarknessF
“Mmm.”
“It went up, it went up again.”
Audrey was right, her level limit was one higher than what I had seen last night.
That means — as I looked at Anya.
“Yes, mine also went up from last night.”
Looking at my status.
My eye caught ‘∞’ notation, which was said to be unheard of.
Is it thanks to this?
But, I am still not quite sure about that.
“It must be that!
“That’s really amazing, Your Majesty!
Audrey, and Anya, as well.
They were very happy about it, as they thought it was for certain. |
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} | 巨竜が倒れた後、十分度――それでも人間よりは大きい竜が何体も同時に飛び出してきた。
魔剣リヴァイアサンをぐるりと回し、地面に突き立てる。
刀身が光る。
柄と刀身の境目から、何本もの水柱――いや激流とも言うべき物が打ち出された。
かつて反乱軍の首魁を遠距離で撃ち抜いたそれよりも、鋭く絞り込まれた針のような鋭さの水柱。
それが次々と、竜の眉間を撃ち抜いた。
竜達はバタバタと撃ち抜かれて一瞬で絶命する。
「ぐおおおおお!!」
天と地が震撼した。
最初の巨竜が咆哮を上げた。
首を一刀両断に斬り捨ててもなお絶命しない生命力にすこし驚いた。
起き上がった巨竜は、こっちに向かって跳びかかってくる。
「慮外者が」
幼げだが、威厳をたたえた声が静かに響いた。
次の瞬間、水竜が顕現した。
巨竜よりも一回り巨大な水の竜。
リヴァイアサン。
顕現したそれに、巨竜が気圧された。
ビクッと身を震わせ、進むことも引くことも出来ずに、固まってしまう。
わなわなと震えた後、まるでしっぽを丸めて逃げ出すかのように、一歩後ずさったが。
「万死」
水竜が低い声でつぶやく。
次の瞬間、巨竜は全身を水に取り囲まれる。
その水は徐々に圧縮されていく、中の巨竜ごと圧縮される。
水の中でつぶれて、弾けて、やがて消滅する。
巨竜ごと水はドンドン小さくなっていき、完全に消滅した。
「ご苦労」
「はっ」
リヴァイアサンは水の竜のまま頭をかすかに上下させ、依り代の魔剣リヴァイアサンの中にもどっていった。
忠犬で狂犬のリヴァイアサンが戻ったと言うことは、敵が一掃されたということ。
俺は剣を腕輪の中に収納し、エヴリンに振り向いた。
「......」
「どうした、目と口が必要以上に開いているぞ」
「え? あっ......す、すみません。すごすぎて、もうなんと言えばいいのか」
「リヴァイアサン――レヴィアタンの狂犬っぷりはお前も知っているだろう」
「そうではなく......いえそれもそうですけど。そのリヴァイアサンをそこまで手懐けてるご主人様がすごくて......。『従えている』という情報と、実際に見るのとでは大違いです」
俺は頷き、その話をそこまでで打ち止めにした。
地面を――大地を見つめる。
まさにエヴリンが今言ってたとおりだ。
知っているのと、実際に見るのとでは大違い。
巨竜を倒した後、それがより顕著になった。
大地に見えている、力の流れがはっきりと見て分かるようになった。
本物の川のように、力が流れてきて、一点に集まる。
すると、何もなかったそこに変化が現われた。
何もない空中から、ぽたり、と水が一滴したたりおちた。
「さわるな!」
「――!」
手を伸ばしてキャッチしようとするエヴリンを止めた。
「それは大地の純粋な力が物質化したものだ。超高濃度の魔力だと思え」
慌てて手を引っ込めるエヴリン。
俺はフワワで容器を作って、雫を受け止めた。
そして、最初に作ったのと同じように、大地の雫をポーションに加工した。
「それが......ポーション、ですか?」
俺は頷き、爪で自分の手の平をひっかいた。
血が一瞬でどくどくと流れ出るほどの深い傷、そこにポーションをぶっかける。
傷が、一瞬で治った。
「――っ! す、すごい!」
「ヘンリーもそう言っていた。戦争の概念がかわるってな」
「それだけじゃありません。世界の在り方が変わってしまいます」
「そうだな。だからこそ、しばらくは管理が必要だ。エヴリン」
「――はい!」
それまでメイドで、お付きの人だったエヴリンの空気が一変した。
俺が名前を改めて呼んだ事から察した。
一を聞いて十を知るのように、自分の立場と役目に一瞬で気づいて切り替えた。
「ここの管理は任せる。製造もだ。やり方は後でじっくり教える」
「分かりました」
エヴリンはすぅ、と手をあげた。
すると、どこからともなく全く同じ服をきた男達が現われた。
エヴリンが目配せするだけで、男達の半分は大地の雫をガッチリガードして、半分は地面にラインを引いたり掘ったり――建築を始めた。
「お前の部下か?」
「はい。ご安心下さい。全て命を助けたり援助したりした男達です。私の命令には忠実です」
「それって――」
「はい、ご主人様から学んだやり方です」
俺は微かに苦笑いした。
エヴリンは小首を傾げた。
俺は手を伸ばして、エヴリンの襟に触れた。
「お前の格好に懐かしさを覚えていたんだ。その理由が今分かったよ」
「え?」
「格好が普通すぎる、質素すぎる。見ろ、この襟、ほつれは一切無いが、洗濯を繰り返してうっすらと色落ちしている。総督が着るようなものじゃない」
「あっ......」
エヴリンは顔を赤らめた。
「す、すみません」
「よかろう。これからお前に毎年9000リィーンをやる」
「え?」
「親王の基本俸禄と同じ額だ」
「あっ......ご主人様が最初の......」
親王邸の最初期にいたメイドエヴリンはその事を思い出した。
「内務省、つまり余のポケットマネーから出す。お前の
「しかし、そのようなものがなくても――」
「お前は俺への忠誠心で動く」
俺は襟に触れながら、エヴリンの言葉をさえぎって、
「お前自身、霞を食んでても生きていけそうだ。だが、お前の部下はそうは行かないだろう?」
「それは......」
「なら聞こう。お前が俺に抱いてる忠誠心。それと同じレベルの部下がお前にはいるか?」
これはかなり意地悪な質問だ。
どう思っていても、エヴリンは「いる」とは言えない。
だからエヴリンの「言葉」は予想通りだった。
「い、いません」
「なら、金で育てろ。金があれば、数も質も上げられるだろう?」
「わかりました。誓って、全て
「うむ」
俺は頷いた。
そして歩き出し、エヴリンに目配せをして、彼女を連れてその場から離れた。
「それともうひとつ。ポーションの効果が分かってくると、絶対に横流しをするものが出てくる」
「......はい」
そこで「ない」とは言わないのが、エヴリンのいいところだ。
「あらかじめ分かっていればいくらでも対処出来ます。防ぎます」
エヴリンはきょとんとした。
彼女の部下たちが絶対に聞こえない程度の距離に離れてから、立ち止まって彼女に振り向く。
「防ぐよりも、あぶり出しに使え」
「あぶり出し」
「その方が得だ」
「で、ですが。このポーションはご主人様の戦略にとっての大事なものです。そんなものを流出させては」
「人は宝だ」
「あらかじめ分かってれば、流出も数本から数十本程度で済む。その程度の損害で、不届き者をあぶり出してお前の忠実な部下たちを作れるのなら、安いとは思わないか?」
「......やっぱり、ご主人様ってすごいです」
「あのポーションを、ただでさえすごいアイテムをそんな使い方が出来るなんて......」
エヴリンはますます感動した目で俺を見つめた。
「分かりました。ポーションも、年間9000リィーンも。全てお預かりします」
俺は頷き、エヴリンの頭に手を乗せた。
かつては俺よりも背が高かった少女だ。
俺が成長し、彼女は年齢を重ねた。
いつしか身長差が完全に逆転し、こうして頭に手をポンと乗せれるようになった。
「お前に模範提督の称号をやる、もどったら正式な文書で全国に告知する」
エヴリンは真顔で、重々しく頷いた。
理解したのだ。
俺の屋敷からでていった家人第一号。
彼女を模範とすれば、彼女のやり方を真似る人がでる。
俺に――皇帝にとりいるためだけだとしても、彼女のやりようを真似られれば俺にはありがたい。
人は、宝なのだ。 | After the giant dragon fell, several dragons about one-tenth of its size – but still larger than a human – jumped out at the same time.
I turned the demon sword Livyathan around and thrust it into the ground.
The blade shined,
And from the border between the hilt and the blade, several pillars of water–or should we say torrents–were shot out.
The water columns are as sharp as needles, drawn even sharper than the one that once shot the leader of the rebel army at a long distance.
One after another, they shot out between the dragons’ brows.
The dragons were shot through the air and instantly died.
“Gooooooooooooooooo!!!!”
Heaven and earth shook.
The first gigantic dragon roared.
I was a little surprised at its life force which did not die even after its head was cut off with a single slash.
The giant dragon got up and leaped toward us.
“Insolent one.”
A childish but dignified voice echoed quietly.
The next moment, a water dragon appeared.
The water dragon was one size larger than the giant dragon.
Livyathan.
The giant dragon was overwhelmed by the manifestation.
It shuddered and froze, unable to move either way.
After shivering, it took a step back as if to curl up its tail and run away.
“Thousand Death.”
The water dragon murmured in a low voice.
In the next moment, the giant dragon’s entire body was surrounded by water.
The water then gradually compressed along with the entire giant dragon inside.
It collapsed inside the water, burst open, and eventually disappeared.
The water became smaller and smaller with the giant dragon and disappeared completely.
