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デュークのその言葉に全員の顔が引き締まる。
ついに全員が貧困村から出ることが出来るのだ。この日どれだけの人が待ち望んだのだろう。
太陽のある世界へ行ける。あの明るい希望に満ちた場所へ解き放たれるのだ。
レベッカの手が少し震えているのが分かる。
「なんだか、少し恐くなってきたわ」
「大丈夫だ」
ネイトはギュッとレベッカの手を握る。
......ん? え、そういうこと?
いや、今はそこに追及しないでおこう。あちこちの恋愛事情に首を突っ込んで(口を挟んで)いる暇はない。
デュークは霧の壁の方を向き、手をかざす。その瞬間、霧がスッと消える。ついさっきまであった壁はもうそこにはない。
「おおおお!」
誰かが叫びながら、思い切り壁の方に走り始める。
自由になれた喜びが抑えきれなかったのか、それとも王子の指示を拒絶し逃げ出したのか。
物凄い形相をした男はデュークに襲い掛かろうとする。
「あ~あ」
僕は彼を見ながら呟く。
パチンッとデュークが指を鳴らした瞬間、男はガクッと地面に倒れ込む。男は魔力で抑えられていて、立ち上がろうと足掻くができないようだ。
「ぐッ」
ネイトは「馬鹿が」と吐き捨てる。
「こいつのことを任せていいか?」
デュークはネイトに目を向ける。
「ああ、すまない。こっちで処理する。ジェット」
ネイトの声に、後ろにいた背の高い赤毛の男が応じる。ジェットはデュークの前で倒れている男を、軽々と持ちあげてネイトの近くまで運んだ。
凄い筋力......。成人男性を片手で持ち上げるなんて。
「大人しくしてろ」
ネイトが男を睨むと、男は何も言わずネイトから目を逸らす。
「いいか、お前ら、ここを出る前に決めただろ。変なことはするなって。それをしっかり守れ。俺が仕切るのが嫌だという奴は出てこい。相手になってやる」
ネイトは声を上げる。その声に全員が黙り込む。
緊迫した空気が満ちる。この中でネイトと戦おうと思う者はいない。
この貧困村で最も強いのがネイトだ。彼に立ち向かっても勝てないことは皆承知している。
てか、その彼と互角に戦ったアリシアって......やばくない?
僕はじっちゃんを見る。「アリシアはやばい」と言葉にしなくてもじっちゃんの目も同意していた。
ぶっ飛んだ人が周りに多すぎて、何が平凡なのか分からなくなる。
もしアリシアが大貴族の位を剥奪されたとしても、どこででも生きていけるだろう。平民になった方が、もっととんでもない成功を収めていくかもしれない。
僕がそんなことを考えているうちに、どんどん貧困村の村人達は外の世界へと向かって歩いていく。
「な、なんて新鮮な空気なのかしら」
「あの眩しいのは何?」
「タイヨウと呼ばれるものらしいぜ」
様々な声が耳に響く。皆それぞれ外の世界に感動している。
森の中は薄暗く不気味だが、微かに太陽が見える。そして、貧困村の籠った空気とは全く違い、外の世界の空気はとても澄んでいる。
嬉々とした声にじっちゃんは穏やかな笑みを浮かべる。
こんな所に閉じ込めたこの国が大嫌いだけど、それでも僕はこの国を愛してる。
言っていることが矛盾していることは分かっている。......言い方を変えると、僕はアリシアがいるからこの国が好きなのだ。 | Duke’s words caused everyone’s faces to tighten.
At last, everyone would be able to leave the impoverished village. How many people had been looking forward to this day?
We could go to a place where there was sunshine. We’d be taken to that bright and hopeful place.
Rebecca’s hands were shaking a little.
“I don’t really understand this feeling, I’m getting a little scared.”
“It’s okay.”
Nate squeezed Rebecca’s hand.
Eh, are those two...?
No, I need to leave that aside for now. I didn’t have time to poke my head (or mouth) into other people’s love affairs.
Duke extended his hand toward the wall of fog. At that moment, the fog suddenly disappeared. The wall that had been there only moments before had vanished.
“Oh, oh!”
Someone cried and started running toward the wall as fast as he could.
Perhaps the joy of freedom was too much for him, or he just wished to defy the prince’s orders and flee.
The man with a terrible look on his face tried to attack Duke.
“Ah~ah!”
I mumbled as I looked at him.
With a snap of Duke’s fingers, the man falls to the ground crumpled. The man was held back by magic power and seemed unable to stand up, even though he tried to struggle to his feet.
“Ugh!”
Nate spits out, “Idiot”.
“Can I trust you with him?”
Duke turned to Nate.
“Yeah, sorry about that. I’ll take care of it. Jet!!”
A tall, red-haired man standing behind him responded to Nate’s voice. He lifted the prone man in front of Duke and carried him lightly to Nate’s side.
Amazing muscular strength.... Lifting a grown man with one hand.
“Stay quiet.”
Nate glared at the man, who turned away without saying anything.
“Look, guys, we have to decide before leaving here not to do anything stupid and stick to it. Anyone who doesn’t want to follow my command, come on out. I’ll deal with you personally.”
Nate said, with a raised voice. Everyone fell silent at the sound of his voice.
The air was filled with tension. No one here dared to fight Nate.
Nate was the strongest person in this impoverished village. Everyone understood that even if they stood up to him, they would not be able to win.
After all, didn’t he fight against Alicia on an equal footing... unbelievable?
I look at Gramps. To my thoughts that “Alicia was a badass”, Gramps’ eyes agreed without words.
There were so many eccentric people around her that it was difficult to tell what was normal.
Even if Alicia were stripped of her great nobility, she could live anywhere. She might become a commoner and achieve even more extraordinary success.
While I was thinking about this, more and more villagers in the impoverished village were walking towards the outside world.
“What a breath of fresh air!”
“What’s with this dazzling light?”
“It’s called the Sun, apparently.”
Various voices echoed in my ears. Everyone was impressed by the outside world.
The forest was dim and eerie, but the sun was faintly visible. And unlike the caged air of the impoverished village, the air in the outside world was very clean.
Gramps smiled serenely at the sound of joy in their voices.
I detest the people of this country that trapped me in this place, but I still do adore this country.
I knew what I was saying was contradictory. ...but just to be clear, I love this country because of Alicia. | {
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「へ? ハジメくん? って南雲くん? えっ? なに? どういうこと?」
香織の歓喜に満ちた叫びに、隣の雫が混乱しながら香織とハジメを交互に見やる。どうやら、香織で目の前の白髪眼帯黒コートの人物がハジメだと看破したようだが、雫にはまだ認識が及ばないらしい。
しかし、それでも肩越しに振り返って自分達を苦笑い気味に見ている少年の顔立ちが、記憶にある南雲ハジメと重なりだすと、雫は大きく目を見開いて驚愕の声を上げた。
「えっ? えっ? ホントに? ホントに南雲くんなの? えっ? なに? ホントどういうこと?」
「いや、落ち着け樫。お前の売りは冷静沈着さだろ?」
香織と同じく死を覚悟した直後の一連の出来事に、流石の雫も混乱が収まらないようで痛みも忘れて言葉をこぼす。そんな雫の名を呼びながら諌めるハジメは、ふと気配を感じて頭上を見上げた。そして、落下してきた金髪の女の子ユエをお姫様抱っこで受け止めると恭しく脇に降ろし、ついで飛び降りてきたウサミミ少女シアも同じように抱きとめて脇に降ろす。
最後に降り立ったのは全身黒装束の少年、遠藤浩介だ。
「な、南雲ぉ! おまっ! 余波でぶっ飛ばされただろ! ていうか今の何だよ! いきなり迷宮の地面ぶち抜くとか......」
文句を言いながら周囲を見渡した遠藤は、そこに親友達と魔物の群れがいて、硬直しながら自分達を見ていることに気がつき「ぬおっ!」などと奇怪な悲鳴を上げた。そんな遠藤に、再会の喜びとなぜ戻ってきたのかという憤りを半分ずつ含めた声がかかる。
「「浩介!」」
「重吾! 健太郎! 助けを呼んできたぞ!」
〝助けを呼んできた〟その言葉に反応して、光輝達も魔人族の女もようやく我を取り戻した。そして、改めてハジメの少女を凝視する。だが、そんな周囲の者達の視線などはお構いなしといった様子で、ハジメは少し面倒臭そうな表情をしながら、ユエとシアに手早く指示を出した。
「ユエ、悪いがあそこで固まっている奴等の守りを頼む。シア、向こうで倒れている騎士甲冑の男、容態を見てやってくれ」
「ん......任せて」
ユエは周囲の魔物をまるで気にした様子もなく悠然と歩みを進め、シアは驚異的な跳躍力で魔物の群れの頭上を一気に飛び越えて倒れ伏すメルドの傍に着地した。
「ハ、ハジメくん......」
香織が、再度、ハジメの名を声を震わせながら呼んだ。その声音には、再会できた喜びを多分に含んではいたが、同じくらい悲痛さが含まれていた。それは、この死地にハジメが来てしまったが故だろう。どういう経緯か香織にはわからなかったが、それでも直ぐに逃げて欲しいという想いがその表情から有り有りと伝わる。
ハジメは、チラリと香織を見返すと肩を竦めて「大丈夫だから、そこにいろ」と短く伝えた。そして、即座に〝瞬光〟を発動し知覚能力を爆発的に引き上げると、〝宝物庫〟からクロスビット取り出し、それを香織と雫の周りに盾のように配置した。
突然、虚空に現れた十字架型の浮遊する物体に、目を白黒させる香織と雫。そんな二人に背を向けると、ハジメは元凶たる魔人族の女に向かって傲慢とも言える提案をした。それは、魔人族の女が、まだ
「そこの赤毛の女。今すぐ去るなら追いはしない。死にたくなければ、さっさと消えろ」
「......何だって?」
もっとも、魔物に囲まれた状態で、普通の人間のする発言ではない。なので、思わずそう聞き返す魔人族の女。それに対してハジメは、呆れた表情で繰り返した。
「戦場での判断は迅速にな。死にたくなければ消えろと言ったんだ。わかったか?」
改めて、聞き間違いではないとわかり、魔人族の女はスっと表情を消すと「殺れ」とハジメを指差し魔物に命令を下した。
この時、あまりに突然の事態――――特に虎の子のアハトドが正体不明の攻撃により一撃死したことで流石に冷静さを欠いていた魔人族の女は、致命的な間違いを犯してしまった。
ハジメの物言いもあったのだろうが、敬愛する上司から賜ったアハトドは失いたくない魔物であり、それを現在進行形で踏みつけにしているハジメに怒りを抱いていたことが原因だろう。あとは、単純に迷宮の天井を崩落させて階下に降りてくるという、ありえない事態に混乱していたというのもある。とにかく、普段の彼女なら、もう少し慎重な判断が出来たはずだった。しかし、既にサイは投げられてしまった。
「なるほど。......〝敵〟って事でいいんだな?」
ハジメがそう呟いたのとキメラが襲いかかったのは同時だった。ハジメの背後から「ハジメくん!」「南雲君!」と焦燥に満ちた警告を発する声が聞こえる。しかし、ハジメは左側から襲いかかってきたキメラを意にも介さず左手の義手で鷲掴みにすると苦もなく宙に持ち上げた。
キメラが、驚愕しながらも拘束を逃れようと暴れているようで空間が激しく揺らめく。それを見て、ハジメが侮蔑するような眼差しになった。
「おいおい、何だ? この半端な固有魔法は。大道芸か?」
気配や姿を消す固有魔法だろうに動いたら空間が揺らめいてしまうなど意味がないにも程があると、ハジメは、思わずツッコミを入れる。奈落の魔物にも、気配や姿を消せる魔物はいたが、どいつもこいつも厄介極まりない隠蔽能力だったのだ。それらに比べれば、動くだけで崩れる隠蔽など、ハジメからすれば余りに稚拙だった。
数百キロはある巨体を片手で持ち上げ、キメラ自身も空中で身を捻り大暴れしているというのに微動だにしないハジメに、魔人族の女や香織達が唖然とした表情をする。
ハジメは、そんな彼等を尻目に、観察する価値もないと言わんばかりに〝豪腕〟を以てキメラを地面に叩きつけた。
ズバンッ!!
そんな生々しい音を立てて、地面にクレーターを作りながらキメラの頭部が粉砕される。そして、ついでにとばかりにドンナーを抜いたハジメは、一見、何もない空間に向かってレールガンを続けざまに撃ち放った。
乾いた破裂音を響かせながら、二条の閃光が空を切り裂き目標を違わず問答無用に貫く。すると、空間が一瞬揺ぎ、そこから頭部を爆散させたキメラと心臓を撃ち抜かれたブルタールモドキが現れ、僅かな停滞のあとぐらりと揺れて地面に崩れ落ちた。
ハジメからすれば、例え動いていなくても、風の流れ、空気や地面の震動、視線、殺意、魔力の流れ、体温などがまるで隠蔽できていない彼等は、ただそこに佇むだけの的でしかなかったのである。
瞬殺した魔物には目もくれず、ハジメが戦場へと、いや、処刑場へと一歩を踏み出す。これより始まるのは、殺し合いですらない。敵に回してはいけない化け物による、一方的な処刑だ。
あまりにあっさり殺られた魔物を見て唖然とする魔人族の女や、この世界にあるはずのない兵器に度肝を抜かれて立ち尽くしているクラスメイト達。そんな硬直する者達をおいて、魔物達は、魔人族の女の命令を忠実に実行するべく次々にハジメへと襲いかかった。
黒猫が背後より忍び寄り触手を伸ばそうとするが、ハジメは、振り向きもせずダランと下げた手に持つドンナーを手首の返しだけで後ろに向けて発砲。音速を優に超えた弾丸は、あっさり黒猫の頭蓋を食い破った。
弾けとんだ仲間の魔物には目もくれず、左右から同時目狼が飛びかかる。が、いつの間にか抜かれていたシュラークが左の敵を、ドンナーが右の敵をほぼゼロ距離から吹き飛ばす。
その一瞬で、絶命した四つ目狼の真後ろに潜んでいた黒猫が、ハジメの背後から迫るキメラと連携して触手を射出するが、ハジメは、その場で数メートルも跳躍すると空中で反転し上下逆さとなった世界で、標的を見失い宙を泳ぐ黒猫二体とキメラ一体をレールガンの餌食とした。
血肉が花吹雪のように舞い散る中で、着地の瞬間を狙おうとでも言うのか、踏み込んで来たブルタールモドキ二体がメイスを振りかぶる。しかし、そんな在り来りな未来予想が化け物たるハジメに通じるはずもなく、ハジメは、〝空力〟を使って空中で更に跳躍すると、独楽のように回りながら左右のドンナー・シュラークを連射した。
解き放たれた殺意の風が、待ち構えていたブルタールモドキ二体だけでなく、その後ろから迫っていたキメラと四つ目狼の頭部を穿って爆砕させる。それぞれ血肉を撒き散らす魔物達が、慣性の法則に従いハジメの眼下で交差し、少し先で力を失って倒れこんだ。
ハジメは、四方に死骸が横たわり血肉で彩られた交差点の真ん中に音もなく着地し、虚空に取り出した弾丸をガンスピンさせながらリロードする。
と、その時、「キュワァアア!」という奇怪な音が突如発生した。ハジメがそちらを向くと亀の魔物アブソドが口を大きく開いてハジメの方を向いており、その口の中には純白の光が輝きながら猛烈な勢いで圧縮されているところだった。
それは、先程、メルド団長のもつ〝最後の忠誠〟に蓄えられていた膨大な魔力だ。周囲数メートルという限定範囲ではあるが、人一人消滅させるには十分以上の威力がある。
その強大な魔力が限界まで圧縮され、次の瞬間、ハジメを標的に砲撃となって発射された。射線上の地面を抉り飛ばしながら迫る死の光に、しかし、ハジメは冷静に柩型の大盾を虚空に取り出すと左腕に装着、同時に〝金剛〟を発動しながらどっしりとかざした。地に根を生やした大樹の如く、不動の意志を示すハジメの瞳に焦燥の色は微塵もない。
魔力の砲撃が直撃した瞬間、凄まじい轟音が響き渡り、空気がビリビリと震え、その威力の絶大さを物語る。しかし、直撃を受けた本人であるハジメは、その意志の示す通り一歩もその場を動いておらず、それどころか、いたずらっぽい笑みを口元に浮かべると盾に角度をつけて砲撃を受け流し始めた。逸らされた砲撃が向かう先は......
「ッ!? ちくしょう!」
魔人族の女だ。ハジメがあっさり魔物を殺し始めた瞬間から、危機感に煽られて大威力の魔法を放つべく仰々しい詠唱を始めたのだが、それに気がついていたハジメが、アブソドの砲撃を指示したであろう魔人族の女に詠唱の邪魔ついでに砲撃を流したのだ。
予想外の事態に、慌てて回避行動を取る魔人族の女に、ハジメは盾の角度を調整して追いかけるように砲撃を逸らしていく。壁を破壊しながら迫る光の奔流に、壁際を必死に走る魔人族の女。その表情に余裕は一切ない。
しかし、いよいよ逸らされた砲撃が直ぐ背後まで迫り、魔人族の女が、自分の指示した攻撃に薙ぎ払われるのかと思われた直後、アブソドが蓄えた魔力が底を尽き砲撃が終ってしまった。
「チッ......」
ハジメの舌打ちに反応する余裕もなく、冷や汗を流しながらホッと安堵の息を吐く魔人族の女だったが、次の瞬間には凍りついた。
炸裂音が轟くと同時に右頬を衝撃と熱波が通り過ぎ、パッと白い何かが飛び散ったからだ。
その何かは、先程まで魔人族の女の肩に止まっていた白鴉の魔物の残骸だった。思惑通りにいかなかったハジメが、腹いせにドンナーをアブソドに、シュラークを白鴉に向けて発砲したのである。
アブソドは、音すら軽く置き去りにする超速の弾丸を避けることも耐えることも、それどころか認識することもできずに、開けっ放しだった口内から蹂躙され、意識を永遠の闇に落とした。
白鴉の方も、胴体を破裂させて一瞬で絶命し、その白い羽を血肉と共に撒き散らした。レールガンの余波を受けた魔人族の女は、衝撃にバランスを崩し尻餅を付きながら、茫然とした様子でそっと自分の頬を撫でる。そこには、白鴉の血肉がべっとりと付着しており、同時に、熱波によって酷い火傷が出来ていた。
あと、数センチずれていたら......そんな事を考えて自然と体が身震いする魔人族の女。それはつまり、今も視線の先で、強力無比をうたった魔物の軍団をまるで戯れに虫を殺すがごとく駆逐しているハジメは、いつでも魔人族の女を殺すことが出来るということだ。今この瞬間も、彼女の命は握られているということだ。
戦士たる強靭な精神をもっていると自負している魔人族の女だが、あり得べからざる化け物の存在に体の震えが止まらない。あれは何だ? なぜあんなものが存在している? どうすればあの化け物から生き残ることができる!? 魔人族の女の頭の中では、そんな思いがぐるぐると渦巻いていた。
それは、光輝達も同じ気持ちだった。彼等は、白髪眼帯の少年の正体を直ぐさまハジメとは見抜けず、正体不明の何者かが突然、自分達を散々苦しめた魔物を歯牙にもかけず駆逐しているとしかわからなかったのだ。
「何なんだ......彼は一体、何者なんだ!?」
光輝が動かない体を横たわらせながら、そんな事を呟く。今、周りにいる全員が思っていることだった。その答えをもたらしたのは、先に逃がし、けれど自らの意志で戻ってきた仲間、遠藤だった。
「はは、信じられないだろうけど......あいつは南雲だよ」
「「「「「「は?」」」」」」
遠藤の言葉に、光輝達が一斉に間の抜けた声を出す。遠藤を見て「頭大丈夫か、こいつ?」と思っているのが手に取るようにわかる。遠藤は、無理もないなぁ~と思いながらも、事実なんだから仕方ないと肩を竦めた。
「だから、南雲、南雲ハジメだよ。あの日、橋から落ちた南雲だ。迷宮の底で生き延びて、自力で這い上がってきたらしいぜ。ここに来るまでも、迷宮の魔物が完全に雑魚扱いだった。マジ有り得ねぇ! って俺も思うけど......事実だよ」
「南雲って、え? 南雲が生きていたのか!?」
光輝が驚愕の声を漏らす。そして、他の皆も一斉に、現在進行形で殲滅戦を行っている化け物じみた強さの少年を見つめ直し......やはり一斉に否定した。「どこをどう見たら南雲なんだ?」と。そんな心情もやはり、手に取るようにわかる遠藤は、「いや、本当なんだって。めっちゃ変わってるけど、ステータスプレートも見たし」と乾いた笑みを浮かべながら、彼が南雲ハジメであることを再度伝える。
皆が、信じられない思いで、ハジメの無双ぶりを茫然と眺めていると、ひどく狼狽した声で遠藤に喰ってかかる人物が現れた。
「う、うそだ。南雲は死んだんだ。そうだろ? みんな見てたじゃんか。生きてるわけない! 適当なこと言ってんじゃねぇよ!」
「うわっ、なんだよ! ステータスプレートも見たし、本人が認めてんだから間違いないだろ!」
「うそだ! 何か細工でもしたんだろ! それか、なりすまして何か企んでるんだ!」
「いや、何言ってんだよ? そんなことする意味、何にもないじゃないか」
遠藤の胸ぐらを掴んで無茶苦茶なことを言うのは檜山だ。顔を青ざめさせ尋常ではない様子でハジメの生存を否定する。周りにいる近藤達も檜山の様子に何事かと若干引いてしまっているようだ。
そんな錯乱気味の檜山に、比喩ではなくそのままの意味で冷水が浴びせかけられた。檜山の頭上に突如発生した大量の水が小規模な滝となって降り注いだのだ。呼吸のタイミングが悪かったようで若干溺れかける檜山。水浸しになりながらゲホッゲホッと咳き込む。一体何が!? と混乱する檜山に、冷水以上に冷ややかな声がかけられる。
「......大人しくして。鬱陶しいから」
その物言いに再び激高しそうになった檜山だったが、声のする方へ視線を向けた途端、思わず言葉を呑み込んだ。なぜなら、その声の主、ユエの檜山を見る眼差しが、まるで虫けらでも見るかのような余りに冷たいものだったからだ。同時に、その理想の少女を模した最高級のビスクドールの如き美貌に状況も忘れて見蕩れてしまったというのも少なからずある。
それは、光輝達も同じだったようで、突然現れた美貌の少女に男女関係なく自然と視線が吸い寄せられた。鈴などは明からさまに見蕩れて「ほわ~」と変な声を上げている。単に、美しい容姿というだけでなく、どこか妖艶な雰囲気を纏っているのも、見た目の幼さに反して光輝達を見蕩れさせている要因だろう。
と、その時、魔人族の女が指示を出したのか、魔物が数体、光輝達へ襲いかかった。メルドの時と同じく、人質にでもしようと考えたのだろう。普通に挑んでも、ハジメを攻略できる未来がまるで見えない以上、常套手段だ。
鈴が、咄嗟にシールドを発動させようとする。度重なる魔法の行使に、唯でさえ絶不調の体が悲鳴を上げる。ブラックアウトしそうな意識を唇を噛んで堪えようとするが......そんな鈴をユエの優しい手つきが制止した。頭をそっと撫でたユエに、鈴が「ほぇ?」と思わず緩んだ声を漏らして詠唱を止めてしまう。
ただ一言そう呟いたユエに、鈴は、何の根拠もないというのに「ああ、もう大丈夫なんだ」と体から力を抜いた。自分でも、なぜそうも簡単にユエの言葉を受け入れたのかは分からなかったが、まるで頼りになる姉にでも守られているような気がしたのだ。
ユエが、視線を鈴から外し、今まさにその爪牙を、触手を、メイスを振るわんとしている魔物達を睥睨する。そして、ただ一言、魔法のトリガーを引いた。
「〝蒼龍〟」
その瞬間、ユエ達の頭上に直径一メートル程の青白い球体が発生した。それは、炎系の魔法を扱うものなら知っている最上級魔法の一つ、あらゆる物を焼滅させる蒼炎の魔法〝蒼天〟だ。それを詠唱もせずにノータイムで発動など尋常ではない。特に、後衛組は、何が起こったのか分からず呆然と頭上の蒼く燃え盛る太陽を仰ぎ見た。
しかし、彼等が本当に驚くべきはここからだった。なぜなら、燦然と燃え盛る蒼炎が突如うねりながら形を蛇のように変えて、今まさにメイスを振り降ろそうとしていたブルタールモドキ達に襲いかかるとそのまま呑み込み、一瞬で灰も残さず滅殺したからだ。
宙を泳ぐように形を変えていく蒼炎は、やがてその姿を明確にしていく。それは蒼く燃え盛る龍だ。全長三十メートル程の蒼龍はユエを中心に光輝達を守るようにとぐろを巻くと鎌首をもたげた。そして、全てを滅する蒼き灼滅の業火に阻まれて接近すら出来ずに立ち往生していた魔物達に向かって、その顎門をガバッっと開く。
ゴァアアアアア!!!
爆ぜる咆哮が轟く。と、その直後、たじろぐ魔物達の体が突如重力を感じさせず宙に浮いたかと思うと、次々に蒼龍の顎門へと向けて飛び込んでいった。突然の事態にパニックになりながらも必死に空中でもがき逃げようとする様子から自殺ではないとわかるが、一直線に飛び込んで灰すら残さず焼滅していく姿は身投げのようで、タチの悪い冗談にしか見えない。
「なに、この魔法......」
それは誰の呟きか。周囲の魔物を余さず引き寄せ勝手に焼滅させていく知識にない魔法に、もう光輝達は空いた口が塞がらない。それも仕方のないことだ。なにせ、この魔法は、〝雷龍〟と同じく、炎系最上級魔法〝蒼天〟と神代魔法の一つ重力魔法の複合魔法でユエのオリジナルなのだから。
ちなみに、なぜ〝雷龍〟ではなく〝蒼龍〟なのかというと、単にユエの鍛錬を兼ねているからという理由だったりする。雷龍は、風系の上級である雷系と重力魔法の複合なので、難易度や単純な威力では〝蒼龍〟の方が上なのだ。最近、ようやく最上級の複合も出来るようになってきたのでお披露目してみたのである。
当然、そんな事情を知らない光輝達は、術者であるユエに説明を求めようと〝蒼龍〟から視線を戻した。しかし、背筋を伸ばして悠然と佇み蒼き龍の炎に照らされる、いっそ神々しくすら見えるユエの姿に息を呑み、説明を求める言葉を発することが出来なかった。そんなユエに早くも心奪われている者が数人......特に鈴の中の小さなおっさんが歓喜の声を上げているようだ。
一方、魔人族の女は、遠くから〝蒼龍〟 の異様を目にして、内心「化け物ばっかりか!」と悪態をついていた。そして、次々と駆逐されていく魔物達に焦燥感をあらわにして、先程致命傷を負わせたメルドの傍らにいる兎人族の少女と離れたところで寄り添っている二人の少女に狙いを変更することにした。
しかし、魔人族の女は、これより更なる理不尽に晒されることになる。
シアに襲いかかったブルタールモドキは、振り向きざまのドリュッケンの一撃で頭部をピンボールのように吹き飛ばされ、逆方向から襲いかかった四つ目狼も最初の一撃を放った勢いのまま体を独楽のように回転させた、遠心力のたっぷり乗った一撃を頭部に受けて頭蓋を粉砕されあっさり絶命した。
また、香織と雫を狙ってキメラや黒猫が襲いかかった。殺意を撒き散らしながら迫り来る魔物に歯噛みしながら半ばから折れた剣を構えようとする雫だったが、それを制止するように、周囲で浮遊していたクロスビットがスっと雫とキメラの間に入る。
自分を守るように動いた謎の十字架に雫が若干動揺していると、突然、十字架が長い方の先端をキメラに向けて轟音を響かせた。雫が「ホントに何なの!?」と内心絶叫していると、その頬を掠めるように何かがくるくると飛び、カランカランという金属音を響かせて地面に落ちた。香織の側でも同じく轟音が響き、やはり同じように金属音が響く。
香織と雫が、混乱しつつも、とにかく迫り来る魔物に注意を戻すと、そこには頭部を爆砕させた魔物達の姿が......唖然としつつ、先程の金属音の元に視線を転じてその正体を確かめる。
「これって......薬莢?」
「薬莢って......銃の?」
香織と雫が、馴染みのない知識を引っ張り出し顔を見合わせる。そして、ハジメが両手に銃をもって大暴れしている姿を見やって確信する。自分達を守るように浮遊する十字架は、どこぞのオールレンジ兵器なのだと。
「す、すごい......ハジメくんってファ○ネル使いだったんだ」
「彼、いつの間にニュー○イプになったのよ......」
周囲の魔物が一瞬で駆逐されたことで多少の余裕を取り戻した香織と雫が、二人には似つかわしくないツッコミを入れる、実はそれがクロスビットを通してハジメに伝わっており、なぜ二人がそのネタを知っているのかと逆にハジメの方がツッコミを入れていたりするのだが、ユエ達で鍛えられたスルースキルで、ハジメは気にしないことした。
「ホントに......なんなのさ」
力なく、そんなことを呟いたのは魔人族の女だ。何をしようとも全てを力でねじ伏せられ粉砕される。そんな理不尽に、諦観の念が胸中を侵食していく。もはや、魔物の数もほとんど残っておらず、誰の目から見ても勝敗は明らかだ。
魔人族の女は、最後の望み! と逃走のために温存しておいた魔法をハジメに向かって放ち、全力で四つある出口の一つに向かって走った。ハジメのいる場所に放たれたのは〝落牢〟だ。それが、ハジメの直ぐ傍で破裂し、石化の煙がハジメを包み込んだ。光輝達が息を飲み、香織と雫が悲鳴じみた声でハジメの名を呼ぶ。
動揺する光輝達を尻目に、魔人族の女は、遂に出口の一つにたどり着いた。
しかし......
「はは......既に詰みだったわけだ」
「その通り」
魔人族の女の目の前、通路の奥に十字架が浮遊しておりその暗い銃口を標的へと向けていた。乾いた笑いと共に、ずっと前、きっとハジメに攻撃を仕掛けてしまった時から既にチェックメイトをかけられていたことに今更ながらに気がつき、思わず乾いた笑い声を上げる魔人族の女。そんな彼女に背後から憎たらしいほど平静な声がかかる。
魔人族の女が、今度こそ瞳に諦めを宿して振り返ると、石化の煙の中から何事もなかったように歩み寄ってくるハジメの姿が見えた。そして、拡散しようとする石化の煙を紅い波動〝魔力放射〟で別の通路へと押し流す。
「......この化け物め。上級魔法が意味をなさないなんて、あんた、本当に人間?」
「実は、自分でも結構疑わしいんだ。だが、化け物というのも存外悪くないもんだぞ?」
そんな軽口を叩きながら少し距離を置いて向かい合うハジメと魔人族の女。チラリと魔人族の女が部屋の中を見渡せば、いつの間にか本当に魔物が全滅しており、改めて、小さく「化け物め」と罵った。
ハジメは、それを無視してドンナーの銃口をスっと魔人族の女に照準する。眼前に突きつけられた死に対して、魔人族の女は死期を悟ったような澄んだ眼差しを向けた。
「さて、普通はこういう時、何か言い遺すことは? と聞くんだろうが......生憎、お前の遺言なんぞ聞く気はない。それより、魔人族がこんな場所で何をしていたのか......それと、あの魔物を何処で手に入れたのか......吐いてもらおうか?」
「あたしが話すと思うのかい? 人間族の有利になるかもしれないのに? バカにされたもんだね」
嘲笑するように鼻を鳴らした魔人族の女に、ハジメは冷めた眼差しを返した。そして、何の躊躇いもなくドンナーを発砲し魔人族の女の両足を撃ち抜いた。
「あがぁあ!!」
悲鳴を上げて崩れ落ちる魔人族の女。魔物が息絶え静寂が戻った部屋に悲鳴が響き渡る。情け容赦ないハジメの行為に、背後でクラスメイト達が息を呑むのがわかった。しかし、ハジメはそんな事は微塵も気にせず、ドンナーを魔人族の女に向けながら再度話しかけた。
「人間族だの魔人族だの、お前等の世界の事情なんざ知ったことか。俺は人間族として聞いているんじゃない。俺が知りたいから聞いているんだ。さっさと答えろ」
「......」
痛みに歯を食いしばりながらも、ハジメを睨みつける魔人族の女。その瞳を見て、話すことはないだろうと悟ったハジメは、勝手に推測を話し始めた。
「ま、大体の予想はつく。ここに来たのは、〝本当の大迷宮〟を攻略するためだろ?」
魔人族の女が、ハジメの言葉に眉をピクリと動かした。その様子をつぶさに観察しながらハジメが言葉を続ける。
「あの魔物達は、神代魔法の産物......図星みたいだな。なるほど、魔人族側の変化は大迷宮攻略によって魔物の使役に関する神代魔法を手に入れたからか......とすると、魔人族側は勇者達の調査・勧誘と並行して大迷宮攻略に動いているわけか......」
「どうして......まさか......」
ハジメが口にした推測の尽くが図星だったようで、悔しそうに表情を歪める魔人族の女は、どうしてそこまで分かるのかと疑問を抱き、そして一つの可能性に思い至る。その表情を見て、ハジメは、魔人族の女が、ハジメもまた大迷宮の攻略者であると推測した事に気がつき、視線で「正解」と伝えてやった。
「なるほどね。あの方と同じなら......化け物じみた強さも頷ける......もう、いいだろ? ひと思いに殺りなよ。あたしは、捕虜になるつもりはないからね......」
「あの方......ね。魔物は攻略者からの賜り物ってわけか......」
捕虜にされるくらいならば、どんな手を使っても自殺してやると魔人族の女の表情が物語っていた。そして、だからこそ、出来ることなら戦いの果てに死にたいとも。ハジメとしては神代魔法と攻略者が別にいるという情報を聞けただけで十分だったので、もう用済みだとその瞳に殺意を宿した。
魔人族の女は、道半ばで逝くことの腹いせに、負け惜しみと分かりながらハジメに言葉をぶつけた。
「いつか、あたしの恋人があんたを殺すよ」
その言葉に、ハジメは口元を歪めて不敵な笑みを浮かべる。
「敵だと言うなら神だって殺す。その神に踊らされてる程度の奴じゃあ、俺には届かない」
互いにもう話すことはないと口を閉じ、ハジメは、ドンナーの銃口を魔人族の女の頭部に向けた。
しかし、いざ引き金を引くという瞬間、大声で制止がかかる。
「待て! 待つんだ、南雲! 彼女はもう戦えないんだぞ! 殺す必要はないだろ!」
「......」
ハジメは、ドンナーの引き金に指をかけたまま、「何言ってんだ、アイツ?」と訝しそうな表情をして肩越しに振り返った。光輝は、フラフラしながらも少し回復したようで何とか立ち上がると、更に声を張り上げた。
「捕虜に、そうだ、捕虜にすればいい。無抵抗の人を殺すなんて、絶対ダメだ。俺は勇者だ。南雲も仲間なんだから、ここは俺に免じて引いてくれ」
余りにツッコミどころ満載の言い分に、ハジメは聞く価値すらないと即行で切って捨てた。そして、無言のまま......引き金を引いた。
乾いた破裂音が室内に木霊する。解き放たれた殺意は、狙い違わず魔人族の女の額を撃ち抜き、彼女を一瞬で絶命させた。
静寂が辺りを包む。クラスメイト達は、今更だと頭では分かっていても同じクラスメイトが目の前で躊躇いなく人を殺した光景に息を呑み戸惑ったようにただ佇む。そんな彼等の中でも一番ショックを受けていたのは香織のようだった。
人を殺したことにではない。それは、香織自身覚悟していたことだ。この世界で、戦いに身を投じるというのはそういうことなのだ。迷宮で魔物を相手にしていたのは、あくまで実戦
だから、殺し合いになった時、敵対した人を殺さなければならない日は必ず来ると覚悟していた。自分が後衛職で治癒師である以上、直接手にかけるのは雫や光輝達だと思っていたから、その時は、手を血で汚した友人達を例え僅かでも、一瞬であっても忌避したりしないようにと心に決めていた。
香織がショックを受けたのは、ハジメに、人殺しに対する忌避感や嫌悪感、躊躇いというものが一切なかったからである。息をするように自然に人を殺した。香織の知るハジメは、弱く抵抗する手段がなくとも、他人の為に渦中へ飛び込めるような優しく強い人だった。
その〝強さ〟とは、決して暴力的な強さをいうのではない。どんな時でも、どんな状況でも〝他人を思いやれる〟という強さだ。だから、無抵抗で戦意を喪失している相手を何の躊躇いも感慨もなく殺せることが、自分の知るハジメと余りに異なり衝撃だったのだ。
雫は、親友だからこそ、香織が強いショックを受けていることが手に取るようにわかった。そして、日本にいるとき、普段から散々聞かされてきたハジメの話から、香織が何にショックを受けているのかも察していた。
雫は、涼しい顔をしているハジメを見て、確かに変わりすぎだと思ったが、何も知らない自分がそんな文句を言うのはお門違いもいいところだということもわかっていた。なので、結局、何をすることも出来ず、ただ香織に寄り添うだけに止めた。
だが、当然、正義感の塊たる勇者の方は黙っているはずがなく、静寂の満ちる空間に押し殺したような光輝の声が響いた。
「なぜ、なぜ殺したんだ。殺す必要があったのか......」
ハジメは、シアの方へ歩みを進めながら、自分を鋭い眼光で睨みつける光輝を視界の端に捉え、一瞬、どう答えようかと迷ったが、次の瞬間には、そもそも答える必要ないな! と考え、さらりと無視することにした。
もっとも、そんなハジメの態度を相手が許容するかは別問題である...... | “Eh? Hajime-kun? Wait, Nagumo-kun? Eh? What? What do you mean?”
Kaori’s ecstatic shout made Shizuku, who was by her side, confused and looked alternately between Kaori and Hajime. Apparently, Kaori was able to see through the white haired, eye-patched, black-coated person before her as Hajime with just a single glance, but Shizuku was still unable to recognize him.
However, when she saw the boy’s face who was looking back over his shoulder with a wry smile, it immediately overlapped with Nagumo Hajime in her memory, and Shizuku, with widened eyes, raised a surprised voice.
“Eh? Eh? Really? Is he really Nagumo-kun? Eh? What? What’s really happening here?”
“Well, just calm down, Yaegashi. Aren’t calm, cool, and collected your main selling point?”
The chain of events happened after she, Shizuku, just like Kaori, was prepared to die which made her perplexed and she forgot her pain. Admonishing her as he said Shizuku’s name, Hajime suddenly looked overhead, feeling their presences. Thus, the falling blond-haired girl, Yue, was caught by him in princess carry style and he carefully let her down, next he received the rabbit-eared girl, Shia, who jumped down the same way.
The last to jump down was a boy dressed in black, Endou Kousuke.
“Na-Nagumoo! You-! I was blown away by that! Wait, what was that just now!? It suddenly pierced the dungeon’s floors...”
Endou looked at the surrounding, started complaining. Then, he saw his best friends and the others together with a group of demonic beasts. After noticing that he was being watched by his stiffened classmates, “Nuoh!,” and released a strange shout. To Endou, they voices were half-filled with joy because of their reunion, and anger because he came back.
“”Kousuke!””
“Jyuugo! Kentarou! I’ve come with help!”
Reacting to “I’ve come with help,” Kouki’s party and the demon race woman finally returned to their sense. Then, they once again stared at Hajime and the two girls. However, not minding the gazes of those in his surroundings, Hajime quickly ordered Yue and Shia with a slightly irritated expression.
“Yue, sorry but please protect those people gathered there. Shia, please look at the condition of the fallen man in Knight’s armor there.”
“Nn... leave it to me.”
Yue calmly walked without caring about the surrounding demonic beasts, while Shia used her marvelous jumping power to jump overhead the group of demonic beasts and landed beside the collapsed Meld.
“Ha-Hajime-kun...”
Kaori once again called Hajime’s name with a shaking voice. Her tone was probably filled with joy due to the reunion, yet there was also sorrow. It was because she thought Hajime had came here to die. Although Kaori didn’t know the details, her expression was telling him to immediately get away from the place.
Shrugging his shoulders, he returned Kaori’s gaze. Hajime briefly said, “It’s okay now, so just wait there.” After saying that, he activated “Light Speed” which greatly improved his perception. Then, he took out three Cross Bits from “Treasure Box” which surrounded Kaori and Shizuku like shields.
The floating cross-like objects that suddenly appeared from empty space surprised Kaori and Shizuku. With his back before the two, Hajime made a proposal towards the demon race woman whose appearance could be seen as nothing but arrogance. It was his mercy since the demon race woman was still not his enemy.
“The red-haired woman over there. I won’t do anything if you leave immediately. Just disappeared quickly from here if you don’t want to die.”
“...What did you say?”
It was not a remark that could be said by an ordinary human while being surrounded by demonic beasts. It was the reason why the demon race woman inadvertently asked back. As a response, Hajime repeated himself with an amazed expression.
“Prompt decisions are needed in battlefields. That’s why I said, just disappear from here quickly if you don’t want to die. Understand now?”
Knowing she did not hear it wrong, the demon race woman erased her expression and ordered the demonic beasts while pointing at Hajime, “Kill him.”
This time, the too abrupt situation—— especially the dead of her treasured Ahatd due to an unknown attack made the demon race woman lose her calm and make a fatal mistake.
Even if Hajime had his own objection, the woman was too enraged by Hajime who by the course of events treaded on Ahatd, a demonic beast she didn’t want to lose since it was given to her by her revered superior. In addition, there was the confusion due to the unbelievable situation where the dungeon’s ceiling had been destroyed just because he wanted to go downstairs. In any case, she would have been able to make a more careful judgement if it was the usual her. However, the glove had been thrown out.
“I see... So, I take it that you’re an “enemy”, right?”
Hajime muttered at the same time the Chimera attacked him. Behind Hajime, “Hajime-kun!” and “Nagumo-kun!” warning voices filled with urgency could be heard. However, Hajime casually clawed the Chimera attacking from his left with his artificial arm and lifted it without any difficulty.
The Chimera was surprised and struggled to escape which made the space blurred intensely. Looking at it, Hajime looked at it with scorn.
“Oi, oi, what is this? This half-assed peculiar magic. Are you a street performer?”
Because there’s no meaning if one’s presence and figure disappears when spaces blurs when it moves. Hajime inadvertently retorted. Even in the abyss, there were demonic beasts that could conceal their presences and figuring out what each of them has was extremely troublesome. Comparing it to them, Hajime thought it was too childish that the concealment exposed when it moved.
Standing still while he raised a Chimera with huge body weighing several hundreds kilograms as it struggling mid air, Hajime made the demon race woman, Kaori, and the others dumbfounded.
Hajime leered at them and used “Great Arm” to throw the Chimera on the ground as though he had lost his interest in it.
With a raw sound ringing out, the Chimera had its head crushed and made a crater on the ground. Next, having drawn out Donner, Hajime turned the railgun towards the space that seemed to be empty at a glance and fired it in succession.
BAAANG BAAAAANNNG!!
Dry, explosive sounds rang out and two flashes cut through the air, mercilessly piercing respective targets. The space blurred for a moment, then a Chimera with a blasted head and a Brutal-look-alike whose heart had been shot through appeared. They stood still for a second, swayed, and crumbled to ground.
Not moving but could not conceal the wind flow, the shaking of the air and ground, their gazes, killing intent, flow of magic, and temperature made them nothing but unmoving targets for Hajime.
Without even looking at the demonic beasts he instantly killed, Hajime took a step forward into the battlefield, no, the execution ground. What started could not even be called deathmatch. It was a one-sided execution by the monster who shouldn’t be made into an enemy.
The demon race woman was shocked seeing the demonic beasts were killed casually and easily while the classmates stood still feeling the chill from the weapon that shouldn’t exist in this world. Leaving aside those stiffened people, the demonic beasts were attacking Hajime one after another, faithfully executing the demon race woman’s order.
A black cat creeped behind him and fired its tentacles, but Hajime didn’t turn around and only turned the wrist of his lowered arm where Donner was and fired behind. The bullet exceeding the speed of sound easily gouged through the black cat’s forehead.
Without stopping to look at their companion, four-eyed wolves rushed towards him from left and right at the same time. However, Schlag, unknown as to when it was drawn, blew the enemy on his left while Donner blown off the one on the right.
At that moment, the black cats hidden behind the annihilated four-eyed wolves shot their tentacles in cooperation with the Chimeras that were approaching Hajime’s back. However, Hajime had jumped several meters above, flipped mid-air, and while hanging upside down, the floating black cats and the two Chimera, who lost sight of their target, became preys for the railgun.
Within the scattered flesh and blood that looked like flower storm, two Brutal-look-alikes came and swung their maces, aiming for the moment Hajime landed. However, such an easily predicted future wouldn’t work on a monster such as Hajime, and he jumped further using “Aerodynamic” mid-air. He then fired Donner-Schlag to his left and right in succession while spinning like a top.
The released wind of killing intent not only moved towards the two Brutal-look-alikes that were waiting for him, but it also pierced and burst to pieces the heads of the Chimeras and four-eyed wolves that were approaching from behind. While each of the demonic beasts sprayed and scattered blood, Hajime descend as though to follow the law of inertia and dulled the momentum right before he landed.
Landing soundlessly in the center of the corpses and a ground dyed with blood, Hajime took out ammo from an empty space and use gunspin to reload them.
And at that time, “KuWAaAA!,” a strange sound rang out all of a sudden. Hajime turned toward the source and there was the six-legged turtle-like demonic beasts, Absod, whose wide opened mouth was turned towards Hajime. Inside its mouth was a compression of tremendous power shining a pure white light.
It was the previously stored huge magic power from Commander Meld’s “Last Loyalty.” The “Last Loyalty”‘s range was only few meters but its power was more than enough to decimate a person.
The magic power was compressed to the limit and in the next moment it was launched like a laser towards its target, Hajime. The death light approached as it gouged out the ground on its track. However, Hajime calmly took out a large, coffin-like shield from an empty space, equipped it on his left arm, and activated “Vajra” the same time he held up the shield. Just like a huge tree whose roots were firmly rooted on the ground, there was no impatience in Hajime’s eyes which showed his firm will.
A tremendous roar resounded the moment the laser-like magic power hit, and the trembling air expressed how strong it was. However, Hajime, who received the direct hit, didn’t even move a step away, but rather, he sported a mischievous smile, and began to slant the shield to parry the attack. The destination of where the attack was averted to was...
“Kh!? Damn it!”
It was the demon race woman. Since the time Hajime began to easily kill the demonic beasts, she sensed the crisis and began to chant powerful magic with an exaggerated chant, but Hajime noticed it and redirect Absod’s attack towards the demon race woman to obstruct her.
The unexpected situation made the demon race woman take an evasive action in a panic, but Hajime only adjusted the angle of his shield for the attack to reach her. The torrent of light approached her and destroyed the wall, made the demon race woman frantically ran on the side of the wall. Her expression was one where there was not the slightest hint of composure remained.
However, the attack gradually drew near her back, and when she thought she would be mowed down by the attack she had ordered to be released, the magic power stored by Absod had reached the bottom and the attack ended.
“Tch...”
Without any room to react to Hajime who clicked his tongue, the demon race woman breathed a sigh of relief only to be frozen in the next moment.
An explosive sound roared along with the feeling of heat passing right beside her right cheek, and something white splattered.
That something was the remains of the white crow which was previously stood on the demon race woman’s shoulder. Although things had not been going the way he expected, Hajime countered by firing Donner aiming at Absod while Schlag was aimed at the white crow.
Even if Absod tried to evade only to endure the bullet so even with its tremendous velocity, it would only leave a small sound, but it could not even sense the bullet which ended up piercing through its opened mouth and its consciousness fell into darkness for eternity.
Even the white crow had its body burst open and had died in an instant, scattering white feathers along with its flesh and blood. Receiving the after effect of the railgun, the demon race woman lost her balance, fell on her butt, and absentmindedly patted her own cheek. What stuck there were the white crow’s flesh and blood, and at the same time she felt the heat from the severe burn.
If it shifted just by a few centimeters... The demon race woman was trembling when she thought of what might have happened. In other words, Hajime whose matchless strength allowed him to playfully kill the army of demonic beasts as though he was killing bugs before her eyes, and could have also killed her at any time. Even now, her life was in the palm of his hands.
The demon race woman had a strong pride as a warrior, but she could not stop her trembling body before the monster-like existence. What was that? Why did such a thing exist? How can I survive from that monster!? Such thoughts filled the demon race woman’s mind, and it continued to circle round and round inside her.
Kouki and the others felt the same as her. They could not immediately see through the white haired, eyepatched boy as Hajime. They could not understand who was the unknown person who easily annihilated the demonic beasts that had put them into such predicament.
“What was that...? Just who in this world is he!?”
Kouki muttered while his unmoving body was laid on the ground. Everyone around him also had the same questions forming in their minds. The one who answered was the person they asked to retreat only to return here by his own will, Endou.
“Haha, I know it is unbelievable... but he is Nagumo.”
“”””””Hah?””””””
Endou’s words made Kouki and the others leaked those words at the same time. Seeing Endou, they though, “Is this guy’s head okay?,” and made some gesture with their hands. Thinking, it can’t be helped, huh~, Endou could only shrugged his shoulders because he was only stating the truth.
“Like I said, he is Nagumo, Nagumo Hajime. The Nagumo who fell from the bridge at that day. He survived in the depth of the dungeon and climbed up with his own power. When coming here, he treated the demonic beasts as if they are just small fries. It’s seriously unbelievable!, I thought so, too... but it is the truth.”
“Nagumo, eh? You mean Nagumo is alive!?”
Kouki said with a surprised voice. Thus, the others also simultaneously tried to look at the boy with monstrous strength who was advancing the annihilation progress... but as expected they tried to deny it while thinking, “Just how is he Nagumo?” Endou understood their feelings and with a gesture he said, “Well, it’s true. Although he has completely changed, I’ve seen his status plate,” Endou told them again that the boy was Nagumo Hajime while sporting a dry smile.
Everyone felt it was unbelievable as they vacantly looked at Hajime’s peerlessness, and a person who was awfully flustered said,
“L-Lies. Nagumo is dead. Wasn’t that the case? Everyone also saw it. There’s no way he is alive! We have already agreed on that!”
“Uwah, what’s with you! I have seen his status plate so there’s no mistake it is him.”
“Lies! There’s must be some trick! He must be in disguise and trying to trick us!”
“No, just what are you saying? There’s no reason for him to do that.”
The one who was saying unreasonable things and grabbed Endou’s collar was Hiyama. He was denying Hajime’s survival with an abnormally paled complexion. Kondou and the others around him were somewhat taken aback by Hiyama’s appearance.
The agitated Hiyama was doused by cold water, literally. A large amount of water suddenly appeared above Hiyama and poured down on him like a small waterfall. Hiyama somewhat drowned because it matched the timing when he inhaled. After being doused with water, he had a coughing fit. What on earth!? Hiyama was confused only to be told by a cold voice far colder than the cold water.
“... Be quiet. It’s irritating.”
Although Hiyama seemed to getting more agitated and tried to object, he instinctively swallowed his words when he turned his gaze towards the source of the voice. After all, the source of the voice, Yue, was looking at Hiyama with a very cold gaze as though she was looking at an insect. At the same time, not only a few would forget their situation after they were captivated by the ideal girl whose beauty was just like the highest grade bisque doll.
Same could be said for Kouki’s party. Their gazes were naturally attracted to the beautiful looking girl whether they were female or male. Even Suzu was obviously captivated and said, “Whooaa~,” with a strange voice. It wasn’t simply because of her beauty, she was also cladded in a bewitching atmosphere contrary to her young appearance which made Kouki’s party captivated.
And at that time, maybe because of the demon race woman’s instruction, several demonic beasts came to attack Kouki’s party. She probably thought of turning them into hostages just like how she had used Meld. It was a normal measure since she couldn’t even imagine of capturing Hajime with a fair challenge.
Suzu immediately thought of creating shields. Having activated magic one after another, her exhausted body was screaming. She bit her lips to prevent herself from blacking out... but Yue gently stopped Suzu with her hand. Having Yue quietly patting her head, “Ehh?,” Suzu inadvertently said with a relaxed voice and stopped her chant.
Yue muttered, and Suzu said, “Ah, it’s already safe now,” without any basis for it nor any power left her body. Even she herself didn’t know why she could simply accepted Yue’s words, but she felt she was being defended by a reliable big sister.
Yue looked away from Suzu and glared at the demonic beasts that readied their fangs, claws, tentacles, and maces. Then, with one sentence she pulled her magic’s trigger.
“”Blue Dragon.””
In the next moment, a bluish-white sphere with one meter in diameter appeared above Yue and the others. Those who used flame attribute magic knew it was one of the highest level magic, a blue flame magic capable of decimating anything it approached, “Blue Imperial.” It was abnormal to be able to activate it without any chant and in no time. Especially the rear group; they knew what happened and could only looked up at the blue blaze in blank surprise.
However, this was just the start of what would make them truly surprised. The blue flame burning radiantly suddenly changed its shape to one of a snake, attacked the incoming maces swinging Brutal-look-alikes and the others by swallowing them. They were instantly killed, and not even an ash remained.
Before long, the shape of the blue flame changed and swam in the air. It was a blazing blue dragon, with length of around meters. With Yue in the center, the blue dragon protected Kouki and the others by coiling around them. Then, it raised its head, and opened its jaws towards the demonic beasts which were standing still because they could not approach the the blue hellfire that would perish everything.
RoOoOAAAAR!!!
It roared. And immediately, the bodies of the demonic beasts flew. As though they were attracted by gravity, they jumped into the blue dragon’s mouth one after another. Although the others understood it was not suicide since the demonic beasts desperately tried to escape in mid-air in panic due to the abrupt situation. Seeing the demonic beast throwing their bodies in queue towards the annihilation that didn’t even leave an ash, made them think it as nothing but a bad joke.
“What is this magic...”
Someone muttered. The unknown magic had one-sidedly burnt the demonic beasts to annihilation by pulling them, which made Kouki’s party unable to close their wide opened mouths. But it couldn’t be helped. After all, this magic was the same as “Thunder Dragon,” an original magic of Yue’s, formed by combining the highest fire magic element, “Blue Imperial,” and one of the Age of Gods’ magic, gravity magic.
Incidentally, the reason she used “Blue Dragon” and not “Thunder Dragon” was simply because Yue was training herself. Thunder Dragon was a combination between gravity magic and high-ranked wind attribute, thunder, so “Blue Dragon” had higher difficulty and power. Because she was just recently capable of combining highest level magic, she wanted to make its debut.
Naturally, Kouki’s party who didn’t know of the circumstances shifted their gazes from the “Blue Dragon” to Yue, about to ask for an explanation. However, calmly straightening its back, the Blue Dragon stopped and its flame shone brighter. Together with Yue’s sublime figure, it made Kouki’s party hold their breath, and they were unable to say the words to ask for an explanation. Several people quickly had their hearts stolen by Yue... especially Suzu; she was letting out an exclamation of joy like a small old man.
On the other side, when the demon race woman saw the bizarre “Blue Dragon” from the distance, she cursed in her mind, “There’s only monsters here, huh!” Frustrated due to the demonic beasts being exterminated one after another, she changed her aim to the RabbitMan girl beside the mortally wounded Meld, and the two girls close to each other who were separated from the others.
However, the demon race woman was further exposed to the arbitrary.
The Brutal-look-alike which came to attack Shia had its head blown away like a pinball with a swing from Doryukken. She then rotated her body using the momentum from her first attack towards the four-eyed wolf coming advancing from behind her and it died easily with its head crushed by an attack carrying enough centrifugal force.
Once again, Chimeras and black cats were about to attack Kaori and Shizuku. Shizuku gritted her teeth, and readied her broken sword towards the incoming; the scattered demonic beasts filled with killing intent. However, as if to stop them, the cross bits floating in her surrounding came in between Shizuku and the Chimeras.
Shizuku was somewhat shaken by the mysterious crosses were moving as though to protect her. Suddenly, the longer point of the crosses turned towards the Chimera and a roaring sounds rang out. “Seriously, what are those!?” Shizuku was shouting inside her mind, when something spinningly flew almost grazing her cheek and fell to the ground with a metallic sound. The same roaring sound rang out beside Kaori, and the same sound of metal resounded, too, as expected.
Although confused, Kaori and Shizuku returned their attentions towards the incoming demonic beasts, and there were only the figures of demonic beasts with heads blown to pieces... They were speechless and turned their gazes towards the source of the metallic sounds and confirmed its identity.
“Isn’t that... cartridge?”
“Cartridge... a gun’s?”
Kaori and Shizuku faced each other as they said the unfamiliar term out loud. They were convinced once they saw Hajime’s figure rampaging with guns in both hand. The crosses floating to defend them were similar to an all-range weapon from somewhere.
“A-Amazing... Hajime-kun can use Funnel.”
“Just, since when did he become a NewType...”
Kaori and Shizuku regained a lot of their composure after the surrounding demonic beasts were instantly exterminated. They let out unbecoming retorts which were actually transmitted to Hajime through the Cross Bits. And on the contrary, Hajime wanted to retort back in regards to how the two knew such references. However, Hajime did not worry about it thanks to the skill he honed by being in the company of Yue and the girls, “Let it be”.
“Seriously... what’s with this.”
The demon race woman muttered powerlessly. No matter what she tried, everything was held down and crushed by sheer power. Such irrational things allowed her mind to be invaded by feeling of throwing in the towel. There were hardly any demonic beasts remaining, and it was obvious to anyone who was the victor and loser.
My last hope! The demon race woman fired magic towards Hajime for the sake of escaping and ran towards one of the four exits with all of her might. The magic fired towards Hajime was “Final Prison.” It exploded right beside Hajime, and the petrifying smoke wrapped around him. Kouki’s party held their breaths while Kaori and Shizuku screamed Hajime’s name.
Leering at the shaken Kouki’s party, the demon race woman finally reached one of the exits.
However...
“Haha... I’ve been checkmated, huh.”
“It is certainly as you say.”
Before the demon race woman was the floating cross with its dark muzzle pointed at her from inside the passage. With a dry laughter, only now did she realize she had been checkmated long since before she attacked Hajime, and the demon race woman inadvertently leaked a dry laughter. The hateful calm voice came from behind.
This time, the demon race woman looked back in resignation and she saw Hajime walking closer from inside the petrifying smoke as if nothing happened. Next, he scattered the petrifying smoke to the other passage by sweeping it away using the red wave of “Magic Emission.”
“... You monster. To take a high-ranked magic as something insignificant... You, are you really human?”
“Actually, even I’ve doubting that. But, it isn’t so bad to become a monster, you know?”
Hajime and the demon race woman said in a joking manner with only a slight distance between them. When the demon race woman took a look at the room, the demonic beasts had truly been annihilated before she was aware of it. Once again she cursed in a small voice, “You monster.”
Ignoring her, Hajime aimed Donner’s muzzle towards the woman. The weapon of death pointed right before her eyes made the demon race woman realize it was time for her to die, and she looked back.
“Well then, “Do you have anything left to say?” Is what is usually said in these kinds of situation... Unfortunately, I don’t have any interest in hearing your last will. More importantly, about why a person of the demon race had come here... and where you obtained those demonic beasts... Shall I have you spit it out?”
“Do you think I will speak? It might become an advantage for human race, right? As if I am that stupid.”
The demon race woman snorted scornfully, which made Hajime look at her with cold gaze. Thus, without hesitation, he fired Donner to both of the demon race woman’s legs.
“AgaaAH!!”
The demon race woman screamed and collapsed. The scream resounded inside the silent room where the demonic beasts had ceased to breathe. Hajime knew the classmates behind him were gulping because of his merciless action. However, not worrying about such things, Hajime asked again with Donner aimed at the woman.
“Whether it’s human race or demon race, I don’t care about your world’s circumstance. I am asking you not as someone from human race. I am only asking because I want to know it. So, answer it now.”
“...”
The demon race woman was glaring at Hajime while gritting her teeth from the pain. Seeing her eyes, Hajime realized she was not likely to speak, so he began to speak instead.
“Well, I have roughly guessed it. You came here to conquer the “True Great Dungeon,” right?”
The demon race woman’s brows twitched from Hajime’s words. Hajime continued speaking while carefully observing the woman’s reaction.
“Those demonic beasts were the product of an Age of Gods magic... looks like I hit the bull’s eye. I see, so the change in demon race side was because they conquered a Great Dungeon and obtained the Age of Gods magic which could enslave demonic beasts, huh... Resultantly, the human race side moved to conquer the Great Dungeon by investigating and then inviting the heroes...”
“How... it can’t be...”
Hajime had stated his theories which was right on the mark, and it rattled the demon race woman. With the mortified expression, she questioned how he knew when a possibility came to mind. Seeing her expression, Hajime noticed the demon race woman had guessed Hajime was also another dungeon conqueror. With his glance, he responded, “Correct.”
“I see, if you are the same as that person... then I can understand your monster-like power... Ah, isn’t that enough? Just kill me. After all, I have no intention of being a captive...”
“As that person... right. You must be referring to the conqueror whom you received the demonic beasts from, huh...”
The expression of the demon race woman’s face told him she would rather commit suicide rather than to be taken as a captive. Thus, she wanted to at least die in battle. The information about another dungeon conqueror was enough for Hajime, so with thoughts of ending it, killing intent appeared in his eyes.
As revenge for dying in the middle of her path, and unwillingness to admit defeat, the demon race woman muttered towards Hajime.
“Someday, my lover will kill you.”
Her words made Hajime’s lips curved and floated a fearless smile.
“I will kill my enemy, even if it is God. And if that person is someone who dances inside the palm of God’s, then he wouldn’t be able to reach me.”
There’s nothing left to talk about, so the two closed their mouths. Hajime turned Donner’s muzzle towards the demon race woman’s head.
However, the moment he was about to pull the trigger, a loud voice stopped him.
“Wait! Just wait, Nagumo! She can no longer fight! So, it’s not necessary to kill her!”
“...”
With his finger still on Donner’s trigger, “What is this guy saying?,” Hajime looked over his shoulder with a dubious expression. Kouki managed to unsteadily stand up after he had slightly recovered and further raised his voice.
“Capture, right, just make her a captive. It’s absolutely unforgivable to kill someone who cannot resist. I am the hero. And Nagumo is my comrade, so please back away in consideration of me.”
Excuses that rendered too much retort was something Hajime thought there was no value in hearing it and swiftly discarded them. Silently,... he pulled the trigger.
The dry explosive sound echoed inside the room. Killing intent was aimed and a shot was fired through the demon race woman’s forehead where she instantly died.
Silence engulfed their surrounding. The classmates finally understood and could only hold their bated breaths, puzzled to the spectacle where one of their classmate killed a person without hesitation. Amongst all of them, Kaori was most shocked by it.
It was not about him killing a person. After all, Kaori herself had been prepared for it. It was a natural thing since they had entered the fight in this world. After all, fighting the demonic beast inside the dungeon was only combat exercise.
That’s why, a day where killing one another would surely come, for she must kill hostile people, and she was prepared to do it. She was a healer who stand by the rear, but thinking of Shizuku, Kouki, and the others who were in the front lines — the time when her the hands of her friends will be dirtied by blood, even if it was just a little, made her heart resolved to not averting from such situations even just for a moment.
What shocked Kaori was because she could not sense any aversion, disgust, and hesitation towards murder from Hajime. He killed a person as though it was natural as breathing. The Hajime Kaori knew was someone who even though he couldn’t go against the others, he was a gentle and strong person capable of being able to jump into a whirlpool for the sake of others.
That form of being “strong” was not a power that came from violence. It was a strength due to “thinking about others” no matter what time or situation he was in. That’s why, Hajime who could kill an enemy who had lost her spirit and would not resist with neither hesitation nor had any deep emotion, had become someone completely different from Hajime she knew, and it shocked her.
Shizuku was her best friend, so she understood Kaori had received a powerful shock. However, she was able to guess what shocked Kaori from the scattered talk they usually had about Hajime when they were in Japan.
Shizuku looked at Hajime with a cool expression and she thought he had certainly changed, but she knew it was wrong for her, who knew nothing, to complain about it. That’s why, as the result, she could do nothing but to stop being nestled close to Kaori.
However, naturally, the lump of justice called hero wouldn’t be able to stay silent about it. Kouki’s voice rang out as if to subdue the space filled with silence.
“Why, why did you kill her. Was there any necessary to kill her...”
Hajime was walking towards Shia’s side and caught Kouki staring at him with a penetrating glare at the edge of his view. He hesitated for a moment thinking how he should answer, but in the next moment, to begin with, there’s no need to answer!, he thought and decided to ignore Kouki.
However, whether the other party would allow Hajime’s attitude was another problem... | {
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英国科学振興協会の 3回目の会議が ケンブリッジ大学で 開かれているところです
会議1日目の夜 ― その後の科学を変える ― 議論が始まろうとしていました
立ちあがったのは 白髪の老人です
会員達は その男性が詩人の S・T・コールリッジだと 気づいて驚愕します 彼はそれまで何年も 自宅から出たことはありません
彼の発言を聞いて さらに驚愕します
「君達は『自然哲学者』という 呼び名を返上すべきだ」
コールリッジの考えでは 自分のような真の哲学者は アームチェアに座って 宇宙について考えるけれど
振興協会員のように 化石の産地をうろついたり 手を汚して電堆で 実験などしないというのです 手を汚して電堆で 実験などしないというのです
次第に聴衆の感情は高ぶり 不満を述べはじめました
ウィリアム・ヒューエルという 若いケンブリッジの学者が 立ちあがって聴衆をなだめ
振興協会員にふさわしい名称は 確かに存在していないと 丁寧に述べました
「『哲学者』という呼び方が 幅広く高尚過ぎると言うなら ― "artist"という 呼び名にならって "scientist"という 言葉を作ってはどうでしょう」 この時初めて公の場で "scientist"という言葉が使われたのです この時初めて公の場で "scientist"という言葉が使われたのです わずか179年前のことです
私は この議論について 大学院生の時に知り 心底驚きました
なぜ"scientist"という ― 言葉が1833年まで 存在しなかったのか?
それまでは どう呼ばれていたのか?
新たな名前が その時 必要になったのは どのような変化が原因か?
この会議以前は 才能あるアマチュアが 自然界を研究していました
チャールズ・ダーウィンのように 地方の聖職者や地主をしながら 昆虫や化石を収集したり ランズダウン侯爵の司書で 酸素を発見した ― ジョゼフ・プリーストリーのように ジョゼフ・プリーストリーのように 貴族の助手だったのです
この会議以降 彼らは科学者になりました つまり科学特有の方法と目的 学会 予算をもった ― 専門家になったのです
この革命の大きな源となったのが 1812年にケンブリッジ大学で 出会った4人の人物 ― C・バベッジ J・ハーシェル R・ジョーンズ W・ヒューエルです
聡明かつ野心的で 数々の優れた業績を挙げました
たぶん皆さんもご存じの チャールズ・バベッジは 初の機械式計算機や 現在のコンピュータの 原型を発明しました
ジョン・ハーシェルは 南半球の星を記録し 余暇を利用して 写真の開発にも一役買いました
私達もFacebookや Twitterの時間を減らせば 同じ位 創造性豊かに なれるかも知れません
リチャード・ジョーンズは 大経済学者となり 後にマルクスに影響を与えました
ヒューエルは"scientist"以外に 陽極 陰極 イオンといった 言葉を造っただけでなく 地球規模の潮汐に関する ― 国際的研究を率いました
1812-13年の冬 ケンブリッジで この4人が集まって 「哲学朝食会」を開きました
話題は科学について ― そして新たな科学革命の 必要性についてです
彼らは17世紀の科学革命以降 ― 彼らは17世紀の科学革命以降 ― 科学が停滞していると感じていました
4人が起こすと誓った 新たな革命が 必要な時期でした 彼らのすごいところは 大学生のような 壮大な夢を抱いただけでなく 夢を遥かに超えることを 実現したことです
これからお話しするのは 彼らが実現した4つの大きな変革です これからお話しするのは 彼らが実現した4つの大きな変革です
『証拠に基づく帰納的方法』 200年ほど前には フランシス・ベーコン その後にはニュートンが 科学の帰納的方法を 提案していました
帰納的方法とは観察と実験から 帰納的方法とは観察と実験から 自然に関する一般法則 つまり自然律を導きます これは新たな証拠が得られれば 修正あるいは否定されます
ところが1809年に デビッド・リカードが 経済学においては演繹的方法を 使うべきと主張しました
そして影響力のある オックスフォードの学者達が 始めた主張が問題となります 「演繹法が経済学で 機能するなら ― 自然科学にも応用すべきだ」
「哲学朝食会」の面々は これに反発しました
彼らは科学の全分野で 帰納法を用いることを 本や論文を通じて説き ― 自然哲学者 大学生 一般大衆に 広く読まれました
ハーシェルの本は ダーウィンにとって 重要な転機となりました 彼は後に こう言っています 「あれほど影響を受けたものは 一生を通じて 他に見当たらない
彼の本を読んで 私も自然科学の知識を 蓄積することに貢献したいと 感じたのだから」
その本は ダーウィンとその仲間たちの 科学的な手法を確立したのです
『公益のための科学』 かつて科学知識は 王や女王のため ― あるいは個人の利益のために 使われるべきとされていました
例えば船長は 船を安全に着岸させるために 潮汐の知識が必要でしたが
港湾管理人は その知識を集めて 船長に売っていたのです
哲学朝食会は協力して これを変えました
ヒューエルの世界的潮汐調査により 公的な潮汐表と潮汐地図が完成し 港湾管理人だけが持っていた 知識を 全ての船長が
自由に得られるようになりました ハーシェルも南アフリカ沿岸で 潮汐観測を行いました 激しい高波で 埠頭から落ちてしまったと ヒューエルに こぼしたそうです
4人はあらゆる面で 助け合いました
英国政府に働きかけ バベッジが考案した ― 機械を作る 資金を得ようとしました 彼の機械は社会にとって 極めて有用だと考えたからです
電卓が開発される前は 銀行家や保険代理業者 船長や技師といった ― 専門家が 必要な数値を知るには 数字で埋めつくされた ― 早見表を調べる 必要がありました
このような早見表は 決まった手順で 何度も計算を行う パートの労働者 ― 「コンピュータ」達が 作っていました 数値の計算は 極めて難しいものでした
この航海暦には 毎月の月の変化が 1年分載っています
1か月分で1,365回の 計算が必要で 誤りが多く見られます
バベッジの階差機関は このような表なら常に正しく 計算できるように設計された 初の機械式計算機です
ロンドン科学博物館では バベッジの設計図を元に この20年で2種類の 機械を制作しました この20年で2種類の 機械を制作しました
1台は今 カリフォルニアの コンピュータ歴史博物館にあり ― 実際に正確な計算ができます
後に構想された解析機関は 初めての機械式の 現代的な意味でのコンピュータで
独立したメモリと 中央演算装置を備えていました
繰り返しや条件分岐 ― 並行処理ができ パンチ・カードを使った プログラムが可能でした バベッジがジャガード織機から 得たアイデアです
残念ながら 当時バベッジの機械は 制作されませんでした そんな機械が社会の役に 立つはずがないと そんな機械が社会の役に 立つはずがないと 考える人が ほとんどだったのです
『新しい科学団体』 ベーコンの時代に設立された 王立協会は イングランドのみならず 世界的にもトップレベルの 科学学会でした
19世紀には 会員制クラブ化していて 19世紀には 会員制クラブ化していて 好古家や学者や貴族が 主たるメンバーでした
哲学朝食会の人々は 英国科学振興協会を含む 新たな多くの団体の
結成を支援しました 新しい団体では 会員は現役の研究者で
研究結果の公表が 必要とされました 論文発表後に 質疑の時間を設ける ― 伝統も復活しました 王立協会では 「紳士的でない」として やめていた慣習です
また これらの団体は初めて 科学を女性に開放しました
英国科学振興協会では 会員が自分の 妻 娘 姉妹を会合に 同伴するよう奨励されました 当初 女性は公開講座や イベントにだけ 出席するものと 考えられていましたが 次第に科学の授業にも 姿を見せるようになりました
後に科学振興協会は 国レベルの科学機関としては 世界で初めて 女性を会員として受け入れました
『外部からの資金援助』 19世紀までは 実験器具や材料は 自然哲学者が 自前で用意するものでした
時々 賞金が出ることは ありました 18世紀に「経度問題」を 解決したジョン・ハリソンに 与えられた賞金は その一例です ただ成果があがるまで 賞金は出ませんでした ただ成果があがるまで 賞金は出ませんでした
哲学朝食会の助言により 科学振興協会は 会合で集まった余剰の資金を 天文学 潮汐調査 化石魚 ― 船の建造など 様々な分野の研究に対する ― 助成金として使いました
これにより資金の乏しい人が 研究できるように なったばかりでなく 既存の問題に 取り組むだけでない ― 型にはまらない 発想を促したのです
その後 王立協会や 他の国の科学団体も その例にならいました 現在の科学の世界では 幸いにも これが主流になっています
哲学朝食会は 現代の科学者を生む きっかけとなりました
それが彼らの物語の 成果の部分です
その反面 ― 自分達が起こした革命の
結果の一部は彼らには 予見できませんでした
科学と文化の他の分野が 断絶した現在の状況を見たら 彼らはがっかりすることでしょう
驚くべきことに アメリカでは基礎的な 科学知識をもっているのは 成人のわずか28%に過ぎません この結果は ごく簡単な 質問を通して得られました 「人間と恐竜が 一緒に住んでいた時期はあるか?」
「地球上の何割が 水におおわれているか?」
科学者が専門家集団になると 次第に その他の人々との間に 壁ができました
これは哲学朝食会の 面々も予期しなかった ― 革命の副作用です
ダーウィンは言いました 「一般向けの論文も 元の論文と同様に 科学の進歩にとって重要である」 科学の進歩にとって重要である」
実際 『種の起源』は 一般向けに書かれ 実際 『種の起源』は 一般向けに書かれ 出版当初から 広く読まれていました
ダーウィンは 私達が忘れかけている ― 「科学は科学者だけのものではない」 ということを理解していたのです
ありがとうございました | The British Association for the Advancement of Science is holding its third meeting at the University of Cambridge.
It's the first night of the meeting, and a confrontation is about to take place that will change science forever.
An elderly, white-haired man stands up.
The members of the Association are shocked to realize that it's the poet Samuel Taylor Coleridge, who hadn't even left his house in years until that day.
They're even more shocked by what he says.
"You must stop calling yourselves natural philosophers."
Coleridge felt that true philosophers like himself pondered the cosmos from their armchairs.
They were not mucking around in the fossil pits or conducting messy experiments with electrical piles like the members of the British Association.
The crowd grew angry and began to complain loudly.
A young Cambridge scholar named William Whewell stood up and quieted the audience.
He politely agreed that an appropriate name for the members of the association did not exist.
"If 'philosophers' is taken to be too wide and lofty a term," he said, "then, by analogy with 'artist,' we may form 'scientist.'" This was the first time the word scientist was uttered in public, only 179 years ago.
I first found out about this confrontation when I was in graduate school, and it kind of blew me away.
I mean, how could the word scientist not have existed until 1833?
What were scientists called before?
What had changed to make a new name necessary precisely at that moment?
Prior to this meeting, those who studied the natural world were talented amateurs.
Think of the country clergyman or squire collecting his beetles or fossils, like Charles Darwin, for example, or, the hired help of a nobleman, like Joseph Priestley, who was the literary companion to the Marquis of Lansdowne when he discovered oxygen.
After this, they were scientists, professionals with a particular scientific method, goals, societies and funding.
Much of this revolution can be traced to four men who met at Cambridge University in 1812: Charles Babbage, John Herschel, Richard Jones and William Whewell.
These were brilliant, driven men who accomplished amazing things.
Charles Babbage, I think known to most TEDsters, invented the first mechanical calculator and the first prototype of a modern computer.
John Herschel mapped the stars of the southern hemisphere, and, in his spare time, co-invented photography.
I'm sure we could all be that productive without Facebook or Twitter to take up our time.
Richard Jones became an important economist who later influenced Karl Marx.
And Whewell not only coined the term scientist, as well as the words anode, cathode and ion, but spearheaded international big science with his global research on the tides.
In the Cambridge winter of 1812 and 1813, the four met for what they called philosophical breakfasts.
They talked about science and the need for a new scientific revolution.
They felt science had stagnated since the days of the scientific revolution that had happened in the 17th century.
It was time for a new revolution, which they pledged to bring about, and what's so amazing about these guys is, not only did they have these grandiose undergraduate dreams, but they actually carried them out, even beyond their wildest dreams.
And I'm going to tell you today about four major changes to science these men made.
About 200 years before, Francis Bacon and then, later, Isaac Newton, had proposed an inductive scientific method.
Now that's a method that starts from observations and experiments and moves to generalizations about nature called natural laws, which are always subject to revision or rejection should new evidence arise.
However, in 1809, David Ricardo muddied the waters by arguing that the science of economics should use a different, deductive method.
The problem was that an influential group at Oxford began arguing that because it worked so well in economics, this deductive method ought to be applied to the natural sciences too.
The members of the philosophical breakfast club disagreed.
They wrote books and articles promoting inductive method in all the sciences that were widely read by natural philosophers, university students and members of the public.
Reading one of Herschel's books was such a watershed moment for Charles Darwin that he would later say, "Scarcely anything in my life made so deep an impression on me.
It made me wish to add my might to the accumulated store of natural knowledge."
It also shaped Darwin's scientific method, as well as that used by his peers.
[Science for the public good] Previously, it was believed that scientific knowledge ought to be used for the good of the king or queen, or for one's own personal gain.
For example, ship captains needed to know information about the tides in order to safely dock at ports.
Harbormasters would gather this knowledge and sell it to the ship captains.
The philosophical breakfast club changed that, working together.
Whewell's worldwide study of the tides resulted in public tide tables and tidal maps that freely provided the harbormasters' knowledge to all ship captains.
Herschel helped by making tidal observations off the coast of South Africa, and, as he complained to Whewell, he was knocked off the docks during a violent high tide for his trouble.
The four men really helped each other in every way.
They also relentlessly lobbied the British government for the money to build Babbage's engines because they believed these engines would have a huge practical impact on society.
In the days before pocket calculators, bankers, insurance agents, ship captains, engineers — were to be found in lookup books like this, filled with tables of figures.
These tables were calculated using a fixed procedure over and over by part-time workers known as -- and this is amazing -- computers, but these calculations were really difficult.
I mean, this nautical almanac published the lunar differences for every month of the year.
Each month required 1,365 calculations, so these tables were filled with mistakes.
Babbage's difference engine was the first mechanical calculator devised to accurately compute any of these tables.
Two models of his engine were built in the last 20 years by a team from the Science Museum of London using his own plans.
This is the one now at the Computer History Museum in California, and it calculates accurately. It actually works.
Later, Babbage's analytical engine was the first mechanical computer in the modern sense.
It had a separate memory and central processor.
It was capable of iteration, conditional branching and parallel processing, and it was programmable using punched cards, an idea Babbage took from Jacquard's loom.
Tragically, Babbage's engines never were built in his day because most people thought that non-human computers would have no usefulness for the public.
[New scientific institutions] Founded in Bacon's time, the Royal Society of London was the foremost scientific society in England and even in the rest of the world.
By the 19th century, it had become a kind of gentleman's club populated mainly by antiquarians, literary men and the nobility.
The members of the philosophical breakfast club helped form a number of new scientific societies, including the British Association.
These new societies required that members be active researchers publishing their results.
They reinstated the tradition of the Q&A after scientific papers were read, which had been discontinued by the Royal Society as being ungentlemanly.
And for the first time, they gave women a foot in the door of science.
Members were encouraged to bring their wives, daughters and sisters to the meetings of the British Association, and while the women were expected to attend only the public lectures and the social events like this one, they began to infiltrate the scientific sessions as well.
The British Association would later be the first of the major national science organizations in the world to admit women as full members.
[External funding for science] Up to the 19th century, natural philosophers were expected to pay for their own equipment and supplies.
Occasionally, there were prizes, such as that given to John Harrison in the 18th century, for solving the so-called longitude problem, but prizes were only given after the fact, when they were given at all.
On the advice of the philosophical breakfast club, the British Association began to use the extra money generated by its meetings to give grants for research in astronomy, the tides, fossil fish, shipbuilding, and many other areas.
These grants not only allowed less wealthy men to conduct research, but they also encouraged thinking outside the box, rather than just trying to solve one pre-set question.
Eventually, the Royal Society and the scientific societies of other countries followed suit, and this has become -- fortunately it's become -- a major part of the scientific landscape today.
So the philosophical breakfast club helped invent the modern scientist.
That's the heroic part of their story.
There's a flip side as well.
They did not foresee at least one consequence of their revolution.
They would have been deeply dismayed by today's disjunction between science and the rest of culture.
It's shocking to realize that only 28 percent of American adults have even a very basic level of science literacy, and this was tested by asking simple questions like, "Did humans and dinosaurs inhabit the Earth at the same time?"
and "What proportion of the Earth is covered in water?"
Once scientists became members of a professional group, they were slowly walled off from the rest of us.
This is the unintended consequence of the revolution that started with our four friends.
Charles Darwin said, "I sometimes think that general and popular treatises are almost as important for the progress of science as original work."
In fact, "Origin of Species" was written for a general and popular audience, and was widely read when it first appeared.
Darwin knew what we seem to have forgotten, that science is not only for scientists.
Thank you. | {
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めらめらと燃えている炎だが、アルナを傷つけている様子はなかった。
豹変したアルナが、右手に持つ刀に火を纏わせるが、その火は先ほどとは違っていた。禍々しいほど赤く光る火は、炎といったほうが似合っている。
アルナはセイヤのことを視界にとらえるとにやりと笑った。
(来る......)
セイヤがそう思った次の瞬間には、アルナの姿はセイヤの目の前にあった。
そして、右手に握る刀でセイヤに襲い掛かる。セイヤはホリンズでその刀を受け止めようとするが、刀とぶつかり合った瞬間、ホリンズが砕けた。
アルナの刀そのままセイヤの首を斬る勢いで振り下ろされる。その時、セイヤはアルナの左目に宿る炎を見た。
(ゲドちゃん!)
セイヤの首を今にも斬りそうなアルナを、リリィが作ったゲドちゃん(本名限界まで強化した水のドラゴン)が体当たりで吹き飛ばす。
しかし、同時にゲドちゃんは蒸発して消えてしまった。
(助かったリリィ。ありがとな)
(うん! でもあれって......)
(ああ、あれはアルナじゃないな)
(じゃあ?)
(乗っ取られているな)
飛ばされたアルナが立ち上がり、セイヤのほうを睨む。その時、大きな爆発音がスタジアムに響く。
が爆発音のほうを見ると、そこにはユリアルで何かを放った後のユアが立っていた。そしてコニーが光の塵となってリタイヤする。
どうやらユアは透明なバリアに守られていたコニーのことを、ユリアルでユリエルを射る『ホーリー・ロー』を使い、貫いたらしい。
たしかにあの技なら、硬化した雷獣も貫けたため、コニーを倒せても不思議ではなかった。
セイヤはユアのおもいっきりの良さにあっけをとられていた。
まさか学園であの大技を使うとは思っていなかったから。ちなみに、コニーがリタイヤしたことにより、『
「終わった......残るのはあ......」
ユアがセイヤの隣に来て言う。しかし、アルナの姿を見たユアは、すぐに表情を変えた。
「セイヤ......あれは?」
「わからない。ただ強敵だな」
ユアは手元にユリエルを生成しながら、うなずく。セイヤもホリンズを生成して光属性の魔力を纏わせる。
こうなってしまえば、魔法を隠している余裕などない。
まるで二人が武器を生成するのを待っていたかのように、アルナが再び襲い掛かってくる。
セイヤは光属性の魔力を纏ったホリンズで、アルナの攻撃を受け止める。
「お前は何者だ?」
セイヤは攻撃を受け止めながらもアルナに宿る何かに聞く。答えを期待していなかったセイヤだが、アルナに宿る何かはセイヤの問いに答えた。
「さあ、何者だろうな。ところで、貴様は闇の力は使わないのか?」
なぜ闇属性を知っているのか、セイヤは疑問に思った。現時点でセイヤが闇属性を使えることを知っているのは、ユアたちアルーニャ家の人間と、徒のバジルだけ。
それ以外の者は、知らないはずだ。だが、アルナに宿る何かが言う。
「ふん、闇を使わないと、俺には勝てないぜ?」
「だが、使ったら一瞬で終わりだぜ?」
』を行使した。しかし、対象はアルナではなく、観客に。
』が行使されたため、反応できずに視界を失う。セイヤはその隙に、ホリンズに纏わせる魔力を光から闇に変えた。
「どうやら闇属性が苦手なのは、本当らしいな」
「貴様......」
「ユア、リリィ、あいつを拘束してくれ。そしたら俺がとどめを刺す」
「わかった......」
「うん!」
ユアはユリエルに光属性の魔力を流し込み、アルナに接近する。しかしアルナは、炎を纏った刀でユアに斬りかかる。
炎神破
次の瞬間、ユアに向かって炎の塊が落ちてくる。ユアはその炎の塊を避け、『
バランスを失ったユアが、その場で膝をつく。その隙を逃さんとばかりに、アルナが再び『
』はユアに当たる直前で、跡形もなくに消滅する。もちろんセイヤの『闇波』によるものだ。
「ついに使ったか」
「当たり前だ。お前の弱点だからな」
観客の目が見えない今なら、セイヤは心置きなく闇属性を使える。
と言っても、あまりにも強力な魔法を使えば、教師陣たちが感知してしまうリスクがあるため、初歩的な闇属性魔法しか使えない。それでも、闇属性の有無はかなり大きい。
セイヤはそのままアルナに向かって『闇風』を行使する。セイヤから放たれたかまいたちが、アルナに襲い掛かるが、アルナは防御を選択する。
直後、アルナを中心に眩い炎が渦を巻く。『闇風』が炎の渦に防がれる。
「足りないか」
「大丈夫......」
そのとき、セイヤの後ろから声がした。そこにはユリエルを矢に、ユリアルの弓弦をひくユアの姿があった。ユリエルの先端には、白い光が渦を巻いている。
ユアがユリアルの弓弦を離すと、聖なる光を纏ったユリエルが、アルナに向かって螺旋回転をしながら飛んでいく。
アルナは飛んでくるユリエルを一瞥すると、静かにつぶやいた。
突如、突風がユアに向かって吹く。その風は、かなりの熱を帯びており、飛んでくるユリエルを溶かしてしまう。
そしてその風が、今度はユアの柔肌を焼こうと吹き荒れる。
しかし、そんなことは当然、婚約者が許さない。
「『闇波』」
セイヤはユアに襲い掛かる熱風を物質ごと消滅させる。
それにより、風の吹いた場所から物質が消え、気圧差によって再び突風が吹く。だが先ほどと違い、ただの風だ。といっても、勢いは相当強かった。
ここまでで費やした時間は約。もうそろそろ、観客の中で視界を取り戻す者が出てくるかもしれない。
アルナは不意の突風に、反応できず、目を瞑ってしまう。そんなアルナを見たセイヤが笑みを浮かべる。
「リリィ、いまだ!」
「わかった! 『水牢結界』!」
リリィの叫び声とともに、水がアルナのもとに集まり、アルナのことを拘束していく。
「無駄だ。さっきから貴様の水はすべて蒸発させている。こんなものもすべて蒸発させて......」
たしかに先ほどから、リリィの攻撃はすべて炎により蒸発させられていた。だが、そんなことはリリィにもわかっている。
「知っているよ! でも、この場所にある水すべてを蒸発させるのと、セイヤに斬られるのなら、どっちが先かな!」
「なに!?」
そこでアルナは気づいた。周りの地面が、湿ったり、ところどころに水たまりがあることに。
その水たちは、この試合でリリィが使った魔法が弾かれた残り水だ。
弾かれた水は、そのまま地面に広がり浸透していた。また、空中にはアルナが蒸発させた水蒸気がある。そして現在、このスタジアムの湿度はかなり高い。
そして水であれば、リリィには簡単に操れる。
アルナが水を蒸発させても、拘束は決して解けない。
「セイヤ!」
「ああ、終わりだ」
』を最大にしたセイヤが、ホリンズにまとわせる闇属性の魔力も最大にして、アルナに斬りかかる。
そしてそのまま、ホリンズをアルナの胸に突き刺し、アルナに宿る謎の炎だけを消滅させる。
謎の炎は最後に、「また会うことになる」と言い残して消えた。謎の炎から解放されたアルナは、そのまま光の塵になってリタイヤする。
アルナのリタイヤにより、決勝ブロック一回戦の勝者はセイヤたちになったのだが、アナウンスが流れない。それもそのはずである。
』によって視界を失っていた観客たちがやっと視界を取り戻したのだから。
観客たちは急に閃光したと思ったら、視界を取り戻した時には試合が終わっており、どうなったのか理解していない。
「えっと......決勝ブロック一回戦終了。勝者登録番号86」
「「「「「「「おっ、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」」」」」」」
遅れて流れたアナウンスに、観客たちが歓声を上げる。
最後は何が起きたかわからなかったが、近年まれに見る好ゲームで、全員が興奮していたのだ。
一方、スタジアム上部にあるVIP席では。
「失礼します」
銀髪長髪の男が部屋の中に入ると、中には青い髪の眼鏡の男とスカーレット色の髪をした筋肉質な男がいた。
「これは、これはバジル殿。よくぞいらっしゃいました」
ザッドマンが低姿勢でバジルに挨拶をする。しかしバジルはザッドマンを無視し、レオナルドのもとへ行く。
「レオナルド殿、あれは一体どういうことですか?」
「とぼけるのですか。あの少女に取り付いたもののことです」
「レオナルド殿!」
バジルは知っている。アルナに宿った炎が、レオナルドと契約する精霊だということを。しかし、レオナルドは知らないふりを通す。
VIPルームでは、険悪なムードが漂うのであった。 | Fire violently burned, but Aruna didn’t seem to notice.
Aruna enveloped her katana in fire, but this fire was different from the one before. It was disturbingly red.
Aruna noticed Seiya and laughed.
(Here she comes.....)
In the next moment after he thought that, Aruna was already before him.
She swung her katana with her right hand and Seiya attempted to accept the blow with the Hollins, but upon collision, the Hollins broke.
The katana continued on its way to Seiya’s neck. At that time, Seiya looked at the fire, dwelling in her left eye.
(Gedo-chan!)
Lily created a Gedo-chan (a dragon that was strengthened to the limit) and blew away Aruna, who almost cut through Seiya’s neck.
However, at the same time, Gedo-chan evaporated and disappeared.
(I was saved, Lily. Thanks)
(Un! But this is.....)
(Yeah, this is not Aruna)
(Then? )
(She is possessed)
Aruna, who was blown away, stood up and glared at Seiya. At that moment, a sound of a big explosion reverberated across the stadium.
When the two looked towards the direction of the explosion, they saw Yua in a stance that suggested that she released something from the Yurial. And Connie became a cloud of dust and retired.
Apparently, she pierced through Connie’s barrier by shooting the Yuriel from the Yurial.
Indeed, this technique was able to defeat even the strengthened lightning beast, it wasn’t surprising that it was able to deal with Connie.
Seiya was surprised at her decisiveness.
He never thought that she would use it inside the academy. By the way, once Connie retired, 『Silent World』was forcibly dispelled and the sound returned.
「Finished....only one left....」
Said Yua once she arrived at Seiya’s side. However, once she saw Aruna’s appearance, she immediately changed her expression.
「Seiya.....this is? 」
「Don’t know. But it is strong」
Yua nodded and created the Yuriel in her hand. Seiya created the Hollins too and enveloped it in the light-attributed mana.
Since this had happened, there was no need to conceal his power anymore.
As if she was waiting for them to create their weapons, Aruna attacked right after they did that.
Seiya accepted the blow with the light-clad Hollins.
「Who the hell are you?」
Asked Seiya, while blocking her blow. He never expected to hear the answer, but that “something” did answer.
「Well, who knows. By the way, aren’t you going to use your power of darkness? 」
「You, how do you......」
Seiya had no idea why it knew about the dark attribute. At present, only Yua, Lily, certain people in the Arunia family and an apostle, Bagil, knew about it.
No one should have known besides them. However, the “something” inside Aruna said.
「Heh, you can’t defeat me without your dark attribute」
「However, once you use it, everything will be over, you know? 」
Seiya separated from Aruna and cast『Flash』, but its target wasn’t Aruna, but the audience.
The audience wasn’t able to react to the sudden『Flash』and lost their sight. Utilizing this opportunity, Seiya switched the mana around the Hollins from light to dark.
「Apparently, you dislike towards the dark attribute wasn’t a lie」
「Yua, Lily, please restrain it. I will deal the final strike」
「Understood....」
「Un! 」
Yua poured the light-attributed mana into the Yuriel and closed in on Aruna. However, Aruna swung her katana to meet it.
「『Flame God Break』」
In the next moment, a mass of fire falls towards Yua. Yua avoided this mass and tried to cast『Holy Hammer』. However, right after, the ground below Yua ruptured.
Yua lost her balance and fell on her knee. Not willing to let go of this opening, Aruna cast『Flame God Break』again.
However, just before reaching Yua, 『Flame God Break』vanished without a trace. Of course, it was due to Seiya’s『Dark Wave』.
「You finally used it」
「Of course, it is your weakness after all」
While the audience wasn’t able to see, he could use the dark attribute to his heart’s content.
That being said, if he used some large-scale spells, there would be a risk of audience detecting it. Because of that, he could only use some simple spells. By even like that, the dark attribute wasn’t to be underestimated.
Seiya cast the『Dark Wave』at Aruna. Aruna chose to defend.
In the next moment. A dazzling flame vortex appeared around Aruna. It was able to defend against『Dark Wave』.
「Not strong enough, huh」
「It is fine.......」
At that time, he heard a voice from behind. There, was a figure of Yua loading the Yuriel into the Yurial. A white light was agglomerating at the Yuriel’s tip.
Yua released the bowstring. Clad in the sacred light, the spinning Yuriel flew at Aruna.
When Aruna looked at the Yuriel, she quietly murmured.
Suddenly, a wind blew in Yua’s direction. That wind was considerably hot and melted the flying Yuriel.
Next, this hot wind tried to melt Yua’s soft skin.
However, the fiancé, of course, won’t allow it.
「『Dark Wave』」
The hot air was completely disintegrated on the molecular level.
The matter disappeared from that place, and, due to the difference in pressure, the wind blew again. But this time, it was just normal wind, that being said, it was still quite strong.
Up to this point, it was about seconds. Someone amongst the audience might regain his vision very soon.
Aruna didn’t react to the wind and closed her eyes. Seiya looked at such Aruna and smiled.
「Lily, now!」
「All right!『Water Barrier』! 」
Together with her scream, water gathered around Aruna and bind her.
「Useless. I can easily evaporate your water. Once it all evaporates......」
True, her previous attack didn’t stand a chance and evaporated. But Lily was perfectly aware of it herself.
「I know! But, will you be able to evaporate all of this water before being cut down by Seiya!?」
「What!?」
At this point, Aruna noticed. The surrounding ground was damp, there were water puddles all around her.
All this water was left over from her previous spells during this match.
The deflected water soaked the ground. The was also plenty of vapor in the air. Currently, the atmosphere in the stadium was quite humid.
And as Long as it is water, Lily can easily manipulate it.
Even if Aruna vaporized it, Lily could gather it again.
「Seiya!」
「Yeah, this is the end」
Seiya maximized『Mantle of Light』and the mana wrapped around the Hollins, then, he closed in on Aruna.
Like that, the Hollins penetrated her chest and erased the mysterious being inside of her.
The mysterious flame said「We will meet again」and disappeared. After she was released from the mysterious flame, Aruna collapsed on the ground, turned into dust and retired.
After Aruna’s retirement, they won the first round, but there was no announcement. Well, that was understandable.
After all, the audience had just regained the vision after『Flash』.
Just as they regained their vision, they saw that the match has ended. They couldn’t understand what happened.
「Etto....The winner of the first round of the final block is the team .」
「「「「「「「Uoooooooooooo」」」」」」」
The audience cheered after the late announcement.
Although they didn’t know what happened in the end, they were excited seeing this rare high-level match.
On the other hand, in the VIP section.
「Excuse me」
A silver-haired man entered the room where a man in glasses and a man with scarlet hair were.
「Isn’t it Bagil-dono. Thank you for coming」
Zadman greeted Bagil, but he ignored him and approached Leonardo.
「Leonardo-dono, what was that?」
「Playing dumb? It is about the possession of that girl」
「Leonardo-dono! 」
Bagil knew. The flame that was inside of Aruna was Leonardo’s contracted spirit. However, Leonardo was pretending not to know.
There was a tense atmosphere in the VIP room. | {
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今朝は楽観的になろうと試みたい そして将来のインターネットに 希望が持てる理由を 現在の状況から説明したいと思います
現在は昔よりも希望が少なくなっているように見えます
みんな親切でなくなり
人を信じなくなっています 例として ちょっとテストをしてみましょう
今までにヒッチハイクをしたことのある人はどれくらいいますか?
たくさんいますね ではこの10 年間に ヒッチハイクをしたという人は?
そうでしょう 何が変わったのでしょうか?
公共交通機関が良くなったからではないですよね
1つの見方は 世の中が下り坂にあり 悪い方向に向かっているというものです
しかし私は3 つの例を通して トレンドラインが別な方向を向いており そしてインターネットが その力になっていることを示したいと思います
第一の例は インターネット自体です
この3 人はインターネットの創始者たちです
彼らは1960 年代に ロサンゼルス郊外の同じ高校に通っていたクラスメートです
フランス語クラブとか弁論クラブとかありますよね
彼らは「グローバルネットワークを作ろう」クラブで それはすごくうまくいきました
この写真はニューズウィーク誌の インターネット25 周年記念号のために撮られたものです
見ての通り 彼らは基本的に変わり者でした 彼らにはグローバルネットワークを考え出す上で
1 つ大きな制限と 1 つ大きな自由がありました 制限は 彼らにはお金が全然なかったということです
彼らには物理的なネットワークに投資すべき資金が これといってありませんでした 夜通し荷物を運ぼうと思ったら トラックや人やハブが必要です
彼らには何もありません
しかし彼らには驚くほどの自由がありました そこから収益を得る必要がなかったのです
インターネットには ビジネスプランなどあったためしがありません
CEO もいません 構築に責任を持つ会社もありません
かわりにいたのは 何か面白いものを一緒に作ろうという連中です それで大儲けできるぞと 聞いたわけでも 考えたわけでもありません
その精神は ネットワークアーキテクチャを それ以前 あるいはそれ以降の どんなデジタルネットワークとも違ったものにしました
あまりに変わっていたため インターネットがうまく機能するかどうか分らないとさえ言われてきました
1992 年になっても IBM は言っていたのです インターネットプロトコルを使って 企業ネットワークを構築することは不可能だと 今日のインターネットエンジニアの中にさえ インターネット自体試験プロジェクトであり まだ結果は出ていない
そう言う人がいます インターネット技術のマスコットがあるとしたら それはクマバチだと言われるゆえんです
クマバチの体は 飛べるためには 羽の長さに対して大きすぎるのです
それがどういうわけか クマバチは飛ぶことができます
うれしいことに 政府の多額の資金を使って 3年ほど前に ハチがどうやって飛んでいるのかが ついに解明されました
非常に難しい話なのですが どうやら― 羽をすごく速く動かしているかららしいです
ではインターネットを動かしているアーキテクチャというのは どう変わっているのでしょうか?
データをある場所から別な場所へ 動かすのに 運送会社みたいにはやりません
それよりは観客席に近い
ご自分がネットワークの一部だと思ってください 何かスポーツを観戦しています このような座席に座っていて 誰かがビールを注文します それは通路で手渡され
あなた方は隣席の責務として 自分のズボンを汚すリスクを冒しながら ビールを目的地へと 受け渡していくのです
そのためにお金を払う人はいません
隣の席にいる者の努めというだけです
そしてこれは インターネットをパケットが動いている仕組みでもあるのです ときには25 回から30 回も中継されます 間でデータを受け渡す組織には 契約上あるいは法律上の 義務は何もありません 送信者に対しても 受信者に対しても
観客席にいて目的地を指定するのはもちろん困難です
大きな信頼が必要ですが 「ペンサコラまでお願いします」というわけにはいきません
インターネットにはアドレスと指示が必要です
実はインターネットには全体の地図というのは存在しないことが分ります
みんな劇場の中に座っているようなものなのですが 霧が立ちこめていて すぐ近くにいる人しか見えません
では誰がどこにいるのか どうやって分るのでしょう?
右にいる人に向かって 左に見えるものを伝えるのです 逆方向にも同じことをします
これをずっと繰り返して行くのです そうすると どこに何があるかおおよそ分るようになります
これがインターネットのアドレッシングとルーティングの仕組みです
これは親切と信頼に依存したシステムであり とてもデリケートで脆弱な面があります
まれではありますが ハチの巣の中の1 匹がついた 1 つの嘘によって 大きな混乱が 引き起こされることがあります
たとえば去年のことですが パキスタン政府が 国内のインターネットサービスプロバイダに パキスタン国民がYouTube を見られなくするよう求めました
政府の気に入らないビデオがあって 確実にブロックしたかったのです
これは良くあることで 至る所の政府が インターネットのコンテンツをブロックしたり フィルタリングしたり 検閲したりしています
あるISP が 加入者の視聴をブロックするために ちょっと変わった手段を選びました
突然言い始めたのです インターネットで問い合わせが来たら答える仕方で 周りに対して 突然気づいたかのように 言い始めたのです 自分がYouTube であると
「その通り 私がYouTube である」
この結果 YouTube へ向かう 加入者のパケットは このISP を目的地と勘違いして留まり ISP は中身を見ずに捨て ブロックの目的を達します
しかしそれだけでは終わりませんでした
この告知は 一歩先へと送られ 広まっていったのです
この事後分析資料を 見ていただけばわかりますが 最初の時点では YouTube が見られました
その次の時点で 偽の告知が行われます
そして2分のうちに それは広まっていき 世界中でYouTube がブロックされることになりました
イギリスのオックスフォードにいても YouTube を見ようとすると パケットがパキスタンに行ったきり 戻ってこなくなりました
考えてみてください
これは世界で最も力のある企業による 世界で最も人気のあるサイトです YouTube やGoogle には何ら これに関して特権がないのです
それでも どうやってか 問題は 2 時間後には解決していました
何が行われたのでしょう?
手がかりとして NANOG に目を向けましょう
北米ネットワーク オペレーターズ グループです そこでは人々が 外は晴れているというのに 窓のない部屋に籠もり 端末に向かって メールやメッセージを読んでいます ちょうどこのような等副フォントで そしてネットワークの話をしています
彼らの中には世界中のISP の 中堅社員がいます
その1 人がこのようなメッセージを送ります 「おかしなやつが現れたようだ YouTube が乗っ取られた!
これは訓練ではない YouTube のエンジニアが へまをしたわけでもない
パキスタンで何かが起こっている」
そしてこの問題を解決するために彼らは力を合わせます
だからこれは火事のようなものです
悪いニュースは 消防隊はいないということです
いいニュースは いろんな人がどこらかともなく姿を現し 火を消し止め そしてお金も賞賛も求めることなく
立ち去っていくということです このような形態の 見知らぬギークによる親切を表す 適切なモデルは何かと考えていました 合図が出ると 人々が助けに現れるのです
このモデルは 探してみると至る所にあるのが分ります
第二の例 Wikipedia
ジンボという男が2001年に現れて言いました 「いいこと思いついた! 7 つの記事から出発して 誰でも いつでも 何でも編集できるようにしたら すごい百科事典ができるぞ! どうだい?」
確かに これ以上ないくらい間抜けなアイデアです
実際 Wikipedia はあまりに間抜けなアイデアなので ジンボ自身考えてはいませんでした
ジンボが考えていたのはNupedia です
これはまったく従来的なものになるはずでした 彼は気前よくお金を払い そのお金で人々に 記事を書いてもらうのです Wiki は 他の人が修正案を書けるよう
後から導入された 裏部屋のようなものでした それがプロジェクト全体を占めるくらいに
成長したのです 今日では Wikipedia はすごく普及し 中国のレストランのメニューにまで顔を出すようになりました
でっち上げてなんかいませんよ
これについては ご説明できますが 今のところは―
こうとだけ言っておきましょう Wikipedia は唐辛子と炒めたのが
おすすめです でもWikipedia は何もせずに機能するわけではありません
どうなっているのでしょうか? ここにも窓のない奥まった 部屋があるのがわかります
たくさんの人が 晴れた日に 部屋の中に籠もって 管理者用掲示板を見つめています これ自体 誰でも編集できるWikipedia のページになっています
問題があればここに報告するようになっています
ここに記録されているのは 「ひどいことの連続としての歴史」です
1番は「ユーザAndyvphil による甚だしく偏向した編集」とあります
Andyvphil 氏がここにいたらごめんなさい
相手の肩を持つわけではありません
お次は「Anon が取り消し攻撃してくる」と
私が好きなのは「長い話になる」
このページに上がってくる問題の数よりも このページをチェックし 問題を解決しようという人たちの方がたくさんいるのです
それがWikipedia を沈まずにいさせているのです
Wikipedia はいつでも 崩壊の45 分前という状態にあります
スパムボットが徘徊し すべての記事を ロレックスの広告に変えようとしています
この細いギークの防衛線で 守られているのです
彼らがやっているのは 仕事だからではありません 使命感によってです
彼らは大事なことを気にかけており それ故に行動に駆り立てられるのです
彼らは「対荒らし部隊」という グループまで作り 「礼儀 成熟 責任」という標語の元 ページを掃除し続けています
もし週末に 大人気のスタートレックの集まりか何かがあったとしたら 誰が番をするのかと気になります
ここで目にしているのは... ここで目にしている現象は 交通工学者ハンス モンデルマンが オランダで発見したことを思わせます ここ南ケンジントンでも見られますが 外的な規則や信号といったものを取り除くと より安全で 人々が機能でき 互いにより人間的に接するような
環境ができるのです 自分の行動に対する責任を 人々が自覚するからです
Wikipedia はこの原理を活用しているのです
スターウォーズキッドを覚えている人もいるでしょう 哀れな10 代の少年が ゴルフボール拾い器をライトセーバーみたいに 振り回しているビデオです
このビデオは本人の了承なしに 本人が知ることもなく インターネットで公開され
瞬く間に広まり すごい人気になったのです
本人は ひどく恥をかくことになりました
百科事典として Wikipedia には スターウォーズキッドの項目があります
Wikipedia の各項目には 議論のためのページがあるのですが そこでWikipedian たちが徹底した議論をしました 本人の名前を記事に載せるべきか ということについてです
両方の意見があるのが分ります
これはそのほんの一部です
異論もありましたが 彼らは最終的には 本名を載せないことに決めました 一般のメディアのほとんどが載せていたにもかかわらずです
彼らはそれが正しいことだとは思わなかったのです
善意のなせる技です
スターウォーズキッドのページの一番上には 本人の氏名を書き込まないことという 警告が今でもあります
書き込んだら即座に削除されます あの決定に同意しなかった人たちでさえ 決定を尊重し それを守るべく行動します 自分の意見よりも大きなものを信じているからです
法律家として言わせてもらうと 彼らは法や 先例拘束の原則といったものを 運営する中で作り出しているのです
これはWikipedia に限った話ではありません
様々なブログにも見られます
これは2005 年のビジネスウィーク誌の表紙です
ワオ! ブログがあなたのビジネスを変える!
これが馬鹿げて見えるのは分ります
あらゆるおかしなプロジェクトが行われていますから
これは私のお気に入りのブログです CatsThatLookLikeHitler.com
自分の猫はヒットラーに似ているという人たちが 写真を投稿します
分ります 4 番目のやつ 毎日家に帰ると あれが出迎えるところを想像してみてください
同じようなことは人を対象としても 行われています
これは失敗した肖像写真を集めたサイトです
こうあります 「丸太の柵のある牧歌的な草地
後ろにあるの 動物の死骸じゃない?」
「あれはどう見ても 動物の死骸だよ」
こういうのがずっと並んでいます
しかしこんなのも―所有者の要求により画像は削除されました
そう 所有者の求めで削除されたのです
ここで風刺された人が このサイトをやっている人にメールを送り 法的な脅しではなく 金銭によるのでもなく ただ「あれ削除してもらえない?」と言い
「ああ いいよ」と
私たちはオンラインアーキテクチャを作れると思います そのような人間的な要求をずっと 簡単に行えるようなものを ここで実現したいのは 私たちが出会うデータは クリックし 貼り付け コピーし 転送する対象であっても 実際は人の感情や努力や影響を 表しているのであり それをどう扱うか 倫理的な判断ができるようにするということです
それは現実世界へも拡がるだろうと思います
もっと検閲のある世界になり 至る所にカメラがあり ネットにも上げられるとき 「私は写真を公開されたくない」 そう書いた服を着た写真に対し
テクノロジーは 写真を撮った人に その人は公開される前に 連絡を求めていることを わかるようにでき
写真を撮った人は それをどう尊重するか決められます
現実の世界では そういうフィルタリングが パキスタンで行われているのを見ました
そして私たちにはこのようなシステムを作る手段があり 人々が出会ったフィルタリングを報告することができます
それはもはや「分らないけど行けないみたいだ 他へ行こう」というのではなく ネットワークのどこで何がブロックされ 検閲されているのかについての 集合的意識が突然生み出されるのです
テクノロジーを模倣した生物を 模倣したテクノロジーの話をしましょう 逆かもしれませんが
ニューヨーク大学の研究者が笑顔の描かれた 厚紙の小さなロボットを作りました モーターがついていて真っ直ぐにだけ進めます 旗が立っていて行きたい先が書かれており
「ここに行くのを助けてください」 と言っています
これをマンハッタンの通りで放しました
最近では何にでも資金が出るものです
ここに図示されているのは この曲がれないロボットの方向を変えるために 43人の人が手助けし ワシントンスクエアパークの一方の端から 別な端へと進んだ道のりです
これは第三の例であるヒッチハイクに繋がります
私はヒッチハイクが死に絶えたとは思いません
なぜか? Craigslist には相乗りの掲示板があるのです
これがヒッチハイク板と呼ばれていたとしたら 閑古鳥が鳴いていたでしょう
しかしこれは相乗り板です 実際は同じことですが
どうしてみんな ここを見に行くのでしょう?
わかりません たぶん彼らは 殺人者は前もって予定を組んだりしないと思っているのでしょう
いいえ 本当の答えは ひとたび見方を変えたなら かつては良かったけどなぜか駄目になった プロジェクトに対する古い考えから離れるなら Craigslist が示しているように 人の親切や共有は 再び活気を得るものなのです
そしてこれは CouchSurfing.org のようなものにより 際立って示されます
CouchSurfing はついに2者を結びつけたのです 遠くへ行って 見知らぬ他人の家のカウチにタダで寝泊まりしたい人と 見知らぬ遠くに住む人に 自分のカウチにタダで寝泊まりしてほしい人をです
素晴らしいアイデアです
このハチは確かに飛びました
どれほど多くのカウチサーフィンが成功しているかは驚くばかりです
疑問に思っておられるでしょうが これまでCouchSurfing に関わる事故は 1 件も起きていません
評判システムがあって カウチサーフィンをしたあと評価するようになっています だから選択の偏りはあるかもしれません
だから私が言いたいのは インターネットは単なる情報の山ではないということです
名詞ではなく 動詞なのです
そして進みつづけ 注意して耳を傾けるなら 気づくはずです その情報があなたに何か 語りかけているということに
それが語っているのは 昨日我々が聞いたこと デモステネスが私たちに語っているのです
「さあ行進しよう」と言おうではありませんか | So I thought this morning I would try to be the optimist, for the future of the Internet by drawing upon its present.
Now, it may seem like there is less hope today than there was before.
People are less kind. There is less trust around.
I don't know. As a simple example, we could run a test here.
How many people have ever hitchhiked?
I know. How many people have hitchhiked within the past 10 years?
Right. So what has changed?
It's not better public transportation.
So that's one reason to think that we might be declensionists, going in the wrong direction.
But I want to give you three examples to try to say that the trend line is in fact in the other direction, and it's the Internet helping it along.
So example number one: the Internet itself.
These are three of the founders of the Internet.
They were actually high school classmates together at the same high school in suburban Los Angles in the 1960s.
You might have had a French club or a Debate club.
They had a "Let's build a global network" club, and it worked out very well.
They are pictured here for their 25th anniversary Newsweek retrospective on the Internet.
And as you can tell, they are basically goof balls.
They had one great limitation and one great freedom The limitation was that they didn't have any money.
No particular amount of capital to invest, of the sort that for a physical network you might need for trucks and people and a hub to move packages around overnight.
They had none of that.
But they had an amazing freedom, which was they didn't have to make any money from it.
The Internet has no business plan, never did.
No CEO, no firm responsible, singly, for building it.
Instead, it's folks getting together to do something for fun, rather than because they were told to, or because they were expecting to make a mint off of it.
That ethos led to a network architecture, a structure that was unlike other digital networks then or since.
So unusual, in fact, that it was said that it's not clear the Internet could work.
As late as 1992, IBM was known to say you couldn't possibly build a corporate network And even some Internet engineers today say the whole thing is a pilot project and the jury is still out.
That's why the mascot of Internet engineering, if it had one, is said to be the bumblebee.
Because the fur-to-wingspan ratio of the bumblebee is far too large for it to be able to fly.
And yet, mysteriously, somehow the bee flies.
I'm pleased to say that, thanks to massive government funding, about three years ago we finally figured out how bees fly.
It's very complicated, but it turns out they flap their wings very quickly.
So what is this bizarre architecture configuration that makes the network sing and be so unusual?
Well, to move data around from one place to another -- again, it's not like a package courier.
It's more like a mosh pit.
Imagine, you being part of a network where, you're maybe at a sporting event, and you're sitting in rows like this, and somebody asks for a beer, and it gets handed at the aisle.
And your neighborly duty is to pass the beer along, at risk to your own trousers, to get it to the destination.
No one pays you to do this.
It's just part of your neighborly duty.
And, in a way, that's exactly how packets move around the Internet, sometimes in as many as 25 or 30 hops, with the intervening entities that are passing the data around having no particular contractual or legal obligation to the original sender or to the receiver.
Now, of course, in a mosh pit it's hard to specify a destination.
You need a lot of trust, but it's not like, "I'm trying to get to Pensacola, please."
So the Internet needs addressing and directions.
It turns out there is no one overall map of the Internet.
Instead, again, it is as if we are all sitting together in a theater, but we can only see amidst the fog the people immediately around us.
So what do we do to figure out who is where?
We turn to the person on the right, and we tell that person what we see on our left, and vice versa.
And they can lather, rinse, repeat. And before you know it, you have a general sense of where everything is.
This is how Internet addressing and routing actually work.
This is a system that relies on kindness and trust, which also makes it very delicate and vulnerable.
In rare but striking instances, a single lie told by just one entity in this honeycomb can lead to real trouble.
So, for example, last year, the government of Pakistan asked its Internet service providers there to prevent citizens of Pakistan from seeing YouTube.
There was a video there that the government did not like and they wanted to make sure it was blocked.
This is a common occurrence. Governments everywhere are often trying to block and filter and censor content on the Internet.
Well this one ISP in Pakistan chose to effectuate the block for its subscribers in a rather unusual way.
It advertised -- the way that you might be asked, if you were part of the Internet, to declare what you see near you -- it advertised that near it, in fact, it had suddenly awakened to find that it was YouTube.
"That's right," it said, "I am YouTube."
Which meant that packets of data from subscribers going to YouTube stopped at the ISP, since they thought they were already there, and the ISP threw them away unopened because the point was to block it.
But it didn't stop there.
You see, that announcement went one click out, which got reverberated, one click out.
And it turns out that as you look at the postmortem of this event, you have at one moment perfectly working YouTube.
Then, at moment number two, you have the fake announcement go out.
And within two minutes, it reverberates around and YouTube is blocked everywhere in the world.
If you were sitting in Oxford, England, trying to get to YouTube, your packets were going to Pakistan and they weren't coming back.
Now just think about that.
One of the most popular websites in the world, run by the most powerful company in the world, and there was nothing that YouTube or Google were particularly privileged to do about it.
And yet, somehow, within about two hours, the problem was fixed.
How did this happen?
Well, for a big clue, we turn to NANOG.
The North American Network Operators Group, a group of people who, on a beautiful day outside, enter into a windowless room, at their terminals reading email and messages in fixed proportion font, like this, and they talk about networks.
And some of them are mid-level employees at Internet service providers around the world.
And here is the message where one of them says, "Looks like we've got a live one. We have a hijacking of YouTube!
This is not a drill. It's not just the cluelessness of YouTube engineers. I promise.
Something is up in Pakistan."
And they came together to help find the problem and fix it.
So it's kind of like if your house catches on fire.
The bad news is there is no fire brigade.
The good news is random people apparate from nowhere, put out the fire and leave without expecting payment or praise.
I was trying to think of the right model to describe this form of random acts of kindness by geeky strangers. You know, it's just like the hail goes out and people are ready to help.
And it turns out this model is everywhere, once you start looking for it.
Example number two: Wikipedia.
If a man named Jimbo came up to you in 2001 and said, "I've got a great idea! We start with seven articles that anybody can edit anything, at any time, and we'll get a great encyclopedia! Eh?"
Right. Dumbest idea ever.
In fact, Wikipedia is an idea so profoundly stupid that even Jimbo never had it.
Jimbo's idea was for Nupedia.
It was going to be totally traditional. He would pay people money because he was feeling like a good guy, and the money would go to the people and they would write the articles.
The wiki was introduced so others could make suggestions on edits -- as almost an afterthought, a back room.
And then it turns out the back room grew And today, Wikipedia is so ubiquitous that you can now find it on Chinese restaurant menus.
I am not making this up.
I have a theory I can explain later.
Suffice it to say for now that I prefer my Wikipedia stir-fried with pimentos.
But now, Wikipedia doesn't just spontaneously work.
How does it really work? It turns out there is a back room that is kind of windowless, metaphorically speaking.
And there are a bunch of people who, on a sunny day, would rather be inside and monitoring this, the administrator's notice board, itself a wiki page that anyone can edit.
And you just bring your problems to the page.
It's reminiscent of the description of history as "one damn thing after another," right?
Number one: "Tendentious editing by user Andyvphil."
Apologies, Andyvphil, if you're here today.
I'm not taking sides.
"Anon attacking me for reverting."
Here is my favorite: "A long story."
It turns out there are more people checking this page for problems and wanting to solve them than there are problems arising on the page.
And that's what keeps Wikipedia afloat.
At all times, Wikipedia is approximately 45 minutes away from utter destruction. Right?
There are spambots crawling it, trying to turn every article into an ad for a Rolex watch.
It's this thin geeky line that keeps it going.
Not because it's a job, not because it's a career, but because it's a calling.
It's something they feel impelled to do because they care about it.
They even gather together in such groups as the Counter-Vandalism Unit -- "Civility, Maturity, Responsibility" -- to just clean up the pages.
It does make you wonder if there were, for instance, a massive, extremely popular Star Trek convention one weekend, who would be minding the store?
So what we see -- what we see in this phenomenon is something that the crazed, late traffic engineer Hans Monderman discovered in the Netherlands, and here in South Kensington, that sometimes if you remove some of the external rules and signs and everything else, with a safer environment in which people can function, and one in which they are more human with each other.
They're realizing that they have to take responsibility for what they do.
And Wikipedia has embraced this.
Some of you may remember Star Wars Kid, the poor teenager who filmed himself with a golf ball retriever, acting as if it were a light saber.
The film, without his permission or even knowledge at first, found its way onto the Internet.
Hugely viral video. Extremely popular.
Totally mortifying to him.
Now, it being encyclopedic and all, Wikipedia had to do an article about Star Wars Kid.
Every article on Wikipedia has a corresponding discussion page, and on the discussion page they had extensive argument among the Wikipedians as to whether to have his real name featured in the article.
You could see arguments on both sides.
Here is just a snapshot of some of them.
They eventually decided -- not unanimously by any means -- not to include his real name, despite the fact that nearly all media reports did.
They just didn't think it was the right thing to do.
It was an act of kindness.
And to this day, the page for Star Wars Kid has a warning right at the top that says you are not to put his real name on the page.
If you do, it will be removed immediately, removed by people who may have disagreed with the original decision, but respect the outcome and work to make it stay because they believe in something bigger than their own opinion.
As a lawyer, I've got to say these guys are inventing the law and stare decisis and stuff like that as they go along.
Now, this isn't just limited to Wikipedia.
We see it on blogs all over the place.
I mean, this is a 2005 Business Week cover.
Wow. Blogs are going to change your business.
I know they look silly. And sure they look silly.
They start off on all sorts of goofy projects.
This is my favorite goofy blog: Catsthatlooklikehitler.com.
You send in a picture of your cat if it looks like Hitler.
Yeah, I know. Number four, it's like, can you imagine coming home to that cat everyday?
But then, you can see the same kind of whimsy applied to people.
So this is a blog devoted to unfortunate portraiture.
This one says, "Bucolic meadow with split-rail fence.
Is that an animal carcass behind her?"
You're like, "You know? I think that's an animal carcass behind her."
And it's one after the other.
But then you hit this one. Image removed at request of owner.
That's it. Image removed at request of owner.
It turns out that somebody lampooned here wrote to the snarky guy that does the site, not with a legal threat, not with an offer of payment, but just said, "Hey, would you mind?"
The person said, "No, that's fine."
I believe we can build architectures online to make such human requests that much easier to do, to make it possible for all of us to see that the data we encounter online is just stuff on which to click and paste and copy and forward that actually represents human emotion and endeavor and impact, and to be able to have an ethical moment where we decide how we want to treat it.
I even think it can go into the real world.
We can end up, as we get in a world with more censors -- everywhere there is something filming you, maybe putting it online -- to be able to have a little clip you could wear that says, "You know, I'd rather not."
And then have technology that the person taking the photo will know later, this person requested to be contacted before this goes anywhere big, if you don't mind.
And that person taking the photo can make a decision about how and whether to respect it.
In the real world, we see filtering of this sort taking place in Pakistan.
And we now have means that we can build, like this system, so that people can report the filtering as they encounter it.
And it's no longer just a "I don't know. I couldn't get there. I guess I'll move on," but suddenly a collective consciousness about what is blocked and censored where online.
In fact, talk about technology imitating life imitating tech, or maybe it's the other way around.
An NYU researcher here took little cardboard robots with smiley faces on them, and a motor that just drove them forward and a flag sticking out the back with a desired destination.
It said, "Can you help me get there?"
Released it on the streets of Manhattan.
They'll fund anything these days.
Here is the chart of over 43 people helping to steer the robot that could not steer and get it on its way, from one corner from one corner of Washington Square Park to another.
That leads to example number three: hitchhiking.
I'm not so sure hitchhiking is dead.
Why? There is the Craigslist rideshare board.
If it were called the Craigslist hitchhiking board, tumbleweeds would be blowing through it.
But it's the rideshare board, and it's basically the same thing.
Now why are people using it?
I don't know. Maybe they think that, uh, killers don't plan ahead?
No. I think the actual answer is that once you reframe it, once you get out of one set of stale expectations from a failed project that had its day, but now, for whatever reason, is tarnished, you can actually rekindle the kind of human kindness and sharing that something like this on Craigslist represents.
And then you can highlight it into something like, yes, CouchSurfing.org.
CouchSurfing: one guy's idea to, at last, put together people who are going somewhere far away and would like to sleep on a stranger's couch for free, with people who live far away, and would like someone they don't know to sleep on their couch for free.
It's a brilliant idea.
It's a bee that, yes, flies.
Amazing how many successful couch surfings there have been.
And if you're wondering, no, there have been no known fatalities associated with CouchSurfing.
Although, to be sure, the reputation system, at the moment, works that you leave your report after the couch surfing experience, so there may be some selection bias there.
So, my urging, my thought, is that the Internet isn't just a pile of information.
It's not a noun. It's a verb.
And when you go on it, if you listen and see carefully and closely enough, what you will discover is that that information is saying something to you.
What it's saying to you is what we heard yesterday, Demosthenes was saying to us.
It's saying, "Let's march." Thank you very much. | {
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「おいミトロフ! 食い過ぎ!」
額にたんこぶを作ったコウが机をばしばしと叩いた。
その隣に座っている幼子が、くいすぎぃ、と真似をする。
「ぼくは身体が大きいんだ。食べる量が多いのは当然のことだ」
真面目な表情で言い返し、ミトロフは大皿から肉と野菜の炒め物をお代わりした。
ああー! と叫ぶのは、同じように卓を囲んでいる子どもたちである。
「みとろふがまたおかわりした! ずるい!」
と、顔を包帯で覆った少年が指差す。
「あたしもおかわりする!」
と、首に黒蛇の鱗を浮き上がらせた少女がテーブルに身を乗り出した。
中庭の長机を並べ、そこには子どもたちと、数人の修道女が集まっている。教会の全員で夕食を囲んでいた。
「ちと見ぬ間に、ずいぶんと仲を深めたのう」
グラシエが目を丸くしている。
グラシエとカヌレが食事の支度を手伝っている間に、ミトロフは意図せず子どもたちと交流することになった。
ぼうっと座っていたミトロフを、ベッドを抜け出したコウとカイが棒を片手に襲撃してきたのを返り討ちにしたのだが、子どもたちはそれを遊びと認識したらしい。
見知らぬ上に貴族らしいミトロフの佇まいに怯えたように遠巻きにしていた子どもらも、コウとカイを筆頭にした年長の子たちが食ってかかり、転がり、笑っているのを見て、ミトロフは危険な生き物ではないと理解したようだった。
少女たちのおままごとに律儀に参加し、本を抱えた少女に読んで聞かせ、片手の棒切れで男子たちの剣を打ち払っていたら、いつの間にか夕暮れになって食卓に料理が並んでいたというわけである。
「すまないね、ミトロフくん。うちの子どもたちの相手をするのは大変だったろう」
サフランが申し訳なさそうに言う。
ミトロフは左手で幼子の拳をいなしながら、右手のナプキンで口元を拭いた。
「大変とは、なにがだ?」
「なにって......振り回されるだろう? うちの子たちは元気が溢れていてね」
苦笑するサフランに、ミトロフは首を傾げた。
「別段、ぼくはなにもしていない。誘われた遊びに参加しているだけだ」
ぽーんと、ひと口大に千切られたパンが横から飛んできて、ミトロフの頬にぶつかってテーブルに落ちた。
ミトロフはそれをひょいと摘んで口に入れた。
「......テーブルマナーはよく教えたほうがいいかもしれない」
「てーうるあなー!」
「そうだ、よく分かってるじゃないか。まずはパンとお手玉の違いを学ぶところから始めよう」
ミトロフの物言いに、背後で立って控えていたカヌレがくすくすと口元を押さえた。
「おぬし、子守りが上手いのう......」
「グラシエは苦手か?」
首を傾げたミトロフに、横からコウが顔を寄せ、ひそひそと告げ口をした。
「グラシエってまじこわいんだよ、すぐ怒るんだ。話し方も婆さんみたいだし」
「コウ、聞こえておるぞ。そこまで怒ってほしいならそうしてやってもよいがの?」
笑顔を向けるグラシエの迫力に、思わずミトロフのほうが身を引いてしまう。
しかしコウはそんな表情に慣れてしまったのか、あるいは若さゆえの蛮勇か、へんと鼻で笑うと、グラシエに堂々と言い放った。
「鬼婆」
「––––よきかな。そこを動くでないぞ」
グラシエが席を立つと同時に、コウは椅子を飛び降りている。
途端に始まったのは鬼ごっこであり、舞台は目の前の広い庭だ。子どもたちは楽しいことに目がない。食器やパンを放り出すなり、あっという間に鬼ごっこに参加する。
「にぎやかなことだ」
駆け回る子どもたちとグラシエを眺めながら、ミトロフは鷹揚に頷き、籠に盛られた丸パンをひとつ取った。
薄闇の中で、わいのきゃいのと明るい子どもたちの声が響く。
サフランは席を立ち、テーブルの燭台に火を灯すと、空いた食器をまとめていく。
「ミトロフさん」
と、穏やかに声をかけたのは、グラシエの姉、ラティエである。
並んだ椅子の背に手を渡らせながら、すぐ近くまでやって来ている。
蝋燭の灯火に照らされた細面は白く、陶器のように滑らかな肌をしている。グラシエよりも大人びた雰囲気を纏っているが、まぶたを覆う黒い布が目立つ。
「ラティエ殿、腕に手を」
ラティエはそっとミトロフの腕に指をかける。慎ましやかな所作の中にたおやかさがある。
ミトロフはラティエの動きに合わせながら、空いた隣席に導いた。
「こちらこそ挨拶が遅れて失礼しました。妹からはあなたのお話をよく聞いていたんですよ」
椅子の背もたれに寄り掛からず、しゃんと背筋を伸ばした姿は、グラシエとはまた違う趣きの凛とした芯をミトロフに感じさせた。
それでいて透き通るほどに白い肌と、線の細い輪郭も相まって、手を触れることさえ躊躇するガラス細工のような儚さを纏っている。
ミトロフは隣に座り、テーブルに伏せられたグラスをひとつ取ると、水差しから注いだ。
「右手の2時の方向にグラスを置く。肘を伸ばせば届く距離だ」
「ご配慮ありがとうございます。ずいぶんと慣れていらっしゃいますね......?」
言われてようやく、ミトロフは自分の行為的なものでないことに気づいた。
「子どものころに身についた習慣というのは、どうも自然と出てしまうようだ」
ミトロフは苦笑する。そこには昔を懐かしむ気持ちが混在する。
「世話をしてくれていたばあやが目を病んでな。しばらく、こうして手助けをしていたことがある」
「お喜びになられたでしょう」
「どうかな。至らぬところも多かった。かえって気を遣わせてしまっていた気がする」
ミトロフは幼き日の思い出をひとつ拾い上げると、現実に意識を戻した。
「なにかぼくに話が?」
ええ、と、いえを混ぜ合わせた声は、肯定と迷いを選びきれていない様子である。
庭を走る子どもたちの笑い声が響く。ラティエは顔を向け、口元に笑みを浮かべた。瞼を覆う布はあれど、その瞳には子どもらとグラシエが映っている。
「......グラシエは、幼いころからよく私を助けてくれました。ここにお世話になってからも、街に来るたびに様子を見に来てくれて。里の用命で冒険者の真似事をすると聞いたときには、ずいぶんと心配したのです」
「そういえば、グラシエは宿で寝泊まりをしていたようだが」
「子どもたちと、それに私に心配をかけまいとしたのでしょう。あの子が冒険者として迷宮に潜っている間は、ほとんど顔を出しませんでした。迷宮では怪我をすること、命を失うことは珍しくないと聞きます。帰ってくるはずの者が帰ってこない......そうした経験を、あの子たちは知りすぎてしまっていますから」
「それじゃまるで、グラシエは死ぬことを覚悟していたみたいじゃないか......?」
「あの子は生真面目ですから。必ずうまくいくと期待することはできなかったのでしょうね。自分がいなくなっても、子どもたちを傷つけぬようにと、ひとりで宿を取ったのです」
宿の部屋でひとり、姉や里のことを考えながら、迷宮に挑む決意を固めているグラシエの姿を、ミトロフは想像した。
待っている者、帰りたい場所がありながら、地下穴に潜っていく心境とは、どんなものであったろう。
出会ったときには思いもしなかったグラシエの心の内を、今になってミトロフは察する。
明るく、頼もしく、初心者であったミトロフに親切にしてくれたグラシエであっても、そこに恐怖や葛藤がなかった訳がない。
あるいは街の中で孤独に迷宮に挑む恐ろしさゆえに、ミトロフを仲間として求めたのかもしれない。
庭を走り回るグラシエは、手近な子どもを捕まえて抱きしめる。
きゃー、と声をあげる子どもは満面の笑みである。グラシエもまた子どものように透明に笑っている。
「楽しそうだ」
「ええ、本当に。父が早くに亡くなってしまったことで、あの子は弓を取って狩人となりました。獣を狩り、夜盗を追い払い、ついには迷宮にまで。今はこの教会を守るため、また争いごとに......本当は、とても優しい子なのです」
ラティエはミトロフを見る。不思議と今ばかりは、その焦点がくっきりとミトロフの瞳を掴んでいるような気がした。
「あの子は、あなたに大変な借りがあると言っていました。どのような形であれ、この一件が落ち着けば、またあなたと迷宮に行くつもりだと思います」
それは、と。ミトロフは返答に悩む。そんなことはない、とは言えない。
なによりミトロフ自身が、グラシエはまた戻ってきてくれると当然のように思っていた。
カヌレでまた迷宮に挑む。それですべてが元通りになるような気がしていた。
けれどグラシエにとって、迷宮に赴くことは“元通り“ではない。彼女には彼女の人生があり、居場所がある。
そんな当たり前のことが今になってはっきりと分かったようである。
「このような物言いは、私のわがままです。どうか、妹を迷宮に連れて行かないでいただけませんか?」 | “Hey Mitrof! You’re eating too much!”
Kou slammed the table, creating a knot on his forehead.
A young child sitting next to him imitated, “You’re eating too much!”
“I have a big body—It’s only natural for me to eat a lot.”
Mitrof replied with a serious expression and got himself another serving of stir-fried meat and vegetables from the large dish.
“Ahh!” echoed the other children gathered around the table.
“Mitrof got another serving! That’s not fair!”
And the boy, with his face wrapped in bandages, pointed his finger.
“I want seconds too!”
The girl with black snake scales on her neck leaned over the table.
Long tables were set up in the courtyard, and children and several nuns gathered there. Everyone from the church was having dinner together.
“It seems like you’ve formed quite a deep bond in a short amount of time.”
Grace’s eyes widened.
While Grace and Canule were helping with the meal preparations, Mitrof unintentionally began to interact with the children.
Mitrof was sitting absent-mindedly when Kou and Kai, who had climbed out of bed with sticks in hand, attacked him. He retaliated and defeated them, but the children apparently recognized it as play.
The younger children who were timid about Mitrof’s unfamiliar and aristocratic appearance gradually moved away, but the older children, led by Kou and Kai, became aggressive and started joking around, rolling around, and laughing. It seems Mitrof is understood not to be a dangerous creature.
He politely participated in the girls’ house game, read a book to a girl while listening, and even used a stick to fend off the boys’ swords. Before he knew it, it had become dusk, and dishes were lined up on the table.
“I’m sorry, Mitrof-kun—It must have been tough to handle our children.”
Saffron said apologetically.
Mitrof wiped his mouth with a napkin in his right hand while holding the young child’s fist with his left hand.
“What’s so difficult?”
“Well... being overwhelmed? My children are full of energy, you know.”
Saffron gave a wry smile, and Mitrof tilted his head.
“I haven’t done anything wrong—I’m just participating in the invited activity.”
Suddenly, a palm-sized piece of bread was sliced off and flew towards Mitrof, hitting his cheek and falling onto the table.
Mitrof picked it up and popped it into his mouth.
“...You might want to teach them better table manners.”
“Teh-ru-a-na-!”
“Right, you understand it well—let’s start by learning the difference between bread and a juggling ball.”
Canule, who was standing behind Mitrof, stifled a laugh at his words.
“You’re good at babysitting...”
“Do you not like Grace?”
To Mitrof, who tilted his head, Kou approached from the side and whispered.
“Grace is really scary—she gets angry quickly and speaks like an old lady.”
“Kou, I can hear you—if you want me to be that angry, I can do that for you, okay?”
Grace smiled, and Mitrof involuntarily backed away from her powerful presence.
However, whether Kou had grown accustomed to such expressions or was simply reckless due to his youth, he sneered and boldly declared it to Grace.
“You old hag.”
“——Well, well. Stay where you are.
As soon as Grace stood up from her seat, Kou leaped off his chair.
Then, a game of tag immediately began, and the stage was the large garden before their eyes. The children were always looking for fun. They quickly joined the game of tag, throwing dishes and bread aside.
“It’s a lively place.”
Watching the children run around with Grace, Mitrof nodded gently and took a round loaf of bread from the basket.
In the dim light, the sound of cheerful children’s voices could be heard.
Saffron stood up and lit the candlestick on the table, then collected the empty dishes.
“Mitrof-san.”
It was Grace’s sister, Lattier, who spoke calmly.
Walking over to him with her hand on the back of a chair, she came close.
White and with porcelain-smooth skin, the slender face in the candlelight. She had a more mature atmosphere than Grace, but the black fabric covering her eyes stood out.
“Lattier-dono, please take my arm.”
Mitrof stood up and extended his arm, and Lattier gently placed his fingers on it. There was a graceful elegance in his modest gesture.
Mitrof led Lattier to the empty seat next to him while following Lattier’s movements.
“I apologize for being late to greet you—my sister spoke very highly of you.”
Mitrof sensed a different kind of elegance in Lattier’s dignified posture, with her back straight and not leaning on the chair’s backrest, unlike Grace.
Meanwhile, Lattier’s delicate features, translucently white skin, and slim outline portrayed a fragile, glass-like beauty, even hesitating to touch them.
Mitrof sat down next to him and picked up a glass that had been placed face-down on the table, pouring water from the pitcher.
“I place the glass in the direction of o’clock to your right—it should be within reach if you stretch out your elbow.”
“Thank you for your consideration—you seem quite accustomed to this...?”
Finally, Mitrof realized that his actions were not commonplace upon hearing the words.
“It seems that habits developed during one’s childhood tend to manifest naturally.”
Mitrof chuckled. There was a mix of nostalgia for the past in his expression.
“An elderly woman who had taken care of me had developed eye problems—I helped her out like this for a while.”
“I’m sure she was pleased.”
“Not sure about that—I was quite inadequate and may have just caused more trouble.”
Mitrof picked up on his childhood memories before returning to reality.
“Is there something you want to talk to me about?”
The voice mixed affirmation and indecision, showing that he had not fully made up his mind.
The laughter of children running through the garden echoed. Lattier turned her face towards the children and Grace with a smile on her lips, even though her eyes were covered by a cloth.
“...Grace has always been helping me since we were young—even after I came here, she would check on me whenever she came to the city. I was very worried when I heard that she was going on an adventure because of her duty in the village.”
“Come to think of it, Grace was staying at the inn.”
“She probably didn’t want the children and me to worry about her—while she was exploring in the labyrinth as an adventurer, she hardly showed her face here. It is said that getting injured or losing one’s life is not uncommon in the labyrinth. Those who were supposed to return didn’t come back... The children have experienced such things too much.”
“Does that mean Grace was prepared to die...?”
“She is a very serious girl; she probably couldn’t expect everything to go well. She took the inn alone to make sure she didn’t hurt the children even if she was gone.”
Mitrof imagined Grace alone in her room at the inn, thinking about her sister and the village while preparing to challenge the labyrinth.
What was it like to venture into the underground cave, despite having someone waiting for you and a place to come back to?
Mitrof could now sense what was in Grace’s heart, something that he had never thought of when they first met.
Even though Grace was bright and dependable and helped Mitrof, who was a beginner, she must have experienced fear and conflict.
Perhaps she sought Mitrof as a companion because of the terror of venturing into the labyrinth alone in the city.
Grace ran around the garden, catching a nearby child and embracing them.
The child screamed, “Kyaa!” with a smile on their face. Grace was also laughing transparently, like a child.
“They seem to be having fun.”
“Yes, really. After her father passed away early, that child took up the bow and became a hunter. She hunted beasts, drove away bandits, and finally even went into the labyrinth. Now, she protects this church and gets involved in conflicts... actually, she’s a very kind girl.”
Lattier looked at Mitrof. Somehow, Mitrof felt like her gaze was firmly fixed on his eyes.
“That child said she owes you a great debt—in any form, once this matter is settled, I think she intends to go to the labyrinth with you again.”
To that, Mitrof struggled to respond. He couldn’t say that there was no such thing.
Above all, Mitrof himself had naturally thought that Grace would come back.
He, Canule, and Grace would challenge the labyrinth again together. He felt like that would make everything go back to normal.
However, going to the labyrinth was not “normal” for Grace. She had her own life and a place to be.
It seems that such an obvious thing is now clearly understood.
“This is selfish of me—please, won’t you refrain from taking my sister to the labyrinth?” | {
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アリオとジニーは気持ちが悪そうに、ひざをつく。
「......吐きそうだ」
「手足がしびれます。立っていられないです。毒ガスかな」
苦しんではいるが、まだ症状は軽い。
力ある者ほど邪神の加護の影響を受ける。だから力の弱いアリオとジニーはまだましなのだろう。
「......ゲルベルガさま、大丈夫か?」
「............ゥゥゥゥ」
ゲルベルガさまは俺の懐の中でぷるぷる震えている。
ゲルベルガさまは神鶏。この中でもっとも邪神の加護の影響を受けているはずだ。
もしかしたら、俺たちがロードと戦っている間、邪神の加護は発動しかけていたのかもしれない。
だから、眠っているようにみえたゲルベルガさまは、邪神の加護の影響で具合が悪くなっていた可能性もある。
俺は魔法で周囲を探索しながら叫ぶ。だが見つからない。
巧妙に隠されていることに加えて、邪神の加護により俺自体も本調子ではないからだろう。
「ケーテ、邪神の加護だ! コアを探せ。コアを壊せば――」
ケーテがかりで探せば見つかるかもしれない。そう考えて俺は叫ぶ。
邪神の加護はエリック、ゴラン、シアたちとハイロードを倒したときにも使われた。
あのときはコアを壊して、邪神の加護を消滅させたのだ。
「ないのである!」
ケーテの悲鳴のような声が響く。ケーテもすでに探し始めていたようだ。
魔力探知の精度も邪神の加護のせいで、かなり落ちている。
とはいえ、ここは屋外。隠せる場所も近くには見当たらない。見つけやすいはずだ。
だというのに見つからない。
「......下か?」
俺は地中に向けて魔力探知を発動する。当然意識も下へと向かう。
まさにそのとき、
「上だ、間抜けが!」
低い声が、俺の耳に届くのと同時に巨大な魔力弾が降り注ぐ。
俺はとっさにアリオとジニー、そしてガルヴを守るために障壁を張る。
ケーテは強力な魔導士ではあるが、邪神の加護の影響下なため自分の身を守るのでだ。
邪神の加護の影響下にいても、並の魔力弾ならば防げるのだが、魔力弾の威力が高すぎる。
守りきるのは容易ではない。
魔力弾の雨が収まった後、俺はアリオたちに尋ねる。
「無事か?」
「ロックさん、血が!」
ジニーが悲鳴に近い声をあげるので、俺は微笑んでおく。
「かすり傷? ふん。肩の肉がえぐれてるようにみえるがな?」
上空からゆっくりと、俺の右肩の肉を拳の一ほどの大きさを吹き飛ばした奴が降りてくる。
「気のせいだろう。俺のかすり傷より、お前の顔色のほうが心配だな。どうしたんだ? まるで死んでいるみたいだぞ?」
俺は心底驚いていた。だが平然と返す。
「ロック、あいつは......あいつは、死んだはずなのである!」
降りてきたのは、倒したはずの真祖だ。
「我が死ぬだと? トカゲは道理を知らぬようだ」
顔色は土気色で、一般的なヴァンパイアのそれではない。
何らかの方法を使っているのだろうが、俺にはわからなかった。
「......きつかろう? 神の加護」
降りてくると、真祖はロードの灰に手を突っ込んだ。
そしてメダルを取り出す。そのメダルはいつものロードのメダルとは気配が違った。
「網を張っていた。こんなに早くかかるとは思わなかったぞ」
「そうか。お前はコウモリじゃなく、蜘蛛だったのか?」
そういいながら、俺は魔力探知を素早くメダルにかけた。
それに気付いたのだろう。真祖はにやりと笑うと、メダルにかかった魔法を解いた。
「ロック、あれが......」
ケーテも気付いたようだ。邪神の加護のコアをメダルに偽装していたようだ。探しても見つからないはずだ。
「おかげで、貴様も気付かなかっただろう? これを埋め込むと強化されるのだ。一石二鳥であろう?」
ロードの割に強いと思ったが、邪神に強化されたほどではなかった。その謎がやっとわかった。
真祖はそのメダルを口に入れて飲み込む。
「神の加護を解きたいならば、我の腹を割くしかあるまいよ」
厄介なことこの上ない。
ただでさえ真祖は強いのだ。邪神の加護の中で戦い倒すのは非常に面倒である。
「......よほど俺が怖かったとみえる」
「怖くはない。だが、猿の割に、お前は中々やるようであるからな」
「このようなロードを王都近くの村に何人も派遣し、お前が引っかかるのを待っていたのだ」
そういって真祖は楽しそうに笑う。
「それはよかった。俺じゃない冒険者がやってきていたら、殺されていたところだ」
真祖を倒してから時間が経っていない。ということはこの罠も仕掛けたばかりということ。
恐らく前から占拠していた村に、邪神の加護を埋め込んだロードを送り込んだのだ。
だから、さほど時間をかけずに罠を整えることが出来たのだろう。
「死ぬのが自分でよかったと思っているのか? 自己犠牲精神にあふれることだ」
「まさかまさか。死ぬのはお前だ。いや、お前はもう死んでいるのかも知れないが」
「ふん」
そんなことを真祖と話しながら、俺は皆に念話で話しかける。
『アリオ、ジニー。頼む。ガルヴを連れて逃げてくれ』
「で、でも、傷が」
念話だと気付かないようで、ジニーは口に出して答える。
『静かに。俺にとっては本当にかすり傷だし、面倒だが倒せる相手だ』
『この前、倒した相手であるしな! 心配はいらないのである!』
ケーテが元気にそう言ってくれたおかげで、アリオとジニーは逃げてくれる気になったようだ。 | Ario and Ginny looked ill as they fell to their knees.
“...I’m going to vomit.”
“My hands and feet are numb. I cannot stand. Is it poisonous gas?”
While they were in pain, the symptoms were still light.
It was those who were strong who felt the full effect of the protection of the evil god. And so Ario and Ginny got off lightly, because they were weak.
“...Lord Gerberga. Are you all right?”
“...Oooo...”
Lord Gerberga was shaking within my jacket.
Lord Gerberga was the God Fowl. And so he should be feeling the effects more than anyone here.
Perhaps while I was fighting against the Lord, the protection had already started to be activated.
And so while Lord Gerberga had appeared to be asleep, he might have actually been feeling ill due to the effects.
I cast magic over the surrounding area and searched. However, I could not find it.
Not only was it well-hidden, but I wasn’t at my best due to the protection of the evil god.
“Kathe. It’s the protection of the evil god! Find the core! If we can destroy it...”
Perhaps if both of us searched, we may find it. That’s what I thought as I shouted.
This protection of the evil god had been used before, when I defeated a High Lord with Eric, Goran, and Shia.
That time, we had been able to destroy the core.
“I cannot find it!”
Kath’s voice sounded like a scream as it echoed. So she was already searching for it.
Due to the protection of the evil god, the precision of magic detection had fallen greatly.
That being said, we were outside. And I couldn’t see any place where it could be hidden. We should be able to find it easily.
And yet we couldn’t.
“...Is it below?”
I activated magic detection towards the ground. Of course, that meant my attention moved down as well.
That’s when it happened.
“Up, you fool!”
A low voice rang in my ears, and then giant magic bullets rained down from above.
I immediately cast a barrier to protect Ario, Ginny, and Grulf.
While Kathe was a powerful sorcerer, she was under the influence of the evil god’s protection, and it was all she could do to save herself.
Even under these conditions, I could stop normal magic bullets. But these were extra powerful.
Stopping them was no easy feat.
When the rain finally stopped, I turned to the others.
“Are you all right?”
“Mr. Locke. You’re bleeding!”
Ginny screamed. But I smiled.
“It’s just a scratch. Don’t worry about it.” “A scratch? Hmph. It looks like a piece of your shoulder was carved out to me?”
From above, the person who had blown a chunk off my shoulder began to descend slowly.
“You’re just seeing things. I would be more worried about your face. What’s wrong? You look like you’re dead?”
I was actually surprised, but remained calm.
“Locke, that one...he should be dead!”
The one who came down was the true ancestor that we had already defeated.
“I should be dead? You lizards cannot comprehend the truth, it seems.”
Its face was ghastly pale, and different from average vampires.
Perhaps there was some method to it, but I did not know.
“...It’s painful, isn’t it? The god’s protection.”
After coming down, the true ancestor shoved his hand into the ashes of the Lord.
And then he took out the medal. This too looked different from the medals usually found in Lords.
“I had cast my nets. But did not expect to catch you so quickly.”
“I see. So you’re not a bat, but a spider?”
I said as I quickly used magic detection on the medal.
But it must have noticed me doing this. The true ancestor grinned and then undid the magic on the medal.
“Locke. That...”
Kathe realized it as well. The core had been made to look like a medal. That’s why we were unable to find it.
“Even you did not notice it. And they are strengthened when this is buried in them. It’s two birds with one stone, isn’t it?”
He had seemed strong for a Lord, but not as strong as someone strengthened by the evil god. But the mystery was solved now.
The true ancestor put the medal in his mouth and swallowed it.
“If you want to undo this protection, you will have to crack me open.”
This was incredibly dangerous now.
The true ancestor was strong enough on his own. And fighting and defeating him here would be very troublesome.
“...You must be very afraid of me then.”
“I’m not afraid. However, you are rather capable for an ape.”
“I sent a lot of Lords like this one to different villages around the capital, and waited for you to get caught.”
The true ancestor said with a gleeful laugh.
“I’m glad it was me, then. Were it any other Adventurer, they would have been killed.”
But not much time had passed since we last defeated him. So that meant he had only set the traps very recently.
These were likely villages he already had control over, and he sent Lords with the evil god protection embedded in them to the villages.
And so he was able to set these traps in no time at all.
“You are happy that you’re the one who is going to die? How very noble of you.”
“Hardly. It’s you who is going to die. Well, maybe you are already dead.”
“Hmph.”
As we talked like this I communicated to the others through telepathy.
‘Ario, Ginny. Please. Take Grulf and run.’
“B-but, your wound...”
Ginny didn’t realize it was telepathy, and said this out loud.
‘Be quiet. It’s only a scratch for me. And while he is troublesome, I can still defeat him.’
‘We defeated him before! There is no need to worry!’
Kathe agreed cheerfully, and so Ario and Ginny seemed to be convinced. | {
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建物が建つと「場所」となり いくつもの建物が建つと 「街」となります この様な 政治、文化、経済など いろいろな力が交じり合って 形作られるこういう場所には 実際に 出かけていって 中を歩き回ることができます
匂いに触れ 感じを掴み
その場の雰囲気を経験することができます
しかしここ数年 大きく変化したと思うのは 外の世界に触れる機会が 徐々に減り コンピューターの前に座っている時間が 増えたことです
特にiPhoneを手にした2007年頃から 一日中画面の前に座っているだけでなく スクリーンの前から立ち上がって ポケットに入れて持ち運ぶ小さな画面を 見るようになりました
自分でもびっくりするほど あっという間に 実世界との接し方が変わってしまったのです
インターネットが普及して15年 常にネットを使う状態になってからは 4~5年ですが 周囲の環境への接し方が 変わってしまいました 注意力が常に分散し スクリーンの中にあるものと 自分の周囲と 両方の世界を眺めているのです
さらに 気になったのは スクリーンの中の世界 それ自体は 実際にあるものとは思えないことです
インターネットのイメージを探すと 見つかるのは この有名なオプテの画像だけであり インターネットを銀河になぞらえた 無限に広がる空間には 我々が属しているとは思えません
全体像を捉えることは不可能でしょう
このイメージを見る度に アポロから撮影した 青いビー玉のような 地球の写真を思い出します 全体を捉えることは不可能であり その広がりの中では
我々はちっぽけな存在でしかありません
インターネットの世界とスクリーンがあって 私を取り巻く 実世界があっても それらを一緒にすることは できないのです
そう考えているうちに こんな事が起こりました
たまにあるのですが インターネット回線が故障し ケーブル会社の社員が修理にやって来ました ソファの後ろの埃だらけの ケーブルを辿り 家の入り口近くから 地下室 裏庭へと出ると 外壁の前でケーブルが ごちゃごちゃになっていました
彼はそこでケーブル沿いに走って 逃げるリスを目撃し こう言いました 「これが原因だ
インターネットが リスに かじられている」 これは驚くべきことでした インターネットは超越的な概念であり 買い物やデート 革命の方法までをも変えた 通信方法の取り決めです
言うまでもなく リスがかじれるものではありません でもどうやら 私のインターネットは
リスの歯に やられてしまったようです 突然 こんな事が頭によぎりました ケーブルを壁から引き抜いて それを辿ったら どこに続いているのだろう?
インターネットは実際に訪れることのできる 場所でしょうか?
行けたら 誰に出会うでしょう?
何かが実在するのでしょうか?
誰に聞いても その答えは「ノー」です
こちらがインターネット 赤ランプ付きの黒い箱 イギリスのコメディー番組 「ハイっ、こちらIT課!」で使われました
通常は受信がしやすい様 ビッグベンのてっぺんに設置されているが 通常は受信がしやすい様 ビッグベンのてっぺんに設置されているが 午後の会議で使えるよう インターネットの代表者から 借りてきたと 2人のオタク社員が技術に無知な同僚を からかう全くウソの話です
「短時間なら借りても大丈夫だ」と説明すると 同僚は この箱を心配そうに眺めて訊きます 「これがインターネット?インターネット全体?重いの?」
彼らは答えます「もちろん違うよ インターネットには重さなんかありません」
恥ずかしいことに 私が探していインターネットも 人が聞いたら笑うような こんなものだったんです
不定形のブヨブヨしたものだとか 赤ランプのピカピカする ばかげた黒い箱でした
インターネット「そのもの」なんてないんです
しかし実際には 現実のインターネットの世界があるのです そこで二年間 様々な 「インターネットの場」を訪ねて廻りました 建設された街同等の電力を使う 大規模なデータセンターや こんな所にも行きました ニューヨークの60 Hudson Street ビルです 世界で最も大きなビルの1つであり 世界中のどこよりも
たくさんのネットワークがお互いに接続される 世界でも屈指の場所です
この接続は明らかに物理的なプロセスで
フェイスブックや グーグル B.T. コムキャスト タイムワーナー等の ネットワークのルーター同士が 通常 黄色の 光ファイバーケーブルで 天井をつたって 繋がれています それは間違いなく物理的であり 親密ささえ感じます
60 Hudson 級の場所は 他にも十数ヶ所あり 次のレベルのものと比べると 10倍ものネットワークが繋がり合っています 次のレベルのものと比べると 10倍ものネットワークが繋がり合っています
このような場所はほんのわずかしかありません
60 Hudson のビルが特別なのは ここが 5本の指に入る程重要な ネットワーク拠点だからです これら のネットワークは海底ケーブルで 海の底をつたって ヨーロッパとアメリカをつなぎ
我々みんなをつなげています このようなケーブルについて 特に考えてみたいのです
インターネットがグローバルな現象だとか 国境のない縮まった世界に 住むようになったと感じるとしたら このような海底ケーブルのおかげです
こうやって見ると ケーブルは驚くほど細く
片手で握ることができます 庭のホースのようです
しかし別の見方では ご想像の通り とても広範囲にわたっています
海を横断して広がっており 長さにして 1万キロ以上にも及びます 材料科学や計算技術が すごく複雑なのに比べ ケーブルの基本的な物理プロセスは 驚く程単純です 光が海の一方から入って来て 他方から出てきます 通常は目立たない沿岸部にひっそりと建てられた 「ランディングステーション」と呼ばれる 建物から出てきます 海底にある 本マグロのように見える
増幅器にかけられ 80キロごとに 信号が増幅されます 通信速度は信じられないくらい速いのです 基本単位は 1波長につき10Gbps です きっと皆さんのネット回線の千倍速くて 1万本のビデオをストリーミングできます それに留まらず 1本の光ファイバーで 1つでなく50, 60, 70もの 波長 つまり色が異なる光を 送ることができます
また1本のケーブルにはおそらく 8本の光ファイバーがあり 4本ずつそれぞれの方向に 信号を送っています
一本一本はとても細く 髪の毛ほどの太さしかありません
ケーブルは どこかで陸地につながり
このようなマンホールの中でつながっています 8000キロに及ぶケーブルが 実際 ここでつながっているのです
これはハリファックスにあるのですが ケーブルは ここからアイルランドまで伸びています
この状況は変わりつつあります 3年前 これについて調査を始めた頃 アフリカ大陸西海岸沿いのケーブルは1本でした スティーブ・ソング作成の地図に 細い黒線で示されています
現在は6本のケーブルが東西の海岸に3本ずつありますが さらに増設される予定です
どの国も 世界につながるようになると ケーブル一本では足りないと悟るからです 海底ケーブルの力で産業を 発展させるつもりであるならば 安定した恒久性のある通信回線が 必要になります ケーブルが切断したら 船を出して フックのついたツールを投げごみ 切れた両端を引き上げ 融着後 海に戻さなければ ならないからです
とても たいへんな作業です
こちらは私の友人のサイモン・クーパーです つい最近まで インドの巨大財閥タタの通信部門を担う タタ・コミュニケーションズで働いていました
実際に直接 会った事はなく いつも テレプレゼンスのシステムで 会話をしたせいか 彼はインターネットの 中の人だといつも思っていました 彼はイギリス人です 海底ケーブル産業は 圧倒的にイギリス人が多いんです 全員 42歳に見えます 皆 20年前のブーム到来と同時に
始めたからですね タタが通信事業を始めたのは 2本のケーブルを買ったときです 1本は大西洋 もう1本は太平洋を横断するもので その後もケーブルの増設を続け 世界中にベルトを形成するまでになり 皆さんのデータを東西へと送っています
文字通り 光のビームを世界中に 飛ばしているのです ケーブルが太平洋で切断したとしても 逆方向へ送ることが可能です その後 タタは次の接続先を探し始めました
接続されていない場所を探しました 南北方向 つまりアフリカへと至るケーブルです
しかし私が驚いたのは サイモンの 並外れた地理的な想像力でした
彼は世界をすごい規模で考えているのです
私がこれに興味をもったのは ケーブルの敷設作業を見たかったからです ツイートやフェイスブックへの書き込み メールなど ふと繋がっているとか 何かすぐ傍にあるような気がします この裏には何かがあるはずです
大陸が接続された瞬間があったはずです 私はそれが見たかったのです
サイモンは新しいケーブルの敷設に 取りかかっていました 西アフリカ・ケーブルシステム 通称「WACS」です リスボンからアフリカ西海岸を下って コートジボワールやガーナ ナイジェリア カメルーンへと延びるものです
天候次第でもうすぐ着くと彼は言いましたが 日時が分かったら教えてくれると 約束してくれました 4日後に着くという知らせのもと リスボン南岸のこのビーチに 行くように言われました 9時をわずかに過ぎた頃 — この男が水中から出てきました 彼は緑色のナイロン製のロープを運んできました 「メッセンジャーライン」と呼ばれる軽量のロープです これが海と陸とをつなぐ 足がかりになり
後の1万4千キロを越す 光の通り道になるのです
しばらくすると ブルドーザーがケーブル敷設船から ケーブルを引き揚げ始めます ケーブルはブイに浮かべられ 所定の位置まで運ばれます
イギリス人の技師が 監督しているのが見えますね
所定の位置まで運ばれると 彼は海に戻り 大きなナイフを手にし ブイを切り離します ブイは水面から跳ね上がり ケーブルは海底に沈みます 彼はこの作業を繰り返しながら 船まで戻り 船の上で ジュースやクッキーを受け取り 再び海に飛び込み 浜辺まで泳いで戻って来ると
タバコに火をつけました ケーブルが陸まで到達すると もう一端との融着作業の準備に取りかかります 「ランディング・ステーション」から 延びているケーブルと接続するのです
まず 弓のこを手にし プラスチック内部を削ぎ落します シェフのようです それが終わったら今度は 宝石職人さながらに 髪の毛程の太さのファイバーを 陸地からのものと ぴったり付き合わせて 穴あけパンチのような機械を使って融着します この作業員たちが弓のこで ケーブル作業をしているのを見たら インターネットは雲のような ものとは考えられなくなり
とても物理的なものに見えてきます
この他にもう1つ私が驚いたのは インターネットは最も洗練された技術であることに加え 最先端のものであるにも関わらず 物理プロセス自体は依然として変わっておらず 文化も同じだということです
地元の労働者もいれば 裏方で指示を与える イギリス人技師もいます さらに重要なのは — 場所は同じだということです これらのケーブルはいまだに リスボン モンバサ ムンバイ シンガポール ニューヨークなどの 昔ながらの港町につながっています
海岸での作業には3〜4日かかりますが それが終わったら マンホールの蓋をして 砂をかぶせ 我々は皆 忘れてしまいます
我々はクラウドについてよく話しますが クラウドに何かを置く度に 責任を放棄しているように私には思えます
つながりが薄れ 管理も他人まかせになりますが それは正しいことのようには思えません
つながりが薄れ 管理も他人まかせになりますが それは正しいことのようには思えません
これは ニール・スティーヴンスンの名言です 「つながれた人たちは つなぐものについて知るべきだ 」
我々は知るべきです インターネットがどこから来るのか 我々を物理的につなげているのは何なのかを
ありがとうございました ありがとう | An architect designs a building, and it becomes a place, or many architects design many buildings, and it becomes a city, and regardless of this complicated mix of forces of politics and culture and economics that shapes these places, at the end of the day, you can go and you can visit them. You can walk around them.
You can smell them. You can get a feel for them.
You can experience their sense of place.
But what was striking to me over the last several years was that less and less was I going out into the world, and more and more, I was sitting in front of my computer screen.
And especially since about 2007, when I got an iPhone, I was not only sitting in front of my screen all day, but I was also getting up at the end of the day and looking at this little screen that I carried in my pocket.
And what was surprising to me was how quickly my relationship to the physical world had changed.
call it the last 15 years or so of being online, or the last, you know, four or five years of being online all the time, our relationship to our surroundings had changed in that our attention is constantly divided. You know, we're both looking inside the screens and we're looking out in the world around us.
And what was even more striking to me, and what I really got hung up on, was that the world inside the screen seemed to have no physical reality of its own.
If you went and looked for images of the Internet, this was all that you found, this famous image by Opte of the Internet as the kind of Milky Way, this infinite expanse where we don't seem to be anywhere on it.
We can never seem to grasp it in its totality.
It's always reminded me of the Apollo image of the Earth, the blue marble picture, and it's similarly meant to suggest, I think, that we can't really understand it as a whole.
We're always sort of small in the face of its expanse.
So if there was this world and this screen, and if there was the physical world around me, I couldn't ever get them together in the same place.
And then this happened.
My Internet broke one day, as it occasionally does, and the cable guy came to fix it, and he started with the dusty clump of cables behind the couch, and he followed it to the front of my building and into the basement and out to the back yard, and there was this big jumble of cables against the wall.
And then he saw a squirrel running along the wire, and he said, "There's your problem.
A squirrel is chewing on your Internet." And this seemed astounding. The Internet is a transcendent idea. It's a set of protocols that has changed everything from shopping to dating to revolutions.
It was unequivocally not something a squirrel could chew on. But that in fact seemed to be the case.
A squirrel had in fact chewed on my Internet. And then I got this image in my head of what would happen if you yanked the wire from the wall and if you started to follow it. Where would it go?
Was the Internet actually a place that you could visit?
Could I go there? Who would I meet?
You know, was there something actually out there?
And the answer, by all accounts, was no.
This was the Internet, this black box with a red light on it, as represented in the sitcom "The IT Crowd."
Normally it lives on the top of Big Ben, because that's where you get the best reception, but they had negotiated that their colleague could borrow it for the afternoon to use in an office presentation.
The elders of the Internet were willing to part with it for a short while, and she looks at it and she says, "This is the Internet? The whole Internet? Is it heavy?"
They say, "Of course not, the Internet doesn't weigh anything."
And I was embarrassed. I was looking for this thing that only fools seem to look for.
The Internet was that amorphous blob, or it was a silly black box with a blinking red light on it.
It wasn't a real world out there.
But, in fact, it is. There is a real world of the Internet out there, and that's what I spent about two years visiting, these places of the Internet. I was in large data centers that use as much power as the cities in which they sit, and I visited places like this, 60 Hudson Street in New York, which is one of the buildings in the world, one of a very short list of buildings, about a dozen buildings,
where more networks of the Internet connect to each other than anywhere else.
And that connection is an unequivocally physical process.
It's about the router of one network, a Facebook or a Google or a B.T. or a Comcast or a Time Warner, whatever it is, connecting with usually a yellow fiber optic cable up into the ceiling and down into the router of another network, and that's unequivocally physical, and it's surprisingly intimate.
A building like 60 Hudson, and a dozen or so others, has 10 times more networks connecting within it than the next tier of buildings.
There's a very short list of these places.
And 60 Hudson in particular is interesting because it's home to about a half a dozen very important networks, which are the networks which serve the undersea cables that travel underneath the ocean that connect Europe and America and connect all of us.
And it's those cables in particular that I want to focus on.
If the Internet is a global phenomenon, if we live in a global village, it's because there are cables underneath the ocean, cables like this.
And in this dimension, they are incredibly small.
You can you hold them in your hand. They're like a garden hose.
But in the other dimension they are incredibly expansive, as expansive as you can imagine.
They stretch across the ocean. They're three or five or eight thousand miles in length, and if the material science and the computational technology is incredibly complicated, the basic physical process is shockingly simple. Light goes in on one end of the ocean and comes out on the other, and it usually comes from a building called a landing station that's often tucked away inconspicuously in a little seaside neighborhood, and there are amplifiers that sit on the ocean floor
that look kind of like bluefin tuna, and every 50 miles they amplify the signal, and since the rate of transmission is incredibly fast, the basic unit is a 10-gigabit-per-second wavelength of light, maybe a thousand times your own connection, or capable of carrying 10,000 video streams, but not only that, but you'll put not just one wavelength of light through one of the fibers, but you'll put maybe 50 or 60 or 70 different wavelengths or colors of light
through a single fiber, and then you'll have maybe eight fibers in a cable, four going in each direction.
And they're tiny. They're the thickness of a hair.
And then they connect to the continent somewhere.
They connect in a manhole like this. Literally, this is where the 5,000-mile cable plugs in.
This is in Halifax, a cable that stretches from Halifax to Ireland.
And the landscape is changing. Three years ago, when I started thinking about this, there was one cable down the Western coast of Africa, represented in this map by Steve Song as that thin black line.
Now there are six cables and more coming, three down each coast.
Because once a country gets plugged in by one cable, they realize that it's not enough. If they're going to build an industry around it, they need to know that their connection isn't tenuous but permanent, because if a cable breaks, you have to send a ship out into the water, throw a grappling hook over the side, pick it up, find the other end, and then fuse the two ends back together and then dump it over.
It's an intensely, intensely physical process.
So this is my friend Simon Cooper, who until very recently worked for Tata Communications, the communications wing of Tata, the big Indian industrial conglomerate.
And I've never met him. We've only communicated via this telepresence system, which always makes me think of him as the man inside the Internet. And he is English. The undersea cable industry is dominated by Englishmen, and they all seem to be 42. Because they all started at the same time with the boom about 20 years ago.
And Tata had gotten its start as a communications business when they bought two cables, one across the Atlantic and one across the Pacific, and proceeded to add pieces onto them, until they had built a belt around the world, which means they will send your bits to the East or the West.
They have -- this is literally a beam of light around the world, and if a cable breaks in the Pacific, it'll send it around the other direction. And then having done that, they started to look for places to wire next.
They looked for the unwired places, and that's meant North and South, primarily these cables to Africa.
But what amazes me is Simon's incredible geographic imagination.
He thinks about the world with this incredible expansiveness.
And I was particularly interested because I wanted to see one of these cables being built. See, you know, all the time these sort of brief adjacencies, a tweet or a Facebook post or an email, and it seemed like there was a physical corollary to that.
It seemed like there was a moment when the continent was being plugged in, and I wanted to see that.
And Simon was working on a new cable, WACS, the West Africa Cable System, that stretched from Lisbon down the west coast of Africa, to Cote d'Ivoire, to Ghana, to Nigeria, to Cameroon.
And he said there was coming soon, depending on the weather, but he'd let me know when, and so with about four days notice, he said to go to this beach south of Lisbon, and a little after 9, this guy will walk out of the water. And he'll be carrying a green nylon line, a lightweight line, called a messenger line, and that was the first link between sea and land, this link that would then be
leveraged into this 9,000-mile path of light.
Then a bulldozer began to pull the cable in from this specialized cable landing ship, and it was floated on these buoys until it was in the right place.
Then you can see the English engineers looking on.
And then, once it was in the right place, he got back in the water holding a big knife, and he cut each buoy off, and the buoy popped up into the air, and the cable dropped to the sea floor, and he did that all the way out to the ship, and when he got there, they gave him a glass of juice and a cookie, and then he jumped back in, and he swam back to shore,
and then he lit a cigarette. And then once that cable was on shore, they began to prepare to connect it to the other side, for the cable that had been brought down from the landing station.
And first they got it with a hacksaw, and then they start sort of shaving away at this plastic interior with a -- sort of working like chefs, and then finally they're working like jewelers to get these hair-thin fibers to line up and with this hole-punch machine they fuse it together. And when you see these guys going at this cable with a hacksaw, you stop thinking about the Internet as a cloud.
It starts to seem like an incredibly physical thing.
And what surprised me as well was that as much as this is based on the most sophisticated technology, as much as this is an incredibly new thing, the physical process itself has been around for a long time, and the culture is the same.
You see the local laborers. You see the English engineer giving directions in the background. And more importantly, the places are the same. These cables still connect these classic port cities, places like Lisbon, Mombasa, Mumbai, Singapore, New York.
And then the process on shore takes around three or four days, and then, when it's done, they put the manhole cover back on top, and they push the sand over that, and we all forget about it.
And it seems to me that we talk a lot about the cloud, but every time we put something on the cloud, we give up some responsibility for it.
We are less connected to it. We let other people worry about it.
And that doesn't seem right.
There's a great Neal Stephenson line where he says that wired people should know something about wires.
And we should know, I think, we should know where our Internet comes from, and we should know what it is that physically, physically connects us all.
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ジワリと熱を帯びた鈍痛に、俺はようやく意識を取り戻した。
「コルティナ、フィニア! お前たちがついていながら――!」
「ご、ごめんなさい。私......」
「すみません、申し訳ありません! この責任は――」
珍しく荒々しい......いや、刺々しいライエルの声。いつも温和な奴にしては、珍しく殺気すらまとわせている。
「父さん、そのくらいでやめてあげて」
「ニコル、気が付いたのか!?」
しかし目を開けたはずなのに、俺の視界は闇に包まれたままだった。
「慌てないで。落ち着いて聞いてね? ニコル、あなたの目は潰されているの」
俺のそばからマリアの声が聞こえてきた。
ライエではここまで来ることはできないので、連れてきた誰かがいる。そしてそれは大抵マリアである。ならば彼女がここにいるのも道理だ。
まだ無名のフィニアでは、緊急連絡網の個人使用という対応に冒険者ギルドが応じてくれるとは思えない。階位は高くとも、やはり新米という壁は存在する。
冒険に出ている現状では、それを使用するほどの大金も持ち合わせてはいないはずだ。
「目が......?」
「大丈夫よ。私が絶対に治してあげるから」
「うん」
俺はしおらしく頷いてみたが、同時に、そう簡単にいかないことを理解していた。
マリアならば、これほどの重傷ならすぐ治しているはずだ。軽い怪我なら自然治癒に任せる傾向にあるが、目が潰れるほどの重傷を放置する彼女ではない。
それにクファルの奴も、『癒えない傷』と口にしていた。何らかの理由で、治癒魔法を無効化させているのかもしれない。
「熱があるみたい」
「そうね。怪我のせいか、結構熱があるみたい。とりあえず準備があるから、あなたは少し眠りなさい。できる?」
マリアの優しい声に、俺は首を縦に振って肯定の意を返す。
このままでは眠るより先に失神する方が早い気もするが、とにかく体力を戻さないと話にならない。
「まずは休んでおいて。その間になにか対策を立てておくから」
「うん」
そのマリアの言葉に俺は目を閉じ、再び眠りに落ちていったのだった。
◇◆◇◆◇
「それで、どんな状況なんだ?」
ニコルが眠りに落ちた後、ライエルたちは廊下を挟んだ別の部屋へと移動していた。
「以前ラウムを襲った病魔に侵されているわ。それだけならいいんだけど......」
「私が見たところ、眼球内に異物が残っているわね。それが
マリアの言葉を継いだのは、トリシア女医。彼女も医療系魔法を修めているだけに、ニコルの容体については把握していた。
「ええ、それは私も確認したわ。おそらくはスライムの欠片よ。それもディジーズスライムの」
「以前ラウムを襲った奴か」
「ええ。核もないのにまだ生きているなんて......以前はそんなことなかったのに」
ラウムを襲った時、スライムの一部は何の意識もない、ただの毒の塊になり果てていた。
の魔法などで押し出されそうになると、周囲の再生した肉を食らい始めるようだ。
再生した肉を食らい、眼球内のスライムの欠片が成長してしまうからである。
「なら取り出せば――」
「刺激を受けて活動しだすのよ。それに眼球の向こうはすぐ脳がある。下手に活性化させたら、そっちに逃げ込みかねないわ」
「じゃあ、どうすればいいんだ」
で再生させれば......でも、神経に大きな負担をかけてしまうわ」
「下手に手を出すと眼球は元に戻っても神経に異常をきたして、治っても見えない、なんてこともありうるわね」
「少なくとも下手に治癒魔法をかけていたら、命はなかったわ。あなたがいてくれて助かった」
彼女がもし未熟な治癒術者で、不用意に治癒魔法をかけ続けていたら、体内に残されたスライムの欠片が暴れ出し、増殖し、脳を損壊していた可能性もあった。
そうなればニコルの命は、まず助からなかっただろう。
「摘出すれば目が見えなくなる。しなければ命が危ない、そういうことか?」
「ええ。正直いって、現状では手を出しかねているわ」
「じゃあ、ニコルちゃんの目は......!」
悲痛な声を上げるミシェルに、マリアは何も答えない。
「私、ニコル様の様子を見てきます」
彼女に何ができるというわけではないが、状況はどう変化するかわからない。
「ああ、頼む。それと......さっきは悪かった」
先ほど取り乱して、彼女を叱責したことへの謝罪だった。
「いえ、私が目を離したのは事実ですから」
「ニコルも一人前の冒険者だ。だから怪我も自分の責任のはずなのに......それを認めたくなくて、君に......俺は卑劣だ」
「そんなことはないです。ライエル様はご立派ですよ」
儚げな笑みを残して、彼女は部屋を出ていった。
それを見送ってから、ライエルは拳をテーブルに叩き付け、悔しさをぶちまけたのだった。 | With a seething dull pain, I finally regained consciousness. Then, a harsh reproachful voice reached my ears.
“Cortina, Finia! You were with her, so how did this happen!”
“I-I’m sorry, I...”
“I have no excuse! I’m responsible for this...”
It was Lyell’s unusually harsh... no sharp voice. I could even feel bloodlust from him who normally stayed calm. Still, I couldn’t overlook it when it was directed at Cortina and Finia.
“Dad, please leave it at that.”
“Nicole, are you awake?!”
His yells stopped at my words. However, despite opening my eyes, my vision remained dark. On top of that, despite feeling like my body was on fire, I could also feel a trembling sense of cold.
“Nicole, calm down and listen okay? Your eyes have been crushed.”
I heard Maria’s voice from the side.
Now that I think about it, I should have been in the capital of Forneus, Berith. I didn’t think Lyell would’ve come here alone, so someone must have brought him. And that was probably Maria. That would explain why she was here too.
I didn’t know how long I was out, but considering the pain, it must not have been very long. Since they arrived here so fast, Cortina must have contacted them. I don’t think Finia, who wasn’t famous yet, would be allowed to use the emergency contact network. Even with a high rank, she was still a beginner, after all.
We were on an Adventure now, and she probably didn’t even have enough money on hand to use that network.
“My eyes...?”
“Don’t worry. I’ll definitely heal them.”
“Okay.”
I nodded, but I knew it wouldn’t be so easy.
Maria would’ve been able to instantly heal an injury of this level. She tended to leave light injuries to natural healing of the body, but she wouldn’t leave something like crushed eyes as is.
Besides, Kufar also said it was an “unhealable injury”. It was probably canceling out the healing magic in some way.
“Looks like I have a fever.”
“Yes. Perhaps because of the injury, you have quite a high fever. I have preparations to make, so sleep for a bit. Can you?”
I nodded in affirmation at her gentle voice.
Maybe because of the fever, I could feel my body deteriorating fast enough to even feel it happening. I felt like I’d sooner faint than fall asleep, but I had to regain my strength either way.
“Rest for now. I’ll come up with something in the meantime.”
“Okay.”
I closed my eyes at her words, and fell asleep once more
◇◆◇◆◇
“So, what’s the situation?”
Once Nicole fell asleep, Lyell and the rest moved to another room across the corridor. Michelle and Cloud were also standing by there.
“She’s been infected by the same illness that attacked Raum before. That alone wouldn’t be a problem, but...”
“From what I can see, there’s some foreign substance remaining inside her eyeballs. And it’s preventing the Regeneration spell.”
Dr. Tricia continued Maria’s words. She was also studying medical magic, so she had a grasp of Nicole’s current condition. She was the one who had examined her when Finia and others carried her back.
“Yes, I have also confirmed that. It’s probably a Slime fragment. And one belonging to a Disease Slime.”
“The one that attacked Raum before?”
“Yes. For it to be alive even without a core... That didn’t happen before.”
Back during the attack on Raum, the fragment of the Slime was but a lump of poison with no will of its own. But now, it still maintained its instinct as a Slime despite the lack of a core.
It was staying dormant for now, but when a spell like Regeneration was cast that would force it out, it started to devour the regenerated flesh around.
That’s why, Maria did not cast Regeneration yet. Because it would only make the Slime inside the eyeballs grow by devouring the regenerated flesh.
“What if we pull it out...”
“It becomes active under a stimulus. Besides, there’s a brain right behind the eyeballs. If we agitate it too much, it could escape towards it.”
“Then what should we do?”
“We could take out the entire eyeballs and then cast Regeneration... But that would put a big burden on the nerves.”
“If we overdo it, we may create some disorder in the nerves that could leave her blind even if we restore the eyeballs.”
“At any rate, it would’ve been a disaster if we cast healing spells. Thank god you were present.”
Maria thanked Dr. Tricia. Had she been an inexperienced medic and carelessly kept healing her with magic, the Slime fragment could’ve grown violent, grown in size, and damaged the brain.
If that happened, Nicole would have been beyond saving.
“So if we take them out, she will become blind. And if we don’t, she could die, is that it?”
“Yes. Honestly, it’s difficult to make a move now.”
“Then, Nicole’s eyes...!”
Michelle exclaimed in grief, but Maria did not answer. Finia seemed unable to endure anymore and headed to Nicole.
“I will check on Lady Nicole.”
There was nothing she could do, but there was no knowing how the situation would change. It was necessary to check Nicole’s condition even as she slept.
“Yes, please do. Also... Sorry for earlier.”
Lyell apologized as she passed by him. It was an apology for yelling at her earlier.
“No, it is true that I let her out of my sight.”
“Nicole is a proper Adventurer. So the responsibility for her injury should be her own... I just didn’t want to admit it and lashed out at you... I’m despicable.”
“Not at all. You’re a splendid person, Lord Lyell.”
With a fleeting smile, she left the room behind.
Seeing her go, Lyell slammed his fist on the table, overflowing with frustration. | {
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「カレスさんの店は人手、足りてますか?」
「そうですな......このように薬草を販売するとなると、少々足りないかもしれません。今日の反響次第ではありますが......しかしタクミ様、それを聞くという事はもしかして?」
「まぁ、この男をここで働かせたらどうかと考えてます。この男もお金が無くて困ってる様子ですしね」
「それは......」
俺の作った薬草を販売するのなら、人手は十分では無いようだ。
しかし、カレスさんの方は、目の前で暴れたこの男を雇う事に反対するような雰囲気。
テーブルを壊されたり、恫喝されたりしたもんな......当たり前か。
それならこういう事ならどうだろうか?
「俺が雇うという扱いにするのはどうですか? 薬草を販売する事を専門に働いてもらいます」
「タクミ様が、ですか?」
「タクミさん、どうするんですか?」
「タクミ様が雇う事に意義があるとは思えませんが......?」
俺の言葉に、カレスさんを始め、クレアさんもセバスチャンさんも驚いている。
まぁ、暴れた男......しかも自分に刃を向けて襲って来た男を雇うと言うのは普通じゃないのかもしれないな。
「セバスチャンさん、カレスさん。薬草を作れば、当然この店まで運ばなければいけませんよね? しかも、頻繁に」
「そうですな」
「はい。今日の売れ行きを見るに、薬草を度々運ばなければ供給が間に合わないと思われます」
セバスチャンさんもカレスさんも頷いてくれる。
俺が大量に薬草を作っに運んでもらっても良いんだが、俺を心配してくれるクレアさん達は、俺が一気に薬草を作る事に賛成してくれないだろう。
また倒れる心配があるからな......それに鍛錬のための薬草も作りたいから、あまり無理は出来ない。
だったら、こまめに薬草を作ってこの店まで運ぶ必要がある。
「頻繁にここまで運ぶと言うのは、当然ですが手間がかかります」
さすがに毎回俺やクレアさん、セバスチャンさんが運んで来ると言うわけには行かないだろう。
俺は鍛錬があるし、クレアさんやセバスチャンさんにも、やらなければいけない事があるはずだ。
今日は初めての薬草販売という事だから皆で来ただけだしな。
「だったらこの男を俺が雇って、毎日ここと屋敷の往復をしてもらって、薬草を運ばせるというのはどうかと考えました。まぁ、それ以外の時間はこの店でこき使ってもらう事になるでしょうが......」
「成る程......この男に運ばせるのですか......しかし、この男が薬草をまともに運びますかね?」
俺の言葉に納得しつつも、疑問を感じて首を傾げてるカレスさん。
確かに、充分な恐怖を与えたから逆らう事はもう無いと思うが、逃げ出したりという事も考えられる。
そこの所をどうクリアするかまでは考えて無いんだよなぁ......思い付いた事を言っただけだから、ちょっと詰めが甘かったかもしれない。
「ふむ......タクミ様、この男がもし逃げ出した時、どうするのですか?」
「それが......そこについてはあまり考えていませんでした......」
セバスチャンさんが、今まさに考えて無い事を反省していた内容を言い当てる。
「そうですか......それなら私からも一つ、良いですかな?」
「何でしょう?」
「基本的には、タクミ様の案に賛成です。直接この男を使う事で、反省の様子も見る事が出来るでしょうからな。しかし逃げられる恐れもある......そこで、魔法を使いましょう」
「魔法ですか?」
魔法で何をするのだろう?
攻撃するわけじゃないだろうし......というより、この世界の魔法でどんな事が出来るのかよく知らないからな......。
セバスチャンさんはどういった魔法を使うのだろうか?
「魔法には、掛けた相手を追跡するものがありましてな。それを掛ければ逃走しても追いかける事が出来るのです。捕まえた罪人に掛ける事に使われる魔法です」
「逃走防止ですか?」
「逃走防止と言うよりは、逃走した後に捕まえるため......ですかな。どうやらこの男は、その魔法が掛けられる前に逃げ出したようですが」
成る程ね、それを使えばもし薬草を持って逃げ出したとしても、追い掛けて捕まえる事が出来ると言うわけか......。
しかし、追い掛けるのは面倒かもしれないな......。
「ん? どうしたレオ?」
俺がセバスチャンさんから教えられた魔法の事を考えていると、レオが俺に顔を近づけて来た。
「ワフワフ。ガウー」
「成る程、それなら良いかもしれないな」
「レオ様はなんと?」
「男にその魔法を掛けて、追い掛けるのは任せてくれとの事です」
レオなら男が逃げ出したとわかってすぐに追い掛ければ、馬より早いから追跡は楽だろうからな。
「成る程......それでしたら、レオ様にも逃走した時にわかるように致しましょう」
「そんな事も出来るんですか?」
「はい。この魔法は、複数人が対象になった者がどこに行ったのかわかるようになっております」
それなら、レオがすぐに察知して捕まえてくれるだろうな。
俺はセバスチャンさんとの話を終え、座ったままで縛られている男に問いかける。
今の話は聞いていたはずだ、だからその魔法を掛けられるという条件でなら男を雇う事が出来る。
男が承諾すれば......だがな。
反省もせず、承諾もしないのなら、もう衛兵やセバスチャンさん達に任せるしかないな。
「...えっと、つまりどういう事で?」
「俺がお前を雇うという事だ。安心しろ、こき使うとは言ったが、ちゃんと報酬は払うぞ」
「こんな俺を雇って下さるんですかい?」
確かに、自分にナイフを向けて襲い掛かって来た相手を雇うと言うのは、普通では無いのかもしれない。
でも、目の前にいる男が悪い事をしたとは言え、猶予も与えずに処刑というのはなんだか寝覚めが悪い気がするからな。
公爵家に逆らったという事は、この国だと厳しい処罰が下されるのかもしれないが、俺は日本で生まれて育った人間だ。
まだ取り返しのつかない事をしていないうちに、更生する余地を残しておきたい。
......一応......後で他に余罪が無いか聞く事はするけどな。
「まぁ、お前が更生して真っ当に生きたいと思うならだけどな。あと、追跡の魔法? はしっかり掛けさせてもらうぞ。もし逃げたら......」
「ワフ!」
「に、逃げません! 決して逃げたりはしません!」 | “Mr. Kalis. Do you have enough people working here?”
“Indeed... If we are going to start selling herbs like this, then perhaps we could use more help. Though, it depends on how they sell from here on... But, why do you ask, Mr. Takumi?”
“Well, I was wondering if this man could work here. He seems to be in desperate need of money.”
“That...”
If they were going to sell my herbs, then they might need some help.
However, Mr. Kalis did not seem like he wanted to hire someone who had caused such a scene right in front of his eyes.
After all...he had broken the table and made threats.
Well, what about this, then?
“What if he was hired by me? His job would be exclusively related to herbs.”
“You, Mr. Takumi?”
“What are you thinking, Mr. Takumi?”
“I don’t understand the meaning of doing things like that...?”
Not only Mr. Kalis, but Ms. Claire and Sebastian were also surprised by my words.
Well, this guy...had attacked me with a knife. Wanting to hire such a person was surely not normal.
“Sebastian, Mr. Kalis. When I make herbs, they will have to be delivered to this store, yes? And regularly.”
“Indeed.”
“Yes. They nearly sold out today, so we would need to restock regularly in order to avoid running out.”
Sebastian and Mr. Kalis nodded.
I could just make a lot of herbs at once and deliver them, but Ms. Claire and the others would be so worried, and probably won’t let me do it.
There was the chance that I could faint again... Besides, I also wanted to make herbs for my training, so it was best not to push myself too far.
In that case, it was necessary to make smaller and regular deliveries.
“Obviously, it would be quite a hassle to deliver them here regularly.”
I doubted that I, Ms. Claire or Sebastian could deliver them each time.
I had my training, and Ms. Claire and Sebastian were busy with other duties.
We only came today, because it was the first day that they were being sold.
“In that case, I thought I could hire this man to pick up the herbs from the mansion and deliver them here. And I suppose he could do some chores around the store when not making deliveries...”
“I see... So you want to make this man deliver them... But do you really think that he will deliver them as you say?”
Mr. Kalis understood my intention, but still didn’t look convinced.
Indeed, while fear might insure that he didn’t go against us again, he still might try and run away.
I wasn’t exactly sure what to do about that... I had just said what was on my mind, and perhaps needed to think about it more.
“Hmm... Mr. Takumi. What will you do if this man escapes?”
“Well...I’m not quite sure...”
I admitted to Sebastian that I had not given it enough thought.
“I see... Well, perhaps I can make a suggestion?”
“What is it?”
“I am not completely against your plan, Mr. Takumi. After all, you will be able to keep a direct eye on him if he is working for you. However, he might still run away... And so you could use magic.”
“Magic?”
What was he going to do with magic?
Surely it wasn’t an attack... Though, I wasn’t really sure what you could do with magic in this world...
What kind of magic was Sebastian going to use?
“There is a spell that allows you to track people. If you use it, he will not be able to run away. It’s usually used on criminals.”
“It prevents them from running?”
“It doesn’t prevent them, but allows you to capture them easily if they do... I think this man was able to escape before the guards cast the spell on him.”
I see. So if we used this spell, even if he ran away with the herbs, it would be easy to find him again...
Though, that in itself was rather troublesome...
“Wuff. Wuff.”
“Hmm? What is it, Leo?”
As I thought about the magic that Sebastian told me about, Leo put her face close to mine.
“I see. That just might work.”
“What did Leo say?”
“She said that we should cast the spell on the man, and leave the chasing to her.”
As Leo was faster than any horse, it would be easy for her to catch him as soon as he tried to run away.
“I see... In that case, I will make it so that Leo will be informed if he runs.”
“You can do that?”
“Yes. With this magic, you can make multiple people aware of the target’s whereabouts.”
In that case, Leo would be able to detect it immediately and catch him.
After I finished talking to Sebastian, I turned to the man who was sitting on the ground.
He would have been listening to the conversation. With this requirement of having the spell cast on him, I would be able to hire him.
If he accepted it...that is.
But if he wouldn’t repent and agree to it, then I would have no choice but to leave him to the guards or Sebastian.
“...Uh, what do you mean?”
“It means that I’m going to hire you. Don’t worry, while I did say that I’d put you to work, I do intend to pay you.”
“You’re going to hire someone like me?”
Indeed, it was quite abnormal to hire someone who had attacked you with a knife.
However, in spite of the fact that he had done something bad, I didn’t know if I’d be able to sleep well at night if he was executed immediately.
In this country, such insolence against the duke might be worthy of a harsh punishment, but I was born and raised in Japan.
I wanted him to have a chance of reform before something irreversible happened.
...That being said...I would have to ask if he had any other criminal record as well.
“It really depends on whether you want to reform and live a proper life. Also, we will cast the tracking spell on you. And should you try to run...”
“Wuff!”
“I-I won’t run! I promise!” | {
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ケーテの宮殿を昏き者どもから取り戻した後、ケーテは俺たちを送って王都に来た。
そのころにはすでに夜明けごろ。俺たちは中眠らなかったのだ。
とりあえず、ケーテは俺の屋敷で仮眠してから帰ることになった。
エリックは王宮に、ゴランは自分の屋敷に戻っていった。
軽く寝て、すぐ仕事をするのだろう。頭が下がる。
俺はガルヴと一緒に、昼まで寝ることにした。
俺が目を覚ますと、夕方になっていた。予定より長く眠ってしまった。
戦闘と移動で疲れていたのかもしれない。
俺とガルヴが居間に行くと、みんながいた。
俺より先に起きていた、ケーテが言う。
「人族の家にお泊りしたのは初めてなのである」
「それはよかったぞ。折角だし夜ご飯も食べて行くといい」
「もちろんだ」
ケーテは嬉しそうだ。太い尻尾が上下に揺れる。
「ケーテさんは苦手な食べ物とかあるのかい?」
「苦手な食べ物......」
俺の徒弟ミルカの問いに、ケーテは真剣な表情で考え込んだ。
ミルカは料理担当の徒弟なのだ。
「フィリーの読んだ文献には......。竜族は肉が好きと書いてあったのだ」
「なるほどー。フィリー先生、勉強になるんだぜ!」
ミルカはフィリーのことを先生と呼ぶのが嬉しいようだ。
フィリーは錬金術だけでなく、あらゆる学問に精通している天才だ。
それゆえ、俺の徒弟たち、ミルカ、ルッチラ、ニアの家庭教師をお願いしてある。
「ああ、肉はうまいものが多いのである」
ケーテは初めて王都に来たとき、肉料理の屋台で無銭飲食していた。
肉料理は好きなのだろう。
「我は肉食であるのは間違いないのだ。普段はそこらの魔獣を捕まえて食べているのだぞ」
そんなことを言いながら、ケーテは狼のガルヴのお腹を撫でていた。
「ガルヴのことは食べないから安心するがよいぞ」
「ケーテさんは、肉以外には何が好きなんだい?」
「甘いお菓子も大好きであるぞ!」
「ケーテはたくさん食べるからな。相当多めに頼む」
「わかったんだぜ」
台所に向かうミルカをニアとルッチラが追う。
「私もお手伝いします!」
「ぼくも手伝うよ」
「ありがたいんだぜ!」
ルッチラが台所に行ったことで、ゲルベルガさまが残った。
「ココッ」
一声鳴くと、トトトと走ってきて、俺のひざにぴょんと跳ぶ。
ゲルベルガさまは、白い羽と赤いとさかを持つ普通のニワトリの外見をしている。
だが、その正体は神鶏さまだ。
霊獣などより格が高い。半神のようなものだ。
ルッチラの一族の氏神様のような存在であり、鳴き声には特別な力がある。
「ゲルベルガさま、どうしたんだ?」
ゲルベルガさまは甘えるように、俺に体を押し付ける。
そんなゲルベルガさまを優しく撫でた。
「タマも撫でて欲しいのか?」
フィリーの足元で寝ていたフィリーの愛犬、タマも俺のところに寄ってきた。
俺はゲルベルガさまを左手で抱えながら、タマも撫でる。
タマは大型犬だが、ガルヴに比べたらだいぶ小さい。
そして、ガリガリに痩せている。
「タマも、少し太って来たか?」
「解放されたばかりに比べたら少し太ったのだが......まだまだやせているのだ」
フィリーもタマを心配しているようだ。
タマは忠犬だ。
餌をもらえず、家族にも会えない中、一頭で屋敷にとどまった。
それも昏き者どもが占拠している屋敷にだ。
フィリーのことが心配で、ずっと雨ざらしの庭で助けを待っていたのだ。
尊敬すべき犬と言えるだろう。
俺がタマを撫でていると、ケーテが近づいてきた。
ケーテは馬のように大きなガルヴを両手で抱いていた。
相当な腕力だ。
「......きゅーん」
ガルヴが助けを求めるような目でこっちを見ていた。
「ガルヴにタマと、ロックの家には犬がいっぱいおるのであるな」
「......犬科なのは間違いないな」
「ガルヴは狼でありますよー」
「へー?」
ニアの姉にして狼の獣人族のシアの言葉にケーテは首を傾げた。
ケーテにとっては、狼も犬も大した違いはないのだろう。
「ガルヴは霊獣の狼だから、我らの遠い遠い親戚のようなものであります」
シアはの若さでBランク冒険者になった優秀なヴァンパイアハンターだ。
「ガルヴは大きいから、あまり抱えないほうがいいかも知れないでありますよ」
ケーテはガルヴを降ろすと、タマを撫でる。
「成犬のガルヴも可愛いが、子犬のタマも可愛いのである」
「タマは子供ではないぞ?」
俺がそういうと、ケーテは驚いたようだ。
「そうなのであるか?」
「うむ。ガルヴが子狼で、タマが成犬だ」
「不思議であるなー」
そんなことを言いながら撫でている。
「その鳥もかわいいのである」
「ゲルベルガさまは、神鶏さまだぞ」
ケーテにもゲルベルガさまの偉大さを教えておいた。
「ゲルベルガさまは、偉大なのであるな!」
ゲルベルガさまは、俺の肩の上に乗り羽をバタバタさせた。
これはゲルベルガさまなりの照れ隠しである。
セルリスは戦闘力はBランク相当だが、冒険者になりたてなのだ。
セルリスに抱きかかえられると、ゲルベルガさまは大人しくなった。
「夜ご飯の準備ができたぞー」
そのとき、居間にミルカの声が届いた。 | After getting Kathe’s palace back from the dark ones, Kathe had taken us back to the city.
It was just at the break of dawn, and we had not slept all night.
And so it was decided that Kathe would stay and rest with us before returning home.
Eric went to his palace and Goran returned to his own mansion.
They would probably sleep for a short while before going back to work. I had nothing but respect for them.
I decided to take a nap with Grulf.
When I woke up, it was already evening. I had slept much longer than I planned.
The fighting and traveling must have been very tiring.
When Grulf and I went to the drawing room, everyone was there.
Even Kathe had gotten up before me.
“This was the first time I have stayed at a human’s house.”
“That’s nice. I hope you will stay for dinner as well?”
“Of course.
Kathe looked very happy. Her thick tail swayed up and down.
“Is there anything you don’t like to eat, Miss Kathe?”
“Don’t like to eat...”
Milka asked. Kathe thought hard on this question.
Milka was the apprentice who was in charge of the kitchen.
“According to books that I have read...dragons are very fond of meat.”
“Oh, I see. Master Philly, that is very useful information!”
Milka seemed to like calling Philly that.
Philly was a genius who knew more than just alchemy.
In fact, she was a private tutor for Milka, Luchila and Nia.
“Ah, there certainly are many delicious kinds of meat.”
Kathe had eaten at a street stall serving meat when she first arrived in the capital.
So she must really like meat.
“Yes, I do eat meat the most. Normally, I catch a nearby monster and eat it.”
Kathe said as she petted Grulf’s belly.
“Do not worry. I will not eat you, Grulf.”
“Do you like anything that isn’t meat, Miss Kathe?”
“I also love sweet snacks!”
“And she eats a lot of them. You should prepare more than usual.”
“Understood!”
Nia and Luchila followed Milka as she ran to the kitchen.
“I will help too!”
“Let me help.”
“Thank you!”
While Luchila went to the kitchen, Lord Gerberga stayed.
He clucked as he ran towards me and jumped on my lap.
Lord Gerberga had white wings and a red crest that made him look like an ordinary chicken.
But he was actually the God Fowl.
Stronger than any spirit beast, he was practically half a god.
Luchila’s tribe had worshipped him and his cry had special powers.
“Lord Gerberga. What is it?”
“Cluck.”
Lord Gerberga pressed into me like a spoiled child.
And so I petted him gently.
“You want to be petted too, Tama?”
Tama had been sleeping by Philly’s feet, but now came over to me.
I held Lord Gerberga with my left arm and petted Tama.
Tama was a large dog but quite small compared to Grulf.
And he was very skinny.
“Tama, have you been putting on some weight?”
“He definitely looks better than before...but still has a way to go.”
Philly was also worried.
Tama was a loyal dog.
Even when he wasn’t being fed and was not allowed to see his family, he stayed by the mansion.
And this was when the mansion was overrun by dark ones.
He was worried about Philly, and had stayed out in the rain in the garden.
He was a dog that deserved respect.
As I petted Tama, Kathe approached me.
Kathe was carrying Grulf with both arms.
She was incredibly strong.
“...Grr...”
Grulf looked at me with pleading eyes.
“You sure have a lot of dogs here, Locke.”
“...Well, they are in the same family, I guess.”
“Grulf is a wolf.”
“Huh?”
Shia said. Kathe tilted her head to the side in puzzlement.
To Kathe, there was hardly a distinguishing difference between a wolf and a dog.
“Grulf is a spirit beast wolf. So he is like a distant, distant relative for us.”
Shia was a fifteen year-old B-Rank Adventurer and vampire hunter.
“It might be better to not carry him so much, as Grulf is so big.”
“Is that so?”
Kathe put Grulf down on the floor and started to pet Tama.
“Grulf is cute for an adult, but this Tama puppy is also cute.”
“But Tama is not a puppy?”
I said. Kathe looked very surprised.
“Yes. Grulf is a wolf pup and Tama in an adult dog.”
“Oh, how strange.”
She said as she petted him.
“That bird is also quite cute.”
“Lord Gerberga is the God Fowl.”
And so I told Kathe of Lord Gerberga’s greatness.
“So Lord Gerberga is very important!”
Lord Gerberga hopped onto my shoulder and fluttered his wings.
This was his way of hiding his embarrassment.
Serulis was a new Adventurer who had the combat ability of a B-Ranker.
Lord Gerberga became quiet when Serulis held him.
“Dinner is ready!”
Just then, Milka’s voice rang through the door. | {
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「そうか、今は冒険者になるためにややこしい手順が必要なのか......」
ルカの話を聞いて、メルクは思わず頭を抱えてしまう。
昔――メルクがエステルトであった時代――は、そんな面倒な決まりはなかった。成人を過ぎ、ギルド加入費である銀を支払えば誰でも冒険者になることができた。年間費の青銀貨一枚は、銀枚分なのでさすがに支払えない者も多かったが、それでも銀貨一枚払えれば一年間は冒険者をすることができた。
貧しくても才能ある者は一年目から冒険者として依頼をこなし仕事の報酬を得ることで、年間費を払うことだってできるだろう。事実、エステルトはそうやって冒険者稼業を続けてきたのだ。
多少は無理をしたが、それでも一等級冒険者に登り詰めるためには必要な事だった。なけなしの銀貨をはたいて冒険者になったのは間違いではなかったはずだ。
大抵の者級以上の冒険者にコネなどないだろうし、『推薦状』など書いてもらえないだろう。
「はぁ。なんでそんなことになってるんだか......」
「メルク、『推薦状』ない?」
「ああ。ルカたちに会うまで、冒険者にすら会ったことがなかったからな。もちろん、そんなものはないよ」
かながら笑みを浮かべてそう提案してくれた。思わず前のめりに彼女を見下ろしたメルクに、ルカは嬉しそうに右掌を開いて
「へ?」
「銀貨五枚」
「......金をとるのか?」
「ん、相場は十枚。メルクは知り合いだから、五枚。安い」
いや、たしかに『推薦状』を欲している者にとってみれば、銀貨五枚でも十枚でも払えるのだろう。
「ちなみにだが、『推薦状』一枚で、試験は何度でも受けられるのか?」
「ん、無理。一度の試験に付き一枚、必ず必要」
推薦されて合格できなければ、四等級冒険者に推薦されるに値しなかったこととなる。
そのため、もう一度『推薦状』を書いてもらって、改めて実力を認められ仕切り直す必要があると言うわけだ。面倒だが合理的だ。
「どうする? ないと試験は受けられない」
「ぐ、ぬぅ......」
「どうする?」と聞きながら、微笑して手を差し出してくるルカ。その妖艶な笑みが見られただけでもお金を払う価値はありそうだが、後から虚しくなるに決まっている。
』を討伐した報酬も貰っているしな。懐に余裕はあるが......)
メルクが悩みながら懐の巾着へ手を伸ばした時、
「お? 冒険者試験の話をしてるのか?」
エレアといちゃいちゃ――もとい言い合っていたヨナヒムが追い付いて気さくに話しかけてきた。
「そう言えば、メルクは冒険者試験を受けるんだな。『推薦状』はあるのかい?」
「いや、ないが。それを今ルカに――」
「ないなら俺が書こうか。メルクには世話になったからな」
「え? いいのか? 銀貨何枚だ?」
「銀貨? 金はいらんよ」
思わずルカへ視線を向けると、先ほどの笑顔が嘘のように消え、無感情な瞳でヨナヒムを見上げていた。
「......ちっ」
(うわ、露骨に舌打ちしたぞ、この娘っ)
とドス黒いオーラが漂っているように思え、何だか大変な事をしてしまったような気になった。
(ま、まぁ。ヨナヒムがただで書いてくれるならそれがいいか)
自分自身を納得させ、メルクはヨナヒムに頼んだ。
「じゃあ、書いてもらってもいいか?」
「ああ。とは言え、さすがにこの場で書くわけにもいかないな。人里について、宿をとったらそこで書こう。そこまで一緒でも構わないか?」
「もちろん。私はお前たちがギルドへ報告に行くまで同行させてもらうつもりだったしな。ええと? この森を抜けた先にある町は、レザウ公国のエンデ市だったか?」
「ああ。俺たちは公国に拠点を置く冒険者だからな。護衛依頼でエンデ市まで来たときに、エルフの里で出された『炎翼狼』の討伐依頼を目にしたってわけだ」
レザウ公国は、大陸中央のやや下の辺りにあり、古い歴史を持つ小さな国だ。
ところが圧政を敷いていたエゲレムンで市民革命が起き、大王国は崩壊。結局、領地は散り散りとなってレザウ公国だけが残った。
その名残から、今でもレザウ公国はエゲレムンの公爵だったレザウ家が治めているのだ。
「レザウ公国はギルド支部が一つしかない珍しい国だったよな?」
「おいおい、それはいつの時代の話だ? エンデ市にもあるし、ガルド街にもある。最近じゃあ、ログホルト市にもできたし、田舎の方にも簡易支部があるぞ」
「あ、そうなのか?」
エステルトであった時代は、レザウ公国には一つの冒険者ギルドしかなかった。レザウ公国は国土面積も小さく、それほど冒険者もいなかった。一つでも十分事足りていたのだ。
それが十五年ほどで、随分と増えたものだと感心する。
(そうか、エルフの里を出ればすぐにつくエンデ市だって、十五年以上訪れてないんだったな。今じゃあ街並みも変わっているかもなぁ)
改めて、過ぎ去った月日の長さを感じつつも、ヨナヒムと並んで森を歩く。その背後から、ルカとエレアも何事かを小声で話しながらついてくるのだが、その音は森の中へと吸収されていった。
相変わらずエルフの里を覆っているこの森は『迷いの森』と呼ばれるだけあって、何やら得体の知れない空気が漂っている。
(相変わらず、嫌な森だな。ローはよくこんなところに平気で来られるものだ)
通常のエルフたちが「安らぎ落ち着ける」と称するこの場所は、メルクにとっては不気味なだけだった。
「おっ、どうやら関所が見えてきたようだぞ」
森の雰囲気に背を押されるように早足で歩を進め、気にしないようにヨナヒムと無駄話をしていれば、ついに森の関所が見えてきた。
な森を抜け、とうとう関所をも超えて『メルク』にとって未知の場所に――人間の世界に、一歩踏み出そうとしていた。 | “I suppose I’ll have to go through some tedious procedures to become an adventurer...”