“Good work.”
“Haa”
Livyathan, still as a water dragon, nodded its head faintly and returned to the magic sword Livyathan.
Livyathan, the loyal and mad dog’s return meant that the enemy had been wiped out.
I stowed the sword in my bracelet and turned to Evelyn.
“.......”
“What’s the matter, your eyes and mouth are a little more open than they should be.”
” What? Ah ....... S-sorry. It’s so amazing, I don’t know what to say anymore.”
“You know what a mad dog Livyathan– Leviathan is, don’t you?”
“It’s not that. ...... I mean, that’s true, too. But, Master who tamed such Livyathan to that extent is even more ...... amazing. There’s a big difference between seeing it in person and hearing that it’s ‘Obeying’.”
I nodded and ended the conversation there.
Then, I gazed at the ground – at the earth to be specific.
It’s exactly as Evelyn just said.
There is a big difference between knowing about it and actually seeing it.
After defeating the giant dragon, it became more pronounced.
I could clearly see and understand the flow of power that is visible on the earth.
Like a real river, the power flowed and gathered at one point.
Then a change appeared where there was nothing.
A drop of water fell from the empty air.
“Don’t touch it!”
“—!”
I stopped Evelyn from reaching out to catch it.
“It is the materialization of the pure power of the earth. Think of it as super-concentrated magic.”
Evelyn hurriedly withdrew her hand.
I made a container from Fuwawa to catch the drops.
Then I processed the drops of earth into a potion, just as I had done the first time.
“Is that the ...... potion?”
I nodded and scratched my palm with my fingernail.
The wound was deep enough to cause blood to pour out in an instant, and I poured the potion on it.[TN: If you hit yourself and it hurts, are you strong or weak?]
The wound healed in an instant.
“—-! A-amazing!”
“Henry said the same thing. It’s going to change the whole concept of war.”
“Not only that. It will change the way the world works.”
“That’s right. That’s why we need to manage it for a while. Evelyn.”
“—-Yes!”
Evelyn’s atmosphere, who had been a maid and an attendant until then, changed drastically.
I guessed it by the fact that I called her name again.
Like a person who hears one and knows all, she instantly realized her position and role and switched.
“I’m going to leave the management of this place to you. Manufacturing as well. I’ll teach you how to do it later.”
“I understand.”
Evelyn raised her hand.
Then, out of nowhere, a group of men wearing the exact same clothes appeared.
Evelyn looked over at them, half of them guarded the drops and half of them began to line the ground, dig—- and started constructing.
“Are these your men?”
“Yes. Be assured. They are all men who I have saved or assisted with their lives. They are loyal to my orders.”
“Is that–?”
“Yes, I learned it from Master.”
I chuckled slightly.
Evelyn tilted her head.
I reached out and touched Evelyn’s collar.
“I was feeling nostalgic about your outfit. Now I know why.”
“Eh?”
“Your outfit is too ordinary, too plain. Look at this collar, there are no loose threads, but the color has faded slightly from repeated washings. It’s not something a governor would wear.”
“Ah, .......”
Evelyn blushed.
“A-Apologies.”
“That’s all right. I’ll give you , reens every year from now on.”
“Eh?”
“The same amount as the Prince’s basic allowance.”
“Ah, ......, Master first got ......”
Evelyn, who had been in Prince’s residence as the maid from the beginning, recalled.
“The Ministry of Internal Affairs, which means it will come out of my own pocket. Use it as you please.”
“But even without such–“
“You act out of loyalty to me.”
I interrupted Evelyn, touching her collar.
“You can live in a haze, yourself. But your people won’t, will they?”
“That’s .......”
“Let me ask you this. The loyalty you have for me. Is there anyone under you who can match that level of loyalty?”
This is a rather mean question.
No matter how she feels about it, Evelyn can’t say ‘yes’.
So Evelyn’s “word” was as expected.
“Then raise them with money. If you have money, you can increase the number and quality, right?”
“I understand. I promise I’ll spend it all as I please.”
“Umu.”
I nodded.
Then I walked away, glanced at Evelyn, and took her with me.
“And one more thing. As you learn more about the potion’s effects, there will definitely be some diversions.”
Evelyn is good enough not to say ‘no’ there.
“If we know in advance, we can deal with it as much as we want. It can be prevented.”
“No, not that.”
Evelyn was taken aback.
She stopped and turned to look at her after her men were far enough away that they would not hear her.
“Use it to flush them out rather than prevent them.”
“Flush them out.”
“It’s more profitable that way.”
“B-But. This potion is important to Master’s strategy. We can’t have them leaking out.”
“People are treasures.”
“If you know beforehand, the leakage will only be a few bottles to a few dozen bottles. If that kind of damage can flush out the undesirables and make your loyal subordinates, don’t you think it’s a small price to pay?”
“...... I knew it, Master is amazing.”
“The potion which is such an extraordinary item can be used in such a way,.......”
Evelyn looked at me with increasingly impressed eyes.
“Understood. I will utilize the potions and the ,00 reens per year. I’ll take care of everything.”
I nodded and put my hand on Evelyn’s head.
She used to be taller than me.
I grew up and she matured.
The height difference between us reversed completely, and I was able to put my hand on Evelyn’s head like this.
“I will give you the title of Exemplary Governor, and when I get back, I’m going to announce it in a formal letter to the whole country.”
“...... Yes.”
Evelyn nodded seriously, with a serious expression.
She understood.
She was the first of the retainers to leave my mansion.
If she sets an example, there will be others who will imitate her methods.
Even if it was only to win me, the Emperor, over I would be grateful if they could copy her ways.
After all, people are treasures.[TN: Haah, this guy serious clung to that phrase huh] |
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"series": "Noble Reincarnation~Blessed With the Strongest Power From Birth",
"source": "superScraper-fanfic"
} | 如何様にも、か。
跪いているレイモンドを眺めつつ、少し考えてから。
「父親の事は尊敬しているのか?」
「え? ......はい、それは、もう」