Merc felt troubled after hearing Luka’s explanation.
There had never been any such processes when she was still living as Estert. Back then anyone could become an adventurer as long as they were an adult and paid the Guild entrance fee of a silver coin. The annual charge of one blue silver coin, or silver coins, had been out of reach for most people, but as long as they paid the first entrance fee, they could be an adventurer for a year.
Even if they were poor, as long as they had talent, they could amass the sum in a year by fulfilling requests and getting the rewards. Estert had been able to continue being an adventurer in this manner as well.
He had worked hard to become a Grade Adventurer. His choice to give up what little he had to become an adventurer hadn’t been wrong. However, with the current system even that wasn’t allowed.
Most individuals had never met a Grade or higher adventurer, much less asked for a recommendation from one.
“Good grief. How did it turn out like this...”
“Merc, you don’t have a recommendation?”
“That’s right. You’re the first adventurers I’ve met, after all. Of course I don’t have one.”
“Should I write you one?”
“What?”
Luka proposed to Merc, who appeared to be feeling under the weather, with an unusually bright smile for her. When Luka noticed Merc’s eyes fly up to stare at her, she quickly extended her right palm towards her.
“Five silver coins.”
“You’re charging me?”
“The market price is . Five because we’re acquaintances. I’m selling it cheap.”
It was true, however, that a person in need of a recommendation would pay five, if not ten, silver coins. However, even if one managed to obtain a recommendation it wasn’t certain that they would pass the exam. Merc began by inquiring about a concern she had.
“By the way, can you take the exam multiple times with one recommendation?”
“No. One recommendation is for one exam.”
If you were recommended but failed, it meant you weren’t deserving of a Grade Adventurer’s recommendation.
As a result, you’d need to get a new recommendation and have your skills reassessed. It was inconvenient, but it was also rational.
“What will you do? You can’t take the exam without one.”
“Um...”
Luka’s gaze seemed to be constantly pressuring Merc to make a choice. Merc believed that witnessing Luka’s seductive smile was worth the money, but she also feared that she would come to regret it later.
I did receive a prize for defeating the Ghezo Velche, so it’s not like I don’t have the money, but...
Merc slowly reached for her pouch as she pondered her options.
“What’s up? Are you talking about the exam?”
Jonahim, who had been flirting with Elea up until this point, swooped in and inquired happily.
“Come to think of it, Merc, you’re taking the exam, aren’t you? Do you have a recommendation?”
“No, I don’t. I’m talking with Luka abou...”
“How about I write you one. After all, you’ve been quite helpful to us.”
“Huh? Really? How much?”
“How much? I don’t need money.”
Jonahim said casually. Hearing him mention that, Merc instinctively shifted her gaze to Luka, only to be surprised to see her look up at Jonahim.
“Tsk...”
This woman...
Luka turned around and began murmuring something after clicking her tongue, seemingly upset that her bargain had been spoiled. A dark, sorrowful aura could be seen wafting above her, causing Merc to believe she had done something wrong.
W-Well Jonahim said he’d write one for me for free, so...
Merc turned to Jonahim when she had persuaded herself.
“Sure. But it’d be hard to write it here. I’ll write it when we get to the inn in the city. Would you mind staying with us until then?”
“Of course not. In any case, I was going to stay with you until we got to the guild. By the way, the town that’s right ahead of this forest is the City of Ende inside the Lezau Duchy, correct?”
“That’s right. Our party has its base set at the Duchy. After being hired for an escort mission, we arrived in the City of Ende and noticed the elf village’s request for the subjugation of the Ghezo Velche.”
The Lezau Duchy was a small country with a long history, situated just below the continent’s center. It had previously been a vassal state of the neighboring Kingdom of Egelmun, and was ruled by Duke Lezau, a noble from that kingdom.
However, a people’s revolution had occurred as a result of the Egelmun’s oppressive rule, and the kingdom had been reduced to ruins. As a result, the territory had split into parts, with only the Lezau Duchy remaining.
The Lezau Duchy is still ruled by the Lezau family to this day.
“Isn’t the Lezau Duchy an unusual country with only one Guild branch?”
“From what era is that information? A branch can be found in both the City of Ende and the Town of Gard. A new branch recently opened in the City of Logholt, and small branches can also be found in rural areas.”
“Really?”
During Estert’s time, the Adventurers’ Guild had only one branch within the Lezau Duchy. Back then, the Lezau Duchy
Merc was astounded to learn how much it had changed in only 15 years.
I see. This will be my first time visiting the City of Ende in over 15 years. I guess the roads will have changed a lot as well.
Merc continued to stroll through the forest with Jonahim, while being reminded that a considerable amount of time had gone by. Luka and Elea were whispering behind them, but their quiet voices were quickly muffled out by the sounds of the forest.
The peculiar air that lingered around the forest reminded Merc why it was called the Forest of Illusion. It gave her the impression that Magic Beasts were about to emerge from the crevices between the thick, overgrown trees.
As usual, this forest is quite unpleasant. I’m amazed that Law is willing to come here.
Merc found the environment that most elves would describe as comforting to be extremely unpleasant. Most likely due to her previous life as a human. Regardless of the fact that she wouldn’t get lost in it due to her elven body, she couldn’t say it was a place she desired to visit.
“Oh! We can see the end.”
After talking casually with Jonahim, Merc suddenly noticed the end of the forest and hurriedly walked forward, as though forced out by it.
known as the human world after leaving the village, traversing the dreary forest, and crossing the barrier. | {
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見つけたと思うからです そして それはこの近くのスタンフォード大学で 見つかりました
心理学の研究者が、4歳の子どもたちを一人ずつ 大人たちの誰もいない部屋へ 入れました
そして その4歳の子どもに こう言うのです 「ジョニー これからここに マシュマロを置いておくけど 15分して戻ってきた時に
まだマシュマロがあったら もう一個 もらえるよ そうしたら二つ食べられるんだよ」
4歳児に 自分の好きなものを 15分間待て と 言い聞かせるのは 大人が「2時間後にコーヒーをお持ちします」と言われるようなものです
ぴったり同じです
では 教授が部屋を出た後 何が起こったのでしょう?
ドアが閉まると同時に... パクっ
3人のうち2人が マシュマロを食べてしまいます
5秒 10秒 40秒 50秒 2分 4分 8分
14分半のところで食べてしまった子もいます
どうしても 待ちきれなかったのです
面白いことに 3人のうち1人が マシュマロを見ては このようにやるのです...
マシュマロを見る
元に戻す
歩き回る スカートやズボンで遊ぶ
その子たちは4歳にして すでに 成功するために最も重要なことを 知っているのです それは 楽しみを後に取っておく という能力です
自制すること それは 成功するために最も重要な要素です
14年か15年経ってから 追跡調査を行いました
何が分かったか?
研究者たちは 18歳から19歳になったその子どもたちを見つけ
マシュマロを食べなかった子どもたちはみんな 人生がうまくいっていることを 発見したのです
成績が良い 非常に良い出来である
幸せである 将来の見通しがある
先生や友達と よい人間関係を築いている
とにかくうまくやっていた
マシュマロを食べた子どもたちの多くは 何かしら問題を抱えていました
大学に行けなかった
成績が悪い 何人かは中退
在学している一握りも 成績が悪い
成績が良かったのは ほんのわずかだけ
私は疑問を抱きました ラテンアメリカの子どもも― アメリカの子どもと同じ反応をするのか?
そこで私はコロンビアで同じ実験をやってみました
非常に面白かったです 4歳から6歳が対象でした
何が起こったか お見せしましょう
コロンビアでは 結果はどうだったのか?
コロンビアの子どもも 3人に2人はマシュマロを食べました 3分の1の子どもは 食べませんでした
この女の子は 興味深いです この子は マシュマロの中を食べました
つまり 彼女は二つもらえるように 食べてないと見せかけようとした
でも 食べたわけです
だから 彼女は成功するでしょう でも見張っておく必要があります
例えば 彼女は銀行だとか レジで働かせてはいけない
でも この子は成功するでしょう
そして これは全てに当てはまります セールスにもです
あるセールスマンが... 「これがほしい」と言う客に「どうぞ」と渡す
このセールスマンは マシュマロを食べた側です
もしこの人が「お聞かせいただけますか?
もっとお客様に合うものがあるかもしれません」と言えば
この人は もっと売上を伸ばせる
どんな職業の人にも これは当てはまるのです
最後になりますが 韓国の人たちがこれをやったのです
結果は? とても素晴らしかった それで これを本にしたいという話になりました
そして子どものための本が作られました それが今韓国中に広まっています
この原理を そのまま子どもたちに教えているのです
この原理を 合衆国でも教える必要があります 私たちには 大きな借金があるからです
我々は 作る以上のマシュマロを 食べているのです
ご静聴ありがとうございました | And it was found close to here, Stanford.
Psychology professor took kids that were four years old and put them in a room all by themselves.
And he would tell the child, a four-year-old kid, "Johnny, I am going to leave you here with a marshmallow for 15 minutes.
If, after I come back, this marshmallow is here, you will get another one. So you will have two."
To tell a four-year-old kid to wait 15 minutes for something that they like, is equivalent to telling us, "We'll bring you coffee in two hours."
Exact equivalent.
So what happened when the professor left the room?
As soon as the door closed...
two out of three ate the marshmallow.
Five seconds, 10 seconds, 40 seconds, 50 seconds, two minutes, four minutes, eight minutes.
Some lasted 14-and-a-half minutes.
Couldn't do it. Could not wait.
What's interesting is that one out of three would look at the marshmallow and go like this ...
Would look at it.
Put it back.
They would walk around. They would play with their skirts and pants.
That child already, at four, understood the most important principle for success, which is the ability to delay gratification.
Self-discipline: the most important factor for success.
15 years later, 14 or 15 years later, follow-up study.
What did they find?
They went to look for these kids who were now 18 and 19.
of the children that had not eaten the marshmallow were successful.
They had good grades. They were doing wonderful.
They were happy. They had their plans.
They had good relationships with the teachers, students.
They were doing fine.
A great percentage of the kids that ate the marshmallow, they were in trouble.
They did not make it to university.
They had bad grades. Some of them dropped out.
A few were still there with bad grades.
A few had good grades.
I had a question in my mind: Would Hispanic kids react the same way as the American kids?
So I went to Colombia. And I reproduced the experiment.
And it was very funny. I used four, five and six years old kids.
And let me show you what happened.
So what happened in Colombia?
Hispanic kids, two out of three ate the marshmallow; one out of three did not.
This little girl was interesting; she ate the inside of the marshmallow.
In other words, she wanted us to think that she had not eaten it, so she would get two.
But she ate it.
So we know she'll be successful. But we have to watch her.
She should not go into banking, for example, or work at a cash register.
But she will be successful.
And this applies for everything. Even in sales.
The sales person that -- the customer says, "I want that." And the person says, "Okay, here you are."
That person ate the marshmallow.
If the sales person says, "Wait a second.
Let me ask you a few questions to see if this is a good choice."
Then you sell a lot more.
So this has applications in all walks of life.
I end with -- the Koreans did this.
You know what? This is so good that we want a marshmallow book for children.
We did one for children. And now it is all over Korea.
They are teaching these kids exactly this principle.
And we need to learn that principle here in the States, because we have a big debt.
We are eating more marshmallows than we are producing.
Thank you so much. | {
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私が学んできた音楽や 家族などについて 少しお話しできる機会に わくわくしています でもそれ以上に あなた方に ドネルの素晴らしい家族についてや 私たちがどのように 出会ったかなどを お伝えできることに わくわくしています 私の経歴を ご存知ない方のために申し上げると 私はケープ・ブレトン島― カナダ東部の ノヴァ・スコシアの出身です
とても音楽の豊かな島で 起源はスコットランドにあります 音楽など あらゆる伝統を継いでいて 踊りや言葉もそうです 言葉は残念ながら ケープ・ブレトンでは 廃れつつあります
伝統的な言葉はゲール語ですが 多くの音楽は ゲール語に由来しており 踊りや歌など すべてがそうです 私の血筋は ずっとスコットランド系ですが 私の父と母は 2人とも とても音楽を 愛する人たちです
私の母は 私が5歳の時に ダンスを教えてくれ 父は 私が9歳の時にフィドルの弾き方を 教えてくれました
おじはとても有名な ケープ・ブレトン・フィドル奏者です
彼はバディ・マクマスターと言い とにかく素晴らしい人です うちではスクエア・ダンスという 伝統があります うちや近所のうちで パーティーをすることもあります キッチン・ケイリーです
「ケイリー」というのはゲール語で パーティーの意味で キッチン・パーティーは ケープ・ブレトンではとても よく行われています 誰かが家に立ち寄って始まるのですが ケープ・ブレトンでは 必ずどの家にも フィドルがある と言っていいでしょう ケープ・ブレトンには 世界のどこよりも 1人当たりのフィドル奏者の 数が多いと思います ほとんどの人が弾けるので 家に入ってきた人が 弾いてもいいので 誰かが家にやってきたら
1曲弾くように言うのです そうするうちに 小さなパーティーが始まって 誰かが踊りだし 誰かが歌いだす といった具合です ですから 育つには素晴らしい環境でした そして そのような場所で 私も音楽を始めたのです それは周囲の環境や家族 血筋そのものから生み出され 音楽で様々なことをしてきました
たくさんのCDを録音しましたし
グラミー賞にもノミネートされ 賞もいくつかいただきました すごい経験です でも 1番は夫に出会ったことです ドネルとはかれこれ 12年間知り合いでした どのようにして音楽が 私たちを結びつけたかを お話ししたいと思いますが まずは10月5日に 私の夫となったばかりの 彼を紹介します ドネル・レーヒーです ありがとう TEDは初めてなので
登壇できてうれしく思います どういうものなのか どういう方々の集まりなのか どういうものなのか どういう方々の集まりなのか まだ時間は経っていないのですが 少しずつわかってきました
ナタリーに 何をしたらいいか尋ねたら
自分のことを話せばいい ということなので
退屈だと思いますが 少しだけ 家族の話をさせてください 私は11人兄弟で オンタリオ州の レイクフィールド出身です トロントから1時間半ほど 北西に向かったところです 私たちは農場で育ちました
両親は肉牛を育てており 私は長男です
私より少し年上の姉が4人います
私たちはテレビのない 環境で育ちました
周りには変わっていると 思われていましたが 私は素晴らしいことだった と思っています
テレビがあったことも 数年間ありましたが もちろん とても時間を 無駄にしてしまい やるべきことを 終わらせられないので テレビは持たないことにしたのです
私たちは音楽を 奏でながら育ちました― 私の母も ケープ・ブレトンの出身で
母とナタリーのお母さんは お互い知っていました 私たちは楽器を 弾いたり 一緒に踊ったりして 育ちました
色々な曲を 耳から聴いて弾く事を 覚えて育ったことは とても重要なことだった と思います というのも それほど多くのスタイルの 音楽に触れることは あまりなかったからです
私たちは楽器の弾き方を 学びましたが ある意味で 内にあるものを 使うほかなかった とでも言いましょうか テレビもなければ ラジオもそれほど 聞きませんでした 時には教会や学校に行ったり 農場の手伝いをして 音楽を奏でていました ですから 私が思うに 重要な時期に 自分のスタイルや 自分のスキルを 伸ばすことができました 私の両親の音楽は
オンタリオ州の オタワ・バレー・スタイルで オンタリオ州の オタワ・バレー・スタイルで フレンチ・カナディアン・スタイル とも呼ばれ 木材伐採キャンプで 生まれたものです
何年も前 何百人もの人々が 冬の間 北オンタリオや ケベックの 伐採地へ行ったものです そこではあらゆる異なる文化があり アイルランド人 フランス人 スコットランド人 ドイツ人などが 夜な夜な 集まって カードで遊んだり ステップダンスを踊ったり フィドルを奏でたりしました そして 何年も経つうちに オタワ・バレーのフィドル奏法は だんだんと進化し オタワ・バレー・ステップダンスも 発展しました 私は
そのスタイルから始めて すぐに自分のスタイルを 持ち始めたのです それからナタリーに出会い 私は素晴らしいケープ・ブレトンの フィドル奏法に触れたのです
私たちはこうして出会ったのです 君が話しなよ 話したくないの? 私が話す番のようですね
非常に面白いのは ドネルの育った環境が 私の育った環境に とても似ているということです ドネルが演奏するのを 私は12歳の頃に見ました 彼は家族と一緒に インヴァネスに来たのです 私の家から 45分くらいのところです 私はただ圧倒されてしまい とにかくすごかったのです すぐにその理由は おわかりになるはずです 私はただその演奏が 信じられなかったのです 母もそこにいて
母はこう言っていました― ドネルのお母さんも 舞台に上がって 子供たちと一緒に 踊ったのですが 母は「あれはジュリー・マクドネルよ 子供の頃 一緒に踊ったものだわ 自分たちの子供が 楽器を弾いたり 音楽をやるなんて 思いもしなかったけどね」と
母は思ってもいなかったでしょうね 12年 いえ20年後に 子供たちが結婚するなんて それはともかく 電話がかかってきたのは その7年後 私が19歳— 大学の1年生か2年生の時でした ドネルでした 彼は「もしもし 僕のことを 知らないかもしれないけど ドネル・レーヒーです」 と言いました
私は「知ってるわ
あなたのテープが家にあるもの」 と言い
彼は「トゥルーロにいるんだけど」 と続けました 当時そこに私は住んでいました そして彼は夕食に誘ってくれました
そういうわけです では — 続けましょうか? 2年ほど付き合って別れ 10年間離れていて またよりを戻して 結婚したのです さて 時間も無くなってきているので 取りかかろうか
みなさんに1曲をお聞かせします
スコットランドの曲を選びました
ゆっくりとしたエアから始めます
エアというのはヨーロッパで 葬儀の時に 通夜から墓地へと 遺体が運び出されるときに 演奏されます 葬送の列は 笛吹きか フィドル奏者が先導します
エアの短い部分を ちょっと演奏したら ちょっと面白い曲を 弾こうと思いますが 準備ができていないと 弾くのが難しい曲なので 失敗しても 気に入ったふりを してくださいね 『バンクス』という曲です
では 今度は2人で一緒に 演奏したいと思います 私たちが笑っているのは 2人のスタイルがあまりにも 違うからです お聞きの通りです
ですので ドネルと私は 一緒に演奏できる新曲を 書いているところなのですが どの曲もまだ 完成していません
昨日始めたところなのです ですが 一緒に何か弾いてみましょう
1分間でね
1分間ね
君から始めて いえ あなたから あなたのやり方があるでしょう
調律できてないわ ちょっと待って
アヒルか 鳥のポーズをしているみたいですね アナウンサー:いい知らせです 次の準備が まだできてないようなので
あと10分あります
わかりました
ええ いいでしょう
続けましょう 何を弾きたい?
そうね うーん...
うん いいわよ
速さは?
あまり速すぎずに
一緒に1曲弾きますが ナタリーはピアノ伴奏をしてくれます
ケープ・ブレトンのピアノ奏法は 素晴らしいです とてもリズミカルで すぐにお分かりになると思います
私の母はピアノを弾きますが ケープ・ブレトンの家に ピアノがない時に 覚えたのだそうです 母の家族が ケープ・ブレトンで ピアノを買う前に 母は板の上でリズムを奏でて 覚えたのだと言います 寒い冬の夜には フィドル奏者たちが 集まってきて 一緒に弾いたのですが 母は板を叩いていたのだそうです ですからピアノを買ったとき— トロントで購入したピアノは
電車で輸送されて 馬が引くそりで 家まで運ばれてきた
当時その地域で最初の ピアノでしたが— 母はピアノが着くやいなや すぐに弾けたと言います あらゆるリズムを 学んでいたので 弾くことができたのです とにかく 昨年私たちは そのピアノを見つけて 家に持ち帰りました 購入したのです
そのピアノは 5つか6つの家族を 渡り歩いていたのですが 私たちにとっては 大事なものでした 何年も前の誰かとその家族の
写真も見つけました ともあれ 無駄話は これくらいにして
いいのよ レーヒーについて話してあげて
レーヒーの何を話すの? 話してよ― 彼女が私に話してほしいのは― 私たちは「レーヒー」という名前のバンドを
11人兄弟でやっています 私たちは― 何を言えばいいんだろう? 私たちが開いたのは― 手術の事じゃないわよ
そうだね
素晴らしいチャンスがありました
2年間 シャナイア・トゥエインの 国際ツアーで前座を務めたのです
私たちにとっては大きな出来事でした 姉たちはみな育児休暇中で 男どもは結婚したところなので もう何週間か おそらく 故郷にいることになるでしょう 何を言ったらいいの? 何を言えばいいかわからないよ ナタリー 私たちは えーと... 結婚ってこういうことなの?
悪くないわね わかった いいよ 私の家族には女が7人 男が4人いて フィドルが2挺と ピアノが1台ありました もちろん 誰がどの楽器を 弾くかでもめるので 両親は 弾いている人から楽器を 取り上げてはいけないという ルールを作りました 弾き終わるまで 待たなければいけないのです ですから ピアノに向かったら
食事の時も離れずにいました 姉や弟にとられたくありませんからね 兄妹たちは待って 待って 待って 真夜中になってもまだ ピアノに座っているのです そうやって両親は 私たちに練習させたのでした
1曲弾こうか?
うまくいったわね そうだね
続けたくないのですが...
最後の曲です ナタリーはピアノを弾きます
オーケー イ長調でどう? | Well, I'm really excited to talk a bit about my own upbringing in music and family and all of that, but I'm even more excited for you people to hear about Donnell's amazing family and maybe even a little bit about how we met, and all that sort of thing, but for those of you that may not be familiar with my upbringing, I'm from Cape Breton Island, Nova Scotia, eastern Canada,
which is a very, very musical island, and its origins come from Scotland with the music and all the traditions, the dancing, the language, which unfortunately is dying out in Cape Breton.
The traditional language is Gaelic, but a lot of the music came from the Gaelic language, and the dancing and the singing and everything, and my bloodline is Scottish through and through, but my mother and father are two very, very musical people.
My mom taught me to dance when I was five, and my dad taught me to play fiddle when I was nine.
My uncle is a very well-known Cape Breton fiddler.
His name's Buddy MacMaster, and just a wonderful guy, and we have a great tradition at home called square dancing, and we had parties, great parties at our house and the neighbors' houses, and you talk about kitchen cèilidhs.
Well, cèilidh first of all is Gaelic for party, but kitchen party in Cape Breton is very common, and basically somebody drops into the house, in Cape Breton, there's a fiddle there, guaranteed, and I'd say, well there's first of all more fiddlers per capita in Cape Breton than anywhere in the world, so ten chances to one, the fellow who walked in the door could play it, so you'd have someone come
into the house, you'd invite them to play a tune, and lo and behold a little party would start up and somebody would dance, and somebody would sing, and all that sort of thing, so it was a wonderful, wonderful way to grow up, and that is where my beginnings in music come from: my surroundings, my family, just my bloodline in itself, and, oh, I've done lots of things with my music.
I've recorded lots of CDs.
I was nominated for a Grammy and I've won some awards and stuff like that, so that's awesome, but the best part was meeting my husband, and I've actually known Donnell for probably 12 years now, and how music brought us together, but I'm going to introduce you right now to my new husband as of October 5, Donnell Leahy. Donnell Leahy: Thank you. I'm kind of new to the TED
experience and I'm glad to be here, but I'm just trying to put it all together, trying to figure all you people out, and I've been here for a short while, and I'm starting to understand a little bit better.
So I asked Natalie, what do I do?
And she said, just talk about yourself.
It's kind of boring, but I'll just tell you a little bit about my family. I'm one of 11 brothers and sisters from Lakefield, Ontario, an hour and a half northeast of Toronto, and we grew up on a farm.
Mom and Dad raised beef cattle, and I'm the oldest boy.
There are four girls a little bit older than me.
We grew up without a television.
People find that strange, but I think it was a great blessing for us.
We had a television for a few years, but of course we wasted so much time and the work wasn't getting done, so out went the television.
We grew up playing— Mom's from Cape Breton, coincidentally.
Mom and Natalie's mother knew each other. We grew up playing, and used to dance together, right, yeah.
We grew up playing a bunch of, we played by ear and I think that's important for us because we were not really exposed to a lot of different styles of music.
We learned to play the instruments, but we kind of had to come from within or go from within, because we didn't watch television, we didn't listen to a lot of radio. We went to church and to school sometimes, and farmed and played music, so we were able, I think, at a very critical age to develop our own style, our own self, and my mother plays, my father plays,
and the style that came from the Ottawa Valley in Ontario, we call it French-Canadian style but it originated in logging camps.
Years ago, hundreds of men would go in Northern Ontario and in Quebec, and they were all different cultures, and the Irish, the French, Scottish, German, they'd all meet, and of course at night, they'd play cards and step dance and play fiddles, and over the course of many years, the Ottawa Valley fiddling kind of evolved and the Ottawa Valley step dancing evolved, so that's, I kind of started out
with that style and I quickly started doing my own thing, and then I met Natalie, and I was exposed to the great Cape Breton fiddling.
That's how we met. You tell them. NM: You want to or no? Well I guess I have to now.
Well, it's just so interesting that Donnell's upbringing was very similar to mine, and I actually saw Donnell play when I was about 12 years old, and he and his family came to Inverness, which is about 45 minutes from where I lived, and I was just blown away, like, it was just amazing, and you'll find out why pretty soon here, but I couldn't believe the fiddling and Mom was there with me,
and she was saying — Donnell's mother came up on stage and danced with her children, and Mom was saying, "That's Julie MacDonnell, I used to dance with her when we were kids. Little did I think our children would be playing instruments, you know, playing music, yeah."
Twelve years, er, 20 years later little did she think her kids would be getting married, but anyway, so, then I got a phone call about, I dunno, seven years later. I was 19, first or second year of college, and it was Donnell, and he said "Hi, you probably don't know me but my name is Donnell Leahy."
And I said, "I know you.
I have a tape of yours at home."
And he said, "Well, I'm in Truro," which is where I was, and he asked me out for supper.
That's it. Then — Will I keep going? Then we dated for two years, broke up for 10, got back together and got married. DL: So anyway, we're running out of time, so I'll just get to it.
I'm going to play a piece of music for you.
It's actually a Scottish piece I've chosen.
I starts out with a slow air.
Airs were played in Europe at burials, as a body was carried out from the wake site to the burial site, the procession was led by a piper or a fiddle player.
I'll quickly play a short part of the air, and then I'm going to get into kind of a crazy tune that is very difficult to play when you're not warmed up, so, if I mess it up, pretend you like it anyway. It's called The Banks.
NM: Well, we're gonna play one together now. We're laughing, like, because our styles are totally different, as you can hear.
And so, you know, Donnell and I are actually in the process of writing new pieces of music together that we can play, but we don't have any of those ready.
We just started yesterday. So we're gonna play something together anyway.
DL: With one minute.
NM: With one minute.
DL: You start. NM: No, you have to start, because you've got to do your thing.
NM: I'm not tuned. Hold on.
NM: I feel like I'm in the duck or the bird pose right now. Announcer: Great news, they're running late downstairs.
We've got another 10 minutes.
NM: Okay. Sure.
All right, okay.
Let's get her going. DL: What do you want to play?
NM: Well, um...
NM: Uh, sure.
DL: How fast?
NM: Not too fast.
DL: We're going to play a tune and Natalie's going to accompany me on the piano.
The Cape Breton piano playing is just awesome. It's very rhythmic and, you'll see it.
My mom plays piano, and she learned to play before they had a piano at home in Cape Breton. Before Mom's family had a piano in Cape Breton, she learned to play the rhythms on a piece of board, and the fiddlers would all congregate to play on the cold winter's evenings and Mom would be banging on this board, so when they bought a piano, they bought it in Toronto and had it taken
by train and brought in on a horse, a horse and sleigh to the house.
It became the only piano in the region, and Mom said she could basically play as soon as the piano arrived, she could play it because she had learned all these rhythms. Anyway, we found the piano last year and were able to bring it back home. We purchased it.
It had gone through, like, five or six families, and it was just a big thing for us, of somebody and their family years ago.
Anyway, I'm blabbering on here.
NM: No, I want you to tell them about Leahy.
DL: What about Leahy? NM: Just tell them what— DL: She wants me to talk about— We have a band named Leahy.
There's 11 siblings. We, um— What will I tell them? We opened— NM: No surgeries.
DL: No surgeries, oh yeah.
We had a great opportunity.
We opened for Shania Twain for two years on her international tour.
It was a big thing for us, and now all my sisters are off having babies and the boys are all getting married, so we're staying close to home for, I guess, What can I say? I don't know what to say, Natalie. We, uh... NM: Is this what marriage is about?
I like it. DL: Oh yeah, okay, in my family we had seven girls, four boys, we had two fiddles and one piano, and of course we were all fighting to play on the instruments, so dad and mom set a rule that you couldn't kick anyone off the instrument. You had to wait until they were finished, so of course, what we would do is we'd get on the piano
and you wouldn't even get off to eat, because you wouldn't want to give it up to your brother or sister, and they'd wait and wait and wait, and it'd be midnight and you'd be still sitting there on the piano, but it was their way to get us to practice.
Will we play a tune?
NM: It worked. DL: It worked.
Sorry, I hate to carry on...
So this is our last number, and we'll feature Nat on piano.
Okay, play in, how about A? | {
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狩猟祭開始まで残り数分。
ウィルゴは緊張した面持ちで剣を握り締めながら多くの参加者と共に開催を待っていた。
周囲にいるのはどれも強そうな強面ばかりで、何だか自分が酷く場違いに思えてくる。
巨大な戦斧を持った筋骨隆々の大男に、「フッ」とか格好つけている全身黒尽くめの変な人。
どう見ても身長が2mは超えていそうな格闘家に、肥満体型のフンドのよく分からない人間。
全身フルアーマーの騎士など一目で強そうだと思ってしまう。
『さあ、いよいよ開催間近となりましたドラウプニル狩猟祭!
魔物達にはそれぞれ、その強さに応じてポイントが振り分けられており、1時間の制限時間が過ぎた時に最も多くのポイントを保有している勇士が優勝となります!
あ、申し遅れました。わたくし実況のケイロンと申します』
拡声の魔法か天法だろうか。
実況と名乗る誰かの声が響き渡り、ウィルゴが顔を向ければ実況席にはいかにも旅人、という感じの軽装の優男が座っているのが見えた。
隣には虎の獣人がおり、何だか凄く強そうだ。
『今回は解説としてこの国の誇り、大陸最強の剣聖であるフリードリヒさんにお越し頂きました。
『ミズガルズ共通語でOK』
虎さんのユニークなジョークに会場がドッと沸く。
きっと皆の緊張を和らげようという彼なりの粋な計らいだろう。
流石に剣聖と呼ばれる者は緊張の和らげ方も心得ているようだ。
『さあ、いよいよ開幕の時間が迫って参りました! 皆様準備はよろしいですか?
実況より狩猟祭開始の声が響き、それと同時に魔法か何かで鳴らしたのだろう大きな破裂音が響く。
選手達は我先にと走り、ウィルゴも置いて行かれないように必死で走った。
あれ? と思うも仕方のない話だ。レベルとステータスが違う。
皆が遠慮してくれてるわけじゃないよね? などと思い後ろを振り返りつつウィルゴはトップを走る。
とはいえこの祭は徒競走ではない。いかに魔物を狩るかの祭だ。
選手達はそれぞれが勘や経験で見出した魔物の集まりやすいスポットへと走り、東西南北へ散っていく。
そしてウィルゴの前には早速、いかにも『俺強いよ?』と顔に書いてそうな全長2mはあるだろう魔物が立ち塞がっていた。
緑色の肌に鍛えられた肉体。腰蓑一丁の格好。
ホブゴブリンと呼ばれる亜人の一種だ。
「ゴブゴブ!」
ホブゴブリンは見た目からして弱そうなウィルゴに油断しているのだろう。
ニタニタと笑いながらゆっくりと近付いてくる。
一方ウィルゴは、自分の強さというものにあまり自信がなかった。
井の中の蛙大海を知らずとはいうが、彼女が住んでいた井戸は大海を消し飛ばすような化け物しか住んでいない。
だから彼女は自分の強さが分からないのだ。
それでもウィルゴを踏み止まらせたのは主からの期待があったからだ。
剣まで貰っておいて、それで逃げるなんて無様は晒せない。
「やあああああ!」
そう思い、ヤケクソ混じりで突撃!
剣を突き、ホブゴブリンの胸へと当てる。
するとホブゴブリンの身体はまるで抵抗もなく貫通されてしまい、声も発せず地面に崩れ落ちた。
「え?」
あまりにも呆気なく勝ててしまった事にウィルゴが呆け、恐る恐るといった様子でホブゴブリンの死体をつつく。
だが反応はない。再生するとかそんな気配もなく、本当に死んでしまっている。
それを見てようやくウィルゴは自分の勝利を理解し、そして考えた。
(もしかして......この狩猟祭のモンスターって凄く弱い?)
実際は魔物が弱いのではなく彼女が強いのだが、そうはまだ思えないらしい。
しかし相手が弱いならば何とかなる。
ウィルゴは微妙な勘違いを治さぬままに立ち、そして気合を入れた。
これならいける! 優勝は無理でも恥ずかしくない程度には戦える!
ウィルゴは白い翼を羽ばたかせ、一気に空へと踊り出た。
飛ぶのは別に反則ではない。空を飛ぶのもまた技の一つとして認められている。
ウィルゴは空から魔物を探し、そして一番近くにいた狼型の魔物を標的と定めると、一気に加速した。
すれ違いざまに一閃!
狼の魔物を切断し、再び空へと舞い上がる。
今度は少し離れた位置にいる鳥の魔物へ狙いを定める。
少し距離はあるが今のウィルゴにはルファスから与えられた剣がある。
ラピュセルに力を込めて振るえば剣先からは白い刃が射出され、遠くの鳥を切断した。
速度を落とす事なく今度は固まっているゴブリンを見付ける。
身長が150程度の、棍棒を持った通常のゴブリン。杖を持った希少種の魔法を使うゴブリン――ゴブリンマジシャンが一体のだ。
ウィルゴは急加速して彼等の中まで切り込むと剣を振るい、すれ違いざまにゴブリン二体を葬った。
飛び去っていくウィルゴの背にマジシャンが火球を発射するが振り返る事もせずに横に移動して回避。
空中で上下逆さまになり、剣から光の刃を発射してマジシャンを切断した。
『ウィルゴ選手、20ポイント獲得!』
いける、勝てる!
ウィルゴはここにきて少しばかり、もしかしたら自分は強いのかもしれない、と思い始めていた。
しかしすぐに思い浮かぶのは仲間達の姿だ。
脳裏に思い浮かぶのは、もしもこの狩猟祭に仲間の誰か......例えばリーブラなどが参加したらどうなるか、というIF。
ウィルゴの思い描いた脳裏の世界では機関銃やらバズーカやらを装備したリーブラが燃え盛る草原の中を徘徊し、ドラウプニルを焦土へと変えながら目に付く魔物全てを殺戮していた。
あ、無理だこれ。やっぱり私弱い。
比較対象が単純に悪すぎるだけなのだが、まだ彼女はそれに気付かない。
ともかくルファス達の一員として、せめて恥ずかしくない程度には頑張るとしよう。
そう思いながらウィルゴは、現在自分がポイントの上でもトップを独走している事に気付かずに大空を飛翔した。
『ウィルゴ選手5ポイント獲得!』
『ウィルゴ選手9ポイント獲得!』
『ウィルゴ選手8ポイント獲得!』
何あの娘、超強い。
そんな戦慄を抱きながら彼......勇者瀬衣は必死こいて魔物を倒していた。
今現在無双しているウィルゴという少女が誰なのかは解っている。
昨日の変な一団の中にいた白翼の可愛い子だ。
開始前でもあの純白の翼は目立ち、あの子も参加するのかと驚かされたし、緊張している様子だったからもし危なくなっていたら助けてあげるべきかもしれないと正義感を燃やしていた。下心とか言ってはいけない。瀬衣だって男なのである。
だが甘かった。というか自惚れていた。
助ける? ......一体誰を?
さっきから空を飛んでヒット&アウェイで魔物を凄い勢いで駆逐しているあれを?
冗談だろう。あの子は自分などより圧倒的に格上だ。というか多分この祭の参加者で最強だ。
最初の緊張した面持ちは一体何だったのか。擬態だろうか?
弱そうなのに限って凄い強いというのはファンタジーのお約束のようなものだが、それにしたってあれは酷い。下手をすると剣聖より強いんじゃないだろうかあの子。
それは流石にないと思いながらも、しかしあの無双を見るとそんな気がしてならない。
あ、今度はワイバーン倒しやがった。
亜竜は本物のドラゴンと比べれば弱いらしいけど、それでもレベル80超えの怪物なんだぞ。
どうでもいいが瀬衣の現在のレベルは35。余裕でウィルゴとかいう少女に一撃で殺されてしまう実力である。
というかこの世界、レベル上がりにくすぎて泣けてくる。
こういうのって普通、もっとこう、レベル上がり易いのが普通じゃないだろうか?
昔見たライトノベルだと他と比べて主人公だけやけにレベルアップが早くて楽々チートとかやってたのに何だこれは。
『ウィルゴ選手、12ポイント獲得!』
『バニーダンディ選手、3ポイント獲得!』
『ビキニマッスル選手、7ポイント獲得!』
次々と選手の名とポイントが実況され、瀬衣の心に焦りが生じる。
やばい。このままでは成績上位を狙うどころではない。普通に最下位が見えてきた。
実際のところは瀬衣も結構頑張って上位にギリギリ食い込んでいるのだが、本人はそう思えないのだろう。
瀬衣は取り憑かれたように刀を振るい、魔物を斬り倒していく。
しかし命を奪う事にはまだ抵抗がある。いつまで引き摺ってるんだと思われるかもしれないが、やはり日本人にこれは辛い。
相手が結構可愛い犬の魔物とかだと攻撃する意思そのものがなくなってしまう。
おいやめろ、こっちに来るな。俺結構犬好きなんだよ。
尻尾振るな。後ろ足で立ってじゃれてくるな。後ろに付いてくるな。
そのような事を考えながら必死に戦っていた瀬衣だが、遠くから何か悲鳴のようなものが聞こえてきた事で意識を現実へと戻した。
「な、なんだ?」
向こうに強い魔物でもいるのだろうか?
そう考えて視線を悲鳴の方向へと向ける。
視線の先......数百mは先だろう草原に、何かでかいのがいるのだ。
この距離でもハッキリと見えるほどに巨大な『恐竜』が暴れ回っている。
近くの森をテリトリーとする恐竜のディノギガントが会場に乱入しました!
――恐竜いんのかよ、この世界!
瀬衣は青い顔をして、遠くで暴れている恐竜を見る。
あれが魔物と生物のどちらにカテゴライズされているかは分からないが、とりあえず祭用の魔物など比較にもならないヤバイ化物だという事だけは見て解った。
だってあの恐竜、あろう事か魔物を捕食しているのだ。
魔物達が逃げ、亜竜すら戦意を失って逃走している。
そしてそれを追いかけて襲う様はまさに捕食者。食物連鎖の上位に君臨する存在だ。
だが最大の問題は人間までも餌と見なしている事だろう。
今の所冒険者や旅人は犠牲になっていないようだが、このままでは時間の問題だ。
誰かが食い止めなければ確実に人に被害が出る。
そして最悪な事に、参加者と思しき女性冒険者が恐竜の前で尻餅をついてガクガクと震えていた。
やばい、と一目で解る。あれを放置したら確実に喰われてしまう。
瀬衣は悪態を吐いて走り出し、恐竜の所へと疾走する。
その後に続いて何故か犬も疾走した。
恐竜が今食っている魔物を完食するまでにかかる時間は精々数秒。その間にあそこまで行き、尻餅をついている女性冒険者を引っ張って逃げる。
戦う? 冗談じゃない。身の程くらいは弁えている。
自分に出来るのは、あれを討伐する為の戦士達なりが派遣されるまでの間に誰も死なせないように逃がす事くらいだ。
時間さえ稼げばフリードリヒやガンツがここに来てくれるはずだ。そうなれば勝ち目も見えてくる。
「おい、早く逃げるぞ! 立つんだ!」
何とか辿り着いた瀬衣は女性の手を掴んで引き上げようとする。
だが女性はまるで動かず、首を振るばかりだ。
「だ、駄目......腰が抜けて......」
「っ、仕方ないな!」
瀬衣はすぐに女性を背負って逃げる事を決意する。
だが駄目だ。重い。女性が重いのではなく、身に付けている鎧が重い。
ついでに剣も重い。これではとても背負う事など出来ない。
「おい、鎧と剣を捨てるんだ! これじゃ背負えない!」
「で、でもこれ高くて......買う為の借金もまだ返してないし」
「そんな事言ってる場合かあ!?」
今は一刻を争うのだ。
ディノギガントが魔物を捕食し終える前に逃げなければならない。
だが既に時遅し。恐竜は魔物を飲み込んでしまい、こちらへと視線を向けた。
最早逃げる事は不可能と察した瀬衣はすぐに刀を構え、恐竜を威嚇する。
ここでまだ女性を見捨てて逃げるという選択を選ばない辺りが彼という男だろう。
もっとも女性の方はその選択を迷いなく選んだらしく、瀬衣など放置して這って逃げようとしているが。
「GIGAAAAAAAAAA!!」
恐竜が吼え、こちらへと突進する。
速く、そして重い。
一歩ごとに地面が揺れるくせに、何だこの速度は。
瀬衣は覚悟を決めて刀を握り、死を避ける為に恐竜の動きを冷静に観察する。
警戒すべきは口! あの噛み付きをまずは回避する。
そして何とか足を斬る事が出来れば、逃げる事もまだ不可能ではない。
――瞬間、白い影が間に割り込みをかけた。
手にした剣を薙ぎ、風圧で恐竜を跳ね飛ばす。
純白の羽根が舞い、瀬衣の眼前に白い天使が舞い降りる。
後にそれは天使などではなくただの天翼族だと理解するのだが、それでもその時の瀬衣には紛れもなく、彼女の存在は天使に見えていた。 | There were a few minutes left until the start of the hunting festival.
With a nervous looking face, Virgo strongly held onto the sword whilst waiting for the festival to start amongst the other participants.
She felt that there were only strong looking people around her and were greatly feeling out of place.
A muscular man was holding a gigantic battleaxe and a weird man, dressed completely in black, was posing with a “fuu”.
There were also a martial artist who was clearly over two metres in height and a random chubby human with a single piece of white loincloth around his crotch.
There were also knights with full plate armours which made one feel that they were strong.
“Now, it is finally nearing the time for the start of Draupnir hunting festival! I would like to dedicate this time to reiterate the rules again! ...Is what I would like to say, but the rules are very simple. It is to hunt and hunt and hunt the magical beasts that have been released throughout the capital! That is the one and only rule!
Each magical beast is individually assigned a point corresponding to its strength and the brave warrior who has gained the most amount of points after the time limit of one hour will be crowned the champion!
Oh, yes, excuse me for the late introduction, I am Chiron, who will be reporting live.”
It was a voice amplification arcane magic, or perhaps divine magic.
The voice of a person who called himself the live reporter rang throughout the place. Virgo turned to face towards the commentary box and she found a very gentle looking man sitting there.
Next to the man was a tiger beastkin who looked quite strong.
“This time, we have invited this country’s pride, the strongest man on the continent, the Sword Saint, Friedrich, as a commentator! Sword Saint-san, please enlighten us!”
“Common Midgard language is OK.”
To the tiger’s unique joke, the stadium felt some excitement.
It was most probably his way to relieve everyone’s nervousness.
People thought that once one became known as the Sword Saint, he probably would know a way to relieve the nervousness.
“Now then, the time for the curtains to be drawn is finally upon us! Is everyone ready? Now get to your position, and...... STARRRTTTT!”
The reporter’s voice indicating the start of the hunting festival rang. At the same time, some form of arcane magic must have been fired as a loud and explosive round could be heard.
All the participants started running to take the lead and Virgo also ran with all her might so that she would not be left behind.
Wait, what? – Although she thought in this way, this was just a matter of course. There was simply too much difference in their levels and statuses.
Could everyone be holding back because they’re being considerate of others? – Thinking along those lines, Virgo looked back as she ran at the very front.
Having said all that, this festival was not a running competition. It was a festival on how many magical beasts could be hunted.
The participants each used their own instincts and experiences to find and run towards spots that magical beasts might gather leading them to scattered in all directions.
And in front of Virgo was a magical beast with the height of over two metres and a face that looked like it was trying to say “I’m strong, you know?”, blocking the way.
Green skin with a well-trained muscle. It was a creature wearing a loincloth.
It was one of the demi-humanoids species called the hobgoblin.
“Gobugobu!”
The hobgoblin was most probably underestimating Virgo who appeared weak.
With a creepy smile, it slowly closed in on Virgo.
On the other hand, Virgo was not confident in her own strength.
Although there was a saying that the frog in the well did not know that an ocean existed, the well that she lived in was filled with nothing but monsters who could scatter that giant ocean into oblivion.
As a consequence, she did not know her own strength.
Even then, the reason she did not falter was that her master had an expectation out of her.
She could not do such a disgraceful thing like run away even after getting gifted a sword.
“Yaaaaaaa!”
Thinking in that way, she charged in with a desperate feeling.
She thrust her sword and pointed it towards the hobgoblin’s chest.
When she did so, the hobgoblin was pierced without the slightest bit of resistance and collapsed onto the ground without even being able to raise its voice.
“Eh?”
Due to how easily she won, Virgo became a little befuddled. She then slowly and nervously approached and nudged the hobgoblin’s corpse.
However, she did not get a reaction from it. She noticed that there was not a shred of sign of it resuscitating and that it truly was dead.
Looking at the situation, Virgo finally realised that she had won and thought about what was going on a little.
(Could it be..... The monsters in this hunting festivals are all extremely weak?)
In actuality, it’s not that the monsters are weak but I’m strong – she was still unable to think in this way.
However, she thought that things would work out somehow if the enemies were weak.
Without realising that she was under some weird misunderstanding, she stood up and motivated herself.
If it’s something like this, I can do it! Even if I can’t win, I can still fight to the degree of not embarrassing everyone!
Virgo batted her white wings and danced straight into the air.
The act of flying itself was not excluded by the rule. To fly in the air was also judged as one of the skills.
Virgo looked for a magical beast from the air and once she chose the nearest magical beast as her target, she accelerated straight to that wolf type magical beast.
Right past the side in a straight line!
She sliced the magical beast in half and flew right back up into the air.
This time she chose the bird type magical beast in slightly a distance away as her target.
Although there was some distance between her and the magical beast, Virgo currently had a sword which was entrusted to her by Ruphas.
By pouring power into La Pucelle, Virgo was able to fire a white blade-like thing from the tip of the sword, allowing her to shred the bird which was still some distance away.
Without reducing her speed, this time, she was able to find a pack of goblins.
With the height of around 0 centimetres, there were two ordinary goblins holding onto clubs as well as a rare species of goblin which held a staff and used magic—a goblin magician. Thus there were three enemies in total.
Virgo quickly accelerated and dived into the middle of them, whereby she swung her sword around. With this single swing, she was able to cull two of them.
Towards Virgo who was flying away, the magician fired a fireball at her back. Nevertheless, without even turning around, she was able to avoid the attack by dodging to the side.
She became upside down in the air and released a blade of light from her sword at the magician.
“Participant Virgo, 20 points obtained!”
I can do it, I can win!
After reaching this point, Virgo had finally started thinking for the first time that she could actually be strong.
However, as she thought in that way, the first thing that came to her mind was the appearance of her colleagues.
In her mind was a scenario of what if any one of her colleagues had participated in this hunting festival... for example, what if someone like Libra had participated.
Within Virgo’s mind was a picture of Libra equipped with machine guns and bazookas whilst roaming around a burning grassland and turning the country of Draupnir into a scorched ruin, murdering every magical beast which could be spotted.
Ah, yea it’s impossible. I’m actually just weak.
Although it was merely that the standard of comparison was horrible, she was not able to notice that fact.
In any event, as one of Ruphas-sama’s group member, I have to at least put enough effort in to not embarrass the others.
Thinking along those lines, Virgo flew into the air, unaware that her score had also soared above all the others’ scores.
“Participant Virgo, 5 points obtained!”
“Participant Virgo, 9 points obtained!”
“Participant Virgo, 8 points obtained!”
What’s with that girl, she’s hell strong.
As he... the Hero Sei, shivered with such a thought, he was desperately trying to defeat a magical beast.
He knew who the currently peerless young girl called Virgo was already.
It was the cute white-winged girl from the group with weird getups.
Even before the commencement of the festival, her white wings stood out, causing Sei to feel surprised that she was going to participate. Additionally, as she was clearly nervous, Sei was burning with a sense of justice, thinking that he would go rescue her if things were to ever become dangerous for her. It would not be fair to say that there was an ulterior motive. Even Sei was a man.
However, he was too naïve in his thoughts. Or rather, he was too pretentious.
He wondered what the nervousness from before was. Perhaps to camouflage her strength?
It was a common trope in the fantasy genre to have a person who looked weak but was actually strong. However, she was on a very bad end of that. Sei thought that she could even have been stronger than the Sword Saint.
Although in his head, he thought that could not be possible, however, one could not help but think in that way when they looked at her.
Ah, this time she defeated a wyvern.
The pseudo-dragons were apparently weaker than the real dragons, but they were still scary monsters which levelled over 80.
Although it was not relevant to what he was thinking about, Sei was currently level 35. He was at the point where he could easily be one shotted by that young girl.
Or more like, I want to cry because it’s so hard to level up in this world.
Normally, it should be a scenario where I can easily level up quickly... shouldn’t it?
In the light novels that he had previously read in the past, as opposed to everyone else, the main character alone was able to unreasonably level up super quickly and enjoy an easy life using dumb cheats.
“Participant Virgo, 12 points obtained!”
“Participant Bunny Dandy, 3 points obtained!”
“Participant Bikini Muscle, 7 points obtained!”
Participants’ names were announced one after another, causing Sei to start feeling impatient.
Not good. At this rate, I can forget about becoming one of the high ranks. I can see myself ranking near the bottom.
In practice, Sei was barely managing to hang onto what would be considered a high ranking, however, the person himself did not seem to think that way.
Sei swung his sword as if he was possessed, striking down the magical beast with the movement.
Nevertheless, he still had hesitation in snatching someone’s life away. One might ask why he was still dragging such a feeling of hesitation around, however, to pluck another’s life away was still a harsh thing for a formerly Japanese person.
All the more so if the enemy happened to be a cute puppy type magical beast.
Oi stop it, don’t come this way. I actually like puppies a lot.
Don’t wag your tail around. Don’t come towards me using only your hind legs. Don’t follow me from behind.
Thinking along those lines, Sei was continuing to desperately fight against it. At that moment, he was pulled back to sanity as he heard a shriek from a distance.
“Wh, what?”
Could there be a strong magical beast on that side?
He turned his head to the direction of the shriek as he considered that thought.
In the direction of his eyes.... In the grassland few hundred metres away from him, something big existed.
It was a raging [Dinosaur] big enough that he could clearly see even from such a distance away.
“Ah, an accident! There is an accident! The dinosaur Dinogiganto who has the surrounding forest as its territory has come out and intruded onto the arena! Everyone, please don’t fight with that. That thing is not a target in this hunting festival!”
— What the hell, the dinosaurs exist in this world?!
Sei’s face turned pale as he looked at the raging dinosaur in the distance.
He did not know whether they were categorised as a magical beast or a living creature, however, he could at least see that it was a monster which was clearly incomparable to the magical beasts used for the festival.
After all, the dinosaur was eating the magical beasts of all things.
All the magical beasts were running away from the dinosaur and this even included the pseudo-dragons who had lost the will to fight.
Its appearance of chasing down and devouring those magical beasts was truly a depiction of the predator. It was truly a portrayal of those that stood in the upper echelon of the food pyramid.
The biggest problem at this moment was that it also saw the humanoids as its prey.
Currently, there were no victims amongst the travellers and the adventurers, however, if things continued like this, it was only a matter of time.
If someone did not try and stop the raging monster, it was certain that there would be victims.
And this horrible situation was about to become a reality. A female adventurer believed to be a participant was currently on her bottom, trembling right in front of the dinosaur.
Not good! – Such a thing was obvious to any onlookers. If she was to be left alone, she would definitely be eaten.
Sei swore out loud and started running towards the location of the dinosaur.
For some reason, the dog also followed behind him.
The amount of time left until the dinosaur finished eating the current magical beast was at most, a few seconds. In this time period, he had to get to the location and drag the female adventurer, who was on her bottom, out of where she was.
Fight it? Stop joking. Sei knew his own place.
He knew that the best he could do would be to gain enough time and allow others to run away successfully until the warriors who could fight the beast were dispatched.
He knew that as long as he bought enough time, Friedrich and Gants would likely arrive on the scene. When that happened, there would be a chance of winning.
“Oi, hurry up and run! Stand up right now!”
Sei who had somehow managed to reach the place in time grabbed on the woman’s arm to pull her up.
However, the woman did not budge and merely shook her head.
“I, I can’t... my knees are feeling weak and...”
“Tsk, can’t be helped!”
At this point, Sei immediate decided to carry the woman and run away from the place.
It was not the woman who was heavy, but the armour on her which was heavy.
Additionally, her sword was also heavy.
“Oi, leave your armour and sword behind! I can’t carry you around like this?”
“Bu, but these are expensive and... I haven’t even managed returned the loan I made to buy them and...”
“Is this really the time to be saying things like that!?”
Time was of the essence at that moment.
They had to run away from the place before Dinogiganto finished eating the magical beast.
However, it was too late. The dinosaur had already swallowed the magical beast and turned its direction towards them.
Judging that it was already impossible to run away, Sei drew his katana and entered into a combat stance and provoked the dinosaur.
Perhaps his decision to not abandon the woman at this point in time could be attributed to Sei’s manliness.
Although this courageous action was not reciprocated by the woman at all as she quickly chose to leave Sei behind and run away.
“GIGAAAAAAAAAAAAAAAA!!”
The dinosaur roared and started heading towards Sei.
Fast and heavy.
Even though the ground shakes every time it takes a step, what is up with that speed?
Sei held his katana firmly in position and patiently studied the movements of the dinosaur to avoid getting killed.
The thing I have to look out for is its mouth! I have to dodge its bites before anything else.
And if I can somehow manage to hit its feet, running away won’t be impossible.
– Right at that moment, a white shadow came between the dinosaur and Sei.
She swung the sword in her hands and the wind pressure blew the dinosaur away.
The pure white wings battered, creaking an image of a white angel descending in front of him.
Using hindsight, he was able to figure out that she was not an angel but a flugel instead. However, at the time of the event, Sei had without a doubt saw her existence as an angel.
Help? ... Exactly help who?
Help the person who had been flying around in the air and wiping out the magical beasts using a “hit and run” tactics?
You must be kidding with me. That girl’s leagues above me. Or more like, she’s probably the strongest amongst all the participants in this festival. | {
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「王家は何者にも負けない国の象徴として、シルバーフェンリルを模した紋章なのです。それに対し、リーベルト家の紋章は牙と爪を表す事で、何者をも倒す象徴としています。それと......随分古い伝説なのですけど、リーベルト家は初代当主様がシルバーフェンリルと懇意にしていたとの伝説があるのです」
「シルバーフェンリルと懇意......ですがクレアさんは最初、何者にも従わないと言っていましたよね?」
「ええ、従えていたわけではないようなのです。初代当主様とはあくまで対等な立場だったという言い伝えです。実際の所は詳しくわかりませんが、シルバーフェンリルと懇意にしていた事で助けられ、多大な戦果を挙げた事で公爵という爵位まで授かったのだと伝わっています」
「多大な戦果......」
「はい、その頃はこの国も盛んに戦争をしていた時期らしく、初代当主様が戦争に赴くと何処からともなく風のように現れ、初代当主様を救ってくれたそうなのです」
戦争をしてたら最強のシルバーフェンリルが助けてくれるって事か。
シルバーフェンリルが強いのはわかるし最強と言われてるのは聞いたが、戦争でどれだけの戦果を挙げたのだろう。
まぁ、最終的に王家の次に偉い公爵にまでなってるんだから、その戦果は目覚ましい物だったんだろうと推察出来る。
「戦争で多大な戦果を挙げ、国を勝利に導いた事から、リーベルト家ではシルバーフェンリルを何者をも倒す象徴としたのです。それからのリーベルト家では代々、シルバーフェンリルを敬う事を義務としています」
つまり、シルバーフェンリルのおかげで公爵にまでなれたのだから、シルバーフェンリルさんありがとうって代々感謝を伝えろって事かね。
ソーセージをたらふく食べて、床で丸くなってるレオがそのシルバーフェンリルと同じとはあまり思えないんだが......。
「ワウ?」
俺がそんな事を考えながらレオに視線をやると、顔を持ち上げて「何か?」とでも言ってるように鳴いた。
頼りになる相棒だよ、お前は。
視線だけでレオにそう伝えた......伝わったかどうかはわからないけどな。
「リーベルト家が領主を務める地域の街や村ではシルバーフェンリルの事を知っている人が多いのです」
「公爵家の言い伝えがあるから......ですね」
「はい。今日も街でエメラダさんに声を掛けられましたが、私に居る事も、シルバーフェンリルだと考える理由になったようです」
そういえば言ってたな。
確か......『銀色の毛並みにクレア様と一緒に居られる事』だったか。
クレアさんが公爵家で、その象徴がシルバーフェンリルだと知っていたから、クレアさんと一緒に居たレオがシルバーフェンリルだと思ったんだな。
それに見た目や牙の特徴もあったから、わかりやすかったのか。
「なので、私達リーベルト家は、タクミさんとレオ様を歓迎致します。......それに、個人的にも助けてもらいましたしね、ふふ」
「ははは、助けたのはレオですよ」
最後には笑って話を終えたクレアさん。
やっぱり美人さんは笑った顔も素敵だねぇ。
セバスチャンさんやメイドさん達、ティルラちゃんも朗らかに頷いてるのを見て、本当に歓迎されてるんだなと実感した。
歓迎されてるのはわかってはいたが、部屋を用意してもらったり、身の回りの物を買うためのお金を出してくれたりするのは少し気後れしてたからな。
とは言え、これからもずっとクレアさん達の厚意に甘え続けるわけにもいかないだろう。
さしあたって俺のギフト『雑草栽培』、何か役に立つ事があるかじっくり考えないといけないな。
「......タクミ様、少しよろしいですかな」
「......何ですか、セバスチャンさん?」
ふと今までクレアさんの後ろで控えていたセバスチャンさんが近づいて来て小声で話しかけて来た。
セバスチャンさんは美形の老紳士だが、男と顔を寄せ合う趣味は無いんだけどな......。
「例の物をお嬢様方に渡すのはどう致しましょう? きっととも喜ばれると思いますが......」
「例の物......あぁ!」
思い出した。
二人に買った物があったんだった。
思わず大きな声を出してしまった俺をクレアさんとティルラちゃん、メイドさん達は何事かと見ている。
二人に買ったとはいえ、お金はセバスチャンさんの貸しにしてもらったから、あまり恰好は付かないが、渡すなら今が良いだろう。
「......セバスチャンさん、今渡しても大丈夫でしょうか?」
「お互いの素性等を話し合った事ですし、今が一番良いタイミングかと存じます」
「わかりました」
部屋に荷物は置いて来たが、これだけはちゃんと持って来た。
俺は二人に買ったプレゼントを取り出しテーブルに置いた。
「クレアさん、ティルラちゃん」
「何でしょうか?」
二人は返事をしながらも、テーブルに置かれた物が気になるようだ。
「えっと......色々とお世話になってるお礼というか......二人に似合ってると思ったからというか......まぁ、立て替えてもらった物なんですけど......その......」
「......タクミ様、しっかりなさって下さい」
どう渡すか考えて無かったため、何を言おうかとしどろもどろになっていた俺を横からセバスチャンさんから発破をかけられる。
メイドさん達も、俺が何をしようとしてるのか分かったのか、応援するような目で見てるな。
多分......食堂に集まる前にセバスチャンさんから伝わったんだろうな......クレアさんとティルラちゃんはまだわかっていない様子で首を傾げている。
慣れてない事をするもんじゃないなぁ、なんて思いつつプレゼントを渡すために適当な言葉を探す。
「その......何と言うか......お世話になってる、感謝の印......です。......どうぞ」
もっと良い言葉が無かったのか俺......。
俺の慣れてない物言いは置いておいて、まずは近くにいるティルラちゃんに銀色の狼を模したネックレスを渡す。
レオに懐いてるから喜んでくれるかな? | “The royal family uses the Silver Fenrir on their crest, as they symbolize a country that cannot be defeated. On the other hand, the Liebert crest shows the fangs and claws, which symbolizes how we will defeat any foe. Also...this is a very old legend, but it is said that the first head of the Liebert house was friends with a Silver Fenrir.”
“Friends with a Silver Fenrir...But didn’t you say that Silver Fenrirs yielded to no one?”
“Yes, it was not about yielding. They were said to be of equal standing. Well, I do not know how it really was, but this friendship helped my ancestor greatly, and after accomplishing great feats in battle, my ancestor rose to the rank of duke.”’
“Great feats in battle...”
“Yes. This country was fighting many wars during that time. And it is said that when the first Liebert went to war, the Silver Fenrir appeared like the wind and saved the duke.”
So if he fought, the powerful Silver Silver Fenrir would save him.
I knew that they were strong. They were said to be the strongest of monsters. How much impact had it had during the war, I wonder?
Well, he had ultimately become someone who was only under the royal family, so it must have been glorious indeed.
“It is because of the results of the war, and victory for the country, that House Liebert decided to use the Silver Fenrir on our crest. Ever since then, it has become our duty to respect the Silver Fenrirs.”
In other words, if it was because of the Silver Fenrir that he rose to duke, they had to show their gratitude towards it.
But it was hard to think of Leo as the same kind of Silver Fenrir. Not when she had just stuffed herself with sausages and was now curled up on the floor...
“Wou?”
As I looked at Leo and thought of such things, she raised her head and barked as if to say, ‘What?’
You are a reliable buddy.
I said to Leo with my eyes... But I didn’t know if she understood me.
“Many people who live in towns or villages governed by House Liebert are aware of the connection to Silver Fenrirs.”
“Because of the stories about the first duke...”
“Yes. For instance, Ms. Emeralda, who we met today. She thought Leo was a Silver Fenrir because I was there.”
Yes, she had said something like that.
I think it was... ‘It has silver fur and is with Lady Claire.’
As the duke’s daughter, and knowing that their family crest is the Silver Fenrir, she would have quickly assumed that Leo was a Silver Fenrir.
Especially since the appearance, including the fangs, were so similar.
“And that is why House Liebert will warmly welcome you and Leo. ...Well, aside from the personal reason that you saved me. Hehe.”
“Haha. It was Leo who saved you.”
Ms. Claire chuckled as her story ended.
She was even more pretty when she laughed.
I saw that Sebastian, the maids, and Tilura were all nodding with smiles, and I really did feel that we were welcome here.
I knew that, and yet I still felt awkward about having a room prepared for me, and having them pay for purchases that I made.
Still, it wasn’t as if I would continue to rely on their hospitality.
Now that I knew I had the Gift, ‘Weed Cultivation,’ I would have to think about a way that it could be useful.
“...Mr. Takumi. Do you have a minute?”
“...What is it, Sebastian?”
He had been waiting behind Ms. Claire up until now, but he suddenly stepped close to me and spoke in a hushed voice.
While Sebastian was a handsome older gentleman, I still didn’t care to have another man’s face so close to me...
“When do you intend on giving the items to the ladies? I am sure they will be very pleased...”
“The items... Ah!”
I remembered.
I had bought something for them.
My sudden exclamation caused Ms. Claire, Tilura and the maids to turn in our direction with puzzled expressions.
While I had bought it for the two, Sebastian had lended me the money. So it was a little awkward. Still, it would be best to give it to them now.
“...Do you think I should give it to them now, Sebastian?”
“You have both just explained your origins to each other, so it seems like the best time to do it.”
“I understand.”
While I had left my belongings in my room, I had brought the presents with me.
And so I took them out and placed them on the table.
“Ms. Claire, Tilura.”
“What is it?”
They answered, but also looked very curious about the things placed on the table.
“Uhh... I wanted to give you something to show my gratitude...and thought these would suit you two... But, uh, I borrowed money to pay for them and uh...”
“...Mr. Takumi, please pull yourself together.”
As I hadn’t been thinking about how I would give it to them, I ended up floundering through my speech. And Sebastian was not impressed.
Still, the maids seemed to have understood my intent, and they watched on with supportive looks.
I think...Sebastian may have told them before dinner... On the other hand, Ms. Claire and Tilura still looked at me uncomprehendingly.
One really shouldn’t do things that they weren’t used to. Still, I searched for the right words to say when handing them the presents.
“It’s just that...the thing is...it is a sign of my gratitude for all of the help... Yes... Please take it.”
Surely there were better words to say...
Leaving that aside, I handed Tilura the necklace with the silver wolf.
As she was so fond of Leo, she would probably like it? | {
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私の息子は三人とも優秀で自慢の息子たちだ。
何に対しても長続きしなかったアリシアが急に剣を習い始め、本を読み始めたのだ。
すぐに飽きるだろうと思って放っておいたが何かが憑いたように豹変した。
剣の腕はどんどん磨かれていき、膨大な知識を持ち、発想力も素晴らしい事が分かった。
私は何かの病気かと疑い、医者を呼ぶと言ったのだがアリシアは断固拒否した。
彼女が剣のテストを受けたいと言った時はなんとしても止めなければならなかった。
あのテストは勿論女の子も受ける事が出来るが、アリシアはその辺の貴族と比にならない程の並外れた剣の技術を持っている。本人は全く自分の剣の腕の凄さには気付いていないみたいだが。
アルバートも私の意見に賛成してくれた。
しかし、事態は急変しつつある。
アリシアの魔法を実際に見た後、我々五大貴族は緊急会議を開いた。
ネヴィルが顎の髭を触りながら呟いた。
「十歳で魔法が使えるなんて、初めてじゃ......」
「いや、初めてじゃない」
デレクの言葉に重なるようにジョアンが答えた。
「確か過去に一人いたはずだ」
「そいつはどうなったんだ?」
「魔法と使えなくなった」
ルークの言葉で部屋が静まり返った。
私達は国王の事をルークと呼ぶ。本名はシーカー・ルーク。
「なら、アリシアもそうなる可能性があるという事か?」
「いや、レベルを順番に上げていけばそうならないだろう」
「成程」
アリシアには幸せでいてもらいたい。
「ルーク、異例だがアリシアを魔法学園に入れたらどうだろうか?」
ジョアンの提案に耳を疑った。
「アリシアはまだ十歳だ」
「それが一番の安全策だ」
確かにそれはそうだが、アリシアには普通の生活を送ってもらいたい。
私はアリシアの意思を尊重したいが、十歳はまだ早すぎる。
「せめて十三歳だ」
「そうだな。十三歳が妥当かもしれない。どうだ? ルーク」
ルークは目を瞑りながら難しい顔をして俯いている。
暫く沈黙が続いた後、ルークが顔を上げた。
「キャザー・リズの件はどうするのだ?」 | I have three sons, each of which are outstanding. I’m extremely proud of them all. However, my youngest child, my only daughter, has grown up to be very selfish and willful. But because she’s so cute I can’t help but want to spoil her anyway.
That all changed the year that Alicia turned years old though. Without any apparent reason, that girl who for the longest time had preferred to laze around and indulge herself day after day suddenly insisted on learning swordsmanship and started reading avidly.
As always, I let her do as she wished, thinking that she would soon grow tired of such endeavors, but she never did. It almost seemed as if something had possessed her, she had changed so completely overnight.
Her sword skills grew incredibly quickly. And in a short amount of time she had already amassed a vast knowledge on a diverse array of topics as well as cultivated an understanding and creativity that were simply astounding for a child her age.
I started to worry that she might have gotten sick and that somehow spurred her to make all these changes, but when I suggested calling for a doctor, Alicia was vehemently against it. Wishing to respect her opinion, I let the matter drop.
It wasn’t until she said that she wanted to take the sword skills exam that I knew I needed to start limiting her actions. There’s no way I could allow her to take that test.
Of course, there are no rules prohibiting women from taking the exam, but Alicia had already far surpassed the skills of the other nobility who would be in attendance to the point that they’d no longer be her match. And although it’s understandable that she’d want to evaluate her abilities, since she doesn’t seem to have realized just how proficient she’s become, allowing her to attend would undoubtedly throw Alicia into the center of attention. And I believe that standing out to that degree at such a young age would likely be dangerous for her, so I prohibited her from going.
I explained as much to my oldest son, Albert, who thankfully he agreed with me. And after a prolonged battle, Alicia finally agreed to wait as well when I promised to tell her the reason when she became , the age to enroll in the magic academy.
But once again, the situation has suddenly changed.
Once we had verified her abilities personally, we convened an emergency meeting of the five great noble houses.
“I never thought she’d really be able to use magic.....” Neville mutters while stroking his beard.
“Finding a -year-old capable of using magic, this must be the first time......”
“No, it’s not the first.”
Johan interrupts before Derek has the chance to finish speaking.
“True. I believe there should have been one other person in the past who had accomplished that.”
“What ended up happening to that kid anyway?”
“He lost the ability to use magic.”
At Luke’s words, the room falls deathly silent.
Luke is what we call the king of this country. His full name is Luke Seeker.
“Then, does that mean that there’s a chance that might happen to Alicia as well?” Neville asks with furrowed brows.
“No, as long as she doesn’t try to skip any levels, that shouldn’t happen.”
“I see.”
Considering Alicia’s childhood, I never could have foreseen that she would become an enfant terrible. The reason that I always let her have her way was because I just wanted her to be happy.
“Luke, it may be unprecedented, but what if we let Alicia matriculate into the magic academy early?”
At Johan’s proposal, I want to doubt my own ears.
“Alicia’s only ten!”
“Taking such a precaution is the safest option.”
While that’s true, I never wanted this for her. I wanted to give her a normal life if possible. Though, knowing that girl, she might actually be happy for the chance to enroll early.
I’d like to respect her opinion and let her make the final decision, but ten is still too young.
“At least wait until she’s 3.”
“Hmm, that seems reasonable. And waiting until she’s 13 might be a more appropriate time for her to enroll anyway. What’s your opinion, Luke?”
Luke lowers his head, eyes closed, a frown firmly etched into his face. This is how he tends to look when he’s thinking deeply about something.
After a long moment of silence, Luke looks up.
“How is the current situation regarding Liz Cather?” | {
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それまで見たことのない光景でした 以降 同じような光景を 見た事がありません
人類が月を目指したのには 1つの単純な理由がありました ケネディー大統領が期限を設け 公約にしたのです
仮に 期限が 設けられていなかったとしたら 今もなお 月面着陸の夢を 見続けていたことでしょう
作曲家レナード・バーンスタインによると 偉大なる功績には2つのことが必要であるそうです 計画と 不十分な時間だと
期限と公約という アポロ計画から得られた教訓は 偉大ですが消えかけています
それこそ「月ロケット打ち上げ」という言葉に 意味を与えました
そして 世界が望むのは アポロ計画と同じレベルの― 大胆な夢の達成に対し 思い切った期限を 自ら掲げてくれる政治指導者です
夢について考える時 LAやストーンウォールの反乱で戦った ドラッグクイーンや あらゆることがリスクに晒される 危険な時期だったのに カミングアウトに踏みきった 何百万もの人のことや この写真の 虹色に照らされた ホワイトハウスのことを考えます そうです (拍手) アメリカで同性婚が認められたことを 祝福しているのです
私が夢にも思わなかった写真です 18歳の時 自分がゲイであることを 自覚し始めました それが理由で 自分の国と 自分の夢に対して 疎外感がありました
この家族写真を見ると思いますが 家族を持てるとは 夢にも思っていませんでした (拍手) 最高裁の判決が記事となり 子供達がその新聞の見出しを手にする姿など 夢にも思っていませんでした
私たちには ドラッグクイーンや宇宙飛行士と 同じ勇気がもっと必要です
(拍手) ですが 私がお話ししたいことは ある一面を超えたところで 私たちが夢をもつ必要性についてです 私が8歳の時には知らなかったことが アポロ計画にあり あの虹色を実現する上でも同じく 何かがあるからです
マーキュリー、ジェミニ、アポロ計画に関わった 30人の宇宙飛行士の中で 結婚が続いたのは7人だけでした
月面を跳ねるあの伝説的な 宇宙飛行士のイメージが 地球でのアルコール依存症やうつ病の存在を ぼやかしてしまいました
トラピストの修道士トマス・マートンが アポロ計画時 こう問いかけました 「私たちと私たちの自己を分断している溝を 越えることができないのなら
月へ飛行したからといって 何を得られるのか?」 また ひんぱんに 私たちを愛から切り離してしまう― 辛らつな態度や感情的な隔たりを 越えることができないのなら
結婚する権利で私たちは 何を得られるのでしょう?
結婚に限った話ではありません LGBTやAIDS、乳がん、NPO機関での 愛の名のもとに起こった 心の痛む 破壊的で悲劇的な内紛を 目にしてきました
トマス・マートンは聖者間で起こる 争いについてもこう書きました 「現代の暴力にはある形式がまん延しており 理想主義者は実に容易に屈してしまう それは“行動主義”と“過労”である
我々の行動主義の狂乱は 平和のための活動を無力化し
内面にあった平和への能力を 壊してしまう」
しばしば私たちの夢は ある未来に対して このように細分化された 強迫観念となります それは今を生きるために存在する力を 壊してしまいます
未来の人々や 異国に住む他の人々が より良い生活を送るという夢が それが今身近に暮らす 美しい人から 私たちを遠ざけているのです
それは進歩の代償なんだ とも言えます
月へ行くか 安定した家庭を維持するかのどちらかです
どちらも同時に 両方の面において 夢見ることはできません 人生の感情面のことになると
安定という以上の高い基準を 定めたりはしないものです それゆえ 互いに話しを伝える技術は 急速に加速する一方で 互いに話を聞き 理解する能力は 昔のままです
情報へのアクセスは 屋根を突き抜けるほど加速しますが 喜びへ至る手段は 地面に張り付いたままです
でもそういう考え― 現在と未来はお互いに重複しないものだとか 我々の可能性を 行動によって実現するためには 人間の存在としての深い可能性の方は 諦めなければならないだとか 回路のトランジスタ数は どんどん倍増するけれど 我々の思いやり、人間性 安らぎ、愛の能力は たかだか限られたものにすぎにないだとか そういう考えは誤りで 息の詰まりそうな選択を迫るものです さらなる「ワーク・ライフ・バランス」をといった
退屈な提案を しているわけではありません 家で子供と過ごす時 心ここにあらずであれば 何のためになるでしょうか
マインドフルネスのことではありません
マインドフルネスも 突然 生産性を向上する ツールになりましたが―
ですよね?
産業や技術の分野で夢見たのと同じように 我々の存在に関して大胆に夢見ることについて 話しているのです
大胆なほどの信頼に基づいて 互いに涙を流すことができるようなこと― 勇敢なほどの謙虚さに基づいて 仮面を脱いで素のままで振る舞えることの話です
そもそも 互いに一緒にいることができない 私たちの無力さや 互いに涙を流すことへの恐れから 議会での議論の手詰まりや 経済の非人間的な側面などの 解決しようと必死の努力をしている 問題が生じたのです
(拍手) 医学者のジョナス・ソークが 「エポックB」と呼んでいました 「新しい時代では 技術の発展と同様に 私たちは人間性の発展に対して わくわくして 関心をもち、科学的になる」と
単純に理解できないからという理由で
このチャンスに尻込みするべきではありません 人類が宇宙を理解していなかった時代も ありましたから
技術だとか 行動主義に慣れている というのも理由にはなりません
それは 安全地帯から 抜け出せない状況の定義そのものです
私たちは 想像もつかない技術による偉業の達成を 想像するだけで満足してしまっています
2016年の今 我々の存在そのものという面についても 十分な想像をめぐらせることが 求められています
我々は夢を見るためにこの場にいます ですが 正直になると それぞれが自分の夢を追っています
お互いの名札を見て 誰が自分の夢を 手伝ってくれるかチェックしているのです そこで お互いの人間性も 見えてくるでしょう
「話しかけないでください 世界を救うことを考えてるんだから」とか
そうでしょう?
ずっと昔に 大規模な市民参加のイベントで ご覧のような長旅をする 素晴らしい会社を経営していました
会社の標語はこうでした 「人間性 思いやり その両者を目指せ」
そして ものすごく親切にする実験を 勧めました
例えば「皆のテント張りを手伝いなさい」などです
そこでたくさんのテントが出来上がりました
「皆にアイスを買ってあげなさい」
「夕食が遅くなってしまうと分かっていても パンクしたタイヤを直してあげなさい」と
皆がこれを実行したことで 「AIDSライド」中にタイヤがパンクして 困っていても 助けが必要かを聞いてくれる人が たくさんいます
数日間で 何万人もの人たちにとって誰もが 世界がずっとこうあって欲しいと願う世界を 私たちは作り上げました
これからの数日間で同じような世界を 作るとどうなるでしょう?
「お仕事は何ですか?」と尋ねる代わりに こう聞いてみてください
「あなたの夢は何ですか?」
「果たせなかった夢は何ですか?」と
“TED”は“人の夢を手伝う”の略にもなります
(拍手) 夢が例えば「シラフでいたい」であったり 「子供とツリーハウスを建てたい」ということもあるでしょう
誰もが会いたいと願うような人に 話をしに行く代わりに 一人ぼっちでいる人のところへ行って 一緒にコーヒーでもどうかと誘ってみましょう
私たちが最も恐れているのは 我々の真の可能性である 生まれながらにして夢を見るという能力を 実現する機会が否定され その機会を得ることがないまま 死ぬかもしれないことです
思い描いてみてください 互いに 実存的な深い恐れを持ちながらも お互いが大胆に愛し合う世界に住んでいることを 何故なら 人間とはその恐れと共に生きることであると 知っているからです
さまざまな面において同時に夢を見るべき時がきました 我々に可能な、いずれ可能になる、 なさねばならない 素晴らしいことは いろいろとありますが それを超越したところに 我々が実現できるかもしれない 信じられないようなことがあります
その領域へ足を踏み入れる時がきたのです そこに夢があるという事実を 明らかにする時でもあります
もし あの月が夢を見ることができたら 月の見る夢は私たちにとっての夢になるでしょう
この場にいることを光栄に思います
ありがとうございます | We got to the Moon for one simple reason: John Kennedy committed us to a deadline.
And in the absence of that deadline, we would still be dreaming about it.
Leonard Bernstein said two things are necessary for great achievement: a plan and not quite enough time.
Deadlines and commitments are the great and fading lessons of Apollo.
And they are what give the word "moonshot" its meaning.
And our world is in desperate need of political leaders willing to set bold deadlines for the achievement of daring dreams on the scale of Apollo again.
When I think about dreams, I think about the drag queens of LA and Stonewall and millions of other people risking everything to come out when that was really dangerous, and of this picture of the White House lit up in rainbow colors, yes -- -- celebrating America's gay and lesbian citizens' right to marry.
It is a picture that in my wildest dreams I could never have imagined when I was 18 and figuring out that I was gay and feeling estranged from my country and my dreams because of it.
I think about this picture of my family that I never dreamed I could ever have -- -- and of our children holding this headline I never dreamed could ever be printed about the Supreme Court ruling.
We need more of the courage of drag queens and astronauts.
But I want to talk about the need for us to dream in more than one dimension, because there was something about Apollo that I didn't know when I was 8, and something about organizing that the rainbow colors over.
Of the 30 astronauts in the original Mercury, Gemini and Apollo programs, only seven marriages survived.
Those iconic images of the astronauts bouncing on the Moon obscure the alcoholism and depression on Earth.
Thomas Merton, the Trappist monk, asked during the time of Apollo, if we are not able to cross the abyss that separates us from ourselves?"
And what can we gain by the right to marry if we are not able to cross the acrimony and emotional distance that so often separates us from our love?
And not just in marriage.
I have seen the most hurtful, destructive, tragic infighting in LGBT and AIDS and breast cancer and non-profit activism, all in the name of love.
Thomas Merton also wrote about wars among saints and that "there is a pervasive form of contemporary violence to which the idealist most easily succumbs: activism and overwork.
The frenzy of our activism neutralizes our work for peace.
It destroys our own inner capacity for peace."
Too often our dreams become these compartmentalized fixations that destroy our ability to be present for our lives right now.
Our dreams of a better life for some future humanity or some other humanity in another country alienate us from the beautiful human beings sitting next to us at this very moment.
Well, that's just the price of progress, we say.
You can go to the Moon or you can have stability in your family life.
And we can't conceive of dreaming in both dimensions at the same time.
And we don't set the bar much higher than stability Which is why our technology for talking to one another has gone vertical, our ability to listen and understand one another has gone nowhere.
Our access to information is through the roof, our access to joy, grounded.
But this idea, that our present and our future are mutually exclusive, that to fulfill our potential for doing we have to surrender our profound potential for being, that the number of transistors on a circuit can be doubled and doubled, but our capacity for compassion and humanity and serenity and love is somehow limited is a false and suffocating choice. Now, I'm not suggesting simply the uninspiring idea of more work-life balance.
What good is it for me to spend more time with my kids at home if my mind is always somewhere else while I'm doing it?
I'm not even talking about mindfulness.
Mindfulness is all of a sudden becoming a tool for improving productivity.
Right?
I'm talking about dreaming as boldly in the dimension of our being as we do about industry and technology.
I'm talking about an audacious authenticity that allows us to cry with one another, a heroic humility that allows us to remove our masks and be real.
It is our inability to be with one another, our fear of crying with one another, that gives rise to so many of the problems we are frantically trying to solve in the first place, from Congressional gridlock to economic inhumanity.
I'm talking about what Jonas Salk called an Epoch B, a new epoch in which we become as excited about and curious about and scientific about the development of our humanity as we are about the development of our technology.
simply because we don't really understand it.
There was a time when we didn't understand space.
Or because we're more used to technology and activism.
That is the very definition of being stuck in a comfort zone.
We are now very comfortable imagining unimaginable technological achievement.
In 2016, it is the dimension of our being itself that cries out for its fair share of our imagination.
Now, we're all here to dream, but maybe if we're honest about it, each of us chasing our own dream.
You know, looking at the name tags to see who can help me with my dream, sometimes looking right through one another's humanity.
I can't be bothered with you right now. I have an idea for saving the world.
Right?
Years ago, once upon a time, I had this beautiful company that created these long journeys for heroic civic engagement.
And we had this mantra: "Human. Kind. Be Both."
And we encouraged people to experiment outrageously with kindness.
Like, "Go help everybody set up their tents."
And there were a lot of tents.
"Go buy everybody Popsicles."
"Go help people fix their flat tires even though you know the dinner line is going to get longer."
And people really took us up on this, so much so that if you got a flat tire on the AIDS ride, you had trouble fixing it, because there were so many people there asking you if you needed help.
For a few days, for tens of thousands of people, that everybody said were the way they wish the world could always be.
What if we experimented with creating that kind of world these next few days?
And instead of going up to someone and asking them, "What do you do?"
ask them, "So what are your dreams?"
or "What are your broken dreams?"
You know, "TED." Tend to Each other's Dreams.
Maybe it's "I want to stay sober" or "I want to build a tree house with my kid."
You know, instead of going up to the person everybody wants to meet, go up to the person who is all alone and ask them if they want to grab a cup of coffee.
I think what we fear most is that we will be denied the opportunity to fulfill our true potential, that we are born to dream and we might die without ever having the chance.
Imagine living in a world where we simply recognize that deep, existential fear in one another and love one another boldly because we know that to be human is to live with that fear.
It's time for us to dream in multiple dimensions simultaneously, and somewhere that transcends all of the wondrous things we can and will and must do lies the domain of all the unbelievable things we could be.
It's time we set foot into that dimension and came out about the fact that we have dreams there, too.
If the Moon could dream, I think that would be its dream for us.
It's an honor to be with you.
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はをかけて、フレスタン地方中部のウォッカの街に到着した。
時刻は夜になっていたため、五人は事前に連絡しておいたポールとケインと合流して宿に入る。
そして食事が終わると、バジルは全員を宿に借りた会議室に集めて、怒りを必死に押し殺しながら言う。
「犯人の目的がわかった」
「本当ですか隊長?」
何も知らされていないポールが聞く。
「ああ、犯人の黒幕はおそらくフレスタンの上級魔法だ」
「隊長、それは......」
グリスがそんなことを言っていいのか、と言う顔をするが、バジルが答える前にワルツが質問をする。
「隊長、それで犯人の目的はなんですか?」
「魔法師の大量生産だ」
「まさか......」
モーラスはバジルの言葉で気づき、驚いた顔をする。ケインもモーラスと同じく気づいたようでバジルに聞いた。
「魔法師と少女って......」
「おそらくそうだろうな」
「そんな......酷いこと......」
ケインの言葉で、唯一の女性であるエリエラも犯人の目的がわかり怒り、をあらわにする。グリスたちも犯人の目的がわかったようで、言葉を失っていた。
「おそらく犯人はフレスタンの上級魔法師一族に依頼を受けて犯行をしている。フレスタンは実力で地位が決まる場所だ」
バジルがたどり着いた結論、それは魔法師の大量生産。
犯人たちは拉致した魔法師と少女の間に子供を作らせて、魔法師を大量に作り出し、一族の戦力を底上げしようとしているのだ。さらにバジルが言う。
「黒幕は火属性魔法を使う一族だ」
「なぜですか?」
バジルの言ったことにワルツが尋ねる。そこには今の段階ではそこまで絞っていいのか、という質問も入っていた。
なので、バジルはちゃんと理由を説明する。
「攫われた魔法師の中に火属性使いの魔法師が多かった。おそらく子供に火属性の適性を付けて、自分たちで育てようという根端だ」
エリエラが同意する。しかし彼女も、いやこの場にいる全員が本当にそんな事があるのかと半信半疑だ。
そんな部下たちに対してバジルは明日の行動について説明する。
「明日は教会に行き、火属性を中心とする上級魔法師について調べる。わかった場合は、すぐにその家に向かい、人質の場所を聞き出す。最悪の場合そこで戦闘になるかもしれないから、準備をしていてくれ」
「「「「「「了解」」」」」」
その日の会議はそこで終わり、バジルと小隊長たちは各々複雑な面持ちで自分の部屋へと帰っていくのだった。
翌日、バジル一同がフレスタン教会に行くと、教会ではちょうどトップたちの会議をしていた。
怒りを何とか抑え込んでいるバジルは、会議をしている部屋の扉をドバッと大きな音と共に開けて言う。
「貴様何者だ? 今は会議中だぞ」
会議室の中では五人の男が会議をしていたが、急に入ってきたバジルに対して非難の声を上げる。
五人のうち、聖教会からの派遣されている者で、残り三人はこの地の代表者たちだ。その三人のうちの一人で五十過ぎの男、トズが急に入ってきたバジルに向かってどなりつけた。
「部外者は帰れ。今は重要な会議中だ」
「トッ、トズ殿! その方は聖教会十三使徒のひとり、バジル=エイト様だ」
「なっ、なに?」
聖教会から派遣されてい前後の男、トルバンの言葉で、トズが驚きながらバジルを見る。
彼の装備している白い鎧は、まさしく聖教会十三使徒のものであり、トズは慌てて態度を変える。
「こ、これは失礼しました。それで用件はなんでございましょうか?」
バジルは態度を変えたトズに対して率直に用件を言う。
「フレスタンにいる火属性を使う上級魔法師一族のリストがほしい」
なぜ十三使徒であるバジルがそんなものを欲しているのか、気になるトズだが、バジルには答えることはできない。
「それは言えない。しかし、これは十三使徒としての要求である」
「わかりました」
そう言い、トズは一度部屋を出て行き、ファイルのようなものを持ってきた。
そこにはフレスタン所属の上級魔法師一族のリストが載っており、バジルはそのリストを見る。
トズの持ってきたリストには、上級魔法師一族がかなり載っており、バジルはその中から火属性を使う一族を絞る。
「この中で資金が潤沢な一族は?」
人攫いには資金が必要なため、バジルは資金の潤沢な一族に絞った。トズの指した一族は全部で六家、それでもまだ多い。バジルはさらに条件を絞る。
「この六家の中で暗黒領に討伐に行ったことのある戦闘を得意とするのは?」
「こちらの二家です」
に探すことも可能だが、バジルは一応聞いた。
「もしかして、この二家のうち弱い方は最近不穏な動きをしては?」
「はい、確かにグルスベール家は最近不穏な動きをしていますが......なぜそれを? 今ちょうどそのことについて会議していたのに......」
「いろいろありまして。それでグルスベール家にはどうやったら行けるのですか?」
バジルは内心当たったと思った。犯人まであと少し、バジルは早く誘拐された人々を救出したいという一心で聞く。
「それでしたらこの近くにあるのですぐに行けます」
「わかりました。では今からグルスベール家の周辺に警備を配置してもらえますか?」
「なぜですか?」
「今から訪ねて、もしグルスベール家が攻撃をしてきた場合、聖教会十三使徒の名の下に殲滅しますので」
「そ、それは......」
バジルの殲滅という言葉に、教会のトップたちは悟る。聖教会は教会では把握していない事件を捜査しており、その中心にいるのがグルスベール家だと。
「協力感謝します」
バジルはそう言い残して、会議室から出た。
そして小隊長たちと合流して、教会から貰った地図を頼りに、グルスベール家へと向かうのだった。 | After five days, the group of five arrived in the city of Wokka.
Because they arrived at night, they decided to meet Paul and Kain in the inn.
When the meal was over, Bagil gathered everyone in the wide room borrowed from the inn, and said, while desperately restraining his anger.
「I understood the aim of the criminal」
「Is it true, captain?」
Asked Paul, who wasn’t informed until now.
「Yeah, the mastermind behind this case is probably a member of an advanced magician family」
「Captain, that is......」
Gris wondered if it was okay to say it, but before Bagil managed to answer, Waltz asked:
「Captain, so what is the purpose of the criminal?」
「Mass production of magicians」
「No way....」
Moras noticed something and made a surprised face. Kain also seemed to notice, so he asked Bagil:
「Magicians and girls....」 []「That’s probably true」
「Something.....So terrible...」
Hearing Kain’s words, Eliera, the only woman, understood the criminal’s purpose and showed an anger on her face. Gris also seemed to understand and lost his words.
「Probably, the criminal is committing a crime under the request from the Freestan’s advanced magician clan. In Freestan, your position is determined by your ability」
Bagil’s conclusion was: mass production of magicians.
The criminals are trying to raise the fighting power of their clan by making magicians breed with kidnapped girls. Then Bagil said:
「The mastermind if a member of the clan that uses fire magic」
「Why?」
Waltz inquired Bagil, he was also interested how he managed to narrow it to this extent.
Therefore, Bagil properly explained the reason.
「There were many magicians with fire attribute among the ones who were kidnapped. Perhaps they tried to raise loyal children with fire attribute」
「This might just work...」
Eliera agreed. However, she doubted that it was just that.
To his puzzled subordinates, Bagil said that he would explain everything tomorrow.
「I will go to church tomorrow and investigate advanced magicians, mainly of fire attribute. If found, we will head there and free the hostages. In the worst case, we will need to battle it out, be prepared」
The meeting ended at this point and everyone dispersed with complicated expressions.
The next day, when Bagil went to the church, the top brass of the church had a meeting.
Restraining his anger, Bagil opened the door with a loud noise.
「Please excuse me」[]「Who are you? We are in a meeting now」
The five men who were in the room raised a criticizing voice.
Of the five people, two were dispatched from the Holy Church and the other three were representatives of the Freestan. One of those three, a man of fifty years old, said.
「Outsiders should stand back. There is an important meeting」
「Toz-dono! This person is one of the thirteen apostles, Bagil Eight-sama! 」
「What?」
Hearing Torban’s words, the man named Toz looked at Bagil with incredulous eyes.
His attire was precisely of one of the thirteen apostles. Immediately changing his attitude, he said:
「That was rude of me. What brings you here? 」
Seeing his change in the attitude, Bagil goes straight to the point.
「I want a list of advanced magician families adept at fire attribute」
Toz was naturally interested why one of the thirteen apostles needed such thing, but Bagil could not answer.
「I can’t say. Nevertheless, this is my request as one of the apostles」
「I understand」
Having said so, Toz left the room and brought something like a file.
This was a list of advanced magician clans of the Freestan.
There were quite a bit of the families, but Bagil only chose those of the fire attribute.
「Which of these clans have abundant funds?」
You need funds to establish a criminal organization. Toz pointed at the six clans, but it was still too many. Bagil further asked:
「Which of these six clans are capable of operating in dark territory?」
「Only these two, sir」
It came down to two clans. With this, he can proceed, but he still asked.
「Were there any suspicious movements from one of these clans?」
「Yes, the Gursber family is behaving suspiciously lately......How did you know? We just planned to discuss it during this meeting.........」
「A lot of thing happened, so how could I reach this clan?」
Bagil thought that this was it. With a strong desire to save the kidnapped victims, that is why he immediately asked that.
「In this case, it will be easy, they are quite close」
「Then can I ask you to guard the surroundings of Gursber family」
「Why?」
「In the worst case scenario, I will have to eradicate the Gursber family in the name of thirteen apostles」
「That is....」
Hearing his words, everyone understood. Is seems that Gursber family is in the center of a very big case, big enough to attract the Holy Church.
「Understood」
「I appreciate your cooperation.」
Bagil said so and left the meeting room.
Then he rejoined with his squad and headed for the Gursber family. | {
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◇◆◇◆◇
フィニアはマリアの元に戻ると、ニコルの容体を告げ、彼女を安心させようとしていた。
「ニコル様はおやすみになられました。服も着替えさせ、汗も拭きましたので、しばらくは必要ないかと」
「そう......手間をかけたわね。ありがとう、フィニア」
「いえ、元は私の不手際ですから」
不審者を追うニコルをで行かせたこと。それが今も彼女に罪の意識を覚えさせている。
同時に、クファルと名乗った少年に対し、これまでにないほどの憎悪を感じていた。
「あの野郎、今度会ったらタダじゃおかねぇ」
「うん、今度会ったら有無を言わさずサードアイの刑なんだから!」
問答無用で殺害宣言すと違って、彼女は命の危険が遠い場所にある一般人だ。
無邪気な口調だが殺意を漲らせる二人に、同意する者もいた。
「気持ちはわかるが、殺すのは俺が先だ。それよりニコルの目を治す方法を探さないと」
現状ではマリアの治癒魔法でニコルの目を癒すことはできない。
「今のニコルは、いうなれば怪我を負い続けている状態に近いわ。すでに負った傷を治すのとは意味が違う」
「眼球内に寄生したスライムの欠片を、どうにか排除しないと無理ってことか」
「問題はスライムの欠片というところね。普通なら核を破壊すれば、ただの粘液に変わるはずなのに、核すら持たない欠片が生き続けている」
コルティナの言葉に、マリアは顎先をつまむようにして考え込む。
「普通のスライムとは違うということね。寄生してる欠片も、核がないから仕留めることが難しいわ。摘出できないなら目を治せない」
「マクスウェルの魔法ならどうにかできないか?」
「難しいわね。あの爺さん、細かい調整とか苦手だったもの」
核のないスライムを根こそぎ吹き飛ばすことは、魔術を極めた彼なら可能だろう。
ほんのわずかな欠片を周囲に被害を与えることなく精密に撃ち抜くとなれば、それは人の限界を超えた領域といえるかもしれない。
「あの爺さんにできないとなると......」
その意味を悟り、別室は沈黙に包まれる。絶望の気配が漂い始めたころ、部屋の扉が勢いよく叩き開けられた。
「そんなあなたに! The 神・頼・み!」
扉を開けて入ってきたのは、白い少女だった。その後ろには、背の高い壮年の男もいる。
「そんな説明で理解できるか。いや、話を聞いてやってきた。力になれるかと思ってな」
三年前、ニコルの装備を担当してくれていた鍛冶師の男だった。
「あんたは確か......アストといったか」
「ああ、まあ、そんな感じだ」
「そんな感じ......? いや、それより、どうにかできるのか!?」
がっしりした手でアスト――ハスタールの肩を掴むライエル。
「それは私の専門分野ではないな。こいつの役目だ」
ポンと目の前の少女の頭に手を乗せる。
「おまかせください。たかがスライムもどきに眷属が害されたとあっては、神の沽券にかかわりますので!」
そういうとニコルの眠る部屋にズカズカと踏み込んでいく。
騒動にもかかわらず、ニコルは目を覚ます気配はない。どうやらフィニアが退出した後に、また気絶してたようだった。
「状況は?」
「あ? えっと、眼球内に核のないスライムが寄生していて、回復魔法が掛けられないのよ。治す端から食べられちゃうから」
「しかも食べた分だけ成長しちゃうから、手の出しようがないの」
それを聞いて白い少女は興味深そうにニコルの顔を覗き込んだ。
「ほうほう。これがあれかぁ」
そう小さくつぶやき、パチンと小さく指を鳴らす。指先から小さく光が舞ったところを見ると、何かの魔法を使ったのかもしれない。
「ほらほら、ここから先は秘密の治療の邪魔になるので、出てってください!」
「え、ちょ、ちょっと! 私は治癒魔法のスペシャリストで――」
「そんなの関係ありませーん」
全員を押し出そうとするが、小柄な彼女ではそれは叶わない。代わりにハスタールが全員を室外へと移動させた。
そして破戒神は自らの指の先を噛み切り、血を一滴、傷跡に垂らす。
の魔法で、スライムの欠片は消滅させましたけど、念には念をってやつです」
だからこそ彼女の血を受け、再生させることで、破戒神の持つ不死性を利用して眼球を再構成させたのだ。
これが他の血脈を持つものだったら、拒否反応を起こしていただろう。
「しかし、大丈夫なのか?」
唯一室内に残っていたハスタールが、不安げに尋ねる。
「もちろんです。ですがひょっとしたら、わたしの魅了の力とか受け継いじゃうかもしれませんけど?」
「それはむしろ呪いだろう。仕方ない奴だな」
「でもほんの少しですよ。理性の戒めを破壊するほど強くは伝わらないはずです」
そういうとハスタールは懐から眼帯を取り出し、そこに魔法を刻み込んだ。
「こいつならその力を抑えるくらいはできるだろう」
「ですが、なぜ眼帯? わたしみたいに眼鏡でいいじゃないですか。それになぜ眼帯を持ち歩いてるんです?」
「......趣味だ」
彼もまた、若者たちと接することによって、くらいの病をぶり返していたのだった。 | ◇◆◇◆◇
As Finia returned to where Maria was, she reported Nicole’s condition, trying to calm her down.
“Lady Nicole is resting now. I have changed her clothes and wiped her too, nothing else is necessary for the time being.”
“I see... You’ve been working hard. Thanks, Finia.”
“Not at all. My ineptitude is to blame for this from the start.”
The fact that she let Nicole chase a suspicious person on her own was making her feel a sense of guilt.
At the same time, she felt unprecedented hatred towards the boy called Kufar. This was the first time in her thirty years of life that she had become aware of such a feeling. And just like her, there were others who held the same level of hatred towards him.
“That b̲a̲s̲t̲a̲r̲d̲, he’s not getting away the next time I find him!”
“Yeah, he’s getting Third Eye punishment, no questions asked!”
Tricia couldn’t help but shudder at Michelle and Cloud’s display of wrath. Unlike the two who were readily spelling out the death sentence for Kufar, she was an ordinary citizen distanced from life-threatening situations.
However, there were others who agreed with the two’s deadly proclamations said with innocent tones.
“I understand your feelings, but I’m the one who’s going to kill him. Rather than that, we have to find a way to heal Nicole’s eyes now.”
Lyell suggested with a scratch of his head. At present Maria’s healing magic could not heal her eyes.
“Presently, you could say Nicole is being continuously injured. It’s different from healing an already present wound.”
“So there’s no use unless we exterminate the Slime fragments inside the eyeballs.”
“And that Slime fragment is the problem. Normally, slimes transform to ordinary mucus with their cores destroyed, yet that fragment without a core continues to function.”
At Cortina’s words, Maria started to ponder while pinching her jaw.
“So it means we are dealing with something that’s not a normal Slime. And since this parasitizing fragment has no core, it’s hard to bring it down. Unless we take it out, her eyes can’t be healed.”
“Maybe Maxwell’s magic would be able to do something?”
“That would be hard. That old man is bad at fine-tuning his spells.”
Blowing away the coreless Slime should be possible with someone as proficient in magic as him. But the Slime in question was small fragments that had made the eyeballs their nest.
Landing a precise attack on a tiny fragment without damaging the surroundings would be called a superhuman level.
“If even that old man can’t do it...”
Realizing what that meant, the room fell into silence. As the despair started to show its face, the door was forcefully bashed open.
“And that’s when you rely on THE GOD!”
Entering inside was a young girl in white. Behind her was a tall man in his prime. He ruthlessly chopped the gung-ho girl in the back of her head, and spoke in a calm tone.
“Like that would serve as an explanation. Anyway, we heard the situation and came. Thought we could be of help.”
Lyell recognized the man’s face. He was the blacksmith that was in charge of Nicole’s equipment three years ago. He remembered hearing he was Maxwell’s acquaintance.
“You are... Aste, right?”
“Yeah, well, something like that.”
“Something like that...? Wait, more importantly, can you do something?!”
Lyell grabbed Aste—Hastur’s shoulders with his strong hands. It was forceful enough it seemed as if he would grab his collar and pull him in.
“That’s not my area of expertise. It’s this one’s role.”
He said and put his hand on the girl’s head in front. The white girl puffed her chest in excitement with hands on her hips.
“Leave it to me. A mere Slime wounding my dependent would affect my name as a god!”
Saying that, she barged into the room Nicole was sleeping at.
Maria and Dr. Tricia hurriedly followed after her. Despite all the noise, Nicole showed no signs of waking up. It appeared that she had fainted again after Finia had left. The white girl stood next to Nicole and asked about the condition without looking back.
“What’s the situation?”
“Huh? Umm, there is a slime without a core parasitizing her eyeballs so we can’t cast healing magic. It would start eating the recovered parts.”
“Moreover, it would grow as it eats, so we are out of options.”
Being asked, Dr. Tricia explained in confusion, and Maria followed up. Hearing it, the white girl peered into Nicole’s face with deep interest. She removed the bandage over her eyes, exposing the hideously burned scars.
“Oho. So it’s this, huh.”
She muttered quietly and snapped her fingers a little. Based on the small light around her fingers, she might have used some spell. Then, she twirled around and started to push Maria and Tricia out of the room.
“Okay, from this point on, you’ll get in the way of my secret healing, so please get out!”
“Huh, w-wait! I’m a healing magic specialist so—”
“That doesn’t matter!”
She tried to push everyone out but it was impossible with her tiny body. Instead, it was Hastur who moved everyone outside the room.
After that, the God of Destruction bit her own fingertip and dripped a droplet of her blood on her scar. The droplet that fell on the still-unconscious Nicole’s eyes, permeated the scar as if being sucked into it.
“I exterminated the Slime fragments with the earlier Disintegrate spell, but just in case.”
The God of Destruction and Nicole were linked both by blood and spirit. So by taking her blood, God of Destruction had her regenerate and reconstruct her eyeballs using her own immortality.
Had she been of a different bloodline, most likely a rejection would have occurred.
“But is this fine?”
Hastur, the only other remaining person in the room, asked anxiously. The God of Destruction replied full of confidence.
“Of course. But maybe she’ll inherit my charm power or something?”
“Now that would be a curse. You’re beyond help.”
“Only a bit of it though. It shouldn’t be strong enough to destroy people’s sense of reasoning.”
Saying that, Hastur took out an eyepatch from his pocket and etched a spell into it.
“This should manage to suppress its power.”
“But why an eyepatch? Wouldn’t glasses like mine have done the job? Besides, why do you carry an eye patch on you?”
“...It’s my hobby.”
God of Wind Hastur. By interacting with youngsters, his illness from when he was around fourteen years old had shown its face again. | {
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立ち話もなんなのでフェリも連れてツェアフェルト隊の陣幕に入る。マックスたちにも来てもらい全員で話を聴くことにした。バルケイはまだ未着か。しょうがない。
ノイラートとシュンツェルがやや厳しい顔をしてるのは貴族である俺を兄貴呼びしてるせいだろうな。まあ後でそのあたりは話をしておく必要があるか。今はフェリに話を聴く方が先だ。
「久しぶりだが何でお前がここにいるんだ?」
「マゼルの兄貴が『きっとヴェルナーならすぐにヴァレリッツに来る』って言ってさ。それでおいらがメッセンジャー任されたんだ」
思わず苦笑する。信用されるのか過大評価されてるのか判断に悩む。いろいろ言いたいことはあるがまあフェリに言っても仕方がない。
「んで、マゼルはどこにいるんだ」
「フィノイの大神殿にいるよ。相手のを皆で撃退してからおいらだけ出てきたんだ」
「何っ!?」
異口同音に声を上げたのはマックスとノイラートとオーゲンだが俺は声も出せずに絶句していた。ちょっと待て、なんでマゼルがもうフィノイにいる?
ゲームではフィノイが事実上攻め落とされて、ラウラの目の前に魔軍の一人がいて危機一髪ってところに
「詳しく説明してくれ」
「いいよ、えーっとね......」
フェリの話をまとめるとこうなる。マゼルたち一行はグーベルクの街近郊でレベルアップ兼近隣にあるダンジョンの情報を集めていたところ、ヴァレリッツが襲撃された、と言う噂を聞いた。
そこですぐヴァレリッツに向かわなかったのは、ルゲンツの「時間差がある、今から行っても多分手遅れだ」と言う意見をマゼルが悩みながらも受け入れたためらしい。俺もその意見には賛成だがマゼルがよく納得したな。
と思ったらその時マゼルがふと気が付いたようにこんなことを言い出したことから事態が急転する。
「そういえばヴェルナーはフィノイを当面の目標にすればいいとか言っていた」
......いや言ったよ。確かに言ったけど。えー。ひょっとしてそのせいなの?
さらにそこでエリッヒが「フィノイなら行ったことがあります。すぐにでも行けますが」なんて言ったもんだからそのまますぐマゼルたちはフィノイに移動し、敵襲の危険性を伝えて回ったそうだ。
大神殿の連中は半信半疑だったらしいが、ラウラがマゼルの言うことを信じたらしい。そういやゲームと違ってもう顔見知りだったもんなあ。
そのラウラが念のためと言うことで自衛態勢を整えるように指示を出したため、神殿衛士の防衛準備が間一髪で間に合ったということになる。
であるエリッヒならフィノイに行ったことがあってもおかしくないけどさ。それだったらゲームでも......ってあああ!
か! そういえば飛行靴は星数えの塔の後に行く街から買えるようになるんだった。ゲームだとこの時点では勇者パーティーは誰も持ってないはずなんだ。
そして行ったことがある人間がいれば飛行靴でフィノイに一瞬で移動できる。エリッヒが使うことで結果的に魔軍を追い越して先に大神殿に入ったのか。マジかー。
「んでとりあえず相手の第一波を叩き返して誰かが状況を伝えに行こうってことになったんだよね」
「それでフェリがここにいるってわけか」
「つまり、フィノイは今のところ無事だということだな」
「うん」
「ヴェルナー様、これは......」
「ああ、オーゲン。済まないが第二騎士団に状況の報告に行ってくれ。フィノイはまだ無事だと」
オーゲンが陣幕を飛び出していく。確かにこの情報は重要だがほかに考えることが多すぎて頭ん中がおもちゃ箱ひっくり返したみたいになってる。見送るのも忘れて思わず唸ってるとフェリが妙なことを言い出した。
「兄貴はやめろ。何だ?」
「おいらの気のせいかもしれないけどさ、変な奴らがいたんだよ」
「......変?」
フェリの話によると、フィノイには巡礼者やその巡礼者相手の行商人団なんかも避難してきているらしい。その巡礼者の中に奇妙な一団がいたということだ。
「魔物の出没状況が変わってるのに変に軽装でさ。なんかこう、話をしてる時も顔は笑ってるんだけど目が笑ってないって言うか」
のフェリだからこそ怪しさに気が付いたのかもしれない。そしてそいつらはマゼルたちの活躍で敵の第一波が追い返された後、しきりにマゼルたちの事を訊いて回っているように見えたんだそうだ。
「なんて言うかさ。こう、すごい人たちがいるって言う関心からの質問じゃないような気がしたんだよね」
マゼルにも相談したのだがマゼルも判断に悩んでいたらしい。ただルゲンツは警戒しておいた方がよさそうだと言っていたそうだ。むう。直接見ていないから何とも言えんな。
「あれは誰か、とか、どこの出身なのか、とか。あとマゼルの兄貴とお姫様との関係とかも訊いてたと思う」
頭の中で警報が鳴った気がした。まて。俺は何に気が付いた?
ゲームの状況を確認してみよう。ゲームではフィノイはすでに事実上制圧されていてダンジョン扱いだった。そして礼拝堂にいるラウラと三将軍の一人ベリウレスが対峙している状況に
その時にベリウレスは何と言っていた? 確か、抵抗するなら人質がどうとかラウラを脅していたはず。つまり“人質を取るような知恵が回る”事は確実。
同時に、ヴァレリッツでのあの殺戮をするような連中が人質を取るような判断をするか? と言う疑問。ここから想定される最悪の可能性は......
「トロイの木馬か!」
「うわっ!?」
俺が大声を上げたんでフェリが驚いた顔で俺を見る。いやマックスたちも驚いているが。傍から見れば突然謎発言をしたんだから当然か。トロイの木馬なんかこの世界で通じるはずもないものな。いやそれはいい。
先に大神殿に入り込んだそいつらは、おそらく内部で騒動を起こしつつ人質を確保するのが目的だったんだろう。ひょっとしたら大神殿の正門を内側から開けたりしたのかもしれない。
だが大神殿の門が簡単に破れないということを知ったらどうするか。防衛戦力の主力が勇者だと把握したら。その勇者の情報を手に入れたんだとしたら。アーレア村がマゼルの出身地だって事は別に秘密でもなんでもない。
最悪の可能性に気が付いた俺にとってはあらゆる面での優先順位がひっくり返った。
「フェリ、危険なことをやってもらいたいが頼めるか?」
「ヴェルナー様?」
ノイラートの声を無視して陣幕の隅にある棚から青い箱を取り出す。中にポーションのほか商隊で買い出して来た
中から薬瓶を二本と飛行靴を取り出す。飛行靴も残り二個しかないから残りは一個か。実験や補充する時間はあったのに手配しなかったのは俺のミスだ。
「何だい、それ」
「こいつは魔除け薬って言う代物らしい。一定時間魔物が寄り付かなくなるそうだ」
ゲーム的には寄り付かなくなくなるって言うか戦闘が発生しなくなるって言うか。ノイラートやシュンツェルが驚いた声を上げるがとりあえず無視。
しなくなるというものだが、理由がわからん。魔物がこっちの気配を感じられなくなるのか、加護的な何かで近づくことを躊躇するのか。相手が既に視認しているような状況だと効果がないかもしれない。だが大神殿内部にスパイがいる状況はどう考えてもやばい。そして俺だとどうにもならないというか、俺にはどうしても別にやることがある。
「こいつを振りかけてやるから飛行靴を使ってフィノイに戻ってくれ。もう一個分けてやるからフィノイに到着直後に周囲にばらまけば時間も稼げると思う」
フェリは真顔で俺の言うことを聞いている。マゼルもそうだがお前も人を疑うことを覚えろよ。いやこの状況で嘘を言う気はないが。
これは相当に危険性が高い。フィノイに飛行靴で戻るということは、フィノイの壁の外側に一人で移動するということだ。正門と言うか城門と言うか、とにかく扉が開くまでは魔軍の前に一人孤立することになる。
俺にはそんな危険な状況に飛び込む自信はない。だがフェリはあっさり頷いた。流石は勇者パーティーの一人、肝が据わってやがる。
「それで、戻ったらあの怪しい連中を捕まえておけばいいの?」
「ツェアフェルト家の名前を出して捕縛して牢に叩き込んでくれ。ただし一人でやるな。マゼルたちと一緒にやる事。抵抗したら力づくでいい」
「解った」
「敵の目的はおそらくラウラだ。ラウラの周囲に気を付けるようにマゼルには伝えてくれ」
「俺は緊急にやることができた」
俺の表情を見てフェリはこれ以上の会話をするのはやめたらしい。魔除け薬を頭から被ると「じゃ。フィノイへ」と短く言って飛行靴を使いその場から消えてしまった。マックスたちが茫然としている。
「ヴェルナー様、これは......」
「説明は後だ。マックス、部隊指揮を任せる。オーゲンを副将にして騎士団の指示に従え」
「ヴェルナー様?」
マックスだけでなくノイラートとシュンツェルまで怪訝な表情を浮かべている。だが説明のしようがない。
敵が魔軍三将軍の一人、ベリウレスであることを知っているのは現時点では俺だけだ。ましてベリウレスが人質を取るような狡猾さを持つことを知る人間などいるはずもない。
これはひょっとして孤独ってやつなんだろうかとか一瞬だけ考えたがそんなことはどうでもいい。
「ノイラート、シュンツェル。悪いが付き合ってもらうぞ。他に一〇騎選抜しろ。馬は必要だ。元気な奴から臨時に借り受ける。ポーションの準備も忘れるな」
「は......はっ」
「どうなさるのですか」
シュンツェルの当然の疑問に俺は短く答える。軍規違反になるがそんなこと知ったことか。マゼルがいるならしばらく大神殿は無事だろうからな。
「少数精鋭だけで急ぎアーレア村に向かう。マゼルの家族が危ない」 | We can’t talk comfortably while standing outside like this, so I brought Feli to the camp. I also called Max and several other people to come here to hear Feli’s story. Unfortunately, Barkey hasn’t reached the campground yet.
Neurath and Schunzel gazed fiercely at Feli probably because he called me a noble, ‘big bro’. I need to talk about this to Feli later, but for now, let’s hear what he wants to say.
“It’s been a while. Why are you here?”
‘Welner is probably going to arrive in Valeritz soon.’
I blurted that out with a sour smile. I don’t know if he trusts me or if he just has way too high of expectations for me. There’s stuff I want to complain about, unfortunately, the person himself isn’t here.
“Anyway, where’s that guy now?”
“He’s in the Great Temple Finnoi. After we succeeded in repelling the first wave of the demon attack on Finnoi, I came here alone.”
“WHAT!?”
Max, Neurath, and Augen raised a surprised yelp in unison. I stayed silent, not because I wasn’t surprised but because I’m lost for words. Why the hell is Mazell in Finnoi!?
In the game, Mazell was supposed to appear when Finnoi is already destroyed and Laura is facing off with one of Demon Generals. Currently, Finnoi is still intact so why is Mazell already there?
“Tell me the details.”
“Alright. You see...”
Feli’s story can be summarized as follows. Mazell and his party were leveling up in a place near Gouberg. They were gathering information about nearby dungeons when they heard the rumor that Valeritz was attacked by demons.
That’s why even though Mazell was unwilling, they decided to not head to Valeritz. I agree with Luguentz’s assessment but I’m more surprised that Mazell accepted Luguentz’s words.
After that, the situation completely changed as Mazell suddenly noticed a critical thing.
“Come to think of it, Welner said that we should put Finnoi as our target for the time being.”
...I did say that. Wait, is that why they went to Finnoi?
“I’ve been to Finnoi before so we will be able to go there immediately.”
The people of the Great Temple were skeptical, but Laura believed Mazell’s words. Ah, right. Unlike in the game, in reality, Laura already knows Mazell.
Laura ordered for the temple’s defense to be strengthened, she said it was just in case. That’s why the guards of the temple barely have enough time to prepare themselves before the demon’s attack.
I guess since Elrich is a monk, it wouldn’t be strange if he went to Finnoi before. But then again, in the game, the hero party should’ve... AH!!
Skywalk! In the game, Skywalk can only be obtained in the town that was unlocked after the players cleared the Counting Star Tower. That’s why when the Finnoi incident happened in the game, the players didn’t have Skywalk.
But now, Mazell and his party have Skywalk and Elrich has gone to Finnoi before so they can use Skywalk to arrive in Finnoi before the demon army did. To think that giving them Skywalk has this much effect.
“Well, since we succeeded in knocking back the demon’s first wave of attack, we decided that someone needs to convey the situation in Finnoi to you.”
“That’s why you’re here, huh, Feli.”
“In short, currently, Finnoi is still fine?”
“Yeah.”
“Welner-sama, this...”
“Ah, Augen. Can I trouble you to give the news that Finoi is still fine to the people of the nd Division?”
Augen left the tent. I have so many things to think about that I feel like my head is going to burst. I groaned. Then, with a strange expression, Feli said, “Big bro.”
“Stop calling me Big bro. What?”
“Well, maybe I’m being too sensitive but I feel like there are a bunch of strange people in the Great Temple.”
“Strange?”
According to Feli, there is a strange group of people among pilgrims and the peddlers that are taking refuge in Finnoi currently.
“Well, they were traveling in a light outfit even though demons have been appearing more frequently recently. How to describe it... They were smiling when I talked with them but I felt like their smiles were fake.”
Maybe their strangeness is something that only scouts like Feli can notice. Feli also told me that after Mazell’s party succeeded in repelling the first wave of the demon attack, this group seemed to be asking around about Mazell’s party.
“Um... How should I explain it... I feel like they were not asking around just because they were curious about the amazing people that just saved them...”
It seems like Feli has also talked about it with Mazell but Mazell was hesitant in taking any action while the cautious Luguentz told him to be careful around them. Hmm... since I haven’t seen them directly, I can’t really judge.
? They also asked about the relationship between Big bro Mazell and the Princess.”
I felt an alarm go off in my head. Wait, what did I just notice?
Let’s remember the game scenario. In the game, Finnoi was taken over by the demons and became no different than a dungeon. Then, in the Great Temple, the protagonist interrupted the confrontation between one of the Three Demon Generals, Beliulace, and Laura.
When Laura confronted Beliulace, what did he say? Hmm... I think he threatened Laura to do something to the hostage if Laura resisted? That means Beliulace has enough intelligence to take and use hostage.
Still, would the group that massacred Valeritz even bother to take hostages? I don’t know but if we’re talking about the worst-case scenario...
“The Trojan Horse!!”
“Yes!?”
Feli yelped in surprise because of my loud shout. Well, Maz and others are also surprised. I guess anyone will be surprised since this world didn’t have the words ‘Trojan Horse’. For them, I just uttered some incomprehensible words. Anyway...
The strange people Feli was talking about are probably aiming to cause strife inside Finnoi and secure hostages during the chaos. Maybe they even aimed to open the temple’s gate from the inside.
But what if they judged that it would be difficult to open the temple’s gate from the inside? What will they do once they know that the hero was there, protecting the temple? What will they do once they gather the information about the hero? I mean the fact that Mazell was from Alea village isn’t a secret.
My priority was literally flipped once I noticed what the worst-case situation is.
“Feli. There’s something I want you to do, but it will be dangerous.”
“Welner-sama?”
I ignored Neurath’s voice and entered the camp. I took the blue box that was placed on a shelf in the corner of the camp. Inside it are potions and magic items that I’ve had the merchant party buy. I haven’t tested the magic items so my plan might be a huge gamble.
I took medicine bottles and a Skywalk from the box. I only had Skywalks so with this, I have left. I had enough time to test the magic items and resupply them yet I didn’t do that. I was too careless.
“What is that?”
“This is called anti-evil medicine. It can prevent demons from approaching you for a fixed amount of time.”
In the game, this medicine will make it so the player won’t have any encounters with demons for a fixed amount of time. Neurath and Schunzel were surprised by my explanation, but for now, I decided to ignore them.
The problem is I don’t know why and how this item prevents encounters with demons. Maybe it will make the user unable to be detected by the demons? Or perhaps it will give some kind of divine protection to the user so the demons hesitate to approach the user?
“Sprinkle the anti-evil medicine on your body and use the Skywalk to return to Finnoi. I will give you two so, after arriving in Finnoi, sprinkle the other on the ground around you. You should be able to buy some time if you do that.”
Feli listened to my words with a serious expression. Just like Mazell, I think you need to learn how to doubt other people’s words. Well, it’s not like I’ll gain anything by lying here though.
This mission is quite dangerous. Using the Skywalk to go to Finnoi will mean that Feli is going to be transported outside of Finnoi. Until someone opens Finnoi’s gate to Feli, he will be surrounded by demons. Alone.
I don’t think I can handle that kind of dangerous situation but Feli easily nodded his head. As expected, the members of the hero party had a lot of nerve.
“So after I return to the Great Temple, I just need to catch the suspicious people, right?”
“Yeah. Use the Zeavert’s name to arrest them and throw them in prison. But do it with Mazell and others, don’t do it alone. Use force if they resist.”
“Got it.”
“The enemy’s aim is probably Laura. Tell Mazell to strengthen the defense around Laura.”
“I have an emergency.”
After seeing my expression, Feli stopped talking. He poured the anti-evil medicine on his head, said “Bye.
“Welner-sama, that...”
“I’ll explain later. Max, I’ll appoint you as the army’s temporary commander and Augen as the lieutenant. Wait for the nd division instruction here.”
“Welner-sama?”
Not only Max but also Neurath and Schunzel looked confused. However, I don’t have any way to explain it to them.
The fact that our enemy is one of the Three Demon Generals, Beliulace, and the fact that he’s a sly demon who planned to use hostages are both something that only I know.
For a second, I thought maybe this is what people call loneliness... but well, that’s not important.
“Neurath, Schunzel, sorry for troubling you both but I need you to come with me. Bring along horsemen and 26 healthy horses with us. Also, prepare some potions.”
“Y...Yes!”
“What are you planning to do?”
This is going to be a violation of military discipline, but I couldn’t care less. As for the Great Temple, it will probably be fine for a while since Mazell is there.
“We are going to take a few elites to Alea Village. Mazell’s family is in danger.” | {
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学院の授業が終わり、俺はミシェルちゃんたちと合流して、支援学園御用達の茶店に立ち寄っていた。
例のエリオットに紹介されたところは価格が少し高めのため、気軽に立ち寄るというわけにはいかない。
そこで貴族が少なく、懐具合の寒い支援学園の生徒目当てに、格安で営業している店に頻繁に足を運んでいる。
「でね、レティーナってば後ろからドーンって」
「その前のニコルさんの悪口が許せなかっただけですわ。わたしだって成長してますもの」
「あははは、でもこれでまたクラウドくんが嫉妬されちゃうね」
周囲には俺たちと同じように買い食いに立ち寄った生徒も多いため、多少派手に声を出しても、目立ちはしない。
ミシェルちゃんもそういう環境ということで声を押さえずに爆笑していた。
「やめてくれよ、またギルドでの訓練が激しくなる」
「その時はレティーナに報復することに忙しかったから、弁解できなかった」
「その場でしてくれていたら嬉しかったのに!」
そして隙あらば胸に攻撃を仕掛けてくる、フィーナのキスマークでもあった。
なのでクラウドへの疑惑は完全に見当違いの物である。
だが噂というのは独り歩きするモノだ。今回もその例に漏れず、余波はクラウドに及んでいる。
現に今いる店でも、俺を知る生徒が多いため、視線がときおりこちらに飛んできていた。
「まー、わたしたちと一緒にいるだけで役得だから」
「それ、自分で言うかな?」
「ミシェルちゃんやわたしが美少女でないと?」
「そこは否定できないのがつらいな」
「ちょっと、なぜわたしを外したのか、説明してくださいまし!」
「そりゃ、レティーナは幼......いやなんでもない」
例によってレティーナは騒々しい。彼女はいつでも、自分のペースを崩さない。
一歩間違えれば煩わしいと思われかねない言動なのだが、それでも憎めないのが彼女の人徳というところか。
俺は無口な性質なので、おかげで随分と交友関係が広がってくれた。
「でもまさか、コルティナ先生まで乗ってくるとは思いませんでしたわ」
「ちょっと最近浮かれてる感じはあるね」
「もっとなんというか......近寄りがたい雰囲気を持っていたと思っていたのですが」
「そうなの?」
俺はコルティナのことは、こちらに来てからの状態しか知らない。
確か親友の娘を預かるということで、かなり気分を持ち直したと聞いている。
「そうですわね、前のコルティナ様は何というか、無気力というか、投げやりというかそんな雰囲気でしたわ」
「そんなに変わったの?」
「ええ。少なくともあの始業式の日に、教室に入ってきた姿を見て驚いたのは確かですわ」
それを聞いてミシェルちゃんは、不思議そうな顔をしていた。
「でもコルティナ様って、もっと気さくな感じだったのに、へんなの」
「変って、すごく失礼な言い草ですわね。まあ今のコルティナ様からは想像できないのもわかりますけど」
「コルティナ様かぁ。マクスウェル様と違って、あまり表に出てこない人だから地味な人だと思ってたけど、わりと美人だよね」
「クラウドくんのえっちぃ」
ということは、積極的な活動を始めたのは、やはり俺が来てからなんだろう。
そんな話をしながらその日は解散になった。
クラウドから孤児院のシスターからの感謝の手紙を受け取り――これは先の煮込み肉のお礼に関してだ――レティーナたちとも別れる。
今日はミシェルちゃんの矢が不足気味になっていたので、狩りに出るのは中止になっている。
の全力射撃は特製の矢でないと使用できないが、彼女がいつも使っている狩猟弓は通常の矢を使っている。
俺たちと冒険に出ると主にこちらを消費するので、消耗が早いのもこちらの方だ。
もちろん、ミシェルちゃんも矢を作ることはできるが、そこはやはり、素人の作る矢とプロが仕上げる物では精度が違うらしい。
「ごめんねぇ。わたしが自分で作ったやつだと、ちょっと軌道がブレちゃって」
「ミシェルちゃんはわたしたちの中でも最重要の
両手にいっぱい矢を抱えてして帰路につく。
二人の少女が両手いっぱいの荷物を抱えて歩く姿を見て、通りの露店の人たちが冷やかし混じりの声をかけてきた。
「ミシェルちゃん、今日は買ってってくれないのかい?」
「さすがに無理ィ!」
「ニコルちゃんはどうだい?」
「これ以上持ったら潰れちゃう」
「それを見たいんだよね!」
「ヒドイ!」
俺が悲鳴を上げて抗議すると、屋台のおっちゃんは声をあげて笑う。
俺が何かに押し潰される姿は、わりと頻繁に目にすることができるのに、何がおかしいのか。
そうやって俺たちはミシェルちゃんの家の前まで帰ってきた。
「待って」
「ん、なぁに?」
「なんか......ちがう」
ミシェルちゃんの家族に用意された家は、普通の一軒家の民家だ。
窓は高価なガラスが入ったものではなく、落とし窓の形式。
「なんだ――?」
だが何かが違うと、俺の感覚が警鐘を鳴らしている。
「洗濯物だ......」
「え、あホントだ。洗濯物、今日は干してないね。珍しい」
ミシェルちゃんの家は彼女も父親も、現役の猟師だ。
その汚れ物は、毎日のように洗濯され、二階の物干し台に干されている。
「昨日はみんな狩りに出てたし、洗濯物はあるはずなのに」
「そういえばそーだね。お母さん、どうかしたのかな?」
ミシェルちゃんが踏み出そうとするのを制し、俺が先に入ることにする。
彼女は現在、いろんな人物に身柄を狙われる身だ。ひょっとしたら、何らかの強硬手段に出た愚か者が何かしでかした危険もある。
家に踏み込んだ瞬間その身柄を攫われる、なんて状況も有り得るかもしれない。
俺は抱えていた矢をその場に置き、護身用に持ち歩いている短剣を抜いてドアを開けた。
明かりもなく、薄暗い室内。
そこには――荒らされた室内と、いくらかの血痕が残されていた。 | When the academy classes ended, I met up with Michelle and stopped by the support academy’s tea house.
The place Elliot introduced me to was on the pricey side, so we couldn’t go there too casually.
Especially for Michelle who could eat a lot, the prices there was quite a problem. Thus, we instead frequently visited the cheap stores that were aimed for the support academy students who were mostly commoners and lacked financial influence.
“So as I was saying, Letina just went and pushed me out.”
“I could not forgive your slanders. I will have you know that I have properly grown too.”
“Ahahaha, with this, Cloud’s going to get envied even more.”
There were many other students who stopped by to eat like us, so we wouldn’t stand out even if we raised our voices a little.
Given such an environment, Michelle was laughing without holding back. Meanwhile, Cloud who came along was at his wits’ end.
“Please stop. My Guild training will just get harsher from that.”
“I was too busy trying to get back at Letina so I didn’t manage to explain the situation.”
“I really wish you had though!”
The red mark on my chest was the bruise from the boar’s attack from the other day. There was also Fina’s kiss mark there who attacked my breasts at every chance she got.
As such, suspecting Cloud was really misplaced there.
That said, rumors spread on their own. This time, too, Cloud simply ended up taking the brunt of the after-effects.
In fact, there were many students who knew me here, and they kept periodically stealing glances at our way.
“Well, being together with us is already considered a perk.”
“Is that really something you should say yourself?”
“Are you saying Michelle and I aren’t beauties?”
“It frustrates me that I can’t deny that.”
“Hey! I demand an explanation on why you omitted me just now!”
“Well, that’s because Letina’s still a chi-... No, never mind.”
“Grrr!”
As always, Letina was being noisy. She was always going at her own pace.
Her speech and conduct were one step short of coming out as annoying, but finding it unable to hate her came from her natural virtue.
I had a quiet nature, so our relationship had developed quite a bit.
“Still, I never thought that Teacher Cortina would take part in it too.”
“Yeah, she is a little festive as of late.”
“How should I put it... I used to think that she was harder to approach.”
“Really?”
I have only known about Cortina’s state ever since I arrived in Raum. Before that, I only knew how she was during my previous life.
I heard that being entrusted by her friend’s daughter had lifted her spirits quite a bit.
“Indeed. Lady Cortina from before was somewhat apathetic, or perhaps I should say negligent.”
“Did she really change that much?”
“She did. At the very least, I was certainly surprised when I saw her during the opening ceremony that day.”
If I remember correctly, she was in quite high spirits when she entered the classroom that day. Hearing that, Michelle looked to be curious about something.
“But I always saw Lady Cortina as a friendlier person, so that’s weird.”
“Calling it weird feels really rude to her, you know? But well, I can see why it is hard to imagine from her current self.”
“Lady Cortina, huh. Unlike Lord Maxwell, she hardly ever showed herself in public so I thought she would be a plain person, but she turned out to be a beauty.”
“Cloud you perv.”
It seemed that Cloud didn’t use to hold much of an impression on her either. Which means, she only started an active lifestyle when I arrived here.
While discussing such things, we finally broke up for the day.
Cloud gave me the thank you letter—for sharing meat with them the other day— from the orphanage sisters, and then I parted with Letina and him.
Michelle’s arrows had been worn out today, so we decided to call it a day. Thus, the two of us instead went for the weapon store to replenish them.
She couldn’t use the full power of the Third Eye without special arrows, but the normal hunting bow that she usually used worked on normal arrows.
When adventuring with us, she used that bow most of the time, so its arrows used to deplete faster.
Naturally, she could make arrows herself, but in the end, the accuracy of the shots differed between arrows made by an amateur and a pro.
“Sorry about this. If I use the ones I make, the trajectory tends to be slightly off.”
“You are the most important shooter in our group, so it can’t be helped.”
With hands full of arrows, the two of us took the way home. Our legs were pretty unstable so we were walking with tottering steps.
Seeing two little girls carrying a lot of luggage, the nearby stall owners called out to us in joking voices.
“Hey Michelle, you aren’t going to buy anything today?”
“It would be impossible now!”
“How about you, Nicole?”
“I’ll get crushed if I carry any more than this.”
“I’d like to see that.”
Hearing my protests, the stall uncle started laughing loudly. For some reason, even the nearby stall owner started laughing.
They should be used to seeing me get crushed under something by now, so what was so funny now?
At any rate, we managed to reach Michelle’s house. But then, I felt something was out of place compared to the usual.
“Stop.”
“Hmm, what’s wrong?”
“Something feels... Wrong.”
The house provided to Michelle’s family was a normal detached house. Walls built with stone and a wooden door.
The windows weren’t using the luxurious glass, but instead were drop window types. Up to that, it was your everyday scene...
“What’s going on...?”
However, my intuition was giving off alarm bells that something was wrong. Surveying the surroundings, I finally realized what was different.
“The laundry...”
“Huh, oh you’re right. There’s no laundry out today. That’s strange.”
In Michelle’s family, both she and her father were active hunters. While her mother was in charge of butchering jobs.
In other words, they had a lot of dirty clothes accumulated every day. And they washed them every day and hung them on the second-floor dryer. But only today, they were nowhere to be found.
“We all went out for hunting yesterday, so there should be laundry.”
“That’s true. I wonder what mom’s thinking?”
I stopped Michelle and went in first.
She was currently targeted by various people. It was possible that some fool resorted to strong measures.
It was possible that someone would attack while entering the house.
I dropped the arrows and pulled out my self-defense dagger, and opened the door.
It was a dim room without lights.
A devastated room—and bloodstains. | {
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「レン! 何あの剣、ちょっとおかしいんだけど!?」
再会し後、トリエラが怒鳴り込んできた。怒鳴り込んできたと言うか、裏口からでたところに待ち構えていて、顔を出して早々怒られた。意味がわからないよ。
「あ、あとご飯美味しかった! 皆も喜んでた! ありがと!」
それであの剣、どこかおかしいところありました? もしかして壊れちゃいました?」
おかしい。そう簡単に壊れないようにしっかり造ってたはずなんだけど。
「あ、壊れたとか、そういうのじゃないから」
「んー? じゃあ何が?」
......三日前は、お昼ご飯を食べて別れた後にギルドの資料室に行ったらしい。そこは私の言うとおり、自分の知りたかった物が沢山あったのだそうだ。
その日の夜は私が持たせたサンドイッチで仲間達がみんな大盛り上がりだったとかなんとか。ちなみにケインの馬鹿も夢中で食べてたらしい。ファック!
孤児院から一緒に出てきた仲間はトリエラやケインも含めて全部で8人も居るとかで、宿代に食費もあわせると当然かなりの金額になる。
前日に資料室で覚えて来たとは言っても、流石に自信なんて全然無いわけで、いつも通りに別れてトリエラは採取組に混ざる事にしたらしい。
今までなら薬草採取組の稼ぎなんてたいしたことはなく、雑用の収入と合わせても、多くて銀貨一枚行くか行かないか。大抵の場合は薬草採取のみでも小銀貨7枚前後位だったらしいんだけど、その日の収入は銀貨5枚。今までで最高金額だったらしい。
硬貨は下から小銅貨、銅貨、小銀貨、銀貨、小金貨、金貨。ギル換算で小銅貨一枚が1ギル。銅貨が10ギル。以下、10倍単位で貨幣価値が上がっていく。1ギル以下の貨幣として卑貨というのもあるけど、こっちは割愛。私の感覚としては、1ギルで1~10円位の感じがする。揺れ幅が大きい? それはまあ、物価変動とか時代によってとか、色々あるからね。
トリエラ達が泊まってる安宿の大部屋は一人一晩銅貨7枚分なので合せて小銀貨5枚と銅貨6枚。食費も考えると結構ギリギリ。
それがその日だけでいつもの7倍以上稼げてしまった訳で、当然仲間全員で大騒ぎになったらしい。
但し、いつもなら街の雑用の仕事を受けに行く予定の仲間の半数はギルドの資料室に行って勉強することにしたんだって。8人の半分の半分だから二人? うん、知識は武器だから、勉強は大事だよね。
前日は雑用に行ってたケインを含めたトリエラが、森で薬草採取をしてる時にゴブリンに襲われた。
ゴブリンが振り下ろした剣を、トリエラは咄嗟に剣を抜いて受け止め、はじき返して斬り返したらしい。
トリエラが振り下ろした剣は、ゴブリンが構えた剣ごと、ゴブリンを脳天から真っ二つにしてしまったのだとか。
それをみたケインが大騒ぎ。とは言え私のことは言えないし、言いたくない。
ちなみにその日はゴブリン討伐の収入+四人がかりの薬草採取の収入で小金貨1枚の収入になったそうで。
「えっと、おめでとう?」
なんなのこの剣!? 本当にレンが造ったの!?」
「間違いなく私が打った剣です」
三日前にトリエラにあげたその剣は、鍛冶スキルがLV5になった後に自分用に新しく打った剣。間違いなく私が造った剣だ。
「うーん......流石に、ケインの分も、って言うのは」
「ケインの分は絶対嫌です。他の子の分というなら考えなくも無いですけど」
「だよねー」
ケインに剣をあげるとか、死んでもお断り。自分で稼いで買えばいいよ。
「正直、今のわたしには不釣合いすぎるよ、この剣......」
「そういうのはどうでもいいです。トリエラの身を守る為にも持っていてください」
「そういうと思った......わかった、持っておくね」
あ、それとなんですけど、ちょっといいですか?」
「何?」
「トリエラ用に革の防具を造ってみたので、合わせましょう」
「......それも拒否権無い感じ?」
YES!
「当然です」
というわけで革鎧のサイズ合わせ。裏通りのベンチに座ってちまちま調整していく。一応鎧とは言ってみたけど、実際は革鎧と言うよりは革の胸当て?
とは言っても小手や膝当てなんかも用意してあるので、胸当ても含めた革鎧一式、かな? でもこれで全身の急所はある程度フォロー出来てる筈。
「一応、ベルトである程度のサイズ調整は出来るようにしておいたので、成長して身体が大きくなっても暫くの間は使える筈です。
全然動きにくいとか無いんだけど、どうやって私のサイズ調べたの? この一年ちょっとでわたしかなり背が伸びたんだけど」
サイズは再会した日のうちに【解析】で調べておいたんだけど、でも......
「......そうですね、随分大きくなりましたね」
孤児院に居た頃は私のほうが背が大きかったのに、今ではトリエラのほうが背が高かった。全体的にスレンダーで、すらっとしてる。いや、実際はスレンダーって言うか痩せてるんだけど。
「というか、レンってもしかして全然背が伸びてない......?
どうせ私は一ミリも伸びてないよ! 畜生め! 胸ばっかり大きくなって、一体どうしろって言うのさ!? ちょっと、胸を凝視しないで! やめて!
「あんまり胸ばかり見ないでください」
「あ、ごめん」
「正直これ、邪魔なだけです。寧ろ私からすればトリエラの急成長のほうがびっくりです」
「邪魔って......」
胸が邪魔で脇が締まり辛いから、鍛冶の時に槌を振るのも、剣を振り回す時も邪魔で仕方ないんだよ。走ると揺れて痛いし、無い人にこういうこと言うと怒られるのかもしれないけど、あったらあったで悩みの種になるのがコレなんだよ。あと、肩凝るし。
「剣もそうだったけど、なんだかこの革鎧も凄いことになってる気がする......わたし、装備が強すぎて自分自身の経験って余り積めなくなったりしないかな?」
「確かに先を考えるとそれはそれで問題になりそうですけど、それでもトリエラにはちゃんとした装備を身につけていて欲しいです」
でも、ちゃんとした武具を使うほうが、正しい取り扱い方を覚えられそうな気もするんだけどね。
うん、まあ、それはそれでいいんだけど、帰ったらこの鎧見てまたケインが騒ぎそう」
「無視しましょう」
「ひどっ!」
トリエラは自分の足で互助契約の相手を探し歩いたから、私に会えたんです。ケインも自分の剣や他の装備が欲しいなら、自分で何とかすればいいんです」
実際いつも私の東区巡り、馬鹿にしてたし。無駄だーって」
あの野郎、口の悪さと馬鹿さ加減は相変わらずなのか。私の親友の努力を笑うとか、許されざるよ?
「こんなにお肉沢山、食べきれないよ......」
ダメダメ。全部食べなさい。 | “Ren! What’s up with that sword, isn’t it a bit strange!?”
Three days after our reunion, Triela was now yelling at me. Or to be more precise, she was waiting for me at the back entrance, and got angry at me when I showed up. I’m not really sure why.
”Ah, and the food was delicious! Everyone was so happy! Thank you!”
“You’re welcome. So was there something wrong with the sword? Did it perhaps break by any chance?”
That’s strange. It’s supposed to be made so that it wouldn’t break easily.
“Ah, it’s not like it broke or anything like that.”
“Hmm? Then, what’s wrong?”
.......So it seems three days ago, after we had lunch and separated, she had gone to the guild’s resource room. Like I said, there were many things there that she had wanted to know. That being said, Triela couldn’t read many characters. So she had pleaded with the librarian and asked them to teach her.
Apparently, her companions also had a great time that night with the sandwiches I made or something like that. That stupid Cain was also eating too. Fuck!
And the next day, she had gone to the forest on the east side to gather herbs in order to test out what she had learned in the resource room. There were a total of eight people who left the orphanage with her, including Triela and Cain, so the expenses for food and rent was quite high.
And so, like usual she had gone with them and divided into two groups, one to learn more about gathering herbs and the other to earn money. Since she had just learned it yesterday at the resource room, as expected, she wasn’t entirely confident in herself. And as usual, they split up and Triela decided to join the gathering group.
But judging from the results, Triela was successful. Up until then, the earnings from the herb gathering group weren’t too great, and even with adding in earnings from miscellaneous requests, the total would at most equal to around a silver coin. In most cases, the earnings from gathering herbs would be about small silver coins, but the earnings for that day was silver coins. Apparently, it was the highest amount ever.
Incidentally, the monetary unit in this world is called gil. Going from the bottom, the coins begin with small copper coin, copper coin, small silver coin, silver coin, small gold coin, and gold coin. In terms of gil, a small copper coin would equal gil. A copper coin would equal gil. And the monetary value continues to increase by x beyond that. There’s also currency under gil, but I’ll spare you the details. Going from my senses, 1 gil feels about equal to 1-10 yen. The range is kind of large? Well, there’s also various elements like price fluctuations, time period, and such.
The large room at the inn where Triela and the others were staying cost seven coppers a night, per person. For eight people, that would be five small silver coins and six copper coins in total. Adding in food expenses, it was just barely safe.
And on that day alone, they had made more than seven times the usual amount of money. So naturally, everyone was in an uproar. Apparently, Triela had misled everyone and given the explanation that she had been informed by a kind blacksmith. She also explained that the food from the previous day was also given by the same person.
Naturally, the next day, Triela went out again with the gathering group. But apparently, half of the other group that would normally go out to accept miscellaneous requests within the city, decided to go to the guild’s resource room to study. So with half of eight people remaining splitting into two groups, there’s only two people per group? Yep, knowledge is a weapon, so it’s important to study.
But here was the problem. The day before that, Triela’s group of four, which included Cain, got ambushed inside the forest by goblins when they were gathering herbs.
When a goblin attacked her, Triela had quickly drawn her sword and managed to block it, then countered by slashing back. But despite managing to counter, she was still an amateur at using the sword. And it seems she had swung towards the sword that the goblin was holding.
Initially, she had thought she had failed and that she would damage the sword that she had received. But instead, the sword Triela had swung managed to cut through the sword that the goblin was holding and split the goblin cleanly into two.
When Cain saw that, he had made a huge deal out of it. That being said, she couldn’t talk about me and didn’t want to. She had managed to mislead everyone, but after returning to the inn, Cain had wanted Triela’s sword and been persistent about it.
Incidentally, the earnings from the goblins and the herbs gathered by four people on that day resulted in a small gold coin. Ah, and on a side note, apparently the rusty, broken sword that the goblin had is now hanging from Cain’s waist. Lame!!
“Um, congratulations?”
“Thanks! No, that’s not it! What’s with that sword? Is it really made by Ren!?”
“It’s definitely a sword I forged.”
The sword I gave to Triela three days ago was a new sword I forged for myself after my blacksmithing skill reached LV5. So it’s definitely a sword I made. Incidentally, there’s a similar sword hanging on my waist right now, which I forged two days ago.
“Umm.......as expected, one for Cain would...be.”
“I will never make one for Cain. But if it’s for the other children, I might consider it.”
“Right~”
I refuse to give Cain a sword even if my life were on the line. He could just earn enough to buy one for himself.
”To be honest, this sword is too much for the current me to handle......”
“It doesn’t matter. Please keep it to protect yourself, Triela.”
“I had a feeling you’d say that.......okay, I’ll keep it.”
“Good. Ah, and also can I ask you for something?”
“What is it?”
“I’ve made leather armor for Triela, and I need to adjust it to fit you.”
“.......I suppose I don’t have a choice anyways?”
YES!
“Of course.”
Yep, this is also for the sake of my mental peace. And so I began adjusting the size of the leather armor. We sat on a bench in the back alley as I made the adjustments. Although I said it was armor, isn’t it actually more of a leather breastplate than leather armor?
However, I’ve also prepared arm and knee guards, so including the breastplate, I guess it is actually a complete set of leather armor? With this, most of the vital points of the body should be covered.
“For now, I’ve made it so that you can adjust the size up to a certain extent with the belt, so it should be usable for a while even if you grow up and your body becomes bigger. But if you feel that the size doesn’t fit anymore, don’t force yourself to use it and get a new one. Otherwise, you’ll get injured.”
“Okay, I understand. But this is amazing, it fits so well but it’s still easy to move in. The one from before was very difficult to move in, but how did you get my sizes? I’ve grown quite a bit in the past year or so.”
I checked her sizes using Analyze the day we met, but......
“.......Right, you have grown a lot.”
When we were back at the orphanage, I was taller, but now Triela was taller. And her entire frame was slender and slim. Or rather, it was actually slender and skinny.
“Actually, Ren didn’t seem to have grown taller at all......? Ah, but your chest......”
Right, I haven’t even grown a millimeter taller! God dammit! What am I even supposed to do with this ridiculously big chest!? Wait, don’t stare at my chest! Stop it!
“Please don’t stare at my chest so much.”
“Ah, sorry.”
“To be honest, they’re a nuisance. Rather, Triela’s rapid growth is more surprising to me.”
“A nuisance......”
Even if you look at me like that, a nuisance is a nuisance. My chest gets in the way and I’m forced to keep my movements tight, and they also get in the way when I swing the hammer during forging, and when I use a sword. It hurts when I run, and if I say something like this to people who don’t have them, they might get angry, even though it would just actually be a pain if they did. Also, my shoulders get sore.
“It was the same with the sword, but I get the feeling that this leather armor will also be amazing......I wonder if my equipment is too strong and it’ll cause me to be unable to gain actual experience?”
“It could be a problem when considering the future, but I still want Triela to be properly equipped.”
But it’s still better to use good equipment, since she should be able to learn how to properly use them.
“If you say so...... Well, okay, that’s fine then, but when I get back and Cain sees this armor, he’s going to make a fuss again.”
“Just ignore him.”
“That’s harsh!”
“Fine, just tell him you saved up some money and buy it. Triela, you were able to meet me because you walked around on your own two feet looking for a mutual assistance contract partner. If Cain also wants his own sword and other equipment, he should get it for himself.”
“That’s true. In fact, he always mocked me whenever I went out to the eastern district and called it pointless.”
That a-hole, is he still as foul-mouthed and stupid as ever? Laughing at my best friend’s efforts, unforgivable. But for now, I’m prioritizing Triela’s diet. I should add more meat.
“There’s so much meat, I can’t eat it all......”
Nope. Everything must be eaten. | {
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更衣室で服を脱ぎ、篭に突っ込んでからロッカーの中に仕舞い込む。
ミシェルちゃんだけは裸の上に、肩から大弓用のケースをぶら下げていた。あの中身だけは、ロッカーの鍵程度では安心できないからだ。
そこには岩を組み合わせて作った室内浴場と、その奥に続く露天風呂の扉があった。
洗い場の隅には、カーテンで区切られたマッサージ、並んでいた。
「おー、ひっろーい!」
「わたしの屋敷のお風呂より広いですわ」
「でもプールよりは狭いね」
「当たり前でしょ!」
「え、崖なんてあるっけ?」
「あの岩、さすがにそんな大きさは無いと思いますわよ」
「気にしない、気のせいだから」
まぁ、人の事は言えた物じゃない。俺も見下ろせば、つま先まで遮るものの無い直滑降なのだ。むしろポッコリしたイカ腹体型でお腹が邪魔になるくらいである。
コルティナも浴場の職員にマッサージ師を要求していた。
「それじゃ、さっそくはじめようかな。フィニア、こっち座って」
「え、座るんですか?」
「うん。まずは身体洗わないとね」
その仕草をする俺を見て、フィニアは一歩後退った。
「ニコル様......な、なんだか指の動きがイヤらしいんですけど?」
「くっくっく。今日はいい声で鳴かせてやるぜー」
「何の話ですか!」
木製の椅子は湯気で温められ、冷たくはなかったし、綺麗に磨き上げられているため、不潔感もない。
ミシェルちゃんとレティーナが寄って集ってフィニアの身体を洗い始める。
「ちょ、ちょっと、みなさん!?」
「あはは、フィニアお姉ちゃん、覚悟ー!」
「わたくしも洗う側に回るのは初めての経験ですわね。覚悟なさいまし♪」
二人がフィニアの両手を引っ張り、ガシガシと洗い始める。と言うか、レティーナ。お前はいつもは洗われる側なのか? いや、いつもフィニアに楽し気に洗われている俺が言う事じゃないが。
髪を纏めるのもフィニアよりは上手くできないが、慣れてきている。学院に行けば自分で纏める必要性も出てくるので、最近学び始めていたから、必然的に覚えていた。
「どう? きもちいい?」
「あはは、くすぐったい。ミシェルちゃんそこはダメ――」
「え、こっち?」
「そこは胸です!」
対してレティーナは指先から丁寧に洗い始めていた。大雑把なミシェルちゃんと、細かいレティーナの性格がよく出ている。
「むぅ......」
背後から唸るような声が聞こえてきたと思ったら、コルティナが恨めしそうにこちらを見ていた。
さすがに家主に対して放置は不味いか。というか、ちょっとばかり下心を解放しても問題ないよな?
「あ、じゃあわたしはコルティナを洗ってあげる。フィニアはお願いね?」
「ずるい! わたしがコルティナ様を――」
「レティーナだけには絶対やらせん」
雄オタクのレティーナにコルティナを洗わせたら、なにが起きるかわかった物ではない。
「うう、幼女まみれのお風呂とか、なんて天国」
「コルティナ、それはさすがにキモい」
「ちょっと本音をダダ漏らしただけよ」
「うわ、今後の付き合いを考えさせていただきます」
「冗談だってば!」
性質の悪い冗談を飛ばすコルティナの頭にお湯をぶっかけて反撃する。
「天罰」
「優しさが欲しいわ」
「わたしは優しいよ?」
コルティナとは、自宅でも何度も一緒に風呂に入っているので、今更恥ずかしさはない。
現にフィニアは、ミシェルちゃんに正面から抱き着かれて、身体全体で洗われていた。二人とも泡まみれで、際どいところが見えなかったのが救いかもしれない。見えていたら俺もちょっと興奮していた所だろう。
いつもならば有り得ない光景。みんなも無駄にテンションが上がっていたのかもしれない。
一通り洗った後、フィニアをマッサージ台の方に誘導する。
マッサージというのは実は危険な側面もあり、腱や筋肉を痛める可能性も高い。なのでこればっかりは俺が付きっきりで指導する必要がある。
子供の力とは言え、ミシェルちゃんは結構な力持ちだ。身体を痛める可能性は充分にある。
「じゃあ、わたしが指示するから、その通りにやってね」
「はぁい!」
「わかりましたわ」
隣のプロも、心配そうにこちらを眺めているが、俺だって前世では身体のケアは欠かさなかった。
というか、人一倍筋力に恵まれなかった俺は、そういう方面では実に細心の注意を払っていた。
最小限の力で最大限の効果を発揮するために、思考通りに、瞬時に動く肉体は必要不可欠だった。そのためには、日頃の身体の手入れも重要になってくる。
だから、マッサージに関しても、相応に知識はある。
「こう、筋肉の筋に沿って揉みほぐすようにね。最初はゆっくりと......ミシェルちゃんそこじゃなくてもうちょい右」
初めてのマッサージにおっかなびっくりフィニアの背に触れるミシェルちゃん。
そんな俺たちの背後で、素っ頓狂な声が響いたのは、その時だった。 | We stripped ourselves in the changing room, dropped our clothes into the baskets and stored them inside the lockers. There were some valuables mixed among them, so we made sure to lock them tight.
Only Michelle had a bow case hanging on her shoulder. Its contents couldn’t be trusted to the lock of a locker. After all, it stored a mythical weapon. She couldn’t possibly feel safe leaving it behind a lock that could be cracked open with a hit or two.
We opened the door leading to the bath and entered inside. Inside was a bathhouse made from aligned rocks, and further inside was another door that led to the open-air bath. I could feel a faint sulfuric smell drifting in the steam. Perhaps this cloudy bath contained additional components?
At the corner of the washing place, there were three massage tables divided with curtains. One on the left was already occupied. You could probably ask the inn person to call a masseur for you.
“It’s bigger than the bath in my mansion.”
“But it’s still smaller than a pool.”
“Of course it would be!”
“Huh? Where’s the cliff?”
“That rock over there? I don’t think it’s big enough to be called one.”
“Never mind. Looks like I imagined it.”
Well, I wasn’t the one to talk about being flat. Looking down at my body, I could see all the way to my toes with nothing blocking the vision. The only real obstacle was my stomach that was sticking out a bit.
Cortina asked for a masseur from the bath staff member. We were the “doers” this time, though.
“Okay, let’s get to it. Finia, come sit here.”
“Eh, sit?”
“Yeah, I gotta wash your body first.”
I spoke and approached her while making fumbling motions with my fingers. Seeing that, Finia took a step back.
“Lady Nicole... T-Those finger movements appear somewhat obscene.”
“Ku-ku-ku. I’ll be hearing your sweet cries today.”
“What are you talking about!”
Finia tried to flee from me as I got carried away, but I hugged her waist and forced her to sit down. The chair was quite warm thanks to the steam and it was nicely polished too, so it didn’t feel filthy in any way.
This inn seemed to be a “hit”, seeing that they were attentive to such small details. Michelle and Letina joined up with me and we started washing her together.
“W-Wait a minute, all of you!?”
“Ahaha, prepare yourself, big sis Finia!”
“It is my first time to be the one doing the washing. Prepare~♪”
The two pulled Finia’s hands and started washing them. Rather, so you were always being washed by others, Letina? Though Finia was always washing me happily too, so I wasn’t the one to talk.
Meanwhile, I moved behind her and tied her hair up, then started washing her slender back. I couldn’t tie hair better than her, but I was still used to doing it. I knew there would be times when I had to do my hair when I went to the Academy, so I ended up learning it recently. Her youthful skin that bounced back my fingers had me a little shocked.
“How is it? Does it feel good?”
“Ahaha, it’s ticklish. Michelle, not there—”
“Eh, here?”
“That’s my chest!”
Michelle was washing her in quite an enviable way. She was trying to wash her arm from its base and even reached for her chest. Letina, on the other hand, started washing from her fingertips. Their washing methods showed Michelle’s rough and Letina’s attentive personalities.
“Mgh...”
I heard a groaning voice from behind which turned out to be Cortina’s who was looking reproachfully towards us. Speaking of which, we sort of abandoned her there. It wouldn’t be strange for her to feel alienated.
I suppose neglecting my landlord was pretty unskillful on my part. Rather, she wouldn’t mind if I let loose some of my secret intentions, right?
“Ah, then I’ll go wash Cortina. Can I leave Finia to you?”
“No fair! I wanted to wash Lady Cortina—”
“No way I’m letting you do that, Letina.”
There was no knowing what would happen if I let a Six Hero nerd like Letina wash her. Thus, I headed towards Cortina and started washing her back.
“Ahh, a bath full of little girls is truly a heavenly sight.”
“Cortina, that sounds gross no matter how you look.”
“My true feelings leaked out a little is all.”
“Oh, wow, I should start thinking whether I really want to associate with you.”
“Hey, it was just a joke!”
Cortina’s perverted joke made me pour a bucket of water on her head. My unannounced attack got a little yelp out of her.
“Ukyaa!”
“Taste the divine punishment.”
“I wish for more kindness.”
“I believe I’m quite kind, you know?”
I continued washing her body as we exchanged giggles. I’ve been occasionally entering the bath with Cortina so I wasn’t embarrassed about it at this point. Still, directly touching each other’s skin induced peculiar stimulation.
How should I put it, it heightened the urges to touch and decreased the private space. True to that statement, Michelle was directly clinging to Finia now and washed her with her entire body. The bubbles that prevented me from seeing their risky part might’ve been a blessing in disguise. If I did, even I might’ve gotten aroused.
It was a scene that I normally would never see. Perhaps they, too, have been overly excited about this.
After the general washing was done, we led Finia to the massage tables. While Cortina went for the right one after pointing us to the middle one.
Cortina had asked the inn’s professional for the massage, so I moved towards Finia instead. Massages actually held some risks in them, there was a chance you could injure their tendons or muscles.
Because of that, it was necessary for me to supervise the entire process. A child she may be, Michelle was still quite strong. It was plenty possible to hurt Finia with her strength.
“Okay then, I’ll give instructions, so do as I say.”
“Okaay!”
“Understood.”
Cortina lied next to us and entrusted her body to the professional masseur. She intended to monitor us anyway, so she left the curtains open. The said professional was also looking worriedly at us, but I knew the ropes of body care since my previous life.
Rather, my muscle strength lacked far more than an average person, so I was especially attentive to this kind of work.
In order to exhibit maximum effects with minimum strength, it was absolutely essential for me to have a body that could move instantly according to my thoughts. Because of that, it was essential for me to maintain my body on a daily basis.
For that reason, I was quite knowledgeable when it came to massaging.
“Just massage along the muscle lines, like this. Start slowly... Michelle, not there, a bit more right.”
Being her very first massage, Michelle nervously touched Finia’s back. The professional also looked quite impressed with my instructions.
It was at this moment that a hysteric scream reached our ears from behind. | {
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その夜は、レティーナの獲って来たストライクボアの肉を料理した物を、夕食に出した。
そこへマテウスがやってきた。作業を始めて間が無いので、茶などの用意はしていない。
「なんじゃ? 神妙な顔をして」
「いやぁ、爺さんにちょっと聞きたいことがあってね?」
「話せることと話せないことはあるぞ。なにせ今は機密を扱っておるからの」
「ああ、そっちじゃねぇよ?」
今マクスウェルが扱っている書類は、レメク公爵家の資産をどう処分するかという案件に関わるモノだった。
メトセラ領は森が深い。同時にそれは豊富な森林資源を有することを意味している。
金銭の流れが激しいこの領地で、管理者である領主が長く不在というのは、さすがに問題がある。
「メトセラ領に早く管理者を送らねばならんでな」
「俺の話はすぐ済むさ。なあ爺さん?」
「ニコル嬢ちゃん、ありゃ何者だ?」
ゆっくりとマテウスの方に振り向き、射すくめるような視線を向けた。その視線には、いつもとは違う殺意にも似た圧力が篭っていた。
「ニコルが、どうかしたのかの?」
「――ッ!」
ややゆったりとした、落ち着いた声音。だがマテウスは蛇に睨まれた蛙のように、身動きが取れなくなっていた。
ただ戦いを潜り抜けただけではない。貴族として謀略の波を潜り抜け、その上で生死を掛けた実戦も潜り抜けたからこそ、発せられる圧力だった。
「この屋敷には、糸使い出入りしている。ニコル嬢ちゃんと、レイドだ」
「ほう、それで?」
マテウスの声からいつものおどけたような口調は影を潜め、ひきつる喉を無理やり動かして問い詰める。
「先の事件に関してもそうだが、この二人が同時に関わる案件が多すぎねぇか?」
「......だから?」
「だから、俺はこう考えた。ニコル嬢ちゃんこそが、レイドじゃないかってな」
まるで崖から飛び降りる心地で、マテウスはそう断言した。その言葉を受けてマクスウェルはゆっくりと席を立つ。
大きく唾を飲み込み、腰の剣に手が伸びるが、それを掴むことをためらってしまう。
マクスウェルは老人で、しかも魔術師だ。剣士である自分が、この距離で敗北するとは思えない。
睨み合うことしばし。たっぷり数分も睨み合ってから、ようやくマクスウェルが口を開いた。
「その考え、誰かに話したことはあるかね?」
「いや、まだない。それが?」
「命拾いしたの。いや、いっそここで口を封じるのもありかのぅ?」
「勘弁してくれ! 本当に誰も話してないし、話す気もねぇ!」
「そうかの? ならばよい......そうじゃな、お主には話しておいた方がいいかもしれんな」
ニコルの正体に関しては、現状マクスウェルとガドルス、あとはフィニアとデンと二柱の神々しか知らない。
雄のガドルスは信頼できるし、ニコルを主と崇めるデンも、問題はない。
ならばここで、後ろ暗い面を持ち、マクスウェルに従属しているマテウスを巻き込むことも悪くない、と判断していた。
「お主には裏で色々と動いてもらっておるからの。そうじゃな、その質問の答えは肯定しておこう」
「やっぱりか。タダモンじゃねぇと思ってたよ。初めてあった時ですら、俺を出し抜いたんだからな?」
「元々、あまり身体の丈夫な方ではなかった男じゃったからな。非力を補うための手札の多さは、前世から引き継いでおる」
「創意工夫はお手の物ってか。勝てねぇはずだよ?」
「もちろん言わずともわかろうが、この件については他言無用。特にコルティナ、ライエル、マリアには断じて許さん」
「なんでだ? むしろ言うべきじゃねぇのか?」
それから軽く肩を竦めてから、再び席に着いた。
「ライエルとマリアからすれば、十年越えてようやく得た子宝じゃ。それが実はかつての仲間だと知ったら、微妙な気分になるじゃろ」
「そりゃ......なぁ?」
「コルティナに至っては、親友の娘がかつて惚れた男になっとるんじゃぞ? しかも、息子ならともかく、娘じゃし」
「気まずいったらありゃしねぇな。なるほど、喋るに喋れねぇってわけか?」
「無論このままとはいかん。レイドは喋る気はないようじゃが、いつかは知ってもらわねば、少なくともコルティナが不憫じゃ」
マテウスに背を向け、書類仕事を再開しながら、説明を続ける。
「ライエルとマリア......様にゃ、死ぬまで喋らねぇと?」
「こちらは、さすがにのぅ。それに今はその下準備という所じゃよ」
「下準備?」
「少しずつレイドの存在を臭わせ、お主のようにわずかずつ『そうではないか?』という疑念を持たせることで耐性を持たせておる段階じゃ」
「ワシはエルフじゃからな。問題はかつての仲間だけではなく、レティーナ嬢やミシェル嬢の話にも広がりつつあることじゃ」
「交友関係、広がってるよな?」
「うむ。あ美人め、容赦なく友や信奉者を増やしよる。悪い事とは言わんが、尻を拭うワシの気にもなれというものじゃ」
「爺さん、ひょっとして俺に愚痴を漏らすために、真実を教えたとか?」
マテウスの言葉にマクスウェルは肩越しに振り返った。
「苦労人の仲間は多い方が良いのでな。お主も覚悟してくれ」
「おいおい......」
マクスウェルのぶっちゃけた言葉に、マテウスは大きく肩を落としたのだった。 | That evening, the dinner was served with the Strike Boar meat that Letina hunted. Maxwell ate it with relish, and after he sent her home, he started working on the documents of the aftermath.
But then, Mateus showed up. He only just started working on it, so he hadn’t ordered tea or anything. In other words, he came here because he had something to talk about.
“What is it? You have quite a serious expression.”
“Well, I had something to ask you, can I, old man?”
“There are things I can and cannot answer. I am working in secrecy now, after all.”
“Oh, I don’t mean that stuff, okay?”
The documents Maxwell was dealing with now were related to how to deal with the Lamech household’s assets. It was an urgent matter for the territory.
The Methuselah domain had dense forests. That meant it offered abundant forest products. And despite their dense forests, the highways were well maintained, had big human traffic, and had strong cash flow.
And the domains with strong cash flows would cause problems if the lord was absent for too long.
“We have to send a manager to the Methuselah domain quickly.”
“My business won’t take time. Hey, old man?”
“Yes?”
“About Nicole, just who is she?”
Mateus’ straight question made Maxwell’s hand stop. He slowly turned towards Mateus, and gazed at him as if glaring him down. His gaze contained an unusual pressure that was closer to bloodlust.
“What is it about Nicole?”
“—!”
He asked in a somewhat slow, collected voice. But Mateus was petrified just like a frog stared down by a snake. Mateus was still a warrior who had gone through many difficulties. He wasn’t so weak mentally to be seized by fear from a little coercion.
But Maxwell’s pressure was on another level. It was a pressure emitted by someone who had not only gone through battles, but also gone through waves of schemes as a noble, and even overcame matters of life and death.
“There are only two thread users visiting this mansion. Nicole and Reid.”
Mateus’ usual joking tone disappeared, and he forced his stiff throat to move and posed a question. Maxwell also removed his usual amiable expression and glared at Mateus with a sharp, hawk-like glare.
“It was the same before too, but aren’t there too many events where these two are simultaneously involved in?”
“...And so?”
“So I had this thought: Maybe Nicole is actually Reid?”
Mateus declared it, feeling as if he was jumping off a cliff. Hearing his words, Maxwell slowly stood up from his chair. It was very slow, as if a ghost was seeping out of the ground. Mateus felt his life was in danger.
He gulped his saliva, and reached out to the sword on his waist, but he hesitated to grab it. If he grabbed the hilt, he would certainly die. He was convinced of that fact.
Maxwell was old, and also a magician. Being a swordsman, he couldn’t imagine losing at this distance. But even so, he couldn’t believe his own assessment.
They glared at each other for several minutes, and eventually, Maxwell opened his mouth.
“Have you told that to anyone else?”
“No, not yet. What of it?”
“That barely saved your life. Or maybe I should silence you here and now?”
“Please don’t! I’ve really not told it to anyone, and I don’t plan to either!”
“Really? Alright then... I suppose it would be best to explain the situation to you.”
After pondering for some time, Maxwell came to a conclusion. At present, only Maxwell, Gadius, Finia, Den, and also two gods were aware of Nicole’s identity.
Gadius, being a member of the Six Heros, was to be trusted, and Den also respected Nicole as his master, so he was not a problem either. As for the gods, it was hard to figure out what they were thinking.
Putting it differently, only those people were told about it. But for Nicole’s future activities, she would need more allies. Thus, Maxwell decided that it wouldn’t be so bad to get Mateus, who had a shady background and worked under him, involved too.
“I am making you do behind-the-scenes work already anyway. Alright, the answer to your question is, yes.”
“So it was like that, after all. I knew she wasn’t a normal fellow. She outwitted me when we first met too.”
“Reid was never someone with a robust body. To make up for his lack of power, he had many trump cards piled up since the previous life.”
“So ingenuity is his forte, huh. No wonder I couldn’t win, eh?”
“It goes without saying, but not a word to anyone about this. Especially to Cortina, Lyell, or Maria.”
“Why not? Shouldn’t you be telling them instead?”
Maxwell looked away at his argument. Then he shrugged lightly and sat down again.
“From Lyell and Maria’s perspectives, she’s their treasured child they earned after ten years. They would feel very conflicted if they suddenly found out she was their former comrade.”
“Well... I suppose?”
“As for Cortina, her friends’ daughter will turn out to be the man she fell for, you know? Not a son, but a daughter.”
“That would be extremely awkward indeed. I see, you want to say but can’t huh?”
“It cannot go on like this, of course. Reid does not seem to be willing to talk, but if we keep it from them forever then, at least Cortina, would be pitiful.”
He turned his back on Mateus, and explained while resuming his paperwork. What he was talking about and what he was doing were completely different things, but that didn’t slow him down at all. He was just that used to doing paperwork.
“As for Lyell...Lord Lyell and Lady Maria... Do you plan to keep it from them until they die?”
“That would be too much. I am laying some groundwork in regards to that.”
“Groundwork?”
“I plan to make them develop some resistance towards the truth by giving them faint clues that would make them ponder the possibility.”
“Well, I am an elf, after all. The problem is not just his old comrades but the situation is even spreading to Letina and Michelle and others too.”
“His circle of friends is growing, huh?”
“Yes. He and his “everybody’s a friend” act. He keeps increasing friends and believers to no end. I will not say anything bad, but I wish he would also consider my position, who has to clean-up after him.”
“Old man, did you reveal the truth so you could complain to me?”
Maxwell glanced back at Mateus over his shoulder. There was no hint of his intimidating air anymore, instead, he was smiling in his usual impish way.
“It is better to have more hard-working allies. You should resolve yourself.”
“Come on...”
Mateus could only shrug heavily at Maxwell’s frank answer. | {
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なぜなら 皆さんは こんな疑問をもつでしょうから 「本当の自分」をどうやって見つけるのか どうやれば「本当の自分」を 知ることができるのか?
その他いろいろ
しかし「本当の自分」が 存在するはずだという考えは 自明のことです
世界中で本物と感じられるものが あるとすれば それは自分です
しかし 私にはよく分かりません
少なくともその意味をもう少し 理解する必要があります
確かに我々をとりまく文化には 各自がある種の核 つまり本質的要素を 持つという考えを
ある意味 より強固にするものが 多くあります 「自分らしさを定義するための 何かが存在し
それは永続的で変化しない」と するものです なかでも最も素朴なものは
星占いの類です 人々はこういったものに実に強く傾倒し
Facebookのプロフィール欄に 意味ありげに載せたりします Facebookのプロフィール欄に 意味ありげに載せたりします 中国式占星術に詳しい人だって いるかもしれません
これをもっと科学的にした バージョンもあります 性格タイプを描き出す あらゆる類のもののことです 例えば MBTI (性格検査) とかですね
やってみたことがあるでしょうか
多くの企業が雇用の時にこれを用います
皆さんが多くの質問項目に答えると これはあなたの中核的な人格を あらわにするとされています
そしてもちろん世間の人々には 非常に魅力的に映ります
このような雑誌には 左下の隅に 性格云々という広告が 毎号のように掲載されています
こういった雑誌を手に取った時 抗うのは難しくないですか?
テストに回答して自分の学習スタイルや 恋愛パターン 働き方のスタイルを 探ることをです
あなたはこういうタイプの人ですか?
自分自身の核あるいは本質的要素が存在し それは発見できるのだという常識を 我々は持っているように思います
さらにこれは自分自身に関する 永遠の真実であり 生涯を通じて同一であるものだとも 考えているようです
実は それこそが私が挑戦したい考えなのです
今言っておくと― 後にも少し触れますが これに挑むからといって 私は別に変人ではありません この挑戦は実のところ 極めて由緒のあるものです
常識的な考えではこうです
あなたがいます
あなたは個人としてのあなたであり こんな核を持っています
そしてもちろん人生で起きる 様々な経験などを蓄積していきます
これがあなたの記憶になります これらの記憶はあなたらしさを生む 手助けをします
あなたには願望があります それはクッキーかもしれないし 午前11時の学校で話すのが はばかられるようなことかもしれません 午前11時の学校で話すのが はばかられるようなことかもしれません
あなたには信念もあるでしょう
これはある人の ナンバープレートです
この「メシア1」という ナンバープレートが 運転手がメシアを信仰していることを 指すのか 自分がメシアだという意味なのかは 分かりませんが
どちらにしろ 彼らはメシアに関する 信念を持っている訳です
我々は知識を持っています
同様に 感覚や経験も持っています
単に理知的なものだけでは ありません
今紹介したのは その人らしさを考える際の 常識的なモデルだと思います
つまり人生経験を全て抱えた 1人の人がいるという考えです
しかし今日私が皆さんに 提起したいのは このモデルには根本的に 誤りがあるということです
何が誤りなのか 1クリックで お見せしましょう
この全経験の中心に 「あなた」は 実際にはいないのです
奇妙な考えでしょうか? いいえ
ではそこに 何があると言うのでしょう?
記憶や願望 意図 感覚 その他諸々は 明らかに存在します
しかし実際には これらのものは存在し 何らかの形で全てが統合され 重なり合ったり 様々な形で結びついたりしています
結びつきは一部だけの場合も 大部分の場合もあるでしょう なぜならそれらは全て 1つの身体 1つの脳に属しているからです
しかし我々は自分について物語を形づくります それは我々が過去の事柄を思い出す時に 行うことです
我々がある事をするのは 別の事に影響されたからです
我々の願望は信念の結果でもあり 我々が想起することは 知識を反映してもいます
そうであるからこそ 信念、願望、感覚、経験といったもの全ては 関連しあって存在しており その在り方が「あなた」に他なりません
それは常識的理解と 大差ない場合もあれば
大幅に違う場合もあります
それは人生の全経験をもつ存在として 自分を捉えることから それは人生の全経験をもつ存在として 自分を捉えることから 単に人生の全経験を寄せ集めた存在であると 捉えることへのシフトです 単に人生の全経験を寄せ集めた存在であると 捉えることへのシフトです
あなたはあなたを構成する部品を 合体させたものなのです
もちろんこの部品とは 身体の部位も指します たとえば脳 胴体 脚などですが 実は それらはあまり 重要な部品ではありません
もしあなたが心臓移植を受けても あなたは依然として同一人物です
もし移植されるのが記憶だとしたら?
信念の移植を受けても 同一人物といえるでしょうか?
この 「自分はどんな人間か」 つまり自己理解のあり方に関して 自分は経験を抱えた永続的な存在であると 考えるのではなく 経験の寄せ集めであると考えるのは ある種 奇妙に聞こえるかもしれません
しかし私はそう思いません
ある意味 これは常識的なことです
私は皆さんに 最も根源的な力についてではなく 世界の物一般の在り方と比較して 考えてもらいたいだけです
たとえば水について考えてみましょう
私は理科があまり得意ではありませんけどね
我々の言い方では 水は水素を2つと 酸素を1つ持っていますね?
我々はそれをよく知っています
ここにおられる皆さんは 「水」と呼ばれるものがまず存在し それに水素や酸素が 付属している とは定義しませんね それに水素や酸素が 付属している とは定義しませんね
もちろんです
水は 水素分子と酸素分子が 適切に配置された物にすぎず 水は 水素分子と酸素分子が 適切に配置された物にすぎず
それ以上の何物でもないことを 我々は当たり前のように知っています 世の中の一切のものはこれと同じです
例えばこの時計も全く 謎めいたものではありません
私たちの言い方では 時計は盤面と針 それから 機械部分と電池で構成されています しかし私たちは 「時計」と言われるものがまずあり それに先ほどの部品を くっつけたのだとは考えません
我々は時計は部品が入手され それを寄せ集めて作られると とても明快に理解しています
さて もし全ての物が こんなふうにできているとすれば 自分はそれと違うと なぜ言えるのでしょう?
なぜ自分を 部品の寄せ集めにすぎないと見ずに それらの部品をもった 独立した永久的な実体と見なすのでしょう?
この見方は実のところ 特に新しいものではありません
これには長い経緯があるのです
それは仏教や ロックやヒュームなど 17、18世紀に始まり現在に続く哲学にも 見られます
しかし面白いことに この見方は神経科学からの 支持を増しつつあるのです
こちらはポール・ブロックス 臨床神経心理士です 彼はこう言います 「私たちには 核 つまり 本質的要素が実在するという 深い本能があり それを振り払うのは難しい 恐らく不可能だ
しかし脳には全ての事が 集まってくる中心がないことを 神経科学が示しているのは真実である」と
ですから皆さんが脳を見て どうやって自分という感覚が 生み出されているか知れば 統制を司る中心点が 脳にはないことが分かるでしょう
そこで全ての事が生じる中枢のようなものは 存在しないのです
脳の中では実に多種多様なプロセスが 進行しており 各プロセスは 言わばはっきりと独立して 実行されています
しかし我々が自分という感覚を得るのは まさに各プロセスの そのような関係のあり方によるのです
このことを私の著書では 「エゴ・トリック」という言葉で表しています
これは機械的なカラクリのようなものです
それは私たちが存在しないという 意味ではありません そのトリックによってこそ私たちは 実際よりも統合的な何かが 自分の中に存在すると感じるのです
今皆さんはこの考え方に対して 心配を抱いたかもしれません
もしその考えが正しいとすれば つまり 自己の核 または 永続的な本質的要素を 誰も持っていないとすれば それは自分という存在が 幻想であることを意味するのでしょうか?
それは自分が存在しないという 意味なのでしょうか?
確かに「本当のあなた」はいません
実際に多くの人が この幻想や それに類するものについて語っています
この3人は心理学者のトーマス・メッツィンガー ブルース・フード スーザン・ブラックモアです 彼らをはじめ多くの人たちが 幻想という言葉で語っています 「自分とは幻想であり フィクションである」 と
しかしこれが有益な見方であるとは 私はそれほど思いません
時計の話に戻ります
この時計は部品の寄せ集め以上の 何物でもありませんが だからといって幻想ではありません
同じように 我々もまた幻想ではありません
自分がいろいろな意味で 単に非常に複雑で整然とした 物事の寄せ集めであるからといって 自分が現実に存在しないと いうことにはなりません
これに関してちょっとした例え話を しましょうね
滝を考えてみましょう
これはアルゼンチンにある イグナスの滝です
今こういうものを取り上げてみると 良く分かると思いますが いろいろな意味で ここには永続的な物は何もありません
第一に これは常に変化し続けています
水は常に新しい流路を 切り開いていきます
それらの変化や 潮の満ち引き、天候によって ある物は干上がってしまったり あるいは新しい物が作られたりします
もちろん滝を流れ落ちる水は 瞬間ごとに異なります
しかしだからといって このイグアスの滝が幻想で
現実でないという意味にはなりません
このことが意味するのは それが歴史をもつ 1つのまとまりとして捉えるべきである一方 それがプロセスまたは流動的であり 永遠に変化し続けていることを
我々が理解しなければ ならないということです そしてこれが自分を理解するための 1つのモデルだと私は考えます これは解放的なモデルだと思います
なぜならもし皆さんが この固定的 ・永続的で 生涯にわたり常に同一の本質を 何であれ持っていると考えるならば ある意味皆さんは囚われの身です
あなたはある本質的要素をもって生まれ あなたという人間は死ぬまでそのままです もし死後の世界を信じているなら それはまだ続くでしょう
しかしもし皆さんが 自分という存在を そのようなものではなく ある種のプロセス つまり 変化し続けるものだと考えるなら それは非常に解放的なことでしょう
なぜなら滝の場合と違って我々には 自分の目指す方向を ある程度は自分で決める力が あるからです
ここで慎重にならないといけません でしょう?
もしあなたが自分の知られざる可能性を 過剰に重視してしまうと 思いどおりの自分になれると 信じ込んでしまいます
それは真実ではありません
私は今朝素晴らしいミュージシャンの 演奏を聴きましたが 自分があんな風に上手にできるとは 決して思いません
一生懸命練習すれば 上手にはなるかもしれませんが 私にはあんな生まれつきの 才能はありません
人が成し遂げられることには 限界があります
どんな自分になれるかについても 限界はあります
それにも関わらず 我々には 自分で自分を形づくる一種の力があります
「本当の自分」とは かつて言われていたような 発見されるような性質のものでは ありません 心の中をのぞいても本当の自分は 見つかりません 少なくとも部分的には 本当の自分を 実際には自ら作り出しているのです
これは極めて有意義なことだと思います 特に皆さんのライフステージではそうです
皆さんは 自分の多くの部分が ここ数年でいかに変化したか 分かるでしょう
もし皆さんが自分の映った 3、4年前の動画を見たら 気恥ずかしいでしょうね だって自分の姿だと分からないから
そこで私はこれを皆さんに伝えたいのです 我々に必要なのは 自分という存在を 自ら形作り 方向づけ 変えられるものとして 捉えることです
再びこれは仏陀の言葉です 「井戸職人は見事に水を導き 矢師は見事に矢の曲がりを直し 大工は丸太を見事にまっすぐにし 賢人は見事に自分自身を形作る」
皆さんに覚えておいてほしいのは 「本当の自分」とは 追い求めても永遠に見つからないような 謎めいたものではないということです
「本当の自分」が存在すると言う場合 それはあなたの発見による部分も あるでしょうが あなた自身が作り出すものでもあるのです
これは解放的でわくわくする見方だと 私は考えます
ありがとうございました | Because, you might ask, how do we find the real you, how do you know what the real you is?
And so forth.
But the idea that there must be a real you, surely that's obvious.
If there's anything real in the world, it's you.
Well, I'm not quite sure.
At least we have to understand a bit better what that means.
Now certainly, I think there are lots of things in our culture around us that for each one of us, we have a kind of a core, an essence.
There is something about what it means to be you which defines you, and it's kind of permanent and unchanging.
The most kind of crude way in which we have it, are things like horoscopes.
You know, people are very wedded to these, actually.
People put them on their Facebook profile as though they are meaningul, you even know your Chinese horoscope as well.
There are also more scientific versions of this, all sorts of ways of profiling personality type, such as the Myers-Briggs tests, for example.
I don't know if you've done those.
A lot of companies use these for recruitment.
You answer a lot of questions, and this is supposed to reveal something about your core personality.
And of course, the popular fascination with this is enormous.
In magazines like this, you'll see, in the bottom left corner, they'll advertise in virtually every issue some kind of personality thing.
And if you pick up one of those magazines, it's hard to resist, isn't it?
Doing the test to find what is your learning style, what is your loving style, or what is your working style?
Are you this kind of person or that?
So I think that we have a common-sense idea that there is a kind of core or essence of ourselves to be discovered.
And that this is kind of a permanent truth about ourselves, something that's the same throughout life.
Well, that's the idea I want to challenge.
And I have to say now, I'll say it a bit later, but I'm not challenging this just because I'm weird, the challenge actually has a very, very long and distinguished history.
Here's the common-sense idea.
There is you.
You are the individuals you are, and you have this kind of core.
Now in your life, what happens is that you, of course, accumulate different experiences and so forth.
So you have memories, and these memories help to create what you are.
You have desires, maybe for a cookie, maybe for something that we don't want to talk about at 11 o'clock in the morning in a school.
You will have beliefs.
This is a number plate from someone in America.
I don't know whether this number plate, which says "messiah 1," indicates that the driver believes in the messiah, or that they are the messiah.
Either way, they have beliefs about messiahs.
We have knowledge.
We have sensations and experiences as well.
It's not just intellectual things.
So this is kind of the common-sense model, I think, of what a person is.
There is a person who has all the things that make up our life experiences.
But the suggestion I want to put to you today is that there's something fundamentally wrong with this model.
And I can show you what's wrong with one click.
Which is there isn't actually a "you" at the heart of all these experiences.
Strange thought? Well, maybe not.
What is there, then?
Well, clearly there are memories, desires, intentions, sensations, and so forth.
But what happens is these things exist, and they're kind of all integrated, they're overlapped, they're connected in various different ways.
They're connecting partly, and perhaps even mainly, because they all belong to one body and one brain.
But there's also a narrative, a story we tell about ourselves, the experiences we have when we remember past things.
We do things because of other things.
So what we desire is partly a result of what we believe, and what we remember is also informing us what we know.
And so really, there are all these things, like beliefs, desires, sensations, experiences, they're all related to each other, and that just is you.
In some ways, it's a small difference from the common-sense understanding.
In some ways, it's a massive one.
It's the shift between thinking of yourself as a thing which has all the experiences of life, and thinking of yourself as simply that collection of all experiences in life.
You are the sum of your parts.
Now those parts are also physical parts, of course, brains, bodies and legs and things, but they aren't so important, actually.
If you have a heart transplant, you're still the same person.
If you have a memory transplant, are you the same person?
If you have a belief transplant, would you be the same person?
Now this idea, that what we are, the way to understand ourselves, is as not of some permanent being, which has experiences, but is kind of a collection of experiences, might strike you as kind of weird.
But actually, I don't think it should be weird.
In a way, it's common sense.
Because I just invite you to think about, by comparison, think about pretty much anything else in the universe, maybe apart from the very most fundamental forces or powers.
Let's take something like water.
Now my science isn't very good.
We might say something like water has two parts hydrogen and one parts oxygen, right?
We all know that.
I hope no one in this room thinks that what that means is there is a thing called water, and attached to it are hydrogen and oxygen atoms, and that's what water is.
Of course we don't.
We understand, very easily, very straightforwardly, that water is nothing more than the hydrogen and oxygen molecules suitably arranged.
Everything else in the universe is the same.
There's no mystery about my watch, for example.
We say the watch has a face, and hands, and a mechanism and a battery, But what we really mean is, we don't think there is a thing called the watch to which we then attach all these bits.
We understand very clearly that you get the parts of the watch, you put them together, and you create a watch.
Now if everything else in the universe is like this, why are we different?
Why think of ourselves as somehow not just being a collection of all our parts, but somehow being a separate, permanent entity which has those parts?
Now this view is not particularly new, actually.
It has quite a long lineage.
You find it in Buddhism, you find it in 17th, 18th-century philosophy going through to the current day, people like Locke and Hume.
But interestingly, it's also a view increasingly being heard reinforced by neuroscience.
This is Paul Broks, he's a clinical neuropsychologist, and he says this: "We have a deep intuition that there is a core, an essence there, and it's hard to shake off, probably impossible to shake off, I suspect.
But it's true that neuroscience shows that there is no centre in the brain where things do all come together."
So when you look at the brain, and you look at how the brain makes possible a sense of self, you find that there isn't a central control spot in the brain.
There is no kind of center where everything happens.
There are lots of different processes in the brain, all of which operate, in a way, quite independently.
But it's because of the way that they relate that we get this sense of self.
The term I use in the book, I call it the ego trick.
It's like a mechanical trick.
It's not that we don't exist, it's just that the trick is to make us feel that inside of us is something more unified than is really there.
Now you might think this is a worrying idea.
You might think that if it's true, that for each one of us there is no abiding core of self, no permanent essence, does that mean that really, the self is an illusion?
Does it mean that we really don't exist?
There is no real you.
Well, a lot of people actually do use this talk of illusion and so forth.
These are three psychologists, Thomas Metzinger, Bruce Hood, Susan Blackmore, a lot of these people do talk the language of illusion, the self is an illusion, it's a fiction.
But I don't think this is a very helpful way of looking at it.
Go back to the watch.
The watch isn't an illusion, because there is nothing to the watch other than a collection of its parts.
In the same way, we're not illusions either.
The fact that we are, in some ways, just this very, very complex collection, ordered collection of things, does not mean we're not real.
I can give you a very sort of rough metaphor for this.
Let's take something like a waterfall.
These are the Iguazu Falls, in Argentina.
Now if you take something like this, you can appreciate the fact that in lots of ways, there's nothing permanent about this.
For one thing, it's always changing.
The waters are always carving new channels.
with changes and tides and the weather, some things dry up, new things are created.
Of course the water that flows through the waterfall is different every single instance.
But it doesn't mean that the Iguazu Falls are an illusion.
It doesn't mean it's not real.
What it means is we have to understand what it is as something which has a history, has certain things that keep it together, but it's a process, it's fluid, it's forever changing.
Now that, I think, is a model for understanding ourselves, and I think it's a liberating model.
Because if you think that you have this fixed, permanent essence, which is always the same, throughout your life, no matter what, in a sense you're kind of trapped.
You're born with an essence, that's what you are until you die, if you believe in an afterlife, maybe you continue.
But if you think of yourself as being, in a way, not a thing as such, but a kind of a process, something that is changing, then I think that's quite liberating.
Because unlike the the waterfalls, we actually have the capacity to channel the direction of our development for ourselves to a certain degree.
Now we've got to be careful here, right?
If you watch the X-Factor too much, you might buy into this idea that we can all be whatever we want to be.
That's not true.
I've heard some fantastic musicians this morning, and I am very confident that I could in no way be as good as them.
I could practice hard and maybe be good, but I don't have that really natural ability.
There are limits to what we can achieve.
There are limits to what we can make of ourselves.
But nevertheless, we do have this capacity to, in a sense, shape ourselves.
The true self, as it were then, is not something that is just there for you to discover, you don't sort of look into your soul and find your true self, What you are partly doing, at least, is actually creating your true self.
And this, I think, is very, very significant, particularly at this stage of life you're at.
You'll be aware of the fact how much of you changed over recent years.
If you have any videos of yourself, three or four years ago, you probably feel embarrassed because you don't recognize yourself.
So I want to get that message over, that what we need to do is think about ourselves as things that we can shape, and channel and change.
This is the Buddha, again: "Well-makers lead the water, fletchers bend the arrow, carpenters bend a log of wood, wise people fashion themselves."
And that's the idea I want to leave you with, that your true self is not something that you will have to go searching for, as a mystery, and maybe never ever find.
To the extent you have a true self, it's something that you in part discover, but in part create.
and that, I think, is a liberating and exciting prospect.
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すなわち再評価への重圧は、中国経済の実際の必要性ではなく、米国の巨額の収支不均衡、特に GDP の 5% を上回る長期的な貿易赤字から派生したものである。ただしドルの優位は、米国が他の国々よりも、より幅の大きな貿易収支を維持できることを意味する。 | Pressure for revaluation stems, therefore, not from the real needs of China economy, but from large imbalances in the United States, particularly its long-standing trade deficit, which exceeds 5% of GDP. However, dollar supremacy means that the US can sustain a much wider balance-of-payments deficit than other countries. | {
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現在、ハジメ達は【オルクス大迷宮】の正面入口がある広場に集まっていた。
ハジメとしては薄暗い陰気な入口を想像していたのだが、まるで博物館の入場ゲートのようなしっかりした入口があり、受付窓口まであった。制服を着たお姉さんが笑顔で迷宮への出入りをチェックしている。
浅い階層の迷宮は良い稼ぎ場所として人気があるようで人も自然と集まる。馬鹿騒ぎした者が勢いで迷宮に挑み命を散らしたり、裏路地宜しく迷宮を犯罪の拠点とする人間も多くいたようで、戦争を控えながら国内に問題を抱えたくないと冒険者ギルドと協力して王国が設立したのだとか。入場ゲート脇の窓口でも素材の売買はしてくれるので、迷宮に潜る者は重宝しているらしい。
ハジメ達は、お上りさん丸出しでキョロキョロしながらメルド団長の後をカルガモのヒナのように付いていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
縦ートル以上ある通路は明かりもないのに薄ぼんやり発光しており、松明や明かりの魔法具がなくてもある程度視認が可能だ。緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっているらしく、【オルクス大迷宮】は、この巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ているらしい。
は隊列を組みながらゾロゾロと進む。しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高ートル位ありそうだ。
「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」
灰色の体毛に赤黒い目が不気味に光る。ラットマンという名称に相応しく外見はねずみっぽいが.....歩行で上半身がムキムキだった。八つに割れた腹筋と膨れあがった胸筋の部分だけ毛がない。まるで見せびらかすように。
間合いに入ったラットマンを光輝、雫、龍太郎で迎撃する。その間に、香織と特に親しい女子二人、メガネっ娘の中村恵里とロリ元気っ子の谷口鈴が詠唱を開始。魔法を発動する準備に入る。訓練通りの堅実なフォーメーションだ。
彼の持つその剣はハイリヒ王国が管理するアーティファクトの一つで、お約束に漏れず名称は〝聖剣〟である。光属性の性質が付与されており、光源に入る敵を弱体化させると同時に自身の身体能力を自動で強化してくれるという“聖なる”というには実に嫌らしい性能を誇っている。
龍太郎は、空手部らしく天職が〝拳士〟であることから籠手と脛当てを付けている。これもアーティファクトで衝撃波を出すことができ、また決して壊れないのだという。龍太郎はどっしりと構え、見事な拳撃と脚撃で敵を後ろに通さない。無手でありながら、その姿は盾役の重戦士のようだ。
雫は、サムライガールらしく〝剣士〟の天職持ちで刀とシャムシールの中間のような剣を抜刀術の要領で抜き放ち、一瞬で敵を切り裂いていく。その動きは洗練されていて、騎士団員をして感嘆させるほどである。
ハジメ達が光輝達の戦いぶりに見蕩れていると、詠唱が響き渡った。
「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ――〝螺炎〟」」」
三人同時に発動した螺旋状に渦巻く炎がラットマン達を吸い上げるように巻き込み燃やし尽くしていく。「キィイイッ」という断末魔の悲鳴を上げながらパラパラと降り注ぐ灰へと変わり果て絶命する。
気がつけば、広間のラットマンは全滅していた。他の生徒の出番はなしである。どうやら、光輝達召喚組の戦力では一階層の敵は弱すぎるらしい。
「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」
生徒の優秀さに苦笑いしながら気を抜かないよう注意するメルド団長。しかし、初めての迷宮の魔物討伐にテンションが上がるのは止められない。頬が緩む生徒達に「しょうがねぇな」とメルド団長は肩を竦めた。
「それとな......今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」
メルド団長の言葉に香織達魔法支援組は、やりすぎを自覚して思わず頬を赤らめるのだった。
現在の迷宮最高到達階層五階層らしいのだが、それは百年以上前の冒険者がなした偉業であり、今では超一流階層越え、二十階層を越えれば十分に一流扱いだという。
この点、トラップ対策として〝フェアスコープ〟というものがある。これは魔力の流れを感知してトラップを発見することができるという優れものだ。迷宮のトラップはほとんどが魔法を用いたものであるから八割以上はフェアスコープで発見できる。ただし、索敵範囲がかなり狭いのでスムーズに進もうと思えば使用者の経験による索敵範囲の選別が必要だ。
従って、ハジメ達が素早く階層を下げられたのは、ひとえに騎士団員達の誘導があったからだと言える。メルド団長からも、トラップの確認をしていない場所へは絶対に勝手に行ってはいけないと強く言われているのだ。
「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」
ここまで、ハジメは特に何もしていない。一応、騎士団員が相手をして弱った魔物を相手に訓練したり、地面を錬成して落とし穴にはめて串刺しにしたりして、一匹だけ犬のような魔物を倒したが、それだけだ。
(ただ、これじゃあ完全に寄生型プレイヤーだよね、はぁ~)
再び、騎士団員が弱った魔物をハジメの方へ弾き飛ばしてきたので、溜息を吐きながら接近し、手を突いて地面を錬成。万一にも動けないようにして、魔物の腹部めがけて剣を突き出し串刺しにした。
(まぁ、なんか錬成の精度が徐々に上がっているし......地道に頑張ろう......)
魔力回復薬を口に含みながら、額の汗を拭うハジメ。騎士団員達が感心したようにハジメを見ていることには気がついていない。
実を言うと、騎士団員達もハジメには全く期待していなかった。ただ、戦闘に余裕があるので所在無げに立ち尽くすハジメを構ってやるかと魔物をけしかけてみたのだ。もちろん、弱らせて。
騎士団員達としては、ハジメが碌に使えもしない剣で戦うと思っていた。ところが実際は、錬成を利用して確実に動きを封じてから、止めを刺すという騎士団員達も見たことがない戦法で確実に倒していくのだ。錬成師は鍛冶職とイコールに考えられている。故に、錬成師が実戦で錬成を利用することなどあり得なかった。
ハジメとしては、何もない自分の唯一の武器は錬成しかないと考えていたので、鉱物を操れるなら地面も操れるだろうと鍛錬した結果なのだが、周りが派手に強いので一匹相手にするので精一杯の自分はやはり無能だと思い込んでいた。
昨夜の〝守る〟という宣言通りに見守られているようでなんとなく気恥ずかしくなり目を逸らすハジメ。若干、香織が拗ねたような表情になる。それを横目で見ていた雫が苦笑いし、小声で話しかけた。
「香織、なに南雲君と見つめ合っているのよ? 迷宮の中でラブコメなんて随分と余裕じゃない?」
からかうような口調に思わず顔を赤らめる香織。怒ったように雫に反論する。
「もう、雫ちゃん! 変なこと言わないで! 私はただ、南雲くん大丈夫かなって、それだけだよ!」
「それがラブコメしてるって事でしょ?」と、雫は思ったが、これ以上言うと本格的に拗ねそうなので口を閉じる。だが、目が笑っていることは隠せず、それを見た香織が「もうっ」と呟いてやはり拗ねてしまった。
そんな様子を横目に見ていたハジメは、ふと視線を感じて思わず背筋を伸ばす。ねばつくような、負の感情がたっぷりと乗った不快な視線だ。今までも教室などで感じていた類の視線だが、それとは比べ物にならないくらい深く重い。
その視線は今が初めてというわけではなかった。今日の朝から度々感じていたものだ。視線の主を探そうと視線を巡らせると途端に霧散する。朝から何度もそれを繰り返しており、ハジメはいい加減うんざりしていた。
(なんなのかな......僕、何かしたかな? ......むしろ無能なりに頑張っている方だと思うんだけど......もしかしてそれが原因かな? 調子乗ってんじゃねぇぞ! 的な? ......はぁ~)
深々と溜息を吐くハジメ。香織の言っていた嫌な予感というものを、ハジメもまた感じ始めていた。
迷宮の各階層は数キロ四方に及び、未知の階層では全てを探索しマッピングするのに数十人規模で半月から一ヶ月はかかるというのが普通だ。
二十階層の一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと二十一階層への階段があるらしい。
すると、先頭を行く光輝達やメルド団長が立ち止まった。訝しそうなクラスメイトを尻目に戦闘態勢に入る。どうやら魔物のようだ。
「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」
その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやらカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物のようだ。
「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」
メルド団長の声が響く。光輝達が相手をするようだ。飛びかかってきたロックマウントの豪腕を龍太郎が拳で弾き返す。光輝と雫が取り囲もうとするが、鍾乳洞的な地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。
龍太郎の人壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。
「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」
部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。
体をビリビリと衝撃が走り、ダメージ自体はないものの硬直してしまう。ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。
ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ香織達後衛組に向かって投げつけた。見事な砲丸投げのフォームで! 咄嗟に動けない前衛組の頭上を越えて、岩が香織達へと迫る。
「こらこら、戦闘中に何やってる!」
香織達は、「す、すいません!」と謝るものの相当気持ち悪かったらしく、まだ、顔が青褪めていた。
そんな様子を見てキレる若者が一人。正義感と思い込みの塊、我らが勇者天之河光輝である。
「貴様......よくも香織達を......許さない!」
どうやら気持ち悪さで青褪めているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いしたらしい。彼女達を怯えさせるなんて! と、なんとも微妙な点で怒りをあらわにする光輝。それに呼応してか彼の聖剣が輝き出す。
「万翔羽ばたき、天へと至れ――〝天翔閃〟!」
「あっ、こら、馬鹿者!」
その瞬間、詠唱により強烈な光を纏っていた聖剣から、その光自体が斬撃となって放たれた。逃げ場などない。曲線を描く極太の輝く斬撃が僅かな抵抗も許さずロックマウントを縦に両断し、更に奥の壁を破壊し尽くしてようやく止まった。
パラパラと部屋の壁から破片が落ちる。「ふぅ~」と息を吐きイケメンスマイルで香織達へ振り返った光輝。香織達を怯えさせた魔物は自分が倒した。もう大丈夫だ! と声を掛けようとして、笑顔で迫っていたメルド団長の拳骨を食らった。
「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが! 崩落でもしたらどうすんだ!」
「......あれ、何かな? キラキラしてる......」
そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。香織を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。
「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」
グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなものだ。特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気であり、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入るとか。
「素敵......」
香織が、メルドの簡単な説明を聞いて頬を染めながら更にうっとりとする。そして、誰にも気づかれない程度にチラリとハジメに視線を向けた。もっとも、雫ともう一人だけは気がついていたが......
「だったら俺らで回収しようぜ!」
そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。それに慌てたのはメルド団長だ。
「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」
メルド団長は、止めようと檜山を追いかける。同時に騎士団員の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。
「団長! トラップです!」
檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。美味しい話には裏がある。世の常である。
魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。
「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」
メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが......間に合わなかった。
尻の痛みに呻き声を上げながら、ハジメは周囲を見渡す。クラスメイトのほとんどはハジメと同じように尻餅をついていたが、メルド団長や騎士団員達、光輝達など一部の前衛職の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。
ハジメ達が転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。ざっと百メートルはありそうだ。天井も高く二十メートルはあるだろう。橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。
橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば掴むものもなく真っ逆さまだ。ハジメ達はその巨大な橋の中間にいた。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。
「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」
しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現したからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が......
その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。
――まさか......ベヒモス......なのか...... | Right now, Hajime and the rest of his class gathered in front of the entrance to the 【Orcus Great Dungeon】.
Hajime had imagined a dark gloomy entrance, but instead he found something that looked like museum. It even had a reception desk at the side of the entrance. A uniformed big sister with beautiful smile was inspecting the people who entered and left the dungeon. In brief, their work here was to inspect the Status Plate, and record the number of people who entered and left the dungeon to accurately pinpoint the death toll. With the war nearing, this was the method they adopted to avoid more casualties than necessary.
On the plaza near the entrance, there were many stalls lined up. All the shop owners were trying to promote their own goods. It was like a festival. This place was a popular area to earn money because people would naturally gather here. There were many foolish people who challenged the dungeon haughtily, which ended with them losing their life. The dungeon’s back alleys also seemed to attract criminal activities. However, with the war coming, they didn’t want to have any internal conflicts, so the Adventurer Guild and Kingdom worked together with a common goal in mind. The venue beside the entrance was a place where the materials were traded. The treasures obtained by the adventurers would be exchanged for money there.
While the class was looking around like country bumpkins, they followed behind Commander Meld like ducklings following their mother.
~~~~~~~~~~~
The inside of the Dungeon was totally different to the bustling of the outside. There was no lamp at the five meter wide passage, yet it was emitting a dim light, it was possible to see to some extent even without any illumination magic or torches. It seemed like a lot of special green stones were buried in the walls, one could excavate a huge vein of these green stones from 【Orcus Great Dungeon】.
The party organized into ranks and pressed forward. For a while, nothing of interest happened until they advanced into a certain hall. This hall was dome shaped and the ceiling looked to be around - meter high. Then, in front of the party that seemed to be looking for treasures in the circular hall, gray fluffy balls gushed out from the crevices in the wall.
“Okay, Kouki’s group, step forward. Everyone else fall back! Follow the instructions you received before setting off! Get ready! These Magic Beasts are called Ratmen. Their movement is quick, but they are not very strong. Just stay calm.”
Just like he said, the Ratmen ran over with considerable speed. Their scarlet eyes shone eerily from their gray matted heads. Their name suited them. The Ratman was a very fitting name, their outward appearance looked very similar to a rat...... They were bipedal Magic Beasts and had a muscular upper body. As if to show off their six packs and chest muscle, those parts were not covered by hair.
The front-line was comprised of Kouki and his party. When Shizuku, who was in his party, saw the enemy, her face stiffened up. The Ratman gave off a creepy feeling. Kouki, Shizuku, and Ryutaro intercepted the charging Ratman. Meanwhile, two girls that were close to Kaori started to chant. The girls were Nakamura Eri, a glasses-wearing girl, and her friend Taniguchi Suzu the energetic loli. They were preparing to invoke their magic, staying in the formation like they were taught.
Kouki wielded his cross-shaped sword with unfathomable speed. He quickly made short work of the few enemies. His sword was one of the divine artifacts that was given to him by Hairihi Kingdom, the 【Holy Sword】. The sword had a light attribute. Any enemies caught in the light that the sword produced would be weakened, and it also automatically strengthened its wielder. Even if it was called a “Holy” sword, it certainly had some troublesome abilities.
Ryutaro’s class was a “Fist Fighter”, so he used gauntlets and shin guards as his equipment. These were also divine artifacts, they could produce shock-waves, and the power was definitely not lacking in any way. Ryutaro took an imposing stance and did not let any enemy get past him with beautiful kicks and punches. Though he was unarmed, he played the role of a heavy armored tank.
Shizuku, like the Samurai girl she was, her class was “Swordswoman”. She took a battojutsu stance and drew her sword that looked like a Shamshir. All the enemies were cut in an instant. That agile movement caused the knights to sighs in admiration.
While Hajime and other students were fascinated by the battle, a chant resounded.
”Swirling Dark Flames, Incinerate My Enemies, Return them to the Earth as Ashes, 【Spiral Flame】.”
Three people simultaneously launched the spiraling flames which engulfed the Ratmen. The Ratmen let out a death cry as the flames turned them to ashes.
By the time they noticed, all the Ratmen in the hall were wiped out. The other students didn’t get a turn. It seemed like the enemies on the first level were too weak for Kouki’s party.
“Ahhh~ good job! Next time you guys give it a try, but don’t lower your guard!”
While facing the outstanding students, Commander Meld smiled bitterly as he warned the group not to let up. However, after successfully subduing Magic Beasts for the first time, it was unavoidable for them to feel excited. The student’s faces broke out into smiles. Commander Meld just shrugged his shoulders and said, “It can’t be helped.”
“Anyway, good job on your performance this time, don’t forget to retrieve the Magic Stone. But still, wasn’t that a bit overkill just now?”
Commander Meld was clearly admonishing the rear-support, the girls in Kaori’s group knew they overdid it and began to blush.
There were no particular problems from there onwards, they took turns in battles, and made their way to the lower levels smoothly. Eventually, they arrived at the th floor, which is the mark of a first-class adventurer. The highest level explored was the th floor, but this achievement was accomplished by adventurers over 100 years ago. Getting to the 40th level now is considered the work of an Elite Adventurer. Any who passed the 20th level were considered first-class. Since all the students were cheats, they easily broke through to the 20th level, even if they did not have much battle experience.
However, traps were the scariest feature of a dungeon. In some instances, the traps were lethal. Fair Scope was the best countermeasure against traps. This is a gadget that detected traps by perceiving the flow of magic. As most traps in the dungeons use magic, the Fair Scope can detect more than 80% of the traps. However, the detecting range was somewhat narrow, so in order to progress smoothly, experience or information was needed.
As they quickly breezed through the floors, the Knights could only focus on guiding them. However, Commander Meld strongly admonished them; They were not to move about randomly in places that haven’t been confirmed for traps.
“Alright, you guys. From this point on, not only will there be other types of Magic Beasts, but they will work together to attack us. Do not get careless just because it had been easy so far! The training for today will end after we clear the 20th floor! Get fired up!”
Commander Meld’s voice was very low but it resounded clearly. Up to this point, Hajime had not done anything in particular. Once, he practiced on a Magic Beast that the knights had weakened. He created a pitfall on the ground, and skewered the dog-like Magic Beast that fell into the trap. That was all he did. Basically, there was no chance for him to get involved in the group battle, he just stood behind the cover provided by the knights. It was pretty pathetic. Even so, his magic power still improved by repeatedly using his “Synergy” skill in combat, therefore it was not meaningless. His magic power was raised by two points, so actual combat was still very beneficial.
(But still, I’m totally a parasite player, sigh......)
Again, a weakened Magic Beast was thrown to Hajime by the Knights. When it approached, Hajime transmuted the ground and let out a sigh. Its abdomen was skewered by the sharp sword in the pothole, it doesn’t seem like it will be able anymore.
(Well, it seems like my precision with transmutation has gone up...... Let’s do it one step at a time......)
Hajime consumed a magic replenishing pill as he wiped the sweat off his brow. Hajime had not noticed, but there were several knights that were impressed with him.
To be honest, the knights did not expect anything from him in the beginning. However, since the battle was well-off, they paid a little attention to Hajime who had nothing to do at the back, and pushed a few Magic Beasts to him. Of course, the Magic Beasts were weakened beforehand.
The knights had assumed Hajime would fight with his sword, despite not knowing how to swing a sword. Instead, Hajime effectively sealed off the opponent’s movements with transmutation, and stabbed them to death in the end. He brought down the Magic Beasts with a strategy that the Knights had never seen before. “Synergist” was considered a crafting class, that was a common knowledge. Therefore, they had never thought of using the transmutation skill like that in combat.
Since he did not have anything else, Hajime’s only weapon was his transmutation skill. He figured that if he could manipulate minerals, why couldn’t he manipulate the ground too? He came up with this strategy while thinking about such a thing. Since he was surrounded by so many strong people, he felt his all-out effort was useless. This was the first public exhibition of his tactic. After making a fool of himself in the combat training at the outskirts of the capital, he came up with this tactic.
They stopped for a short rest. Hajime who looked forward occasionally and made eye contact with Kaori. She looked towards Hajime and smiled at him. Kaori seemed to be keeping an eye on him after last night’s declaration to “protect” him. This caused Hajime to be embarrassed and broke the eye contact. Her expression sulked slightly at that. Shizuku who had been observing what was going on wore a wry smile on her face, then she asked in a quiet voice.
“Kaori, why are you two constantly looking at each other? Thinking about a romantic comedy in the dungeon, are you?”
Kaori blushed at the teasing and refuted Shizuku angrily.
“Mou-! Shizuku-chan! Don’t say strange things! I was just wondering if Nagumo-kun was alright. That’s all!”
The romantic comedy was already in full swing with that remark, because Kaori began to sulk for real. Shizuku kept her mouth shut, but the laughter in her eyes indicated that it was a fact. After seeing that, Kaori puffed her cheeks and muttered in a low voice, “Seriously!”
Hajime kept casting sidelong glances at them, but he suddenly felt a gaze that made him straighten his backbone. The unpleasant gaze was filled with negative emotions. To date, Hajime had felt similar stares in the classroom, but this feeling he get from this gaze was incomparably deep and heavy.
It was not the first time today that he felt that gaze. Since the morning he had felt someone staring. When he tried to locate the stare, this feeling would disappear. This had happened repeatedly since the morning, Hajime was already getting tired of it.
(I wonder what it is...... did I do something? ......I was trying hard despite being an incompetence...... Could that be the reason? Don’t joke around! Who’s the scoundrel? ......Sigh~)
Hajime let out a deep sigh. He started getting the bad premonition Kaori had mentioned.
The party continued to explore the 20th floor. Each level of the dungeon was several kilometer square. It would normally take dozens of people up to one month to map out all the unknown areas. Currently, up to forty seven levels have been mapped properly, so it was not that easy to get lost. There was also little concern that they would get caught in traps.
The innermost room of the 20th level had a very complicated geographical feature. The walls were protruding like a stalactite cave and icicle-like rocks formed around the room. The stairs to the 21st floor were just ahead of this room. If they reached that point, the training would be done for the day. In ancient times, they were able to wield teleportation magic, but in this current age, such means were impossible. They had to head back the old fashion way. The party relaxed slightly, since the walls were protruding they couldn’t spread out and had to advance in a column.
At this time, Kouki’s party and Commander Meld whom were at the front stopped. The surprised classmates also got into their fighting stance with confused look. Clearly, they encountered some Magic Beasts.
“They’re camouflaged! Make sure to pay attention to your surroundings!”
Commander Meld advised them. After that, the wall suddenly rose and discolored. The body that was camouflaged was now dark brown, and the creature that appeared stood on two legs. It raised its chest and started to pound on it like a drum. It seemed like a Gorilla-type Magic Beast with chameleon’s camouflage ability.
“They’re Rockmounts! Be careful of their arms, they are strong!”
Commander Meld’s voice reverberated in the cave-like room. The Rockmount beside Kouki’s party threw itself at them. Ryutaro’s fist was able to reflect the powerful arm of the Rockmount. Kouki and Shizuku tried to surround the beast, but they could not get into position due to the influence of the terrain.
When the Rockmount felt that it could not get past Ryutaro, it bent its body downward and inhaled a deep breath. After that...
“GuGaGaGaaaaa——!!”
It let out an intense roar like this, which caused the whole room to shake.
A shock ran through their bodies, it did not damage them, but paralyzed them instead. This was the Rockmount’s unique magic【Intimidating Roar】. The roar carried a magic that caused temporary paralysis.
Kouki and vanguards took the roar almost point-blank, causing them to freeze momentarily. The Rockmount took this chance to slip to the side. It lifted a boulder and threw it at the rear guards with a beautiful shot-put throw! The rock flew over the vanguards, towards Kaori and the rest.
“Hey! What are you doing? This is a battle!”
In a hurry, Commander Meld leapt out to intercept the Rockmount that was swooping down fast. “S-sorry.” The girls apologized like this, but the negative feeling was still there. Their face had turned pale.
There was a youngster who got mad at such a situation. It was our hero, Amanogawa Kouki.
“*******...... You dare treat them like that...... I won’t forgive you!”
Kouki seemed to have misunderstood the girls’ disgust as fear for their impending death. ‘You dare to frighten the girls like that!’ Kouki got a little angry due to his misunderstanding. His Holy Sword seemed to shine in response to his feelings.
“Myriad of Soaring Wings, Reach the Heavens, 【Soaring Flash】!”
“Ah, you idiot, stop it now!”
Ignoring Commander Meld’s voice, Kouki brandished his sword over his head and swung it down in one motion. His chant had made the sword emit an intense light, and the slash released a blade of light. Drawing a curve, the light bisected the Rockmount without encountering any resistance. The blade of light continued on until it destroyed the wall beyond.
Debris lightly fell from the damaged wall. Kouki exhaled and gave the girls a sparkling smile. He had defeated the monster that scared them. It’s alright now! Commander Meld approached him with a smile and smacked him.
“You fool. I understand how you feel, but you shouldn’t use a skill like that in such a narrow place! If the tunnel collapsed, what are you going to do?”
“......Eh? What is that? It’s sparkling......?”
Hearing this, everyone looked at the wall Kaori was pointing at. Blooming on the wall were minerals that radiated pale light. It was like a crystal covered in indicolite. The girls were enchanted by the beautiful sight of the crystals.
“Hoh~ That’s Grantz Crystal. One this big in size is rare.”
When talking about Grantz Crystal, it was an ore that looked like a jewel. The crystal did not have any special effects, but its gorgeous and sparkling appearance was popular among the ladyship. Rings, earrings, pendants, and other jewelries processed from these crystal are very well received. It was one of the top three choices as proposal rings.
“Lovely......”
Hearing Commander Meld’s simple explanation, Kaori’s cheeks blushed. She took a glance at Hajime without anyone noticing. However, Shizuku was the only ones who noticed this.
“If that’s the case, we should retrieve it!”
The one who said that and abruptly moved toward it was Hiyama. He approached the wall that was embedded with Grantz Crystal, and climbed up with sounds of tiny rocks falling. Commander Meld shouted in panic.
“Hey-! Don’t just do what you want! We haven’t confirmed if it’s safe!”
However, Hiyama pretended not to hear and finally arrived in front of the crystal. Commander Meld chased after Hiyama to stop him. At that moment, one of the knight finished his analysis with the Fair Scope. And then his face turned pale.
“Commander! It’s a trap!”
However their warnings came a little too late. The moment Hiyama touched the Grantz Crystal, magic circle started to spread from the crystal. The trap was set for people who became so fascinated with the crystal that they would touch it carelessly. Beautiful mushroom tend to be poisonous. It’s the way of the world.
In a blink of an eye, the magic circle spread throughout the whole room, and it gradually became brighter. It was like a replication of the magic that summoned them.
“Withdraw! Get out of the room this instant!”
At Commander Meld’s command, everyone started to run towards the exit...... but they weren’t fast enough. When the light filled the room, everyone momentary felt a floating sensation. Following that, they were slammed onto the ground with a thud.
Everyone let out a groan due to their sore butt, Hajime looked at the surrounding, most of his classmates were stroking their butt like him. Commander Meld, the knights, Kouki, and the vanguards quickly stood up and observed their surroundings. Seems like the magic earlier was a teleportation magic. A magic that the modern day mage couldn’t even use was casted with ease, the magic from the Age of God was truly worthy to be called a cheat.
They were all transferred onto a huge bridge made of stone. It was about hundred meter in length. The ceiling looked to be about twenty meter tall. There was no river underneath the bridge, there was only a bottomless abyss. If they fell, it would probably feel like falling into hell.
The width of the bridge was about ten meter, but let’s not say the handrails, even the edge was rounded. If you slipped there would be nothing to grab on to, and you would fall head-first. The group was right in the middle of the bridge. On both sides of the bridge, they could see a stairway that led to the upper level. After confirming it, Commander Meld issued the orders with a grim expression.
“You guys, get up immediately! Go towards the stairs. Hurry!”
Hearing the thunderous orders from Commander Meld, the students who were on the ground got up immediately. However, the dungeon’s trap was not only at this level, it wouldn’t let them escape so easily. Magic Beasts emerged from the magic circles that appeared on both sides of the bridge. A huge Magic Beast appeared on one side of the passage. The other passage had a large amount of monsters.
At this time, Commander Meld stared at the huge Magic Beast with blank expression, his mumbles was transmitted loud and clear.
“This couldn’t be...... a Behemoth......?” | {
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某月某日、魔王専用会合場
「チェックメイト。」
「ぐぬぬ......」
俺の前には完全に詰んでいるチェスの盤面と対戦相手である小火狐with狐姫が座っている。
「主は本当に弱いのう。これで何敗目じゃ?」
「知るか。てかお前との勝負に関しては7:3ぐらいだろうが。」
フォッグwith俺は悔しそうな表情をしつつ狐姫にそう反論する。
さて、何故に俺と狐姫がチェスなんてものに興じているかと言うとその理由は割と複雑だ。
まず俺たちの配下(眷属、モンスター問わず)はその数を年々増やしており、基本的にはダンジョン内で待機をさせているし、様々な理由から狩られるなどしてその数を多少減らすのだがそれでもかなりの数が貯まってきている。
そのスピードと数はじきにダンジョン外にあふれ出て、かつての雪翁の配下たちがしたような暴走を引き起こしかねないレベルである。
で、貯めた以上はどこかで消費する必要があるわけなのだが、この消費方法がまた問題になる。
というのも、まず普通にダンジョン外で暮らしているレベル1の人ではよほど優秀なスキルを所有していても薄靄狼と一対一でやり合うのが限度であり、そんなところに大量のモンスターを放出すれば確実に村や町単位で人間が死ぬ。これはさすがに殺し過ぎだ。
かといってダンジョン内に突入してくるような人間でもごく一部の規格外を除けば大量のモンスター、それも種類の違うモンスターが代わる代わる襲い掛かってくるような状況には対応できない。なので、ダンジョン内への過剰放出もダメ。
ならばとモンスターたちを無抵抗で殺させるなんてのは人間に対しての物資的な意味での施しでしかなく、魔王が人間にそんな施しを与えてやる謂れはない。というか絶対にごめんだ。
じゃあどうするかとなった時にここでこういう会話があった。
「のう霧王よ。」
「何だ?」
「模擬戦でもせんか?」
「模擬戦だぁ?」
「うむ。ルールを決めた上で互いに配下を出し合って外で戦争の真似事をするのじゃ。」
「あー、なるほどな。その内蛸王辺りが攻めてくるかもしれないしいい訓練になるかもな。というかそんな話を切り出すあたりそっちもアレか?」
「うむ。貯まりきっておる。」
「なら審判は雪翁と竜君の配下に頼むとしてだ......」
とまあ、あれよあれよと言う内に模擬戦を行う事が決定し、その事前練習として元来はそういう物として作られたというチェスや将棋を出してきて、冒頭の光景に至るわけである。
盤上の模擬戦(チェスとか将棋)に関しては強い順に雪翁、狐姫、俺、竜君である。雪翁が強いのはまあ年の功としてだ。狐姫が意外に強い。その場その場の対応しかできない竜君は論外にしても、2,3手くらいなら先を読める俺相手に7:3で勝てるあたり人間時代から嗜んでいたのではないかとも思う。
まあいい、所詮は盤上の模擬戦であって実際の戦いではない。
仮想で千回負けようとも現実で一回勝てばいいのだ。そう!決してこれは負け惜しみではない!年下である狐姫に負け続けいるのが悔しいとかそういうことは無いのだ!
「いや、どう聞いても負け惜しみじゃぞそれは。」
「ちくしょおおおぉぉぉ!今度の模擬戦で目に物見せてやらあぁ!!」
■■■■■
1'、模擬戦中に発生したあらゆる事柄はお互い偶然の物だとして納得すること。
2、模擬戦を行う魔王以外の魔王は審判役を務める。
2'、審判役の魔王は戦いの規模に合わせて自分の配下を審判役として参加させること。
3、戦闘日時は適当なものを審判役が出す。
3'、戦闘場所に集落などがあった場合はその場に住む人間王で協力して退去させ、模擬戦終了後に住居の修理を初めとして各種補償を行う事。
4、模擬戦に参加させる配下は大きく分けてキング、ナイト、ポーンの3つに分ける。
4'、キング:各陣営の目標であり、キングが撃破された側の陣営は敗北となる。キングには必ず魔性を用いり、魔王が常時フルコントロールして、
4''、ナイト:各陣営の眷属であり、最大10名まで参加させてよいが互いに数は揃えること。不幸な事故を出来る限り避けるために各員頭の上にマーカーをつけ、マーカーが破壊された時点で死亡したとして戦場外に撤退すること。
4'''、ポーン:各陣営の魔性であり、公平を規すために数に関してはお互い揃える事。種類や質に関しては問わない。原則戦場外への撤退は無し。
5、予め物品などを賭けていた場合は模擬戦終了後に模擬戦の結果に合わせて素直に相手に渡すこと。
5'、模擬戦終了後に大量に出ると思われる魔性の素材に関しては各員が持ち帰れる範囲で持ち帰り、残りは放置して人間たちに処分を任せる。
6、ルール改訂を行う際は多数決で半数以上の魔王の賛成が得られた場合のみ改訂がされる。
なお、残りの細かいルール運用などは高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に行う事。 | On a certain day of a certain month, at a meeting place exclusively designated for the Demon Kings.
“Checkmate.”
“Ugh...”
Before me lay a flawlessly stalemated chessboard, as well as my opponent, a Little Fire Fox controlled by the Fox Princess.
“You’re really weak. How many losses is this now?”
“Who cares? When it comes to the game against you, the ratio is about :.”
With a frustrated expression on his face, Fog, who was under my command, refuted this to the Fox Princess.
Now, the reason why the Fox Princess and I were engaging in this chess game was rather complicated.
First of all, the number of our subordinates (both kin and monsters) had been escalating year by year, and although they were basically kept on standby in the dungeon and were reduced somewhat by being hunted for various reasons, a substantial number of them were still accumulated.
At this tempo and number, the monsters will soon overflow out of the dungeon and lead to the kind of chaos that Snow Sage’s subordinates did in the past.
Therefore, the number of accumulated monsters must be consumed at some point, but the method of consumption was another obstacle.
To begin with, a single level human living outside of a dungeon can only go toe-to-toe with a Thin Mist Wolf, even if they possessed superior skills, and by releasing a large number of monsters into such a setting will inevitably result in people in villages and towns succumbing. This was indeed an excessive amount of carnage.
On the other hand, humans who invade dungeons will not be in a position to cope with a situation involving a mass of monsters, with the exception of a few non-standard ones, and will be successively swarmed by monsters of different kinds. Consequently, excessive release into the dungeon was also inadvisable.
If this was the case, allowing the monsters to be slaughtered without opposition is only an act of charity in terms of supplies for the humans, and the Demon King had no obligation to lavish such charity on the humans. Or, to put it another way, it was absolutely not permitted.
When confronted with such a predicament, a conversation like this of us Demon Kings will take place.
“Oh, Mist King...”
“What is it?”
“Shall we have a sham battle?”
“Sham battle?
“Yes. After determining the rules, we’ll send out our subordinates to fight a sham war outside.”
“Ah, I see. The Octopus King may invade one of these days, so this could be a good training exercise. Or rather, since you brought that up, is your side facing the same problem too?”
“Yes. I have enough on my plate.”
“If so, I would like to ask the referee to be under the supervision of the Snow Sage and Dragon Sovereign...”
As a result, it was agreed to stage a sham battle, and chess and shogi, which were designed specifically for this purpose, were brought out for preliminary rehearsal, leading to the scene depicted at the start.
By the way, regarding the board games (chess and shogi), in order from the strongest to the weakest was Snow King, Fox Princess, me, and Dragon Sovereign. The Snow King was dominant due to his age. As for the Fox Princess, she was unexpectedly strong. Even though Dragon Sovereign can only react on the spot, I guess she must have developed a penchant for chess from her human days, considering that I can read two or three moves ahead and can beat her :.
Well, it was only a sham battle on the board, not an actual battle.
Even if you lose a thousand times in the virtual battle, winning once in the real battle is all that matters. That’s right! I am not a sore loser! It’s not like I’m frustrated that I keep losing to the Fox Princess, who is younger than me!
“Well, you’re being a sore loser, regardless of how I perceive it,” the Fox Princess said in an incredulous voice.
To which I responded, “Damn itttttt! I’ll show you what I can do in the next sham battle!”
————–
Rules of the sham battle (simplified version), The sham battle will be decided by an agreement between the two Demon Kings.′, Both parties must mutually agree that everything that arises during the sham battle is coincidental.”, Naturally, the two Demon Kings must inform the humans to some extent before the sham battle is held.
2, The referee will be the Demon King who is not one of the Demon Kings that will be conducting the sham battle.
2′, The Demon Kings who act as the referee should have their own subordinates participate as referees, depending on the scale of the battle.
3, The referee shall set an appropriate date and time for the battle.
3′, In the event that there is a village or other settlement in the battle site, the four Demon Kings shall cooperate in evacuating the people living there, and shall provide compensation of various kinds, including repairs to the residence, after the conclusion of the sham battle.
4, The subordinates to participate in the mock battle are roughly divided into three categories: King, Knights, and Pawns.
4′, King: The goal of each camp and the camp whose king is defeated will lose the battle. The King must always use their demons, and the Demon King must be in full control at all times, and cannot be allowed outside of their stronghold of Rook.
4”, Knight: These are the kin of each camp and may include up to 10 members, but their numbers must be matched with each other. To minimize mishaps, a marker must be placed on the head of each member, and when the marker is destroyed, the member is considered dead and must withdraw from the battlefield.
4”’, Pawns: The demons of each camp, and to ensure fairness, the number of pawns must be equal to each other. Neither the type nor the quality of the pawns is questioned. As a rule, no withdrawal from the battlefield is allowed.
5, When you have wagered something in advance, you must give it to your opponent after the sham battle in accordance with the outcome of it.
5′, Concerning the demonic materials that are expected to be produced in large quantities after the sham battle, each member can take as much as they can, and the rest will be left to the humans to deal with.
6, When revising the rules, a majority vote will be required to approve the revision if more than half of the Demon Kings are in favor.
Furthermore, the rest of the detailed rules must be implemented flexibly while maintaining a high degree of resourcefulness. | {
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挫折感の政治は、過去15年における脱共産主義の社会でとりわけ顕著に見られる。ノーメンクラツーラの圧倒的支配は過ぎ、西側の開かれた社会のような新しい生活の構想は実現するかに見えた。ところが、実際には初期段階で、状態が悪化した。繁栄と自由への道のりはまっすぐではなかった。それどころか、いばらの道だったのだ。 | The politics of frustration has been particularly apparent in the postcommunist world during the last fifteen years. The heavy hand of nomenklatura rule was gone, and the vision of a new life like that in the open societies of the West seemed real. | {
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「「「いらっしゃいませ(ぇ)」」」
修理を終えて再開してから数日。ちゃっかりリニューアルと称して営業している。
観葉植物の代わりにぬいぐるみとかを置いてファンシーにしてるけど、リニューアルと呼べるのか......。
お店の雰囲気がファンシーになったので、男性客が減って楽になるかなぁと思っていたら全然減らなかった。むしろ増えてる?何がそう彼らを駆り立てるのか......。いや、確かに制服可愛いけどさ。
カインとフィルはザンブルに帰らず、暫く王都で活動することにしたらしい。今日はお店に来てくれている。
「はい、コーヒーお待ち遠様」
「ありがとさん。それにしても凄い制服だな。まぁ悪くはないぃいててて!」
「顔が緩んでるのです」
また耳引っ張られてるよ。後、カインが僕を見てそういう反応するのは色々複雑なんだけど。
「はぁ......。引っ張られすぎて、そのうち森人みたいになっちゃうんじゃないの?」
「なるかもなぁ」
割と真顔で答えられた。反省してないのか......。こういうとこで素直になるんじゃなくて、フィルの前で素直になってあげればいいのに。
そんなやり取りをしてたら、すいませーんと他のお客さんに呼ばれる。
「はーい、少々お待ちくださーい。......それじゃまた後でね」
「おう」
「お仕事頑張ってくださいです」
そういえば暫く王都で活動するって言ってたけど、狩猟系の仕事ほとんどないけどどうするんだろう?まぁまた後で聞けばいっか。
チルが来てくれたおかげで大分楽になった。ちょくちょく休憩も入れられるし、リーズナーさんの調理補助にも入れる増えるだけでかなり違う。
お店が終わって着替えている時にそんな会話になった。
「チルが来てくれて大助かりだね」
「本当だわ。前まで満席になるとてんてこ舞いだったものね」
「そうですかぁ?役に立ってるなら嬉しいですぅ」
褒められて嬉しいのか、ニコニコしながら私服に着替えていく。私服もフリルが沢山ついた可愛らしいものだ。
「私服も可愛いね。どこで買ってるの?」
「これですかぁ?これは最近オープンした服屋さんですよぉ。デザインもそうですけどぉ、品揃えが凄くいいんですぅ」
「へぇ、じゃあさ今度の休みの日にでも案内してよ。僕達も秋物買い足したいし、冬物も今のうちから見ておきたいし」
「いいですよぉ。どこで待ち合わせしますぅ?」
「このお店の前でいいんじゃないかしら?その方がお互い楽でしょうし」
「わかりましたぁ。それじゃぁ今度のお休みの日にぃ」
首尾よく約束を取り付けられた。
王都の新規オープンのお店かぁ。正直王都の既存のお店はいまいちだったので、期待してしまう。今着ている秋物も結構妥協してるしね。
宿に戻り、夕食を取るために食堂に。夕食時にはちょっと遅い時間なのにカイン達がいた。表情がちょっと渋い。
「あれとも遅いね。何かあったの?」
「いや、あの後組合に行ったんだけどな?依頼がな......」
あ、これは僕達と同じパターンかな。どうせだし、同じテーブルについて食べながら話を聞こう。
「狩猟系がほとんどなかったんでしょ?」
「そうなんだよ。まさかここまでないとは思ってなくてなぁ。あれこれ見たがどうにもな」
「諦めて日雇い系で探すしかないよ。だから僕達もカフェで働いてるんだし」
「まじかー。荷物運びでもやるかなぁ」
「よかったら聞かせて欲しいんですけど、ナツキさん達のカフェって報酬どのくらいなのです?」
特に問題もないだろうから素直に教える。あれ、目をまん丸くしてこっち見てる。
「今日見た依頼のどれよりも遥かに高いですよ?まだ雇ってくれるなら私も行きたいです」
パラパラっとめくって報酬がいいからって決めたけど、まさか他が軒並み低いとは知らなかった。
「フィルがいいならオーナーに紹介してみるけど、制服結構際どいの着せられたりするよ?今はロリィタ系で露出ないけど」
「その時はその時です。まさか水着はないでしょうし、大丈夫ですよ」
いやぁわかんないけどねぇ......。ハッ!フラグ建てたくないからここまで!やめやめ!
「じゃあ明日にでも会ってみる?」
「はい、お願いしますです」
まだ人手は欲しいところだから多分雇ってもらえるかな。後はカインがどうするかかな。
「カインはどうするの?オーナーに会ってみる?」
「いや、俺は接客って柄じゃないしいいわ。さっき言ったように荷運びかなんかで探すよ」
「客としてフィル目当てでお店くるんですね、わかります」
「......」
うわ、スルーだよ。図星だからってよくないよね。目もちょっと泳いでるし。
とりあえずカインは何とかするって言ってるし、フィルが採用されれば問題はないかな?
翌日フィルを連れてお店まで。リーズナーさんと話をするので気持ち早めに宿を出た。
「「おはようございまーす」」
「はい、おはよう。今日は早めだね。ところで、そちらのお嬢さんは?」
「私、フィルと申しますです。ナツキちゃんに話を聞きまして、ここで働かせてもらえないかなと」
「リーズナーさんどう?料理とかもできるから、調理補助もできるよ?」
あれ?フィルをじーっとみて黙っちゃった。もしかしでいっぱいいっぱいで雇えないのかな......。
「......よし、制服も似合いそうだし採用!明日からでも大丈夫かな?」
おお、もう......。この人それしかないのか。このお店の売りなのはわかるんだけどさ、もうちょっとこう...なんというか......無理か。
この間も思ったけど、一日でサイズぴったりの制服を用意できるのも謎すぎる。でも、聞いたりしたら変なの着させられそうだから聞かない。世の中知らないほうがいいこともあるよね。
翌日フィルに手渡された制服は僕達と同じデザインで水色だった。フィルの明るい茶髪とよく合っている。本当そういう目だけは確かだよね、このオーナー。 | 「「「Welcome!」」」
A few days after the repairs were done, the cafe was shrewdly overhauled just as we got back to business.
The decorative plants were replaced by teddy bears and stuff, so it got a more fancy feel to it. But, can I really call this an overhaul.......
The store’s atmosphere got quite a bit fancier, so I thought we could relax since male customers are going to decrease but that didn’t happen at all. Instead, aren’t there even more of them now? What even drives them to come here...... Well, yeah, I know the uniform’s cute and all but...
Cain and Firu didn’t return to Zanbul, it seems like they’re planning to work here for a while. And today, they came to the cafe.
「I’m sorry for keeping you waiting, here is your coffee.」(Natsuki)
「Thanks a lot. Still, the uniforms are something. Well, doesn’t look half ba-
「Your face is slacking.」(Firu)
Cain’s getting his ears tugged again. Also, it feels really complicated to hear Cain react like that towards me.
Haa
...... Sooner or later you’re going to get your ears stretched so much that you’ll look like a Forestkin, you know that?」(Natsuki)
「Might just actually happen.」(Cain)
He answered me in a relatively serious tone. Haven’t you learned your lesson already...... It would be nice if he became more honest with Firu, not just in situations like these.
And as we had this exchange, another customer called for something.
「Ye~s, please wait for a while~...... Well, see you two later.」(Natsuki)
「Good luck with your work.」(Firu)
Come to think of it, they said that they’re planning to work here for a while but there are practically no hunting-type requests here. What are they going to do? Well, I could just ask them later anyway.
Thanks to Chris being here with us, things became much easier. Now we can take breaks and even help Ryzna-
And so, while we were changing clothes after closing time, I told her about that.
「Chris being here now really helped a lot.」(Natsuki)
「Honestly. Before, we would have been busy running around when the seats get fully occupied.」(Ruti)
「Really~? I’m glad to be of help~!」(Chris)
Delighted from being praised, she keeps a big smile as she changes into her casual clothes. Even her casual clothes are the cute and frilly type, it seems.
「Your clothes are pretty cute too. Where did you buy them?」(Natsuki)
「These~? I bought them from a clothing shop that opened recently~ The designs they have are really cute but the variety they have are amazing too~!」(Chris)
「Really? Then would you guide us there on the next day off? We want to buy some more summer clothes and we want to look for winter stuff while we still can.」(Natsuki)
「Sure~ Where can we meet up~?」(Chris)
「Isn’t this cafe’s storefront good enough? It’s easier for all of us after all.」(Ruti)
「Understood~ The~n, let’s meet up on the next off day~」(Chris)
We successfully made a promise with her.
A new shop in the capital, huh. To be honest, the existing shops in the capital were a bit lacking, so I’m looking forward to it. The summer clothes we have right now aren’t that great after all.
We got back to the inn and headed to the cafeteria for dinner. It’s already a bit later than dinnertime, but for some reason, Cain and Firu are still here. They’re looking a bit glum.
? Did something happen?」(Natsuki)
「No, well, so we went to the union after that, yeah? But the requests were a bit......」(Cain)
. Since we’re here, we sit together on their table and talk to them as we have our meal.
「There isn’t many hunting-type requests, right?」(Natsuki)
「Yeah, that. I didn’t expect them to have that few requests. We took a look at them but there was nothing good.」
「No choice but to find yourselves a good employment-type request. That’s why we’re working at the cafe after all.」(Natsuki)
「Seriously? I should probably work as a baggage loader or something.」(Cain)
「If the two of you are fine with it, I’d like to ask, how much does the cafe pay you?」(Firu)
Since it’s not really a problem, we honestly tell her.
「It pays a lot more than any of the requests we’ve seen today, you know? If they’re still hiring, I want to do it too.」(Firu)
We decided on it since we were skimming for requests that pay well but I didn’t know that the other requests actually pay generally lower than that.
「If you want to, we could try introducing you to the owner, but he might make you wear some questionable clothes, you know? The current uniforms are lolita-style right now, so there’s zero exposure though.」(Natsuki)
「I’ll think about it when it happens. It’s not like they’ll have you wear swimsuits, so I’ll be alright.」(Firu)
! I don’t want to jinx it, so enough about that! Nope, no more!
「Then would you like to meet him tomorrow or something?」(Natsuki)
「Yes, please.」(Firu)
We still need more people so he’ll probably still hire Firu. All that’s left is Cain.
「What about you, Cain? Do you want to see the owner too?」(Natsuki)
「No, I’m not really all about the reception and stuff, so I’m good. Like I said earlier, I’ll try finding some baggage loading work or something.」(Cain)
「You want to go see Firu as a customer, right? I feel you.」(Natsuki)
「......」(Cain)
, he ignored me. It’s not good to ignore people just because they’re right. His eyes are swimming too.
For now, since Cain has his own plans, the only problem here is whether Firu gets hired, right?
The next day, we went to the cafe together with Firu. Since we needed to talk with Ryzna-san, we left the inn at an earlier time.
「「Good mornin~g!」」
「Good morning too. You two are a bit early today, huh? By the way, you are?」(Ryzna)
「M-My name is Firu. I heard about the cafe from Natsuki-chan, so I wanted to ask if you could hire me......」(Firu)
「What do you think, Ryzna-san? She can cook and all too, so she can also help with the cooking, you know?」(Natsuki)
? He silently stares at Firu. Maybe the cafe can’t afford to pay for more than three of us right now......
「...... Yup, you’ll definitely look good in the uniform, so you’re hired! Can you start working by tomorrow?」(Ryzna)
...... Is that really the only thing on his mind? I get that it’s the cafe’s selling point, but can’t he... you know...... probably impossible.
I thought about it before, but the fact that he can prepare a perfectly fitting uniform in a day is a big mystery. Still, he might make me wear some weird stuff if I ask him about it, so I won’t. There are things that are better left unknown.
The next day, Firu was given a light blue one uniform with the same design as ours. It fits really well with Firu’s light brown hair. Really, this owner seriously has a good eye for these stuff. | {
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実際に、その最適な貨幣区域についての研究が、ユーロの理論的な実地研究の実施により裏付けされた経済学者ロバート マンデルは、中国が、現在の経済発展のフェーズにおける必要不可欠な一面として、固定為替相場を維持すべきであると主張している。しかし、中国の歪んだ経済構造に目を向ければ、その為替相場制度の、日本およびその他の東アジア経済が直面してきた問題よりもさらに難しい問題が明らかになる。 | Indeed, the economist Robert Mundell, whose work on optimal monetary zones is credited with laying the theoretical groundwork for the euro, insists that China should maintain its fixed exchange rate as a necessary part of its current phase of economic development. But, owing to China’s skewed economic structure, its exchange-rate regime presents much more challenging problems than those encountered by Japan and other East Asian economies. | {
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前忍び込んだ日から私は出入り禁止になったものね。懐かしい景色だわ。
それにしても一度見たとはいえ、やっぱり贅沢な作りをした学園よね。
ジルは口を開けて、目を丸くして魔法学園を見ている。
ジルはこっち側に来てから驚きの連続ばかりだもの。
初めて太陽見た時は涙を流していたし、ここまで馬車に乗ってきた時もずっと外ばかり見ていたものね。
きっとジルにとっては全てが新鮮なんだわ。
「どうして......、どうしてこんなにも違うんだろう」
その目は少し潤んでいるように見えたけど涙を流す様子はなかった。
ここで泣かないのね......。偉いわね、ジル。
「ジルは自分で何か悪い事したと思っているの?」
「それが階級、身分制度なの。実力があっても結局貴族に隠れてしまうのよ」
「聖女は?」
「あまりにも稀有な才能を持っていたからよ。それに彼女は魔法を使えるでしょ?」
「......そうだね。僕は魔法を使えないけど、魔法学園に入ってもいいの?」
「当たり前でしょ。魔法学園は魔法だけを教える学園じゃないのよ」
ジルは真っすぐ魔法学園の門を見た。
あの時、私の事を止めた人......、だわ。
少し歳をとったように見えるわね。皺が若干増えたような気がするわ。
「ウィリアムズ・アリシア様。どうぞ」
......前回とは随分と態度が違うのね。
「もう一人いるわ。私の助手のジルよ」
「申し訳ございません! ジル......、様ですか。どうぞ!」
頭を下げたのはこれ以上私の顔を見たくなかったからかしら。
ジルは別にそんな事を気にする様子もなく堂々と歩いている。
流石悪女の助手だわ。
お昼休みに着くなんてついてないわ。授業時間中に来たかったわ。
とりあえず、リズさんを探しましょ。
お父様から貰った情報だと成績は優秀で魔法も特に暴走していないみたいなのよね。
「貴方がアリシア様?」
「アルバート様の妹様よね?」
「なんて可愛いのかしら」
「ヘンリ様とアラン様の妹様って事?」
「そうよ! やっぱりお兄様達に似て美しいのね」
私、来て数分でもう有名人なの?
「アリシア様、分からない事があれば私達にいつで」
私の一言で一気に静まり返った。
「私が初対面の方を簡単に信用すると思っていますの?」
お嬢様軍団は怯えた顔で私を見ている。
貧困村の人達は私が睨んでも睨み返す勢いなのに......。
そう思ったらやっぱり私と対等に戦えるのはヒロインのリズさんなのね。
けど、私的にはもっと怯えて欲しいのよね。
「名前も名乗らずに本当に失礼な方たちですわ」
一人は小さく震えだした。
人を震えさせるぐらい怯えさせたって事でしょ。
正直、彼女達が弱すぎるっていうのもあるのかもしれないけど。
「何をしているの?」
この聞き覚えのある柔らかい声は......。
私はゆっくり声のする方へ振り向いた。 | After that day when I snuck in here, they sent out a notice that I was banned from the premises so I haven’t had the chance to come back since.
I know I’ve only been here once before, but it’s just as extravagant as I remember.
I glance over at Gilles to get a look at his reaction to the grandeur. His mouth is hanging wide open and his eyes are as round as dinner plates as he stares at the academy.
Well, considering he’s only ever seen the impoverished village up until now, this sort of response is to be expected. I’m sure he’s been experiencing one surprise after another since coming to this side of the barrier.
The first time he saw the sun he actually shed tears, and during our whole carriage ride over here he couldn’t tear his eyes away from the scenery passing by.
Everything here on the outside must seem like a brand new experience for him.
“Why..... Why is it so different?” Gilles mumbles. “Just what did we do that was so wrong?” he asks, turning a slightly stricken gaze towards me.
His eyes look wet, but he doesn’t let the tears spill. He just looks straight at me with that agonized expression.
You won’t let yourself cry here, huh.....? I’m proud of you, Gilles.
“Gilles, do you think that you, yourself, did something wrong?”
He gives a little shake of his head.
“Right. It wasn’t you. This whole class system is at fault. Regardless of ability, all the power lies in the hands of the nobles. At their whim, anyone can be put down and the truly talented are left wallowing in the shadows.”
“What about the saintess?”
“Her talent is so rare and priceless that she was able to overcome her low status. Plus, she’s able to use magic, right? That’s the one thing that separates the nobility from the commoners.”
“.....That’s true. But I can’t use magic, so is it really okay for me to enroll here?”
“Of course. Even though this place is called the magic academy, magic isn’t the only thing that’s taught here.”
Gilles turns away from me to look at the gates leading into the academy.
I wonder if the same guard will be standing there today? The one who had stopped me the last time..... Ah, he is.
He looks a bit older, but it’s definitely the same person. I do get the feeling that he has more wrinkles than he did before though.
“Alicia Williams-Sama, welcome back,” he greets, smiling at me.
.....His attitude did a complete in comparison to last time.
“I hope you realize there’s another person here besides me. This is my attendant, Gilles,” I say, glaring at the guard.
“Please forgive me! Gilles.....Sama is it? Welcome to the academy!” he says loudly, his eyes never leaving the ground.
I wonder if he’s keeping his head down because he doesn’t want to see my face after I glared at him like that.
Gilles, on the other hand, doesn’t seem to care a whit about the guard’s initial slight or his now deferential posture. He just walks ahead unaffectedly, ignoring the guard entirely.
As expected of a villainess’s attendant.
We seem to have arrived at the academy right at lunch time. How unfortunate. I had hoped we would arrive while classes were in session.
I guess we should search for Liz-san for now then.
According to the information that Father gave me, these last few years she’s been attaining excellent grades in her magic classes and otherwise, and aside from that one episode, her magic has been stable and completely under control.
“Oh! Could this be Alicia-Sama?”
“Albert-Sama’s younger sister, right?”
“Oh, how cute!!”
“So that must mean she’s also Henry-Sama’s and Alan-Sama’s younger sister?”
“Yes! She’s so pretty! She’s the spitting image of her brothers.”
It’s only been a couple minutes since I’ve gotten here, but I’ve already become this famous?
“Alicia-Sama, if you encounter any difficulties here, please don’t hesitate to come to us at any time.”
With just a single statement, they all fall deathly silent. These young noblewomen who have crowded around to get the chance to talk to me all stiffen and stare at me.
“Did you think that I would just carelessly trust the words of some stranger whom I’ve only just met?”
The young women turn frightened gazes towards me.
How weak. At least the inhabitants of the impoverished village had the gall to glare back at me when I’d glare at them, but these young ladies who will soon be at the top of this country......
How disappointing. But that’s normal, I suppose. The heroine really is the only one who has the chance to stand on equal footing and duke it out with me.
But, since they’re scared already, they might as well fear me even more. Personally, I wouldn’t mind if they’d become terrified at the mere sight of me.
“You’ve come forward to address me all at once and not one of you has offered me her name. How egregiously impolite,” I say imperiously, pressuring them with my gaze. One of them even starts to tremble when our eyes meet.
Ah, I’ve already brought a person to quake in fear of me. I guess that means my villainous demeanor must have passed with flying colors.
Though, on second thought, rather than a testament to my wickedness, such a strong reaction might only prove how incredibly weak these girls are.
“What are you all doing over here?”
This light and airy tone.... sounds quite familiar.
I slowly turn towards the one who spoke. | {
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それに対し 私は 大抵こう答えます コンピュータ音楽です
多くの人はその瞬間 話を終え 去ってしまいますが 残った人は大抵 「どういう意味なんだ」と
うつろな目になってしまうので 自分の返答が 彼らに十分な情報を与えていないと感じ もうこの時点で私はパニックで 頭に浮かんだ最初の事を言っています- 「自分でも何をやっているのかわからない」と
まぁ 真実なわけですが
そしてこの考えが後に続きます- 「何であれ自分のやっていることは 大好きだ」と
今日 この私の愛している物をご紹介し なぜ愛しているのか お話したいと思います
まず この質問から始めましょう: 「コンピュータ音楽とは何か?」
出来る限りベストを尽くしてご説明したいと思います 私が取り組んできたもののいくつか お話することによって ご説明しましょう
まず始めに ChucK と呼ばれるものです
ChucK とは音楽のためのプログラミング言語で オープンソースで無料で入手でき 私はこう思いたいのですが- 最新のどのOSでも同様にクラッシュします
もっとお話するよりも デモをお見せしましょう
ところで 数分だけ おたくモードに入りますが 引かないで下さい むしろ 一緒におたくの世界へ
ご招待したいと思います コードを書いた経験がなくても 心配しないで下さい
理解して頂けると思います
まず最初に 正弦波発振器を作って この発振器を 「Ge」と呼びましょう
そして 「Ge」を「DAC」に接続します
これは コンピュータの 音声出力を抽象化するものです いいですか?
そして 私を(「Ge」)をスピーカに接続しました
次に周波数を 440Hzにし このオペレーションは 継続時間を2秒と設定しましょう
よし それではこれを再生すると- - 440Hzの正弦波が2秒聞こえますね
OK すばらしい これをコピー・アンド・ペーストして 一部数値を変えます 220Hz 0.5s 400Hzはそのままにして 0.5s と 880Hz
周波数を2倍にして 1オクターブ上げましょう そうすると こんなトーンのシークエンスになります
OK すばらしい これを使って ひどい 「単一正弦波楽曲」を作る 数々のアイディアが浮かびますが ここで コンピュータが得意とすることをさせましょう 反復です
これを全てwhile ループにかけます 本当は必要ありませんが 見やすくするためにインデントを入れましょう
良い習慣ですしね
そうするとこうなります- - しばらく続きます
実際は コンピュータが壊れない限り 止まることはありません
実証することは出来ませんが 信じて頂けたらと思います
次に この220を 「math.random2f」 に置き替え
30から1000までの 乱数を生成するようにし その数値を 私の(「Ge」)周波数とします
これを0.5秒毎行うようにしましょう
200ミリ秒毎にしてみましょう
100
さて この時点で
私の思う 「典型的な」 「コンピュータ」 「音楽」という ものが出来上がりました
私には メインフレームコンピュータが 一生懸命考えている 音のように思えます
こんな感じですよね- 五百万の平方根は
さて これがコンピュータ音楽でしょうか?
まぁ 定義上は コンピュータ音楽 のようなものですね
ハイウェイを走っている時に聞くような 音楽ではありませんが コンピュータ生成音楽の基盤となるものです 実は ChucKを使って スタンフォード・ラップトップ・オーケストラに 楽器を作ってきました 彼らは スタンフォード大学CCRMA(コンピュータ音楽音響技術研究所)に 本拠地を置いています
ラップトップ・オーケストラ は ラップトップ 人そして半球状のスピーカーアレイのアンサンブルです
このスピーカーを使う理由は 私達がラップトップから 作り出した楽器の音を 楽器と演奏者の近くから 出るようにしたかったからです 伝統的な生の楽器のような状況です
もし私がここでバイオリンを演奏すると 音はPAシステムからではなく
楽器から自然と流れてきます
このスピーカーはそれをシミュレートするよう作られました 実際にどうやって作ったか お見せしましょう
まず最初のステップはイケアに行き サラダボールを買うことでしす
これは28cmのBlanda Mattです
実際の商品名です 私はサラダを作る時 これを使っています 本当です
そして これをひっくり返して ドリルで穴を開けます 一半球に六個です そしてベースプレートをつくり エンクロージャーの中に 車用スピーカーとアンプを取り付けると 半球アレイスピーカーの 出来上がりです
演奏者とラップトップを加えると ラップトップ・オーケストラになります
ラップトップ・オーケストラはどの様な音を出すのでしょう?
では オーケストラの為に 今まで作った約200の楽器の内の中から一つ デモをお見せしましょう
なにをするかと言うと こちらに移動して
目の前にあるこの機器は かつてGametrakという ゲームコントローラーでした
手に装着するグローブが付いていて
本体とコードで繋がっています これで手の位置をリアルタイムに 追跡します
本来ゴルフゲームのコントローラーとしてスウィング動作を 感知するよう設計されました
この商品は 失敗に終わり 千円まで値下げされ その時 私達コンピュータ音楽の研究者は こう言いました 「素晴らしい
これで楽器のプロトタイプを作成できる」と
多数作成した物の中から一つ 楽器をお見せしましょう これは 「Twilight」 と言います 音を大地から引き上げる様を
比喩しています うまくいくかな
元に戻すと
左に動かすと 右だと 象が痛みに苦しんでいるような音ですね
これは少しメタリックな音です
ボリュームを少し上げて
宙を浮く車のような音ですね
OK
三番目はラチェットで締めるような音です ボリュームを上げます
少し異なる音です
四番目はブーンという音を出します
そして最後に これはまったく異なる音です ステージに巨大な太鼓が 設置されているのを想像してください それを叩きます
(太鼓) ラップトップ・オーケストラの数ある楽器の中の 一つをご紹介しました
(拍手) ありがとうございます
そしてこれらを組み合わせると このような演奏になります
ラップトップ・オーケストラの 多くの楽器を造った経験と この将来性のある 表現力の高い楽器を 多くの人に届けられたら という好奇心 そして すこしばかりの突拍子のなさ- これら三つの要素を合わせ- 2008年にSmuleというベンチャー企業の 共同創設者の一人となりました
Smuleの目標は 表現の手段となる携帯用の音楽の何かを作る事でした そして最初に造った楽器の一つが Ocarinaでした
少しだけお聞かせしましょう
Ocarinaは- - オカリナという古代フルートのような 楽器が基になっていて 4穴式 英ペンダント型の形状をしています マイクに息を吹きかけて 音をだします
機器内でChucKのちょっとした スクリプトが起動していて 息の強さを感知し 音の合成も行います
ビブラートの加減は加速度センサーに対応していて このようになります- 少しだけ演奏してみましょう バッハを少し
ここで メロディーの伴奏が聞こえますね
伴奏がメロディーを追いかけていきます その逆ではありません
時間をとって 表現を高めるところが探せるよう デザインされていて 暫くこのまま間を置いて 非常にドラマチックな表現にもできます そして準備が出来たら- この様な長い音には 終わりにビブラートを かけましょう 少し表現の深さが加わります
あぁ 終わりにするのに抜群の和音ですね
(拍手) ありがとうございます
さて Ocarinaに対するよい質問は 玩具なのか楽器なのかということだと思います おそらく両方でしょう ですが私にとって もっと重要なことは 表現力が豊かかどうかという事です
そして同時に この様な楽器を作ることは 演奏方法に対する テクノロジーの役割と立場を 問いかけている思います
例えば それほど昔ではない ほんの百年ほど前- 人類史上そんなに昔ではありません- 当時家族で 一緒に演奏することが 一般的な娯楽でした
現在あまり行われて いないと思います
当然ですが ラジオや録音媒体の前です
この百年 テクノロジーの発展で 私達はリスナーや消費者として より音楽と接していますが 演奏する頻度は これまでより
少なくなっていると思います 何故でしょう
再生ボタンを押すことが簡単すぎるからかもしれません
音楽鑑賞がすばらしいことであると同時に 演奏する事もそれ特有の 楽しみがあります
私が行うこの取り組みの 目標の一つは 少しだけ私達を昔の時代に戻すような事です
これが目標の一つだとするともう一つは 未来を見つめ 技術によって可能になる まだ開発されていない新しいタイプの楽器を作り 最終的に 人の演奏方法を変えることです
ここで一つ例をご紹介しましょう これはOcarinaの機能で
地球を表わしていて 他のOcarinaユーザーが iPhoneに息を吹きかけて 演奏しているのを聞くことができます
これはテキサスの「G.I.R」さん ロサンゼルスの「R.I.K.」さん 今日は3文字の名前が続きますね
皆さん素晴しい演奏をしています ミニマル・ミュージックの様な演奏ですね
このアイデアは テクノロジーが前面的に出るべきではない というところから来ていて そして -- この事を考え始めて
最初に浮かんだ事は 何処かで誰かが音楽を奏でている これは些細な事だが 重要な人との繋がりの きっかけであり おそらくテクノロジーがそれを可能に出来るであろうと
最後の例は 私が気に入っている例ですが 日本で2011年地震と津波災害の 余波が残る中 一人の女性が私達のアプリを通して 共に『Lean on Me』を歌ってくれる人を 募りました
これは他のユーザー若しくはグループユーザーの パフォーマンスに 自分の声を追加できる アプリで ある意味 彼女は 見知らぬ人々の世界規模の特別合唱団を作り 数週間のうちに 数千もの人が これに参加したしのです ごらんの通り 人々が世界中から参加して これらのラインが一点に合流しています
一番最初に歌が歌われた場所 東京です
そして これが千人が集まった音です
千人の声です
♪人生の中では時々 ♪ ♪苦しい事や悲しいことがあるけれど ♪ ♪でもよく考えれば ♪ ♪明日があるじゃないか ♪ ♪私を頼って ♪ ♪くじけそうな時は♪ ♪私はあなたの友達♪ ♪あなたが前を向けるよう手助けをしたい♪ ♪いつかは♪ ♪私だって♪ ♪誰かの頼りが必要な時が来るのだから♪
♪私を頼って ♪ これはコンピュータ音楽でしょうか?
(拍手) コンピュータ音楽でしたか?
まぁ そうですね コンピュータ無しでは この様な事は出来ませんでした
ですが同時に人々の合唱です 今のところ私が本質的にお答えしたのは 私が何故このようなことを行っているかという事ですので 最初の質問に戻りましょう コンピュータ音楽とは何か?
ここで重要な事は 少なくとも私には コンピュータ音楽とは コンピュータが中心ではないという事です
人が中心なのです
どうテクノロジーを使って 考え方や 行動 演奏方法 そしておそらく音楽を通しての 人の繋がり方までもを どう変えることが出来るかという事
そう言うことを含めて 私は コンピュータ音楽と言いたいと思います ご清聴ありがとうございました | Now, a number of people just stop talking to me right then and there, and the rest who are left usually have as if to say, what does that mean?
And I feel like I'm actually depriving them of information by telling them this, at which point I usually panic and spit out the first thing that comes to my mind, which is, I have no idea what I'm doing.
Which is true.
That's usually followed by a second thought, which is, whatever it is that I'm doing, I love it.
And today, I want to, well, share with you something I love, and also why.
And I think we'll begin with just this question: What is computer music?
And I'm going to try to do my best to provide a definition, maybe by telling you a story that goes through some of the stuff I've been working on.
And the first thing, I think, in our story is going to be something called ChucK.
Now, ChucK is a programming language for music, and it's open-source, it's freely available, and I like to think that it crashes equally well on all modern operating systems.
And instead of telling you more about it, I'm just going to give you a demo.
By the way, I'm just going to nerd out for just a few minutes here, so I would say, don't freak out.
In fact, I would invite all of you to join me If you've never written a line of code before in your life, do not worry.
I'll bet you'll be able to come along on this.
First thing I'm going to do is to make a sine wave oscillator, and we're going to called the sine wave generator "Ge."
And then we're going to connect "Ge" to the DAC.
Now this is kind of the abstraction for the sound output on my computer. Okay?
So I've connected myself into the speaker.
Next, I'm going to say my frequency is 440 hertz, and I'm going to let time advance by two seconds through this operation.
All right, so if I were to play this -- — you would hear a sine wave at 440 hertz for two seconds.
Okay, great. Now I'm going to copy and paste this, and then just change some of these numbers, 220.5, 440 I shall leave it as that, and .5 and 880.
By doubling the frequency, we're actually going up in successive octaves, and then we have this sequence -- — of tones.
Okay, great, now I can imagine creating all kinds of really horrible single sine wave pieces of music with this, but I'm going to do something that computers are really good at, which is repetition.
I'm going to put this all in a while loop, and you actually don't need to indent, but this is purely for aesthetic reasons.
It's good practice.
And when we do this — — that's going to go on for a while.
In fact, it's probably not going to stop until this computer disintegrates.
And I can't really empirically prove that to you, but I hope you'll believe me when I say that.
Next, I'm going to replace this 220 by math.random2f.
I'm going to generate a random number to the frequency of me.
And I'm going to do this every half a second.
Let's do this every 200 milliseconds.
One hundred.
All right.
At this point, we've reached something that I would like to think of as the canonical computer music.
This is, to me, the sound that mainframes are supposed to be making when they're thinking really hard.
It's this sound, it's like, the square root of five million.
So is this computer music?
Yeah, I guess by definition, it's kind of computer music.
It's probably not the kind of music you would listen to cruising down the highway, but it's a foundation of computer-generated music, and using ChucK, we've actually been building instruments in the Stanford Laptop Orchestra, based right here at Stanford Center for Computer Research in Music and Acoustics.
Now the Laptop Orchestra is an ensemble of laptops, humans and special hemispherical speaker arrays.
Now the reason we have these is so that for the instruments that we create out of the laptop, we want the sound to come out of somewhere near the instrument and the performer, kind of much like a traditional, acoustic instrument.
Like, if I were to play a violin here, the P.A. system, but from the artifact itself.
So these speakers are meant to emulate that.
In fact, I'm going to show you how we actually built them.
The first step is to go to IKEA and buy a salad bowl.
This is an 11-inch Blanda Matt.
That's the actual name, and I actually use one of these to make salad at home as well, I kid you not.
And the first step is you turn it upside down, and then you drill holes in them, six holes per hemi, and then make a base plate, along with amplifiers in the enclosure, and you put that all together and you have these hemispherical speaker arrays.
Add people, add laptops, you have a laptop orchestra.
And what might a laptop orchestra sound like?
Well, let me give you a demonstration of about 200 instruments we've created so far for the Laptop Orchestra.
And what I'm going to do is actually come over to this thing.
This thing I have in front of me actually used to be a commodity gaming controller called a Gametrak.
This thing actually has a glove you can put on your hands.
It's tethered to the base, and this will track the position of your hands in real time.
It was originally designed as a golfing controller to detect the motion of your swing.
commercial non-success, at which point they slashed prices to 10 dollars, at which point computer music researchers said, "This is awesome!
We can prototype instruments out of this."
one of many, and this instrument is called "Twilight," and it's meant to go with this metaphor of pulling a sound out of the ground.
So let me see if this will work.
And put it back.
And then if you go to the left, right, it sounds like an elephant in pain.
This is a slightly metallic sound.
Turn it just a bit.
It's like a hovering car.
Okay.
This third one is a ratchet-like interaction, so let me turn it up.
So it's a slightly different interaction.
The fourth one is a drone.
And finally, let's see, this is a totally different interaction, this giant invisible drum sitting right here on stage, and I'm going to bang it.
So there we go, so that's one of many instruments in the Laptop Orchestra.
Thank you.
And when you put that together, you get something that sounds like this.
of building a lot of instruments for the Laptop Orchestra, and I think from the curiosity of wondering, what if we took these hopefully expressive instruments and we brought it to a lot of people, plus then a healthy bout of insanity — put those three things together — led to me actually co-founding a startup company in 2008 called Smule.
Now Smule's mission is to create expressive, mobile music things, and one of the first musical instruments we created is called Ocarina.
And I'm going to just demo this for you real quick.
So Ocarina — — is based on this ancient flute-like instrument called the ocarina, and this one is the four-hole English pendant configuration, and you're literally blowing into the microphone to make the sound.
And there's actually a little ChucK script running in here that's detecting the strength of your blowing and also synthesizing the sound.
And vibrato is mapped to the accelerometer, so you can get — All right. So let me play a little ditty for you, a little Bach.
And here, you'll hear a little accompaniment with the melody.
The accompaniment actually follows the melody, not the other way around.
to let you take your time and figure out where your expressive space is, and you can just hang out here for a while, for a really dramatic effect, if you want, and whenever you're ready — And on these longer notes, I'm going to use more vibrato towards the end of the notes to give it a little bit more of an expressive quality.
Huh, that's a nice chord to end this excerpt on.
Thank you.
So I think a good question to ask about Ocarina is, is this a toy or it an instrument? Maybe it's both, but for me, I think the more important question is, is it expressive?
And at the same time, I think creating these types of instruments asks a question about the role of technology, and its place for how we make music.
Apparently, for example, not that long ago, like only a hundred years ago — that's not that long in the course of human history — families back then used to make music together as a common form of entertainment.
I don't think that's really happening that much anymore.
You know, this is before radio, before recording.
In the last hundred years, with all this technology, we now have more access to music as listeners and consumers, but somehow, I think we're making less music than ever before.
I'm not sure why that would be.
Maybe it's because it's too easy just to hit play.
And while listening to music is wonderful, there's a special joy to making music that's all its own.
And I think that's one part of the goal of why I do what I do is kind of to take us back to the past a little bit. Right?
Now, if that's one goal, the other goal is to look to the future and think about what kind of new musical things can we make that we don't perhaps yet have names for that's enabled by technology, but ultimately might change the way that humans make music.
And I'll just give you one example here, and this is Ocarina's other feature.
This is a globe, and here you're actually listening to other users of Ocarina blow into their iPhones to play something.
This is "G.I.R." from Texas, "R.I.K." I don't know why it's these three-letter names today, Los Angeles.
They're all playing pretty, somewhat minimal music here.
And the idea with this is that, well, technology should not be foregrounded here, and — — we've actually opened this up.
The first thought is that, hey, you know there's somebody somewhere out there playing some music, and this is a small but I think important human connection to make that perhaps the technology affords.
As a final example, and perhaps my favorite example, is that in the wake of the 2011 earthquake and tsunami disaster in Japan, a woman reached out in one of our singing apps on a version of "Lean on Me."
Now, in these apps, there's this thing that allows any user to add their voice to an existing performance by any other user or group of users, so in some sense, she's created this kind of global ad hoc corral of strangers, and within weeks, thousands of people joined in on this, and you can kind of see people coming from all around the world and all these lines converging on the origin
where the first rendition of the song was sung, and that's in Tokyo.
And this is what it sounds like when there's 1,000 people.
This is 1,000 voices.
♪ Sometimes in our lives ♪ ♪ We all have pain, we all have sorrow ♪ ♪ But if we are wise ♪ ♪ We know that there's always tomorrow ♪ ♪ Lean on me ♪ ♪ When you're not strong ♪ ♪ And I'll be your friend ♪ ♪ I'll help you carry on ♪ ♪ For it won't be long ♪ ♪ Till I'm gonna need ♪ ♪ Somebody to lean on ♪
♪ Just lean on — ♪ Is this computer music?
Was that computer music?
Yeah, I guess so; it's something that you really couldn't have done without computers.
But at the same time, it's also just human, and I think what I've essentially answered so far is maybe why I do the stuff that I do, and let's just finally return to the first question: What is computer music?
And I think that the catch here is that, at least to me, computer music isn't really about computers.
It is about people.
It's about how we can use technology to change the way we think and do and make music, and maybe even add to how we can connect with each other through music.
And with that, I want to say, this is computer music, and thank you for listening. | {
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彼女達の友情の絆は強く 戦場においても勇敢でした それは当時の本格的な 戦場での体験だけでなく 歴史的な意味合いもありました それは当時の本格的な 戦場での体験だけでなく 女性の地上戦への参戦が禁じられており アメリカ人もその存在を知らなかったのです
きっかけは特殊部隊リーダー 米軍で様々な試練をくぐり抜けた 男性の言葉でした 「この戦争を遂行するために 女性が必要だ」
「戦争を終結させるには 敵を殺すだけではだめなのだ」
「幅広い知識と理解が必要だ」
ご存知の通り コミュニティや家庭での出来事を 理解したいなら 南アフガニスタンであろうが 南カリフォルニアであろうが
女性から聞くことです しかし保守主義で伝統的な社会のアフガニスタンでは 男性は女性に声をかけることはできなかったのです
これが大変な失礼なことだからです だから 女性兵が必要でした
当時の戦況で陸海の特殊部隊と 協働するために集められる女性たちは 当時の戦況で陸海の特殊部隊と 協働するために集められる女性たちは アメリカ軍のうち5%未満しか経験しない 特殊な戦いに臨むことになります
5%未満ですよ
募集が始まりました
「女性兵士募集 歴史を作ろう
アフガニスタンで戦う 特殊部隊員」
これは2011年のことで
アラバマ州からアラスカ州まで 選りすぐりのメンバーで 力を合わせ 価値あることを成し遂げ 国の役に立ちたい 女性達が応募してきました
彼女達にとって 政治的でないものの 意味のある任務でした
特殊任務の最前線への 枠をかけて競うために ノースカロライナに集まった女性達は 今まで見たこともないようなコミュニティを たちまち形成しました
多くの女性達は勇敢で適合力があり 何かを変えようとしてました
女性であることを 申し訳なく思う必要はなく むしろ歓迎するべきことでした
ノースカロライナで 突然分かったことは 自分達と同じような 女性がたくさんいることでした
一人がこう言いました 「周りを見て動物園に麒麟が 2頭以上いることに気付いたようなものだ」
この素晴らしいチームに キャシーは所属していました 彼女は予備役将校の訓練団に属し 女性学を副専攻し 1人何役もこなす若い女性です
トリスタンは陸軍士官学校のトリックスターで いつも靴下を履かず走ったり 行進したりしていので 靴の臭いを嗅げばお分りのはずです
ハイジに似ているアンバーは 歩兵隊へ入隊したいと思っていましたが 女性の入隊は認められていなかったので 諜報部員になることを決めました
彼女はボスニアで勤務した後 ペンシルベニア州でFBIに協力し 麻薬組織撲滅に参画しました
ケイトは4年間ずっと 高校アメフトの選手でした ケイトは4年間ずっと 高校アメフトの選手でした 実は合唱部に所属するため 1年で辞めたかったのですが 実は合唱部に所属するため 1年で辞めたかったのですが 「女子生徒にアメフトは無理」と 男子生徒に言われると ケイトは後輩のために クラブに残ることを決めました ケイトは後輩のために クラブに残ることを決めました
性別により 運命付けられる部分もありますが キャシーは以前こう言っていました 「女性が気高いことをするのは難しい」
でも今回 国家にとって 重要なミッションを 選りすぐりのメンバーと 一緒に実行する機会がありました 「女性にもかかわらず」ではなく 「女性だからこそ」なのです
この女性のチームは多くの点で 一般的な女性で
お化粧もしますし 実際トイレでアイメイクの話をして 絆を深めました
彼女達は防弾チョッキも着ます
約20キロの荷物を背中に背負って 軍事行動のためヘリに乗り 基地に戻ると 『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』 という映画を見ました
彼女達はスパンクスというものも着ています 男性の体型に合わせた制服は 小さくていい部分が大きく 大きく作ってほしい部分が 小さくなっていたからです
イラク戦争従事者のレーンは ー画像の左あたりにいますがー 彼女はアマゾンでスパンクスを注文し 基地まで配達してもらったので 毎晩 任務に出かける時 体に合ったズボンが穿けました
彼女達はアフガニスタンや 様々な所属基地から ビデオ会議をするため集まりました 議題は数少ない女性兵士が担う 職務についてです 議題は数少ない女性兵士が担う 職務についてです
冗談も言いますし うまく行ったことや行かなかったこと 学んだことや改善することなどを 話し合いました
特殊任務の最前線で働く女性兵士から 普通の女性に戻って話したのでした 例えば女性用トイレ補助具で 男性みたいに立って 小用を足すための道具ですが ただし狙いの正確さは 40%くらいと言われています
彼女達はながら族なのです
彼女達は勇敢でありながら 女性的でもあるのです
マスカラもしながら 防弾チョッキも着ます
クロス・フィット・トレーニングも クロス・ステッチも好きです
ヘリから飛ぶことが好きながら クッキーを焼いたりすることも好きです
彼女達は日々両立しているのです 彼女達はこれを戦場に持って行きました
死ぬか生きるかの戦場で忘れてはいけないことは 女性として最前線に行ったのだとしても 一人前の兵士でなければならないことです
アンバーが夜の任務のため出かけて 家の中にいる女性達と話している時 その家に入って来る アフガニスタン軍とアメリカ軍を狙う 狙撃手がいることに気付きました
また別の夜 トリスタンは 部隊が待機している家の周りに 爆弾の部品が置いてあることに気付きました 事実 爆弾はそこから その晩の目的地までの経路ぞいに 置かれていました さらに別の夜 別の部隊の女性兵士は
明らかに能力を疑ってかかるメンバーに対して 赤ちゃんの湿ったオムツの中に隠された 諜報機器を見つけて 実力を示しました 別の部隊にいるイサベルという女性兵士は ある夜
部隊が探していたものを見つけ 殊任務歩兵部隊員の インパクトアワードを受賞しました 彼女がその場にいなければ その夜探していた物や人を 発見できなかったのが受賞理由です
様々な夜の活動を通し 自分達だけでなく 自分たちの後継者や
一緒に働いている男性兵士に対しても 能力を認めさせました
男性の成功を支えた女性の話は多いですが
彼女達の場合は 男性達が彼女たちの成功を願って 支えていたのです
彼女達を訓練した陸軍特殊部隊隊長は 12回出征しています
彼は女性を訓練するよう命じられた時 どうなることかと途方に暮れたそうです
2011年の夏 彼女達の訓練を開始してから8日目に 「歴史を目撃しているのだ 伝説のタスキーギ・エアメンかもしれない」
と彼は同僚に言いました
(拍手) 女性部隊の中心にいる女性は 「私たちのトップ」と呼ばれていました
彼女は元気のいい 小柄で金髪の女性です かろうじて160cmに届く程度です
でも彼女は GIジェーンとしての全てと マーサ・スチュワートの魂を持っています
彼女は夫のために料理を 用意することが大好きです ケント州の予備役訓練隊で知り合った夫は 彼女がベストを尽くし 自信を持って 自分の限界に挑めるように 応援してくれます
彼女は20kg強の荷物を背負い マラソンすることも 兵士の仕事も大好きです
彼女はカンダハールの事務所には パン焼き機があり ぶどうパンを焼いてから 体育館に行って 懸垂を25-30回していました
ブーツが欲しかったり 手料理を食べたくなると 皆は彼女に電話するのです
彼女は自慢話を絶対に口にしません 彼女の行動を見れば分かります
彼女は安易で間違ったことより 困難でも正しいことを選ぶ人として有名です
また 約5mの縄を登るとき 腕力だけで登ります そして登った後謝るのです 特殊部隊の訓練では 縄登りは両手両足を使うとされていたからです 女性兵士の中には帰国して 自分の体験を語る者もいれば
帰国できない者もいます
2011年10月22日 アシュリー・ホワイト中尉は 特殊部隊の2人の隊員 クリストファー・ホーヌスと クリソトファー・ドメイと 共に殺害されました
彼女の死により 秘密裏に行われてきた計画が 公になりました
結局のところ 女性が戦場に行くことのタブー視は 根深く
彼女の葬式のとき 米軍特殊部隊長が参列し アシュリー・ホワイトの勇気だけではなく 部隊の女性兵士全員の勇気を 称えました
「誤解がないように言います この女性達は兵士です 彼女達は米軍での女性の役割に関し 新たな一章を書き上げました」
アシュリーの母親は教員助手で スクールバスの運転手ですが 副業ではクッキーを焼いています
母親は深い悲しみとプライドの入り混じった どうしようもない日々を あまり覚えていませんが
ある出来事だけを覚えています
見知らぬ女性が女の子を連れてやってくると こう言ったのです 「ホワイトさん 私は娘を連れてきました それは英雄は何かを 娘に理解してほしいからです
そして女性でも英雄になれることを 娘に知ってほしいからです」
称えられなかった女性の英雄を 賞賛する時代なのです 彼女達にはガッツや 思いやりや根性があり 自分の限界を超えていくのです
女性同士の固い絆が時を超え 歴史となることは非常に稀なことです そして後輩のために道を切り拓き 先人の偉業を重んじるのです
彼女達は様々な兵士がいることを証明しました
女性も英雄になれるのです
どうもありがとうございました | This was a group of women whose friendship and valor was cemented not only by what they had seen and done at the tip of the spear, but by the fact that they were there at a time when women -- officially, at least -- remained banned from ground combat, and America had no idea they existed.
This story begins with Special Operations leaders, some of the most tested men in the United States military, saying, "We need women to help us wage this war."
"America would never kill its way to the end of its wars," it argued.
"Needed more knowledge and more understanding."
And as everyone knows, if you want to understand what's happening in a community and in a home, whether you're talking about Southern Afghanistan, or Southern California.
But in this case, men could not talk to women, because in a conservative and traditional society like Afghanistan, that would cause grave offense.
So you needed women soldiers out there.
That meant, at this time in the war, that the women who would be recruited to serve alongside Army Rangers and Navy SEALs, would be seeing the kind of combat experienced by less than five percent of the entire United States military.
Less than five percent.
So the call went out.
"Female soldiers: Become a part of history.
Join Special Operations on the battlefield in Afghanistan."
This is in 2011.
And from Alabama to Alaska, a group of women who had always wanted to do something that mattered alongside the best of the best, and to make a difference for their country, answered that call to serve.
And for them it was not about politics, it was about serving with purpose.
And so, the women who came to North Carolina to compete for a spot on these teams which would put women on the Special Operations front lines, landed and found very quickly a community, the likes of which they had never seen.
Full of women who were as fierce and as fit as they were, and as driven to make a difference.
They didn't have to apologize for who they were, and in fact, they could celebrate it.
And what they found when they were there was that all of a sudden, there were lots of people like them.
As one of them said, "It was like you looked around and realized there was more than one giraffe at the zoo."
Among this team of standouts was Cassie, a young woman who managed to be an ROTC cadet, a sorority sister and a Women's Studies minor, all in one person.
Tristan, a West Point track star, who always ran and road marched with no socks, and had shoes whose smell proved it.
Amber, a Heidi look-alike, who had always wanted to be in the infantry, and when she found out that women couldn't be, she decided to become an intel officer.
She served in Bosnia, and later helped the FBI to bust drug gangs in Pennsylvania.
And then there was Kate, who played high school football all four years, and actually wanted to drop out after the first, to go into the glee club, but when boys told her that girls couldn't play football, she decided to stay for all the little girls who would come after her.
For them, biology had shaped part of their destiny, and put, as Cassie once said, "everything noble out of reach for girls."
And yet, here was a chance to serve with the best of the best on a mission that mattered to their country, not despite the fact that they were female, but because of it.
This team of women, in many ways, was like women everywhere.
They wore makeup, and in fact, they would bond in the ladies' room over eyeliner and eye pencil.
They also wore body armor.
They would put 50 pounds of weight on their backs, and board the helicopter for an operation, and they would come back and watch a movie called "Bridesmaids."
They even wore a thing called Spanx, because, as they found very quickly, the uniforms made for men were big where they should be small, and small where they should be big.
So Lane, an Iraq War veteran -- you see her here on my left -- decided she was going to go on Amazon and order a pair of Spanx to her base, so that her pants would fit better when she went out on mission each night.
These women would get together over video conference from all around Afghanistan from their various bases, and they would talk about what it was like to be one of the only women doing what they were doing.
They would swap jokes, they would talk about what was working, what wasn't, what they had learned to do well, what they needed to do better.
And they would talk about some of the lighter moments of being women out on the Special Operations front lines, including the Shewee, which was a tool that let you pee like a guy, although it's said to have had only a 40 percent accuracy rate out there.
These women lived in the "and."
They proved you could be fierce and you could be feminine.
You could wear mascara and body armor.
You could love CrossFit, and really like cross-stitch.
You could love to climb out of helicopters and you could also love to bake cookies.
Women live in the and every single day, and these women brought that to this mission as well.
On this life and death battlefield they never forgot that being female may have brought them to the front lines, but being a soldier is what would prove themselves there.
There was the night Amber went out on mission, and in talking to the women of the house, for the Afghan and American forces who were waiting to enter the home.
Another night it was Tristan who found out that there were pieces that make up explosives all around the house in which they were standing, and that in fact, explosives lay all the way between there and where they were about to head that night.
There was the night another one of their teammates proved herself to a decidedly skeptical team of SEALs, when she found the intel item they were looking for wrapped up in a baby's wet diaper.
And there was the night that Isabel, another one of their teammates, and received an Impact Award from the Rangers who said that without her, the things and the people they were looking for that night would never have been found.
That night and so many others, they went out to prove themselves, not only for one another, but for everybody who would come after them.
And also for the men alongside whom they served.
We talk a lot about how behind every great man is a good woman.
And in this case, next to these women stood men who wanted to see them succeed.
The Army Ranger who trained them had served 12 deployments.
And when they told him that he had to go train girls, he had no idea what to expect.
But at the end of eight days with these women in the summer of 2011, he told his fellow Ranger, "We have just witnessed history.
These may well be our own Tuskegee Airmen."
At the heart of this team was the one person who everyone called "the best of us."
She was a petite blonde dynamo, who barely reached five-foot-three.
And she was this wild mix of Martha Stewart, and what we know as G.I. Jane.
She was someone who loved to make dinner for her husband, her Kent State ROTC sweetheart who pushed her to be her best, and to trust herself, and to test every limit she could.
She also loved to put 50 pounds of weight on her back and run for miles, and she loved to be a soldier.
She was somebody who had a bread maker in her office in Kandahar, and would bake a batch of raisin bread, and then go to the gym and bust out 25 or 30 pull-ups from a dead hang.
She was the person who, if you needed an extra pair of boots or a home-cooked dinner, would be on your speed dial.
Because she never, ever would talk to you but let her character speak through action.
She was famous for taking the hard right over the easy wrong.
And she was also famous for walking up to a 15-foot rope, climbing it using only her arms, and then shuffling away and apologizing, because she knew she was supposed to use both her arms and her legs, Some of our heroes return home to tell their stories.
And some of them don't.
And on October 22, 2011, First Lieutenant Ashley White was killed alongside two Rangers, Christopher Horns and Kristoffer Domeij.
Her death threw this program built for the shadows into a very public spotlight.
Because after all, the ban on women in combat was still very much in place.
And at her funeral, the head of Army Special Operations came, and gave a public testimony not just to the courage of Ashley White, but to all her team of sisters.
"Make no mistake about it," he said, "these women are warriors, and they have written a new chapter in what it means to be a female in the United States Army."
Ashley's mom is a teacher's aide and a school bus driver, who bakes cookies on the side.
She doesn't remember much about that overwhelming set of days, in which grief -- enormous grief -- mixed with pride.
But she does remember one moment.
A stranger with a child in her hand came up to her and she said, "Mrs. White, I brought my daughter here today, because I wanted her to know what a hero was.
And I wanted her to know that heroes could be women, too."
It is time to celebrate all the unsung heroines who reach into their guts and find the heart and the grit to keep going and to test every limit.
This very unlikely band of sisters bound forever in life and afterward did indeed become part of history, and they paved the way for so many who would come after them, as much as they stood on the shoulders of those who had come before.
These women showed that warriors come in all shapes and sizes.
And women can be heroes, too.
Thank you so much. | {
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でも簡単な解決法があるのかも それはもっと目を使うことです
情報の可視化は 重要なパターンや関連を見えるようにし 情報にデザインを与えることで 意味が引き立ち ストーリーが伝わり 重要な情報だけに集中できるようにします
そうできないなら 単に小奇麗な見かけにすぎません
例を見てみましょう
これは「ビリオンダラーグラム」です この画像は メディアの伝える 何億ドルがどうのというニュースへの 苛立ちから生まれました
そういう数字は文脈なしには意味がありません パイプラインに5千憶ドル 戦争に2百億ドル
ピンときません 分かるための 唯一の方法は 可視化と相対化です
それで私はたくさんのデータを 様々な情報源から集め 額に応じて四角の大きさを変えて描いてみました
色はお金の用途を表しています
紫色は軍事 赤は寄付 緑は所得という具合です
すぐに気づくのは 数字に対して 違った関係ができるということです
文字通り見えるようになります
さらに重要なのは 複数のニュースに 分散していた数字の間にある パターンや関連が見えるようになることです
いくつか面白い部分を拾ってみましょう
この緑の箱は OPECの収入で 年に7,800億ドルです
この隅の小さなのは 30億ドル 気候変動のための基金です
アメリカ人はものすごく気前がよく 慈善のため 年に3,000億ドル以上寄付します 一方 主要工業国17カ国の 国外援助の総額は 1,200億ドルに過ぎません
それからイラク戦争は 2003年には600億ドルかかると
予測されていましたが 少しばかり膨らんだようです イラク アフガン戦争は 累計で3兆ドルかかっています この素敵な絵があるので 別な数字を追加もできます
何か新しい数字が出てきたとき たとえば
アフリカの西欧への負債額は この絵ではどれくらいになるのか?
見てみましょう
これです 2,270億ドルがアフリカの借金です
では最近あった金融危機は この絵ではどうなるのか?
世界に対し どれだけ負担になったのでしょう?
ドゥーシュ! これだけの額のお金に ぴったりの効果音だと思います 11兆9,000億ドル
情報は 可視化することによって 目で探究できる景観に 変えることができるのです 情報の地図と言ってもいい
そして情報の中で迷子になったら 情報の地図は役に立つことでしょう
違う景観をお見せしましょう
世界の恐怖の景観は どのようなものになるか想像してください
見てみましょう
このモグラ塚みたいなのは 時系列で表した世界のメディアの―
狂乱です 後ですぐご説明しますが
高い山は メディアを賑わした 特定の恐怖の高まりを表しています
いくつか見てみましょう
このピンクは豚インフルエンザ
これは鳥インフルエンザ
茶色っぽいのがSARS 覚えてますか?
それに2000年問題 ひどい災難でしたね
この小さな緑の山は 小惑星の衝突です
夏になると 殺人蜂が話題になります
これは メディアがその時々に 伝えてきた恐怖なのです
ジャーナリストとして私が惹かれるのは 隠れたパターンを見つけ出すことです
このデータには 面白い奇妙なパターンが隠れており 可視化によって明らかにできます
それをハイライトしてみましょう
この線は 暴力的ビデオゲームへの恐れを表しています
ご覧のように 奇妙な規則的パターンがあります 毎年2つの山があります
よく見ると 毎年 同じ月に現れているのが分かります
なぜなのでしょう?
11月は クリスマス向けの新作が 出てくる時期で その内容に対して懸念が現れます
でも4月はビデオゲームで 特に意味のある月ではありません
なぜ4月なのでしょう?
実は1999年4月に コロンバイン高校 銃乱射事件があり それ以来メディアは毎年 この時期に恐怖を呼び起こし 人々の心理に静かに浸透しているのです
回顧があり 何周年があり 裁判があり 模倣犯の乱射事件まであります それが恐怖を引き起こすのです
パターンが違うところがあります
ここにギャップがあり それが 他のニュースすべてに影響しています
ここにギャップがあるのはなぜか?
いつ始まっているかというと 2001年9月で 非常に大きな恐怖の対象が ここで生じています
私がデータジャーナリストとして 1年ほど働いてきた中で 絶えず耳にした言葉があります 「データは新しい石油だ」
データはあまねく存在する資源で それを形作ることで新たなイノベーションや洞察を得ることができ 身の回りにあって 容易に掘り出すことができます
最近は とくにメキシコ湾の近くに住んでいるなら 石油というのは あまり好ましいメタファではありません 少し変えて こう言いいましょう 「データは新しい土壌だ」と
私にはそれが豊かで創造的な媒体だと思えるからです
長年に渡り 私たちは ネット上で膨大な量の 情報とデータの種を蒔き ネットワークと接続性で潤し 無報酬の人々や政府の力で耕してきました
メタファを少し広げすぎたかもしれませんが
しかしこれは本当に豊かな媒体なのです そしてインフォグラフィックスや データ可視化というのは この情報という媒体に咲いた花のように感じられます
直接見ている分には たくさんの数字や バラバラな事実にすぎませんが
ある種の仕方で弄び 取り組むことで 面白いものが現れ 異なったパターンが見出されます
これを見てください
何のデータかお分かりになりますか?
年に2回 大きな山があります 復活祭の時と クリスマスの2週間前です 毎週月曜に小さな山があり 夏の間は平らです
答えを聞いてみましょう
チョコレートですか
チョコレートなら食べたくなるかもしれません
他にありませんか?
ショッピング
ショッピング療法は効くかもしれませんね
病欠 確かに休みたくもなるでしょう
見てみましょう
この情報は リー バイロンと私が 「破局」のFacebookステータス更新データを 1万件集めたもので このようなパターンが見つかりました みんな春休みに関係を清算し 月曜に不首尾な週末のことを打ち明け 夏の間は独り身でいます そして最も低くなるのはもちろんクリスマスです
誰がそんなことするでしょう?
ですから今や空前の量の データがあるのです
それを適切な質問 適切な方法で処理すれば 興味深いものが現れるのです
だから情報は美しいのです
それで自分も美しくできないかと思いました
これは視覚的にした私の履歴書です
うまくいったかは 何とも言えません
角々していて 色も冴えません
でも私は伝えたいことがあったんです
私は最初プログラマで それからライターを20年ほど 出版、オンライン、広告とやって ほんの最近になって デザインを始めました
デザイン学校に行ったことはなく
アートの類を学んだこともありません
ただやりながら覚えていったのです
そしてデザインを始めた時 奇妙なことに気付きました
私はデザインを理解していたのです すごい才能があるということではありません ただグリッドやスペースや アラインメントやタイポグラフィといったものに
敏感だったのです 長い間メディアに触れることで デザインの基本が 気付かぬうちに身に付いていたのです
私は自分が特別だとは思いません
私たちはみんな毎日 情報デザインに晒されています
Webを通して私たちの目に流れこみます 私たちはみな視覚的な人間なのです 私たちはみな情報を
視覚的なものとして求めています 視覚情報には何か魔法のようなところがあって
苦もなく 文字通り流れ込んでくるのです
そして深い情報のジャングルに入り込んだとき 美しいグラフィックスや 愛らしい可視化データを見るとホッとします ジャングルの中で開けた場所に出たかのようです
こういうことに興味があったため デンマークの物理学者 ノーレットランダーシュの仕事に 辿り着きました コンピュータの単位で表した 感覚の帯域幅です
これは感覚を通して 毎秒流れ込む情報量です
視覚が最も速く
コンピュータネットワーク並の速さがあります
次が触覚で USBの速さがあります
それから聴覚と嗅覚は ハードディスクほどの速さです
そして哀れな味覚は ポケット電卓並の速さしかありません
この隅の赤い四角の部分で 全感覚の0.7%になります
だから大部分の情報は 視覚から流れ込むのです
気付かぬうちに
そして目というのは 色や形や パターンの変化に対し ものすごく敏感なのです
目はそれを好み 美しいと言うのです
それは目の言語なのです
目の言語を 心の言語である 言葉や数字や概念と組み合わせると 2つの言語が同時に語られ それぞれが互いに強め合うようになります
目が捕らえ 概念へと落ちるのです
そうやって2つの言語が 同時に機能するのです
この新しい種類の言語を使って ものの見方を変えることができます
ひとつ簡単な質問をしましょう 答えはすごく簡単です 軍事予算最大の国はどこか?
アメリカでしょうね
2008年でなんと 6,070億ドルです
すごく大きくて ほかの国々の軍事予算が まるまる収まります
ガブガブガブ
参考までに アフリカの負債額と イギリスの財政赤字額を 並べておきます
アメリカというのは 武力挑発的な 軍事マシンで 巨大な軍産複合体によって 世界を征服しようとしているという 見方に符号しているようです
でも本当にアメリカが軍事予算最大の国なのでしょうか?
というのもアメリカはとても裕福な国だからです
実際ものすごく裕福で 他の工業国 上位4か国の経済が すっぽり入るほど豊かなのです
だから軍事予算だって必然的に大きくなります
公平を期して視点を変え 別のデータセットを導入してみましょう GDP つまり国の所得です
GDP比では どこが最大になるか?
見てみましょう
様相がずいぶん変わりましたね
予想外の国が上に来ているんじゃないでしょうか アメリカは8位に落ちています
同じことが兵員数でもできます
兵員数が最も多い国は?
もちろん中国で 210万人います
中国というのは軍事国家で 大兵力を動員する気満々だと 思うかもしれません
しかしもちろん中国は膨大な人口を抱えています
だからさっきと同じことをすると 様相が大きく変わります 中国は124位に落ちるのです
別のデータも考慮するなら
むしろ小さな軍隊なのです ですから世界という文脈の中では
軍事予算のような絶対的な値は 全体像を与えてはくれないのです
そうあるべきほどには真実を伝えません
より完全な姿を見るためには 他のデータと関連した 相対的な数字が必要なのです それは私たちの見方を変えるでしょう 私の師である
ハンス ロスリングが言うように 「データセットでマインドセットを変える」のです
そうできたなら 行動もまた変えられるかもしれません
この図を見てください
私はちょっとした健康オタクです
サプリメントを飲んだり 健康に気を使っています しかし本当に効くのかわかりません
いつも相反する証拠があります
ビタミンCや ウィートグラスは 摂るべきなのか?
これは栄養補助食品に関する データを可視化したものです
このような図をバルーンレースと言います
上に行くほどそのサプリメントが 効くという証拠があるということです
円の大きさはGoogleヒット件数に基づく人気度です
ですから一目で有効性と 人気度の関係がわかります 証拠を等級づけることで 「価値あり」の 境界線を引くこともできます
この線より上のサプリメントは調べる価値があるでしょうが 下に付記した症状に対してのみ有効です そして線よりも下のサプリメントは おそらく調べる価値もないでしょう
この画像には膨大な労力がかかっています
生物医学データベースのPubMedから 1千件に上る研究を拾い出して まとめ 等級づけをしました
すごくストレスのたまる作業でした 私は本のために250の可視化画像を用意しましたが これには1か月もかかったのに 2ページにしかならなかったからです
しかしそれで分かったのは このような情報の可視化は 一種の知識圧縮だということです
膨大な量の知識や理解を 小さなスペースの中に 押し込めるということです
一度データを集めて整理したなら それを使って すごく気の利いたことができます
それで私はこれを対話的アプリにして ネット上で動的にデータを 可視化できるようにし ようやく「ああ よかった」と思えました
自動的に生成され
「心臓病に効くものだけ」 表示させることもできます
フィルタリングして
関心があるものだけ見られるのです
「いや 合成品はいらない ハーブと植物だけ見せてくれ」 すると天然原料のものだけになります
このアプリは データから生成されます
データはGoogle Docに格納されていて そのデータから生成されるのです
生きているデータの 生きている図なのです アップデートはすぐにできます
新しい証拠が出たら データを1行変えるだけ
ドゥーシュ! 画像が自動的に生成されます
気が利いているでしょう
生きているのです
可視化はデータや数字を 超えて行くことができます
私はアイデアやコンセプトに 情報可視化を適用するのが好きです これは政治の諸相を 可視化したもので 世の仕組みを理解しようとする 私の試みです アイデアはいかに 政府から社会や文化、家族、個人 その信条へと浸透していくのか どうフィードバックして サイクルが形成されるのか
この絵が気に入っているのは コンセプトから出来ていることで 我々の世界観を探究して 他の人の考えが どこから来ているのか 知る手がかりになるからです
すごくいかしてると思います これをデザインしていて
最も興奮させられたことが 何だったかというと 私はジャーナリストとして 左寄りの人間として 左側を右側よりも良いものに見せたかったのですが それができなかったことです 歪んだバイアスのかかった図になってしまうからです
本当の全体像を作り出すためには 右側の見方にも敬意を払う必要がありました 同時に不本意ながらも それらの資質が どれほど多く自分の中にもあるか気付いて 困惑し 居心地悪く感じました
でもそうひどくではありません 政治的な展望を見ることには 言われたり 聞くよう強要されるほど
圧迫を感じません 実際 これを見ていると 対立する視点を
気持ちよく持つことができます 視覚的なため
楽しくさえあります 私がワクワクするのは データが自分の見方をいかに変えるか 美しく愛らしいデータが心の流れを
いかに変えるか分かるときです まとめましょう デザインというのは 問題を解決し エレガントな解決法を提供することだと思えます そして情報のデザインというのは 情報の問題を解決するということです
現在私たちの社会には 情報の問題がたくさんあります 情報過多や飽和 信用や信頼の崩壊や 手に負えない懐疑主義 透明性の欠如 そして無関心さえも問題です
私は情報は面白すぎると気付きました
私を引き寄せる磁力のようなものがあります
情報の可視化はそういった問題への 即席の解決法を与えることができます
ひどいことを示す情報であろうと ビジュアルとしてはとても美しいものになり得ます
そして明快な理解や 単純な疑問への答えを 素早く手にできることもよくあります たとえばこれは 最近のアイスランドの火山噴火データです
CO2排出量が多いのはどちらか?
フライトをキャンセルされた飛行機か それとも火山か?
見てみましょう
データから分かるのは 火山は15万トン排出しましたが フライトをキャンセルされた飛行機は 飛んでいたら34万5千トン排出していたことです
だからこれは世界初のカーボンニュートラルな―
火山というわけです そしてこれは美しいものです どうもありがとうございました | And the good news is there might be an easy solution to that, and that's using our eyes more.
So, visualizing information, so that we can see the patterns and connections that matter and then designing that information so it makes more sense, or it tells a story, or allows us to focus only on the information that's important.
Failing that, visualized information can just look really cool.
So, let's see.
This is the $Billion Dollar o-Gram, and this image arose out of frustration I had with the reporting of billion-dollar amounts in the press.
That is, they're meaningless without context: 500 billion for this pipeline, 20 billion for this war.
It doesn't make any sense, so the only way to understand it is visually and relatively.
So I scraped a load of reported figures from various news outlets and then scaled the boxes according to those amounts.
And the colors here represent the motivation behind the money.
So purple is "fighting," and red is "giving money away," and green is "profiteering."
And what you can see straight away is you start to have a different relationship to the numbers.
You can literally see them.
But more importantly, you start to see patterns and connections between numbers that would otherwise be scattered across multiple news reports.
Let me point out some that I really like.
This is OPEC's revenue, this green box here -- 780 billion a year.
And this little pixel in the corner -- three billion -- that's their climate change fund.
Americans, incredibly generous people -- over 300 billion a year, donated to charity every year, given by the top 17 industrialized nations at 120 billion.
the Iraq War, predicted to cost just 60 billion back in 2003.
And it mushroomed slightly. Afghanistan and Iraq mushroomed now So now it's great because now we have this texture, and we can add numbers to it as well.
So we could say, well, a new figure comes out ... let's see African debt.
by the debt that Africa owes to the West?
Let's take a look.
So there it is: 227 billion is what Africa owes.
And the recent financial crisis, how much of this diagram might that figure take up?
What has that cost the world? Let's take a look at that.
Dooosh -- Which I think is the appropriate sound effect for that much money: 11,900 billion.
So, by visualizing this information, we turned it into a landscape that you can explore with your eyes, a kind of map really, a sort of information map.
And when you're lost in information, an information map is kind of useful.
So I want to show you another landscape now.
We need to imagine what a landscape of the world's fears might look like.
Let's take a look.
This is Mountains Out of Molehills, a timeline of global media panic.
So, I'll label this for you in a second.
But the height here, I want to point out, is the intensity of certain fears as reported in the media.
Let me point them out.
So this, swine flu -- pink.
Bird flu.
SARS -- brownish here. Remember that one?
The millennium bug, terrible disaster.
These little green peaks are asteroid collisions.
And in summer, here, killer wasps.
So these are what our fears look like over time in our media.
But what I love -- and I'm a journalist -- and what I love is finding hidden patterns; I love being a data detective.
And there's a very interesting and odd pattern hidden in this data that you can only see when you visualize it.
Let me highlight it for you.
See this line, this is a landscape for violent video games.
As you can see, there's a kind of odd, regular pattern in the data, twin peaks every year.
If we look closer, we see those peaks occur at the same month every year.
Why?
Well, November, Christmas video games come out, and there may well be an upsurge in the concern about their content.
But April isn't a particularly massive month for video games.
Why April?
Well, in April 1999 was the Columbine shooting, and since then, that fear has been remembered by the media and echoes through the group mind gradually through the year.
You have retrospectives, anniversaries, court cases, even copy-cat shootings, all pushing that fear into the agenda.
And there's another pattern here as well. Can you spot it?
See that gap there? There's a gap, and it affects all the other stories.
Why is there a gap there?
You see where it starts? September 2001, when we had something very real to be scared about.
So, I've been working as a data journalist for about a year, and I keep hearing a phrase all the time, which is this: "Data is the new oil."
Data is the kind of ubiquitous resource that we can shape to provide new innovations and new insights, and it's all around us, and it can be mined very easily.
It's not a particularly great metaphor in these times, especially if you live around the Gulf of Mexico, but I would, perhaps, adapt this metaphor slightly, and I would say that data is the new soil.
Because for me, it feels like a fertile, creative medium.
Over the years, online, we've laid down a huge amount of information and data, and we irrigate it with networks and connectivity, and it's been worked and tilled by unpaid workers and governments.
And, all right, I'm kind of milking the metaphor a little bit.
But it's a really fertile medium, and it feels like visualizations, infographics, data visualizations, they feel like flowers blooming from this medium.
But if you look at it directly, it's just a lot of numbers and disconnected facts.
But if you start working with it and playing with it in a certain way, interesting things can appear and different patterns can be revealed.
Let me show you this.
Can you guess what this data set is?
What rises twice a year, once in Easter and then two weeks before Christmas, has a mini peak every Monday, and then flattens out over the summer?
I'll take answers.
David McCandless: Chocolate.
You might want to get some chocolate in.
Any other guesses?
DM: Shopping.
Yeah, retail therapy might help.
DM: Sick leave. Yeah, you'll definitely want to take some time off.
Shall we see?
So, the information guru Lee Byron and myself, we scraped 10,000 status Facebook updates for the phrase "break-up" and "broken-up" and this is the pattern we found -- people clearing out for Spring Break, coming out of very bad weekends on a Monday, being single over the summer, and then the lowest day of the year, of course: Christmas Day.
Who would do that?
So there's a titanic amount of data out there now, unprecedented.
But if you ask the right kind of question, or you work it in the right kind of way, interesting things can emerge.
So information is beautiful. Data is beautiful.
I wonder if I could make my life beautiful.
And here's my visual C.V.
I'm not quite sure I've succeeded.
Pretty blocky, the colors aren't that great.
But I wanted to convey something to you.
I started as a programmer, and then I worked as a writer for many years, about 20 years, in print, online and then in advertising, and only recently have I started designing.
And I've never been to design school.
I've never studied art or anything.
I just kind of learned through doing.
And when I started designing, I discovered an odd thing about myself.
I already knew how to design, but it wasn't like I was amazingly brilliant at it, to the ideas of grids and space and alignment and typography.
It's almost like being exposed to all this media over the years had instilled a kind of dormant design literacy in me.
And I don't feel like I'm unique.
I feel that everyday, all of us now are being blasted by information design.
It's being poured into our eyes through the Web, we're all demanding a visual aspect to our information.
There's something almost quite magical about visual information.
It's effortless, it literally pours in.
And if you're navigating a dense information jungle, coming across a beautiful graphic or a lovely data visualization, it's a relief, it's like coming across a clearing in the jungle.
I was curious about this, so it led me to the work of a Danish physicist called Tor Norretranders, and he converted the bandwidth of the senses into computer terms.
So here we go. This is your senses, pouring into your senses every second.
Your sense of sight is the fastest.
It has the same bandwidth as a computer network.
Then you have touch, which is about the speed of a USB key.
And then you have hearing and smell, which has the throughput of a hard disk.
And then you have poor old taste, which is like barely the throughput of a pocket calculator.
And that little square in the corner, a naught .7 percent, that's the amount we're actually aware of.
So a lot of your vision -- the bulk of it is visual, and it's pouring in.
It's unconscious.
The eye is exquisitely sensitive to patterns in variations in color, shape and pattern.
It loves them, and it calls them beautiful.
It's the language of the eye.
If you combine the language of the eye with the language of the mind, which is about words and numbers and concepts, you start speaking two languages simultaneously, each enhancing the other.
So, you have the eye, and then you drop in the concepts.
And that whole thing -- it's two languages both working at the same time.
So we can use this new kind of language, if you like, to alter our perspective or change our views.
Let me ask you a simple question with a really simple answer: Who has the biggest military budget?
It's got to be America, right?
Massive. 609 billion in 2008 -- 607, rather.
So massive, in fact, that it can contain all the other military budgets in the world inside itself.
Gobble, gobble, gobble, gobble, gobble.
Now, you can see Africa's total debt there and the U.K. budget deficit for reference.
So that might well chime with your view that America is a sort of warmongering military machine, out to overpower the world with its huge industrial-military complex.
But is it true that America has the biggest military budget?
Because America is an incredibly rich country.
In fact, it's so massively rich that it can contain the four other top industrialized nations' economies inside itself, it's so vastly rich.
So its military budget is bound to be enormous.
So, to be fair and to alter our perspective, we have to bring in another data set, and that data set is GDP, or the country's earnings.
Who has the biggest budget as a proportion of GDP?
Let's have a look.
That changes the picture considerably.
Other countries pop into view that you, perhaps, weren't considering, and American drops into eighth.
Now you can also do this with soldiers.
Who has the most soldiers? It's got to be China.
Of course, 2.1 million.
that China has a militarized regime ready to, you know, mobilize its enormous forces.
But of course, China has an enormous population.
So if we do the same, we see a radically different picture.
China drops to 124th.
It actually has a tiny army when you take other data into consideration.
So, absolute figures, like the military budget, don't give you the whole picture.
They're not as true as they could be.
We need relative figures that are connected to other data so that we can see a fuller picture, and then that can lead to us changing our perspective.
As Hans Rosling, the master, my master, said, "Let the dataset change your mindset."
And if it can do that, maybe it can also change your behavior.
Take a look at this one.
I'm a bit of a health nut.
I love taking supplements and being fit, but I can never understand what's going on in terms of evidence.
There's always conflicting evidence.
Should I take vitamin C? Should I be taking wheatgrass?
This is a visualization of all the evidence for nutritional supplements.
This kind of diagram is called a balloon race.
So the higher up the image, the more evidence there is for each supplement.
And the bubbles correspond to popularity as regards to Google hits.
So you can immediately apprehend the relationship between efficacy and popularity, but you can also, if you grade the evidence, do a "worth it" line.
So supplements above this line are worth investigating, but only for the conditions listed below, and then the supplements below the line are perhaps not worth investigating.
Now this image constitutes a huge amount of work.
We scraped like 1,000 studies from PubMed, the biomedical database, and we compiled them and graded them all.
And it was incredibly frustrating for me because I had a book of 250 visualizations to do for my book, and I spent a month doing this, and I only filled two pages.
But what it points to is that visualizing information like this is a form of knowledge compression.
It's a way of squeezing an enormous amount of information and understanding into a small space.
And once you've curated that data, and once you've cleaned that data, and once it's there, you can do cool stuff like this.
So I converted this into an interactive app, so I can now generate this application online -- this is the visualization online -- and I can say, "Yeah, brilliant."
So it spawns itself.
And then I can say, "Well, just show me the stuff that affects heart health."
So let's filter that out.
So heart is filtered out, so I can see if I'm curious about that.
I think, "No, no. I don't want to take any synthetics, I just want to see plants and -- just show me herbs and plants. I've got all the natural ingredients."
Now this app is spawning itself from the data.
The data is all stored in a Google Doc, and it's literally generating itself from that data.
So the data is now alive; this is a living image, and I can update it in a second.
New evidence comes out. I just change a row on a spreadsheet.
Doosh! Again, the image recreates itself.
So it's cool.
It's kind of living.
But it can go beyond data, and it can go beyond numbers.
I like to apply information visualization This is a visualization of the political spectrum, an attempt for me to try and understand how it works and how the ideas percolate down from government into society and culture, into families, into individuals, into their beliefs and back around again in a cycle.
What I love about this image is it's made up of concepts, it explores our worldviews and it helps us -- it helps me anyway -- to see what others think, to see where they're coming from.
And it feels just incredibly cool to do that.
What was most exciting for me designing this was that, when I was designing this image, I desperately wanted this side, the left side, to be better than the right side -- but I couldn't, because I would have created a lopsided, biased diagram.
So, in order to really create a full image, I had to honor the perspectives on the right-hand side and at the same time, uncomfortably recognize how many of those qualities were actually in me, which was very, very annoying and uncomfortable.
But not too uncomfortable, because there's something unthreatening about seeing a political perspective, versus being told or forced to listen to one.
You're capable of holding conflicting viewpoints joyously when you can see them.
It's even fun to engage with them because it's visual.
So that's what's exciting to me, seeing how data can change my perspective and change my mind midstream -- beautiful, lovely data.
So, just to wrap up, I wanted to say that it feels to me that design is about solving problems and providing elegant solutions, and information design is about solving information problems.
It feels like we have a lot of information problems from the overload and the saturation to the breakdown of trust and reliability and runaway skepticism and lack of transparency, or even just interestingness.
I mean, I find information just too interesting.
It has a magnetic quality that draws me in.
So, visualizing information can give us a very quick solution to those kinds of problems.
Even when the information is terrible, the visual can be quite beautiful.
Often we can get clarity or the answer to a simple question very quickly, like this one, the recent Icelandic volcano.
Which was emitting the most CO2?
Was it the planes or the volcano, the grounded planes or the volcano?
So we can have a look.
We look at the data and we see: Yep, the volcano emitted 150,000 tons; the grounded planes would have emitted 345,000 if they were in the sky.
So essentially, we had our first carbon-neutral volcano.
And that is beautiful. Thank you. | {
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それから数日。何度も街と山間部を行き来して探しているけど、さっぱり見つからなからない。
そして僕はあまり眠れなくて、日に日に疲れが溜まっていった。
『早く見つかってくれないかな......さすがにキツイ......』
『確かに、このままだとナツキさんが倒れてしまいますね......』
いつもの様に朝食後に打ち合わせをしているけど、ネラさんも体力的にはともかく、連日気を張っているから精神的な疲労はそこそこ溜まってるみたい。溜息の回数が前より増えてきてる。
お互いこの状態だとジリ貧だ。何か打開策は......。
暫で考え込んでいると、宿のドアが勢いよく開けられ、バタバタと人が入ってきた。騒がしいなぁと、いまいちすっきりしない頭でドアの方をぼんやり見やる。
「ああ、よかった! まだいらっしゃいましたか!」
「どうかなされましたか?」
「つい先程、荷馬車が賊に襲われたという報告がありまして! 急ぎ報告に来たのですが!」
なんだって? くそぅ、アジトを突き止める前に被害が増えてしまった。
街長、申し訳ありませんが、賊の追跡を優先させて頂きます。襲われた荷馬車の対応は街長と衛兵でお願いいたします」
なるほど、これ以上の被害を抑えるためにも、大本であるアジト発見を優先するのか。さすがに判断が早い。
街長におおよその位置を聞き、急いで宿を出た。
緊急事態なので門まで行かずに、そのままネラさんを抱きかかえて飛び上がる。
『あれですね』
飛び始めてすぐに現場が見えてきた。賊は撤収済みのようだし、御者の人は街に連絡に行ったので、荷馬車の近くに人の影はない。
そのまま現場から山間部にかけてのルートを探す。若干草が倒れたりしてる部分が見つかったのでそれを辿っていく。
『......いた!』
『このままの距離を維持して追ってください!』
賊達は荷車を引いて走ってる。......けど何あの速度? 僕達が魔力循環させて走ってるのといい勝負。
『ねぇ、ネラさん。あれってやっぱり魔力循環させてる?』
『恐らくはそうでしょうね......。魔法が使えるかどうかまではわかりませんが、これは油断できませんね』
魔力循環出来るからと言って、必ず魔法が使えるとは限らないらしい。身体を効率よく動かす訓練をしていて、自然と覚えることもあるからとか。
僕が自然と飛べるようになったのと同じ感じか。
しばらく賊の後をつけていると山間部が見えてきた。向かっている先は......あれ、この間調べた場所っぽい?
見落としがあったとは思えないんだけど、でも実際向かってるしなぁ。
木々で見えなくなってしまうので、降りて走って追いかける。うん、やっぱり調べた場所だ。この先にちょっとした壁っていうか崖があるところ。
賊達はその崖のあるところまで来ると、何やら崖のところを叩いたりし始めた。
すると、崖が変形し、洞穴の様に穴が開いた。あの叩いてたのは合図か。
『魔法で塞いでいたとは。悔しいですがあれを見つけるのは困難ですね。今回チャンスが巡ってきてよかったと言うしかありません』
『とりあえずアジトが見つかったのは良いけど、これ、魔法が使える面子が賊にいる事が確定だよね?』
『そうですね。それも結構、練度が高そうです。やはり団長の言う通り、殲滅戦を避けて正解でした。これはよくよく調査して報告しなければいけませんね』
想定していたよりも賊は面倒な相手だった。ルティが一緒じゃなくてよかったと思ったのは初めてかもしれない。団長に感謝かな、これは。
賊の規模などを知るために、近くに潜んで様子を窺う。時折、周辺の見回りの為なのか武装した賊が出たり入ったりしてる。帯剣してるけど、こっちも訓練されてるんだろうか。
ずっと見張っていると、僕達が追ってきたのとは別の荷車が運び込まれてきた。またどこかで被害でも出たのかと思ったけど、どうも積まれてるのは食料とかっぽい? 野菜っぽいものなんかが見えてる。
『食料......』
昼も食べずに見張ってるから、余計にお腹が減ってくる。ああ、がっつりと分厚いステーキをこう、がぶっといきたい。
『ナツキさん、涎出てますよ。私も同じなのでもうちょっと我慢してください』
うぅ、殺生な。しかしまぁ大量に運び込まれるなぁ。保存食じゃなくて生鮮ものを大量にだから、それだけ大所帯ってことだよね。この賊の討伐隊組むときは結構な人数が必要になりそう。
「あー、もう交代かよ。もう少し休ませろってんだ」
「まぁそう言うなよ。ここんとこ順調で腹いっぱい食えてんだし悪かねぇだろ」
「腹は満たせっけどよぉ、もうちょっと休みが欲しいだろ。後何より女っけなさすぎ。近くに色街があるわけでもねぇし、その辺なんとかなんねぇかなぁ」
なんともまぁ下品な会話だこと。いや、気持ちはわからないでもないよ? 僕だって昔は男だったわけだし。
「さぁてとお仕事......ん? なんかいい匂いがすんな?」
そう言って鼻をスンスンさせながら獣人の男がこっちに向かってくる。
『え、ちょっと待って。魔法切れてないよね?』
『切れてるわけないですよ! さっきかけなおしたばっかりじゃないですか! 嘘でしょう!? この魔法、ただ見えなくなるだけじゃなくて認識阻害の効果もあるんですよ!?』
ネラさんが凄い慌ててる。珍しい......じゃない、どうすんのこれ!? | A few days have passed since then. We’ve gone back and forth several times between the town and the mountain range in search of them but they were nowhere to be found.
And since I can’t get some quality sleep, I’m getting increasingly worn out as days go by.
『I hope we find them soon...... I’m getting really tired these days......』
『True. At this rate, you’re going to collapse from exhaustion, Natsuki-san.....』
We were doing our usual post-breakfast talk but it seems like although Nera-san is still physically okay, she’s also getting mentally exhausted from being on alert for multiple days straight. She’s sighing more than she did before.
In our current state, it’s only going to get worse from here on. Isn’t there something we can do......
And as we were trying to think of something, the inn’s entrance door suddenly banged open and someone came clattering in. It’s really noisy. I turned my still tired head towards the door and vacantly stared at what it is.
「Ohh, thank goodness! The two of you are still here!」
「What’s the matter?」
「There was a report of a wagon attacked by bandits just moments ago! I rushed to inform you two as soon as possible!」
What? Dammit, the casualties increased before we could even find their hideout.
「Natsuki-san, let’s hurry. This is our chance. If we follow them, we can find their hideout. Mayor, we’re very sorry but we will be prioritizing the pursuit of the bandits. We’ll leave the reception of the attacked wagon to you and this town’s guards.」
I see, so we’re prioritizing our main mission, searching for the bandits’ hideout, so that we can prevent any future casualties too. That’s a really quick decision.
We asked the town mayor for the general location and quickly left the inn.
Since it’s an emergency, we ignored the gate. I immediately embraced her and took to the skies.
『That’s the place, right?』
Just moments after I started flying, we immediately saw the crime scene. It seems like the bandits have already retreated and since the driver went to contact the town, there aren’t any signs of people near the wagon.
We immediately look for routes leading from here to the mountains. We saw a spot where the grass seemed somewhat flattened, so we followed where it led to.
『...... There!』
『Please follow them while maintaining our current distance!』
The bandits are running while pulling a wagon...... But what’s with their speed? They’re just as fast as us when we were running with magic power.
『Hey, Nera-san. Look, they’re circulating magic power, aren’t they?』
『I’m afraid so...... We still don’t know whether they can use magic or not, but it seems like we can’t let our guard down.』
It looks like just being able to circulate magic power doesn’t assure that they can use magic. It can be learned naturally when training to move one’s body efficiently and such.
It might be like how I naturally learned to fly, huh.
After pursuing the bandits for a while, we can now see the mountains. The place they’re going to is...... wait, isn’t that where we searched the other day?
I don’t really think that we missed something that time but we are actually heading there, so yeah.
Since the trees were blocking our sights, I landed and we started chasing them on foot. Yeah, this really is a place we investigated before. Straight ahead of us is something like a wall, or rather the face of a cliff.
The bandits went to the face of the cliff and, for some reason, started banging on the cliff.
After that, a part of the cliff changed and it now had a cave-like hole. So them banging on it was some kind of signal, huh.
『To think that they closed it off with magic. It’s frustrating but finding that would have been absolutely difficult. I can only be glad that we stumbled upon this chance.』
『For now, it’s great that we found their hideout but... Doesn’t this confirm that there’s someone that can use magic among them?』
『That’s true. Besides that, it seems like they’re quite proficient with magic. It’s as the leader imagined, avoiding an extermination mission was the right choice. It seems like we need to be careful in investigating and report this to the leader straight away.』
The bandits were more troublesome than we expected. This might be the first time I was ever glad that Ruti wasn’t here with us. I might need to thank the leader for this.
To know how many of them there are and stuff, we hid somewhere nearby and observed what they were doing. Occasionally, some armed bandits would come out, probably to patrol the surrounding area. They have swords on them, but are they trained in these too?
While we kept observing them, behind us came a different wagon dragged to this place. I thought that it might have been from the new victims, but it looks like the wagon was carrying some food-like(?) and vegetable-ish stuff.
『Food......』
We’ve been watching them since without eating lunch, so it’s just making me more and more hungry. Ahh, I want to just munch on some really thick meaty steak.
『Natsuki-san, you’re drooling, you know? I feel the same way as well, so please bear with it for just a bit more.』
Ugh, this is killing me. But still, they really have a lot of food, huh. And it’s not even preserved food, it’s the fresh stuff, so this means that there’s a lot of them, right? The team needed to suppress these bandits would probably need a lot of people.
「Ah, it’s already time to switch, huh. Could’ve let us rest a bit more, really.」
「Man, don’t be like that. We’ve been eating a real lot these days, so it’s not that bad.」
「Well yeah, it’s pretty nice to eat but I just want to rest just some more. Besides, there just aren’t any women here. And it’s not like there’s a red-light district nearby, so can’t they do anything about this?」
Well, that was some really indecent exchange. I mean, it’s not like I don’t understand his point, yeah? I was a man before after all.
「Well, guess it’s time to wor-...... Hm? Is it just me or does something smell good?」
Saying so, the beastkin man headed towards our direction while sniffing the air.
『Eh, wait a minute. Your magic didn’t run out, right?』
『Like heck it would run out now! I just cast it again earlier, didn’t I! Are you kidding me!? This magic doesn’t only hide things, it inhibits recognition, you know!?』
Nera-san is really panicking. That’s quite rare....... No, not that! What do we do about this!? | {
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「セイヤ!?」
「話は後だ。今はあいつをどうにかするぞ」
ユアは死んだと思ったセイヤが生きていたことに驚くが、セイヤの言う通り、今はそれどころではない。まずは目先の脅威を取り除くことが先だ。
「ユア、あいつの堅い防御を破ることはできるか?」
それは白虎を仕留めることが可能な技があるかという質問。残念なことにセイヤには白虎の風で硬化された表皮を貫くほどの貫通力を持つ攻撃手段はない。
そうなると、頼みの綱はユアになる。
セイヤの質問に対しユアは、
間同じところに留めてくれたら......」
「わかった。なら最後は頼む」
セイヤはユアに攻撃手段があることを聞くと、自分の役割を認識する。セイヤの仕事は白虎のことを五秒間同じところに留めて、ユアにバトンを繋ぐこと。
それは容易なことではないが、生き残るためには必要なことだ。
セイヤは両手にホリンズを握って、自身が纏う光属性の魔力の量を上げていく。
』では白虎に追いつけても、追い越すことはできない。だから今までの『
それの限界突破であり、セイヤにとっても未知の領域。しかしセイヤには闇属性があるため、不安はない。絶対に成功する。セイヤはそう思い、魔力の量を上げていく。
限界突破
纏う魔力の量を上げた瞬間、セイヤの視界から色が消えた。それは高速の、いや、神速の世界を見るための視界。
視界から色が消えれば、それだけ脳の処理も軽くなり、いつも以上のスピードを視認できる。
変化は視界だけではない。聴覚や嗅覚、味覚なども一気に機能を停止し始める。そして脳への無駄な負担を減らし、戦いに必要な器官だけを鋭くさせていく。
まさに神速の世界で戦うためだけの状態。
それは白虎もまた同じだった。白虎もセイヤと同じように纏う雷の量を上げて、視界から色を消していく。
そしてそこからは神速の戦いが始まった。
両者が動き出したのはほぼ同時。セイヤが脚力を上昇させて地面を蹴ると、雷獣もまた、活性化させた足で地面を蹴り、セイヤに迫る。
神速で迫るセイヤのホリンズと、神速で振られる雷獣の爪がぶつかり合うと、盛大な爆発音とともに衝撃波が生まれた。その衝撃波は一度だけではなく、何度も生まれ、空気が振動する。
「すごい......」
ユアはセイヤと雷獣の神速の戦いを認識することはできなかったが、その戦いがどれほど凄いのかは、ひしひしと感じていた。
盛大な爆発音が発生し、ものすごい衝撃波が生まれたときには、既にそこにはセイヤたちの姿はない。
もうその次の瞬間にはほかの場所で、盛大な爆発音と衝撃波が生まれる。
まさに異次元の戦い。
しかしユアはその異次元の戦いを見ているだけにはいかない。なぜならこの異次元の戦いに終止符を打つのはユアの仕事だから。
ユアは最後を決めるための準備に入る。
まずはレイピアであるユリエルを握っていない方の左手に、弓であるユリアルを生成した。
両手に白を基調としの武器を握るユアは、弓のユリアルにレイピアであるユリエルをまるで矢のように装填する。
その魔法はユアの中で最も貫通力の高い技。しかしその反面、動いている対象に当てるのは至難の業であり、外れてしまえばもう後がない。
まさに最後の一撃。
それ故に、この魔法を行使するにはセイヤのことを信頼しなければならない。
「セイヤ......」
ユアは頼れるパートナーのことを思いながら、装填されているユリエルに魔力を流し込み始めた。魔力を流し込まれたユリエルが白い魔力を纏っていく。
白い魔力を纏っていくユリエルは、その空間内でかなりの存在感を放っていた。だからセイヤにも、ユアが攻撃の準備を終えたという事が分かった。
セイヤは雷獣とぶつかり合う中で、雷獣の隙を伺う。けれども、神速の中での戦いを繰り広げている雷獣が、そう簡単に隙を見せるはずもなく、セイヤは雷獣の隙を見つけることが出来ない。
「仕方がない」
隙が無いのなら、隙を作ればいい。セイヤは先ほどと同様に、雷獣とぶつかり合った後の、着地の瞬間を狙う。
「『闇波』」
消滅させるのは雷獣ではなく、雷獣が着地するのであろう地面。セイヤが魔法を行使した刹那、雷獣が着地するはずであった地面の一部が窪み、小さな穴が生まれる。
グルッ
しかし雷獣とて馬鹿ではない。そう何度も同じ手が通じるはずがなかった。
雷獣は瞬間的に『闇波』によって消滅させられなかった場所だけを選び、器用に着地して、もう一度跳ぶ。
そして何も変化してない地面に移動を図った。
セイヤは雷獣がもう一度跳躍したのを見ると、ニヤリと笑みを浮かべる。セイヤは信じていた。雷獣がくぼんだ地面に足を取られずにもう一度跳躍することを。
足場の悪い地面から跳躍した雷獣に対して、セイヤは新たな魔法を行使する。
次の瞬間、跳躍して空中にいた雷獣の上に紫の魔法陣が展開される。しかし地面に注意を払っていた雷獣は、気づくのが遅く、対応に遅れる。
気づいた時にはすでに遅い。
空中にいた雷獣のことを、謎の圧力が襲い、そのまま地面へと押し付ける。
雷獣は何とか抜け出そうとするが、圧力が相当重く、そう簡単には抜け出せそうにない。それでも長くは拘束できないだろう。
けれどもユアに頼まれた五秒は余裕で稼げた。
セイヤの使った魔法は、闇属性オリジナル魔法『
』をみて、自分の同じような魔法を闇属性でもやってみたいと思ったセイヤが、考え付いた魔法であり、その効果は『
雷獣の足止めに成功したセイヤはユアの名前を叫ぶ。
「ユア!」
「任せて......」
セイヤに名前を叫ばれたユアは、ユリアルを雷獣に向けて構える。
ユリアルに装填されているユリエルは先ほどよりも多くの白い魔力を纏っており、相当の存在感を放っていた。
ユアは思う。
セイヤは信頼できると。
最初こそ、自分が暗黒領から人に会わず帰るために利用しようとした、ちょっと使える存在だった。
しかしその存在は、次第にただの利用できる存在ではなくなっていた。
ユアのことをなんだかんだで信じてくれて、ダリス大峡谷まで着いて来てくれたセイヤ。
先ほどなんて自分の身を顧みずに、ユアのことを助けてくれた。
それに今だって、ユアに決める力があるという事を信じて、しっかりと雷獣のことを足止めしてくれている。
セイヤはすでにユアのことを信頼している。そしてそれはユアも同じだった。
心の底ではわかっていたが、認めようとしなかったユア。
それはセイヤのことを信頼して、また裏切られるのが怖かったから。だからセイヤのことを信頼してない風に装ってきた。けれども、それももう限界だ。
ユアの心の中にはすでにセイヤが住み着いており、ユアにとってセイヤはかけがえのない存在である。
確かに人に裏切られることは怖い。それが心の底から信頼していた者なら尚更だ。けれども、人を信頼するにはその恐怖に打ち勝たなければならない。
(セイヤ......)
もう認めるしかない。
ユアは、自分は、セイヤに事を心の底から信頼していると。そしてそれと同じくらい、セイヤのことが好きになっているという事を。
ユアは心の中で思い人の名を呟きながら、雷獣に向かってユリアルの結弦を手放した。
「ホーリー・ロー」
パン! と小気味いい音と共に撃ち出されたユリエルが、螺旋回転しながら、動きを封じられている雷獣に向かって直進する。
白い魔力を纏いながら螺旋回転していくユリエルは、みるみるとスピードを上げていき、その貫通力も上がっていく。
そんなユリエルが雷獣の固い表皮を貫くのは簡単だった。
グギャァッ
ユリエルによって貫かれる苦痛に悲鳴を上げる雷獣。しかしその悲鳴が上がりきる前には、雷獣はすでに絶命し、その意識を失っていた。
これにより、セイヤたちの勝利が決まる。
「終わったな」
「うん......」
「それにしても、最後のあれはすごかったな」
セイヤは最後を決めたユアのもとに駆け寄り、ユアの攻撃を称えた。
しかしセイヤ声に対するユアの答えはかなり落ち込んでいた。それに加え、頬もどこか赤くなっている気がする。
「うん......」
「ユア?」
不思議に思ったセイヤがユアを心配そうに見ると、ユアは静かな声で謝罪した。
「セイヤ......ごめん......」
「はっ? なにがだ?」
急にユアから謝られて困惑するセイヤ。しかしユアの心の中を知らないセイヤがそのような態度をとってしまうのも無理はないだろう。
ユアが謝ったことは、今までセイヤのこと信頼してこなかったこと、先ほどセイヤが死んだと思った際に見捨てようとしたこと、など、これまでのいろいろなことだった。
そこでユアに疑問が浮かぶ。
「そういえば......どうして生きていたの?」
それは雷獣に貫かれたセイヤがどうして生きていたのかという疑問。
確かにあの時点でセイヤは死んでいたと思ったユア。今もセイヤが貫かれた場所には大量の血が飛び散っている。
普通に考えておかしかった。
「ああ、それはな......」
セイヤがユアの質問に答えようとした瞬間、急に二人が立っていた地面が崩落を始める。
「「!?」」
二人はとっさにどこかに捕まろうとしたが、残念ながらそれは叶わず、崩落していく地面と共に落下を始めていく。
「セイヤ......」
落下して行く中、セイヤはとっさにユアのことを抱きしめる。セイヤによって強く抱きしめられたユアの頬は、赤くなり染まる。
そうして二人はそのまま落下していくのであった。 | 「Seiya!?」
「Let’s talk later. Need to deal with it first」
Yua was surprised that Seiya, who she thought was dead, survived, but as he said, now it is not the right time. They need to get rid of the immediate threat.
「Yua, can you break through his defense?」
He asked whether she had a method to stop the white tiger. Unfortunately for Seiya, he didn’t have any means to pierce its skin. []
So he ended up asking Yua.
Answering to his question,
「If you can stop it in one place for seconds......」
「Alright, I’m counting on you」
When Seiya heard that there was a solution, he decided on his role. Seiya’s job was to keep the white tiger in the same place for five seconds then pass the baton to Yua.
It is not easy, but it is necessary to survive.
Seiya grasped Hollins in both hands and increased the amount of mana of the light attribute on its surface.
Up till now, even if he used『Mantle of Light』to catch up with the white tiger, he couldn’t overtake it. So he put on his strongest『Mantle of Light』so far.
For a moment he broke through his limit. However, since Seiya had a dark attribute, there was no anxiety. I will make it succeed. Seiya thought so and further increased the amount of mana.
「Break through the limit, Overlimit」[]
The moment he raising the amount of mana worn, the color disappeared from his view. He was in the world of speed.
If color disappears from view, he can deploy more brainpower to keep up with the speed of the tiger.
Not only his sight changed. Hearing, olfaction, taste and so on also stopped functioning at once. This reduced the burden on the brain and enhanced only the aspects necessary for battle.
It was all for fighting in the world of godspeed.
It was the same for white tiger. The white tiger also increased the amount of lightning around him just like Seiya and erased the color from its view.
From there, the battle of godspeed started.
They moved almost at the same time. When Seiya kicked the ground with his raised leg power, the lightning beast also kicked the ground and approached Seiya.
When Hollins approached the claw of thunder and they collided, a shock wave was born with a grand explosion sound. And there was not only one shockwave, but many. Even the air vibrated from them.
「Amazing.......」
Yua could not trace the figures of Seiya and lightning beast, but she could feel just how amazing the fight was.
The moment after the massive explosion sound and tremendous shockwave, there was already no one there.
At the next moment, a huge explosion sound and shockwaves were born in other places.
Truly a fight on a different level.
But Yua couldn’t just look at this fight. Because it was her job to put an end to this battle.
Yua begins her final preparations.
Firstly, Yuriel appeared in her free left hand.
Yua who grasped two white weapons in both hands, loaded the rapier Yuriel into a bow as if it was an arrow.
That spell is the most penetrating spell she knows. On the other hand, however, it is a difficult task to hit the moving target, and once she missed it will be the end.
Truly the finishing blow.
Therefore, to cast this spell she had to trust Seiya.
「Seiya......」
While thinking about her reliable partner, Yua started pouring mana into the loaded Yuriel. From all this mana, Yuriel started to shine brightly.
Yuriel cloaked in white mana had a considerable presence on the battlefield. So, Seiya understood that she was ready.
While colliding with the lightning beast, he tried to find an opening. However, the lightning beast couldn’t afford to show a gap so easily, so Seiya failed to achieve anything.
「I have no choice」
If there is no gap, make a gap. As before, Seiya aimed for the moment the beast lands on the ground after the collision.
「『Dark Wave』」
It was not to annihilate the lightning beast, but the ground where it will land. The moment when Seiya cast his spell, a part of its landing spot became depressed, and a small hole appeared.
Gururu
But the lightning beast was not an idiot. The same thing won’t work on it two times in a row.
Lightning beast chose only the space that was not instantaneously eliminated by the『Dark Wave』, landed on it dexterily, and jumped again.
Then it tried to move to the ground which was still intact.
Seiya smiled when he saw the lightning beast leap again. Seiya believed that it will leap once again without getting its legs on the ground.
Seiya casts a new spell against the lightning beast which jumped away from the depression.
In the next moment, the purple magic circle appeared above the jumping lightning beast. However, it was paying attention to the ground and was too late to notice the spell.
The moment it finally noticed it was already late.
The mysterious pressure attacks the lightning beast that was still in the air and pushes it to the ground.
The lightning beast was trying to free himself somehow, but the pressure was quite strong, it was unlikely to escape so easily. Still, it will not be detained for a long time.
However, it was enough to buy the five seconds that Yua required.
The spell used by Seiya was the dark attribute original spell『Black Hammer』, a spell that was instantly created by Seiya.
Remembering『Holy Hammer』which Yua used against the sea dragon, he wanted to incorporate a similar spell in his repertoire, its effect wasn’t much different from the『Holy Hammer』.
Seiya who succeeded in stopping the lightning beast shouted out Yua’s name.
「Yua!」
「Leave it to me......」
Yua, who was called out, readied her bow Yurial and faced the lightning beast.
Yuriel, which is loaded in Yurial, was cloaked in more white mana than before and emanated a considerable pressure.
Yua thought.
She could trust Seiya.
At first, he was just convenient, she tried to use him to return home from the dark territory without meeting people.
But his existence gradually becomes more than just useful.
Seiya trusted Yua enough to come to the Great Dalis Canyon.
Just a few moments ago, he did not care about himself and saved her.
Even now, believing that she had a power to decide the outcome, he did his best to suppress the lightning beast.
Seiya already trusted Yua. And that was the same for her.
She knew about that but didn’t admit it.
Because she was afraid to trust Seiya just to be betrayed again. That’s why she distanced herself from him. But she finally faced it.
Seiya already imprinted himself in her heart, and he became an irreplaceable existence for Yua. []
She was certainly scared to be betrayed by people. Even if she wanted to trust from the bottom of her heart. However, to trust people, Yua must overcome that fear.
(Seiya......)
She could only admit it.
Admit, that she trust Seiya from the bottom of her heart. And admit that she also liked him as much.
While muttering his name, Yua released the bowstring.
「Holy Law」
Pan! And Yuriel was fired with a loud sound straight towards the lightning beast.
Yuriel, cloaked in white mana, started rotating and increasing its speed, its penetrating power was also raised.
It was easy for such Yuriel to penetrate the hard skin of a lightning beast.
Gugya
The lightning beast wanted to scream from the pain. But before the scream came out, it already lost its consciousness and died.
This determined the victory for Seiya and Yua.
「It ended」
「Yup......」
「Even so, your last attack was amazing」
Seiya was deeply impressed by her last attack.
But her answer to Seiya sounded quite depressed. Besides that, her cheeks were somewhat red.
「Yes......」
「Yua?」
Perplexed, Seiya looked at Yua carefully, she apologized in a quiet voice.
「Seiya......sorry......」
「Mm? For what?」
Seiya who suddenly received an apology was bewildered. It wasn’t surprising, considering that he didn’t know what transpired in her heart.
She apologized not trusting Seiya until now, she apologized for trying to abandon him, when she thought that he died, she apologized for a lot of things.
Then the question was born in her head.
「By the way ... how are you still alive?」
Yua asked why Seiya, pierced by the lightning beast, was still alive.
She thought that Seiya was certainly dead at that time. A lot of blood is scattered at the place where Seiya was penetrated. []
It was weird thinking normally.
「Ah, that was.....」
The moment Seiya tried to answer her question, the ground where they stood suddenly began to collapse.
「「!?」」
They tried to catch onto something but unfortunately, they failed and started falling with the collapsing ground.
「Seiya....」
While falling, Seiya hugged Yua in a hurry. Yua’s cheeks were quickly dyed red from the hug.
Then the two of them fell together. | {
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夕食を終えると、クローシェザードはすぐに席を立ってしまう。
忙しいのに時間を割いてもらうのは申し訳ないが、シェイラは彼がいる内にと話を切り出した。
「クローシェザード先生。実は、薬草茶を売り出そうと思ってるんです」
教員室で何度か淹れたことがあるため、彼の理解は早かった。
「あの珍しい茶か。構わないが、君に商魂があったとは驚きだな」
「もちろんゼクスを通してですよ。僕に商才なんかないし、そもそも儲けたいとも思ってませんし」
シェイラ達のやり取りに興味が湧いたのか、ヨルンヴェルナが口を挟んだ。
「薬草茶って何のことだい?」
「デナン村で作ってるお茶です。村には紅茶なんてオシャレな飲み物なかったので、薬草茶が主流だったんですよ」
口で説明しても分かりにくいので、シェイラは準備しておいた薬草茶を全員に振る舞うことにした。
ティーカップを目の前に置くと、ヨルンヴェルナは困惑げに眉をしかめた。
「......これが、その薬草茶かい? 見た目はかなり衝撃的だねぇ」
ほとんど黒に近い色味に、どうにも抵抗があるらしい。シェイラは苦笑いを返した。
「誰に出しても初めはそんな反応されるんですよね。紅茶だってそこそこ黒いと思うんですけど」
「紅茶は赤みを帯びているけれど、これは真っ黒じゃないか」
「まぁいいから、とりあえず飲んでみてください。スゴく濃く見えますけど、味はさっぱりしてるんですよ。うちでは食事中にも食後にも飲んでました」
「......君って僕が貴族だということを、時々本気で忘れているよね」
――そっちこそ、私が女だってこと、絶対忘れてる癖に。
決して口にはできない本音を眼差しにのせると、ヨルンヴェルナは面白そうに瞳をきらめかせる。ろくでもないことを言い出しそうな気配に、シェイラは慌ててカップを持たせた。
「――――へぇ。意外においしい。癖がなくて香ばしいんだね」
「それは炒った穀物が入ってるからですね。他にもショウガとかクマザサとかかけて材料を集めるんですよ」
気負いなく飲み始めたヨルンヴェルナに、シェイラは胸を撫で下ろした。貴族の彼が飲めるのならば、世間に広めるのも難しくないかもしれない。
コディとルルも飲みながら頷く。
「これのおかげで、僕もずいぶん体調がよくなったんですよ。以前は胃腸が弱くて、緊張するとすぐ痛くなったりしていたんですけど」
「分かります。わたくしの主人も、定期的にご愛飲していらっしゃいますよ。わたくし達使用人にも振る舞ってくださるので、すっかり馴染んだ味です」
フェリクスは長年デナン村にいたため、今でも薬草茶に親しんでいる。使用人達に勧めていることも、ルルやリチャードから聞いていた。
――あそこで働く人達が前より元気になったって言うから、王都全体に広められたらって思ったんだよね。
ティーカップを置きながら、クローシェザードが口を開いた。
「君の後見人には、話を通してあるのか?」
「もちろんですよ。一応話を進める前に、クローシェザード先生にも許可をもらっておきたかっただけです」
先日の月の日に、フェリクスには報告済みだ。
それだけで彼には十分だったらしい。特に懸念を見せることなく首肯を返された。
「君のしたいようにするといい。ただし、本業に影響するようならば即刻やめてもらうぞ」
「はい。ちゃんと気を付けます」
細かい確認がないのは信頼の証と受け止め、シェイラは満面の笑みで答えた。
みんなが飲み終えた茶器をルルと共に片付けていると、クローシェザードが不意に視線を寄越した。
「ところで、儲けを気にしない君が、薬草茶を売ることによって得る益とは何だ?」
孔雀石の瞳に不審の色はなく、単純な興味だけが浮かんでいた。
シェイラは神妙な面持ちになると、ルルに後片付けを任せて再びテーブルについた。
「王都の人は、デナン村の人に比べると元気がないような気がするんです。余計なお世話なのは分かってますし、人の心配してる暇があるのかって言われたらそれまでなんですけど、この薬草茶で何かしらの効果があればいいなー、なんて」
「ふむ。そういうことか......」
クローシェザードが顎に手を当て、思案の
「例えば一定の効果を得て、王都の病人が減少したとしよう。しかし、それによって不利益を被る職種もある」
彼の言わんとしていることが分かって、シェイラは頷いた。
「医師、ですよね。フェ......後見人にも同じことを指摘されました」
患者が減少することによって、細々と経営している医院は立ち行かなくなる。フェリクスはそう予想した。薬店が利益を専横することで、他にも思いもよらないところから恨みを買う可能性があると。
シェイラとエイミーだけで話し合っていても、決して挙がることがなかっただろう政治的な意見だ。
けれどシェイラは、もう打開策を考案していた。
「僕、考えたんです。そしたら、定期健診をすればいいんじゃないかって」
「定期健診?」
クローシェザードだけでなくテーブルを囲む全員が、知らない言葉を聞いたように不理解を示した。
「やっぱり、王都にはない制度なんですね。僕のいた村では普通にやってたんですけど」
村では、不調がなくても定期的に医者にかかる決まりがあった。体に潜む様々な病魔を早期に発見し、治療するための制度だった。
シェイラはざっくり、デナン村で行われていた健康診断について説明した。
「うちの村では診てくださったお医者に、お礼代わりの食料をお裾分けしてました」
「......君の村は、先進的なのか前時代的なのか、本当によく分からんな」
「そうですか? でも、王都では物々交換が成立しませんし、そうもいきませんよね」
診察代が必要になると、切り詰めた生活をしている者は定期健診を受けたがらないかもしれない。それでは制度の普及に繋がらないとフェリクスは言っていた。
「そこで僕の後見人がいうには、国から補助金を出すよう働きかけるべきだ、とか何とか。正直、僕にはさっぱり分からないんですけど」
制度に関して意見を言えるほどシェイラは博識ではない。フェリクスの言葉をそのまま話すと、クローシェザードはすぐに理解したようだ。
「――――なるほど。医師から仕事を奪わずに済む上、国から補助金を捻出すれば貧しい者でも健診を受けられるという訳か。健康診断という考え方が常識になっていけば、むしろ町医者の生活は保障されるだろうな」
どこからも不満が出ない素晴らしい案だ、と賛辞を述べるクローシェザードのフェリクス至上主義は、相変わらず健在のようだ。
一緒に話を聞いていたコディが、興奮ぎみに目を輝かせた。
「凄い。もし本当にその制度が成立すれば、この国は劇的に変わるね。手の施しようがないほど悪化する前に病気を見つけられれば、助かる命も増える」
「うーん。問題は、頭の固い貴族達が本当に国庫を解放するのか、ってところだねぇ」
水を差すような発言をしたのはヨルンヴェルナだった。けれど現実的に考えれば、確かに肝になるのはそこだ。
いくらフェリクスが王弟だとしても、長く国政を離れていた彼に権力などほとんどないに等しい。無理やり政策を押し進めるより、賛同者を探した方が軋轢も少なくて済む。
――その賛同者を集めるために、色々根回ししてくれるとは言ってたけど。
政治の話になってくると、シェイラは途端に無力だ。ただでさえ忙しくしているフェリクスの手を借りねば何も実現できないことに、歯痒さを感じた。
「病気の者が減れば労働力が増え、国力が上がる。長期的に考えれば利益は見込めるだろう。賛同者は必ず得られる」
淡々とした口調だが、だからこそ慰めの言葉ではないと分かる。シェイラは少し救われた心地になって、小さく頷き返した。
解散の運びとなり、それぞれが席を立つ頃。
商売の話題なら最も饒舌になりそうなゼクスが一言も発していないことに気付き、シェイラは首を傾げた。 | After Claushezade finished his dinner later, he had to immediately leave.
Sheila felt sorry to ask him to take time out of his busy schedule, but she struck up the conversation while he still was there.
“Claushezade-sensei. Actually, I’m thinking of selling herbal tea.”
Having brewed it several times in the faculty room, Claushezade quickly understood what she was talking about.
“Ah, that rare tea. I don’t mind, but I’m surprised you have a business mind.”
“It was because of Zechs, of course. I don’t have any business acumen, and I don’t want to make money in the first place.”
Perhaps intrigued by the exchange between Sheila and Claushezade, Jornwerner interjected.
“What is this herbal tea you’re talking about?”
“This is the tea made in Denan Village. In the village, there was no such fashionable drink as black tea, so herbal tea was the norm.”
Since it was difficult to understand even if she explained it verbally, Sheila decided to serve everyone a cup of herbal tea that she had prepared.
Jornwerner frowned in bewilderment as she placed the teacup in front of him.
“..... Is this that herbal tea you’re talking about? It looks pretty surprising.”
The almost black color of the tea was apparently unappealing to some people. Sheila returned a wry smile.
“That’s the reaction I get at first, no matter who I serve it to. But isn’t black tea black?”
“Black tea has a reddish tinge, but this one is pitch black, isn’t it?”
“Well, it’s fine, just try it. It looks very thick, but it tastes light. The villagers used to drink it during and after meals.”
“Sometimes you seriously forget that I’m an aristocrat, don’t you...?”
‘I’m sure you sometimes forget that I’m a woman, too.’
Jornwerner’s eyes sparkled with amusement when he saw through Sheila’s true feelings, which she could never say out loud. Sheila hurriedly held the cup for him, as she felt he was about to say something absurd.
“――Heh. It’s surprisingly delicious, and it’s very fragrant.”
“That’s because it contains roasted grains. Other ingredients such as ginger and bamboo grass are collected over the course of a year.”
Sheila patted her chest as Jornwerner began to drink without hesitation. If he, an aristocrat, could drink it, it might not be difficult to spread it to other people.
Cody and Lulu also nodded as they drank.
“Thanks to this, my health condition has improved a lot. I used to have a weak stomach, and when I got nervous, it would hurt right away.”
“I understand what you mean. My master also drinks it regularly. He also serves it to us servants as well, so I’m familiar with the taste.”
Since Felix lived in Denan Village for many years, he was still familiar with herbal tea. Sheila had also heard from Lulu and Richard that he recommended it to his servants.
‘The people who work there say they feel better than before, so I thought it would be great if it spread throughout the royal capital.’
Clauschezade opened his mouth as he set down his teacup.
“Have you spoken to your guardian?”
“Of course. I just wanted to get Claushezade-sensei’s permission before proceeding.”
Sheila had already informed Felix the other day.
That was enough for him, apparently. Claushezade nodded without showing any particular concern.
“You can do whatever you want. However, if it affects your training, I will ask you to stop immediately.”
“Yes. I’ll be careful.”
Sheila took the lack of detailed confirmation as a sign of trust and answered with a big smile.
As Sheila and Lulu were cleaning up the teacups after everyone had finished drinking, Claushezade suddenly glanced over at her.
“By the way, if you don’t care about making a profit, what’s in it for you by selling herbal teas?”
There was no hint of suspicion in his peacock-colored eyes, only simple curiosity.
Sheila made a serious face, and left Lulu to clean up the mess, then sat down at the table again.
“I just have a feeling that the people in the capital are not as energetic as the people in Denan Village. I know it’s none of my business, but I’m hoping this herbal tea will have some effect for them.”
“Hmm. So, that’s how it is....”
Claushezade put his hand on his chin and assumed a contemplative stance.
“Suppose, for example, that the number of sick people in the royal capital does decrease due to a certain effect. However, there are some occupations that would be disadvantaged by this.”
Sheila nodded, knowing what he was trying to say.
“Doctors, right? Fe―... My guardian pointed out the same thing to me.”
With fewer patients, small clinics wouldn’t be able to survive. Felix predicted as much. He said that the pharmacy ‘s monopoly on profits could attract resentment from other unexpected sources.
It was a political opinion that would never have come up if Sheila and Amy had discussed it alone.
But Sheila had already devised a solution.
“I thought about it. Then I realized, ‘Why don’t we just have regular medical checkups’?”
“Regular medical checkups?”
Not only Clauschezade, but everyone around the table showed incomprehension at the unfamiliar word.
“I guess it’s a system that doesn’t exist in the capital. It was normal in the village where I was.”
In the village, there was a rule to see a doctor regularly even if there was no ailment. It was a system for early detection and treatment of various diseases lurking in the body.
Sheila roughly explained the medical checkups that were conducted in Denan Village.
“In our village, we used to give food to the doctors who examined us as a token of our gratitude.”
“.... I really don’t know if your village is progressive or old-fashioned.”
“Really? But bartering doesn’t really work in the royal capital, and it doesn’t really work that way.”
might be reluctant to get regular checkups if they had to pay for them. Felix said that it wouldn’t lead to the spread of the system.
“So, my guardian said that I should encourage the country to provide subsidies or something like that. To be honest, I have no idea what he is talking about.”
Sheila wasn’t knowledgeable enough to have an opinion about the system. Speaking straight from Felix’s words, Claushezade seemed to understand immediately.
“――I see. In addition to not taking jobs away from doctors, the government could generate subsidies so that even the poorest of the poor could receive medical checkups. If the idea of medical checkups becomes the norm, it will rather guarantee the livelihood of the town doctors.”
Claushezade’s Felix supremacy seemed to be alive and well as ever, as he praised the idea as a great idea that wouldn’t generate any complaints from anywhere.
Cody, who was listening to the conversation, had his eyes lit with excitement.
“It’s amazing. If that system is really enacted, this country will change dramatically. More lives can be saved if a disease can be detected before it becomes unmanageably worse.”
“Hmm. The question is, will the hard-headed aristocrats really release the national treasury?”
It was Jornwerner who made a remark that seemed to put a damper on the current atmosphere. But realistically speaking, that was certainly the key.
No matter how much Felix was the King’s younger brother, he had little to no power after being away from the country’s state affairs for so long. Rather than forcing his policies forward, it would be better to find a supporter, so there would be less friction.
‘He did say that he would put in a lot of groundwork to gather those supporters, though.’
When it came to politics, Sheila was completely helpless. She was frustrated when she realized that she couldn’t achieve anything without the help of the already busy Felix.
“If the number of sick people decreases, the labor force will increase and the power of the country will rise. In the long run, it will be profitable. We will surely gain supporters.”
Sheila nodded in return, feeling a little comforted.
The group was about to disperse, and each of them left their seats.
Sheila tilted her head when she noticed that Zechs, who would be the most talkative on the topic of business, hadn’t said a word. | {
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時は少し、遡る。
この世界はドラゴンの住む場所が半分、人の住む場所が半分なのだという。
厳密に言うのであれば、ドラゴンたちは数が極めて少ないため『住む場所』はそこまで必要としない。だがドラゴンは生きていくために広い狩り場を必要とするし、ドラゴンの数に比例して増える『変異体』の魔物たちは人が居住不能な魔境を作り出す。
さらには知的な魔物たち......いわゆる魔族が、ドラゴンと緩やかな共存関係を築いてドラゴンの領域に住まい、国を作って人族を脅かしている。
『ベルマール火山の群れ』は、その名の通りベルマール山を中心として、人族の最も大きな国と同じくらいの領域を支配している。全てがレッドドラゴンで構成された群れだ。
人は荒ぶる自然のエネルギーを
炎に親しいレッドドラゴンたちは炎の因子を好み、火勢を増す。
灰色のベルマール山は朝も夕もなく炎を吹き続け、水ではなく溶岩の大河が煌々と大地を輝かせているのだ。それはただドラゴンだの『変異体』が跋扈しているというだけにとどまらず、人が踏み入るべきではない魔境の眺めそのものだった。
そんなベルマール山の洞窟内。
冷え固まった溶岩が刺々しく複雑なオブジェとなり、天井からも床からも突き出すその空間は、まるで超巨大なドラゴンの口の中にでも飛び込んだような光景だ。
壁際には大きな溶岩の滝が流れ、常人であれば干からびて死ぬであろうほどの熱を発している。
広大な空間の最奥に、威厳ある深紅の巨竜が蹲っていた。
甲殻も、鱗も、万年風雨にさらされた岩のように風化した質感。
だがそれは朽ち果てているという事ではない。長き時をその身に刻んだもののみが持ちうる圧倒的な迫力を持っていた。
そんな老竜の前に、鱗も鬣も艶やかに赤い、若き赤竜が座して頭を垂れていた。身体も老竜に比べるりくらい小さい。
彼女の名を、カファルという。
『どうか人化の法をお授けください』
その様を見て老竜は、火の粉と共に溜息をこぼした。
『さて......数十年ぶりに会うなり、言うことはそれか。
世界そのものを震わせ音としているような威厳ある声で言い放った、そのドラゴンの名はシュレイ。
『ルジャは、死んだのか』
『............はい』
『弔辞は述べぬぞ。人などに殺されるのであれば、そのような隙を晒した者が悪い。まして自ら群れを出て、人の住まう地に新たな巣を見繕ったのであればな。
カファルは返す言葉も無く、長い首をしならせて項垂れていた。
カファルは『ベルマール火山の群れ』出身だが、数十年前、群れを出奔している。
ルジャという、他所の群れのブルードラゴンと......そう、カファル自身はレッドドラゴンでありながらブルードラゴンとだ! ブルードラゴンであるルジャと結ばれるため、群れを飛び出したのだ。
もっとも、これは群れの掟に反したわけではない。
単色の群れの支配領域は大抵、何の因子が強く出るためにそこで違う色のドラゴン同士がつがうことは難しいが、適切な環境を見つけて移住するのであれば叶う。
冒険心あるドラゴンが群れを出て人の近くに住まうのも、長い目で見ればドラゴンという種全体にとって利益になるから止められているわけではない。
混血の仔は時に出来損ないだが、時に素晴らしい才覚を授かり、群れの血を強くすることもある。
だから、そう。カファルがルジャとつがうことそれ自体は問題ではない。
問題は、まだ年若く卵すら産んだことのないカファルが、ルジャなるブルードラゴンにすっかりいかれてしまい、勢い任せに茨の道へ踏み込んでいったことだ。
ドラゴンは長すぎる生涯を唯一の伴侶と過ごすことは稀で、一度つがった相手とは特別な関係を維持しつつも、幾度か伴侶を変えるのが常。
最初の伴侶に他色のドラゴンを選び群れを出るのではなく、母として経験を積んで後に結ばれるべきだ......そう言ってやんわりと止める
そし目の繁殖期にようやくカファルは卵を身籠もった。
間もなくルジャは人族の罠に掛かり、殺された。
そして......
らの仔は?』
大方察しているらしいシュレイの言葉を聞き、カファルはその巨躯をぶるりと震わせる。
やがて彼女は振り絞るようにいなないた。
『守り......きれませんでした......』
『......で、あろうさ。
その仔は『赤』と『青』の血を引く仔だ。
ドラゴンの誕生は世界を揺るがす出来事だ。
親が適切にそれを制御できなければ、その力は雛竜をも襲うだろう。
レッドドラゴンであるカファルは炎を御すことができる。
クグセ山は百年に一度の大水害に見舞われた。それはもはやただの水害にあらず、万物を呑み込み押し流す『水による滅び』という概念だ。
カファルは我が仔を焼き殺すギリギリまで炎を繰り、水の力を退け卵を守った。
だが、ほんの一瞬、娘可愛さに手元を狂わせ、火勢を弱めてしまったのだ。
水は瞬きの間に雛の命を奪った。
『何故、誰も頼らなかった』
でも、違った。失って初めて分かったのです。たとえ一生会えなかったとしても、私は! ルジャと私の仔に生きていて欲しかったのだと! 私は......!!』
後悔の叫びが溶岩洞に響いた。
宝石のような涙が流れ落ち、岩の上で弾けては蒸散する。
シュレイは静かに呟いた。
もしカファルが悔いておらぬのであれば詰りもしただろう。
『まあ、それも過ぎた事よ。それがどうして突然、
『それは......』
『申せ。わけも知らず頼みを聞いてやる道理はあるまい』
『では、事情をお話すれば教えてくださるのですか』
人族に化ける術そのものは、特に出し惜しみする類のものではないのだが......群れを飛び出したカファルがそのためだけに戻って来たとなると、何か穏やかならぬものを感じるのは自然だろう。
が『今度は人の男に惚れた』などと言いだしたら、儂はいい加減、跳ねっ返りの末娘を閉じ込めておきたくなるところだ』
カファルは僅かに頭を上げる。
父の鋭い視線が、彼女に向けられていた。 | Going back a little in time.
It was said that half of the world was inhabited by dragons while the other half was by humans.
In reality, the number of dragons was limited, and they did not require much living space. However, they needed vast hunting grounds to survive, and the Variants that increased in proportion to their number turned the lands into monster dens uninhabitable for humans.
To make matters worse, intellectual monsters called demons formed a cooperative relationship with dragons, settled in their territories, established kingdoms, and posed a threat to humanity.
The Volcanic Group of Belmar, composed entirely of red dragons, controlled an area around the size of the largest human kingdom, centered around Mount Belmar as its name suggested.
While humans controlled the wild, natural energy using
to preserve habitable regions, dragons powered the world instead. The red dragons, who had a strong affinity for fire, increased the potency of fire elements.
The ash-colored Belmar constantly spewed flames day and night, and the rivers of not water but lava it produced illuminated the land with a dazzling glow. Not only were dragons and Variants ruling the land, but the landscape itself was so ominous and forbidding that no human should venture into it.
One day, in a cavern of Mount Belmar.
The cooled-off lava had turned into sharp and complex pieces of art, sticking out both from the ceiling and the ground, creating an illusion as if you had jumped into a gigantic dragon’s maw.
A large lava waterfall flowed by the wall, releasing enough heat for an average person to dry up and die.
Deep inside that large space, a giant, deep crimson dragon crouched majestically.
His carapace and scales were weathered like a rock exposed to ten thousand years of wind and rain.
However, the dragon didn’t look decayed at all. On the contrary, he exuded an overwhelming aura that could only be attained by beings that had endured a long test of time.
Before that old dragon sat a young dragon with glossy scales and a mane, bowing her head to him. Its body was two sizes smaller compared to the old one too.
Her name was Kafal.
“Please impart the knowledge of human transformation to me.”
She implored with a slightly trembling voice. Seeing that, the old dragon heaved a sigh mixed with sparks.
“Well well... Is this the initial utterance upon our reunion after several decades? Pray tell, what brought this?”
The old dragon, Shurei, spoke with a majestic voice that seemed like the roar of the world itself. He was the head of the Volcanic Group of Belmar.
“Did Luja die?”
“...Yes.”
“I shall not extend my condolences, for those who fall by the hands of humans have none but themselves to blame for allowing it to happen. Not to mention, one who willingly left the group and made a nest within the human territory. Luja and you should be well aware of this fact.”
Kafal said nothing and bent her long neck further down.
She was originally from the Volcanic Group of Belmar but had run away several decades prior.
She had departed with a dragon from a different collective – a blue dragon named Luja, to be exact. Despite being a red dragon herself, she had eloped with a blue dragon, abandoning her own group.
That said, this was not exactly forbidden by her group’s laws.
A region controlled by a group of a single color was generally influenced by a single elemental factor, which made it hard for dragons of different colors to form a pair and settle there, but it could be realized if they found a suitable environment and moved there.
Adventurous dragons leaving the nests to live near humans would be advantageous for their species as a whole in the long term, so they weren’t exactly banned from it.
Mixed-race offspring sometimes turned out failures but sometimes were blessed with wonderful wit and intelligence, which served to further strengthen the blood of their group.
As such, Kafal forming a pair with Luja wasn’t a problem in itself.
The problem was that Kafal, who was a young dragon that hadn’t even laid eggs before, was completely infatuated with Luja and followed him along on a thorny path without much thought.
Dragons rarely spent their entire long life with a single companion, so it was normal to maintain a special relationship with someone they once paired with while still changing companions several times.
Some dragons tried to gently stop her saying that she shouldn’t choose a dragon of a different color as her first partner and flee, but rather gain experience as a mother first and then form a pair with them... but Kafal chose to flee and join him.
And during the third breeding season, Kafal finally produced an egg.
However, Luja soon fell into a human trap and was killed.
And then...
“Then, what of your child?”
Hearing Shurei’s words, who seemed to have guessed the situation, Kafal’s giant body trembled.
Before long, she mustered a groan.
“I... failed to protect her...”
“...It was to be anticipated. That child inherited the blood of Red and Blue. Your flames alone have been inadequate to quell her without resulting in her demise.”
It could be said that Luja died at the worst time possible. The birth of a dragon was a world-shaking event. When an egg hatched, the power of the very world awakened and went wild.
Unless the parent properly controlled it, the power would attack even the baby dragon itself.
Kafal, being a red dragon, could subdue the flames. However, controlling the rampaging water factors was impossible with her strength.
Mount Kuguse experienced its once-in-a-century flood. It went beyond a simple flood disaster and became the embodiment of a water catastrophe that destroyed and washed away everything.
Kafal controlled her flame output to be just a step away from burning her child to death, and drove the water’s power back to protect the egg.
However, for just a moment, her love for her child caused her to make a mistake and lower the flame’s output.
That instant was enough for the water to rob the life of the fledgling.
“For what reason have you refrained from seeking help?”
“I was... arrogant. If I asked the Blue group for help, they would have surely taken her away once she was born. I believed that to be no dissimilar fate from death’s separation... Oh, how wrong I was. It was only after losing her that I realized it – even if we were never to reunite, I yearned for her survival! I...!!”
Her regretful scream reverberated in the lava tube.
Tears fell from her eyes like jewels and evaporated as they hit the surface of the rocks.
“......I see.”
Shurei muttered silently.
Had Kafal not been regretful he would have pressed further. But rubbing salt into her was just a distraction.
“Alas, it is an unchangeable past now. Now tell me, why have you come before me to seek human transformation all of a sudden?”
“Well...”
“Speak. You do not expect me to listen to your request without an explanation, do you?”
“Then, if I explain it, will you teach me?”
Shurei pondered for a moment. The technique to transform into a human was not something he was reluctant to give... but it was natural for him to feel something was up for Kafal who left their group to suddenly come back just for that.
“...So be it. It remains contingent, however. Should I hear that you have succumbed to the charms of a human man this time, I may be compelled to contemplate locking my youngest tomboy daughter away.”
Kafal raised her head slightly.
She saw the sharp gaze of her father directed at her. | {
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都市では街領主の下、衛兵隊が編成され、治安維持を担う。
人の数が多い都市では、当たり前だが犯罪も多く、多くの衛兵による組織的で効果的な治安維持が求められるのだ。
対して、小さな農村では犯罪も少ない。......もしくは犯罪があったとしても、住人たちはコミュニティに波風立てることを厭い、犯罪扱いさせず内輪の理論で解決する場合もある。
衛兵の仕事は揉め事の仲裁や、外から来る者への警戒。そして都市への連絡係だ。
それを近隣の都市の衛兵隊から派遣された駐在衛兵がで担うというのが、よくある話だ。
表から直接入れる広い土間が応接間とオフィスを兼ねていて、机と椅子が置かれていた。相談に来た者や、何らかの犯罪の容疑者の話を、ここで聞けるのだ。
とは言え、この部屋に来る者は少ない様子で、部屋の主たる駐在衛兵以外が床を踏んだり物を触った形跡は希薄だった。皆無ではないが。
ガートベーラより派遣され、このコルティに駐在しております」
ドベロはいかにもドワーフらしい、隆々たる筋肉と立派な髭を持つ男だった。衛兵の証として、黒に近い紺色の制服を着ていた。
部屋の隅には、熊でも倒せそうな大斧が立てかけられていた。都会では、武器を持った衛兵が通りをうろつくのも犯罪抑止のため重要なのだが、こんな村の駐在では訓練の時とか、たまの魔物退治以外で斧を持ち出す機会など無いだろう。むしろ日頃からこんなものを持ち歩いていたら顰蹙を買うかも知れない。
「マクレガー冒険支援事務所、代表のイヴァー・マクレガーです。
イヴァーは挨拶を返しつつ、全てを観察していた。
続いて、家具類。建物と同じくらい古い。おそらく駐在所が出来た時から置かれている。ドベロが村に来る前からここにあったという事だ。ならばそれはリスクだと判断した方がいい。
イヴァーは懐中時計を取り出し、時間を確認するフリをした。
部屋を睨め回した一瞬で、棚の上や隙間など、イヴァーは
『目』は無さそうだ。と、なると......
「おっと、失礼」
イヴァーは懐中電灯をポケットに仕舞いつつ、わざと万年筆を床に落とした。
「拾っても構いませんか?」
「え? あ、はあ、構いませんが」
首をかしげているドベロを尻目に、イヴァーは万年筆を......拾わなかった。
懐中時計を開くと、文字盤の宝石は、もう光っていなかった。
露わになった棚の裏には、潰れてひしゃげたブローチの残骸みたいな物体が落ちていた。
「......お前ら、ここで何を話した? 聞かれてたぞ」
「それは......!」
のように音を届ける力があるが、一方通行であり、主に盗聴に用いられる。
何者かが駐在所に仕掛けていたのだ。
「こ、こんな!? こんなもの、誰が、いつ......」
あるいは最初から仕掛けられていたかも知れません。あなたが村に来た時から」
しかしルシェラの方は、そこまで驚いてもいないようだった。
「どうやら、お前の勘は大当たりだな。ルシェラ。
「どうするべきでしょう?」
「何も気が付いてねえフリをするんだ。
駐在衛兵が部外者として扱われ、閉鎖的な村で疎まれる......というのは、決して珍しくない話だ。
だが、そのために盗聴まで仕掛けられるというのは流石に異常だ。
盗聴器は潰したが、これが偶然なのか、それともイヴァーが勘付いて対処したのかは、分からないようにしておく。
「ここで話したのは、ギルドの調査に対して村人が偽りの証言をしている可能性と、それに対するドベロさんの意見です」
さて、あらためてお話を伺えますか、ドベロさん」
「は、はあ......はい」
もし村人が何らかの陰謀を働いていて、ドベロをも敵視しているのなら、彼の身は安全と言えないし、外部の者に縋るしかないのだ。
「まずは件の事件に関して、あなたの視点からの事実を」
「一月前、田に出て農作業をしていた村人が、防壁を越えてきた魔物に襲われて殺されました。
「死体の状態は?」
朝早くでしたので魔物を目撃した者は居りません。現場を見ましたが、稲が薙ぎ倒された田んぼの中に、巨大な猫のような足跡がありました。ですが本職には魔物の種類までは分からず......魔物なら冒険者に任せればいいと、よく見てもいませんでした」
「なあ、ルシェラ......」
「ええ。調査書によれば、冒険者ギルドの調査が入る前に均されて足跡は消されていたと」
は頷く。
現場に居合わせた者や現地の者の無理解によって、重要な証拠や痕跡が悪意無く消されてしまう......というのは、よくある事だ。
だが、この場合、悪意を勘ぐれるのではないか。
「......その後のことも、もう一度伺ってよろしいでしょうか」
「あ、ええ、はい」
ドベロはルシェラに促されて、少し躊躇ってから、口を開く。
「犠牲者の葬儀が、いつの間にか終わっておりまして......」
「はい?」
事件から二日後の、夜間でしたね。まるで本職に隠すかのように、本職が眠っている間に」
不気味に思ってはいたのだろうが、この上、盗聴アイテムまで出てきたとあれば心穏やかでは居られまい。
駐在衛兵も普通は冠婚葬祭に呼ばれるものだ。住人に嫌われているか......それとも何か、他の不都合があるのか。
「衛兵さん。お酒はお好きですか」
「え? は、はい。人並みに......」
「毎晩お飲みに?」
「......はあ、そうですが」
ドワーフが『人並みに酒好き』と言った場合、それは、火を噴くほど強い酒を浴びるように呑むという意味だ。
そして、酒飲みの動きを封じることは、容易い。ミスリル銀の検毒食器など、誰もが持っているわけではないのだから。
「盛られたな」
「葬儀の夜、普段より眠くてぐっすり眠ってしまった、なんてことはありませんか?」
の味を誤魔化し、身体への回りも早くする。
ドベロは寒さを堪えるような顔をして、太い指でしきりに髭の先を絡めていた。
「覚えて......おりませんが、確か、あの朝は二日酔いのように軽く頭痛が......」
ドベロの頬を汗が伝うのは、暑さのせいばかりでもあるまい。
小さな村にとって駐在衛兵は、国を国として編むもの......法秩序への窓口だ。
その目を欺き、村の者らは何をしているのか。
死んだのは鼻つまみ者なんかじゃなく、皆に慕われる働き者や、結婚したばかりの好青年だったのに」
あくまでも彼の評は、村の外からのものだ。村人から犠牲者たちは違う姿が見えていたかも知れない。
だとしても留意には値するとイヴァーは思った。
この村では、道理の通らぬ何かが起こっているのだと。 | In cities, under the jurisdiction of the city lord, a city guard unit was organized to maintain law and order.
In densely populated cities, it’s only natural that there would be a higher rate of crime, and thus, an organized and effective law enforcement system involving many city guards was required.
On the other hand, in small rural villages, there was generally less crime. Even if a crime did occur, the residents may prefer to handle it within the community without causing a disturbance, sometimes not even treating it as a crime.
The duties of the city guards included mediating disputes, guarding against outsiders, and serving as a liaison to the city.
It wasn’t uncommon for a stationed guard from a neighboring city to handle these duties alone, just like in the case of Corti Village.
The guard station in the village hardly differed in appearance from the surrounding houses. The spacious entrance area with a dirt floor served as both a reception room and an office, equipped with tables and chairs. This was where they listened to the concerns of those who visited or dealt with the cases of suspected criminals.
However, it seemed that very few visitors came to this room, and apart from the primary stationed guard, there were few signs of anyone walking on the floor or touching any objects. Although not entirely absent.
“I’m Dovelo Gajunak, a member of the Gartbera City Guard. I’ve been dispatched from Gartbera to be stationed here in Corti.”
Dovelo was a typical dwarf, with robust muscles and a magnificent beard. He was dressed in a uniform that was almost black but closer to navy blue, a hallmark of the city guard.
In the corner of the room, a massive axe leaned against the wall. In the city, guards carrying weapons was crucial for deterring crime, but in a quiet village like this, there were likely very few occasions to wield an axe other than during training or the occasional monster hunt. Carrying such a weapon regularly in a place like this might even raise eyebrows.
“I’m Ivar McGregor, representing the McGregor Adventurer Support Office. I’m presently collaborating with the adventurer party, Golden Helmet.”
Ivar reciprocated the greeting while carefully observing everything. He tried to deduce Dovelo’s personality from his every move. Well, that wasn’t too important, really.
Next, the furniture. It was as old as the building itself, probably there since the guard station was established. It had been here before Dovelo arrived in the village. If that was the case, it might be a risk.
Ivar took out his pocket watch and pretended to check the time. The red gem embedded in the watch face was shining brightly. As expected. In an instant, Ivar scrutinized every possible location for
in the room, like the shelves and gaps.
There didn’t seem to be any ‘eyes.’ If that was the case...
“Oh, excuse me.”
Ivar pocketed his watch and intentionally dropped his fountain pen on the floor. It rolled skillfully and came to a stop in front of the document shelf.
“May I pick that up?”
“Huh? Oh, um, sure, go ahead.”
Ignoring Dovelo, who was tilting his head, Ivar...didn’t pick up the fountain pen. Instead, he lifted the shelf and shifted it against the wall as if to graze it. There was a crunching sound; the moved shelf seemed to have run over something hard and crushed it.
When he opened the pocket watch, the gem on the watch face was no longer glowing.
Ivar shifted the shelf more significantly this time. Behind the exposed shelf, there was an object that looked like the crushed remnants of a brooch.
“What were you talking about here? Someone was listening.”
“What...!”
It was a half of a magic item called the ‘Twin Ears.’ This item had the power to transmit sound like a Caller, but it was one-way and primarily used for eavesdropping.
Someone had planted it in the guard station.
“This, how...?! Who, or when...”
“It’s not like someone is always here, right? There are plenty of opportunities, like when you’re sleeping or patrolling the village. Or perhaps it was set up from the beginning, maybe even before you came to the village.”
Dovelo was visibly shaken. However, Lucella didn’t seem as surprised.
“It seems your intuition was spot on, Lucella. ...The tactics are devious, but the execution is amateurish. Probably the work of someone in the village.”
“What should we do?”
“Pretend you haven’t noticed a thing. There’s no point in questioning, they won’t spit a word. We’ll let them swim free.”
Being treated as an outsider and being alienated in a closed-off village was not an uncommon occurrence for stationed guards.
However, being bugged to this extent was indeed unusual.
While the bug had been crushed, it was intentionally left unclear whether this was accidental or if Ivar had suspected it and taken action. The aim was to make the perpetrator feel pressured by the uncertainty, placing a psychological burden on them. That was Ivar’s intention.
“What we were discussing here was the possibility that the villagers are giving false testimony to the guild’s investigation, and Dovelo’s opinion on the matter.”
“Understood. Now, Mr. Dovelo, can you tell us your side of the story again?”
“O-Oh...Yes.”
Dovelo still seemed overwhelmed, but he nodded. If the villagers were involved in some conspiracy and viewed Dovelo as an adversary, his safety couldn’t be guaranteed, and he had no choice but to seek help from outsiders.
“First, the facts from your perspective about the incident.”
“A month ago, a villager who was working in the fields was attacked and killed by a monster that came over the defensive wall. It happened early in the morning, and there were only three people in the fields at the time... and all of them were right there.”
“What was the condition of the body?”
“It was gruesome. Torn apart by claws and fangs, with their thighs and entrails devoured. Since it was early in the morning, no one saw the monster. I went to the scene, and there were large cat-like footprints in the trampled rice field. But I didn’t know how to tell monsters apart so I didn’t investigate the type of monster further... I thought if it was a monster, it should be left to the adventurers.”
“Hey, Lucella...”
“Yes. According to the investigation report, the footprints had been smoothed out and erased before the Adventurer’s Guild’s investigation began.”
Both of them nodded.
Whether it was the aftermath of a monster rampage or evidence of a crime committed by a person, it was common for vital evidence and traces to be inadvertently erased due to the presence of onlookers or the actions of local residents who didn’t understand the situation.
However, in this case, one couldn’t help but suspect malice.
“...Could you please tell us what happened afterward one more time?”
“Yes, of course.”
Dovelo, urged by Lucella, hesitated for a moment and then began to speak.
“The victim’s funeral had somehow concluded before we knew it....”
“I wasn’t told anything. It happened at night, two days after the incident, as if they were deliberately hiding it while I was asleep.”
Dovelo spoke with a weary expression. He had likely found it eerie, but with the emergence of the listening device, any sense of calm would have vanished.
Normally, stationed guards were also invited to ceremonies such as funerals. It made one wonder if the villagers disliked him or if there was some other issue at play.
“Do you enjoy a drink, Mr. Guard?”
“Huh? Y-yes, moderately...”
“Do you have a drink every night?”
“...Well, yes, I do.”
When a dwarf said they enjoyed drinks ‘moderately,’ it meant they drowned in alcohol that was as strong as raging flames.
And it was easy to suppress a drinker’s movement. After all, not everyone had mythril-silver anti-poison tableware.
“You were drugged, huh.”
“Huh?”
“On the night of the funeral, did you perhaps sleep more soundly than usual?”
Alcohol was used to disguise the taste of mixed-in drugs and accelerate their effects on the body.
Dovelo had a pained expression, repeatedly twirling the tips of his beard with his thick fingers.
“I...don’t remember, but I did have a slight headache that morning, as if I had a hangover...”
The sweat trickling down Dovelo’s cheek was not solely due to the heat.
In a small village, the stationed guards not only upheld order but also served as a gateway to the rule of law, symbolizing the country’s governance.
Yet, beneath those watchful eyes, the villagers were secretly up to something.
“I hate to say this, but... the villagers don’t seem to be showing much sorrow for the victim. He wasn’t just an ordinary person; he was a hardworking fellow, a young man who had just recently gotten married and was beloved by all.”
Rather than scared, Dovelo seemed to feel eerie. His assessment was based on his perspective as an outsider. The villagers might have seen things differently when it came to the victims.
Nevertheless, Ivar thought it was something to keep in mind.
In this village, something unreasonable was happening. | {
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ウィルおじさんがその台詞を言った瞬間強い風が吹き、私は思わず目を細めてしまった。
「ウィルおじさん」と私が目を開いた頃には彼はそこにはいなかった。
さっきまで目の前にいたのが嘘のように消えてしまった。その瞬間、彼が幻覚だったということに気付く。
そうだわ......。あんなにリアルだったけれど、ここはあくまでもクシャナの訓練場なのだ。
私は無事に敵を倒せたのかしら。
「あれは倒したとは言えないわよね」
そう呟きながら苦笑した。
きっと、私はウィルおじさんには敵わない。あの器の大きさには誰も敵わない。
ウィルおじさん相手になら喜んで負けを認めるわ。
そう思った時だった。ないはずの左目が疼いた。
......なんだかみたいな状況だけど、本当に左目に違和感を抱く。
「なにこれ」
私は暫く微かな痛みに耐えながら、片手で左目を抑えた。
............ウィルおじさんが死んじゃう? 本当にあれが最期だったというの?
私はそっと左目から手を離した。左側の景色がハッキリと見える。久しぶりに視界が広がった。
「ウィルおじさん、逝ってしまったのね......」
その事を悟った瞬間、私は花畑に蹲るように涙を流した。嗚咽を上げ、私の泣き声だけがその場に響いた。溢れ出る涙を止めることができなかった。
ウィルおじさん、ウィルおじさん、ウィルおじさん......。
何度も心の中で大好きだった人の名を呟いた。
彼がこの世からいなくなるなんて考えたこともなかった。ずっとにいれると思っていた。
心がズタズタに引き裂かれそうだった。ここに来て、初めて大切な人を失った。
私はどこかで自分を過信していたのかもしれない。きっと、私なら誰でも救えるのだと......。
ウィルおじさんの優しさにもう二度と触れることはない。あのごつごつした大きな手で頭を撫でてくれることも、あの優しい声で私の名前を呼んでくれることも、何かあっても相談に駆け寄れる場所がなくなってしまった。
私にとってウィルおじさんは私の居場所の一つだった。
常に悪女として生きている私が唯一何も考えずに助けを求めることのできるところだった。
片手で胸元を抑える。この胸の痛みをどうしたら取り除くことができるの。
魔法ではどうにもならないこの痛みを受け止めるしかない。
今、私がウィルおじさんの傍に居れないことが悔しくてたまらない。最後に抱きしめたかった。感謝してもしきれないくらいに、今までウィルおじさんにはお世話になった。
感謝の一つも伝えることも出来ず逝ってしまうなんてずるいわ......。私もまだまだ貴方に言いたいことがあった。
左目に微かなウィルおじさんの魔力を感じた。こんなにも優しくて温かい魔力を感じたことがない。
乙女ゲームでは出てこなかったウィルおじさんがこの世界にとってこの上なく重要な人材だったなんて思いもしなかった。
私は生涯シーカー・ウィルを忘れない。
「あ、なたに......、出会えて、良かった」
顔を上げて、震える声を発した。とめどなく流れる涙を拭いながら、空を見つめた。
私に沢山の愛を与えてくれて、ありがとうございました。 | A strong wind blew just as Uncle Will said that line, and I couldn’t help but squint.
“Uncle Will,” I said, and by the time I opened my eyes he was not there.
He was right in front of me a moment ago, and then he was gone. At that moment, I realized that he was a hallucination.
That’s right... He was so real, but this was only Kushana’s training ground.
I wondered if I had successfully defeated the enemy.
“I wouldn’t say I beat him, right?”
I chuckled as I muttered that.
Surely, I was no match for Uncle Will. No one could match the height of that person.
If it were against Uncle Will, I would gladly admit defeat.
That was when I thought so. I felt a tingle in my left eye, which should not be there.
...I know this sounds like a chuuni situation, but I really felt a discomfort in my left eye.
“What is this?”
I held my left eye with one hand while enduring the slight pain for a while.
...Uncle Will is dying? Was that really the end?
I gently removed my hand from my left eye. I could clearly see the view to my left. For the first time in a long time, I could see clearly.
“Uncle Will, he’s gone...”
The moment I realized this, I burst into tears as I crouched in the flower garden. I sobbed, and my cries were the only sound in the place. I could not stop the tears from overflowing.
Uncle Will, Uncle Will, Uncle Will....
I whispered the name of the man I loved so much over and over in my heart.
I had never thought that he would leave this world. I thought we would be together forever.
I felt like my heart was being torn to shreds. This was the first time I had lost someone I cared about since I came here.
Maybe somewhere along the way I had been overconfident, I thought. I was certain that I could save anyone.
I would never be able to feel Uncle Will’s kindness again. I would never again feel his big, craggy hands patting my head, or his gentle voice calling my name, and I would never again have a place where I could run to for advice if something happened to me.
For me, Uncle Will was the one place where I belonged.
It was the only place where I could ask for help without thinking, even though I have always been a bad girl.
I held my chest with one hand. How could I get rid of this pain in my chest?
I had no choice but to accept this pain, which no magic could do anything about.
I was so frustrated that I couldn’t be with Uncle Will right now. I wanted to hug him for the last time. I couldn’t thank Uncle Will enough for everything he had done for me.
It was unfair that he passed away without being able to express even a single word of gratitude to him... I also had more things I wanted to say to him.
I felt the faint magic of Uncle Will in my left eye. I had never felt such a gentle and warm magic power.
I had never thought that Uncle Will, who did not appear in the Otome Game, would be the most important person in this world to me.
I would never forget Will Seeker for the rest of my life.
“Ah, I’m so glad I met him.”
I looked up and uttered a shaky voice. Wiping away the tears that flowed unceasingly, I stared at the sky.
Thank you for giving me so much love. | {
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妖物
アンブローズ・ビヤース
一
粗木(あらき)のテーブルの片隅に置かれてあるあぶら蝋燭の光りを頼りに、一人の男が書物に何か書いてあるのを読んでいた。
それはひどく摺り切れた古い計算帳で、
その男は燈火(あかり)によく照らして視るために、時どきにそのページを蝋燭の側へ近寄せるので、
火をさえぎる書物の影が部屋の半分をおぼろにして、そこにいる幾人かの顔や形を暗くした。
書物を読んでいる男のほかに、そこには八人の男がいるのである。
そのうちの七人は動かず、物言わず、あらけずりの丸太の壁にむかって腰をかけていたが、部屋が狭いので、どの人もテーブルから遠く離れていなかった。
かれらが手を伸ばせば八人目の男のからだに触れることが出来るのである。
その男というのは、顔を仰向けて、半身を敷布(シーツ)におおわれて、両腕をからだのそばに伸ばして、テーブルの上に横たわっていた。
彼は死んでいるのである。
書物にむかっている男は声を出して読んでいるのではなかった。
ほかの者も口をきかなかった。
すべての人が来たるべき何事かを待っている様子で、
死んだ人ばかりが待つこともなしに眠っているのである。
外は真の闇で、窓の代りにあけてある壁の穴から荒野の夜の聞き慣れないひびきが伝わって来た。
遠くきこえる狼のなんともいえないように長い尾をひいて吠える声、
木立ちのなかで休みなしに鳴く虫の静かに浪打つようなむせび声、
昼の鳥とはまったく違っている夜鳥(ナイトバード)の怪しい叫び声、
めくら滅法界(めっぽうかい)に飛んでくる大きい甲虫(かぶとむし)の唸り声、殊(こと)にこれらの小さい虫の合奏曲(コーラス)が突然やんで半分しかきこえない時には、なにかの秘密を覚(さと)らせるようにも思われた。
しかし、ここに集まっている人びとはそんなことを気にとめる者もなかった。
ここの一団が実際的の必要を認めないことに興味を有していないのは、
たった一つの暗い蝋燭に照らされている、かれらの粗野なる顔つきをみても明らかであった。
かれらは皆この近所の人びと、すなわち農夫や樵夫(きこり)であった。
書物を読んでいる人だけは少し違っていた。
人は彼をさして、世間を広くわたって来た人であると言っているが、それにもかかわらず、その風俗は周囲の人びとと同じ仲間であることを証明していた。
彼の上衣(うわぎ)はサンフランシスコでは通用しそうもない型で、
履き物も町で作られた物ではなく、自分のそばの床に置いてある帽子
――この中で帽子をかぶっていないのは彼一人である
――は、もしも単にそれを人間の装飾品と考えたらば大間違いになりそうな代物(しろもの)であった。
彼の容貌は職権を有する人に適当するように、自然に馴らされたのか、あるいは強(し)いて粧(よそお)っているのか知らないが、一方に厳正を示すとともに、むしろ人好きのするようなふうであった。
なぜというに、彼は検屍官(けんしかん)である。
彼がいま読んでいる書物を取り上げたのもその職権に因(よ)るもので、
書物はこの事件を取り調べているうちに死人の小屋の中から発見されたのであった。
審問(しんもん)は今この小屋で開かれている。
検屍官はその書物を読み終わって、それを自分のポケットに入れた。
その時に入り口の戸が押しあけられて、一人の青年がはいって来た。
彼は明らかにここらの山家(やまが)に生まれた者ではなく、ここらに育った者でもなく、
町に住んでいる人びとと同じような服装をしていた。
しかも遠路を歩いて来たように、その着物は埃(ほこり)だらけになっていた。
実際、彼は審問に応ずるために、馬を飛ばして急いで来たのであった。
それを見て、検屍官は会釈(えしゃく)したが、
ほかの者は誰も挨拶しなかった。
「あなたの見えるのを待っていました」
と、検屍官は言った。
「今夜のうちにこの事件を片付けてしまわなければなりません」
青年はほほえみながら答えた。
「お待たせ申して相済みません。
私は外へ出ていました。
......あなたの喚問(かんもん)を避けるためではなく、その話をするために、たぶん呼び返されるだろうと思われる事件を原稿に書いて、わたしの新聞社へ郵送するために出かけたのです」
検屍官も微笑した。
「あなたが自分の新聞社へ送ったという記事は、
おそらくこれから宣誓の上でわれわれに話していただくこととは違いましょう」
と、相手はやや熱したように、その顔を紅(あか)くして言った。
「わたしは複写紙を用いて、新聞社へ送った記事の写しを持って来ました。
しかし、それが信用できないような事件であるので、普通の新聞記事のようには書いてありません、むしろ小説体に書いてあるのですが、
宣誓の上でそれを私の証言の一部と認めていただいてよろしいのです」
「しかし、あなたは信用できないというではありませんか」
「いや、それはあなたに係(かか)り合いのないことで、わたしが本当だといって宣誓すればいいのでしょう」
検屍官はその眼を床(ゆか)の上に落として、しばらく黙っていると、
小屋のなかにいる他の人びとは小声で何か話し始めたが、やはりその眼は死骸の上を離れなかった。
検屍官はやがて眼をあげて宣告した。
「それではふたたび審問を開きます」
人びとは脱帽した。
証人は宣誓した。
「あなたの名は......」
と、検屍官は訊いた。
「ウィリアム・ハーカー」
「年齢は......」
「二十七歳」
「あなたは死人のヒュウ・モルガンを識(し)っていますか」
「はい」
「モルガンの死んだ時、あなたも一緒にいましたか」
「そのそばにいました」
「あなたの見ている前でどんなことがありましたか。
それをお訊(たず)ね申したいのです」
「わたくしは銃猟や魚釣りをするために、ここへモルガンを尋(たず)ねて来たのです。
もっとも、そればかりでなく、わたくしは彼について、その寂しい山村生活を研究しようと思ったのです。
彼は小説の人物としてはいいモデルのように見えました。
わたくしは時どきに物語(ストーリー)をかくのです」
「わたしも時どきに読みますよ」
「それはありがとうございます」
「いや、一般のストーリーを読むというので......。
あなたのではありません」
陪審官のある者は笑い出した。
陰惨なる背景に対して、ユーモアは非常に明かるい気分をつくるものである。
戦闘中の軍人はよく笑い、死人の部屋における一つの冗談はよくおどろきに打ち勝つことがある。
「この人の死の状況を話してください」
と、検屍官は言った。
「あなたの随意に、筆記帳でも控え帳でもお使いなすってよろしい」
証人はその意を諒(りょう)して、
胸のポケットから原稿をとり出した。
彼はそれを蝋燭の火に近寄せて、自分がこれから読もうとするところを見いだすまで、その幾枚を繰っていた。
二
――われらがこの家を出(いで)たる時、日はいまだ昇らざりき。
われらは鶉(うずら)を猟(あさ)らんがために、手に手に散弾銃をたずさえて、ただ一頭の犬をひけり。
最もよき場所は畔(あぜ)を越えたるところに在り、とモルガンは指さして教えたれば、われらは低き槲(かしわ)の林をゆき過ぎて、草むらに沿うて行きぬ。
路の片側にはやや平らかなる土地ありて、野生の燕麦(からすむぎ)をもって深く掩(おお)われたり。
われらが林を出(いで)て、モルガンは五、六ヤードも前進せる時、
やや前方に当たれる右側のすこしく隔たりたるところに、獣(けもの)のたぐいが藪(やぶ)を突き進むがごときひびきを聞けり。
その響きは突然に起こりて、草木のはげしく動揺するを見たり。
「われらは鹿を狩りいだしぬ。
と、われは言いぬ。
モルガンは歩みを停(と)めて、動揺する林を注意深く窺いいたり。
彼は何事をも語らざりき。
しかも、その銃の打ち金(がね)をあげて、何物をか狙うがごとくに身構えせり。
焦眉(しょうび)の急がにわかに迫れる時にも、彼は甚(はなは)だ冷静なるをもって知られたるに、今や少しく興奮せる体(てい)を見て、われは驚けり。
「や、や」
と、われは言いぬ。
「鶉(うずら)撃つ銃をもて鹿を撃つべくもあらず。
君はそれをこころみんとするか」
彼はなお答えざりき。
しかもわがかたへ少しく振り向きたる時、われはその顔色の励(はげ)しきに甚だしくおびやかされたり。
かくてわれは、容易ならざる仕事がわれらの目前に横たわれることを覚(さと)りぬ。
おそらく灰色熊を狩り出したるにあらずやと、われはまず推量して、
モルガンのほとりに進み寄り、おなじくわが銃の打ち金をあげたり。
藪のうちは今や鎮(しず)まりて、物の響きもやみたれど、モルガンは前のごとくにそこを窺いいるなり。
「何事にや。
何物にや」
と、われは問いぬ。
「妖物(ダムドシング)?」
と、彼は見かえりもせずに答えぬ。
その声は怪しくうら嗄(が)れて、
かれは明らかにおののけり。
彼は更に言わんとする時、近きあたりの燕麦がなんとも言い分け難き不思議のありさまにて狂い騒ぐを見たり。
それは風の通路にあたりて動揺するがごとく、麦は押し曲げらるるのみならず、押し倒され、押し挫(ひし)がれて、ふたたび起きも得ざりき。
しかも、その風のごとき運動は徐(じょ)じょにわがかたへも延長し来たれるなり。
この見馴れざる不可解の現象ほど、われに奇異の感を懐(いだ)かしめたることはかつてなかりき。
しかもわれはなお、それに対して恐怖の念を起こすにいたらざりき。
われはかくの如くに記憶す。
――たとえば、開かれたる窓より何心なしに表をながめたる時、目前にある小さき立ち木を遠方にある大木の林の一本と見誤まることあり。
それは遠方の大木と同様の大きさに見ゆれど、しかもその量(かさ)においても、その局部においても、後者とはまったく一致せざるはずなり。
要するに、大気中における遠近錯覚に過ぎざるなれど、一時は人を驚かし、人を恐れしむることあり。
われらは最も見馴れたる自然の法則の、最も普通なる運用を信頼し、そのあいだになんらかの疑うべきものあるを見れば、直(ただ)ちにそれをもってわれらの安全をおびやかすか、あるいは不思議なる災厄の予報と認むるを常とす。
されば、今や草むらが理由なくして動揺し、その動揺の一線が迷うことなくおもむろに進行し来たるをみれば、たとい恐怖を感ぜざるまでも、確かに不安を感ぜざるを得ざるなり。
わが同伴者は実際に恐怖を感じたるがごとく、あわやと見る間に、彼は突然その銃を肩のあたりに押し当てて、ざわめく穀物にむかって二発を射撃したり。
その弾(たま)けむりの消えやらぬうちに、われは野獣の吼(ほ)ゆるがごとき獰猛(どうもう)なる叫び声を高く聞けり。
モルガンはその銃を地上に投げ捨てて、跳(おど)り上がって現場より走り退(の)きぬ。
それと同時に、われはある物の衝突によって地上に激しく投げ倒されたり。
煙りにさえぎられて確かに見えざりしが、柔らかく、しかも重き物体が大いなる力をもってわれに衝突したりしと覚ゆ。
われは再び起きあがりて、わが手より取り落としたる銃を拾い上げんとする前に、モルガンが今や最期(さいご)かとも思わるる苦痛の叫びをあぐるを聞けり。
さらにまた、その叫び声にまじりて、闘える犬の唸(うな)るがごとき皺枯(しわが)れたる凄(すさ)まじき声をも聞けり。
異常の恐怖に襲われて、われはあわてて跳(は)ね起きつつモルガンの走り行きたる方角を打ち見やれば、
ああ、二度とは見まじき怖ろしの有様なりしよ。
三十ヤードとは隔てざる処(ところ)に、わが友は片膝を突いてありき。
その頭(かしら)は甚だしき角度にまでのけぞりて、その長き髪はかき乱され、その全身は右へ左へ、前へうしろへ、激しく揺られつつあるなり。
その右の腕は高く挙げられたれど、わが眼にはその手先はなきように見えたり。
左の腕はまったく見えざりき。
わが記憶によれば、この時われはその身体の一部を認めたるのみにて、
他の部分はさながら暈(ぼか)されたるように見えしと言うのほかなかりき。
やがてその位置の移動によりて、すべての姿は再び我が眼に入れり。
かく言えばとて、それらはわずかに数秒時間の出来事に過ぎず。
そのあいだにもモルガンはおのれよりも優(すぐ)れたる重量と力量とに圧倒されんとする、決死の力者(りきしゃ)のごとき姿勢を保ちつつありき。
しかも、彼のほかには何物をも認めず、彼の姿もまた折りおりには定かならざることありき。
彼の叫びと呪いの声は絶えず聞こえたれど、その声は人とも獣(けもの)とも分かぬ一種の兇暴獰悪(ねいあく)の唸り声に圧せられんとしつつあるなり。
われは暫(しばら)くなんの思案もなかりしが、やがてわが銃をなげ捨てて、わが友の応援に馳(は)せむかいぬ。
われはただ漠然と、彼はおそらく逆上せるか、あるいは痙攣(けいれん)を発せるならんと想像せるなり。
しかもわが走り着く前に、彼は倒れて動かずなりぬ。
すべての物音は鎮まりぬ。
しかもこれらの出来事なくとも、われを恐れしむることありき。
われは今や再びかの不可解の運動を見たり。
野生の燕麦は風なきに乱れ騒ぎて、眼にみえざる動揺の一線は俯伏(うつぶ)しに倒れている人を越えて、踏み荒らされたる現場より森のはずれへ、しずかに真っ直ぐにすすみゆくなり。
それが森へと行き着くを見おくり果てて、さらにわが同伴者に眼を移せば
――彼はすでに死せり。
三
検屍官はわが席を離れて、死人のそばに立った。
彼は敷布(シーツ)のふちを把(と)って引きあげると、死人の全身はあらわれた。
死体はすべて赤裸で、蝋燭のひかりのもとに粘土色に黄いろく見えた。
しかも明らかに打撲傷による出血と認められる青黒い大きい汚点(しみ)が幾カ所も残っていた。
胸とその周囲は棍棒で殴打されたように見られた。
ほかに怖ろしい引っ掻き疵(きず)もあって、
糸のごとく、または切れ屑のごとくに裂かれていた。
検屍官は更にテーブルのはしへ廻って、死体の頤(あご)から頭の上にかかっている絹のハンカチーフを取りはずすと、
咽喉(いんこう)がどうなっているかということが露(あら)われた。
陪審官のある者は好奇心にかられて、それをよく見定めようとして起(た)ちかかったのもあったが、彼らはたちまちに顔をそむけてしまった。
証人のハーカーは窓をあけに行って、わずらわしげに悩みながら窓台に倚(よ)りかかっていた。
死人の頸(くび)にハンカチーフを置いて、検屍官は部屋の隅へ行った。
彼はそこに積んである着物のきれはしをいちいちに取り上げて検査すると、
それはずたずたに引き裂かれて、乾いた血のために固くなっていた。
陪審官はそれに興味を持たないらしく、
近寄って綿密に検査しようともしなかった。
彼らは先刻すでにそれを見ているからである。
彼らにとって新しいのは、ハーカーの証言だけであった。
「皆さん」
と、検屍官は言った。
「わたくしの考えるところでは、最早(もはや)ほかに証拠はあるまいと思われます。
あなたがたの職責はすでに証明した通りであるから、
この上に質問するようなことがなければ、外へ出てこの評決をお考えください」
陪審長が起ちあがった。
粗末な服を着た、六十ぐらいの、髯(ひげ)の生えた背丈(せい)の高い男であった。
「検屍官どのに一言おたずね申したいと思います」
と、彼は言った。
「その証人は近ごろどこの精神病院から抜け出して来たのですか」
「ハーカー君」
と、検屍官は重(おも)おもしく、しかもおだやかに言った。
「あなたは近ごろどこの精神病院を抜け出して来たのですか」
ハーカーは烈火のごとくになったが、しかしなんにも言わなかった。
もちろん、本気で訊(き)くつもりでもないので、七人の陪審官はそのままに列をなして、小屋の外へ出て行ってしまった。
と、ハーカーは言った。
「私はもう勝手に帰ります」
「よろしい」
ハーカーは行こうとして、戸の掛け金に手をかけながら、また立ちどまった。
彼が職業上の習慣は、自己の威厳を保つという心持ちよりも強かったのである。
彼は振り返って言った。
「あなたが持っている書物は、
モルガンの日記だと思います。
あなたはそれに多大の興味を有していられるようで、
わたしが証言を陳述している間にも読んでいられました。
わたしにもちょっと見せていただけないでしょうか。
おそらく世間の人びともそれを知りたいと思うでしょうから......」
「いや、この書物にはこの事件に関するなんの形をもとどめていません」
と、検屍官はそれを上衣(うわぎ)のポケットに滑(すべ)り込ませた。
「これにある記事はみんな本人の死ぬ前に書いたものです」
ハーカーが出て行ったあとへ、陪審官らは再びはいって来て、テーブルのまわりに立った。
そのテーブルの上には、かの掩(おお)われたる死体が、敷布(シーツ)の下に行儀よく置かれてあった。
陪審長は胸のポケットから鉛筆と紙きれを把(と)り出して、念入りに次の評決文を書くと、他の人びともみな念を入れて署名した。
――われわれ陪審官はこの死体はマウンテン・ライオン(豹の一種)の手に因(よ)って殺されたるものと認む。
但(ただ)し、われわれのある者は、死者が癲癇(てんかん)あるいは痙攣のごとき疾病を有するものと思考し、一同も同感なり。
四
ヒュウ・モルガンが残した最後の日記は確かに興味ある記録で、おそらく科学的の暗示を与えるものであろう。
その死体検案の場合に、日記は証拠物として提示されなかった。
検屍官はたぶんそんなものを見せることは、陪審官の頭を混乱させるに過ぎないと考えたらしい。
日記の第一項の日付けははっきりせず、
その紙の上部は引き裂かれていたが、
残った分には次のようなことが記(しる)されている。
――犬はいつでも中心の方へ頭をむけて、半円形に駈けまわる。
そうして、ふたたび静かに立って激しく吠える。
しまいには出来るだけ早く藪(やぶ)の方へ駈けてゆく。
はじめはこの犬め、気が違ったのかと思ったが、家(うち)へ帰って来ると、おれの罰を恐れている以外に別に変わった様子も見せない。
犬は鼻で見ることが出来るのだろうか。
物の匂いが脳の中枢に感じて、その匂いを発散する物の形を想像することが出来るのだろうか。
九月二日
――ゆうべ星を見ていると、その星がおれの家の東にあたる畔(あぜ)の境の上に出ている時、左から右へとつづいて消えていった。
その消えたのはほんの一刹那(せつな)で、また同時に消える数がわずかだったが、畔の全体の長さに沿うて一列二列の間はぼかされていた。
おれと星との間を何物かが通ったのらしいと思ったが、
おれの眼にはなんにも見えない。
また、その物の輪郭を限ることの出来ないほどに、星のひかりも曇ってはいないのだ。
ああ、
こんなことは忌(いや)だ......。
(日記の紙が三枚剥(は)ぎ取られているので、それから数週間の記事は失われている。)
九月二十七日
――あいつが再びここへ出て来た。
おれは毎日あいつが出現することの証拠を握っているのだ。
おれは昨夜もおなじ上掩(うわおお)いを着て、鹿撃ち弾を二重籠(ご)めにした鉄砲を持って、夜のあけるまで見張っていたのだが、
朝になって見ると新しい足跡が前の通りに残っているではないか。
しかし、おれは誓って眠らなかったのだ。
確かにひと晩じゅう眠らないはずだ。
どうも怖ろしいことだ。
どうにも防ぎようのないことだ。
こんな奇怪な経験が本当ならば、おれは気違いになるだろう。
万一それが空想ならば、おれはもう気違いになっているのだ。
十月三日
――おれは立ち去らない。
あいつにおれを追い出すことが出来るものか。
そうだ、そうだ。
ここはおれの家だ、ここはおれの土地だ。
神さまは卑怯者をお憎みなさるはずだ。
十月五日
――おれはもう我慢が出来ない。
おれはハーカーをここへ呼んで、幾週間を一緒に過ごしてもらうことにした。
ハーカーは気のおちついた男だ。
あの男がおれを気違いだと思うかどうかだが、その様子をみていれば大抵判断ができるはずだ。
十月七日
――おれは秘密を解決した。
それはゆうべ判ったのだ
――一種の示顕(じげん)を蒙ったように突然に判ったのだ。
なんという単純なことだ
――なんという怖ろしい単純だ!
世の中にはおれたちに聞こえない物音がある。
音階の両端には、人間の耳という不完全な機械の鼓膜(こまく)には震動を感じられないような音符がある。
その音はあまりに高いか、またはあまりに低いかであるのだ。
おれは木の頂上に鶫(つぐみ)の群れがいっぱいに止まっているのを見ていると
――一本の木ではない、たくさんの木に止まっているのだ
――そうして、みな声を張りあげて歌っているのだ。
すると、不意に
――一瞬間に
――まったく同じ一刹那に
――その鳥の群れはみな空中へ舞いあがって飛び去ってしまった。
それはなぜだろう。
どの木も重なって邪魔になって、鳥にはおたがい同士が見えないはずだ。
――みんなから見えるような指揮者の棲んでいる場所がないのだ。
してみれば、そこには何か普通のがちゃがちゃいう以上に、もっと高い、もっと鋭い、通知か指揮かの合図がなければならない。
ただ、おれの耳にきこえないだけのことだ。
おれはまた、それと同じようにたくさんの鳥が一度に飛び去る例を知っている。
鶫の仲間ばかりでなく、たとえば鶉(うずら)のような鳥が藪のなかに広く分かれている時、さらに遠い岡のむこう側にまで分かれている時、なんの物音もきこえないにもかかわらず、たちまち一度に飛び去ることがあるのだ。
船乗りたちはまた、こんなことを知っている。
鯨(くじら)の群れが大洋の表面に浮かんだり沈んだりしている時、そのあいだに凸形の陸地を有して数マイルを隔てているにもかかわらず、ある時には同じ刹那に泳ぎ出して、一瞬間にすべてその影を見失うことがある。
信号が鳴らされた
――マストの上にいる水夫やデッキにいるその仲間の耳にはあまりに低いが、
それでも寺院の石がオルガンの低い音響にふるえるように、船のなかではその顫動(せんどう)を感じるのだ。
音響とおなじことで、物の色もやはりそうだ。
化学者には太陽のひかりの各端に化学線(アクテニック・レイ)というものの存在を見いだすことが出来る。
その線は種(しゅ)じゅの色をあらわすもので、光線の成分にしたがって完全な色を見せるのだそうだが、われわれにはそれを区別することが出来ない。
人間の眼は耳とおなじように不完全な機械で、
その眼のとどく程度はただわずかに染色性の一部に限られているのだ。
おれは気が違っているのではない、
そこには俺たちの眼にもみえない種じゅの色があるのだ。
そこで、たしかに(うそ)でない、あの妖物はそんなたぐいの色であった! | THE DAMNED THING
Ambrose Bierce
I--ONE DOES NOT ALWAYS EAT WHAT IS ON THE TABLE
By the light of a tallow candle which had been placed on one end of a rough table a man was reading something written in a book.
It was an old account book, greatly worn;
and the writing was not, apparently, very legible, for the man sometimes held the page close to the flame of the candle to get a stronger light on it.
The shadow of the book would then throw into obscurity a half of the room, darkening a number of faces and figures;
for besides the reader, eight other men were present.
Seven of them sat against the rough log walls, silent, motionless, and the room being small, not very far from the table.
By extending an arm any one of them could have touched the eighth man,
who lay on the table, face upward, partly covered by a sheet, his arms at his sides.
He was dead.
The man with the book was not reading aloud,
and no one spoke;
all seemed to be waiting for something to occur;
the dead man only was without expectation.
From the blank darkness outside came in, through the aperture that served for a window, all the ever unfamiliar noises of night in the wilderness
--the long nameless note of a distant coyote;
the stilly pulsing thrill of tireless insects in trees;
strange cries of night birds, so different from those of the birds of day;
the drone of great blundering beetles, and all that mysterious chorus of small sounds that seem always to have been but half heard when they have suddenly ceased, as if conscious of an indiscretion.
But nothing of all this was noted in that company;
its members were not overmuch addicted to idle interest in matters of no practical importance;
that was obvious in every line of their rugged faces--obvious even in the dim light of the single candle.
They were evidently men of the vicinity--farmers and woodsmen.
The person reading was a trifle different;
one would have said of him that he was of the world, worldly, albeit there was that in his attire which attested a certain fellowship with the organisms of his environment.
His coat would hardly have passed muster in San Francisco;
his foot-gear was not of urban origin, and the hat that lay by him on the floor
(he was the only one uncovered)
was such that if one had considered it as an article of mere personal adornment he would have missed its meaning.
In countenance the man was rather prepossessing, with just a hint of sternness;
For he was a coroner.
It was by virtue of his office that he had possession of the book in which he was reading;
it had been found among the dead man's effects
--in his cabin, where the inquest was now taking place.
When the coroner had finished reading he put the book into his breast pocket.
At that moment the door was pushed open and a young man entered.
He, clearly, was not of mountain birth and breeding:
he was clad as those who dwell in cities.
His clothing was dusty, however, as from travel.
He had, in fact, been riding hard to attend the inquest.
The coroner nodded;
no one else greeted him.
"We have waited for you,"
said the coroner.
"It is necessary to have done with this business to-night."
The young man smiled.
"I am sorry to have kept you,"
"I went away,
not to evade your summons, but to post to my newspaper an account of what I suppose I am called back to relate."
The coroner smiled.
"The account that you posted to your newspaper,"
"differs, probably, from that which you will give here under oath."
"That,"
I used manifold paper and have a copy of what I sent.
It was not written as news, for it is incredible, but as fiction.
It may go as a part of my testimony under oath."
"But you say it is incredible."
"That is nothing to you, sir, if I also swear that it is true."
The coroner was silent for a time, his eyes upon the floor.
The men about the sides of the cabin talked in whispers, but seldom withdrew their gaze from the face of the corpse.
Presently the coroner lifted his eyes and said:
"We will resume the inquest."
The men removed their hats.
The witness was sworn.
"What is your name?"
the coroner asked.
"William Harker."
"Age?"
"Twenty-seven."
"You knew the deceased, Hugh Morgan?"
"Yes."
"You were with him when he died?"
"Near him."
"How did that happen--your presence,
I mean?"
"I was visiting him at this place to shoot and fish.