俺の質問に驚きはしたが、父を誇りに思っていることは間違いないようで、レイモンドはすぐに真顔に戻って、はっきりと頷いた。
「なら、お前の父親の爵位をそのまま受け継げ」
「――っ! ありがとうございます!!」
「やって欲しいことは、このまま縄張りを広げることだ」
「え?」
またしても「え?」できょとん顔になってしまうレイモンド。
翻弄された人間特有の、困惑した顔を浮かべている。
「盗賊をやって、このまま縄張りを広げろと言う意味だ」
「僭越ながら......なぜそのようなことを?」
「お前のようなやり方が珍しい事は自覚しているか?」
「......はい」
レイモンドが斬り倒した、狼藉を働いた彼の仲間の死体をちらっと見ると、その視線に気づいたレイモンドは小さく頷いた。
「お前らを官軍とかに編入するのは簡単だ、しかしそれではお前の縄張りが空白地帯になる。新しく入ってきた奴らは正反対のやり方をするかもしれん」
「はい」
「それよりもお前を置いたほうがいい。そして、お前が、やり方の違う奴らを押しのけて縄張りを拡大していけば......?」
レイモンドはハッとして、頷いた。
俺の目論見が理解できたようだ。
「やってることは官軍、しかし表向きは盗賊団のまま、という事でございますね」
「賢いな、そういうことだ」
「御意」
「年名誉騎士の枠をやる。手下の誰に与えるのかは、お前が決めろ」
「「「おおお!?」」」
レイモンドの後ろに跪いている手下達がざわついた。
全員が見るからに嬉しそうな顔をしている。
「糧秣も供給してやる。まったくやるなとは言わんが、略奪はほどほどにな」
「これもくれてやる、余に何か直訴したいときに使え」
前もって用意したフワワの箱を渡した。
皇帝になって、箱の外装をちょっとイジった。
皇帝の紋章を使い、すこし豪華にした。
「一度施錠すると余以外だれも開けられなくなる。慎重に扱え」
「そのようなものを私に......ありがとうございます!」
レイモンドは感極まって、更に頭を地面に擦り付けた。
誰の目から見ても、俺に心服している姿だった。
「凄いです。陛下」
荷馬車の上で、再っきりになったシャーリーが感動した声で言った。
レイモンドの件は片付いたが、せっかくここまで出てきたんだ、もう少しお忍びであっちこっち見て回ろうという事で、レイモンドともシェリルとも別れて、荷馬車を駆って街道を進んでいた。
さっきの一部始終を見ていたシャーリーがもの凄く感動していた。
「そうか?」
「はい! 名誉回復もそうですけど、それを受け継がせたのはさすがです」
「ほとんどの貴族の悲願だからな、世襲というのは」
貴族は(やせ我慢もあるが)死は恐れない。
恐れるのは名誉と地位を失うことだ。
そうすると、少しでも自分の手で地位を築き上げた貴族は、その地位を世襲する事を願うようになる。
親王の息子は通常親王ではない。
地位をそのまま引き継げるのは、本来皇帝ただ一人だ。
地位を世襲すると言うことは、皇帝に等しい何かという意味でもある。
親王であった俺は、その事をよく知っている。
「なるほど。だからそうしたのですね。さすがです陛下」
「賢い人でしたし、あの様子だと陛下のご命令なら命を躊躇なく投げ出しますね。陛下のステータス、また上がったのではありませんか?」
俺の最初の騎士という事もあって、シャーリーもまた、俺の「+」の詳細を知っている一人だった。
「ああ、上がった」
「やっぱり! 凄いです......人を従えて力が上がっていく、皇帝になるべくして生まれてきたお方だとますます思います」
そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
適性があるのは間違いないとは思う。
馬車を進ませること半日。
夕焼けで大地が染まる頃になると、大きめの集落に辿りついた。
「なんか賑わってますね」
「そうだな、祭りかなんかか?」
遠目から見たそこは、街ではなく村だった。
街であれば日常的に賑わっているのだが、村だとよくも悪くも日常は平穏なものだ。
それが、かなり騒々しく、村人達が動き回っている。
村であれば収穫祭かなにかをまず想像させる。
「良い時に来たのかもしれませんね」
頷きつつ、集落に入る。
入り口で村人を捕まえて、シャーリーが尋ねた。
「すみません、ここに宿はありますか? 無ければ他にどこか一晩泊めていただける場所ってありますか?」
呼び止められたのは中年の女だった。
女は馬車の上にいる俺たちに一瞥して。
「商人さんかい? 悪いことは言わない。ここから北に半日くらい行ったところに宿屋があるよ、そこにいって泊まりな。今から出発すればまだぎりぎり間に合うよ」
「はあ......」
シャーリーは見るからに困惑した。
この手の村で、泊まる所がないって言われるのはかなり珍しいことだ。
「なにかある――」
俺が口を開いたが、女はそれを聞こうともせず、早足で村の奥に向かっていった。
何か急いでいる様子で、切羽詰まっているようにも見える。
「どうしますか、ご主人様」
周りに誰かいないとも限らないから、シャーリーは俺の正体を悟られないようにまた呼び方を変えた。
同時に、彼女もなにか気づいているようだ。
「どうする?」って聞いてきたときの顔が、かなり真剣な顔だ。
「少し様子を見ていこう」
シャーリーは頷き、気を引き締めた。
馬車を更に進めていくと、遠目にうっすらと
村の開けたところに簡素な高台が作られて、祭壇のように設えている。
その祭壇の上に一人の少女が手足を縛られ、猿ぐつわを噛まされて、寝かされている。
その周りに村の住民達が集まっている。
住民の中から一人、杖をついて、震えた足取りの老人が前に進み出た。
「皆の者よ。今日、この時。レイナを我らがカラ神に捧げる」
村民達はシーンと、静まりかえって、老人の演説じみた言葉を聞き入っていた。
「レイナの事は子供の頃から知っている。わしにとっても娘同然じゃ。しかし、レイナはよそ者に乱暴された。そのような不浄の身を、村に置いておくわけにはいかない。故に、カラ神に捧げて、魂まで浄化していただく」
老人はそう言ってから、振り向いて、祭壇に向き直って。
「神よ、カラ神様よ。どうか我らの汚れを浄化して下され!」
「「「カラ神よ!!」」」
老人の言葉の後に、村民達が一斉に叫んだ。
大体の話は分かった。胸くそが悪い。
「ご主人様」
シャーリーにそう言って、俺は馬車から飛び降りた。
ズンズンと大股で祭壇に進んでいく、途中で村人が俺に気づいて、呼び止めようとしてきたが、無視して更に進んだ。
「その儀式待った」
村民全員に聞こえるくらい声を張り上げて、祭壇の前に立った。
「何者じゃ」
村長がプルプル震えたまま、俺を睨んだ。
「俺が誰かなんてどうでもよろしい。この儀式を今すぐやめろと言っている」
「余所者か。出しゃ張るでない」
「そうだそうだ!」
「余所者に何が分かる!」
「この村が滅んだら責任とれるのか!」
村人達が俺に怒鳴ってくる。
「旅の者よ」
老人は静かな、しかし有無を言わさない口調で俺に言った。
「右後ろの山を見なされ」
「山?」
俺は振り向き、背後にあると言う山を見た。
夕焼けの中、奇特な形が目に付いた。
「欠けておるじゃろ? アレはカラ神様が噛み砕いた痕じゃ」
いわれて初めて分かった。
山の奇特な形は、巨大な生物に噛み砕かれた、という痕らしい。
「そういう化け物がいるから、怒らせないように供物を捧げるというのか」
「おお......なんと恐れ多いことを」
自分達が信じる「カラ神」とやらを化け物呼ばわりされたからか、老人は目眩を起こしたかのようにふらついた。
だが、そんな事はどうでもいい。
「人間を生け贄に捧げる行為は帝国法351条で禁止されている、それを――」
どっしん!
俺が言い終えるよりも早く、巨大な音と、地響きがした。
「来たぞ!」
「カラ神様だ!」
村人は一斉に青ざめた。
その視線を追って振り向くと、祭壇の向こうに、巨大なモンスターがいた。
ドラゴンの一種か、ただし首は長く、二つもある。
瞳は爛々と燃え盛っているように見えて、とても
そいつは祭壇に近づくと、視線は寝かされている少女にそそがれている。
「ふん」
俺は祭壇を駆け上がった。
「やめるのだ!」
老人の制止を振り切って、更に階段を駆け上がる。
「やれるものは?」
駆け上がりつつ、問うた。
すると、レヴィアタンがもっとも強く
「よし、ならばお前だ。レヴィアタン!」
腕輪の中から水の魔剣を抜き放つ。
祭壇まで一気に駆け上がると、目をきつく閉じて震えている少女の上を飛び越えて、カラ神とやらに飛びかかる。
カラ神は巨大な口を開けて、俺に噛み付いてきた。
「遅い!」
体をひねって噛みつきをかわして――一閃!
レヴィアタンで、二つの首を斬り落とした。
ドサッ......ドッシン!
首が落ちて、胴体が力なく大地に倒れ込む。
「バハムート」
念の為に、炎で死体を燃やした。
けいれんなのか硬直なのか分からないが、ドラゴンの死体は炎に包まれて、急速に黒焦げになっていった。
俺はレヴィアタンをしまって、祭壇の上に戻る。
まだ震えている少女を助け起こす。
「もう大丈夫だ」
「......え」
未だに何が起きたのか分からない少女。
しかし炎上するカラ神の死骸をみて、まなじりが裂ける程、目を見開いて驚いた。
そんな少女を抱き起こして、一緒に祭壇を降りる。
老人を含め、村民達はポカーンとしていた。
「この娘はもらっていくぞ」
夜、少女の家の中で。
俺とシャーリーと、少女でいた。
俺が座って、出された茶を飲みながら、少女の話を聞く。
前半はありきたりな話だった。
村の近くに化け物がいて、土着の土地神として崇められている。
後半は胸くその悪い話だった。
少女が外地からの人間に乱暴されたせいで「穢れて」、それを「神」に捧げて汚れを浄化してもらう。
「なるほど、話は分かった」
「助けてくれてありがとうございます......でも」
「もう村にいられない、っていうんだろう?」
この手の話はよく知っている、ごまんとありふれている。
少女の心配も察しがつく。
「俺の所に来い、仕事くらいくれてやる」
「いいん、ですか? 私、穢れているのに」
「そんなのどうでもいい」
乱暴されたからといって何かが変わる訳でもない。
「ありがとうございます、なんでもします、一生懸命働きます」
とりあえず今夜はここで一晩明かして、朝になったら村を出よう。
俺の正体は追々明かしていけば良い。
シャーリーが話しかけて。
「能力はあがりましたか、ご主人様」
「いいや。だが、今はそれでいい」
俺はほとんど味のしない、出涸らしのような茶で唇を湿らせつつ、更に続けた。
「人は宝、そして可能性だ」
「生きてさえいれば、その先可能性しかない」
可能性しかないという言い方に一瞬きょとんしたが、すぐに感動した目をしたシャーリー。
「さて、明日だが――」
俺はそう言いながら、癖で茶に手を伸ばした。
味がしないと分かっていても、つい癖で手を伸ばしたのだが――驚いた。
直前に、湯飲みがさっと入れ替わったのだ。
さっきはぬるく、そろそろ冷たくなって来た茶を、少女がサッと熱いものに入れ替えた。
俺はそれを手に取って、少女を見つめる。
「あっ、熱いのが嫌いですか?」
「......いいや」
俺はふっと笑った。
どうやら、少女は給仕の――気持ち良くさせるタイプの給仕の才能はあるようだ。
俺は微笑んだまま、シャーリーに向いて。
「ほら、既にな」
「はい! さすがですご主人様!」 | However I want, huh?
I looked at Raymond, who was kneeling, and thought for a moment.
“Do you respect your father?”
“‘Eh? ...... Yes, that’s, you know.”
He was surprised by my question, but there was no doubt that he was proud of his father, and Raymond quickly returned to a straight face and nodded clearly.
“You’ll inherit your father’s title as it is.”
“–! Thank you very much!”
“What I want you to do is to continue to expand your territory.”
“Eh?”
Raymond’s face became puzzled again as he gave me another ‘Eh?’.
He has the bewildered look of a man who has been tossed around.
“I mean that you should act as a bandit and continue to expand your territory.”
“If I may be so presumptuous, ...... why do you suggest such a thing?”
“Are you aware that your kind of approach is unusual?”
“...... Yes.”
Raymond glanced at the corpse of his companion that he had cut down, and noticing the gaze, he gave a small nod.
“It’s easy to incorporate you guys into the government army or something, but then your territory becomes a void. The newcomers might do the exact opposite.”
“That’s why I’d rather have you. Then you can expand your territory by pushing out those who do things differently. ......?”
Raymond nodded, huffing.
It seems that he understands what I’m trying to do.
“We are doing this as a government army, but we are still a bandit organization.”
“Smart, that’s what it is.”
“By your will.”
“And I will give one honorary knighthood a year. You can decide which of your men will receive it.”
“””Ooh!?”””