A part of my purpose, however, was to study him and his odd, solitary way of life.
He seemed a good model for a character in fiction.
I sometimes write stories."
"I sometimes read them."
"Thank you."
"Stories in general
--not yours."
Some of the jurors laughed.
Against a sombre background humor shows high lights.
Soldiers in the intervals of battle laugh easily, and a jest in the death chamber conquers by surprise.
"Relate the circumstances of this man's death,"
said the coroner.
"You may use any notes or memoranda that you please."
The witness understood
Pulling a manuscript from his breast pocket
he held it near the candle and turning the leaves until he found the passage that he wanted began to read.
II--WHAT MAY HAPPEN IN A FIELD OF WILD OATS
" . . . The sun had hardly risen when we left the house.
We were looking for quail, each with a shotgun, but we had only one dog.
Morgan said that our best ground was beyond a certain ridge that he pointed out, and we crossed it by a trail through the chaparral.
On the other side was comparatively level ground, thickly covered with wild oats.
As we emerged from the chaparral Morgan was but a few yards in advance.
Suddenly we heard, at a little distance to our right and partly in front, a noise as of some animal thrashing about in the bushes,
which we could see were violently agitated.
"'We've started a deer,'
I said.
"Morgan, who had stopped and was intently watching the agitated chaparral,
said nothing,
but had cocked both barrels of his gun and was holding it in readiness to aim.
I thought him a trifle excited, which surprised me, for he had a reputation for exceptional coolness, even in moments of sudden and imminent peril.
"'O, come,'
I said.
'You are not going to fill up a deer with quail-shot,
are you?'
"Still he did not reply;
but catching a sight of his face as he turned it slightly toward me I was struck by the intensity of his look.
Then I understood that we had serious business in hand
and my first conjecture was that we had 'jumped' a grizzly.
I advanced to Morgan's side, cocking my piece as I moved.
"The bushes were now quiet and the sounds had ceased, but Morgan was as attentive to the place as before.
"'What is it?
What the devil is it?'
I asked.
"'That Damned Thing!'
he replied, without turning his head.
His voice was husky and unnatural.
He trembled visibly.
"I was about to speak further, when I observed the wild oats near the place of the disturbance moving in the most inexplicable way.
It seemed as if stirred by a streak of wind, which not only bent it, but pressed it down--crushed it so that it did not rise;
and this movement was slowly prolonging itself directly toward us.
"Nothing that I had ever seen had affected me so strangely as this unfamiliar and unaccountable phenomenon,
yet I am unable to recall any sense of fear.
I remember
--and tell it here because, singularly enough, I recollected it then
It looked the same size as the others, but being more distinctly and sharply defined in mass and detail seemed out of harmony with them.
It was a mere falsification of the law of aerial perspective, but it startled, almost terrified me.
We so rely upon the orderly operation of familiar natural laws that any seeming suspension of them is noted as a menace to our safety, a warning of unthinkable calamity.
So now the apparently causeless movement of the herbage and the slow, undeviating approach of the line of disturbance were distinctly disquieting.
My companion appeared actually frightened, and I could hardly credit my senses when I saw him suddenly throw his gun to his shoulder and fire both barrels at the agitated grain!
Before the smoke of the discharge had cleared away I heard a loud savage cry
--and flinging his gun upon the ground Morgan sprang away and ran swiftly from the spot.
At the same instant I was thrown violently to the ground
by the impact of something unseen in the smoke--some soft, heavy substance that seemed thrown against me with great force.
"Before I could get upon my feet and recover my gun, which seemed to have been struck from my hands, I heard Morgan crying out as if in mortal agony,
and mingling with his cries were such hoarse, savage sounds as one hears from fighting dogs.
Inexpressibly terrified, I struggled to my feet and looked in the direction of Morgan's retreat;
and may Heaven in mercy spare me from another sight like that!
At a distance of less than thirty yards was my friend, down upon one knee,
his head thrown back at a frightful angle, hatless, his long hair in disorder and his whole body in violent movement from side to side, backward and forward.
His right arm was lifted and seemed to lack the hand--at least, I could see none.
The other arm was invisible.
At times, as my memory now reports this extraordinary scene, I could discern but a part of his body;
it was as if he had been partly blotted out--I cannot otherwise express it
--then a shifting of his position would bring it all into view again.
"All this must have occurred within a few seconds,
yet in that time Morgan assumed all the postures of a determined wrestler vanquished by superior weight and strength.
I saw nothing but him, and him not always distinctly.
During the entire incident his shouts and curses were heard, as if through an enveloping uproar of such sounds of rage and fury as I had never heard from the throat of man or brute!
"For a moment only I stood irresolute, then throwing down my gun I ran forward to my friend's assistance.
I had a vague belief that he was suffering from a fit, or some form of convulsion.
Before I could reach his side he was down and quiet.
All sounds had ceased,
but with a feeling of such terror as even these awful events had not inspired
I now saw again the mysterious movement
of the wild oats, prolonging itself from the trampled area about the prostrate man toward the edge of a wood.
It was only when it had reached the wood that I was able to withdraw my eyes and look at my companion.
He was dead."
III--A MAN THOUGH NAKED MAY BE IN RAGS
The coroner rose from his seat and stood beside the dead man.
Lifting an edge of the sheet he pulled it away, exposing the entire body,
altogether naked and showing in the candle-light a claylike yellow.
It had, however, broad maculations of bluish black, obviously caused by extravasated blood from contusions.
The chest and sides looked as if they had been beaten with a bludgeon.
There were dreadful lacerations;
the skin was torn in strips and shreds.
The coroner moved round to the end of the table and undid a silk handkerchief which had been passed under the chin and knotted on the top of the head.
When the handkerchief was drawn away it exposed what had been the throat.
Some of the jurors who had risen to get a better view repented their curiosity and turned away their faces.
Witness Harker went to the open window and leaned out across the sill, faint and sick.
Dropping the handkerchief upon the dead man's neck the coroner stepped to an angle of the room
and from a pile of clothing produced one garment after another, each of which he held up a moment for inspection.
All were torn, and stiff with blood.
The jurors did not make a closer inspection.
They seemed rather uninterested.
They had, in truth, seen all this before;
the only thing that was new to them being Harker's testimony.
"Gentlemen,"
the coroner said,
"we have no more evidence, I think.
Your duty has been already explained to you;
if there is nothing you wish to ask you may go outside and consider your verdict."
The foreman rose
--a tall, bearded man of sixty, coarsely clad.
"I should like to ask one question, Mr. Coroner,"
he said.
"What asylum did this yer last witness escape from?"
"Mr. Harker,"
said the coroner, gravely and tranquilly,
"from what asylum did you last escape?"
Harker flushed crimson again, but said nothing,
and the seven jurors rose and solemnly filed out of the cabin.
"If you have done insulting me, sir,"
"I suppose I am at liberty to go?"
"Yes."
Harker started to leave, but paused, with his hand on the door latch.
The habit of his profession was strong in him--stronger than his sense of personal dignity.
He turned about and said:
"The book that you have there
--I recognize it as Morgan's diary.
You seemed greatly interested in it;
you read in it while I was testifying.
May I see it?
The public would like--"
"The book will cut no figure in this matter, "
replied the official, slipping it into his coat pocket;
"all the entries in it were made before the writer's death."
As Harker passed out of the house the jury reentered and stood about the table,
on which the now covered corpse showed under the sheet with sharp definition.
The foreman seated himself near the candle, produced from his breast pocket a pencil and scrap of paper and wrote rather laboriously the following verdict, which with various degrees of effort all signed:
"We, the jury, do find that the remains come to their death at the hands of a mountain lion,
but some of us thinks, all the same, they had fits."
IV--AN EXPLANATION FROM THE TOMB
In the diary of the late Hugh Morgan are certain interesting entries having, possibly, a scientific value as suggestions.
At the inquest upon his body the book was not put in evidence;
possibly the coroner thought it not worth while to confuse the jury.
The date of the first of the entries mentioned cannot be ascertained;
the upper part of the leaf is torn away;
the part of the entry remaining follows:
" . . . would run in a half-circle, keeping his head turned always toward the centre,
and again he would stand still, barking furiously.
At last he ran away into the brush as fast as he could go.
I thought at first that he had gone mad, but on returning to the house found no other alteration in his manner than what was obviously due to fear of punishment.
"Can a dog see with his nose?
Do odors impress some cerebral centre with images of the thing that emitted them? . . .
"Sept. 2.
--Looking at the stars last night as they rose above the crest of the ridge east of the house, I observed them successively disappear--from left to right.
Each was eclipsed but an instant, and only a few at the same time, but along the entire length of the ridge all that were within a degree or two of the crest were blotted out.
It was as if something had passed along between me and them;
but I could not see it,
and the stars were not thick enough to define its outline.
Ugh!
I don't like this." . . .
Several weeks' entries are missing, three leaves being torn from the book.
"Sept. 27.
--It has been about here again
--I find evidences of its presence every day.
I watched again all last night in the same cover, gun in hand, double-charged with buckshot.
In the morning the fresh footprints were there, as before.
Yet I would have sworn that I did not sleep
--indeed, I hardly sleep at all.
It is terrible,
insupportable!
If these amazing experiences are real I shall go mad;
if they are fanciful I am mad already.
"Oct. 3.
--I shall not go
--it shall not drive me away.
No,
this is MY house, MY land.
God hates a coward . . .
"Oct. 5.
--I can stand it no longer;
I have invited Harker to pass a few weeks with me
--he has a level head.
I can judge from his manner if he thinks me mad.
"Oct. 7.
--I have the solution of the mystery;
it came to me last night
--suddenly, as by revelation.
How simple
--how terribly simple!
"There are sounds that we cannot hear.
At either end of the scale are notes that stir no chord of that imperfect instrument, the human ear.
They are too high or too grave.
I have observed a flock of blackbirds occupying an entire tree-top
--the tops of several trees
--and all in full song.
Suddenly
--in a moment
--at absolutely the same instant
--all spring into the air and fly away.
How?
They could not all see one another--whole tree-tops intervened.
At no point could a leader have been visible to all.
There must have been a signal of warning or command, high and shrill above the din,
but by me unheard.
I have observed, too, the same simultaneous flight
when all were silent, among not only blackbirds, but other birds--quail, for example, widely separated by bushes--even on opposite sides of a hill.
"It is known to seamen
that a school of whales basking or sporting on the surface of the ocean, miles apart, with the convexity of the earth between, will sometimes dive at the same instant--all gone out of sight in a moment.
The signal has been sounded
--too grave for the ear of the sailor at the masthead and his comrades on the deck
--who nevertheless feel its vibrations in the ship as the stones of a cathedral are stirred by the bass of the organ.
"As with sounds, so with colors.
At each end of the solar spectrum the chemist can detect the presence of what are known as 'actinic' rays.
They represent colors--integral colors in the composition of light--which we are unable to discern.
The human eye is an imperfect instrument;
its range is but a few octaves of the real 'chromatic scale.'
I am not mad;
there are colors that we cannot see.
"And, God help me! the Damned Thing is of such a color!" | {
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「これ任した。計算間違えないように」
「まだ終わってないのか? 早くこの書類に目を通して契約書作れ」
「はい、次これ」
......なにここ地獄?
死ぬほど忙しいじゃない。兄弟揃って私を虐めるのが好きね。
絶対にこなしてみせるっていう精神でやってるから何とか全ての仕事を時間通りに間に合わせているけど、こんなの普通の世話係じゃ不可能よ。
辞めたくなる理由が分かるわ。
私の手から紙がなくなったと思えば、さっき終わらせた倍の書類が乗っかってくる。いくら文章を読むのが早くてもずっと集中するのにはかなり体力がいる。
終わりのない作業って精神的にもしんどいのよね......。けど、私が仕事をしている時、ヴィアンも同じぐらい、いやそれの倍の量の仕事をしている気がする。
休憩することなくずっと忙しく働いている。ハードワーカーって彼のような人のことを言うのだろう。
第一王子っていう職業も大変ね......。
ん? もしかしてデューク様もこれぐらいの量の仕事は難なく出来るのかしら。
「何ボーッとしているんだ? まだこれが終わってないだろ」
ヴィアンはそう言って、更に私に仕事を課す。
ああ、もう疲れたわ! ずっと頭を使っているもの。脳も叫びたがっている。
けど、私は弱音を吐くようなダサい悪女じゃない。もう少しの辛抱よ。忍耐と根性があれば何でもできるわ。
私は自分に喝を入れて、与えられた仕事をこなす。
「ここで更にいい仕事が出来るのは優秀な人材だ」
ヴィアンは小さくそう呟いて、彼も自分の仕事に取り掛かる。
急に褒められると調子が狂う。けど、こんな上司が一番人望あるのよね......。
こんな仕事は私のやりたいことから程遠いけど、目の前にあるタスクを出来ない人間が他のことをこなせるわけがない。
こんな仕事、今すぐ終わらしてやるわ!
私は布越しに必死に書類を見つめる。
......ん? 何かしら、これ。
紙をめくる手を思わず止めてしまう。そして、想像もしてなかった内容が視界に入ってくる。
『デュルキス国に存在する聖女について』
こんな情報一体どこで手に入れたの......?
私はヴィアンにバレないように、じっくりとその内容に集中する。
『デュルキス国に聖女がいることが判明した。名はキャザー・リズ。平民出身だが特例で魔法学園に入学。全属性の類稀なる魔法使い』
な、なんでこの情報がラヴァール国に知れ渡っているのよ......。
だから、リズさんの情報を探ろうと学園にラヴァール国の狼が入って来たのね。
聖女だってことはデュルキス国の貴族の間でも隠されていた内容だったのに、いつの間にヴィアンはこの情報を得たの?
聞きたいけど、今聞いたら不自然過ぎる。彼に怪しまれたら、今後が大変だわ。
「何か問題あったか?」
ヴィアンは私の様子がおかしいのを察したのか、私の方に近付いてくる。
「いえ、何も!」
私はそう言って、急いで紙を捲り始める。
もうすぐ点と点が線になりそうなのに......。まだ全部掴めていない。 | “I’ve got this. I’ll make sure the calculations are correct.”
“Are you done yet? Look over these documents and draw up the contract after that.”
“Okay, here’s the next one.”
...What the heck is going on here?
Why was I so busy? Both of these brothers really like to torment me, don’t they?
Although I manage to complete all of my work on time because I am determined to get it done, it would be impossible for a normal caretaker to do this.
I could see why they wanted to quit.
Just when I thought I had finished all of the paperwork, twice as much paperwork would be piled on top of it. No matter how fast I may be at reading, it takes a lot of energy to concentrate for an entire day.
It was mentally tough to work endlessly.... But when I was working, I had the feeling that Vian was doing the same amount of work, or maybe even twice as much.
He was always working nonstop and never took a break. Someone like him was probably the very image of a hard worker.
It was a tough job to be the first prince....
Hmm? I wondered if Duke-sama could do this amount of work without any difficulty.
“What are you just standing there like that? You haven’t finished this yet.”
Vian said, while assigning me more work to do.
Ah, I’m so tired! I had been using my head all day. My brain wants to scream.
But I was not a lame villainess who would complain. It was just a matter of patience. With patience and perseverance, anything was possible.
I braced myself and did the job I was given.
“It’s nice to have a good talent who can do an excellent job here.”
Vian muttered quietly, and he, too, returned to his own work.
The sudden praise made me feel out of sync. But it was this kind of boss who would become extremely popular....
This was not the kind of work I wanted to do, but there was no way someone who couldn’t even complete the task in front of them could do anything else.
For now, I intend to finish this work!
I stared desperately at the documents through the cloth covering my eyes.
Hmmm...? What is this?
I involuntarily stop my hand from turning the paper over. And then, something I never imagined entered my field of vision.
[About the saints that existed in the country of Duelkis.]
Where in the world did they get this information...?
I concentrate on the contents of the article so that Vian does not find out.
[It turns out that there is a saint in the country of Duelkis. Her name is Liz Cather, and although she is from a commoner background, she was admitted to the Magic Academy as a special exception. She is an exceptional magician of all attributes].
Hey, why did this information find its way to Ravaal Kingdom...
Was this why wolves from Ravaal Kingdom invaded the Academy, hoping to learn more about Liz-san?
The fact that she was a saint was a secret even among the nobility of the Duelkis. When did Vian get this information?
I wanted to ask him, but it would be too unnatural to ask him right now. If he becomes suspicious, things will be difficult in the future.
“Is there a problem?”
Vian approached me, perhaps sensing that I was acting strangely.
“No, it was nothing!”
I said and hurriedly rolled up the paper.
The dots have slowly started to form lines... I still haven’t been able to grasp all of it, though. | {
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部屋に戻るとはテーブルに座って現状と今後の事を相談する。
「キシャナは今までどうやって生計を立てていたんだ?」
「商業ギルドで薬草を持ち込んだり、冒険者や観光客を目当てに占いさ」
「魔物討伐はやらないのか? 危険は伴うけど、報酬はかなり貰える」
「......ごめん。あまり殺生な依頼は請け負いたくないんだ」
「......そうだったな。そのために城塞都市を訪れたのに」
キシャナは魔物討伐と聞くと、口が重くなる。
人殺しが嫌で同族でダークエルフの故郷を離れたのに、魔物討伐をさせよう誘ったのは配慮が足りなかったとシェーナは反省する。
「魔物討伐は俺一人でやるよ。キシャナは家事の仕事をして役割分担をしよう」
魔物討伐は魔物の種類にもよるが、高額な報酬で請け負うことができる。
一体当たりの相場は大体決まっている。
デーモンが金貨百枚、グリフォンが金枚、オーガが金枚、オークが金貨十枚。
依頼者の事情次第では報酬が上乗せされる場合もあるので、高額な魔物討伐は人気が高い。
シェーナは騎士団で活躍していた頃には部下と協力してグリフォンの討伐、オークをソロで討伐した実績があるので、魔物討伐で安定した生活を送れる筈だ。
「シェーナを危険に晒すことはできない! もし討伐に失敗して魔物に凌辱されたり酷い仕打ちに遭わされたりしたら、私は一生後悔する」
「腕には自信があるさ。騎士団では魔物討伐は仕事の日課だったし、引き際は心得ているつもりだ」
「お願いだ......シェーナがいなくなるようなことは嫌だ!」
キシャナはシェーナの胸に飛び込むと、目に涙をにじませて引き止める。
魔物討伐以外で高額な報酬は希少な薬草、鉱物、道具を納入と限られてくる。
「それなら君達に良い条件の仕事があるよ」
驚いた二人は玄関先から声がする人物を確認すると、そこには隣の部屋に住んでいるリィーシャの姿があった。 | After getting back home, both Schenna and Kishana sat at the table discussing the current situation and what to do in the future. Schenna brought up the subject regarding the lack of payment once more and told Kishana that she would help her out with any other similar problems in the future.
“Kishana, how have you managed to live until now?”
“Carrying medicinal plants for the merchant guild and offering fortune-telling to visitors and adventurers.”
“How about taking out monsters? It obviously comes with danger but the reward is quite big!”
“... I’m sorry, but I don’t want my life to be built around killing so I can’t accept those quests.”
“Oh, that’s right... you even came all the way here to escape that.”
As Kishana heard Schenna talk about killing monsters, she went silent.
She had abandoned her hometown and her race for the simple fact that she couldn’t stand the fact everything revolved around killing, and Schenna who then invited her for monster subjugation felt like she was being very inconsiderate, so she reflected on it.
“I’ll handle the monster subjugation by myself, don’t worry. You can take care of the domestic work, that way we’re both contributing.”
There are various types of monsters. Obviously, the one that yields the highest rewards are the tougher ones, luckily I have enough training to deal with the strong ones.
The reward for each one is pretty much set in the stone:
Daemons being worth a hundred gold coins, Griffons being gold coins, Ogres , and Orcs .
Depending on who ordered the elimination of the monsters, there may be particular requests that involve getting more rewards so it’s quite a popular job.
Schenna had defeated Griffons with the help of her subordinates, along with soloing Orcs, so getting money this way for a living should be just fine, however, Kishana was against it.
“I can’t let you do that! What if something bad were to happen, like getting injured while fighting? I wouldn’t be able to live afterward due to the regret of letting you do that.”
“Don’t worry, I trust my skills. On top of that, if something worse were to happen I was well trained and have enough knowledge to deal with the situation.”
“Please... I can’t stand the thought of you being gone!”
Kishana jumped on Schenna’s chest with her eyes filled with tears.
Other than defeating monsters, there’s nothing else that pays as much, the alternatives were to provide medicinal herbs, ores, and equipment, but Schenna didn’t have the skills for it.
“If that’s the case, I have the perfect job for both of you!”
They were surprised by the voice that came from the front door, but it turned out to be Reesha, their neighbor. | {
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――そして王子様と王女様は幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし。
王都カルディアには鎮魂の鐘が鳴り響いていた。
人々は、老いも若きも俯いて悲しみに浸り、時たま王宮の方角を向いて、彼らが敬愛したその魂が、安らかに天上へと導かれんことを切に願った。
また、王宮前に設えられた献花台には、国内外から集った多くの弔問客が長蛇の列を作り、各自が持参した花束を供えていた。
涙を流す者、静かに瞑目する者、自らの信ずる神に祈る者、その行いは様々だが、死者を悼むその気持ちは全員だった。
それにしても、こういう辛気臭いのは苦手だねぇ。だいたいなんなのかなアレは、人が黙って瞑目している隣で『イーオン神よこの穢れなき魂を御御許に...』とかゴチャゴチャ唱えるのは。そんなありがたい神がいるなら、この世に悲劇なんて起こらないはずじゃないかい?」
「さあ? 我々が信奉する唯一の神は姫――緋雪様だけですから」
「......うっ。そーいえば、ある意味、うちもカルト集団と変わらないんだったけ」
献花を終えたらしい、ネックラインに白のクレープを用いた黒のモーニングドレス、そして胸元に一輪の赤薔薇を差した少女と、それよりも年上らしい薄墨色のドレスを着た女性が、連れ立って――というか主従の関係なのだろう、少女が先に立ち、女性が後に侍る形で歩いていた。
どちらもベールハットに隠されて素顔は覗えないが、素肌の白さ、瑞々しさ、その全体から発せられる凛としたたたずまいが、ただ者でない気品と隠された美貌を漂わせていた。
「とはいえなんだね、実際問題こうなると馬鹿王子のいってた改革を差す時計の針もずいぶんと後退しただろうし、こちらもある程度方針を変更しておいたほうがいいかも知れないねぇ」
「滅ぼしますか?」
「滅ぼすのは簡単なんだけどね。うちは基本的に君臨すれども統治せずの方針だろう? そうなると後々、この国は周辺国に掠め取られるのが目に見えてるし、トンビに油揚げはちょいと業腹だからね。できれば使えそうな人材に任せたいねぇ」
「あの王子のような人物ですか?」
「ああ、あれは駄目だね。あれならまだコラードギルド長のほうが百倍ましだよ。少なくともギルド長は自分の物差しを持って、常に周囲を推し量っていたけれど、あの王子は自分の物差しと周囲の目盛りが合わないことすら気付いてなかったからねぇ」
だから足元に注意しろっていったのにねぇ、と付け加えた少女の足がふと止まった。
彼女たちの前方、街路樹にひっそりと隠れるようにして、黒髪の青年貴族――カルロ卿が片膝をついてを出迎えていた。
「おや、意外と元気そうじゃないかい」
開口一番そう言われて、アミティア王子アシル・クロード・アミティアは、久方ぶりに口が笑いの形になるのを心地よく思った。
「・・・そう言ってくださるのはヒユキ姫だけですよ。誰も彼も腫れ物にでも触るように慰めの言葉ばかりですからね」
「そりゃそんだけひどい顔――は、まあ元々あまり変わらないけど――やつれて死にそうな顔をしてれば、慰めの言葉のひとつも言いたくなるさ」
「・・・やれやれ、もともとそんなひどい顔でしたか?」
「たいていヘラヘラ笑ってるか、スケベな目で人の体を嘗め回すように見るかのどちらかしか記憶にないからねぇ。――ああ、失礼させてもらうよ」
軽く肩をすくめながら、アシル王子が座っている対面のソファーに腰を下ろす緋雪。
その言葉に苦笑の色をより強くしたアシル王子だが、ふと、緋雪が身にまとっている衣装に気がついて、知らず尋ねていた。
「そのモーニングドレスは・・・?」
通常、モーニングドレスは葬儀で近親者がまとう衣装である。
「ああ、勝手なことをして申し訳ないけど。仮にも私を『お姉さま』と呼んでくれた『妹』の弔問なのでね、はばかりながら着させてもらったよ。迷惑だったかい?」
ゆっくりと万感の想いを込めて、首を振るアシル王子。
「とんでもありません。それを聞いたらアンジェリカがどれほど喜ぶことか」
その名が出たことで初めて緋雪の顔から笑みが消えた。
「このたびは気の毒だったね」
ただそれだけ。弔いの言葉とも言えぬ言葉だが、そこには百万言を連ねても足りない深いいたわりの心が宿っていた。
その背後で、命都が主に代わり深々と頭を下げていた。
「いえ......すべて俺の責任です。俺が警備の人間の確認をしてれば防げたことです。......なにしろ、犯人は俺が保養所の警備を依頼した青年会の連中だったんですから!」
血を吐くようなその言葉に、緋雪は眉をひそめた。
「裏で貴族派が手を引いた襲撃ではなかったのかい?」
「・・・だったらまだ、この怒りのぶつけようがあったんですけどね。手を下したのは、我々の政治運動に賛同する青年会に所属する15~18歳の若者4人です。裏もとりましたがシロです。単純な金目的の犯行でした」
「奴らは保養所の中の警備を担当していたんですが、『お前ら王族、貴族が贅沢三昧をしているから!』『俺たちの苦労を知れ!』『これは正当な報復だ!』と言って保養所の家財を略奪し、さらにアンジェリカに暴行を加え......。ようやく外を警備していた者どもが騒ぎに気付いて、連中を取り押さえた時には、妹は護身用の毒を服毒していたそうです」
緋雪は沈痛な表情で無言のまま首を振った。
「王家としてもこうした不祥事は表沙汰にできませんから、幸い――と言うべきか、アンジェリカは表向き病気療養のためフルビア湖の保養所に行ったことになっていましたので、そこで容態が急変した...という形で公式には発表されています」
「ふーん、まあそれはいいけどさ。そのアンジェリカを襲った外道連中は、当然始末したんだろうね?」
「・・・いえ、非公式に裁判を行い、おそらく近日中に処刑されるでしょう」
その言葉に緋雪の目が剣呑な光をたたえた。
「――ずいぶんと悠長だねぇ。なんで君が処罰しなかったのさ?」
その言葉に、何かに耐えるように黙って俯いたアシル王子は、やがて怒りと悲しみがない交ぜになった顔を上げた。
「正直、奴ら裂きにしても飽き足らない!! この手で始末してやりたいと、何度剣に手をかけたか! ......でも、奴らを殺してもアンジェリカは帰ってこない。それに、血で血を洗うなって連中に言ってたのは俺なんですよ。復讐はなにも生まないって――」
「何も産まなくてもいいじゃないか。少なくとも君の気は多少は晴れるよ」
そう言われてぐっと唇を噛み締めるアシル王子。
「まあ、あくまで君の気持ちの問題だからね、これ以上は言わないけど、民主運動のほうはまだ続けるのかい? より良い世界を見せる妹さんはいなくなったわけだけど」
その言葉に緋雪は肩をすくめた。
「あまり意固地になるのもどうかと思うよ。前にも言ったけど、足元をおろそかにしないようにね」
「・・・はい。今度こそ肝に銘じますよ」
頷いたアシル王子の顔を見て、緋雪はソファーから腰を上げた。
「もうお帰りですか? そういえば再会の時は再戦の時の約束でしたけど、そちらはよろしいのですか?」
「やめとくよ。チャンバラする雰囲気じゃないしね。第一、自殺の片棒を担がされるなんて真っ平だよ」
『自殺』という言葉に、アシル王子ははっとした顔になった。
「そういえば、アンジェリカの遺体には逢えるのかな?」
「いえ、すでに王家の墓所に移されたので、王族以外は会うことはできませんが、綺麗な顔でしたよ」
妹姫の綺麗にされた遺体を思い出して、アシル王子は泣き笑いのような表情を浮かべた。
「そうかい。直接お別れが言えるかと思って、カルロ卿について来たんだけど残念だね」
言いつつ胸に差している一輪の赤薔薇を取って差し出す。
「邪魔でなければ、次に君がアンジェリカに会いに行く時にこれも一緒にあげてくれないかい?」
そう言った緋雪の目が一瞬、紅い光を放った気がした。
「――わかりました。きっと」
頷いて受け取るアシル王子。
帰りはここ――王宮内の別棟である自室――から外にお連れするようにと侍女に命じて、二人を送り出した後、アシル王子は緋雪から手渡された薔薇を手の中でクルクルともてあそびながら、塞がっていた心がずいぶんと軽くなっていることに気が付いた。
――どうやら自分は本気であの風変わりなお姫様に心引かれているらしい。
愛する者を失い凍りついたと思っていたが、まだ自分には誰かを愛せる心が残っていた。
そのことが素直に嬉しかった。
「――さて、カルロ。また明日から忙しくなるぞ!」
背後に立つカルロ卿にそう言って立ち上がったアシル王子の胸から、ずぶっと鈍い音を立てて剣の先端が生えた。
「......カ、カルロ...?」
驚いたというより信じられないという顔で振り向いたアシル王子の目に、どこか途方に暮れた子供のような顔で、自分を刺したままその場に立つ、乳兄弟であり、腹心であり、親友でもある青年の顔が映った。
「......なぜ......?」
「・・・なぜと問いたいのは私です殿下。なぜアンジェリカ様がお亡くなりになったというのに、政治ごっこを続けるのですか?! こうならないよう、殿下が諦められるよう手を回したというのにっ!」
「...ま、まさか...アンジェリカもお前が......」
絶望を伴う質問にカルロは頷いた。
「直接私が手を下したわけではありませんが、段取りは整えました」
「......なぜだ? お前は......貴族派に......?」
その質問には首を振る。
「いいえ、私は生まれた時から王家に忠誠を誓った身です」
「.........」怪訝そうな顔をしていたアシル王子だが、はっと気が付いて目を見開いた。「......そうか、父上か」
「.........」
その質問には答えないカルロだったが、沈黙が雄弁に物語っていた。
あの毒にも薬にもならない父王は、貴族院に尻尾を振って邪魔な息子を亡き者とすることにしたのだろう。
おそらくそれを命じられたカルロも苦悩したのだろう、そしてその妥協点としてアンジェリカの襲撃を手配し、その痛手から自分が政治運動から手を引くことを願っていたのだろう。
だが、その意に反して自分は運動を続けることを宣言してしまった。
『足元をおろそかにしないようにね』
さきほど別れたばかりの緋雪の言葉が甦った。
ああ。自分はちゃんと足元を見なかったのだな・・・。
だんだんと霞む目の中、アシル王子は手の中の赤い薔薇に語りかけた。
「......すみません姫。約束2つとも...守れそうにあり...ませ......」
意識が暗闇に融ける間際、アシル王子は遠くから聞こえる鎮魂の鐘の音を聴いた。
アミティア王国第三王子アシル・クロード・アミティア暗殺される。
現場に残された遺留品である魔剣と薔薇の花から、犯人は人間ではなく魔物と断定。
――同日、アミティア王国は魔王国インペリアル・クリムゾンへ宣戦布告を行なった。
なお、王家の墓所に安置されたアシル王子の遺体が、その3日後、忽然と消えていることに気が付いた者は誰もいなかった。 | ―And then the prince and the princess lived happily ever after.
The bell of requiem chimed in the royal capital of Cheadia.
Every resident, regardless of age, bowed their heads down in sadness. Once in a while, they looked towards the royal palace, earnestly hoping for the soul they respected to be safely guided to heaven.
The altar in front of the royal palace became host to numerous visitors from both inside and outside of the country. They came to offer their condolences and gathered, making a long line. Each person presented a bouquet of flowers.
Some people shed tears, others silently closed their eyes, and others sincerely prayed to their gods. All the people shared an underlying sentiment of sadness, regardless of what they did.
“Seems it didn’t end like a fairy tale, eh. ―What a pity. Nevertheless, I hate this irritating situation. What I’m trying to say is, what the hell is he doing? Next to the person who silently closed their eyes, that man recited various jumbled prayers such as, ‘O God Aeon, I hope you accept this unclean soul to your side.’ If there really was such a graceful god in this world, this kind of tragedy wouldn’t have happened.”
“Who knows? The only god that we have faith in is you, princess―solely Lady Hiyuki.”
“...Uuh. Come to think of it, in a sense, there are the same kinds of cults on our side too.”
The girl seems finished with her flower offering. She wore a black mourning dress which utilized a white crepe along the neckline. Other than her, an older woman wearing a thin colored dress is accompanying her―Or rather, they have a master-attendant relationship since the girl took the lead and the woman followed her thereafter.
Both wore veiled hats which made it so that their faces couldn’t be seen through it. However, their whiteness and freshness were entirely emitted from their majestic appearance, their atmosphere radiated hidden elegance and beauty completely unlike an ordinary person.
“Nonetheless, now that the present situation has turned out like this, the arms of the clock for revolution that the foolish prince talked about will be moved back by a lot. Perhaps we also need to change a few points in our plan.”
“Shall we overthrow this country?”
The attendant expressed it trivially like choosing a midnight snack. The girl lightly shrugs her shoulders and replies. “Overthrowing will be an easy task. But our policy is basically to reign, not govern, isn’t it? When it comes down to it, in the distant future it would be very likely that this country would be snatched up by a neighboring country and I don’t really like things that are mine being stolen from me. If I can, I want to entrust this country to a useful and capable person.”
“Someone like that prince?”
“Ah, that prince is no good. If you want to talk about capable people, then Guild master Collard is a hundred-times better. At least the guild master carried himself like a leader and always paid attention to his surroundings. That prince didn’t notice that his own abilities didn’t match with the scale of his surroundings.”
‘That’s why I told him to watch his feet,’ the girl added, then she suddenly stopped.
In front of the pair, a black haired young noble named Sir Carlos revealed himself from behind the roadside trees. He kneeled and greeted them.
“My! How surprisingly energetic you are.”
After being greeted by those words, the third prince of Amitia Kingdom, Acyl Claude Amitia felt so good that he smiled after a long time.
“...The only one who would tell me that is you, Princess Hiyuki. Everyone else just gave comforting words, worried about the sensitive mood.”
“That’s because of your awful face―Well, it’s not quite different from your usual one―but that worn out face like you were at the point of death will make people want to say at least one comforting word to you.”
“...Oh dear, was my original face that awful?”
“There’s nothing in my memories other than your foolish smile or that dirty look, like you were licking peoples’ bodies. ―Ah sorry, for my discourtesy.”
While shrugging her shoulders, Hiyuki sat down on the sofa opposite Prince Acyl. Standing behind each person as a matter of course was Mikoto and Sir Carlos, respectively.
Her words made Prince Acyl’s smile wryer, but he suddenly realizes the costume which Hiyuki is wearing, and perplexedly asked,
“That mourning dress is for...?”
Usually, a mourning dress is a dress that’s worn by close relatives at a funeral service.
“Ah, sorry if I did it arbitrarily. However, it’s my condolences for my ‘little sister’ since she once called me ‘big sister’ even if only for an instant; therefore excuse me for having worn it. Is it bothering you?”
Slowly flooded with emotions, Prince Acyl shook his head.
“Absolutely not. If Angelica heard that, I wonder how delighted she would be.”
It was the first time Angelica’s name appeared, Hiyuki’s smile disappeared from her face.
“That time was very unfortunate.”
Simply no more than that. It was your usual condolence words, but they were filled with a deep sense of sympathy that a million words could not suffice to express.
At her back, Mikoto deeply lowered her head, substituting for her lady.
“No...It was all my responsibility. It could have been prevented if I had verified the guards...In any case, the culprits were the guys from the youth association I asked to guard the resting villa!”
Each of his words were so bitter like him vomiting blood, Hiyuki knitted her eyebrows.
“Was it an underhanded attack by the nobles behind the scenes?”
“...If that had been the case, then my anger would be irrepressible. But they were chosen by us, four youths between the age of - belonging to the youth association that supports our political movement. There was nobody behind it, it’s simply the motive of money.”
“Even though they were in charge of guarding the inside of the villa, they said things like ‘You are royalty, aristocrats indulging themselves in luxury!’, ‘Feel our suffering!’, ‘This is justified retribution!’, and pillaging the villa’s belongings, and even more they assaulted Angelica... At the time when the guards outside noticed the uproar and arrested those guys, my sister already drank the poison to protect herself.”
Hiyuki shook her head with a grave expression and remained silent.
“Since the royal family cannot afford to make such scandals public, perhaps I had to say it was fortunate. It was officially announced that...Angelica had gone to the resting villa at Fulvia Lake to perform medical treatment for her named illness, and at the villa her condition became critical.”
“Hmm, well that’s good. As for those bad guys who attacked Angelica, they got what they deserved, right?”
“...Well, they were judged informally and it seems like they’re going to be executed in a few days...”
Those words made Hiyuki’s eyes express a dangerous look.
“...that was surprisingly slow, eh. Why don’t you personally deliver the punishment instead?”
Hearing her words, Prince Acyl silently hung his head down as if to endure something, and soon raised his face with a mixture of sadness and anger.
“To be honest, I wouldn’t be satisfied even if I tore their limbs off!! So many times I wanted to hold my sword and settle it with my own hands! ....But, even if I kill them Angelica won’t come back. Besides, I was the one who told their colleagues to not wash blood with blood. Revenge won’t produce anything―”
“It’s fine even if revenge won’t produce anything. At least your feelings will become a bit better.”
Hearing that, Prince Acyl bit his lips tightly.
“Well, in the end it’s your own feelings, so I won’t say any more than this, but do you still want to continue your democracy movement? There’s no more of your sister to show a better world to though.”
Hearing those words, Hiyuki shrugged her shoulders.
“You’ll hear nothing from me if you’re that stubborn. But, although I’ve said this before, I hope that you watch your feet.”
“...Yes. This time I will engrave it in my heart for sure.”
Seeing that Prince Acyl agreed with her, Hiyuki gets up from the sofa.
“Returning so soon? Come to think of it, I had promised a rematch during our next meeting, is now fine with you?”
“I’ll pass. I am not in the mood for swordplay. And first of all, I’m not interested to help you take part in suicide anyway.”
On the word ‘suicide’, Prince Acyl’s face was colored in surprise. Although he pretended to not understand it, his surprise showed that he was hit with a bullseye.
“Which reminds me, I wonder if I could see Angelica’s remains?”
“No, she’s already being transferred to the royal family graveyard. Therefore no one except royalty can visit her, but her face is really pretty.”
Recalling his little sister, the princess’ remains which were prettied-up, Prince Acyl showed a sad smile.
“Is that so? I had come since Sir Carlos thought that perhaps I could give a final farewell to her but that’s too bad.”
As she continued, she presented a shining red flower from her chest.
“If it doesn’t bother you, next time when you go to meet Angelica, would you give this to her?”
The moment Hiyuki said that, it felt like a red light emitted from her eyes.
“―I understand. For sure.”
Prince Acyl nodded and accepted it.
After Prince Acyl showed the two people out by ordering the maid to lead them outside ―in his own room at a separate building in the royal palace― he spun the rose flower he got from Hiyuki in his hand. While doing so, he noticed that his closed heart became surprisingly better.
―It appears his heart was really charmed by that eccentric princess.
He believed that his heart was frozen as he lost his dear one, but it appears there remains someone in his heart that he could love.
That honestly made him happy.
“―Well then, Carlos. We will get busy again from tomorrow onward!”
Prince Acyl said towards Sir Carlos who stood behind him, but then as the prince stood, a thick stabbing sound rang from the pointed end of a sword that grew from his chest.
“...Ca-Carlos...?”
Rather than surprise, as Prince Acyl turned his face around, he instead had a look of disbelief on his face. There, reflected in his eyes, was a young man who looked like a kid who had lost his way. He remained standing, piercing Acyl with the sword, the young man who is his foster brother, his most trusted retainer, and his close friend.
“...why...?”
“...It is I who should ask why, your highness. Why would you still continue your political movement even though Angelica is dead!? All of my efforts were in order to make you abandon your plan so this kind of thing wouldn’t happen!”
“...Do-don’t tell me...Angelica...by you...too...”
Replying to the question he made in despair, Carlos nodded.
“I wasn’t directly involved in it; however I was the one who arranged the plan.”
“...Why? You’re...with the noble faction....”
As for that question, he shook his head.
“No, ever since I was born I had sworn my allegiance to the royal family.”
“......” Prince Acyl made a puzzled face, but then suddenly he opened his eyes wide, surprised. “...is that so, then father is..”
“......”
Carlos did not respond to the question, but his silence gave the answer.
It seems Acyl’s father, the king, was wagging his tail for the House of Nobles and decided to kill his hindrance of a son.
Perhaps Carlos was also troubled, being ordered like that. So as to not attack Acyl directly, he prepared the attack on Angelica, hoping that Acyl would withdraw from his political movement after taking the blow.
But, contrary to his belief, Acyl declared that he was going to continue the movement. That’s why; he can’t do anything but this.
‘I hope that you watch your feet.’
Hiyuki’s words from not long ago resounded in Acyl’s mind.
Ahh. I didn’t really take her word seriously...
While his view gradually went hazy, Prince Acyl said toward the red rose within his hand.
“....I am sorry, princess. I can’t keep...both...of the promises...”
The prince heard the requiem bell chime in the distance just as his consciousness melted into darkness.
The third prince of the Amitia Kingdom, Acyl Claude Amitia had been assassinated.
From the items left on the scene, a magic sword and a rose flower, it was concluded that the offender was not human but a demon.
―On the same day, the Amitia Kingdom performed the declaration of war toward the demon kingdom, the Imperial Crimson.
Yet, there were none who noticed that three days later, the corpse of Prince Acyl which was enshrined at the tomb of the royal family was suddenly gone. | {
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『おやおや、やり過ぎてしまいましたかな?』
神官が先程まで俺の居た場所で憎たらしい笑みを浮かべながらこちらを見て笑っている。
まあ確かに片腕を失ったような物だからな。そう判断されてもおかしくないか。
「舐めるな。腕程度どうとでもなる」
『ほう?』
俺はマントの中から厳重に封がなされた小瓶を取り出すと小瓶の中に規定順序で魔力を流し込む。
すると小瓶から光が溢れだして割れ、中から黒い液体のような物体が溢れ出して千切れかけた腕にくっついてその腕を傷を負う前の状態に戻す。
『再生魔法ですか。そのスピードに回復のレベル。これは驚きましたな』
「ふん」
【共鳴魔法・蠱毒腐肉】とはリーンの森に生息しているクロイングボアたちの肉に俺の葉っぱと魔力を混ぜ込んで熟成......と言うよりは腐敗させたものを触媒とした共鳴魔法であり、発動させれや内臓程度なら術者がどれだけ対象の肉体構造を把握しているかに依るが再生することが出来る魔法である。
尤もこの魔法は事前準備として触媒の作成段階から術者の魔力に身体の一部を混ぜ込んでいるからこそ発動できる魔法であり、一回分の触媒を作るのにも結構な時間がかかるのだが。
「悪いが、手加減も遠慮も無しだ。全力でやらせてもらう」
『ほう。竜殺しの本気ですか。これは見ものですな』
俺は【共鳴魔法・蠱毒腐肉】で再生させた腕の状態を確認しつつマントの中からハンティングビーの蜜蝋と灰硬樹の木片をそれぞれ丸めた物を取り出しの共鳴魔法を発動させる。
なお、【共鳴魔法・狩猟蜂蜜蝋】には対象の身体能力を全体的に上昇させる効果があり、【共鳴魔法・灰硬樹木片】には魔力による障壁を全身に張り巡らせて防御力を上げる効果がある。
これに加えて魔力による単純な身体強化を組み合わせれば今の神官の動きにも十分対応できるだろう。
『準備完了と言ったところですか?』
「ああ、待たせて悪かったな」
俺は左手に灰硬樹のナイフを逆手で握り、右手には【共鳴魔法・牛蒡細剣】を持つと壁から離れ、空中で構える。
「どうせ、お前も飛べるんだろ?来な」
『では、遠慮なく......』
俺の準備を力を得た事から来る余裕なのか笑みを浮かべて眺めていた神官も俺が構えをとると同時に構えをとり始める。
構えを取り終ると俺も神官もお互いに瞬き一つせず相手の動きを観察し、自らの呼吸を整え、一瞬の隙を窺ってゆっくりとその位置取りを変えていく。
そして静寂がこの場の空気を支配し......
次の瞬間には俺と神官は先程まで両者が居た場所を繋ぐ線の丁度真ん中で、俺は右手の剣を、神官は右手の爪を金属音を周囲に響かせ、火花を辺りに散らしながら凌ぎ合っていた。
『このスピードについて来るとは......』
「さっきまでの余裕はどうしたよ!」
そして続けて行われたのはお互いの得物を用いた乱撃。
その中で神官は俺が自身の予想以上に強化されていたためなのか先ほどまで浮かべていた笑みを消すとその身体能力に物を言わせて両手の爪を縦横無尽に振るう。それに対して俺は強化された身体能力で神官の動きを読むと、左手のナイフで完全にとはいかないが攻撃を防ぎ、反撃として右手の剣で神官の身体を少しずつ切り裂いていく。
『がああああ!何故だ!何故だ!何故だああぁぁぁ!!』
「......」
やがて何十合とお互いに打ち合い、致命傷こそなくとも少しずつお互いに手傷を負う中で、少しずつ神官の動きに粗が出て来て攻撃が大振りになっていく。
だがそれでも俺は冷静に神官の動きを読み、右手の爪の先端をナイフで跳ね上げて軌道を逸らし、一歩踏み込んで逆に神官の脇腹を鱗を削ぐ様に薄く切りつける。
『何故倒せない!何故倒せないのだ!?』
そして左手の爪を使った特に大振りの攻撃を避けた所で俺は神官の胸を狙って構えをとる。
恐らく神官には何故身体能力が追いついただけで戦いが拮抗化するのかなど理解できていないだろう。
だから、焦っている。今まではその姿になれば一撃。かかっても数撃で戦いが終わっていたのに未だに戦いが終わらない事に。
「知も技も捨てたのに同じ身体能力の相手に勝てるわけがないだろうさ!」
『ガッ!?』
俺の剣が神官の胸を今までにない深さで抉り、神官は大きくよろめく。
結局はどれだけ直接戦う事に慣れているか否か。それが俺と神官の差だ。
考えてみれば裏で糸を引き、謀略ばかり巡らせているような奴が僅かな迷いや気持ちの差で勝敗を決するような直接的な戦いに慣れていることの方がおかしいわけだしな。
「破壊神様の恩恵とやらも大した力は無いな」
俺は次はその首を刈り取ってやると言わんばかりに右手の剣の切っ先を神官の首に向ける。
と言っても人間はいつその才覚を目覚めさせるか分からないものだ。
だから、奢らず昂らず冷静に自分の戦いを進め、逆に相手の理性を言葉とポーズと痛みによって奪い取る。
『この......南瓜風情が破壊神様を愚弄するかああぁぁぁ!』
神官が両手の爪を振りかぶりながら突撃を仕掛ける。
さて、これで準備は完了。後はタイミング次第だ。
再びの激しい攻防。
お互いに少しずつ手傷を覆いながらも相手の隙を窺い、必殺のチャンスを生み出そうとする。
「ここだ!」
『くっ......!?』
そして神官の大振りな攻撃が俺によって弾かれ、神官に大きな隙が生み出される。
俺はその隙を見逃さずに右手の剣を振るおうとし......
神官がそう言った瞬間に棘の生えた尾が俺に向かって突き出されるのを見た。 | [Oh dear, have I overdone it?]
With a detestable smile on his face, the priest was laughing at Pumpkin where he had been just a moment ago.
Well, it is certainly true that it seems like I’ve lost one arm. It’s not so surprising that he would judge me that way.
“Don’t underestimate me. I can manage with just one arm.”
[Oh?]
Taking out a tightly sealed bottle from inside his cloak, Pumpkin injected magic power into the bottle in a prescribed order.
A black liquid-like substance subsequently flowed out of the bottle and attached itself to his shredded arm, restoring it to the state it was in before the arm was wounded.
[Regeneration magic huh? That speed and the level of recovery is rather shocking.]
“Hmm.”
[Resonance Spell・Remover] was a resonance spell that was created by mixing Pumpkin’s own leaves and magic power into the meat of the Clawing Boar that inhabit Lean Forest and allowing it to rot... rather than ripen. Depending on how well the practitioner grasped the physical structure of the subject, the spell can regrow internal organs as well as limbs.
However, this spell cannot be cast without first producing the catalyst, which takes a lot of time. Instead, it must be cast by combining a portion of the practitioner’s body with their magic power.
“Unfortunately, there is no room for reservation or restraint. I’ll throw everything I’ve got at you.”
[Oh. The dragon slayer is getting serious huh. This is worth witnessing.]
While inspecting the condition of the arm that he had regenerated with [Resonance Spell・Remover], Pumpkin took out a piece of Hunting Bee beeswax and a piece of ash-hardwood from within his cloak for activating the two resonance spells.
In addition, [Resonance Spell・Physical Boost] had the effect of increasing the target’s overall physical ability, while [Resonance Spell・Protect Up] had the effect of raising the target’s defenses by creating a magical barrier over the target’s entire body.
To respond to the priest’s present movements, these spells coupled with a simple physical reinforcement by magic power ought to be sufficient.
[You just said you’re all set up?]
“Ah, sorry to keep you waiting.”
In his left hand, Pumpkin gripped the ash-hardwood knife with the opposite hand, and in his right hand, he held [Resonance Spell・Burdock Rapier], then moved away from the wall and poised it in the air.
“In any case, you’re going to fly up there as well, right? Make your move.”
[Then, I will do it unreservedly...]
The priest, who was observing his preparation while wearing a smile, perhaps because of his newfound power, began to take his stance at the same time as Pumpkin did.
“...”
Neither of them blinked as they assumed their positions, observing the other’s movements, regulating their own breathing, and slowly shifting their stance to seize an opportunity.
Silence then prevailed in the air...
By the next instant, the priest and Pumpkin were right in the center of the line connecting where they had been, with Pumpkin clutching the sword in his right hand and the priest tearing at him with his right claw, sending sparks scattering all around the area.
[I didn’t imagine you could keep up with this speed of mine...]
“What happened to your composure just now!”
The next scene was a melee attack in which both sides exchanged blows with each other’s weapons.
The priest’s smile, which had been present on his face up until then point, vanished in the midst of this, possibly as a result of Pumpkin’s fortification exceeding his expectations. In response, he read the priest’s movements with his heightened physical abilities and blocked his attacks with the knife in his left hand, though not perfectly, and then counterattacked with the sword in his right hand, slashing at the priest’s body bit by bit.
[Ahhhh? Why! Why! Whyyyyyyyy!!]
The priest’s motions became a little rougher and his attacks grew stronger and harsher as the dozens of strikes were traded between them and as both sides eventually sustained injuries, but not fatal ones.
Pumpkin, nonetheless, observed the priest’s movements calmly, sprung up with the knife at the tip of the hand’s right claw to deflect it, and stepped forward to administer a narrow slash to the side of the priest, as if scraping off the scales.
[Why can’t I beat you! Why can’t I knock you down!?]
After dodging a particularly aggressive attack with the claws of his left hand, Pumpkin positioned himself to aim at the priest’s chest.
The priest was likely not able to have any understanding of why the combat was becoming more competitive just because Pumpkin’s physical abilities had caught up with his own.
That was why he was impatient. Until now, if the priest took that form, he would only need to land a single blow. Even if it took a few blows, the battle would be over, and yet the current battle has not ended.
“How can you win against someone with the same physical ability when you’ve thrown away all your knowledge and skills?”
[Gah!?]
The priest staggered greatly as Pumpkin’s sword gouged his chest at an unprecedented depth.
It ultimately boiled down to how much direct combat experience a person had. That was how Pumpkin and the priest differed.
When viewed in this light, the fact that a man who continuously conspired behind the scenes would be accustomed to direct combat, where the slightest hesitation or difference in feelings could determine the outcome of a battle, was rather strange.
“Looks like the blessings of the God of Destruction don’t amount to much, either.”
As if he were going to have the priest’s head chopped off next, Pumpkin pointed the tip of his right-hand sword at his neck.
Despite this, no human being can ever be certain of the exact moment when their talent will blossom.
Therefore, Pumpkin continued the fight in a cool and collected manner while, on the other hand, depriving his opponent of his rationality through words, posture, and pain.
[This... lowly pumpkin is mocking the God of Destruction!]
While brandishing the claws of both hands, the priest launched an assault.
Now, the arrangements are complete. All that is left is to rely on the proper execution of the timing.
Once more, a ferocious battle unfolded.
Each side, while covering their wounds little by little, sought an opening and strove to create a chance to score a killing blow.
“Here!”
[Ugh...!?]
After that, the priest’s grand attack was repelled by Pumpkin, which left him with a golden opening.
Without missing the opportunity, Pumpkin attempted to swing his right-hand sword...
The moment the priest said that Pumpkin saw the priest’s spiked tail thrust towards him. | {
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あまり多くはないですね
では 手をあげた人のうち― ルンバ以外のロボットを 持っている人は?
わずかですね
いいんです
これこそ Romotive で 私と20人のオタクが 解決しようと やっきになっている問題なんですから
私たちが本気で作りたいのは 誰もが使えるロボット― 8歳でも80歳でも 使えるロボットです
実際のところ これは 本当に難しい問題なんです というのも そのロボットは 小さくて 持ち運びができて― 単に 手ごろな値段 というだけではなく 皆が 実際に持ち帰って 子どものそばに置いておきたい ようなものでないといけません
このロボットは 気持ち悪くても 不気味であってもいけない
親しみやすくて かわいくあるべきなんです
では Romoをご紹介します
Romoは 皆さんが ご存知で 大好きな iPhoneを 頭脳として使います
iPhoneのプロセッサの力を 活用することで Wi-Fiが使えて コンピューター・ビジョンを備えた— ロボットを 150ドルで 作れました これは 従来のこのようなロボットの 約 1%の値段です
Romoは起きたら 生き物モードに入ります
装着されたビデオカメラを使って 私の顔を追います
私がしゃがめば Romoもついてきます
Romoは注意深いですから ずっと私から目を離しません
私が こちらに来れば― Romoもまた追ってきます
こっちにきたら― 賢いんです
そして もし近寄りすぎたら― 他の生き物と同じように 怖がります
いろんな意味で Romoは 自分の心を持ったペットのようです
ありがとう Romo
お大事に
世界を探検したければ― おや Romoが退屈しちゃったようですね もしRomoと世界を 探検したければ― どのiOSデバイスからでも Romoに接続できるんです
ここに iPadがありますが
Romoが このiPadに 映像を送ってきます
Romoが見たものを見て ロボットの目を通じて 世界を見られます
これはApp Storeの 無料アプリです このアプリを携帯に 入れてる人がいたら 文字通り このロボットを一緒に コントロールして ゲームもできます
本当に簡単にやってみますね Romoが映像を 送ってきています 私や 客席の皆さんが 映っています
Romoの正面に 来ましょう
コントロールしたければ 運転もできます
Romoを運転してまわれて 皆さんの写真を 撮ることもできます
TEDの千5百人の聴衆を 撮ってみたかったので
1枚 撮影しますね
iPadで ページをスクロール させるようにして カメラの角度を調整できます
ですから Romoの目には みんなが映っています
おまけに Romoは 私の延長ですから Romoの表情で 感情表現できます
こうやると Romoが 喜ぶんです
でも 最も大事なことは― 私たちは 文字通り まったく直感的に 動かせるものを 作りたかったということです
ひとに教わらなくても Romoを操作できます
誰かロボットを 動かしてみたい人いませんか?
さあ 挑戦者です
はい どうぞ
ありがとう スコット
さらにクールなのは ロボットを操縦するのに― 地理的に同じ場所に いる必要がないことです つまり Romoは どんなスマートデバイスとの間でも
双方向で音声とビデオを送れます ブラウザからログインできます 車輪付きのSkype みたいなもので
さきほど テレプレゼンスの 話がありましたが これはその いかした例です
想像してみてください iPhoneを持った 8歳の女の子が お母さんにロボットを 買ってもらい
その子は iPhoneを ロボットに装着して 遠くに住む おばあちゃんを メールで招待し
おばあちゃんが ロボットにログインして 孫娘と かくれんぼできます それも 毎晩15分でもです そうでなければ 孫娘には 年に1回か2回しか会えないかもしれません
ありがとう スコット
(拍手) Romoが今できるクールなことのうち 2つを紹介しました
最後に 将来に向け 私たちが取り組んでいることをお話しします
元々うちのエンジニアのドムが ある週末に作ったツールなんですが
BlocklyというGoogleのオープン・ フレームワーク上に作られていて
それぞれ意味を持ったコードのブロックを ドラッグ ドロップして ロボットに 好きな行動を させることができます
Romoを動かすプログラムの書き方を 知らなくても大丈夫
ブラウザ内で 行動をシミュレーションできます 左で Romoが やっていますね
気に入ったのがあれば 自分のロボットに ダウンロードして プログラムを現実に 実行できます
そして 自慢できる ものができたら― 世界中のRomo所有者と 共有できます
つまり これらのWi-Fiが使えるロボットは 互いに学習し合えるというわけです
誰でも訓練できるロボットに 私たちがそんなに熱を入れている理由は 個人に合ったものにできることこそ パーソナル・ロボットの一番の魅力だからです
人によって 違っていないといけない
ですから 皆さんの家に ロボットがいるとしたら そのロボットは 皆さんの想像力を 体現したものであるべきだと思います
パーソナル・ロボットの未来について 話せたらと思いますが―
正直なところ わかりません
ただ 分かっているのは それは 10年先でも 千億ドルの投資の後でもなければ 大きな人間型ロボットでもない ということです
パーソナル・ロボットの未来は もう 現実に起こりつつあります そして それは Romoのような 小さくて 機敏なロボットと 皆さんのような人たちの想像力に かかっているのです
皆さんがロボットを手にし それで何を作るのか 見るのが 待ち遠しいです
ありがとうございました | Not very many of you.
Okay. And actually of those hands, if you don't include Roomba how many of you have a robot at home?
So a couple.
That's okay.
That's the problem that we're trying to solve at Romotive -- that I and the other 20 nerds at Romotive are obsessed with solving.
So we really want to build a robot that anyone can use, whether you're eight or 80.
And as it turns out, that's a really hard problem, because you have to build a small, portable robot that's not only really affordable, but it has to be something that people actually want to take home and have around their kids.
This robot can't be creepy or uncanny.
He should be friendly and cute.
So meet Romo.
Romo's a robot that uses a device you already know and love -- your iPhone -- as his brain.
And by leveraging the power of the iPhone's processor, we can create a robot that is wi-fi enabled and computer vision-capable for 150 bucks, which is about one percent of what these kinds of robots have cost in the past.
When Romo wakes up, he's in creature mode.
So he's actually using the video camera on the device to follow my face.
If I duck down, he'll follow me.
He's wary, so he'll keep his eyes on me.
If I come over here, he'll turn to follow me.
If I come over here -- He's smart.
And if I get too close to him, he gets scared just like any other creature.
So in a lot of ways, Romo is like a pet that has a mind of his own.
Thanks, little guy.
Bless you.
And if I want to explore the world -- uh-oh, Romo's tired -- if I want to explore the world with Romo, I can actually connect him from any other iOS device.
So here's the iPad.
And Romo will actually stream video to this device.
So I can see everything that Romo sees, and I get a robot's-eye-view of the world.
Now this is a free app on the App Store, so if any of you guys had this app on your phones, we could literally right now share control of the robot and play games together.
So I'll show you really quickly, Romo actually -- he's streaming video, so you can see me and the entire TED audience.
If I get in front of Romo here.
And if I want to control him, I can just drive.
So I can drive him around, and I can take pictures of you.
I've always wanted a picture of a 1,500-person TED audience.
So I'll snap a picture.
And in the same way that you scroll through content on an iPad, I can actually adjust the angle of the camera on the device.
So there are all of you through Romo's eyes.
And finally, because Romo is an extension of me, I can express myself through his emotions.
So I can go in and I can say let's make Romo excited.
But the most important thing about Romo is that we wanted to create something that was literally completely intuitive.
You do not have to teach someone how to drive Romo.
In fact, who would like to drive a robot?
Okay. Awesome.
Here you go.
Thank you, Scott.
And even cooler, you actually don't have to be in the same geographic location as the robot to control him.
So he actually streams two-way audio and video So you can log in through the browser, and it's kind of like Skype on wheels.
So we were talking before about telepresence, and this is a really cool example.
You can imagine an eight-year-old girl, for example, who has an iPhone, and her mom buys her a robot.
That girl can take her iPhone, put it on the robot, send an email to Grandma, who lives on the other side of the country.
Grandma can log into that robot and play hide-and-go-seek with her granddaughter for fifteen minutes every single night, when otherwise she might only be able to get to see her granddaughter once or twice a year.
Thanks, Scott.
So those are a couple of the really cool things that Romo can do today.
But I just want to finish by talking about something that we're working on in the future.
This is actually something that one of our engineers, Dom, built in a weekend.
It's built on top of a Google open framework called Blockly.
This allows you to drag and drop these blocks of semantic code and create any behavior for this robot you want.
You do not have to know how to code to create a behavior for Romo.
And you can actually simulate that behavior in the browser, which is what you see Romo doing on the left.
And then if you have something you like, you can download it onto your robot and execute it in real life, run the program in real life.
And then if you have something you're proud of, you can share it with every other person who owns a robot in the world.
So all of these wi-fi–enabled robots actually learn from each other.
The reason we're so focused on building robots that everyone can train is that we think the most compelling use cases in personal robotics are personal.
They change from person to person.
So we think that if you're going to have a robot in your home, that robot ought to be a manifestation of your own imagination.
So I wish that I could tell you what the future of personal robotics looks like.
To be honest, I have no idea.
But what we do know is that it isn't 10 years or 10 billion dollars or a large humanoid robot away.
The future of personal robotics is happening today, and it's going to depend on small, agile robots like Romo and the creativity of people like yourselves.
So we can't wait to get you all robots, and we can't wait to see what you build.
Thank you. | {
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特別にと 病理学研究室に 私を入れてくれたのです 彼は 瓶に入っていた― 人間の脳を取りだし 私の手にのせてくれました
そこには 人間の意識の源― 人間の体を司るものが のっていました
そのときです 大人になったら 神経学者か 科学者になると確信しました
それから何年も経過して 私の夢は叶いました
博士号のテーマは
神経に起因する― 子どもの失読症 でした そのときに私が直面した― 驚きの事実を今日はお話しします
6人に1人の子どもが 発達障害を抱えると
推定されています 発達障害とは 子どもの 精神的発達が遅滞し
一生続く精神障害の原因となるものです この会場にいる皆さん誰もが 発達障害の子どもを
1人は知っている計算になります
しかし 私が困惑したのは このような障害は 例外なく 脳から発生しているのに そのケースのほとんどが 目に見える行動だけを基準に 診断されているのです
実際に脳を見ず 脳の障害を診断するのは 心臓に問題がある患者の心電図や 胸部のX線写真さえ撮らずに 身体的症状を頼りに
治療するようなものです
脳障害の正しい診断や 適切な治療には まず脳を見る必要がある― というのが私の直感でした
行動だけを観察していると 子どもの問題の 肝心な部分を見逃したり ときには誤った理解に至ります しかし これだけ医療技術が進歩しているにも関わらず 6人に1人が抱える― 脳障害の診断法は あまりにも決まりきったものでした
そんなとき ハーバード大学のチームを知ることになりました 彼らは ある高度な医療技術を 脳の研究ではなく 脳障害をもつ子どもの診断に 適用するところまで来たのです
その革新的な技術とは 脳波 すなわち脳の電気活動を リアルタイムで記録します 脳の様々な働きを 観察することができて 視覚 注意力 言語 聴覚を司る働きの 異常が少しでもあれば 見つけ出すことができます
脳電気活動図と呼ばれる― プログラムで 異常な電気信号の 場所を特定します
統計的確率マッピングという 別のプログラムが 数学的計算を行い 異常を示すものが 臨床的に重要かどうか 判定します 子どもの脳神経の症状に 正確な診断を 下すことができるのです そんなわけで私は神経生理を扱う― 部門を指揮することになりました この技術を用いて 脳障害をもつ子どもたちを
やっと助けられるようになりました インドでも この技術を 立ち上げる最中であることを嬉しく思います
ある男の子の話を紹介します ABCニュースでも取り上げられた―
7歳のジャスティンです 彼は我々の診療所に来る前 重度の自閉症と診断されていました
自閉症の子どもに多いように 彼は心を閉ざしていました
ジャスティンは時に うわの空になることもありました
両親は医師から ジャスティンが社会性を身につけるのは 無理だろうと言われていました また 言葉の習得の難しさも指摘されていました
我々が 革新的な脳波技術を使って ジャスティンの脳を実際に観察したとき 驚く結果が出ました
ジャスティンが自閉症ではないと ほぼ確実に言える結果が出たのです
肉眼だけでは特定できない― てんかん発作を患っていましたが 自閉症の症状に類似した― 症状を引き起こしていました
抗てんかん薬を飲んでから 驚く変化がありました
60日もしないうちに 彼の言葉は数える程度から 300に増えました
コミュニケーションも 劇的に向上し 普通の学校に入り 空手でも優秀な成績を収めました
自閉症と診断された― 子どものうちの約半数は 目に見えないてんかん発作が 原因だという研究結果が出ています
これは私が検査をした― 子どもたちです 皆 ジャスティンと同じ境遇にいたのです
どの子どもたちも 我々の診療所を訪れる前に 自閉症 注意欠陥障害 知的障害 言語障害という診断を受けていました
私たちの脳波スキャナーで 脳に隠れた特定の問題があることがわかりました 彼らの行動を判断するだけでは 絶対に発見できなかった問題です
このような脳波スキャンは 子どもたちに より正確な 脳神経の診断をすることができ より適した治療をすることができます
発達障害の子どもたちは 長いこと誤診のために 本来の問題を見いだしてもらえず 悪化するまま見捨てられてきました
そして このような子どもと親は長い間 ひどい苛立ちと絶望感に苛まれてきました
しかし我々は神経科学の新しい時代におり リアルタイムで脳の機能を じかに見れるようになりました それに伴うリスクや副作用はなく 障害をもつ多くの子どもたちの
本当の原因を痛みを伴わずに突き止められます 皆さんが 発達障害に苦しむお子さんがいる方を 一人でもご存じなら この革新的な 診断方法を ぜひお伝えください 一人でも多くの悩みが 解消できるかもしれません
もう1人の子どもの心が扉が開き
誤診されていた子ども― または従来の方法で 診断さえされていなかった― 子どもの本当の可能性に気づけるのです そこにはまだ 回復するだけの時間があります
方法は簡単 彼らの脳波を観察するだけです
ありがとう | And as a special treat, he took me to the pathology lab and took a real human brain out of the jar and placed it in my hands.
And there it was, the seat of human consciousness, the powerhouse of the human body, sitting in my hands.
And that day I knew that when I grew up, I was going to become a brain doctor, scientist, something or the other.
Years later, when I finally grew up, my dream came true.
And it was while I was doing my Ph.D.
on the neurological causes of dyslexia in children that I encountered a startling fact that I'd like to share with you all today.
that's one in six children, suffer from some developmental disorder.
This is a disorder that retards mental development in the child and causes permanent mental impairments.
Which means that each and every one of you here today knows at least one child that is suffering from a developmental disorder.
But here's what really perplexed me.
Despite the fact that each and every one of these disorders originates in the brain, most of these disorders are diagnosed solely on the basis of observable behavior.
But diagnosing a brain disorder without actually looking at the brain is analogous to treating a patient with a heart problem without even doing an ECG or a chest X-ray to look at the heart.
It seemed so intuitive to me.
To diagnose and treat a brain disorder accurately, it would be necessary to look at the brain directly.
Looking at behavior alone can miss a vital piece of the puzzle and provide an incomplete, or even a misleading, picture of the child's problems. Yet, despite all the advances in medical technology, the diagnosis of brain disorders in one in six children still remained so limited.
And then I came across a team at Harvard University that had taken one such advanced medical technology instead of in brain research, towards diagnosing brain disorders in children.
Their groundbreaking technology records the EEG, or the electrical activity of the brain, in real time, allowing us to watch the brain as it performs various functions and then detect even the slightest abnormality in any of these functions: vision, attention, language, audition.
A program called Brain Electrical Activity Mapping then triangulates the source of that abnormality in the brain.
And another program called Statistical Probability Mapping then performs mathematical calculations to determine whether any of these abnormalities are clinically significant, allowing us to provide a much more accurate neurological diagnosis And so I became the head of neurophysiology for the clinical arm of this team, and we're finally able to use this technology towards actually helping children with brain disorders.
And I'm happy to say that I'm now in the process of setting up this technology here in India.
I'd like to tell you about one such child, whose story was also covered by ABC News.
Seven-year-old Justin Senigar came to our clinic with this diagnosis of very severe autism.
Like many autistic children, his mind was locked inside his body.
There were moments when he would actually space out for seconds at a time.
And the doctors told his parents he was never going to be able to communicate or interact socially, and he would probably never have too much language.
When we used this groundbreaking EEG technology to actually look at Justin's brain, the results were startling.
It turned out that Justin was almost certainly not autistic.
He was suffering from brain seizures that were impossible to see with the naked eye, but that were actually causing symptoms that mimicked those of autism.
After Justin was given anti-seizure medication, the change in him was amazing.
Within a period of 60 days, his vocabulary went from two to three words to 300 words.
And his communication and social interaction were improved so dramatically that he was enrolled into a regular school and even became a karate super champ.
Research shows that 50 percent of children, almost 50 percent of children diagnosed with autism are actually suffering from hidden brain seizures.
These are the faces of the children that I have tested with stories just like Justin.
All these children came to our clinic with a diagnosis of autism, attention deficit disorder, mental retardation, language problems.
Instead, our EEG scans revealed very specific problems hidden within their brains that couldn't possibly have been detected by their behavioral assessments.
So these EEG scans enabled us to provide these children with a much more accurate neurological diagnosis and much more targeted treatment.
For too long now, children with developmental disorders have suffered from misdiagnosis while their real problems have gone undetected and left to worsen.
And for too long, these children and their parents have suffered undue frustration and desperation.
But we are now in a new era of neuroscience, directly at brain function in real time with no risks and no side effects, non-invasively, of so many disabilities in children.
So if I could inspire even a fraction of you in the audience today to share this pioneering diagnostic approach with even one parent whose child is suffering from a developmental disorder, then perhaps one more puzzle in one more brain will be solved.
One more mind will be unlocked.
And one more child who has been misdiagnosed or even undiagnosed by the system will finally realize his or her true potential while there's still time for his or her brain to recover.
And all this by simply watching the child's brainwaves.
Thank you. | {
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そして学者でもあるので、トークを通して、無料で観客のみなさんを寝かせます。
しかし、実際の私の仕事は パロ・アルトのスタンフォードにあるパッカード児童病院の
疼痛管理部署の監督です。 今日、みなさんに伝えたいことは 20~25年間、この仕事に従事して 得ることができた「痛みは病気である」という 理解です。
ほとんどの場合、痛みとは 何かしらの病気の兆候であると思うでしょう。 ほとんどの場合がその通りです。
腫瘍や、感染症、 炎症や薬品による病気の兆候です。
しかし、そういった病気から回復した後でさえ 10%ほどの患者に 痛みが残ります。
ひと月で済む場合もあれば 何年も続くことがあります。 そして、それが起こると 痛み自体が病気になってしまうのです。
どのようにしてそれが起こるのか、そして それに対して何ができるのかをお話しする前に 痛みがどのようにして私の患者たちを苦しめるのかをお見せしたいと思います。
私が自分の腕をなでているように あなたの腕をこの羽でなでたら どうなるか想像してみてください。 次に、このバーナーでなでたらどうかを
想像して下さい。 大丈夫、そんなことしませんから。
かなり異なった感覚が起こるはずです。
これがどのように慢性的な痛みと関係しているのか。
次に挙げる2つのことを考えてみてください。
もしも、実際にはこの羽でなでられているのに 脳はバーナーでなでられてると判断し その感覚をあなたに伝えたら、 あなたの人生はどうなるでしょうか。 実は、私の慢性的な痛みを患っている患者たちは、これを経験しているのです。
もっと悪い状況を考えてみてください。
もし私が、あなたの子供たちの腕をこの羽でなでているのに 彼らの脳がこの熱いバーナーでなでられている と判断したらどうなるでしょう。
これは、写真に写っている私の患者、シャンドラーが 実際に経験したことです。
ご覧の通り、彼女は美しい若い女性です。
去年彼女に会ったとき、彼女は16歳で プロのダンサーになりたいと強く思っていました。
ダンスの練習中に彼女は腕から転んでしまい 手首を捻挫してしまいました。
彼女がそうしたように、あなたも 手首の捻挫なんて、人生の中では 微小なことだと思うはずです。
包帯でテーピングして 1週間か2週間鎮痛剤を飲む。 これでこの話は終わります。
しかし、シャンドラーの場合、これこそがすべての始まりだったのです。 これは彼女が捻挫の3ヶ月後に私の診療所を
訪れた時の彼女の腕の様子です。 腕の色はくすみ 紫色になっているのがわかります。
触ってみると、死人の腕のようでした。
筋肉は硬直しており、ジストニアと言うのですが 麻痺していました。
痛みは手首から手、指先、 ひじから先までも広がり ほとんど彼女の肩に届く勢いでした。
しかし、さらに悪いことに、この痛みは一時的なものではなく 24時間、1日中続くものだったのです。
最悪なことに、彼女は、 ちょうど今私がこの羽とバーナーを使って説明した医学現象、 異痛症を患っていたのです。
彼女の腕にとって、ちょっとした刺激、 たとえば手で触られたり、 着ている服や袖が触れただけでさえ、 激烈な、耐えがたい痛みの原因となります。
どうやったらここまで神経はおかしくなってしまうのか。
どうやったら神経は 腕が触れるといった害のない感覚を 誤解し、その感覚を バーナーが触れたかのような害のある感覚と 勘違いしてしまうのでしょうか。
私たちの体の中の神経は、まるで家の中の 配線のようなものだと思うでしょう。
配線は、壁の中を電球のスイッチから天井の 接続箱へとつながれ、接続箱からも 電球に配線がつながっています。
スイッチを入れると、ライトがつき、
スイッチを切ると、ライトも消えます。
なので、神経もこのようなものだと思うでしょう。
親指をカナヅチで叩くと、 腕の中の配線、もちろん、神経のことですが、 脊髄の中の接続箱へと情報が伝達され そこで、新しい配線、すなわち新しい神経が その情報を、親指が傷つけられたと認識する
脳へと伝達します。 しかしながら、当然のことですが 人間の体は、家よりもはるかに複雑です。
本来なら 脊髄の中の接続箱は、 神経伝達物質と呼ばれる化学的な情報を 発することにより、1つの神経を 次の神経に1対1の形で、 つなぐだけなのですが 実際には何が起きたかと言うと 神経伝達物質が、四方八方、脊髄中 至るところにこぼれだし、 周りにある他の細胞たちと 作用しあうのです。
これらの、神経こう細胞と呼ばれる細胞は かつては脊髄の中でも 神経のように、重要な情報をまとめておくためだけの そんなに重要ではない構造であると 思われていました。
しかしながら、神経こう細胞は 調整や増幅、さらには痛みの 感覚を歪める上で、 必要不可欠であるということが 分かりました。
これらの神経こう細胞が起動されると
DNAは、隣接する神経と交流する 新しいたんぱく質の合成を 始めます。 そのたんぱく質が、神経伝達物質を放出します。 この神経伝達物質は、あふれだし 私達がこの反応は害のないものだと思うまで、 繰り返し、隣接する神経こう細胞を 活性化させます。
これはまるで、誰かが家にやってきて 壁の中の配線を 電気のスイッチを入れると、 他の場所でトイレの水が流れたり、 食器洗い機が起動したり、コンピューターの 画面が切れるように細工するのと同じです。
こんなの、あり得ません。 あり得ないはずですが、これは実際に 慢性痛で起こることなのです。
そして、これこそが痛みが病気になる理由でもあります。
神経系には柔軟性があります。
刺激によって、変化し 変形もします。
では、私たちは、シャンドラーのような
場合に、何ができるのでしょうか。
この状態では、そういった患者には、かなり雑な方法で 治療を行います。
率直に言うと、この種の痛みには あまり効果のない、 症状を緩和する薬や痛み止めを
使用します。 痛みの原因となっている細胞を 捕えて、 局部麻酔によって眠らせます。
最も重要なことですが、私たちは 日常生活の一部である活動や感覚に、 普通に反応できるように、 神経系の中にある 神経を再教育するために 苛烈で、時として不快な理学療法や 作業療法を用います。
そしてその全ての行程で 慢性痛にいつも伴う落胆や、絶望感、 憂鬱な気持ちなどに対処するために 徹底的な精神療法プログラムを 用います。
治療を始めてから 2か月でバックフリップができるようになった このシャンドラーを見ていただくと分かりますが、 この療法は成功を収めました。
昨日のことですが、ここ、ロングビーチの大学で ダンスを勉強している彼女と昼食をとりました。 今では彼女は素晴らしいダンサーです。
しかし、この療法の未来はより一層輝かしいものです。
将来的には、今現在使われている、 単純に問題をまぎらわし、 症状を緩和するだけの 薬ではなく、 問題の根本に 直接作用し、神経こう細胞、もしくは その神経こう細胞が作り出す、こぼれ出して 中枢神経系を緊張させる 有害なたんぱく質を 攻撃するような治療薬、すなわち、 私たちが痛みと呼ぶ感覚を 歪めたり拡大したりできる 形成性を持つ
治療薬を開発できると 確信しています。
ですから、私は、 近い将来、 ジョージ・カーリンが残した、「痛みがなければ それでいい」という言葉が 実現されてほしいと思います。
ご清聴、ありがとうございます。 | And I'm an academic, so I put audiences to sleep for free.
But what I actually mostly do at the Packard Children's Hospital up at Stanford in Palo Alto.
And it's from the experience from about 20 or 25 years of doing that that I want to bring to you the message this morning, that pain is a disease.
Now most of the time, you think of pain as a symptom of a disease, and that's true most of the time.
It's the symptom of a tumor or an infection or an inflammation or an operation.
But about 10 percent of the time, after the patient has recovered from one of those events, pain persists.
It persists for months and oftentimes for years, and when that happens, it is its own disease.
And before I tell you about how it is that we think that happens and what we can do about it, I want to show you how it feels for my patients.
So imagine, if you will, that I'm stroking your arm with this feather, Now, I want you to imagine that I'm stroking it with this.
Please keep your seat.
A very different feeling.
Now what does it have to do with chronic pain?
Imagine, if you will, these two ideas together.
Imagine what your life would be like if I were to stroke it with this feather, but your brain was telling you that this is what you are feeling -- and that is the experience of my patients with chronic pain.
In fact, imagine something even worse.
Imagine I were to stroke your child's arm with this feather, and their brain [was] telling them that they were feeling this hot torch.
That was the experience of my patient, Chandler, whom you see in the photograph.
As you can see, she's a beautiful, young woman.
She was 16 years old last year when I met her, and she aspired to be a professional dancer.
And during the course of one of her dance rehearsals, she fell on her outstretched arm and sprained her wrist.
Now you would probably imagine, as she did, that a wrist sprain is a trivial event in a person's life.
Wrap it in an ACE bandage, take some ibuprofen for a week or two, and that's the end of the story.
But in Chandler's case, that was the beginning of the story. This is what her arm looked like when she came to my clinic about three months after her sprain.
You can see that the arm is discolored, purplish in color.
It was cadaverically cold to the touch.
The muscles were frozen, paralyzed -- dystonic is how we refer to that.
The pain had spread from her wrist to her hands, to her fingertips, from her wrist up to her elbow, almost all the way to her shoulder.
But the worst part was, not the spontaneous pain that was there 24 hours a day.
The worst part was that she had allodynia, the medical term for the phenomenon that I just illustrated with the feather and with the torch.
The lightest touch of her arm -- the touch of a hand, the touch even of a sleeve, of a garment, as she put it on -- caused excruciating, burning pain.
How can the nervous system get this so wrong?
How can the nervous system misinterpret an innocent sensation like the touch of a hand and turn it into the malevolent sensation of the touch of the flame?
Well you probably imagine that the nervous system in the body is hardwired like your house.
In your house, wires run in the wall, from the light switch to a junction box in the ceiling and from the junction box to the light bulb.
And when you turn the switch on, the light goes on.
And when you turn the switch off, the light goes off.
So people imagine the nervous system is just like that.
If you hit your thumb with a hammer, these wires in your arm -- that, of course, we call nerves -- transmit the information into the junction box in the spinal cord where new wires, new nerves, take the information up to the brain where you become consciously aware that your thumb is now hurt.
But the situation, of course, in the human body is far more complicated than that.
Instead of it being the case that that junction box in the spinal cord by releasing these little brown packets of chemical information called neurotransmitters in a linear one-on-one fashion, in fact, what happens is the neurotransmitters spill out in three dimensions -- laterally, vertically, up and down in the spinal cord -- and they start interacting with other adjacent cells.
These cells, called glial cells, were once thought to be unimportant structural elements of the spinal cord that did nothing more than hold all the important things together, like the nerves.
But it turns out the glial cells have a vital role in the modulation, amplification and, in the case of pain, the distortion of sensory experiences.
These glial cells become activated.
Their DNA starts to synthesize new proteins, which spill out and interact with adjacent nerves, and they start releasing their neurotransmitters, and those neurotransmitters spill out and activate adjacent glial cells, and so on and so forth, until what we have is a positive feedback loop.
It's almost as if somebody came into your home and rewired your walls so that the next time you turned on the light switch, the toilet flushed three doors down, or your dishwasher went on, or your computer monitor turned off.
That's crazy, but that's, in fact, what happens with chronic pain.
And that's why pain becomes its own disease.
The nervous system has plasticity.
It changes, and it morphs in response to stimuli.
Well, what do we do about that?
What can we do in a case like Chandler's?
We treat these patients in a rather crude fashion at this point in time.
We treat them with symptom-modifying drugs -- which are, frankly, not very effective for this kind of pain.
We take nerves that are noisy and active that should be quiet, and we put them to sleep with local anesthetics.
And most importantly, what we do is we use a rigorous, and often uncomfortable, process of physical therapy and occupational therapy to retrain the nerves in the nervous system to respond normally to the activities and sensory experiences that are part of everyday life.
And we support all of that with an intensive psychotherapy program to address the despondency, despair and depression that always accompanies severe, chronic pain.
It's successful, as you can see from this video of Chandler, who, two months after we first met her, is now doings a back flip.
And I had lunch with her yesterday because she's a college student studying dance at Long Beach here, and she's doing absolutely fantastic.
But the future is actually even brighter.
The future holds the promise that new drugs will be developed that are not symptom-modifying drugs that simply mask the problem, as we have now, but that will be disease-modifying drugs that will actually go right to the root of the problem and attack those glial cells, or those pernicious proteins that the glial cells elaborate, that spill over and cause this central nervous system wind-up, or plasticity, that so is capable
of distorting and amplifying the sensory experience that we call pain.
So I have hope that in the future, the prophetic words of George Carlin will be realized, who said, "My philosophy: No pain, no pain."
Thank you very much. | {
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』まですべてが揃って、『
そんなキャッチコピーを掲げるショッピングモールがある。
食料や日用品はもちろん、家具や家電、衣料品にオモチャまでなんでも揃い、豊富なテナントには各種専門店が並び、映画館や医療モールを備え、フードコートの充実っぷりも有名だ。
休日ともなれば広大な駐車場に車が並び、来客の笑顔であふれかえる。
郊外において外出と言えば、遊びに行くと言えば、デートと言えば、ここに行くことだと言っても過言ではない。
その充実っぷりと人の多さから「小さな街」とも言われる、郊外型大規模ショッピングモール。
最後の二音
までありとあらゆる商品が揃い、訪れた人を笑顔にする「
」がある。
それが、『アイヲンモール』である。
「後ろにあるのはたしかにアイヲンモールだな......」
夜のアイヲンモールの駐車場に立ち尽くす男がいた。
ライトアップされたアイヲンモールを見つめて、呆然と。
谷口 直也、24歳。
大学卒業後に株式会社アイヲンに入社して、アイヲンモール
「暗い森、青い月、車サイズで角があるウサギ、屋上のドラゴン、あ、なんかめっちゃキレイに星が見える。......渦巻きの天の川は初めて見たなあ」
ぼんやりと呟く直也。
すべて、たったいま目にしたものである。
「はあああああ!? なんなのコレ! え、ドッキリじゃなくて? 夢でもなくて?」
バタバタと動きまわり、直也は頬をつねる。
ピタッと止まる。
直也は、先日受け取った辞令を思い出したのだ。
アイヲンモール*%#店と、読めない店舗名が書かれた辞令を。
「......はは、ははは。あ、なるほど、そういうことね。わかった、俺わかっちゃったかも」
うつろな目をして乾いた声で笑う直也。
背後のアイヲンモールにも駐車場にも
直也の奇行を咎める者はいない。
「俺の異動先、アイヲンモール
ライトアップされたアイヲンモールを背に、直也が叫ぶ。
「異世界ってなんだよ! さっきの地震かあの落書きのせい!? いやおかしいだろ!」
青い月はただ、直也の奇行を照らしていた。
「そもそもなんで異世界にアイヲンモールがあるんだよ! さっすが業界最大手、進出には積極的ですね!っておいいいいいい!」
直也に答える声はない。 | Prologue
—- From the A to the Z, everything is here. It’s all start with 『愛』(Ai = Love).
There is a shopping mall with that kind of catch phrase.
Not only food and daily necessities, but also furniture, home appliances, clothing and toys, various specialty necessities are lined up in abundant shops, movie theaters and clinics are available, and the food court is the most famous one.
On holidays, cars line up in the vast parking lot, and the smiles of the visitors overflow in there.
It is no exaggeration to say it’s a place to go out in the city, just going out to play, and also as a place to date.
A large-scale suburban shopping mall that is said to be a 「Miniature Town」because of its abundance and large number of people.
From the syllable of ‘All Items Will be always On the list No matter what’ products are available to make visitors smile. Of course our Love for customers is always there.
In short, [AIWON MALL].
“My eyes didn’t try to trick me, it’s really behind the [AIWON-MALL]’s building....”
There was a man standing in the parking lot of AIWON Mall at night.
The man was stunned when he stared at the illuminated AIWON Mall.
Naoya Taniguchi, years old.
He joined AIWON Co., Ltd. after graduating from university, A man who works in the AIWON Mall, at the Kasugano Prefecture.
“Dark forest, blue moon, car-sized horned rabbit, a dragon with the height as tall as the building’s rooftop, oh- I can see the stars so clearly.... I’ve never seen this swirling Milky Way.”
Naoya mutters vaguely.
He just says everything that he sees.
“Haaaaaah?! What the heck is this? Am I High? Or is it just a dream?”
Naoya pinches his cheeks as he flutters around.
But he stopped immediately.
Naoya remembered the resignation letter he received the other day.
AIWON Mall *% # store, a personnel transfer notice with an unreadable store name.
“....... haha, hahaha, ah,I see. I understand. I think I know what it is.”
Naoya laughs with a dry voice with hollow eyes.
In the back of AIWON Mall and in the parking space, no one is there beside him.
No one blames Naoya for his sudden- eccentric behavior.
“I got transferred with AIWON-Mall to another world!?”
Naoya shout against the illuminated AIWON-Mall
“How the hell am I in a different world? Where is the sudden earthquake? Or at least a weird magic circle drawn on the ground!”
The light from the blue moon just silently illuminates Naoya’s retort.
“Why is AIWON-Mall in a different world in the first place! As expected, it’s because they are the largest in the industry, and it is aggressively expanding to another world as well!?”
No one was there to answer Naoya’s question.
For now. | {
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バイオエネルギーは地球温暖化のことではありません 直感に反して バイオエネルギーとは 石油やガスや石炭のことです 未来に向かって架けていく橋の一部として 海を合理的に捉えたり 地球の周回軌道に人工衛星を打ち上げたり 電子レンジで温めたりできるかどうかは バイオエネルギーの理解と管理にかかっています そこでまず農業を見てみましょう
耕作の歴史は1万1千年ほど 作物を植える技術として 農業から学んだことは 害虫の退治です あらゆる悲惨な出来ごとにも対応して 作物を栽培しなければなりません 栽培するためには 水の使い方を学び そしてナイル流域から広まっていきます
それから動力を手に入れて 灌漑によって農業が変わりました 灌漑を行えば どこでも作物を植えられます それまでは河が氾濫する所に限られていました こんな有機農法にやがて 機械を投入し始めます 機械力と大量の水によって 農業は非常に大規模に行われるようになります
機械力と水とを投入すると こんな景色が作り出されます こんな商売も現れます 物量作戦です さて 農業は実に自然なものから 始まり やがて 自然のシステムを制御し始めました 自然に対してどんどん力を加えます 山ほどの農薬と除草剤を投入し -- 自然のシステムから
このようなシステムに到達します
これは全くもって力まかせの手法です エネルギーについても同様です 農業から学んだことは システムを組み合わせたり 生物学にもとづいたシステムの研究を進めることで 物量作戦から脱却できたということです 工学の原理や化学の原理から離れて 生物学の領域に入ります 人類の中で最も重要な人の一人である
後ろのスクリーンのこの人は
ノーマン=ボーローグです ノーベル賞を受賞し 栄誉賞も得ています 彼の偉業は これら全てに値します かつて無いほど 多くの人に 食糧を提供した業績が認められています 彼は生物学の種子への応用を メキシコで研究していました インドと中国でひどい飢餓が無くなったのは ボーローグが穀物の効率的な育て方を指導して
緑の革命が始まったからです これを批判する人も多いですが その人たちは 中国とインドで多くの国民が飢えることが無くなり さらに穀物を輸出している現状を
見逃しています 皮肉なことに 彼が研究に従事していたメキシコでは この技術を採用せず無視しました この技術についてあれこれ論じながら 実地には適用しませんでした
自国発の技術を採用しなかったメキシコは 結果として ずっと穀物の大量輸入国のままです 彼の功績を認めようともせず メキシコのどこにも彼の彫像はありません 中国とインドには彫像が立っていて 彼の組織はインドに移転してしまいました 技術を採用する事と
技術を論じる事はこれほどに違うのです 彼は 世界中のとてつもない人数に 食糧を提供しただけではなく 生物学の知見によって
技術そのものを大きく変えました 農業に何が起きたのでしょうか この百年の農業を概観すると 1900年頃の農業は 千年前の農民にも 理解できるものでした 鍬が違い ラバがトラクタに変わっても 百姓なら 何が何のために行われているか そしてどうなるのかを 理解できるはずです 農業が本当に変わり始めたのは
工学と化学による物量作戦から生物学に 移行したときで それから生産性が 増大し始めたのです 生物学の応用に伴って 生産性がこのように改善しました
すなわち100ブッシェルを生産するために 250時間かかったのが 40から15そして5時間まで短縮しました 生産性は 1950年から2000年の間に7倍になりました その他の経済領域では2.5倍の伸びです 一人当たりの生産量は
著しく増加しました 「琥珀色に波打つ穀物」のみならず
大量の農産物が得られました EUの予算の50%は 山のように作りすぎた農産物に対する 補助金に費やされています
これがエネルギーだったら良かったのですが ここまでで 皆さんは心の中で 「おい エネルギーの話を聞きにきたのにこやつは 生物学の話をしている」と思われているでしょう
ではこの二つはどう繋がるのでしょうか
バイオエネルギーの話で厄介な点は 理解していないシステムについて論じていることです 石油とは何なのかが分かっていないのです つまり石油が文字通りどこからきたのか それは未だに論争の種です この黒い液体が何で どこから来ているのか いちばん良く言っても 推測の域を出ません この物質は
この物質からできたとされます 太陽光を吸収した後 圧力を受けながら何百万年もかけて この漆黒の流れになりました
この理論が 真実であれば 石油と全ての炭化水素は濃縮された 太陽光である ここが面白いところです バイオエネルギーはエタノールのことではありません バイオエネルギーとは太陽からのエネルギーを アメーバや植物の中に濃縮したもので だから こんな虹色が見えるのかもしれません
さてこのシステムで 炭化水素を濃縮された太陽光と見なすなら バイオエネルギーは独特の作用をします 石油とその他の炭化水素はこれらの太陽光パネルシステムの
一部と考えなければなりません テキサスの空から眺める油井の姿が カンサスの灌漑農業が描く図形と 同じように見えるのは こんな理由によるのかもしれません こういう風に石油を収穫するのです
石油の採掘について これまでの発展を振り返ります 力任せの手法から出発して何を学んだでしょうか より大規模化が必要な事が分かりました それから何を学んだか? さらに大規模化をしました 辺境からこのバイオエネルギーを 収穫するときには こんなに破壊的な方法です これはアサバスカで タールサンドを大量に採掘します
世界最大のトラックもここで使われています この黒い混合物は 砂と結合していて 流動しない石油です ここに大量の蒸気を使って石油を分離します 今日の石油価格の上でのみ成立する手法です さて 石炭です
石炭も実質的に同じ物であることが分かります おそらくは植物でした 圧力下で燃えて潰されたことが違いです
こんなものを元に 燃やして圧力を加えて おそらくこれになります ただ繰り返し強調しますが 確実ではありません
皆が石炭について論じているのに奇妙なことです 石炭といえば小麦の種は燃やすとこうなります 石炭と似ていませんか
いうまでもなく 炭坑は大変危険な場所です なぜなら炭坑ではガスが出ることがあり 爆発によって人命が失われることもあります 炭坑によって石炭からバイオガスを 産出している所と産出しない所があります
そういう違いに気づくと 興味深い疑問が生じます ガスはどう取り扱えばよいのか ところで石炭に戻ると ほぼ同じ方法論でまさに同じ技術を
適用しています 物量作戦ということです 物量作戦が行き過ぎると 山を丸ごと削り取ってしまいます そして単一で最大の炭素放出源を造るわけです 石炭をガス化する処理工場です バイオエネルギーの最適な使い方ではないでしょう
このシステム以外の 別のシステムを見い出すことは重要です それはアメリカの石油埋蔵量が 減少しているにもかかわらず 石炭資源は減少していないからです 中国も同様です 石炭の埋蔵量は莫大であり これをバイオエネルギーとして見直すべきです 化学エネルギーや工業エネルギーとして 扱い続けると いずれは大変な状況に陥るからです
ガスも同じ問題を抱えています ガスもまた生物由来の物質です みなさんご存知のあれです これは石炭の掘り方の亜種なのです
これは炭層メタンと呼ばれます この写真のどこが面白いのでしょうか 石炭が植物の濃縮されたものとすれば なぜ鉱山ごとにガスの出方が違うのでしょう 爆発する炭坑もあればそうでもない炭坑もあるのです もしかすると石炭を食べてガスを造る何者かが 居るのかもしれません
よく知られた現象です 何かを食べると 沢山のガスを発生する 石炭鉱山でも同じような生物学的なプロセスがあるかもしれません そうであれば 石炭からエネルギーを取り出すには 山を削って採掘して 石炭を燃やす以外の方法もありそうです 農業で達成されたように 生物学的に石炭を処理できる
仕組みを見い出せばよいのです
これこそがバイオエネルギーです エタノールではありません 限られた数社の企業への補助金ではありません エタノール工場を作りすぎたからと アイオワにコーンを輸入するのではありません 農業に起きた変革の理解は進んでいます 物量作戦から生物学的な力に変革しました それをする過程で 技術をクリーン化することができ これは非常に速く行えるでしょう
生産性についての指標が少し得られています 十年以上稼働している石炭鉱脈や油田に 蒸気を導入すると 産出量は増大します 例えば 8倍増など これはまだ初期的な 段階にすぎません
バイオマテリアルといえばこの人 ヒト ゲノムの解読の一部を担い 世界を巡る航海を通じて 遺伝子やタンパクのデータベースを倍増させました 彼はエネルギーの課題にも取り組んでいます 知恵者を何人か集めて シンセティック ゲノミクス社や カンブリア社 コドン社を一つにしました これらの会社では 物量作戦の代わりに
生物学の仕組みを使うことを考えています
こんな風に考えています ある目的のために生物をプログラムする技術を研究します
細胞がハードウェアで遺伝子がソフトウェアです その技術の中で 生命は交換可能なプログラムと見なします エネルギーにもなるし 食糧にも 繊維にもなり ヒトにもなる つまり あらゆるものになり得るのです つまりエネルギーについての 問題の枠組みを変化させ 取り組み方を大いに変えることになります
根本の原理は何で 我々はどこへ向かっているのか 画面の人は 実に穏やかな人柄の偉人で またとない最高の人格者 ハミルトン=スミスです 遺伝子を切断する技術を開発して ノーベル賞を受賞しました 制限酵素と言うものです
彼はその研究をホプキンス大で行いました 控えめな彼のもとに 電話してきた母親は 「ホプキンス大で もう一人の知らないハム スミスさんが ノーベル賞を取ったんだってね」 お母さんにして このありさまです 彼はまさに一流でした 毎日欠かさず ピペットと試料を手に実験台に向かっていました
この人が成し遂げたことが
こんなこと これは何か? むき出しの DNA を移植する最初の試みです ある細胞から丸ごと取り出した DNA という OS を 別の細胞に注入しました 注入された細胞を 別の生命体として起動させました これで発生から 1 ヶ月 来月にはこの技術について 更に重要なものを目にするかもしれません この技術とその意味とを考えると
非常に高い補助金を払ってコーンを エタノールにする以外にやることがあります 生物学がエネルギーの領域に入っていくのです エネルギーを作り出すために お金もエネルギーも
大変なコストをかけています アルバータのタールサンドから集められた 硫黄のブロックです 砂と石油を分離するときには 大量のエネルギーを使って蒸気を作り 水蒸気で成分を分離させます そして硫黄も分離しなければなりません 軽油と重油の違いは 1 バレルあたり 14 ドル そこで 分離された硫黄がこんなピラミッドになります
実に大きなピラミッドです
これを作るエネルギーの一部でも取り出せるなら 生物学の原理による もっと小さなシステムで エネルギーの抽出を始められます ここから 技術を伸ばして行って 風力発電や太陽光発電や原子力発電に 追い着かなければなりません でもお願いです 次の原子力発電所は 美しい海岸線でも 活断層が近いところには
建てないで下さい 気になっています
当面 少なくとも次の10年間 それが石油であれ ガスであれ 石炭であれ ターゲットは炭化水素です さて 話が長くなりすぎないうちに 今のエネルギーシステムには
こんなことが起きています 消費するエネルギーの 86% は炭化水素 つまりエネルギー消費の 86% は おそらく変成した植物やアメーバなのです 資源保護と代替エネルギーの 役目はここにあります しかし 無駄になっている部分についても 解決しないといけません
無駄をどうするかということは、未来への架け橋です この未来への橋については じっくりと考えるべきことがあります 現在 石油の2/3は油田に残されています つまり巨額を投じていてもエネルギーの過半は そこに残置しています 取り出して利用するには 追加のエネルギーが必要だからです
エタノール製造に費やすエネルギーの割合もばかになりません 投入したエネルギーと得られるエネルギーが 1対1に成りかねません システムを管理する上で
これは ばかげたやり方です さて 最後の話題 最後のグラフです 石油の価格を安定させなければなりません 石油の価格はこんな様子です
このシステムは大変困ったもので 目標とするレートが大変に安いところに設定されます 太陽電池でも風力発電にしても 本当に優れたアイデアが 登場したときに何が起きるかというと
石油の価格が底値まで下がります 新しい会社が破産してしまいます それから石油の値段が戻ります
そこで今日の話の最後に提案したいことがあります ヨーロッパとアメリカの石油の価格を安定させましょう どうやって実施するのか 石油に税金をかけましょう 売上げ税ではありません 今後20年間 石油の価格を固定するためです -- 35ドルなり 40ドルの所定価格に -- OPECの価格がそれ以下になったら課税します OPECの価格がそれ以上になったら
税金はなしです これが起業家と企業に対して どう働くのか 1バレル35 --40 --50ドル以下で -- 金額は議論すべきですが -- それ以下でエネルギーを開発すれば 事業が成立します ともあれ 研究が見合わなくなるような 価格変動を放置するのは止めましょう そうしないとOPECは 新しい代替エネルギー事業を潰して バイオエネルギーの登場を阻止するからです
ありがとうございました | Bioenergy isn't global warming. Bioenergy is something which seems counterintuitive. Bioenergy is oil. It's gas. It's coal. And part of building that bridge to the future, to the point where we can actually see the oceans in a rational way, or put up these geo-spatial orbits that will twirl or do microwaves or stuff, is going to depend on how we understand bioenergy and manage it. And to do that, you really have to look first at agriculture.
So we've been planting stuff for 11,000 years. And in the measure that we plant stuff, what we learn from agriculture is you've got to deal with pests, you've got to deal with all types of awful things, you've got to cultivate stuff. In the measure that you learn how to use water to cultivate, then you're going to be able to spread beyond the Nile.
You're going to be able to power stuff, so irrigation Irrigation starts to make you be allowed to plant stuff where you want it, as opposed to where the rivers flood. You start getting this organic agriculture; you start putting machinery onto this stuff. Machinery, with a whole bunch of water, leads to very large-scale agriculture.
You put together machines and water, and you get landscapes that look like this. And then you get sales that look like this. It's brute force. So what you've been doing in agriculture is you start out with something that's a reasonably natural system. You start taming that natural system. You put a lot of force behind that natural system. You put a whole bunch of pesticides and herbicides -- -- behind that natural system, and you
end up with systems that look like this.
And it's all brute force. And that's the way we've been approaching energy. So the lesson in agriculture is that you can actually change the system that's based on brute force as you start merging that system and learning that system and actually applying biology. And you move from a discipline of engineering, you move from a discipline of chemistry, into a discipline of biology. And probably one of the most important
human beings on the planet is this guy behind me.
This is a guy called Norman Borlaug. He won the Nobel Prize. He's got the Congressional Medal of Honor. He deserves all of this stuff. And he deserves this stuff because he probably has fed more people than any other human being alive because he researched how to put biology behind seeds. He did this in Mexico. The reason why India and China no longer have these massive famines is because Norman Borlaug taught them how to grow grains in a more efficient way and launched the
Green Revolution. That is something that a lot of people have criticized. But of course, those are people who don't realize that China and India, instead of having huge amounts of starving people, are exporting grains.
And the irony of this particular system is the place where he did the research, which was Mexico, didn't adopt this technology, ignored this technology, talked about why this technology should be thought about, but not really applied.
And Mexico remains one of the largest grain importers on the planet because it doesn't apply technology that was discovered in Mexico. And in where there aren't statues of this man all over Mexico. There are in China and India. And the Institute that this guy ran has now moved to India. That is the difference between adopting technologies and discussing technologies.
Now, it's not just that this guy fed a huge amount of people in the world. It's that this is the net effect in terms of what technology does, if you understand biology.
What happened in agriculture? Well, if you take agriculture over a century, agriculture in about 1900 would have been recognizable to somebody planting a thousand years earlier. Yeah, the plows look different. The machines were tractors or stuff instead of mules, but the farmer would have understood: this is what the guy's doing, this is why he's doing it, this is where he's going. What really started to change in agriculture is when
you started moving from this brute force engineering and chemistry into biology, and that's where you get your productivity increases. And as you do that stuff, here's what happens to productivity.
Basically, you go from 250 hours to produce 100 bushels, to 40, to 15, to five. Agricultural labor productivity increased seven times, 1950 to 2000, whereas the rest of the economy increased about 2.5 times. This is an absolutely massive increase in how much is produced per person.
The effect of this, of course, is it's not just amber waves of grain, it is mountains of stuff.
And 50 percent of the EU budget is going to subsidize agriculture from mountains of stuff that people have overproduced.
This would be a good outcome for energy. And of course, by now, you're probably saying to yourself, "Self, I thought I came to a talk about energy and here's this guy talking about biology."
So where's the link between these two things?
One of the ironies of this whole system is we're discussing what to do about a system that we don't understand. We don't even know what oil is. We don't know where oil comes from. I mean, literally, it's still a source of debate what this black river of stuff is and where it comes from. The best assumption, and one of the best guesses in this stuff, is that this stuff comes
out of this stuff, that these things absorb sunlight, rot under pressure for millions of years, and you get these black rivers.
Now, the interesting thing about that thesis -- if that thesis turns out to be true -- is that oil, concentrated sunlight. And if you think of bioenergy, bioenergy isn't ethanol. Bioenergy is taking the sun, concentrating it in amoebas, concentrating it in plants, and maybe that's why you get these rainbows.
And as you're looking at this system, if hydrocarbons are concentrated sunlight, then bioenergy works in a different way. And we've got to start thinking of oil and other hydrocarbons as part of these solar panels.
Maybe that's one of the reasons why if you fly over west Texas, the types of wells that you're beginning to see don't look unlike those pictures of Kansas and those irrigated plots.
This is how you farm oil. And as you think of farming oil and how oil has evolved, we started with this brute force approach. And then what did we learn? Then we learned we had to go bigger. And then what'd we learn? Then we have to go even bigger. And we are getting really destructive as These are the Athabasca tar sands, and there's an enormous amount -- first of mining, the largest
trucks in the world are working here, and then you've got to pull out this black sludge, which is basically oil that doesn't flow. It's tied to the sand. And then you've got to use a lot of steam to separate it, which only works at today's oil prices.
Coal. Coal turns out to be virtually the same stuff. It is probably plants, except that these have been burned and crushed under pressure.
So you take something like this, you burn it, you put it under pressure, and likely as not, you get this. Although, again, I stress: we don't know.
Which is curious as we debate all this stuff. But as you think of coal, this is what burned wheat kernels look like. Not entirely unlike coal.
And of course, coalmines are very dangerous places because in some of these coalmines, you get gas. When that gas blows up, people die. So you're producing a biogas out of coal in some mines, but not in others.
Any place you see a differential, there're some interesting questions. There's some questions as to what you should be doing with this stuff. But again, coal. Maybe the same stuff, maybe the same system, maybe bioenergy, and you're applying exactly the same technology.
Here's your brute force approach. Once you get through your brute force approach, then you just rip off whole mountaintops. And you end up with the single largest source of carbon emissions, which are coal-fired gas plants. That is probably not the best use of bioenergy.
As you think of what are the alternatives to this system -- it's important to find alternatives because it turns out that the U.S. is dwindling in its petroleum reserves, but it is not dwindling in its coal reserves, nor is China. There are huge coal reserves that are sitting out there, and energy, because if we keep treating them as chemical energy, or engineering energy, we're going to be in deep doo-doo.
Gas is a similar issue. Gas is also a biological product. And as you think of gas, well, you're familiar with gas. And here's a different way of mining coal.
This is called coal bed methane. Why is this picture interesting? Because if coal turns out to be concentrated plant life, the reason why you may get a differential in gas output between one mine and another -- the reason why one mine may blow up and another one may not blow up -- may be because there's stuff eating that stuff and producing gas.
This is a well-known phenomenon. You eat certain things, you produce a lot of gas. It may turn out that biological processes in coalmines have the same process. If that is true, then one of the ways of getting the energy out of coal may not be to rip whole mountaintops off, and it may not be to burn coal. It may be to have stuff process that coal in a biological fashion as you
did in agriculture.
That is what bioenergy is. It is not ethanol. It is not subsidies to a few companies. It is not importing corn into Iowa because you've built so many of these ethanol plants. It is beginning to understand the transition that occurred in agriculture, from brute force into biological force. And in the measure that you can do that, you can clean some stuff, and you can clean it pretty quickly.
We already have some indicators of productivity on this stuff. OK, if you put steam into coal fields or petroleum fields that have been running for decades, you can get a really substantial increase, like an eight-fold increase, in your output. This is just the beginning stages of this stuff.
And as you think of biomaterials, this guy -- who did part of the sequencing of the human genome, who just doubled the databases of genes and proteins known on earth by sailing around the world -- has been thinking about how you structure this. And there's a series of smart people together companies like Synthetic Genomics, like, a Cambria, like Codon, and what those companies are trying to do is to think of, how do you apply
biological principles to avoid brute force?
Think of it in the following terms. Think of it as beginning to program stuff for specific purposes.
Think of the cell as a hardware. Think of the genes as a software. And in the measure that you begin to think of life as code that is interchangeable, that can become energy, that can become food, that can become fiber, that can become human beings, that can become a whole series of things, then you've got to shift your approach as to how you're going to structure and deal and think about energy in a very different way.
What are the first principles of this stuff and where are we heading? This is one of the gentle giants on the planet. He's one of the nicest human beings you've ever met. His name is Hamilton Smith. He won the Nobel for figuring out how to cut genes -- something called restriction enzymes.
He was at Hopkins when he did this, and he's such a modest guy that the day he won, his mother called him and said, "I didn't realize there was another Ham Smith at Hopkins. Do you know he just won the Nobel?" I mean, that was Mom, but anyway, this guy is just a class act. You find him at the bench every single day, working on a pipette and building stuff. And one of the things
this guy just built are these things.
What is this? This is the first transplant of naked DNA, where you take an entire DNA operating system out of one cell, insert it into a different cell, and have that cell boot up as a separate species. That's one month old. You will see stuff in the next month that will be just as important as this stuff. And as you think about this stuff and what the implications of this are, we're going to start not
just converting ethanol from corn with very high subsidies. We're going to start thinking about biology entering energy. It is very expensive to process this stuff, both in economic terms and in energy terms.
This is what accumulates in the tar sands of Alberta. These are sulfur blocks. Because as you separate that petroleum from the sand, and use an enormous amount of energy inside that vapor -- steam to separate this stuff -- you also have to separate out the sulfur. The difference between light crude and heavy crude -- well, it's about 14 bucks a barrel. That's why you're building these pyramids of sulfur blocks. And by the way, the
scale on these things is pretty large.
Now, if you can take part of the energy content out of doing this, you reduce the system, and you really do start applying biological principles to energy. This has to be a bridge to the point where you can get to wind, to the point where you can get to solar, to the point where you can get to nuclear -- and hopefully you won't build the next nuclear plant on a beautiful seashore next to an
earthquake fault. Just a thought.
But in the meantime, for the next decade at least, oil, be that gas, be that coal, this is what we're dealing with. And before I make this talk too long, here's what's happening in the current energy system.
86 percent of the energy we consume are hydrocarbons. That means 86 percent of the stuff we're consuming are probably processed plants and amoebas and the rest of the stuff. And there's a role in here for conservation. There's a role in here for alternative stuff, but we've also got to get that other portion right.
How we deal with that other portion is our bridge to the future. And as we think of this bridge to the future, one of the things you should ponder is: we are leaving about two-thirds of the oil today inside those wells. So we're spending an enormous amount of money and leaving most of the energy down there. Which, of course, requires more energy to go out and get energy. The ratios become
idiotic by the time you get to ethanol. It may even be a one-to-one ratio on the energy input and the energy output. That is a stupid way of managing this system.
Last point, last graph. One of the things that we've got to do is to stabilize oil prices. This is what oil prices look like, OK?
This is a very bad system because what happens is your hurdle rate gets set very low. People come up with really smart ideas for solar panels, or for wind, or for something else, and then guess what?
The oil price goes through the floor. That company goes out of business, and then you can bring the oil price back up.
So if I had one closing and modest suggestion, let's set a stable oil price in Europe and the United States. How do you do that? Well, let's put a tax on oil that is a non-revenue tax, and it basically says for the next 20 years, the price of oil will be -- whatever you want, 35 bucks, 40 bucks. If the OPEC price falls below that, we tax it. If the OPEC price goes above that, the tax
What does that do for entrepreneurs? What does it do for companies? It tells people, if you can produce energy for less than 35 bucks a barrel, or less than 40 bucks a barrel, or less than 50 bucks a barrel -- let's debate it -- you will have a business. But let's not put people through this cycle where it doesn't pay to research because your company will go out of business as OPEC drives alternatives and keeps bioenergy from
happening. Thank you. | {
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「あ、でもこのブルーなドレスも捨てがたいわね」
「それともこっちかしら」
ヴィアンが私の前にドレスを沢山並べて吟味する。私は何も口を挟まず、ただ彼の言うとおりにする。
もう数回色々なドレスに着替えている。その度に沢山褒めてくれるから、私も決められない。
このままじゃ、街に出る前に日が暮れてしまう。......仕事はあんなに早いのに、ドレスを決めることに関してはこんなにも時間がかかるのね。
「アリシアは何色のドレスを着たいの?」
「私は......、黒かしら」
「黒ね。気品のある黒が貴女に似合うわね。強い女は大概黒か赤を選ぶのよ」
「何その胡散臭い情報。どこ調べなのよ」
「もちろん私調べよ!」
彼が嬉しそうにそう言って、大量にあるドレスの中から、ラメの入った黒いシンプルで大人っぽいドレスを取り出した。
......これを幼い頃に着てたの!? まぁ、ヴィアンなら間違いなく似合うだろうけど。
というか、このドレスを着て街で目立たないわけがない。
私はヴィアンにドレスを渡され、ドレスの品質を確認するために、ゆっくりと生地に触れる。
柔らかく、最高級の生地だということがすぐに分かる。
「そのドレスはアリシアに絶対に似合うと思うわ」
ヴィアンはそう言って、私に笑顔を向ける。
本当にドレスが好きなのね。......私が出会ってきたどの女の子よりも美意識が高いわ。
「ヴィヴィアンは何色にするの?」
「............貴女が私のドレスを選んでちょうだい」
「私が?」
「是非私に似合うドレスを選んで欲しいわ! 今日の外出の格好はアリシアのセンスに全て任せるわ」
急に難題出してこないで......。
決して、ファッションセンスがないわけではない。ただ、ヴィアンを相手って言うのがね。
プロを前にして素人があまりしゃしゃり出ない方がいい......って、あれ?
悪女ならどんどん前に出ないといけないのに!
ヴィアンといるとそんな気持ちがいつの間にかなくなっていた。悪女は常に目標であり、それが揺るぐことはないけど、彼は何か違う。
戦友? というのが、正しいのかしら。
「何をそんなに考えているの?」
黄緑色のガラス玉のような瞳が私をじっと見つめている。
「何もないわ。ヴィヴィアンに似合うドレスを考えていただけよ」
私はそう言って、部屋にあるドレスを観察する。
こうなったら、彼に最も似合うドレスを探し出して見せる。気を抜くなんてだめよ、アリシア。
悪女は常に自分が納得して、満足できる答えを見つけ出すのだから。
私は必死に沢山のドレスの中から選抜していく。いくつかに絞り、彼の前にドレスを持ち上げて合わせる。
少しでも違うなと感じたものは消去していく。
......正直、ヴィヴィアンはどのドレスでも似合うのよね。
だから、選ぶのが大変だ。私は何枚か試した後、ついに見つけた。
「これだわ」
最も彼に合うドレスを見つけ出した。
誰も文句が言えないぐらい美しく、ヴィアンの良さを全て引き出してくれるドレス。
フリルやリボンななく、無地の真っ赤なロングドレス。少しタイトだが、ストレッチ生地だから、着心地も良いと思う。肩が出て、少し男らしさが出てしまうのなら、真っ白なファーショールで隠せばいい。
ドレスを決めて、ヴィアンに差し出すと、彼女はそのドレスをじっと見つめたまま固まった。 | “Oh, but this blue dress would be hard to pass up.”
“Or this one?”
Vian arranged a slew of dresses in front of me for me to try on. I didn’t say anything; I just did what he suggested.
I had changed into different dresses a few times already. Each time, he complimented me so much that I couldn’t make up my mind.
If I continued like this, the day would be over before we could go out. ...I worked so fast, but when it came to deciding on a dress, it took me so long.
“What color dress do you want to wear, Alicia?”
“I think black.”
“Black. A black dress with a touch of class would suit you. Strong women usually choose black or red.”
“What kind of shady information is that? Where did you get that information?”
“Of course, I researched it!”
He smiled happily and pulled out a simple, black, mature dress with lace from a large collection of dresses.
He wore something like this when he was a child! Well, Vian would definitely look good in it.
I mean, there was no way he wouldn’t stand out in the city wearing this dress.
Vian handed me the dress, and I slowly touched the fabric to feel the quality of the dress.
It was soft, and I could tell right away that it was a top quality fabric.
“I think that dress would definitely look great on Alicia.”
Vian said and smiled at me.
You really like dresses. ...You have more sense of beauty than any girl I have ever met.
“What color do you want, Vivian?”
“... Can you please pick out my dress for me?”
“Me?”
“ I want you to choose a dress that looks good on me! For today’s outing, I’ll leave everything up to Alicia. “
Don’t suddenly give me such a difficult task....
It wasn’t that I didn’t have any sense of fashion. It was just that I was dealing with Vian.
It was better for an amateur to not get too involved in front of a professional, right?
As a villainess, I should be more straightforward!
With Vian, that feeling somehow disappeared. Being a villainess would always be my goal, and I would never waver from that, but he was something different.
A comrade-in-arms? I wondered if that was the right way to put it.
“What are you thinking so much about?”
His yellow-green, glassy eyes stared at me.
“Nothing, I was just thinking about a dress that would look good on Vivian.”
I said and observed the dresses in the room.
Now that it has come down to it, I would find the dress that would suit him best and show it to him. Don’t let your guard down, Alicia.
A villainess always finds the answer that satisfies her and makes her happy.
I frantically narrowed down the selection from among the many dresses. After narrowing it down to a few, I lift the dresses up in front of him and make adjustments.
I eliminated the ones I felt were even slightly different from the rest.
...To be honest, Vivian looks good in every dress.
So, it was hard to choose. I finally found one after searching for a long time.
“This is it.”
I figured out the dress that would fit him the best.
A dress that brought out the best in Vian, so beautifully that no one could complain.
A long, plain, bright red dress with no frills or ribbons of any kind. It was a little tight, but the elastic fabric made it comfortable to wear. The shoulders would show and make him look a little masculine, but he could cover them up with a bright white fur shawl.
When I decided on the dress and presented it to Vian, he froze, gazing at it. | {
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ギルド到着、今日も採取依頼。そして即離脱。早々に街の外に出る。
今日は昨日よりも少し早い時間だ。城門から出て暫く進み周囲を見回すと、それでも昨日と同じように子供達が薬草を採取していた。やはり成果はあまりよろしくなさそう。でも余り街から離れると魔物も居るから、仕方ないとは思う。
気を取り直して今日も森を目指す。昨日行った南の森は結構、と言うか実はかなり深い森でここで狩りや採取をしてる中級、上級冒険者も割と多いらしい。
ともあれ今日も森の探索開始。
今日は自分で探す事にする。正直言えば売る分はまだ山程残ってる。だから今日は自分のスキル経験を積もうかなーと思ったのだ。
まあ、常時使用状態だから、別に差が出る訳ではないんだけどね。
所で、後ろからずっと付いて来てる複数の冒険者諸君なんなんでしょうね?
いやまあ、昨日の素材買い取りを見ていて、私が群生地を見つけたと踏んでお零れに与ろうって事だと思うんだけど。でも今日は適当に浅い所を探す予定だから、期待には添えませんよ?
そもそも群生地を探すなら振り切って逃げるし。
という訳で今日はゆったりと自力探索。
私の【探知】に反応は出ないけど、約1年の森の引き篭もり生活のお陰で、何となくだけど沢山生えてそうな場所は分かる。その経験を生かして適当に見当をつけ、何ヵ所かを移動しながら細々と薬草採取。その都度現れては一緒に採取する冒険者達。
ひの、ふの......7人? 2パーティー位? 見た感じだと殆どが13歳以上っぽいけど、うーん......マナーは悪いとは思うけど、だからと言って何か言うのも面倒だし。
どうしたものかな、と考えながら移動してると何か見覚えのある木が群生しているのをみつけた。
これ、椿? この世界に椿あるんだ。って、いやいやいや、おかしいでしょ!? 明らかに時期がおかしいから! っていうか、森に引き篭もってた時も思ったけど、この世界の植生明らかにおかしいよね!? 地球に喧嘩売ってるとしか思えない......
いや、もういいけどさあ? 何かこの世界特有の法則が有るとか、そういう事だと思うんだけど......うん、もう何でもいいや。何にしても懐かしいものが見れた事には変わりないしね?
と、どこと無く懐かしい気持ちになった所でふと気付いた。椿って、油取れたよね? 油、植物油。
植物油があれば、オークのラードでは作るのを諦めてた揚げ物が出来る? あ、ドレッシングも作れる! シャンプーやボディソープを作るのも消費が減る! これは集めないと!
猛然と椿の実を集める。ひたすら集める。一帯全てを採り尽くす勢いで集める。
薬草採取を止め唐突に木の実を集めだした私に、付いて来た冒険者たちが困惑しているのがわかる。
ギルドの薬草買い取りリストにも書いてないような木の実だ。仮に自分達も採取したとしても、売れるかどうかも怪しい。
でもそんな事はどうでもいい。そもそも売る為のものじゃない。油だ。私が使う為の油だ。パンはあるのでパン粉は作れる。卵を探そう。オーク肉。トンカツ! 米が無い? パン! カツサンド! これで勝つる!
あっと言う間に辺りの椿の実を採り尽くした。いや、念の為に言っておくけど、根絶させるような真似はしてないからね? 流石にまだ小さい実は残しておいたよ。
次は油を作らないと。実を炒めて潰して煮て......まあ、大体の手順は知ってるので、説明は省く。
火を使うので森の外へ移動し、テントを出してフライパン、大鍋等、必要そうな道具も準備。後は延々と油作り。とは言っても実は半分以上は見せる為だけにやってるブラフ。
正直、これだけ道具が揃っていれば殆どMPを消費せずに【創造魔法】で油を作れる。私の後を付いて来た冒険者達は暫くは私の様子を窺っていたけれど、そのうち森へ戻って行った。
私はと言えばそのまま延々と油作り。途中昼時になってご飯を作って食べたりはしたけど、それ以外はずっと油。遠巻きに様子を窺ってる人達が何人か居たけど、みんな直ぐに離れていった。
うーん、何とか全部処理完了かな。残った搾りかすは後で肥料にでも変えておこう。
空を見上げると大体午後の2~3時位? 今から帰れば夕方前には帰れるかな?
という訳で帰宅準備をしよう。テントを仕舞おうと振り返ると、またしても魔物の死体の山が。
ノルンさん、もう少し加減というものをですね? そ知らぬ顔でゴブリンを齧るのはやめてください。こんな人目に付く場所で、こんな。
取り敢えずさっさと収納して見なかった事にした。私は何も見てない、いいね?
アレを見なかった事にした後は街に戻ってギルドへ。私を付け回していた連中は居ないっぽい? なら早く換金を済ませて帰りましょう。という訳で昨日と同程度の量の薬草を買い取ってもらう。
昨日に引き続き職員さんの顔色が悪いけど、気にしない。順番待ちの冒険者もざわついてるけど、私は気にしない。目立ちたくないとはなんだったのか? 生きる上ではお金は大事だから、仕方ないでしょ? それに今はもっと大事な事があるのだ。逃げるように宿へ帰る。
昨日と同じ様に付けて来た人が数人居たけど、それも撒いておいた。
正直な所を言わせてもらえれば、私が泊まってる宿は直ぐにばれると思う。でも何もしないよりはマシかなーって。
宿に到着して木札提示。あ、追加で料金払って延長しておかないと。取り敢えず数日分位まとめて入れておこうかな。という事で追加で払っておく事にした。これで仮に金欠になっても、いきなり宿を追い出されるなんて事は無い。安心だね。
さて、今日はお風呂は後。手に入れたばかりの椿油を使って料理をするのだ。
という訳で給仕の女の子に声をかけて厨房を借りれないか聞いてみる。金髪ポニーテールの子だ。ちょっと見覚えがある。確か昨日ナイフを持って来てもらった子だったかな?
ちょっと待ってください、と厨房へ行って暫くすると戻ってきて、OKとの事。ありがたい。
ついでにパンと小麦粉少々、それと卵を少し分けてもらえないか聞いてみた所、パンは無料で卵は一個銀貨1枚だった。
たっか! 養鶏とかしてないのかな......取り敢えず2個譲ってもらう事にした。
厨房に移動。コックさんが一人居た。妙に偉そうにしてるし、どうやら料理長っぽいので軽く頭を下げてみたら、鼻で笑われた。
......いや、良いけどね。厨房貸してくれれば。
何をするのか興味津々という感じで給仕の子が見ている。コックの人は遠くからちらちらとこちらを窺ってるようだけど、さっきの態度もあるので無視。
作るのはトンカツ。揚げ物をするので危なくない様にマントは外した。視線が気になるけど、諦めて無視。
使い慣れた自作の包丁、小鍋を取り出してざっと【洗浄】。
次にオーク肉を取り出して適当なサイズにカット。筋切りもしておく。しゅぱぱぱぱ。塩胡椒を振って下味をつけ、小麦粉を塗して余計な粉は落とす。
卵を溶いてパン粉も準備。鍋に油を入れて火にかける。ある程度油の温度が上がったら卵にくぐらせた肉にパン粉をつけて投入、揚げる。この時低温の油から揚げるのがコツ。じゅわわわー。
途中ひっくり返したりしつつある程度火が通ったら、一度引き上げて少し休ませる。
暫く休ませた揚げでこんがり狐色に。こうする事で衣はさくさくで肉は柔らかく仕上がる。取り敢えず2枚揚げた。
後は譲ってもらったパンをカットして刻みキャベツと一緒に挟んで、出来上がり。
食べやすいように小さく切り分けると、全部れになった。ウスターソースがあればもっと良かったんだけど、下味もつけてるし大丈夫でしょう、多分。
後片付けを終わらせたらマントを身につけなおしてフードを被り、会釈して礼を言う。そして何か言われる前に出来上がった料理を手に厨房から退散する。
コックの人がもの凄い顔でこっちを凝視してたけど、華麗にスルー。
席について出来たてのカツサンドを頬張る。さくさくじゅーしー。うん、下味つけたからソース無しでも十分に美味しい。寧ろ肉の味がよくわかる。キャベツもいいね。うんうん。
あっと言う間に一切れ分食べてしまった。次に手を伸ばそうとした所で、側に給仕の子が立っているのに気が付いた。
「何か?」
「あ、あの......その」
視線が一ヵ所に、皿の上に固定されている。ああ、味が気になるんだね。んー、口利きもしてくれたし、ちょっとなら良いかな?
「食べてみますか?」
「いいんですか!?」
凄い食いつきだね。黙って一切れ勧めた。給仕の子が受け取って、恐る恐るという感じで口にする。サクッ、もぐもぐ......
「ふわぁ......なにこれぇ......」
顔が蕩けてる。うん、そうでしょうそうでしょう。久しぶりに作ったにしては、我ながらなかなか良く出来たからね。
ゆっくりと味わう様に食べるその様子を見ながら、私も食事を進める。給仕の子は一切れ全てを食べ終わった後は夢見るような表情で虚空を眺めていた。どうやら味を反芻しているっぽい?
私がカツサンドの残りも全て食べ終わる頃になって、漸く給仕の子が正気に戻った。
皿が既に空になっているのを見て一瞬悲しそうな表情になったけど、直ぐにこちらに向き直る。
「その、凄く美味しかったです! こんな料理、初めて食べました!」
「いえいえ、御粗末様でした」
「そんな......それに、お客様にこんなおねだりをして、私......」
私の顔を見ながら顔を赤らめてる。変な意味はないよね? いや、あってもいいけどね。女の子なら大歓迎。男はごめんです。
口利きしてくれたお礼だと告げると恐縮そうにしてた。うーん、こんな殺伐とした世界だというのに、いい子だなあ。贔屓してあげたい。
「また、厨房を借りる事があるかもしれません。その時はお願いします」
「あ......はい! 是非!」
はぁ、一々反応が可愛い。15歳位かな? 今度名前を聞こう。 | I arrived at the guild and accepted the gathering request for today. And then immediately left. I quickly made to exit the town.
I was starting a bit earlier today than yesterday. After exiting through the gate, I gave a brief glance around for a while, there were children about gathering herbs just like yesterday. But it seemed the results weren’t too great. However, if they ventured too far from the town, there would be monsters, so it couldn’t be helped.
I decided to head into the deeper parts of the forest for today. The southern part of the forest I explored yesterday had produced great results. Rather, the deeper parts were actually a place where intermediate and even some advanced level adventurers went to gather and hunt.
Anyways, let’s begin the search inside the forest.
But I will be doing the searching myself for today. To be honest, I still had quite a lot left to sell. So for today, I thought I would try to gain some experience for my skill instead.
Although, I was constantly using it anyways, so there probably wouldn’t be too much of a difference.
That aside, what should I do about the adventurers who have been following me?
Apparently, after witnessing yesterday’s material sales, these adventurers thought that by following me they would be able to cash in on the untouched areas. But I was planning on staying in the more shallow areas of the forest today, so I guess I wouldn’t be able to meet their expectations?
To begin with, if I was looking for an untouched area, I would’ve shaken them off and escaped.
Hence, I was doing the searching myself today.
My Detection skill didn’t pick up on anything, but due to my life in the forest for about a year, I was somehow able to tell where they grew. As such, due to my experience, I was able to find adequate spots to gather herbs in several areas. But the adventurers who followed me would also appear each time to gather all the herbs.
There were a total of seven people, so about two parties? I think most of them were over years old, but......they didn’t look too well-mannered, so it would be meaningless to say anything.
I was a bit troubled, but as I thought about moving to a different location I noticed a familiar looking plant.
Hm, is this a common camellia? So common camellia exists in this world. No, wait a minute! Isn’t this strange! The plants are totally blooming out of season! I thought this when I was living in the forest, but isn’t the vegetation in this world clearly off!? I get the feeling that it definitely goes against Earth’s seasons.......
But I suppose it’s fine, right? It’s probably due to a law unique in this world, or something along those lines.......right, so it shouldn’t really matter. However, I’m somehow feeling a bit nostalgic from looking at the plants?
But then I suddenly realized where that nostalgia was originating from. Common camellia, which means I can get oil? Or rather, vegetable oil.
With vegetable oil, couldn’t I make the fried foods that I wasn’t able to make using the orc lard? Ah, I could make dressings too! I could also reduce the cost needed to make soap and shampoo! I must collect this!
Thus, I started crazily gathering all the common camellia. I was gathering it with a single-minded drive. And gathering with the intention to take everything within the area.
When I stopped gathering herbs and suddenly started gathering the seed pods of the common camellia, the adventurers who followed me became confused.
It was a plant that wasn’t listed on the guild’s herb purchasing list. As such, even if I was gathering them, everyone was doubtful of whether they could even be sold.
But I didn’t care about that. I wasn’t trying to sell them in the first place. I just want the vegetable oil. Rather, I wanted to use the vegetable oil. There was bread so I could make bread crumbs. I also found eggs. And I have orc meat. Which means I can make tonkatsu! But there’s no rice? Alright, then bread! I can make cutlet sandwiches! This is a great find!
Soon, I finished gathering all the seed pods of the common camellia within the area. No, I didn’t really mean that, did you really think I would eradicate everything? I actually left some of the seed pods alone.
Now, I just need to extract the oil. Fry the seed pods and boil it.......well, I know the general procedure, so I’ll just save the explanation.
Since I would need to use fire, I exited the forest and took out a tent, then started taking out the necessary tools such as a frying pan and a large pot. After that I started extracting oil repeatedly. That said, I actually only did about half the work.
Since I already had all the necessary tools, I could just make the vegetable oil using Creation Magic without consuming too much MP. The adventurers who followed me watched me do all this for a while, but eventually returned back into the forest.
And I continued extracting oil without stopping. During the process, I stopped to make and eat lunch, but otherwise I was just extracting oil the entire time. There were some people passing by who stopped to look, but they all left almost immediately.
It seems I managed to finish extracting everything. I’ll use the leftovers as fertilizer later.
I glanced up at the sky, it looked about to in the afternoon? If I head back now, I think I should be able to make it before evening.
As such, I prepared to head back. I glanced back towards the tent to put it away, but there was a pile of dead monsters like before.
Norn, would it be possible for you to be a bit more modest? And please stop gnawing at the goblin pretending like you don’t know anything. It was also in such an obvious place where anyone could see.
For the time being, I decided to pretend I didn’t see anything and stored everything. I saw nothing, okay?
After pretending nothing had happened, I returned back to town and headed towards the guild. It didn’t look like anyone was following me, so I decided to hurry on back and sell my materials. As such, I gave the same amount of herbs as yesterday.
The guild staff’s complexion was as bad as yesterday too, but I ignored it. The adventurers waiting in line also started making a fuss, but I ignored them too. What happened to trying not to stand out? I need money for living expenses, so I guess it can’t be helped? And now, I have something more important in mind. Thus, I escaped back to the inn.
There were a few people who tried following me like yesterday, but I managed to shake them off.
To be frank, even with all my efforts, I think the inn I’m living at will be leaked soon. But it was still better than doing nothing.
I arrived at the inn and showed my wooden tag. I also paid lodging for several more days. For the time being, I was planning to continue staying here. Hence, I decided to pay in advance. With this, even if I ran out of money, I wouldn’t be forced out of the inn. One less thing to worry about.
Now then, let’s take a bath later. I wanted to try cooking with the vegetable oil I just got.
As such, I went to ask the waitress girl if I could borrow the kitchen. She was a young girl with blonde hair tied up in a ponytail. She also looked a bit familiar to me. I think she was the waitress girl who brought me the knife yesterday?
She asked me to wait a minute and then went inside the kitchen, after a while, she came back and gave me the OK. Thanks.
I also asked her if I could have some bread, flour, and a few eggs. The bread was free but the eggs cost one silver coin.
Expensive! I wonder if they’re raising chickens. As such, I decided to ask for two eggs for now.
I headed inside the kitchen. There was only a single cook inside. He had a sort of arrogant atmosphere around him, but it would seem he was the chef here. As such, I gave him a slight bow, but he merely snorted at me.
......Well, I thought he was fine with it. Since he had agreed to lend me the kitchen.
The waitress girl was watching me with a curious expression on her face. While the cook watched on from a distance away, but I ignored him because of his previous attitude.
Thus, I started making tonkatsu. I took off my cloak so that it wouldn’t get in the way while I was frying. I was a bit anxious about the surrounding gazes, but I gave up and ignored them.
I took out my usual kitchen knife and a small pan then used the cleaning skill on it.
Next, I took out a piece of orc meat and started cutting them into appropriate sizes. I sliced along the tendons of the meat. Afterwards, I began applying salt and pepper on the meat to season it, then applied flour, and removed any excess pieces.
I began mixing the eggs and started preparing the bread crumbs. Then, I added a bit of vegetable oil to the pan and started the fire. When the temperature of the vegetable oil was heated up enough, I started adding breadcrumbs to the meat that I had dipped in the eggs, then I began frying them. The trick was to fry by heating the oil to a low temperature.
I allowed the flames to heat the meat up to a certain extent before flipping it over, then I brought it up and let the meat sit for a bit.
After letting it sit for a while, I fried the meat again until it reached a deep gold color. By doing this, the outer layer would be crisp while the meat would be tender. I fried two pieces for the time being.
After finishing, I cut open the bread that was given to me and filled it with chopped cabbage.
I had cut it into smaller pieces so that it would be easier to eat, so it became a total of six pieces. It would have been better if I had some Worcester sauce, but it should hopefully still be fine since I also added seasoning to it.
The waitress girl, the cook, and several other people were staring at me with really surprised looks, but I ignored them.After cleaning up, I put my cloak back on, pulled up the hood, then gave a bow to express my thanks. And then left the kitchen with my food in hand before anyone could say anything.
The cook was staring at me with quite an expression on his face, but I completely ignored him.
I sat down with my freshly-made cutlet sandwich and started eating. Yep, it’s still delicious even without Worcester sauce due to the seasoning. Rather, the taste of the meat was amplified. The cabbage was good too. I was fully satisfied.
I finished a portion of the sandwiches in no time. But as I was about to reach out for another piece, I noticed that the waitress girl was standing next to me.
“What?”
“Ah, um......that.”
Her line of sight was fixed on the plate. Ah, I see, so she’s curious about the taste. Hmm, she was quite polite with me, in that case I guess a bit would be fine?
“Would you like to have some?”
“Is it really okay!?”
She looked like she really wanted to eat some. So I silently gestured for her to have some. The waitress girl accepted a piece and brought it to her mouth with trembling hands. She started chewing and swallowed.
“Wow......what is this.......”
A blissful expression crossed her face. Hmm, I see. It’s been a while since I’ve made one, but I would say I still did quite well.
I continued on with my meal while watching the waitress girl slowly savor the food. After the waitress girl finished eating everything, she stared off into empty space with a dreamy expression on her face. It looked like she was reminiscing over the taste?
When I also finished eating the rest of the cutlet sandwiches, the waitress girl finally returned to herself.
When she saw that the plate was already empty she looked a bit sad, but then she immediately turned to me.
“That was really delicious! This is the first time I’ve ever eaten a dish like this!”
“No, it was a bit crudely made.”
“That.....that is, to actually ask the customer something like this, I......”
She was blushing while looking at me. She didn’t mean something weird right? No, never mind. Girls are most welcomed. But I apologize to the guys.
It would seem she was a bit embarrassed and wanted to thank me for my kindness. Yep, even in such a violent world like this, this girl is a good kid. I like her.
“If I ever want to borrow the kitchen again, at that time, I’ll be in your care.”
“Ah......yes! Definitely!
Haah, her reactions were so cute. She looked about year old? Let’s ask for her name next time. | {
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結局、俺と少女は靴を取り合った挙句、俺が敗北する事となった。
少女は靴を持ったまま、母親の元に駆け戻っていったのだ。
「ママ! わたし、このブーツがいい!」
「レティーナでうろうろしないでって言ったでしょう!」
母親はなかば金切り声を上げながら少女を咎める。
それはそうだろう。先日拉致されたばかりなのだ。心配して当然である。
「はぁい。でもいいブーツを見つけたのよ! みて、ここ。コルティナ様と同じネコが入ってるの!」
「それはいいけど、そこの子も付属品なのかしら?」
「そこの子?」
レティーナと呼ばれた少女が手にした靴に目をやると、そこにはぶら下がる様にしがみついたままの俺の姿があった。
戦場で武器を手放すと命に関わる。そんな関係から、俺の握力は歳のわりに結構強い。
その結果、俺はレティーナに引き摺られるようにブーツごと拉致されたのである。
「ちょっと、まだつかまってたの!?」
「しんでも、わたさん。お前にだけは」
「お前呼ばわりされる義理はないわよ!」
「あらあら。お友達かしら」
「ママ、違うわよ! こんな変な子とお友達にしないで」
断固たる決意を込めて、俺を否定するレティーナ。
さすがに女の子とは言え、ここまではっきり拒絶されると、少しばかり傷付く。
俺が衝撃の表情を浮かべている所へ、フィニアが追いかけてきた。
「『また』って失礼な」
「あら。様付けで呼ばれるって事は、あなたもどこかのお嬢様なのかしら?」
「あなた『も』?」
少女の母親が、フィニアの呼称を聞いてそう口を挟んできた。
しかし、という事はレティーナと言う少女も貴族の子女って事になるのか?
「ええ。私はウィネ領のヨーウィ侯爵の妻で、エリザベート・ウィネ=ヨーウィよ。よろしくね。エリザおばさんって呼んでくれていいわ」
おっとりとした仕草で微笑む母親。そこには先ほどまでの張りつめていた雰囲気はない。
「そしてわたしは、娘のレティーナ・ウィネ=ヨーウィよ!」
名乗られたからには名乗り返すのが礼儀だろう。
「わたしはニコル。平民だから姓はない」
ライエルもマリアも、国を出るまでは高位の立場にいたので姓を持っていた。
俺の中で姓を持っているのは、国に戻ったマクスウェルしかいない。
「なんだ、平民かぁ」
「これ、レティ。はしたないですよ」
そんな事情を知らないレティーナは、俺の名乗りを聞いて少しばかり侮るような顔をした。
すぐさまそれを嗜めるエリザさん。貴族制は敷かれているが、同じ学院に通う身だ。今後は身分差のない生活になる。
学院内に通う生徒は、その身分の高低によって差別をしてはならないという決まりがある。
これは古より決められた原則であり、マクスウェルも、これを何よりも重視していた。
そんな親子のやり取りを無視して、フィニアも礼を返す。
「これはご丁寧に。私はニコル様にお仕えするフィニアと申します」
「まぁ、綺麗なお辞儀ですね。よっぽどよく教育されていると見えますわ」
「恐縮です。主もお喜びになるでしょう」
エリザさんはそう気にした風ではないが、レティーナの態度にフィニアはカチンと来たようだ。
ことさら丁寧に一礼する仕草に、少し怖さを感じる。
そこへさらに混乱を巻き起こす存在が現れた。英雄その人、コルティナである。
「おー、いたいた。ほんとニコルちゃんはお転婆だ。目を離すと本当に消えちゃうんだね」
「こ、コルティナ様!?」
突如現れた伝説上の生物に、さすがのエリザさんも緊張を隠せないようだ。
「あ、あなた......コルティナ様のご親族?」
かすれた声で、かろうじてそう尋ねてきた。
「ん? 違う。あれは大家さん」
「大家って......コルティナ様の家に住んでるのですか?」
怪しい敬語交じりの言葉遣いになるレティーナ。余程コルティナの存在がショックだったのだろう。
「うん。親がお友達だからね」
「コルティナ様とご友人って一体――」
「ライエルとマリアだよ。わたしのパパとママ」
「ええっ!?」
俺の衝撃の告白に、ついにエリザさんが卒倒しそうにぐらつく。
それをフィニアが、慌てて支える。俺では下敷きになるだけだ。
そんなこそこそ話をしている俺とレティーナを交互に眺めて、コルティナはぽつりとつぶやいた。
「お友達?」
「違うし」
「そうですわ! さっきお友達になりましたの!」
「へ、ええ!?」
どうやら俺は、ラウムで初めての友達をゲットした......らしい。 | In the end, after that girl and I argued for a while, I admitted defeat.
That girl then ran back to her mother with the shoes in tow.
「Mama! I like these boots! 」
「Letina, didn’t I tell you not to run around on your own!」
Her mother scolded the girl for running away on her own.
That’s to be expected. After all, she has been abducted yesterday. It would be natural for her mother to worry.
「Yeesh. But, but look, I found some good Boots! Look, it’s this. It has Cortina-sama’s cat motif! 」
「That looks good indeed, but is that child added as an accessory?」
「That child?」
When the girl called Letina looked at the shoes, she found my figure still hanging on the shoes.
Releasing your weapons on the battlefield would be a fatal mistake. My grip is quite strong you know, despite my age. However, my body is much too light for someone my age.
As a result, I was pulled along with the boots and was easily dragged by Letina.
「Hey, why are you still holding onto it!?」
「I won’t let go even if I die. Especially from you」
「Don’t look at me as if I am a thief!」
「My oh my. Is she a friend? 」
「Mama, no it’s not! I don’t want to be friends with such a weird child」
Letina rejected her mom’s statement with all her will.
Even though I am a girl, being clearly rejected like this still hurts me a bit.
While I was reeling from the shock of being rejected, Finia finally arrived.
「You didn’t have to imply『again』 though」
「Oh my. Being called by an honorific, are you perhaps a young lady from some well-off family as well?」
「You 『as well』?」
The girl’s mother uttered after hearing how Finia was addressing me.
But does that mean that this girl, Letina is also a noble’s child or something?
「Yes. I am the wife of Marquis Yowi, Elizabeth Winne Yowi. Please to meet you. You may call me Aunt Eliza if you want」
The mother smiles with a relaxed gesture. She doesn’t show any strict atmosphere at all even now. It was probably because she is worried about Letina.
「And I am, Letina Winne Yowi, her daughter!」
It is common courtesy to introduce yourself when someone gives you their names.
「I am Nicole. I don’t have a surname because I am a commoner」
When they left their countries for the expedition, both Lyell and Maria have a higher status so they both have surnames. However, after successfully subjugating the evil dragon, they both abandoned their surnames in order to break their connections from any country.
Among the six of us, only Maxwell returned while not abandoning his surname.
「Oh, so you were just a commoner」
「Now Letty. Didn’t I tell you not to speak that way」
Perhaps Letina doesn’t know about things like this so she might have felt a little offended after hearing my name.
On the other hand, Eliza-san probably realized it. Although an aristocratic system does function here, she would still be going to the same school as me. Everyone is also going to be treated equally upon entry.
After all, there is a strict rule in the school that no one should discriminate based on their social status.
This is an established principle and Maxwell prioritizes this above everything else.
Finia returns her thanks while ignoring the parent/child reaction.
「Thank you for taking care of her. I am Finia, an exclusive servant of Nicole-sama」
「My, what a beautiful posture. It looks like you have received a very good education」
「Thank you for the praise. I’m sure my master would be pleased to hear it」
Eliza didn’t mind her formality, but Letina seems to have clicked her tongue after seeing Finia’s formal gesture.
I feel a little scared that if it was me who was going to bow, I won’t be able to properly do it.
But then an entity that caused even further confusion suddenly appeared. It was the Hero Cortina.
「Oh, there you are. You are really quite the tomboy Nicole-chan. I just took my eyes off you for a bit and you really disappeared」
「Co, Cortina-sama!?」
For a legendary figure to suddenly appear, it couldn’t be helped for even Eliza-san to be unable to hide her tension. Her back was straightened and her expression became stiff. Similarly, Letina also froze.
「Y, you......were a relative of Cortina-sama?」
With a faint voice, she was barely able to ask.
「Nn? Nope. She’s my Landlord」
「Landlord......Do you live in Cortina-sama’s residence?」
Letina ended up using strange honorifics. Well, it was probably from the shock of meeting Cortina.
「Un. My parents are friends with her」
「When you speak of Cortina-sama’s friends, d- don’t tell me――」
「It’s Lyell and Maria. My mama and papa」
「Eeeehhh!?」
Probably from the sudden confession about my background, Eliza-san fainted from shock.
Finia immediately supported her. She then lays her down on a bench.
Then, looking at me and Letina conversing, Cortina asked.
「A friend of yours?」
「Nope」
「That is so! We’ve just become friends!」
「Heee, eeeh!?」
And because of that, I have acquired my first friend in Raum......or so it seems. | {
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そのおかげでここに立っています それから名声とお金を得たんです
私がした事言うのは 新婚時代にさかのぼります
新婚時代って奥さんに 良い印象を与えようとしますよね 私も皆さんと同じです
あるとき 私は妻が何かを こんな風に持っているのに気づきました
それを見て 「それは何?」と尋ねました
妻はこう返事しました 「あなたには関係ないわ」
そう言われても 私は夫ですので 彼女の後ろに回り込み それが汚れたぼろ切れだと分かりました
バイクの拭き掃除にも使わないような 汚れた布でした
それで分かりました その非衛生的なやり方で 生理の日をやり過ごしていたということを
すぐに妻に尋ねました なんでそんな非衛生なことをしているの?
彼女は答えました 私だって 生理用ナプキンのことは知ってるわ でも私と姉妹みんなが もしそれを使い始めたら 家族のミルク代を削らなくてはいけなくなるの
びっくりしました なんで生理用ナプキンと ミルク代が関係あるのかって? びっくりしました なんで生理用ナプキンと ミルク代が関係あるのかって?
いわゆる家計の事情ですね
1パックの生理用ナプキンを提供して 妻を驚かせようとしました
地元の小売店に行き 生理用ナプキンを彼女に買おうとしました
その店の店員は左右を見回して 新聞紙を広げ それを新聞紙の中へグルグルと包んで まるで禁制の物みたいにして渡されたんです
なぜだか分かりません コンドームを買った訳でもないんですよ
こうして生理用ナプキンを手にいれました とくかく見てみたかったんです 中身は何だろう?って
私が29歳になった時 本当に初めて 生理用ナプキンに触ったんです
ここに 生理用ナプキン触ったことのある男性って 何人いるでしょうね?
普通触りませんよね 男性には関係ないものですから
でわかったんです その白いやつは綿でできてて 本当に こんなに安い材料で 作ってある生理用ナプキンが 何百円もするんです
私の新妻に生理用ナプキンを 地元で作ってあげたらいいんじゃないか?
これが事の始まりです でも生理用ナプキンを作ったとして どうやって試したらいいでしょう?
実験室で試すというわけにはいかないし
女性のボランティアが必要ですが インドでどうやってみつけたらいいでしょう?
南部のバンガロールに行ってもいないでしょうから
それが唯一の問題でした 犠牲者になってくれるのは妻しかいません
そうして生理用ナプキンをつくり シャンティに渡しました シャンティは妻の名前です
「目をつぶって 私があげるものは ダイアモンドのペンダントでないし ダイアモンド指輪や チョコレートでもないけど キラキラの紙に包んだビックリするものをあげるからね
目を閉じて」
私は 妻と仲良くなりたかったんです
だって見合い結婚だったから 恋愛結婚でなくてね
ところがある日 彼女が率直に もう研究を手助けできないと言ったんです
それで他の犠牲者が必要になりました 私の姉妹たちです
しかし妻や姉妹たちにさえ 研究の支援を断られました
だから私はずっとインドの聖人たちがうらやましかったです
だって周りにたくさんの女性のボランティアがいます
わたしには1人もいないのに
彼らは何も頼まなくったって たくさん女性のボランティアが集まるのです
そこで医学校の女学生にボランティアを頼もうとしました
でも彼女たちにも拒否されて 結局 私は決めました 生理用ナプキンを 自分で使ってみることにしました
そういうわけで私は称号を持っています 月に降り立った人類最初の人
アームストロングや エベレストに初登頂したテンジンとヒラリー みたいに 私ムルガナタムは 地球上で初めて 生理用ナプキンをつけた男性ってね
私は生理用ナプキンをつけ 動物の血液をいっぱいにした水筒を ここに括り付けて パンツの中までチューブをのばしたんです 歩いたり 自転車にのっている間に 水筒を押して パンツの中へ血液を送り込んだんです
もう すべての目の前の女性に 頭が下がる思いです 心から尊敬します この5日間のことは生涯忘れません その汚らしい日々 そのうんざりする日々 そのべっとりぬれた感触を
本当にとても信じられない経験でした
でも問題は ある会社は綿製の 良いナプキンを作っているのに
いくら 良い質の綿を使っても 私の生理用ナプキンは失敗でした
それで私はこの研究、研究、研究の毎日を 続けたくなくなりました
まず資金が必要だったんです
でも財政的な危機だけでなく 生理用ナプキンの研究ですから あらゆる類の問題が ふりかかってきました 妻からの離婚届もありました
なんでかって?女子医学生に ボランティアを頼んでいたのですが
妻は 私が研究を口実に 医学校の女学生を追いかけているのだろうって
そうこうするうちに 松の木から採れる特殊な セルロースがあることを知りました でもそれが分かっても この材料を作るのに何百万円もする こんな設備が必要だったのです また頓挫です
そこで その後4年かけて 自分で機械を作りました とっても単純なこんな機械です
この機械があれば どこの田舎の女性でも多国籍工場と同じ 材料を使いナプキンを作ることができるのです 誰でも世界レベルのナプキンを 家庭で つくることができるのです
これが私の発明です
機械を発明した後で 私がしたことは 普通は もし特許や開発をしたら すぐに これを お金に変えたがりますよね
私はこれを決してしませんでした これをこんな風に落としました だって そんな風にお金を追っかけていたら 人生が美しいものではなく 退屈なものになってしまう
沢山の人が何千億ものお金を 稼ぎ 溜め込んでいます
なぜ慈善事業に向かうのは 後回しなんでしょう?
なぜお金を貯めてから 慈善事業をする必要があるんでしょう?
もし初日から慈善事業をすると決めたらどうでしょう
そういうわけで私はこの機械を インドの田舎に住む 田舎の女性たちだけに提供しました 実は インドではたった2%の女性しか 生理用ナプキンを使っていないのです 残りの女性たちはボロ布や 葉っぱ、トウモロコシの皮や木屑 生理用ナプキンはだれも使っていません
それは21世紀になっても同じでした だから私は この機械をインド中の貧しい女性たちだけに 提供する決心をしました
これまでインドの23州 インド以外の6カ国で 630機が設置されました
現在多国籍の大企業にも負けず 7年目になります MBAの学生たちの頭上には クエスチョンマークが浮かんでいるはずです
学歴もないコーヤンブットゥールの人間が なぜ競争に生き残れるのかってね
そのおかげで私はインド経営大学院の客員教授や 招待講演者になれました
(拍手) ビデオ1をかけてください
妻が持っていた布を見て 「なぜ君はこんな汚い布を使っているの?」と尋ねると
すぐに彼女は答えたんです 「わたしだってナプキンは知ってるわ でもナプキンを使ったら 家族のミルク代を削らないといけなくなるのよ」って
じゃあ 安いナプキンを 自分で作ればいいじゃないかって思ったんです
それで私はこの新しい機械を女性の 自助グループにだけ 売ることを決心したのです
これが私のアイデアです
以前は機械もろもろに 何十万ドルの投資が必要でした でも今は田舎の女性たちが 製造することができるのです
ほら お祈りをしています
ちょっと考えてみてください 大企業とやり合うって ハーバードやオックスフォードで 学んでも難しいことでしょう
でも私は田舎の女性たちが 多国籍企業とやり合えるようにしたんです
私はこれを7年間やっています
もう600機設置しました 私の使命はなんでしょう?
私が生きているうちに インドを 「女性100%が生理用ナプキンを使用する国」 にすることです
こうして 私は少なくとも 田舎に10万人以上の 雇用を生みだす予定です
自分だけが金持ちになるような ことはしませんでした
私は真剣なのです
女性を追いかけていても その女性に好かれるものでもありません
正しいことをすれば 女性の方が追いかけてくるのです
私は 富を司る女神 マハラクシュミを追いかけなかったので
マハラクシュミが私を追いかけてきて お尻のポケットにずっと入っています
前ポケットではないんですよ 私はお尻ポケット男なんです
以上です 学歴もないものが 生理用ナプキンが使われていないという
問題を見抜き 問題の解決法を提供できたのです 私は今とても幸せです
私はこれを会社にはしたくありません
この地域生理用ナプキン運動を 世界に広めたいんです ですから ことの詳細をすべて オープンソフトウェアのように公のものとしています
現在110カ国がアクセスしています
ここで 人間を3つのタイプに 分けてみましょう 教育を「受けていない」「少しだけ受けている」 「受けすぎている」タイプです
教育を少しだけ受けた 私がこう出来たのです 教育を受けすぎている皆さんは 社会に対し 何をしますか?
ご清聴ありがとうございました | It makes me to stand here, the fame, the money I got out of it.
So what I did, I'd gone back to my early marriage days.
What you did in the early marriage days, you tried to impress your wife. I did the same.
On that occasion, I found my wife carrying something like this.
I saw. "What is that?" I asked.
My wife replied, "None of your business."
Then, being her husband, I ran behind her and saw she had a nasty rag cloth.
I don't even use that cloth to clean my two-wheeler.
Then I understood this -- adapting that unhygienic method to manage her period days.
Then I immediately asked her, why are you [using] that unhygienic method?
She replied, I also know about [sanitary pads], but myself and my sisters, if they start using that, we have to cut our family milk budget.
Then I was shocked. What is the connection between using a sanitary pad and a milk budget?
And it's called affordability.
I tried to impress my new wife by offering her a packet of sanitary pads.
I went to a local shop, I tried to buy her a sanitary pad packet.
That fellow looks left and right, and spreads a newspaper, rolls it into the newspaper, gives it to me like a banned item, something like that.
I don't know why. I did not ask for a condom.
Then I took that pad. I want to see that. What is inside it?
The very first time, at the age of 29, that day I am touching the sanitary pad, first ever.
I must know: How many of the guys here have touched a sanitary pad?
They are not going to touch that, because it's not your matter.
Then I thought to myself, white substance, made of cotton -- oh my God, that guy is just using a penny value of raw material -- inside they are selling for pounds, dollars.
Why not make a local sanitary pad for my new wife?
That's how all this started, but after making a sanitary pad, where can I check it?
It's not like I can just check it in the lab.
I need a woman volunteer. Where can I get one in India?
Even in Bangalore you won't get [one], in India.
So only problem: the only available victim is my wife.
Then I made a sanitary pad and handed it to Shanti -- my wife's name is Shanti.
"Close your eyes. Whatever I give, it will be not a diamond pendant not a diamond ring, even a chocolate, I will give you a surprise with a lot of tinsel paper rolled up with it.
Close your eyes."
Because I tried to make it intimate.
Because it's an arranged marriage, not a love marriage.
So one day she said, openly, I'm not going to support this research.
Then other victims, they got into my sisters.
But even sisters, wives, they're not ready to support in the research.
That's why I am always jealous with the saints in India.
They are having a lot of women volunteers around them.
Why I am not getting [any]?
You know, without them even calling, they'll get a lot of women volunteers.
Then I used, tried to use the medical college girls.
They also refused. Finally, I decide, use sanitary pad myself.
Now I am having a title like the first man to set foot on the moon.
Armstrong. Then Tenzing [and] Hillary, in Everest, like that Muruganantham is the first man wore a sanitary pad across the globe.
I wore a sanitary pad. I filled animal blood in a football bottle, I tied it up here, there is a tube going into my panties, while I'm walking, while I'm cycling, I made a press, doses of blood will go there.
That makes me bow down to any woman in front of me to give full respect. That five days I'll never forget -- the messy days, the lousy days, that wetness.
My God, it's unbelievable.
But here the problem is, one company is making napkin out of cotton. It is working well.
But I am also trying to make sanitary pad with the good cotton. It's not working.
That makes me to want to refuse to continue this research and research and research.
You need first funds.
Not only financial crises, but because of the sanitary pad research, I come through all sorts of problems, including a divorce notice from my wife.
Why is this? I used medical college girls.
She suspects I am using as a trump card to run behind medical college girls.
Finally, I came to know it is a special cellulose derived from a pinewood, but even after that, you need a multimillion-dollar plant like this to process that material. Again, a stop-up.
Then I spend another four years to create my own machine tools, a simple machine tool like this.
In this machine, any rural woman can apply the same raw materials that they are processing in the multinational plant, anyone can make a world-class napkin at your dining hall.
That is my invention.
So after that, what I did, usually if anyone got a patent or an invention, immediately you want to make, convert into this.
I never did this. I dropped it just like this, because you do this, if anyone runs after money, their life will not [have] any beauty. It is boredom.
A lot of people making a lot of money, billion, billions of dollars accumulating.
Why are they coming for, finally, for philanthropy?
Why the need for accumulating money, then doing philanthropy?
What if one decided to start philanthropy from the day one?
That's why I am giving this machine only in rural India, for rural women, because in India, [you'll be] surprised, only two percent of women are using sanitary pads. The rest, they're using a rag cloth, a leaf, husk, [saw] dust, everything except sanitary pads.
It is the same in the 21st century. That's why I am going to decide to give this machine only for poor women across India.
So far, 630 installations happened in 23 states in six other countries.
Now I'm on my seventh year sustaining against multinational, transnational giants -- makes all MBA students a question mark.
A school dropout from Coimbatore, how he is able to sustaining?
That makes me a visiting professor and guest lecturer in all IIMs.
Play video one.
Arunachalam Muruganantham: The thing I saw in my wife's hand, "Why are you using that nasty cloth?"
She replied immediately, "I know about napkins, but if I start using napkins, then we have to cut our family milk budget."
Why not make myself a low-cost napkin?
So I decided I'm going to sell this new machine only for Women Self Help Groups.
That is my idea.
AM: And previously, you need a multimillion investment for machine and all. Now, any rural woman can.
They are performing puja.
: You just think, competing giants, even from Harvard, Oxford, is difficult.
I make a rural woman to compete with multinationals.
I'm sustaining on seventh year.
Already 600 installations. What is my mission?
I'm going to make India [into] a 100-percent-sanitary-napkin-using country in my lifetime.
In this way I'm going to provide not less than a million rural employment that I'm going to create.
That's why I'm not running after this bloody money.
I'm doing something serious.
If you chase a girl, the girl won't like you.
Do your job simply, the girl will chase you.
Like that, I never chased Mahalakshmi.
Mahalakshmi is chasing me, I am keeping in the back pocket.
Not in front pocket. I'm a back pocket man.
That's all. A school dropout saw your problem in the society of not using sanitary pad.
I am becoming a solution provider. I'm very happy.
I don't want to make this as a corporate entity.
I want to make this as a local sanitary pad movement across the globe. That's why I put all the details on public domain like an open software.
Now 110 countries are accessing it. Okay?
So I classify the people into three: uneducated, little educated, surplus educated.
Little educated, done this. Surplus educated, what are you going to do for the society?
Thank you very much. Bye! | {
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1980年代の後半に 私は若気の至りから ロースクールに行ったのです
アメリカでは 法律は専門職学位です まず大学を出て それからロースクールへ行きます
ロースクールで私は あまり成績が芳しくありませんでした
控えめに言ってもあまり良くなく
上位90パーセント以内という成績で 卒業しました
どうも
法律関係の仕事はしたことがありません やらせてもらえなかったというべきかも
しかしながら今日は 良くないことだとは思いつつ 妻の忠告にも反しながら この法律のスキルを 再び引っ張り出すことにしました
今日はストーリーは語りません
主張を立証します
合理的で 証拠に基づいた 法廷におけるような論証で ビジネスのやり方を再考してみたいと思います
陪審員の皆さん こちらをご覧ください
これは「ロウソクの問題」と呼ばれるものです
ご存じの方もいるかもしれません
1945年に カール ドゥンカーという心理学者が
この実験を考案し 様々な行動科学の実験で用いました
ご説明しましょう 私が実験者だとします
私はあなた方を部屋に入れて ロウソクと 画鋲と マッチを渡します
そしてこう言います 「テーブルに蝋がたれないように ロウソクを壁に 取り付けてください」 あなたならどうしますか?
多くの人は 画鋲でロウソクを 壁に留めようとします
でも うまくいきません
あそこで 手真似をしている人がいましたが マッチの火でロウソクを溶かして 壁にくっつけるというアイデアを思いつく人もいます
いいアイデアですが うまくいきません
5分か10分すると たいていの人は解決法を見つけます このようにすればいいのです
鍵になるのは「機能的固着」を乗り越えるということです
最初あの箱を見て 単なる画鋲の入れ物だと思います
しかしそれは別な使い方をすることもでき ロウソクの台になるのです これがロウソクの問題です
次にサム グラックスバーグという科学者が
このロウソクの問題を使って行った 実験をご紹介します 彼は現在プリンストン大学にいます この実験でインセンティブの力がわかります
彼は参加者を集めて こう言いました 「この問題をどれくらい早く解けるか時計で計ります」
そして1つのグループには この種の問題を解くのに 一般にどれくらい時間がかかるのか 平均時間を知りたいのだと言います
もう1つのグループには 報酬を提示します
「上位25パーセントの人には 5ドルお渡しします
1番になった人は 20ドルです」
これは何年も前の話なので 物価上昇を考慮に入れれば 数分の作業でもらえる金額としては 悪くありません
十分なモチベーションになります
このグループはどれくらい早く 問題を解けたのでしょう?
答えは 平均で― 3分半 余計に時間がかかりました
3分半長くかかったのです そんなのおかしいですよね?
私はアメリカ人です 自由市場を信じています
そんな風になるわけがありません
人々により良く働いてもらおうと思ったら 報酬を出せばいい
ボーナスに コミッション あるいは何であれ―
インセンティブを与えるのです ビジネスの世界ではそうやっています
しかしここでは結果が違いました 思考が鋭くなり
クリエイティビティが加速されるようにと インセンティブを用意したのに 結果は反対になりました
思考は鈍く クリエイティビティは阻害されたのです
この実験が興味深いのは それが例外ではないということです
この結果は何度も何度も 40年に渡って再現されてきたのです
この成功報酬的な動機付け―If Then式に 「これをしたら これが貰える」というやり方は 状況によっては機能します
しかし多くの作業ではうまくいかず 時には害にすらなります
これは社会科学における 最も確固とした発見の1つです そして最も無視されている発見でもあります
私はこの数年というもの 動機付けの科学に注目してきました 特に外的動機付けと内的動機付けの ダイナミクスについてです
大きな違いがあります
これを見ると 科学が解明したことと ビジネスで行われていることに食い違いがあるのがわかります
ビジネス運営のシステム つまりビジネスの背後にある前提や手順においては どう人を動機付け どう人を割り当てるかという問題は もっぱら外的動機付け アメとムチにたよっています
20世紀的な作業の多くでは これは実際うまくいきます
しかし21世紀的な作業には 機械的なご褒美と罰というアプローチは 機能せず うまくいかないか 害になるのです
どういうことか説明しましょう
グラックスバーグはこれと似た別な実験もしました このように若干違った形で 問題を提示したのです
机に蝋がたれないようにロウソクを壁に付けてください
条件は同じ あなたたちは平均時間を計ります
あなたたちにはインセンティブを与えます
どうなったのでしょう?
今回は― インセンティブを与えられたグループの方が断然勝ちました
なぜでしょう? 箱に画鋲が入っていなかったら 問題はバカみたいに簡単になるからです
If Then式の報酬は このような作業にはとても効果があります 単純なルールと 明確な答えがある場合です
報酬というのは 視野を狭め 心を集中させるものです 報酬が機能する場合が多いのはそのためです
だからこのような 狭い視野で 目の前にあるゴールを まっすぐ見ていればよい場合には うまく機能するのです
しかし本当のロウソクの問題では そのような見方をしているわけにはいきません
答えが目の前に転がってはいないからです 周りを見回す必要があります
報酬は視野を狭め 私たちの可能性を限定してしまうのです
これがどうしてそんなに重要なことなのでしょうか
西ヨーロッパ アジアの多く 北アメリカ オーストラリアなどでは ホワイトカラーの仕事には このような種類の仕事は少なく このような種類の仕事が増えています
ルーチン的 ルール適用型 左脳的な仕事 ある種の会計 ある種の財務分析 ある種のプログラミングは 簡単にアウトソースできます 簡単に自動化できます
ソフトウェアのほうが早くできます
世界中に低価格のサービス提供者がいます
だから重要になるのは もっと右脳的で クリエイティブな 考える能力です
ご自分の仕事を考えてみてください
あなた方が直面している問題は あるいは私たちが― この場で議論しているような問題は こちらの種類でしょうか? 明確なルールと 1つの答えがあるような? そうではないでしょう
ルールはあいまいで
答えは そもそも存在するとしての話ですが 驚くようなものであり けっして自明ではありません
ここにいる誰もが その人のバージョンの ロウソクの問題を扱っています
そしてロウソクの問題は どんな種類であれ どんな分野であれ If Then式の報酬は― 企業の多くはそうしていますが― 機能しないのです
これには頭がおかしくなりそうです
どういうことかというと
これは感情ではありません
私は法律家です 感情なんて信じません
これは哲学でもありません
私はアメリカ人です 哲学なんて信じません
これは事実なのです 私が住んでいるワシントンDCでよく使われる言い方をすると 真実の事実です
例を使って説明しましょう
証拠の品を提示します
私はストーリーを語っているのではありません 立証しているのです
陪審員の皆さん 証拠を提示します ダン アリエリーは現代における最高の経済学者の1人です 彼は3人の仲間とともに MITの学生を対象に実験を行いました
学生たちにたくさんのゲームを与えます クリエイティビティや 運動能力や 集中力が要求されるようなゲームです
そして成績に対する報酬を 3種類用意しました 小さな報酬 中くらいの報酬 大きな報酬です
非常にいい成績なら全額 いい成績なら半分の報酬がもらえます
どうなったのでしょう? 「タスクが機械的にできるものである限りは 報酬は期待通りに機能し 報酬が大きいほど パフォーマンスが良くなった
しかし認知能力が多少とも 要求されるタスクになると より大きな報酬は より低い成績をもたらした」
それで彼らはこう考えました 「文化的なバイアスがあるのかもしれない
インドのマドゥライで試してみよう」
生活水準が低いので
北アメリカではたいしたことのない報酬が マドゥライでは大きな意味を持ちます
実験の条件は同じです たくさんのゲームと 3レベルの報酬
どうなったのでしょう?
中くらいの報酬を提示された人たちは 小さな報酬の人たちと成績が変わりませんでした
しかし今回は 最大の報酬を提示された人たちの成績が 最低になったのです
「3回の実験を通して 9つのタスクのうちの8つで より高いインセンティブがより低い成績という結果となった」
これはおなじみの 感覚的な 社会主義者の陰謀なのでしょうか?
いいえ 彼らはMITに カーネギーメロンに シカゴ大学の経済学者です
そしてこの研究に資金を出したのはどこでしょう?
合衆国連邦準備銀行です
これはまさにアメリカの経験なのです
海の向こう ロンドン スクール オブ エコノミクス に 行ってみましょう 11人のノーベル経済学賞受賞者を輩出しています
偉大な経済の頭脳がここで学んでいます ジョージ ソロス、フリードリヒ ハイエク、 ミック ジャガー 先月 ほんの先月のこと LSEの経済学者が 企業内における 成果主義を導入した工場 51の事例を調べました
彼らの結論は 「金銭的なインセンティブは... 全体的なパフォーマンスに対しマイナスの影響を持ちうる」ということでした
科学が見出したことと ビジネスで行われていることの間には 食い違いがあるのです
この潰れた経済の瓦礫の中に立って 私が心配するのは あまりに多くの組織が その決断や 人や才能に関するポリシーを 時代遅れで検証されていない前提に基づいて行っている 科学よりは神話に基づいて行っているということです
この経済の窮地から抜けだそうと思うなら 21世紀的な答えのないタスクで 高いパフォーマンスを出そうと思うのなら 間違ったことを これ以上続けるのはやめるべきです 人をより甘いアメで誘惑したり より鋭いムチで脅すのはやめることです
まったく新しいアプローチが必要なのです
いいニュースは 科学者たちが 新しいアプローチを示してくれているということです
内的な動機付けに基づくアプローチです
重要だからやる 好きだからやる 面白いからやる 何か重要なことの一部を担っているからやる
ビジネスのための新しい運営システムは 3つの要素を軸にして回ります 自主性 成長 目的
自主性は 自分の人生の方向は自分で決めたいという欲求です
成長は 何か大切なことについて上達したいということです
目的は 私たち自身よりも大きな何かのために やりたいという切望です
これらが私たちのビジネスの全く新しい 運営システムの要素なのです
今日は自主性についてだけお話ししましょう
20世紀にマネジメントという考えが生まれました
マネジメントというのは自然に生じたものではありません
マネジメントは木のようなものではなく テレビのようなものです
誰かが発明したのです
永久に機能しつづけはしないということです
マネジメントは素晴らしいです
服従を望むなら 伝統的なマネジメントの考え方は ふさわしいものです
しかし参加を望むなら 自主性のほうがうまく機能します
自主性について少し過激な考え方の 例を示しましょう
あまり多くはありませんが 非常に面白いことが起きています 人々に適切に 公正に 間違いなく 支払い お金の問題はそれ以上考えさせないことにします そして人々に大きな自主性を認めます
具体的な例でお話しします
Atlassianという会社をご存じの方はどれくらいいますか?
...半分もいない感じですね
Atlassianはオーストラリアのソフトウェア会社です
彼らはすごくクールなことをやっています
1年に何回か エンジニアたちに言うのです 「これから24時間何をやってもいい 普段の仕事の一部でさえなければ何でもいい
何でも好きなことをやれ」
エンジニアたちはこの時間を使って コードを継ぎ接ぎしたり エレガントなハックをしたりします
そしてその日の終わりには 雑然とした全員参加の会合があって チームメートや会社のみんなに 何を作ったのか見せるのです
オーストラリアですからみんなでビールを飲みます
彼らはこれを「FedExの日」と呼んでいます
なぜかって? それは何かを一晩で送り届けなければならないからです
素敵ですよね 商標権は侵害しているかもしれませんが ピッタリしています
この1日の集中的な自主活動で生まれた 多数のソフトウェアの修正は この活動なしには生まれなかったでしょう
これがうまくいったので次のレベルへと進み 「20パーセントの時間」を始めました Googleがやっていることで有名ですね エンジニアは仕事時間の20パーセントを 何でも好きなことに使うことができます
時間、タスク、チーム、使う技術 すべてに自主性が認められます
すごく大きな裁量です
そしてGoogleでは よく知られている通り 新製品の半分近くが この20パーセントの時間から生まれています Gmail、Orkut、Google Newsなどがそうです
さらに過激な例をご紹介しましょう 「完全結果志向の職場環境」と呼ばれるものがあります ROWE アメリカのコンサルタントたちにより考案され 実施している会社が北アメリカに10社ばかりあります
ROWEでは 人々にはスケジュールがありません
好きなときに出社できます
特定の時間に会社にいなきゃいけないということがありません 全然行かなくてもかまいません
ただ仕事を成し遂げれば良いのです
どのようにやろうと いつやろうと どこでやろうと かまわないのです
そのような環境では ミーティングはオプショナルです
どんな結果になるのでしょう? ほとんどの場合 生産性は上がり 雇用期間は長くなり 社員満足度は上がり 離職率は下がります
自主性 成長 目的は 物事をする新しいやり方の構成要素なのです
こういう話を聞いて 「結構だけど 夢物語だね」と言う人もいることでしょう
違います 証拠があるのです
1990年代半ば Microsoftは
Encartaという百科事典を作り始めました
適切なインセンティブを設定しました 何千というプロにお金を払って 記事を書いてもらいました
たっぷり報酬をもらっているマネージャが全体を監督し 予算と納期の中で出来上がるようにしました
何年か後に 別な百科事典が開始されました
別なモデルを採っていました
楽しみでやる 1セント、1ユーロ、1円たりとも支払われません
みんな好きだからやるのです
ほんの10年前に 経済学者のところへ行ってこう聞いたとします 「ねえ 百科事典を作る2つのモデルを考えたんだけど
対決したらどっちが勝つと思います?」
10年前 この地球上のまともな経済学者で Wikipediaのモデルが勝つという人は 1人もいなかったでしょう
これは 2つのアプローチの 大きな対決なのです
モチベーションにおけるアリ vs フレージャー戦です
伝説のマニラ決戦です
内的な動機付け vs 外的な動機付け
自主性 成長 目的 vs アメとムチ そしてどちらが勝つのでしょう?
内的な動機付け 自主性 成長 目的が
ノックアウト勝利します まとめましょう
科学が解明したことと ビジネスで行われていることの間には食い違いがあります
科学が解明したのは
1. 20世紀的な報酬― ビジネスで当然のものだとみんなが思っている動機付けは 機能はするが驚くほど狭い範囲の状況にしか合いません
2. If Then式の報酬は 時にクリエイティビティを損なってしまいます
3. 高いパフォーマンスの秘訣は 報酬と罰ではなく 見えない内的な意欲にあります
自分自身のためにやるという意欲
それが重要なことだからやるという意欲
大事なのは―
私たちがこのことを知っているということです 科学はそれを確認しただけです
科学知識とビジネスの慣行の間の このミスマッチを正せば 21世紀的な動機付けの考え方を 採用すれば 怠惰で危険でイデオロギー的な アメとムチを脱却すれば 私たちは会社を強くし 多くのロウソクの問題を解き そしておそらくは 世界を変えることができるのです
これにて立証を終わります | In the late 1980s, in a moment of youthful indiscretion, I went to law school.
In America, law is a professional degree: after your university degree, you go on to law school.
When I got to law school, I didn't do very well.
To put it mildly, I didn't do very well.
that made the top 90% possible.
Thank you.
I never practiced law a day in my life; I pretty much wasn't allowed to.
But today, against my better judgment, against the advice of my own wife, I want to try to dust off some of those legal skills -- what's left of those legal skills.
I don't want to tell you a story.
I want to make a case.
I want to make a hard-headed, evidence-based, dare I say lawyerly case, for rethinking how we run our businesses.
So, ladies and gentlemen of the jury, take a look at this.
This is called the candle problem.
Some of you might know it.
It's created in 1945 by a psychologist named Karl Duncker.
He created this experiment that is used in many other experiments in behavioral science.
And here's how it works. Suppose I'm the experimenter.
I bring you into a room.
I give you a candle, some thumbtacks and some matches. And I say to you, "Your job is to attach the candle to the wall so the wax doesn't drip onto the table." Now what would you do?
Many people begin trying to thumbtack the candle to the wall.
Doesn't work.
I saw somebody kind of make the motion over here -- some people have a great idea where they light the match, melt the side of the candle, try to adhere it to the wall.
It's an awesome idea. Doesn't work.
And eventually, after five or ten minutes, most people figure out the solution, which you can see here.
The key is to overcome what's called functional fixedness.
You look at that box and you see it only as a receptacle for the tacks.
But it can also have this other function, as a platform for the candle.
The candle problem.
I want to tell you about an experiment using the candle problem, done by a scientist named Sam Glucksberg, who is now at Princeton University, US, This shows the power of incentives.
He gathered his participants and said: "I'm going to time you, how quickly you can solve this problem."
To one group he said, "I'm going to time you to establish norms, averages for how long it typically takes someone to solve this sort of problem."
To the second group he offered rewards.
He said, "If you're in the top 25% of the fastest times, you get five dollars.
If you're the fastest of everyone we're testing here today, you get 20 dollars."
Now this is several years ago, adjusted for inflation, it's a decent sum of money for a few minutes of work.
It's a nice motivator.
Question: How much faster did this group solve the problem?
Answer: It took them, on average, three and a half minutes longer.
3.5 min longer. This makes no sense, right?
I mean, I'm an American. I believe in free markets.
That's not how it's supposed to work, right?
If you want people to perform better, you reward them. Right?
Bonuses, commissions, their own reality show.
Incentivize them. That's how business works.
But that's not happening here.
You've got an incentive designed to sharpen thinking and accelerate creativity, and it does just the opposite.
It dulls thinking and blocks creativity.
What's interesting about this experiment is that it's not an aberration.
This has been replicated over and over again for nearly 40 years.
These contingent motivators -- if you do this, then you get that -- work in some circumstances.
But for a lot of tasks, they actually either don't work or, often, they do harm.
This is one of the most robust findings in social science, and also one of the most ignored.
I spent the last couple of years looking at the science of human motivation, particularly the dynamics of extrinsic motivators and intrinsic motivators.
And I'm telling you, it's not even close.
If you look at the science, there is a mismatch between what science knows and what business does.
What's alarming here is that our business operating system -- think of the set of assumptions and protocols beneath our businesses, how we motivate people, how we apply our human resources-- it's built entirely around these extrinsic motivators, around carrots and sticks.
That's actually fine for many kinds of 20th century tasks.
But for 21st century tasks, that mechanistic, reward-and-punishment approach doesn't work, often doesn't work, and often does harm.
Let me show you.
Glucksberg did another similar experiment, he presented the problem in a slightly different way, like this up here.
Attach the candle to the wall so the wax doesn't drip onto the table.
Same deal. You: we're timing for norms.
You: we're incentivizing.
What happened this time?
This time, the incentivized group kicked the other group's butt.
Why? Because when the tacks are out of the box, it's pretty easy isn't it?
If-then rewards work really well for those sorts of tasks, where there is a simple set of rules and a clear destination to go to.
Rewards, by their very nature, narrow our focus, concentrate the mind; that's why they work in so many cases.
So, for tasks like this, a narrow focus, where you just see the goal right there, zoom straight ahead to it, they work really well.
But for the real candle problem, you don't want to be looking like this.
The solution is on the periphery. You want to be looking around.
That reward actually narrows our focus and restricts our possibility.
Let me tell you why this is so important.
In western Europe, in many parts of Asia, in North America, in Australia, white-collar workers are doing less of this kind of work, and more of this kind of work.
That routine, rule-based, left-brain work -- certain kinds of accounting, financial analysis, computer programming -- has become fairly easy to outsource, fairly easy to automate.
Software can do it faster.
Low-cost providers can do it cheaper.
So what really matters are the more right-brained creative, conceptual kinds of abilities.
Think about your own work.
Are the problems that you face, or even the problems we've been talking about here, do they have a clear set of rules, and a single solution?
No. The rules are mystifying.
The solution, if it exists at all, is surprising and not obvious.
Everybody in this room is dealing with their own version of the candle problem.
And for candle problems of any kind, in any field, those if-then rewards, the things around which we've built so many of our businesses, don't work!
It makes me crazy.
And here's the thing.
This is not a feeling.
Okay? I'm a lawyer; I don't believe in feelings.
This is not a philosophy.
I'm an American; I don't believe in philosophy.
This is a fact -- or, as we say in my hometown of Washington, D.C., a true fact.
Let me give you an example.
Let me marshal the evidence here.
I'm not telling a story, I'm making a case.
Ladies and gentlemen of the jury, some evidence: Dan Ariely, one of the great economists of our time, he and three colleagues did a study of some MIT students.
They gave these MIT students a bunch of games, games that involved creativity, and motor skills, and concentration.
And the offered them, for performance, three levels of rewards: small reward, medium reward, large reward.
If you do really well you get the large reward, on down.
What happened? As long as the task involved only mechanical skill bonuses worked as they would be expected: the higher the pay, the better the performance. Okay?
But once the task called for even rudimentary cognitive skill, a larger reward led to poorer performance.
Then they said, "Let's see if there's any cultural bias here.
Let's go to Madurai, India and test it."
Standard of living is lower.
In Madurai, a reward that is modest in North American standards, is more meaningful there.
Same deal. A bunch of games, three levels of rewards.
What happens?
People offered the medium level of rewards did no better than people offered the small rewards.
But this time, people offered the highest rewards, they did the worst of all.
In eight of the nine tasks we examined across three experiments, higher incentives led to worse performance.
Is this some kind of touchy-feely socialist conspiracy going on here?
No, these are economists from MIT, from Carnegie Mellon, from the University of Chicago.
Do you know who sponsored this research?
The Federal Reserve Bank of the United States.
That's the American experience.
Let's go across the pond to the London School of Economics, LSE, London School of Economics, alma mater of eleven Nobel Laureates in economics.
Training ground for great economic thinkers like George Soros, and Friedrich Hayek, and Mick Jagger. just last month, economists at LSE looked at 51 studies of pay-for-performance plans, inside of companies.
Here's what they said: "We find that financial incentives can result in a negative impact on overall performance."
There is a mismatch between what science knows and what business does.
And what worries me, as we stand here in the rubble of the economic collapse, is that too many organizations are making their decisions, their policies about talent and people, based on assumptions that are outdated, unexamined, and rooted more in folklore than in science.
And if we really want to get out of this economic mess, if we really want high performance on those definitional tasks of the 21st century, the solution is not to do more of the wrong things, to entice people with a sweeter carrot, or threaten them with a sharper stick.
We need a whole new approach.
The good news is that the scientists who've been studying motivation have given us this new approach.
It's built much more around intrinsic motivation.
Around the desire to do things because they matter, because we like it, they're interesting, or part of something important.
And to my mind, that new operating system for our businesses revolves around three elements: autonomy, mastery and purpose.
Autonomy: the urge to direct our own lives.
Mastery: the desire to get better and better at something that matters.
Purpose: the yearning to do what we do in the service of something larger than ourselves.
These are the building blocks of an entirely new operating system for our businesses.
I want to talk today only about autonomy.
In the 20th century, we came up with this idea of management.
Management did not emanate from nature.
Management is not a tree, it's a television set.
Somebody invented it.
It doesn't mean it's going to work forever.
Management is great.
Traditional notions of management are great if you want compliance.
But if you want engagement, self-direction works better.
Some examples of some kind of radical notions of self-direction.
You don't see a lot of it, but you see the first stirrings of something really interesting going on, what it means is paying people adequately and fairly, absolutely -- getting the issue of money off the table, and then giving people lots of autonomy.
Some examples.
How many of you have heard of the company Atlassian?
It looks like less than half.
Atlassian is an Australian software company.
And they do something incredibly cool.
A few times a year they tell their engineers, "Go for the next 24 hours and work on anything you want, as long as it's not part of your regular job.
Work on anything you want."
Engineers use this time to come up with a cool patch for code, come up with an elegant hack.
Then they present all of the stuff that they've developed to their teammates, to the rest of the company, in this wild and woolly all-hands meeting at the end of the day.
Being Australians, everybody has a beer.
They call them FedEx Days.
Why? Because you have to deliver something overnight. It's pretty; not bad.
It's a huge trademark violation, but it's pretty clever.
That one day of intense autonomy has produced a whole array of software fixes that might never have existed.
It's worked so well that Atlassian has taken it to the next level with 20% time -- done, famously, at Google -- where engineers can spend 20% of their time working on anything they want.
They have autonomy over their time, their task, their team, their technique.
Radical amounts of autonomy.
And at Google, as many of you know, about half of the new products in a typical year are birthed during that 20% time: things like Gmail, Orkut, Google News.
Let me give you an even more radical example of it: something called the Results Only Work Environment , created by two American consultants, in place at a dozen companies around North America.
In a ROWE people don't have schedules.
They show up when they want.
They don't have to be in the office at a certain time, or any time.
They just have to get their work done.
How they do it, when they do it, where they do it, is totally up to them.
Meetings in these kinds of environments are optional.
What happens? Almost across the board, productivity goes up, worker engagement goes up, worker satisfaction goes up, turnover goes down.
Autonomy, mastery and purpose, the building blocks of a new way of doing things.
Some of you might look at this and say, "Hmm, that sounds nice, but it's Utopian."
And I say, "Nope.
I have proof."
The mid-1990s, Microsoft started an encyclopedia called Encarta.
They had deployed all the right incentives, They paid professionals to write and edit thousands of articles.
Well-compensated managers oversaw the whole thing to make sure it came in on budget and on time.
A few years later, another encyclopedia got started.
Different model, right?
Do it for fun. No one gets paid a cent, or a euro or a yen.
Do it because you like to do it.
Just 10 years ago, if you had gone to an economist, anywhere, "Hey, I've got these two different models for creating an encyclopedia.
If they went head to head, who would win?"
10 years ago you could not have found a single sober economist anywhere on planet Earth who would have predicted the Wikipedia model.
This is the titanic battle between these two approaches.
This is the Ali-Frazier of motivation, right?
This is the Thrilla in Manila.
Intrinsic motivators versus extrinsic motivators.
Autonomy, mastery and purpose, versus carrot and sticks, and who wins?
Intrinsic motivation, autonomy, mastery and purpose, in a knockout.
Let me wrap up.
There is a mismatch between what science knows and what business does.
Here is what science knows.
One: Those 20th century rewards, those motivators we think are a natural part of business, do work, but only in a surprisingly narrow band of circumstances.
Two: Those if-then rewards often destroy creativity.
Three: The secret to high performance isn't rewards and punishments, but that unseen intrinsic drive-- the drive to do things for their own sake.
The drive to do things cause they matter.
And here's the best part.
We already know this.
The science confirms what we know in our hearts.
So, if we repair this mismatch between science and business, if we bring our motivation, notions of motivation into the 21st century, if we get past this lazy, dangerous, ideology of carrots and sticks, we can strengthen our businesses, we can solve a lot of those candle problems, and maybe, maybe -- we can change the world.
I rest my case. | {
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この考えは正しいのだろうか。宗教的対立の歴史についての簡単な調査では、宗教上の論争が宗教学の議論により解決されたことが、一度もないことが明らかにされている。より良く考えてみれば、宗教用語により表現されるこれらの論争が、まったく宗教と無関係であることがわかる。宗教的な文句の、対立的な解釈の幅広さはほぼ無限であり、合理的な議論により論争が解決されることはほとんどない。 | A quick survey of the history of religious conflict shows that theological controversies have never been resolved by theological arguments. Looking more closely, one finds that while these controversies were often framed in religious terms, they were not at all about religion. | {
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「新鮮なお肉......!?丸ごと!?」
「うん。高速で運ぶならそのままで大丈夫――持って帰って、ラファ兄様に食べさせてあげようよ?」
「いいわね! きっとラファ兄様も喜ぶわ!」
「じゃあ、すぐ持って来るね――!」
そして――
「さあ行こう、ラニ――!」
「うん......! 待っててね、ラファ兄様――! 必ず助けて、おみやげに竜さんの美味しいお肉も食べさせてあげるからね――!」
イングリスの方は生の神竜の尾を丸々一本肩に担ぎ、ラフィニアの方は干し肉に加工した神竜の肉の大きな塊を両手に抱えて――
ついでにレダスも、荷物持ちとして同じ干し肉を持たされていた。
「......表情と恰好が合っていませんわねえ――」
「ま、まあ、いつもの事よ......あれだけラファエル様へのお土産を用意して行くって事は、絶対お助けするっていう決意の表れでもあるし――ね」
「その方があいつららしくていいんじゃねえかな――あんまり悲壮感漂わせてるのも、な......?」
「きっと大丈夫ですよ......! むしろ私達の方こそ、自分達が帰らなかったらってイングリスちゃん達を後悔させないように、しっかりしないとです......!」
そんな風に皆が見送る中――血鉄鎖旅団の飛空戦艦の底部の格納庫が開き、中から人が顔を覗かせる。
「凄い積荷だな......!? 今船を降ろすから、少し待っていてくれ――!」
「いえ不要です、急ぎますので――! 少しそこから後ろに下がって頂けますか――!?」
「......? どうするつもりだ――ああぁぁぁっ!?」
血鉄鎖旅団の兵士が応じた時、イングリスは既に神竜の尾を抱えたまま猛然と助走に入っていた。
「じゃあみんな――また騎士アカデミーで会おうね! はああぁぁぁぁっ!」
勢いよく地を蹴ると、まるで竜の尾の重量など存在しないかのように、軽やかにその姿が空に舞い上がり――そのまま船の格納庫へと吸い込まれて行く。
イングリスと巨大な神竜の尾が飛び込んできた衝撃で、一瞬船体が大きく傾ぐ。
「おおおおおおおおぉぉぉぉっ!?」
「と、飛んだ......!? こんなでっかいモノを抱えて......!?」
「に、人間業じゃない......! 流石は首領がわざわざ呼ぼうとするだけは――っ!?」
狼狽える血鉄鎖旅団の兵達に、イングリスはぺこりと一礼する。
「カーラリアまで送って頂けるそうで――よろしくお願いします」
「こ、こうして見ると――」
「す、凄い可愛いな......システィア様以上かも......?」
「おいおいお前ら、それシスティアの前で言うんじゃねえぞ? あいつはイングリスちゃんの事嫌ってるからなあ」
兵達の間から、レオンが姿を見せた。
「......わたしはあの方の事は嫌いではないんですが――?」
「――あいつは喧嘩っ早いからだろ?」
「はい。好戦的な方は大好きです」
「ははは――どんな時でも君は変わらないなぁ。今はそれが頼もしいよ」
イングリスに続いて、格納庫に入って来たのだ。
「レオンさん......! それよりも、レオーネと話しておかなくていいんですか......? 今ならまだ――!」
「いや、今は一刻を争うんだ。君達を早く送らなきゃならん――それに、俺にはあいつに合わせる顔なんてないからなあ......何をどう取り繕った所で、俺のせいであいつがとんでもなく苦労した事は事実だろ? むしろ知っちまった事で、俺を倒して家の汚名を返上しようって目的でようやく立ってるあいつを、無駄に迷わせちまったかも知れん。不出来な兄で申し訳ないぜ――」
レオンはばつが悪そうに後ろ頭を掻きつつ、イングリス達に背を向ける。
「大丈夫。どんな事情があっても自分がやる事は変わらない、レオンお兄様を倒す――って言ってましたから」
「......ラニ?」
話を聞いたレオーネは、そういう事は言ってはいなかったが――
「そうか――いやでも、それでいいんだ。あいつには、それが――」
「......嘘ですよ」
「えぇ......!?」
「ラファ兄様を助けることが出来たら、レオンさんの気持ちも軽くなるだろうから――早く行ってあげてって言ってました」
「......! そうか、あいつがそんな――」
「......どっちの方が良かったですか?」
ラフィニアが悪戯っぽくレオンに微笑む。
「――やれやれ、意地が悪い事を聞かないでくれよ」
レオンは降参した、と言うように両手を上げる。
「ラファ兄様の事はあたし達に任せて下さい。だから、今じゃなくてもいいですけど、ちゃんとしっかりレオーネに謝って、仲直りする事――! いいですね......!?」
「ラフィニアちゃん――」
「まあ、あたしじゃなくてほぼ全部クリスがやるんですけどね――!」
「いいんだよ、ラニ。わたしの力はラニが自由に使っていいから、それはラニの力だって言っても過言じゃないと思うよ?」
「ははは......ホント仲いいなあ、君達は――ああ、いつかラフィニアちゃんの言う通りになればいいなって思っておくよ――」
「よし――じゃあ早速行きましょ! 全速力でっ!」
「もうラニ――わたし達は送って貰う立場なのに」
「いや、いいさ――何か言う事を聞いてあげたくなる不思議な魅力があるよ、ラフィニアちゃんはさ――さあ行くぞ! 出発だ!」
レオンが周囲の兵士達に向け、高らかに宣言した。
「「「はっ!」」」
その指示に応えて、それぞれに散って行く血鉄鎖旅団の兵士達。
「さ、君達に使って貰える船室に案内するよ。と、その前に――ほらっ」
レオンはイングリス達に、折り畳まれた黒い厚手の服を手渡して来る。
「これは――?」
イングリスはレオンに尋ねる。
「ここにいる皆が着てるのと同じだよ。それは女性兵士用だな。ここじゃそのままだと目立ってジロジロ見られるだろうからさ。気が向いたら着替えとくといいぜ? まあいらなきゃ捨ててくれ」
「......ねえクリス、どうする? これちょっと気になるけど......」
今回は力を借りるのだが、血鉄鎖旅団は反
一時的とはいえ、その服に身を包んでしまっていいものかと、ラフィニアは悩んだようである。
「別に着てもいいと思うよ? 服に罪はないし――」
単純に、新しい服というのは心が躍る。 | 「Fresh meat?! The whole tail?!」
「Yup. With greater speed, we could carry it as is! We can take it with us and have big brother Rafa feast on it, okay?」
「Sounds great! I’m sure he will be happy!」
「Okay then, I’ll bring it over!」
And then...
「Let’s go, Rani!」
「Yeah! Wait for us, big brother Rafa! We’ll save you and give you mister dragon’s exquisite meat, that’s for sure!」
Inglis and Rafinha nodded at each other with serious expressions. Inglis was carrying a whole dragon’s tail on her shoulder, while Rafinha was holding a huge chunk of dragon jerky in both hands...
Incidentally, Redas was also carrying jerky as their porter.
「......Their faces are beautiful and yet the sight is a bit...」
「W-, well, that is how they always are...... The fact that they’re bringing so many souvenirs for Sir Raphael shows how determined they are to help.」
「Rather, this means they’re back on their usual track... That’s much better than feeling grim, ain’t that right?」
「I’m sure they will be okay! If anything, we should be the ones making sure Inglis and Rafinha don’t regret going back to Charalia!」
Whilst the rest of the group watched over them, the hangar at the bottom of the flying battleship opened and a person peeked out.
「That’s some luggage! We’ll bring the ship down, just wait a sec!」
「No need, we’re in a hurry! Would you mind backing away a little?!」
「......? What’d you wanna—AAAAH?!!」
When the Ironblood Chain Brigade soldier asked her, Inglis was already furiously running at them with the Dragon God’s tail in her grip. As she did, she looked back to Leone and the others.
「Well then, everyone! I’ll see you at the Academy! HYAAAaahh!!」
With an earth-shattering kick to the ground, her figure soared weightlessly into the sky as though the dragon tail weighed nothing, and she was promptly sucked into the ship’s hangar.
The impact of Inglis and the huge Dragon God’s tail diving into the ship caused the hull to lean heavily for a moment.
「OOOOooooohhhhh?!!!」
「Sh-, she flew?! While carrying such a huge thing?!」
「I-, inhuman! No wonder the general bothered to summon her!」
In the midst of the dismayed Ironblood Chain Brigade soldiers, Inglis politely bowed.
「I’m told you can give us a ride to Charalia! I look forward to our trip.」
「L-. looking closely...」
「Sh-, she’s hella cute... even cuter than Lady Cystia, maybe?」
「C’mon guys, don’t say that in front of Cystia, kay? She loathes little Inglis, after all.」
From amongst the soldiers, Leon appeared.
「......I bear no hatred for her though?」
「Coz she’s quick to lose temper, right?」
「Yes. I love people who love fighting.」
「Hahaha! You never change, even during such times. Though, that’s why you’re dependable right now.」
It was then, Rafinha came in through the hangar onboard the Star Princess unit.
「Mister Leon! Rather than this, have you spoken to Leone at all? We still have time!」
「No, time is of the essence right now. We gotta send you ASAP! Besides, I have no right to face her... No matter how you spin it, fact is she went through hell ‘cause of ol’ me. In fact, she might be lost with how to restore our family’s name now that she knows the truth. Dang, I’m a pathetic big bro...」
Leon awkwardly scratched the back of his head, turning away from Inglis and Rafinha.
「It’s okay. No matter what the circumstance is, I will still defeat my brother! That’s what she said.」
「......Rani?」
After learning the truth, Leone didn’t say such a thing, but... When Inglis looked at Rafinha puzzled, Rafinha made a shushing gesture at her.
「I see... No, that’s good. That’s the best for her!」
「......I lied.」
「Eeh?!」
「She told me that if we could save big bro Rafa, she could be more forgiving to you, Mister Leon, so she urged us to go.」
「......! I see... that’s what she...」
「......Which one do you prefer?」
Rafinha smiled mischievously at Leon.
「Good gods, don’t ask me such a mean question.」
Leon raised both hands, seemingly giving up.
「You can leave big bro Rafa to us. That’s why, I’m not forcing you to do it now, but you should apologize to Leone and make up with her! Understood?!」
「Rafinha...」
「Well, I won’t be doing anything since it’s mostly Glis, though!」
「It’s all right, Rani. My power is all yours to use, so think of me as your own power, okay?」
「Hahaha...... You two really are chummy! Man, I hope what you said is true, Rafinha!」
「Good! Now, let’s hurry it up! Full speed ahead!」
「Come on, Rani! We are the guests here.」
「No, it’s fine! Rafinha has this strange charm that makes you want to listen to her! Come on, let’s go! We’re off!」
In high spirits, Leon ordered the soldiers.
「「「Roger!」」」
In response, the soldiers scattered to their respective stations.
「Now, I’ll show you your cabin. But first... here.」
Leon handed Inglis and Rafinha a folded thick black garment.
「What is this?」
Inglis asked.
「The uniform everyone is wearing. This is for female soldiers. With your clothes like that, everyone’s gonna gawk at you. Feel free to change if you want, or throw it away if you don’t.」
「......What do we do, Glis? I’m conflicted......」
They were lending each other help for now, but the Ironblood Chain Brigade was an anti-Highland guerilla organization. From the standpoint of Charalia Knights, they were a conflicting group that must be defeated.
Even if only temporarily, Rafinha wasn’t sure if they should be dressed in their uniform. The uniform itself was chic, so she wanted to try it on. Which was why she was concerned.
「Why not? The clothes did nothing wrong!」
Inglis liked the uniform just as much. Simply put, new clothes were always exciting. She could look at herself in the mirror and appreciate herself with a fresh experience. Which she would do the moment she had the chance. | {
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13歳のとき 家族で親しくしてた 叔父さんのような人が すい臓がんで 亡くなりました
本当に身近な人が この疾患に襲われ もっと知らなければと 感じたので
ネットに繋いで 答えを探しました
インターネットを使って すい臓がんの 色んな統計を見つけました その統計は 衝撃的なものでした
すい臓がんの85%が 手遅れな段階でしか 発見されず 患者はたった2%以下の生存率しか ないというのです
なぜ すい臓がんを見つけるのが こんなにヘタなのか?
理由?現在の現代医学が 使っている技術は
60年前のものを 使い続けているからです うちの父さんよりも年上です
それだけでなくて かなり高価です 判定毎に800ドルかかって その上 検査は なはだしく不正確で すい臓がんの30%以上を 見落としてしまいます
担当医が 検査の指示を出すには バカバカしくなる程 患者を がんと 疑う必要があります
これを知って もっと良い方法が あるはずだという確信がありました
そして すい臓がんを 効果的に検出するために センサーが 満たすべきと考える 科学的な基準を 決めました
センサーは 安く 速く 簡単で 高感度で 判定度が高く 低侵襲でなければ なりません
実は がん検査が 60年間も新しくならなかったのには 理由がありました
それは すい臓がんを 検出しようとするときには 体内を流れる血液を調べて 既に山のようにある 豊富なタンパク質の中から ごく少量に存在する ある特定のタンパク質に発生する
微妙な量の違いを探します
ほとんど不可能なことです
でも ティーンの楽観的な想いは そんなことに屈しません ティーンの「親友」の Google とWikipedia を開けて
調べ始めました 宿題をするときは この2つを使えば何でも分かります
こんな記事を見つけました すい臓がんになると検出される 8,000種のタンパク質を 納めたデータベースがある という記事でした
そして 新しいミッションができました タンパク質データを全て調べて この中のどれかが すい臓がんを見つける バイオマーカーとなるか 調べることにしました
自分自身にとって よりシンプルにする為に 科学的な基準を作ることにしました こんな基準です
何よりも第一に そのタンパク質の血中レベルが ごく初期の段階から 全てのすい臓がんの患者で高くなり がんである場合のみ 変化が見られるものでなければいけません
僕は超膨大な作業を どんどん淡々と進めて行き 4,000種を確認したところで 正気を失う寸前でしたが ついに タンパク質を 見つけました
やっと突き止めた このタンパク質は メソテリンと呼ばれています どこにでもある ありふれた タンパク質です すい臓 卵巣 肺のがん でない場合はです がんになっている場合は 大幅に増加して発現します
これが重要な鍵となるのは 疾患のごく初期に見つかることで 患者に100%に近い 生存率がある そんな時期です
検出に使える信頼性の高い タンパク質を見つけたので 次は どうタンパク質を検出し つまりはすい臓がんを 見つけるのかということに 焦点を移しました
画期的な突破口は 予期しない所でやってきます 恐らく最も不釣り合いな所です 高校の生物の授業中 イノベーションが 最高に抑制されている所
カーボンナノチューブの この記事を こっそり持ち込んでました 炭素で出来た長くて細い管です 原子1個分の厚さです みなさんの髪の毛の直径の 50,000分の1です
極めて小さいものですが 非常に素晴らしい 特性があります
材料科学のスーパーヒーロー みたいなものです
生物の授業中に 僕がこっそりとこの記事を 机の下で読んでいた一方で きちんと聞くべき授業で 扱っていたのは 抗体という 別の 素晴らしい分子についてでした 抗体がすごいのは たった一つの タンパク質にだけ 反応することです でもナノチューブほどには 興味を引かれませんでした
まぁだから ただ授業を 受けていたのですが 突然 ひらめきました この読んでいた カーボンナノチューブと 授業で考えているべき抗体を
組み合わせられるかもしれないと 気付きました 本質的には 大量の抗体を ナノチューブの網構造に 編み込んで 特定のタンパク質にだけ 網構造が反応するようにした上で ナノチューブの特性を利用して 存在するタンパク質の量に応じて 電気特性が変化するように できそうだと 気が付きました
ただし 問題がありました
ナノチューブの網構造は 極端にもろいのです
網構造はとても壊れやすいので 維持する支えが必要でした
この為 紙を使うことにしました
紙から がんの検査紙を作るのは チョコクッキーを作るくらい 簡単にできます
大好物ですが まず用意した水に ナノチューブを加え 抗体も加えて かき混ぜます そこに紙を持ってきて 浸し 乾かしたら これだけで がんが検査できます
そこで 急に気が付きました 僕の素晴らしい研究計画に ちょっとした影を落とすようなものです
がんの研究をするには 家のキッチンでは できないということです
母にも不便かもしれません
そこで その代わりに 研究所で研究しようと決めました
そして 材料一覧 予算 研究予定表 研究手順を 書き上げました そして それを ジョンス・ホプキンス大学と 国立衛生研究所の 200人の教授にメールしました 基本的に すい臓がん関係の 研究者全員です
こんな了解のメールが 送られてくるのを待ってました 「きみは天才だ!