The minions kneeling behind Raymond were buzzing.
They all looked very happy.
“I’ll supply you with provisions. I won’t say don’t do anything at all, but don’t loot too much.”
“Yes”
“I’ll give you this, too, in case you want to make a direct appeal to me.”
I gave him a Fuwawa box that I had prepared in advance.
As the emperor, I tweaked the exterior of the box a bit.
I used the emperor’s coat of arms and made it a little more luxurious.
“Once it is locked, no one but me can open it. Be careful with it.”
“For giving me such a thing ......, thank you very much!”
Raymond was so overcome with emotion that he rubbed his head against the ground some more.
By all accounts, it was a figure of heartfelt admiration for me.
“It’s amazing. Your Majesty.”
Shirley, who was now alone with me again on the wagon, said in an impressed voice.
Raymond’s case has been settled, but since we’ve come all this way, we decided to look around a bit more surreptitiously, so we parted ways with Raymond and Sheryl, and drove the cart down the street.
Shirley, who had watched the whole thing earlier, was extremely impressed.
“Is that so?”
“Yes! Restoring the honor is one thing, but to have it passed down is as good as it gets.”
“It’s a long-cherished wish of most noblemen, the idea of hereditary succession.”
Aristocrats are not afraid of death (although they can become impatient).
What they fear is losing their honor and status.
The nobleman who has built up his position with his own hands, even if only a little, will wish to inherit that position.
The son of a Prince is usually not a Prince.
The Emperor is the only one who can inherit the throne.
To inherit the throne means to be something equivalent to the Emperor.
I know this very well, having been a Prince.
“I see. That’s why you did it, isn’t it? You are indeed the best, Your Majesty.
“He was a clever man, and the way he was acting, he wouldn’t hesitate to give up his life if his majesty ordered it. Your status has risen again, hasn’t it?”[TN: She meant by his stats]
As my first knight, Shirley was also one of those who knew the details of my “+”.
“Yeah, it went up.”
“I knew it! It’s amazing how your power rises with the ...... people you follow, and more and more I believe that you were born to be the Emperor.”
It may be so, it may not.
But there is no doubt that I have the aptitude for it.
We drove the carriage for half a day.
When the land was dyed by the sunset, we reached a large village.
“There’s a lot of activities going on here.”
“Yeah, some sort of festival?”
From a distance, it looked like a village, not a city.
In a city, it would be bustling with activity on a daily basis, but in a village, for better or worse, the daily routine is usually peaceful.
However, the villagers were moving around quite noisily.
If it were a village, one would first imagine a harvest festival or something.
“Maybe we’ve come at a good time.”
I nodded and entered the village.
At the entrance, Shirley stopped a villager and asked,
“Excuse me, do you have an inn here? And if not, is there anywhere else we can stay for the night?”
The person who stopped him was a middle-aged woman.
She took one look at us on the carriage.
“Are you a merchant? I don’t have that much to say. But, there’s an inn about half a day’s ride north of here, you can stay there. If you leave now, you’ll be just in time.”
“Haah, .......”
Shirley was puzzled by what she saw.
It is quite unusual for a village like this to say they have nowhere to stay.
“There is something–“
I opened my mouth, but the woman didn’t even listen to me and walked quickly towards the back of the village.
She seemed to be in a hurry, as if in a dire situation.
“What should we do, Master?”
Not knowing if there would be anyone else around, Shirley changed the way she called me again so that I would not be recognized.
At the same time, she seemed to have noticed something as well.
“What do you want?” That woman had that kind of expression on her face when we asked.
“Let’s see what happens.”
Shirley nodded and composed herself.
As the carriage continued on, we could vaguely see it in the distance.
A simple platform had been built in the open space of the village and was set up like an altar.
On top of the altar, a young girl lay bound hand and foot, gagged and bedraggled.
The residents of the village are gathered around her.
One of the residents, an old man with a cane and a trembling gait, stepped forward.
“All of you. Today, at this time. I dedicate Raina to our god Kala.”
The villagers were silent, listening to the old man’s speech.
“I’ve known Raina since she was a child. She is like a daughter to me. However, she was violated by a stranger. We cannot leave such an unclean body in the village. Therefore, I offer her to the God Kala to purify her soul.”
The old man said, then turned and faced the altar.
” O God Kala... Please cleanse us of our filth!
“””O God Kala!”””
After the old man’s words, the villagers shouted in unison.
I got the gist of it. It’s disgusting.
“Master.”
I said to Shirley and jumped out of the carriage.
The villagers noticed me and tried to stop me, but I ignored them and continued on my way.
“Halt that ritual!”
I stood in front of the altar, shouting loud enough for all the villagers to hear.
“Who are you?”
The village headman stared at me, trembling.
” It doesn’t matter who I am. I demand that you stop this ritual right now.”
“You’re a stranger. Stay out of it.”
“That’s right, that’s right!”
“What do you know about it!”
“Will you be responsible for the destruction of this village!”
The villagers are shouting at me.
“Travelers!”
The old man told me in a quiet but insistent tone.
“Look at the mountain behind you on the right.”
“The mountain?”
I turned and looked at the mountain he said was behind me.
In the sunset, I noticed a peculiar shape.
“It’s missing, isn’t it? That’s the mark of the god Kala, who chewed it up.”
I understood only after he said that.
The strange shapes on the mountain seemed to be the marks of a giant creature that had chewed them up.
“That’s why you make offerings to such monsters, so as not to anger them?”
“Oh, ......, how dare you!”
The old man staggered as if he were dizzy, probably because his belief in this “God Kala” was called a monster.
But it didn’t matter.
“The act of sacrificing a human being is forbidden by Imperial Law , which–“
Booom!
Before I could finish, there was a huge sound and the earth shook.
“Here they come!”
“It’s God Kala!”
The villagers all turned pale at once.
When I turned my head to follow his gaze, I saw a huge monster behind the altar.
It was some kind of dragon, but it had two long necks.
Its eyes seemed to be blazing with fire, giving it a very atmospheric look.
As it approached the altar, its gaze drifted to the girl lying on the floor.
“Fumu.”
I ran up to the altar.
“Stop it!”
I ran further up the stairs, overcoming the old man’s restraint.
” Anything I can do?”
I asked as I ran up.
Leviathan answered most strongly.
“All right, then, you. Leviathan!”
I pulled out a water demon sword from my bracelet.
Running up to the altar, I jumped over the trembling girl with her eyes tightly closed and pounced on this God Kala.
It opened its huge mouth and tried to chomp down on me.
“Too late!”
I twisted my body to dodge the bite–a flash!
With a leviathan, I chopped the two heads off.
Boom ...... Booom!
The head falls off, and the torso falls to the ground without power.
“Bahamut.”
I burned the body with flames, just to be sure.
Whether it was cramping or stiffening, I couldn’t tell, but the dragon’s corpse was engulfed in flames and rapidly becoming charred.
I put Leviathan away and returned to the altar.
And then I helped the still shivering girl up.
“It’s all right now.”
“...... Eh.”
The girl still didn’t know what had happened.
But when she saw the corpse of the god Kala in flames, she was so surprised that her eyes widened to the point that her nape of the neck split open.
I picked the girl up and walked down the altar with her.
The villagers, including the old man, were puzzled.
“We’ll be taking this girl.”
At night, in the girl’s house.
There were three of us, me, Shirley, and the girl.
I sat down and listened to the girl’s story while drinking the tea that was served.
The first half of the story was a common one.
There was a monster near the village, and it was revered as a local deity.
The second half was a disgusting story.
A young girl is “defiled” by a violent attack by an outsider, and she offers it to the “God” to be cleansed.
“I see, now I understand the story.”
“Thank you for helping me, .......but”
“You mean you can’t stay in the village anymore?”
This kind of thing is familiar, it’s all too common.
I can understand the girl’s concern.
“Come with me, I’ll give you a job.”
“Are you sure? I’m defiled.”
“I don’t care about that.”
Being violated doesn’t change anything.
“Thank you very much, I’ll do anything and work very hard.”
For now, let’s spend the night here and leave the village in the morning.
We can reveal our true identities in the morning.
Shirley spoke to me.
“Have your abilities grown, Master?”
“No, not yet. But that’s enough for now.”
I moistened my lips with an almost tasteless cup of dry tea and continued.
“People are treasure and possibilities.”
“As long as you’re alive, there’s nothing but possibilities.”
Shirley was puzzled for a moment, by the way, I said there was nothing but possibilities, but soon her eyes lit up with emotion.
“Well, tomorrow...”
As I said this, I reached for my tea out of habit.
Even though I knew it wouldn’t taste good, I reached for it out of habit, and – to my surprise...
Just before I did, the teacup was quickly replaced.
The tea had been lukewarm earlier and was getting cold, but the girl quickly replaced it with a hot one.
I picked it up and looked at her.
“Ah, you don’t like it hot?”
“...... it’s fine.”
I chuckled.
Apparently, the girl has a talent for hospitality – the kind that makes you comfortable.
While still smiling I turned to Shirley.
“See, it already is.”