これでみんなが救われる!」 そして― でも 現実は甘くなくて 1ヵ月ほどの間に 送った200件のメールに 199件の却下メールが届きました
ある教授は 研究手順の全てを 細かく確認して ― 一体どこにそんな時間が あったのかと思いますが ― 手順の1つ1つ全て こんな酷いものは無いという風に 指摘してきたのです 僕の研究構想を 自分で思っていたほどには
教授たちが高く評価していないのは 明らかでした
でも 希望の兆しがありました ある教授から
「私のところで キミのこと 手助けできるかもしれないよ」
とのメールが届いたので そっちへ向かいました
子供に だめと言うな! というのに従うようでした
それから 3ヵ月後 この人が絶対会える日を やっと取りつけて 彼の研究室へ行きました 僕は もの凄くウキウキして イスに座り 口火を切って 話し始めると 5秒もしないうちに 別の博士を呼びます
こんな狭い研究室に 博士が何人も集まってきて 僕を質問攻めにしました 最後には すし詰めの満員電車 かのようでした
20人の博士と 僕と教授が この小さな研究室に 詰め込まれ みんなで質問を 次から次へと投げかけて 研究手順に 穴を開けようとします
こんなことってありますか? どうとでもなれです
しかし この尋問に さらされながらも 全ての質問に答えました かなりの数に勘で答えましたが 正答でした そうこうして ついに 研究場所を手に入れました
でも その後すぐに 気づくことになりました 一時は輝かしい手順と 思えた手順には おびただしい数の間違いが ありました 7ヵ月以上の時間をかけて 1つ1つ丁寧に 全ての間違いを直していきました
どうなったかって? 1つの小さな検査紙で
費用は3セントで 5分でテストできるようになりました
この方法なら 168倍速く 26,000分の1以下の費用で 400倍の感度で検査できます 現在の標準的な 検査方法と比べた場合です
でも 最高なのは この検査紙が 100%に近い正確さで 検出できることと 患者が100%に近い 生存率がある ごく初期のがんを 検出することができるところです
ということは 今後2から5年以内には この検査紙が すい臓がんの生存率を 悲惨な5.5%から 100%近くに 引き上げる可能性があり 卵巣や肺のがんでも 同じように生存率を上げるでしょう
でも これで 終わりではありません
抗体の種類を変えることで 違うタンパク質を検出する様にすれば 違う疾患を検出できます 潜在的に 世界中のどんな疾患でも 検出出来るでしょう
心臓疾患に始まり マラリヤ HIV AIDSまで また 他の種類のがんだったり 何にでも使えます
いつの日か こうなればと願います 以前は助からなかった 1人の叔父さんが助かり 母親が助かり 兄弟が姉妹が助かり 愛すべき家族の一員が 助かるよう願います
すい臓 卵巣 肺のがん の疾患のことを考えて悩まされ 心配することがなくなるように そしてどんな疾患にも 苦しまなくても良くなるように と願います
インターネットを使えば 何だって可能です
理論を人に伝え 共有しても良くて 価値あるアイデアと 評価されるのに 複数の学位を持った 教授である必要はありません 中立的な場所で
見た目や年齢や ジェンダーが何であれ 影響はなく
アイデアだけが重視されます
僕の場合には インターネットに対して 全く新しい見方を したのが全てでした ネットはもっと別の 使い方ができて 皆さんのふざけた顔の写真を アップロードする以上に 使い方によっては 世界を変えていけるかもしれないと 気付きました
もし すい臓が何かさえも 知らなかった15才の子が 新しいすい臓がんの 検査法を発見できたとしたら 皆さんなら何ができるか 想像してください
ありがとうございました | When I was 13, a close family friend who was like an uncle to me passed away from pancreatic cancer.
When the disease hit so close to home, I knew I needed to learn more.
So I went online to find answers.
Using the Internet, I found a variety of statistics on pancreatic cancer, and what I had found shocked me.
Over 85 percent of all pancreatic cancers are diagnosed late, when someone has less than a two percent chance of survival.
Why are we so bad at detecting pancreatic cancer?
The reason? Today's current "modern" medicine is a 60-year-old technique.
That's older than my dad.
But also, it's extremely expensive, costing 800 dollars per test, and it's grossly inaccurate, missing 30 percent of all pancreatic cancers.
Your doctor would have to be ridiculously suspicious that you have the cancer in order to give you this test.
Learning this, I knew there had to be a better way.
So, I set up scientific criteria as to what a sensor would have to look like in order to effectively diagnose pancreatic cancer.
The sensor would have to be: inexpensive, rapid, simple, sensitive, selective, and minimally invasive.
Now, there's a reason why this test hasn't been updated in over six decades.
And that's because when we're looking for pancreatic cancer, we're looking at your bloodstream, which is already abundant in all these tons and tons of protein, and you're looking for this miniscule difference in this tiny amount of protein.
Just this one protein.
That's next to impossible.
However, undeterred due to my teenage optimism -- I went online to a teenager's two best friends, Google and Wikipedia.
I got everything for my homework from those two sources.
And what I had found was an article that listed a database of over 8,000 different proteins that are found when you have pancreatic cancer.
So, I decided to go and make it my new mission to go through all these proteins, and see which ones could serve as a bio-marker for pancreatic cancer.
And to make it a bit simpler for myself, I decided to map out scientific criteria, and here it is.
Essentially, first, the protein would have to be found in all pancreatic cancers, at high levels in the bloodstream, in the earliest stages, but also only in cancer.
And so I'm just plugging and chugging through this gargantuan task, and finally, on the 4,000th try, when I'm close to losing my sanity, I find the protein.
And the name of the protein I'd located was called mesothelin, and it's just your ordinary, run-of-the-mill type protein, unless, of course, you have pancreatic, ovarian or lung cancer, in which case it's found at these very high levels in your bloodstream.
But also, the key is that it's found in the earliest stages of the disease, when someone has close to 100 percent chance of survival.
So now that I'd found a reliable protein I could detect, I then shifted my focus to actually detecting that protein, and thus, pancreatic cancer.
Now, my breakthrough came in a very unlikely place, possibly the most unlikely place for innovation -- my high school biology class, the absolute stifler of innovation.
And I had snuck in this article on these things called carbon nanotubes, and that's just a long, thin pipe of carbon that's an atom thick, and one 50,000th the diameter of your hair.
And despite their extremely small sizes, they have these incredible properties.
They're kind of like the superheroes of material science.
And while I was sneakily reading this article under my desk in my biology class, we were supposed to be paying attention to these other kind of cool molecules, called antibodies. And these are pretty cool because they only react with one specific protein, but they're not nearly as interesting as carbon nanotubes.
And so then, I was sitting in class, and suddenly it hit me: I could combine what I was reading about, carbon nanotubes, with what I was supposed to be thinking about, antibodies.
Essentially, I could weave a bunch of these antibodies into a network of carbon nanotubes, such that you have a network that only reacts with one protein, but also, due to the properties of these nanotubes, it will change its electrical properties, based on the amount of protein present.
However, there's a catch.
These networks of carbon nanotubes are extremely flimsy.
And since they're so delicate, they need to be supported.
So that's why I chose to use paper.
Making a cancer sensor out of paper is about as simple as making chocolate chip cookies, which I love.
You start with some water, pour in some nanotubes, add antibodies, mix it up, take some paper, dip it, dry it, and you can detect cancer.
Then, suddenly, a thought occurred that kind of put a blemish on my amazing plan here.
I can't really do cancer research on my kitchen countertop.
My mom wouldn't really like that.
So instead, I decided to go for a lab.
So I typed up a budget, a materials list, a timeline, and a procedure, and I emailed it to 200 different professors at Johns Hopkins University and the National Institutes of Health -- essentially, anyone that had anything to do with pancreatic cancer.
I sat back waiting for these positive emails to be pouring in, saying, "You're a genius! You're going to save us all!"
And -- Then reality took hold, and over the course of a month, I got 199 rejections out of those 200 emails.
One professor even went through my entire procedure, painstakingly -- I'm not really sure where he got all this time -- and he went through and said why each and every step was like the worst mistake I could ever make.
Clearly, the professors did not have as high of an opinion of my work as I did.
However, there is a silver lining.
One professor said, "Maybe I might be able to help you, kid."
So, I went in that direction.
As you can never say no to a kid.
And so then, three months later, I finally nailed down a harsh deadline with this guy, and I get into his lab, I get all excited, and then I sit down, I start opening my mouth and talking, and five seconds later, he calls in another Ph.D.
Ph.D.s just flock into this little room, and they're just firing these questions at me, and by the end, I kind of felt like I was in a clown car.
There were 20 Ph.D.s, plus me and the professor crammed into this tiny office space, with them firing these rapid-fire questions at me, trying to sink my procedure.
How unlikely is that? I mean, pshhh.
However, subjecting myself to that interrogation -- I answered all their questions, and I guessed on quite a few but I got them right -- and I finally landed the lab space I needed.
But it was shortly afterwards that I discovered my once brilliant procedure had something like a million holes in it, and over the course of seven months, I painstakingly filled each and every one of those holes.
The result?
One small paper sensor that costs three cents and takes five minutes to run.
This makes it 168 times faster, over 26,000 times less expensive, and over 400 times more sensitive than our current standard for pancreatic cancer detection.
One of the best parts of the sensor, though, is that it has close to 100 percent accuracy, and can detect the cancer in the earliest stages, when someone has close to 100 percent chance of survival.
And so in the next two to five years, this sensor could potentially lift the pancreatic cancer survival rates from a dismal 5.5 percent to close to 100 percent, and it would do similar for ovarian and lung cancer.
But it wouldn't stop there.
By switching out that antibody, you can look at a different protein, thus, a different disease -- potentially any disease in the entire world.
So that ranges from heart disease, to malaria, HIV, AIDS, as well as other forms of cancer -- anything.
And so, hopefully one day, we can all have that one extra uncle, that one mother, that one brother, sister, we can have that one more family member to love.
And that our hearts will be rid of that one disease burden that comes from pancreatic, ovarian and lung cancer, and potentially any disease.
But through the Internet, anything is possible.
Theories can be shared, and you don't have to be a professor with multiple degrees to have your ideas valued.
It's a neutral space, where what you look like, age or gender -- it doesn't matter.
It's just your ideas that count.
For me, it's all about looking at the Internet in an entirely new way, to realize that there's so much more to it than just posting duck-face pictures of yourself online. You could be changing the world.
So if a 15 year-old who didn't even know what a pancreas was could find a new way to detect pancreatic cancer -- just imagine what you could do.
Thank you. | {
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鏡の国のアリス
第 1 章 鏡のおうち
一つ確実なのは、白い子ネコはなんの関係もなかったということ:
――もうなにもかも、黒い子ネコのせいだったのです。
というのも、白い子ネコは年寄りネコに、もう四半時も顔を洗ってもらっていたからです
(そしてその状況を考えれば、なかなかがんばって耐えていたと言えましょう)。
というわけで、白い子ネコはどう考えてもいたずらにはまったく荷担していなかったのはわかるでしょう。
ダイナはこんなふうにして子どもたちの顔を洗ったのでした:
まずかわいそうな子を耳のところで前足片方を使っておさえこみ、そして残った前足で、子どもの顔中をこすります。
それも鼻からはじめて変な方向に。
そしてちょうどいま、ぼくがこうして話している間にも、ダイナはいっしょうけんめい白い子ネコを片づけています。
白い子ネコはほとんど身動きせずに、のどをならそうとしていました
――これもみんな自分のためを思ってのことなんだ、というのを感じていたのはまちがいありません。
でも黒い子ネコは、午後の早い時期に顔を洗ってもらったので、アリスが半分ぶつぶつ、半分眠りながら、大きなソファのすみに丸まっている間に、アリスが巻いておこうとした毛糸の玉とせいだいにじゃれて、あちこちころがしてまわり、やがて毛糸玉はぜんぶほどけてしまいました。
おかげで毛糸玉はこの通り、暖炉前のじゅうたんいちめんに広がって、そこらじゅうに結び目ができたりからまったりして、そのまん中で子ネコが自分のしっぽを追いかけているのでした。
「まあこのいたずらっ子め!」
とアリスはさけんで子ネコを抱え上げ、ちょっとキスをして、しかられているんだとわからせてあげました。
「まったく、ダイナがもっとちゃんとしつけてくれないと!
そうでしょ、ダイナ、わかってるわよね!」
とアリスはつけくわえながら、非難がましい目つきで年寄りネコのほうをながめて、できるだけきびしい声を出そうとします
――それから子ネコと毛糸を持ってソファにかけもどり、また毛糸を巻きはじめました。
でも、あまり手早くはありません。
というのもときには子ネコに向かって、ときには自分に向かって、ずっとしゃべりどおしだったからです。
子ネコちゃんはとてもとりすましてアリスのひざにすわり、毛糸を巻くすすみ具合を見ているふりをしつつ、ときどき前足を片方出して毛糸玉に軽くさわり、できるものなら喜んでお手伝いするところですが、とでも言うようです。
「明日がなんの日か知ってる、子ネコちゃん?
あたしといっしょに窓のところにいたら、見当ついたと思うけど
――でもダイナにきれいにしてもらってたから、窓は見られなかったのよね。
男の子たちがたき火用に棒を集めるのを見てたのよ
――それで棒がいっぱい集まってね!
ただ、すごく寒くなってきて、しかもいっぱい雪もふって、それでみんな途中でやめちゃったの。
でも別にいいわ、子ネコちゃん。
たき火は明日いっしょに見に行きましょう」
ここでアリスは、毛糸を二、三回子ネコの首に巻きつけました。
どんな風に見えるか試してみたかっただけなのですが、
これは大騒動になって、おかげで毛糸玉は床に転がり落ちて、何ヤード分もの毛糸がまたほどけてしまいました。
「わかってるの、子ネコちゃん」
とアリスは、両者がもういちど気持ちよくソファにおさまると同時に口を開きます。
「おまえのやってたいたずらを見て、あたしはもうホントに腹がたって、もうちょっとで窓をあけて、おまえを雪のなかに放り出すところだったのよ!
そしてそれは自業自得(じごうじとく)ってもんよ、このいたずらっ子のおちびちゃんめ!
なにかいいわけはあるの?
さ、だまってるのよ!」
とアリスは人差し指をたてて見せます。
「おまえのやったいけないことを全部教えてあげますからね。
その一:
今朝、ダイナがおまえの顔を洗ってるときに、二回鳴いたわね。
ごまかしてもだめよ、子ネコちゃん。
ちゃんと聞いてたんですからね!
え?なんですって?」
(と子ネコが口をきいたふりをします)
「ダイナの前足が目に入ったんだもん、ですって?
ふん、それはおまえのせいですよ、目を開けてるほうが悪い!
しっかり閉じていれば、そんなことにはならなかったはずでしょ。
さ、いいわけはおよし。
聴いてなさい!
その二:
あたしがスノードロップの前にミルクのお皿をおいたとたんに、スノードロップのしっぽをひっぱってどかせたわね?
なに、のどがかわいてた、ですって?
あの子だってのどがかわいてたかもしれないでしょうに。
そしてその三:
ちょっとよそ見をしてるうちに、毛糸をぜーんぶほどいちゃったじゃない!
これでおいたが三つよ、子ネコちゃん、そしてまだそのどれについても罰を受けてないでしょう。
あたし、おまえの罰は、水曜の週までぜーんぶためてあるのよ
――あたしの罰もそうやってためてあったらどうだろ」
とアリスは、子ネコよりは自分に向かってしゃべりつづけました。
「そうなったら、年末にはいったいぜんたいどんな目にあわされるかな。
その日がきたら、牢屋に入れられちゃうかもしれないぞ。
それとも
――うーんとそうだな
――かりにその罰がみんな、晩ごはんぬきになることだったとしたら:
するとその悲惨な日がきたら、あたしは一度に五十回の晩ごはん抜きになるってことか!
うん、それならそんなには気にならないわ。
そんなに食べるよりは、ぬきにしてもらったほうがずっといいもん!
ねえ、窓にあたる雪の音がきこえてる?
すっごくすてきでやわらかい音よね!
だれかが窓一面、外からキスしてるみたい。
雪って、木や野原が大好きなのかな、だってすごく優しくキスするでしょう。
それで、白いキルトでしっかりくるみこんじゃうわよね。
それで
「さあいい子だから、夏がくるまでおやすみ」とか言うのかも。
それで夏がきてみんな目をさますと、全身を緑で着飾ってそこらじゅうで踊るの
――風がふくところどこでも
――うん、それってすっごくきれい!」
とアリスは叫んで、手を叩いたひょうしに毛糸玉を落としてしまいました。
「これがホントに本当だったらいいのに!
だって森は確かに、葉っぱが茶色くなる秋には眠そうに見えるもん。
ねえ子ネコちゃん、おまえ、チェスはできる?
こら、笑うんじゃない。
まじめにきいてるんですからね。
だってさっきチェスをしてたら、おまえ、いかにもわかるような顔して見てたじゃないの。
そしてあたしが『王手!(チェック!)』って言ったら、鳴いたでしょ!
ええ、たしかにうまい王手だったし、もうちょっとで勝つところだったんだけれど、あの意地悪なナイトがこっちの駒の間をぬってやってきたもんだから。
子ネコちゃん、ごっこ遊びをしましょうよ!」
そしてここで、アリスがこの「ごっこ遊びをしましょうよ!」というお気に入りのせりふを皮切りに言いだすことの半分でも、みなさんに話せたらと思います。
すぐ前の日にも、お姉さんとかなり長いこと言い合いになりました
――それというのもアリスが「ごっこ遊びをしましょうよ、お姉ちゃんとあたしで、王さまたちと女王さまたちになるの」と言い出したからで、
そのお姉さんはなんでも正確なのが好きだったので、それは無理だ、二人しかいないのにそんなたくさんにはなれない、と言ったからで、言い争ったあげく、ついにアリスがゆずってこう言いました。
「わかった。
じゃあお姉ちゃんははだれか一人になればいいわよ。
残りはぜんぶあたしがなるから」。
そして一度なんかアリスは、こんなことを言って年寄りの乳母さんを本当にこわがらせたものでした。
「乳母さん!
ねえ、ごっこ遊びをしましょうよ!
あたしがおなかのへったハイエナになって、乳母さんは骨ね!」
が、子ネコ相手のアリスの話からちょっと脱線しましたね。
「ごっこ遊びをしましょう!
あなたが赤の女王さまよ、子ネコちゃん!
知ってる?
あなたがちゃんと起きあがって腕組みしたら、赤の女王さまそっくりになると思うのよ。
さ、やってごらんなさいな、いい子だから!」
そしてアリスはテーブルから赤の女王をとって、子ネコの前に見本として置きました。
でも、うまくいきません。
アリスに言わせると、それは子ネコがちゃんと腕組みしないからだそうです。
そこで罰として、アリスはネコを鏡の前に持ち上げて、そのむくれぶりを自分で見られるようにしてやりました
――「そしておまえがすぐにいい子にならなかったら、向こうの鏡の国のおうちに入れちゃうぞ。
それでもいいの?
どう?
さて、あなたがちゃんと聴いてるならね、子ネコちゃん、そしておしゃべりしないでいられたら、鏡のおうちについてのあたしの考えを、ぜーんぶ話してあげますからねー。
まず鏡ごしに見えるお部屋があるでしょ
――あれはうちの書斎とまるっきり同じだけど、でもなんでも逆になってるのね。
いすに登ったら、全部見えるのよ
――ただし暖炉の向こうのとこ以外はだけど。
あーあ、
そこんとこも見られたらいいのになぁ!
向こうにも冬には火が入ってるのか、すっごく知りたいの。
だってぜったいにわかんないんですもん、ただしこっちの火が煙をたてたら、向こうの部屋でも煙があがるけど
――でもそれって、ふりをしてるだけかもしれないでしょ、火があるように見せかけてるだけで。
それとね、本はこっちの本と似てるけど、でもことばが逆向きになってるの。
知ってるんだ。
だって、本を一冊鏡に向けてみたら、向こうでも一冊こっちに向けるんだもん。
鏡の国のおうちに住んでみたい?
あっちだとミルクがもらえるかしらね。
鏡の国のミルクはあんまりおいしくないかも
――でも、あら!
ちょうど廊下のとこまでやってきましたよ。
鏡の国のおうちでは、ほんのちょっとだけ廊下をのぞけるのよね、書斎のドアを思いっきり開いておくと。
それで、見えるはんいではこっちの廊下とそっくりなんだけど、でもその向こうはぜんぜんちがうかも。
鏡の国のおうちのほうに、ぬけられたらホントに楽しいでしょうね、子ネコちゃん!ねえ?
もうぜったいに、すごくきれいなものがあると思うんだ!
なんか通り抜ける道があるつもりになりましょうよ。
ね、子ネコちゃん。
鏡がガーゼみたいにふわふわになったつもりになって、通り抜けられることにしましょう。
あらやだ、なんだか霧みたいなものになってきてるじゃない!
これなら簡単に通り抜けられるわ――」
こう言うアリスは暖炉の上にあがっていたのですが、自分でもどうやってそこまであがったのか、よくわかりませんでした。
そして確かに、鏡は本当に溶けだしていて、明るい銀色っぽい霧のようでした。
次のしゅんかん、アリスは鏡を通りぬけて、ピョンッと鏡の国の部屋に飛びおりていました。
まっ先にやったのは、暖炉に火が入っているかを確かめることでした。
そして、本物の火が、後にしてきた部屋と同じくらい明るく輝いているのを見て、アリスはとてもうれしく思いました。
「これで前の部屋と同じくらいあったかでいられるわね。
いえ、もっとあったかくいられるわ、だってここではだれも、火に近寄りすぎてるって叱る人はいないし。
みんなが鏡ごしにこっちにいるあたしを見て、でもだれも捕まえられないの。楽しいだろうな!」
それからアリスはあたりを見まわし始めましたが、もとの部屋から見えたものは、とっても見なれたつまらないものばかりだけれど、それ以外の部分はとことんちがっているのがわかりました。
たとえば暖炉のとなりのかべにかかった絵は、どれも生きているみたいで、暖炉の上のすぐそこにある時計だって
(ごぞんじのように、鏡の中では裏っかわしか見えないよね)
小さなおじいさんの顔をしていて、アリスににやっとしてみせます。
「こっちのお部屋は、むこうのほど片づいてないのね」
とアリスは思いました。
炉端に燃えがらがころがって、そこにチェスの駒がいくつか転がっていたのが見えたからです。
でも次のしゅんかん、「あら!」というオドロキの声とともに、アリスはよつんばいになってそれを見つめていました。
チェスの駒が、それぞれ対になってうろうろ歩いているのです!
「こっちには赤の王さま(キング)と赤の女王さま(クイーン) ね」
とアリスは言いました
(ただしこわがらせるといけないので、ひそひそ声でね)。
「そしてあっちには白の王さま(キング)と白の女王さま(クイーン)が、シャベルのはしにすわってるわ
――こっちではキャッスル二つがうでを組んで歩いてるし
――どうもあたしのこと、聞こえないみたい」
と、もっと頭を近くまで下げました。
「それに、あたしが見えないのはまちがいなさそう。
どうも目に見えなくなった感じ――」
そのとき何かがアリスの背後のテーブルでキイキイ声をあげはじめました。
ふりかえるとちょうど、白のポーンが転がって足をバタバタさせだすところでした。
これからどうなるんだろうと、アリスはわくわくしながらながめています。
「わが子の声がする!」
と白の女王さま(クイーン)は叫んで王さまの横をすごい勢いでかけぬけます。
それが勢いよすぎて、王さま(キング)は灰の中につきたおされてしまいました。
「かわいいリリーちゃんや!
高貴な子ネコちゃんや!」
そして女王さま(クイーン)は、猛然と暖炉の囲いをよじのぼりだしました。
「高貴だかホウキだか知らんが!」
と王さま(キング)は、たおれたときにぶつけた鼻をさすっています。
まあちょっとは女王さまに腹をたてるのも仕方ないでしょう。
だって王さまは頭のてっぺんからつま先まで、灰まみれになっちゃっていたのですから。
ぜひともお手伝いしたかったし、それにかわいそうなリリーちゃんが、ひきつけを起こしそうなほど泣き叫んでいたもので、アリスはいそいで女王さまをつまみあげると、テーブルの上のそうぞうしい赤ちゃん娘の横に置いてあげました。
女王さまは息をのんで腰をぬかしてしまいました。
空中を高速で移動したので、息がつけなくなって、しばらくはだまってリリーちゃんを抱きしめるばかりです。
ちょっと息がつけるようになると、女王さまはすぐに、まだ灰の中でふくれっつらをしてすわっている白の王さま(キング)に呼びかけました。
「火山にご注意を!」
「火山ってなんじゃ?」
と王さまはいっしょうけんめい暖炉の炎をのぞきこみます。
そこがいちばん火山の見つかりそうな場所だとでも言うように。
「わたし――を――噴きとばし――た――やつ」
と女王さまは、まだ息をきらしていて、あえぎながら言いました。
「気をつけて――ふつうに上がってらして――噴きとばされないで!」
アリスは、格子を一本ずつ苦労しながら登っていく白の王さまをながめていましたが、とうとうこう言いました。
「まあ、そんな速さじゃテーブルにたどりつくまで、何時間かかるかわかりゃしない。
あたしがお手伝いしたほうがずっといいわ、よね?」
でも王さまはこの質問にぜんぜん反応しません。
王さまにはアリスが見えもしないし聞こえもしないのは、もうはっきりしていました。
そこでアリスは王さまを、とってもそっとつまみあげて、女王さまを持ち上げたときよりもゆっくりと運んであげました。
あまり目を白黒させずにすむようにしてあげたかったからです。
でも、テーブルに置く前に、ついでだからちょっとほこりをはらってあげよう、と思いました。
すごく灰まみれだったからです。
あとでアリスが話してくれたところでは、王さまは自分が目に見えない手で空中に持ち上げられて、ほこりを払われているときの王さまの顔つきといったら、生まれてこのかた見たこともないようなものだったそうです。
叫びだすにはびっくりしすぎていましたが、目と口がどんどんあんぐりしてきて、どんどんまん丸くなっていって、アリスは笑って手がふるえてしまい、王さまをあやうく床に落としてしまうところでした。
「まあおねがいだから、そんな顔しないでちょうだい!」
とアリスは、王さまに聞こえないのも忘れて大声で言ってしまいました。
「笑いすぎて、落としちゃいそうだわ!
それと、口をそんなにあんぐり開けないの!
灰がぜんぶ入っちゃうじゃない
――よーし、これでなんとかきれいになったかな」
とアリスは、王さまの髪をなでつけて、テーブルの女王さまの横に置いてあげました。
王さまはすぐに背中からたおれこんで、まるで身動きせずに横たわっています。
そしてアリスは、自分のしでかしたことにちょっと驚いて、王さまにかける水がないか、部屋の中をさがしまわりました。
でも、インキのビンしか見つかりません。
そしてそれを持って戻ってきたら、もう王さまは回復したようで、女王さまとおびえたささやき声で話をしていました
――ひそひそすぎて、アリスにもほとんど聞き取れないくらいです。
王さまはこう言っていました。
「いやまったく、わしはまちがいなく、ヒゲの先の先っぽまで凍りつく思いであったぞ!」
答えて女王さまいわく
「あなた、ひげなんかございませんでしょうに」
「あのしゅんかんの恐怖といったら、わしゃ決して、決して忘れやせんぞ!」
と女王さま。
アリスが興味津々(きょうみしんしん)で見ていると、王さまはすごくでっかいメモ帳をポケットから取りだして、書きはじめました。
アリスはパッとひらめいて、王さまの肩ごしにかなりつきだしていた鉛筆のはしっこをつかまえると、王さまのかわりに書きはじめました。
かわいそうな王さまは、合点がいかないようすであまりうれしそうではありません。
しばらく何も言わずに、鉛筆と格闘していました。
が、アリスが王さまよりも強すぎたので、ついに王さまは息がきれてしまいました。
「おまえ、
わしゃどうあっても、もっと細い鉛筆を手に入れんと。
こいつはまるっきり言うことをきかん。
わしの思ってもいないようなことをやたらに書きよる――」
「というとどういうたぐいのこと?」
と女王さまは帳面をのぞきこみました
(そこにアリスが書いたのは
「白の騎士(ナイト)が火かき棒をすべりおりています。
バランスを取るのがとっても下手です」だった)。
「これはあなたの気持ちのメモじゃありませんわね!」
テーブルの上、アリスのすぐ近くには本がころがっていました。
そして白の王さま(キング)をすわってながめながら
(というのも、まだちょっとは王さまのことが心配で、また気絶したときのために、すぐにでもインキをかけられるようにはしてあったから)、
アリスはページをめくって読めるところをさがしてみました。
「――だって、ぜんぶあたしの知らないへんなことばで書いてあるんだもん」
とアリスはつぶやきます。
こんな具合でした。
ーキッォウバャジ
がちたマゲモオしりる(ゅし)俊、(じ)時ろそ(に)煮はれそ
頃るす(んねく)捩躯り(ぐわ)繰環てにりか幅
りま(わき)極さしらじみのらトバョシボ
頃るめさほがラグト(ろい)漏居
アリスはしばらく首をかしげてしまいましたが、やっとひらめきました。
「あ、そうか。
もちろんこれ、鏡の国の本なのよ!
だから鏡に映してあげたら、ことばがまたちゃんとして見えるはず」
アリスが読んだのは、こんな詩でした。
ジャバウォッキー
それは煮(に)そろ時(じ)、俊(しゅ)るりしオモゲマたちが
幅かりにて環繰(わぐ)り躯捩(くねん)する頃
ボショバトたちのみじらしさ極(きわ)まり
居漏(いろ)トグラがほさめる頃
「息子よ、ジャバーウォックに用心せい!
噛みつく顎(あご)に、つかむ爪!
呪侮呪撫(ジュブジュブ)鳥にも警戒を、しておそかなき
犯駄酢那智(ばんだすなっち)をも避けよ!」
男子、ねれたる妖剣を手にとり
かねてより追い求めし恨髄(こんずい)の敵――
そして男子は凡鼓(ぼこ)の木の傍らで休み
しばし回想しつつ立ちつくす。
そしてけそかき思いにふけるうちに
炎の瞳のジャバーウォック
憂騒たる森中よりのそり出で
呆拷(ほうごう)しつつ襲(おそ)じむる!
一撃二撃!ぐさり、またぐさり
ねれたる刃が舞い踊る!
男子そやつを屠(ほふ)り頭を取りて
闊歩大笑(かっぽたいしょう)して騎ち帰る。
「してジャバーウォックを仕留めたか?
ほくれし息子よ、わが腕にまいれ!
嗚呼ゆるばしき日かな!億歳!兆歳!」
父は喜びに高笑い。
それは煮(に)そろ時(じ)、俊(しゅ)るりしオモゲマたちが
幅かりにて環繰(わぐ)り躯捩(くねん)する頃
ボショバトたちのみじらしさ極(きわ)まり
居漏(いろ)トグラがほさめる頃
「すごくきれい、みたい」
と読み終わったアリスは言いました。
「でもちょっとわかりにくいけど!」
(ほら、アリスは自分自身にむかってでも、いまの詩がまるっきりわからなかったと白状するのはいやだったわけね。)
「なぜだか、いろんな考えで頭がいっぱいになるんだけど
――でもそれがなんだか、どうもわかんないわ!
だけど、だれかが、なにかを殺したのよ。
それだけは、なにはともあれはっきりしてるわ――」
「あ、でもそうだ!」
とアリスは急に気がついて飛び上がりました。
「急がないと、家のほかのところがどうなってるか見ないうちに、鏡を通って戻らなきゃなんなくなる!
まずはお庭を見てみようっと!」
アリスはいっしゅんで部屋を出ると、階段をかけ下りました
――というか、まあ正確には走っておりたわけじゃなくて、階段を急いで簡単におりる、新発明のやり方よね、とアリスは自分でも思いました。
指の先っぽだけを手すりにつけて、階段に足でふれさえしないで、ふわふわ静かにおりていったわけです。
それからふわふわと廊下をぬけて、そのままドアを出てしまいそうになったところを、入り口の手すりに捕まっておさえます。
宙に浮いてばかりいて、ちょっとくらくらしてきたところだったので、またふつうに歩けるようになってアリスはかなりホッとしました。
第 2 章 生きた花のお庭
「お庭を見るんなら、あの丘のてっぺんにいったほうが、ずっとよく見えるはずだわ。
そして丘のてっぺんにまっすぐ向かう道がある
――少なくとも、いいえ、まっすぐしてないわ――」
(何メートルか道沿いに歩くと、急なかどをいくつか曲がることになりました)
「でもいずれ着くはずだけど。
でもずいぶんと変にクネクネした道だわ!
道というより、コルク抜きみたい!
よかった、このかどを曲がれば丘の方にいくはず
――ではなかった!
家のほうにまっすぐ戻っちゃうじゃないの!
ふん、だったら反対方向を試してみよう」
というわけで試してみました。
いったりきたりさまよい、次から次へとかどを曲がって、でも何をやっても、必ず家に戻ってきてしまいます。
なにせ一回なんか、かどをいつもより勢いよく曲がったら、そのまま止まる間もなく家につっこみそうになったほどです。
「いいえ、議論してもむだよ」
とアリスは家を見あげて、それと口論しているふりをしてみました。
「まだまだ中に戻る気はありませんからね。
そしたらまた鏡を通って戻らなきゃいけなくて
――もとの部屋に戻って
――そしたら冒険もすべておしまいだわ!」
というわけで、アリスは決然と家に背を向けて、またもや道を進みはじめ、とにかく丘につくまでまっすぐ進もうと決めました。
数分はまったく思い通りにことが運びます。
そしてアリスがちょうど「こんどこそいけるわ――」とつぶやいたとたん、
道が急にくねって揺さぶりがかかって
(とアリスは後になって表現しました)、
次のしゅんかんには気がつくと、まさにドアから家に入るところでした。
「あらあら、どうしましょう。
こんなに通せんぼばっかりする家は見たことない!
一度も!」とアリスは叫びます。
それでも、丘は目の前にそびえていますし、ですからまた歩き出す以外にどうしようもなかったのでした。
こんどのアリスは、大きな花壇にやってきました。
ふちにはヒナギクが植わり、まん中には柳の木が生えています。
「ああオニユリさん」
とアリスは、優雅に風にそよいでいるオニユリに話しかけました。
「あなたが話せたらどんなにいいでしょう!」
するとオニユリが言いました。「話せるわよ、
まわりに話す値打ちのある人がいればね」
アリスは驚きすぎて、しばらく口がきけませんでした。
まったく意外で、息をのむしかなかったのです。
ずいぶんたって、オニユリがそよいでいるだけだったので、アリスはまた口を開きました
――おずおずと、ほとんどささやくように。
「じゃあ、花はみんなしゃべれるの?」
「あなたなみにはね。
それにずっと大きな声が出せるな」とオニユリ。
「こっちから話しかけるのも失礼でしょう、ねぇ?」
とバラが言います。
「あたしも、あんたがいつになったらしゃべりだすか、待ってたのよ!
『あの子、ちょっとは道理をわきまえてそうじゃない、あんまり賢くはないみたいだけど』って思ってぇ。
でも色はそこそこまともだし、それって結構きくでしょう」
「色はどうでもいいけど、
花びらをもうちょっとカールさせたら、ずっとよくなるわよね、この子は」とオニユリも言いました。
アリスはあれこれ品定めされるのがいやだったので、こちらから質問をすることにしました。
「こんなところに植わって、だれにもめんどう見てもらえないで、ときどきこわくなったりしませんか?」
「まん中に木があるでしょうに。
あれがなんのためにいると思ってんの?」とバラ。
「でもなにか危険が迫っても、木に何ができるの?」
とアリスはたずねます。
「『木をつけろー』って言うにきまってるでしょ!
だから木って 言うんじゃないのよ!」とヒナギクが叫びました。
「そんなことも知らなかったの?」
と別のヒナギクが叫び、そこでヒナギクどもはいっせいに叫びだしまして、空中が小さな金切り声まみれになったかのようでした。
「おだまんなさい、あんたたちみんな!」
とオニユリは、顔をまっ赤にして身を左右にゆすり、興奮でふるえています。
「こっちが捕まえられないのを知ってるもんだから!」
と、オニユリは息をきらして、ふるえる頭をアリスのほうにまげます。
「さもなきゃ、絶対にあんな口はきけないはずよ!」
「ご心配なく!」
とアリスはさわやかに言うと、またもやしゃべりだしたヒナギクの上に身をかがめてささやきました。
「だまんないと、摘んじゃうわよ!」
いっしゅんであたりは静まり、ピンクのヒナギクがいくつかあおざめました。
「そうそう!」
とオニユリ。
「ヒナギクがいちばんたち悪いわ。
一人がしゃべると、みんないっせいに口を開いて、まあそれがぺちゃくちゃ続くの聞いてるだけで、こっちがしおれそうになっちゃうわ」
「どうしてみなさん、そんなにすてきにしゃべれるの?」
アリスはお世辞を言って、なんとかオニユリのご機嫌をとろうとしました。
「これまでいろいろお庭には行ったけど、でもしゃべる花なんて一つもなかったわ」
「手をおろして、地面をさわってごらん。
そうすればわかるわよ」とオニユリ。
アリスは言われたとおりにしました。
「すごくかたいけど。
でもなんの関係があるんだか、ぜんぜんわかんないけど」オニユリが答えます。
「ほかのお庭だとふつうはね、花壇をやわらかくしすぎるのよ
――だから花がいつも眠っちゃってるわけ」
これはとてもよい理由に思えたので、アリスはそれがわかってとてもうれしく思いました。
「まあ、そんなこと、これまで考えたこともなかった!」
「あたしに言わせりゃ、あんたこれまでどころか、まるっきり考えたりできないのよね」
とバラがいささかトゲトゲしい調子で言いました。
「そんなまぬけそうな人は見たこともない」
とスミレが言いまして、それが実にいきなりだったもので、アリスは文字通りとびあがりました。
スミレはこれまでだまっていたからです。
「ちょっとあんた!だまんなさいよ!」
とオニユリが言います。
「あんたがだれを見たことあるって言うのよ!
いつも葉っぱの下に頭を隠して、グウグウ寝てばかりで、つぼみの頃からこの世で何が起きてるのかぜんぜんわかってないじゃないのよ!」
「このお庭に、あたし以外の人がいるの?」
「あんたみたいに、うろうろできる花がもう一人いるわ。
あんたたちがどうやってんのか、不思議だけど――」
(「あんた不思議がってばっかりね」とオニユリ)、
「でもそっちのほうが、あんたよりボサボサしてるけど」
「あたしに似てるの?」
とアリスは熱心にたずねました。
とふと思ったからです。
「そうね、形はあんたと同じでへんてこだけど、でも色はもっと赤いし
――それに花びらももっと短かったはず」とバラ。
「彼女の花びらはもっときっちりまとまってるわ、ほとんどダリヤみたいね」
とオニユリが割りこみます。
「少なくともあなたのやつみたいに、バサバサになってはいないわね」
「でも、それはあんたのせいじゃないわよ」
とバラが親切そうにつけくわえてくれました。
「あんた、しぼみかけてるからね
――そうなったら、花びらにちょっと張りがなくなってもしょうがないわよねぇ」
アリスはそんなのぜんぜん気に入りませんでしたので、
話を変えようとしてきいてみました。
「その人、ここに出てきたりするの?」
「まちがいなくもうじき会えるわよ。
トゲっぽい種類の人だわね」とバラ。
「トゲって、どこにトゲがあるの?」
アリスは不思議に思ってききました。
「どこって、頭のまわりにぐるっとよ、決まってるじゃない」
とバラが答えます。
「あんたはどうしてないのかなって、不思議に思ってたところだったのよ。
あるのがふつうだと思ってたわ」
「いまくるわ!
足音がきこえる。
ズン、ズン、ズンって、砂利道をやってくるわ!」
アリスは熱心にあたりを見まわして、それが赤の女王さまだと気がつきました。
「ずいぶんと大きくなったものねえ!」
というのが彼女のまっ先に口走ったことでした。
確かに女王さまは大きくなっていました。
アリスが灰の中で女王さまを見たときには、身の丈ほんの十センチほど
――ところがいまの女王さまは、アリス自身より頭半分だけ背が高いくらいです!
「新鮮な空気のおかげよ。
こうして外に出ると、空気がすばらしくいいから」とバラが言います。
「ちょっとお目にかかってこようっと」
とアリスは言いました。
花とおしゃべりするのもおもしろかったのですが、本物の女王さまとお話しするほうが、ずっとすごいなと思ったからです。
「それは絶対に無理よ」
とバラが言います。
「あたしなら反対方向に歩くよう忠告しますがね」
これはまったくのナンセンスにしか聞こえなかったので、アリスは何も言わずに、すぐに赤の女王さまに会いにでかけました。
びっくりしたことに、いっしゅんで女王さまを見失ってしまい、気がつくとまたもや玄関を入ろうとしているところでした。
ちょっとムッとしてアリスは身をひくと、あちこち女王さまをさがしまわって
(やっと見つけた女王さまはずいぶんと遠くにおりました)、
こんどはちょっと策を練って、反対方向に歩いてみようと思ったのです。
これは見事に成功しました。
ほんの一分かそこら歩いただけで、赤の女王さまと鉢合わせすることになりました。
さらに、さっきからいっしょうけんめい行こうとしていた丘もすぐそこです。
「おまえ、どこからきた?」
と赤の女王さま。
「どこへ行くつもりだえ?
はい、背筋のばして、はきはきしゃべって、指をそんなもじもじさせるんじゃない!」
アリスはこうした言いつけをすべて守り、なんとかかんとか、自分の行き先がわからなくなったことを説明しました。
「自分の行き先とは、何を申しておるのやら」
と女王さま。
「ここの行き先はすべて、このわらわのものなんだからね
――でも、そもそもなんだってこんなところへ出てきたのかえ?」
と、ちょっとやさしい口調でつけくわえます。
「何を言うか考えてる間に会釈をなさい、時間の節約になるから」
これにはアリスもちょっと考えこみましたが、でも女王さまのご威光におされて、信じないわけにはいきませんでした。
「おうちへ帰ったらやってみようっと。
晩ごはんにちょっと遅くなったりしたときに使えそうだわ」
「さ、おまえの答える時間だよ」
と女王さまは時計を見ながら言いました。
「しゃべるときには、もうちょっと口を大きく開けて、それと必ず『陛下』と言うように」
「お庭がどんなふうか見たかっただけなんです、陛下――」
「そうそう、よくできました」
と女王さまは、アリスの頭をなでましたが、アリスはそれがまるで気に入りませんでした。
「とはいえ、『お庭』と言うけど
――わらわが見た庭に比べたら、あんなものただの野原じゃがの」
アリスはこんなことでわざわざ議論するつもりはありませんでした。
「――それで、あの丘のてっぺんに行こうかなと思いまして――」
女王が割りこみます。「『丘』と言っても、
このわらわが見せてやれる丘に比べたら、あんなのは谷と呼ぶしかない代物じゃがの」
「そんなバカな」
とアリスは、びっくりしすぎてつい反論してしまいました。
「丘はどうやったって谷にはなれませんもの。
そんなのナンセンスで――」
赤の女王さまは首をふります。
「『ナンセンス』と呼ぶのは勝手だがね、
このわらわがきいたナンセンスに比べれば、さっきのなんか辞書なみに正論であるぞ!」
アリスはまた会釈しました。
女王さまの口ぶりから、どうもちょっとは機嫌をそこねたらしいな、とこわかったからです。
そして二人はだまって歩き続けて、あの小さな丘のてっぺんにたどりつきました。
しばらくの間、アリスは何も言わずに立って、この国の四方八方を見渡していました
――そしてそれは、なんともへんてこな国ではありました。
左右にまっすぐ、小さな小川がたくさん走っていて、小川の間の地面は、緑の茂みがいくつか小川から小川へと続いて、正方形に区切られています。
「これって絶対、おっきなチェス盤みたいに仕切られてるわよね!」
とアリスはやっと言いました。
「駒がどこかで動いてそうなものだわ
――ほーらあそこにいるじゃない!」
とアリスは大喜びで付け加え、そしてしゃべりながらもわくわくしてきて、心臓がドキドキしてきます。
「すごくおっきなチェスの試合をやってるんだわ
――世界中で
――もしこれがそもそも世界ならの話だけどね。
すごく楽しいじゃない?
ああ、あたしもあの中の一人だったらなぁ!
試合に入れるなら、ポーンでもいいや
――でももちろん、女王さま(クイーン)になれるものなら、それがいちばんいいですけど」
そういいながら、アリスはちょっともじもじして、本物の女王さまのほうをチラリと見ましたが、連れはにこやかに笑ってこう言っただけでした。
「それくらいならおやすいご用だとも。
おまえさえよければ、白の女王のポーンになるといい、リリーはまだ試合には小さすぎるから。
そしておまえは、そもそも二升目にいるわけだね。
八升目についたら、おまえも女王(クイーン)になれる――」
まさにそのしゅんかんに、二人は走りだしました。
あとから考えてみても、どうやってそれが始まったのか、アリスにはさっぱりわかりませんでした。
おもいだせるのは、二人が手をつないで走っていて、女王さまがすごい勢いだったもので、アリスはついていくのがやっとだったことだけです。
そしてそれでも女王さまはたえず
「もっと速く!
もっと!」と叫びつづけて、
でもアリスは、絶対にこれ以上は速く走れないと思い、でも息をきらしすぎていて、そんなことが口にだせる状態ではありませんでした。
なかでもいちばん不思議だったのは、木やまわりのその他のものが、まったく場所を変えなかったことです。
どんなに速く走っても、なにも通り過ぎたりしないようでした。
「ほかのものも、あたしたちといっしょに動いてるのかしら?」
とかわいそうな混乱したアリスは思いました。
そして女王さまはアリスの考えていることが見当ついたようです。
「もっと速く!口をきこうとするんじゃない!」と叫んだからです。
アリスとしても、口をきくつもりはまるっきりありません。
とにかく息がきれてきて、もう二度としゃべれないんじゃないかと思ったくらいです。
そしてそれなのに女王さまは「もっと速く!もっと!」と叫びつづけて、
アリスを引きずっていきます。
「もうそろそろ着く頃でしょうか?」
とアリスは、やっとの思いでぜいぜいと言いました。
「そろそろ、だと!」
と女王さまが繰り返します。
「そんなとこ、もう十分も前に通り過ぎたよ!
もっと速く!」
そして二人はしばらくだまって走り続け、アリスの耳では風がうなり、ほとんど髪が吹き飛ばされそうだわ、とアリスは思いました。
「さあさあ、もっと速く!もっと!」と女王さまがさけび、
二人はあまりに速く走ったので、最後はまるで宙を切るように進んでいて、足がほとんど地面につかない感じです。
そして急に、ちょうどアリスが疲れきってしまった頃に二人は泊まり、アリスは地面にすわりこんで、息をきらしてクラクラしていました。
女王さまがアリスを木にもたれさせてくれます。
「さあ、ちょっと休んでよろしい」と親切そうに言います。
アリスはあたりを見まわして、おどろいてしまいました。
「まあ、まるでずっとこの木の下にいたみたいだわ!
なにもかももとのまま!」
「もちろんそうだとも。
ほかになりようがあるとでも?」と女王さま。
「ええ、わたくしどもの国では、
ふつうはどこかよそにたどりつくんです
――もしいまのわたしたちみたいに、すごく速く長いこと走ってたら」
「グズな国じゃの!
ここではだね、同じ場所にとどまるだけで、もう必死で走らなきゃいけないんだよ。
そしてどっかよそに行くつもりなら、せめてその倍の速さで走らないとね!」
「それは遠慮したいです、後生ですから!」
とアリス。
「ここにいられれば十分満足ですから
――ただ、確かにすごく暑くてのどがかわいちゃって!」
「それなら気に入るはずのものがあるぞえ!」
と女王さまはとても親切そうに言って、ポケットから小さなはこを取り出しました。
「ビスケットをいかが?」
アリスは、ことわるのも失礼だわと思いましたが、でもそんなものがほしいとは、まるで思いませんでした。
そこでそれをもらって、できるだけ食べようとしました。
それはすさまじく乾燥していまして、
だから生まれて初めてというくらい、のどにつまって窒息しそうになったほどです。
「おまえがそうやって一息ついておる間に、わらわはちょいと寸法を採るとしようかね」と女王さま。
そしてインチごとに印がついたリボンをポケットから取りだして、地面を測りはじめ、あちこちに小さなペグを差しこみはじめました。
「二ヤードのおしまいにきたら」
と女王さまは、ペグをさして距離をしるします。
「道順を教えてあげるとしよう
――ビスケットをもう一ついかが?」
「いえ、結構です。
一つでもうじゅうぶんです!」
「のどの乾きはおさまったであろうが?」
と女王さま。
アリスはどう答えていいかわかりませんでしたが、ありがたいことに女王さまはこちらの返事をまたずに、しゃべりつづけました。
「三ヤード目の終わりにきたら、わらわはそれまでのを繰り返すとしよう
――おまえが忘れるといけないからね。
そして四の終わりでは、ごきげんようを言おうぞ。
それから五の終わりで、わらわは去る!」
この頃には女王さまも、ペグをぜんぶ差しこみ終わって、その女王さまが木のところに戻ってくるのを、アリスは興味津々(きょうみしんしん)で見守りました。
女王さまは、ゆっくりとペグの列にそって歩きだします。
二ヤードのペグまでくると、女王さまはふりかえってこう言いました。
「ポーンは最初に動くときだけは二駒進めるのは知ってるね。
だから、三升目はとっても高速に通り抜けることになる
――たぶん鉄道を使うことになるはずだよ
――そしてあっという間に四升目だ。
その升は、トゥィードルダムとトゥィードルディーの升だね
――五番目はほとんど水で
――六番目のはハンプティ・ダンプティのものだわね
――でもおまえ、ウンとかスンとか言ったらどうだえ?」
「あ――あの、言わなきゃいけないとはぞんじませんで
――いまですか?」
アリスはまだ息をきらしています。
「おまえはね、『まあいろいろ教えてくださいまして、まことにありがとうございます』と言うべきではあったんじゃが
――が、まあ言ったことにしておいてやろう
――七升目は森ばっかりだね
――でも騎士(ナイト)が道案内してくれるじゃろ
――そして八升目ではわれらとともに女王(クイーン)になって、そうしたらずっと宴会で楽しかろうて!」
アリスは立ちあがって会釈をすると、また腰をおろしました。
次のペグで女王さまはまたふりかえり、こんどはこう言いました。
「なにかを指すことばがわからなくなったら、フランス語でしゃべってみるように
――歩く時は、内股になってはいけません
――そして自分がだれだか忘れないこと!」
女王さまは、こんどはアリスが会釈するのを待たず、急いで次のペグまで進むと、いっしゅんだけ振り返って「ごきげんよう」と言ってから、最後のペグに急ぎました。
それがどういうふうに起こったのか、アリスにはまるでわかりませんでしたが、最後のペグのところにきたちょうどそのしゅんかん、女王さまはいなくなっていました。
空中にかき消えたのか、それともすごい速さで森にかけ込んだのか
(「確かに、すごく走るのが速いのは事実ですもんねえ」
とアリスは思いました)、
かいもく見当もつきませんでしたが、とにかく、女王さまは姿を消し、そしてアリスは自分がポーンで、そろそろ動く順番だというのを思いだしはじめたのでした。
第 3 章 鏡の国の昆虫たち
もちろん真っ先にやったのは、これから旅する国をおおざっぱに見渡すことでした。
「地理のお勉強ととってもよく似てるわよね」
とアリスは、もうちょっと遠くまで見ようとして、つま先立ちになりました。
「主要な河川――ぜんぜんなし。
主要な山――あたしが立ってるのが唯一の山だけれど、でも別に名前はなさそうだ し。
主要な街――あらあら、下でハチミツを集めてるあの生き物、いったいぜんたいなんだろ?
どう見てもハチじゃないわ――一キロ先から見えるハチなんていないもんね――」
そしてしばらくアリスはだまって立ったまま、花の中を飛び回ってるその生き物の一匹をながめていました。
吸い口を花につっこんだりしています。
「まるでふつうのハチみたい」
とアリスは思いました。
でも、これはどう見てもふつうのハチなんかじゃありませんでした。
むしろ、ゾウでした
――アリスもじきにこれがわかりましたが、でも気がついて思わず息をのんでしまいました。
「じゃああのお花って、すさまじい大きさにちがいないわ!」
とアリスは続いて思いました。
「小屋の屋根をとっぱらって、くきをくっつけたみたいな
――それに、ハチミツの量もすごいはずよ!
ちょっと下りてってみようかしら
――いえ、いまはダメだわ」
と、いまにも丘を駆け下りそうになった自分を制します。
そして、急にしりごみしたので、なんとかいいわけを考えようとしました。
「追い払うのに、すごく長い枝がないと、あんなのの中に行けないわよね
――そしてみんなが、散歩はいかがでしたと聞いたら、すごく楽しいだろうな。
こう言うの
――『ああ、まあまあでしたわ――』」
(そしてここでお気に入りの、頭をちょっとはねあげるポーズ)
「『ただいささかほこりっぽくて暑かったのと、それにゾウにいっぱいたかられちゃったのがどうも!』」
「反対側におりようっと。
ゾウはあとで訪ねてみてもいいし。
それに、三升目に行きたくてたまらないもの!」
そしてこの口実で、アリスは丘をかけおりて、最初の小川六本を飛び越えたのでした。
「きっぷ拝見!」
と車掌が、まどから頭をつっこんで言いました。
すぐさまみんな、きっぷを出していました。
きっぷは人間ほども大きくて、車両がそれだけでいっぱいになりそうです。
「さあさあおじょうちゃん、きっぷを見せるんだよ!」
と車掌がつづけ、怒ったようにアリスのほうを見ます。
そしてすごくたくさんの声がいっせいにこう言いました
(「歌のコーラスみたいだわ」
とアリスは思いました)、
「おじょうちゃん、車掌さんを待たせちゃダメよ!
車掌さんの時間はお値打ち一分千ポンド!」
「すいません、ないんですけど」
とアリスはおびえた声で言いました。
「あたしがきたところには、きっぷ売り場がなかったんです」
そしてまたもや声のコーラス がはじまります。
「この子がきたところには、余裕がなかったのよ。
あそこの土地は、お値打ち一ミリ千ポンド!」
「いいわけするんじゃない」
と車掌さん。
「機関手から買えばよかっただろう」
そしてまたもや声のコーラスが始まりました。
「機関車を運転する人だよ。
なんと、煙だけでもお値打ち一雲千ポンド!」
アリスは「しゃべってもしょうがないわ」と思いました。
声はこんどはコーラスしませんでした。
アリスがしゃべらなかったからです。
でもすごくおどろいたことに、みんなコーラスで考えたのです
(「コーラスで考える」というのがどういう意味か、わかってもらえるといいんだけど
――というのも白状しちゃうと、このぼくはさっぱりわからないんだもの)
「なにも言わないほうがいい。
ことばは一言千ポンド!」
「今夜は千ポンドの夢を見そう、絶対!」
とアリスは思いました。
この間ずっと、車掌さんはアリスをながめていました。
最初は望遠鏡を使って、それから顕微鏡を使って、それから双眼鏡を使って。
とうとう車掌さんは言いました。
「旅行の方向がまちがってるぞ」
そして窓を閉めて、あっちに行ってしまいました。
と向かいにすわった紳士(白い紙の服を着ています)が言いました。
白い服の紳士のとなりにすわっていたヤギが、目を閉じて大声でいいました。
「ABCが暗唱できなくったって、きっぷ売り場への道くらいは知ってないとダメだね!」
ヤギのとなりには、カナブンがすわっていました
(総じて、なかなか風変わりな乗客ばかりいっぱい集まった客車でした)。
そしてどうやら、みんな順番にしゃべるというのが規則のようで、そのカナブンが先を続けます。
「この子は、ここから貨物扱いで戻ってもらわんとダメだね」
カナブンの向こうにだれがすわっているのか、アリスには見えませんでしたけれど、次に聞こえてきた声はずいぶん狼狽(ろうばい)したようすです。
「機関車を換えて――」
と言って、そのままとぎれてしまいました。
「ロバみたいな声ね」
とアリスは思いました。
すると耳元で、とっても小さな声が聞こえました。
「いまのでだじゃれができるかもね
――『ロバ』の『狼狽(ろうばい)』、でね」
すると遠くのほうで、とてもやさしい声が言いました。
「その子には『小娘、取り扱い注意』のラベルをつけないといけませんわ――」
そしてそのあと、次々に声がつづきます
(「この客車って、ずいぶんたくさん人が乗ってるのねえ!」
とアリスは思いました)。
「指先でも切手(きって)もらっ て、郵便で送ったら――」
「電信で、電報扱いで送らないと――」
「この先、その に列車を牽かせないと――」
などなど。
でも白い紙の服の紳士が身をのりだして、アリスの耳にささやきます。
「みんながあれこれ言うのは気にしなさんな、おじょうちゃん。
でも列車が止まるたびに、戻りのきっぷを買うこと」
「そんなことするもんですか!」
「あたしはそもそもこの鉄道旅行には入ってないのよ
――さっきまで森の中にいたんだから
――できたらそこに戻るつもりよ」
「いまのもだじゃれにできるよね。
森に戻るつもり、なんちて」
「そんなにからかわないで」
アリスは声がどこからきているのか、あたりを見回しましたが、何も見あたりません。
「そんなにだじゃれが好きなら、自分で言えばいいじゃない!」
小さな声がすごく深いため息をつきました。
明らかにとっても不幸で、アリスとしても何かなぐさめるようなことを言ったでしょう
「ただし他の人みたいにため息をついてくれてればね!」
とアリスは思いました。
でもそれは実に見事に小さなため息だったので、ごく耳元からきたのでなければ、完全に聞きのがしていたでしょう。
その結果として何がおきたかというと、耳をすごくくすぐって、そのせいでかわいそうな生き物の不幸のことを、アリスはすっかり忘れてしまったのでした。
「きみは友だちだよね。
だいじな友だち、昔からの友だち。
そしてぼくをいぢめたりしないよね、ぼくが昆虫にはちがいなくても」
「昆虫って、どんな昆虫なの?」
とアリスはちょっと心配そうにたずねました。
実はほんとうに知りたかったのは、それが刺す昆虫かどうかだったのですが、そうきくのはちょっとお行儀が悪いかな、と思ったのです。
「え、だったらきみは――」
と小さな声が言いかけたところで、機関車からの甲高いきしり音でかき消されてしまい、アリスも含め、みんなびっくりして飛び上がりました。
窓から首をつきだしたさっきのロバが、静かに頭を戻して言いました。
「小川を飛び越えなきゃならないだけですよ」。
みんな、これで納得したようでしたが、アリスはそもそも列車が飛ぶということで、ちょっと心配になりました。
「でも、それで四升目に行けるわ、それだけはありがたいわね!」
とアリスはつぶやきました。
つぎのしゅんかん、客車が宙にまっすぐ飛び上がるのが感じられて、こわくなったアリスは、いちばん手近なものを握りしめました。
それはヤギのひげでした。
でもさわったとたんにひげはとけてしまうようで、気がつくとアリスは木の下に静かにすわっているのでした
――一方でブヨ(これまで話をしていたのはこの昆虫だったのです)はアリスのすぐ上の小枝でバランスをとって、羽でアリスをあおいでいました。
たしかに、すっごくおっきなブヨではありました。
「ニワトリくらいあるわ」
とアリスは思います。
でも、いままでずっと話をしてきたもので、今さらこわくなったりもしませんでした。
「――だったらきみは、昆虫はみんなきらいなの?」
とブヨは、なにごともなかったかのように、静かにつづけました。
「しゃべれると昆虫も好きよ。
あたしがきたところだと、話す昆虫なんかぜんぜんいないもん」
「どういう昆虫に熱狂するの、きみのきたところだと?」
とブヨがたずねます。
「あたし、昆虫に熱狂したりはしないわよ。
ちょっとこわいんだもの
――特に大きいのは。
でも、名前なら少しはわかるけど」とアリスは説明します。
「もちろん昆虫は、名前を呼ばれたら答えるんだよね?」
とブヨはなにげなく言います。
「あたしはそういうおぼえはないけど」
「呼ばれて答えないんなら、その子たちは名前なんかあってもしょうがないじゃないの」とブヨ。
「そりゃ昆虫には役に立たないだろうけど、でも名前をつけた人間には役にたつんだと思うな。
だってそうでなきゃ、なぜそもそもいろんなものに名前なんかついてるのよ」とアリス。
「わかんない。
それに、下の方の森では、名前がないんだよ
――だけど昆虫の一覧を続けてよ。
時間がもったいないし」
「そうねぇ、まずウマバエでしょ」
とアリスは指折り数えながら名前を挙げはじめました。
「はいはい、
あの茂みの半ばくらいのところを見てもらえば、木馬ハエがいるでしょう。
全身が木だけでできてて、枝から枝へギシギシ揺れながら動くんだよ」とブヨ。
「なにを食べてるの?」
アリスは知りたくてたまりませんでした。
「樹液とおがくず。
先を続けてよ」とブヨ。
アリスは木馬バエを興味津々(きょうみしんしん)で見上げました。
ペンキ塗り立てみたいね、と思いました。
色鮮やかでベタベタしてそうだったからです。
でも、先を続けました。
「それと、ドラゴンフライ(とんぼ)ね」
「頭の上の枝をみてごらん。
スナップ・ドラゴンフライがいるでしょ。
からだはプラム・プディングで、羽はヒイラギの葉っぱ、頭はブランデーの中で燃える干しぶどうだよ」
「それは何を食べるの?」
「小麦プリンとミートパイ。
そして巣はクリスマスのプレゼントの箱の中につくるの」
「それと、黄斑(きはん)チョウっていうのもいたな」
アリスは、頭の燃えている昆虫をよーくながめて、
と思ってから続けました。
「きみの足下をはいずっているのが」
(とブヨに言われて、アリスはあわてて足をひっこめました)
「バタつきパンチョウね。
羽は薄いバタつきパンで、胴体が耳のところで、頭が角砂糖」
「それでこれはなにを食べてるの?」
「クリーム入りの薄い紅茶」
新しいなぞが、アリスの頭に浮かびました。
「もしそれが見つからなかったら?」
「そしたら死ぬよ、もちろん」
「でも、それってずいぶんよくありそうだけど」
とアリスは考えこんで言いました。
「しょっちゅうだよ」
とブヨ。
これをきいて、アリスはしばらくだまって考えこんでしまいました。
ブヨはその間、退屈しのぎにアリスの頭のまわりをブンブン飛んでいます。
最後にまた枝にとまって、こう言いました。
「きみって、名前をなくしたりしたくないよね」
「いいえ、まさか」
アリスはちょっと不安そうです。
「うん、でもどんなもんだろうね。
名無しで家に戻れたらすごく便利だと思わない?
たとえば家庭教師が授業できみを呼びたくても、『始めますよ、――』と言って止めるしかなくて、だって家庭教師が呼べる名前もないし、そうなったらもちろんきみもいかなくてすむわけでしょ」
「それじゃぜったいすまないわ、まちがいなく。
先生はぜったいにそんなことで、授業をやめたりしないもの。
あたしの名前が思い出せなければ、召使いたちを呼ぶときみたいに『ちょっと!』と言うだけよ」
「ふーん。
でももし先生が『ちょっと!』とだけしか言わなかったら、もちろん授業もちょっとしか出なくていいんだよね。
いまのはだじゃれだよ。
きみが言ったんならよかったのに」
「どうしてあたしが言ったらよかったと思うわけ?
ずいぶん寒いだじゃれなのに」
でもブヨは深いため息をついただけで、おっきな涙が二つ、ほっぺたを転がりおちてきました。
「そんなに不幸になるなら、だじゃれなんか言っちゃだめよ」とアリス。
そこにまた、あの憂鬱で小さなため息がきて、今回は哀れなブヨも、ため息で自分をはきだしきってしまったようです。
アリスが目をあげると、小枝にはなにも目に入るものはなくて、アリスとしてもじっとすわりっぱなしでちょっと寒くなってきたので、立ち上がって歩き出しました。
じきに開けた野原にやってきまして、その向こう側に森があります。
さっきの森よりずいぶん暗くて、アリスとしてもそこに入っていくのはちょっとだけこわかったんですが、
考え直して、森に入ることに決めました。
「だって、絶対に戻るのはいやだもの」
と思ったし、それに八升目につくには、これが唯一の方法でしたから。
とアリスは考えこみました。
「入ったら、あたしの名前はどうなっちゃうんだろう。
名前を全部なくしちゃうのはいやだな
――そうなったら別の名前がつけられるだろうし、どうせひどい名前になるに決まってるもの。
でも、そうしたらあたしのもとの名前をもらった生き物を探すのはおもしろいだろうな!
迷子の犬を探す広告とかみたいでしょう
――『「ポチ」と呼ぶと答えます:しんちゅうの首輪つき』
――だれかが返事するまで、会うものを片っ端から『アリス』と呼ぶのよ!
でも、賢ければ呼ばれても返事なんかしないと思うけど」
とかなんとか、いろいろぶつぶつ言っているうちに、森にやってきました。
とてもうっそうとして涼しそうです。
「なにはともあれ、とっても気持ちよさそうではあるわね」
とアリスは木々の下に入りました。
「こんなに暑かったところから、こんなひんやりした
――ひんやりしたなんだっけ?」
とアリスは、ことばが出てこないのにいささか驚いて続けました。
「つまりひんやりした――この――この、これの下、なんだけど!」
とアリスは、手を木の幹に触れました。
「これって、なんて自称してるんだろう。
まちがいなく、名前がないんだと思うわ
――絶対まちがいなくないわ!」
アリスはしばらくだまって考えこみました。
それから急にしゃべりだしました。
「じゃあほんとうに起きたんだわ!
それじゃあ、あたしはだれ?
思い出したいわ、思い出せるものなら!
絶対がんばって思い出すわ」
でもいくらがんばっても大した役にはたちません。
そしてさんざん首をひねったあげくに、アリスがやっと言えたのはこれだけでした。
「『リ』よ、ぜったいまちがいなく『リ』で始まったはず!」
ちょうど、子鹿がふらりとやってきました。
おっきなやさしい目でアリスを見つめましたが、ぜんぜんこわがっていないようです。
「おいで!
おいで!」
とアリスは手をのばしてなでようとしました。
でもそれはちょっととびのいて、またじっと立ってアリスを見つめています。
「きみ、なんていうの?」
子鹿はやっと言いました。
とってもやわらかくて甘い声でした!
「それがわかればねえ!」
とアリスは思いました。
そして、ちょっと悲しそうにこう答えました。
「いまはなにもないの」
とそれは言いました。
考えましたが、なにも浮かびません。
「お願い、あなたはなんていうの、教えてよ。
そしたらこっちも、思いだしやすくなるかも」
「もうちょっと先までいったら教えてあげる。
ここでは思い出せないの」と子鹿。
そこで両者は、森の中をいっしょに歩いていきました。
アリスは子鹿のやわらかい首に、愛しげに腕をまわしています。
でもやがて、また開けた野原にやってきました。
すると子鹿はとつぜん空中に飛び上がって、アリスの腕をふりほどきました。
「ぼくは子鹿だ!」
と喜びの声をあげます。
「そして、わあどうしよう!
きみは人間の子供じゃないか!」
その美しい茶色の目に、いきなり警戒の色が浮かんで、つぎのしゅんかんには全速力でかけ去ってしまいました。
アリスはそれを見送って立ちつくしていました。
こんなに急に、愛しい小さな旅仲間を失って、ほとんど泣きそうです。
「でも、もう自分の名前がわかるわ。
それはちょっとは安心だな。
アリス――アリス――もう二度とわすれないわ。
さて、あの道しるべのどっちにしたがったらいいのかな?」
これはとっても答えやすい質問でした。
森をぬける道は一つしかなかったし、二つの道しるべは、どっちも同じ方向を指していたからです。
とアリスはつぶやきました。
でも、どうやらそんなことにはならないようです。
アリスはひたすら前進して、ずいぶん歩いたのですが、道が分かれるたびに道しるべが二つあって、どっちも同じ方向を指しているのです。
一つはトゥィードルダムのおうち方面 → と書かれていて、
もう一つはトゥィードルディーのおうち方面 →と書かれています。
「これってどう考えても、二人とも同じ家にすんでるんだわ!
どうしていままで思いつかなかったのかしら
――でも長居するわけにはいかないわね。
ちょっといって、『ごめんください』と言って、森から出る道をきくだけね。
暗くなる前に八升目につかないと!」
そこでアリスはさらにぶらぶらとすすみ、ぶつぶつ独り言を言っていましたが、急な曲がり角を曲がると、ちびでデブな二人組に出くわしました。
いきなり出くわしたので、思わず飛びのいてしまいましたが、次のしゅんかんには気をとりなおして、これぞまさしく――
第 4 章 トゥィードルダムとトゥィードルディー
二人は木の下に立って、おたがいに相手の首に腕をまわしております。
どっちがどっちか、じきにわかりました。
片方がえりに「ディー」とししゅうしてあって、もう片方は「ダム」とししゅうしてあったからです。
「たぶん二人とも、えりのうしろ側に『トゥィードル』って書いてあるんでしょうね」
とアリスはつぶやきました。
二人とも、まるで動かなかったので、アリスは二人が生きていることを忘れて、二人ともえりの後ろに『トゥィードル』って書いてあるかどうかを見に、後ろにまわろうとしたとき、「ダム」と書いてある方が声をたてて、アリスはびっくりしてしまいました。
「ぼくたちがろう人形だと思うんなら、見物料を払いなさいよ。
ろう人形は無料で見るもんじゃない、如何様にも!」
と、「ディー」とついたほうがつけ加えました。
「ええ、ほんとに心からごめんなさいね」
アリスはそう言うのがやっとでした。
あの古い歌の歌詞が、カチカチ言う時計みたいに頭のなかで鳴り響いていて、ついそれを口に出してしまいそうだったからです:
――「トゥィードルダムとトゥィードルディー
決闘しようと取り決めたわけ
なぜってトゥィードルダム曰くトゥィードルディー
新品のすてきなガラガラを壊しめたわけ
ちょうどお化けガラスが舞い降りて
墨ツボみたいに真っ黒で
英雄たちはこわがって
口論もすっかり忘れましたとさ」
とトゥィードルダム。
「対照的に、そうであったなら、そうであったかもしれず、
そしてそうであったとすれば、そうであろう。
しかしそうでない以上、そうではあらぬのである。
それが論理というもの」とトゥィードルディーが続けます。
「あたしが考えていたのは、森から出るのにどの道がいちばんいいかってことなんです。
ずいぶん暗くなってきたし。
お願いですから、教えていただけませんか?」
でも、小さな男たちは、顔を見合わせてニヤニヤするだけでした。
二人とも、まったくなりの大きな小学生二人組そっくりだったもので、アリスはついついトゥィードルダムを指さして、
「いちばーん!」と叫んでしまいました。
「如何様にも!」
とトゥィードルダムは短く叫んで、すぐにぴったりと口を閉ざしてしまいました。
「にばーん!」
とアリスはトゥィードルディーに移りましたが、どうせ「対照的!」と叫ぶだけに決まってるわ、と確信しておりまして、まさにその通りでした。
「ちがうだろう!」
とトゥィードルダムはわめきました。
「人のところに訪ねてきたら、まっさきに言うのは『ごめんください』で、次に握手をするんだぞ!」
そしてここで兄弟二人はお互いに抱きあって、それからそれぞれ空いたほうの手をのばして、アリスと握手しようとしました。
アリスは、片方だけ先に握手するのはいやでした。
残ったほうが気を悪くするかもしれないからです。
そこでむずかしい状況をきりぬけるいちばんいい方法として、アリスは両方の手を同時ににぎりました。
次のしゅんかん、みんなは輪になっておどっていたのです。
これはとても自然に思えて(と後からアリスは思い出しました)、音楽が流れてきても、まるでおどろきませんでした。
音楽はみんながおどっている頭上の木から流れてくるみたいで、どうも(アリスがなんとかつきとめた範囲では)枝がお互いにこすれあって音楽になっているみたいでした。
バイオリンと、バイオリンの弓みたいな感じです。
「でも、ホントすっごくおかしかったのよね」
(とアリスはあとで、この一件すべてのおはなしをお姉さんにしているときに言いました。)
「あたし、いきなり『かごめかごめ(HERE WE GO ROUND THE MULBERRY BUSH)』をうたってるんだもん。
いつうたいはじめたのかはわかんないけど、でもずいぶん長いことうたってたような気がしたの!」
アリス以外のおどり手二人はでぶで、すぐに息をきらしてしまいました。
「一回のおどりで四周もすればじゅうぶん」
とトゥィードルダムがぜいぜい言って、みんなははじまったときと同じくらい、いきなりおどりをやめました。
音楽も、その同じしゅんかんに止まりました。
それから二人はアリスの手をはなしましたが、一分ほど立ったままアリスを見つめています。
これはなかなかきまりの悪い間で、アリスとしても、たったいままでおどっていた人たちとどういうふうに会話をきりだしていいのか、わかりませんでした、
「いまさら『ごめんください』でもないわよねえ。
なぜかもうそんな段階はすぎたみたい!」
「あまりお疲れじゃないといいんですけど?」
とうとうアリスは言いました。
「如何様にも。
それと、きいてくれてたいへんにありがとう」
とトゥィードルダム。
「実に感謝感激!」
トゥィードルディーがつけ加えました。
「詩はお好き?」
「え、ええ。
まあなかなか――全部じゃないですけど」
とアリスは、用心しながら言いました。
「森から出る道はどっちか教えていただけませんか?」
「この子に何を暗唱してあげようか?」
とトゥィードルディーは、荘厳な目をぱっちりと開けてトゥィードルダムのほうを見つめ、アリスの質問は無視しました。
「『セイウチと大工』がいちばん長いよ」
とトゥィードルダムが、兄弟を愛情こめて抱きしめながら答えました。
トゥィードルディーはすぐに始めました。
「おひさまピカピカ海の上――
ここでアリスは、思い切って口をはさみました。
「あの、それってものすごく長いんでしたら、まずは森から出る道を教えていただいて――」
トゥィードルディーはやさしくほほえむと、最初から暗唱しなおしました。
いまは夜のど真中。
のこのこじゃましにくるなんて!』
そもそも飛ぶ鳥なんかいないから。
なんとも豪勢だろうになぁ!』
辛苦の涙を流してる。
最高四匹までだよ』
する気はないよというつもり。
だってカキには足がない。
岸辺めがけて押し寄せる。
そこに並んで待っていた。
またはブタの翼の有無』
みんなこれには感謝した。
よければ食事を始めよう』
『なんともすてきなながめじゃないか』
二度も三度も言わせるな!』
『バターを厚く塗りすぎた!』
涙流れる目を隠しつつ。
だって一つ残らず腹の中」
「あたし、セイウチがいちばん好きだな。
だってあわれなカキたちのこと、ちょっとはかわいそうと思ってあげたでしょ」とアリス。
「でも、大工よりもいっぱい食べたんだよ。
ハンカチを口にあてて、いくつ食べたかを大工に数えられないようにして。
対照的に」とトゥィードルディー。
「それ、ひどいわ!
じゃあやっぱり大工がいちばん好き
――セイウチほどたくさん食べなかったんなら」とアリスは憤然として言いました。
「でも大工だって食べられるだけ食べたんだよ」
とトゥィードルダム。
これは悩ましい問題でした。
しばらく考えこんでからアリスは口を開きました。
「まったく!
どっちもずいぶんといやな連中で――」
ここでアリスは、ビクッとしてあたりを見まわしました。
ちかくの森から、おっきな蒸気機関車(じょうききかんしゃ)の音みたいなものが聞こえてきたからです。
アリスは、たぶん野獣じゃないかしらと思ったわけです。
「このあたりって、ライオンとかトラとかいるのかしら?」
アリスはびくびくしてたずねました。
「ありゃただの赤の王さま(キング)のいびき」
とトゥィードルディー。
「おいで、ごらんよ!」
と兄弟たちは叫んで、それぞれがアリスの手を一つずつにぎると、王さまの眠っているところまでつれてきました。
「なんて美しい姿だと思わない?」
とトゥィードルダム。
アリスとしては、これに心底賛成はできませんでした。
長い赤いナイトキャップをかぶって、王杓を持ち、みっともない山みたいに丸まってねっころがり、大いびきをかいているのです
――それもトゥィードルダムが言ったように「頭がはずれそうなくらいの大いびき」です。
「湿った草の上に寝てるなんて、カゼひいちゃうんじゃないかしら」
アリスはとても配慮のいきとどいた女の子だったので、こう申しました。
「夢を見てるんだよ。
それで、なんの夢を見てると思う?」とトゥィードルディー。
アリスは答えます。
「そんなのだれにもわかんないわ」
「いやぁ、きみのことだよ!」
とトゥィードルディーは、勝ち誇ったように手を叩きながら叫びました。
「そして王さまがきみのことを夢見るのをやめちゃったら、きみはどうなっちゃうと思う?」
「別にいまのままここにいるわよ、もちろん」
とアリス。
「きみはちがうね!」
とトゥィードルディーがバカにしたように切り返します。
「きみはどこにもいなくなっちゃうんだよ。
だってきみなんか、王さまの夢の中にしかいないモノじゃないか!」
「あそこにいるあの王さまが目をさましたら、
きみは――ボーン!――ロウソクみたいに消えちゃうんだよ!」とトゥィードルダムがつけくわえます。
「消えるわけないでしょ!」
アリスは怒って叫びました。
「それにもしあたしが王さまの夢の中にしかいないモノなら、そういうあなたたちはなんなのか、ぜひとも知りたいもんだわ!」
「それはこっちのせりふ。知りたいのはこっちだよ!」
とトゥィードルダム。
「こっちのせりふ、こっちのせりふ」
とトゥィードルディーも叫びます。
その叫び声がすごく大きくて、アリスはつい言ってしまいました。
「シーッ!
そんなに大声だしたら、王さまが目をさましちゃうでしょう」
「ま、きみが王さまを起こすの起こさないの言ってもしょうがないよ。
きみなんて、王さまの夢に出てくるものの一つでしかないんだもん。
自分だって、自分がほんものじゃないのはよーくわかってるんだろ」とトゥィードルダム。
「あたし、ほんものだもん!」
とアリスは泣き出しました。
「泣いたって、ちっともほんものになれるわけじゃなし。
泣くことないだろ」とトゥィードルディー。
「もしあたしがほんものじゃないなら」
――アリスは泣きながら半分笑ってました。
なんともめちゃくちゃな話だと思って
――「泣いたりできないはずでしょう」
「それがほんものの涙だとでも思ってるんじゃないだろうねえ」
とトゥィードルダムが、すごくバカにした調子で口をはさみます。
「でたらめ言ってるに決まってるわよね。
とアリスは思いました。
そこで涙をぬぐって、なるべく元気な声で言いました。
「とにかくあたし、そろそろ森から出たほうがいいわ。
だってすごく暗くなってきたでしょう。
雨が降るのかしら、どう思います?」
トゥィードルダムは、おっきな傘(かさ)を自分と兄弟の上にひろげて、それを見あげました。
「ううん、降らないと思うよ。
少なくとも――この下では。
如何様にも」
「でもその外なら降るかもしれないでしょ?」
「かもね――雨の気分しだいで」
とトゥィードルディー。
「ぼくらとしては異議なし。
対照的に」
「身勝手な連中ね!」
とアリスは思い、まさに「おやすみなさい」と言って二人を後にしようと思ったときに、トゥィードルダムが傘(かさ)の下からとびだして、アリスのうでをつかみました。
そして「あれが見えるか?」
と、気持ちがたかぶってのどがつまったような声で申します。
同時に、目をいっしゅんでおっきく黄色くしながら、木の下にころがっている小さな白いものを、ふるえる指で示します。
「ただのガラガラよ。
ガラガラヘビじゃないからね」
と、トゥィードルダムがこわがっているのかと思って、あわててつけ加えます。
「ただの古いガラガラよ
――すごく古いし、こわれてるし」
「そうじゃないかと思ったんだ!」
とトゥィードルダムは叫んで、足を踏みならし、もうれつに髪の毛をかきむしりだしました。
「もちろん壊れてるよな!」
そしてここでトゥィードルディーのほうをにらみつけます。
トゥィードルディーは、すぐにすわりこんで、かさの下に隠れようとしました。
アリスはトゥィードルダムのうでに手をのせて、なだめるように申しました。
「古いガラガラのことで、そんなに怒らなくてもいいじゃないの」
「でも古くないんだもん!」
とトゥィードルダムは、前にも増して怒りくるって叫びました。
「新品なんだよ
――きのう買ったばっかなんだもん!
――ぼくの新品のガラガラが!!」
ここで声は完全な金切り声になりました。
この間ずっとトゥィードルディーは、いっしょうけんめいかさをたたんで、自分もその中にたたみこまれようとしていました。
これは実に不思議なことだったので、アリスは怒っている兄弟のことをつい忘れてしまいました。
でも、さすがのトゥィードルディーも、これはうまくいかずに、結局はかさにからまったままころんでしまい、頭だけがつきだすかっこうになりました。
そしてそうやって転がったまま、口をぱくぱく、目をぱちくりさせています。
「なんというか、魚以外のなにものでもないわよね」
とアリスは思いました。
「もちろん決闘するのには合意するよな?」
とトゥィードルダムはもっと落ち着いた調子で申しました。
「まあ仕方ないか」
と相方は、かさからゴソゴソ這いだしながら、不機嫌そうに申します。
「でも、この子が着付けをてつだってくれないとね」
というわけで兄弟二人は、手に手をとって森の中へと向かい、しばらくしてから腕いっぱいにがらくたをかかえて戻ってきました
――たとえばクッションや毛布、じゅうたんやテーブルクロス、お皿のカバーや石炭ばけつなど。
「ピン留めとかひもを結んだりとか、じょうずだといいんだけど。
これ全部、一つ残らずなんとかしてつけてもらわないと」とトゥィードルダム。
あとでアリスの話によると、ほかのどんなことについてだって、これほどの大騒ぎなんか見たことない、とのこと
――二人ともあーだこーだと文句ばかり
――そしてこの二人が身につけたがらくたの量ときたら
――さらに、ひもをむすんだりボタンをとめたりするので、すさまじく手がかかるのです
――「いやぁ、もうなんというか、二人とも準備が整う頃には、古着のかたまりとしか言いようがなくなっちゃうはずだわ!」
とアリスは、トゥィードルディーの首に石炭入れをゆわえてあげながら思いました。
「頭を斬り落とされないようにするんだ」
とは当人の言。
「知ってるかい、これは決闘で起こり得るいちばん深刻な事態なんだよ
――頭を斬り落とされるってのは」
アリスは大笑いしてしまいましたが、
機嫌を損ねないよう、なんとかごまかして咳きこんだふりをしました。
「ぼくってすごく蒼ざめてる?」
とトゥィードルダムが、ヘルメットのひもをしばってもらいにきて言います
(ヘルメットと呼んではいましたが、それはどう見てもソース用のおなべにずっと似ていました。)
「ええ――まあ――その、ちょっとだけね」
アリスは優しく答えます。
「ぼくはいつもはとっても勇敢なんだ。
でも、きょうに限っては、たまたま頭痛がしてるんでね」とトゥィードルダムは声を落としてつづけます。
「ぼくなんか歯が痛いんだぞ!
とトゥィードルディーが、いまのせりふをもれ聞いてもうします。
「じゃあ、二人ともきょうは闘わないほうがいいわよ」
とアリスは、争いをおさめるいい機会だと思っていいました。
「でもちょっとくらいは闘わないと。
そんなに長くやんなくてもいいけど。
いま何時?」とトゥィードルダム。
トゥィードルディーは時計を見ました。
「四時半」
「六時まで闘って、それから晩ごはんにしよう」
とトゥィードルダム.
「しかたないか」
と相方は、いささか悲しそうに言いました。
「そしてこの子は見てるといい
――でも、あんまり近くにきちゃダメだよ」
とつけ加えます。
「ぼくは目に入ったものには、片っ端から斬りつけちゃうからね
――すっごく興奮してきたときには」
「そしてぼくは届く範囲のものならなんでも斬りつけるんだぞ、見えようと見えまいと!」とトゥィードルダムがどなります。
アリスは笑いました。
「だったら二人とも木にしょっちゅう斬りつけるってことになりそうね」
トゥィードルダムは、満足そうな笑顔であたりを見まわしました。
「ぼくたちが戦い終える頃には、見渡す限り一面、立っている木は一本もないであろうぞ!」
「ガラガラ一つでそこまでやるの?」
アリスは、こんなつまらないことで闘うなんて、ちょっとは恥ずかしいと思わせられるんじゃないか、とまだ思っていました。
とトゥィードルダム。
「お化けガラスが出てきてくれないかなあ!」
とアリスは思います。
「剣は一本しかないなあ。
でもおまえは傘(かさ)を使っていいよ
――かなり鋭いしね。
でも、はやいとこはじめよう。
とことん暗くなってきてるし」とトゥィードルダムが兄弟に言います。
「とことんよりも暗いよ」
とトゥィードルディー。
すごく急に暗くなってきたので、アリスは雷雨がやってきたんだと思ったほどです。
「すごく濃い黒雲だわ!
それもすごいいきおい!
まあどうみても翼が生えてるじゃない!」
「あのカラスだ!」
とトゥィードルダムが警告の金切り声をあげまして、
兄弟二人はあっという間にしっぽを巻いて姿を消してしまいました。
アリスはちょっと森の中にかけこんで、おっきな木の下で止まりました。
「ここならぜったいつかまらないわ。
おっきすぎて、木の中にまで入ってこられないもの。
でも、あんなにはでに羽ばたかないでくれればいいのに
――森の中に、すごい嵐が起きたみたい
――ほら、だれかのショールがとばされてきたわ!」
第 5 章 ウールと水
そう言いながらアリスはショールをつかまえて、持ち主はだれかな、とあたりを見まわしました。
次のしゅんかん、白の女王(クイーン)さまが森を猛然と駆け抜けてきました。
まるで飛んでいるかのように、両腕を左右に大きくひろげています。
アリスは、とっても礼儀正しく、ショールをもって女王(クイーン)さまに会いにでかけました。
「ちょうど飛んできたところにいられて光栄でしたわ」
とアリスは、女王(クイーン)さまがショールを着るのをてつだってあげながら言いました。
白の女王(クイーン)さまは、とほうにくれたような、おびえたような感じでアリスのほうを見つめただけで、なにか小声でブツブツくりかえすばかりです。
どうも「バタつきパン、バタつきパン」と言ってるみたいです。
会話をしたければ、こっちから始めるしかないな、とアリスは思いました。
そこでちょっとおずおずと切り出してみました。
「あの、白の女王(クイーン)さまとお見受けしますが、相違(そおい)ございませんよね?」
「ええ、まあ確かにこの装(よそお)いは、ないも同然ですわね。
わたくしとしてもこんなの、装(よそお)いになってないとは思いますよ」と女王さま。
アリスは、会話を切り出したとたんに口論をはじめても仕方ないと思いましたから、にっこりしてつづけました。
「陛下、どこから手をつけるのをお望みかおっしゃっていただければ、できる限りのことはしてさしあげますけれど」
「でもわたくしは、ぜんぜんしてほしくなんかございませんですのよ」
とかわいそうな女王さまはうめきます。
「わたくし、自分で過去二時間にわたって、着付けをし続けてきたんでございますから」
アリスの目から見ると、だれか別の人に着付けをしてもらったほうがずっとましなようでした。
女王(クイーン)さまは、まったくどうしようもなくひどい身なりなのです。
「なにもかもひんまがってるし」
とアリスは思いました。
「それにピンまみれ!
――ショールをまっすぐにしてさしあげましょうか?」
最後のところは声に出して申しました。
「まったくこのショール、どこがおかしいのやらぜんぜん」
と女王さまは、ゆううつそうな声で申します。
「えらくご機嫌ななめでございましてねえ。
あっちもこっちもピンでとめてやったのに、ぜんぜん言うことをきいてくれやしないんですの!」
「まっすぐなれって言っても無理ですよ、こんなピンを片側だけでとめたら」
と言いながらアリスは、やさしくそれをちゃんと整えてあげました。
「それと、あらまあ、髪の毛もひどいことになってますね!」
と女王(クイーン)さまはため息をつきます。
アリスは注意してブラシをはずし、せいいっぱい髪をきちんとしてあげました。
「さあ、これでかなりよくなりましたよ!
でも 、ホントに着付け係のメイドを雇われたほうがいいですよ」
「あなたなら喜んで雇ってさしあげますけれど!
と女王さま。
アリスはついつい笑ってしまいました。
「いいえ、遠慮させていただきます
――それにジャムもいりませんし」
「とっても上等のジャムなんでございますよ」
と女王(クイーン)さま。
「ええ、でもどのみちきょうはジャムはほしくないですし」
「ほしくても、もらえやしませんよ。
それがルールでございますからね」と女王さま。
「でもいつかは今日のジャムになるはずでしょう」
とアリスは反論します。
「いいえ、なりませんね。
ジャムは一日おきですからね。
今日だと、一日おいてないでしょうに」
「よくわかんないです。
とてつもなくややこしくて!」とアリス。
「逆回しで生きてるとそうなっちゃうんですよ」
と女王さまは優しく申します。
「最初はみんな、ちょっとクラクラするみたいで――」
「逆回しに生きる!
そんなの聞いたこともないわ!」
「――でも大きな利点が一つあって、それは記憶が両方向に働くってことなんでございますよ」
「あたしのはぜったいに一方向にしか働きませんけど。
何かが起きる前にそれを思いだしたりはできないから」とアリスは申します。
「うしろにしか働かないなんて、ずいぶんと貧弱な記憶でございますわねえ」
と女王さま。
「じゃあ陛下は、どんなことをいちばんよく覚えてらっしゃるんですか?」
アリスはあえてたずねました。
「ああ、再来週に起こったことですわねえ」
と女王さまはあたりまえのように申しました。
そして、おっきな絆創膏(ばんそうこう)をゆびに巻きつけながら続けます。
「たとえばいまなんか、王さまの伝令のこととか。
牢屋に入れられて、罰を受けているんでございますよ。
裁判は来週の水曜まで始まらないし、
もちろん犯罪はいちばん最後にくるし」
「でも、その人が結局犯罪をしなかったら?」
とアリス。
「それは実に結構なことではございませんの、ねえそうでございましょう?」
と女王は、ゆびの絆創膏(ばんそうこう)をリボンでしばりました。
アリスとしては、確かにそれは否定できないな、と思いました。
「確かにそれは結構なことかもしれないけれど、
でもその人が罰を受けたのは、ちっとも結構じゃないと思う」
「なにはともあれ、それは大まちがい。
あなた、罰を受けたことは?」と女王さま。
「悪いことをしたときだけ」
とアリス。
「そして罰を受けて、いい子におなりになったわけでしょう!」
と女王さまは勝ち誇ったように言います。
「ええ、そうですけれど、でも罰を受けるようなことを最初にやったわけじゃないですか。
ぜんぜん話がちがいますよ」とアリス。
「でも、そういうことをやっていなかったなら、
もっとよろしかったわけですわよねえ。
ねええ!
もっとずっとよろしかったですわよねええええ!」
女王さまの声は、「ねえ」と言うごとにかん高くなって、最後はキイキイ声にまでなってしまいました。
アリスは「それってどっかおかしい――」と言いかけましたが、
そのとき女王さまがすさまじい叫び声をあげだして、中断するしかありませんでした。
「あいたたた、いたたた、いたた!」
と女王さまは叫びながら、手を振り落としたいかのように、猛然とふっています。
「指から血が出てる!
いたたたた、いたたた、あいたたた、いたた!」
その金切り声は、蒸気機関車の汽笛そっくりで、アリスは両手で耳をふさいでしまいました。
「いったいぜんたいどうしちゃったんですか?
指を刺したんですか?」
「まださしてはおりませんことよ。
でももうすぐ
――いたたた、あいたた、いたた!」
「いつ刺すつもりなんですか」
とききながらもアリスはついつい笑い出したい気分でした。
「こんどショールを止めるときですよ。
ブローチがポロッとはずれるんでございます。
あら、あらら!」
そう言う間にブローチがパチンとはずれて、女王さまはあわててそれをつかみ、とめなおそうとしました。
「気をつけて!
持ち方が曲がってます!」
とアリスは叫びながらブローチのほうに手を伸ばしました。
でも手遅れです。
ピンがずれて、女王さまは指を刺してしまいました。
「いまののおかげで血が出たわけでございますわね。
これでここでの物事の起こり方がおわかりになったでしょう」と女王さまはにっこりしました。
「でも、どうしていま叫ばないんですか?」
アリスは耳をふさごうと、手をあげたままききました。
「だって、叫ぶのはさっきたっぷりやったじゃござませんの。
いまさらやりなおすこともありませんでしょう」と女王さま。
そろそろ明るくなってきました。
「カラスは飛んでっちゃったみたいですね。
行っちゃってくれて、ホントにうれしいな。
夜になってきたのかと思った。」とアリス。
「わたしもそんなふうにうれしくなれたらよいんでございますけどねえ!」
と女王さま。
「でも、やりかたを失念してしまったものでして。
あなたはこの森に住んで、好きなときにうれしくなれて、さぞかし幸せなんでございましょうねえ!」
「でも、ここはとてもすごくさびしいんです」
とアリスはゆううつな声で言いました。
そしてひとりぼっちなのを考えると、おっきな涙が二つ、ほっぺたをつたって流れ落ちました。
「あらあら、ちょっとおよしなさいって!」
とあわれな女王さまは、困り果てて手をもじもじさせます。
「自分がどんなにえらい子か、考えてごらんなさいな。
きょう、どれほど遠くまできたか考えてごらんなさいな。
いま何時か考えてごらんなさいな。
なんでもいいから考えてごらんなさいな、なんでもいいから、とにかく泣くのはおよしなさいって!」
アリスは泣きながらも、これには笑わずにはいられませんでした。
「陛下は、ものを考えると泣かずにいられるんですか?」
「それがやり方なんですよ」
と女王さまは、すごく確信をこめて申しました。
「二つのことを同時にできる人はいませんからね。
じゃあまず、あなたの歳から考えてみましょうか
――あなた、おいくつ?」
「ちょうど七歳半です」
「『ちょうど』はなくてよろしい。
それがなくても、十分に信じられますよ。
さて、じゃああなたに信じられるものをあげましょうか。
わたくしの年齢は正確に百一歳五ヶ月と一日なんでございますよ」
「それは信じられないわ!」
とアリス。
「信じられない、ですって?
もう一回やってごらんなさいな。
はい、まず深呼吸して目を閉じて」
アリスは笑いました。
「やるだけ無駄です。
ありえないことは、信じろと言われても無理ですもん」
「言いたくはございませんが、どうも練習が十分でないごようすですわね。
わたくしがあなたくらいの歳には、毎日三十分必ず練習したものでございますよ。
ときには、朝飯前にありえないことを六つも信じたくらい。
あら、ショールがまた風に飛ばされた!」
そう言う間にブローチがはずれて、突風がふいて、女王さまのショールを小川の向こうに吹き飛ばしました。
女王さまはまたうでをひろげて、ショールを追いかけて飛んでいき、こんどは自分でショールをうまいことつかまえました。
「つかまえた!」
と女王さまは勝ち誇ったように申します。
「さあ見てなさい、こんどは自分一人できちんとピン留めしてみますからね!」
「まあ、そしたら指はもうよくなったんですか?」
とアリスは、女王さまを追いかけて小川を渡りながら礼儀正しく申しました。
「ああ、ずっといいみたいですわね。ねええ!」
と女王さまは叫びましたが、声はだんだんキイキイ声になってきます。
「いいみたいですわねええええ!メエエエエ!」
最後の一言は実に長くのびて、すごくヒツジっぽくて、アリスはすごくびっくりしてしまいました。
女王さまを見てみると、なにやらいきなりウールにくるまってしまったようです。
アリスは目をこすってもう一度見直しました。
なにが起きたのか、まるっきりわかりませんでした。
これはお店の中にいるのかしら?
そしてアレは本当に
――カウンターの向こうにすわっているアレは、本当にヒツジでしょうか?
いくら目をこすってみても、それ以上のことはまるでわかりません。
アリスは小さな暗いお店の中にいて、カウンターにひじをついてよりかかっていて、その向かいには歳取ったヒツジが、安楽いすにすわって編み物をしていて、ときどき手をやすめて、おっきなめがねごしにアリスをながめるのです。
「なにを買いたいんだね?」
やっとヒツジが、編み物の手をちょっと止めて目をあげながら言いました。
「まだよくはわからないんだけれど。
ぐるっと見てまわりたいんですけど、いいですか?」とアリス。
「自分の前を見るのも、左右を見るのも、お好きなように。
でもぐるっと見るのは無理だよ
――頭のうしろにも目がついてるんでなけりゃね!」とヒツジ。
でも、残念ながらアリスには、そういうものはついていませんでした。
そこでアリスはふりかえって、それぞれの棚の前にきたときに、それをながめるだけで満足しました。
お店はいろいろ変わったものだらけのようでした
――でもいちばん変てこだったのは、どのたなも、いっしょうけんめい見つめて何がのっかっているのか調べようとすると、そのたなだけにはまるで何もなくなってしまうということでした。
そのまわりのたなは、思いっきりいっぱい、のるだけ詰めこまれているのに。
「ここじゃ何もかも、まるでじっとしてないのね!」
アリスはついに、憤然と申しました。
一分かそこら、ときに人形みたいに見えて、特に道具箱みたいに見える、おっきな明るい色の物体を追いかけようとしていたのですが、それはいつも、アリスが見ている一つ上のたなにあるのです。
「なかでもこれはいちばん頭にくるわ
――でも、そうだ、こうすればいいんだ――」
と急に思いついてアリスはつけ加えました。
「いちばんてっぺんのたなまで、この調子でおっかけてけばいいのよ。
さすがに天井を通り抜けるのはまごつくはずだわよね!」
でもこの計画でさえ失敗してしまいました。
その「物体」は、思いっきり静かに天井を通り抜けてしまったのです。
もう何度もやりつけている、とでもいわんばかりに。
「あんたは子どもか、それともコマかね?」
とヒツジは、編み針をさらに一組み手にとりました。
「そんな具合にくるくる回ってたら、そのうちこっちの目までまわってしまうよ」
いまやヒツジは、編み針を十四組同時に使っています。
アリスは感心しきって、思わずヒツジをまじまじと見つめてしまいました。
「あんなにいっぱいで、どうして編めるんだろう」
と不思議に思った子どもは考えます。
「しかも一分ごとにどんどん増えていって、もうヤマアラシみたい!」
「ボートはこげる?」
とヒツジは、編み針を一組こちらに手渡しながらききました。
「ええちょっとなら
――でも地面の上じゃなくて
――それと編み針でこぐのも――」
と言いかけたとき、編み針が手の中でオールに変わり、気がつくと二人は小さなボートに乗って、岸辺の間をただよっているのでした。
というわけで、アリスとしては精一杯にこぐしかありませんでした。
「羽根(フェザー)!」
とヒツジは、またもや編み針を追加しながら叫びます。
これは返事が必要なせりふには聞こえませんでしたので、アリスはなにも言わずに船を出しました。
この水って、なんかすごく変だわ、と思いました。
というのも、しょっちゅうオールがつかえて、ほとんど出てこなくなってばかりいるのです。
「羽根(フェザー)!
羽根(フェザー)!
その調子だと、そのうちもろにニをつかまえちゃうよ」
「カニなんて、かわいい!
ぜひつかまえたいな」とアリスは思いました。
「羽根(フェザー)って言ったのが聞こえなかったのかい?」
とヒツジは怒って、編み針をさらに大量に増やしました。
「聞こえましたと。
ずいぶん何度もおっしゃったし
――それにとっても大声で。
ねえ、そのカニって、どこにいるんですか?」
「水の中に決まってるでしょうが!:
とヒツジは、手がいっぱいだったもので髪の毛に編み針を刺しています。
「だから羽根(フェザー)って言ってるのに!」
「いったいどうしてさっきから『羽根(フェザー)』ばっかりおっしゃるんですか?
わたし、鳥じゃありません!」
「鳥だよ。
それもちっちゃなガチョウ」
これでアリスはちょっと腹が立ったのでしばらくは会話がありませんでしたが、その間にもボートはゆっくりとただよい、ときどき水草の茂みの中(こうなると、オールは水の中でびくともしなくなり、いつにも増してひどいことになります)、そして時には樹の下を通りますが、いつでも頭上には、同じ背の高い川岸がそびえているのでした。
「まあお願い!
トウシンソウが咲いてるわ!」
とアリスは、いきなり喜びにあふれて叫びました。
「ホントにトウシンソウなんだ
――それも、すっごいきれい!」
「その件でわたしに『お願い』されたって知りませんよ」
とヒツジは編み物から目もあげません。
「わたしが植えたもんじゃないし、それをどかす気もありませんからね」
「ええ、そうだけど、つまり
――お願いですから、ちょっととまって少しつんでもいいですか?
ボートをしばらく止めましょうよ」とアリスはお願いします。
「このわたしにどうやって止めろと?」
と羊。
「あんたがこぐのをやめたら、勝手に止まりますよ」
というわけで、ボートはそのまま流れをただようままにほうっておかれ、やがてゆらゆらと、風にそよぐトウシンソウのしげみに入り込んでいきました。
そして小さなそでが注意深くまくりあげられて、小さな腕がひじまでしげみに差しこまれて、トウシンソウをなるべく根っこ近くで折り取ろうとするのでした
――そしてしばらくアリスは、ヒツジのことも編み物のこともすっかり忘れて、ボートのふちから身を乗りだして、もつれた髪の先だけが水にふれています
――そして目を熱心に輝かせながら、一束、また一束と、愛らしくかぐわしいトウシンソウをつんでゆくのでした。
「ボートがひっくりかえらないといいんだけど!
あら、あそこのがすごくきれい!
でも、ちょっと手が届かない」とアリスは考えます。
そして確かに、それはちょっと頭にくることではありました
(「まるでわざとやってるみたい」とアリスは思いました)。
ボートがただようにつれて、きれいなトウシンソウはいっぱいつんだのですが、でも手の届かないところに、いつももっときれいなやつがあるのです。
「いちばんきれいなのが、いつもちょっと遠くにあるのね!」
とアリスは、とうとうあまりに遠くに咲いているトウシンソウの頑固さにため息をついて申しました。
ほっぺたを赤くして、髪と手からは水をポタポタたらしながら、アリスはまたもとの場所に戻ると、見つけたばかりの宝物をならべはじめました。
そのときには、つんだ瞬間からトウシンソウがしおれだし、香りも美しさもなくしつつあったなんてことは、アリスにはまるで気にもなりませんでした。
本物のトウシンソウだって、ごく短時間しかもたないのです
――そしてこれは、夢のトウシンソウだったのですから、アリスの足もとで束になって転がるうちに、ほとんど雪みたいにとけてしまうのです
――でも、アリスはほとんど気がつきもしません。
ほかにいろいろ不思議なことで頭がいっぱいだったのです。
ちょっと先に進んだとたん、オールが水の中でつっかえて、どうしても出てこようとしません
(とアリスは後になって説明いたしました)。
その結果として、オールの握りがアリスのあごにあたって、そしてかわいそうなアリスが何度か「あらら!」と叫んでも、そのままアリスは座席から投げ出されて、トウシンソウの山に埋もれてしまいました。
でも、けがはなくて、アリスもすぐに起きあがりました。
ヒツジはその間、ずっと編み物を続けています。
なにごとも起きなかったかのように。
「なかなかたいそうなカニをつかまえたねえ!」
もとの場所にもどって、自分がボートから投げ出されなくてほっとしているアリスに向かって、ヒツジは申しました。
「あらそうでしたか?
あたしには見えませんでしたけど」
とアリスは、おそるおそるボートのふちから暗い水の中をのぞきこみました。
「だったらオールをはなすんじゃなかったわ
――うちに持って帰れるような、ちっちゃなカニだったらよかったな!」
でもヒツジは、バカにした感じでせせら笑うと、編み物を続けました。
「ここらへん、カニは多いんですか?」
とアリス。
「カニとか、いろんなものがね。
もう選ぶものならたっぷりと。
だから腹を決めなさいな。
さあ、いったいなにが買いたいね?」
「買いたいって!」
とアリスは、半分おどろいて、半分こわがって声をあげます
――というのもオールとボートと川は、みんないっしゅんで消え失せて、またあの小さな暗い店の中にいたからでした。
「じゃあ、たまごをくださいな。
どういう売り方なんですか?」とアリスはおずおずとたずねます。
「一つは五ペンス硬貨一つ――二つなら二ペンス」
とヒツジは答えます。
「じゃあ、一つより二つのほうが安いの?」
アリスはお財布を出しながらもびっくりして言いました。
「ただし、二つ買ったら、ぜったいに両方食べなきゃダメなんだよ」
とヒツジ。
「それなら、一つくださいな」
とアリスは、カウンターにお金をおきました。
と内心思います。
ヒツジはお金を受け取ると、箱にしまいました。
それからこう言いました。
「あたしはぜったいに物を手渡さないんですよ
――それはぜったいダメ
――あんたが自分でとらないと」
そういいながら、ヒツジは店の反対側にまで行って、たまごを棚にたてました。
「どうしてそれがダメなんだろう」
と思いながら、アリスはテーブルや椅子の間を、苦労しながらかきわけて行きました。
店は奥のほうにいくほど、すごく暗くなっていったのです。
「あのたまご、向かっていけばいくほど遠くにいっちゃうみたい。
えーと、これって椅子?
あら、枝がついてるじゃないの!
こんなところに木が生えてるなんて、変なの!
それにこんなところに小川まで!
まあこんな変なお店って、いままで見たこともないわ!」
そしてアリスは先へ進みました。
でも、何もかも近くによったとたんに木に変わってしまうので、どんどん不思議になってきました。
だから、たまごも近づくと木になるんだろうと思いこんでいました。
第 6 章 ハンプティ・ダンプティ
でも、たまごはどんどん大きくなるばかりで、どんどん人間じみてきました。
あと数メートルのところまでくると、そのたまごには目も鼻も口もついているのがわかります。
そして間近にきてみると、それがまさに他ならぬハンプティ・ダンプティだというのがはっきりわかりました。
「ほかに考えられないわ!
顔中にハンプティ・ダンプティの名前が書いてあるくらいはっきりわかる」とアリスはつぶやきました。
それはそれは巨大な顔だったもので、百回書いてもまだ余ったでしょう。
ハンプティ・ダンプティは高い壁のてっぺんに、トルコ人みたいにあぐらをかいてすわっていました
――それもすごく薄い壁で、どうやってバランスをとっているのか、アリスは不思議でたまりません
――そして目はしっかりとあさっての方向に固定されていて、こっちのほうをまるで見ようともしないので、実はぬいぐるみなんだろうとアリスは思いました。
「それにしても、ほんとにたまごそっくりよねぇ!」
とアリスは声に出していいながら、腕を広げてかれをキャッチしようとしていました。
いまにも落ちてくるものと確信していたからです。
ハンプティ・ダンプティは、ながいこと何も言いませんでした。
そして、口を開いたときには、アリスのほうを見ないようにしています。
「たまご呼ばわりされるとは、実に不愉快千万――実に!」
「たまごそっくりに見えるって申し上げたんです」
アリスはていねいに説明しました。
「それに、世の中にはすごくきれいなたまごもあるじゃないですか」
とつけくわえて、なんとか自分のせりふをほめことばに仕立てようとしてみます。
「世の中には」
とハンプティ・ダンプティは、さっきと同じく目をそらしています。
「赤ん坊なみの常識もないようなやつらもいるんだからな!」
アリスは、なんと答えていいやらわかりませんでした。
まるっきり会話らしくないわね、だってハンプティ・ダンプティは、あたしに向かってはなにも言わないんだもの、とアリスは思いました。
いや、さっきのせりふだって、見た目には近くの木に向かってのせりふです
――そこでアリスは立ったまま、静かに暗唱しました:
――「ハンプティ・ダンプティ壁の上
ハンプティ・ダンプティ大転落。
王さまの馬や兵隊総がかりでも
もとの場所には戻せぬハンプティ・ダンプティ」
「最後の行は、この詩にはちょっと長すぎるのよね」
とアリスは、ほとんど声に出して言いそうになりました。
ハンプティ・ダンプティに聞こえるかもしれないのを忘れていたのです。
「そんな突っ立って一人でブツブツ言ってるんじゃない。
名前と用件を述べたまえ」
「あたしの名前はアリスですけど、でも――」
「聞くからに間抜けな名前だ!」
とハンプティ・ダンプティは、短気そうに口をはさみます。
「それでどういう意味?」
「名前って、意味がなきゃいけないんですか?」
アリスは疑わしそうにたずねます。
「いけないに決まってるだろうが」
ハンプティ・ダンプティはちょっと笑いました。
「わたしの名前はといえば、これはわたしの形を意味しておる
――しかも、すてきでかっこいい形であるな。
あんたのみたいな名前では、ほとんどどんな形にだってなれそうじゃないか」
「なぜたった一人でこんなところにすわってらっしゃるんですか?」
アリスは口論をはじめたいとは思わなかったのでこう言いました。
「そりゃもちろん、ここにはほかにだれもいないからだよ!」
とハンプティ・ダンプティ。
「その程度のものに答えられんとでも思ったか!
次いってごらん」
「地面におりたほうが安全だと思わないんですか?」
アリスは、別になぞなぞを続けようと思ったわけではなく、単にこの変な生き物に対し、善意から心配してこう言ったのです。
「だってその壁、とってもせまいじゃないですか!」
「なんともまあ、えらく他愛のないなぞなぞばかりをきくもんだな!」
とハンプティ・ダンプティはうなるように言います。
「もちろんそんなことは思わんとも!
それにもしわたしが仮に本当に落ちたとしても
――もちろんそんなことはまったくあり得んことだが
――でも、仮にもし落ちたとしたら――」
ここでハンプティ・ダンプティは口元を引き締めて、えらく荘厳でえらそうな様子を見せたので、アリスは笑いをこらえるのが精一杯でした。
「仮にもし落ちたとしても、
王さまが約束なさってくだされて
――えへん、なんならあおざめてくれたっていいんだぞ!
「配下の馬や兵隊さんを総がかりで送る、でしょ」
とアリスは、いささか軽率にもわりこみました。
「いやまったくこりゃひどい話だ!」
ハンプティ・ダンプティはいきなり、憤怒にかられて叫びました。
「戸口で聞き耳をたててたな――木に隠れて――煙突にもぐって――さもなきゃそんなこと知ってるわけがない!」
アリスはとても静かに申しました。
「ああそうね!
そういうことも本になら書くだろうさ」
ハンプティ・ダンプティは、もっと落ち着いた口調で言いました。
「それがイギリスの歴史ってもんだからね、つまるところ。
さ、このわたしをよっくごらん!
わたしは王さまと話したことがあるヤツなんだからな、このわたしが:
そんなやつには、ちかってほかにお目にかかったことがあるまい。
でも鼻にかけてないのを示すため、あんたと握手してあげようではないの!」
そして前にかがむと同時に(そしてそのせいで、ほとんど壁からおっこちかけましたが)ほとんど耳から耳へ届くように、にんまりと笑って見せて、アリスに手を差し出します。
アリスは、その手を握り返しながらも、ちょっと心配になってハンプティ・ダンプティを見つめていました。
「これ以上にんまりしたら、口の端が裏側でくっついちゃうんじゃないかしら。
そしたら、頭はいったいどうなっちゃうことやら!
ポロッと落ちちゃうかも!」
「そうとも、配下の馬や兵隊を総がかりでな」
とハンプティ・ダンプティは続けました。
「たちまちまた拾い上げてくれる、まちがいなくね!
しかしながら、この会話は先を急ぎすぎておる。
もう一つのそのまた一つ前のせりふに戻ろうではないの」
「どうも、はっきり覚えていないんですが」
アリスはとてもおぎょうぎよく申しました。
「それならば最初からやりなおそう。
こんどはわたしが話題を選ぶ番だ――」とハンプティ・ダンプティ。
(「これがゲームかなんかみたいな言い方ね!」
とアリスは思いました。)
「そこであんたに質問。
あんた、いくつだって言ったっけね?」
アリスはちょっと計算して言いました。
「七つ半です」
「ブーッ!おおまちがい」
ハンプティ・ダンプティは勝ち誇ったように言います。
「あんたそんなこと、一言も言ってやしないだろう!」
「『何歳なの?』っていう意味だろうと思ったんですけど」
とアリスは説明しました。
「そういう意味のつもりなら、そういうふうに言ってるよ」
とハンプティ・ダンプティ.
アリスはまた口論をはじめる気はなかったので、なにも申しませんでした。
「七歳六ヶ月とはね!」
ハンプティ・ダンプティは考え込むように繰り返します。
「なんか落ち着かない年頃だわな。
さて、もしこのわたしに相談してくれてたら、『七歳でやめとけ』と言っただろうが
――もう手遅れだな」
「育ち方を人に相談したりなんかしません」
アリスは頭にきて言いました。
「自尊心が許しませんってわけかい」
と相手がつっこみます。
そう言われてアリスはなおさら頭にきました。
「そうじゃなくて、人が歳をとるのはどうしようもないでしょうって意味です」
「一人ならそうかもな。
でも二人ならどうしようもある。
しかるべき助けがあれば、七歳でやめとけたかもしれないのにねぇ」とハンプティ・ダンプティ。
「そこにつけてらっしゃるベルト、すごくきれいですね!」
アリスはいきなりもうしました。
(歳のはなしはもういい加減たくさんだと思ったのです。
そして話題を順番に選ぶというのがほんとうなら、こんどは自分の番だ、とアリスは考えました。)
「もとい」
と考え直して訂正します。
「きれいなチョーカーですね、と言うべきだったかしら
――いいえ、やっぱりベルト、じゃなくて
――あらごめんなさい!」
アリスはがっかりして付け加えました。
ハンプティ・ダンプティはすっかり怒ってしまったようで、別の話題にすればよかったとアリスは後悔しはじめたのです。
「まったく、どこが首でどこがウェストだかわかったらいいのに!」とアリスはこっそり考えました。
しばらく何も言わなかったものの、あきらかにハンプティ・ダンプティはとても怒っていました。
そしてやっと再び口をきいたときにも、それは深いうなり声でした。
「まったく――なんと言ったらいいか
――ベルトとチョーカーの区別もつかんとは
「はい、もの知らずなのはわかってるんですけど」
とアリスはじつにへりくだった調子で言ったので、ハンプティ・ダンプティも機嫌をなおしたようです。
「これはチョーカーだよ、おじょうちゃん。
しかもその通り、非常に美しいものだね。
白の王さまと女王さまからの贈り物なのだよ。
どうだね!」
「まあ、そうなんですか」
アリスは、やっぱりこれはいい話題を選んだとわかって、とてもうれしく思いました。
ハンプティ・ダンプティは、片ひざを反対のひざのうえにのせて、それをそれぞれの手でつかみました。そして、考え深そうに続けます。
「お二人はこれをだね――
非誕生日プレゼントとしてわたしに賜ったのであるのだ」
「あの、すみません」
とアリスは、不思議そうに言いました。
「別に怒っちゃいないよ」
とハンプティ・ダンプティ。
「そうじゃなくて、いったい非誕生日のプレゼントってなんなんですか?」
「お誕生日じゃないときにもらうプレゼントだよ、もちろん」
アリスはちょっと考えこみました。
そしてやっと「あたしはお誕生日のプレゼントがいちばんいいな」
と言いました。
「あんた、自分がなに言ってるかわかってんの?」
とハンプティ・ダンプティ。
「一年は何日?」
「三百六十五」
とアリス。
「で、あんたのお誕生日は何回?」
「一回」
「それで三百六十五から一を引いたらなんになる?」
「三百六十四よ、もちろん」
ハンプティ・ダンプティは疑わしそうな顔をします。
「紙に書いてもらったほうがいいな」
アリスはメモ帳を取りだして、計算をしてあげながらも、つい笑ってしまいました。
ハンプティ・ダンプティはメモ帳をとって、しげしげと見つめ、
「正しいように見えなくもないが――」
と切り出しました。
「逆さにお持ちですけど!」
とアリスが口をはさみます。
「いやはやその通りだ!」
とハンプティ・ダンプティは、アリスにメモ帳をひっくり返してもらって陽気に言いました。
「どうも様子がへんだとは思ったんだ。
で、言いかけていたように、正しいように見えなくもない
――が、いまじゅうぶんに目をとおしてる暇がないもんでね
――そしてこれで、非誕生日プレゼントをもらえるかもしれない日が三百六十四日あって――」
「そうね」
とアリス。
「そしてお誕生日プレゼントの日は一回しかないのがわかる。
さあのめや歌えや!」
「のめや歌えやって、なにをおっしゃってるのかわかんないです」
とアリス。
ハンプティ・ダンプティはバカにしたような笑いを浮かべます。
「そりゃわかんないだろうよ
――わたしが説明してやるまではね。
いまのは『さあこれであんたはこの議論で完全に言い負かされたわけだ』という意味だ」
「でも『のめや歌えや』って、『これであんたはこの議論で完全に言い負かされた』なんて意味じゃないでしょう」
とアリスは反論します。
「わたしがことばを使うときには、
ことばはわたしの選んだ通りの意味になるのである
――それ以上でも以下でもない」ハンプティ・ダンプティはつっけんどんに言いました。
「問題は、
ことばにそんないろいろちがった意味を持たせられるかってことよ」とアリス。
「問題は、
どっちがご主人さまかってことだ
――単にそれだけの話」とハンプティ・ダンプティ。
アリスはわけがわからず、何も言えませんでしたので、しばらくしてからハンプティ・ダンプティがまた口を開きました。
「まあ中には気むずかしいことばもあってね
――特に動詞は、これがえらく気位が高い
――形容詞はどうにでもなるけれど、動詞はそうはいかん
――でもこのわたしなら、全部まとめてめんどう見切れる!
不可侵性!
わたしに言わせりゃ、つまりはそういうこった!」
「もうしわけないですけど、それってどういう意味ですか?」とアリス。
「やっとまともな子らしい口をきくようになったな!」
ハンプティ・ダンプティはずいぶん機嫌がなおったようです。
うことだな」
「ことば一つに、ずいぶんたくさんの意味を持たせるんですねえ」
とアリスは考え込んでいいました。
「ことばにいまくらいたくさん仕事をさせるときには、給料もよけいに払うんだよ」とハンプティ・ダンプティ。
「まあ」
アリスはわけがわからず、ほかに何も言えませんでした。
「まったく、土曜の晩にことばが群がってくるところを見せたいよ。
とハンプティ・ダンプティは、頭を左右にえらそうにふってみせます。
(アリスはハンプティ・ダンプティが何で給料を支払ったのか、きく勇気がもてなかったんだ。
そういうわけで、ぼくもきみに説明できないんだよ。)
「ことばの説明がとってもお上手みたいですね。
よろしければ、『ジャバーウォッキー』という詩の意味を教えていただけませんでしょうか?」
「聞こうではないの」
とハンプティ・ダンプティ。
「わたしはこれまで発明された詩ならすべて説明できる
――そしていまだ発明されてない詩もかなり」
これはなかなか有望そうにきこえたので、アリスは最初の一節を暗唱しました。
居漏(いろ)トグラがほさめる頃
「とっかかりはそのくらいで十分」
とハンプティ・ダンプティがわりこみました。
「むずかしいことばがたくさんある。
『煮(に)そろ時(じ)』というのは、夕方四時のことであるな
――晩ごはんのために、そろそろ煮はじめる時間である」
「それでしっくりきますね。
じゃあ『俊(しゅ)るり』は?」
「うむ、『俊(しゅ)るり』は、『俊敏(しゅんびん)でぬるりとした』という意味。
『俊敏(しゅんびん)』は『元気がいい』というのと同じことである。
おわかりのように、かばんみたくなっておるわけ
――二つの意味を一つのことばにつめこんであるのだ」
「それでわかりました」
とアリスは考え深げにもうします。
「じゃあ『オモゲマ』ってなに?」
「そう、『オモゲマ』は、まあアナグマのようなもんだ
――トカゲみたいでもある
――さらにはコルク抜きのようでもあるな」
「ずいぶんとへんてこな生き物なんですねえ」
「いやホント」
とハンプティ・ダンプティ。
「それと日時計の下に巣を作るのだね
――それと、チーズを食べて生きておる」
「じゃあ『環繰(わぐ)る』と『躯捩(くねん)する』は?」
「『環繰(わぐ)る』のは、環球儀みたいにぐるぐるまわること。
『躯捩(くねん)する』は、コルク抜きみたいに穴をグリグリと開けることである」
「じゃあ『幅かり』っていうのは、日時計のまわりの草地のこと、かしら?」
と言ったアリスは、自分の賢さにわれながらおどろいてしまいました。
「もちろんそうである。
『幅かり』と呼ばれるのはだね、そいつが手前にも奥にも横にも、ずっと幅をとってあるからで――」
「そしていたるところ、葉ばかりだから?」
とアリスは付け加えました。
「まさにその通り。
さてこんどの『みじらしい』というのは『みすぼらしくてみじめ』ってことであるな
(ほら、これまたかばんなのだ)。
それと『ボショバト』はやせたショボい鳥で羽がそこらじゅうに飛び出しておる
――なんか歩くモップみたいなものを考えたらよろしい」
「それじゃ『居漏(いろ)トグラ』って?
お手数ばかりおかけして本当に申し訳ないですけど」
「『トグラ』は緑のブタみたいなものだな。
でも『居漏(いろ)』となると、わたしもよくわからん。
たぶん『居場所から漏れた』を縮めたんであろう
――つまりは迷子になった、というわけであるな」
「じゃあ『ほさめる』ってどういう意味?」
「うむ、『ほさめ』ってのは、ほえるのと口笛の中間で、間にくしゃみみたいなのが入ったものであるね。
でも、いずれそれを実際に聞くこともあるだろう
――森の奥なんかで
――いったん聞いたら、もうそれでじゅうぶんすぎるくらいであるな。
にしても、こんなむずかしいものをあんたに暗唱して聞かせたというのは、いったい何者かね」
「本で読んだんです。
でも、これよりずっとやさしい詩も暗唱してもらいましたよ、えーと――トゥイードルディー、のほうだったかな」
「詩となるとだねぇ」
とハンプティ・ダンプティは、でっかい手を片方のばします。
「そういう話になるんなら、このわたしなら、ほかのだれにも負けないくらい詩を暗唱してあげられるよ――」
「ああっ、そういう話にならなくてもいいんですけど!」
とアリスはあわてて言って、ハンプティ・ダンプティが始めるのをやめさせようとしました。
「わたしがこれから暗唱する詩篇はだね、
あんたのためだけに書かれたものであるのよ」
アリスとしては、そういうことならこれは聞くしかないと思いましたので、腰をおろし、
「ありがとうございます」と言いました。
ちょっと悲しそうに。
「冬に野原が白い頃
きみのためにこの歌をうたおう
――と言っても、ホントにうたうわけじゃないけど」
とハンプティ・ダンプティは説明で付け加えました。
「そうお見受けします」
とアリス。
「わたしがうたってるかどうか見たりできるって、ずいぶんといい目をしてるようだねえ」
ハンプティ・ダンプティがきつい口調で言います。
アリスはだまりました。
「春に森が萌える頃
なんとか意味を説明しよう」
「ありがとうございます」
とアリス。
「夏に日が長くなる頃
きみにもこの歌がわかるかも:
葉のしおれる秋の頃
ペンとインキで書き留めて」
「はい、そんなに長いことおぼえてられたらだけど」
とアリス。
「いちいちそうやって口をはさまんでよろしい。
はさんでもしょうがないし、わたしも気が散るではないの」とハンプティ・ダンプティ。
「ぼくは魚に手紙をだした
『ぼくの望みはこれだ』と言った。
海の小さな魚たち
ぼくに答を書き送り
小さな魚たちの答とは
『遺憾ながらできかねます、それは――』」
「なんかよくわかんないんですけど」
とアリス。
「先にいけばやさしくなる」
とハンプティ・ダンプティは答えます。
「ぼくはもう一度書き送り曰く
『言うとおりにするのが身のためよ』
魚たちはにやりと答え
「ずいぶんご機嫌ななめですねぇ!」
一回言ったが、二回言ったが
聞く耳もたぬが魚(うお)の性(さが)
ぼくはピカピカやかんをとった
目下の仕事にぴったりだった
胸はどきどき心ははずみ
自慢のやかんを満たすは泉(いずみ)
そこへだれかがやってくると
「小魚たちは寝ちゃったよ」と
ぼくはそいつにはっきり告げた
「だったらも一度起こしてきてよ」
これは大きくはっきり告げた
耳元間近でどなってやった」
ハンプティ・ダンプティはこのくだりを暗唱するとき、ほとんど金切り声になりましたので、アリスは身震いしました。
「あたし、その伝令さんにはぜったいになりたくないわ!」
「でもそいつはがんこで高慢で
曰く『そんな怒鳴らなくてもよろしいので!』
そしてそいつはがんこで高慢で
曰く『起こしてもいいが、まず――』
ぼくは棚からコルク抜きを手に
自分で魚を起こしに行った。
そしてドアに鍵がかかって悩苦(のうく)
押してはひいては蹴ってはノック。
そして扉がしまっていると見て
ぼくがすかさずまわした取っ手――」
長い間がありました。
「それだけ?」
とアリスはおずおずとたずねました。
「これだけ。
さよなら」とハンプティ・ダンプティ。
これっていきなりすぎないかしら、とアリスは思いました。
が、立ち去れというのをここまでほのめかされると、このままいたらかなりお行儀わるいな、という気がします。
そこで立ち上がり、手を差し出しました。
「さよなら、またお目にかかるまで!」
となるべく明るい声で言います。
「またお目にかかることなんか、あったとしてもわたしには見分けがつくまいよ」
ハンプティ・ダンプティは怒ったように返事をしながら、指を一本差し出してアリスに握らせました。
「あんた、ほかの人間とえらくそっくりだからねえ」
「ふつうは、顔で見分けるものですけれど」
とアリスは慎重にもうします。
「わたしが言ってるのも、まさにそういうことだよ。
あんたの顔ときたら、ほかのみんなとおんなじだ――目が二つ、そんな具合に――」
(と親指で空中に場所をしるし)
「鼻がまんなかで、その下に口。
いつだって同じ。
たとえば目が二つとも片っぽに寄ってるとかすれば
――あるいは口がてっぺんにあるとか
――それならちったぁ見分けがつこうってもんだがね」
「それじゃみっともないでしょう」
とアリスは反対しましたが、
ハンプティ・ダンプティは目を閉じて
「試してもいないくせに」と言っただけでした。
アリスはもうしばらく待って、ハンプティ・ダンプティがまた口を開くかどうか見てみました。
でも二度と目を開きもしなかったし、アリスをまったく意に介する様子もなかったので、もういちど「さようなら!」と言ってみました。
そしてこれにも返事がなかったので、アリスは静かにそこを立ち去りました。
でも歩きながら、どうしてもつぶやかずにはいられませんでした。
「まったく、どうしようもなく腹のすえかねる――」
(このことばは口に出していいました。
こんなに長いことばを言えるのはすごく気が休まったからです)
「どうしようもなく腹のすえかねる人にはたくさん会ったけど、その中でもあれほど――」
でもこの文は結局最後まで言えませんでした。
というのもまさにそのしゅんかん、森中に「グシャッ」というすさまじい音がとどろきわたったからです。
第 7 章 ライオンと一角獣
次のしゅんかんに、兵隊さんたちが森の中を走ってきました。
最初は二人、三人組みで、それから十人、二十人まとまって、そしてついには森全体にあふれそうなすさまじい群衆になって。
アリスは、ふみつぶされるんじゃないかとこわくて、木の陰にかくれてみんなが通り過ぎるのを待ちました。
生まれてこのかた、こんなに足下のおぼつかない兵隊さんたちは見たことない、とアリスは思いました。
しょっちゅう何かにつまずいたり、おたがいにつまずいたり、そして一人が倒れると、いつもそれにまた何人かがつまずいて倒れるので、やがて地面は人の山だらけになってしまいました。
それから馬がやってきます。
四つ足なので、歩兵たちよりはましです。
が、馬たちですらしょっちゅうつまずきます。
そして、馬がつまずくと、騎手はそくざに転げ落ちる、というのが規則のようでした。
いっしゅんごとに混乱はますますひどくなって、アリスは森から出て開けた場所にきて、すごくほっとしました。
そこでは白の王さまが地面にすわりこんで、メモ帳にいっしょうけんめいなにやら書き込んでいます。
「総がかりで送ってやったぞ!」
と王さまは、アリスを見てうれしそうに叫びました。
「おじょうちゃん、森を通ってくるときに、兵隊に出くわしたりはせなんだか?」
「会いました。
何千人くらい、かしら」とアリス。
「四千二百とんで七。
それが正確な数じゃ」
と王さまはメモ帳を見ながら申します。
「馬は全部は送り出せなんだ。
ゲームで二駒は必要じゃからの。
それと伝令二人も送ってはおらん。
二人とも街に出かけておる。
ちょいと道をながめて、どっちか見えないかどうか教えてはくれんかの」
「うーん、道に見えるのは......だれも」
とアリス。
「このわしも、そのくらい目がよければなぁ!」
と王さまは、いらだたしい声で申します。
「だれもが見えるなんて!
しかもそんな遠くから!
いやぁ、このわしときたら、この光の中ではだれもが見えるどころか、おじょうちゃん一人見るのだってやっとこさじゃよ!」
でもいまの話を、アリスはぜんぜん聞いていませんでした。
まだ片手を眉にかざして、道の向こうを熱心にながめています。
「こんどはだれかが見える!
でも、こっちに向かってるけどすごくゆっくり
――しかも、ずいぶんとへんてこなふるまいばっかしてるわ!」
(というのもその伝令は、こっちに向かいながらもぴょんぴょん跳び上がったり、ウナギみたいにくねくねしたりして、おっきな手を左右にうちわみたいに広げているのです)。
「ちっとも」
と王さま。
「そやつはアングロサクソンの伝令なのじゃ
――そしてあれは、アングロサクソン式ふるまい。
あれをやるのは、あやつが晴れがましいときだけじゃな。
そしてあやつの名はヘイヤ」
(つづりは Haigha だけれど、発音は mayor と韻をふむように)。
「ハヒフヘホの恋人は、
晴れがましいから大好き。
ひどいから大きらい。
食べさせてあげるのは
――えーと、あげるのは――あげるのは、ハムサンドに干し草。
名前はヘイヤで、住まいは――」
「住まいはほったて小屋じゃ」
と王さまはあっさり申しました。
自分がゲームに参加したとはつゆほども気がついていません。
アリスは、ハヒフヘホで始まる地名が思いつかずに困っていたところだったのです。
「もう一人の伝令はボウシャと言うんじゃ。
伝令は二人おらんとな。
行くのに一人、戻るのにもう一人」
「あの、すみませんけど」
とアリス。
「すまないようなことは、最初っからしないことじゃ」
と王さま。
「いえ、意味がわからないって申したかったんですけど。
行くのに一人、戻るのにもう一人って、なぜですか?」
「だから、いま申したであろうが。
伝令は二人おらんと
――送るのと、取ってくるのとな。
取ってくるのに一人、送るのに一人じゃ」
このしゅんかんに伝令がとうちゃくしました。
ハァハァヒィヒィと息をきらしすぎていて、一言も口がきけず、手をばたばたふりまわしながら、かわいそうな王さまにむかってすっごくおっかない顔をしてみせるばかりでした。
「こちらのお若いご婦人に言わせると、おまえはハヒフヘホの恋人じゃそうな」
王さまは、伝令の注意を自分からそらそうとして、アリスを紹介しました
――が、むだでした
――アングロサクソン的ふるまいは、どんどんとんでもないものになるばかりで、でっかい目が左右にはでにギョロギョロいたします。
「びっくりさせよる!」
と王さま。
「気絶しそうじゃ
――ハムサンドをもて!」
そう言われて伝令は、アリスがわくわくして見守る中、首からぶら下がったふくろを開けるとサンドイッチを王さまにわたしました。
王さまは、それをガツガツむしゃむしゃと食べました。
「サンドイッチもう一つ!」
と王さま。
「もう干し草しか残ってませんぜ」
と伝令は、ふくろをのぞきこんで申します。
「じゃあ、干し草」
と王さまは、気絶しそうなひそひそ声で言いました。
干し草で王さまがかなり元気をとりもどしたのでアリスはホッとしました。
「気絶しそうなときには、干し草はまたとないものじゃな」
と王さまはむしゃむしゃ食べながらアリスに申します。
「つめたい水をかけるほうがいいと思うんですけれど。
それとも気付け薬とか」とアリスは提案してみました。
「干し草よりよいものがないとは申しておらん。
干し草のようなものは他にない、と申したのじゃ」と王さま。
アリスとしても、あえてこれに反論する気はありませんでした。
「道でだれかおまえを追いしたか」
と王さまは、もっと干し草をよこせと伝令に手を伸ばしながら申します。
「だれも」
と伝令。
「いやまったく。
こちらのお若いご婦人も、そいつを見たそうな。
だからもちろんそのだれも、おまえほどは歩くのが遅くないわけじゃ」
「あっしだってがんばってるんでさぁ。
だれも、あっしより大して速くは歩けないはずでっせ!」
「いやいややつに、それはできんじゃろ。
もしできるなら、おまえより先にここに着いておるはずじゃ。
でもそろそろおまえも息切れがなおったようだな。
街で何が起きたか話すがよいぞ」
「ないしょ声で」
と伝令は、口元にラッパみたいに手をあてて王さまの耳に近寄ろうと背伸びします。
アリスはがっかりしました。
アリスもニュースがききたかったからです。
でも、ないしょ声を出すかわりに、ヘイヤは思いっきりどなったのでした。
「あいつら、またやりあってますぜ!」
「いまののどこがないしょ声じゃ!」
とかわいそうな王さまは跳び上がって身ぶるいいたします。
「こんどいまみたいな真似をしおったら、貴様をバターにしてくれる!
まったく、頭の中でガンガンこだまして地震みたいじゃった!」
「ずいぶん小さな地震だったのねえ!」
とアリスは思いましたが、
「あいつらってだれですか?」
「だれって、ライオンと一角獣(ユニコーン)に決まっとろうが」
と王さま。
「王冠めぐって大げんか、ですか?」
「そうとも、まったくそのとおり。
そしてこいつの何とも言えんオチはだな、その王冠が、結局ずっとわしのものだってことなんだよ!
ちょいと出かけて見物してやろう」と王さま。
そして一同は、トコトコとかけだし、アリスは走りながら、あの古い歌の歌詞を頭のなかでくりかえしていたのでした――
「ライオンと一角獣(ユニコーン)王冠めぐって大げんか
一角獣(ユニコーン)はライオンに街中随所(ずいしょ)でボコボコに
両者に白パンやる人や黒パンあげる人もおり
すももケーキをあげる人もいて太鼓で街からたたき出す」
「勝った――ほうが――王冠を――もらうんですか?」
とアリスはがんばって聞いてみましたが、走っているせいで、かなり息がきれていました。
「いやいや、まさか!
どっからそんな途方もないことを!」と王さま。
「もし、よ、よろしければ」
とアリスは、もうちょっと走ってからやっとのことで、ぜいぜいと申します。
「一分かそこら、休ませていただけませんか――せめて――また息がつけるまで」
「よろしいかと言われれば、わしとしてはよろしくはあるがな、でも実際にやるほどの力はないぞ。
一分、というのはとんでもない勢いで進んでおるものでな。
それを休ませようとするのは、犯駄酢那智(ばんだすなっち)を休ませようとするようなもんじゃ!」
アリスは息が切れて、それ以上しゃべれませんでしたので、一行はだまってかけって行きました。
やがて大群衆が見えてきて、そのまん中でライオンと一角獣(ユニコーン)がけんかをしていました。
すごくほこりが舞い上がっていて、アリスは最初、どっちがどっちか見分けがつきませんでした。
でもじきに、角で一角獣(ユニコーン)が見分けられるようになりました。
一行はもう一人の伝令ボウシャに近づきました。
ボウシャはけんかを見物しつつ、片手にお茶わんと、もう片手にはバタつきパンを持っています。
「こいつは牢屋から出てきたばっかで、ぶちこまれた時にはまだお茶をすませてなかったんよ。
それで牢屋では、カキの貝殻しか食わせないんだぜ
――だからこいつ、すっごくおなかがすいて、のどがかわいてるの。
坊や、元気でやっとるかね」
とヘイヤは、ボウシャの首に愛情込めてうでを巻きつけます。
ボウシャはあたりを見まわしてうなずき、バタつきパンを食べ続けます。
「坊や、牢屋では幸せだった?」
とヘイヤ。
ボウシャはもう一回あたりを見まわすと、こんどは涙が一、二滴、ほっぺたをながれました。
でも、一言もしゃべりません。
「なんか言ったらどうだい!」
とヘイヤがいらいらして叫びました。
でもボウシャはパンを食べてお茶をもっと飲んだだけでした。
「なんとか言わんか、え!」
と王さまが叫びました。
「あやつらのけんかはどんな具合じゃ?」
ボウシャは目を白黒させてがんばって、バタつきパンの大きなかけらを飲み込みました。
「なかなかうまいこと運んでますがな。
どっちも八十七回くらいダウンしてまっせ」
「じゃあ、もうすぐ白パンや黒パンを持ってくるのかしら?」
アリスは勇気を出してきいてみました。
「もう用意してありますがな」
とボウシャ。
「あっしがいま喰ってますのも、その一切れでさぁね」
ちょうどこのとき、けんかに間が入って、ライオンと一角獣(ユニコーン)はハァハァいいながらすわりこむ一方で、王さまが
「おやつタイム十分間!」と宣言いたしました。
ヘイヤとボウシャはすぐにはたらきだし、白パン、黒パンののったお盆を運んで回ります。
アリスも一切れ試してみましたが、すっごく乾いていました。
「きょうはもう、けんかしないであろうと思うのだがな。
太鼓を始めるように命令を伝えてまいれ」と王さまはボウシャに申しました。
ボウシャは、バッタみたいにぴょんぴょんはずみながら、出かけていきました。
一分かそこら、アリスはだまってボウシャを見送りながら立っていました。
急に、パッと元気になりました。
「見て、見て!」
と熱心に指さします。
「白の女王さまが国を横切って走ってる!
あっちから森をつっきって、飛び出してきたわ
――女王さまって、ホントにすごく速く走れるのねぇ!」
「だれか敵に追われておるのであろうよ、まちがいなく。
と王さまはあたりを見まわしすらせずに申します。
「でも、走ってって助けてあげないんですか?」
アリスは王さまがずいぶんと落ち着きはらっているので、とってもびっくりしてしまいました。
「無駄、無駄!
あいつはこわいぐらいに速く走りよるからの。
犯駄酢那智(ばんだすなっち)でも捕まえようとしたほうがマシなくらいじゃ!
でもお望みなら、あいつについて、メモはとっておいてやろう
――あやつは実に善良な生き物じゃからの」
とメモ帳を開きながら、王さまは優しくつぶやきました。
「生き物の『物』は、手へんじゃったかの?」
このとき一角獣(ユニコーン)が、両手をポケットにつっこんで、一同のところへぬっと顔を出しました。
「今回はおれが上わ手だったろ?」
と、通りすがりに王さまをちらっと見ながら申します。
「まあまあってとこじゃな――まあまあ」
と王さまは、かなり心配そうに申しました。
「おぬし、その角で突き通すのはあまりよろしくないぞ」
「向こうだってけがはしてねーよ」
と一角獣(ユニコーン)はどうでもよさげに申しました。
そして通り過ぎようとしたとき、ふとアリスに目が止まりました。
一角獣(ユニコーン)はすぐさま立ち止まり、しばらくつっ立ってアリスを見つめ、気持ち悪くてたまらないよ、とでも言いたげでした。
「な、なんだ、こりゃいったい?」
一角獣(ユニコーン)はやっとのことで言いました。
「こいつぁ子どもだ!」
ヘイヤはうれしそうに答えて、アリスの前に出て紹介しつつ、アングロサクソン的ふるまいで、アリスのほうに両手をひろげて見せました。
「きょう見つけたばっかだよ。
等身大で、二倍も天然自然!」
「空想上の怪物だとばかり思ってたのに!
生きてるの?」と一角獣(ユニコーン)。
「しゃべれますぜ」
とヘイヤは荘厳に申します。
一角獣(ユニコーン)は夢見るようにアリスを見つめて言いました。
「子供、なんかしゃべれ」
アリスは、口を開きながらも口元がゆるむのをおさえられませんでした。
「ねえ知ってた、あたしのほうもずっと、一角獣(ユニコーン)って空想上の怪物だと思ってたのよ!
生きてるのを見るのはこれが初めて!」
「ふーむ。
じゃあ、こうしてお互いに相手を見たことだし、あんたがおれの実在を信じてくれれば、おれもあんたの実在を信じよう。
取引成立、かな?」と一角獣(ユニコーン)。
「ええ、一角獣(ユニコーン)さんさえよければ」
とアリス。
「おい、じいさん、すももケーキを出してくれよな。
あんたの黒パンはいただけないぜ」
「はいはい――わかったわかった!」
と王さまはつぶやいて、ヘイヤに合図しました。
「袋を開け!」
とささやきます。
「急いで!
そっちじゃない
――そっちは干し草しか入ってない!」
ヘイヤは袋からでかいケーキを取り出して、持っててくれとアリスにわたし、こんどはお皿と包丁を取り出しました。
こんなにいろいろ、どうやってあの袋から出てきたものやら、アリスには見当もつきません。
まるで手品みたいだわ、とアリスは思いました。
この間に、ライオンも加わりました。
とっても疲れて眠そうで、目が半分とじてます。
「なんだぁ、こりゃあ!」
と、めんどうくさそうにアリスに向かって目をぱちくりさせながら、おっきな鐘がなるみたいな、深いがらんどうな調子でしゃべりました。
「さあ、いったいぜんたい何でしょうか!」
と一角獣(ユニコーン)はうれしそうに叫びます。
「絶対にあたりっこないね。
このおれだってわかんなかったもん」
ライオンは、めんどうくさそうにアリスをながめました。
「おまえ、動物?
――植物?
――それとも鉱物?」
と、一言おきにあくびをしながら言います。
「空想上の怪物だぜ!」
アリスが返事をする前に、一角獣(ユニコーン)が叫びました。
「じゃあ怪物くん、すももケーキを切り分けてくれよ」
とライオンは、ごろごろ横になって、あごを前足にのせます。
「それと二人ともすわれよ」
(と王さまと一角獣(ユニコーン)に言います)。
「ケーキではフェアプレーな!」
王さまは、でっかい生き物二ひきの間にすわらされて、どう見てもすごくいごこち悪そうでした。
でも、ほかに場所がありません。
「さ、これでやっと、王冠めぐって本気で大げんかできようってもんだな!」
と`一角獣(ユニコーン)が、意味ありげに王冠を見あげながら言いました。
かわいそうな王さまは、ぶるぶるふるえすぎて、頭から王冠がほとんど落ちそうになってます。
「おれがあっさり勝つだろよ」
とライオン。
「ほう、そいつぁどうかな」
と一角獣(ユニコーン)。
「なんだと、街中随所(ずいしょ)でボコボコにしてやる、この根性なしめが!」
とライオンは怒ったように答えつつ、立ち上がりかけます。
ここで王さまが、口論の続くのをとめるためにわりこみました。
とっても心配そうで、声がすごくふるえています。
「街中随所(ずいしょ)で、ですと?
それはかなりの道のりであろう。
あの古い橋や、市場の横は通ったかな?
古い橋のたもとがいちばん景色のいいところじゃからの」
「おれにわかるわけねぇだろが。
ほこりまみれで、なんにも見えやしねぇ。
おい怪物くんよぉ、ケーキ切るのにいつまでかかってんの!」
アリスは小川のほとりにすわりこんで、ひざにおっきなお皿をのせて、ナイフでいっしょうけんめい切っておりました。
「すごく頭にくるのよ!」
とライオンに答えます
(もう「怪物」よばわりされるのはなれちゃいました)。
「切っても切っても、またくっついちゃうの!」
「鏡の国のケーキの扱いを知らねぇな。
まずみんなに配って、その後で切るんよ」
これはまったくのナンセンスに聞こえましたが、アリスはさからわずに立ちあがってお皿をまわすと、ケーキは自分で三切れにわかれてくれました。
「それから切りなよ」
と、空っぽのお皿を持って自分の場所に戻ったアリスに、ライオンが言いました。
「おいおい、こんなの不公平だぞ!」
どうやって切ればいいのか、アリスがナイフを手にとほうにくれているところへ、一角獣(ユニコーン)が言います。
「怪物ったら、ライオンにはおれの倍もくれてやってるじゃないか!」
「だけど、自分にはぜんぜん残さなかったぜ。
おい怪物くん、すももケーキは好きか?」
でもアリスがこたえるより先に、太鼓が鳴り出しました。
その音がどこから出てきたのか、アリスには見当がつきませんでした。
あたり一面、太鼓の音でいっぱいで、それがアリスの頭の中になりひびいて、ほかに何も聞こえない感じです。
アリスはこわさのあまり、たちあがって小川を飛び越え、
そして見るとちょうど、ライオンと一角獣(ユニコーン)も、宴会をじゃまされて怒った表情で立ちあがるところでした。
アリスはひざをついて耳を手で覆い、すさまじい太鼓の轟音をなんとか閉め出そうとしますが、むだでした。
「ライオンも一角獣(ユニコーン)も、あの太鼓で街から叩きだされなければ、もうほかにたたきだしようがないでしょうよ!」とアリスは思いました。
第 8 章 「ぼくならではの発明」
しばらくすると、騒音はだんだん小さくなってくるようで、やがてあたりはシーンとしずまり、アリスはびくっとして顔をあげました。
た。
でも、あのおっきなお皿がまだ足下にころがっていました。
あのすももケーキを切ろうとしていたお皿です。
「じゃあ、あれは夢じゃなかったんだわ。
ただし――ただしこれがみんな、同じ夢の続きなら別だけど。
でもこれがあたしの夢で、赤の王さまの夢じゃありませんように!
ほかの人の夢の中にいるなんて、いやだもの」
そしてちょっと文句を言うような調子でつけ加えました。
「いって起こしてみて、何がおこるかぜひとも見てみたいわ!」
「アホイ!アホイ!王手(チェック)!」
そして真紅の甲冑を着た騎士(ナイト)が、おっきなこん棒をふりまわしながら、馬でパカパカとこっちにやってきます。
目の前まできたときに、馬が急にとまりました。
「これできみはぼくの捕虜(ほりょ)だ!」
と言いながら、騎士(ナイト)は馬からころげおちました。
めたのでした。
しっかりと鞍にまたがりなおすと同時に、騎士(ナイト)はまた「これできみは――」と繰り返しはじめましたが、そこで別の声が「アホイ!アホイ!王手(チェック)!」とそれをさえぎって、
アリスはちょっとおどろいてあたりを見まわして、新しい敵をさがしました。
こんどやってきたのは白の騎士(ナイト)でした。
アリスのとなりに馬をつけると、赤の騎士(ナイト)とまったく同じように、馬から転げ落ちました。
それからまたまたがりなおし、そして騎士(ナイト)二人は、なにも言わずにしばらくにらみあっていました。
アリスはちょっとうろたえつつ、二人を交互に見つめます。
「この子はぼくの捕虜(ほりょ)なんだからな!」
とうとう赤の騎士(ナイト)が申しました。
「うん、でもそこへぼくがやってきて、この子を救いだしたんだぞ!」
と白の騎士(ナイト)が答えました。
「ふん、それならこの子をめぐって決闘だな」
と赤の騎士(ナイト)はかぶとを手に取り
(これは鞍の横にぶらさがっていて、なにやら馬の頭みたいなかっこうです)、
それをかぶりました。
「決闘の規則はもちろん守るだろうな」
と白の騎士(ナイト)もかぶとをかぶります。
「いつも守る」
と赤の騎士(ナイト)。
そして二人はお互いにすさまじい勢いでなぐりあいはじめたのでアリスは木の陰にかくれて、ふりまわすこん棒に当たらないようにしました。
「さてさて、決闘の規則ってなんなんだろ。
規則その一は、片っぽの騎士(ナイト)の一撃が相手にあたったら、相手は馬から転げおちて、はずれたら自分が馬から転げ落ちるってことみたい
――それと別の規則は、どっちもこん棒を、指人形みたいに腕で持つってことみたいだわ
――転げ落ちるとき、どっちもすっごい音をたてるんだなぁ。
まるで火かき棒の束をまるごと鉄格子の中に落としたみたい!
それと、馬たちはすごくおとなしいのね。
まるでテーブルみたいにじっとして、二人が落ちたりまたがってりしてもぜんぜん動かないわ!」
アリスの気がつかなかったもう一つの決闘の規則は、落ちるときには必ず頭から落ちるということのようでした。
そして二人がそうやって、仲よくならんで落っこちて決闘は終わりました。
そして二人は立ちあがると、握手して、そして赤の騎士(ナイト)は馬にまたがると、パカパカと走り去っていきました。
「輝かしい勝利だっただろう!」
と白の騎士(ナイト)は、ぜいぜい言いながら近寄ってきました。
「わかんない」
とアリスは疑わしそうに言いました。
「あたし、だれの捕虜にもなりたくない。
女王さまになりたいの」
「うん、なれるよ。
次の小川をこえればね。
ぼくが森のはしまで安全に送ってあげよう
――そしたらぼくはもどんなきゃ。
それがぼくの動きのおしまいだから」と白の騎士(ナイト)が申します。
「ありがとうございます。
かぶとをぬぐの、おてつだいしましょうか?」
明らかに、騎士(ナイト)一人では手にあまることのようでした。
が、アリスはなんとかいっしょうけんめいゆすって、やっと騎士(ナイト)のかぶとをぬがせるのに成功しました。
「これでやっと楽に呼吸ができる」
と騎士(ナイト)は、ぼさぼさの頭を両手でうしろになでつけて、やさしそうな顔と、おっきくておだやかな目をアリスのほうに向けました。
こんな変なかっこうの兵隊さんは、これまで見たことないや、とアリスは思いました。
身につけた甲冑はブリキで、どうもぜんぜんからだにあっていないようです。
さらに肩からは変な形の木の箱がかかっていて、それが逆さまで、ふたがぶらぶらと開いたままぶら下がっています。
アリスは、すごくおもしろがってそれをながめました。
「見たところ、ぼくの小箱に感動してるようですね。
それ、ぼくならではの発明なんですよ
――服とかサンドイッチとかを入れとくんです。
さかさにして運ぶのはですね、雨が中に入らないようするためなんです」
「でも、中のものが外に出ちゃうでしょう。
ふたが開いてるの、知ってました?」とアリスが優しく指摘しました。
「知らなかった」
と騎士(ナイト)は、ちょっと困ったような顔色を浮かべて申しました。
「じゃあ、中のものも全部こぼれちゃったはずだ!
中身がなけりゃ、箱もなんの役にもたたない」
と言いながら騎士(ナイト)は小箱を鞍からはずして、まさにしげみに投げ込もうとしたところでいきなり何か思いついたらしく、慎重に木にぶら下げました。
そして「なぜああしたか、わかる?」
とアリスに申します。
アリスは、首を横にふりました。
「ハチが中に巣をつくるといいな、と思ったから
――そうしたらハチミツが手に入るでしょう」
「でも、ハチの巣ならもう持ってるじゃないですか
――少なくともそれらしいものを。
ほら、鞍にゆわえてある」
とアリス。
「うん、それもすごくいいハチの巣なんだよ」
と騎士(ナイト)は、不満そうな声でいいました。
「もう最高級品。
それなのに、ハチの一匹たりとも、近寄ってきさえしないんだよ。
それともう一つ、ねずみ取りも。
ネズミのせいでハチがこないのかも
――それともハチのせいでネズミがこないのかな。
どっちかわからないけど」
「ええ、ねずみ取りはちょうどふしぎに思ってたとこです。
馬の背にネズミがいるなんて、あまりありそうにないと思ったから」とアリス。
「あまりありそうにない、かもしれないけど、でも万が一きたら、そこらじゅう走り回られちゃかなわないでしょうに」と騎士(ナイト)。
そしてちょっと間をおいてから続けます。
「つまりね、あらゆる事態にそなえておくのがだいじなわけ。
だからこの馬は、足のまわりにあんなに金具をつけてるんだよ」
「でも、なんのためのものなんですか?」
アリスは興味津々といった声でききました。
「サメにかまれるのをふせぐため。
ぼくならではの発明なんだよ。
さあ、馬に乗るのをてつだって。
森のはしまで送ってあげよう
――そのお皿はなんのお皿?」
「すももケーキ用だったんですけど」
とアリス。
「いっしょに持ってったほうがいいね。
すももケーキが見つかったときに便利だから。
このふくろに入れるのを手伝ってよ」
これはずいぶんと長い時間がかかりました。
アリスはとっても気をつけて袋の口を開いていたのですが、騎士(ナイト)がお皿をいれるのに、まったくとんでもなくぶきっちょだったからです。
最初の二、三回は、お皿を入れようとして自分が袋の中におっこちてしましました。
「なかなかおさまりがきついからねえ」
やっと入れ終えたときに騎士(ナイト)が申します。
「袋の中にはロウソクがいっぱい入ってるもんで」
そして袋を鞍にぶらさげました。
そこにはすでに、ニンジンの束や暖炉の金具や、その他いろんなものでいっぱいです。
「きみの髪の毛は、しっかり頭にくっついてるといいけど」
また動き出したときに、騎士は続けて申しました。
「まあ、ごくふつうにくっついてますけど」
とアリスは、笑いながら答えます。
「それじゃじゅうぶんとは言えないな。
だってここでは、風が実にものすごく強いんだよ。
もうスープみたいに強いんだからね」
「髪が吹き飛ばされないようにする計画は発明なさったんですか?」
とアリスはきいてみました。
「いやまだ。
でも、髪の毛が落っこちないようにするための計画ならあるよ」
「ぜひ聞かせてくださいな」とアリス。
「まず、棒を立てるよね。
それから、髪の毛をそれに沿って、こう上向きにつたい上がらせるんだよ、果物の樹みたいに。
さて、髪が落ちるのは、それが下向きにぶら下がっているからだろう
――上向きに落ちるものなんてないからね。
こいつはぼくならではの発明による仕組みだよ。
気に入ったら試してくれていい」
あまり快適な仕組みじゃあなさそうね、とアリスは考え、数分ほどこのアイデアに頭をなやませつつ、だまって歩いていましたが、でもしょっちゅう立ち止まっては、かわいそうな騎士を助け起こしてあげなきゃなりませんでした。
この騎士は、どう見ても馬に乗るのがへたくそです。
馬がとまるたんびに(というのはかなりしょっちゅうでした)、騎士は前に転げ落ちます。
そして馬が動き出すたびに(馬はこれを、かなり急にやるのでした)騎士はうしろに転げ落ちます。
それ以外は、そこそこ馬に乗っていられるのですが、ただしクセなのか、なんだかんだと横に転がり落ちるのです。
しかも転がり落ちてくるのは、たいがいアリスの歩いている側だったので、アリスはじきに、あんまり馬の近くを歩きすぎるのは、やめといたほうがいいな、とわかったのでした。
「馬に乗るの、どうもあんまり練習なさってないんですね」
五回目にころげおちた騎士を、馬上に助け上げながら、アリスはついに思い切って言ってみました。
騎士はこう言われてとってもびっくりしたようすで、それにちょっとムッとしたようです。
「どうしてそんなふうに思うね?」
そういいながら騎士は鞍になんとか戻り、その間片手でアリスの髪の毛をつかんで、反対側に落ちないようにしていました。
「だって、いっぱい練習した人は、そんなにしょっちゅう落っこちたりしないもの」
「ぼくだって、たっぷり練習はしてる」
と騎士(ナイト)はとっても重々しく申しました。
「それはもうたっぷりとね!」
アリスは「まあそうですか」以上のせりふを思いつきませんでしたが、これをなるべく心をこめて申しました。
二人はその後ちょっとばかりだまって進みました。
騎士(ナイト)は目を閉じてぶつぶつつぶやいていますし、アリスは、いつまた騎士(ナイト)が転げ落ちるかと、ハラハラしながら見守っています。
「乗馬の極意というものはだね、こうして――」
そこで文章は、始まったのと同じくらいいきなり終わりました。
というのも騎士は、まさにアリスの道筋の真ん前に、頭から思いっきりころげ落ちたからです。
こんどはアリスもかなりおびえました。
そして騎士を助け起こしならが、心配そうに申します。
「骨、折れたりしてませんよね?」
「あえて言うほどのものは一つも」
と騎士は、二三本なら折ってもかまわないとでも言いたげに申しました。
「乗馬の極意というのはだね、さっきぼくが言いかけていたように
――こう、バランスをしっかり保つことなんだ。
ほら、こんなふうに――」
騎士は手綱を放して、両手をひろげて見せ、アリスに言わんとするところを示そうとします。
そしてこんどは、背中からベタッと、馬の脚の間に落っこちてしまいました。
「練習ならたっぷり!」
アリスに立ちあがらせてもらながらも、騎士は繰り返し続けました。
「練習ならたっぷり!」
「ちょっとどうしようもなさ過ぎるわ!」
アリスはもうがまんできなくなって叫びました。
「車輪のついた木馬にすればいいのよ、まったく!」
「それってガタガタしないで進む?」
と騎士は、ひどく興味を覚えたようにたずねます。
そしてそう言いつつも、馬の首にあわてて抱きついて、かろうじてまた落っこちるのを防いだのでした。
「ええ、生きた馬よりはずっと」
とアリスは、必死でこらえながらもついつい笑い声をあげてしまいました。
「一つ手に入れることにしよう」
と騎士は、考えこんでつぶやきました。
「一つか二つ
――いくつか」
その後、しばらく沈黙が続いて、それから騎士(ナイト)がまた続けます。
「ぼくは発明にかけてはすごい腕のもちぬしなんだ。
で、気がついたと思うけれど、さっき引っ張り上げてくれたとき、ぼく、ちょっと考え深そうな様子をしてただろ?」
「そういえばちょっと重々しかった」
とアリス。
「うん、ちょうど門を乗り越える新しい方法を発明してるところだったわけ
――聴きたい?」
「ええ、ぜひぜひ」
アリスはとても礼儀正しいのです。
「どうして思いついたか話してあげよう。
つまりね、こう考えたわけ:
『むずかしいのは足だけだ。
頭はもうじゅうぶん高いところにあるから』。
だから、まず頭を門のてっぺんにのっける
――それからさかだちをする
――すると、足もじゅうぶんに高くなるよね
――そしたら門を越えられたことになる」
「ええ、それができたら、越えたことになるでしょうねえ」
アリスは考えこんで申しました。
「でもそれって、ちょっとむずかしいと思いません?」
「まだ試してないから、確実なことは言えないけど
――でも確かに、ちょっとはむずかしいかもしれないねえ」
騎士はそれを考えてずいぶんいらだっているようだったので、アリスはあわてて話をそらしました。
「すごく変わったかぶとですねえ!
と明るくたずねます。
騎士はほこらしげに、鞍からぶら下がっているかぶとを見おろしました。
「そうだよ。
でも、これよりもっといいのを発明したことがある
――おさとうのかかったパンみたいなやつ。
それをかぶっていると、馬から落ちても、それが直接地面にふれてる。
だから、落ちる距離もすごく短くてすんだわけ
――でも、確かにそのかぶとそのものの中に落っこちる危険は確かにあってね。
一度そういうことがあって
――しかも最悪だったのは、ぼくがそこから出られる前に、もう一人の白の騎士(ナイト)がやってきて、それをかぶっちゃったんだ。
じぶんのかぶとだと思って」
騎士はこれをずいぶんと荘厳な様子で申しますので、アリスは死んでも笑っちゃいけないと思いました。
「そしたら、相手の方をけがさせちゃったんじゃないですか?
だってその方の頭のてっぺんにいたんですもの」
「もちろん、けとばさなきゃダメだった」
騎士はもう真剣そのものです。
「そしたらあいつもかぶとを脱いでくれたんだけど
――でも、ぼくを出してくれるのに、もう何時間もかかっちゃってね。
もうはまりかたがきつかったもので
――お酢のにおいみたいにね」
「でもそれって、『きつい』がちがうでしょう」
アリスは反論します。
騎士は首を横にふりました。
「ぼくの場合は、いろんなきつさだったんだよ、これは保証してもいい!」
こう言いながら、ちょっと興奮して両手をあげ、そしてすぐさま鞍から転げて、深いみぞに頭からつっこんでしまいました。
アリスはみぞの縁にかけていって、騎士を捜してみました。
いまの落下にはちょっと驚かされたのです。
というのも、その前のしばらくは、なかなか上手に馬にのったままになっていたし、こんどこそはけがをしたんじゃないか、と思ってしまったからです。
でも、見えるのは騎士の足の裏だけでしたが、でもいつもの調子で騎士がしゃべっているのがきこえて、アリスはとてもほっとしました。
「いろんなきつさ、ね。
でもあいつも他の人のかぶとをかぶるなんて、不注意もはなはだしい
――それも中に人が入ってるのをかぶるなんて」
「頭を下にして、いったいどうしてそんなにおちついてしゃべってられるんですか?」
とアリスは、騎士の足をつかんでひきずり出して、土手にぐったりと横たわらせてあげながらきいてみました。
騎士(ナイト)は、この質問におどろいたようでした。
「ぼくの体がたまたまどこにあったって、関係ないでしょう。
頭はぜんぜん変わらずにはたらき続けるんだよ。
いや実は、頭が下にあればあるほど、新しいものをどんどん発明できるんだよ」
「さてぼくがやったその手のことでいちばん賢いのが、ごはんで肉料理を食べてる間に、新しいプリンを発明したことだったのね」
「そのごはんのデザートに間に合うように思いつんたんですか?」
とアリス。
「いや、そのごはんのデザートは無理だよ」
と騎士(ナイト)は、ゆっくり考え深げに申します。
「いやいや、まさかそのごはんのデザートはね」
「じゃあ、その次の日になっちゃったんですね。
一回のごはんで、デザート二回は無理ですもんね」
「うん、いいや次の日でもなかったな」
と騎士は、さっきのように繰り返します。
「いやいや次の日ではね。
いや実は」
と頭を下げて、そして声をどんどん落としながら続けます。
「実はあのプリンが実際に料理されたことはないと思うんだよ。
それどころか、そのプリンはこれからだって、ぜったい料理されることはないと思うよ!
それでも、発明するのに実に巧みなプリンではあったわけ」
「それって、何でつくるつもりだったんですか?」
とアリスは、騎士(ナイト)を元気づけようとしてきいてみました。
かわいそうな騎士(ナイト)さんは、このことでかなり落ち込んでいるみたいだったからです。
「まずは吸い取り紙を用意しまして」
と騎士(ナイト)は、うめきながら答えます。
「それじゃあんまりおいしくなさそう――」
「それだけなら、そりゃおいしくないよ」
騎士(ナイト)は喜々としてわりこみました。
「でも他のものと混ぜると、もうぜんぜんちがってくるんだよ
――火薬とか、封蝋なんかと混ぜるの。
で、ここでお別れだ」
二人はちょうど森のはずれまでやってきたのでした。
アリスは、ぽかーんとした顔をするしかありませんでした。
なんせ、プリンのことを考えていたもので。
「悲しいんだね」
と騎士(ナイト)は心配そうに申します。
「歌をうたってなぐさめてあげよう」
「すごく長いですか?」
とアリスはたずねました。
その日は、もうずいぶんたくさん詩をきかされてきたからです。
「長い。
でも、それはそれはきれいなんだ。
ぼくが歌うのを聞いた人はみんな
――みんな目に涙を浮かべるか、それとも――」
「それともなに?」
とアリス。
騎士(ナイト)が急に口を止めたからです。
「それとも浮かべないか、だよ。
この歌の名前は『タラの目』と呼ばれてるんだ」
「ふーん、そういう名前なんですかぁ」
とアリスは、なんとか興味を持とうと努力して申しました。
「いやちがうよ、わかんないかな。
それは歌の名前がそう呼ばれているっていう話。
名前そのものは『すごく歳寄りの男』なんだ」
「じゃあ、『その歌はそう呼ばれてるんですかぁ』って言うべきだったのね、あたしは」
とアリスは自分を訂正しました。
「いいや、べきじゃない。
そりゃまったく別の話だよ!
歌は『方法と手段』って呼ばれてるんだ。
でも、これはそれがそう呼ばれてるってだけなんだよ、わかる?」
「じゃあそれなら結局、歌そのものはいったいなんなの?」
この時点でアリスは、もう完全に頭がこんがらがっていました。
「いま説明しようとしてたところ。
歌そのものは『門にすわって』なんだよ。
そしてメロディはぼくならではの発明なんだ」
そう言いながら、騎士は馬を止めて、手綱をはなして馬の首にかけました。
そして、片手でゆっくりと拍子を取りながら、自分の歌の音楽を楽しんでいるかように、優しいへんてこな顔を軽い微笑でかがやかせつつ、歌い出したのでした。
鏡の国の道中で、アリスはいろいろふうがわりなものを見てきました。
でもずっと後までいちばんくっきり心に残ったのが、この光景でした。
何年もたってからでも、アリスはこの場面を丸ごと、ついきのうのできごとみたいにそっくり思い出せたのです
――騎士(ナイト)の穏やかな青い目と優しげなほほえみ
――夕日がその髪の毛ごしにぎらついて、甲冑にはねかえった強い光で目がくらくらしたこと
――馬が静かにうろうろして、手綱をゆるく首からぶら下げつつ足下の草をかじっているところ
――そして背後の森の黒い影
――そのすべてを、アリスは写真みたいにとりこんだのでした。
片手を額にかざして、木にもたれながらその不思議な騎士(ナイト)と馬のペアをながめ、夢うつつで歌の悲しげな音楽に耳を傾けながら。
「でも、この曲ってぜったいにこの人ならではの発明なんかじゃないわ。
これって『I GIVE THEE ALL, I CAN NO MORE』の曲だもん」とアリスは思いました。
そして立って、いっしょうけんめい聴いたのですが、目にはぜんぜん涙が浮かんできませんでした。
ざるに入れた水みたいに流れ落ちる。
ちょいとばかり、とはいうものの』
そしておじいさんの頭をたたく。
たったの二ペンス半ばかりなり』
どんなお仕事か教えてよ!』と叫ぶ。
それだけで九個も買えるのじゃ』
喜んで一杯おごられましょうぞ』
乾杯したいという願いのためだったけど。
おじいさんを思い出しては泣く――
バッファローみたいないびきの
門にすわってたあのおじいさんを」
騎士(ナイト)は、バラッドの最後のせりふを歌い終えると、手綱をまとめて馬の首を、これまで来た道の方向に向かせました。
「きみはあと数メートル行けばいいだけだよ。
丘をおりて、あの小川を越えたら、そしたらきみは女王さまだ――
でも、まずちょっと残って、ぼくを見送ってもらえないかな」
指さした方向へ、アリスがいそいそと向き直ったのをみて、騎士(ナイト)はつけくわえました。
「そんなに長くはかからないよ。
待ってて、ぼくがあの曲がり角まできたら、ハンカチをふってくれるよね。
そうしたら、ぼくも元気が出ると思うんだ」
「もちろん見えなくなるまで待ちます。
それと、こんなに遠くまできてくれてホントにありがとう
――それとあの歌だけど
――すごく気に入りました」とアリス。
「そうだといいんだけど。
でもきみ、思ったほど泣かなかったよね」と騎士(ナイト)は疑わしそうに申します。
というわけで二人は握手して、騎士(ナイト)はゆっくりと森のなかへ馬を進めました。
「単に見えなくなるまでなら、実はすぐかもね。どうせまた落っこちるだろうから」
とアリスは、立って見送りながらつぶやきました。
「ほーらまた!
例によって頭から!
でも、馬にのりなおすのはかなり楽みたい
――あんなにいろいろ馬にぶらさげてあるおかげだな――」
こんな具合につぶやきながら、アリスはゆっくり歩み去る馬と、そして騎士(ナイト)が片方へ、そしてまた反対側へと転げ落ちるのをながめました。
四回目か五回目に落ちた頃に曲がり角についたので、アリスはハンカチをふってあげて、そして騎士(ナイト)が見えなくなるまで待ったのでした。
「あれで元気を出してくれたらいいんだけど」
とつぶやきながら、アリスは身をひるがえして丘をかけおりました。
「そしてこれが最後の小川、それで女王(クイーン)さまになるんだ!
すっごく豪華なひびき!」
ほんの数歩で、小川のふちまでやってきました。
「ついに八升目!」
と叫びながら、アリスは小川をとびこえ、
そしてあちこち小さな花壇のちらばった、コケのようにやわらかい芝生に転がって休みました。
「ここまでこれてすごくうれしい!
それと、この頭の上のものはいったいなに?」
アリスはうろたえて声をあげてしまいました。
頭に手をやると、なにかとっても重くて、頭にぐるっとぴったりはまったものがあったからです。
「でも、そうやってこんなものが、あたしの知らないうちに頭にのっかれるのかしら?」
とアリスはつぶやいてそれを持ち上げてはずし、ひざに載せて、いったいぜんたいそれがなんなのか見きわめようとしました。
それは黄金の王冠でした。
第 9 章 アリス女王
「まあ、これはたしかに豪勢だわ!」
とアリス。
「こんなにすぐに女王さまになれるとは思わなかった
――そして女王陛下、それならあえて申し上げましょう」
ときびしい調子で続けます
(アリスはいつだって、自分をしかるのがちょっと好きなのでした)。
「そんなふうに、草の上でゴロゴロしてるなんて通りませんよ!
女王さまってもっと威厳がないとダメなんですからね!」
というわけで、アリスは立ちあがって歩き回ってみました
――さいしょは、王冠が脱げちゃうんじゃないかと思って、ちょっとぎこちなかったのですが、
でもだれも見ている人はいないし、と思って自分を安心させました。
「それにもしあたしがほんとうに女王さまなら、いずれこれも立派にできるようになるはずよね」
なにもかも、すごくへんてこに起こっていたので、気がつくと赤の女王さまと白の女王さまが、右と左の間近にいつの間にかすわっていても、ぜんぜんおどろきませんでした。
いつのまにやってきたんだか、ぜひともきいてみたいとは思いましたが、でもちょっと失礼なんじゃないかな、とこわかったのです。
でも、たぶん試合が終わったのか聞いてみても、いけないことはないかな、と思いました。
『あの、ちょっと教えていただけないでしょうか――』
おずおずと赤の女王さまを見て口を開きます。
「話しかけられるまで口を開くんじゃない!」
女王さまは、ぴしゃりとアリスを制しました。
「でも、もしみんながその規則どおりにしたら、
アリスはいつだって、ちょっとした議論は大好きなのでした。
「ばかばかしい!
子供よ、わからぬのか――」
ここで顔をしかめて、せりふがとぎれました。
そしてしばらく考えこんでから、急に話をそらしました。
「さっきの『もしあたしがほんとうに女王さまなら』というのは、どういう意味だえ?
なんの権利があって女王を名乗る?
しかるべき試験に合格するまでは、女王にはなれぬののだからな。
そして、ことわざにも言うとおり、試験は急げ。すぐ始めるとしよう」
「『もし』って言っただけです!」
かわいそうなアリスは、あわれっぽい調子でうったえました。
女王さま二人は顔を見合わせて、そして赤の女王さまが、ちょっと身震いしながら述べます。
「この子は、自分が『もし』と言っただけだと述べておるが――」
「でもそれよりはずっといろんなことを発言しましたわよね!」
と白の女王さまが、手をもみくちゃにしながらうめきます。
「ほんとうにもう、とてもじゃないけどいろいろと!」
「まさしくその通り、であろうが」
と赤の女王さまがアリスに申しました。
「いつも正直におっしゃい
――口を開く前によく考えて
――そしてあとで書き留めておくこと」
「あたしだって別に本気でそんな――」
とアリスが切り出しましたが、赤の女王さまがそれをすぐさまさえぎります。
「いまそのことで苦情を申したばかりであろうが!
ちゃんと本気でなくてはいかんのじゃ!
本気なしの子供なんて、なんの役もたたないであろう。
冗談にすら、多少の本気はあるべきだし
――そして子供は、願わくば冗談よりはだいじであってほしいものだがね。
おまえだって、たとえ両手を使ってみても、それを否定することは能うまい」
「あたし、手で否定したりしません」
アリスは反論しました。
「だれもするなどとは申しておらぬわ。
と赤の女王さま。
「その子はねえ、そういうお年頃なんでございますよ。
なにかを否定したくてしょうがないんだけれど
――でも、何を否定していいかわからない、という!」と白の女王さま。
「性悪で始末におえない気質じゃね」
と赤の女王さまが述べます。
そして、一分かそこら、とても居心地の悪いだんまりが続きました。
だんまりを破ったのは赤の女王さまで、白の女王さまにこう申しました。
「本日午後の、アリスの晩餐パーティーにご招待しましょう」
白の女王さまは弱々しくほほえみました。
「ではわたしも陛下をご招待いたしますわ」
「あたし、自分が晩餐パーティーをやることになってるなんて、ぜんぜん知りませんでした。
でも、もしあるなら、お客様をご招待するのは、あたしのはずだと思うんですけれど」
「それをやる機会は与えてやったのじゃがの、
でもおまえ、あえて申せばまだ礼儀作法の授業はあまり受けておらぬであろうが」
「礼儀作法は、授業で教わるものじゃありません。
授業では計算とか、そういうのを教えるんです」とアリス。
「じゃあ足し算はおできになるわねえ」
と白の女王さま。
「一足す一足す一足す一足す一足す一足す一足す一足す一足す一足す一足す一はいくつ?」
「わかりません。
とアリス。
「足し算はできない、と」
と赤の女王が割り込みます。
「引き算はできるかえ?
八引く九」
「八から九を引くのは無理です、そうでしょう」
アリスは待ってましたとばかりに答えます。
「でも――」
「引き算もおできにならないのねえ」
と白の女王さま。
「じゃあわり算はいかがかしら?
パンをナイフで分割すると
――答えはなあに?」
「それはたぶん――」
とアリスが言いかけたところで、赤の女王さまがかわりに答えました。
「バターパンだよ、もちろん。
引き算をもう一つやってみるがいい。
犬から骨をとったら、
なにが残る?」
アリスは考えました。
「骨は残らない、わよねえ、もちろん。
だって取るんだから
――そして犬も残らないでしょう、
あたしにかみつきにくるもの
――そしたらあたしだってぜったい残らないわ!」
「じゃあ何も残らないと思うわけじゃな?」
と赤の女王さま。
「それが答えだと思います」
「ちがうな、毎度ながら」
と赤の女王さま。
「犬の正気が残る」
「でもいったいどうして――」
「やれやれ、少しは考えるがよいぞ!」
と赤の女王さまが叫びます。
「骨をとられたら、犬は怒って正気を失うであろうが、え?」
「そうかもしれませんわねえ」
アリスは慎重に答えました。
「そうしたら、犬が去ったら、正気のほうがあとに残っているわけじゃろうが!」
女王さまは、勝ち誇ったように叫ぶのでした。
アリスは、なるべく重々しい声を出そうとしました。
「残らずに別の方向に向かうかもしれないじゃないですか」
でも、ついつい考えてしまうのでした。
「まったく、どうしてこんな、とんでもなくわけのわかんない話をしてるんだろう!」
「この子、計算はカケラもできないときた!」
と女王さまたちは声をあわせ、思いっきりそれを強調してみせました。
「陛下は計算はおできになるんですか?」
とアリスは、いきなり白の女王さまに向き直って申しました。
こんなにあれこれ粗さがしをされるのがいやだったからです。
女王さまは息をのんで、目を閉じました。
「もし時間さえいただければ、足し算はできますのよ
――でも引き算は、どんな場合でもできませんの!」
「もちろん A B C はわきまえておるな?」
と赤の女王さま。
「それはもちろんまちがいなく」
とアリス。
「わたくしもですのよ」
と白の女王さまがささやきます。
「わたくしたち、いっしょに暗唱したりしましょうねえ。
それで、これは秘密なんですけれど
――わたくし、一文字だけの単語なら読めますのよ!
これってなかなかすごくございませんこと?
でも、あまりがっかりなさらないでくださいな。
あなたもいずれ追いつかれますわよ」
ここで赤の女王さまがまたしゃべりだします。
「実用問題なら答えられるかの?
パンの作り方は?」
「あ、それなら知ってます!
えーと、まず強力粉を用意して――」
「強力とおっしゃいましても、どのくらい お強うございますの?
ライオンくらいですかしら、それともゾウくらいかしらねえ?」
「いえ、それはそういう強さじゃなくて、
なんか小麦粉の種類の一種みたい――」
「見たいとおっしゃいましても、何がごらんになりたいのかしら?
そんないろいろ話をお飛ばしに なると、こちらといたしましてもねえ」と白の女王 (クイーン) さま。
「頭をあおいでやろう!」
赤の女王さまが心配そうに割り込みます。
「考えすぎで、熱っぽくなってるはずじゃ」
そこで二人は葉っぱをたくさん使って、がんばってアリスをあおぎはじめて、やがてアリスはやめてくださいとお願いしなくてはなりませんでした。
髪の毛があちこち吹き流されてたいへんだったからです。
「これでまた大丈夫だろうて。
おまえ、語学はできるかえ?
あっちょんぶりけをフランス語で言うと?」
「『あっちょんぶりけ』なんて日本語じゃありません」
アリスは重々しく答えました。
「だれも日本語だなんて申してはおらぬ」
と赤の女王さま。
アリスは、こんどこそこの面倒から逃げ道を見つけたと思いました。
「『あっちょんぶりけ』が何語か教えてくださいましたら、それをフランス語で言うとどうなるか申しますけど!」
と勝ち誇って申します。
でも赤の女王さまは、ちょっとツンとした様子で身を引いてこう申しました。
「女王たるもの、取引などはせぬ」
「女王たるもの、質問もしないでくれたらいいのに」
とアリスは思いました。
「もう口論はよしましょうよ。
稲妻の原因はなぁに?」
アリスは、これは絶対確実にわかってるわと思ったので、きっぱりと答えました。
「稲妻の原因は雷で
――あ、ちがった!
と、あわてて訂正します。
「訂正には手遅れだわい。
おまえが何か言ったら、それはもう確定して、その結果を受け入れるしかないのじゃ」と赤の女王さま。
「それで思い出しましたけれど――」
と白の女王さまは目を伏せて不安そうに、手をにぎりしめたり離したりしています。
「こないだの火曜日に、すごい雷雨がございましてねえ
――というか、こないだの火曜日の一群の一つで、ということですけど」
アリスにはちんぷんかんぷんでした。
「あたしの国では、
一日は一度に一つずつしかないんですけれど」
赤の女王さまが申します。
「それはなんとも貧相でうすっぺらいやり方じゃの。
さてここでは、昼も夜もたいがいは一度に二つ三つ同時にこなして、冬になるとときには、最高で五夜くらいまとめてこなすね
――もちろん暖をとるためじゃが」
「五夜まとめてとると、一夜よりあったかいんですか?」
アリスはあえてたずねました。
「五倍あったかじゃ、とうぜんであろう」
「でもその同じ規則によると、五倍寒くなるわけで――」
「まさにその通り!
五倍あったかで、しかも五倍寒い
――ちょうど、わらわがおまえより五倍裕福で、しかも五倍賢いのと同じじゃ!」と赤の女王は叫びます。
アリスはため息をついて降参しました。
「まさしく、答えのないなぞなぞみたいだわ!」
と思って。
「それ、ハンプティ・ダンプティも見たんですよ」
と白の女王さまは小さい声で、まるで独り言みたいに続けました。
「コルク抜きを手にドアにやってきて――」
「そやつ、望みはなんじゃ?」
と赤の女王さま。
「どうしても入ってくると申しまして、
というのもカバを探しているとか。
さて、ことの次第を申しますと、そんなものは家の中にはおりませんでね、その朝は」
「いつもはいるんですか?」
アリスはびっくりした口調でききました。
「ええ、まあ木曜だけですけどね」
と女王さま。
「あたし、ハンプティ・ダンプティの望みなら知ってます。
お魚をこらしめたかったのよ、だって――」
ここで白の女王さまがまた口を開きました。
「とにかくものすごい雷雨でして、ものを考えることもできないくらい!」
(「彼女の場合、もともと考えたりできぬたちでな」
と赤の女王さま)
「そして屋根が一部はずれてしまったんですのよ、そして雷がいっぱい家に入って参りましてねぇ
――そしてこんなおっきなかたまりになって、部屋の中をころげまわりますんですの
――テーブルとかいろいろひっくり返しまして
――わたくし、もうおびえすぎて、自分の名前も思い出せなくなってしまったんですのよ!」
「そんな事故の最中に、自分の名前を思い出そうなんて、そもそもやらないほうがいいな、
だって何にも役にたたないじゃない!」
とアリスは思いましたが、かわいそうな女王さまの気持ちを傷つけまいとして、これは口には出しませんでした。
「陛下はこの方に寛大でなくてはなりませぬぞ。
と赤の女王さまは、白の女王さまの片手をにぎり、やさしくなでながらアリスに申しました。
白の女王さまはおずおずとした様子でアリスを見つめます。
アリスとしても、なにか言った方がいいにちがいない、とは思いましたが、ここでは何も言うことを思いつきません。
「もともとあんまり育ちはよくない方なのですじゃ。
でも、この気だてのよさは驚くほど!
頭をなでてやってごらんなされ、すごく喜びますぞ!」
でもこれは、さすがのアリスも勇気がありませんでした。
「ちょっとの優しさ
――それと髪を紙にくるんでやること
――それでこの方はおどろくほど――」
白の女王さまは深いため息をついて、頭をアリスの肩にもたせかけます。
「もうとても眠いですの」
とうめきます。
「かわいそうに、疲れておられるのじゃ。
髪をなでておやり
――ナイトキャップを貸してあげて
――そして気持ちのよい子守歌を歌ってさしあげるのじゃ」
「でもナイトキャップは持ってません。
それに、気持ちのいい子守歌も知らないです」
「ではわらわが自らやるしかないな」
と赤の女王さまは、歌い始めました:
おやすみご婦人、アリスのひざで!
宴の支度が整うまでお昼寝
宴が終われば舞踏会
紅白女王とアリスとみんな!
「さあこれで歌詞がわかったじゃろ」
と赤の女王さまは、アリスの反対側の肩に頭をのせます。
「こんどはわらわに歌うのじゃ。
わらわも眠気をもよおしてきたでな」
次のしゅんかん、女王さま二人ともぐっすり眠っていて、しかも大いびきをかいています。
「あたし、どうすればいいのかしら!」
とアリスは、丸い頭が一つ、また一つと、肩からすべりおちて、重たい固まりみたいにひざに転げ込んできたので申しました。
「こんなことって、これまで一度もなかったはずよ、寝ている女王さま二人もいっしょにめんどう見なきゃならないなんて!
いいえ、イギリス史上一人も
――だってありえないもの、女王さまって一度に一人以上はいなかったから。
重たい人たちね、起きてちょうだいったら!」
とアリスは、いらいらした口調で続けました。
でも、返事はなく、軽いいびきだけ。
いびきは、一分ごとにますます強烈になってきて、だんだん曲のように聞こえてきました。
とうとう、歌詞までききとれるようになってきました。
そしてとても熱心に耳を傾けていたので、でかい頭二つがひざから消えたときにも、ちっとも名残惜しいなんて思いませんでした。
アリスは、おっきなアーチになった戸口の前に立っていました。
そのアーチにはおっきな文字で「アリス女王」ということばがかかっていて、アーチの左右には呼び鈴のハンドルがついていました。
一つは「お客用呼び鈴」、もう一つは「召使い用呼び鈴」とふだが出ています。
「歌が終わるまで待とうっと。
それから呼び鈴を鳴らす――といっても――どっちをならせばいいのかな?」
札に書いてあることで、ずいぶん混乱してしまったのです。
「あたしはお客じゃないし、召使いでもないし。
『女王』って書いたのがあってしかるべきよねぇ――」
ちょうどそのとき、ドアが細く開いて、長いくちばしの生き物がいっしゅん頭をつきだし
「再来週まではだれも入れませんよ!」
と言って、またドアをバタンと閉めてしまいました。
アリスはながいこと、ノックしたり呼び鈴を鳴らしたりしていましたが、何も起きません。
やっと、木の下にすわっていたとっても年寄りのカエルが、立ち上がってゆっくりよたよたと、アリスのほうにやってきました。
明るい黄色の服をきて、巨大なブーツをはいています。
「やれやれ、こんどはなにごとですかいな?」
アリスはふりかえりました。
だれでもいいからやつあたりしたい気分です。
「このドアに応えるのは、どの召使いの仕事ですか!その者はどこにおりますか!」
とアリスは、怒った調子で申しました。
「ドアって、どのぉ?」
とカエル。
アリスはカエルのゆっくりまのびしたしゃべりかたでいらいらして、足を踏みならしたい気分でした。
「このドアに決まっているでしょうが!」
カエルはそのおっきなどんよりした目で、一分かそこら、そのドアをながめていました。
それから近くによって、親指でこすってみて、ペンキが落ちないか試しているようでした。
それからアリスのほうを向きます。
「ドアに答えるって?
こいつが何を質問してましたかね?」
声がしゃがれすぎて、アリスがほとんど聞き取れないほどです。
「なにを言ってるんだかさっぱり」
とアリス。
「あっしゃふつうにことばをしゃべっちょるでしょうが、え?
それともあんた、つんぼ?
このドアが何か質問しましたかいな?」
「何も!
ノックしてたのよ!」とアリスはいらいらして申します。
「それやっちゃあいかんよ――それはいかんよ――機嫌損ねちまうもんね」とつぶやいて、
カエルはドアに歩み寄ると、でかい足でドアを一発けとばしました。
と、またよたよた木のところに戻ります。
このしゅんかんに、ドアがサッと開くと、かんだかい声がこんな歌を歌っているのが聞こえました:
「鏡の国にアリスが語る
『我が手には杓(しゃく)、頭上には王冠
鏡の国の生き物たちよ、なんであれ
紅白女王と我との晩餐(ばんさん)にくるがよい』
そして何百もの声が合唱に加わりました:
「ではグラスを急いで満たそう
ボタンとbranをテーブルにふりまき
コーヒーにはネコを入れ、紅茶にはネズミを
――そして女王アリスに三の三〇倍の歓迎を!」
そして歓声のごちゃごちゃした騒音がきこえて、アリスは考えました。
「三の三〇倍って九〇よね。
だれが数えてるんだろう?」
一分ほどしてまた静かになって、同じかんだかい声が次の歌を歌うのでした。
「『鏡の国の生き物たちよ、近う寄れ!』とアリス
『我が姿を見るは栄誉、聞くは幸
食事とお茶をともにするは誇りなり
紅白女王と我との晩餐(ばんさん)にくるがよい』」
そしてまたコーラスが続きます:――
「ではグラスに糖蜜(とうみつ)とインクを満たし
その他飲むに快いもの何でも満たし
サイダーを砂に、ワインをウールにまぜ――
そして女王アリスに九の九〇倍の歓迎を!」
「九の九〇倍!
そんなのいつまでたっても終わらないわ。
いますぐ入ったほうがいいわね――」とアリスは思いました。
そして入ったしゅんかんに、みんな死んだように、しーんとしずまりかえってしまいました。
アリスは大きな広間を歩いていきましたが、ずっと不安そうにテーブルに沿ってながめていきました。
お客は全部で五〇人ほど、それもいろいろです。
動物もいれば鳥もいて、中には花もいくつか混じっています。
「招待される前にでてきてくれてよかったわ。
あたしだったら、だれを招待したらいいかさっぱり見当つかなかったでしょうから!」
テーブルのいちばん上座には、いすが三つありました。
赤と白の女王さまがそのうち二つにすわっていましたが、真ん中のがあいています。
アリスは、だれもなにも言わないのでちょっとまごまごしながらそこにすわりました。
だれかしゃべらないかな、と思っています。
とうとう赤の女王が口を開きました。
「もうスープと魚は下げられてしまったぞえ。
ひざ肉を持て!」
すると給仕たちが、マトンの脚をアリスの前に置きました。
アリスは心配そうにそれをながめます。
関節肉を切り分けるのなんて、これが初めてだったからです。
「引っ込み思案のようじゃな。
マトンの脚に紹介してつかわそう。
アリス、こちらマトン。
マトン、こちらはアリス」
マトンの脚は皿の中で立ち上がり、アリスに軽くおじぎをしました。
アリスもおじぎを返しました。
おびえるべきなのか、おもしろがるべきなのか、見当もつきません。
「一切れお取りしましょうか」
とアリスはナイフとフォークを手にとって女王二人を交互に見比べます。
「まさか、何を申しておるか」
と赤の女王さまがきっぱりと申しました。
「紹介された相手を切るなんて、エチケットに違反しておるではないの。
ひざ肉をお下げ!」
すると給仕たちがそれを運び去り、かわりにおっきなすももプリンを持ってきました。
「プリンには紹介していただかないで結構ですから。
そうでないと、晩ごはんが一口も食べられないでしょう。
少しおとりしましょうか?」
でも赤の女王さまは冷たい目つきでアリスをにらむと、うなるように申します。
「プリン、こちらはアリス。
アリス、こちらはプリン。
プリンをお下げ!」
そして給仕たちの下げかたがすばやすぎて、アリスはおじぎを返すひまもありませんでした。
でも、命令を出すのが赤の女王さまだけというのは、アリスとしても納得がいきませんでしたので、試してみようと思って、アリスは叫びました。
「給仕!
プリンを戻してちょうだい!」
そして、まるで手品みたいに、プリンがいっしゅんのうちに戻っていました。
すごくおっきなプリンで、アリスとしてもマトンのときのように、ちょっとはたじろがずにはいられませんでしたが、
でもいっしょうけんめいがんばって気持ちをおさえこんで、プリンを一切れ切ると、赤の女王さまに渡しました。
「なんとまあ失礼千万!」
とプリン。
「あんたからわたしが一切れ切ったりしたら、どれほどお気に召すか知りたいもんだよ、このいきものめが!」
プリンの声は、ねばっこい、脂肪っぽい感じの声で、アリスは返すことばもありませんでした。
ただすわってそれをながめ、息をのむばかり。
「なんとか申すがよいぞ。
プリンばかりにしゃべらせておくなど、とんでもないことじゃ!」と赤の女王さま。
「そうですね、今日はすごくたくさん詩を暗唱してもらったんですよ」
とアリスが言い始めたとたんに、、みんな死んだようにしー んとしずまりかえって、いっせいにこちらを見つめるので、アリスはちょっとこわくなってしまいました。
「そして、すごくおもしろかったんですけど――
どの詩も、なにかしらお魚と関係があったんです。
なぜここではみんな、そんなにお魚が好きなのかご存じですか?」
アリスはこれを赤の女王さまに向かってきいたのですが、その答えは、ちょっと見当はずれなものでした。
女王さま、とてもゆっくりと重々しく、アリスの耳に口を寄せて申します。
「魚といえば、白の女王陛下はすばらしいなぞなぞをご存じなのじゃ
――それもぜんぶが詩になっておる
――しかもぜんぶ魚のこと。
暗唱していただこうかの?」
「赤の女王陛下、それをおっしゃってくださるとはなんとご親切な」
と白の女王さまは、アリスの反対側の耳にぶつぶつと申します。
その声は、まるで鳩の鳴き声みたいでした。
「実にすばらしいもてなしでございますわ!
よろしいでしょうか?」
「ぜひに」
とアリスはとても礼儀正しく申します。
白の女王さまはうれしそうに笑って、アリスのほっぺたをなでます。
そして始めました:
「『まずは魚をつかまえなければ』
これは簡単、赤ん坊でもできるはず。
『つぎに、魚を買いましょう』
これも簡単、ペニーで買えるはず。
『さあ魚を料理して!』
これも簡単、一分もかからない。
『お皿に入れて!』
これも簡単、もとからお皿に入っているもの。
『持っておいで、食べるから!』
お皿をテーブルにのせるは簡単。
『お皿のふたをとっておくれ!』
さて、これはむずかしすぎて、できません!
ふたは糊づけみたいにしっかりくっつき――
ふたをお皿にくっつけて、お魚は間に横たわる
さて簡単なのはどちらかしら
魚のふたを解明するか、なぞなぞの謎を開けるか?」
「一分かそこら考えてみてからあててみるがよいぞ。
その間に、こちらは陛下の健康を祈って乾杯いたそう
――アリス女王の健やかならんことを!」
と赤の女王さまは、思いっきり金切り声をあげて、お客たちはみんなすぐに乾杯して、しかもとってもへんてこなやり方で飲んだのでした。
あるモノはグラスを消化器みたいに頭のてっぺんにのっけて、顔に流れ落ちてきたのを全部飲み干しました
――デカンターをひっくり返して、テーブルのふちから流れ落ちるワインを飲んでいます
――そして三人(カンガルーみたいです)はローストマトンのお皿にわれさきによじのぼって、うれしそうに肉汁をなめだすのです。
「かいばおけのブタみたいね」
とアリスは思いました。
「お返しに、見事なスピーチをするがよいぞ」
「わたくしたちが、支えてさしあげないといけませんですからねえ」
「ありがとうございます。
でも、支えていただかなくても、だいじょうぶだと思いますから」とアリスもささやき返しました。
「そんなことですむと思っておるのかえ?」
赤の女王さまがきっぱりと申します。
そこでアリスは、なるべく優雅にその役目を果たそうとしたのでした。
(「それで、二人ともすっごく押してくるの!
とアリスは、あとでこの祝宴の様子をお姉さんに話してあげたときに言いました。)
確かに、スピーチをしながらアリスとしては、その場にじっとしているのがなかなかむずかしくなっていました。
女王さま二人はそれぞれ右と左から猛烈に押してきて、アリスはほとんど空中に持ち上げられそうなくらい。
「感謝の念で天にも昇る思いです――」
とアリスは切り出しましたが、
そう言いながら、アリスはほんとうに何センチか宙に上ってしまいました。
でも、テーブルのふちをつかまえて、なんとか自分を引き下ろしたのでした。
「用心なさいな」
と白の女王さまは、アリスの髪の毛を両手でつかんでわめきました。
「何か起こりますわよ!」
そしてそのとき(とアリスはあとになって表現しました)いろんなことが一気に起きました。
ロウソクがみんないっせいに天井までのびあがり、まるでてっぺんに花火のついたイグサのしげみみたいになりました。
そしてびんはと言えば、みんなお皿を二枚ずつ取って、それを急いで翼として自分にくっつけました。
そしてフォークを脚としてくっつけると、あちこちめがけてパタパタ飛び回り始めたのでした。
「ほんとうにまるで鳥みたいに見えるのねえ」
とアリスは、始まりつつあるこのとんでもない混乱の中で、やっとのことでそう考えました。
このしゅんかんに、アリスのとなりから、耳ざわりな笑い声がして、アリスは白の女王(クイーン)さまに何があったのかと思いました。
でも女王(クイーン)さまのかわりにそこにすわっていたのは、マトンの脚肉です。
「わたくし、ここですわよ!」
とスープ入れの中から声が叫び、アリスが向き直ると、ちょうど女王(クイーン)さまのおっきい人のよさげな顔が、器のふちからいっしゅんアリスに向かってニヤリとして、すぐにスープの中に消えてしまうところでした。
もういっしゅんも無駄にはできません。
すでにお客さまの何人かは、お皿の上に横になっているし、スープのおたまがテーブルの上をアリスに向かって歩いてきて、そこをどけとせっかちに合図をよこしています。
「もぉがまんできない!」
とアリスは叫んで飛び上がり、両手でテーブルクロスをわしづかみにしました。
そのままグイッと強力にひっぱると、大皿小皿、お客さま、ロウソクがぜんぶ、床にガシャンといっしょくたに落ちて、山づみになりました。
「そしてあなたはといえば」
とアリスは、カンカンになって赤の女王さまのほうを向きました。
彼女こそがこのバカ騒ぎの大もとだと思ったからです
――でも女王さまはもう隣にはいませんでした
――いきなり小さな人形くらいの大きさに縮んでしまって、いまではテーブルの上にのっかり、自分が背後にひらひらさせているショールの後を、うれしそうにグルグルとおっかけているのでした。
ほかのときなら、アリスはまちがいなくこの光景にびっくりしていたはずです。
でも、このしゅんかんには、もう何を見ても驚くどころではないくらい、アリスは頭に血が上っていました。
「そしてあなたはといえば」
と繰り返しつつ、ちょうどテーブルの上で燃えだしたびんを、まさに飛びこえつつあったその小さな生き物を捕まえました。
「ゆすって子ネコにしちゃうからね、まったく!」
第 10 章 ゆさぶる
そういいながらアリスは赤の女王(クイーン)さまをテーブルから持ち上げると、思いっきり前後にゆさぶりだしました。
赤の女王(クイーン)さまは、まるでなんの抵抗もしません。
ただ顔がとても小さくなってきました。
目が大きく緑になってきます。
そしてさらに、アリスがどんどんゆさぶりつづけると、どんどん小さく――そして太って――そしてやわらかく――そして丸っこくなってきて――そして――
第 11 章 目をさます
――そしてそれは結局ホントに子ネコ、だったのでした。
第 12 章 どっちが夢を?
「陛下、そんなに大きな声で鳴くもんじゃありませんわ」
とアリスは目をこすり、子ネコに向かって敬意ときびしさをこめて申しました。
「もう、とってもすてきな夢を見ていたのに、目がさめちゃったでしょう!
でも、おまえもいっしょだったわよね、子ねこちゃん
――鏡の国の世界中ずっと。
知ってた?」
子ネコたちのとっても不都合なクセとして(というのはアリスがまえに言ったせりふですが)、こちらが何を言っても、必ずミャアと言うことがあります。
「『イエス』だけがミャアで、『ノー』がニャアとか、そういう規則があればいのに。
そうすれば会話が続くでしょう。
でも、いつだって同じことしか言わない人と、話のしようがないじゃない!」
この時にも、子ネコはミャアと言っただけでしたので、
それが「イエス」の意味か「ノー」の意味かを当てるのは不可能でした。
そこでアリスはテーブルの上のチェスの駒をさがしまわって、赤の女王(クイーン)を見つけだしました。
それから炉端のじゅうたんの上にひざまずいて、子ネコと女王(クイーン)をご対面させました。
「さあ子ネコちゃん、
おまえが変身したのがそれだと白状なさい!」
(「でも、駒を見ようともしないのよ」
とあとでお姉さんにすべてを話しているときにアリスは言いました。
「顔を背けて、見ないふりをするの。
でも、ちょっとはうしろめたい感じだったから、たぶん赤の女王(クイーン)さまだったのよ、ぜったいに」)
「もうちょっと背筋をのばしてすわんなさい!」
とアリスは楽しげな笑い声をたてます。
「それに、何を――何を鳴こうか考えてる間、会釈なさい。
時間の節約になる、でしょ!」
そしてアリスは子ネコを抱き上げると、小さくキスしてやりました。
「赤の女王(クイーン)となった名誉をたたえて」だそうです。
「かわいいスノードロップ!」
とアリスは続けて、肩越しに白の子ネコをながめました。
白の子ネコはまだじっと洗面中です。
「白の閣下、ダイナはいったいいつになったら、おまえを洗い終わるのかしらねえ。
夢の中でおまえがあんなにみすぼらしかったのも、そのせいにちがいないわ――ダイナ!
おまえ、白の女王さまの顔を洗ってるって知ってた?
不敬罪だわよ!」
「そしてダイナはいったいなんになったんだろう?
ねえダイナ、おまえ、ハンプティ・ダンプティになったの?
たぶんそうだと思うな
――でも、まだお友だちには言わないほうがいいわよ。
あたしもまだはっきりしないし」
「ちなみにね、子ネコちゃん、おまえがほんとにあたしの夢の中にいたんなら、おまえがぜったい楽しんだはずのことが一つはあるわ
――すごくたくさん詩を朗読してもらったんだけれど、それがみんなお魚のことなの!
明日の朝にはほんとうにおおごちそうよ。
朝ごはんを食べてるとき、ずっと『セイウチと大工』を暗唱してあげるわ。
そうしたら、朝ごはんがカキだってつもりになれるでしょう!」
「さあ子ネコちゃん、こんどは、あれをすべて夢にみたのがだれだったかを考えてみましょう。
まじめにきいてるんだから、そんなに前足をなめてばかりいるんじゃない!
ダイナに朝、洗ってもらったばっかりでしょう!
つまりね、夢を見たのは、あたしか赤の王さまかのどっちかにまちがいないのよ。
赤の王さまはあたしの夢の一部よね、もちろん
――でも、そのあたしは、赤の王さまの夢の一部でもあったのよ!
だからほんとに赤の王さまだったのかしら、子ネコちゃん?
おまえは赤の王さまの奥さんだったんだから、知ってるはずでしょう
――ねえ、おねがいだから、考えるのを手伝ってよ!
前足なんかあとでいいでしょうに!」
でも意地悪な子ネコは、反対側の前足をなめはじめただけで、質問が聞こえないふりをするばかりでした。
あなたはどっちだと思いますか?
晴れた夏空の下のボートが
夢見るように漂い進む
七月の夕暮れどき――
近くに群がる子供ら三人
きらめく瞳に熱心な耳
簡単なお話を聞いて喜び――
あの晴れた空はとうに色あせ
こだまは消えて記憶は薄れ
秋の霜が七月を斬る。
それでも彼女が亡霊的につきまとう
覚めたる目に見られたこともない
空の下でうごくアリスが。
子供たちはまだお話を聞こうと
きらめく瞳に熱心な耳で
いとおしくも近くに群がる。
みな不思議の国に横たわり
日が流れるにつれて夢を見
夏の衰えの中で夢を見る。
果てしなく流れを漂い下り
黄金の輝きの中で戯れ
人生、まさに夢ならんや? | Through the Looking Glass: And What Alice Found There
Looking-Glass house
One thing was certain, that the WHITE kitten had had nothing to do with it:
--it was the black kitten's fault entirely.
For the white kitten had been having its face washed by the old cat for the last quarter of an hour
(and bearing it pretty well, considering);
so you see that it COULDN'T have had any hand in the mischief.
The way Dinah washed her children's faces was this:
first she held the poor thing down by its ear with one paw, and then with the other paw she rubbed its face all over,
the wrong way, beginning at the nose:
and just now, as I said, she was hard at work on the white kitten,
which was lying quite still and trying to purr
--no doubt feeling that it was all meant for its good.
But the black kitten had been finished with earlier in the afternoon, and so, while Alice was sitting curled up in a corner of the great arm-chair, half talking to herself and half asleep, the kitten had been having a grand game of romps with the ball of worsted Alice had been trying to wind up, and had been rolling it up and down till it had all come undone again;
and there it was, spread over the hearth-rug, all knots and tangles, with the kitten running after its own tail in the middle.
`Oh, you wicked little thing!'
cried Alice, catching up the kitten, and giving it a little kiss to make it understand that it was in disgrace.
`Really, Dinah ought to have taught you better manners!
You OUGHT, Dinah, you know you ought!'
she added, looking reproachfully at the old cat, and speaking in as cross a voice as she could manage
--and then she scrambled back into the arm-chair, taking the kitten and the worsted with her, and began winding up the ball again.
But she didn't get on very fast,
as she was talking all the time, sometimes to the kitten, and sometimes to herself.
Kitty sat very demurely on her knee, pretending to watch the progress of the winding, and now and then putting out one paw and gently touching the ball, as if it would be glad to help, if it might.
`Do you know what to-morrow is, Kitty?' Alice began.
`You'd have guessed if you'd been up in the window with me
--only Dinah was making you tidy, so you couldn't.
I was watching the boys getting in sticks for the bonfire
--and it wants plenty of sticks, Kitty!
Only it got so cold, and it snowed so, they had to leave off.
Never mind, Kitty,
we'll go and see the bonfire to-morrow.'
Here Alice wound two or three turns of the worsted round the kitten's neck,
just to see how it would look:
this led to a scramble, in which the ball rolled down upon the floor, and yards and yards of it got unwound again.
`Do you know, I was so angry, Kitty,'
Alice went on as soon as they were comfortably settled again,
`when I saw all the mischief you had been doing, I was very nearly opening the window, and putting you out into the snow!