“Yes! That’s my master!” |
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"source": "superScraper-fanfic"
} | 「――そうだ、街の被害は――え?」
はっとしたオスカーだったが、周りを見てまた絶句した。
おそらくは予想していた水柱の街への被害がなかった。
ビームのように打ち出して、魔道書から飛び出してきた何かを吹き飛ばした水柱、それは街に何の被害も出さなかった。
いきなり起きた事にコバルト通りの売り手も買い手もびっくりしていたが、人間にも建物にも、骨董品にも被害はない。
空の彼方に飛んでいく水柱をみて、そして俺を見て。
「まさか......ノアお前」
俺は人差し指を伸ばして、斜め上に伸びていく軌道を描いて見せた。
の俺、本を持っていて視線は下向き。
普通なら水柱は水平か斜め下だ。
そしてそれだと、前に庭に大穴を開けたように、多分何十人かの命を奪ってしまう。
だから俺はとっさに下から上に向かって撃った。
斜めに打ち上げた水柱は魔道書の怨霊を吹き飛ばしただけで、他に何も被害を出さずに空の彼方へ飛んでいった。
「あで上に向かって撃ったというのか」
「うん」
「なんという状況判断能力だ......」
絶句するオスカーだったが、すぐにいつもの笑顔に戻って。
「いや、さすが父上の息子。さすが私の弟だ」
と、上機嫌でほめてくれた。
俺たちが何も説明しないし、何も被害が出なかったから。
コバルト通りは急激に、何も起きなかったかのように元に戻っていく。
が、全員がまったく今の出来事を気にしていないのかって言えば、そうでもない。
「失礼、少しよろしいでしょうか」
横から俺とオスカーに声を掛けてくる男。
身なりのいい、ちょび髭を生やした小太りの男だ。
「お前は?」
「あそこの店の店主でございます。今の事拝見致しました。是非、見て頂きたいものが」
「なんだい、宝物でもあるのかい」
「そのようなものでございます」
男は頭を下げた。
そのようなもの、か。
なんか煮え切らないが。
「分かった、案内して」
オスカーが乗り気だから、それに付き合うことにした。
男の後についていって店に入って、更に店の奥に通された。
俺もオスカーもためらう事なくついていった。
貴族ともなれば、買い物を店先でする事はない。
特にこういう高価な骨董品を扱う店だと、奥にあるVIP用の部屋に通されるのが当たり前だ。
今回もそうで、俺たちはそこそこの調度品で設えた部屋に通された。
「しばしお待ちを」
男はそういって、俺たちを置いて部屋から出た。
俺は部屋をぐるっと見回して、「へえ」とつぶやいた。
「どうしたノア」
「いや、上手いなって思って。この部屋、わざと貴族の屋敷の格式よりも一個下のランクにしてある。『平民が出来る最高のもてなし』を上手く演出してる」
「なに? もうそれが分かるのか?」
驚くオスカー。
「すごいなあ......私がそれを理解したのはの時だ」
今度は感心するオスカー。
そのままオスカーとソファーに座って、男が戻ってくるのを待った。
数分後、男は宝石箱を持って戻って来た。
部屋に入るなり、俺とオスカーに片膝をついた。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。アラン・バーズリー。親王殿下にご挨拶申し上げます」
当たり前のように頷くオスカー。
こっちは名乗っていないが、この部屋に案内した事からも分かる様に、向こうはこっちの事を知っているんだな。
ならばこういう時、名乗らないのが貴族のたしなみだ。
もとより、貴族とは、相手が自分の事を知っていて当然、として振る舞うことをよしとするものだ。
さりとて急かしもしない。
俺は黙って、向こうから話を切り出してくるのを待った。
アランは片膝をついたまま顔を上げて、俺たちを見る。
「先ほどの事を拝見させて頂きました。下の大いなるお力にただただ感服する次第でございます」
「たいした事じゃない。元はと言えばこっちが引き起こしたことだ。民の迷惑に成らないように自分で片をつけただけだ」
そう答えると、満足そうに微笑むオスカーの笑顔が目に入ってきた。
「おお、なんという胸襟の広いお方なのだろう。あなた様ならきっとこれの謎を解き明かしてくれるでしょう」
俺はオスカーと視線を交換した。
どうやら招かれたのは俺で、オスカーじゃないらしい。
本題にはいったアランは、宝石箱を開けて、それを献上するかのような仕草でおれの前に差し出した。
「これは、当店で一番のお宝です」
「指輪......だな」
「どういう物なんだ?」
「分かりません」
アランはきっぱりと言い放った。
商人が自分の商品をかくも「わかりません」と言い切るのは初めてのことで、コントじみたおかしさを感じてしまった。
「言い伝えでは、真の持ち主が現われたとき、この指輪は真の姿を見せる。という事しかわかっておりません」
「真の持ち主か」
「はい。今まで様々な方にそれとなく見せて来ましたが、真の姿というのは一度たりとも見せたことはありませんでした」
「さっき俺がやったことをみて、それで試して見ようってことか」
アランは宝石箱を差し出したまま、頭を下げた。
「試すのはいいが、それよりも気になるのはなんでこれをずっと持っているんだ? お前にとって商品の価値はないだろう? 何も分からないんじゃ。なのになんで持っていた」
「捨てても、捨て値で売っても戻ってくるのです」
「戻ってくる?」
「はい、いつの間にか、この店に勝手に。それで詳細はなにも分からなくとも、『何かがある』とだけは......」
「なるほど」
それなら確かにそう思うだろうな。
「いいじゃないか。ノア、つけてみなよ」
それまで黙って話を聞いていたオスカー、ノリノリで俺に指輪を勧めた。
正直直前までどうでも良かったんだけど、捨てても戻ってくる、という事を聞いて俄然興味をもった。
俺は指輪を手にして、
綺麗に親指にはまったそれを眺める、さてなにかあるか――と思っていると。
(レベル限界確認......レア度SSS)
「なに? なんだこの声は」
(新たな持ち主と承認――鎧化)
空耳のような声のあと、指輪から何かが一斉に「吹きだした」。
それが俺の体を包み、瞬く間に、騎士のような鎧になった。
「おお!」
「こ、これは......」
驚嘆するオスカー、絶句するアラン。
俺は自分を見た。
窓ガラスを鏡に見立てて自分を見た。
白い鎧を纏った俺、不思議と自分の目にもぴったりあっているように見えた。
ちなみにステータスに変化はない。
おそらく、レヴィアタンと似たような存在だろう。
「アラン、これをもらうぞ」
「はい! 喜んで差し上げます」
「謝礼は後で届けさせる」
「いや、ここは私に払わせてくれ」
オスカーは持ってきた一万リィーンを取り出して、アランに手渡した。
「兄上!?」
「私からのプレゼントだ。魔剣に続きその鎧? ふふふ、ノアはやはり何かが違うな」
オスカーは本当に上機嫌に笑い、鎧姿の俺を眼を細めて見つめたのだった。
指輪の鎧は俺の意思で出し入れ自由。
破壊されても、指輪本体が無事なら時間を掛けて自己修復する事ができる。
それらのことを、レヴィアタンと同じようにリンクしている思考で聞き出して、帰り道の馬車の上でオスカーに話した。
「すごいじゃないか。そんなの聞いた事もない」
「でもまあ、コバルト通りだ。どんな宝物が出てきたって驚くには値しないのかもしれないな」
そういう街なのか、あそこは。
「ともかく、いいものを見せてもらったよ。今度一緒に謁見して、陛下にも見ていただこう」
「ああ」
そうしているうちに、俺の屋敷、十三親王邸に戻って来た。
俺は馬車を飛び降りて、オスカーに別れを告げる。
「しねええええええ!」
ふと、背後から怒号とともに何かが襲いかかってきた。
「あぶない!」
オスカーが表情を変えて叫ぶ――ガキーン!
何かが弾かれた。
が弾いた直後、おそってきた暴漢はオスカーの御者に取り押さえられた。
「盾だって!? 一体どこから」
俺の後頭部に現われて、襲撃を弾いた盾の事の方が気になった。
「指輪とレヴィアタンをリンクさせた」
「なに」
ますます驚くオスカー。
「レヴィアタンは俺への敵意に敏感だから、リンクさせてみたらいいんじゃないかって思ったけど――自動防御として機能したな」
「もう使いこなしているのか! すごいな......」
オスカーは、またまた驚嘆したのだった。 | “...That’s right, the damage to the city is– eh?”
Oscar was relieved, but he looked around him and was again exclaimed.
There was no damage to the city from the water column that he had probably expected to see.
A water column that shot out like a beam and blew something out of the grimoire, it didn’t cause any damage to the city.
Both the sellers and buyers on Cobalt Street were surprised that it happened so suddenly, but there was no damage to humans, buildings, or antiques.
He looked at the water column flying off into the sky, and then at me.
“No way ... Noah did you.”
I extended my index finger and showed him a trajectory that extended upward at an angle.
I’m six years old, holding a book, and my gaze is downward.
Typically, the water column would be horizontal or diagonally down.
And that would probably take the lives of dozens of people, just like the big hole in the garden before.
So I took the plunge and shot from the bottom up.
The water column I launched at an angle only blew away the grudge spirit of the grimoire and flew away into the sky without causing any other damage.
”You mean you shot upwards in that split second?”
“Yes.”
“What an ability to assess the situation...”
Oscar was exclaiming, but he soon returned to his usual smile.
“No, that’s our father’s son. That’s my brother.”
He was in a good mood and complimented me.
We didn’t explain anything and nothing was done to cause any damage.
Cobalt Street rapidly returned to normal, as if nothing had happened.
But it’s not as if everyone is completely unconcerned about what just happened.
“Excuse me, may I have a moment?”
A man calls out to me and Oscar from the side.
He’s a well-dressed, little fat guy with a little beard.
“And you are?”
“I’m the owner of that shop. I saw what you just did. I’d like you to have a look at something.”
“Do you have any special treasures?”
The man lowered his head.
Something like that, huh?
Although it’s something that doesn’t quite boil over.
“Okay, show us the way.”
Oscar was on board, so I decided to go along for the ride.