And you'd have deserved it, you little mischievous darling!
What have you got to say for yourself?
Now don't interrupt me!'
she went on, holding up one finger.
`I'm going to tell you all your faults.
Number one:
you squeaked twice while Dinah was washing your face this morning.
Now you can't deny it, Kitty:
I heard you!
What that you say?'
(pretending that the kitten was speaking.)
`Her paw went into your eye?
Well, that's YOUR fault, for keeping your eyes open
--if you'd shut them tight up, it wouldn't have happened.
Now don't make any more excuses,
but listen!
Number two:
you pulled Snowdrop away by the tail just as I had put down the saucer of milk before her!
What, you were thirsty, were you?
How do you know she wasn't thirsty too?
Now for number three:
you unwound every bit of the worsted while I wasn't looking!
`That's three faults, Kitty, and you've not been punished for any of them yet.
You know I'm saving up all your punishments for Wednesday week
--Suppose they had saved up all MY punishments!'
she went on, talking more to herself than the kitten.
`What WOULD they do at the end of a year?
I should be sent to prison, I suppose, when the day came.
Or
--let me see
--suppose each punishment was to be going without a dinner:
then, when the miserable day came, I should have to go without fifty dinners at once!
Well, I shouldn't mind THAT much!
I'd far rather go without them than eat them!
`Do you hear the snow against the window-panes, Kitty?
How nice and soft it sounds!
Just as if some one was kissing the window all over outside.
I wonder if the snow LOVES the trees and fields, that it kisses them so gently?
And then it covers them up snug, you know, with a white quilt;
and perhaps it says,
"Go to sleep, darlings, till the summer comes again."
And when they wake up in the summer, Kitty, they dress themselves all in green, and dance about
--whenever the wind blows
--oh, that's very pretty!'
cried Alice, dropping the ball of worsted to clap her hands.
`And I do so WISH it was true!
I'm sure the woods look sleepy in the autumn, when the leaves are getting brown.
`Kitty, can you play chess?
Now, don't smile, my dear,
I'm asking it seriously.
Because, when we were playing just now, you watched just as if you understood it:
and when I said "Check!" you purred!
Well, it WAS a nice check, Kitty, and really I might have won, if it hadn't been for that nasty Knight, that came wiggling down among my pieces.
Kitty, dear, let's pretend--'
And here I wish I could tell you half the things Alice used to say, beginning with her favourite phrase `Let's pretend.'
She had had quite a long argument with her sister only the day before
--all because Alice had begun with `Let's pretend we're kings and queens;'
and her sister, who liked being very exact, had argued that they couldn't, because there were only two of them, and Alice had been reduced at last to say,
`Well,
YOU can be one of them then,
and I'LL be all the rest.'
And once she had really frightened her old nurse by shouting suddenly in her ear,
`Nurse!
Do let's pretend
that I'm a hungry hyaena, and you're a bone.'
But this is taking us away from Alice's speech to the kitten.
`Let's pretend
that you're the Red Queen, Kitty!
Do you know,
I think if you sat up and folded your arms, you'd look exactly like her.
Now do try, there's a dear!'
And Alice got the Red Queen off the table, and set it up before the kitten as a model for it to imitate:
however, the thing didn't succeed,
principally, Alice said, because the kitten wouldn't fold its arms properly.
So, to punish it, she held it up to the Looking-glass, that it might see how sulky it was
--`and if you're not good directly,' she added, `I'll put you through into Looking-glass House.
How would you like THAT?'
`Now,
if you'll only attend, Kitty, and not talk so much, I'll tell you all my ideas about Looking-glass House.
First, there's the room you can see through the glass
--that's just the same as our drawing room, only the things go the other way.
I can see all of it when I get upon a chair
--all but the bit behind the fireplace.
Oh!
I do so wish I could see THAT bit!
I want so much to know whether they've a fire in the winter:
you never CAN tell, you know, unless our fire smokes, and then smoke comes up in that room too
--but that may be only pretence, just to make it look as if they had a fire.
Well then, the books are something like our books, only the words go the wrong way;
I know that,
because I've held up one of our books to the glass, and then they hold up one in the other room.
`How would you like to live in Looking-glass House, Kitty?
I wonder if they'd give you milk in there?
Perhaps Looking-glass milk isn't good to drink
--But oh, Kitty!
now we come to the passage.
You can just see a little PEEP of the passage in Looking-glass House, if you leave the door of our drawing-room wide open:
and it's very like our passage as far as you can see, only you know it may be quite different on beyond.
Oh, Kitty! how nice it would be if we could only get through into Looking-glass House!
I'm sure it's got, oh! such beautiful things in it!
Let's pretend there's a way of getting through into it, somehow,
Kitty.
Let's pretend the glass has got all soft like gauze, so that we can get through.
Why, it's turning into a sort of mist now, I declare!
It'll be easy enough to get through--'
She was up on the chimney-piece while she said this, though she hardly knew how she had got there.
And certainly the glass WAS beginning to melt away, just like a bright silvery mist.
In another moment Alice was through the glass, and had jumped lightly down into the Looking-glass room.
The very first thing she did was to look whether there was a fire in the fireplace,
and she was quite pleased to find that there was a real one, blazing away as brightly as the one she had left behind.
`So I shall be as warm here as I was in the old room,' thought Alice:
`warmer, in fact, because there'll be no one here to scold me away from the fire.
Oh, what fun it'll be, when they see me through the glass in here, and can't get at me!'
Then she began looking about, and noticed that what could be seen from the old room was quite common and uninteresting, but that all the rest was a different as possible.
For instance, the pictures on the wall next the fire seemed to be all alive, and the very clock on the chimney-piece
(you know you can only see the back of it in the Looking-glass)
had got the face of a little old man, and grinned at her.
`They don't keep this room so tidy as the other,'
Alice thought to herself,
as she noticed several of the chessmen down in the hearth among the cinders:
but in another moment, with a little `Oh!' of surprise, she was down on her hands and knees watching them.
The chessmen were walking about, two and two!
`Here are the Red King and the Red Queen,'
Alice said
(in a whisper, for fear of frightening them),
`and there are the White King and the White Queen sitting on the edge of the shovel
--and here are two castles walking arm in arm
--I don't think they can hear me,'
she went on, as she put her head closer down,
`and I'm nearly sure they can't see me.
I feel somehow as if I were invisible--'
Here something began squeaking on the table behind Alice,
and made her turn her head just in time to see one of the White Pawns roll over and begin kicking:
she watched it with great curiosity to see what would happen next.
`It is the voice of my child!'
the White Queen cried out as she rushed past the King,
so violently that she knocked him over among the cinders.
`My precious Lily!
My imperial kitten!'
and she began scrambling wildly up the side of the fender.
`Imperial fiddlestick!'
said the King, rubbing his nose, which had been hurt by the fall.
He had a right to be a LITTLE annoyed with the Queen,
for he was covered with ashes from head to foot.
Alice was very anxious to be of use, and, as the poor little Lily was nearly screaming herself into a fit, she hastily picked up the Queen and set her on the table by the side of her noisy little daughter.
The Queen gasped, and sat down:
the rapid journey through the air had quite taken away her breath and for a minute or two she could do nothing but hug the little Lily in silence.
As soon as she had recovered her breath a little, she called out to the White King, who was sitting sulkily among the ashes,
`Mind the volcano!'
`What volcano?'
said the King, looking up anxiously into the fire,
as if he thought that was the most likely place to find one.
`Blew--me--up,'
panted the Queen, who was still a little out of breath.
`Mind you come up--the regular way--don't get blown up!'
Alice watched the White King as he slowly struggled up from bar to bar, till at last she said,
`Why, you'll be hours and hours getting to the table, at that rate.
I'd far better help you, hadn't I?'
But the King took no notice of the question:
it was quite clear that he could neither hear her nor see her.
So Alice picked him up very gently, and lifted him across more slowly than she had lifted the Queen,
that she mightn't take his breath away:
but, before she put him on the table, she thought she might as well dust him a little,
he was so covered with ashes.
She said afterwards that she had never seen in all her life such a face as the King made, when he found himself held in the air by an invisible hand, and being dusted:
he was far too much astonished to cry out, but his eyes and his mouth went on getting larger and larger, and rounder and rounder, till her hand shook so with laughing that she nearly let him drop upon the floor.
`Oh! PLEASE don't make such faces, my dear!'
she cried out, quite forgetting that the King couldn't hear her.
`You make me laugh so that I can hardly hold you!
And don't keep your mouth so wide open!
All the ashes will get into it
--there, now I think you're tidy enough!'
she added, as she smoothed his hair, and set him upon the table near the Queen.
The King immediately fell flat on his back, and lay perfectly still:
and Alice was a little alarmed at what she had done, and went round the room to see if she could find any water to throw over him.
However, she could find nothing but a bottle of ink,
and when she got back with it she found he had recovered, and he and the Queen were talking together in a frightened whisper
--so low, that Alice could hardly hear what they said.
The King was saying,
`I assure, you my dear, I turned cold to the very ends of my whiskers!'
To which the Queen replied,
`You haven't got any whiskers.'
`The horror of that moment,' the King went on, `I shall never, NEVER forget!'
`You will, though,' the Queen said, `if you don't make a memorandum of it.'
Alice looked on with great interest as the King took an enormous memorandum-book out of his pocket, and began writing.
A sudden thought struck her, and she took hold of the end of the pencil, which came some way over his shoulder, and began writing for him.
The poor King look puzzled and unhappy,
and struggled with the pencil for some time without saying anything;
but Alice was too strong for him, and at last he panted out,
`My dear!
I really MUST get a thinner pencil.
I can't manage this one a bit;
it writes all manner of things that I don't intend--'
`What manner of things?'
said the Queen, looking over the book
(in which Alice had put
`THE WHITE KNIGHT IS SLIDING DOWN THE POKER.
HE BALANCES VERY BADLY')
`That's not a memorandum of YOUR feelings!'
There was a book lying near Alice on the table,
and while she sat watching the White King
(for she was still a little anxious about him, and had the ink all ready to throw over him, in case he fainted again),
she turned over the leaves, to find some part that she could read,
`--for it's all in some language I don't know,'
she said to herself.
It was like this.
YKCOWREBBAJ
sevot yhtils eht dna ,gillirb sawT`
ebaw eht ni elbmig dna eryg diD
,sevogorob eht erew ysmim llA
.ebargtuo shtar emom eht dnA
She puzzled over this for some time, but at last a bright thought struck her.
`Why,
it's a Looking-glass book, of course!
And if I hold it up to a glass, the words will all go the right way again.'
This was the poem that Alice read.
JABBERWOCKY
'Twas brillig, and the slithy toves
Did gyre and gimble in the wabe;
All mimsy were the borogoves,
And the mome raths outgrabe.
`Beware the Jabberwock, my son!
The jaws that bite, the claws that catch!
Beware the Jubjub bird, and shun
The frumious Bandersnatch!'
He took his vorpal sword in hand:
Long time the manxome foe he sought--
So rested he by the Tumtum tree,
And stood awhile in thought.
And as in uffish thought he stood,
The Jabberwock, with eyes of flame,
Came whiffling through the tulgey wood,
And burbled as it came!
One, two! One, two! And through and through
The vorpal blade went snicker-snack!
He left it dead, and with its head
He went galumphing back.
`And has thou slain the Jabberwock?
Come to my arms, my beamish boy!
O frabjous day! Callooh! Callay!'
He chortled in his joy.
'Twas brillig, and the slithy toves
Did gyre and gimble in the wabe;
All mimsy were the borogoves,
And the mome raths outgrabe.
`It seems very pretty,'
she said when she had finished it,
`but it's RATHER hard to understand!'
(You see she didn't like to confess, ever to herself, that she couldn't make it out at all.)
`Somehow it seems to fill my head with ideas
--only I don't exactly know what they are!
However, SOMEBODY killed SOMETHING:
that's clear, at any rate--'
`But oh!'
thought Alice, suddenly jumping up,
`if I don't make haste I shall have to go back through the Looking-glass, before I've seen what the rest of the house is like!
Let's have a look at the garden first!'
She was out of the room in a moment, and ran down stairs
--or, at least, it wasn't exactly running, but a new invention of hers for getting down stairs quickly and easily, as Alice said to herself.
She just kept the tips of her fingers on the hand-rail, and floated gently down without even touching the stairs with her feet;
then she floated on through the hall, and would have gone straight out at the door in the same way, if she hadn't caught hold of the door-post.
She was getting a little giddy with so much floating in the air, and was rather glad to find herself walking again in the natural way.
CHAPTER II The Garden of Live Flowers
`I should see the garden far better,' said Alice to herself, `if I could get to the top of that hill:
and here's a path that leads straight to it
--at least, no, it doesn't do that--'
(after going a few yards along the path, and turning several sharp corners),
`but I suppose it will at last.
But how curiously it twists!
It's more like a corkscrew than a path!
Well, THIS turn goes to the hill, I suppose
--no, it doesn't!
This goes straight back to the house!
Well then, I'll try it the other way.'
And so she did:
wandering up and down, and trying turn after turn, but always coming back to the house, do what she would.
Indeed, once, when she turned a corner rather more quickly than usual, she ran against it before she could stop herself.
`It's no use talking about it,'
Alice said, looking up at the house and pretending it was arguing with her.
`I'm NOT going in again yet.
I know I should have to get through the Looking-glass again
--back into the old room
-and there'd be an end of all my adventures!'
So, resolutely turning her back upon the house, she set out once more down the path, determined to keep straight on till she got to the hill.
For a few minutes all went on well,
and she was just saying, `I really SHALL do it this time--'
when the path gave a sudden twist and shook itself
(as she described it afterwards),
and the next moment she found herself actually walking in at the door.
'Oh, it's too bad!' she cried.
`I never saw such a house for getting in the way!
Never!'
However, there was the hill full in sight, so there was nothing to be done but start again.
This time she came upon a large flower-bed,
with a border of daisies, and a willow-tree growing in the middle.
`O Tiger-lily,'
said Alice, addressing herself to one that was waving gracefully about in the wind,
`I WISH you could talk!'
`We CAN talk,' said the Tiger-lily:
`when there's anybody worth talking to.'
Alice was so astonished that she could not speak for a minute:
it quite seemed to take her breath away.
At length, as the Tiger-lily only went on waving about, she spoke again,
in a timid voice--almost in a whisper.
`And can ALL the flowers talk?'
`As well as YOU can,' said the Tiger-lily.
`And a great deal louder.'
`It isn't manners for us to begin, you know,'
said the Rose,
`and I really was wondering when you'd speak!
Said I to myself, "Her face has got SOME sense in it, thought it's not a clever one!"
Still, you're the right colour, and that goes a long way.'
`I don't care about the colour,' the Tiger-lily remarked.
`If only her petals curled up a little more, she'd be all right.'
Alice didn't like being criticised, so she began asking questions.
`Aren't you sometimes frightened at being planted out here, with nobody to take care of you?'
`There's the tree in the middle,' said the Rose:
`what else is it good for?'
`But what could it do, if any danger came'?
Alice asked.
`It says "Bough-wough!" cried a Daisy:
`that's why its branches are called boughs!'
`Didn't you know THAT?'
cried another Daisy, and here they all began shouting together, till the air seemed quite full of little shrill voices.
`Silence, every one of you!'
cried the Tiger-lily, waving itself passionately from side to side, and trembling with excitement.
`They know I can't get at them!'
it panted, bending its quivering head towards Alice,
`or they wouldn't dare to do it!'
`Never mind!'
Alice said in a soothing tone, and stooping down to the daisies, who were just beginning again, she whispered,
`If you don't hold your tongues, I'll pick you!'
There was silence in a moment, and several of the pink daisies turned white.
`That's right!'
said the Tiger-lily.
`The daisies are worst of all.
When one speaks, they all begin together, and it's enough to make one wither to hear the way they go on!'
`How is it you can all talk so nicely?'
Alice said, hoping to get it into a better temper by a compliment.
`I've been in many gardens before, but none of the flowers could talk.'
`Put your hand down, and feel the ground,' said the Tiger-lily.
`Then you'll know why.
Alice did so.
`It's very hard,' she said,
`but I don't see what that has to do with it.'
`In most gardens,' the Tiger-lily said, `they make the beds too soft
--so that the flowers are always asleep.'
This sounded a very good reason, and Alice was quite pleased to know it.
`I never thought of that before!' she said.
`It's MY opinion that you never think AT ALL,'
the Rose said in a rather severe tone.
`I never saw anybody that looked stupider,'
a Violet said, so suddenly, that Alice quite jumped;
for it hadn't spoken before.
`Hold YOUR tongue!'
cried the Tiger-lily.
`As if YOU ever saw anybody!
You keep your head under the leaves, and snore away there, till you know no more what's going on in the world, than if you were a bud!'
`Are there any more people in the garden besides me?' Alice said, not choosing to notice the Rose's last remark.
`There's one other flower in the garden that can move about like you,' said the Rose.
`I wonder how you do it--'
(`You're always wondering,' said the Tiger-lily),
`but she's more bushy than you are.'
`Is she like me?'
Alice asked eagerly,
for the thought crossed her mind, `There's another little girl in the garden, somewhere!'
`Well, she has the same awkward shape as you,' the Rose said, `but she's redder
--and her petals are shorter, I think.'
`Her petals are done up close, almost like a dahlia,'
the Tiger-lily interrupted:
`not tumbled about anyhow, like yours.'
`But that's not YOUR fault,'
the Rose added kindly:
`you're beginning to fade, you know
--and then one can't help one's petals getting a little untidy.'
Alice didn't like this idea at all:
so, to change the subject, she asked
`Does she ever come out here?'
`I daresay you'll see her soon,' said the Rose.
`She's one of the thorny kind.'
`Where does she wear the thorns?'
Alice asked with some curiosity.
`Why all round her head, of course,'
the Rose replied.
`I was wondering YOU hadn't got some too.
I thought it was the regular rule.'
`She's coming!' cried the Larkspur.
`I hear her footstep,
thump, thump, thump, along the gravel-walk!'
Alice looked round eagerly, and found that it was the Red Queen.
`She's grown a good deal!'
was her first remark.
She had indeed:
when Alice first found her in the ashes, she had been only three inches high
--and here she was, half a head taller than Alice herself
`It's the fresh air that does it,' said the Rose:
`wonderfully fine air it is, out here.'
`I think I'll go and meet her,'
said Alice,
for, though the flowers were interesting enough, she felt that it would be far grander to have a talk with a real Queen.
`You can't possibly do that,'
said the Rose:
`_I_ should advise you to walk the other way.'
This sounded nonsense to Alice, so she said nothing, but set off at once towards the Red Queen.
To her surprise, she lost sight of her in a moment, and found herself walking in at the front-door again.
A little provoked, she drew back, and after looking everywhere for the queen
(whom she spied out at last, a long way off),
she thought she would try the plan, this time, of walking in the opposite direction.
It succeeded beautifully.
She had not been walking a minute before she found herself face to face with the Red Queen,
and full in sight of the hill she had been so long aiming at.
`Where do you come from?'
said the Red Queen.
`And where are you going?
Look up, speak nicely, and don't twiddle your fingers all the time.'
Alice attended to all these directions, and explained, as well as she could, that she had lost her way.
`I don't know what you mean by YOUR way,'
said the Queen:
`all the ways about here belong to ME
--but why did you come out here at all?'
she added in a kinder tone.
`Curtsey while you're thinking what to say, it saves time.'
Alice wondered a little at this, but she was too much in awe of the Queen to disbelieve it.
`I'll try it when I go home,' she thought to herself.
`the next time I'm a little late for dinner.'
`It's time for you to answer now,'
the Queen said, looking at her watch:
`open your mouth a LITTLE wider when you speak, and always say "your Majesty."'
`I only wanted to see what the garden was like, your Majesty--'
`That's right,'
said the Queen, patting her on the head, which Alice didn't like at all,
`though, when you say "garden,"
--I'VE seen gardens, compared with which this would be a wilderness.'
Alice didn't dare to argue the point, but went on:
`--and I thought I'd try and find my way to the top of that hill--'
`When you say "hill,"' the Queen interrupted,
`_I_ could show you hills, in comparison with which you'd call that a valley.'
`No, I shouldn't,'
said Alice, surprised into contradicting her at last:
`a hill CAN'T be a valley, you know.
That would be nonsense--'
The Red Queen shook her head,
`You may call it "nonsense" if you like,' she said,
`but I'VE heard nonsense, compared with which that would be as sensible as a dictionary!'
Alice curtseyed again,
as she was afraid from the Queen's tone that she was a LITTLE offended:
and they walked on in silence till they got to the top of the little hill.
For some minutes Alice stood without speaking, looking out in all directions over the country
--and a most curious country it was.
There were a number of tiny little brooks running straight across it from side to side, and the ground between was divided up into squares by a number of little green hedges, that reached from brook to brook.
`I declare it's marked out just like a large chessboard!'
Alice said at last.
`There ought to be some men moving about somewhere
--and so there are
She added in a tone of delight, and her heart began to beat quick with excitement as she went on.
`It's a great huge game of chess that's being played
--all over the world
--if this IS the world at all, you know.
Oh, what fun it is!
How I WISH I was one of them!
I wouldn't mind being a Pawn, if only I might join
--though of course I should LIKE to be a Queen, best.'
She glanced rather shyly at the real Queen as she said this, but her companion only smiled pleasantly, and said,
`That's easily managed.
You can be the White Queen's Pawn, if you like, as Lily's too young to play;
and you're in the Second Square to began with:
when you get to the Eighth Square you'll be a Queen --'
Just at this moment, somehow or other, they began to run.
Alice never could quite make out, in thinking it over afterwards, how it was that they began:
all she remembers is, that they were running hand in hand, and the Queen went so fast that it was all she could do to keep up with her:
and still the Queen kept crying
`Faster!
Faster!'
but Alice felt she COULD NOT go faster, though she had not breath left to say so.
The most curious part of the thing was, that the trees and the other things round them never changed their places at all:
however fast they went, they never seemed to pass anything.
`I wonder if all the things move along with us?'
thought poor puzzled Alice.
And the Queen seemed to guess her thoughts,
for she cried, `Faster! Don't try to talk!'
Not that Alice had any idea of doing THAT.
She felt as if she would never be able to talk again, she was getting so much out of breath:
and still the Queen cried `Faster! Faster!'
and dragged her along.
`Are we nearly there?'
Alice managed to pant out at last.
`Nearly there!'
the Queen repeated.
`Why, we passed it ten minutes ago!
Faster!'
And they ran on for a time in silence, with the wind whistling in Alice's ears, and almost blowing her hair off her head, she fancied.
`Now! Now!' cried the Queen. `Faster! Faster!'
And they went so fast that at last they seemed to skim through the air, hardly touching the ground with their feet, till suddenly,
just as Alice was getting quite exhausted, they stopped, and she found herself sitting on the ground, breathless and giddy.
The Queen propped her up against a tree,
`You may rest a little now.' and said kindly,
Alice looked round her in great surprise.
`Why, I do believe we've been under this tree the whole time!
Everything's just as it was!'
`Of course it is,' said the Queen,
`what would you have it?'
`Well, in OUR country,' said Alice, still panting a little,
`you'd generally get to somewhere else
--if you ran very fast for a long time, as we've been doing.'
`A slow sort of country!' said the Queen.
`Now, HERE, you see, it takes all the running YOU can do, to keep in the same place.
If you want to get somewhere else, you must run at least twice as fast as that!'
`I'd rather not try, please!'
said Alice.
`I'm quite content to stay here
--only I AM so hot and thirsty!'
`I know what YOU'D like!'
the Queen said good-naturedly, taking a little box out of her pocket.
`Have a biscuit?'
Alice thought it would not be civil to say `No,' though it wasn't at all what she wanted.
So she took it, and ate it as well as she could:
and it was VERY dry;
and she thought she had never been so nearly choked in all her life.
`While you're refreshing yourself,' said the Queen, `I'll just take the measurements.'
And she took a ribbon out of her pocket, marked in inches, and began measuring the ground, and sticking little pegs in here and there.
`At the end of two yards,'
she said, putting in a peg to mark the distance,
`I shall give you your directions
--have another biscuit?'
`No, thank you,' said Alice,:
`one's QUITE enough!'
`Thirst quenched, I hope?'
said the Queen.
Alice did not know what to say to this, but luckily the Queen did not wait for an answer, but went on.
`At the end of THREE yards I shall repeat them
--for fear of your forgetting them.
At then end of FOUR, I shall say good-bye.
And at then end of FIVE, I shall go!'
She had got all the pegs put in by this time, and Alice looked on with great interest as she returned to the tree,
and then began slowly walking down the row.
At the two-yard peg she faced round, and said,
`A pawn goes two squares in its first move, you know.
So you'll go VERY quickly through the Third Square
--by railway, I should think
--and you'll find yourself in the Fourth Square in no time.
Well, THAT square belongs to Tweedledum and Tweedledee
--the Fifth is mostly water
--the Sixth belongs to Humpty Dumpty
--But you make no remark?'
`I--I didn't know I had to make one
--just then,'
Alice faltered out.
`You SHOULD have said,' `"It's extremely kind of you to tell me all this"
--however, we'll suppose it said
--the Seventh Square is all forest
--however, one of the Knights will show you the way
--and in the Eighth Square we shall be Queens together, and it's all feasting and fun!'
Alice got up and curtseyed, and sat down again.
At the next peg the Queen turned again, and this time she said,
`Speak in French when you can't think of the English for a thing
--turn out your toes as you walk
--and remember who you are!'
She did not wait for Alice to curtsey this time, but walked on quickly to the next peg, where she turned for a moment to say `good-bye,' and then hurried on to the last.
How it happened, Alice never knew, but exactly as she came to the last peg, she was gone.
Whether she vanished into the air, or whether she ran quickly into the wood
(`and she CAN run very fast!'
thought Alice),
there was no way of guessing, but she was gone, and Alice began to remember that she was a Pawn, and thatit would soon be time for her to move.
CHAPTER III Looking-Glass Insects
Of course the first thing to do was to make a grand survey of the country she was going to travel through.
`It's something very like learning geography,'
thought Alice, as she stood on tiptoe in hopes of being able to see a little further.
`Principal rivers--there ARE none.
Principal mountains--I'm on the only one, but I don't think it's got any name.
Principal towns--why, what ARE those creatures, making honey down there?
They can't be bees--nobody ever saw bees a mile off, you know--'
and for some time she stood silent, watching one of them that was bustling about among the flowers,
poking its proboscis into them,
`just as if it was a regular bee,'
thought Alice.
However, this was anything but a regular bee:
in fact it was an elephant
--as Alice soon found out, though the idea quite took her breath away at first.
`And what enormous flowers they must be!'
was her next idea.
`Something like cottages with the roofs taken off, and stalks put to them
--and what quantities of honey they must make!
I think I'll go down and
--no, I won't JUST yet, '
she went on, checking herself just as she was beginning to run down the hill,
and trying to find some excuse for turning shy so suddenly.
`It'll never do to go down among them without a good long branch to brush them away
--and what fun it'll be when they ask me how I like my walk.
I shall say
--"Oh, I like it well enough--"'
(here came the favourite little toss of the head),
`"only it was so dusty and hot, and the elephants did tease so!"'
`I think I'll go down the other way,' she said after a pause:
`and perhaps I may visit the elephants later on.
Besides, I do so want to get into the Third Square!'
So with this excuse she ran down the hill and jumped over the first of the six little brooks.
`Tickets, please!'
said the Guard, putting his head in at the window.
In a moment everybody was holding out a ticket:
they were about the same size as the people, and quite seemed to fill the carriage.
`Now then! Show your ticket, child!'
the Guard went on, looking angrily at Alice.
And a great many voices all said together
(`like the chorus of a song,'
thought Alice),
`Don't keep him waiting, child!
Why, his time is worth a thousand pounds a minute!'
`I'm afraid I haven't got one,'
Alice said in a frightened tone:
`there wasn't a ticket-office where I came from.'
And again the chorus of voices went on.
`There wasn't room for one where she came from.
The land there is worth a thousand pounds an inch!'
`Don't make excuses,'
said the Guard:
`you should have bought one from the engine-driver.'
And once more the chorus of voices went on with
`The man that drives the engine.
Why, the smoke alone is worth a thousand pounds a puff!'
Alice thought to herself, `Then there's no use in speaking.'
The voices didn't join in this time,
as she hadn't spoken,
but to her great surprise, they all THOUGHT in chorus
(I hope you understand what THINKING IN CHORUS means
--for I must confess that _I_ don't),
`Better say nothing at all.
Language is worth a thousand pounds a word!'
`I shall dream about a thousand pounds tonight, I know I shall!'
thought Alice.
All this time the Guard was looking at her,
first through a telescope, then through a microscope, and then through an opera-glass.
At last he said,
`You're travelling the wrong way,'
and shut up the window and went away.
`So young a child,' said the gentleman sitting opposite to her (he was dressed in white paper), `ought to know which way she's going, even if she doesn't know her own name!'
A Goat, that was sitting next to the gentleman in white, shut his eyes and said in a loud voice,
`She ought to know her way to the ticket-office, even if she doesn't know her alphabet!'
There was a Beetle sitting next to the Goat
(it was a very queer carriage-full of passengers altogether),
and, as the rule seemed to be that they should all speak in turn, HE went on with
`She'll have to go back from here as luggage!'
Alice couldn't see who was sitting beyond the Beetle, but a hoarse voice spoke next.
`Change engines--'
it said, and was obliged to leave off.
`It sounds like a horse,'
Alice thought to herself.
And an extremely small voice, close to her ear, said,
`You might make a joke on that
--something about "horse" and "hoarse," you know.'
Then a very gentle voice in the distance said,
`She must be labelled "Lass, with care," you know--'
And after that other voices went on
(What a number of people there are in the carriage!'
thought Alice),
saying, `She must go by post, as she's got a head on her--'
`She must be sent as a message by the telegraph--'
`She must draw the train herself the rest of the way--'
and so on.
But the gentleman dressed in white paper leaned forwards and whispered in her ear,
`Never mind what they all say, my dear,
but take a return-ticket every time the train stops.'
`Indeed I shan't
belong to this railway journey at all
--I was in a wood just now
--and I wish I could get back there.'
`You might make a joke on THAT,' said the little voice close to her ear:
`something about "you WOULD if you could," you know.'
`Don't tease so,'
said Alice, looking about in vain to see where the voice came from;
`if you're so anxious to have a joke made, why don't you make one yourself?'
The little voice sighed deeply:
it was VERY unhappy, evidently, and Alice would have said something pitying to comfort it,
`If it would only sigh like other people!'
she thought.
But this was such a wonderfully small sigh, that she wouldn't have heard it at all, if it hadn't come QUITE close to her ear.
The consequence of this was that it tickled her ear very much, and quite took off her thoughts from the unhappiness of the poor little creature.
`I know you are a friend, the little voice went on;
`a dear friend, and an old friend.
And you won't hurt me, though I AM an insect.'
`What kind of insect?'
Alice inquired a little anxiously.
What she really wanted to know was, whether it could sting or not, but she thought this wouldn't be quite a civil question to ask.
`What, then you don't--'
the little voice began, when it was drowned by a shrill scream from the engine, and everybody jumped up in alarm, Alice among the rest.
The Horse, who had put his head out of the window, quietly drew it in and said,
`It's only a brook we have to jump over.'
Everybody seemed satisfied with this, though Alice felt a little nervous at the idea of trains jumping at all.
`However, it'll take us into the Fourth Square, that's some comfort!'
she said to herself.
In another moment she felt the carriage rise straight up into the air, and in her fright she caught at the thing nearest to her hand.
which happened to be the Goat's beard.
But the beard seemed to melt away as she touched it, and she found herself sitting quietly under a tree
--while the Gnat (for that was the insect she had been talking to) was balancing itself on a twig just over her head, and fanning her with its wings.
It certainly was a VERY large Gnat:
`about the size of a chicken,'
Alice thought.
Still, she couldn't feel nervous with it, after they had been talking together so long.
`--then you don't like all insects?'
the Gnat went on, as quietly as if nothing had happened.
`I like them when they can talk,' Alice said.
`None of them ever talk, where _I_ come from.'
`What sort of insects do you rejoice in, where YOU come from?'
the Gnat inquired.
`I don't REJOICE in insects at all,' Alice explained,
`because I'm rather afraid of them
--at least the large kinds.
But I can tell you the names of some of them.'
`Of course they answer to their names?'
the Gnat remarked carelessly.
`I never knew them do it.'
`What's the use of their having names the Gnat said, `if they won't answer to them?'
`No use to THEM,' said Alice; `but it's useful to the people who name them, I suppose.
If not, why do things have names at all?'
`I can't say,' the Gnat replied.
`Further on, in the wood down there, they've got no names
--however, go on with your list of insects:
you're wasting time.'
`Well, there's the Horse-fly,'
Alice began, counting off the names on her fingers.
`All right,' said the Gnat:
`half way up that bush, you'll see a Rocking-horse-fly, if you look.
It's made entirely of wood, and gets about by swinging itself from branch to branch.'
`What does it live on?'
Alice asked, with great curiosity.
`Sap and sawdust,' said the Gnat.
`Go on with the list.'
Alice looked up at the Rocking-horse-fly with great interest,
and made up her mind that it must have been just repainted,
it looked so bright and sticky;
and then she went on.
`And there's the Dragon-fly.'
`Look on the branch above your head,' said the Gnat,
`and there you'll find a snap-dragon-fly.
Its body is made of plum-pudding, its wings of holly-leaves, and its head is a raisin burning in brandy.'
`And what does it live on?'
`Frumenty and mince pie,' the Gnat replied;
`and it makes its nest in a Christmas box.'
`And then there's the Butterfly,'
Alice went on, after she had taken a good look at the insect with its head on fire,
and had thought to herself,
`Crawling at your feet,'
said the Gnat (Alice drew her feet back in some alarm),
`you may observe a Bread-and-Butterfly.
Its wings are thin slices of Bread-and-butter, its body is a crust, and its head is a lump of sugar.'
`And what does IT live on?'
`Weak tea with cream in it.'
A new difficulty came into Alice's head.
`Supposing it couldn't find any?' she suggested.
`Then it would die, of course.'
`But that must happen very often,'
Alice remarked thoughtfully.
`It always happens,'
said the Gnat.
After this, Alice was silent for a minute or two, pondering.
The Gnat amused itself meanwhile by humming round and round her head:
at last it settled again and remarked,
`I suppose you don't want to lose your name?'
`No, indeed,'
Alice said, a little anxiously.
`And yet I don't know,' the Gnat went on in a careless tone:
`only think how convenient it would be if you could manage to go home without it!
For instance, if the governess wanted to call you to your lessons, she would call out "come here--," and there she would have to leave off, because there wouldn't be any name for her to call, and of course you wouldn't have to go, you know.'
`That would never do, I'm sure,' said Alice:
`the governess would never think of excusing me lessons for that.
If she couldn't remember my name, she'd call me "Miss!" as the servants do.'
`Well.
if she said "Miss," and didn't say anything more,' the Gnat remarked, `of course you'd miss your lessons.
That's a joke.
I wish YOU had made it.'
`Why do you wish _I_ had made it?' Alice asked.
`It's a very bad one.'
But the Gnat only sighed deeply, while two large tears came rolling down its cheeks.
`You shouldn't make jokes,' Alice said, `if it makes you so unhappy.'
Then came another of those melancholy little sighs, and this time the poor Gnat really seemed to have sighed itself away,
for, when Alice looked up, there was nothing whatever to be seen on the twig, and, as she was getting quite chilly with sitting still so long, she got up and walked on.
She very soon came to an open field, with a wood on the other side of it:
it looked much darker than the last wood, and Alice felt a LITTLE timid about going into it.
However, on second thoughts, she made up her mind to go on:
`for I certainly won't go BACK,'
she thought to herself, and this was the only way to the Eighth Square.
`This must be the wood, she said thoughtfully to herself, `where things have no names.
I wonder what'll become of MY name when I go in?
I shouldn't like to lose it at all
--because they'd have to give me another, and it would be almost certain to be an ugly one.
But then the fun would be trying to find the creature that had got my old name!
That's just like the advertisements, you know, when people lose dogs
--"ANSWERS TO THE NAME OF `DASH:' HAD ON A BRASS COLLAR"
--just fancy calling everything you met "Alice," till one of them answered!
Only they wouldn't answer at all, if they were wise.'
She was rambling on in this way when she reached the wood:
it looked very cool and shady.
`Well, at any rate it's a great comfort,'
she said as she stepped under the trees,
`after being so hot, to get into the
--into WHAT?'
she went on, rather surprised at not being able to think of the word.
`I mean to get under the--under the--under THIS, you know!'
putting her hand on the trunk of the tree.
`What DOES it call itself, I wonder?
I do believe it's got no name
--why, to be sure it hasn't!'
She stood silent for a minute, thinking:
then she suddenly began again.
`Then it really HAS happened, after all!
And now, who am I?
I WILL remember, if I can!
I'm determined to do it!'
But being determined didn't help much,
and all she could say, after a great deal of puzzling, was,
`L, I KNOW it begins with L!'
Just then a Fawn came wandering by:
it looked at Alice with its large gentle eyes, but didn't seem at all frightened.
`Here then!
Here then!'
Alice said, as she held out her hand and tried to stroke it;
but it only started back a little, and then stood looking at her again.
`What do you call yourself?'
the Fawn said at last.
Such a soft sweet voice it had!
`I wish I knew!'
thought poor Alice.
She answered, rather sadly,
`Nothing, just now.'
`Think again,' it said: `that won't do.'
Alice thought, but nothing came of it.
`Please, would you tell me what YOU call yourself?' she said timidly.
`I think that might help a little.'
`I'll tell you, if you'll move a little further on,' the Fawn said.
`I can't remember here.'
So they walked on together though the wood,
Alice with her arms clasped lovingly round the soft neck of the Fawn,
till they came out into another open field,
and here the Fawn gave a sudden bound into the air, and shook itself free from Alice's arms.
`I'm a Fawn!'
it cried out in a voice of delight,
`and, dear me!
you're a human child!'
A sudden look of alarm came into its beautiful brown eyes, and in another moment it had darted away at full speed.
Alice stood looking after it,
almost ready to cry with vexation at having lost her dear little fellow-traveller so suddenly.
`However, I know my name now.' she said,
`that's SOME comfort.
Alice--Alice--I won't forget it again.
And now, which of these finger-posts ought I to follow, I wonder?'
It was not a very difficult question to answer,
as there was only one road through the wood, and the two finger-posts both pointed along it.
`I'll settle it,' Alice said to herself, `when the road divides and they point different ways.'
But this did not seem likely to happen.
She went on and on, a long way, but wherever the road divided there were sure to be two finger-posts pointing the same way,
one marked `TO TWEEDLEDUM'S HOUSE'
and the other `TO THE HOUSE OF TWEEDLEDEE.'
`I do believe,' said Alice at last, `that they live in the same house!
I wonder I never thought of that before
--But I can't stay there long.
I'll just call and say "how d'you do?" and ask them the way out of the wood.
If I could only get to the Eighth Square before it gets dark!'
So she wandered on, talking to herself as she went, till, on turning a sharp corner, she came upon two fat little men,
so suddenly that she could not help starting back, but in another moment she recovered herself, feeling sure that they must be
CHAPTER IV TWEEDLEDUM AND TWEEDLEDEE
They were standing under a tree, each with an arm round the other's neck,
and Alice knew which was which in a moment,
because one of them had `DUM' embroidered on his collar, and the other `DEE.'
`I suppose they've each got "TWEEDLE" round at the back of the collar,'
she said to herself.
They stood so still that she quite forgot they were alive, and she was just looking round to see if the word "TWEEDLE" was written at the back of each collar, when she was startled by a voice coming from the one marked `DUM.'
`If you think we're wax-works,' he said, `you ought to pay, you know.
Wax-works weren't made to be looked at for nothing, nohow!'
`Contrariwise,' added the one marked `DEE,' `if you think we're alive, you ought to speak.'
`I'm sure I'm very sorry,'
was all Alice could say;
for the words of the old song kept ringing through her head like the ticking of a clock, and she could hardly help saying them out loud:
'Tweedledum and Tweedledee
Agreed to have a battle;
For Tweedledum said Tweedledee
Had spoiled his nice new rattle.
Just then flew down a monstrous crow,
As black as a tar-barrel;
Which frightened both the heroes so,
They quite forgot their quarrel.'
`I know what you're thinking about,' said Tweedledum: `but it isn't so, nohow.'
`Contrariwise,' continued Tweedledee, `if it was so, it might be;
and if it were so, it would be;
but as it isn't, it ain't.
That's logic.'
`I was thinking,' Alice said very politely, `which is the best way out of this wood:
it's getting so dark.
Would you tell me, please?'
But the little men only looked at each other and grinned.
They looked so exactly like a couple of great schoolboys, that Alice couldn't help pointing her finger at Tweedledum, and saying
`First Boy!'
`Nohow!'
Tweedledum cried out briskly, and shut his mouth up again with a snap.
`Next Boy!'
said Alice, passing on to Tweedledee, though she felt quite certain he would only shout out `Contrariwise!' and so he did.
`You've been wrong!'
cried Tweedledum.
`The first thing in a visit is to say "How d'ye do?" and shake hands!'
And here the two brothers gave each other a hug, and then they held out the two hands that were free, to shake hands with her.
Alice did not like shaking hands with either of them first,
for fear of hurting the other one's feelings;
so, as the best way out of the difficulty, she took hold of both hands at once:
the next moment they were dancing round in a ring.
This seemed quite natural (she remembered afterwards), and she was not even surprised to hear music playing:
it seemed to come from the tree under which they were dancing, and it was done (as well as she could make it out) by the branches rubbing one across the other,
like fiddles and fiddle-sticks.
`But it certainly WAS funny,'
(Alice said afterwards, when she was telling her sister the history of all this,)
`to find myself singing "HERE WE GO ROUND THE MULBERRY BUSH."
I don't know when I began it, but somehow I felt as if I'd been singing it a long long time!'
The other two dancers were fat, and very soon out of breath.
`Four times round is enough for one dance,'
Tweedledum panted out, and they left off dancing as suddenly as they had begun:
the music stopped at the same moment.
Then they let go of Alice's hands, and stood looking at her for a minute:
there was a rather awkward pause, as Alice didn't know how to begin a conversation with people she had just been dancing with.
`It would never do to say "How d'ye do?" NOW,' she said to herself:
`we seem to have got beyond that, somehow!'
`I hope you're not much tired?'
she said at last.
`Nohow.
And thank you VERY much for asking,'
said Tweedledum.
`So much obliged!'
added Tweedledee.
`You like poetry?'
`Ye-es.
pretty well--SOME poetry,'
Alice said doubtfully.
`Would you tell me which road leads out of the wood?'
`What shall I repeat to her?'n
said Tweedledee, looking round at Tweedledum with great solemn eyes, and not noticing Alice's question.
`"THE WALRUS AND THE CARPENTER" is the longest,'
Tweedledum replied, giving his brother an affectionate hug.
Tweedledee began instantly:
`The sun was shining--'
Here Alice ventured to interrupt him.
`If it's VERY long,' she said, as politely as she could, `would you please tell me first which road--'
Tweedledee smiled gently, and began again:
`The sun was shining on the sea,
The moon was shining sulkily,
The sea was wet as wet could be,
The Walrus and the Carpenter
"If seven maids with seven mops
"O Oysters, come and walk with us!"
The eldest Oyster looked at him.
But four young oysters hurried up,
Four other Oysters followed them,
The Walrus and the Carpenter
"The time has come," the Walrus said,
"But wait a bit," the Oysters cried,
"A loaf of bread," the Walrus said,
"But not on us!" the Oysters cried,
"It was so kind of you to come!
"It seems a shame," the Walrus said,
"I weep for you," the Walrus said.
"O Oysters," said the Carpenter.
`I like the Walrus best,' said Alice:
`because you see he was a LITTLE sorry for the poor oysters.'
`He ate more than the Carpenter, though,' said Tweedledee.
`You see he held his handkerchief in front, so that the Carpenter couldn't count how many he took:
contrariwise.'
`That was mean!' Alice said indignantly.
`Then I like the Carpenter best
--if he didn't eat so many as the Walrus.'
`But he ate as many as he could get,'
said Tweedledum.
This was a puzzler.
After a pause, Alice began,
`Well!
They were BOTH very unpleasant characters--'
Here she checked herself in some alarm,
at hearing something that sounded to her like the puffing of a large steam-engine in the wood near them,
though she feared it was more likely to be a wild beast.
`Are there any lions or tigers about here?'
she asked timidly.
`It's only the Red King snoring,'
said Tweedledee.
`Come and look at him!'
the brothers cried, and they each took one of Alice's hands, and led her up to where the King was sleeping.
`Isn't he a LOVELY sight?'
said Tweedledum.
Alice couldn't say honestly that he was.
He had a tall red night-cap on, with a tassel, and he was lying crumpled up into a sort of untidy heap, and snoring loud
--`fit to snore his head off!' as Tweedledum remarked.
`I'm afraid he'll catch cold with lying on the damp grass,'
said Alice, who was a very thoughtful little girl.
`He's dreaming now,' said Tweedledee:
`and what do you think he's dreaming about?'
Alice said
`Nobody can guess that.'
`Why, about YOU!'
Tweedledee exclaimed, clapping his hands triumphantly.
`And if he left off dreaming about you, where do you suppose you'd be?'
`Where I am now, of course,'
said Alice.
`Not you!'
Tweedledee retorted contemptuously.
`You'd be nowhere.
Why, you're only a sort of thing in his dream!'
`If that there King was to wake,' added Tweedledum,
`you'd go out--bang!--just like a candle!'
`I shouldn't!'
Alice exclaimed indignantly.
`Besides, if I'M only a sort of thing in his dream, what are YOU, I should like to know?'
`Ditto'
said Tweedledum.
`Ditto, ditto'
cried Tweedledee.
He shouted this so loud that Alice couldn't help saying,
`Hush!
You'll be waking him, I'm afraid, if you make so much noise.'
`Well, it no use YOUR talking about waking him,' said Tweedledum,
`when you're only one of the things in his dream.
You know very well you're not real.'
`I AM real!'
said Alice and began to cry.
`You won't make yourself a bit realler by crying,' Tweedledee remarked:
`there's nothing to cry about.'
`If I wasn't real,'
Alice said--half-laughing though her tears,
it all seemed so ridiculous
--`I shouldn't be able to cry.'
`I hope you don't suppose those are real tears?'
Tweedledum interrupted in a tone of great contempt.
`I know they're talking nonsense,'
Alice thought to herself:
So she brushed away her tears, and went on as cheerfully as she could.
`At any rate I'd better be getting out of the wood,
for really it's coming on very dark.
Do you think it's going to rain?'
Tweedledum spread a large umbrella over himself and his brother, and looked up into it.
`No, I don't think it is,' he said:
`at least--not under HERE.
Nohow.'
`But it may rain OUTSIDE?'
`It may--if it chooses,'
said Tweedledee:
`we've no objection.
Contrariwise.'
`Selfish things!'
thought Alice, and she was just going to say `Good-night' and leave them, when Tweedledum sprang out from under the umbrella and seized her by the wrist.
`Do you see THAT?'
he said, in a voice choking with passion,
and his eyes grew large and yellow all in a moment, as he pointed with a trembling finger at a small white thing lying under the tree.
`It's only a rattle,' Alice said, after a careful examination of the little white thing.
`Not a rattleSNAKE, you know,'
she added hastily, thinking that he was frightened:
only an old rattle
--quite old and broken.'
`I knew it was!'
cried Tweedledum, beginning to stamp about wildly and tear his hair.
`It's spoilt, of course!'
Here he looked at Tweedledee,
who immediately sat down on the ground, and tried to hide himself under the umbrella.
Alice laid her hand upon his arm, and said in a soothing tone,
`You needn't be so angry about an old rattle.'
`But it isn't old!'
Tweedledum cried, in a greater fury than ever.
`It's new, I tell you
--I bought it yesterday
--my nice New RATTLE!'
and his voice rose to a perfect scream.
All this time Tweedledee was trying his best to fold up the umbrella, with himself in it:
which was such an extraordinary thing to do, that it quite took off Alice's attention from the angry brother.
But he couldn't quite succeed, and it ended in his rolling over, bundled up in the umbrella, with only his head out:
and there he lay, opening and shutting his mouth and his large eyes
--'looking more like a fish than anything else,'
Alice thought.
`Of course you agree to have a battle?'
Tweedledum said in a calmer tone.
`I suppose so,'
the other sulkily replied, as he crawled out of the umbrella:
`only SHE must help us to dress up, you know.'
So the two brothers went off hand-in-hand into the wood, and returned in a minute with their arms full of things
--such as bolsters, blankets, hearth-rugs, table-cloths, dish-covers and coal-scuttles.
`I hope you're a good hand at pinning and tying strings?' Tweedledum remarked.
`Every one of these things has got to go on, somehow or other.'
Alice said afterwards she had never seen such a fuss made about anything in all her life
--the way those two bustled about
--and the quantity of things they put on
--and the trouble they gave her in tying strings and fastening buttons
--`Really they'll be more like bundles of old clothes that anything else, by the time they're ready!'
she said to herself, as she arranged a bolster round the neck of Tweedledee,
`to keep his head from being cut off,'
as he said.
`You know,' he added very gravely, `it's one of the most serious things that can possibly happen to one in a battle
--to get one's head cut off.'
Alice laughed aloud:
but she managed to turn it into a cough, for fear of hurting his feelings.
`Do I look very pale?'
said Tweedledum, coming up to have his helmet tied on.
(He CALLED it a helmet, though it certainly looked much more like a saucepan.)
`Well--yes--a LITTLE,'
Alice replied gently.
`I'm very brave generally,' he went on in a low voice:
`only to-day I happen to have a headache.'
`And I'VE got a toothache!'
said Tweedledee, who had overheard the remark.
`Then you'd better not fight to-day,'
said Alice, thinking it a good opportunity to make peace.
`We MUST have a bit of a fight,
but I don't care about going on long,'
said Tweedledum. `What's the time now?'
Tweedledee looked at his watch, and said
`Half-past four.'
`Let's fight till six, and then have dinner,'
said Tweedledum.
`Very well,'
the other said, rather sadly:
`and SHE can watch us
--only you'd better not come VERY close,'
he added:
`I generally hit everything I can see
--when I get really excited.'
`And _I_ hit everything within reach,' cried Tweedledum, `whether I can see it or not!'
Alice laughed.
`You must hit the TREES pretty often, I should think,' she said.
Tweedledum looked round him with a satisfied smile.
`I don't suppose,' he said, `there'll be a tree left standing, for ever so far round, by the time we've finished!'
`And all about a rattle!'
said Alice, still hoping to make them a LITTLE ashamed of fighting for such a trifle.
`I shouldn't have minded it so much,' said Tweedledum, `if it hadn't been a new one.'
`I wish the monstrous crow would come!'
though Alice.
`There's only one sword, you know,' Tweedledum said to his brother:
`but you can have the umbrella
--it's quite as sharp.
Only we must begin quick.
It's getting as dark as it can.'
`And darker.'
said Tweedledee.
It was getting dark so suddenly that Alice thought there must be a thunderstorm coming on.
`What a thick black cloud that is!' she said.
`And how fast it comes!
Why, I do believe it's got wings!'
`It's the crow!'
Tweedledum cried out in a shrill voice of alarm:
and the two brothers took to their heels and were out of sight in a moment.
Alice ran a little way into the wood, and stopped under a large tree.
`It can never get at me HERE,' she thought:
`it's far too large to squeeze itself in among the trees.
But I wish it wouldn't flap its wings so
--it makes quite a hurricane in the wood
--here's somebody's shawl being blown away!'
CHAPTER V Wool and Water
She caught the shawl as she spoke, and looked about for the owner:
in another moment the White Queen came running wildly through the wood,
with both arms stretched out wide, as if she were flying,
and Alice very civilly went to meet her with the shawl.
`I'm very glad I happened to be in the way,'
Alice said, as she helped her to put on her shawl again.
The White Queen only looked at her in a helpless frightened sort of way, and kept repeating something in a whisper to herself
that sounded like `bread-and-butter, bread-and-butter,'
and Alice felt that if there was to be any conversation at all, she must manage it herself.
So she began rather timidly:
`Am I addressing the White Queen?'
`Well, yes, if you call that a-dressing,' The Queen said.
`It isn't MY notion of the thing, at all.'
Alice thought it would never do to have an argument at the very beginning of their conversation, so she smiled and said,
`If your Majesty will only tell me the right way to begin, I'll do it as well as I can.'
`But I don't want it done at all!'
groaned the poor Queen.
`I've been a-dressing myself for the last two hours.'
It would have been all the better, as it seemed to Alice, if she had got some one else to dress her,
she was so dreadfully untidy.
`Every single thing's crooked,'
Alice thought to herself,
`and she's all over pins!
--may I put your shawl straight for you?'
she added aloud.
`I don't know what's the matter with it!'
the Queen said, in a melancholy voice.
`It's out of temper, I think.
I've pinned it here, and I've pinned it there, but there's no pleasing it!'
`It CAN'T go straight, you know, if you pin it all on one side,'
Alice said, as she gently put it right for her;
`and, dear me, what a state your hair is in!'
`The brush has got entangled in it!' the Queen said with a sigh. `And I lost the comb yesterday.'
Alice carefully released the brush, and did her best to get the hair into order.
`Come, you look rather better now!' she said, after altering most of the pins.
`But really you should have a lady's maid!'
`I'm sure I'll take you with pleasure!' the Queen said.
`Twopence a week, and jam every other day.'
Alice couldn't help laughing, as she said,
`I don't want you to hire ME
--and I don't care for jam.'
`It's very good jam,'
said the Queen.
`Well, I don't want any TO-DAY, at any rate.'
`You couldn't have it if you DID want it,' the Queen said.
`The rule is, jam to-morrow and jam yesterday--but never jam to-day.'
`It MUST come sometimes to "jam to-day,"'
Alice objected.
`No, it can't,' said the Queen.
`It's jam every OTHER day:
to-day isn't any OTHER day, you know.'
`I don't understand you,' said Alice.
`It's dreadfully confusing!'
`That's the effect of living backwards,'
the Queen said kindly:
`it always makes one a little giddy at first--'
`Living backwards!' Alice repeated in great astonishment.
`I never heard of such a thing!'
`--but there's one great advantage in it, that one's memory works both ways.'
`I'm sure MINE only works one way.' Alice remarked.
`I can't remember things before they happen.'
`It's a poor sort of memory that only works backwards,'
the Queen remarked.
`What sort of things do YOU remember best?'
Alice ventured to ask.
`Oh, things that happened the week after next,'
the Queen replied in a careless tone.
`For instance, now,' she went on, sticking a large piece of plaster [band-aid] on her finger as she spoke,
`there's the King's Messenger.
He's in prison now, being punished:
and the trial doesn't even begin till next Wednesday:
and of course the crime comes last of all.'
`Suppose he never commits the crime?'
said Alice.
`That would be all the better, wouldn't it?'
the Queen said, as she bound the plaster round her finger with a bit of ribbon.
Alice felt there was no denying THAT.
`Of course it would be all the better,' she said:
`but it wouldn't be all the better his being punished.'
`You're wrong THERE, at any rate,' said the Queen:
`were YOU ever punished?'
`Only for faults,'
said Alice.
`And you were all the better for it, I know!'
the Queen said triumphantly.
`Yes, but then I HAD done the things I was punished for,' said Alice:
`that makes all the difference.'
`But if you HADN'T done them,' the Queen said,
`that would have been better still;
better,
and better, and better!'
Her voice went higher with each `better,' till it got quite to a squeak at last.
Alice was just beginning to say `There's a mistake somewhere--,'
when the Queen began screaming so loud that she had to leave the sentence unfinished.
`Oh, oh, oh!'
shouted the Queen, shaking her hand about as if she wanted to shake it off.
`My finger's bleeding!
Oh, oh, oh, oh!'
Her screams were so exactly like the whistle of a steam-engine, that Alice had to hold both her hands over her ears.
`What IS the matter?' she said, as soon as there was a chance of making herself heard.
`Have you pricked your finger?'
`I haven't pricked it YET,' the Queen said,
`but I soon shall
--oh, oh, oh!'
`When do you expect to do it?'
Alice asked, feeling very much inclined to laugh.
`When I fasten my shawl again,' the poor Queen groaned out:
`the brooch will come undone directly.
Oh, oh!'
As she said the words the brooch flew open, and the Queen clutched wildly at it, and tried to clasp it again.
`Take care!' cried Alice.
`You're holding it all crooked!'
And she caught at the brooch;
but it was too late:
the pin had slipped, and the Queen had pricked her finger.
`That accounts for the bleeding, you see,' she said to Alice with a smile.
`Now you understand the way things happen here.'
`But why don't you scream now?'
Alice asked, holding her hands ready to put over her ears again.
`Why, I've done all the screaming already,' said the Queen.
`What would be the good of having it all over again?'
By this time it was getting light.
`The crow must have flown away, I think,' said Alice:
`I'm so glad it's gone.
I thought it was the night coming on.'
`I wish _I_ could manage to be glad!'
the Queen said.
`Only I never can remember the rule.
You must be very happy, living in this wood, and being glad whenever you like!'
`Only it is so VERY lonely here!'
Alice said in a melancholy voice;
and at the thought of her loneliness two large tears came rolling down her cheeks.
`Oh, don't go on like that!'
cried the poor Queen, wringing her hands in despair.
`Consider what a great girl you are.
Consider what a long way you've come to-day.
Consider what o'clock it is.
Consider anything, only don't cry!'
Alice could not help laughing at this, even in the midst of her tears.
`Can YOU keep from crying by considering things?' she asked.
`That's the way it's done,'
the Queen said with great decision:
`nobody can do two things at once, you know.
Let's consider your age to begin with
--how old are you?'
`I'm seven and a half exactly.'
`You needn't say "exactually,"' the Queen remarked:
`I can believe it without that.
Now I'll give YOU something to believe.
I'm just one hundred and one, five months and a day.'
`I can't believe THAT!'
said Alice.
`Can't you?' the Queen said in a pitying tone.
`Try again:
draw a long breath, and shut your eyes.'
Alice laughed.
`There's no use trying,' she said:
`one CAN'T believe impossible things.'
`I daresay you haven't had much practice,' said the Queen.
`When I was your age, I always did it for half-an-hour a day.
Why, sometimes I've believed as many as six impossible things before breakfast.
There goes the shawl again!'
The brooch had come undone as she spoke, and a sudden gust of wind blew the Queen's shawl across a little brook.
The Queen spread out her arms again, and went flying after it, and this time she succeeded in catching it for herself.
`I've got it!'
she cried in a triumphant tone.
`Now you shall see me pin it on again, all by myself!'
`Then I hope your finger is better now?'
Alice said very politely, as she crossed the little brook after the Queen.
`Oh, much better
squeak as she went on.
`Much be-etter! Be-etter! Be-e-e-etter! Be-e-ehh!'
The last word ended in a long bleat, so like a sheep that Alice quite started.
She looked at the Queen, who seemed to have suddenly wrapped herself up in wool.
Alice rubbed her eyes, and looked again.
She couldn't make out what had happened at all.
Was she in a shop?
And was that really
--was it really a SHEEP that was sitting on the other side of the counter?
Rub as she could, she could make nothing more of it:
she was in a little dark shop, leaning with her elbows on the counter, and opposite to her was an old Sheep, sitting in an arm-chair knitting, and every now and then leaving off to look at her through a great pair of spectacles.
`What is it you want to buy?'
the Sheep said at last, looking up for a moment from her knitting.
`I don't QUITE know yet,' Alice said, very gently.
`I should like to look all round me first, if I might.'
`You may look in front of you, and on both sides, if you like,' said the Sheep:
`but you can't look ALL round you
--unless you've got eyes at the back of your head.'
But these, as it happened, Alice had NOT got:
so she contented herself with turning round, looking at the shelves as she came to them.
The shop seemed to be full of all manner of curious things
--but the oddest part of it all was, that whenever she looked hard at any shelf, to make out exactly what it had on it, thatparticular shelf was always quite empty:
though the others round it were crowded as full as they could hold.
`Things flow about so here!'
she said at last in a plaintive tone,
after she had spent a minute or so in vainly pursuing a large bright thing, that looked sometimes like a doll andsometimes like a work-box, and was always in the shelf next above the one she was looking at.
`And this one is the most provoking of all
--but I'll tell you what--'
she added, as a sudden thought struck her,
`I'll follow it up to the very top shelf of all.
It'll puzzle it to go through the ceiling, I expect!'
But even this plan failed:
the `thing' went through the ceiling as quietly as possible,
as if it were quite used to it.
`Are you a child or a teetotum?'
the Sheep said, as she took up another pair of needles.
`You'll make me giddy soon, if you go on turning round like that.'
She was now working with fourteen pairs at once,
and Alice couldn't help looking at her in great astonishment.
`How CAN she knit with so many?'
the puzzled child thought to herself.
`She gets more and more like a porcupine every minute!'
`Can you row?'
the Sheep asked, handing her a pair of knitting- needles as she spoke.
`Yes, a little
--but not on land
--and not with needles--'
Alice was beginning to say, when suddenly the needles turned into oars in her hands, and she found they were in a little boat, gliding along between banks:
so there was nothing for it but to do her best.
`Feather!'
cried the Sheep, as she took up another pair of needles.
This didn't sound like a remark that needed any answer, so Alice said nothing, but pulled away.
There was something very queer about the water, she thought,
as every now and then the oars got fast in it, and would hardly come out again.
`Feather!
Feather!'
`You'll be catching a crab directly.'
`A dear little crab!' thought Alice.
`I should like that.'
`Didn't you hear me say "Feather"?'
the Sheep cried angrily, taking up quite a bunch of needles.
`Indeed I did,' said Alice:
`you've said it very often
--and very loud.
Please, where ARE the crabs?'
`In the water, of course!'
said the Sheep, sticking some of the needles into her hair, as her hands were full.
`Feather, I say!'
`WHY do you say "feather" so often?' Alice asked at last, rather vexed.
I'm not a bird!'
`You are,' said the Sheet:
`you're a little goose.'
This offended Alice a little, so there was no more conversation for a minute or two, while the boat glided gently on, sometimes among beds of weeds (which made the oars stick fast in the water, worse then ever), and sometimes under trees, but always with the same tall river-banks frowning over their heads.
`Oh, please!
There are some scented rushes!'
Alice cried in a sudden transport of delight.
`There really are
--and SUCH beauties!'
`You needn't say "please" to ME about `em'
the Sheep said, without looking up from her knitting:
`I didn't put `em there, and I'm not going to take `em away.'
`No, but I meant
--please, may we wait and pick some?' Alice pleaded.
`If you don't mind stopping the boat for a minute.'
`How am _I_ to stop it?'
said the Sheep.
`If you leave off rowing, it'll stop of itself.'
So the boat was left to drift down the stream as it would, till it glided gently in among the waving rushes.
And then the little sleeves were carefully rolled up, and the little arms were plunged in elbow-deep to get the rushes a good long way down before breaking them off
--and for a while Alice forgot all about the Sheep and the knitting, as she bent over the side of the boat, with just the ends of her tangled hair dipping into the water
--while with bright eager eyes she caught at one bunch after another of the darling scented rushes.
`I only hope the boat won't tipple over!' she said to herself.
Oh, WHAT a lovely one!
Only I couldn't quite reach it.'
`And it certainly DID seem a little provoking
(`almost as if it happened on purpose,' she thought)
that, though she managed to pick plenty of beautiful rushes as the boat glided by, there was always a more lovely one that she couldn't reach.
`The prettiest are always further!'
she said at last, with a sigh at the obstinacy of the rushes in growing so far off,
as, with flushed cheeks and dripping hair and hands, she scrambled back into her place, and began to arrange her new-found treasures.
What mattered it to her just than that the rushes had begun to fade, and to lose all their scent and beauty, from the very moment that she picked them?
Even real scented rushes, you know, last only a very little while
--and these, being dream-rushes, melted away almost like snow, as they lay in heaps at her feet
--but Alice hardly noticed this,
there were so many other curious things to think about.
They hadn't gone much farther before the blade of one of the oars got fast in the water and WOULDN'T come out again
(so Alice explained it afterwards),
and the consequence was that the handle of it caught her under the chin, and, in spite of a series of little shrieks of `Oh, oh, oh!' from poor Alice, it swept her straight off the seat, and down among the heap of rushes.
However, she wasn't hurt, and was soon up again:
the Sheep went on with her knitting all the while,
just as if nothing had happened.
`That was a nice crab you caught!'
she remarked, as Alice got back into her place, very much relieved to find herself still in the boat.
`Was it?
I didn't see it,'
Said Alice, peeping cautiously over the side of the boat into the dark water.
`I wish it hadn't let go
--I should so like to see a little crab to take home with me!'
But the Sheep only laughed scornfully, and went on with her knitting.
`Are there many crabs here?'
said Alice.
`Crabs, and all sorts of things,' said the Sheep:
`plenty of choice,
only make up your mind.
Now, what DO you want to buy?'
`To buy!'
Alice echoed in a tone that was half astonished and half frightened
--for the oars, and the boat, and the river, had vanished all in a moment, and she was back again in the little dark shop.
`I should like to buy an egg, please,' she said timidly.
`How do you sell them?'
`Fivepence farthing for one--Twopence for two,'
the Sheep replied.
`Then two are cheaper than one?'
Alice said in a surprised tone, taking out her purse.
`Only you MUST eat them both, if you buy two,'
said the Sheep.
`Then I'll have ONE, please,'
said Alice, as she put the money down on the counter.
For she thought to herself, `They mightn't be at all nice, you know.'
The Sheep took the money, and put it away in a box:
then she said
`I never put things into people's hands
--that would never do
--you must get it for yourself.'
And so saying, she went off to the other end of the shop, and set the egg upright on a shelf.
`I wonder WHY it wouldn't do?'
thought Alice, as she groped her way among the tables and chairs,
for the shop was very dark towards the end.
`The egg seems to get further away the more I walk towards it.
Let me see, is this a chair?
Why, it's got branches, I declare!
How very odd to find trees growing here!
And actually here's a little brook!
Well, this is the very queerest shop I ever saw!'
So she went on,
wondering more and more at every step, as everything turned into a tree the moment she came up to it,
and she quite expected the egg to do the same.
CHAPTER VI Humpty Dumpty
However, the egg only got larger and larger, and more and more human:
when she had come within a few yards of it, she saw that it had eyes and a nose and mouth;
and when she had come close to it, she saw clearly that it was HUMPTY DUMPTY himself.
`It can't be anybody else!' she said to herself.
`I'm as certain of it, as if his name were written all over his face.'
It might have been written a hundred times, easily, on that enormous face.
Humpty Dumpty was sitting with his legs crossed, like a Turk, on the top of a high wall
--such a narrow one that Alice quite wondered how he could keep his balance
--and, as his eyes were steadily fixed in the opposite direction, and he didn't take the least notice of her, she thought he must be a stuffed figure after all.
`And how exactly like an egg he is!'
she said aloud, standing with her hands ready to catch him,
for she was every moment expecting him to fall.
`It's VERY provoking,' Humpty Dumpty said after a long silence,
looking away from Alice as he spoke,
`to be called an egg--VERY!'
`I said you LOOKED like an egg, Sir,'
Alice gently explained.
`And some eggs are very pretty, you know'
she added, hoping to turn her remark into a sort of a compliment.
`Some people,'
said Humpty Dumpty, looking away from her as usual,
`have no more sense than a baby!'
Alice didn't know what to say to this:
it wasn't at all like conversation, she thought, as he never said anything to HER;
in fact, his last remark was evidently addressed to a tree
--so she stood and softly repeated to herself:
--`Humpty Dumpty sat on a wall:
Humpty Dumpty had a great fall.
All the King's horses and all the King's men
Couldn't put Humpty Dumpty in his place again.'
`That last line is much too long for the poetry,'
she added, almost out loud,
forgetting that Humpty Dumpty would hear her.
`Don't stand there chattering to yourself like that,' Humpty Dumpty said, looking at her for the first time,
`but tell me your name and your business.'
`My NAME is Alice, but--'
`It's a stupid enough name!'
Humpty Dumpty interrupted impatiently.
`What does it mean?'
`MUST a name mean something?'
Alice asked doubtfully.
`Of course it must,'
Humpty Dumpty said with a short laugh:
`MY name means the shape I am
--and a good handsome shape it is, too.
With a name like yours, you might be any shape, almost.'
`Why do you sit out here all alone?'
wsaid Alice, not wishing to begin an argument.
`Why, because there's nobody with me!'
cried Humpty Dumpty.
`Did you think I didn't know the answer to THAT?
Ask another.'
`Don't you think you'd be safer down on the ground?'
Alice went on, not with any idea of making another riddle, but simply in her good-natured anxiety for the queer creature.
`That wall is so VERY narrow!'
`What tremendously easy riddles you ask!'
Humpty Dumpty growled out.
`Of course I don't think so!
Why, if ever I DID fall off
--which there's no chance of
--but IF I did--'
Here he pursed his lips and looked so solemn and grand that Alice could hardly help laughing.
`IF I did fall,' he went on,
`THE KING HAS PROMISED ME
--WITH HIS VERY OWN MOUTH--to--to--'
`To Send All His Horses And All His Men,'
Alice interrupted, rather unwisely.
`Now I declare that's too bad!'
Humpty Dumpty cried, breaking into a sudden passion.
`You've been listening at doors--and behind trees--and down chimneys--or you couldn't have known it!'
`I haven't, indeed!' Alice said very gently. `It's in a book.'
`Ah, well!
They may write such things in a BOOK,'
Humpty Dumpty said in a calmer tone.
`That's what you call a History of England, that is.
Now, take a good look at me!
I'm one that has spoken to a King, _I_ am:
mayhap you'll never see such another:
and to show you I'm not proud, you may shake hands with me!'
And he grinned almost from ear to ear, as he leant forwards (and as nearly as possible fell of the wall in doing so) and offered Alice his hand.
She watched him a little anxiously as she took it.
`If he smiled much more, the ends of his mouth might meet behind,' she thought:
`and then I don't know what would happen to his head!
I'm afraid it would come off!'
`Yes, all his horses and all his men,'
Humpty Dumpty went on.
`They'd pick me up again in a minute, THEY would!
However, this conversation is going on a little too fast:
let's go back to the last remark but one.'
`I'm afraid I can't quite remember it,'
Alice said very politely.
`In that case we start fresh,' said Humpty Dumpty,
`and it's my turn to choose a subject--'
(`He talks about it just as if it was a game!'
thought Alice.)
`So here's a question for you.
How old did you say you were?'
Alice made a short calculation, and said
`Seven years and six months.'
`Wrong!'
Humpty Dumpty exclaimed triumphantly.
`You never said a word like it!'
`I though you meant "How old ARE you?"'
Alice explained.
`If I'd meant that, I'd have said it,'
said Humpty Dumpty.
Alice didn't want to begin another argument, so she said nothing.
`Seven years and six months!'
Humpty Dumpty repeated thoughtfully.
`An uncomfortable sort of age.
Now if you'd asked MY advice, I'd have said "Leave off at seven"
--but it's too late now.'
`I never ask advice about growing,'
Alice said indignantly.
`Too proud?'
the other inquired.
Alice felt even more indignant at this suggestion.
`I mean,' she said, `that one can't help growing older.'
`ONE can't, perhaps,' said Humpty Dumpty,
`but TWO can.
With proper assistance, you might have left off at seven.'
`What a beautiful belt you've got on!'
Alice suddenly remarked.
(They had had quite enough of the subject of age, she thought:
and if they really were to take turns in choosing subjects, it was her turn now.)
`At least,'
she corrected herself on second thoughts,
`a beautiful cravat, I should have said
--no, a belt, I mean
--I beg your pardon!'
she added in dismay,
for Humpty Dumpty looked thoroughly offended, and she began to wish she hadn't chosen that subject.
`If I only knew,' the thought to herself, 'which was neck and which was waist!'
Evidently Humpty Dumpty was very angry, though he said nothing for a minute or two.
When he DID speak again, it was in a deep growl.
`It is a--MOST--PROVOKING--thing,' he said at last,
`when a person doesn't know a cravat from a belt!'
`I know it's very ignorant of me,'
Alice said, in so humble a tone that Humpty Dumpty relented.
`It's a cravat, child,
and a beautiful one, as you say.
It's a present from the White King and Queen.
There now!'
`Is it really?'
said Alice, quite pleased to find that she HAD chosen a good subject, after all.
`They gave it me,' Humpty Dumpty continued thoughtfully, as he crossed one knee over the other and clasped his hands round it,
`they gave it me
--for an un-birthday present.'
`I beg your pardon?'
Alice said with a puzzled air.
`I'm not offended,'
said Humpty Dumpty.
`I mean, what IS an un-birthday present?'
`A present given when it isn't your birthday, of course.'
Alice considered a little.
`I like birthday presents best,'
she said at last.
`You don't know what you're talking about!'
cried Humpty Dumpty.
`How many days are there in a year?'
`Three hundred and sixty-five,'
said Alice.
`And how many birthdays have you?'
`One.'
`And if you take one from three hundred and sixty-five, what remains?'
`Three hundred and sixty-four, of course.'
Humpty Dumpty looked doubtful.
`I'd rather see that done on paper,' he said.
Alice couldn't help smiling as she took out her memorandum-book, and worked the sum for him:
Humpty Dumpty took the book, and looked at it carefully.
`That seems to be done right--'
he began.
`You're holding it upside down!'
Alice interrupted.
`To be sure I was!'
Humpty Dumpty said gaily, as she turned it round for him.
`I thought it looked a little queer.
As I was saying, that SEEMS to be done right
--though I haven't time to look it over thoroughly just now
--and that shows that there are three hundred and sixty-four days when you might get un-birthday presents--'
`Certainly,'
said Alice.
`And only ONE for birthday presents, you know.
There's glory for you!'
`I don't know what you mean by "glory,"'
Alice said.
Humpty Dumpty smiled contemptuously.
`Of course you don't
--till I tell you.
I meant "there's a nice knock-down argument for you!"'
`But "glory" doesn't mean "a nice knock-down argument,"'
Alice objected.
`When _I_ use a word,' Humpty Dumpty said in rather a scornful tone,
`it means just what I choose it to mean
--neither more nor less.'
`The question is,' said Alice,
`whether you CAN make words mean so many different things.'
`The question is,' said Humpty Dumpty,
`which is to be master
--that's all.'
Alice was too much puzzled to say anything, so after a minute Humpty Dumpty began again.
`They've a temper, some of them
--particularly verbs, they're the proudest
--adjectives you can do anything with, but not verbs
--however, _I_ can manage the whole lot of them!
Impenetrability!
That's what _I_ say!'
`Would you tell me, please,' said Alice `what that means?'
`Now you talk like a reasonable child,'
said Humpty Dumpty, looking very much pleased.
`I meant by "impenetrability" that we've had enough of that subject, and it would be just as well if you'd mention what you mean to do next, as I suppose you don't mean to stop here all the rest of your life.'
`That's a great deal to make one word mean,'
Alice said in a thoughtful tone.
`When I make a word do a lot of work like that,' said Humpty Dumpty, `I always pay it extra.'
`Oh!' said Alice.
She was too much puzzled to make any other remark.
`Ah, you should see 'em come round me of a Saturday night,'
Humpty Dumpty went on, wagging his head gravely from side to side: `for to get their wages, you know.'
(Alice didn't venture to ask what he paid them with;
and so you see I can't tell YOU.)
`You seem very clever at explaining words, Sir,' said Alice.
`Would you kindly tell me the meaning of the poem called "Jabberwocky"?'
`Let's hear it,'
said Humpty Dumpty.
`I can explain all the poems that were ever invented
--and a good many that haven't been invented just yet.'
This sounded very hopeful, so Alice repeated the first verse:
'Twas brillig, and the slithy toves
`That's enough to begin with,'
Humpty Dumpty interrupted:
`there are plenty of hard words there.
"BRILLIG" means four o'clock in the afternoon
--the time when you begin BROILING things for dinner.'
`That'll do very well,' said Alice:
and "SLITHY"?'
`Well, "SLITHY" means "lithe and slimy."
"Lithe" is the same as "active."
You see it's like a portmanteau
--there are two meanings packed up into one word.'
`I see it now,'
Alice remarked thoughtfully:
`and what are "TOVES"?'
`Well, "TOVES" are something like badgers
--they're something like lizards
--and they're something like corkscrews.'
`They must be very curious looking creatures.'
`They are that,'
said Humpty Dumpty:
`also they make their nests under sun-dials
--also they live on cheese.'
`Andy what's the "GYRE" and to "GIMBLE"?'
`To "GYRE" is to go round and round like a gyroscope.
To "GIMBLE" is to make holes like a gimlet.'
`And "THE WABE" is the grass-plot round a sun-dial, I suppose?'
said Alice, surprised at her own ingenuity.
`Of course it is.
It's called "WABE," you know, because it goes a long way before it, and a long way behind it--'
`And a long way beyond it on each side,'
Alice added.
`Exactly so.
Well, then, "MIMSY" is "flimsy and miserable"
(there's another portmanteau for you).
And a "BOROGOVE" is a thin shabby-looking bird with its feathers sticking out all round
--something like a live mop.'
`And then "MOME RATHS"?' said Alice.
`I'm afraid I'm giving you a great deal of trouble.'
`Well, a "RATH" is a sort of green pig:
but "MOME" I'm not certain about.
I think it's short for "from home"
--meaning that they'd lost their way, you know.'
`And what does "OUTGRABE" mean?'
`Well, "OUTGRABING" is something between bellowing and whistling, with a kind of sneeze in the middle:
however, you'll hear it done, maybe
--down in the wood yonder
--and when you've once heard it you'll be QUITE content.
Who's been repeating all that hard stuff to you?'
`I read it in a book,' said Alice.
`But I had some poetry repeated to me, much easier than that, by--Tweedledee, I think it was.'
`As to poetry, you know,'
said Humpty Dumpty, stretching out one of his great hands,
`_I_ can repeat poetry as well as other folk, if it comes to that--'
`Oh, it needn't come to that!'
Alice hastily said, hoping to keep him from beginning.
`The piece I'm going to repeat,' he went on without noticing her remark,
was written entirely for your amusement.'
Alice felt that in that case she really OUGHT to listen to it, so she sat down,
and said `Thank you'
rather sadly.
`In winter, when the fields are white,
I sing this song for your delight--
only I don't sing it,'
he added, as an explanation.
`I see you don't,'
said Alice.
`If you can SEE whether I'm singing or not, you've sharper eyes than most.'
Humpty Dumpty remarked severely.
Alice was silent.
`In spring, when woods are getting green,
I'll try and tell you what I mean.'
`Thank you very much,'
said Alice.
`In summer, when the days are long,
Perhaps you'll understand the song:
In autumn, when the leaves are brown,
Take pen and ink, and write it down.'
`I will, if I can remember it so long,'
said Alice.
`You needn't go on making remarks like that,' Humpty Dumpty said:
`they're not sensible, and they put me out.'
`I sent a message to the fish:
I told them "This is what I wish."
The little fishes of the sea,
They sent an answer back to me.
The little fishes' answer was
"We cannot do it, Sir, because--"'
`I'm afraid I don't quite understand,'
said Alice.
`It gets easier further on,'
Humpty Dumpty replied.
`I sent to them again to say
"It will be better to obey."
The fishes answered with a grin,
"Why, what a temper you are in!"
I told them once, I told them twice:
They would not listen to advice.
I took a kettle large and new,
Fit for the deed I had to do.
My heart went hop, my heart went thump;
I filled the kettle at the pump.
Then some one came to me and said,
"The little fishes are in bed."
I said to him, I said it plain,
"Then you must wake them up again."
I said it very loud and clear;
I went and shouted in his ear.'
Humpty Dumpty raised his voice almost to a scream as he repeated this verse, and Alice thought with a shudder,
`I wouldn't have been the messenger for ANYTHING!'
`But he was very stiff and proud;
He said "You needn't shout so loud!"
And he was very proud and stiff;
He said "I'd go and wake them, if--"
I took a corkscrew from the shelf:
I went to wake them up myself.
And when I found the door was locked,
I pulled and pushed and kicked and knocked.
And when I found the door was shut,
I tried to turn the handle, but--'
There was a long pause.
`Is that all?'
Alice timidly asked.
`That's all,' said Humpty Dumpty.
`Good-bye.'
This was rather sudden, Alice thought:
but, after such a VERY strong hint that she ought to be going, she felt that it would hardly be civil to stay.
So she got up, and held out her hand.
`Good-bye, till we meet again!'
she said as cheerfully as she could.
`I shouldn't know you again if we DID meet,'
Humpty Dumpty replied in a discontented tone, giving her one of his fingers to shake;
`you're so exactly like other people.'
`The face is what one goes by, generally,'
Alice remarked in a thoughtful tone.
`That's just what I complain of,' said Humpty Dumpty.
`Your face is the same as everybody has--the two eyes, so--'
(marking their places in the air with this thumb)
`nose in the middle, mouth under.
It's always the same.
Now if you had the two eyes on the same side of the nose, for instance
--or the mouth at the top
--that would be SOME help.'
`It wouldn't look nice,'
Alice objected.
But Humpty Dumpty only shut his eyes and said
`Wait till you've tried.'
Alice waited a minute to see if he would speak again,
but as he never opened his eyes or took any further notice of her, she said `Good-bye!' once more,
and, getting no answer to this, she quietly walked away:
but she couldn't help saying to herself as she went,
`Of all the unsatisfactory--'
(she repeated this aloud,
as it was a great comfort to have such a long word to say)
`of all the unsatisfactory people I EVER met--'
She never finished the sentence,
for at this moment a heavy crash shook the forest from end to end.
CHAPTER VII The Lion and the Unicorn
The next moment soldiers came running through the wood,
at first in twos and threes, then ten or twenty together, and at last in such crowds that they seemed to fill the whole forest.
Alice got behind a tree, for fear of being run over, and watched them go by.
She thought that in all her life she had never seen soldiers so uncertain on their feet:
they were always tripping over something or other, and whenever one went down, several more always fell over him, so that the ground was soon covered with little heaps of men.
Then came the horses.
Having four feet, these managed rather better than the foot-soldiers:
but even THEY stumbled now and then;
and it seemed to be a regular rule that, whenever a horse stumbled the rider fell off instantly.
The confusion got worse every moment, and Alice was very glad to get out of the wood into an open place,
where she found the White King seated on the ground, busily writing in his memorandum-book.
`I've sent them all!'
the King cried in a tone of delight, on seeing Alice.
`Did you happen to meet any soldiers, my dear, as you came through the wood?'
`Yes, I did,' said Alice:
`several thousand, I should think.'
`Four thousand two hundred and seven,
that's the exact number,'
the King said, referring to his book.
`I couldn't send all the horses, you know,
because two of them are wanted in the game.
And I haven't sent the two Messengers, either.
They're both gone to the town.
Just look along the road, and tell me if you can see either of them.'
`I see nobody on the road,'
said Alice.
`I only wish _I_ had such eyes,'
the King remarked in a fretful tone.
`To be able to see Nobody!
And at that distance, too!
Why, it's as much as _I_ can do to see real people, by this light!'
All this was lost on Alice,
who was still looking intently along the road, shading her eyes with one hand.
`I see somebody now!' she exclaimed at last.
`But he's coming very slowly
--and what curious attitudes he goes into!'
(For the messenger kept skipping up and down, and wriggling like an eel, as he came along, with his great hands spread out like fans on each side.)
`Not at all,'
said the King.
`He's an Anglo-Saxon Messenger
--and those are Anglo-Saxon attitudes.
He only does them when he's happy.
His name is Haigha.'
(He pronounced it so as to rhyme with `mayor.')
`I love my love with an H,' Alice couldn't help beginning,
`because he is Happy.
I hate him with an H, because he is Hideous.
I fed him with
--with--with Ham-sandwiches and Hay.
His name is Haigha, and he lives--'
`He lives on the Hill,'
the King remarked simply,
without the least idea that he was joining in the game,
while Alice was still hesitating for the name of a town beginning with H.
`The other Messenger's called Hatta.
I must have TWO, you know --to come and go.
Once to come, and one to go.'
`I beg your pardon?'
said Alice.
`It isn't respectable to beg,'
said the King.
`I only meant that I didn't understand,' said Alice.
`Why one to come and one to go?'
`Didn't I tell you?' the King repeated impatiently.
`I must have Two
--to fetch and carry.
One to fetch, and one to carry.'
At this moment the Messenger arrived:
he was far too much out of breath to say a word, and could only wave his hands about, and make the most fearful faces at the poor King.
`This young lady loves you with an H,'
the King said, introducing Alice in the hope of turning off the Messenger's attention from himself
--but it was no use
--the Anglo-Saxon attitudes only got more extraordinary every moment, while the great eyes rolled wildly from side to side.
`You alarm me!'
said the King.
`I feel faint
--Give me a ham sandwich!'
On which the Messenger, to Alice's great amusement, opened a bag that hung round his neck, and handed a sandwich to the King,
who devoured it greedily.
`Another sandwich!'
said the King.
`There's nothing but hay left now,'
the Messenger said, peeping into the bag.
`Hay, then,'
the King murmured in a faint whisper.
Alice was glad to see that it revived him a good deal.
`There's nothing like eating hay when you're faint,'
he remarked to her, as he munched away.
I should think throwing cold water over you would be better,' Alice suggested:
`or some sal-volatile.'
`I didn't say there was nothing BETTER,' the King replied.
`I said there was nothing LIKE it.'
Which Alice did not venture to deny.
`Who did you pass on the road?'
the King went on, holding out his hand to the Messenger for some more hay.
`Nobody,'
said the Messenger.
`Quite right,' said the King:
`this young lady saw him too.
So of course Nobody walks slower than you.'
`I do my best,' the Messenger said in a sulky tone.
`I'm sure nobody walks much faster than I do!'
`He can't do that,' said the King,
`or else he'd have been here first.
However, now you've got your breath,
you may tell us what's happened in the town.'
`I'll whisper it,'
said the Messenger, putting his hands to his mouth in the shape of a trumpet, and stooping so as to get close to the King's ear.
Alice was sorry for this,
as she wanted to hear the news too.
However, instead of whispering, he simply shouted at the top of his voice
`They're at it again!'
`Do you call THAT a whisper?'
cried the poor King, jumping up and shaking himself.
`If you do such a thing again, I'll have you buttered!
It went through and through my head like an earthquake!'
`It would have to be a very tiny earthquake!'
thought Alice.
`Who are at it again?' she ventured to ask.
`Why the Lion and the Unicorn, of course,'
said the King.
`Fighting for the crown?'
`Yes, to be sure,' said the King:
`and the best of the joke is, that it's MY crown all the while!
Let's run and see them.'
And they trotted off, Alice repeating to herself, as she ran, the words of the old song:--
`The Lion and the Unicorn were fighting for the crown:
The Lion beat the Unicorn all round the town.
Some gave them white bread, some gave them brown;
Some gave them plum-cake and drummed them out of town.'
`Does--the one--that wins--get the crown?'
she asked, as well as she could, for the run was putting her quite out of breath.
`Dear me, no!' said the King.
`What an idea!'
`Would you--be good enough,'
Alice panted out, after running a little further,
`to stop a minute--just to get--one's breath again?'
`I'm GOOD enough,' the King said, `only I'm not strong enough.
You see, a minute goes by so fearfully quick.
You might as well try to stop a Bandersnatch!'
Alice had no more breath for talking, so they trotted on in silence,
till they came in sight of a great crowd, in the middle of which the Lion and Unicorn were fighting.
They were in such a cloud of dust, that at first Alice could not make out which was which:
but she soon managed to distinguish the Unicorn by his horn.
They placed themselves close to where Hatta,
the other messenger, was standing watching the fight, with a cup of tea in one hand and a piece of bread-and-butter in the other.
`He's only just out of prison, and he hadn't finished his tea when he was sent in,' Haigha whispered to Alice:
`and they only give them oyster-shells in there
--so you see he's very hungry and thirsty.
How are you, dear child?'
he went on, putting his arm affectionately round Hatta's neck.
Hatta looked round and nodded, and went on with his bread and butter.
`Were you happy in prison, dear child?'
said Haigha.
Hatta looked round once more, and this time a tear or two trickled down his cheek:
but not a word would he say.
`Speak, can't you!'
Haigha cried impatiently.
But Hatta only munched away, and drank some more tea.
`Speak, won't you!'
cried the King.
'How are they getting on with the fight?'
Hatta made a desperate effort, and swallowed a large piece of bread-and-butter.
`They're getting on very well,' he said in a choking voice:
`each of them has been down about eighty-seven times.'
`Then I suppose they'll soon bring the white bread and the brown?'
Alice ventured to remark.
`It's waiting for 'em now,'
said Hatta:
`this is a bit of it as I'm eating.'
There was a pause in the fight just then, and the Lion and the Unicorn sat down, panting, while the King called out
`Ten minutes allowed for refreshments!'
Haigha and Hatta set to work at once, carrying rough trays of white and brown bread.
Alice took a piece to taste, but it was VERY dry.
`I don't think they'll fight any more to-day,' the King said to Hatta:
`go and order the drums to begin.'
And Hatta went bounding away like a grasshopper.
For a minute or two Alice stood silent, watching him.
Suddenly she brightened up.
`Look, look!'
she cried, pointing eagerly.
`There's the White Queen running across the country!
She came flying out of the wood over yonder
--How fast those Queens CAN run!'
`There's some enemy after her, no doubt,'
the King said, without even looking round. `That wood's full of them.'
`But aren't you going to run and help her?'
Alice asked, very much surprised at his taking it so quietly.
`No use, no use!' said the King.
`She runs so fearfully quick.
You might as well try to catch a Bandersnatch!
But I'll make a memorandum about her, if you like
--She's a dear good creature,'
he repeated softly to himself, as he opened his memorandum-book.
`Do you spell "creature" with a double "e"?'
At this moment the Unicorn sauntered by them, with his hands in his pockets.
`I had the best of it this time?'
he said to the King, just glancing at him as he passed.
`A little--a little,'
the King replied, rather nervously.
`You shouldn't have run him through with your horn, you know.'
`It didn't hurt him,'
the Unicorn said carelessly,
and he was going on, when his eye happened to fall upon Alice:
he turned round rather instantly, and stood for some time looking at her with an air of the deepest disgust.
`What--is--this?'
he said at last.
`This is a child
Alice to introduce her, and spreading out both his hands towards her in an Anglo-Saxon attitude.
`We only found it to-day.
It's as large as life, and twice as natural!'
`I always thought they were fabulous monsters!' said the Unicorn.
`Is it alive?'
`It can talk,'
said Haigha, solemnly.
The Unicorn looked dreamily at Alice, and said
`Talk, child.'
Alice could not help her lips curling up into a smile as she began:
`Do you know, I always thought Unicorns were fabulous monsters, too!
I never saw one alive before!'
`Well, now that we HAVE seen each other,' said the Unicorn,
`if you'll believe in me, I'll believe in you.
Is that a bargain?'
`Yes, if you like,'
said Alice.
`Come, fetch out the plum-cake, old man!' the Unicorn went on, turning from her to the King.
`None of your brown bread for me!'
`Certainly--certainly!'
the King muttered, and beckoned to Haigha.
`Open the bag!'
he whispered.
`Quick!
Not that one
--that's full of hay
Haigha took a large cake out of the bag, and gave it to Alice to hold, while he got out a dish and carving-knife.
How they all came out of it Alice couldn't guess.
It was just like a conjuring-trick, she thought.
The Lion had joined them while this was going on:
he looked very tired and sleepy, and his eyes were half shut.
`What's this!'
he said, blinking lazily at Alice, and speaking in a deep hollow tone that sounded like the tolling of a great bell.
`Ah, what IS it, now?'
the Unicorn cried eagerly.
`You'll never guess!
_I_ couldn't.'
The Lion looked at Alice wearily.
`Are you animal
--vegetable
--or mineral?'
he said, yawning at every other word.
`It's a fabulous monster!'
the Unicorn cried out, before Alice could reply.
`Then hand round the plum-cake, Monster,'
the Lion said, lying down and putting his chin on this paws.
`And sit down, both of you,'
(to the King and the Unicorn):
`fair play with the cake, you know!'
The King was evidently very uncomfortable at having to sit down between the two great creatures;
but there was no other place for him.
`What a fight we might have for the crown, NOW!'
the Unicorn said, looking slyly up at the crown,
which the poor King was nearly shaking off his head, he trembled so much.
`I should win easy,'
said the Lion.
`I'm not so sure of that,'
said the Unicorn.
`Why, I beat you all round the town, you chicken!'
the Lion replied angrily, half getting up as he spoke.
Here the King interrupted, to prevent the quarrel going on:
he was very nervous, and his voice quite quivered.
`All round the town?' he said.
`That's a good long way.
Did you go by the old bridge, or the market-place?
You get the best view by the old bridge.'
`I'm sure I don't know,' the Lion growled out as he lay down again.
`There was too much dust to see anything.
What a time the Monster is, cutting up that cake!'
Alice had seated herself on the bank of a little brook, with the great dish on her knees, and was sawing away diligently with the knife.
`It's very provoking!'
she said, in reply to the Lion
(she was getting quite used to being called `the Monster').
`I've cut several slices already, but they always join on again!'
`You don't know how to manage Looking-glass cakes,' the Unicorn remarked.
`Hand it round first, and cut it afterwards.'
This sounded nonsense, but Alice very obediently got up, and carried the dish round, and the cake divided itself into three pieces as she did so.
`NOW cut it up,'
said the Lion, as she returned to her place with the empty dish.
`I say, this isn't fair!'
cried the Unicorn, as Alice sat with the knife in her hand, very much puzzled how to begin.
`The Monster has given the Lion twice as much as me!'
`She's kept none for herself, anyhow,' said the Lion.
`Do you like plum-cake, Monster?'
But before Alice could answer him, the drums began.
Where the noise came from, she couldn't make out:
the air seemed full of it, and it rang through and through her head till she felt quite deafened.
She started to her feet and sprang across the little brook in her terror,
and had just time to see the Lion and the Unicorn rise to their feet, with angry looks at being interrupted in their feast,
before she dropped to her knees, and put her hands over her ears, vainly trying to shut out the dreadful uproar.
`If THAT doesn't "drum them out of town,"' she thought to herself, 'nothing ever will!'
CHAPTER VIII `It's my own Invention'
After a while the noise seemed gradually to die away, till all was dead silence, and Alice lifted up her head in some alarm.
There was no one to be seen, and her first thought was that she must have been dreaming about the Lion and the Unicorn
and those still lying at her feet,
on which she had tried to cut the plum-cake,
`So I wasn't dreaming, after all,' she said to herself,
`unless--unless we're all part of the same dream.
Only I do hope it's MY dream, and not the Red King's!
I don't like belonging to another person's dream,'
she went on in a rather complaining tone:
`I've a great mind to go and wake him, and see what happens!'
At this moment her thoughts were interrupted by a loud shouting of `Ahoy! Ahoy! Check!'
and a Knight dressed in crimson armour came galloping down upon her, brandishing a great club.
Just as he reached her, the horse stopped suddenly:
`You're my prisoner!'
the Knight cried, as he tumbled off his horse.
Startled as she was, Alice was more frightened for him than for herself at the moment, and watched him with some anxiety as he mounted again.
As soon as he was comfortably in the saddle, he began once more `You're my--' but here another voice broke in `Ahoy! Ahoy! Check!'
and Alice looked round in some surprise for the new enemy.
This time it was a White Knight.
He drew up at Alice's side, and tumbled off his horse just as the Red Knight had done:
then he got on again, and the two Knights sat and looked at each other for some time without speaking.
Alice looked from one to the other in some bewilderment.
`She's MY prisoner, you know!'
the Red Knight said at last.
`Yes, but then _I_ came and rescued her!'
the White Knight replied.
`Well, we must fight for her, then,'
said the Red Knight, as he took up his helmet
(which hung from the saddle, and was something the shape of a horse's head),
and put it on.
`You will observe the Rules of Battle, of course?'
the White Knight remarked, putting on his helmet too.
`I always do,'
said the Red Knight,
and they began banging away at each other with such fury that Alice got behind a tree to be out of the way of the blows.
`I wonder, now, what the Rules of Battle are,' she said to herself, as she watched the fight, timidly peeping out from her hiding-place:
`one Rule seems to be, that if one Knight hits the other, he knocks him off his horse, and if he misses, he tumbles off himself
--and another Rule seems to be that they hold their clubs with their arms, as if they were Punch and Judy
--What a noise they make when they tumble!
Just like a whole set of fire-irons falling into the fender!
And how quiet the horses are!
They let them get on and off them just as if they were tables!'
Another Rule of Battle, that Alice had not noticed, seemed to be that they always fell on their heads,
and the battle ended with their both falling off in this way, side by side:
when they got up again, they shook hands, and then the Red Knight mounted and galloped off.
`It was a glorious victory, wasn't it?'
said the White Knight, as he came up panting.
`I don't know,'
Alice said doubtfully.
`I don't want to be anybody's prisoner.
I want to be a Queen.'
`So you will,
when you've crossed the next brook,' said the White Knight.
`I'll see you safe to the end of the wood
--and then I must go back, you know.
That's the end of my move.'
`Thank you very much,' said Alice.
`May I help you off with your helmet?'
It was evidently more than he could manage by himself;
however, she managed to shake him out of it at last.
`Now one can breathe more easily,'
said the Knight, putting back his shaggy hair with both hands, and turning his gentle face and large mild eyes to Alice.
She thought she had never seen such a strange-looking soldier in all her life.
He was dressed in tin armour, which seemed to fit him very badly,
and he had a queer-shaped little deal box fastened across his shoulder, upside-down, and with the lid hanging open.
Alice looked at it with great curiosity.
`I see you're admiring my little box.' the Knight said in a friendly tone.
`It's my own invention
--to keep clothes and sandwiches in.
You see I carry it upside-down, so that the rain can't get in.'
`But the things can get OUT,' Alice gently remarked.
`Do you know the lid's open?'
`I didn't know it,'
the Knight said, a shade of vexation passing over his face.
`Then all the things much have fallen out!
And the box is no use without them.'
He unfastened it as he spoke, and was just going to throw it into the bushes,when a sudden thought seemed to strike him, and he hung it carefully on a tree.
`Can you guess why I did that?'
he said to Alice.
Alice shook her head.
`In hopes some bees may make a nest in it
--then I should get the honey.'
`But you've got a bee-hive
--or something like one
--fastened to the saddle,'
said Alice.
`Yes, it's a very good bee-hive,'
the Knight said in a discontented tone,
`one of the best kind.
But not a single bee has come near it yet.
And the other thing is a mouse-trap.
I suppose the mice keep the bees out
--or the bees keep the mice out,
I don't know which.'
`I was wondering what the mouse-trap was for,' said Alice.
`It isn't very likely there would be any mice on the horse's back.'
`Not very likely, perhaps,' said the Knight: `but if they DO come, I don't choose to have them running all about.'
`You see,' he went on after a pause,
`it's as well to be provided for EVERYTHING.
That's the reason the horse has all those anklets round his feet.'
`But what are they for?'
Alice asked in a tone of great curiosity.
`To guard against the bites of sharks,' the Knight replied.
`It's an invention of my own.
And now help me on.
I'll go with you to the end of the wood
--What's the dish for?'
`It's meant for plum-cake,'
said Alice.
`We'd better take it with us,' the Knight said.
`It'll come in handy if we find any plum-cake.
Help me to get it into this bag.'
This took a very long time to manage,
though Alice held the bag open very carefully, because the Knight was so VERY awkward in putting in the dish:
the first two or three times that he tried he fell in himself instead.
`It's rather a tight fit, you see,'
he said, as they got it in a last;
`There are so many candlesticks in the bag.'
And he hung it to the saddle,
which was already loaded with bunches of carrots, and fire-irons, and many other things.
`I hope you've got your hair well fastened on?'
he continued, as they set off.
`Only in the usual way,'
Alice said, smiling.
`That's hardly enough,' he said, anxiously.
`You see the wind is so VERY strong here.
It's as strong as soup.'
`Have you invented a plan for keeping the hair from being blown off?'
Alice enquired.
`Not yet,' said the Knight.
`But I've got a plan for keeping it from FALLING off.'
`I should like to hear it, very much.'
`First you take an upright stick,' said the Knight.
`Then you make your hair creep up it, like a fruit-tree.
Now the reason hair falls off is because it hangs DOWN
--things never fall UPWARDS, you know.
It's a plan of my own invention.
You may try it if you like.'
It didn't sound a comfortable plan, Alice thought, and for a few minutes she walked on in silence, puzzling over the idea, and every now and then stopping to help the poor Knight,
who certainly was NOT a good rider.
Whenever the horse stopped (which it did very often), he fell off in front;
and whenever it went on again (which it generally did rather suddenly), he fell off behind.
Otherwise he kept on pretty well, except that he had a habit of now and then falling off sideways;
and as he generally did this on the side on which Alice was walking, she soon found that it was the best plan not to walk QUITE close to the horse.
`I'm afraid you've not had much practice in riding,'
she ventured to say, as she was helping him up from his fifth tumble.
The Knight looked very much surprised, and a little offended at the remark.
`What makes you say that?'
he asked, as he scrambled back into the saddle, keeping hold of Alice's hair with one hand, to save himself from falling over on the other side.
`Because people don't fall off quite so often, when they've had much practice.'
`I've had plenty of practice,'
the Knight said very gravely:
`plenty of practice!'
Alice could think of nothing better to say than `Indeed?' but she said it as heartily as she could.
They went on a little way in silence after this,
the Knight with his eyes shut, muttering to himself, and Alice watching anxiously for the next tumble.
`The great art of riding,' the Knight suddenly began in a loud voice, waving his right arm as he spoke, `is to keep--'
Here the sentence ended as suddenly as it had begun,
as the Knight fell heavily on the top of his head exactly in the path where Alice was walking.
She was quite frightened this time,
and said in an anxious tone, as she picked him up,
`I hope no bones are broken?'
`None to speak of,'
the Knight said, as if he didn't mind breaking two or three of them.
`The great art of riding, as I was saying, is
--to keep your balance properly.
Like this, you know--'
He let go the bridle, and stretched out both his arms to show Alice what he meant,
and this time he fell flat on his back, right under the horse's feet.
`Plenty of practice!'
he went on repeating, all the time that Alice was getting him on his feet again.
`Plenty of practice!'
`It's too ridiculous!'
cried Alice, losing all her patience this time.
`You ought to have a wooden horse on wheels, that you ought!'
`Does that kind go smoothly?'
the Knight asked in a tone of great interest,
clasping his arms round the horse's neck as he spoke, just in time to save himself from tumbling off again.
`Much more smoothly than a live horse,'
Alice said, with a little scream of laughter, in spite of all she could do to prevent it.
`I'll get one,'
the Knight said thoughtfully to himself.
`One or two
--several.'
There was a short silence after this, and then the Knight went on again.
`I'm a great hand at inventing things.
Now, I daresay you noticed, that last time you picked me up, that I was looking rather thoughtful?'
`You WERE a little grave,'
said Alice.
`Well, just then I was inventing a new way of getting over a gate
--would you like to hear it?'
`Very much indeed,'
Alice said politely.
`I'll tell you how I came to think of it,' said the Knight.
`You see, I said to myself,
"The only difficulty is with the feet:
the HEAD is high enough already."
Now, first I put my head on the top of the gate
--then I stand on my head
--then the feet are high enough, you see
--then I'm over, you see.'
`Yes, I suppose you'd be over when that was done,'
Alice said thoughtfully:
`but don't you think it would be rather hard?'
`I haven't tried it yet,' the Knight said, gravely: `so I can't tell for certain
--but I'm afraid it WOULD be a little hard.'
He looked so vexed at the idea, that Alice changed the subject hastily.
`What a curious helmet you've got!'
she said cheerfully.
The Knight looked down proudly at his helmet, which hung from the saddle.
`Yes,' he said,
`but I've invented a better one than that
--like a sugar loaf.
When I used to wear it, if I fell off the horse, it always touched the ground directly.
So I had a VERY little way to fall, you see
--But there WAS the danger of falling INTO it, to be sure.
That happened to me once
--and the worst of it was, before I could get out again, the other White Knight came and put it on.
He thought it was his own helmet.'
The knight looked so solemn about it that Alice did not dare to laugh.
`I'm afraid you must have hurt him,' she said in a trembling voice,
`being on the top of his head.'
`I had to kick him, of course,'
the Knight said, very seriously.
`And then he took the helmet off again
--but it took hours and hours to get me out.
I was as fast as
--as lightning, you know.'
`But that's a different kind of fastness,'
Alice objected.
The Knight shook his head.
`It was all kinds of fastness with me, I can assure you!'
he said. He raised his hands in some excitement as he said this, and instantly rolled out of the saddle, and fell headlong into a deep ditch.
Alice ran to the side of the ditch to look for him.
She was rather startled by the fall,
as for some time he had kept on very well, and she was afraid that he really WAS hurt this time.
However, though she could see nothing but the soles of his feet, she was much relieved to hear that he was talking on in his usual tone.
`All kinds of fastness,' he repeated:
`but it was careless of him to put another man's helmet on
--with the man in it, too.'
`How CAN you go on talking so quietly, head downwards?'
Alice asked, as she dragged him out by the feet, and laid him in a heap on the bank.
The Knight looked surprised at the question.
`What does it matter where my body happens to be?' he said.
`My mind goes on working all the same.
In fact, the more head downwards I am, the more I keep inventing new things.'
`Now the cleverest thing of the sort that I ever did,' he went on after a pause, `was inventing a new pudding during the meat-course.'
`In time to have it cooked for the next course?'
said Alice.
`Well, not the NEXT course,'
the Knight said in a slow thoughtful tone:
`no, certainly not the next COURSE.'
`Then it would have to be the next day.
I suppose you wouldn't have two pudding-courses in one dinner?'
`Well, not the NEXT day,'
the Knight repeated as before:
`not the next DAY.
In fact,'
he went on, holding his head down, and his voice getting lower and lower,
`I don't believe that pudding ever WAS cooked!
In fact, I don't believe that pudding ever WILL be cooked!
And yet it was a very clever pudding to invent.'
`What did you mean it to be made of?'
Alice asked, hoping to cheer him up,
for the poor Knight seemed quite low-spirited about it.
`It began with blotting paper,'
the Knight answered with a groan.
`That wouldn't be very nice, I'm afraid--'
`Not very nice ALONE,'
he interrupted, quite eagerly:
`but you've no idea what a difference it makes mixing it with other things
--such as gunpowder and sealing-wax.
And here I must leave you.'
They had just come to the end of the wood.
Alice could only look puzzled:
she was thinking of the pudding.
`You are sad,'
the Knight said in an anxious tone:
`let me sing you a song to comfort you.'
`Is it very long?'
Alice asked,
for she had heard a good deal of poetry that day.
`It's long,' said the Knight,
`but very, VERY beautiful.
Everybody that hears me sing it
--either it brings the TEARS into their eyes, or else--'
`Or else what?'
said Alice,
for the Knight had made a sudden pause.
`Or else it doesn't, you know.
The name of the song is called "HADDOCKS' EYES."'
`Oh, that's the name of the song, is it?'
Alice said, trying to feel interested.
`No, you don't understand,' the Knight said, looking a little vexed.
`That's what the name is CALLED.
The name really IS "THE AGED AGED MAN."'
`Then I ought to have said "That's what the SONG is called"?'
Alice corrected herself.
`No, you oughtn't:
that's quite another thing!
The SONG is called "WAYS AND MEANS":
but that's only what it's CALLED, you know!'
`Well, what IS the song, then?'
said Alice, who was by this time completely bewildered.
`I was coming to that,' the Knight said.
`The song really IS "A-SITTING ON A GATE":
and the tune's my own invention.'
So saying, he stopped his horse and let the reins fall on its neck:
then, slowly beating time with one hand, and with a faint smile lighting up his gentle foolish face, as if he enjoyed the music of his song, he began.
Of all the strange things that Alice saw in her journey Through The Looking-Glass,
this was the one that she always remembered most clearly.
Years afterwards she could bring the whole scene back again, as if it had been only yesterday
--the mild blue eyes and kindly smile of the Knight
--the setting sun gleaming through his hair, and shining on his armour in a blaze of light that quite dazzled her
--the horse quietly moving about, with the reins hanging loose on his neck, cropping the grass at her feet
--and the black shadows of the forest behind
--all this she took in like a picture,
as, with one hand shading her eyes, she leant against a tree, watching the strange pair, and listening, in a half dream, to the melancholy music of the song.
`But the tune ISN'T his own invention,' she said to herself:
`it's "I GIVE THEE ALL, I CAN NO MORE."'
She stood and listened very attentively, but no tears came into her eyes.
`I'll tell thee everything I can;
He said "I look for butterflies
But I was thinking of a plan
His accents mild took up the tale:
But I was thinking of a way
He said "I hunt for haddocks' eyes
"I sometimes dig for buttered rolls,
I heard him then, for I had just
And now, if e'er by chance I put
Whose look was mild, whose speech was slow,
That summer evening, long ago,
As the Knight sang the last words of the ballad, he gathered up the reins, and turned his horse's head along the road by which they had come.
`You've only a few yards to go,' he said',
down the hill and over that little brook, and then you'll be a Queen--
But you'll stay and see me off first?'
he added as Alice turned with an eager look in the direction to which he pointed.
`I shan't be long.
You'll wait and wave your handkerchief when I get to that turn in the road?
I think it'll encourage me, you see.'
`Of course I'll wait,' said Alice:
`and thank you very much for coming so far
--and for the song
--I liked it very much.'
`I hope so,'
the Knight said doubtfully: `but you didn't cry so much as I thought you would.'
So they shook hands, and then the Knight rode slowly away into the forest.
`It won't take long to see him OFF, I expect,'
Alice said to herself, as she stood watching him.
`There he goes!
Right on his head as usual!
However, he gets on again pretty easily
--that comes of having so many things hung round the horse--'
So she went on talking to herself, as she watched the horse walking leisurely along the road, and the Knight tumbling off, first on one side and then on the other.
After the fourth or fifth tumble he reached the turn, and then she waved her handkerchief to him, and waited till he was out of sight.
`I hope it encouraged him,'
she said, as she turned to run down the hill:
`and now for the last brook, and to be a Queen!
How grand it sounds!'
A very few steps brought her to the edge of the brook.
`The Eighth Square at last!'
she cried as she bounded across,
and threw herself down to rest on a lawn as soft as moss, with little flower-beds dotted about it here and there.
`Oh, how glad I am to get here!
And what IS this on my head?'
she exclaimed in a tone of dismay,
as she put her hands up to something very heavy, and fitted tight all round her head.
`But how CAN it have got there without my knowing it?'
she said to herself, as she lifted it off, and set it on her lap to make out what it could possibly be.
It was a golden crown.
CHAPTER IX Queen Alice
`Well, this IS grand!'
said Alice.
`I never expected I should be a Queen so soon
--and I'll tell you what it is, your majesty,'
she went on in a severe tone
(she was always rather fond of scolding herself),
`it'll never do for you to be lolling about on the grass like that!
Queens have to be dignified, you know!'
So she got up and walked about
--rather stiffly just at first, as she was afraid that the crown might come off:
but she comforted herself with the thought that there was nobody to see her,
`and if I really am a Queen,' she said as she sat down again, `I shall be able to manage it quite well in time.'
Everything was happening so oddly that she didn't feel a bit surprised at finding the Red Queen and the White Queen sitting close to her, one on each side:
she would have liked very much to ask them how they came there, but she feared it would not be quite civil.
However, there would be no harm, she thought, in asking if the game was over.
`Please, would you tell me--'
she began, looking timidly at the Red Queen.
`Speak when you're spoken to!'
The Queen sharply interrupted her.
`But if everybody obeyed that rule,'
said Alice, who was always ready for a little argument, `and if you only spoke when you were spoken to, and the other person always waited for YOU to begin, you see nobody would ever say anything, so that--'
`Ridiculous!' cried the Queen.
`Why, don't you see, child--'
here she broke off with a frown, and, after thinking for a minute,
suddenly changed the subject of the conversation.
`What do you mean by "If you really are a Queen"?
What right have you to call yourself so?
You can't be a Queen, you know, till you've passed the proper examination.
And the sooner we begin it, the better.'
`I only said "if"!'
poor Alice pleaded in a piteous tone.
The two Queens looked at each other, and the Red Queen remarked, with a little shudder,
`She SAYS she only said "if"--'
`But she said a great deal more than that!'
the White Queen moaned, wringing her hands.
`Oh, ever so much more than that!'
`So you did, you know,'
the Red Queen said to Alice.
`Always speak the truth
--think before you speak
--and write it down afterwards.'
`I'm sure I didn't mean--'
Alice was beginning, but the Red Queen interrupted her impatiently.
`That's just what I complain of!
You SHOULD have meant!
What do you suppose is the use of child without any meaning?
Even a joke should have some meaning
--and a child's more important than a joke, I hope.
You couldn't deny that, even if you tried with both hands.'
`I don't deny things with my HANDS,'
Alice objected.
`Nobody said you did,'
said the Red Queen. `I said you couldn't if you tried.'
`She's in that state of mind,' said the White Queen,
`that she wants to deny SOMETHING
--only she doesn't know what to deny!'
`A nasty, vicious temper,'
the Red Queen remarked;
and then there was an uncomfortable silence for a minute or two.
The Red Queen broke the silence by saying to the White Queen,
`I invite you to Alice's dinner-party this afternoon.'
The White Queen smiled feebly, and said
`And I invite YOU.'
`I didn't know I was to have a party at all,' said Alice;
`but if there is to be one, I think _I_ ought to invite the guests.'
`We gave you the opportunity of doing it,' the Red Queen remarked:
`but I daresay you've not had many lessons in manners yet?'
`Manners are not taught in lessons,' said Alice.
`Lessons teach you to do sums, and things of that sort.'
`And you do Addition?'
the White Queen asked.
`What's one and one and one and one and one and one and one and one and one and one?'
`I don't know,' said Alice.
`I lost count.'
`She can't do Addition,'
the Red Queen interrupted.
`Can you do Subtraction?
Take nine from eight.'
`Nine from eight I can't, you know,'
Alice replied very readily:
`but--'
`She can't do Subtraction,'
said the White Queen.
`Can you do Division?
Divide a loaf by a knife
--what's the answer to that?'
`I suppose--'
Alice was beginning, but the Red Queen answered for her.
`Bread-and-butter, of course.
Try another Subtraction sum.
Take a bone from a dog:
what remains?'
Alice considered.
`The bone wouldn't remain, of course,
if I took it
--and the dog wouldn't remain;
it would come to bite me
--and I'm sure I shouldn't remain!'
`Then you think nothing would remain?'
said the Red Queen.
`I think that's the answer.'
`Wrong, as usual,'
said the Red Queen:
`the dog's temper would remain.'
`But I don't see how--'
`Why, look here!'
the Red Queen cried.
`The dog would lose its temper, wouldn't it?'
`Perhaps it would,'
Alice replied cautiously.
`Then if the dog went away, its temper would remain!'
the Queen exclaimed triumphantly.
Alice said, as gravely as she could,
`They might go different ways.'
But she couldn't help thinking to herself,
`What dreadful nonsense we ARE talking!'
`She can't do sums a BIT!'
the Queens said together, with great emphasis.
`Can YOU do sums?'
Alice said, turning suddenly on the White Queen,
for she didn't like being found fault with so much.
The Queen gasped and shut her eyes.
`I can do Addition,' `if you give me time
--but I can do Subtraction, under ANY circumstances!'
`Of course you know your A B C?'
said the Red Queen.
`To be sure I do.'
said Alice.
`So do I,'
the White Queen whispered:
`we'll often say it over together, dear.
And I'll tell you a secret
--I can read words of one letter!
Isn't THAT grand!
However, don't be discouraged.
You'll come to it in time.'
Here the Red Queen began again.
`Can you answer useful questions?' she said.
`How is bread made?'
`I know THAT!' Alice cried eagerly.
`You take some flour--'
`Where do you pick the flower?' the White Queen aske.
`In a garden, or in the hedges?'
`Well, it isn't PICKED at all,' Alice explained:
`it's GROUND--'
`How many acres of ground?' said the White Queen.
`You mustn't leave out so many things.'
`Fan her head!'
the Red Queen anxiously interrupted.
`She'll be feverish after so much thinking.'
So they set to work and fanned her with bunches of leaves, till she had to beg them to leave off,
it blew her hair about so.
`She's all right again now,' said the Red Queen.
`Do you know Languages?
What's the French for fiddle-de-dee?'
`Fiddle-de-dee's not English,'
Alice replied gravely.
`Who ever said it was?'
said the Red Queen.
Alice thought she saw a way out of the difficulty this time.
`If you'll tell me what language "fiddle-de-dee" is, I'll tell you the French for it!'
she exclaimed triumphantly.
But the Red Queen drew herself up rather stiffly, and said
`Queens never make bargains.'
`I wish Queens never asked questions,'
Alice thought to herself.
`Don't let us quarrel,' the White Queen said in an anxious tone.
`What is the cause of lightning?'
`The cause of lightning,' Alice said very decidedly, for she felt quite certain about this,
`is the thunder
--no, no!'
she hastily corrected herself. `I meant the other way.'
`It's too late to correct it,' said the Red Queen:
`when you've once said a thing, that fixes it, and you must take the consequences.'
`Which reminds me--'
the White Queen said, looking down and nervously clasping and unclasping her hands,
`we had SUCH a thunderstorm last Tuesday
--I mean one of the last set of Tuesdays, you know.'
Alice was puzzled.
`In OUR country,' she remarked,
`there's only one day at a time.'
The Red Queen said,
`That's a poor thin way of doing things.
Now HERE, we mostly have days and nights two or three at a time, and sometimes in the winter we take as many as five nights together
--for warmth, you know.'
`Are five nights warmer than one night, then?'
Alice ventured to ask.
`Five times as warm, of course.'
`But they should be five times as COLD, by the same rule--'
`Just so!' cried the Red Queen.
`Five times as warm, AND five times as cold
--just as I'm five times as rich as you are, AND five times as clever!'
Alice sighed and gave it up.
`It's exactly like a riddle with no answer!'
she thought.
`Humpty Dumpty saw it too,'
the White Queen went on in a low voice, more as if she were talking to herself.
`He came to the door with a corkscrew in his hand--'
`What did he want?'
said the Red Queen.
`He said he WOULD come in,' the White Queen went on,
`because he was looking for a hippopotamus.
Now, as it happened, there wasn't such a thing in the house, that morning.'
`Is there generally?'
Alice asked in an astonished tone.
`Well, only on Thursdays,'
said the Queen.
`I know what he came for,' said Alice:
`he wanted to punish the fish, because--'
Here the White Queen began again.
`It was SUCH a thunderstorm, you can't think!'
(She NEVER could, you know,'
said the Red Queen.)
`And part of the roof came off, and ever so much thunder got in
--and it went rolling round the room in great lumps
--and knocking over the tables and things
--till I was so frightened, I couldn't remember my own name!'
Alice thought to herself, `I never should TRY to remember my name in the middle of an accident!
Where would be the use of it?'
but she did not say this aloud, for fear of hurting the poor Queen's feeling.
`Your Majesty must excuse her,' the Red Queen said to Alice,
taking one of the White Queen's hands in her own, and gently stroking it:
The White Queen looked timidly at Alice,
who felt she OUGHT to say something kind, but really couldn't think of anything at the moment.
`She never was really well brought up,'
`but it's amazing how good-tempered she is!
Pat her on the head, and see how pleased she'll be!'
But this was more than Alice had courage to do.
`A little kindness
--and putting her hair in papers
--would do wonders with her--'
The White Queen gave a deep sigh, and laid her head on Alice's shoulder.
`I AM so sleepy?'
she moaned.
`She's tired, poor thing!' said the Red Queen.
`Smooth her hair
--lend her your nightcap
--and sing her a soothing lullaby.'
`I haven't got a nightcap with me,'
`and I don't know any soothing lullabies.'
`I must do it myself, then,'
said the Red Queen, and she began:
`Hush-a-by lady, in Alice's lap!
Till the feast's ready, we've time for a nap:
When the feast's over, we'll go to the ball--
Red Queen, and White Queen, and Alice, and all!
`And now you know the words,'
she added, as she put her head down on Alice's other shoulder,
`just sing it through to ME.
I'm getting sleepy, too.'
In another moment both Queens were fast asleep, and snoring loud.
`What AM I to do?'
exclaimed Alice, looking about in great perplexity, as first one round head, and then the other, rolled down from her shoulder, and lay like a heavy lump in her lap.
`I don't think it EVER happened before, that any one had to take care of two Queens asleep at once!
No, not in all the History of England
--it couldn't, you know, because there never was more than one Queen at a time.
`Do wake up, you heavy things!'
she went on in an impatient tone;
but there was no answer but a gentle snoring.
The snoring got more distinct every minute, and sounded more like a tune:
at last she could even make out the words,
and she listened so eagerly that, when the two great heads vanished from her lap, she hardly missed them.
She was standing before an arched doorway
over which were the words QUEEN ALICE in large letters, and on each side of the arch there was a bell-handle;
one was marked `Visitors' Bell,' and the other `Servants' Bell.'
`I'll wait till the song's over,' thought Alice,
`and then I'll ring--the--WHICH bell must I ring?'
she went on, very much puzzled by the names.
`I'm not a visitor, and I'm not a servant.
There OUGHT to be one marked "Queen," you know--'
Just then the door opened a little way, and a creature with a long beak put its head out for a moment and said
`No admittance till the week after next!'
and shut the door again with a bang.
Alice knocked and rang in vain for a long time,
but at last, a very old Frog, who was sitting under a tree, got up and hobbled slowly towards her:
he was dressed in bright yellow, and had enormous boots on.
`What is it, now?' the Frog said in a deep hoarse whisper.
Alice turned round,
ready to find fault with anybody.
`Where's the servant whose business it is to answer the door?'
she began angrily.
`Which door?'
said the Frog.
Alice almost stamped with irritation at the slow drawl in which he spoke.
`THIS door, of course!'
The Frog looked at the door with his large dull eyes for a minute:
then he went nearer and rubbed it with his thumb, as if he were trying whether the paint would come off;
then he looked at Alice.
`To answer the door?' he said.
`What's it been asking of?'
He was so hoarse that Alice could scarcely hear him.
`I don't know what you mean,'
she said.
`I talks English, doesn't I?' the Frog went on.
`Or are you deaf?
What did it ask you?'
`Nothing!' Alice said impatiently.
`I've been knocking at it!'
`Shouldn't do that--shouldn't do that--' the Frog muttered. `Vexes it, you know.'
Then he went up and gave the door a kick with one of his great feet.
`You let IT alone,' he panted out, as he hobbled back to his tree, `and it'll let YOU alone, you know.'
At this moment the door was flung open, and a shrill voice was heard singing:
`To the Looking-Glass world it was Alice that said,
"I've a sceptre in hand, I've a crown on my head;
Let the Looking-Glass creatures, whatever they be,
Come and dine with the Red Queen, the White Queen, and me."'
And hundreds of voices joined in the chorus:
`Then fill up the glasses as quick as you can,
And sprinkle the table with buttons and bran:
Put cats in the coffee, and mice in the tea--
And welcome Queen Alice with thirty-times-three!'
Then followed a confused noise of cheering, and Alice thought to herself,
`Thirty times three makes ninet.
I wonder if any one's counting?'
In a minute there was silence again, and the same shrill voice sang another verse;
`"O Looking-Glass creatures," quothe Alice, "draw near!
'Tis an honour to see me, a favour to hear:
'Tis a privilege high to have dinner and tea
Along with the Red Queen, the White Queen, and me!"'
Then came the chorus again: --
`Then fill up the glasses with treacle and ink,
Or anything else that is pleasant to drink:
Mix sand with the cider, and wool with the wine--
And welcome Queen Alice with ninety-times-nine!'
`Ninety times nine!'
Alice repeated in despair, `Oh, that'll never be done!
I'd better go in at once--'
and there was a dead silence the moment she appeared.
Alice glanced nervously along the table, as she walked up the large hall,
and noticed that there were about fifty guests, of all kinds:
some were animals, some birds, and there were even a few flowers among them.
`I'm glad they've come without waiting to be asked,' she thought:
`I should never have known who were the right people to invite!'
There were three chairs at the head of the table;
the Red and White Queens had already taken two of them, but the middle one was empty.
Alice sat down in it, rather uncomfortable in the silence,
and longing for some one to speak.
At last the Red Queen began.
`You've missed the soup and fish,' she said.
`Put on the joint!'
And the waiters set a leg of mutton before Alice,
who looked at it rather anxiously,
as she had never had to carve a joint before.
`You look a little shy;
let me introduce you to that leg of mutton,' said the Red Queen.
`Alice--Mutton;
Mutton--Alice.'
The leg of mutton got up in the dish and made a little bow to Alice;
and Alice returned the bow,
not knowing whether to be frightened or amused.
`May I give you a slice?'
she said, taking up the knife and fork, and looking from one Queen to the other.
`Certainly not,'
the Red Queen said, very decidedly:
`it isn't etiquette to cut any one you've been introduced to.
Remove the joint!'
And the waiters carried it off, and brought a large plum-pudding in its place.
`I won't be introduced to the pudding, please,' Alice said rather hastily,
`or we shall get no dinner at all.
May I give you some?'
But the Red Queen looked sulky, and growled
`Pudding--Alice;
Alice--Pudding.
Remove the pudding!'
and the waiters took it away so quickly that Alice couldn't return its bow.
However, she didn't see why the Red Queen should be the only one to give orders, so, as an experiment, she called out
`Waiter!
Bring back the pudding!'
and there it was again in a moment like a conjuring-trick.
It was so large that she couldn't help feeling a LITTLE shy with it, as she had been with the mutton;
however, she conquered her shyness by a great effort and cut a slice and handed it to the Red Queen.
`What impertinence!'
said the Pudding.
`I wonder how you'd like it, if I were to cut a slice out of YOU, you creature!'
It spoke in a thick, suety sort of voice, and Alice hadn't a word to say in reply:
she could only sit and look at it and gasp.
`Make a remark,' said the Red Queen:
`it's ridiculous to leave all the conversation to the pudding!'
`Do you know, I've had such a quantity of poetry repeated to me to-day,'
Alice began, a little frightened at finding that, the moment she opened her lips, there was dead silence, and all eyes were fixed upon her;
`and it's a very curious thing, I think--
every poem was about fishes in some way.
Do you know why they're so fond of fishes, all about here?'
She spoke to the Red Queen, whose answer was a little wide of the mark.
`As to fishes,' she said, very slowly and solemnly, putting her mouth close to Alice's ear,
`her White Majesty knows a lovely riddle
--all in poetry
--all about fishes.
Shall she repeat it?'
`Her Red Majesty's very kind to mention it,'
the White Queen murmured into Alice's other ear,
in a voice like the cooing of a pigeon.
`It would be SUCH a treat!
May I?'
`Please do,'
Alice said very politely.
The White Queen laughed with delight, and stroked Alice's cheek.
Then she began:
`"First, the fish must be caught."
That is easy: a baby, I think, could have caught it.
"Next, the fish must be bought."
That is easy: a penny, I think, would have bought it.
"Now cook me the fish!"
That is easy, and will not take more than a minute.
"Let it lie in a dish!"
That is easy, because it already is in it.
"Bring it here! Let me sup!"
It is easy to set such a dish on the table.
"Take the dish-cover up!"
Ah, THAT is so hard that I fear I'm unable!
For it holds it like glue--
Holds the lid to the dish, while it lies in the middle:
Which is easiest to do,
Un-dish-cover the fish, or dishcover the riddle?'
`Take a minute to think about it, and then guess,' said the Red Quee.
`Meanwhile, we'll drink your health
--Queen Alice's health!'
she screamed at the top of her voice, and all the guests began drinking it directly, and very queerly they managed it:
some of them put their glasses upon their heads like extinguishers, and drank all that trickled down their faces
--others upset the decanters, and drank the wine as it ran off the edges of the table
--and three of them (who looked like kangaroos) scrambled into the dish of roast mutton, and began eagerly lapping up the gravy,
`just like pigs in a trough!'
thought Alice.
`You ought to return thanks in a neat speech,' the Red Queen said, frowning at Alice as she spoke.
`We must support you, you know,' the White Queen whispered, as Alice got up to do it, very obediently, but a little frightened.
`Thank you very much,' she whispered in reply,
`but I can do quite well without.'
`That wouldn't be at all the thing,'
the Red Queen said very decidedly:
so Alice tried to submit to it with a good grace.
(`And they DID push so!'
she said afterwards, when she was telling her sister the history of the feast. `You would have thought they wanted to squeeze me flat!')
In fact it was rather difficult for her to keep in her place while she made her speech:
the two Queens pushed her so, one on each side, that they nearly lifted her up into the air:
`I rise to return thanks--'
Alice began:
and she really DID rise as she spoke, several inches;
but she got hold of the edge of the table, and managed to pull herself down again.
`Take care of yourself!'
screamed the White Queen, seizing Alice's hair with both her hands.
`Something's going to happen!'
And then (as Alice afterwards described it) all sorts of thing happened in a moment.
The candles all grew up to the ceiling, looking something like a bed of rushes with fireworks at the top.
As to the bottles, they each took a pair of plates, which they hastily fitted on as wings,
and so, with forks for legs, went fluttering about in all directions:
`and very like birds they look,'
Alice thought to herself, as well as she could in the dreadful confusion that was beginning.
At this moment she heard a hoarse laugh at her side, and turned to see what was the matter with the White Queen;
but, instead of the Queen, there was the leg of mutton sitting in the chair.
`Here I am!'
cried a voice from the soup tureen, and Alice turned again, just in time to see the Queen's broad good-natured face grinning at her for a moment over the edge of the tureen, before she disappeared into the soup.
There was not a moment to be lost.
Already several of the guests were lying down in the dishes, and the soup ladle was walking up the table towards Alice's chair, and beckoning to her impatiently to get out of its way.
`I can't stand this any longer!'
she cried as she jumped up and seized the table-cloth with both hands:
one good pull, and plates, dishes, guests, and candles came crashing down together in a heap on the floor.
`And as for YOU,'
she went on, turning fiercely upon the Red Queen,
whom she considered as the cause of all the mischief
--but the Queen was no longer at her side
--she had suddenly dwindled down to the size of a little doll, and was now on the table, merrily running round and round after her own shawl, which was trailing behind her.
At any other time, Alice would have felt surprised at this,
but she was far too much excited to be surprised at anything NOW.
`As for YOU,'
she repeated, catching hold of the little creature in the very act of jumping over a bottle which had just lighted upon the table,
`I'll shake you into a kitten, that I will!'
CHAPTER X Shaking
She took her off the table as she spoke, and shook her backwards and forwards with all her might.
The Red Queen made no resistance whatever;
only her face grew very small,
and her eyes got large and green:
and still, as Alice went on shaking her, she kept on growing shorter--and fatter--and softer--and rounder--and--
CHAPTER XI Waking
--and it really WAS a kitten, after all.
CHAPTER XII Which Dreamed it?
`Your majesty shouldn't purr so loud,'
Alice said, rubbing her eyes, and addressing the kitten, respectfully, yet with some severity.
`You woke me out of oh! such a nice dream!
And you've been along with me, Kitty
--all through the Looking-Glass world.
Did you know it, dear?'
It is a very inconvenient habit of kittens (Alice had once made the remark) that, whatever you say to them, they ALWAYS purr.
`If them would only purr for "yes" and mew for "no," or any rule of that sort,' she had said,
`so that one could keep up a conversation!
But how CAN you talk with a person if they always say the same thing?'
On this occasion the kitten only purred:
and it was impossible to guess whether it meant `yes' or `no.'
So Alice hunted among the chessmen on the table till she had found the Red Queen:
then she went down on her knees on the hearth-rug, and put the kitten and the Queen to look at each other.
`Now, Kitty!' she cried, clapping her hands triumphantly.
`Confess that was what you turned into!'
(`But it wouldn't look at it,'
she said, when she was explaining the thing afterwards to her sister:
`it turned away its head, and pretended not to see it:
but it looked a LITTLE ashamed of itself, so I think it MUST have been the Red Queen.)'
`Sit up a little more stiffly, dear!'
Alice cried with a merry laugh.
`And curtsey while you're thinking what to--what to purr.
It saves time, remember!'
And she caught it up and gave it one little kiss,
`just in honour of having been a Red Queen.'
`Snowdrop, my pet!'
she went on, looking over her shoulder at the White Kitten,
which was still patiently undergoing its toilet,
`when WILL Dinah have finished with your White Majesty, I wonder?
That must be the reason you were so untidy in my dream--Dinah!
do you know that you're scrubbing a White Queen?
Really, it's most disrespectful of you!
`And what did DINAH turn to, I wonder?' she prattled on, as she settled comfortably down, with one elbow in the rug, and her chin in her hand, to watch the kittens.
`Tell me, Dinah, did you turn to Humpty Dumpty?
I THINK you did
--however, you'd better not mention it to your friends just yet,
for I'm not sure.
`By the way, Kitty, if only you'd been really with me in my dream, there was one thing you WOULD have enjoyed
--I had such a quantity of poetry said to me, all about fishes!
To-morrow morning you shall have a real treat.
All the time you're eating your breakfast, I'll repeat "The Walrus and the Carpenter" to you;
and then you can make believe it's oysters, dear!
`Now, Kitty, let's consider who it was that dreamed it all.
This is a serious question, my dear, and you should NOT go on licking your paw like that
--as if Dinah hadn't washed you this morning!
You see, Kitty, it MUST have been either me or the Red King.
He was part of my dream, of course
--but then I was part of his dream, too!
WAS it the Red King, Kitty?
You were his wife, my dear, so you ought to know
--Oh, Kitty, DO help to settle it!
I'm sure your paw can wait!'
But the provoking kitten only began on the other paw, and pretended it hadn't heard the question.
Which do YOU think it was?
A boat beneath a sunny sky,
Lingering onward dreamily
In an evening of July--
Children three that nestle near,
Eager eye and willing ear,
Pleased a simple tale to hear--
Long has paled that sunny sky:
Echoes fade and memories die.
Autumn frosts have slain July.
Still she haunts me, phantomwise,
Alice moving under skies
Never seen by waking eyes.
Children yet, the tale to hear,
Eager eye and willing ear,
Lovingly shall nestle near.
In a Wonderland they lie,
Dreaming as the days go by,
Dreaming as the summers die:
Ever drifting down the stream--
Lingering in the golden gleam--
Life, what is it but a dream? | {
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ティレアさんから詳しく話を聞くと、どうやら「ツバメ返し」は「まーじゃん」のいかさま技のことらしい。戦闘の技ではなかった。
ティレアさん、いかさましてまで勝ちたいってゲームに引きずられすぎだよ。
だけど、ティレアさんが話してくれたそのいかさま技は、成功すればゲームを支配できそうな感じである。
ツバメ返し――あらかじめ自分の前に積まれている「はいやま」の中に「あがり」となる「はい」をまとめておき、隙を見て「はいやま」と「てはい」を全て入れ替えてしまう技だ。
成功すれば「やくまん」を連続であがれるし、逆転可能である。理論を聞くとハイリスクではあるが、リターンも大きい。ティレアさんならやってやれないことはないと思う。
それにしてもティレアさん、こんないかさま技まで知ってるなんて......知恵はなくても、その知識だけは本物ですね。
「ティレアさん、やれそうですか?」
「えぇ、やってやる! それでね、ジェシカちゃんに頼みがあるんだけど......」
「はい、なんでしょうか?」
「私がツバメ返しをやる間、魔族達の注意をひいてほしいの」
「確かにこの技は派手ですし、注意をひかないとばれる恐れはありますね」
「そうだよね、だからお願いできる?」
「わかりました。でもどうやりましょうか?」
「そうね~。例えば女の色気で注意をひけそうじゃない?」
「え!? そ、そんな色気なんて私には無理です。それに相手は魔族なんですよ」
「いやいや魔族とはいえ男には違いない。十分に通じると思うよ」
「大丈夫だって。これも魔族を倒すためなんだからね」
「で、でも......や、やっぱり私には無理です!」
「ジェシカちゃんならできる!」
「うぅ、そんなに言うんならティレアさんがやったらどうなんですか!」
「私は無理よ。ツバメ返しに集中したいし、何より私じゃ奴らの注意を引けない」
「そうなんですか?」
「うん、そう、奴ら知の隊とか言ってエリート面しているからきっとロリね。エリートなんて皆、ロリに決まっているんだから」
「ろ、ろ......りって?」
「あぁ、ロリコンっていってね。ジェシカちゃんみたいな慎ましやかな胸をしている小さな女の子にしか興味がない奴らを言うんだよ」
な、なんだろう、この人。け、喧嘩を売っているの?
「むぅ、ティレアさん、これでも去年より成長しているんですよぉっ!」
「いやいや、まだまだジェシカちゃんは立派なロリだよ。そのロリフェイスにロリ声、ロリスタイル。その筋の人達にとってはたまらないよ」
「そういうことだから私じゃ無理なんだ。ほら私って胸もでかいし、スタイルはいいし、奴らのストライクゾーンを外れているんだよね。それに比べてジェシカちゃんなら絶対に奴らの気を引けると思うんだ」
ど、どうしよう?
今本気でティレアさんに殺意が湧いているんだけど......。
......
............
..................
いや、だ、だめよ、だめ。怒りを抑えないと。ティレアさんに悪気はない。天然を地でいく人なんだから。きっと何も考えずにその時のフィーリングで話をしているのだろう。
それに、今、こうしている間にも市民達の被害は次々と増えている。こんなところで時間をつぶしている暇はない。早くこんな茶番を終わらせないと!
私は不承不承ながらティレアさんの作戦に賛同し、魔族達が待つテーブルにつく。ゲーム再開だ。緊張でおぼつかない手で「はい」を積み上げる中、ティレアさんは作戦通り「つみこみ」といういかさま技をしている。
横目にティレアさんを見ると......。
おぉ、すごい俊敏な動きだ。あれよあれよと「はい」を積み立てていく。
数分後......。
ティレアさんがこちらを見てきた。準備万端らしい。
し、しょうがない。羞恥心は捨てるのよ、ジェシカ! 全ては魔族を倒すため、人々を救うため。
すうっと深呼吸をし、きっと魔族達を見つめる。
そして......。
「か、体がほてっちゃう~♪」
これ見よがしに胸元をぱたぱたさせながら、体をくねくねさせ魔族の注意をひいてみた。
「そうだな、小娘。この『まーじゃん』というゲーム、なかなかに戦略がいがあって興をそそる。心が熱くなってくるわ!」
「どうした小娘? お前もそう思うゆえの言なんだろう?」
あぁ......なにか大事なものが壊れた気がする。私はそっと開いていた胸元のボタンを止め、襟元を正す。
うぅ、ティレアさん、ここまでやったんですよ! 成功しているんでしょうね!
涙目になりながらティレアさんを見る。ティレアさんは口元がにやけている。いわゆるドヤ顔だ。どうやら成功したらしい。
す、すごい。あの一瞬でやったの? 魔族の目をかいくぐるなんて、どれだけの超スピードだったんだろう。ティレアさんの早業に驚愕していると、
「それでは私めのところですな」
「「あっ!?」」
私とティレアさんの声が共鳴する。
そ、そうだ。このいかさま、サイコロの目が重要なのだ。副将ギルガントの山から「はい」をとっていくので、「ツバメ返し」は意味を成さない。
私は小声でティレアさんに声をかける。
「ティレアさん、サイコロの目もなんとかできないんですか?」
「そ、それは......さすがに、む、無理」
ティレアさんはふるふると首を横に振った。
結局「ツバメ返し」は機能しないまま普通にゲームは続き......。
「それだ『ろぉん』!」
「ぎ、ぎゃぼん!」
「はんちゃん」が終了した。ティレアさん目の「はこわれ」が決定。「しゃあば」に入る前にティレアさんと再度の作戦会議に入る。
「ティレアさん、もうゲームは無理です。戦闘に切り替えましょう!」
「......ま、まだよ、まだまだ。ジェシカちゃん、私はまだ負けてないもの。これからよ、これから逆転劇が始まるんだから!」
ティレアさんの目は血走っている。典型的な博打の負けパターンにはまっちゃってるよ。
「ティレアさん、残念ですけど諦めましょう! 相手が一枚も二枚も上手です。引き際を考えないと!」
本当は一枚どころか十枚と言ってもまだ足りないぐらいだ。ただ、さすがにティレアさんがかわいそうになってきた。もうこの「はんちゃん」、ティレアさんはふるぼっこの状態だったから、さすがに控え目に説得する。
「ち、違うのよぉ! ジェシカちゃん、こ、これはね......えぇと~そうそう、まだかんを取り戻せてないだけ。そうそれだけなんだから!」
「ティレアさん......」
う~ん、意地になってるよ。ティレアさんけっこう頑固なところがあるし。しょうがない、このままゲームを続けても無駄だと思うけど、ティレアさんの好きにさせてあげよう。
「はぁ~、わかりました」
「ジェシカちゃん、今度こそ魔族に目にもの見せてやるんだから!」
「あ、ティレアさん、一つアドバイスです。独り言をやめてください」
「独り言?」
「やっぱり自覚なしですね」
「それはどういう......」
「ティレアさんって『てんぱい』間近になるとテンションが上がってくるみたいで、異様な叫び声をあげてましたよ」
「はい。あと『てはい』がうまくいかない度に『うらめったぁあ――ッ!』と言うのも止めてください」
「そうです。あと、極めつけは『はく』が『てはい』にきた時です。『ふ、ぬるりときたわ』と毎回言うのはもうなんて言ったらいいか......」
「はは......ついつい」
「そういう次第で敵にティレアさんの情報は筒抜けでした」
「他にも色々気になる点はありますが、一度に言ってもわからないと思いますので、せめて独り言はやめてください!」
一応、ティレアさんには注意すべきところはしたけど。これでどこまでいけるか......あぁ不安である。
だが、健闘空しくゲームは終局した。
終わってみればホルスの圧勝。二位はギルガントは私。途中、ホルス達と戦うのは無謀と判断し、ターゲットをティレアさんに変更した。直撃をなんとか避けながらティレアさんから点棒をかすめとり、プラスにすることができた。私はティレアさんと違って魔力吸収されるとすぐに死んでしまうから、ここは心を鬼にしたのである。
ごめんなさい、ティレアさん。べ、別に「ろり」と言われたはらいせじゃないですよ。
そして、ダントツのビリはティレアさん、予測どおりというかマイナス十二万点を超えていた。途中、ホルス達でなく私からも狙われたからね。「はこわれ」を四回、そして、一度も上がれてない「やきとり」である。
「☆∋★◆......ぎゃぽぉん」
ティレアさんがテーブルにつっぷしている。あぁ、口から魂が出ているよ。さすがにショックなようである。
「しかし、ホルス様、終わってみればこやつはただの大バカでしたな」
を制したのも戦略でなくただただ強運だっただけのようだ」
「本当にこんな大バカに部下が殺されたかと思うと! こやつは魔力吸収だけでは生ぬるい。もっと残虐な極刑にしましょう、ホルス様」
「確かにギルガントの言うことは一理ある。だが、ルールはルール。それを破ることは知の隊の誇りにかかわる。それに、こやつは『まーじゃん』という興のそそるゲームを紹介したのだ。その功に免じて極刑だけは避けてやろうではないか」
「さすがはホルス様、その矜持は知の隊の誇りでございます」
「うむ、それではこの大バカ者に敗者としての義務をはたしてもらおう」
「そうですな。この大バカ者、いや、奇声をあげる、めちゃくちゃな戦略をたてる、こやつは痴れ者ですな」
「そうだな。こやつは痴れ者だ。それではギルガントよ。この痴れ者に魔力吸収器をあてるのだ!」
「はっ!」
ギルガントがホルスの命を受け、ティレアさんの頭を掴む。
「ほら痴れ者! 面をあげろ! 魔力吸収はそれほど苦痛ではない。楽に殺してやるからホルス様に感謝するのだぞ!」
「おい、聞こえているのか! 痴れ者!」
「さ、さっきから聞いてればおんどりゃ――っ!」
ティレアさんは、いきなり顔をあげるとポケットからクカノミを取り出し、ホルス達にそれをぶつけていく。
「な、何を――ぐ、ぐはっ!」
「はぁ、はぁ、ったくお前らよく聞けぇ! 麻雀は運のゲームなんですぅ! べ、別に頭の良さなんか関係ないんだからなぁあ! そ、それに痴れ者とか言いやがって。私はなぁ『セーラさんのお子さんはお利口さんですねぇ』ってご近所でも評判だったんだぞ。わかるかぁああ!」
ティレアさんが雄たけびを放つ。さすがに頭にきてたんですね。
でも、逆切れって......。
まぁ、私はもともとゲームはせずに戦闘したかったからいいんですけど。
あぁあぁ、ティレアさんホルス達もう死んでいるのに、胸倉掴んでゆさゆさと揺らしている。周りが見えていないみたいだ。ティレアさんの
「はぁ、はぁ。よ、よし、お前ら、次はポーカーで勝負だ。次は絶対に――」
「ティレアさん」
「あぁ、ジェシカちゃん、ちょっと待ってて。次こそ――」
「ティレアさん! こいつらもう死んでますよ」
「え!?」
私がそう言うと、ティレアさんはホルス達の死体をまじまじと見つめている。ティレアさんが無意識に投げたクカノミが、ホルス達の顔面に命中しているのに気づいたみたいだ。ティレアさんのあの強烈な投擲を間近で受けたのだ。ホルス達もたまったもんじゃなかっただろう。
「さ、作戦どおり......い、いや~実はジェシカちゃん、これは作戦だったんだよ」
「そ、そう、ゲームに熱中していると思わせて油断したところをえぃってね!」
「ジ、ジェシカちゃん、そんな遠い目しないで」
「とりあえず、ティレアさん、ここを出ましょう」
「そ、そうだね、早くティムが待っている避難場所まで行かないと。確かここから東だったよね?」
「いえ、違います。実はそこは変更になって......私についてきてください」
「そうなんだ。了解。ジェシカちゃん、よろしくね」
ごめんなさい、ティレアさん、実は避難場所は変更になってません。やっぱり確信した。ティレアさんじゃないと魔族には勝てない。とりあえず、魔族四将の一人を倒したんだ。ティレアさんには残りの幹部も倒してもらいたい。
魔力をサーチする。東西南北サーチを開始し、でかい魔力のところにティレアさんを誘導するつもりだ。ティレアさんには悪いけど、もう少し付き合ってほしい。
そして、私は発見してしまった。
何? なんで? こ、こんな魔力が存在するの? | According to Ms. Tilea, ‘Swallow Reversal’ is a cheating technique in ‘Marge’Ong’. It wasn’t a combat technique.
Ms. Tilea, if you want to win in games so badly that you’re cheating, I think you might be an addict.
But according to Ms. Tilea, as long as you succeed in using it, you can dominate the flow of the game.
Swallow Reversal― to prepare a winning hand within your ‘wall’, and then look for a chance to swap your ‘hand’ with your ‘wall’.
From what I hear, it sounds high risk, but at the same time promises high return. I don’t think it would be impossible for Ms. Tilea.
But still, to even know a cheating technique like this... Even if she isn’t intelligent, her knowledge of this game is the real thing.
“Ms. Tilea, do you think you can do it?”
“Yeah, I definitely will! And you know, there’s actually something I wanted to ask of you, Jessica...”
“Yes, what is it?”
“While I’m using the Swallow Reversal, please distract the demons.”
“It certainly sounds like a flashy technique. I guess they would notice without a distraction.”
“That’s right. So can I ask this of you?”
“I understand. But what should I do?”
“Let’s see~ For example, couldn’t you use your charms as a woman to distract them?”
“Eh-!? T-, That kind of seduction is impossible for me. And they’re demons, you know.”
“No, no, demons are still men. It’ll definitely work, I think.”
“N-, No way... That’s just impossible...”
“It’s fine, I said. This is also for the sake of defeating the demons, okay?”
“B-But... It-, It really is impossible for me!”
“I BELIEVE IN YOU Jessica!”
“Uuu, if you say that much, then why don’t you do it, Ms. Tilea!”
“That’s impossible. I’ll need to concentrate on the Swallow Reversal, and more importantly, they won’t have any interest in me.”
“Do you really think so?”
“Yeah. That’s how it is. Those ‘Wisdom Unit’ guys all act like elites, so I bet they’re actually into lolis. It’s pretty much a given that elites are lolicons.”
“Lo-, lo... li?”
“Oh, lolicon, you see. It basically refers to the bunch that are into tiny girls with modest chests like yours, Jessica.”
W-, What the heck is with this person. I-, Is she picking a fight or something?
“Muu, Ms. Tilea, even if I look like this I’ve grown since last year, okay!?”
“No, no, you’re definitely still a splendid loli, Jessica. That loli face and your loli voice, and on top of that there’s your loli figure. You’re basically irresistible to those types.”
“And that’s how it is, so it’s impossible for me. I mean, look, my chest is huge, and I’ve got a great figure, so I’m totally outside their strike zones, right? Compared to me, you’re definitely the better choice.”
W-, What do I do?
I’m starting to want to kill her for real.
......
............
..................
N-, No. I can’t. I can’t, I can’t. I have to control my anger. Ms. Tilea doesn’t mean anything bad by this. She’s like the personification of airheaded. She definitely never thinks anything, and just speaks whatever’s on her mind.
Also, the number of victims in town is increasing by the second right now. We don’t have the leisure to waste time here. We have to end this farce once and for all!
I very unwillingly consented to Ms. Tilea’s plan, and sat at the table where the demons were waiting. The game started again. With my hands shaking from nervousness, I piled up the ‘tiles’ while Ms. Tilea was building a winning ‘hand’ inside her ‘wall’.
Looking at her out of the corner of my eye...
Ooh, what nimble movements. She was stacking ‘tiles’ in the blink of an eye.
A few minutes later...
Ms. Tilea looked my way. Apparently she was done preparing.
C-, Can’t be helped. Abandon your pride, Jessica! In order to defeat the demons! In order to save the people!
After taking a deep breath, my eyes shot towards the demons.
And then...
“W-, Wow, my body is getting so hot~♪”
I brought attention to my chest as I fanned my shirt, twisting my body to draw their attention.
“Quite right, girly. This ‘Marge’Ong’ game is truly a strategic game. My heart is burning with excitement!”
“What’s the matter, girly? Did you not speak because you felt the same way?”
Aahh... I think something important just broke inside me. I softly did my shirt back up, and fixed my collar.
Uuu, Ms. Tilea, look how much I’ve done for us! You’ve succeeded, right!?
I looked at Ms. Tilea with my teary eyes. Ms. Tilea’s mouth was curved into a smirk. Apparently she succeeded.
A-, Amazing. She did it in that little instant? To slip past the eyes of the demons, just what kind of super speed had she moved at? While I was feeling shocked at her fast work,
“Then I guess I suppose it is me.”
““AHH!?””
The two of us raised our voices in synchrony.
T-, That’s right. This cheat depends on the dice roll. The ‘tiles’ will be coming from Vice General Gilgant’s ‘wall’, so there was no meaning to the ‘Swallow Reversal’.
I whispered to Ms. Tilea.
“Ms. Tilea, can’t you do something about the die?”
She shook her head side to side.
So in the end, the game continued normally without ‘Swallow Reversal’ getting its chance to shine...
“‘Ron’!”
“G-, GYABON!”
The ‘hanchan’ just finished. Ms. Tilea’s second ‘Bust’ was determined. Before the ‘West Round’ began, I had another strategy meeting with Ms. Tilea.
“Ms. Tilea, the game is impossible to win already. Let’s do battle instead!”
“...I-, I can still-, I can still do it. Jessica, I haven’t lost yet. This is where it begins. This is where my turnaround begins!”
Her eyes were bloodshot. Typical of a losing gambler.
“Ms. Tilea, it’s a shame, but we should admit defeat! The enemy is a cut above us. We have to think about cutting our losses!”
To be honest, it isn’t just one cut, but over ten cuts, even I’m starting to feel bad for her. It’s been a crushing defeat for her every round till now, so I was careful to be a little gentler in my words.
“Y-, YOU’RE WRONGG! Jessica, t-this is... Umm, yeah! I just haven’t got my sense for the game back yet. That’s all it is, okay!”
“Ms. Tilea...”
Yep. She’s grown stubborn. She’s got quite a stubborn part to her, after all. Can’t be helped. I don’t think it’s going to help to let the game continue, but I’ll just let her do what she wants.
“Hahhh~ I understand.”
“Jessica, this time I’ll really teach them a lesson, okay!”
“Ah-, Ms. Tilea, just one bit of advice. Please stop talking to yourself.”
“Talking to myself?”
“So you really didn’t notice.”
“What do you...?”
“Ms. Tilea, whenever you’re about to reach ‘tenpai’, you get really excited, and start screaming weirdly to yourself.”
“Yes. Also, please stop screaming “I MESSED UPPPPPPP―!” whenever your ‘hand’ isn’t going well.”
“Yes. Also, the worst is when you get a ‘White Dragon’ in your ‘hand’. Each and every time, you say “Hmph. There it is. A slip.” and I just don’t know what to do with you anymore...”
“Haha... I just kinda...”
“It’s because of that that the demons all know your information, Ms. Tilea.”
“There are lots of other things that you’re doing wrong, but I don’t think you’d remember if I only told you once, so at least please stop talking to yourself!”
Well, I’ve warned her about what I can. As for how effective it’ll be... Aahh, I’m so uneasy.
But the struggle ended fruitlessly.
In the end, it was Horus’ overwhelming victory. Second place was Gilgant. Third place was me. Along the way, I realized that fighting with the demons was reckless, so I instead changed my target to Ms. Tilea. While somehow avoiding direct hits, I snatched points from Ms. Tilea, and managed to get myself into the positives. Unlike Ms. Tilea, I’ll immediately die if my mana gets taken, so I steeled my heart and did that.
I’m sorry, Ms. Tilea. I-, It’s not because you called me a ‘loli’ or anything, okay?
And then far, far, faaaar at the bottom was Ms. Tilea, and as expected, she was below minus , points. Because along the way, she began being targeted by me as well. Four games with a ‘Bust’, and on top of that, a ‘Yakitori’ penalty.
“☆∋★◆......GYOPOON”
Ms. Tilea collapsed onto the table. Aahh, I think I can see her soul escaping from her mouth. It must have been a shock to her.
“But still, Ser Horus, in the end it seems this one was simply a huge idiot.”
“Indeed. It looks like she won the Element Predict not through strategy, but simply miraculous luck.”
“Honestly, when I consider that our subordinates were killed by such a massive idiot...! Simply draining her of mana is much too lenient. We should execute her in a much crueler way.”
“You certainly have a point, Gilgant. But the rules are the rules. If we break those rules, it will affect the pride of our unit. And moreover, this girl introduced us to a game as fun as ‘Marge’Ong’. In light of that achievement, shall we not spare her the worst punishment?”
“As expected of you, Ser Horus. Your self-respect is the pride of our Wisdom Unit.”
“Umu. Well then, time to have this massive idiot take responsibility for losing.”
“Quite so. Hey, massive idiot. No, since she makes weird sounds and comes up with ridiculous strategies, I suppose we should be calling her a buffoon.”
“True. This girl is a buffoon. Well then, Gilgant. Attach the mana absorption tool to this buffoon.”
“Sir!”
Gilgant did as Horus ordered, grabbing Ms. Tilea by the head.
“Come now, buffoon! Raise your face! The tool does not hurt so much. We are allowing you to die comfortably, so be thankful to Ser Horus!”
“Oi, do you not hear me! Buffoon!”
“I-, I’ve been listening, B̲A̲S̲T̲A̲A̲A̲A̲A̲A̲A̲A̲A̲R̲D̲S̲!”
She suddenly raised her head as she produced a laminariales from her pocket, smashing it into the demons.
“W-, What are―G- GUHAH-!”
“Hahh, hahh... LISTEN UP, GODDAMMIT! MAHJONG IS A GAME OF LUCKK! I-IT’S NOT BECAUSE I’M DUMB OR ANYTHING, OKAYYY!? A-, And calling me buffoon and stuff... You know, I used to be praised in the neighborhood as “Gosh, Sera’s daughter is such a bright child” you know! DO YOU GET ITTTT!?”
Ms. Tilea roared. She was understandably mad.
But it’s hardly their fault...
Well, to begin with, I wanted her to just beat them up without a game, so this is fine.
Aahh aaahh, even though Horus and the others are already dead, Ms. Tilea is shaking them by the collars. It’s like she’s not even paying attention. Ms. Tilea continued to roar. I suppose I’d better stop her now.
“Hahhh, hahhh, a-, alright! You lot, the next game is poker! This time for sure, I’ll―”
“Ms. Tilea.”
“Aah, Jessica. Just wait a moment. This time for sure―”
“Ms. Tilea! They’re already dead.”
“EH-!?”
At my words, Ms. Tilea began to stare at the corpses of the demons. The laminariales she had thrown unconsciously had hit all of them dead in the face. They took her amazing throws at close range, after all. Looks like these guys couldn’t handle it either.
“J-, Just as planned... Y-, You know, Jessica, this was all one big plan.”
“Y-, Yeah, I made them think I was really into the game, so that when they let their guards down, I could really nail them, you know!?”
“J-, Jessica, please don’t look at me with such distant eyes.””
“Anyway, Ms. Tilea, let’s get out of here for now.”
“Y-, Yeah. I’d better hurry to the shelter where Timu is waiting. If I recall, it’s at the East, right?”
“No, that’s wrong. The location has actually changed and... Just follow me, please.”
“I see. Roger. I’ll be in your care, Jessica.”
Sorry, Ms. Tilea. The location hasn’t actually changed at all. But I’m sure of it now. Without Ms. Tilea, we can’t defeat the demons. For now, we’ve defeated one of their four generals. I need Ms. Tilea to defeat the others.
Once I find large spots of mana, I’ll lead Ms. Tilea there. I feel bad about this, but I hope she’ll accompany me for just a little longer.
Eventually, I found something.
Huh? Why? W-Why does a mana like this exist? | {
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逆に、脆弱で閉鎖的な経済環境で民主主義へ移行しようとした場合、結果は惨憺たるものであった。この例としては 1980 年代中頃のラテンアメリカとフィリピンの民主主義化や、1980 年代初期のトルコと 1990 年のネパールが挙げられる。対照的な中国とロシアも、このパターンに正確に当てはまる。 | Conversely, when democratic transition was attempted in a fragile and closed economic environment, the outcome was much worse. This applies to the episodes of democratization in Latin America and the Philippines in the mid-1980’s, but also to Turkey in the early 1980’s and Nepal in 1990. | {
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「アンナちゃん! こっちは10個頼む!」
「くっ! ポーチ持ちだからって
「落ち着いてくださいみなさん。こちらは特別な商品ですから、までですよ」
「うまああああああい! なんだコレ! なんだコレ!」
「うまい、うますぎる! さすが伝説の肉!」
「くふふ......ふははっ! はーっはっは! 見ろナオヤ! お客さまがたくさんだ! お買い上げありがとうございます!」
「この料理がこの値段で......買い占め......数量限定か。仕入れ先を聞き出すには」
「......秘密」
俺が店長になってから10日目のアイヲンモール異世界店。
店舗前に設けたお惣菜販売の特設ブースとイートインスペースは、これまでにないほどの人であふれていた。
ところでそこの怪しいことを企んでる商人。仕入れ先は目の前に......仕入れ先? 生産者?
「よし、これなら目玉商品になるな。
バルベラが俺に託してくれた、ドラゴンの尻尾の肉。
開店前に受け取った肉の味を確かめたところ、すぐに調理法は決まった。
肉片を焼いて味見したら、もうそれだけでおいしかった。
塩コショウを振って焼けば、やわらかな肉質と旨みたっぷりの肉汁あふれる極上ステーキの完成だ。
とはいえ、尻尾のすべてをステーキにできるわけじゃない。
骨のまわりと皮の近く、それに尻尾の先端付近はステーキにはできない。
そこで俺は「尻尾といえばこれだろ」とテイルスープを作ってみた。
香味野菜と一緒にさっと煮込んでだけなのにおいしい。
下ゆでして臭みを取り、血を押し出し、煮込んで寝かせる必要もない。
味見したら叫んでしまって、営業中なのにヨダレを垂らしたクロエとバルベラ、アンナさんに振る舞わなきゃいけなくなるほどおいしかった。ドラゴンすごい。
「おおっ、休日のアイヲンモール名物、駐車場出入り口の大渋滞。ってのんびり眺めてる場合じゃな......は?」
朝のピークの途中から販売を開始したところ、ウワサは街まで届いたらしい。
いつもは道を使う人しか立ち寄らないのに、続々と街から馬車がやってくる。
クロエもアンナさんもバルベラも接客しているし、俺が交通整理に行こうとして。
誰か向かっているのに気がついた。
誰か、というか——
「は? 倉庫にあったウサギの着ぐるみ?」
ぴょこぴょこ歩くウサギの着ぐるみは、手に赤い誘導棒を持っている。
渋滞している場所に着くと、ブンッ! と大きな動きで誘導棒を振りまわした。ノリノリで。
大げさなアクションはわかりやすくて、馬車の御者は大人しく従っている。
「おお、助かる......あれ、でも俺はここにいて、クロエもアンナさんもバルベラも接客中で。あれ?」
振り返る。
薄暗いアイヲンモール異世界店の出入り口の影で、エプロン付きスケルトンたちが外を眺めていた。
心配そうにハラハラと。
今日は店員総出で特設ブースに詰めているから、アイヲンモール異世界店の建物内はトイレへの導線しか開けてない。
農家のおばちゃんが持ってくる野菜も今日は外に陳列してる。
だからまあ、スケルトンたちがあそこにいても見つからないだろう。それはいいとして。
「あれ? エプロン付きスケルトンの数も揃ってる? じゃああの着ぐるみの中の人は誰だ?」
中の人などいない。わけがない。
全身を使って交通整理するウサギの着ぐるみを見る。
やけに嬉しそうなアクションで、俺は気がついた。
「あの感じ。......
いつも店舗の上空をふよふよと漂い、好奇心旺盛でリアクションが大きかったゴーストは、着ぐるみに憑依したらしい。
動きだけで気がつくあたり、俺はそうとう異世界に毒されてるのかもしれない。
いやでも、あのぴゅっとした動きとか、怖がりだけど実は好奇心旺盛な感じとか、私も役に立つんだー! 的な感じは、なあ。
「......あ。つまりマジで『中の人などいない!』のか? いやいやいや」
アイヲンモール異世界店はじまって以来の大混雑。
本当の意味の従業員総出で、俺たちは多くのお客さまに対応するのだった。
猫の手どころかドラゴンの手とアンデッドの手を借りて。
「すごかったなナオヤ! 数量限定にしたのに夕方前にはすべて売り切れてしまったぞ! カツもハンバーグもビーフシチューも、おばちゃんたちの野菜まで!」
「ああ、うれしいことに『ついで買い』もおきてたな。街から離れてる分、手ぶらで帰るのはもったいないと思ったんだろう」
これまでにない来客ラッシュを乗り越えて、アイヲンモール異世界店の今日の営業は終わった。
クロエが言う通り、商品はすでにない。
目玉商品だったドラゴンステーキとドラゴンテイルスープは早々に売り切れ、次に各種お惣菜が売り切れ、家庭でお惣菜を再現するための食材も農家直送の野菜も、残り少なくなっていた園芸用品も売り切れた。
「だから言っただろうナオヤ! ステーキとスープの値段は上げるべきだと! 幻のドラゴン肉の料理がこの値段だなんて、数量限定でなければ私が買い占めていたぞ!」
「商品が店頭に並ばなくなるので止めてくれクロエ。肉じゃなくて森の恵みを求めろエルフ」
これまで販売していた商品と比べて、ドラゴンステーキとドラゴンテイルスープは高額の設定にした。
日本円に換算するとステーキが一食10,000円、スープが5,000円という、超高級レストラン並みの値段だ。
「目玉商品はこれでいいんだ。というかこれでいいことにしてくれ。その、バルベラのおかげで月間売上一億円の目標を達成するのも、なあ」
チラッとバルベラに目を向ける。
何が気になるのか、バルベラは自分の左手を眺めていた。
「ナオヤさん、予定通りドラゴン肉料理の販売は10日ごとでいいんですか? 『治癒』の魔法を使えば」
「充分ですアンナさん! 治して斬って治してってそんな拷問みたいな発想は止めてください! 優しそうに見えてやっぱりアンデッド怖い!」
「そうですか、では......『とおか! はつーかさんじゅーにっちどらごーんせーるっ!』でいいんですね?」
「いやリズムは別にそれにしなくていいんですけどまあいいです。そうですね、尻尾が自然に生えてくるタイミングで問題ありませ......いやなんかおかしい気がする。正気か俺?」
振り払うように小さく首を振る。
また左手を見つめてるバルベラが目に入った。
「うん? さっきからどうしたバルベラ?」
「......売り切れ」
ボソリと呟くバルベラ。
左手を見つめて、口からぽたりとヨダレが垂れる。
「ああなるほど、試食でおいしかったのに売り切れたからもう食べられなくて、だったらちょっと肉を用意しようかって考えてると。尻尾はまだ生えてないから、左手を」
クロエが精霊剣エペデュポワの柄に手をかける。
アンナさんがスケルトン部隊に視線を送ってバルベラの変身前の脱衣を助けに来させる。
「なにそのスムーズすぎる連携! 待て待て待て! あるから! 本当はダメだけど三人分取っておいたから!」
「おおおおお! 本当かナオヤ! 従業員として耐えなければと思っていたのに! はっ! まさか『これが食べたければ』などと私を脅してかわりに私の体を食べようと! くっ、仕方あるまい!」
「おい認めてどうするポンコツ騎士。脅さないけども。これは今日がんばってくれたご褒美で」
「ありがとうございますナオヤさん! では『治癒』は必要ありませんね!」
「あっはい。え、アンナさんまで本気だったんですか。そりゃドラゴンステーキもドラゴンテイルスープも美味しかったですけど」
「......はやく」
「あー、はいはい、いま準備するから。ってうれしそうだなバルベラ。自分を食べる......ま、まあ、本人がいいならいいのか。いいのか?」
バルベラに手を引かれて、レジ前から調理場へ向かう。
三人ともうれしそうで、食べていいか悩んでいるのは俺だけらしい。
まあそういう俺も試食したし調理したし販売したんだけど。慣れって怖い! 異世界ヤバい!
俺が店長になってから10日目のアイヲンモール異世界店。
来客数、312人。
売上、1,943,000円。
目玉商品のドラゴンステーキとドラゴンテイルスープの宣伝効果はすさまじく、来客数も一日の売上も、これまでの倍以上の新記録を叩き出した。
「でも正直この感じだと、お惣菜と食材だけで月間売上一億円を超えるのは難しそうなんだよなあ。そりゃドラゴン肉に頼ればイケるだろうけど......ウロコもあるし」
いまの方向性のまま売上を伸ばしても、限界が見える。
アイヲンモール異世界店。
月後までに月間一億円を売り上げるには、まだ遠い。 | “Anna-chan! We’ll take over here!”
“Darn it! Just because you’re carrying a pouch doesn’t mean you can get all dirty, you filthy peddler! Fine, Anna-san, we’ll take !”
“Please, everyone, calm down. This is a special product, so it’s limited to three per person.”
“Delicious! What is this? What is this?”
“It’s amazing, incredibly delicious! Truly the legendary meat!”
“Kufufufu..... Huahahahaha! Look, Naoya! So many customers! Thank you for your purchases!”
“At this price for this dish... buying up... limited quantity. To find out the supplier...”
“...it’s a secret.”
On the th day since I became the manager at the Aion Mall Otherworld store.
The special booth for pre-cooked food sales and the eat-in area in front of the store were overflowing with more people than ever before.
By the way, there’s that suspicious merchant over there plotting something. Finding suppliers right in front of... the suppliers themselves? So, the producer?
“Alright, this will become the flagship product. DRAGON STEAK, and DRAGON TAIL SOUP.”
Barbera entrusted me with dragon tail meat.
After tasting the meat before opening, I immediately decided on the cooking method.
Grilled meat slices for tasting were already delicious on their own.
Seasoned with salt and pepper, they turned into exquisitely tender steak with rich juices.
However, not all of the tail can be turned into steak.
The area around the bones, close to the skin, and the tip of the tail couldn’t be made into steak.
When I tried making “tail soup” thinking, “If we’re talking about the tail, it has to be this.”
Simply simmering with aromatic vegetables turned out to be delicious.
No need for blanching to remove the odor, pressing out the blood, or slow simmering.
It was so delicious that Chloe, Barbera, and Anna-san drooled and had to be served during business hours. Dragons are amazing.
“Wow, a famous scene at Aion Mall on a holiday, a huge traffic jam at the parking entrance. But now’s not the time to leisurely enjoy it... huh?”
Starting sales during the morning peak, the rumors seem to have reached the town.
Even though usually only people using the road would stop by, carriages were coming from the town one after another.
Both Chloe and Anna-san were dealing with customers, and I was about to manage the traffic...
I noticed someone coming.
Well, not just someone, but...
“Huh? A rabbit costume from the warehouse?”
The hopping rabbit costume had a red guiding rod in hand.
When it reached a congested spot, it swung the guiding rod with a big motion. It was enthusiastic.
The exaggerated actions were clear and the carriage drivers obediently followed.
“Oh, that’s helpful... wait, but I’m here, and Chloe, Anna-san, and Barbera are all attending to customers. Huh?”
Looking at the far back
In the shadows of the dim entrance of the Aion Mall Otherworld store, apron-clad skeletons were gazing outside.
They seemed worried, fluttering nervously.
Today, all the staff were gathered at the special booth, so the interior of the Aion Mall Otherworld store had only a passage to the restroom open.
The vegetables brought by the local farmers were displayed outside today.
So, well, even if the skeletons were there, they probably wouldn’t be found. That’s fine though.
“Huh? Are all the apron-clad skeletons here too? Then who’s inside that costume?”
There’s nobody inside. That’s impossible.
Looking at the rabbit costume managing traffic with its entire body, it locked eyes with me and jumped up, waving its hand.
With an overly delighted action, I realized.
“That feeling... it’s the ghost.... The black mist.”
The ghost that always floated around the store’s airspace, full of curiosity and big reactions, seemed to have possessed the costume.
Recognizing it just by its movements, I might have been influenced by the other world quite a bit.
But well, that kind of “pyu” movement, that fearful yet curious vibe, like “I’m useful too!” – that’s how I felt.
“...Ah. In other words, there really is ‘nobody inside it!’? No, no, no.”
The Aion Mall Otherworld store experienced its biggest crowd ever.
With all the staff present in the truest sense, we were catering to a large number of customers.
With the help of not only a cat’s paw but also dragon’s claws and undead hands.
“It was amazing, Naoya! Even though it was limited, everything was sold out before evening! Cutlets, hamburgers, beef stew, even the old ladies’ vegetables!”
“Ah, it seems some people were just ‘buying for takeaway.’ Being a bit far from the town, they probably thought it’d be a waste to return empty-handed.”
Overcoming an unprecedented rush of customers, the business day at the Aion Mall Otherworld store came to an end.
As Chloe said, there are no more products left.
The flagship products, Dragon Steak and Dragon Tail Soup, were sold out early, followed by various side dishes and even the ingredients for replicating the dishes at home. The supply of vegetables from local farmers and gardening supplies had also run out.
“See, I told you, Naoya! You should’ve increased the price for the steak and soup! The fact that the legendary dragon meat dishes were sold at this price... If they weren’t limited, I would’ve bought them all!”
“Please stop, Chloe. If the products don’t appear on the shelves, they’re out of stock. Rather, you should seek the blessings of the forest, not meat, Elf.”
Compared to the products we had been selling, the Dragon Steak and Dragon Tail Soup were priced significantly higher.
In terms of Japanese yen, the steak was priced at ,000 yen per serving, and the soup at 5,000 yen – a price comparable to a high-end restaurant.
“These flagship products are fine. Actually, let’s consider them good enough. Thanks to Barbera, we’re even achieving the goal of one billion yen in monthly sales.”
I glanced briefly at Barbera.
For some reason, she was looking at her left hand.
“Naoya-san, is it alright to have the sales of the dragon meat dishes on a ten-day schedule? With the ‘healing’ magic...”
“Enough, Anna-san! Please stop that torturous idea of healing and cutting and healing! Even though you look kind, undead are still scary!”
“I see, then... ‘Tooka! Hatsuu-ka sanjuu nichi do ra goon seeru!’ Is that good?”(Tenth day! Twentieth day and thirtieth day is Dragon Sale!)
“Well, the rhythm doesn’t have to be like that, but it’s fine. Hmm, let’s see, there might be an issue with the timing of the tail naturally growing... No, something feels off. Am I sane?”
I shook my head slightly as if trying to shake off the thought.
I noticed Barbera staring at her left hand again.
“Huh? What’s wrong, Barbera? You’ve been acting strange for a while now.”
“...Sold out.”
She was gazing at her left hand, drool dripping from her mouth.
“Oh, I see. So, you were thinking that since the sample was delicious but sold out, you wouldn’t be able to eat it anymore, and if that’s the case, you should prepare some meat. Since the tail hasn’t grown yet, you’d use your left hand.”
Barbera nodded in agreement.
Chloe rested her hand on the hilt of the spirit sword Epee du Pois.
Anna-san sent a glance toward the skeleton team and called for assistance to help Barbera with her transformation.
“What a smooth coordination! Wait, wait, wait! Hold on! I have some leftovers! Even though it’s not recommended, I saved some for three people!”
“Ohhh! Really, Naoya! I thought I had to endure it as an employee! Hah! Could it be that you were threatening me with something like ‘If you want this, then...’ and planning to eat my body instead? Ugh, well, there’s no other choice!”
“Hey, admitting it won’t change anything, you dimwitted knight. I’m not threatening you. This is a reward for your hard work today.”
“Thank you, Naoya-san! In that case, there’s no need for ‘healing’ magic, right?”
“Ah, yes. Wait, Anna-san, were you serious too? Well, the Dragon Steak and Dragon Tail Soup were delicious, though.”
“...Hurry up.”
“Yeah, yeah, I’m on it. Really, Barbera, you seem so happy. Eating yourself... well, if you’re fine with it, I guess it’s okay. Is it okay?”
Led by Barbera, we headed from the register to the kitchen.
The three of them seemed delighted, and I was apparently the only one pondering whether it was okay to eat her meat herself.
Well, I did taste it, cooked it, and sold it, after all. The familiarity is quite unnerving! This is getting weird in another world!
The 10th day since I became the manager at the Aion Mall Otherworld store.
Number of visitors, 312.
Total sales, 1,943,000 yen.
The publicity effect of the flagship products, Dragon Steak and Dragon Tail Soup, was tremendous, resulting in a daily record-breaking number of visitors and sales that were more than double the previous records.
“But honestly, with this current situation, it seems challenging to surpass one hundred million yen in monthly sales with just prepared foods and ingredients. Relying solely on dragon meat might work, but... there are scales to consider too.”
Expanding sales in the current direction seems to have its limits.
Aion Mall Otherworld store.
To achieve monthly sales of one hundred million yen within the next five months is still a long way off. | {
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これは彼が喉が渇いていたと言うより、言う事を聞かなかった際の報復を恐れたような態度だった。
「落ち着いた?」
元よりあまり量は残っていなかったので、すぐに飲み干してしまったようだ。
「う、うん」
「こんな時間にどうしたの? 子供が出歩く時間じゃないと思うけど」
「君だって――あ、ごめん」
「わたしは別にいいけどね。言葉使いとか気にしないし」
おそらく、俺に反論した事を謝ったのだろうと推測し、そう告げた。
「わたしは半魔人に偏見は持ってないよ。だから気にしなくていい」
「そうなんだ......めずらしい――あ!」
「うん、さすがに変人扱いは怒るけどね?」
トンと材木の上から飛び降り、少年の背後に回り込んで後ろから両頬を引っ張る。
毛糸を体中に絡めて、筋力補助をしている俺の動きは、少年の目にも止まらぬ速度だっただろう。
「あっ......すごい」
「ん?」
「速いから、驚いた」
「ああ、動き? ちょっと工夫しててね」
俺が再びトンと跳躍して、少年の頭を飛び越えた。
筋力が低いとはいえ、動かす身体は幼い少女の物だ。軽い分、速度や跳躍力といった面での効果は目に見えて発揮される。それでも大の大人の筋力と比較すると......やや物足りなさは残る程度だが。
「それ、工夫ってどうやるの?」
「名前を聞く前にそれを聞くのかな?」
「あ、ごめん......僕、クラウドって言うんだ」
「そう、わたしは――」
そこまで言ってから、気付いた。俺はそれなりにこの街で名前が知れてきている。
ここで名乗ってしまえば、夜に秘密特訓してる事がバレてしまう可能性がある。というか、その可能性が非常に高い。
「えーと、そうだ、わたしの名前はレイドというのだ」
「レイド?雄の人?」
「うん、そうカッコイイ人!」
自分で自分の事をこういうのは面映ゆい所があるが......まぁ、子供の前だし多少調子に乗っても許されるよな?
「一番最初に死んだ人じゃん」
「ひぃ!?」
再び頬を引き延ばされるクラウド。コイツ、口が軽いんじゃないか? 本名を名乗らなくて正解だったか?
「お前も半魔人ならちょっとは敬意を示せよ、コルァ!」
「すみません! すみません!」
引っ張ってわかったが、こいつの頬、意外と伸びるな。面白い。
「で、でもあの人は例外ですよ。六英雄は半魔人とかそういうのを超越してますから」
北部の王国滅ぼし、数十万......いや、百万に届こうかという犠牲者を出した邪竜を討伐した功績という物は、それほどに大きい。
例え前世の俺が半魔人だったとしても、それを声高に批判する人間など皆無だ。
「お前......いや、クラウド、君も迫害でもされているのか?」
「え、うん......その......」
俺の言葉にクラウドは口籠った。この態度だけで答えているも同然である。
「親はどうした?」
「僕、孤児院に住んでるから」
「子供同士のイジメか。その辺りのチェックは厳しくなったはずなんだがなぁ」
半魔人の子供は、その嫌悪感から捨てられる事案も多い。元々数百人に一人生まれるかどうかという確率なので、問題にもなり難い。
人と違う異貌。あまりにも少数派故の無力。だからこそ迫害するにはちょうどいい存在。それが半魔人だ。
だが俺の一件があってから、ラウムでは孤児院のチェックは厳しくなっているので、そういう迫害は起きていないはずなのだが......
「ううん、先生は仲良くしなさいって。でも......」
「ああ、なるほど。子供は無邪気で――容赦がないからなぁ」
子供のイジメというのは、ある意味大人でも引くほど残酷な場合がある。
「それで、さっきの動きをどうやるか聞いたのか」
「うん」
「仕返しするために?」
「......うん」
子供のヒエラルキーというのは運動ができるかどうか、勉強ができるかどうかで決まる。
俺も幼い頃迫害を受け、それ故に反骨心を正義感に変えて、力を求めたのだから。
そしてその感情が暴走し、手当たり次第に悪を断罪して、暗殺者として恐れられるようになった。
「まぁ、これはちょっと特殊な技術を使っている技だから、君にそれを習得するのは無理だろうけど......」
「そっか......無理なんだ」
。それに由来する能力というのは、一般人には手に入らない力と宣告されたに等しい。下手に希望を持たせるよりは、無理だと断言してやった方が彼のためになる。
そもそも俺の技術は俺が磨き抜いた技であり、あのような機動力はライエルですら持っていない。
「でも、基本的な戦い方くらいなら、教えてあげられるよ」
「本当!?」
パァッと急激に笑顔を浮かべるクラウド。この浮き沈みの激しさは、子供特有なのか、こいつだけなのか。
それに、俺はかつてパーティ解散の憂き目の後、仲間を集めることができなかった。これは俺の特殊な戦術がネックになったことは否定できない。
彼にも俺と同じ轍を踏んでほしくはない。そのためにも汎用性というモノはできる限り重視しておきたい。 | The boy timidly took a sip from the bottle that I gave him. Rather than actual thirst, it felt like he did that out of fear of what would’ve happened if he didn’t heed my words. His behaviour showed just how badly he had been treated.
“Have you calmed down now?”
The bottle was mostly empty already, so it didn’t take him long to empty it. I waited for a moment until he stopped drinking before speaking to him again. It was then that he responded to me.
“Um, yes.”
“So, can you tell me what happened to you? I don’t think that this would be a good time for a kid to be loitering around.”
“But, you too――Ah, sorry.”
“You don’t have to mind me. I don’t really care about how you address me.”
I answered, guessing that he was apologizing for his argument towards me, and just as I had expected, his response to my answer was a surprised look.
“I don’t have any prejudice against half-demons. That’s why you don’t have to worry about it.”
“Is that so...... You are a rare――Ah!”
“Okay, yeah, if you treat me as a weirdo, even I’ll get angry, got it?”
I jumped down from the timber and quickly moved behind the boy, then pulled his cheeks as punishment.
My strength was enhanced by the threads covering my entire body, allowing me to move at a speed that would have been impossible for the boy to perceive. The young boy was shocked from the sudden pinch that attacked him from behind. After having my fill with the punishment, I moved back once again.
“A......Amazing.”
“Nn?”
“I was really surprised because it was really fast.”
“Oh, you mean my movements? Well, it’s just something I devised.”
I jumped over the boy’s head once more.
Despite having low muscular strength, my body itself belonged to a young girl. Because of how light it was, the boost in my speed and jumping power was noticeably huge. Though, it still left much to be desired if compared to the strength of an adult...
“That, how are you doing it?”
“So you are going to ask that before introductions?”
“Ah, sorry......I, I am Cloud.”
“Is that so, I am――”
After saying that much, I finally realized something. That is, I had already gained quite some fame in this town.
If I gave my name right now, there was a possibility that they would find out about my special training. Rather, that possibility was extremely high.
“Let’s see, ah right, my name is Reid.”
“Reid? One of the Six Heroes?”
“That’s right. The coolest among them!”
There would only be few places where I could boast like this......besides, there’s nothing wrong boasting about it in front of a child, right?
“You mean the first one to die?”
“Hiii!?”
And so, Cloud’s cheeks were stretched once again. This brat sure doesn’t know how to hold back, eh? Not giving my actual name turned out to be a wise move, huh?
“If you’re a half demon, show some respect, you little...!”
“I’m sorry! I’m so sorry!”
I noticed it after pulling on them, but his cheeks could stretch quite a bit. It was quite fun. Setting that aside, it pissed me off a bit that even my fellow half-demon was treating me like that. I suppose the fact that everyone had been holding a high opinion of me as of late made me a bit conceited.
“B-but that person is an exception. The Six Heroes can’t be judged by the concept of races like half-demons.”
No one would criticize any of the Six Heroes in this world. That was just how big of an achievement it was to subjugate the Evil Dragon that had destroyed three northern kingdoms and claimed tens of...nay, almost a million lives.
Even if I was a half-demon, there was no one to voice their criticisms. If there appeared one that did, however, perhaps they’d have been thrown before a dragon and told, “go ahead, repeat his deed then.” But even if I had left such an achievement behind, that didn’t improve the half-demons’ standing at all. I was simply deemed to be one ‘exception.’
“You... I mean, Cloud, are you being persecuted too?”
“Eh, yes...... well......”
Cloud answered hesitantly. Though his behavior was already good enough as an answer.
“What happened to your parents?”
“I, I live in an orphanage”
“Are you being bullied by other children then. I believe the monitoring should have gotten stricter in that regard...”
There were a lot of cases where Half Demon Children were thrown out because of disgust by their parents. Since the start, the probability was very low, only one in several hundred, which prevented it from becoming a problem.
However, they differed a lot from normal people and their numbers were very few. That made them perfect targets for persecution. Such were the fate of half-demons.
For that reason, it wasn’t that strange to find a half-demon child in an orphanage. However, ever since my incident, the orphanages of Raum had been strictly monitored, so such acts of persecution shouldn’t have happened, but...
“Well, the teacher told us to get along, but......”
“Oh, I see. Children may be innocent――but they surely don’t hold back when it comes to things like this.”
In a way, the bullying among children could sometimes be so cruel it could even give the adults cold feet. His case was probably something like that too.
“So, you wanted to know how I did that earlier?”
“Yes.”
“Is it to get revenge?”
“...Yes.”
Children’s hierarchy was built around things such as how nimble or how smart one was. If he could imitate what I did, he would be able to pull himself out of the bullying swamp. It was natural for him to think that.
Even I could understand his feelings. I had also been the target of persecution when I was young, thus I turned my rebellious spirit into my sense of justice and sought power.
My feelings ran wild and I indiscriminately judged what I thought was evil, and eventually became feared as an assassin. You could say the boy before me was the spitting image of my younger self. At this rate, he would probably recklessly chase after power just like I did.
“Well, this technique requires some special skill, so it would be impossible for you to learn it...”
“I see... It’s impossible after all...”
That’s just how overwhelmingly unreasonable Gifts were. An ability derived from one such Gift could be declared as power unattainable for an ordinary person. Instead of letting him cling to false hopes, it was better to declare it as impossible, for his own good.
In the first place, I developed and mastered all my techniques myself, and even Lyell couldn’t reach the amount of mobility that I could reach. But well, leaving Cloud down in the dumps would end up having a bad aftertaste for me.
“Still, if it’s general fighting, I can teach you that much.”
“Really!?”
Hearing that, Cloud responded with a bright smile. I wonder if this intense shift in emotions was peculiar to all children, or maybe just to this one alone. After that, I explained to him the basics of using a sword, and then proceeded to lecture about the actual use.
Naturally, I didn’t believe that he could master my thread techniques, so I just went the orthodox, highly-versatile way and made do with a sword and shield. You could easily find swords in this town, while a shield was a good way to protect yourself. Different from armor, it even allowed children to acquire sufficient defense. Besides, after the bitter disbanding of our party, I failed to gather my comrades back again. I couldn’t deny that my unique battle style became a bottleneck for that.
I didn’t want him to repeat the mistakes I made. For that reason, I wanted to put emphasis on versatility as much as I could. After that, I promised that I would teach him again if we ever meet again at night. It was in this way that I acquired my first disciple. | {
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あの幽霊飛行船は......敵なのか?
HPゲージは見えないし、ガー坊も鳴かないあたりその可能性は低いか......?
では、何のためにあれは空を飛んでいる?
飛行船なんだから......乗るためか?
疑問は尽きない。
ただ、あちら側は俺に対して何かアプローチを仕掛けてはこない。
動きを止めることなく、ゆらゆらと風に流されていく。
つまり、俺をめがけて飛んできたわけではなく、どこかに向かう途中に偶然俺の近くを通りかかったわけだ。
......このまま見過ごすのは絶対モヤモヤが残るな。
何とかしてあの船に乗り込んでみたい。
オンボロだからところどころ壁がなく客席がむき出しになっているが、それが【ワープアロー】を当てるのに好都合だ。
「浮雲の群れ! 風! 舞風!」
風で舞い上がり、雲の足場に乗って高さを稼ぐ。
飛行船だからさほど高いところは飛んでいない。
ただ、外すと3分待たされるのが面倒だ。
出来る限り近づいて......撃つ!
「ワープアロー!」
矢はゴンドラの壁のないところを通り抜け、内部に命中。
俺の体は謎の幽霊飛行船の中にワープした。
乗り込んでみると......怖いな......!
てか、このゴンドラ木造じゃないか......。
隙間風が妙に冷たい......。
そもそも俺ってホラーが苦手なのに、なぜ人魂の浮かぶ幽霊船に乗り込んでしまったのか。
人間の好奇心というのは時に恐怖心に勝る......!
まあ、怯えていても仕方がないので、ワープの際に引っ込めたガー坊を再召喚し、船内を探ってみるか......。
ギィ......ギィ......ギィ......
軋む床の通路を歩き、ゴンドラの前の方に来た。
そこには......俺の他にもプレイヤーがいた!
革が破けて中身が飛び出している座席に座る彼らは、俺の方を
やはりモンスターではなくプレイヤーだ。
ガー坊も反応しないし、俺の顔を見て明らかに驚いた表情を見せた。
チャリン戦以降、顔を見られると驚かれたり叫ばれたりすることが増えたからな......。
でも、ここにいる人たちは不自然に静かだ。
パーティで乗っている人もいるだろうに会話の1つもない。
俺としては気楽でいいのだが単純に気になる。
無言がこの幽霊飛行船のルールで破ると叩き落されるとか?
相手に上手くしゃべらせるのがこの飛行船における『戦闘』だとか?
ついにNSOもそういう頭脳戦を......。
「よっしゃ! やっと出会えたねぇ
また誰かが乗り込んできた。
なんとも特徴のない......というと失礼だが、ザ・普通の好青年なのだ。
キャラメイク出来るゲームにおけるデフォルト男、教科書に描かれている当たり障りのない男子生徒、無難すぎてボツにされた主人公のデザイン案......。
間違いなくカッコいいし、嫌悪感を抱くことはないが、印象に残らない造形はある意味特別な感じがする。
「お、あなたはキュージィさんじゃないですか! あの時はどうもですねぇ!」
「あ、あの時......?」
覚えがない......。
出会ったことがあっても、忘れてしまいそうな見た目をしているからなぁ......。
というか、この人は忘れてほしいからこんな顔にしているんじゃ......?
「あっ、すいませんねぇ! これまで無数の敵やプレイヤーを倒してきたキュージィさんにとって、プレイヤーの1人や2人忘れても仕方ありませんねぇ! というか、僕自身こんな顔してますからねぇ......」
「いやぁ、すいませんねぇ......」
でも、これでハッキリわかった。
そもそも人と会話をすることがあまりない俺が、こんな喋り方をするプレイヤーを忘れるはずがない。
彼と出会っているとしたら、会話をする機会がないタイミングで......だ。
つまり、バトロワとか陣取りとかの敵として......。
それでも搾り切れないな。倒したプレイヤーが多すぎる。
特に陣取りなんて大雑把な戦闘だったからなぁ......。
「まっ、ご挨拶はこのくらいにして静かに待つとしましょう。しばらくすれば目的地に着くと思いますからねぇ」
「あなたはこの幽霊飛行船がどこに行くか知っているんですか?」
「もちろん! 一回この船に乗って、そこに行って、落っことされて、戻ってくるのに時間がかかったもんでねぇ......。いやぁ、この船っていつどこに現れるのか、どこを通るかがまったくわからないんですよねぇ。でも、終着駅だけは毎回同じ......『ゴーストフロート』なんです」
「ゴースト......フロート......?」
「おっと、キュージィさんはネットのネタバレとか見ないスタイルでしたねぇ! 僕としたことがこれ以上言ってしまうと他人の素晴らしいゲーム体験を奪ってしまうところでしたねぇ。もう黙っておきます!」
ゴーストフロート......か。
正直、この船が行く当てもなく
それが一番ガッカリするオチだからな。
少し引っかかるけど、まあ名乗り忘れなんてよくあるか。
俺も座席に座って静かに待とう。
幽霊飛行船は高度を上げ、加速していく。
同時にギシギシと軋む音も大きくなる。
空中分解だけはやめてくれよ......と目をつぶって祈っていると、不意に軋む音が止んだ。
同時に席を立つプレイヤーたちの声が聞こえてくる。
「今度こそ......」
「ひひっ......! 楽しみだなぁ......」
なんか物騒だなぁ......。
不安になりながら俺も席を立つと、周りから小さく悲鳴が上がった。
せ、世間だと俺はもう戦闘狂扱いなのか......?
でも、フィールドじゃプレイヤーキルは出来ないんだから、怖がることなんてないはずだが......。
妙な違和感の連続も、ゴーストフロートに上陸した途端に吹っ飛んだ。
「なんだここは......!?」
ボロ布をツギハギしたような地面、綿が入ってるみたいに妙に柔らかい!
やたらカートゥン風でけばけばしいまでにカラフルな木々や草花!
何より......この島は浮いている!
に存在するこれまたボロ布をツギハギした気球に吊られて......!
これが幽霊浮遊島......ゴーストフロートか!
デザインセンス極振りだな......!
今までのNSOとはまったく違う雰囲気のフィールドに興奮が抑えられない!
でも、抑えろ......!
まずは状況を整理だ。
現在地は船着き場だ。
幽霊飛行船は複数あって、各地からプレイヤーを集めてはここに連れてきて、またプレイヤーを拾うために出発するようだ。
連れてこられたプレイヤーたちは船着き場の近くの街に流れていく。
西洋、英国、霧のロンドン辺りをモチーフにしたこれまたミステリアスな街だ。
いいなぁ、いいねぇ......。
目的がなくてもフラっと立ち寄って景色を眺めたくなる場所だ。
ぜひともファストトラベルを解放したい。
その解放クエストは街の中のどこかで受けられるんだろうけど、まずはちょっと街の外のフィールドも見てみたい!
人間の好奇心は時に合理的な思考に勝る......!
街から伸びる街道には、これまたオシャレな街灯が立ち並んでいる。
その先には魔女が出てきそうな深い森だ。
こういうベタベタな雰囲気......最高だ!
でも、やけに人通りが少ない気がする。
新天地ではどこかに向かう時、モンスターが寄り付きにくい街道を使うのが常識のはず。
だというのに、今ここを歩いているのは俺の他に少し前を行く2人組の少年だけだ。
街にいたプレイヤーの数的に、フィールドにはもっと人がいていいはずだが......。
「な、なんだ!? うわああああああっ!?」
前を歩く少年たちが膝から崩れ落ちる。
そこにトドメを刺さんと何者かが飛び出してきた。
その姿......プレイヤーだ!
な、なぜプレイヤーがプレイヤーに攻撃を!?
「いるんだよなぁ......たまに。ここが『ヴァーサスフィールド』だって知らない初心者が......!」
プレイヤーは剣を少年たちに振り下ろそうとする。
な、なんだかよくわからないけど、やって良さそうだな!?
混乱する頭とは裏腹に、体は素直に弓を構えていた。 | This Ghost Airship...was it an enemy?
There was no visible HP gauge, and since Garbow wasn’t crying, it seemed unlikely...?
But for what purpose was it flying up there?
Since it’s an airship...can you ride on it?
I had so many questions.
However, they didn’t do anything to acknowledge me.
They did not stop, but continued to drift away slowly, like the wind.
In other words, they were just just passing by. It was a coincidence that had nothing to do with me.
...However, I would definitely regret it if I just let them go.
I wanted to get on that airship somehow.
It was quite shabby-looking. So there were places where there were no walls and you could see the passenger seats. That was perfect, as I could hit it with Warp Arrow.
“Floating Cloud Herd! Windcloud Blast! Whirlwind!”
The wind carried me up, and I stepped on clouds in order to rise even higher.
As it was an airship, it wasn’t flying too high up.
However, if I missed, I would have to wait for minutes.
And so I got as close as I could and...shot!
“Warp Arrow!”
The arrow went through the gap in the walls and landed inside.
And then my body warped into the mysterious Ghost Airship.
When I was inside...I was scared...!
The floor was made of wood...
And there were gaps, which allowed cold air to seep through...
In the first place, I was not a fan of horror. It made me wonder why I had ever gotten into a Ghost Airshop where human souls were floating around.
There were times when human curiosity trumped any fear...!
Well, there was no point in being scared now. And so I might as well summon Garbow again and explore the area...
Creak...creak...creak...
I walked through the creaking passages until I arrived at the front.
And there...I saw that there were other players!
They sat on torn, leather seats. And after looking at me once with wide eyes, they turned away as if nothing had happened.
Yes, they were players, not monsters.
Garbow didn’t react to them, and they were clearly surprised to see me.
After the Charin fight, more people looked surprised or would shout after seeing me...
Still, the people here were strangely quiet.
While some were likely here as a party, none of them were talking to each other.
It was more comfortable that way for me, but I couldn’t help but wonder.
Was there some kind of rule here, where you would be thrown off of the airship if you talked?
Did the ‘combat’ here involve trying to make someone talk?
Perhaps NSO was now about mind games...
“Alright! I’ve finally found you, Ghost Airship!”
Someone new had come aboard.
Someone with no notable features...as rude as that sounded, it really was just an ordinary young man.
It was the default male that you could make in the character creator. The kind of student you would see in textbooks. The design that was discarded for being too plain to be the protagonist...
He was still handsome, and not someone that you would dislike. But there was nothing memorable about the design.
“Ah, you are Mr. Kyuji! I forgot to thank you back then!”
“Back then...?”
I don’t remember...
Maybe it was because of his appearance. Even if we had met, I would have likely forgotten...
But, maybe this person looked like this because he wanted to be forgotten...?
“Ah, I’m sorry! You’ve beaten so many players and enemies now. So you would have forgotten someone like me! Especially since I have a face like this...”
“Uh, sorry...”
Still, I got it now.
I rarely even talked to people. And so I would not have forgotten someone who talked like this.
If I did meet him before, it must have been a time when we didn’t have time to talk...
In other words, as enemies during the battle royale...
Still, I wasn’t sure. I had defeated too many players.
Especially during the turf war, where the combat had been so random...
“Well, that’s enough talking. Let’s wait quietly. I think that we’ll arrive at our destination soon enough.”
“So, you know where this Ghost Airship is headed?”
“Of course! I’ve been on it, arrived, been dropped, and returned before. Though, it did take a long time... Well, we don’t know when or where this ship will actually appear. But the last stop is always the same... The Ghost Float.”
“Ghost...float...?”
“Oh, I guess you don’t look up spoilers online, Mr. Kyuji! If I say anymore, I will be robbing you of a wonderful experience. So I will be silent!”
Ghost Float...eh?
To be honest, I was quite relieved that there was a destination, and this ship didn’t just wander endlessly.
That would have been terribly disappointing.
While it was a little odd, I suppose people did occasionally forget to introduce themselves.
And so I would take a seat as well and wait.
The Ghost Ship rose into the air and accelerated.
At the same time, the creaking sounds grew louder.
I just hoped that the ship wouldn’t fall apart while in the air... I closed my eyes and prayed. Finally, the creaking stopped.
At the same time, I could hear the other players stand up and talk.
“This time...”
“Ahh...! I can’t wait...”
Well, that was ominous...
While I was worried, I stood up. That was when I heard people scream around me.
Did they think that I was some blood-thirsty player...?
But it wasn’t like I was able to kill them on the field, so there was no need to worry...
Regardless, all these strange feelings were blown away once we landed on the Ghost Float.
“What is this...?”
The ground was made of patchwork tattered cloth, and it was soft as if it was stuffed with cotton!
The trees and grass were colorful and cartoonish!
But more than anything...the island was floating!
It was a hanging sphere made of patchwork cloth...!
A ghost island...the Ghost Float!
Everything about the design felt so exaggerated...!
The atmosphere was so different from the NSO I had experienced up until now, that I couldn’t help but feel excited!
But, I will control myself...!
First, I had to take in my surroundings.
I was currently in the dock.
There were several other ghost airships. They gather players from all over the lands and bring them here, before setting off to pick up more.
The players that arrived would then move from the dock to the town.
It was a mysterious town that looked like it was modeled after London, and was covered in fog.
Nice...very nice...
It was a place where you wanted to just stop and look around, even if you didn’t have any destination in particular.
I very much wanted to unlock fast travel here.
But where could I accept the quest to unlock it? And I also wanted to explore the field around the town as well!
Sometimes human curiosity trumped rational thinking...!
The street that stretched out from the town was lined with fancy lamp posts.
And it led to the kind of forest that you would expect a witch to live in.
I loved this kind of classical atmosphere!
However, there weren’t too many people there.
In new areas, when you were headed somewhere, it would make sense to use the main roads, as there were fewer monsters to be seen there.
And yet, aside from me, I could only see two boys walking further ahead.
Considering how many people had been in the town, there should be more people on the field as well...
“Wh-what!? Ahhhh!?”
The boys in front of me fell to their knees.
And then someone jumped out as if to deal them a mortal wound.
It was...a player!
But why was a player attacking them!?
“You see them sometimes... Beginners who don’t know that this is a ‘versus field’...”
The player swung a sword at the boys.
I didn’t really really understand what was happening, but it seemed like you were allowed to do it!?
But while my mind was confused, my body had already pulled out my bow and was ready to attack. | {
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人口爆発は止めようがなく
世界規模の飢餓は避けられず
環境中の化学物質が原因で癌が流行し 私たちの寿命を縮めるとされていました
酸性雨が森林に降り注ぎ
砂漠は一年に2,3kmの速度で拡大し
石油は枯渇し そして核の冬が人類を絶滅させると言われていました
ですが これらの何一つとして実際には起こりませんでした それどころか 私の生涯に起こったことは驚嘆すべきことです この地球に住む人間の 一人あたりの収入が インフレ率を差し引いても 3倍になりました
人の寿命は30%伸び
幼児死亡率は2/3になりました
一人あたりの食糧生産高は 3倍になりました
しかもこれらが実現する間に人口は2倍になったのです
そのことの是非はともかく どのようにして
これらが可能になったのでしょう
いったい私たちは どのようにして もっとも栄えつつ もっとも数の多い 唯一の種となり得たのでしょう
このグラフの太さは人口の大きさを表しています グラフの縦軸は 一人あたりのGDPを表しています
先の質問に答えるには 人類が いかにして その頭脳を寄せ集め アイディアを何度も何度も組み合わせたか 出逢わせ交わらせたかを 理解する必要があります
言い換えれば アイディアがいかにセックスしあったかを 理解する必要があるのです
想像してください どのようにして 私たちが左のものから 右のものを作れるようになったのかを
両方ともに現実に存在するものです
一方は50万年前にホモ エレクトゥスによって作られた アシュール文化期の手斧です
他方は 明らかにコンピュータのマウスですね
二つの大きさと形は気味が悪いほどよく似ています
どちらが大きいかを測ってみましたが 計測はほとんど不可能でした
二つとも人間の手になじむように作られているからです
二つとも技術の産物で 類似性はさほど興味深くはありません
人間の手にしっくり来るように作られているだけです
二つの間の相違が興味深いのです 左の石斧の形は 100万年ほどの間 つまり 150万年前から50万年前まで 変化しませんでした
ホモ エレクトゥスは同じ道具を 3万世代にわたって作り続けたのです
もちろん多少の変化はありました しかし その頃は 道具よりも骨格の進化の方が速かったのです
道具には進歩もなければ 革新もありませんでした
驚くべき現象ですが 事実なのです
ところが 右のマウスは 5年もすれば廃れてしまいます
相違がもう一つあります 左の石斧は単一の物質からできていますが
右のマウスは シリコン 金属 プラスチックなど 異なった物質の集合体です
さらに これは 異なったアイディア つまり プラスチック レーザー 半導体に関する アイディアの集合体なのです
この技術の産物の中にそれらが盛り込まれているのです
この組み合わせ 技術の集合が 私には面白いのです というのは それが この世界で起きていることを 理解する鍵となるからです
私の体も 皮膚細胞 脳細胞 肝細胞という アイディアの集合体です
それらの細胞が組み合わさっているのです
進化はどのように組み合わせを累積できるのでしょう?
それは 有性生殖によってなされるのです
無性生物の個体二つにそれぞれ突然変異が起きたとしましょう これらを緑と赤で表しましょう いずれかが他方より勝っているはずです
勝っている方が生き残り 他方は死滅します
しかし 有性生物であれば 一つの個体が 異なる系統から
二つの変異を受け継ぐことも可能です 生殖は個体に 種全体の遺伝的な革新を
受け継ぐ機会を与えます それは その個体の系統に限定されません
文化の進化において 生物の進化に果たす生殖の役割と 同じ効果をあげる変化は何でしょうか?