I followed the guy into the store and was ushered further into the back of the store.
Me and Oscar followed without hesitation.
When you are a nobleman, you don’t do your shopping in front of a store.
Especially in a store that deals in expensive antiques like this, it’s natural to be shown to a VIP room in the back of the store.
The same is true this time, and we were shown into a room with decent furnishings.
“Please wait a moment.”
The man said and left the room, leaving us alone.
I looked around the room and muttered, “Heh.”
“What’s up Noah?”
“No, I just thought he was good at it. This room is deliberately set one rank lower than the class of a nobleman’s house. This room is a great example of “the best hospitality a commoner can offer.”.”
“What? Can you figure that out already?”
Oscar was surprised.
“Wow, that’ s amazing ... I didn’t figure that out until I was twelve years old.”
This time Oscar seemed impressed.
As it was, I sat on the couch with Oscar and waited for the man to come back.
A few minutes later, the guy came back with a jewelry box.
As soon as he entered the room, he got down on one knee to me and Oscar.
“I apologize for the delay in my greeting. I am Alan Bardsley. I would like to offer my greetings to His Royal Highness the Prince.”
“Um”
Oscar nods as if it’s obvious.
Although we didn’t tell him our names, as evidenced by the fact that he led us to this room, the other side knows about us.
Then it is the etiquette of a nobleman not to tell his or her name at a time like this.
Originally, a nobleman is supposed to act as if the other party knows about you.
I didn’t even try to rush him.
I kept quiet and waited for him to start the conversation.
Alan looks up, down on one knee, at us.
“I have seen what you just did. I am simply in awe of Your Highness the Thirteenth’s great power.”
“It’s no big deal. It’s just that I brought this thing on myself in the first place. I just did what I had to do to keep my people out of trouble.”
As I replied, I saw Oscar’s smile with a satisfied look on his face.
“Oh, what a big-hearted man you are! I’m sure you will be able to solve the mystery of this.”
I exchanged glances with Oscar.
Apparently, I was the one who was invited, not Oscar.
When he got down to business, Alan opened a jewelry box and presented it to me with a gesture of offering.
“This is our most prized possession.”
“The ring...”
“What’s it all about?”
“I don’t know.”
Alan said flatly.
It was the first time a merchant had ever said ‘I don’t know’ about his merchandise, and it felt contrived and funny.
” The ring will show its true form when its true owner appears. That is all that I know.”
“A true owner.”
“Yes. I’ve shown it to many people in different ways, but I’ve never shown it to them in its true form.”
“You saw what I did just now, so you want to give it a try?
Alan bowed his head as he held out the jewelry box.
“You can try it, but what I’m more concerned about is why do you keep this all the time? What’s the value of the product to you? You don’t know anything. So why did you keep it?”
“If I throw it away or sell it for a throwaway price, it comes back to me.”
“It comes back to you?”
“Yes, before I knew it, it was here on its own. So, even though I don’t know anything about the details, I just know that ‘something’s up’...”
Then you’d certainly think so.
“Come now. Noah, try it on.”
Oscar, who had been quietly listening to me until then, flippantly offered me the ring.
To be honest, I didn’t care about it until just before, but when I heard that it would come back to me if I threw it away, I suddenly became interested.
I took the ring and put it on my thumb like a matter of course.
I look at it neatly stuck in my thumb and wonder what it is.
(Level limit check.......rarity SSS)
“What? What’s that voice?”
( New ownership confirmed and now authorizing– armorization initiate)
After a voice that sounded like void speech, something “blew” out of the ring all at once.
It wrapped around my body, and in the blink of an eye, it turned into knightly armor.
“Oooh!”
“My God, that’s...”
Oscar marveled, and Alan exclaimed.
I looked at myself.
I saw myself, using the window pane as a mirror.
I was clothed in white armor, and strangely enough, it seemed to fit my own eyes as well.
By the way, there is no change in status.
Probably a similar existence to Leviathan.
“Alan, I’ll take this.”
“Yes! I’d be happy to oblige.”
“You’ll get your payment delivered later.”
“No, let me pay for this one.”
Oscar took out the ten thousand reens he had brought with him and handed them to Alan.
“Brother!?”
“It’s my gift to you. After the Demon Sword, this armor as well? Hmmm, Noah is indeed something different.”
Oscar was really smiling happily, and he looked at me in the armor with narrowed eyes.
The armor of the ring can be taken in and out at will.
If it is damaged, it can repair itself over time if the ring itself is safe.
I listened to those things with the same linked thoughts as Leviathan, and told Oscar on the carriage on the way home.
“Isn’t that amazing? I’ve never heard of that before.”
“It really is something.”
“But, well, it’s Cobalt Street. Maybe it’s not surprising what treasures they’ve found.”
So that’s what the city is like there.
“Anyway, it’s been a great experience. Next time let’s have our audience together and let His Majesty take a look at it.
“Yeah.”
In the meantime, we returned to my mansion, the Thirteenth Prince’s Mansion.
I jumped off the carriage and said goodbye to Oscar.
“Dieeeeee!”
Suddenly, something attacked me from behind with an angry shout.
” Watch out!”
Oscar’s expression changed and he shouted–Gakin!
Something bounced off of me.
As I was pulling away, the frightened assailant was subdued by Oscar’s men.
“A shield? Where the hell did it come from?”
He was more concerned about the shield that appeared in the back of my head and bounced off the assault.
“I linked the ring to the Leviathan.”
“A what now?”
Oscar is more and more surprised.
“Leviathan is sensitive to hostility towards me, so I thought it would be a good idea to link them together – but it worked as an automatic defense.”
“You already know how to use it! Amazing.....”
Oscar marveled again. |
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} | 昼下がりの書斎。
ドンに、次々と政務を処理していく。
ここ最近すっかり慣れてきて、宰相達が概要をつけてきたものなら、その概要から大体は読み取る事ができるようになり能率が上がった。
とは言え流れ作業になってミスを起こすことだけは避けねばと、俺は気を引き締めて政務に取りかかっていた。
そこに、ロレンスが訪ねてきた。
部屋に入ってきたロレンスは、俺の前で瀟洒に片膝をつく。
「来たか。いくつかお前の意見を聞きたい事がある。ドン」
ドンは頷き、書斎の隅っこに寄せておいた文書を取りに行こうとした。
実際ロレンスがどれくらい出来る人間なのかを試すために、政務を広範囲にわたって選りすぐっておいた物だ。
それの対処を聞こうとしたが、ロレンスは更に頭を下げて。
「その前に殿下、一つお願いしたいことが」
「なんだ?」
「是非とも口説き落として、殿下に紹介したい者がおります」
「分かった、行ってこい」
「..................」
顔を上げたロレンスが、片膝をついたままポカーン、となった。
「どうした、変な顔をして」
「い、いえ。まだ何も言ってないのに。どんな人間なのかも聞いていないのに。それをこうもあっさり承諾して下さった事に驚いているのです」
俺はふっ、と笑った。
「お前の事は信用している。それに」
「人は宝だ。お前程の男が紹介しようと思う人間なら間違いは無いだろう」
「......」
たっぷりと一分くらい固まって、我に返ったあと深呼吸して落ち着きを取り戻して。
「やはり殿下はすごいお方。一度でも、お仕えするのを拒んだ過去の自分が情けない思いです」
「過ぎた話だ」
「はっ。口説き落とせるか分かりませんが、殿下の統治には必ず役に立つ人物です」
それまでロレンスに任せるつもりでいた俺だったが、その言い方に興味を持った。
手を完全に止めて、ロレンスを真っ直ぐ見つめる。
「絶対になのか?」
「はい。私なんかよりも優秀です」
「なるほど」
俺は頷き、立ち上がった。
ドンに向かって。
「少し離れる、後は任せる」
「殿下?」
頷くドンと、更に戸惑うロレンス。
「案内しろ」
「お前にそこまで言わせる程の人物だ。それなら俺が出向くのが礼儀というものだ」
「......やはり、すごいお方だ......」
ロレンスは苦笑いして、ちょっと俯いてしまった。
馬に乗り州都ニシルを出て、南に向かった。
きちんと舗装された街道だが、後方の街が完全に見えなくなって、人気の無い郊外になった。
ロレンスは同じように馬に乗って、俺の横についてくる。
「それで、紹介したい者の名前っていうのは?」
「はっ。リオン、それにクレスという名の二人です」
「リオン......」
「いや、なんでもない」
聞き覚えのある名だが、気のせいかな、と思い首を振って忘れた。
「どんな二人なんだ?」
「私はかつて、ウォーター・ミラーという方が開いている私塾にいました。学問を、特に世に役立つ実務的な学問を教える所です」
「ふむ」
「リオンとクレスはその私塾に入ってきて、どちら月で卒業していった者です。あまりにも優秀すぎて、最後の方は教わることがなくなって、逆に他の生徒を指導していた程です」
「へえ、それはすごいな」
それほど優秀な人間なら、ますます会って、配下に加えたくなった。
人は宝、その二人を物に出来れば、俺の能力もますます上がるだろう。
そのままロレンスから二人の話を聞いた。
クレスは比較的温和な性格で、ミラー塾にもちょくちょく戻って来て指導をしていたが、リオンは喧嘩っ早く、最後も他の生徒とケンカして、後ろ足で砂を掛けるような形でミラー塾を後にしたそうだ。
性格が実に対照的な二人だ。
「馬が合うようで、仲は良いです。常に行動を共にしてますし、今も人里離れた同じ山の中に住んでいます」
リオンとクレスの二人の事が大体分かってきた。
馬を更に進めていく。
ふと、道の先に砂埃が巻き起こっているのが見えた。
目を凝らすと、男が何かに追われているのが見えた。
追っているのは虎だ、それも普通の倍はある、体が真っ白な毛皮に包まれた大虎だ。
「リオン!?」
横を向く、ロレンスが驚いているのが見えた。
「あれがお前の言ってたリオンなのか?」
「間違いありません! また何か変な事をしたな......」
ロレンスの口調に焦りはあっても、驚きはなかった。
どうやらリオンと言う男は、こういうことが日常茶飯事のようだ。
他の塾生と大喧嘩をして塾を飛び出した男と聞いていたので、俺も特に驚きは無く、成る程なという納得があった。
「ああっ!」
ロレンスの焦りは更に強くなった。
大虎とリオン、両者の距離が徐々に縮まっている。
このままでは十秒もしないうちに追いつかれるだろう。
「助けないと!」
「まかせろ」
俺は立ち上がって、馬の背中を蹴って飛び出した。
全能力SSS。
馬を駆って向かうよりは自分の足で向かった方が早いと踏んだ。
そしてその通りだった。
俺は一瞬で距離を詰めて、リオンと大虎の間に割って入った。
大虎は咆吼し、飛びかかってきた。
目前に迫る大虎は日差しを完全に覆い隠して、目の前がまるで夜のように暗くなる。
その巨体に向かって、俺は拳を突き出した。
軽く握った拳を、虎の眉間に向けて振るう。
頭蓋骨を砕き、首の骨が折れた音が、体の中を通って聞こえてきた。
一撃で絶命した虎はそのままぐったりと地面に崩れ落ちた。
ふむ、良い毛皮だ。
剥ぎ取って陛下に献上しようか。
そう思っていると、背後から声が聞こえてきた。
「おいおい、こいつを一撃かよ。すげえなお前――って」
「ん? お前は......」
男はなぜか驚いているみたいで、それに振り向いた俺も驚いた。
知っている顔だ。
リオン。
しばらく前に、乞食に変装して屋敷にやってきたあの男だ。
向こうも俺がノアだと分かったようで、気まずそうな笑顔を浮かべている。
馬を駆って俺の馬を引いてやってきたロレンスは、俺たちの反応を見て、首を傾げてしまうのだった。
リオンに案内されて、彼が住んでいる山に入った。
数百メートル程度の小さな山の中に、ひっそりと佇むように建っている二軒の小屋。
そのうちの一つに、俺とロレンス、そして小屋の主であるリオンが向き合って座っていた。
「いやぁ、助かったよ。あんたらが来てくれなかったら、今ごろ俺はあの虎の胃袋の中だ」
「なんであの虎に追われてたんだ」
「あれ、ホワイトサーベルタイガーつってな、その乳を人間の子供に飲ませたらすっごい免疫がついて、子供がかかる病気とかまるまる罹からなくなるって説があってさ」
「ああ、聞いた事はある」
噂レベルだが、白い虎に育てられた人間の子供が、普通の子供よりも遥かに体が大きくて、丈夫で、強く育つという話は聞いたことがある。
「で、その乳がどんなもんかって気になって、子虎が生まれたって知って搾りに行こうとしたら......あのざまだ」
「当たり前だ!」
ロレンスは大声を出した。
「子育て中の猛獣に近づくなんて死にたいのか!」
「怒るなよ。そうだ、ちょっとは搾れたから、一緒に飲んでみないか?」
「おまえな!」
いきり立つロレンスを押さえて、リオンに話しかける。
「リオン、と言ったな」
「ロレンスにあんたの事を推薦された。クレスと一緒にだ」
「ロレンスが?」
リオンはびっくりした顔でロレンスを見た。
の事ようやく見限ったのか」
ロレンスは苦笑いして、答えなかった。
リオンのパスカルに対する呼び名と、それを聞いて反論しないロレンス。
どうやら、俺とロレンスの間で行ったやりとりを、彼ら友人の間でもやっていたらしい。
ロレンスは気まずそうな顔をしたまま、やがて答える。
「今は、殿下にお仕えしている」
「へえ......」
リオンは俺を見つめた。
「クソ頑固なロレンスを口説き落とせるなんてお前すごいな。コロンシアの話といい、大した男だ」
「コロンシア?」
を向かわせただろ? そのおかげで再建は上手く行ってるぜ」
ハワードらからの報告は聞いていたが、どうやら傍から見てもちゃんと復興は進んでいるようだ。
「よし、そういうことならお前の部下になってやる。クレスの事も任せろ」
「良いのか?」
「ああ。元からそのつもりだったし、ロレンスのでっかち頭を柔らかくしたすげえヤツって聞けば、クレスも反対はしないさ」
「これから頼むな――殿様」
口調はざっくばらんなものだったが、座ったまま、両手を膝について頭を下げる直前のリオンの目は。
ものすごく、真剣なものだった。
数日後、書斎で政務をしていると、再びクルーズがやってきた。
前回同様、勅使としてやってきた宦官の前で、俺は片膝をついて頭を下げた。
俺の隣でドンも一緒に跪いていた。
クルーズは勅命を諳んじた。
陛下の体調がすっかり良くなったので、避暑地から帝都に戻るとのこと。
それに伴い、俺の総理親王大臣の任を解く、という命令だ。
瞬間、視界の隅っこのステータスが変わった。
――――――――――――
名前:ノア・アララート
法務親王大臣
性別:男
レベル:10/∞
HP D+E 火 E+A
力 D+E 風 E+F
―――――――――――
帝国全土を意味するSSSが全部なくなり、それ以前のものに戻った。
その時よりも若干高く、いくつかDになっているのは、ロレンス、リオン、クレスの三人を配下に加えたためだろう。
それを眺めながら、この先どう能力を上げるべきなのかを考えていると。
「此度は、よく政務を執り行ってくれた。ついてはアポピスを下賜し、封地にアララートを追加するものとする」
「す、すごい......」
黙って聞いていた――いや黙って聞かなきゃいけないはずのドンが、思わず声を出すほど驚いた。
俺も驚いた。
封地、アララート。
今となっては何もない、なにも産出しない辺境の土地だが、その名の通り、アララート一族が最初に挙兵した象徴的な土地だ。
ドンが「すごい」と思わず反応するのも宜なるかなってもんだ。
一方で、俺はもう少し冷静だった。
なぜなら、クルーズが勅命を宣告した瞬間に、俺のステータスがまた伸びたからだ。
名前:ノア・アララート
性別:男
HP D+E 火 E+A
力の「+」が一気にAまであがった。
地の「+」もDになった。
二つも上がっている。
アララートの土地は、今はたいした物はない。
かつて生まれた時、アルメリアを封地にもらった瞬間に水が上がった事と、実際のアルメリアの実情を考えれば。
アララートの土地で二つも上がるとは考えにくい。
となれば――。
顔を上げると、クルーズが連れてきた人間が、宝箱を運んでくるのが見えた。
宝箱を俺の前に置き、開く。
中には、蛇のモチーフが入った杖が置かれていた。
これが――アポピスか。
手を伸ばして、アポピスに触れる。
共鳴。
レヴィアタン。
バハムート。
フワワ。
ベヘモト。
そして、アポピス。
が同時に音を立てて――まさに共鳴をしていた。
その事にはさすがに驚いたが、周りを見ても、クルーズやドンがそれに反応した素振りはない。
俺だけって事か。
が、これで分かった。
アポピスはレヴィアタンらと
ならば、この上ないお宝。
俺は頭を下げて、下賜してくれた陛下――の名代たるクルーズに。
「ありがたき幸せ」
と口上した。
その夜、俺は奇妙な夢を見た。
夢の中で、不思議な存在が五体、何かを話していた。
『我らを五人も、しかも何事もなく従えるとは』
『史上初ね、こんなの。すごい男だわ』
『これならば......あるいは』
を受け入れる事も可能かもしれん』
『そして、アララートの地に眠る箱船を目覚めさせられる、そんな存在に』
『箱船が目覚めれば、地上の人間も含めて全員が楽園にいけるものね。期待だわ』
『うむ、期待だ』
『期待しよう』
の可能性を持つ我らが主に......』
『『『『『期待しよう』』』』』 | Late afternoon in the study.
Together with Don, I deal with the affairs of the state one after another.
I’ve gotten so used to it lately that I can read the summaries of what the Viziers have outlined, and my efficiency has improved.
However, I still had to keep my mind on the task at hand and avoid making mistakes.
Just then, Lawrence came to visit me.
He came into the room and knelt down elegantly in front of me.
“You’re here. I’d like to ask your opinion on a few things. Don.”
“Excuse me”
Don nodded and went to get a document that he had put in the corner of his study.
In fact, he had selected a wide range of political duties to test how well Lawrence could do them.
I was about to ask him to deal with it, but he bowed further.
“But first, Your Highness, I have a favor to ask.”
“What is it?”
“There’s someone I’d like you to persuade and introduce to your highness.”
“All right, go ahead.”
“...................”
Lawrence looked up and puzzled, dropping to one knee.
“What’s with that funny look on your face?”
“N-no. I have not told you anything yet. And you have not heard what kind of person he is yet. I’m just surprised that you agreed to it so easily.”
I chuckled.
“I trust you. And”
“People are treasures. If a man of your stature is willing to introduce you to someone, you can’t go wrong.”
“......”
He froze for a full minute, then came back to himself, took a deep breath, and regained his composure.
“Your Highness is an amazing man. I feel ashamed of myself for refusing to serve you, even once in the past.”
“It’s a story of the past.”