私はそれを 交易だと考えます あるものを別のものと交換する習慣です
これは人間に固有の特徴です
他の動物にはありません
実験室の中では 動物にも交換を少しは教えることができます 人類以外の動物にも交換する行為はあります ですが モノとモノとを交換することは決してありません
アダム スミスも言っています 「いまだかつて 犬と犬とが 公正に骨を取引するのを見たことはない」
交換なしでも文化は成り立ちます
つまり無性生殖の文化が存在します
チンパンジーやシャチなどは 文化を持っています
両親から子どもたちへと 伝統の技を伝えます
写真の場合 チンパンジーは木の実を 石で割ることを教え合っています
人類との異なりは 彼らの文化が 決して拡大 成長しない 累積しない 結合されないことにあります その理由は いうなれば セックスしないからです アイディアの交換がないからです
チンパンジーは群れごとに異なった文化を持っています
その間にアイディアの交換はありません
なぜアイディアの交換が生活水準を引き上げるのでしょうか
その答えは デイビッド リカードの1817年の論文にあります
彼は国家間の交易について論じたのですが 石器時代に当てはめることもできます
アダムは槍を作るのに4時間 斧を作るのに3時間かかるとしましょう
オズは槍を作るのに1時間 斧を作るのに2時間かかるとしましょう
オズはアダムよりも槍や斧作りが上手です
オズはアダムを必要としません
自分で槍や斧を作れるからです
しかし よく考えてみてください もしもオズが槍を二本作り アダムが斧を二丁作って それを交換するならば 双方ともに1時間節約できることになります
これを行えば行うほど 節約できる時間が増えます これを推し進めると アダムはますます斧作りがうまくなり オズは槍作りがうまくなるからです
交換によって得られるものは ますます増えていきます
交換のすばらしさはここにあります 実際 交換は専門化に 弾みをつけます 専門化がさらに交換を促進します
アダムとオズは1時間を節約できました
これは豊かさです 必要を満たしつつ 時間が節約できたのですから
ここで 自分自身に問うてください 1時間本を読むための明かりを手に入れるのに
どれだけの時間働かねばならないかを ゼロから始めるとすれば つまり農場に行って
羊を見つけ それを屠り 脂を得て
それを精製して ろうそくを作る 等々
どれだけ時間がかかることでしょう?相当なものです
現代の英国での平均的な賃金労働者は 1時間の読書の明かりを得るために 実際にどれだけ働く必要があるのでしょう
答えは約1/2秒です
1950年には その同じ明かりを得るためには 8秒間働く必要がありました つまり 1950年と比較すれば
7秒半のゆとりを手に入れたことになります その時間を他の事に費やしたり 他の商品 サービス購入に充てられます
1880年に 同じ明かりを得るには 15分かかりました
1800年には 1時間灯すろうそくを買うには 6時間働かねばなりませんでした
言い換えれば 平均的な賃金労働者は 1800年にはろうそくを買えませんでした
この写真に戻り自問してください 「一体誰が誰のために作ったのだろう」
石斧は誰かが自分のために作ったものです
自給自足でした
今日ではそれを貧困と呼びます
しかし 右のマウスは 他の人々が私のために作ってくれたものです
いったい何人ほどでしょうか
数十?数百?数千?
おそらく 数百万でしょう
というのは コーヒーを栽培していた男 そのコーヒーを飲んだ石油採掘場で働いていた男 男が採掘した原油からプラスチックが作られ 等々
それらの人々がみな働いて 私にマウスを作ってくれたのです
このようにして社会は機能しているのです
このようにして人類は成功してきたのです
その昔 金持ちには 使用人たちが 大勢いました
人を使うことで金持ちになったのです
ルイ14世には使用人が大勢いました
こんな奇妙な服を作ったのは彼らです 奇妙なヘアスタイル これも使用人が整えました 彼は毎日の晩餐を準備するのに
498人をあてがいました でも ベルサイユ宮殿を巡り ルイ14世の肖像画を鑑賞する現代の観光客も
やはり498人を晩餐の準備にあてています 使用人は パリ中のビストロや カフェやレストランや商店にいるのです そして1時間の猶予を与えられれば ルイ14世の晩餐よりもすばらしい内容の 晩餐を提供してくれます
これが人類です 互いのために働くのです
専門性と交換によって 相互の生活水準を引き上げているのです
ほかにもお互いのために働く動物はいます
働き蟻と女王は互いにのために働きます
しかしそこには一つ大きな違いがあります 他の巣との協力がないことです
異なる巣同士が協力することはありません
労働が生殖能力によって分化しているからです
生殖能力のあるなしが労働の種類を決定します
蟻の世界では生殖するのは女王のみです
人間は それを嫌います
これだけは自分でやると言い張ります 生殖行為だけは
イングランドでさえ それを女王に任せようとはしないのです
(拍手) この習慣はいつ始まったのでしょうか?
どのくらい続き そして何を意味するのでしょうか?
おそらく この行為の最古のものは 性差による労働の分化だと思われます
しかし 確証はありません
人類は最初に 男を女のために働かせ 女を男のために働かせたようです
今日のすべての狩猟採集社会では 食糧調達のための労働があり 狩猟する男と 採集する女に分化しています
常にこれほど明確ではありませんが しかし 確かに男と女の 役割は分化しているのです
このシステムの優れたところは 双方に利益があることです
このハザ族の場合には 女は植物の根を掘り 男の狩る動物の肉と交換するのですが 女は 蛋白質を手に入れるには 少し余分に根を掘り 肉と交換すればよいことを知っています
そうすれば 体力を消耗する狩猟に出かけて イボイノシシを倒さなくてもいいのです
男は 根を手に入れるために地面を掘る 必要がないことを知っています
男は 殺すイボイノシシが 肉を分配できるほど 大きいことを確認すればいいのです
このようにして男も女も性別分業により 生活の水準を上げることができます
いつから始まったから分かりませんが ネアンデルタール人には不可能でした
ネアンデルタール人は高度な共同作業が可能で
高度に知的な種でした
末期には その大脳の容積は ここにいる 私たちのものよりも大きかったのです
想像力に富み 死者を埋葬しました
ここオックスフォードでの発見で 彼らには 私たちと同様にFOXP2遺伝子があることが分かり おそらく言葉を用いたと思われますし
言語能力も備わっていたと考えられます
彼らは賢い原人でした 私は彼らを無視してはいません
しかし 彼らには 性別分業があった証拠がありません
女が採集に従事したという証拠がないのです
女は男と共に狩猟に従事していたようです
もう一つ証拠がないのは 集団の間での交換です ネアンデルタール人の遺跡で発掘される 彼らの作った道具類は 地方原産の素材で作られているからです
例えば コーカサス地方に ネアンデルタール人の道具が発掘される場所がありますが
道具はその地方のチャートで作られています
同じ谷に 現生人類の遺跡もあります 約3万年前のものです 彼らの道具の一部は その地方のチャート製ですが 多くは はるか遠く離れた場所で産出する 黒曜石で作られています
このように 人類が物資を 移動させ始めたということは 集団の間に交易がなされていたということです
交易は農耕の10倍の歴史を持ちます
我々はこのことを忘れ 交易は現代のものと考えがちです
集団間の交易には 数万年の歴史があるのです
その最初の証拠は120万年から80万年前の アフリカで見つかります エチオピアでは 黒曜石や碧玉その他の物資が 遠く離れたところまで運ばれていました また オックスフォード大学の
チームによって発見されましたが 貝殻もアルジェリアの地中海岸から 約200km内陸に運ばれました
これは 人々が 集団間の交易を始めた証拠です
交易は専門化を促進します
長距離の動きが 民族の移動によるものではなく 交易に起因すると どうしてわかるのでしょうか?
現代の狩猟採集民族である アボリジニを見てみましょう 彼らは アイザ山という場所で石斧用の石を採掘します この場所はカルカドゥーン族の領地です
彼らは隣り合う部族と交易し 石をエイの棘などと交換します その結果 石斧は オーストラリア大陸に広く行き渡るのです
道具のこのような長距離移動は交易の証で 人の移住によるものではありません
人を交易から切り離したら 専門化する能力から切り離したらどうなるでしょうか
その答えは 技術の進歩が遅れるばかりでなく 実際には後退することもあるのです
タスマニアにその例を見ることができます
海面が上昇して タスマニアは1万年前に島になりました 島民は オーストラリア本島の人々よりも 進歩が遅れたばかりでなく 退歩したのです
彼らは骨製の道具や漁具 そして衣服を作る能力を失いました 約4万人あった島の人口は 彼らの持っていた技術を保つのに必要な 特殊なスキルを維持するには 少なすぎたのです
私たちが無人島に置き去りにされるようなものです
私たちが身につけているもので 1万年の後も作り続けられるものがいくつあるでしょう?
ティエラ デル フエゴ島では事態は異なりました タスマニアとは 島も住民もよく似ています
ティエラ デル フエゴ島は 南アメリカ大陸と 狭い海峡で隔てられているので 島と大陸との間には 1万年の間 交易が行われていました
一方 タスマニアは孤島でした
写真に戻りましょう 自問してください 誰が誰のために だけでなく 誰が作り方を知っていたのか を
石斧の場合には 作った人が作り方を知っていました
しかし マウスを作ることは誰が知っているのでしょう
実際誰も知りません
マウスの作り方を知っている人は地球上に一人もいません
これは真面目な話ですよ
マウス製造会社の社長は知りません
彼が知っているのは 会社の経営方法です
組み立てラインの工員も知りません 彼は油井を掘って 石油を取り出し プラスチックを作る方法を知らないからです
私たちは皆 断片は知っていますが 全体は把握していません
私はこれを 1950年代の経済学者 レオナルド リードの有名な論文から引用しています 論文のタイトルは 「私は鉛筆」 その論文の中で リードは鉛筆ができる過程と 誰も鉛筆の作り方を知らないことを論じました 組み立て係は黒鉛を採掘する方法を知らず 木の伐採方法なども知らないからです
人間社会の中で 交易と専門化を通じて 私たちが成就したのは 私たちが理解すらしていないことを 成し遂げる能力です
それは言語とは異なります
言語を用いて私たちはそれぞれが理解している アイディアを伝えますが
技術を用いれば 私たちは能力を超えることを成し遂げ得るのです
人間の精神の能力を 超えることができるのです お断りしておきますが 私はIQの議論 つまり ある集団が他の集団よりも高いIQを持っている という議論に導こうとしているのではありません
そのような議論は全く無意味です
社会にとって意味があるのは 人々がいかに上手にアイディアを伝達しあっているか いかに上手に協力しているかであり その集団の個人がいかに賢いかではありません
私たちは「集団脳」を創り出しました
一人一人はその網の目の結節にすぎません
私たちは集団脳のニューロンなのです
前進させているのは アイディアの交換であり アイディアの出逢いと交流なのです しかし 悪いことも起こります
将来的には 私たちは恐ろしいことも経験するでしょう
戦争や恐慌や 天災もあるでしょう
今世紀中に恐ろしいことが起きるのは確かです
しかし 人々が作り出す アイディアを 出逢わせ交流させる能力が これまでになく活発になることも確かです 私はまた 科学技術の発展に伴い 生活水準も向上すると確信しています
インターネットを通じて クラウドソーシングを通じて 私たちが創り出す ボトムアップの世界では エリートだけでなく 誰もがアイディアを持ち アイディアを出逢わせ 交流させる この世界では 革新のスピードが一段と速まると信じるからです
ありがとうございました | The population explosion was unstoppable.
Global famine was inevitable.
A cancer epidemic caused by chemicals in the environment was going to shorten our lives.
The acid rain was falling on the forests.
The desert was advancing by a mile or two a year.
The oil was running out, and a nuclear winter would finish us off.
None of those things happened, and astonishingly, if you look at what actually happened in my lifetime, the average per-capita income of the average person on the planet, in real terms, adjusted for inflation, has tripled.
Lifespan is up by 30 percent in my lifetime.
Child mortality is down by two-thirds.
Per-capita food production is up by a third.
And all this at a time when the population has doubled.
How did we achieve that, whether you think it's a good thing or not?
How did we achieve that?
How did we become the only species that becomes more prosperous as it becomes more populous?
The size of the blob in this graph represents the size of the population, and the level of the graph represents GDP per capita.
I think to answer that question you need to understand how human beings bring together their brains and enable their ideas to combine and recombine, to meet and, indeed, to mate.
In other words, you need to understand how ideas have sex.
I want you to imagine how we got from making objects like this to making objects like this.
These are both real objects.
One is an Acheulean hand axe from half a million years ago of the kind made by Homo erectus.
The other is obviously a computer mouse.
They're both exactly the same size and shape to an uncanny degree.
I've tried to work out which is bigger, and it's almost impossible.
And that's because they're both designed to fit the human hand.
They're both technologies. In the end, their similarity is not that interesting.
It just tells you they were both designed to fit the human hand.
The differences are what interest me, because the one on the left was made to a pretty unvarying design for about a million years -- from one-and-a-half million years ago to half a million years ago.
Homo erectus made the same tool for 30,000 generations.
Of course there were a few changes, but tools changed slower than skeletons in those days.
There was no progress, no innovation.
It's an extraordinary phenomenon, but it's true.
Whereas the object on the right is obsolete after five years.
And there's another difference too, which is the object on the left is made from one substance.
The object on the right is made from a confection of different substances, from silicon and metal and plastic and so on.
And more than that, it's a confection of different ideas, the idea of plastic, the idea of a laser, the idea of transistors.
They've all been combined together in this technology.
And it's this combination, this cumulative technology, that intrigues me, because I think it's the secret to understanding what's happening in the world.
My body's an accumulation of ideas too: the idea of skin cells, the idea of brain cells, the idea of liver cells.
They've come together.
How does evolution do cumulative, combinatorial things?
Well, it uses sexual reproduction.
In an asexual species, if you get two different mutations in different creatures, a green one and a red one, then one has to be better than the other.
One goes extinct for the other to survive.
But if you have a sexual species, then it's possible for an individual from different lineages.
So what sex does is it enables the individual to draw upon the genetic innovations of the whole species.
It's not confined to its own lineage.
in cultural evolution as sex is having in biological evolution?
And I think the answer is exchange, the habit of exchanging one thing for another.
It's a unique human feature.
No other animal does it.
You can teach them in the laboratory to do a little bit of exchange -- and indeed there's reciprocity in other animals -- But the exchange of one object for another never happens.
As Adam Smith said, "No man ever saw a dog make a fair exchange of a bone with another dog."
You can have culture without exchange.
You can have, as it were, asexual culture.
Chimpanzees, killer whales, these kinds of creatures, they have culture.
They teach each other traditions which are handed down from parent to offspring.
In this case, chimpanzees teaching each other how to crack nuts with rocks.
But the difference is that these cultures never expand, never grow, never accumulate, never become combinatorial, and the reason is because there is no sex, as it were, there is no exchange of ideas.
Chimpanzee troops have different cultures in different troops.
There's no exchange of ideas between them.
And why does exchange raise living standards?
Well, the answer came from David Ricardo in 1817.
And here is a Stone Age version of his story, although he told it in terms of trade between countries.
Adam takes four hours to make a spear and three hours to make an axe.
Oz takes one hour to make a spear and two hours to make an axe.
So Oz is better at both spears and axes than Adam.
He doesn't need Adam.
He can make his own spears and axes.
Well no, because if you think about it, if Oz makes two spears and Adam make two axes, and then they trade, then they will each have saved an hour of work.
And the more they do this, the more true it's going to be, because the more they do this, the better Adam is going to get at making axes and the better Oz is going to get at making spears.
So the gains from trade are only going to grow.
And this is one of the beauties of exchange, is it actually creates the momentum for more specialization, which creates the momentum for more exchange and so on.
Adam and Oz both saved an hour of time.
That is prosperity, the saving of time in satisfying your needs.
Ask yourself how long you would have to work an hour of reading light this evening to read a book by.
If you had to start from scratch, let's say you go out into the countryside.
You find a sheep. You kill it. You get the fat out of it.
You render it down. You make a candle, etc. etc.
How long is it going to take you? Quite a long time.
How long do you actually have to work to earn an hour of reading light if you're on the average wage in Britain today?
And the answer is about half a second.
Back in 1950, you would have had to work for eight seconds on the average wage to acquire that much light.
And that's seven and a half seconds of prosperity that you've gained because that's seven and a half seconds in which you can do something else, or you can acquire another good or service.
And back in 1880, it would have been 15 minutes to earn that amount of light on the average wage.
Back in 1800, you'd have had to work six hours to earn a candle that could burn for an hour.
In other words, the average person on the average wage could not afford a candle in 1800.
Go back to this image of the axe and the mouse, and ask yourself: "Who made them and for who?"
The stone axe was made by someone for himself.
It was self-sufficiency.
We call that poverty these days.
But the object on the right was made for me by other people.
How many other people?
Tens? Hundreds? Thousands?
You know, I think it's probably millions.
Because you've got to include the man who grew the coffee, which was brewed for the man who was on the oil rig, who was drilling for oil, which was going to be made into the plastic, etc.
They were all working for me, to make a mouse for me.
And that's the way society works.
That's what we've achieved as a species.
In the old days, if you were rich, you literally had people working for you.
That's how you got to be rich; you employed them.
Louis XIV had a lot of people working for him.
They made his silly outfits, like this, and they did his silly hairstyles, or whatever. He had 498 people to prepare his dinner every night.
But a modern tourist going around the palace of Versailles and looking at Louis XIV's pictures, he has 498 people doing his dinner tonight too.
They're in bistros and cafes and restaurants and shops all over Paris, and they're all ready to serve you at an hour's notice with an excellent meal that's probably got higher quality than Louis XIV even had.
And that's what we've done, because we're all working for each other.
We're able to draw upon specialization and exchange to raise each other's living standards.
Now, you do get other animals working for each other too.
Ants are a classic example; workers work for queens and queens work for workers.
But there's a big difference, which is that it only happens within the colony.
There's no working for each other across the colonies.
And the reason for that is because there's a reproductive division of labor.
That is to say, they specialize with respect to reproduction.
The queen does it all.
In our species, we don't like doing that.
It's the one thing we insist on doing for ourselves, is reproduction.
Even in England, we don't leave reproduction to the Queen.
So when did this habit start?
And how long has it been going on? And what does it mean?
Well, I think, probably, the oldest version of this is probably the sexual division of labor.
But I've got no evidence for that.
It just looks like the first thing we did was work male for female and female for male.
In all hunter-gatherer societies today, there's a foraging division of labor between, on the whole, hunting males and gathering females.
It isn't always quite that simple, but there's a distinction between specialized roles for males and females.
And the beauty of this system is that it benefits both sides.
The woman knows that, in the Hadzas' case here -- digging roots to share with men in exchange for meat -- she knows that all she has to do to get access to protein is to dig some extra roots and trade them for meat.
And she doesn't have to go on an exhausting hunt and try and kill a warthog.
And the man knows that he doesn't have to do any digging to get roots.
All he has to do is make sure that when he kills a warthog it's big enough to share some.
And so both sides raise each other's standards of living through the sexual division of labor.
When did this happen? We don't know, but it's possible that Neanderthals didn't do this.
They were a highly cooperative species.
They were a highly intelligent species.
Their brains on average, by the end, were bigger than yours and mine in this room today.
They were imaginative. They buried their dead.
They had language, probably, because we know they had the FOXP2 gene of the same kind as us, which was discovered here in Oxford.
And so it looks like they probably had linguistic skills.
They were brilliant people. I'm not dissing the Neanderthals.
But there's no evidence of a sexual division of labor.
There's no evidence of gathering behavior by females.
It looks like the females were cooperative hunters with the men.
And the other thing there's no evidence for is exchange between groups, because the objects that you find in Neanderthal remains, the tools they made, are always made from local materials.
For example, in the Caucasus there's a site where you find local Neanderthal tools.
They're always made from local chert.
In the same valley there are modern human remains from about the same date, 30,000 years ago, and some of those are from local chert, but more -- but many of them are made from obsidian from a long way away.
And when human beings began moving objects around like this, it was evidence that they were exchanging between groups.
Trade is 10 times as old as farming.
People forget that. People think of trade as a modern thing.
Exchange between groups has been going on for a hundred thousand years.
And the earliest evidence for it crops up somewhere between 80 and 120,000 years ago in Africa, when you see obsidian and jasper and other things moving long distances in Ethiopia.
You also see seashells -- as discovered by a team here in Oxford -- moving 125 miles inland from the Mediterranean in Algeria.
And that's evidence that people have started exchanging between groups.
And that will have led to specialization.
How do you know that long-distance movement means trade rather than migration?
Well, you look at modern hunter gatherers like aboriginals, who quarried for stone axes at a place called Mount Isa, which was a quarry owned by the Kalkadoon tribe.
They traded them with their neighbors for things like stingray barbs, and the consequence was that stone axes ended up over a large part of Australia.
So long-distance movement of tools is a sign of trade, not migration.
What happens when you cut people off from exchange, from the ability to exchange and specialize?
And the answer is that not only do you slow down technological progress, you can actually throw it into reverse.
An example is Tasmania.
When the sea level rose and Tasmania became an island 10,000 years ago, the people on it not only experienced slower progress than people on the mainland, they actually experienced regress.
They gave up the ability to make stone tools and fishing equipment and clothing because the population of about 4,000 people was simply not large enough to maintain the specialized skills necessary to keep the technology they had.
It's as if the people in this room were plonked on a desert island.
How many of the things in our pockets could we continue to make after 10,000 years?
It didn't happen in Tierra del Fuego -- similar island, similar people.
The reason: because Tierra del Fuego is separated from South America by a much narrower straight, and there was trading contact across that straight throughout 10,000 years.
The Tasmanians were isolated.
Go back to this image again and ask yourself, not only who made it and for who, but who knew how to make it.
In the case of the stone axe, the man who made it knew how to make it.
But who knows how to make a computer mouse?
Nobody, literally nobody.
There is nobody on the planet who knows how to make a computer mouse.
I mean this quite seriously.
The president of the computer mouse company doesn't know.
He just knows how to run a company.
The person on the assembly line doesn't know because he doesn't know how to drill an oil well to get oil out to make plastic, and so on.
We all know little bits, but none of us knows the whole.
I am of course quoting from a famous essay by Leonard Read, the economist in the 1950s, called "I, Pencil" in which he wrote about how a pencil came to be made, and how nobody knows even how to make a pencil, because the people who assemble it don't know how to mine graphite, and they don't know how to fell trees and that kind of thing.
And what we've done in human society, through exchange and specialization, is we've created the ability to do things that we don't even understand.
It's not the same with language.
With language we have to transfer ideas that we understand with each other.
But with technology, we can actually do things that are beyond our capabilities.
We've gone beyond the capacity of the human mind And by the way, that's one of the reasons that I'm not interested in the debate about I.Q., about whether some groups have higher I.Q.s than other groups.
It's completely irrelevant.
What's relevant to a society is how well people are communicating their ideas, and how well they're cooperating, not how clever the individuals are.
So we've created something called the collective brain.
We're just the nodes in the network.
We're the neurons in this brain.
It's the interchange of ideas, the meeting and mating of ideas between them, that is causing technological progress, However, bad things happen.
And in the future, as we go forward, we will, of course, experience terrible things.
There will be wars; there will be depressions; there will be natural disasters.
Awful things will happen in this century, I'm absolutely sure.
But I'm also sure that, because of the connections people are making, and the ability of ideas to meet and to mate as never before, I'm also sure that technology will advance, and therefore living standards will advance.
Because through the cloud, through crowd sourcing, through the bottom-up world that we've created, where not just the elites but everybody is able to have their ideas and make them meet and mate, we are surely accelerating the rate of innovation.
Thank you. | {
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「ふんふんふふ~ん、ふんふふ~ん! いい天気ですねぇ~、絶好のデート日和ですよぉ~」
フューレンの街の表通りを、上機嫌のウサミミ少女シアがスキップしそうな勢いで歩いている。服装は何時も着ている丈夫な冒険者風の服と異なり、可愛らしい乳白色のワンピースだ。肩紐は細めで胸元が大きく開いており、シアの豊かな胸が歩く度にぷるんっ! ぷるんっ! と震えている。腰には細めの黒いベルトが付いていて引き絞られており、シアのくびれの美しさを強調していた。豊かなヒップラインと合わせて何とも魅惑的な曲線を描いている。膝上ンチの裾からスラリと伸びる細く引き締まった脚線美は、弾む双丘と同じくらい男共の視線を集めていた。
もっとも、何より魅力的なのは、その纏う雰囲気と笑顔だろう。頬を染めて、楽しくて仕方ありません! という感情が僅かにも隠されることなく全身から溢れている。亜人族であるとか、奴隷の首輪らしきものを付けている事とか、そんなものは些細な事だと言わんばかりに周囲の人々を尽く見惚れさせ、あるいは微笑ましいものを見たというようにご年配方の頬を緩ませている。
そんなシアの後ろを、ハジメは苦笑いしながら歩いていた。よほど心が浮きだっているのか、少し前に進んではくるりとターンしてハジメに笑顔を向け追いつくのを待つという行為を繰り返すシアに、周囲の人々同様、ハジメも思わず頬が緩んでしまうのだ。
「はしゃぎすぎだろう、シア。前見てないと転ぶぞ?」
「ふふふ、そんなヘマしませんよぉ~、ユエさんに鍛えられているんですからッ!?」
注意するハジメに、再びターンしながら大丈夫だと言いつつ足を引っ掛けて転びそうになるシア。すかさず、ハジメが腰を抱いて支える。シアの身体能力なら特に問題なく立て直すだろうが、今日は丈の短いスカートなので念のためだ。シアを鼻息荒く凝視している男共にラッキースケベなど起こさせはしない。
「しゅ、しゅみません」
「ほれ、浮かれているのはわかったから隣りを歩け」
腰を抱かれて恥ずかしげに身を縮めるシアは、ハジメの服の袖をちょこんと摘んだまま、今度は小さな歩幅でチマチマと隣りを歩き始めた。その頬を染めて恥らう愛らしい姿に、周囲の男達はほぼ全員ノックアウトされたようだ。若干名、隣を歩く恋人の拳が原因のようだが。
そんなハジメとシアは周囲の視線を集めつつ、遂に観光区に入った。観光区には、実に様々な娯楽施設が存在する。例えば、劇場や大道芸通り、サーカス、音楽ホール、水族館、闘技場、ゲームスタジオ、展望台、色とりどりの花畑や巨大な花壇迷路、美しい建築物や広場などである。
「ハジメさん、ハジメさん! まずはメアシュタットに行きましょう! 私も生きている海の生き物って見たことないんです!」
ガイドブックを片手に、ウサミミを「早く! 早く!」と言う様にぴょこぴょこ動かすシア。【ハルツィナ樹海】出身なので海の生物というのを見たことがないらしく、メアシュタットというフューレン観光区でも有名な水族館に見に行きたいらしい。
ちなみに、樹海にも大きな湖や川はあるので淡水魚なら見慣れているらしいのだが、海の生き物とは例えフォルムが同じ魚でも感じるものは違うらしい。魚なんて皆一緒だろうと、ハジメなどは思うのだが......空気を読んで何も言わなかった。ハジメ的に、今日はシアに優しくする所存である。
「へぇ~、内陸なのに海の生き物とか......気合はいってんな。管理、維持、輸送と大変だろうに......」
少し興味を持つ点がズレているハジメだが断る理由もないので了承する。それにシアが嬉しそうにニコニコしながらハジメの手を握って先導した。
途中の大道芸通りで、人間の限界に挑戦するようなアクロバティックな妙技に目を奪われつつ、たどり着いたメアシュタットは相当大きな施設だった。海をイメージしているのか全体的に青みがかった建物となっており多くの人で賑わっている。
中の様子は極めて地球の水族館に似ていた。ただ、地球ほど、大質量の水の圧力に耐える透明の水槽を作る技術がないのか、格子状の金属製の柵に分厚いガラスがタイルの様に埋め込まれており、若干の見にくさはあった。
だが、シアはそんな事気にならないようで、初めて見る海の生き物の泳いでいる姿に瞳をキラキラさせて、頻りに指を差しながらハジメに話かけた。すぐ隣で同じく瞳をキラキラさせている家族連れの幼女と仕草が同じだ。不意に、幼女の父親と思しき人と視線が合い、その目に生暖かさが含まれている気がして、ハジメは何となく気まずくなりシアの手を取ってその場を離れた。シアが、ハジメの行動に驚きつつも、手を握られたのが嬉しくて、頬を染めながら手をにぎにぎし返したのは言うまでもない。
そんなこんなで一時間ほど水族館を楽しんでいると、突然、シアがギョッとしたようにとある水槽を二度見し、更に凝視し始めた。
そこにいたのは......シーマ○だった。ハジメが、知っている某ゲームの人面魚そっくりだった。
「......な、なぜ彼がここに......」
戦慄の表情でシアが一歩後退りする。○ーマンは、シアに気がついたのか水槽の中から同じように、彼女を気だるそうな表情で見つめ返した。訳のわからない緊迫感が生まれる。そんな二人?を放置して、ハジメは水槽の傍に貼り付けられている解説に目をやった。
それによると、このシー○ンは水棲系の魔物であるらしく、固有魔法〝念話〟が使えるようだ。滅多に話すことはないらしいがきちんと会話が成立するらしく、確認されている中では唯一意思疎通の出来る魔物として有名らしい。
ただ、物凄い面倒くさがりのようで、仮に会話出来たとしても、やる気の欠片もない返答しかなく、話している内に相手の人間まで無気力になっていくという副作用?みたいなものまであるので注意が必要とのことだ。あと、お酒が大好きらしく、飲むと饒舌になるらしい。但し、一方的に説教臭いことを話し続けるだけで会話は成立しなくなるらしいが......ちなみに、名称はリーマンだった。
ハジメは、一筋の汗を流しながら未だ見つめ合っているのかにらみ合っているのかわからないシアを放置して、話しかけてみた。ただ、普通に会話しても滅多に返してくれないらしいので、同じく〝念話〟を使ってみる。
〝お前さん、念話が使えるんだって?本当に話せるのか?言葉の意味を理解できる?〟
突然の念話に、リーマンの目元が一瞬ピクリと反応する。そして、シアから視線を外すと、ゆっくりハジメを見返した。シアが、何故か勝った! みたいな表情をしているが無視だ。
〝......チッ、初対面だろ。まず名乗れよ。それが礼儀ってもんだろうが。全く、これだから最近の若者は......〟
おっさん顔の魚に礼儀を説かれてしまった。痛恨のミスである。ハジメは頬を引き攣らせながら再度会話を試みる。
〝......悪かったな。俺はハジメだ。本当に会話出来るんだな。リーマンってのは一体何なんだ?〟
〝......お前さん。人間ってのは何なんだ?と聞かれてどう答える気だ?そんなもんわかるわけないだろうが。まぁ、敢えて言うなら俺は俺だ。それ以上でもそれ以下でもねぇ。あと名はねぇから好きに呼んでくれ〟
ハジメは、内心「どうしよう......」と思った。何か、セリフがいちいち常識的で、しかも少しカッコイイのだ。全くもって予想外である。やる気の欠片もなかったんじゃないのか?と水族館の職員にクレームを付けたい。ハジメが、ちょっと現実逃避気味に遠くを見る目をしていると、今度はリーマンの方から質問が来た。
〝こっちも一つ聞きてぇ。お前さん、なぜ念話が出来る?人間の魔法を使っている気配もねぇのに......まるで俺と同じみてぇだ〟
当然といえば当然の疑問だろう。何せ、人間が固有魔法として〝念話〟を使っているのだ。なぜ自分と同じことを平然と出来ているのか気になるところだ。普段は、滅多に会話しないリーマンがハジメとの会話に応じているのも、その辺りが原因なのだろう。ハジメは、念話が使える魔物を喰って奪い取ったとかなり端折った説明をした。
〝......若ぇのに苦労してんだな。よし、聞きてぇことがあるなら言ってみな。おっちゃんが分かることなら教えてやるよ〟
同情された。どうやら、魔物を喰うしかないほど貧乏だとでも思われたようだ。今のそれなりにいい服を着ている姿を見て、「頑張ったんだなぁ、てやんでぇ! 泣かせるじゃねぇか」とヒレで鼻をすする仕草をしている。
実際、苦労したことは間違いないので特に訂正はしないハジメ。ただ、人面魚に同情される人生って......と若干ヘコんだ。何とか気を取り直しつつ、リーマンに色々聞いてみる。例えば、魔物には明確な意思があるのか、魔物はどうやって生まれるのか、他にも意思疎通できる魔物はいるのか......リーマン曰く、ほとんどの魔物は本能的で明確な意思はないらしい。言語を理解して意思疎通できる魔物など自分の種族しか知らないようだ。また、魔物が生まれる方法も知らないらしい。
他にも色々話しているとそれなりの時間が経ち、傍目には若い男とおっさん顔の人面魚が見つめ合っているという果てしなくシュールな光景なので、人目につき始める。シアが、それにそわそわし始めハジメの服の裾をちょいちょい引っ張るので、ハジメは会話を切り上げた。
リーマンとの会話は中々に面白かったが、今日はシアに付き合うと決めていたのだ。蔑ろにしては約束を反故にすることになる。リーマンの方も「おっと、デートの邪魔だったな」と空気を呼んで会話の終わりを示した。ちなみに、その頃には「リーさん」「ハー坊」と呼び合う仲になっていたりする。ハジメは、リーマンの中に〝漢〟を見たのだ。
ハジメは、最後にリーマンが何故こんなところにいるのか聞いてみた。そして、返ってきた答えは......
〝ん?いやな、さっきも話した通り、自由気ままな旅をしていたんだが......少し前に地下水脈を泳いでいたらいきなり地上に噴き飛ばされてな......気がついたら地上の泉の傍の草むらにいたんだよ。別に、水中じゃなくても死にはしないが、流石に身動きは取れなくてな。念話で助けを求めたら......まぁ、ここに連れてこられたってわけだ〟
ハジメは、ツーと一筋の汗を流した。それは、明らかにライセンの大迷宮から排出された時のことだろう。どうやら、リーマンはそれに巻き込まれて一緒に噴水に打ち上げられたらしい。直接の原因はミレディの阿呆だが、巻き込んだという点に変わりはない。
ハジメは、ゴホンッと咳払いを一つして気を取り直すと、リーマンに尋ねた。
〝あ~、リーさん。その、何だ。ここから出たいか?〟
〝?そりゃあ、出てぇよ。俺にゃあ、宛もない気ままな旅が性に合ってる。生き物ってのは自然に生まれて自然に還るのが一番なんだ。こんな檻の中じゃなく、大海の中で死にてぇてもんだよ〟
いちいち言葉に含蓄のあるリーマン。既に、リーマンを気に入っていたハジメは、巻き込んだこともあるしと彼を助けることにした。
〝リーさん。なら、俺が近くの川にでも送り届けてやるよ。どうやら、この状況は俺達の事情に巻き込んじまったせいみたいだしな。数分後に迎えを寄越すから、信じて大人しく運ばれてくれ〟
〝ハー坊......へっ、若造が、気ぃ遣いやがって......何をする気かは知らねぇが、てめぇの力になろうって奴を信用できないほど落ちぶれちゃいねぇよ。ハー坊を信じて待ってるぜ〟
ハジメとリーマンは共に男臭い笑みを交わしあった。その分かりあったような表情で見つめ合う二人? に「あれ? まさかのライバル登場?」とシアが頬を引き攣らせる。ハジメがシアの手を引いてその場を離れようと踵を返した。訳がわからないが、取り敢えずハジメに付いて行くシアにリーマンの〝念話〟が届く。
〝嬢ちゃん、あん時は驚かせて悪かったな。ハー坊と繋いだその手、離すんじゃねぇぞ〟
「へ? へ? えっと、いえ、気にしてません! おかげでハジメさんとファーストチュウ出来たので! あと、もちろん離しませんよ!」
訳がわからないなりに、しっかり返事するシア。そんな彼女に満足気な笑みを見せるリーマン。「お節介め」と苦笑いするハジメは、新たな友人のこれからに幸運を祈りつつメアシュタット水族館を後にした。
そして、その数分後、下部にカゴをつけた空飛ぶ十字架が水族館内を爆走し、リーマンの水槽を粉砕、流れ出てきたリーマンを見事カゴにキャッチすると追いかける職員達を蹴散らし(怪我はさせていない)、更に壁を破壊して外に出ると遥か上空へと消えていくという珍事が発生した。新種の魔物か、あるいはリーマンの隠された能力かと大騒ぎになるのだが......それはどうでもいい話だ。
一方その頃......
ユエとティオは、商業区にて買い出し中だった。といっても、ハジメの〝宝物庫〟には必要なものが大量に入っているので、旅中で消費した分を少し補充する程度のことだ。したがって、それほど食料品関係を買い漁る必要はなく、二人は、商業区をぶらぶらと散策しながら各種のショップを冷やかしていた。
「ふむ。それにしても、ユエよ。本当に良かったのか?」
「? ......シアのこと?」
「うむ。もしかすると今頃、色々進展しているかもしれんよ? ユエが思う以上にの?」
ブティックで展示品を品定めしているユエに、ティオがそんな質問をする。声音は少し面白がるような響きが含まれていた。余裕ぶっていていいのか? 足元をすくわれるかもしれないぞ? と。ティオとしてはの不思議な関係に興味があった。これから共に旅をする以上、一度腹を割って話してみたかったのだ。
それに対して、ユエは動揺の欠片もなくティオをチラリと見ると肩を竦めた。本当になんの危機感も持っていないようだ。
「......それなら嬉しい」
「嬉しいじゃと? 惚れた男が他の女と親密になるというのに?」
「......他の女じゃない。シアだから」
首を傾げるにティオにユエは、店を見て回りながら話を続ける。
「......最初は、ハジメにベタベタするし......色々下心も透けて見えたから煩わしかった......でも、あの子を見ていてわかった」
「わかった?」
「......ん、あの子はいつも全力。一生懸命。大切なもののために、好きなもののために。良くも悪くも真っ直ぐ」
「ふむ。それは見ていてわかる気がするの......だから
ティオは、短い付き合いながら今までのシアを脳裏に浮かべて頬を緩めた。亜人族にあるまじき難儀な体質でありながら笑顔が絶えないムードメイカーな少女に自然と頬が綻ぶのだ。まだ、若いがゆえに色々残念なところや空回るところはあるが、ティオもシアの事は気に入っている。しかし、唯一無二の恋人とデートさせる理由としては些か弱い気がして、結局は気に入ったからという理由だけなのかと確認をとる。
「......半分は」
「半分? もう半分は何じゃ?」
ティオの疑問顔に、ユエは初めて口元に笑みを浮かべて答えた。
「......シアは、私の事も好き。ハジメと同じくらい。意味は違っても大きさは同じ......可愛いでしょ?」
「......なるほどの......あの子にはご主人様もユエもどちらも必要ということなんじゃな......混じりけのない好意を邪険に出来る者は少ない。あの子の人徳というものかの。ふむ、ユエのシアへの思いはわかったが......じゃが、ご主人様の方はどうじゃ? 心奪われるとは思わんのか? あの子の魅力は重々承知じゃろ?」
ユエは、それこそ馬鹿馬鹿しいと肩を竦めると、今度は妖艶な笑みを見せた。目を細め、頬を染め、チロリと舌が唇を舐める。少女のように小柄でありながら全身から溢れ出る色気に、周囲を歩く者達が男女に関係なく足を止めて見蕩れている。そして、同じようにユエに目を釘付けにされながら歩いてきた歩行者と衝突してあちこちで事故が起きていた。隣にいるティオの色気溢れる豊満な肉体ですら霞むほどで、当のティオも、昨夜覗き見した時のユエの蕩けた表情を思い出し、思わず見蕩れてしまった。
「......ハジメには〝大切〟を増やして欲しいと思う。でも......〝特別〟は私だけ......奪えると思うなら、やってみればいい。何時でも何処でも誰でも......受けて立つ」
〝貴女に出来る?〟そう言外に言い放ち微笑むユエに、ティオは普段の無表情とのギャップも相まって言い知れぬ迫力を感じ一歩後退った。無意識の後退だったようで、ティオはそんな自分に驚いた表情をすると、苦笑いしながら両手を上げて降参の意を示した。
「まぁ......喧嘩を売る気はない。妾は、ご主人様に罵ってもらえれば十分じゃしの」
「......変態」
呆れた表情でティオを見るユエに、本人はカラカラと快活に笑うだけだった。そして、わざわざこのような話を始めたのも自分達との関係を良好なものにするためだろうと察していたユエは、あこがれの竜人族のブレない変態ぶりに深い溜息を吐きつつも、上手くやっていけそうだと苦笑いするのだった。
と、そんな風に、少しユエとティオの距離が縮まり二人がブティックを出た直後、
ドガシャン!!
「ぐへっ!!」
すぐ近くの建物の壁が破壊され、そこから二人の男が顔面で地面を削りながら悲鳴を上げて転がり出てきた。更に、同じ建物の窓を割りながら数人の男が同じように悲鳴を上げながらピンボールのように吹き飛ばされてくる。その建物の中からは壮絶な破壊音が響き渡っており、その度に建物が激震し外壁がひび割れ砕け落ちていく。
そして十数人の男が手足を奇怪な方向に曲げたままビクンビクンと痙攣して表通りに並ぶ頃、遂に、建物自体が度重なるダメージに耐えられなくなったようで、轟音と共に崩壊した。
野次馬が悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らすように距離を取る中、ユエとティオは聞きなれた声と気配に、その場に留まり呆れた表情を粉塵の中へと向けた。
「ああ、やっぱり二人の気配だったか......」
「あれ? ユエさんとティオさん? どうしてこんな所に?」
「......それはこっちのセリフ......デートにしては過激すぎ」
「全くじゃのぉ~、で? ご主人様よ。今度は、どんなトラブルに巻き込まれたのじゃ?」
ユエとティオが感知していた通り、粉塵をかき分けて現れたのはハジメとシアだった。二人はデートに出かけた時の格好そのままに、それぞれお馴染みの武器を携えてユエ達のもとへ寄って来た。可愛らしい服を着ていながら、肩に凶悪な戦鎚を担ぐシアの姿はとてもシュールだ。
「あはは、私もこんなデートは想定していなかったんですが......成り行きで......ちょっと人身売買している組織の関連施設を潰し回っていまして......」
「......成り行きで裏の組織と喧嘩?」
呆れた表情のユエにシアが乾いた笑いをする。ティオが、どういう事かとハジメに事情説明を求めて視線を向けた。
「まぁ、ちょうど人手が足りなかったところだ。説明すっから手伝ってくれないか?」
ドンナーをホルスターに仕舞いながら、地面に転がる男達を通行の邪魔だとでも言うように瓦礫の上に放り投げていくハジメ。積み重なっていく男達を尻目に、ハジメは、ユエとティオに何があったのか事情を説明し始めた。 | “Fufufufu~n, fufufu~n! What a fine weather~ It’s a splendid weather for a date~.”
, swaying as she walked. A slender, black belt was attached on her waist. Her rich hip-line and the indescribably enchanting curve were clearly displayed. Slender, tight, and beautiful legs were extended from the skirt cm above her knees, and the gazes of men were gathered on the pair of bouncing hills.
But the most attractive thing about her was her atmosphere and her smile. With blushing cheeks, I am happy, so it cannot be helped!, was overflowing from her without any effort to conceal it. About her being a demi-human or how she wore a slave’s collar-like thing, could be said as something trivial as the surrounding people fell for her. There were also elderlies who smiled as if they saw something pleasant.
Behind the ecstatic Shia, was Hajime who walked on with a wry smile. Maybe because she was so elated, Shia repeatedly walked a little ahead, and then turned around with a smile as she waited for Hajime to catch up. Just like the surrounding people, Hajime inadvertently smiled.
“Your spirit is too high, Shia. You will fall down if you don’t look in front, you know?”
“Fufufu, I won’t make such blunder~, after all I have been trained by Yue-sa—!?”
Because of Hajime’s warning, Shia turned around again as she replied to him, she almost fell down. Hajime promptly held her waist to support her. Though there wouldn’t be any problem considering Shia’s physical strength, she wore a short skirt today. He would not let the men who pant as they looked at Shia to become lucky perverts.
“I-I am sorry.”
“See, now that you understand, walk right beside me.”
As she shrunk her body because of the embarrassment from being held by the waist, Shia demurely tugged Hajime’s sleeve, and this time she began to walk in slower pace next to him. Because of how lovely she looked with blushing cheeks, most of the surrounding men seemed to have been knocked out. Some of them were because of the fists from the lovers by their side.
Hajime and Shia kept collecting the surrounding gazes, and they finally entered the Sightseeing Ward. There were various facilities inside the Sightseeing Ward. For example were theatres and street performers avenue, circus, music halls, aquarium, arena, game studio, observatory, colorful flower garden along with huge maze of flowers, and even beautiful buildings along with the plazas.
“Hajime-san, Hajime-san! Let’s go to Meerstat first! I have never seen a marine creature before!”
With a guide book in hand, Shia’s rabbit ears moved as though to express, “Let’s go! Let’s go!” She seemed to have never seen any marine creature because she lived in «Haltina Sea of Trees», so she wanted to go to Meerstat, a famous aquarium in Fhuren’s Sightseeing Ward.
Incidentally, she was used to seeing freshwater fishes because there were lakes and rivers in the Sea of Trees. However, she felt they weren’t the same even though the marine creatures were shaped similar to those fishes. Though Hajime thought them as only fish... he didn’t say anything since he read the mood. Hajime was going to be nice to Shia today.
“Hee~, for marine creatures to be inland... that’s the point. Though the management, maintenance, and transportation must be troublesome...”
Though Hajime wasn’t interested at all, he didn’t reject it since he didn’t have any reason to refuse her. Furthermore, Shia was happily smiling as she pulled Hajime’s hand.
On the way in street performers avenue, their eyes were caught by people who did acrobatic as they challenged the human’s limit, when they finally reached the big facility of Meerstat. Maybe as to represent the sea, the whole building was painted in blue and there were crowds of people in there.
The interior was extremely similar to the aquarium in the Earth. However, maybe because they didn’t have the technology to make transparent water tanks that could endure the water pressure like the ones on Earth, bulky glass tiles were buried in the fence made of crystal-like metal, and it only somewhat visible.
However, Shia didn’t mind it. Her eyes sparkled from seeing the marine creatures for the first time, and she spoke to Hajime while pointing her finger. Right next to them, was a little girl with her family who also pointing with sparkling eyes. Unexpectedly, his gaze met the father-like person’s gaze and because Hajime noticed he looked at him with warm gaze. Hajime, who felt awkward, took Shia’s hand and moved elsewhere. Shia was surprised by Hajime’s action but she was happy he took her hand, and needless to say she returned his grasp while blushing.
After this and that, they enjoyed the aquarium for one hour, when Shia suddenly became wide-eyed when she looked at a certain water tank again, and began to stare at it.
Inside was... a Seaman. It was human-faced fish very similar to the one from the game Hajime knew.
“... Wh-why is he here...”
Shia backed away and trembled. Maybe because the Seaman noticed Shia, it turned to watch her with the same lazy expression from inside the water tank. The tension raised for some unknown reason. Because of two people, Hajime looked at the explanation placed beside the water tank.
According to it, this Seaman was an aquatic demonic beast, and it capable of using peculiar magic called “Telepathy.” It seemed to be able to speak fluently though it rarely spoke, and he confirmed from the description that it was famous as a demonic beast one could converse with.
However, even if it was possible to talk to, it would only answer with an unmotivated voice as though the talk was very troublesome for it. Also, caution was necessary because the person it spoke to would become depressed as a side effect. It like alcohol and becomes talkative as it drinks. However, it wouldn’t be called a conversation as a person would one-sidedly continued to preach to the conversation partner... Incidentally, it was named Lehman.
Since Hajime didn’t know whether Shia was simply staring or if she was having at argument with it. However, when sweat lines started to appear on her face and she didn’t reply to him, or when he talked to it in the normal way, he used “Telepathy” instead.
“You, can you really use telepathy? Can you really converse? Can you understand my words?”
Because of the sudden telepathy, Lehman’s eyes twitched for a moment in response. It followed by shifting its gaze from Shia to slowly looking at Hajime. Shia whose expression expressed, Somehow I won!, was ignored.
“... Tch, this should be our first meeting. First, introduce yourself. That is how you show your manner. Good grief, this is why the young people these days...”
He was taught about manners by the fish with a face of an old man. He regretted his mistake. With cramped cheeks, Hajime tried to talk again.
“... My bad. I am Hajime. Looks like you really can converse. Just what is Lehman?”
“... You know. Just what is human? How can you answer that? That’s why, how would I know the answer. Well, I only can say I am me. No more no less. Also, call me by my name or whatever you like.”
Hajime had thought, “Just how does it think...” But somehow it spoke about common sense, moreover it was rather cool. That was completely unexpected. Wasn’t it written that it was unmotivated?, he wanted to complaint to the aquarium’s staff. Hajime was slightly looking at the distance in escapism, but this time a question came from the Lehman.
“I also want to ask one thing. You, why can you use telepathy? There’s no sign of the use of human’s magic... It was as if you are the same as me.”
It was nothing but a natural question. After all, a human was using the peculiar magic, “Telepathy.” It was curious as to why he was able to casually use just like it. It might be the cause of why the rarely talkative Lehman was responding to Hajime’s conversation. Hajime explained he was able to use it by eating the demonic beast that was capable of using telepathy.
“... That’s a lot of hardships for someone so young. Okay, ask me anything you want. This old man will answer anything in my knowledge.”
He was sympathized. Apparently, it thought he was so poor that there was no choice other than eating the demonic beast. When it saw his current appearance and he was wearing good clothing, it said as it sniffled, “Looks like you’ve worked so hard, good boy! It make me want to cry.”
Hajime didn’t correct it because it was the true he had some hard times. However, for him to be sympathized by a fish... it was somewhat depressing. He somehow managed to set it aside and asked Lehman various things. For examples, Does a demonic beast have a clear will?, How were the demonic beasts born?, Are there any other demonic beasts people can communicate with?, ... Lehman answered that most demonic beasts didn’t have clear will. It didn’t know any other demonic beasts that could understand human language other than its species. Moreover, it didn’t know how the demonic beasts were born.
Moderate amount of time had passed as he asked a lot of things, and they began to gather attention because it was a surreal spectacle for the onlookers to see a young man and a fish with a face of an old man staring at each other. Shia, who began to feel restless, was tugging Hajime’s sleeve, so Hajime rounded up the conversation.
Even though his conversation with Lehman was somewhat interesting, today was decided for him to go out and spend it with Shia. He would not neglect his promise. Lehman also said, “Oops, looks like I have obstructed your date,” as it rounded up the conversation by reading the mood. By the way, they got along so well that they called each other with “Leh-san” and “Ha-boy.” Hajime could see the “nobleness” inside the Lehman.
In the end, Hajime asked why Lehman was in such a place. The answer was...
“Nn? Just as I said before, I was traveling freely... but the underground water which I was swimming through suddenly sprouted outside and I was thrown away... Before I knew, I was in a grassy place beside a spring. Though I won’t die even without water, I cannot move without it. When I tried to ask for help using telepathy... Well, I was brought here.”
Immediately, a line of sweat flowed from Hajime’s forehead. It was obviously the time when they got out from the Great Dungeon of Raisen. Apparently, Lehman was involved and was launched together with them at that spring. Though the real culprit was the idiot Miledi, there was no change that they got it involved.
Hajime, ahem, cleared his throat, then asked the Lehman.
“Ah~, Leh-san. That is, what can I say. Do you want to get out of here?”
“? That’s, of course. For I am more suited for traveling freely. It is the best for a living thing to live the natural way. Rather than inside such a cage, I prefer to die in the ocean.”
Lehman used lot of connotations in those words. Therefore, Hajime who liked the Lehman decided to help it because he was also at fault.
“Leh-san. If so, I will bring you to a nearby river. Apparently, your situation was caused by my party. Since I will bring you out in few minutes, please believe in me and I will quietly transport you.”
“Ha-boy... Heh, though you are young, to have such way of thinking... I don’t know what will you do, but no one should be able to match your power. I will believe in Ha-boy and wait.”
Hajime and Lehman exchanged manly smiles. As if understanding the their expressions, Shia’s cheeks cramped as she said, “Huh? Don’t tell me another rival?” Hajime pulled Shia’s hand as he turned on his heel from the place. Although the reason was unknown, the Lehman used “Telepathy” to Shia who followed Hajime.
“Little miss, I am sorry to surprise you back then. Don’t let go of the hand tied to Ha-boy’s.”
“Heh? Heh? Umm, well, there is no need to worry about that! I have my first kiss with Hajime-san thanks to that! Also, I definitely won’t let it go!”
Though she didn’t understand, Shia firmly answered. Lehman displayed a satisfied smile as it looked at Shia. “How meddlesome,” Hajime prayed for his new friend’s good luck from now on as he left the Meerstat aquarium with a wry smile.
After a few minutes, a claw crane broke through into the lower part of the aquarium. It crushed Lehman’s water tank, used the arm to catch the Lehman that came out along the water splendidly, defeated the staff members who were after them (there were no injury). Furthermore, it destroyed a wall to get out and disappeared far into the sky; these kinds of things happened. There were commotions about whether it was a new kind of demonic beast or the Lehman’s hidden ability... but that was something trivial.
At that time, on the other side...
Yue and Tio were shopping inside the Commercial Ward. Even so, because there were already a large amount of necessary thing inside Hajime’s “Treasure Box,” they could only replenish a small amount of the things they consume in their travel. Therefore, rather than shopping for food, the two were just indifferently wandering around the various shops in the Commercial Ward.
“Hmm. Even so, Yue. Art thou really okay about that?”
” ? ... About Shia?”
“Mm-hmm. It is possible that various things had progressed right now, thou know? Have thou thought of that?”
Tio was questioning Yue, who was judging the things exhibited in the boutique. Her tone was filled with some curiosity. Is it okay to be this calm? Isn’t it possible she passed thou? Tio was interested in the mysterious relationship of the three. Because they would be traveling companions from now on, she wanted to converse without reserve for once.
On the other hand, Yue wasn’t was shaken. She simply shrugged her shoulders and looked at Tio. There was no sense of crisis at all.
“... I am happy if it happens.”
“Happy? Though the man thou love becomes intimate with another woman?”
“... It is not another woman. It’s Shia.”
When Tio inclined her head, Yue continued to talk as she walked around the shop.
“... In the beginning, when she tried to get close to Hajime... I was annoyed because she clearly had another intent... However, I understand now.”
“Understand?”
“... Nn, that girl always did her best. Always used her utmost effort. All for the sake of her important things and the things she loves. She is straightforward for the better or worse.”
“Hmm. This one understands just by seeing her... Is that why thou have such a bond?”
Tio smiled when Shia, someone she was associated with only for a short time, floated in her head. She naturally smile as she thought of the moodmaker girl, whose smile didn’t disappear even with the hardship she has experienced for being a demi-human. Moreover, although there were a lot of disappointing things about her because she was still young, Tio liked Shia. However, she thought it was a weak reason to allow her to go on a date with Yue’s lover. In the end, she wanted to confirm another reason than Yue just liking Shia.
“... The other is.”
“Other? What doest thou mean by other?”
Because of Tio’s questioning face, Yue began to smile as she answered.
“... Shia also likes me. At least as much as Hajime. They are the same even though they have different meaning... Isn’t that cute?”
“... Indeed... Master and Yue, ye both are necessary for that child... There are only few people who could be fond of the one who treated them unkindly. That might be her virtue. Hmm, this one thought this one understood what Yue thinks of Shia... But what about Master? Have thou thought Master might be captivated by her? Don’t thou understand that child’s charm?”
Yue shrugged her shoulders as if those things were ridiculous, and this time she displayed a bewitching smile. Eyes narrowed, cheeks blushed, she licked her lips. Her seductiveness overflowed from her body though she was small just like a little girl. Men and women who were walking around them stopped to look at her. In the following moments, accidents appeared here and there; pedestrians collided because they walked while their eyes were still nailed on Yue. Overflowing sensuality came from Tio’s voluptuous body, but beside her was blurred. Tio recalled the time when she peeped at Yue last night and she became charmed by her.
“... I want to increase Hajime’s “important ones.” However,... only I am “special”... if you think you can take him, then try it. No matter the time, the place, or who it is... I will be the winner.”
“Can you do it?”, Yue implied the declaration with a smile, and Tio backed away from the force she felt coming from the gap of Yue’s usual expressionlessness. Because she backed away unconsciously, Tio revealed a surprised expression and she raised both hands to show she gave up with a bitter smile.
“Well... this one never thinks of starting a fight. This one feel it is enough as long as Master abuse this one.”
“... A pervert.”
Yue looked at Tio with an amazed expression while the person in question only laughed cheerfully. Thus, Yue, who had guessed Tio was trying to find a way to relate with them when she purposely began such talk, could only sighed because the Ryuujin race she longed for turned out to be a pervert. However, she smiled wryly as they seemed to be able to get along.
As such, the distance between Yue and Tio slightly shortened as they went out of the boutique and,
BOOM!!
“Guwa!!”
The wall of a nearby building was immediately destroyed, and the screams of two men could be heard from there as they appeared with their faces planted on the ground. In addition, several men were also blown away from the window of the same building just like pinballs as they screamed. Sounds of destruction resounded from inside the building, and with that, the wall cracked and collapsed as though the building received a severe earthquake.
With several tens of men convulsing with their limbs bent in strange directions as they lined up on the street. The building that could no longer endure the damage finally collapsed with a tremendous roar.
Among the onlooker who had scattered in a distance, Yue and Tio perceived familiar voices and presences. Thus, they stayed in their places and they looked inside the scattered dust with amazed expressions.
“Ah, ah, these are the two’s presences, as expected...”
“Huh? Aren’t those Yue-san and Tio-san? Why are you here?”
“... That’s our line... You are overdoing it for a date.”
“Seriously~, well? Oh Master, just what kind of trouble hath art thou gotten involved in this time?”
Just as Yue and Tio perceived, what appeared from the scattered dust were Hajime and Shia. The two should be on a date now, but they approached Yue and Tio with familiar weapons on their arms. She was wearing adorable clothing, so the appearance of Shia who shouldered a brutal weapon was truly a surreal one.
“Ahaha, even I never thought it will turn into such a date... It just that the development... we destroyed a facility related to an organization that trades people...”
“... What kind of development resulted in fighting an underground organization?”
Yue displayed an amazed expression as Shia let out dry laugh. Tio was looking at Hajime asking for an explanation.
“Well, we are rather short handed for now. So can you help me after I explain the situation?”
As he put Donner into the holster, Hajime threw away the men who tumbled on the ground like pebbles as they obstructed his way. While looking at the piled up men with a leer, Hajime began to explain the situation to Yue and Tio. | {
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キシャナは大鍋に水と乾燥昆布を入れると、魔法で火にかけていく。
しばらくすると、大鍋に気泡が出てくると乾燥昆布を取り出して、だし汁を完成させる。
「さて、つけていた米を炊飯器で炊くよ」
キシャナは炊飯器のフタをすると、炊飯ボタンを押してご飯を炊き始める。
次に、だし汁の中サイズにした茄子と南瓜を入れ程煮る。
具材が煮えると、味噌を取り出して火を止める。
味噌を溶き入れると、再度火をかけて沸騰直前で火を止める。
具材を深皿に移すと、味噌汁の完成になる。
「丁度良いタイミングで、ご飯も炊けたね」
炊飯器は音を鳴らして、できあがりの合図を出す。
炊飯器のフタを開けると、キシャナは皿にご飯を盛り付ける。
キシャナはご飯と味噌汁を食卓に並べると、前世でよく目にした光景が飛び込んできた。
「ご飯と味噌汁か。和食の定番メニューだね」
「味噌はエルフの里で作られた物を保存してたから、キュウリの味噌ディップ用に取って置いて正解だったわね」
ご飯と味噌汁の湯気が立ち上り、シェーナとサリーニャの食欲をそそる。
は食卓を囲むと、食前の挨拶をして食事を始める。
「ご飯はよく炊けていて美味しいよ。味噌汁のしょっぱさと南瓜の甘さが口に広がっていいよ」
シェーナはキシャナの料理を褒めると、キシャナは照れ臭そうな仕草をする。
「そんなに慌てて食べなくても、誰も取ったりしないよ」
「昨日から飲まず食わずで仕事をしていたから、正直有難いわ」
「仕事も大切だけど、体調を疎かにしたら身も
「面白いことに没頭すると限界近くまで働いちゃうのよね。以前、それでリィーシャさんに注意されたことがあったっけ」
シェーナはサリーニャの体を気遣って言葉をかける。
何かに没頭できることは素晴らしいことだが、やはり限度がある。
サリーニャのような天才肌は特に注意が必要で、周りの者が監視していないと危なっかしい性質だ。
「こんな美味しい料理を毎日食べられるなんて、君達のような夫婦が羨ましいよ」
「いや、夫婦じゃないから。サリーニャは自炊とかはどうしているの?」
「自炊はあまり得意じゃないから、適当に済ませることが多いわ。『森の聖弓』から専属シェフを雇うのもいいけど、人妻ダークエルフが兼業でこっちにも料理を提供してくれたらいいなぁ」
サリーニャは熱い視線をキシャナに向けるが、シェーナが遮って提案をする。
「俺が今度、暇な時にでも料理を教えるよ。それでいいだろ?」
キシャナは食材の仕入れや材料の仕込みで忙しくなる。
とてもではないが、兼業できる余裕はない。
「君の料理もなかなか美味しいから大歓迎だけど、自炊は面倒だなぁ」
最低限の自炊は覚えてほしいと願うシェーナだが、そう簡単にはいかないようだ。 | Rice cooker and interview Kishana then put water and the dried seaweed in the pot before lighting the fire with magic.
After a while, the water started to boil and she took the seaweed from the water. The broth was ready.
“Now I’ll cook the rice.”
After putting the lid on the rice cooker, she pressed the button and let it cook.
Next, she took the bite-sized eggplant and pumpkin and let them boil in the broth for five minutes.
When the ingredients were cooked, she added miso and put the fire out.
Then she dissolved the miso into the water and lit the fire again until it was about to boil.
Lastly, she put it into deep bowls and the miso soup was done.
“And just on time, the rice is done cooking too.”
A sound rang from the rice cooker and it showed a ‘done’ sign.
She opened the lid and served some rice on a plate.
Kishana then placed the rice and miso soup on the table, which brought back a scene they saw frequently in their past life.
“Rice and miso soup huh. A staple of Japanese cuisine.”
“Since I heard they were making miso in the elves’ district, I always kept some to use as a dip for cucumbers, guess it was a good idea.”
Puffs of steam rose from the rice and miso soup, making Schenna and Sareenea’s appetite grow.
The three of them sat at the table, and after a short pause, they began eating.
“The rice is well cooked and tasty. And the saltiness from the miso soup and the sweetness from the pumpkins mixes well.”
Schenna complimented Kishana’s food, and Kishana seemed to get slightly embarrassed.
“Don’t be so hasty, no one will take your food away from you.”
“I’ve been working non-stop without drinking or eating since yesterday, I’m honestly thankful.”
“I know your job is important, but if you neglect your body, there won’t be anything to replace it with.”
“When I find something interesting, I tend to focus on it to extreme limits. I think Reesha warned me about something like that before too.”
Schenna was worried about Sareenea’s health.
It was commendable that she was able to focus on things, but there was still a limit to everything.
Especially if it was a genius like Sareenea, it was not a good trait to need someone else to watch over her so she would not overdo things.
“I’m jealous of a couple like you, being able to eat tasty food like this every day.”
“I’m telling you we’re not a couple. Why don’t you try cooking yourself or something?”
“I’m not too good cooking myself, and most of the time I just do something random. I could just employ an exclusive chef from the Holy Bow, but it would be nice if your dark elf mistress could come here and cook for me as a side job you know.”
Sareenea shot an intense stare at Kishana, but Schenna interrupted her.
“I can teach you how to cook if you want, sometimes when you are free. Would that be good?”
Kishana would be busy buying food and ingredients.
It might not be much more, but she still could not afford to have a side job.
“Your cooking is pretty good too so I would love that, but cooking sounds like a pain...”
Schenna was hopeful she would want to learn at least a little bit, but it seemed like it would not be as easy as she first thought. | {
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いえ 冗談です
6年前に第1子を妊娠していた時 おかしな事を発見しました ベビーケア商品に 一番良く使われている 保存料が 体内に入ると エストロゲンに似た 働きをするのです
実は 製品内の化学物質は とても簡単に 皮膚から体内に入り込みます
これらの保存料は 乳がんの腫瘍から見つかっています これが映画 『汚染される赤ちゃん』を
作るきっかけになりました 間もなく この問題の驚くべき統計を 見つけました
私たちの体内にはある化学物質のうち 3万から5万種類は 私たちの祖父母の体内には ありませんでした
これらの化学物質の多くは 先進工業国でよく見られる 慢性小児疾患が 急増していることと関連があります
統計をお見せしましょう
例えばイギリスでは 小児白血病が 1世代で20%増えました
アメリカの小児がんの統計も とても似ています
カナダでは子どもの10人に1人は喘息です
4倍も増加しています
世界中 同じ様子です
アメリカでは おそらく 最も驚くべき統計― 自閉症や 自閉症スペクトラム障害 その他の学習障害が
7倍も増えています またこの傾向は 欧州や 北米でも見られます
ヨーロッパの ある地域では 先天性生殖器異常が 4倍も増えています 興味深いことに アメリカではある疾患は3倍になりました
性的早熟なども含め 慢性小児疾患は ものすごい勢いで 増えているのです 意外な人物を
ご紹介しましょう これらの事柄について話ができ 赤ちゃんに対する毒性について議論ができる おそらく世界で最も重要な人物の1人- カエルの専門家です
私も驚きました 殺虫剤や公衆衛生について 私がお話をするなんて- 有益な事をしてるつもりはなかったので
だってカエルですよ
この殺虫剤の問題に 私が関わるようになった事にも 実のところ驚いています 世界で最も大きい化学メーカーが アトラジンの両生類やカエルへの 影響を調べてほしいと頼んできたのです
アトラジンは世界最大の化学メーカーの
売れ筋商品でしたが 地下水、飲み水、雨水を 最も汚染する化学物質でした
2003年にヨーロッパでは 使用禁止になりましたが 同年 アメリカの環境保護庁は この化学物質を再登録したのです
研究結果にはちょっと驚きました カエルをとても低い値の- 10億分の1のアトラジンにつけたところ このようになってしまったのです
生殖巣を解剖すると 睾丸が2つ 卵巣が2つに 肥大した睾丸や卵巣- 普通じゃありませんよね
両生類にでさえ-
キタヒョウガエルという種類には 精巣に卵子があるオスもいました
この大きく育った卵は オスの睾丸からはじけ出ています
妻も おそらくペネロピも同意見でしょうが 出産ほど痛いものはないでしょう 私は経験できませんから 何とも言えないのですが おそらく1ダースの鶏の卵が 睾丸にあるのと 匹敵するかもしれません
私たちが出版した最近の研究で アトラジンに晒された生物の オスの中には完全に メスになったものもいました
このように2匹のオスが交尾をしています
遺伝的にはオスであるにもかかわらず 交尾をするだけでなく 実際に卵を産む事も可能なのです
私たちが提唱し 今や多くに支持されているのは アトラジンがホルモンのバランスを 崩しているという事実です
通常 精巣は男性ホルモンである テストステロンを作ります
しかしアトラジンはエンザイムの1種 アロマターゼを働かせ テストステロンをエストロゲンに変えます
結果としてこのオスは テストステロンを失い 化学的に去勢され 女性ホルモンを作るようになり メス化したのです
私は人間の問題にも目を向けました
女性に一番多い乳がんが エストロゲンとエンザイムアロマターゼによって
引き起こされると分かったからです 胸に がん細胞ができると アロマターゼが アンドロゲンをエストロゲンに変えます それが がんを成長させ 腫瘍にし 広げるのです
事実 アロマトーゼは乳がんの主要原因ですが レトロゾールという化学物質を使う 最新治療は アロマターゼとエストロゲンをブロックし 細胞が変異しても腫瘍になりません
不思議な事に 未だに 3万6千トンものアトラジンが使われています それは最も飲み水を汚染し その一方で アロマターゼやエストロゲンを増やし ラットに腫瘍を発生させ 人間の腫瘍 乳がんとも関係しているのです
おかしなことに 3万6千トンの アトラジンを売るこの会社は 乳がんを発症させる一方で 乳がんのブロッカーを売っています 同じ会社がです
おかしいと思いませんか この化学物質を避けて 病気を予防するどころか さらに多くの化学物資を 環境に投入しているんですよ
エストロゲンと言えば タイロンが映画の中で述べていた ビスフェノールA BPAという化学物質が 最近取り上げられています
これは可塑剤です
ポリカーボネイト樹脂に混ぜられている物質で 哺乳瓶にも使われています
BPAの面白いところは エストロゲンと同じ働きをし かつて実際に合成エストロゲンとして ホルモン補充療法で 使われる事を検討されていた事です
いまや大変多くの研究が証明しています BPAが哺乳瓶からしみだし ミルクに溶け 赤ちゃんの体内に
取りこまれているのです 私たちは 新生児や乳幼児に 合成エストロゲンを 与えているのです
2週間ほど前に欧州連合は 哺乳瓶と乳児用カップに BPAを使う事を 禁止する法案を可決しました
乳児用カップとは 幼児が哺乳瓶を卒業する段階で 使うプラスチックカップの事です
しかしちょうどその2週間前に アメリカの上院は 哺乳瓶と乳児用カップへの BPAの禁止について 論じる事さえ拒んだのです
これでおわかりでしょう 親の責任で 自分たちの生活を規制し 守らなければいけないのです 驚くべきことです
多くの哺乳瓶からは ビスフェノールAという 化学物質が溶け出していることが 分かっています 親が注意する事でしか 子どもを化学物質から 守る事は出来ません
哺乳瓶の例が示すように 体内への侵入は防ぐことが出来ます
しかし親が気をつけなければ 子どもたちを 守るものはいません
ペネロピが言っている事は 確かな真実です
私たちは大量絶滅の危機にひんしています
科学者も今は同意しています
多くの種が恐竜よりも早く 絶滅しようとしています 両生類もいなくなるでしょう
両生類の80%は 絶滅の危機にあります
科学者たちも私も 殺虫剤が主な原因だと信じています また両生類はとても繊細で 良い指標になります 殻や膜や胎盤で 保護されておらず
水中の汚染から身を守れないためです 事実 我々哺乳類の最大の発明の一つは 胎盤です しかし哺乳類も
起源は水中動物です
そして この古代からの組織 - 他の動物には無い 哺乳類特有の胎盤は 私たちが新しい化学物質を 造り出すスピードに 進化や適応が 追いついていません
ネズミの研究では アトラジンによるホルモンの不均衡が 流産を引き起こすと証明されています
妊娠を維持させるには ホルモンが必要だからです
流産せずに生まれても アトラジンはオスに 老人の病気 前立腺疾患を発症させます
また 子宮内のメスは アトラジンに晒される事で 乳房の発達障害が 引き起こされます
そのネズミが成長し 十分なミルクを子どもに与えられないと
その子どもも発達障害を負います 祖母がアトラジンに晒されると
孫まで影響を受けるのです 多くの化学物質に 何代も 何十年も 晒される事で 私たちの孫や その孫の代の健康にまで 影響が及びます 私たちが今日使う化学物質によってです
理論上だけではありません エストロゲンや 胎盤を通して 子宮内の胎児の 乳ガンや肥満 糖尿病になる確率を 高める事が分かっています
また 我々哺乳類は 出産後も子孫に 栄養を与え続けます DDTやDESやアトラジンのような
化学物質は 赤ちゃんが生まれた後も ミルクを通して 影響を与えます タイロンが 胎盤は
古代からの器官であると言った時 どのようにお見せしようかと 考えました
このようなビデオにすれば
見えない事も イメージ化できると考え 擬人化してみました
おじいさん: 胎盤管理局です
なんですか?
え?
(グーグー) は?何と?ペルペル・・・ 何ですか?
ペルフルオロオクタン酸
なんとまあ
聞いたこともない物質じゃ 私もこのビデオを作り始めるまで
聞いたことがありませんでした 母親の胎盤から 胎児が 化学物質も吸収すると知った時 私はこう考え始めました
私のお腹の赤ちゃんは何と言うかしら 来る日も来る日も 汚染にさらされている赤ちゃんは私たちに 何を言うのでしょうか
子ども:今日 私は オクチルフェノールと 人工香料と ビスフェノールAを与えられました
助けてください
私たち女性がこの関心事の 先頭に立っているという事は
大変重要なことです これは私たちの大問題です 一生をかけて これらの化合物を体内に蓄え それらを最終的に胎児に
負わせているのです 自分の子ども達を
汚染してしまっています 1年前 妊娠が分かった時に この事実を実感しました 最初の超音波診断で 赤ちゃんは エストロゲンに似ている物質に晒された為 先天性欠損があったと わかりました 2回目の診断の時には 心拍がありませんでした
自分の子どもを失った事で この映画を通し メッセージを伝える必要性を本当に感じました
意図したわけでなく 語り手が話しの一部になった事は 不思議な感じです 胎児が汚染された環境に 閉じ込められていると タイロンは話しました これは私の汚染された環境で
私の汚染された赤ちゃん
何という 悲しいことでしょう でも驚く事に この事はほとんど知られていません
興奮し光栄に思う理由の1つは 昨夜のディナー席での どなたかのスピーチに要約されます 「そばに座る男性に言ってください 私たち女性は あなた方男性を いつまでも護るでしょう」 実は 女性はずっと 男性を護って来ているのです カーソンの『沈黙の春』に始まり シーア・コルボーンの『奪われし未来』も サンドラ・スタイングラーバーの本
『がんと環境』も 『信頼を持つ』もしかり
次世代への繋がりのためでしょう 13年前の私の家内と娘のように - その繋がりのお陰で女性は よく この分野で 活動家になるのかもしれません
しかし危険にさらされるのは 女性や子どもだけではありません
アトラジンにさらされたカエルは ホルモンの不均衡のせいで 睾丸に多くの穴があき 精子を作れません 睾丸管が空になり 繁殖力が50%も 下がります
私の両生類の研究においてだけではなく ヨーロッパでは魚の研究で 同じような結果が見られます 南アメリカでは 睾丸に穴がある無精子の爬虫類 睾丸管に 精子がないネズミも見られます 人間では研究出来ませんが ある研究者が偶然発見したのは 精子の数や質の低い男性の 尿中アトラジンのレベルは
かなり高いということです こちらは 農業地帯に
住んでいる男性です 実際 農業をしている男性の アトラジンのレベルは より高くなっています
直接アトラジンが 肌に付く男性の尿は アトラジンのレベルが 普通の人の24,000倍にもなります もちろん 90%がメキシコ人です
アトラジンだけではなく
元々 神経ガスとして使われた クロロピクリンなどの
化学物質にも晒されています 労働者の多くの平均寿命は たったの50歳です
野生動物に起こっていることは レイチェル・カーソンらの言う通り 私たちへの警告です
ウガンダのナブガボ湖では 作物からの農業排水が 最終的にバケツに回収され 村の唯一の飲み水や料理 お風呂に使われます
この村の男性達に カエルの免疫機能が弱まり 睾丸には卵子があるという事を教えたら 環境と人間の健康との関係を 理解してもらえるでしょう
水中生物にひどい影響を 与えていることが分かれば 水を飲まないでしょう
私の村 オークランドでも 住人のほとんどは この関係に気づいていません
蛇口を開ければ安全な水が出て 私たちは 人間は環境の一部ではなく 環境の支配者であると思ってしまいます
これは環境の問題であると すぐに分かるでしょう
私はこの問題を懸念し ずっと考えています
私たちは地球温暖化や気候変化については よく分かっていますが 体内の環境保護については考えません
世界に撒き散らしている物の 影響は知っていますが 自分の体に 取り入れた時の影響に関する知識が 欠けています
私個人の考えを ここで述べたいと思います 私たち女性の役割は 伝達者として 行動をするだけではありません 子どもを産み 育てる性 家庭で消費の実権を握る私たち女性が 将来 タイロンのような世界中の 科学者の仕事を前進させるのです
覚えていてください 環境の問題とは 溶けている氷河や凍土の事だけではなく 私たちの子どもの問題でもあるのです
ありがとうございました | No, I'm just joking.
It's interesting, because it was six years ago when I was pregnant with my first child that I discovered that the most commonly used preservative in baby care products mimics estrogen when it gets into the human body.
to get a chemical compound from products into the human body through the skin.
And these preservatives had been found in breast cancer tumors. That was the start of my journey to make this film, "Toxic Baby."
And it doesn't take much time to discover some really astonishing statistics with this issue.
One is that you and I all have between 30 to 50,000 chemicals in our bodies that our grandparents didn't have.
And many of these chemicals are now linked to the skyrocketing incidents of chronic childhood disease that we're seeing across industrialized nations.
I'll show you some statistics.
So for example, in the United Kingdom, the incidence of childhood leukemia has risen by 20 percent just in a generation.
Very similar statistic for childhood cancer in the U.S.
In Canada, we're now looking at one in 10 Canadian children with asthma.
That's a four-fold increase.
Again, similar story around the world.
In the United States, probably the most astonishing statistic in autism and autistic spectrum disorders and other learning disabilities.
Again, we're seeing that trend across Europe, across North America.
And in Europe, there's certain parts of Europe, where we're seeing a four-fold increase Interestingly, one of those birth defects has seen a 200 percent increase in the U.S.
So a real skyrocketing of chronic childhood disease that includes other things like obesity and juvenile diabetes, premature puberty.
So it's interesting for me, when I'm looking for someone who can really talk to me and talk to an audience about these things, that probably one of the most important people in the world is expert in frogs.
Tyrone Hayes: It was a surprise to me as well that I would be talking about pesticides, that I'd be talking about public health, because, in fact, I never thought I would do anything useful.
Frogs.
In fact, my involvement in the whole pesticide issue was sort of a surprise as well when I was approached by the largest chemical company in the world and they asked me if I would evaluate how atrazine affected amphibians, or my frogs.
It turns out, atrazine is the largest selling product for the largest chemical company in the world.
It's the number one contaminant of groundwater, drinking water, rain water.
In 2003, after my studies, it was banned in the European Union, but in that same year, the United States EPA re-registered the compound.
We were a bit surprised when we found out that when we exposed frogs to very low levels of atrazine -- 0.1 parts per billion -- that it produced animals that look like this.
These are the dissected gonads of an animal that has two testes, two ovaries, another large testis, more ovaries, which is not normal ...
even for amphibians.
In some cases, another species like the North American Leopard Frog showed that males exposed to atrazine grew eggs in their testes.
And you can see these large, yolked-up eggs bursting through the surface of this male's testes.
Now my wife tells me, and I'm sure Penelope can as well, that there's nothing more painful than childbirth -- which that I'll never experience, I can't really argue that -- but I would guess that a dozen chicken eggs in my testicle would probably be somewhere in the top five.
In recent studies that we've published, we've shown that some of these animals when they're exposed to atrazine, some of the males grow up and completely become females.
So these are actually two brothers consummating a relationship.
And not only do these genetic males mate with other males, they actually have the capacity to lay eggs even though they're genetic males.
What we proposed, and what we've now generated support for, is that what atrazine is doing is wreaking havoc causing a hormone imbalance.
Normally the testes should make testosterone, the male hormone.
But what atrazine does is it turns on an enzyme, the machinery if you will, aromatase, that converts testosterone into estrogen.
And as a result, these exposed males lose their testosterone, they're chemically castrated, because now they're making the female hormone.
Now this is what brought me to the human-related issues.
that the number one cancer in women, breast cancer, is regulated by estrogen and by this enzyme aromatase.
So when you develop a cancerous cell in your breast, aromatase converts androgens into estrogens, and that estrogen turns on or promotes the growth of that cancer so that it turns into a tumor and spreads.
In fact, this aromatase is so important in breast cancer that the latest treatment for breast cancer is a chemical called letrozole, which blocks aromatase, blocks estrogen, so that if you developed a mutated cell, it doesn't grow into a tumor.
Now what's interesting is, of course, that we're still using 80 million pounds of atrazine, the number one contaminant in drinking water, that does the opposite -- turns on aromatase, increases estrogen and promotes tumors in rats and is associated with tumors, breast cancer, in humans.
What's interesting is, in fact, the same company that sold us 80 million pounds of atrazine, the breast cancer promoter, now sells us the blocker -- the exact same company.
And so I find it interesting that instead of treating this disease by preventing exposure to the chemicals that promote it, we simply respond by putting more chemicals into the environment.
PJC: So speaking of estrogen, one of the other compounds that Tyrone talks about in the film is something called bisphenol A, BPA, which has been in the news recently.
It's a plasticizer.
It's a compound that's found in polycarbonate plastic, which is what baby bottles are made out of.
And what's interesting about BPA is that it's such a potent estrogen that it was actually once considered for use as a synthetic estrogen in hormone placement therapy.
And there have been many, many, many studies that have shown that BPA leaches from babies' bottles into the formula, into the milk, and therefore into the babies.
So we're dosing our babies, our newborns, our infants, with a synthetic estrogen.
Now two weeks ago or so, the European Union passed a law banning the use of BPA in babies' bottles and sippy cups.
And for those of you who are not parents, sippy cups are those little plastic things that your child graduates to after using bottles.
But just two weeks before that, the U.S. Senate refused to even debate the banning of BPA in babies' bottles and sippy cups.
So it really makes you realize the onus on parents to have to look at this and regulate this and police this in their own lives and how astonishing that is.
PJC: With many plastic baby bottles now proven to leak the chemical bisphenol A, it really shows how sometimes it is only a parent's awareness that stands between chemicals and our children.
The baby bottle scenario proves that we can prevent unnecessary exposure.
However, if we parents are unaware, we are leaving our children to fend for themselves.
TH: And what Penelope says here is even more true.
For those of you who don't know, we're in the middle of the sixth mass extinction.
Scientists agree now.
We are losing species from the Earth faster than the dinosaurs disappeared, and leading that loss are amphibians.
80 percent of all amphibians are threatened and in come decline.
And I believe, many scientists believe In part, amphibians are good indicators and more sensitive because they don't have protection from contaminants in the water -- no eggshells, no membranes and no placenta.
In fact, our invention -- by "our" I mean we mammals -- one of our big inventions was the placenta.
But we also start out as aquatic organisms.
But it turns out that this ancient structure that separates us from other animals, the placenta, cannot evolve or adapt fast enough because of the rate that we're generating new chemicals that it's never seen before.
The evidence of that is that studies in rats, again with atrazine, show that the hormone imbalance atrazine generates causes abortion.
Because maintaining a pregnancy is dependent on hormones.
Of those rats that don't abort, atrazine causes prostate disease in the pups so the sons are born with an old man's disease.
Of those that don't abort, atrazine causes impaired mammary, or breast, development in the exposed daughters in utero, so that their breast don't develop properly.
their pups experience retarded growth and development because they can't make enough milk to nourish their pups.
So the pup you see on the bottom is affected by atrazine that its grandmother was exposed to.
And given the life of many of these chemicals, generations, years, dozens of years, that means that we right now are affecting the health of our grandchildren's grandchildren by things that we're putting into the environment today.
And this is not just philosophical, it's already known, that chemicals like diethylstilbestrol and estrogen, cross the placenta and effectively determine the likelihood of developing breast cancer and obesity and diabetes already when the baby's in the womb.
our other unique invention as mammals is that we nourish our offspring after they're born.
We already know that chemicals like DDT and DES and atrazine can also pass over into milk, again, affecting our babies even after their born.
PJC: So when Tyrone tells me that the placenta is an ancient organ, I'm thinking, how do I demonstrate that?
How do you show that?
And it's interesting when you make a film like this, because you're stuck trying to visualize science that there's no visualization for.
And I have to take a little bit of artistic license. Old man: Placenta control.
What is it?
Oh what?
Puffuffuff, what?
Perflourooctanoic acid. Blimey.
Never heard of it.
PJC: And neither had I actually before I started making this film.
And so when you realize that chemicals can pass the placenta and go into your unborn child, it made me start to think, what would my fetus say to me?
What would our unborn children say to us when they have an exposure that's happening everyday, day after day?
Child: Today, I had some octyphenols, some artificial musks and some bisphenol A.
Help me.
to know that we as women are at the vanguard of this.
This is our issue, because we collect these compounds our entire life and then we end up dumping it and dumping them into our unborn children.
We are in effect polluting our children.
And this was something that was really brought home to me a year ago when I found out I was pregnant and the first scan revealed that my baby had a birth defect associated with exposure and the second scan revealed no heartbeat.
So my child's death, my baby's death, really brought home the resonance of what I was trying to make in this film.
And it's sometimes a weird place when the communicator becomes part of the story, And so when Tyrone talks about the fetus being trapped in a contaminated environment, this is my contaminated environment.
This is my toxic baby.
And that's something that's just profound and sad, but astonishing because so many of us don't actually know this.
for me to be here at TEDWomen is that, well, I think it was summed up best last night at dinner when someone said, "Turn to the man at your table and tell them, 'When the revolution starts, we've got your back.'" The truth is, women, you've had our back on this issue for a very long time, starting with Rachel Carson's "Silent Spring" to Theo Colborn's "Our Stolen Future" to Sandra Steingraber's books
"Living Downstream" and "Having Faith."
And perhaps it's the connection to our next generation -- like my wife and my beautiful daughter here about 13 years ago -- perhaps it's that connection that makes women activists in this particular area.
But for the men here, I want to say it's not just women and children that are at risk.
And the frogs that are exposed to atrazine, the testes are full of holes and spaces, because the hormone imbalance, instead of allowing sperm to be generated, such as in the testis here, and fertility goes down by as much as 50 percent.
It's not just my work in amphibians, but similar work has been shown in fish in Europe, holes in the testes and absence of sperm in reptiles in a group from South America and in rats, an absence of sperm And of course, we don't do these experiments in humans, but just by coincidence, my colleague has shown that men who have low sperm count, low semen quality have significantly more atrazine in their urine.
These are just men who live in an agricultural community.
Men who actually work in agriculture have much higher levels of atrazine.
And the men who actually apply atrazine have even more atrazine in their urine, up to levels that are 24,000 times what we know to be active Of course, most of them, 90 percent are Mexican, Mexican-American.
And it's not just atrazine they're exposed to.
They're exposed to chemicals like chloropicrin, which was originally used as a nerve gas.
And many of these workers have life expectancies of only 50.
It shouldn't come to any surprise that the things that happen in wildlife are also a warning to us, just like Rachel Carson and others have warned.
As evident in this slide from Lake Nabugabo in Uganda, the agricultural runoff from this crop, which goes into these buckets, is the sole source of drinking, cooking and bathing water for this village.
Now if I told the men in this village that the frogs have pour immune function and eggs developing in their testes, the connection between environmental health and public health would be clear.
You would not drink water that you knew was having this kind of impact on the wildlife that lived in it.
The problem is, in my village, Oakland, in most of our villages, we don't see that connection.
We turn on the faucet, the water comes out, we assume it's safe, and we assume that we are masters of our environment, rather than being part of it.
that actually this is an environmental issue.
And I kept thinking over and over again this question.
We know so much about global warming and climate change, and yet, we have no concept of what I've been calling internal environmentalism.
We know what we're putting out there, we have a sense of those repercussions, but we are so ignorant of this sense of what happens when we put things, or things are put into our bodies.
And it's my feeling and it's my urging being here to know that, as we women move forward as the communicators of this, but also as the ones who carry that burden of carrying the children, bearing the children, we hold most of the buying power in the household, is that it's going to be us moving forward to carry the work of Tyrone and other scientists around the world.
And my urging is that when we think about environmental issues that we remember that it's not just about melting glaciers and ice caps, but it's also about our children as well.
Thank you. | {
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以上の重要な論拠が、成功する市場システムを構築するには、国家は基本的人権 (法の支配、個人資産の保障および正義の執行) を尊ばなくてはならない点にある。これらの基本的権利は民主主義政府の一部であり一面である。しかし経済発展にとっては、これら基本的権利は、平等な選挙権および真の政治的競争といった、民主主義の他の純粋に政治的な側面よりも、さらに重要なのである。 | These fundamental rights are part and parcel of democratic government. But when it comes to economic development, these fundamental rights are more important than other purely political aspects of democracy, such as universal suffrage and genuine political competition. | {
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「ケーテ、急いでくれ」
ヴァンパイアに占拠された村は、王都から徒間の距離があった。
ケーテが全力で飛べば十分ほどで到着できる。
「わかったのである!」
ケーテが加速を始めたとき、俺の通話の腕輪に反応があった。
『ロックさん。聞こえるか?』
腕輪から聞こえたのはフィリーの声だ。
狼の獣人族の集落に出かける前、俺はフィリーとミルカに通話の腕輪を渡してあった。
緊急時の連絡用である。
『王都に異変だ』
そこまでは予測の通りだ。
それは予測通りではない。そこまで悪い状況だとは思わなかった。
「位置と規模を教えてくれ」
俺がフィリーに尋ねると同時に、エリックが自分の通話の腕輪で各所に連絡を開始した。
国王直属の枢密院や、狼の獣人族が多く居る国王直属警護兵に命じて警戒させるためだろう。
『加護の穴の位置は王宮直上。規模は王宮をまるごと覆ってまだ余るほどだ。ロックさんの屋敷も穴の中だ』
俺の家まで穴の範囲内と言うことは、王宮と上位貴族の屋敷があるエリアには加護がないと考えるべきだろう。
横で聞いていたエリックが険しい表情になる。
ゴランも通話の腕輪で連絡を開始した。冒険者ギルドに指示を出しているのだろう。
「襲撃は?」
『それはわからぬ......』
「そうか。それならよかった」
わからないということは、フィリー、ミルカ、ニア、ルッチラは襲われていないと言うことだ。
それだけ、わかればひとまずは充分。
「フィリー。屋敷には俺が魔法をかけている。屋敷に引きこもれば当分は大丈夫だろう」
「神の加護の穴を塞ぐ方法は何か無いか?」
フィリーは錬金術の天才。どの宮廷錬金術士よりも知識も技量も優れている。
神の加護のコアには賢者の石が使われている。
その賢者の石を錬成できるのもフィリーぐらいだ。
『......ロックさんは、難しいことをいうのだな。絶対に出来るとは言わぬが......』
「それでもいい。大急ぎで何か考えてくれ。フィリーが出来ないなら他の誰にも無理だろう。諦める」
「俺の徒弟たち、ミルカ、ニア、ルッチラを頼む」
フィリーとの通話を終えると、次に俺はシアの通話の腕輪に繋げた。
シアは狼の獣人族の族長。それゆえエリックから通話の腕輪を支給されているのだ。
そして、シアとセルリスはエリックの娘と遊ぶために王宮に行くと言っていた。
今、王宮にいる可能性が高いのだ。通話できれば王宮の現状がわかるかもしれない。
「シア! 聞こえるか?」
応答がない。何か話しているのかも知れないが、雑音がひどすぎて聞き取れない。
「シア! 聞こえたら応答してくれ!」
『――――ザ......ザザ......』
俺とシアとの通話がつながらないことがわかると、エリックが言う。
「やはり応答がないか?」
「ああ。王宮の直属警護兵や枢密院に連絡がつかん」
「そういうことか。神の加護に穴を開けただけでなく、通信魔法を妨害する結界を張ったんだろう」
「普通に考えたら無理だと思うが、いや、ロックがいうなら出来るんだろうけどな......」
エリックとゴランも、疑っているわけではないが信じられないといった表情だ。
「そう簡単にできることじゃない。恐らくは例の内通者が長い時間をかけて仕掛けたんだろう」
フィリーを助け出したときから、王宮に内通者がいることはわかっていた。
枢密院が全力で調べてくれていたが、いまだに見つけ出すことは出来ていなかった。
「なんということだ」
エリックは聖剣の柄を強く握りしめていた。
「落ち着け。エリック」
とはいうものの、妻レフィや娘シャルロットとマリーが、王宮にいるのだ。
「ああ、わかっている。俺は落ち着いているさ」
それでもエリックは、無理をしてにやりと笑って見せた。
「もう少しで到着するのである!」
ケーテが叫ぶ。
全力で飛んでくれたおかげで、王都が見え始めた。
王宮の周辺は地面から上空まで、濃い霧が立ちこめていた。
「......なんだあれは? ただの霧ではなかろうが......」
エリックとゴランが俺の方を見る。
「調べてみよう」
俺は魔力探知と魔力探査を発動させる。
霧の正体と神の加護の状態、あるならば邪神の加護の状態も把握しておきたい。
「調べたが、わからない。魔法を妨害する何かなのは間違いないが」
だが、神の加護がないのも間違いなさそうだ。
「エリック。神の加護のコアはどこにあるんだ?」
神の加護のコアの位置については国家の最高機密である。
とはいえ、神の加護のコアに近ければ近いほど神の加護の影響は強くなる。
だからなんとなく俺にも位置はわかっている。
「王宮の奥深くだ。具体的には俺の居室の天井にある」
「神の加護の中心と、加護の穴の中心のずれを観測している」
神の加護は完全に無効化されているわけではない。
王都の大半はいまだ神の加護の保護下にある。
「コア自体を無効化しているわけではなく、神の加護の影響を排除するなにかがあるんだろう」
エリックたちに話しながら、俺は調べていく。
その間にもケーテは飛び続け、どんどん王宮との距離が近づいていった。
「見つけた!」
俺は丹念に計算し、加護に大穴を空けているその中心の位置を暴き出した。 | “Kathe, please hurry.”
The village that had been overrun by vampires was two hours away from the royal capital on foot.
If Kathe flew at full speed, she should be able to arrive in ten minutes.
“I know!”
Just as Kathe began to accelerate, my communications bracelet reacted.
‘Mr. Locke. Can you hear me?’
“What happeed?”
I could hear Philly’s voice coming from the bracelet.
Before leaving for the beastkin wolf settlement, I had given Philly and Milka the bracelets.
It was for emergency communication.
‘Something is happening in the royal capital.’
I had expected this.
I did not expect that. I didn’t think that things would be that bad.
“Tell me the location and scale.”
As I talked to Philly, Eric used his own bracelet to contact others as well.
The privy council directly under him, and the royal guards, which had a lot of beastkin wolves. He was likely giving them orders to be on guard.
‘The hole is directly above the royal palace. As for the size, it is more than big enough to cover the palace. In fact, your mansion is inside as well, Mr. Locke.” “I see. That is very big.”
If even my house was in range, that means the palace and entire nobles district was no longer protected.
Eric looked at me grimly when he heard this.
Goran also started to contact others with his bracelet. He was probably giving orders to the Adventurers Guild.
“Has there been an attack?”
‘I do not know...’
“I see. That’s good.”
If they didn’t know, it at least meant that Philly, Milka, Nia and Luchila had not been attacked.
That was enough for me at this time.
“Philly. I have casted magic on the mansion. You should be safe as long as you stay inside.” ‘I know.’
“Is there any way to close the hole in the divine protection?”
Philly was a genius alchemist. She had more skill and knowledge than the alchemists in the palace.
Besides, the divine protection used the sage’s stone as its core.
And Philly was the only one who could craft those.
‘...Mr. Locke, it is harder than it sounds. I won’t say that I’m sure I can do it, but...’
“That’s fine. Just think of something quickly. If you can’t do it, then no one can. We will have to give up.” ‘Very well. I will do my best.’
“Take care of my apprentices, Milka, Nia and Luchila.” ‘Yes. I will do my best for them as well.’
I finished my communication with Philly and then contacted Shia next.
Shia was one of the chiefs of the beastkin wolves. And so Eric had given her one of the bracelets.
Also, Shia and Serulis had said that they were going to the palace to play with Eric’s daughters.
It was likely that they were at the royal palace right now. And so if I could contact them, I might be able to find out about the situation in the palace.
“Shia! Can you hear me?”
‘...zazaza...zaa...’
There was no reply. Perhaps she was saying something, but there was too much noise, and I couldn’t hear.
“Shia! Answer me if you can hear!”
Once Eric saw that I couldn’t connect to Shia, he said,
“So there is no reply for you either?” “You either? Is it the same for you too?”
“Aye. I can’t connect to the guards or the privy council.” “Is it only within the palace?” “Yes. I was able to contact departments outside of the palace. I’m sending them to the palace right now.” “What about you, Goran?”
“I am able to contact the others. I’m sending our best Adventurers to the palace now.” “I see. So not only did they make a hole in the divine protection, but they put up some kind of barrier that obstructs communication magic.” “They can do such a thing?”
“Normally, it would be impossible. Well, I suppose Locke could do it...”
While Eric and Goran weren’t doubting me, they were very surprised.
“It’s not that easy to do. I believe it was something done over a long period of time by the informers within.”
Ever since we had helped Philly, we were aware that there were informers within the palace.
The privy council was doing its best to look into it, but they had not been able to find the culprits.
Eric tightly gripped the handle of his holy sword.
“Calm down, Eric.”
That being said, his wife Lefy and daughters, Charlotte and Marie were in the palace.
“Aye, I know. I am calm.
Still, Eric forced a smile.
“We are almost there!”
Kathe shouted.
Thanks to her flying at top speed, the palace was now within view.
The area surrounding the palace was filled by a thick fog from the ground up into the sky.
“...What is that? It can’t be ordinary fog...” “Locke. Do you know what is happening?”
Eric and Goran looked at me.
“I’ll check.”
And then I activated Magic Exploration and Magic Detection.
I wanted to know what the fog was, as well as the condition of the divine barrier. And if there was an evil god protection, I wanted to know about that as well.
“I checked, but I can’t tell. There must be something that is obstructing my magic.” I could not even tell if there was an evil god protection.
However, it was clear that there was no divine protection.
“Eric. Where is the divine protection core?”
The location of the core was the highest state secret.
That being said, the closer you were to the core, the stronger the effect of the divine protection.
And so even I had a vague idea of its location.
“It’s deep into the palace. To be precise, the ceiling of my room.” “I see.” “Does that tell you anything?”
“I’m measuring the distance between the center of the divine protection and the hole.”
The divine protection wasn’t nullified completely.
And so a large part of the royal capital was still under its protection.
“So the core itself is not nullified. There is just something to get rid of its effect.”
I said to Eric and Goran as I continued to search.
In the meantime, Kathe continued to fly us closer to the palace.
“I found it!”
After careful calculations, I found the location of the thing that was making a hole in the protection. | {
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物の操作や 人とのやりとりができる コンピューターの力を 画面の中から 我々のいる 物質世界に引っ張り出す— という話をしたいと思います
何年か前に 高級ファッションの バーニーズ・ニューヨーク という店から 電話をもらって 店のショーウィンドウで使う 動く彫刻を 作ることになりました
「チェイス」という作品で
男物と女物の 2組の靴があり それが このゆっくりとして 緊迫感のある ドラマを演じます 男が女の後を追い 近づきすぎると 彼女はまた距離を置きます
靴には磁石が仕込んであって テーブルの下の磁石で 靴を動かしています
友人のアンディ・キャバトータが ビョークの 「バイオフィリア」ツアーのために ロボット・ハープを作っていたんですが そのハープを動かし 音楽を奏でるための 電子回路と制御ソフトを 私が作ることになりました
このハープには 4つの振り子があり それぞれの振り子に 11の弦があって 振り子は振れると同時に 回転することで いろいろな音を出します それぞれのハープは ネットワークで繋がり 正しい音と 正しいタイミングで 曲を弾けるようになっています
シカゴ科学産業博物館のために インタラクティブな化学の展示を 作りましたが それはホッケーパックのような 物を使い 周期表から元素を取り出して 組み合わせ 化学反応を起こす という趣向のものでした
博物館は 見学者が多くの時間を この展示に費やしている ことに気付き オーストラリアの 科学教育センターから来た研究者が いったいどういうことなのか 調べることになりました
そして分かったのは 手で動かせる物があることが どう使うのか 理解するのを助け また他の人と一緒に学ぶよう 促すということです
これは理にかなったことです それ専用に作られている物の方が インターフェースとして使いやすいのは 当然でしょう
私たちの手や頭というのは 触れられる物について 考え 扱うことに 最適化されています
本物のキーボードと スマートフォンの 画面上のキーボードとで どちらが使いやすいか 考えてみてください
しかし これらの— プロジェクトを通して 痛感したのは そういう物は 一から作らねばならないことです エレクトロニクスのレベルまで 降りていって プリント基板に始まって 機械仕掛けやソフトウェアまで 作る必要があるのです コンピューター制御下の 物を動かすという 概念に基づいて さまざまな相互作用を 生み出すような作品を 毎回すべて一から作らずに
実現できるようにするものを 作れないかと思いました
私が最初にした試みは MITメディアラボで 石井裕教授の元 512 個の電磁石を 碁盤目に並べ その上で物を 動かせるようにする というものでした
問題は これらの磁石が 1万ドル以上もすることです
個々の磁石は 小さなものですが 合わせると すごく重くなって 机がたわんでしまう という問題もありました
このような操作を どんな机の上でも できるようにするものを 作りたいと思いました
このアイデアの 可能性を探るため 小さなロボットを たくさん作りました それぞれのロボットには オムニホイールという
特別な車輪がついていて どの方向にも自由に 動けるようになっています このロボットを プロジェクターと 組み合わせることで デジタル情報を操作する
形のある物としてのツールを 作ることができます 例をご覧に入れましょう
これはビデオ編集アプリで ビデオの操作はすべて 手触りのある物を 通して行います
色を調整したいと思ったら 色編集モードに入り 3つのダイアルで 色を調整します 音を調整する時も 手で操作する ダイアル2つで行います
左右のチャネルは 同期していますが 別々の設定にしたければ 両方のダイアルを同時に動かすことで 指定できます
これらのダイアルを 使うことによる スピードや効率と ソフトウェアで作るシステムの 柔軟性と汎用性を
併せ持ったものを作ろうというのが ここでのアイデアです これは災害対応のための
マッピングアプリです 警官や消防車や 救助隊を表す 駒として このロボットを使い 通信指令室で それを— マップの上で動かすことで 部隊に行き先の指示を出し マップ上の駒の位置は 対応する部隊の 実際の位置と同期します 対応する部隊の 実際の位置と同期します
これはビデオチャットアプリですが
物にちょっとした 動きを付けることで どれほど感情表現ができるかは 驚くほどです どれほど感情表現ができるかは 驚くほどです
このインターフェースによって 従来のボードゲームと アーケードゲームの間の 様々な可能性が開けます 物を使った対話が 非常に異なるスタイルの 遊び方を 可能にするからです
私がこの応用として 特に面白いと思うのは コンピューターだけ あるいは 人間だけでは 解くのが難しい問題に 適用した場合です
1つの例は タンパク質の折り畳み問題です
このインターフェースでは 画面の中のタンパク質に 手でつかめるハンドルを付け それを使って タンパク質を動かすことで
様々な畳み方を 試すことができます 分子シミュレーション上 無理な動かし方を しようとすると 触覚的なフィードバックがあり ハンドルが動きに抵抗するのを
実際に感じることができます 分子シミュレーションが どうなっているのか 体で感じ取れる点で 全く異なる関わり方が 可能になっています
身の回りにある 物の動きを ソフトウェアで制御したら どんなことが— 可能になるかという探求は まだ始まったばかりです
未来のコンピューターは このようになっているかもしれません
タッチスクリーンはなく
目に見えるハイテクなものは 何もありません
しかしビデオチャットや ゲームや 次のプレゼンの— スライド作りをやろう という段になったら テーブルの上の物に 命が吹き込まれるのです
どうもありがとうございました | A few years ago, I got a call from a luxury fashion store called Barneys New York, and the next thing I knew, I was designing storefront kinetic sculptures for their window displays.
This one's called "The Chase."
There are two pairs of shoes, a man's pair and a woman's pair, and they play out this slow, tense chase in which the man scoots up behind the woman and gets in her personal space, and then she moves away.
Each of the shoes has magnets in it, and there are magnets underneath the table that move the shoes around.
My friend Andy Cavatorta was building a robotic harp for Bjork's Biophilia tour and I wound up building the electronics and motion control software to make the harps move and play music.
The harp has four separate pendulums, and each pendulum has 11 strings, so the harp swings on its axis and also rotates in order to play different musical notes, and the harps are all networked together so that they can play the right notes at the right time in the music.
I built an interactive chemistry exhibit at the Museum of Science and Industry in Chicago, and this exhibit lets people use physical objects to grab chemical elements off of the periodic table and bring them together to cause chemical reactions to happen.
And the museum noticed that people were spending a lot of time with this exhibit, and a researcher from a science education center in Australia decided to study this exhibit and try to figure out what was going on.
And she found that the physical objects that people were using were helping people understand how to use the exhibit, and were helping people learn in a social way.
And when you think about it, this makes a lot of sense, that using specialized physical objects would help people use an interface more easily.
I mean, our hands and our minds are optimized to think about and interact with tangible objects.
Think about which you find easier to use, a physical keyboard or an onscreen keyboard like on a phone?
But the thing that struck me about all of these different projects is that they really had to be built from scratch, down to the level of the electronics and the printed circuit boards and all the mechanisms all the way up to the software. I wanted to create something where we could move objects under computer control and create interactions around that idea without having to go through this process
of building something from scratch every single time.
So my first attempt at this was at the MIT Media Lab with Professor Hiroshi Ishii, and we built this array of 512 different electromagnets, and together they were able to move objects around on top of their surface.
But the problem with this was that these magnets cost over 10,000 dollars.
Although each one was pretty small, altogether they weighed so much that the table that they were on started to sag.
So I wanted to build something where you could have this kind of interaction on any tabletop surface.
So to explore this idea, I built an army of small robots, and each of these robots has what are called omni wheels.
They're these special wheels that can move equally easily in all directions, and when you couple these robots with a video projector, you have these physical tools for interacting with digital information.
So here's an example of what I mean.
This is a video editing application where all of the controls for manipulating the video are physical.
So if we want to tweak the color, we just enter the color mode, and then we get three different dials for tweaking the color, or if we want to adjust the audio, then we get two different dials for that, these physical objects.
So here the left and right channel stay in sync, but if we want to, we can override that by grabbing both of them at the same time.
So the idea is that we get the speed and efficiency benefits of using these physical dials together with the flexibility and versatility of a system that's designed in software.
And this is a mapping application for disaster response.
So you have these physical objects that represent police, fire and rescue, and a dispatcher can grab them and place them on the map to tell those units where to go, and then the position of the units on the map gets synced up with the position of those units in the real world.
This is a video chat application.
It's amazing how much emotion you can convey with just a few simple movements of a physical object.
With this interface, we open up a huge array of possibilities in between traditional board games and arcade games, where the physical possibilities of interaction make so many different styles of play possible.
But one of the areas that I'm most excited about using this platform for is applying it to problems that are difficult for computers or people to solve alone.
One example of those is protein folding.
So here we have an interface where we have physical handles onto a protein, and we can grab those handles and try to move the protein and try to fold it in different ways.
And if we move it in a way that doesn't really make sense with the underlying molecular simulation, we get this physical feedback where we can actually feel these physical handles pulling back against us.
So feeling what's going on inside a molecular simulation is a whole different level of interaction.
So we're just beginning to explore what's possible when we use software to control the movement of objects in our environment.
Maybe this is the computer of the future.
There's no touchscreen.
There's no technology visible at all.
But when we want to have a video chat or play a game or lay out the slides to our next TED Talk, the objects on the table come alive.
Thank you. | {
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世界は時に容易く崩れ、温かな寝床にも寒風が吹き込む。
「また侵入者かよ、しかもまたカファルが居ないタイミングで」
その日、ルシェラはまたしても自分の行動圏内に立ち入る冒険者を発見した。
先日出遭った“青旗”なるパーティーは、ドラゴンの巣の近くは立ち入り禁止のままだと言っていたはずだが、実際どの辺までが立ち入り禁止かは曖昧らしい。
そもそも調査に入るのさえ危険な山なので、正確な地形を把握しがたく、どこからどこまでが立ち入り禁止だと言うのも難しいからそうなったらしいが。
にしてもドラゴンの巣からはっきり見えるほどの場所で炊事をして煙を立てるなんて不用心すぎるだろうと、木々の合間から立ち上る煙を見てルシェラは思った。
「おいおい、強い魔獣はだいたい頭もいいんだぞ、こんなの見つけてくれって言ってるようなもん......」
木々を掻き分け、斜面を駆け下り、煙の真下にルシェラは向かう。
そこには誰も居なかった。
――なんだ? 炊事の煙じゃない。狼煙?
ただ薪を燃やしただけではあり得ないような煙の立ち方で、狼煙にするための薬か何かが燃やされたのだと思われた。
その時だ。
『君が、ルシェラかい?』
「うわあ!?」
幽霊のような青白い人影が、突如、焚き火の傍らに立った。
「幻影の魔法......? いや、マジックアイテムか?」
その男は、鋼の山脈みたいな重厚な鎧を着ていた。
『このような形で誘いだしてしまってすまない。どうしても話がしたかったんだ』
「誰だ、あんた」
『冒険者パーティー“黄金の兜”、リーダーのティム。
青白い幻像が話すのと被さって、どこか離れた場所からも声が聞こえた。マジックアイテムによって姿と声を届けているらしい。
おそらく、狼煙に惹かれてルシェラ以外の何かが来てしまったら危ないから、自らが狼煙の下で待つのではなく魔法による遠隔会話の準備をしていたのだろう。
「俺が助けた冒険者......あの“青旗”ってパーティー?」
『そうそう、彼女らだ。
その件で君にお礼をしに来た。まあ、お礼になるか分からないが......
鎧男は兜の面覆いを持ち上げる。割と渋い顔だった。
彼は渋い顔を更に渋く歪め、凜々しく太い眉をぐっと寄せる。
もし、彼女の養い子だという君が、彼女を大切に思うのであれば、落ち着いてよく話を聞いてほしい』
“黄金の兜”組のパーティーだった。
のティム。メタリックに青く輝く、山脈のように重厚な全身鎧を身に纏い、巨人用のナタみたいな大剣を背負った男だ。兜だけは何故か金メッキがされている。
のウェイン。目を覆う仮面に黒シルクハット、そして黒マントという、どう見ても山を歩く格好ではない怪盗スタイル。こんな重苦しい出で立ちなのにどこか軽薄な雰囲気が漂う男だ。
、ビオラ。ビン底を切り抜いたみたいな眼鏡を掛けた彼女は、野暮ったさを砂糖で煮詰めてジャムにしたかのようなローブと、辛うじて魔女っぽい濃紫の上着を身につけていた。腰のベルトにはなんだかよく分からない道具がいくつも収まっている。
狼煙を揉み消し、岩陰の隠れ場所にルシェラを呼んだティムは、挨拶もそこそこに話を切り出す。
「このクグセ山は国境の山なんだが、知ってるかな」
「えっと......」
このクグセ山は東西に広がる山脈地帯の一部。南北を隔てる国境線でもある。
――うん、出来事の記憶に比べると知識は消えてないんだよな。
カファルに名前を貰ったとき、ルシェラは自分自身に起こった過去の出来事や、出遭った人々に関する記憶をほとんど失った。
しかし、そういった個人的な出来事とは別の『知識』とでも言うべき区分の記憶は概ね無傷だった。
「北には大国マルトガルズ、南には水の国セトゥレウ」
「生まれも育ちも山ってわけじゃないんだ。外の事情も知ってる」
ティムは頷いて、表情をますます渋くする。
「では、マルトガルズがレッドドラゴンを、つまり君が言う所の『カファル』を排除してクグセ山を越え、セトゥレウへ攻め込もうとしていることは知っているかな?」
その衝撃を受け止めるきるまでに一秒。
時が止まったかのようにいつまでも続くかと思われた、奇妙だけれど穏やかで幸せな生活は、揺らぐ。
「知らない......」
「こいつは実際、最近のことだ。
......マルトガルズは東で長いことグファーレ連合と戦争をしてる。そのグファーレが南の友好国から支援を受けるための命綱がセトゥレウだ。セトゥレウはあくまで物と人の通り道になってるだけの第三者って立ち位置だが、戦争がここまで泥沼になったのはセトゥレウあってこそだな。
マルトガルズにとっちゃ目の上のたんこぶだし、戦力差を考えればすぐ潰せる相手だ。しかも地図上では隣接してる。だのにずっと、魔境・クグセ山に阻まれてセトゥレウに攻め込めなかった」
「それがなんで、急に?」
ただ純粋に聞いたのだけれど、ティムはもうただでさえ渋い顔を、草団子に生の虫を添えて食ったかのように渋くした。
「それに関してはこちらこそ聞きたい。この山で何が起こってるんだ?」
「......え?」
そう簡単にクグセ山に入れなかったのは『変異体』がわさわさ居たからだよ。少人数で忍び込むならまだしも、軍隊なんぞ通そうとしたら確実に大惨事になる。
ルシェラの中で、全てが繋がった。
「減った......」
歯車が噛み合うように。
あるいは、噛み合っていた歯車が、ネジ一つ緩んだことで連鎖的に崩壊するかのように。
ルシェラは理解した。
「狩ったんだ、カファルが......俺に食わせるために......」 | The world could easily collapse at times, and a cold wind could blow even into a warm bed.
“Intruders? And when Kafal’s away again.”
That day, Lucella once again discovered adventurers trespassing in his home range.
The party called Blue Flag that he met the other day said that the dragon nest’s vicinity was still off-limits, but the strict border was apparently still vague.
In the first place, it was hard to grasp its accurate terrain as even just investigating this mountain was dangerous as is, so it was hard to say where the off-limits area stretched.
Nevertheless, it was still too careless to start cooking and raising smoke in a place which they could actually see from the dragon’s nest, Lucella thought as he looked at the smoke rising from between the trees.
“Come on now. Strong magic beasts are generally clever, so you’re basically telling them to come and find you...”
Lucella headed to the source of the smoke, pushing his way through the trees as he went down the slope.
But he couldn’t find anyone there.
—What the? This isn’t cooking smoke. Is it a smoke signal?
There was a meager bonfire set up in a somewhat open field and the smoke was rising from it. But it was smoking in a way that was impossible by just burning firewood, it was smoking due to some drug or something which was used for smoke signals. The question still stood— for what?
It was at that moment.
“Are you Lucella?”
“Woah?!”
A pale-bluish humanoid ghost-like figure suddenly appeared next to the bonfire. But it didn’t seem like it was a ghost that mistook when to appear or anything. There was a small box-like thing on the grass with a lens attached to it. The pale-bluish figure of a man was projected through it.
“Illusion magic...? No, is this a magic item?”
The man wore solid armor like a steel mountain range. He was most likely an adventurer.
“I’m sorry for leading you here like this. I had something I had to talk about.”
“Who are you?”
“I’m the leader of an adventurer party called Golden Helmet, Tim. I’m a senior... or rather, a friend, of the adventurers that you saved the other day.”
As the illusion talked, a voice was reaching from somewhere in sync. He seemed to be projecting his form and voice using the magic item.
Most likely, he judged that it would be dangerous if anything other than Lucella came, so instead of waiting under the smoke, he prepared a way to converse from a distance using magic.
“The party I saved... You mean that party called Blue Flag?”
“Yeah, that’s the one. I came to thank you for that. Though, well, I’m not sure if this will serve as repayment... but I came to tell you something important.”
The armored man raised the visor of his helmet. He had quite a stern face.
His stern face grew even sterner and moved his thick brows together.
“A danger is approaching the mountain queen. If you, her foster child, treasure her, then I want you to stay calm and listen.”
Golden Helmet was a party of three.
Their leader was the fighter, Tim. He was a man clad in full-body armor that was as solid as a mountain range which shone in metallic blue, and carried a large sword on his back which looked like a giant cleaver.
The second member was the thief, Wein. He wore a mask over his eyes, a black top hat, and a black cloak—a phantom thief getup which was clearly not suitable for mountain travel. Despite his gloomy getup, he gave off quite a frivolous atmosphere.
And finally, the sole woman, the wizard, Viola. She wore glasses that looked like they were cut off from the bottom of the bottles, a robe that seemed like someone took the word unfashionable and boiled it into a jam with sugar, and a purple coat that was just barely qualified to be called witchy. She had several tools of questionable nature fitted into her belt.
After smothering the signal smoke and calling Lucella to the hiding place behind a rock, he cut the introductions short and got to the point.
“This Mount Kuguse is a mountain on the national border. Do you know about that?”
“Uhh...”
Lucella recalled a map in his head. Mount Kuguse was part of the mountain range zone that stretched east and west. It was also a border separating south and north.
—Yeah, looks like my knowledge itself isn’t gone, unlike those related to the incident.
When he received a name from Kafal, Lucella had lost most of the memories related to the past events and people he had met.
However, the memories that could be classified as ‘knowledge’ separate from personal matters were mostly retained.
“There is the major nation Maltgartz in the north and the water kingdom Setulev in the south.”
“Oh, so you know.”
“It’s not like I was born and raised on the mountain. I know about the outside circumstances.”
Tim nodded and his expression grew increasingly stern.
“Then, do you know that Maltgartz plans to eliminate the red dragon, in other words, who you call “Kafal,” cross the mountain and invade Setulev?”
It took a second for him to process it. And one second to be hit with the shock.
Their strange yet peaceful and happy life which seemed like it would last forever as if time had stopped was no longer stable.
“I didn’t know...”
“This is something very recent.
...Maltgartz has been in a long war with the Gufare Union of the east. The lifeline for that union for receiving aid from friendly southern kingdoms is Setulev. Setulev is merely a third party that acts as a passage for people and things, but it’s because of their existence that the war situation has reached this quagmire.
Maltgartz considers it a thorn in their side, and they can crush them easily considering the difference in war power. Not to mention, they are adjacent geographically. And yet, the demonic region of Mount Kuguse has been preventing them from attacking Setulev.”
“But why so suddenly?”
He asked it purely as a question, but Tim’s already stern expression turned even worse as if he ate a grass dumpling garnished with living bugs.
“We’re the ones wanting to ask that. Just what is going on in this mountain?”
“...Huh?”
“Places where dragons live are rampant with powerful Variants. Monsters that undergo abnormal mutations after eating the scattered scales, fangs, and feces of the dragons...or being exposed to their dragon aura. The reason why they couldn’t enter Mount Kuguse was that those Variants were crawling here. It was one thing to sneak in with a few people, but doing so with an army would’ve certainly ended in a great disaster. But lately, those Variants suddenly decreased.”
Everything connected in Lucella’s head with that.
“Decreased...”
It was as if the gears meshed together.
Or perhaps, as if those meshed gears started collapsing in a chain after a single screw came loose.
Lucella understood everything.
“Kafal... hunted them... to feed them to me...” | {
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「さあね」
というか、歩きながら本を読むのは危ないからやめた方が良いわよ。
私がそう言おうとした瞬間にいきなり体がふわっと浮かんだ。
「へ?」
いつの間にか私の腰には逞しい腕が回っている。片腕で私を持ち上げるなんてどんな筋肉しているのよ。
後ろから甘く透き通った声が私の耳に響く。
顔は見えないが、逞しい背中は視界に入る。
「逃げるだろ?」
ああ、後ろから話しかけないで欲しいわ。色気の増したデューク様を相手するのは難しいのよ。
初めて会った時のまだ少しだけ少年っぽさが残っている時に戻ってくれないかしら。
「ジル、アリシアを少し借りるぞ」
ジルっ! まさか裏切るなんて!間で本当に全く可愛げがなくなったわね。
せめて本から目を離して欲しいわ。私より本が大事なの?
それとも、デューク様を信用しているからかしら......。
「ジルの承諾も得られたし行くぞ」
「どこに!?」
デューク様はそう言って私をすぐ横にある小部屋に連れ込んだ。あまりの強引さに声もでない。
机に椅子の本当に何にもない部屋。ここで何をするのかしら......。
デューク様が私が出て行かないように腕を組みながら扉にもたれて、立っている。
どうしてそんなに偉そうなのよ。
私は軽く睨みながらそう言った。
「話があるのはアリシアの方なんじゃないか?」
「え?」
「昨日、何か俺に言いたそうにしていただろ」
嘘でしょ、どうして分かったのかしら。......出来るだけ気持ちは表情に出さないようにしているのに。
「えっと......聞きたい事が結構多くて」
「それは楽しみだな」
私が少し躊躇っていると意地悪そうにデューク様が微笑んだ。
......本当に嫌だわ、この人。
私は軽くため息をついた。
とりあえず、何から話せばいいのかしら。ウィルおじいさんの話はジルがいた時の方がいいけど......そのジルが私じゃなくて本を取ったのよね。今は多分本に夢中だから邪魔しない方がいいし。
結局分からなかったのよね。......実際ヘンリお兄様はデューク様が殺している所を見たのかしら。
「あの......」
私が聞く前にデューク様は真剣な瞳でそう言った。
......デューク様は私の脳を見るコンタクトレンズでもつけているのかしら。
というか、今殺してないって言ったわよね?
私は目を瞠ったままデューク様を見つめた。 | Hey now. Can’t you at least pretend that you’re paying a bit of attention to me....? It’s dangerous to read while walking anyway. So closing the book while we’re still moving shouldn’t be that unreasonable, right? What an un-cute little boy.
I’m about to give him a piece of my mind when suddenly I find my feet lifting off the ground.
“Huh?”
Without my noticing, a sturdy arm had encircled my waist and lifted me into the air. Just how strong is he to be able to lift me so easily with only one arm!?
“You really are tiny,” a silky sweet voice murmurs from behind my head. He’s so close that I can feel his breath on my neck as he speaks. I wish he wouldn’t whisper into my ear like that!
Although I can’t see his face, I have a very good view of his wide, well-muscled back.
“Please put me down,” I say, miffed.
“But then won’t you just run away?”
Ahh, like I said! Don’t talk from behind me like this. Your breath tickles!
“Gilles, I’ll be borrowing Alicia for a bit.”
“Sure. Go ahead.”
Gilles–! To think that you’d betray me like this! You’ve seriously lost all hints of cuteness since I’ve been gone!
And won’t at least spare me a glance now? Now that I’m being bodily stolen away!? Shouldn’t my safety at least be more important to you than that book?
Or does he just trust Duke-Sama that much.....?
“Since I’ve gotten Gilles’s consent, let’s go.”
“Go where!?”
As soon as he spoke, Duke-Sama started walking towards one of the classrooms just off to the side of the hallway. He didn’t answer me as he opened the door and carried me in.
Once the two of us are safely inside, the door shut behind us, he graciously lets me down. He then stations himself in front of the only door and proceeds to casually lean against it, his arms crossed over his chest.
Grr. What makes him think he can go around acting so high-and-mighty?
After a quick survey of the room, I note that it’s almost completely empty. There’s a single desk, four chairs, and that’s it. I really can’t imagine what he could have brought me here to do....
I look at him questioningly, but he just returns my gaze. I’m the first to break the silence.
“Nothing. Rather, aren’t you the one with something to say to me?”
“Huh?”
“You seemed like you had something you wanted to talk to me about yesterday,” Duke-Sama says coolly while gazing at me as if he can see right through me.
No way. How did he know....? I thought I had been doing a decent job of maintaining an impassive expression yesterday!
“Uhh..... I have quite a few things that I’d like to ask you actually.”
“Oh? Sounds interesting.”
As I hesitate, a merciless, teasing smirk spreads across Duke-Sama’s face.
.....Urgh, this man is really.... so frustrating!
A small sigh escapes my lips.
For now, where should I start? I’d like to ask about Grandpa Will, but I should probably do that when Gilles’s around too.... and I’ve already seen where his priorities lie for now. He chose his book over me. Nope, it’s probably best not to try and get in between him and his precious book at the moment.
Hm, then the next thing I’m most curious about is how he killed those people who were going around badmouthing me. In the end, I have no idea what really became of them.... Did Henry-Oniisama actually see Duke-Sama killing them?
“Umm.....”
“I didn’t kill anyone,” Duke-Sama says before I can even formulate the question. As he speaks, his eyes look seriously into mine, all traces of his rakish smile from before gone.
.....Is he wearing a pair of contact lenses that give him the power to pick my brain or something? How did he know that’s what I wanted to ask!?
Wait, did he just say that he didn’t kill anyone?
My eyebrows shoot up and my eye goes wide as I stare at him. | {
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ちょっとずつではあるが謎が解けてきている。
国王と謁見したあの日、じっちゃんは国王と交渉をした。貧困村の村人達を解放することを受け入れさせた。
彼らに反乱を起こさせない為にも、先にあの村から解放するべきだと言ったが、国王はなかなか首を縦に振らなかった。
得体のしれない人間をいきなり解放したら、国王の命が危ない可能性は十分にある。実際僕も、村人全員を信用しているわけではない。
彼らの中には国王の暗殺を企てている人間もいるかもしれない。
だが、「全ての責任はわしがとる」といで国王はじっちゃんの要求を承認した。
じっちゃんのその台詞はとても重く、誰も何も言い返せないほどの威圧があった。今まで見てきた彼とは全く違った。
僕はチラリと横を見る。並々ならぬオーラを漂わせた人間も立っている。彼らの存在に圧倒されそうだ。
こんな薄汚い森の中の貧困村の入り口にどうしてこんな高貴な人間が二人もいるんだ。
ここにいるのは息子の方だし。そりゃ国王がわざわざ貧困村に足を運ぶとは思っていなかったけど......。
「霧の壁の魔法を解くには国王の力が必要だって言ってたのに......」
「俺じゃ悪いか?」
デュークは特に気分を害した様子もなく、僕の方に顔を向ける。
「いや、けど、何か、こんなに大きな国の変化を国王がしなくてもいいのかなって思っただけ」
「父より俺の方が魔力が強いからな」
え、そうなの? と言いかけたが、やめておいた。
考えてみれば確かにそうだ。デュークを普通の王子だと思っちゃだめだ。彼は超人だ。彼も異端児に入るだろう。
彼はスッと霧の方に手を伸ばす。その瞬間、じっちゃんが口を開いた。
「待て、まだ解放しない方がいい。先に中に入ろう」
じっちゃんの言葉にデュークは静かに頷く。
「ちょっと待って、僕、エイベル持ってきてないよ」
「わしのがある」
そう言って、じっちゃんはポケットからピンク色の液体が入った瓶を取り出し、一口飲んだ後に僕に渡した。僕もじっちゃんに続き、エイベルを飲む。
「行こうか」
先陣を切ってじっちゃんが霧を抜ける。デュークと僕も彼に続く。
今日、何かが変わる。これからこの国を揺るがすかもしれない大きな出来事だ。その瞬間に僕が関わることが出来る。
小さな恐怖と大きな興奮に包まれて、鼓動が速くなる。自然と体に力が入る。
「ちゃんと戻ってきたんだな」
一番最初に僕らを迎えてくれたのはネイトだ。ニヤリと口角を上げて、僕達の方を見ている。そして、ゆっくりとデュークに視線を移す。
その目は鋭く、敵を見るような目だ。デュークはそんな彼の様子に少しも怯むことなく堂々としている。
初めて来る貧困村に一体どんな印象を抱いたんだろう。とんでもない所だと分かっているのに、ちょっとでも良く映ればな、なんて考えてしまう。
少なくともアリシアが一番最初にこの村に来た時よりかは随分と改善された。空気ももっと汚れていたし、皆の瞳も死んでいた。
「デュルキス国第一王子、シーカー・デュークだ」
彼は真っ直ぐネイトを見つめる。異質な彼の雰囲気にネイトの顔が少し引きつる。
きっと、また厄介な人間がやって来たと思っているんだろうな。しかも、第一王子って聞いたら、流石に後退ってしまう。
「さっきまでの威勢はどこに行ったのよ」
レベッカがネイトの耳元で囁く。
彼女はアリシアで貴族への対応が慣れたおかげか、王子相手に怯えた様子はない。
それに、そもそもデュークは自分の権力を振りかざしにここに来たわけじゃない。
「うるせえな」
ネイトが小さく舌打ちする。そんな様子をデュークは何も言わず黙って見ている。
なんだか、自分の家族を友達に紹介するような気持ちだ......。 | Little by little, the mystery was being solved.
On that day, when we had an audience with the king, Gramps negotiated with the king. He convinced him to release the villagers of the impoverished village.
We told him that he should release the villagers from that village first to prevent them from revolting, but he was reluctant to do so.
There was a good chance that the king’s life would be in danger if we suddenly released these unknown people. In fact, I, myself, did not trust all the villagers.
Some of them might be plotting to assassinate the king.
However, the king agreed to Gramps’ request when he said he would take full responsibility for the situation.
Gramps’ words were so heavy and commanding that no one could respond. It was unlike anything I’d ever seen him do before.
I glanced to the side. There were two people standing there with an extraordinary aura. I was almost overwhelmed by their presence.
Why would such a noble person be standing at the entrance of this impoverished village in the middle of a dank forest?
It was the king’s son who was standing there. Of course, I didn’t expect the king to go all the way to the impoverished village, but....
“Didn’t we mention that the king’s power was needed to break the magic of the Wall of Mist?”
“Am I not good enough?”
Duke stared at me, not looking particularly offended.
“No, but I was wondering if this wasn’t something the king should do because it could have a significant impact on the country.”
“Not really. It was because I have more magic power than my father.”
Eh, is that so? I was about to say something but stopped myself.
On second thought, yes, Duke was indeed a prince, but he was no ordinary prince. He was a superhuman. He’d definitely fit in with the odd group, which included Alicia.
He quickly reached for the fog. Just then, Gramps spoke up.
“Wait, we shouldn’t release them yet. First we should go inside.”
Duke nodded quietly at Gramps’ words.
“Wait a minute, I didn’t bring my Abel.”
“I have my own.”
Gramps then drew a bottle of pink liquid from his pocket and handed it to us after taking a sip. Following Gramps’ example, we take a sip.
“Let’s go.”
Gramps led the way through the fog, while Duke and I followed him.
Something was going to change today. It would be a big event that could shake this country. I get to be a part of that moment.
My heart beats faster, filled with a little fear and a lot of excitement. My body naturally tenses up.
“You’re back, I see.”
Nate was the first to greet us. He looked at us with a grin on his face. Then he slowly shifts his gaze to Duke.
Nate’s eyes were sharp, as if he was looking at an enemy, but Duke was not the least bit intimidated by the look in Nate’s eyes.
I wondered what kind of impression he had of the impoverished village he had never been to before. I knew it was a terrible place, but I hoped it would look a little better.
At least it had improved a lot since Alicia’s first visit to this village. At that time, the air was much dirtier, and everyone’s eyes were dead.
“I’m Duke Seeker, first prince of the Duelkis Kingdom.”
He looked straight at Nate. Nate’s face tightened a little at the presence of a foreign man.
He must be thinking that another troublesome person has arrived. And when he heard that he’s the first prince, he backed away from the stone.
“Where’s all that swagger you had earlier?”
Rebecca whispered in Nate’s ear.
She didn’t seem intimidated by the prince, probably because she was used to dealing with nobles like Alicia.
Besides, Duke didn’t come here to wield his power in the first place.
“Shut up.”
Nate clicked his tongue while Duke watched the situation silently without saying a word.
It kind of felt like I was introducing my family to my friends... | {
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自分は冷静な魔族であると、イクリプスは自負していた。
必要以上のことは語らず、与えられた任務を忠実に実行する。
それこそが自分の存在理由であり、誇りでもあった。
そう。開発主任の教育などなくても、カプセルの中で行なわれた機械的な調整だけで、イクリプスは生物兵器として完成していたのだ。
しかし、開発主任が『念には念を入れて、甘い物で釣ろう』などと余計なことを思いついたせいで、イクリプスの心は乱れてしまった。
冷静沈着になろうとしても、頭の隅に砂糖がチラついてしまう。
実際に差し出されようものなら、完全に思考が停止し、砂糖を食べることしか考えられなくなってしまう。
口調や表情し、もはや別人。
イクリプスは、甘い物のことを考えている自分は、自分ではないと思っていた。開発主任のミスによって発生した欠陥である。
あんな、まるっきり子供のように砂糖を舐めながら、はしゃいでいる姿をイクリプスだと思われてはたまらない。
(あれは私ではない――!)
玉座の前で醜態をさらしてしまったことを恥じながら、イクリプスは命じられたとおり、アイリスがいる村へと向かった。
開発主任と大魔王に教えてもらった情報によれば、アイリスは丘の上にある教会でゴロゴロしていることが多いらしい。
一刻も早くアイリスをクリフォト大陸に連れ戻し、ご褒美の砂糖を――いや、違う。砂糖などもらえずとも、イクリプスは任務を果たす。
むしろ砂糖のことを考えているせいで、集中力が落ちている。
開発主任は何を考えてイクリプスに砂糖を食べさせたのか。
自分が作った生物兵器がどのくらい真面目なのか調べもせずに甘い物を与えるなど、短慮の極み。
遺伝子上の父親である大魔王もあまり知性的な感じはしない、もしかしたら魔族というのはアホの集団なのではないか――そんな疑惑がイクリプスの中に湧き上がってくる。
自分だけは違うぞ、という自負とともに、イクリプスは草原の上スレスレを飛行する。
上空から侵入するとアイリスに発見される恐れがあるので、低空から侵入するのだ。
更に、存在感を希薄にする魔術を使用し、気配を悟られないようにする。
この魔術があれば、たとえ目の前を通り過ぎたとしても、よほど注意していないと誰もイクリプスには気がつかないはず。
なにせアイリスは、任務を果たす気がゼロのぐーたら生物兵器らしいが、それでもイクリプスと同じ方法で作られた生物兵器だ。
新型である自分のほうが強いに違いないが、念には念を入れるのがイクリプスのやり方なのだ。
(村民たちが畑に何か植えている......どうやら甘い物とは関係なさそうだ)
もし村が甘い物であふれかえっていたら、イクリプスは冷静に行動することができない。
逃げることすらできず、ひたすら甘い物を食べ続けるだけの生き物になってしまうだろう。
それでは任務を放棄したアイリスと同じだ。
イクリプスは決して、そんな無責任なことはしないのだ。
断固として甘い物を回避し、誰にも気づかれることなく丘の上の教会に辿り着き、アイリスに拘束魔術の奇襲を加え、素早く連れ帰る。
(いくら認識妨害の魔術を使っているからと言って、真正面から入るのは危険だな......)
イクリプスは教会の裏口を発見したので、それを静かに開ける。
その瞬間、甘い匂いが鼻先をかすめた。
(っ!?)
教会の中にはアイリスの他にも、金髪の人間一人と、赤い髪の人間いた。
いや、赤い髪のは人間ではない。気配からして、おそらくはドラゴン。
なぜこんな場所にドラゴンが二匹もいるのだろうか。
無論、イクリプスにとって、ドラゴンなど敵ではない。二匹同時でも余裕を持って勝てる。
しかし、それがアイリスの味方になっているというのは、実にうっとうしい。
連携されたら、やっかいなことになるかもしれない。
あと、大きなスライムがプニプニしているが......これは戦力として無視してもいいだろう。
だが、そういう真面目なことはどうでもよかった。
なにせ、甘い匂いだ。
そして、教会の中にいる連中は、その匂いの元を食べているのだ。
とても美味しそうな、焦げ茶色の板。
それを見た途端、イクリプスの理性は溶け去った。
「なにそれ、おいしそーう! 私にもちょうだぁぁぁいっ!」
ここまで誰にも見つかることなく接近できたのに、自ら大声を出してしまった。
これでは認識妨害の魔術も役に立たない。
アイリスを含む全員がイクリプスを振り向いた。
だがイクリプスはすでに甘い物のことしか考えていなかったので、気にせずパタパタと走って教会に入っていく。
「それちょーだい、ちょーだい!」
イクリプスはピョンピョン飛び跳ねておねだりする。
「......はて? この子、どこのどなたでしょう? この村にはいなかったはずですが」
そう言って金髪の少女は首をかしげる。
「あんたアホだから領民の顔を忘れたんじゃないの?」
赤い髪の少女が辛辣な指摘をする。
「ひ、酷いですね! いくらなんでも、こんな小さくて可愛い子を忘れたりしません! それにしても......どことなくアイリス様に似ていますね。髪の色も銀色ですし......」
「そうねー。もしかして、アイリスちゃんの家族? ......あら? アイリスちゃんはどこかしら?」
同じく赤い髪の、しかし大人びた女性が首をキョロキョロさせる。
そう。
アイリスはイクリプスが声を上げた瞬間、もの凄い速さで動き、スライムの後ろに隠れてしまったのだ。
もしや、イクリプスがアイリスを連れ去るために現れたと気づいたのだろうか。
だとすれば恐ろしい勘の持ち主。
教会に入る前はともかく、今のイクリプスの頭に任務のことなど一欠片も残っていないというのに。
「アイリス様。なぜプニガミ様の後ろに?」
「だ、だって知らない人がいきなり入ってきたから......でもその子......人間じゃないわね」
「そうねー。この気配は、アイリスちゃんと同じ魔族みたいねー」
「え? ジェシカさん、何を言っているんですか? アイリス様は女神様であり、この土地の守護神ですよ?」
金髪の少女はアホっぽい顔で疑問を口にする。
だが、アイリスは女神ではない。大魔王の遺伝子を元に作られた生物兵器であり、魔族である。
「だからさー。何度か言ったじゃないの。私、クリフォト大陸から来た魔族だって。シェリルったら全然信じてくれないんだから」
「ええ!? それは冗談ですよねっ? 魔族なんて千年も前のおとぎ話ですよ。まだ生き残ってたんですか!?」
「生き残ってるわよ。え、なに。人間的には、魔族ってもう完全に滅んだことになってるの?」
アイリスがスライムの影から金髪の少女に問いかける。
「いえ......今まで魔族について深く考えたことがなかったもので。大昔に人間と戦争してクリフォト島に追いやられたという話は子供の頃に聞いたのですが......普通に生きていて魔族と関わることなんてないですからね」
「そんなのはどうでもいいから、その美味しそうなのちょうだーい」
イクリプスは金髪の少女の前に立ち、両手を差し出す。
「チョコレートが食べたいんですか? 私の食べかけでよかったらどうぞ」
「わーい! ちょこれーと!」
そのチョコレートという食べ物を、早速口に入れる。
堅い食べ物だ。見た目通りの板。しかし簡単にかみ砕ける。
ボリボリ......。
「な、なにこれー! こんな美味しいもの、はじめて食べたー!」
チョコレートの味に感激し、イクリプスは飛び跳ねた。
飛び跳ねながら残りを食べる。
あまりの美味しさに飛び跳ねるだけでは飽き足らず、くるりと一回転してしまう。
「わー、すごい。元気な子ですねー。お名前はなんて言うんですか?」
金髪の少女はイクリプスの頭を撫でながら尋ねてきた。
「イクリプスっていうのー」
「イクリプスちゃんですか。イクリプスちゃんは、魔族なんですかー?」
「うん、そーだよー。アイリスと同じく、大魔王の遺伝子を元に作られた生物兵器なのー。人類を根絶やしにするために作られたんだよー」
「へー、人類を根絶やしに......って、ええ!?」
「でも大丈夫だよー。今日はー、アイリスを連れ戻しに来ただけだからー」
「そ、そうなんですか......それは一安心......いや、駄目です! アイリス様を連れて行っては駄目です!」
そう言って金髪の少女はイクリプスの両頬を掴み、むにーっと引っ張ってきた。
「イクリプスちゃんが誘拐宣言するからお仕置きですよ!」
「誘拐じゃないもん。アイリスはもともとクリフォト大陸から来たんだから、家に帰るだけだよー」
「たとえ魔族だったとしても、今のアイリス様は守護神です! ずっとこの教会に引きこもってもらうんです! というわけで、イクリプスちゃんは遠慮してください! チョコレート上げますから!」
「わかったー。チョコレートくれるならアイリスのことは諦めるー」
「くっ、流石にチョコくらいでは懐柔できない......ん?」
「チョコちょうだい、チョコちょうだい!」
「は、はい......どうぞ」
金髪の少女はバスケットから新しいチョコレートを取り出した。
「わーい、おいしー! チョコがあればあとは何もいらなーい! アイリスもいらなーい!」
イクリプスは新しいチョコレートをもらって大満足だった。
本気で任務のことなどどうでもいいと思っていた。
普段の冷静なイクリプスは、どこにも残っていない。ただチョコレートを食べるだけの生き物になってしまった。 | Eclipse was proud of herself for being a calm and composed demon.
Without asking anything unnecessary, she aims to faithfully complete her mission.
This was her reason for existence as well as pride.
Yes. Even without development chief’s training and only technological aspect of her capsule, she was a complete biological weapon.
However, the development chief came up with his『let’s bait her with sugar』 idea, which led Eclipse’s heart astray.
Even when she tried to achieve her calm state, there was an image of sugar flickering in a remote corner of her mind.
When presented with an actual thing, it completely takes over her mind until she can’t think of anything but eating sugar.
Her voice and behavior undergo a significant change turning her into a completely different person.
Eclipse didn’t think of her sugar-loving self as her real self. Just a result of the development chief’s mistake.
She couldn’t stand herself as she behaved like a noisy child, who was given a candy.
(This isn’t me!)
Having displayed her embarrassing side in the throne room, she headed towards Iris’ village as ordered.
According to the development chief’s and the Great Demon King’s information, Iris could often be spotted lazing in a certain church on top of a hill.
She would bring Iris back to the Kurifot continent and receive sugar as a reward — no, wrong. Even without sugar, Eclipse will fulfill her mission.
On the contrary, her concentration fell sharply as she thought about sugar.
What did that development chief think when he fed Eclipse sugar?
Feeding a biological weapon of his own creation sugar without assessing her attitude about the mission, what a great oversight.
Her father on the genetics’ side, the Great Demon King, didn’t seem that intelligent either, could it be that the demon race is just one big group of idiots? — such suspicions appeared in Eclipse’s heart.
Pridefully considering herself different from the rest, Eclipse flew above the grassland.
Afraid of being prematurely discovered by Iris, she flew at a low altitude.
On top of that, she used recognition interference magic to keep herself unnoticed.
With this magic, even if she walks before someone’s eyes, he won’t be able to notice unless he is especially vigilant.
After all, despite Iris’s lack of motivation to complete her task, she was still a biological weapon produced in the same way as Eclipse.
As a new model, Eclipse considered herself to be stronger, but to be on the side of caution was Eclipse’ way.
(The villagers are planting something in the field......it doesn’t seem to have any relation to sweets)
If the village were to be full of sweet things, Eclipse wouldn’t have been able to operate calmly.
She would become a creature that eats sweets all day long.
Same as Iris, who abandoned her mission.
Eclipse definitely won’t do something so irresponsible.
Determined to avoid the sweets on her way, she reached the top of the hill without being noticed by anyone intent on catching Iris off guard with restraining magic and bringing her back.
(Even with recognition interference magic, entering through the front door is too risky.........)
Eclipse discovered a back door and quietly peered inside.
At that time, she caught a whiff of a sweet smell.
(Mn!?)
Besides Iris, there was one blonde human and two red-haired humans.
No, the red-haired ones weren’t humans. Dragons, judging by the aura.
Why are there two dragons at such a place?
Of course, dragons weren’t a threat for Eclipse. She could easily win against both of them.
However, if those dragons are Iris’ allies, that would be rather annoying.
Their cooperation might be problematic.
Also, there is a big squishy slime......it’s probably okay to disregard him.
However, those important matters weren’t relevant anymore.
There was a sweet smell after all.
And the people inside the church were in the middle of eating the source of it.
A very tasty-looking dark brown plate.
The moment she saw it, Eclipse’s reason melted.
「What’s that, it looks tasty! I want some too! 」
She successfully came this close unnoticed yet let out a loud voice at her own volition.
No amount of recognition interference magic would be of any help.
Everyone, including Iris, turned to look at her.
However, at that moment, Eclipse couldn’t think of anything but sweets anymore and trotted inside the church.
「Gimme, Gimme!」
Eclipse jumped around in agitation.
「.......Sorry? Who is this child and where did she come from? I don’t remember seeing her in the village」
Said the blonde girl as she tilted her head.
「Maybe you forgot you people’s faces since you are an idiot?」
The red-haired girl let out a sharp remark.
「Y-You’re terrible! There’s no way I’d forget such a cute and small girl! Even so.......she resembles Iris-sama somewhat. Her hair is silver too........」
「That’s right. Could she be Iris-chan’s family?........Ara? Where did Iris-chan go? 」
Said another adult red-haired woman as she looked around.
Yes.
Iris hid behind the slime the moment she heard Eclipse’s voice.
Perhaps she noticed that Eclipse came here to bring her back.
Is that is so, she has a frightening intuition.
Even though all thoughts of her mission vanished from Eclipse’s head the moment she entered the church.
「Iris-sama. Why are you hiding there? 」
「B-But an unknown person suddenly appeared........and she is......not a human」
「Apparently so. From her aura, she seems to be a demon, same as Iris-chan」
「Eh? What are you saying, Jessica-san? Iris-sama is the Goddess and the Guardian Deity of this village」
Asked the blonde girl with a stupid look on her face.
However, Iris wasn’t the Goddess but a biological weapon produced from the genes of the Great Demon King.
「As I said many times before. I’m a demon from the Kurifot continent. But you’ve never believed me」
「Eh!? Wasn’t that a joke? Demons is a legend from a thousand years ago. Are there still those who survived? 」
「There are. Could it be that humans think that demons were completely obliterated? 」
Iris asked the blonde girl from behind the slime.
「No.......I didn’t think about demons too deeply before. As a child, I’ve heard about demons being driven to the Kurifot island after their lost the war with the human race.......I didn’t have any contact with the actual thing」
「Enough about that, gimme that tasty-looking thing」
Eclipse stood before the silver-haired girl and held out her hands.
「Do you want to eat chocolate? You can have mine if you want」
「Wai! Chocolate! 」
She immediately put that so-called chocolate in her mouth.
It was hard. Looked like a plank. But it crumbled easily.
Crunch crunch........
「W-What is this!? This is the first time I ate something so delicious! 」
Delighted in the chocolate’s taste, Eclipse jumped around.
She ate the rest while she was at it.
Just jumping around wasn’t enough to express her joy, so she started spinning.
「Wa, amazing. What an energetic child. What’s your name? 」
Asked the blonde girl as she patted Eclipse’s head.
「Eclipse」
「So it’s Eclipse-chan. Is Eclipse-chan a demon? 」
「Un, that’s right. Same as Iris, I’m a biological weapon created from the Great Demon King’s genes. I was made to eradicate the human race」
「I see, eradicate the human race.......eh!?」
「But it’s okay. Today I’m only here to bring Iris back」
「S-So it’s like that.......that’s a relief.......no, you can’t! You can’t take Iris-sama away with you! 」
Having said that, the blonde girl grabbed Eclipse by the cheeks and pulled.
「It’s a punishment for you kidnapping declaration!」
「It’s not a kidnapping. Iris came from the Kurifot continent in the first place, I’ll just bring her home」
「Even if she’s a demon, right now Iris-chan is the Guardian Deity. She’s going to stay inside this church forever! That’s why Eclipse-chan should restrain herself. I’ll give you some chocolate for it! 」
「Okay. If you give me chocolate, I’ll give up on Iris」
「Kuh, as expected, chocolate alone isn’t enough......n? 」
「Gimme chocolate, gimme!」
「.......Here」
The blonde girl took out more chocolate from her basket.
「Wai, tasty! As long as there is chocolate, I don’t need anything! Even Iris! 」
Eclipse was greatly satisfied with additional chocolate.
She honestly thought nothing of her mission at the moment.
Her usual calm self was nowhere to be found. There was only a creature exceptionally fond of chocolate. | {
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というわけで、帝国との交渉......じゃないな、
うん、いつも色々とサービスしてあげているんだから、こういう時には返してもらわないとね。
「......まあ、そういうやり方も、取り得る選択肢のひとつであり、戦略のひとつとしてはそう悪手だというわけでもないか......。
ミツハの、個人的な立場がどうなるかということを考慮に入れなければ、だが......」
王様は、私のことを心配してくれているけれど、私にとってはそんなことよりも、コレットちゃんや孤児院の子供達、そしてうちの領民達の身の安全の方が重要だ。
私の関係者に手出しすれば全てを失う、ということを周知させることの方が......。
......サビーネちゃん?
いや、王女様は常に護衛に護られているし、王族を襲ったりすれば、即、戦争だ。
私なんかより、ずっと安全だよ、サビーネちゃんは......。
とにかく、これで帝国の方はしばらく放置かな。
あのビラで、私が海水撒布は保留にしたと伝わっただろうし、皇帝の退位、その直系卑属である子供や孫達の廃嫡、そして傍系卑属や上位貴族達の争い等が、そう簡単にケリが付くとは思えないからね。
とにかく、貰うものだけ貰えば、あとは潰し合って消耗してくれればいいや。
すり潰すのは、国の財産や食料、国民の命とかではなく、自分達が溜め込んだ財貨と、暗殺による貴族の命だけで......。
「じゃ、あとはお願いしますね! 私、コレットちゃんのところへ行かなきゃならないので......」
「あ、こら待て、全部押し付けてさっさと帰るんじゃない! もう少しきちんと説明せんか!」
よし、脱出!
「......というようなことが、あったぞな......」
「鬼か!!」
帝国への報復のことを説明したら、コレットちゃんに呆れられた。
ここは、イギリスのとある病院の地下深くに秘密裏に作られ......ているわけじゃない、普通の総合病院の地上6階。
地下にあるのは、霊安室だ。
報復活動がひと区切りついたから、今日は1日、ずっとコレットちゃんの付き添い。
勿論、サビーネちゃんもいる。
異国の地で、怪我をして動けず、付き添う家族もいないというのが、どれだけ心細くて、寂しいか......。
集中治療室
に入らなきゃならないわけでもない。だから、普通の個室にいる。さすがに、大部屋はちょっとね......。
コレットちゃんは英語もある程度喋れるけれど、私とサビーネちゃん以外の者と話をするには、
向こうの世界のことは話せないし、コレットちゃんには
それに、退屈凌ぎの話し相手として入院仲間の子供達をお菓子で釣って招待しようにも、絶対に混じっているだろうからねぇ、『少年少女諜報員』とかが......。
害意はないだろうけど、こんな絶好の機会に、情報収集を躊躇うような連中じゃないだろう。
ま、そんなわけで、昼間は大半の時間、私かサビーネちゃんのどちらか片方が付いているんだけどね。流石に、夜は付いていないけど。
コレットちゃんは私に対する鋼鉄の忠誠心を持ってくれているけれど、諜報的なこととか搦め手には弱いから、そのあたりのこともある。
サビーネちゃんが付いていれば、そういう心配もないからね。
勿論、私がここにいる間は、サビーネちゃんを
でないと、王に殺されるわ!
......でも、それだと常に私とはすれ違いになるわけだから、サビーネちゃんが抵抗するんだよねぇ......。
まぁ、気持ちは分からないでもないけど......。
コレットちゃんの退院までには、まだ日数がかかりそうだし......。
だから、3人での時間もちゃんと取っているんだけどなぁ。
......で、まあ、サビーネちゃんもいる間にここ数日のことを報告したら、この評価だ。
いや、ちゃんと毎日顔を出していたよ? ただ、不確定な状況で進行していた帝都でのことをいちいち報告していなかっただけで......。
それが一段落したから、きちんと纏めて説明しただけだ。
勿論、コレットちゃんの御両親にも今回のことは報告している。
が残る、って説明して必死で謝ったんだけど、田舎村の娘で傷のひとつも無いような者はいない、もしいたら、そんなのは怠け者の印だ、といって笑われた。
......いや、自分達の娘が死にかけたというのに、それでいいのか!
って、私が怒ったんだけど、『雇い主である貴族家当主を護るために平民が命を懸けるのは当たり前。そして今回は、コレットが護ろうとしたのは「雇い主の貴族」ではなく、「ミツハという名の、大切なお友達」だからねぇ。それに、今のコレットの命はミツハちゃんに救われた命だから、ミツハちゃんを護るために使うのは当たり前なんじゃないかなぁ......』とか言われた。
それでいいのか!!
は、顔は笑っていたけれど、眼は全然笑っていなかった。
そりゃそうか。
気を遣ってもらった、ってことなんだろうなぁ、多分......。
とにかく、謝るべきところには、ちゃんと謝った。
事前の根回しもなく勝手にサビーネちゃんを付き添い要員として連れ去ったことも、勿論王様に謝罪した。
......でも、それはそれ、これはこれ、で、それによって王様に特別な便宜を図ることはない。
協力してもらっているのはサビーネちゃんであって、王様じゃない。だから、報酬を渡すなら王様じゃなく、サビーネちゃんだ。
そして、サビーネちゃんが『コレットちゃんの介護を手伝った報酬』なんかを受け取るはずがない。
コレットちゃんは、サビーネちゃんの友達だから。
そしてサビーネちゃんは、友達を助けるのに代価を要求するような子じゃない。
私から渡そうとしても、絶対に受け取らないだろう。
そんなことをすれば、多分、侮辱するな、と言って怒り狂うに違いない。
......そして、『謝罪とお詫びの品』を要求されるのだ。
お詫びの品は、介護の報酬とは関係ないから、問題とはならない。
......うん、サビーネちゃんの判断基準は、多分そんなトコだろう。
「で、もうそろそろいいよ?」
「え、何が?」
コレットちゃんが、何やら言ってきた。
「......私への付き添い。看護師さんに聞いたよ、ここ、『かんぜんかんご』とかで、付き添いは要らない、って。
じゃないから、面会時間とかの文句は言われずにミツハとサビーネちゃんはフリーパス状態だけど......」
あ~、それ、多分、国の上の方から特別に指示が出てるよね。ありがたいから文句はないけど。
「それで、ミツハはすごく忙しいでしょ、領地とか新大陸とか......。
しか喋れない振りをしているけど、本当は殆ど聞き取れるから、向こうからの意思疎通には問題ないし。こっちが、都合の悪いことは分からない振りをするだけだから、言葉が通じなくて困ることはないよ。
あ、本と『ぶるーれい』は、たくさん持ってきてね!」
............。
円盤のことを、サビーネちゃんは『でーぶいでー』と言っているけれど、コレットちゃんは『ぶるーれい』と言っている。
やはり、コレットちゃんの方が勉強の進み具合が......、って、そんなことはどうでもいいよ!
いくら命の心配はなくなって安心だとはいえ、9歳の女の子が異国でたったひとりというのが、心細くないはずがない。
......トビアスさんだけでなく、コレットちゃんにも気を遣わせたか......。
「あと、ゲーム機とお菓子、果物もたくさん!」
どうしてサビーネちゃんが眼をキラキラさせて追加注文をするんだよ!
さては、ずっとここに居座る気だな、コイツ......。 | So, the negotiations with the empire... not only the demand for compensation and the confirmation of the fulfillment of the promise... I threw the whole thing at the higher-ups.
Yeah, I’m always providing various services, so I have to get them back at times like this.
“...Well, that’s one of the options you can take, and it’s not that bad as one of your strategies...
Unless we take into account what Mitsuha’s personal position will become...” (King)
The king is worried about me, but for me, the safety of Colette-chan, the children at the orphanage, and our fiefdom are more important than that.
It’s more about making it known to the people that if they mess with me, they will lose everything......
......Sabine-chan?
No, the princess was always protected by escorts, and if they attack the royal family, it’ll turn into war immediately.
Sabine-chan, you’re in a much safer position than me...
Anyway, I guess I’ll leave the empire alone for a while now.
The leaflet should have conveyed that I had decided to put the “seawater sprinkling” on hold. Moreover, I don’t think that the abdication of the emperor, the abolition of his direct descendants, his children and grandchildren, and the conflicts among the collateral descendants and higher nobles, etc., will be settled so easily.
Anyway, I’ll just take what I can get, then let them crush each other and wear each other out.
It’s not the country’s property, food, or the lives of its citizens that needed to be crushed, but only the accumulated wealth and the lives of the nobles responsible for the assassination...
“Then, I’ll leave the rest to you! I have to go to Colette-chan...” (Mitsuha)
“Hey wait! Don’t just shove everything down my throat and leave! You have more to explain!” (King)
Alright, escape!
“...Well, something like that...” (Mitsuha)
“Such a demon!!” (Colette)
When I explained about the retaliation against the empire, Colette-chan was taken aback.
We’re on the sixth floor above the ground of an ordinary general hospital, not a secret one built deep underground and...... in one of the hospitals in England.
The basement was the morgue after all.
Now that the retaliation activities have come to a close, I’ll be with Colette-chan all day today.
Of course, Sabine-chan was also here.
How lonely and heartbreaking it was to be in a foreign country, injured and unable to move, with no family to accompany you......
Colette-chan wasn’t unwell, her surgery was successful, and she does not need to be in the intensive care unit (I C U) or high care unit (H C U). So she’s in a normal private room. As you can imagine, being alone in a large room was not a good idea......
Colette-chan can speak some English, but to talk to anyone other than Sabine-chan and me, she doesn’t have anything to talk about......
Colette-chan can’t speak about the other world, and she has no knowledge of this country.
And even if she invites the fellow hospitalized children with candy to talk to them out of boredom, there will definitely be “boys and girls secret agents” and the like in the mix.......
They may not mean any harm, but they were not the kind of people who would hesitate to gather information on such an amazing opportunity.
So, during the daytime, either Sabine-chan or I would be with her. We didn’t visit her at night, though.
Colette-chan has a loyalty of steel to me, but she’s not invulnerable to counterintelligence matters and the like.
If Sabine-chan was with her, I wouldn’t have to worry about that.
Of course, whenever I’m here, I send Sabine-chan back home. I can’t have her stationed here all the time.
Otherwise, I’ll be killed by the King’s family!
But that also means we’ll always be passing by each other, so Sabine-chan would try to resist...
Well, it’s not like I don’t know how she feels......
It would seem like it will be a few more days before Colette-chan can be discharged from the hospital......
So I’m making sure we’re getting the right amount of time for the three of us.
...Well, while Sabine-chan was here, I reported on what I did in the last few days and this was her evaluation.
No, I was properly showing up every day, okay? I just didn’t report every single thing that was going on in the Imperial Capital, which was going on under uncertain circumstances......
Now that that’s settled, I’m just trying to put it all together and explain it properly.
Of course, I have also reported this incident to Colette-chan’s parents.
I tried my best to apologize, explaining that it was not life-threatening and would not leave any permanent damage, but that it would leave a few scars and marks. Still, they said there’s no daughter in the countryside village who has no scars, if any they will be laughed at as a sign of a lazy person.
......No, their own daughter almost died, and they’re okay with that!
I thought they would be angry with me, but they just said, “It is natural for commoners to risk their lives to protect their employer, the head of an aristocratic family. And this time, Colette was not trying to protect her employer, [a nobleman], but her [precious friend named Mitsuha-chan]. Besides, Colette’s life has been saved by Mitsuha-chan, so I think it’s natural for her to use it to protect Mitsuha-chan”......
Was that really ok?!!
When I told them that, her father, Tobias-san, was smiling, but his eyes were not.
Well, of course.
I guess that means they cared, somewhat.......
Anyway, I properly apologized where I should apologize.
I apologized to the king, of course, for taking Sabine-chan away as an escort without prior arrangement.
......But that’s that and this is this, and it doesn’t give the King any special favor.
It was Sabine-chan who was cooperating with us, not the king. So, if he wanted me to give a reward, it would be for Sabine-chan, not the king.
And Sabine-chan would never receive any kind of “reward” for helping Colette-chan take care of her.
Colette-chan is Sabine-chan’s friend.
And Sabine-chan is not the kind of girl who demands a price for helping her friends.
So even if I try to give it to her, she will never accept it.
If I do that, she would probably tell me not to insult her, and I bet she would be very furious.
......And then she’ll ask for an [apology] and a [gift of apology].
The apology gift is not an issue because it has nothing to do with the long-term care reward.
......Yeah, Sabine-chan’s criteria are probably something like that.
“So, are you about to go now?” (Colette)
“Eh, what?” (Mitsuha)
Colette-chan suddenly said something.
“...I’ll be attending to myself. I told the nurse that I don’t need a
Complete nursing (かんぜんかんご)
I’m a child and not a native English speaker. Besides, they give Mitsuha and Sabine-chan a free pass without any complaints about visiting hours or anything like that......” (Colette)
Oh, that’s probably a special directive from higher up in the country. I’m grateful, so I have no complaints.
“Also, Mitsuha must be very busy, with your territory and the new continent......
So, I don’t need you to follow me all the time. I pretend to be able to speak only a few words of English to avoid being asked many questions, but I can actually understand most of what they say, so there is no problem with them communicating with me. I just pretend I don’t understand things that are inconvenient for me, so I don’t have to worry about not being able to communicate with them.
Oh, bring a lot of books and [Blu-ray]!” (Colette)
“............”
Sabine-chan calls the disks [de-bui-dee], but Colette-chan calls them [bururei].
After all, Colette-chan’s progress in studying was... I don’t really care about that!
No matter how relieved she was that her life was no longer in danger, there was no way she would not be discouraged by the thought of being a nine-year-old girl alone in a foreign country.
......Did Tobias-san’s I don’t care attitude rub off on Colette-chan?
“Oh, and a video game console, some snacks, and lots of fruit!” (Sabine)
Why were Sabine-chan’s eyes twinkling and making an additional order!
Well, she’s going to be here forever, isn’t she?...... | {
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「エディムと言ったな。まったく不遜な態度を取りおる。お姉様からの賜りものでなければ即刻廃棄したところだぞ。いや、そのような考えではだめだ。お姉様からの贈り物なのだ。例え石ころであっても大切にせねばならぬ」
な、なんだ、なんなんだ、お前達! 私は魔族なんだぞ!
「ほのれ! わひゃしは、まじょくなんだぞ!」
「ふぅ、まずはその醜く欠けた牙を治してやる。エディム、貴様は光栄にもお姉様からくだされた品なのだ。その品にふさわしい姿形にしておく必要がある」
「な、なひを......」
「いいから、黙っておれ!」
の妹が、私の顔を容赦なく掴む。
くっ、離せ!
力任せに引き剥がそうとするが、その掴んだ手はびくともしない。今の私の力は大の大人十人分を軽く凌駕するはずなのに......。
どうして? 何故? 意味がわからない。
そして、ティムは何かしらの呪文を唱えると、私の中に濁流のように魔力が注ぎ込まれていく。
うぁああ! な、なんという暗黒に満ちた力なんだろう。力が溢れてくる。
「はぁ、はぁ、いったい何をし......あ、あれ? 歯が治っている!?」
「ふん、真祖たる我の魔力を与えたのだ。欠けた歯を戻すなど造作もない」
「えっ!? 嘘? 本当に真祖......様なの?」
「まだわからぬのか! 自己の魔力の源流を感じとってみよ」
「で、でも、私の主はアルキューネ様で......」
が作った眷属であろう。本来であれば、そのまた眷属である貴様のようなクズは即刻処分しておったところだぞ」
「そ、そんな......」
確かにティム、ううん真祖様の力は本物だ。冷静に自分の中の魔力を探ると、目の前にいる御方の魔力がその源流であり、アルキューネ様とは比較にならないほど格上の魔族だと理解できた。
あぁ、なんてこと! そんな御方にあんな無礼な言動をしていたなんて......。
噛んだり罵ったり不敬極まる行為を思い出し、後悔で沈んだ面持ちとなる。
から、光栄にもお姉様の品に格上げされたのだ。誇るが良い。我の直属眷属にしてやろう」
そう言って、真祖様は周囲に暗黒の魔力を漂わせる。
あぁ、すごい......。
あっという間に私を取り巻く環境が、真祖様の魔力で包まれていく。私は、すかさず真祖様の足元に土下座し、今までの無礼を謝罪する。
「あぁ、偉大なる真祖様......愚かな振る舞いお許しください」
「ふん、ようやく理解したか。そう我を、そしてお姉様を崇め讃えるが良い」
「ははっ、肝に銘じます」
「それとだ。エディム、近くに寄れ」
「はい」
真祖様の仰せのままに傍らに移動する。
あぁ、なんで気づかなかったの。
目の前にいる御方が偉大なる真祖様と認識すると、その魔力もさることながら、そのひときわ輝く美しいお姿に魅了されてしまう。
私が恍惚と真祖様を見つめていると、真祖様はそのどこまでも美しい手を私の頭にのせてきた。
「お前は、我の眷属に連なるくせに脆弱すぎる。元人間というハンデを差し引いても力不足なことこの上ない」
「ま、まことに不甲斐なく。お許しください」
「まぁ、見てくれは悪くない。後は、我が潜在能力を引き上げてやれば、少しはものの役には立つはずだ」
真祖様の手からすさまじい魔力の波動が伝わってくる。
「っふぁぁああん!」
思わず喘ぎ声が漏れてしまう。
まさに源流。私の中の眷属としての血が真祖様の魔力をどこまでも求める。
真の主様......。
はぁ、はぁ、すごすぎるよ。今までに感じたことがない快感。何故ここまでの快感が、これほどまでの魔力が......。
はぁ、はぁ、はぁ。だめ、そんなことを考える前に脳味噌が沸騰しそう。あまりになじむ魔力、快感にもう何も考えられない。
なんて素晴らしい魔力を与えて頂けるのぉお!
このお力の前では、アルキューネなどカスにすぎない。
「はぁ、はぁ......はぁうぅん。す、すごすぎますぅ。し、真祖様」
私はだらしなく唾液を垂らしながら、真祖様にすがりつく。
あぁ、素晴らしき真祖様。そのりんとしたお姿にどこまでも美しいお顔。もっともっと真祖様と強い繋がりを求めたい。
はぁ、はぁ、もう我慢できないよ。私は恐れ多くも大胆に真祖様に口づけをしようとするが......。
「む!? このたわけぇ!」
「がはっ!」
「我と接吻など......身の程をわきまえるが良い!」
「はぁ、はぁ......ま、まことに......も、申し訳ございません。で、ですが、真祖様が、あ、あまりにお美しいので......わ、私は、あぁ、もう我慢が――」
「ふん、快感におぼれたか! 仕方がない。ほれ、我の足になら許そう」
真祖様からの許可が出る。
あぁ、なんという僥倖!
その類まれなる美しいおみ足にキスをする。
はぁ、はぁ、私はなんて果報者なの!
私はうっとりと真祖様の足元に寄り添う。
未来永劫、お仕え致します。真祖カミーラ様! | “Edim, was it? Honestly, what an insolent fellow you are. Were you not a gift from elder sister, I would scrap you on the spot. No, that kind of thinking is unacceptable. You are a gift from elder sister. Even a rock, I must treasure.”
W-, What the heck. What the heck, what the heck!? What’s with you people!? I’m a ******* demon, you know!? Even though I was supposed to have ascended to a demon, to a being above humans... Why is it that you two can just grab me and do whatever you want to me?
“Curshh youu! I ham a dhee-mhonn, you knhoww!”
“Heh. First is healing that disgraceful chipped tooth of yours. Edim, you have the glory of being a present from elder sister. As a gift from elder sister, you must look worthy of the part.”
“W-, whah are hyou...?”
“Enough, be silent!”
Timu, the younger sister of Master Alcyune’s killer, was gripping my face without mercy.
Kuh-! Let go!
I struggled and rampaged, but that vice-grip wouldn’t budge at all. Even though my strength was supposed to be equal to ten grown men...
Why? Just why? I don’t understand what’s happening.
Then, Timu started chanting some kind of spell, and mana flowed into me like a muddy stream.
UWAHHH! W-, What pitch dark power. My body is being filled with strength.
“Hahh, hahh, just what are you... H-, Huh? My tooth is healed!?”
“Hmph. I, your True Ancestor, granted you mana. Healing a tooth is but child’s play.”
“Eh-!? No way. Are you really the True Ancestor...?”
“So you still cannot tell! Try concentrating on the source of your mana.”
“B-, But, my master is Alcyune and...”
“THIS INSUFFERABLE DUNCEEE! This Alwhatever? He is no more than kin created by my failed creation. By all rights, I would normally be disposing of the kin of that kin immediately.”
“T-, That can’t be...”
It’s true that Timu, no, that this Esteemed True Ancestor is the real thing. When I calmed down and checked the mana inside me, it was telling me that my mana came from the personage before me, and that she was a demon of so high a ranking that Alcyune couldn’t compare.
Aahh, what on earth have I...! To think that I did something so rude to this personage...
When I remembered how I bit her, cursed her, and behaved with ultimate rudeness, my face sank with regret.
“However, Edim, you have been uplifted from the status of being garbage formed from garbage, to the glorious position of ‘gift from elder sister’. Feel proud. I shall turn you into one of my direct kin.”
With that, Esteemed True Ancestor painted the surroundings in jet-black mana.
Aahh, amazing...
In an instant, I was enveloped in her mana. I immediately prostrated at her feet, and apologized for my previous misdeeds.
”Aahh, lofty and esteemed True Ancestor... Please forgive my foolish behavior.”
“Hmph, so you finally understand. Indeed. You shall sing praise and worship of elder sister and I.”
“Yes, Milady. I shall engrave it on my heart.”
“And also. Edim, come here.”
“Yes.”
I did as she commanded, and moved to her side.
Aahh, why didn’t I notice?
Now that I realized that the personage before me was my lofty and august True Ancestor, I was charmed by not only her mana, but her exceptionally beautiful countenance.
While I watched her, enraptured, she placed her indescribably beautiful hand on my head.
“For one of my kin, you are much too frail. Even considering the fact that you were once a human, you are still unacceptably weak.”
“M-My deepest apologies. Please forgive me.”
“Well, your appearance is not bad, at least. As long as I properly bring out your latent potential later, perhaps even you will be of some use.”
A surge of incredible mana came from her hand.
“HYAAAAAAN!”
A voice leaked out, despite myself.
She truly is the source. My blood as a kin sought for her mana endlessly. Hahh, hahh, so this is the power of the Esteemed True Ancestor...
My true Master...
Hahh, hahh, it’s just too amazing. This ecstasy that I’ve never felt before... Why is this ecstasy, why is this mana...
Hahh, hahh, hahh, I can’t. I can’t think about it. Before I can, my brain is going to boil. Because of this mana, I can’t think because of the pleasure.
WHAT INCREDIBLE MANA I’VE BEEN GIVENNN!
Before this power, Alcyune is nothing but trash.
“Hahh, hahh... haaa~n. S-, Sho amashingg, E-, Esteemed True Ancestor.”
As saliva flowed from my mouth, I clung to Esteemed True Ancestor.
Aahh, my magnificent True Ancestor. That dignified bearing, and that impossibly beautiful profile. I want to form stronger, and stronger bonds with her.
Hahh, hahh, I can’t stand it anymore. In the end I did something as shocking and bold as trying to kiss the Esteemed True Ancestor...
“Mu!? This fool!”
“GAHAH-!”
“To dare kiss me... You shall know your place!”
“Hahh, hahh... m-, my deepest... a-, apologies. B-, But, you were j-, just s-so beautiful... t-, that I couldn’t, can’t―”
“Hmph, mad from the pleasure, huh! I suppose it can’t be helped. Here. I’ll allow you a foot.”
Esteemed True Ancestor gave me permission.
Aahh, what fortune!
I began to kiss that august foot of unparalleled beauty.
Hahh, hahh, I’m so unbelievably lucky!
Entranced, I nestled up against her foot.
I shall serve you for eternity, True Ancestor Camilla! | {
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まず WIREDは技術雑誌ですから テクノロジーの動向を 記事にしますし 情報も得ておく必要があります
また月刊の雑誌でもありますから 未来のことを考なければなりません 長いリードタイムがあります
数ヶ月先の記事を考えなければならないのです 半年先に 皆さんの関心がどこにあるか予想しなくてはなりません 9か月先かもしれません ある種の予想ビジネスなのです
また 製品を作り出すという点では 他の会社と変わりがありません テクノロジーの動向にそって製品を作ります
我々の製品は アイデアや情報であったり 時には エンターテイメントであったりしますが コンセプトは全く同じです
我々が理解すべきことは テクノロジーがなぜ重要なのか どこへ向かうのか だけではなく 「いつ」 がさらに重要だということです タイミングが全てなのです
1990年代の景気の絶好期にあった予測について考えてみるのも 面白いと思います 例えば 電子商取引 ネットのトラフィック ブロードバンドの採用 ネット広告 どれも考えは正しかったのですが 「いつ」が間違っていたのです
どのテクノロジーも 数年後に実現されました
しかし 株式市場の評価における数年間の差異は 誰の目にも明らかです つまり タイミングが全てなのです
これはご覧になったことがあると思います
古典となったガートナーのハイプ曲線ですが これはテクノロジーがそのライフスパンにおいて描く曲線です
試しに テクノロジーをいくつか重ねてみましょう 最初の高いピークを上っていたのか あるいは 失望の淵へ急降下するところだったのか 理解が広がって回復軌道に乗ろうとしていたのか 等々
これはテクノロジーの予測を行う手法のひとつで テクノロジーの現況を理解し 次の変動を予測します
重要だと考えるに足るテクノロジーについては こういったことを行います たいていは二度 行います まずは一番最初に
あるテクノロジーに一番乗りしたいと思うのは マニアが評価してくれるからです あるテクノロジーが誕生したところでキャッチするわけです
1997年にはLinuxを表紙にしました
そして再び 戻ってきました Linuxの存在は大きくなり 今や主流になろうとしています Linuxブームは爆発寸前です
もう一度 取り上げるときが来たのです それは去年のことでした
この手法でテクノロジーの動向について把握しようとしています
では テクノロジーの動向に関する考え方について話しましょう 未来予測の大統一理論と呼んでいるものです 本当は 未来予測の「小さな」統一理論と呼ぶべきかもしれません
ある推定または観察結果に基づく理論です 重要なテクノロジーはすべて 4つの段階のうち少なくとも一つ あるいは4段階すべてを経て成長するという推定に基づきます
そして それぞれの段階で 衝突が起こります なにか他のものと衝突するわけです 例えば 限界価格のラインがそうです テクノロジーと テクノロジーが世界に及ぼす影響を変えてしまいます これが変曲点です
この変曲点によって テクノロジーが向かえることになる 次の章について知ることができるのです あたなが取るべき行動も知ることができるかもしれません
まず 限界価格
テクノロジーの進歩における第一段階は 限界価格を下回ることにあります
限界価格を下回ることができれば そのテクノロジーは 臨界質量に達し 市場に浸透できる可能性があります
この時点で 多くのテクノロジーが別のテクノロジーの代替となります ここが もう一つの重要なポイントです
そして最終的には 多くのテクノロジーがコモディティ化します
寿命の終わりが近づくに従って 無料に近づきます
これらのポイントこそ なにかを行うチャンスです テクノロジーに変革をおこすチャンスなのです
分かりやすいよう 最初のWi-Fiブームについて考えてみましょう Wi-Fiは限界価格になり 臨界質量に達しましたが まだ代替とはなっておらず 無料でもありません まだチャンスは残っているというわけです
私がお伝えしたいことを DVDの話で考えてみましょう DVD技術は 全ての段階を経たテクノロジーです
DVDが1990年代の半ばに登場したのはご存じの通りです 当時は非常に高価でしたが 1998年には 400ドル以下になりました 400ドルは心理的な分岐点です
そして上昇を始めました 販売台数が 上昇し始めました 見えない変曲点を経て 上昇が始まりました
そして一年後 臨界質量に到達しました 家庭用品では20パーセントが一般的な限界質量とされています
おもしろいことに 同時に上昇し始めた商品が他にもあります ホームシアターです
DVDが家にやって来ると 高品質のデジタルビデオを手に入れたことは 大型のスクリーンを購入する理由 ドルビーの5.1チャンネル サラウンドも購入する理由となりました
機材を一式そろえて エンターテイメント機器と つなげる理由になったのかもしれません
ネットフリックスが1999年に創設されたというのも興味深い点です
リード ハスティングスは時機を捉えることができたのです 彼は そこが変曲点であり 何かができるに違いないと考えたのです
DVDが次に達した段階は「代替」でした
2001年頃に DVDがVTRの販売を追い越しました
ここでも 世界的に どういう事が起こったのかお分かりいただけると思います
ネットフリックスは そのビジネスモデルで利益を得ることに成功しました それはレンタルビデオ業界ではできなかった方法でした
DVDには様々の利点があります メディアが小さく 封筒に入れて 安く送れるという点もそうです
こういった利点は テクノロジーが進歩するまで だれも その存在に気づくことがなかったのです
そして最終的にはDVDは無料に近づいています
Apexという 無名ブランドの中国企業があります 過去数年間で何度か 米国のDVD販売で一位になりました 昨年の平均価格は48ドルでした
おそらく 噂話になった ウォルマートでの30ドルDVDへの殺到の件を 思い出されるかもしれません
DVDは安く 安くなっているのは確かです さらによく見てると興味深いことが分かります DVDが安くなるにつれ プレミアブランド つまりソニーなどがマーケットシェアを失っています そしてApexeなどの無名ブランドがシェアを奪っています
DVDはすっかりコモディティ化されました これがゼロに近づく時に起こることです ビジネス環境は厳しくなります
テクノロジーを考える際に それを分割できる4つの段階をすべて経験しました テクノロジーがたどる4つの段階を経験したのです
それでは その他のテクノロジーについてもお話ししましょう 我々のレーダーで捉えたテクノロジーです 同じ考え方をしましょう この4つの段階の考え方で テクノロジーがそれぞれ開発のどの段階にあるか考えたいと思います
トップ10に入るテクノロジーである必要はありません それぞれの段階にある テクノロジーの例としてお話しするだけなのですから
しかし こういったテクノロジーが交差路 あるいは交差点に近づいていることについては 考えるに値します
まず 遺伝子配列解明技術について
ご存じのように 遺伝子配列解明は そのほとんどを コンピュータによって実装しており 価格が下落しています ムーアの法則と同じ状況です
現在可能 あるいは可能になると思いますが クレイグ ベンター博士が今日来られていれば このように言ったに違いありません 「年末には 4000万ドルでヒトの遺伝子配列を解析できるようになる」
数年前には数十億ドルが必要だったのです
創造のツールを理解するための我々の能力は ますます高まっています
もう一つ面白いことは 発見される遺伝子の数も 非常な速度で増えているということです
どの遺伝子に対しても診断テストが可能になります
将来 希望すれば 何十万という遺伝子の テストを受けられる日が来るかもしれません 非常に安価で 自身のモザイクについても調べることができるでしょう
限界価格に近づくテクノロジーがもう一つ
WHOの素晴らしい調査によれば ジェネリック薬品が 抗レトロウイルス薬の混合薬およびカクテル療法での使用において効果を示しています
2000年1月時点では その価格は1万ドルでした 一日27ドルです
ジェネリックが登場したのはブラジルあたりだったと思いますが その価格に対する影響は劇的なものでした
今では一日50セント以下になりました
この価格弾力性をご覧になり この二つの関連性について考えてください 抗レトロウイルス薬の値段が下がれば 治療できる患者の数は 劇的に増加します クリントン財団とWHOは 2005年までに世界で300万人を治療できるとしています 内200万人がサハラ以南のアフリカです
これには薬価の下落が多いに貢献しています
Linuxも良い例でしょう
Linuxは限界質量を超えました
こういったテクノロジーが限界質量を超えようとしています
Linuxを赤で示していますが 20パーセントに達しています
面白いことに 以前にも交差点がありました しかし その交差点ではなく
考えるべき交差点は この青い線との関連です
線が向かっている方向をよく見てください 20パーセントに達したところで その扱われ方が変わりました
オタクだけのものではなくなったのです
レドモンドの住人が夜中に目を覚まして 考えているところを想像しました
最近よく見かけるようになった例としてハイブリッドカーがあります
プリウス2004を運転されているでしょうか すばらしい車です
この傾向をご覧になれば 2008年頃までに プリウスが自動車販売の2パーセントをとることは 奇妙な予測であるとは思いません
2パーセントは20パーセントではありません しかし 自動車産業での話です この産業は動きが鈍く 強大なものです しかし ここにも時が至ります
2パーセントでも あちこちでプリウスを見かけるようになります
ハイブリッド市場が活発になることで 考えるべきことは 電気モーターが自動車産業に持ち込まれたということです
それは自動車産業100年において 初めての劇的変化です
電気モーターの使用で 多くのことが可能になります 車の構造を 思うがままに変えることができるのです
回生制動装置 電子制御方式による運転 交換可能な車体形状 ハイブリッドがもたらす小さな変化にすぎません 自動車が全く新しい世紀を迎えることになるかもしれないのです
Voice Over IPについては すでにご存じだと思います
このテクノロジーも突然現れたものです 今のところ 使い勝手はよくありません
Kazaaの創業者たちが作ったSkypeという会社があります
この数をみてください 去年の8月にビジネスを立ち上げましたが 登録ユーザ数は400万に達しようとしています これは限界質量です
キャリアの側でも変化が起ころうとしています
過去に存在した電気通信規格のいくつかが IPに置き換えられたのです ティッピング ポイントです マルコムの方には申し訳ありませんが これは経済 スピード 業界のプレイヤーをも変えてしまうのです
こういうことになる可能性は高いのです
そして最後にフリーについて フリーとは非常に興味深いものです
フリーはデジタル化とともに到来します なぜなら その再生産に要するコストは実質的にフリーとなるからです IPは効率の良いプロトコルであり フリーをもたらしまします 広大なバンド幅によって 光ファイバーもフリーをもたらします
フリーはシリコンバレーから世界への贈り物です
経済的な力であり 技術的な力でもあります
正しく扱わなければ デフレ圧力となります
あり余るほどあるもので 希少性とは対極にあります
フリーはおそらく最も興味がひかれるものです
ハードディスクに格納できる曲数を
示しています 映像でも構いません 今までに作られた全ての曲を 400ドルのディスクに 格納できる日が2008年にはやって来るかもしれません 音楽から物理的な制約が取り除かれたわけです
こういった数字から
音楽産業は崩壊しようとしていることがお分かりいただけるでしょう 正に今起こっていることです ハリウッドも困惑しています
今まで経験したことのない力に立ち向かっているのです
彼等からの反応は厳しいものですが その対応によって 必ずしも この状況から抜け出せるとは限らないのです
最後に もう一つだけフリーの例をお見せしましょう おそらく最も強力なフリーです 先ほど光ファイバーについて話しましたが その「あり余るということ」で フリーが生まれます
インドにおける一分あたりの通話料を示した資料です
1990年には 一分あたり2ドル以上していました
米国同様 インドでも電話のシステムに規制がありました
革新は全くなく 何事もゆっくり進んでいました しかし 光ファイバーがどこでも利用できるようになったのです 価格が急速に下落しているのがご理解いただけるでしょう
多くの場合 一分あたり7セントです
インドへの電話が非常に安く あるいは無料がもたらした結果とは 怒れるプログラマ つまりアウトソーシングです
グローバル化の中で起こった変化でも劇的なものでしょう そして 今日の世界に存在する経済のツールの中でも 最も強力なものだと思います
インド そして中国 その他の国々にある 我々のマーケットに参入可能な企業は 国内の企業と仕事をすることになるでしょう 通信はフリーなのですから まだ 始まったばかりです
おそらく これは 今日のテクノロジーの動向において最も重要なものといえるでしょう
ありがとうございました | Obviously, being a technology magazine, technology trends are something that we write about and need to know about.
But also it's part of being any monthly magazine -- you live in the future. And we have a long lead-time.
We have to plan issues many months in advance; we have to guess at what public appetites are going to be six months, nine months down the road. So we're in the forecasting business.
We also, like a lot of companies, create a product that's based on technology trends.
In this case, ours is about ideas and information, and, if we're lucky, some entertainment. But the concept's quite the same.
And so we have to understand not only why tech's important, where it's going, but also, very importantly, when -- the timing is everything.
And it's interesting, when you look at the predictions made during the peak of the boom in the 1990s, about e-commerce, or Internet traffic, or broadband adoption, or Internet advertising, they were all right -- they were just wrong in time.
Almost every one of those has come true just a few years later.
But the difference of a few years on stock-market valuations is obviously extreme. And that's why timing is everything.
You've probably seen something like this before.
This is the classic Gartner Hype Curve, which talks about kind of the trajectory of a technology's lifespan.
And just for fun, we put a bunch of technologies on it, to show whether they were kind of rising for the first high peak, or whether they were about to crash into the trough of disillusionment, or rise back in the slope of enlightenment, etc.
And this is one way to do technology forecasting: get a sense of where technology is and then anticipate the next upturn.
We tend to do any technology that we think is sufficiently important; we'll typically do it twice. Once, we want to do it first.
We want to be the first to do it, for the geeks who appreciate that, we'll catch it right there at the technology-trigger.
You can see in 1997, we put Linux on the cover.
But then it comes back. And sufficiently big technologies are going to hit the mainstream, and they're going to burst out.
And then it's time to do it again. Last year.
And that's one way that we try to time technology trends.
I'd like to talk about a way of thinking about technology trends that I call my "grand unified theory of predicting the future," but it's closer to a petite unified theory of predicting the future.
It's based on the presumption, the observation even, that all important technologies go through four stages in their life -- at least one of the four stages, sometimes all four of the stages.
And at each one of these stages, can be seen as a collision -- a collision with something else -- for example, a critical price-line that changes both the technology and also changes its effect on the world. It's an inflection point.
And these are the inflection points that tell you what the next chapter in that technology's life is going to be, and maybe how you can do something about it.
The first is the critical price.
The first stage in a technology's advance is that it'll fall below a critical price.
After it falls below a critical price, it will tend, if it's successful, to rise above a critical mass, a penetration.
Many technologies, at that point, displace another technology, and that's another important point.
And then finally, a lot of technologies commoditize.
Towards the end of their life, they become nearly free.
Each one of those is an opportunity to do something about it; it's an opportunity for the technology to change.
And even if you missed, you know, the first boom of Wi-Fi -- you know, Wi-Fi did the critical price, it did the critical mass, but hasn't done displacement yet, and hasn't done free yet -- there's still more opportunity in that.
I'd like to demonstrate what I mean by this by telling the story of the DVD, which is a technology which has done all of these.
The DVD, as you know, was introduced in the mid-1990s and it was quite expensive. But you can see that by 1998, it had fallen below 400 dollars, and 400 dollars was a psychological threshold.
And it started to take off. And you can see that the units started to trend up, the hidden inflection point -- it was taking off.
The next thing it hit, a year later, was critical mass. In this case, 20 percent is often a good proxy for critical mass in a household.
And what's interesting here is that something else took off along with it: home-theater units.
Suddenly you have a DVD in the house; you've got high-quality digital video; you have a reason to have a big-screen television; you have a reason for Dolby 5.1 surround-sound.
And maybe you have reasons for starting to connect them, and bring the rest of your entertainment in.
What's interesting also is -- note that Netflix was founded in 1999.
Reed Hastings is here. He clearly saw that that was a moment, that was an inflection point that he could do something with.
The next phase it hit was displacement.
You can see around 2001 it finally out-sold the VCR.
And here too, you can see the implications in the world at large.
Netflix was right -- the Netflix model could capitalize on the DVD in a way that the video-rental stores couldn't.
Among the DVD's many assets is that it's very small; you can stick it in the mailer and post it cheaply.
That gave an advantage; that was an implication of the technology's rise that wasn't obvious to everybody.
And then finally, DVDs are approaching free.
There's a company called Apex, a no-name Chinese firm, who has, several times in the past year, been the number-one DVD seller in America. Their average price, for last year, was 48 dollars.
You're aware of the perhaps apocryphal Wal-Mart stampede over the 30-dollar DVD.
But they're getting very, very cheap, and look at the interesting implication of it. As they get cheaper, the premium brands, the Sonys and such, are losing market share, and the no-names, the Apexes, are gaining them.
They're being commodified, and that's what happens when things go to zero. It's a tough market out there.
Now they've introduced these four ways of looking at technology, these four stages of technology's life.
I'd like to talk about some other technologies out there, just technologies on our radar -- and I'll use this lens, these four, as a way to kind of tell you where each one of those technologies is in its development.
They're not necessarily the top-10 technologies out there -- they're just examples of technologies that are in each one of these periods.
But I think that the implications of them approaching these crossovers, these intersections, are interesting to think about.
Start with gene sequencing.
As you probably know, gene sequencing -- in a large part, because it's built on computers -- is falling in price at a kind of a Moore's Law-like level.
It is now possible -- will be possible, and if Craig Venter indeed comes today, he may tell you something about this -- to sequence the human genome for 40 million dollars by the end of this year.
That's as opposed to billions just a few years ago.
You know, our ability to capture the tools of creation is getting closer and closer.
What's interesting is that at the same time, the number of genes that we're discovering is rising very quickly.
Each one of these genes has potential diagnostic test.
There will come a day when you can have hundreds of thousands of tests done, very cheaply, if you want to know. You can learn about your own mosaic.
Here's another technology that's approaching a critical price.
This is a fascinating research from WHO that shows the effect of generic drugs on anti-retroviral drug compounds and cocktails.
In January 2000, the price was 10,000 dollars, or 27 dollars a day.
The generics came in, first in Brazil and elsewhere, and the effect was just dramatic on pricing.
Today it's less than 50 cents a day.
And what's interesting is if you look at the price elasticity, if you look at the correlation between these two, as the anti-retrovirals come down, the number of people you can treat goes radically up. And the Clinton Foundation and WHO believe that they can treat three million people worldwide by 2005 -- two million in sub-Saharan Africa.
And the falling price of drugs has a lot to do with that.
Linux is another good example.
Now we've switched to critical mass.
These are now technologies that are hitting critical mass.
If you look here, here's Linux in red, and it's hit 20 percent.
Interestingly, it's done a crossover before, but not the crossovers that matter.
The crossover that's going to matter is the one with the blue.
But you can look and see the direction those lines are going, you can see that at the 20 percent, it's now taken seriously.
It's not just for the geeks any more.
That is, I imagine, what people in Redmond wake up in the middle of the night thinking about.
Another technology that we see all around us out here is hybrid cars.
I don't know whether anybody has a Prius 2004, but they're fantastic.
And if you look at the trends here, by about 2008 -- and I don't think this is a crazy forecast -- they'll be two percent of auto sales.
Two percent isn't 20 percent, but in the car business, which is slow moving, that's huge; that's arrival.
At two percent, you start seeing them on the roads everywhere.
And what's interesting about the hybrids taking off is you've now introduced electric motors to the automobile industry.
It's the first radical change in automobile technology in 100 years.
And once you have electric motors, you can do anything: you can change the structure of the car in any way you want.
You can have regenerative braking; you can have drive-by-wire; you can have replaceable body shapes -- it's a little thing that starts with a hybrid, but it can lead to a whole new era of the car.
Voice Over IP is something you may have heard something about.
Again, it's kind of coming out of nowhere; it's a little hard to use right now.
There's a company created by the Kazaa founders called Skype.
Look at these numbers. They launched it in August of last year; they already have nearly four million registered users -- that's critical mass.
And the same thing's happening on the carrier side.
You're looking at IP taking over from some of the traditional telecom standards. This is a tipping point -- if Malcolm's here, forgive me -- and it's going to change the economics, and the speed, and the players in the industry.
It's going to look a little bit like that.
And finally, free. Free is really, really interesting.
Free is something that comes with digital, because the reproduction costs are essentially free. It comes with IP, because it's such an efficient protocol. It comes with fiber optics, because there's so much bandwidth.
Free is really, you know, the gift of Silicon Valley to the world.
It's an economic force; it's a technical force.
It's a deflationary force, if not handled right.
It is abundance, as opposed to scarcity.
Free is probably the most interesting thing.
that can be stored on a hard drive.
You know, there could be a film's [unclear] there, but it's basically, every song ever made could be stored on 400 dollars worth of storage by 2008. It takes that entire element, the physical element, of songs off the table.
And you've seen the numbers.
I mean, you know, the music industry is imploding in front of our very eyes, and Hollywood's worried as well.
They're facing a force that they haven't faced before.
And their response is draconian, and not necessarily the one that's going to get them out of this.
And finally, I'll give you one last example of free -- perhaps the most powerful of all. I mentioned fiber optics -- their abundance tends to make things free.
This is the price of a phone call to India per minute.
And what's interesting is that it was just 1990 when it was more than two dollars a minute.
India had, still has, a regulated phone system and so did we.
It was surprisingly non-innovative, moved very slowly, but then there was just so much fiber out there, you couldn't hold back, and look how quickly the price fell.
It's seven cents a minute, in many cases.
And the consequence of cheap phone calling, free phone calling, to India, is the pissed-off programmer, is the outsourcing.
It is probably one of the most dramatic shifts in globalization and one of the most powerful economic tools that we're seeing in our world today.
The force of India, and then China, and any other country that can contact our markets and will work with our companies -- because the communications are free -- is just beginning to be felt.
And I think that's probably one of the most important technology trends that we're looking at today.
Thank you. | {
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◇◆◇◆◇
ミシェルたちは、メトセラの街を出たあと、防塵マスクの仕入れの護衛についていた。
今回は大口の注文で、かなりの量を運ぶ必要があるため、労働力兼護衛としての人材が必要との話だった。
「で、これが運び込まれた先が、ニコルの標的って可能性も高いんだ。だから油断するんじゃないぞ」
「もー、クラウドくんに言われるまでもなく、わかってるって」
運ぶ荷物は馬丸ごと必要なため、彼女たと他に人足同行していた。
目的地の港町はメトセラの街から一日かかる場所にあるため、往復三日を想定した旅程だ。
「ラウムってこう見ると、行商には向いてないよなぁ」
「はっはっは、それでも商品を運ばないと、困る人がいるからな!」
輸送を担当する商人は顔に斬り傷を残した大男で、その影響で人前に出ることができないといっていた。
しかし明朗快活な性格をしており、物怖じしないミシェルなどは早速懐いている。今も干し肉などを貰って、満面の笑顔で齧りついていた。
「嬢ちゃんはよく食うな。まあいいけど、ほどほどで頼むぜ。片道一日とはいえ保存食なんだから」
「ふぉい、ひひょうひまふ」
ミシェルが食べながら話すのはいつものことである。その言語を散々聞いてきたクラウドは、それを翻訳して商人に伝えていた。
「んく。大丈夫だよ。ご飯が足りなくなったら現地調達すればいいし。わたし狩人だし」
「獲物を探すのはニコルの仕事だったじゃないか」
「わたしだってできるもん」
それを見て、商人は背中にも弓ケースを背負ったミシェルを奇異の目で見た。
「お嬢ちゃん、背中に背負ってるのも弓だろう? なんで二つも背負ってるんだ」
弓使いが近接専用に軽めの剣を用意することはよくある。しかし彼女は弓を二つ用意していて、近接用の武器は用意していなかった。
しかも胸や腕を弦から保護する胸当てや手甲は、妙に質のいい物で揃えられていた。
「これは大物用の特別なやつなの。だからいつもはこっちね」
「剣とかは用意しないのか?」
「それは体術で何とか。何よりクラウドくんが守ってくれるし」
「へー、信頼されてるんだな、坊主」
「なんで俺が坊主でミシェルがお嬢ちゃん......いや、いいけど」
扱いの違いに憮然とした顔をするクラウドに、商人はガハハと大声をあげて笑う。
「悪いな。男には遠慮せん性質なんだ。それよりあれを見な」
「ん?」
商人が指さした先には、一羽のヴァルチャーが飛んでいた。
「さっそくで悪いが、口ほどの腕ならアイツを仕留めてくれんかな?」
「ヴァルチャーは高空から急降下で襲ってくるから危険なんだよな。俺じゃ守り切れないし、先手必勝が楽。ってことで、ミシェル、頼むよ」
「はぁい!」
返事が終わるより早く、ケースから弓を取り出し、矢筒から矢を番える。
その流れるような動きは、商人が目を剥くほど滑らかで熟達した動きだった。
一呼吸の間に放たれた矢は、一直線に空に向かい、獲物を探すヴァルチャーの頭部に狙い
「な......え? もう?」
「まあ、ミシェルだからね。これでも位だから」
「ハァー! こんなに若くて四階位って大丈夫かよって最初は思ってたが、こりゃすげぇ」
「まあね。周囲が化け物揃いで、俺も肩身が狭いよ。それより、回収しないのか?」
「ああ、そうだな。お前ら、ちょっと行って来てくれ」
人足の男たちに、ヴァルチャーの回収を任せる商人。
彼らもミシェルたちと同じく、護衛兼労働力として雇われているため、森の中を移動する程度のことはできる。
一人を残し、二人が一組になって森の中に入っていく。
「待ってくれ、俺も行くよ」
しかし彼らの装備では大型のモンスターに襲われては危険と判断し、クラウドも同行を申し出た。
「じゃあ、ミシェル。後は任せるね」
クラウドは手を振り返した後、先に森に入っていった二人を追って、草を掻き分けていったのだった。 | ◇◆◇◆◇
Once Michelle and Cloud left Methuselah, they worked as guards for the dust-tight mask acquisition. They employed Adventurers to guard them through the journey from the port city to Methuselah.
It was a fairly big order this time, so they needed to transport a large amount, thus they needed people to work both as laborers and guards.
“So the place we carry these is supposed to be Nicole’s goal, most likely. So we shouldn’t lower our guards.”
“Hey, I know that already without you telling me, Cloud.”
Cloud warned her clearly over and over, and Michelle was already fed up with it. She did know that he was doing that out of concern for her, so she didn’t take offense at it. They needed an entire carriage to carry the luggage, so other than them, there were also three more laborers accompanying it.
The port city was located at about a day’s distance from Methuselah, the round trip was estimated to take three days. Since they were using a road that passed through Raum’s characteristic forest, the free view around wasn’t very good.
“Looking at it like this, Raum really isn’t suited to trade, huh?”
“Hahaha, but if we don’t transport goods, people would suffer from it!”
The merchant in charge of the transporting was a large man with a scarred face, who said he couldn’t show himself to customers for that reason. Certainly, the scar gave him a fierce impression, so it wasn’t suited for service business.
However, he had a cheerful and openhearted personality, so people like Michelle who were not timid quickly got along with him. He was currently gnawing on jerky with a big smile.
“You sure can eat, little lady. That’s fine and all, but please be a bit moderate. Even if it only takes a day for the one-way trip, they are still our preserved foods.”
“Ohay, I wiw conhwow myshewf.”
It was usual for Michelle to talk while eating. Cloud heard it so often that he could translate her words to the merchant.
“Gulp. It’s fine. If we run out of food, I can just get some locally. I am a hunter, after all.”
“Finding prey is Nicole’s work, isn’t it?”
“I can do it too, you know?”
She tapped on the hunter bow case on her waist with those words. Seeing that, the merchant looked at her curiously, noticing she had another bow case on her back.
“Young lady, the one on your back is a bow too, right? Why do you have two of them?”
Archers often had light swords on them for close combat. But she had two bows, but no close-combat weapon on her. She also had two types of arrows, so she drew a contrast with common Adventurers that were specializing in a bow.
Moreover, he noticed that the breastplate and gauntlets that protected her arms and chest from the bowstring were made of strangely good material. They were too high-class items for her to be a young Adventurer.
“That one is a special bow for hunting big game. This is the one I normally use.”
“You don’t have a sword or something on you?”
“I can handle that part with physical combat. Plus I have Cloud to protect me.”
“Oh, she’s depending on you quite a bit there, sonny.”
“Why am I a sonny while she’s a young lady... Ah, whatever.”
Cloud felt bothered by the treatment difference, making the merchant burst into laughter. He gave him a strong slap on the back and spoke in a good mood.
“Sorry about that. I tend to be pretty unreserved towards guys. That aside, look at that.”
“Hmm?”
There was a single vulture flying from the direction the merchant pointed to.
“Sorry to ask right away, but assuming you’re as skilled as rumored, can you take it down for me?”
“Vultures are dangerous since they can swoop down on you from high altitudes. I wouldn’t be able to fully protect you, so it’s easier to make the first move. So yeah, Michelle, do it.”
“Gotcha!”
She quickly pulled out the bow from the case and nocked an arrow before her reply was even over.
Her flowing sequence of movements looked so smooth and masterful that the merchant stared wide-eyed. It only took her an instant to take aim and she loosed the arrow so casually as if it was no big deal.
The arrow that was loosed in a short moment flew straight to the sky and accurately pierced the head of the vulture that was searching for prey. It died with that single attack and fell to the ground with a spin.
“Wha... It’s over?”
“Well, it’s Michelle, after all. She may not look like it, but she’s a fourth-rank.”
“Hah! I had my reservations about her rank despite being so young, but this is amazing.”
“Yeah. Everyone around me is a monster, so I’m feeling quite overwhelmed too. More importantly, aren’t you going to recover that?”
“Oh, right. You guys, go and grab it.”
The merchant entrusted the recovery of the vulture to the laborer men.
Like Michelle and Cloud they were also both guards and laborers, so they were able to move through the forest. They seemed like they wanted to object to them being the ones to recover it, but they couldn’t go against their employer’s wishes.
One of them remained behind while the other two headed inside the forest as a pair. The vulture didn’t fall that far away, so they probably judged two of them would be enough.
“Wait, I’ll come too.”
But Cloud judged that it would be dangerous if a large-type monster appeared judging by their equipment, so he asked to accompany them. The men exchanged looks for a moment and quietly nodded curtly in approval.
“Okay, Michelle. I leave here to you.”
Michelle didn’t seem to care about the transcendent skill she displayed earlier, and responded with a short wave. Cloud returned the wave and then followed after the two who entered the forest before him, making his way through the weeds. | {
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ついていった先はジーゼフさんの家。
テーブルには料理が並べられていた。
ポトフのような物やパン、肉など様々な料理が数皿。
「おぉう! うまそうじゃねぇかっ!」
そう言いながらオリゴさんは席に着いた。
「うふふふふ。これは村長さんの奥さんとミュリと私で腕をふるって作ったんだから、アリムちゃんも席に着いて、さぁ、食べて食べて!」
「ご、ご馳走になります!」
リロさんの言うとうりに、勧められるまま席に着いた。変に謙遜すると逆に失礼だもんね。
俺の隣にミュリさん、リロさんが座る。向かいはオルゴさんだ。
俺が『いただきます』と言うと、村長の奥さん、ガーベラさんは『召し上がれ』とニッコリして答えた。
とりあえず、目の前の料理を皿に取ってみる。その料理はどう見てもサラダなのだが、そのサラダには、黄色い皮のカブのような物がふんだんに使われていた。
こ間近く、俺は肉と木の実数個しか口にしていない。ちゃんとした食事は久しぶり。
、そのカブを食べてみた。甘い、カブなのにトウモロコシのように甘い。とても変わった味だ。
「おいしい......」
久々のまともな食事につい、そう声が漏れてしまう。
皆の顔、全員が嬉しそうにニッコリしていた。
特に、ジーゼフさんは満面の笑みで、
「そうじゃろう、そうじゃろう。その野菜はな、この村の名産、カバと言うんじゃ。美味しいじゃろう? ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉっふぉっ!」
と言った。カバ? これ、カバっていうんだ...。
俺はそんなカバのサラダを食べ終わると、次は鶏肉料理っぽいものを取る。チキン南蛮のような感じ。
「それは、オドド鳥っていうEランクの魔物の肉のソース和えよ。私達が黒兵犬を討伐している最中に見つけたから、狩っておいたの。」
あぁ、あのドラゴンの肉の次に美味かった肉か。オドド鳥って、変な名前。
「美味しい?」
「おいしーですっ!」
と答えた。
リロさんはその可愛い顔に満面の笑みを浮かべ、
「そうか、そうか~!」
と嬉しそうにしている。
あとは、パンの他にポトフのようなものがある。それをよそっていると、ミュリさんも嬉しそうに
「それ、私が作ったんですよ!アリムちゃん!」
どれどれ、ハムハムハム。うん、美味しい。本当にポトフまんまだ。
「この、お料理も美味しいですっ!」
そう、ミュリさんに言うと、
「えへ、そうですか? エヘヘヘヘェ......」
と照れていた。可愛い。あ、あとお礼も言っとかないと。
と、返された。できた人だ。その他にパンも美味、俺は満足なのだ。ご馳走さまでした。
この日は昼御飯を食べたあとも引き続き村中を見て回った。そうそう、1つ報告。
木を切ってるおじさんが居たから、お願いして習ったの。すんなりOKしてくれた。
これが、他人から教えてもらうっていうことなんだね。ありがとう、おじさん。
その日の夜御飯は、オドド鳥のカバ入り具沢山のシチューだった。勿論、美味しかった。
この世界で人にあって、こんな暖かいものまで食べさせて貰えるなんて、森の中にいた時は思わなかった。
晩御飯を食べ終わったセインフォースの皆さんは宿屋へと帰って行き、俺はガーベラさんにお風呂に入れてもらった。
しかも寝巻きまでくれた。本当にありがたい。今着てる服も、寝巻きも、この二人の娘さんのお古なのだそうだ。
今は王都に居るらしい。いつか会うかも。
ひっさしぶりのお風呂......。本来、俺は風呂好きなんだ。
だから、森の中にいた時は調味料がないことのほかに、風呂がないこともきつかったんだよね。
~~あぁ~~生き返るぅ~~~
風呂だし、自分の顔や姿を水で確認できるかも。この風呂場に鏡はない。
俺は波が消えた風呂を覗き込んでみた。
___________だれ? この美少女。
自分に惚れるってなんだろう?