“Ha. Although I don’t know if he can be persuaded, he will certainly be useful in your reign.”
I had been planning to leave it to Lawrence, but the way he said it intrigued me.
I stopped my work completely and stared straight at Lawrence.
“Are you absolutely sure?”
“Yes. They’re better than I am.”
I nodded and stood up.
Then facing Don.
“I’ll leave you to it.”
“Your Highness?”
Don nodded, and Lawrence was even more confused.
“Lead the way.”
“They’re something that makes you say that much. Then it’s only polite that I come to you.”
“...... You’re an amazing man, after all. ......”
Lawrence laughed bitterly and looked down for a moment.
We left the provincial capital, Nisir, on horseback and headed south.
It was a neatly paved road, but the city behind us was completely out of sight, and we were now in an unpopular suburb.
Lawrence rode his horse the same way and followed beside me.
“So, what is the name of the person you want to introduce me to?”
“Huh. Leon, and another one named Cress.”
“Leon ......”
“No, nothing.”
The name sounded familiar, but I shook my head and forgot about it, thinking it was just my imagination.
“What are they like?”
“I used to be in a private school run by a man named Walter Miller. It is a place that teaches learning, especially practical learning that is useful to the world.”
“Fumu.”
“Leon and Cress came to the private school and both graduated within three months. They were so good that by the end they didn’t need to be taught anymore, they were teaching other students.”
“Hoo, that’s quite a feat.”
If they are that good, I want to meet them and take them under my command.
People are treasures, and if I can get my hands on those two, my abilities will increase even more.
As it was, Lawrence told me about the two men.
Cress was relatively mild-mannered and came back often to teach at the Miller School, while Leon was quarrelsome and quarreled with the other students at the end, leaving the school with his back to them.
They were two very different personalities.
“They seem to get along well. As they always work together, they still live in the same remote mountain area.”
I was beginning to understand the two men, Leon and Cress.
We continued on our way.
Suddenly, I saw a cloud of dust rolling down the road.
I looked closer and saw a man being chased by something.
It was a tiger, twice the size of a normal tiger, its body wrapped in pure white fur.
“Leon!”
I turned my head to the side and saw that Lawrence was surprised.
“Is that the Leon you were talking about?”
“I’m sure of it! He did something strange again.......”
There was impatience in Lawrence’s tone, but no surprise.
Apparently, this kind of thing is a regular occurrence with this guy Leon.
I heard that he was a man who got into a quarrel with another student and ran away from the school, so I was not taken aback.
“Aaaah!”
Lawrence’s impatience grew even stronger.
The distance between the Tiger and Leon was gradually closing.
If they continued at this rate, he would be caught up in less than ten seconds.
“We have to help!”
I stood up, kicked the horse’s back, and jumped out.
My entire ability is SSS.
I figured it would be faster to head out on my own than to gallop my horse.
And I was right.
I closed the distance in an instant and stepped in between Leon and the giant tiger.
The giant tiger roared and pounced on me.
It completely obscured the sunlight, darkening the space in front of me as if it were night.
I thrust out my fist toward the huge body.
Lightly clenching my fist, I swung it at the tiger’s brow.
I could hear the sound of its skull being crushed and the bones of its neck being broken through its body.
The tiger was killed by the blow and collapsed to the ground in a limp heap.
Fumu, nice fur.[PETA, this guy right here!!!!]
Shall I strip it off and present it to His Majesty?
Just as I was thinking this, I heard a voice behind me.
“Whoa, whoa, a blow to this thing? You’re awesome!”
“Hmm? You’re .......”
The man seemed surprised for some reason, and when I turned around, I was surprised too.
It’s a face I know.
Leon.
That’s the guy who came to the mansion a while ago disguised as a beggar.
The other side seemed to have figured out that I was Noah, too, and gave me an awkward smile.
Lawrence, who came with his horse to pull my horse, tilted his head when he saw our reaction.
Leon led me into the mountain where he lives.
Two huts stood quietly in the middle of a small mountain only a few hundred meters away.
In one of them, I, Lawrence, and Leon, the owner of the hut, were sitting facing each other.
“Well, thank you for your help. If you hadn’t come, I’d be in that tiger’s stomach right now.”
“Why were you being chased by that tiger?”
“Well, there’s a theory that if you give the milk of a White Saber Tiger to a human child, the child will become immune to all diseases.”
“Yeah, I’ve heard about it.”
It’s only a rumor, but I’ve heard that human children raised by white tigers grow up to be much bigger, tougher, and stronger than normal children.
“So I was curious to see what the milk was like, and when I found out that a tiger cub had been born, I went to go milk it.”
“No wonder!”
Lawrence shouted.
“Do you want to die by going near a beast of prey while it’s raising its young!”
“Don’t get mad. Oh, yes, I’ve squeezed some out of you, why don’t you join me for a drink?”
“You!”
I held Lawrence’s impatience and spoke to Leon.
“Leon, right”
“Yeah.”
“Lawrence recommended you to me. Along with Cress.”
“Lawrence?”
Leon looked at Lawrence in surprise.
“You’ve finally given up on Kaskal, huh?”[Leon is saying Kasukaru]
Lawrence smiled bitterly and did not answer.
Leon’s calling out Pascal, and Lawrence’s not refuting it when he heard it.
Apparently, the exchange that took place between me and Lawrence was also taking place between their friends.
Lawrence looked uncomfortable but eventually answered.
“I am now in the service of His Highness.”
“Heh, .......”
Leon stared at me.
“It’s amazing that you can persuade that stubborn Lawrence. You’re a great guy, just like your story at Coroncia.”
“Coroncia?”
“Yeah, you sent three of your subordinates over there, right? Thanks to that, the rebuilding is going well.”
I’ve heard the reports from Howard and the others, but it looks like the reconstruction is going well from the outside.
“All right, in that case, I’ll be your subordinate. And leave Cress to me.”
“Are you sure?”
“Yeah. I intended to do so from the start, and if Cress hears that you are an amazing guy who has softened Lawrence’s big head, he won’t object.”
“I’ll be in your care—Lord.”
The tone of his voice was casual, but his eyes were serious just before he sat down and bowed his head with his hands on his knees.
It was very, very serious.
A few days later, while I was doing political work in my study, Curuz arrived again.
Just like last time, I got down on one knee and bowed before the eunuch who had come as an imperial envoy.
Next to me, Don knelt with me.
Curuz recited the imperial order.
His Majesty’s health has improved completely, and he will return to the imperial capital from the summer resort.
With that, the order is to relieve me of my post as Prime Minister.
Instantly, the status in the corner of my vision changed.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Minister of Justice
Gender: Male
HPD+EMPE+EStrengthD+EStaminaE+EIntelligenceE+DSpiritE+DSpeedF+EDexterityE+DLuckE+D FireE+AWaterD+SWindE+FEarthE+FLight E+CDarknessE+F
All of the SSS, which means the whole empire, disappeared, and it returned to its previous state.
The reason it’s slightly higher than it was then, with some D’s, is probably because I added Lawrence, Leon, and Cress as my subordinates.
As I looked at it, I was thinking about how I should improve my abilities in the future.
“You have done a good job with the affairs of the state. For this reason, I am giving you Apophis and shall add Ararat to the fief.”
“A-Amazing.......”
Listening in silence, – or rather, Don, who should have been listening in silence, was so surprised that he shouted out.
I was surprised too.
The fief, Ararat.
As the name implies, it is the symbolic land where the Ararat family first raised its armies, although it is now a remote land that produces nothing.
Don’s involuntary reaction of “Amazing” was understandable.
I, on the other hand, was a little soberer.
Because the moment Cruz pronounced the imperial decree, my status increased again.
――――――――――――
Name: Noah Ararat
Gender: Male
HPD+EMPE+EStrengthD+AStaminaE+EIntelligenceE+DSpiritE+D
SpeedF+EDexterityE+DLuckE+D FireE+AWaterD+SWindE+FEarthE+DLight E+CDarknessE+F
The “+” in strength went up to A at once.
The “+” in earth also went up to D.
That’s two more.
There’s not much in Ararat’s land now.
Considering the fact that the water went up the moment I received Almeria as a fief when I was once born, and the actual situation in Almeria.
It’s hard to imagine two status would rise just because of the land of Ararat.
If that’s the case...
I looked up and saw the person that Cruz had brought with him carrying a treasure chest.
He placed the treasure chest in front of me and opened it.
Inside was a cane with a snake motif on it.
So this is — Apophis.
I reached out my hand and touched the Apophis.
Resonance.
Leviathan.
Bahamut.
Fuwawa.
Behemoth.
And Apophis.
Five of them were simultaneously emitting a sound – a true resonance.
I was indeed surprised by this, but I looked around and saw no sign of Curuz or Don reacting to it.
So it was just me.
But now I knew.
Apophis is the same as Leviathan and the others.
If that’s the case, this is a treasure.
I bowed down to Curuz, who had given it to me in the name of His Majesty.
“Thank you for the generosity.”
I said.
That night, I had a strange dream.
In the dream, there were five mysterious beings talking about something.
{Five of us, and yet without incident.}
{That’s a first in history. He’s an amazing man.}
{If this is the case, ...... then..}
{Yes, it may be possible for him to take us all in.}
{And become the one who can awaken the Ark that lies dormant in the land of Ararat.}
{When the Ark awakens, everyone including those on the ground can go to paradise. I have high hopes.}
{Umu, I have expectations.]
{Let us hope.}
{To our Lord of infinite possibilities......}
{{{{{Let’s hope }}}}}
Level: 10 / ∞ |