一回、男に戻ってみるか。
__________まさかの、顔が変わらない。
えぇえええ......。
身体は男の子だ。だが、顔が女の子だ。いわゆる、美少年。
俺は顔と不釣り合いの身体がなんだか違和感を感じてしまった。身長も10センチ近く変わるし。自分の身体なのにね。
どうせ今は周りから女の子だって勘違いされてるんだから、このままのほうがこの世界で暮らしていくのには良いはずだし。
あぁ、半分ヤケね? これ。
いろいろと考察しつつも、風呂から上がったら寝た。
おやすみなさい。今日は...まぁ、いい日だったかな。 | I followed back to Jizefu’s house.
Dishes were already lined up in the table.
Lot’s of food, potatoes, meat. bread...
「Oh! Don’t eat just yet!」
Orgo says that while sitting down.
「Ufufufu, As you know my wife made this meal so go ahead and take a seat! Go on eat up, eat up!」
「This is a feast!」
I sat down as asked. You have to be modest.
Muri and Loli are next to me, while Orgo is across.
As they said “All right!”, the village chief wife said “I’ll serve!”
For now I am eyeing the dish. The dish is a salad no matter how you look at it.
It has been nearly two weeks since I appeared here, during that time i only had nuts and scraps of meat. It feels good to have a proper meal.
I take a bite from a turnip. Unexpectedly. It is sweet like corn.
「Delicious......」
My voice unitentionally leaks out.
Everyone was smiling sweetly.
Especially Jizefu, he has the biggest grin.
「Good good. This is a famous vegetable from our village called, “Hippo”. Is it not delicious? Fu ~offoffoffoffoffo~tsu!」
Hm. Hippo? This is “Hippo”...
When I finish this “Hippo” salad, I’ll try the chicken meat. Looks like chicken soba.
「Praise the E rank Demon Ododo Bird. I found one while we were hunting the Black Dogs, so I killed this one as well.」
So it was this delicious meat. Ododo Bird is a funny name.
「Delicious?」
「Delicious!」
I answered.
Lilo cute face smiled.
「I see, is that so~!」
I’m glad
After that, there seems to be some bread as well as soup that looks like Pot-au-feu.
「That’s the one i made!Alim!」
Hamuhamuhamuhamu。Yup, tasty. It really is Pot-au-fue.
「This is also delicious!」
I say to Muri.
「Is that so, Ehehehehe......」
She got emberassed. Cute. Oh, I have to say thanks.
And so, we returned to eating. The bread was delicious.
I continued to watch the village after the feast. Oh yeah, a report. I learned the skill 「Logging」
There was an old man cuttng wood, I asked and learned from him. He said it was okay.
Thank you Old man.
The evening’s meal was stew made from the Ododo Birrd and the Hippo turnip. Of course, it was delicious.
I never thought while I was in the forest that I would meet people in this world and let me eat such godly things.
Everyone from Seinforce went back to the inn, and I took a bath with Gerbera.
She even got me to sleep. I really appreciate it. Seems the clothes I am wearing and bed is from one of their daughters.
She seems to be in the Kingdom. I feel that one day we will meet.
A hot bath for the first time. I originally like baths.
It was hard being in the forest with no seasonings and hot water to take baths.
~~ah~~I’m revived~~~
With the bath water, my face is barely visible. There are no mirrors here.
I looked at the water after the waves dissapeared.
___________Who? This beautiful girl...
I guess you can fall in love with yourself?
一Would I like to return to being a man?
__________Impossible, the face won’t change.
Eeeeeeeh.......
The body’s a boy. However, the face is a girl’s. The so called bi-shonen.
It is pretty uncomfortable with these counterparting parts. Height would also change by cm. Even though it’s my body.
Seems that I was misunderstood for being a girl, though I can’t say I hated it.
Oh? this is half-salty.
I went to bed after the bath, thinking of various things.
Today.. Well. It was a nice day. | {
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これが、私が11歳の時に書いた作文でした。 そして、評価はB+でした。 これから話すのは、無から生まれる有について、そしていかに私たちが創造するかです。
しかも、私たちに許された 18分という時間の中で、そしてTEDの決まりに従って、 この話を進めていきたいと思います。 言葉を換えれば、実際これは 死に近い経験を創り出すものですが、 仮死というのは創造性によく働くのです。
さて。
そう、これも説明しておきたいのです。 もし私が普遍的な創造性について嘘を言ったり、本当でないことを言えば 私を質問攻めにするぞ、とデイヴ・エガーズが言ってきたからです。
ですが、私はこの方法でお話しています。皆さんのうちの半分は科学者でいらっしゃいますね。
私が「私たち」と言う時、必ずしも皆さんのことを指す訳ではありません。 私が言っているのは、自分自身と、私の右脳と左脳、 そして、私の言っていることは間違っていると指摘する 私の中にある検査官を指しています。
そして、私は話を進めていくにあたって、 私が創造する過程の一部であると思われるものを見ていきます。 それには過去の数々の出来事が含まれています。実際には、 無というものは、私が新しい何かを作り出しているその瞬間よりも 前から始まっているのです。
そして、それには遺伝、養育、 そして私の言うところの悪夢が含まれています。
さて、遺伝の領域では、 私たちが何かを先天的に持っているかどうかに注目します。 おそらく脳の中の、芸術的な霊感を起こさせるような効果を持つ 染色体異常のようなものなのでしょう。
私たちは他の手段で何かを持って生まれてくると言う人もいますし、
私の母のように、 前世から何かを得ていると言う人たちもいます。
創造性は何かの神経のねじれの作用かもしれないと 言う人たちもいます。 ゴッホ症―ご存じかも知れませんが、多少の精神病やうつ病ですね。
ただし、誰かが・・・最近読んだのですが、 ゴッホは必ずしも精神病を患っていたわけではなく、 側頭葉てんかんの発作があり、そのおかげで 彼の創造性があふれ出たのかもしれない、ということでした。 私も、側頭葉てんかんが脳の一部に何かしら働くと思います。
それと言うのも、実は私自身 随分前に側頭葉てんかんの発作を経験したからです。 この頃、私は近著を書いている最中でしたが、 その作品は他とは随分違う、と言うコメントを受けています。
創造性の一部は、自我意識の危機という感覚からも生まれると思います。 いわゆる、私は誰、私はどうしてこの人間なのか、 私はなぜ他のみんなと違って黒人ではないのか?
時折、秀でた能力を持っている人もいますが、 それが創造性に役立つものではないかもしれません。
私は昔、絵を描いていて、画家になると思っていました。
ミニチュアプードルを飼っていたのです。
悪くはありませんでしたが、そこまで創造的とは言えませんでした。
私にできたことは、厳密な一対一の方法で物事を表現することくらいだったからです。
今から思えば、おそらくこれは本からの写しだったのだと思います。
私は自分のなりたいと思った分野で特に目立っている訳ではありませんでした。 そして、ご覧のとおりの点数で、悪くはありませんでしたよ。 しかし、まさか巧妙に言葉を羅列することで、 自分の生計を立てることになるとは、全く予想だにしませんでした。
又、創造性の法則の一つに幼児期のトラウマがあります。
私も、たくさんの人々が持つような、一般的なタイプのトラウマがあります。 それというのも、お分かりのように、周囲からの自分に対する期待です。
ちなみに、この人形、 この人形は私がまだたったの9歳の時にもらったおもちゃですが、 随分小さい時から私をお医者さんにするのを助けるためのものでした。
もっと長い期間続いたトラウマもいくつかあります。それは5歳から15歳までの間で、 この写真は、私の副業となるはずでした。 しかし後に残ったのは、失敗したなという感覚でした。
ですが実際、私の人生の中で非常に鮮明なものがあります。 それは私が14歳くらいの時のことです。
1967年に私の兄、そしてその6か月後に私の父に、 脳腫瘍が見つかったのです。
母は、何かがおかしいと信じ、 それが何かを探そうとしました。そしてそれを元通りにしようともしました。
父はバプティスト教会の牧師で、奇跡を信じていました。 そして、神の意思で全てがうまくいくと。
しかし勿論、それから6か月後に二人とも結局死んでしまいました。
その後、母はそれが運命か、又は呪いだと信じるようになりました。 母は何故二人が死んだのか、その理由を求めて あらゆる森羅万象を探し回りました。
偶然以外のことを。母は、偶然を信じていませんでした。
全てのものに理由があるのだ、と。
そして母は、自分がまだ幼い時に亡くなった母親が、 自分に対して怒っているのが理由の一つだと考えました。
なので、私は死の概念をいつも身近に感じていました。 母が、次は私、その次は母自身であると信じていたからです。
そして、そのように早い時期に死の概念に直面すると、 全ての事柄について深く深く考えるようになります。
生き残るという意味において、創造的になるのです。
そして、これが私の大きな疑問へとつながったのです。
その疑問は、今日私が持っているものと同じです。
なぜ物事は起こるのか、そしてどのように起こるのか?
そして母が抱いた疑問―私はどのように、物事を実現させるのか?
物語を書くとき、この疑問を考えてみることは素晴らしい方法です。
そもそも、1ページから300ページまでの枠組みの中で、 なぜ、どのように物事が起こるか、どのような順序で起るのか 答えなければならないからです。それはどう影響するのか?
語り手として、書き手として、私はどのように影響するのか?
そしてそれは、多くの科学者たちも抱いてきた疑問だと思うのです。
宇宙論のようなものです。そして、私は自分の宇宙の創造者として、 自分の宇宙の宇宙論を作り出さなければならない。
ご覧のように、何年にもわたって何度も何度も 何かを起こそう、理解しようとして しょっちゅう試行錯誤した跡が山ほどあります。
私が創造性に着目する際、この感覚、もしくはこの無力感が 人生における事実上全てのものの関連性へ目を向けることを、抑制していると思います。
そのような感覚は、この会議の間でも たくさん感じました。 おそらく、ほとんど全ての出来事について。
この関連性を、比喩として使ってみます。 量子力学。私自身さっぱりわかりませんが、 これを用いて、これがどのように比喩になるのかを 説明していこうと思います。
量子力学には、勿論、ダーク・エネルギーと暗黒物質があります。
これは、物事がどのように起こるのかという疑問を検討するのと同じです。
分からないことはたくさんあります。しかし、それが分からないということ以外何も知らないことが多いのです。
しかし、このように連想すると、 物語の中の相乗効果のようなものと一緒になってやってきて そして、見つけたものが大事なものです。それが、意味です。
そして、それが私が仕事をする上で求めるもの、つまり個人的な意味なのです。
量子力学の中には、不確定性原理というのもあります。 私が知っている限りでは。 そして、これは作家活動において頻繁に起こります。
そして、恐るべき観察者効果もあるのです。 何かを探しているとき、ほら、あるでしょう、 物事が同時にいくつも起こっていて、 それを違う視点から見ている。 そして、それが大体どんなものか、物語は何についてのものか、というのを 一生懸命見つけようとするのです。そして一生懸命になりすぎると、 大体の事しか書けないのです。
何も見つけることはできません。
そして、見つけるはずだったもの、 偶然にでも見つけたいと願っていたものは、 もうそこにはないのです。
さて、私たちの宇宙において起こっていることの 反対側を、多くの科学者たちがしてきたように 無視したくはありません。
なので、ここで「ひも理論」を少し付け加えようと思うのですが、 ただ単に、創造的な人たちは多面的である、 それから、私が思うに、11の不安レベルがあるという程度にしておこうと思います。
(会場笑い)そして、それらのレベルは全て、同時に機能します。
そこには、多義性という大きな疑問も存在します。
そしてそれを、今度は宇宙定数と呼ばれるものへとリンクさせていきます。
何が機能しているのかは分からないが、何かが働いている。
そして私にとって、多義性というのは人生において 非常に不快なものです。倫理的多義性。
それはいつでもあるものです。これは単なる例ですが、 最近私が経験した多義性があります。
それはある女性が書いたイラク戦争についての 社説でした。彼女いわく、 「溺れる者を救え。彼に対して命の責任がある。」
これは、非常に有名な中国のことわざです。
つまり、イラクに行ったのだから、全てが収まるまで そこに居座るべきである、と。おそらく100年間であっても。
それから、たまたまもう一つの言い回しを見つけました。 それは「魚を溺死から救う」です。
これは、仏教徒の漁師の言葉で、 生きものを殺してはいけないとされていたことから来たものです。
しかし彼らも生活しなければなりませんし、人々も食べなければいけません。
なので、彼らの理屈は、彼らは魚を溺れさせないようにしていて、 その過程で不幸にも魚は死んでしまう、ということだったのです。
では、この二つの溺れることについての比喩が何を意味しているか、というと、 ―実は、一つは母の解釈であって、 有名な中国の言葉なのですが、 「溺れる者を救え。彼に対して命の責任がある。」
そして、これは警告であると・・・他人の用事に巻き込まれるな。 そうでないと、そこで行き止まりになってしまうから。
もし誰かが本当に溺れていたら、母は救助に向かっただろうと思いますけどね。
しかしこの二つの言い回し、つまり魚を溺れさせないことと、 溺れる者を救うこととでは、意図が関係していたのだと私には思われます。
人生において、ある状況を観察する時、私たちは反応します。
そこから、意図を持つようになります。
ここに、私たちがすべきである、なすべきことに多義性が生じます。 ここで、私たちは何かを行います。
その結果は、私たちの意図とは適合しないかもしれない。
もしかしたら間違っているかもしれない。それなら、私たちの責任はどうなるのか?
私たちは何をするべきなのか?
生涯その場にとどまるのか、 それとも何か他のことをして正当化し、「でも、意図していたことは良かった、 だから全ての責任を負うことはできない」と言うのか?
これが私の人生における多義性です。 このせいで非常に不愉快な思いをし、後に 「溺れる魚を救う」という本を書くことになりました。
この疑問がはっきりして以来、その例をたくさん見ました。そこら中にあるのです。
そのきっかけは至るところにありました。
そして、ある意味では、あらゆるところにそれがいつもあるという事を知っていたとも言えます。
そして、書く、これが起きるのです。このようなヒントや鍵を得て、 疑問ははっきりしていた、けれどもまだはっきりしていない、ということを知る。
そして実際には、焦点が必要なのです。
何か疑問を持つ時、それは焦点なのです。
人生においてくだらなく見えるもの全てが実は、その疑問を通り抜けます。 それから起ることは、そのような具体的な物事が関係するようになる。
これは絶えず起こっているようなのです。
皆さんも、偶然や思いがけない幸運のようなものがあって、 そこから宇宙からの全ての助けを得ていると思っていらっしゃることでしょう。
それは、皆さんが今は焦点を持っているからとも説明できるかもしれません。
そして、それに前よりも頻繁にそれに気づいています。
しかし、それをあてはめます。
自分の中にある矛盾と物事がどう関係しているのかを見始める。
トラブルに陥った兄弟の世話をするのかどうか?
なぜするか、もしくはなぜしないのか?
もしかしたら、考える対象はもっと深刻なものかもしれません。 先にも言ったとおり、ミャンマーの人権について。
私が行けばミャンマーの軍事政権を認めることになる、と誰かに言われたので、 私はそこに行くべきではないと考えていました。
しかししばらくした後、 「なぜ他人の知識や予測に対して自分が責任を取るのだろうか?」と 自分に問わねばなりませんでした。
それは、私が小さかった頃、バプティスト教会の牧師であった父親から 道徳的行いのルールを聞いた時に感じた事と 同じだったのです。
なので、私は自分の意図でミャンマーに行こうと決めました。 しかし、そこに行ったらどうなるのか、 本を書いたらどのような結果になるのか、まだ分かっていませんでした。 ただ、時が来たらそれに直面しなければならない、と考えていました。
私たちは、自分が意識する世界で見えるものに、心を砕きます。
この点までたどり着いて、私は一個人として何をするのか?と問うのです。
全ての人がアフリカに行ったり、病院で働ける訳ではない。 ならば、この道徳的反応、この気持ちがある時、何をするか?
さらに、私たちみんなが目にしている、今日話したことでもある 最も大きな問題のうちの一つが、大量虐殺だと考えます。
これは、次の疑問に通じています。
道徳的に曖昧で不快である全てのものを見る時、 そして自分の意図がどのようであるべきか考える時、 それが私が子どもの時に抱いていた自我意識の疑問へとさかのぼることに気づきます。 なぜ私はここにいるのか、私の人生の意味は何なのか、 そして、宇宙における私の役割は何なのか?
それはとてもはっきりしているようで、未だはっきりとはしていません。
私たちは、ある意味で道徳的多義性をひどく嫌っていますが、 それは絶対的に必要なものでもあるのです。
物語を書くとき、それが私の始点なのです。
どうやら、私は宇宙から時たま助けを得ているようでもあります。
母は、私の最初の著作から、それは私の祖母の霊であると言っていました。 私が、知っているはずのないことを知っていたからだそうです。
祖母が、アヘンをやりすぎてしまったため 事故で死んでしまった、と書く代わりに 私は、その女性が自殺したと物語に書きました。 そして、それが実際起こったことだったのです。
母は、その情報は祖母から来たに違いないと決めつけました。
他にも、作品を書いているときに 役立つ情報をもたらしてくれる、神秘的な何かも存在しています。
これについては、私はある物語を書いていたのですが、 それはある種の詳細、歴史のとある時期、具体的な場所を含んでいて、
そして、それにぴったり合う歴史的な何かを探していたのです。
私はある本を手に取り、そして・・・ めくった最初のページはまさにその設定、その時期のもので、 私が必要としていたキャラクターは 桂林の近く、その外側の地域で起きた太平天国軍で、 自分を神の子だと思っている男でした。
こういったことは、偶然に起こるのか?とお思いでしょう。
では、偶然とは何でしょうか?運とは?幸運とは?
宇宙から得るうまく説明できないことは、何なのか?
そして、それも物語に含まれるのです。
これらは、毎日毎日私がずっと考えていることです。
特に良いことが起こったときや、 悪いことが起こったときに。
しかし、そこには思いもよらない偶然のようなものがあると、心から思いますし その要素が何なのかも、心から知りたいと思います。 それらに感謝し、人生の中でそれを見つけようとするためです。
なぜならば繰り返しますが、私がそのことを意識しているとき、それがより頻繁に起こるからです。
他の偶然の出会いは、私がある場所に行った時のことです。 私はたまたま数人の友達と、違う場所へ行き当たりばったりに車で移動していました。 そして、観光地ではないある場所に行きついたのです。 そこは、美しい村で、素朴なところでした。
そこから3つの谷を歩いて越え、 その3つ目の谷で、私は何やら非常に神秘的で不吉な 不快感を覚えました。その時、そこが私の本の背景になるのだと感じました。
そしてあるシーンを書いていた時、それはその3つ目の谷で起こりました。
なぜか私は、ある男が作った石塚、積み重なった岩のことを書いていました。
なぜ自分がそれを書いていたのかははっきり分かりませんが、それは非常に鮮明でした。
そこで行き詰まり、ある友達が犬の散歩についてこないかと誘ってきたので 私は一緒に行くと言いました。そして45分くらい経った後、 海岸を歩きながら、私はこの風景に出くわしたのです。
それは男、中国人の男で、 石を糊も何も使わずに、積み上げていたのです。
私はその男に、どうしてそのようなことができるんですか?とたずねました。
彼は、そうだね、この世の全てにはうまく釣り合う点があると思うよ、と言いました。
それがまさに、その時点で私の物語の持つ意味だったのです。
そのような例はいくつもあります。物語を描いているときはこのような偶然に多く出くわします。 そして、それを説明できないのです。
私がこういった例を執筆活動により強く結び付けることができるから、 私の持つ疑問との間にこんなに強い関連性を持つのか?
それとも、宇宙定数のような、説明できない偶然なのか?
私が考える大きなこととして、事故も挙げられます。
お話したとおり、母は偶然を信じていませんでした。
事故の性質とは何なのか?
そして、裁判所を抜きにして、どのように その責任と原因を判断していくのか?
私が中国最貧しい貴州省のトン族の美しい村を訪れた時、 それを実感することができました。
その美しい場所を見て、戻ってきたいと思いました。
そして、ナショナル・ジオグラフィック誌が中国について何でも好きな事を書いてくれと言ってきた時、 そこに戻るチャンスを得たのです。
私は了承し、歌う人々、歌う少数民族の村について書きたいと言いました。
先方も納得しましたが、私が前回そこを見た時から2回目に訪れるまでの間に そこでひどい事故がありました。お年寄りの男性が居眠りをして、 彼の掛け布団が、身体を温めるための火の中に落ちてしまったのです。。
60軒が焼失し、40軒に被害が及びました。
その家族全員が責任を負うことになり、
男の息子たちは追放され、3キロ離れた牛小屋で暮らすことになりました。
勿論、欧米人は「単なる事故だったんだからそれは不公平だ。
当の父親ではなく、息子じゃないか。」と言うでしょう。
私が物語を書くとき、そういった信条から解き放たれなければならないのです。
時間はかかりますが、それを解き放ち、そこに行って滞在しなくてはいけない。
そんな訳で私はそこを3回、異なる季節に訪れました。
そして、その場所の歴史や、以前に何が起こったのか、 非常に貧しい村での生活の本質がどのようなものか、 娯楽、儀式、伝統、他の家族とのつながりに見出すものについて、異なるものを感じ取り始めました。 そして、それがどのように、事件の責任の中である種の正義を持つのかを見たのです。
私は彼らが行う式典についても、発見することができました。 29年間、行われていなかった式典です。それは、数人の男を派遣するもので・・・ 風水の達人が馬の霊に乗せて、男たちを地下世界へ送るというものでした。
欧米人である皆さんや、私も含めてですが、 そんなものは迷信である、と思うことでしょう。しかし、そこにしばらく滞在し、 信じられない出来事が起こるのを目撃すると、 どのように物事が起こるのかということを決める、 世界で動いている信条は誰のものなのか、ということを考えるようになるのです。 なので私は彼らとともにしばらく残り、その物語を書くにつれ そういった信条に入り込むようになりました。 重要なことだと思います。なぜなら、そこが物語が真実である場であり、
そこで私は、人生に対して持ついくつかの疑問をどう感じているのか、 それに答えを出す場でもあるからです。
勿論、年月は過ぎ、物語というのは、 このTEDの場でお伝えしようとしているとおり、瞬時には出来上がりません。
物語はやってきては去ります。それが皆さんの手元に届いたら、もう私の本ではなくなります。
読者の手に渡ったら、解釈は人それぞれです。
しかし、どうやって無から有を創り出すのか?という疑問に戻っていくのです。
そして、いかに自分の人生を創り上げるか?
そして人生を創造するには、 疑問を抱き続けること、絶対的真実はないのだと自分に言い聞かせることだ、と私は思います。
私は細かいことを信頼しています。物語の詳細や 過去、その過去の詳細、 そしてその時点で物語に何が起こっているのか、といったことを。 そして、物事や幸運、運命、偶然、事故、神の意思、 神秘的な力の一致に対する私の考察が、 それが何なのか、どのように私たちは創造するのかという 何らかの考えに行き当たると信じています。
自分の役割について、考えなくてはいけません。私は宇宙の中のどこにいるのか、 誰かが今ある私を意図したのか、それとも自分で思いついたものなのか?
それも、心ゆくまで想像し、想像したものになることで見つけられると思います。 しかし、それは現実世界、虚構の世界に存在するのです。
そうやって、私は絶対的真実や全体的真実ではなく、真実の分子を見つけます。
そして、それは私が今まで考えもしなかったものも含めて、 全ての可能性の中になくてはいけません。
ですから、完全な解答は、ありえません。
むしろ、もし答えが一つあるのならば、それは 全てに不確定な部分があることを、自分に確認させるためなのです。 そして、それはいいことであると。私は何か新しいものを発見するからです。
そしてそこに半端な答え、私自身から生まれるより完全な答えがあるなら、 それは単に、想像することなのだ、と。
そして想像することは、物語の中に自分を入れることです。 そこに何も・・・自分と自分が創っている物語との間に何もなくなるまで。
そうやって、物語、ある物語の中に何があるのかを自分が感じ取れるかを 見つけてきました。そしてそこで、 共感とは何なのか、共感を感じることは何なのかを知ることに最も近づくと思います。
なぜなら、全てにおいて どのように物事が起こるのかという疑問は、感情と関係しているからです。
共感を深く理解するために、私自身が物語にならなければいけないのです。
さて、この講演も終わりに近づいてきましたので、 かばんの中に何があるのかをお見せしましょう。それは、芸術的霊感です。 それは私たちの人生の中で形を変え、 素晴らしく、私たちと共にあるものなのです。
ほら、出てきた。
ご静聴ありがとうございました。 | That was an essay I wrote when I was 11 years old and I got a B+. What I'm going to talk about: nothing out of something, and how we create.
And I'm gonna try and do that within the 18-minute time span that we were told to stay within, and to follow the TED commandments: that is, actually, something that creates a near-death experience, but near-death is good for creativity.
OK.
So, I also want to explain, if I said anything that was a lie, or not true to universal creativity.
And I've done it this way for half the audience, who is scientific.
When I say we, I don't mean you, necessarily; I mean me, and my right brain, my left brain and the one that's in between that is the censor and tells me what I'm saying is wrong.
And I'm going do that also by looking at what I think is part of my creative process, which includes a number of things that happened, actually -- the nothing started even earlier than the moment in which I'm creating something new.
And that includes nature, and nurture, and what I refer to as nightmares.
Now in the nature area, we look at whether or not we are innately equipped with something, perhaps in our brains, some abnormal chromosome that causes this muse-like effect.
And some people would say that we're born with it in some other means.
And others, like my mother, would say that I get my material from past lives.
Some people would also say that creativity may be a function of some other neurological quirk -- van Gogh syndrome -- that you have a little bit of, you know, psychosis, or depression.
I do have to say, somebody -- I read recently that van Gogh wasn't really necessarily psychotic, that he might have had temporal lobe seizures, and that might have caused his spurt of creativity, and I don't -- I suppose it does something in some part of your brain.
And I will mention that I actually developed temporal lobe seizures a number of years ago, but it was during the time I was writing my last book, and some people say that book is quite different.
I think that part of it also begins with a sense of identity crisis: you know, who am I, why am I this particular person, why am I not black like everybody else?
And sometimes you're equipped with skills, but they may not be the kind of skills that enable creativity.
I used to draw. I thought I would be an artist.
And I had a miniature poodle.
And it wasn't bad, but it wasn't really creative.
Because all I could really do was represent in a very one-on-one way.
And I have a sense that I probably copied this from a book.
And then, I also wasn't really shining in a certain area that I wanted to be, and you know, you look at those scores, and it wasn't bad, but it was not certainly predictive that I would one day make my living out of the artful arrangement of words.
Also, one of the principles of creativity is to have a little childhood trauma.
And I had the usual kind that I think a lot of people had, and that is that, you know, I had expectations placed on me.
That figure right there, by the way, figure right there was a toy given to me when I was but nine years old, and it was to help me become a doctor from a very early age.
I have some ones that were long lasting: from the age of five to 15, this was supposed to be my side occupation, and it led to a sense of failure.
But actually, there was something quite real in my life that happened when I was about 14.
And it was discovered that my brother, in 1967, and then my father, six months later, had brain tumors.
And my mother believed that something had gone wrong, and she was gonna find out what it was, and she was gonna fix it.
My father was a Baptist minister, and he believed in miracles, and that God's will would take care of that.
But, of course, they ended up dying, six months apart.
And after that, my mother believed that it was fate, or curses -- she went looking through all the reasons in the universe why this would have happened.
Everything except randomness. She did not believe in randomness.
There was a reason for everything.
And one of the reasons, she thought, was that her mother, who had died when she was very young, was angry at her.
And so, I had this notion of death all around me, because my mother also believed that I would be next, and she would be next.
And when you are faced with the prospect of death very soon, you begin to think very much about everything.
You become very creative, in a survival sense.
And this, then, led to my big questions.
And they're the same ones that I have today.
And they are: why do things happen, and how do things happen?
And the one my mother asked: how do I make things happen?
It's a wonderful way to look at these questions, when you write a story.
Because, after all, in that framework, between page one and 300, you have to answer this question of why things happen, how things happen, in what order they happen. What are the influences?
How do I, as the narrator, as the writer, also influence that?
And it's also one that, I think, many of our scientists have been asking.
It's a kind of cosmology, and I have to develop a cosmology of my own universe, as the creator of that universe.
And you see, there's a lot of back and forth in trying to make that happen, trying to figure it out -- years and years, oftentimes.
So, when I look at creativity, I also think that it is this sense or this inability to repress, my looking at associations in practically anything in life.
And I got a lot of them during what's been going on throughout this conference, almost everything that's been going on.
And so I'm going to use, as the metaphor, this association: quantum mechanics, which I really don't understand, but I'm still gonna use it as the process for explaining how it is the metaphor.
So, in quantum mechanics, of course, you have dark energy and dark matter.
And it's the same thing in looking at these questions of how things happen.
There's a lot of unknown, and you often don't know what it is except by its absence.
But when you make those associations, you want them to come together in a kind of synergy in the story, and what you're finding is what matters. The meaning.
And that's what I look for in my work, a personal meaning.
There is also the uncertainty principle, which is part of quantum mechanics, as I understand it. And this happens constantly in the writing.
And there's the terrible and dreaded observer effect, in which you're looking for something, and you know, things are happening simultaneously, and you're looking at it in a different way, and you're trying to really look for the about-ness, or what is this story about. And if you try too hard, then you will only write the about.
You won't discover anything.
And what you were supposed to find, what you hoped to find in some serendipitous way, is no longer there.
Now, I don't want to ignore the other side of what happens in our universe, like many of our scientists have.
And so, I am going to just throw in string theory here, and just say that creative people are multidimensional, and there are 11 levels, I think, of anxiety.
And they all operate at the same time.
There is also a big question of ambiguity.
And I would link that to something called the cosmological constant.
And you don't know what is operating, but something is operating there.
And ambiguity, to me, is very uncomfortable in my life, and I have it. Moral ambiguity.
It is constantly there. And, just as an example, this is one that recently came to me.
It was something I read in an editorial by a woman who was talking about the war in Iraq. And she said, "Save a man from drowning, you are responsible to him for life."
A very famous Chinese saying, she said.
And that means because we went into Iraq, we should stay there until things were solved. You know, maybe even 100 years.
So, there was another one that I came across, and it's "saving fish from drowning."
And it's what Buddhist fishermen say, because they're not supposed to kill anything.
And they also have to make a living, and people need to be fed.
So their way of rationalizing that is they are saving the fish from drowning, and unfortunately, in the process the fish die.
Now, what's encapsulated in both these drowning metaphors -- actually, one of them is my mother's interpretation, and it is a famous Chinese saying, because she said it to me: "save a man from drowning, you are responsible to him for life."
And it was a warning -- don't get involved in other people's business, or you're going to get stuck.
OK. I think if somebody really was drowning, she'd save them.
But, both of these sayings -- saving a fish from drowning, or saving a man from drowning -- to me they had to do with intentions.
And all of us in life, when we see a situation, we have a response.
And then we have intentions.
There's an ambiguity of what that should be that we should do, and then we do something.
And the results of that may not match what our intentions had been.
Maybe things go wrong. And so, after that, what are our responsibilities?
What are we supposed to do?
Do we stay in for life, or do we do something else and justify and say, well, my intentions were good, and therefore I cannot be held responsible for all of it?
That is the ambiguity in my life that really disturbed me, and led me to write a book called "Saving Fish From Drowning."
I saw examples of that. Once I identified this question, it was all over the place.
I got these hints everywhere.
And then, in a way, I knew that they had always been there.
And then writing, that's what happens. I get these hints, these clues, and I realize that they've been obvious, and yet they have not been.
And what I need, in effect, is a focus.
And when I have the question, it is a focus.
And all these things that seem to be flotsam and jetsam in life actually go through that question, and what happens is those particular things become relevant.
And it seems like it's happening all the time.
You think there's a sort of coincidence going on, a serendipity, in which you're getting all this help from the universe.
And it may also be explained that now you have a focus.
And you are noticing it more often.
But you apply this.
You begin to look at things having to do with your tensions.
Your brother, who's fallen in trouble, do you take care of him?
Why or why not?
It may be something that is perhaps more serious -- as I said, human rights in Burma.
I was thinking that I shouldn't go because somebody said, if I did, it would show that I approved of the military regime there.
And then, after a while, I had to ask myself, "Why do we take on knowledge, why do we take on assumptions that other people have given us?"
And it was the same thing that I felt when I was growing up, and was hearing these rules of moral conduct from my father, who was a Baptist minister.
So I decided that I would go to Burma for my own intentions, and still didn't know that if I went there, what the result of that would be, if I wrote a book -- and I just would have to face that later, when the time came.
We are all concerned with things that we see in the world that we are aware of.
We come to this point and say, what do I as an individual do?
Not all of us can go to Africa, or work at hospitals, so what do we do, if we have this moral response, this feeling?
Also, I think one of the biggest things we are all looking at, and we talked about today, is genocide.
This leads to this question.
When I look at all these things that are morally ambiguous and uncomfortable, and I consider what my intentions should be, I realize it goes back to this identity question that I had when I was a child -- and why am I here, and what is the meaning of my life, and what is my place in the universe?
It seems so obvious, and yet it is not.
We all hate moral ambiguity in some sense, and yet it is also absolutely necessary.
In writing a story, it is the place where I begin.
Sometimes I get help from the universe, it seems.
My mother would say it was the ghost of my grandmother from the very first book, because it seemed I knew things I was not supposed to know.
Instead of writing that the grandmother died accidentally, from an overdose of opium, while having too much of a good time, I actually put down in the story that the woman killed herself, and that actually was the way it happened.
And my mother decided that that information must have come from my grandmother.
There are also things, quite uncanny, which bring me information that will help me in the writing of the book.
In this case, I was writing a story that included some kind of detail, period of history, a certain location.
And I needed to find something historically that would match that.
And I took down this book, and I -- first page that I flipped it to was exactly the setting, and the time period, and the kind of character I needed -- was the Taiping rebellion, happening in the area near Guilin, outside of that, and a character who thought he was the son of God.
You wonder, are these things random chance?
Well, what is random? What is chance? What is luck?
What are things that you get from the universe that you can't really explain?
And that goes into the story, too.
These are the things I constantly think about from day to day.
Especially when good things happen, and, in particular, when bad things happen.
But I do think there's a kind of serendipity, and I do want to know what those elements are, so I can thank them, and also try to find them in my life.
Because, again, I think that when I am aware of them, more of them happen.
Another chance encounter is when I went to a place -- I just was with some friends, and we drove randomly to a different place, and we ended up in this non-tourist location, a beautiful village, pristine.
And we walked three valleys beyond, and the third valley, there was something quite mysterious and ominous, a discomfort I felt. And then I knew that had to be [the] setting of my book.
And in writing one of the scenes, it happened in that third valley.
For some reason I wrote about cairns -- stacks of rocks -- that a man was building.
And I didn't know exactly why I had it, but it was so vivid.
I got stuck, and a friend, when she asked if I would go for a walk with her dogs, that I said, sure. And about 45 minutes later, walking along the beach, I came across this.
And it was a man, a Chinese man, and he was stacking these things, not with glue, not with anything.
And I asked him, "How is it possible to do this?"
And he said, "Well, I guess with everything in life, there's a place of balance."
And this was exactly the meaning of my story at that point.
I had so many examples -- I have so many instances like this, when I'm writing a story, and I cannot explain it.
Is it because I had the filter that I have such a strong coincidence in writing about these things?
Or is it a kind of serendipity that we cannot explain, like the cosmological constant?
A big thing that I also think about is accidents.
And as I said, my mother did not believe in randomness.
What is the nature of accidents?
And how are we going to assign what the responsibility and the causes are, outside of a court of law?
when I went to beautiful Dong village, in Guizhou, the poorest province of China.
And I saw this beautiful place. I knew I wanted to come back.
And I had a chance to do that, when National Geographic asked me if I wanted to write anything about China.
And I said yes, about this village of singing people, singing minority.
And they agreed, and between the time I saw this place and the next time I went, there was a terrible accident. A man, an old man, fell asleep, and his quilt dropped in a pan of fire that kept him warm.
60 homes were destroyed, and 40 were damaged.
Responsibility was assigned to the family.
The man's sons were banished to live three kilometers away, in a cowshed.
And, of course, as Westerners, we say, "Well, it was an accident. That's not fair.
It's the son, not the father."
When I go on a story, I have to let go of those kinds of beliefs.
It takes a while, but I have to let go of them and just go there, and be there.
And so I was there on three occasions, different seasons.
And I began to sense something different about the history, and what had happened before, and the nature of life in a very poor village, and what you find as your joys, and your rituals, your traditions, your links with other families. And I saw how this had a kind of justice, in its responsibility.
I was able to find out also about the ceremony that they were using, a ceremony they hadn't used in about 29 years. And it was to send some men -- a Feng Shui master sent men down to the underworld on ghost horses.
Now you, as Westerners, and I, as Westerners, would say well, that's superstition. But after being there for a while, and seeing the amazing things that happened, you begin to wonder whose beliefs are those that are in operation in the world, So I remained with them, and the more I wrote that story, the more I got into those beliefs, and I think that's important for me -- to take on the beliefs, because that is where the story is real,
and that is where I'm gonna find the answers to how I feel about certain questions that I have in life.
Years go by, of course, and the writing, it doesn't happen instantly, as I'm trying to convey it to you here at TED.
The book comes and it goes. When it arrives, it is no longer my book.
It is in the hands of readers, and they interpret it differently.
But I go back to this question of, how do I create something out of nothing?
And how do I create my own life?
And I think it is by questioning, and saying to myself that there are no absolute truths.
I believe in specifics, the specifics of story, and the past, the specifics of that past, and what is happening in the story at that point. I also believe that in thinking about things -- my thinking about luck, and fate, and coincidences and accidents, God's will, and the synchrony of mysterious forces -- I will come to some notion of what that is, how we create.
I have to think of my role. Where I am in the universe, and did somebody intend for me to be that way, or is it just something I came up with?
And I also can find that by imagining fully, and becoming what is imagined -- and yet is in that real world, the fictional world.
And that is how I find particles of truth, not the absolute truth, or the whole truth.
And they have to be in all possibilities, including those I never considered before.
So, there are never complete answers.
Or rather, if there is an answer, it is to remind myself that there is uncertainty in everything, and that is good, because then I will discover something new.
And if there is a partial answer, a more complete answer from me, it is to simply imagine.
And to imagine is to put myself in that story, until there was only -- there is a transparency between me and the story that I am creating.
And that's how I've discovered that if I feel what is in the story -- in one story -- then I come the closest, I think, to knowing what compassion is, to feeling that compassion.
Because for everything, in that question of how things happen, it has to do with the feeling.
I have to become the story in order to understand a lot of that.
We've come to the end of the talk, and I will reveal what is in the bag, and it is the muse, and it is the things that transform in our lives, that are wonderful and stay with us.
There she is.
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うーん、とミトロフは天井を見上げている。
もうもうと上がっていく湯気が白い靄を掛けていた。壁に開いた通風口から風が吹き込むと、靄はふっと流されて消えていく。
そこに湯気が立ち上り、風がまた吹き流す。そんな動きをぼうっと眺めている。
すっかりミトロフの習慣となっている公衆浴場には、いくつもの浴槽がある。
中心には円形の大浴槽があり、すり鉢状に深くなっているために、中心では肩まで浸かれるようになっている。そこがやはの人気で、いつも人の声に溢れている。ミトロフは中心には寄り付かず、いつも人の少ない縁を選んでいる。
あまりの広さにそこばかりが目立つが、浴場は左右にも広がっており、それぞれに特色のある湯を張っている。
さいきん、ミトロフは日替わりでそれぞれの湯に浸かるという楽しみを見つけていた。
今日は薬湯である。迷宮で産出された薬草の一種を溶かし込んだ湯であり、傷や打ち身によく効くらしい。
十人も入れば肩身の狭い浴槽であるが、入っているのはミトロフと、老人がふたりばかりである。薬草というだけあって臭いがきつく、心身を休めるというよりは苦行のようにも感じられる。
ミトロフは視線を落とし、湯を掬い上げてみる。
細かく千切られた緑の欠片は、おそらくは薬草を刻んだものだろう。湯は深緑に染まり、まるで藻に濁った小池に浸かっている気分になる。
まさにこれが、ミトロフの求めているものである。
掬い上げた薬草まじりの湯を、右腕に塗り込んでみる。
昼間、トゥチノコ、串刺しにした。
初回は偶然の産物であったが目は狙ってやったことである。再び遭遇したトゥチノコと戦ってはみても、すぐに最適解が見つかるわけもなかった。
壁で待ち、カヌレが弾き、ミトロフが追いかけ、試行錯誤をしてみても結局、向かってくるトゥチノコを剣で串刺しにするのがもっとも効率的だった。
身体は大きいために、剣角兎よりも狙うのは容易い。向かってくる場所を見極め、そこに剣を置くという作業は、以前に学んだ小盾の扱いに通ずるものがある。
頭から串刺しにすればトゥチノコは即死する。だが、問題があった。ミトロフの腕力では堪えきれないのである。
受け止めるのも難しく、刺した後に受け流すこともできず、握った剣をもぎ取られるように離してしまう。
結果としてトゥチノコを倒せるのであれば良しとするかと、二度続けたが、ミトロフは見事に腕の筋を痛めてしまった。
薬湯に沈めた右腕を揉みほぐしても、肘から手首につながる痛みと違和感は拭えない。
「......どのみち、あれでは剣がだめになってしまうな」
口の中で転がすように呟く。
ミトロフの扱う刺突剣は、魔物と戦えるように頑丈に作られたものである。けれど刺突に特化したものに違いはなく、剣身は細い。
何度もトゥチノコの突進を受けていれば、やがては折れるということもあり得る。弾き飛ばされて剣身が床や壁にぶつかるのも良くない。
ではどうしたものか、とミトロフは腕を組もうとして、右腕に響いた痛みに小さく悲鳴をあげた。
やれやれ、とため息をついて、ミトロフは湯を上がった。
更衣室で服を着てから休憩場に向かう。並んだ木の長椅子には湯上がりの男たちが腰掛けている。
湯の中では談笑する声も大きく響いていたが、椅子に座る男たちのほうは穏やかなものである。
湯上がりの身体を冷ましているという風で、揺れ椅子で目を閉じている者もあれば、長椅子でごろりと横になってしまっている者もいる。
彼らの傍らによく見るのが木製のジョッキである。中身はミトロフの知ったものに間違いはないだろう。
ミトロフは壁際の売店に向かうと、ミルクエールを一杯、注文する。風呂に入った後は、ここで休みながらミルクエールを飲む。そこまでがミトロフの日課である。
カウンターの後ろには巨大な箱がある。その中には氷水が詰められ、小樽がいくつも浮かんでいる。受付の老人はひとつを取り上げて栓を抜くと、ジョッキに並々と注いだ。小樽ひとつでジョッキ一杯分である。
ミトロフはジョッキを受け取ると、人の少ない長椅子を選んで腰掛けた。
休憩場にはあちこちに下働きの男たちがいて、大きな団扇で風を送っていた。そのうちのひとりが気を利かせ、ミトロフに風を向けてくれる。湯で火照った身体に当たる風がぬるくとも心地よい。
白く泡立ったミルクエールは、見ているだけで涼しくなるほど冷え冷えとしている。ミトロフはジョッキに口をつけた。
ごっ、ごっ、ごっ......
喉を鳴らしながら、冷え冷えとしたミルクエールを胃に流し込む。あまりの冷たさにミトロフは目にぎゅうっと力を入れる。それでも止めない。喉から胸から腹にきぃんと響く冷たさ。
迷宮での疲労、風呂での乾いた喉と身体、その全てがこの一杯で満たされる。
「––––ぷひぃぃ!」
ひと息で半分ほども飲み干して、ミトロフはようやく口を離した。
「......はぁぁ、生き返る」
熱い身体に、冷えた腹、届く風はゆるくも涼しく、すべて揃って至福というものである。
ミトロフは長椅子に腰掛けたまま、ぼけーっと視線を弛ませた。何を見ているわけでもなく、何を考えるわけでもなく。
完璧に糸を緩めるこの時間があるからこそ、迷宮の中での緊迫の時間をやり過ごせるのである。
ミトロフはちびちびとミルクエールを舐める。
そのうちに温くなってくると、清涼なほど研がれていた香りが鈍り、ミルク臭さが立ってくる。ぬるくなったミルクエールは飲めたものではないので、美味いうちに飲み干してしまう。
「......帰るか」
ミトロフは立ち上がると、売店にジョッキを返してから休憩所をあとにした。迷宮探索での疲れと、湯上がりの気だるさと。身体に残る疲労感によって、今日も生き残ったのだと実感する。
なにかを成した。そんな充実感を腹に収めて、ミトロフは鼻歌など歌いながら、安宿への帰途に着く。 | Hmm... Mitrof looked up at the ceiling.
The rising steam covered the air with a white haze. When the wind blew through the vent on the wall, the haze disappeared.
The steam rose again, and the wind swept it away once more. Mitrof watched the movement absentmindedly.
In the public bath, which had become a regular habit for Mitrof, there were many bathtubs.
In the center was a large circular bath that deepened like a mortar, making it possible to immerse up to the shoulders in the center. It was still the most popular spot and always crowded with people. However, Mitrof did not approach the center, he always chose the quieter edges.
Although the center was so vast, the bathhouse spread out to the left and right, with each tub(bath) having a unique feature.
Lately, Mitrof has found enjoyment in soaking in a different tub every day.
Today was a medicinal bath. It was a bath made by dissolving one of the medicinal herbs produced in the labyrinth. It was said to be effective for wounds and bruises.
The bathtub was so cramped that it would feel uncomfortable with ten people, but the only ones in it were Mitrof and two old men. As expected of medicinal herbs, the smell was strong, and it felt more like a trial than a rest for the mind and body.
Mitrof lowered his gaze and scooped up some water.
The finely chopped green pieces were probably herbs. The water was dyed dark green, making it feel as if he were soaking in a small, murky pond filled with algae.
This is precisely what Mitrof was seeking.
He applied the herb-infused water he had scooped up to his right arm.
During the day, he skewered three tsuchinoko.
The first time was accidental, but the second time he did it intentionally. Even though he tried to fight a tsuchinoko when he encountered it again, there was no optimal solution that could be found quickly.
Waiting on the wall, Canule baits, Mitrof chases after it, and they try various things, but in the end, the most efficient is to skewer the oncoming tsuchinoko with the sword.
Due to their large bodies, they were easier to aim than the swordhorn rabbit. The task of discerning the incoming attack and placing the sword in that spot is akin to handling a small shield, which he learned before.
If skewered in the head, the tsuchinoko would die instantly. However, there was a problem. Mitrof’s arm strength could not withstand the impact.
It was difficult to catch, and after thrusting, it was impossible to deflect or swing back, resulting in Mitrof’s grip being torn away.
Despite trying twice to knock down a tsuchinoko, if it could not be defeated, then it was fine, but Mitrof had successfully injured his arm.
Even after massaging and soaking his right arm in medicinal water, the pain and discomfort from the elbow to the wrist remained.
“...Either way, the sword is damaged by this.”
He muttered as if rolling the words in his mouth.
The thrusting sword that Mitrof was using was sturdy, made to fight monsters. However, there was no difference from a sword specialized for thrusting, and the blade was thin.
If you receive the tsuchinoko’s charge multiple times, it is possible that it will eventually break. It is also not good to be knocked back and have the sword hit the floor or wall.
So, with his arms crossed, Mitrof wondered what to do and let out a small cry of pain from his right arm.
With a sigh, Mitrof got out of the hot spring.
He changed into clothes in the dressing room and headed to the resting area. Men who had just finished bathing were sitting on the lined up wooden benches.
While there were loud voices chatting in the hot springs, the men sitting on the benches were calm.
Some were gently swaying on their chairs as they cooled their bodies after their bath. Others were lying down on the benches.
Next to them were often wooden mugs. There is no doubt that Mitrof knows what is inside.
Mitrof headed to the wall-side shop and ordered a milk ale. After his bath, he rests here while drinking milk ale. That is Mitrof’s daily routine.
Behind the counter, there was a giant box filled with ice water, and several small barrels were floating in it. The elderly receptionist picked one up and uncorked it, pouring the ale into a mug. One small barrel was enough for one mug.
Mitrof received the mug and chose a bench away from the few other people there to sit on.
There were several working men in the rest area, fanning themselves with large fans. One of them thoughtfully directed the wind towards Mitrof. The cool breeze felt pleasant against his heated body.
The milk ale, with its white foam, was so cold that just looking at it made one feel refreshed. Mitrof put his lips on the mug.
Gulp, gulp, gulp...
He swallowed the cold milk ale, making his throat jingle. Mitrof tightened his eyes at the extreme coldness, but he did not stop. The coldness resonated in his throat, chest, and stomach.
The exhaustion from the labyrinth, the dryness in his throat and body from the bath—everything was satisfied with this one mug.
“——buhiiii!”
Mitrof took a deep breath and drank about half of the drink, finally releasing his mouth with a sigh.
“... Ah, this makes me feel alive.”
The warm body, the cold stomach, and the gentle breeze all together create a sense of bliss.
Mitrof stayed seated on a long bench, absentmindedly gazing into space without looking at anything, or thinking of anything.
It is only because of these perfect moments when the tension of exploring the labyrinth is eased, that one can endure the intense times inside.
Mitrof licked the milk ale little by little.
As it got warmer, the polished scent that was crisp became dull, and the smell of milk became prominent. The tepid milk ale was no longer drinkable, so he finished it while it was still delicious.
“... Let’s go home.”
Mitrof got up, returned the mug to the vendor, and left the rest area. He felt that he had survived the day, thanks to the tiredness of exploring the labyrinth, the sluggishness after taking a bath, and the fatigue remaining in his body.
He had accomplished something. Feeling a sense of fulfillment in his stomach, Mitrof sang a tune while walking back to the cheap inn. | {
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意思疎通の大体6割は聴くという行為が占めます これが上手に出来ていないのです
会場の皆さんのことではありませんが
一般的な値として耳からの情報は 25%しか保持されないそうです
”音から意味を取得すること” これを"聴く"の定義としておきます
これは心理的な 情報抽出の過程なんです
これには素敵なテクニックが使われます
一つ目はパターン認知です
こんなカクテルパーティでは 「デビッド!サラ!気をつけて」と言えば しゃがみ込む方が出てくるでしょう
パターンを識別して 雑音と 情報を聞き分けるのです 名前には特に敏感です
次のテクニックはキャンセリグです
こんな雑音が継続して聞こえれば 皆さんは聴くのをやめるでしょう
私達は違いを聞き分けて 変化のない音を無視するのです
聴くという行為を支えるのはフィルターです
フィルターが全ての音から 聴くべきものだけを選りすぐります
このフィルターを意識している方は ほとんどいないでしょう
しかし注意を向けている先を示すという点で ある意味で現実を作り上げていることになります
一つ例を挙げましょう 聴覚において意志はとても重要です
私が妻と結婚したとき 彼女の話を初々しい気分で 毎日聴いてやると約束をしました 大抵の日は出来てないようですがね
聴こうとする意志は対人関係においてとても重要ですが
これが全てではありません
音は空間を司っています
今この場で目を閉じても 残響音と反響音から この部屋の大きさを
知り得ることが出来ます 耳に入る微少な雑音から 周りの人の数もわかるでしょう
更に音は時間をも司ります 音には常に 時間が埋め込まれているのです
実際 聴覚こそが過去から 未来への時間の流れを 感じる主たる感覚だと思います
「音は時間・意味である」 素敵な言葉です
初めに言ったとおり 聴く能力が失われてきています
なぜこんなことを言ったのかって?
理由はたくさんあります
まず 記録という技術の開発があります 模写にはじまり録音― そして録画が誕生しました
これは注意深く聴き 正確に情報を得ることの 利点を損ねてしまいました
第2に今日の世界はやかまし過ぎます 視覚的にも聴覚的にも 邪魔なものが散乱していて 聴くことを困難にしています 「耳が疲れた」という状況です
ヘッドフォン難民が多くいますが 彼らは音景を共有する巨大な パブリックスペースを パーソナルな空間に区画してしまっています
こうなると人の話を聴かなくなるのです
忍耐力を失っているのです
雄弁なスピーチよりも 短い抜粋の方が好まれています
会話が一方通行の情報発信に とって変わられようとしています 危険なことだと思いますよ
このメールにどれだけの意思疎通があるかは知りませんが 不幸にもこれは例外的でなく 英国では特に顕著です
感覚が鈍ってきているんです
メディアはこのような見出しを用いて 私たちに呼びかけるべきです
言い換えると強調されていない 静かな呼びかけには なかなか注意が向かないということです
聴くという行為は理解の手段であって
この能力の喪失は
些細なものでなく重大な問題です
意識的に聴けば必ず理解を生みます
意識的なリスニングが欠如すると このようなことが起こってしまいます 互いの話に耳を傾けようとしない 今日の世界はとても恐ろしい場所なんです
そこで皆さんには 意識的なリスニング力を鍛える5つの 簡単なエクササイズを紹介します
いかがでしょうか?
よかったです
1番目は沈黙です
1日3分の無音エクササイズは 皆さんの耳をリセット― チューニングしてくれます こうして静かな音が聞こえるようになります
完全な無音状態でなくても 静かな状態なら構いません
2番目は私がミキサーと呼んでいるものです
このようにうるさい場所はよくありますね コーヒーバーなどの こういった不協和音に 単一の音源がいくつあるのか
聞き分けて見て下さい
このエクササイズは湖のような綺麗な場所でもできます
鳴いている鳥を数えて下さい
「鳥はどこ?」「波はどこでたっているの?」
このエクササイズは リスニングの質を高めてくれます
3番目は美しいエクササイズです 鑑賞と呼んでいます
これはありきたりな音を楽しむというものです
例えばこれは私の家の回転式乾燥機の音ですが
これはワルツです
ワン、ツー、スリー ワン、ツー、スリー
いいリズムですね
こちらの音量はいかがですか
わお!
ありふれた音も注意して聴くとおもしろいものです
これを ”隠れ聖歌隊” と呼んでいます
いつでも私たちの周囲にいますからね
次のエクササイズはあるものを 取り払えば 今日紹介する中で
最も重要なものでしょう リスニングポジションです 聴き取る対象に合せて一番適切な場所に
ポジションを移動するということです
先ほど話をしたフィルターを 利用します
まずフィルターをレバーのように操作して 意識付けをして場所を変えていきます
画面のものはポジションや 尺度のほんの一例です
他にもたくさんあるんですよ
わくわくしますね ぜひ楽しん下さい
最後は頭字語です
これをコミュニケーションとリスニングに利用します
これらのいずれかをされている方― もしくはこの話を聞いている皆さん全員へ この頭字語はRASAです acronymというのは サンスクリット語でエッセンスの意です RASAの R は Receive 話者の話を注意深く聴くこと A は Appreciate 「んん」とか 「わかった」と意思表明をすること S は Summarise 意思疎通において要約することは大切です そしてA は Ask 質問をすることです
音は私の情熱・人生そのものです
私は音に関する本を出しています
皆さんには私のようなことをしろとは求めませんが
人生を最大限楽しむには 意識的に聴くことが 必要不可欠だと考えています 時間と空間をつなぎ 周囲の世界と私たちをつないでくれます 互いの理解をつなぐのはもちろん 精神的にも私たちをつないでくれます 私の知る限りスピリチュアルな 道の根底には全て リスニングと瞑想があるからです
ですから学校では リスニングを技術として 教える必要があります
なぜ教えない? おかしいですね
学校でリスニングを教えれば 今日お話した危険な世界へ続くつるつるな 坂道から私たちのリスニングを救い出して 常に意識的なリスニングがされる世界 もしくは少なくとも それが達成できる世界へ移すことができます
でもどうすればいいかって? ここはTEDですよ TEDなら何でも出来ると思っています
皆さんつながっていきましょう 一代先に 相互理解・平和を実現した世界を実現するには 使命感をもって学校教育の中で 意識的なリスニングを 教えていく必要があるのです
ご静聴ありがとう御座いました | We spend roughly 60 percent of our communication time listening, but we're not very good at it.
We retain just 25 percent of what we hear.
Now not you, not this talk, but that is generally true.
Let's define listening as making meaning from sound.
It's a mental process, and it's a process of extraction.
We use some pretty cool techniques to do this.
One of them is pattern recognition.
So in a cocktail party like this, if I say, "David, Sara, pay attention," some of you just sat up.
We recognize patterns to distinguish noise from signal, and especially our name.
Differencing is another technique we use.
If I left this pink noise on for more than a couple of minutes, you would literally cease to hear it.
We listen to differences, we discount sounds that remain the same.
And then there is a whole range of filters.
These filters take us from all sound down to what we pay attention to.
Most people are entirely unconscious of these filters.
But they actually create our reality in a way, because they tell us what we're paying attention to right now.
Give you one example of that: Intention is very important in sound, in listening.
When I married my wife, I promised her that I would listen to her every day Now that's something I fall short of on a daily basis.
But it's a great intention to have in a relationship.
But that's not all.
Sound places us in space and in time.
If you close your eyes right now in this room, from the reverberation and the bouncing of the sound off the surfaces.
And you're aware of how many people are around you because of the micro-noises you're receiving.
And sound places us in time as well, because sound always has time embedded in it.
In fact, I would suggest that our listening is the main way that we experience the flow of time from past to future.
So, "Sonority is time and meaning" -- a great quote.
I said at the beginning, we're losing our listening.
Why did I say that?
Well there are a lot of reasons for this.
First of all, we invented ways of recording -- first writing, then audio recording and now video recording as well.
The premium on accurate and careful listening has simply disappeared.
Secondly, the world is now so noisy, visually and auditorily, it's just hard to listen; it's tiring to listen.
Many people take refuge in headphones, but they turn big, public spaces like this, shared soundscapes, into millions of tiny, little personal sound bubbles.
In this scenario, nobody's listening to anybody.
We're becoming impatient.
We don't want oratory anymore, we want sound bites.
And the art of conversation is being replaced -- dangerously, I think -- by personal broadcasting.
I don't know how much listening there is in this conversation, which is sadly very common, especially in the U.K.
We're becoming desensitized.
Our media have to scream at us with these kinds of headlines in order to get our attention.
And that means it's harder for us to pay attention to the quiet, the subtle, the understated.
This is a serious problem that we're losing our listening.
This is not trivial.
Because listening is our access to understanding.
Conscious listening always creates understanding.
And only without conscious listening can these things happen -- a world where we don't listen to each other at all, is a very scary place indeed.
So I'd like to share with you five simple exercises, tools you can take away with you, to improve your own conscious listening.
Would you like that?
Good.
The first one is silence.
Just three minutes a day of silence is a wonderful exercise to reset your ears and to recalibrate so that you can hear the quiet again.
If you can't get absolute silence, go for quiet, that's absolutely fine.
Second, I call this the mixer.
So even if you're in a noisy environment like this -- and we all spend a lot of time in places like this -- listen in the coffee bar to how many channels of sound can I hear?
How many individual channels in that mix am I listening to?
You can do it in a beautiful place as well, like in a lake.
How many birds am I hearing?
Where are they? Where are those ripples?
It's a great exercise for improving the quality of your listening.
Third, this exercise I call savoring, and this is a beautiful exercise.
It's about enjoying mundane sounds.
This, for example, is my tumble dryer.
It's a waltz.
One, two, three. One, two, three. One, two, three.
I love it.
Or just try this one on for size.
Wow!
So mundane sounds can be really interesting if you pay attention.
I call that the hidden choir.
It's around us all the time.
The next exercise is probably the most important of all of these, if you just take one thing away.
This is listening positions -- the idea that you can move your listening position to what's appropriate to what you're listening to.
This is playing with those filters.
Do you remember, I gave you those filters at the beginning.
It's starting to play with them as levers, to get conscious about them and to move to different places.
These are just some of the listening positions, or scales of listening positions, that you can use.
There are many.
Have fun with that. It's very exciting.
And finally, an acronym.
You can use this in listening, in communication.
If you're in any one of those roles -- and I think that probably is everybody who's listening to this talk -- the acronym is RASA, which is the Sanskrit word for juice or essence. And RASA stands for Receive, which means pay attention to the person; Appreciate, making little noises like "hmm," "oh," "okay"; Summarize, the word "so" is very important in communication; and Ask, ask questions afterward.
Now sound is my passion, it's my life.
I wrote a whole book about it. So I live to listen.
That's too much to ask from most people.
But I believe that every human being needs to listen consciously in order to live fully -- connected in space and in time to the physical world around us, connected in understanding to each other, not to mention spiritually connected, because every spiritual path I know of has listening and contemplation at its heart.
That's why we need to teach listening in our schools as a skill.
Why is it not taught? It's crazy.
And if we can teach listening in our schools, we can take our listening off that slippery slope to that dangerous, scary world that I talked about and move it to a place where everybody is consciously listening all the time -- or at least capable of doing it.
Now I don't know how to do that, but this is TED, and I think the TED community is capable of anything.
So I invite you to connect with me, connect with each other, take this mission out and let's get listening taught in schools, and transform the world in one generation to a conscious listening world -- a world of connection, a world of understanding and a world of peace.
Thank you for listening to me today. | {
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『大物が出たぞおおおおぉぉぉぉ!』
の男が大声を上げて私たち全員へ注意喚起します。
そこに居たのは何人もの人間を跳ね飛ばしつつ突進してくる背中から何本も赤い棘を生やした体高2m程の蜥蜴。いえ、もはや竜と言った方が正しい威圧感を放っていますね。そしてその上には唐辛子の実に手足を生やしたような魔性が乗っています。どうやらこの魔性が騎手のようです。
「名称識別!蜥蜴は『辛棘蜥蜴』、上のは『カプシカマン』です!」
『この奴隷共が!貴様ら全員このコチュ=カプシカマンが殺してくれるわ!』
辛棘蜥蜴にカプシカマンですか。辛棘蜥蜴は恐らく『白霧と黒沼の森』で言うところのクエレブレ、カプシカマンは恐らく魔王のレベルが4で生み出せる魔性ですね。
となると、レベル1の人間では何人居ても厳しいですね。
「全員退きなさい!あれは私たちが相手をします。」
私は大声を張り上げて、周囲の人間を敵から離します。
「...!」
そして、周囲の人間が退くのに合わせてイズミがその斧を大きく振りかぶり、辛棘蜥蜴の顔面に横から思いっきり叩きつけます。
が、辛棘蜥蜴は効かないという表情を浮かべている上にその首を大きく動かしてイズミを弾き飛ばします。
イズミが弾き飛ばされたのを見てムギさんが無数の≪火の矢≫を放ちます。
『奴隷が生意気なんだよ!』
しかし辛棘蜥蜴の上にいるカプシカマンが赤い盾を生み出して≪火の矢≫を防ぎ、止んだところで辛棘蜥蜴が背中の棘を投げ槍のように飛ばします。
「ハッ!...っつあ!」
が、その棘は私が≪ロングエッジ≫を発動して長剣のようになった短剣を振って防ぎます。しかし、その一撃は重く。しかも、どうやらこの棘はかなりの高熱を放っているようで、ただ弾いただけなのに私のHPが削られたように感じます。
『時間稼ぎをします!≪土壁≫!』
周りに居た人間の一人が≪土壁≫を使って辛棘蜥蜴の周囲を土の壁で囲います。
『こんなもので止まるかぁ!』
が、カプシカマンのスキルでしょうか、爆発が起きて土の壁が吹き飛びます。
『ならば一斉射撃だ!≪水の矢≫!』
『≪発破≫!』『≪風の矢≫!』『≪土礫≫!』
しかし、壁が壊れた瞬間に周囲の人間達が一斉に遠距離から攻撃できるスキルで攻撃します。
その攻撃は凄まじく辺りには轟音と土煙が立ち込めます。
でも、ムギさん。それはフラグです。現に...
『奴隷が調子こいてんじゃねえぞ!』
カプシカマンも辛棘蜥蜴も多少のダメージは負っていますが健在です。
『行くぞ!』
辛棘蜥蜴が突っ込んできて手近にいた不幸な人間が何人か轢かれて断末魔を上げながら絶命します。と、急いで止めなければ!
「フンッ!」
私は突進する辛棘蜥蜴の前に出て剣を構え、その剣で辛棘蜥蜴の突進を止めます。イズミも私の後に続く形で抑えにかかり、その結果として辛棘蜥蜴の突進が止まります。
『何!』
カプシカマンが驚いたような声を上げます。
ここがチャンスですね。かねてより密かに練習していたあれをやるべきタイミングです。
「イズミ!ムギさん!コイツの足止めお願いします!私は準備に入ります!」
「(コクリ)」
私が後ろに飛び退くのと同時にイズミは辛棘蜥蜴の攻撃を避けつつ縦横無尽に両手に出した斧を振り回して攻撃していきます。辛棘蜥蜴はその攻撃ではダメージをほとんど受けませんがイズミに攻撃が当たらないためイラついています。
同時にムギさんはカプシカマンの動きを抑えるために≪狐火≫と≪火の矢≫を組み合わせて攻撃していき、カプシカマンはそれを防ぐために攻撃する暇もなく赤い盾を出し続けて防御しています。
そして、その間に私は自分の中にある力を練り上げ、右手で持った剣の刃に左手を添えつつそれを込めています。
正直に言えば今から私がやる事が成功するかどうかは分かりません。なにせ実戦で使うのは初めてですし、練習でもほとんど成功したことがないからです。それにきちんとした理論の元で構成された技と言うわけでもありません。
ですが、やるしかありません。今が抑えてくれていますが、MPもSPも無限ではないのです。もし二人の攻撃が途切れればそのわずかな隙に再び多くの犠牲者が生まれます。
「...。『我は虚空を跳ぶものにして霧王の眷属。求めるは敵の首、命の華、血の噴水。』」
私の詠唱が始まると共に極度の集中によって私の視野は急速に狭まって、手に持った剣の刃だけが映るようになり、周囲の音も聞こえなくなっていきます。
「『跳べよ刃。我が求めるものが手に入るまでひたすらにその刃を我が敵に振り下ろし続けろ。』」
私の手の内で剣は黒いオーラを纏い始め、徐々にその輝き増していきます。
「二人とも退いて!『切れ!裂け!断て!アウタースキル・センキリカイシャク!』」
そして、私は剣を大きく横に一閃します。
しかし、その剣には先程まであったはずの刃はありません。なぜなら、
『何をし...ガアアアアアアアアア!!』
『グギ、ギャアアアアアアアアアア!』
その刃はカプシカマンと辛棘蜥蜴の首が落ちるまで叩き込まれ続けているからです。
アウタースキル・センキリカイシャク
それは私がクロキリのアウタースキル・クロキリノコを見て思いついたスキルというシステムの定めた枠の外側にあるスキル。
≪短距離転移≫と≪首切り≫を組み合わせ、相手の首が落ち、命の華を散らせて血の噴水を上げるまで切り続ける技。
「ははっ...なんてスキルだい。こんなの聞いたこともないよ。」
「聞いたことがなくて当たり前です。私が自分で編み出した技ですから。」
ムギさんは既に半分ほど首を切られて絶命したにも拘らず首を切られ続けている二体の魔性を見て顔を青くし、私の説明を受けて頭を抱え込んでいます。
そして、私の技によってカプシカマンと辛棘蜥蜴の首が落ちたところで、センキリカイシャクは終わり、それと同時に私はSP切れによって気絶しました。 | “There’s a big shot coming at usssss!”
A man alerted all of us by yelling at the top of his lungs.
As it surged forward, a two-meter-tall lizard with red thorns protruding from its back emerged, knocking many people off in its path. No, given its oppressive presence, you could even call it a dragon. And on top of it, there was a demon that looked like a red pepper with limbs growing out of it. Evidently, this demon seemed to be a rider.
“Name identification! The lizard is called ‘Spicy Thorny Lizard’ and the one on top is ‘Capsicaman’ [i] !”
“You bunch of slaves! All of you will be killed by this Gochu-capsicaman!”
Spicy Thorny Lizard and Capsicaman? It is likely that the Spicy Thorny Lizard is equivalent to the Cuélebre in “White Mist and Black Swamp Forest,” and the Capsicaman is probably a demon that can be conjured up at level of the Demon King.
That would mean the combat will be challenging no matter how many level human beings were present.
“All of you retreat! We will be the ones to confront those creatures.”
With a booming yell, the humans around me distanced themselves from the foes.
“...!”
And as the surrounding humans withdrew, Izumi swung her axe wide and bashed it into the face of the Spicy Thorny Lizard from the side with all her force.
However, the Spicy Thorny Lizard showed an expression that indicated it was ineffective, and jerked its neck in a broad sweep, sending Izumi hurling away.
After witnessing Izumi’s being blown away, Mugi-san unleashed a multitude of ≪Firebolt≫.
“You slaves are so impudent!”
Nonetheless, the Capsicaman on top of the Spicy Thorny Lizard produced a red shield to obstruct ≪Firebolt≫, and once it ceased, the Spicy Thorny Lizard shot the thorns on its back like a javelin.
“Hah...! Ah!”
When I invoked ≪Long Edge≫ and swung the dagger that has become like a long sword, it blocked the thorns. Nevertheless, the blow it delivered proved to be grave. Moreover, the thorns apparently radiated a substantial amount of heat, and even though I merely repelled it, I felt as if my HP has been reduced.
“I’ll stall for time! ≪Mud Barrier≫!”
One of the human beings around me utilized ≪Mud Barrier≫ to enclose Spicy Thorny Lizard with a wall of mud.
“As if this kind of thing can stop us!”
But then, perhaps due to the skill of the Capsicaman, an explosion burst out causing the wall of mud to be scattered.
“Then let’s fire a volley! ≪Aquabolt≫!”
“≪Blast≫!” “≪Windbolt≫!” “≪Glacial Till≫!”
Yet, the moment the wall crumbled, all the humans in the vicinity simultaneously launched attacks with skills that can be deployed from long range.
Their impact was so ferocious that the area was awashed with a deafening boom and a cloud of dust and smoke.
But, Mugi-san. That’s a flag
“Don’t get carried away, you slaves!”
Both the Capsicaman and the Spicy Thorn Lizard were still alive and well, albeit somewhat damaged.
“Let’s go!”
When the Spicy Thorn Lizard lunged at them, several unfortunate people in the immediate area were run over and perished while uttering their death cry. And I needed to act swiftly to put an end to those demons!
“Hmph!”
With my sword drawn, I moved in front of the charging Spicy Thorn Lizard and used my sword to restrain it, prompting the Spicy Thorn Lizard to come to a standstill. Even Izumi followed my lead in suppressing it, and consequently, the Spicy Thorn Lizard’s onrushing ceased.
“What!”
The Capsicaman let out a shocked yelp.
This is my opportunity. It is the perfect time to execute that thing I have been discreetly practicing for some time.
“Izumi! Mugi-san! Please hold them back! I’ll get ready!”
“(Nod.)”
At the same time as I leaped back, Izumi wielded her axes in both hands in all directions while evading the Spicy Thorn Lizard’s assaults. Despite the fact that her blows only inflicted minor damage to the Spicy Thorn Lizard, it was agitated by the absence of hits on Izumi.
Simultaneously, Mugi attacked with a combination of ≪Fox Fire≫ and ≪Firebolt≫ with the aim of suppressing the Capsicaman’s movements, leaving no time for the Capsicaman to counterattack while forcing him to constantly bring out his red shield to defend against the attack.
And meanwhile, I was concentrating the power within me on the edge of the blade, which I held in my right hand while adding more strength with my left hand.
Frankly speaking, I was not certain that what I was about to do will be successful. After all, this was the first time I have performed this technique in a real fight, and I hardly ever had any success with it in practice. Furthermore, this was not a technique that is based on a proper theory.
Even so, I had no alternative but to do it. The two of them were repressing them now, but their MP and SP were not unlimited. f their strikes ceased, many more casualties would be inflicted in the smallest of gaps.
“...’I am the one who leaps through the void, a kin of the Mist King. I seek the head of my adversary, the flower of life, the fountain of blood’.”
As my chanting ensued, my vision rapidly constricted due to my extreme immersion, until all I can see was the edge of the sword in my hand, and all sounds around me were rendered inaudible.
“‘Leap, O blade. Until I reach what I seek, cast this blade down upon my foe’.”
Within my grip, the blade began to assume a black aura, gradually increasing in brilliance.
“Both of you, retreat! ‘Cut! Slice! Sever! Outer Skill・Senkiri-kaishaku’ [iii] !”
And with that, I brandished my sword broadly to the side.
However, the edge of that sword that was visible earlier was now no longer in view. This was because...
“What did you... gaaaaaaaa!”
“Gugi, gyaaaaaaaaah!”
...that blade was continuously being driven into the Capsicaman and Spicy Thorn Lizard until their heads fall off.
Outer Skill・Senkiri-kaishaku.
That was a skill that fell outside the boundaries set by the skill system which I conceived of when I witnessed Kurokiri’s outer skill, Kurokirinoko.
By combining ≪Short-range Teleportation≫ and ≪Decapitation≫, this technique was used to continuously sever an adversary’s head until it falls off, scattering the flower of life and triggering a fountain of blood.
“Hah... what a skill you possess. I’ve never heard of this before.”
“It is only natural that you have never heard of it since I devised it myself.”
Mugi’s face turned pale at the sight of the two demons who were still being beheaded despite the fact that they had already been severed halfway to demise, and I lifted their heads up while I elucidated the situation to her.
The Senkiri-kaishaku ended when the heads of Capsicaman and Spicy Thorn Lizard were torn off by my technique, and at the same time I passed out due to SP exhaustion. | {
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「はいはい、こっちだよパンダさーん」
未開の地への冒険に心躍らせていた俺だが、その前にあるクエストを受けてしまった。
それはこのダーパンの街へのファストトラベルを解放するクエストだった。
ならむしろ良かったじゃないかと多くの人が思うだろう。
実際その通りで特に解放することに問題はない。
だが、絶対に今する必要があるかと言うとそうでもない。
仮に俺が山脈でキルされてもちゃんとダーパンの街に送り返される。
蒼海竜にキルされた時、港町トナミの砂浜に打ち上げられていたように、死ぬ直前に立ち寄った街に強制送還されるのだ。
これが初期街に飛ばされるとかならファストトラベルを解放してないと大きな時間のロスになるけど、ダーパンからならまた最短距離で山にアタックを仕掛けることが出来る。
とはいえ、解放しておけばいざという時ダーパンから初期街まで帰れるし、良いじゃないかと思ってこのクエストを受けたのだが......。
「パ、パンダさーん......。笹だよ~......」
クエストの内容は、とある女性の飼っているパンダが逃げ出したので探して連れ戻すというものだった。
パンダだらけのこの街に1匹だけ背中にハートの模様があるパンダがいるらしく、それを探し出してからさらに女性の家まで連れ帰らなければならない。
パンダたちは仰向けに寝転んでいたり、壁にもたれていたりするので、まず背中の模様の確認が大変だった。
時間をかけてやっと見つけたと思ったら、そのパンダは丸々太っていてとても持ち上げられなかった。
これ......攻撃にステータスを振っていればパワーがついて持ち上げられたりしたのだろうか?
残念ながら非力な俺は、『笹の葉』というアイテムを買ってパンダを家まで誘導することにした。
しかし、これが本当に難しい。
最初は興味を示してついてくるものの、そのうち街中に生えている方の笹を食べて満足してしまった。
それでもしばらくするとまた俺の持つ笹に興味を示すのだが、今度は疲れたのかぐでーんと寝始めたりする。
でもどこか憎めないのは見た目のせいか。
外交のカードに使われていただけのことはあるかわいさだ。
とはいえ、流石に我慢の限界が近くなった俺は、最後の手段を使った。
攻撃特化でパワーがあるガー坊に押してもらうのだ。
それにガー坊は一見非常に怖い姿をしている。
人に刺さるほど鋭い魚のダツを機械兵器にしたような見た目だからな。
今となっては愛らしさを感じるけど、敵として出会った時は俺も恐ろしいと思った。
そんなガー坊に軽くでも突っつかれれば、パンダとてのほほんとはしてられないだろう。
まあ、軽く突っついてもガー坊のボディだと痛そうなので、最初は鳴き声で威嚇してみよう。
「ガー! ガー!」
近くで鳴き声を上げる魚に驚いたパンダはてくてくと歩き出した。
その後、パンダは突っつかれることなく無事飼い主の元へとたどり着いた。
なかなか帰ろうとしなかったクセに、飼い主を見ると甘えだすんだから不思議な生き物だなぁ。
まあ、人間にもそういうところはあるか。
クエストをクリアしたので、このパンダだらけのダーパンにファストトラベル出来るようになった。
同時にダーパン周辺の地図が描かれる。
そう、風雲山と同じくあくまでもその地域周辺の地図だけだ。
港町トナミの時とは事情が違う。
俺も最近ハッキリと仕様を把握したのだが、クリアすることで広い地域のマップが描かれるクエストと、ファストトラベルを解放するだけのクエストは違うらしい。
港町トナミの際は南の広い地域の地図が描かれ、それに付随する形でトナミへのファストトラベルも解放された。
その広い地図を見て俺はマップ上で目立っていた『鏡石の洞窟』を見つけ、そこを冒険してネココと出会った。
このように広いマップを描くクエストをクリアすると、行ったことがない地域の情報を得られるので、冒険できる場所が広がる。
逆に今回のような場合は、街のファストトラベルを解放した結果、その街をファストトラベル先に選択するためのシンボルとして街が地図に描かれたということになる。
せっかくクエストをクリアして一瞬でワープできるようになった街が、その地域の地図を埋めていないという理由で真っ黒表示だったら『どんな町だったけ?』となるし、単純に不便だ。
風雲山にある『風雲の隠れ里』もまだその地域の地図を描いてもらっていない場所にあるので、地図上では黒い大地の中にポツンと高い山が存在することになっている。
だが、その街がどんな場所にあるどんな雰囲気の街なのかは一目でわかる。
ややこしいので、ザックリまとめると......。
・大きい街には広い地域の地図を描いてくれるNPCがいて、描いたついでにその街ファストトラベルも解放される。
・小さい街や村はファストトラベルが解放されるおまけに狭い周辺地域の地図がついてくる。
実際、今回描かれた地図は狭く、霧深山脈のふもとだというのに山脈の情報がまるでない。
やはり、まったく情報のない状態で冒険することになりそうだ。
明日から......な。
パンダめ......相当な時間泥棒だ。
かわいいからたちが悪い。時間を無駄にしてもぜんぜん気にならなかった。
まあでも、今日は天秤の試練をクリアして、ゼウスと戦って、チャリンの助言を聞いてからこのダーパンまで来ている。
パンダに構うことなく、山に入っていたら中で夜になっていたかもしれない。
そういう意味では救われたのかもな。
「焦りは禁物だ。時間はたっぷりある」
朝を待って山にアタックを仕掛けることにしよう。
◆ ◆ ◆
翌日の早朝、俺は有言実行で山を登り始めた。
最初は何の変哲もない山道だ。
というか、未開の地なのになんで山道があるんだ......?
その疑問の答えを俺は知っていたが、思いだしたのは切り立った崖の前に立つ看板を見つけた時だった。
看板にはこう書かれていた。
――我が工房を訪ねる際には、この崖をお登りください。ウー・シャンユーより。
そうだよな、山の上まで登ってきた人の依頼しか受けないとはいえ、誰も来ないでは困るものな。
職人さんだって仕事がなければお金を稼げない。
当たり前のことに気づいた俺は、言われた通り崖をよじ登りだした。
【ワープアロー】や【浮雲】などのスキルで楽をしてもいいが、現在地からでは崖の終わりが見えない。
ここは登れるだけ登って、区切りが見えたらスパートにスキルを使おう。
ボルダリングなんてシャレた趣味は持っていない素人の崖のぼりだが、プレイヤー特有の身体能力により何とかなる。
だが、両腕装備の『雲穿の弓懸』は柔軟性がいまいちなので、弓を引く動作以外には向かないのかも。
ここは山だしゴリラこと『森の賢者の拳』に切り替えるか。
......うん、やっぱこの装備は動かしやすい。
何気に毛皮がすごいので指先の防寒にもなる。
「良いですね、ゴリラの手の装備。バトロワの時も装備してましたよね」
「ええ、そうですね......って、え!?」
俺の隣にはいつの間にかサル型モンスターがいた。
しかも、その背中にはボロボロの装備をつけた銀髪の少年を背負っている。
少年は死んだかのようにピクリとも動かない。
わけのわからない光景に脳が機能停止しそうになる。
そのせいで危うく落っこちかけたが、何とか体勢を立て直す。
「ここでお話はキツそうですね。山頂についてからにしましょうか」
流石サルだ......なんて言ってる場合じゃない!
ツッコミどころが多すぎる......。山頂まで我慢しろなんて生殺しだ。
なんとか追いついて、話を聞かせてもらうぞ......! | “Here, here. Over here, Mister Panda!”
While I was excited to explore some uncharted territory, I ended up accepting a certain quest first.
It was a quest that would unlock fast travel for this town of Dapan.
Well, isn’t that a good thing? Some might wonder.
Indeed, it was. There was no reason that I shouldn’t unlock it.
However, it wasn’t really something that I needed either.
Even if I was killed in the mountains, I would just be sent back to Dapan town.
It would be like how I was sent to the beach of the port town after the Bluesea Dragon killed me. You would be forced to return to the last town you were in.
It would be a massive time waster if I were sent back to the first town, but if it was Dapan, then I could take on the mountain again, which was a short distance away.
But unlocking it meant having an instant route to the first town from Dapan, so I had accepted the quest thinking that it was a good idea...
“M-mister Panda... It’s a bamboo leaf...”
This quest was about finding and bringing back a woman’s lost panda after it had escaped.
The town was filled with pandas, but this one had a heart pattern on its back. And so I had to find it and bring it back to the woman’s house.
But as many of the pandas were lying on their backs or leaning against walls, it was difficult to even see if they had a pattern.
I managed to find it after spending a lot of time searching, but the panda was so big and round that I couldn’t pick it up.
I wonder...if I had put all my points into Attack, would I have been strong enough to lift it?
Unfortunately, I had no such power, and so I had to buy the item, ‘Bamboo Leaf’ and try and lure the panda back to its home.
However, this was very hard.
While it had shown interest and followed me at first, it soon became satisfied with eating the leaves that were growing throughout the town.
Even then, it would eventually become interested in the leaf I was holding again, but after some time, it became tired and lay on the ground.
Still, it was hard to become angry when they looked like that.
It was so cute that it was no wonder they were used in diplomacy.
That being said, I was still reaching my limit in terms of patience, and so I used my trump card.
I would use Garbow, who was specialized in attack and had power to push it.
Besides, Garbow had a somewhat intimidating appearance at first glance.
He was a fish that was so sharp it could pierce a human, and was also a mechanical weapon.
And while he looked cute to me now, even I had been scared when I first met him as an enemy.
With a light prick from Garbow, surely even the panda would start moving again.
Well, a light prick from Garbow might actually still hurt. So I would use its cry to try and scare it first.
“Gar! Gar!”
The panda was alarmed at the sudden appearance of a crying fish, and started to walk again.
After that, I was able to take it back to its owner without having to poke it.
And in spite of the fact that it had not been eager at all to return, it immediately fawned on her when they reunited. They really were mysterious creatures.
Well, humans could be like that too.
Now that I had finished the quest, I could now fast travel to this town full of pandas.
At the same time, the area around Dapan was filled in on my map.
Yes, just like Windcloud Mountain, it was just the surrounding area.
It was different from the port town of Tonami.
This was something I had realized recently. There were quests that filled in a wide area of your map, and quests that merely unlocked fast travel.
With Tonami, it had filled in a lot of the southern land, and fast travel was unlocked as well.
It was because of this, that I had been able to find the ‘Mirrorstone Cave’ near the top, and my adventure there led to an encounter with Necoco.
Finishing a quest that filled in a large part of the map gave you information about places you’ve never been to, which expands the places you could adventure in.
In cases like this, where it was the opposite, the town appeared on the map as a symbol where you could fast travel.
It would be no good if you unlocked fast travel to a town, but it was surrounded in black because the rest of the map wasn’t filled in. You would be like, ‘what town was it?’ and it would be simply inconvenient.
The Hidden Windcloud Settlement was also in an area where the map wasn’t finished, and so it looked like a tall mountain was in the center of black terrain.
However, you could still tell at a glance where it was and what kind of place it was.
As it’s a little confusing, in short...
Large towns had NPCs who would fill in a large part of the map. And you also get to unlock fast travel as a bonus.
Small towns and villages allowed you to unlock fast travel, and as a bonus, filled in a small part of the surrounding area on your map.
In fact, the area this time was very small. There was barely any information once you reached the foot of the mountain range.
So, I would really have to go on this adventure without any information.
Well...from tomorrow.
That panda...took up so much time.
But it was so cute. And so I didn’t really care if it felt like a waste of time.
That being said, I had finished the Libra trial, fought Zeus, been advised by Charin, and came all the way to this town in a day.
Had I not been distracted by the pandas, I might have entered the mountains and it would have been night time.
So in a way, it was likely a good thing.
“You should never rush. I have plenty of time.”
I would take on the mountain in the morning.
◆ ◆ ◆
Early the next morning, I made good on my word, and started my climb of the mountain.
At first, it was just an ordinary mountain path.
Actually, why was there a path if it was uncharted land...?
Well, I knew the answer to that question already. But I hadn’t thought about it until I saw a sign near a cliff.
The sign read:
When visiting my workshop, climb up this cliff. —Yu Shanyu.
That’s right. While he only accepted jobs from people who came up the mountain, it would not do if no one came at all.
He could not make money without any work.
Realizing this obvious fact, I started to climb up the cliff as directed.
It might have been easier to use skills like Warp Arrow or Floating Cloud, but from where I was, I couldn’t see the top of the cliff.
And so I would just climb as much as I could, and use a skill to cover the final stretch.
I didn’t have fancy hobbies like bouldering, so I was a complete amateur. However, it was doable with the average player’s physical abilities.
However, Cloudpiercer Archer’s Gloves were not very flexible. And weren’t really good for movement outside of drawing a bow.
Since I was in the mountains, I suppose it would be best to switch to the gorilla’s Fists of the Forest Sage.
...Hmm. Yes, these were much better.
And they were very furry, which helped keep my fingers warm.
“Very nice. Those gorilla gloves. I think you wore them during the battle royale as well.”
“Uh, yeah... Huh!?”
Before I knew it, there was a monkey-type monster right next to me.
Not only that, but it was carrying a silver-haired boy with damaged armor on its back.
The boy was completely still, almost as if he was dead.
This was all so unexpected that my brain almost stopped working.
Which nearly made me fall off, but I somehow managed to regain my posture.
“I suppose this isn’t a good place to talk. We’ll do that once we reach the top of the mountain.”
Monkeys sure are fast... Wait, this is not time to be impressed!
What was even happening here... And how cruel to make me wait until I reached the top.
No, I would catch up with that guy and get an explanation for all of this...! | {
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研修の疲れをとるために、エイミー薬店の仕事はさら間ほど休ませてもらった。
一ヶ月ほど休んでいた期間のことは、『地方の実家に帰る用事があった』という設定になっていた。エイミーはその辺りの抜かりがなくて感心してしまう。
久々のエイミー薬店は、変わらぬ忙しさでシェイラを歓迎した。
『お休みをいただきて、まして、感謝いたして、ます』
シェイラの呟きに、エイミーはきょとんとした。
「シェイラちゃん?」
「すいません。何でもありません」
研修中も欠かさず頑張った甲斐あって、勉強の成果が少しずつ出てきていた。カタコトながら、古代語が話せるようになってきたのだ。
――分かるようになると楽しいんだよね。つい話しちゃうや。
勉強を欠かさなかったのももちろんだが、同室だったコディとハイデリオンが、ぶつぶつ呟くシェイラに付き合って古代語で会話をしてくれたことも、飛躍的な成長に一役買っているだろう。
忙しい合間にも、ついつい古代語を使ってしまって、何度かエイミーに訝しげな視線を向けられていた。
『これがこっち、あれに......じゃない、あれを、こっち』
言い回しだけでなく、接続詞もまだまだ要勉強だ。
ようやく客が途切れると、シェイラ達は窓辺のテーブルでお茶の用意をした。村でよく飲んでいた薬草茶の話をしたら、エイミーが興味を持ったのだ。
「何だか、飲むのを躊躇ってしまう色ね......」
色は黒に近く一見苦そうだが、甘くて飲みやすい。
「ちょっと怖いかもしれませんけど、体にいい薬草ばかり使われてるんですよ。おかげで、村には健康な人がとても多かったんです」
「そうよね。じゃあ、いただきます」
エイミーはカップを恐るおそる持ち上げ、思いきって一口飲んだ。覚悟していた苦味がなかったらしく、彼女はすぐに目を瞬かせた。
「全然苦くない。むしろ、甘くてとてもおいしいわ。......これは、カンゾウが入っているのかしら」
「正解です。他にも炒った穀物なんかが入ってて、少し香ばしいでしょう?」
「本当ね。これを飲んで健康になれるなら、とても手軽だわ。お茶なら誰でも飲むから生活に取り入れやすいし」
エイミーはニッコリと笑顔になってカップを置く。
何とも言えず迫力のある笑顔には見覚えがあった。薬草を卸しに来たシェイラを販売員に引きずり込もうと、力業でねじ伏せにかかった時と全く同じだ。
また仕事を増やされる前にと、シェイラは機先を制した。
「材料を集めるのに時間がかかりますよ。店では扱ってない薬草が幾つかありますから」
毅然とした態度を崩さずにいると、エイミーは雨に打たれた花のような風情でため息をこぼした。
「そうなの............。じゃあ、売り出すのは、一年がかりの計画になりそうね......」
「諦めはしないんですね............」
シェイラはそっと目を逸らしながら呟いた。
彼女の不屈の精神は身を持って知っているから、仕事が増えてしまうだろう未来が鮮明に見えた。
「そういえば、ギルグナー伯爵の悪事がどんどん露見しているって話、もう聞いた?」
疲れを誤魔化すために薬草茶を飲んでいると、別の話題に移った。ギルグナー伯爵の名前に、シェイラの表情は固まる。
「人身売買に恐喝、立場にものを言わせて婦女暴行、何だか色々と証言が出ているらしいわ」
ギルグナー伯爵の罪は無事に立件され、逮捕と相成った。
彼の罪の証拠は意外なところから見つかった。
長年彼の愛人だった女性の一人が、人身売買だけでなく、ありとあらゆる悪事の証拠を巡回兵団に差し出したのだ。
兵団に捕まって尋問されているという噂を聞き付けた彼女の行動は早かった。落ち目の男にさっさと見切りをつけ、自分にいらぬ火の粉が降りかからないことを条件に、伯爵の罪状を包み隠さず供述した。
元々愛のない関係だったのかもしれないが、報告に寄ったイザークが女は怖いと震えていたのが印象的だった。
しかしギルグナー伯爵が裁かれたことが、ここまで詳細な噂になっているなんて。シェイラが驚きで無言になっていると、エイミーは肩をすくめた。
「街でも評判の悪い男だったのよ。私も一度声を掛けられたことがあるわ。地声でお断りしたら逃げていったけれど」
ドスの利いた地声は何よりの武器になっただろう。あの手強いギルグナー伯爵を一声で退散させてしまうなんて、エイミーは騎士を目指すべきだったのではないだろうか。
薬草茶が半分も終わらない内に、扉が軋んだ音を響かせた。
「いらっしゃいませー............」
初めて見かける客だった。一目見たら忘れられない、目の覚めるような美しい少女。
豪奢な髪は金色に輝き、控えめに伏せられた瞳は澄んだ碧眼。花びらのような唇に浮かべた慎ましい笑顔は、慈愛溢れる女神のようにさえ思えた。
スラリとした体を包むドレスは下町風を装っているが、品のよさは隠しようがなく、どこぞの深窓の姫君であることは最早疑いようがない。ちらりと視線を遣れば、店舗の外には護衛らしき男が立っていた。
シェイラが見惚れている内に、エイミーが動き出した。
「お久しぶりですね、シーナ様。今日も薬草をお持ちくださったのですか?」
エイミーの対応から、彼女が客ではなく薬草を卸しに来たのだと分かった。落ち着いた声で答えるシーナという女性の腕には、よく見れば小箱が抱えられていた。
シーナがカウンターへ歩き出す。彼女に荷物を持たせたままではいけないという謎の使命感に駆られ、シェイラはすぐに両手を差し出した。
「よかったらお持ちします」
「そんな。これくらい大丈夫ですので、お気遣いなく」
可憐な微笑みを返され、シェイラは頬が熱くなるのを感じた。
同年代のはずだが、比較対象にならないくらい美しい、人形のような少女。綺麗な物が好きという少女らしい感覚も一応持ち合わせているため、思わずうっとりとした吐息がこぼれる。
けれど間近で見つめていると、彼女の容姿の何かが引っ掛かった。言うなれば野生の勘のようなものだ。
空気が洗われるような笑顔、儚げな佇まい。女性にしては少し凛々しい眉。
――どこかで見覚えがあるような。いやでも、こんな素敵な人と知り合ってたら、絶対忘れないって断言できる............。
相手ももしかしたら同じことを考えているのかもしれない。少し不思議そうな表情で、シェイラの顔をじっと見つめている。
おそらく、思い出したのはほぼ同時だった。
目を真ん丸にするシェイラと、口元に手を当てて上品に驚くシーナ。しかしそれが偽名であることに気付いた。
「あなたは――――」
言いかけたシーナの手から、スルリと小箱が滑り落ちる。シェイラは咄嗟に手を添えて支えた。
触れ合った手から、少しだけ低い温度が伝わる。
長い指、大きな手の平。爪の先まで美しいけれど、流石に女性の柔らかさはなかった。
女装した男と、普段は男装している女が一人。性別の境界が限りなく曖昧な空間だ。何だろう、このよく分からない状況は。
「な、なんでこんな場所に――――いえ、なぜこのような場所にいらっしゃられるのですか?」
シェイラは彼女に小箱を渡し、薬草の精算をお願いする。その隙に、シーナに小声で囁いた。
『......えっと、二人きりで話すことは、できますか?お渡ししたい、物が、あります』
拙い古代語に目を瞬かせたシーナが、店舗の入り口に立つ厳めしい護衛にチラリと視線を移した。
『一人きりになるのは、どうしても難しいです。............あの、またここに来ます。次は二週間後の、月の日に』
相手もシェイラの意図を察したらしく、同じように古代語で返してくれた。古代語が意外なところで役に立ち、しっかり学んでいたことを思わず神に感謝してしまった。
『分かりました。お待ちしております』
間違えずに言い切ることができ、シェイラはホッと胸を撫で下ろした。
その後は慣れたやり取りで商談を終え、シーナは帰っていった。
「............まさか、女装の趣味があったなんて」
自分も普段男装しているため、人の趣味をとやかく言うつもりはない。身近にエイミーという例がいるので、似合っているしアリだと思う。
――でも立場上、公になったら色々騒動になっちゃうんだろうな。
王族は大変だ。去っていくシーナの――――いや、第二王子殿下⋅ヴィルフレヒトの後ろ姿を見つめながら、シェイラは少し同情した。 | Sheila was given another week off from her job at Amy’s Pharmacy to recover from the training.
The period of time she was absent for a month or so was set up as “Sheila had to go back to her parents’ house in the countryside.”
After a long absence, the pharmacy welcomed Sheila with the same busy schedule.
F-for the time off..... Thank you so... very much.
Amy was taken aback by Sheila’s mutterings.
“Sheila-chan?”
“I’m sorry. It’s nothing.”
The hard work she had put in during the training was paying off, and the results of her studies were gradually starting to show. She was now able to speak the ancient language, albeit in a very broken way.
It’s fun once you get to know it. I can’t help talking about it.
Of course, it wasn’t only her constant study but also the fact that Cody and Hyderion, who shared the room with her, accompanied the mumbling Sheila and conversed with her in the ancient language, which probably played a role in her rapid growth.
Even in the midst of her busy schedule, Sheila would find herself using the ancient language, and several times Amy would give her a quizzical look.
This one over here, that one there.... no, that one, over here.
She still had a lot to learn about conjunctions as well as phrases.
When the number of customers finally stopped, Sheila prepared tea at the table by the window. Amy became interested when Sheila told her about the herbal tea that she used to drink in the village.
“Something about the color makes me hesitate to drink it...”
The color was almost black and looked bitter at first glance, but it was actually sweet and easy to drink.
“It might be a little scary, but it’s made from medicinal herbs that are good for the body. Thanks to that, there are a lot of healthy people in the village.”
“Is that so? I’ll have some then.”
Amy hesitantly lifted the cup and took a bold sip. She immediately blinked her eyes, as if the bitter taste she was prepared for was not there.
“It’s not bitter at all. Rather, it’s sweet and very delicious.... I wonder if this contains daylily.”
“That’s correct. It also has some roasted grains in it, and it’s a little fragrant, right?”
“Yes, it is. If I can be healthy by drinking this, it’s very simple. Anyone can drink tea, so it’s easy to incorporate it into your daily life.”
Amy smiled and put down her cup.
Sheila had seen this smile before. It was exactly the same as when she tried to manipulate Sheila, who had come to wholesale medicinal herbs, into applying a sales representative.
Sheila took the initiative before she had to do more work again.
“It’s going to take some time to gather the ingredients. There are some medicinal herbs that are not available in the store.”
When Sheila remained resolute, Amy let out a sigh with the air of a flower caught in the rain.
“I see.... Then, it looks like it’s going to be a year-long project to get it on the market.....”
“You never give up, do you...?”
Sheila muttered while gently averting her eyes.
Knowing her persistence firsthand, she could clearly see a future where she would have more work to do.
“Speaking of which, have you heard yet that Count Gilgner’s evil deeds are being exposed more and more?”
Drinking a cup of herbal tea to fool the tiredness, they moved on to another subject. At the mention of Count Gilgner’s name, Sheila’s expression hardened.
“I heard that there are various testimonies of human trafficking, extortion, and assault of women by taking advantage of his position.”
Count Gilgner’s crime was successfully prosecuted, and he was arrested.
Evidence of his guilt was found in an unexpected place.
One of his long-time mistresses presented the Patrol Corps with evidence of not only human trafficking, but all of his misdeeds.
When she heard rumors that he had been captured and interrogated by the corps, she acted quickly. She immediately gave up on the failed man and gave a full confession of the Count’s crimes, provided that they didn’t bring any unnecessary heat down on herself.
Perhaps the relationship was loveless to begin with, but it was impactful to see that Isaac, who came by to report the incident, trembled with fear of women.
However, she had no idea that Count Gilgner’s being judged had become such a detailed rumor. Amy shrugged her shoulders as Sheila fell silent in surprise.
“He was a man with a bad reputation in town. I was approached by him once. When I refused in a low voice, he ran away.”
Amy’s husky voice would have been her best weapon. To send that formidable Count Gilgner away with a single sound, perhaps Amy should have aspired to be a knight.
Before the herbal tea was even half finished, the door made a creaking sound.
“Welcome toー....”
It was the first time Sheila had seen this visitor. A dazzlingly beautiful girl, unforgettable at first sight.
Her luxurious golden hair shone, and her modestly downcast eyes were a clear blue color. The modest smile on her petal-like lips was like a goddess who was overflowing with compassion.
The dress that wrapped around her slender body was designed in a downtown style, but there was no way to hide her elegance, and there was no doubt in Sheila’s mind that she was actually a princess of some deep-rooted family. A glance around revealed a man standing outside the store who appeared to be her escort.
While Sheila was admiring her, Amy started to move.
“It’s been a long time, Sheena-sama. Did you bring medicinal herbs today as well?”
From Amy’s response, Sheila knew she wasn’t a customer but a wholesaler of medicinal herbs. The woman named Sheena, who answered in a calm voice, was holding a small box in her arm.
Sheena walked to the counter. Driven by a mysterious sense of duty not to leave her holding the package, Sheila quickly held out her hands.
“I can bring it if you like.”
“Oh, no. This much is fine, so please don’t worry about it.”
Sheila felt her cheeks heat up as she received a dainty smile in return.
Sheena must be the same age as her, but she was a beautiful, doll-like girl beyond comparison. Sheila also had a girlish sense of liking beautiful things, so she couldn’t help but let out an enraptured sigh.
But as Sheila gazed at her up close, something about her appearance caught her attention. It was like a wild intuition, if you will.
A smile that cleansed the air and a fragile appearance. Eyebrows that were a little gallant for a woman.
She looks familiar. No, but if I met such a lovely person, I would never forget her....
Maybe the other person was thinking the same thing. She stared at Sheila’s face with a slightly puzzled expression.
It was at that time that they both remembered.
Her eyes widened, and Sheena was elegantly surprised with her hand on her mouth. But then Sheila realized it was her pseudonym.
“You’re―”
The small box slipped out of Sheena’s hand as she was about to say something. Sheila quickly supported it with her hand.
The hands that touched one another transmitted a slightly cooler temperature.
Long fingers, large palms. The hands were beautiful down to the tips of their fingernails, but they didn’t have the softness of a woman’s hands.
Two men dressed as women and one woman who usually dressed as a man. What kind of situation was this?
“Why are you here――no, why are you in a place like this?”
Sheila handed her a small box and asked her to settle the exact calculation of the herbs. While she was doing so, she whispered to Sheena.
.... Um, is it possible for us to talk alone? I-I have something for you.
Sheena blinked at the use of clumsy ancient language, and then she glanced at the stern guard standing at the entrance of the store.
It’s hard to be alone..... Um, I’ll be back here again. Next time in two weeks, on a lunar day.
The other party seemed to have guessed Sheila’s intentions and replied in the same ancient language. The ancient language came in handy in an unexpected way. Sheila couldn’t help but be thankful that she had learned it well.
I understand. I’ll be waiting for you.
Sheila was relieved that she was able to say it without making a mistake.
After that, the business negotiations ended with familiar exchanges, and Sheena left.
“..... I had no idea he had a taste for cross-dressing.”
Since Sheila usually dressed as a man herself, she didn’t mean to comment badly on other people’s hobbies. She had an example of Amy, who was close to her, so she thought it suited him and was quite a good idea.
But I’m sure there would be a lot of uproar if it became public knowledge.
Being royalty was tough. As she gazed at the back of the departing Sheena――no, His Highness, Prince Wilfrecht, Sheila felt a bit sorry for him. | {
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自身の能力を確認してか間ほどたった。
森を駆け回り、木の実や野草を採取し、兎や鹿などの獲物を捕らえ、捌いて冷凍保存する日々。食料に関してはもう心配することはほぼなくなった。
ということで次は服と住むところをなんとかしたい。とは言え服に関しては全く当てがないので後回しである。いくら人がいないとはいえ、裸族の趣味はないので早めになんとかしたいのだが。
「とりあえず崖でも掘りますかー」
当初は木を加工して掘っ建て小屋でも建てようかと思っていたが、釘がないのでいかんともしがたいと気付き、適当な横穴を掘って住居にしようと決めた。
雨やなんかを考慮し、崖の中腹あたりをざくざくと掘り始める。階段でも作るかと思ったが、出入りは爪でよじ登るか飛べばいいと思いやめた。
爪と膂力でもって掘り砕き、尻尾で掃き出していく。あっという間にワンフロア分掘り進める。余りにも快調なので思わずテーブルや椅子、棚などを削り出して作った。
寝室、倉庫、リビング屋ほど作れたので、いそいそと食料や毛皮、石をくり抜いて作っておいた水瓶などを運び込んで作業終了。こちらに来てから今のところ雨に降られていないが、これでもし降られても安心だ。崩落が少々怖いが、出来るだけ硬い場所を選んだので無いと信じたい。
また、トイレと台所を外に作った。さすがに中に作るのは難しいので、崖に溝を掘り、切り出した木板を差し込んで屋根代わりとした。
台所は石積みの竈で、その上に水瓶同様くり抜いて作った石鍋を置く。調理台は岩をスパッと切って作った台。加工は全て爪。爪がなかったら今頃どうなっていたか...
住むところ落したので、服の変わりに使えそうなものを探しに出る。とは言っても、二週間探してよさそうなものが見つかっていないので余り期待はしていない。半分散歩気分で森の中を歩く。兎でもいれば追加で狩っておこうかなーなんて思っていると、ガサッ!バキバキ!ドスン!と派手な音が聞こえた。
倒木の音かな、とそのまま散策に戻ろうかと思ったが、もし原因がこの間の巨大猪とかであればせっかく作った住居が壊されかねない。確認して猪なら狩ってしまおうと音のした方へ向かった。
(うーん?なんか様子が違うな)
てっきり倒木かと思っていたが、木は倒れていない。代わりに葉っぱと小枝が散乱している。ぱっと見危険もなさそうなのでもっと近づいて確認してみると、それらに埋もれるようにして人が倒れていた。
(人間...ではないね。僕みたいに翼がついてるし)
恐らく飛んでいて何かしらの原因で落ちてきたのだろう。しかしまぁかわいい子だ。
黒髪で肩口くらいのショート。頭の巻いている一対の角に、漫画でありそうな悪魔っぽい翼。尻尾は...なさそうだ。ちょっと残念。
「もしもーし?大丈夫ですかー?」
息はあるようなので声をかけてみる、が意識がないのか返事はない。揺すってみても気が付く気配はない。
仕方ない、一旦連れて帰ろう。住居が出来ていて良かった。
◇◆◇
「んん...」
「お、気が付いた?」
連れて帰ってきた次の日の昼くらいに女の子の意識が戻った。
「...裸族だ!」
「開口一番にそれかい!」
意識が戻るなり失礼な事を言ったこの子はルティモというらしい。なんであんなところに倒れていたのか聞いてみると、やはり墜落したらしい。
「連日飛び続けで疲れが限界まできてて、そこに空腹が重なっちゃったもんだから意識失っちゃったみたい。助けてくれてありがとね。裸族さん!」
「着るものないからこんな格好だけど、裸族じゃないってば...あと僕の名前は近藤夏樹っていうから宜しくね」
「コンドウナツキ?」
「夏樹って呼び捨てでいいよ」
「ナツキね。私の事はルティって呼んでね。ところで着るものがないってどういうこと?」
僕はどう言えばいいのか迷ったが、うまく言える自信もないので、まったく別の世界からこの森に放り出され、今日にいたるまでの事をそのまま話した。
「ふーん...別の世界ねぇ、それよりも女の子になったっていうほうが驚きだわ」
「そのくらいの反応で済んでるルティのほうが驚きだよ。...そういえばなんで言葉が通じてるんだろう?」
何気なく話していたがふと気になった。
「さぁ?体が変わったんでしょう?頭の中も変わったんじゃないの?」
怖っ!ありえないと言えないのがさらに怖い。のーみそこねこねされたとか考えたくない。
じゃあ会話が通じるなら文字はどうかと、試しにルティに書いてもらう。...読める。さらに書こうと思うと文字が頭に浮かぶ。怖いを通り越して、もはや気持ちが悪い。
「...とりあえず日も暮れてきたし、ご飯にしようか」
お腹が膨れれば気も紛れるだろう、そう思い夕飯の準備をし始めた。 | It’s been two weeks since I’ve confirmed my abilities.
I spent my days running through the forest, harvesting nuts and grass, hunting for prey like rabbits or deer, dismantling and freezing them. In terms of food, I practically have nothing to worry about anymore.
So now, I want to do something about my clothing and shelter. Nonetheless, I have absolutely no clue on the clothes part, so I’m putting it off for later. Even if there aren’t any people around, I’m not into nudism so I want to do something about it quick.
「For now, let’s dig on the cliff~」
At first, I thought of making wood to build a hut or something but I noticed that I can’t really do that without nails, so I decided on digging out a random tunnel and using it as shelter.
Taking into account the rain and stuff, I began digging halfway up the cliff. I thought of making a stairway too, but realizing I could just either jump or claw my way up the entrance, I stopped.
I dig my way through with my claws and pure strength, then swept the rubble out with my tail. In an instant, I was able to dig out a single floor. It went so well that I unconsciously sculpted out tables, chairs, shelves, and such.
I’ve already made the bedroom, storage, and living room; so I excitedly moved in my food supplies, fur mattress, and the water jug I carved out of a rock and finished my job. There hasn’t been any rain ever since I arrived but with this, I’ll be safe even if rain falls. I’m a bit scared of cave-ins but I chose the toughest place I could dig, so I want to believe that it won’t happen.
Also, I made the toilet and kitchen outside. Since making those inside would be really difficult, I dug out a groove on the cliff and inserted the wooden board I cut out to act as a roof. For the toilet, I worked hard to draw in water flow and placed a plank with a hole in the middle on top of it, Japanese-style. It’s not the real thing, but I was able to make it flush. There isn’t any paper, so a relatively soft grass was used as a substitute for it.
The kitchen has a stone stove with a stone pot, which was carved up like the water jug, on top of it. The kitchen table was something I cleanly cut from a boulder. The crafting was all done by claw. If I didn’t have my claws, what would have happened to me by now...
Since I’m roughly done with my shelter, I began looking for things I can use for clothing. Still, I haven’t found anything good after searching for two weeks, so I’m not expecting too much. I walk through the forest in a half-leisurely mood. If there’s a rabbit, I should hunt it just to be sure and- Swoosh! Crick-Crack! Thud! I suddenly heard a loud sound.
It’s probably a fallen tree so I thought of going back to my walk but if it was caused by something like the giant boar from that time, the house I worked hard on might get destroyed. So, I head towards the origin of the sound to check it out and hunt it if it’s a boar.
Hmm?
I was sure that it was just a fallen tree, but no tree fell to the ground. Instead, leaves and branches are scattered around. From a glance, it doesn’t seem to be dangerous so I tried getting closer to check what happened and buried in the leaves and branches was a person lying on the ground.
(It’s a human... or not. They do have wings like me.)
It’s likely that she was flying when she probably fell down for some reason. But, man, she’s cute.
She has short black hair only up to the tip of her shoulders. She has a pair of horns coiling around her head and devil-ish wings that I’d probably see in a manga. As for the tail... none. That’s a bit disappointing.
「Hell~o? Are you alright?」
She seems to be breathing so I tried calling out to her, but she seems to be unconscious since she isn’t replying. Even after trying to jolt her awake, she doesn’t seem to notice.
It can’t be helped; I’ll just take her home for now. I’m really glad I made the shelter.
◇◆◇
「Ngh...」
「Oh, are you awake?」
At noon the day after I took her home, the girl regained consciousness.
「... It’s a nudist!」
the first thing you say!」
This girl being rude the moment she regains her consciousness seems to be called Rutimo. I asked her why she collapsed at that place and, as I thought, she crashed.
「I was near my limit after flying continuously for days, and on top of that, I was hungry as well, so it seems like I fainted at that time. Thanks for the help. Nudist-san!」
「I’m like this because I have nothing to wear, but like I said, I’m not a Nudist... Also, my name is Kondou Natsuki, nice to meet you.」
「Kondounatsuki?」
「You can just call me by Natsuki.」
「Natsuki, right. You can call me Ruti. By the way, what do you mean by nothing to wear?」
I wasn’t sure about what I should say but since I’m not confident if I could say it properly, I just talked about everything that happened from how I was thrown into the forest from a different world up until now.
「Hmm... Another world, right? More importantly, I’m more surprised about the became a girl part.」
「I’m more surprised that that’s your only reaction, Ruti... Speaking of which, I wonder why we understand each other’s words?」
We were casually talking when I suddenly got curious about it.
「Who knows? Your body was changed, right? Doesn’t that mean the inside of your head was changed too?」
Scary! The fact that I can’t deny it; is even scarier. I don’t want to think about my brain being messed around with.
Well, if we can communicate verbally then how about writing; so to test, I asked Ruti to write something... I can read it. Moreover, when I thought about writing something, letters pop into my mind. Now it went beyond scary and just feels plain disgusting.
「... For now, it’s already sunset so why don’t we have a meal?」
If I fill my stomach, I’ll probably get my mind off it; so I started the preparations for dinner. | {
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次の日、早朝から行政地区の最深部にある宮殿でリィーシャともの若い剣士が立ち会ってルトルスの事情聴取を行う。ルトルスを店で発見した証人としてシェーナとキシャナも同席する。
宮殿の客室に通されると、それぞれ指定されたテーブルの席に着く。
剣士はキシャナとルトルスの顔を見るなり、不機嫌を露骨に顔に出す。
「忙しいのに悪いね。手短に済ませるから、早速始めようか」
主導権はリィーシャが握って進行を始めようとするが、剣士はリィーシャを遮るようにシェーナ達の素性を確認する。
「その前の経歴を確認しておきたい。シェーナ・ウラバルトはハシェル国の元第三近衛隊隊長の女騎士。キシャナ・ウスティーはガフェーナ国の元諜報員に属していたダークエルフ。ルトルス・ライヤーはガフェーナ国の元ディアン枢機卿直属の暗黒騎士で間違いはないか?」
威圧的な態度の剣士は書類に記載されている経歴を読み上げる。
経歴については間違っていないし、シェーナ達は頷く。
すると、剣士は腰に下げている剣をシェーナに向ける。
「そこのシェーナ・ウラバルトの邪教徒を使役して、我々を葬国を征服しようと画策している可能性がある。ハシェルがガフェーナと密約を交わしているのではないかね」
「違います! 私達はそんな大それたことを考えたりはしていません」
必死に無実であると訴えるシェーナだが、剣士は頑なに聞く耳を持たない。
「即刻、裁判を開いて貴様等を......」
「カリュー君、少し黙ろうか?」
リィーシャは表情を変えずに、静かな口調で諭す。
カリューと呼ばれた剣士はリィーシャに反論しようと試みるが、彼女の凄みに圧されて剣を鞘に収めて口をつぐむ。
「では聴取を始めるね」
リィーシャは事情聴取を再開すると、ルトルスは淡々と語り始める。
たしかにハシェルの女騎士、ダークエルフ、ガフェーナの暗黒騎士が一堂に集まる機会はな
事情聴取が終わると、リィーシャはルトルスに住民票と身分証明書を渡す。
「住民票の住所は料理店にしてあるよ。それと身分証明書は商業ギルド『森の聖弓』に登録させてもらうよ。ギルドについてはシェーナ君やキシャナ君に詳しく聞くといいよ」
「ああ、手間をかけさせたな」
ルトルスはリィーシャと握手を交わすと、正式に中立国家プライデンの住人となった。
その様子を忌々しそうに眺めるカリューは宮殿の奥へと消えていった。
「すまないね。彼は勇者君がリンスル聖王国から引っ張って来た神官戦士なんだ」
リィーシャがカリューの出自を説明すると、合点がいった。
を邪教徒の烙印を押して宗教戦争が勃発。五大国の中で魔王復活前から因縁深い国同士なのだ。
うなリンスル聖王国の人間には我慢がならないのだろう。
リィーシャは上層部へ報告するためにその場で別れると、シェーナ達は料理店へと戻る。 | The next day, Reesha and a young swordsman listened to Luthors story in detail in a room located at the deepest part of the administrative office. Schenna and Kishana, both of whom were present at the time she broke into the restaurant, were also attending the meeting.
After being led inside the palace’s guest room, they were told exactly where to sit.
The swordsman expressed his displeasure as he looked at both Kishana and Luthors.
“Sorry to disturb you guys at such bad timing, we’ll try and be as brief as possible.”
Reesha tried to gain the lead of the conversation, but the swordsman interrupted her, questioning the identity of the girls.
“Before we start, I would like to check their background. Schenna Urablatt is the former captain of the third imperial guard corps. Kishana Ustey, a dark elf and former spy from the country of Gafenna. And finally, Luthors Raya, a previous dark knight who worked directly for cardinal Dian, correct?”
Taking an aggressive attitude, the man recited the words written on their records.
He wasn’t wrong in terms of their personal history, therefore everyone nodded in agreement.
Right after the girls nodded, the swordsman took out his sword and pointed it at Schenna.
“There’s a high chance that Schenna Urablatt is utilizing the other two heretics and is planning on doing something against the Five Great Powers. It wouldn’t be surprising to find that Hashel and Gafenna have a secret agreement”
“You’re wrong! There’s no way we would ever think of doing such an outrageous thing!”
Schenna desperately tried to express their innocence, but the man didn’t seem to be interested in hearing anything.
“We’ll have you all instantly taken to trial and...”
“Karyu-kun, can you shut up for a second?”
Without any change in expression, Reesha scolded the swordsman.
Karyu tried to oppose her and refuse to listen to orders, but he gave in to the insane pressure he was feeling from Reesha.
“Okay then, let’s begin”
As Reesha restarted the interview, Luthors began talking, seemingly unconcerned about the ruckus at all. Meanwhile, Karyu sat there staring at them with a hostile expression.
In all fairness, the sight of a former Hashel Knight with a dark elf and a dark knight from Gafenna was quite unique, it wasn’t a group anyone ever expected to see. Also, considering Karyu was in a position to defend his country, feeling threatened was only natural.
As they finished the interview, Reesha handed Luthors her residential certificate along with her identification papers.
“I put the restaurant as the address for your residential certificate. All you have to do now is take both of those documents and register yourself in the [Holy Bow of the Forest] guild.”
“Alright, sorry for the trouble.”
“Luthors exchanged a handshake with Reesha and became an official resident of the country of Priden.
Karyu found that to be unacceptable and disappeared into the back of the palace.
“Sorry for his behavior. He’s a battle priest who came all the way from the holy kingdom of Rinsr.”
As Reesha explained his circumstances and where he came from, everyone seemed to reach an understanding.
Being from a religious country who had the exact opposite beliefs from the ones in Gafenna, everyone that had any sort of connection to Gafenna was automatically considered to be a heretic, which ended up creating a religious war between the two countries. Between the Five Great Powers, Rinsr was the country with the most hostility towards Gafenna.
For someone from the holy kingdom of Rinsr like Karyu, the idea of having people like Luthors or Kishana around was completely unacceptable.
Reesha parted ways with them in order to report to her superiors, and the three girls headed back to the restaurant. | {
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片目の猿はその女性がセクリだと分かりました
彼女はさらに有名なブラーマンの妻でした
彼女が良く見ようと、片目の猿は木に登りました
すると、大きな音がして 天が裂けたのです インドラ神は空き地に飛び込みました
インドラはセクリを見ました
ははあ
セクリは彼を気にも留めません
インドラは彼女を引き寄せ、床に投げ倒し レイプしたのです
インドラは姿を消しました(タン!タン!) 彼女の夫、ブラーマンが現れました
彼はすぐに事態を認識しました
より崇高な神に申し立て 当然の報いを彼に与えるように願ったのです
ビシュヌ神がやってきました
「証人はいるのか?」
「片目の猿だけです」とブラーマンが言いました
その片目の猿は どうしてもセクリの正当性を訴えたかったので 何が起こったかを正確に説明しました
ビシュヌ神は判決を下しました
「インドラ神は罪を犯したのだ ブラーマンに対して罪を犯したのであるから
彼は罪を洗い流すことを求められる」
インドラがやって来て 馬を生け贄にしました
そのため 馬が殺されました 神は、罪悪感のないブラーマンのエゴが 満たされたことに怒りました 彼女の心は傷つけられ 片目の猿は...私たち人間が言う
正義についてとても困惑しました
インドでは3分に一度レイプが起こっています
インドで警察に被害届があるレイプは 全体のたった25パーセント 警察に被害届があった25パーセントのうち 有罪になるケースは4パーセントだけです
当然の報いを得られない女性がたくさんいます
女性に限ったことではありません
まわりを見渡して下さい、あなたの国はどうでしょう
罪に問われる人たちには、一定のパターンがあります
オーストラリアで刑務所に拘留されている人たちは殆どが先住民です
インドではイスラム教徒かインド先住民 または私たちの部族であるナクサルです
アメリカでは殆どが黒人です
こういった傾向があります
私の話の中では、ブラーマンと神々は 常に彼らの真実を「真実」として語るのです
私たちはみんな片目の猿 または片目ではなく両目の猿になったのでしょうか?
私たちは不正行為の認識をやめたのでしょうか?
おはようございます
皆さん、私はこれまでにこの物語を 550回近くも 40か国の聴衆の前で話してきました 学生たち、スミソニアンでの準礼装のディナーなど 何らかの状況に合うたびにお話しました
もし、私が同じ集団に 「正義と不正について皆さんに講義したい」などと言ったら 彼らは「ありがとう。でも、他にやることがあるから」と言うでしょう
これが芸術の驚くべきパワーです
芸術でこそ出来ることがあるのです
先入観を打ち破り、バリアを張ることはできません あなたを覆い隠しているー 「私はこれ、私はそれ、私はそれ」という仮面
それらをすべて打ち破ります
他では辿り着けないような所に行き着きます
考え方を変えるのが難しい世界では 人の心を動かす伝達手段が必要です
ヒトラーはそれを理解していました ワグナーの音楽で、ナチスとアーリア人の気を立てました
ベルルスコーニ氏も理解して メディアとテレビの巨大帝国の頂点に立ったんです
広告代理店の素晴らしい創造的精神 まったく必要ないものを私達に売る人達 彼らも芸術のパワーを理解しています
私は、早い時期にそれを知っていました
私が子供の頃、振付師だった私の母は とても辛い出来事に遭遇しました
それは若い花嫁達がグジャラートの田舎町で 自殺している話でした 彼女達は親戚の家族にお金を渡すよう強制されていたのです
私の母はダンス作品を作り、その後ネール首相がその作品を観ました
彼は母のところにやって来て「これは何の話だ?」と聞きました
母は彼に説明し、彼は現在「ダウリーダンス」と呼ばれているー ダンスについて初めての調査を始めました
想像して下さい 今日でも数千人の女性が命を絶つ
その調査のきっかけになったダンス作品を 何年も経って、私がピーター・ブルック監督の作品 「マハーバーラタ」でドローピディという女性フェミニストを 演じた時、同じような体験をしました
ブロンクスの太った黒人のお母さんが やってきて「その通りだわ!」と言いました
その後、ソルボンヌのお洒落な若者達が言っていました 「ドローピディ夫人、私たちはフェミニストではないけど、すごい!」と
アフリカの先住民の女性達は 「まさにこれだわ」と言いました
これこそ私達が伝達手段として 必要だと思いました
公衆衛生の方に来てもらいました。デュデットも公衆衛生について話しました
世界中で何百万もの人々が 水の感染症によって毎年死んでいます
それはきれいな飲み水がないからです インドのような国では 人々は排便の前に石鹸を使うを知らないのです
彼らはどうしているのでしょうか?
汚いと分かっていながら水を飲んでいるのです コレラに感染し、下痢をし、黄疸を発症し 命を落とします
政府はきれいな水を提供できていません
パイプラインを建設しようとするのですが、実現しません
多国籍企業が機械を提供しますが、それを購入する余裕がありません
彼らを死なせるのでしょうか?
素晴らしいアイデアがあったのです
単純なアイデアです。誰も得することはないのですが あらゆる分野の衛生に役に立つアイデアでした
アジアとインドのほとんどの家には 綿の衣類があります
WHOが承認する方法が見つかったのです 8回折り畳んだ清潔な綿の衣類を使って 水を通すと、バクテリアを80%まで減らすことができるのです
なぜ政府はこれをテレビで宣伝しないのでしょう?
なぜなぜ第三世界各地でポスターになっていないのでしょう?
利益がないからです
誰も見返りを得ることができないからです
でも人々にとっては必要なものです
そこで1つの方法があります
[ビデオ]女性: ねぇ、豪華な浄水器を買ってよ
男性: 浄水器がどのぐらい高価なのか知っているのか?
機械、木や調理用ガスも必要としない 解決策があるんだぞ
女性: どんな解決策?
男性: 君の綿のサリーを持ってきなさい
男の子: おじいちゃん、解決策を教えてよ
男性: 教えるから、ちょっと待て
女性: どうぞ、お父さん 女性: ええ、もちろん
男性: 私が言うとおりにしなさい。サリーを8つに折り畳むのだ
女性: はい、お父さん
男性: 彼女がやるから数えて 男性: 1、2、3、4つ折
水から細菌をすべて取り除く
コーラス: 1、2、3、4つ折♪
水から細菌をすべて取り除く♪
5、6、7、8つ折♪
飲み水を安全に♪
5、6、7、8つ折♪
飲み水を安全に♪
女性: ほら、お父さん。8つ折の綿のサリーができたわ
男性: これが綿のサリーだ
これで、きれいな水を作るんだ
日常生活でエスカレートする暴力について ひどく心配していると言って間違いないと思います
大学が紛争解決の講座を創設しようとしている一方 政府は国境での小競り合いを止めさせようとしています 私達は暴力に取り囲まれています。交通渋滞でのイライラ 家庭内暴力 宿題をやらない生徒に先生が暴力を振るって生徒を殺したり 暴力はどこにでもあります
なぜその問題に関心を向けるようなことを 日常的にしていないのか?
私達は、子供達や 若者達が 暴力は何かに溺れること 私達が止めることができること そして暴力、怒り、欲求不満を 他人を傷つけない別のものに導く方法が 他にあると教える為に何をしているのでしょうか
そういった方法についてお話しましょう
皆さんは平和を愛する人々です
皆さんの両親は平和を愛する人々です
皆さんの祖父母は平和を愛する人々です
1つの場所に平和がたくさんありますか?
そうでなければなぜなのでしょう?
でも、もし...
ええ、もし...
あなたの中の小さな遺伝子が 生き抜こうとしていたらどうしますか?
アフリカでの起源から 各世代を通り抜け、あなたに受け継がれるのかも それは、心の奥深くに隠れている本能です
あなたの中にあれば、私の中にもあります
弟のお尻をピシャリと打ったり ゴキブリを踏み潰したり、お母さんを引っかいたり
心の奥底から込み上げる感覚 夫が酔っ払って帰って来て、懲らしめたくなった時
通勤途中に自転車に乗っている人を殺したくなる時 いとこは本当に嫌なやつだから絞首刑にしたいと思う時
外国人の白人、黒人、褐色人を 厳しく非難し、町から追い払う時
それが小さな遺伝子。小さくてささいなこと
見つけるには小さすぎる。生まれつき備わった身を守るもの
アドレナリン、殺しは、あなたに意志を与える
置き換えれないので、立ち向かったほうがいい
あなたは「ぼうりょくてき」
犠牲者になるか、私のような第一人者になる
さようなら、エイブラハム・リンカーン
さようなら、マハトマ・ガンジー
さようなら、マーティン・ルーサー・キング
こんにちは、この地区のギャング達 あの地区のギャング達を殺してるギャング達
こんにちは、裕福な国の政府達 食料を提供できないほど貧しい国々のー 政府に武器を売っている政府達
こんにちは、文明。こんにちは、21世紀
私達がやってきたことを見て
彼らがやってきたことを見て
主流芸術である映画は 社会問題を語るときに、世界中で利用されています
数年前「Rang De Basanti」という映画が公開されました この映画で、何千人もの若者達が突然 社会改革のボランティア活動を志願しました
ベネズエラでは、最も人気のあるメロドラマに クリスタルというヒロインが出演していました
ドラマでクリスタルが乳癌になった時 7万5千人以上の若い女性達が乳房X線撮影を受けに行きました
もちろん「ヴァギナ・モノローグス」についてはご存知ですね
人種問題や民族問題について
語っているコメディアンもいます なぜでしょう つまり、より良い世界が必要だと みんなの意見が一致していると考えるなら より公正な社会が必要です 障壁を取り除き、人の心に届くということを 私達に絶えず教えてくれている 言語を使わないのはなぜなのでしょう?
世界の計画者、政府、戦略家に 私が言いたいことは 「芸術はおまけのような扱いを受けてきましたが
イースト菌であることが必要だ」ということです
なぜなら、将来の計画は 目標に達するのが2048年だとすれば 芸術を科学者や 経済学者や 将来の準備を進めるすべての人達と同等に考えない限り 私達は目的を達成できないでしょう
これが実際に理解されなければ、成り立ちません
私達が求めるもの、必要とするものは何でしょうか?
計画者とは 正しい生き方とは といった構想を打ち破る必要があります
そのため、ここ数年 より良い世界を作ろうとしましたが、失敗しました
レイプの被害者は増えています。戦争も増えています
単純なことで死んでいく人々も増えています
何かが変わらなければいけません。そしてそれは私が望むことです
最後の音楽をお願いします
昔、口笛の上手なお姫様がいました
父である国王は「口笛を吹くな」と言いました
母である女王は「口笛はやめなさい」と言いました
お姫様は止めません
何年か経って、お姫様は成長し 若くて美しい女性になりました 口笛ももっと見事に吹くようになりました
父である国王は「誰が口笛を吹く姫と結婚するのだ?」と言いました
母である女王は「誰が口笛を吹く姫と結婚するのでしょう?」と言いました
けれども国王には考えがありました
国王はソヴァヤムヴァラを開催すると発表しました
すべての王子を招待して、娘より口笛が上手な王子を探すことにしました
「私の娘に勝った者には、王国の半分を譲り渡し 娘と結婚させよう!」
間もなく、宮殿は口笛を吹く王子達で埋め尽くされました
口笛が下手な王子もいました
口笛が上手な王子もいました
けれども、お姫様に勝てる者はいませんでした
「さて、どうしたらいいのだ?」と国王は言いました
「さて、どうしたらいいのでしょう?」と女王は言いました
そのとき、お姫様が言いました。「お父様、お母様、心配しないで
いい考えがあるの。王子らの所に行って 自分が負けたかどうか ひとりずつ聞いてみます
誰かが負けを認めたら、それが私の望むものでしょう」
お姫様はそれぞれの王子の所へ行き「私が勝ったことを認めますか?」
すると、「私が?女性に負けた?
まさか!いいえ!無理!絶対無理です」と言います
ついに、ある王子が言いました 「お姫様、私が負けたことを認めます」と
「あら...」
「お父様、お母様、私の夫になるのはこの人です」とお姫様は言いました
ありがとうございました | The one-eyed monkey recognized the woman, a Sekhri.
She was the wife of an even more famous Brahmin.
To watch her better, the one-eyed monkey climbed onto the tree.
Just then, with a loud bang, the heavens opened. And the god Indra jumped into the clearing.
Indra saw the woman, a Sekhri.
Ah-hah.
The woman paid him no heed.
So, Indra, attracted, threw her onto the floor, and proceeded to rape her.
Then Indra disappeared. And the woman's husband, the Brahmin, appeared.
He realized at once what had happened.
So, he petitioned the higher gods so that he may have justice.
So, the god Vishnu arrived.
"Are there any witnesses?"
"Just a one-eyed monkey," said the Brahmin.
Now, the one-eyed monkey really wanted for the woman, a Sekhri, to get justice, so she retold events exactly as they had happened.
Vishnu gave his judgment.
"The god Indra has sinned, in that he has sinned against ... a Brahmin.
May he be called to wash away his sins."
So, Indra arrived, and performed the sacrifice of the horse.
And so it transpired that a horse was killed, a god was made sin-free, a Brahmin's ego was appeased, a woman ... was ruined, and a one-eyed monkey was left ...
very confused at what we humans call justice.
In India there is a rape every three minutes.
In India, only 25 percent of rapes come to a police station, and of these 25 percent that come to a police station, convictions are only in four percent of the cases.
That's a lot of women who don't get justice.
And it's not only about women.
Look around you, look at your own countries.
There is a certain pattern in who gets charged with crimes.
If you're in Australia, it's mostly aboriginals who are in jail.
If you're in India, it's either Muslims or Adivasis, our tribals, the Naxalites.
If you're in the U.S., it's mostly the blacks.
There is a trend here.
And the Brahmins and the gods, like in my story, always get to tell their truth as The Truth.
So, have we all become one-eyed -- two-eyed instead of one-eyed -- monkeys?
Have we stopped seeing injustice?
Good morning.
You know, I have told this story close to 550 times, in audiences in 40 countries, to school students, to black-tie dinners at the Smithsonian, and so on and so forth, and every time it hits something.
Now, if I were to go into the same crowd and say, "I want to lecture you about justice and injustice," they would say, "Thank you very much, we have other things to do."
And that is the astonishing power of art.
Art can go through where other things can't.
You can't have barriers, because it breaks through your prejudices, breaks through everything that you have as your mask, that says, "I am this, I am that, I am that."
No. It breaks through those.
And it reaches somewhere where other things don't.
And in a world where attitudes are so difficult to change, we need a language that reaches through.
Hitler knew it; he used Wagner to make all the Nazis feel wonderful and Aryan.
And Mr. Berlusconi knows it, as he sits atop this huge empire of media and television and so on and so forth.
And all of the wonderful creative minds who are in all the advertising agencies, and who help corporate sell us things we absolutely don't require, they also know the power of the arts.
For me it came very early.
When I was a young child, my mother, who was a choreographer, came upon a phenomenon that worried her.
It was a phenomenon where young brides were committing suicide in rural Gujarat, because they were being forced to bring more and more money for their in-laws' families.
And she created a dance piece which then Prime Minister Nehru saw.
He came to talk to her and said, "What is this about?"
She told him and he set out the first inquiry into what today we call Dowry Dance.
Imagine a dance piece that even today kills thousands of women.
Many years later, when I was working with the director Peter Brook in "The Mahabharata" playing this feisty feminine feminist called Draupadi, I had similar experiences.
Big fat black mamas in the Bronx used to come and say, "Hey girl, that's it!"
And then these trendy young things in the Sorbonne would say, "Madame Draupadi, on n'est pas feministe, mais ça? Ça!"
And then aboriginal women in Africa would come and say, "This is it!"
And I thought, "This is what we need, as a language."
We had somebody from public health. And Devdutt also mentioned public health.
Well, millions of people around the world die of waterborne disease every year.
And that's because there is no clean water to drink, or in countries like India, people don't know that they need to soap their hands before defecation.
So, what do they do?
They drink the water they know is dirty, they get cholera, they get diarrhea, they get jaundice and they die.
And governments have not been able to provide clean water.
They try and build it. They try and build pipelines; it doesn't happen.
And the MNCs give them machines that they cannot afford.
So what do you do? Do you let them die?
Well, somebody had a great idea.
And it was a simple idea. It was an idea that could not profit anybody but would help health in every field.
Most houses in Asia and India have a cotton garment.
And it was discovered, and WHO endorses this, that a clean cotton garment folded eight times over, can reduce bacteria up to 80 percent from water sieved through.
So, why aren't governments blaring this on television?
Why isn't it on every poster across the third world?
Because there is no profit in it.
Because nobody can get a kickback.
But it still needs to get to people.
And here is one of the ways we get it to people.
[Video] Woman: Then get me one of those fancy water purifiers.
Man: You know how expensive those are.
I have a solution that requires neither machine, nor wood, nor cooking gas.
Woman: What solution?
Man: Listen, go fetch that cotton sari you have.
Boy: Grand-dad, tell me the solution please.
Man: I will tell all of you. Just wait.
Woman: Here father. Woman: Yes, of course.
Man: Then do as I tell you. Fold the sari into eight folds.
Woman: All right, father.
Man: And you, you count that she does it right. Man: One, two, three, four folds we make.
All the germs from the water we take.
Chorus: One, two, three, four folds we make.
All the germs from the water we take.
Five, six, seven, eight folds we make.
Our drinking water safe we make.
Five, six, seven, eight folds we make.
Our drinking water safe we make.
Woman: Here, father, your eight-times folded cotton sari.
Man: So this is the cotton sari.
And through this we will have clean water.
I think it's safe to say that all of us here are deeply concerned about the escalating violence in our daily lives.
While universities are trying to devise courses in conflict resolution, and governments are trying to stop skirmishes at borders, we are surrounded by violence, whether it's road rage, or whether it's domestic violence, whether it's a teacher beating up a student and killing her because she hasn't done her homework, it's everywhere.
So, why are we not doing something to actually attend that problem on a day to day basis?
What are we doing to try and make children and young people realize that violence is something that we indulge in, that we can stop, and that there are other ways of actually taking violence, taking anger, taking frustrations into different things that do not harm other people.
Well, here is one such way.
You are peaceful people.
Your parents were peaceful people.
Your grandparents were peaceful people.
So much peace in one place?
How could it be otherwise?
But, what if ...
Yes. What if ...
One little gene in you has been trying to get through?
From your beginnings in Africa, through each generation, may be passed on to you, in your creation. It's a secret urge, hiding deep in you.
And if it's in you, then it's in me too. Oh, dear.
It's what made you smack your baby brother, stamp on a cockroach, scratch your mother.
It's the feeling that wells up from deep inside, when your husband comes home drunk and you wanna tan his hide.
Want to kill that cyclist on the way to work, and string up your cousin 'cause she's such a jerk. Oh, dear.
And as for outsiders, white, black or brown, tar and feather them, and whip them out of town.
It's that little gene. It's small and it's mean.
Too small for detection, it's your built-in protection.
Adrenaline, kill. It'll give you the will.
Yes, you'd better face it 'cause you can't displace it.
You're V-I-O-L-E-N-T.
Cause you're either a victim, or on top, like me.
Goodbye, Abraham Lincoln.
Goodbye, Mahatma Gandhi.
Goodbye, Martin Luther King.
Hello, gangs from this neighborhood killing gangs from that neighborhood.
Hello governments of rich countries selling arms to governments of poor countries who can't even afford to give them food.
Hello civilization. Hello, 21st century.
Look what we've ...
look what they've done.
Mainstream art, cinema, has been used across the world to talk about social issues.
A few years ago we had a film called Rang De Basanti, which suddenly spawned thousands of young people wanting to volunteer for social change.
In Venezuela, one of the most popular soap operas has a heroine called Crystal.
And when, onscreen, Crystal got breast cancer, 75,000 more young women went to have mammographies done.
And of course, "The Vagina Monologues" we know about.
who are talking about racial issues, about ethnic issues.
So, why is it, that if we think that we all agree that we need a better world, we need a more just world, why is it that we are not using the one language that has consistently showed us that we can break down barriers, that we can reach people?
What I need to say to the planners of the world, the governments, the strategists is, "You have treated the arts as the cherry on the cake.
It needs to be the yeast."
Because, any future planning, if 2048 is when we want to get there, unless the arts are put with the scientists, with the economists, with all those who prepare for the future, badly, we're not going to get there.
And unless this is actually internalized, it won't happen.
So, what is it that we require? What is it that we need?
We need to break down our vision of what planners are, of what the correct way of a path is.
And to say all these years of trying to make a better world, and we have failed.
There are more people being raped. There are more wars.
There are more people dying of simple things.
So, something has got to give. And that is what I want.
Can I have my last audio track please?
Once there was a princess who whistled beautifully.
Her father the king said, "Don't whistle."
Her mother the queen said, "Hai, don't whistle."
But the princess continued whistling.
The years went by and the princess grew up into a beautiful young woman, who whistled even more beautifully.
Her father the king said, "Who will marry a whistling princess?"
Her mother the queen said, "Who will marry a whistling princess?"
But the king had an idea.
He announced a Swayamvara.
He invited all the princes to come and defeat his daughter at whistling.
"Whoever defeats my daughter shall have half my kingdom and her hand in marriage!"
Soon the palace filled with princes whistling.
Some whistled badly.
Some whistled well.
But nobody could defeat the princess.
"Now what shall we do?" said the king.
"Now what shall we do?" said the queen.
But the princess said, "Father, Mother, don't worry.
I have an idea. I am going to go to each of these young men and I am going to ask them if they defeated correctly.
And if somebody answers, that shall be my wish."
So she went up to each and said, "Do you accept that I have defeated you?"
And they said, "Me? Defeated by a woman?
No way, that's impossible! No no no no no! That's not possible."
Till finally one prince said, "Princess, I accept, you have defeated me."
"Uh-huh ..." she said.
"Father, mother, this man shall be my wife."
Thank you. | {
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「入っていいわよ」
「誰もいない?」
「ええ、私だけよ」
私がそう答えると沈黙があった後、ゆっくりと扉が開いた。
......あら、どうしてそんなにも真剣な表情を浮かべているのかしら。まだ何か問題があるのかしら。
「どうしたの?」
ジルは小さな声でそう言って私に一枚のカードを渡した。
「どこでこれを?」
......これはトランプだわ。この世界では確か、ロイヤルカードって言ったかしら。貴族の賭け事とかで使われるのよね。大人の遊びをするためのカード、......でもこれがどうして学園にあったのかしら。まぁ、生徒が遊びで賭け事しているって事も考えられるわね。
「狼が出現した所で見つけたんだ」
私はジルの声に思わず間抜けな声を出してしまった。
「つまり、これに何か意味があるって事かしら......」
「それは僕も分からない。でも、どうしてスペードのかは不思議だよね」
スペードの四......、犯人は何か残したって事かしら? それとも深読みし過ぎ?
はぁ、刺激のある生活の方が好きだけど、たまに長閑に暮らしたいとも思ってしまうわ。
「このカードが犯人だとすれば」
私とジルの声が見事に重なった。
「あ、やっぱりアリシアも分かってたんだ」
トランプの世界ではスペードは貴族、四の読み方はケイト、ここまでは分かったわ。
「でも、これを信じるわけにはいかないわ。罠かもしれないもの」
「そうだね、ラヴァール国の人間が魔法学園の誰かに罪をかぶせようとしたのかもしれないしね」
「このカードだけだと何も分からないわね......。謎が深まるばかりだわ」
......やっぱりラヴァール国に侵入するしかないのかしら。
でも、絶対にお父様は許してくれないわ。リズさんの監視役でさえやめさせたがっていたのだもの。
自ら国外追放になるとか......? それはあまりにも浅はかな考え方だわ。
......でも、ここは悪女らしく国外追放になった方がいいかもしれないわ。そして、またデュルキス国に戻ってくるのよ。上手くいくか分からないけど、もしこれが成功したら、確実に私は歴史に残るわ。
「アリシア? 何を考えているの?」
「......リズさんの監視役についてよ」
「僕、魔法は使えないけど、嘘は分かるよ」
「私が悪女になるためになにが一番良い選択かを考えていたのよ」
「......で、結論はでたの?」
今の私の考えをそのままジルに話せば、間違いなく反対されるわ。けど、嘘はばれるだろうし......。
「私はリズさんの隣にいるだけではだめなのよ」 | “Yes. You can come in.”
“....Is there anyone else in there?”
“No, it’s just me.”
There’s a moment of silence after my reply before Gilles slowly slides my door open.
......Hm? Why is his expression so serious? Don’t tell me something’s happened again?
“What’s wrong?”
“......I found this at the academy,” Gilles says quietly, handing a single card over to me.
“This...? But where did you....?” I ask while gazing at the card.
......It’s a playing card. In this world, I believe they call them ‘royal cards’ to be exact. Aristocrats use them for gambling. But a card used for adult entertainment..... what could it have been doing at the academy? Though, I guess it isn’t unimageable to think that some student might have brought a deck to campus to fool around and place bets with in order to pass the time.
“I found it in the area where the wolf appeared.”
“Eh?” I gasp out involuntarily, stunned by Gilles’s words.
“So... that is to say... there could be some sort of meaning to it.....?”
“That I don’t know. But if there is, it seems strange that it would it be a four of spades, don’t you think?”
The four of spades..... Could this really be something that the culprit left behind? Or are we just reading too much into it?
Ugh, I do like to have a bit of excitement in my life, but sometimes I really do just want to relax in peace for a little while.
“If this card is indicative of who the culprit is.....” I let my voice trail off for a moment.
” “Kate of the Aristocracy” ” Gilles and I say in perfect sync.
“Oh, as I thought, you knew about it too, Alicia.”
In the world of playing cards, the suit of spades represents the aristocracy and the number can be read as ‘Kate’. If this card has some sort of significance, then we can at least surmise up to here.
“But, there’s no way that we can trust this. It could all just be a trap,” I note.
“Right. Someone from the Ravaal Kingdom could have planted this as evidence. They might have been trying to cover up their involvement and pin the crimes on someone from the magic academy.”
“Finding this really doesn’t tell us anything..... It only adds to the mystery. The intrigue just keeps thickening.”
.....Is infiltrating the Ravaal Kingdom really my only option?
But, Father would never allow it. I mean, he even tried to make me quit monitoring Liz-san for my own safety.
Maybe there’s a way I could get myself banished from the country.....?
But wait..... It would be a very villainess-y move to get exiled, would it not? Maybe that is the best way to go.... And, afterwards, I would have to forcefully return to Duelkis. I can’t say whether it would work out well or not in the end. But if the operation was a success.... then that would be my ticket to instant stardom. My name would go down in history for sure!
“Alicia....? What exactly are you thinking about?” Gilles says, pulling me out of my thoughts.
“......My role as Liz-san’s monitor.”
“I may not be able to use magic, but it doesn’t take magic to know that’s an obvious lie,” he replies, staring at me with eyes full of deep-set mistrust.
“I’m trying to decide on what course of action would be the best for my future as a villainess.”
“.....And? Have you come to any conclusions?” Gilles asks me, his eyebrows raised.
If I explain to him what I had been considering just now, he’d definitely be opposed. But, if I try to lie to him, I’m sure to be found out.....
“I’ve realized that it’s not enough to merely stay near Liz-san,” I tell him evenly, maintaining pointed eye contact with him. | {
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だが少なくとも、最新の標準に照らして、チャベスは一線を越えたといえるのではないか。ラテンアメリカ全域における急進主義と反帝国主義の修辞的側面を支持する彼は、フィデル・カストロ(Fidel Castro)の後を継いだと非難されて久しい。今こそ、他のラテンアメリカの諸国と国際社会がこの非難を深刻に受け止めるべき時が来ていると言えよう。 | For years, he has been accused of taking over where Fidel Castro left off: supporting the rhetoric of radicalism and anti-imperialism, if not revolution, throughout Latin America. It could now be time for other Latin American nations and the international community to take such charges more seriously. | {
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私は朦朧としてくる意識の中で、気を引き締めて、思い切り足を上げた。そのまま足をヴィアンの腕に絡ませ、体ごとねじる。
ヴィアンは体勢を崩し、それと同時に私の首を絞める力が緩くなる。その瞬間を決して逃さない。
絶対に私を弱い女だなんて思わせない。
私は全力で体をねじり彼の手から首を離し、宙返りで地面につく。
思い切り息を吸い込み、空気を体内に取り入れる。
ヒューヒューと奇妙な呼吸になるが、なんとか彼の手から逃れたことに安堵する。
この男、本気で私の首を絞めていたわ......。私を殺したいの?
「残念、ね。わたしを......消すなんて、出来ない、わよ」
私は息を切らしながら、彼を睨む。ヴィアンは目を見開いて私を見つめたまま動かない。
これ以上何も言う気力はなく、私は首をおさえながら必死に呼吸を整え、ゆっくりと立ち上がる。
......え、サイコパスなのかしら? 情緒不安定な人って関わりたくないわ。
どうして、彼のこと大人っぽくてまともだなんて思ったのかしら。笑い方なんてヴィクターにそっくりじゃない。
「まさかそうやって抜けるとはなぁ」
ヴィアンは盛大に笑い終えた後、感心するようにそう言った。
「本当に、私を殺すつもりだったの?」
なんとか普通に話せるようになってきた。私の言葉に「まさか」と彼は含みある笑顔を向ける。
気持ち悪い王子様ね......。この辺は本当にヴィクターと大違いだわ。
彼は私の方に近付いてきて、私の許可など得ず、思い切り目を覆っている布をはがした。その瞬に視界がクリアになる。
やっぱりこっちの方が圧倒的に見やすいわ。私はキラキラした色気のある第一王子をまじまじと見つめる。
「......本当に片目が」
「だからないって言ったでしょ」
第一王子なんて関係ないわ。無理やり瞳を見られたんだもの。敬語なんて使わない。
「黄金の瞳か......、実に美しいな」
彼は私から決して目を逸らさない。
「満足?」
「綺麗な女だな」
私の声が届いていないみたい。......というか、その顔に言われてもね。私、貴方みたいにキラキラオーラを放っていないもの。
片目がないのに、それでも私は彼の瞳に綺麗に映っているのは光栄だけど。
「この容姿にその身体能力と素晴らしい仕事スキル、皇后にふさわしい素質」
「皇后ですって? いつラヴァール国が帝国になったのよ」
「じきに帝国になる」
......ヴィアンは一体何を考えているの?
この世界を征服出来るとでも思っているのかしら。この乙女ゲームの主軸はデュルキス国よ?
............もしかして、私がこの国に追放されたから?
デューク様が私に惚れた時点で、とっくにシナリオ通りじゃないわ。私が嫌われ者になったのと、リズさんが人気者だからずっと上手くいっているんだと思っていたけど、そうじゃない。
もう私の知っているエンディングにはならない。 | I drew myself together in my fading consciousness and lifted my leg as high as I could. I then twisted my legs and my entire body around Vian’s arms.
Vian shifts his position, and his stranglehold on my neck loosens at the same time. I take advantage of that moment.
I would never let him think that I was a weak woman.
I twist as hard as I can to remove my neck from his hands and somersault to the ground.
I breathe in as hard as I could, letting the air enter my body.
It was a really strange experience, but I was relieved that I managed to escape from his hands.
This man was seriously choking me... Did he want to kill me?
“Too bad, huh? You can’t...erase me... you know.”
I stared at him, exhausted, while Vian remained motionless, staring at me wide-eyed.
I didn’t have the energy to say anything else, so I held my head and struggled to breathe, slowly rising on my feet.
Was he a psychopath? I wouldn’t want to get involved with someone who was emotionally unstable.
Why did I think he was mature and sane? The way he laughs resembled Victor.
“I didn’t think you’d be able to pull it off like that.”
Vian said he was impressed after he finished laughing hysterically.
“Seriously, were you trying to kill me?”
I managed to speak normally. “No way,” he said, smiling at my remark.
You’re a creepy prince.... He really was very different from Victor in this area.
He came closer to me and, without asking for my permission, pulled off the cloth covering his eyes as hard as he could. My vision became bright and clear all of a sudden.
I could see much better this way, I thought while staring at the glittering first prince.
“...You really do have only one eye.”
“I told you, didn’t I?”
I was so frustrated with the First Prince that I didn’t even use honorifics, but he still forced me to look into his eyes.
“Golden eyes... they’re charming.”
He never looked away from me.
“Satisfied?”
“You’re a beautiful woman.”
I didn’t think he could hear me. Even if he did say it with that expression. I didn’t have his dazzling aura.
I was honored to be reflected beautifully in his eyes, even though I have one eye missing.
“With your looks, your physical abilities, and your great work skills, you have all the right qualities to be an empress.”
“Empress? When did the Ravaal Kingdom become an empire?”
“Soon it will be an empire.”
...What the hell was Vian thinking?
Did he think he could conquer the whole world? The main focus of this game was Duelkis, you know?
...Could it be because I was exiled to this country?
The scenario was long gone when Duke-sama fell in love with me. I thought things were going well all along because I was disliked and Liz-san was popular, but that was not the case.
It’s not going to end the way I remember it anymore. | {
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私はお父様の部屋を軽くノックしてから入った。
......もうなんだかこの展開に慣れてしまって驚かなくなったわ。
私はいつも通り国王様に挨拶をした。
「アリシア、久しぶりだな」
国王様はそう言って微かに微笑んだ。
むしろ三年も経って大人っぽくなっていない方が問題だわ......、それがゲーム内のアリシアなのだけど。
というか貴族様が皆集まって私に何の用なのかしら。
この展開になる度に理由を考えるのだけど、毎回予想外な事を言われるのよね。
「アリシア、異例だが十三歳で魔法学園に行く気はないか?」
前言撤回だわ、物凄く驚いてしまった。
実は、私てっきり魔法のレベルを聞かれるのかしらって少し思ってしまったのだけど、全く違ったわ。
つまも早くリズさんに会えるって事? 行くに決まっているじゃない!
「行きますわ。行かせてください」
私の言葉にお父様が困惑した表情をした。
やっぱり少しは謙遜も必要だったのかしら?
でも悪女は謙遜なんてしないもの。チャンスがあるのなら必ず貰うわ。
「アリシアは今魔法レベルをいくつまで習得しているんだ?」
あら、この質問、さっき考えていたものだわ。
私は満面の笑みを作った。悪女はやっぱり自慢気に言わないとね。
「レベル80ですわ」
......もっと凄いって顔をしてくださっても構わないのですよ?
思っていた反応と違うわ。
驚いているのは若干伝わりますが、私は褒めていただきたいの。
お父様なら喜んでくれると思いましたのに、その顔は何ですか......。
ネヴィル様が蚊の鳴くような声で呟いた。
もっと大きな声を出して驚いて欲しいですわ。
「聖女と同じレベルだ」
......聖女? 誰ですの?
聖女って大概の乙女ゲームではヒロインの役よね?
私、リズさんと同じレベルなの!?
やったわ! これで対等よ!
私は出来るだけ表情に出さないようにして心の中で喜んだ。
「アリシア、我々からの頼みを聞いてくれるか?」
「頼みですか?」
お父様がジョアン様を睨む。どうして怒っているのかしら。
「勿論断ってくれても構わない」
「分かりましたわ」
五大貴族の頼みを断ったりしたら、私、国外追放か死刑になりそうな気がするのですが。
「キャザー・リズの監視役をして欲しい」
私は今の国王様の言葉を理解できなかった。
えっと、どういう事ですの? | After knocking lightly on the door, I enter.
......I can’t even be surprised by this sort of development anymore.
As always, I sweep into a deep curtsy in greetings to the king.
“It’s been a while, Alicia.”
“You’ve become even more mature in that span of time,” he says, smiling lightly.
Rather, I feel like it would be a problem if I hadn’t matured at all over three years’ time..... which I suppose describes the Alicia from the game rather well.
And this time too, the five heads of the great noble houses have all gathered here together. What business could they have with me this time I wonder?
Each time this has happened, I tried to imagine the reason, but every time they end up saying things that are way beyond my expectations. So, I might as well give up on trying to think about it. This time, I won’t be surprised no matter what they tell me!
“Alicia, this might sound like an unusual question, but do you have any desire to attend the magic academy starting this year?” Johan-Sama asks me.
Huh?
I.... have to take back what I just said. I ended up being extremely surprised after all.
While I said I wasn’t going to bother thinking about the reason, I still assumed that they brought me here to ask about my current magic level or something similar..... but as it turns out, I was dead wrong.
And in short, doesn’t this mean I’ll be able to see Liz-san two years faster than I was expecting? If I can enroll early, then obviously I’d want to go!
“Yes. I’d like that. Please allow me to attend starting from this year.”
Hearing my answer, Father looks rather uncomfortable.
Should I have tried to act a bit more humbly after all? Should I have questioned whether it would be okay for me to attend at only ?
But, a villainess really has no use for such forced modesty. Since they’re giving me this amazing opportunity, of course I’d accept it.
“Alicia, what level of magic have you currently acquired?”
Ah. There it is. The question that I had been waiting for.
A huge grin stretches across my face. As a villainess, I absolutely cannot miss this chance to brag about myself.
“Level .”
.....You can act a little more awed over my amazing achievement, you know? I won’t mind.
At the very least, would you please refrain from looking at me like this answer was even more troubling than my last one? This reaction is not what I was expecting at all.
I suppose such looks do convey a feeling of surprise, but I was looking for something a bit.... more. Praise me! Commend me for my efforts..... Something!
I thought that at least Father would look happy for me, but what’s with his expression right now?
“......” Neville-Sama whispers feebly.
You should say that more confidently. I was hoping you’d all be shocked and amazed.
“That’s the same level as the saintess.”
.......The saintess? Who?
In otome games, doesn’t the saintess usually turn out to be the heroine? Which means.... could they be referring to Liz-san?
I’m at the same level as Liz-san!?
Yes! I did it! With this I leveled the playing field!
I’m inwardly ecstatic, but as much as I can, I make sure to manage my expression, trying not to let any of my true feelings leak out.
“Alicia, won’t you listen to a request of ours?”
“A request?”
Father glares at Johan-Sama. I wonder what made him angry?
“Of course, you may feel free to decline after hearing it. That will be completely fine.”
“Okay. I understand.”
Though, I feel like I’ll be exiled or executed if I actually decline a direct request from the council of the five main noble families....
“We would like you to monitor Liz Cather for us,” the king tells me.
Um, I don’t understand. His words aren’t making sense in my mind. What does he mean by that? | {
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翌日、朝の支度を済ませた頃に部屋を訪ねて来たティルラちゃんに食堂へ向かう。
「ワフ、ワフー」
「レオ様綺麗になったねー」
レオはティルラちゃんを背中に乗せてご満悦だ。
シェリーもティルラちゃんに抱かれながら、レオに乗れて喜んでるようだ。
ティルラちゃんは風呂に入って綺麗になったレオの毛を触りながら喜んでる。
嫌がるレオをちゃんと風呂に入れて良かったな。
そういえば、フェンリルはシルバーフェンリルより小さいとは聞いてるけど、もしシェリーが育って人を乗せられるようになったら、ティルラちゃんは喜ぶだろうか?
今はシェリーを抱き上げたり出来る事が嬉しいようだけど、大きくなった時に喜んでるティルラちゃんを想像しながら、屋敷の廊下を歩く。
まぁ、シェリーがそこまでになるのにどれだけの時間が必要なのかわからないし、そもそもそんなに大きくなるのかもわからないけどな。
「どうぞ」
客間に到着し、レオに乗ったままのティルラちゃんが俺の代わりに扉をノックして声を掛けてくれる。
クレアさんの声で許可が出て、先に来ていたライラさんが中から扉を開けてくれた。
ライラさん、さっきまで俺の部屋の前で待機してたはずなんだけどなぁ......挨拶した後は先に食堂へ向かったけど、もうお茶を用意し終えて扉を開けるまでやってるなんて......。
本当にこの屋敷の使用人達は移動をどうしてるんだろう?
なんて事を考えつつ、食堂に入り中ですでに待っていた人達に挨拶をする。
「おはようございます、クレアさん、セバスチャンさん」
「タクミさん、おはようございます」
いつものようにテーブルについたあたりで、朝食が運ばれて来る。
「あれ? エッケンハルトさんは?」
「......お父様は昨日までの疲れを取るとかで、まだ寝ています」
「旦那様は朝が弱いですからなぁ......朝食を抜かれる事もよくあります」
「お父様は寝坊助さんです」
食堂にいないエッケンハルトさんの事を聞くと、クレアさんとセバスチャンさんがやれやれといった様子で教えてくれた。
失礼かもしれないが、歳を取ると疲労が抜けにくくなるらしいからな......エッケンハルトさんがいくつなのかは知らないけど。
見た目的には30前後くらいだが、クレアさんくらいの子供がいるから、40代くらいかもな。
しかしティルラちゃん......寝坊助なんて言葉、この世界にもあるんだね......。
「お父様の事は放っておいて、朝食を頂きましょう」
「はい。......頂きます」
「ワフー」
「キャゥ」
父親で公爵家の当主様であるエッケンハルトさんを放っておくのは少し気が引けたが、起きて来ないのなら仕方がない。
クレアさんからの当たりが強い気もするけど、年頃の娘さんは父親に対してこういうものなのかもしれないな。
元気に返事をするティルラちゃんとレオ、シェリー達に続くように、俺も美味しそうな朝食を頂く事にした。
ヘレーナさん、今日も美味しい料理ありがとうございます、
心の中でお礼を言って、お腹いっぱいになるまで朝食を楽しんだ。
食後のデザートには、昨夜と同じくヨークプディンにバタークリームを乗せた物が出た。
多分、またクレアさんのリクエストなんだろうけど......クレアさんが太ったりしないか少しだけ心配だ。
デザートも食べ終え、食後のティータイムになろうかという時、食堂の入り口が勢いよく開いた。
「ワフ!?」
「キャゥ?」
レオとシェリーは音に驚いて、そちらの方に顔を勢いよく向ける。
俺も驚いた。
大きく扉を開いて入って来たのはエッケンハルトさんだ。
「おはよう! クレアにティルラ。それにタクミ殿も揃ってるな!」
「おはようございます、お父様」
「お父様、おはようございますー!」
「おはようございます、旦那様」
「......おはようございます、エッケンハルトさん」
「......ワフゥ」
「キャゥ」
朝が弱いとは思えないくらい高いテンションで食堂に入って来て、皆に大きな声で挨拶をした。
クレアさんとセバスチャンさんは溜め息でも付きそうな雰囲気で、ティルラちゃんは元気よく挨拶を返してる。
シェリーもティルラちゃんと同じように元気に返してるが、レオだけは「何だお前か......」とでも言うようにやれやれと言った返事になってる。
......レオ、一応この屋敷の一番偉い人なんだから、ちゃんとした挨拶を返した方が良いぞ?
「旦那様、朝食はどう致しますか?」
「いや、朝食はいい。それよりだタクミ殿」
「はい?」
セバスチャンさんから朝食をどうするか聞かれたエッケンハルトさんは、それを断りつつ俺に声を掛けて来た。
俺は扉が開く大きな音に驚いた事を落ち着かせるように飲んでいたお茶をテーブルに置き、エッケンハルトさんへと顔を向ける。
「タクミ殿の『雑草栽培』なのだが、実際に見せてもらう事は出来るか? 昨日はその能力を確かめもせずに契約してしまったからな」
「お父様......」
クレアさんとセバスチャンさんが溜め息を吐きながらエッケンハルトさんを見ている。
契約を結ぶのに、実際の能力を見ずに決めるなんて、当主様として良いのだろうか......。
まぁ、クレアさんやセバスチャンさんの勧めや、何故か気に入られたという事があったからなのだと思うけどな。
「わかりました。それではこれから裏庭で見せますよ」
「おお、そうか! 見せてくれるか!」
エッケンハルトさんのワクワクするような輝いた目を向けられて断れるわけがない。
断る気も無かったけど。
俺が見せる事に頷くと、エッケンハルトさんは満面の笑みで喜ぶ。
豪快という話は聞いていたが、どちらかと言うと、興味を持った事以外の細かい事は気にしない少年みたいな人だなと思った。
もしかしたら、こういう所はクレアさんに遺伝してるのかもしれない。
クレアさんも好奇心旺盛だからなぁ......セバスチャンさんも興味を持った事には前のめりな感じもするし......何だろう......公爵家......大丈夫かな......?
俺が心配しても仕方ない事だろうけど、近くにいる人達だから心配せざるを得なかった。
30分後、食後のお茶をしっかり楽しんでから俺達はエッケンハルトさんを含め、いつもの皆で裏庭に出た。 | The next day, Tilura came to our room just as I had finished getting ready, and so we headed to the dining hall together.
“Wuff. Wuff.”
“Leo is clean now!”
Leo was carrying Tilura on her back, and seemed to be in a good mood.
Sherry also looked happy, as she was carried in Tilura’s arms.
Tilura was feeling the texture of Leo’s washed fur with relish.
It really was a good thing that I had gotten Leo to bathe, even if she hated it.
Now that I think about it, while fenrirs were smaller than Silver Fenrirs, if Sherry eventually grew large enough to carry people, would Tilura be happy?
Right now, she seemed happy that she was able to carry and hold the fenrir, but I could also imagine her being happy once Sherry grew up.
Well, I didn’t know how long it would take for her to grow to that size. Or if she even would get that big.
“Come in.”
We arrived at the dining hall, and then Tilura knocked on the door while still riding on Leo’s back.
Ms. Claire answered from the other side, and then Ms. Lyra, who had arrived first, opened the door.
But she had been waiting in front of my room just a moment ago... And while she had gone ahead of us, she had already finished preparing the tea and was standing by for us...
Really, how did the servants in this mansion move so quickly?
I thought of such things as I entered the room and greeted the others.
“Good morning, Ms. Claire. Sebastian.”
“Good morning, Mr. Takumi.”
“Good morning, sir.”
I sat down at the usual seat and then breakfast was brought in.
“Huh? Where is Mr. Ekenhart?”
“...Father is still asleep. He is very tired from yesterday.”
“His Grace is not good with waking up early... He rarely even eats breakfast.”
“Father is a sleepyhead.”
When I asked about Mr. Ekenhart’s absence, Ms. Claire and Sebastian told me with a little exasperation.
While it might be a little rude to say, it was true that it was harder to recover once you grew older... Though, I didn’t know how old Mr. Ekenhart was.
He looked to be in his thirties, but considering Ms. Claire’s age, he was probably in his forties.
Still, Tilura... Sleepyhead was rather harsh...
“Nevermind father. Let’s eat breakfast.”
“Yes. ...Thank you.”
“Wuff!”
“Kyau.”
I felt a little bad about eating before their father, the head of the house, had arrived, but if he wasn’t awake yet then it could not be helped.
Ms. Claire also seemed a little severe towards him, but perhaps daughters generally felt like this towards fathers at that age.
And so as if to follow Tilura, Leo and Sherry’s eager replies, I also started to eat.
Ms. Helena’s cooking was as delicious as always.
I thanked her in my heart as I enjoyed eating until I was full.
There was also a dessert, which was the same york pudding with buttercream that we had last night.
I suppose Ms. Claire had requested it again... She would start to get fat if she wasn’t careful.
After we ate dessert, and were about to have our tea in the drawing room, the door suddenly flung open loudly.
“Wuff!?”
“Kyau?”
Leo and Sherry were startled by the sound, and they quickly turned their heads to look.
Even I was surprised.
It was Mr. Ekenhart, who came walking in.
“Morning! Claire and Tilura. And I see you’re here too, Mr. Takumi!”
“Good morning, father.”
“Father! Good morning!”
“...Good morning, Mr. Ekenhart.”
“...Wuff!”
“Kyau.”
He was so energetic, that it was hard to believe he would have trouble getting up in the morning.
Ms. Claire and Sebastian sighed visibly, but Tilura seemed happy to see her father.
Sherry looked happy as well, but Leo’s answer had been more of a ‘Oh, it’s you...’
...Leo. He’s the most important person here. So you should greet him properly, all right?
“Your Grace. Will you have your breakfast now?”
“No, I won’t eat. More importantly, Mr. Takumi.”
“Yes?”
Mr. Ekenhart refused his breakfast and addressed me.
I put down my cup of tea, which I had been sipping in order to calm myself after the startling appearance. And then I turned to face Mr. Ekenhart.
“About your Weed Cultivation. Can you show it to me? While we signed the contract, I haven’t actually seen you use it yet.”
“Father...” “Your Grace...”
Ms. Claire and Sebastian looked at him with exasperation.
To sign a contract without even seeing the actual ability in action. It did seem rather careless for someone of his position...
But then again, Ms. Claire and Sebastian had vouched for me, and he also seemed to like me for some reason.
“Very well. I can show you in the back garden.”
“Ah, I see! So you will!”
Mr. Ekenhart’s eyes were shining with excitement. And so there was no way that I could refuse.
Not that I had any intention of refusing.
After I agreed to it, Mr. Ekenhart smiled broadly.
In spite of what I had heard about him, he now reminded me of a young boy who didn’t really care about anything other than what interested him.
Perhaps Ms. Claire had inherited that trait.
She too was filled with curiosity... And even Sebastian became very engrossed in anything that caught his interest... What was it... Was this house going to be alright...?
Well, it was not my place to be worried about such things. But I couldn’t help it, when they were so close by.
And so thirty minutes later, after we all finished drinking our tea, we went out into the back garden. | {
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で売買されます。 ブラジルでの様々な違法野生動物売買によって 毎年3800万体ほどの動物が自然から 持ち出され、 商業的価値は 200億ドルにも匹敵すると 言われています。
警察はペット市場に出される、 生きてる動物の入っている 巨大なカーゴをインターセプトしたり、 住居から直接動物を押収したりしています。 毎月何千匹もの動物を 押収する結果となっています。
次に何が起こるのかを理解するため、 「ブラッド」を追って見ましょう。
多くの人は、動物が保護されると 「やった!正義は下された!
正義の味方がやってきて、 虐待された愛くるしい動物を 邪悪な密売者の手から 救い出し、 皆、幸せに暮らしました」と言うでしょう。
本当にそうでしょうか? 実際は違います。 多くの問題はここから始まります。
これらの動物をどうするかを 考える必要があるからです。
ブラジルでは一般的に、まず 国営トリアージ機関に送られます。 その環境は 密猟者のと同等に 劣悪なものです。 トリアージ機関は2002年に、 4万5千体の動物を受け入れ、 その内3万7千体は鳥類でした。
警察の推測によると、密猟された内 5%程度しか救出されていません。
「ブラッド」を含む幸運な動物達は、 トリアージ後本格的リハビリ施設へ行きます。
そこでは手当を受けます。
飛び方を教わります。 自然における食物の見つけ方も学びます。 そして同じ種族と 交際できるようになります。
しかしその後は?
鳥類だけを見てみます。 ブラジル鳥類学機構は 野生動物に対する知識が なさすぎると主張しています。 よって、動物を自然に 帰すことは保護された動物と自然で生息する動物にとって
多大なリスクを伴います。 その上、リハビリに資源を
費やしすぎていると主張しています。 この議論に際して 保護された鳥類の内、 絶滅危惧種でない種は
安楽死させるべきだと提案しています。 しかしそれでは、 サンパウロだけで、2006年に 26267羽の鳥を殺した計算になります。
しかし私を含めた何人かの研究者や いくつかの非営利団体、ブラジル政府の人々は 他の策があると信じています。
健康状態や行動、推測生息地、 そして分かる限りの自然生息個体数等の 判定基準を満たした動物を 責任持って自然に帰す ことができると考えています。 動物自身、種族の保護、 エコシステムのためでもあります。 環境変化に取り組む上で 重要な役割を果たすだろう遺伝子を 自然に帰しているからです。 それに種子分配役や、捕食獣、 餌などを放している可能性もあります。
私達の放した動物です。
一番上ではウミガメが自由を満喫しています。
真ん中の写真の鳥は、 放された数週間後に巣を作りました。
一番下はわたしのお気に入りで、 放された雄は、 4時間後に野生の メスと一緒になりました。
つまりこれは新しい取り組みではなく、 世界中で既に実施されています。
しかし、ブラジルではなお深刻な問題です。
我達は責任ある 放野をしてきたと信じています。
自然に帰した動物が交尾し、 ひなが生まれた記録を持っています。
つまりこれらの遺伝子は確実に自然に帰ってます。
しかし知識不足が原因で、 少数でしかありません。
もっと研究し、 この問題にもっと光を当てましょう。 できる限りの事をしましょう。
私はこの職に全力を捧げています。
皆さんも、自分達のできる事をするよう、 ここで呼びかけます。 隣人に話をしたり、子供達に実態を教えたり ペットを正当なブリーダーから購入したりです。
行動が必要です! 今必要です。 彼らが全滅する前に。
ご清聴ありがとうございました。 | It is estimated that all kinds of illegal wildlife trade in Brazil withdraw from nature almost 38 million animals every year, a business worth almost two billion dollars.
The police intercepts these huge cargos with live animals, intended to supply the pet market, or they seize the animals directly from the people's houses, and this is how we end up, every month, with thousands of seized animals.
And for us to understand what happens with them, we're going to follow Brad.
In the eyes of many people, after the animals are seized, they say, "Yay, justice has been served.
The good guys arrived, took the cute, mistreated animals from the hands of the evil traffickers, and everyone lived happily ever after."
But did they? Actually, no, and this is where many of our problems begin.
Because we have to figure out what to do with all these animals.
In Brazil, they are usually first sent to governmental triage facilities, in which most of the cases, the conditions are as bad as with the traffickers. In 2002, these centers received 45,000 animals, of which 37,000 were birds.
And the police estimates that we seize only five percent of what's being trafficked.
Some lucky ones -- and among them, Brad -- go to serious rehabilitation centers after that.
And in these places they are cared for.
They train their flying, they learn how to recognize the food they will find in nature, and they are able to socialize with others from the same species.
But then what?
The Brazil Ornithological Society -- so now we're talking only birds -- claims that we have too little knowledge about the species in nature. Therefore, it would be too risky to release these animals, both for the released and for the natural populations.
They also claim that we spend too many resources in their rehabilitation.
Following this argument, they suggest that all the birds seized from non-threatened species should be euthanized.
However, this would mean having killed 26,267 birds, only in the state of São Paulo, only in 2006.
But, some researchers, myself included -- some NGOs and some people from the Brazilian government -- believe there is an alternative.
certain criteria concerning their health, behavior, inferred origin and whatever we know about the natural populations, then technically responsible releases are possible, both for the well-being of the individual, and for the conservation of the species and their ecosystems, because we will be returning genes for these populations -- which could be important for them in facing environmental challenges -- and also we could be returning potential seed dispersers, predators, preys, etc.
All of these were released by us.
On the top, the turtles are just enjoying freedom.
On the middle, this guy nested a couple of weeks after the release.
And on the bottom, my personal favorite, the little male over there, four hours after his release he was together with a wild female.
So, this is not new, people have been doing this around the world.
But it's still a big issue in Brazil.
We believe we have performed responsible releases.
We've registered released animals mating in nature and having chicks.
So, these genes are indeed going back to the populations.
However this is still a minority for the very lack of knowledge.
So, I say, "Let's study more, let's shed light on this issue, let's do whatever we can."
I'm devoting my career to that.
And I'm here to urge each and every one of you to do whatever is in your reach: Talk to your neighbor, teach your children, make sure your pet is from a legal breeder.
We need to act, and act now, before these ones are the only ones left.
Thank you very much. | {
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俺とマクスウェルはラウムに戻ると早速コルティナの元へ向かった。
それは俺がニコルであるときに匂いが漏れないような容器を用意しておくことだ。
「つまり、密封と開放を切り替えられる容器が必要と言うことじゃな」
「そんな都合のいいもの持ってるか?」
「いや、じゃがアスト殿を見て思うところはある」
「ないものは作ればいいのじゃよ」
もちろん、そんなにすぐに加工できるはずがないので、俺はマクスウェルの屋敷に居残って加工をすることにする。
その間マクスウェルは、他の仲間の元を訪れ、事情を説明することにした。
まず上部を切断し、切り離した下半分の中をくり抜いていく。これは振動短剣の機能が非常に役立ってくれた。
上下に切断したため、保持するのに糸を巻き付けて固定する必要があるが、硬いファングウルフの牙でもバターのように切り裂けるのは実にありがたい。
手首まで響く振動を堪えながら、切っ先を使って中を慎重に抉っていく。
内部に収めるのは欠片一つなので、それほど深くくり抜く必要はない。その後合わせ部分を抜け落ちないように加工してきっちり蓋が閉まるように加工した。
「このままじゃあっさり抜けちゃうよな。なにかないかな?」
俺は前衛をこなすので激しく動くことが多い。うっかり抜け落ちて匂いが漏れたら、事情を知る者には正体がバレてしまう可能性がある。
そのためには抜け落ちないように、しっかりと固定できる細工が必要だ。
「と言っても、俺のだけ外見に違いが出たら問題あるしなぁ......魔法でどうにかできないかな?」
俺が使える魔法は干渉系一つだけ。すでに中級までは使用できるようになっているが、モノを固定する魔法となると――そこで一つ思い出した魔法があった。
それはジーズ連邦郊外の奴隷商の屋敷に押し入った時、マクスウェルが使っていた魔法だ。
と違い、鍵を掛けるだけでなく、完全に扉と壁を閉鎖してしまい、さらに構造物質すらも強化してしまう干渉系魔法だ。
構造に干渉する魔法なので、状況によっては使い道はある。
だが干渉するのは開口部だけであり、その周辺の壁までは影響が及ばないので、屋敷のように、横の壁を抜かれるなどという状況がよく発生する。
を密封するだけなので、その心配は必要ない。
「確か俺も学んだっけ。えーっと......」
記憶の隅に放り込んだ、あまり使用しない術式を引っ張り出し、詠唱を開始した。
の魔法は一度封鎖すると、その効果は術者が解除するまで永続してしまうため、今後の維持に魔力などは必要ない。
今回の目的のために使用するならば最適と言えよう。
カチリとしっかりと密着したのを確認してから、外れないか試してみたが、俺の力程度ではびくともしなかった。
問題は匂いが漏れているかどうかを確認するべきなのだが、現在部屋の中にはすでに匂いが充満しているため、それがわからない。
俺は作業していたマクスウェルの居間を出て、匂いの届かない範囲まで移動する。
途中で玄関前を通った時、急に不審な男が屋敷に入ってきた。
「うぉ?」
「うぉとはなんだよ。来てたのか、ニコル嬢ちゃん?」
「なんだマテウスか。死ねばいいのに」
「いきなりひっでぇな!?」
酷いも何も、当初は命のやり取りをした仲である。この程度の罵倒は罵倒のうちに入らない。
それより、作業中に戻ってこなくてよかったというべきか。
「それにしてもなんだ、この匂い。めちゃくちゃ草臭ぇんだが?」
「それ、マリアにケンカ売ってるからね?」
「ひぇ!?」
この匂いは世界樹の樹液を濃縮したものと言っていい。確かに濃密な植物独特の匂いをしているが、臭いというほどではない。
むしろ不快になるギリギリの、濃厚かつ絶妙な芳香と言えた。
先の罵倒を世界樹教徒のマリアがきいたら、それこそ懇切丁寧に『癒して』もらえたことだろう。
だがこれはこれで、ちょうどいいタイミングとも言える。
「そうだマテウス。わたし臭くない?」
「お嬢ちゃんはいつも乳臭ぇよ?」
俺が短剣を引き抜いたことで、マテウスは飛び退いて手を上げていた。
「まあ、冗談じゃなく答えると、屋敷ん中の匂いがきつすぎてさっぱりわからん」
「むぅ、それもそうか」
先ほどまで剥き出しで欠片を放置していたため、屋敷内はエリクサーの匂いで充満していた。
そこで俺は、玄関の外に出て再度マテウスに確認してもらった。
匂いというものは意外と慣れてしまいやすいため、俺の鼻では微妙な違いが判らなくなっているからだ。
「ふむ? 多少草っぽい匂いがしているが、それほどキツイもんじゃねぇな?」
「じゃあこれは?」
奴は鼻を鳴らしてその匂いを嗅ぎ、再び首を振った。
「それほど特別な匂いはしないぞ?」
「よし、成功!」
マテウスは暗殺者をやっていただけあって、感覚は鋭い。
なお、この光景を目撃した口さがない近所の主婦が、『マテウスがマクスウェルの屋敷前で、うら若い乙女とイチャついていた』と噂を流されることになるのだが、それは俺には関係のない話だった。
いや無関係というわけじゃないけど...... | As Maxwell and I returned to Raum, he immediately headed to Cortina. We were going to cut the Elixir into six parts and give it to each of the Six Heroes. For that, I had to do some fiddling.
That is, I had to make sure to find a container that wouldn’t leak the smell when I was acting as Nicole. But at the same time, I needed to be able to let the smell out of the container when I return to being Reid.
“In other words, you need a container that you can hermetically seal and open at will.”
“Do you have something so convenient lying around?”
“I do not, but after seeing Sir Aste, I have something in mind.”
“We can just make what we do not have.”
And with that, I started working to seal the Elixir fragment inside my Talisman as Maxwell instructed. Naturally, I couldn’t make one on the spot, so I stayed behind in Maxwell’s mansion to keep working.
In the meantime, Maxwell visited the rest of our comrades to explain the situation.
I first cut the top half off, and started to hollow out the inside of the lower half. The oscillation of the dagger was super useful for this.
Since I bisected it into two, I needed to tie a thread to keep them in place, but I was really thankful that the dagger could cut a tough fang of a Fang Wolf like butter.
While enduring the vibration that reached my wrists, I carefully gouged out the insides of it with its tip.
I only needed to put a fragment in it, so there was no need to make a big hole. Following that, I made it so the two halves wouldn’t fall off and were able to shut tight.
“Still, it would easily come undone at this rate. I wonder if there’s another way.”
I was a vanguard so I moved about a lot. If it slipped off inadvertently and let the smell out, those who knew about the situation could figure it out.
For that, I needed to find a method that would keep it tightly shut so it wouldn’t slip off.
“Having said that, it would also be problematic if only mine stood out from the rest... Can’t I do something with magic?”
I could only use the Interference System magic. I could already use middle-grade spells from it, but when it comes to spells to fix things in place——Then, I suddenly remembered one spell.
It was the spell that Maxwell used when we were infiltrating the slave merchant’s mansion in the Geeze Union.
The Hard Lock spell, unlike simple Lock, was a spell of the Interference System that didn’t simply lock things, but fixed the door and the wall in place and even further strengthened the structure’s material.
It was a spell that meddled with the structure, so there were ways to put it to use.
However, it only meddled with the part that opened, so its influence didn’t extend to the surrounding walls. As such, getting rid of the wall next to it like during that time was a common method to bypass it.
That said, I was just sealing the talisman this time, so that part didn’t worry me.
“I think I learned it too. How was it again...”
I dug out the magic formula that I hardly ever used from the back of my mind and started chanting it.
With the Hard Lock spell, once locked, the effect would stay permanent until the caster removed it, so it didn’t require magic power to maintain it.
You could say it was the ideal spell for my current goal.
I put the fragment inside the hollowed section, put the cover on, and activated the spell. Once I confirmed that they were stuck together, I tested whether or not I could open it, but it didn’t budge even with my full strength.
I should have also checked whether the smell was leaking or not, but the room was already full of it, so I wouldn’t be able to tell now.
I left Maxwell’s living room where I was working and moved to a place where the smell was no longer present.
On the way, just as I passed before the entrance, a suspicious man entered the mansion.
“Woah?”
“What do you mean, woah? I didn’t know you were here, young missy.”
“Oh, it’s you, Mateus. I hoped you died.”
“Why are you so heartless all of a sudden!?”
Of course, I would be, we were once engaged in a deathmatch. This much wasn’t even considered abuse.
That aside, I guess I should be glad he didn’t show up while I was working.
“Still, what’s with this smell. It stinks of grass.”
“You’d be picking a fight with Maria if she heard that.”
“Eek!?”
You could say this was the smell of the condensed sap of the World Tree. It was quite an abundant plant-like smell, but I wouldn’t call it stinky.
Rather, you could call it an exquisite perfume whose smell was one step away from what would start bothering you.
If Maria, who was the World Tree believer heard his earlier remark, she would have probably kindly “treated” him.
In any case, his timing was good.
“Right, Mateus. Do I smell?”
“Yeah, you always smell of immaturity.”
Just as I pulled out my dagger, Mateus jumped back and raised his hands. If you’re gonna act so scared, don’t make fun of me from the start.
“Anyway, answer seriously. The mansion smells too much so I can’t tell myself.”
“Ugh, you’re right.”
Since I had the fragment out until just a while ago, the whole mansion was full of the Elixir.
Thus I passed through the entrance and asked Mateus to confirm it again.
You could get used to smells surprisingly fast, so my nose couldn’t tell the subtle differences apart now.
“Hmm? Well, you have some grassy smell, but I guess it’s not too much?”
“Then how about this?”
I held out the Talisman with the fragment inside before his nose. He sniffed it and then once again shook his head.
“I don’t smell anything particular from it?”
“Okay, it’s a success!”
Mateus was an assassin, so his senses were very sharp. If he didn’t think anything of it, it seemed that sealing it off was a success.
In addition, the gossipy housewives in the neighborhood that witnessed this sight started spreading rumors that “Mateus was flirting with a young girl in front of Maxwell’s house”, but that had nothing to do with me.
Or well, I guess it had... | {
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何故か少し地面は湿っていて、水たまりなどがある。そこを鼠がシュッと駆け抜けたのが見えた。
......もしかして、私に罪人を押し付けようとしているの?
昨日はおじい様の美しい部屋で楽しんだのに、今は臭くて汚い牢獄にいる。
「もし、僕が手に負えない場合、その人達はどうなるのですか?」
「殺すしかないだろうな」
ニール副隊長は低い声でそう呟いた。人の命の価値はみな平等であるけれど、立場によってその重みは変わってしまう。
「着いた」
彼の声と共に私はその場に足を止める。ピチャッと足元で音がする。丁度、足が水たまりに入った。
けど、今はそんなことを気にしている場合じゃない。太い鉄の柵で閉じ込められていを見つめる。
......なんて鋭い目。敵意と憎悪しかないじゃない。特の男から放たれる殺気には驚かされる。
全くこの場所で馴染もうなんてしていない。
私と同い年かそれより下ぐらいかしら。ジルと同じぐらいかも。......そう言えば彼も最初は私にこんな目を向けていた時もあったわね。懐かしいわ。
兄と思われる方は少し怯えている弟を抱きしめて私達を睨んでいる。
少し癖のある黒い髪に韓紅色の瞳。双子だとは到底思えない歳の差だが、顔は二人ともよく似ている。
けど、性格があまりにも表情に出過ぎているからか、そんなに似てもいないのよね......。それに、彼らは褐色肌。デューク様より随分と濃いけれど。
「どこで彼らを見つけたんですか?」
私の言葉にニールは苦笑する。私を見るその瞳は「お前が一番知っているだろう」と言いたげだ。
「も、しかして、闘技場?」
「ああ。正確に言えば、闘技場から脱走した人間を捕まえた、かな」
「褐色肌ってことは......」
「何をそんなに驚いている。メルビン国からも罪人は来るだろ」
当たり前のようにニール副隊長がそう言った。
............確かに、それもそうよね。デュルキス国限定で罪人受け付けるなんて考えられないもの。
メルビン国......。きっとデューク様のお母様の出身国。王妃が生まれた国のことなんて今まで気にもかけてこなかった。それ以外にすることが沢山あったから。
けれど、今こうして、メルビン国出身の彼らを見ると興味が湧いてきた。
「僕に彼らを預けてくれるのですか?」
「ああ。けど、こいつらは相当厄介だぞ。兄だけじゃなくて、弟のほうもな」
私はニール副隊長の言葉を聞きながら牢に入っている二人の少年へと視線を向ける。
私に慈悲なんて言葉は似合わない。だから、強くなければいらない。私の部隊は誰でも入れるようなものじゃない。
「名前は?」
私が少し圧をかけてそう言っても、全く彼らは動じない。兄の方は私から決して目を離さず、物凄い形相で睨んでくる。
魔法学園でも沢山睨まれていたせいか、睨まれることが日常になってしまって彼らに対して何も思わない。
「僕の名前はリアだ。。君達の年齢は?」
「どうしてここに入っているんだ?」
「お腹が減った?」
何を言っても無駄なようね。あからさまに無視されているもの。......彼らが一番望むことは。
「解放されたい?」
私のその質問に兄の眉がピクッと少し動くのが分かった。 | The ground was damp for some reason, with puddles and such. I also noticed a rat scurrying across the ground.
...Are they trying to force a sinner on me, perhaps?
Yesterday I enjoyed myself in Grandfather’s beautiful room, and now here I am in a smelly, filthy prison.
“What will happen to those people if I can’t handle them?”
“I guess you’ll have to kill them.”
Deputy Captain Neil muttered in a low voice. All human lives were of equal value, but their weight varied depending on their position.
“Here we are.”
I came to a halt when I heard his voice. Under my feet, I heard a clicking sound. My foot had just stepped into a puddle.
But now was not the time to worry about that. I looked at the two people trapped by the thick iron fence.
...What sharp eyes. Nothing but hostility and hatred. The murderous intent from the man in particular was astonishing.
He didn’t seem to be trying to fit in at all.
He was around my age or younger, maybe the same age as Gilles. ...Come to think of it, there was a time when Gilles used to look at me like this at first. I missed it.
The older brother was holding his slightly frightened younger brother in his arms and staring at us.
He had black hair with a slight curl and crimson eyes. It was difficult to believe they were twins, but their faces were strikingly similar.
They didn’t even look that similar, probably because their personalities were reflected too strongly in their facial expressions.... Besides that, they both have brown skin that is much darker than Duke-sama’s.
“Where did you find them?”
Neil chuckled at my words. The look in his eyes as he looked at me was as if to say, “You should know better than anyone else.”
“In the arena, perhaps?”
“Yes. Or, to be more precise, I caught someone escaping from the arena.”
“Brown-skinned...”
“What are you so surprised about? There are also sinners coming from Melvyn Kingdom, you know.”
Vice Captain Neil said, as if it were just a matter of course.
It was unthinkable that the Duelkis Kingdom would be the only place to send sinners.
Melvyn Kingdom.... Melvyn Kingdom...must be the country where Duke-sama’s mother was born. I never paid attention to the country where the queen was born. I had many other things to do.
But now, seeing these people from Melvyn Kingdom, I am becoming interested.
“You are going to entrust them to me?”
“Yes, but these guys are quite a pain in the neck. Not just the older brother, but the younger one as well.”
I turned my attention to the two boys in prison as I listened to the words of Vice Captain Neil.
Mercy was not a word that suited me. So, I didn’t want them if they weren’t strong enough. My unit would not be just for anyone.
“What’s your name?”
I put some pressure on them, but they didn’t budge. The older brother never took his eyes off me, and continued staring at me with a horrified expression on his face.
Perhaps it was because I had been stared at so much at the magic academy that I didn’t react to the stare as much, as it had become a normal part of my life.
“My name is Ria. I am years old. How old are you?”
“Why are you here?”
“Are you hungry?”
Nothing I say worked. They were blatantly ignoring us. The last thing these people want is to be released.
“Do you want to be released?”
I could see the twitch of the older brother’s eyebrows at my question. | {
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月の日の休日、シェイラはいつも通りフェリクスに会いに帰っていた。
「この間、初めて王都で遊んだんだ。これ、おみやげ」
フェリクスには様々なお菓子の詰め合わせを、ルルとリチャードにはクッキーを手渡す。
「街は楽しかったかい?」
「楽しかったけど、ちょっと迷子になっちゃった。あ、もちろんすぐに合流できたから大したことなかったけどね」
ゼクスから延々お小言を聞かされてすっかり懲りていたシェイラは、これ以上の叱責を避けるために問題を過少に伝えた。兄とのお茶の時間がなぜかいつもお説教の時間に変わってしまうけれど、今日こそ全力で回避だ。
シェイラの努力の甲斐あってか、お茶会は和やかに進んだ。
「このクッキー、とてもおいしいよ。シェイラが僕のために選んでくれたものだと思うと、それだけで世いしく感じる」
「喜んでもらえてよかった。ルルやリチャードさん、クローシェザード先生に買ったのと同じクッキーだけどね」
同じものだけれど、種類も量もフェリクスが一番多くしてある。こういう面で気を遣わないと兄はすぐ拗ねるのだ。妹に特別扱いされて何が嬉しいのかと不思議に思う時も多いが。
「クローシェザードとは、仲よくやっている?」
「あー............」
今一番微妙な距離感の相手だったので、すぐに答えることができなかった。表面上はいつも通り会話をしていたし、最近はヨルンヴェルナとの補習で会うことすら少なくなっていた。
「他の生徒よりは仲よくできてる方だと思うよ。何と言っても私にとっては憧れの騎士様だし」
シェイラは答えをはぐらかした。明言を避けたことくらいは兄にも分かっているはずなのに、彼は言及しなかった。
「そうか。騎士になりたいと思ったのは、クローシェザードがきっかけだものね。可愛い妹が他の男に憧れるなんて、兄としては結構複雑だけれど」
「だってそれはフェリクスが、」
咄嗟に言い返そうとして、シェイラは慌てて口を塞いだ。フェリクスが挙動不審な妹を不思議そうに見つめる。
「僕?僕は関係ないだろう?」
「いや......」
「シェイラ?」
フェリクスからの圧力に耐えきれず、渋々口を開く。単に恥ずかしかっただけで、後ろめたいことなど一つもないのだ。
「............騎士になりたいと思ったのは、フェリクスに頼られたかったからなの。だってあの頃、私達家族のこと、全然好きじゃなかったでしょ?」
幼い頃からフェリクスは優しかった。ただひたすらに、どこまでも。
悪戯をしても、フェリクスが大切にしていた釦を欲しがっても、文句一つ言わなかった。シェイラにはそれがなぜか、距離を置かれているように感じた。それは両親に対しても同じで、にこにこ微笑んでいる向こうで本当に考えていることは決して明かさないようなところがあった。
けれどあの日、山中で見かけたフェリクスは笑っていなかった。どこまでも無表情、どころか厳しい顔をして。そんな兄の姿がとにかく衝撃だった。でもきっと、それが本来の兄の顔だ。シェイラは直感的に思った。
なぜかその時、騎士が酷く羨ましくなった。フェリクスが本当の顔で接している、特別な存在。シェイラも、冷たくても怒ってもいいから、特別な顔を見せてほしかった。
そうして突然現れた凶悪な大虎。シェイラは咄嗟に動こうとしたが、フェリクスの様子に足を止めた。彼は怯えることも逃げることもせず、平然としていたのだ。
そして、さして労せずに猛獣を打ち倒す騎士。シェイラは理解した。フェリクスは、騎士が獣を倒すと確信していたから逃げなかったのだと。
そこに見える絶大な信頼に、絆に、胸が苦しくなった。焦がれた、と言ってもいい。
騎士になりたい。そんな思いが芽生えたのは、その時だった。
「フェリクスに家族として認められたかった。私だって守れるのにって思った。信頼されたかったの。............騎士様が強くてカッコいいって思ったのも、もちろんあるんだけどね」
シェイラはモゴモゴとやや早口に話し終えた。
恥ずかしくて顔が上げられない。フェリクスのシスコンをいつも呆れているのに、シェイラも大概ブラコンだ。
ずっと言葉を失っていたフェリクスの反応が気になり怖々と顔を上げると、彼はいつの間にかシェイラの隣に立っていた。
「あまり、可愛いことを言わないでくれ。――――手離せなくなる」
ぎゅうっと抱き潰され、段々笑いが込み上げてきた。やはりこの兄は、とびきり甘い。
「フェリクスが私を手離す必要、ないのに」
「うん............そうだね」
甘々な触れ合いに、リチャードが今日も恒例の砂を吐く。それすら目に入らずに、兄弟は会話を弾ませるのだった。
◇ ◆ ◇
フェリクスの屋敷をいつもより早く出たのは、顔を出したいところがあるからだった。
送ってくれたルルに礼を言って別れると、シェイラは意を決して職員棟に向かった。ゆっくりと階段を上り。いつも人の気配が感じられないほど静まり返っているが、今日は休日なので本当に誰もいないはずだ。階段の高い天井に足音が反響する。
特別コース教員室の扉の前に立つ。誰もいないはずなのに、確かに人の気配がした。
「............やっぱり。月の日なのに、働いてるんですか?」
こっそりと扉を覗くと、いつも通り働いてるクローシェザードの姿があった。彼は顔も上げずに嫌みを返した。
「君が補習を受けているせいで人手が足りないのだ」
「クローシェザード先生が仕事を減らせばいいじゃないですか」
「引き受けた仕事をできないと言えと?」
「そんなところで意地を張ってもどうしようもないでしょうが......」
呆れるシェイラだったが、すぐに気を取り直して入室した。
「実はこの間、王都に行ったんです。それでこれ、おみやげ」
一生懸命選んだ紅茶の缶と蜂蜜の瓶、数種類のお菓子を取り出す。フェリクスの屋敷で使っていない茶器も拝借してきたので、準備は万全だ。
「――――水の精霊よ」
ティーポットに手をかざして唱えると、中は水で満たされた。次いで火の精霊にお願いして水を瞬時に熱湯に変える。
入れる茶葉の量や蒸らし時間は、ルルに習ってきたから何とかなる。やがて、紅茶のほのかな香りが部屋に漂い始めた。
覚束ない手付きで作業をしていくシェイラを眺めながら、クローシェザードが息をついた。
「............土産と言うが、それは自分のためではないか?」
「居心地のいい環境作りは大切ですよー。ホラ、クローシェザード先生もちょっと休憩にしたらどうですか?」
シェイラがあえて否定せずに返すと、クローシェザードは苦虫を噛み潰したような顔に変わった。
コポコポと音を立てて、紅茶がカップに注がれていく。無機質な部屋に温かな湯気が立ち上った。それだけで、なぜだか心が安らぐ。
シェイラが何度も誘うと、クローシェザードはようやく書類を脇に避けた。この部屋でゆっくりする時間を取るのは初めてのことだ。
彼の前にも紅茶とお菓子を置いて、シェイラはようやく腰を落ち着けた。
しばらくは無言で紅茶を楽しんだ。
まだ蜂蜜は手放せないが、ミルクがなくても紅茶を飲めるようになった。こちらでの生活に少しずつ慣れてきていることを実感する。
「......政変のこと、調べました」
シェイラは静かにティーカップを置いた。
「この間は、すいませんでした。クローシェザード先生への配慮が足りませんでした」
クローシェザードがゆっくりとカップから顔を上げた。
「別に、構わない。............あの頃の傷がどこにあるのか、もう自分でも分からないほど過去の話だ」
静かで、透徹とした横顔。孔雀石色の瞳には、諦めの感情さえ見つけられなかった。
この人は、もうどこもかしこも傷だらけで。沢山の傷を、ずっと呑み込み続けてきたから、最早痛みすら分からなくなってしまったのではないか。
この部屋が殺風景だったのは、赴任したばかりだからだと思っていた。けれど一向に増える様子のない私物。
もう、甘いお菓子にも、おいしい紅茶にも。――――何も感じなくなって久しいのかもしれない。
「......この部屋、私の好きにしてもいいですか」
「急にどうしたのだ」
「急に思い立ったんです。クローシェザード先生も、もっと色々こだわった方がいいですよ。どうせ一日の大半をバカみたいにここで過ごしてるんですから」
「喧嘩を売りたいのか、君は」
軽口を叩けば、胸が痛くなるような切ない空気が霧散していく。それでいい、と思った。
次に空いた時間ができたら、今度こそ座り心地のいいクッション買ってこよう。部屋に花を飾ってもいい。
この人が、幸福とは何か、思い出せますように。
救いが何か一つでも、ありますように。
......初めて自分で淹れた紅茶は、甘くて少し苦かった。 | On a lunar day, Sheila went back home to see Felix as usual.
“The other day, I walked around in the royal capital for the first time. Oh, here’s a souvenir for you, Felix!”
She handed Felix an assortment of sweets, and also for Lulu and Richard.
“Did you have fun there?”
“I had fun, but I got a little lost. Of course, I was able to join them right away, so it wasn’t a big deal.”
Sheila, who had learned her lesson from Zechs’s endless lectures, underplayed the problem to avoid further reprimands. For some reason, teatime with her brother always turned into lecture time, but today was the day to avoid it at all costs.
Thanks to Sheila’s efforts, the tea party proceeded peacefully.
“These cookies are very good. Just thinking that Sheila chose it for me makes me feel like it’s the best cookie in the world.”
“I’m glad you enjoyed them! They’re the same cookies I bought for Lulu, Richard, and Claushezade-sensei.”
It was the same cookies, but Felix had the most variety and quantity. If Sheila didn’t pay attention to this aspect, her brother would get upset. She often wondered why he was so happy to be treated specially by his sister.
“Do you get along well with Claushezade?”
“Ah....”
Sheila couldn’t answer right away because they weren’t seeing each other as frequently as before at the moment. On the surface, they were conversing as usual, but lately, she was seeing him less and less because of the supplementary lessons with Jornwerner.
“I think I get along better with him than the other students. After all, he’s a knight I admire.”
Sheila brushed off the question. Even though her brother noticed, he didn’t mention it.
“I see. Claushezade was the reason you wanted to become a knight, wasn’t it? As an older brother, it’s quite problematic to have my pretty little sister yearning for another man.”
“That’s actually because of Felix...”
Sheila hurriedly covered her mouth as she was about to reply. Felix looked curiously at his sister who was acting suspiciously.
“Me? I had nothing to do with it, did I?”
“No....”
“Sheila?”
Unable to withstand the pressure from Felix, Sheila reluctantly opened her mouth. She was simply embarrassed and had nothing to feel guilty about.
“.... I wanted to become a knight because I wanted to be relied on by Felix. Because back then, you didn’t like our family at all, did you?”
From an early age, Felix was kind. Just earnestly, anytime.
Even if Sheila played a prank on him or wanted Felix’s cherished buttons, he never complained. For some reason, Sheila felt as if he was keeping his distance from her. It was the same with her parents; behind their smiling faces, they never revealed what they were really thinking.
However, that day, the Felix she saw in the mountains wasn’t smiling. He had no expression on his face, or rather, he had a stern face. She was shocked to see him like that. But that must have been his true face, Sheila thought intuitively.
For some reason, at that moment, she envied the knight terribly. A special existence that Felix treated with his true face. Sheila also wanted him to show his true face, even if it was cold or angry.
Then suddenly a vicious giant tiger appeared. Sheila tried to move as quickly as possible but stopped short at the sight of Felix. He was neither frightened nor running away; he was calm.
There was a knight there who could strike down a ferocious beast without much effort. Sheila understood. Felix didn’t run away because he was convinced that the knight would defeat the beast.
The immense trust and bond that Sheila saw made her heart ache. She was yearning for the same thing.
It was at that time that such a thought began to grow in her.
“I wanted to be recognized by Felix as family. I wanted to be able to protect him. I wanted to be trusted..... Of course, I also thought that the knight was also strong and cool.”
Sheila finished speaking rather quickly.
She was too embarrassed to look up. She had always been dumbfounded by Felix’s siscon, but Sheila was also a brocon.
Worried about Felix’s reaction, who had been quiet for a while, Sheila looked up in fear, and before she knew it, he was standing next to her.
“Don’t say such cute things too much. ――I won’t be able to let you go.”
Sheila was hugged tightly, and laughter gradually welled up. After all, her brother was incredibly sweet.
“There’s no need for Felix to let me go.”
“Yes..... That’s right.”
In response to the sweet exchange, Richard spit out sand as usual today
◇ ◆ ◇
Sheila left Felix’s mansion earlier than usual because she had someplace to show up.
After thanking Lulu for the ride and saying goodbye, Sheila made her way to the staff building. She slowly climbed the stairs to the third floor. It was always so quiet that she couldn’t feel any sign of people, but today was a holiday, so there really should be no one there. Her footsteps echoed against the high ceiling of the staircase.
She stood in front of the door of the special course teacher’s office. No one was supposed to be there, but she definitely felt someone’s presence.
“.... I knew it. Even though it’s a holiday, you’re still working?”
When she secretly peeked through the door, she saw Claushezade working as usual. He returned the sarcasm without looking up.
“We’re short-staffed because you’re taking supplementary classes.”
“Why don’t you just cut back on the workload, Claushezade-sensei?”
“You’re telling me I can’t do the work I’ve accepted?”
“I can’t help you if you’re stubborn like that....”
Sheila was taken aback, but quickly regained her composure and entered the room.
“Actually, I went to the royal capital the other day. So, here is a souvenir.”
Sheila took out the tea tins, a jar of honey, and several kinds of sweets that she worked hard to select. She had also borrowed some unused tea utensils from Felix’s mansion, so she was all set.
“――O Spirit of Water.”
She held her hand over the teapot and chanted, filling it with water. Next, she asked the fire spirit to turn the water into boiling water instantly.
She had learned from Lulu how much tea leaves to put in and how long the time to brew, so she was able to handle it on her own. Soon, the faint aroma of tea began to waft through the room.
Claushezade sighed as he watched Sheila work with her clumsy hands.
“..... You say it’s a souvenir, but isn’t it for yourself?”
“It’s important to create a comfortable environment! Look, why don’t you take a break too, Claushezade-sensei?”
When Sheila dared to reply without denying it, Claushezade’s face changed to one of bitterness.
The tea was poured into cups. Warm steam rose in the room. That alone was somehow comforting.
After Sheila repeatedly invited him to join her, Claushezade finally put the papers aside. This was the first time he took some time to relax in this room.
Placing a cup of tea and a pastry in front of him as well, Sheila finally sat down.
They enjoyed their tea in silence for a while.
Sheila still couldn’t give up honey, but she could now drink tea without milk. She felt that she was gradually getting used to life here.
“.... I checked about the political upheaval.”
Sheila quietly set down her teacup.
“I’m sorry about the other day. I wasn’t considerate enough to Claushezade-sensei.”
Claushezade slowly looked up from his cup.
“No, I don’t mind..... It’s so far in the past that I don’t even know where the scars from those days are anymore.”
A quiet, translucent profile. In his peacock-colored eyes, Sheila couldn’t find even a hint of resignation.
This person was already full of scars everywhere. He must’ve been filled with so many scars for so long that he no longer even knew what pain was.
She thought that the reason why this room was so empty was because she had just arrived here. However, there was no sign of an increase in the number of personal belongings.
No sweet pastries, or even good tea. Maybe it had been a long time since he felt anything.
“..... May I do as I please with this room?”
“What’s the matter with you all of a sudden?”
“It suddenly occurred to me. Clauschezade-sensei, you should be more particular about things. You’re spending most of your day here like a fool anyway.”
“You’re trying to pick a fight, aren’t you?”
A lighthearted remark, and the heart-wrenching, sad air fizzled out. ‘
The next time she was free, she would buy two comfortable cushions and decorate the room with flowers.
May this person remember what happiness is.
May there be one thing that saves you.
The first cup of tea Sheila brewed herself was sweet and a little bitter. | {
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